運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1955-05-17 第22回国会 参議院 商工委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月十七日(火曜日)    午後一時四十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     吉野 信次君    理事            古池 信三君            高橋  衛君            山川 良一君            三輪 貞治君    委員            上原 正吉君            小野 義夫君            上林 忠次君            河野 謙三君            海野 三朗君            栗山 良夫君            上條 愛一君            小松 正雄君            白川 一雄君            苫米地義三君   国務大臣    国 務 大 臣 高碕達之助君   政府委員    内閣官房長官  根本龍太郎君    経済審議庁次長 石原 武夫君    公正取引委員会    委員長     横田 正俊君    警察庁刑事部長 中川 董治君    通商産業政務次    官       島村 一郎君    通商産業省鉱山    局長      川上 為治君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○過度経済力集中排除法等を廃止する  法律案内閣提出) ○ニッケル製錬事業助成臨時措置法を  廃止する法律案内閣提出) ○連合審査会に関する件 ○経済自立方策に関する調査の件  (経済総合開発計画に関する件)  (経済審議庁機構改革に関する件)  (外資導入に関する件)  (飛び出しナイフ製造に関する件)   —————————————
  2. 吉野信次

    委員長吉野信次君) それではこれから委員会を開会いたします。  まず最初に本委員会に付託されました過度経済力集中排除法等を廃止する法律案、この提案の説明を当局からお伺いしたいと思います。
  3. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) ただいま上程されました過度経済力集中排除法等を廃止する法律案について、その提案理由を説明いたします。  過度経済力集中排除法過度経済力集中排除し、国民経済を合理的に再編成することによって民主的で健全な国民経済基礎を作ることを目的とするもので昭和二十二年十二月に公布施行せられたものであります。  また過度経済力集中排除法の施行に伴う企業再建整備法特例等に関する法律本法の実施を円滑にするため企業再建整備法との関係を調整するとともに、その一部規定を準用するためのもので本法と同時に公布施行せられたものであります。  また過度経済力集中排除法第二十六条の規定による持株会社整理委員会職権等公正取引委員会への移管に関する法律公正取引委員会への職権等移管規定したもので昭和二十四年五月から公布実施されたものであります。  集中排除法規定によって持株会社整理委員会過度経済力集中として昭和二十三年二月に指定しましたものは三百二十五会社でありましたが、そのうち二百九十七会社については指定を取消しましたので企業再編成の指令を受けることになったものは、実際には日本発送電株式会社日本製鉄株式会社等の二十八会社であったのであります。  これらの二十八会社については持株会社整理委員会当時のものを含め昭和二十四年度中に四会社昭和二十五年度中に五会社昭和二十六年度中に六会社昭和二十七年度中に一会社昭和二十八年度中に九会社昭和二十九年度中に三会社の手続を完結し、昭和二十九年十一月をもって一切の事務を終了いたしました。  よってこれらの法律は必要がなくなりましたので、本法案を提出した次第であります。  何とぞ御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  4. 海野三朗

    海野三朗君 ちょっと私お伺いしたいのですが、排除法律案を読んでみますと、この、たとえば鉄の方などというものは八幡富士と分れてしまった、ところがまたこれは実際から考えると一つにしておく方が非常な利点があるというようなことも考えられる場合があるのです。せっかくこういうように排除法をやったけれども、また逆行しつつあるような機運に向いているのじゃないですか、その点についてはどうですか。たとえば電力会社のように一本になった方がいい、あるいはまた製鉄会社のような、同じ種類のやつで八幡富士が分れておるというのは、人事の交流の点から言っても、あるいは仕事の上から言っても、かえってこういうようにしないで一つになってやった方がいいというような意見もときどき耳にするのでありますが、そういう点に対しての御所見はどうなんですか。
  5. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) 便宜私からお答え申し上げますが、御承知のように過度経済力集中排除法は、読んで字のごとく過度経済力集中排除目的といたしましたきわめて経過的な規定でございますので、この法律がなくなりました後は独占禁止法がこういう関係を規律いたしまする一般法として残りまするので、結局ただいま御質疑がございましたような、たとえば製鉄会社集排以前の状態に返すものだ、あるいは電力関係会社をあるいはまたもとに返して一本にするというような問題は独占禁止法上の問題となりまして、現行の独占禁止法上そういうことが認められるかどうかということになるわけでございます。しかしその点になりますというと、これは個々の問題といたしまして、独占禁止政策の上から十分検討しなければならぬことでございますが、御質疑趣旨はさらにその点を越えまして、独占禁止法上の問題というよりも、さらにもう一歩進んだ問題としまして、そういうふうにした方がいいかどうかというような点になりますると、これはむしろ国家一つ経済政策といたしまして、その問題はまた十分に検討しなければならぬ問題だろうと思いますが、その点は私どもからいたしますれば、独占禁止政策の観点から申しまして、軽率にそういうことはやるべきではないという見解でございます。しかし国家の要請上そういうものが必要となりますれば、これは十分に検討いたさなければならぬ問題だろうと思います。
  6. 吉野信次

    委員長吉野信次君) ちょっとお諮りいたしますが、経済審議庁長官が見えていまして、二時半から予算の方に出なければならぬそうでありますから、この間の前回の会議のときにも経済審議庁長官から新聞に伝えられておる経済審議庁ですか、あれの機構改革、あるいは六ヵ年計画その他について一ぺん伺うことになっておりますから、ちょっとこれから伺いたいと思います。それでは一つ……。
  7. 高橋衛

    高橋衛君 ちょっと今の問題をもう一点だけ聞きたいのでございますが…。過度経済力集中排除法を廃止しまするについて、私は反対は一つもないのでございますが、この法律占領下法律であって、相当、何と申しますか、画期的な経済制度についての改革であったわけでありますが、この結果のあとを眺めてみますと、それが相当行き過ぎになっている点がありはしないかというととが感じられるわけであります。また独占禁止法は約二年ほど前に改正になりまして、相当国家独占禁止そのものに対するところの考え方も変ってきているわけでありますが、現在の公取の独占禁止法に基いての考え方から考えて、この過度経済力集中排除法によって実施しました結果をさらに再検討する必要が現在の考え方から言ってあるものが相当あるのじゃないかという感じがするのでありますが、先ほどの海野委員質問に対する答弁では、独占禁止法の建前から別途に考えたいというお考えでありますけれども、その考えの際に、あの過度経済力集中排除法に基いてやったことは、独占禁止法の現在の考え方に基いても妥当な程度でやったのだというふうにお考えになりますか、それともこれは相当行き過ぎであって、今後こういうものについては、さらに復元するということについては別途に考え直してみたいというお考えであるか、その点を伺っておきます。
  8. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) ただいまの点お答えいたします。集排排除基準と言いますものが、独占禁止法とはだいぶ変っておりまして、その点で現在の独占禁止法から見ますれば、必ずしもそういう結果にする必要がなかったと思われるものがあり得るわけでございます。  なお、これは集排だけでなく、その他のいろんな当時できました法律に基きまして、集排にかかりました会社は二十何社ございまするが、その他の関係におきまして自発的にいろいろ機構改革、分割というようなことをされたものが相当あるわけでございます。しかし、それらにつきましても、現在といたしましては独占禁止法あるのみでございますが、その基準に対しましていろいろ検討いたしますれば、あるいはもと状態に返っても必ずしも独占禁止法に違反しないというようなものが、相当あるのではないかと考えます。
  9. 吉野信次

    委員長吉野信次君) 高碕長官一つお願いします。
  10. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 今回経済審議庁の名称を変更いたしまして、経済企画庁という名前にいたしました根本理由はどこにあるかと申しますと、まず経済六ヵ年計画を遂行する上において、それを推進するということが一つ目的でございます。それからもう一つ目的は、従前、これは実行上は円滑にいっておりますが、各省から資料をもらっているわけなんでございますが、この資料を収集します上において、これは円滑に推進しておりますけれども、これを一そう提出せしめるというふうなことに直していきたい、こういうふうに考えております。  それからもう一つは、この計画を立案しまする上において、各省の長に対して計画立案について勧告するという条項をつけ加えたいと、こう思っておりますのが大体の主眼でございまするが、今日は経費を節約すべきときでありますから、内部の人たちは、人員をふやさずにやりくりをして、そうしてそれだけの実行ができるようにいたしたいと、こう存じているわけでございます。この個条書を読みますと、皆さんのお手元に差し上げた通りでございます。大体の趣旨はそういう趣旨に相なっております。さよう御承知を願いたいと思います。  それから経済の六ヵ年計画につきましては、これはすでにお手元に、六ヵ年計画を差し上げております通りに、根本趣旨は、六年後における日本人口がどうなるかという問題でございまして、それを主眼におきまして、その人口の中で何人の人が労働過剰だと、それにはどれだけの仕事を与えれば失業者の数を少くすることができるかと、そうして日本経済が自立できるかということが、この六ヵ年計画根本でございまして、その趣旨を貫徹するために、一つ目安を置こうじゃないか、その目安を作らなければならないのじゃないかというのがこれは本年の一月に総合経済六ヵ年計画構想として各位に差し上げた通りでございますが、これを実行いたします方法といたしましては、とにかくまず最初この計画につきましても今度の企画庁審議庁だけでこれは一応原案を作りまして、各省との連絡をとる、そうしてこれを修正いたしまして閣議決定したのでありますけれども、これは最終的の数字でなくて、できるだけ各方面意見、特に学者、業界、さらに国民諸君意見までも聞いて、これをほんとうの国民が支持する目標を作り上げたい、こういう考えで今進んでおるわけなんでありまして、その目標を作ればその目標を達成するためには国民全体の支持を得て、そうしてできるだけこれは国民自由意思を尊重し、各人の創意工夫を生かして生産を増強して経済自立をするということが目的でありまして、できるだけ政府の力による規制は加えないつもりでありますが、時によるとその政策においてある程度規制はやむを得ないかと存じますが、それはそのときどきの政府方針できめたい、こういうことが主眼でございます。  なお詳細の数字等につきまして御質問がございますればお答えをいたしたいと思いますが、大体の今度の経済審議庁機構改革と、それから経済六ヵ年計画というもののあり方につきまして根本方針を御説明申し上げた次第であります。
  11. 吉野信次

    委員長吉野信次君) いずれ皆さんからも御質問があると思いますが、はなはだ私なんですけれども、長官にちょっと伺っておきたいのですが、経済というものに計画性を持たせるということは、これは当然なことであって、ただ自由経済計画経済はどこが違うかとこういえば、自由経済の方はその経済計画性というものを民間人に自由にまかしておくことが一番いいというのが自由経済であって、民間経済といえどもこれは計画というものは非常に大事であって、私が申すまでもない。商売をする人は五年、十年先のことを考えて、みな計画をしておるわけであります。それから今度は計画経済というものを国がとる場合には、これを民間にまかせない。民間にまかせないということはどういうことかといえば、いわゆる国家権力を発動して、そうして自由に民間人がやろうとするところを押える。これが政府長期経済計画というものの私は主眼だ、こう思うのです。それですから六ヵ年計画の内容は別として、六ヵ年なら六ヵ年にわたって長期計画を立てられると、こういう上は、これをいろいろな道具立てが要ると思うのです。つまり民間の自由奔放な企業に対して、どういう一体規制をやるか、これが私は一番問題だろうと思うのですが、今伺いますと企画庁のなにはただ勧告をするということにとどまるということですが、この勧告ということも、これはむしろ事務の方に伺った方がいいと思いますけれども、行政法的にいうと、一体どういう効果があるものか、それにも私はよくのみ込めないのです。ということは、企画庁というものが今度できて、そうして経済長期計画を立てる役所であるということが法律できまって、それが権限があればこれは勧告するもしないもないのであって、政府できめたことだから政府部内ではやはりそれに従って、各省はその計画を立てなければならんと思うのですよ。それがもしきかない閣僚があれば、そのために総理大臣というものがあるのですから、いわゆる閣内でもってこれをきめるのであって、これを今さら法律でもって各省大臣勧告するもしないもおかしな話じゃないかという、これはちょっと私思いつきですけれども、考えているんです。事務の方で、行政法勧告というものはどういう一体効果があるものか。アメリカならアメリカの、私はよく知りませんけれども、いろいろなもので、やっぱり法律で官庁の権限規定したものの上に、そういう勧告をするということを書いたものがありますけれども、これはよく意味があるので、勧告をした、勧告をしてきかないときはどうするとか、あるいは以上のなにをなにしなければならんとかいう、あとの段階があってはじめてあるのであって、ただ同じ内閣であって、そうしてその内閣一つの部局が法律でもって与えた権限があるというなら、その権限に従って予算なり政策各省がきめるのは同じことであって、これを法律でもって勧告するということをきめておくのはどうかという疑いがあるのです。これについても伺いたいと思います。それはそれとして、ただ勧告ということのほかに一体——これは今日でなくてもいいのですが、六ヵ年の長期計画をやるのに一体政府はどういう道具立てを用意されるのか、それを一つお伺いしたいと思うのです。ただ今のお話を伺いますと、そのときどきによってやるのだ、こういうのですけれども、ときどきではいけないので、やはり六ヵ年にわたるのだから、たとえば金融方面財政投資をするというふうな場合に、この六ヵ年計画に沿うてやるという場合に、これも今までは行政庁が勝手に金の割り振りをきめているようですが、予算じゃきままっている、開発銀行なら開発銀行総額は。けれどもその総額の中でこの事業に幾らやるかということは今までの行政では法律も何もない。それが一体いいか悪いか。しかも六ヵ年計画を立てるというなら、六ヵ年計画の見地からいえばやはりそういう場合にはプリオリティをどの事業にやるかということについて議会から明確な委任権限というものを持っているのが一つ方法じゃないかというふうに考えております。ですから、これは一つの例ですけれども、いろいろあると思うのです。くどいようですけれども、とにかく長期計画政府がやるのだ、計画経済の一端をやるのだというなら、言葉をかえて言えば国権でもってやはり民間の自由というものに干渉するということですから、だからどういう道具立てでこれを干渉するのか、干渉というと工合が悪いでしょうが、長官言葉をかりて言えば推進です。ただ絵にかいた計画でなしに、実行するのだというならこれを効果あらしめるために、推進するためにどういう道具立てを並べられるのか。これは今日でなくてもいいですが、私もよく存じませんから、今までもあるでしょう、いろいろそういうものを一通りこの委員会にお示し願えれば大へん審議をする上に幸いじゃないか、こう思うのでございます。これはお願いでございます。
  12. 海野三朗

