運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1955-05-31 第22回国会 参議院 商工委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月三十一日(火曜日)    午後二時三分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     吉野 信次君    理事            古池 信三君            高橋  衛君            山川 良一君            三輪 貞治君    委員            小野 義夫君            河野 謙三君            海野 三朗君            白川 一雄君            苫米地義三君   政府委員    公正取引委員会    委員長     横田 正俊君   事務局側    常任委員会専門    員       林  誠一君    常任委員会専門    員       山本友太郎君    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君    常任委員会専門    員       桑野  仁君    常任委員会専門    員       内田源兵衛君   説明員    公正取引委員会    事務局調整課長 丸山 泰男君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○過度経済力集中排除法等廃止する  法律案内閣提出)   —————————————
  2. 吉野信次

    委員長吉野信次君) それではこれより委員会を開会いたします。  過度経済力集中排除法等廃止する法律案、これを議題に供します。この間政府から提案理由だけは一応説明を聞いたのですが、何か政府から補足して御説明でもありますか、あれば伺いたいと思います。
  3. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) この法案に関しまして特に先日の提案理由につけ加えます点はございませんが、過度経済力集中排除法実施経過というものをプリントにいたしましてお手元に御配付申し上げておりますので、詳しいことはそれについてごらん願いたいと思います。前に提案理由で申し上げましたように、この法律によって指定されました会社は御承知のように二百五十七社というおびただしい数に上っておったわけでございますが、その後アメリカ占領軍当局の方にもいろいろ事情がございまして、御承知の五人委員会というようなものがこちらへ参りまして、これはどうも少し日本経済再建のために多少行き過ぎであるということを占領軍当局の方で認めました結果、正式に指定になりましたものは非常に数が少くなりまして、その大部分は指定が解けたということになったわけでございます。そして指定されましたものにつきましては、順次に手続がとられまして、これは御承知持株会社整理委員会で処理をいたしておったわけでございますが、その跡始末を公正取引委員会が引き継ぎまして、これが今回廃止しまする法案の中に一つ公正取引委員会事務を引き継ぐ関係法律がございます。その法律規定に従いまして公正取引委員会事務の引き継ぎがございまして、引き続き委員会で注意しておりましたが、つい最近になりましてその全部につきまして終結決定が行われたわけであります。なおすでに前の国会にこの廃止法案をおかけするというようなこともあったのでございますが、その当時はごくわずかでございましたが、まだ残ったものがございましたので、一つ延びましてこの国会にこの廃止法案を提出することにいたした次第であります。  なお、この持株会社整理委員会はすでに消滅いたしておりまするし、これらの法律もここで廃止になりまして、その後は結局独占禁止法が、こういう経過的な法律でなく、日本の今後の経済あり方を示す一つ法律といたしまして残りましたわけでございまして、あと独占禁止法で処理せられることになるわけでございます。従いまして、この集中排除法で処理せられましたものも、さらに独占禁止法観点から見直しますれば、あるいはこれほど集中を排除する必要のなかったものもあるのではないかと思われます。要するに、それらの点は、今後業界のいろいろな動きとともに、独占禁止法の線に沿いましそれらの点があるいは修正せられるという場合も出てくることかと思うのでございす。この点も前回簡単に申し上げた通りでございますが、一言つけ加えて申し上げておきます。
  4. 吉野信次

    委員長吉野信次君) これはよく見ないでお尋ねしちゃ悪いのですが、過度経済力集中排除法というものをよく克明に見てお尋ねしないといかんのですが、経済力集中過度になれば、それはまあその過度の認定というものはむずかしいと思いますが、ただそのことの客観的事実といいますか、その事実だけで排除するのですか。過度集中されましても、理論上からいえば国民経済利益こそあれ害のない場合もありますわね。そういう場合もそれにかかわらずとにかく大きいものはいかんのだと、こういう法律ですか、大体立法しましたその方針で処理されたのですか、ちょっと伺いたい。
  5. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) 大体過度経済力集中排除法はややそれに近い考え方でできております。それに反しまして独占禁止法は、実は一昨年改正になりました前にはややそれに近い規定もあったのでありますが、それも一昨年削除になりまして、独占禁止法上は経済力が大きいということ自体が違法という考え方をとっておらないわけであります。
  6. 吉野信次

    委員長吉野信次君) それからもう一つ、今のお話で、まあ少し行き過ぎのようなやつで解体されたものが今日また一緒になるということも将来あり得るわけですか。人については、人というか、その当時の重役ですね、何か私よく知らないが、それに指定されると、そのときの重役というものはみなやめなきゃならぬでしょう。そうすると、人の関係は、どうもやめてしまえばあとどうすることもできないで、ずいぶんみじめなことになった人もあったと思いますけれども、それは切り捨てごめんで、どうにもこうにもしようがないという、こういうこれは建前なんですね。
  7. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) その人事問題につきましては、やはりいろいろ非常にやかましい規定がございまして、いわゆる一種のパージが行われたわけでございます。あるいは一つ会社に、たとえば三菱系会社には、三菱のかつて社員であった人は百人以上は置いてはならぬという、非常にやかましい規定があったわけでございます。しかし、それらの関係法律は、現在はもうなくなりましたから、理論的にはそういう制約は全然なくなったわけでございますが、ただすでに時期的に申しまして、そういう方が実業界からだんだん遠ざかられまして、今さらもとの業界に復帰するということが事実上困難になっておる場合はどうもいたし方ないのでございます。しかし、これも場合によりましては、また昔の方がお帰りになって、仕事が、ほかの関係が許されるならば、そういうことは一向法律的にはその点は妨げがないことになっております。
  8. 吉野信次

