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1955-05-12 第22回国会 参議院 農林水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月十二日(木曜日)    午前十時五十四分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     荒木正三郎君    理事            秋山俊一郎君            白波瀬米吉君            三浦 辰雄君            戸叶  武君            千田  正君    委員            青山 正一君           池田宇右衞門君            大矢半次郎君            重政 庸徳君            関根 久藏君            田中 啓一君            長谷山行毅君            飯島連次郎君            奥 むめお君            溝口 三郎君            森 八三一君            江田 三郎君            三橋八次郎君            東   隆君            棚橋 小虎君            菊田 七平君            鈴木 強平君   政府委員    内閣官房長官  根本龍太郎君    水産庁長官   前谷 重夫君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君    常任委員会専門    員       倉田 吉雄君    常任委員会専門    員       林  達磨君   説明員    農林省農地局管    理部長     立川 宗保君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査の件  (ビキニ水爆実験補償配分に関す  る件)  (農地問題に関する件)   —————————————
  2. 荒木正三郎

    委員長荒木正三郎君) ただいまから農林水産委員会を開きます。初めにビキニ水爆補償金配分の件を議題にいたします。過日ビキニ水爆補償金七億二千万円の配分方法がようやく決定したようでありますから、本日この問題について政府当局から説明を聞き、御審議を願うことにいたします。
  3. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 政府アメリカから受領しました二百万ドルの配分につきまして、できるだけ公平に配分をするために、関係各省からなる打合会を設けまして、これは四月二十八日の閣議決定したのであります。それ以来関係方面が非常にこれは多いのと、さらに被害を受けた人々要求との間にも、全体の額の間に相当開きがございますることで、この問の配分基礎を固めるためには慎重なる資料の収集と、また一面におきましては理解を得なければならないので、十数回の委員会並びに幹事会を開きまして、そうして最後的に配分決定をいたした次第でございます。なお、この配分に当りましては、本件関係処理のために相当行政費がかかっておりますが、これは全面的に受領した金額の中からそういう費用を出すことが適当でないと思いまして、これは全部一般会計から国庫負担として政府が負担することにいたした次第でございます。  配分の内容を申し上げますというと、第一は治療費でございまして、これが二千五百四十七万四千円でございまして、その内訳福龍丸乗組員関係が二千四百八十六万九千円でございます。その他船舶乗組員関係が六十万五千円でございます。  第二は慰謝料及び傷病手当金でございまして、これは五千四百二十六万二千円になっております。その内訳福龍丸乗組員関係が五千二百七十九万二千円でございます。その他船舶乗員関係が百四十七万円となっておる次第であります。  第三は漁獲物廃棄による損害でございまして、これが七千九百二十八万九千円でございまして、その内訳A廃棄魚価が四千百三十二万七千円、廃棄の経費が一千七十万三千円、それから休漁損害が二千五百五十七万一千円、その他が百六十八万八千円になっておるのでございます。  第四の項目危険区域設定による漁船損害について五千百十六万三千円を計上しております。  それから第五の魚価低落によるマグロ生産者損害が四億五千四百二十万四千円でございまして、そのうち魚価低落による価格差損が四億一千三百五十四万四千円になっているのでございます。次に漁獲物廃棄を行なった漁船水揚げ分特別値下りについて四千六十六万円を配分いたした次第でございます。  第六の項目商船関係損害でございまして、これは百二十七万二千円でございます。  第七の項目は、流通業者等損害についてでございまするが、これは四千百万円でございまして、そのうち産地仲買業については千六百万、六大都市仲買業については二千二百万、練り製品、焼きちくわ業等に対しては三百万。  第八項目としましてその他、これが千三百三十三万六千円でございまして、焼津市の分が百二十三万六千円、漁業者団体が五百五十万円、その次は六大都市卸売小売団体が六百万円、カン詰冷凍団体関係が六十万円、合計七億二千万円となっておる次第であります。  なお、備考として申し上げるならば、事件処理に要した行政費福龍丸購入費、これは二千百万円、急性放射能医療対策費一千百万円、ビキニ海域漁場調査費一千四百四十一方円、放射能被害調査及び検査が二千七十五万六千円、放射能被害に関する基礎的研究費が六千百六十七万六千円、合計一億二千八百八十四万二千円、かようになっている次第でございます。  なお、業者関係に対する融資については、先般、本委員会においても強い要請がございましたので、生産業者関係については二億三千万、それから流通業者については、産地仲買に対しては千六百万、六大都市仲買については二千二百万、いずれも特別融資の許可をいたすことにし、その手続を完了しておる次第でございます。  以上、概略御報告申し上げましたが、詳細について必要とありますれば、担当事務当局から補足説明を許していただきたいと思います。
  4. 千田正

