運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1955-06-29 第22回国会 参議院 内閣委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二十九日(水曜日)午 前十一時十二分開会     —————————————   委員の異動 本日委員三好英之辞任につき、その 補欠として小柳牧衞君を議長において 指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     新谷寅三郎君    理事            長島 銀藏君            木下 源吾君            松原 一彦君    委員            井上 知治君            植竹 春彦君            木村篤太郎君            中山 壽彦君            中川 以良君            上林 忠次君            野本 品吉君            千葉  信君            加瀬  完君            田畑 金光君            小柳 牧衛君            堀  眞琴君   国務大臣    外 務 大 臣 重光  葵君    国 務 大 臣大久保留次郎君    国 務 大 臣 川島正次郎政府委員    行政管理政務次    官       森   清君    行政管理庁次長 山中 徳二君    行政管理庁管理    部長      岡部 史郎君    法務政務次官  小泉 純也君    法務省入国管理    局長      内田 藤雄君    外務政務次官  園田  直君    外務省参事官  安藤 吉光君    外務大臣官房長 島津 久大君    外務省アジア局    長       中川  融君    外務省欧米局長 千葉  皓君    文部政務次官  寺本 広作君    文部大臣官房総    務課長     田中  彰君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君    常任委員会専門    員       川島 孝彦君   説明員    法務省入国管理    局次長     下牧  武君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠選任の件 ○文部省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○法務省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○行政機関職員定員法の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付) ○外務省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまより内閣委員会を開会いたします。  まずお諮りいたしますが、植竹春彦君から理事辞任したい旨の申し出がございます。これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) それではさように決定いたします。  つきましては、理事植竹さんの後任を選任したいと思うのでありますが、いかがいたしましょうか。
  4. 松原一彦

    松原一彦君 成規の手続を省略して委員長の御指名を希望いたします。
  5. 植竹春彦

    植竹春彦君 私はただいまの動議に賛成いたします。
  6. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまの松原君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) それではさように決定いたします。つきましては、理事長島銀藏君を後任に指名いたします。     —————————————
  8. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 次に、文部省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  本法律案につきまして質疑のある方は順次御発言を願います。
  9. 松原一彦

    松原一彦君 政府委員に伺いますが、この文部省設置法の一部改正はきわめて簡単で、「賠償及び国際協力に関する事務」というものを明記しただけのことでありますが、その内容を一応御説明をいただきたいのです。
  10. 田中彰

    政府委員田中彰君) 賠償並びに国際協力に関する事務の具体的な例と、こういう御質問でございますが、たとえば賠償につきましては、現物賠償としては教育関係機械器具といったようなものの提供につきまして要求のリストを検討いたしますとか、あるいはまた価格の調査をいたしますとか、その他必要な資料提供いたします等、それらの事務が予想されるわけでございます。さらに現物賠償のほかに役務賠償、あるいは技術提供と申しますか、留学生受け入れもその一つ、あるいは研究所の教授その他の研究者相手国に対する派遣によりまする技術提供、こういったようなものが考えられるのではないかと思っております。
  11. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ほかにございませんか。
  12. 野本品吉

    野本品吉君 ちょっとお伺いします。今海外からの学生受け入れの問題に触れられたのですが、私は先年来南方華僑受け入れの問題について一応の関心を持ってきておるんですが、そこでお伺いしたいのは、ビルマであるとか、タイであるとか、国籍を持った向うからの入国学生についてはある程度こちらで便宜をはかる道があるように思うのですが、華僑として南方に散在しておりますそういう国籍がないと言いますか、そういうよう学生受け入れについて文部省で何かお考えになっておるかどうか。
  13. 田中彰

    政府委員田中彰君) お答えをいたします。外国人留学生に、国費によりまする外国人留学生制度を昨年から実は文部省として実施をいたしております。主として東南アジアでございますが、そのほか若干ヨーロッパ関係のものを国費をもちまして日本の大学に受け入れる、一定の期間留学させて研究便宜を与えるといったよう制度はとっております。
  14. 寺本廣作

    政府委員寺本広作君) 野本さんからお尋ねの点は、国費留学生だけでなく、私費留学でくる華僑お話、それにつきまして文部省がどういう受け入れ態勢をとっておるかというお話だと思います。華僑留学生は多数参っておりますが、国籍は多分台湾中華民国政府国籍として入って来ておるはずだと考えます。私立学校としてこのよう学生受け入れ教育をしておる学校がありまして、文部省としても私立学校振興会を通じて相当援助を与えておるはずでございます。御承知でもございましょうが、太田耕造氏のやっておられる学校がございまして、文部省としても管理局長その他があそこの入学式卒業式などにもそれぞれ出向いて、援助を与えておるよう状況もございますので、私事務的なことはつまびらかにいたしませんが、相当のお世話をいたしておると考えております。
  15. 野本品吉

    野本品吉君 太田さんのおやりになっております内容につきましても、私はある程度詳しく知っているわけです。問題は、先ほどお話しのございました国費による南方地域からの受け入れについては、やはり国として一つの公けの道と申しますか、そういうものが開かれているんですが、兼備に対しましてはそれを民間の仕事にゆだねるだけで、便宜はおはかりになっておるかしりませんが、あるいは経済的な面から、その他いろいろな面からの積極的な協力があるかもしれませんが、きわめて私は足らぬと思う。で、私は実は将来南方の青年を日本に導入して教育するという問題になってきますと、あの広域に散在しております華僑の子弟に対して十分な道を開いて、そうしてそれらの人間を通して東南アジア地域と直結するということが、一つには貿易根底をそれによってつちかうということになりますので、こちらから進出と申しますか、移民というような問題にも触れてくるのですが、私はやはり今の文部省やり方では、そういう点において非常に不満足なものがあるのですから、これをお伺いするわけです。で、民間のものとしまして、私ども同志幾人かのものでかねがねいろいろ考えて、具体的にまだ目鼻はついておりませんけれども、将来の問題といたしましては、いわゆるしっかりした国としての形を整えております台湾であるとか、タイであるとか、ビルマだとかいうほかに、寄るべのない華僑の大衆というものをどう把握するかということは、教育の問題であると同時に外交の問題でもあり、それが日本貿易の問題につながる大きな問題であるので、この点についてさらに御研究をお願いしたい、こう思っております。
  16. 寺本廣作

    政府委員寺本広作君) 華僑の問題につきまして、御指摘通り非常に重大な問題であると考えます。文部省といたしましては、交換教授交換学生というよう国費によるもののほか、華僑経済力がありますので、私費留学をしてくる者も多数ございますので、私立学校振興を通して適当な援助方法を考究してみたい、かよう考えております。
  17. 野本品吉

    野本品吉君 今、政務次官がおっしゃいました華僑経済力を持っておるというところに、実はやはり警戒すべき一つの点があるのでありまして、これらの華僑を食い物にして営利的に、教育の名において利益を追求しようとする動きもないではないと思いますので、こういう動きをやはり封殺しますためにも、国としてその問題についての一定方針を打ち立てることが私は特に必要であると思います。これらの点につきまして、時間がありませんから、こまかいことを申し上げることを避けますが、後刻ゆっくり政務次官等とも話し合ってみたいと思っております。もう一つお伺いしたいと思いますが、これは直接この設置法には関係ありませんが、例のアメリカ余剰農産物による学童給食、被服の給与等の問題でありますが、この前の土曜日ですか、日曜日ですか、私はきわめて不愉快なラジオニュースを聞いたのです。きわめて不愉快と私が感じましたのは、あのやさしい女の声を通して、全国のがんぜない子供たちに、生活に困っておる日本子供さんの皆さんに対して、アメリカから今度ただ小麦もきます。ただ粉乳もきます。そうして着物のない方には二百万着とか、三百万着とかの着物まで、こしらえてあげますということを、ラジオを通して全日本の童心に呼びかけておる。私はアメリカ日本経済自立に対して、再建に対して協力するという、それに対しては反対のための反対をするつもりはありませんけれども子供のやわらかい心に、アメリカおかげで私たちは御飯が食べられるのだ、アメリカおかげ着物が着られるのだ、そういうふうに恩を売りつけるような、売りつけられたようなそういう印象を子供に与えることは、私は食べ物がアメリカのものであり、着物アメリカのものであり、やがてはそこに日本国民性日本の民族的な自覚というものがスポイルされちゃうのじゃないか、このことを私は考えまして非常に不愉快なニュースであり、怒りを感じつつ実は聞いておった。事教育に関しますラジオの放送その他に関しましては、文部省はもっと深い関心を持っていただかないというと困るのじゃないか、こういうことを感じましたのですが、これはいかがでしょう。
  18. 寺本廣作

    政府委員寺本広作君) 余剰農産物受け入れに伴います贈与分処分方法につきましては、ただいまアメリカ側とまだ折衝中でございます。最終的な決定に到達いたしておりません。その贈与分受け入れによって学童教育上悪い影響を及ぼさないように、卑屈な感情を起させぬようにということは十分配慮して参りたいと思っております。特にまあアメリカ側からは、学童福祉のためということで、国境を越えた、学童福祉の問題としてこれを送ってくるわけでございますので、これの受け入れ方につきましては、それがいろいろの悪影響を及ぼさぬように十分配慮して参りたいと思っております。ただいま御指摘ラジオにつきましては、私聞き漏しましてその詳細を承知いたしませんので、従いまして、どういう影響を及ぼしたか調査をしてみたいと思っております。
  19. 野本品吉

    野本品吉君 もう一つ伺いたいと思います。実は、先般私の友人であります今の海上保安庁の水路部長の須田君が国際海洋学者会議フィリピンにありましたときに出席されました。で、何か僕にみやげを持ってきてほしい、こう言いましたところが、一九五一年に出版されたフィリピン高等学校生徒用教科書を持ってきた。この教科書を見ますというと、日本という書き出し冒頭に、日本人は戦争を好む国民である。中国人は平和を愛する国民である。従って日本人に鉄を与えるというと直ちに武器を作る。中国人に鉄を与えるというと直ちに農耕用すきを作る。これが冒頭書き出しである。私は今、日本フィリピンとのいろいろな話し合いが進められておるそうでありますけれども、単にいわゆる物質的な賠償に関する交渉でなしに、かような面からお互いの理解を深める工作を必要とすると思うのです。で、文部省の方はこの向う高等学校生徒の使っております教科書をごらんになったことがありますかどうか。もしあれを見たとしますならば、日本フィリピン話し合いの途上において、これは見落すことのできない問題でありまして、かよう教科書が使われておる限りにおきましては、日本フィリピンとの友好関係根底が動揺し、くずれてしまう。この点につきまして何かそういう角度からの対外折衝ということをお考えになっておられますかどうか、それをお伺いしたいと思います。
  20. 寺本廣作

    政府委員寺本広作君) ただいま初めて承わります話でございます。話のおもむきは外務省の方へまで伝えまして、先方との交渉の参考に供したいと存じます。
  21. 野本品吉

    野本品吉君 終ります。時間がありませんから……。
  22. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 文部省設置法の一部を改正する法律案につきまして、他に御質疑はございませんでしょうか……。速記をとめて。   〔速記中止
  23. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めて。それでは文部省設置法の一部を改正する法律案につきましては質疑を一応終了いたします。     —————————————
  24. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 次に、法務省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。
  25. 松原一彦

    松原一彦君 第一に、横浜入国者収容所が今度川崎に移るようでありますが、その規模と、それから現在収容している外国人国籍別、どういう事情で入ったか、その人数及びこれらに要する収容所職員数等の概要を一応お聞かせ願いたいのであります。
  26. 下牧武

    説明員(下牧武君) 現在の横浜入国者収容所定員が六十名でございまして、職員は六十三名がその事務に当っております。現在収容人員は六月二十七日現在で三十二名収容いたしております。その内訳は、朝鮮人十名、中国人十四名、その他欧米人八名となっております。いま少しく具体的に申し上げますと、退去強制令書を受けて収容しております者が中国人十一名、朝鮮人二名、アメリカ人二名、フィリピン人二名、カナダ人一名、それから違反調査段階収容令書によって収容している者が、中国人三名、朝鮮人八名、アメリカ人二名、ギリシャ人一名、合計で退令が十八名、それから収容令書によって収容している者が十四名、計三十二名となっております。それからその川崎入国者収容所規模は、大体現在の横浜入国者収容所規模を一応そのまま初年度におきましては移すという考え方でございまして、職員現行通りに六十二名を横すべりさせるという考えであります。
  27. 松原一彦

    松原一彦君 横浜収容所は、その環境もよくないし、建物も不良であるから、新しく建てて理想的なものを作るという御説明であったのでありますが、その位置はどの辺でどのくらいな敷地にどのくらいな坪数のものができますか、御説明を願いたい。
  28. 下牧武

    説明員(下牧武君) お手元に、この資料でございますが、第二十二国会提出資料、ここへお配りしておると存じますが、これの三十九ページ、図面を添付してございますが、ちょうど羽田横浜港との、ちょっと羽田寄りでございますが、中間の埋立地がございまして、それでこの収容予定地となって斜線が引いてあります。この場所で、坪数敷地といたしましては約一万坪でございます。それでその建設予定計画を次のページの四十ページに載せてございますが、第一年度におきましては、収容能力約五十名の庁舎を建設したい、それでまあ二年、来年度になりますと、またその次の年度までかかりますが、できれば来年度にいたしたいと思いますが、全体としてまあ百五十名から二百名程度の収容能力を持つものを作りたい、かよう考えております。
  29. 松原一彦

    松原一彦君 御説明によるというと、収容所は二つあって、大村収容所は主として朝鮮関係東洋人ですか、川崎は主として欧米関係というふうに承知しておったのでありますが、今の御説明によるというと、欧米人は八名で、朝鮮人及び中国人合わせて二十四名となっております。自然そういうことになったのでありましょうが、別にこれは欧米人を主としてというわけではないのでございますか。
  30. 下牧武

    説明員(下牧武君) 当初横浜収容所を設けました趣旨は、朝鮮人以外の外国人、特に欧米人を主として収容するという予定で設けたのでございますが、その設備がどうにも、立地条件、それからもともと建物の構造から申しまして、相当改善いたしたのではございますけれども欧米人収容できるだけのものになりません。非常に何と申しますか、外国に対しても恥かしいよう状況なものでございますので、本来一時とめておいて、収容していいよう欧米人に対しましてもある程度手心を加えまして、それで仮放免とかいう措置をとって、収容をせずにある程度その処遇を緩和しておる、せざるを得ない状況にございます。その状況を何とか打開いたしたい、それにはやはり収容設備を完全なものにいたしまして、そしてやるべきことはこれはもう厳正に行う、こういう態勢をとりたいというのが今度の川崎収容所を新設いたしたいという根本的な動機でございます。
  31. 松原一彦

    松原一彦君 今お話を聞くと、欧米人収容するのにはあまりに粗末過ぎるというお話でありますが、そうすると、欧米人東洋人とはその待遇に差別があるのですか。
  32. 下牧武

    説明員(下牧武君) ある程度その風俗習慣等も変っております。それから食事朝鮮、中国、それから欧米人等において好みが違って参ります。ある程度、民俗、習慣に応じた食事を与える、またその処遇をいたさなければならぬわけなんです。それでその意味で、しかもそれを欧米人を一律に、東洋人並みに落して一律にいたしますと、やはりそこに国際的な問題も起きて参ります。その辺を考慮いたしまして、やはり今度の川崎収容所も、中国人ももちろんある程度予定しておりますが、中国人、それから欧米人、こういうふうにして、風俗習慣の大体似たものを一括してやるというよう設備にいたしたいと、かように思います。
  33. 松原一彦

    松原一彦君 そうしますと、食費等単価差別はございますか。
  34. 下牧武

    説明員(下牧武君) ある程度差別を設けております。それで大体朝鮮人の方は単価、たしか七十円と記憶しておりますが、七十円か八十円でございます。それから欧米人の方は百三十円、これはやはり食事の質が違いますので、単価が違って参りますが、カロリーの点は大体二千四百カロリー以上を確保するというふうでやっております。
  35. 松原一彦

    松原一彦君 私はかつて戦前にフィリピンからジャワ方面を見て回ったときに、ジャワ刑務所に行って統計を見ましたところ、ユーロピアンというものがあって、その次が東洋外国人となって、その次に、三階級あっていわゆる土人なんですが、ヨーロッパ人東洋外国人土人とある中で、東洋外国人の中に日本人があるのかと思って調べてみたらない。日本人はどこに収容するのかと言ったら、日本人一等国民であるからしてヨーロッパ人であると答えている。それでユーロピアンの中に日本人を入れてあるのを見て、それは悪い気持はしなかったのでありますが、しかし三段階に分けて収容してあるというのは、今日の国際事情から言うて、おそらく向うにはそういうことはありますまいが、日本でもそういうふうな階級的文化に応じての何か収容の上に差別がはっきりあるのですか、どうですか。それが及ぼす影響ヨーロッパ人にとってはいいでしょうが、今後の中国人及び朝鮮人等に障害を起すようなことはないでしょうか。
  36. 下牧武

