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1955-06-16 第22回国会 参議院 内閣委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月十六日(木曜日)    午前十時三十九分開会   ―――――――――――――    委員の異動 六月十五日委員松本治一郎君及び加瀬 完君辞任につき、その補欠として荒木 正三郎君及び三橋八次郎君を議長にお いて指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     新谷寅三郎君    理事            植竹 春彦君            宮田 重文君            木下 源吾君            松原 一彦君    委員            井上 知治君            中川 以良君            中山 壽彦君            上林 忠次君            高瀬荘太郎君            野本 品吉君            千葉  信君            田畑 金光君            松浦 清一君            三好 英之君            堀  眞琴君   委員外議員            八木 幸吉君   国務大臣    国 務 大 臣 杉原 荒太君   政府委員    外務政務次官  園田  直君    外務省参事官  矢口 麓蔵君    外務大臣官房長 島津 久大君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国務大臣私企業等への関与制限  に関する法律案八木幸吉君外三名  発議) ○外務省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○国防会議構成等に関する法律案  (内閣送付予備審査)   ―――――――――――――
  2. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  まず、国務大臣私企業等への関与制限に関する法律案議題といたします。  本案は、参議院議員八木幸吉君ほか三名提出にかかるものでございます。提案者から提案理由説明を伺いたいと存じます。
  3. 八木幸吉

    委員外議員八木幸吉君) ただいま委員長からお話のありました国務大臣私企業等への関与制限に関する法律案提案理由説明させていただきます。  最初に、法律案を朗読させていただきます。    国務大臣私企業等への関与制限に関する法律   内閣総理大臣その他の国務大臣である者は、商業工業金融業その他の営利目的とする私企業(以下「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体役員顧問評議員その他これに準ずる職を兼ね、自ら営利企業を営み、又は報酬を得て営利企業以外の事業を行う団体役員顧問評議員その他これに準ずる職を兼ねてはならない。    附則   この法律は、公布の日から起算して一箇月を経過した日から施行する。  これが法律案文でございます。以下その理由説明させていただきます。  本法律案目的とするところは官紀の振粛にあります。内閣総理大臣その他の国務大臣は、わが国の行政府におきまして最高の重責にあり、その政治的活動は、わが国商業工業金融業等私企業には申すに及ばず、私企業以外の事業にも、有形、無形の大なる影響を及ぼすことは言を待たないことであります。もし、これらの人々がこれらの事業関与いたしておりました場合には、その公正なる職務を遂行する上に世上の疑惑を招くおそれが多分に予想されるのであります。いわんや官紀がややもすれば乱れんとしている今日におきましては、国務大臣のごとき要職にある人は、いやしくも世上り疑惑を招くがごとき私企業等関係を一切断ち切って、その行動の公正を期するはもちろん、その本務に専念することの妨げとなることは一切これを排除すべきであります。  これが本法律案提案した理由であります。どうか皆さん方慎重御審議の上御賛成を賜わらんことをお願い申し上げます。  なお、この機会に、この法律案の在来の経過について一言つけ加えさしていただきたいのでございますが、昨年の夏の第十九国会におきまして、これと全然同一の法律案内閣委員会におきましていろいろ審議をしていただきました。満場一致で本委員会を通過し、また本会議も大多数をもちまして通過いたしまして衆議院送付をされたのでございます。しかるに、不幸にしまして衆議院送付されましてから、審議の日数が足りませんでしたがために、衆議院におきましては審議未了になったのでございます。本院におきましては、大多数の御賛成を得てほとんど満場一致に近い数字をもちまして通過をいたしておる次第でございます。しかし法律になりませんでしたので、再びここにこれを提案をいたしました。皆さん方の御賛成を得て、ぜひこれを法制化いたしたいというのが提案者の願いでございます。どうかよろしくお願いいたします。
  4. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  5. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めて。次に、外務省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案に対しまして御質疑のある方は順次御発言を願います。外務省からは外務大臣官房長島津君がお見えになっております。
  6. 野本品吉

    野本品吉君 提案理由説明で二十九年度の状況等は一応数字でわかっているのでありますが、終戦後の日本海外移民経過実情、それから今後の構想と申しますか、お考え、それについてちょっとお話しを願いたいと思います。
  7. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) お答え申し上げます。戦後におきまする移民の送り出し状況でございまするが、御承知通り、三十七年に初めて送り出しまして、二十七年にはわずかに五十七名でございます。それがその翌年の二十八年に入りましてから千五百人にふえまして、それから昨年度は三千七百人という数字が出ております。その送り先、行きました国は主としてブラジルでございまするが、そのほかにいわゆる自費渡航と称しまして、政府からの補助を得ないで参りましたものが二千人ばかりございます。合わせまして約七千から八千くらいの人間に達しておるのであります。言い方が前後いたしまするけれども、個々に参りまするのと、これは呼び寄せ移民でございまするのと、集団的に参りまするのと二色ございます。これが戦争後の今日までの状況でございます。それから今後の構想と申しまするか、についての御質問に対しましては、御承知のことかと察知いたしまするが、最近われわれの努力も若干報いられまして、中南米その他におけるわが国移民に対する受け入れ状況が逐次好転しつつありまして、ブラジルのみならず、アルゼンチンとか、それからボリビアドミニカ、その他の国におきまして日本移民を歓迎しておりますので、今年度は約六千人ばかりを送り出し得る予定であります。六千人という数はどこから出ますかと申しますと、これは渡航費政府で貸し付けておるのでありますから、その方面からの制約がございまして、予算の関係から六千人という数になるのであります。もしそういったふうの予算的な制限がございませんならば、はるかに多くの、数万の人間は送れると思っております。これが中南米に対するいわゆる構想とでも申し上げますか、そのほかにわれわれが特に力を入れておりまするのは、何とかして東南アジア方面にも送り出したいということであります。しかしこれは国際関係上、ほかの国を刺激する理由もありますので、たとえば国際連盟の名のもとに送り出すとか、これは佐藤尚武参議院議員のお考えでもあるようでありますが、そういったものによって送り出したい。あわよくば国連にも入りまして、国連移民に関する機構がございますが、そういう方面にも入りまして、その入ることによって、財政的な支援を得て大規模に送り出したい、こういう工合考えております。  それから話がはなはだ前後いたしまするが、構想一つと申しますか、従来は主として農業だけの、いわゆる竹槍式移民でございましたけれども、今後は機動的なと言いますか、技術と資本を持ちました工業移民企業移民と申しますか、そういったものを中心として、その方面にも力を入れて送り出したい、かくすることによって、よりよく効果を簡単に上げるようにしたいと、こういう工合考えております。
  8. 野本品吉

    野本品吉君 今のお話で、農業移民だけでなしに企業的な性格を持った移民もしたい、これは大へん移民に対する考え方の進歩だと思いますが、それと関連のあることで一つお伺いしておきたいことがあるのですが、それは農業に従事するものだけでなく、そういう単独な職種と言いますか、そういう送り方でなしに、外地において一つの小さな社会単位ができるというようないろいろな人を同時に送るということが必要であるということを、私の友人のブラジルに長くおりましたものがよく言うのですが、特にサンパウロ付近ではそういうことを必要と認める段階になってきたということを言うのですが、そういうことについて何かお考えになっていますか。
  9. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) 社会単位と申しますると……。
  10. 野本品吉

    野本品吉君 つまり名前でなしに、それに付随して一つ農村部落が形成されるような、いろいろの仕事ができるという……。
  11. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) 移民政策上、非常に注意しなければなりませんことは、いわゆるキストの結成と申しまして、日本部落のそのままをブラジルならブラジルに移転せしめるということは、これは一番警戒を要することでございまして、ブラジル側でもこれを一番排撃しているのであります。でありますから、日本人だけ一カ所に集まって、日本人町、日本人部落を作るというようなことは極力これは避けなければならないし、これをやったんじゃ移民政策というものは長く続かないというような状態にありますので、その方がどういう意味社会単位ということをおっしゃったのか知りませんが、おそらくは、想像いたしまするのに、たとえば今現実ボリビアなどに起っておりますが、一つ砂糖企業を送り出します。プラントを送り出します。それに伴いまして技術者がついて行きます。技術者のもとに農民がついて行きます。その農民砂糖を作ります。その砂糖を作って原料を会社に売り込んで、日本人の技師が砂糖に変えてというように、技術農業と一体化して行くというようなことをお考えになっておったのじゃないかと思いますが、これは今のドミニカボリビアにおきましては、そういった日本人だけでも、日本人だけとは申しませんが、日本人が主体となっても、相当、数が多くても注目を引きませんが、ブラジル、特にサンパウロにおきましては、その中には相当数ブラジル人を入れませんと、要するに日伯混淆形式でやりませんと注目を引きやすいから、相当数ブラジル人を入れなければならないと思います。そういったお考えだろうと思いますが、それならば、現在われわれが考えておるところとよく合致するアイデア、思想でございますので、できるだけ推進いたしたいと考えております。
  12. 野本品吉

    野本品吉君 今、日伯というので思い出してお聞きするのですが、従来日伯協会というのがございましたね。それから別にまた海外移住協会連合会というようなものがあって、各府県にもその組織がある。そういう日伯協会というようなものと海外移住協会というようなものは、大きなねらいとしては、一つのところをねらって活動されておると思うのでありますが、そういう団体活動統制と申しますか、調整といったようなものはとれておるのでございますか。
  13. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) 今申し上げましたいわゆる私どもから言いますと、外郭団体とでも申し上げますか、そういうものがもっとほかにもたくさんございまして、永田稠氏の経営しておる力行会どもその一つでありますが、最近移民学校ども新たに登場してきております。これは厳格に言いますると、移民保護法によりまして、外務省の認可を得ませんと、その活動ができないことになっております。実は今国会移民保護法を全面的に改正いたしまして提案するつもりでございましたけれども、間に合わなかったものでありまするから、この次の国会にぜひ出しまして御審議を願いたいと、こう考えております。その内容は、こういったものの統制強化をはかるとともに、その活動の便をはかりたい、かかるところにねらいを置きまして法案を整備して行くつもりであります。特に海外協会連合会等は、御承知通りわが移民政策のバックボーン、背骨をなしております。これの強化はつきましては、今の移民保護法の有無にかかわらず、今から着々この準備と強化策に乗り出さなければならない時期に来ておるのであります。御承知かと思いまするが、新たにアメリカからの千五百万ドルの借款問題にも関連しまして、この海外協会の存置ということも問題になっておりますので、これは別途に、日伯協会とは別に強化策を講ずる考えであります。
  14. 野本品吉

    野本品吉君 従来一般には、こういう仕事政府の手でやるよりも、民間の有力な団体を育成強化して、それらの民間団体の連絡のもとに活発にその仕事をさせるということの方が成績が非常に上ると一般に言われておりますし、また私どももそう思っておるのでありますが、今度の考え方ですね、これを官庁事務中心としてやるというようなことでなしに、今お話のありましたような民間団体助成強化を通して、この仕事を全面的に展開して行く、こういうお考えであるのですか、どうですか、その辺を伺いたい。
  15. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) まことにその通りでございます。実は海外協会の存置問題につきましても、諸説ふんぷんとしておりますが、われわれの信念といたしましては、移民政策というものは、これは民間団体中心となってやるべきであるという固い信念を持っておりまして、民間団体でありまするところの、この海外協会を育成して行きたいという強い希望を持っております。今問題になっておりまする千五百万ドルの受け入れ機構につきましても、あるいは公社といい、あるいは会社といい、種々意見がございまするけれども、われわれが終始一貫会社案を支持してきましたのも、こういった移民政策というものは、民間団体中心になって遂行しなければ永続性を期し得ないという、われわれの強い信念から出発しているつもりでありまして、野本委員からのお説は全面的に同感でございますから、極力その線に沿って進みたいと思います。
  16. 野本品吉

    野本品吉君 大へんどもも共鳴を禁じ得ない御意見を伺いまして喜ぶものですが、なおそれと関係いたしましてお伺いしたいのですが、この従来の移住者募集と申しますか、それが農林省系統機関を通じて行われておったのです。従ってその当然の結果といたしまして、移民の問題が農業関係のものだけに片寄るというような傾向を自然生じてくると思うのですが、ここで先ほど来お伺いいたしております外務省考え方と、末端の農民を対象としたというような考え方との間に多少のひずみがあるように感ずるのですが、そういう点で、この海外移住事務に関する行政と言いますか、指導一貫性を持たせるといったような意味におきまして、外務省というものがもっとそういう方面に乗り出していいんじゃないか。なお地方の募集実情を見ますと、それはむろん受け売りとしての海外事情に関する知識は持っておりますけれども、直接海外の問題にタッチしております外務省人たちの話と、それらの人たちの話では相手に与える影響相当違うと思う。そういう点について何かお考えになりませんですか。
  17. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) 先ほど申し上げました通り、現在までの移民はほとんど九九パーセントまでこれは農民でございましたので、農業に経験のあるものということが移民の重大なる要件であったのでございます。従いまして、その方面に最重点をおかれてきたのでありまするが、今後、ことしから今の米銀借款もできそうでありますし、改めて工業関係移民を送り出すこととなりますれば、おのずからやり方も変ってくることと信じております。しからば、いかなる場合に変るかと申されますけれども、まだ粗案でございまして、まだ発表する段階に至っておりませんけれども、従来の農民中心としただけのものじゃございませんで、工業関係のものを最も適切なものを選んで送り出すところに眼目をおいて諸般の施策を進めて行くつもりであります。
  18. 野本品吉

    野本品吉君 そういうように移民問題に対するねらいが、従来のような狭いところから相当幅の広いものになってきたということになって参りますというと、おのずから移民の問題についての啓蒙と申しますか、宣伝とか、そういうようなことにつきまして、もっと積極的におやりになる必要があるかと思うのですが、今までの私の知っております実情におきましては、そういう点について非常に欠けていると思うのですが、いかがでしょうか。
  19. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) お説まことにもっともでございまして、今回移住局案提案いたしました最大の理由一つも実にその点にあるのであります。いずれにせよ、わずかに二十人そこそこの移民課というようなものでは、とうてい対外外交、とうてい対内宣伝啓蒙というようなことは、ましてやそれに基礎的な仕事もございますので、できませんので、何とかしてこれを強化するために移住局を置きたいというのが今回の念願であったのであります。幸いにしてこれができますれば、ただいま野木委員のおっしゃいます通り、大いに啓蒙宣伝に力をいたしまして、間違った思想考え方を持って移民することなきように万全を期するつもりであります。
  20. 野本品吉

