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1955-07-27 第22回国会 参議院 社会労働委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月二十七日(水曜日)    午前十一時開会     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小林 英三君    理事            加藤 武徳君            常岡 一郎君            竹中 勝男君            山下 義信君    委員            榊原  亨君            高野 一夫君            谷口弥三郎君            松岡 平市君            田村 文吉君            森田 義衞君            阿具根 登君            山本 經勝君            吉田 法晴君            相馬 助治君            有馬 英二君            寺本 広作君            長谷部廣子君   衆議院議員            八木 一男君   国務大臣    労 働 大 臣 西田 隆男君   政府委員    厚生政務次官  紅露 みつ君    厚生省医務局長 曾田 長宗君    厚生省医務局次    長       高田 浩運君    厚生省保険局長 久下 勝次君    労働省労働基準    局長      富樫 總一君    労働省職業安定    局長      江下  孝君   事務局側    常任委員会専門    員       多田 仁己君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○あん摩師はり師、きゆう師及び柔  道整復師法の一部を改正する法律案  (内閣提出) ○日雇労働者健康保険法の一部を改正  する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○失業保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○労働者災害補償保険法の一部を改正  する法律案内閣提出、衆議院送  付)     —————————————
  2. 小林英三

    委員長小林英三君) ただいまから委員会開会いたします。  本日初めに当委員会付託の請願を議題に供します。  速記をとめて下さい。    午前十一時一分速記中止      ——————————    午後零時二十六分速記開始
  3. 小林英三

    委員長小林英三君) 速記を始めて下さい。  それでは暫時休憩いたします。    午後零時二十七分休憩      ——————————    午後二時五十六分開会
  4. 小林英三

    委員長小林英三君) ただいまから休憩前に続き委員会を再開いたします。  あん摩師はり師、きゆう師及び柔道整復師法の一部を改正する法律案議題といたします。御質疑を願います。
  5. 高野一夫

    高野一夫君 政府委員にお伺いしておきたいと思いますが、政府原案ではあん摩師の中にカッコして「マッサージ指圧を含む」ということになっておりますが、これは試験の問題はあとで伺いますが、試験を受けてあん摩師免状をもらうのだろうと思うのですが、カッコの中にある人たちもすべてあん摩師免状をもらうことになろうと思うのでありますが、そのときの免状は、あん摩師免状はもらうけれども自分マッサージ専門にやる、指圧専門にやる、あん摩専門にやるという場合に、たとえば指圧の場合、マッサージの場合にあん摩ということを看板に掲げないで指圧あるいはマッサージ、こういうようなふうに看板に掲げたり、あるいは広告をしたりすることはごうも差しつかえないのでございますか。どういうふうにお考えでございますか、その点をお伺いしておきます。
  6. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 御説の通り考えております。
  7. 高野一夫

    高野一夫君 そうするとあん摩師試験を受けてあん摩師免状をもらって指圧マッサージ専門広告をしても、看板を掲げても差しつかえない、こういうことならば実際的には世間から、お客さんの側から見れば、あん摩マッサージ指圧もほとんど別個のもののよう考えられ、かつ区別されるわけでありますが、それはそれでけっこうだと思いますが、試験はどうなりますか。試験はみんな同じ実技あるいは学理、同じ試験を受けたものがあん摩になろうともあるいはマッサージ師になろうとも、指圧師になろうともそれは御随意である、こういうことになりますか。それともその三者に対して多少なりとも何か実技なら実技のところで手心を加えた試験をする、こういうお考えであるかどうか。
  8. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 第一に試験科目については、これは現在省令できまっておりまして、これについては特例を設けることができるということを今度の改正案に入れているわけであります。実際の試験の具体的なやり方については、あん摩はりきゅう云々に関しまするいわゆる審議会がございますので、審議会意見をよく承わってきめるべきことだと考えておりますが、私どもとしましては、なるべく既存人たち試験に当りましては実情に合って、たとえば指圧的な手法を相当加味するよう考えていきたいと現在思っております。
  9. 高野一夫

    高野一夫君 そうしますと、率直に伺いますが、たとえば試験を受けて実は指圧看板にしたい、マッサージ看板にしたいというような場合に、その指圧看板にしたいという場合に、マッサージ術なりあん摩術はあまり得意ではない、できるだけその方の試験をやめてもらって指圧専門に行きたいから指圧実技試験だけ一つ受けさせてやっていただきたい、こういう希望があると思いますが、そういう希望はいれられますか、あなたの考えでは。それとも一応は、平均してあん摩術マッサージ術指圧術もすべて三つとも一応は受けなければならぬ、こういうことになりますか。
  10. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 現在御承知のようあん摩マッサージにつきましては、試験科目としても、それから実技としても特別の区別を置かないで一本科目として取扱っておるわけでございます。考え方としては、指圧についても同じよう考え方で参りたいと思いますけれども、しかし、先ほど申し上げましたように、既存人たちに対する試験の取扱いについては、これは実情にかなった特別の考え方をしなければならぬと思っております。その場合にいわゆる指圧だけをやる、ほかのやつは全然やらない、この辺は非常に実は具体的な手法の問題になりますので、簡単には言えないと思いますけれども考え方としては、基礎的にはすべてのものに一応通暁することを前提として、その上にプラスのそれぞれの得意というものを考えられるようなふうに考えていきたい、たとえば医師についてみますれば、将来産婦人科あるいは整形外科を標傍しようとするものにおきましても、一応医師としての試験をいたしておりますが、ある程度そういった考え方中心によく研究いたしたいと考えております。
  11. 榊原亨

    榊原亨君 ただいまその実技試験のことでありますが、この点に関しましては、実情に即してあん摩あるいは指圧あるいはマッサージというものの実技試験を実施するということで私どもは了解してよろしゅうございますか。
  12. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) さよう考えております。
  13. 吉田法晴

    吉田法晴君 政府提案理由に出て参りますが、あん摩はりきゅう柔道整復師指圧以外の医業類似行為を業とする者の教育期間を延期をいたしまして、三年間延長をして、そうして、これにはあん摩師試験試験資格を認め云々、こういうことがございますが、巷間いわれているところによりますと、参考人等意見を聞いてみましても、その中からあん摩試験、それからここに書いてございます。あるいは政府原案によると、あん摩師試験を受けるという以外に医師の助手的な役割を果すよう云々という意見もございました。三年間、いずれにいたしましてもこの法律によるあん摩になるか、それともあるいは医師の補助的な役割を果すか、こういうことになるかと思うのですが、その点については具体的にどのよう考えておられまするか、その点を一つ伺いたいと思います。
  14. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 医師の場合に、物理療法その他におきまして、電気でありますとか、あるいは光線でありますとか、その他の治療手段を使っておりますことは事実でございます。それに従いましてある程度自分の手下の者を使っていることもこれも事実であります。その一つの例として、レントゲンにつきましては、レントゲンの技師の免許を受けなければならない、免許を受ければレントゲンの撮影に医師指導のもとに当ることができる、そういうことになっているわけでございます。それで現在電気光線そういったいわゆる物療等において、あるいは整形外科方面において使われておりますものについては、それは今後考えなければならない問題の一つだろうと思います。ただこれは現在問題になっておりますいわゆる療術行為として問題になっている、独立をして電気なり光線なりの治療的な行為をしている業態と全然種類が違うわけでございまして、なおかつ学問の程度その他につきましても、これは使う方の考え方というものも十分掛酌をしなければならないし、特にそういう人たちの就職に関する、いわゆる需給関係——言葉は悪いですが需給関係、そういったものをよほどにらみませんというと、かえって将来弊害を来たすことも考えられますので、その辺のところ、今お話しになりました問題は十分慎重に考えなければならぬ問題の一つだと考えております。
  15. 吉田法晴

    吉田法晴君 慎重に考えなければならぬというが、三年間なら三年間延びても今までのままほうって置いたら、そうすると三年間なら三年間の後にやはりまた同じような問題が起ってくる。そこでやはり方針というものを出されて、今のあなたのお話では、たとえばレントゲンならレントゲン技術者になるというのも一つ方法かもしれない、しかしそれはほんの一部だろうと思います。そうするとあん摩師それからカッコはありますけれども、そのいずれかになるかは別問題であります。しかしその他のものについてはどういうようにするかという、たとえば教育なりあるいは試験なり、それから行きます方向というものが、三年なら三年の間に立てられませんと、三年たってまた実際にこれで生活をしている者をどうするのだという問題が起って参ると思うので、その点について、今すぐ方針があればお示し願いたい。それからどういう工合いにして方針を立てるのだという点がございますならば、一つお示しを願いたいと思います。
  16. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 言葉が足りませんでしたが、今申し上げました医師のいわゆる補助者としてのそういった技術者に関する制度というものは、現在のいわゆる療術行為というものとはむしろ関係なしに別個の見地からこれを考えなければならぬ問題で、いわゆる療術行為一つ処理方策としてこれを考えるということは、その筋道において、出発点において私はいささか間違っている点がありはしないだろうか、そういうようにその点については考える次第でございます。現在いわゆる療術に関するいろいろな仕事をなさっておられる方を、できるだけ今度の法律によりましてあん摩等仕事試験を受けてやっていただくように十分指導いたしたいと思います。
  17. 森田義衞

    森田義衞君 ただいまの御説明ですと、現在の既存業者でいわゆる無免許の者が、今度の法律によりまして指圧関係ははっきり試験関係に入っていくといったことになりますが、こういったあん摩なりはり師なりマッサージ以外に、ただいまお話しになりました光線療法あるいは電気療法といったものが、政府の御説明ですと、これらの業者もやはりこういったあん摩試験を受けて転向してもらいたいといった御趣旨ように大体お伺いしたのでございますが、そうでございますか。
  18. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 原則的にはさよう考えております。
  19. 森田義衞

    森田義衞君 現在これらの光線業者あるいは電気業者といった者にははなはだいかがわしい者もある、弊害もあるといったことを政府もお認めになっておるのでありますが、現実に何千という業者があり、しかもある程度は療養効果を上げているためその利用者もあって、またそれらの患者から患者へと宣伝されておるものもあるやに聞いておる。だからこれらを大体取捨選択をして、そのうちよきものはやはり合法的にこれを認めるより仕方がないのではないかといった感じがするのですが、これらの業者が必ずしも私は政府の期待するようあん摩師試験を受けて生きていこうとは私は考えられないが、政府はその点で御自信をお持ちになっておるのですか。
  20. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 試験を受けるかどうかということはもとよりこれは本人の意思が中心となっておるのでございますけれども、われわれとしては、受けていただくことを期待をいたしております。
  21. 森田義衞

    森田義衞君 私はこういった業者が特に将来ふえてくれとか、そういったことを期待しておるわけではございませんが、現実に何千という業者がある。しかも公共福祉に反するようなものが現実にある。そういったようなものを、三年間の猶予という前に、早くこういったものを政府で認定いたしまして、公共福祉に反するものは取締りを厳重にしてこれを禁止しなければならないのではないか。しかし、すでに八年間といったものが公然と公共福祉に反しないといったことで、これまでの経過法律にあって認められてきておるという現実があるのだ。しかも、今後三年間これを認めようという間に、ただ八年間転職できなかったためにやるのだと、こういったなまぬるいことで三年後にこの問題が解決するとは私は思いません。特に職業の選択の自由ということは、憲法の二十二条によって公共福祉に反しない限りはとにかく認められておる。あるいは営業の自由があるのだといったことで、これらの方々があん摩さんの領域を侵して特にその領域を狭めるといったようなことを私は考えておるのではないのでありまして、少くとも現在公然と職業に従事している者は、ある程度今後法的関係を考慮して、少くとも人体を扱っておるのだとすれば、あん摩さんでも、しかも身体障害者であるずいぶん不自由なからだを持ちながら、あるいは解剖学だとかずいぶんむずかしい試験を受けられて御資格をおとりになっておる。こういった苦労をしておられるので、そういうよう人体を扱う者は、少くとも漫然と扱うべきではないのではないか。ためには、やはりこういう人には長年の修業期間を置いて、こういった理学上の何といいますか試験をする、あるいは人体に関するいろいろな解剖学やその他の試験をして、その上でまたその機械それ自体が、医師が使わなくても、こういう連中でも試験の受かった者は使えるという限界において、そういう機械も認定をしてやる、そうして現在の業者を少くともそれならば認めてやるといったよう立法措置を講じなければ、私は政府の怠慢ではないかという感じをいたしておりまするが、その点におきまする政府見解を聞きたいと思います。
  22. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 取締りという点から見ますれば、これはまあ終戦後ほかの部面もあるいはそういう面があるかと思いますけれども、この分野においても取締りの手を十分伸べていなかったことは、これは認めざるを得ないと思いますし、この辺は大へん私どもも遺憾に思っております。今後十分これらの取締り等の点については意を用いて参りたいと思います。ただ、今お話の点につきましては、これはまあお話のお考えもごもっとものような点もあると思いますけれども、全体としては、やはり今まで検討いたしました結果、指圧につきましては、あん摩はりきゅう、そういったものと同じよう考え方で処理することが適当であると思いますが、その他のものにつきましては、そういうよう措置をとるということは現在のところ考えていないわけでございます。
  23. 森田義衞