    説明員(下牧武君) その点はおのおの風俗習慣の違った各国人を一律に取り扱うということよりも、その外国人の国情、また風俗に応じた取扱いというものがその外国人にとって最も、何と申しますか、ふさわしいものであろうと思います。その関係から申しまして、やはり朝鮮人と、それから欧米人を一緒に一律に扱うということは、やはり当を得たものじゃないんじゃないかという気がいたします。やはり欧米人には欧米人に応じた取扱いをし、それから朝鮮人には朝鮮人に応じたやはり取扱いをするのが最もいいのじゃないか、ただ食事カロリーとか、そういう点において非常に片方が粗末になり、あるいは片方が非常に高度になるということになりますれば、これはやはりいけないと思いますけれども、その一応の通常の給与をいたします場合に、そこに単価におのずからある程度の差が出てくるということは、これはやむを得ないことじゃないか、それを一律に無理にならすということをいたさなくても、むしろその当人の好むやり方を与える方が入管の取扱いとしてはふさわしいんじゃないかと、かよう考えております。
  37. 松原一彦

    松原一彦君 それは一応承わっておきますが、考慮の余地があると考える。一方は七十円、一方は百三十円ということになりますと、倍ですからカロリーもおのずから違ってくると思う。そこでお尋ねしたいのは、収容所における収容態度ですが、大村を見ますと、一時、もっともあそこはあばれたからでもあろうが、大へんまわりにコンクリートの高い刑務所と同じような塀をこしらえて、四隅に監視者が武装をして上って下を見下ろしている、その中にまるで罪人同様に、二重のとびらをこしらえて中に入れて扱っておるのですが、あれは必ずしも犯罪者ときまったわけでなくて、一時的に収容して送り返すとか、処分をしなければならない過渡期のものがあそこに置いてあるのだと思うのですが、横浜のもああいうふうに塀を高うして、のぞかれもしないような中に、刑務所と同じよう態度をもって臨まれるのですか、その点伺いたい。
  38. 下牧武

    説明員(下牧武君) 局長が参りましたから局長から……。
  39. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) 私どもといたしましては、犯罪者ではないという考え方でいっておるつもりでおります。これはわれわれ何かの機会にそういうことを訓示でもいたす場合には絶えず繰り返しておることでございまして、国際学会の決議でございましたか、密入国者犯罪者ではない、こういうような原則を打ち立てられておりますので、そのことを徹底いたしますように繰り返し申しておるのでございます。ただ、今お話がありましたような、施設が少し厳重に過ぎるのじゃないかという点でございますが、実は犯罪者でないという考えで臨みますだけに、中の人々に刑務所などとは比較にならない多くの自由を与えております。そのことは言いかえますと、その中ではなるべく自由にはさせるけれども、同時に逃亡とか、そういうことも起らないようにまたしなければならないという別の要求があるものでございますから、それを防ぐ意味においては割合に厳重な措置をとっておるわけでございます。それが今繰り返し申しますように、なるべく自由を与えるということからルーズになってしまっては困るという角度で、逃亡を防ぐ意味では相当固い態度をとっておるわけでございますが、中におきましてはできるだけの自由を与える、こういうつもりでやっておるわけでございます。
  40. 松原一彦

    松原一彦君 すると、今度の設備はやはりああいうふうに高い塀をもって取り囲んで、そうして高いところから監視をさせるといったふうな設備でございますか。
  41. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) 新しい収容施設につきましては、まだ設計などきまっておりませんですけれども、大体の思想といたしましては、あまり高い塀や何か作らないで、なるべくホテル的な考えで行きたいというふうに思っております。ですから大村と比べました場合には、今度は今の御指摘ようなことが大分やわらいだ形で施設ができるのではないかと思っております。
  42. 松原一彦

    松原一彦君 大村狂暴性をもってああして家をこわしたり、あばれたりしたので、方針も変ったようでしたが、ただいま大村の方には何人くらいを収容しておりますか。
  43. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) 六月二十七日現在の数字でございますが、現在千百四十三でございます。内訳は朝鮮人が千百二十、それから中国人が二十三、そのうちなお内訳を申し上げますと、千百二十のうちの七百九十四というのが密入国でございます。
  44. 松原一彦

    松原一彦君 大村の最近における情勢はどんなふうでしょうか。少しは減りつつあるのでしょうか。そうしてまたあそこにおる連中は一体何ヵ月くらいおって、どう片がつくのであるか、罪人でもなければ、どうもわけのわからぬような姿で、おるものはぶりぶり不平を言っておる。片がつかないという、中途半端で大変おかしな状態である。私が参ったのはおととしでしたが、一方に市街に出てみると、水兵が悠々と列を作って大ぜい歩いておる。どうも日本人としては違うと思うと、朝鮮の兵隊が軍艦に乗ってやってきて、そうして悠々と朝鮮の水兵が佐世保の町を歩いておる。別にこれは入国を許したわけじゃなかろうと思うのですけれども、一方には個人的なものが、ああして入ってきたものが刑務所の中に閉じ込められて、えらいぶりぶり言って怒っておる。朝鮮との関係はむずかしいので、一がいには言われませんけれども、あれは最近においてどういう傾向になっておるのでしょうか。やはりああいう傾向が続いて、なお収容者が増加するというようなことになるのでしょうか、あるいは一部は片づきつつあるのでしょうか、その辺の実情を聞かしていただきたい。
  45. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) ちょっとさかのぼって前からのいきさつを申し上げますと、昨年の六月に送還船が出ましたのを最後といたしまして、昨年中は送還が不能の状態でございました。それはいろいろ理由はございましたのですが、韓国側が戦前から日本に在留しております朝鮮人については、日本側が最後までめんどうを見る責任があるのであって、これを退去させる権限はないのである、こういう主張が根底になりまして、われわれの方から送り返したものの中に、ただいま申しましたような戦前からおる朝鮮人が入っておった、これは日本側の不信行為であるというようなことがおもな理由になりまして、昨年中向うは送還を受付けないという態度で参りました。そのため昨年の暮、一番収容人員のピークになりました当時は千六百くらいまでいったかと存じます。ところがその後、昨年の暮ごろから寄り寄りまた話が始まりまして、ことしに入りまして、二月の末に久しぶりに、密入国だけでございますが、送還を受付けるということになりまして、初め二百二十、それから三月末に二百五十、四月末に二百五十、大体七百数十名を帰すことができました。それで今また実は話をしておりますが、最近の情勢を申し上げますと、韓国側は日本が、大きく申しますと、ソ連とか、中共などと外交関係を設定するという話し合いを始めた、のみならず、最近に至って北鮮とも話し合いをしようとしておる、すでに漁業協定というものができたというような口実のもとに、日本が北鮮を相手にするのならば、自分の方は日本を相手にしないというようなことで、一時非常に感情的に悪くなったのでございます。そのために五月、通常ならば、それまで二、三、四と一ヵ月に一そうずつ送還ができておりましたので、その予定で参りますれば、五月にも一つ船が出るはずでありましたのが、できませんで今日に至っておりますが、これは最近七月の初旬になるかと思いますが、もう一そうは帰せるつもりでおります。そういたしますと、大体におきまして昨年中の密入国者は全部片がつくはずでございます。ただ問題は、依然として残っておりますのは戦前から日本におります朝鮮人で、しかも犯罪などによりまして、われわれの方から見ますとどうしても帰したい、たとえて申しますならば、刑務所から出るとほとんどすぐまた犯罪をやるというようなことで、すでに前科四犯か、五犯を重ねておる、こういうようなものは治安の角度から申しましてもできるだけ帰したいし、また帰せないにいたしましても、これをただ在留許可にしてまた世間に出すということは非常におもしろくないということで大村に送っておる者がございます。そういう人口は、これはしかも向うでは引き取りません関係で、時間がたつと同時に少しずつふえて行く、こういう傾向にございます。それでこの問題はわれわれとしてもまだ努力しておりまして、絶対に絶望とは考えておりませんが、しかし一般的に申しますならば、やはり日韓の間の大きな話し合いができあがりませんことには、なかなか帰すということはむずかしいのではないかと考えておるわけでございます。それから密入国者の方で申し上げますと、ただいま申しましたように、去年から詰っておりましたものが、今度帰しますと約千名になりますが、一応は去年のものは片がつくという情勢でございますが、しかし最近また密入国というものが非常にふえております。これは毎年のことでございますが、大体玄海灘の海上の様子が、小船で密航できやすい状況になりますとふえて参るというのが毎年の例でございまして、大体四月ごろからまた密入国者の数というものは上昇線をたどっております。先般福岡管内だけで、これはもっとも福岡管内というのが一番多いのでございますが、六月二十日の数字でございますが、福岡管内だけで三百六十七という密入国者を収捕いたしております。それから下関管内に九十八、そのほかいろいろございまして、通計いたしますと、収捕した密入国者だけで六百四という数字が出ております。これ以外に、たとえば三十人の集団で入って参りまして十人がつかまって、二十人がどこかもぐってしまったというようなことが、つかまえた者の口からはっきりわかったものだけでもかなりございます。それからそれ以外に、密入国して来てまるまるグループがだれもがつかまらないでもぐってしまったということになりますと、これはちょっと確認のしようがないのでございますが、通常の推定からいたしまして、つかまった者の数字よりは無論少いとは思いますが、相当なるものがあるであろうということは推定いたしております。
  46. 松原一彦

    松原一彦君 こういう人たちの費用は、私よく知らぬのですが、全部日本の政府持ちでございますか。
  47. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) これは建前は私の了解いたしておりますところでは、かわって払ってやっておるのだ、将来は本国政府から補償を受けるものである、こういう建前で行われておるものと了解いたしております。
  48. 松原一彦

    松原一彦君 よろしうございます。
  49. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) 先ほどのお話でちょっとお答えを補わしていただきますが、佐世保で韓国の軍艦の船員が公然と歩き回っておるというお話でございましたが、これはもちろん正規の入国ではございませんのですが、国際慣例にのっとりまして、治安上差しつかえのないような場合には仮上陸というものを許しまして、ある短かい期間でございますが、船が寄港しております間、上陸地においてレクリエーションあるいは買物等のための上陸ということは認めております。これは正規の入国ではございませんが、いわゆる仮上陸というもので、やはり正式な上陸でございます。
  50. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 他に御質疑ございませんか。
  51. 木下源吾

    ○木下源吾君 ソ連代表部はどういうことになっておりますか、私はそれはいろいろ問題を詮議立てて、これをおられないようにしようという考えで申し上げるのではありません。今日の情勢ではそれのいろいろ連絡がつくようなことをした方がいいだろう、こう考えて、できるならば根拠を見つけて、いわゆる承認とまで行かなくても、それに類したものの取り扱いができるようになったらいいのだろう、こういう考えで御質問を申し上げるのであります。
  52. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) この問題は、実は純粋に法律的に申しますならば、全く根拠のない在留であると申し上げざるを得ないのでございます。平和条約が締結されました以後、ソ連のものが日本に滞在いたします根拠というものは失われたというのが、法律的に申せばそうなると思うのでございますが、実際上の外交的な見地からそのまま在留を現在まで認めて参りました。実は最近、と申しますよりは、日ソ交渉など始まる前でございますが、一ぺんあれをどうしようというようなことが政府の部内におきまして議題に上ったこともございましたのですが、今さらこれを強制的に退去させるというようなことは、もうすでに時期を失してしまっておるのではないかというようなことから、現在にまで至っております次第でございまして、われわれといたしましても、法律的にはなはだ説明しにくい妙な状態なのでございますが、しかし現状におきましては、これをそのまま認めて行くよりほかないのではないかと思っております。なお一言申し添えますと、新たなる入国ということにつきましては、そのつどはっきり正規の仕方で入って来ておりますので、いわゆる代表部の人間というものは減る一方でございます。非常に大きな数でございましたのが、現在では十二、三名ではないかと存じます。
  53. 木下源吾

    ○木下源吾君 その政府部内での議題に上ったことがある、この政府部内のそういう問題はどこで議題になるのですか、どういうあれでしょうか。
  54. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) まあ外務省一つでございますし、それから治安関係の機関でございます。そういうようなところでございます。
  55. 木下源吾

    ○木下源吾君 そうすると、外務省と治安関係とか、それからあなたの方と、こういうような何かそういうことを協議する定例の会議とか、何かございますか。
  56. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) これは時期によっても違いますが、現在定例のそういうものが集る会議体というようなものはございません。しかしまあ非常に連絡を常に密接にとっておると申し上げていいと思います。
  57. 木下源吾

    ○木下源吾君 今のお話しの模様だと、だんだん必要なときはそれぞれの事情によって入国をさせる、こういう措置をとっておられるようですが、その必要な入国というやつが相当あるらしい話を聞いた、この間の通商代表ですか、何とかいうやつを三月延ばしてもらう、ところがそれはなかなかいけない、そういうことで、私どものところへも何とか処理してもらう方法がないものだろうかというような話を持ち込まれたことがある、これは今お尋ねするのですが、そういうものを決定せられるのに、外務省、治安、それからあなたの方、こういうような何か局長会議と言いますか、あるいは何会議か、そういうもので決定せられるのか、あるいは政府、いわゆる大臣ですね、政治的に大臣とか、政務次官だとかという会議でいろいろお話しになってきめられるのであるか、こういったことを一応聞いておきたいと思う。
  58. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) ただいまの具体的な問題で、また具体的にわれわれがどんな措置をとったかということを申し上げるのが一番適当かと思っておりますが、クルーピン氏の入国当時は、これは昨年のたしか八月ごろであったと思います。それで初めての共産圏からの入国でありましたので、非常に慎重に、当時単に、ただいま申しましたよう外務省、治安関係機関だけでなく、通商の関係で通産省、それから船の問題でいろいろ問題になるということで運輸省、そのほかたしか木材の関係もあるということで農林省なども入ったと思いますが、相当広い範囲で協議をいたしましてきめたのでございます。従いまして、その後の延長の問題に当りましても、随時そうした経済の実際に関係をしております関係省の意見も聞きながら、この間まで正規の延長をして参りました、その第二回の延期をいたします際に、実は十分業者の方々にも念を押しまして、もうこれ以上の延期は申請いたしませんという契約書を当時とっておったのでございます。そこでこの間の三回目の期限が切れますときには、そのいきさつから言いますと、もう延期をしないということでやるはずであったのでございますが、念のために一応関係機関の意見を徴しましたところが、もう今度は必要ないということが、当初ほとんど全関係機関一致できまったのでございます。そこで私どももそう措置をいたそうと思っておりましたところへ、いろいろ業界の方から陳情がございまして、もうしばらくぜひ延ばしてもらいたい、こういうようお話しでございましたので、果して正規に再び延ばすべきであるかどうかということについては、かなり慎重な議論をいたしました。その結果われわれの出しました、これは関係方面の意見も十分に入れた上でのことでございますが、出しました結論は、特にソ連であるから有利な取り扱いをする必要はないのではないか、またもちろんソ連だから特にこれを毛ぎらいするよう意味での結論も出さない、しかし通常九十日という短期の在留資格を持って入ってきた者に、通常とるよう態度で行くべきであるという大体の結論に達しましたので、正規の延期というものはお断わりいたしまして、ただ経済上のいろんな理由もおありのようでございましたから、それでは一月半、実際上勧告期間という形で在留を黙認しようということになったのでございます。ところがその後またその間に非常に商売の話がふえてきた、それでもうしばらくまたぜひ延ばしてもらいたい、こういうようお話しが起ったわけでございます。私どもの立場から申しますと、ただいま申しましたように、ソ連なるがゆえに、ことさらうるさいことを申すつもりでないのでございまして、しかしそうかといってソ連の場合に、特にほかの通常のケースよりも有利な扱いをするということも、また別の方からいろいろ批判も起り得るのでございます。われわれといたしましては、そういうずるずるべったりのような形で持って行くことは、まことにおもしろくないのでございまして、また非常な強い御希望もございましたので、現在のところでは実際上もう一月くらいは黙認するのもやむを得ないのではないかというふうに考えておるのが現状でございます。ただいまどこで大臣がきめるのかというようお話がございましたが、われわれといたしましては、繰返すようでございますが、関係機関のいろいろな意見を聴取いたしまして、われわれのところで大体腹案はきめますけれども、問題がなかなか微妙な問題でございますので、この場合には私どもは法務省の省議にもかけまして、次官、大臣等の十分な了解のもとにきめた次第でございます。
  59. 木下源吾