    野本品吉君 それからもう一つお伺いをいたします。これは一つ私が関係をし、また苦労させられている問題に関連して思いついておることなのですが、実は私の県の利根川の上流で、現在建設省で藤原というダム建設をしております。このダム建設の過程におきまして、狭隘な山間の部落百戸ほどが水没いたしました。なお土地相当水没いたしましたが、そこの相当多数の人たちが移住しなければならぬ。そこでいろいろの問題について土地の人と話し合っておるのでありますが、まあ私は猫の額のようなところばかりで生きることを考えないで、眼をもっと広く見なくちゃならぬというので、実は群馬県出身の方の手をわずらわしまして、向うの映画や何かを借り寄せまして、その人たちにこういう広い世界もあるのだということを見せておるわけです。で、だんだん関心を持ってきておりますが、これは単に私の県の藤原ダム建設の問題だけではありません。今後ずいぶん多くのダムが全国的に各地でできる。そういうような場合にも、ダムのできるようなところは狭隘な峡谷でございますから、従ってもうどこへも行き場がない。そこで私はこのダム建設による水没者海外移民の問題というのが実は頭に浮んで参ったわけであります。で、このダム建設によります水没者は、どういうふうにして将来生きて行かなければならぬかというような深刻な問題に当面いたしまして、全国的な一つ組織等もできております。私はまあそういうような組織の代表的な人ですね、そして人物においても立派な、将来そういう問題の指導者として適格性を持っておるような人に、今外務省考えておるようなそういう現地視察を国の援助によってさせるというようなことが、現実にそれが効果を表わすか、表わさないかは別の問題といたしまして、非常に政治としてあたたかい政治になりますし、またそういう人たちに物事を広く考えさせるということだけでも非常に効果があろうと思います。私はこの問題をぜひ移民の問題と結びつけて、そういう組織の中堅になっております代表者現地視察というようなことを外務省は当然企画すべきであると、こう考えておりますが、いかがでしょうか。
  21. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) ただいまのお話しごもっともでございまして、現に利根川の周辺のみならず、静岡県の佐久間ダム、それから青森県の何とかダム、それらから同じような陳情と言いますか、お話しがございまして、現実に水没されるところの人たちともしばしば私は会見しておりまするが、何とかしてこれらの人たちは優先的に最もいいところに行っていただきたいという強いわれわれの希望を持っております。しかして、これらの人たち代表者を行く前に現地を見させるということの案についても私考えてみたことがございます。と言いますのは、何と言っても百聞一見にしかずでございまして、移民政策ということは、移民する者はみな一つのイリュージョンを、一つの夢を持っておりまして、幾らはたの者が何がしの判断の資料を提供いたしましても、自分の夢と合致するものだけ採用いたすのでありますから、行ってみると、聞いたところと現実の見る姿とは違ったという不平をしばしば聞くのであります。従いまして、われわれといたしましては、一人でも多くの方々に現場を見ていただくということが一番よき宣伝であるということを信じまして、機会あるごとに行っていただくような取り計らいをしておるのでありまして、具体的に申し上げますと、各地海外協会というのがございまして、その海外協会方々移民監督ないしは移民助監督という名前向うに行っていただくのであります。この移民監督ないしは助監督のお名前を差し上げますると、船賃だけは事実上お支払いを願わなくても行ける。ただ向う飛行賃とか、上陸いたしましてからの経費はこれは払うのでありますが、これは大体の場合、今までの例によりますと、当該府県庁において負担されております。そういたしますると、そう必ずしも大きな金でなくて見てこられるというのが今までの実情なんであります。で、ただいまの御提案をいかにして実行するかということになりますると、結局はその助監督ないしはそういうような形式で行っていただきますと、船賃の問題は一応かりに解決できるといたしましても、上陸してからの費用の問題になるわけであります。で、費用をどこから出すかという問題でありまするが、遺憾ながら移民局が持っておりまする約六億の中の大部分がこれは渡行費でございまして、残りの一億ばかりが全国で現地受入機関の整備からその他をやっておりまするので、この中から捻出するということは非常な困難がありまするけれども、その問題さえ解決できれば、船賃の問題その他はわれわれの方で整備できると思います。お考えに対しましては、われわれは全面的なる賛成でございまして、何とか具体化する方法があればやりたいと思いまするし、重ねて申し上げまするが、こういったふうなダムの犠牲になられる方には優先的に渡航していただく、移住していただくという工合考えております。
  22. 松原一彦

    松原一彦君 今回の移民局の御計画は私は当を得たものと思うのでありまするが、非常に規模が小さくて、こんなことでどうなるかと思わさせられるものがありますが、しかし出発せらるることはけっこうだと思います。ただ日本の今の当面の問題は、御承知通りに人口の過剰で、この小さい四つの島に八千万人が息詰まるような苦しみをみておるのでありますが、これを移民で解決するということは、今の状態であれば不可能であって、一年に五千や一万の人間を幾ら送ってもしようがない問題でありまするが、しかし、もしこれを東南アジア方面の近くに適当な移民し得る地帯を何かの方法によって獲得することができれば、私はもっともっと多量の移民の問題が解決するのではないかと思いまするが、その方面における将来夢を描くのに似たものとは言え、何かおありになりはしないかということを伺いたい。
  23. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) 前世の方を最初に御返事申し上げますると、移民政策は人口問題の解決にならぬというのが一般通念でありまするけれども、必ずしもそうじゃないのであります。といいまするのは、現実に送り出す人間は今年度にいたしましてわずかに六千人、それに自費渡航がどのくらいあるか知りませんけれども、千人あるといたしましても、七千人の人間しか出ないのであります。しかし明治四十一年から今日まで中南米に送り出しました移民が、日本経済に直接間接貢献しているところの金並びに明治時代から北米へ渡りましたところのわが移民が、日本経済に貢献している金によって現在扶養している人間が、われわれの計算によりますると約十六万、最小限度につかみまして十六万の人間があるのであります。その内訳を申し上げますると、これは東大の泉助教授が現地に行かれての推算の計算でありまするが、昭和二十七年、すなわち国交が回復いたしまして、日本経済不安定なりし当時において、すでに約五十九億円の金を日本経済に直接間接貢献いたしております。この金を詳細に分析いたしますその計算方法は、私今ここで記憶しておりませんから申し上げかねまするが、それによって養い得る人間が約四万足らずであります。それから北米合衆国から年々送って参りまする金が、これは最近なくなられました神戸経済大学の元学長の田崎慎治先生の計算によりますると、約百億円ないし百五十億円になっております。その少い方の数の百億円を基準にして計算をいたしますると、この金は中南米から送って参りました金で、従いまして、直接送金的なものか多いものでありまするから、約十二万近くの人間を扶養し得るのであります。でありまして、合計十六万の人間、それに六千人の人間を加えまするから、約十七万の人間移民政策によって現在解決できる、少くともであります。少くともと申し上げまする理由は、この表面に表われないところの送金というものは多分にあると私たちは見られるのであります。これは一つの脱法行為でありまするから表面に出ないのでありますが、と言いますのは、たとえばブラジルにいるAがブラジルにいるBに一定の送金を払い込む。そうして日本におけるCがDに円貨でこれを払い込むということによってする送金でありますが、これは全然表面に出ませんので、この金が相当の額に達すると見られる若干の理由があります。これをも計算に入れますと、移民改築によって扶養し得る人間というものは、二十万やそこらの人間じゃきかないということを私は確信を持っているのであります。遺憾ながら後者につきましては統計的なことを申し上げることは、もちろんわからないのでありますからできないのであります。次に、東南アジア方面における進出いかんという御質問に対しましては、全く同感でございまして、われわれの今のねらいは主として中南米にありまするけれども、いつの日にか東南アジアに進出したい、特に北ボルネオに進出したい。北ボルネオは御承知通り英領でございまして、あそこは最近華僑が大部分の勢力を占めております関係上、逐次赤化の一途をたどっているようでありまして、英国官憲も神経をとがらしている模様であります。それでわが日本が屯田兵的な意味を含めてもかまわないから、日本がその赤化防止の一役を買う意味合いにおいて、日本人を送り出したい、そうしてその金はアメリカに出してもらいたい、土地はイギリスが出して、金はアメリカが出して、労力は日本が出すというこの構想をもって何とかこれを実現いたしたいとわれわれは考えております。何がしのステップはとりつつありますが、いよいよ移住局が発足いたしますれば、現在よりもより多くこの方面に力を入れて推進したいと思っております。いずれにいたしましても、本件を推進いたしますにつきましては、オランダ、それから豪州、ニュージーランド、インドネシア等の近隣の諸国に対する警戒心をとくというのが最大のねらいでありまして、まず移住外交の刷新というのが重大なねらいであります。こういうものをやりたいために、われわれとしては移住局というものを設置したいのでありまして、もしこれが幸いにして移住局ができましたならば、こういう方面にも私どもは力をいたす覚悟であります。ちなみにインドネシアにおきましても、あるいはビルマにおきましても、わが移民を引き入れてもいいというきざしはすでに見えております。そういうような点であります。
  24. 松原一彦

    松原一彦君 人口問題の解決にはならないが、日本経済問題の解決には非常に貢献しているということはわかりますが、私は今、日本での急務は人口問題の解決であって、しかも一面にはせっかく世界大戦の機会に各方面に出て行った日本人は皆日本に戻って来つつあるのです。これはある意味から申せば、日本局族の運命ということから言えば非常に遺憾なことだと私はかねて思っている。今北ボルネオのお話しが出ましたが、ボルネオという鳥そのものがすでに日本内地の三倍の面積を持っている。そうして白人はほとんどまあいないではないが、ごくまれで、しかも北から東側にはおらない。原始林が全島をおおっているといったような姿で、あのボルネオを適当に開拓すれば二千万人以上の移民ができると言われておる。かりに一千万人にしても、一千五百万人にしても、ここに決して領土的野心はない、帰化移民として国連指導のもとでもよろしい、日本の人口を移すことができるならば、私は東洋における一つの大きなマーケットができると思うのです。台湾からは一衣帯水であります。私も単にのぞいたのにすぎませんけれども、しかし今回の戦争でボルネオに行った壮丁がずいぶん多い。こういう人々は、ボルネオからニューギニアの肥沃な、資源の多い生活のきわめて楽な状態をよく見てきておる。募集すれば私は帰化移民として集団で行こうとするものがおびただしくあるだろうと思う。少くとも計画を立てるならば、二千万、三千万の移民計画を立てなければならない。もし二千万人送ることができれば日本の人口問題は解決する。渡航費にいたっては南米などの比ではない。発動機船でも行ける。台湾のすぐ南、ボルネオならばあれは暴風圏外である、赤道直下である、台風のおそれもない、マニラ麻などが無限にできる、ゴムもできる、その日から生活ができるほどの豊かな資源を持っておる。これが現に遊んでおる。パルプの材料でも多量にある。これこそ私は日本民族が将来伸びる場所ではないかと心ひそかに多年思っております。ニューギニアにいたってはもっといい条件があるように聞いておりますが、不幸にして私はニューギニアを知りませんけれども、ただ、今お話のあったように豪州方面の猜疑心が非常に強い。ニューギニアよりむしろボルネオの方が解決の道が近いのではないかという感じを持つのであります。ただいまのお話のように、土地はイギリスが提供する、資金はアメリカがというお話しもありますが、私はそういう政略的なことを考える、あるいは赤化が云々といったようなことを考えてはいかぬと思います。そういうことを考えることではこの問題は解決せぬ。もっときわめて単純に人道的に……、過剰人口が戦争のもとになるのです。日本の過剰人口というのが一番災いの火種になっておる。だから過剰人口を人口希薄のところに移すということは自然の理である。国連などは当然これを考えて平和を促進せにゃならぬ。そういう意味から、内地の三倍もあって、しかもきわめて人口の希薄な自然の豊かなボルネオ移民のごときは、移民局をお作りになる以上は、ままごとみたような五千人や一万人を、地球の向う側のブラジルに送るといったようなことばかりではない。一衣帯水のすぐ南に豊富に送る、これなどは話ができれば直ちに解決ができる、あの土地におった豊かな経験を持った帰還軍人もおるのでありますから、この方面に対する御計画がもっと具体化しないかどうか、政務次官もおいでですからして、御意見を伺っておきたいと思います。
  25. 園田直

    政府委員(園田直君) 移民に関しましては全くお説の通りでございまして、本年度は国家財政緊縮の折からではございますが、当初一万数千人を目標にして予算折衝をしたのでございますが、その後予算折衝の経過に伴いまして、逐次他の費用とともに削減をせられ、遺憾ながら今日の段階においては五千数百名の、まず第一歩としての渡航貸付資金を獲得したわけであります。しかし先般来より報告いたしておりますように、借款等の見込みも立っておりますし、なおまたこの借款と同時に、今般の予算修正によって、今まで御相談しておりました予算には、予備金の中にこの借款受け入れの会社の基金を一億計上してございましたが、今度の予算修正によって正式に移民会社の基金として計上されて、今御相談願っておる次第でございまして、この会社の設立につきましても、ただいま法案等を準備いたしまして御相談願い得る段階に達しております。従いまして、非常に不満足なものではございますが、一応移民局の設置をお願いをし、こういう借款をやり、借款受け入れの会社を設置することによりまして、いろいろ御指摘がありましたような点につきまして、飛躍の拠点を作りたいというのが今日の段階における外務省としての考え方でございます。特に近距離の東南アジアの移民につきましては全く御指摘の通りでございまして、この面はただいま行われておりますいろいろな賠償問題、あるいはその他東南アジア諸国とのいろいろな国交調整等の問題等もからみまして、まず外交を進め、逐次今御指摘のような方向に大規模移民を進めて行きたいという考え方をしております。
  26. 松原一彦

    松原一彦君 その御方針も一つぜひ推し進めていただきたい。ボルネオは日本内地の三倍の面積を持っておるのでありまして、原始林でおおわれておる、あの実態を考えれば、日本内地の人口の四分の一を移すのはそれほどむずかしいことじゃない。論者によっては三千万人ほど入ると言っておる者がある。ただ問題は外交的な問題で、これは何しろ領土の問題にからみますから厄介ではありますが、英国は実は遊ばしておるのであります。北ボルネオは英領というのは名ばかりでほとんど遊ばしておる。英国人はほとんどいないと言っていいくらいに希薄なんであります。中国の人たちが実権を握っておるというのが事実でありますが、ここにもし道が開けるならば、私は吉田前首相にも申したのですけれども、白地図とでも申しますか、新しい無防備の地域を作るがいいと思う。そうして日本と同じような憲法を持って防備のない地域を作る、そうしてこれを国連管理にする。新しい弱小の領土は日本と同じ憲法を持って広げて行く。そうすれば猜疑心は起らない。豪州をあそこから除いて日本の領土にしようといったような侵略的な意図などは起り得ない。日本だけが無防備の地になるのじゃなくして、無防備地帯を拡充するという意味からいっても、私はボルネオ、ニューギニア等の大集団移民を、全然侵略の意図のない、非常に大きな人口を拘いて苦しんでおる地方の生活を緩和する上から見て考えたいと思うのであります。これはどうしても外務大臣などが先頭に立たれ、日本経済閣僚等ともよく緊密に連絡せられ、大きな調査機関を持ち、機会あるごとに外交的に折衝して、まず手初めに今のボルネオあたりから進めて行きたい。南米も決して悪いとは申しませんが、何といっても遠い。これは国費を食っても効果は上らないのです。近い方ならば、さっき申したように発動機船でも行けるし、また、上ってそのまま生活はきわめて簡易にできるような利益もある。もうこれから上は申しませんが、一つぜひこの移民局をお置きになった機会に、大きな国策として、平和的な大国策としてお進めを願うように私は希望するものであります。今回の移民局は、できないよりはけっこうでありますが、三百万円くらいの事務費であって、まことに小さな目にもとまらぬほどの局ができたのであって、今日の課よりはよいのでありますが、これではとうてい遠大なる日本民族の将来の発展に資するものとしては問題にならないように思います。外務当局の一そうの御努力を切望しまして私の質問を終ります。
  27. 田畑金光