    海野三朗君 審議庁長官にお伺いしますが、六ヵ年という数字はどこからお出しになったものでありますか。
  13. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 現在計画基礎人口推移を一番大事に考えております。それで現在は厚生省人口調査というものの数字がちょうど六ヵ年目の数字が一番正確に出ておりますことが一つ、それからもう一つは前期と後期とに分けまして、前三ヵ年は大体拡大均衡をやって行く地ならしをやる、準備期間としてやる。そうして後期の三ヵ年に拡大均衡へ持って行って、そうして日本の増加する人口を六ヵ年目にどうすれば完全雇用に近い、つまり失業者を一〇%の程度におくことができるかという数字を出すにはこれが一番便利だ、こういうことから六年という数字をおいたのであります。
  14. 海野三朗

    海野三朗君 今のお話では六年が一番正確だというふうにお考えになっておりますけれども、経済界変動は御承知のように昭和二十年から以降でさえもすばらしい変動を来たしている状態において、六年というのはあまりにも虫がいい御計画であるように私は思うのです。とても六年後は想像できないのじゃないか。たとえば原子力が平和利用に持って来られて、これが原子炉でもできたときは直ちに経済界に一番変動を及ぼしてくるのじゃないか。こういうふうに考えますと、六年というのは私は非常に根拠が薄弱のように思えるのですが、やはり厚生省の六年というものを絶対信頼してお立てなさったわけでありますか。
  15. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 厚生省人口推移ですね。人数の動態ということは、これはそれ以外にもう信頼し得る数字がないのでございますから、それを信頼してやっております。  それから今の御質問ですが、大体は六年目に、現在あります特需が六年ぐらいになくなる予定なんでございます。六年目には特需がなくなっちゃう。特需がなくなったときにこれをどうしてやっていくか。そういう数字から申しますと、六年は非常にいい数字になりまして、いろんな点からも考えられます。特需がなくなる。国際情勢は現在の状態からそう変化しない。今の平和の状態が、冷戦の状態と言いましょうか、この状態が当分続いておって大きな変動がないということが前提になっておりまするけれども、特に何か変動があれば当然この数字は変えなければならぬ。そういうふうなことから、とにかく海外貿易は逐次各国とも非常に競争が大きくなるというふうなことも従前数字から見ましていろいろ考察いたしております。
  16. 高橋衛

    高橋衛君 鳩山内閣になりましてから、いわゆる経済計画ということを言い出されて参ったわけであります。計画経済というのは必然的に従来の自由放任的なものの考え方と、本質的のあり方は変って来なければならないと、こういうふうに考えるのでありますが、ところが今までの日本占領下におけるところの経済というものは占領軍等指導等もございまして、完全に自由化に向って参っておったわけであります。一つの例を申し上げれば、金融等について戦前にも、また以前にも非常に自由主義はなやかだった時代においてもなかった程度に、金融は完全に政府権限を離れて日本銀行、あるいは日本銀行政策委員会権限に完全に掌握されて参ったという実情に相なったわけであります。ところが計画経済というものを考える際におきましては、どうしても金融についてある程度計画を持たなければ、これは絶対に経済計画というものが成立いたすまいと思うのであります。たとえば開銀の資金の使い方とか、あるいはその他一般預金の伸びに対して貸し出しをどういうふうな方向に向けていくか、それは強制であろうと何であろうと方法は別といたしまして、とにかく計画性を持たせる、さらにそれについては最後の場合にある程度の保障がなければ、それがその計画経済というものを実際上確保できないと、こう考えるのでありますが、その点について経済計画というものをはっきりと具体化され、今度やっていくのだということになります以上は、その点について相当な政策の変更についての御所信があろうかと思いますが、その点についての御所信を伺いたいと思います。
  17. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 先ほどの委員長からの御質問も、ただいまの御質問も、これは同じことでありまして、委員長の御質問の方は計画経済実行するのは権力を持たなければ実行できない。これはまさにその通りであります。この鳩山内閣がやっております経済六ヵ年計画は、言い方は何と言いましょうか、私はしろうとですから、経済計画性を持たす、計画性を持たなければならぬということが主眼でございまして、これをさて実行するということになれば、政府の力をできるだけ使わないで、なるべく民間創意工夫を生かしていこう。従いまして、現在政府が持っております規制の力というものは、為替の売買をするとか、あるいは基礎物資の価格をある程度話し合いをするとか、今の日本銀行委員会におきまして金融規制をどの程度にするかということを民間人たちと話し合ってやってもらう。同様でございまして、今度われわれがやっております民間資金を今後どんどん集めて、できるだけこれを集めて民間資金をどういうふうにしようじゃないか、さてどういうふうにしたあとでその金をどっちへ回すかというようなことになれは、これはできるだけ民間人たちの御意見を聞いて、その方によってまた諮問できるような機関を作ってやっていきたいと思う。どうしてもこうしてもそれはいかんということになればやはりそのときの政府側方針でどの程度規制をするかということは、やはりそのときにきめるもので、今前提として、これはこういうふうな計画を立てたのだからこの計画政府の力をもって実行していくということまでは、そこまでは強く今考えていない状態なんでございますが、そういう点につきまして法規の問題とか、そういうふうなことにつきましては、また政府委員からいろいろ説明いたさすことにいたします。
  18. 吉野信次

    委員長吉野信次君) ちょっと私の言い方が悪かったのかもしれませんが、権力をむやみに使えというのじゃないのですけれども、政府政策として実行するのだということならば、それをやはり実行するだけの力が要るのだと僕は思うのです。ただ今お話のように、民間に指導するのだというのなら、これは具体的な政策というものじゃないのです。それならただわが政府はこういうふうにやるのだという、何というか国民に対して、経済界に対して政府としての一つの指標を示すだけで、これをするもしないも民間人の勝手なんです。そうすると、今ちょっと伺えば、そういう場合に民間人と相談をするのだというけれども、民間人と相談しても、政府が六ヵ年計画というものである問題をやったときに、まあ政府政策だというなら、民間人がこれに従わない場合でも——これは政府責任でやっているのですから、民間の人と相談するものじゃないのだから、それをきめるまでは民間の人にいろいろ意見を聞くのはいいと思うのですけれども、政府責任をもって政策として打ち出した以上は、これをやるとすれば、これは政府責任でやるべきである。それをどうしてやったらいいか、やったら悪いかということを民間に聞くのじゃこれは私は長期計画というのじゃないと思う。これは言葉の何かもしれませんが、それだからあるいは長官考えている長期計画というものと私の了解しているのとは違うかもしらぬが、しかしこれは、だれが考えても長期経済計画というものを政策としてやるのだというなら、これはやっぱり政策にするだけの道具立てなくして、ただ指標だけを、方向だけをきめて、ただおれがやるのだというならば、これは私は責任ある政府政策じゃないと思う。そこは言葉の争いというよりも、むしろ何かそこで少し内容が私どもの了解と違うかもしれない、違うならこれはそうじゃないことになるが、しかしあれだけ鳴りもの入りで、いかにも計画実行するのだという一つ政策を掲げていられるなら、今権力を使うというのじゃないけれども、最後はその計画されたところのものを実行するだけのやはり道具立てというものを持たないで計画を立てるということは、私は、少し責任を回避するものであって、どうかと、こういう意味でお伺いしたのですが、今日でなくてけっこうですから、いろいろの今までの法規もあるでしょうし、これからのいろいろのまだ何もございましょうから、大体のそういう道具立てのことを一ぺんお示しを願いたいと、こう思うのです。
  19. 高橋衛

    高橋衛君 先の質問に関連してもう一点いたしておきたいのでありますが、政府は今度の住宅政策に関連して、生保に対して、生命保険会社ですね、生保に対して四十億円の住宅公団に対する出資を勧奨し、その承諾を得たのでありますが、同時にその代償として、所得税の生命保険料控除一万二千円を一万五千円に引き上げたと新聞に報ぜられておりますが、そういうふうな何らかのかわりの条件をもつてそういうふうなことをやっていくという意図であるのか、そうじゃなしに、単純な勧奨でもって聞いてもらえるというふうに政府はお考えになっておられるのか、その辺のことを一つ聞いておきたいと思います。
  20. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 住宅問題につきましては、内閣は非常に重点を置いてやっていることでございますが、あの手この手をいろいろ考えていることは御承知通りでありますが、ただいま御質問の住宅問題は、あまり専門にわたっておりますから、私はあまり存じません、存じませんですが、できるだけ御協力を願って、政府目的通り四十二万戸を造成いたしたいという方針で進んでいきたいと思っております。
  21. 高橋衛