    ○木下源吾君 今お話しを承わっておれば、きておる人間の用ですね、仕事、内容についてまでのいろいろな御配慮があって、そして在留させた、こういうお話しでした。そこで実はあの代表部がきまして、まず第一番には船を注文した、そのおもなる見返りになるものは北洋材である、こういうよう関係で、ずいぶん期間が長くなると思うのですが、当時は日本で船の新規造船は非常に渋っておったときに、ソ連では確かに一万トン級の貨物船は五そうだ、そのほかマグロ船、また引き船やら、かれこれ改造修理を加えると、およそ五十隻くらい日本に注文する仮協約ができたはずであります。日本の場合は従来から取引がある大倉産業、進展実業会社、これらを筆頭としまして、ところがその後木材の、つまり輸入の……、船の方は非常にこちらが造船を希望しておるが、木材の価格が引き合わぬということでだいぶ渋滞しておったように聞いておるのです。私どもは実は造船があのような不況になっておるときに、造船労働者の熟練労働者でも約二十万近く関連産業から下請を加えた五、六十万の労働者の生業の問題であって、一日も早くソ連の注文が正規に実現することを私どもはこいねがっておる。たとえば函館ドックあたりでも、これは会社も労働組合も一つになって、そうしてこれが造船の実現に努力をしておる。涙ぐましい努力ですね。つまりそういうような背景があって、業者が、貿易業者なら貿易業者で仕事を進めておる。ところが木材の価格が折り合わない。で、折り合わない理由もだいぶいろいろあるだろうと思うのですが、さらに昨年風倒木、いわゆる台風で被害をこうむったので、この風倒木で市場価格、木材価格がまたひた押しに押されてきたし、政府のいわゆる緊縮デフレ政策によってだんだんこれが影響をされて、木材が向うの言い値で買うということはできなくなった、こういう経過をわれわれはながめておるのであります。今はまあお話によれば木材に関することは農林省ですね、あるいは船に関することは通産の方面、いろいろそういう関係各省の機関で検討したと言われるのでありますが、その検討が真に国民の、つまり切実な経済利益、経済要求に基いた根底の上に立って御協議になっておるのかどうか、私はそれを聞きたいのです。それをつまり取引き、受け渡し、いろいろのためにあの代表は来たと思う。もしそれが何か政府の特務調査か、思想調査か、そういうような機関がこれを重大な発言権でもあるというならば、そういう事例が他にあったのかどうかも、まあ聞かにゃなりませんが、それよりも私は入国を許可し、そうして許可した背景にはそのよう事情があったことを十分に御検討になっておやりになったのかどうか。ただ事務的におれの方の所管は法律にはこう定めておる、規定ではこう定めておるというようなことを根拠としての御審査であれば、そういうことを私は懸念されるがゆえに、大臣から政務次官、いわゆる政治的な方面の総括的な方面からそういうことを判断するか、そういうところで決定したかということをお聞きしておるわけです。これは実にこの問題は深刻で大きいのです。ただ向うが来ておるのはこうこうだという、そんな簡単なものではないんです。私はこれは外部からちゃんと調べておってそういうよう考えられるのです。その点、それらについてはどういうような御検討をなさったか、それを一つお聞きしたいと思います。
  60. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) ただいまのお話ようなことは、実はわれわれ自身業者の方とも数度お会いいたしまして、大体お話にございましたよう事情を聞いております。そのことも、従いましてわれわれの結論を出す場合に十分に考慮に入れておるつもりでございます。ただ繰り返し申し上げますようでございますが、われわれの方の立場といたしまして、大体九十日の在留資格で入ってきたようなものの取扱い方というようなものにつきましては、おのずからの一つのルールができてております。これは業者の力にも十分それを了解してやっていただきたいということを希望しておるわけでございます。そうして大体私は数度業者の方ともお会いしました結果、現在においては業者の方々も十分にそれを御理解になっておられると考えております。それでわれわれはもちろん、せっかくこういう仕事をやっておられます方々の仕事の妨害のようなことは、できるだけしたくないという考えは十分に持っておるつもりでございますが、しかし同時に、こういう国際的な人の出入りという問題につきましては、おのずから一つの国際的にも一般に認められておりますルールがあるわけなんでございまして、われわれといたしまして、それに従って考慮しておるつもりでございますので、関係の方々もそれを御理解いただいて、それを頭に入れて商売の話をしていただきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  61. 木下源吾

    ○木下源吾君 そこなんですよ、私はだいぶ皆さんの方では国民の経済的なそういう利害に立脚してものをお考えになるようになったとは思います。御答弁のようになっておるとは考えますが、しかしながら、実際はその前年に瀬戸内海の向島ですか、日立かどこかで船を造ったのです。修繕か何かやった。その修繕のときに機関は月島で直したことがあった。ところがあなたの方では受け渡しに来ている船長か、機関士か知りませんが、それを修理したその場で検査することを許さない。そのために修繕したものをばらばらで持って行かなければ都合が悪いので、組み立てたものをまたほごして持って行って、またつけて、ここが悪いということで、また持ってきてというようなことをやらなければならぬことになったことがある。そういうようなことのために、業者は莫大な損害をこうむっておるわけです。従ってそれらはひいて日ソの間の貿易を発展の方向ではなく、阻害する実情に実際は作用したわけです。で、こういうことがあったので、私はその当時から見れば今はだいぶ直ったのだろうとは思っておりますけれども、そこで私もそのときに管理局の次長さんにお伺いしたことがあった。次長がいないから課長か何かの方へ行けということを言われたことがある。いずれにしても入れないなら入れないと、きぱっとしたことの方がいいのですね。そうして入れておいて、そういう実際には妨害になるような結果になるということは私はいけないと思う。しかしそれは入れる入れない上りも、そういうことを一体だれが決定してやっているか、私は非常に当時も疑問に思った。業者は業者で行って仕事を頼んでおったらしい。私は日ソ貿易民間のつまり貿易機関からそういう要請があって行ったことはあるのです。そんなばかなことはなかろうと行ったら事実なんで驚いたのですが、私はそういうような惰性が今日残っておって、今のクルーピンですか、そういう期間を延長するとかしないとか、そういうようなことが政府の何か国際慣例と言いますか、何かそんなような簡単な理由できめられるのでは、日本の産業が行われている中枢が麻痺してしまう。そうして今この不景気を打開するには、こういう政策で行かなければならぬということを、国民協力して考えておる問題と逆行しておるのじゃないか、こういうふうに考えるのだが、今のお話を承わっておれば、農林省も関係しておるだろうというようでありますが、一体農林省は北洋材さえ入れれば船ができるのです。それだけの船をつまり造船所で仕事をやることができるのですから、そういう問題で、この木材関係を農林省はあなた方の会議でどういうことを言ったか、私は聞きたいのですが、そういうところが根拠ですから……。今聞いておって、もう一息で交渉が済むと思っておるところへ台風が突然吹いて来て、風倒木のためにまた価格が下っておる。せっかく折り合うように話しておるときにうんと価格が下って、またやり直さなければならぬということは、当然期間を延長しなければならなくなる、そこなんです。急にそういう現象が現われてこないのです。これは役人の諸君はわからぬだろうけれども、そういう業界には鋭敏にそういうことがくるわけで、そういうふうな点で一体そういう領域に入って、先ほども言うようであるが、くどいようであるが、ほんとうに国民経済の向上のために、発展のために考慮してやられておるのか、あるいはまた国際慣行とか、何とかいうようなそんな死んだような、そういうような化石のようなものを定木にしてやられておるのかどうか、そういう点を私は今お聞きしたいと思っておるのです。今あなたに重ねてお伺いするが、事務当局でそういうようなものを商人が頼んで来たからやってやるとか、事業家が頼んで来たからやってやるとか、アメリカから指示が来たからだめだとか、そういうようなことでおやりになっておるのではないか。そうでないとするならば、私が今お聞きするように、ほんとうに経済省は経済省で、その実情はどうなのかということを究明しておやりになったかどうか、こういう点を聞きたい。
  62. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) ほかの経済省はどこまで調査して意見をきめたかどうかということは、ちょっとこれは何ともわかりかねるわけでございますけれども、繰り返し申し上げますように、関係のありますいろいろな方々の意見は十分に聞いたつもりでおります。それから死んだ国際慣例とおっしゃいますけどれも、これは外国での在留の問題につきましては決して死んでいない、生きた一つの国際慣例があるわけでございまして、たとえて申しますならば、アメリカ人にしろ、イギリス人にしろ、日本に参りますにはある限られた期間内に参りまして、その期間が過ぎればそのまま帰ってしまう。商用の必要があればどこかへ出直しをして新たに査証を取って入ってくる、こういうことは日常茶飯事行われておることなのでございまして、従いまして、私どもはその関係の業者の方が国際的に外国人と話しをするときには、そういうものなのだということを十分考慮してやっていただきたいということを考えますし、私の了解しております限りソ連側の人々も十分にそれを了解しておると聞いております。従いまして、われわれといたしましては、実態において十分研究いたし、その上でわれわれがこういう問題を通常やりまして、われわれのやり方と調和させながらやって参ってきておるつもりでございまして、ただ一片の規則だけで固いことを申しておるつもりではございませんし、そうかと申しまして、業者の方がまた今度はこういうわけだから延ばしてくれというようなことで、ずるずるべったりにそのまま行くというようなことは、われわれといたしましてはやりたくない、そう考えておる次第でございます。
  63. 木下源吾

    ○木下源吾君 その何らかの会議で、それは記録でもとってあるようでありますから、そして記録をとってあるならば、そういうものを出されるかどうか、そういうものの相談について……。
  64. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) これは関係の方が集まりまして自由にいろいろ話し合うのでございますので、記録というようなものはおそらくないと思います。しかしまあわれわれ日常こういうことはしょっちゅうやっておることでございまして、いろいろな方の御意見を伺った上できめております際に、ことさらにうそでやるというようなこともないのでございますから、大体当時いろいろな方の御意見も一致したのであると私は考えておる次第でございます。
  65. 木下源吾

    ○木下源吾君 黙認しておるということを先に言われたが、当りまえに必要だと認められたら延期したらどんなものでしょうか。
  66. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) すでに一度延期の問題はお断わりいたしまして、実際当時これは記録をお出ししてもよろしうございますが、業者の方から希望をいただきました種類は、短かいのは三週間、一番長いので一月であったわけです。それをわれわれはこちらから約二週間をプラスいたしまして一月半ときめたのでございまして、当時の業者の方々の御希望の種類はここに提出してもよろしうございます。
  67. 木下源吾

    ○木下源吾君 最初のソ連側からの必要な要件が済んだと認められておるか。
  68. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) これは当初の話で申し上げますと、相当大きな数字の四千万ドルであったか、片道四千万ドルであったのじゃないかと思いますが、とにかく仮契約ができた。これを本契約に直すために来てもらうので、これはもう九十日でけっこうなのだというのが実は最初のふれ込みであったわけです。しかしその後いろいろな事情で九十日で足りないということでありますので、先ほど申しましたように二回正規に延長して参ったわけでございます。それでもそのときに、先ほど申しましたように二回の延期のときには、もうこれ以上は絶対に延期などは申請いたしませんという誓約書が当時すでに出ておった。それですから、われわれの方から申しますならば、もうその誓約にもかかわらず具体的な御事情があるならばやむを得ないだろうということで、相当に業者の方々の御意見を参酌して行動しておるつもりでございます。先ほど申しましたように三回目の更新を拒否するということに一応決定はいたしましたものの、業界の方からの再三の希望が一月であったにもかかわらず、われわれの方といたしましては一月半を差し上げたわけでございます。今さらわれわれとしましては、われわれの考え方が非常に形式的だというような御批判を受ける筋合いではないと実は感じておるわけでございます。
  69. 木下源吾

    ○木下源吾君 私の言うのは、あなたの方だけならば私はそういうことが御無理だと思うのだが、関係各省とみな御相談したというから、それならば往復八千万ドルの仮契約がどのぐらい、どういうようなもので、どういうふうにできておるということを御調査になったか、そうしてまたどういう事情であれば、もうどのくらい日にちを延ばせばこれができるのだというようなことも、一つの延期に対する考えの中には必要じゃないか、そういうことを聞いておるのです。どのぐらいの仮契約の何が本契約に直って、そうして実行に移されておるか、また今後それが実行に移される可能性があるのかというようなことも御調査になったのだろうかと、こういうことです。
  70. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) 実は先ほど申しましたように、非常に大きなふれ込みであったのでございますが、その後の実情というのは、これは先ほど御本人御自身のお話になりましたような理由もあったと思いますが、非常に遅々として進まなかったのでございます。ところがその後ぼつぼつふえて行っておるように聞いておりまして、最近は百万ドルぐらいの話もできたというようなこともございますので、われわれといたしましても、実は一番知りたいことは一体どのぐらいの期間があったならばはっきりできるのかということを、われわれ自身も実は業者の方にいろいろ聞いておるわけです。ところがそれに対して業者の方も的確なお答えができない。ですから、このままで行きますと、ただずるずるべったりで、またこの契約ができたから延ばしてくれ、また一つ契約ができたから延ばしてくれ、こういうことになるのではないか、それではわれわれとしては困る。むしろわれわれといたしましても、繰り返し申しておるのでございますすが、クルーピン氏を帰したからといって、あなた方の商売の話を進めていかぬといっておるのでも何でもない、現に最近におきましても、クルーピン氏がおるにもかかわらず、ドムニツキー氏の書類によって契約ができておる例も多々ございます。つまり、われわれから申しますなら、クルーピン氏がいなくてもある程度の話はできるのじゃないか。またこういう話は相当長期になるのだから、もともと九十日なんということの方は一応清算して、もう少し長期の、また代理資格を持って入ってくるようにされたらどうか、その際はわれわれも考えましょうと、こういうことも申し上げてあるわけでございます。
  71. 木下源吾

    ○木下源吾君 業者の話はどうこうというよりも、通産省ですね。通産省はそのかぎを握っておるといってもいいです。実際は……。私は木材が絶対高い場合、あるいは不足な場合は北洋材を入れて、そうしてやるというのは国策としても考えられることなんです。そういうことは通産省の何はよくわかっておると思う。ですから私が今お尋ねしておるのは、業者にばかりではなく、通産省そのものがやろうと思えばできることなんだから、それを言っておるのです。だから根本は、進んでこの対岸との貿易を積極的にやるという一体その意図が乏しいのだと、こういうところから私は申し上げておるのです。それは先ほど言うた、この前向島で船を修繕したそのときの状況を見ておって、私は非常につまらぬことをやっておるものだという頭が今でもこびりついて抜けないのだ。それはなるほどいろいろな関係で、上陸は大阪まできちゃいかぬ、一ぺんは許したのです。何日間か……。それを二回目はもう許さぬ、こういうことになってしまって、これは非常なわれわれが見ておっても非常識なやり方をやったわけなんですから、そういうかつての何があるものだから、今でもこの場合においても、このような不景気になって、毎日の新聞で死んだ、生きた、心中だと、そういうことがあるにもかかわらず、なお政府の当路の人たちは、ただ持ち場持ち場で自分のところだけをかたく守っておればいいんだという状態は、経済のごときはどうだっていいんだという考えでやっておるのでは、私はどうも高い月給をもらっておって相済まぬのじゃないか、こういうようにまあ考えるわけなんです。もっと、もう少し生きたやり方をやって、通産省に、むしろこういうように業者も言ってきているのだが、通産省、お前の方ではどうなんだ、これをやらせる気はあるのかないのか、やらしたらどうだ、一千万ドルといえば大した貿易ですからね。しかも向うからは何でしょう、プラチナまできておるでしょう。プラチナですよ。あるいはまた粘結炭ですね。南樺太の粘結炭もきているでしょう。また途中でクレームが出てどうこうということもあったらしいですが、いずれにしても隣との貿易ですから、これを積極的にやらしたらという、これはだれが考えても、私はそういうことをやはり少しは考えてやってもらいたい。あなたたちがきめて、次官、大臣のところへ持って行けばそれは判を押すでしょう。あなたたちの、きめる前の事務局政治だ、日本の……。このときに、もう少し事務局の考え方国民全体の利益という面に一つ置いてやってもらったらどうか、こういうことを私は考えておるのです。ですからいろいろお尋ねしておるのです。お尋ねしておって、そういう方向に持って行ってもらわなければならぬからお尋ねしておるので、だからやめてしまえとか、これはだれも取り消してしまえと、こういうことを言っておるのではない。今までのやり方を見ておると、全く生きた人のやるようなことをやっていないように見えるから、こういうことを言っておるわけで、ただいまの答弁によって、あくまでも業者の要請で、そうして貿易が伸展するよう考えておやりになっておるという、これに対しては私は非常にけっこうだから、そのように進めてもらいたいと思うのですが、ただここにきてだけでは、それではまずい、それは実際において行なってもらわなければいかぬ、そういうことです。  次に、これはあなたの方との関係かどうか知らぬが、実は台湾の戦犯ですね、南朝鮮、韓国ですね、ここの戦犯が切々としてわれわれのところに手紙をよこして訴えていることは、自分たち日本の戦争に協力して戦ったのだ、ところが今日ここへきておると、まことにさびしいのだ、一日も早くわれわれもまあ対等な釈放の何があるならば、これも一緒にやってもらいたいという意味なのですな。こういうものに対しては、われわれはやはり同情を持ってやってあげなければならぬ、こう思っておるのです。そこで直接あなた方は収容所に行っておる監視人とは違うだろうが、やはりこれは、法務省は、絶えずそれぞれやはりどこかの相談を受ける機会が法務省は多いのじゃないか、こういうふうに考えます。こういう問題については何かいろいろ御相談なすったことがないかどうか、そういうことをお聞きしたいのです。
  72. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) ただいまの問題は、法務省は確かに非常に関係しておることでございまして、矯正局と保護局におきまして主としてこの問題を研究しておられます。われわれの方の関係だけを申し上げますならば、戦犯として巣鴨から釈放せられました朝鮮人台湾人につきましては、戦前から日本におります朝鮮人台湾人の資格をあげまして、それと同一に取り扱うという方針をきめております。
  73. 木下源吾

