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菊川孝夫君 私はただいま議題になりました三案につきまして
反対するものであります。
反対理由の第一は現在の税体系があまりにも複雑過ぎるからもっと簡素化するようにせよということは、いつも税法改正案が当
委員会にかかる際に、各
委員から、これはもう保守党、あるいはわれわれの革進派といいますか、どの党派を問わず、強く要望されるところであり、主税当局におきましても、その要望にこたえて、次の機会にはなるべく検討する、あるいは次には検討するという御
答弁がございます。きょうも
大蔵大臣からも複雑過ぎるということにつきましては、大臣みずからも十分お認めになっておる。にもかかわらず、だんだんと複雑化してゆく、簡素化してゆくどころか、複雑化してゆく、従いましてすみやかに、これは
大蔵大臣は新たに就任された今度の大きな
一つの事業としてこの問題と取り組んでもらいたい、われわれはこういう要望を強く持っておるわけでございます。従いまして第一点として複雑過ぎるものを、さらに複雑化しつつあるという
意味におきまして
反対いたすものであります。
それから第二の
反対理由は、租税公平の原則がどうも薄らいでいっておるということは、先ほどからの
質疑応答、本法案
審議に当っての
質疑応答を通じまして、明らかにわれわれの
意思はおわかりになったと思うのでありますが、特に
大蔵大臣はわれわれが
質問いたしますと、いかにもその
考えは同じようだというようなことを述べられましたけれども、はからずも口をすべらして出た
大蔵大臣の口の下から、預金
利子は勤労所得だというふうな見方をしておられる発言をされたのでありますが、これは
衆議院において、仮にそんな発言をされたとするならば、失言問題でこれはごめんなさいをやらなければならない。ごめんなさい内閣が
一つごめんなさいを加えなければならないと思うのですが、そういう感覚で、預金
利子所得が勤労所得だというような感覚でもって
——これは速記を
あとで調べればわかるが確かに言っておる。あるいは重役と守衛とが同じような水準になっておる、こういう感覚でもって今回の税制改正と取り組まれたとするならば、われわれとしてはまことにこれは心外の至りだと思います。従いまして公平の原則を失しておるという一、二の例をあげてみたいと思うのです。
それは第一に期末手当の五千円についてはせめてこれは免税にしたらどうかという強い要求がありまして、院外の要求もあり、これは民主党のかつての改進党時代にも案件としてわれわれと話し合ったのでありますが、次期の議会においては必ず実現するからといっておったんであります。今回の税制改正においても取り上げられておらないにもかかわらず、反面におきましては配当所得に対しての税務署に対する申告は五千円、一回に限り五千円、これも一社、一社五千円でありますから、百社持っておって、五千円ずつどの会社の株も配当収入が入るようにいたしておったら、これは税務署に捕捉されない。これはもうはっきり言いますと、税金をのがれるには、こういう途があるぞといって教えてくれるようなものであります。これは決して免税ということはうたっておりませんけれども、実質的に税金をのがれる途を教えておるようなものだ、こういう
措置が講ぜられておる。また夜遅く勤務するものにつきまして、たとえば病院の看護婦であるとかあるいは警察官であるとか、鉄道の
職員であるとかあるいは電話の交換手であるとかいうような人は深夜にわたって作業をいたします。深夜作業をやる者につきましては、これはどうしましても夜は一食ずつ余分にめしを食わなきゃならぬ。農家は農繁期におきましては四食、五食を食べますように、深夜作業を行う労働者につきましてはどうしても四食分、そういう夜一ぺん余分に食う食糧分として夜勤加給というものが支給されているんであります。これらについては夜の一ぺんのうどん代くらいは免税にしたらどうか。これまでもつかまえて税金をかける必要はないんじゃないか。この問題につきましては、過般の税制改正の際にも、主税当局においても十分考慮をしよう、検討をしようということを約束をされました。だからこの税制改正においてはそのくらいのことは配慮をされているんだろうと
考えておったところが、そういう配慮はされておらないにもかかわらず、反面におきましては、今度は配当控除につきましては、もうかねがね申し上げましたように一千万円持って寝ている人は一文も税金がかからない。今度は現行法にさらに輪をかけて、これはもう一千二百万円くらいの株券を現在持って寝ておっても一銭も税金がかからない。ところが弁当を持って通って家族を養っておる者は、これに対して二十万なり二十一万の税金を取られる。こういうような点につきまして、われわれは公平の原則は完全に失われておりまして、ときの権力につながる方面には非常に減税の恩典が厚く与えられておる。なるほど今回の自民の修正によりまして出されましたのは、寡婦控除であるとか勤労学生の控除ということについては配慮されておりますが、これは名目的な、株式所得やあるいは
