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1955-07-19 第22回国会 参議院 内閣・社会労働委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月十九日(火曜日)    午前十時四十五分開会     —————————————  委員氏名   内閣委員    委員長     新谷寅三郎君    理事      長島 銀藏君    理事      宮田 重文君    理事      木下 源吾君    理事      松原 一彦君            井上 知治君            植竹 春彦君            木村篤太郎君            中山 壽彦君            中川 以良君            高瀬荘太郎君            豊田 雅孝君            野本 品吉君            加瀬  完君            千葉  信君            松本治一郎君            田畑 金光君            松浦 清一君            小柳 牧衞君            堀  眞琴君   社会労働委員    委員長     小林 英三君    理事      加藤 武徳君    理事      常岡 一郎君    理事      竹中 勝男君    理事      山下 義信君            石原幹市郎君            榊原  亨君            高野 一夫君            谷口弥三郎君            横山 フク君            高良 とみ君            田村 文吉君            森田 義衞君            阿具根 登君            河合 義一君            吉田 法晴君            相馬 助治君            有馬 英二君            寺本 廣作君            長谷部ひろ君     —————————————  出席者は左の通り。   内閣委員    委員長     新谷寅三郎君    理事            長島 銀藏君            宮田 重文君            木下 源吾君            松原 一彦君    委員            中川 以良君            野本 晶吉君            千葉  信君            田畑 金光君            小柳 牧衞君   社会労働委員    委員長     小林 英三君    理事            常岡 一郎君            竹中 勝男君            山下 義信君    委員            石原幹市郎君            榊原  亨君            横山 フク君            田村 文吉君            森田 義衞君            河合 義一君            相馬 助治君            有馬 英二君   委員外議員            山本 經勝君   衆議院議員    高橋  等君   国務大臣   国 務 大 臣 大久保留次郎君   政府委員    総理府恩給局長 三橋 則雄君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君    常任委員会専門    員       多田 仁己君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○恩給法の一部を改正する法律の一部  を改正する法律案山下義信君外三  名発議) ○恩給法の一部を改正する法律の一部  を改正する法律案衆議院提出)     —————————————   〔内閣委員長新谷寅三郎委員長席に着く〕
  2. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから内閣社会労働委員会連合審査会を開きます。  恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(参第一二号)、恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(衆第二八号)を一括して議題といたします。  お諮りいたしますが、山木純勝君から委員外発言を求められておりますが、本件に関しまして発言を許可することにして御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御異議ないようでありますから、さように取り計らいます。  順次御質疑を願います。
  4. 山本經勝

    委員外議員山本經勝君) 恩給法改正に関する法律案については、民主自由両党の修正案議題となっておるわけですが、これについてまず基礎的な問題をお伺いしておきたい。資料についてでありますが、大将あるいは大佐、大尉、こういったような階級別軍人のあれにつきまして詳細な資料がお願いしたいのですが、将官、佐官、尉官、それから准士官、曹長、下士官、兵というようなふうの各階級にわたってそれぞれの現在お調べになっております実数を明らかにしていただくことが……。
  5. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) よく聞えないのですが、恐縮でございますけれども……。
  6. 山本經勝

    委員外議員山本經勝君) 下から申しますならば、兵、そして下士官、それから准士官、それから少尉以上各級の大将まで、階級に応じてそれぞれの現在の対象人質になります実数、それからそれらの勤務年数職年数といいますか、それの実際の数字、それからさらにそれらの扶養しております家族、こうしたものの実数一つお示し願いたい。  そこで、一応の修正案の中に見られまする何といいますか、給付額でございますが、これに対して私ども疑問を持ちますのは、当初この修正案を提示されております根本的な精神として、戦没者並びに戦傷病者、そうしてまたこれらの老齢の旧軍人人々、こうした人たちが非常に現在苦境に立っておられることはよくわかるのでありますが、修正案の中に強調されておるのは、いわゆる下部に厚く、そうして上部に薄くしたということを言っておられますが、私の今まで知っております範囲においては、下部に厚くされたといいながらも、月額にして割り当ててみますというと、非常に僅少の額になる。それでまず第一点、修正案の中で見られます年額にして七万九千八百円というものが用瀬にして六千六百五十円に当るようであります。それが修正案によります基本的な考え方を、一万二千円ベースを賃金、つまり仮定俸給年額を一万二千円ベースに置いておると言われるが、一万二千円のベースと害われるのは一体この階級の中でどの階級対象にして算出されておるのか、この点まず第一点からお伺いをして参りたいと思います。
  7. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) 提案者に対する御質問でしょうか。
  8. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 山木議員に伺いますが、提案者に対してですか。
  9. 山本經勝

    委員外議員山本經勝君) 提案者の方がいいと思います。
  10. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) どうも御査閲の要旨が聞き取れなかったり、またあるいは私の誤解によってもし答えが間違っておりましたらもう一度一つ訂正をさしていただくことにしまして申し上げてみたいと思うんでありますが、御質問は、いわゆる下級者に対する仮定俸給のきめ方についての御質問だと思いますが、それでよろしゅうございますか。
  11. 山本經勝

    委員外議員山本經勝君) その点も一つあるわけなんですが、今私申し上げたのは、こういう意味なんです。一万二千円ベースというのを仮定俸給年額として基準を立てられたということなんでしょう。それが、先ほど申し上げた大将から下士官、兵に至るまでのどういう者が対象ベースになっておるのか。
  12. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) 昭和二十八年にいわゆる旧軍人恩給恩給法改正で制定せられました。これは、恩給特例審議会の議を経たものを大体基準といたしまして作られた政府原案だったわけであります。それで、このたび、その原案を見ますと、一般文官に比較いたしまして、各階級ともにちょうど二千円だけベースが全部にわたって低いのでございまして、一万円べースを採用をいたしたんであります。そこで、これをこのたび文官と同じようなベースに直しますために、一万二千円ベースといたしたのでありまして、これは全部の階層にわたって一万二千ベース引き上げが行われておるんでございます。
  13. 山本經勝

    委員外議員山本經勝君) そうすると、これは、従来あったいわゆる、何といいますか、仮定俸給と言われるものの年額の上に一万二千円をプラスするという意味なんですか。
  14. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) ちょっと恩給局長から説明いたします。
  15. 三橋則雄

    政府委員三橋則雄君) 在職公務員俸給昭和二十七年十一月一日から増額されましたのでございますが、その増額されました給与ベースは俗に一万二千円ベースと言われるものでございます。その一万二千円ベース、そのベース一般のわれわれ公務員のその当時の俸給号俸というものを前提として考えまして、その一万二千円ベースのときの俸給の線まで仮定俸給金額引き上げるというのが二万二千円ベースの線まで引き上げるということでございます。
  16. 山本經勝

    委員外議員山本經勝君) そこで、変ったまた御質問になるわけでありますが、大体ここで扶助しなければならない対象になるものは、この冒頭に書かれておるように、戦没者遺族遺家族それから戦傷病者老齢軍人、こういったものになるんですが、この点で、修正案によりますと、それらの救済あるいは援護せなければならない対象を考慮の中に入れてあるのか、あるいは当時軍人として大将とか、あるいは大佐とか、それぞれにおきまして級が職業軍人としてあったわけなんですが、それらの軍人階級によってその対象考えられているのか、ここら辺が非常に不明だと思いますが、御説明いただきたい。
  17. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) 先ほども申し上げますように、この恩給特例審議会決議、結論によりまして、昭和二十八年の恩給法一部改正が行われたわけであります。この恩給は、結局文官恩給にもごらんになりますように、退職前の給与というものが、すべて恩給基礎になる、これがまあ、その恩給の立て方でございまして、従って大将である立場の方には、大将に相当する給与があったわけでありまして、それに従った恩給というものが出ると、こういうまあ立て方になっております。これは文官も同等でございます。そういうようなわけで目標は先ほどお話のありました戦没者遺族それから障害者及び旧生存軍人どいうものが対象になっておりますが、その恩給金額は今言いますような階級的なものにいたしております。そうしてそれをこのたび文官均衡をとりますために一万二千円ベースで四号俸引き上げという措置を講じた、こういうわけでございます。
  18. 山本經勝

    委員外議員山本經勝君) そこで先ほど私が申しましたのでおわかりであればお示しを願いたいと思うのでありますが、これらの対象になります人員、つまり戦没者遺家族それから老齢軍人戦傷病者等の数がわかりますならば御説明を願いたいと思います。
  19. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) 持っておりませんから恩給局から……。大体のパーセンテージでよろしゅうございますか。
  20. 山本經勝

