○
政府委員(
塩見友之助君) 現在の繭糸
価格安定法は生糸の輸出増進と蚕糸業の経営安定を
目的として制定されましたもので、生糸の
価格を安定帯、すなわち最高
価格と最低
価格の間に維持することを建前としております。ところが本法の施行以後の経緯にかんがみますと、出発当初
政府が手持ち生糸なしで出発いたしましたために、二十七年と二十八年の両生糸年度におきまして最高
価格をはるかに突破する、禁止
価格をも突破するという
ような
事態を生じたのでございます。これでは本来の
目的である海外の生糸の需要者のための最高
価格の安定というふうな点に欠けるところがございます。これに対しまして現在の
法律は
国内の生糸も輸出の生糸もそれを一本にして
価格の安定をはかろうというふうな
考え方で立っておりますが、現在の
ように繭の生産も少く、また糸の方も年度末になりますると不足するというふうな
事態のもとでは、輸出の生糸について一段と強めた
価格安定
措置を実施してもいいのではないかというふうな
考え方が成り立つわけでございます。民間においてもそれを非常に要望しておりますし、海外においてもその要望は強いわけでございますので、輸出増進に資することができます
ように、
政府におきまして輸出適格生糸というものを現在の生糸の中でよりすぐりまして、それを決定いたしまして、輸出適格の生糸につきましては、
国内用の生糸と違いまして特別の
価格でもって買い入れ得るというふうな方法をとったわけでございます。
それから
現行法では生糸の
価格を安定帯の中で維持することによりまして、原料繭の
価格も自然に安定できるといろ
考え方をとっております。養蚕農民の経営安定のために直接
関係あるととろの繭の値段につきましては、ただ、
政府が繭価の低落防止のために、非常
事態においては必要な
措置が講ぜられるという抽象的な文句があるだけでありまして、それの具体的な方法については何ら明確な
規定がなかったわけでございます。それに対しまして明確な
規定をおきまして、これに基くところの
措置によりまして、現在繭も糸も不足している、また海外の要望にこたえられない
ような状態にあるというふうなこれを救いまして、最低の繭価を維持しまして、それで養蚕農家が増産に進める
ようにいたしたいというのが第二のねらいでございます。
法案の
内容についてちょっと概略を御説明申し上げますと、第一は、
政府は最高
価格によりまして売り渡す生糸としまして輸出適格生糸を保有する必要がある場合は、最低
価格を越える
価格で買い入れることができるということにしたわけでございます。
現行法で今年の最低糸価は十九万円になっておりますが、アメリカの方ではもう少し高い値で、すなわち四ドル五十セント、
日本の
価格にいたしますれば、大体二十万円というふうなところならば十分買い得るというふうな状態でございますので、特に指定しましたところの輸出適格生糸については最低
価格を越える
価格で買い入れるということができる
ようにいたしたわけでございます。もちろんその場合でも
政府が買いますのに糸価に非常に悪
影響を及ぼす
ような方法であってはならないわけでございまして、その買い入れ方法としましては、あらかじめ農林大臣の指定する者が農林大臣の定める
条件に従って保管した輸出適格生糸のうちで一定の保管期間を経過したものを
政府が買い入れるということで、その買い入れ契約を結ぶごとができることにいたしたわけでございます。この方法による買い入れは、当然輸出確保のための必要保有量に限定すべきものでありまして、
国内の糸価及び海外市場の糸価両方を操作するために必要な量はまあ要らないわけでございまするので、買い入れ限度を
政令をもって限定いたすというふうに
考えておりまして、現在の状態では大体一ヵ月あまりの分をこれによって持てればいいんではないかというふうに
考えて、概略大蔵省の方では一万俵見当を予定しておるわけでございます。あるいはその場合にすでに
政府が最低
価格を維持するために買い入れた生糸とか、あるいは繭の値段を維持するための繭の買い入れをやって委託加工あるいは交換というものによって
政府が持っておりました糸の中で、それで輸出適格生糸がございますれば、その分はその数量の中から差し引いて買い入れができるということにしたわけでございます。で、現在特別会計がございまするが、特別会計で直接市場から買うということは非常に困難でございます、市価に悪
影響癒しに。昔何回かこういう糸を
政府が持ちました例がございまするが、その際は常に民間のこういう種類の値が落ちた場合にそれを大体保管するとか買い取るとかいう会社ができまして、その会社が一定量保有し、それをもし持ち切ることができなくなった場合に、
政府が買い入れたという形態をとっておりましたが、この
