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1955-06-09 第22回国会 参議院 社会労働委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月九日(木曜日)    午前十時三十四分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小林 英三君    理事            加藤 武徳君            常岡 一郎君            竹中 勝男君            山下 義信君    委員            榊原  亨君            高野 一夫君            谷口弥三郎君            松岡 平市君            横山 フク君            田村 文吉君            森田 義衞君            阿具根 登君            河合 義一君            山本 經勝君            相馬 助治君            有馬 英二君            寺本 広作君            長谷部廣子君   委員外議員            藤原 道子君   政府委員    厚生政務次官  紅露 みつ君    厚生省医務局長 曾田 長宗君    厚生省社会局長 安田  巌君   事務局側    常任委員会専門    員       草間 弘司君    常任委員会専門    員       多田 仁己君    常任委員会専門    員       磯部  巌君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   参考人    国立療養所清瀬    病院長     島村喜久治君    中野派出看護婦    家政婦労働組合    委員長     村上 とく君    国立中野療養所    医療社会事業係    主任      江森 まさ君    全国看護労働組    合副委員長附添    婦       常村 まさ君    国立埼玉療養所    医官      松島 良雄君    国立東京第二病    院総婦長    村田 きく君    全日本国立医療    労働組合委員長 井上 五郎君    厚生省関東信越    医務出張所長  千種 峯蔵君    国立療養所清瀬    病院附添婦   後藤 しづ君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人の出頭に関する件 ○社会保障制度に関する調査の件  (つき添い婦制度に関する件)   —————————————
  2. 小林英三

    委員長小林英三君) それでは、ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  本日は、社会保障制度に関しまする調査の一環といたしまして、つき添い看護婦制度に関する件を議題といたします。本日は、本問題に関しまして、先日の委員会の要求によりまして、参考人方々の御出席を願っておるのでありますが、これらの方々意見を聴取することにいたします。人員の都合上、午前と午後に分けて御出席を願っておるのであります。  この際、委員会を代表いたしまして、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。参考人方々には御多忙のところ御出席下さいまして、まことにありがとうございました。本問題は厚生行政、特に医療行政に関しまする重要な問題でございまして、当委員会におきましても、厚生当局の説明を聴取いたしますとともに、直接に関係を有せられますところの各位の御出席を願いまして、皆様方の隔意のない御意見存拝聴いたしまして、調査上の参考に資したいと存じておる次第でございます。何とぞ忌憚のない御意見をお述べ下さるようにお願いをいたします。  なお、本日の参考人方々のうちで、つき添い婦以外の参考人の方に特に申し上げておきますが、末席には厚生省当局の方も御出席になっておられまするが、皆さんの御発表の御意見につきましては、決して御遠慮をなさるようなことなく、率直にありのままをお願い申し上げたいと思います。  次に、御意見発表していただきます事項につきましては、さきに皆様方のお手元に文書で御通知いたしておきましたが、必ずしもその項目にとらわれることなく、率直にお話しをお願いいたしたいのであります。ただ時間の関係もございまするので、一人当り十五分以内で御発表お願いいたし、後刻各委員から質疑がございまするので、これに対しましてお答えを願いたいと存じます。  なお委員方々にお諮りいたしますが、時間の関係もございまするので、午前中予定いたしました参考人意見発表が全部終了いたしましてから、御質疑お願いをいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小林英三

    委員長小林英三君) 御異議がないようでございますから、さよう取り計らいたいと存じます。  それでは、まず国立療養所清瀬病院長島村喜久治君にお願いをいたします。
  4. 島村喜久治

    参考人島村喜久治君) 私、国立療養所長の一人といたしまして、この問題に関しまして意見を申し述べさしていただきます。  第一に申し上げたいことは、このつき添いの問題は、実は国立療養所でももう四年と申しますか、五年越しの問題でございまして、五年間くすぶり続けておる問題なのでございます。と申しますのは、療養所側といたしましては、つき添い婦制度というものにいろいろな不自由と申しますか、不便を感じておりまして、何とかしてこれを解決したいという念願を持っておりまして、常々厚生省当局にもお願いしてきた問題でございますが、つき添い婦制度の改正を要する理由は四つばかりございまして、第一は、非常に手続が煩瑣だということなのでございます。これは非常に簡単な理由のようでございますが、実際に診療に当っております医者の側から言わせますると、国立療養所では医者定員がそうたくさんではございませんので、平均私の所では六十人内外患者を一人の医師が担当しております。そういたしますと、この診療かなり手が食われます上に、近来の社会保障制度の発達と申しますか、によりまして、非常にたくさんの書類を書かなければならないのでございます。その中で、患者病状が悪化した、医者が手を放せない時期に、それより先にまず書類を書かなければならない。病状その他詳しい——東京都の場合は体温表までつけた診断書をつけなければ許可がおりません。許可がおりません場合は、たとい重症患者であってもつき添い婦はつけられない。実情は事前につき添いをつけて、事後に審査を受ければいいのでありますが、実際には、あとで承認しないと言ってこられた場合は、つき添い料の出どころがないわけでございます。そういう非常に不便がございまして、近来社会保障費と申しますか、だんだん窮屈になって参りまして、このつき添いの制限がだんだん窮屈になって参りましたために、かなり実際上の運営に不便を感じております。これが所の職員でございますと、直ちに重症患者ができた、即刻つき添い看護人員を配ることができるのでございますが、それができかねている実情でございます。  第二の点は、これは国立療養所だけの問題でございますが、そういうめんどうなつき添いの申請をしておりながら、実際にやっていることは国費のたらい回しと申しますか、生活保護で入っている、入院患者申請をして入ってくるつき添い料金は、そのまま右から左へ通り抜けて大蔵省へ国庫収入として入るわけでございます。ただお金がぐるぐると地方を回って、二割つけ加えられて国へ返されるならば、国立療養所はもう少し簡便な方法があるんじゃないかとわれわれはいつも主張しているわけであります。そういう実情でございます。  第三の問題としましては、つき添い婦の働いている労働条件でございます。二十四時間ぶっ続けの拘束された勤務でございまして、週休も休日もございません。府県によっては深夜手当を出す府県もございますが、出していない府県も多いように聞いております。そういたしますと、大げさにいえば非人間的な、あるいは前近代的な労働状態を、勤務状況国立療養所人手が足りないからといっていつまでもしているということは、これでは何らか解決しなければならないのじゃないか。そういう人たちが働いてくれることによって国立療養所医療なり治療なりがやっと運営されている。やっとというのは誇張かもしれませんが、運営されているという実情は何らかの機会に解決しなければならない、そういうふうに考えておったわけなんです。  それから四番目の問題といたしましては、つき添い婦制度を改革しなければならない。四番目の理由——四番目と申しましても一番比重が軽い意味ではございませんが、やはり療養所長管理権の届かない人たちが、重症患者あるいは手術直後の患者の非常に重要な看護の部面を受け持っている実情でございます。これは何とかしてやはり解決しなければならぬ。もし事故があった場合にやはり責任療養所長にかかって参ります。その場合実際には管理権のない人たち看護に当っておりますので、これは重大な問題だと私は常に考えております。実例を申しましても、これは別につき添い婦を責めるわけではございませんが、つき添い婦がちょっとやむを得ない理由のために目を放した間に亡くなったという手術直後の患者でありますが、そういう実例も戦後の十年間の間には何回かなかったとは申せない実情でございます。そういう実情でございまして、私どもといたしましては、こういうつき添い婦制度というものが改革されて、本来の療養所職員で全部の看護責任がとれれば、これにこしたことはないと考えておったわけであります。しかしながら現在のような国立療養所看護定員では到底そういうことは不可能でございまして、やむを得ず拘束二十四時間、三週間、四週間連続勤務という非常に苛酷な労働を提供してくれる人たちによって、療養所運営が行われてきたわけであります。そこで私どもといたしましては、国立療養所長としましては、今回の政府案と申しますか、常勤労務者をふやすことによって国立療養所におけるつき添い婦をなくするという方向は、解決への一つの前進と申しますか、進歩であろうと私思っておりまして、その点では政府案に賛成しているのでございます。ただしかし、伝えられるといいますか、私どものところへ政府から申し伝えられました数字がいささか少な過ぎるのではないかという危惧を持っているわけであります。現在のつき添い婦は二十四時間拘束勤務を実際やっております。三週間四週間、手術直後ぶっ倒れるくらいの勤務をしておりまして、四千人内外のつき添い婦が全国立療養所にいるわけでございますが、それを政府の案を私ども聞いております数字では二千二百七十人で置きかえよう、機械的に二十四時間勤務のつき添い婦を八時間勤務の公務員に切りかえますと、三倍の人数がいる。これは全く機械的に換算した場合でございますが、そのほかに勤務の形態といいますか、内容を合理化するとか、あるいは中の設備を改善するとか、あるいは勤務を分業化することによってかなり人員の節約はできるとは思いますが、二千二百七十という数字ではどうも非常に大きな不安を持たざるを得ないというのが私どもの実際の感じでございます。と申しますのは、国立療養所には現在六人に一人の看護婦定員がございます。これに今の二千二百七十という数字は大体患者二十五人に一人の割になるのでございますが、六分の一と二十五分の一を加えますと、大体患者四・七人に一人になる計算でございます。ところが一方国立病院の方は三・六人に一人でつき添い婦の入らないいわゆる完全看護をやっておるわけでございます。ところが三・六人で完全看護をやっておるという国立病院から実態をよく聞いてみますと、家族が毎日面会と称して朝から晩まで行って患者のつき添いをやっておるとか、あるいはもぐってつき添い婦を強制的につけさしている、強制的にというか、半強制的につけさしておるという実情がございますので、私どもといたしましても、国立病院並みには人数がないところでは、安心してこういう重大な改革は遂行できないのじゃないかという不安を持っておるわけでございます。実際いいことを行うというのでございますから、私ども賛成なんでございますが、やはり事は重症患者あるいは手術直後の自分で呼び鈴を押せない、インターホーンに話しかけることもできない重症患者でございますので、この患者たちに不安を与えないで切りかえられればと、それを念願しておる次第でございまして、極端な例かもしれませんが、やってみてもしいけなければ、すぐ変えるというふうなことを言われる方もあるのでございますが、極端な例かもしれませんが、飛行機からパラシュートをつけて飛びおりる場合、パラシュートをつけて飛んでみろ、開かなかった場合には何とかしてやろうということは、これは非常に危険なんでございまして、パラシュートの例は極端なようですが、実際には今言いましたように、たった五分間近所が火事だというのでつき添い婦が手を放したために、帰ってきたときには酸素吸入をはずして患者が死んでいたという実例があるのでございまして、そういうふうな状態に置かれる患者の心配といいますか、不安ということは、これは私ども説得いたしましても、重症患者の心理では納得しないのでございます。実際に安心できるようにかなり安全率をみて、できれば切りかえの時間、相当期間の間二本立と申しますか、ある制限をつけても今まで通りのつき添い婦をある期間は認めてもらえる、そういうふうにしていただけたらと私考えておるわけでございます。  時間があまりございませんが、最後に私一つ申し上げたいことは、実は去年御承知のように死のすわり込み事件というのがございまして、あれは主として国立療養所軽症患者が騒いだ事件なんでございます。今年は大体一年たったですけれども、ちょうど今度はつき添い婦の問題が起りまして、重症患者はみんな動けない患者でございますから、騒いではおりませんが、みんな非常な不安を持っております。私は去年から今年足かけ二年、まる一年国立療養所長として仕事をしてきたことを反省してみますと、口はばったい言い方かも存じませんが、社会保障制度がどうもうまくいっておりませんために、そういうしわ国立療養所に寄って参りまして、そのしわを払いのけるために振り回されていた感じばかりが強いのであります。そういうことよりももっとまっとうな、社会保障制度が完備されてもっとまっとうな結核対策のために努力したいと念願するのでございます。と申しますのは、結核死亡率は非常に減った、それからまた地方によっては療養所にあきベッドが出てきたという状況でございます。患者も確かに減りつつありまして、もう結核の問題は峠を越したのじゃないかということを言われるのですが、実際には患者が減り、ベッドに多少のゆとりができてきたときこそ積極的な、こちらでイニシァチブをとった結核対策が行われるべきときだと思うのでございまして、そういう社会保障制度の完備によって結核対策がまっとうになって、われわれをほんとう結核の撲滅のために、こういう若輩でございますが、多少とも役に立つ人間だといううぬぼれは持っておりますので、つき添い問題や、すわり込み問題の解決などというような能力はございませんが、そういうことよりもまっとうな結核対策のために努力さしていただきたいと念願しておるものでございます。  以上で終ります。
  5. 小林英三