    ○木下源吾君 今のは、さらに私はお聞きしようと思っていたやつに御答弁になったので、出ている人はいい、出た人はこの間も新聞だかに見ましたが、出てもやはり自分たちは仕事もなく、行く所もないから、しばらくまだ置いてくれというような、そんなことがあった、だからそれはまた伺いますが、私はそうではなく、今の入っている人たち、これはあまり数がない、三十名ぐらいらしいですがね、その少い人がだな、今日では国籍が違うために不当な不利益な、あるいは精神的にも不利益をこうむっておるのではないか、こういう点で同情を私はしますから、もしもすみの方に押し込めておいているならば、それはかわいそうだ。ほかの方では、えらい人たちのものは、しかも日本人であるならば、アメリカとか、あるいはイギリスとか、オランダとか、そういうところと交渉して釈放のためにおやりになっておるという私は新聞などを見るのだが、このような非常に不遇であるような状態に置かれておる人たち、そういう人たちに一体何か早く帰してやる、あるいは出る期間が来ておる者に対しては適当な、国内において出てからの生計の保障がつくようなことをお考えになっておるかどうか。
  74. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) ただいま申し上げましたように、その所管は矯正局及び保護局なのでございますが、私どもわきから聞いておりますところでは、初め巣鴨に入りました人たちは、朝鮮台湾を合わせまして百五十一ありましたのですが、そのうち満期出所で、三十一が満期出所、それから六十二名が仮出所いたしまして、現在なお巣鴨におります人は五十八、そのうち朝鮮が二十、台湾が三十八、こういう数字を聞いております。で、私繰り返して申し上げますように、われわれの主管ではございませんが、われわれの聞いております限り、この方々たちが特に不当な差別待遇を受けておるというような事実はまずないと了解しております。
  75. 木下源吾

    ○木下源吾君 政府もやはり日本人の戦犯と同じような取り扱いをやっておるのですかどうか。
  76. 内田藤雄

    政府委員内田藤雄君) 仮出所等につきましては、全く日本人と同じようにやっておる、努力しておるものだと了解いたします。
  77. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 法務省設置法の一部改正法案につきましては、大体質疑も終了したようでありますから、暫時休憩いたします。    午後零時五十一分休憩      —————・—————    午後三時三十五分開会
  78. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) それでは休憩前に引き続いて、内閣委員会を再開いたします。  行政機関職員定員法の一部を改正する法律案議題といたします。  幸い、きょうは行政管理庁長官の川島国務大臣と給与担当の大久保国務大臣が御出席になっておりますので、大臣に対する総括質問の残った分を御継続を願いたいと思います。
  79. 田畑金光

    ○田畑金光君 大久保国務大臣にお尋ねいたしますが、公務員制度調査会が昨年の六月吉田内閣のときに設立されまして、現内閣に引き続き諸般の公務員制度に関しまして調査を進めておるわけであります。この間、川島長官にお尋ねいたしましたが、大久保国務大臣の担当事項でもありますので、本日まで答弁が保留されていたわけであります。お尋ねしたいことは、前内閣においても、すみやかに公務員制度調査会の答申を待って、公務員制度に関するたとえば法律体系の整備、あるいは公務員の労働関係法律上の取扱いについて結論を得たいという答弁がなされていたわけであります。ところがこれを引き継がれました現内閣におきましても、いまだ調査会から諮問を受けて、これに基く措置をとられたということも聞いていないわけであります。われわれの見るところでは、常に政府はこういう諮問機関の審議に名をかりて、じんぜん日を送って問題の解決を一日片々延ばしておるきらいが強いわけであります。で、この際大久保国務大臣から、ただいま公務員制度調査会は、どういう審議過程に至っておるのか、いつごろ答申がなされる見通しであるか、この答申に基いて政府は公務員制度全般についてどのような解決をはかる心算があるのか、これに対してまず承わっておきたいと思います。
  80. 大久保留次郎

    ○国務大臣(大久保留次郎君) ただいまお尋ねの公務員制度調査会、これは前の内閣のときにできましたのであります。調査会の会員は十九名、この第一回の会合は昨年の六月二十二日、ちょうど一年ばかりになりますが、六月二十二日に第一回の会合を開きました。自来毎週ほとんど一回総会を開いて、公務員制度の全般の問題について討議をしております。総会において意見が出ましたので、さらに小委員会を設けまして、昭和二十九年、昨年の十二月から五人の小委員会を作って、この小委員会においてさらに検討したのであります。総会を開くことが、ちょうど昨年の第一回の六月二十二日に開きましてから、十一月の二十六日までに十九回総会を開いております。この総会において論議になった主要な点を申し述べてみますると、第一番に問題になりましたのは、国家公務員制度の職階制、職階制をどういうふうにするか、職階制の問題であります。その次に問題になりましたのが公務員の任用の問題であります。任用をいかにするかという問題であります。その次に問題になりましたのは、給与をいかにするかという給与制度の問題、それから公務員の分限、懲戒、保障、服務及び能率の増進というような問題について論議され、さらに退職の年金制度についても論議された。それから地方の公務員制度についての論議もありました。それから人事の行政機関、すなわち今日は人事院が中心になってやっておりますが、これと内閣との関係をいかに結びつけるかという人事行政であります。人事行政の問題についての論議がありました。それからさらに各国の公務員制度の概要についての研究がありました。それから公務員の罰則をいかにするかという罰則の問題の研究がありました。さらにまた公務員の団体行動権と言いますか、団体交渉権と言いますか、あるいは労働権と言いますか、こういう問題についての論議がありました。さらにまた恩給制度についての論議、こういうのが本会議中の主要な問題として論議されたのでありますが、先に申しました通り、十一月の二十六日、十九回をもって総会は一まず閉じて、小委員会に移してこれらの問題をさらに検討いたし、五人の小委員会において検討いたしまして、小委員会は二十九年の十二月、昨年の十二月から開会しまして、これまた毎週一回開きまして、ちょうど小委員会は十三回開いて、五月の末に小委員会での討論を一まず打ち切って、これから主要問題についての結論を整理しようということで、この六月から主要問題の整理に入っております。これが今申し上げましたいろいろな項目についての整理中であります。この整理はこの六月中に大体の整理を終りまして、成案を得ましたならば概要について総会を開いて総会に報告をする。これは来月中にいたしたいと思って考えております。七月中に総会に報告する、そうして総会がこれを承認すれば、さらに今度は立法化の問題に入ると思います。こういう状況になっておるのであります。  以上、大体のことでありますが、経過だけ申し述べました。
  81. 田畑金光

    ○田畑金光君 総会並びに小委員会で今日まで取り上げて参った項目別の事項の説明がなされたわけですが、七月中には小委員会から付託された問題に関する総会も持たれる。そうして総会を通じ、結論が出されるような情勢であることの報告は了承いたしました。私のお尋ねしたいと思いますことは、まず第一に、人事行政の問題に関連いたしまして、政府は人事院制度についてどういうお考えを持っておられるのか、この点をまず承わりたいと思います。
  82. 大久保留次郎

    ○国務大臣(大久保留次郎君) これは先に申しました通り、まだ公務員制度調査会の意見もまとまっておりませんし、確定してもおりませんが、論議の種になりましたのは、人事院というものをこのまま存続しておいた方がいいか悪いかという問題が一つであります。しからば仮にこれを人事院をなくした場合には、内閣の中にどういう制度にしてこれを持って来るか、あるいは人事局というものを作った方がいいのじゃないかというような議論も出ておるようでありますが、まだ正確なる結論は出ておりません。
  83. 田畑金光

    ○田畑金光君 現内閣といたしましては、人事院についてもこれを今検討して、あるいは行政機構の改革等に及ぶかもしれない、またこれを廃止して人事局等で所管させるということも一応考えられる、こういう御趣旨のように拝聴いたしましたが、それで間違いありませんか。
  84. 大久保留次郎

    ○国務大臣(大久保留次郎君) そういう点について議論は出ましたが、ただその結論はまだ出ていませんから、結論はどうかということは申し上げかねるのでありますが、そういう論議は出ました。
  85. 田畑金光

    ○田畑金光君 それは公務員制度調査会においていろいろな意見も出たであろうことは予測されまするが、私のお尋ねしていることは公務員制度調査会の論議はとにかくといたしまして、現内閣といたしましては、人事院等についてのこれをあるいは根本的に変えるような行政機構という問題等についてどういうお考えでおられるのか、この点について、行政機構の根本問題についてどういう政府は方針でおられるのか、この点を大久保国務大臣から承わりたいと思います。
  86. 大久保留次郎

    ○国務大臣(大久保留次郎君) この公務員制度調査会は政府の諮問機関でありますから、諮問の機関として生まれたのであります。この諮問機関の答申を参考といたしまして政府の意見をきめたい、こう思っております。まだ政府としての確定した意見は出ておりません。
  87. 田畑金光

    ○田畑金光君 もし公務員制度調査会において、人事院制度は改正すべきである、あるいは内閣の総理府の内局等にすべきである、こういうようなもし答申が出されるならば、政府は人事院制度を改めるという考え方でおられるのか、この点をお尋ねいたします。
  88. 大久保留次郎

    ○国務大臣(大久保留次郎君) それはその答申を待ってから一つ決定したいと思います。今ここで言ってしまっても、答申がないうちに言うのもどうかと思います。
  89. 田畑金光

    ○田畑金光君 それでは大へん話しの食い違いが出て参るわけです。前のこの内閣委員会においても、その前の内閣委員会においても、川島自治庁長官は現内閣としては行政機構の根本的な改革等については考えていない。たとえば省の廃合とか、人事院の廃止等ということについては考えていない、あくまでも行政機構の現在の省庁の配置、人事院等については現行制度を守って行くという明確な答弁がなされたわけであります。ところが今の大久保国務大臣の答弁を承わりますると、人事院制度等については、今後の諮問機関の答申いかんによっては人事局等に改めることも考えられる、こういう御趣旨でありまするが、食い違いがあるわけであります。この点について大久保国務大臣の答弁を求めます。
  90. 大久保留次郎

    ○国務大臣(大久保留次郎君) 今のお話し、食い違いないと思います。ただそういう問題がこの調査会の論議に出たというだけでありまして、これは決定した問題でないのでありまするから、この点をよく一つ御了承を願います。
  91. 川島正次郎

    ○国務大臣(川島正次郎君) 私の前回の答弁を御引用になりましたからして重ねて説明申し上げますが、現在の公務員には団結権もスト権もないのであります。そのかわりに人事院というものを置いて、公務員の利益を擁護するというのが現在の制度であります。人事院を廃止、縮小しますれば、当然公務員に対する団結権、スト権をどうするかということに触れなければならぬのでありまするからして、それとあわせて考えなければ人事院の廃止問題はこれは決定いたしません。従いまして、行政管理庁長官といたしましては、今日人事院を直ちに廃止する、あるいは権限を縮小する考えはない、こういうことを申し上げたわけであります。
  92. 田畑金光

    ○田畑金光君 大久保国務大臣もお聞きの通り川島自治庁長官としては、人事院制度というものが公務員の労働基本権を制限、禁止したそれの補充として、補完として、あるいは代替として人事院というものが設置されたということを明らかにされたわけであります。従いまして、行政管理庁長官としては、公務員の団結権あるいは団体交渉権、こういう基本的な問題にも触れてくるので、今の内閣行政管理庁長官としては人事院制度を廃止するということは考えていない、明確に言い切っておるわけであります。前回においても速記録を見れば明らかでありまするが、川島長官は、公務員の団結権、団体交渉権制限の結果生まれたのが人事院制度であって、現内閣は人事院の廃止とか、省の廃止統合というような、こういう根本的な機構改革は考えてない、こういうことを明確に言い切っておるわけであります。大久保国務大臣の答弁は、変りがないというけれども、聞く方からいうと変りがあるのです。これについて一つ明確に答弁願いたい。
  93. 大久保留次郎

    ○国務大臣(大久保留次郎君) 私はただそういう論議が出たというだけを申し上げましたので、そういう意見を持っているとは申し上げないのですから、この点を一つよく御了承願いたいと思います。公務員制度調査会における論議が、こういう話が出たというのを申し上げましたので、私がそういう意見を持ったと、こういう話じゃないのですから、この点を一つ御了承願いたい。
  94. 田畑金光

    ○田畑金光君 大久保さん、あなたは私の質問の要旨がわからぬのじゃないのですか、公務員制度調査会でそのような問題が出たということはとうに私は承わっておるし、その御質問は終っておるのです。公務員制度調査会の答申があろうと、なかろうとにかかわらず、あくまでも諮問機関であるから、現内閣としては機構改革について根本的な方針があるはずです。その根本的な方針は何かと私は尋ねておるのであって、今問題となっている人事院制度についてどう大久保国務大臣は考えておるか、そういうことを私は尋ねておるのです。
  95. 大久保留次郎

    ○国務大臣(大久保留次郎君) それは先ほど私が申し上げたのですが、せっかく政府が前の内閣から続いてこの公務員制度調査会というものを設けて、知識経験者、大学の教授その他を網羅して研究しておるのですから、この研究の結果を参考にして意思決定をしたいというので、私まだ考えをきめておりませんと、こう申し上げたはずと思います。
  96. 田畑金光

    ○田畑金光君 人事院制度というものが公務員の団結権、団体交渉権の制限の結果、公務員の労働条件の維持改善、あるいは身分の保障、こういうような建前から人事院制度が生まれたということは、大久保国務大臣は御承認になりまするかどうか、この点をお尋ねいたします。
  97. 大久保留次郎

    ○国務大臣(大久保留次郎君) それはつまり公務員の勧告権、利益を代表する機関としての人事院を、たとえ人事院という形がどうなろうとも、政府以外に別個に置くべきであるという意見はこれは起っております。それは別個の問題として考えます。
  98. 田畑金光

    ○田畑金光君 私はどうも川島自治庁長官と大久保国務大臣の答弁が大きな食い違いがあることを残念に思うわけですが、今のお話によると、もし人事院制度をかりに廃止して、他の機関でたとえば勧告権を当てるとか、あるいは人事院制度にかわるような機構を考えるとかというようなことになって参りますると、人事院制度の趣旨というものは根本的にくつがえされると考えるわけであります。そうなってくると、これは根本的な国の行政機構の改革に及んでくるわけであって、川島自治庁長官の答弁にあるように、根本的な機構改革は考えていないのだ、こういう説明と、同じ内閣において関係閣僚の意見がこのように食い違っておるということは不統一であると考えるわけであります。
  99. 川島正次郎

    ○国務大臣(川島正次郎君) 前回の委員会の御質問のとき私が答弁申し上げたのは、御質問の趣意が、根本的に行政機構の改革をするかという御質問でありましたからして、現在政府におきましては省の廃合等は考えておらぬ、こういうことを申し上げました。しからば人事院はどうか、こういう重ねての御質問でありましたからして、行政管理庁長官といたしましては、現在人事院を置いたときの理由にかんがみまして、今日は廃止する気はないのだ、こう申し上げたのであります。大久保大臣の申し上げておるのは、公務員制度調査会としては、人事院の問題に触れて研究したけれども、結論は出ておらぬ。公務員制度調査会のことを答弁しておるのでありまして、人事院を廃止する、しないということは、これは内閣内部から申し上げたら行政管理庁の主管でありまして、私が申し上げていることが内閣の趣意とおくみ取り願って一向差しつかえございません。
  100. 田畑金光

    ○田畑金光君 それじゃただいまの川島自治庁長官の答弁で私は了承いたしまするが、機構の廃合等の問題については、行政管理庁長官としての川島国務大臣の権限であるので、今日現内閣が人事院制度の廃止については考えてない、こういう明確な答弁をなされたわけであります。この点大久保国務大臣も、先ほど来の私の質問に対しまして、直接の所管でなければ、ないということを明確に答弁なさればいい。直接の所管でないから、それは川島自治庁長官の答弁が政府の答弁である、そういうことになさるならば、話は至ってスムースに済むわけであります。この点大久保国務大臣にいま一度、川島長官の今の言葉を政府の言葉としてお聞き取りできるかどうか、あらためてお尋ねいたします。
  101. 大久保留次郎

    ○国務大臣(大久保留次郎君) それはもうその解釈でけっこうです。私はそういう解釈をされてけっこうです。
  102. 田畑金光

    ○田畑金光君 けっこうですね。
  103. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記をやめて。   〔速記中止
  104. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めて。それでは行政機関職員定員法の一部を改正する法律案の審議は一時中止いたしまして、ただいまから、外務大臣が御出席になりましたので外務省設置法の一部を改正する法律案議題として審議をいたします。
  105. 木下源吾

