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1955-06-20 第22回国会 参議院 大蔵委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二十日(月曜日)    午前十時四十七分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青木 一男君    理事            西川甚五郎君            山本 米治君            土田國太郎君            平林  剛君            森下 政一君    委員            岡崎 真一君            木内 四郎君            白井  勇君            藤野 繁雄君            宮澤 喜一君            片柳 眞吉君            小林 政夫君            岡  三郎君            中川 幸平君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君    常任委員会専門    員       小田 正義君   公述人    一橋大学教授  井藤 半彌君    全国銀行協会連    合会副会長   堀田 庄三君    日本中小企業団    体連盟理事   森田 彌市君    野村証券株式会    社社長     奥村 綱雄君    日本教職員組合    中央執行委員長    官公庁労働組合    賃銀専門委員  笹川 運平君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○所得税法の一部を改正する法律案  (内閣送付予備審査) ○法人税法の一部を改正する法律案  (内閣送付予備審査) ○租税特別措置法等の一部を改正する  法律案内閣送付予備審査) ○地方道路税法案内閣送付予備審  査) ○関税定率法等の一部を改正する法律  案(内閣送付予備審査)   —————————————
  2. 青木一男

    委員長青木一男君) これより委員会を開きます。  本日は所得税法の一部を改正する法律案  法人税法の一部を改正する法律案  租税特別措置法等の一部を改正する法律案  地方道路税法案  関税定率法等の一部を改正する法律案について公聴会を開きます。  公述人の方に一言いたします。本日は皆様お忙しいところをかつ炎暑の折からおいでをいただきましてまことにありがとうございました。皆様のそれぞれの専門的立場から御覧になった御意見を伺いまして、私ども法案の審議に資したいと考えますから、どうぞ御意見のあるところを率直簡明にお述べを願いたいと思います。  それでは当初に一橋大学教授井藤半彌君にお願いいたします。
  3. 井藤半彌

    公述人井藤半彌君) 一橋大学教授井藤半彌でございます。御命令によりまして、所得税法の一部を改正する法律案外四件につきまして卑見を申し上げたいと思います。  今回の法案は、御案内通りいわば部分的な修正でございますので、議論の余地は割合に少いのであります。しかしこの機会に法案にもちろん直接または間接に関係することでございますが、日本税制全般に関連したことについても申し上げさしていただくことにいたします。租税問題を問題にする場合に、これは私こういう公聴会でもたえず申し上げておることでございますけれども、問題は次の二つであります。一つは、その総額が、租税の金高全体が国民経済その他から見て当を得たものであるかどうか、すなわち一番は総額の問題、それから二番は内容の問題であります。総額がいいとか悪いとかきまりましても、その中身がどうか、人民への割当がどうかという内容の問題であります。まあ一応この二つの問題に触れませんと議論が進みませんので、それで今日もこの二つについて触れさしていただきます。ただし総額の問題につきましてはきわめて簡単に取扱うことといたします。と申しますのは、私はこの参議院の公聴会などでやはり同じようなことをよく申し上げておりますので、あまり同じようなことを繰り返すのもどうかと思いますので、ただ結論だけを簡単に申します。  まず一番は総額の問題、今度の政府原案並びに民主党、自由党の共同修正、それを加味したもの、すなわちそれがまあ一応原案と申しますが、それでは、国税総額が、専売益金を含めまして九千百二億であります。これは今の二党の共同修正による修正も加味してでありますが、国税総額が九千百二億円、それから地方税でありますが、地方税につきましても部分的修正がありましたので、私の計数はちょっとあやしいのでありますが、地方税が三千五百八十二億円、国税地方税を通算いたしますと、昭和三十年度は、この案がそのまま国会を通過するといたしますと、一兆二千六百八十四億円であります。まあ普通これを国民所得で割算して見当をつけるということがよく行われております。そこで昭和三十年の国民所得六兆三千二百七十億円、国税地方税の合計を割算いたしますと、大体二〇%となるのであります。国民所得の二〇%、ここ五、六年来ほとんど二〇%ないし二一%という数字は動いておりません。奇蹟的といってもいいくらいに二〇%内外、二〇%ないし二一%となっております。終戦後一番重かったのが昭和二十四年でございまして、昭和二十四年が二七%、それに比べますと現在の二〇%というのは相当軽くなったのでございますが、戦争のまつ最中の昭和十九年は三〇%であります。これはまあ戦争中ですから当然のことだと思います。それから昭和年度、事変前の昭和年度は二二%であります。従って現在の二〇%というのは昭和二十四年、すなわちシャウプが来た年であります。シャウプ改革の前年であった昭和二十四年の二〇%に比べますと、比率は低いのでありますが、昭和十年の二二%に比べますとなお五割高い、五割重いということなのであります。ところがこれはまあ当てになるようでならぬということは、いろいろ多くの方がおっしゃられる通りであります。それで私よく、これは数年前から例のエンゲル系数を使いまして、国民所得から食費部分を引いた残り国民所得から食費部分最小生活費とみなしまして、国民所得から食費を引いた残り、これをかりに負担能力最大限と解釈いたします。そして、税金を、国民所得の今申しました負担能力最大限、これをもって税金を割算いたしますと、もちろんこの方が真相に近い数字が出ますので、そういう計算をいたしますと、昭和三十年度は三六%になるのであります。すなわち負担能力の三六%を国税地方税として徴収することになっております。ところが過去と比較いたしますと、先に申しました昭和二十四年は七二%になるのであります。それから戦争前の昭和十年は一九%になるのであります。昭和三十年度の三六%という計数は、比率昭和二十四年度の七二%に比べますと約半分になっております。ですが、この昭和十年の一九%に比べますと、これは倍近くになっておるのであります。すなわち昭和十年と昭和三十年を比べますと、租税国民所得に対する比率におきましては、一三%が二〇%にふえるのでありますからして、およそ五割増しになったのでありますが、租税の、私が今申しました意味負担能力に対する比率から申しますと、一九%が三六%になったのでございますからして、およそ倍になっておるということになっておるのであります。まあこれを見まして、これだけで次のような結論を下しますのは少し早いのでありますが、またわれわれの実感から申しましても、なお現在日本では税金が重いということは一応言えるのではないかと思います。  これに関連していろいろ申し上げなくてはならないことがございますのですが、これはもう簡単にこれだけにしておきまして、今度は二番の内容の問題、これについてやや詳しく公述さしていただきます。  それで今度の増税案内容を見ますと、これは事務局からいただいた資料によるのでありますが、直接税については相当の減収になっております。私は減税と申しません。減収というのは、実収入が減少、直接税については減収になっております。ところが間接税につきましては増収になっております。何が増収になっておるかと申しますと、必ずしも、制度としての増税があったわけではございませんけれども、租税及び印紙収入に関するあの政府提出資料その他を見ますと、酒の消費税、それから砂糖消費税が非常にふえる計算になっております。これは酒の消費高砂糖消費高がふえるという建前、それから揮発油税が、今度地方道路税なんかできたりいたしますが、揮発油税がふえる建前揮発油税は後に申しますように増税になりますのでふえるということは考えられますけれども、酒、砂糖につきましては制度改革はあまりないのでございますけれども増収になっております。これに関連いたしまして、政府デフレ政策をとる、ある意味において消費抑制をやる建前になっておりますが、計数からいうとこれは増収になるのであります。一昨日でしたか昨日でしたか、ある新聞に国税庁の事務官の話が出ておりましたが、酒、それから砂糖につきましても昭和二十九年度予算以上の増収があったそうであります。今度もまた増収になるという建前、これとデフレ政策との関連はどうか、これは相当問題になることだと思います。  これはまあしばらくおきまして、今度の税制改革内容の大きな特徴を見ますと、とにかく直接税は減収になると同時に減税になります。それから間接税については増収になるのであります。例によりまして直接税と間接税比率を、これは私かっての計算をいたしますと、これは先に申し上げました二つの政党による共同修正をも加味したものでありますが、国税について申しますと、国税は九千百二億円でありますが、直接税が五一%、計数は省きます。直接税は五一%、間接税は四九%になっておるのであります。大体半々のところになっております。これも昭和十年ごろの三五%に比べますと、直接税はふえております。それから昭和二十四、五年ごろのやはり五五%に比べますと、直接税は五一%でありまして、やや減っておるということになっております。  そこでまあ普通いわれておることは、一体直接税が多い方がいいか、間接税が多い方がいいかという問題でありますが、これは絶えずいわれておることでございますが、現在日本におきましてはこの直接税、間接税の仕訳によりまして日本税制を判断するのは少し無理だということは一応言えると思うのであります。これはあとから申します。  私は日本財政及び租税に関する基本的方針としては次のものでなければならないと考えております。これはきわめて単純なことを申し上げるのでございますが、それは国費、まあ地方団体経費も含めてでありますが、この場合には国家を中心にいたします。中央政府国費というものは総額において減らさなければならない。そして直接税を減税にして、間接税をそのままにする。増税をしろとは申しません。国費を減らして、直接税を減税にして、間接税をそのままにする、これが一番いいのではないかと思っております。と申しますのは、この方法は絶えず私が申し上げておることでありますが、現在の日本の直接税と申しますと、累進税とか何とか申しましても、実は大衆課税の性質が非常に強いのであります。これも事務局からいただきました所得階層別資料によって私が計算いたしましたところによりますと、昭和三十年度——もちろん予算年度だと思いますが、昭和三十年度所得税申告納税並びに給与所得について、一体どの部分が主として税金を納めているかということを調べたのであります。昭和三十年度所得税申告納税者予定人員は二百七万人であります。このうち一年の所得が五十万円以下の納税者——五十万円というのは私は大した金持とは考えておりません。井藤でも五十万円以上の所得があるのでありますから、この辺は大衆と考えてよいのであります。ほんとうは四十万円というのがいいのでありますが、四十万円の資料がないので、三十万円から五十万円に飛んでおります。そこで五十万円以下の所得者は八四%であります。所得税申告納税者予定人員二百七万人のうち五十万円以下のものが人員から申せば八四%です。それから所得金額は、やはり昭和三十年度申告納税者でありますが、所得金額は七千三百十七億円、このうち五十万円以下の者が六四%であります。まあ大ざっぱにいって大部分は五十万円以下の者で六四%であります。大ざっぱに申しますと、申告所得税を納める人の大部分は、七、八割はこの辺の額ということになるのでありますが、七、八割は五十万円以下です。  今度は給与所得について申しますと、勤労所得でありますが、人員総数は七百九十一万人のうち、五十万円以下の者が九三%であります。これは、給与所得者は、平均して所得が少いのでありまして、人員総数七百九十一万人のうち、九三%が五十万円以下の者であります。それから給与所得総額は幾らかと申しますと、二兆一千五百九十億円、このうち五十万円以下の者が全体の八二%、五十万円以下の者が、所得金額から申しまして八二%を占めておるのであります。すなわち、給与所得だけについて申しますと、大体八、九割が五十万円以下だということになっております。すなわち現在日本におきましては、なお普通一般公式論といたしましては、所得税金持がたくさん負担する、間接税は貧乏人も金持も大体同じように負担すると申しますけれども、終戦以来、国民全体が国民皆貧の形になっておりますので、所得税と申しましても、五十万円以下の者が大部分であるというような状態になっておるのであります。それで、税金に対するわれわれの苦痛は一番所得税に現われております。これは私はもっともしごくだと思いますので、所得税その他直接税を軽減する、間接税はそのままにして、国費全体を減らすということがいいのじゃないかと思っております。これが私の税制問題に対する基本的——というと大げさでありますが、まあ基本的な考えであります。  これから各租税内容ついて卑見を申し上げさしていただきます。税法全体について意見を申し上げることはできませんので、ただ私が気がついたものだけについて申し上げさしていただきます。  まず、所得税でありますが、今度は減税——減税は必ず評判がいいにきまっております。とにかく減税することになっております。そこで、どの程度減税が行われるか、内容はここで説明することはもちろん差し控えますが、私は昭和二十五年と三十年と比較してみました。この二つを比較してみたのであります。昭和二十五年というものをなぜとったかと申しますと、昭和二十五年は、例のシャウプ税制が実施されたのが昭和二十五年であります。そこでシャウプ税制の実施された第一年度と、それから今度の昭和三十年度——改正案が通過してという建前でありますが、それとの比較であります。そういたしますと、昭和二十五年度では、勤労者夫婦子供三人、この五人の標準家族でありますが、昭和二十五年度は、一月に七千三百円までは免税でありました。これはきちっと合いませんけれども、大体七千三百円ぐらいのところまでが昭和二十五年は免税でございました。ところが、昭和三十年は幾らまで免税になるかというと、大体一万九千円まで免税になってきておるのであります。一昨年、昭和二十八年の秋に、政府諮問機関として税制調査会がございましたが、あの調査会の案が大体一月二万円見当で、今申しました五人家族標準家族、一月に二万円くらいまでを免税にせよという答申が出ておったのでありますが、大体あの当時の線に非常に近づいてきております。私は、これは概括的に申しますと、非常にいいことだと思っておるのであります。この間に物価一体どれだけ騰貴したか、七千三百円まで免税だったのが一万九千円まで免税になった。しかし物価が何倍にもなっておればこれは困るのです。物価を申しますと、C・P・I、全国都市消費者物価指数を見ますと、これは御案内通り基準年度昭和二十六年度昭和二十六年を一〇〇にしたものでありますが、昭和二十五年の平均は八五・九であります。ところが昭和三十年の三月、それ以後の新らしい計数は手に入れることができません。昭和三十年三月のC・P・Iは幾らかと申しますと、一一八・四であります。割り算いたしますと、昭和二十五年から今年の三月までの間に三八%物価騰貴していることになっております。それで昭和二十五年の免税点であった、実質的の免税点であった七千三百円というものは、今年の三月の貨幣価値に直しますと一万七十四円、大体一万円であります。そうすると昭和二十五年の七千三百円を今の貨幣価値に直した一万七十四円までが月給取り免税だった。子供三人、夫婦二人、ところが、今度は一万九千円まで免税になるというのでございますので、これは確かに実質的にいって減税になっておるということは言えるのであります。それは論より証拠でございまして、まず納税人員を見ましても非常に減っております。これを政府の推算によりますと、これは多少重複はあるのでありますけれども、政府の推算した資料によりますと、所得税納税人員昭和二十五年度は千四百二十八万人でございましたのが、昭和三十年は九百九十九万人に減っております。およそ五割近く減っておるのであります。これだけ確かに減税になったということが言えるのであります。  それから減税になった内容を申し上げましても、昭和二十五年と昭和三十年と比較いたしますと、三十年はもちろんこれは平年度に直しての話で、三十年は臨時措置でちょっと違いますけれども、基礎控除昭和二十五年は二万五千円だった。ところが今度の改革案では平年度八万円、これは基礎控除割合物価騰貴を加味してもふえております。それから給与所得控除最高限昭和二十五年は三万円だったのが、今度の案では六万円とふえております。それから扶養家族控除も、昭和二十五年度は一人当り、一人はすべて一万二千円ずつ、一年ですが、一年に一万二千円ずつ引いたのでありますけれども、今度の改革案では、最初の一人が四万円、あとの二人目、三人目がおのおの一人二万五千円、四人目から以下一万五千円と、こうなっておりますが、これも相当物価騰貴以上に引いております。それから昭和二十五年と今日の間で社会保険料控除ということが行われておりまして、私はこういうところは、もちろん決して理想的とは申しませんけれども、だんだん望ましい方向に向いつつあるということが言えるのじゃないかと思います。  そこで今まではどちらかといえば賛成のことを申し上げたのでありますが、これからは問題点問題点ということは、どうかと御再考を願いたいという問題、問題点について少し申し上げることにいたします。  まず一番に問題になりますのは、今度の各修正案でこういうことが加わったと思うのでありますが、この雑損その他、雑損とそれから医療費、それから社会保険料控除をするかわり所得五彩、それも最高は一万五千円でありますが、一年に一万五千円か、あるいは最高五彩、これの選択控除を認める、この問題であります。これは私は相当問題があるのじゃないかと思います。内容は今御案内通り従来社会保険料は全額引いておる。それから雑損についても一定制限のもとに引いておる。それから医療費についても一定制限のもとに引いておりますが、この三つを引いてもらってもいいし、あるいは納税者が希望するならば、これを引いてもらうかわりにその人の所得の五%、だし最高限は一年一万五千円、これを引くことを選択して認めようという案が出ておるのであります。これは果していいか悪いかという問題でありますが、これは察しますにアメリカのこの連邦の所得税法におけるスタンダード・ディダクションによっておるものではないかと思います。それでアメリカ制度、これは日本に関係があるので私申し上げますが、アメリカ制度ではこの所得の、所得といってもいろいろ計算しての後の所得でありますが、所得の一割を選択控除として認める、あるいは最高限は一千ドル、所得の一割あるいは最高限の一千ドルを選択控除として認める、そうしてその控除が認められておるために、アメリカ税制というものは非常に簡素化されておるのでありまして、これは割合アメリカでは歓迎されております。わが日本にそれを持ってこようというのでありますが、この場合に、一体日本の場合に簡素化といえるかどうかという問題であります。アメリカでは非常に実用が大きいのでありますが、日本では必ずしもそうは言えないのであります。と申しますのは、アメリカでは所得からこの控除が認められる項目が三十数項目あります。日本のように今三つかわりにというのではなくて、三十以上の項目があるのであります。たとえばどんなものかといいますと、慈善団体への寄付金教育団体への寄付金、それから扶養費、それから医療費それから天災、盗難の経費、それから事業用でない資産、すなわちたとえば私などが持っておる資産についての減価償却費、これも所得から引いてもらえるのであります。これが三十以上の項目があります。それがあまり煩雑だというので一〇%または最高限一千ドルのスタンダード・ディダクションを認める、これはアメリカでは確かに意味があるのであります。ところがわが日本ではどうかというと選択といっても社会保険料雑損控除と、医療費控除だけであります。雑損控除医療費控除というものはあまり行われておらないのでありまして、事実一般に行われておるのは社会保険料控除であります。この社会保険料控除かわりにこういう選択控除を認めるということが、税制簡素化という点から申しましてどれだけの効果があるかというと、これはおのおの相当問題があるのじゃないかと思います。しかしながらこれは悪いということばかりじゃございません。この選択控除制度によって利益を受けるものも出てきておるのであります。  次に述べます計数は、大蔵省主税局税制第一課長の白石正雄氏が今から一、二週間前でしたか、財政経済弘報の中にちょっと書いておられるのですが、これはなかなかいい研究です。その中で次のような計数が出ておる。これをちょっと拝借いたしますが、これによって一体だれが利益を受けるか、選択控除によって。そういたしますと、まず給与所得者について申しますと、一体一万五千円までは最高引いてもらえるというのでありますが、この一万五千円内外の、一万五千円級の社会保険料をすでに控除を認められておる人間が非常に多いのであります。給与所得者のうち年収四十万円程度の者は一年にすでに一万五千円程度社会保険料控除を受けております。それで今度の選択控除が認められるといいましても、これによって利益を受けるのはそれ以下の人たちであります。これは私は決して悪いとは申しません。それから事業所得者でありますが、事業所得者割合社会保険料控除を請求しておる人が少いのでありまして、昭和二十八年度の実績で申しますと三割、事業所得者の三割の人が社会保険料控除を請求しておるのであります。七割の者は社会保険料控除の請求をしておりません。そういたしますとこの一万五千円または最高五%の選択控除によって一番利益を受けるのはだれかといいますと事業所得者であります。すなわち事業所得者につきましては従来社会保険料控除を受けておらぬ人は、基礎控除が八万円から一万五千円加えまして、九万五千円に上ったと同じような効果になるのであります。私は小企業者負担をもっと重くせよとは申しませんけれども、ここで問題になりますのは、一体勤労生活者とそれから事業所得者負担の均衡という点から考えまして、果してこれでいいのか悪いのか、私はここではっきり結論は申しませんけれども、相当ここに問題があるのではないかと考えるのであります。だからまあ私は選択控除を設けるのも悪くありませんが、しかしそれよりはやはりこの勤労生活者の下の方の控除をふやすような考え方をする方がより合理的じゃないかと考えております。それが選択控除。  それから次の問題に入りますと、今度はこれは租税特別措置法でありますが、この所得税につきまして、利子を全然免税にしようとする案であります。その論拠は、貯蓄の奨励、資本の蓄積の必要といわれております。これはいかにももっともでございまして、私は資本蓄積、貯蓄の奨励は必要でないとは申しません。しかしこれにつきまして私はもうあらゆる機会に申しておるのでございますが、これは租税原則に反するものであります。これは決して悪いのじゃございませんが、そういうこと自体を抽象いたしまして問題にいたしましたときは、これは確かに現在の日本では貯蓄の増進も必要でありますが、利子を免税にすると、金額は大して多くはないかもわかりませんが、その負担のしわはやはりどこかへ寄る。結局は大部分勤労者または小企業者に寄るのじゃないか。租税というものは結局負担の均衡ということが問題でございますので、この点を私はどうかと思うのであります。それでこの銀行預金の利子というものは、銀行預金の預金高というものは利子免税制度によって私は確かにふえると思います。これは当然のことでありますが、われわれはこの銀行預金をするかせないかということは、まあ利子をほしさに銀行預金をするということもございますけれども、それ以上に通貨の安定性の問題であります。通貨の安定性があったらば、利子は安くともわれわれは預金をするのでありますが、結局通貨の安定性というものがより以上大きな問題じゃないかと思うのであります。私は結論を申しますと、これはあまりにも利子所得者を優遇し過ぎる、しわはどっかへ寄ると思うのであります。  それからその次が配当率、個人が会社からもろうた配当につきまして、配当の二五%を所得税から従来引いておりましたが、これを三〇%に引き上げようといろ案であります。これも私結論を申しますとこれは反対であります。というのは、日本の現在の法人税、所得税税制建前は、御案内通り法人擬制説を基本としております。法人税というものは個人の所得税の前取りだ、だから二重課税を排除するために、いわば法人税の一部を個人に返してやるという建前で、現在の制度では二五先の控除が行われておるのであります。これを今度は三〇%まで引き上げようというのであります。これが果していいか悪いかという問題でありますが、これは察しますのに、あるいは察しなくとも、そういうふうに政府の説明がついておるのだろうと思うのでありますが、今度は利子が免税になるのだ、それで利子との負担の均衡ということを考えて、配当についても少し負担を軽くしようというのじゃないかと思うのであります。それで私はこの問題はまたあとからもう一度触れますけれども、結論を申しますと、日本では現在法人擬制説といろ建前をとっております。すなわち法人税というものが個人の所得税の前払いになっておるという、建前はいわば源泉徴収と考えております。そういたしますと、法人擬制説を前提にするのであれば、次に述べますように今度は法人税が値下げになります。法人税の四二%が大体四〇%または三五%の値下げになります。そうしますと、法人擬制説を前提とするのでありましたら、いわば源泉徴収というべき前取りが、すなわち個人所得の前取りが四二%から四〇%、または三五%に下るのでありますから、この配当所得について二五%を現在控除をする制度は引下げるのが当然でありまして、引上げるということは理論に反するのじゃないかと思うのであります。これは法人の本質にも関係がありますが、擬制説を前提にすると、法人税を下げておいて控除率を引上げるということは、これは矛盾じゃないかと思うのであります。  それから時間の都合であまり詳しいことは申しませんし、また当参議院の大蔵委員会公聴会でかつて申し上げさしていただく機会を持ったこともございますので、結論だけを申し上げますると、今度の三〇%の引き上げをすることによって非常に利益を得るのはどの辺からかと申しますと、これは法人税を個人の税金の前払いと見ての計算であります。そういたしますと、現行制度では大体どういうことになっておるかというと、配当所得の中には、法人税を入れての話でありますが、配当所得とそれから配当以外の普通の所得と比べますと、五百万円を超える部分が両方とも大体六五%になっておるのであります。すなわち五百万円を超えた人が非常に負担が軽くなる。ところが今度の三〇%に控除率を引上げますと一三百万円を超ゆる人の負担が非常に軽くなるということになっておるのであります。これはちょっと計数を申し上げないと、私の申し上げたいことをはっきりと皆さんにお伝えすることができませんのでございますが、かつて申し上げたこともございます。それから時間の都合で計数は省きます。あとから御質問がございましたら申し上げることにいたします。配当控除はそれだけ。  それから法人税の問題、今法人税の問題も多少出ましたが、今度は法人税を中心に申し上げますと、現在の日本制度におきまして法人税ほど制度的に見て思想の混乱のあるものはないのであります。少し話が大げさでございますけれども、とにかく法人税がめちゃめちゃといいますと言い過ぎかもしれませんが、思想の混乱といいますか、制度として非常に混乱のあるのは法人税でございます。御案内通り、わが日本租税制度では明治二十年に所得税ができましたときには、法人税については、法人の課税につきましては、大体法人擬制説的な建前をとっておりました。ところがそれから後法人実在説的な建前に変りまして、それから終戦後またアメリカの指導によりまして擬制説的な要素が加味され、それから最後にシャウプ勧告によって大体擬制説的な租税制度ができたのであります。ところがそれから後また法人税や個人所得税についての部分的修正がございまして、最近はシャウプ勧告の擬制説からだんだんと実在説に接近しつつあります。それで現在の日本建前は、先にも申しましたように個人の配当金から二五%、今度の改革案では三〇%引くという建前になっておりますので、建前としては擬制説を本体としておるのでございますけれども、それから後の部分的修正によりまして、実在説的な課税方法が非常に加味されて参りました。試みにどういうものが、昭和二十五年以後今日に至る改正で、どういう改正によって実在説的課税の要素が加味されたかと申しますと、思いついて書いてみましたのは次の四つであります。  まず一番は会社の社内留保積立金の累積高、過去から累積したものに対して従来シャウプ勧告では税金がかかっておったのでありますが、その課税を廃止いたしました。現在では同族会社に限り、ただ一回限り留保したとき、積み立てたとき一回限り一〇%の課税をやっているだけであります。これはこういうことのやり方をやめたということは、擬制説を放棄して、実在説に近づいたことであります。それからその次、二番は、清算所得、会社が解近いたしますときの清算所得については、シャウプ税制におきましては、清算所得が個人に分配されたときに個人で所得税をかけることになっておったのでありますが、一両年前の改正によって、法人税で課税することになっております。これまた実在説的課税の要素の加味であります。それから三番、これは大きな問題でありますが、三番は会社の増資株式に対する配当金は一〇%を限度として会社の損金に算入する。すなわちこれも今度は会社の資本の構成を是正と言えばいろいろ意味があるのでありますが、利子に準じて一〇%、新規増資株式に対する配当金の一〇%を限度として、会社の所得税を、法人税を計算する場合の損金に算入する。これまた実在説的課税の要素であります。それから四番は地方税でありますが、地方で住民税、府県民税や、法人税割りというのがあります。あれをかけるようになったということも、これまた実在説的の考え方であります。そこで、現在日本では擬制説を建前にすると言いながらも、実は実在説的な要素が相当加わっているのであります。そのために現在の所得税、法人税の関係が非常に混乱しております。=先にも申しましたように、今回の改正におきまして、普通の法人税の税率を、四二%をやめて、四〇%と三五%と二種に分けることにいたしました。これは先の配当控除との関連でも問題はございますけれども、法人擬制説、実在説という立場から見ますと、いわば法人税の税率について階段は二つございますけれども、一種の累進税をかけるということになっているのであります。それで法人税に累進税をかけるとすると、やはり法人に独立の負担能力があるというところがその前提になっておりますので、これまた実在説に接近してきたことになるのじゃないかと思うのであります。この関係がどうも税制ではっきり現われておりません。そのために非常に税制の混乱が行われております。これは何とか私は整理する必要があるのじゃないかと考えております。  それではお前は、井藤はどういうような整理案を持っているかといいますと、これは学校の教員のもちろん空論でございますが、私としては次のようなやり方がいいのじゃないかと考えております。これも私数年前から持っております考えで、衆議院、参議院の公聴会などでも絶えず申し上げている考えであります。それはどういうことかと申しますと、一口に法人と申しましても、大会社とそれから家族会社とは非常に意味が違います。でありますので、大法人はこれは実在説的な取り扱いをする方がいいんじゃなかろうか。従って個人と法人が二重課税になるのは、これは当然のことだと思います。それから大体小法人は、これは法人という企業形態をとっておりますけれども、その実態は個人の組合に近いのでありますので、これは擬制説的な課税方法をするのが理論的に正しいのじゃないかと思っております。現に現在日本における小法人というものは非常にふえております。これはふえるのは、税金負担を少くするという動機ばかりではありませんけれども、税金負担を少くしようという動機も確かにあると思うのであります。昭和二十四年ごろの法人の数が二十万だったのが、最近は四十万になっておりますが、これは主としてもちろん小さい法人、それから税金と相当関係があるのじゃないかと考えております。それでこの擬制説的な課税方法のやり方、いろいろございますが、私はここでは申し上げません。結論を申しますと、大法人につきましては実在説的な課税、これは法人の側から見ましても、投資家、出資者の側から見ましても、たとえば井藤が〇〇会社の株を十株持っている、百株持っている、そういったって私は株主にはなりたくない、なりたく思っておらん、ただ株を買うのは、株がもうかるか、銀行預金がもうかるか、こういうことでやるのであります。それから株式会社の方でも、私なんか株式を持っていても、銀行の玄関に行ったって何しに来たかと怒られるくらいでありまして、出資など別に考えておりません。こんなのは独立の企業形態、独立の経済単位であります。だからわれわれが配当をもらおうと、社債の利子をもらおうと同じことでありますので、これは私は二重課税を認めた方がいい。ところが小法人の場合はそうはいきませんで、これは擬制説的な課税をやる方がいいだろう。擬制説的な課税のやり方にもいろいろありますが、ここでは申しません。  これに関連して私、このわが日本で最近行われておる次の二つの主張について特に批評しておきたいと思います。それはその一つは、法人税を計算するときに利子というものは経費として引いてもらいます、法人所得から。それと同じように配当についても一定割合まで引けというのであります。現在では総株式に対する一割については例外として引いておりますが、それ以外に引けということ。これは法人という立場からいえばそうなんでありますが、こういうことについての主張は法人実在説をとらなければこの説は成り立たないのであります。法人実在説をとって初めて成り立ちます。すなわち株を募集するのも、それから利子も、これは大体同じ似た行き方をするということは、法人実在説をとって初めて成り立つもの。それからもう一つの主張はどうかというと、今度特にそういう主張が強くなっておるのでありますが、個人の投資家、個人所得税という立場からであります。それはどういうことかというと、今度は利子が免税だ、現在でも利子は五%、非常に安い。ところが配当は二〇%、三〇%、利子と配当との利回り計算をすると配当の方が重いから、配当と利子との均衡をはかれよという説であります。この説も私は実在説を前提にして初めて成り立つものじゃないかと思っておるのであります。ところがこういうことを主張する人たちが、一番、二番もともでありますが、一方でこういうことを主張しながら、他方では個人の所得から配当金の二五%、今度の改正で三〇%を割引する、あの制度は手をつけてもらっては困るというのですね。だからしてこれは両方とも、実在説と擬制説と都合のいいところだけをとって、そうして一方の方で目をつぶるというものになりますので、私は、もし法人実在説を貫くのだったら、これはまた場合によっては法人実在説を貫く方がいいと思うのでありますが、二五%、場合によっては三五%の配当控除ということはこれは全然認めない、理論的に矛盾するのではないかと思うのであります。  それから大法人の負担と小法人の負担でありますが、租税特別措置法その他によりまして、大法人の負担が事実軽くなっておるということは私は事実だと思います。昭和二十八年の秋出ました税制審議会の答申書を見ますと、種々の特別措置、減税特別措置、資本蓄積その他のための、輸出振興その他のための減税、特別措置法により五百億といっております。それから昭和二十九年度は幾らかといろと、これは参議院の事務局から私ども頂戴した資料によりますと、昭和二十九年度は七百八億円となっております。七百八億円が資本蓄積、輸出振興、その他の特別措置によって企業負担が七百八億円も軽くなっておるのであります。これは建前からいいますと、大法人でも中法人でも小法人でも、それから一部の個人経営でも平等になっておるのでありますが、事実は必ずしもそうはいかない。それでやはり参議院の事務局からいただいた資料によりますと、政府計算では、一億円以上の大法人で三百何十社かについて実態調査をやったものによりますと、こういうことによる減税の有効税率は一一%ということになっております。すなわち四二%の税金から一一%を引いて三一%ということになっております。一一%を有効税率について軽減、ところがやはり参議院提出の資料によりますと、五百万円未満のものはどうかというと、有効税率は六・五%の軽減しかなっておらん、事実はすなわち大法人がこれによって恩典をこうむっている。ところが同じく参議院提出の資料によりますと、これは中小法人がそういう恩典を十分にフルに活用しない。だからしてフルに活用すればどうなるかというと、やはり一一%の減税になる、こういわれておるのであります。これは私は法律制度としてはそうなるのだろうと思います。しかしながらこれは平均しての話でありまして、個々の会社について見れば割引の恩典に浴さないものもありまして、平均したらこうだということで、正しいとは言えないのでありまして、個々について言えば相当不均衡があるのではないかと思うのであります。  それからあの資料について私よく内容はわからなかったのでありますが、あれだけを見ますと、次に述べるようなものはあの特別措置による減税の中に入っておらんのじゃないかと思います。先に申しました七百八億円はこの中に入っております。この一一%、六・五%の軽減の中に次に述べるようなものはどうも入っておらない。それは企業合理化促進法による割増償却、これは入っておらない。それから同法による探鉱、鉱山を探る機械設備などの特別償却なども入っておらん。それから企業資本充実のための法律によりまして資産再評価を強制される会社は一定限度以上の再評価をした場合に再評価税及び固定資産税について減免される規定がありますが、これもどうも入っておらんように思うのであります、あの計算の中に。それからこれは地方税でありますが、固定資産税について、重要産業の固定資産税は非常に安くなっている、これはもちろん入っておらん。それから所得税法法人税法に出ている重要物産の一定の年限を通じての減免税、これも入っておらない。こういうことを加味いたしますと、もう少し計算が違ってくるんじゃないかと思います。  最後に租税特別措置法について簡単に申し上げます。もちろん租税特別措置法所得税、法人税に関するものは大体申し上げました。しかしまあもう一度租税特別措置法について申し上げますと、今度の租税特別措置法で利子の課税を全廃するとか、輸出所得について軽減するとか何とか出ております。これはただこれだけを抽象いたしますと、みんな意味のあることでありまして、一がいには反対はできないのでありますが、ほかの税金との負担の均衡という点から考えますと、一がいに賛成はできないのであります。特にこの機会に申し上げたいのは、終戦後、ことにここ数年来租税特別措置法によって二年間を限りこの税金をまけるのだ、あるいは三年間を限り税金をまけるのだといってこの特別措置が非常にでたらめに、少しこれは言い過ぎましたが、少し乱用され過ぎているように思うのであります。そのために租税体系が非常に乱れて参りました。私は租税体系などはどうでもいい、よければ一番いいが、租税体系が乱れるということは、国民負担が不均衡になるということ、その上に税制がきわめて複雑化いたしました。  私は財政の講義をやっておりまして三十有余年でございますけれども、お前こういう税金を幾らかかるか計算せよと言われた場合に、私は自信を持ってすることができません。大へん危くてできない。これは所得税法だけを読んでも所得税法自体が非常にむずかしいのでありますが、それを読んでやっとわかって計算する。いや、それはそうではない、租税特別措置法でこういうことをやって、企業合理化促進法による割増償却はこうする等々、これは私ども教員ふぜいではとうてい原価計算ができない、ことほどさように複雑になっているのであります。これはこの条文が複雑である、また制度も複雑になったということもありますけれども、それはやはり何とか簡素化してやっていただきたい。その体系ももう少しすっきりしたものにしたいと思っております。租税特別措置法というやつは私は税制のガンではないかと思っております。何とか整理をしていただきたいと思います。  次に地方道路税でございますが、これは事実問題といたしまして、これによって揮発油税が二千円引き上げになると思います。これはやむを得ないと思っております。  それから関税定率法についての一部改正、これについてもどちらかというと技術的なことが多いのでありまして、地方道路税、関税定率法については私はまとまって特に申し上げる意見はないのであります。  これをもって私の公述は終ります。御清聴感謝いたします。
  4. 青木一男