    委員長小林英三君) 大へんありがとうございました。  次は、中野派出看護婦家政婦労働組合委員長村上とくさんにお願いいたします。
  6. 村上とく

    参考人村上とく君) 私はこういうところへ出て発言いたしますのは初めてなものですから、非常にお聞き苦しいところもおありだと思いますけれども、どうぞ御了承願います。  私はつき添い婦の生活権の問題と療養所看護の低下するという点で、常勤制度を置くことは反対の意見を持っておるものでございます。たとえて中野療養所重症病棟の一例をあげたいと思います。ここはベット数が四十三床で、現在患者数が四十三名に対して看護婦主任を含んで五名おります。それに食事運搬専用雑役婦が一名おりまして、つき添い婦が四名おります。その内訳は生活保護法に一人ついておりまして、あとは有料のつき添い婦が三人おるのでございます。患者安静度内容として、第一度が九名で、第二度が十七名、第三度が十五名、第四度が二名、第五度が一名という割でございます。それについて看護婦さんは、患者洗髪、全身清拭するものが二十八名おるのでございます。看護婦勤務内容は三交代でして、第一勤務、昼勤でございますが、それは七時から三時三十分まで、第二勤務というのが準夜といいまして三時から十一時三十分まで、第三勤務というのがこれは深夜と言っておりますが、十一時十五分から朝の七時十五分まで、それで夜勤は三病棟ブロック制をやっておりますので、ちょうど深夜の十一時十五分からの勤務の方がおらないときがあるのでございます。それは準夜を五日しまして深夜が二日、準夜をまた五日しては深夜が三日といった割で、ちょうど一カ月で十日間は夜勤がおらないのでございます。それでその夜勤はそうですけれども、今度は勤務状態、お昼の間主任を含んで三人いるときは一週間のうち二日でございます。それは、看護婦さんは一週間に一日のお休みをとりますので、そういうふうになりますけど、この三人と二人でつき添い婦の手を借りて病室を掃除したり、それからあとは牛乳を配ったり、お茶をわかすとか何とかということはつき添いさんが手伝っているわけでございます。看護婦病室の掃除を終る時間は大がい朝九時三十分ごろでございます。それで主任を入れて三人の勤務のある日は、主任カルテ整理書類整理患者の容態回り、それから回診についたり、処置、レントゲンの運搬主任さんがいたして、なお患者の種々の連絡もいたしております。そうしてもう一人の看護婦さんは、そのときは重症患者処置、それから便器痰コップ含嗽水交換などするとか、現在では十名の患者さんがいるのでございます。食前食後配薬痰コップの消毒、それを洗います。ほかの看護婦さんは清拭洗髪に当るのですけれども、大体ずっと寝たっきりの患者さんでございますから、時間が大分長くかかりますので、看護婦さんがどんなに急いでやっても二人以上はできないのでございます。二人の場合は、清拭洗髪もとてもそれはできないので、そのときはしておりません。  以上こういったような日を送っておりますので、患者のサービスも十分にしてあげることもできぬと言っておる現状であります。人手不足のため、今でさえこのように寸暇のひまもない看護婦さんがかけ回ってやっているのは、ほんとうに涙ぐましいような感じがいたします。もし今度のつき添い制度廃止が行われたら、一体これはどういうことになるのでしょうか。看護力の低下ということは申すまでもないことだと思います。  それで、重症病棟というものは長期ここに入っている方が多いので、ほんとうに身動き一つできないのですが、つき添いをつけるというようなことは、私費の方はできますけれども政府の方ではなかなかそれが得られない。ただ一人しか今はおりませんようなありさまです。  看護婦さんというのは、お昼の食事が十二時三十分から一時ころ、または一時三十分ごろになるのです。それで一時三十分からは破損交換消耗品、その他の受け渡しをこの時間を利用してやってらっしゃいます。安静時間にカルテ整理書類整理、それから処置材料作り、パスを包んだり、そういうことをいたしておるような状況でございます。  それでつき添い婦はどういうことをしておりますかというと、つき添い婦は患者さんの口であり、手であり、足であります。現在つき添いをつけることを許可されております患者さんというのは、前にも申し上げましたように、安静度一度という、ほとんど一度というと全部人手を借りなければ自分では何一つできない人と、手術患者であります。急変が起っても、喀血、発熱しても、つき添い婦は直ちに医師看護婦に連絡いたします。食欲がないので、食事はそのままでは食べられませんから、暖めるなり、やわらかくしてあげるなり、あるいは補食を作って、一人では食べられませんので食べさして上げます。ことに胃腸の悪い人などは、一回にごく少量ずつしか食べられませんので、一日に五、六回に分けて食べさして上げております。  その他洗面、清拭洗髪、身の回り、室内の整理整頓喀血、発熱時の氷嚢、氷枕、湯たんぽ、便器尿器痰コップの始末をやられ、つくろいもの、その他看護婦雑仕婦が今申し上げた通り手不足のため、お手伝いをしております。病状によっては徹夜勤務をして働きます。ことに手術患者さんには二十四時間勤務で、かたわらにつきっきりで容態に注意しております。その後は手術で失った体力の回復に努めております。  つき添い婦の生活実情を少し申し上げたいと思います。つき添い婦は大体未亡人でありまして、あるいは引揚者、多い者は子供を四、五人も抱え、老人や病める夫を扶養しながら一家の支柱となって生活最低線をあえいでおる者がほとんどでございます。かかる危険な職場にありながら健康保険もなく、何の身分保障すらもありませんので、病気になっても容易に医者にかかれず、一日休めば明日の生活が案じられますので、無理をしても無休で働く者も多い有様です。それですから、たえず不安に脅かされた生活をいたしておる次第です。もし今度のつき添い婦廃止が実行されましたら、とたんに生活権を奪われ、家賃は払えなくなる、子供を養育していけなくなる、病弱の夫をどうしよう、借金をどうして払うか、家庭は食べていかれなくなるなど差し迫った問題をどう解決したらよろしいのでしょうか。つき添い婦廃止は私どもをこうした悲惨に追い込むのです。つき添い婦の生活を破壊されてしまうのです。これは単につき添い婦の生活の面だけの問題ではなく、医療面におきましても大きなマイナスとなってくるでしょう。重症患者は死期を早めることになるでしょう。手術医師患者ともに不安から手控えとなり、その回数は減らされ、一般社会における患者数は減るどころか、かえって増すばかりでしょう。自費の生活ゆとりのあるほんのわずかの患者しかできなくなると思うのです。看護婦さんも労働強化がさらに行われ、つき添い婦としましても、全くその身分保障がいたされませんで、もしまた幸いに廃止になって雇っていただいた場合も、二カ月で切りかえるので、何らその身分保障というものは受けられないと思います。それで現在よりはずっと下回る料金によって働かなければならなくなると思うのです。生活権を守ることと、病院看護を今より悪くしないために、今度のつき添い婦制度廃止しないでいただきたいと、強くお願いするものでございます。
  7. 小林英三

    委員長小林英三君) ありがとうございました。  次は、国立中野療養所医療社会事業係主任江森まささん。
  8. 江森まさ

    参考人江森まさ君) 私は、国立中野療養所医療社会事業係主任で、患者さんが入院をするときから退院をするまでの間のいろいろな困った問題、ことに経済問題、家庭問題、また退院するときには退院問題とか、そういうようなことでいろいろ相談相手になっております。かたわらつき添い婦さんの問題については私が担当しておりますので、このつき添い婦の廃止問題につきましては、まあいろいろなことが考えられているのでございますけれども、実はこのつき添い婦の補助婦制度の問題については、すでに中野療養所では昭和二十五年の夏から三カ月間すでに実施済みなので、まあこの問題を体験しているわけなのです。そのときの体験のことから少し申し上げたいと思いますけれども、その当時入院患者さんは八百四十四名でありました。そして当時の手術数と申しますか、おもに成形手術を中心といたしました二十五年度の一年間の例数からみますと、成形手術が二百七十七例、横隔膜麻痺手術は六十九例、焼灼手術が二百四十一例といったようなことで、あまりたとえば焼灼手術の場合などはつき添い看護を必要としない状態であり、その重症患者の数がここで不明なんでございますけれども、その当時つき添い婦の補助婦制度に切りかえる当時の、つき添い婦、看護婦数を見ますと、百一名ついておりました。その当時の看護力というのが百五十八名、配膳や何かの世話をする雑役婦が二十三名でございまして、補助婦制度にかえましたときの人員と申しますと、初め六十三名で、そのときには全国の国立療養所の総婦長級の方の講習がありまして、中野療養所がその実習地に当てられておりまして、その講習生の方が六十名でありました。そういう状態の下で補助看護婦制度が行われたのであります。  私は、いつも貧困の問題だとか、孤独の患者さんの問題だとかで、いつも深い関心を持ち、またそういう相談を受けておりますので、この制度でまあ非常に助かったかたわらから考えられますのは、自費で入っております患者さん、また入院料が自費では入れないし、また社会保障制度にも適用されていないという軽微の患者さん、そういう方は、看護料金の支払いというものが一応助かりましたから助かったと思いますけれども、そういう状態でありながら、生活保護患者さんとか、また健康保険患者さんという方の感想、またその当時どういうふうに実施されていたかということを実は病舎で聞いてみたのでございます。やはりまあ患者さんにしますと、自分一人についているつき添い婦さんでありますれば、何も言わなくてもよく気持を察して、自分が何を要求しているかということをよく察してくれて非常に助かったけれども補助婦制度になりますと、どうしてもその看護が配分されますから、時間がくると帰ってしまうとか、また他の別のつき添い婦さんに看護されて、また同じことを頼まなければ看護が受けられなかったとかいうようなことで大へん不自由をした、また寝巻などもすぐ取りかえたくても、やはりがまんしなければならなかったとかいうようなことを訴えて、ぜひ二人つきでも三人つきでもいいから、つき添い婦制度の方がよかったということは訴えております。しかしながら療養所のまあ私どもが全体の患者さんを見ますときに、やはり訓練を受けました技術のある看護婦さんが直接看護をして、そうして資格のない方が雑役の方を担当してくれるような看護の形態でありまするならば、非常に望ましいことでありますし、またそのことにつきましては、再三厚生省の方にもいろいろな資料を出しましてお願いしたわけでございます。その当時、それではどのくらい看護力があったらばそういうような患者さんの不安を一応除くことができるだろうというような線を出してみたのでございますけれども、たとえば手術直後の患者さんに、一人つきで夜も交代で泊ってもらうということをするには、どうしても最低九十名の補助婦がなければやっていけなかったというような成績でございました。その当時のそれでは家族のある患者さんたちはどういうふうにしたかといいますと、やはり補助婦さんが夜は引き上げてしまうし、三部交代にそのとき切りかえまして、夜も看護婦さんに見てもらっておりますけれども、大かたの患者さんは家族を呼びまして、夜そばについていてもらったというような実情でございますし、その当時は補助婦制度によりまして、洗たくとか、それから炊事の面とか、ずいぶん療養所としては改善はいたしたのでございますけれども、なお患者さんにも大へん不自由があったように見受けられます。そういうような過去の実績があります上で、このつき添い婦の廃止問題に当りましては、私どもとしましては生保や健保の患者さんだけでなく、そういう入院料の払えないような社会保障制度から漏れた患者さんたちを国立療養所では大ぜい担当しております。また私ども医療社会事業の面から、好んで医療施設また保健所などからそういう患者さんを向けられまして、それを何とか費用がないために治療する機会をあきらめていたのを引き受けて治療している状態でございますので、ぜひこの制度は望ましいのです。ぜひ望ましいのですけれども、何としても過去の成績におきましても九十名でもまだ不安であったというような状態でありますので、この数におきまして不安のないような数を御考慮願いたいと、そのように考えております。また完全看護の実施の病院結核入院中の患者さんが併発症のために治療を受けに行く場合がございます。そのときに私どもしばしばつき添いをつけてもらいたいというような病院の要求を受けることがあります。まあ金を出せる方ならよろしいのですけれども、出せないような方はずいぶん苦労しておりますし、また完全看護だから重症の方はいられないというようなこともしばしば体験しております。まあ国立療養所が今考えられているような数でもし実施されたとするならば、そういうような家族のいない者、また自分で費用の出せないような患者さん、そういう方がずいぶん困るということはもう火を見るよりも明らかなことと考えられますので、そういろ点に非常に不安を持っているものでございます。
  9. 小林英三

    委員長小林英三君) ありがとうございました。  次は、全国看護労働組合副委員長の常村まささんにお願いいたします。
  10. 常村まさ

    参考人(常村まさ君) 常村でございます。  ただいまつき添い婦のことにつきましても、村上さんの方からたくさん発言がございましたのですが、私どもやはりつき添い婦全体から申し上げまして、今のこの制度をこのままで存続していただきたい、これだけでございます。そうしてそれはどういうことかと申しますと、今常勤労務者二千二百七十人に切りかえる、今四千二百人のつき添いが二十四時間患者につき添っております。それを二千二百七十人に減らして、しかもそれが八時間の労働になりましたならばどういうことになるか、その点でほんとう看護力は低下するんじゃないか。それから今私ども生活の実態でございますが、今、村上さんから申し上げられました通りで、ほんとうにみじめな生活をいたしましても、どうしても残された子供とか、母親を養っている者もありますし、またむすこが戦死して子供と嫁を家に置いて、しゅうとめが働いて養っている者もあります。このような状態の中でこれが実施されましたならば、どういうことになりますか。また厚生省から心配しなくてもいい、失業者にしないんだから、労働省だとか職安の方に連絡をとって職をやるから、とはおっしゃっていただくのですけれども、私は大阪でございますが、大阪の市内の失業者は府庁だとか、市庁だとか、職安の前には列を組んでおります。それがだんだんふえますので、稼働日数が減りますので、そのおばさん方でも十日働けない状態にある。そこに私たちがほうり出されて一体何の職があるのかということが第一の不安でございまして、私どもはほかに別に何も職を持っておりません。やはり私たちの天職であるところのつき添いで働かしていただきたい。  それから、またもし職にあぶれまして生活が困りましたときに、やはり食っていくためには生活保護をいただけなければしょうがないと思うのであります。そうしましたときに、やはり生活保護を受けるよりも、ほんとうに働かしていただいて、働いたお金で食っていきたい一念でございます。  それから、このことが起りましてから、患者さん自身がどんなに悩んでいるかということでございます。ほんとう生活が苦しくて結核におかされている人が、卵一個買えない状態にある患者さんが、このことを聞きましてからどんなに悩んでいるかと申しますと、今まで二十四時間夜も昼もついてくれたおばさんが、今度は八時間になって、夜はだれもみてくれる人はないのじゃなかろうか、そういうときにはどうしたらいいのか、そういうようなことでほんとうに悩んでいるわけでございます。そうしてこの現状を、もしもこれを廃止して常勤労務者に切りかえられるということになったら、また私たちが平均十六時間といたしましても、四千人の倍の八千人は要るだろうと思うのでございます。それから患者さんのベッドのところへ所側から来て、一部負担を出せと言われるわけであります。そのことで栄養一つとれない患者さんが、お前は一部負担の千円を出せとか、今月は二千円負担せよと言われましたら、この排菌している患者さんが家庭に帰るよりほかなく、家庭に入ったら、この患者さんがばらまく結核菌がどうなるかということをもっと考えていただきたいと思います。そういうようなことがほんとう患者さんの悩みです。  そうして看護の実態でございますが、私たち主治医の方から、この患者にはこういう状態でつき添いが必要だからという申請書を書いていただく。それを福祉事務所の方に持って参りまして、その福祉事務所から市を経て府の方に行くのでありますが、その市の方でもうすでにつき添いがついておりますのに、今島村先生がおっしゃいましたように、これは許可しないのだという場合もあるわけです。そういう場合には、賃金はもらえない状態になります。そうしてまた申請をしてあるにしても、成形をやりましたら大体二週間、肺切をやりました場合は三週間というように、厚生省の方では基準がきめられております。その間だけしか許可が出ないわけです。そうしましたら、先生の方ではやはりつき添いをつけなければならないという御意見がある、そうしましたときに、つき添いは患者さんのところに一人つくわけでございますが、二週間の許可の人はこれは四週間に延ばし、一週間の人は二週間に延ばしするように、二人つきを余儀なくされまして、そのしわ寄せは全部つき添いが背負うわけでございます。それから打ち切られました場合に、その打ち切られました患者さんは看護婦さんの手に渡すわけでございますが、その場合に看護婦さんの手が足りなくて、患者さんも一々看護婦さんを呼ばなければしてもらえないし、だからといって一々呼んでも、看護婦さんが忙しいと気がねをして、何もしてもらえないというので、無理をして動くというような状態に追いやられておるのです。大体手術の場合でございますが、手術が済みまして、病室に運ばれますと、つき添いはそれに取りかかるわけでありまして、食塩注射だとか、酸素吸入だとかいうようなものを看護婦さんの指示によってお手伝いをする。それが済むと一昼夜というものは、全然患者さんは麻酔がさめないわけです。その間つき添いは脈をとりながら一睡もしないで、一寸の間も眼が放せない。その間にどういうことが起ってくるかもわからない。そういう中で大体三日、四日は一睡もできません。その間は自分食事すらもほかの人にかわってもらって食べる状態であります。いよいよ患者さんの意識がたしかになりましたら、栄養の方に取りかかるのでありますが、その場合に、流動食からだんだん三分がゆ、五分がゆにいくのでありますが、病院の方からもほんとうに心をこめた食事が運ばれるのでありますが、その食事の何と言いますか、給食料と言いますか 九十円というのではなかなか患者さんの口に合うようなものはできない。そうしましたときに、つき添っているつき添いの立場から言いましたら、何とかして患者さんにちょっとでも食べていただきたいという気持ちで一生懸命になるわけです。そうしたときには、自分の乏しい生活費の中からさいてでも患者さんにあげているわけです。その場合患者さんには一つのものでもおいしく食べていただいて、一日でも早くよくなっていただいて、早く社会に出ていただけるというように努めるのがわれわれ医療従業員の任務だと心得ております。  それから国立病院看護婦さんでございますけれども、そのことはあとからいろいろと医療従業員の方から申されることと思いますけれども、大体つき添い婦は今患者さんの数の大体八%といいますか、その数がいるわけなんでございますが、その中で働いておりますが、やはり排菌をしているたくさんの患者さんの中で、ほんとう結核菌の中にまみれて働いても、たとえば今八時間労働にしてやるとおっしゃっても、それが二十四時間でございましても、自分のからだをすり減らしてでも働いて、自分たちの家族の生活を守っていかねばならないと思うわけでございます。一つこのつき添い婦の何といいますか、必要性といいますか、それを一つ私例をあげて申し上げたいと思うのでございますが、私実は大阪でついておりました患者さんが整形から帰りまして、まだ麻酔がさめない間に顔の色が変って来て、ものすごく脈搏が悪くなったわけでございます。それで自分でもどこが悪いかつき添い婦にはわからないのでございます。それですぐに先生の方にかけつけまして、先生と看護婦さんが二人来られましたときには、もはや十一時十二時という時間なんです。それで内出血をして、そうして心臓がどんどん弱っていっている、でもほんとう患者さんは気持よく眠っておるわけでございます。そのときにその先生と看護婦さんが一生懸命に胸の血の出ているのを抜いては静脈に入れられたわけなんです。それを繰り返しまして夜が明けた、その患者さんはとうとう命をとりとめて全快して帰られたわけなんです。そのときにやはり先生が申されましたのは、ああよかった、これがもしわかっていなかったら、患者は眠ったままで死んだだろう、やはりこういうふうなことがございまして、やはりそういうときには私はつき添いがなかったら、ほんとうにはたについていつでも脈をみているものがなければ、ほんとうにそんなことはわからないのじゃないかと思うわけでございます。  それからもう一つ、私兵庫県に参りましたときに、療養所の中にたくさんベッドがあいているわけなんです。それから今度県庁の厚生課に参りましたら、このごろ生活保護法患者がたくさん入院があるのだが、療養所ベッドが詰まっていて、受け付けてくれないで困っているのだということを訴えられました。そこで私ちょっとおかしいですが一生懸命、春霞園に行ってごらんになったらどうですか、ベッドはたくさんあいていますがと申し上げたのです。それを私聞きましたら、生活保護患者さんの一部負担が多くなって、患者の出す支払う資力がない。そうしましたときに、それは全部療養所の負担になるというので、生活保護患者さんはだんだん入れないような状態にあるのではないかと思うわけでございます。そうしましたら、この結核患者さんは一体どこにも受け取ってくれない。そうしましたらその患者さんは一体どうなるのか。それからある保健婦さんが言われましたのですが、今までの家庭の療養の結核患者さんは二間以上部屋がなかったら許可しちゃいけないという指示を受けております。ところがこのごろは一間でもいい、家庭療養をさせろ、中にカーテンを掛けて足と頭を差し違えて寝かせろというふうに指示を受けている。そこで保健婦さんはほんとうに頭の中で矛盾があるわけなんです。コレラとか、チフスの黴菌でしたら、こっちから持っていってひっつかなかったら動かないわけなんですが、この結核菌は空気の中に舞い舞いしているわけなんです。そうしまして、家族の中に二人三人同じ病気で倒れているというふうなことが現実にございまして、結核がだんだんとふえていくということを、今では化学療法もできまして、そうして患者さんもあまり死なないわけなんですが、この患者さんの言いますのには、ほんとうにいい薬ができてけっこうだけれども、一に看護二に薬という、それで一の看護が行き届かなかったら、あるところまではよくなるけれども、それ以上は行きつ戻りつでちっともはっきりしないのじゃないか、こういうことも言われておりました。それでその結核の対策でございますが、私厚生省にお願いしたいわけなんですが、この結核がだんだんだんだんふえていくわけなんですが、私たちもつき添い制度が廃止されまして社会に送り出されたときには、その結核菌をもらっているのじゃないかというふうな不安があるわけなんです。そうしましたときに、やはりこの結核の対策ということをもう少し厚生省の方々ほんとうに腰を据えて考えていただきたい。こういうふうなことが続いておりましたら、ほんとうにどこへ行っても結核でごろごろしまして、道を歩いてもたくさんあるわけです。そういうことをほんとうお願いしたいわけです。  そうして、今いろいろと私とりとめのつかないようなことを申し上げたのでございますが、ただつき添いの立場から、私たちもやはり看護婦さんや先生と同じように医療の第一線に働かさせていただいておるわけです。医療の前進はほんとうにうれしいのでございますが、後退をしております。昔私たちの若いときは看護婦の資格者はなかったわけです。戦後にこのつき添いができまして、そのつき添いがまたなくなるということになりますと、何か医療は前進しなくて後退しているんじゃないか、そういうふうに考えられるわけです。その点をよくお考えいただきまして、どうぞこのつき添いの制度がこのまま存続していただけますように、そうしていつでも医療の第一線で働かしていただきたいわけです。
  11. 小林英三