    ○木下源吾君 外務大臣に簡単に二点お伺いします。  まず第一点は、移民に関する問題であります。先般来当委員会においていろいろ質疑をいたしましたが、政務次官から、わが国の移民の方針は従来行なったような、いわば帝国主義的なそういう意味ではなく、平和的な移民、平和移民という方向が今後とられなければならぬ、こういうような御答弁がありました。そこでお伺いしますが、先般わが国はバンドン会議において、アジア・アフリカ会議におきまして、その会議の宣言たるいわゆる平和五原則に賛成したのであります。そこで平和五原則は、中心をなすものは言うまでもなく平和共存、あくまでも話合いによって世界の各国との間の問題を解決しようということが基本であり、またお互いに内政には干渉しない、領土の主権を尊重する、互恵平等の立場に立って互いに貿易をやろう、そういうようなことが謳われておるのでありますが、そこでこれが平和五原則と言われている。そうして今わが国は新らしい移民の方向を平和移民の方向に持って行こうとしているならば、今のような原則が現実の面において着々と実施されなければならない、こう考えている。しかるに本内閣は、成立以来まだ日幾ばくもありませんから、そのような問題を直ちに行い得るとは考えませんけれども方針を明確にすることは私はできると考えております。すなわち今日まで軍事予算、いわゆる防衛予算においても、兵力においても、しばしばアメリカの希望が覚書によって外務大臣に届けられたり、いろいろそういう面は私はどうも内政に干渉されているよう内容を含んでいるのじゃないか。またそればかりではありません。一方から言えば、地域安全保障であるからアメリカと互いに手を携えて防衛するということを原則として、だからアメリカからのいろいろな注文は、やはり互いに受け入れてやらにゃならぬということも考えられるでありましょうけれども、何といたしましても、究極において、今の状態を見ますると、あらゆる面で内政に強く干渉されているという事実をいなむことはできないと思うのであります。果して、しからば、平和五原則とは矛盾しないか、今はそれに内政干渉という面を極力取り除くために御努力を願える、御努力をするという言明を得るならば私は非常に仕合せだと考えます。また領土の面におきましても、国内においては数百ヵ所の施設、軍事基地が設けられております。これらの実情を先般来から調査してみますると、必ずしもわれわれの主権というものが尊重されておるということが言えない点もあります。これまた私は平和原則に合わせてみて是正する必要があるのではないか、こういうよう考えます。また対外貿易についても、御案内の通り隣国との間における経済交流は、わが国の経済自立のために、今日の場合絶対的に私どもは必要だと考えておるが、これまたアメリカのバトル法によって、あるいはココム、これは日本が加盟しておるかどうか知りません。とにかくこういうようなものによって強い束縛を受けておる、こういうことを考えますると、これまた私は平和の原則に照してみて、はなはだ遺憾の点があると考えます。こういう具体的な問題を私は申し上げまして、真にわが国の人口を解決し、国力の回復をはかるとか、あるいは経済自立の面から、あるいは戦争中にわが国が与えた相手に対する損害と言いますか、そういうものを復活させるためには、技術の面において、当然わが国の持てる特殊なものを相手方に提供し、アジアの復興のために寄与するというようなことが考えられる。こういう面に私は移民といういわゆる政策を中心に進めることが大切じゃないかと考えます。今新たに移民に対する外務省が機構を作られる、あるいはそれを、機構を昇格するというような意図をもって提案されておるようでありますが、真に平和移民発展のために、ただいま申し上げましたようないろいろのこの原則上の問題に対して、外務大臣はどういうようなお考えを持っておられるか、願わくは平和移民遂行のために、平和原則を貫く具体的な方針をお示し願いたい、かよう考えます。これが一点であります。
  106. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) それじゃこのままで失礼いたします。  今の御質問は移民に関することであったと思います。バンドン会議において平和十原則というものができました。これはお話の五原則というのは、周恩来、インドのネール総理等の主張したものでありまして、いかにも何か宣伝に使われたような感じがいたしたわけでございますが、バンドンにおいてはそういう思想もむろん入れて十原則というものをこしらえました。その十原則のうちで一つの重要な点は、日本代表の主張であったのでございます。これを原則として、宣言としてこしらえ上げたのが、日本代表が非常にあずかって力があるのであります。初めは宣言にしないというような議論がありましたけれども、わが方の主張によって非常にこれが宣言として重きをなしたわけでありますが、その十原則、これは平和十原則と言われても少しもさしつかえない非常に平和主義の宣言でございます。そこでこういう宣言にそれではなぜ日本が非常に力を入れたか、バンドン会議で特に力を入れたかと言いますと、日本の今日の海外発展は、御承知の通りにまず第一が経済発展でございます。その中に移民の問題を含めてもよろしうございます。御承知の通りに、移民を外国に出すということは、戦前ではほとんどこれは問題にならぬよう状況で、これは非常にきらわれておった。その原因はしばらく別として、特に東南アジア方面に移民を送り出すということは、日本の政策に対する非常な猜疑心からこれは事実できなかった。そこで日本に対する猜疑心、すなわち日本の侵略政策に対する猜疑心でございます。これを取ってのけなければ貿易もできない、すなわち移民もまたこれできないということで、この猜疑心を取ってのけるためには、あらゆる機会に、日本は侵略政策を持っておらぬのだ、日本は平和政策で行くのだということを外国に浸透させなければならぬわけであります。それでバンドン会議においても、特に日本の代表も重きをおいて力を注いだのはその点であります。それでありますから、このバンドン会議の平和宣言というのは、たしかに国際間の猜疑心を取りのぞき、かつまたあつれきを少しでも少くするという方向に向いておることは事実でございます。また日本はそう向けたいと思ってこれに参加したわけでございます。しかし今日の国際間において、一足飛びに国境を突破するということができぬのみならず、猜疑心を全部払拭して行くということもこれまた不可能でございます。そこでバンドン会議で平和十原則が採用せられたから、すぐこれに参加しておる国国が、日本の移民を平和移民としてすべて歓迎するかというと、それはそうは参りません。これはいろいろ手続を経て、日本に対する猜疑心を取りのぞいて、そして漸次に進んで行かなければならぬのでございます。今日においても、相当東南アジア方面で日本技術家が歓迎されるとかいうような現象が起っております。農業に対する技術、漁業に対する技術、こういう技術を入れたいといって、まあこれを移民の方から言えば技術移民と申しますか、そういうようなふうな言葉で言われておりますが、さようなこともでき得るのでございます。これはしかし漸進主義で行かなければならぬ。向うの了解を得るに従って進めて行くというふうにして行かなければ、すぐ故障が起ります。そこで猜疑心をのぞいて、日本の政策を十分に、正しい政策を強く進めて行って、経済、外交、移民も含めた外交を進めて行きたいと、こう考えておるのでございます。しかし幸いなことには、移民はアジア方面以外に、たとえば中南米に対する移民は、これは受け入れ態勢が非常によくなりました。日本人の評判がいいのでございます。そこで中南米方面においては、今、日本移民は歓迎される状況になっている。このいい受け入れ態勢の時期において、一つでき得るだけ日本の移民を、平和移民をこういう土地に送り出したいと思って、まあ今回もその施設の一部分として、若干の予算を成立せしめることに努力をしておるわけでございます。中南米における移民は、相当将来も開き得ることと考えております。移民に対するお答えといたしまして、以上の通りに御説明をいたします。
  107. 木下源吾

    ○木下源吾君 今の御答弁ではまだ不十分です。もちろんバンドン会議は五原則を中心とする、植民地政策を排除する等々をつけ加えたいろいろな決議が決定せられておる。いずれもおっしゃる通り平和の原則であります。その実行を日本みずから実現しなければ、相手方の猜疑心をなくすることはできないと考えますので、国内においてできるだけそれを猜疑心を起させないような政策を着々実行して行くということでなければ、私の質問に満足に答えていただいたとは私は考えない。それで差しつかえなければ私はよろしいと思いますが、どうでございましょう
  108. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) さようにやって行く考えを持っております。またさようにやって行かなければならぬと思います。
  109. 木下源吾

    ○木下源吾君 次は富士山ろくの演習場についてであります。先般来当委員会において、この富士山ろくの演習場をめぐる最近の諸情勢は非常に憂慮すべきものがある、こういう見解からこれが調査に乗り出したのでありますが、私は昨日院議によって現地を見に参りました。一昨日の私が参りました夜から昼も、ゆうべ私は河口湖畔に泊りましたが、この夜もわれわれしばらくぶりで野砲の音を聞いたわけです。現地でもわれわれのわきを、頭の上をすぐ通って大砲が撃たれておる。その音は肝を冷すという形容が一番妥当だと思います。そういう演習をやっておる。いろいろ問題があります。入会権の問題であるとか、あるいはその他の借上げ料金等々の問題、いろいろありますが、ここで重要なことは、当初あそこの演習場はアメリカの方で希望したのではないのだ、日本側から進んでこれを提供したのだ、こういうことを現地で私聞いたわけなんです。果してそうであるとするならば、ほかにも条件がありますが、これを早急に返してもらったらどうか、そういうことを一つ大臣からアメリカの方に御交渉をなさるお考えがないかどうか。もちろんただこれだけを申し上げますというと、はなはだ今まで協定してやっておるものを、ただ大砲を撃つからということだけでこれを返してもらうということは、理由が成り立たないよう考えられましょう。しかし実は当初日米合同委員会によって提供したこの当初に、すでに所有権者、入会権者に対する承諾がなされておらぬというわれわれの調査の結果が生まれてきております。これは明らかに国内的な諸法規を十分に尊重し、適用したやり方でないと考えられる点が一点と、また道義的には、富士山は日本の象徴である、この富士山のすそ野を、明日から登山の山開きになるわけであります。今日一ぱいはあの実弾射撃をやっておるわけであります。こういう点、また今砲座を据え付けて発砲しておる地点を含めて、これはかつて山梨県が災害に会ったときに当時の御料林、今は御料林を下賜されたというので、これは恩賜林と呼ばれておるのであります。この恩賜林が、あの途方もないずうたいの砲車、数門続続と網をかぶって並んでおりましたが、この砲車によってじゅうりんされておるのであります。等々のことを思い合わせるときに、国民感情と言いますか、また富士山の場合には日本のほんとうの象徴であります。日本のプライドと言いますか、そういうものが異国の軍隊のよごれた泥ぐつによってじゅうりんされておるというこの実情は、何としても私は日本国民は承服できないと思うのであります。ことに当初は実弾射撃をするということの約束はなかった、にもかかわらず、中途から不十分な代表者の、それこそ承諾ではない承諾ということをたてに今この演習が実行されておるのであります。かたがた外務大臣はよく実情をお調べになりまして、これが返還をあえてアメリカお話になるお考えがありませんかどうか、この点について昨日私はなまなましい調査の結果、あなたに御質問申し上げまして御回答を願いたいと思うのであります。
  110. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) よく伺いました。この富士山ろくの演習地の問題については、私は直接の何を持っておりませんことを御承知でございましょう。これは特別調達庁の関係であって、特別調達庁のうちで、施設特別委員会というものがありまして、これでいろいろやっております。しかし私も今お話のことをよく一つ話しまして、特別調達庁と連絡を密接にしまして、よく調査をいたしまして、できるだけのことを一つ私もやってみたいと、こう考えております。さよう御了承を……。
  111. 長島銀藏

    長島銀藏君 外務大臣にお尋ねいたしたいと思うのでありますが、最近におきましては、平和という言葉あるいは平和という問題が日常の新聞を非常ににぎわしておるわけでございますが、われわれ日本も平和国家建設ということで非常に努力をしておるわけでございます。実は昨年私欧州を視察して参りましたが、各国ともやはりどこの国に行きましても、平和という言葉を盛んに使うようになっておるのであります。その平和をもたらすための一つ方法といたしまして、その国の特有の芸術を送りまして、そうしてその国特有の芸術を公開することによって自国を理解してもらう、かようにどこの国でもやっておるように見受けられたのでございます。仄聞するところによりますと、本年の七月か、八月にパリにおいて芸術祭が行われる。わが国でも劇団派遣の招請状が到来しているやに聞いているのでございますが、わが国においては、かような国際的なつどいが行われておるときに当りまして、劇団を派遣してこの芸術祭に参加せしめる考えが外務大臣におありかどうか、これを承わってみたいと思うのでございます。
  112. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 今は平和国家、お話通りであります。平和そのものが悪用、悪用と申しますか、政策的にあまり利用される場合においては、平和攻勢という言葉も出てくるわけでございます。芸術文化の方面で各国の間に国際的に理解を進めて行くことが一番親善を増進する上において効果的であるということも今定論のあるところで、そこで文化外交ということが言われるわけでございますが、しかし文化芸術をもやはりあまり政策的にこれを利用しようということになると、平和攻勢の一つとして人が非常に疑うようになってくる。それで私はやはり文化の交流ということは、策略でなくして、文化そのものの表現をそのままに交流することがいいと、こう考えるわけでございます。さような非常に政策的の意味でない、策略的のものでなければ、さようなことは国際的にわが国の力の及ぶ限り、これは協力すべきだと、こう考えております。今パリのお話がございましたが、それを今、係の者に聞いてみましても、まだ聞いておらぬということでございますが、今のような趣旨でこれを処理することに私はいたしたいと、こう考えております。
  113. 長島銀藏

    長島銀藏君 そこで私はこう考えるのでございますが、去年のロンドン滞在中に感じたことでございますが、どうも戦後の日本の文化国家、平和国家を建設しつつあるわれわれに対しまして、意思の疎通が欠けておるためか、何かしりませんけれども日本を十分に理解してくれないような工合に感じて参ったわけでございますが、これは実にまあ悲しいことでございまして、われわれとしてはやはり自由国家群の一員として、十分に日本の独立後の国情をも理解していただくという方法をとりたいと思うわけでございますが、つい数日前の新聞に、アメリカへ対しまして、日本個有の建築様式によりまする、多分新聞の写真でございまするからよくわかりませんが、茶室のようなものだと理解しておりまするが、そういうものをアメリカへ送るという記事が出ておったわけでありますが、こういう際に私はまあ国費も要ることで、国の財政から行きましても大へんではございまするが、より以上日本を十分に理解していただく意味合いにおきまして、たとえば日本の名優市川猿之助丈のような、ああいう方にお願いして、それを先ほど大臣のおっしゃったように、策略という意味でなく、もっと何と申しますか、そういう策略なんという考えを除きまして、そうしてほんとうに日本の現状を十分に理解してもらうのだ、日本としては自由国家群の仲間に対して、こういうふうな考え方で、こういう工合に頼っておるのだというようなところを十分理解していただく意味におきまして、この劇団や何かを派遣してもらいたいと思うわけでございますが、大臣のお考えいかがでございますか。
  114. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 全く御同感でございます。外務省の文化局において実はそういうようなことを一生懸命にやっておるわけでございます。はなはだ貧弱な経費をもってやっておるわけでございます。十分に思う通りには参りませんけれども、せいぜい努めたいと考えております。
  115. 田畑金光

    ○田畑金光君 二、三質問をいたしたいと思いますが、先般の内閣委員会において、園田政務次官からも一応の答弁はありましたが、あらためて大臣の答弁を求めたいと考えるわけであります。  まず第一は、外務省設置法の一部改正によりまして、今回政府は外務省のアジア局の中に賠償部を設置されるわけであります。今後賠償及びこれに伴う経済協力に関する条約その他国際約束の実施に伴いまして、統合的、統一的に進められるという方針ようであります。ビルマ賠償問題はすでに本年の四月から効力を発生いたしておりますが、まだ実施に関する細目に関しまする一般原則が話し合いがついていない、こういう情勢のようでございます。この点に関しましては、中川アジア局長からも先般一応の説明は承わりましたが、わが党からも、両派社会党からもビルマとの協定の細目実施に関する一日も早く取りきめを促進すべしという申し入れを行なっておるわけであります。これに関しまして、どういうところに問題があり、またいつごろまでに取りきめの見通しがあるか、この点についてまず第一にお尋ねいたします。
  116. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 賠償問題をぜひ片づけたいと思っております。これは実はもう日本として有識者の間で異存のないことだと存じます。もっともそれは条件次第でございます。しかしまあ条件が日本の負担能力の範囲内であれば、早く解決をして、一日も早く通商貿易を進めて行って、その前に平和関係を樹立して国交を樹立して行かなければならぬ。また先ほどのバンドン会議の十原則もありますけれども、一体こういう国交から先に開いて行かなければ、実際問題として先に参りません。そこで賠償問題に重きをおいて、これをまあ統合して、一つの中心を、世話をやく中心を一つこしらえたいという考え方賠償部というものを置くようになりました。今お話通りであります。ビルマ賠償細目の問題でございますが、ビルマ賠償の細目、これらの問題は外務委員会においてはまあ実に微に入り細をうがって議論を伺ったわけでございます。今お話の点は細目がいかにも遅れておる、締結が遅れておる、それはどういうわけかということでございます。これはまあ相当時間がかかるのでありまして、この時間のかかったのは、日本側の故障と申しますか、手続だけではございません。先方も相当準備にひまをとったのでございます。しかしこれらの困難は着々克服されて、この細目協定はもう遠からず、ごく最近に成立する段取りに相なっております。その上でビルマ賠償問題も実施の時期に入るわけでございまして、さようにしてビルマに対する平和関係を増進し、かつまた通商貿易関係を進めて行くように着々施策をして行きたい、こう考えておるのであります。
  117. 田畑金光

    ○田畑金光君 今のお話の中にもありましたが、賠償問題は尽きるところ、国力あるいは国の経済力、支払能力、こういう問題と緊密一体だろうと思うわけであります。従いまして、この問題は日本の今後予測される賠償総額というものが国の経済力を侵さないかどうか、国民経済の正常な発展に根本的な障害にならないかどうかという一応の限界があると考えるわけであります。今日までの政府のやっておられる方針を見ますると、各国別にそれぞれの交渉を進められる結果においては、政府の、あるいは国民の予測せられた額よりも相当多額に上っておる、こういうことになって参りますると、個別に交渉を進めて、その結果は国の財政能力よりもはるか上回った総額負担になる結果に陥りはせんかという心配を持つわけであります。従いまして、今後政府としては国の経済力、あるいは国力、あるいは国の支払能力という総額の限度内において賠償問題の処理をはかって行く、こういう考え方等も当然出てくると考えるわけであります。これらの点に関しましてどのよう態度で今後の賠償交渉に、さらに促進されて行かれる政府の方針であるか、この点を承わっておきたいと思います。
  118. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) むろん賠償交渉をやるのには、日本の負担能力を勘案して交渉を進める方針であることは当然でございます。今日までの日本はそれでやっております。またそれを逸脱しておらぬつもりでございます。しかし日本の全部の賠償能力、賠償能力と申しますか、たとえばアメリカあたりに対するガリオアの処理の問題などを今考えれば、賠償だけでなくなる、対外支払いの能力、こういうことになりますが、その総額をまずきめて、そうして相手国を全部一堂に集めて、賠償をお前には幾らやる、こっちには幾らやるという工合にして処理するということが、これが可能ならば一つ方法でございましょう、総括的にやって行く、ところがそういうことの不可能であるということは、これはもうすぐおわかりのことだと思います。従いまして、むろん日本の経済能力ということを考えなければなりませんが、やり方は各国の国別に交渉をするというやり方以外には方法はございません。そうして全部のことを考えつつ、各個の国と折衝をして、そうして日本の経済能力を考え、また相手方との将来の関係等をも考えて、そうして大局、小局よりこれを処理して行くと、こういうふうに考えてやっておるわけでございます。それでお答えになっておるかと思いますが。
  119. 田畑金光