    委員長吉野信次君) お尋ねありませんか。  これは大体臨時の法でしょうから、もう過ぎちゃたものだから、これを今どういうふうにといってもしようがない問題だと思いますが、むしろ問題は独禁法ですか、その方の点に、これが運用について、あればあるのだろうと思うのです。それに私が、委員長があまり発言しては悪いのですけれども、ほかの委員の方がお尋ねがなければ、独禁法に関連しまして、大体私もよく内容をしさいに読んでおりませんけれどもアメリカ占領時代にできた法律が尾を引いているのだろうと思いますので、そうすれば取引制限というものに関するアメリカ思想というものがやはり一つの根底になっておるのじゃないかと思うのです。大変こまかいことを申し上げるようですけれども、大体取引制限、いわゆるリストレイント・オブ・トレードというものの観念は、御承知通りイギリスのコンモン・ローで違法とされたというのが始まりであって、それをアメリカに来て、なぜああいうシャーマン法みたいな法律になったかというと、当時の特殊の事情があったことは御承知通りだと思うのです。あのときにカーネギーはじめロックフェラーにしても、いわゆる事業界の天才が出まして、非常な強大な経済力というものを乱用したので、ああいう立法が出て、それから後にグレイトン法に発展したという事情がありますから、どうもカルテルトラストというものに対する取り締りの非常な峻厳なことにおいては、アメリカが一番であって、世界に例を見ないのだろうと思うのです。それですから国によっては、むしろカルテルというものは助長こそすれ、これを取り締らないという国柄もあることは御承知通りだと思います。そこで日本の現状において、日本の明治以来産業の発達した過程をよくお考えになって、アメリカ式のこのカルテルトラストをむしろ罪悪とするような思想経済政策というものは妥当であるとお考えになるかどうか、まずその点を一つ伺いたいと思います。
  9. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) ただいまのは非常に基本的なむずかしい問題でございまして、いろいろ考え方の分れるところでございますが、ただいま公正取引委員会として、大体考えておりますることを申し上げてみようかと思いますが、日本独占禁止法は全くアメリカ法制な移し植えたものであることは御承知通りでございます。そうして移し植えたのみならず、事柄によりましては、アメリカ法律よりもさらにきつい面すら出ておったわけでございます。これは独占禁止法及びその後にできました事業者団体法というのがございますが、この二つをあわせましてその当初の形を見ますと、きわめてアメリカ法律よりもむしろ峻厳な法律になっておったわけでございます。これは制定当時からすでにいろいろな批判の対象になっておったのでございまして、常に国会等におきまして、その改正が論議せられて参りましたが、何分にも占領当時におきましては、若干のごくわずかな改正司令部許してくれましたが、基本的な問題に触れます点につきましては、ごうも改正を許すという態度に出て来なかったために、かなり長い間その形で推移して参ったわけでございます。  なお、法律施行も、そういう司令部方針でございますから、法律がきつい上に、施行につきましても、その担当の役所でございまする公正取引委員会に対して、かなりやかましい干渉をして参りました結果、施行の結果がやはりかなりきびしいものであったことは当然のことでございます。幸いにいたしまして、日本もだんだん独立を回復する機運に向いまして、ついに平和条約というところまでこぎつけました結果、さっそく起りましたものが、この独占禁止法日本の独自の経済事情に即応したものに改正する、司令部のいろいろそういう関係を全然なしで、日本人の頭で考えて、これを日本の国情に即応したものにするという動きが、直ちに、業界はもちろん、官界においても起りまして、結局それが結実いたしましたのが、昭和二十八年の九月に施行になりました改正独占禁止法でございます。この内容につきましては、ここでくだくだしく申し上げることを省略いたしたいと思いますが、ただいま御指摘のトラストカルテルの点につきまして申し上げますと、カルテルにつきましては、前の法律は、いやしくも事業者価格協定数量協定その他につきまして、協定をいたしますれば、ごくごくつまらないものでない限りは、すべてそれが当然に違法というようなきついことになっておったわけでございますが、この改正独占禁止法におきましては、カルテル影響が相当大きな、いわゆる競争の実質的な制限というようなところまで行きませんければ、問題にしないという線がはっきり出ましたこと、つまりカルテル影響考えるということと、それから場合によりましては、そういう実質的制限に至りましても、たとえば不況を打開するために必要な場合につきましては、カルテル結成を認める、あるいは合理化を促進するために必要な場合につきましては、カルテルを認める、この二つの道を独占禁止法の中に開いたわけでございます。もちろんこれは野放しに認めたわけではございませんで、そこには一定要件、それから公正取引委員会認可というような、手続上、あるいは実質的な要件としての制約はございまするが、ともかくも二つの道が開かれて来たわけでございます。それと並びましてこのカルテルにつきまして申し上げますと、独占禁止法には非常にたくさんの適用除外法令がございまして、たとえば中小企業関係でございますれば協同組合行為は大体特殊なものを除きましては独占禁止法規定適用がないというようなことになっておりまするし、また中小企業一種不況打開ということにつきましては中小企業安定法という特別法がございまして、その調整組合というようなものを通じまして、いろいろ不況打開のための操短行為その他のカルテル的行為をすることができるように認められておりまするし、あるいは輸出入取引法、これは先般の改正法と前後してできた法律でございますが、輸出入取引法におきまして輸出入に関しましては特にやはりこれは認可というような手続上の制約がございまするが、カルテルを認めるというようなことにもなっております。あるいはその他特殊の金融関係、あるいは運輸関係農業関係というような、あるいは海運業というような特殊の業界につきましては、そのカルテル結成というものがある範囲において認められておるというような状態でございまして、これらの特別法と、それから二十八年に行われました独禁法改正とによりまして、アメリカによって植え付けられました独占禁止法かなりの程度に日本的なものになって来ておると考えております。もちろんこれは基本にはやはりアメリカ考え方でございまするところの、カルテルには弊害が伴いがちであるという基本的な考え方はやはり現行法の中にも残っておるわけでございまするが、しかし実際上の法律あり方から見ますと、その点はアメリカ法制よりはよほど緩和された形になっておるわけでございます。  それからトラスト関係におきましては、御承知株式保有役員兼任等につきまして非常識にも近いかなり制約が当初の独占禁止法にはございましたが、それはほとんど撤廃されまして、いわゆる競争の実質的な制限をもたらすような場合、あるいは不公正な手段によりまする場合を除きましてはこの株式保有役員兼任かなり自由になったわけでございます。これはもちろん金融会社等につきましては、たとえば株式保有について制約はございまするが、その他の一般の会社につきましては、かなりこの点が自由になって来ております。  それから、先ほど委員長から御質問がございましたいわゆる事業の巨大なこと、ビッグネスそのものが悪いという考え方があるのかないのかという点でございますが、この点は先般の改正前の独禁法には事業能力較差という規定がございまして、ある事業分野におきましてある企業のその能力が非常にひいでておりまして、その大きさそのものから独占ということが必然的につながって出て来るというような段階になりますと、その大きな企業を解体をするというようなことが認められておったわけでございますが、その規定は先般改正されて削除せられたわけでございます。この前の考え方はやや集中排除法の流れをくんだような考え方でございまして、これはむしろアメリカが、自分独占禁止政策を本国において実行しました結果、やはりそこまで手をつけなければ独占による弊害を十分に是正できないのではないかという一つ考え方からいたしまして、日本独占禁止法の中にそれを盛り込んだものと私は考えておりまするが、その規定は下手に運用いたしますれば企業意欲を阻害するというような弊害がございますので、二十八年の改正の際にそれを取ってしまったわけで、これを取りました結果、たとえば会社合併が行われる場合に、従前の法律によりますれば、その結果企業能力較差が生ずるというときには、合併が許されなかったということになっておりますが、現行法ではそういう制約はなくなったというような結果になっておりまして、合併もその意味におきましてその他の要件に触れますれば別でございまするが、やりやすくなったということは言えるわけでございます。そういうような観点からいたしまして、なおこれは二十八年の改正でございまして、その後の運用、実績というようなものが大いに考えられなければならないわけでございまするが、何分にもまだ改正法施行後間もないことでございまして、もう少しこの制度を動かしてみませんければ、はっきりしたことは申し上げられないと思いますが、私ども考え方によりましては、これらの改正並びに適用除外特別法制定ということと合さりまして、独占禁止法かなりの程度日本的なものになっておるというふうに思っております。
  10. 吉野信次

    委員長吉野信次君) 私のお尋ねしたのはそういう法律の輪郭ではなくて、つまりこういう企業連合なり合同なりというものをアメリカ流に取り締るというその政策が妥当かどうか、日本現実から見てですよ、言葉をかえていえば、一体トラストの例についていえば、日本の過去の経済界においてアメリカのあのシャーマン法制定当時のような企業独占弊害現実にあったのかどうか、そこなんです。だからただ妥当かどうか、しかしこれは一つ政策の問題ですからあるいは取引委員長としては答えにくいなら答えにくいという御答弁でけっこうです。そこだけをまず一つお聞きしたいと思います。
  11. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) ただいま経過お話に少し熱中いたしまして、御質疑にまともからお答えいたしませんようでございましたが、少くとも公正取引委員会といたしましては、こういう形の修正のもとにおきまするカルテルなりトラストの規制というものは、少くとも日本の現在の実情に即しておるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  12. 吉野信次