    委員外議員山本經勝君) パーセンテージでなくて、実数がおわかりと思いますが、当然当局の方では……。
  21. 三橋則雄

    政府委員三橋則雄君) 今山木委員から御質問がありました、現在の旧軍人恩給及び旧軍人遺族扶助料対象となっている人々階級別人員実数についてでございまするが、この実数は今のところわかっておりません。階級別人員ははっきりとつかんでおりません。と申しますのは、終戦の際におきまする混乱からいたしまして一応の推計はできておるのでございますけれども、その後今日までの実際の実績に徴しまする統計がまだ完備するまでに至っておりませんので、確実なものはまだでき上っておりません。総数について申し上げますというと、今度の予算対象となっておりまする人員普通恩給、これは老齢軍人恩給その他在職年限によって給される恩給でございますが、この対象人員は十七万二千人でございます。それから傷病者支給される恩給の中で、不具廃疾者に給される恩給受給者は五万九千人でございます。またこの不具廃疾程度に至らないところの年金恩給を給せられる傷病恩給受給者は七万一千人を予定しております。それから戦没者遺族扶助料は約百四十八万、大まかに申しまして百四十八万でありまして、こまかに申しますと百四十七万二千人でございます。こういう数字を予定いたしております。それから普通の病気でなくなった旧軍人遺族に給せられる扶助料普通扶助料と申しているのでございますが、この対象人員は十六万四千人を大体予定いたしているのでありまして、年金恩給受給者総数といたしましては百九十四万六千人、大体大まかにいたしまして、二百万人ぐらいを予定いたしているのでございます。階級別数字は今申し上げましたようにわかっておりませんのでございます。
  22. 山本經勝

    委員外議員山本經勝君) そこでこの修正の解説の中に入っております職年といいますか、年数によって支給率が変るようになっておるのでございましょうかね。
  23. 三橋則雄

    政府委員三橋則雄君) 終戦の際におきます旧軍人恩給につきましては、すなわち在職年によって給される恩給につきましては、准士官以上の軍人でありますれば在職十三年以上、下士官以下の軍人にありましては在職十二年以上で退職した場合におきまして普通恩給を給せられることになっておったのであります。それから今申し上げました准士官以上の軍人でございますれば在職十三年を越える一年ごとに、また下士官以下の軍人につきましては十二年を越える一年ごと退職時におきまする恩給年額計算基礎俸給の百五十分の一の額を基本の恩給年額に加えて計算する、こういうことになっておったのでございます。
  24. 山本經勝

    委員外議員山本經勝君) そこで大体修正の案の方の数字基礎はようわかって参るのでございますが、修正案によりますというと、まず上から参りますと、大将につきましては、これは年額だろうと思うのですが、七十二万六千円でございますか。
  25. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) それは仮定俸給でございます。
  26. 山本經勝

    委員外議員山本經勝君) 二十四万二千円というわけですか。
  27. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) そうです。仮定俸給から割り出しました恩給額普通恩給におきまして大将が二十四万二千円であります。
  28. 相馬助治

    相馬助治君 今般恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案提案された高橋外発議者の方に敬意を表しまして、私自身がいまだ不明瞭な二、三の点について発議者を代表しての見解をお聞かせ願いたいと思うのです。なおこれに関しましては山下議員外数名の提案されている法律案もありますが、順序上私はまず高橋議員に以下の質問をいたしまして、次いで山下議員に対して質問をしたい、こういうふうに思っております。今回の自民両党の恩給法改正趣旨は、文官恩給の有利というものは社会正義上許しがたいという立場に立って、そうして今回の改正案を出した、かように提案理由の中で申し述べておるのでございますが、御承知のように文官恩給の場合と、それから武官恩給の場合とにおきましては、納付金の率も違っておるのでございまするが、現在においても提案者は依然として文官恩給に比べて軍人恩給ははなはだしく不利であるという御見解をおとりでございますか。
  29. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) 提案理由をごらん下さるとわかるのでございますが、文官恩給が高いということは決して申しておるのでございません。この遺族傷演者軍人恩給文官恩給よりも低いということはこれは不公平である、どうしてもこれを平等にしなけりゃならぬという思想の上に立ってこれをやっておる、こういうことを申し上げておるわけでございます。それでこのいわゆる恩給積立金といいますか、文官にはそういう制度がございまするが、これは過去におきまするいわゆる軍人恩給というようなもの、文官恩給というようなもの、こうしたもののしきたりをいろいろとにらみ合せまして、そして過去におきましても同じように均衡のとれたものが出されておるわけでございますので、この積立金につきまして、特にそれがあるが故にどう、こうということは考えておりません。ことに先ほど説明になりましたように、この積立金を過去においてやっておらなかった人々は特にこのたびの改正の中で、人員数からいきましてもおそらく八五%ぐらいをこえる数に当るいわゆる戦没者遺族というものが対象となっておりまするのであります。従ってそういうような考え方から、この一時金の問題があるが故に文官と差をつけていいという考えは実は持っておらないのであります。
  30. 相馬助治

    相馬助治君 実は私自身右派社会党に所属しておりまして、右派社会党としても御承知のように議案を発議しておりますが、これは自民両党によるところのこの発議された案がございましたので必要上これを出したというふうな経緯にも相なっておるのでございます。そこで私は高橋さんにもう一点お尋ねしたいと思いますことは、文官による恩給受給者の中に不均衡是正の動きのあることを発議者御存じでありましょうか、存ぜられないでございましょうか。なお、この種のものは国家社会保障の前進であるという角度からいたしますると、文官恩給武官恩給を総合し現行法のもとにおける不均衡是正すると同時に、その恩給のトータル、また国家財政等とにらみ合せて抜本的な基本的な法令を出すべきが至当であると考えるのでございまするが、発議者におかれましてはその点に関しまして政府自体が責任をもって抜本的な恩給法改正をなすように慫慂なさった事実等がございますでしょうか、いわゆるこの発議されるまでの経過につきまして簡単でけっこうでございまするからお聞かせ願いたいのです。すなわち武官文官恩給受給者の内部にある諸矛盾というような現実、それから文官恩給武官恩給とのつり合いの関係、それから国家財政の規模から見た恩給の適正、こういうふうなものを考え政府提案こそが望ましいと考えるのでありまするが、議員提案をもってこういうような発議になりましたことに関してそれの原因があるはずでありまするので、それらについて承わりたいという、かような趣旨なんであります。
  31. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) 第一点は文官相互間に不均衡のあることを承知しておるかという御質問かと思います。これは非常にむずかしい実はお尋ねといいますか、問題なんでございまして、いわゆる昭和二十三年何月から以前に退職文官につきましては、現在の、その後の文官との間の給与の不均衡がある、こういうことが主張されておりますことはよく存じております。そうして衆議院におきましてもこの恩給法を通します際に、この不均衡政府において十分検討の上、すみやかに措置を講ずるようにという付帯決議がついておるのであります。ただ、何分にも御存じのように、政府提案法案予算及び法案修正をこのたびいたしたということと、それからいわゆる二万二千円ベース号俸という意味合いにおける不均衡をこのたびは是正をいたすという建前をとりました関係上、過去におきまする昭和二十三年以前の文官恩給がその後のものに低いというのはこの基本給に関する問題があるということはわれわれ考えておりますので、これは存じておりましたが、次の機会に見送らざるを得なかったのでございます。これは必ず何らかの措置をいたしたいということは自由党におきましても民主党におきましてもそういう考え方であるわけでございます。  それから、どうもこの文武官のつり合いがどうとか、国家財政恩給の適正、それから政府提案がいいのではなかろうかという何か一連の御質問であったように思いますが、本修正案提案いたしまするまでの経過といいますか、沿革を簡単に申し上げて御了解いただきたいと思うのです。それは自由党におきましても、民主党におきましても、選挙の当時の公約におきましても、文官均衡のとれた恩給を出したいということの公約をいたしております。これは昭和二十八年に恩給法改正いたしましたときに、その当時の財政事情との関係上低いところにいわゆる遺族その他の恩給が置かれておったものですから、これを何とか直したい、ところが政府の方でいろいろ作業せられましたが、予算関係上、たとえば兵については二万五千円、あるいは軍曹についてはたしか年額二万一千円というようなことを中心にした案が出たのでございまするが、それでははなはだしく私たちはこの旧軍人との間の均衡を失するし、すでに終戦後十年にもなる今日でございますので、この機会に何とか財政の都合がつくならばこの問題を解決したいという考えのもとで実は自民両党間で予算の組みかえといいますか、修正というものについてのいろいろの折衝を実はいたして参りました。その結果、見通しを得ましてここに今御審議を願っているような修正案を作ったようなわけでございます。もし御必要でありますならばこれが三十一年度三十三年度の財政に及ぼす影響等につきましても御説明してもけっこうだと思いますが、はなはだしくこれをやりましたために、いわゆる恩給亡国というような声もございまするが、そうした心配のない案であるということを、ここでわれわれ民主党自由党とも考えまして提案いたしたようなわけであります。大体以上でお許しを願いたいと思います。
  32. 相馬助治