    委員長青木一男君) 質問がありましたらどうぞ。
  5. 小林政夫

    ○小林政夫君 先生の公述には大体賛成ですが、ただ一点配当控除の問題で、今度四二%を四〇%に下げる、だから配当控除も下げるのが当りまえじゃないか。私お説としてはその通りそのままなんですが、前の三五%が四二%に上ったときに控除は据え置きになっているわけで、本来は三五%から四二%に上ったときに二五%の控除率も引き上げるべきものであった。それを据え置きにしたから今度はついでに下げると、こういうことであろうと思うのです。  それからもう一つ先生の従来の所論である大法人と中小法人と線を引いて、一方は擬制説で一方は実在説の問題も、実際問題としては線の引き方がむずかしい。これも先生の御承知の通りでありますが、従ってむしろ租税特別措置法等の問題もあるし、私は最近擬制説一本で貫いたらどうだろうか。むしろ内部留保課税というものをやって、擬制説一本にした方がいいのではないか、すっきりいたすのではないかという気持を持っている。その点が一つ。  それからもう一つは、時間の関係で全部並べますが、農業課税について先生はどういうふうにお考えになるか。今の所得税だけの総収入二千七百五十五億九千五百万円の中で、直接の所得税としては農業の負担しているのは八十三億一千六百万円、その比率はわずかに三%である。それから日本の納税階層を扶養家族を含めて、非課税階層にも扶養家族を含めて八千八百万の人口を按分してみると、納税階層は三七・六%、その中で農業人口、まあ農業階層、農業をやっておる階層というものはその納税階層、全国民の三七・六%の中で一三、七%という数字が出るわけです。それから課税所得あるいは総所得に対して現在の課税割合を見てみると、営業関係が総所得に対して一二・三%であるにもかかわらず、農業の方は四・四%、課税所得に対して営業関係が二六・五%に対して農業は一八・九%、それから給与所得者の方で申しますと、支払額に対して八・九%の税、それから課税所得に対しては二四・三%、こういうような数字が出まして、総所得に対するパーセントからいうと、最も問題にならない低いので、また課税所得をとってみても非常に低い。また納税階層の全体から見ても非常に負担割合は低い。こういう点についてなかなか国会では、相当むずかしい問題なのでありますけれども、まあ上げるというようなことはむずかしいことなのですけれども、主として課税の公平という観点から、先生の方の研究ではどうなっているか……。
  6. 井藤半彌