    委員長吉野信次君) そこでだいぶ前とは変った点もよく了承しますし、そうすると一つの例ですけれども、たとえばトラストですね……、モノポリイで条文の第二条の五項ですか、私的独占説明がございますね。この読み方ですが、「他の事業者事業活動を排除し、又は支配することにより、公共利益に反して、一定取引分野における競争を実質的に制限することをいう。」とありますが、これは理屈ですが、そうすると前に掲げてあることが公共利益に反しなければ、そのまま認めてもいいというお取り扱いになりますか、なりませんか。それとも取引分野における競争を実質的に制限するという客観的の事実があれば、これがいかなる場合にも公共利益に反するというお取り扱いになっておるのかどうか、そこを一つ伺いたいのです。
  13. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) 公正取引委員会の大体の、これはいろいろ人によりまして議論がございますが、公正取引委員会の今までの取り扱いを素直に申し上げますれば、要するに一定取引分野における競争実質的制限ということが行われます場合は、一応それは公共利益に反するというふうに見ておるわけでございまして、この公共利益に反するというところにいろいろな政策的な、あるいはその他の考慮をあまり入れない、入れないで扱っておるというのが実際の扱いでございます。
  14. 吉野信次

    委員長吉野信次君) それでしたら、これはただ私の希望ですけれども、そういうお扱いになっておるということは、やっぱり占領治下アメリカ流思想に多少とらわれているのじゃないか。これは議論になりますから、これ以上は申し上げませんが、たとえばアメリカでも、過去の経済の歴史をごらんになれば、あれだけ峻厳な法律がありますけれども運用においてはずいぶん手かげんをしておりますね。たとえば自動車でも、今日アメリカは、フォード、シボレー、それからパッカードのやつと、それからスチュードベーカー、あのやつと、それからクライスラーですか、たくさんメーカーがあるけれども、ほとんど五つの方にやっておりますね。これは実際はしかし価格協定やなんか実際やっている。表向きのあれはありませんけれども、しかしこういうものは実質的に市場を支配しているのだな、四つか五つで。あと七つ、八つありますけれどもね。それでもトラスト禁止法適用はないのです。デュポンが一番いい例でしょう。デュポンの場合が、あれだけの大コンツェルンでも、前の内閣じゃそれを取り締るようにやったけれども、結局人が死んだ関係もありましょうけれども、やっておりますから、ただ公共の、私はそう思うのですね。さっき申し上げた通り過度経済力集中したことそれ自身は大した害悪がないのです。それが乱用したときに初めて害悪が生ずる。それですから、むしろ過度経済力集中排除をするよりも、ドイツ流経済力の乱用を取り締るということに私は重点を置くべきものだ、こう思うのですが、これは意見になりますから、これ以上は申し上げません。ただ将来の運営についてそういう点も、殊に世界各国のこのごろの情勢をも考慮に入れてお考えになった方がよろしかろうということを老婆心までに希望を申し上げておきます。  それと、もう一つ非常に重大だと思うことは、中小業者の場合なんです。自由競争というものは、自由競争というものの何と申しますか、学者の言う結果は、現実には現われない場合がずいぶんあるんですな。理論的にいえば、自由競争によって能率の悪いものは倒れて、そうして一番いい品質を一番安く作る者だけが残るという建前になっておりますけれども経済の実際においてはその自由競争のアダム・スミス以来の理論というものは実現されていないことは御承知通りだと思う。それが日本中小業者の場合においては特にそれが著しいのですな。だから、中小業者の場合に、数が多いから、自由競争にやっておけば自然に整理されるだろうと、こう思うけれども、それは整理されないですね。私はよく言うのですけれども、つまり個人は能率の悪い者はそれは破産して退きますけれども、その能率の悪い設備そのものを二束三文に買う人があると、また新しい経営者が出て参りますから、決して自由競争理論というものは日本中小業界においては全然行われないと言っても過言でないと思う。それからこの間この委員会にも出ておりましたけれども原料代にさえつかないような値段で製品を売るという人が出て来るわけです。そこで、それは困るから、業界というものに一定秩序を与えるために、組合結成してこれを強力にやろう、あるいは必要があれば国家がそれに強制力を用いる、こういう行政を私どもは過去においてとって来たのですけれども、そのことを私どもはこれは決してカルテルトラストのリストレイント・オブ・トレイドの観念じゃないのだ、理論的にも。業界秩序を正しく立てるというのであるから、これはいわゆる独占禁止法なり何なりの何には本質が違うのだと、こういう解釈をとり、今でも私は理論的にはそういうものだと信じておるので、従ってこの適用で、今お話のところ詳しく読んでいませんけれども中小業者組合にこの独占禁止法適用除外例とか何とかいうよりも、一歩進んで私はワクの外にあっていいものだというふうに考えておるのですけれども、しかしそれは理屈ですから、理屈は別として、運用上私が言うたような場合はこれを全面的にこの法律適用から除外するような建前になっているのか、あるいは運用でどういうふうになっておるのか、その点だけ一応伺っておきたい。
  15. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) 中小企業関係規定は多少複雑になっておりますが、基本的な規定は、御承知独占禁止法の二十四条にございまして、これは主として協同組合考えておるわけでございますが、この協同組合行為につきましては独禁法適用を除外するということが建前になっておりまして、ただ中小企業といえどもやはり独禁法上問題にするという点が若干ございまして、それは一つ中小企業が団結をいたしまして価格を引き上げる、それがただ単に引き上げるだけでなく、著しく不当な価格に引き上げる、結局それは主として消費者の面におきまして出てくるわけでございまするが、そういうような特殊な場合、本来中小企業は共同いたしまして自分たちの力を共同によって強めるというところに意味があるわけでございますが、その共同の力をより弱い消費者の方に向ける、しかも価格を非常につり上げるというようなことになって参りますと、その面におきまして初めて独占禁止法が働いてくるというような形になっておるわけでございます。その他、先ほどもちょっと申しましたが、不況を打開するための手段といたしましても独禁法の中に本来不況カルテルというものを認められることになったわけでございますが、さらに中小企業を主体といたしまする業種につきましてはそれをもっとゆるやかにかつ有効な手段がとれまするように特に中小企業安定法というような法律規定しておるわけでございますが、まあ大体現行法も御趣旨のような形にはなっておると思うのでございます。
  16. 吉野信次

    委員長吉野信次君) つまり、今の場合、値段引き上げのことをおっしゃったけれども原料代にも行かないめちゃくちゃに売っておるやつを正常なコストの値段まで上げることはかまわないのですか。
  17. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) 全然ございません。
  18. 海野三朗

    ○海野三朗君 私がお伺いしたいのは、最近スクラップのカルテルを認められたのでありますが、そのねらいはどういうところにあったんでありますか。
  19. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) 最近に銅と鉄のスクラップにつきまして公正取引委員会認可ということがあったわけでございますが、鉄の方でございますか。両方申し上げましょうか。
  20. 海野三朗

