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説明員(白石正雄君)
所得税法の一部を改正する
法律案、
法人税法の一部を改正する
法律案、
租税特別措置法等の一部を改正する
法律案に対しまする修正案の内容につきまして、便宜私から御
説明を申し上げます。
所得税法の一部を改正する
法律案に対しまする修正案でございますが、これは十五条の二から十五条の五までにつきまして
所要の改正をしております。十五条の二は御
承知のように不具者控除の裁定でございます。十五条の三は老年者控除の規定でございます。十五条の四は寡婦控除の規定でございます。十五条の五は勤労学生控除の規定でございます。これらは現在四千円に相なっておりますが、これを千円上げまして五千円にしようとしておるわけでございます。それから、これらの控除のうちに遺族等援護法二十三条の規定によって遺族年金を受ける者、それから遺族等援護法第七条の規定によりまして障害年金を受ける者、これらにつきましては現在六千円ということに相なっております。これも同じように千円を引き上げるということで七千円に改めるというのが修正案の内容でございます。これらの税額控除は、これは二十七年に設けられましてから、従来は所得控除でございました、税額控除に直りまして、それ以来四千円で現在まで据え置きになっておったわけでございます。所得控除は、御
承知のように、所得控除額を引き上げますと、累進税率の高い方の適用を受けるところの人の方が、低い人よりも、所得控除を引き上げた場合におきまして多くの減税を受けるというようなことに相なるわけでございます。税額控除の方はどのお方に対しましても同じ税金を引きますので、いわば低額者の方に、一般の累進税率の考え方からいたしますと、低額者の方に所得控除の場合よりも有利になる、かような考え方ができるわけでございまして、そういう意味におきまして、これらの寡婦控除や勤労学生控除、老年控除というような控除は、低額者の控除という点から考えられておるという意味で、税額控除にしてあるのであると、私
ども解釈しておるわけでございますが、そういたしますと、所得控除が引上げられまして、あるいは税率が軽減せられまして一般に減税が行われますと、税額控除自体は何ら変らないといたしましても、実質的には税額控除が引き上げられたと同じような作用を及ぼす、こういうような意味で、従来減税が行われたにもかかわらず、税額控除の方は据え置かれておったというように考えておるわけでございます。しかし寡婦控除等、特に低額者の所得税を軽減するというような趣旨で、今回の修正案におきましてはかような改正がなされたものと私
どもは
承知しておるわけでございます。
それから次に横書きでいろいろと修正いたしてありますのは、これは今の額の改正に伴いまして、別表の方の月額表その他の表につきましてもそれに伴いました
数字の改正がなされておるわけでございます。最後の方に、「附則第八項第一号中「同年分の所得税額の計算上控除した」を「同年分の所得税額の算出の基礎となった事実に基き新法の規定により計算した」に改める。」となっておりまするのは、これは改正後の額を予定納税基準額につきましても及ぼすというような意味におきまして改正がなされておるわけでございます。
次は
法人税法の一部を改正する
法律案に対しまする修正でございますが、これは御
承知のように、法人所得年五十万円以下につきまして三五%の軽減税率を設けようとするのが主眼になっておるわけでございますが、まず第一に、十条の三第一項の、いわゆる
外国税額の控除につきまして修正がなされておりまするのは、今までは法人税率が一本でございましたので、
外国税額を控除するという場合におきましては、所得の按分で、全体の所得の中におきまして、
外国から源泉が生じた、こういう所得の占める率によりまして一応出しまして、そうしてそれに対応する税額を引く、かような規定でよかったわけでございますが、税率が二本になりますと、その
外国から源泉が生じた所得に対応する税額といいますものがどの税率ではじくかという疑問が出てくるわけでございます。まあ、よくよく考えてみれば、それは按分で、三五になった
部分と四〇になった
部分とを計算いたしまして算出するということになるだろうと思いますけれ
ども、規定上いささか疑問が生じてくる可能性もございますので、今回その点を、全体の税金を出しまして、そうして税金を所得の方の按分で出しまして、そうして
外国の税額を引くというように、はっきりさしたというのがこの改正でございます。それから十七条の改正に関する
部分の修正でございますが、これは百分の三十五の税率を百分の三十にすると、こうなっておりまするのは、これはいわゆる公益法人、それら特別の法人
——第五条に、民法三十四条の規定により