    千田正君 私はこの際官房長官に特にお伺いしておきたい点が三点ばかりあるのです。  それはまず第一に、これは慰謝料として受け取ったということになっておりますが、おそらくアメリカにしろ、ソ連にしろ、今後とも絶対こういう問題はやらないということは私は保証できないと思います。全然、こういう問題が再び起らないということは、私は保証できないと思うのですが、それに対しての心がまえは、やはり、国家問賠償請求権というものを放棄する。そして、慰謝料ぐらいでがまんして、国内におけるところの損害に対しては政府が責任をもって、国内のそうした損害を受けたものに対しては、日本政府みずからがそういうものに対しての補償なり何なりするというお考えで、これはアメリカ側の提示をそのまま受けたのかどうかという点を一つ聞きたい。  もう一つは、六百万ドルの請求に対して、二百万ドルの慰謝料でこの際日本側はがまんする。これは日米間のいろいろな援助資金、あるいはフィリピンやインドネシアに対する日本側賠償問題等を十分考慮した上において、当然この程度でがまんしなければならないのじゃないかと、政府の苦しんでいるのは、われわれにも相当了解できるのでありますが、ただ、こういうことにおいて、一方において国家間の賠償というような、あるいは損害に対する請求権を放棄して、一面国内におけるところの被害者に対してはなかなか処置ができないということになると、これは、やはり日本国の定あられておるところの憲法上の問題がそこに出てくる、こういう問題に対して、将来どういうふうに考えられるか。言いかえれば、私はこれを契機として、こういう問題が将来起きた場合に、国家賠償に対する国内処置として、立法でもするお考えがあるのかどうかという点であります。  もう一つは、これはこの前の予算委員会で私は官房長官にお尋ねしたのでありますが、二億三千万円の業者に対する融資は、三月三十一日をもって政府は返せということを一応通達して、二億三千万円という金が貸してあった。その間にとにかく慰謝金として来たものをお前たちに分けてやる。一応のつなぎ資金としては二億三千万貸してやるから、それは三月三十一日までだということで貸してあったわけであります。ところが三月三十一日になっても、政府最後決定をしない。そのために業者は苦しんで高利を借りたりして一応つないでいる。ところが今お話通り閣議においてこの配分決定したのが四月の二十八日、ところが大蔵当局あるいは政府からのいわゆるつなぎ融資決定したのが四月の二十七日、ただ一日しか間をおかない。これはどういうわけでそうなさったのかわれわれはふに落ちないのであります。そうしまするというと、片っ方においては早く返せということを、三月三十一日までに返しなさいということを言っておいて、アメリカ側から受取ったものは四カ月も前に受け取っておって、それはそのまま配分決定しないで四月二十八日まで持ち越した。片っ方においては貸し付けたものに対しては利息がつく。そういう点は、私は非常に政府側の手落ちじゃないかと思うのですが、この点についてはどういうふうにお考えになっておられるかということと、この五億八千万では業者承知しないように私は聞いております。今後についても一体どういうような方法においてこの人たち納得せしめるような、あるいは納得せしめないとしても、政府側において苦しんでいるところの業者に対するいわゆる融資方法なり、あるいは何かの方法において、苦しんでいる人たちに対しての政府側処置考えられるものかどうか。この点を一応承わっておきたいと思います。
  5. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 第一のお尋ねの、国家請求権を放棄して、いわば政治的解決に終ってしまった。従って、この問題については、被害者側においてはいまだに請求権が残っておる。これについては政府はどうするかというような御趣旨だったと解釈しまするが、これはすでに本会議においても外務大臣関係閣僚から御答弁申し上げたように、政府は前内閣以来この問題の解決を非常に努力されまして折衝いたしましたけれども、国際法上の法律論として交渉した場合に、どうしてもこれが合意ができない、こういう観点のために、この問題が妥結のめどがつかないままにいきますれば、これは被害者に対してもまことに相済まぬことであるし、そういう観点からして全くこれと同様な問題ではありませんけれども、従来、国家問のこうした紛争の場合において、やはり、政治的解決が行われる慣例に基きまして、政府は当時の現状から見て、政治的解決をする以外に方法なしという判断のもとにあの協定になったわけであります。従いまして、日本政府として現実に被害を受けた個々日本国民損害賠償請求権そのものを、国家がこれを否定したという立場はとっていないのでありまして、法律論上はこれは個々請求権はあるでございましょうが、政府としてその請求権まで停止せしめたというような考えは毛頭持っていない次第でございます。  その次の第二の問題は、将来こういうような問題が絶無とはいわれないであろう。そうした場合において、こうした問題に対して、政府被害を受けた国民に対して何らかの立法措置において国家賠償措置に関する法的措置をする用意があるかどうかという御質問のように解釈いたしますが、現在のところ政府としてまだ今国会にそういう立法措置を講ずるということは準備いたしておりません。今後もこういうことがひんぱんに起るとは政府考えておりませんし、なおこの協定を締結するに当りましては、外務大臣からかかる問題が起らないように厳重に申し入れをし、アメリカ側においてもそういうことは万全を期して避けると、こう言っておられまするので、現存のところ政府といたしましては、国家賠償特別措置立法化するという考えは持っていない次第でございます。  なお、第三点といたしましては、今日配分決定したけれども、本来被害を受けた人々請求額が二十七億にも達しておったのでありまするから、従って満足しておるとは思っておりません。その差額について今政府自身一般会計からこれを支出するという考えも持っていないのでありまするが、そのために被害を受けた人々に対して何らかの措置によって救済措置考えているかどうかというような御質問だったと思うのでございまするが、これについては、御指摘のように融資については、実情に即しましてでき得るだけ業者の将来の更生、そういう方面を考慮して参りたいという考えを持っておる次第でございます。
  6. 千田正