    森田義衞君 その取締りが、療術であると申しましても、加持とか、祈祷とか、キツネとか、タヌキとかいったよう医業類似行為は、そういうものは当然これまでの法律によっても認められていない。それは弊害があれば当然取り締るべきである。それ以外の電気業者光線業者は、かつて届出をして八年間は認められてきたのだ。その間転業方向にやろうとした。転業しなくても、少くともその事実を政府はこれまで認めてきたので、別に取締りの対象ではなかったのだ。そのうち弊害があれば、そういった公共福祉に反する面から取締りをする必要がありましょうけれども、公然とこういうものをやってきたということは事実ではありませんか。だから、その事実の上に立って弊害を是正して、今後どういうふうに持っていくかという政府方針をお立てになるのが今後の政府態度ではないか。ただ漫然と三年間に転業さすといったことでは政府責任は済まされないではないかと、こういうふうに考えますが、その点の政府の御見解を伺いたい。
  24. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 本質的には電気光線等仕事医師のいわゆる補助行為として行われるべき性質のものだと、さよう考えます。
  25. 森田義衞

    森田義衞君 それならそれではっきりいたしておりますれば、現在の三年間の経過規定というものを漫然と認める態度はどういうことか伺いたい。
  26. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 三年の猶予を置きまして、今登録されておりまする約一万三千の人たち、このうちにはいろいろな方がおられると思いますけれども、しかもその内容はきわめて複雑多岐にありまして、簡単に右左と分類できない性格のものだと私どもは承知いたしておりますが、それらの人たちにこの特例試験あるいは免許を受ける時間的な余裕を与える、そういう意味で三年間を適当だと考えまして三年間にしたわけであります。
  27. 森田義衞

    森田義衞君 私は、医師指導を受けなければいけないといったものを認めていくことは、それが弊害があるというなら、早くそれは法的措置を講ずるのが当然の国民に対する保健上の責任からいってゆるがせにすべからざる責任問題だと思う。単に八年間も待ったのだと、その上三年間も待つのだと、そうしてこれらがあん摩その他になってもらいたいということでは済まされないのではないか。そこにやはり医業類似行為として、医師指導を受けなければならぬ範囲身体の診断をしなければならぬ範囲、そういったもの以外にそういうものがあり得るかどうかといった検討を政府がいたしまして、それによってそういうものの弊害のないものだけを認めてやるといったよう研究政府においてたさるべきだと思うのですが、どうしてもこういったものは医師指導以外にはレントゲンその他はあり得ないのだといった御見解か、あるいはそういったものを相当研究して、そしてそれの範囲によって特に弊害のないものは認めるといったことの研究の余地があるかないかといったことを聞きたい。
  28. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 過去八年間において私どもとしましては、できるだけこれらのまあ業態ないし実態というものについて研究をいたしました結果、今日指圧というものについては、これはあん摩マッサージと、いわゆる同様にあん摩のうちにマッサージも含めて取り扱っていくことが適当である、かよう結論に達した次第であります。
  29. 森田義衞

    森田義衞君 指圧はそうでしょうけれども、今言った光線でありますとか電気といったものが、あん摩、そいつの中に今言ったものは認めてもいいが、これらのものはこれまでの結論では医師の大体指導のもとにしなければならぬといったよう結論に達したなら、三年待たずして、もちろんその間に過程的には当然あん摩になる人もあるかもしれません。しれませんが、どうしてもそれ以外にならないという人はその方向をはっきりとさせてやらなければならないじゃないか。不安定な状態に三年間置くことはやはりこういった業態にあられる人に非常に不安感を与えるのじゃないか。そういった点でどうしてもあん摩でなければならないのか、同時にそれ以外のものについては、やはり研究の上で医学的医師指導によってこういったものもある程度やる、どういうよう方法でやるか目安をつけてやらなければ私は不安定であろうと思うのですが、早くそういった目安をつけてもらいたいと思いまするが、それにつきましての政府見解を……。
  30. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) なるほどお話ように、理論的には今までの法律通りにこれを改正せずにすることが適当だと思いますけれども、しかし一部についてまあ特例試験等を受けさせるということとも関連をいたしまして、三年間の猶予という意味において設けた趣旨でございまして、本質的には現在あります法律を変えている趣旨ではございません。
  31. 田村文吉

    田村文吉君 関連して伺いますが、今のあん摩師学校電気療法も教えておいでになるのじゃございませんか。
  32. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 現在のあん摩もある程度の電気器具を使うことは許されております。
  33. 田村文吉

    田村文吉君 あわせて赤外線を使うとか、そういうような問題も研究されたことはございますか。
  34. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 赤外線等につきましては、これはかなり強い刺激を与えるものでありまして、この使用を誤まると重大な障害を生ずるというところから、赤外線はこれは医師でなければ許可をしないという方針でございます。
  35. 田村文吉

    田村文吉君 その今の電気の問題でございますし、また光線の問題でございますが、そういう問題は現実に今それで職を営んでいる人がある。これに対しては失業されては困るから三年の間に何とか一つ転業してもらいたい、こういうのが今度の法律の案でありますね。そこで、そういうように消極的に考えることも一つ方法であるが、また名前はあん摩師学校であろうがどういう学校であろうがかまわないが、そういう電気とか光線療法の無害なもので、しかも有効なものが考えられたら、医師指導してそういう人たちにもそういう新しい職業をこれからでも授けてあげるというような、ことが、いわゆるそういう今日の非常に失業者の多い場合においては必要なことではないか、またそれによって満足している患者の上からいけばそれも喜ばしいことではないか、こういうふうに考えられますのでございますが、今度の三年間に何かそういう点についてのあるいは学校で教えるなり、そういうよう指導の具体的な方途をお持ちになっているかどうか。ただ漫然と三年の間に、もうそういうものはまかりならぬから全部あん摩師仕事を習いなさい、それ以外にあなた方の職業は許しませんぞ、こういうことは少しく不親切に思うのですが、何か具体的にそういうものをどういうふうにするのだというよう考え方がありますかどうか。
  36. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 第一段の御質問でございますが、将来現在のあん摩あるいははりきゅうというようなものに新技術を取り入れることを考えるべきではないか——少し御趣旨が違うかもしれませんけれども、さような点につきましては、私どもこれは将来の問題といたしましては、これを決して排除しない、あん摩術にいたしましてもマッサージ術にいたしましても、それはその後の医学研究、人知の進みといいものに応じまして逐次改良されていくということは考えられることでありまして、私どももできますならばその指導ということも考えて参りたい。これは一般的な考え方であります。  それから第二段の、今日まで一応電気あるいは光線等療法を許されておった人たちが、この三年間の間にその仕事ができなくなって、その三年だけで以後は仕事ができなくなってしまう。それに対して何かその方法考えておるかというような御質問かと思うのでありますが、先ほども森田委員からの御質問とかなり近い点だと思いますが、私どもとしましては、基本的にはあん摩、この中には今度の改正によりまして指圧も含まれるわけでありますが、さような術を修得していただいて、そしてそれに転業していただく。それについては私どもとしましてあるいは簡単な講習会なり何なりの方法で御援助をいたすということは考えてみておるわけでございます。
  37. 田村文吉

    田村文吉君 その今のあん摩師の方に転業することについてのまあ講習会を開くとかいうことによって転業をやさしくしてやるということはわかるのでありますが、もう一歩進んで、電気なりあるいは光線なりというものを、今後治療のときには大いに有効に利用しなければならぬ。しかし専門の六年なり七年の大学を出た人でなければそういう術はできないのだということではあまりに不自由なんだな。そういう点からいってあるいは今のあん摩師の諸君が二年なり三年なりでそういう仕事ができると同様に、電気とか光線というようなものについてもできるよう方法考えてあげることが必要じゃないか。まあ私は今日新聞を見て、鳩山総理がこの夏休みの間に電気療法をやる、そして健康をさらに強めるというようなことが新聞に出ておった。これは多分お医者さんの指導のもとにやられることだと私は思うのですが、それだけの治療だけを専門にやる人が七年なり六年なりの大学教育を受けたお医者さんでなければ絶対やっちゃならぬのか、そういう点についての道を開く必要があるんじゃないか、そういうことを考えないでは少しく今民生安定の上からいって不親切じゃないか。こういうことは私意見ですが、何かそういうよう方法をお開きになるお考え方はありませんか。
  38. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) ただいま例を鳩山総理のことについておっしゃいましたが、これは先生も申されました通り、私どもが伺っておりますのは、医師が行われ、あるいは医師が直接指導されて行われる電気療法だというふうに承わっております。それからさよう意味におきまして医師が直接責任を負いまして、医師のお手伝いというよう意味で特別に資格を持っておられない方が手伝いをされるというようなことは、これは差しつかえないというふうに考えておるのでありまして、今日におきましても、いろいろ大学の物理療法の教室というようなところでは、中にあん摩あるいはマッサージ資格を持っておる方も相当おられますが、別に資格も何も持たずとも水浴療法ですとか、あるいはその他の光線療法等のお手伝いをしておる方も現在おられるわけであります。それから、たとえば医師の非常に大切な仕事でございます尿、糞便等の検査、あるいはそのほかの病理組織の検査というようなことにつきましても、これは医師自身がやるのが本体でありましょうけれども、なかなか忙しい方はそれが直接できませんために、助手を使っておられます。この助手も一部にはやはり衛生検査士とかあるいは臨床検査士という身分をきめてくれというよう意見もあり、私どももそれを検討いたしておりますが、今日においては特別に資格がない方がお医者様の手伝いをしておられるのであります。さよう意味におきまして、今の物理療法の手伝いをなさるということは、今日までいわゆる今の物理療法と申しますか、電気光線療法をやっておられた方々がお医者さんの手伝いを今後なさることは、これは一つの新しいと申しますか、一つの進み方であろうと考えます。私どもその意味におきましては、いろいろ働く場所のごあっせんとかいうようなものについては努力をいたしたいというふうに考えております。
  39. 田村文吉

    田村文吉君 そこで問題がだんだんデリケートになるのですが、病院の物理療法の先生の所にいる場合においては無資格人でもいいんだ、町にいて相当の電気に対する知識、物理上の知識、また解剖学の知識も若干持っている人が開業して、お医者さんの方から依頼を受けて、この人についてはこういう電気療法をやってくれ、こういうようなことが今後起るとしたならば、その人は合法的なあれなんですか、どうなんですか。
  40. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 私どもは、このよう物理療法的な処置というものは、医師の直接の指導がなければ許さるべきものではないというふうに考えております。
  41. 田村文吉