    委員長小林英三君) ありがとうございました。  それではただいままでの参考人の御意見に対しまして質疑お願いいたしたいと思います。
  12. 山下義信

    ○山下義信君 療養所長の島村さんに承わりたいと思いますが、つき添い婦の業務について、療養所長としてはどれだけの指導監督をしておいでになるのか、またできるのか、あるいはまた適当でないつき添い婦というのは交代させることも所長でできるのかどうか。それからつまりつき添い婦があなたの方の療養所の中で働いている実情ですね。つまりつき添い婦をつけることについての先ほどのあなたのお話の中に、つき添い婦が必要だという申請をして、療養所の方からなさるでしょう、それが福祉事務所の方に行くでしょう、それがつけてもいいという認可が来るでしょう、雇い入れはだれがするのですか、雇い主は患者ですが。その雇い入れのいろいろの手続、認可までの手続は療養所がするのでしょうが、認可が来た、従ってつき添い婦を雇うその辺の手続はだれがするのですか、その療養所の中における医療社会事業係がつまりするのですか、そういう手続きを。そういうつき添い婦というのはしょっちゅう療養所、現実にはあなたの方にはある程度のつき添い婦が、いわばそのつど雇うようであるが、常にそれはもうその仕事をしている人がずっといて、甲の患者が済んでもすぐ乙の患者に行けるようになっているのでしょうか。その移動の模様、つき添い婦が新たに仕事をするについて仕事につく前後の模様ですね。それからこれは大部分通勤しているのですか。それとも療養所内で泊り込んでいるのですか。仕事をするについて療養所の中にいる状態ですね、そういう状態を承わりたい。それで何かつき添い婦の業務を行うについての基準というようなものがありますか。一定のつまり言いかえれば服務規律的なものがありますか。どういうふうに監督しておるのですか。その辺の実情を一つ承わりたいと思います。
  13. 島村喜久治

    参考人島村喜久治君) お答えいたします。つき添い婦の業務指導と人事権と申しますか、そういうお尋ねが最初だったと思うのでございますが、私のところの実情は、実態は婦長室に一人その責任者がおりまして、婦長の一人でございますが、それが実際にやっております。業務指導となりますと、やはり医者が実際の看護の何といいますか、教育をしなければならないことも出て参りますので、医学的な知識がございます医者か婦長がしなければなりませんので、定期とまではいかないですが、何年かに一ぺんくらい皆を集めて再教育というようなことをしたこともございます。雇い入れ、つまりつき添い婦を私の療養所で採用するかどうかというようなことは、すべてその婦長を通して行われているわけでございまして、ただ、どの患者につけるということになりますと、実情は、実際の法律的な解釈と申しますか、実際には患者個人とつき添い婦個人の契約ということになっておるのでございますが、実情はやはり婦長室を通して、各病棟看護婦控室に勤務しております看護婦の長でございます。私のところでは主任看護婦といっておりますが、その主任看護婦がつけているわけでございます。あなたはこの患者について下さいというふうにしてつけておるわけでございます。  それからその次は、所内である患者がよくなって、つき添い婦が不必要になった場合、そのつき添い婦はどういうふうになるかというお話ですが、なるべく私どもも休みのないように、すぐ次の患者につけるように心使いはしておりますが、実際の問題としては重症患者が少くなった場合、手術患者が少くなった場合、そういう数は浮動しておりますので、まあやはり年間を通じますれば何日になりますか、何十日になりますか、失業状態は起っているようでございます。  それから、住み込んでいるか、通勤かというお話でございますが、これは療養所の立地条件によって非常に差があると思うのでございますが、私のところでは、現在七十名ちょっとぐらいが中に住み込んでおります。それからあとの十数名は、これはやはり手術件数によって移動いたしますが、十五、六名前後は派出看護婦会から派遣されてきております。手術が済めばこれは帰るのでございますが、帰らないで次々に手術患者について半定住のような格好の人もおります。これは一口につき添い婦と申しましても、看護婦の免状を持っているつき添い婦と、持っていない、ただしろうとの方々が頼まれてやっていらっしゃるうちに、だんだんなれてやっていらっしゃる方と、二通りございまして、手術直後のような、高度の専門的な技術を必要とする場合には、看護婦の免状を持った専門のつき添い婦をつけるようにいたしております。それからやはり手術直後はほんとうに二十四時間ぶっ続けの勤務でございますので、そう肉体的に続かないわけでございますので、外から派遣されてきた人を主としてそれにつけて、手術が済んだら帰っていただく、中のつき添い婦はそのあとを受け持つと申しますか、内科の方の多少夜なんかゆとりのあるといいますか、そういう患者さんを受け持っていただいております。  それから最後に、つき添い婦の採用の基準があるか、服務規律があるかというようなお話でございますが、これは婦長室でやっております。私どもとしては婦長の方でいろいろ履歴書なんかもらって、この人ならよかろうという人に対して、一応何といいますか、まあはんこは押しているわけでございます。ただ、よほどのことがなければ拒否はできないという状態でございます。
  14. 山下義信

    ○山下義信君 よくわかりました。従って一定の服務規定というようなものはなく、ことに全国共通の何か本省あたりから、つき添い婦の執務に関する規定というようなもの、通牒的なものというようなものは、つまりないわけですね。  それでもう一つ島村さんに伺いますが、今あなたのところに大体七十名前後といいますか、そのつき添い婦の人が大体何ですか、雑仕婦の制度というものに、雑仕婦にかりにその人を切りかえるとしたら、ほとんど雑仕婦に切りかえ得る、能力その他の点からいっても切りかえてもいいという適任者というか、適格者というか、そういうことはどうなんですか。それに切りかえられない人もありますか。かりに全部切りかえるとすれば全部切りかえられますか。何といいますか、適格の状況、どうでしょうか。
  15. 島村喜久治

    参考人島村喜久治君) 最初におっしゃいました厚生省からの全国的な指示というものは参っておりません。  それから現在私のところで働いてもらっている七十人ちょっとのつき添い婦さんを雑仕婦に切りかえ得るかという御質問でございますが、まあ私どもとしては、実はまだ具体的に一人々々の方の履歴その他に当っておりませんので、はっきりしたお答えを申し上げかねますが、こういう制度がもし実現するとすれば、できるだけつき添い婦の人を常勤労務者に切りかえていきたいとは考えておりますが、御本人が拒否されれば困難かと思います。できないと思います。と申しますのは、先ほどどなたか参考人の方で発言がありましたように、待遇が多少下がるようでございまして、その点で不安をお持ちになる方があるだろうと思います。そういうこと以外には、私どもとして問題になりますのは年令の点でございまして、私のところは今ではそう年とった方はいらっしゃいませんが、前にはかなりの年配の方がございまして、私ども冗談に、つき添いをつけなければならないようなつき添いというようなことを言った時代もあるのでありますが、養老院に行っていただいた方も数人ございます。現在はそういう方はございませんで、中年過ぎぐらいまでの人と申しますか、五十代の方が何人かいらっしゃるようですが、御本人がやっていこうとおっしゃいますれば、私どもとしては、そのくらいの年令の条件だけでは拒否はしないつもりでおります。
  16. 山下義信

    ○山下義信君 村上さんに一つ伺いますが、あなたはつき添い婦会の世話をなさっていらっしゃるのですね。つき添い婦会というもの、つまり派出婦会、つき添い婦の世話をしておいでになる。それで実情を御承知だろうと思いますが、つき添い婦の人はもう三十日ずっと病院に非常な御勤務ですが、承りますというと、ほとんど徹夜の場合もあるし、大へんなお仕事ですが、それで実際は承りますというと、今もお話がございましたように、ときどき一カ月のうち五日や一週間仕事のないような日が出てきて、日当が五百十円というようなことでも全収入にならないようなことがあるということですが、人によるというと、今の常勤労務者のように、からだが正規の職員としてくくりつけられてしまうのじゃなくて、つき添い婦の今のような状態ですと、出たり入ったりするというのが自由ですね。やはり家庭の事情で二日や四日は家にいて子供のめんどうその他をみたい。三十日、時間でくくりつけられているよりは、今のように二、三日は自分の家庭へ帰ったりして、いろいろ家の仕事をすることもしたいというような人もありますか。そういう点の便、不便というようなものについて何か特に注意しなくちゃならぬ点がありますか。つき添い婦の人たちの希望といいますか、その勤め方についてですね、それはどうなんですか、実情は。相当出たり入ったりがありますか。それともあるつき添い婦を清瀬の療養所に派出したらずっとそれは続きますか。やはり出たり入ったりして、こちらの療養所から向うの療養所というふうに、つき添い婦の出たり入ったりの状況はどうなんですか。それはあまりないのですか。それを一つ派出婦会といいますか、その立場から、実情をおっしゃっていただきたいと思います。
  17. 村上とく

    参考人村上とく君) お答えします。今つき添い婦会とおっしゃいましたけれども、うちの方は、名前は中野派出看護婦家政婦労働組合、そういう名前でございますけれども、これは病院の所長さんの話し合いでもって、中につき添い婦事務所をお借りしまして、病院内でだけやって、ほかには派出しないことになっております。
  18. 山下義信

    ○山下義信君 はあそうですか。中で作っている組合ですか。
  19. 村上とく

    参考人村上とく君) それで結局今言ったように、今度は江森さんの方の管轄になりましたけれども、ある病棟でつき添い婦を一人ほしい場合は、江森さんの方に申し込みを出すわけです。江森さんの方から私の方にお電話でもって、何病棟手術なら手術と、さもなければ喀血患者が出たから、そこに適当者だれか一人いるかというようなお話がありまして、それで五人か三人も手があいておりますときには、私ども江森さんの考えで、これなら適任者だというような考えで、その方に回しております。ですから、もし今の制度が切りかえになったとしても、大体泊っている者が、うちの方には今百名になっておりますけれども、百名の中三分の一ぐらい泊っているのです。中にこのつき添い婦の部屋をお借りしておりますから、各病棟に大体ついております。そうしてその方たちはそこから、用が済めば、勤務が終ればまたその部屋に来て休んでおる。また朝六時前に出ていって……そういったような便宜を所側の方から受けておるわけでございます。ですから今申しましたように、もし手があいてもほかに行くということは、その借りておる間はしないようなお約束でもってそこに置いていただいておるのであります。
  20. 山下義信

    ○山下義信君 わかりました。  今のに関連して、江森さんのところでは、つき添い婦はあなたのところでお雇いになっておるのではないのですね。さっき島村さんのお話の中に、療養所では婦長さんがやるということですが、あなたのところではあなたがなさるのですか。
  21. 江森まさ

    参考人江森まさ君) はあ。
  22. 山下義信

    ○山下義信君 ああそうですか。やはり同じことなんですね。そうですか、わかりました。そうすると、どの患者につける、この患者につけるつき添い婦をどうするかという、そういうお仕事もあなたの方でなさるのですか、あなたの場合は。
  23. 江森まさ