    千田正君 お答えをいただきましたうちの第一点でありますが、これはすこぶる将来日本にとっては大きな問題であると同時に、考えなければならない問題であると思うのです。かつてこういう問題がないかどうかと、同じようなケースがなかったかということを考えるというと、御承知通り戦時中における阿波丸沈没事件がありました。これは戦時中の問題であったので、日本政府はその賠償権を放棄した。放棄したかわりに、国内において見舞金あるいは慰謝料という名前において、国内措置によってそうした被害者に対する慰謝料を出しておる。これは戦時中の問題であって、いろいろそうした状況において行われた問題でありますが、このビキニの問題は平和の間において行われたところの国家間の問題であり、しかも受けた損害は非常に大きいし、また将来これは世界の人道上からいいましても、こういう問題は相当日本政府側としては慎重に取り扱わなければならない問題じゃないかと思う。私が非常に心配するのは、単に金の問題とか何とかいう問題ではなく、現在もうすでに原子力競争時代であり、あるいは将来戦争のないことはみな望んでおりますけれども、その最もおそるべきところの原子力による兵器の戦いが将来起らないとはだれもこれは断言できないのでありまして、その実験の具に供せられたような感がある日本の平和な漁民とかあるいは平和な国民人たちがこうむった損害というものは、やはり国家間におけるところの十分なる国際的な良心のもとにこの問題は解決されなければならない問題ではないだろうか。仮にアメリカ側がこれでがまんしてくれと、そして政府が了承したのでありましょうから、それはそれでわかりますけれども、それなら国内損害を受けたものむこれでがまんしてくれとこういうことを言うならば、ある程度良心的な方法によってそうした被害者に対して何らかの措置を講じなければならないのではないか。ところが今御説明のあった通り、二億三千万つなぎ融資はしたけれども、これは当時の政府としてはなかなか苦しかったかもしれません、しかしこれは預金部資金の中から流用して、ただで貸しておらない。やはりこれは政府資金を貸しておるということで、低利ではあるけれども利息を取っておるのであります。ところがアメリカ側から受け取ったところのこのいわゆる慰謝料というものは、すでに四カ月前に政府は受け取っておる。そのとき直ちに配分決定しておれば、何も利息をつけた金をそうした苦しんでおるところの漁民に貸し付ける必要はなかったはずである。片方では利息をつけた政府の金を貸し付けておって、そうして片方においてはこの賠償金がじんぜんとして四カ月も延びておって、さらにそれを決定したのは、つなぎ資金融資決定とそれから閣議におけるところの配分決定はわずかに一日の差である。片方においては利息によって責められておる。こういう実情考えまして、こういうような方途を今後ともとるならば、ちっとも国民納得させるような政策ではないじゃないか。それで今後において、しからばどういうふうにして、こうしたいわゆる天災にも比すべきところの損害を受けたこの平和な漁民に対するところの措置というものは、どういうふうな方法をとろうとするのか、これに対して官房長官お話は、何かの方法を講ずると、あるいは融資方法を講ずるというお話だけでありまして、確たる御答弁がないというと、相変らずこの人たち自分請求権要求してあなたがたを困らせることだろうと思うのであります。この際一日も早くこうした人たち納得させるような方法考えてもらいたい、その点について何か確信があってこの人たち納得させるような方法をもう政府考えておられるかどうか、この点をもう一回重ねてお尋ねいたします。
  7. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 御指摘のように、見舞金を受領してから配分に至るまで四カ月も時間を費したことはまことに遺憾でございまするが、御承知のように、関係被害者要求と受領した金額との間に大きな差がありまして、これをできるだけ公平に納得ができてもらえるようにというためには、関係各省の意見を十分にこれは検討してみなければなりませんので、まことに残念ながら時間がかかった次第でございます。これは不手ぎわといえば誠に不手ぎわで残念に存じております。本来ならば、これがきまりますれば、従って従来融資したのはもう期限がきておるから返して、引き続いて融資をしなくてもいいという立場に、これは厳密にいえばそういうこともいえましょう。しかしそれはあまりに酷に過ぎるし実情に即しないというので、配分決定いたしましたけれども、なおかつ、それを考えまして、さらに今後も融資をしばらく実情に応じて続けていくというような形にしまして、これによって、若干の間高利資金を受けたけれども、今後の融資期間を若干延長することによって、その間の調整というか、被害者立場をできるだけ政府として考慮して措置したいと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  8. 千田正

