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1955-07-12 第22回国会 参議院 内閣委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月十二日(火曜日)    午前十時四十八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     新谷寅三郎君    理事            長島 銀藏君            宮田 重文君            木下 源吾君            松原 一彦君    委員            井上 知治君            植竹 春彦君            木村篤太郎君            中川 以良君            中山 壽彦君            上林 忠次君            野本 品吉君            加瀬  完君            千葉  信君            松本治一郎君            田畑 金光君            松浦 清一君            小柳 牧衞君            堀  眞琴君   国務大臣    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    国 務 大 臣 高碕達之助君   政府委員    経済審議政務次    官       田中 龍夫君    経済審議庁総務    部長      酒井 俊彦君    経済審議庁調整    部長      松尾 金藏君    大蔵省理財局長 阪田 泰二君    大蔵省管財局長 窪谷 直光君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君    常任委員会専門    員       川島 孝彦君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○大蔵省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○経済審議庁設置法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  大蔵省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 田畑金光

    田畑金光君 大蔵大臣に一、二お尋ねいたしたいのですが、実は六月の二十三日、衆議院において、同じく六月の二十九日に参議院におきまして、在外資産処理促進に関する決議案が満場一致をもって可決され、政府はこれに対しまして慎重に院の決議を尊重して検討されるという発言がなされたわけであります。この内閣委員会におきましても、外務大臣並びに外務政務次官出席を求めまして、この問題に関し政府の所信並びに外務省の方針を承わったわけであります。その答弁によりますると、今後とも外交折衝によって在外資産返還努力をするが、しかしその結果は必ずしも予断を許されない情勢相手国によってはあり得るということであります。ただ返還交渉の問題と、また国内措置としてこれをどう処理するかという問題とは別個であるという答弁もなされたわけであります。たまたま在外資産等が賠償の一部に引き当てられるとか、こういうようなことも考えられるわけであります。そこで返還交渉がもし妥結しないで、海外にありまするかつての私有財産等が没収されるとか、戻ってこないとか、こういうような場合には、国内措置として、これが補償等については政府として善処をする、こういうような趣旨答弁がなされたわけであります。御承知のように、五月の十一日にアメリカ日本とは取りきめがなされまして、総額一千万ドル、一人当て一万ドルを限度として個人の財産返還するということになったわけであります。これがため今アメリカにおいては国内法の手続をとっておるという状況になって参っておるわけであります。そこでこういう諸般情勢からいたしまして、院の決議に基いて政府善処をされるというわけでありまするが、善処ということは具体的に法律上、あるいは予算上の措置を伴うことになるわけであります。この点に関しまして大蔵大臣の所見を承わっておきたいと考えます。
  4. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ただいまの御質疑につきましては、先般、お話のように院の決議もありました次第でありますので、政府としても十分これを尊重いたしまして、今後検討を加えて参るつもりであります。ただこの問題については今お話がありましたように、外交交渉とも密接な、また非常にデリケートな点もありますし、かつまた今日日本財政状態もなかなか苦しい事態にもありますので、具体的な事態推移をよく見きわめつつ政府としても決議趣旨に基きまして検討を加える、こういうように考えております。
  5. 田畑金光

    田畑金光君 大蔵大臣といたしましても院の決議を尊重して検討を加えるという御答弁がなされておりますが、要するにこの問題はこのままの形で放任するわけには参らぬと思っております。戦争に伴う犠牲者の問題が、国民経済力の充実に伴って一つ一つ解決されて参っておるわけでありまするし、また当然解決しなければならぬ問題であると思うわけであります。すでに過去の記録によって見ましても、本件に関しましては第一次吉田内閣の折に、昭和二十一年十月二十二日の閣議決定で、引揚者各世帯に一万五千円当て交付しようというような議も上り、現に閣議決定もみているわけであります。昭和二十二年の予算にも百五十億を計上するという閣議決定も確認されたのでありますが、GHQからの横やりで、これを思いとどまることになったという経過もなされてあるわけであります。ことに引揚者人たちに対しましては、いわゆる更生資金として、国民金融公庫を通じ、わずかな資金が立ち直り資金として融資されて参っているわけであります。ところが今日国民金融公庫を通じ、この融資状況がどうなっているかということを私はお尋ねするとともに、とにかくこういう経済状況に、苦境の波にさらされて非常に延滞をしている、おくれている、こういうのが普通だろうと思っております。ところがこういう引揚者の零細な人たちに対して延滞利息を要求し、あるいは強制取り立てをやっている、こういうような事例が非常に多いわけでありまして、こういう問題とも関連いたしまするが、先ほど私のお尋ねいたしました在外財産処理について、一段と政府誠意をもって処理されるべきだと私は考えるわけでありまするが、慎重に検討なさると言っても、これは検討に終ってしまう場合もあり得るし、検討の結果当然法律上、予算上の措置をはかるという誠意もあるわけでありまして、大蔵大臣としては具体的にどう今後この問題を処理して行かれようとするのであるか、この点をもう一度伺っておきたいと思います。
  6. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 先ほど御答弁申し上げましたように、これは今後においての外交上の交渉推移、それから具体的な事態の把握、それから財政状況等を勘案をいたしまして、そうしてこれは考えて見たい、考えて見るべきだと、かように考えております。今具体的に、ここでどうするということを今ここで申し上げることは困難な状況であります。
  7. 田畑金光

    田畑金光君 私が今お尋ねしたものの中で、かつての在外引揚者に対する更生資金貸し出し状況がどうなっているのか、あるいは延滞実情がどうなっているかということについて質問したわけでありまするが、それについての御説明を願うとともに、もう一度……。
  8. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) その点につきましては、私今十分数字的の記憶も、資料も持っておりませんので、国民金融公庫や、関係機関から資料を出させまして、提出を申し上げて御了承得たいと思います。
  9. 田畑金光

    田畑金光君 御承知のように、内閣在外財産問題審議会が昨年の七月以降設置されまして、在外財産調査審議をはかることになっておりまするが、一体今までこの審議会はどういう仕事をやってきているのか、今日までの業績について御説明願いたいと思います。
  10. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 従来の経過につきましては政府委員から答弁をいたすことにいたします。
  11. 阪田泰二

    政府委員阪田泰二君) 在外財産問題審議会につきましては、別途資料を差し上げておきましたが、大体いろいろ問題の処理方針といたしましては、先ほど来お話のように、根本的な在外財産問題全体をどう処置すべきかという問題がございますわけでありまするが、審議会ができまして、さしあたりの問題としましては、当面解決できる問題を順次に解決して行こう、こういう趣旨のもとに審議をやっておりまして、昨年引揚者が持ち帰りました古い旧日銀券処理の問題、あるいは未払い送金為替の問題、在外預金、こういうものにつきまして、ある程度支払いをする、あるいは外地におきまする軍事郵便貯金処理等につきまして審議をいたしまして、そういうものにつきまして答申を行いまして、それに基きましてこの国会に法案を提案いたしまして支払いをやっております。これは御承知通りでございます。なおこれと同時に並行いたしまして、いろいろ在外財産問題の実情につきまして引揚者の代表の方々からいろいろお話しを伺いまして、実情を調べる、あるいは法律的、実際的にいろいろ複雑な点を含んでおりますので、そういうような問題につきまして国際的な法規、あるいは国内法規、いろいろな線で事実問題等調査をいたしておる、こういう段階でございます。
  12. 田畑金光

    田畑金光君 この閉鎖機関として指定されておる朝鮮銀行台湾銀行資産処理の問題でありまするが、承わりますと、年内に清算事務も終了する、あるいは近く終了する、こういうことを聞いておるわけであります。で、この点に関しましては、政府としてたとえば六月の六日でありましたか、六日の次官会議においては閉鎖機関令の改正によって、両銀行の現在ある資産について半分は国庫納付金としてこれを国庫に吸収する、あるいは残余については清算所得の形で徴収をする、こういうような方針のように承わっておるわけであります。この点に関しまして、さらにその後また石橋通産相方針としては、この旧朝鮮銀行残余資産をもって科学技術の振興に充当をしたい、これがために科学技術公社等を設立してこの資産の活用をはかりたい、こういうような趣旨の談話も発表されているわけであります。この際この両閉鎖機関の今後の清算に伴う処理あるいは政府方針、こういうものについて承わっておきたいと思います。
  13. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 朝鮮台湾銀行のこの閉鎖機関残余財産処理につきましては、いろいろと今お話しのように意見もあります。また考え方もあるのであります。大蔵省といたしましても、事務的に一応考えを持ってもおりますが、しかしこれはこういうふうないろいろな見解を今後さらに慎重に検討を加え、十分各方面意見並びに関連をするいろいろな事情、こういうものを考慮に入れて、改めてもう少し広い見地から考えてみたい、今一応事務的に考えておるのは、株式会社の関係で、株主にある程度、ある程度は発券銀行という特殊な授権行為に基いて生ずる残余財産で、これは国で考えていいのじゃないかというような考え方がありますが、それだけでいいのか、大へんに大きな問題で、あるいは各般の事情十分考慮に入れて、これは考えるべきではないかという考え方でもって、どれということに私はまだきめておりません。まだ今後においても意見を十分徴し、かつ事情を十分調べてまとめてみたい、従って今国会に私はこれについての処理については出す意思を持っておりません。
  14. 田畑金光

    田畑金光君 まだお話によりますと、政府としては、あるいは大蔵大臣としては両閉鎖機関残余財産についての処理はきまっていないという御説明でありますが、そうしますと、石橋通産大臣のこの構想等もまだ単なる通産省の構想であって、政府としての方針でもないとこういうような御趣旨でありますか。
  15. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) さようでございます。
  16. 田畑金光

    田畑金光君 御説明によりますと、発券銀行であるから国庫納付金として大幅に国庫に納付せしめるというような考え方一つ考え方だと思います。しかし今言われておりまする残余財産というものが朝鮮銀行においては七十億、あるいは台湾銀行においては二十五億に上るという多額な計数に上っているわけであります。お話によりますると、まあいろいろな国庫に納付せしめる残額は旧株主に還元する、こういうような御説明もあったようでありまするが、相当に莫大な残余財産が少数の株主に還元されるという結果になろうと考えます。そういうような場合に、たとえば零細な旧預金者保護等については政府はどう考えられているのか、今までは旧預金者にも一部預金払い戻しがなされておりまするが、両銀行払い戻しというものは、まことにわずかな預金払い戻しであります。その例等を見ましても、われわれ今日の常識では考えられないような僅少な率でもって払い戻しをやっているわけであります。旧株主保護するという考えの前に、当然零細な旧預金者保護というものが考えられてしかるべきではないかと、こう思いまするが、この点について大蔵大臣はどう考えられるのか、承わりたいと思います。
  17. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 先ほど申しましたように、株主をどうするとか、いろいろそういうような案もまだきまっていないのでありまして、今お話のような点もいろいろと将来考えまして、そして具体案をすみやかに作りたいと、かように今考えているわけで、御意見の点は十分承知し、心にとどめております。
  18. 田畑金光

    田畑金光君 たとえば私の聞いているところでは、これは法律によってそうなっているのだと思いまするが、朝鮮銀行の場合等を聞いてみますると、旧預金額一万五千円に対しまして三分の一を削って一万円しか払い戻していない。たとえば一万五千円の預金額に対しまして一万円の払い戻しをやっておるに過ぎない。そうして利息を一律に四割として戻しております。従って一万五千円の預金額に対して結局一万四千を払い戻しておる、これが今日までの実情のようであります。当時の貨幣価値と今日の貨幣価値を比較するまでもなく、また当時のたとえば朝鮮銀行券台湾銀行券日本銀行券といったものは一対一であったはずでありますが、このようにかつての預金者というものは不当な取扱いを受けておるわけであります。にもかかわらず、現在清算業務を終えてみると莫大な資産朝鮮銀行台湾銀行に残っておる、そういうことになって参りますならば、発券銀行であるという特殊な事情等はもちろん考慮されなければなりませんが、株主保護する前に、こういう零細な旧預金者保護するという考えが当然とられなければならぬはずでありまするし、同時に今問題となっておりまする在外財産処理等の問題にも関連して、閉鎖機関残余財産処理等については考えなければならぬと私は思うのでありまするが、この点に関しまして大蔵大臣はどうお考えになるか、お尋ねいたします。
  19. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 先ほどから御答弁申し上げますように、いろいろな点を考えて、私一つこれは考えてみようとしておるのであります。従いまして、今のようなお説も十分承わって、大へんよい御意見、こういうことでありますので承わって、まだ何にもこうする、ああすると実はきめて……、いろいろな意見を聞き、いろいろな資料、実態を把握して、そうして最善を尽したい、かような状況が今の状況でありますから、御意見はもう少し虚心たんかいによく拝聴しておきたい、かように考えております。
  20. 田畑金光

    田畑金光君 大蔵大臣に私はこの在外財産の問題についてはこの辺で、質問をこの点に関しましては終りたいと思いまするが、特に私の希望として申し上げたいことは、両院とも政府に対しまして在外財産処理促進に関する決議案を満場一致採決して政府善処方を要望しておるわけであります。ところが大蔵大臣の御答弁を承わりますると、慎重に考えて行きたいというようなことで、まことに頼りない感じを禁じ得ません。院の決議を尊重されるとしますならば、当然時間という問題が大事でありまするから、予算上、法律上の措置について格段の努力を願いたいと思います。同時に私が今申し上げましたように、朝鮮銀行台湾銀行清算業務に伴う残余財産も非常に多額に上っておるわけでありまして、この処理運用等についても諸般情勢を十分検討されて善処を願いたいと考えます。また先ほど追って資料提出されるという、国民金融公庫を通ずる引揚者に対する更生資金貸出運用等についても、これはやはり弾力性のある考え方処理されなければならぬ問題だと考えますので、あらためてこれらの点については別の機会に質問いたしまするが、特に大蔵大臣善処を願いたいと思っております。  次に、私若干この際大蔵大臣にお尋ねしておきたいことは、資金運用部資金運用についてどういう方針であるかということでありまするが、具体的に申し上げますと、たとえば本年の三月末に資金運用部資金が七千七百二十四億に上っておりまして、そのうち六千八百五十九億というものは一般勤労者預金から成り立っておるのがこの資金運用部資金状況であります。たとえば昭和二十九年度年度末の資金構成を見ますると、郵便貯金振替貯金預託金が四千五百十四億円、簡易生命保険郵便年金が千二百三十八億、厚生年金保険が千百五億に上っておるわけでありまして、これらの資金構成というものは一般勤労者預金によって成り立っておるということは明らかであります。ところがその一つ厚生年金保険を見ましても、すでに本年度の三月末に一千百五億に上っておる、にもかかわらず、たとえば昭和二十九年度予算を見ますならば、厚生年金保険運用として産業労務者住宅建設資金にわずか三十五億しか政府運用していない。一年間の利息の半額に相当する予算計上しかなしていない、こういうことでは、これはどうも資金運用部資金の性格から申しまして、運用の面において大きな疑問を抱くわけであります。今日までの運用状況についてはほとんどこれは金融債の引き受けであるとか、あるいはまた特殊銀行を通ずる貸し出しであるとか、こういうように、要するに金融資本を擁護する部面にしかこの資金運用部資金というものが運用されていないわけであります。こういうようなことを考えたときに、本年度勤労者更生資金として、いわゆる産業労務者住宅建設等に四十五億の金が流れておりまするが、まことにこれはわずかな資金であります。こういうことを見ましたときに、もう少しこの資金運用部資金運用については、勤労者福利厚生、あるいは住宅建設、いろいろな面に積極的な構想がなければならないはずと思いまするが、この点に関しまして大蔵大臣のお考え方を承わっておきたいと思います。
  21. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 資金運用部資金等資金源と言いますか、あるいは資金の性質からみまして、御意見の点はその限りにおきまして私もごもっともな点が多分にあると存ずるのでありますが、ただ問題は、この敗戦後におきまして日本資本が、あるいは資金がふっ飛んでしまいまして、従いまして、どの金もこの金もなく、要するにこれを日本経済の再建に使いまして、そうして多くの人に雇用の機会を与える、いわゆる職を与えるというふうに持って行かざるを得なかったのであります。また今日においてもなおその必要は決して私減少していないと思うのでありますが、しかしゆとりのできるに応じまして、今申された御趣旨は漸次実現をして行きたい。そういう意味合いにおきまして、たとえば今回の住宅建設もいろいろと御批判もありますし、必ずしも満足すべき状況ではないのでありますが、やはりほうっておけないから、こういう方面にも金を出すとか、あるいはまた勤労者住宅にも、前よりも私は苦しい資金の中でもふやして、そしてこの金を回す、こういうことであります。御趣旨はよく私拝聴いたしまして、徐々にそういう方向に持って行きたいと考えておる次第であります。
  22. 田畑金光

    田畑金光君 お話によますと、とにかく資本蓄積が少なかったので、産業基盤の確立のためにこの原資を運用して参った、その点については私も認めるわけであります。しかしその運用の内容と申しますかが、あまりにも片寄って参ってきているのではなかろうか。ことにだんだん資本蓄積も、特に政府のあらゆる特別保護措置によって、だんだん蓄積されて行きますならば、この資金運用部資金運用等についても、もう一段と勤労者立場を尊重する、あるいは勤労者のための運用をはかる、こういう配慮がなされてしかるべきではないかと思うわけであります。たとえば具体的に質問いたしますが、今労働金庫というのができているわけであります。すでに全国の府県に皆労働金庫というものが設立をされているわけであります。預金もすでに百億に達しておりまするが、この労働金庫が今日労働者のためにいかなる役割を果しておるかということは説明するまでもないわけであります。しかるに労働金庫法に基いて設置されている労働金庫等に対しまして、資金運用部資金をあるいは貸付けるとか、預託をするとか、こういう面については何らの配慮も加えられていないわけであります。もちろん今日の労働金庫法では債券発行が認められておりませんので、問題もあるわけでありますが、しかし今まで大蔵省当局や、政府立場というものは、こういう勤労者のための福利厚生機関に対しましてほとんど顧慮が払われていない、こういう事実であります。私はもし大蔵大臣のお考えのように、だんだんと経済自立に伴うて何らかの措置考えて行こうという御意思でありますならば、当然労働金庫等に対しましても特別の配慮があってしかるべきだと考えてますが、この点伺っておきたいと思います。
  23. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 労働金庫勤労大衆に大きな役割を今日果しており、将来果すべきものであるということについても私は同様に思いますし、従いまして、今後この金庫が健全なる発達をして行くことはこれは望ましいことであります。これと今具体的のお話資金運用部資金の問題でありますが、ただし短期的のものについては融通を申し上げたときもあるように私も考えております。全然そういう道を閉ざしているわけではありません。しかしこいねがわくば労働金庫自体が今後資金を大いに融通されて、最近は今お話のように百億にも上って相当資金が充実されつつあります。これらの資金が融通される、しかし今申したように全然閉ざされているわけではありません。私の考えは、労働金庫ができた以上、そして現在大きな役割を果しており、ほんとうにいい発達をすれば、政府としても常に決して等閑に付するという考えは持っておりません。
  24. 田畑金光

    田畑金光君 なるほどお話のように、昨年の夏に造船関係産業が非常に深刻な不況に陥ったので、その当時賃金対策賃金遅払い資金として三億二千万、また年度末には中小企業賃金対策資金として四億の融資措置がなされたわけであります。しかしいずれも二カ月という短期の資金であります。こういうようなことは、これはそれ自体として見ればなるほど新らしいケースでありまして、われわれといたしましては政府善処されたこと自体を否定するわけではありませんが、非常に微々たるものである、こういうことであります。これはまたこの融資の場合におきましても、直接労働金庫融資されたということではなくして、府県地方公共団体を通じ、地方公共団体から労働金庫は借り受けておる、こういうような形を組んでおるわけであります。それでまあ具体的にお尋ねいたしますと、この夏に政府労働金庫を通じ賃金欠配資金等に対しまして融資をする道を考えていないかどうか、これが一つ。さらに今後資金運用部資金運用等に関しまして関係法令を整備されて、もう少し、いま一段と資金運用部資金等を、労働者の唯一の金融機関であり、今日大きな福祉厚生部面において役割を果しておる労働金庫に対しまして資金運用部資金等の、あるいは預託貸付等について構想をお持ちになっていないかどうか、あらためてお尋ねいたします。
  25. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 資金運用部資金運用については運用委員会もありまして、いろいろ検討を加えるのであります。そうしてどの方面に出すときもそうでありますが、使途等について具体的な場合に検討を加える、従って労働金庫の場合におきましても具体的な場合ができましてお話があれば、それも検討を加えてよかろうと、かように考えております。
  26. 田畑金光

    田畑金光君 私の質問は、具体的の場合もありまするが、もう一歩進んで、お話のように運用委員会等において十分検討をなされて、関係法令の整備を考えて、たとえば資金運用部資金労働金庫に将来預託をするとか、貸し付けるとか、こういうような方法を考えられないかどうか、このことを質問しておるわけです。
  27. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今のところ直接には融通をする道ができないようであります。それで間接的にということになっておるわけであります。なおそういう点について検討を加えてみることにいたします。
  28. 田畑金光