法律ができましたときには、特別会計だけがございまして、そういう形態はないわけでございます。十九万円の値段では、ここ数年間の経費では、
政府がそれだけの資力をもって買い入れをするという態勢を整えておりますると、常に十九万までは下らないで、二十万円をちょっと下って十九万に近づきますと、大体半月以内には戻ってしまうという状態になって、上値押えの生糸は非常に買いにくいというわけで今般その道を開いたと、こういう形になっておるわけであります。すなわち特別会計とそういうふうな民間の買い入れ機関という二段がまえにならないと、
政府が直接市場から買い付けるということではどうしても悪
影響があるわけでございます。
それから第二に、
政府の手持生糸の数量が生糸の
価格の異常な騰貴を防止するに必要な数量をこえる
ような場合が起りました場合に、その超過数量につきましては、最高
価格でなくても、時価によって売り渡すととができるということにいたしたわけであります。今般はそういう輸出適格生糸の買い入れであるとか、あるいは最低繭価の保障のために、繭の不当取引という
ようなことが行われますので、
政府としては
相当の数量を持つことが見込まれるわけでございまして、この会計で上値押えに必要な数量以上を持つ必要はないわけでございまするので、余剰分は最高
価格でなくても売り渡せるということにしたわけでございます。ただしこの場合に、この売り渡しによって糸価を不当に圧迫するということは
考えなければならないことでございまするので、その売り渡しは生糸の市場
価格がその生糸の生産費をこえている場合だけに限ったわけでございまして、また売り方も一度に多量に市場に売り出すということは慎しまなければならないので、分割売りその他時価に悪
影響を及ぼさない方法によるというふうなことで制限をしているわけであります。
それから第三は、繭値維持のための具体的の
措置を定めたことでございます。繭の
価格が生糸の最低
価格に見合う
価格、すなわち最近繭価以下に下る
ようなおそれがあります場合に、これは昔たびたびあったわけでございまするが、そういう場合におきましては、農林大臣の指定いたしまするところの農業
協同組合連合会があらかじめ農林大臣の承認を得まして、繭の出回り調節によるところの最低繭価維持のために自主的に保管をしたときに、保管に要する経費について糸価安定特別会計から補助金を交付することができるということにしたわけでございます。この
ような、繭が非常に大量に出回って、それで値段が崩れるということでございまするので、この数量等は一部のものを共同保管して
相当長期間保管いたしますれば、ほかの繭価は最低原価維持の
目的を達成することができる
ようにはなるだろうということで、こういうふうに
考えて、一部を共同保管するという
考え方であります。保管した繭を一定期間中には最低繭価以上の
価格で売り渡すことができないという場合もございます。その共同保管した繭につきましては、そういうふうに最低
価格で売れないという場合に、
政府が買い上げてやるという
措置がございませんと、農業団体の方も
相当な危険がございまするので、共同保管になかなか入りにくいというのが
国会等の強い御
意見でもございましたので、その部分につきましては、
政府が保管繭を買い入れるということをいたしたわけでございます。
第四は、
政府がそういうふうに保有する繭がございますが、この繭の処分といたしまして、売り渡し加工あるいは生糸の交換という
規定を設けたわけでございます。
政府が買い上げました繭につきましては、農業団体が一定期間持ちまして、そのあとでございまするから、それからあとは長期の保管には堪えない状態にあるわけでございます。これを一時に売り渡すことによって繭の
価格に悪
影響を及ぼすことも避けなければなりません。そういう状態でございますので、これは生糸に加工して保有するとかあるいは生糸の交換というふうな道も開きましたわけでございます。繭が売れる
ような状態であれば、農業団体の方は
政府の方へ必ずしも売ってこないわけでございまするので、どうしても委託加工であるとか、生糸の交換であるとかいう
ような方法を講じなければならない、こういう状態にあるわけであります。
第五は、
政府が生糸の買い入れ契約とか繭の買い入れ契約あるいは補助金の交付契約をする場合におきまして、その金額に限度を設けたことでございます。これによりまして
政府が契約することのできる額の総計は、糸価安定特別会計における収納済みの歳入額と借入金の限度の総計をこえてはならないということになっておるわけであります。
以上申し上げましたところが、今般の
法律改正の要点でございまして、これが御協賛を得ますれば、生糸の輸出振興と蚕糸業経営安定というふうな点で、多大の効果があると存じております。
大体概略御説明申し上げました。
――
―――――――――――