    ○田畑金光君 せっかく移民局を独立されまして、移民政策を極積的に進められようとする以上は、当然政府においても、移民政策あるいは計画的な年次計画、こういうようなものがあるものと考えるわけであります。先ほど矢口参事官のお話を承わっておりますると、明治四十一年からやっていて、今日送金その他を入れて十六万人前後の扶養能力しかないという移民の政策であっては、これは私たちの今日考えておる大きな人口問題解決の積極的施策としての移民政策とはほど遠いものと見るわけであります。従来は欧米局の一つの課で取扱った事務が、今回独立の局になっておられようとする以上は、当然政府としても積極的な移民計画というものがあると考えられるわけでありますが、一つその辺について政府の方針を聞かしてもらいたいと思います。
  28. 園田直

    政府委員(園田直君) 仰せの通りでございまして、外務省といたしましては、本年度以降数年間にわたる移用計画を策定、検討いたしております。今般移民局の設置を御相談申し上げるに際しまして、外務省といたしまして静かに反省いたしますると、今まで数人の委員の方から指摘いたされましたように、ややもすると、移民というものが外交のごく付随した一部の仕事のような感が、在外公館の中にも、あるいは本省の中にもあったことはいなみ得ない事実でございまして、またそれがために移民の実績もふるわなかったわけでございます。終戦後、移民という問題が変った問題として出されて参りまして、移民というものが、人口問題の観点からと、もう一つ民間外父の観点からと、もう一つは外貨獲得の観点からと、もう一つ日本文化の進出という観点から大きく取り上げなければならない段階がきたものとわれわれは推定をいたしまして、それに伴いまして移民局を設置をし、本省並びに在外公館の機構等の若干の修正充実を行いまして、移民というものが、今までのように外交の付随ではなくて、移民外交として、外交の大きな要素として進むべきものと考えますが、ここ当分の間は、相手のあることでございまして、中南米移民と、大体これも年限のあることでございまして、永久に移民の受け入れが順調であるということも考えられません。大体十年か、あるいは十数年の間の見通しがつけてございまするので、とりあえず、今までの規模中南米に対する移民、続いて先ほどから御指摘になっておりまする中南米以外の近隣諸国への移民というものも考えておりますが、その計画につきましては、長期経済計画とも相マッチしまして、また予算折衝等との面もございまするので、まだここに発表して御指導を受ける段階には至っておりませんが、近々中に直接数字をもってこの年度計画を発表し、御批判を願いたいと考えております。
  29. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を止めて。   〔速記中止
  30. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めて。お諮りいたしますが、外務省設置法の一部を改正する法律案の質疑中でありますが、一時その質疑を中断いたしまして、杉原防衛庁長官から、国防会議構成等に関する法律案提案理由を聴取したいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) それではさようにいたします。   ―――――――――――――
  32. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 国防会議構成等に関する法律案について提案理由説明を求めます。
  33. 杉原荒太

    国務大臣(杉原荒太君) 今回提出いたしました国防会議構成等に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明いたします。  御承知通り、さきに第十九回国会において成立をみました防衛庁設置法は、その第三章におきまして国防会議のことを規定いたしておるのであります。すなわち内閣に国防会議を置くこととし、国防の基本方針、防衛計画の大綱、防衛計画に関連する産業等の調整計画の大綱、防衛出動の可否等につきまして、内閣総理大臣国防会議に諮問すべきものとし、また国防会議は、国防に関する重要事項について、必要に応じ、内閣総理大臣に対し意見を述べることができるものといたしております。しかして国防会議の構成その他必要な事項は別に法律で定める旨を規定いたしておるのであります。政府は、以上のような国防会議の任務にかんがみ、これが構成等につきまして慎重に検討して参ったのでありますが、ここに成案を得ましたので、今回本法律案提出いたした次第であります。  次に、本法律案の主要なる点を申し上げます。国防会議は議長及び議員をもって組織するものとし、議長は内閣総理大臣をもって充てることとし、議員は、副総理たる国務大臣、外務大臣、大蔵大臣、防衛庁長官、経済審議庁長官並びに識見の高い練達の者のうちから、内閣が両議院の同意を得て任命する五人以内の者をもって充てることといたしております。しかして国務大臣以外の議員の任期は三年といたしております。なお議長は、必要があると認めるときは、議員以外の関係国務大臣、統合幕僚会議議長、その他の関係者を会議に出席させ、意見を述べさせることができることといたしております。  以上のほか、議長及び議員の職務上の秘密保持、国務大臣以外の議員の任免等につきまして所要の規定をいたしております。なお、国防会議事務につきましては、内閣総理大臣官房に国防会議事務局を置き、これを処理させることといたしております。  以上が本法律案提出理由及びその内容の概要であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  34. 松浦清一

    ○松浦清一君 議事進行について。この国防会議構成等に関する法律案は、今回の国会提案をされておる法律案の中できわめて重要な内容を持っておる法律案でありまするから、今後この法律案審議される場合には、内閣総理大臣が出席のできるような日を選んで審議されることを希望いたしておきます。理事会等で然るべくお願いいたします。
  35. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 承知いたしました。   ―――――――――――――
  36. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) それでは外務省設置法の一部を改正する法律案の質疑を御継続願います。
  37. 田畑金光

    ○田畑金光君 先ほどの外務次官の答弁によりますると、近いうちに年次計画を設定して公表する、こういうお話でありましたが、大体それはいつごろに目標をおいて計画立案をなされておられるのか、これが第一点。さらにお話によりますると、移民問題は相手方のある問題であるからというお話でありまするが、これはもちろん私も理解できるものであります。移民の政策に関する理念の問題を私はお尋ねしておるわけではなくして、現実移民が積極的に推進できる態勢を政府はどのように講じられつつあるのか、これをお尋ねしているわけであります。先ほど来の矢口参事官のお話を承わりますると、大へん積極的におやりになっておる意欲はよくわかります。しかし何分昭和二十七年が五十七名、二十八年が千五百名、二十九年が三千七百名、本年度が六千名前後であるというような移民であっては、まことにわれわれのいわゆる人口問題解決の一環としての移民からいうと足りないことはなはだしいわけであります。これは中南米諸国が主要な対象のようになっておるようでありまするが、中南米諸国とのこの話し合いと申しますか、外交上の折衝というものは、移民中心としてどのように展開されておるのか、これが第二点。第三点としてお尋ねしておきたいのは、東南アジアの国々とは賠償問題の解決を通じて国交の正常化をはかり、さらに移民問題について積極的な話し合いを進めて行くという御方針のようでありまするが、先般ビルマとは賠償問題も一応片づいておるわけであります。こういう賠償問題の処理に応じて、今取り上げておりまする移民問題等についてはどういう話し合いをなされておるのか、あるいは全然話し合いをしていないのかどうか、これらの点についてお尋ねしておきます。
  38. 園田直

    政府委員(園田直君) 今年度の計画の大略は、五千五百名が大体渡航するだけの貸し付けの予算をとっておりますので、その内訳はブラジル三千名、パラグァイ千名、ボリビア及びドミニカ各六百名、アルゼンチン五百名、まことに御指摘の通りに非常に遺憾な数字でございます。なお長期の計画に対しましては、約十カ年間の計画で各年五万で五十万の計画を立てておりまするが、この数字は今御指摘を受けました通りに、非常にわれわれの期待と遠い、もっとこの数字をふやすわけにはいかぬかという御意見等もちょいちょい承わりまするし、なおまた外務省としては一応案を作っておりまするが、一応この資金、予算面との大体の話し合いもしていただかなければなりませんので、そういう程度にただいま作成中でございます。なお東南アジア、各賠償問題をやっておりまする国々との移民の問題は、ただいまのところはまだ直接話しはいたしておりません。中南米との交渉については参事官よりお答えいたします。
  39. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) 中南米を二つに分けて申し上げます。まず、従来ありましたブラジルとか、アルゼンチンとかという国、それから最近新たに登場して参りました、登場させたと私は申し上げたいのでありますが、ドミニカとか、ボリビアという国がございます。それから可能性の問題になりますと、メキシコもベネズエラもございます。最初言い落しましたが、一番最初ブラジル、アルゼンチン、パラグァイと最初にこの三者でございますが、この三者につきましては、最初の三者でございますブラジル、アルゼンチン、パラグァイにつきましては、戦後移民協定というものがまだできておらないのであります。この協定を作りませんと、これは移民政策の背骨にならないので、いろいろな条約である程度の拘束を受けておりますので、義務的なものにいたしませんと、これを現在進めるために話を進めております。最近登場して参りましたボリビアドミニカ等につきましては、その案が進んでおりまして、ボリビアにつきましては、近くこれは成立の見込みでございます。こちらの方の案をすでに向うに提示しております。最近私の方の代表者ボリビアに到着しておりますので、後日この移民協定というものはボリビアに関する限りはできるはずでございます。それからドミニカにつきましては、これは全然今まで移民を送り出したことはございません。今度新たに送り出すのでございますので、調査団を送り、それと相前後いたしまして移民協定を作る段取りになっております。これもできます。それから話は前後いたしますが、前の方のブラジル関係はどうじゃということになりますと、これはいささか、考慮がございまして、といいますのは、ブラジル日本人の勤勉と努力に対しましては満腔の敬意を表するのは間違いないのでありますが、一面反目的な気持を持っている分子も相当ございまして、これを移民協定というような形式をとりますと、また国会等において種々論議されると、若干の反日的な気持を持った人に油を注ぐような結果になるおそれがあるものでございますので、われわれの判断といたしましては、今のままで、すなわち辻機関松原機関というような個人をしてやらせて、政府がこれを推進するといったような形式がいいのじゃないかという考えでございます。それからアルゼンチンにつきましては、よりより話し合いをしておりますが、アルゼンチンにつきましては、これは集団的な移民はあすこは歓迎いたしませんが、いわゆる個々の呼び寄せ移民という形式になるのでありますので、今のところはそう移民協定を急がなければならないというような立場に向うも置かれておりませんので、それこそただいまも政務次官から御答弁申し上げました通り、相手のあることでございますので、性急にはやってはいけない状態でございます。パラグアイにつきましては、ドミニカ同様近く成立せしめたいという考えで草案を作っております。これは移民外交の中核でございます。
  40. 田畑金光

    ○田畑金光君 今の矢口参事官の御説明によりまして、たとえば集団移民の一番大きな対象であるブラジルとの関係は、なお対日感情等も考慮して、国会等で論議するようなことはかえって不利であるから、今の個人機関を通じて推進した方が得策であろう、こういうような見解でありますか。
  41. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) そうでございます。
  42. 田畑金光

    ○田畑金光君 それに対しまして、私たまたま六月十三日、つい二、三日前の朝日新聞の記事によりますると、お話に出ました松原機関の当事者である松原安太郎氏が、結局移民の計画に失敗をして近く帰国をするというような記事が出ているわけであります。これは外務省としても十分検討をなされておると、こう思うのでありまするが、昭和二十七年に四千家族の移民のワクを当時のヴァルガス大統領からもらって日本に報告をもたらしたのがこの松原氏であります。ところが実際入植した入植民の非常に質も悪いというようなこと、あるいは入植地も適当でなかったというようなこと、いろいろな悪条件が重なって、完全に松原機関の入植計画は失敗したというような記事が出ているわけであります。かれこれ総合いたしますと、こういう国策が単なる個人の力により、あるいは個人の機関を通じて行われてきたということ、同時にまた政府もこういう機関に何らの財政的な援助も与えなかったというようなことが、こういう結果をもたらしたものと考えるわけであります。今のお話によりますると、政府外務省ブラジルのような最も相手国として大きな国に対してすらもが、個人機関中心として進めて行くということではまことにこれは頼りない、不安な感じを持つわけであります。いかに政府が近々のうちに移民計画を数字の上で発表されても、そういう基本的な態度であっては移民政策を進めるということはできないわけでありまするが、この点に関しまして、どう外務省としてはお考えなさっておられるか。ことにこの松原機関の新聞記事に出ておりまするように、移民計画が失敗に帰したという、こういうような問題についてどのように処理されようとされておるのであるか、この点お尋ねしておきます。
  43. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) この新聞記事についての御質問でありますが、相当信憑性もありますが、相当誇大に報告されておる点もございます。実は私も去年の暮に松原氏に直接に現地で会っておりまして、よく事情を承知しているつもりでございまするが、松原氏の四千家族の勲功というものは、これは実に大でありまして、日本政府といたしましても大いにこれを感謝しなければならぬことだと思います。しかして彼が今回失敗いたしましたことにつきましては、私は三つの理由があると思うのでふります。一つは、公けの仕事のための失敗、一つは、彼の個人企業の失敗、第三には、生命まで賭けたヴァルガス大統領の死、これが一番大きく彼の精神的方面には作用をしたと判断されるのでありますが、この三つの悪条件が重なりまして、いわゆる神経衰弱に陥って企業をする能力もなくなったような状態であります。しかし彼が持っております財産がこれによって全部根こそぎなくなったというような状態ではないようでありまして、現実に彼の息子があとを継いでやっておるようであります。それから政府移民政策を彼が負担することによって生じたマイナスと言いまするのは、御指摘の通り移民早々、送り出し早々にウナ事件のおいていったものの質がよくなかった関係上、ストライキとなって脱耕して、その責任を全部松原氏がかぶせられるような結果になったのであります。それで場合によってはこの四千家族のコンセッションを取り消されるような情勢になりまして、われわれといたしましては種々苦慮したのでありますが、辛うじて昨年の末にこの損失だけは政府においてカバーいたしまして、四十家族のコンセッションだけは未だに残っております。この点だけは松原氏に対するわれわれも心やすい気持で彼を迎え得ると思っております。それからこれはまた私だけの考えでありますが、何らかの形において彼の努力を表彰するような形式をとりたいものと私は今考えております。それだけだったと思います。それから一つの重要な問題として、移民の協定を作らないかというこのお説、私たちも先ほど申し上げました通り、できれば何とかしてこれは作りたいのでありまするが、これも現地に行きまして、あらゆる向う人間に会っての受けた印象が、今移民協定を作らない方が得だというような結論に達しておるのでありまして、実は安東新大使が赴任のときも、よくそのことも同大使に話しまして、向うの情勢でできるならば一日も早く移民協定を作ってもらいたい。作らぬことによって生ずるマイナスがずいぶんございますから、それは一に現地における雰囲気によって判断せられることであるというわけでありまして、安東新大使はさような事情をよく含んで赴任しておりますから、もし移民協定ができるというようなことであるならば、さっそく手配をいたすことと思います。今のところそういったふうな報道もございませんから、その時期に、雰囲気に達していないのじゃないかと判断するわけであります。しかしこれは人によりまして意見が違いまして、あるのでありますが、大体の意向は時期尚早なりというのが現地の人人の通の意見のようであります。しかし繰り返して申し上げますが、できるような時期に至りましたら一日も早くわれわれとしても作りたい念願でございますから、そういう工合に努力することをお約来することはできると思います。
  44. 田畑金光