    田村文吉君 そこに問題があるのでありまして、今現にかりに五千なり六千なりの物理療法をやっている人がいる。この人たちがあすから今度あん摩師の中へお入りなさいと言ったところで、今さら手技を習ってもなかなか簡単には行かない。行かないから、やはり習い覚えた電気とか光線というものを医師と連絡をつけて、医師治療のもとに、ちょうど医者が処方せんをもって薬剤師によって調薬をすると同様に、そういう療法をある指示のもとにやるというようなことは、今後考えられても行き得ることじゃないか、こう常識的に考えられるのでありまするが、そういうようなことについては、お考えになる余地はございませんか。
  42. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 私どももいろいろ検討はいたしましたのでありますが、エキス線技師におきましてもさようでございまして、医師のもとにおいては仕事ができますが、医師のかりに指示書がありましても、その病院、診療所以外の所ではレントゲンを用いて患者の検査をすることはできないというふうになっておるのでありますが、私どももこの物理的な療法というものは、これはあくまでも医師の直接の監督のもとにおいて行わるべきものだというふうに考えております。
  43. 田村文吉

    田村文吉君 より以上は私の見解を述べるにとどまりますから、しいては申し上げませんが、ただ現実には三年の間に約五千人の療術の方が、いわゆる指圧を除いた物理療法ですね、そういう方々が職を失わなければならぬという問題にぶつかるのですから、何とかして親切に考えてあげていただかなければならぬ。それには、世の中はだんだん分業の世の中でございますから、お医者さんは一々忙しくて助手もないからやれぬ、町にはそういうものを専門にやってくれる何ボルトの電流でもってこういう方法療法がある、これを一つやった方がいいんだというような指示を与えるようなことによって、そういう人たちの生きる道を考えてやるということが必要じゃないか、こう考えるので、そういう方途にお考えにならぬと、ただいたずらに取締りを厳重にして今後三年の間にはそういうわけのわからぬ治療法はやめるんだ、こういうことでは、何かしら当局の御親切が届かないように思う。そこで私は方法を今後お考えになれるのじゃないか、また必ず考えれば道がある、こういうふうに考えますことを申し上げて、まあより以上は討論になりますから、御答弁いただかぬでもよろしいのですが、そういうことがあり得るのじゃないかということだけ申し上げておきます。
  44. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 相当論議を尽されたようですし、また付帯決議の中でただいまのような問題もあるのじゃないかと思いますので、一つ議事を進行していただきたいと思います。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  45. 吉田法晴

    吉田法晴君 質問を二、三点。
  46. 小林英三

    委員長小林英三君) どうか簡単に。
  47. 吉田法晴

    吉田法晴君 簡単にお尋ねをいたしますが、政府原案によりますと、指圧あん摩師の中に入る、そうすると実際にどういうことになるかということをお尋ねするわけですが、三年間は今まであん摩師免状を持たなかった人も今のまま続け得るということになる。そうしますと、その指圧人たちは三年間の間に試験を受けてあん摩師にならなければ営業はできなくなる、こういうことになるわけでありますが、その試験を三年間におやりになるためには講習等をおやりになる予定か、その点を一つ
  48. 高田浩運

    政府委員高田浩運君) 講習等については、十分考えなければならぬと思っております。
  49. 小林英三

    委員長小林英三君) 他に御発言がなけらねば、質疑は終了したものと認めたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 小林英三

    委員長小林英三君) 御異議がないと認めます。  それではこれより討論に入るのでありますが、ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  51. 小林英三

    委員長小林英三君) 速記始めて。  それではただいまより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにして、お述べを願います。
  52. 榊原亨

    榊原亨君 私は、この際本案についての意見を申し述べたいと存ずるのであります。  本案につきましては、私どもいろいろ公聴会その他におきまして慎重審議をいたしました結果でありまするが、結局八年間の間これらの医業類似行為につきまして政府結論を出すことをせずにおられたということにつきまして、すでにこれらの業者につきましては現に行なっておられる方が一万数千名あるというような現状にかんがみまして、どういたしましてもこれらの方々に対する措置を講じなければならぬということは私どもわかるのでございまするが、そのうちで特に指圧につきましてこれをあん摩の中に入れますことにつきましては、ただいままでいろいろの質疑応答を通じまして判明いたしましたことは、これらの指圧マッサージあん摩と申しますものは、その原理におきましてもその技能それ自身の技術範囲におきましてもほとんど同じものであるのでございまするが、その流儀におきましては、一応異なっておるものと認めざるを得ないのであります。申しますならば、柔道におきましてもレスリングにおきましても相撲におきましても、いろいろ術技があるのでありますが、その基本的術技は共通でございましても、それを行います上におきましてはいろいろ流儀がある。また庭球におきましても、この中に硬球と軟球とあるようなわけでありまして、これらの点から申しましても、これらにつきましては、一応種類を認めざるを得ないのであります。ことに厚生省は、現行法規におきましても、その広告をいたします場合には、マッサージ広告していいというのでありまするが、広告の制限におきましては、種類より以外にこれを広告することはできないということが書いてあります。また一面、厚生大臣の指示の範囲におきましてもこれを指示しておらぬというようなことから申しましても、どういたしましてもこれらのものは一応の社会通念上種類の異なっているものと認めざるを得ないのであります。従いましてこれらのことにつきましても、あるいは受験科目におきまして、あるいは今後のいろいろの取締りにおきましても十分考慮すべき点があると思うのでございまするが、これらのことにつきましては省令その他に譲りまして、この際は一応原案を認めることといたしまして、なお、この原案運営につきましては、特に私どもは、この際私どもの要望を提案いたしまして、委員皆様方の御賛同をお願いいたしたいと思うのであります。  ただいまより、本法案に対しまする付帯決議をする動議を提出いたしたいと存じます。その案文を一応朗読いたします。     附帯決議案  医業類似行為に関しては、政府はその業態を把握、検討の上左記事項に関し適当なる措置を講ずべきである。      記  一、第十九条第一項の規定による届出をした既存業者であって本法に認められないものについては猶予期間中に充分な指導を行い国民保健上弊害のないものにつき将来適当な措置を講ずること。  二、あん摩師等のうち身体障害者については本法運営に関し特別な考慮を払うこと。  三、所謂無免許あん摩その他の無免許業者に対しては、厳重なる取締を励行し、その根絶を期すること。  右決議する。以上であります。  第一項に申し上げておりますのは、本法に、今政府提出の原案によりまするというと、現に指圧をしておられる方々は一応の法的措置ができるのでございまするが、先ほどから問題になっておりますところの、本法に規定せざるその他の医業類似行為者に対しましては一応措置が抜けることになりまするので、これらのものにつきましては、現にやっておられるところの技能があるいは国民保健上疑義のある点もありまするので、これらは当局において十分指導されまして、そうして国民保健上弊害のないという程度になりましたときに、将来三年間の猶予期間中適当な処置を講ぜられたいという趣旨であるのであります。  第二の「あん摩師等のうち身体障害者云々という項目につきましては、もう申すまでもありません。現にこの業に尽しておるところの六〇%以上の方々が身体不自由者でありますので、それらの方々が本法運営をいたしますることによりまして、その業態が侵されたり、あるいはいろいろの不安が起るということでは私どもこの目的を達することができませんので、この点につきましては、特に運営上考慮を払うべきであるという意味であります。  第三番目は、御承知のようにこれらの法によって規定せられていない無免許あん摩その他の無免許の方々が、ことに健康なるからだを持っておられる方々が無免許でこれらの業務を行うということにつきましては、私どもは単に国民の保健衛生上ばかりでなしに、先ほどから申し上げました意味におきましても、十分取締っていただきたいと思うのでありますが、これらにつきましては当局はいまだ十分の取締りがないということは、先ほどから質疑応答において明らかなところであります。従いましてこれらを励行されまして、その根絶を期するということを私ども考えておるのでありまして、以上の意味におきまして、この付帯決議案を提案いたす次第であります。
  53. 山下義信

    ○山下義信君 私は、ただいまの榊原委員の付帯決議に関する動議に賛成いたします。
  54. 小林英三

    委員長小林英三君) 榊原委員の動議に御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 小林英三

    委員長小林英三君) 他に御意見もないようでありますから、討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 小林英三

    委員長小林英三君) 御異議ないものと認めます。よってあん摩師はり師きゅう師び柔道整復師法の一部を改正する法律案につきまして採決をいたします。本案を原案通り可決することに賛成の諸君の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  57. 小林英三

    委員長小林英三君) 全会一致と認めます。よって本案は全会一致をもちまして原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、討論中に述べられました榊原委員提出の付帯決議案を議題といたします。  榊原委員提出の付帯決議案を本委員会の決議とすることに御賛成の諸君の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  58. 小林英三

    委員長小林英三君) 全会一致と認めます。よって榊原委員提出の付帯決議案は全会一致をもちまして、本委員会の決議とすることに決定いたしました。  なお、本会議におきまする口頭報告の内容、議長に提出する報告書の作成その他の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 小林英三

    委員長小林英三君) 御異議がないものと認めます。  それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりまするので、本案を可とせられる方の順次御署名を願います。   多数意見者署名     加藤 武徳  高野 一夫     吉田 法晴  阿具根 登     山本 經勝  森田 義衛     有馬 英二  長谷部ひろ     谷口弥三郎  榊原  亨     田村 文吉  常岡 一郎     松岡 平市  山下 義信     竹中 勝男  相馬 助治
  60. 紅露みつ

    政府委員紅露みつ君) あん摩師はり師きゅう師及び柔道整復師法の一部を改正する法律案を提出いたしまして以来、委員の皆様におかれましては非常に熱心に御審議をいただきまして、敬意を表しまするとともに感謝を申し上げる次第でございます。ことに医業類似行為につきましては、長い間解決を見なかった問題でございまするだけに、問題も非常に多くここに含まれておると存じます。それなればこそ、ただいまの三項目にわたりまして付帯の御決議をいただいたわけでございまして、政府といたしましては、この御決議の趣旨に従いまして、今後十分に本問題を検討いたしまして、善処いたす所存でございます。     —————————————
  61. 小林英三

    委員長小林英三君) 次に、日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案議題といたします。御質疑を願います。
  62. 榊原亨

    榊原亨君 日雇い労働者健康保険の経済は今いかようになっておるのでありますか。十分の余裕があるのでございまするか、承わらしていただきたいと存じます。
  63. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) お答え申し上げます。日雇労働者健康保険法は、提案理由説明にもございましたように、昨年の一月から発足をいたしておるのでございます。ちょうど給付が始まりましたのが三月でございまするので、満一カ年の経験を経ておるわけでございます。昭和二十九年度終りまでの経済の状態は、相当な剰余金を持ちまして決算を済ましておりますよう実情でございます。
  64. 榊原亨

    榊原亨君 ほかの健康保険が御承知のように赤字に悩んでおりますのに、この日雇い労務者の健康保険だけが相当の剰余金があるというのはどういうわけでありますか。
  65. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 日雇い労働者健康保険制度の創設のときにおきまして、満一カ年の経過を経ましても多少まだその点が残っておると思って、率直に認めざるを得ないのでございますが、当時この制度を発足いたします際に、私どもといたしましては、日雇い労働者自身の傷病にかかる度合い等が明確に資料を持ち合せておらなかったのでございます。そこでこの制度が発足いたしましたために、給付上必要な経費の計算をいたしますにも、当時は健康保険の実績を使いまして、それに約一割の安全率を見て所要経費の計算をいたしておったのでございます。この点が一つ、それからもう一つは、私どもとしてはこの制度としてはやむを得ないことであろうと思いますが、御案内の通り受給要件がございます。この受給要件がありまするために、病気になりました際には、まず法律に定めるところの受給要件に合致しておることの証明を受けまして、それからいわゆる受診券を手に入れてから医者にかかるというような建前になっておりまするので、一般健康保険の場合と違いまして、また制度の発足当初でもありますので、私どもが予想したような給付費が支出されなかったというのがおもな理由であると考えております。
  66. 榊原亨