    田畑金光君 それは大蔵大臣も、今御答弁を聞いておると非常に不勉強でおわかりにならぬようです。私は先ほどから申し上げておりますように、関係法令を整備されて、その道を、そういうような方法もとるように善処願いたい、こういうことを申し上げておるわけであります。この点に関しましてはいろいろ質問もありまするが、また後の機会に譲りたいと思いますけれども、ただ大蔵省として、大蔵大臣として考えていただきたいことは、本年の一月でありますが、大蔵省銀行局では、銀行局の同義としては、たとえば社内預金の禁止ということを掲げたわけです。それは要するに昨年の二十国会でありますか、で通りました例の保全経済会や日本殖産金庫、ああいう不健全な金融の経験に徴して、あれは何という法律でありましたか、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律、この法律に基いて社内預金検討されたわけであります。ところがこういう不況になりまして、デフレの結果企業が倒産する、その結果従業員が会社に預けていた預金もふいになってしまう、あるいはまた会社更生法の適用を受けた場合には、預金一般債権と同様にたな上げになってしまった、こういう事例が今巷間多いのであります。そこでこの社内預金については再検討を加えよう、こういうわけで禁止するという方針をとられたはずでありまするが、いつの間にか龍頭蛇尾に終って、この大蔵省銀行局の方針は流れてしまっているわけであります。だんだん聞いてみますると、これは財界からの強い反対に会うていつの間にか大蔵省は財界の前に屈服しておるわけであります。どうも私たちが見ますると、こういうような点はまことに大蔵省の態度として遺憾きわまる点であります。労働金庫がだんだん強化して発展してくると、とにかくこの発展を阻止しようとする動きが政府部内の中にもあるわけであります。外部の財界からの圧力に属して、労働金庫を健全に育てる、伸ばして行こうとする努力政府にもないのでありますか、非常に少いのであります。消極的であります。こういうことを私は見ましたとき、大蔵大臣としては、いま一段と労働金庫というものに対する認識、理解を含めまして、私が先ほど申し上げたように、今の資金運用部資金運用を見ますると、勤労者の金から成り立っておる厚生年金保険運用等利息の額すらもが勤労者のために運用されていない、まことにこれは不公平きわまるへんぱな政治であると考えます。でありまするから、私はどうか一つ大蔵大臣ももう少しこういう面についても勉強なされて、勤労者のための福祉施策の面において一段と御配慮を願いたいと考えます。
  29. 木下源吾

    ○木下源吾君 同僚委員のせっかく質問中でありましたが、二つ三つ譲ってもらいたいと思う。というのは、先般来九州、東北、最近また北海道、こういうように災害が相次いでやって来ておる、これは例年よりも早い。台風の季節じゃないのであります。そこでいろいろ政府調査してこれが対策を立てているとは思いますが、まあ最近北海道の一番新らしいところ、道側からの情報では九十億ぐらいの損害を受けておる、そうして公共的な、つまり国の直轄の面で約五十億近く、あとは地方関係で四十億、こういうようになっておる。こういう損害に対して、当然政府は進んで従来の災害の例によって応急の立法をせねばならぬのじゃないかと、こう考えるのでありますが、まずそういうような御準備がなされておるかどうか、私この際お伺いしたい。
  30. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今私どもは災害について、まことに不仕合せなことでございますが、今後考えて行かなければならぬと思いますが、今日のところは起った災害について、大蔵省としてはできるだけ従来に比べて早く金を出すように、そうしてこの復旧を早くしよう、かように考えているのが現状であります。
  31. 木下源吾

    ○木下源吾君 大蔵省はできるだけ大蔵省の権限で出させる分はそれでいいが、従来の例によると特別立法を必要とするものがだいぶあるんですよ。そういうのを従来は議員立法でやっておりましたが、もう政府が進んでおやりになっていいんではないかと、こう考えておるのでお尋ねしておるわけです。
  32. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) まあ考え方としては、第一に災害の予防についてできるだけの手を打つべきだと思います。ただこれもなかなか実際問題になりますと、非常にむずかしい点も御存じの通りございまして、かつまた最近の財政状況も決して豊かでありません、こういうふうな状況でいろいろの制約を受ける、がしかし、私は今後治山治水と言いますか、こういう方面には非常に重点的に考えて行きたい、かように考えておる次第であります。
  33. 木下源吾

    ○木下源吾君 いや、そういう一般方針というよりも、現実に、たとえば食糧供出代金の延納であるとか、あるいは農家に融資しているものにこれを伸ばしてやるとか、いろいろそういうのは従来みな議員立法で災害に対してやっているわけです。まああなたはお知りにならないかもしれませんけれども、それはきまりきっておるのでありますから、政府の方で進んで法律を提案さるる御意思はないかということを聞いておるのであります。
  34. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 一般的に申し上げますれば、災害の特にひどいところには、その補助率を上げるような法律案の今御審議を願っておるわけであります。なお具体的にはこれは農林省、建設省、いろいろの現地の、あるいは運輸省も関係しておりますが、それぞれの行政庁で、直接にこの仕事に関連があるそういうところは十分調査をいたしまして、具体的にこれをどうするかという相談も大蔵省にあろうかと考えております。一般的にそういう法律は今国会に提案されておりません。
  35. 木下源吾

    ○木下源吾君 私は特に大蔵省ばかりに要求するわけではありませんが、結局するところ、資金の問題になりますと、みな大蔵省関係してくるのであります。従って議員立法いたしましても、大蔵省の方で資金面でこうだと言われれば、何とも今までの例だと困難なんです。それであなたに、これは大蔵大臣にお伺いしておるわけです。各省からそういう措置を講ぜられてあなたの方へいろいろ連絡があってしかるべきだと思うのだけれども、まだないとするならば、これは早くそういう手順をあなたの方で促して行くくらいにしてもらいたいと、こう考えるのです。それにいたしましても災害復旧に対する予算です。すなわち予備費ですね。これは一体本年度は従来の例にかんがみて、災害に対してはどのくらい一体お見込みになっておられるか、それをお伺いしたいと思います。
  36. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 大体予備費は御承知のように八十億しかありません。まあ大体五十億程度と私は考えております。
  37. 木下源吾

    ○木下源吾君 すでに八十億よりないということになれば、今までの災害で、すでにもう当りまえにすればそれで足らぬわけですよ。九州、東北、北海道の分でですね、これからいよいよ、きょうの新聞でもごらんのように、台風第七号というようなものが、本土にはまあこないと言っておりますが、これからもう本物がどんどんやって参ります。それでそういうような時期に向っておるのに、そういうくらいの予備費で一体何をなさるというのかな。それはできなければ、どういうことをおやりになるのですか。まあそれは先のことですから、今のでももう足りませんよ。これをお伺いしたい。
  38. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これはまあ災害はできるだけこないことをお祈りするわけでありますが、まあしかしこれはいかんともいたし方がありません。いよいよ大きな災害でもくれば、これはまた別個その際は考えなくてはなりません。
  39. 木下源吾

    ○木下源吾君 では北海道の今国の直轄の分だけでも五十億、これはおやりを願えるのですか。
  40. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今のところ私はやれると考えております。
  41. 木下源吾

    ○木下源吾君 それは非常にやっていただけば……。今のお話で私は意を強うするのでありますが、早急に今必要なことはつなぎ融資です。このつなぎ融資だけでも約二十億近く今必要だ、こういうことになっておりますが、この点はどうですか、何とかめんどうを見ていただけますか。
  42. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今厳格なところは……、それぞれの現地の官庁の申し出もありますし、また査定も必要と思うのであります。今回はまあなるべく私は早く、あまり査定させて時間をとっておるよりも、早く出したらよかろうという意味合いをもちまして、まあ概算的になりますが、大体建設省の資料に基きまして早く出す。従来は現地の調査を待ってやっておったのであります。大体建設省の方で、まあしかし金額は内輪になりますが、一応早く出す。そのうちに、やっておる間にまた精密な調べをする、こういうふうなやり方をいたしたいと思っております。
  43. 木下源吾

    ○木下源吾君 まあ大臣は非常に災害に対しては御同情的であって、私は感謝するのでありますが、今度の災害についてはぜひ一つ各省を督励をしまして、そうして特別立法の必要なものは早くそろえて出してもらう。議員立法とかいうことでやるならば、議員立法で早く出してということを示唆を与えてもらわぬと、今あなたのおっしゃった、早くこれを始末をしてやるという趣旨には沿わなくなるのではないか、まあこういうふうに考えます。そこでいずれにいたしましても、九州でも東北、北海道でも、特に北海道は御案内の通り、昨年の券の暴風雨、それから冷害、それから霜害、それから大雨、それに今度は経済的にはニシンがまるでとれない。本年もニシンが全くとれない、こういうような苦況にありますので、もう村落に行けば、どうしてやって行くか、全く生活の保護にすがっても、それはやって行けないというような窮状のところがたくさんあるのですから、一つ早く手を打ってもらいたい。  次にお尋ねしたいのですが、時間も私一人でたくさんとれませんから、私は簡単な二、三のものをお伺いするのですが、公務員給与、これはストップになってからもうずいぶん久しいのですが、人事院が勧告したものでも大蔵省でそのまま延ばしているものがある。特に昨年の勤務地手当ですね、こういうものでも、人事院から勧告されてもただそれをやりっぱなしになっておる。この給与についてはただ上げないのだ、物価は横すべりとか何とか、そんなことを言っているのですが、実際は生活の面では当然上げなければ、法律でも上げなければならぬことになっているのですが、これについてはどういうように根本的に一体大蔵大臣考えているか、それを一つ承わっておきたい。
  44. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) まあ私の考えの基本的な点は、御承知のように物価との関係であるのでございますが、物価を下げて行く政策をとり、また事実下りつつある、少くとも横ばいの状況である。今後二%程度は年平均で物価を下げて行く、こういうような政策、いわゆるデフレ政策、こういうふうな状況であるのでありますから、全体の社会情勢を勘案いたしまして、にらみ合せて、そうしてお苦しいことは重々承知しておりますが、給与の方は一応現状を維持して行く、こういうふうに考えておるわけであります。これはしばしば他の機会に申し上げたのでありますが、給与を上げる。それがまた物価を騰貴させるというような方向にかりになりますれば、これはやはり勤労大衆が一番損失を受ける。勤労大衆の一番好ましいことは物価が低く安定をするということに、一番私はあるというように考えております。それが同時に経済の繁栄を来たす道でもあり、雇用の機会が同時に多い、こういうような考えが私の本旨で、決して公務員等、あるいはその他勤労大衆の給与が今日満足すべき状況にあるとかいうのではありません。考え方としては今のような考えを私はとっております。
  45. 木下源吾

    ○木下源吾君 その考え方については別に大いに意見を闘わしてみたいと思います。私たちはそう考えておらない。しかしそれはそれで別の機会でいいのですが、当面人事院の勧告をしたもの、法律に従って勧告をしたものをそのままにしておくというのは、あなたのお考えはお考えとしてもよろしいが、法律に一体従わないというのはどういうわけです。
  46. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 決して法律に従わないという考えは持っておりません。大蔵省としてはそういう法律規則に準拠してやっているつもりで私はいたしております。お話の点はおそらく地域給の問題かと思うのでありますが、この勧告についてはそれは予算措置もたしかとって出しておると思います。
  47. 木下源吾

    ○木下源吾君 その点について予算措置をとっていると今おっしゃったが、これは事実でございますか。
  48. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) あるいは私の発言が間違うと悪いですから、これは給与担当の閣僚、あるいはその方の政府委員が参りますから、どうぞその方から……。
  49. 木下源吾

    ○木下源吾君 別のことをもう一つお伺いしますが、今日はこれだけにしておきます。この日中貿易の支払協定、この点については、私はほかの機会に、大蔵大臣は支払協定を、つまり日本の円で取引ができるように、具体的に、ざっくばらんに言えば、そういうことに努力している、総理大臣もそういうように言われているように思っているのでありますが、この支払協定については、どういうように考えておられるかどうか、またそういう準備をしておられるかどうか、端的に言えば、中国から物をこっちへ買って、それでその代金を日本銀行に口座を設けて積んでおいて、その金でこちらから物を買う、こういうような、簡単に言えば、そういう形の支払協定を中国はこの前言っているように聞いているのですが、こういうことならば何も国交の回復、そういうものがなくても、他の国ではやっている実例があるのであるが、こちらの方でどうしてそれはできないのか、またできないではない、おやりになるというお考えがあるならば、どういう順序でこれを実現されようとしているのか、これを一つだけお伺いしておきたい。
  50. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私は日中貿易の支払い、これはごく経済的な関連で考えれば、そうむずかしい問題ではないと私は思っておりますので、これは話し合いによって、そう一般の人が考えておるのと違った方法じゃなくてもいいと思うのですが、ただ問題はやはり外交問題、そういうことにやることによって生ずるもろもろの外交関係、ここに問題があると私は思います。そういうふうな取引をするのは、どうしてもやはり外交関係を進行しなければという考え方になり立っているわけであります。まあ今ポンド決済になっておりますが、これを円決済にという、これなんかも私は検討に値する、検討してよかろう、こういうふうな考えを持っているのでありますが、そういう取引の方法論におきまして、今申しましたように、外交関係、複雑なことがあるので、それらの点について外務省で十分御処理があれば、これは私は割合に簡単に行くのじゃないか、こういうふうに考えております。
  51. 木下源吾

    ○木下源吾君 今のポンド関係でやっているからやれないこともないけれども、これは金のたくさんあるものでないとできないのです。今の円関係で行って、日本銀行へ口座を設けて、それを取引しようということになれば、小さいものでもやれるのです。中小企業と言いますか、そういうものでもどんどんやれる。従って貿易の量も、お互いに必要なものの交換も多くなる、こういうような実際実情になるのでありますから、外交問題がどうこうと言われますけれども、外交で今腹ふくれるわけじゃない、実際のところは……。必要なものをやはりみんなほしい。お互いがそれを交換することが国民の生活に直接響くのでありますから、この支払協定に関する限りは、そう外交問題がどうこうなどということは私はないと思うのですが、ただ日本銀行が、大蔵省の方で何か抑えているのじゃないか、そういう関係で……。
  52. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 大蔵省が抑えているというわけでもありませんし、日本銀行が押えているというよりも、そこに問題があるのであります。中央銀行がこういうような支払協定の相手方になることが、今日の国際情勢において、あるいは国際法の上においていろいろと問題があるわけで、そういうような関係から、従いまして、先ほどお話の円決済にいたしましても、一体だれが日本側の相手になるかという点にやはり問題があるわけで、そういう点が解決いたしますれば……、それは日本銀行というわけにいかぬ、それならばほかの人でいいかというと、それはそうもいかぬ、そういうところに問題がある。ですから私はすみやかに、こういう点について国際的ないわゆる外交上の点を早く私はきめてほしい。少くとも最小限度、たとえば支払協定なら支払協定というものがどういう形でもやり得るという程度に決済の方法をきめるとか、あるいはきめる場合に一体条件の方はどうなるかという問題があると思いますけれども、そういうものをはっきりしたいと、そういうふうな方法の実現が困難と思います。
  53. 木下源吾

    ○木下源吾君 まるでよその人のことを言っているような大蔵大臣答弁ですが、国民がそういう要望をしていることに対しては、積極的にやはりこうしてやろうか、ああしてやらなければいかぬということを考えてやるべきであると思います。国民と外務当局というか、政府というものが別々になっている立場で、何とかするときには何とかしてやろうという、そういうことではないのではないか、こういうように考えておりますが、進んで隣りの国との貿易を積極的に伸ばしてやろう、そういうことの考えはおありにならないのかどうか、それがそういう考えがあるとするならば、進んで政府当局としては、民間の取引に便利のように、民間の取引が支障なく進むように、何も日本だけ国交回復をしなければなんという……、ほかの国では国交回復しない国でもやっておりますから、日本だけでそういうことを何もほかに気兼ねすることはないと思います。こういう点をお尋ねしておるわけです。
  54. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) その点にやはり私は今日日本の複雑性があると思うのです。中共があり、日本の承認する台湾もありますし、いろいろな、とかく単純な関係と違った複雑な関係にあると思います。ただ私は経済人、あるいは経済閣僚といたしましては、少くとも自由国家、自由国家群の他の国々がいろいろと中共との間の貿易の発展を期する、少くともそういう程度はやっていいのじゃないかという考え方は、まあ、特に一番近い、地理的にも近く、永い歴史を持っている国でもある、それが特にかりにそういうことはありませんが、特に制約のもとにおかれるということは私はなくてもいいのじゃないか、他の自由国家等がやっておる程度なら、これは今日の国際情勢でも実現し得るように努力をいたすべきだ、かように考えております。
  55. 木下源吾

    ○木下源吾君 いや、今のお話ではっきりしてきたのだが、他の自由国家ですね、イギリスあたりがどんどんやっているのに、他の国家なみにというならばそれでけっこうなわけなんです。それがいっていないところに問題があるのじゃないですか。これは何もあなたを詰問してとっちめているわけじゃない、これは国民的要望なんだから、進んで積極的にこういう問題を解決してあげたらどうか。そういうことに政府は、経済閣僚としては特にお骨折りをしてあげたらどうか。二、三日前に、中国から日本経済代表が来ることを向うが承諾したと言ってきておりますね。けれども一つも何も民間協約をやった実績もないので、行ったってしようがないのじゃないかと私は思います。ただ政府は何もやらない、日本政府ほどうもわれわれの言うことを聞かないということを向うへ行って言うたってしようがない。それで今緊急を要する問題だから、すみやかにおやりを願えないかどうか。ただ外交がどうだこうだということは言い古されておるのでありますから、何も日本がやったところが、直ちにアメリカから戦争をふっかけられるとか何とかいう立場じゃない、自由主義国家がやっておる程度のことをやるのですから……、それをお尋ねしておる。大蔵大臣一つ進んで支払協定でもやって、代表団がそれをみやげに持って、日本政府もこういうようにして今度われわれとやれるのだということで代表団を送るくらいの、そのくらいの考えをお持ちにならぬかどうか。
  56. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これはやはり政府といたしましては、外務大臣、通産大臣等において特に考慮を払うべきものであります。また大いに大蔵大臣としましても、いろいろなことができるような客観的な条件を整える、私はそういう点の努力に対して協力をする、こういうふうに思っております。
  57. 長島銀藏

    ○長島銀藏君 私は納税義務の問題でごく小さな問題なんですが、大蔵大臣に一、二点伺いたい。税金の納付に関しまして、現金がないために不動産その他を売却する。場合によると親兄弟の名義のものまで納税義務を履行するためにこれを売却して納税に充てる、その場合に売却したその土地、不動産というものに対する譲渡所得がかかる。その譲渡所得の課税に対しまして、またさらに次の不動産を売却しなければ義務が果せない、こういう実例が多々ございます。これに対しまして納税額に相当する分だけの額は免税処置をとってもらいたいと、私はこう考えるわけでございます。大蔵大臣はどういうお考えを持っていらっしゃいますか。
  58. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは納税技術のことにも関係いたします。他のいろいろ関連も考えなければならぬ。今回私はごく近いうちに税制について専門家の調査会を作り、それらのいろいろな点について大きくこまかく税制を再検討する。そして各方面意見を十分取り入れたりっぱな税制をとって行く、そういうことを取り急いで来年度予算にもいろいろ取り入れて行きたい。そういうふうな税に関しまする御意見については十分遠慮なく言っていただいて、十分書きとめて調査会に反映させるようにいたしたいと思います。
  59. 長島銀藏

    ○長島銀藏君 この問題に対しまして、とにかくこれは立法する、議員立法か、あるいは政府提案にしていただくか、その他の点につきましては実は主税局長ともいろいろ相談したりしておるわけなんです。これによって一面には納税義務の履行が促進されるという観点からぜひ進めて参りたいと、かように思うのでございますが、こういう点につきましての大臣の御意見はいかがでございましょう。
  60. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 十分そういうような御意見も取り入れて行きたいと思っております。ただ私は税制ということは総合的にやらなければなりませんから、政府としてやはり立法をするというのがいい、こういうふうに考えております。
  61. 千葉信

    ○千葉信君 先ほど木下委員の質問に対して、大蔵大臣の方から予算折衝を講じておらない問題について予算措置を講じているという答弁がありました。これは私は大蔵大臣の不勉強ということで、この際はこの問題を取り上げるつもりはないのですが、しかしこれは大蔵大臣としてもう少しこういう問題について真剣に勉強してもらわなければならないということを当然要請できると思います。もし先ほどの御答弁のような結果から行けば、実に不勉強しごくな答弁を平気でやるようなことは、実際この問題のために苦しい生活を押しつけられている二百万以上の公務員は、大蔵大臣答弁を聞いたら黙っては済まないのではないかと思います。むしろ憤りよりも憎しみを感じさえすると思う。しかし私は大蔵大臣にお尋ねしたいことは、先ほど大蔵大臣は、自分は給与の問題については物価との関連でこれを考えて参りたい、そうしてイタチごっこをやるような格好の給与改訂をやるよりも、なるべく自分としては物価を引き下げるという方向、あるいはまた税の処理の問題を通じて、できるだけ実質賃金を上げる方向に自分としては考えておる。これは私は大蔵大臣の一応の御意見として聞いておきますが、しかしここで私のお尋ねしたいことは、今の物価の状態と、それから給与の決定されましたときの物価の状態とは非常に違っておる。おそらく大蔵大臣はそういう点についてはっきり把握されてはいないかもしれませんが、申し上げますと、今の給与を決定しました基準というのは、二十八年の三月の物価を基準にして決定されております。ですからそういう二十八年の三月の物価の水準からいって、もし政府考えておるデフレ政策なり、もしくはさっきお話がありましたような、なるべく実質賃金を引き上げるという政策等が逐次成功し、もしくは成功の可能性がはっきりしておる場合には……、ところがそうじゃなくてもう二年も経過しておるのにちっとも物価は下らない、下らないどころじゃない、今はっきり政府の方から発表されておる数字によっても、これは経済審議庁、それから国立国会図書館立法考査局の方から発表されておる数字によりましても、その給与を決定した当時の物価の状態から言いますと、はっきりここで九・二%という商い物価状態が持続しておる。つまり結論から言いますと、給与をきめたときの物価の状態に比べて賃金はそのまま据え置きになっておるのに、横ばいとはいっても今日、五月現在九・二%高い水準の物価が持続しておる。こういう状態に対して、大蔵大臣としては将来政府方針なり、もしくは大蔵大臣考えておられるような実質貨金の引き上げというような問題をかりにやるとしても、過去二年間にわたってこういう物価と賃金との間に開きを続けておる、こういう状態に対して、やはりこれは政府としてこの問題を処理しなければならぬ責任を持っておると思う。大蔵大臣はこれに対してどういうふうに処理されるつもりか、承わりたい。
  62. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この二十九年の一月ですかにベース・アップをして、それから後は大体物価は横ばい、それからまた社会一般の生活状況等から考えまして、同時に財政も非常に苦しいものですから、御無理を強いておる点もこれはあるかもしれません。御しんぼう願っておるというのが実情であります。何も公務員の給与が現状で満足すべき状況というような考えは毛頭持っておりません。ただ何さま国全体の財政考えなければならぬ、そういうふうなことで苦慮いたしております。なお先般おしかりを受け、はなはだ私も恐縮をいたしておるのでありますが、アルコール専売の地域給のことが予算編成の当時頭にありました。これは予算に計上いたしておる。ただこれは今聞けば人事院の勧告ではなくて、公共企業体労働委員会の裁定に基いておるということで、これは私はよくこの関係が……違ったかもしれません。これはアルコールの……、一般の何は、地域給の改訂につきましては人事院の勧告もありますが、この問題については、根本的に地域給については再検討をしたいと、こういう政府方針でありますので、目下公務員制度調査会において勧告の処理、今後の地域給の制度のあり方等に検討を加えて、その結論を待って処理したいと、かようなのが政府方針であります。なお詳しいことは、給与担当の閣僚から適当な機会に詳しく申し上げることにいたしたいと思います。
  63. 千葉信