    高橋衛君 住宅の問題について、よく御存じないというお話でございますけれども、いやしくも政府が生保に、四十億円の民間資金を投入することを承諾させて、それでもって四十二万戸の建設という、鳩山内閣の大きな公約を実現しようということにしておられるからには、これはやはりこの計画経済一つあり方として、非常に大きな意味を持つ、今までなかったところの一つの大きな政策であると私は思う。その点については私は、そう軽々に、これはよくわからないということじゃ困ると思う。
  22. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) よく調べてお答えいたします。間違うと困りますから。
  23. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 経済審議庁長官が今お述べになりました長期経済計画の推進というのは、端的に申して、どういうことを目標にしておられるのか。
  24. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 端的に申しますというと、日本の現在の人口は、六年後になりますというと、七分七厘総人口がふえるわけでございます。それに対しまして、労働の可能な、これに職を与えなければならぬ人口の増加率は、非常に多いのでございまして、一〇・七、つまり人口のふえる数よりも、職を与えるべき人が非常に多くなる。で、それだけの人にできるだけ完全雇用をするのには、一体幾らの生産をすればいい、どれぐらいの国民生産を上げればいいという、こういうことの根本方針を定めまして、国民生産をそれだけにするのには、農産物を幾らふやせばいい、それから鉱産物を幾らくらいふやせばいい、それで、それに対しては、輸出をどれくらいにすればいい、輸入をどういうふうにすればいい、そうすればこれだけの、六年後の人口に対して、比較的完全雇用に近い完全雇用を与えて、そして日本経済が伸びていくと、こういうことを根本目標に置きまして、それに進むのには、どういう順序で進んだらいいかと、こういうことを考察したのが、その全体の根本方針なのでございます。
  25. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そのお考えのベースになります問題なんですが、国民生活の水準と申しますか、あるいは平均国民所得といいますか、そういうものは現状のままを想定せられておるか、あるいはこれに若干の改善を加えようとしておられるのか、その辺はいかがですか。
  26. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 大体国民所得は三十二年、前三年のところ、一〇・一%くらいふやしていく。それから三十五年、最後には、国民所得二四%ふやす、こういう考えでございまして、生産の方は、三十二年には九・一%、それから三十五年には二三・一%に生産をふやしていきたい、こういう所存でございます。
  27. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 今の御計画、並びに国民所得を漸次増加させながら、しかも人口、特に労働人口の増加に対して、完全雇用政策をとると、こうおっしゃるわけでございますが、これはまあ理想的ではありましょう。ありましょうが、非常に困難な問題だと私は思う、率直に申しまして。そうしますと、今、委員長の御質疑お話の内容を伺っておりますと、長期経済計画の推進というものは、政府当局がプランを立てるというだけではやはりいけないのじゃないか。やはり政府が相当に強制力を持って、そうして経済計画の推進というものに当らなければ、今おっしゃった点はできないのじゃないか。私は細目について、まだお尋ねしたい点がありますが、総合的にはそういうふうに考えるのであります。ですから今、長官のおっしゃったような、まあ自由党内閣のときよりは一歩前進でしょう。とにかく計画をやらなければならぬと、こうおっしゃっておるのですから。しかし民主党内閣としても、もう一歩推し進めた強力な政策を行うという考え方がなければ、三十五年度に対しての経済界、あるいは完全雇用について非常に御心配になっている点はわかります。御心配になっている点はわかるが、今のような進め方では、それが実現しないのじゃないか、そういうように思うが、いかがでございましょう。
  28. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは非常にむずかしい問題でございまして、これはなかなか、そこまで行くのには並み大ていではないということは、よく私は存じておりますのですが、しかし、ここで全然これはできないことだと申しますと……これは端的に、ほんとうに私の実感を申し上げますというと、私は経済審議庁に昨年の十二月に入りましたときに、経済審議庁には、もうすでに社会党内閣の時代から、あるいは自由党内閣の時代からりっぱな計画の立案ができておったのでございます。これはあまり日の目を見ずに、そのままになっておりました。こういうような状態でありまして、それを知りつつ、私はその前にアメリカに参りまして、アメリカ経済計画はどうしておるかということを聞きましたところが、アメリカではコルムという男がこの計画経済を立てて、今それが政府一つの参考になってそれをやっておるという話を聞いて、それで非常にアメリカの景気がよくなったときには、こうやるのだ、悪く行ったら、これはこうやるのだというように、これが一つのかじになっておるという話を聞いて帰って、経済審議庁に来てみると、そういう計画があったものですから、これは一体何を資料にしたのか、こう聞いてみますと、私の考えとぴたっと一致したコルムの考えを持ってきておるという話です。それでは基礎的の数字はどういう点にあるかと聞いてみますと、アメリカは大体自給自足の経済を立てておるけれども、日本はとても自給自足経済は立たぬ。それで特需はだんだん減るのだ。特需はだんだん減るのだということになれば、輸出貿易の振興をはからなければならぬ、こういうことに原則を置きました。もう一つは、アメリカ完全雇用というものは、比較的楽であります。十四才以上の人たち人口の五六%を、これは働くものと見ればいい。日本ではそうではありません。六七%働いておる、こういうことでありますから、そこにアメリカ日本との考え方を別にしなければならない、こういうことを考えまして、まず、そういうようなことの基礎観念で従前やっておった数字基礎に置いて、数字というよりもスタッフ、このスタッフは、これはなかなか得られないスタッフです。私はよくまあこれだけ、戦争後皆があれだけのことをやっておってくれた。非常に努力しておられる人たちがおる。この人たちの頭を利用して、できるだけ短期間に仕上げてきたわけであります。この仕上げた数字は決して完全なものじゃない。私はもっと皆さんの御意見を承わり、また国民諸君の声を聞いて、そうして皆が納得する、これならよかろうというこの数字国民に問うて、それを広く一般に示して、そうしてこういうふうに耐乏生活、時には耐乏生活もして、貯蓄も増進してもらわなければならない、こうしていけば、六年目には自分たちの生活はこういうように向上するのだということを納得してもらっていこうじゃないか。そうして、どうしてもいかぬときには、ある程度の、そのときの政策によって統制を加えていこう、こういうことが、私どもの、この計画を立案いたしました偽わらざる心境を吐露いたしますと、さようなわけでありますから、さよう御承知願いたいと思います。
  29. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そのお考えは、私も大体わからないことはないのです。ただ問題は、アメリカの例をおとりになったけれども、アメリカはただいまの段階では、決して自由放任経済ではないと私は見ております。これは統制経済という言葉が当らなければ、管理経済というのか、とにかく自由放任の経済ではない。おそらく世界において日本のような経済運営をやっている国はそう例はないでしょう。だからそのことをお気づきになっておるので、計画までの点については長官の御説明に別にお言葉を返すようなことはないのです。ただそれを忠実に実行する御意思がおありかどうかということを伺っている。ただ先ほど伺っているところをみますというと、そこまではおっしゃっていないのですが、しかし六年先のことではなくて、まだ鳩山内閣ができましてから半歳程度のものですが、その間においても従来の吉田内閣がとった態度とは相当異なった経済計画を国の力によって強力に推進しようという具体的な動きが二、三あることは私も承知しているわけです。これは具体的なことは私申し上げませんが、こう私が申し上げればお気づきいただけると思います。そういうようなことをさらに間口を広げておやりになる御意思があるかどうか。これはやはり国民にとっては非常に重要なことです。納得行政をやるということは異存がありません。これは戦争中のようなああいう強度の軍事統制というか、官僚統制というか、ああいうことは避けなければならんわけですから、納得行政そのものは当然のことだ。その上に立って、なおかつ国の強力なる施策によって進めていくということの御意思があるのかどうか。現に具体的に二、三の問題についてはその片鱗が見えているわけです。そこでお考えを伺った、こういうことを申し上げておきます。
  30. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) まず最初六年計画数字についてはっきりした国民全体の支持を得られるかということはまず第一問題であります。これはまだ六ヵ月しかたちませんから、またこの数字が私は正確なものだと思っておりません。まだ大いに検討しなければならんと思っております。それができました以上はできるだけこれは実行に移す、推進しなければならない。それがためには政策上ある程度規制をしなければならないというものは規制をしていきたい。そういうふうに承知しております。
  31. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それからあと二点ほど質問したいのですが、その第一点はやはり産業活動を活溌にいたしますためには基礎産業というものを度外視して考えるわけにはいかない。特にエネルギー資源というものについては格別の考慮を必要だと私は思います。その場合に長官の、直接伺ったわけではありませんが、あるいは談話、あるいは新聞等を通じて長官の御意思というものをそんたくいたしますと、たとえばエネルギー資源の中で石炭問題については合理化法を推進する、それから電力の開発については財政投資をやって安価な電力を供給する、こういうことをしばしば言明せられている。その限りにおいては私は一向に差しつかえないと思うのですが、問題は財政投資を行なって安価な電力を起し、あるいは安価な石炭を供給する、こういうことになった場合に、これはやはり国民全部の犠牲において行われる。従って国民全部の犠牲において行われることであるならば、やはり国民全部がそれの利益を供与されなければならない。そういう建前からしますると、電源開発によって最も多くの利益を受けるような、要するに基礎産業、こういった部面においても自由奔放な経営というものが果して許されるか。財政投資による安価な電気や石炭の供給を得たところの基礎産業というものが自由奔放な経営をして、そして国民から指弾を受けるような経営状態に陥るという、そういうようなことが許されるか、これでは納得行政にならない。これについて長官はただいま御引例になておる二、三の問題をことに出してみてもいろいろ問題がある。基幹産業の民主化というか、あるいは規制とかそういうことについてどういう考えをお持ちであるか、これをちょっとお伺いしたい。
  32. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 電力にいたしましても石炭にいたしましてもそれが基幹産業でありますから、根本的には供給を円滑にして低物価……価格を下げるということが根本方針でありますから、価格を下げるためには場合によると比較的金利の安い財政投融資もやりますし、また海外の余剰農産物を持ってきてもこれは政府責任——保証で買うわけでありますから、これは国民の税金でやるわけでありますから、その意味において国民の生活が潤沢になるように低物価政策を堅持していきたいと思う、こういう所存でおります。
  33. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それで予算の問題は特定の企業に対してそういうお考え規制を加えられる、行政指導をせられる。ところがそれによって恩恵を受ける、しかも国民に公益的なサービスをしなければならぬ任務を持っておる国の経済の基幹である産業ですね、たとえて申し上げますならば鉄鋼であるとか、あるいはセメントであるとかその他幾つかの関連産業がありましょう。エネルギーに現に関係のない産業、そういう産業について今日のような状態に放置しておいてそれでよろしいのかどうか、そういうことを伺っておるわけです。もっと具体的に申し上げますならば、たとえば石炭にいたしましてもその出炭量の過半の数量というものは巨大産業がこれを使うでしょう。また電力にいたしましても開発された電力のおそらく過半数に近い数量というものは大産業が使うでしょう。そういう使った産業は国民生活のためには公益的なやはりサービスをすべき義務を持っておると思う。そういう企業がみずからの利潤追求にのみ専念して、そうして国民経済考えないというような形象はただいま出ていないとはだれも断言できないと思います。そういうものについて長期経済計画を推進するならばあわせてやはり規制を加えていかなければならない。これはそうしなければ片手落ちであり、あなたの言った国民に得納せしめて指導をするという道にはなはだ遠いものになるのじゃないかと考えますが、その点の御見解はいかがですか。
  34. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 何しろ石炭の値が安くなれば従ってこれを使います電力も安くなる、セメントも安くなるということは当然でありまして、それだけ安くなれば安くなるように価格の点についても相当勧告をいたしたいと、こう思っておる次第であります。
  35. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 いや、安くなるのが当然であるというところに私は議論の飛躍があると思う。安くなるのが当然であるというそこまで経済審議庁が一足飛びに結論をお出しになるような日本経済状態ではなかろうと私は思う。今安い電力を供給してやる、安い石炭を供給してやるそのときに、基礎産業が果してそれに応じて値を下げるか。実際問題として低物価政策に応じますか。ここが一番私は問題だと思う。だから高碕長官が今言ったように、下げれば必ず安くなるという、そういう結論を一足飛びにお出しになって、そうして何らこれに対しては施策をする必要がないのだと、こうおっしゃれば、これは別の角度から議論をしなければならん。そういう安易なものではなかろうと思う。現にここ二、三年におけるところの数種の業態をあげてお考えをいただけば、私はしろうと目に見ても当然下げなければならん基礎産業がちっとも下っていないと思う。
  36. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 今日全体の会社の経理等におきましても、原価計算というものがもうこれははっきり基準がきまっておることでありまして、原価計算からよく見たときには、セメント会社が、石炭が安くなればその原価計算が安くなるのは当然だと私は考えております。これを業者自身がやらないということは、これはほかの理由があるのかむしれませんが、こういうものについては相当政府勧告すべきものだと存じます。たとえば製鉄におきましても鉄の原価が高い。その石炭が安くなればそれで製鉄の原価は安くなるということは計算上すぐわかることでありまして、だからこれは政府が当然これに対して勧告をすべきものだと存じております。
  37. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 各大企業の資本構成というものが非常にアブノルマルな状態に戦前戦後通じてあるんですね。まだ完全に安定した資本構成になっていない。その過程は、努力はされておるでしょうがなってはいない。従って試みに一つの私の若干承知しておりまする電気事業におきましても、その経理整備等においては国の法律によって強い規制を加えている。その電気事業の経理においてすらいろいろとその数字というものについて規制が行われておることは否定すべきもない事実であります。こういうガラス張りの中に置かれておる企業ですらそうなんであります。ましてや一般の企業は、今高碕さんのおっしゃるように、そういう早計なるところの判断でもってぱっと一言で言い尽すことのできる状態にあればはなはだ大へんけっこうだと私は思っておる。従って今あなたのおっしゃることをそのまま妥当であるとすれば、要するに経理整備の根本的な指導についてもやはり経理基準というものを、基礎産業についても設けなくてはならない。そうしてすべてのものについてどんどん規制をやっていくということであれば、私は納得できます。そういうこともしないでただ基礎エネルギーを少して下げてやったから下るであろう、そういう議論ではちょっと承服いたしかねると私は申し上げておるのです。
  38. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 今のお説はごもっともでありまして、なるべくそういうふうにいくように政府は努力いたしたいと存じております。今具体的にこうやる、ああやるということは今ここで申し上げかねますけれども、今の御質問はごもっともだと思います。
  39. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 長期経済計画の推進をめぐって私の考えていることについて大体その考え方そのものについては是認をしていただいたようでありますから、またいずれこの計画の推進の進む度合において私もお尋ねいたしたいと思います。積極的に審議庁の方においても御用意ができましたならば一つお答えをいただきたいと思います。こういうことにつきまして総合的な産業指導と申しますか、産業規制と申しますか、こういうことについてのお考えを伺いたい。  それから第二点として私の伺いたいのは、まあいろいろありますけれども、一番問題になっているのは原子力の経済的利用の問題ですが、原子力の経済的利用というのは、一体概念的に高崎長官はこれまたどういう工合に考えておられるのでしょうか。
  40. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは私が直接やったことでないからわかりませんが、大体今までの調査の研究の結果によりますれば、今アメリカで普通の原子炉から発展をいたします場合に一番安くいっているのは一キロワット・アワーが一・一という数字が出ておりまして、小さくやっていけば一・五ということになっておりますから、将来六万キロワットぐらいのものを作れば〇・七セントになる。〇・七セントと申しますと二円五十銭ぐらい、こういう数字が私どもの手に入っております。将来もっと大きくなれば〇・四までいくであろう。アメリカ人たち意見では日本は一番やはりエネルギー資源が少い。石炭も高いし、電力を使えば高くつくし、また油もない。日本が一番原子力を早く利用するだろう、こういうふうなことを専門家は言っておりますが、これは実際まだ私ほんとうにやっているところを見ないのですから、皆の報告を聞いた結果はそういうふうな数字になっておるわけであります。そういたしますと、将来これはやはり日本とすれば、相当研究すべき価値がある、必要があるということを痛感いたしておる次第であります。
  41. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 原子力の平和利用に対する取扱いのいろいな問題については、私も衆議院の予算委員会で行われたことは大体承知いたしておるのでありますので、重複して質問申し上げたいと思いませんが、ただ、今高碕長官お話を伺っておりますと、原子力の経済的利用を、あえてうたわれたその本旨とするところは、やはり日本のエネルギー資源を、これによって補っていこう、こういうお考えだと承わってよろしゅうございますか。
  42. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) もう一点、エネルギー資源として原子力を考えると同時に、放射能の利用、これは存外広く行われているようであります。これは実験も済んでおりまして、私も見たのであります。たとえばポテトを殺菌すること、それから魚のようなものを殺菌する。それからもう一つは植物の肥料の吸収率をみるとか、そういう放射能を利用するということも、等閑に付すべきものでないと思います。この二つの意味があります。
  43. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 今御説明になった後段の方は私言葉が足らなかったのですが、アイソトープがアメリカから参りまして、工業技術院の中に一つの課が設けられておりますし、やっているのですから、その点は問題ないと思うのです。  それからエネルギー源として考えた場合、ささいなもの、そういうものについては、医療とかその他のものについての利用は問題ない。一番問題になるのはやはり原子力の経済利用というもの、エネルギー源の補給として、将来日本考えていかなければならないかどうかというところにあると私は思うのです。だから今そういう考えで行くと、こうおっしゃったのですから、この点はよろしいのでございますが、そこで問題は、日本は将来アメリカから若干精製された天然ウラニウムを、そのまま輸入をして来て、これを濃縮化するのかどうか。あるいは濃縮されたウラニウムを輸入をして、そうして日本経済的利用に使うのか、その点のお考え方が、私まだいろいろ国会の論争を聞いておってもよくわからない。それから日本の国内に、そういう天然ウラニウムの資源というものがあるのかないのか、その辺のこともあまりはっきりしない。この資源がもしあったとすれば、それはどういう工合にして濃紺過程まで持って行くか。一ぺんアメリカへ送って、それから濃縮されたものだけをこちらへとるのか。その辺の考え方というものがあまり明らかにされていないのですが、この点は経済審議庁の方ではどういう工合に計画が進んでいるか。
  44. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) さしあたり実験用といたしますると、濃縮ウラニウムを持って来た方が、いろいろな試験をしやすい。それを今ここで作るということになると非常に大きな設備が要りますから、実験用には濃縮ウラニウムを持ってくるという考えを持っております。将来はもちろん、日本においてウラニウム鉱石があれば鉱石を発見して、自分で自給するということも考えるべきだ、こういうふうな見解のもとにいろいろと計画を立てておるわけであります。
  45. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 実は私も今党内で原子力の問題について若干どうすべきかについて慎重に考慮しておる一人なんです。で、問題はアメリカで作られた濃縮ウラニウムをそのまま日本へ持って来てエネルギー源に補給をするということになれば問題は非常に簡単なんです。ただ経済的に引き合うか引き合わないかは別ですけれども……。今おっしゃったように、コンマ四セントくらいでアワーができるということになれば、これはいいわけです。しかし先ほどおっしゃった後段の、日本において製練までも将来行うんだというような基本的な構想があるとしますと、エネルギー源の補給のためにそういうことを考えるには考えたんだが、それをやるところの日本の力ですね、経済的な力あるいはこの原子エネルギーを取り出すまでの電気的なエネルギー、そういうものが日本にあるのかないのか、これもやはり一つの問題になると思う。たとえば、私のちょっと調べたところによると、アメリカの一番最初に作りました原子力工場というのは、一工場で電力の使用量が百万キロワットという。百万キロワットだといえば、まずどの辺が適当でしょうか、東北六県の全使用電力量でもなお足りないでしょう。そういうことができるかできないかという問題が一つありますね。だから、その点の政府考え方というものを私ある程度参考にちょっと伺っておきたいと思います。
  46. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 濃縮ウラニウムは、これは実験用にとりますが、将来動力用とする場合に濃縮したものを使うかどうかということは問題であります。濃縮ウラニウムを作るためにはいろいろな設備が要るわけであります。原鉱石からやっていくということにつきましては、これは私はあまりくろうとでないから、あるいは間違っておるかも知れませんが、この戦争中にも、満洲から二千万トン、三千万トンのウラニウムの鉱石を持って来て、日本である程度製練したことがあるのであります。これはあながち私は日本の技術においてそんなに捨てるべきものでない。これは大いに研究する必要がある、こういうふうに考えております。
  47. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 経済六ヵ年計画の基本的な考え方をお伺いしましたが、これはもっともなことでありまして、六ヵ年間に人口がどれくらいふえる、就業人口もどれくらいふえる、それを生活水準はどれくらい上げ、所得はどれくらい上げて、そのために生産をどれくらい上げる、それは計画経済そのものがそういうものでなければならぬ。もっとも具体的に日本の現状というものを考えると、そのほかにもっと大きな防衛の計画というものが並行して考えられておるだろうと思うのです。今まで一つもその説明がなかったのですが、これは一体どういうふうに経済六ヵ年計画と防衛の漸増計画とはお考えになっているのでありますか。
  48. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 防衛計画は、当然この日本経済力の増加するに従って防衛費はふやしていく考えでございまして、従前のごとく仮想敵国を設けてどうこうというのでなくて、経済力に順応したる防衛計画を立てていきたい。経済力が多くなればそれだけその予算もふやすということになっておりまして、計画の内容はこれは防衛庁がきめるべきもので、金のほうの面だけは年々それによって増減したい。六ヵ年計画にもそれを織り込んでおるのであります。
  49. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 そうなりますと、経済力の増強というものが主であって、それに見合った防衛力というものをいつも考えている、そういうことですか。
  50. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) その通りであります。
  51. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 そうなりますと、極端にお伺いしますが、六年後に一体駐留軍はいなくなるのですか。また存在するのですか、今の御計画では……。それが全然なくちゃ、ただ経済力がだんだんできて来て、その力に見合って防衛力を増していくといったところで、六年の計画がある以上は、それはすでに想定されておらなければならぬと思うのです。
  52. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいま申し上げました通り計画というものは、具体的の計画は防衛庁が立てるべきものでありまして、経済六ヵ年の計画におきましては日本経済力が六年後になったらどうなるか。それに対してこれだけの経費を見ることができる、その数字は挙げております。その内訳はどうなるかということはまだここにお答えすることはできないわけであります。
  53. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 ちょっとむずかしいと思うのですね。全然関係なしにあなたのほうは経済のほうだけをお立てになる。防衛庁はそのほうの漸増計画を立てる。これでは全くおかしいのであって、防衛庁の計画があなたのほうに示されて、それによって御計画というものが作られておらなければ意味ないと思うのですが、今お述べになった通りなのですか。
  54. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) この防衛六ヵ年計画というものはまだ立たないのでございます。立っていないのでございます。従いまして、これを今相談し合うとしたところで、どうも相談する相手がないわけでありますから、そこでこれは計画が立ったときによく調整して行きたい。それでそんなに要らなければほかに廻し、要ればどうするかというふうなことを、そのとき調整したいと、こう存じております。
  55. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 それでは先ほどお述べになった生活水準の何パーセント引き上げとかというようなことは、全然そういうものを抜きにしたお考えで、ただ経済審議庁だけで、防衛予算というものを考えない数字なんですか、それじゃ全く架空のものでありますね。
  56. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 防衛予算というものは先ほど申し上げました通りに、経済力に順応して増加する、こういう方針でこの計画を立てております。
  57. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 だから六ヵ年後に生活水準を幾らに引き上げたいと言えば、そのときに防衛力が幾らあるかということが考えられなくて、一体何パーセント上げるということが言えますかと聞いている。
  58. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ですから、そのときにおける経済負担力は幾らあるかということは検討いたしておりますが、経済の負担力から言えばこれだけだ。それが果して日本の防衛になるかということは、それは今度防衛計画が立たないとわかりませんから、そのときにまた調整するわけでございます。
  59. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 それでは六年後には、日本の何という名前になるかわかりませんが、兵力は幾らあって、それをささえるには幾ら要って、なおかつ生活水準は何パーセント上るのだという計算はされているのでしょう。
  60. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 内容につきましては、今申し上げた通りに、まだ計画いたしておりませんが、二十九年度には一千三百二十七億円というものを払っている。それからいって、そのときの日本経済力がこうである、それで六年先になれば経済力はこうなるということになれば、その経済力に順応して防衛費というものを、その基準からふやしていくということを考えております。
  61. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 先ほどの生活水準の引き上げというやつは何パーセントでしたかね、六年後における……。
  62. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 国民所得というものは大体二三%ふえております。
  63. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 生活水準は……。
  64. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 個人の生活水準は、三十二年は五%、三十五年になりまして一〇%になります。
  65. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 どうもおかしいですね
  66. 河野謙三