    ○田畑金光君 私のお尋ねしておるのは、その賠償交渉を持つ方法や形式を申し上げておるわけではありません。そうじゃなくして、私のお尋ねしていることは、次にお尋ねいたしまするたとえばフィリピン賠償の問題とも関連いたしまするが、真に国の支払能力が許すのであるならば、八億ドルも問題ないと思うわけであります。しかし八億ドルについていろいろ問題になっておりますのも、要するにわが国の対外支払能力に問題があるからであります。そういうことを考えたときに、交渉を一堂に集まってもらって話し合いをするという形式ではなくして、一体政府としては、少くともこれからそれぞれの西南アジアの諸国と賠償問題の話し合いを進めなければなりませんが、今の国の力においてどの程度が支払能力の限界であるかというめどのもとに話し合いを進めておられると考えるわけであります。そういう意味におきまして、私は総合的にと申しまするか、あるいは総額等について大よその見当があってしかるべきではないかと考える、わけであります。どうしても個別に折衝して参りますと、おのずからそこに政治的な配慮が加わってくるから、自然早く国交の回復を望もうとするならば譲歩しなければならぬ問題も出てきましょうし、そういうことをかれこれ考えましたときに、日本政府といたしましても、日本の対外支払能力について十分な腹がまえをもって進めておられると考えるわけでありまするが、この点に関して私は政府の方針を尋ねているわけであります。
  120. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) それは今お話の点は全部私はお答えをいたしました通りであります。すなわちそういう全局について十分考えてやっておるわけであります。しかし今言われた通り、個別的の交渉をやるよりほかに方法はございませんことも先ほどお答えした通りであります。全局を考えて、個別的にどういう工合にこれを応用して行くかということによって交渉が進められるのであります。お話ような全局を考えて、日本の経済能力その他をむろんこれは標準にして進んで行かなければならぬのであります。その方針で進んでおります。
  121. 田畑金光

    ○田畑金光君 次にお尋ねいたしますことは、フィリピンとの賠償の問題であります。この点に関しましては、いろいろ衆議院の、あるいは参議院の外務委員会、あるいは予算委員会等において十分議論を尽されておるようでありまするが、ただこれらの話し合いの経過をたどってみますると、なるほど日本政府は八億ドルの線は明確に出していないかもしれません。しかしフィリピンにおける政府筋の発表や、ネリ団長の談話の発表等を伺ったときに、少くともそのような示唆を与えたであろうことも予測されるおけであります。とにかくフィリピンとの今後の賠償話し合いは、近くフィリピン政府から何らかの申し入れがあるものと期待されるわけでありまするが、日本政府としてもフィリピン政府の申し入れに応じて話を進めて行こうとする方針であるのかどうか、この辺の事情をお尋ねしておきたいと思います。
  122. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 今お話通りでございます。それらの問題は他の委員会ではもういさいを尽して討議がございました。しかしそれはそれにしておいて、フィリピン交渉の問題について、フィリピン側から新聞情報としていろいろなことが来たことは事実でございます。八億という数字も新聞情報に載せられました。しかしこれは他の機会においてはっきりと御説明いたしておる通りフィリピンとの交渉はまだはっきりした数字は出ておらぬのでございます。むろん内交渉でございますから、いろいろな言い合いはございました。しかしながら、このまとまったはっきりした数字が幾らか、まとまった数字と申し上げれば、向うは十億、こっちは四億、こういって出発をしたのでありますけれども、むろんそれで接近するわけではございません。そこでいろいろな考え方が検討されたことは事実でございますが、その結果は結末は得ませんでした。そこでフィリピン側としては、フィリピン側の意向を今まとめておるときであって、昨今はその意向がまとまったというようなことも新聞には来ております。それはまとまり次第向うの意向は、向うの案としてはこれであるといってこれが出て来るだろうと思います。それが遠くないと私どもは期待しておるのでありますが、それが出て来た上で、その提案についてわが方は検討をいたしまして、わが方の考えもきめて、正式の折衝に移りたい、こう考えておる次第であります。
  123. 田畑金光

    ○田畑金光君 私のお尋ねしたいことは、要するに向うから申し入れが来るであろうという時期でありまするが、園田政務次官も近々そのような申し入れがあるであろうということを予期されておるわけでありまして、この問題としてはせっかくここまで両国の話し合いが進んで参りました以上、また一日も早く国交の正常回復をはかるという両国民の願望から申し上げましても、すみやかに話し合いを進めるべきであると考えておるわけでありまして、この点に関しましては、近々というわけでありまするが、政府はいつごろまでに来るであろうと予想されておるのか、この点あらためてお尋ねしたいと思います。
  124. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) そいつは私はちょっとお答えできません。お答えできませんが、だんだんわが方の向うの出先と向うの政府筋といろいろ接触をいたしておりますから、その結果によりますというと、まず遠からずと言っていいのじゃないかと思いますが、いつ来るかということは実際わかりませんが、向うはなるべく早くそれをまとめて日本側に提案したいということを申しておるわけであります。その上はその提案を十分に一つ検討をして交渉に臨みたい、こう考えております。
  125. 田畑金光

    ○田畑金光君 話は若干変りますが、外務大臣も本日出席されましてお聞きの通り、最近において在外資産の処理促進に関する決議案が満場一致で可決を見たわけであります。六月二十三日、同じく衆議院におきましても満場一致をもって可決されて参ったおけであります。外務大臣は、院の決議に照らし慎重に検討を加えますという発言があったわけでありまするが、何事によらずこれは慎重に検討されておる、こう思いますけれども、決議の趣旨はすみやかに予算上の措置法律上の措置をはかるべしという趣旨であるわけであります。これに関しまして、外務大臣として慎重に検討するということは何を意図されておるのか、御答弁を願います。
  126. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) お話の点は心得ておるつもりです。慎重に検討するというのは、それを心得て一つやろう。しかし今私は予算処置をどうするんだというようなことは申すことはできません。ほんとうにその趣旨を、院議を尊重して慎重に検討すると申し上げたつもりは、今お話しのようなことを十分一つ心得てやりたいと、こういうことでございます。それで御了承願いたいと思います。
  127. 田畑金光

    ○田畑金光君 心得ておるということは、私のお尋ねすることは、要するに立法上の措置と予算上の措置をすみやかにはかるべしということでありまするが、その点を御了承になったという意味でありまするかどうか、この点。
  128. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) さような点は、院議を尊重する場合においていろいろな手段を講じなければならぬと思いますし、いかなる手段を講じなければならぬかということもあわせて検討したいと、こうお答えをしておるわけであります。財政上の処置をするためには、はっきりお答えをするためには、これはむろん財政当局との協議を経なければなりません。法律関係においては法制局の検討をも経なければなりません。十分にそういうようなことを院議を尊重して検討をしよう、こういうことが、すべてのことが含まれておることと私は思っておるわけであります。今具体的なことを私はお約束するのは、かえって私としては行き過ぎだろうと思いますから、この程度で御了承を願いたいと思います。
  129. 田畑金光

    ○田畑金光君 この点に関しまして質問をすると長くなるわけであります。従って私は結論を大臣にお尋ねしたわけであります。と申しますのは、先ほど申し上げましたように、本委員会におきまして、私の質問に対し、園田政務次官は明確な答弁をなしておるわけであります。すなわち引揚者の在外財産の処理の問題は、たとえば五月の十一日、日米の取り決めがなされたと同じように、第一は在外の財産を返還してもらいたいという問題だと思うわけであります。在外財産の返還請求であります。第二の問題として、もし在外財産の返還要求が外交交渉の結果なおできなかったというような場合に、そこに当然国内法上の措置として補償という問題が出て参るはずであります。アメリカにおいては、六千万ドルの日本政府の主張が、結局結果においては一千万ドルに削られておるわけであります。しかしとにかくサンフランシスコ平和条約において、財産権その他の請求権は一切放棄しておる。だがしかし、アメリカは国内法を修正して、私有財産の一応尊重の原則を貫こうとする誠意を示したわけであります。ところが台湾政権の場合は、日華平和条約第三条によると、明確に、両国政府はこの問題について話し合いをする、取り決めをする、こういうことになっておるはずです。今まで日本政府は何をやって来たかということを私は尋ねたいのであります。この点については中川アジア局長から、先般の委員会においてるる現在までの経過は説明なさったわけであります。要するにその結論は、台湾政権は、向う日本における財産と、台湾にある中国人日本における財産請求権と、日本人並びに日本国が台湾に持っておる財産権その他の債権の請求権とを相殺しよう、まあこういう考え方であるようであります。そうなって参りますると、当然個人の財産というものが、国と国との話合いの結果に基いて相殺をされる、返還されない、こういう事実が発生してくるはずであります。で、その場合、この個人の財産について政府はどういう補償措置を講ずるかというのが、本日の決議案の趣旨であろうと私は考えるわけであります。そういうような重大な問題に対しまして、今の外務大臣の答弁というものは、まことに私は不親切きわまる答弁だと言わざるを得ません。この点に関しては、明確に先ほどもまた本会議において私は申し上げましたが、園田政務次官は、「在外資産の返還の交渉と、それから国内における在外資産の補償支払いの件は別個の問題でございます」と、こういう工合にはっきりと言っているわけであります。また、速記録の十六ページの一番下の段に、「在外資産の返還の交渉と、それから国内における在外資産の補償支払いの件は別個の問題でございます」、またその次には、「政府といたしましては、当然国際法規並びにヘーグの陸戦法規にも規定してあります通り、戦いに負けました国が勝った国に賠償を支払うということが規定してございまするが、負けた国の国民が個人の持っている財産を勝った国に没収をせられる、あるいはまたは賠償としてこれを押収せられることは禁ぜられておるばかりでなく、いかなる場合といえども、個人の財産は守られなければならぬということは明瞭に書いてあるところでございまするから、こういう意味におきましても、外務省といたしましては、当然そのよう関係から、各国に対しましては、特別の規定を除くもののほかに、個人の私有財産の解決については極力折衝しなければなりませんが、これとは無関係にしまして、かりにその他の国々との折衝ができない場合におきましても、国内においてはこれに対する支払いをやるのは当然のことでなければならぬと考えております。」と、明確に園田政務次官は答弁をされておるわけであります。従いまして、私の聞かんとすることは、もし外交交渉の結果、政府の力では返還をさせることができなかったという結果が生まれた場合に、日本政府としては国内措置として、先ほど申し上げたように、立法上、法律上の措置をはかるべきだと私は考えるわけで、その点外務大臣の所信を承わっておきたいと思うわけであります。
  130. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) それは私がすべてお答えした通りであります。今御指摘になった園田政務次官の言明は、これは私は非常に賛成です。この通りに行かなければならぬ、そうであるから先ほど私はああいう御返事をいたしたわけであります。そこで繰り返して申します。お話通りに、米国との関係は、これは日本が放棄しておるんだけれども、まあ向うがいろいろやっておる、これは私は非常に好意であると思います。これをできるだけ助長してですな、補償してもらわなきゃならない。台湾のことが出ました。台湾のことも、これはもう引き続き日本側から督促をして交渉を進めておるのであります。しかしこれにはまた先方の都合もあり、利害関係もあってなかなか向うも準備ができません。そこで延び延びになっておる。しかしこれは督促しなければならぬ、大いにやらなければならぬ。台湾の問題もありますが、朝鮮の問題もある、それは大きな問題、韓国との交渉、これは朝鮮との国交の正常化という問題にひっかかってきてなかなか容易じゃございません。ございませんけれども、これも極力進めてやらなければならない。さようなことで、各国との間において外交交渉を持って、この問題はできるだけ解決をしなけりゃならぬ、園田政務次官の言う通りであります。しかしながら、それで結果が十分でない場合はどうなるか、十分な結果を得れば、それは補償はつくのでありますから、それはそれでいいとして、十分でない場合には国内問題になるから、これは一つ政府としても国家も十分これを考えなければならぬということになる。そこで私は今日の本会議の決議になったことだろうと思います。これは十分尊重して、その趣旨によってこれを慎重に検討してやるべきことはやらなければならぬ、それをやろうと私は申し上げているんですから、私はそれでもって御返答は全部尽きていると私は思います。しかし今、いつ何どきどういう予算を提出して、どうはっきり法律をこしらえるということを私は今申し上げるのは、少し時期が早いと思います。それはその院議を尊重して検討してやろうということを申し上げて、私は十分御満足を得ることだと、こう考えているのでございます。私は誠意がないわけでも何でもございません。
  131. 田畑金光

    ○田畑金光君 園田政務次官の答弁を全面的に大臣も認めるということでありますので、その点の御答弁は私も了承いたします。ただ私は重光外務大臣に特に考えていただきたいことは、もうすでに戦後十年の月日が経過しているわけであります。そうしてこれからなお台湾朝鮮や、あるいは中共や、その他の国々とお話し合いをして在外財産の返還の問題を進められるわけでございますが、非常にこれは成果を得るまでには長い時間がかかると考えます。また国によっては時間をかけてもとうてい不可能ではないかというところも予測されるわけでございます。すでに台湾政権においても、日華条約の第三条に明確にうたっているにもかかわらず、じんぜん事をかまえて今日まで話し合いに乗ってこない、応じていない、具体的に進んでいないということをわれわれは忘れることはできないはずです。さらに朝鮮の場合を見ましても、一昨年来、日韓の交渉がとだえたのも、大きな一つの理由は、この財産権あるいはその他債権の請求権問題というのが、両国間の交渉の糸口を困難にならしめているはずであります。そういうことを考えたときに、私はすみやかにという表現を用いましたが、現内閣がいつまで続くかという問題も考えなくちゃなりません。今のような状態で経過しますと、この内閣が通常国会まで持つのかどうかということもわれわれは実は心配をしているわけであります。そんなこともわれわれは国内政治条件として考えないわけには参りません。とにかくまあ次の通常国会までは存命であることを希望しますが、そういたしました場合に、補正予算という問題もありましょうし、少くとも次の通常国会には三十一年度の骨格予算の問題も出てくるわけであります。そこで私は重光外務大臣にお伺いしたいことは、誠意をもって善処をするというお答えでございますが、それは台湾や中共や、あるいは中共の問題はまた別になりますが、朝鮮との話合がつかなければ、国内手続としてはこの問題には手を触れるわけには参らぬ、こういう態度であるのか、外交交渉の進展に応じて、もしそれがむずかしいというような判断がつくならば、私の申し上げておりまするすみやかなる国内処置をとる誠意があるのかどうか、あらためてこの点をお尋ねいたします。
  132. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 私は率直に申し上げれば、この外交交渉を待ってこれをどうするということは、本当にこれは待ち切れないと思っております。それだから、これはすみやかに検討しなけりゃならぬ問題だと思っております。しかしこれは非常に複雑な問題でありますよ。国家の負担その他検討すべき事項が非常に多いと私は思う。けれども、それは今申し上げる必要はない。これは非常に検討を要する問題だと、こう思います。外交交渉を一々待って、その結末をつけてこれをやるということになっては、これは私は容易なことではないと思う。
  133. 田畑金光

    ○田畑金光君 私はただいまの外務大臣の答弁にありますように、外交交渉の結末を見て処理するということでは、事実上これはやらないことと同じ結果を持つものと考えますので、外交交渉の問題は外交交渉の問題として、別個に、国内措置としては衆参両院における院の決議を十分に尊重されて、同時にまた、園田政務次官が本委員会におきました答弁を外務大臣も確認されておりますので、すみやかなる機会に国内措置をとられることを強く要望したいと思います。もう一つ私はお尋ねしたい点がありまするが、これもその他の機会において十分論議をなされたこととは思いまするが、六月十八日の新聞によりますると、重光外相が十七日夜の閣僚懇談会で、ロンドンにおいて行われておるマリクソ連全権とわが方との話し合いについて説明をなされ、その中で、ソ連側提案として日ソ平和条約草案の十一条を説明なされたという記事があるわけであります。この中に一項目として、賠償権は双互に放棄するものとする、こういう項目があるわけであります。なるほど今日まで、日本政府がソ連との外交交渉に臨む態度、あるいは当面懸案事項として解決をしなければならないとして取り上げられておる問題の中には賠償問題はないと記憶いたしております。この点に関しまして、賠償権は双互に放棄するものとするという点は、日本政府としてもこのよう考え方で臨まれておるのかどうか、お尋ねしておきたいと思います。
  134. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) これは交渉内容関係することでありますから、私が申し上げるわけには参りません。差し控えたいと思います。
  135. 田畑金光