    公述人井藤半彌君) 三つの問題の一番であります。これは確かにおっしゃる通りでございますが、この場合に考慮すべき問題は、もとそうだった、もとへ戻ったと申しましても、これは何との関連がございまして、所得税最高率がもとは五五%だった、それが六五%に上りました。それでこれはもう御案内通りだと思いますけれども、ビックリイというシャウプ勧告のときに来ました頭のいいコロンビア大学の若い教授なんですが、あれが非常な綿密な計算をいたしまして、最高率五五%のところで負担が均衡になるようにそろえたのです。ところが、日本政府所得税の税率を四二%に上げた。そしてこちらの所得税の方はそのままにしておいたので、どうもそれは日本的にはっきりしないということをアメリカで言っていたそうです。それはまたビックリイの考え方をいいという建前、前提にすればですが、何も五五%のところでそろえなくてはならないのでなくて、私はまた下の方でもそろえることができると思っております。  ですから、今あなたのおっしゃいましたことも一つの根拠だと思います。しかしながら、もとに戻したいというだけでは根拠が弱い。もとに戻すなら六五%を五五%にして、富裕税を復活しなければならないのではないかと思います。それが一番。  それから二番の法人擬制説を貫けということですが、私は擬制説がいいか、実在説がいいかということは、一つは貫くこと自体が私は無理ではないか。ということは、法人の実情を見ますと、擬制的な法人もあるし、それから実在説的な法人も事実ある、事実に即するという点からいいますと二つあるのだ。ということは、一・五%とか二・五%という中間のものもございますけれども、しかしそうだったらそれに即して税金のかけ方も分ける方が合理的じゃないか、便宜という点ではまた別でございます。  それから三番の農業課税の問題でありますが、私計数についてはっきりしたことを申し上げられませんが、実は昭和二十二年の秋に、参議院の公聴会で私は農業課税をやれと申しました。そうして大いに反対を受けました、一部の人は賛成したが……、その点、私は今おっしゃいましたように、ことに地方税についてよく聞くのです。勤労者が市町村民税や府県民税をたくさん払っておって、そして何は払っておらない、農業者は。私は大体の感じから、私正確な……、今計数をあげておっしゃいましたので何でございますが、私、特に計算しておりませんでしたが、大体私もそういうような印象を持っております。農業者の負担がだいぶ軽くなり過ぎているんじゃないかという印象を持っております。
  7. 山本米治

    ○山本米治君 私は今日の日本の経済の難問のほとんど大部分が人口問題からきていると思うわけであります。人口問題は非常に広範な問題でして、今ここに問題の租税の面からだけでもこれを解決することはとうていできない。しかしながら今あらゆる経済政策において、租税制度の務める役割は非常に多いわけでありますが、その租税制度に人口問題の要素を取り入れることが必要じゃないかと私は思っているわけです。で、まあ今まで給与の体系におきましても、子供があれば家族手当とかいろいろなものがありますが、そしてまた税制の面においても家族控除があるわけです。これは今まで、ことに戦時中生めよふやせよでやってきて、そして生まれてきている子供に対する手当ですから、これを急になくすることはとてもできないのですが、長い目ではやはり税制面からもこの問題に貢献する方向に持っていかなければならない。そうすると、今までこの給与の面からいえば、家族手当とか、あるいは税の面からいう家族控除はやむを得ませんが、今後はもうそういうことはしないのだという方向へ一歩踏み出してもいいんじゃないかと思っております。たとえば家族控除にいたしましても、今まで生まれてきた者の家族控除はある程度やむを得ないが、今後は家族控除をしない、それと歩調を合わせて、今後生まれる子供には家族手当をやらないということにすれば、これは非常に複雑な難問でありますが、そういう方向を加味すべきじゃないかと思いますが、何しろ全般が貧乏な日本ですから、そんなことをしたらなかなか困難な事態も生ずるかもしれませんが、こういう思想、考え方だけを入れるべきだと思いますが、いかがでございますか、御感想を伺いたい。
  8. 井藤半彌

    公述人井藤半彌君) 税制に人口政策的なものを加味すると今おっしゃいました意味は、むしろ制限の方でございますか。戦時中は生めよふやせよで、イタリアなんかで独身税をかけておりました。日本では独身税をかけておりません、そんなことはやっておりませんでしたが、今おっしゃいましたお説は、ふやす方じゃなくて制限でございますか、——これは私、日本は現在人口が多過ぎるということは、これは世論になっておりますが、しかしできたものを何人までは認めるが、何人から認めない。それを税金控除を認めるのはどうかと……、私はやっぱり人間は生まれたからには人格を認めなければならぬのでございますから、だからそれを棄損するようなものは税制でもどうかと思います。あるいは産児制限に関する法律を緩和するとか、それから犯罪を緩和するとか、それは何ですが、でき上ったらそれは一つの人格者ですから、それを軽視するのはどうかと思うのでございますが……。
  9. 土田國太郎

    土田國太郎君 私聞き落したかもしれませんが、先ほど先生の説明で、昭和二十五年の五人の家族は七千三百円であった、それが物価指数からいけば一万円だ、ところが一万九千円までは免税点になっている。これは給与所得者は九千円だけ得をしているという現状だという御説明のようですが、これと同じ比率の事業税で計算していったら、事業税ではどんなふうになっているのですか、御計算になりましたか。
  10. 井藤半彌

    公述人井藤半彌君) 事業税については計算しておりません。しかし事業税の方は御案内通り、さっきもちょっと申しましたように、社会保険料控除がない、それから勤労控除がございませんですが、そのかはりに何の方がございますから、経費控除がございますし、それからこれもまあ申し上げるまでもないことですけれども、勤労所得の場合はこれはほとんど百パーセントとられる。事業税はとかく話し合いで、これはいいこともあれば悪いこともあるのでございますが、そうすると、私事業税との比較というものは、実際の税率の場合にいろいろ問題があるんじゃないか。それで勤労所得については、大体九〇%までは把握できる。それから農業所得については、八〇%、それから事業所得は七〇%も把握できないなどといわれておりますから、ちょっと実効税率だけについて比較するのはどうかと思っております。それから私自身はきょうここへ準備して参りませんでしたから。
  11. 平林剛

    ○平林剛君 私も一つだけお尋ねをしたいと思うのであります。今、先生からお話しがありました租税全般について、国民経済の角度から見て当を得ているかどうかという概論の御説明のときには、昭和十年、それから昭和二十四年、三十年をそれぞれ比較をされてパーセントをあげられたのでありますが、そのあとで現行の、今国会で行われる減税の比較においては、特に昭和二十五年を基準にしてお話しをされたのでありますが、この点は私は聞き方としまして、非常に今度の減税でも大へん勤労者あるいは中小企業者全般にとって前進したことには間違いはありませんけれども、全般の国民経済、あるいは実際の生活水準などから見ますと、決して軽減の方向にいっていないように思うのです。これは先生があとでこまかい問題を御説明になったときに明瞭になったと思いますが、そこで一体税制全般を考える場合に、われわれはいつを基準にしてものさしを考えたらいいのだろうか。昭和二十五年を例にされましたけれども、私は必ずしもそれを基準にすべきであるという先生の御意見のようには聞かなかったのでありますが、その点を念のためお聞かせを願っておきたいと思います。
  12. 井藤半彌

    公述人井藤半彌君) おっしゃる通りだと思います。それで実はさっき納税人員が、五十万円以下が八四%なんと申しました。これは実は私昭和十年を基準にして比較しておるのでございます。それで昭和十年はきょうは申し上げませんでした。ということは、あまりにも同じことを言うので恥かしいので、実は千二百円を今の貨幣価値に直して四十万円じゃないか、そこで私四十万円というところに線を引いたのですが、ですからやはり戦争前と比較するのもいいと思います。それではなぜ戦争前に比較しないで、この場合昭和二十五年を持ってきたか、これは戦争前の日本税制と現在の税制とが非常に根本的に違いますために、比較が無理なんであります。そうすると現在の税制昭和二十五年から実施されましたシャウプ税制からスタートしておりますから、それを一応基準に持ってきたのであります。ですからよりよくといいますか、より合理的にやるには、昭和二十五年と現在、それから昭和十年のいわば事変前と現在と比較するのがいいんじゃないかと思います。その場合に一応問題になるのは、納税人員、もとは百万人にも足りなかったのが、今は九百九十九万人になっておる。人員とか、それから免税点、千二百円が今度八万円ですが、免税点基礎控除だけとはいえませんが、現在扶養控除なりその他の控除が今ずっと割合がよくなっておる。この点もございまして、それですから今おっしゃいますお説にはもちろん賛成でございます。やはり十年と二十五年のその辺をとるのがいいんじゃないかと思います。
  13. 青木一男

    委員長青木一男君) 他にも質疑があろうかと思いますが、時間の関係上、井藤教授に対する質疑はこの程度でとめたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 青木一男

    委員長青木一男君) ありがとうございました。   —————————————
  15. 青木一男

    委員長青木一男君) 次に、全国銀行協会連合会副会長堀田庄三君にお願いいたします。
  16. 堀田庄三

    公述人(堀田庄三君) ただいま御紹介を受けました堀田でございます。御審議中の三十年度税制改正案につきまして、御指名がありましたので、金融界の立場から、預金利子課税免税の問題を中心として意見を申し上げたい、かように存じます。  今日税制改革を考えまする場合に、その基調となるところのものは、申すまでもなく減税であると思うのであります。わが国の租税負担は戦時中はもちろん、戦後におきましても、当初は大むね増大傾向をたどり、ようやく昭和二十五年、シャウプ勧告による税制改正を契機といたしまして、租税負担の軽減、適正化がはかられるようになりましたが、今なお租税負担はかなり重いものがあると思うのであります。これは前公述人井藤教授からも詳細データをあげての御説明がありましたので、私も大体同じ資料を用意して参りましたが、これを省かしていただきたいのであります。  そこでこれがため国民生活の安定は、いまだ十分な域に達しておりませず、また現下最大の課題である資本の蓄積も思うようには進んでおらないのであります。この意味におきまして、租税負担の軽減は、かねて国民各層からの強い要望であったものでありますが、今回、先に政府原案の三百二十七億円の減税に加えて、さらに過般修正によって六十七億円の減税が織り込まれましたことは、私どもとしてまことにけっこうな次第であると存ずるのであります。特に現下のわが国の経済の諸情勢を直視いたしますると、当面最も重要なる課題は何かと申しますると、私は言下に輸出の振興策を確立するごとだと思います。これと同じウエートにおいて社会保障の充実による国民生活の安定を考えるべきではないか、さらにこれらとの関連において資本の蓄積を促進すべきである。要約いたしますれば、多々当面の重要問題はございまするが、まずさしずめ私はこの三つが大きな問題であるように思うのであります。もちろんこれらは相互に深い関連を持っておりまして、たとえば輸出振興の問題を取り扱うにいたしましても、租税措置だけではいまだ完璧を期するわけにいかないと思うのであります。輸出の振興は、要約すれば良品を廉価に作り出す、すなわち技術とコストの引き下げをするということでありますが、いわゆる合理化の促進なるものはこれを意味しておるのでありまするが、しからばこのコストの引き下げを何によってするかということになりますると、申し上げるまでもなく、これは蓄積によってなされなければ、逆にインフレ的な逆作用を生んで参りまして、コストはむしろ上がる可能性すら持っておると思うのであります。そういうふうに考えますると、この資本蓄積こそこういった諸政策の前提をなす政策ではなかろうかというふうに考える次第であります。  本税制改正案は、これらの重要なる観点から見ましても、個人の低額所得者所得を軽減する、あるいは法人の低額所得に重点をおいた軽減をはかる。さらに輸出振興においては、輸出所得に対する控除制度控除額を引き上げる。また資本蓄積の推進のためには、一般法人税の引き下げ、預金利子課税の免除、並びに配当控除額の引き上げ等を実施せられまして、それぞれの課題解決に向いまして、税法上一歩進められた適切なる措置であると考えるのであります。このような重点的減税のらち、私の本日言及さしていただきたいのは、預金利子課税免除措置に関しましては、配当所得とのつり合いの問題、租税負担の公平の問題、本措置による預金増加見込み等が、すでに従来しばしば問題となっておるように承わっておるのであります。自然以下これらの点につきまして、いささか私見を申し述べたいと存じます。  まず第一の問題は、今回の預金利子課税の免除によって、配当所得課税との間に不つり合いが起きやしないかという懸念は、先ほどいろいろお話しがありましたので、詳しいことは言及いたしませんが、政府原案が発表されて以来、しばしば論議された結果、衆議院における過般の修正がありまして、配当控除額が従来の二五%から三〇%に引き上げられたこと、並びに配当の三千円の申告義務が、五千円に引き上げられたということの結果、こういうことをすること自体が、法人税の根本的な観念からいいか悪いかという論説につきましては、専門家にいろいろ御意見のあることは、ただいま拝聴した通りと思いますが、預金とのつり合いに関する限りにおいて、私は、おおむね是正をされた、不つり合いはとれるようになったというふうに考えておるのであります。これについて、まだいろいろな詳しいことを申し上げるつもりでおりましたが、先ほどそれがすでにほとんど言い尽された観がありますので、個々の点は省略さしていただきます。  明治以来のわが国経済の発展過程を振り返ってみますると、資本蓄積が不十分でありましたために、戦前には、民間投資では、金融機関の手を通ずる間接投資がきわめて大きな比重を持つておりましたために、税制面でも間接投資を促進する方法として、利子所得の優遇措置がとられてきたのであります。これが戦後になりますと、預金の面でも各種の優遇策もとられましたが、証券民主化政策、あるいはシャゥプの税制改正措置を通じて、一段と直接投資を奨励する方針が推進されて参りました。しかしなお現在の資本蓄積が戦前に比べて、はなはだ不十分なるものがあるのであります。たとえば昭和二十九年末の株式払込金、積立金、社債、全金融機関の預金の合計は、七兆五千九百七十六億円に達しておりまするが、これは昭和十年末の貨幣価値に換算いたしますると、(この換算の仕方は、東京卸売物価指数昭和十年基準倍率の三百五十一倍をかげたものであります。)二百十六億円となりまして、当時のこれらの合計四百六十七億円の四六・三%に過ぎない状態になるのであります。従って、今や直接投資、間接投資の別なく、ともにこれを優遇し、双方相待って資本の蓄積に努めなければならないと考える次第であります。この意味におきまして、今回の預金利子所得、配当所得双方にわたる優遇措置は、きわめて適切であったと思います。  第二の問題点は、預金利子課税の免除が、租税負担上、高額所得層には大きな利益となっても、国民大衆勤労者にはさほどの利益とはならず、いわゆる租税負担の公平という原則に反するのではないかという問題があります。たしかに今回の措置によりまして、預金利子所得という資本所得は、全然課税をされないようになるに反し、毎日の動労の成果である国民一般大衆所得には、かなりの税金がかけられることは、租税負担上不公平なそしりがあるかと思うのであります。しかしわが国の現状を見ますると、先にも申し述べました通り、資本蓄積は戦前の半ばにも達しておらないのに反し、生産は戦前を七割程度上回り、また人口は戦前の三割程度上回っておる状態でありますから、資本蓄積をはからずして、国民経済の円滑なる循環と発展を期待し、かつ国民生活の安定向上を期することは、ほとんど不可能に近いと思うのであります。従いまして、国民経済の水準向上を所期する限り、資本蓄積の促進策こそ高位の優先順位を与えられるべき時期であると存ずるのであります。すなわち将来の経済の発展、国民生活の向上のためには、一時、租税体系論、あるいは租税理論から言いましては、理想的体系を実現することはできないといたしましても、またやむを得ない客観情勢ではないかと思うのであります。ゆえに、国家的、大乗的な見地から、時間を限って資本蓄積を増進することが、結局回り回って最後に低額所得者にとっても利益となると考える次第でありまして、しこうして、このような事例は本改正案にのみ限ったことではなく、西独においては、さらに一歩進んで、長期預金を預け入れた場合は、元金の一定割合所得控除を初めから認めておるような次第でもあるのであります。かく考えますると、時限立法として取り上げるのであれば、現状、当を得たものではないかと存ずる次第であります。  以上、利子所得者とその他の所得者との間の租税負担の問題につきまして申し述べたところでありまするが、次に小額預金者と高額預金者の租税負担の間に不均衡があるのではないかという問題について考えてみますると、今回の免税措置は、実際問題として、両者の間に危惧されるほどの不均衡はまずないと思うのであります。すなわち、最近の預金の金額別構成を見てみますると、これまでの預金利子の免税限度であるところの十万円以上の預金が急増いたしておりまして、ことに十万円から五十万円にかけての預金が、金額でも口数でもかなりの比重を持っておるのであります。このことは、すでに十万円以上の預金も、ある意味において大衆化したということを物語っておるものであろうと思うのであります。先ほどもお話しがありましたように、十万円を戦前の貨幣価値に換算いたしますると、私の使いました三百五十一倍の倍率でいけば、二百八十円、約三百円ということに相なるのであります。戦前三千円まで免税されておったという事態にかんがみましても、これでは十万円の限度では少なすぎる。それ以上のものがかなり大衆化してきておるというふうに考えておるのでありますから、今回の免税措置は、この面からおきましても、大衆課税を軽減するに資するとも言えると思うのであります。もっとも、かように申し上げますと、国民貯蓄組合法による免税限度を、十万円から相当高額に引き上げれば足りるのではなかろうかという御意見も出てくるかと思うのであります。しかし、ここに重要なことは、免税制限を設けることの預金者心理に及ぼす影響も大いに考えたければならないのでありまして、実際問題としては、預金者心理というものは、はなはだ微妙なものでありまして、免税に限度を設けますと、その限度以下の預金者の貯蓄意欲までも減殺さるれることは否定し得たいと思うのであります。また実際上、銀行預金者の金額別の構成状態を見ますと、一口百万円以上の個人預金者は口数においても金額においてもきわめて少いのであります。従ってそこまで一挙に全部免税するということも、実質的の効果は大して変りはないというふうに考える次第であります。  第三の問題は、今回の措置によって果して預金が増加するかどうかということであります。この点につきましては、預金の利子率が依然として貯蓄と密接な関係にあること、並びに、過去の例を見ましても預金の優遇措置がとられたときには、必ず預金の増加を伴っているという、この二点より見まして、預金の増加を招来することが確実であろうと思うのであります。しからばどれだけ増加するか、こういうことでありまするが、これは全く腰だめで、何らの確信は持てないのでありまするけれども、しかしながら、金融機関を通じて四、五百億くらいのところ、普通銀行を通じて三百億くらいのところは一応想定の中に入れておる次第であります。すなわち、まず預金の利子率と貯蓄の関係を見ますると、最近では、預金の増減は、国民所得の増減によって大きく左右されるものであって、利子率に影響されるところは少いという意見もあるのであります。しかしながら、わが国の資本不足の現状においては、インフレ的な方法で名目的に国民所得と貯蓄を増加せしむることは排すべきであり、着実な国民所得の増加と、その中で貯蓄に振り向けられる比率、すなわち貯蓄性向を向上せしむることが肝要なことは申すまでもありません。一昨年秋以来の引き締め政策によって、通貨価値がほぼ安定して参りましたために、貯蓄性向は向上をたどっております。このような時期におきましては、貯金の利子率が貯蓄性向に敏感に影響することは確実であると思うのであります。従いまして、今回の措置が、国民の貯蓄性向を向上せしめ、貯蓄の総額を増大せしめる効果も大きいといわざるを得ないと思うのであります。  最後に、本案の成立によりまして、われわれ金融機関といたしましても、預金増強に挺身する基盤を与えられるとともに、その結果集め得ましたる資金の運用については、言うまでもなく国家目的の達成のために役立つように、運営に心がけなければならぬと存じておる次第であります。従いまして、われわれは、資金運用面における産業資金の確保と、オーバー・ローンの解消による金融の正常化に一段と努力をいたしますとともに、一そう銀行経営の合理化をはかって、よく国家的使命の達成を期したいと存じております。  以上簡単でございましたが、卑見を申し上げます。
  17. 青木一男