    ○河野謙三君 今の三輪さんのお尋ねに関連しますけれども、防衛六ヵ年計画の内容はまだ持たない。従って五年先、六年先に海軍力が幾らになり、空軍力が幾らになる、こういうものは持たんでしょうけれども、少くとも五年、六年先には防衛費に廻すべきものにどのくらいの余力が出てくるか、経済負担はどのくらいできるという金額の机上のあれは当然出てくると思うのですが、それはお示し願えませんか。防衛力の内容じゃないのです。防衛力に対して経済負担がどれくらい余力が出てくるか、これは今の御説明によりますと、あるはずであります。これを一つ御説明願いたい。
  67. 石原武夫

    政府委員(石原武夫君) お答えをいたします。ただいまのお尋ねにつきましては、この計画自体を作ります際に、今お話ございましたように、防衛庁の方の調整ができませんので詳しくはもちろん織り込んでございません。ただわれわれといたしましては、この計画を作ります際に防衛費に支出される面は当然まあ財政から出るわけでございます。それでこの計画の中にも政府購入とございますが、これは中央地方を通じての財政規模でございますが、それらは大体国民所得に占める割合をほぼ動かないというようなことで想定をいたしております。従って防衛費にさかれる分はこの中からさかれるということになるので、ほぼ国民所得の伸びに応じて伸びてくる、従って具体的に財政のうちの各費目についての按分ということを詳しくやっておりませんが、われわれの感じでは、国民所得が伸びるに従いまして国民所得に占める防衛費の割合というのはそう大きな変動はないという程度考え方でございます。今後防衛計画の方が作業がお進みになれば、その間の調整をはかりたいと存じますが、われわれの方の立場から申しますと、この国民所得に占めておる現在の防衛費の割合といいますものは約二%ちょっとかと思いますが、それが大きな変動は大体ないという程度の想定をしておるわけでございます。
  68. 河野謙三

    ○河野謙三君 そうしますと、その具体的の数字はどうなりますか。この計画に基く六ヵ年先の国民所得に対する二%ですか、これはどういう数字になりますか。と同時に、この六ヵ年の間に常に国民所得に対する防衛費の比率というものは変えずに、ふやしもしなければ減らしもしない、こういう計画に基いておるのですか。
  69. 石原武夫

    政府委員(石原武夫君) ただいま私申し上げましたのは大体のところでございまして、たとえば二十九年あるいは本年度あたりは多分二・一くらいかと思いますが、それを二・一そのままヒックスするということではないかと思います。これが二・何%になるか、ある程度の当然幅というものは具体的な計画を策定する際に変動は起ると思いますし、その辺は向うの計画との調整で動くと思いますから、かりに二十九年度なり三十年度の占める割合が二・一というのが出て参りますと、そのくらいの数字が三十五年度においても同じパーセンテージだということを申し上げたのではないのであります。それが大きく変動するということは考えていないのであります。具体的な数字は今後防衛計画の方の御要求も見てわれわれとの方との間で、これは上の方で御調整になるものと思いますが、この計画との調整をはかっていきたいと思います。それが何%になるか、はっきりここで申し上げるわけにはいきませんが、今の二・一という数字が非常に大きく変動することは、われわれとして経済の見通しから言って適当ではないという一応意見を持っておるわけであります。
  70. 河野謙三

    ○河野謙三君 その二・一%というのは多少アローアンスがあると、こう私思うのですが、しかし、たとえわずかのアローアンスでも、これが動くことによって他の計画に相当そごを来たすでしょう、そうじゃないでか。
  71. 石原武夫

    政府委員(石原武夫君) もちろん程度でございますから、それがかりに一%とすると、今幾らになりますか、わかりません。かりに百億ならばどの程度になるかという程度のもちろん影響はあるわけでございますが、その点につきましては、その他のものにつきましても、各産業なり、あるいは投資関係のものとか、その辺の問題もまだ詳しくブレイク・ダウンしてございませんので、他の問題についてもきちっとヒックスした関係にあるのではございませんので、今後その点を調整して参りますので、お話のように、防衛費がかりにふえれば他に影響があるということはお話通りでございますが、従って先ほど申しましたように、パーセンテージが大きくなるということになれば、あるいはこの計画から言って非常にそのパーセンテージが大幅に動くということは、私どもの立場から言って、他に大きな影響があって困るのじゃないか、こういうふうに感じておるわけであります。
  72. 河野謙三

    ○河野謙三君 最後に長官に私御回答いただきたいのですが、今の国民所得と防衛費の比率ですね、これは原則として現在の二・一%でいくのですか、原則としてこれを動かさない、こういう意味に受取っていいんですか。
  73. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) それはただいまはそういう計画でやっておりますけれども、これは必ずしも二・一ということの何はいたしておりません。なぜかとなると、国民所得というものと、経済情勢というものは、それだけにおいて判断することができませんですから、全体の情勢を見た上でやりたいと思います。
  74. 河野謙三