    参考人江森まさ君) はあ。
  24. 山下義信

    ○山下義信君 わかりました。
  25. 相馬助治

    ○相馬助治君 私は島村さんと常村さんに一点ずつお尋ねしたいと思うのですが、この問題は、厚生省側の言い分を聞いてみますと、患者のためにも、療養所のためにも、そうして日本の社会保障制度の前進のためにも、今般つき添い婦制度をやめたい、こう言っておりますし、つき添い婦側から聞きますと、患者のためにも、療養所のためにも、現在の日本の社会保障制度の現実の上からも、この制度をやめられることは非常に困る、自分たちの生活権の問題はもちろんだが、そういう点からも困る。こうおっしゃっておるわけでして、島村先生のようなお立場にある方の御意見というものが非常に当委員会としては重大だと、こう私どもは考えておるわけです。そこで私は先生に一つ率直に教えていただきたいと思うのです。それはつき添い婦を今般厚生省が廃止するということは、制度上からは一歩前進であると先生は先ほどおっしゃったわけです。現実の問題の看護力という点からいうと、きわめて多くの問題がある、こういうふうにもおっしゃったように思うのです。そこで問題は四千二百人いたつき添い婦を二千二百七十人の看護婦に置きかえるという現実のこの問題に対しては、所長さんとしてはどのようにお考えであるか、賛成であるか。反対であるか。賛成であるとするならば、その理由はいかなる点において賛成でございましょうか。それとも反対の場合には、どんな立場から御反対でございましょうか。基本論でなく、現実に今問題になっておりますのは、数が明示されておりますので、この問題について一つ御見解を承わりたいと思うのです。実をいえば、重症患者の方にこれは聞くことが一番はっきりしていいのですが、当委員会でこのことを聞くことができませんから、その患者の気持をも含めて島村先生の御見解を一つ承わっておきたい、こういうふうに思います。  それから第二の問題は、今回政府が出しておる予算案並びにこの制度の改革なるものがそのまま実施されますと、看護婦に支払われる金と雑仕婦に支払われる金がしかく明瞭でない。いわば所長さんのお手元において自由に操作できるように相なると、こう思うのです。これは十分な金額がある場合には自由にお使いになれる制度の方がよろしいのですが、非常に足らないことは明瞭です。非常に足らないことが明瞭なこういう金がお手元に自由に使われる形で来た場合には、勢い看護婦の数が増加していく傾向になりますか。それとも幾分安く使い得ると推定される雑仕婦の数が増していくような傾向になると御推定になりますか。これは御推定ですから答えられないという場合もあると思いまするが、おわかりになったら一つ教えていただきたいと思います。  それから常村さんがちょっとおっしゃったことで島村さんにお尋ねしておきたいのですが、二週間のつき添い婦の金が出た、最初の一週間は重症患者一対一でついていたが、その次はその一週間が二週間に延びまして、すなわちつき添い婦一人が二人の患者につくようになることがあるということですが、そういうデリケートな問題はだれがきめるのですか。そうしてそのきめ方がおかしいというようなときには、所長としては、それをおかしいというので訂正させるような法的権限——は先ほど山下委員との質疑の中でないように思いますか、法的権限は別として、そういう権限がおありでしょうか、指導権がおありでしょうか。これだけを島村先生に三点お伺いしたいと思います。  それから常村さんには、あなたの立場からはこういう制度は廃止しては困ると強く御主張になることはよくわかりますが、つき添い婦全般の方々の意思を代表してそういう御発言だと思いますが、ただ一点私が聞きたいのは、この制度を存続させるのは、今ままでいいんだ、こういうのではないでしょう。今のつき添い婦制度にもこういう点がまずい点である、今の制度を残すのだけれども、こういう点はつき添い婦自身が国の権力あるいは療養所長の権力等によって制限されても、この程度はやむを得ないのだ、しかしこの制度は残してもらいたいのだ、これがむしろあなたたちの本音ではないかと思うのですが、さようでございましょうか。それとも現在のつき添い婦制度はこれでいいんだ、この制度をこのまま残すことでもう間違いないのだという御見解でございましょうか。この一点をお尋ねしておきたいと思います。
  26. 島村喜久治

    参考人島村喜久治君) 第一の点からお答えいたします。現在政府案とされております二千二百七十人で十分かどうかという御質問でございますが、先ほど申し上げましたように、患者の実際の治療の責任を持たされております現場の責任者としては重大な不安を感じておるということなのでございますが、実はこれを二千二百七十名を現在全国立療養所に入所しておる患者と対比してみますと、二十五人に一人の割になるそうでございますが、これは全国立養療所百八十数カ所ございますが、百八十数カ所の全国立療養所の平均でございますので、実は二十五人に一人の割で全国の百八十カ所に分けるのではないようでございます。それで従いまして私の所へ二十五人に一人の割合で来るのか、あるいは二十五人に一・八くらい来るのか、この辺は今皮算用しておるところでございますが、そういう点で、私の所についてはできるかできないかということをお尋ねになりましても、答える資料と申しますか、資料がないわけでございまして、ただ私ども考えてみまして、やはり二十五人に三人も来るはずはないのでございまして、そういう点でこれでは非常に不安があり、また重症患者諸君がベッドから心細い目をしておるのを見ましても、これを説得するだけの、大丈夫安心しておれと言うだけの自信もないわけでございます。  それから第二の点につきましては、従来の看護婦と今度の雑仕婦の予算が流用できるかという意味かとも存じますが、これはできないのじゃないかと思います。その辺は私はまだよくわからないのでございますが、看護婦の方は本来定員でございますし、今度の雑仕婦常勤労務者という格好で参りまして、おそらく予算が別個になって参りますので、お互いに流用はできないのじゃないかと思います。この辺は自信がございません。よくわかりません。  それから第三番目の問題としましては、一人づきで許可申請して、たとえば二週間として取った場合に、二人づき、三人づきのやりくりは実は私どもの所ではやっております。これは一つの理由は、そういたしませんと足らないからでございます。ただいま中野療養所で百人という数字が出まして、私の所で七十数人というお答えをしましたが、この数の違いは、実は中野の療養所と私のところでは患者数としましても幾らも違いませんし、手術の件数も幾らも違ってないのでございますが、おそらく中野療養所は厳重に一人つきを実施しておられるのだろうと思います。私のところは少し操作をせざるを得ない状況にございまして、つき添いさんと納得ずくの上で患者さんの手が多少抜けるような、手術後二週間、三週間たってきて経過がいい場合には、もう一人お気の毒だが見て下さいという格好で見てもらっておるのでございます。ですからこれは正しくないと申しますか、所長がそれを訂正したり、指導したりできるかという御質問でございますが、実際にはまあ所長の代理者として各病棟の担任医が病状を判定いたしまして、つき添い婦さんに主任を通して、あなたは二人見て下さい、というふうにお願いしておるわけでございます。この問題に関して実は二人づき、三人づきということが現在でもできれば、まあつき添い婦の数は減るのじゃないかということは常々厚生省にもお話していたのでございますが、一挙にして二人づき三人づきの段階を通り越して、一挙に廃止という方向に持っていかれたのでございまして、先ほど先生が一番初めにお話しになりましたように、つき添い婦制度廃止そのものは、私先ほど申し上げましたように決して悪い方向ではないどころか、積極的な意味すらあると思うのでございますが、ただ現在の国立療養所の設備、それからほかの人手、つき添い婦以外の、看護婦も含めてでございますが、つき添い婦以外の人手の不足の状況から考えましても、それから国費の少なさと申しますか、炊事場で働く人員人手の少なさ、そういう問題もひっくるめまして、現在の国立療養所の置かれている条件で、つき添い婦だけを廃止しよう、こういうためには、かなり人海戦術にも似た、人手ですべてを補い得るような莫大な数を持ってこなければ、私ども重症患者看護に力を抜かないでやってゆけるというだけの自信がないのではないかということをおそれているわけでございます。
  27. 常村まさ

    参考人(常村まさ君) ただいまお尋ねにあずかりましたのですが、私どもこれをこのままで存続して頂きまして、それ以上のお願いは、二週間だとか三週間だとかいうふうに主治医が認められないものを、主治医でない先生が勝手に打ち切られるということが、ほんとうに何と言いますか、まだ患者さんに手もかかるし、動けない人を何と言いますか、ほうっておくような格好になりまして、そこのところをやはり主治医はほんとうに最大限じゃなくて、最小限に見積ったつき添いのつけ方だと思うのですが、それは認められなくて、ただ厚生省の二週間だとか三週間、机の上だけの計算で基準がきめられまして、それにことこととはめ込まれるわけなんでございます。それをやはり主治医の方から言いましても、国の予算の関係もありますし、決してむだなことではなくて、最小限だと思うわけなんでございます。その点をつき添いといたしましても、まだほんとうに悪いのに手を放さなきゃいけない。そうしましたら、今度もっとつけたかったら、先生にもう一ぺん申請書を書き直してもらう、追加申請をするわけなんです。そういうことが先生の診療の上から妨害になっていると思うのです。簡単に申請ができればいいのですが、もう一度つけたければ、もう一度同じことを書いて出せというわけです。そのために先生の方でも手が足りないのに診療の妨害になる。私たちも先生もう一ぺん書いて下さいというのも言いにくいし、やはり主治医の意見を尊重して、何といいますか、許可をいただきましたら、つき添いとしましても、患者さんの療養の面からもほんとうに中途半端でおっぽり出すのではなくて、やはりある程度よくなって、一人立ちができるようになってから切られるというんだったら、私たちもほんとうにいいと思うのですけれども、現状はそうでないわけでございます。
  28. 相馬助治

    ○相馬助治君 質問の趣旨が常村さんの聞きとり方が違ったのですが、現在のつき添い制度について不満がありますかと聞いたのではないのです。不満があるもないもなくて、つき添い婦の現在の制度が全部吹っ飛んでしまうという騒ぎなんです。そこで私が聞いているのは、あなたはつき添い制度をこのまま残してくれとおっしゃったから、それはわかりました。わかったが、現在のままで残してくれというのか、それとも私たち自身も、たとえば身分の点についてはこういう拘束を受けても、あるいはさっき島村所長さんのお話のように、所長さんあたりからこういうふうなあるいは限度のようなものを受けるような規則になっても、とにかくこの程度のことならば、私たち自身の程度が幾分窮屈になることもやむを得ない、ともかくこの制度を残してくれ、こういう意見もあると思う。今のまま何でもいいから残すというのは理想ですけれども、私たち自身もこういう点は直されてもやむを得ないという点も、もしあったらこの際聞かしてくれぬかということを私質問しているのです。私の聞き方が委員長まずいですか。(笑声)
  29. 常村まさ

    参考人(常村まさ君) 廃止をしないでこのままつき添い制度というものを残していただくわけなんですね。その上のことでございますか。残していただきまして、それ以上何か注文があるかと言われましたら、たくさん注文ございます。
  30. 小林英三

    委員長小林英三君) 速記をちょっとやめて下さい。   〔速記中止〕
  31. 小林英三

    委員長小林英三君) 速記を始めて。
  32. 阿具根登

    ○阿具根登君 今のに関連して、二つの面から考えてみたいと思うのです。たとえばつき添い看護婦さんは八時間勤務で、今の給与が保障されて、そうして首切りがなかったならば、こういうことがいいと思われるのか。今度は別な面から、たとえばこれは患者に聞くのが一番いいと思うのですけれども患者の方が手術をして寝ておって、目がさめるたびにつき添い婦さんが変っておるというのは非常にさびしい感じをされるから、やはりその一番ひどいときには同じ人が最初から、一番詳しい人がきたないところの掃除から何からしてもらうのが一番気がねもしなくていい、こういうような面があるのかないのか、どちらを重視しておられるのかということをちょっとお聞きしたいのですがね。
  33. 常村まさ

    参考人(常村まさ君) やはりあとのあれだと思うのですが、やはり患者さんはずっと一人がつききりにしまして、一々変ったりするとほんとうに困ると思うのですね。今でしたら一人の患者さんにほんとうに手のあくまではずっと一人がつき切りでできるわけなんです。これが療養所の管理になりまして、お前はきょうはこっちだ、あっちだと言われれば、患者さんはほんとうに大へんなことだと思うわけです。だから私が思いますのは、やはり患者さんの一人に許可が出まして、打ち切られるまでは、ずっと同じ患者さんにつくことが患者さんもよろしいでしょうし、私たちも勝手がわかっていいと思うのです。変りましたら行ったたびに新しくなるわけです。やはりつきました場合には家族と同じようになるのですから、患者さんには何も不自由をかけないで、ここにあれがある、そこに何があるというふうに一つの家族になるわけですが、それが転々と変りますと、ものすごく違ったものができると思うわけです。それですから、やはり私は今の制度が、今はやはり患者さん一人に対して雇用主が患者になっているというので、その人にずっとついているわけなんです。やはり患者さんがいやと言われればかわらなければなりませんが、つき添いさんにやはりついていてくれと言われれば、やはりその患者さんにつき切りにできるわけなんでございます。患者さんもほんとうに都合がいいですし、私たちもほんとうにそれが都合がいいわけなんでございます。
  34. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすれば、あなた方の待遇が八時間で、そうして失業の心配もなくて生活をやれても、これはいやだと、こういう制度はいやだと、患者は一人のつき添い婦さんにずっとつき添われるのが望みだと、そうすると、もう一つこういうことも極端なことですけれども言えるわけなんです。たとえば私たちが病院に行って、看護婦さんに注射をしてもらう場合でも、同じ器械で看護婦さんがされても非常に痛い注射と痛くない注射とあるわけなんです。看護婦さんによって非常に上手な注射と痛い注射があるわけです。つき添い婦さんにしてもそういうようなことが言えるわけです。そうした場合に、逆に今度は患者さんの方でもいろいろ変ったつき添いさんの方を望まれることがありはしないか。先ほど問題があったら——そういうふうに言われましたけれども、最初の質問が私のお聞きしたい質問だったのです。もう一回繰り返しますと、たとえ自分たちの勤務時間が十六時間も二十四時間も今勤務しておるのが、それが八時間になって、そうして身分保障されてもらってもこれはいやだと、患者のためにいやだとおっしゃるのと、患者はどちらを望んでおられるのか、こういうことなんです。
  35. 常村まさ

    参考人(常村まさ君) やはり患者さんは一人で……。私たち公務員となりまして、身分保障をされますというのですが、患者さんの方からいいましたら、やはり一人の人がつき切りにしてほしいという方をとると思いますし、私たちもその方が同感でございます。
  36. 阿具根登

    ○阿具根登君 最初の問題は……。
  37. 常村まさ

    参考人(常村まさ君) 何と言いますか、今あなたの方からおっしゃいました、八時間労働で公務員になって、生活ができたらいいじゃないのか。それとも患者さんは、患者さんの方から逆の場合に、変った人がちょっちょっと来てもらう方がいいと思うのと違うかというような質問だったと思うのですけれども、私言い方が下手くそなんですけれども、やはり患者さんはそんなに転々と変るのではなくて、一人の人がずっとついてくれる方を望んでいると思いますし、私たちもやはり公務員にしていただかなくても、その方がけっこうだと思います。
  38. 小林英三

    委員長小林英三君) それから常村さん、先ほど相馬さんからの御質問がありましたが、これに対する御意見がありましたらおっしゃって下さい。相馬委員からの先ほどの御質問に対して御意見ございませんか……。「ないない」と呼ぶ者あり)
  39. 長谷部廣子

    長谷部廣子君 それに関連をしてでございますけれども、きょうのような場合にでも患者の方を呼んでいただきたいとほんとうに思うのでございます。けれども大てい呼んでいただけないだろうと思いまして、私は先回りして郷里の方の国立療養所に行って患者に会ってきたわけなんです。そうしますと、患者はもうつき添い婦さんのことをおばちゃんおばちゃんと言ってほんとうに親身の母親のように慕っているのでございます。それでどうしても一人が一人の人につき添っていただかないと不安でたまらないということを患者は言っているわけなのでございます。そこでいろんな人に聞いてみたのですけれども、中でこういうことを言った人があるのです。話は非常に小さな問題になるけれども、これは非常に大事な問題だと思うのですが、やはり一人に一人ついていただけない場合でございますが、便器を差し込まれたのだそうです。そうしたらなかなかとりに参りせんで、それで二時間くらいほうっておかれたことがあるのです。そういうときにまあ食事が次に運ばれましたから、そういうようなところで食事をしなければならないという、現実の問題も起ったということなんです。それが一つと、それから食事でも運んできてもらいますと、患者というものは非常に食欲が減退するものですから、おかゆでも温度が非常に大事なものですし、それからそのかたさというものまで考慮しなければならないという、そういうようなこまごまとした心づかいというものは、やはりつき添い婦さんがそばにほんとうに親切についていて下すってこそ、これは患者の要求通りになるのですから、そういったようなことをどうしても考えて見ましても、これはやはりつき添い婦さんというような方は廃止するということは、私は絶対反対だと思ったのです。ところで先日厚生大臣に伺って見ますと、看護内容を充実させるためにこういう制度を廃止するんだということをおっしゃったわけですけれども、今お四人の権威ある参考人の御発言を伺いますと、内容を充実させるどころか、かえってこれは低下させるということをはっきり私は感じたわけなんです。ですからもう一度厚生大臣にもおいでをいただいて、しっかりしたところを申し上げ、また伺わなければならないと思うのですけれどもほんとうに今日はありがとうございました。それで伺うのですが……。(「簡単々々」と呼ぶ者あり)
  40. 小林英三