    ○田畑金光君 先ほどの松原委員からの質問に対しまして、矢口参事官から重要な発言がなされております。それはボルネオの移民について、金はアメリカから出してもらう、土地はイギリスから一つ提供してもらう、労力は日本から一つ行こう、まことにこれはけっこうな話でありまするが、御説明によりますると、最近西南アジア地域に非常に赤化が激しくなって来ておる。そしてボルネオも同様な情勢にあるという前提のもとに話がなされていろわけであります。そういたしますと、あたかも日本が労働力を提供し、あるいは兵隊を提供して、ボルネオの果てまで行って赤化防止の役割りを果すのが移民の重大な任務なるかのごとき印象を与えたわけであります。これは前例がないのでもなく、満州事変後の満州における開発政策、青少年義勇隊、移民輸出というようなものは、移民というものは明らかに一方においてはくわをとり、一方においては銃をとる赤化防止、それに対する防壁としてとられたのが満州移民であり、青年義勇隊の諸君であります。そういうような考え方が今日でもなお政府の中に、外務省移民政策の根底に横たわっておるとすれば、これは非常な時代離れをした考え方じゃないかと、こう思うのです。一体外務省の今後のアジア地域に対する移民というものは、先ほど園田政務次官は移民外交であり、外交の一環としての移民でなければならない、こういう理念を説かれたわけでありまするが、はしなくも事務当局において考慮されておる移民は、赤化防止の役目をになった兵隊提供のための移民のようになっております。これは重大な問題だと思います。この点に関しましてどういうお考えで今後の作業を実現されるのか、あるいは移民というものをどのように考えられるのか、政府の方針を一つ聞かしていただきたいと思います。
  45. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記をとめて下さい。   〔速記中止
  46. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めて下さい。
  47. 園田直

    政府委員(園田直君) ただいまの御質問は、政府の方針といたしましては、あるところへ移民するのに屯田兵を置き、あるいは特殊の政治的任務を帯びるというようなことは考えておりません。参事官の発言中に、たまたまそういう発言がございましたのは、これは単なる参事官の情勢上の思いつきでございまして、取り消しをいただきたいと思います。
  48. 田畑金光

    ○田畑金光君 まあ園田政務次官から簡単に取り消しを求められたので、この問題はこの辺で打ち切りたいとも、こう思いまするが、打ち切るにしては、なかなかどうも事重大であります。これは作業をやっておられる、あるいは直接この仕事に当っておられる矢口参事官が、平素の政府の方針や、外務省の方針に基いてやられたことが、たまたま言葉に出たものと私は考えるわけであります。こういうような、かりそめにも政府委員の答弁の中に、かつての軍国主義のもとにおける日本のとって参りました大陸政策、あるいは満州移民政策を思い出させるような発言があるということは、まことにこれは重大だと考えております。そのような考え方のもとに話を進めておられるから、移民協定等も、なお中南米諸国においても日本に対する感情が釈然としない、こういうようなことにもなるだろうとみるわけであります。私は当の発言者である矢口参事官が、どういうつもりで赤化防止の一翼をになうような日本移民ということを考え、またそのような発言をなされたか、この機会に発言者である矢口参事官の考え方を承わっておきたいと思います。
  49. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) 私が考えておりましたのは、相手との折衝の問題でございます。何か向うにも日本人を入れることによってプラスになるという点がなければならない。もちろん人道主義的な観点から行くのはけっこうでありまして、現にわれわれはカトリック団体等にも働きかけて、その力によって中南米のみならず、東南アジア方面にも出たい意欲を示しております。それで、たとえばボルネオに出ると仮定いたしますと、日本としては、私が聞いておりましたところによりますと、北ボルネオにおける中共の勢力がだんだん浸透してきて、イギリスが非常に困っておるということを私は聞いておるものですから、そういう色彩を帯びないところの日本人が行けば、イギリス人が喜ぶのではないかという、こういう気持からの私はああいう表現をなしたのでありまして、別に深刻な考えがあるわけではございませんし、私自身軍国主義者でも何でもございませんで、たまたまそういうことを申し上げたことが、全部が私の日常の行動の基調をなしておるわけではございませんから、そういう点は私は撤回をいたしますから、さよう御了承を願えれば幸いだと思います。
  50. 田畑金光

    ○田畑金光君 まあ撤回するというようなことであるなら、これはやむを得ないが、南の方に赤化の勢力が伸びてきたので、イギリスも手をあげて困っておるもんじゃから、それで日本移民が行けば喜ぶであろう。これは言葉を返して言うと、やはり先ほどのあなたの発言を肯定していることであって、これは撤回には何もなっていないんです。一体外務当局としては今後の移民を進められる上において、西南アジア地域に限らず、中南米においてもそうでありまするが、共産主義勢力が各地に勢力を張ってきておる。そうしますると、共産主義勢力に対決する勢力として日本移民各地に歓迎される。あるいはまた歓迎されなくてもそのような情勢や雰囲気を巧みに日本は利用して移民の進出をはかる。こういうことも考えられるわけでありまするが、理論としては、理屈としては、一つ外務省としては、政府としてはそのような情勢、そのような雰囲気というものを巧みに利用して、今後の外交、あるいは今後の移民を積極的に進められようとする御意思なのかどうか、この点園田政務次官にお尋ねいたします。
  51. 園田直

    政府委員(園田直君) あわせてお答え申し上げ、御了承を願いたいと思いますが、外務省といたしましては移民を出しまするに際して、あるいは一つ政治目的であるとか、あるいは一つの国際情勢の一任務をなすとか、そういうことは考えないばかりでなく、むしろ先ほど移民外交と申しましたが、その移民外交も日本の国家の出先機関としての移民外交ではなくて、今日までの日本移民がいろいろ障害がございますのは、御指摘の中によく表われておりまする通りに、日本人移民をして、何か日本の国家の出先機関か、または国策に沿うての一つ目的を持って行くのではないかというような点がややもすると各所において日本人排斥の原因になっておるようでございまするし、また今日においても移民の障害は戦争という問題と、もう一つは、やはり日本人がそういう国家の意図に従い、あるいは政治目的を持ち、あるいは日本の国家の出先機関としてやってくるのではなかろうかという点が非常に批判を受けておる点であったと考えまするので、外務省といたしましては、その点ははっきりいたしておきまするが、移民外交と申しまするのも、いろいろな目的のために日本人が出て行って、日本民族というものは平和を好み、しかも世界人数と一緒に進んで行くという認識を受けさせるための移民外交でございまして、移民した以上はあくまで政治的にも、あるいは生活的にもその移民した国の情勢に順応してやらしめることが、移民外交をうまく進める私は一番大事な問題であると考えておりますので、その点は決してさような考え方は毛頭持っておりませんので、重ねて御了承願いたいと考えます。
  52. 田畑金光

    ○田畑金光君 ただいまの答弁の通りに今後の日本移民政策はなければならぬことでありまするし、政府としても、またあくまでも平和移民という考え方で進めなければ、今後の積極的な移民政策の推進をはかることは期待できないと考えております。ただ先ほど松原機関の新聞記事等を見ましても、確かに外国に移民した人方の素質が非常に悪いということ、とにかく一攫千金を夢みて出稼ぎに行くような考え方で行く人方があるのじゃなかろうかという印象もわれわれは受けるわけであります。こういうような点はまことに遺憾な点でありまして、幸いに今回移住斡旋所というのが従来神戸に一カ所あったのが横浜にも設置をされた、こういうようになったわけであります。しかも移住斡旋所の職務分掌を見ますると、移住に必要な教養を与える、こういうことになっておりまするが、この教養を与えるということはどんな教養なのか、また教養を少くとも与えるには相当の期間、時間が必要だと思いまするが、あるいは経費も必要だと思いまするが、今日までこういう移民に教養を与える、あるいは移民の再教育を施す、入植地に行って相手国の生活、あるいは政治、社会、こういう環境と調和して行ける、こういうような教育も当然とられておるものと推測するわけでありまするが、これらの点について今日まで政府はどのような指導をとってこられたか、承わっておきます。
  53. 園田直

    政府委員(園田直君) 移民前の訓練は、移住斡旋所の訓練と、ただいまの農業移民は農林省で行なっておる訓練と二つございまして、農林省が担当している訓練は主として実務講習でございまして、移住斡旋所の行う訓練とは、すなわち相手国の移住地に関する知識、あるいは簡単な語学、一般的な国際教養、具体的にはエチケットに類することを教えておるわけでございます。なおまた戦後の移民の基本方針であって、基本方針の先ほどから論議されておる問題については、十分その際に移民される方々に徹底するように申し上げたいと考えます。なおまた、ここに付加して申し上げますると、今まで移民というものは、御指摘になりましたように、何か日本で食い詰めた人が行くような感じを、見ている者にも、あるいはその他の者にも与えておりましたが、こういう点はこの際一擲をして、そうして一つの使命を持って行くのだというような方向に切りかえたいと考えております。
  54. 田畑金光

    ○田畑金光君 私一人でやるのもどうかと思いますので、この辺で質問を終りまするが、先ほど政務次官からお話のありました移民計画について、外務省としても作業を進めて、近日、近いうちに年度計画等の公表ができるであろうというような御発言があったわけであります。私はすみやかにそのような計画ができましたら、本委員会にも資料を提出願いたいと考えております。さらに要望として申し上げたいことは、あくまでも今後の移民というものは平和移民でなければならない、相手の国情に、相手の国の社会生活、条件にそのまま調和し、調整し得るような移民でなければならない、こういう前提のもとに進めていただかなければならぬと考えております。かりそめにも矢口参事官のような発言に裏づけられたような考え方外務省政府の中にあるとすれば、これはゆゆしき問題でありまするから、十分一つ注意をしていただきたいと考えております。さらに希望として申し上げたいことは、われわれといたしましては、いま少し積極的な移民施策がとられてしかるべきだと考えまするが、何分財政上の渡航費の制約その他からも移民制限があるようにも承わっております。こういうような国内の政治的な問題として処理できる点は、さらに一つ積極的にこういう解決のためには努力をしていただきたい、こう要望をしまして移民の問題に関する私の質問はここで終えます。
  55. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ちょっと速記を止めて。   〔速記中止
  56. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記を始めて。
  57. 松浦清一

    ○松浦清一君 私はこの次の審議のために資料をちょうだいいたしたいのでが、先ほど政務次官から正確な数字ではないが、年間五万人ずつの計画であるとの御説明がございましたが、これはまあ向うが受け入れるか、受け入れないかということが問題になりましょうし、旅費等の関係、予算等の関係の問題になりますから、この計画通り行くか、行かんかということはわかりませんが、もし年間五万人ずつ、十年間で五十万人という計画を立てたならば、いつを起点としての十年間であるか、そうして逐年、どの国に何人を送ろうという計画であるかということ、これが一覧表に出てくるならばそれを、もし非常にめんどうであれば、このことを私は質問しておきますから、この次の機会にお答えを願いたいと思います。資料ができれば資料をいただきたい。それから先ほど参事官から、計画移民のほかに自由移民がどれくらい行っているかわからないというような御説明があったが、これはまことにどうも軽卒な御説明だと思います。外務省で自由移民、自費で行っている者が幾らかわからないというのは……、ですから計画移民で、今までに国の費用で旅費を貸してもらって行った者と、それから自由で行った人たちが年別に幾ら行っておるかということ、これも資料があれば知らせていただきたい。もし非常にめんどうならば御説明願いたい。この次の機会にでも御答弁願いたい。それから、これはちょっとむずかしいことかもしれませんが、移住民の国別の資産状況、これはわかりませんか、どうしてもわからなければ、しいてお尋ねしませんから、この次の機会にわかり得る程度のことを御答弁願えれば仕合せと思います。今申し上げたのは、資料ができれば作っておいていただきたい。できなければ、この次の機会にできる範囲で御答弁願いたい。
  58. 園田直

    政府委員(園田直君) ただいまの資料は、できるものは本日午後持参いたしまして、間に合っていないものは早急に作りましてお手元にお配りいたしたいと思います。
  59. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) それでは午後一時半まで休憩いたします。    午後零時二十四分休憩    ――――・――――    午後一時五十六分開会
  60. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 休憩前に引き続き内閣委員会を開会いたします。  外務省設置法の一部を改正する法律案について御質疑を願います。
  61. 上林忠次