    ○河野謙三君 今のは私答弁がちょっとおかしいと思うのですが、ほかのことで委員長急いでおられるようですから後日にゆずりますが、先ほどの栗山さんの御質問に関連して具体的に伺いたいのですが、今後この六ヵ年計画をやっていく上において、私は具体的原則を伺いたいのですが、物価の低落をはかり、国民経済の安定をはかるというのが大きなねらいでしょう。それにつきまして、その方向に向って国家資金、ある場合には投資をする、ある場合には補助金を出す、またその線に沿って外貨の割当をやる、こういうことになってくるのですが、この国家権力なり、国家資金をこの計画に合わして出したものについては、それらの私は物資については全部政府が最終まで何らかの形で責任をとるべき性質のものだと思う。もっと具体的に言うならば、ある一つの重要物資に補助金を出した以上は、その物資の最終価格というものは、決して私は放任した価格ではいかんと思う。マル公でいけなければ、指示価格なり、もしくは行政指導なり、こういうものでその物資に対する責任を私はとらなければいかんと思う。外貨の割当をした物資についても、同様に何らかの形で政府は最終まで監督をし、また責任を持たなければならぬ、こういうふうに思うのですが、現在まではそういうことをやっていないのですよ、御承知のように……。いたずらに、私からいえば、しいていいますが、いたずらに国家資金を使っている、いたずらに外貨の割当をする、なぜいたずらかといいますと、そういうことをやったことによって誰がもうけているか、産業資本なり、商業資本がもうけており、最終の国民の生活保護にはなっていない。具体的にいえば、たとえば小さい問題につきましては農業薬品に対して補助金を出している、ところが農業薬品に補助金を出しているけれども、農業薬品は自由な価格であります。千円のものを千五百円に売るというように、原価計算上千円のものが千五百円で農業薬品は売られております。そこに五百円の補助金をつけても、その補助というものは農家に行っているのではなくて、それは要するに農薬メーカーなり、農薬に関係する業者に行っている、こういうことになるわけですね。あらゆる物資について非常にそれが多い。これは私は非常に間違っていると思う。少くとも外貨の割当をするとか、国家資金を出すとか、また補助金をつけるとか、こういうものについては私はマル公とはいいません。マル公の失敗もありますから、何らかの形で政府が監督をし、責任を持つということにしなければいけない、こういうふうに思うのですが、その考え方はこれは間違いでありましょうか、政府はどういう考え方を持っておられるのでありましょうか。もしそういう考え方を持っておられるならば、今やっておることは間違いであります。すみやかに経審長官が中心になって、もう少し物価の安定に対して、政府のとるべきことはすみやかにとらなければならぬ、こう思うのですが、どうでしょうか。
  75. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいまのお説に私は原則的に同意いたします。いかなる方法でやるかということにつきましては、直接この衝に当る省ともよく相談いたしまして、経審長官だけでやれる仕事ではございませんですから、御趣旨は私は全く同感でございます。その方針で進みたいと思います。
  76. 河野謙三

    ○河野謙三君 一言だけ。趣旨について御賛同をいただいたのですが、そうだとすれば、今やっているあらゆる外貨割当の物資、あらゆる補助金をつけている物資、また国家資金を出しているところのいろいろ保護を受けている産業ですね、これらにつきましてほとんど何ら、金を出す、物を出す、外貨割当をやるというだけで、その最終について責任を持っている点は、これはほとんどないのであります。これはもし御趣旨に御賛同願った以上は、すみやかに政府としてはとるべきことはたくさんあると思うのです。ぜひ適切な処置をとっていただきたい。もし何でしたら、具体的にかくあるべきだということを申し上げたいと思いますけれども、時間がありませんから、これは改めて申し上げます。
  77. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 私の質問中に今御質問されたのですが、防衛費と国民所得の比率ですが、それは長官の言われたように、ただ国民所得の比率だけでは算定できないということはよくわかりますけれども、しかし一応の今計画としては、やはり二・一%で六ヵ年後もお考えになっておるのでありますか。それからその二・一%という数字は、アメリカ側の了解ももちろん得られておる数字だと思うのですが、いかがですか。
  78. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答えいたします。これはアメリカと何も関係ありません。何ら関係ありません。ちっとも了解も何も得ておりません。ただ私どもは現在の状況において、今は二・一%になっておるようでございますけれども、これは将来この二・一%を守るか、あるいは二・二になるか、あるいは一・八になるか、これは今将来のことは申し上げられませんが、大体の基準はそれに従っていきたいと、こういう考えでございます。
  79. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 それは低物価政策基準になっているにかかわらず、現状は皮肉にも少し上っているじゃありませんか。あなたの方の発表になっている数字でも、卸売物価と小売物価ともに指数が上っているように思いますが、いかがでしょうか。
  80. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 物価のことでありますから多少上り下りはありますが、最近はまた下っております。大体本年度は昨年度と比較いたしまして二%下げたいと、こういう方針で進んでおります。
  81. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 何パーセントですか、二%ですか。
  82. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 二%です。
  83. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 それは年度末においてですか。
  84. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 年間を通じてです。
  85. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 現在は三%か、そこら上っておるじゃありませんか。
  86. 石原武夫

    政府委員(石原武夫君) 今の三%というのは、どれを比較してのお話かわかりませんが、最近は割合、二月末ごろが一番高かった、それが最近まで一・四、五%ぐらい下っておる、今の三%というのはどの時点の御比較かわかりませんが、先ほどちょっと長官が申し上げましたのは、二十九年度の年度間平均の卸売物価と、それから三十年度の年度間平均の卸売物価との差が二%あると、こういう趣旨であります。
  87. 高橋衛

    高橋衛君 お忙しいところですが…。その今度の政府の案によりますと、減税の問題で貯蓄に対して利子の免税を完全にやっておるわけであります。ところが一方株に対してそれらの手当ができていない。ところが産業資金計画を見ますと、二十九年度と三十年度の増資の資金というものは、むしろ三十年度にふやされております。ところが現実の問題として、配当はたとえば一割の配当をいたしましても、税の関係等で三割ぐらいのものをしなければならない。従ってもしも経営の健全化をはかるということになれば、増資よりも借入金とか社債にいくことの方が、よほど経営の健全化のためにいい状態であるというととはだれしもおわかりであります。ところが一方において自己資金を充実しなければならんという要請は断然にあるわけであります。ところが政府は預金利子の免税ということで、やはり預貯金の増加はここ急速にやるということは非常にけっこうでありますが、同時にそれはむしろ現在唱えられておるところのオーバーボローイングをより大きくする傾向にいくものであります。こういうふうに経済審議庁のほうで計画をなさっていらっしゃるように、増資に振り当てられる資金が今年度よりさらにふえるという見通しを立てるということは、むしろ実態から相当離れておるのじゃないかという感じをわれわれは持っておるのであります。その点についての経済の専門家としての長官の御意見を伺わせていただきたいと思います。
  88. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ちょっと詳細の数字になるものですから、これの考え基礎は……。
  89. 高橋衛

    高橋衛君 数字の問題をお聞きしているのじゃありません。感覚として、そういうふうに預金利子に対しては非常な優遇を与えておる一方、株式については優遇を与えていない、そういう政策の結果として預貯金はどんどん伸びるでありましょう。しかしながら、現在においても株の増資によるもののほうが経営の健全化をなすゆえんじゃないということが事実であるとすれば、こういうふうに増資の金額がむしろ前年よりもふえるという計画を立てられるごと自体がおかしいのじゃないか、その点非常な専門家でいらっしゃるから、その長官のお感じを伺っておきたいと、こういうことなんです。
  90. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 現在の株主が株式を持ちます上において、これはどうしても銀行から借金しなければならないということが大体の原則であります。従って銀行の預金はふえてきておる、銀行の手元が楽になれば株式投資も楽になると私は考えております。
  91. 高橋衛

    高橋衛君 私はこの表を見る場合におきましては、事業家が増資をする場合に、銀行から貸し出しを受けるもので、この貸し出しのうちに当然含まれておると考えております。従ってそういうふうな貸し出しと、それから本当に増資によるところの資金の供給と、この二つを区分してお考えになってはどうかということをお聞きしておるのです。借金をしてやるのなら同じなのですから、どこまでも貸し出しの増であって、増資によるところの資金の増、資金の供給ということは厳密な意味において言えないと思います。
  92. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 一方におきまして、この資本利子税等もこれを非常に軽減いたしておりますから、その意味からいけば、銀行から借金して今の株主が投資するということも、自分が投資することによっての税金も幾らか免除されるということになりますから、これで自己資金で株式を持つということの一つの慫慂になると考えております。
  93. 高橋衛

    高橋衛君 こまかい数字のことでありますから、おってまた……。
  94. 吉野信次

    委員長吉野信次君) まだ長官に対する御質疑もあると思いますけれども、さっきから予算委員会の方で衆議院の方からたびたび長官の出席要求がありますから、今日はこの程度長官に対する質問は打ち切りまして、また時をあらためましてやりたいと思います。
  95. 高橋衛

    高橋衛君 一つ資料の要求があるのでございますが、経済審議庁にお願いしたいのですが、総合資金需給計画についてのいろんな表のうちから、あるいはただいまいただいた中にあるかもしれませんけれども、この財政資金民間収支の内訳を、繰越金、食糧管理特別会計、外為等に区分して明らかにしたものがありましたらいただきたいと思います。それが第一、それから第二は、二十九年度から三十年度への繰越金の問題でありますが、また三十年度から三十一年度への繰り越し見込み、これを出納整理期間後の見込みのものと、それからいま一つは四月一日以降に支出されるものと、二つの区分によって一つ御提出を願いたいと思います。それからこれはできれば主要な支出費目だけでも出していただきたいと思います。それから二十九年度におきましては、前年度、つまり二十八年度からの二十九年度におけるところの出納整理期間中の支出が八百三十一億円という非常な巨額に上っておるわけでありますが、しこうしてこれが二十九年度の散超の非常に大きな原因になっております。本年度においてはこれが幾らになるか、さっきの質問の内訳になるわけでありまして、これを一つお願いしたいと思います。それから外為会計で今年度は輸出の目標を十六億五千万ドルと予定しておられまして、そうしてそれによるところのある程度の散超を見込んでおられるようでありますが、輸入輸出の関係、または外国の経済情勢の関係で果してこれが散超になれるかどうか、場合によると揚超になる関係もあるのじゃないかという心配をいたしておりますが、これは輸出貿易の振興が果して順調にいくかどうかの問題にもなるわけでありますけれども、その点いま少しく御説明願いたいと思います。いま一つ、郵便貯金は前年度が千十四億円ということでありましたが、これが当初は九百億円、それを千百億円に増しておられる。ところが三月の実績は郵貯が四十四円の減少を示しております。それから四月末ごろまでも減少の傾向を示しておるのでありますが、この減少の傾向があるにもかかわらず、なおかつやはりその程度の見込みが確実に見込まれるかどうかという点の資料がいただきたいと思います。それからいま一つちょっと申し上げます。経済援助資金特別会計、これはMSAのやつですね。これが三十六億円、これは本会計から開銀を通じて融資されるのでありますが、どうも見ておりますと開銀の資金計画にも入っておりませんし、財政投融資計画の中にも三十年度の予算の説明にも入っていないようでありますが、どういう関係になっておるか、その点もおっての御説明でけっこうでありますから、お願いいたしたいと思います。それだけこの次に……。
  96. 吉野信次

    委員長吉野信次君) それではちょっとお諮りしたいのですが、この経済審議庁設置法の一部を改正する法律案は組織法なものですから、これは内閣委員会に提出されておるわけであります。しかしこちらとしては非常に関係があるわけですから、自然連合ですか、連合調査とか何とかということになるのだろうと思いますが、そういったような手続を向うの内閣委員会の方に進めてよろしうございましょうか、お諮りしておきたいと思います。もしお差しつかえなければ、委員長におきまして向うの委員会の方にそういう意味で交渉をいたしたいと思いますから、御了承を願いたいと思います。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  97. 吉野信次

    委員長吉野信次君) それではさよう決します。
  98. 海野三朗

    海野三朗君 私はちょっと通産当局にお伺いいたしたいのでありますが、日本の鉱山、一例を申し上げますと、硫黄の山、その山に米人か、あるいはその米人のつまり個人または法人が投資をしようと思っておる場合に、日本の鉱山の持ち主においてもやはり投資してもらいたい、というふうに考えた場合には、政府はこれを許可するかどうか、それをお伺いいたしたいのであります。
  99. 川上為治

    政府委員(川上為治君) 日本の資本力によりまして、その鉱山がどうしても開発できない、しかもまた導入される技術が日本にはなくて、どうしてもそういう技術を入れなきゃならないという場合におきましては、鉱山といえども、投資につきましては外資委員会のこれは承認を受けなければなりませんけれども、差しつかえないというふうに考えております。しかしながら、鉱業権を持つことにつきましては、鉱業法によりまして外国人は鉱業権を持てないことになっておりますので、ただ外資の導入につきましては、今申し上げましたようなことで差しつかえないと考えております。
  100. 海野三朗

    海野三朗君 その際に入れるお金に制限がございますか。
  101. 川上為治

    政府委員(川上為治君) 従来いろいろな、会社によりましては、大体半分程度株を外国人が持っておるのがありますけれども、これはいろいろまちまちでありまして、外国人が半分程度株を持っておるための弊害というものもいろいろ聞いておりますので、私どもの方としましては、少くとも過半数の株につきましては日本側が持っておくべきじゃないかというふうに考えております。
  102. 海野三朗