    委員長小林英三君) 長谷部君に申し上げますが、病院の方は、当委員会において視祭をいたすことになっております。
  41. 長谷部廣子

    長谷部廣子君 ありがとうございます。
  42. 榊原亨

    ○榊原亨君 ちょっと簡単に、時間がございませんから、島村先生にお聞きをいたしますが、先ほどつき添いの流用をやるというお話がございましたが、そのつき添いの流用をなさいますときに、届出は二人の患者につくということをお届けになりまして、厚生省、あるいは基金の方からお金をもらっていらっしゃるのでございますか。それは生活保護法あるいは社会保険の面におきまして違反にならないのでございますか。その点を一つ……。  もう一つは九十何円で食事がある。その食事はどうも十分患者さんが——病気の重い患者さんにその食事はいかないんだと、そこでどうしてもつき添いの方にいろいろめんどうを見ていただかなければならぬということでございますが、そういたしますると、今国立療養所、清瀬療養所で九十何円で作ってらっしゃる食事というものは、おそらく栄養士がいると思いますが、おそらく重症患者には、そういうことではあまり適当でないという食事をしてらっしゃるのでありますか。その点が第二点であります。  第三点は、先ほどつき添いの方のお話によりますというと、非常に重症患者であるので、もう手術後におきましては、しょっちゅう脈をみてやらなければならぬのだ、そこで食塩注射というようなものもやらなければならぬ、その手伝いをするのだというお話でありますが、清瀬の療養所におきましては、看護婦の方がリンゲルをおやりになりましたり、あるいは輸血をおやりになるのか何か知りませんが、そういうことはつき添いに手伝わせてやっているのでありますか。看護婦に手伝わさせてやってらっしゃるのでございますか。その点はいかがでございましょうか。  それから先生のところでは、全国平均するというとそれはいいかもしれんけれども、私のところではその二十五人に一人じゃどうも困る、困るんじゃないかというような御説明でありました。そうしますならば、先生のところでは、何人に一人の要員がおりましたならば先生の方で御満足いくような、まあ御満足じゃありませんが、治療ができるのでございましょうか。  その次にお尋ねいたしたいのは、先生のところでは肺切除をおやりになりましたり、あるいはトラコプラスチックをおやりになりました場合に、何日間先生のお考えではつき添いがついてなければならぬのか、というお考えはいかがでございましょうか。その点お聞きしておきたいと思います。
  43. 島村喜久治

    参考人島村喜久治君) 最初の二人つきの問題でございますが、これは所内で操作しておりますので、何と申しますか、福祉事務所へ請求を出すのは、もちろん一人分でございます。それで余力ができてきたような場合に、つき添いさんに無理を言って、もう一人近くの患者さんで、つき添いさんが一日のうち何時間と言いますか、何回か顔を出してめんどうを見てやれるような病状の人をお願いしているわけなんでございます。実際には、確かにこれは違法でございます。違法でございますが、そうでもしない限り実際上不便が起りますので、不便と申しますのは、看護婦の手が足りませんので、実情やむを得ずやっているわけで、二重どり三重どりなどやっているわけじゃございません。  それから二番目の問題でございますが、九十六円なんでございますが、九十六円の食費では不足か、重症患者に不適当な食事しか出していないかと言われますと、まあ国立療養所長として言いにくいことなんでございますが、確かにその通りなんでございます。と申しますのは、清瀬町には民間、私立あるいは都立の療養所あわせて十三ばかり療養所がございますが、どこを開いてみましても、食事健康保険あるいは生活保護法患者にも実費として百二十円前後をかけております。私のところでは九十六円、国立療養所では九十六円以上使えないわけでございまして、どうしてもまあこの九十何円以上の差の二、三十円というのは当然副食にかかって参りますので、副食で一日二十円、三十円違えば非常に差が出てくるのでございます。そういう点で私どもこの食費をふやすことは、やはりつき添い廃止の問題と裏表の問題であるということをいつも主張しているわけでございますが、なかなか実現しないのでございます。で重症患者には、あるいは手術直後の患者にはもちろん程度を分けて、流動食から五段階、何段階か各療養所によって違いますが、段階をつけた食事を出しているところもだんだんふえて参りました。私どものところでも出してはおりますが、やはり何といいましても重症、ほんとうに生きるか死ぬかの境の患者にとってみれば、段階的な食事よりもやはり今日はすっぱいものを食べたいとか、もう少し甘いものが食べたいという場合には、やはり画一的な療養所食事だけでは間に合わない場合があるのでございます。そういう場合にはそれじゃ食べるなというわけには参りませんで、そういう場合にはつき添い婦さんがそれに何らかの加工をして患者に食べさしているわけでございます。  それから三番目の問題は、重症あるいは手術直後の患者のリンゲルや輸血でございますが、これは原則として看護婦がやっております。つき添い婦さんに実際は湯をくんできてもらったり、あるいはリンゲルの場合足をもんでもらったりというような手伝いはしてもらっておりますが、実際は看護婦がやっております。  それから四番目の、清瀬で今後つき添いを廃止する場合の必要な人員という御質問でございますが、まあ全体のつき添い婦を全廃して、全部を今度の常勤労務者で置きかえるとなりますと、まあ私ども外科の医者、医長、それから外科の看護婦あたりと相談した数では大体九十人という数字が出ております。これでもかなり窮屈かと思います。ぎりぎりのところでございます。それから私ども患者が九百三十、定床九百三十でございますので、大体十人前後に一人ということになります。  それから五番目に、成形あるいは切除術後のつき添いの期間はどのくらいが適当かという御質問でございますが、これはやはり看護人員によってかなり違ってくると思いますが、実際に厳密な意味で医学的に二十四時間絶対に目が離せない期間、これは一人でつくか、二十四時間を三人でつくかは別といたしまして、二十四時間片時も目が離せない時間というのはおそらく私のところでは五日間であろうというふうに見ております。それからあとはたとえば二人ベッドが並んでいれば二人を一人で見ることもできる、もちろんこれは病室の構造、人員によって違って参りましょうが、そのことだけを切り離して考えれば、全然目が離せない期間というのは五日間だろうと思っております。
  44. 榊原亨

    ○榊原亨君 先の療養所の場合でございますね、生活保護健康保険の方から監査をされました事実がございますか。今まで全然監査をされないでそういう方法でやっていらっしゃるのでございますか。その点を一つ……。
  45. 島村喜久治

    参考人島村喜久治君) 実はされたのでございまして、それで実は前に何年でございますか、ちょっと正確に記憶しておりませんが、数年前までは実はこういうことが許可されていたわけなんでございます。それが……。
  46. 榊原亨

    ○榊原亨君 されたのならいいのです。
  47. 加藤武徳

    ○加藤武徳君 ただいま島村さんの方から雑仕婦の数が大体九十名程度がよかろう、こういうようなお話を承わったのでありますが、このお答えと関連して私は江森さんにちょっとお尋ねしたいのであります。去る昭和二十五年の夏から約三カ月間、補助婦制度というか、今厚生省が頭に浮べておる雑仕婦の制度、これを実施なすった、そうしてその詳しい内容を承わったのですが、当時つき添い婦が百一名おられた、ところで補助婦の制度に切りかえた場合には最低九十名程度の人が必要だろう、かように思った、かようなお答えを承わりましたが、つき添い制度で百名をややこした場合、それを補助婦の制度に切りかえて、若干の数が減っても看護は可能であった、かようにお考えであったかどうか、その点をちょっと……。
  48. 江森まさ

    参考人江森まさ君) お答えいたします。つき添い婦の場合には一人に一人つくということで、多少看護力を減らしても、島村先生がおっしゃったようにある程度、たとえば手術後の場合ですと、一週間くらいたつと二人づきでもいいというような時期になりましても一人づきをしております。そして許可された期間がくると、それをゼロにしてしまわなければならないという状態でございますけれども、補助婦の場合ですと、その点は二人づきにし、また次の週には三人づきにするというような操作を考えている数でございます。  それから補助婦の労働力と看護婦労働力を置きかえるといいますか、雑役的な面に向けて、看護婦が直接患者さんの看護をするというふうな、そういうふうに考えての数でございますが。
  49. 加藤武徳

    ○加藤武徳君 それでは療養所長がじかに監督しないまでも、婦長や主任看護婦、あるいは医師の十分な指導なり監督や管理のもとに置かれれば、むしろ数の点では今のつき添い婦の数よりも雑仕婦に置きかえた場合の数がやや減っても大体間に合うだろう、こういう御意見と御了承していいですか。
  50. 江森まさ

    参考人江森まさ君) それは療養所ではそういうふうに考えております。ただ患者さんの声としましては、やはり直接看護に当っております参考人の方たちの声のように、自分の専任のつき添いになってもらいたいというそういう希望も絶対でございます。
  51. 加藤武徳

    ○加藤武徳君 これは感情的なものは除いての意味でございますね。
  52. 江森まさ

    参考人江森まさ君) ……。
  53. 横山フク

    ○横山フク君 島村さんに伺いたいのですけれども、先ほど十人に一人というお話でしたが、その十人に一人というと、五日間の間、手術後五日間の間一人が一人につき切りと、そういうことを前提において十人に一人というのですか。もう一つは十人に一人が雑仕婦の場合、看護婦さんは六人に一人の割合になってくる、その六人に一人の割合で十人に一人が雑仕婦であるかどうかということを伺いたい。  もう一つは、これは現在の清瀬病院では定員法に満たされるだけの看護婦が置かれてあるかどうか、実際には看護婦さんの定員雑仕婦が入っているかどうか。その点を伺いたいと思います。
  54. 島村喜久治

    参考人島村喜久治君) 十人に一人と申しましたのは、やはり手術後五日間は一人づきというのではございませんが、先ほど申し上げましたように二十四時間を三人で交代して、ある時間はどの時間をとってみても一人がついている、その一人が一日のうちで三交代するということを計算しての意味でございます。看護婦とつき添い婦、今度の雑仕婦でございますが、一応別個に計算してございます。と申しますのは、従来の六人に一人の看護婦の上に十人前後でございますが、各一人の雑仕婦が加わって各病室に何人くらい看護婦がつくかということを計算しての数でございます。  二番目はどういうなんでしたか。
  55. 横山フク

    ○横山フク君 看護婦定員だけのものが清瀬では採用されているかどうか。定員看護婦に欠員がいるか。またその欠員は雑仕婦等が欠員の名でもって入っているかどうか。
  56. 島村喜久治

    参考人島村喜久治君) 看護婦定員は一ぱいになっております。しかし実際はその中の二十二、三人、これは多少違うかもしれませんが、二十二人か三人、これは病棟雑役婦になっている。従ってその看護婦の実際の定員よりもそれを引いただけが実際の看護婦の数でございます。二十何人かが雑仕婦になっております。
  57. 横山フク

    ○横山フク君 そうしますと、実際には二十何人かが雑役婦でとられているので、患者六人に対して一人というあの形は実際には行われてはいなくて、六人半かあるいは七人に一人という形に看護婦は現在なっているということに解釈していいのですか。
  58. 島村喜久治

    参考人島村喜久治君) さようでございます。
  59. 横山フク

    ○横山フク君 その今の六人に一人の看護婦は、そり六人に一人が妥当であるか、あるいはまたその六人に一人というものはほかの線が出る方が妥当であるかということに対して御意見はどうですか。
  60. 島村喜久治

    参考人島村喜久治君) 先ほど申しましたように、看護婦プラス看護助手と言いますか、補助看護婦と言いますか、名前はいろいろあると思うのですが、雑仕婦でもけっこうですが、名前は何でもいいのですが、病棟患者看護に当り得る人員は大体先ほど申しましたように、国立病院並みは最低ほしいと思うのでございます。つまり四人に一人でございます。これだけあれば何とかできるんじゃないかと思っております。
  61. 山本經勝

    ○山本經勝君 島村さんに伺いたいのですが、先ほどのお話の中で特定の患者について看護を必要とするということで、つき添い婦の申請が出ると、その申請について他の患者も一緒に見させるような心持ちで許可をしたり、あるいは言葉をかえて言いますと、そのつき添い婦の重用ということのお話があったわけですが、それについては特定の人に期限を切って二週間のつき添いを与えるのでありますが、そのつき添い婦を他の患者も見させるという重用をなされねばならないということは、つき添い婦の絶対数が足りないのだということに理解してよろしいですか。  それからもう一つは、常勤雑仕婦という形で切りかえられるということに案としてはなっているわけでありますが、そうした場合につき添い婦と常勤雑仕婦との業務上の相違から看護はさらに不行き届きになるというような点の御懸念がございますかどうか。以上の二点についてお伺いをしたい。
  62. 島村喜久治

    参考人島村喜久治君) 第一のお尋ねの件はその通りでございます。つき添いが足りない現状なんでございます。先ほどの中野療養所の百人と清瀬病院の七十五人を比べていただけばわかると思いますが、少いからそういうことになっているのでございます。  第二の点は、常勤労務者になりますと、これは何と申しましても公務員が少し評判がよくないようでございますから、つき添い婦より仕事の内容が多少落ちる危険がないとは言えないと思います。そういう点でよほどこういうことになりますと、私ども覚悟をきめて指揮監督を強化しなければならないと思うのでございますが、実際には今まで一人のつき添いがついていた患者さんに常勤労務者を一人つける場合は、やはり三倍の数が要るのでございますから、もう少し仕事の内容整理いたしまして、分業化いたしたいと思っております。
  63. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 つき添い婦の方の御意見を十分伺えないのですが、さっきの阿具根君の質問に対してもまだはっきりした御返事が聞き取れなかったのです。まあ江森さんでも、村上さんでも、常村さんでも、どなたでもけっこうですが、今つき添い婦の方たちが絶対にこのままの状態でつき添い制度を残してくれと言われることはわかるわけですが、その言われる理由は、雑仕婦に切りかえられると、現在の収入だとか、あるいはそれがずっと身分保障される制度であるかどうかというようなことが不安だから、雑仕婦に切りかえられることに反対なんですか。ただその雑仕婦ということが十分わからないで、現在のままにしておきたいというような気持から、つき添い婦の現在の制度をこのままに残してほしいと言われているのでしょうか。その点をまず返事して下さい。常村さんにお願いいたします。
  64. 常村まさ

    参考人(常村まさ君) 今雑仕婦に切りかえられまして、身分保障があったらいいのではないか、その点が収入が半分になるからいけないのかというお尋ねですが、私はその点もあるわけなんです。厚生省の方でああいうふうに常勤労務者になって、身分保障ができていいじゃないかと言われることはよくわかるのですけれども、私たち今働いておりますだけで生活が精一ぱいなんでございます。それからずっと下りますと、生活がまたできなくなりますし、もう一つは今四千二百人おりますのが、二千二百七十人に減らされて、しかも看護する時間が八時間になった場合の医療の面から申しまして、これでは患者さんの医療が守れないのではないかという点、両方でございます。
  65. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 二つの面からといっても、一つの点、ほんとう完全看護のために挺身しようという面は今ちょっとしばらくおきまして、生活の面で収入が減るということが一番主な原因じゃないかと私は考えるのですが、ところが生活が現在ぎりぎりであるということはつき添い婦さんだけでなくて、大体日本の勤労階級はそういうふうになっているのですけれども、これは大阪や東京はつき添い婦さんの収入が非常にいいのですが、全国の平均は必ずしもそうでない。ところが定員化されるところの雑仕婦の収入というものは、大体月に八千円、それから期末手当があります。それから皆さん方今持っておられないところの共済組合であるとか、こういう互助制度がありますので、全国平均してみたら、厚生省の調べでは一万七百円くらいになるという報告をいま得ておるのです。そうすれば、現在全国の平均から、すなわち東京都だとか大阪とかいうところのいいところ、雑仕婦の収入のいいところだけでなくて、全国的に見て、やはり全国のつき添い婦は現在の収入の方がはるかにいいから、その方が自分らの生活を安定することになるから、これがどうしてもこの制度でなければならないと言われるのでしょうか。もう一度、全体的にものを考えておられる江森さんや村上さんにも、そういう意見や御感想がもしあったら返事をして下さい。
  66. 常村まさ