    委員長青木一男君) 質疑がありましたら。
  18. 土田國太郎

    土田國太郎君 ごく簡単にお伺いしたいのですが、今七兆何ぼの蓄積でしたね。それが戦前と三百五十一倍の比例のようですが、それと比較いたしまして、計算すればわかることですが、今の蓄積金額と、戦前の蓄積金額と比較いたしまして、どんなふうなパーセンテージになっていますか。
  19. 堀田庄三

    公述人(堀田庄三君) 預金の面ですか。
  20. 土田國太郎

    土田國太郎君 今の蓄積と戦前の基準年度あたりと比較した……。
  21. 堀田庄三

    公述人(堀田庄三君) それは、全体の蓄積といいますと、ちょっと計数がありませんが、預金の面で銀行勘定で申しますと、銀行に関する限り六一%であります、二十九年度末が。
  22. 木内四郎

    ○木内四郎君 今、堀田さんから、資金がふえてきたら、それを国家目的の方に使われるというお話がありましたが、大へんけっこうなことでありますが、それをきめる場合に、このごろ、いろいろ金融機関その他のお話で、国会できめたり、政府がきめたりする、これは形はいろいろあるでしょうが、そういうことでなしに、金融機関がみずからきめるのが適当だという御意見等も散見しているように思うのですが、その国家目的に沿って使うかどうかということは、きめ方ですね、それについて何か伺っておきたい。
  23. 堀田庄三

    公述人(堀田庄三君) その問題は、非常に私は、今度重要な一つの課題になると思うのであります。これは率直に結論から申し上げますと、金融機関としては、金融機関の自主性を一つ尊重して、その上で、国家目的に沿うような方向に協力をさしていただく、これが一番望ましいことと思うのであります。これは実は金融というものが、ある程度と申しますか、完全に——完全にと言うと、あるいは語弊があるかもしれませんが、一つの中立性を維持していきたい、こういう念願がかねてからあるわけであります。しかし金融に政治なり政府なりが全く無関係でいいのかどうかという問題は、これは世界中どこの国でも相当問題になっておる。現にアメリカでも、財務長官と連邦準備銀行の総裁の間に、その問題については、かなり大きなやりとりがあったということは、まだわれわれの記憶に新しいのです。従って国家というものに発言権がないということは、私はもちろん言えないだろうと思うのであります。しかし、金融自体が政治によって常に左右され、その時の政府によってその方向がしょっちゅうゆがめられる——ゆがめられると言うと言い過ぎかもしれませんが、規制されていく、こういう習性を作るということは、大きな観点から、災いではないか。従って、いつの場合でも、金融が国家の政策に協力するということは、これは当然だと思いますが、それをきめる方法なり態度は、やはり金融に一つの自主性を持たしていく、こういうことで、方向づけは、やはり国家の必要な方向に協力をするということではないかと思います。
  24. 木内四郎

    ○木内四郎君 それに関連して簡単に伺いますが、今お話があったように、世界各国共に、資金の使用の方向、国家目的に沿って使う方向については、それぞれ国会その他できめるわけであります。ことに日本の現状から見まして、最近は資金の計画につきまして、予算において、あるいは今度の六カ年計画、そういうものによって、大きな方向は、やはり国会において、国権の最高の審議機関の国会においていろいろ論議されてきめられておることは、それは御承知の通りでありますが、そうすると、その線に沿ってやられる、こういうわけですね。国会におきまして大きなワクをいろいろきめておりますが、その範囲を逸脱してまで、それとは別に金融機関にまかせてくれという意味じゃないのですね。
  25. 堀田庄三

    公述人(堀田庄三君) もちろんそうであります。それで、国会で直接扱われる資金計画その他は、これは政府財政資金を直接投融資される開発銀行なり、輸出入銀行なり、そういうものを直接縛られることは、これはもう当然であります。しかし、その線は、即国家の金融政策の線であるという方向のものであるとわれわれは了解するのであります。やはりその線に重点を置いてわれわれは協力する、こういうことに間違いはないのであります。
  26. 山本米治

    ○山本米治君 この預金利子の免税は、租税の理論上はあまりおもしろくないけれども、この際、資本蓄積という非常に重要な国家目的のために、やむを得ないというか、そういう意味においてわれわれもけっこうだと思っております。先ほども言われました、これによる預金の増、これは全く腰だめというか、腰だめ以外にないでしょうが、銀行局長は、どこかで、五百億ないし千億、これは要するにプラス・アルファになる金額でありますから、当然預金がふえるかもしれませんが、この新たな制度によってプラス・アルファとして出てくるものがいろいろ言われておるわけであります。これは腰だめの数字を争ってもしようがありませんが、銀行局長は五百億ないし千億というお話で、今四、五百億というお話でありましたが、今まででも十万円までのものは免税になっておる。それ以上持っておるものも、口数を分けて免税の恩典に浴していたということから見ると、あまり大きな数字は期待できないように思うわけです。二、三百億でもふえれば、ふえただけ、けっこうなんですが、その辺は皆さんの方で専門家が御検討になった結果が、四、五百億という数字でしょうが、観測としてどうでしょうか、もう一ぺん伺いたいのです。
  27. 堀田庄三

    公述人(堀田庄三君) 今のその問題ですが、全くこれは理論的根拠は実は何もないのであります。そこで先ほど申し上げましたように、全免しなくても、限度引き上げでもいいじゃないか。新しいソースが生れてこない、従って預金がふえるということは、どこから来るか、横流れじゃないか、こういう議論もおありだろうと思いますが、これは先ほど公述人井藤教授からもお話がありましたが、私の考えでは、貨幣価値の安定ということが、預金増強の一番大きな要素である。これはインフレ政策をとる限りにおいては、換物、物でとるという考え方は動かない。デフレになればその逆であって、貨幣価値がそれだけ増大するということで、どうしてもそこに重点があるのでありますが、たまたまそういう時期が一昨年の十月、デフレ政策をとられてから展開をしている。そこに利子率というものの引き上げが、これはプラス・アルファとなって働きをする、こういう考え方と、もう一つ、ほんとうの貯蓄奨励をやるということであるならば、利子の引き上げのほかに、政府が、あるいは国民が、消費節約の運動を起していくとか、あるいはそういった方に及ふごとき政策をやっていく。これと相まって初めて大きな効果があるのじゃないかと、かように存じております。従って、先ほどの数字の腰だめの根拠は実はないのでありますが、まあ全国の金融機関で五百億、そのうち銀行は三百億と、まあ考えておるのでありますが、本年の貯蓄目標が八千億と想定されておりまして、銀行を大体四千億、その五割と思っておりましたけれども、今回の措置があれば、あるいはその一割増し、四百億くらいを目標に進んで行ったらどうか。だから今三百億というのは、むしろ私どもとしては安全率を考えたわけでして、一割くらいこれによって責任額をふやそうという意欲に燃えておるわけなんです。
  28. 小林政夫

    ○小林政夫君 まあ税制の問題とは離れますけれども、今の問題に関連して、今度の自民の予算折衝で百四十一億というところの金融債及び四十五億の国鉄債をあなた方の方へ押しつけるという結果になったのでありますが、大蔵大臣は、もう完全に消化いたしますと、こう予算委員会で何回も言明しておられますが、金融機関の立場からその点について御所見を伺いたいと思います。
  29. 堀田庄三

    公述人(堀田庄三君) その問題でございますが、これは極力その線に沿って御協力したいというふうに考えております。ただ、もし思うように貯蓄が伸びません場合、われわれのオーバー・ローンとなっております日本銀行借り入れの返済が遅れて、金融の正常化が遅れるというような結果が来やせんか、あるいは産業資金の方をそれだけ減らすような結果になりはせんかと、そういうことを非常におそれているわけですが、どうしてもこういう措置をしていただいた上からは、やはりプラス・アルファを出して、従って引き受けても、それを消化しても、なおかつ金融正常化の線あるいは産業資金の供給の線に事欠くような行き方は万しないという決意を持っておるわけなんです。
  30. 平林剛

    ○平林剛君 今あなたの御説明でありますと、今回の政府の措置が資本蓄積のためになるから、国家的に見て御賛成の御意見であったのでありますが、まあ私はこの点について、もちろん国家的に見て資本の蓄積が大事なことはわかりますが、問題は、この蓄積された資本というものがどういうふうに使われるか、あるいはそれが有効的に使われるかどうかということにむしろ大きな問題があると思います。もう一つは、大衆が、一般の人が、先ほど井藤先生のお話しのように、大へん疲弊しておる時代に、大衆の疲弊困憊した中で資本の蓄積が行われて、一体それがどれだけの役に立つか、国というものは国民で構成している以上、そういう見地から考えなきゃならぬと思うわけです。特に今度の政府の政策を見ていると、私は、たとえば輸出業者に対する減免の措置をする、そのことよりも、根本的に貿易政策をもっと考えていくことが輸出振興になるのであろうし、資本の蓄積のことを考えますと、むしろ通貨価値を安定させるということに根本的な原因があって、利子に対する減免措置がそれに役立つ、それはプラス・アルファとして何らかの意味で役立つことは事実でありましょうが、やはり根本的な措置を置き去りにした、私に言わせれば、こそく的なやり方では、ほんとうの資本蓄積になり得ないのではないかと、こう思うのであります。あなたの御意見からいけば、むしろやらないよりやった方がいいから、そうして賛成をされるかもしれませんが、一つあなたから、根本的なことについても、やはり国家的に見て、この際御意見を聞かしておいていただきたいと思うのです。  それからもう一つ、先ほどあなたもお聞きになったように、現在の勤労者全般の申告所得やあるいは源泉所縁の例から見まして、五十万円以下の所得の人が八四%である、申告所得の場合に……。また源泉所得の場合におきましても、五十万円以下の所得者は九四%である、こういう御説明がございました。私はこれは今日の国民生活の実態であると思うのです。そういう意味からいきますと、今、銀行に対する預貯金の額が、大体五十万から百万というのは、これはまあ食っちゃって、あと預金を下げるという方の人たちだと思うのでありますが、私はこの点から見て、今度の措置は非常に小範囲の人に対する措置だと思っておるわけでありますが、きょう数字をお持ちであるかどうかわかりませんが、念のために、銀行に預貯金されるところの口数ですね、それと、どのくらいの人たちが預金者になっているかということを、数字がございましたら、一つお示しを願いたいと思います。
  31. 堀田庄三

    公述人(堀田庄三君) さきの経済政策、産業政策の根本に触れた問題でありますが、あるいはそれで集めた預金の流し方いかんによっては意味がないじゃないか、こういうお話しでありますが、これは相互に関連していると思うのであります。これはお説の通りだと私は思うのであります。従って集めた預金をできるだけ効果的に、国家目的に沿うような行き方において使用するということは、もろ当然であって、きわめてこれを効率的に使用したいという線に沿うて運用の衝に当らなければならないと思うのであります。それにつけまして、私はかねて、自分の持論でありますが、金融だけで経済の立て直しをやるということは、所詮いろいろ弊害ができる。最初の段階におきましては、それはおそらく非常に効果を発揮したろうと思います。一昨年の十月から去年の夏までぐらいは、真に金融引き締めがデフレの効果を私は発揮したと思うわけです。去年の夏から今年の春までぐらいの間の輸出増加という面も、それに附随していろいろ国際収支の改善が行われたのでありますが、しかしこれはもう一つ、そういった引き締めの効果のほかに、より大きな原因があるのです。これは国際情勢が、つまり客観情勢がよかった、ヨーロッパが景気がよかったとか、アメリカがよかったということで、日本のものが大いに役立ったということと、もう一つは、出血とか、あるいは補償リンク制というようなものも加わって国際収支が改善されたのであります。今日になりますと、引き締めとか金融だけの問題ではなく、もう事実的にデフレというものは進行しかけているのではないかというふうに考えるわけであります。そこで今年の問題としては、金融だけでやるのは、やはり無理ではないか、これに附随する総合政策というものが随伴していくのが絶対必要である。そういう意味におきましても、金融機関の立場からいっても、目標として国家が一つの産業計画をお立てになって、それに向っての一つの線をはっきりお示しを願うということが必要になってくる段階であるということを感じておるのであります。経済六ヵ年計画という一つの構想を持っておりますが、これに関するほんとの方法論、あるいはそれをするのにどういう具体的な措置をするということについても、やはりすみやかに根本の施策を考えていただいて、金融はこれに歩調を合わせていくという段階が、私はそろそろ来ているのではないかというふうに考える次第であります。  次に預金の構成その他からお考えになりまして、五十万円以下の所得の実態に徴して、国民生活の実態からいうと、今度の免税を受ける階層が比較的小規模じゃないかというお話しでございますが、今、銀行の預金は非常に口数がふえまして、約三千六百万口に上っております。預金の残高は約三兆円。従いまして一口当り平均約八万円、こういうことになっておりまするから、この概算だけでは即断をすることは許しませんけれども、平均で見ますと、非常に零細な預金から成り立っている、こういうふうに考えられると思うのであります。
  32. 青木一男

    委員長青木一男君) この程度で堀田さんに対する質疑を終りたいと思います。暫時休憩いたしまして、一時半より再開いたします。    午後零時三十一分休憩    ————————    午後二時四分開会
  33. 青木一男