    ○千葉信君 大蔵大臣の認識の点が問題になると思うのです。二十九年の一月に給与の改訂が行われたのは、政府の都合によってそのときまで延びて、二十九年一月から改訂されておる。しかしその二十九年の一月に決定した給与の決定の基礎になっておるのは二十八年三月の物価です。ですから二十八年の三月の物価を基準にして、二十九年の一月に政府の都合によって延びてきめられた。しかも約八カ月もずれてきめられた、その給与の決定の状態は、残念ながら人事院の勧告によってきめられていない。四・六%低い水準できめられておる。二十九年の一月にきめられたときは、いいですか、しかも四・六%低くきめられた。給与の基礎になっているのは二十八年の三月です。ですから二十八年の三月の物価の状態から検討をし直して行かなければならない。ですから二十九年の一月にきめたのは、おくれてそのとききめられただけで、基礎になっているのは二十八年の三月ですから、三月のそのときの物価と、その後の物価の推移の状態を勘案しなければいけないのです。ですからそれを勘案すると、はっきり政府資料によっても九・二%の物価の上昇があるということです。ですからこれは給与を改訂した二十九年一月から以降の物価がこうだからと言ってほうかぶりをすることは許されない、この点を大蔵大臣は十分認識して、この問題に対処しなければならないと思うのです。  それからもう一つ。地域給の問題についても御答弁がありましだが、私もその予算措置が講じられている、その問題は知っております。アルコール専売の仲裁裁定が行われて、そうしてその結果、政府の方としては最初、のまない態度をとっておったが、地方選挙のあとではアルコール専売の仲裁裁定をのみ、仲裁裁定の予算措置を講じ、仲裁裁定で年間七百万円の予算措置を講じて、アルコール専売、アルコールの仲裁裁定をのんだ、これは地域給の仲裁裁定。ところがこれは労働委員会における仲裁裁定、だからのんだと言うことを言ってすましてはおられない、どうしてかと言うと、このアルコール専売の仲裁裁定の中身は、昨年の五月に人事院が勧告した地域給の実費的な中身なんです。いいですか、アルコール専売の裁定は離れたものでなくて、人事院から勧告された、その勧告の中に含まれているアルコール専売の職場のあるところを、これがつまり今回政府によって、大蔵大臣がさっきおっしゃったその予算措置を講じたという裁定の実施です。ところが今度は、その問題に関連してまた別の問題が起ってきている。それはどうしてかと言うと、中身は人事院の勧告ですから、従って五つか六つのアルコール専売の工場のある地域ですね、その地域の諸君は、同じように他の公務員諸君なんかは人事院勧告を受けておる、ところがその中で、アルコール専売の職員だけが他に比べて一級とか、二級上っておる、ですからその地域の諸君は、アルコール専売の諸君を除く他の職員ほおさまらない、こういうへんぱな扱いを今度は政府がやったということなんです。ですからこれは労働委員会の仲裁裁定とは言っても、中身は人事院の勧告なんだから、従ってその人事院の勧告の一部をどっかの都市、どっかの職場にこれを実施する以上、その他の職場なり、その他の公務員との不均衡が明らかに政府措置によって起ってきているのです。給与をある程度の水準に上げなければならないのは当然ですが、一指給与の問題にとっ組まれた場合に考えなければならないことは、公平にやるということです。それが今度は完全に不公平になっております。ですから今の地域給の問題については、大蔵大臣としては、予算措置について将来考えてみるというような御答弁がありましたが、今日こういう不均衡が起って、不公平が起っておるわけですから、これは一体大蔵大臣としてはどうするつもりか、この点を承わっておきます。二点の御答弁を願います。
  64. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 一点の点は勧告を受けたときの物価の維持ですが、大体従来勧告は、実施はずれているような実情です。そうしてそのようにずれているときに、大体実施の時をとりましているのが従来の例にもなっているようであります。まあそういうことがいいのかどうかという御議論は、これはやはり検討の要はありましょうが、大体従来はそういうふうになっている。そうしてその点からみると大体横ばい、水準はほとんど動かないという状態になっていると思います。なおもう一つは、裁定の問題でありますが、これは今申し上げましたように、私の考えは、これは一種のいろいろと考えてみる一つの過渡期ですか、そこでまあ公平でなくてはならぬこともむろんですが、どうも私は何かこうしろうとですけれども、そういうことをあれこれ言うことはないと思いますけれども、私どもとしての考えといたしましても、ここでやはり考えてみる必要があるという考えがある。そこで公務員制度調査会にかけまして、そうしてその結論をみてからにしようと、こういうふうな考え方になっているわけであります。ただ一方アルコールについては、公労法の所定の手続で裁定がありましたから、私は予算措置を一応やると、こういうのであります。
  65. 千葉信

    ○千葉信君 第一点の問題ですが、大蔵大臣の認識は実に私は怪しいと思うのです。なるほど従来勧告の実施されることが遅延したことはしょっちゅうあります。これは決していい、悪いの問題じゃなくて、結果としてそうなってしまったのでしょう。しかもそのおくれて実施をした、その実施の時期の物価なり、民間の賃金を基準として、その次の改訂すべきか、据え置きにすべきか、これをきめるということは全然それは誤まりなんです。ですからこれは人事院の勧告を受ける考え方も、たとえば二十八年の三月なら三月の物価を基準として勧告をした、その次に一体勧告をすべきか、すべきでないかということを考えるときには、給与を改訂された二十九年の一月じゃなくて、二十八年の三月の基準、これは当然です、そういう態度をとっているのです。ですから政府も、そういうその二十八年の三月の物価を基準にして給与を決定しておきながら、今度は二十九年の一月に実施をしたのだから、二十九年の一月の状態を基準にして、その次の問題を考えればいいということは、これは当てはまらないのです。これは筋としても通らないことは大蔵大臣おわかりと思うのです。おまけにさっき申し上げたように、ずれて二十九年一月に決定したその時でさえも、政府の都合で四・六%低い水準で決定されている。それらをなおさらに二十八年の三月の基準にさかのぼって検討を加えなければならない。それから物価の情勢がどうなっているか、民間賃金の状態がどうなっているかということも考えなければならぬ。これは筋の通る話だと思うのです。その点を大蔵大臣から重ねて御答弁願いたい。私はこれ以上あまり追及するつもりはありませんから……。
  66. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私も御意見はよくわかるのです。わかりますが、そうしてほんとうに財政が許せば私はやりたいと思うのです。ですけれども、何さま財政も苦しいものですかう、そういう点もう少し御考慮願って、同時に民間等の賃金に与える影響等も考えて、まあ私らにいたしましても、これは公務員制度調査会にかけてやってもらっておりますから、いずれ近いうちにまたいい案が出るものと、かように期待しております。
  67. 千葉信

    ○千葉信君 何でもかんでも公務員制度調査会に逃げ込もうとしている態度がどうも露骨になっているので、この点私ども大いに不満にたえないのですが、しかしここで大蔵大臣にはっきり言って置きたいことは、大蔵大臣も私もその話については筋が通っておることはわかる。大蔵大臣もあながちその趣旨に反対ではない。そこでその予算が許さないから給与の改訂の問題はなかなか思うにまかせないというところに予算関係があり、財政負担の問題があるから、なかなかこの問題は慎重に処理されませんが、しかし処理されない最も大きな理由として、今年はとにかく何とかある程度、たとえば一月から二月、三月、こうずって行って、そうして年度の更新近くにその問題を処理することになれば、その年間の負担分については予算額はぐっと少くすることができる。しかし何といっても、今年はいいけれども、来年の財政負担がそうなると大へんだというのが従来非常に大きな理由になって来ております。いいですか、ところがそういう今の物価の状態に、今の公務員の給与のアンバランスの状態が、大蔵大臣によっても、政府としてはそれは何とかしなければならない話だということになりますれば、少くともその最小限度、はっきり毎月一割程度の不利益な状態にあるのだから、物価が横ばい、下ったといっても、その状態でなおかつ九・二%も、つまり一割近くも毎月不利な生活をしなければならないのですから、こういう状態に対する給与を改訂する、しないは別としても、たとえばこの間も期末手当の問題、あるいはまた十二月の期末手当の問題、もしくはその中間における赤字を補てんするとか、借金を穴埋めするという格好の給与の支給という問題、つまり一時的な給与の支出問題です。これはもう当然やらなければならない。つまり一年間その状態が続けば一割程度のものが一年問続けば、これは完全に十二割も、本人の俸給から見ると、本人の俸給の一カ月分以上の赤字が生じて来ることははっきりしています。政府資料統計においてはっきりしている。こういう点については大蔵大臣ももう少し、ついこの間のこの問題に対する態度のようじゃなく、もう少し私の話が筋が通っていてわかるというのなら、これに対する処理の方法はもっと積極的にやるべきだと思う。その点について大蔵大臣からあらかじめ御意見を承わっておきたい。
  68. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 御意見はよく承わっておきます。私も決して勤労大衆について考慮がないわけじゃないのです。ただ私は今のところは、そういう点でなるべく所得税等の税額を少しでも給与所得者の楽なように、また苦しい財政であるから、そういうような方法も今年から打ち出して見たのでありますが、しかしほんとうに言いまして、やはり働く人のほんとうの協力がほしいのです。ですから、そういう大きな見地からもここでいたずらな無理も困りますが、お互いに国全体として調和を取りつつ、人口も大いのですから助け合って行きたい。そういうふうな見地からこういうふうな話を十分承わっておきたいと思います。
  69. 木下源吾

    ○木下源吾君 実は私先ほど、給与問題に対して別な機会でと、こう申したのでありますが、今、千葉委員との間においてだんだんお話になっておるのを聞いておりますと、これはやはり聞いておく方がいいと思う。今の給与は二十八年の三月の物価により、これは人事院が人事院の規則によって調査をしてやったものです。ところが今お話を聞くと、その後物価が横ばいだと、こう言っておられる。それはまあある物の卸売の価格はあるいはそうかもしらん。小売はちっとも安くなっておらぬという面はこれはあなたも承認されると思う。現に今やみ米が幾らですか、百八十五円しておるでしょう、百八十五円。去年、おととしは何ぼしておったか、その当時おそらく百五十円くらいです。それですから、そんなことでは私は水かけ論になると思う。公務員制度が、今調査会のあなたが何か答申を待っておる、そんなものは何のためにやるのですか、人事院があるのだ。それは国家公務員はちゃんと公務員法に基いて、これは一九四七年の五月ですか、一方においては公務員は国民に対する奉仕の義務があるのだからストライキの権利やそういうものは取ってしまうぞ、そのかわり政府は公務員の生活は保障する義務を負う、こういうマッカーサー、その当時はマッカーサーです。覚書によってできておるでしょう。そうして日本の公務員制度を民主化するためには法律によってきめて、当然働いたものは働いたものだけとり与えるというこの制度を確立してきたのであります。ところが今のお話を聞いておると、こういうことになる、財政が苦しいから。これは封建時代の給与制度、体系です。親方がふところ工合で、自分は料理屋に行ってぜいたくをして、金がこんだけしかないからこんだけ、これは封建的給与体系です。その封建的体系の方向に今戻そうとしておる。戻していって、そのために調査会なんというものを別な方からすべり込ませて法律化しようとしておる、それは大いなる誤まりだ。私はそういうことは基本的に私は政府の態度がいけない。なぜならば一方において公務員法は厳然としてあるし、人事院が独立の機関としてあるのだから、これが一年に一回、国会あるいは政府に報告の義務を負わされておる。勧告の権利を持っておる。この勧告をなぜ無視するのか、これをお聞きしておるのであります。あなた方があなた方のお考えで給与体系を封建的に引き戻そうというのは御意見としてはよい、かまわないけれども、現存しておる公務員制度は、今申し上げるように日本を民主化するために自分の働いたものは金を権利として取る、これを支払う義務が確立しておる、これがいわゆる日本の公務員の民主化の制度なんです。これをなぜこれに従わないのか、こういうことをお聞きしておる、それを今あなた方があなた方の考えで金がないから払えない、これは昔のやんちゃというものですよ。そういうことでなしに、今、千葉君の言われておるのは、じゅんじゅんとしてその制度の内容についてお伺いしておるのですから、もう少しまじめに公務員制度の給与制度に対しては、取っ組んでもらわなければならぬ。これは政府全体に何ですけれども、経済閣僚、特に大蔵大臣はこれを一つ考えてもらわなければならぬ、それを私はお尋ねしておる。
  70. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私はですね、あるいは私の言葉が足りなくて御理解を得なかったかと思うのですが、この財政が苦しいからどうこうというのではなかったのです。いわゆる財政が楽であればまた考えようも十分いくが、やはり財政が苦しいという点は、こういうものの実現にやはりいろいろな苦労がいるということを申し上げたので、私はこれでどうするというのではない。またこの物価問題も、卸物価は御承知のように昨年度続けて相当下っております。まあ消費者物価が去年の一月あたりからとりまして横ばいになっておる。かように私は考えておるわけです。先ほどからしょっちゅう申し上げますように、今までのところにおいていろいろの公務員給与について御不満もありましょうし、御意見もありましょう。そこで今回は人事院の総裁も委員に加え、人事院の職員もこれは公務員のこういう給与をお守りになる建前になっておる、そういう総裁も委員に加え、この人事院の職員も幹事に入れて、そして委員会をして一つここで考えようじゃないか。ただ継ぎはぎで、そういうふうなことではなくて考えよう、その調査の結果を待とう、こういうことに今なっておる現状であるのであります。そういう点で御理解を切に願いたいと思います。
  71. 木下源吾

    ○木下源吾君 私は先ほど来黙ってお聞きしておりますと、御意見では、給料を上げればそれで物価が上る、こういう御議論を展開された、これは一般的にはそうかも知れません。ところがわが国の今の公務員、労働者の給与というものは、ぜいたく品を買う余裕なんというものはこれほども与えておらぬということは御承知通りであります。今日もらってくる給料は直ちに生活費、それも窮屈な生活費だけを辛うじてまかなうような給与であります。こういう給料は購買力の増大にこそなれ、平和産業の、生活産業の購買力の増大にこそなれ、決してそれがインフレの要因なんというものには断じてならない、これはあなた方はよく知っておられるのだ。それをごまかして、まるで池田君が言うようなことだ、池田君はそれ一本で通してきた。それは間違いだ。ぜいたく品を買う余裕のあるものはカメラを買うとか、ぜいたく品のテレビを買う、こういう余裕のあるものならば、それは物価が高くなるでありましょう。それはよく一つ考えを願わなければ、わが国の公務員はそういうぜいたく品を買うような、インフレを起すような要因の給与ではないということを、お考えになっておる通り一つあなたの正直な御見解を承わりたいと思います。
  72. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) いや、私の申し上げたのは、公務員の給与を上げたから、それがすぐに物価騰貴になるということでもないのであります。むしろこれは給与を受けるものとしては、いわゆる勤労大衆といたしましては物価が下る、物価が安くて安定をするということがむしろいいのである、この給与のベース・アップするのも、要するに物価が上ってだんだん苦しくなるのじゃないか、だから給与を上げてもらわなくちゃならない、こういうような形になると思う、そういうことになってくると、物価の上り方の方が激しいから結局勤労大衆は損をしている。なかなか物価が上るように給与ベースが上るものじゃない、それでこれは物価を下げる、物価を下げるという方向をとるから、はなはだ苦しいとは思いますけれども、決してぜいたくをできるなんて夢にも考えておりません。大へんお困りの点もあると思うが、物価を下げることに専念をし、まあそれに努力をしておれば、物価も今のところまあ横ばいということであるから、がまんを願えないか、がまんをしておれば……、こういう考え方なんで、給与を上げるからすぐにインフレというふうには私は考えておらないのであります。ちょっとその辺私言葉が足りませんでしたが、御理解を願います。
  73. 木下源吾

    ○木下源吾君 了承しました。
  74. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 他に御質疑ございませんか……。別に御発言もないようですから、質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  75. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御異議ないと認めます。  それでは直ちにこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。  別に御発言もないようでありますから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御異議ないものと認めます。  それでは、これより採決に入ります。大蔵省設置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  77. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 全会一致でございます。よって本案は全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条による議長に提出すべき報告書の作成、その他自後の手続等は、慣例によって委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御異議ないと認めます。よってさよう決定いたします。  なお報告書には多数意見者の署名を付することになっておりまするから、本案を可とされた方は順次御署名を願います。   多数意見者署名     松原 一彦  小柳 牧衞     植竹 春彦  中川 以良     木村篤太郎  宮田 重文     野本 品吉  松本治一郎     田畑 金光  堀  眞琴     中山 壽彦  木下 源吾     千葉  信  長島 銀藏     加瀬  完   —————————————
  79. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  80. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めて下さい。  次に、経済審議庁設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案に対し御質疑のある方は順次御発言を願います。
  81. 加瀬完

    ○加瀬完君 この前、長官から六カ年計画のプリントをいただいたわけですが、その六カ年計画の遂行について、長官の御意見から行くと、条文に出ております「勧告」ということは、長官の意思を百パーセントに現おしていることにはならないのじゃないかという点について、いろいろとお伺いをしたわけでありますが、今日はそれとは問題を別にして、衆議院内閣委員会等でも、防衛六カ年計画と経済六カ年計画の問題が、どんなふうにからみ合っているのかということが非常に問題になっているわけでありますが、この間説明いただきました経済六カ年計画も、衆議院で指摘があります通り、防衛六カ年計画というものとどんな関係にあるのかということを検討いたしませんでは、経済六カ年計画の遂行というものもできないかとも思われるわけであります。この点一体経済六カ年計画について、防衛問題と当然生ずるところの障害と申しましょうか、あるいは相関する問題と申しましょうか、こういう点を長官はどのようにお考えになっておられますか、この点をまず伺いたいと思います。
  82. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。この経済六カ年計画では、六カ年間における日本経済を自立せしめて、国民に完全雇用をするというのが目的でありまして、で、防衛計画とは、この防衛計画は六カ年計画が立てばこれと相関達して行くということが本筋でございますが、現在のところ、防衛計画の六カ年計画は立っておりませんが、経済自立六カ年計画から申しますというと、防衛費というものは、大体国力に沿って今後の防衛費というものが支出さるべきものである。国力というものは何だ、こういうことになりますれば、私は国の富、国富ということが第一でなければならぬ、こう存じております。それともう一つは、国民の所得ということが基本になると存じておりますが、ただいま六カ年計画を立てます上において、国富というものは、これは過去におきましては、昭和十年来まだ取調べていない状態でございますから、今度経済審議庁におきましては、急速にこの国富というものを取調べたい、こう存じておりますが、現在のところ、大体は国民所得というものから基準にいたしますというと、現状及び過去におきましては、大体国民所得の二・一%ないし二ポイントそこそこ、二%ぐらいを使っておるわけでございます。それで将来におきましては、大体二%ないし三%ということに見込もうじゃないか。それでいよいよ実際の防衛計画が立ちますれば、それとの間の調整をして行こう、こういう考え経済六カ年計画は立てておるようなわけなんでございます。お説のごとく、防衛計画が相立ちますれば、これは確実な数字が出るわけであります。多少そこに不確定はございますけれども、大体の経済のおもむくめどにつきましては狂いがないと、こう存じております。
  83. 加瀬完

    ○加瀬完君 防衛費は国力に沿うて当然支出さるべきものであるので、国富あるいは国民所得というものを除外して防衛費というものを考えることはできない、こういう御趣旨のように拝聴したのであります。従いまして、経済六カ年計画というものがあくまでも主軸であって、その経済六カ年計画によりまして国民所得を増し、あるいは国富を増して行く、その間においてもし防衛計画というものが具体的になってくれば、そういう太い線で調整して行くんだ、こういうふうに了解しておるのでございますが、この点よろしうございますか。
  84. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) さようでございます。
  85. 加瀬完