    千田正君 こまかい面はあるいは官房長官にお尋ねするのは御無理かもしれませんが、もしわかってお答え願えれば、水産庁長官でもよろしいし、どなたでもよろしいのでありますが、この五億八千万の渡す金の中から二億三千万円というこの前融資しておるのを差し引いて渡すのですか、それともこの点はどうなんですか。  それからたとえば利息ですね。高利を借りることもわかっております。あるいは高利を借りておらなくても、政府が貸しておる分に対する利息はあるわけです。こういうものは天引きにして渡すのですか、それとも政府預金部資金の分は法律によって三分何厘でしたか、それはあくまで政府は取る、そうして慰謝料慰謝料だが、政府の貸した分は貸した分として利息をつけて取る、こういうやり方でやっておられるわけですか、その点をはっきりして下さい。
  9. 前谷重夫

    政府委員前谷重夫君) 融資の点についてお答えいたします。ただいま千田委員お話のように、四月の二十七日に融資決定いたしましたが、その前に我々といたしましては財政当局交渉をしながら農林中金のほうといろいろ話し合いまして、その間のつなぎ融資を出すように斡旋いたしておりまして、県によりましては相当早く出たものもございます。  それから第二点の二十七日に決定いたしました二億三千万円は、これは直ちにこの金額を差し引くということではなく、三カ月以内の期間におきまして融資をいたしたわけでございます。ただ先ほど官房長官からお話がございましたように、今後の問題といたしましては、実情に即しましてその融資についての斡旋等についてはざらに努力して参りたい、かように考えておるわけであります。ただ利子の点につきましては、預金部資金融資でございますので、預金部資金融資一般と同様の利子を徴収する、かように相なっております。
  10. 千田正

    千田正君 それでは慰謝料引き渡しに際しては、そういう政府の純然たる不手ぎわによって遅れたこの配分のために政府から金を借りなければならない、しかもそれは法律によって利息はつけて政府にお返しをする、しかしその渡すところの金に対しては、早く言えばその人たちに渡さなければならない金を、政府が無利息で預っておるようなものですが、そういうようなものも換算してこの五億八千万というものを見込んでおられるのですか、そういうものはもう利息は別なんだ、そういうことはもう文句を言うな、こういうことでこの五億八千万は別途の考えでお渡しになるのですか、その点も伺っておきたい。
  11. 前谷重夫

