○
説明員(
奥野誠亮君) 現在お
示しのような問題が市町村を通じて非常に大きな問題になっておりますので、私
たちも苦慮いたしておるわけであります。現在の建前は所得というものはだれが決定しても同じ額であるはずだ、もしその額が適当でないなら、お互いに力を合せ合って適当な所得の額を決定していくべきだ、こういう建前になっておるわけであります。従いまして、またかりに国の
税務官署の決定した所得が過少であった場合には、市町村長の権限で引き上げていくことも可能であります。また国の
税務官署が腐敗しているために地域全体に非常に酷になっている場合には、市町村長が独自で決定をしてもよろしい、こういうことになっているわけであります。実際問題として、しかし納税者に不利なようなやり方をこの法を根拠として
運営することもなかなか容易のことではないと思います。現在市町村が困っておりまする点につきましては、二つあると思うのでありまして、
一つは納税者の収入なり
経費なりを把握していくのに適正を欠いている、たとえば給与生活者の所得でありますと、非常にはっきりつかむことができます。しかしながら事
業者の所得でありますと、収入
金額とか、あるいは
経費というふうなものがよくわかりませんので、なかなか的確に把握されない、こういうような
税務行政運営上から起って参ってきている問題であります。もう
一つは国の
制度から起ってくる問題でありまして、たとえばしばしば町村におきましては、給与生活者と農業生活者との問題が持ち出されるのでありまして、あるいは予約申し込みの米の代金につきまして特別な軽減措置が講ぜられているというふうな式の問題でありまして、そのようなことから相当な経営をやっている農
業者であるにかかわらず、
課税総所得
金額がマイナスになっている。自然また給与生活者との間で非常な不均衡をかもし出していくと、こういう式の問題であります。
制度の問題につきましては、できる限り
所得税法の
改正によりまして、国民に納得のいくような所得決定にもっていかなければならないのじゃないだろうか、かように考えているわけであります。もしかりに国の政策の点からそれが不可能であった場合には、国の
所得税の場合にはそういうやり方をするけれども、市町村民税の場合にはそういう方式によらないのだということが立法上可能であるならば、それも
一つの方法じゃなかろうか、こういう感じを持っておるわけであります。これらの問題を離れまして、おっしゃいますような見立て割りを加味したいという
考え方、その
考え方につきましては、従来の見立てというのは、資産の状況をも加味して所得をきめておったわけであります。この点につきましては、現在別途に固定資産税というものがございますので、やはり市町村民税の所得割というものは、相当な資産を持っている方でありましても、前年にむしろ事業である場合には欠損であったり、所得がなかったという場合には、所得割は軽減した方がいいんじゃないだろうか、そのかわり別途に固定資産税を課して行くんじゃないだろうか、こういう
考え方を持っているわけでありまして、いわゆる資産の見立て割りを加味するという場合の、資産の状況をその中に織り込むということならば、現在の市町村民税の所得割は、純粋の所得という見地から決定して行った方がいいんじゃないだろうか、こういう感じを持っております。その他の意味の見立ての問題でありますならば、国と
府県と市町村とが協力態勢をさらに強固にすることによって、
税務行政をもっと適正に
運営されるように
努力して行くべきじゃないだろうか、やはりばらばらに決定するという行き方は避けた方がいいんじゃないか、かような
考え方をもっております。しかしそれよりも現在は
制度上の問題がはるかに大きいんじゃないか、こういう
気持を抱いております。