    参考人(常村まさ君) 私はやはり今のままでおいていただきまして、これでとにかく全国的に自分らの生活保障されていると思います。今の収入で……。ですから、このままでやはりおいていただいた方がけっこうだと思います。
  67. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 この点はなかなかむずかしい点ですね。それで二十四時間勤務ということについて、あなた方が二十四時間勤務に満足しておられるということについて、私どもは形式的にちょっと非常に疑問があるのですね。二十四時間勤務が非常に理想的だ、これでなくちゃならないというふうな結論になるわけですね。八時間勤務であればつき添い婦が一万二千人要るわけです。現在四千人おられるとしても一万二千人になりますね。それから厚生省の雑仕婦二千二百七十人というのは八時間勤務雑仕婦ですから、これを二十四時間勤務で直せば、実質的にはこれは七百六十人くらいのことになるのですね。二十四時間勤務のつき添い婦にかわるものとするならば実質的には七百六十人、だからこういう点にあなた方が心配になるのじゃないかと思うのです。定員々々といって、定員に切りかえるといっても、ほんとうは現在の中のごく一部しか雑仕婦には切りかえられない。しかもその収入は現在皆さん方が一万二、三千円あるのに対してこれが八千円か九千円になるだろう、こういう点がつき添い婦の方が現在の制度をこのまま置いてくれということを要望されている元だと私どもは考えざるを得ないのですけれども、それはそうなんですか。
  68. 常村まさ

    参考人(常村まさ君) そうです。
  69. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 それでいいんですね。
  70. 常村まさ

    参考人(常村まさ君) それでけっこうでございます。   〔委員外議員藤原道子君「私、委員外議員の質問がお願いできましたら」と述ぶ〕
  71. 小林英三

    委員長小林英三君) 今藤原君から委員外議員の質問をさしてもらいたいという御発言がございましたが、これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  72. 小林英三

    委員長小林英三君) それでは許可することにいたします。簡単に。
  73. 藤原道子

    委員外議員(藤原道子君) 島村参考人にお伺いしたいのですが、つき添いの許可の問題でございますが、一人に一人ときまっているのに、あえて二人づきをきせなければならないのは、これは必要なりというので許可申請をしても現在許可にならないから、やむを得ず無理をしてもつき添いを二人に一人つけなければならないのか。それとも申請をなさらないでそういう操作をしておいでになるのかという一点がお伺いしたいことと、それから私どもが各病院調査いたしましても、非常に看護婦定員に無理があると思う。一般の人たちは六人に一人といえば、絶えず六人の患者にその人が常時いるものと解しやすいのであります。ところがこれは夜間の前夜、後夜の交代がございます。これにとられる。あるいは病欠がある。あるいは看護婦定員の中に雑役がいるというようなことで、常時看護婦さん一人で十二、三人から二十人くらいの看護をさせられているのが普通ではないかと私は見ているのでありますが、島村参考人はこれに対してどういう御見解を持っておいでになるか。夜などは前夜、後夜で一人の看護婦さんが全部の病床を見回らなければならないというような状態にある。そういう無理がたたって看護婦さんの病欠がやはり相当あるように聞いているのですが、島村参考人はこの点についてはどういうふうにお考えになるか。この点をちょっとお伺いしておきたい。あとはまたあとで……。
  74. 島村喜久治

    参考人島村喜久治君) 第一の点につきましては、先ほど私一番初めに申し上げましたように、つき添いの認可が非常に厳重になってきたのでございます。と申しますのは、常時一人づきで、常時監視を要する病状でなければ一人づきにならないわけでございます。ところが結核患者手術直後以外は、まあ結核患者といいましても、あるいは熱が出たといいましても、二十四時間常時つかなければならない病状というのはごく短期間なのでございます。実情はそうなのでございます。ですから私どもといたしましては、むしろそういうつけ方よりも二人つける、あるいは三人つけるという段階をぜひ認めてほしいということをお願いしたわけなのですが、それが実現していないわけでございます。従ってやむを得ず重症の、ほんとうに一人に一人つかなければならない病状の人についておるはずのつき添い婦さんに、まあ無理であるが、そういう申請しても許可にならないであろうようなより軽い重症、変な言葉ですが、もう少し病状の軽い重症、申請しても許可にならないだろうという人をお願いしておるわけでございます。実際にはこういう人は二人づき、三人づきでつき添いさせていただけばこの問題は解決できる問題でございます。と申しますのは、結核のものは御承知のように動ける、患者は動けます。おそらく火事だ、地震だというときは安静度二度、三度でも動けると思いますが、その動けるということと動かせるということは別でございまして、動かせないのが結核の治療なのでございまして、たとえ動けても動かせないようにしておる段階があるのでございます。いわゆる安静度と申しまして、二度三度の患者は、これは自分で便所や洗面場に行かれません。しかしながらこれはつき添い婦は絶対に許可にならないわけでございます。  それから二番目の御質問はおっしゃる通りでございまして、六人に一人、実際に六人の患者に一人看護婦がついておるわけじゃございません。夜間は私どもの場合でも六十人に看護婦一人というのが実情でございます。
  75. 小林英三

    委員長小林英三君) それではただいままでの参考人に対しましては、この程度にいたしたいと思います。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 小林英三

    委員長小林英三君) 異議ないものと認めます。  なおこの機会に参考人各位に申し上げますが、参考人各位には長時間にわたりまして、貴重な御意見の開陳を願いまして大へんにありがとうございました。  午前中の調査はこの程度にいたします。   —————————————
  77. 小林英三

    委員長小林英三君) この際ちょっとお諮りいたしたいと思いますが、赤痢予防注射等に関しまする件の調査のために、本委員会参考人出席を求めまして意見の聴取をいたしたいと存じます。参考人の人選、日時、手続その他につきまして、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 小林英三

    委員長小林英三君) 御異議がないと認めます。よって赤痢予防注射等に関します調査のために参考人出席を他日求めることにいたしたいと思います。  暫時休憩いたしまして、午後は一時半から再開いたしたいと思います。    午後零時三十七分休憩    ————————    午後一時五十九分開会
  79. 加藤武徳

    ○理事(加藤武徳君) それでは再開いたします。  休憩前に引き続き、つき添い婦制度に関する件について、参考人の御意見を聴取いたしたいと思います。  この機会に、委員会を代表いたしまして、参考人のお方に一言ごあいさつを申し上げます。参考人の方には、御多忙中のところ、特に御出席下さいまして、まことにありがとうございました。つき添い婦の制度は、医療行政に関する重要な問題といたしまして、当委員会においてこれを取り上げ調査することとなったのでありまするが、直接この問題に関係を持っておられまする各位の御意見を拝聴いたしまして、調査上の参考に資したいと思っております。なおこの席には厚生省当局出席をいたしておりまするが、御遠慮なさることなく、隔意のない御意見を十分に御発表賜わりたいと、かように存じております。  次に、御意見発表いただく事項につきましては、さきに文書で御通知いたしておりまするが、その項目にとらわれることなく、率直にお話を願えれば幸いと存じます。ただ時間の関係上、お一人十五分程度で御発表願い、後刻委員からの質疑がございますので、これに対してお答えを願いたい、かように思っているわけでございます。  なお、委員の方にお諮りをいたしますが、時間の関係もございますので、午前中と同様に、参考人の御意見発表が全部終りましてから御質疑を願う、かようにいたしたいと思いまするが、御異議ございませんか、   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 加藤武徳

    ○理事(加藤武徳君) 御異議ないと認めます。それではまず国立埼玉療養所医官松島良雄君からお願いをいたします。
  81. 松島良雄

    参考人(松島良雄君) 本日ここに参考人として招かれまして、つき添い婦問題に関連をしまして申し上げますことが、今後の結核対策の上に何らかの御参考になれば、はなはだ幸いと思っておるものであります。私ども国立療養所職員、特に医者また看護婦、これらは結核患者、特に国立療養所患者というものにいつも接しているわけでございますが、そして彼らのからだと精神状態、また経済状態まで非常に総合的に一番よく知っているつもりでいるわけであります。この患者状態とそれから結核対策の根本的なあり方、そういうものについても、皆様にほんとうによく知っていただかなくては、看護婦の増員とか、つき添い婦の問題、そういうものについて深い御理解がいただけないのではないかというふうに思っております。  まず初めに結核対策について、ちょっと触れて申し上げたいことがあります。結核対策は、もう御承知のことと思いますけれども、予防とそれから治療、後保護、その三つが一貫して強力に行われないと、どの一つが欠けても、またあまり薄弱なものであっては、結局いずれも水泡に帰してしまうということが考えられるわけであります。例を申し上げますと、結核予防法という法律、これは非常にけっこうなものでありますけれども、現在は書類審査のために非常に治療が遷延して、まあときには治療を開始しないうちに悪化さえしてしまうという状態が生じてきているわけであります。結局患者にとっても非常に不幸な目にあっているという事例がときどき見受けられるわけであります。それからまた化学療法が発達しましてから、その普及が広くなるにつれて、私ども療養所へ最近入ってくる患者さんについてみますと、大体いろいろな治療はすでに終ってしまったあとで入ってきている患者さんが非常に多いわけです。しかももう入ってきましたときには、ほとんど治療の方法がないというような状態の人があるわけであります。こういうことは、結局結核の対策というものがあまり一貫して行われてない結果、そういうことになってくるのではないかというような考えを持っているのであります。そこで現在の看護状況というものを考えてみますと、やはり同じような状態におかれているのではないかと考えられるわけであります。ことにきょうは、この点について私どものところでいろいろ検討したものがありますので、それを皆さんに御説明申し上げて、いろいろ御批判をいただきたいと思っております。  私たちの国立埼玉療養所調査した資料がございまして、それに医学的な考慮を加えまして作成した表がありまして、それは今皆さんのお手元へ回してあると思います。それをごらんいただきたいと思います。この看護の現況とそれから業務管理上の完全看護、しかも治療医学上最低看護と考えられる想定看護力、これを計算いたしまして出しましたもので、それについて申し上げたいと思います。  その先に、私自身、医者といたしまして、本来の看護のあり方というものについては、やはり患者というものは職員の手で看護するという意味で、完全看護はその精神が非常に望ましいものとは思っております。しかしこのたび考えられている方法ですと、むしろ看護力のマイナスになるのではないかということが考えられまして、それを一番初めに申し上げておきたいと思います。  まず、私ども療養所患者の特殊性というものがございまして、それはお回ししてある表でごらんになっていただけばわかると思いますけれども、表の一番と二番がございます。十ページになります。それをごらんいただきますと、一の表は、昭和三十年の三月末日に入所していた患者について、入所したときの費用はどういう費用であるかということを調べまして表を作りましたところが、医療保護の患者が二百五十二名、社会保険の患者が四百九十一名おります。そのうちで、それと下の表を比較していただきますと、下の表は、それらの人々が現在どういうような費用で入っているかというのを調べたものでありますが、医療保護の人は三百七十九名にふえております。そうして共済、国保その他の社会保険、そういう人たちが三百六十五名に減っているわけであります。それを昭和二十六年あたりを見てみますと、医療保護の人が二十九名から六十一名にもふえております。それから社会保険の人は五十三名から十八名にも減っているわけであります。これはちょっと表の順序がまずいのでありますけれども、十三ページの表を見ていただくとわかりますけれども、発病の年度が非常に古い人が約半数、五〇%以上いることがわかります。そういうことで結局療養所に入所している患者というものは、相当古くから発病して、相当長い年月療養生活を送っているということが言えるのではないかと考えられるわけであります。そうして結局、初めには諸種の社会保険制度によって医療を受けていた人たちが、長い療養の間に経済的に破綻を生じて医療保護を受けるような運命に陥っていったものと考えられるわけであります。  次に、国立埼玉療養所における看護の概要を申し上げてみますと、現在の療養所看護の形態は、もうすでに御存じのように、看護婦と補助婦と、それからつき添い婦という三者によって行われているわけであります。看護婦と補助婦は職員で、つき添い婦は国家から費用が出されているわけであります。それで昭和三十年の三月の看護婦勤務形態がどういう工合になっていたかと申しますと、表の四になります。十一ページになります。これを見ますと、看護婦は百十二名、補助婦が二十三名そのときに勤務しておりました。このうちに手術室、外来検査室、薬局、事務等に入っている——看護婦定員のうちから、そういう方面に使われている人を除き、直接に入所患者看護に当っている人員は百十一名、これは看護婦、補助婦まぜて百十一名であります。一日の平均の勤務者は、昼間が表にありますように六十三名になります。それから正午から午後八時まで、この人たちが十二名、夜勤が十二名、計八十七名が勤務しているわけであります。で、そのほかの人たち、これは日曜日とか祝祭日、そういう日の代休または病気休暇、そういうものによってこれだけの人数に減っているわけであります。これを見ますと、勤務者が一番多い日中、そういうときに看護婦一人の受け持つ看護人数というものは、平均して十三名強になっております。これは私ども療養所病棟の構成、といいますと、一病棟患者が約七十名おります。そこに看護婦を配置しますと、昼間で五名ということになります。そしてその看護婦がどういうような仕事をするかといいますと、表にありますA、B、C、Dという十五ページ以下の表になります。これをごらんになるとおわかりのように、非常にいろいろな種類の仕事をやっているわけであります。で、この業務を分類してみますと、看護婦がやらなければならない仕事であるけれども、やらずにも済ませるという仕事が一つあります。それは患者のからだをふいてやる、頭を洗ってやるとか、ベッドの掃除をしてやる、髪の毛の手入れをしてやる、こういうことはやらずに済ませば、患者にがまんさせればさせられる仕事であります。そういう仕事が看護婦の一日の仕事の一七%になっております。時間は大体九十三分間になっております。こういうようなことが国立の広島療養所にも、表が出ておりまして、それを見ますと、この数字が約九%しかないということが出ております。それからその次の表のBといいますのは、これはどうしても手の省くことができない仕事になります。それが約五〇%になっております。これはまあ当然といえば当然なことであります。病状観察、療養指導、病状報告、これがいずれも看護婦でなければできない仕事であります。広島では大体これが四〇%くらいということに出ております。  それから次に十七ページの表Cを見ていただきますと、これは看護婦以外の人が行なってもできる仕事、これを集めてみますと、約二二%強の時間をこういう仕事に費しております。これは広島の方では約三〇%ということに出ておりまして、まあそういう工合に現在仕事を分担してやっているわけであります。しかしながら看護婦の仕事といたしまして、本来の看護婦の仕事というのは、やはり患者の身の回りの世話とか、患者の何といいますか、親身になって世話をして上げるということが、本来の看護婦の仕事であると私は思うのであります。それでこの表Aの方が一七%、広島では九%というのはあまりにも少な過ぎるというような感じがするのであります。それで表の六番を見ていただきたいと思います。これは十二ページにございますけれども、そこに患者のからだをふいてやること、それから頭を洗ってやること、ベッドの掃除をしてやること、この三つを取り出しまして、一カ月にどのくらいの仕事をやったかというのを見てみますと、そうしますと、三月中の患者の平均数が八百四十名おりまして、その中で自分でできない患者、すなわち厚生省において示されました安静度の基準表における一度から三度までの患者であります。それから四度の患者の中に、それと同じような病状の人がやむを得ず含まれている人数があるわけであります。これはやむを得ずと申しましたのは、看護力が足りないので、患者の方へしわ寄せをさせれば幾らか手が省けるというので四度という名前をつけただけにすぎないのであります。そういう人が含まれているので、その点を考慮して、自分でできない人の数を見てみますと、四百九十五名になっております。ところが清拭という仕事、これは一カ月の間に受けた患者が二百九十五名で、その人たちに行なった数が三百六十八回、でありますから、患者一名が一カ月に受けた回数、これはたった一・二回しか受けておらないわけであります。それを四百九十五名にやらなくてはならないことになると、一回を割ってしまうことになるわけであります。洗髪ベッドの掃除についても、同じようなことが言えるわけであります。まあそのように非常に患者に対する精神的な、または身の回りの世話をするというようなことが非常に行われていないのが現状であります。  それからその看護内容が低下している原因でありますけれども看護婦定員が定められたのが大体昭和二十二年だと記憶しておりますが、その当時は患者の数とそれから看護婦数との比から大まかに割り出されて、一回六と割り出されたと聞いております。しかしその後医学が非常に進歩いたしまして、業務内容が非常に変ってきております。それは一番最後の十八ページの表を見ていただくとおわかりになるのでありますが、この仕事といいますのは、化学療法とか、外科療法、これが非常に発達したために、必然的に付随して起ってきた仕事を全部集めてみたのであります。それが看護婦の行なっている仕事の三九・九四%になっているわけであります。で、この割合の半分くらいが昔より増加したと考えても、二〇%増加しているわけであります。ほとんど全部増加されているんではないかという感じを持っているわけではありますけれども、そんなふうに考えてみました。  それからさらにまた、表Cに示された雑用が非常に多い。これを人数で換算した表が、表八に述べられております。設備のことも問題でありますけれども、設備を相当整えても、人数の節約にはあまり役に立たないということも計算上出ております。  そしてこの不足の状況を一覧表にして出してございますのが、十四ページの表になりまして、これを一つ一つ拾って御説明したいのでありますけれども、あまり時間がかかると思いますので、大ざっぱに申し上げますと、大体看護業務以外に、看護方面から見て不足している人員が四十名、それから現在の看護面で不足している看護婦人員が約百三十三名と出ております。これを患者一人に割当ててみますと、必要な看護婦人数というものは、患者約三・四名に対して一人という数字が出て参りました。この場合に、私が先ほど申し上げましたように、医療上最低、それから業務上完全という言葉を使いましたけれども、この中に考慮いたしましたのは、一度の重症患者が五名に少くとも一人ぐらいのつき添い的な人がおれば最低の看護はできるであろうということを考えてここに加えてあります。で、重症患者というものは、その心情は、患者にお聞きになればわかると思いますけれども、非常に将来に対して大きな不安を持っておるものであって、一度の患者になりますと、いつ死ぬかわからないという不安を非常に大きく持っておるもので、外見上今すぐ死ぬというようなふうには見えなくても、常に観察を要するような患者が相当いるわけであります。そういうことを考え合せてみますと、このたびの計画が行われますと、非常に大きなマイナスになることが考えられます。私のところには大体三十四名が配置される計算になりますけれども、この人たちを三交代で一度の患者に当らせる場合には、十一名の患者しか見ることができないことになります。それからまた一度の患者が約五十九名おりますけれども、その人たちに三交代でつきますと、五十九の三倍になって、百七十七名の人員が実際には必要になるわけでございます。これは精神的な看護が非常に大きいということを考えなければいけないのではないかと思います。実際に動いている時間よりも、むしろ動かないでそばにいる時間が、患者にとってははなはだ必要であると考えるわけでございます。そういう点を考えまして、現在の今考えられている方法で廃止が行われたら、非常に困ったことが起るのではないかと考えているわけであります。  以上のように、医療の進歩とか看護内容の変化、そういうように治療体系が全く違ってきたのに、看護婦定員が十年も前とほとんど変らない。それから社会保障の法規が非常に複雑になってきて、事務量の増加があるにもかかわらず、一般職員の数もむしろ減らされてきている。こういうことでは、今までは曲りなりに何とかやってきましたけれども、だんだん仕事ができなくなるのではないかということを私は非常におそれるものであります。私のお願いしたいことは、今述べましたような点をよく御勘案下さって、関係者の方が療養所へぜひおいでになって下さって、その実情をうわべだけでなくて、十分に視察をしていただきたいということをお願いしたいと思います。
  82. 加藤武徳