    海野三朗君 昨年の十月でございましたが、鉱山の合弁事業は、日本政府の許可を得られないというところの返事をアメリカの方に申し送ったようでありますが、昨年の十月、松尾鉱山のことについては、何か通産省の方に連絡がございましたか、どうでしょう。
  103. 川上為治

    政府委員(川上為治君) 内容がよくわかりませんが、松尾鉱山につきまして、外国の技術あるいは外国の資本を入れまして開発をしたいというような問題が今日までたびたび実はあります。今おっしゃいました件は、おそらく米国の会社が資本を入れて、そしてその会社の技術を導入して松尾鉱山を開発するというような問題ではないかと思うのですが、その問題につきまして私どもの方にいろいろ相談があったことは事実であります。しかしながら、今おっしゃいますような外国との合弁事業については、通産省としてはいやだということを言ったことはございません。またそういうことを向うの方に私の方から通知してもらいたいということを言った覚えはありません。
  104. 海野三朗

    海野三朗君 よくわかりました。
  105. 吉野信次

    委員長吉野信次君) どうですか、幸い通産政務次官もお見えになっていますが、ニッケル製錬事業助成臨時措置法を廃止する法律案ですね、あれは簡単な法律でして、こちらの方が先議になっているものですから、もし何でしたらもう少しこの法案について審議を進めたいと思いますが。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  106. 吉野信次

    委員長吉野信次君) 御異議ないと認めます。政務次官いかがでしょうか。私から伺うのは何ですけれども、どうでしょう、数字的に、この法律をやりましてから国が一体どのくらいの助成金を出して、その結果抽象的には国際水準にも品質的に云々と書いてありますが、品質の点は別として、別ではない、この通りでしょうが、あるいは価格の点についても国際市場価格とニッケルが十分立っていけるという、そこらの数字上のもし御説明でも、御資料があれば一ぺん……。局長からでけっこうです。もっとも私はうっかりしておったが、資料はいただいておりますか。
  107. 川上為治

    政府委員(川上為治君) 入っております。
  108. 吉野信次

    委員長吉野信次君) それならいいです。資料を見ればわかりますから…。ほかに何かこれについてお話になることはないですか。
  109. 川上為治

    政府委員(川上為治君) 今回このニッケル製錬事業助成臨時措置法を廃止する法律案を出しておるわけでございますが、この法律につきましては、もう御承知通りでございまして、私から特別にお話申し上げることはないと思うのですが、この法律を作りました当時はちょうど朝鮮事変当時でございまして、ニッケルが国際的に非常に不足になって参っておりまして、従って日本におきましても、おそらくほとんど外国から入って来ないんじゃないかというふうに考えられましたし、また当時国内におきましてほとんど生産はなかった、従来戦争中に持っておりましたストックでまかなっていたというような状況でありましたが、どうしても国内におきまして、どこか工場を作りましてニッケルの製錬をしなければならないということで、この法律を作っていただいたわけでございます。この法律の内容は、要するにある事業者を指定いたしまして、その指定された業者に対しまして、あるいは設備に対する国家補償とか、あるいは法人税その他税金の免除でありますとか、あるいはまた価格につきましては一定の安定した価格を指示して、それによって販売させるとか、あるいはまた開銀等の融資を援助してやるとか、そういうような措置によりまして、この事業体を援助いたしまして、そうして一日も早く国内におきましてニッケルが増産できるようにということでやったわけでございます。期限としましては大体四年程度でこれを完成するということでございまして、指定業者につきましてはいろいろ検討をいたしたのでありますが、結局住友金属鉱山株式会社の新居浜の工場が最も適当であるということに考えまして、その工場を指定いたしたわけであります。指定されましたのは二十六年の十月、すなわちこの法律が可決されましたのは六月の七日でありますが、十月にはこの住友鉱山を指定いたしました。それから補償に見合う程度の積立金制度というものをこの法律によりまして第七条で設けることになっておるんですが、これを大体総額四億五百万円程度ということにいたしたわけでございます。それから価格につきましては一定の価格をきめまして、これを最高販売価格といたしまして、その中に積立金をトン当り大体どれくらいということで積み立てをさして参ったのでありますが、最初におきましてはトン当り販売価格を三百二十万円といたしまして、その際の積立金は四十万円、それからその次にだんだんコストも下って参りましたので、二十七年におきましてはさらにこの三百二十万円という最高販売価格を二百七十万円程度に下げまして、これをお配りしました最後の表、第四表というのに書いてございますが、積立金は二十三万円、それからその後さらにまたコストが下りましたので販売価格を二百五十万円、そして積立金につきましては四十万円ということにいたして参ったのであります。価格につきましては、現在におきましては非常に安くなっておりまして、大体百五十万円程度に販売価格は下っております。それから生産の方につきましてはこの表の第一表を見ますというと、二十六年度におきましては住友鉱山の生産が年間百六十トン、それからその他というのは志村化工でありますとか日本鉱業でありますとか、そういうものでありますが、七十九トン、合計いたしまして二百三十九トン程度しか生産がなかったわけであります。ところが二十七年度におきましては全部で九百九十八トンという生産が出ております。それから二十八年度におきましては千九百七トンというふうに向上いたしております。二十九年度におきましては住友鉱山だけで千六百九十トン、それからその他のものを入れますというと二千五百十八トンという生産になっております。三十年度におきましてはこれよりも相当生産がふえるわけございまして、ほとんど二十五年ころは生産がなかったものが、現在におきましてはこの法律によりまして年間二千五百トン以上の生産が行われるようになっておるわけでございます。現在におきましてはその次の第二表にもちょうど二十九年度のニッケルという欄の需給関係のところを見ますというと、その上の生産のところでは先ほど申し上げました二十九年度はニッケルの生産が二千五百十九トン、そのうち輸出の方がこの需要の関係を見ますというと、輸出が千七百九十二トン、国内の需要は千三百二十二トン、むしろ輸出の方が最近におきましては非常にふえて、そして国内の需要をまかなうどころか相当の輸出をしておるというような状況になっております。三十年度の見込みを見ますというと、生産が四千二十トン、それから国内の需要が千七百四十トン、それから輸出が二千二百八十トンというようなふうにふえて参っております。こういう生産の面から見ましても、非常に最近におきましてはこの法律によりまして助成されております目的を達しておるといっても差しつかえないのじゃないかというように考えております。それから価格の問題につきましては、先ほど申し上げました最初三百二十万円というような非常に高い価格でありましたものが、だんだん下りまして、現在におきましては百五十万円程度に下っております。しかしこの百五十万円程度というのは国際価格というのは国際価格と比べますというとまだ相当高いのでありまして、国際価格につきましては、やはりこの第四表の資料に載っておりますが、五十万円程度でありますので、やはり相当高いということになるわけでありますが、ただ高いという理由一つは鉱石を遠いところから運んで持って来て、精練をしておるというその鉱石代がやはり相当高くつく。その鉱石そのものが、たとえばカナダのニッケルなどと比べますというと品位が非常に悪いというような問題。特にその品位が、比較的カナダのニッケルなんかに比べますというと悪いという点なんかが、やはり価格が高いということになってくるのじゃないかと考えております。しかしそれ以外に、やはり精練設備の内容におきまして、なお合理化すべき点が多々あると考えられますので、今後におきましては価格の引き下げということに全力を私どもの方としましては講じたいというふうに考えております。しかしながら国際的に見ますというとこのニッケルは依然として不足しておりまして、そういうためか相当輸出が現在伸びておるというような状況にありますので、私どもの方としましては、一応この法律によりまして目的は達せられましたが、今後におきましてはニッケルの価格を下げるように極力努力いたして、内需の方はもちろん、輸出に対しましても大いに貢献さすような行政指導をしたいというふうに考えております。  以上述べましたようなことで、この法律目的とするところはもう十分達せられましたので、この際この法律を廃止すべきではないかというふうに考えておるわけでございます。  なお、指定されました住友鉱山につきましては一昨年の十月でありましたが、大体目的を完遂するような状態になりましたので、指定の取り消しを行なっております。また同時に、この積立金につきましては、すなわち補償に見合う積立金につきましては、その当時約四億五百万円程度の、政令できめました程度の積み立ても完了いたしましたので、今申し上げましたようなことでこの指定業者としての取り消しを行なって参っております。従いまして現在におきましては法律によりまして特別に助成なり擁護なり、そういう必要はなくなったものと考えておるわけでございます。
  110. 高橋衛

    高橋衛君 一、二点お伺いいたしたいのでございますが、ただいまの御説明によりますと、国内価格と国際価格とはなお相当の開きがある。それにもかかわらず生産の半量に近いものが、半ばに近いものが輸出になっておる。その輸出価格というものは国際価格によって輸出されておるのでございますか、それとも国内価格にふさわしい程度の価格で輸出されておるのでございますか。
  111. 島村一郎

    政府委員(島村一郎君) 実はこの表に載っておりますアメリカの相場五十万円というのは、これが国際価格を別に支配しておるわけじゃないのでありまして、非常に高い価格でも外国におきましては従来やはり買っております。特に西ドイツでありますとか、そうした方面におきましては、相当高い価格で買っておるわけでございまして、大体先ほど申し上げましたように、現在国内のコストにつきましては百四、五十万円と申しましたが、大体その程度、それに近い程度で実は買っております。
  112. 高橋衛

    高橋衛君 この点あるいは通産省のお方にお聞きするのは筋が違うかとも存じますが、島村政務次官はかつて大蔵政務次官でおられましたからあえてお伺いしたいのでございますが、ニッケルが非常に日本に不足だということで、かつて日本で硬貨を鋳造する際に、造幣局の保有しておるところの何百貫かのニッケルを硬貨に回そうという計画がありましたのを、国内の市場に向けて回しておる。そして貨幣の鋳造を中止したのであります。ところが本来硬貨として最も適当なものと世界的に認められておるのがニッケルですが、こういうふうに計画が変った後におきまして、また将来そういうようなものが国内資源として硬貨の形で保有されることが必要だということが一部で唱えられておりますが、そういうものであるニッケルにつきまして、今後硬貨について、現在の青銅貨をニッケルに変えるかどうかというような、何らかの政府としての御見解を伺いたいと思います。
  113. 島村一郎

    政府委員(島村一郎君) これはまだ大蔵省の御意向など伺っておりませんので、はっきりしたことは申し上げられませんけれども、私の聞いておりますところでは、この問題には直接関係がございませんけれども、だんだん小額の紙幣が硬貨に変りつつあるというような世界的な現象であるように伺っております。従って大蔵省から何らかのお考えがあるのではないかと存じますけれども、まだ明確に伺っておりませんので、きょう明確なお答えができませんことを御了承いただきたいと思います。
  114. 海野三朗

    海野三朗君 この、住友で作っておるニッケルは、パーセントはどのくらいの純度を持っておりますか。モンドのニッケルは九九くらいいっておると思いますが、日本のやつは純度はどのくらいですか。
  115. 川上為治

    政府委員(川上為治君) モンドのニッケルと比べますと、だいたい現在におきましては似ておる。九九・九九九ですか、ほとんど国際的に見ましても、技術的には遜色のない程度になっております。実は二年くらい前におきましては、純度は相当高いけれども、たとえば延びでありますとかいろいろな点におきまして、日本のものが劣っておるというような批評を受けまして、通産省におきましても、技術院の中に委員会を設けまして、この問題を詳細に検討いたしました。ところがこれは約半年にわたりまして実験をして検討いたしたのでありますが、ほとんど外国のモンド級と互角であるというような状況になっております。ただ若干まだ通信関係のもの等に少しどうかと思うようなところもございましたが、これもほとんど現在におきましては問題がありませんが、最近まで若干特別なものについて輸入していたというような状況であります。
  116. 海野三朗

    海野三朗君 もう一点お伺いいたしたいのは、アメリカの価格に比べますというと、約三倍近い値段になっておりますが、生産が相当できるようになったからといわれるけれども、こんなふうでは国際価格を遠ざかることはなはだしいので、これはこのままでいっていいとお考えになっておるのか、もう少し政府が力を入れて、これを安く作るようにでもやっていかなければならないのではないか、その辺に対しての一つ御所見を承わりたい。これはこのままに放っておいていいと思われるか、三倍の値段でちょっと高すぎると私は思うのです。
  117. 川上為治

    政府委員(川上為治君) 私の方としましては、決してこのまま放置しようとは考えておりません。この表にもありますように、二十八年の一月に、市中価格といいますか、二百二十万円程度であったのが、最近におきましては百四十万円程度に下って、しかも百四十万円程度で十分住友にしましても、志村にしましても、販売できるというような状況になって参りましたということは、いかにそのコストを引き下げるために努力したかということがうかがわれるわけでござまいすが、今後におきましてさらにまだ引き下げの余地はございますので、先ほども申し上げましたように、私どもの方の行政指導によりましてこれをさらに引き下げるようにしたいと考えておりますし、また会社におきましても設備の合理化とかいろいろなことをやっておりまして、極力引き下げるように努力いたしておりますので、もちろんこれはアメリカほどに果して四十七万円とかそういうところまで引き下げ得るかという点につきましては、私はこれは工場の規模なりあるいは鉱石の種類なり、そうした問題から何とも言えませんけれども、われわれの方としましてはそれに近いところまで引き下げるようなことに、だんだんなってくるものと考えております。
  118. 海野三朗