    政府委員前谷重夫君) 七億二千万円の配分で、漁業関係に五億八千万円でありますが、これはビキニ被害につきまして、先ほど官房長官からお話がございましたように、各被害項目につきまして公平に分配する、かような意味におきまして当時の被害を見、廃棄物等につきましてはその後の廃棄を入れまして、そうしてその被害額について配分の対象にいたしたわけでございます。
  12. 千田正

    千田正君 時間もないから、ここでまた論争を繰り返してもしようがありませんが、最後に重ねて官房長官に要望しておきますのは、どうもおそらくこれでは納得いかないじゃないだろうか、というのは、アメリカ側との交渉は、政府としては六百万ドルの請求に対して二百万ドル、約三分の一でがまんせざるを得なかった状況は、我々もこれは何回となく政府側の御答弁である程度了解しました。しかし国内措置はこれでは到底納得いかないのじゃないか。憲法二十九条あるいはその他の方からいいましても、国民の福祉のために自分らの財産の被害をある程度眠るとしましても、政府そのものとしては、やはりこうしただれの罪でもない、一方の国の勝手な実験の結果受けた損害に対しては、やはり平和な国民としては当然要求するのは当りまえだと私は思うのです。これを政府側としては十分に考究はしておられると思いますけれども、即刻に何かの方法においてこの人たち納得のいくような施策をやってもらいたい、これは強く要求しておきます。これは単なるこの程度で話がまとまるものとは私は思っておりません。ということは、片方においてはそれでなくても漁家経営が苦しいところにもってきて利息を払い、あるいは高利を払って苦しんでおる、その状況を見るというと、容易なことではこの問題は解決つかないのではないかと思います。官房長官は御自信があるようでありますが、その御自信のほどをさっそく実行に移してもらいたい、これを今日は要望しましてこの程度にしておきます。
  13. 荒木正三郎

    委員長荒木正三郎君) ほかに御質問がございましたら御発言を願います。
  14. 千田正

    千田正君 ちょっと水産庁長官に伺っておきますが、そうするとあとの問題として、融資の大体の額その他については目安はついているのですか、どうですか。
  15. 前谷重夫

    政府委員前谷重夫君) 配分決定いたしましたが、水産業者に対しては二億三千万円、それから流通関係につい三億五千万融資いたしましたが、これは三カ月以内という期間になっております。今後におきまする融資につきましては、われわれとしてもその具体的な実情をさらに調査いたしまして、それに基きましてさらにこの融資等措置につきましては、関係当局と相談いたしたいと、われわれとしては実情に即して努力いたしたいと、かように考えております。
  16. 荒木正三郎

    委員長荒木正三郎君) ちょっと速記をやめて下さい。   〔速記中止
  17. 荒木正三郎

    委員長荒木正三郎君) 速記を始めて。それでは暫時休憩いたします。    午前十一時二十八分休憩    ————————    午後一時二十七分開会
  18. 荒木正三郎

    委員長荒木正三郎君) それでは午前に引き続きまして委員会を再会いたします。ちょっと速記をやめて下さい。   〔速記中止
  19. 荒木正三郎

    委員長荒木正三郎君) それでは速記を始めて下さい。
  20. 江田三郎

    江田三郎君 農地担保金融がいずれ法案として今国会中に出るものと予想されておりますが、まあこれは非常に日本農地という問題をどういうふうに考えていくか今後の農政の一つの大きな基調になる問題なので、われわれも非常にこれを重要視しているわけです。で、当然まあこの問題が問題化されて取り上げられる場合には耕作権の問題、あるいは小作料の問題というようなこと、そこまで掘り下げていかなければ、簡単に担保金融というようなことをきめられぬ問題ではないかと思うのですが、それに国連して、最近私どものほうの聞いている範囲では、各地で不法な土地の取り上げ事件がひんぴんとして起きておるわけですが、それについて農林省のほうで調べられたのでは、大体全国的に何かそういう不法取り上げ、あるいは取り上げ問題についてトラブルを起している状態というようなものを総括的に調べたのがございますか、あれば、今でなくてよろしいから、後ほど資料として出していただきたいと思います。  それから特にその中で、最近全国的に問題になったのは、福島県の鏡石村の問題なんですが、これは衆議院においてもすでに農林水産常任委員会で取り上げられて、おそらく農林省のほうでも調査をなさったと思いますが、その調査の結果というものを、おわかりになりましたらお知らせ願いたいわけなんです。
  21. 立川宗保