    榊原亨君 この保険におきまする家族の受診率と一般健康保険におきます家族の受診率は同じでございますか。
  67. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 御承知の通り日雇労働者健康保険法は今回の改正によりまして被扶養者の範囲を広げて、健康保険と同じよう改正をお願いしておるのであります。現行法は直系尊属と妻と子だけになっておるのであります。そういうよう関係から家族の範囲に大幅な制限がございます。今受診率の数字につきましては、一般的なことだけを申し上げまして、こまかい数字を持っておりませんけれども、先ほど来申し上げておりまするような受給要件の関係から、本受給者のみならず被保険者本人につきましても、健康保険に比較して一年間の実績では受診率は低くなるのであります。
  68. 榊原亨

    榊原亨君 ここに問題があると思うのでありまして、日雇い労務者の方々は遺憾ながら家族が病気になりましても、半額を負担しなけりゃなりませんから、かかろうにもかかれないということで受診される人が——家族の受診率が少いのであります。従いまして、そのために一般健康保険におきましては赤字になるのでございますが、家族に対する給付がそのために少いために黒字になるのではないかと思うのであります。従いまして、この際、日雇い労働者の健康保険の経済が黒字であるということによりまして、今回政府が御立案になりましたような点に給付の範囲を広めますよりも、むしろその家族給付——家族が病気になられてもその半額を負担し得ないのでかかり得ないという、その半額給付の負担についての考慮が払われてしかるべきであると私は思うのでありますが、その点について政府はどんなお考えを持ってこの法案を御立案になったのですか。
  69. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 一般的に申しますれば、日雇い労働者と健康保険の被保険者との間には御指摘のよう関係はあると思いまするが、しかしこれをさらにこまかく検討いたしますれば、健康保険の被保険者の中にも非常に給与の低い人も数多くあるわけでございまして、そういう面の人との比較をいたしますると、必ずしもこの問題は一般論だけで片づかない面もあるのではないかと思うのであります。  それからもう一つ申し上げたいと思いますることは、ただいまの御質問の本質に触れておりますが、昭和二十九年度の剰余金がございまするが、実はそれを当てにして給付内容の改善をいたしたのではないのでございます。もちろん、いざという場合には、この剰余金を積立金にしておきまするから、財政上の困難が生じました場合には、これを充当することはできまするけれども、私どもの計画は、今回御提案を申し上げておりますような給付内容の改善をやりましても、昭和二十九年度の剰余金を当てにしないで財政のつじつまが合う、こういう計算のもとに提案をいたしておるような次第でございます。そこでそういう建前から申しますると、家族の五割給付という問題は、これは健康保険あるいは共済組合制度と全部同じよう考え方で含まれておるものでございまするので、先ほど申し上げましたような理由も考えあわせますると、日雇い労働者健康保険だけが家族の十割給付をやるということは、財政的にもただいまの計算では困難でございまするし、またそうした他の制度との関連におきましても検討をいたさなければならないと考えておる次第でございます。
  70. 榊原亨

    榊原亨君 昨年度黒字で余りましたから今年度それを使おうという意味ではありませんが、少くとも一年の収支の上において、それだけの分が余るというその原因が家族給付の半額の負担がし切れぬ。家族が病気でもかかり切らぬと、かかることができないと、その点にあるということを私どもは率直に認めざるを得ないのであります。今まで健康保険が黒字になりますというと、それじゃその給付の範囲を広めようというようなことで政府がおやりになっておいでになった。そうして今日一般の健康保険は赤字に悩んでいるということでございますので、こういう点を十分考慮されまして、そしてその給付の範囲を広めるということについては万全のこの保険の性質そのものの実態に応じたような御研究の上にこれをきめていただくことが至当ではないかと私は思うのであります。従いまして、この日雇い労務者という方は、普通の会社や工場に雇われておられる方々とはその性質そのものが違うのでありまして、そういう性質を十分のみ込みますならば、今私が申しました点を十分考慮されまして、今後この給付の範囲を広めるというような場合には、このような点に特に重点を置いて御考慮を願わなければならなぬと思うのでありますが、政府はその点におきましてどういうお考えであるか、これは政務次官にお話しを願いたい。
  71. 紅露みつ

    政府委員紅露みつ君) ただいま御指摘の半額負担ということが日雇いの場合は非常に困難で、その結果が黒字になったであろうと、こういうお話でございますが、伺ってみますると、やはりそうした面もあるであろうと私はうなずけるのでございまして、今後この点に注意いたしまして、そういう気持で見守れば、これは当然結果が現われるわけでございますから、そうした場合にはこれをまた十分考慮して取り入れていくと、かよう考えて今伺った次第でございます。
  72. 田村文吉

    田村文吉君 政府は今の日雇い保険者の保険料というものが安過ぎるとお考えになっているのか、高過ぎるとお考えになっているのか。
  73. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 私どもの計算の基礎なりあるいは現状から考えてみまして、大体この現行程度の保険料でございますると、健康保険の保険料率に基く保険料と大体同じ程度であると考えております。千分の三十弱、三%弱のものが被保険者本人の負担になっております。そういうつり合いから考えまして、この程度のものでいいのではないかと思いますし、また一面におきまして、日雇い労働者の実情から考えまして、これはこれ以上に上げることは非常に困難であると現在判断いたしておるのでございます。
  74. 田村文吉

    田村文吉君 そこで給付をおふやしになるということは願わしいことでありまするから、私はそれで今度の法案の趣旨には賛成するものでありまするか、また始めてから一年ぐらいたってもうすぐ黒字だから、もうすぐ赤字だからというようなことであまりその動揺するようなことのないことが願わしいと思うのでありまするので、今の保険料が決して高くはないのだ、現在の被保険者としてはもうこれ以上の保険料を高くすることは困難だというぐらいに判断をしておいでになるとすれば、もしまた今度の給付が非常にふえたために、歯の治療であるとか、分べんであるとかというようないろいろな給付がふえております。ふえておりますために、やってみたところがまた赤字になった、それで来年はまた日雇い保険者の保険料を上げなければならぬというようなことをおっしゃることがないかどうか。これは私ははっきりとそういうめどをおつけになってこの法案をお出しになったのだろうと思うが、念のために一つ
  75. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 田村先生御指摘の点はごもっともでございまして、私どもといたしましても、すでに健康保険の赤字が大幅に出ますことが明らかになりましてからこの計画をいたし、いろいろ予算上の数字もはじいたのでございまするので、この点につきましては、私どもなりに十分心配のない計算をいたしたつもりでございます。しかしながらなお今後の変動もございましょうし、御懸念の点はごもっともでございます。ただこの問題につきまして、私どもの従来からの、また現在も持っております考え方も申し上げたいと思いますが、実はこれ以上に給付内容をよくして参りますことは各方面の御要望でもあり、御批判でもございますので、私どもとしては今後内容の改善をいたしますためには、国庫の療養給付に対する負担を、現在一割でございますが、これを増すということに努力をするつもりでございます。またそういたさなければ内容の改善は今後はできないことにもなりますので、見込みが違いまして経済的に破綻をするような万一の場合がございますれば、もちろんかような場合にもただいま申し上げたような線で問題を解決していくべきではないかというふうに考えておる次第でございます。
  76. 田村文吉

    田村文吉君 言いかえると、私はこの法がしかれてわずか一年半ぐらいしかなりませんから実際の数字というものはわからないし、それから利用される方も、あらゆる保険がそうであるように、十分に徹底していないというようなことであったろうという点も考えられる。それで今度いよいよ保険を大いに利用していただくようになったのはけっこうですが、またその給付を広げられるのもけっこうですが、今度それがために保険料を上げなければならぬというようなことになると、先刻私が承わったように、保険料の値上げはできませんぞ、できないとすれば政府がそれを負担する、こういう方向にいかなければならないが、ほかの保険の体制の上からいっても、そういう点については御自信がおありかどうかということを私は念のために伺っておきたい。
  77. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 自信と仰せられますると、なかなかちょっと私としても申し上げにくい点もございまするけれども、もともと実は私どもが当初この日雇い労働者健康保険制度というものを検討をしました際には、所要の給付をやりまするのには、どうしても三分の一程度の国庫負担、三割三分程度の国庫負担が必要であるという計算が出まして、当初はさような予算要求をいたしたりいたしておったのでございます。いろいろな事情から今日ようやく一割の国庫負担が獲得されたばかりでございまするけれども、先ほど来申し上げておりますように、今日かよう改正案を提出はいたしておりまするが、まだまだ健康保険に比較いたしますると、給付の内容はあるものは非常に低く、あるものは全然考えられていないというような御批判を受けておるわけでございます。とれる自信があるかとおっしゃられますと、はなはだどうも約束が済んでおりませんから、さようなことを申し上げる段階ではございませんけれども、今申し上げましたようないきさつからも、私どもとしては国庫負担の増額によりまして内容の改善を今後はかっていくということに全力を尽すつもりでございます。
  78. 吉田法晴

    吉田法晴君 政府原案に対して衆議院で修正がなされて、二カ月に二十八日と、それから六カ月に七十八日のいずれか選択的にする、こういうことに受給要件が緩和されておる。これは六カ月に七十八日という点は緩和だと思いますが、そうすると、六カ月たたなければこれは入れない、こういうことになると思います。そういう意味では緩和が緩和でないことはありませんが、大へん、六カ月という条件がつきますだけに、むしろきつくなっておるということも言い得るのじゃないか。就労日数は御承知のように、これはあるいは政府なりあるいは地方の財政的な事情で、失業者が七十万もありますのにそれを十分働かせることが、就労させることができないような予算であることはこれは間違いないことだ、何日就労するかというのは、日雇い労働者の本人の責任じゃなくて、むしろ政府なり何なりの責任だと思うのです。保険経済の点からある条件をつけなければならぬという主張もわからぬことはございません。それから保険料を徴収いたします場合に、その月の収入というものが保険料の計算の基礎になりますが、一年やってみて黒字が出た、こういう点からいっても就労日数というものが日雇い労働者の責任でないとするならば、その点ももっと考慮されてよかったんではないかと考えるのであります。政府においてその点においての全然考慮はなかったかどうか。それから衆議院において六カ月七十八日ということにせられました理由、私はもう少し緩和し得たのではないか——計算の上からも緩和し得たのではないか、こういうことを考えますが、その点についてどういう工合に考えられますか所見を承わりたい。
  79. 八木一男