    ○田畑金光君 私がお尋ねしておりますことは、先般来外務大臣が各種委員会や本会議等において説明なさっておる日ソ交渉に対する基本的な問題の中には、いろいろな項目が並べてありまするが、なるほどそういうと賠償問題というものは取り上げてないのであります。たまたまソ連の十一項目の中にもそれがない。十一項目の中にも、双互に放棄をすると、こういうことが出ておりますので、日本政府としての態度を伺ったわけであります。
  136. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 日本政府の態度は、もう本院の本会議においても私は詳細に報告した通りであります。その態度を逸脱することはないのでございます。それで御承知を願いたいと思います。
  137. 田畑金光

    ○田畑金光君 いま一つ私がお尋ねしたい問題は、この中共に対する今後の日本政府の外交方針であります。この点について今後どのように進められて行こうとする御方針であるのか、と申しますのは、たとえば四月の初めに日中貿易協定を締結するために、中国から多くの代表団が見えたわけであります。その節外務省としては、日中貿易協定の締結に関しては、政府は最初からこれには関係しない態度で一貫されているわけであります。それで中国の通商使節団と日本政府との関係は、出入国の問題、あるいは身辺の保護の問題等のみを処理されているようであったわけであります。しかしこの日中貿易協定の締結に伴いまして、通商代表部の設置等の問題がやかましく論議せられまして、五月の中ごろの衆議院予算委員会における鳩山総理の答弁であったと記憶いたしまするが、領事の交換等も考えられることである、こういうような答弁があったわけであります。たまたま六月二十五日の新聞によりますると、園田政務次官は、衆議院の外務委員会におきまして、中共の残留邦人引き揚げの問題に関し、次のような発言をしておるわけであります。すなわち、中共からの引き揚げ問題は今まで三民間団体に委託していたが、今後は政府が責任を持ってやることに完全に意見が一致しておる、目下その具体的方法について検討中であり、近く中共政府に正式申し入れを行う決心である、このように述べられておるわけであります。このことは、初めて日本政府が中共政府を相手にして、両国間の当面の最も大事な懸案事項を解決するという申し入れだと考えるわけであります。引き揚げ問題は人道問題であるから、そういう政治問題とは別に離れている、こういう御答弁になるかもしれませんが、しかし少くともこういうことを申し入れられるということは、中共と日本との国交の前進のために私は喜ぶべき現象ではないか、こう考えるわけでありまして、現内閣は中ソとの国交調整についても、吉田内閣と違って、非常に弾力性のある、融通性のある態度国民に訴えられたことが、たまたま二月総選挙における第一党になったわけであります。こういうことを考えたとき、今後中共に対しまして、現内閣がどのような外交方針を持たれるかということは、国際的にも国内的にも大きな問題でありまするが、その点に関しまして外務大臣の所信を承わっておきたいと思います。
  138. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 中共に対する政府の方針は、私が本議会の劈頭において、外交演説に申し述べたことをそのまま行なっております。中共との関係は、まず貿易関係を進めて行きたい、そこで中共との貿易日本にとっては重要な意味を持つわけであります。これを日本の国際的の義務に反しない限り、でき得るだけ増進して行きたい、こういう方針をもって進んでおります。これが中共に対する日本政府の方針であります。これはあらゆる方面に好影響を持つものだと、こう信じておる次第でございます。
  139. 田畑金光

    ○田畑金光君 何らまあ前進していないわけですが、この園田政務次官の答弁は、事実このように、近く中共における在留邦人の引き揚げについては正式に日本政府から中共政府に申し入れをなされようとする方針でありますかどうか。
  140. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 先ほど読まれたのは、さようなことを検討すると園田君は言っておるのでありますね。そうあるでしょう。
  141. 田畑金光

    ○田畑金光君 こういうことになっておるのです。これは速記録ではありませんから……。
  142. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 新聞ですか。それは園田政務次官が言ったことは私は少しもこれを変えようとか、取り消そうということは考えておりません。その通りだと御返事して差しつかえありません。しかしながら、今そこにお読みになった通りに、さようなことを検討しよう、それは検討しております。しかしまだそういうことを申し込んでおりません。直接には申し込む機関が今ないのでございますから……。
  143. 田畑金光

    ○田畑金光君 それは検討ではないのです。検討の段階はもう終えて、近く中共政府に正式に申し入れを行う決意を持っておるという強い表現でありまして、実は五月二十五日の夕刊には各新聞ともこれを大きくトップ記事に取り上げて、あたかも現内閣の中共に対する外交方針が一歩前進したような印象を国民に与えておるわけであります。速記録を見なければ、私はこの内容について保証の限りでありませんけれども、今の外務大臣の答弁でありますると、何らの前進を見受けられるわけには参りません。
  144. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 私は前進も後退もしない、私の外交演説に申した方針をそのままやっておると申し上げておるのであります。園田政務次官の言明もその意味であります。しかしその問題については、今さようなことに大体向けたいと思って検討しておるということは事実であります。しかしまだそれをどういう方法によってそれをやるかということはまだはっきりした結論が出ておりません。しかしそれを前進と考えられるならば前進と考えられてもよろしゅうございます。しかし日本の外交方針は私の施政方針演説に述べたその範囲で、またそれよりも少からずそれを逸脱することなく進んでおるわけであります。
  145. 中川以良

    中川以良君 私もちょっとお尋ねしたいのでありまするが、実はただいま田畑君が御質問申し上げた通りに、本日本院におきまして、在外財産処理促進に関する決議が御承知のごとく満場一致をもって可決されました。私は発議者の一人といたしまして、この趣旨弁明をいたしたことは大臣も御承知の通りであります。そこで私がお尋ねをいたしたいことは、大体田畑委員が御質問をしておりますので、詳しいことは私は時間もございませんでしょうから御質問は申しませんが、ただ一、二ここでお伺いいたしたいことは、前内閣におきまして在外財産問題調査会を当初作って、それをさらに拡充して審議会といたしております。この間調査会においては十四回、審議会においては十一回、合計二十五回の調査並びに審議をいたしております。ところが現内閣になってから、私の承わるところでは一回もこれはおやりになっておらない、こういう点が引揚者諸君その他の方からながめまして、まことに政府は誠意がないじゃないか、まことに心もとないということがまず私は感じられると存じます。こういう点、私もどうも重光外務大臣は、この在外財産に対しまする御関心が薄いのではないかという点を非常におそれておりますものでありまするが、まずこの点がどういうふうになっておるか、大臣の御所見はいかようにおありになるかという点を御明示をいただきたいのであります。
  146. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 私は実はその委員会は現内閣において一度も開いておらぬというような御議論を本会議で伺いまして、ほんとうに心外でした。さようなことがあってはならぬと思います。もっとも今聞きますというと、それは少し事実でないようでございます。事実でないようでございますけれども、それは熱心にたびたび開かれたことでないことはその通りようでございますから、私はこれは非常に心外だと思っております。それはいろいろな事情もございましょう、しかしこの問題は私はまあ各個人々々は非常な重要な問題になるわけでありまするから、十分熱意を持って取り上げなければならぬ問題である。特に戦敗のあとを受けて、日本国民全体が協力一致して国家再建の道を進まなければならぬ今日、また進みつつある今日さようなことは私は非常に注意して取り扱わなければならぬ問題だと、こう思っておる次第でございますが、きょうの院議、決議の御趣旨はほんとうに尊重して、必要ある措置を検討して進んで行きたいと、こう私は思っております。この問題は直接外務省の問題というのもどうかと思いますが、関係のあることはむろんでございます。私はきょうの本会議の発言は、むろん政府を代表して発言しておったことでございまして、単に外務省関係の仕事のみについて言ったわけではございません。まあ私はそういうふうに考えておる次第でございますから、どうかまあ、この問題について私はちょっと自分の感じだけ言っても非常に大きなことである、また重大なことであると共に非常に複雑なことであると思います。どうかさような場合には十分皆さんの御協力を得たいと考える次第であります。
  147. 中川以良

    中川以良君 今の御答弁を伺いますると、この審議会の問題につきましては、私の本日本会議における演説によりまして、初めて大臣が審議会が活発に動いていなかったということをお知りになった事ほどさようにこの大きな問題に関しまして御関心がなかったということが、また逆に言えるのじゃないかと私は思います。しかしきょうの決議によって非常に御認識を高められて、御誠意のほどをお示しになっておりまする点を私もこれを了解いたします。今日わが国の財政がきわめて窮乏の困難な事態に直面をいたしておりますることはわれわれもよくわかっておりますので、何も私どもはその政府が補償する額の大小を論ずるのでなくて、この際何といたしましても、こういう気の毒な人に、国のために犠牲になった人に、国といたしましては誠意のほどを一日も早く示すべきではないかということを申し上げたいのであります。どうぞ一つような観点からお立ちになりまして、このせっかくできております審議会を一つ活発に御活用になって、大臣のりっぱな諮問機関として一つこれを御運用になりますように特に私は希望いたします。  そこで台湾の問題でございまするが、これも田畑君からお話しがあったのでございまするが、これは日華平和条約によりまして、第三条によって明らかに私有財産権は尊重されておる。まあ両国の話し合いにゆだねると存じます。しかも今日はもう平和条約を締結いたしてから日子もたっておりまするし、りっぱな芳沢大使も向うに御赴任になっております。その後この問題について一体どの程度の話し合いが進んでおりまするか、どういうふうにやろうという御方針であるかという点を、一つここに大臣よりお示しを願いたいのであります。
  148. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 今の台湾の問題でございますが、お話ように第三条、これは先ほどの御質問にもございまして、私も簡単にお答えをしたわけでございます。これはもう今ひっかかっておるのは実は向うの都合で時間を食っておることが事実のようでございます。こちらとしてはほんとうに急いでやりたいのでございます。そこで今後も私としてはあらゆる方法で督促をするようにして、そうして解決に少くとも近づいて行くように最大の努力を尽したいと、こういうふうに申し上げて御了承を得たいと思いますが、しかし一々のことについては、ここにちょうど中川局長がおりますから、十分の御説明をし得ることと思います。
  149. 中川融

    政府委員中川融君) 日華平和条約第三条に基きます財産権の処理の問題につきましては、一昨年以来、日本政府といたしましては機会あるごとに先方に督促いたしまして、早く会議を開こうではないかということを申し入れて来ておるのでございます。しかしながら、現実の問題といたしましては、先方は調査不十分である、調査がまだできないということを理由といたしまして、いまだにその交渉開始に応じていないのでございます。こういう事態ははなはだ遺憾でありますので、最近、これは先月でございますが、改めて芳沢大使に訓令いたしまして、正式の文書をもって再度交渉開始方を申し入れております。これは実際の話をするだけでは、申し入れをするだけではなかなからちがあきませんので、はっきり記録にも残しておくというので、必要あるごとに正式文書をもって公式に会談開始を申し入れております。さようにして今後も引き続き努力を続けたいと思うのでございます。何分先方はいろいろ先方の事情と申しますか、考え方からして、日本側の申し入れに応じていないのが従来の経緯でございますから、この問題はなかなか将来においても困難性があるのではないか、かように心配いたしております。しかし今後とも引き続き努力を続けて参る所存でございます。
  150. 中川以良

    中川以良君 台湾の問題は朝鮮と違いまして、ともかくも軌道に乗っている問題でありますから、努力次第でどんどん進捗する問題だと思います。どうぞ今お示しになったこと通りに一層努力をお願い申したいと思います。  もう一点でありますが、朝鮮の問題でありまするが、朝鮮のいわゆる私有財産というものは、一応アメリカ占領軍がこれを没収占領をいたしまして、それを今度は韓国政府に渡したように承わったのでありまするが、これは朝鮮との間が今日台湾と違いまして国交が正常化されていないという点がまことに残念でございまするが、今の私有財産の問題は、アメリカ軍と韓国政府、日本との間は、これは国際法規上から見ましてどういう状態になっているというふうにお考えになって、今後御交渉になるのでございましょうか、この点を一応明らかにしていただきたいと思います。
  151. 中川融

    政府委員中川融君) 御承知のようにサンフランシスコ平和条約によりまして、朝鮮につきましては、そこにおきまして米国軍当局でとりました措置日本がこれを承認するという規定があるのでございます。その解釈につきまして、日韓双方の態度が日韓交渉開始当初から食い違っておるのでございまして、韓国側はこれによって日本は在韓米軍当局のいたしましたいわゆるベスチング・デクリーの効果、日本の財産を全部取りまして、所有権を取って、これを初めは米軍に帰属せしめ、さらに米軍からこれを韓国政府に渡しました、あの措置日本が全面的に承知したのであるという解釈をとっておるのであります。これに対しまして日本側は、平和条約といえどもヘーグの陸戦法規その他国際法規に違反したことまできめることはあり得ないのである。また米軍当局も国際法に違反した措置はとり得ないはずであるから、従って平和条約にきめましたことも日本の所有権を奪ってしまったおけではない。いわば敵産の管理の一つの仕事として、そういうようなことをしたのであるという解釈をとりまして、所有権は依然日本に帰属しておるという法的解釈をとって対立しているわけであります。その対立は今日に至るまで解決がつかぬのでありまして、従って法理論として双方の見解が一致していないというのが現状でございます。
  152. 中川以良

