○国務大臣(重光葵君) それじゃこのままで失礼いたします。
今の御質問は移民に関することであったと思います。バンドン
会議において平和十原則というものができました。これは
お話の五原則というのは、周恩来、インドのネール総理等の主張したものでありまして、いかにも何か宣伝に使われた
ような感じがいたしたわけでございますが、バンドンにおいてはそういう思想もむろん入れて十原則というものをこしらえました。その十原則のうちで
一つの重要な点は、
日本代表の主張であったのでございます。これを原則として、宣言としてこしらえ上げたのが、
日本代表が非常にあずかって力があるのであります。初めは宣言にしないという
ような議論がありましたけれ
ども、わが方の主張によって非常にこれが宣言として重きをなしたわけでありますが、その十原則、これは平和十原則と言われても少しもさしつかえない非常に平和主義の宣言でございます。そこでこういう宣言にそれではなぜ
日本が非常に力を入れたか、バンドン
会議で特に力を入れたかと言いますと、
日本の今日の海外発展は、御承知の
通りにまず第一が経済発展でございます。その中に移民の問題を含めてもよろしうございます。御承知の
通りに、移民を
外国に出すということは、戦前ではほとんどこれは問題にならぬ
ような
状況で、これは非常にきらわれておった。その原因はしばらく別として、特に
東南アジア方面に移民を送り出すということは、
日本の政策に対する非常な猜疑心からこれは事実できなかった。そこで
日本に対する猜疑心、すなわち
日本の侵略政策に対する猜疑心でございます。これを取ってのけなければ
貿易もできない、すなわち移民もまたこれできないということで、この猜疑心を取ってのけるためには、あらゆる機会に、
日本は侵略政策を持っておらぬのだ、
日本は平和政策で行くのだということを
外国に浸透させなければならぬわけであります。それでバンドン
会議においても、特に
日本の代表も重きをおいて力を注いだのはその点であります。それでありますから、このバンドン
会議の平和宣言というのは、たしかに国際間の猜疑心を取りのぞき、かつまたあつれきを少しでも少くするという方向に向いておることは事実でございます。また
日本はそう向けたいと思ってこれに参加したわけでございます。しかし今日の国際間において、一足飛びに国境を突破するということができぬのみならず、猜疑心を全部払拭して行くということもこれまた不可能でございます。そこでバンドン
会議で平和十原則が採用せられたから、すぐこれに参加しておる国国が、
日本の移民を平和移民としてすべて歓迎するかというと、それはそうは参りません。これはいろいろ手続を経て、
日本に対する猜疑心を取りのぞいて、そして漸次に進んで行かなければならぬのでございます。今日においても、
相当東南アジア方面で
日本の
技術家が歓迎されるとかいう
ような現象が起っております。農業に対する
技術、漁業に対する
技術、こういう
技術を入れたいといって、まあこれを移民の方から言えば
技術移民と申しますか、そういう
ようなふうな言葉で言われておりますが、さ
ようなこともでき得るのでございます。これはしかし漸進主義で行かなければならぬ。
向うの了解を得るに従って進めて行くというふうにして行かなければ、すぐ故障が起ります。そこで猜疑心をのぞいて、
日本の政策を十分に、正しい政策を強く進めて行って、経済、外交、移民も含めた外交を進めて行きたいと、こう
考えておるのでございます。しかし幸いなことには、移民はアジア方面以外に、たとえば中南米に対する移民は、これは
受け入れ態勢が非常によくなりました。
日本人の評判がいいのでございます。そこで中南米方面においては、今、
日本移民は歓迎される
状況になっている。このいい
受け入れ態勢の時期において、
一つでき得るだけ
日本の移民を、平和移民をこういう土地に送り出したいと思って、まあ今回もその
施設の一部分として、若干の予算を成立せしめることに努力をしておるわけでございます。中南米における移民は、
相当将来も開き得ることと
考えております。移民に対するお答えといたしまして、以上の
通りに御
説明をいたします。