    ○海野三朗君 ええ、両方。
  21. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) 実は鉄の方が問題は先でございましたが、正式の手続といたしまして認可になりましたのは銅の方が先になりましたので、銅の方から申し上げますと、銅は、輸入の銅だけでございまするが御承知のように、外国から銅くずを伸銅業者が買います場合に、むやみに競争いたしまして非常に高いものを買うというおそれがございます。これは一つ輸出入取引法運用をもってあるいは処理できる面もあるのでございまするが、これはむしろ生産業者である伸銅業者が団結いたしまして、そういうばかな買い方はよそうではないかということが主となりまして、結局独占禁止法の二十四条の四に基きますいわゆる合理化カルテル一種といたしまして銅くずの購入に関するカルテルの申請がございました。三月三十一日に認可になったわけでございますが、この方は、もちろんこの銅くずの輸入くずは、全体の所要の銅くずのうちではごく一部分ではございまするが、しかし、それがコンスタントの価格で入る、比較的買いあおりということでなく、安く入るということは、結局伸銅業者にとっては非常に利益でございまするし、いわゆるコスト引き下げという面に非常に役立つわけでございまして、合理化の目的に沿っておりましたので、これを認可いたすことにいたしたわけでございます。  それから鉄くずにつきましては、一昨年の幕から問題がございまして、一度申請がございましたが、諸般の事情によりまして、昨年の春ごろ一応取り下げになりましたが、御承知のようにくず鉄につきましてはいろいろな価格の変遷がございまして、その結果ことしになりまして、三月の三十一日に鉄くずに関しまして八幡製鉄ほか十八社から国内のくず鉄の職人の価格に関するカルテルと、それから輸入鉄くずの購入価格、その他の購入方法等に関するカルテルと、この二つにつきまして認可の申請があったのでございます。この輸入につきましては先ほど申し上げましたように、銅くずの輸入と全く同じ理由でございます。国内くずにつきましても、やはり御承知のようにくず鉄が、これは普通の原材料と違いまして、必要に応じてどんどん生産できるというものではない性格を持っておりまする結果、その価格が非常に浮動でございまして、あるいは非常に高くなったり、安くなったりいたしますので、これはやはりある程度のところへ落ちつけるということは、これは製鉄業にとりましては非常に重大な問題でございまするし、またその結果作られまする製品のコストの切り下げということにも役立つわけでございます。この点を、いろいろその他の関係考慮いたしまして認可いたしたわけでございます。ただ御承知のように、輸入の場合はともかくといたしまして、国内のくずに関しましては、くずを扱いまする業者というものの利益を十分考慮して、幾ら安ければよいといいましても、これを非常に安い価格で買うと、結束して買いたたくというようなことになりますれば、その結果は国内のくず鉄業者にとって不当な圧迫になるわけでございまして、こういうような点を十分に考慮いたしまして、さしあたり一万五千円に下げる、順次、しかもこれは急にでなくて、順次下げていって、一応一万五千円の線に持っていくという点につきましては、諸般の考慮をいたしまして、大体くず鉄の価格というものはどこら辺に落ちつくのか、一応の目標はどの辺にあるべきであるというようなこともいろいろ考慮いたしました結果、一万五千という線に徐々に持っていくということについてのカルテルは一応認可をいたしましたわけでございます。もちろんこれはくずの扱い業者の意見を十分に尊重してそこまで持っていくというような条件の上で認めたわけでございます。
  22. 海野三朗

    ○海野三朗君 そういたしますと、値段の方もそういうふうにおきめになった、数量の方もおきめになったのでありますか。それからその値段というものは外国のスクラップに比べて一体どういう値段の位置にありますか。それをお伺いいたしたい。
  23. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) 数量の点につきましては、やはりいろいろ検討いたしまして、数量のカルテルももちろん合理化カルテルとして認められないことはないのでありまするが、この点は主としまして御承知のように、くず鉄は国内くずと輸入くずが非常に深い関連があるわけでございますので、その輸入くずに関して、輸入につきまして権限を持っておりますところの通産の方面におきまして、その輸入くずとにらみ合せて国内くずの所要量というものを行政指導と申しますか、そちらの方の指導をもって適当に処理するというようなことになりました結果、現在の形におきましては一応この力ルテルから数量についての問題ははずされているわけでございます。しかし、これは今後の推移を見ましてあるいは場合によってはもっとはっきりとしたカルテルの形にいたしまして、認可を受けて、その監督の監視のもとに数量のカルテルが動いていくというような形に持っていった方がいいかどうかという点は今後の問題として残されているわけでございまして、価格の面と申し、この数量の点と申しまして、いずれにいたしましてもこのカルテルは今発足したばかりでございまして、今後の推移を私どもといたしましてはもう少し見たいと考えております。
  24. 海野三朗

    ○海野三朗君 今輸入をしておりますこのスクラップの値段と、公取委の方でおきめになったスクラップの値段とは相当な開きがあるんではありませんか、どれほどの開きがありますかということと。それから数量の方も制限なさったのでありますか、この二点をお伺いしたいと思います。会社々々によって数量を幾らしかお前のところは国内のくずを集めてはならないというところの指令を出しなさっているのでありますか。
  25. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) その点につきましては、先ほど申し上げましたように、数量につきましてはカルテルの中では別段何らのきめがないのでございまして、その点は輸入との関係とも関係ございますので、通産省の方で数量を指示するというような形で今動いているのでございます。  それから輸入くずとの価格の点でございますが、私はただいま正確な数字を心得ておりませんので、本日ここに参っております調査課長からお答えいたしたいと思います。
  26. 丸山泰男

    説明員(丸山泰男君) ただいまのお尋ねでございますが、カルテルが目ざしております特級くずの値段は先ほど委員長からお話しのありましたように一万五千というところを目ざしております。しかしながら現在の値段はカルテル側は一万八千円で購入するということでございまして、これはほぼ五十ドルに当ると思います。で、メーカーが外国から輸入いたしております外国、主としてアメリカのくず鉄は値段は私どもは聞いておりますところでは非常にまちまちでございまして、大体平均五十ドルから五十二、三ドルが現在の相場ではないかというふうに聞いております。で、東南アジア方面はこれよりも高い場合がしばしばであるというように聞いております。そこで国内の価格が外国の値段よりも低くきめられているのではないかというような点もないではございませんけれども、現在のカルテルでは外国の値段と国内の値段を直接に関連せしめて申請があったわけではないのでありまして、大体の目標といたしましては、アメリカの特にピッツバーグあたりでのくず鉄の相場というものは、四十ドルあるいは四十ドル以下というような相場であるから日本でもその程度の相場で日本の国内で買い得れば一番好ましいということは当初話があったわけでございます。で、そういうふうになりますと、現在目標にしておりまする一万五千円以下で国内の業者は国内コークスを買わなければアメリカの業者とは条件が同じにならないというような点が出てくるわけでございますけれども、本カルテルではアメリカのピッツバーグにおけるメーカーの買手と同額であるということはあえて望んでおりませんで、一万五千円というものを最終の目標というようにしてもってきたわけでありまして、これは先ほど委員長からお話がありましたように、国内のくず鉄の取扱い業者の立場というようなものをできるだけ考慮して考えられたものであるというように言われております。そこでこの一万五千円程度というものが適当な値段であるかどうかという点に関することでございますが、大体公正取引委員会におきましては、銑鉄の値段の七割というところが今日までのくず鉄の値段の大体平均したところであるというように見たわけでございまして、現在の銑鉄の相場から見ますと、一万五千円以下に持っていくというようなことは少しバランスがとれないのではないかというような観点からこの一万五千円を目標とするカルテル認可と申しますか、最終的には認可したわけでございます。そういうことであります。
  27. 海野三朗

    ○海野三朗君 そういたしますと、この一万五千円というのは業者の要求によっておきめになったわけでありますか。
  28. 丸山泰男

    説明員(丸山泰男君) そうであります。申請書にそのように書いてあったわけであります。
  29. 海野三朗

    ○海野三朗君 その申請書は使う方ですか、供給の方ですか。
  30. 丸山泰男

    説明員(丸山泰男君) 買手側の方でございます。
  31. 海野三朗

    ○海野三朗君 私はここでお伺いしたいと思うのは、買手側の方のその値段の要求だけに重きを置かれてはいけないのじゃないか、公取できめるような場合にはやはり世界情勢ともにらみ合せて、そうしておきめになるのがほんとうではないか、私はこういうふうに考えられますが、その辺はいかがなものでございますか。使用者の方は安ければ何ぼ安くてもいいわけです。
  32. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) この点は向うとしては公正取引委員会ののめないような数字は出さないように、もちろん私の方の意向を考えながらこの線が出ていると思いますし、またもしこの線が非常に不当なものでございますれば、取扱い業者の方はおそらく反発して参りますわけでございまして、御承知のように認可に対しましては利害関係人から不服の申し立てが一ヵ月内にできるような道も開かれておりましたが、その点につきましても別に取扱い業者その他から不服の申し立てもないということから見ますと、一応この線というものは妥当な線であったのではないかというように考えております。
  33. 海野三朗