    相馬助治君 次にあと一点山下議員質問をしたいと思います。  この山下議員発議にかかる法律案は、ただいま最初に議題になっておりまする高橋君外何名かの発議にかかる同名の法律案を見て、それを是正する意味でこの法律案提案となったのでございますかどうか、その点について明瞭にされたいとともに、この右社案が特に自民両党の案に比較いたしまして強調されているよい点と申しますか、そういう点がありましたらばごく簡単でけっこうですから一つこの際御説明を願っておきたいと思います。
  33. 山下義信

    山下義信君 お答え申し上げます。  第一点の提案についての自民案との関係でございますが、実は率直に申し上げますると、公式ではございませんけれども、やや半公式の遺族援護関係の諸会合等におきまして、従来遺族問題、遺族恩給等に御熱心な保守党の方々とわれわれ席を同じくする機会がたびたびありまして、従来とも遺族問題が年々歳々それらの扶助料支給その他問題の解決につきまして遺族要望が繰り返され、そのつど国会並びに各政党の問題となりまして、ひいてはこれが選挙に際しまして、あるいは心なき人々の間におきましてはこれが選挙に悪用されるというような弊害もあり、また一面においては遺族関係団体の中には、ある政党遺族問題に好意を示している、ある政党遺族恩給に反対しているというようなことをかれこれ選挙に際しまして流言飛語を放ちました。この種の問題につきましては国会におきまして、与野党を問わず、いかなる政党を問わず、心から遺族に同情を表してその善処について今日まで努力して参っている実情であるにもかかわらず、選挙に際しましては各種の流言飛語が行われ、こういう問題が政治的に悪用され、あるいは選挙に利用されるというようなことがあってはならないことでございますし、また一面さようなことを選挙に利用するような形をもって、団体の力をもってそれらの要求について迫るというようなことがあってはならないのでありまして、ある段階におきましては国会としてもこの種の問題については政党政派のいかんを問わず国家的見地からこれを解決する必要があるのではないかというような話は、しばしば話し会いました事実がございまして、従いまして今国会におきまして遺族関係者要望もおそらく最終的な要望であり、これに対処する政党立場を表明いたすことも、あるいは国会がこれに対処いたしますることも、最後の段階ではないかというようなことも考えられておりまして、そしてまた本問題に対しまする関係者の希望いたしておりまするところもだんだんとしぼって参りまして、べース・アップでありますとか、号俸改正でありますとか、通算の問題でありますとか、あるいは対象範囲の拡大でありますとかいうような点にしぼって参りまして、言いかえますると、従来の遺族問題の大部分は解決を見まして、残るところがもう一割か二割かというような程度になっておる段階でもございまするので、問題はきわめて実は明々白々となって参ったのでございます。ただ、これの裏づけとなりまする予算関係、あるいは政府の御方針等は、予算案その他でわれわれ野党も承知をいたしておったのでございます。しかしながらとうてい遺族間におきましては、政府の三十年度当初予算のあの御方針には絶対的に承服できがたいという情勢でございまして、御承知の通りでございます。やがてこの軍人恩給関係予算増額は必至でありますことは、きわめて明白な状態になりつつあったのでございます。われわれ右派社会党といたしましても、この問題につきましてかねてから政策審議会で慎重に検討を続けて参っておったのでございまして、政府の三十年度予算に対しまする社会党の組みかえ要求案を作成いたしますると同時に、これの裏づけとしての恩給法改正案を立案する必要があるということになりまして、国会対策委員会でその立案を決定いたしまして、政策審議会がその作業に従いましたのでございます。従いましてわれわれが提案をいたしました本改正案は、民国案を伺いましてからではないのでございまして、作業といたしましては、ただいま申し上げましたように、政府の三十年度の組みかえ要求をいたすことが決定いたしましたときから作業に従事いたしまして、参議院法制局にわれわれの方針を示しまして、改正案の立案を委嘱して参ったのでございます。従いまして民同案を見ましてから、これが修正をいたしたいというような考え方でこの修正的意見として提案をいたしたのではないのでございまして、ただしだんだんと時日が移るに従いまして、新聞紙等では、自由党民主党予算の増額とともに、この増額した予算をどういうふうに配分するか、どういうふうに使うか、どういうふうに増類するかということについて、両党が御交渉に相なっておる経過につきましては若干承わりつつあったのでございますが、わが党といたしましては、大体この遺族扶助料を中心とする恩給法改正は、これを最終段階としまするならば、できるだけ遺族要望を最大限に入れまして、そうして合理的に筋を通しまして、一応思いつきの手直しではなくして、あるいは限られたる増額予算というものをこれを適当に振り分けるというそういうためにこの手直しがなされるというのではなくして、予算の増額は別途としても、恩給法の建前で筋を通すならばこうあるべきだ、また遺族の多年の要望がここにあるのだ、もし一時的な、今回の増額が、十八億か二十億の予算増額しかできなかったから、それでその範囲内で振り分けるとすればこういうことだというのではなくして、遺族が最終的に要望しておりまする諸問題、あるいは恩給法遺族要望するとしないにかかわらず、筋を通すとすればこういう建前のものでなくちゃならぬというものを、われわれはこの恩給法に与えられてありまする権利を擁護する、一応恩給法上の既得権と申しますか、そういうものを筋を通すという建前で立案をいたしましたのでございます。もとより、さりとて予算関係を無視することはできませんので、われわれが考えまする範囲内で、この程度ならば恩給法上の権利を認めることにもなり、この程度ならばかれこれ他とのつり合い上も妥当な線ではないかという点を考えまして本法案を提出をいたしました次第でございます。そのことが自然に民自案の方と対照されるような立場になりまして、提案はわれわれの方が先でございましたが、この民国案と比較対照をいただくようなことになりまして、本席も並行審議を仰いでおるわけなんでございますが、そういう次第でございまして、民自案を伺いましてから右社案を起案いたしたのではないのでございます。  従いまして、第二の御質問でございまする本案についての特徴はどうかというお尋ねでございますが、これは先般の内閣委員会におきまして補足説明をお許しいただきまして、大体民自案といわゆる右社案との相違点を申し上げたんでございますが、詳細は前回の補足説明の速記でごらんを願うといたしまして、要点だけ申し上げますと、仮定俸給号俸引き上げにつきまして、民自案は先ほど山本先生からもこの点についてお尋ねがおありになりましたようでございますが、やはり尉官、佐官、将官と、尉官以下は四号、佐官は三号、将官は二号と、やはり次第に段階をおつけになっておられますが、上級者にも仮定俸給の増額をやはりしておいでになるわけであります。われわれの方は、その点が、尉官以下は文官とのバランス上引き上げましたのでございますが、しかし、佐官以上につきましては引き上げをいたしていないのでございます。全く下級者号俸改正を、仮定俸給改正をいたしておるわけでございます。またこれらのベース・アップに伴いまする支給を、われわれは今年十月の恩給支給の時期から実施しよう、こういうことでございますが、民自案におかれては、来年の六月までは半額で、来年の七月から全額支給ということでございます。ことに大なる差異点といたしましては、通算に関する問題でございます。これは従来通算を認めなかった、それを今回認めようとすることは、民自案とわれわれの案とこの点は同一でございますが、その通算のいたし方が違うのでございます。つまり、われわれの方は五カ月でも七カ月でも、年数の長短にかかわらず服役年間は、実在職いたしました口数は、長短にかかわらずこれを通算していこうというのでございます。その通算をいたしますのは、すべての者に通算をしよう、従来一博恩給をつけておりました七年、八年という短期な人たちにもこれを通算し、それからまた一切の公務員にもこの通算をしよう、恩給法の通則に従いまして、この通算というものをことごとく認めていこうというのであります。民自案におかせられましては、通算いたしまするその実在職年数は一年以下は切り捨てるという御案のように伺っております。それからまたただいまも御説明がありましたように、将校が十三年、下士官が十二年に満つるまでは通算を認めてやるが、それ以上になった分は算入なさらないように相なっておるようでございます。  それから加算に関しましては、民自案はおとりになっておりません。われわれは召集軍人職業軍人と同じように、この恩給の恩典に浴させるためには必然的に加算を認めなければ、その恩恵が公平に行き渡りませんので、従来は御承知ごとく、戦争にいけば一年が三年になる、約三倍に加算されておりましたのでありますが、その程度をずっと低めまして最小限度一カ月につき一月、すなわち一年行った人は一年の加算という程度にいたしますと、大体七年も八年も長く行っておりました召集軍人恩給の恩典に浴することができますので、加算を認めたのであります。  それから遺族扶助料すなわち公務扶助料でありますが、民自案におかせられましては各階級に従って金額引き上げにはなりましたけれども、各階級にずっと従って従来の通りの制度でございます。われわれといたしましては曹長の線ですべて均一にいたしまして、それ以下の階級の人は三万八千二百五円というので、軍曹、伍長、上等兵、兵というような区別は認めないで、曹長の線にフラットに引き上げたということでございます。そういう点がおもな点でございまして、その他公務に基因した死亡を認定いたして参ります問題、あるいは自決者の遺族に対しまする問題等につきましては、民自案と同一であります。ただ戦犯で拘禁された人たちの拘禁中を恩給の年限に加えるという民自案に対しましてわれわれこれを認めておりません。従いまして戦犯中に負傷または疾病にかかった場合の取扱いにつきましても、民自案は公務員傷として、あるいは公務疾病としてのお取り扱いをされるようでございますが、われわれはその点は認めていないのでございます。  大体おもなる点を申し上げますと、これはわれわれがすぐれておると申し上げるよりは民自案との間の相違点でございます。お答えを申し上げます。
  34. 竹中勝男