    委員長青木一男君) 休憩前に引き続き公聴会を開きます。  日本中小企業団体連盟理事森田彌市君に公述をお願いいたします。
  34. 森田彌市

    公述人(森田彌市君) 私はきょう申し上げる方のうちでも理論的にいろいろなことを研究したものでもありませんし、非常な経験を豊富に持っているものでもありません。ただ市井の一経営者といたしまして、今度政府あるいは国会方面できめていただきますいろいろ税制その他の改正案につきまして、私どもが社会活動といいますか、経済活動をいたしております面から感じました二、三、あるいは日ごろ私どもが同志とともに運動いたしております中小企業の振興の面から、ぜひこういうふうにしていただきたいという点について、若干私見を申し述べさしていただきたいと思うのであります。ただ遺憾なことは私どもきょうここへお呼ばれをいただきまして申し上げるわけでございますが、所得税法の一部や改正する法律案あるいはその他の法律案等の上程について、詳細の実はその趣旨その他について説明を受けておりません。ただ文書によってその趣旨をくみ取ったという程度のものでございますので、政府あるいは国会方面の御意向を私どもが十分に感じとっていないで、勝手な意見を述べるというような節もあろうかと思うのでございますけれども、その点につきましては一つ情状おくみ取りいただきまして御賢察をいただきたいと思うのであります。  私ども中小企業家の立場から申し上げますと、先生方に一々そういういうことを申し上げる必要もないと思うのでございますが、何といたしましても、一番の脅威は税金であるのであります。火事とか雷とか、その他者はおそろしいものがあったようでございますけれども、現在は税金ほどおそろしいものはないと、こういうふうに断言できると思うのであります。私どもは家内、子供家族あるいは親戚その他をいわば打って一丸として一家を経営しておるわけでございますけれども、いかに働いてもいかに努力をいたしましても、現在のいわば政治の情勢と申しますか、経済の情勢と申しますか、そういう中で仕事を、ガラス張りで仕事をして、きまった通り税金をとられておったのでは、決して世の中に立っていくことはできないということを私は申し上げられると思うのであります。もちろん、世の中のつき合いであるとか、その他を一切やらないで、娯楽もやらないで、ただ働いて税金を納めるということだけならば、あるいはそれはできるかもしれません。しかし憲法で許された最低の文化生活を営み、国民生活を営んだ上で税金を払うということは、なかなか至難のことであると思うのであります。そういうようなことを政府なり国会なりで、いわば私どもに言わせると、だんだん御賢察をいただいた結果として、少額所得者に対するいろいろな措置というようなものについてお考え下すって、今回もそういうようないろいろな措置が講ぜられることになったと思うのでございますが、さらに私どもはもう少し一歩を進めて、根本的に国民の大多数である中小企業者が安んじて、喜んで税金を納めるような措置をとっていただきたいと思うのであります。  そういう点からお願いいたしますと、今度の所得税の改正の中に私ども経営者であって、いわゆる所得を納める者いわゆる給与所得でない所得税を納める者につきましては、その大半が中小企業といいましても零細企業が多いのでございます。経営者であると同時に、これはいわばりっぱな勤労者でございます。しかもその努力、その心配、そういった点につきましては、いわば勤労所得をいたしておる者の比ではないと思うのであります。非常に勤務時間も長くしなければなりません。たとえば私どもの近所を見ましても、八百屋であるとか、つけもの屋であるとか、もう朝の七時ごろから夜の十一時まで働いて、そうしてやはり上ってきた所得については同じような税金をほとんどとられておるというようなことでございます。従って私は少額の所得者に対しましては、相当多額の所得をいたしておる者と別個に特別な保護の処置をしていただきたい、こういうふうにお願いを申し上げたいと思います。それは、たとえば給与所得に認められておりますいろいろの特典などを給与所得以外の少額の所得者にも何かそういった制度を設けていただきたい、こういうわけなんであります。  それから中小企業家といたしまして、所得に関して一つの光明であると思われましたのは、青色申告の制度であるのであります。青色申告は納税者と税務署の方といわば協力態勢によってその実を上げるという点については、非常に考え方としてはいい制度であるのでございますが、おそらく最近の実情から照らしましても、相当な文筆のいわばくせのある、ペンを持ったことがあり、書類を作ったことがあり、あるいは記録をしたことのあるような方は、それで相当救われていると思うのでありまするけれども、まだまだ日本の中小企業家の中の大半は、割合と文筆に親しんでおりません。従って、青色申告をいたしますことは、非常な努力が要るようなわけであります。ほとんどが、たとえば十人、二十人ぐらいの従業員を使っておるようなところにいたしますと、ほとんど、そう言うと失礼な言い分であるかもしれませんけれども、計理士あるいは税理士等のそういった手数料をかせぐために精一ぱいである。青色申告をしないで税務署におまかせして税務署の言いなりのものを納めるのと、適正な税金を納めるために青色申告をして、さらにその上そういった他人の手をわずらわして青色申告のいろいろな手続をしたり、年間の記録をしていただいたりするようなことを加算いたしますると、相当な多額のものになってしまうわけであります。従って、私ども納税者の方からお願いいたしたいと思いますのは、青色申告の制度をもっと簡素化するか、あるいは直接税務署の方に、たとえば現在青色申告を一般の中小企業家がやっておりますのは、売り上げあるいは買入れその他のものをその日その日簡単にメモなり伝票なりに書いておく、それを半月なり一カ月なりためたものを計理士の人がまとめて持って行って帳簿へつけてくれる、その費用が相当多額に上るわけでございます。そういうようなことをただ伝票だけつけておけば、税務署の方でそれをめんどう見てくれる、これは大福帳のようなものであっても、つけておけば、それを税務署の方で何かめんどう見てくれるというようなめんどうを見ていただけないか。さらにそういったようなことではできないというのでありまするならば、現在のように一部計理士なり税理士の方たちにお世話を願うとして、青色申告を大いにやりますので、その他人にそうした事務処理をしていただきます費用程度のものは、特に青色申告をした者に対しては特別控除をしていただければ幸いである。それはぜひ一つ、そういうような青色申告をしてもあるいは普通のあれであっても、ただ更正決定その他で若干有利ではあるけれども、税率については現在一向御考慮をいただいていないわけであります。従って、そうした余分な費用を使って青色申告をいたすのでございますから、その余分な費用程度、支出に相当する程度のものは何か一般の青色申告以外の課税率よりも特別に若干控除していただいたならば、青色申告は非常に中小企業家としてたやすく手がつくのではないかと思うのであります。そういう点について一つ御考慮をいただきたいと思うのであります。  それから所得税の調査あるいは決定等につきまして私どもが一番悩まされますのは、いわば大法人ならばほとんどそういうことはないと思うのでございますが、小法人あるいは小法人以外の一般の企業家などは、税務署の方にいろいろの支出を認めさせたりあるいは借入金を認めさせたりすることがきわめて至難なんであります。いわば税務署の方では脱税の準備だろうというような目で見られますために、非常に苦しくなって、親戚、友人、知己等から金の借り入れをしておる。しかしその借り入れも、単なる借り入れ証文では税務署はこれを認めない。相当うがった、担保にでもはいっておるようなものでないと、すなおには認めて下さらない。そういうようなことで、国民金融公庫であるとか、その他正規の所から借り入れる以外は、ほとんど認めさせるのに困難であるというような実情でもあります。それから未収金の問題もあります。売掛ではいって来るか来ないかはっきりわからないようなもの、あるいはほとんど取れなくなってしまったようなものすら、二年を経過しないとこれを税務署はやはり資産勘定の方に入れなければならんということで、実際はあの金はもうはいっておそらく来ないだろうと思われるものであっても、その年度には相当な利益が出たんだとして課税をされる。あるいは在庫品などにおきましても、たとえば私どもの例をとりますと、私は出版を業といたしておるのでございますけれども、一度もう返って来てしまった本というのは、ほとんど定価なり卸値では販売できないわけであります。ところが、それが庫にある間はある程度それを半額であるとか七掛であるとかいうふうに見込まれてしまうわけであります。ところが、一度返って来たそういった本というのは、もう目方で出すよりほかに方法がないようなものであります。ですけれども、それがあるいは注文によって出ないとも限らん、こういうような実情にあるもののために、スクラップとしてそれを落すことを認めていただけない。従って、私どもは売掛金の場合でありましても、はいって来ないんだと説明をしても、これははいって来るものとして資産勘定に入れられる。あるいは在庫品もそのような状態でありますので、私どもの立場から行けば、これを業者の方ではいらない売掛金なんだ、落したいんだというのを、どうしても落してくれないのなら、私どもの立場で言わしむるならば、これは税金で振りかえてもらえば一番いいわけであります。われわれは取れないと思う、税務署はそれはまだ取れるんだ、二年間の間は落すわけに行かないんだ、こういうなら、取れるんだと税務署が言うならば、それをいわば税金その他が物納が認められている時代なんですから、売掛金、在庫品を税務署が査定したのだから、その通りあんたたち持って行ってくれればいいじゃないか、私たちの立場とすればこう言いたい。その点をもう少し実情に即した、納税者側の意向を体して査定をしていただきたい。税務署が取っていただけないような売掛金であり在庫品であるならば、やはり納税者側の言い分もある程度聞いていただきたい。こういうようなことを私どもは、だだをこねるわけじゃないのですけれども、言いたくなるわけであります。そういったあれもありますので、私どもは青色申告に対してもう少し優遇して処置をしていただきたい、こういうわけであります。  それからこれは私ども中小企業家の中の少額所得の法人にももちろん当てはまることでございますが、今度の税制の改正案によりますと、年額五十万以下の所得に対しましては現在の百分の四十二を百分の三十五に減らしていただく、あるいはそれ以上のものに対しても百分の四十にしていただくというようなことのようでございますが、私ども中小企業家の立場からばかり申し上げて申しわけないのですが、私どもはお願いといたしましては、あるいは意見といたしましては、もっと差のある累進課税と申しますか、そういったことをやっていただきたい。たとえば五十万までは百分の二十五くらいにしていただきたい。それからだんだんやはり累進して百万あるいは一千万あるいは五千万、一億というふうに相当額を取ってもいいのじゃないかと思うのですが、それは御承知のように、戦前のように経済界がある程度安定しておって、自分たちの努力で所得が生まれて来るというような時代でありますならば、ある程度所得の多い人はそれだけ非常な努力をしたから、それだけの所得が生まれて来たのだということが言えるわけでございますが、最近の仕事をいたしておりますと、如何に仕事を熱心にやって、いいアイデアをもってこの事業を進めて参りましても、国の政策であるとか、あるいは時の流れであるとか、あるいは新しいものの発明であるとか、そういったようなもののいわゆる時流のために如何に努力をしても、利益が生まれて来ない。それからその時流に乗ったりあるいは政治と手を結べば、語弊があるかもしれませんが、それは悪い意味でなしに、いい意味で時流に乗り国策に沿うというようなことでありますれば、一億、二億の金を利益することはきわめて易々たることであるというようなのが現在の、最近のこの所得の状況のように私どもは思うのです。従ってそういう時流に乗っての所得、ほんとうの勤労によってのみ生まれて来るものでないという考え方も一部入れていただきまして、この五十万、百万の所得に対しましては、その努力なり生活なりあるいは国民生活への希望なりを持たせるといろ意味から、なるべく低額にすべきである。高額の所得に対しては相当大幅な課税をしていいのじゃないかと私どもは思うのであります。少額所得は努力をしても、自分がまっ先になって働らいても、一方には大企業に圧迫を受けたり、あるいは中小企業の労働関係の法規も大企業の労働関係の法規も同じようなものでありまするために、二十人、三十人の小企業であっても同じような要求を出してきてやっておるというようなことでありますので、労働攻勢にもたえられないというような状態でございますので、そういった点について、その結果である所得に対しましては相当多額になればなるほど累進した課税をして行くべきだと思うのであります。  それからこれは実はこの問題には関係が薄いかもしれませんけれども、関連もありますので、私どもの立場からお願いをいたしたいと思うのでございますが、事業税の問題であります。この事業税というのは商工業者だけが負担をしておる税金であります。農業、漁業等におきましてはこういった税金はないのでございます。従ってそれはきわめてへんぱな税金であると思うのです。商工業関係は、それではほかの税金の面で非常に優遇を受けておるかといいますと、そういうわけはございません。あるいは品物については物品税を取られたり、いろいろな点で先ほど申し上げましたような所得の関係におきましても非常に苦しい立場にあるわけでございます。それが農業、漁業等については課さないで、商工業者だけにそういったような事業の多寡によって税金を課するというようなことは、私どもとしてはこれを廃止していただきたいと思うのであります。それでこれについていろいろ私ども中小企業家といたしまして、運動をいたしましたときに、国会方面の答弁といたしまして、農業は土地から固定資産税を徴収しておる、だから大体バランスがとれるじゃないかというようなことを政府の責任者の方が答弁をしたように新聞で伺ったのでございまするけれども、私ども商工業者といえども行商をしてあるいは露店でやっておるのじゃありません。店舗を持ち、事務所を持ち、工場を持ち、倉庫を持って、それぞれ仕事をいたしておるのでございまして、それぞれのそういった工場、倉庫、事務所、店舗、そういったものについてはもちろん農業者が土地について固定資産税を納めると同じように、私どもも固定資産税を納めておるわけであります。従って農業が固定資産税を土地から納めているから、商工業者だけに事業税を課するのは至当であるというようなことは、私は当らないと思うのであります。どうぞそういう点についても御考慮をいただきたいと思うのであります。  それから私は日本中小企業団体連盟、協同組合連合会というような性質のものの役員をしておりますので、そういう面からお願いをいたしたり、あるいは意見を申し上げたいことが二、三あるのでございます。それは中小企業等協同組合に対する法人税というのは、一般営利会社、株式会社等の営利を目的とする会社に課する法人税ともう少し国策的な意味から課税を緩和していただきたいと、こういうわけであります。それは御承知のように協同組合というのは、国がここ何十年来中小企業を救うのは個々の業者を救っていたのでは救えないから、あるいは金を貸す場合でもこれを協同してその保証力なり、団結力なりを利用して国が金を出すとか保護育成をするとかいうようなことで、国是として、国の方針として協同組合を作れ作れということを言っておったのであります。そういったようなために私どもも全国的に呼びかけていろいろな業種で協同組合を作って参ったわけでございますが、それらが仕事をお互いに協同にして、そして今日までやって来たのでございますが、それの所得に対して一般の営利法人と同じような税金をかけるということは、私は当を得たことではないと思うのであります。いわゆる保護育成というようなことは全然そういった課税面で考慮をされないわけであります。私どもは協同組合を運営する場合でも同じ仕事をする場合でも、ほとんどたとえば商工中金から金を借りる場合でも、あるいはほかから金を組合のために借りる場合であっても、全部ほとんどが個人保証をして自分の財産を投げ出す覚悟でこれをやって、しかもそれを私することなしに、その業界の発展充実のために、私どもはいささかなりとも寄与しておるつもりでございます。従ってこの協同組合が得た利益なども、国の法律によって利益は上げないで、この業界のために寄与すべきであるという建前から、配当なども、出資金に対する配当は制限を受けて、一割以上やってはいけないというふうに協同組合法できめられておるわけです。私どもその線に沿って運営をいたしておりますので、利益が出たからといって、それをみんなが分配して使っちまうという心配はないのです。普通の法人税はそういう心配があると思うんでございますけれども、協同組合についてはそういう心配がないわけでございます。それをほかの法人と若干区別していただきまして、所得に対してある程度いわば安くできるといたしまするならば、それが組合の資本蓄積となって、業界のために再生産に使われることになると思うんであります。そういう点で一つ、中小企業等協同組合法による協同組合の所得については、法人税率はほかの一般の営利法人よりも相当考慮をして課税すべきである、まあこういうふうに考えるわけであります。  それからもう一つ、さらにこの問題について掘り下げて考えますと、この協同組合が得た利益金のうちで、出資に対する配当はまだけっこうといたしましても、協同組合が利益を得まず、それを配当するわけでございますが、この出資金に対して配当するのと、それから利用率に応じて配当をするのと、二本建てに配当がなっておるわけでございますが、この利用率に応じて配当をする協同組合の配当につきましては、これはもう全然利益ではないので、組合の経費を利用したときに出しておったんでございます。それが費用を差っ引いて余ったから、これをその利用している人に返すという、従ってこれは経費を一部出していたのを、出し過ぎたから組合に返すという趣旨なんであります。一般の営利法人の利益金と全然性質が違うわけでございます。これに対しても同じように税金が課かってきておるのでございます。従って年度末に決算をして利益が出た、そのうちで、利用率に応じて配当をする部分は、優先的にですね、返えさしちまって、残り部分に対して税金を課するというのが至当ではないかと思うんであります。こういう点についても一つ御考慮をいただきたいと思うのであります。  それから簡単にもう一つお願いしたいと思うんでございますが、物品税というのがあるんでございますが、これは当然消費税の性格でございますので、これはまあ消費する人が出す形になるわけでございますが、実際の徴税は徴税技術の点からだろうと思うんでございますが、これは生産をした人が倉出しのときに全部を課税をされておるわけであります。そして、これが売れようが売れまいが、戻ってこようがどうしようが、一応それは、その出されたものは税金は戻らないということで、ちょうどまあ出版に対して著者の方に印税を払って、検印をもらってその本を出すわけでございますが、それが返本になって返ってきても、やはりその著者の方はその印税を返して下さらないで、やはり出版業者がその全額を負担するという形になっております。これと同じようなもので、本来ならば消費税あるいは間接税だから、消費者が払うべきものを、製造業者が取られておる、立てかえて取られておる、売れた場合は、これは消費者に転嫁されてだんだんいくわけでございますが、売れないで戻ってきたものは、依然として当然消費者が払うべきものを製造業者が立てかえたんだけれども、これをそのまま製造業者が泣き寝入りをしなければならんということになっております。こういう点についても非常に取扱いがへんぱなのではないかと思うのであります。それから御承知のように、この物品税というのは、昭和十四年の七月に戦時立法として、消費を規制して、軍需資材を確保するということが一つの目的であったのでございます。そうしてその当時は五百種の事業種について物品税が課けられたのでございますが、その後いろいろ政治力の強い業種が国会方面等に運動をして順次撤廃をされて、今七種ぐらいが残っているだけであります。非常にこういったような、もちろんそれは公平な目で皆さんが見て残るべきものが残ったんだ、当然物品税を課していいような数種が残ったとおっしゃられると思いますが、私どもここ七、八年の中小企業運動を見ますと、政治力の強い不平不満をぶちまける、デモをやる、そういった品種が、優先的に物品税が廃止されて、政治力のない、組織のない、力の弱いものが現在残っているような感を受けているのでございますが、そういった点につきましては、よしんばこの間もどなたか先生方に伺ったときに、そういったような意味のことをはっきりと申しました。それだけ不満があるから強く当ってくるんだ、国会に声の反映されないのは、それだけまあいわば不満がないんだろう、こういうようなことを言っておられましたけれども、必らずしもここの門をたたかなくても、より以上に苦しんでいるものがあるわけでございます。運動の方法を知らない、あるいは組織力がないために動員ができない、こういうようなふうな力の弱いものに対しましても、一つ大いに政治の目を見開いていただきまして、救済の手を伸べていただきまして、公平な税措置をとっていただきますように私はお願をいたす次第でございます。
  35. 青木一男

    委員長青木一男君) 御質問のある方はどうぞ。
  36. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 今のお話のうちの事業分量に対する免税のお話があったが、事業分量に対する免税はしてあると思っておりますが……。
  37. 森田彌市

    公述人(森田彌市君) その仕事の上でですね、これはあとの決算をして、利益金を出して、そうしてこれを私どもは利用配当とそれから出資配当と、それから法定準備金、そういったものを引きまして、その全部に対して一応私どもは今税金を払っておりますが、そういう措置は実はないように承知しております。
  38. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 今の問題は、事業の分量に対して、配当は経費と見積って損益計算を作るといろ場合において、損失に落して剰余金に上げないということになっているのじゃないですか、別な協同組合は皆そういうふうになっておりますが……。
  39. 森田彌市

    公述人(森田彌市君) その損金への算入が認められていないように承知をいたしております。
  40. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 それから今お話の法人税は一般法人より一〇%軽減するというのは、今のところでは一般の方は四二%ですね、今度の改正によるといろと三〇%ぐらいになるが、そうするというと、この今度の改正で一〇%減税になるが、どのくらいの減税にしてもらいたいか。パーセントを具体的な数字を示していただきたいと思います。
  41. 森田彌市

    公述人(森田彌市君) 今のお話は一般法人と協同組合が出される法人税でございますが、それについては一般法人が三五%になるならば協同組合は二五%くらいにしていただきたい、こう思っております。
  42. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 今度の改正案を見てみるというと、一般法人は四二%が四〇%にして、さらに修正されて下げられているが、今度協同組合はそういうふうな関係で三五%が三〇%になっているから、一般のものが四〇%であったならば、それより一〇%下げたところの三〇%に現在はなろうとしている。それが三〇%よりどのくらい下げていただきたいというお考えかというのです。
  43. 森田彌市

    公述人(森田彌市君) 私どもは大体三〇%くらいに、今のお話のようにきまりますればさしたる不満はないのでございます。
  44. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 そうしますというと、今度の改正案が適当なりとお考えになるわけですね。
  45. 木内四郎

    ○木内四郎君 今、国会の門を叩かないから下げられないものもあるというお話だが、何か一つ具体的に、二、三教えてもらいたいのですが、どんなもの、たとえば例をあげて言うならば。抽象的ではちょっと私どもぴんとこないものですから、何か具体的な例を、このほかにも各方面に云々というあなたの御意見、具体的に示していただければ……。
  46. 森田彌市

    公述人(森田彌市君) 具体的にこれというのはないのでございますが、私どもこちらにいろいろと、私どもは日中連としてもお願いに来ているわけでございますが、(「全廃じゃないですか」と呼ぶ者あり)物品税などにおきましても、実はそれを私の立場で言って私が小言を食うと困るのでございますが、たとえばはっきり申し上げますと、私どもの仕事については事業税を免除してもらいたい、出版については。
  47. 木内四郎

    ○木内四郎君 さっきあなたがおっしゃったように物品税のお話で、国会へ要求するかしないかで違う。そのほかのものは下げられないという御不満がだいぶおありになるというお話だったのですが、例を教えていただけば、僕ら参考になると思って伺ったのですが、またここでお話になることが工合が悪ければあとで伺います。
  48. 青木一男

    委員長青木一男君) それでは森田君に対する質問はこの程度にいたします。  ありがとうございました。
  49. 小林政夫

    ○小林政夫君 あとで誤解があるといけませんから、今の藤野さんの言われた事業分量による配当はこれは経費ですか。経費に算入されるわけですか。これはもしあなたの方になっていなければ……。
  50. 土田國太郎

    土田國太郎君 今のは事業分量の種目でしょう、そうでしょう。それは経費ですよ、経費に入っていますよ。   —————————————
  51. 青木一男

    委員長青木一男君) 次に経済団体連合会事務局長堀越=三君の公述をお願いする予定でございましたが、急に御病気になられましたので省略いたします。  次に野村証券株式会社社長奥村綱雄君に公述をお願いいたします。
  52. 奥村綱雄