設立しました公益法人その他のいわゆる公益法人の規定がございます。それから第九条の六項に、農業協同組合その他のいわゆる特別法人の規定がございます。これらはいずれも現在三十五に税率がなっておるわけでございますが、これにつきましては、今回小法人の、いわば低額五十万円以下が三十五に引き下がるという点と権衡をとりまして、三十五を五%引き下げまして三十にするというのがこの修正でございます。それから百分の四十二の税率を二つに分けまして、年所得五十万円以下につきましては三十五、年所得五十万円をこえるものにつきましては四十、かように改められております。ただ、これは次のところに「前項第一号の場合において、
事業年度が一年に満たない法人については、同号中年五十万円とあるのは、五十万円に当該
事業年度の月数を乗じたものを十二分して計算した
金額とする。」と、かような規定が挿入されておりますが、これは所得を年五十万円ということで押えましたので、六カ月決算というような場合においてはどうなるか、かような問題が起ってきますので、六ヵ月決算の場合におきましては、月数按分で二十五万円までで計算する、二十五万円までを三十五にすると、かような意味におきましてこういう規定が入っておるわけでございます。
それから清算所得につきましては、法人税率が一般的に四十二から四十に軽減されるにつきまして、四十六の清算所得の税率を四十五に改めておるわけでございますが、今回特別法人につきましても各
事業年度の税率が引き下がりましたので、それに応じまして、特別法人に対しまする清算所得の税率の方も四十一から四十に引き下げるというように相なっておるわけでございます。
それから次のところの「第四十三条第一項中『事実に基く税額』の下に『として命令の定めるところにより計算した
金額』を加える。」と、かようになっておりますが、四十三条の規定は過少申告加算税額及び無申告加算税額の規定でございます。過少申告加算税、無申告加算税は、過少申告いたしました場合におきまして、その過少申告の差額の
部分につきまして加算税を加算すると、かようになっておるわけでございますが、その場合に、今回税率が二本になりましたので、それに三十五で課するのか四十で課するのか、かような問題が起ってくるわけでございます。従いまして、それは命令におきまして現在の
方法をきめよう。実態といたしましては、たとえば所得が百万円本当はあった、申告が八十万円であったといたしますと、二十万円の
部分につきまして過少申告加算税がかかるわけでございますが、そういう場合におきましては、五十万円以下の税率が三十五でございますから、その二十万円につきましては四十の税率でかかると、かように相なるわけでございます。ところが所得が三十万円であった、それを二十万円で申告した、かような場合においては、差額の十五万円はそれは三十五の税率の
部分がかかる。いわばその分が上積みで計算になりまして、それに基きまして過少申告加算税を加算すると、かように相なるわけでございます。
それから附則第四項は、これは規定の整備でございまして、実体的な問題としては特に申し上げるべきことはないかと存じます。
それから「附則第五項を次のように改める。」と書いてありますのは、今回の修正に関連いたしまして、それをいつから適用するかという問題でございます。で、
政府が改正を提案しておりました四十二を四十に下げるというのは、七月一日以降
事業年度が終了した
部分から適用することになっておりますが、今回の修正の
部分は、十月一日以降
事業年度が終りました
部分から適用する、かようになっているわけでございますので、一応本文の方では、五十万円以下につきまして軽減税率を設けるという意味の規定を設けております。そうして一応その適用
期間の附則の方で、この適用を十月一日以降にいたしまして、七月一日から九月末日までの間におきましては、やはり百分の四十でするというように規定いたしまして、この間の
関係を明確にしているわけでございます。
次は
租税特別措置法等の一部を改正する
法律案に対する修正案でございますが、まず第一条の第二条の六の規定は、これは配当控除の額の引き上げの規定でございまして、特別に
説明するまでもなくおわかりかと存じますが、三十年分と三十一年分の所得税につきましては、
所得税法の十五条の六の規定による配当控除額が
所得税法では百分の二十五になっておりますので、それに配当所得の百分の五に相当する額を加算いたしました百分の三十にするということがこの規定でございます。
それから次の五条の四、これがいわゆる選択による概算所得控除の規定でございまして、相当各項に分れているわけでございますが、
まず第一項は、
所得税法の一条第一項、いわゆる居住者と考えられております者の所得税につきましては、総所得
金額、退職所得の
金額、山林所得の
金額、それの合計額の百分の五をその者の選択によって控除をする。で、選択があれば一般的に百分の五を控除するということに相なっております。その場合に、給与所得者につきましては、現在の
所得税法の規定するところによりますと、総所得
金額は給与所得の収入