    竹中勝男君 最初に民自案の提出者に御質問したいのですが、この改正案を出されるに当って、民主党自由党もそうだろうと思いますが、社会保障の充実強化ということを政策の重要なものの一つにしておられるわけですが、またこの社会労働委員会でこれが審議されるということは、そういう観点から私どもはこれの審議に当っておるわけでありますが、この恩給社会保障との関係をどういうように考えていらっしゃいますか、まずその点を一つ
  35. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) 昨日も内閣委員会で左派の方からの同じような御質問にお答えをいたしたのでございますが、もうこれは私から申し上げるまでもなくよく御存じのことだと思うのでございますが、恩給国家の使用人と国家との関係においてできておる、ものなんです。一口に申し上げますと、公務員国家公務員として働きまして、そして生活能力がなくなりました者に対して、国が給与の延長として恩給というものを使用人に出すんだ、こういうわれわれは考え方をいたしております。社会保障といいますのは、国家一般国民の関係でございまして、いわゆる最低生活の保障とかその他いろいろな問題がございまするが、この公務員国家関係と、私は考え方が異なるのではないか、こう考えます。これを混同いたしたくないのです。私もそういうような意味から各国の例を見ましても、相当福祉国家として発達いたして、国民年金制度なんかおやりになっている国々がございますが、御存じのようにこれらの国におきましても、やはり恩給制度というものは、一応その建前をとっております。そしてしかる後に、この一般社会保障制度との間の調整という問題を考えておる。私たちはやはり現在この法案をやりますに当りまして、そうした建前のもとに文官恩給を認め、そしてそれとの均衡のとれた恩給制度というものが当然である、こう考えて実は起案をいたしておるわけでございます。
  36. 竹中勝男

    竹中勝男君 そうすると現在の政府は、社会保障的な政策を充実するという場合に、この階級的に非常な段差を持っておる恩給法に従って、さらに軍人恩給のその差額を大きく結果的にはするわけですが、そういうことは社会保障制度の充実に別に障害にはならないとお考えになりますか。
  37. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) ただいま申し上げましたように、公務員制度全般の問題として考えますときに、こうした恩給のやり方というものがあります、社会保障制度のやり方というものも、別に一般国民を対象としたものとしては行えるわけです。従ってこれをやりましたから、社会保障制度のいろんな今後の施策に影響が、これは影響があるかもしれません、ありましても、根本的にものの性格が違うのだという私は考え方に立っております。これは政府の公式な言明でなしに、むしろ提案者としての私の考えを申し上げておるわけでございます。政府には政府考えがあると思いますが、一応さように御承知おきを願いたいと思います。
  38. 竹中勝男

    竹中勝男君 今のに関連して右派の案についての質問をいたしたいのですが、下に厚く上にはそのままにしておくという点におきましては、私ども左派の考え方と同一に近い考え方をしておられると、この案について私は認めますけれども、最初私どもは左右両派で一つ軍人恩給改正法案を作ったのですが、それに対して山下委員から今右派の案というものが出ておるのですが、それとの関係はどういうようにお考えでいらっしゃいますか。
  39. 山下義信

    山下義信君 公式の席でございますが、公式のお尋ねでございましたので、この席ではっきりお答え申し上げたいと思います。率直に申し上げまして本案につきましては、左派社会党に対しまする御連絡を申し上げることが不十分でございまして、先般私から千葉会長に対しまして釈明の意を表わしました。まことに遺憾に存じておる次第でございます。両派社会党が予算の組みかえをいたしまするときは、この二十億の増額を認める。左社の方におかれまして軍人恩給関係の経費の増額を認めますることについては、従来の御方針からいたしまして非常に御難色でございましたので、その一点がまとまらなければ両社の予算組みかえ案ができないことでございますので、私と柳田議員とが担任者になりまして御折衝申し上げました。二十億の増額右社案を認めていただく、その軍人恩給の二十億の増額につきましては、その内容としては多分尉官の線でありましたか、その線でフラットにする。口頭でございましたが、大体そういうことで、私どももその案にはけっこうでございますと言って、その内容につきましては左社のお考えに御賛成申し上げまして、予算の組みかえをいたしたわけでございます。その後われわれの方におきましていろいろ同僚議員の間で非常に議論が出まして、その案自体に対して議論が出たのではないのでございまして、遺族問題に対しまする従来の種々なる問題につきまして御議論が出たのであります。また右派社会党として従来二十八年の軍人恩給復活の当時からとりました方針等につきまして、さらにこれを再検討いたしまして、どういう方針できたかということを詳細に検討をいたしまして、要するに右派社会党としてはこの遺族に対しまする公務扶助料の問題につきましては、はっきりとした態度をとって参りましたのでありまして、その間少しも方針に変更を加えたことはないのでございます。しかるにきわめて顕著に現われました事実は、本年の四月の衆議院議員選挙におきまして、この遺族恩給が非常に選挙に利用せられたということの見のがすべからざる事実であります。これは所属両院議員諸君がそれを指摘せられまして、非常にこれが問題に相なりました次第でございます。従いまして右社といたしましては従来の方針を再確認いたしますると同時に、今回われわれといたしましては少くとも遺族遺族たるゆえんをもってことさらにこの問題の善処を政府あるいは国会に求むるのでなく、また政党としてもそれにその都度迎合するというのではなく、民主主義の建前すなわち法律を尊重するという建前から、どの程度まで一体恩給法上その権利を認めるかどうか。もし恩給法上当然正当な権利があるとするならば、これはその権利を認めるということは当然しなければならぬことであります。しこうしてその権利を認めることによって、必要なる予算措置というものが出てくるならば、すなわち予算が足りなければ、それは財政上のやり方はあるはずなんです。財政上困るから権利は認めないということは逆なんです。われわれとしては、恩給法上当然認められる権利ありとするならば、この際総ざらいにどの点とどの点を当然これは法治国家として、憲法上当然既得権を認めるべきものなら認めて、そうしてそれに対する実行の予算措置、金が足りなければ足りないやり方がある。払いにくければ払い得る方法があるのでしょう。金が足らないからといって権利を阻却することはできないはずなんです。こういう建前で議論をいたしまして、一応右社案としての成案を作るようにという国会対策の決定でございまして、その作業をいたしましたのでございます。ただ、その当時の真相をありていに申し上げますと、左社におかれましては、戦争犠牲者補償法案の、従来から御方針の御案がありまして、そうしてもしわれわれがこういう恩給法遺族扶助料を中心とする問題解決の一案をかりに符たといたしまして、これについて両社がこの案についての連絡検討をいたして参るということになりますると、とうてい本国会の会期中あるいは予算修正等の時期等からにらみ合せまして、作業が不可能ではなかろうかと存じまして、あるいはまた左社に対して御迷惑をかけることになりはしないか等のことも考え、実はわれわれといたしましては御遠慮申し上げまして、もしおとがめを受けまするならば、われわれはおわびを申し上げる、こういう立場右社案を提出をいたしましたのでございます。しかしながら率直に申し上げまして、両社はお話し合いを申し上げまして措置いたしますのが当然でございますので、衆議院の御審議の御過程におきましては、わが党の関係委員も御相談を申し上げたい。非常に審議に際しまして御心配をかけましたのでございますが、そういうことで右社独自で出しましたのでございますが、左社の御意見を十分伺いませんで私どもだけで単独に出しましたというそういう何と申しますか、ひとり右社が、こういう案を出しまして云々ということは、他意はないのでありまして、かえって左社に御迷惑をかけてはと存じました点もありましたのは事実でございます。  当時のいきさつを率直に申し上げる次第でございます。
  40. 竹中勝男