    ○上林忠次君 朝来、今回できます移住局ですか、これが強化される、私これは衷心より喜んでおりますが、ただいま実は定員がどのくらいふえるのか、そういうことも聞いておりませんが、かたわらから聞いておりますところでは大した強化もされないような話であります。従来移住協会ですか、移民協会、ああいうようなものが地方にありまして、ほんとうの事務的な仕事しかやっておらぬ。こういうような弱体な協会に移住の仕事移民仕事をまかしたために、ただいまのような日本移民がふるわないということにもなっているのじゃないかとも思うのでありますが、私外務省がこれまで移民に対してあまり熱を入れておらぬ、努力が足らなかったということを感じておるのであります。これまでも、前回の戦争におきましても、人間の密度というものが大きな原因になって戦争が起きたのだ。水が低きに流れるように自由に移民ができるという時代が来るのをわれわれはこいねがっておるわけであります。国連ができまして、さような問題が相当取り上げられて協議されているはずでありますが、この世界の今の状況を見まして、国連の動きが、この移民に対してどの程度熱意をもって仕事をしているか、また日本外務省はまだ国連に対して大きな力を出す時期ではないかもしれませんが、われわれ日本の再建のために、世界の平和のためにも、もっと移民ということを自由にする、全部国を開放するというときがくるために外務省はうんと力を出していただきたい。国連に対しても御努力願うところであります。外務省は果して、どの程度の意気込みでおられるのか、あるいは国連仕事はどの程度今進みつつあるのか、そういうふうなところを一つお話し願いたいと思います。
  62. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) お答え申し上げます。まず第一に、移民政策がふるわないということについて申し上げさしていただきますが、これは始めましてから、まだわずかに二年半にしかなりませんので、それに遺憾ながらただいま御指摘の通り外務省当局におきましても今日まで移民の力の入れ方が不十分であったことは、私自身もこれを認めざるを得ないのであります。今後は別でありますけれども、最近まではそういう状況でございました。しかも現在まではわずかに十三名の人間でこれだけの大きな問題を処理しておりまして、ほとんど最近では緊急状態の徹夜々々というようなことが続いておって、わずかに仕事を取りさばいておる状況であります。今度移住局になりますと純増が十名になりますし、ほかからの振りかえが十名になりまして、現在の十三名に合わせますと三十三名になります。そのほか渡航課というものを併合いたしますから、旅券の発行等をいたす課でありますが、これが三十一名あります。これを合わせますと、これは移民仕事じゃありませんけれども、約六十四名の世帯ができようと思いますから、今度は皆様方の御期待の線に沿ってある程度前進し得る、またしなければならぬという意気込みはわれわれ持っておるということははっきり申し上げられると思います。それから国連関係につきましては、前からわれわれはこの点を考えておりますけれども、今申し上げました通り、わずかに十三名の人間では、力もなかったものですから意図することができなかったのでありますが、今後われわれが取りあえず描いております構想と申しますか、と言いますのは二つ、取りあえずの考えでありまして、まだ着手はいたしておりません。構想の一端を御披露申し上げしまして、秘密も何もございませんから御披露いたしたいと思うのでありますが、一つは、御承知通り欧州国家間移民委員会というのがございまして、これILOという国連一つ機関の下部機構ではございませんが、それと連係のある機関でございます。これはその経費の六割方を北米合衆国が出しまして、あとの四割方を欧州各国が出し合って、欧州の人間中南米に送り出す一つ機関でございます。われわれはどうかしてこれに入りたい、と言いますのは、中南米ではまだ、日本人を引き受けてくれますけれども渡航費関係向うに渡れないものでございますから、そういった方の金を借りて送りたいというので、今そこに着目しておるわけであります。と申しますのは、アメリカでは日本の人口問題に対して私は了解があると思われるのであります。その証拠に、現在進行中の千五百万ドルの移民借款の問題、これも初めわれわれが考え出したときは人は笑っておりましたけれども現実にやってみれば、こういう工合に実を結ぶのでありまして、これはアメリカの日本の人口問題に対するところの、一つの同情と言いますか、理解の表われとみても差しつかえないかと思われます。しこうして見れば、欧州国家間移民委員会にもわれわれは入れぬことはない、特にカソリック関係の人では移民に反対する関係がありましても、日本移民のみ、ある程度理解を持っておりますから、努力次第ではこれは入れぬことはないじゃないかと考えております。これは考えだけでありまして、今までは何と言ってもそれだけの力がなかったからやれないのです。もう一つは、午前中にも申し上げました通り東南アジア方面に出すにつきまして、各国は猜疑心を持っておる。日本の軍国主義とか、日本の非平和的進出というものに対して非常に警戒心を持って、豪州、ニュージーランド等特に然りでありますが、そういった誤解を解くために、国連の名において日本人を出したらどうかという意見がございまして、これはちょっと先ほど触れましたが、佐藤尚武氏なんか盛んに唱道しておられますが、何かそういう方面一つ連絡をして、そういうようなことを実施できないものかということを考えております。まあこれは実施の段階に来ておりませんで、考慮の段階でありますが、人的にも整備いたしますれば着々その方面に手を打ちたいと思っております。まずニューヨークあるいはジュネーヴ、あるいはバチカンあたりに、そういった中心がございますので、それにもう一つ加えておきたいと思いますのは、カソリック関係の国際団体が、これがやはり日本移民問題に理解を持っておりますので、この方面との協力も今若干進めつつあります。これをまた協力してその措置をとるようにしたい、こういう工合考えております。
  63. 上林忠次

    ○上林忠次君 第一次世界大戦の跡始末は、民族の自決、民族によって国を分けたようなことをして世界の平和を保とうとしたというような考えもあったことを聞いておりますが、第二次戦争の跡始末は、私はこの移民、国の開放ということをしない限りはできぬじゃないか、西と東に分れての陣営が、この問題に関してあまり関心を持たぬような、ほかの手で平和を維持しようというようなことに一心に動いておるように見えるのです。もっと民族の解放と言いますか、民族の交流ということを全世界が声をあげてやらなけりゃならぬじゃないか、新聞を見ましても、あまりこういうような記事が出ていない、アメリカ人もああいうような膨大な土地をかかえて、自国の人民だけがまあ文明を享受すると言いますか、天然資源を自由にこいつを味わって行く、ほとんど国かそういう気持でいる、ソ連にしても中央アジアあるいはシベリアの大陸が余っている、来いとも言わない、それで千島を取ったり、樺太を取っておるという状態ですが、南方の諸邦におきましては、朝から話がありましたように膨大な土地が遊んでおる、世界の大きな不経済ではないか、各国の国民の再分配と申しますか、ディストリビューションをもっとうまくやって現存する人類がもっと楽しめる、享楽して行く、また文化に貢献して行くというためには、国のなわ張りを早く取らなければならぬ、これは今申し上げるような今さらの問題でありませんが、この方面外務省はもっと力を入れてくれないかと思いますが、少し熱のある御意見を聞きたいのですが。
  64. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) われわれ遺憾ながら、ただいま政務次官がいらっしゃらないので、私遺憾ながらこういう大きな問題を申し上げかねると思いますが、とにかく今までは、とりあえず一人でも多くの人間を送り出すというところに重点を置いて考えてきまして、これをあらゆる施策の中心となる移住局というものを設置しなければならぬ。と申しますのは、国民外交の推進をやらなければならぬ。これが一番大事なことでありまして、第二点には基礎的な資料の整備であります。たとえば新たなる移民保護法の制定とか、あるいは団体貸付法の制定とか、あるいは移住株式会社組織法とか、それとともに独伊の戦後の中南米における進出状況は非常にわれわれの参考になるのであります。ところが、ほとんどこれも調査されていない。そういうものもしてみたい。それから国内に対する宣伝であります。国内は移民の実態を国民は知りませんし、関係官庁においても必ずしもこの実態を把握しておりませんです。もっと何とかして移民というものに対して国民の朝野をあげての熱意を引き上げてもらいたいというので、われわれ今日まで努力して参りまして、ようやく一歩前進したという形でありまして、逐次第二段階、第三段階に上りまして、今の御指摘の民族の交流、やがてはなわ張りを取り上げるというところまで上げて行きたいと思いますが、まず今のところ一つ段階をのぼり上ったという感じでありますから、しばらく年をおかし願えれば、その点まで伸び上げるわれわれは確信を持っております。
  65. 上林忠次

    ○上林忠次君 私はすでに各国がその方面に熱意がないということを指摘しておるのでありまして、日本外務省は一意専心その方に邁進してもらいたいという気がするのであります。果してそういうなわ張りがとけたならば、十分交流ができるというときがあって、行きなさいと言ったところで日本人が行くかどうか。この因循的な日本人の、従来の島にとじ込められた長い伝統にこびりついた日本人が、これは啓蒙が必要でありますけれども、果してどんどん行くかどうか。私はアメリカ大陸があれだけ大きな発展をしたのも、アングロサクソンがあすこに上って、どんどん東から西に短日月の間に広がったのでありますが、おそらく日本人なら東の海岸に上ったら、まだあれはアパラチア山脈というか、東の山脈を越えずに、まだあすこに集団生活しているのじゃないか。こういうような日本人の国民性と申しますか、民族性と申しますか、かような点からもよほど啓蒙運動しなければ、日本人は流れて行かないと私は考える。で、またこれまでの移民のやり方も指導も悪い。行った連中に対する施設も悪い。援助もしておらぬということで、日本のこれまでの移民が発展しなかったのじゃないか。まず人を送り込む、送り込むにも、もちろんこれは訓練をしなければいかぬ。その訓練はどこでするか、また向うに着いた連中に対して事業を伸ばさせるためには、どうしてもこれは金融機関を作ってやらなければいかぬ。そうして事業を発展させる援助をしてやらなければいかぬ。こういうことについて、これまでどういうことをなされましたか、外務省としては移民に対して移民仕事を発展させるためにどういうようなバックアップをされたか、これまでの事績を一つお話し願いたいのです。
  66. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) これは遺憾ながら力がなかったので、特に財政的の力がございませんので、まことに思うようにできなかったのであります。よくこの最近の日本移民政策が、現地においてほうりっ放しであるという非難を仰ぎますが、これはごもっともでありまして、向うにいた者を十分の世話するだけの熱意はあっても、財政的な裏づけがないものでございますから、遺憾ながら彼らの期待に十分沿い得ないというのが実情であります。もっと分析して申し上げますと、二つありまして、一つ現地の調査が十分じゃないということがあるのでございます。これはその通りでありまして、アマゾンだけでも欧州全土と同じくらいの広さがございまして、その調査は非常な努力と金の要る仕事でございまして、また向う現地受け入れ機関の整備ということは、これは言うべくして大へんな金になりますし、しかもこれを外費にかえなければいかぬのですから、この現在の脆弱なる日本の財政状態をもってしましては、遺憾ながらこれはできないのであります。それでやむを得ず、もちろんわれわれの力が足りなかったことに大きな原因がありまするけれども、今までのところは、わずかに移民関係の担当者が私のところに、私も入れて十三名しかおらなかったのです。農林省では二人しかおらなかったのです。まあ、もちろん地方の海外協会というのがありますけれども、これだとてほとんど地方から援助をやっておりませんし、県の自費、または各人の自費でやっておるというような実情でございまして、換言すれば今まで移民というものに対する日本朝野の熱意というか、あるいは理解というものが足りなかったところに根本的な原因があったのではないかと思います。ところが最近ようやく気が向いて参りまして、新聞を見ても、ラジオを聞いても再三再四移民のことを取り扱っております。ことに移民借款ができるとか、移民局ができるとかいう工合に、少しずつ情勢がよくなってきましたから、ようやく朝野の方々の御支援を得て一歩々々前進して行きたいという、ようやく頭を持ち上げてきたような形でございまして、過去において御期待に沿えなかったのは事実でございまして、まことに申しわけなかった次第でございます。
  67. 上林忠次

    ○上林忠次君 これまで移民関係仕事は、一つ事務方面の陣容も足りなかったのでありますが、農林省と二つに分かれてやっている。おもな移民農業移民がおもで、しかも外国関係には関係のない農林省がこの訓練をやったりしているというようなところで、そういうような欠陥もあったと思いますが、今度はどういう工合になるのですか、農林関係移民と、ほかの事業関係移民に対してどういうような訓練をされますか、現地でやるのか、日本でやるのか、どういうようなことになっていますか。
  68. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) 農林省との関係でございますが、これはまあ一言で申し上げますると、満州等に出した移民とは違いまして、今度の中南米移民というのは、いわばお嫁にやるようなものでございまするので、お嫁に行った先で、頭が悪いの、顔がまずいの、行いが悪いのとけちをつけられて、その責任は出先官庁である外務省がみな責任をとれということで、十分責任をとらなければならないのですが、そうすると、お嫁さんを選ぶときに鼻が曲っていたか、口が大きかったか、素行がどうであったかということについて一つも知らないということはいけないのではないかということでありまして、結局簡単に言いますと、そういうような今の関係から、国外におきましてのことは外務省がもっぱらこれをやりまするけれども、国内のことにつきましては日本移民の大宗をなすものはこれは農業にあるのですから、農業に対する知識というものは農林省が一番よく持っておるから、農林省と外務省とが手を合わせて協力して行くというのが今までの建前、去年の七月の閣議決定でそういうことがきまったのでありますが、今度その閣議決定の不足の分を補いまして、さらに農林次官と外務次官との中し合わせ事項によりまして、その不備の点を整備したのであります。それに今までの訓練と申しまするか、農林省側が福島県と宮崎県に農業訓練所がございまして、そこで農業に関する知識、それから国際教養に関する知識につきましては、外務省の者が出まして知識を与えて一応の訓練を、全部の者ではございませんけれども希望者に対して今日まで行なってきたのであります。今後もできるだけこれは引き続きやることになって、農林省が主として引き続きやっておりますが、なるたけ現地の要望に沿うように、すなわち向うに行って同化できるように、向うの要望に沿うような訓練を施すことに両省間の話し合いはできておりますが、いよいよ今度新たに登場いたしまする工業移民となりますれば、全くこれは、全くとは申しませんが、農業関係とは相当これは違いますので、いかなる方針でこれは訓練して行きますか、それは今のところ具体案はできておりません。まず、どうしてかと言いますと、今の工業移民を送るかどうかということにつきましては、まず千五百万ドルの借款ができるかどうかということに関連があるわけでございます。この千五百万ドルの借款が結局今までのところはできませんで、しかし今度予算修正によりまして一億円の資本金が取れましたから、大体この移住振興株式会社というような名目をもってできそうな情勢に、今明日中に登場しそうな情勢にあるのであります。そうなりますと、企業移民というものは具体化して考えなければならないという段階になりまして、訓練方法については具体的なことは考えていませんが、企業移民と言いますか、工業移民農業とはいささか趣きが違いまして、事業とともについて行く、事業とともに労働者がついて行く、農業労働者なり工業労働者がついて行く、こういう形式になりますので、相当趣きが違うのではないかと考えております。いずれにいたしましても、受け入れ国の要望にもよく沿って、向うでもきらわれないような人間を送り出したいという根本方針ははっきりいたしております。
  69. 上林忠次

    ○上林忠次君 私は中国の華僑のあの発展がどういう工合にしてあれだけ発展したか、国の補助も何ももらわずに、援助も受けずにあれだけの個人的な発展をした華僑の状況を見ますと、習うところが何かあるのではないか。旅費をやるとか、いろいろなことをしないと今出ない。しかも訓練のやり方もまだ完備しておらぬ。あの熱帯地方に行きますと、これは日本とは全然違う熱帯農業を相手にして、ぽこっと向うに行った連中が果して何をやるか、とまどうのではないか、こういうような連中に対する訓練の場所なり、訓練の方法なりはよほど慎重にやっていただかないと、いいかげんなことになってしまう。私、華僑の発展の原動力、どうしてああいう工合にうまく世界中にバック・アップしたかということもわかりませんので、外務省でどういうようなお考えを持っておりますか、まねるところがあったらまねなければいかぬのじゃないか。いかにもわずかな移民の家族ではありますけれども、これを完成しなければならぬ。送り出すだけでは何にもならぬのであります。従来の農林省のやり方もあきたらぬところがあるのであります。指導するといっても指導する人がいない。熱帯農業について知っている者はいないじゃないか。私は現地で学校でも作って、しばらくそこで一カ月訓練をするというようなことも必要じゃないかと思いまするので、まあその訓練のしようも尋ねたのでありまするが、何と申しましても人間も少い。かような六十何人でやるとなりますと、とてもこれは言うだけで、結局向うに行った連中がこれから人生を開拓するようなことになるのじゃないか。もっと親切な移民の、何と申しますか、成功を願うためには外務省は真剣に考えてもらわなければいかぬのじゃないか。華僑がどうして発展したのか。私は農業移民をやる前に工業関係事業を移植する。大きな事業の移植をして、それを元にして人を呼びよせる。農業なり、あるいは産業の人間を呼びよせる一つの大きな事業の核、ケルンができたいと移民は成功しないのじゃないか。ただ向うへ行けば行きっばなしで、さあこれから勝手に生きて行けというようなやり方では成功しないんじゃないか。まあ華僑の状況外務省で御存じのある限り、いかにして華僑が発展したかということをお話し願いたいのであります。
  70. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) 遺憾ながら華僑発展の原動力たるべきものについての知識は私は現在持ち合せておりませんので、よく調べましてまた御報告申し上げるということでお許しを願えれば幸いだと思います。
  71. 上林忠次

