○植
竹春彦君
公共企業体職員等共済組合法案について提案の理由を御
説明申し上げます。
日本専売公社、
日本国有
鉄道及び
日本電信電話公社が公共
企業体へ移行した際、その職員となった者のうち、すでに恩給法上の公務員となっていた職員については、当分の間、恩給法の規定が準用されることとなり、その他の職員については、国家公務員共済組合法の規定が準用されることとなったのであります。従って、現在では三公共
企業体の職員は、恩給制度の
適用を受ける職員と、共済組合の年金制度の
適用を受ける職員と、さらにこれらの両制度の
適用を受ける職員とに画然と区別されているのであって、三公共
企業体の職員の退職年金制度はきわめて複雑な
状態におかれているのであります。しかも、恩給制度と共済組合の年金制度とを比較いたしますと、支給
条件、支給額等の給付
内容が両者ほぼ同
程度であるにかかわらず、恩給法に基く国庫納付金は、共済組合の長期給付の掛金に比べ著しく低いために、実質的に給与上の差別待遇となっており、職員間に不満を生ぜしめる原因となっているのであります。また、公共
企業体となる以前であれば任官して当然恩給法の
適用を受けることができた職員が、公共
企業体になったために、恩給法の
適用を受けることができなくなったことも同じく不満を生ぜしめる原因となっているのであります。このような不均衡、かつ、不統一な退職年金制度に対する不平不満は、年とともに激化するばかりでありますから、労務管理の上から考えましても、早急にこのような不均衡と不統一とを是正して一本化した退職年金制度を確立する必要かあるのであります。
さらに、現業的労務を主体とする公共
企業体におきましては、その職務
内容も
一般公務員とは異なり、他に転職させることもできないので、老後の生活安定いかんが職員の勤労意欲に与える影響はきわめて大きく、従って永年勤続者の退職後の生活を十分保障できるような公共
企業体にふさわしい退職年金制度の確立は、健全なる
企業経営の面からも早急に必要となってくるのであります。
以上の点につきましては、各公共
企業体においてもかねてから研究が進められていたのでありますが、昨年十一月の臨時公共
企業体
合理化審議会の答申においても、また第十九国会の衆参両院
内閣委員会における恩給法の一部を改正する
法律案の審議の際においても早急に解決を要するものとして指摘せられた次第もあるのであります。
また、公共
企業体の職員の共済組合制度につきましては、根本的には社会保障制度全般の問題の一環として総合的に考慮しなければならないのは当然であります。しかしこれらの問題の根本的解決はきわめて困難でありまして、その理想と方向はともかくとしても、なお検討さるべきものが少くなく、今直ちに結論を見出しがたい状況にあるのであります。われわれといたしましては、公共
企業体の職員の退職年金制度をこれらの根本的解決の日まで現状のまま放置しておくことは適当でないと考えますので、将来総合的な年金制度ができた場合のことを慎重に考慮しつつ、恩給制度と共済組合の年金制度とを統合して、職員間の不均衡と不統一とを是正する新しい退職年金制度の急速な実現をはかることといたし、今ここに
公共企業体職員等共済組合法案を提案いたしました次第であります。以下この
法律案の
内容の大略を申し述べます。
第一に、各
企業体ごとに、それぞれ共済組合を設け、長期給付、短期給付及びその他の福祉
事業を行うことといたしております。第二に、恩給と共済組合の長期給付とを統合して、一本化した退職年金制度を全職員に
適用することといたしておりますが、各年金及び一時金について簡単に述べますと、まず退職年金は三十年以上組合員であった者が退職したときに支給することとし、その年額は俸給年額の百分の四十を基礎とし、二十年をこえる年数により一定の金額を加算することとし、支給開始年令は、五十五才とすることといたしておりますが、重労務作業に一定年数従事し、公共
企業体の経営上やむを得ない事由により退職した者については、五十才から退職年金額の七〇%の支給を認めることといたしております。次に、減額退職年金は、特に早期支給を希望する者について退職年金のかわりに支給することとし、その年額は退職年金の年額から一定額を減じたものとすることといたしております。次に、廃疾年金については、給付事由はほぼ国家公務員共済組合法のそれと同様でありますが、その年額を不具廃疾の
程度に応じて俸給年額の百分の七十、百分の五十及び百分の四十の三段階とした点が異なっております。次に、遺族年金は、その年額を退職金額の百分の五十とし、それを受ける遺族は、国家公務員共済組合法による遺族と大体同様でありますが、在職十年以上で在職中に死亡した者の遺族に対しても、その在職年数に応じ俸給年額の百分の十又は百分の十五を支給することといたしております。次に、一時金については、これも国家公務員共済組合法によるそれとほぼ同様でありますが、特に退職一時金については、退職年金の充実を重視した
関係上、早期退職者に支給されるものに掛金の払い戻し
程度に押えることといたしました。第三に、公共
企業体の職員と国家公務員との交流の妨げとならないように、この
法律による給付と恩給または国家公務員共済組合法による長期給付との調整を講ずることといたしております。第四に、短期給付については、国家公務員共済組合法のそれとほぼ同様でありまして、
実情に沿わぬ点を若干改めた
程度であります。第五に、給付に要する費用に、保険数理に基き、公共
企業体の負担金と組合員の掛金によってまかなうものとし、負担金の割合は国家公務員共済組合法における国庫の負担割合と同じく、長期給付については五五%、短期給付については、五〇%といたしております。従がって組合員の掛金率も国家公務員共済組合法による給付のための掛金率とほぼ同
程度となるものと考えております。第六に、以上申し述べました点以外の共済組合の組織、運営等は、国家公務員共済組合法による共済組合と同様であります。
以上が本
法案の提案の理由及び
内容の概略であります。何とぞすみやかに御審議の上、御賛成あらんことを
お願いいたす次第であります。