    竹中勝男君 私も社会党の左派の政策審議会の主査をいたしておりまして、この軍人恩給の問題につきましては、これを戦争犠牲者補償法いわゆる社会保障的な性格をこれに持たすという意味においてこの改正法というものを考えておった一人であります。従って厚生年金保険法による年金に、兵の年金の限度を近付けて行くということが改正法の主要点として私どもは作業をやってきておるわけであります。それから同時に恩給の総額が非常に膨大なものになるということを懸念いたしておるわけであります。これは社会保障財政の上に及ぼすところが大きい。それからこれを社会保障制度に切りかえて行くときに、でこぼこといいますか、上下の差が非常に大きくなるということを、非常に大きな障害だと考えておるものであります。そういう点からいたしますと、この右社案は、やはり在来の恩給という権利の考え方に中心が置かれておるように思われますことが第一点であります。その点についてどういうようにお考えですか、これをどうして社会保障的な意味に切りかえられるというふうに……、そういう意味改正法案だとお考えなんでしょうか。  それからもう一つの点は昭和三十二年度には民自案では百六十億なのに対しまして、右派案では二百七十九億という二百八十億近くの膨大な恩給財政的な支出を必要とするわけでありますが、そうするならば、やがてこの財政の一割にも恩給費がなろうという事実上恩給ということが行き詰まりをし、頭打ちをするということもはっきりしておるにもかかわらず、あえてこういう改正案を出されたことは、どういうところにねらいがあるのでしょうか、まずそういう点をお答え願いたいと思います。
  41. 山下義信

    山下義信君 竹中委員のお尋ねの通りであります。右社案といたしましては現在の恩給法の建前を認めるという態度でございます。先ほど申し上げました、御相談申し上げてかえって御迷惑をかけはしないかと存じ上げましたのは、われわれは恩給法の現在の制度を認めるという建前をとり、ただいまお話しのように、左社におかれては認めないという御方針と存じ上げておりましたので、そういう点につきまして御遠慮申し上げておったのであります。これは先ほども御質疑が高橋衆議院議員におありになりまして、高橋衆議院議員からお答えがありましたようでありますが、私どもといたしましては恩給というものに対する考え方はまた若干高橋衆議院議員とは異なった考えを持っておる点もございますが、しかし全体的に申し上げまして、恩給というものと社会保障制度というものとの関係につきましては、これはいろいろに御議論がおありになるのではないかと思います。先年社会保障制度審議会ができまして、諮問に応じて勧告案を出します当時に、恩給とは何ぞやという恩給の本質的定義と申しますか、というものにつきまして相当議論が重ねられまして、政府側の見解もあり、また委員からいろいろな意見も開陳があったように記憶いたしております。これを給与の一形態と見るか、あるいは老後の生活の保障的給与と見るか、あるいは現在の恩給局がとっておるところの一つ考え方、すなわち官吏が在職中に損耗いたしたるところの経済能力の欠減に対して、国家がそれを保障して行くというそういう考え方に立つか、まあいろいろな恩給の持っておりまする性格は人々の議論によりまして、見解によりまして、相違があるであろうということは、竹中委員も御承知の通りであります。私どもといたしましては、これが老後の生活の保障であるという点になりますというと、全く社会保障制度にそれを取りいれて何の不都合があるかということでありまして、即時やらなければなりません、これは言うまでもないことであります。また給与の一形態であるということならば、その考え方で善処する道があるのではないかと存じます。ただ、たまたまこの中に規定されてありまする公務扶助料の損害賠償的な性格、ことに戦争による国家の権力によって徴発をせられたそれらの戦争犠牲者に対する国家の損害賠償的な部分につきましては、それがいかなる制度でありましょうとも、すでにその契約のもとに、権力をもって国民を徴発をいたして、しこうして敗戦したとはいいながら、今日国が存続をして、多くの犠牲をこうむらざるものはそれぞれ生活を営み、それぞれの権利の回復とかあるいは権利の執行をいたしておりまするのに、その戦争犠牲者のみ戦争に敗れたからといって、あるいは財政が不如意であるからといって、国が公けの法律をもって約束いしたましたことを、これを軽々に変改を加えますということは、これは容易ならぬことであろうかと考えるのでございます。私どもは法律的知識も乏しゅうございますから、それらの諸問題につきまして大きな改廃を加えますることが、現在の憲法下その他におきまして可能か不可能かということは軽々に断定を下しがたいと思いますが、少くともその基本法でありまする恩給法が現存しておりまする以上は、職業軍人の場合はともかくもといたしまして、いやその点に関する限りはあるいは同一かもわかりませんが、大部分の国民を徴発いたしまして、そうして強権をもって死に至らしめましたそれに対しまする当然法律で規定してありますることの実行ということは、根本的に憲法を改正国家を革命するという前提に立たなければ、これを否定するのはむずかしいのではないかと考えておるのでございます。しこうしてこの恩給法の復活にかえるに、他に国民年金制がありゃということになりますと、御承知ごとくそれはまだないのでございまして、早急にこれにかわるべき何らかの制度をここで新設するということも今日直ちにこの実現は望み得ないということになりますると、恩給法の現在の制度、これを認めまして、ただその支給方法あるいはその他の手続方法あるいは受給者範囲等々に極力現行法の中におきまして社会保障的な要素を取りいれるだけは取りいれて行くということは、これはある意味においては可能ではないかと考えまして、従来そういうような政策を打ち出して参ったのでございます。従いましてわれわれといたしましては、率直に申し上げまして恩給法の建前を認め、ただその支給方法あるいはその他の付属的な手続等におきまして極力社会保障的な要素を持ち込みたいと考えておるのでございます。  それから御指摘になりました右社案によりまして非常に今後要します経費が増額いたします。御指摘の通りでございます。これは残念ながらこの通りでございます。現在の法律を根本から改めない限りは、法律を忠実に守るということになりますと、この通りになるのでございます。通算を認め、戦争中に服役したその期間もやはり公務である。国の官吏が一例でございますが、役人が召集を受けまして戦地に従軍いたします。そして八カ月行って帰休となり、第二回の召集があり、また十カ月従軍いたします。第三回には一年二カ月参りました。種々その期間はありましょうけれども、従軍いたしましたこれらの期間を引き続いて七年以上服役在職いたしません限りにはこれらの扱い方が無用とされるということになりますが、これこそ公務でありまして、これをことごとく通算いたしまして今の文官恩給にこれを加えるということ、これが法の建前でございます。これをいたしますということになりますというと、御指摘になりましたように多額を要することになります。従いまして今後におきましては、膨大な恩給関係の支出をどうするかということは、これはもとより関連して考えなきゃなりませんけれども、これは国全体の財政から、また将来根本的に考えるべきことでございまして、われわれといたしましても国家としてこの種形態の経費に無制限に逐年経費が急激に膨張いたしますることにつきましては、財政上の見地から、考える必要があると考えております。しかしそのことは根本的な問題でございまして、これはあらゆる諸制度と比較検討いたしまして、当然その対策を考えなきゃならぬことであると存じておる次第でございます。
  42. 竹中勝男