    ○海野三朗君 ただいまのはもう私はそれで質問を打ち切ります。  次にお伺いいたしたいと思いますのは、二十八年の独禁法の大改正に際しましては公取と通産省との間に、今後通産省の勧告による操短は行わないという了解ができてあったと思うのでありますが、最近また勧告操短が行われんとしているようでありますが、これに対して公取の御見解はいかがなものでありますか。
  34. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) その点に関しましては確かに二十八年の改正法が成立いたしました国会におきまして、独禁法がいろいろカルテルの規制をしているのに行政官庁の指導というような形、勧告というような形で事実上操短等も共同行為が行われておって、これは結局独占禁止法がその面でしり抜けになってしまうんじゃないかというようないろいろ御質問なりございまして、たしかそのときの通産大臣から、今後そういう行政勧告による操短は行わないようにするということを言明されたように記憶しております。これは何も公正取引委員会と通産省との間にそういう申し合せがあったわけではございませんで、むしろ国会においてそういう声明がなされたというふうに私は了解いたしております。そこで公取としてそういう問題についてどう考えるかということでございますが、これはもちろん私どもとしましては法律上そういう勧告という形をとりましても、業者が積極的にそれを守っていく、共同の態勢をとって守っていくという場合に、それを普通のカルテルと同じように取り上げて、独禁法抵触というふうに認めるかどうかという法律問題が一つございまするが、その点はさておきまして、やはり独禁法上のみ許されるものはいろいろな一定の条件のもとにそういうカルテルが認められることになっておりまする以上は、行政庁の勧告によりまして、たとえばその条件に当てはまらないような状態のもとに実質的にカルテルと同じような効果を持ちまするところの共同操短が行われるということに対しましては、われわれは常に反対の態度を持っておるわけでございまして、現に最近行われておりまする操短に関しましては、まだ積極的にこちらからいろいろ申し上げてはおりませんけれども、その操短に入るよほど前、今年の一月当時にこういう操短の計画があるがどうであるかということを公正取引委員会に通産省の繊維局の方から尋ねられました際にも、独禁法上の問題もあるし、また実質的な問題としても公正取引委員会としては現段階においてそういうことが行われることは好ましいと思わないという御返事をいたしておるわけでございまして、大体公取といたしましてはそういう方針で臨んでおるわけでございまして、しかし行政官庁としましてはその他いろいろな行政上の観点から、また業界に対して勧告をするという場合はこのほかに幾らもあるわけでございまして、それらの問題と関連いたしますると問題はそう簡単ではないように思いまするが、いやしくも不況対策としての操短というようなことになりますれば、われわれの考え方は先ほど申し上げた通りでございます。
  35. 海野三朗

    ○海野三朗君 私は次にもう一つお伺いしたいのは、この石炭鉱業合理化法案における価格カルテルです。生産制限ということに対しましては公取の御見解はいかがなものでありますか。
  36. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) 基本的な問題としましては、われわれとしましてはいわゆる自由公正な競争の促進ということは一応表看板になっておりますので、もし統制の必要がございますれば、それはその必要がある最小限度ということがわれわれの立場からいたしますれば当然出て参るわけでございますが、価格の点でございまするが、これはやはり石炭業、この基幹産業につきましてはある程度においてその価格の統制ということもやむを得ないのではないかというふうに考えるわけでございます。  また操短につきましても、これも一方におきまして価格の上ることを押えます以上は、値が非常に下りまするような場合につきまして、それを単に業者の恣意的な行為でなく、行政官庁の指導のもとに、指示のもとにある程度の操短が行われる。それによって価格が維持せられるというようなことも、上の方の価格を押えることと関連して考えますると、許されてもいいのではないかというふうに考えまして、あの法案につきましてもいろいろ検討いたしましたが、特に後の方の操短の点に関しましては公正取引委員会に協議をされるということを条件にいたしまして同意した次第でございます。
  37. 海野三朗

    ○海野三朗君 価格カルテルでありますが、石炭、たとえばまあ炭鉱は何百とあるわけでありますが、そのうち背に腹はかえられないので、特に勉強して安く掘っておる、量はもっとも少いのでありますが、そういうふうな業者が非常に困るのじゃないか。この一般、大きな機械掘りでもってどしどしやっておるところであれば、価格をきめるのもいいでしょうし、生産も制限できるのでしょうが、たとえば炭鉱にしましても二、三十人でやっているというようなちっぽけな炭鉱は数多くあるのです。そういうところにこの生産を制限されたり何かいたしますというと、結局食えないものがたくさん出てくるという結果になりはしないのですか。そういう点についてはいかようにお考えになっておるか。  もう一つは操短です。たとえばカーボン・ブラックのごとき国内では売れないので、アメリカ品には対抗ができない結果、だんだん縮小してきておる現状にある。そうすると、こういうのが操業短縮、勧告などによって、これはだんだん生産が少くなってくるとすると、結局はもう国内でのカーボン・ブラックを作るものはやめなきゃならないということになってくる。そういうことでは産業を育成していく上においては、勧告の操短もよほど考えものじゃないかと私は思うのでありますが、そういう点についてはいかように公取ではお考えになっていらっしゃいますか。
  38. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) 私は今例をお引きになりましたような実情を実は正確に存じておりませんので、はっきりしたお答えはできないと思いますが、要するにやはり勧告によりまする操短の場合にはもちろんそういう点は十分にしんしゃくして必要以上にそういう関係業者の利益を害するというようなことのないように取り計らうべきだと思いまするし、またわれわれ公正取引委員会の立場で協議を受けるという場合には、やはりそういうような点ももちろんわれわれの方で考慮される問題の一つになるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  39. 海野三朗