    説明員(立川宗保君) お尋ねのありました福島県の岩瀬郡鏡石村の問題を申し上げます。  この鏡石村におきます農地の事件につきまして、二カ月ほど前でありましたか、なかなか非常に複雑なる問題があって、しかも現地の処理が必ずしも適切でないのじゃなかろうかというようなお話がございまして、それはきわめて重大である、この農地の賃貸借処理の問題は、農地制度の一つの根幹をなすものでありますので、早速調査をいたそうということで、面接農林省のほうから担当者を現地に派しまして、数日の問鏡石村に腰を据えまして調査をいたしたのであります。その調査の概要結果だけを申し上げます。  問題となります事案が十九あると思います。そのうち賃貸借の解除の問題、いわゆる小作地返還の問題が十四件、これを関係町村に分類をいたしますと、お互いに村なりその町なりにまたがっておりますので分類をいたしますと、鏡石村だけの問題が十件、須賀川に合併されました前は稲田村でありますが、この村とに亙りますものが三件、広戸村とに関係するものが一件。さらに今度は内容別に分類をいたしますと、現在におきまして地主と小作人の間で交渉中でありますものが四件、次に当時者から賃貸借の解除の申請をしておりますものが三件、すでにその当時におきましてもう片づいてしまったもの、農事調停が成立をして話し合いがついたものや、あるいは知事が賃貸借の解除を許可をいたしましたために農林大臣に訴願中のもの、こういったものを含みますが、それが五件、それから成規の農地法の手続きをとらずに、無断取り上げが一件、それから賃貸借の解除の申請をしたのでありますが、それを県が不備のゆえをもって突っ返した、返戻をいたしましたので、その後もずっと出てこない、つまりもう申請を撤回したと推定をされるものが一件、以上四件であります。この十四件の賃貸人、つまり地主の賃貸借契約解除要求の理由でありますが、これはいろいろありますが、小作契約の期限が満了したが、更新をしないというものであったり、あるいは小作料が非常に安いから引き合わないという理由であったり、農家経済が近ごろ非常に不況になったので、単作地帯としては、地主で経営を拡張しなければやっていけない、こういうような理由、あるいは家族の人数がふえたとか、二、三男が分家したいというような理由が出ております。この村の特徴は、水田も畑もあるのでありますが、その賃貸借解除の要求がほとんど全部水田であります。そしてその賃借人は、他村の小作人が多く、それから比較的中流の農家と思われるようなものが対象になっておるものが多いのであります。それから地主、賃貸人のほうは、小作人の同意を得て、いわゆる合意解約の形でほとんど申請がされております。そこで内容でありますが、無断取り上げというような問題は、これは申すまでもなく不法なものであります。これは当然農地法の規定に従って許可があるまではこういうものは認められない、こういうことであります。それから非常に特徴がありましたのは、今の十四件のうち四件、それから地主さんの親戚の人がおりますから合計五件ですか、ある特定の地主さんの頭文字はSといいますが、その特定の地主さんが、相当多くの賃貸借の解除の計画をしております。それは二男が学校を出て一人前になったので、分家をしたい、こういうために関係の耕作者との賃貸借契約を解除したい、そして二男にその土地を分けてやりたい、こういうことであります。これはいろいろ現地でも大いに問題になっておったようでありますが、いろいろ許可をする許可権者であります具当局の考え方、その他といろいろ話し合いをしてみたり、調査をいたしたのでありますが、いずれもこれは農地法二十条の規定によります賃貸借解除の理由にはどうもなりがたいのではないだろうか、従って今非常に問題になっておりますこの事案は、おそらく不許可処分といいますか、賃貸賃契約を解除することを認めないということにおそらくなるのではなかろうかということであります。それが大体調査をして来ました要点であります。なお、本件につきましては、後日県の責任者も上京してもらいまして、私も話をしたのでありますが、そのときにとくと注意を要望して、農地法第二十条の適正な運用を要請をしておいたのであります。
  22. 江田三郎