    ○理事(加藤武徳君) ありがとうございました。  それでは次に、国立東京第二病院総婦長村田きくさんにお願いいたします。
  83. 村田きく

    参考人(村田きく君) 村田でございます。  私本日、参考人としてお呼び出しをいただいたのでございますが、過去におきまして療養所勤務をいたしたことがございますけれども、現在は病院勤務をいたしております。それで療養所病院は、いろいろと性格を異にする点があると存じますので、それと、現在療養所状況が、看護その他いろいろの点においてどのような状況でございますか、私わかりませんで、それに記憶もつまびらかでございませんので、特に意見を申し上げることなく、御質問にお答え申し上げたいと存じます。
  84. 加藤武徳

    ○理事(加藤武徳君) ありがとうございました。村田さん、ただいま委員のお方から、療養所のつき添い婦のことについてはあとで御質問にお答え願うことといたしまして、ただいまの病院でつき添い婦の制度があるかどうか。もしあれば、そのことについて伺いたい、かような注文がございますが、この点での御発言は願えませんでしょうか。
  85. 村田きく

    参考人(村田きく君) それは現在完全看護として示されておりますところの看護基準によりまして、完全看護をいたしておりますが、医師許可によりましては、重症の患者さんとか、手術後の患者さん、あるいは小児科におきまして、幼児でございますね、どうしてもお母さんでなければ、手術後保護することができないというような状態、そういう場合には、こちらからお願いしても、つき添いさんをお願いするわけでございます。現在そんな状態でいたしております。
  86. 加藤武徳

    ○理事(加藤武徳君) ありがとうございました。  それでは次に、全日本国立医療労働組合委員長井上五郎君にお願いいたします。
  87. 井上五郎

    参考人(井上五郎君) 井上でございます。  近年結核治療も非常に進歩して参りまして、結核療養所における看護業務も、従前と比較にならない複雑性と科学性を持って、治療の過程の中で非常に重要な任務を要求されて参りました。このような中におきまして、このたび国立結核療養所のつき添い廃止問題が提起されまして、果して政府厚生当局が言うように、これが医療看護の向上と前進を約束するものであるか、あるい後退を意味するか。これを機会に、正しい医療行政結核対策のあり方、特に看護の実態が明らかにされ、そのあり方が余すところなく検討されて、その上に立って、最もいい結論が導き出されることを心から期待するものであります。  そこで、本問題を審議するに当りまして、参考として、国立療養所看護実情を述べてみたいと思います。現在患者の実入院数は、月々多少の変動をみまして、大体五万九千から六万前後であろう、このように思われます。一方、実際入所患者を受持って直接看護力となっている看護婦総数は、約七千名前後と推定いたしております。  次に、なぜこのように実働看護婦数が少いかと申しますと、定員の上では一応一万一千名を超過いたしておりますが、そのうち七百名が婦長業務、千百五十名が治療棟、看護学院、中央材料室、こういうところに使用され、千六百二十七名が雑仕婦に食い込まれ、二百三十八名がX線、病理、薬剤助手、消毒夫等に食い込まれております。また二百三十四名が長期病欠者、このように約四千名の看護婦が、定員から実際入所患者の直接看護力外になってこれを除外しなければならないからです。特にこの中で雑仕婦に千六百二十七名も食われているということ、またX線、病理、薬剤助手等に二百三十四名も食い込まれているということは、これは厚生省の定員基準の不合理性をそのまま現わしたものでありまして、雑仕婦病棟内外の清掃、あるいは廊下、便所の清掃から配食、食器整備、その他多くの間接看護、及びそれ以外の用務を担当しながら、これが定員として認められておらないために、これを看護婦で充足しますれば、その業務がそっくりそのまま看護婦にかぶさるので、どうしてもこれだけは最低限の必要な人員として欠かされないものでございます。またX線、病理、薬剤助手等も、本官として一、二名配置されてあるだけで、それ以外の定員が定められていない。そのためにどうしても必要人員を確保するために、一番数の多い看護婦定員に食い込まざるを得ない。このような実情がそうさしているのであります。このようなことで、大体厚生省の調査によりましても、患者数看護婦の実働数の比率は、患者八・四名に対し看護婦一名ということになっておりますが、しかしこの中で、またさらに看護婦の実働七千名の中で、約千名近くが病棟主任、あるいは病棟婦長ということになっております。これも、最近、看護婦の仕事よりも、結核予防法や、あるいは医療保険や、医療扶助の申請事務の複雑化によりまして、請求事務、カルテ整理、診断、処方箋の控え記入等、事務業務に追われて、直接看護力となり得ない状態になっております。本当に診療介助や身の回りの世話に当る看護婦は、約六千名前後、これがまた週休、短期病欠、祝祭日、講習等にさかれて、しかも二交代、三交代制の勤務をとっているために、毎日の勤務としては、平均して昼間一番看護力の充実しているときでも、患者十二、三名から二十名に対して一人、夜間は四十名から七十名に対して一人の看護婦の割合になっているのが実情でございます。このような状態ですから、看護婦雑仕婦も、年次二十日の有給休暇はもちろん、週休、祝祭日さえも満足にとられず、病気欠勤を代休、年次有給休暇に振りかえてもなお五日から十日しかこれを使用していないという実情が、私たちの調査で明らかになっております。せめて雑仕婦看護婦外で定員化してほしいというのが、これが病院療養所を問わず、私たちの最も切実な要求でありまして、この二、三年来、この問題を中心に、私たちは一番強く運動を進めて参ったのであります。しかし、それがこのたびのつき添い婦廃止を条件にしましたわずか二千二百七十名の増員では、むしろ私たちは激しい憤りをすら禁じ得ないのであります。  なお、約六万名の入所患者を症状別に分類いたしますと、安静度一度から三度までの重症患者、これが全体の五八%、四度から五度の中等度患者が三七・二%、六度、七度の軽症患者と申しますのは、わずか全体の四・八%しかおりません。このような状態ですから、何としましても、以上のような、直接、間接を問わず、絶対的な看護力の不足が、結局家族つき添いを含めまして、約四千三百名のつき添い婦によってささえられているのが、現在の療養所看護実情でございます。しかも、つき添い業務は、看護に非常に重要な部分を占めております身の回りの世話を受持っているのでありますが、もちろん私たち自体も、医療従事者といたしまして、このような形がいいとは決して思っておりません。可能な限り看護力を充実さして、部外の労働力を借りなくても、看護の完全を期していきたいということは念願いたしておるのであります。しかし、わずか二千二百七十名と引きかえに、しかもこのうちの半数しか直接看護要員にならない増員では、看護の低下を来たすことは明らかでございまして、つき添いの縮小、廃止が可能であるとは考えられません。  なお、この問題は、単にできるとかできないとかという観点から討議されることは、私たちは間違いではないか、このように思います。それは、このようなことが、今後の医療あり方、看護のあり方について、プラスするかマイナスするか、このような観点から、また大きく結核対策の面から、これを慎重に討議して、検討していかなければならない重要な問題だと、このように思っております。医務局では、今度の増員を要求するに当りまして、少くとも現在より看護力を低下させないために手術病棟、重症者に対しましては、患者三・四名に対して看護婦一人の割で看護婦を増員し、次に患者二十五名に対して一人の看護補助者を増員することを考えたようでございますが、もちろんこれにはまだまだわれわれの立場からいいますれば、問題はありますけれども、一応看護を低下させないという基本的なものが感じられたのでありますが、この看護力の増加ということが忘れられまして、ただ常勤労務者二千二百七十名だけになったということにつきましては、私たちは何としても不可解に思うわけでございます。二千二百七十名の増員によって、つき添い廃止、厚生省はつき添い廃止ではない、つき添い婦を要しない状態にするのだということを言っておりますが、いずれにせよ、つき添い廃止がもたらす影響がどうなるかということを推測いたしますと、直接看護力でない雑仕婦は、これもどうしても最低必要な人員だし、看護要員となり得る二千二百七十名の約半分の看護補助者、しかもそれが八時間制の人員で約四千三百名の一応二十四時間制のつき添い婦では、あまりにその相違が明確になり過ぎて論議の余地がないように思います。これが医療の向上とどうして申されましょうか。われわれは疑問に思うのであります。  言うまでもなく看護の要件は、これは医学上から治療効果を最も有効に発揮する線、また同時に患者の要求、期待するものと合致できるように私たちは努力しなければなりません。しかしまた一方、患者の心理といたしましては、常時身辺にいて身の回りの世話もし、また不安を除去してもらいたい要求が非常に強くございますが、これは病気をしたことのある人は、だれでもそのような気持を経験しているだろうと思います。この点におきまして、特に現在のつき添い制度がそのままの形でいいものとは申されませんけれども医療機関の看護内容が、この点において著しい不備と欠陥を持っていることは率直に私たちは認めなければならない、このように考えます。  最近完全看護という非常に魅力のある言葉が使用されております。大部分の医療施設がこれを実行していますが、完全看護にせよ、完全給食にせよ、完全寝具にせよ、これを実行することは当然のことでありまして、なぜこのような言葉が使用されるか、私たちは理解に苦しむのであります。結局このような言葉が使用されるということは、四点徴収するということ以外に原因がないような気がいたします。これはわが国の医療行政の恥を天下にさらすようなものじゃないか、人もふやさずに、給食の材料費もふやさずに、病院である以上、被服、寝具の整備は当然しなければならないのに、こういうふうなことを、しかも公的医療機関がこのようなことをせざるを得ないということは、まことに恥かしい次第でございます。私どもの所属下にあります国立病院でも、ほとんど大部分がこの完全看護、完全給食、完全寝具を実施いたしております。しかしそこに働く職員、特に看護婦さん、私どもの気持としましては、ただ恥かしいだけでは済まされない問題でありまして、四点加算の問題は別といたしまして、これがほんとう医療従業員としてやってゆかなければならない点だ。また看護婦としてこうやらなければならない。そして私たちがこれだけ努力すれば何とかそこを報いてくれるだろう、厚生省も報いてくれるだろう、このような気持でほんとうに真剣に努力したのでございます。しかし現在におきましては、先ほど述べましたように、雑仕婦定員化すらまだ現在できておらぬ。私たちが実施しましたタイム・スタディによりますと、長野県の某国立病院では、看護婦が昼の食事と用便、お便所に行く時間を加えましても一日の休憩時が十三分しかなかったという、このような驚くべき実態さえ明らかになっております。このことは、先ほど資料にお上げしておきましたが、切実に完全看護を実施しておる看護婦さんたち、職員の要望、そういうものがほんとうに切実胸を打つように私たちに上ってきております。  つき添い制度は、わが国の医療制度の欠陥をそのまま現わしたまことに悲しむべき制度だと思います。しかしながらそれが医療機関の貧しい経営の中で労働力の不備を補い、患者の信頼を得ているものである以上、これに補償を与えずに取り上げてしまうことは、われわれ完全看護を目ざす医療従事者の立場からも許されないと思います。入退職基準は、その後医療扶助審議会の発足となりまして、厚生当局の説明と相違して入所させねばならぬちまたの結核患者医療費の負担の面から制限して、要入院患者百三十七万という数字が厚生省自身の手で発表されながら、待機患者が最近著しく減少しております。空床すら生じさせてきております。また重症者、手術患者の心のよりどころとなっておりますつき添い婦を、わずかの、しかも身分の不安定な労務者の増員と引きかえにこれを取り上げようとしております。私たちは今年のつき添い廃止が来年の四点徴収のいわゆる完全看護に移行し、それがまた感染源となっている不幸な貧しい結核患者をさらに締め出すことを心から心配するものであります。  この問題が単に可能だとか、不可能だとかいうことに論点を向けてはならないと申しましたのは、以上のような理由によるのでありまして、つき添い婦の失業問題と合せまして、もっと広く日本の結核対策から検討されることを切に要望いたします。
  88. 加藤武徳