利子所得にのみ厚くして勤労所得に対しては全然考慮されないということは、幾ら何でも世間の通りが悪いからというので、カムフラージュをするために、一番影響の少いところの寡婦控除であるとか勤労学生控除というところに、ちょっぴりと色を示したということについては、われわれとしては絶対に納得できないのであります。
それからもう一点私たちとして非常に不明朗なものを持っておるわけであります。今度の特に修正案、
衆議院から送付された修正案を
大蔵大臣はいいものとして、現在の情勢上いいものとして、これは推した、こう言っているでありますから、
大蔵大臣に責任があると思う。で、一萬田
大蔵大臣は長い間
日本銀行総裁として、その敏腕をうたわれまして、俗に
日本の法王だと言われるくらいまでに令名をはせられた。従って金融界については非常に温かい配慮がされておるということは、今度の税制改正に当りましても、銀行の預金がふえるように
一つ預金の
利子は免税と、こういう大英断を下されまして、今回の税制改正に出しておられる。まことにこれは勤労所得だというような
考え方からお出しになったかもしれないが、こういう大英断をふるわれて出したのでありますが、しかしながら、待ち受けておったものは
衆議院の百八十五名の少数でありまして、自由党はそうはいかん、と。そこでここで俗に言われまする、私は何べんも
質疑応答の際にも繰り返しましたけれども、金融の方ではさすがに法王の威力には及ばぬが、証券界はこっちのものだぞというので、証券界の要望をいれまして、配当控除の引き上げ、それから配当所得に対する申告の
限度を引き上げる、こういうようなことで勤労者の方には考慮をされずに、不労所得に対しましては修正に大きな考慮をされまして、そうして修正案として回ってきている。こんな修正がされるのであったならば、私は夏季手当の免税、ある
程度の五千円くらいの免税、あるいは夜勤食糧に対しまして、せめてうどんの一ぱい代ぐらいは免税
措置を講ずる。こういう配慮がされて、そうしてさらにそれでも余裕があるということで、次には預金の
利子の免税、あるいは配当控除の引き上げということになって、両々相待ってくるならば、納得ができるのでありますが、一方において長年の強い要望で主税当局も考慮をすると約束せられているものが考慮されずに、そうしてしかも今まではこんなことは夢にも、こんな配当控除の引き上げということは今までにこの
委員会におきましても要望事項として上ったことはございません。一ぺんもそんな議論が吐かれたことを今日まで聞いておりません。そんなものが突然出て参りまして、勤労者の方の減税問題についてはあまり考慮はされていない。もちろん言いわけ的にはされていますが、されていないということについて、公平の原則を失するという点から
反対する次第であります。
次に、
租税特別措置法につきましては、なるほど法人税の現行税率は四二%でありますけれども、あの三五%から四二%に上げると同時に
租税特別措置法という複雑怪奇な
法律をますます複雑にいたしまして、そうして大法人の諸積立金等に対しまして優遇処置を講じまして、実質的な税率というものは二五%くらいになっている。これはいろいろ見方がございますが、実質的には税率は二五%になっているんじゃないか、こういうようなことをやっておいて、さらに今度は
——この四二%に引き上げをするに当りましても、実は主税当局が強くこの四二%に引き上げるべきだ、どうしても引き上げなければならぬといって引き上げた。それがいつの間にやら今度はそういうことはすぐ忘れてしまったかのように、ちょっとした経済の情勢の変動がありますると、すぐこういうふうに減税をする。減税をするならば、
租税特別措置法でしたところの優遇についてももっと配慮をいたしまして、何らかの均衡を失しないように、これについても斧鉞を加えなければならぬと思うのですが、それらについては斧鉞を加えていない。こういう点から
考えましても、今回の税制改正案がまことに、
大蔵大臣がはしなくも漏らされましたように、政治力が弱いからやむを得んと言っておりますけれども、まことにどこに重点があるかまさしく自由党が証券界を背景に、そうして民主党は金融界を背景に取り組んだ
一つの妥協的な、まことにわれわれとしては納得できない修正案であり、それから税制改正案
そのものが公平の原則を失するところに、さらに輪をかけたこういう修正案に修正されまして回付されましたこの三案については、われわれは絶対に賛成することはできない。
社会党を代表いたしまして強く
反対の
意思表示をいたしまして、次期改正に当りましては、簡素化すると同時に、もっと公平の原則を打ち立てられまして、すみやかに次期機会には正しい
意味の税制改正案を提出されることを強く要望いたしまして、本案に
反対の
意思表示をいたします。