    ○上林忠次君 農業移民にしましても、工業移民にしましても、まず事業をやるには金が相当要る。日本から持って行った金、あるいは向うから援助される金ではとてもやって行けないのじゃないか。先ほど申しますような金融機関事業をバックするための金融機関を作ることが私は必要じゃないかと思うのであります。そういうようなことに対する外務省移民を前にしての計画はありますか、どうですか。
  72. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) それはただいまちょっと触れました千五百万ドルの移民借款でございます。もっと具体的に申し上げますると、何とかして、去年の九月ごろでありまするか、日本人海外進出、今までのような、私はここで竹やり式の移民と言っているのですが、それじゃなしに、資本と機械と資材を持った移民を送り出したい。これが最近のいわゆる独伊におけるところの移民政策の根幹をなしておる大きな姿でありますから、われわれもそういったようなより多く努力が報いられるところの近代的な移民に切りかえたいという念願は持っておったのでありますが、いずれにいたしましても、技術は持っておりましても、遺憾ながら日本に金がありません。それでこの前の吉田前総理の渡航の際に、この話を総理にお話ししてもらうことを頼みまして、吉田総理はもともとは別の面から金を出してもらうことを考えておったようでありますが、結局は今の三銀行から千五百万ドルの借款をするということに原則的に了解に達しられたのであります。それは昨年の十一月、前総理旅行のときの話でありますが、自来大蔵省と私たちがこの話を引き継ぎまして、具体的に進めてきたのでありまするが、と言いまするのは、この会社ができれば、これによって海外企業を行う人に対してある程度の融資ができるようになるのです。そうすれば、技術を持って若干の資本があれば海外雄飛ができるというので、まずこれを成功せしむることによって、しかも逐次これを拡大して、お説のようなものに持って行きたいというのが念願であります。これは今まだはっきりきまっておりませんけれども、自由党と民主党との話し合いによって、大体株式会社、特殊な、政府の厳重なる支配下に立つ株式会社ということになりそうであります。そうなりますると、政府の資本金、今度修正で通りました一億円のほかに、民間資本が相当集められるのではないかというわれわれは期待を持っている。民間資本と申しますのは、私が考えておりますのは、ブラジル等における成功者の金であります。御承知かもしれませんけれどもブラジルにおける、最近ことに南伯方面における移民の成功は大へんなものでございまして、一年間で一億円以上の収入のある者が四、五十人もある。日本にはたった一人しかありませんが、というような状況でありまして、金はふんだんにあり余って持っておるけれども、投資の方法を知らないというのが実情のようでありますので、こういうような金をその会社に引き込むことができれば、それを大きくして海外発展の基盤にしたいというのがねらいでありまして、これはある程度まで成功いたしましたと申し上げても差しつかえございません。しかしどの程度まで基盤が、と言いますか、その海外の資本を吸収し得るか、いなかは、出て行ったところの会社等々の企業がどの程度まで成功するか、ある若干の成功の事例がありますれば必ずあとからついて行くのじゃないか。先ほど御指摘がありました、日本人移民国民として適切であるかどうかということについて私は疑問を持つのでありますが、今やこういう時代になってくると、昔と違いまして、ブラジルまで船では二月かかりますけれども飛行機で行けば二日、三日で行ける世の中でございますから、だいぶ情勢も変ってきております。でありますから、初めの十件なり、二十件なり成功いたしますれば、逐次こういうような企業の進出もできるのではないか、御質問の金融と言いますか、そういう方面の施設はまずこれを拡充することによって実行する考えであり、また実行しつつあります。
  73. 上林忠次

    ○上林忠次君 今の国際社会情勢では、まだ実るのもはるか将来のことと思いますが、先ほど私が申しますような人口の再分配という問題でありますが、われわれの近くにあれだけの南洋の土地を持っている、人口の少い土地を持っている、あるいは沿海州にも土地を持っている、こういうような土地について、もう少し日本移民を、あるいは世界の人数交流をやらそうではないかというような問題が、国連あたりで引当出たのか、出つつあるのか、さようなことをもう一言、先ほども聞きましたが、各国が熱意を持っているかどうかという状況一つ話していただきたい。
  74. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) 私たちの現在承知いたしておりますものにつきましては、欧州につきましては先ほど申し上げました欧州国家間移民委員会でございますか、というものを組織いたしまして、アメリカがリーダーシップをとって、欧州における移民海外に送り出すということの一つの運動がありますが、これは東洋には現在のところ及んでおりません。それからアメリカが難民救済法というものを制定いたしまして、いわゆる難民の定義は相当むずかしいようでありますが、今度の戦争の結果、難民とみなされる者に対しては、各国に割り当てて米合衆国の入国を認めるというのでございまして、東洋に関する限りは、私の記憶にして間違いないならば、約二千人ぐらいだったと、間違ったら訂正いたしますが、記憶いたしております。そうしてそれに、と言いまするか、実際問題として行く者は、台湾人とか、朝鮮の人間とか、日本人ということで、ほかの国の者はあまり対象にならぬのでありますから、一時は日本人相当数行けるのではないかと思ったのであります。ところが実際運営してみますると、難民の定義が非常にむずかしいのでございまして、何年越しでようやく最近神戸から五十人ばかり出発いたしました。これは各国と言いますか、世界が人口問題、移民問題に対する関心の一つの大きな動きとみてもいいと思います。それからもう一つは、政府ではございませんけれども、カトリックの団体がございまして、これは世界カトリック連盟とか、日本にもその支部がございますが、現在カシミターさんが、日本のために中南米において何とか若干でもいいから、いかなる国にも行けるような割当をしてあげたいという工合に努力されておりますが、これはもちろん政府ではございませんが、そういうふうな国連を通じての若干の動き、アメリカを通じての若干の動き、それからカトリック団体を通じての若干の動きがございます。ただ遺憾ながら、日本に対しては欧州に対するごとく熱意がまだないというのが実情じゃないでございましょうか。と言いまするのは、中南米といたしますれば、何といっても彼らの先祖は欧米人であって、その欧米人を第一に呼びたいというのは人情の常でもありましょうから、そういう結果に相なったのと、今度の戦争の結果、日本人は危険なものであるという思想がいまだに相当残っておる関係じゃないかと思いますが、これは今後のわれわれの努力によって、また時の経つことによって逐次に解消せられるのじゃないかと考えております。なお先ほど難民救済法の極東の割当は二千人と申し上げましたが、三千人でございます。
  75. 上林忠次

    ○上林忠次君 もう一つ、アメリカに移民の許可がされているのが一年に百五十家族か何かと思っておりますが、どういうふうな都合でああいうような数字が出てくるのですか、許可数が少い。何のために百五十家族というふうな制限をするのか、百五十家族入れて、どういうふうな方面にアメリカの発展のために使うのか、いろいろなものを入れたらいいじゃないか、州を限って入れてもいいのではないかというような気がするのですが、各国がそういうように閉鎖をしている時期でもありますけれども、たとえば南方地帯、あるいは未開発地帯、経済の遅れている、文化の遅れている地帯の発展を援助する、ああいうようなアメリカ中心としての動き、こういうふうなことにつきましても、ほんとうにその国の発展をこいねがうのならば、日本人移民もやってこい、技術の優秀な日本人をどんどん入れるという場合も合わせて考えなければいかんじゃないか。ただ金を使ってやるとか、金で援助する、あるいは技術で援助するということと一緒に、人間の数量的な援助、技術を持った人間の数量的な援助、自由な移民ということになりますが、さようなことも合わせて考えなければならぬのじゃないか。特にアメリカのような百五十家族をちょこっと入れるというような制限をしているのは、どこから、またどういうふうな気持からきているのか、これはアメリカさんの気持ですから、わかりませんか知りませんけれども、さようなことについてお感じを一つ話していただきたい。
  76. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) これは確たる資料がございませんので私の憶測に相なるわけでありまするが、御承知通り、日米間の関係日本移民排斥という問題を通じて悪化してきたのであります。すべての問題がカリフォルニア一帯にいる日本人の排撃問題から不愉快な気持が日米間にわだかまりまして、暗雲がたれこめてきたことは御承知通りでありますが、今度の戦争によって、少くとも実益は別として、日本人をシャット・アウトしないのだという抽象的なねらいがマクミラン法のねらいじゃないかと思います。マクミラン法は、あえて日本人だけを対象にしているのではないアメリカの移民法でありますが、その中に百八十何がしの日本人を入れ、きわめて抽象的なものを入れたのは、そういったような、日本人というものは排撃しないのだという抽象的なねらいじゃないかと私はそういうふうに思うのであります。と言いまするのは、今度の戦争の結果、いろいろとアメリカに対して日本は大きなマイナスをかせいだわけでありましょうが、ただ二世の関係においては思ったよりもアメリカに対して忠誠であった。二世というものは特にイタリア戦線における二世部隊は、四百二十四部隊と言いましたか、何か番号を忘れましたが、難攻不落と言われたところの戦線を受け持たされまして非常によく戦かったということが、アメリカ人に対して非常な好影響を、心理的な効果を与えまして、日本人も同化できるのだという印象を与えて、その結果マクミラン法に若干の日本人を入れるということになったやに聞いております。でありますから、実際の人間というよりも、象徴的なものじゃないかと考えております。しかしまだたくさんの人間を入れるまでに……、日本人をしからばたくさん入れるかということに対して、そこまでアメリカの輿論というものが、国民というか、そこまで日本に対して好意を持つに至ったとは、われわれは国際情勢から判断を持てないのであります。
  77. 上林忠次

    ○上林忠次君 私が矢口さんにお願いしておきたいのは、たくさんの人間を年々大きな国費の援助で移民させるということはなかなかむずかしい。先ほどから申します中華民国の華僑の発展にしましても、向うで堅実な事業をするということが元になって、それからどんどん郷里の人間を呼び、親籍知己を呼び、自力でやってこいということが元で、あれだけの大きな移民ができたのであります。一人当り何十万円というような国費の援助をしなくちゃ移民ができないというようなことでは移民はこれはいつまでたっても、これはいわゆる大きな効果をあげ得ない。今回これから外務省強化され、移住局強化されて、行く連中はうんと訓練をしてもらって、向うで成功するように、またあともバックしてもらう。そうしてひとり立ちを早くさせるというところに外務省は力を尽してもらいたいのであります。ただ渡航費をやるとか、さようなことでは移民はできないのであります。向うに行った連中が成功するように十分な御支援をいただきたい。希望を申し上げておきます。
  78. 木下源吾

    ○木下源吾君 私もちょっと質問したいのですが、私の質問の趣旨は、外務省がどうも常日ごろ、理事者というか、外務当局というか、そういう諸君が著しく政治方面に多く動いている、こういう印象を持っているわけです。先ほど来聞いておりましても、参事官の答弁を聞いておっても、何か参事官の意見で外務政策をやっておる、そういうことを私は感ずるわけなんです。これでは政府は民主党がとっておっても、なかなか思うような外交政策が行われない、こう思うのですが、それでよく総理大臣の話と、外務当局と重光大臣の答弁とは食い違っているということは一般日本でわかっている。こういう問題が具体的に今たまたま質問が出ているのですが、われわれはどうしてもこれはやっぱりはっきりしておきたいように思うので、具体的に御質問してみるのだが、さっきの田畑君から質問があった中ででも、松原機関とかいうことが出たのです。これは非常に松原機関を参事官のお話では気の毒に思い擁護しておるようで、その損失を政府がカバーをしたと、こう言っておる。どのくらいの損失で、それはどのくらいカバーしたのか、どういう手続きで、どういう予算でそういうものができるのか、どういう機関で一体そういうことが決定されたのか、こういうことを聞きたいと思うのです。ブラジルのじゃない、アルゼンチンのですか、今のあれは……、ブラジル移民ですか、政府がやるよりも個人機関でやった方がいいから、そういうように推奨しておるというようなことを言われた。で、これは一体そうすれば法的にはあるいは関係ないかも知らぬが、結果から見て損失を補償してやったということは、政府は責任を負っておるわけだが、どういう根拠でその責任が生まれて来るのか、こういうことをまずお尋ねしたい。
  79. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) 前段の方は別といたしまして、松原事件についてのことについて御答弁を申し上げます。これは先ほどもお話しいたしました通り、終戦血後、終戦の当時の実情を申し上げますると、このブラジルにおきましては、勝ち組と負け組と相別れまして、日本は絶対に負けたんじゃないのだというのと、一方は負けたんだという認識派と相争いまして、流血の惨事をあちこちで展開したのであります。おそらく数名くらい傷つき、あるいは殺された人もあるやに聞いておりまするが、そういう事件が起りましたので、ブラジル政府では日本人というものは、かねてある一面は非常に勤勉であるけれども、不愉快な人物だとも考えていたかというので、そのとき日本人排斥法というものができまして、九十九票対九十九票というわけで、それに議長が一票入れまして、百票対九十九でわずかにその排斥法が通らなかったのであります。これは憲法の、それも日本人が好きとか嫌いとかいう問題じゃなくて、国家の基礎法をきめる憲法の中にそういったふうなことを織り込むのは好ましくないという理由で、それで幸いにも排斥法というものは通らなかったのであります。そういう状態が若干続いておる間に、例の松原氏がヴァルガス大統領と非常に個人的にじっこんの関係があったので、ことにこれは私が仄聞しておりますので、真否のほどはよく知りませんが、選挙の関係についても陰となり、ひなたとなり援助したので、ヴァルガス大統領が論功表賞の意味で、何か欲しいものがあったらやろうと言ったときに、松原氏は五千家族の日本人移民を許してもらいたいというので、五千人という人間を彼の名において入れることの了解を政府から取り付けたのであります。そのころ日本は占領下にありまして、一方移民なんと言いますと、さっそく問題になるような時代であったのでありますが、外務省の一郭においてこの問題を取扱っており、一係りでやっておったようであります。で、農林省とも相談いたしまして、若干の人間を送り出したのであります。それがウナという所でありまして、リオデジャネイロのずっと北の方になっておりますが、そこに送り出したのでありまするが、不幸にしてそこに行った連中が芳ばしくない。当初のことであったから、選考もずざんであったから、芳ばしくなかったので、ストライキか何か起しまして、それで政府から給付されたところの工具ですね、なたとか、のこぎりとか、それから苗、そういうようなものを持って逃げ出したのであります。しかも原則として、そういったふうな食費は一定の期間はブラジル政府が持つというようになっておったのでありまするが、これも脱耕ときまりますると、執拗にそういうものを返せということを松原に対して要求して来たのであります。それでその松原先生は、自分が自分の名前において入れた移民でありまするけれども日本政府がこれは選考したものであり、しかも自分の利益には直接相なるわけじゃこれはないのであって、非常に彼は苦慮をしたのであります。そうしている間に一方彼の個人的な仕事の失敗もありまして、さらに悪いことには昨年の夏ヴァルガス大統領は自殺する。つえとも柱とも頼む大統領が死ぬというありさまで、非常に彼は気の毒な状態に追い込まれてしまったのです。そうしている間に、ブラジル政府はその今の食費並びに工具、それから苗代、そういうふうなものを返せとやかましく責め立てて参ったのでありまして、もしこれを返さなければ、五千家族のコンセッションをも取り返すという険悪な状態になりまして、われわれ移民関係に携わるものといたしましては深憂したのであります。金額といたしましては、これも今はっきりした数字が頭に残っておりませんが、日本の金にしまして大体二百五十万円くらいでしたか、その前後であるように記憶いたしておりますが、その金を出す出さぬといろいろもめまして、結局まあ外務省が、どういう費目から出たか私は存じませんが、とにかくこれはあとで係官が来ないとわかりませんが、出しまして、一応解決した、こういうわけであります。で、そのウナ事件によってこうむったところのものの被害については、その松原氏の一応まあ責任と言いますか、そういうものを除いたというような格好になっておるのであります。
  80. 木下源吾