    公述人(奥村綱雄君) 今御紹介にあずかりました野村証券の奥村でございます。  お許しを得まして例の租税特別措置法の一部改正案が、今度現内閣から皆様に一部改正案が提出されているわけでございます。その中で預貯金の利子に対しては無課税ということにお願い申し上げているにかかわらず、われわれの方の株式配当金につきましては、御案内のように、源泉徴収ですね。源泉課税でなくて源泉徴収ですね。先に取る源泉徴収を一五%からわずか一〇%だけに下ると、こういう原案が出ているわけであります。しかしながら、これは預貯金の利子と株式配当との均衡が非常に違って参りますので、これではどうも産業資金調達上、株式資本を扱っているわれわれとしましては納得がいきませんので、こうしていただきたいということをお願い申し上げている次第なのであります。  で、ほんとうのところは皆様案内のように、株式配当の課税は非常にややこしゅうございまして、まず初めに源泉徴収として、逃げないように、姿が消せないようにあらかじめ網をつけまして、配当を受け取られるときに一五%を先に徴収してしまうわけでございます。それからその次に今度は個々に株式投資家の皆様に総合課税をする場合に、株式配当金に相当するもののうち二五%を法人税とダブっているという理由で、法人税の四二%はすでに取っておるからというので二五%だけ引いていただく。そうして引いたその株式配当金に今度は所得に応じて税金を掛けていく。それが一五%以上であれば以上の分だけ増徴いたしまして、一五%以下であればまた逆に返していただく、こういうややこしいことになっておる。なお、そのほかに配当で一口三千円までは襲業会社の方で税務署の方に申告をしなくてもよろしいと、こういう三本建てのきわめてややこしい税制体制になっておる。これでは大口の投資家は個々の計算によりまして非常に損得がはっきりしていいのでありますが、今日株式投資家は御存じのように六百万人から七百万人に及び、大口投資家だけでなくて、勤労者皆様に至るまで株式投資をしていただいておるのでありますから、こういうややこしい株式投資に対する課税方法では理解がしにくい。昔の金持だけの場合はいいのですけれども、今のような大衆の諸氏が株を持っていただいているときには非常に理解がしにくいからして、この際、思い切って源泉分離一本にしていただくと、こうすれば、どなたにもわかりやすい。御婦人の方々にもわかりやすいし、勤労者の方にもわかりやすいし、月給取の方々にもわかりやすい。そういうふうに変えていただけないかというのがわれわれの根本のお願いなのであります。  ところが、この問題はだんだんと議論をして参りますと、先生方のよく御研究のように、非常に税制理論のむずかしい問題にぶつかって参りまして、きょうあすの間には合いにくい点もありますので、第二段といたしまして、その税制の根本はいずれゆっくりと長期的に先生の皆様方に御研究をお願いに上るといたしまして、今度の場合は、ともかく目先的に預金の無課税に対しまして、少しでも、目先通過する範囲内におきまして譲歩いたしまして、現在の税制体制をそのままにしておいて、少しでも預金の無課税に対して均衡の程度を回復するように修正していただくと、こういうふうにできないかということにわれわれの意見が一致いたしました。  で、次善の策といたしまして、これも御案内のように、配当控除率は現在の二五%を三五%に上げていただきたい。なぜならば、法人税が四二%から四〇%に下ったといえども、なおそこに二重課税の余地が残っているから、三五%に引き上げていただきたい。本来ならば全部と言いたいのですが、そんなことを言ったところで予算の関係がありまして、皆様にいたずらに御無理をお願いしても、紛糾するだろうと思って、可能な程度において三五%とお願いしたのであります。それから源泉徴収の税率は、これは逃げるということを前提に考えて先に取るというややこしいものでありますから、これを全廃するにしかず。しかしこれもいろいろ国庫歳入の御関係があるから、少くとも五%程度には引き下げていただけないだろうか。それから配当所得の、先ほど申しました事業会社の支払調書の不要な金額が一日三千円となっておりますが、これは大体換算いたしまして六、七万円の投資元本であります。ところが御案内のように、銀行は今日の無課税の前の、源泉徴収をなさっておった当時においてすら、十万円までは無税であります。それでそれと均衡をとるべく一口千円のものは一口五千円まで上げていただきたい。五千円でざっと十万円であります。この三つをお願いすることにしたのであります。  本来は証券会社は非常に心臓が強いと言われておるのでありますが、政府の歳入を考えて非常に穏当であるところをお願いしたのであります。ところが幸いにいたしまして、衆議院の方におきまして、われわれの要望するところを御考慮願いまして、このうちの全部とはいかなかったのでありますが、御案内のように、配当控除率は、三五%はいけないけれども、三〇%までは引き上げてやろう、源泉徴収率の全廃並びに五%は税収入上無理であるから、これは政府原案の一〇%引き下げにしておく、第三目番の配当所得の一口三千円のを五千円に引き上げるということは、銀行の先に申しました十万円との均衡上考えてしかるべきである、こういうふうに御修正を願いまして、参議院の方にお回し願っておるような次第なのであります。われわれは、この衆議院で御修正願いましたことにつきましては非常にありがたく思っているのでありますが、しかしこれをもってわれわれが最上のものと満足しているわけではないのであります。その点につきまして、ちょっと再度参議院の先生の皆様に御了解を得たいと、お願い申し上げる次第であります。  その一つは、ちょうど皆様のお手もとに証券業協会からこういう表が回っているだろうと思います。戦前戦後の経済情勢の比較というのがございます。これは国民所得、銀行券の発行高、全国銀行の預金高、それから全国銀行の貸出高、それから産業資金の供給高、その中の株式の供給高、株式の払込資本額、それから売買代金、時価総額、こういうふうに並べまして、これを戦前と実質的にどう違っておるかということを比較研究したものであります。それによりますと、つまり今日においては昭和九年から十一年までの三百五十倍物価が上っているという仮定に立っているのでありますけれども、それをこのまま当てはめて参りますと、御案内のように国民所得はすでに戦前以上になってきている。銀行の預金も大体九〇%近くまで回復している。貸付も大体同じ程度に回復している。にもかかわらず、株の払込資本金はわずかに戦前の一割五分足らずしかまだ回復してきていない。現在の株の払込総資本金は五千億であります。時価にして約八千億であります。終戦時に比べますと、約十倍近い増加になっておりますけれども、戦前と実質約に比較いたしました場合には、かほどにまだ非常に株式の資本が少いし、全体の産業の必要とする資金において占める比重も戦前に比べて非常に悪いのであります。これを裏返して申し上げますならば、皆様問題にしておられるオーバー・ボローイングの問題なのであります。でありますから、当然にそれらの解消のためには、株式資本こそ優遇さるべき性質のものであるのでありますが、今日の政府原案とするところは、むしろ株式資本の方の優遇の程度がきわめて少い、そこに私は大いに御考慮願いたいものがあると思うのであります。ことに預金とのつり合い上、問題なのでありまして、大体インフレの高進していく最中におきましては、株の方は自然に値が上って参りますから、株の方へ、株の方へと投資が来るのはいいのであります。従って預金の方を優遇いたしまして、株の方を優遇しないでもいいわけであります。また実際インフレ期におきましてはさような措置がとられたのであります。預金につきましては、総合から源泉選択となり、源泉選択がだんだん率を下げて参りまして、三十から二十、二十から十、十から零になるというふうにだんだん優遇されていったのであります。私はそれでいいと思っておるわけであります。けれども今日におきましては、インフレは一応安定期に向いまして、そして先ほど申しましたようにオーバー・ローン、オーバー・ボローイングの解消にもっと力を入れなければならぬようになりました。放っておいても預金の方は経済が安定すれば、金は集まるのでありますが、株の方は放っておけばおくほどインフレ期には値上りがないから株への資金は集めにくいのであります。それがこの度は逆になりまして、こうした必要とするところの株式資本に対して優遇措置がとれないで、こういう優遇措置を必要としない預金に無課税を実施されておるということは、少し客観情勢と矛盾を来たしたような状態になって来ておるのじゃないかと思います。このことは昭和十二年でございますか、皆様御記憶と思いますが、昭和十二年のときに一定の、多分あれは株は八分だったと記憶します。社債は多分四分五厘以上だったと記憶いたします。国債は四分だったと記憶しますが、それ以上の超過所得があれば、それらに対しては課税をする。超過所得は課税する、預金は無税である。こういう処理を昭和十二年にとったことがあるのであります。そのために預金の方は何の動揺もなかったのでありますが、株の方はそれだけではありませんが、そのことが大きく作用いたしまして、株が非常な暴落を演じました。その翌年あわてまして、郷さんなどの御主張によりまして、かようなアンバランスでは産業資金の調達はできないということから、この法は修正されたと、私は記憶しております。それと同じことがこのままであれば、そういう危険が生じやしないか、かように危惧いたしまして、ぜひとも預金の無課税はけっこうだと思うから、それと均衡のとれた株式所得の軽減措置をとっていただきたいということをお願い申し上げたような次第であります。どうかよろしくお願い申し上げたいと思います。先に申し上げましたように今は戦前のように財閥とか、ごく少数の資本家だけが株をお持ちになっておるのではありません。六百万から七百万に達する大衆が株をお持ちになっておるわけであります。そのことをどうかお考え下さいまして、これらの方々に不均衡な重圧とならないよう、再度御考慮をお願い申し上げる次第であります。  なお、そうは申しますものの、衆議院におきまして、若干われわれの趣旨を御了承願いまして、いろいろな財源の関係上、三五%には引き上げられないが、三〇%に引き上げてやろう。源泉徴収は君たちの言う通り全廃するわけにはいかないが五%だけ下げてやろう、それから一口三千円まで申告する必要のないものを五千円まで上げてやろう、こういうことにまずおきめ願ったのであります。一応少しでも預金との均衡が縮まったものという意味におきまして、私どもは非常に感謝もし、喜んでおる次第であります。けれども、なおそのときに、この際、皆さん方に御理解願いたいのでありますが、その最後の三千円を五千円に上げていただいたのはけっこうでありますが、それは三千円に満たないもの、小さい話ですが、満たないものということになっておりますので、満たないものというのは三千円ではだめでありまして、二千九百何円までがよろしいということになって、三千円は入らないわけであります。これは何でもないようでありますが、実は処置上非常に手数のかかることであります。三千円を加えたもの、今度は五千円でありますが、五千円未満というのは五千円以下と五千円のラウンド・ナンバーを下におろしていただきたい。これは何でもないことでありますが、さようにお取り計らい願いますれば非常にありがたいものと考えております。これは何でもないことでありますが、ちょっとした言葉を御修正になることによりまして、取扱い上二千九百九十九円まではいいが三千円はいかぬというように、まことにもって氷と水ほど違ったものではございませんので、ぜひお考え願いたいと思います。  もう一つは一口五千円まで、従って配当を二期しているところは一万円こうなるのであります。ところが一口五千円であるから配当一期のところは当然一万円のはずでありますが、一口五千円であるが故に、配当年一回のところは五千円だというように主税局はおっしゃるのでありますが、これはまことに不合理なことでありまして、言葉のあやにとらわれ過ぎたことであります。一口五千円で年二回のものは、これは一万円であるということをお許しになっておりますからして、年一回では当然一万円までバランスをとっていいのじゃないか、この点もこれは立法措置ではなく、皆さん方の方から、これは施行細則にございますが、皆さん方の方から御注意願えますれば非常にありがたいかと思います。一口五千円であるから、しかも年二回のものは一万円であると御了承になっておりますから、年一回の決算の場合は当然一万円までやっていいのじゃないかというふうに御注意願いますれば、われわれとしては非常にありがたい。投資信託も同様に年一回の決算でありますが、一口一万円まではよろしい、株と同じでありますので同様の御趣旨でお願い申し上げますれば非常にけっこうだと、こう申し上げた次第であります。  長々と申し上げましたが、よろしくどうかお願いいたします。
  53. 青木一男

    委員長青木一男君) 御質問のおありの方は……。
  54. 土田國太郎

    土田國太郎君 株式投資、今七百万人と言いましたが、大体どのくらいの収入のある方が投資されているように見られるのですか。
  55. 奥村綱雄

    公述人(奥村綱雄君) 先生の御質問でございますが、七百万人は絶対数でございますので、ダブっているものがあるかもしれませんが、その平均が今お一人一口千株と見ていただいていいと思います。そしてそれが今平均配当が一割三分でございますので、それが時価にいたしまして六十五円でございますから、千株でございますから六万五千円御投資なすっていると、これが平均であると、こういうふうに考えたことから推しまして、どの程度所得者に最も多いかという、そのはっきりといたしました目途はわれわれもつけにくいし、大蔵省もつけにくいらしいが、今申しました基準から測定いたしまして、昔のような大口投資じゃないということははっきりしていると思います。
  56. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 今度のこの株に対する今お話のようなことによって、株の方の投資がどのくらい増加するというお考えですか。
  57. 奥村綱雄

    公述人(奥村綱雄君) 大体おととしは、上場会社非上場会社を入れまして、一カ年間の株式払込の増加は千七百億見当だったのでありますが、昨年は千四百億に下っているのであります。今年はおそらくさらに下りまして千億台を割るかもしれないと思う。さようなふうに当然増加すべき株の払込金が、逆にだんだん減少していく状態であります。これはつまり預金の方が非常に租税措置上優遇されておりますので、一方の方がインフレ現象の停止とともに、かように減少せざるを得ないという二重のことが重なって、そうなっております。
  58. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 そうするというと、本年の予定は、一千七百億であったのが、現在の状況からいえば一千億ぐらいに減少する見込みだ。これは今度の租税措置によってある程度カバーされたところで一千億ぐらいになるのですか。
  59. 奥村綱雄

    公述人(奥村綱雄君) いいえ、そうじゃありません。今のところで一千億見当に減るのでありまして、もし今度の御措置をお許し願いますならば、多少でもこれを回復していく可能性はあると思います。どの程度回復するかということは、これは預金のように利回りだけではいかぬものでありますので、何とも申し上げかねますが、少くとも回復する可能性を濃くするということだけは間違いないと思います。
  60. 平林剛

    ○平林剛君 今あなたの御意見をお聞きしている間に、特に銀行の利子免税とそれから配当金に対する税の軽減を比較されまして、口をすべらしたと思うのでありますが、預金の増強は今日どんどんされておって、むしろ銀行利子の免税ということは必要でないのにやっているというお話があったように聞いたのでありますが、たぶん私はその辺が本音だろうと思うのであります。一般国家的見地から考え、あるいは全般の国民を対象として政治を行う場合には、私は現在の銀行利子の免税を行うことが、どれだけ貯蓄の増強になるかということを大いに疑いをもっておったのでありますが、あなたの説でもちょっとそういうことに触れたようなことを言われているのでまことに私としては意を強うしたわけでありますが、私の聞き違いであるか、それともあなたは国家的に見て、さように考えているのかとい、点をお尋ねをしておきたいと思います。
  61. 奥村綱雄

    公述人(奥村綱雄君) 私は現在取引所の副議長であり野村証券の社長であります。その職歴上、今のところ預金が無課税になるか、あるいは課税かという点については触れたくないわけであります。それと均衡上株式配当はこのままではいけないということを、特に私は主張したいと思うのであります。
  62. 平林剛

    ○平林剛君 その辺で、あまり今日は言うのはやめておきますが、もう一つ、衆議院の際に、この銀行利子に対する免税の点と、それから株券に対するところの軽減措置というところのバランスがとれないと、経済界、特に株式が暴落する場合がある、経済的にもいろいろ悪い影響を与えるというお説がございました。今回自由党と民主党が改正されたものを見ましても、まああなたの御意見によれば、だんだんその差が縮まったと、こうお話でありますが、しかし、全く権衡がとれておるわけではございません。そういう意味からいきまして、やはり、あなたは現在のお気持として、これでは産業界にどういう影響を与えるか。まあまあその影響は、この程度なら、心理的なものとして、もうあるまいとお考えになるかどうか、そういう点をこの際お聞かせ願っておきたいと思います。
  63. 奥村綱雄

    公述人(奥村綱雄君) 御案内のように、源泉徴収の一割五分は一〇%に下げようという、政府原案に比べまして、衆議院で御修正願いましたところは、先ほど申しましたように、引き上げ率を三割まで認めていた、控除の引き上げですね。それから申請不要限度を五千円まで上げてやろうと、こういうことは、少くともわれわれのお願いしている、先ほど申しましたように、源泉分離一本とか、われわれの申し上げました三五%というものにははるかにほど遠いのでありまして、いろいろな御事情で財源その他をお考えになりまして、一応、この程度で御修正願ったんでありますが、不満足ながらも満足せざるを得ないというのが、私の今の心境であります。参議院で、皆さんでさらにこれ以上御修正願えれば、もう一番けっこうなことなんですが。
  64. 木内四郎

    ○木内四郎君 町の経済学者の中には、預金の課税免除によって預金がふえるということは間違いである。通貨価値の安定がまず第一だ、それによって預金が増加するということを言っている町の学者があるのですが、あなたは今いろいろおもしろい資料をお出しになって、はっきりは言われないけれども、それに似たような説明をされていることは、これはたしかにおもしろい一つの御意見だと私は思うのですが、それはそれといたしまして、株式配当の源泉課税、あなたのお話になるところによれば、平均は六万円から十万円くらい、そして一割三分で大体五千円くらいのものになるだろう、こういろお話でありますが、もちろん、これは総合課税になれば他の所得と合せるから別ですけれども、私どもかって証券民主化の片棒をかついで歩いたことがあるのですが、相当こまかな投資者があるだろうと思うのです。そういう人たちは、今あなたのお示しになった統計その他によって見ると、相当多くの人が所得計算においては、総合課税の上では納税義務者でない者が、源泉において一五%、今度一〇%というものが取られる。その人たち税法に深い理解があり、かつ手続をいとわなければ、また手続を承知しておれば、それを払い戻してもらえるものを払い戻さないで、国庫に取られてしまっておるというような形のものが相当あると思うのですが、あなたの方では統計はどの程度お持ちになっているか、あなたにお聞きしても、あるいは無理かもしらぬと思うのですが、そういう人たちはどのくらいあるというようなお見通しですか。源泉で取られておるが、払い戻しを請求する立場の人、すなわち所得税を納めないでも計算上済む人たちですね。あるいはそのうちで払い戻しを請求する人がどのくらいあるか、払い戻しを請求しないために、国家に納めないでいいものを、国家にとられておる人が相当あると思うのですが、それがどのくらいあるかということをおわかりになれば……。
  65. 奥村綱雄

    公述人(奥村綱雄君) 大へんいい御質問を伺ってわれわれも参考になったのですが、残念ながらその数字は今のところ手元に整っておりませんので、いずれ研究させていただきまして、木内先生のところまで差し上げたいと思います。また大蔵委員の皆さんにも差し上げたいと思います。
  66. 小林政夫

    ○小林政夫君 もう一つ、資料はこれはおそらく手元にないと思うのですが、作っていただきたいと思うのですが、預貯金の全免措置と今度の衆議院修正の優遇措置がだいぶ幅がせばまったということ。同じ十万円なり二十万円の金を持っておる人が、銀行預金にするのが有利なのか、株式投資にするのが有利なのか、いろいろ所得階層によって違うと思う。そういう一つの仮定においての計算をしてみていただきたいと思います。
  67. 奥村綱雄

    公述人(奥村綱雄君) それも簡単な図表はお手元の資料の中に一部入っておるのでございます。ごらん願いますと、利回り表がございますが——事務当局で今日は持ってきてないようでございますが、さっそくお届けさせていただきます。
  68. 小林政夫

    ○小林政夫君 なるべく一つ早く……。あなたの方の都合のいいところばかりでなく、悪いところも一つお出しを願いたいと思います。
  69. 土田國太郎

    土田國太郎君 先ほど平均一割三分の配当で六十五円、これは上場株でしょうな。
  70. 奥村綱雄

    公述人(奥村綱雄君) さようでございます。上場株でございます。  なお、今の数字は、一番最後に載っておりますから、ごらん願いたいと思います。表ては株式配当金に対する課税軽減の要望説明、日本証券業協会連合会の中の一番しまいのところに載ってございますからごらん願いますと、いかに株の利回りが悪くなっているかということが御想像つくと思います。不足するところがございますれば、おっしゃっていただきますれば追加いたします。
  71. 土田國太郎

    土田國太郎君 それで平均一割三分なんですが、大体平均でなく、達観でけっこうなんですが、かりに百種なら百種の株式類のうちで、一割以下というようなものはどれくらいあるものですか——一割でいいですよ。
  72. 奥村綱雄