    衆議院議員(八木一男君) 吉田委員の衆議院の修正案の点に関する御質問だけ答弁さしていただきます。  まず今申されましたように、策議院におきましては、今まで二カ月二十八日の要件というものが保険給付を受ける条件になっておりましたのを、二カ月二十八日と六カ月の七十八日の二要件を作ったわけでございます。これは衆議院の方で「又は」という言葉を使ってございまして、二カ月二十八日かまたは六カ月に七十八日のいずれか一方の要件を果していれば保険給付が受けられるということになっておりまするので、六カ月になったために逆行したのではないと私ども考えているわけでございます。  その次に、就労日数の件でございますが、これにつきましては、衆議院の修正案が出ました論議の過程におきましては、さらに何と申しますか、もっと下げなければいけないという——七十八日以下に下げなければいけないという議論が相当強かったわけでございます。その理由と申しますのは、全国のこの日雇労働者健康保険法を適用されている被保険者の中には、安定所に働いておられる自由労働者という人々、あるいは土建の労働者といわれる人々がおもなものでございまするが、そのどちらも、また特に自由労働者の方々の場合には、全国平均の就労日数が二十一日と労働省の統計では称せられておりますけれども、地域的に見て、また季節的に見てこのような二十一日の標準をはかるに下回っておりまして、一カ月十三日、十四日くらいの状態にあるところが相当にあるわけでございます。でございますので、発病した直前のときに、その不幸な場所において、また不幸な季節に当った場合には、全部働いて全部保険料を払っても、不幸にして保険給付を受ける要件が達せられないということが起るわけでございます。それも一つの原因でございまして、全国で保険給付を受けるパーセンテージが八六・六%しかないというような状況も起っておりますので、このような善意の被保険者を保護するために、保険給付を受ける要件を全面的に緩和すべきである、こういう議論が多かったわけでございます。緩和の方法としまして、二カ月二十八日のほかに六カ月に幾らかという条件をつけました場合には、平均して直前に就労状態が悪いために病気を見てもらえないという状態ではなしに、平均化しますために、六カ月にするためにそれが救われるかというようなことが一つ。それからもう一つは、病気直前において自分のからだの調子が悪いために、仕事がありながら自発的にやむなく休業する場合がございますので、そういうような直前の悪い状態を六カ月という要件を定めることによって克服し得て、善意の被保険者が幾分でも助かるのではないかというよう考え方、それともう一つは、第一病にかかりまして、医者に休業を命ぜられたために仕事を休む、その次に一月か二月後に第二病を発生した、第一病を大腸カタルで休んだ、第二病では中耳炎を起したという際に、大腸カタルで休んでおるために保険料を納められないために、第二病については要件に達しがたいというような条件がございますので、こういう場合に六カ月の要件を定めることによってその弊害を相当食いとめるという考え方から、六カ月の要件を定めることがよいのではないかという一つ結論に達したわけでございます。それとともに総体的に、ただいま申し上げましたような、就労状態が悪いため総体的にその要件を下げるべきだという考え方、下げる場合には二カ月の要件を下げるよりは、六カ月の要件を下げる方が逆選択を防ぎ得るという建設的な立場で、六カ月の要件の一月当りの平均を下げたいという考え方が多くて、六カ月に六十日の要件にすべきであるという意見が相当に強烈でございます。しかしその間におきまして、予算の関係その他のことも検討いたしまして、衆議院の社会労働委員会におきまして、日本民主党、自由党並びに社会党両派それから小会派クラブ全部が一致いたしまして、現在においては六カ月七十八日にするのが妥当である。しかし将来においてはさらにそれを下げたいという意向から、付帯決議案におきまして、適用範囲の拡大についてさらに至急検討して、受給要件の緩和について適当な措置を講ずべきであるという付帯決議を付して、このような案にまとまった——付することを考え方に入れまして、このような修正案をまとめて、それが満場一致通ったような経過でございます。
  80. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 受給要件の緩和につきましては、ただいま八木先主からお話があった通りでございまして、大体申し上げることは尽きておるのでございますが、なぜもっと緩和をすることを考えないのかという意味でのお話がございました。御参考に、今度の衆議院修正によりまして必要な財源の御説明をいたしておきますが、二カ月二十八日分または六カ月七十八日分という、その後段の方がつけ加わりますために、八六・六%の人が現在の要件では受給できますのが、さらにプラス三・四%だけ受給権者がふえて参りました。その所要経費は平年度にいたしまして七千三百九十万円、本年度八月からといたしまして四千三百万円の経費が必要でございます。かような点から問題は、受給要件の緩和ということは、直ちに保険財政に響いて参りますことは申すまでもないのでございます。  もう一つ御承知おき願いたいと思いますことは、現行の受給要件二カ月二十八日程度の保険料納付というものは失業保険の日雇い労働者に対する支給要件と同じに考えておって、それとつり合いをとったつもりでございます。おそらくこれに手がつくということになりますと、失業保険の問題にも響いて参ることもあると思いますので、それらの点の総合勘案をいたさなければならないと思いまして、ただいまのところではこのような財政事情もございますので、この程度でやっていきたいと思っておる次第であります。
  81. 吉田法晴

    吉田法晴君 お二人から大体説明を受けまして、特に八木さんから、六カ月という選択的な要件を付加することによって、病気が二つあるといった場合に救済云々ということは了承いたします。それから保険局長から六カ月七十八日をつけ加えることによって八六・六%の適用率が九〇%になる。その所要資金が云々というお話がございましたが、今の説明からいたしまして、八木さんの御答弁の中にも、就労日数が平均二十一日ということになっておるけれども、実際には地区によっては十三日、十四日になっておるところもある。そういたしますと、先ほど私が申し上げますように、自分責任によるのではなくて十三日、十四日となっておる。これは二カ月二十八日という点もありますから、これは一カ月にいたしますと十四日、そうすると十三日というものはこれは適用がない、こういうことになるわけであります。六カ月七十八日も下げるべきではないかというふうなお話もございましたが、二カ月二十八日、十三日にいたしますと二十六日と、こういうようになりますが、二カ月二十八日、それから六カ月六十日という点を緩和し得ることはできないか、この点を保険局長一つお尋ねをいたしたいと思います。
  82. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 緩和をすべきかどうかということにつきましては、ただいま申し上げた通りでございまするが、衆議院の論議の際にも、ただまい吉田委員から御指摘のような就労日数につきましていろいろと具体的なお話があったのでございます。私どもといたしましては日雇い労働者の就労状況につきましては労働省の資料に基きまして仕事をいたしておるわけでございますが、しかしながら健康保険制度という特殊ないろいろな事情もございまするので、実は本年度すでに予算の計上も若干いたしておりまして、もう少し具体的な細部の事情を調査いたす予定にいたしております。そういうことによりまして、もともと根本的には受給要件をいたずらにきつくすることによって、せっかく病気になっても医者にかかる機会を与えられることが少いということでは、これは健康保険制度としては自殺でございますので、そういう結果になることを私どもはあえてがんばるつもりはございません。ほかの方法を講じても、こういう制度があります以上、大多数の人が受給要件を満たして受給できるようにいたすべきであるとは考えておりますが、それにいたしましても、若干本年の暫定予算の時期におきまして就労状況の悪かった地域なりあるいは日雇い労働者があるようでございますが、これらは臨時的、季節的な変動であると労働省の方で言っております。この点はもう少し長い目をもちまして、季節的な変動等も調査の中に加えまして、そうした上で今後の検討をさしていただきたいというのが私ども態度でございます。
  83. 吉田法晴

    吉田法晴君 それではその点については衆議院の決議もございますが、研究をしたい。それから来年度から実施されることを、改善されることを希望いたします。  次の問題に移りますが、この一般の健康保険に比べまして日雇い健康保険の場合に傷病手当金等、なかんずく傷病手当金が入っておらぬということは、日雇い健康保険のこれは致命的欠陥と言われておる。今度の改正もございますが、これは日雇い労働者の場合について何が一番大事であるか、こういう点を考慮せられた上で改正考えられたと思うのでございますが、改正を見ますというと、必ずしも最急務なる点に重点を置いて改正を行われておるというようには私どもまあ考えられぬので、最初三三%の国庫負担を要望をして日雇労働者健康保険法考えたというお話は先ほどございましたが、傷病手当金等日雇い健康保険の致命的な欠陥について、今後どのように改善をする御意図でありまするか、その点を一つ承わりたい。
  84. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 各方面から御批判をいただいておりまするように、ただいままたお話通り、他の健康保険制度にございます傷病手当金が日雇労働者健康康険法に今日なお欠けておるのでございます。この案にも入っておらないのでございますが、この問題は実はもっぱら財源に関係をいたすのでございまして、御参考に簡単な数字を申し上げますと、傷病手当金を三日の待ち期間を置いて三十日だけ支給をするということにいたしまして、平年度所要額が七億七千五百万円必要でございます。これに対しまして今回の改正に載っております歯科補てつは平年度にいたしまして一億八千万円、それからその他の現金給付のうち埋葬料、分べん費には、ごくわずか三千八百万円程度でございまするので、二億一千万円ぐらいで現在の——大へん失礼いたしました。先ほど申したのは期間延長分でございましたが、期間延長分が七億七千五百万円、傷病手当金はこれらを全部合せたものに匹敵するくらいの金が必要でございます。先ほどの数字を訂正させていただきますが、七億九千五百万円、約八億円の財源が必要でございます。いろいろなにをとるべきかということで検討いたしたのでございますが、六カ月で打ち切るべきものを一年に延ばした、こういう今度御提案を申し上げておるよう改正をする方が一般的には適当でないか、傷病手当金の問題につきましては必要だとは思いますけれども、これは将来国庫負担の増額というよう方法によってこの方向に進むべきものであるという考え方で進んでおるわけでございます。
  85. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうしますと傷病手当金と、まあそのほかにも育児手当等についても、日雇いの場合に子供をかかえて実際に働いておるといったような実態もございますし、その必要は考えておられると思うのでありますが、とにかくまあこの金の少いところで手当の種類をふやそうと、こういう何といいますか、便宜主義でやっておると、こういうお話ように聞くのでありますが、そうしますと、その傷病手当金の総額が八億近いということでございますが、国庫負担額の総額と関連をして給付の増加について考慮せられ、あるいは来年度になりますか、いつになりますか、政府としては、あるいは厚生省としては、国庫負担の増額とそれから傷病手当金等の給付の増加について考えておる、あるいは努力するつもりだと、こういうことなのでございましょうか。これを厚生省の方針にも関連すると思いますので、厚生政務次官から一つ
  86. 紅露みつ

    政府委員紅露みつ君) ただいま御指摘の点で、ございますが、これらは出発の当時から問題にしておるところでございますので、何分まだ実施いたしましてから一年くらいなことでございますので、これはもう改善して参るつもりは十分ございます。御趣旨に沿って今後できるだけ改善していく、かよう考えます。
  87. 吉田法晴

    吉田法晴君 もう一つ最後に、それでは適用の範囲の問題でありますが、先ほど八木さんから日雇い労働者なりあるいは自由労働者が主として適用されておると、こういうお話でございますが、あるいは一般の健康保険——任意保険と申しますか、のように、あるいはそれについて認可を必要とするかもしれませんけれども、同様な事情にあります労働者について何らかの方法によって、この日雇い健康保険を同様の労働者に適用する、山林等の労働者にそれがそういう方法でやるがいいかどうかということは私にわかにわかりませんけれども、いずれにいたしましても、そういう適用の拡大をすべき労働者があることは間違いないと思うのでありますが、そういう点についてどのよう考えておられるか伺いたいと思います。
  88. 久下勝次

    政府委員(久下勝次君) 適用範囲の拡張の問題につきましては、二つの面から問題を考えていくべきものと考えております。一面におきましては、御案内の通り現行の制度は健康保険の適用事業所に働いております日雇い労働者あるいは臨時の職員、こういう者を対象にして、一つの事業所におきましては結局常用の者もあるいは臨時的日雇いの者も、何らか日雇い健康保険なり健康康保険なりの適用を受けるという形にすることが適当であるという考え方で出発いたし、現行法でやっておるのでございます。そういたしますと、その点は広げるということになりますと、健康保険制度とのつり合いも考えていかなければならないと思うのでございます。この点は一面において一つ御了承願いたいと思います。  なお具体的にお示しのございました山林労働者等についての適用の拡張につきましては、これは現在一部の日雇い労働者につきましては、労働基準法でございますか、労働省の方でやっておりまするのと同じように、労働組合を一つの事業主と擬制いたしまして、実際上適用をいたしておるものもあるわけでございます。山林労働者の中にはさような形においてやり得る可能性のあるものもあるのではないかというふうに私ども中で聞いてはおります。しかしながら、現地の者はまだ自信のあるようなことを言って参りませんものですから、そのままになっておりますが、その辺のところは今申し上げましたような実際の運用の面におきまして解決し得る面もあるのではないかと思いますから、もしそういうことで解決し得る面につきましては、十分努力もいたすつもりでございます。かような立場で、適用範囲の拡張につきましては、具体的な問題で解決し得る問題、制度的にいろいろ検討しなければならない問題というようなふうに考えておる次第でございます。
  89. 小林英三

    委員長小林英三君) これにて質疑は尽きたものとみなして御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  90. 小林英三

    委員長小林英三君) 御異議がないものと認めます。それではこれより討論に入ります。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  91. 小林英三

    委員長小林英三君) 速記を始めて。  御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  92. 吉田法晴