    ○木下源吾君 どうも私の聞いていることにぴんと来ない。その二百五十万円か何ぼの金は何の責任でそれを払ったのですか、払わなければならぬどこかに根拠があったのか、それを聞いているのです。
  81. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) 今それは申し上げたと思いますが、それは一つは、この移民を選ぶときについてこちらに相当の、政府側に手落ちがあったかも知れぬと見なければいけませんし、それに実際上、これは表面は松原氏自身のコンセッションになっておりまするけれども、これを送るにつきましては、日本現地の領事館なり、その他が陰に陽にこれを支持しておりまするためと、それからもう一つは、これを返さないとせっかくの五千家族の人間を送り出すことも取り消されるということになってみれば、移民政策上非常に困るから、まあそういう工合な措置をとったのであります。
  82. 木下源吾

    ○木下源吾君 いや、困るか困らぬか、そういう問題ではなく、どういう一体責任で、その責任の生まれて来る一体根拠はどこにあったのかということを聞いておるのです。役所だからな、政府なんですよ、自分の金じゃないのだ。ただその現地でいろいろあっせんをしたとか、それから個人的にいろいろ何か援助したとかいうことと、政府が責任を帯びて二百五十万円の金をやるということと違うのじゃないですか。もしもその二百五十万円が正当にどうしてもやらんければならぬものであるならば、松原何がしが、かりに一億円損害しておっても、政府がそれをやらんければならぬか、それを私は聞いている。一体どういう根拠でそういうことがなされて行くか、金が出されているか。
  83. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) 根拠は先ほども申し上げておるのでありますが、選択のときに、移民を募りますときに政府に手落ちがあったからそういう事態を引き起したとも思われまするので、よくそういうことも勘案いたしまして支払ったのであります。
  84. 木下源吾

    ○木下源吾君 政府に手落ちがあったということはどうしてわかるのですか。
  85. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) それは現実に行った人たちの質が誰が見ましてもよくないと言われているのです。
  86. 木下源吾

    ○木下源吾君 それは一体誰の責任です。
  87. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) 当時の要するに、これの選択に当りましたところの外務省並びに農林省のものでしょうね。それが監督してやらして、現実にやりましたのは地方の海外協会ですからね。
  88. 木下源吾

    ○木下源吾君 私はそれを聞いているんです。外務省でも農林省でもよろしい。よくそういう間違いを起しても、間違いですよ、これは明らかに……。そういうことが一体移民政策で、移民外交であるというのならとんでもない話で、こんな法案なんか通過させられるもんじゃない。そういうことが移民外交であるならば、こんな法律なんか要らない。向うへ行って諸君と領事がやって、まずく行ったら政府の金を払って、それが事実はどういう費目でやったかわからぬけれども、明らかにそれは適法でやったとしても、それは予算なんかにそういうものはない。そういうことをやるのが一体移民外交であるのか。しかも移民外交というものが外務省の官僚諸君だけがそうしてやって、それで一体成功するものなんだと考えたら大間違いだと思う。私はあなたの話をさっきから聞いておったら、まるで自分一人でやっているようなとんでもない話だ。そういうような外交をやっているから間違いが起きている。私がそんなことをあなたに追及してもなかなか改心はしまい、日本の外務当局は……。これはさっき私は何したのだが、これも一つの例だ。私は多く見てないが、ちょっとこれを今見たのですが、これは南ヴェトナムに関する「このような情勢の発展を防ぐためには」、どういう情勢かというと、「議会勢力は共産勢力が過半数を占める公算が大きい。そうなれば、またヴェトナム全体が苦もなく共産化するのは、もはや時間の問題となろう。このような情勢の発展を防ぐためには、どうしてもヴェトナムに、ヴェトナム人に人気のある強力な政権をうち立てる必要がある。」、こういうことは内政干渉じゃないか。こういうことを一体政府の方でこれをやっておるのでしょう。こういうようなことを、それは君の方の関係じゃなかろうけれども、おおむね外務省というものはこういうものなんだ。この前あたりでも、占領当時でもどんどん官費を使って、そうして地方へ行ってとんでもない機関で自分たちの勝手な演説をして歩き、国民を侵蝕している。こういう考え方は幾ら君、民主党が政権を取ろうが、何しようが、先ほど来園田君の答弁で、平和外交で行くんだということを幾ら言っても、諸君によってみんなひん曲げられてしまっているのだ。こういうことをやって、そうしてここに設置法の一部改正でこうでありますとか、何とか言うけれども、信用できるもんじゃないでしょう。それで移民というのは一体人口問題解決だということをさっきから言っているようだが、ほんとうにそうなんですか、どういうつもりで移民をやるのです。
  89. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) 午前中も御説明申し上げましたと思いますが、移民を直接現在送り出しておりまするのは、今年度におきまして約六千人ぐらいであります。しかし今まで送り出しました移民日本経済に直接間接に貢献することによって扶養している人間は十六、七万以上に達しているのではないかということは、けさほど申し上げた通りであります。そういうことのほかに、私は移民政策として一番重きを置かなくちゃならぬことは、そういう人口政策もさることながら、一つの明るい希望を与えるというところにあるのじゃないかと私は考えるのであります。と言いますのは、日本では幾ら働きましても、なかなか実績は出にくいのでありまするが、先ず向うに行けば、原則といたしまして、努力すれば、とにかく努力をすれば自分の進路というものが開拓できる、少くとも開拓できる公算は日本よりもはるかに大まいとわれわれは判断しているのであります。そういったふうな明るい希望を与えたい、努力すれば報いられるという窓を作るという心理的な効果があることも、これは見逃し得ないことだと考えております。もちろんこれが経済的発展の基礎をなしまして、いずれは日本経済を、中南米、あるいはブラジル、あるいは東南アジア方面日本経済が発展する基盤になるのであります。現に一例を申し上げさしていただきますると、昭和二十七年の統計によりますると、五十九億何がしの金が日本政府に直接、間接入ってくるわけでありまするが、貢献するわけでありまするが、そのうちの数字的な記憶が私にはっきりしませんが、間違ったらあとで訂正いたしますが、二十五億ぐらいまでは、私ども考えても、ブラジル人と言いますか、白人系統の人間は使用しないものである、完全に日本人だけが使用する商品であるというようなことが泉教授の発表によって出ておりますが、かくのごときはこれは一つの小さい例に過ぎませんが、こういった工合にとにかく日本経済発展の基盤ができる、たとえばハワイにおきましても同様でありまして、日本とハワイとの経済関係の基盤というものは、向うに参りました日本移民が作っているといっても私は過言じゃないと思います。そういったようなふうの心理的な面、経済的な面、両方面考え移民政策をとりあえず遂行している次第であります。
  90. 木下源吾

    ○木下源吾君 これは諸君に聞いてもしょうがないと思うのですが、政府に聞くのがまあ当りまえだと思うのですけれども、あまり君たちが一人でやっているようなことを皆言うから聞くのだが、移民個人の金もうけのために明るい希望を持ってるからやるのだと、そんなことをやるが、一方においてはほかの方に賠償問題などが出てきている。戦前のような、そんなやり方で移民をやってごそっとこんな賠償を、土台までとられるようなことをしでかしている。そういうことを踏襲したって何にもならないのじゃないか。今や日本移民も戦後においては考えを全く変えて、いわゆる技術移民であるとか、あるいは文化の移民であるとか、あるいは工業移民であるとか、旧態依然として外務当局はそんなことを考えて、そうして選択するところも南米だとか、しかも何か赤いところはその防止のためにやるようなことを言う、そういうように聞こえますけれども、一方においては大陸からどんどん引き揚げをやっているのだろう、君。引き揚げをやっておる、何百万という人を……。これも金が要って、そうしてひどい目にあっているでしょう。そうして他方において、狭いところにあなた方が考えるような移民をわずかばかり送るのに、そうして非常にうき身をやつしておるようであるが、移民といえば探してやる所は一体どういうところなのか、政情が日本とよく似たところにやるのか、日本と違っておるところは向うから手を差し伸べてもやらないというのか、どういう一体考えでおるのか、それを一つお聞きしよう。
  91. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) 移民受け入れ国の状況でありますが、まず現段階におきましては、中南米が主体となっております。と言いまするのは、向うに行っている国が日本人を要望するのであります。これは要望しないところには送り得ませんし、無理に送り込んでみたところで結果が出にくいのであります。今までの移民の歴史を見ますると、やはり若干の先駆者がいたところに第二、第三の移民部隊が続きますると効果は上りやすいのであります。そういう関係もありまして、先輩の移民諸氏が開拓したところのブラジル、アルゼンチン、その他パラグァイというような方面に力をいたしておるのであります。
  92. 木下源吾

    ○木下源吾君 園田さんに一つお聞きするのだが、ずいぶんあなた方の政治はやりにくいだろうと思う。先ほど来あなた代弁してあやまっておる、全くやりにくいと思う。これはだんだん直して行くことに努力していると思うのですが、どうですか。この移民問題を通じてでも、あなた方の考えを真剣に実現するような方向にやり得るかどうか、そういうことをお聞きしてみたいと思います。つまりいえば、南米だとか何とかいっても、カムチャッカでも、それからどこでもですね、あるいは樺太でもです。千島でもですよ、幾らでもあるのですね。国内のあすこにおったのですよ、われわれ。私も北海道ですが、私も移民ですよ、北海道の……。それで政府考えで、そこに行ってはならないものでしょうか。そういうようなことで非常に今たくさんの日本人が困っておるのですが、全体の人口問題というよりも、そういう方面が私は移民が非常に可能だと思っております。ただ悪いのはね、当時の略奪、侵略というこの方式が個人にまで徹底しておったために、今何百万という人々が引き揚げをしなければならないようになってきたと、こう私は考えておるが、現政府は幸いにして日ソの談判を今やっております。ロンドンでやっておりますが、これらも私は必ずや樺太を返せ、千島を返せという前に、そういうように行き来を自由にして、そうして日本の人口問題あるいは技術問題、生活向上の問題、いろいろ平和の問題に貢献し得ると考えるのですが、政府は今どういうように考えておられるか、それを一つここで皆さんに教えてあげて下さい。
  93. 園田直

    政府委員(園田直君) お答えする前に先ほどの問題をおわび申し上げますが、先ほど参事官から申し上げましたのは、答弁の表現が非常に工合が悪くておしかりを受けておりますが、御指摘のごとく、松原機関の失敗で、松原機関がどのような構成でございましょうとも、政府がそれの損失の補償をしますについては、損失補償の法律もしくはその他議会の認可を受けてやります。あるいはまた松原機関の失敗によって相手国に損害を与えた場合には、相手国とわが国との折衝によって、それに基いて議会の許しを得て支払いをやって行くのが当然でございまして、参事官の述べました点は、抽象的に、松原機関が非常に働いて失敗をしたから、かわいそうであるから何とかしてやらなければならぬという気持をそのまま答弁申し上げておしかりを受けたものと思います。二百万の支出がどのような支出になっておりますか、私政務次官に就任以来の一般の支出については、大体百万円以上のものについては記憶しておりますが、就任以前のことでありまして、多分出ておるとすれば、そのような損失補償の名目で出ておるのじゃなくて、現地工作費その他の形式で出ているのじゃないかと思いますが、詳細についてはわかりませんので、この点についてはあとでよく調査をして御報告申し上げたいと思います。  それから第二番目の、外務省から出しておりまする情報に対する御注意でございますが、御指摘のごとく、主観を交え希望的観測をもって情報を作りますことは、これは情報の最大の失敗でございます。ただし、諸情勢の判断によって日本の国是に基き、こうこう、こういう情勢であるから、日本はこうしなければならぬという判決を与えるということは、これは情報に許された権限であると私は考えております。いずれにしましても、このお配りしておりまする「世界の動き」というものは、そういう国家の国是に基く判決を御報告申し上げるべきものではなく、またそれは議会によって御審議を願うために、この情報は希望的観測もしくは主観を交えずして、事実ありのままを御報告申し上げるべきであります。今南ヴェトナムを防禦するためには何かそういう工作費を使っておるかということでありますが、決してそのようなことはございません。そのような工作費は使っておりませんが、表現の仕方はこれは十分検討いたしまして、情報局長によく御趣旨のあるところを伝えまして、自己の有する思想なり主観によって、お配りする資料等にそういう色彩を加えないことは私も当然と考えますので、御注意の点はそれで御了承願いたいと考えます。  なお次にお尋ねのありました問題は、非常に大事な大きな問題でございまして、あるいはその御質問に当を得たお答えができないかもわかりませんが、われわれ外務省として考えておりまする点は、移民というものが今質的にも量的にもばかりでなく、大きな方針が転換をしなければならぬ時期であるとわれわれは考えております。その移民は単なる日本国内の人口問題であるとか、あるいは午前申し上げました各種の問題は、これは日本国内から申し上げる具体的な問題でございまするが、もっと大きな理想面から言いますると、やはり戦後の世界平和という点から、一つの富なり、一つの人員の配置というものが、みんなの協力によってひとしく分布されるという天下の私はそういう大きな筋道から、移民の相手の出先き場所あるいは移民個所というものは出てこなければならぬものだと考えております。そういう筋から考えまして、今日やっておりまする移民の相手というものは、必ずしもそういう方向に沿っておるものではございませんが、御承知通りに、戦後の国交関係の問題あるいは今日までのいきさつ等ございまして、移民を今このまま中止する段階ではなくて、むしろ今までのものを是正しつつ拡大しなければならぬことは皆さんひとしく御支持願っておるところでございますので、今までやっておる点をとりあえずやりつつ、大きな計画のもとに転換しなければならぬ。かように考えております。従いまして、中南米ばかりではなくて、東南アジアあるいは隣国、あるいは先ほど御指摘になりました方面等につきしましては、ただ単に移民の分野からばかりでなく、あるいは賠償の問題、あるいはこの賠償を具体的に実施をいたしまする労務、あるいは経済開発の問題等からもからみ合わして移民の問題を進めて行かなければならぬと考えております。お答えになりますかどうかわかりませんが、以上お答えを申し上げます。
  94. 木下源吾