    公述人(奥村綱雄君) 一割五分以下が、有配会社の中のおそらく、まだ正確な数字は申し上げかねますが、調査部で調査させますが、まず六割五分見当で、一割五分以上配当しているところは全体の三割五分にも達っしないと思いますが。
  73. 土田國太郎

    土田國太郎君 これは一割といいますと、ちょうど千株で五千円というのが出てきますがね。これは非常に便利なんだと、今あなたの御主張の。これが四千九百九十九円じゃどうにもならない。そういう関係でお伺いしてみたんです。
  74. 青木一男

    委員長青木一男君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  75. 青木一男

  76. 青木一男

    委員長青木一男君) 奥村君に対する質問はこの程度にとどめまして、次に日本教職員組合中央執行委員長官公庁労働組合賃金専門委員、笹川運平君の公述をお願いいたします。
  77. 笹川運平

    公述人(笹川運平君) ただいま御紹介にあずかりました日本教職員組合の笹川でございます。  きょうは官公労並びに総評を代表いたしまして、今回の税制改正案につきまして私たちの態度を申し上げたいと思うわけでございます。さらに、あわせまして、税制についてわれわれがどのように考えているか、こういうことについても申し上げたいと思います。  そこで、私たちが日本税制を考えます場合に、どういうことを基本にしてといいますか、どういうふうに日本税制を見ておるか、こういうことを最初に申し上げたい。  そこで、まず第一点として、日本の現在の税金を考えてみますと、非常に重い税金である、こういうふうにわれわれは考えています。これはいろいろとデータをとってみましても、そのことがはっきりといえるおけでございまして、たとえば戦前よく例にとられます昭和九年ないし十一年のときの租税負担額は、人数にしまして、所得税では九十五万人で、その金額は二億二千万円でございました。また国税全般を考えてみましても、昭和九年ないし十一年は、国税は十八億円でございまして、今日この三十年度予算を調べてみますと、租税総額は約九千億円に達しておるわけで、その倍率といたしましては七百五十倍になっておるわけでございます。先ほど言いました所得税の方は二・二億円と考えますと、本年度の衆議院の改正案では、二千七百億円に所得税がなっておりますので、その倍率は約一千二百三十倍になるかと存じます。また人数にいたしましても、今日昭和二十九年度のデータですと、約一千百万人をこえているような実情でございますので、この点は戦前の九十五万人と比べまして約十二倍に達しておるわけでございます。こういうことからいって、戦前と比較しまして私たちの税金というものが全般的に非常に重くなっている、こういうことをこれらの統計は私たちに教えてくれるというふうに考えているわけです。  次に、これは日本の国内ばかりでありませんで、諸外国と比較してみたわけでございますが、昭和二十七、八年ごろの諸外国と日本の実質的な生活といいますか、収入といいますか、そういうものを比べてみますと、手取り額、総収入額から税を差し引いたところの残額は、日本を一としますと、アメリカは約九・五倍、ドイツは日本の二・五倍、フランス及びイギリスは日本の三・五倍前後になっているわけです。ところが、税金にしてみますと、これは二十九年度、昨年度ですが、年額十万八千円程度収入では、独身者の場合で日本だけが二・五%課税されておる。日本よりも非常に多額に収入があるところの諸外国は全然課税されておらない。このような数字が出ているわけでございます。またさらに多く見積りまして、年額四十三万二千円で、月にしまして三万六千円程度収入で、夫婦子供二人、このような場合を例にとってみますと、日本が一二・九%の課税率でございまして、ドイツではその場合に三%、またアメリカでも、イギリスにおいても、課税されておらないわけでございます。  このように、日本税制というものを、諸外国の例から見ても、また日本の戦前との比較においても、非常に重くなってきている。またたくさんの人に課税されておる。こういうことを端的に教えてくれるものと考えています。  特にこの際、税制を考える場合に注目しなければならないのは、給与所得者でございますが、給与所得者については、御承知の通り、戦前には千二百円までは免税になっており、扶養控除というものが百円あり、勤労控除というもりが一二%、ところが今日給与所得控除は、所得税法の第九条を調べてみましても、一五%の四万五千円、このようになっております。その所得税法の第九条を見てみまして、一時的な収入のほかに、このように、そのほかの必要経費に相当すると考えられるところの、この給与所得控除というものが制限されておる、こういうものはないわけでございます。この点からいって、やはり給与所得者というものが、ほかのものと比較いたしまして非常に不公平に扱われておる、こういうふうに言えるのではないかと思います。そこで、いま一つこの税制について考えたいものは、負担が非常に重いということ、いま一つ負担が公平を欠いておる、こういうことでございます。税というものは、その原則的な立場に立ちまして、なるべく犠牲を少くして、しかも公平である、こういうことが基本的な立場だと思うわけでございますが、今日の日本の税を調べてみまして、特に青色申告の法人、その内容は、大きな法人に対して集中的に優遇されているわけでございますが、その優遇措置というものが非常にたくさんに、私たちの計算によりますと、昭和二十九年度において、そのような優遇措置というものが約五百五十億円ないし六百億円と称されております。今日地方財政が非常に赤字がある、昨年から赤字があるということが叫ばれておるわけでございますが、その一カ年間の税の免除というものが地方の三カ年の赤字に匹敵しておる。こういうことは、やはり税の均衡という立場から問題があるわけでございます。特に先ほどもいろいろお話しがあったわけでありますが、法人税については一律四二%でございまして今度の改正案で四〇%に変えられる、さらに衆議院では五十万円以下の収入については三五%、こういうふうに御修正になっているようでございますが、私たちがいろいろと調査してみますと、この大きな法人の中には、全般的に二五%足らずと思われるような、いろいろな控除を引きまして、そういうふうな税率となっている。平均して大きな法人では三〇%、こういういわゆる平均、そのような額が考えられる。ところが中小法人では一律にしまして、大体四〇%前後である、こういうふうな現実があるわけでございます。二五%というところがもしあったとするならば、われわれ勤労所得あるいは農家の方も同じでございますけれども、そういう場合に、今度の改正案におきましても、いろいろな控除を差し引いたあとで三万円から五万円の収入があれば二〇%です。それらと比較いたしまして、そういうふうな税率というものが妥当なのかどうか、ここに私たちとしては大きな問題点を持っているわけでございます。  そこで、現在、物価あるいは戦前と現在との賃金というものを比較してみました場合に、賃金労働者の場合を考えてみると、昭和九年ないし十一年に比べて現在の賃金というものは約二百五十倍です。物価は、いろいろ計算の方法もあるようでございますが、まあ三百倍ないし三百三十倍というのが適当な数字になっているようでありますが、免税点は戦前と比べまして六十五倍程度でございます。こういうような三つの、日本の全般的に重い税率あるいは公正を欠いているのではないかと思われるような税制、あるいは最低の控除額というものが非常に少くなってきている、こういうふうな現実からいって、私たちは日本の現在の税制に対して非常に不満を持っている。現在公務員の夏季手当の問題が、新聞、国会その他でいろいろと論議の的になっているようでございますけれども、物価上昇の様子を見てみましても、また現在民間に起っておりますような首切りの問題、あるいは公務員におきますところの昇給昇格のストップ、俸給分割払い、このような現実のある中において、今申し上げましたような税制を持っているということが、やはり大きな問題点ではないか、ここに私たちは租税制度に対する根本的な考え方を、問題点を持ったわけです。  その根本的な態度に立ちまして、われわれが租税制度についてどういうような方針をお願いしたいかと申し上げますと、  まず第一点として、最低生活費というものを免税にしてもらいたい、こういうことでございます。最低生活費というものはどういうことか、こういうことについてもいろいろ議論があるところでございましょうけれども、また衆議院のこの間の改正では、標準家族で二十四万円までなったと、こういうふうにありまして、二十四万円が最低生活費かどうか、ここではいろいろ問題があるわけでございますけれども、とにかく日本人として、この日本の国内に住んでいて、最低生活というものが免税になっておる、保障されておる、こういう立場に立って税制を考えていただきたい。私は日教組でございますので、例を申し上げるわけですが、現在新制大学を出て、小学校あるいは中学校とかの教員になった場合については、俸給は九千三百円です。その九千三百円で、二十九年度税制ですと、年額にして三千円ほどの税金が徴収されるわけですが、自分のうちの附近でない、山間僻地の赴任もあるわけでございまして、大体下宿料というものが、五千円ないし六千円とられる。一方、税金をとられた上に、いろいろ市町村民税でありますとか、その他いろいろ引かれますと、手取り八千五百円くらいになる。そうしますと、二千五百円くらいで先生としての職責を全うし、修養もしてゆく、こういうことは果してできるかどうか。こういう点が、最低賃金制という意味からいっても、非常に疑問に思っておるわけですが、そういうふうな立場におきまして、まず第一点として考えていただきたい。  第二点として、負担を公平にしてもらいたい。先ほど余りにも一方的な優遇措置が大法人に対してなされておる、こういうことを申し上げたのですが、この点について特に一般のたくさんの国民の方々に迷惑にならないように、やはり租税というものは公平になるようにしていただきたい。その二つの点を特に基本的な考え方として強調いたすわけでございます。  そこで、その立場に立ちまして、税制については、具体的にどのようなことをお願いしたいかと申し上げますと、まず第一点といたしましては、賃金生活者に最も関係の深いところの所得税について、われわれとしては最も重点的に考えておるわけでございます。そこで、現在の所得税を構成いたしますところの基礎控除とか、扶養控除、あるいは給与所得控除、それから各種のそのほかの控除の大幅引き上げ、あるいは税率について大幅に引き下げていただきたい。第二点といたしまして、先ほど申し上げました青色法人に対しては、そのような一方的な優遇措置を廃止して、法人税というものは、その所得に応じてやはり税率によって分けるべきではないか、累進制をとるべきである、このように考えます。第三に、間接税でございますが、御承知の通り間接税は逆進性がございまして、新生一本をどういうふうな収入のある人が吸っても、やはり一本は二円である、こういうことに変りはないのでござりますが、そういう立場に立ちますと、間接税、特に必需品については、できるだけ減額をする、こういうことが正しいと思うのでございますけれども、現在、最近の情勢を見ますと、終戦以後は間接税というものはだんだん上ってきているような状況でございます。そのような立場に立ちまして、今回の政府案に対するところの私たちの態度を申し上げたいと思います。  そこで、一口に申し上げまして、今回の政府案におきまして、政府がこのような現在の税制度において、税金を、減税しなければならぬ。免税、少くしなければならぬ。このように考えられる。総選挙の際にも各党も大きく取り上げられ、さらにこのたびの国会においても大きく取り上げられておる、こういうことについては感謝しておるわけでございますが、その改正の内容を見てみますと、所得税については、果して私たちがお願いしているような所得税が低額所得者というものが、完全に軽減されておるかどうか、この点を指摘したいと思うわけであります。政府の提案を見ると、国民生活の安定、あるいは資本の擁護、こういうふうなことが大きな眼目になっているようでございますが、この点、特に低額所得者の軽減につきましては非常に不徹底になっておる。こういうことを率直に言い得ると思います。  そこで所得税でございますが、所得税につきましては、本改正におきまして基礎控除を七万円から八万円、給与所得控除最高限度を四万五千円から六万円、あるいは百二十万円以下の税率を引き下げる、こういうふうなことがあるわけでございまして、この結果、現在よりも、独身者では九万八千円までは課税されないでいい、それから夫婦子供三人の場合では二十二万五千円程度までは免税になる、このようになっているわけでございます。この点については感謝しているわけでございますけれども、そんならば、各種所得者について、低額所得者というものが政府が言われるように減額されているかどうか、こういうことを、これは大蔵省のデータを調べて見たわけでございますが、見てみますと、月一万円の収入者では、月にしまして百六十三円減額になっています。ところが、月五万円の者にあっては二千七十五円減額で、その倍率というものは十二・七倍です。これは独身者の場合でございますが、これを見ると、低額所得者の百六十三円と高額所得者の二千七十五円というものを考えて見た場合でも、どうひいき目に見ても、低額者の減税である、こういうことには言われません。  次には、扶養控除というものが全然考慮されなかった。われわれが現在いろいろの公務員とかあるいは民間賃金労働者の給与を調べてみますと、家族の多い人ほど苦しい生活をしている。端的にそういうことを調べるのにエンゲル係数を使うわけでございますが、エンゲル係数を調べてみますと、家族の多い人ほどエンゲル係数が数字が大きいわけです。そういう事実があるにもかかわらず、この内容では、先ほど言いました五万円の独身者が二千七十五円の軽減をしているのに、五人の場合には、扶養家族四人で家族五人、そういう場合には一千六百三十七円、そのように、その差は約四百円、こういう点については、われわれとしては不満な点でございます。この点は、やはり扶養控除というものを、この際、家族の多い人ほど考えて取り上げるべきでないかと思います。  次に給与所得控除でございますが、これは最高限のみ若干引き上げているわけでございますが、これにつきましては、現在いろいろ調べてみまして、最高限を若干上げてもらったことにつきましては感謝いたすわけでございますが、やはり税率を取り上げていただくべきでなかったか。現在一五%が給与所得者に対する控除でございますが、戦前、シャウプ勧告以前を考えてみましても、二五%でございました。それから所得税法の九条の問題点については、先ほどから申し上げた通りでございます。そういう事情でございますので、やはり給与所得者の立場からは、この給与所得控除というものを大幅に取り上げていただきたい、こういうふうに考えるわけであります。  では、そのように考えるならば、官公労としては減税案についてどのように考えているか、こういうことを御質問なされたいと思いますので、その点について、官公労として、あるいは総評といたしまして、減税案について、特に所得税についてはどのように考えているかを申し上げたいと思います。そこで、基礎控除は十二万円にしていただきたい。給与所得控除については二五%にして、十万円まで引き上げていただきたい。扶養控除につきましては税額控除にして、一人一万円税額控除していただきたい。税率については特に五十万円以下の大幅引き下げをしていただきたい。  そのような数字を言うと、むちゃな数字でないか、このようにお考えになるかもしれませんが、この点について、われわれがどのような考え方に基いてそのような数字を出したかと言いますと、第一点として戦前と比較したわけです。先ほど言いましたように、免税点が一千二百円、あるいは扶養家族控除が税額にしまして百円、勤労控除というものが一二%、そういうふうな数字というものを今日の物価にしますと、およそ五十万円以上になることは事実でございますし、また東京都の都労連で生活実態調査をやっているわけでございますが、標準家族の五人の場合について調べてみますと、生活費が最低四十五万円かかっているわけでございます。そういうふうに考えまして、この考え方をしたわけでございまして、ぜひこのたびの改正におきまして、参議院側におかれましては、そのような立場に立って、所得税というものを大幅に軽減していただきたい、特に賃金労働者の税金というものを大幅に引き下げていただきたい、このように考えておるわけでございます。  第二に法人税でございます。先ほど法人税について負担の公平を欠くという立場からいろいろ申し上げました。そこで、この法人税の改正について申し上げたいと思いますことは、一律四二%を四〇%に引き下げた、こういうところに問題点を持ちます。先ほど言いましたように、法人税についても、給与所得と同じように高度の累進性を持つべきでないが、なぜ法人税というものがそのような累進性を持たないで一律にしてあるのか、百万円の収入者も十億円の収入の者もみんな同じ税率であるということはなぜか、こういうことについては、私どもとしては、どうしても納得いたしかねるわけでございます。そこで、資本の蓄積、こういうことがいろいろと問題になるわけでございますけれども、資本の蓄積も、もちろんいろいろ考えられることでございましょうが、やはり先ほど言いましたように、最低生活費を守る、こういう立場に立って行くべきでないか。その考えに立つならば、法人税だけ一律にする、こういうことについての理論的根拠もわれわれとしては納得いたしかねるわけでございます。  次に租税特別措置法でございますが、本法のほかに、このような特別措置法を持つ、このようなととが租税体系上から見てどういうことなのか、こういうことについても一応法律的にも問題を持つわけでございますが、大体は時限立法でございます。そこで、この内容を見てみますと、配当所得とか預貯金というものが非常に大きな軽減をされている。先ほど、前の公述人の方が、利子所得の問題あるいは証券の問題、公社債の問題、いろいろと申されましたが、この点につきましては一応それらの方々の御意見もごもっともな点もございますけれども、先ほどから繰り返して申し上げておりますように、そういう利子を収入のもとにしておられる、あるいは貯金をされる、株式を買われる、というような人がわれわれ賃金労働者の場合に果してどの程度あるのか、こういうことをわれわれとしては考えてみるわけでございます。もちろんそのような金をいろいろと国家の大事な企業に利用する、こういうことも重要でございますけれども、一方、毎日、新聞で見ますように、生活苦のために自殺をしておる人がある、このような現実の中で、最低生活というものが利子というものよりも若干軽んぜられているんじゃないか、これは言い過ぎかもしれませんけれども、そのような考えさえ浮ぶほど、一方的に、利子とかそういうものを重視する、こういうことはなぜであるか、こういうことについてわれわれとしては納得行かないわけでございます。もしも、そのように産業を振興しようとするならば、そのような税制というようなことでなくて、もっと、ほかに財政政策としていろいろできないか、このように考えております。そのほか、輸出の問題についても、プラント輸出とか、あるいは、この輸出の問題についての税金というものを非常に軽くしてあるようでございますが、この点も今申し上げましたように、租税制度だけでもってこのように考えて、物価租税制度だけで引き下げて行く、これは必ずしもそればかりではありませんけれども、そこに大きな重点がある、こういうことについては問題があるわけでないかと、こういうふうに考えます。そのような立場に立ちまして、ぜひ法人税あるいはその他の租税特別措置法関係の租税につきましても御修正をしていただきたいと、このようにお願いするわけでございます。  次に、衆議院におけるところの自由党、民主党両党の修正案について一言申し上げたいと思うわけでございます。  第一点といたしまして、所得税法の一部を改正する法律案、すなわち寡婦控除であるとか、そういうふうな点について税額控除を引き上げる、こういう点につきましては、われわれとしては全面的に賛成するものでございます。遺族年金を受けられる方について七千円にする、これについても全く同感でございます。ただこの点、一般の寡婦の方、老年者についても、あまり遺族年金を受けられる方との間に差がないようにしていただきたいと、このように考えるわけでございます。次に法人税でございますが、自民両党の修正案におきましては、この法人税におきましては特に中小企業の税率を引き下げておる。この中小企業の税率を引き下げるということは、法人税というものの累進制をとるべきであるという立場に立ちますと、われわれとしては、この案については全面的に賛成であります。先ほど申し上げましたところの青色法人に対しますところの集中的な優遇措置というものも、この中小法人には、ほとんど優遇されておらないわけでございまして、この点、中小企業の税率を引き下げることにつきましては全面的に賛成いたすものでございますが、ただ、五十万円というような数字に限っていいかどうか、あるいは三五%というようなことが妥当かどうか、こういうことにつきましては、さらに中小企業の現在の企業の情勢にかんがみまして、よく中小企業の方々の御意見を聞いて考えていただきたいと、このように考えております。  それから第三番目に、租税特別措置法の問題ですが、清算所得の問題でございます。この点につきましては、あの修正案の限りにおいて、われわれとしても清算所得でございますので問題はないわけでございますが、清算所得が安いということから、そこに資本というものを逃避する、このようなことのないようにぜひ何らか措置をしていただきたいと思うわけであります。  第四番目に、最後に申し上げたいことは、租税特別措置法の問題で、概算所得控除選択的にあるわけでございます。これによりますと、雑損控除と医療控除と社会保険控除を引くか、あるいは自分の収入の五%を引くか、どちらかを選択してよろしい、こういうふうなことで、この点、所得税所得者に対して引いてやろうと、こういうところの御措置に対しては非常に感謝するわけでございますが、ただその方法につきまして、やはりこのようにお考えいただくならば、もっとわれわれがお願いするような方向にやっていただきたいと思うわけでございます。すなわち、この社会保険料と医療控除雑損控除を調べてみました場合に、一番私たちとして問題になりますのは社会保険料でございます。社会保険料は、現在、公務員の立場に立ちますと、恩給掛金等は共済組合でございますし、一般労働者の立場に立ちますと、健康保険と厚生年金でございます。これはいろいろと同じ公務員の中でも差があるわけでございますが、一般の公務員では大体本俸の四・五%ないし六%、これが普通でございます。この場合についても、まあ、たとえば五%として考えてみますと、二万円の収入の人では年間にすでに一万二千円になる。こういうことでございまして、非常に優遇のされ方が少いわけでございます。特に、共済組合関係の長期給付といいまして、一般の公務員の恩給に匹敵する部面ですが、この部面につきましては、共済組合としても掛金率が三・九%というように非常に多いわけでございます。先ほどの短期給付も、たとえば国税庁関係とかそういうところでは三・八%ぐらい取っておられるわけでありますが、合せまして約八%ぐらいを徴収されておる。ことに身分の不安定な雇用員の方々、そういう方が多く徴収されている。こういう現実からいいますと、そういう方々ほど社会保険の恩恵が少い。こういうことが指摘される一わけであります。また、健康保険とか、あるいはまた厚生年金についてもそうでございますが、だんだんと、今回の国会におきましても、この厚生年金の掛金も多くなっております。特に健康保険でございますが、健康保険の方も多くなっている。こういうような現実に立ちますと、やはりこのような制度につきましては、社会保険料というものをこの際選択控除の中から取り去っていただくか、あるいは、こういう制度というものを、抜本的に基礎控除の引き上げと、このような方向にしていただきたいと思うわけでございます。  最後に、時間が長くなって恐縮でございますが、配当控除の問題であります。前の公述人が、いろいろと利子所得との均衡上申されましたが、私も実は衆議院でも公述人になったわけでございますが、そのときにもいろいろの方からお聞きしたのですが、そのときの話では、まあ八十万円の配当金があっても、扶養家族が四人あれば全然税金を納めないでもいい、こういうお話を聞いたわけでございます。そこで私もいろいろと、そうであるかどうかを疑問に思ったわけでございますが、まあそれが事実かどうかは私はわかりませんけれども、もしもそのようなことが事実であるとするならば、これは大問題でございますし、事実でないにいたしましても、二五%あるいは改正案によりまして三〇%というふうに大幅に引き上げられておる、こういうものが、先ほど言いましたところの勤労控除、こういうものと比較いたしまして、やはり一方的な措置ではないか。もしも、ここのところを考慮いただくならば、この貯金もできない、あるいは株も買えないような人々の税額というものをまず第一に考えていただきたい。それから次に、このようなことについてもいろいろと考えていただきたい、このように考えておるわけでございます。また一回五千円に引き上げられる、こういうことでございますが、年に一回五千円ですと、先ほどのお話では一回のこともあるそうですが、二回ですと一万円でございますが、そういうようなことが自然に利子として出るような階層よりも、私は、要は、やはり、その日その日の米を考えている、翌日の米びつを考えている、このような方々の税というものをまず第一に取り上げたいということを繰り返しお願いいたしまして、このような方向でぜひ参議院では御検討いただき、修正していただきたい、このように考えます。  長時間御清聴ありがとうございました。
  78. 青木一男