    吉田法晴君 私は、日雇い健康保険の一年間の実施にかんがみまして、政府提案をもってここに改正案が提出され、衆議院において受給条件に関連をして修正をして送られて参り、私ども慎重審議をしたのでございますが、なお日雇い労働者の実情にかんがみまして、法の目的といたします休業の場合、あるいは療養の場合その他十分な法の目的を達し得ない実情にする点が明らかになって参り、ただし、政府提案にいたしましても、衆議院提案にいたしましても、最初の施行案に比べまして一歩前進であることは間違いございませんけれども、なお従来の社会保障制度審議会、あるいは社会保険審議会の経緯にかんがみましても、あるいは今後予想せられます答申にかんがみましても、次の点について改善をすべき点があると認めるのであります。それは療養の給付並びに家族療養費の支給期間を延長すること、第二は、保険給付の中に傷病手当金、出産手当金、保育手当金、配偶者保育手当金を加えるべきであるという点、第三に、保険給付の受給条件を緩和すべきであるという点、さらに適用範囲の拡大について考慮をしなければならぬという点、さらに国庫負担を増額をいたしまして、そうして法の目的としました日雇い健康保険のほんとうの使命を果す、特に傷病手当金等保険給付の万全を期する必要があると考えるのであります。質疑を通じて、政府においても研究をし、立案をし、なるたけすみやかなる機会において改善をしたいという答弁がございましたけれども、これらの点については、当委員会といたしましても、委員といたしましても、その点について強く要望をして、この政府提案衆議院送付の案に賛成をする次第でございます。
  93. 小林英三

    委員長小林英三君) これにて討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 小林英三

    委員長小林英三君) 御異議ないものと認めます。それでは日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案の採決をいたします。本案を原案通り可決することに賛成の諸君の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  95. 小林英三

    委員長小林英三君) 全会一致と認めます。よって本案は全会一致をもちまして原案通り可決いたすべきものと決定いたしました。  なお本会議におきまする口頭報告の内容、議長に提出する報告書の作成その他につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  96. 小林英三

    委員長小林英三君) 御異議ないものと認めます。  それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とせられる諸君の順次御署名を願います。   多数意見者署名     加藤 武徳  高野 一夫     阿具根 登  山本 經勝     森田 義衛  長谷部ひろ     吉田 法晴  榊原  亨     寺本 広作  竹中 勝男     田村 文吉  相馬 助治     有馬 英二  谷口弥三郎     山下 義信     —————————————
  97. 小林英三

    委員長小林英三君) 次に、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案議題といたします。御質疑を願います。
  98. 田村文吉

    田村文吉君 この間ちょっとお尋ねしたのですが、やはり労働省関係法律で、日歩八銭というのがございましたね、あれは六銭にお直しになるようなことで、今度の法律で直っておりますか。
  99. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) 日歩八銭が六銭に変りますことにつきましては、すでにある法律につきましては国税徴収法の一部改正法案の付則におきまして、関係法律の修正が全部今国会においてなされたのでございます。ですから労災保険法につきましても八銭とあるのは国税徴収法の一部改正法案の付則において今国会においてすでに可決になりまして、昨日申し上げたような結果にすでになっております。
  100. 田村文吉

    田村文吉君 今度の法律は八銭になっていますか、六銭になっているのじゃないのですか。
  101. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) この労災保険法の直接の改正でなく、八銭を六銭に直す関係法律がほかにたくさんございますので、国税徴収法の改正案の付則でずらりとすでに改正になっております。
  102. 田村文吉

    田村文吉君 これはほかの法律にもあるのですが、追徴金の一割追徴、延滞ですか、この一体原理はどこから来たのですか。
  103. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) これはつまり納むべきものを納めないということに対する懲罰的な意味で、いささか高い追徴金を徴収することになっておりますが、今回の労災保険法の改正におきまして、いささか過酷にわたると考えまして、今度の改正案におきましては労災保険の概算保険料につきましてはその追徴金を取ることをやめまして、確定保険料につきまして、なおかつ追徴金を納めないという場合にのみ追徴金を取るというふうに、従来相当過酷だったものをうんと緩和する改正案をただいま御提示申し上げておる、こういう建前でございます。
  104. 田村文吉

    田村文吉君 私の伺いたいのは、一体この一割というのはどこから出したのですか。どういう基礎によってこういう数字が——まだほかの法律にもありますよ、一体延滞金の一割というのはどういう根拠で出したものですか。
  105. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) 別段数学的根拠なく、経済罰的意味で一割程度、それで従来は四月早々に納める一年間の見込み額についてまで一割かけておったのはどうも過酷だというので、年四期、三期に納付して最後の確定保険料のぎりぎりのときになおかつ納めないという場合に追徴金をかけるというふうに限定いたしましたので、まあ相当緩和されたというふうに私ども考えておる一わけでございます。
  106. 小林英三

    委員長小林英三君) 他に御質疑はないようでございますから、質疑は尽きたものとみなして御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 小林英三

    委員長小林英三君) 御異議がないものと認めます。  それではこれより討論に入ります。——討論を省略して直ちに採決することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 小林英三

    委員長小林英三君) 御異議はないものと認めます。それでは労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案の採決をいたします。本案を原案通り可決することに賛成の諸君の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  109. 小林英三

    委員長小林英三君) 全会一致と認めます。よって本案は全会一致をもちまして原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお本会議におきます口頭報告の内容、議長に提出する報告書の作成その他の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  110. 小林英三

    委員長小林英三君) 御異議ないものと認めます。  それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とせられる諸君は順次御署名をお願いいたします。   多数意見君署名     高野 一夫  吉田 法晴     阿具根 登  山本 經勝     森田 義衛  長谷川ひろ     寺本 広作  榊原  亨     田村 文吉  相馬 助治     竹中 勝男  有馬 英二     加藤 武徳  谷口弥三郎
  111. 小林英三

    委員長小林英三君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  112. 小林英三

    委員長小林英三君) 速記を始めて。  次に、失業保険法の一部を改正する法律案議題といたします。御質疑を願います。
  113. 田村文吉

    田村文吉君 大臣に伺いたいのですが、第三章の二の福祉施設というのですね、これは一体どんなことを考えておられるのですか。
  114. 江下孝

    政府委員(江下孝君) お答え申し上げます。この福祉施設は、実は今度のこの改正によりまして新たに根拠規定を置いたのでございますが、従来からすでに過去二年実施してきております。その実施の内容といたしましては、昭和二十八、年度におきまして一億四千万円の予算によりまして総合の職業補導所九カ所と、それから身体障害者の補導所に付属いたしました共同作業所を六カ所、それから日雇い労働者の簡易福祉施設四カ所、これだけを二十八年度に設置いたしまして、二十九年度におきましては三億八千万円の予算をもちまして総合補導所といたしまして九カ所、簡易福祉施設といたしまして三カ所を設置いたしております。三十年度におきましてはさらに五億五千万円の予算をもちまして主といたしまして現在ございます総合補導所の内容の充実、あるいは福祉施設というものに重点を置いて実施をいたしたいというふうに考えております。
  115. 田村文吉

    田村文吉君 それは在来おやりになっていらっしゃるのですが、今度は新たに根拠法を作るというのですか。
  116. 江下孝

    政府委員(江下孝君) 実はこの失業保険福祉施設を作るという根拠規定が今まで失業保険法の中になかった。しかしながら、失業保険の特別会計法の中に失業保険施設という言葉が実はございます。で、その規定だけで一応やっておったのでございますが、どうも根拠法が本法にないというのはおかしいじゃないかということで、今回新たに規定を置いたというのが実際でございます。
  117. 高野一夫

    高野一夫君 政府委員に伺いますが、現在被保険者に当然なるべきものが除外されておるのが教育とか農林水産とかあるようでありますが、この点についてもう少し詳しく何か御説明を願ってみたいと思います。
  118. 江下孝

    政府委員(江下孝君) 今回の改正によりまして、従来除外されておりました「病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業」、それと「社会事業、司法保護事業その他営利を目的としない事業」、この二つを新たに強制適用にしたわけでございます。先生も御承知の通りこの失業保険法が出発いたしました当初におきましては、この除外例がもっと非常に幅が広くて、たとえば土木建築の事業等も除外いたしておったのでございます。しかしながら、逐次この失業保険法の実施が軌道に乗って参りますとともに、できるだけ適用範囲を拡大してゆくという方針のもとに、今申し上げました土木建築事業等の事業につきましては、前回の改正によりましてこれを強制適用にいたしたのでございます。今回実はこのイからホまでの除外につきまして、さらに強制適用の方法はないかということで検討いたしました結果、先ほど申し上げました二つの事業につきまして強制適用の範囲を広げたわけでございます。数字的に申し上げますと、この適用事業の拡張によりましてふえます被保険者の数が約十万という計算でございます。この内訳を申しますと、保健衛生事業におきまして七万三千、社会事業におきまして一万四千、非営利団体におきまして一万六千、その他入れまして合計約十万という数字になるわけでございます。新たに入れましたのは、今申し上げましたように失業保険制度の本来の趣旨に沿ってできるだけ広範囲に適用範囲を拡大いたすことによって社会保障、失業保険制度の完璧な運用を期したいという趣旨で強制適用にいたしたものでございます。
  119. 高野一夫

    高野一夫君 これで農林水産業なんかは、第六条の二号ですかによって法人である場合にはこの中に入るわけですか。
  120. 江下孝

    政府委員(江下孝君) 法人で五人以上の者を使用する場合に入るわけでございます。
  121. 田村文吉

    田村文吉君 法人でないものを除外してある、これは今度関係ないわけでありますが、審議の都合があるので伺いたいのでありますが、法人でないものでここで農林水産業、教育等について除外したのはどういう意味ですか。
  122. 江下孝

    政府委員(江下孝君) 農林水産業を除外いたしておりますのは、これはこれらの事業が一般産業の労働者に比べまして景気的な変動の影響を受けることが少いということが一つの大きな理由に相なっておるのでございます。現実の問題といたしましても、はっきり農林水産業から他に転向するというような場合は非常にまれでございます。さらに労働関係を見ましても、これらの事業におきましては、家族もしくは近親者による共同労働の形態が非常に多いのでございまして、そういう意味におきまして現実には雇用、離職、失業の関係が不明確であるということもございます。そういう点からいたしまして、これにつきましては今回も強制適用から除外いたしておるのでございます。
  123. 高野一夫

    高野一夫君 個人が五人以上の使用者を使いまして農場を経営しておる、その農場の一部分に農産加工の工場を持っておるというような場合には、これは単なる耕作者ということじゃなくして、いわゆる工場における事業の労働者である場合が多いわけであります。これは同時に水産においてもそういうことがあり得るわけでございますが、そういうような加工工場、その水産に付属した加工工場あるいは農場に付属した加工工場、これに働いておる者も同様にこれは除外されるわけですか。
  124. 江下孝

    政府委員(江下孝君) 農林水産の生産品の加工に従事いたします者につきましては、従来の解釈といたしましては、これは強制適用ということで現在も処置いたしております。
  125. 相馬助治

    ○相馬助治君 この今議題となっておる失業保険法改正案を見ますと、非常に同感の面も多いのです。ところがやはり二、三納得のいかぬ面があるわけです。そこで総括的に私はこれを実際に扱っている局長にお尋ねするのですが、この改正案を発表してから後、各種労働組合からこの改正案に対する反対、あるいはこの部面はこうしてもらいたいというふうな職場の声ともいうべき陳情等を局長自身は受けておりますか。
  126. 江下孝

    政府委員(江下孝君) 私の承知いたしますところでは、確かに一つだけあったような記憶がございます。そのほかにおきましては直接の陳情は何らございません。
  127. 相馬助治