    海野三朗君 もう一つ。これは税金はこれに対してどうなっておりますか。アメリカの四十七万円というのは、これには税金が入っておるのですか、入っていないのですか。
  119. 川上為治

    政府委員(川上為治君) アメリカの価格につきましては、これはもちろん税金も入っておる価格と考えております。
  120. 上原正吉

    ○上原正吉君 ニッケルを製練する鉱石は、内地産のものを使っているのですか、輸入ですか。
  121. 川上為治

    政府委員(川上為治君) 鉱石は全部外国から入ってくるわけでございます。
  122. 高橋衛

    高橋衛君 先ほどアメリカにおいては五十万円、その五十万円程度というお話でございますが、その表によりますと、最近の高くなった価格においても、六十……というようにしるされておりますが、それは円価に直すと…。
  123. 川上為治

    政府委員(川上為治君) これは六十セントですから四十七万円という…。
  124. 高橋衛

    高橋衛君 ああセントですか、わかりました。
  125. 上原正吉

    ○上原正吉君 鉱石を全部輸入するんでしたら、それでできた製品を外国に輸出して値段がこちらの方が高いのですから、おそらくこれには補助が出るか何かして輸出が行われているのだと思います。そうなると貿易の収支決算において輸出してもプラスにならないのではないかと思うのですが、その点はどうですか。
  126. 川上為治

    政府委員(川上為治君) これは先ほど申し上げましたように、現在西ドイツ等に売っております価格は相当高いのでありまして、決して中間に補給金的なものを出しまして輸出をいたしておりません。たしか百四、五十万円で売っておると思いますが、それで売っておりますので、別に助成金等は出しておりません。
  127. 吉野信次

    委員長吉野信次君) ほかにございませんか。   —————————————
  128. 吉野信次

    委員長吉野信次君) 栗山君から緊急に質問したいという申し出がございまして、幸い警視庁の刑事部長が見えておりますから、この際……。
  129. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私仄聞するところによりますと、警察庁の方ではこの特別国会に空気銃あるいは刀剣等の携帯制限ないしは禁止に関する法律の改正をしようという御用意があるように承っております。そこで産業行政の立場から二、三御質問をいたしたい。私が御質問いたしたいと思いますることは、空気銃とかあるいは刀剣ではないのでありまして、ただいま問題になっております飛び出しナイフのことでございます。私はこの飛び出しナイフの全国的な数量のほとんど中心的な生産をしております岐阜県の関市の協同組合の方から陳情を受けておる。まだ法律案が出ない前でありますから、法律案として審議をするわけには参りませんが、一応警察当局のお考え等を伺っておきたいと思います。  まず問題になりますのは飛び出しナイフが兇器として、非常に犯罪を防止する上に取締りの必要がある、こういうお考えのように伺っておりますが、そういったようなお考えはおありかどうか、それを一つ伺いたい。
  130. 中川董治

    政府委員(中川董治君) ただいま御指摘の法律案につきましては、お話通り、私どもの方の主管する法律がございますので、その法律によりますと、空気銃その他の問題もありますが、御質問の飛び出しナイフに限りお答えいたしたいと思いますが、飛び出しナイフが、最近不良少年関係等におきまして所持して、これを用いて殺人、ことに自動車強盗、それから脅迫、傷害、こういったことで用いる例が多くなっております。この傾向が現在一番顕著に現われておりますのは、都市部でございまして、東京の警視庁管下のごときは、これを用いて犯罪を行う向きが多いのであります。それで、こういった、人に危害を加えるものを禁止してもらいたいという、こういう陳情が、私どもの警察関係責任者に参りますとともに、当国会の議長さん等、関係の向きに対して陳情される向きが少くないのであります。そういう陳情等もありますし、私ども犯罪捜査をやっておりますと、こういうものを用いて人を殺したり、傷つけたり、脅迫したり、こういうことがございますので、研究していますが、私ども、いたずらに法律を立案するということでなしに、そういう悪用される面をよく研究いたしましたが、また何か文化の向上に有益な点はないであろうかと、こういう点もあわせて研究して参ったのであります。御案内の通りナイフは、もちろん有益な器具でございますが、問題の点は、急速に飛び出す点と、それから飛び出したあとにおきまして、固定して、あいくちと同様な役割を果す点、この二点が犯罪の防止はもちろんのこと、犯罪に供せられるという点から重大なことだと考えまして、この飛び出しナイフのうち、急速に飛び出す点、私ども現在考えておりますのは、四十五度をこえて飛び出す点、これの装置を有するものは禁止して参りたい。並びにナイフで切断等に、正常の社会生活に用いますためには、直立して人を刺す形において固定する必要は認められませんので、固定する部分、これがいけないのじゃないか、こういうふうに理解いたしまして、今申しました通り、固定する部面、並びに四十五度をこえて飛び出す部面、この二点を公共の福祉上の見地から制限するのは当然である、こういうように考えまして、関係各省庁とも協議して、おおむね整いましたような状況でございます。近く当国会に内閣から御提案に相なりまして、内閣からも御説明があろうかと思いますが、私ども立案の事務に従事いたしましたので、そういう立案事務に従事いたしました内容を御披露いたしまして、いろいろこういった器具が、人の殺傷等に用いられる点を御勘案願いまして、内閣から御提案の上は、一つ御判断願いたい、こう思っておるのであります。今まで私ども立案に当って参りましたので、そういう状況をここで申し上げて、御協力をわずらわしたい、こう思うのでございます。
  131. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 大体わかりました。それで問題は、今現地から見本を送って参りましたが、刄渡り十センチぐらいの長いのから、四センチ程度のものまで、大小さまざまのものがあります。問題は、生産者としては、御案内のようにナイフというものは、物を切るとか、削るとかいう実効価値よりは、それももちろんありましょう。しかし業者としては、アクセサリーとして売れておる部面の方が多いというのです。ですから業者は、意匠の変更だとか、考案だとか、あるいは柄型の改良だとか、いろいろなことをやりまして、アクセサリーとしての販路を今、一生懸命開拓しておる。かつて関においては、製品の半数以上は輸出に向けられておったのが、今、輸出というのは、わずかに二割にしか及ばない程度であります。すなわち国内の販路を獲得しなければならないのだが、しかしナイフの売れ行きはだいぶ悪くなった。いろいろなものを考えて、ただいま売り出しに懸命になっておる。御承知のように家内工業を主とした零細企業なんです。従ってこういうものを全面的に禁止せられると、非常に大きな影響がくるというので、地元では今、大問題になっておる。私もさっそく見本を取り寄せて調べたところ、なるほど十センチ、八センチというようなやつは、やはり兇器として私は使い得る余地が十分あろうと思います。しかし五センチ以下の普通のナイフとほとんど体裁の変らないものまで、一挙に製造禁止にまで及ぶような強行措置をとるということはいかがかと私は考えます。これは私の意見ですが、そこでお尋ねしたいのは、寸法別に犯罪がどの程度起きておるか。寸法別に、現在国民が持っておる所持個数というものは、どの程度と推定されておるか。それから犯罪を犯したときは、犯罪者は、しろうとがやっておるのか、くろうとというと語弊がありますが、そういうものをしょっちゅう脅迫用に携帯するような人がやっておるのか、その辺のところをもう少し計数的にお聞かせを願いたい。
  132. 中川董治

    政府委員(中川董治君) ただいまの点、私どもよく調べておいたのでありますが、まずお説のごとく、日本に生産されております状況もよく調べてみたのでありますが、御指摘の通り、岐阜県の関市におきましては、ほかの刄物も生産されておりますが、飛び出しナイフが生産されております。飛び出しナイフの生産としては、大体日本全国のうち関市が大部分ではなかろうか、こう思っておるのであります。それで、ただいま飛び出しナイフ禁止の要望がある、こういう旨を申し述べたのでありますが、要望も伺ったのであります。ただ関市の商工会議所からはまた要望がございまして、その要望も承知しておりますが、関市におかれましては、こういった点については禁止せられるのはやむを得ないが、ミニマムをきめてもらいたい。関市の御要望によれば、七センチ未満は禁止から除外していただきたい、こういう申し出が関市の商工会議所からございました。関市関係でございましたが、私どもはミニマムをいかようにしようかということを考えて参ったのであります。それでやたらにこういうものを禁止すべきものでないとわれわれ考えております。私ども警察で殺人とか傷害ということを扱っておりますが、やはり国民の文化的生活の向上といろ点を考えて、何か効用があればこれを禁止すべきでないと考えて、いろいろな点を研究して参ったのであります。たとえばボーイ・スカウトで用いられていないか研究してみましたが、用いていらっしゃいません。山岳会等において、山岳の登山等に用いておるかどうか調べてみましたが、山岳会の登山におきましても用いられておりません。現在用いていらっしゃるのは、私どもの目に触れる範囲内においては、東京が多いのですけれども、東京の不良少年仲間が持っておる。警視庁の捜査当局者に話しますと、大体不良少年の補導等を行なっておりますが、飛び出しナイフを持っておれば、大体親元から、不良だから保護してもらいたいということを言う一つ目安ぐらいになっておる、こういう状況でございますので、生産の点も十分考えて参ったのでございますけれども、そういう、やたらに禁止するということではなしに、文化的目的がありはしないかということを研究した結果、いろいろ成案を得たのでございます。  御質問数字でございますから、以下数字を申し上げます。ただいま申しました飛び出しナイフは、現行の私どもの方の警察で所管しておる法律におきましては、正当な理由がある場合のほか携帯してはならない、現行法のもとにおきましては、こういう規定に該当するものでございます。従いまして警察の目に触れないように持っておりますので、生産関係は、私、岐阜県の関係を調べて参りましたが、年間三十万丁生産なさっていらっしゃるのですけれども、警察はそういう現在正当な理由あるにあらざれば、携帯を禁止している。従って下手に見つかるといろいろ刑事処分等を受けるという関係がありますので、たとえば警察に対しては隠し持っております。おおむねの不良少年仲間等はそれで警察に見つかるケースは比較的少いということを前提考えてもらわなければならないと思うのですけれども、そういう状況を調べて参りますと、まず警視庁におきまして、いろいろ飛び出しナイフについて事故を起しましたものについての調べは、五センチから六センチまでが八件、二十九年中でございます、以下いずれもそうですが、それから六センチから七センチまでが六十三件、七センチから八センチまでが四百十八件、八センチから九センチまでの刃渡りを有するものが六十七件、それから九センチから十センチまでが二十件、それから十センチ以上が三件、合計五百七十九件がまあ警察に見つけられたと、こういう状況でございます。それで私どもはこれは現在、過去でもそうでありますが、現在いたずらに人を誰何して、お前はナイフを持っていないかということを聞くことができない法律の建前になっておりますので、何か飛び出しナイフを持っている証拠乃至は飛び出しナイフによって人に傷をつけたり、あるいは殺人を犯したりするということがわからないと、これは警察がやたらに国民の人権を侵害してやるべき性質のものでございませんで、そういう警察権の限界等も見合せて参りますと、警視庁において五百七十九件というのは相当多い数字ではなかろうかと、こういうふうに理解しているのであります。これが警視庁の数字でございますが、全国の数字を次に申し上げます。  全国の数字は、やはり二十九年一っぱいの数字でございますが、一千百七十七件、人員にいたしますと、取締り人員にいたしますと、一千二百十人。一千二百十人の関係者が飛び出しナイフを持ったがゆえをもって犯罪を犯したということで警察で論議された、こういう状況でございます。
  133. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そこで今の数字でも明らかなように、犯罪は主としてそれが兇器として利用価値のあると常識でも判断される七センチ以上のものがほとんど九〇%を越えているわけなんです。ですから七センチ以下を免除してくれという申請があるということを伺いましたが、その寸法の問題はこれはまあ別といたしまして、全面的に禁止しなくてもいいのじゃないか。普通のナイフと同じような、アクセサリー式に使われるものならばよくはないか。それがまた地元の要望でもあるということなんですが、その辺に対するお考えはどうかということを私は伺いたい。それはなぜかと申しますと、これはもう相当長い年月にわたって持たして、使っているわけです。そういうことがあるならば、当初にこれはやはり措置せらるべきものなんです。措置せらるべきものが、やはり犯罪実績がなければできない、こういうことで私はおやりになったと思うのです。そういうことであれば、やはり一つの実績が出たのだから、大きい刃口のものについては措置をされるということについては私も異議はないわけです。ところがそれだからといって一足飛びに全部を禁止してしまうということでなしに、やはり今まで犯罪件数の少いものについては、これはやはりもう少し時間をかしてみて、その先においてなおかつこれが工合が悪いということになれば、やはりそのときに措置せられるのが、実績を審議されて取締り法の成案をされる立場からいえば、当然の措置じゃないかと私は考えるのですが、その点はいかがですか。
  134. 中川董治