    委員長青木一男君) 公述人に対して何か御質疑でもありましたら……。
  79. 小林政夫

    ○小林政夫君 公述人議論するつもりはございませんが、ただ、私の問題と思っていることだけを申しますが、あなたの今の所論を聞いておると、法人税というものに対する考え方、いわゆる実在説なのか、あるいは擬制説なのか、こういう法人税理論の問題で、現行の税制についての多少誤解があるのではないか。今の配当控除の問題にいたしましても、その理論からくるところの帰結であって、法人税制自体について、もう少し、まあ、はなはだ失礼な言い方だけれども、現行の研究をしていただいて、それからお考えを願いたいと思います。  それから、減税割合が、低額所得階層と、上の人たちの間において、金額的にむしろ上の方に厚い、今数字を述べられたのをはっきり記憶しておりませんが、そういう御所論があったようでありますが、私の計算するところでは、午前中もある人に申し上げたのですが、扶養人員を含めて、日本の全人口の中で、納税階層というのは三七・六%、国税を納めている者が……。そういうことで、減税の問題で解決のつく階層と、そうでない、いかに減税をしてもその減税の恩典に浴さない階層の方が多い、こういう点。この点は社会保障制度の強化に待たなければならぬと思いますが、その減税のみで解決のつかない階層の方が非常に多い。こういう点をも含めて今後お考えをわずらわしたいと思います。
  80. 笹川運平

    公述人(笹川運平君) 法人税について研究しろ、こういうことでございますので、われわれも大いに研究してみなければならぬと思いますが、ただここで申し上げたいと思いますととは、大蔵委員会あたりで、労働組合を代表してこのように税制についての御要望を申し上げる、こういうことは今までもあまりなかったのではないか。なぜ私たちがこのような場所に出ざるを得なかったか、こういうことについてもまあお考えいただきたいと思うわけでございます。私たち終戦以来幾たびかベース・アップをお願いしてきて、なってきた。ところが、気がついてみたら、それの内容というものは、給与をもらってみれば、皆税金になっておる。それで夏季手当、今回もらうわけになったわけですけれども、夏季手当をもらっても、まず税金のことが心配になる。こういう現実に立ちますと、やはり税金のことを真剣に考えざるを得ない。ところが税制を一旦突っ込んで言いますと、そういうおしかりを受けたわけでありますけれども、法人税については率直に言っていろいろ問題点がある。もしわれわれに研究の足りない点がございましたら、この点は国会議員の方々にお願いしたいことは、十分に国民に、法人税というものはこのように一律にして四二%にすること、あるいは三五%とか、四〇%にすることが妥当なんだ、こういうことをよく教えていただきたい、こう思うわけでございます。そうでないと、その誤解というものがますます大きなしわ寄せになって、この方にゆくのではないか、こういうことを私たちの国会議員に対するお願いとしてお願いしたいと思うわけでございます。  次に減税できない層の問題でありますが、この点については私たちも全く今のお考えに御同感申し上げたいと思うわけでございますが、この点につきましては減税だけでは絶対に解決できません。やはり社会保障という面を大きく取り上げていただきたい。この点につきましては、この減税をお考えいただくと同時に、この面を考えた広範な低所得者というものの救助、あるいはその人たちの最低生活の確保ということに、国会議員の方々からもさらに御尽力をいただきたい、このように考えております。
  81. 山本米治

    ○山本米治君 先ほどの公述の御趣旨は、まず第一に税金が高いということ、これは戦前と比べても高い、諸外国に比べても高いということ、それからまた租税負担の不公平があるということ、これはある程度お説の通りと思っておりますが、戦前に対して税金が高い、だから戦前並みというか何か、先ほど最低生活費に相当するような二十四万円といろ数字は、これはまだきまった数字ではないでしょうが、そういうものは無税にしろとか、あるいは基礎控除についても相当大きな金額、戦前からみて非常に高いから、そういうものをもっと大幅に下げろというお話しでしたが、われわれも税金の高いことを認めます。はっきり認めます。それから納税者が非常に多くなっていることも認めますが、これは敗戦という事実をどうお考えになるかどうかですね。われわれが戦争に敗けておらずに、朝鮮、台湾、満洲も持っておった。それが、しかも、この四つの島に、また外地に行った者もみな引き揚げてきて、人口が非常に多くなってきて、戦争でみんなわれわれは貧乏になってしまったわけです。それを戦争に敗けない前の状態に返すということが不可能じゃないかと思うわけなんです。非常に領土、資源がもともと少いやつが、さらに小さくなった。人口が多くなった。そこへ今度税金の問題は歳出とからむわけですが、歳出がうんと削れるか。一兆億を、たとえば七千億、五千億に削れるかというと、これはなかなかできないのです。まあ社会党、特に左派の方なんぞは、いわゆる防衛力の金を全部削ったら費用が出るということは、いつでも予算の逃げ口というか、口実になっているが、これはまた、この防衛費の問題については根本的な大きな問題で、これは立場々々で考え方が違うでしょうが、そういう意味で、われわれは戦前のような税金にするということは不可能だと思っておるのですが、この点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  82. 笹川運平

    公述人(笹川運平君) 今の御質問にお答えいたします。まず敗戦という事実についてはどのように考えているか、こういうことでございます。われわれもむろん敗戦という事実は冷厳な事実だ、その結果、国土が非常に荒廃した、こういうことも率直に認めております。そこで、その事実は認めておるし、そのために生活費というものが切り下げられるだろう、国民がそのためにある程度働かなければならない、また国民所得というものがある程度切り下げられる、こういうことの事実というものも認めるわけです。しかしながら、だからといって、最低生活費も、人間としての最低生活費というものも、敗けたからといって確保されないということが、こういうことが政治としてあり得ることだろうか、こういうことをまず考えているわけです。それから、現在まあ敗戦という事実はわれわれ率直に認めても、私は出身はいなかの方なんで、現在東京に来ているわけですが、東京へ来てみまして、まあ、この大きなビルディングが大きな会社によってどんどん建てられている。私はそれをひがむわけでもないし、これを問題にするわけでもございません。しかし、その事実と、私どもの草深いいなかにおける生活において、その人たちが本当にじりじりとした生活をやっている。やはりその中に、敗戦という現実に立ちながらも、やはり富というものが不均衡になっているのではないか、こういうものが税制の面からみても不均衡になっているんじゃないか、こういうことを、われわれは理由を申し上げればまたお叱りを受けるかもしれませんけれども、実感としてこれはいかに説明されてもやはり来るわけであります。そこで、先ほど言いましたように、最低生活というものを確保するように政治上考えていただきたいということ、そうして、その場合に、国の復興という場合に、あまりにも一方に犠牲の出るようなことのないような方向で、この政治というものをやっていただきたい。税金制度というものも、その制度から一方的な犠牲が生まれるものではないと思います。かように考えております。  次に、戦前と比較して同じものを要求することは無理じゃないか、こういう御質問があるわけです。この点、先ほど社会党左派の政策の問題にもからんでお話があったわけでございますが、この点は、私たちが戦前と、昭和十一年と比較してやったわけでございますが、この計算によりますと、大体所得税だけの減税が約千五百億円と私たちは推算しておるわけです。そこで千五百億円になりますと非常に減額になって、国の政策が成り立たんのではないか、こういうことを考えるわけですが、またお叱りを受けるかもしれませんが、率直に言って、先ほどの法人税の特殊の優遇措置というものに私たちは問題を持っておる、こういうものが約六百億もある。そうして、こういうものに対して高度の累進制をとる。それから奢侈品に対しては税金をかける、こういう立場に立ちますと、およそ九百億円ないし一千億円程度を課税されるんじゃないか。そうすると政府は約五百億の減税ということを公約において叫ばれ、自由党の方々は一千億の減税ということを叫ばれましたので、ある程度のことは大体御了解いただけるんじゃないか、こういうことに、非常に手前みそな考えかもしれませんけれども、持っておるわけであります。そういう点で、必ずしも戦前と同じということでないかもしれませんが、現在の国家財政の中でもできることではないか、こう考えて、そういう数字を出したわけであります。
  83. 山本米治

    ○山本米治君 いや、お考え方はよくわかりますし、私、また議論するつもりもないのですが、私は敗戦という事実を考えて、戦前と同じ生活をするということは、これはいかなる意味でもむずかしいと思うのです。それから最低生活を保障しなければならん、政治としてはそうなければならんということもお説の通りだと思うのです。憲法にも、文化的な生活を営む権利を国民は有しておるわけなんですが、そこで、最低生活は何だということは、また非常にむずかしい問題なわけですが、遺憾ながら最低生活に達しない人が多いわけです。税金の問題とからんで先ほど小林委員が言われた通り減税が幾らかもそれに引っかかるもののない縁なき衆生がいるわけです。それは大いに社会保障を充実してそういう人を救わなければならないわけですが、また同じ勤労階級の中でも、非常に組合でもって勢力を団結せられて、それでベース・アップなどということをやっておられる、これもまた結構なことでありますが、一面また日本の全体の情勢を見ますと、今の減税をしても恩典にもあずからない、減税どころでは、その日のめしが喰って行かれないというような人からは、皆さんの行動に対してやはり相当批判的な部分もあるでしょう。たとえば農民がその一つの階層だと思うのですが、われわれは八時間労働も何にもないんだ、極端に言えば二十四時間働いているんだ、そうしてわれわれは大していい生活もできない、あるいはまた同じ勤労者の中でも、組織されてない、特に日雇い労働者などというものは、今の大きな組織労働者の賃上げ要求に対して必ずしも好感を持っておられない節があるようにわれわれも認めておるのですが、そういう意味で、政治はなかなか、なすべき問題が山ほどあります。ありますが今そこで簡単に質問だけをしますと、今、だいぶ法人税の方の問題が先ほど小林委員も指摘されたように誤解があるんじゃないかと思うのですが、そのことを別としまして、租税の特別措置というやつです。これは何十本と出ておるわけです。そうしてこれは、そのつど、むろん国会の議決を経て法律になっておるわけですが、たとえば輸出増進のための特別措置というものもありますし、あるいは産業合理化のための特別措置もありますが、そういうものがあるがために、大法人は法人税四二%、従来の税率四二%といいながら、あるいは三割五分であり、三割であり、あるいは三割以下といわれているのですが、特別措置というものは不必要とお考えになっておりますか。たとえば輸出増進のための特別措置がありますが、輸出増進ということは不必要とお考えになりますか。あるいは資本蓄積ということはあまり大して重要でないとお考えになりますか。こういう点をお伺いしたいと思います。これは全部特別措置にひっかかる問題であります。
  84. 笹川運平

    公述人(笹川運平君) 最初に、非常に食べられない層が組織労働者とかあるいは官公庁の労働組合に対して批判をもっておる、こういうお話しでございました。私はそういう方もあるのじゃないかと思いますが、同時に、私たちとしては、そういう事実は非常にさびしいことと思うのです。労働組合として働いている人たちに、同じく働いている人たちが恨みを持つとか、私たちはそういう方と話しをして、そういう方々の生活というものが常に最低生活というものが維持されるように、何とか政治の力というものを発揮していただきたい、こういうことをぜひ国会議員の方々に国の政治の方向としてお願いするわけであります。私たちもまたそういう労働組合の方と話をしまして、そういう方向にぜひいくように、また一緒に手をとり合っていきたい、こう考えます。  それから租税の特別措置でございますが、輸出の増進でございますが、われわれも、日本の国が現在の中から国力を大いに増進していくためには、ぜひ輸出というものを増していかなければならぬ、こういうことについては全く同感です。ただその場合に、このように措置法の中にありますと、私は税金のことはよくわからぬのですけれども、八〇%ですか控除になる。そうすると、これは国内ではほとんどないわけです。利子所得免税になったものがありますけれども、国内向けにはそういうことにはならない。そういうような方向も一つの重要な方向でしょうけれども、そういう方向だけでもって、そういう方向に重点を置くことによってのみ、この輸出の振興をやるということが、ほんとうに妥当なのか、こういう点については疑念を持つわけであります。ここで財政政策として、税金というものは、少くとも負担というものをできるだけ軽くするという意味に立って均衡にやっていただいて、その他は、国会内部において、国民の代表の皆さんの方で、財政政策として、こちらの方に対してはこれだけ援助するとか、こういうふうにやっていただくことが方向でないか、こう思うわけです。だからといって、税金による方向は絶対いけないというのではないのです。その他のことも総合的に考えていただきたい。  それから資本蓄積でございますが、日本が先ほど申し上げましたように、敗戦という冷酷な現実の前に立ちまして、非常に底の浅い経済の上に立っておる、こういう立場に立って資本蓄積をしなければならぬ。こういうことについては私たちもわかる。そこで先ほどから何回も申し上げますように、資本蓄積と国民の最低生活というものをどのように考うべきか。資本蓄積も大事だ。最低生活も大事だ。その場合、やはりわれわれとしては、ある程度この最低生活というものをまず考えていただいて、そして、少しでも余裕のある人は資本蓄積の方向に、むだ使いをすることなくやっていくべきではなかろうかと考えております。その場合、資本蓄積をすることが国民大多数の働いておる人たちの犠牲においてやることでなく、みなが手をとっての犠牲の上に立つならば、それはまた了解できますが、いろいろの法律によりまして犠牲というものが一方に片寄らないようにしていただきたい。これが私たちのお願いなのです。こういうことを一つ御了解いただきたい。
  85. 山本米治

    ○山本米治君 われわれは今まで租税特別措置というものを非常にやって、これは税制として複雑であるから単一化しろということは、かねがね政府当局に言っておるのですが、今までやった租税特別措置は、一々についてわれわれやはり理由があって国会を通って来たわけであります。それで大法人の実効税率が、表面四二%になっておりますが、それよりも低くなるかと思います。そのうちの一部は、つまり一部の準備金というものは、将来払う場合に税金として出すのです。つまり今払う税金を将来に延ばすというだけの話で、それだけ実質的に軽くなっておるのではないという面が一つあります。それからただいま申しましたように、輸出なら輸出のために、これは輸出をやらなければ日本は食っていけない国柄だから輸出をやっております。あるいは産業の合理化、産業の近代化のために、ある種の機械を買った場合に償却期間を短かくする、あるいは初年度五割の償却という思い切った処置をやっております。これもそういうようなハイカラな機械を買うことのないような中小法人等とは不均衡だということは言われます。その不均衡をわれわれは忍んで、やはり産業を合理化し、近代化するということは、日本のコストの引き下げ、輸出増進のために必要だというのでやってきておるわけであります。これらの租税特別措置は非常に複雑になっておりますが、われわれは一々について必要として今日まで積み上げておる。その結果、非常に複雑になっておりますが、そういうことで大法人が非常に税金の優遇を受けておる。私は、私個人のことを言う必要もないが、今まで資本家であったことは一ぺんもない。今までずっと月給取りとしてやってきたわけであります。大資本家、大企業を優遇するという意味では全然ない。そういう立場から、国家の経済力を伸ばし、国家の経済基礎を培養するという意味から、一々これに賛成して来たわけであります。  それから法人税の一律はおかしいというお話、それから今の三五%になったのはその意味からけっこうだと思いますが、三五%も大蔵省などはずいぶん租税理論から反対しておったのです。そういう意味で、少しこの税制に対して何か偏見というとおかしいが、まだ全般的の御研究が足りないのではないかと思います。私はこれで打ち切ります。
  86. 青木一男

    委員長青木一男君) 本日の公聴会はこれにて打ち切ります。    午後四時十八分散会