金額からその一割五分を引いた額が総所得になっておりますので、この場合も、総所得
金額という規定のままにいたしておきますと、八割五分につきましてその百分の五と、かように相なるわけでございますが、これは給与所得者につきましていささか酷に失するのじゃないか、やはりこの場合においては収入
金額というものを考えることが適当であろうという意味におきまして、給与所得者につきましては一割五分を控除する前の
金額を基礎として引くということにしてあるわけでございます。それからその百分の五を引くわけでございます。この場合には、百円未満の端数があるときにはこれを切り上げまして、そうして納税者に有利になるようにこれは規定してあるわけでございます。それから一万五千円をこえる場合におきましては一万五千円にとめられているわけでございます。
次に、これらは選択によりまして控除を受けるということの規定になっておりますので、その選択する旨の記載が必要であるという意味におきまして、予定納税額減額申請書、七月予定申告書、十一月予定申告書、予定納税額更正請求書、確定申告書その他におきまして控除の記載をしなければならない。もし記載しない場合においては適用しないという意味におきまして、
所得税法第二十五条の四第一項及び同法第二十八条の規定を準用すると、規定しておるわけでございます。
それから次に一項飛びまして、こういう選択がありました場合におきましては、
所得税法の第十一条の三から第十一条の五までの、いわゆる所得控除の規定のうち、雑損控除、医療費控除、社会保険料控除の規定を適用しないということになっております。それから災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する規定も適用しない。これは雑損控除と、災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する規定とは、現在選択になっておりまして、雑損控除を選択するか、あるいは災害減免のほうを選択するか、これはどちらかは納税者の選択にまかされておるわけであります。従いまして、この二つの条項はいわば同列に立っておりますので、従いまして、所得概算控除の選択をいたしました場合におきましては、両方ともこの適用をしない。従いまして、三つのうちどれが一番有利かを考えた上で、納税者は選択していただく、かようなことになっておるわけでございます。そこで、このように所得控除のほうの適用の規定が排除せられておりますので、納税者が概算控除のほうの選択を一度やられた。ところが、その後、災害等が起ってきて、どうも災害減免の適用を受けた方が有利であったというような
事態が生ずることもあるわけでございまして、ことに災害減免の規定は、七月の予定納税をしまして、次の十一月の予定申告の期限がくるまでの間において災害が起ったという場合におきましても、
所要の規定の適用を受けられぬ問題がございますので、こういった点をも考慮いたしまして、そのような場合においては、選択の取り消しもできるというのが、いま一項を飛ばしましたその中の方の規定になっておりまして、一度選択した場合においては、災害により被害を受けたとき、その特別の事情が生じました場合においては、当該選択を取り消すことができる。取り消して、災害減免なら災害減免の方の規定の適用を受けることができるということになっておるわけでございます。
その次の項は、雑損失の雑損控除は、後
年度に繰り越して控除するということができるわけでございますが、これは概算控除のほうの規定の適用を受けますと、雑損失はもう適用がないわけでございますから、従いましてその分の後
年度の繰越という問題も起らなくなるわけでございます。その意味の規定の整理をいたしまして、カッコ書きで、概算所得控除の適用を受けたために適用が受けられなかったところの雑損失の
金額というものは、後
年度においてはもう繰り越されない、こういう意味の規定になっておるわけでございます。
次の項の規定は、これは条文の整理をやっておるわけでございまして、別に御
説明をすることもないと存じます。
その次の規定は、給与所得者につきまして、年末調整によって概算控除の適用を受けしめる、かような規定で、少々複雑な条文になっておるわけでございますが、趣旨は、一万五千円に達しないところの社会保険料を支払っておる給与所得者につきましては、これは当然一万五千円までは選択することが有利になるわけでございますので、特別に選択という手続を経ずして、年末調整において一万五千円ないし所得の百分の五までの控除をいたしまして、そうして年末調整をするというのがこの規定でございます。で、それらの人が、もし雑損失その他の控除のほうが有利であるというような場合におきましては、医療費控除、雑損失の控除は現在確定申告において認めておりますので、そのような人は確定申告をお出しになって、そこでそちらの方を選択いたされれば、これは年末調整しましたところの額と差し引きいたしまして、そこで清算をするということに触りますので、この点は特に選択というような手続の煩雑を省略いたしまして、一般的に納税者に有利になるように控除をしてやるというのが、この条項でございます。