    ○海野三朗君 結局このままでは独禁法というのはだんだん後退していくような感がするのでありますが、一体どこに公取は一線を画しておられるか。この独禁法につきましてその点いかがなものでございましょうか。
  40. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) これは非常にむずかしい問題でございまして、一応二十八年の独禁法は御承知のように、競争実質的制限、不公正の取引方法、いわばこの二つを一応の線といたしまして引きまして、それをさらにいろいろな各種の事情に応じまして、その線に多少の修正を加えているというのが現状でございまして、これはなるほどごらんになりますると、多少の修正とはいうけれども、いろいろたくさんあるじゃないかということになるかもしれませんが、やはりこの点はまあ後退は後退でございまするが、それがやはり日本経済の実体に即したものでございますれば、やはりある程度の後退も応じを得ないように私は考えるわけでございまして、これはこういう日本に新しい独占禁止政策というようなものは、もう少しいろいろやってみませんと、最終的とは申しませんが、どこら辺に大体の線を引くべきであるかというようなことがはっきりとなかなかきまらないのではないかと、これは私の個人的な考えでございますが、考えておるわけであります。
  41. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 一点だけ。この集排法が制定されました第一国会における審議の記録を見ますと、こういうことが質問をされ、答弁されております。「この法案の実施により、再編成後は公正自由な取引ということが建前になるので、その結果再び大きなものが出てくるということが考えられるが、そういうものに対しては、本案はいかなる関係をもつものであるか」という質問に対して「この法案自体では未だそこまで考えていないが、独禁法の方では公正なる競争が許されている、ただそれが再び公共利益に反するほど大きくなって、独占的な支配力をもつようなことになればいけないというのであって、独禁法事業能力較差ということに触れない限り、大きくなることは許されるであろう」こういう答弁があっております。この法律によりまして指定されました会社が三百二十五ほどございまするが、これが再び合併統合等いたしまして、ここで心配されておるような再び大きなものが出てくるということは多分にこれは今日においては想定されるところでございます。特に二十八年の独禁法改正によりましてこの事業能力較差ということが取り除かれたのでございますから、なおその憂いは大きくなってきておるわけでありますが、この指定がはずされた後においてこれらの会社合併統合するということについて公取ではどういうふうにお考えになっておりますか。
  42. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) 先ほど多少その問題に触れたわけでございますが、二十八年の改正によりまして較差規定がなくなったことは事実でございます。従いましてその面におけるたとえば合併、営業譲り受け等の制約というものはなくなったのでございますが、われわれ公正取引委員会が主となりましてあの改正案——原案を作ったわけでございますが、何故にいさぎよくあの較差規定を削除いたしたかと申しますと、先ほどから申しておりますように、較差考え方は形自体で押さえていけば取締りの上から非常に便宜であって、もう一歩進んでその形からいろいろ一定取引分野における競争実質的制限というような段階に至りましたそのところで取り締るというよりも、もっともとの形そのもので押えていくというところにこの較差規定のあるいは妙味と言っていいかもしれませんがあるわけでございますが、われわれといたしましては、そういう形で押えるよりも、むしろもう一歩下りましても一定取引分野競争実質的制限、そういうことを持ちきたさない限りは、形そのもので押えるという必要はないんじゃないか。現に合併制約します規定の中には昔の規定は第一号に較差を生じないことというようなことになっておりましたが、これは削られましたが、この次の二号に持って参りまして「一定取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」、つまりそういうことになる場合には、合併が許されないというそういう第二の規定が控えておりますので、この第一のものを取りましても、いたずらに巨大なものができまして、そこに一定取引分野競争を実質的に制限するというような結果は、この第二号で押えられていくというふうに考えました結果、第一号の規定の削除ということをあえていたしたわけでございます。先ほどせっかく集排でいろいろ分けられたものが、将来また併合、合併その他の方法によって集中して来るおそれがあるのではないかということに対しましては、現行法のもとにおきましても、十五条のただいま申しました規定がございまする以上は、この線において十分に取り締って参れるというふうに考えておるわけでございます。現に集排によって分割されましたもの、その他の手段によりまして解体されましたものは、逐次あるいはもとの形に戻りたいというようなこともちらほら耳にいたしておりまするし、あるいは耳にいたすどころか、われわれの方に向ってもう集排はなくなったからいいのではないかというようなふうに、内意を伺いに来ておるようなものもございます。それはいずれもただいま申しました独占禁止法十五条の規定に照らしまして、まず大体むずかしいというようなものが多いのでございますが、そういうふうに独禁法規定に照らしまして一々答えておりまするし、今後そういうふうに処理をいたしていく方針であります。
  43. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 その十五条の第二の規定で具体的に規制をされておる事例は相当ございますか。
  44. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) これはたとえば具体的に例を申し上げると少し差しさわりがございますが、事実ございましたことですから申し上げますが、雪印乳業という北海道の御承知の有名なバターを作ります会社、これが集排法によりまして二つ会社になりまして、現在も北海道バターと、それから雪印乳業、この二社になったのでございますが、この二社がいろいろな経理上の面その他の事情からいたしまして、合併をいたしたいという希望は相当古くから持っておりまして、具体的にもそういうような話を私どもの方に言ってきております。このバターの生産の面から見ますると、雪印と二つを合せますると非常な生産能力と申しますか、大きなものになるわけでございまして、この点におきまして十五条のいわゆるこの二社合併いたしました場合には、相当に競争実質的制限が行われるのではないかという点が疑問になっておるわけでございます。現在われわれの取り扱っておりまする実例から申しますと、これはパーセンテージで申し上げますのは非常に弊害がございまして、これはほんの一つの標準——単なる一つの標準というふうに聞いていただきたいのでございますが、大体一つ業界で約三〇%近い——あるいは二五%から三〇%近い生産能力、実績を持っておりますものに対しましては、そういうものができますことに関しましては、われわれといたしまして一応相当に警戒をいたすと申しますが、注意をいたしまして、大体現行法で申し上げますと、十五条の第一号の問題にひっかかってくるんじゃないかということで見ております。これはもちろんそのほかにその業界が非常に小さなものがたくさんある場合と、比較的少数独占的な業界でございます場合と、非常に違いますが、大体三〇%あるいはそれ以下くらいのところが、一応の基準としまして危険なる線というふうにいたしまして、合併等の問題を見ておる次第でございます。
  45. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 先年問題のありました不二ドロマイトと磐城セメントの合併、これはどうなっておりますか。
  46. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) これは実はこの独占禁止法の方で申しますと、この不二ドロマイトが現在もこれはいわゆる独占でございまして、それが今度は磐城に合併せられ、やはり独占の状態がそちらに続いていくということでございまして、これは非常に形式的に見ますれば、その状態に変更はないというので、特に合併によって取引制限というものが、そこに生じたのではないというふうに見ますれば、これはやはり独禁法上の問題にならないのじゃないかというわけであります。そういう観点から申しますと、あの合併につきましては、その他いろいろな問題があるようでございますが、独占禁止法の方の問題としましては、あまりそう問題はないのじゃないかという考え方をいたしておるわけでございます。
  47. 河野謙三

    ○河野謙三君 この機会にちょっとお尋ねしたいのですが、ただいまの具体的事例に出ました北海道の雪印バターの問題ですが、先年法律に基く家畜導入資金、この運用を乱用して中央金庫が雪印バターですか、この会社事業の拡張を大いに制限した、こういうことで問題があって、あなたの方で御取り調べになったはずですが、これは一体どうなりましたか。私はこういう機会にこのことを聞く事自体は、これほどひどい法律無視なことをやっておって、しかもなお結末がつかんようなことなら、こういう法律は要らんじゃないか、このくらいに私は思っておるのですが、そういうふうな意味から一つお尋ねしたいのです。
  48. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) 実はその問題は審判事件になっておりまして、雪印、北海道及び農林中央金庫並びに北信連、この四社を被審人にいたしまして、正式の審判をただいま続行中でございまして、ある程度調べは済みまして、なお引き続き多くの参考人等を調べる段階になっておるのでございまして、まだあるいは結論にはすぐに到達いたさないかもしれませんが、要するにわれわれといたしましては、農林中金がああいう差別的な融資の方法によって雪印につながる農家には資金が回り、その他につながるものには資金が出ないというような差別的な取り扱いに対しましては、非常に疑問を持ちまして、いろいろ調査いたしました結果、これはどうしても審判を開始いたしまして、その間の関係を明らかにする必要がある。これは農林中金としましても、これは系統融資というようなことを一応申しておるようでございますが、これはほんとうの腹の中からそう思っているのかどうかわかりませんが、そういうことを一応申しておるようでございます。そういういわゆる系統融資ということが、酪農を育成するため許さるべきことであるかどうかということは、やはり相当何らかの形ではっきりさせる必要があると思いますから、あの事件につきましては特に注意を払っておるわけでございますが、まだ審判の段階でございますので、結論に達しておりませんので、一応そのことだけ申し上げておきます。
  49. 河野謙三