    江田三郎君 多くのものが合意に基くというような報告でありましたが、しかしその合意というのはどういうお調べによって合意という断定を下されておるのか、われわれの聞くところでは、その間に暴行事件も出ておる或いは強制的に判を押さされたというようなことで、今問題になっておると思う。今部長の言われるのと私どもの調べたところでは相当食い違いがありますが、その食い違いの一つとして、合意とはどういうお調べ方をなさったか、その点どうですか。
  23. 立川宗保

    説明員(立川宗保君) 合意は、私の申し上げましたのは形式的に小作人の離作承諾書といいますか、賃貸借の解除の承諾書といいますか、そういうものが出ております格好で申請書が出てきておるということを申し上げたのであります。その間に今江田委員お話のようないろいろな問題があったというようなことも実は調査の際に出て参ったのです。これはもちろん両方から聞いたわけでありますので、その小作人の方の申し出ということに、そういうような、今お話のございましたようなことがあったということが、小作人側からのその話には出ております。それで、いろいろとそういったような問題もあっただろうとは思われますが、さてそこでつけ加えて申し上げますが、合意があれば、形式的に離作承諾書があれば、すなわち全部許可をする、こういう処置はとっておりません。これは私の方の指導といたしましても、離作承諾書があるということは一つの重要な材料ではあるけれども、離作承諾書がかりにありましても、それが詐欺、脅迫そういったものであればもちろんでありますが、そのほかかりにそういうものがありましても、農地法二十条の規定に該当しないということであれば、それは二十条の精神に照らして不許可にすべきものは不許可にする、こういう指導をいたしておるのであります。
  24. 江田三郎

    江田三郎君 たまたまことしは契約の期間満了ということが全国的に相当あると思うのでして、同じような問題がどこでも起きているわけで、長野県でも言ってきておりますし、新潟県でも言ってきておりますが、どうも私は近頃農地法というものの運営が非常にゆるんできておるのじゃないか、これは東京近辺の建築会社ですか、土地会社ですか、あれの問題でも、結局あいまい模糊として終っちまって、多くの問題が、われわれから言ったら当然これは司法権の発動を見るべきものと思っておりましても、それがいつの間にか消えてしまっておるのでして、それらの取り上げはほとんど合意という形式をとるわけですよ。合意で、承諾書があったところで、それは重要な参考資料にしても、それだけじゃやらんと言われても、それがあれば、大体においてあとは何のことはないようになってしまうのですから、そこであなたの方も衆議院の農林委員会でも問題になって、現地へわざわざ出て行かれて何日おられたのかは知りませんけれども、現地へ出て行かれておるのに、それをこの報告によると、ほとんどが合意であったというような報告は、私はあなたのところ自身が町村の農業委員会や県だけでなしに、農林省そのものがちょっとぼけているのじゃないかと思うのですが、なぜ一体もっと突っ込んだ報告ができるような調査ができんのですか。
  25. 立川宗保

    説明員(立川宗保君) 少しく失礼いたしましたかもしれませんけれども、江田委員は私が合意ということを申し上げたのをいわゆる実質上の合意という工合に解釈をしておるようにおとりではないかと想像するのですが、私は今申し上げましたように合意ということを申しましたのは、形式上その県へ許可申請書が出てきておるときには、両者が合意であるという恰好をとっておるものが多いという客観的な事実を申し上げましたので、それはちゃんと判をついて出ておるということを、形式的にやはり一応合意ということを私どもとしては申したのであります。ただしそれが合意であるから、直もに許可をするというような指導は決してしておらないのでありまして、かりに合意でありましても、合意の過程を追及をすることはもちろん、それから合意が真実に合意でありましても、客観的に農地法の規定による許可条件に当るかどうかということは別途の基準で判断をする、こういうことでありまして、今お話しのように非常にぼけているのじゃないかというお話は、必ずしもぼけておらんということをはっきり申し上げたいと思います。
  26. 江田三郎