    竹中勝男君 今の御説明で、特に遺族扶助年金の問題に右社案が力を入れておられるように了解したわけでありますが、しかし民自案も十六条と三十五条でこの点は改正しておると思いますが、これは最低年額というものは定めてありません。しかしながら戦傷病者戦没者遺族等援護法によるところの扶助料というものを新たに民自案は取り上げまして、年金の中に入れておるわけでございますが、これに対して右社は必ずしも特別に遺族の問題を取り上げたという御説明にはちょっと十分私は了解できない点があるわけなんであります。それから恩給法そのものをやはり支持しておられる考えに立っているからしてこの膨大な予算になる、これはやむを得ないと言われるのですけれども、しかしながらそれだからこそ社会党としてはこういう改正案に反対して戦争犠牲者補償法という性格のものに改正するということに力を入れてきたわけなのでありますが、この点については残念ながら、私も同じ社会党であるのですが、右、左という名称をうけておりますけれども、多少意見が違って、こういう結果になってきたことについては大へん残念に思っておる次第です。どこまでも私どもの立場は、そういう社会保障制度の拡充という立場から、軍人恩給改正しようとしておる意図であるということをはっきりこの際出し上げておきたいのであります。その点について民自党の方では公務扶助料の最低限度というものをどういうふうに考えるのですか。
  43. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) 公務扶助料についての最低の点をお尋ねだと思います。昭和二十八年に恩給法改正いたしましたときに、大体下の方の階級は一応整理をいたしまして、昔の階級では上等兵、一等兵、二等兵と、こうなっておったわけでありますが、これを全部兵長の階級まで統一いたしまして、そして現行の二万六千七百六十五円という恩給年額を定めました。それをこのたびは文官との権衡をとりますために一一万二千円ベース、四号俸引き下げ、こういうことにいたしたのでございます。ですからいわゆるこの最低の線を軍曹のところまで引き上げるか、伍長まで全部引き上げるか、これはなるべく下級者に多いほどけっこうだと思います。ただ、今後の行き方としましては、やはり一律に全部——下級者が非常に多いものですから、一律にやりますと大へんな国費がかかります。ところが下級者の中にも非常に困っておる人と、そうお困りでない方とがあるわけでございますので、その辺についての調整はやはり社会保障制度的な考え方を取りいれたといわれるかもしれませんが、たとえば一人子をなくして年をとった親であるとか何とかというようなものについて、将来これらの生活は何らかの形でもう少し手厚くいたさなければならぬ問題が残ると思いますが、漫然として一般的にたとえば今兵長の階級のものを軍曹のところまで、伍長のところまで持ってきて、そして同じような金額をばらまくというだけの、国に財政的の余裕がない、私はそう考えまして、一応兵長の線で実は最低を引いておる。さよう御承知おき願いたいと思います。
  44. 山本經勝

    委員外議員山本經勝君) 大ざっぱでいいのですが、一つ数字を明らかにしていただきたいのは、准尉と申しますか、あるいは准士官以下兵に至る、いわゆる対象人員数はどれくらいあるのか、それからもう一つ尉官、佐官、将官と一応三段階に分けて、大ざっぱでいいですが、これの公務扶助料対象人員はなんぼぐらいになっておりますか、その点を一つ明らかにしていただきたいと思います。
  45. 三橋則雄

    政府委員三橋則雄君) 先ほどその点につきましては申し上げたのでございますが、階級別人員実数はまだ統計の整備ができておりませんのでわかっておりませんのでございます。ただ二十八年に、いわゆる軍人恩給が給せられる法律案を作りますに当りまして、いろいろの点からして一応の推定は立てなければならぬということからいたしまして、大東亜戦争を中心といたしまして戦没者総数が一応推計されました。その推計を前提といたしまして、今度は階級別人員をまた推計いたしたものはございますが、しかしこれは全くの推計でございまして、先ほどのお尋ねは、実数についてのお尋ねでございますので、実数ははっきりしないということを申し上げたわけでございますが、今申し上げたようなことでよろしければ、はっきりしたものでございませんけれども、一応の推計をいたしましたものを印刷してお配りすることはいたします。
  46. 山本經勝

    委員外議員山本經勝君) それからなおあわせてついでにお聞きしたいのは、今の在職年数ですね、あわせてこれについて、推計の数字であれば今でも御発表できるわけですか。
  47. 三橋則雄

    政府委員三橋則雄君) 在職年の問題につきましては、これも在職年別の統計は、このたび新たに裁定いたしたものについてはまだできていないのでございまして、終戦前におきまして、恩給の新規の裁定、すなわちある年に裁定いたしましたものにつきましては、一部ではありますが、ございます。大へん大まかなものでございます。今は持ちあわせておりませんが、ございますので、それを整備いたしましてお配りすることにはやぶさかでございません。
  48. 山本經勝

    委員外議員山本經勝君) それではもう二度申し上げますが、将官、佐官、尉官それから准士官以下兵に至る各階級別実数、それから在職年数、それから公務扶助の対象になります扶助人員数、これを一つ明確にお願いしたい。  それから続いてもう一点お伺いしておきたいのは、先ほど社会保障制度との関係において、竹中委員から御質問がありましたが、いま少し突っ込んで明らかに伺っておきたいのは、非常にたくさんな公務扶助対象人員というものがあると私どもは判断いたしておる。それで、これらの人々は現在生活保護法の適用を受けたり、あるいはその他いろいろの社会的な機構の中で救済を要する人々であろうと思う。ですから、これら多数の人員に対して生活保護なりあるいは職業補導のいろいろのことが現在社会労働委員会でも問題になってやられておりますし、あるいは職業の補導、斡旋等におきましても、ずいぶん国家立場から努力はされておるのであります。こうしたいわゆる国民の中で下層の階級に属して、しかも多数を抱えているこれらの人々に対する保障の方法について、いわゆるここで言われる公務扶助料として支給される、現在民自両党の修正案と言われるものがこれで適当であるとお考えになっているかどうか、この点を一つまず明らかに伺っておきたい。これは提案者の方から御説明願いたい。
  49. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) 現在の国家財政の見地が一つ一つは、恩給特例審議会を通しまして、昭和二十八年に恩給基礎ができ、それが国会を通過いたしております。それを基礎といたしまして文官との均衡をとる恩給にこの際組み直そうといたしております。金額は多いに越したことはございませんが、一般文官その他全般にわたっての引き上げなり調整なりをいたさない限りは、このたびのこの措置以外に方法はないのでございます。私はこれはやむを得ない適当な措置であると考えております。
  50. 山本經勝

    委員外議員山本經勝君) 先ほどのお話を伺っておりますというと、一応職業軍人と申しますか、これらの人々階級というものは基本的に考えられるという御説明であったように思います。そこで現在ありますこれらの対象人員の中で、大将あるいは中将、少将といったような階級職業軍人、それから引き続いて佐官以下というようになって参るわけですが、これらの人々の救済が……これは救済の場合ですが、公務扶助の場合が、やはり下士官以下の兵の場合と差別をつけなければならないという理由が私どもわからないわけなんです。その点を懇切に一つ説明をいただきたい。
  51. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) 恩給制度を貫いておる全般的の問題だと思いまするが、もし公務扶助料を平均して現行法の年金か何かに一本にするといたしますと、まず第一に考えられますのは、文官におきましても、たとえば昔の大将、今は大将なんというのはないのでございますから、大将というのはある一定の俸給額を示す私は言葉だと考えているのでございまするが、その俸給に当る文官恩給もすべて引き直さねばなりません。また恩給というものは現在の公務員給与の延長と私は考えております。従って現に公務員給与自体もその点においては平均化をするということでないと、今おっしゃるようなことは私は不可能であろう、こういうように考えておりますものですから、大体お説に私は遺憾ながら賛成をいたしかねるのであります。
  52. 山本經勝

    委員外議員山本經勝君) 先ほどもお話があったのですが、恩給は、国家国家が雇い入れている公務員との関係において、いわゆる給与の変形であるというお話ですが、これと、一般国民と国家との関係における状態を別個に切り離してお考えになっている根拠を伺っておきたいと思う。
  53. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) それは国家対使用人の関係で、国家対国民の関係というものは、これは全然違うものだと考えております。
  54. 山本經勝

    委員外議員山本經勝君) どういう理由で違うかということを伺っておきたい。
  55. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) どういう理由だと言われても、違うから違うのであります。
  56. 山本經勝