    ○河野謙三君 審判となれば、もちろん慎重はけっこうですけれども、あれは実は私があの問題を一番最初に聞いた本人なんですよ、当時——。その後において二ヵ月の間に農林省が直接行って調査をした結果、私がしてきた通りであるということの報告さえ受けておるのです。そういう民間の人が報告したのじゃなくて、責任ある官庁が調査して、調査の結果報告を得ておる、こういうことについて、審判の慎重もけっこうですけれども、私はあまりに長過ぎるのじゃないか、こう思うのです。私はなぜこういうことを申し上げるかというと、商工委員会でこういう問題はどうかと思うのですが、農民の資本を非常に雪印バターというものは集めているわけですね。ところがこの雪印バターというものは非常に経営の内容が悪いのです。これを何とか早く結末をつけなければ、ただいたずらにこの雪印バターを中金あたりが家畜導入資金というような問題で応援した程度では、農民が多大の出資をしている会社が救われるものじゃないのですよ。でありますから、そういう意味合いで北海道の零細の農民が莫大な出資をしておるこの会社の運営というものにつきましては、私は非常に注目しているわけなんです。そういう意味合いで私はこの審判によってだれをやっつけろとか、かれをやっつけろとかいうことよりも、雪印バターに出資しておる農民の金というもの、それにつながる雪印バターの運命、そういうものに私は非常に関心を持っていたところが、ああいう問題が起ったわけです。あれはあなたのところで調べた結果おわかりのように、雪印バターに農民が牛乳を出さなければ、その農民に貸したところの家畜導入資金というものは取り上げてしまう、こういうことでしょう。その事実が審判になっておるのですか。その事実がわかっておって別なことで審判があるのですか、これをちょっとお伺いしたい。
  50. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) 大体そういうことでございます。
  51. 河野謙三

    ○河野謙三君 審判というのはその事実に対する調査なんですか。
  52. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) そうでございます。一応こちらといたしましては、十分調べて事実を握っておるつもりでございますが、まあそれに対して被審人は審判手続を通じまして、自分の方の言い分を言い、いろいろ事実を証明するというようなことを言っておるわけであります。しかしまあこれは先ほど審判手続を経てと申しましたが、実は最近農林中金の方から、三十年度の融資の方針等につきまして、まあ大体われわれの考えておる線に沿った融資のやり方をする、いわゆる差別的なやり方はやめるというようなことの申し出もあるようでありまして、あるいはこれは三十年度の融資は目の先に見えているわけでございますから、そういうふうに農林中金の方ではっきりした態度を示すということになりますれば、できるだけ早い機会にはっきりした結末をつけまして、場合によりましては二十八年度、二十九年度にさかのぼって、多少の手直しをするというようなことも考えられるわけでございます。むしろあまり長いことかかって審判をいたしますよりも、そういうような早い解決をはかるというようなことも今いろいろ苦心しております。
  53. 河野謙三

    ○河野謙三君 私は別にもう答弁を求めませんけれども、先ほど海野委員からどの線まで後退するのだというお話がありましたが、それでは私はやはり同じような気持で今のようなことをお尋ねしているのですが、あれだけはっきりした事実ですね。それについての結末がなかなかつかない。しかも結末をつける場合において、今後将来にわたってこういうふうに改めるという程度で、これで解決がつくのなら、私はあなたの御担当のお仕事尊厳というものは、全く僕は疑わざるを得ない、こういうことになると思うのですよ、そういう点につきまして、私は法律がある以上はもう少し厳然たる態度でこの法律一つ守っていただきたい、こういうことを私は希望いたしまして質疑を終ります。
  54. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 先ほどちょっと忘れたんですけれども、近頃こういう計画があるように聞くわけです。それは初め政府提案をして石油開発の特殊会社を作る予定であったようでありますが、大蔵省との予算の折衝のためにその案がくずれまして、今、議員提案で特別な石油開発の公社のような性格を持ったものを作ると、こういうことなんです。これに関連してお伺いをするわけなんですが、そういたしますと、現在の帝国石油というものは四千万株のうちで国が五百万株を持っておりますから、これは独占的な性格を非常に持っておりますけれども、しかし国のそういう出資面からくる規制もございまするし、また人事の面においても通産省出身の人がそちらに行っておりまして、やっておる仕事も新しい鉱区を探鉱するというような公的な事業があるために、この独禁の法律にも触れずに存在しておるんだと、こういうふうに考えておるわけです。ところがそれを最近仄聞するところによりますると、新しいこの開発会社は国が持っておる株を全部引き上げまして、それを特殊会社に出資をし、しかも初めの予定ではその探鉱を帝石が請け負うというような形であったものが、全然探鉱はその特殊会社において行いまして、帝石は全くの既存の油田を守って行くというだけの民間の企業になるわけであります、そうなりますと、これは公的な性格がなくなりまするし、全くの現在の油田を守っているという点においては、ほんとど一〇〇%に近い独占であるわけでありますが、こうなった場合に、これは独禁法の立場から、一体そういうことが許されるものであるかどうかという点について私は疑問を実は持っておるわけですが、この点についての御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  55. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) これも先ほどの問題に連なるわけでございますが、非常に独占的であるということ、これが直ちに独占禁止法の問題にならないのでございまして、先ほどのドロマイトの例で申し上げましたように、不二ドロマイトは事実上独占でございますけれども、あれ自信が直ちに独占禁止法違反という問題にはならない次第でございますので、帝石も、これもいろいろな面であるいは独占禁止法の問題を蔵しておるかとも思いますけれども、少くともあの形そのもの独占禁止法規定に抵触すると、かりにこれが国家の資金が引き上げられまして、純然たる民間の会社になったといたしましても、その形だけで直ちに独禁法違反というふうには必ずしも言えないと考える次第でございますけれども、しかしまあああいう独占的な会社につきましては、それに関連いたしまして、独禁法的な問題が起きがちでございますので、この帝石の問題につきましては、もちろん公正取引委におきましては重大な関心をもって見ておることは事実でございます。
  56. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 先ほどの国の出資株数はちょっと違っておりましたから訂正しておきます。七百六万株です。これはちょっとドロマイトと違うと思うのです。今のような帝石の形であるといいと思うのです。国も出資しておりますし、またあれくらい独占的にやらなければ、もうかる面の製油事業はほかの会社でやって一番損をする探鉱をやらなければならぬわけですから、これは今までのような形でやらなければできないわけですが、しかし今度、先ほど申し上げましたような新しい構想によりますと、株は引き上げるわ、また探鉱という一番金を食う面は特殊会社が持って純然たる民間会社になると同時に、既存の油田だけを守っていく、これはもうかるにきまっているわけです。下からわいてくるやつをそのまま売るだけの会社になるわけですから、こうなると、今の帝石とずいぶん変った性格になってくるわけで、その場合私は問題になると、こういうふうに実は考えておるわけで、この点は一つ十分……。まだ表面化した問題ではございませんが、おそらく今度の国会でこれは表面化してくることは必至だろうと思います。しかも初めの構想のように、持株会社は予算だけを持っておって、それを帝石に探鉱を請け負わせるという形であればまだなんですけれども、全く帝石は既存の油田だけを守って行く民間会社になるという点に非常に問題がありますから、これは一つもっと御研究を願って、また御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  57. 海野三朗

    ○海野三朗君 今、北海道のバタ一の会社のことが出ましたから、ついでにちょっとお伺いいたしたいと思います。八幡製鉄と富士製鉄と二つこの前分れました。これは公取としては一つになった方がいいとお考えになっていますか、これはこのままの方がいいとお考えになっていますか、その御所見を承わりたいと思います。
  58. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) 公正取引委員会としてということでございますれば、まあどういうふうに申し上げていいかちょっと困りますが、ああいう製鉄事業を純然たる私企業の体制でやって行くということがよろしいという前提をとるといたしますれば、これはあの二社が合併いたしますことによりまして、ことに非常な独占的な状態が生じまするので、これはもちろん現行法の、先ほどから出ておりまする十五条の第一号に明白に抵触いたしますので、当然許されないことであろうと思います。ただここにいろいろな政策的な考慮を入れまして、あるいは国営というような問題も考えられるわけでございまするが、あるいはそれに近き形に持って行って、むしろ独占利益というような点に着眼をいたしまして、それを別途の方法によりまして、独占から来まする弊害を押えながら独占のいいところを伸ばすということが、製鉄業ということの特殊の業務につきまして好ましいという政策をとるといたしますれば、これはやはり八幡と富士との合併ということも、これはもちろん独禁法がございます以上は、特別な法律が要ると思いますが、考えられることだと思います。しかしそれは公正取引委員会考えることじゃございませんので、私どもとしましては、独禁法の立場から申しますると、あの二つ合併するというようなことはとうてい考えられないというふうにお答えするほかはないと思います。
  59. 海野三朗