    ○加瀬完君 しかしながら、今までのこの防衛関係の支出というのを見ておりまするというと、必ずしも日本の内政面だけから計画をいたしましたそれだけで防衛の総ワクというのがきまるということにはなりかねると思うのであります。アメリカ等のいろいろの外交関係の取りかわし、その他から、防衛の分担金などでも今年ずいぶんもめましたが、ああいう形になって、日本だけでは調整し得ないような別の条件というものによって、防衛費というものが経済六カ年計画の幅にも食い込んでくるということが予想されるのであります。こういうふうな見通しというものについては、経済六カ年計画の推進について、どういうふうに基礎的にお考えになっておられるのでありましょうか。
  86. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 過去の状態、現状におきましても、防衛分担金と防衛費というものを合計いたしますときにおいては、大体大きな狂いがないと思います。先ほど申しましたように、国民所得と比較いたしますと、二%そこそこのものでございます。そういう意味から申しまして、私は将来において大きな狂いはないということの前提のもとにやっておるわけであります。
  87. 加瀬完

    ○加瀬完君 そういう前提があくまでも推進されることをわれわれはもちろん希望するわけでございますが、しかし本年度の防衛分担金の最後の折衝における日米共同声明によりましても、三十一年度以降というものは、防衛費の総ワクというものは、三十年度よりもはるかに幅を広げて行くということは自他ともに認めておるわけであります。そうなって参りますると、どういうふうな広がり方をするかという、防衛計画の何年計画かがはっきりしないうちに何年閥の経済計画を立てましても、それは将来に結局大きな変動を当然生じてくるというふうにわれわれは心配せざるを得ない。この点長官の今おっしゃるように、将来とも心配がないというふうに私ども考えられないのでありますが、この点はいかがでありますか。
  88. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) もっとも、国際情勢が非常な変化をするとかいった場合とか、あるいは天変地異があるとか、いろいろな場合が想定されますが、そういうものがないといたしまして、国際情勢は現状を持続しておるもの、こういうふうな前提のもとに立てておるわけなんでございますから、私はただいま加瀬さんの御心配になったようなことはないものとして立てておるわけでございます。
  89. 加瀬完

    ○加瀬完君 長官のおっしゃるように、経済六カ年計画というものによりまして、目的でありますところの完全雇用という線まで実現しようと思いますならば、防衛費をどう押えて行くかという基本線というものをきめなくては、日米共同声明などの点から言いましても、増大する傾向というものはいなむわけに行かぬわけですから、どういうふうに防衛費を抑えるかという、将来の防衛費の抑え方というものを先にきめなければ、私は経済計画というものを立てましても、その経済計画というものは非常に確率の薄い経済計画というふうになると思うのですが、この点どうですか。
  90. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お説のごとく、防衛費というものは無限に、しかも国民の考えている以外の道でふえるというふうなことになれば非常な不安があると存ずるわけなのでございますが、私は今後の防衛費というものは、国民の力と負担力というものによってきまるものだ、こういうことが前提でなければならぬと、こう存じておるわけであります。ただ、今のごとく、国民所得で何パーセントといったふうなことに相なりますると、これはアメリカでは何十パーセントになっておる、インドですら四%とか、五%とかいういろいろな議論も出てきますけれども、私はこれは国民所得だけで論ずるものでなく、国富というものをまずもってきめなければならぬ。それによってこの防衛費というものはきまるものだと、こういう前提でいるわけであります。
  91. 加瀬完

    ○加瀬完君 防衛問題については、国民の負担力ということが基本であるというお考え、ごもっともでございますが、しかしその国民の負担力というものは、国民所得だけではきまらない、国富ということが問題であるということになると、その国富というものは非常に調査が困難である、今まで決定的な調査されたものは出ておらない、こういうことになりますると、国民所得なら、ある程度確率が出ましても、国民所得で負担できないものも、国富は十二分に負担できるんだからという立場で、たとえば政府がそういう立場をとるならば、防衛費は幾ら増しても、これは今言ったような国民の負担力からいって、この防衛費というものは十分まかなえるんだという議論も成り立つわけであります。これは非常に私は危険をはらんでいるんじゃないかと思う。それともう一つ考えいただきたいと思いますのは、完全雇用の実現を期するんだ、こういう経済計画が目的であるから、完全雇用の実現を期するというのは、中央の政策だけでなくて、もっと地方の政策と言いますか、地方の行政と言いますか、こういったものをも考えなくては完全雇用といったようなことはなかなか聞き入れられない。ところが現在の政府財政方針と言いますか、これを見ますると、地方の財政というものを相当圧縮いたしまして、それでいろいろ問題のあるところの全体の財政のバランスをとろうとしている。こういうことでは国富という調査がどういうふうな基準によってたされるか知りませんけれども、地方というものは、今のように忘れたような形で国富という調査だけをして行くということになりますと、これは国民の負担力でなし得るといったような防衛問題も、結局実際には、ちょうど太平洋戦争のときのように、一般の地方民が塗炭の苦しみを負いながら、なし得ないようなものをあえて背負わされたというような結果を、もう一回再現するという心配を当然持たれるわけでありますが、こういう点いかがですか。
  92. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 大体国富というものを調べられたのは、これは昭和十年以来調べられておりませんが、国民の所得というものは、大体からいうと国富の一割というのが大体の基準なんでございます。現在におきましては、私はこれは一割以上に国民の所得は上っているであろう、国富はおそらく一割に相当するような国富はないであろう、これをよくつかみたい、こう思っておるわけなんであります。これをつかまなければ、ほんとうの国民の負担力というものはわかりかねるわけであります。今のお話のごとく、現状におきましては国民所得からやって行くのが非常に楽であろう、こういうようなことから大体二%ないし三%ぐらいの防衛費をみようじゃないか、こういうように大まかに感じておるわけでありますが、その点ははっきりして行きますし、また将来におきまして地方財政というものが日本の国力の上において、また失業問題の上において非常な重要な役割をしておるということもお話通りでありますから、国富の計算、国民所得を計算する上におきましては、地方というものについて十分重点をおきまして、調査の完成を期したい、こう存じておるわけであります。
  93. 加瀬完

    ○加瀬完君 昭和十一年と昭和二十七年を抑えまして、国の財政規模と地方の財政規模を比較いたしますと、昭和十一年には国の一に対して地方が一・二〇九になっておると思います。ところが二十七年には、これは国の一に対して地方は〇・七何ぼかにしかならないと思う。非常に圧縮されておる。これはますます圧縮される傾向になってくると思う。圧縮される原因ほどこから一番くるかというと、結局防衛費が増大すれば、地方の財政規模というものは圧縮されるということは、これは太平洋戦争の進展に伴った情勢から判断すれば、当然そういうことが心配されるわけであります。くどいようでありますが、防衛費というものをどういうふうに押えて行くかという基本線をきめなければ、私は経済六カ年計画というものは必ずそごをきたす、この押え方というものがまだ非常に不十分なように思われるのですが、たとえばこの間の審議庁からのいろいろの説明を承わりましても、まだまだ勧告という条文もございましたが、そういった内容を伺いましても、結局防衛庁なら防衛庁、あるいは防衛費なら防衛費というものの要求というものは、当然強くなってくる、それを完全に抑えて行かなければ経済六カ年計画というものは推進できない、しかしながら、これだけのことでは押え方にさっぱりききめが現われてこないじゃないか、こういうふうな心配を持つわけであります。この点いかがですか。
  94. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいまのお説ごもっともだと思っております。そういう点につきましては十分私は今後考慮して遊んで行きたい、こう存じておりますが、私どものやっております六カ年計画というものは、ただいま申しました通り、現状というものを今の状態において、基準においておもむく道を示したに過ぎないのでありますが、これは必ずしも完璧なものではないと思っております。ここでできるだけ近いうちに各方面のそういうふうな意見も取り入れまして、正確に近いものにいたしたい、それに一番ほんとうに希望しておりますことは、一日も早くこの防衛六カ年計画ができるということを希望しておるわけでありますが、これができれば完璧なものとなれると存じておるわけであります。
  95. 千葉信

    ○千葉信君 高碕さんにお尋ねいたします。今までこの経済審議庁の設置法の一部改正の問題については、連合委員会等でも、それからまた内閣委員会でもいろいろ質疑応答がありましたが、私は大体重複を避けるという立場から、ごくかいつまんで御質問申し上げたいと思います。実はこの法律案で一番問題になることは何かと言えば、経済企画庁の長官が、今後各省大臣等に対しても、各省に対しても勧告することの権限を持つということであります。これは私はこの法律案を見たときに、正直に言ってぎょっとしたのです。いよいよおいでなすった、それは御承知通り日本の長期経済計画の自立といっても、一体どこに一番問題があるかといえば、これは長官の方の今までの御答弁いかんにかかわらず、日本の自衛力増強をどうするかというところに問題がある。自衛力をどの程度に増強して行くかということを切り離しての長期経済計画はあり得ない。常識からいってもそうである。従って国力不相応の状態で防御分担金を押しつけられてみたり、同時にまたその防衛分担金の振りかえで、日本の自衛隊の増強を強要されたりしておるという条件が、日本経済再建を少くとも経済上の問題だけを切り離して考えた場合には非常に大きく左右される、これははっきりしていると思うのです。ですから、そういう状態の中で経済計画を自立し推進するといっても、やはりその根本の問題は、今、加瀬君からも質問がありましたが、どの程度一体それでは自衛力を増強することができるのか、自衛力を増強するためのその財源としては、今いろいろ御論議もあったようですが、長官はこの際新たに国富なんぞというものを持ち出して、国民にとっては実にはっきりしない膨大な抽象的なものをここに持ち出して、そうして国民所得との関連の問題について巧みに体をかわそうということさえも出しておられる、そういう格好でいわば長期経済計画を推進されるための方針として、ここに勧告という問題が出てきた。ですから私どもの立場、もちろん私どもは自衛力を増強するということにまるまる反対ですから、その反対の立場から今この問題を見ますと、そらおいでなすった、自衛力はどしどし国民の所得にも、それから国の財政力にも、それから今新たに提起された国富というような問題にも関係なしに、とにかく自衛力はどんどん増強する、その自衛力を増強する過程の中で、しかし経済拘束は受けない、自衛力を増強しながら経済についても格好をつけて行かなければならない。その意味では計画性を持たなければならない。だからそうやるためには今のような態勢ではだめだ。従って太平洋戦争を推進する当時に日本がやっておったような強力な推進の機関が要る。昔は企画院ですか、今度は経済審議庁が経済企画庁になる。そういう格好で大臣に、企画庁長官に強大な権限を持たせてやって行こう、私どもはこういう認識から御質問申し上げるのです。そういう関係から言いますと、長官としては一体六カ年計画といっても、もしくは長期経済計画といっても、何にも、何にもというのは極端ですが、自衛力増強の問題と切り離してこれをやって行くのだとか、行けるのだというお見通しを持っておられるのか、それとも私が申し上げているように、何といっても一番の根本の問題は自衛力の増強にあるのだ、自衛力の増強そのものを達成するための一つ方針として考えるのだ、もしくはまた、いや、それとは、実は今までの質疑応答ではっきりしているように切り離して考えているのだ。今回の法律の改正はそういったものとは全く面接の関係なしに、長期経済計画の推進そのもののためにという勧告権を必要としているのだ、こういうふうになっているのか、そのいずれか、大臣からこの際御答弁を伺っておきたい。
  96. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいま千葉さんの御質問は、私の全く予想外の御質問でございまして、私はそういう考えがあるのかと思って驚いたように感じるわけです。私はどこまでも経済六カ年計画というものは、これは政党政派を超越して、国民の完全雇用、日本の自立経済をするということについてはどうしても必要だと、この数字はだれが見ても動かすべからざる数字、このおもむく道を示すべきものである。従いまして、先ほど御説明申し上げましたごとく、日本の防衛力というものは、大体国民の力に応じてやるべきものであると思いますが、これが前提であると思う。そこで国民の力を無視した大きな防衛力がかりに計画されたというときには、これは私は経済審議庁というものは、国民の代表として敢然として立つべきものである、私はこう思うわけなんです。で、今のお話によりますると、経済審議庁というものはそうでなくて、防衛力をふやすために、国民を欺くために、悪く言えばですね、あるいは国富は何だとかというふうなことを考え出してやってるんじゃないかと、こういうふうな御質問、私は全く私の考えと相反する御意見だと思って驚いたようなわけなんでございます。私はそういう意味におきまして、この経済審議庁というものは、今後の経済を立てます上におきまして、各省からいろいろ材料をもらっております。その材料をもらうにつきましても、今のところ別に大きな差しさわりはありませんけれども、将来から考えますれば、その材料を提供するというだけの権利を持っておるわけであります。また各省が計画を立てます上におきまして、予算を要求する上におきまして、国の進むべき、歩むべき大体の経済方針というものがきまった以上は、それに従ってやってもらわなければならぬ。そういうふうなことのために一応は勧告をする、こういうふうなことのために、材料の提供と、それから勧告権というものは、今度経済審議庁の方につけ加えていただきたいと、こういう次第でございまして、今の千葉さんのお考えと私の考えるところとは全然反しておると、こう存じますわけでございます。
  97. 千葉信

    ○千葉信君 国民を欺くものであるかどうかは、これは結果がはっきりしないと、今のところはわからないし、私もそんなことは言ってないのです。しかし今の大臣の御答弁から、私は自己矛盾を発見するのですが、国民がだれでもそうでなくちゃならないと考える、つまり客観的な立場からこうなくてはならぬという長期経済計画、それを企画庁が立案をし、それを推進しようとする場合に、一体ここに、この法律改正に出てきているような、取り立てて勧告をしなければならないような、そういう相手が出てくるということはおかしいじゃありませんか。だれでも国民が納得できる、だれでもそういう長期にわたっての、実にその客観的な立場から見て、そうなくちゃならない経済計画を立てて、それに行こうとしているのに、それをやるために、わざわざ各行政機関等に対して企画庁長官が勧告をしなきゃならないということになると、自己矛盾じゃありませんか。国民はわかっているのに、一体行政機関のそれぞれの連中が、そういう方針なり、そういう計画を理解できないからこそ、それと違う計画を立てる、だからわざわざ勧告などということをしなければならぬということになる。今の長官の御答弁は自己矛盾を包蔵しているとお思いにはなりませんか。
  98. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは議論になりますけれども、各省々々で自分の受け持ちがありますから、従いまして、自分の仕事に非常に熱心な余り、たとえば同じ予算を組みます上におきまして、農業関係にすれば、農業の方にこれだけよこせ、それとまた貿易関係の方では、貿易を増進せなきゃならぬから、これだけよこせ、こういう工合になる。そこで両方の意見が一致しない。こういうことはあるべきことなんです。あるのが当然でございます。そういうふうな場合に、全体の総合的の計画を立てまして、それから各省に向っては、お前はそういうけれども、このくらいでがまんしろというのがつまり一つの勧告でございます。決して自己矛盾でないと存じます。
  99. 千葉信

    ○千葉信君 そうなると、ますますおかしいと思うのですがね。国民でさえも十分納得でき、理解できるような長期経済計画であるとするなら、それに対して同じ内閣にあるそれぞれの行政機関で、そういう国の方策として、大綱として、どうしても実施しなければならない、従ってその問題についてはだれでもが、国民でも理解するはずのものだというのですから、それを行政機関の長なんかが、それと違った方策を立てて、おれの方はこうやるのだという格好でやるとする。これは別の立場から、そういう連中は行政機関の中におけないということになりませんか、この点はどうですか。
  100. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) それはまた議論になるようでございますが、実際問題といたしますよ。それを運営して行く上におきまして、それは過去においても、現在におきましても、いろいろ事情の違っておる点がありまして、それを総合するということには非常に必要性を感じておるわけなんであります。これが何かというと、大体の趣旨はわかっておりましても、その一一の点で、いろいろなことにつきましても、いろいろな問題に差しさわるのであります。こういうふうな問題から考えましても、どうしてもそれはそういうふうな工合に、国民が全部こう信じておるから、これを金科玉条と信じてこの通りにやれと言いましても、やはりこれはその解釈のいかんによりますれば、これは国のためにやるのだからこうやった方がいいという、こういう意見も出るのが当然でありまして、それを調整して行きたいと思います。
  101. 千葉信

    ○千葉信君 あとから速記録を見てもわかると思うのですが、どうもただいまの御答弁はすっきりせぬ答弁で終始していると思うのですが、これは私は結局、私の質問に対して全部平明に答えられない長官の立場があると思うので、私はこれ以上こういう常識的な聞き方をしては水かけ論に終ると思う。私は私の意見で、どうも長官の答弁はすっきりと話の筋が通らない。長官みずから、これはだれでもが冷静に考えて、国民が賛成しなければならない。そうしてまたわかるはずの長期経済計画を立てるのだ、こう言っておる。そうして一方では行政機関の中に、それぞれの立場からどうしてもそれに納得し、賛成しないものがあるだろうから、だからそういうものに対しては勧告権を行使して、言うことを聞かせて、これを推進をしなければならぬ、こういうことですから、今の質疑応答の中だけでも、私は失礼な言い分ですが、小学生でもこの理屈はわかると思う。それを長官が答えるはずなのが答えられないで、今のような答弁に終始しておられるのだから、私はますます疑念を深めざるを得ない。しかし私はこの問題でこれ以上、ああでもない、こうでもないと時間を長く引っぱるつもりはありませんから、大体これはこのくらいにして次の質問に入ります。  実は、かりに百歩を譲って、長官の言われる長期経済計画を樹立して、各省もそれと同時にその方向に沿う計画を立案をし、そうして経済審議庁はその推進に当るという、その推進に当る場合に一番いい方法としては、私はそういうふうに長期経済計画を、どういうふうに各行政機関の方から異論があろうとも、もしくはなかなか無理解なやつがおろうとも、一たんきめた方針に従って強力にやって行かなければならぬ。強力にやる必要があるからというための体制として、私はこの経済企画庁の長官に総理大臣を持ってきた方が一番早いと思う。総理大臣を持ってくることができなければ、私は高碕さんが副総理にでもなれば一番早い。副総理になって、こうしろ、これは総理大臣の方針だといってやれば、何もこんな法律の改正なんか要らないと思う。それをやらないから、この際法律を改正して、それにかわるべき方法が法律案の改正となって、勧告権という問題となってきておる。ところがここで、そういう格好で今法律の改正を企てておりますけれども、今の立法の建前から行けば非常にこれは困った改正だと思うのです。どうしてかというと、今そういう実際上のやり方について、総理大臣を当てるとか、副総理を当てるとかいうことはやめて、この法律の改正で行こうということになりますと、実は現在の各行政機関の権限をきめておる法律、もしくは内閣全体としての内閣の執行権の問題についてはっきり基本的の法律があるわけです。それは高碕さんも御承知のように内閣法の第四条によりますと、「内閣がその職権を行うのは、閣議によるものとする。」、それから「各大臣は、案件の如何を問わず、内閣総理大臣に提出して、閣議を求めることができる。」、こうなっております。ですから内閣としての権限を、職権を行う最高の機関は閣議にあるわけです。内閣法に明確です。そしてまたそういう立法があるばかりじゃなく、実際上の場合も高碕さんの方から、たとえば資料提出を命ずるとか、こういう計画にしたらどうかという勧告をするとか、そういう計画をするための資料をもらうことは、一向こういうことは問題にしなくていいと思うのですが、そういう勧告を与えて、あなた方の答弁によりますと、これは何ら法的な拘束力は持っていないのだ。そうなると、これはまさしく各行政機関の方にとっては完全なる任意規定、任意規定ということになると、これはもう行政機関の都合によっては言うことを聞かないかもしれない。言うことを聞かない場合には、それは閣議で調整される。言うことを聞かない場合でも何でも閣議でそういう問題が最終的に調整されるということは、これは内閣法がはっきり明示しているところです。それなら一体何でそういう内閣法のはっきり明定があるのに、一体勧告権なんていうものをなぜ作ったか、内閣法と抵触するじゃないか、この点はどうですか。
  102. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 今のお話のごとく、最後に勧告をいれられなかったということになりますれば、これは閣議においてお計らいをしてきめてもらうということになりますけれども、閣議を待つまでもなく、お互いに話し合いでできるといった場合が多々あるわけであります。そのときに従前のごとく話し合いだけでなくて、ある程度の勧告権を持っておるということになれば、こちらの審議庁の発言権というものは相当力が得られると、こういうことが私どものねらいでございまして、閣議にかける前の行動として、この勧告権というものをきめていただきたいと、かように存じておるわけでございます。
  103. 千葉信

    ○千葉信君 だいぶ問題がしぼられてきましたが、長官の御答弁から行けば、これは閣議以前のものである。従って閣議で最終的な決定をする以前に、それぞれの行政機関との連絡、話し合い等によってその問題は処理される。従ってその閣議以前の段階として勧告の問題を考えておる、こういう御答弁である。それならばもう一つ問題がある。そういうふうに閣議で調整する前に、各行政機関ごとに意見の調整、話し合いということが、勧告しなければならないような状態に現在行政機関があるかどうか、これが一つ。つまりお互いに長期経済計画ならば長期経済計画を推進するために、各省が閣議にかける前に十分話し合いをしなければならぬ。その話し合いをするのに、あえて勧告などという立法措置を行わなければならぬ。そういう意思の疎通を欠いた状態が現在の行政機関の中に一体あるのかどうか、この点一つ伺いたい。それからもう一つ、もしそういう事態があるとすれば、今度は国家行政組織法によると、第二条の第二項ですが、「国の行政機関は、内閣の統轄のもとに、行政機関相互の連絡を図り、すべて、一体として、行政機能を発揮するようにしなければならない。」、これはどうです。この国家行政組織法の命ずるところから、もしそういう不統一、意見の調整を要する、おまけに勧告をまでしなければならぬ、こういうふうな事実さえあるとしたら、この国家行政組織法がほとんど高碕さんの内閣によっては守られていない、空文化されているじゃないか、こういうことに当然の結論としてなってくるはずなんです。この点はどうですか。
  104. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 第一の御質問の、現在においてこういう勧告権がなくて非常に差しさおりがあるかというお話でございますが、現在においてはきわめて円滑に行っておりまして何ら差しさわりはないわけであります。将来におきましても、これはあったからといって使わなければならぬものでありませんから、現状のごとく円滑に行けばけっこうだと思っておりますが、最後の場合に至るまで話し合いをつけて行こう、話し合いをつけて行く上においては、幾らか勧告権があれば大てい聞いてくれるだろう、これは理屈でなくて、実際の運営におきましてお考えを願いますれば、今度一つこれを入れていただきたい、こういうわけでございますが、別に他意があるわけではございません。
  105. 千葉信