    中川以良君 一衣帯水の間にある韓国と今日まだ国交が正常化されていないということは私もまことに残念に思います。どうぞ一つ韓国との国交の正常化につきまして、この上一そう一つ御努力をいただきまして、これら在外資産の問題を含めまして、韓国との問題は非常にいろいろ複雑なものがあると存じまするので、どうぞ今までより以上にこの点は御熱意を傾けて、早く一つ正常化を実現するように特に希望申し上げまして私の質問を終ります。
  153. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  154. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めて。
  155. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 賠償問題その他二、三の点についてお尋ねいたしたいのですが、先ほど田畑委員に対して、フィリピンに対する賠償問題等についてはすでに外務省からお話しがありましたので、私は重ねてそれをお尋ねしようとは思いません。ただ賠償の問題は日本の戦争の跡始末の問題であり、それからまた東南アジア諸国との親善関係を促進する意味においてきわめて重大な問題であるし、といって、他方日本国民経済と関連する問題があるわけであります。従って私は政府としては一体どういう方針賠償問題に臨んでいられるのかということをお尋ねしたいわけです。というのは、もちろん日本は敗戦国ですから、こちら側がそんなに強く主張し得ない立場にあることはもちろん了承するわけです。しかしまた日本国民経済との関連において、そうむやみやたらに賠償を払うということもできないのですから、といって、東南アジア諸国との関係考えればできるだけ払わなければならない。で、向うの新聞などによりますと、たとえばインドネシアの方では何十億という賠償要求するというようなことが前前から言われているわけで、最近の向うの新聞等を見ましても、インドネシアなどの主張は少しも変っていないというのです。今日賠償問題が解決しているのはビルマ一国だけでありますから、結局フィリピンや、あるいはインドネシア、あるいはヴェトナム、その他の国々の問題も起ってくるのではないかと想像されるわけですが、政府当局、特に外務大臣としてはこの問題について根本的にはどういう方針を持っておられるのか、それをお尋ねいたしたいと思います。
  156. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 賠償問題に対する根本方針というお尋ねでございますが、根本方針はどういう点を説明申し上げれば御納得を得るのか、ちょっと私にはわかりませんが、御承知の通りに、戦争損害ということを言えば、これはまあ実は非常に複雑であり、かつまたその計算は困難であります。困難であって計算の仕方によるというと非常に莫大なものになるわけです。そこで損害がこれだけあったということで、それを積み立てて賠償確認して要求をしたいという考え方賠償要求国にあることは御存じの通りで、今のお話しの筋もそういうところから出て来ておると思います。しかしこれに応じ切れないことは御承知の通りであります。サンフランシスコ条約に賠償条項があります。サンフランシスコ条約に賠償条項があるけれども、サンフランシスコ条約に調印をしておらない国にこれを持ち出すわけには理屈上は行かないのであります。行かないのでありますが、一応サンフランシスコ条約の賠償規定というものは、これは日本側の受け入れておる規定でございますから、日本政府としてはこれが根本の方針になって賠償交渉を進めておるわけでございます。このサンフランシスコ条約の賠償規定というものは、日本の負担能力ということを大きな標準にしておることは御承知の通りであります。これが一つのものであります。その負担能力から現物賠償というよう考え方を割り出しております。大体サンフランシスコ条約の賠償条項を、これをこちらの方針の基本として今日まで進んで来ておるわけでありまして、これを申し上げておきます。
  157. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 サンフランシスコ条約における賠償規定を原則として進めるということ、それはまあそれでいいんですが、ただ私がお尋ねしたいのは、たとえばサンフランシスコ条約において日本の負担能力ということを規定しているわけですが、負担能力についての評価は、賠償要求する国の側と、それから義務を果さなければならぬ国の側とではかなり私は客観的に違うと思うのです。そこで私は基本方針をお尋ねしたわけなんです。で、先ほど申しましたように、日本国民の経済の限界がありますから、つまり負担能力というものについて日本では大体このぐらいという一応の限界があると思うのです。その限界を外務省ではどのように観測しておられるか、評価されておられるか、単に負担能力というだけではきわめて抽象的であって、たとえば二十億要求されても負担能力と見ることができるかもしれぬし、あるいは八十億要求されても負担能力があると見られるかもしれないと思うのです。で、賠償の問題は御存じの通り、たとえばベルサイユ条約等におけるあのドイツの賠償の場合について見ましても、これは戦争による損害を全部負担させるということになれば非常に大きな額になり、そのためにとにかくあのドイツの賠償問題をめぐって十年以上の日数がかけられて、あれが論議されてローザンヌ会議であのような始末になったわけです。結局今政府としてはどのような具体的な方針を大体お持ちになっているのか、それをお尋ねしたいわけです。
  158. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 今の御質問によりますと、今日の日本賠償負担能力は一体幾らに判定をしておるかという質問に帰着するようであります。サンフランシスコ条約の精神によってやるということが基本方針であることは申し上げました。しかしサンフランシスコ条約に拘束されぬ国、たとえばフィリピンもそうであるし、ビルマもそうである、さような国は日本の負担能力はこれこれだといって自分みずからの検討をいたしておることも御承知の通りであります。フィリピンのごときも特に専門家を派遣して日本の負担能力を調査している。それが日本側の承認する負担能力とは差があるということは、これはもう御想像にかたからぬことであります。しかし、それならば今日本の負担能力がこれだけである、金目にして何億であるかということは私は今申し上げるわけにいきません。それをわれわれがこう判断しておるということになれば これは賠償交渉に非常に影響を及ぼしますから、それは申し上げるわけにいきません。しかしわれわれは日本の負担能力というものを相手国が勘定するような寛大な勘定はしていないということだけは、これは御推察にかたくありません。これはやはり何といっても一つのバーゲンであります。そこで日本の負担能力の少いことをいろいろ理由づけることもまた考えなければ、これは交渉次第でありますから、しかしそれが大体何が近づくところによって交渉がまとまるか、まとまらぬかということになるわけでありますから、これを押しつめてみるというと、大体双方の承認する負担能力というところに落ちつくわけでございます。わが方としてはできるだけこれを少くしたい、こう努力するのは当然でございます。まあさように少く少くと行くのが果して大局上いいかどうか、これは大きな議論もございましょう。しかし賠償問題の交渉それ自身としては、できるだけ有利な条件でまとめたいというのは、これは当然のことでございまして、さようにして推し進めて行かなければならぬと思っております。
  159. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 インドネシアの方では、御承知のように、向うの新聞などではかなり大きな額を日本要求したいという意向のように受け取れるのですが、これに対して外務省としてはどういう考えを持っておられるか。これはまあ外交上の今後の折衝のあった場合の支障になっては困るというような御意向も想像できるわけですが、政府の方針を一応承わっておきたいと思います。
  160. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 今日の現状を申し上げましょう。インドネシアの方で、ずいぶんわれわれとしては心外な数字を新聞等に報道していることは事実でございます。しかしインドネシアとの交渉は今日までまだ始まっておりません。何にも交渉というのは始まっておりません。ただ何と申しますか、責任のない探り合いというような程度でございます。向うもできるだけ早く賠償交渉に入りたいという意思表示はわが代表に非公式でございますが、たびたびいたしております。またわが方といえども賠償交渉に入りたくないということは、こういう態度はとっておるわけではございませんけれども、しかしインドネシアの賠償交渉はよほどまだ準備期間を必要とするよう考えます。またフィリピン賠償交渉などがまとまった後に進める方がいいんじゃないかと、こういうふうに大体は考えております。これも状況次第でございますが、そして向う考えと、こちらの考えというものが内々でも非常に離れておる。接近はしていない、こういう状態であることを申し上げておきます。さようなことでだいぶ時間がかかるだろう、こう思っておる次第でございます。
  161. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 次に日ソ国交調整の問題について一、二お伺いしたいのですが、これも先ほど田畑委員が触れた問題でありますから、私は田畑委員の質問をされた事項については、できるだけこれを遠慮いたしまして、次のような諸問題でお尋ねしたいと思います。もちろんその交渉内容については、先ほどの御答弁のように、今後の折衝を円滑に行う上から外務大臣としてはお答えにくい問題だと思います。しかしこのことだけは外務大臣でも御答弁できると思いますが、それは日本側でこの折衝に臨むに当って諸懸案をまず解決する、その上で国交の正常化の方向に持って行きたい、こういうようなことが当時新聞等でも報道されたし、外務大臣もたしか本会議の議場において諸懸案を解決することが先決問題であるというように発言されたと思うのです。諸懸案の中で戦犯問題等はこれは私はそう大して問題にはなるまいと思います。ただ人数等については、向う側とこっち側との意見がだいぶ違いますので、その点はあるいはかなり問題になるかと思いますが、それも今日は一応伏せておいて、懸案として出されている領土問題であります。領土問題につきましては、御承知のように、カイロ宣言であのような決定が行われ、さらにポツダム宣言において日本の本来的な領土というものがきまり、その線でサンフランシスコの条約が結ばれたと思う。日本は敗戦国なので、従って日本としては領土問題に対して果して政府が考えているように、先決問題としてこれを解決しなければ国交の正常化はできないのだというよう態度で臨むことがふさわしいのかどうか、こういうことが私は問題になると思うのです。その点について外務大臣の御所見をあらためてお伺いいたしたいと思います。
  162. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) その点もずいぶん今日まで論議を尽された問題だと思います。大体ソ連側の意向は、領土問題でも何でもあとに回して、国交を先に開いて、そして国交調節をやって大使館を開いて行こうと、こういうふうな意向であるのじゃないかと推測せられるのです。今あなたの言われた通り、これはそういうふうにいろいろ報道がきております。これはただ公報というわけじゃございません。しかし日本側としては、領土のごとき戦争によって派生した重要問題であります。戦争をやめて平和を回復しようというのでありますから、戦争によって生じた重要な問題を解決をして初めて平和が回復されるものだと、こういうふうに考えております。そして日本側は領土問題を初めとして諸多の問題について今これを日本側の主張として交渉の題目に供しておるわけです。そしてこれに対してソ連も全面的にソ連の意向を表示しておるわけでございます。私がこれが今交渉段階であって、これをどういう工合に双方主張を維持し、もしくは必要ならば妥協をして行くかということは将来の問題でございます。日本側としては、日本側の提供した重要な問題、戦争によって生じた重要な問題、平和を回復させるためにはそれらの問題を解決して進んで行くべきであるという態度は変えるわけには行かぬと思います。またそれらの重要問題について、おおよその目鼻もつかずして平和条約というものはちょっと想像ができません。さようでございますから、今交渉の段取りに入ったというわけでありますから、政府といたしましては、繰り返して申し上げます通りに、これらの日本が正当と信ずる主張はあくまで貫徹し、実現するように努力をしたい、こういうことを申し上げなければならぬと思います。その努力がどこまで行って実現してどうなったときにはどうするかということは、今日これを想定して公開の席で議論をするということは私は早計だと考えます。私どもとしては、自分の主張するところを十分に主張して、これを貫徹することに努力を集中したい、こう申し上げたいのでございます。
  163. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 日本側として主張すべき点は主張するということには私は別に異論はない。むしろ日本側として堂々と主張してかまわぬと思うのです。私がお尋ねしたいのは、領土問題について、カイロに宣言、あるいはポツダム宣言等に規定され、それがサンフランシスコ条約の中に取り入れられたこの線を外相としては尊重されて、その上で領土問題を解決されようとしておるのか、そうではなくて、カイロ宣言等に発した日本の本来の領土に関するあの条項は、この場合はそう問題にする必要はないのだというので、領土問題をあれと切り離して解決されようとしておるのか、その点をお伺いすればけっこうと思います。
  164. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 簡単に申し上げます。その問題を今中心にしてお答えしたつもりでありますけれども、ごく簡単に申し上げます。カイロ宣言、ポツダム宣言、サンフランシスコ条約、これらによってソ連と日本との間の領土問題は少しも正式に解決をいたしておりません、解決を見ておりません。従ってかような重要な問題ははっきりと解決をつけなければならぬと、こう考えております。
  165. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 もう一つ領土問題について、外相はヤルタ協定についてどういう考えを持っていられるか、簡単でよろしうございますから、これをお答え願いたいと思います。
  166. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) ヤルタ協定は日本として何も関知するところでないのでありまして、日本としてはこれを無視していいと思います。
  167. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 なるほどあのヤルタ協定には日本は少しも関与しておりません。しかしたとえばポツダム宣言にしましても、あるいはカイロ宣言にしましても、これまた日本が関与してないと言えば言えると思います。ただポツダム宣言の場合は、あれが日本の降伏の場合の条件になるということにおいて日本としては尊重しなければならぬ。しかし一方ヤルタ協定にしましても、連合国の主要な国々があの協定を行い、しかも協定の成立の過程には、御承知のようないきさつがあったわけであります。たとえばバーンズ前国務長官等のしるしている文書等によっても、あの間の事情ははっきりしておると思うのです。日本が関与しないから、あれは無視してもよいということになる理論的な根拠ですね。それをお伺いいたしたいと思います。
  168. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 私は日本の利害関係がある事項を、他の国が日本の承認を得ずして勝手にきめることを、これを日本は有効と認めるわけにはいきません。これは日本は断固として、そういう外国日本の利益の不当な侵害を認めるわけにいかぬと、私はこう考えております。
  169. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 最後に日中貿易問題についてお尋ねいたします。これも田畑委員が大体質問されておりますので、それと重複しない点だけをお尋ねしますが、御承知のように、五月の初旬に貿易協定が結ばれました。しかしあの協定が有効に実施されるために、政府側の措置を必要とする部面が非常に多いわけです。たとえば通商代表を交換する問題であるとか、あるいは決済の問題にいたしましても、政府側の措置を必要とする部面がたくさんあると思うのです。政府側の措置が今日もって行われていないために、日中間の貿易が阻害されている面が相当あると思うのです。それに関して政府としてはどういう所見でいられるのか。たとえば通商代表交換の問題にしても、あるいはまた決済の問題等についても、どのように現在政府の側としては考えておられるか、それをお尋ねしたい。
  170. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 中共貿易は、民間の相互の貿易はこれは助長したいという考えを持っておることは先ほど申し上げました通りであります。その意味において、政府はあの民間代表の契約ですか、あれにできるだけの協力をしたい、助力をいたしたい、こういう方針でおります。しかしそれはあの約束に書いてあることに全部協力を与えるという意味ではございません。政府は民間貿易として認め得る限りにおいてこれは助力をいたします。それは日本のため利益であると私は考えております。中共の貿易日本が負担しておる義務の範囲内において、国際的な義務に反せざる限り、これをやるということは、少しでも貿易が進めばそれだけ日本の利益であることは事実でありますから、それはやりたいのであります。しかしそれかといって、それ以上にこれを措置するということも困難であります。たとえば通商代表部をおいて、これに外交官の特権を与えるということがここに書いてありますが、それはできません。外交官の特権を与えて、そして中共代表部を正式に認めるというような処置はまだできません。さような時期が来るかもしれません。今世界の情勢は大きく動いております。さような時期が来るかもしれません。しかしそれはその時期が来たときにやらなければ、非常にこれは故障が多い、それについて失うところがあまりに大きい。だからそういう突き進んだことはできません。しかし国際的義務に反せざる限りにおいて中共との貿易を進めて行くということは、私は他の国にも異存があろうはずがない、また日本としてこれは進めて行かなければならぬ、こう考えております。
  171. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 政府としては、できるだけ貿易を促進したいという御意向のようですが、しかしたとえば通商代表部の交換の問題、外交官の特権を与えることができないというお話でありますが、現実の問題として日中間の貿易が阻害されておるのは、そこに非常に大きな問題点があると思うのです。外交官の待遇を与えることに相当の疑義ありとするならば、何かそれに準ずるような便法を考えるということも、私は当面の課題としてできるのじゃないか、そういう点については何か考慮されておる部面があるのか、この点をお尋ねいたします。
  172. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) そういう点も十分考究いたしております。つまり私の説明する通り民間貿易の促進ということでできることは、一ついわば最大限に実はしたい、こう思うのであります。しかし行き過ぎたことはこれは非常に抽象的ではありますが、いろいろなことに差しさわりがあって非常に受ける損害の方が大きい、だからそれはやらぬ、こういうことをはっきり申し上げておるわけであります。それから先ほど支払いのことのお話がございました。これらのことは実際何かいい考案が見つかって、そして差しさわりのないことができるなら私はそれもいいと思います。今しきりにそういうようなことは考究をいたしております。また考究された部面がたくさんあります。私は今それを全部申し上げるだけ私の頭は整っておりません。そういうことはできるだけのことをして、これは民間貿易を進めて行きたい、こういう考えでおります。
  173. 野本品吉

    野本品吉君 議事進行について……。外務省設置法の一部を改正する法律案に関する質疑は、一応この段階において終結せられるようにいたしたらいかがかと思います。   〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  174. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) お諮りいたします。ただいまの野本君の動議ように、外務省設置法一部を改正する法律案につきましては、質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  175. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) それではさように決定いたします。  本会議が始まっておりますので、午後七時まで休憩をいたしまして、再開直後に本案の採決をいたしまして、引き続いて定員法の残った審議を続けて行きたいと存じます。  午後七時まで休憩いたします。    午後六時十分休憩      —————・—————    午後七時四十一分開会
  176. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 休憩前に引き続きまして、ただいまから内閣委員会を再開いたします。  外務省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案につきましては、質疑も終了いたしましたので、ただいまから討論に入りたいと存じます。
  177. 上林忠次

    ○上林忠次君 審議中にも私申し上げましたように、今回、外務省設置法賠償部と移住局というものができることになりまして、私はこの部局がますます強化され、また運営がますます発展することを私は祈っております。そういうよう意味で賛成するのでありますが、特に移住局の設置に対しまして、これまで日本の移民がなぜ発展しなかったかということを十分考えていただきまして、この移住局の運営を強化してもらいたい。また、ますますこの移住局の仕事が大きくなることを祈っておるのでありますが、かような移住局が強化されたということは、ただ昔の移民のあの継続でなしに、何とかしてこの国際関係の民族間の融和をはかり、また日本の狭い地域の中におるたくさんの人間が、これから昔のようなああいうような貧弱な移民じゃなしに、どんどんこれから出て行くという一つの大きな芽のはえぎわにこれからなるのでありまして、昔のような失敗をしないように、いやしくも昔のあのような発展しない移民ならば、私はやめた方がいいんじゃないか。ペルーには国際関係が悪くて、かつての移民は失敗した、あるいはカリフォルニア移民が失敗したということで、全部閉鎖されたのでありますが、かような昔の継続の移民ならばやめた方がいいんじゃないか。今回できました移住局で移民の選定、訓練、またこれを活動しやすいように政府がバックアップするということに万全を期さなければならぬと私は考えるのであります。この陰うつな国内の国民の気持、これを明るくして明朗にさせて、私は海外にどんどんこれから発展して行くという気持をこの際作りまして、これが大きな原動力となって国民全体が明るい気持で働く、極端な悪口を申しますならば、今、日本国民は少し気持が弛緩しているのじゃないか。一生懸命働いている人間が少いのじゃないかというところまで極言したいのであります。かような状態を見ますときに、何とか若い者の気持、また失業している国民の気持、全体を引き締めてやって行くためには、この移民の発展が大きな一つの力になるのじゃないか、そういうよう意味で、昔の、向うへ出て行って少しでも人口緩和に役立たせようというような、さような人口緩和に役立たせようというような簡単な従来の式の移民でなしに、これでもって日本国民の気持をうんと働く、おのおのの職場において精励するという緊張した気持に向けて行くために大きな役割をこれで果して行きたい。従来の移民がなぜ悪かったか、なぜ失敗したかということを十分考えていただきまして、特に私従来の移民の失敗の状況を見ますときに、ただ追いやりっ放しで、だれもこれを援助しない。またこれまで行った移民が、訓練を受けないために向う国民感情と同化しない。あるいは習慣風俗に同化しないというようなことが一番のこれまでの移民の失敗であります。一攫千金を夢見て、いつかは日本に帰れるというようなことのないように、向う国民と一心同体となって、向うの骨になるというような気持の移民をしていただきたい。それがためには、移住局の皆さんの大きな御指導を得てりっぱな移民を扶植して行くということをお願いしたい。今回は特にブラジルがおもな行き先でありますが、もっと近い、運送しやすい、あるいは交通しやすい東南アジアの方に将来は特に力を入れていただきたい。かような移民の訓練の必要なこと、従来の失敗を十分反省していただきまして、かような、ますます日本国民が他国民から排斥される、擯斥されるというようなことの移民にならないように、明るい将来の大きな移民を来たすような指導をしていただきたいと考えるのであります。かようなことを御注意申しまして、私はこの案に賛成するものであります。
  178. 野本品吉

    野本品吉君 大体討論も終ったようでありますから、討論を終結したものとして、直ちに採決されることの動議を提出いたします。
  179. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 野本君から、討論をこれにて終結したいという動議が出されておりまするが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  180. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御異議ないと認めます。  それではこれより外務省設置法の一部を改正する法律案の採決に入ります。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  181. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 全会一致でございます。よって本案は全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第百四条によって本会議における口頭報告の内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成、その他事後の手続につきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  182. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御異議ないと認めます。よってさよう決定いたします。  それから報告書には多数意見者の署名を付することになっていますから、本案を可とされた方は順次御署名願います。   多数意見者署名     松原 一彦  小柳 牧衛     田畑 金光  野本 品吉     木村 篤太郎 中山 壽修     中川 以良  上林 忠次     堀  眞琴  加瀬  完     千葉  信  木下 源吾     長島 銀藏
  183. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ちょっと速記をとめて下さい。   午後七時四十九分速記中止      —————・—————   午後八時二分速記開始
  184. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めて下さい。  本日はこれにて散会いたします。    午後八時三分散会