次の項は、これは、このような規定が設けられましたのに伴いまして、別表におきまして読みかえ規定その他の
所要の規定が必要でございますので、その他の必要なことを命令に譲りまして、細部の規定を設けたいという規定になっております。
それから次の、「附則第三項中所得税については同法第十七条」云々という規定をしておりますのは、これは
措置法の利子所得に対します附則の規定につきまして、この際、
所要の整理をはかっているわけでございます。
それから次の附則の四項は、特別に御
説明をすることはございません。
五項は、今まで申し上げましたことは、平
年度の規定でございまするので、初
年度におきましては、これを半額にするという意味におきまして、三十年分につきましては、
所要の読みかえ規定を設けておるわけでございます。まず百分の五は百分の二・五、それから一万五千円は半額の七千五百円、それから概算所得控除を選択いたしました場合におきます医療費控除、雑損控除の適用が排除せられるわけでございますが、初
年度におきましては、概算所得控除のほうが半分になっておりますので、残りの半分につきましては、医療費控除、雑損控除の適用を受けしめる必要がある、さような意味におきまして、半分だけは当然、雑損控除、医療費控除を受けさせまして、二分の一につきまして概算控除との選択を認める、かような意味の規定を設けているわけでございます。
それから六項、七項は、これは特別に御
説明することはないかと存じます。
その次の最後の、読みかえ規定の最後に、相当長くなっておりますが、これは平
年度におきましては百分の五または一万五千円のいずれか低い額と、かようになっているわけでございますが、初
年度におきましては、これを、ただいま申しましたように、二分の一にするわけでございます。そこで年末調整に当りまして、先ほど申しました計算をいたします場合に、概算所得控除、選択等の対象となりますところの所得控除、すなわち医療費控除、それから雑損失の控除、これは三十年につきまして受け得るところの額、それから百分の五の額と合計いたしまして、その二分の一を引くと、かようにいたしておりますのは、先ほど申しましたように、いずれも二分の一ずつにするということになりまするので、医療費控除、雑損控除の年間の額の二分の一の額、それから百分の二・五の額との合計額を引いてやるということを、かような規定において表わしておるわけでございます。
その次の六項は、これも必要な事項を命令に譲っておる規定でございます。
それから七項でございますが、七項は、三十一年分の予定納税の基準額の算定につきまして、
所要の規定を設けているわけでございます。三十一年分の予定納税の基準額はどうなるかと、これを考えてみますと、これは三十年分の確定申告の税額を基礎といたしまして、三十一年の予定納税をしていただく、かようになるわけでございます。そういたしますと、三十年分の確定申告は、概算控除額は半分、二・五%を受けた額で確定申告がなされておるわけでございます。それから、
あとの雑損控除は年間の半分だけ受けてなされておると、かように考えられるわけでございます。その場合におきましては、二・五%を選択した人は、これは二・五%の方が有利であったから二・五%を選択しておられるはずでありますから、その人は三十一年分につきましては当然その選択せられた方の二・五%の方を基礎として計算すべきであろう。そういたしますと、これは三十一年につきまして五%になるわけでございますので、その選択概算控除額の二倍を引いて、予定の基準額を計算をする、そのような規定になっておるわけでございます。その場合にカッコ書きで、(譲渡所得、一時所得又は雑所得の
金額があったときは、当該
金額に係る
部分として命令で定める額を減じて得た額)といたしておりますのは、これは予定納税基準額の計算上は、譲渡所得、一時所得または雑所得は除外されることになっておりますから、従いまして、それに相応する分は除外して計算するという意味の規定でございます。それから八項に、今回このような概算所得控除が設けられましたにつきましては、との
法律が施行になります前に、三十年分の所得について決定を受けた、もうすでに税額がきまっておった、たとえば
外国に行ったとかあるいは死んだ人というような、いわゆる準確定と申しておりますが、こういうような人につきましても、やはり三十年分の所得税として
所要の軽減
措置をしてやる必要があるという意味におきまして、かような人は、この
法律の施行の日から起算しまして二月以内に
政府に対して更正の請求をすることができるということで、
所要の整理をしようとしておるわけでございます。
以上簡単でございましたが、一応内容の
説明をいたした次第でございます。