    ○千葉信君 どうもそうなると、何を苦しんでこんな法律の改正案を長官が出してきたかということになるのです。それにもう一つ、勧告という字句をあなたは使われたが、その勧告には従来いろいろな例があります。これは終戦以来こういう立法例がたくさんあるのですが、その中でまず私どもがいろいろに類推して三つある。一つは、高碕さんが今出そうとしておられる、あれどもなきがごとき必要のない勧告、それからもう一つは、重大な権限もしくは権利の圧縮という問題に関連して、それの代償として出てきている、たとえば公務員法二十八条の人事院の勧告、それからもう一つの例は行政管理庁設置法の中に出てくる第二条ですか、第二条にあるつまり行政機関内において合法的に、適法に行われておらないもの、それからその他の好ましからざる行政に対してその非違を糾弾して、これを取りやめろという勧告、この場合は私はもう十分筋が通っている、そういう三つある、大体の類推がそうなる。ところがそのうちでも今おっしゃっておられる御答弁からいっても、この勧告はあれどもなきがごとき、むしろ有害無益とは申しませんけれども、長官の御答弁からいっても、一体何のためにこんな法律の改正を加えられたか、今の御答弁では僕はある程度これはどう今ここで反論されるとしても、あとから速記録を冷静に調べられれば、だれでも私はこれはふに落ちない話だと思うのです。この点について、あえて勧告なんていう問題をここでとらえるということは、今までの行政管理庁設置法等の関係からいうと、かえってむしろこういう先例を開くことは、それぞれの法律の持っている権威というか、もしくはこれの比重というものを、この際軽々しくしてしまうおそれがある。この点についてはどうですか。
  106. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 法律論になりますと、政府委員から御答弁させます。
  107. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) ただいまの御質問でございますが、これは前回この委員会におきまして……。
  108. 千葉信

    ○千葉信君 要らない。それでは長官がこの問題の答弁をしたくなければ、この問題について追及する必要はない。その次の問題を聞きます。  その次の問題は、これは昨年の夏の国会で防衛庁設置法の審議をしたときに、たしかこれは当時の野党である改進党の方から持ち出した条件の中に、国防会議を設置するということになれば審議に応じてもよろしいという、そういう意思表示があって、そうして最後にこの国防会議の設置という問題が、防衛庁設置法の審議の最中に飛び出してきた。この問題の関係については、最近の情報によりますと、改進党の加わっている現在の民主党の方で、この国防会議を当然防衛庁設置法の審議のときに入れるべきだということを主張した立場の人々が、今回は国防会議設置法を早く成立させることを念願するの余り、この問題について非常に妙な妥協をされた。その内容としては民間の人を入れる入れないという、私はしかしそんなことを聞こうとしているのではない、これは付けたりです。そこでそういう経過をたどって、第三章第四十二条にその国防会議の条文が入っている。この条文によりますと、「内閣総理大臣は、左の事項については、国防会議にはからなければならない。一、その中に、これは長官も御承知だと思うのだけれども、その第三号に「前号の計画に関連する産業等の調整計画の大綱」、これを国防会議に諮らなければならない。長官の方では経済企画庁として六カ年の長期経済計画を立案する、ところがそういう長期計画に一等密接な関係のある防衛力増強の問題、その自衛力漸増の最も中心をなす産業等の調整計画の大綱、これについては総理大臣が諮問しなければならない、諮問すれば答申が出ること当然である、その答申は尊重されなければならない。そうなると、一体経済企画庁で立案し、計画し、推進しようとする長期経済計画と全く同じ計画が出てくるとは限らない、その場合はどういう調整をはかるつもりでお考えになっておられるか、これもこの際伺っておきた。
  109. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 国防に関する廃業のことは国防会議審議されるだろうと存じます。従いまして、国防会議には審議庁長官はこれに参加するということに相なっておりますから、この調整は私は完全に行くと思っております。
  110. 千葉信

    ○千葉信君 経済企画庁の長官が構成員の一人として入るわけですから、発言権は当然あろうと思うのです。しかしその発言権は、閣内における他の行政機関にああしろ、こうしろといって勧告までしたりする、そういう強大な状態においては国防会議での発言は私は期待できないと思います。これは高碕さんが実際にその衝に当られるかもわからない、高碕さんがその構成員の  一人として入るかも知れません。その入る高碕さんに私はお尋ねしたいのですが、その場合の高碕さんの国防会議における構成員としての権限と、閣内における他の行政機関に対してああしろ、こうしろという勧告をすることのできる権限、その権限は同じような比重で発言して、同じように問題の推進をすることができ、問題を左右することができるというなら、これは問題じゃない、しかしだれが考えても、その会議の一構成員である場合と、この法律改正案に盛られている経済企画庁の長官とは私はおのずからその比重は天と地ほど違う。その点であなたが、いや、私はそういう場合でもやってみせるという意気込みはわかります。意気込みはわかるけれども、法律上から言えば、そういうことなんか全然期待できない、当然そうなると思うのです。これは法律論でも何でもないと思うのです。当然の話です、常識から割り出せば……。これに対しては長官はどう考えておられるか。
  111. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) その意味から申しまして、私は国防会議が早くできて国防六カ年計画ができるということは非常に希望するわけなんです。しかし、それができていない間でございますから、経済六カ年計画の立場から申しまして、それを飛行機にするか、軍艦にするか、その金をもってタンクを作るか、これは防衛庁長官がきめるべきものだと思いますが、これに対する大体の金のリミットというものは、今後経済六カ年計画を立てて行きます上におきまして、経済審議庁長官はこれを主張することができる、こう存じておるわけであります。
  112. 千葉信

    ○千葉信君 私の聞いているのは、国防会議ができての段階を聞いているんですが、長官の御答弁はそれに全然答えておられない。しかし私は時間の関係もありますから、大体このぐらいで提案者のほんとうの腹がわかりましたから、これ以上は質問することはやめますが、しかし日本の現在の産業構造の中における重化学部門ですね、たとえば特需を当て込んで兵器を作る、大砲を作る、弾薬を作るという重化学工業部門の比重というものは、長官も御承知通り、決して日本産業部門の片すみにある存在じゃないと思います。非常に大きな比重を占めておる。そういう日本産業構造における重化学等の問題を全然抜きにして日本の長期経済計画の樹立なんということは、よもや長官も考えておられないだろうと思う。むしろそこに比重が当然かかってくる。そういう意味で、私は長官にこの際、一体政府考えておられる方針というものがそういう状態をそのまま放置して、日本産業計画、日本経済再建計画、日本の長期経済計画を立案することができるとお考えになっておるのか。つまりもっと日本産業の構造の状態を、長官としては変える方向でお考えにならなければならないと思っているのか、この点最後に参考のために一つだけ聞いておきたい。
  113. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 国防会議提出いたします国防計画と言いましょうか、国防に対する産業計画と言いましょうか、国防会議提出する前に一応産業全体の計画と調整して、それから事前によく産業計画との折り合いをつけて調整をして、それから提出することに相なりまするから、私はこれは国防計画の産業というものは別に存立すべきものじゃないと思う。将来私の考えといたしますれば、従前軍が勝手に自分の工場を持っていた、こういうようなことは今後許すべきじゃない、こう思うわけでありまして、できるだけ全体の産業に打ちとけて行く、こういうふうな全体の調整をとって行きたい、こういう考えでおります。
  114. 田畑金光

    田畑金光君 きょう一時半から電源開発の審議会に長官は出席されるそうですが、かつての電源開発会社の総裁でもあられる、長官から、今年の電源開発の計画について承わっておきたいと思います。ことに聞くところによりますると、今日の方針は従来のような水力資源の開発がコスト商から限度に来ておるので、いわゆる松永構想に基く火力発電の方向に重点を置くということも承わっておるわけであります。つきましては、本年度の水力、火力発電の計画につきましてどういうような、たとえば開発資金の配分とか、あるいは出力とか、こういうような点についてどういう御方針でおられるのか承わっておきたいと思います。
  115. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 大体三十年度におきましては、資金の分配をやります上におきまして、電力会社の方に千二百二十億円を持って行こう、また公営の方には百二十億を持って行きまして、自家発電の方には六億持って行く、電源開発会社には三百五十三億円を割り当てよう、こういうようなことにつきまして、きょうはそれの審議をいたしたい、こう存ずるわけであります。過去におきましては、電力会社には千百六十四億、公団には百億、自家用には六十二億、電源開発会社には三百六億、こういうふうに相なっておったのでありますが、今後は逐次電源開発会社に、非常に厄介な金のかかる水力電気の開発は電源開発会社に持って行こう、そうしてすぐに実効の上る火力発電のようなものは、これは電力会社に持って行こう、こういうふうな根本方針で進んで行きたいと思っております。なお出力等につきましては、ただいま政府委員も参っておりますが、これはあとで書類で詳細な数字を御説明申し上げた方がいいと思います。根本の方針はそういうふうに進みたいと思っております。
  116. 田畑金光

    田畑金光君 今お話によりますると、金のかかる、あるいは厄介な水力資源の開発は電源開発会社が担当し、金の比較的かからない、また容易である火力の発電については各電力会社が実施をする、こういうような御説明でありまするが、そうしますと、従来、たとえば只見の電源開発とか、大規模な電源開発事業がなされておるわけであります。こういうような点につきましては、今年から方針が、開発の主体が大きく変って行くのかどうか。それともう一つお尋ねしたいことは、本年度、今お話しの各電力会社で担当すると言われておる火力発電について、具体的に開発資金あるいは出力その他について、あるいはまたどことどこにそういうようなものを今年開始しようとするのか、具体的に承わりたいと思います。
  117. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 大体この奥只見、田子倉、あるいは御母衣、あるいは熊野川という非常な大きな設備を要する、資金を要する所は、逐次電源開発会社でもって当らしめたいと思っております。それで小じかけの、簡単に着手できる方面は、これは各県等の県営の仕事等によって着手せしめたい。火力の方につきましては、ただいまの御質問の件につきましては、詳細の数字は政府委員からお答えいたさせます。今資料はございませんですから、その方の係の者はみな何の方に……。
  118. 田畑金光

    田畑金光君 場所くらいはわかっておるでしょう、どことどこと、この火力発電について……。
  119. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 全部電力の方の人間は電源開発審議会の方に行っておるものですから、資料が今手元にございませんですから……。
  120. 田畑金光

    田畑金光君 私のお尋ねしておりますることは、経済審議庁から出されております総合経済六カ年計画の構想と、昭和三十年度経済計画の大綱を読んでみますると、たとえば問題になりますことは、このエネルギー資源の問題であります。たとえばこの大綱の中に、「エネルギーについては、燃料自給度の向上および国内燃料の有効利用を図ることを目途としてエネルギー総合対策を確立し、国内資源の合理的、計画的な開発利用を促進する」という方針が述べられておるわけであります。今の電力資源の開発は当然この燃料資源の開発と密接な関係がありますので、ことに今問題となっておりまする国内燃料資源、石炭の問題と不可分の関係にあるわけであります。従いまして、政府が本年度国内燃料資源の開発、あるいは有効利用、こういうような点についでどのような考え方を持っておられるかということの前提になるわけであります。御答弁によりますると、どうも具体的な説明がなされないということでは、この大綱についてどの程度の実際にこれを実施するだけの熱意をお持ちであるのか疑問に思うわけであります。それでは火力発電の問題については後ほど資料の提供を求めたいと思いますが、この燃料の、ことに国内資源の開発についてどういう構想を持っておられるのか。たとえばこの経済六カ年計画の第一年度たる昭和三十年度において、産業計画に伴う国内の石炭の生産、需給関係について、どういうような考え方でおられるのか、これをまず承わっておきたいと思います。
  121. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) この石炭の問題につきましては、日本の全体のエネルギー対策といたしまして総合的に考えておるわけでありますが、大体に石炭の生産は今後輸入というものを防遏してしまうということと、それから石炭の消費につきましては、低品位の石炭をできるだけ現地に近い所で電気として、発電力といたしまして、そうして送る。今四千カロリー以下のものは運搬賃にたくさんかかりますから、むしろ発電所を作って、そうして電気で送ろう、そうして電気の方に石炭を使おう、こういうような方針をとって行きたいと思っております。それからエネルギー資源といたしましては、重油を相当たくさん輸入いたしておるものでありますから、この重油というものについてはある程度の規制を加えてしまって、ボイラー用には今後はある一つの規制を加える。そうして今後ボイラーに対しては石炭を使わせる、こういうことにいたしまして、六年計画におきましては、現在の石炭を少くとも五千二百万トン掘ろうじゃないか、こういうようなことを目安に置きましてやっておるわけなんであります。それに進めますためには、逐次現状の石炭を幾らかずつ毎年増産いたして参りたいとこう考えております。
  122. 田畑金光

    田畑金光君 長官の御答弁の要旨は私もすでに承知をいたしておるわけであります。本年度のエネルギー対策について、燃料対策について外国炭の輸入の制限をはかるということ、あるいは重油の消費について規制をはかるということ、あるいは重油ボイラーの設置について制限を加えるということ、また低品位炭の活用について火力発電施設の活用をはかるということ、こういうようなことについては私もよく承知をいたしておるわけであります。五年後に五千二百万トンの石炭需給計画を持っておられるということも承わりましたが、五年後のことを私はお開きするわけではありません。五年後の目標もけっこうでありまするが、現在の石炭問題を私はお尋ねいたしておるわけでありまして、昭和三十年度の石炭需給計画は何千万トンに置かれておられるのか、この点をまずお尋ねしたいと思います。  それから第二にお尋ねいたしておきますことは、低品位炭の処理対策、ことに四千カロリー以下の石炭の消費をはかる処置として火力発電施設を行われるとの方針でありますが、この点は全く時宜に適した措置であると考えるわけであります。要は一体どの程度の資金措置を講じられるのか、あるいはどの程度の火力発電の規模を考えておられるのか、これによってどの程度の低品位炭の消費が可能であるかという問題であります。この点第二の質問としてお尋ねいたします。  ついでに申し上げておきますが、第三の点としてお尋ねしておきたいことは、重油消費について規制を行うということでありまして、この点はすでに重油ボイラーの使用制限に関する臨時措置法も出ております。具体的に昨年五百四十九万キロリッターの重油が消費されておりますが、どの程度に重油の消費を制限されようとするお考えであるか、もっとも農林水産用という部面において私は重油の消費制限をはかることはできないと思いまするが、しかし五百四十九万キロリッターの重油の内容を検討いたしました場合に、相当程度消費制限ということを考え得るのではないかと私は思うのであります。そういうようなことを考えましたとき、どの程度政府は重油の使用制限、規制をはかって行かれようとする方針であるのか。  第四の点といたしまして今外国炭の輸入がなされております。もっともこれは原料炭であり、特殊炭でありますから、やむを得ないと考えますけれども、ただ、しかし今日まで見ますると、外国炭の輸入についても十分選別する余地があるように見受けます。国内の石炭資源を確保するためには、外国炭の輸入についていま一段と工夫をこらす必要があるように私は思うわけでありますが、この点について経済審議庁長官としてはどのような今年は措置をとられようとする御方針であるのか、承わっておきたいと思います。
  123. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいまの御質問の本年度の石炭の産額は幾らになるか、こういうことでありますが、これは四千三百万トンということに進んで行きたい。三十年度は四千三百万トン。  それから低品位炭をどの程度のものを幾ら使って、そして幾らの投資をして、幾らの電力をふやすかということにつきましては、詳細の数字をあとで取り調べましてお手元に差し上げることにいたしたいと思います。  それから第三の重油の消費規制でございますが、重油の輸入は三十年度は五百五万トン、三十二年度は四百九十五万トンに滅して行きたいという所存でございます。
  124. 田畑金光

    田畑金光君 今の長官の御答弁は私の聞きたいと思うことをほとんど、資料がそろっていないためでもありましょうが、答えられていないわけであります。私はどうも経済企画庁とか、こういう長期の経済計画の策定及び推進をはかられるという新しい構想をもって進まれるといたしますならば、廃業計画の最も大事な燃料計画、熱資源の計画等についてもう少し私は具体的な構想と申しますか、基本的な考え方等があってしかるべきだと思いますけれども、どうも今の御答弁では要領を得ないわけであります。これじゃどうも今後の経済審議庁あるいは経済企画庁の運用というか、あるいは権威というか、私は疑わざるを得ないわけでありまして、この点は一つ適当な機会に私の今質問しました諸点について、長官から明確な御答弁を願いたいと思います。ことにただいまのお話によりますと、今年度の石炭の需給計画は四千三百万トンに置いておるというようなお話でありますが、四千三百万トンについては政府は責任をもって石炭の需給をはかるだけの熱意をお持ちであるのかどうか、この点をお尋ねしておきます。
  125. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 四千三百万トンの数字は、これは通産省ともよく打ち合せした上においてやっておるわけであります。通産省と協力いたしまして、これは必ず需給関係をバランスして行きたい、こう存じておる次第であります。
  126. 田畑金光

    田畑金光君 先ほど申し上げたように政府の今の熱資源の計画的な今後の生産、需給、配分、こういう点については後の機会に御答弁を願いたいと考えます。  それで次にお尋ねいたしたいことは、昭和三十年度経済計画の大綱を見ますと、労働力の雇用、あるいは就業者数、失業者数の問題でありますが、この点について若干お尋ねしておきたいと思います。まず基本的に、この経済自立、総合経済六カ年計画の方針というものは、日本経済の自立と同時に、完全雇用の達成、これが二本の柱になっておると思うわけであります。その中の完全雇用の問題でありますが、今審議庁長官が出されました資料によりますと、三十年度においては二十九年度に比し総人口百三万人の増加、生産年令人口は百三十万人の増加、労働力人口は八十四万の増加になると推定しておられるわけであります。この新しく増加してくる労働力人口あるいは現在すでに本年三月の、信頼していいかどうか疑わしい総理府統計局の資料によっても、完全失業者が八十四万出ておるわけであります。こういう雇用、失業情勢に対処いたしまして、政府は本年度も昨年並みに完全失業者というものは六十三万程度にしたい、六十三万の線を維持したい、こういうお考えでありますが、一つこの雇用、失業問題に対しまして、あるいは失業対策に対しまして、どのような御方針をお持ちであるのか、この点、この計画との関連において長官の構想を承わっておきたいと思います。
  127. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 大体に失業者の数は、昨年は六十三万人でございましたが、本年も六十三万にとどめたいと、こういう工合に考えておるわけであります。で、現状のままで、そのままで置いておけば約二十万の失業がふえると、こういうことは算定の基礎になっておりまして、そのうちの一部分をこれは転業の方に持って行きます。一部分を大体公共事業、特に治山治水並びに鉄道、道路、その方面に持って行きたい、こう存じておる次第でございまして、それで大体六十三万人、昨年同様にとどめて行きたい、こういう趣旨で進んでおるわけであります。
  128. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  129. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めて。  午後三時まで休憩いたします。    午後二時一分休憩    ————・————    午後三時十九分開会
  130. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 休憩前に引き続きまして委員会を再開いたします。ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  131. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めて下さい。
  132. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 先ほど田畑君がちょっと質問されて、時間がなくってそのまま打ち切られた失業者の問題であります。先ほどの長官の説明によるというと、昨年度と本年度と、その失業者の数を大体同じくらいに押えようという御意向のようであります。経済審議庁で発表されております総合経済六カ年計画の構想というのを見ますというと、六カ年計画の最終年度である三十五年度には、労働力人口の一%に失業者がなる、それだけ減少するのだ、こういう数字になっております。もっともこの数字その他の説明については、最後に断わってあります。これは中間報告であり、その後の情勢の変化によっては変ることもあり得るのだという断わり書きがついておりますので、この数字を最後的のものだとは私も考えないのですけれども、それにしましても、さっきの長官の説明だけでは、果して本年度政府の方で一応二十万増加するものと認めている完全失業者数が、六カ年計画の最終年度には四十三万五千ですか、ということになるというこの結論は、私はかなり問題があるのじゃないかと思います。人口はこれによりまするというと、九千三百七十九万五千人に増加する。労働力人口は二十八年度を基準として、一〇・五%増加するわけです。労働力人口が……。完全失業者はあべこべに三五・一%減となる。ところが国民の総生産はどうなるかというと、二十八年度の基準に対して二割三分強の増強、それから貿易の方を見ますというと、輸出では二十八年度を基準として、これはまたばかにふえているのです。八割八分もふえる。輸入の方はどうかというと、輸入の方は六・六%の増加、こういう数字になっておる。国民総生産の数字そのものもかなり問題があるし、それから輸出と輸入の問題についても、この数字のとり方は非常に私は疑問だと思うのです。労働力人口の一%に完全失業者の数を押えるという考え方の基準ですね、これをお伺いしたいと思う。先ほどは道路の整備に何とか、あるいは公共事業に何とかというような説明がありました。しかし果してそれによって一%に押えることができるかという問題、それから国民の総生産の問題について、二割三分強を見込むことができるかという問題、並びに輸出の増強に八割八分、この数字は仮定的のものだ、中間的な報告だとしても、果してここまで増強することができるかどうかということが問題だと思う。そこで、こういう数字の出てきた基本的な考え方をお伺いしたいわけです。
  133. 田中龍夫