    委員外議員山本經勝君) 先ほどのお話の中に、公務員として国家が使用している雇用関係でありますと、使用の関係というのは一応わかるわけなんですが、ところが今問題になっているのは、それらの人を対象にしてどうこうというのじゃなくて、国民のうちの多数があの戦争のために親を失い、あるいは兄弟を失って生活力がなくなり、あるいはまた先ほどのお話のようにたった一人の大事なむすこに死なれたために、戦争の犠牲になったために、あとに残った父や母やあるいは小さい子供が路頭に迷うという、これらの多数の国民の問題になっているわけであります。公務扶助料対象となる者はこれらの人々であろうと考えるものでありますが、この点はいわゆる国家が雇い入れている人々に対する国家立場と、そうして国家の国民に対する立場とが根本的に違うのだというお考えと、違うから違うのだという御説明では納得いかないのです。そこら辺をもっと懇切に、私ども頭が悪いから理解しがたいので、よくわかるように御説明いただきたい。
  57. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) 国家が使用いたしている公務員に対する給与の延長としての給与と、国家一般の国民等に対しまする国家がやることは、これは異なるということは私は考えられることだと思う、そういう意味でお答え申し上げておるわけであります。
  58. 山本經勝

    委員外議員山本經勝君) そこで、公務扶助というのは、そうすると公務のために犠牲になった人々の家族を措置するのとは違うわけですか。
  59. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) 恩給にはたとえば普通恩給を取っております者がなくなりますと、その家族に普通の扶助料、いわゆる普通扶助料と言いますが、こういうものが参る。また公務で倒れた者には、その家族に公務扶助料が参る、こういう建前に実はなっておるのでございます。
  60. 山本經勝

    委員外議員山本經勝君) それで、今のお話わかるのです。でありますがゆえに、たとえば、公務で倒れる、あるいは公務に従事して業務を継続することができなくなって、そうしてそれらの遺族に対して公務扶助料というものが支給されるのとは違うのですか。その場合に、それらの家族と国家関係は、国家が雇用している使用人と使用者という関係ではないのでしょうか。
  61. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) 先ほど申し上げましたように、国が公務員に対する恩給制度といいますか、というものをきめまする際に、本人がなくなりましたときに、ある程度のものを家族、すなわち二十才未満の子供と妻——これは年令の制限はありません——及び父母というものに対して、なお国家が保障をいたしておる制度が恩給制度でございます。
  62. 山本經勝

    委員外議員山本經勝君) その通りであります。でありますが、それで、私の申し上げておるのは、公務扶助料を今問題にしているのですよ。そこで、公務扶助料として支給された、あるいは公務員として働いておった人がなくなって、その配偶者なり、あるいは子供が未成年であって生活能力がないということになれば、それを保護するという建前はとりますが、その場合に受給の対象になっておるのは、私は一般国民だと申し上げておる。雇用関係を持った公務員ではない、その対象は。ですから、そこをお考え願えると、おしなべて私の申し上げていることが御理解いただけるのではないか。
  63. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) 私はさよう理解いたしません。
  64. 森田義衞

    森田義衞君 ちょっと私から政府の所見につきまして天久保国務相に聞きたいのですが、それは民主党が今回の選挙によりまして比較的多数になって、政権をとられた。そして、いろいろ公約がおありになる。その中で国民税負担の軽減、あるいは社会福祉国家への漸進として社会福祉制度を拡充して行くという建前をとってこられて、その一環としてこういった恩給法の一部改正をさらに一部改正するという法案の中で、軍人、軍属その他の恩給を、一般文官と比較して不均衡だから是正すると、確信ある財政上の見地から申しましても、これが最大限度であろうといった意味合いから出した案であろうと思うのですが、それが今回民・自党の妥協によって、二百十五億かの金が、たまたま予算修正をされた。そのうちの配分がこの中に十八億程度ある。そうして、また何というか、今後の年度において、三十二年度、あるいは三十三年度においては、今十八億ですけれども、これがふえて行くのではないかということが大体予想される。それを政府が漫然と修正を受けたから、非常にけっこうでございますといった程度でお考えになって御賛成になるのかどうか。初めの確信と、この修正案との間についての政府の所見を伺いたい。そのことは、たとえば、一般公務員の、国家公務員恩給につきまして、国家公務員退職年金制度に対しましては、人事院が昭和二十八年十一月かに勧告をしてある。こういった関係について、どういったお考えを今日までお持ちになっているのか。そういったような振り合いなり、あるいはその他今回の予算を見ましても、財政上の都合だからやむを得ないとわれわれ社会労働委員会で考えておりまするが、やはり、何といいまするか、国民保険の関係におきましても負担の増が一般関係にもあるだろうし、あるいはまたその他失業対策にしましても、きわめて不十分な費用であるような感じがいたしております。いろいろの面におきましても、非常に困っている面が多いのであります。そういったバランスから見て、こういったものがあくまでも何といいまするか、必要ではありましょうが、最もバランスのとれた、最もいい案においてこの民自両党、あるいは社会党のこの修正案が適当であるかといったことについて、大久保国務相の御意見を伺いたい。
  65. 大久保留次郎

    ○国務大臣(大久保留次郎君) 経過を申し述べておきたいと存じます。  実は御承知の通り政府としては恩給改正法案を議会に提案いたしまして、そのときの主として増加を計画しましたのは遺族扶助料であります。扶助料を中心として増額しようとするわけであります。これに武官及び文官の増加を合せて、三十年度における恩給の増加が約三十億円であります。その提案をしておる間にただいまお話にありました通り、民主党自由党との政策の協定ができまして、この恩給の問題は、両党ともに選挙のときのスローガンに掲げておった重大な問題であるからして、これを何とか解決しなくちゃならぬという話がまとまりまして、ついに約十八億何ぼ、十九億近くの金額が増額されてこの提案になりました次第でありまして、その当時大蔵君においては多少の異論がありました。これは今年度ばかりでなく、来年度になれば約百億近くの増額になる。その次になればもう少しふえると思う。けれども大局的な意味において、衆参両院が通過しましたならば、まず従おうという腹をきめられておるのでありまするからして、私どももこの点に同意して進んでおる次第でございます。もしこの民主、自由両党の案が成立しましたならば、恩給受給者は喜ぶことと信じております。  なお、社会党云々のお話がありましたが、これはさらに輪をかけての増額でありまして、民主、自由両党の改正案にすら多少の異論がありました大蔵当局でありますからして、おそらく政府としてもこれにはなかなか賛成しかねる、こういう気持を持っております。概略して以上申し上げます。
  66. 森田義衞

    森田義衞君 つまり何でございますか、結局政府が出したものは、なかなか予算上都合がつかないからあまり満足すべきものでなかった。たまたまいい案が出てきたからこれに便乗してこれに賛成するのだ、そういったお気持でございますか。
  67. 大久保留次郎

    ○国務大臣(大久保留次郎君) 前にも、できますれば四号俸引き上げ及びべース・アップというものは当然やらなければならぬ。文官との均衡をとらなければならぬという考えを持っておりましたが、それをやるのには順序があるというので、ひとまず今年度においては扶助料だけを増加しようと思ったときに、さきに申しました通りに、両党の協定によりましてこれが実現することになりましたので、私どもほこれに賛成をして進んでおる次第でございます。
  68. 森田義衞

    森田義衞君 先ほどちょっとお伺いしますと、国家公務員退職年金制度に対する人事院の勧告がございまするが、恩給法全体としては非常に大問題と思いますが、そういった問題、これと関係もある程度あると思うのでございますが、それに対しまする御見解一つお伺いいたしたいと思います。
  69. 大久保留次郎

    ○国務大臣(大久保留次郎君) その問題は、人事院の勧告は確かにありました。現業員の共済組合の制度と年金制度と二つあわせて勧告がありました。これは承知しておりますが、ちょうどただいま末期に近づいております公務員制度の調査会の調査の項目の中に入っております。この論議もほとんど大体尽きましたようでございます。後日その結果はまとまることと思います。
  70. 森田義衞

    森田義衞君 いつ頃まとまりまして、政府としてそれに対する何と言いますか、改正をするとか、そういったような見通しについてお伺いしたいのでございますが……。
  71. 大久保留次郎