    江田三郎君 とてもよろしい、その答弁でよろしい、それでなければ困るのでして、だから一つ合意の書類が出ておるとか出ておらんとかいうようなことでなしに、実質的に今おっしゃったような立場でやっていただきたいと思うのですが、これは鏡石だけでなしに、先ほど申しましたように全国的に非常にことしはこういう案件が多いのです。そこで農地局としては、そういうことについて、何か府県に対しまして特にことしは契約満了の問題が多いから、特別に注意をするようにというようなことを通牒でもお出しになっていますか、また最近お出しになりますか。
  27. 立川宗保

    説明員(立川宗保君) 案は昨日全国の県の農地部長、農林部長の会議がありました。これは全般の問題についてやったのでありますが、その際に、ことし農地関係について特に注意すべき事項の一つということで、ちょうどたまたま文書化の契約をやりましたときに、五カ年の小作契約の満了の期限がことしになるわけであります。それで非常に今年はいろいろ問題の頻発をする年であります。そういうこともありまして、農地法の一番中心をなしますところの今の二十条の運用でありますとか、あるいは小作料の物納の問題でありますとかいう一連のいろいろ事項がございますが、そういう事項については特に注意をして農地法の精神に照らして正しく運用するようにということを、昨日全国の農地部長に対して、口頭でありますが、指示をしたわけであります。
  28. 江田三郎

    江田三郎君 一日違いでやっておられて非常に結構なことでございましたが、そこで今度の調べの中で、立川さんどうでしたか、小作料の問題についてお調べになりましたか、不当な小作料はございませんでしたが。
  29. 立川宗保

    説明員(立川宗保君) 小作料の問題については一応調査の対象にいたしませんでしたので、その詳細な調査がございません。
  30. 江田三郎

    江田三郎君 今、この不法な土地取り上げと、不法な小作料について刑事訴訟が出ておるということは御存じですか、この問題について……。
  31. 立川宗保

    説明員(立川宗保君) 実は私はまだ承知しておりませんが、調査担当者の方では調べておるそうです。そういう事件があるということを現地で帰りぎわに聞いたのだそうでありまして、その問題について詳しく内容に立ち入って調査はまだしておらないわけでございます。
  32. 江田三郎

    江田三郎君 だからあなたのところが少しゆるんでいるというのですよ。せっかく問題になって現地へ出て行って、何日も泊り込んで、そして正面から問題にされたことだけ調べて……、当然この問題と小作料とは関係があるのですよ。今の理由の中でも、小作料が低過ぎるから取り上げられるのだというようなことが出ている。小作料の問題と切っても切り放されない問題ですよ。それを、十分にお調べをしておられないということは、何となく客観的に見て、私の主観でなく客観的に見て、あなたのところがたががゆるんでいるということを言わざるを得ぬのですよ。まあそういうことがあるわけですから……。  今日はほかの委員の方、私だけのためにお待ちになっているのだから、私くどいことは言いませんが、いずれこれは今度の担保金融のときに全国的な問題についてもっと講和にお尋ねしますから、これは今お調べになった問題について出張の報告書が出ると思いますから、報告書が出ましたら私のほうにも一部いただきたいと思います。それに基きまして私のほうも現地をもう少し調査しまして、おそらくあなたの調査と若干の食い違いがあると思います、今聞いておるだけでも若干の食い違いを発見しておりますから、そのときに改めて問題にしますが、とにかく、当面この問題については、せっかく現地に行ってお調べになっているのですから、よく二十条の精神をもって、客観的に、あなたの言われる文書があるとか、どうとか、私の承諾書があるとかないとかいうことではなく、客観的に解決をつけるようにやっていただきたいと思います。  なお、この際つけ加えて言っておきますが、現地でそういう問題について刑事上の問題にもなっていますし、それから昨日も、また新しく小作人がなぐられたという問題も発生しております。問題解決になっておりません。あなたのほうでは現地においでになって、県へも、その他へも適当な指示をすることで、解決がついたと考えておるかもしれませんが、解決はついておりませんから、われわれもこの問題の成り行きについては重大な関心を持っているということをつけ加えておきます。それで終ります。
  33. 荒木正三郎

    委員長荒木正三郎君) ほかの委員のかたで、この問題について御質疑がございましたら。……では、ないようでございますから、本日の委員会は、これにて閉会いたします。    午後一時五十三分散会