    政府委員(田中龍夫君) お答えいたします。  この六カ年計画の基本的な考え方は、今までもいろいろな五カ年計画とか、三カ年計画とかというふうなものがございましたが、それはたとえば輸出をこれだけ伸ばしたい、そのためにこうこういうふうな産業を伸ばさなければならぬ、その何カ年計画、あるいはまた自立経済達成のために自給度をこれだけ伸ばす、そのための計画はこうだといったような計画と違いまして、今回のこの計画の根本は、何と申しましても年間百万以上の人口が増加をする。しかも現在多くの失業の方々をかかえている。これらの新しく増加します人口と、それからこれらの失業の方々に何とかして就労の機会を与えてやらなければならぬ、こういうことが一つの大きな目標となって、いわゆるコルムの方式に基きまして、それだけの方々に対して、就労の機会を与えますためには、それではどうしなくちゃならないか。どうしても就労の機会を与えるためには、第一次産業、第二次産業、第三次産業といったような部面に、どれだけ一体吸収するように施策をしなければならぬか。その際におきまするいわゆる貿易の輸出入の関係では、こうこうでなければならぬ。つまり申しますると、その雇用の問題、就労の問題が根本になって、この計画が立てられているような次第でありまして、さような関係からここに出しておりまする三十二年、三十五年の計画は、われわれとしましては、そういうふうな基本的な考えのもとに、こうこういうふうにしたいと、その目標を掲げている次第でございます。  なお、これはさような関係から、四囲の状況等によりまして、この数字が、あるいは変化をすることもございます。われわれとしましては、そのときに当りまして、ぜひともいわゆる完全失業者の数を、まあ世界各国の例から申しますると、完全失業者というものが、大体三、四%が一般でありますが、それを一%まで下げました四十三万の数に持って行こう、そのためにいろいろな施策を考え、また計画を立てている次第でありまして、さような関係から、基本的な考え方は、ただいま御指摘になりましたその点が、最もポイントでございます。
  134. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 今の政務次官のお話によりますと、完全雇用をできるだけ実現するために、その線に沿って企画を立てた、計画を立てた、こういうお話ですね。ところがたとえば貿易の問題をとりまして申し上げますと、輸出の場合御承知のような状態なんです。現在の状態は……。これを八割八分の、とにかくそれを目標に、六カ年後において実現をするんだ、こういうためには、具体的な裏づけがなければならぬと思うのです。今日の日本の輸出産業というのは御承知のような状態で、ほとんど伸び悩んでいる状態です。輸入の方がずっと超過している。それをどういう工合にして輸出を増強しようとしているのか、それも問題だし、それからまた、たとえば国民の総生産を二割三分も上げる、こういうのですが、果してそれが第一次政策だとか説明していますがね、果してこのように生産が増強できるかどうか、あなたの方の計算では、とにかく完全雇用を実現するんだ、そういう線において数字を合わしてやっていったと、こういうことにならざるを得ないと思うのです。もちろん計画ですから、それは一定の構想に基いてそういう数字を生み出すことは私も承知しているのです。ただし、輸出にしても総生産にしても、果してこの数字まで持って行くことができるかどうかということが問題だと、こういうわけなんです。それから完全失業者を四十三万にまで押えるというのですが、一方では二割三分の総生産、労働力の人口は一割以上ですな、一〇・五%、総人口数についても相当の増加が見込まれているわけです。そういう中で、果して一%までこれを押えることができるかどうかということが私は一番問題の中心点ではないか、このように思うのです。それを私はお尋ねしているわけですが、果して輸出の場合、あるいは国民総生産の場合、どのような基礎に基いてこういう数字を出されたのか、それをお伺いしたい。
  135. 田中龍夫

    政府委員(田中龍夫君) ただいま御指摘のこの輸出の計数でございますが、この二十八年の十二億四千五百万円というのは、これは非常に低い数字でございまして、本年におきましても十六億余の輸出をほぼ達成し得る、それからまた三十二年——三十五年のこの目標も、われわれとしましては、もちろんそこには非常な努力をしなければなりません、またさらに貿易におきまする通貨の自由交換制とか何とかいうふうな問題と関連しまして、さらに一層輸出に対しまして努力を傾けなければなりませんが、しかしながら大体三十二年は二十九年に比しまして、一八・六%の増というこの趨勢値は、必ずしも無理な数字ではないと存じます。またこの輸出の増強と関連しまして、国内の総生産におきましても、一方におきましては人口も増加いたしまして、そういうふうなファクターにおいて、また他方には輸出の増強その他の施策、さらに蓄積されました資本を重点的に拡大生産の方向に投入するといったような、あらゆる施策を動員いたしまして、そうしてこの目標に達しなければ、日本の今日の人口並びにその就労の問題を解決できない、これはもうひとえに政府としましても国民としましても、情熱を傾けてこの目標に向ってあらゆる努力を傾注いたしたいと考え一つの目標の計数であります。
  136. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私は、具体的にこういう見込みがあるから、たとえば輸出貿易は増進するのだということをお尋ねしているのですよ。たとえばドル地域あるいはポンド地域、あるいはオープン・アカウント地域と、まあ大体三つに分けてみますと、どっちの方面に将来日本の貿易が伸びて行くだろうかということをあなたの方ではおそらく予想がついているだろうと思うのです。そしてまたその予想のもとにおいては、輸出方面においてはドル地域というのはほとんど見込みがない。そういうことも一応予想がついているだろうと思うのです。ドル地域については伸びたりしたところで、もう大した伸びる力は私はないだろうと思うのです。そうするというと、ポンド地域あるいはオープン・アカウント地域ということになりますが、このポンド地域はポンド地域でまた御承知のような状態なんです。そうするというと、結局残されたオープン・アカウント地域への貿易の伸展ということになるだろうと思うのです。そういうものについて、中共貿易やその他と関連して、どういうような見込みを立てておられるのか、八割八分も増強するというのには、そういう見込みが相当織り込まれておるのではないかという工合に考えるのです。そこでお尋ねしているわけなんです。
  137. 田中龍夫

    政府委員(田中龍夫君) ただいまの御指摘の通りでございまして、われわれはドル地域に対しまする貿易振興に対して努力をいたしますと同時に、ポンド・ブロックなり、さらに将来中共関係あるいはまたソ連圏との交易の面におきましても、新しい開拓をどんどんやって行かなければならぬ次第でございます。なお、ただいまの御質問のさらに詳細な点につきましては、担当の政府委員がおりますから、御説明させたいと存じます。
  138. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) ただいま御指摘のございました今後の輸出の伸びについて通貨地域別にどういう目標があるかというお話しであったと思いますが、これは非常にずっと先のことを今からその通貨地域別に厳密な見通し、計画ということは非常にむずかしいのでありますが、当面二十九年度から本年度に至りまする傾向を追ってみまして、通貨地域別にどういう方面日本の輸出が伸びるだろうかという点になると思います。御承知のように二十九年度におきましては、米ドル地域にも輸出は御承知のように大幅に伸びましたけれども、同時にあるいはそれ以上にポンド地域への輸出が非常に伸びたことは御承知通りであります。御承知のように二十八年度の輸出が十二億何がしであったのに対しまして、二十九年、前年度におきましてすでに十六億ドル、そこに三億何千万ドルという輸出の伸びを見たわけであります。本年度の計画といたしましても、さらにその上に五千万ドルの輸出の伸びを計画として見込んでおるわけであります。今年度におきましての大体の傾向といたしましては、前年度に比べまして、オープン・アカウント地域に対する輸出の伸びは、御承知のように地域別に見て参りますと、かなり困難な問題があるようであります。御承知のように、たとえばインドネシア地域のような所におきまして、日本の輸出は伸びることは伸びまするが、オープン・アカウント勘定の関係で焦げつきになり、これに対してある程度の制約が出て参るような地域があるわけでありまするし、あるいは地域によりましては、向うの手持外貨の関係で、やはり向うの方で輸入制限をせざるを得ないような地域等もございまして、いわゆるオープン・アカウント地域に対する輸出の伸びは、前年度に比べまして本年度は落ちるでありましょうし、今後オープン・アカウンと地域という制度そのものに対しても、将来の問題としてかなり問題があるであろうというふうに考えております。ドル地域に対しましては前年度も伸びましたけれども、本年度はやはり引き続き輸出の伸びは、ある程度あるいは相当の期待ができるように考えております。御承知のようにガット加入による効果がもちろんあるでありましょうし、かりにそれのみでなくして、全体にドル地域に対して日本の物資、あるいは雑貨、あるいは食料品というようなもものを中心に、前年度に引き続き米ドル地域に対する輸出の伸びは期待できると思います。あとスターリング地域に対する問題でありますが、これは御承知のように、現在ポンド地域に対する協定の今交渉中であります。これに対する関係は多大の影響を見ると思いますけれども、しかし最近本年度に入りましてからのポンド地域に対する輸出の伸びの傾向を見ましても、本年度やはりポンド地域に対しても相当程度の輸出の期待はできるというふうに考ておりまするし、三十年度、三十一年度にも、引き続きましてこれらの地域に対する輸出努力によっての伸張ができるというふうに考え、期待をいたしておるわけであります。もっとも先ほど政務次官から御説明がありましたように、こういういわゆる通貨地域別の問題は、ずっと長い将来のことを考えてみますと、現状ですぐに判断することは必ずしも適当でないのではないかと思われるのであります。現在のいわゆる双務協定によるオープン・アカウント地域に対する制度は、長い目で見れば相当の変化を加えらるべきでありましょうし、ポンドの地域あるいは全体に世界通貨が自由交換の方向に向って行くということを考えますと、ただいま申しましたような通貨地域別の見込みがそのまま長い将来に向って伸びて行くというふうに……伸ばして考えるというわけには必ずしもいかないと思いますが、全体として二十八年度から九年度に、御承知のような非常な輸出の躍進を見、二十九年度から三十年度に対して五千万ドルの輸出のさらに伸びることを期待いたしたのでありますが、この計数も最近の実績と比較してみますと、かなり固い数字であるように私どもも感じております。そういう見地から申しまして、二十八年度に比べれば、非常に大きな輸出の伸びになりますが、二十九年度、三十年度の現在までの実績に照らしてみましても、現在三十一年度以降の目標も、決して無理な傾向値ではないように考えておるような次第であります。
  139. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 先ほど加瀬君がちょっと質問された問題ですが、経済六カ年計画と防衛計画の問題です。高碕長官は、国民の負担力が基礎なんだ、防衛計画の場合ですね、そういうお話があったわけですが、国民の負担力については、別に具体的には説明がなかった。その問題をどなたでもいいからお答え願いたいと思うのです。一体国民の負担力というものをどの線に抑えるか、どの程度をもって国民の負担力とするかという問題です。国民所得は、これは一応計算ができると思います。国民所得の二・何%が日本の場合においては防衛力の限界だというお話を長官はしておられます。これは国によって、その経済の底が高いか浅いかによってだいぶ違う問題で、アメリカのように経済力が非常に強い所では、国民所得のパーセンテージははるかに上でしょうし、弱い所では一%でも非常な負担になる、こういうことが考えられるわけですが、長官は、また経済審議庁で考えていられる国民の負担力というものは、具体的にどの辺の線で押えるかということをお尋ねしたい。
  140. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) お答え申し上げます。これは先ほど長官がお話し申し上げましたように、過去二、三年の平均をとりましても、防衛費全体の国民所得に対する割合は、二・一とか二とか、その辺の割合になっています。従いまして一応われわれが六カ年計画において考えておりますのも、国民所得に対してその比率がそんなに大きく働かない。まあ二%台というようなところに大体見当をつけて、そのぐらいがまあ防衛関係費の限度じゃなかろうかというふうに考えております。  なお、先ほど長官が国富のことをお話になりました。これは堀さんからお話がございましたように、底が浅いかどうか、底が高いかどうかというような点でかなり問題になってくるのでありますが、しかし先ほど来申しましたように、現在のところは、国富の調査昭和十年に統計をとりましたのが最後でありまして、現在国富それ自体調査をこれから経済審議庁でやろうというところでございまして、なかなかそっちの方からは判断の材料が、今すぐここへ出てくるというわけのものでもないと思います。それらをあわせますと、ほんとうのところがだんだん固まってくるのだと思います。ただいまのところは、国民所得との比較をながめまして、大体過去の比率をそう大きくは動かせないだろう、そんな気持であります。
  141. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 防衛計画については、ただいま衆議院で問題になっておるような工合で、もう出したとか出さぬとか、あるとかないとかいうことが問題になっているようですが、しかし一応国民所得の観点からその大体の規模というものがきまってくるというお話。ところが防衛計画の方は、これは日本側だけの意思できまるのじゃなくて、アメリカ側の意思が多分にそれを左右しているわけです。この間の日米の共同声明でも御承知のように、三十一年度、三十二年度においてはさらに増強するのだということが約束され、またアメリカ側においては、日本の国防についての、その一応の線を設けようとして出しているわけです。あの線までもしも増強されるということになると、しかも、それが大体三十五、六年くらいまでだろうと思いますが、そうなりますと、日本の国民所得の中に占める防衛費といいますか、あるいは防衛力の関係の費用というものは、非常に私は増大してくると思う。そういう点、かなり経済計画の方も変ってくるのじゃないかと思う。防衛計画に従ってこれの方が変るという私は可能性があると思う。これは中間報告だと断わっておるから、防衛計画がさらに拡大されれば、従ってそれに応じたようにこの数字も変えて行く、こういうことになるのだと思いますが、そのように考えて間違いないですか。
  142. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) ただいまのお話でございますが、私どもといたしましては、日本経済の安定と申しますか、自立と、それから雇用の増大ということが前提でございまして、そういう自立経済をこわす、あるいは安定をくずすというようなところで防衛計画を考えるということは、これは国全体としてマイナスじゃないか。そういう点につきましては、もし将来ともアメリカとの共同防衛というような面でいろいろな話が出ましても、それは十分にアメリカ側の納得を得るものだと、こういうふうに考えております。ただいま申しましたように、防衛計画の方が先行してこの計画が変ってくるのでなくて、この計画において大体の規模というものがきまりまして、その中でやって行くように調整して行きたいと考えております。
  143. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私がお尋ねしたいのは、防衛計画というものは、向うの意思によって、かなりの程度において左右されるわけです。あなたは日本側の意思、つまり日本の国民経済を破綻にまで導いて、それで防衛計画を進めるつもりはないし、向う側もそのことは十分了解するだろう、こういう御答弁なんです。ところが向う側での日本の国民経済なり、あるいは長官の言う国民の負担力というものに対する評価の仕方と、こっち側の評価の仕方というものは、相当違うと思うのです。現に昨年池田勇人氏が向うに行っての交渉の過程について見ましても、最後には落ちつくところへ落ちついたようでありますが、しかし向う側の要請しておるところは相当きついものだと思う。ましてや今後アメリカ軍が日本から撤退する、こういう事態考えられると思う。わずか日本には飛行場を持つとか、あるいは港を保有するとかいうくらいの程度にして、あとは大半引き揚げることを、一応向う側で予定しておると思う。そうなった場合、日本の側でそれに見合うだけの、あるいはそれ以上の、向う側が現在持っておる以上の防衛力を日本において増強しなければならぬという結果になると思うのです。そうなった場合、結局六カ年計画を立ててみても、それは根本的に破壊されて行くのじゃないかということを心配するわけであります。それをお尋ねしておるわけであります。その点についてはどういう工合にお考えになっておりますか。
  144. 田中龍夫

    政府委員(田中龍夫君) ただいまの御質問でございますが、防衛計画の考え方におきましては、ただいま政府委員からお答えいたさせた通りでございますが、経済計画といたしましての考え方は、この防衛生産に関連いたしまする問題は、いわゆる総体を概観いたしまして、この中に取り入れてありますわけであります。その考え方は、ただいま御説明申し上げましたように、国民所得、総生産といったようなこととにらみ合せまして、同時にまた日本経済の安定が破壊されないという線において、われわれは日本側といたしまして、今後将来ともにこれについては主張もいたして参らなければならぬものと、かように考えます。
  145. 木下源吾

    ○木下源吾君 総合経済六カ年計画というものですね、これは全体の日本財政面とか生産、こういうものとの関連は緊密についておって、この計画によって遂行する、こういうお考えなんですか。
  146. 田中龍夫

    政府委員(田中龍夫君) この六カ年計画は先ほど申し上げましたように、雇用なり何なりの問題とか人口の問題が、今後日本の一番大きな問題になりますので、それに対して国民の労働力人口に対しまする就労の機会をどう与えて行くかという観点に立ってのこの目標を示したものであります。ことに資本主義経済下におきまする計画でございますから、企業の自主性なり、あるいはまた剤意というふうなものを十分に残して、その方向に誘導しなければならない目標でございますので、この計画それ自体に当りましては、もちろん財政の問題につきまして、その他万般の問題につきまして、大蔵省なり、あるいはまた各省と緊密な連絡をとって、ここに概定いたしたわけであります。これはあくまでも目標でありまして、この目標を達成いたしまするために、あらゆる諸般の施策を並行してこの方向に持って参るというのが、この計画の根本でございます。
  147. 木下源吾

    ○木下源吾君 そのためには経済審議庁はよほどの権限がなければならぬと思うのですが、今のような権限でやれるんですか。
  148. 田中龍夫

    政府委員(田中龍夫君) 権限の強化の問題でございますが、これはいわゆる統制経済下におきまする総動員法によっての、ああいった強力なる統制経済という形はとり得ませんが、少くとも経済審議庁といたしましては、ここに御審議をお願いいたしておりまするような権限を持つことによりまして、逐次この目標に向って万般の施策を誘導して参る。それで現在、先ほど来いろいろと御質問がございましたように、もっと強大な権限を一気に持つべきじゃないかといったような御意見もございまするけれども、われわれとしましては一応この程度の権限を持つことによりまして、摩擦その他の問題を避けて、同時に所期の目的を達して参りたい、かように考えております。
  149. 木下源吾

    ○木下源吾君 私はこのような総合経済、まあ計画経済、こういうようなものは、少くも社会主義的な、この強い政治力、こういうものでなければ達成困難でないか、言いかえれば達成はできないのじゃないか、こういうように考えておるんですが、皆様方は今のような自由主義経済のもとにおいて、しかも自由主義諸国間との提携を基盤として、こういうことが本気になって達成できると考えられている根拠を承わりたいのだな。
  150. 田中龍夫

    政府委員(田中龍夫君) 経済の計画におきましては、いわゆる社会主義諸国家におきまするいわゆる計画経済もございまするが、同時にまた自由主義経済下におきましても、これを何でもかんでも放任してよろしいというのではない。たとえば今日までの日本経済が、自由経済であるとは申しながら、やはりそこには外貨の割当でありますとか、あるいはまた資金その他の面の調整でありますとか、いたしておったわけでありますが、しかしながらあるいは各省において、あるいはまた民間の諸企業において、国家の進むべき方向とは違っておりましたり、あるいはまた二重投資、三重投資といったような不経済投資が随時に勝手に行われるといったようなことは、これを抑制しなければならない。そういうふうな関係から、自由主義経済下におきましても、やはり戦後のドイツにおきましても、あるいはまた今日いたしておりまするイタリアの場合、あるいはまたフランス等の場合、自由経済下において、やはり進むべき目標を示すことによりまして、また諸般政府の施策と相待って計画化いたして参るということも、これも当然なさなければならない大きな任務であると存じます。社会主義経済下におきまする権限的な統制経済とは異なりまするが、民間の創意なり、工夫なりを十分生かしつつ、しかも自由主義経済下において、この国家の針路を明示して、その方向に向わせるというのが今日の経済計画の一つの建前でございます。その点どうぞよろしく御了承いただきます。
  151. 木下源吾

    ○木下源吾君 そうしてみれば、少くとも銀行くらいは国でやらなければならないのじゃないか。日本銀行あたりで、国の、つまり国家の方で、ほんとうに強力に統制してやらなきゃいかない。重要産業の面だけでも、国の方でもう少し国営といいますかね、そういうまでは行かぬでも、やらなければならないのじゃないか。つまりあなたの今おっしゃっておるような点では、一方においてやはりこの統制はぜひとも必要であるという要請に基いてこれはできてきたのですから、こういうものと自由のものとを国民は選択して、どちらの方が便利だということがだんだんわかる過程において計画が遂行されて行かなければ、計画は国の権力によるいわゆる官僚統制というものに堕してしまうのではないか、こういうように考えるので、一部のものをやはり公営にして、そして進んで行くのでなければ、国民がみずからどちらがいいのだという選択をする機会がないのじゃないか、こう考えるので、そういう点についてはどういうようにお考えになっておるか。
  152. 田中龍夫

    政府委員(田中龍夫君) ただいまお話になりました通り、この経済計画の遂行に当りましては、やはり国民のほんとうの納得と理解のもとに話し合いなり、納得の行く姿において、民間の創意、工夫も十分生かして、そうしてその方向に進めて参りたいというのが、この経済計画の骨子であります。そして同時にまた、ただいまお話の金融その他の面でございますが、これには今日でも、たとえば日本銀行の政策委員会、あるいはまた開発銀行等によりまする指導的な金融とか、あるいはまた長興銀等についての重点的な誘致といったような面で国家意思を反映させながら誘導して参る、かように考えておる次第でありまして、金融面におきましても、ただいまちょうど御指摘のように考えておる次第であります。
  153. 木下源吾