    ○木下源吾君 いや、非常に明快に今お話になったのですが、二、三まだ先ほどの松原機関の問題は、松原それ自体それを助けておるようにもとられる、そうすると、あなたの御答弁とは食い違う。そういう点をよくお調べをねがって、この問題は、このパンフレットの問題は、おっしゃる通り主観や独断ではいけないので、それが往々にして外務省は、やはり日本外務省はそういうことをやる、これは非常に国民の側からも困る。ただ字句の問題は、そうではない、意識的なんだ。だからこういうように今大きく外交の問題等が転換してきておる時だから、ときどき注意してあげないと、えらい間違いを起して国の損害になるのではないかと考えて、これを指摘したのです。単なる攻撃のための攻撃ととられては困る。それから移民政策と今の日中、日ソの関係などは非常密接であります。これをはばまないように一つ移民の方向を進めてもらいたい。それをはばまないようにね。で、先ほど来、田畑委員からも質問されておるのは、何かあまりにも一辺倒のようなにおいが答弁の中にたくさん出てくるような気がしてしようがない。どうか一つ大切な問題ですから、十分に政府の施策が部内に徹底するように一つおやりを願いたい。こんな問題をとらえてはなはだどうも時宜を得ておらぬかもしれませんけれども、せっかく政府次官が来られたのですからお聞きしたので、どうもありがとうございました。
  95. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 ただいま園田政務次官の力強い移民政策の根幹に関する御発言がありました。私も同感なんでありますが、それにつけても、ごく最近の第二次大戦後の世界の移民事情等で、もしそこに数字がおありでしたらお聞かせを願いたい。というのは、私はもう数字等は全然忘れてしまっているのですが、ともかく従来の移民国と言えば、ヨーロッパではイタリアとか、アイルランドというような国々が一番大きな移民国、十九世紀以来の移民国ですね。そういう移民国が第二次大戦の直前ではどのように変化しているかしれませんが、その後第二次大戦後、それがどのように現在移民が行われている。それから受入国の事情、先ほど産業を移民するのだ、移民借款に基いて産業を移民して、単に農業移民ばかりではなくて、労働移民をもこれに伴わして、技術者など一緒に移民させる、こういうふうなお話があったのでありますが、そういうことになりますと、これまた農業移民ですら相当従来摩擦を起している面があるわけです。そこで今度は労働移民を、まあ技術等はともかくとして、いわんや企業向うへ移転するのだということになりますと、その移民地における産業との摩擦の問題等も考えられるわけです。いわんやブラジル等において、先ほどお話のあったような事情が終戦直後後にあったとすれば、受入国の問題も相当重要な問題ではないかと思います。そこで最近の世界の移民事情を大ざっぱなところでけっこうですから、大体の数字をお聞かせ願いたいと思うのです。
  96. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) 資料をそろえてきておりませんので、はっきり御答弁申し上げることができないのでありますが、ここにとりあえずありますのは、これは戦後と思いますが、詳細な数字につきましては後ほどお手元まで届けさせていただくことでお許し願いまして、受入国の事情でございますね。これはそれに関連しての摩擦の問題でありますが、いろいろと受入国の事情は、まず何と言いましても中南米農業未開発国でありまするので、農業移民優先、これは申し上げるまでもございません。なるだけ農業移民にしてもらいたいということ、しかし戦後中南米におけるナショナリズムの風潮が強くなってきて、従って自国の工業立国をはかる機運も強いのでございます。それにミートするために、日本国から企業と資本を持ったものに来てもらいたいという要望、現にありますのはブラジルでも、それからボリビア、それからドミニカでもそういう要求がございます。それで摩擦云々のこと、まことにごもっともでございますが、主として外務省が心配しておりますのは、これは向うの産業と競合するようなやり方ないし仕事は、これは摩擦の大きな種になりますから、そういったふうな競合しないような、そういうような産業を向うに入れたい。また向うもそういうものを希望しているという実情であります。でありますから、どういうものをどこへ出すかということは、もちろん向うの国々の実情によりまして変って行くということを申し上げておきたいと思います。
  97. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 今のお話によりますと、ナショナリズムの傾向が非常に強くなってきている、確かにそうだと思うのです。ことに第二次大戦後におけるラテン・アメリカ諸国間の最近の動きを見ておりますと、非常にそれが強い、そしてよしんば競合しない企業を持って行くにいたしましても、そんな簡単に外務省考えているように、たとえばブラジルにしても、あるいはその他のラテンアメリカ諸国家にしても、日本からの企業を果して希望しているんだろうかという疑問が私は起ってくるのです。競合しないというか、それは国々によって競合しない企業は違うでありましょうから、一概には申せないと思いますが、しかし一応ブラジルならばこういう企業、あるいはその他ボリビアならばこういう企業といったような企業は、あらましは外務省の方でも現在調査済みなんでございましょうか、それともこれから調査されるのでございましょうか。
  98. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) 十分なものではございませんけれども一応の調査はございます。去年あたりから訓令いたしまして、どういう種類のものが一番適するかというような一応の調査はございます。それから企業は衝突せんかということでございますが、たとえば一例を申し上げさせていただきましょう、ボリビアにおきましては、先ほども申し上げたのでありまするが、砂糖の機械、これに付随しての労働者並びに技術を入れるということで話が進捗して、先般あのボリビアで、というのは、御承知通り砂糖のできる国であります。日本から機械を持って行きまして、それから技術者をこれにつけまして、その手足になる労働者、農民でありまするが、こういうものをつけてやる。こういう話で今着々とボリビア政府企業者との間に話をしておりますが、うまく行きそうであります。ただ一つの隘路はプラント輸出、プラントが行きますと、それに対する代金を、ドルの決済の問題で今ぶつかっているんです。もちろんこういったような問題は、われわれ公務員が直接やってもこれはできるものではありません。私企業でもありまするので、先ほど申し上げました千五百万ドルの移民借款ができますると、海外移住振興株式会社というものができることになると思いますが、そうしますと、そこの社長と言いますか、総裁というかしりませんが、それがきまりまして陣容がきまりますれば、一切のそういったような具体的なやり口につきましては、そういう方面に移しまして、単に外務省としては、彼らの必要な情報ないしはお手伝いをするということになると思います。
  99. 園田直

    政府委員(園田直君) 補足してお答え申し上げます。ただいまの御指摘は全くその通りでございまして、移民につきまして、政府政府との折衝の間では、労働力の問題、技術の問題、及びその他の問題等で割に話が順調に進むのでございますが、これが一たび議会の問題となり、相手国の国民の意見を反映する段階になりますと、一つは労働組合、一つ企業者の方からいろいろ意見が出てきて、そして障害がときどき出てくるような状態でございます。企業の面につきましては、今のところ参事官からお答え申し上げました通りでございまして、一般国民、特に大衆、労働者に対する了解を求めるためには、これは移民外交の最も大事な点であると考えまして、いろいろ検討し、手を尽しておりますし、なお労働組合関係等の議員の方や、あるいは民間方々がそういう方向に、御旅行の際には特にお願いをいたしまして、そういう面についての折衝等もお願いをしてお助けを願っておるような状態でございます。それにつきましても、これをやりまする企業並びにその他の主管と申しますか、受け入れ機関が公社でございますると、これは戦前にもそういう例がございましたが、いかにも政府機関であって、政府の出先機関がやってきて、自分の国内を何らかの政策のもとにやってくるのだという印象を与えまして、非常な反撃をくらうおそれがありますので、ただいま大蔵省との間に意見の食い違いがございましたが、どうしてもこれは民間会社形式をもって向う移民後の企業なり、あるいはその他の諸問題を、資金の面等も加えましてお世話するようにしたいというので、その法律案の準備を急いでおりまして、これは二、三日中に提出、御相談をお願いする予定でございます。
  100. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 今の問題ですが、アメリカの千五百万ドルの借款を元にして、そういう法人組織を作って、そうしてたとえば企業を運営するということになりますと、かつての満鉄会社、たとえば去年問題を起したニカラガの米果物会社というような問題を起す危険が全然ないとは言えない、つまりアメリカ帝国主義の背景においての進出だという印象を、おそらく現地の人々に与えるのではないかというような、今、政務次官の方から労働組合等の反対もあるが、政府の方で折衝しておるというお話でありますが、おそらくこの問題もいよいよ表面化してくるということになると、そういうような現地でのトラブルが起るのではないか、よしんばそれをうまく調整して、そうして工業を移転させるとかということになりましても、これは何としてもやはり一面においては資本の輸出であり、また日本技術の輸出であり、そういう面でどんなにしても、やはり問題はあとあとまで残るのではないかという感じがするのですが、従って問題は結局従来のような、たとえば満鉄でやったような式の移民形式をとったのでは、依然として日本は帝国主義的な土台の上に移民政策を遂行して行くという印象を与え、そういう非難を受けるだろうと思う。そういう点について政府は十分検討される必要があると思う。それからもう一つ、先ほど移民政策の転換の時期であるというお話がありました。確かに移民政策はここで大きく転換しなければならぬと思うのです。従来の移民政策というものは、とにかく食うに困るから行く、婿にやるという形でやっておるわけです。中には移民することによって何十万、あるいは何億という財産を作った者もありましょうが、困った者が行くために、いつでも問題になるのは低賃金の問題です。この問題も政府としては大きな観点から解決する、こういう方向をとらないというと、移民問題はなかなか進展しないのではないかという工合考えられるのです。それらの点を政府としてはどのような立場で考えておられるか、私はイタリアとか、アイルランドとか、十九世紀の末から何十万と移民をしておりますが、しかしあの移民向うに行ってそこの市民権を獲得して、そこの人になってしまう、日本人の場合は、市民権を獲得しても依然として日本人だという考えでやっておるのだから、しかも他面では低賃金であるということで現地の労働者と対立する問題が起ってくる、そういう点について、政府はどういう方針を持っておられるか。
  101. 園田直

    政府委員(園田直君) 御注意の点は検討しなければならぬと考え、よく検討しておりますが、千五百万ドルの借款がいろいろな条件等によりますと、第一に資本面からそんな点が出てくるわけであります。これにつきましては、ただいまの折衝のところは給料を政府が保証すればよろしいという話になっておりますが、これもまた十分検討しながら折衝を続けて行きたいと考えております。なおまた相手国に今御指摘のような満州開拓移民であるとか、あるいはその他のような印象を与えるというような点は、外交上の面から相手国に対しても十分注意しなければならぬ点でございますが、それより前はまずこの移民会社を設立し、これを進めて行こうという国内態勢そのものがやはり問題になる点が多々あると考えます。そういう点につきましては率直に反省しなければならぬ点が多々ございまして、今まで会社法案というものの提案が遅れております理由もそこにございまして、政府から基金を出資する関係上、政府部内にいろいろ意見の食い違い等もございまして、その意見の食い違い等はややもすると政府が直接これを願って、政府統括のもとに、政府の意図のもとにこれを進めて行こうという考え方が出てくるものでございます。また一方純然たる民間会社にすると、これは会計監督上非常に困るというような意見等も出まして、ただいま調停中でございまして、これはわれわれの意見が通るような見込みになっておりまするが、仰せの通り、そういう点につきましては直接会社の設立資金の問題及び機構運営上の問題ばかりでなく、移民を送る際には、こちらの日本一つの出先を作るのではなくて、お送りする人々はりっぱな方々を、向うに行かれて向うの一国民として、向うで繁栄と発展に寄与されるというような方向にしなければならぬということは当然のことであると考え、そういう点十分検討考慮いたしております。
  102. 田畑金光

    ○田畑金光君 今の御答弁の中にありましたいわゆる海外移住振興の会社法案ですが、どういう名前の法案か知りませぬが、二、三日内にはでき上るというようなお話でありました。この国会に出すというような御趣旨だと思うのですが、もうそこまで熟しているならば、一体どういう名称の法案であってどんな構想のもとに立案されておられるのか、これをもう少し詳しく説明を願いたいと思います。それとお話の中に労働組合の諸君や、あるいはまた企業経営者側の方にも話を通じておる、その理解と協力を求めておる、こういうようなお話でありましたが、労働力を輸出する考えであるのかどうか、その辺の事情ももう少し詳しく聞かしてもらいたいと思います。
  103. 園田直

    政府委員(園田直君) 会社法案はまだ政府の最後決定ではございませんが、仰せのごとく、準備をしまして政府部内の意見の統一していない点は極くわずかでございますから、その点はその点といたしまして、ただいまから概略参事官から報告いたさせます。二番目の労働力をやるつもりかどうか、移民は労働力を送るとは全然考えておりません。ただ向うの方でそういうふうに考えられて、労働組合等の方でいろいろ反対の御意見等もあるやに聞いておりますので、そういう点についていろいろ交渉中でございます。
  104. 田畑金光

    ○田畑金光君 何か参事官、その会社法案の構想があるならば、概略でいいから一つ説明して下さい。
  105. 矢口麓蔵

    政府委員矢口麓蔵君) 名前は恐らく海外移住、振興株式会社というようなものになるのじゃないかと思われます。これは仮称であります。それから性格といたしましては、政府の厳重なる監督下に立つ民間株式会社、こういうことになります。資本金は政府出資が一億円、これは先だっての予算の修正で御承知通り取れましたのであります。それから民間からどのくらい集まるか知りませんけれども、少くともそれと同額ぐらいまでは集まるということになっております。実際問題として、とてもそんなに集まりませんけれども、当分の間……。それから事業範囲といたしましては、先ほどもうしばしば触れました海外に対する、農業者、あるいは鉱業者、あるいは漁業者、そういうようなものの海外移住に対する援助資金とするわけでありまして、これを貸し出す形式は担保を取りまして、その担保に基いて貸し出すということであります。利子その他はまだきまっておりません。と言いまするのは、アメリカ側の利子が幾らぐらいでありますか、はっきりしたものがきまらぬものですから、従って貸し出しの利子その他については今のところきまっておりません。それから外務大臣と大蔵大臣の共管ということになっております。もっと細かいことに触れますれば、本店と言いますか、本社と言いますか、本店を東京に置きまして、各移住地におもなるところにその支社ないしは出張所と言いますか、そういったようなブランチを置くような仕組になっております。主として仕事は今申し上げましたような金融業務であります。あるいは鉱業、農業、鉱業はマイニングの方の鉱業でありますが、あるいは漁業、マイニングの方はあまり興らないでしょう。そういうものをやるときに必要な資金を貸し出すとか、例外的に直営的な仕事をやる場合があります。たとえば今われわれが想定されますのは、ドミニカあたりで企業をやるという場合に、全然日本人が一人もここにおりません。そういう場合においては、やむを得ざる措置として、今の株式会社が直営で仕事をする場合があり得るというのが大体の骨組みであります。
  106. 田畑金光

    ○田畑金光君 賠償の質問をしてもよろしいですね。
  107. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 質問の機会はまだございますけれども、きょうは一応移民関係の問題で全部御質問になりましたら、賠償問題の方に移っていいでしょうか。   〔「けっこうです」と呼ぶ者あり〕
  108. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  109. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 速記始めて。一応本日の質疑は、これで終ります。次の機会に賠償問題の質疑をいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十五分散会    ――――・――――