    ○国務大臣(大久保留次郎君) 調査会の総会において十数回論議したのであります。小委員会に移してこれまた十四、五回論議されました。今日においては、総会と小委員会において論議されました意見をまとめております。ほとんどまとまりかかっております。おそらく今月中には大きな主要の問題についての意見がまとまりまして、総会にかける運びになると思います。総会には、おそらく私は八月中には必らずかけ得ると、こう思っております。
  72. 森田義衞

    森田義衞君 もう一つお伺いしますが、先ほどちょっと触れたんですが、その他の社会福祉制度と今回のこの改正との間には、非常にバランスがおとれになっているというお考えでございますか。
  73. 大久保留次郎

    ○国務大臣(大久保留次郎君) 今の何ですか。
  74. 森田義衞

    森田義衞君 たとえば何といいますか、生活援護費でございますか、失業対策費とかその他の社会保障関係の費用、今回の予算、それと今回の修正される軍人関係是正との関係、それとの関係を見まして非常にバランスのとれたものと政府はお考えになっておるか。
  75. 大久保留次郎

    ○国務大臣(大久保留次郎君) これはある程度連絡をとっておりますから、大体においてバランスがとれているのじゃないか、こう考えております。
  76. 田村文吉

    田村文吉君 提案者に伺いたいのですが、将官、佐官の号俸の上げ方を遠慮されたことは、常識的にわかるのですが、これは文官とのつり合い上一向差しつかえないという理論的な何か根拠がございますか。
  77. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) その点は御指摘の通りでございまして、将官、佐官は実は文官とそれだけまだ不均衡でございます。要するに四号俸引き上げを三号俸、二号俸引き上げましたために、文官よりも実は歩が悪くなっております。が、国会におきまする全般的の空気を察しますと、やはり社会党の方の政務調査会の案でも佐官以上は引き上げをとめるというようなお考えでもあったように承わりますし、また民主党あるいはその他各方面の意見を徴しましても、上級の方にはお気の毒ではあるが、ある程度この際、国費もかかることだから、がまんをしてもらおうじゃないかという、全般的の空気がそうなっておりましたものですから、その全般的の空気を取りいれまして、一応号俸の点を一般文官よりもわずかではございますが低い所へ置いてやった。それだけは、当然文官均衡をとるという以上は、そんなことをやらないでもいいのでございますが、今申し上げましたような点を考慮に入れました措置と御了解を願いたいと思います。
  78. 田村文吉

    田村文吉君 大体そうしますと政治的の考慮のもとにこれが行われたので、理論的には必ずしも徹底したお考えではないというふうに了承いたしてよろしゅうございますか。
  79. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) もちろん財政的の見地から申しますと、これはわれわれが想定いたしますのに、佐官以上の数がそうたくさんあるとは思えませんで、財政的の影響は非常に乏しい、それで、ただいま申し上げましたことが、政治的考慮という言葉が適当であるかどうかは存じませんが、今申し上げましたような趣旨でいたしたことを御了解願いたいと思います。
  80. 田村文吉

    田村文吉君 政府の御当局に伺いたいのでありますが、まあ今度の軍人恩給等に対しては、当然にしてあげなければなるまいということは一般的には考えられておりますが、さて財政的な問題になってくると、これは非常に国民全般が頭が痛む問題になっております。こういう問題、つまりインフレーションによってこういうふうにふえてきた恩給、これは、恩給というものは、インフレーションというものは必ずしも現在の状態で続くものやらあるいはもっと下るものやら、また上るものやらわからぬものでありますから、こういうことのためには財政的には非常に負担が重くなるのでありますが、今後の考え方を大久保国務相としてほどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか、恩給に対する根本的の考え方を伺っておきたい。
  81. 大久保留次郎

    ○国務大臣(大久保留次郎君) ただいまのお尋ねでありますが、近ごろ世間及び言論界の一部を通じての恩給亡国論というものがときどき見えるのであります。これは恩給に対する金額が非常に多くなっておる。ことに今年度の増額は約五十億の増額であります。来年度にはなお百億増すというようなことになるのであります。こういうのを指摘しまして、もう来年度においては一千億近くなる、一千億を少し越すかもしれない、こういう状況でありますので、恩給亡国論という話が起きてくるのも無理からぬことであると存じますけれども、各政党のスローガンであるばかりでなく、国民の要望もありまするので、この限度の引き上げはまずやむを得ないのでないか、こういう感じを持っておりまするが、将来さらにたくさん増すというようなことについては、よほどの考慮を払わなければならぬじゃないだろうか、こういう感じを持っております。
  82. 高橋等

    衆議院議員高橋等君) 提案者からも一言。大切な問題ですから。ちょっと大臣のお考えになられております来年度一千億を越すじゃないかというような点につきましても、いろいろ統計的に数字が出ております。それで一応今年度の文官と旧軍人恩給は合計いたしますと八百三十二億、旧軍人恩給だけが六百六十九億ということになっております。三十一年度ほどうなるかといいますと、文官恩給におきましては十八億増の再八十一億になります。軍人恩給の方はちょうど今年度一ぱいで一時金の支払いが実は停止になります。今まで三カ年間引き続き支払ってきました一時金が全部落ちるのでございます。それでありますから、このべースアップの百二十億を入れましても軍人恩給は今年度が六百六十九億のものが七百一億にとまるのでございます。なお七百一億と文官恩給を入れますと八百八十一億でございまして、本年度と比べると五十一億の来年度は増になります。ただしこれには年間約三%に当ります死亡その他による失権を見ておりません。従いまして約二十五億程度の、最小限度に見積りまして二十五億程度の失権は、予算上これは当然毎年組む、約〇・〇二八くらいのものを組んでおりますから、約三%であります。そうしますと、来年度は文武官を通じまして今年度と比べまする恩給費の増は大体二十五億程度、こうお考えいただけばけっこうだと思います。  それから次に三十二年度はこれは恩給費は満額になるのであります。これでいわゆる軍人恩給につきましても、今度引き上げました増加額が全部参ります。その際の文官恩給は百九十九億であります。やはり年間十八億程度ふえます。これは将来何らか措置を講じなければならぬ、たとえば年令制限の引き上げであるとか、あるいは四十五才から恩給をもらっておるというような制度を幾分改めなければいかぬじゃないかと思いますが、とにかく百九十九億、それから軍人恩給につきましては来年度これを完全実施いたしました場合が七百四十二億、合計いたしまして九百四十一億でございまして、三十一年度との比較におきましては五十八億ふえております。これも失権その他のものを考えますると約三十億程度の増、ですから三十二年度におきましては三十年度と比較いたしますると約五十五億くらいが純粋の恩給費の増、この中で一応文官の方の関係が三十六億というものが入ってくる、こういうふうにわれわれは検討いたしております。これは今大臣が恩給費と申された中には、いわゆる援護費その他が入って一千億というような数字のものになったのだろうと思いますが、純粋の恩給からいいますれば、この数字は有権的なものであることを御了承願いたいと思います。
  83. 田村文吉

    田村文吉君 軍人恩給は明後年が一番最高であって、より以上にふえることはないというお話を今伺ったのでありますが、私も軍人恩給については、もう軍人というものはないのでありますから、今後ふえるという心配はない、しかし現在は非常に多額の負担を多くの国民に与えておる。ただ私は恩給局長に伺いたいのでありますが、文官恩給というものがわれわれの戦争前に考えておった時分の公務員の数というものと、今日の比率というものと非常に違っておる、国民所得に与える恩給の増額の比率というものが戦争前と今日ではどういうふうに変りつつあるか、そういう点が大体の数字でけっこうですが、おわかりになったらお知らせいただきたい。また今後これを継続して行くことが、果して文官恩給の点からいって考え得られるのか、このままでずっと二年、三年、四年、五年と、毎年二十億、三十億とふえて行くだろうと思うのですが、これに耐え得られるのかどうか、国民所得との比較を計算して、その点に御説明がいただければ大へんけっこうだと思います。
  84. 三橋則雄

    政府委員三橋則雄君) 国民所得と比較いたしましての資料は、実は持ちあわせておりませんので、ちょっと御説明申し上げかねるかと思います。
  85. 田村文吉

    田村文吉君 これは私ども連合審査はこれで終りますから、私がお伺いすることはできませんでも、われわれの同僚が内閣委員会におられるのでありますから、一応その数字を作って、一つ御発表をいただきたい。こういうことを要望しておきます。
  86. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 他に御発言もないようですから、内閣、社会労働両委員会の連合審査会はこれをもって終了したものと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十三分散会