    ○相馬助治君 実は私もこの失業保険法だけは早急に改正されなければならないということを考えていたものの一人です。特にこの季節的労働者の失業保険給付という問題は、現実的に私の生まれた村なんかにおいても、まことにこっけいきわまりない、どうしてこういうばかなことが法律でなされているんだというようなことを言われた事例も私は知っております。それからもう一つは、私の知り合いの娘が職を引いて家におりますが、どうなっているんだと言ったら、私これでも月給取りよというわけです。何だと言ったら、ちょうど失業保険がもらわれる期間だけ結婚の日から前にそこでやめたんだと、こういう説明なんです。ですから私はこれも納得のいかない話だと思っていたわけです。そこで私は失業保険法のほんとうの精神は、妻子をかかえて生活の主体者である者が、本人の意思によらずして失業した場合において、これが国の力によってあるいは相互扶助の精神によって守られるというこの精神があくまで貫かれなければならないと、こういうふうに考えておるわけです。今度の改正法案で、今私が申した趣旨はどの点に強く打ち出されておるのですか、局長
  128. 江下孝

    政府委員(江下孝君) 端的にお答えさしていただきたいと思うのですが、その点につきましては、この改正案の第十条と第二十条の二、これによりましてこの点が表現されておると思うのであります。で、この趣旨は大臣からもお話いたしたと思いますが、失業保険につきましては、実は過去実施以来八年間相当失業対策として寄与したということは私どもも承知いたしておるのであります。保険経済もまあ非常に好調でございますから、過去二回にわたりまして保険料の値下げを行なったことは御承知の通りであります。ところが最近におきまして、二十九年度におきまして初めて約十億の赤字を生じたのでございます。で、この赤字が実は出ました原因でございますが、もちろんこの一般情勢が悪くなったということもございまするけれども、しさいに検討いたしますと、今先生のおっしゃるような失業保険の本来の趣旨の乱用とも言うべきものが非常に多いという事実を私どもは見たのであります。で、御存じの通り失業保険法趣旨は、これは不意の失業、思わざる失業に対してごく短期の生活の安定を立てしめるというのが目的でございます。しかるところこの法律趣旨が、六カ月だけ被保険者であれば、あとたれもかれも百八十日を支給をするという建前に相なっております関係上、これらの保険の本来の趣旨が、最近におきましては没却されまして、もっぱらこの六カ月働いて六カ月もらう。あるいは毎年繰り返してこの失業保険金を支給を受ける。で、失業保険のほんとうの、この真の目的に沿った運営という点から考えますればいかがかと思われるような点がたくさん出て参ったのでございます。これを数字で申し上げますと、二十九年度におきまして失業保険の給付を受けました人数は百五万人でございます。ところがこのうち六カ月から九カ月の被保険者期間しか有しない者が全体のうちの二七・七%、受給人員にいたしまして二十九万一千人という大きな数字に上っておるのでございます。で、この内容を検討いたしますと、これは主といたしまして東北地方でございますが、出かせぎ労務者というものがこの中の相当大きな部分を占めておる、そのほか都市等におきまするいわゆる循環雇用あるいは計画雇用と申しますか、計画的な失業保険の利用というものも、私どもの調査によりますと相当ある。これらが合せましてこの二十九万の中に約二十二万余あるというふうに計算をされるのでございます。そういたしますと、失業保険のほんとうの必要なものに対する保険金が支給されない、そういう人たちに支給されるために保険経済が危くなるということがある、そのために保険料の値上げまでしなければならぬという事態も起りまするので、これはどうしてもこの際におきまして失業保険法について、もう少し合理的な受給についての基礎を与える、で、ある程度長期間この失業保険というものが収支相償う状態に持っていく必要があるということで考えましたのが今回の改正案でございます。そこで今おっしゃいました点でございますが、この二十条の二でございますが、「離職の日まで引き続き五年以上同一事業主に被保険者として雇用された者には、前条第一項の規定にかかわらず、」通算して百八十日を超えて支給することができる。しかし「超えて」というその超えた限界は三十日を超えてはならない。つまり合計いたしまして二百十日を超えてはならない、かようにいたしておるのでございます。さらに離職の日まで引き続き同一事業主に被保険者として雇用された期間が一年未満でありまして、離職の日まで十年以上の被保険者期間を持ちましたものに対しましては、通算して百八十日にプラス九十日のこのプレミアムと申しますか、さらにプラスの給付を与える、こういうふうに今回では考えたのでございます。この趣旨は、申し上げましたように比較的長期間雇用されたという者は、相当他に転職等も困難な場合が多く、また保険経済等にも寄与もいたしておりまするし、これらの人に対してできるだけ手厚い措置をしたいというのがねらいでございます。これに反しまして受給被保険者期間が六カ月から九カ月というごく短期のものにつきましては、先ほど申し上げましたよう趣旨によりまして、できるだけこの乱用を防ぐということから、九十日というふうに従来の給付日数を半減いたしたのであります。実は毎年繰り返して一定の保険金をもらうということ、しかもこれが計画的に行われることを防ぎますためには、被保険者期間を一年ということにすることも、これは一つ方法であると私ども考えたのでございますが、外国の立法例等を見ましても、六カ月だけで百八十日を出すというような非常に甘い規定につきましては、イギリスほかごく少数の国でございまして、一年というのが相当多いのでございます。さらに六カ月以上のものに支給いたします場合においても、給付期間を非常に制限しておるという例もあるのでございます。  そこで以上申し上げましたような、一方におきまして乱用を防ぎ、さらに合理的な基礎を与えるということから、今回この九十日ということを考えたのでございます。一年ということにいたしますることが筋は通るかもしれませんが、とにかく現在まで半年働けば百八十日出すという建前で運用されて参っておりまするので、これを急激な変化を与えるということは、今の雇用秩序に混乱を来たすというおそれもございます。そこで今回の改正におきましては、その中をとりまして、九十日ということにいたし、幾らかでもこれによりまして乱用が防止されるという点をねらったのでございます。
  129. 吉田法晴

    吉田法晴君 関連。安定局長から人数等についてはお話がございましたが、その点を金額で一つお示しを願いたいと思います。保険経済云々ということでございますから、金額を一つお示しを願いたい。
  130. 江下孝

    政府委員(江下孝君) 今回の措置によりまして、給付日数の延長を行いますことによって給付金がふえますのが二億六千八百万円、これは本年度九月施行ということで一応考えまして、こういうことでございます。それから給付日数の短縮によりまして減額されますものが十三億七千四百万円、こういう数字に相なるのでございます。
  131. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 関連。半年短期の受給者が二七%あるというのを乱用というように直ちに解釈されるということについては、私どもは非常に疑義を持っておるのですが、これは社会保障審議会でも私は相当この点は論じたわけですが、日本の現在の経済機構からすると、長期の常用雇用というものは非常に減っております。そうして臨時的な短期の雇用関係というものがむしろ一般になりつつあるというのが現状であります。ことに、現在の企業合理化という線からすると、すでに綿紡にしても二割、あるいは駐留軍関係仕事もことしは五万くらいの整理が行われる、あるいは炭鉱の合理化、相当大量の失業者が出て来るということは、すでに常用雇用量が減っておるということにほかならない。そうすると、日本の雇用関係というものは、むしろ短期で、そうして臨時的な性質を持っておる。あるいは季節的という言葉も使ってありますが、そういうものがほとんどこれは今日の雇用関係においてむしろ一般的な形をとりつつあるのですからして、むしろ六カ月の雇用というものは、これは決して乱用というわけでなくて、これが実は常態、ノーマルな状態になっておるというふうに私は考えるのですが、この点について乱用ということの数字がありますか。
  132. 江下孝

    政府委員(江下孝君) 失業保険の建前でございますが、これは被保険者にできるだけ平等にこの利益を与えるということは、やはり考えなくてはならぬと思うのでございます。一部の被保険者につきまして、先ほど申し上げましたように、毎年繰り返して失業保険をもらうという状態を継続いたさせますれば、他の長期の雇用の被保険者に対しまして相当影響があるわけでございます。もちろん私どももこの三十万近い短期被保険者の中には先生のおっしゃるようなものも相当あるということは承知をいたしておるのでございますが、失業保険のみをもっていたしましてこの雇用対策と申しますか、失業対策を全部をカバーするということはなかなか困難な事情にあると思います。従いまして、今後におきましては、それら非常に気の毒な人に対しましては、職場を与えてこれらの人の生活を見てやるというふうに考えてゆきたいと思うのであります。
  133. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 もう一つ関連。これはゆっくり私は保険経済というものの根本から考えてゆきたい。あらためて御質問したいと思うのですが、長期の雇用関係にある者については割に優遇するという考え方ですね。長期に就業しておった者が離職しても新たな就職がはずかしいだろうという考え方は、私は逆だと思うのです。長期にたとえば十年雇用されているような者は、失業をしてもまた雇用機会がある。ところが、六カ月くらいで失業する人は、これは産業機構からの失業なのであって、これはまたさらに就職してまた六カ月くらいで失業するというのが今日の状態なんですから、十年以上も就職している者は就業の機会が少いだろうという考え方は、私はちょっと承服ができない。  それから保険経済に貢献しているからそれは優遇するという考え方も、これは保険経済の性質の上から、保険というものはそういう性質のものじゃない。掛金の利益を自分がまた返してもらうということは保険の経済の保険制度の本質じゃないと私は考えております。その二点を。
  134. 江下孝

    政府委員(江下孝君) 御趣旨の点でございますが、私どもといたしましては、かりに一人の人が短期間の被保険者期間をもって絶えずそれを繰り返してゆく、こういうことは、その本人のもちろんためにもならないことであります。そういう形でなくて、私どもとしましては、できるだけこれらの人がそういう保険という安逸なものによらないで働けるような形に持ってゆくというふうに考えなくてはならぬじゃないかと思っております。仰せのごとく、確かに今失業情勢が非常に険悪でございまして、なかなか配置転換その他というものを実施いたしましても困難な面はございます。しかし、御承知の通り、まあことしも相当失業対策の予算を増額いたしましてできるだけ雇用の増加をはかるということで考えておりまするので、そういう方向でこれらの人に対しては対処いたしたいというふうに考えておるのであります。  なお、長期間の被保険者について離職した場合、就職が必ずしも困難にならない、反対だというお話でございましたが、私どもの調べましたところでは、やはり長期間同じ仕事に働いたという人は相当他への配置転換がむずかしいというように私どもは承知をいたしておるのであります。  なお、保険経済に寄与したからどうというお話でございましたが、これは結局冒頭に申し上げましたように、失業保険というものは、先生の御承知の通り、これは短期の生活保障、つまり思わざる不慮の失業に対する短期の生活保障というのが建前になっておる。その見地から考えますときには、この点について多少のニュアンスを持たせるということはやむを得ない処置ではないかというふうに考えております。
  135. 相馬助治

    ○相馬助治君 私は冒頭に、この失業保険法改正案というものは、現在必要で、しかも早急にやらなければならない改正の内容を含んでいるから、その精神はわかると、かような前提に立って質問をしたのです。しかし、この改正法案を賛成だと私言っていない。こういう気持はわかる。そこで私は質問いたしたところが、局長は喜んで、かようなわけですと効能書きを述べた。しかし、私が問題にしているのは、その次に吉田委員が関連して述べた点であるのです。こんなりっぱな改正法案を出したのに労働組合は反対をしておる。私は最初その反対の理由がわからなかった。それで私は文字通りこの法律案を読んで、なぜ労働者諸君が反対するのだろうと思ったが、私はやはり結論的に素朴な労働者の理屈抜きのこの感覚というものの鋭敏さに打たれておる。というのは、今吉田委員の関連質問で、並びに竹中委員の関連質問ではっきりわかったことは、ともかくこの改正案によって本年だけでも十億もうかるというわけです。もうかるというと言葉はおかしいけれども政府出資、政府から出す金が少くなる。そこに問題の第一点がある。  第二点は、竹中委員質問したことに答えられているのは、これで救い得ないところは雇用量を増大して就職させてそこで救う。これはいかに絵にかいたもちであるかということは何人もわかっておるので、おそらく局長自身がよくおわかりだと思うのです。そこで私はこの法律については、やはり逐条的に徹底的にお伺いし、そうして私どもはこの法律にはぜひとも進んで講じてもらわなければならない内容を含んでおりますので、この法律案が成立することには私はいささかも反対しようとするものではないのであって、ただ現実の問題としては、この改正法律案は現在の気の毒な状態にある労働者に福音をもたらすものではないという点に問題が存するので、私は逐条についてもう少し勉強してきてお伺いするつもりですから、本日は、私自身はあとたくさん質問がありますということだけ申し上げて、この辺で打ち切っておきます。
  136. 吉田法晴