    政府委員(中川董治君) これは御指摘のように長さが長いほど危険が強い、こういうことは科学的にも言えようかと思います。それで私どもは、長さが長いほど危いので、長いほどより国民生活に危害を与える。この点は御質問の御趣旨通りだと思います。ところが短いものについて他に正常生活において有益な機能をいたしているという面が発見できました場合は、これを制限から除こうと思いまして、私ども事務的に努力いたしたのでございますが、短くて飛び出して突き刺すような格好になることが何が役立つという面が見つからないのであります。それでその短いものは、たとえば五センチ未満のものは、人を傷つけるにいたしましても比較的軽度の傷になることは確かでございましょうが、その短いものについては私どもは今度の法律を立案するに当りましてミニマムをたとえば五センチ等にきめて参りますと、これは自然の勢いとして、みなさんお詳しいわけですが、自然の勢いとして五センチのミニマムのものをどしどし市場に出てくるという結果を招来するのではなかろうか。たまたまこういう危険物に限りまして青少年関係の補導等に当っていらっしゃる関係の向きにおきましては、こういう凶器という概念と別に、不良玩具というものを追放すべしという議もあるわけです。私ども不良玩具の点につきましては、警察が所掌機関かどうかいささか疑問がありますが、これらの相談等には応じますけれども、また、不良玩具全般については関係各庁と研究はいたしておりまして、まだ結論は得ないのでありますが、たまたま飛び出しナイフが犯罪等に用いられるケースが多いので、かりに禁止することにいたしまして、五センチ未満をたとえば容認することになりますと、五センチ未満が相当市場にあふれる、あふれると言うと言い過ぎかもしれませんが、多くなるというととはこれは不良玩具の観点からも適正でない。ただしそういうことが犯罪関係からいえば適当でないにいたしましても、他に文化的目的がある、たとえば正常なる目的等があれば、もちろんこちらは引き下るべき問題かと思いますが、それが発見できませんので、片や不良玩具も制限すべしという意見がありますので、この際そういう玩具を助長するような立法をするのもいかがかと思いまして、ミニマムは規定しないように立案をいたしておるのであります。それで、たまたま警察が現行法のもとにおいて目に触れて取締りの対象にいたしましたものは五センチ以上のものであったことは、ただいま私が数字で申し上げた通りでございますが、そうしてしかも生産状況等について岐阜県当局をわずらわして調べたところによりますと、生産関係も今日までのところ五センチ以上の関係が多いのでございます。ところがこの問題が新聞その他によって、禁止される向き等もあるといううわさがあった以後におきましての変化もあろうかと思いますけれども、今から二、三ヵ月前におきましては五センチ以上の生産が大部分であったように私どもの方の調査ではなっております。ただし日常の生産ですから動いて参ると思いますが……。それで五センチ未満のものは正常な社会生活に何かの機能を果すかという点を、研究これ努めたのでございますけれども、ナイフの効用は大いに認めるのでござごますけれども、飛び出したり突き刺すことになるという効用は認めがたい。大きいものほど殺傷に役立つということになり、小さいものは興味をそそるということになります。少年どもがぱっと飛び出すことに興味をそそられる点はあろうかと思いますけれども、それ以外について、私どもの研究の結果では、興味をそそるという以外には、正常な社会生活に役立つ部面が発見できませんので、岐阜県の関市からの御陳情もございましたけれども、われわれ事務的にはその理由が発見できないものですから、その御陳情に対してはまことに申しわけなかったのでございますけれども、ミニマムを規定しないで国会に提案する準備をいたしおるのでございます。
  135. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 興味をそそる以外に小さいものでも効用の発見はできないとおっしゃるけれども、あれでやはり鉛筆も削られるし、紙も切れるし、普通のナイフと同じような効用を果すのですよ。その点は少し私は言葉が足りないと思うのです。それは大きいものは凶器だと思いますけれども、それは何も犯罪の余地はないのです。私はそういうことじゃないかと思うのですがね。
  136. 中川董治

    ○説明員(中川董治君) これはこういうことになりますが、私どもはこういう危険物件を扱う点につきましては、たとえばこれはこの間も事件が起って申しわけないのですけれども、外科医の方がメスを用いて人を殺した、これは殺意がありましたけれども、こういうこととか散髪屋の方はめったにないのですが、ああいうかみそりを用いて人を傷つけようとすれば傷つけられる。ただし外科医の刄物とかそういった刄物は、そういう外科医向きにできているわけです。そうしてたとえば刀のごときは人を殺傷する目的にできている。ただしその殺傷する目的にできている日本刀といえども紙を切ればもちろん切れる。それから大きい飛び出しナイフも物を切ろうと思えば切れるのだけれども、ジャック・ナイフというものによって、目的はおおむね達成できることばかりである。ジャック・ナイフに加えて、飛び出す機能を持ち、突き剰す機能を持つということが、プラスされる部面だけが、正常な目的が見つからない、こういうことでございますので、確かに現在市場にありますところの、また不良少年が持っておりますところの飛び出しナイフは、紙も切れるし、木も切れるしいたしますけれども、それはジャック・ナイフだけで目的が達成できるものばかりであります。ジャック・ナイフは、むしろ安装全置という目的も兼ねて開きにくくなっている、バネが逆に安全装置を兼ねていることがジャック・ナイフの正常な機能であります。むしろ、飛び出すようにできているということは、安全装置という意味からも適当でない。ジャック・ナイフを、電気工夫等の持っておりますものは、ポケットにジャック・ナイフを入れた場合におきまして、不注意によって、容易に開かれるのを防ぐ目的のために、バネが逆に作用いたしまして、開かない作用を持っているのでありますが、飛び出しナイフは開き出る装置を持っておりますので、これは犯罪を犯す目的ではなくて、何かの目的によって人を傷つける場合もあり得る問題でございますので、物の裁断機能も私どもは認めておるのでありますが、プラスされる機能だけが、正常目的が発見できないというのが、私どもの研究の結果でございます。
  137. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 いいでしょう。そこまで議論がいくと、これは時間をかけてやらなければいけないと思いますが、目的は先ほど私が言いましたように、われわれがナイフを持っていても一年に何回かしか使わない。大体アクセサリー、普通のナイフでも体裁のいいのは興味をそそるわけです。善意の興味ですよ。従ってナイフというものは、そういうものであるという解釈からすれば、手の中へ入っちゃって、飛び出してみたところで、運んでみたところで、大した問題になっていない、しかもあなたのおっしゃるように、生産数量の少いもの、そういうものまでも、大きいものがあったからというので、坊主憎ければ何とかで、全部やってしまうというやり方は、ちょっと行き過ぎじゃないかと私は思うのですが。そこで問題は、今後の防犯の立場からいって、こういうものが一つ出れば、相次いで禁止しろということをやっていかないで、一つの漸進的な立場が必要じゃないかということを申し上げたいのです。
  138. 中川董治

    政府委員(中川董治君) 物事を漸進的に考えるというお説は、まことに私ども敬服に値するのでありますけれども、本件に関する限りにおきましては、ここの飛び出す部分等については、確かに興味がありまして、興味があるという点で、他に害悪がないという場合においきましては、これをいたずらに立法制限等はすべきでないと思いますけれども、他に害悪等もありますし、特に大きいものはもちろんでございますが、小さいもの等も、少くとも不良玩具の範疇に属するということになりはせんかと思うのでございますけれども、こういった点はよく御研究いただきたいと思うのであります。
  139. 海野三朗

    海野三朗君 私ついででありますからお伺いいたしたいのですが、空気銃、あれは非常に困るので、ああいうような犯罪……、あれはどういうようにお考えになっていらっしゃるのですか。非常にけがも多いし、遠方からぽかっとやるのです。空気銃、実際あぶないのですよ。散弾をこめてやるやつ。私の方などではこれは非常に困る。ガラスをぶちこわされまして、警察へ再三私は訴えるけれども、警察が不良をとっつかまえられない。終戦後は水のピストルでさえも禁じた、いわゆる戦わないという概念から。ところが昨今は、水のポンプ銃よりも空気銃が、だんだん放っておけばますます戦争へ戦争へと追いやるような方向へ、玩具にしても流れておるように思うのですが、その点に対してはどういうようにお考えになっていらっしゃるのですか。
  140. 中川董治

    政府委員(中川董治君) 空気銃による被害がお説のごとく多うございます。これを今飛び出しナイフについて御説明いたしました法案中に規定いたしまして、空気銃の所持につきまして制限を加えよう、こういう考えをもちまして、ただいまお答えいたしました飛び出しナイフの制限を含む改正法律案の中に、空気銃の所持の制限をも規定した法律案を、同じ一つ法律案でございますが、国会に提出すべくおおむね準備を進めている状態でございます。これは空気銃による被害等が多うございまして、これによるところの死者等も出て参りましたので、これに対する制限を加える。空気銃の使用等についても狩猟法に認められた狩猟区域等で撃つ場合、携帯する場合はいいけれども、町場でやたらに携帯する場合は、ちゃんとサックに入れなければならん。こういうような規定も盛り込みまして、許可制にいたしまして、本当に認められたハンティングの場合、それから一定の規格に基く射撃場の場合は、これを撃つことを認めたいと思いますけれども、それ以外には相当制限を加えた法律案を、ただいま質疑応答のありました飛び出しナイフを規制する法案中に含めまして、近々のうちに当国会に提案する運びになろうかと思います。
  141. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 実は、この問題については通産行政にも関係のあることでありますかう、通産省の方にも私は若干尋ねて見たい。ところが通産当局では、やはり警察庁に対して刄の長さの問題については、ただいま申し上げました私の意見等と大体同じような考えで、よく御考慮を願いたいということが具申になっておったようです。これはやはり商工委員会といたしましても、いずれ法律案が出るでございましょうけれども、関心を持って審議をしたいと思いますので、この点はあらかじめ先に私の考えを申し述べておきます。  それから第二の問題は、こういう工合に生産の禁止にひとしいことを一応やられるわけですが、これについて仕掛品あるいは製品について何らの補償が全然法律案の中には講じられていないということを聞いておりますので、これはやはり、五センチ未満のものは残すかあるいは禁止するか別としまして、五センチ以上のものについては、ただいまのところではおそらく問題になりますまい。当然お考え通りにやられると思いますが、その場合に補償措置を全然講じないということは、これは今までのこういう制限あるいは禁止法案のときには例がないと思いますが、必ず業者もそれだけの損失を招くのだから、法律にはっきり明文化して補償せられるのが当然であろうと思います。それがないように思いますが、その点は手落ちじゃないかと私は思いますが、いかがでございますか。
  142. 中川董治

    政府委員(中川董治君) 補償関係も私ども十分検討いたしたつもりでございます。これは上、憲法から始まるのでございますが、まず憲法の点もよく研究をいたした結果、補償を必要としないという結論に到達したわけですけれども、前例等もありまして、現に私どもが改正しゃうするもと法律が、例えば飛び出しナイフというのが最近出だしたのですけれども、それ以外のあいくち類のごときは禁止しており、そのときも補償等の措置を講じておりませんし、改正しゃうとするもと法律のときも、こういう措置を講じておりませんし、例えば覚醒剤等について所持を禁止なさったのですが、こういう場合には覚醒剤所有者の補償等の措置を講じておりませんし、そういう類似の禁止立法の前例等も調べてみた結果、補償等の措置を講じておらないという実情もあることが一つと、もう一つは、飛び出しナイフの点についても、飛び出し装置のバネをはずす作業と、固定施設のボタンをはずす作業で、比較的低廉にジャック・ナイフに直すという技術的なことも可能でありますので、現在の飛び出しナイフをくず鉄にしてしまうわけではないのでありまして、スプリングを、これは比較的安いのでありまして、スプリングをはずということと、飛び出し器具をちょっとはずということが比較的容易で、私どももちょっと器用だったらそういうことが簡単にできますが、そういうはずすということによって目的を達成することができるので、財政的な被害等も甚大とは言いがたい、こういう実情等もありまして、前例等も考え合せまして補償の点も十分研究いたしましたのですけれども、現在のところは補償しないという案になっておるのですが、そういう実害等の費用等も勘案の結果、そういう成案を得たのでございますけれども……。
  143. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私はただいまの問題は、これは憲法の保障している権利の問題でしてね、そういう現実の問題ではないと思うのです。前例にそういうものがないから出せないということであれば、これは法律論として十分成り立つと思います。しかし今できているものをバネをはずせばよいとか、とめ金をはずせばよいというようなことは、これはいささか私は僣越だと思う。これは商品価値の問題ですから。そういうものを作って売れるか売れないかということは、商人の判断、生産者の判断に属する問題ですから、そこまで私は計算に入れて、そういう損害を、もしかけた場合には、その責任をのがれる道は国家としては私はないと思います。これは憲法の問題はもう少し明らかにして……、だから前段の御説明は私は了承いたしますが、しかし後段の御説明については了承いたすわけにはいかない。そういう現実の問題は、少くとも法律をとって道筋を立ててやろうとしておいでになるのですが、そういうことは商人間の話し合いではできるかもしれませんが、生産者の話し合いならばできると思いますが、そういうことは国家が少くとも行政権を通じてやろうということについては、筋の立たない話だということをここではっきり申し上げておきます。
  144. 吉野信次

    委員長吉野信次君) では、ほかの御発言がなければ、本日はどうでょう、この程度で散会することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  145. 吉野信次

    委員長吉野信次君) では、本日はこの程度で散会いたします。    午後四時二十三分散会    ————————