    ○木下源吾君 少くもこの計画を、総合経済六カ年計画というものを作らなければならないという現実は、政府は認めておるわけです。これは何を意味しておるかというと、自由主義経済だけでは国民をもうまかなって行くことは不可能だというこれは基盤の上に立っておるわけなんですね。いいですか。そしてこの総合経済を樹立する以上においては、国民に今このようにして生産力がまだ発展して行くのだという見通しが立っておらぬければならない、生産力が。この生産力があなた方のこの計画において真に発展して行くかどうか。私はなぜこういう質問をするかというと、すでに石炭鉱業においては、今日五千万トンから四千万トン台にもう操短をしなければならない。そうして中小を切ってしまわなければならない。こういうように生産力をかえって縮小しなければならない現状になってきておるのですね。で、果してこういうようなことで、生産力の増強をどこに一体求めるか。これが問題だと思うのです。この点について実際に生産力を増強し得る、まだ生産力が上昇するのだという、この資本主義下においてそれが可能だという考え方において進んでおるのであるか。現実にはそういうふうに重要産業の石炭鉱業なんというものは操短しなければならない、こういうように現実はぶつかってきておるのだ。こういう点について説明はつきますか。
  154. 田中龍夫

    政府委員(田中龍夫君) ただいまの御質問でございまするが、われわれはいわゆる自由主義経済下におきましても完全自由といったような姿ではございませんで、やはりそこには計画性を持った方向付けなり、また国策的な重点形成が当然必要であると考えます。その場合に資本主義経済下においてなお生産力の伸びは期待できるか、こういう御質問でございまするが、われわれは今日のいわゆる国民所得の伸長と、同時にまたその国民所得によります蓄積をさらに計画的に第一次部門なり第二次部門なりに投入することによりまして、さらに生産力の増強をやれまするし、またやらなければならない、かように考えておるのであります。で、この計画それ自体がさような意味で蓄積資本を計画的に投入をする。また再生産性をさらにここに一段とつけて行きまするための施策と考えておる次第でございます。
  155. 木下源吾

    ○木下源吾君 ただいま私お伺いしたのは、現実に石炭産業のような重要産業が生産を切り詰めなければならない。さきには五千万トン、今度は四千五百万トンというので、そういう事態になっておるのに、お話のように生産力が増強はできると、こういうことで計画を進めておられるが、現実にはそういうふうに減退しておる。この矛盾を説明がつくかと、こういうことなんです。
  156. 田中龍夫

    政府委員(田中龍夫君) ただいまの石炭の具体的な例でございますが、コスト等の関係で有効需要がつかないで一応縮んだという結果ではございまするが、そのためにわれわれはあくまでも石炭を合理化して、そうして一方においては消費の面におきまして、燃料だけの石炭を考えるのではない、原料としての石炭の面も新しい分野を展開しなければならない。さらにまたその有効需要を増大をする、そのための資金的な方面におきましてもこれを裏付けて、そして特に輸出の伸長に対して打開をして行くといったような各般の具体的な施策が一連の関連を持って盛り込まれておるわけでございます。で石炭におきましても今日四千二百万トンといったような縮んだ姿でありますが、これはどうしてもわれわれは五千万トンの有効需要を与えて行かなければならない。同時にまたこのエネルギー源であります燃料のコストも低めて、そして生産されたものをやはり国際相場に置きまして、輸出力を増大しながら生産性の向上をはかって参りたい。かように考えております。
  157. 木下源吾

    ○木下源吾君 どうも今私のお尋ねしておることは説明がつかんと思うのですが、まあこれはそれでよいのですが、ここでは中心は完全雇用、完全就業、ここに目標を置いておられるようであります。これができるならばこれはもう大したものです。これは社会主義でなければできぬというのが定説だ。そこで、もちろん今のような生活のできないような最低賃金、そういうものであればそれはどうかもわかりません。だからこういうように完全雇用ということ、失業者をなくするのだということをうたっている以上は、やはり生産が増強して行くことにこの根底は立たなければならないのだが、現実には石炭鉱業においてもすでに今のような五万人も六万人も合理化によって首切られなければならないという逆な現象が出てきているのです。特需の面においてもそうですね、特需を減退させるといっているのだが、あるいはまたここにお書きになっているように、三十五年には特需がなくなると書いておりますし、従いましてここにはだんだん特需関係あるいは駐留軍関係の労務者なんというものは不必要になりますね。これもやはり五万、七万というように不必要になる。それを一体どこの生産に向けるか。今あなたの言うのは、輸出を伸ばすと書いておられます。真にこの輸出を伸ばすためにはどういう方法でおやりになるか、それが解決されなければならない。この輸出を伸ばす基本的な構想を示してもらわないと、ここに目標を書いただけでは納得行きませんね。これを一つ説明を願いたい。
  158. 田中龍夫

    政府委員(田中龍夫君) ただいま輸出を伸ばすという姿において申し上げましたが、輸出が伸びまする前提には、国際価格に日本の物価というものを持って参らなければならない。同時にまたそのための生産の増強の合理化もいたさなくてはなりませんし、あわせてわれわれはいわゆる蓄積資本を重点的に拡大均衡の姿に追い込んで行かなければならない。ことにその部門といたしましては、いわゆる第一次の部門にということもある程度までの限界がございますので、特にわれわれは第二次部門なり第三次部門の増強といったような面を考えて参る、それからまた激化いたしまする対外貿易の線に対しましては、輸出品目の改善でありますとか、あるいはまた輸出機構の整備でありますとか、そういった面とあわせて国内の生産体制もそれに応ずるような拡大生産の方向に持って参りたい、かような施策のもとにこの計画が立てられているわけであります。で、いわゆる社会主義経済下におきまする計画経済とは姿を異にいたしますけれども、資本主義経済下におきまして、そういったあくまでも理解と納得の上に立った一つの目標を掲げて、そうしてこの推進をはかって参る、かように考えております。
  159. 木下源吾

    ○木下源吾君 それではまた石炭の例をとりますが、コストを安くする。安くするためには石炭を安くしなければならない。石炭を安くするためには合理化をせにゃならぬ。そうして失業者を出さにゃならぬ、こういうことになっていると思うのです。現実はそうだと思うのです。コストを安くするにはそういうことになる。このような矛盾ですね、この矛盾は一体どこに結び目があるのでしょうか。そういうようなことをしなくても自然に輸出が伸びて行くようなことにならなければならないのであるが、輸出はコストを安くしなければならない。コストを安くするのには今のように石炭を安くしなければならない。石炭を安くするのには五万、七万もの失業者を出さなければならない。こういうようなことです。これは目的に沿わないのですね。これをどうすればそういうように行かないでコストを安くできるか、こういうことです。
  160. 田中龍夫

    政府委員(田中龍夫君) ただいまのお話でございまするが、石炭の例をおとりいただきましたが、これは一つの進行過程の断面でございまして、われわれは失業者が出るようではこの計画の目標とはおよそ隔りがあると思うわけであります。この計画それ自体が完全雇用を目標として、そして増加人口と合せて昭和三十五年には労働力人口の一割までに完全失業者を少くして行こうというのがこの計画の目的でございますから、そこに失業者が陸続として出てくるといったような姿では相ならぬのであります。そのために今の石炭の場合は一つの進行過程の断面でございまして、われわれといたしましてはあくまでもいわゆる他の面の有効需要にふりかえて就労の機会をお与えして行かなければなりません。同時にそれでも救えない面におきましては、あるいは公共事業等々の面で吸収をして行く、さらにその残った面を失対事業にふり向けて行く、われわれといたしましてはそういうふうに失業者の方々が出ないように、何とかこの計画をいたそうというのがこの計画でございますから、よろしくお願いいたします。
  161. 木下源吾

    ○木下源吾君 そこで……大分暑いからやめましょうかな。(笑声)一体今どのくらい払っていますか、日本の金利、中小企業なり何なり日本のその事業をやっておるものの金利はどのくらい払っておるか。この間二銭三厘ですか、今、日歩二銭四厘を一厘だけ引き下げることを金融界ではやかましく言っておりました。それで一厘下げると年間五十億とか違うのだ、日歩二銭四厘を一厘下げると。二銭四厘というと一千何百億になるのですね、年間の金利が。これは小さいところまで入れたのじゃないのですね。で、けさ新聞を見ますと、世界銀行が年一割を九分にするというと、これも二百何十億くらいの金利をなにすることになるんだな、一年に。日本の今の大企業なり中小企業なりひっくるめて一千何百億も金利を払っておって、そしてそれが最後にはどこかへ行く、よその方へ皆とられてしまうような仕組みらしいのですが、そういうことをやめないで、どうして一体、国民生活の消費水準を上げられるかということが大体疑問の一つですよ。それから輸出を伸ばすのはもう至上命令です。これは私らはもう同感ですよ。まあ第一番に私らが足らない食糧を、足らないのを外国から買うから、そのかわりにこちらから物を外国にやって、というのが貿易の一番の今は中心でしょう。そういうようなときに国内の食糧をたくさん増雄するということに努力を怠っておって、向うさんばかりに、外国にばかり依存しておることは、これはもう私はおかしいものだと思うのですね。食糧増産、まずそこらから自立経済を立てにゃいかぬのじゃないか、ところがこれは今まで土地改良だとか食糧増産に対して日本政府がなんぼやろうとしてもアメリカのあの余った農産物のいい市場ですからね日本は、今世界中のいい市場なんだから、これは今まであまり向うさんはきげんよくやってくれなかったのですね。今はこの愛知用水だとか北海道の篠津原野とか根釧原野とか言っておりますが、こういうことに唯々諾々としておったのではこれは問題にならぬ。しかも高いのですから、相手から来るのは。それと、この間も長官に私が言ったように、貿易のコストを下げるのであるならば、もっと近いところから安い原料を……。これは何といっても至上命令ですよ。そういうことを私は抜きにしては六カ年計画は、これは絵にかいたぼたもちではないか、こんなもの……。(笑声)いや、ほんと。そう言いたくなるんですね。外国の侵略がおそろしい、日本の国土が荒廃するから防衛しなければならぬといって二千何億も使っているんですよ。どうですか、台風一つ、二つ続けざまに来るというと……。台風の侵略をあなた方は考えなければならない。台風に侵略されるのを……。これに対して何の一体防衛費を使っているか、これはまったく本末転倒しておりませんか。この間からもう方々で水害だ暴風雨だといっているが、そんなに国土をこわされるのがおそろしいんだったらば、なぜそれに一体二千億でなくてもいい、年一千億でも五百億でも経常的にこれをやらないか、あの九州の宮崎に私は行きまして、これは九州の北海道だという。行って見るというと、川が——原始河川です。そうして川のまん中が土砂で河床が両側より高くなっているんです。そんなことで侵略をおそれているなんてだれも本気にして受け取りません。あの暴風雨の侵略に対処しなければならん。そうしなければ自立経済なんが達成できないのではないかと思うのです。そういうところに基盤を置いてお考えになったのか、何でもかんでもここに並べておけ、あしたのことはおれは知らぬというのか、これを私は疑うんだが、本気になってやるなら、もう少し核心に触れたことをおやりになったらどうか、こういうことを思っているのです。政務次官いじめるわけではないが、実際まじめに政治をやるなら、もう少しのことをおやりになったらどうかと思うから聞いているわけですよ。貿易だってあんな高い鉄鉱とか粘結炭を買ってきて、あんなものたくさん押しつけられて、米だってあすこから来るのはなんぼですか、百円くらいでくるんでしょう。中国から常熟米とか河北米というりっぱな米が来る。加州米なんぼですか、これは二十円も三十円も高いじゃないですか、そんなもの何とかかんとか言って買っておってはとても貿易伸張なんかできないにきまっているのだから、そういうことであなた方やったら、てんで失業者続出ですよ、これは……。そうして得るところは何もない。一体これは最後の三十五年にエンゲル係数は幾らになるわけですか、これは一体。私、今から言っておきますが、しっかりまじめにおやりを願います。
  162. 上林忠次

    ○上林忠次君 先ほどから話がありますように国の再建のためには輸出以外にないのだということになっております。ところがどの商品を見ましても、輸出はできない、約二割か三割高い。為替のレートが、きめましたあのレート三百六十円、一ドル為替のレートがずっと悪いじゃないか。果して企業の合理化をするなり、種々の工作を講じて三年、六年後になってこの二割、三割の無理な今の為替の割合、これがバランスがとれるようになるのかという点であります。私はこの際平価の切り下げ、これは大きな日本経済の混乱を来たすかもしれませんが、やらないといかぬのじゃないか。かような状態で、どこをつかんでもそう数年のうちに二割や三割のコストの引き下げもできない。いかに貿易国策といいましてもこれはできないのではないかと考える。これに対して経審の方はどういう工合にお考えになっておるのですか。
  163. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) ただいま平価切り下げのお話が出ました。日本のような国情におきまして、平価を切り下げましてもこれは単にその効果はほんの一時的なものでございまして、かえって通貨価値が動揺するということによって国民の貯蓄なり何なりが減ってくる、国民生活が相当の脅威を受けるというようなことがありまして、平価の切り下げということは、考えるべきではないと考えております。この六カ年計画におきましても、そういうことは全然考えておりません。  それから国際価格の比較でございますが、おっしゃいましたように相当国際的に割高なものもございます。しかしながらたとえば繊維関係とかいうようなものは、国際商品並みあるいはそれ以下に下っております。それから鉄鋼等が少なくともヨーロッパ並みの価格になっております。まあ機械とか化学関係で若干高いものもございますけれども、しかしそういう高いものにつきましても、まあ先ほどからのお話のような、石炭合理化を基盤にいたしまして、産業の合理化政策というものを強力に推し進めますならば、私どもは三年、四年たちますうちに、日本の物価というものは国際的に競争できるところまで行くんじゃないか、なおその間にガット加入等によりまして、外国の関税障壁も非常に低められて、これは相当コストが引き下ると同じような効果がございます。そういう面から貿易がどの程度伸張するかということに対しては、これはむずかしいとは決して考えておりません。
  164. 上林忠次

    ○上林忠次君 最近肥料が少し出るようになっておりますが、これが石炭の、炭鉱の方の大きな犠牲でたまたま安い石炭が来たから輸出もできる、その他の商品に至りましては、いろいろな政府の処置のバックをしないと、実際出ておらぬ、どういうような品物が出るか、私はおそらく日本の品物は交付金とか政府の奨励金、あるいは内地価格と貿易価格を変えるというようなことをしないと、実際はできないのじゃないか。かように全産業を見ますと、どんな手があるのか、将来コストを安くしてますます労働者を全部完全雇用して、大きな生産を上げていくというためには何かいい目標があるのか、どういうような措置をとるのか、大体目安がついているのかいないのか、これで一応やって見ようという程度なのか、私はどうも心細く前途を考えている。たまたま六カ年計画が出ておりますが、ただ計画だけで希望的な計画だ、おそらくこれには政府も自信がないのではないかと考えるのですが、ほんとうに工場の合理化、産業の全般の再編成というようなことができる見込みがあるのですが、どうですか。政府としての確信のあるところを一つ、これは大きな問題でありますけれども、お話し願いたい。
  165. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) ただいま御指摘のございました点は、今後の日本の特に経済自立の観点から、最も重要なポイントであるわけであります。先ほど二十九年度、三十年度、この二、三年の輸出の見通しと申しますか、計画の根拠を説明いたしたいと思いますが、結局は輸出の振興の、輸出を伸ばすための最終的なベースとなりますのは、ただいま御指摘のございました輸出品価格の問題になると思います。ただ先ほど総務部長からも御説明いたしましたように、いわゆる国際価格と日本の物価水準とをそのまま比べるということは非常にむずかしい問題であります。かりにたとえば先ほど例におあげになりました硫安のごときでも、これを世界市場の、世界の外国の生産コストと比べますと、なるほど現在の日本の硫安価格は決して世界一安いわけではないわけでありますけれども、しかし最近のように硫安の引き合いが非常に多くて輸出が伸びておりますのは、日本の生産コストが比較的安いということのほかに、日本が硫安の需要地に近い立地条件を占めているというようなまた別な経済的な条件が働いているわけであります。鉄鋼等につきましても、同じような事情が働いているわけであります。しかしそういう条件だけに依存して参るわけには当然行かないわけでありまして、やはり日本の輸出品そのもののコストを下げることが一番根本的な問題でありますが、なるほど二十八年度までは輸出についていろいろな人為的な補償と言いますか、策を講じられたことは御承知通りであります。いろいろなリンク制でありますとか、あるいは損失補償みたいな形で相当輸出を押し出したのでありますが、しかし二十九年度経過過程では、御承知のようにそういう意味のものはだんだんにはずして参りまして、よく例に上ります輸出船については、いわゆる砂糖リンクがはずされたならば、輸出船は絶対に出ないだろうというような話もあったのでありますが、そういう見通しもあったのでありますけれども、最近の様子では御承知のように非常に大きい輸出船の契約ができております。もちろんこの陰にはいわゆる出血輸出ではないかという問題がありますけれども、それは必ずしも造船部門だけがその負担を負っているのではなくて、やはりその原材料である鉄鋼部門あるいはさらにその原材料である石炭部門、そういうような各産業部門が、それぞれ自分の部門のコストの引き下げの努力、あるいは場合によっては出血に近いような犠牲を払って輸出が現在まで伸びつつあるという状況でございますから、そういう状況にさらに合理化について政府努力を惜しまないならば、さらにコストの引き下げが可能であろう、こういうことが窮極的な輸出の伸張の根本的な問題であるというふうに考えている次第でございます。
  166. 上林忠次

    ○上林忠次君 まあ硫安の例でありますが、二カ年計画で一〇%下げる、二年間のうちに一〇%下げるというようなつもりでやっていた時代が半年ばかり前にあったのでありますが、まあ一〇%下げて国際市場で競争できるようになるといっていると、向うは向うでじっとしていない、ストップしていないのだから、こっちが追いついたら向うはそれ以上に進んでいるというようなことでこれは競争にならない、相当向うのアドヴァンスも考えて計画してもらいたいのでありますが、それはそれとして、こういうような六カ年計画、再建計画というようなことをやる、それにはよほど経審の方でも腹をきめておらなくちゃならぬという点からお話し申し上げたいのですが、会計検査院が現在諸種の工事施設に対しまして配付した予算通りの、計画通りの仕事をしているかどうか会計法に照らしまして一々検査するわけでありますけれども、その計画自身がおかしいのじゃないか、あるいは設計自身がおかしいのじゃないかというようなことは会計検査院のやる仕事ではない。実際はそこまで行かないと、現在は各行政諸官庁がやっている仕事に大きなむだがあるのじゃないか。さようなことは検査院がやるのじゃなしに経審がやられなくちゃならぬ、そうして目標の工事を合理的な方向に進めて行かなくちゃならぬ、かような仕事は経審の方はやっておられますかどうですか。各官庁がやる仕事の設計、計画、これ自身が予算にマッチした方向に進んでいるかどうか。
  167. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) これは主として公共事業、食糧増産等の経費についてのお話であろうと思いますが、これらの点につきましては経済審議庁といたしましては、いわゆる国土総合開発法、これに関係のありますものにつきましては、少くとも各省の計画が総合的に効果を発揮するように、事前に調整はいたしているつもりでございます。ただ現実の設計なり現実にどういう計画でやるかという具体的な点は、各省におまかせしてございますので、そのところまで経審が責任をもって調整をしているという現状ではございません。
  168. 上林忠次

    ○上林忠次君 今回の各行政官庁に対する企画庁ですか——今度名前が変りまして、企画庁の長が行政官庁の長に対して諸種の勧告ができるという改正案がありますが、あのようなことでほんとうにこの六カ年計画が大体、的をはずれずに仕事ができるか、遂行して行けるかという問題でありますが、まあ私たちしろうとが考えるならば、企画庁の長官は副総理がやるとか、一段上に持って行かないとこういうことはできないのじゃないか。まあ過渡的な気持でやられたのかもしれませんが、徹底していないと私は考えております。強くやられるのならば、実際に企画庁の考える方向に各官庁の仕事を引っぱって行こうとするならば、大蔵省をくっつける。大蔵省を企画庁にくっつけて一緒にするというようなことも必要じゃないかと思う。また先ほど申しまするような会計検査院もここに入れる。そして強硬にやって行くならば、六カ年計画の再建計画も私は大体皆さんのお考え通りに遂行できるのじゃないか。今のままではこれはむずかしいのじゃないかと考えております。これに対して、かようなことをお考えになったことがあるのですか、どうですか。
  169. 田中龍夫

    政府委員(田中龍夫君) ただいまの御質問でございますが、今日六カ年計画を政府の施策として立てました以上、現在のままの状態、経審の権限ではとても相なりませんので、少くとも一つ御了承を願いまして、一歩前進をさしていただきたいと、これで十分とは存じておりませんけれども、しかしまあまず第一歩といたしまして、少くともこの程度は権限を与えていただきたいというのがわれわれのお願いでございます。なおまた今後の推移に応じまして、いろいろと変化もいたしましょうが、ただいまのお話予算問題等をいろいろと御議論がございますが、われわれとしましては長い目標でありまする六カ年計画、さらにまたその当面の来年度の計画に対しましては真剣に一つ取っ組んで参りまして、そうして早期に全体の国の歩みというもの、またその一応の体系を出すことにいたしまして、これを閣議で決定していただきまして、そしてその方向づけをして参りたい、かような次第に考えております。
  170. 上林忠次