    ○海野三朗君 ただいま独占とおっしゃったのですけれども、同じ仕事をしておる会社がほかにもたくさんあるわけなんです。日本鋼管もあるですし、川崎製鉄もありますし、でありますから、そういう独占ということになりますか。同じ商売のものがもっとたくさんほかにもあるのです。ですから独占にはならないと思うのですが、どうですか。
  60. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) ここではっきり数字を申し上げられませんが、これはもちろん八幡、富士がやっております事業は非常に広範にわたっておりますので、その一つ一つをとりますると、先ほどのパーセンテージの問題から申しましても必ずしも独占とは申しませんが、少くとも銑鉄関係におきましての両者の能力というものが非常に大きなものになるのではないかと考えます。
  61. 海野三朗

    ○海野三朗君 今の三輪委員の不二ドロマイト、あれこそ独占じゃないのですか。あれが他に合併されたから独占には触れないとあなたはおっしゃるけれども、今日ドロマイトを売り出しておるのは日本ただ一つ会社でしょう。あれこそ独占じゃないですか。それが他に合併されたために独占に解しないというようなお話でありますが、その辺はいかなる……。
  62. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) たとえば百パーセントの事業能力を持っておりましても、他に競争者がないために独占になっておるのと、今までいろいろありました会社がだんだんに合わさりまして、そこにだんだん独占的なものが出てくるのと、これは非常に違うわけでございまして、独占禁止法はむしろそのあとの方の問題を規制をするという形になるわけでございます。たとえば今の八幡と富士の例でございますが、これはだんだん富士がふるわなくなってくる、八幡がだんだん伸びてくる、これは非常に経営がうまく行きまして八幡が伸びて行って、あるいは先ほど申しましたよりもずっと大きなパーセンテージをその業界におきまして占めるようなことになりますと、そのこと自体が直ちに独占禁止法違反ということにはならないわけででございまして、結局独占禁止法が押えておりますのは、いろいろな方法によりまして、そこに人為的に独占状態を作り上げて行く、すなわち他の事業者事業活動を支配したり、あるいは他の事業者事業活動を排斥いたしましたりすることによって、そこに独占的な形を作り上げて行く、これがいわゆる公共利益に反する競争制限と、こういうように見ておるわけでございます。
  63. 海野三朗

    ○海野三朗君 それではもう一つ。そういたしますと、今のドロマイトのようなものは独占ではないという御見解なんですか。
  64. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) 法律の言葉で申しますと、先ほど委員長がお読み上げになりましたように、他の事業者事業活動を支配し、または他の事業者事業活動を排除することによって、公共利益に反して一定取引分野競争を実質的に制限してはおりませんから、独占禁止法のいわゆる私的独占ではないと、こういうことになります。
  65. 海野三朗

    ○海野三朗君 あすこはドロマイト専門でありますから、ほかにドロマイトを売っておるところの会社がございますか、ないのであって、あすこが一手に握っておるわけなのであります。それでありますから、やはりこれは独占と見なければならないのではないですか。
  66. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) あるいは経済的な意味の、あるいは社会的な意味独占ではございましょうけれども独占禁止法私的独占にはならないかと存じます。
  67. 吉野信次

    委員長吉野信次君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  68. 吉野信次

    委員長吉野信次君) 速記を始めて。
  69. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 実は前々のときに私質問して、動議としてお諮りをいたしておりました、クーバー法に関する本委員会の態度の問題でありますが、これはアメリカの議会において両院協議会が持たれておるような情勢でしたから、何らかの申入れをしたらどうだろうということをば申しましたけれども、しかしだんだん調べてみますと、外国の議会に対してそういう干渉と申しますか、申入れをすることはどうであろうというような意見もございまして、実はこの法案アメリカにおける審議の状況等を見ますというと、これは明らかに日本政府の在外公館が経済外交において欠くるところがあったのではないかというようなことが考えられまするので、この問題に対する結論としては、一つ委員会としては、政府に対して今まで以上に経済外交の強力なる推進を行えと、そうしてそのことを在外各公館に対して訓令を発して徹底をするようにしてもらいたいというような意味の決議でもしたらよいのではないか。これが実際の実施面において非常に拡張解釈をされまして、日本の貿易に不利になることを避けると同時に、さらにほかの国において同様の政策がとられることによって日本の貿易の門戸が次第に閉されて行くということをばなるたけ避けるために、そういう意味の意思表示を政府に対してすることが、妥当ではないか、こういうふうに考えるわけですが、一つ皆さん方にお諮りを願いたいと思います。
  70. 吉野信次

    委員長吉野信次君) いかがでしょう、この間三輪委員の御発言があって、それから当時外務省の局長に来てもらうように連絡をいたしましたけれども、都合が悪くて見えられませんでした。その際にいろいろ向うの方面の情勢も伺ったのですが、ちょうど今、三輪委員のおっしゃったように、外国の議会になっておるものですから、そうしてアメリカ政府としてはできるだけ努力しておるわけですね、何と言いますか、撤回と言いますか、にですね。それだから、そういう際に向うの、少くともアメリカ政府の意向を全く聞かずして、この委員会で決議してやるということもどうかというような意見もございまして、ちょうど今、三輪委員がおっしゃったような点が、多少デリケートな問題があったわけであります。それでそのままに実はなっておるわけであります。今、三輪委員からお話がございましたが、三輪委員お話のうちに、経済外交におきまして大いに政府が弱いと言いますか、俗な言葉で言えばどじを踏んだようなきらいもないではないというような御発言もございましたが、ただその点委員会として、その事実に基きましてやるとすれば、やはり一応何と言いますか、外務省側の意見も聞いてやるのが穏当じゃないかと思うのです。私としては 一応被害の立場でもありませんけれども、そうして果してその点について向うの方が十分尽したか尽さないかという一応の弁明と言いますか、説明を聞いた上で委員会の意見をきめることにしてもおそくないのじゃないか、こう思いますが。
  71. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 これは私大体考えておる決議案としては、これを具体的に取り上げて指摘はしないで、一般的な問題として、その他のところでもそういうことは一般的に考えられる節がたくさんございまするし、また将来を鞭撻する意味において、あまり具体的な事例を上げていない、まあ穏当と申しますか、そういう案文にしていというふうに考えておるのですが、そうすれば、何も外務省に被告の立場で弁明をさせるということも必要ではないというふうに考えますが。
  72. 吉野信次

    委員長吉野信次君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  73. 吉野信次

    委員長吉野信次君) 速記を始めて。
  74. 海野三朗

    ○海野三朗君 ビルマに対する賠償の問題でありまするが、去年の十二月にビルマに行きましたときに稲垣平太郎君が行っておりました。その後この商工委員会に久留島秀三郎君に来てもらいまして、その当時の状況を聞いたのであります。そのときに、ビルマの方では、すべての事柄を全部日本にまかせる、工場を建てるのも、経営の仕方も全部まかせるから早くやってもらいたいということであったという報告でありましたが、それからもう半年経過しておる、それに対して外務省及び通産省ではいかなる手を打っておるのか、あるいは業者を指定するなり、一体どういうふうな手を打っておるのか、それを私は商工委員会において聞きたいと思うのでありますが、委員長におかれては、その当事者をここへ呼んでいただくようにお願いをいたしたいと思います。これは重大問題でありますから、どうぞお願いいたします。
  75. 吉野信次

    委員長吉野信次君) 承知いたしました。ほかに御発言がなければ、本日はこれで散会いたします。    午後三時四十六分散会