    吉田法晴君 さきほど九月実施によって、給付日数の延長によって二億六千八百万円、短縮によってもうかるといいますか、減るのが十三億七千五百万円ですか、そういう数字があげられましたが、そうしますと平年度におきましてどういうことになりますか、もう少し親切に御答弁願いたい。
  137. 江下孝

    政府委員(江下孝君) 平年度におきましては、この給付日数の延長によります増加が十三億二千二百万円、給付日数の短縮によります減が二十三億五千六百万円、一応のこれは推定でございますが、そういうような計算をいたしておるのであります。   〔委員長退席、理事加藤武徳君着席〕
  138. 吉田法晴

    吉田法晴君 そういたしますと、平年度において年間を通じて、先ほどの相馬委員言葉をもってしまするならば、失業保険全体といたしまして十億こす金がもうかる、どうしてそういう法案を作ったのですか。
  139. 江下孝

    政府委員(江下孝君) 先ほどこれは相馬先生の御質問に対してお答えしたのでございますが、先ほど申し上げましたこの給付日数の短かい、この被保険者期間の短かい者約三十万のうち、はっきり季節労働者らしいとつかめますものが十五万あるわけでございます。この法律をごらんになりますと、この第十条の二号でございます。この十条の第二号の中に「季節的に雇用される者」というのはこれは法律から除外をされておるのでございます。すなわち「季節的に雇用される者」というのは、これはごく短期のものもあるし、短期なものでなくても毎年繰り返すという性質のものであるから、これは適用を除外するということに相なっておるのでございます。で、これらの人たちに対しましてそれではなぜ今まで保険を支給したかという点でございますが、これは現実説明をさしていただきますと、季節的に雇用されるものであるかどうかということは、この法律制定の当初におきましてはある程度明確につかめたのでございますが、最近におきましては、北海道の出かせぎ等に行きます季節的な労働者と申しましても、これが季節的であるかどうかという点についてはいろいろこれは問題がございます。たとえば今から北海道に働きに行くといった場合に、この人はその当初において季節的な労働者であるかどうかということを把握することはできないのでございます。結局六カ月たってまた国に帰ってくるということで初めて季節的という点が判明するわけであります。あるいは雪が降るという予定のもとに半年行っておったものが、これが雪が降らなかったので一年働いたという場合には、これは季節的ではなくなる。そのほか職場の移動等もございますし、現実には季節的に業務というものがまことに困難になってきたのであります。   〔理事加藤武徳君退席、委員長着席〕 それとあわせまして、先ほど来申し上げておりますように、計画的な失業保険の循環利用というものが最近一般的になりつつあるというのが、これが実際でございます。そこでこれらの点をあわせ考えまして、今回の改正におきましては、特に九十日だけは政府でこれを認めるということでございます。そこで実績から申しますと確かに悪くなるじゃないかと言われますけれども、本来の法の建前からいいますと、必ずしもマイナスには私どもはならないというふうに考えているのであります。
  140. 吉田法晴

    吉田法晴君 北海道の出かせぎは季節労働者であるかどうかもはっきりせぬ部分がある。それから十五万人の季節労働者があるということは、最初はわかっておった、最近の実態はわからぬ、そういうわからぬものを基礎にして案を立てるということはこれは軽率でなければ悪意というほかない。それは今年の計算において十億、これは来年度になって年間を通じてもやっぱり十億、この辺もわかりませんが、私先ほど尋ねておったのは、そういう今までから考えてみてプラス、マイナス少くとも今年についてもそうだが、十億ももうかるような保険の改悪をなぜ考えるか。保険経済、保険経済というけれども、それは保険経済でもうけるということを考える必要はない。それにどうしてそういうことを考えたかということです。  それからもう一つあわせて、そうしますと保険経済全体としての失業保険、従来長い間保険の給付が少くて保険の積み立てといいますか、保険の全体の金は黒字を続けてきた、こういうお話でございますが、これは資料の中に出ておるかどうかわかりませんが、保険の実績を一つお示しを願いたい。
  141. 江下孝

    政府委員(江下孝君) お答え申し上げます。少し私の言葉があいまいでございましたので、そういう誤解を受けられたかと思いますが、この季節的に雇用される者というものにつきましては、結果的にしか判定ができないということで、現実にはこれらの大部分の者に適用せざるを得なかったというのでございます。もしこれらのものを放置いたしましておきますならば、季節的に雇用される者は、二十八年度は八万五千程度であったものが、二十九年度は一躍十三万を突破する数字に相なっております。このままいたしておきますと、われもわれもということで皆短期間の被保険者になって参るという実情があるのでございます。今申し上げましたような点もございますし、さらに都市方面等におきましては、短期の人が計画的に失業保険を利用するという面が最近非常に多くなって参っております。で、これを放置いたしておきますと、ほとんどこれが全国的な傾向に相なりまするし、昨年度におきましては十億の赤字で済んだのでございますけれども、おそらく本年度におきましては相当額の赤字になるという予想が出ておるのでございます。そういたしますると、結局そういう比較的安易な方法で失業保険を利用する人のためにむしろ料率の値上げというようなことで一般の善意の人に私は相当負担をかけなきやならぬということにも相なりまするので、この点については、この改正案通り措置することが適当であると考えておるのであります。  なお従来黒字であったということでございますが、確かにさようでございまして、現在までのところ約二百五十億の積立金がございます。これは昨年は赤字になりましたので、この積立金から相当おろしたのでございますが、現在におきまして約二百五十億の積立金がございます。
  142. 吉田法晴

    吉田法晴君 昨年来季節的な雇用の労働者がふえて、そして昨年については赤字が出た。ところが、それは季節的な労務者の部分だけではなかろうと思う。これはデフレ政策と申しますか、失業者が多数に出たという結果でもございましょう。それが計算の上から、失業者がこれだけ出たから、その増加分がこれだけ、季節労務者なら季節労務者の増加の分についこれだけ、こういうことはおそらくあるだろうと思う。で、去年ふえたからこういう工合に抑えるのだと、こう言われるものは、これからほうっておけばふえると言われますが、法の改正によってこれで押えるというと、今年は二億幾ら、来年度は十三億ぐらい、これで短縮することによって、はるかにそれをカバーする、十億もこす、いわば保険経済の点から言うならば、プラスだからもうけると言うのですが、もうけるという数字が出ておることは間違いない。それならばその委節労務者のある云々ということによって改正をしようという点でも合理的じゃないじゃないか。もうけるという結果になっているじゃないかということを申し上げておる。そこで、保険の今までの積み立てが二百五十億という話がございましたが、もっと保険の推移を、昨年なら昨年の二百五十億ということでなくて、一つ資料をお示し願いたい。それは、手元に刷ってお渡し願わなければわからぬ。
  143. 江下孝

    政府委員(江下孝君) これは手元に差し上げてあると思いますが、失業保険事業月報というのがございます。この中にずっと毎月の保険料の収納と支給の金額が出ておるはずでございます。これによって御承知を願いたいということで、説明を省略したのでございます。今申し上げましたように、今回の改正考えましたことは、何と申しましても、その失業保険というものに合理的な基礎を与えるという点でございます。もちろん季節的な乱用と認められるものを排除するということも大きな一つの眼目でございますが、それと合せまして、合理的な基礎を与える、そのために特に被保険者期間の長い者に対しましては、給付期間を延長いたしておるのでございます。そういうように、全体の考え方といたしまして、今後こういうふうに私どもといたしましては失業保険の運用をいたしていき、ここ数年とにかくこれによってこの失業保険が健全に運営されるということを期待をいたしておるのであります。
  144. 吉田法晴

    吉田法晴君 失業保険事業月報と書いてございますが、これは月報なんです。もちろん昭和二十九年四月云々ということもございますが、私が申しておるのは、二百五十億の黒字が出ましたその年間の収支と申しますか、それから、その中で失業者がどれだけあり、あるいは季節労務者がどれだけある、こういうことによってですね、考えなければ、これは、この資料だけでははっきりいたしません。しかもこの中には季節労働者なら季節労働者の数字等はどこに入っておるかしりませんけれども、私の見るところではございません。そうすると、結果から見ての話だけれども、十億ももうかるよう改正は、これはやっぱり改悪だと言わなければならない。そこで、なぜそういう案が立ったかと、こういう数字的な基礎がなければ、ここに検討ができないじゃないか、その数字をこれは、まあ何年からとっていいかわかりませんけれども、月計のじゃなくて、年計について資料を一つ御提出を願って質疑をいたしたいと思います。
  145. 江下孝

    政府委員(江下孝君) この資料ではもちろん直接的にわかりやすく出ておりませんけれども、一応保険料がどれだけ毎月、毎年集まったかということは統計で出ております。さらに保険金の給付につきましても総額が出ております。そこでこの保険金給付総額の三分の一がこれが政府負担でございますので、残りがこの保険料の収納と見合えばいいのでございます。これについておわかりになりますように、過去におきましては、保険金の給付総額の三分の二と保険料の収納済み額を比べてみますと、保険料の収納済み額の方が多い部分が大部分でございます。従ってこの残余の部分が積立金に相なったのであります。ところが最近におきましては、これによっておわかりになりますように、明らかにこの保険金の三分の二が保険料収納済み額より多いという実情に相なって、おります。失業保険法の規定によりますと、過去六カ月間において収納いたしました保険料がこの保険金給付総額の三分の二に満たないという場合には、中央職業安定審議会意見を聞いて、保険料率の改訂のため案を国会に提出しなければならないということに相なっておるのであります。最近一年程度ではほとんどこれが赤字でございまして、その赤字の傾向が最近におきましては特にふえて参りました。このままこれを放置いたしますと、当然これは保険料率の問題にも及んでくるのでございます。で、私どもといたしましては、もちろんこの正当なる保険法の運用によりまして、保険金の支給がふえたということならば、当然料率の改訂問題も起るのでございますけれども、しかしながら以上申し上げましたように、二十七年度においてはほとんどなかったような季節労働者が二十八度におきましては八万、二十九年度におきましては十三万五千、ウナギ登りに上ってきておる、こういうところから考えまして、私どもといたしましては、今回この保険のそういう弱い点を是正いたしまして、結果においてはおっしゃるように十億の給付減になりまして収支がとんとんになるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、本来この保険法の建前といたしましては、季節的に雇用される者というのは除外するのでございます。で、私どもの今回の措置では、これを全然除外しないで、むしろこれらに対しては三カ月だけは保険金を支給するというのでございます。差し引きずれば確かにこの給付額が減るのでございますけれども、それにつきましては他の雇用政策によってできるだけカバーしていくということで処置をいたしたいのであります。
  146. 加藤武徳

    ○加藤武徳君 議事進行について。私は保険法をまあきょう議了したい、かよう考えるわけです。従って委員長におかれましては、もうこの辺で質疑を打ち切られるように議事のお運びをお願いしたいと思います。(「賛成」「反対」と呼ぶ者あり)
  147. 小林英三

    委員長小林英三君) それでは今加藤君から質疑を打ち切りたいという動議が出ましたが、加藤君の動議に賛成の諸君の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  148. 小林英三

    委員長小林英三君) 多数と認めます。  ちょっと速記をとめて。    午後五時四十分速記中止      ——————————    午後六時七分速記開始
  149. 小林英三

    委員長小林英三君) それでは速記を始めて。
  150. 加藤武徳

    ○加藤武徳君 私は失業保険法の一部を改正する法律案の質疑を打ち切る動議を提出いたしましたが、この動議を撤回いたします。
  151. 小林英三

    委員長小林英三君) それでは本日は、これにて散会いたします。    午後六時八分散会