    ○上林忠次君 現下の各官庁の予算の取り方の状況を見ておりますと、大蔵省だけがまあ孤立したような格好で、各行政官庁は自分の仕事をまあこれは善意に解して、自分の仕事をなるべく充実したいというそれは善意でありますが、予算を取るためにきゅうきゅうとしている、みんな競争でやっている。政府におきましてもまた弱いところがありますために、これを適当な方向に方向づけることもできない。議員はもちろん、これは選挙民のためになるべく仕事をしてやりたい。ところがおのおのが予算を食い合うために大蔵省だけが孤立しておる。果して予算が本当に有効に国のために使われておるかどうかということを考えますときに、これほど乱調な時代は少いのじゃないか。これまでのうち、今が一番乱調を来たしておる。そういう意味で私は先ほども企画庁にこういうような財政関係官庁もくっつける。そしてこれを検査する検査院も一緒にする。そしてこの六カ年計画を完全に遂行して行くということを私はここに願っておるのであります。先ほども御返答ありませんでしたが、大蔵省を一緒にしたらどうか。あなたの方で企画庁の方に入れたらどうかというお考えが、そういう議論が出たのか出ないのか、そういうようなところも御意向を漏らして下さい。
  171. 田中龍夫

    政府委員(田中龍夫君) この予算の問題につきましては、かつて安定本部が公共事業に対する認証権を持っておったのであります。これは予算編成権ではございませんで、認証権でございました。なお機構の改正等につきましても、一つには総合計画というものを円滑に処理して行きますためには、そういったより強い権限を持ったらどうかという論もございましたのですが、同時に、われわれは各省の実施の面に対しまして総合調整をして行く、そうしてそれについて、ただいまお話が出ましたように、その権限に基きまする所管事項に対しましては、その監察もいたすこともできますし、また各行政機関もおのおの会計検査院と別個に行政監察を行なっております。それからまた会計検査院を一本にしたらどうかという御意見でありますが、やはり会計検査院は独自の機構として、行政機構に対して監査、監督するということがやはり必要でございましょうから、われわれとしましては、会計検査院も一本という御議論に対しましてはこれは無理があると存じますが、しかしながら予算の編成について、より強い権限を持ったらどうかという議論は出ておったのであります。しかしながら今回の経済審議庁、安本から審議庁という非常な弱体なる姿になりましたが、しかしながらこれがいよいよ六カ年計画なり、年度計画を作るということになりますと、どうしても資料提出なりあるいはまた他の省に対する発言もより強くなければなりませんので、一応今回はこの程度の改正をお願いした次第であります。どうぞよろしく願います。
  172. 上林忠次

    ○上林忠次君 まあ過渡的なこういうような手段としてやむを得ないことと思いますが、私は日本の国の経済全般の将来ということを考えて、そういうようなことについての企画をされる経審として、私は今のわれわれ国民全体が本気になって自分の職務に精励しておるかどうか考えますときに、まあよその国の例をとるならば、隣の中国は着物も着ずに、まあ衣食住を最低限度の節減をして一生懸命働いておるじゃないか。どんどん蓄積をやっておる。どこの国に行っても、日本人ほどまあだらだら、同じ八時間労働にしても、本気で働いてない人間はいないじゃないか。もっとよその国は十分働く。かようなことは労働の強化ということをしいることになりますけれども、私は現状の日本は十分にまあ職務に精励しておらぬじゃないかという気持があるのです。かような国民全体の気持をすっかり変えてしまって、われわれの生活の向上のためにも、もっと働き出し、生産を上げるというように、われわれの政治としては、やるべきじゃないか、ぼやぼやさしてただ生活の向上だけをうたわずに、うんと働き出す、アメリカあたりの、年に幾らの援助がありますか、一億ドルかあるいは二億ドルの援助を当てにするとか、あるいはほかの国からの諸種の援助を当てにするというようなことでなしに、そういうような程度の生産は、少し働き出したら何でもないじゃないか、結局われわれ民族は自分の力で再建するよりしようがないのだ、少しの外国の援助なんということを当てにして、国民が精神的に堕落するよりは、もっとみんなが喜んで働く、精励するというようなことを考えなくちゃいかぬのじゃないか、先般も外務省の方で移住局というのができた、昔の移住なんというのはまあ失敗でもありましたが、大したわれわれ国民の人口緩和の策にもならないし、外貨の獲得にも大したことはなかったが、あのような過去の失敗を繰返すのじゃなしに、今回の移住ということは大きな将来の光明として、こんな小さいことではありますけれども、これで国民感情を少し明るくする、明るくしてわれわれの力で建て直すのだ、もっと働こうという気持に国民全体を引上げるために、やはりこのエミグレーションというのは、もっと大きな気持で外務省としてはこれを完遂してもらいたいという話をしたのであります。何とかしないと、こうぼやついているうちに、よその国が大きくなって行って、われわれだけが沈没するといいますか、さようなことに経審としてはもっと大きな思慮がなくちゃいかぬ。ただ六カ年計画にこのぐらいの生産率の変化があって国際市場に相当の日本品が出回るだろうという夢のようなことじゃなしに、国民全体の気持をすっかり建て直すというようないい施策を考えていただきたい。われわれも考えますけれども、しろうとながらまあ御忠告申し上げます。
  173. 野本品吉

    ○野本品吉君 一つだけお伺いしておきます。  前に吉田内閣に、あらゆる経済の計画性ということについて質問しますというと、直ちにソ連の計画経済を引っぱってきて、そしてそういうことに対してまっこうから反対しておったのが自由党、そこで民主党の経済に計画性を持たせるという考え方、今度、私は今まで沈黙しておったのでありますが、かつて氷炭相いれなかったような自由党と民主党とが提携協力の線を進めつつある。そこで先般も私は大臣に伺ったのでありますが、経済六カ年計画というものが強力に推進されるためには、かつての企画院には軍部の背景があった、経済安定本部にはGHQの背景があった、今度の経済計画の推進策定のために、何がそれをバックしておるか、こう考えて参りますというと、それは強力な政党のバック以外に期待できるものがないと思う。  そこで今までは氷炭相いれなかったような自由党と民主党とが、果して計画性を持った経済方針の策定推進に対して、政党としての支持後援を全面的に求める自信がありますかどうですか。
  174. 田中龍夫

    政府委員(田中龍夫君) 自由党は自由経済を標榜いたしてはおりましたけれども、しかしながらこれがすべて自由放任でよろしいというものではございません。自由党時代におきましてもすでに御承知通りに外貨の資金の割当制度をいたして、まずその外ワクをきめまして、また国内資金の面におきしましても、開発銀行等の政府金融機関を通じまして、そのあるべき方向を指導いたしておりましたし、さらにまた長興銀債等の問題につきましてもやはり金融的な一つの施策を講じておったわけでありまして、自由党であるからと申しまして完全自由で参ったわけではございません。またその間には御承知通りに、輸出振興といったような面で何カ年計画かをお立てはなったこともありましょうし、さらにまた各省におきましても、その自立経済の達成という面でおのおのの計画は立っておったわけであります。ただ今回の民主党の六カ年計画と申しましたものも、要するに年々百万人からの増殖いたします人口をどういうふうにしてこれに就労の機会を与えて行くかという一つのポイントに立って今度の計画は逆算いたしておるような次第であります。これについては自由党といい、民主党といい御異議のない点だろうと思います。ことに民間の創意工夫というものを生かした自由主義経済下においての一つ経済目標を作るという意味で、私は全面的な御協力をいただけるものだと、かように考えます。同時にまたこの百万人というものの増殖いたします人口をどう収容するか、また失業者をできるだけ減らして完全雇用をはかって行こう、三十五年には四十三万という数字にまでも何とかして国内生産の姿をとらえて行こうというこの考え方というものは、私は少くとも八千万の国民の全体の一つの願望だろうと存じます。さような意味から各政党の非常な御協力も当然賜わることができるものだと存じまするし、同時にまた国民全体の支持をいただくことができるものだと、そのためにはわれわれはこの計画をあくまでもいわゆる官庁だけの独占的な計画としないで、できるだけ引き続き発表もし、また御共鳴もいただいて、その上で深い御理解の上に国民全体の御協力をいただいて行こう、これが今回の計画の骨子でございます。どうぞよろしくお願いします。
  175. 野本品吉

    ○野本品吉君 私は、経済審議庁というものができて、そして日本の消費経済に関する各種の方策が策定され、強力に推進されるこの御意図に対しては心から賛成をしている人間なのでありますが、ただ心配になりますことは、先ほど申しましたように、この計画がいわゆる絵に描いたもちに終らせないためには、全国民的な支持と協力が絶対必要です。そういうような国民の理解と協力を求めることに対して、一片の設置法の改正だけではいけないのでありまして、こういう点についてどういうふうに国民を指導し、国民に対する納得を求めて行こうとするか、これは当然この計画を立てると同時に、まじめに考えらるべきことだと思う、そういうことについて何かお考えになっておりますかしらん。
  176. 田中龍夫

    政府委員(田中龍夫君) さような趣旨から、われわれはただいま申しましたように、いわゆる独善的な案にいたしたくはないのでございまして、できるだけこれを発表もし、御理解をいただくようなあらゆる機会を作って参りたい。そうして同時に国民の方々の全体の強力な御支援をいただくような方向に持って参りたいと思っております。同時にまた経審が持っておりまする経済審議会というものもございますが、その審議会を拡大いたしまして、各階、各層の代表の方々もお加わりになっていただきまして、さらにまたその下部に専門部会といったようなものを作りまして、ほんとうに盛り上る力によってこの計画を推進して参りたいと思っております。またそれに伴いまして、母体でありまする経済審議庁の権限等につきましても、今後もいろいろと御注意なり御指導をいただきまして、改めるべきところは改め、またその計画それ自体も多くの方々の御批判を仰ぎつつ進めて参りたい。かように考えております。
  177. 野本品吉

    ○野本品吉君 全国民的な支持と協力を求めるためにいろいろな角度から努力しなければならぬということは、これはだれでもが考えらるべきことだと思いますが、そこで私があらためてお伺いいたしたいと思いますことは、民主党、今の内閣が掲げました新生活運動、私は、こういうような事柄は、いわゆる生きた新生活運動として民間に浸透して行けるようにしなければとてもだめだと思う、そこで新生活運動のその後の状況を、私地方へ参りまして聞きますというと、何やら青年団のキャンプの指導をするといったような格好で、ほんとうに国民生活の基盤を盛り上げて行くという現実的な、経済的な面への新生活運動というものが、具体的に展開されていないのじゃないかと思うのですが、私はこの経済審議庁の設置法の一部改正の精神が、国民の新生活運動に直結するような状態になったときに、初めてあなた方の意図が実現するようになろうと思うのですが、これらについてほとんど考えられておらないのじゃないかと思うのですがいかがでしょうか。
  178. 田中龍夫

    政府委員(田中龍夫君) この経済六カ年計画それ自体には、新生活運動はもちろん取り上げられておりませんけれども、考え方といたしましては、ただいま申し上げましたごとくに、要するに国民全体の盛り上る一つの熱意をもって踏み切って行かなければならない、官製のものであってはならない、その精神におきましては、新生活運動とも相関連がございましょうが、私どもといたしましては、このやむにやまれない日本国民の一つのあるべき方向としてこの経済六カ年計画の姿を十分国民の間に理解、徹底いたすように、そうしてまた国家の再建という大きな目標の前にあらゆる階層の御協力と建設的な御意見を取り入れながら進んで参りたい、かように考えております。
  179. 野本品吉

    ○野本品吉君 私は経済六カ年計画の策定、推進ということ、これほど大きな日本の新しく立ち上がるための新生活運動はないと、こう考えるんです。従って政府考えられておりました新生活運動の展開と、これとの関連なしにはどちらも考えられない、そういうふうな考え方でいるわけです。まあきわめて抽象的な議論でありますけれども、そういう意味において、今後最善の努力を払われますように希望申し上げておきます。
  180. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 他に御質疑はございませんか。……別に御発言もないようですから、質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  181. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御異議ないと認めます。それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。なお、修正意見のおありの方は討論中においてお述べを願います。
  182. 千葉信

    ○千葉信君 私は本法案に対して次の修正案を提起し、この修正部分を除く原案に対して賛成をいたします。まず修正案の朗読をいたします。  今日日本の長期経済計画等を推進する場合に、何といってもこれと密接な相関関係を、持ち、支配的な影響を与える防衛力増強の問題を抜きにしてこの経済計画の推進は考えることができないのは、これは常識でございます。今日このような状態のもとにおいて、日本の対米国際政治取引を遂行して行くためには、そのために国民生活に与える影響、国民の負担力を無視した強力な方策を講ずることなしには、この防衛力の増強をまかない切ることは不可能であるし、同時にまたその客観的な事実を乗り越えるためには、いかなる状態においてか、そのしわ寄せを受ける日本経済の窮通打開の道を見出して乗り切るかというところに問題があるわけでございます。まあこういう状態のもとにおいてとられようとすることは、一つは強力な体制に移行するか、もしくは現行法令自体も軽視するがごとき立法措置を講ずるか、そのいずれかでございます。で、政府は今回のこの法律の改正案によってその後者を選んで、そうして立法による強力な政策の推進をこの際企図したというのでなければ、実は今回の第十一条における経済企画庁長官の監督権云々の問題は理解できないし、首尾一貫したものにならないはずでございます。しかし数度にわたる連合委員会もしくは内閣委員会における審議に際しては、あくまでも政府はこれに対しては否定的な態度と答弁に終始したのでございます。かりに私どもはその政府答弁なり、政府のその態度について一歩を譲って、全くこれは単に日本の長期経済計画を推進するための手段であり、同時にまたその答弁のごとく、この勧告というもの自体は、何ら法律的な拘束を伴うものでない、ですからその意味では私どもが追及したその要点は巧みにその答弁によってかわされたという印象がありますが、しかしそれはそれでもよい。それならそれでもよいが、それなら今度は現行法令との関連において、私どもはこの十一条の改正を認めるわけには参りません。経済企画庁の長官は、国務大臣として内閣法第二条、第四条、第六条、第七条及び行政組織法第二条等に基く権限と義務によってその職務を行うべきものであります。これらの条文についてはこの際一々申し上げる煩を避けます。しかるにこの改正規定による長官の勧告の権限は、これらの法令との関係において疑義のあるものであり、その法的根拠、拘束力並びに実際の運営上の見通し等についてもきわめて不明確であると言い切らざるを得ません。  以上の理由から私はこの修正案を提起する次第でございます。
  183. 田畑金光

    田畑金光君 私はただいま千葉委員から提案されました経済審議長設置法の一部を改正する法律案に対する修正案に対し賛成の意を表します。同時にこの修正案を除く原案についても賛成の意を表するのであります。  修正案に賛成の理由に関しましては、ただいま千葉委員から法律的な見解並びにその他の理由についての説明がありましたので、これらの点については私も全く同じ理由からこの修正案に賛成の意を表する次第であります。ことにこの一部改正法律案審議に際しまして、政府から出されました総合経済六カ年計画の構想あるいは昭和三十年度経済計画の大綱について政府の所信を質したわけでありまするが、これらの諸計画の実行について、どの程度政府に熱意があるかということを私は疑わざるを得ないわけであります。経済自立をはかり、完全雇用の達成を期するためには経済審議庁を企画庁に改めて、長官の権限を強化するというような機構の改革や、権限の強化の問題ではないと考えるわけであります。現行法令の範囲内におきまして、あるいは現在の機構、権限の範囲内におきまして、十分に誠意と周密な計画と、これを実行するだけの財政的な裏づけ等があるならば、当然でき得るものであると考えるわけであります。昭和二十五年に国土総合開発法が制定されまして、全国の府県においても、この法律に基き、政府方針に基き、国土開発について積極的な熱意を示したわけであります。府県においてはそれぞれ総合開発調査局あるいは開発課、こういう機構の整備をして、いざ事業の実施血における政府あるいは国家の施策を期待したわけでありまするが、法律ができ、機構ができたが、何ら積極的な予算的な裏づけもなく、結局総合開発法は、府県の地方財政に膨張を来たし、赤字の大きな原因をもたらして参ったわけであります。こういうことを考えましたときに、今日政府のとるべき方針というものは、機構、権限の強化あるいは長官の権限を強化するという問題ではなくして、むしろ今の国の予算の性格、あるいは国の政治の方向をどう切りかえるかという問題だろうと思っております。ことに軍事的な性格を持つ非生産的な軍事予算が大きな比重を占めている今の国の財政方針を国民生活の安定、産業の自立の方向に切りかえることが大事な問題であろうと考えるわけであります。  こういうような点から今回の経済審議庁設置法の一部を改正する法律案検討いたしましたときに、第十一条第三項の長官の権限の強化等ということはおよそ無意味であるし、またその段階でもなく、私が今申し上げたように、まず政府のとるべき道は、国の予算の性格を切りかえ、政治の方向を切りかえることが大事であると思いますので、以上のような点から、私は今回の政府の一部改正法律案に対し、千葉委員の提案されました修正案に賛意を表する次第であります。
  184. 松原一彦

    ○松原一彦君 私はただいま御提案になりました千葉君の修正案に反対し、原案を支持するものでございます。日本の現況において経済自立こそは独立日本の基調であって、ここに一切の政治力を集中すべきは緊急の要件であると信ずるのであります。同時に野本委員が言われました新生活運動のごときも、この経済自立六カ年計画等の長期計画に対する実現が、全国民の総意を燃やして実践に移る道徳的基準ですらもありたいと考えるのであります。かような意味におきまして今回経済審議庁が経済企画庁となり、そうして、その企画の推進も経済企画庁長官が持ち、ここに当然各省の長に向って勧告を行い、進んでこれが実効をはかることは、きわめて当然なことであって、それができなければこの企画は進みません。もちろん内閣総理大臣は全責任をもってこれが推進に当るべきことは申すまでもないのでありますが、計画責任者としての長官が、その勧告を担当することは私は当然しごくだと思うのであります。  かような意味におきまして、今回の経済審議庁がさらに企画面に重きを置いて経済企画庁となり、完全雇用の立案を実践にまで移し、長期経済計画の推進力となるという本案に対しまして、私は一日も早く実現せんことを要望して、千葉君の修正案に反対し、原案を支持する意見を述べるものであります。
  185. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私は千葉委員の提案にかかります経済審議庁設置法の一部を改正する法律案に対する修正案に賛成をいたし、それとともに修正部分を除く原案に賛成をいたしたいと思います。修正案に関しまする法律的な根拠につきましては先ほど千葉委員から申し上げた通りであり、私もこれに賛成であります。  ところで、経済審議庁は経済自立の計画と、並びに完全雇用を目ざしての計画経済を今後策定すると同時に、それを推進するということが目的になっているのでありますが、しかし計画経済を遂行するためには強い国民の政治力が結集されていなければなりません。しかしながら現在の状態においてそういう強力な国民の政治力が結集されているかというと、決してそうではない。先ほども各委員質疑の中に出ておりましたように、資本主義の経済機構のもとにおいてはそういうものをわれわれは期待することができない。現に政務次官のお話にありましたフランスがどうだ、イタリアがどうだということでありますが、フランスにしましても、イタリアにしましても、経済計画はしょっちゅう変っているのです。その内閣ごとに変っております。もちろん政治に計画性がなければならぬことは言うまでもない。しかし、資本主義体制のもとにおいて、果してそのような基本的な計画ができるかということになるというと、私はいないといわざるを得ない。また、ここに提出されております六カ年計画の構想にしましても、あるいはまた三十年度の計画の大綱にいたしましても、その基礎になっておるところのものがきわめて非現実的である。従って作られたものは画に描かれたもちにひとしいものである。たとえば、完全雇用の問題にしましても、一方では合理化を推進しなければならぬといい、しかし合理化によって生まれてくるものは何かというと、全部とは申しませんが、失業もその一つの結果だといわなければなりません。六年後には労働力人口の一%に失業者をするのだという計算はともかくとして、現実はなかなかそうは参らぬと思います。私は政治に計画性を持たせる上からは、やはり計画経済が必要だと思いますが、その前提になる社会機構ということを問題にしないで、資本主義体制のもとにおいてこういうような計画を進めるということはむだなことだと思うのであります。  それから、経済審議庁長官、今後の、改正後の経済企画庁長官の勧告権の問題の法律的な根拠は除きますが、この勧告権を持つことによって、かえってますます内閣の統一性ということを乱る結果になるのではないかということをおそれます。  従って私は、以上申し上げたような理由から修正案に賛成し、それを除く原案に賛成いたします。
  186. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 他に御発言はございませんか。他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  187. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより経済審議庁設置法の一部を改正する法律案について採決に入ります。  まず討論中にありました千葉委員提出の修正案を問題に供します。千葉君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  188. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 少数でございます。よって千葉君提出の修正案は否決されました。  次に経済審議庁設置法の一部を改正する法律案原案全部を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  189. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 多数でございます。よって本案は多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成、その他自後の手続につきましては、慣例によりこれを委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  190. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御異議ないと認めます。よってさよう決定いたします。  なお、報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は順次御署名を願います。   多数意見者署名     松原 一彦  小柳 牧衞     宮田 重文  中山 嘉彦     長島 銀藏  中川 以良     野本 品吉  上林 忠次
  191. 千葉信

    ○千葉信君 議事進行について……。  今日午前中は午後二時まで不眠不休の努力を続けました。さらに経済審議庁設置法をめぐって熱心な論議が展開されましたので、大方の委員はもう極度に疲労していると思いますから、本日はこれで打ち切って次回に回す動議を提出いたします。
  192. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 委員長も同意見でございます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十三分散会    ————・————