    ○理事(加藤武徳君) ありがとうございました。  それでは次に、厚生省関東信越医務出張所長千種峯蔵君にお願いいたします。
  89. 千種峯蔵

    参考人(千種峯蔵君) 私は療養所の管理運営面より見たるつき添い制度の是非、ならびにつき添い婦廃止による看護力の影響、この二つの項目について手短かに意見を申し述べたいと存じます。私は厚生省案の立案に参画したものではありませんが、本案の確定後における実施に備えて準備を命ぜられた立場にあります。また私自身二十数年間病院療養所の統轄管理の経験にかんがみまして、さらには私自身一カ年半の療養生活を送りました体験も参照いたしまして、つき添い婦による看護は、すみやかに職員たる看護婦による看護に切りかえられるべきものであるということを主張したいと思います。つき添い婦の人柄は、終戦後戦災者の方や、あるいは引揚者の未亡人等の方々が御参加されるに至りまして非常に向上したと感じます。またつき添い婦制度には、他に求めがたいところのいろいろの得点あるいは長所があると存じます。これを患者の側から申しますというと、一人の人が終始一貫して看護をしていただく、またベッドのそばには常に人がおってくれる。またそれらのために非常に親近感を持ちやすい。従って遠慮も要らないし、物事も頼みやすい。その他いろいろあげられると思いますが、ともかくこれらの長所あるいは、得点というものは見のがしてはならないところだと思います。  しかし私はそういう長所を認めながらもこれに反対します理由は、第一には、つき添い婦のつく患者と申しますと、手術後の患者か、あるいは重症患者かのいずれかであります。手術患者重症患者はいわば高度の看護技術を要しまするし、また療養所責任上からも重点的に看護に当らなければならない患者であります。しかるにこれらの患者を技術的教養が不定であり、また病院療養所責任と連繋のない立場にあるつき添い婦にゆだねるということは、療養所責任軽視であり、また科学的医療という金看板に対しての大きな矛盾であると感じます。  第二には、現在のような患者一人に一人のつき添い婦ということでは、つき添いは断続ではあるが、しかし二十四時間勤務ということになるのであります。これではいかに忠実なつき添い婦でありましても、二十四時間勤務の連続というものには耐えるはずがないのでありまして、従って居眠りが出がちであります。私も入院中において経験したことでありますが、夜中に患者ベッドのそばを手でぱたぱた叩いておる。それはそばに寝ておられるつき添いさんを起すのでありますが、それをはるか向うの看護室の看護婦が聞きつけて、そっちの方が早く来たというような場面を何回か実験しておるのであります。  第三番目には、近来のつき添いは昔のつき添いと違って、病院療養所の指示を非常に尊重します。全く勝手なあるいは無軌道な行動をするというようなことはほとんど見当りません。そうしてまたつき添いさん相互に援助して行くけっこうな傾向がありますが、しかし院内におるつき添いさんの数が多くなれば多くなるほど、療養所全体の管理を乱し、療養所に、種々の形の悪影響を周囲に及ぼしておるのであります。これは個人契約ということに対する遠慮もありましょうし、またつき添いさんは、契約者が当の対象でありますからして、それらの点から来る結果だと存じますので、つき添い制度のある限り、ある程度避けがたいものであろうというふうに存じます。  第四番目には、つき添い制度は、直接療養所定員とかあるいは経費に響かない。そのために療養所自体から都合のいい存在と見られる場合も出て参るのであります。すなわち安全弁として重宝がられる点があるのであります。そのために療養所として当然あるべき姿の看護の輪郭と申しましょうか、陣容と申しましょうか、そういうものが不明瞭となって参るのであります。このことは看護の改善向上を著しく阻害しておると申し得るのであります。一例を申しますならば、結核医療の進歩に伴いまして、先刻来重ね重ね御発言がありましたように、業務量が増加しておるのでありますが、その業務量増加に対応して療養所としての看護力の増強が施策きれなかったという点であります。これはひとり厚生省のみにその罪がありというのは当らないのでありまして、その実態がはっきりしないというところにあると言えるのであります。すなわちこの業務量の増加に対する看護力の増強の伴わなかったことの理由を探索いたしますというと、一半は従来の看護婦の供給不足と申しますか、獲得難ということに由来しております。他の一半はこのつき添い制度の存在によって看護実態が不分明であったというところに帰すると言えるのであります。  以上私はつき添い制度のみが持つ長所というものを認めながらも、科学的医療の確立と看護の向上を円滑ならしめるために、つき添い制度を廃止することを主張するものであります。  この考え方は医療界に広く行われている考えでありますので、おそらく反対の方はあるまいと存じますが、問題は置きかえられる看護婦の数にあると思います。今回の問題の焦点も、切りかえようとする常勤労務者の員数と切りかえの過渡期的措置にあると思うのであります。しかして常勤労務者の数とこの切りかえの過渡期的措置とは切り離しては考えられない、あるいは切り離すべからざる問題であると思います。すなわち常勤労務者の員数と過渡期的な措置とは互いに依存する相関の関係にあると思うのであります。まず常勤労務者の員数について一応考えてみますと、私は先刻も申し上げましたように、立案の参画者ではありませんが、準備を進める立場上、この員数を実際的に検討しなければならないし、そこでまず実際的検討に入る前に、一つの段階として、私の管内の療養所病棟勤務看護婦の数と、それに常勤労務者、これは一応厚生省の予算獲得のときの方針に従って二十五人に一人と仮定して、それを加えた場合とにおける看護者一人あたりの患者の負担量というものを、管内の国立病院の全体、それから特定の国立病院、それからつき添い婦のおらない特定の国立療養所のそれと比較してみたのであります。数字を申し上げてわずらわしいと思いますが、簡単でありますので申し上げます。国立療養所のいろいろな勤務は、勤務につく看護力は一切差引きまして病棟において直接患者看護をする看護婦だけの員数についてのことであります。これによると、私の管内の病床数は一万六千四百三であります。それに対して病棟勤務看護婦の数は二千三十三であります。これは最近の現在数であります。そういたしますというと、病棟勤務看護婦一人当りの患者負担量というものは八・一人でありまして、先刻井上さんの言われた全国平均より幾らか分がよくなっております。今度問題になりますところのいわゆる常勤労務者を二十五人に一人と仮定して、六百五十六人の配分を受ける計算になりますが、それを加えますというと、看護力は二千六百八十九となります。これによって先刻同様一人当りの患者負担量を出してみますと六・一人になります。そこで国立病院結核病棟勤務看護婦の数と結核病床数だけについてこれを比較対照してみたのであります。そうしますというと、国立病院結核病床数は三千七百四十七、私の管内だけの数でございます。これに対するいわゆる結核病棟勤務看護婦の数が六八五・五、点五は、ほかとの兼務らしいのであります。そういたしますというと、国立病院における看護婦一人当りの患者負担量は五・五人となります。それから国立の特定の病院、ここでは病院と申しましょう、病院結核病床数は二百二十六であります。ここに勤務している看護婦は三十二名、この一人当りの患者負担量は七・一、それから国立O療養所、これは現在つき添い婦の一人もおりません療養所であります。これの病床数が二百、そこに所属する看護婦は二十七名、従って一人当りの患者負担量は七・四、すなわち管内の国立療養所の今度の常勤労務者の仮定数の患者の負担量というものは、六・一人であり、国立病院結核病棟における該当負担量は五・五人であり、特定病院の国立T病院におけるそれは七・一人であり、国立療養所のつき添い婦のいない特定のO療養所においては七・四人、こういう事実があるのであります。  この数字によると、これらの現存する実績と対照してみて、厚生省の原案というものは著しい無理があるとは見えない、こう私は考えます。少くとも不可能に近い困難があるとは考えられないというふうに存じます。しかしこれは大量観察による平均値であって、個々の場合の特殊事情というもの、たとえば手術件数、重症患者の多少、あるいは内部施設の整備状況、こういうものを一切含んでおらないのでありますので、その平均値を直ちに各施設に当てはめることは、これはむろんできません。実際の割当は各施設の実情に即するよう、合理的傾斜割当でなければならないということになります。しかるに厚生省案に対して実際の割当に入る前に、療養所長の間にちゅうちょする模様があるのはなぜであるかという点でありますが、今回のこの切りかえは、いわゆる平均値に基く判断でありますので、施設間並びに施設内容においても、勤務上の不合理ということをこれは許さないという形であります。いわば看護態勢の立て直しを前提とすることとなるわけであります。すなわち患者看護中心とする分類収容がえとか、あるいは看護婦の合理的な傾斜配置とかいったような内部改善をしなければならないのであります。しかるに現在において基本となるところの三交代制度の経験のある施設は、管内三十九施設のうちで半ばに満たない十四施設にすぎない程度でありますので、いまだ全体として自己施設についての改善計画を持つ段階に至っていないのであります。従って実際的数字をもってする不足数の要求はできないけれども看護態勢の自信が持てないだけに、人命をあずかる立場上、療養所長は自然ちゅうちょする態度をとることとなったものだと思います。従って事態の分析あるいは検討が進んで、実態を正しくつかむようになれば、その態度には変化が来るものと予想いたします。ともあれ、私どもは直接責任者であるところのこの療養所長のちゅうちょということは、これはきわめて重視しなければならないものと思っております。  最後に、本案確定後、いかにこれを実施に移し、あるいはそのための準備をどうするかという点が問題となると思います。前に述べましたように、本案の個々の施設に対する割当というものは、決して機械的であってはならないと思います。個々の施設について、現存の看護力、あるいは雑仕婦状態、あるいは現在のつき添いの状態手術の数、重症患者の数、軽い患者の数、看護を助ける内部施設の有無等々を資料としてまず改善計画を立てて、これに要する看護員数を算出する順序で進むべきものだと考えます。従って私は管内個々の療養所責任者とともに、このような準備を進めていきたいと思っております。  時間が参りましたようですから、今後の善後措置と申しますか、今後の実際的な進め方につきましては、御質問に応じてお答えすることにいたします。
  90. 加藤武徳

    ○理事(加藤武徳君) ありがとうございました。  それでは最後に、国立療養所清瀬病院のつき添い婦、後藤しづさんにお願いいたします。
  91. 後藤しづ

    参考人(後藤しづ君) 後藤です。私はつき添い婦の立場から、つき添い制度を廃止することは現状ではできないことでありますので、反対いたします。  このたび出されました厚生省案が矛盾だらけだということについて申し上げたいと思います。先日来衆議院の諸先生方に大へんお骨折りをいただきまして、つき添い制度廃止反対の決議をしていただいたんですけれども、厚生大臣は、参議院の社会労働委員会におきまして、あれはつき添い制度を残しておく決議ではない。つき添い制度を廃止することについて、施設側に欠陥の出るのを防ぐためのものであると言われているんですけれども、それではせっかく党派をこえて努力していただいた諸先生方の努力が水のあわになってしまったと同じだと思います。それで私はそれに対して大へん残念だと思っております。  それからなぜ反対かと申しますと、政府は予算削減のためにつき添い制度を廃止して、それを常勤労務者にかえようとして、それが完全看護だと言っておるのでございますけれども、そのために全国の結核患者が不安であるのと、私たちつき添い婦とその家族が生活を奪われてしまうからです。また厚生省の言われるように、予算の削減でなくて医療の前進であるならば、少くとも私たち四千二百人が、現在二十四時間から十六時間働いている労働力を八時間労働に切りかえた場合、約二倍の八千四百人から、三倍の一万二千六百人という人員を雇わなければ何にもならないと思います。それで私も常勤労務者というような不安定なものでなく、看護婦定員として雇って初めてそれが完全看護であるだろうと思います。そうでなければ、幾ら厚生大臣が医療の低下ではないとか、看護病院の管理下でするのが完全看護であるとか、つき添い制度は世紀の遺物だと言われても、それは大臣の苦しい答弁であって、完全な医療の後退であると思います。それから中国の療養所でもそうだそうですけれども、日本の聖路加病院あたりでも、患者一人に職員が三人、患者一人に対して看護婦が二人ついているそうでございまして、聖路加病院看護婦さんのおっしゃるのには、看護というものは完全にするものであって、完全看護というその名前自体がおかしいんではないかと言っているそうです。  次に、つき添い婦の仕事のことについて申し上げたいと思います。内科の場合ですと、朝出まして、それからたんコップをきれいにして、尿器便器を取りかえまして、それが済みますと今度は洗面に取りかかって、洗面のお湯がぬるい場合などは火を起しまして、わざわざお湯を熱くして洗面してあげて、それからそのあとでもって、大ていの結核患者というのは夜中に汗をかくもんですから、その汗ぬぐいをしてあげて、それが済みますとそのタオルや何かをちゃんときれいに洗って元の所へ始末して、そうしているうちに食料課からお食事が来るもんですから、その間にやかんをかけておいてお湯を沸かすとか、それから先ほど井上さんからも申しましたように、給食費が少いもんですから、朝のお食事というと大てい普通食であって、おたくわん二きれと、それからつくだ煮がほんの一つまみしかないんです。それからおみおつけも魚粉のおダシで作るもんですから、とてもまずいんです。それでどうしても患者さんはそれでは食べられませんし、かゆ食の場合は梅干が一個なんです。朝は大ていそんな程度でございます。お昼と夕食はずっといいんですけれども、朝はいつでもそうなんです。ですから大ていの患者さんはお漬物をつけるとか、卵を焼いてくれとか、何とかかんとかいろいろおっしゃるもんですから、その補食をしてあげて、それから御飯の世話をして、その跡片づけをいたしまして、それから自分食事をして、自分食事の跡片づけをして、それからお炊事当番が次々に私たちつき添いだけでもって回ってくるもんですから、五人のところは五日に一ぺん回ってきますし、四人のところは四日に一ぺん回ってくるようなわけです。それからそれが済みますと病室のお掃除をしたり、手洗いの水を取りかえてあげたり、これを元の所に戻してあげたり、お花の水を取りかえるとか、そういうような細かいことをいたしまして、そうしているうちに、重症の患者でたんの多い患者さんなんかは、朝の御飯が済みましてからまたたんコップを取りかえなければならないほど、たんコップを使うのです。それからもう十一時になってまたたんコップをやって尿器をやって、買物に行ったり、それからお食事が出るとまたお食事の世話をするわけです。それから昼食が大ていパン食とおうどんが交互に出るもんですから、大ていの患者さんというのはそういうお食事が食べられないのです。それから結核患者というのは食欲が減退するのが特徴なもんですから、どうしても食べられないわけなんです。そのお食事の世話をしてあげる。そうしてその跡始末をして、自分食事をして跡始末をすると大てい一時になるわけです。それから一時から三時まで安静時間だもんですから、患者さんのそばに大ていは看護婦さんも行っておりませんし、常時回診を要するものだけが個室にずっと入っておりますけれども喀血したりなんかして、その安静時間の二時間の間に……、その前に十時ごろになりますと蒸気が出るもんですから、ある患者さんは清拭するとか、洗髪するとか、ベッド払いする患者さんもありますし、それからおふとんをほしてあげるとか、そういうことがない場合は洗たくをするとかいうので、大てい午前中は終ってしまうのです。それから安静時間になりますと今度は買物に行って、それから今度は夕方のお食事の世話をするわけです。それから冬場ですと朝、湯たんぽを入れてあげて、三時にまた湯たんぽを入れてあげる。冬場でない夏だと三時になりますと汗ふきをしてあげる。それから夕方になりましてまたたんコップと尿器便器と、それを全部やるわけです。それから夕方のお食事食事の始末、片づけ、それから自分たちの食事食事の始末、そしてまたたんコップと尿器とずっとやるわけですから、一日にそのたんコップを取りかえるのを五回から六回、尿器が三回から四回、少くとも三回、一番多くて四回、腸結の患者ですと便器を一日に六回も七回も取りかえなければならない。それからその間に熱発したり、喀血患者の方は氷のう、氷枕を取りかえてあげなければなりませんし、夏ですと一度お部屋へちょっと帰りまして、またかやつりに出てくるわけです。そうして大てい朝の六時から夕方の七時ごろまでは完全にかかるわけなんです。そして政府の言うところによりますと、六時から六時までの十二時間なんでございますけれども、その間に十時から十一時までというのは午前中の安静時間で、それから午後の安静時間が一時から三時までのその二時間と、それが三時間で、自分のお食事の時間が一回二十分ずつでもって六十分取られるわけですが、その四時間を除くから八時間労働だというわけなんです。これは大体内科の場合なんでございますけれども、外科の場合ですと、それがまたとっても大変なんで、手術日の第一日は患者の衣類を整理したり、手術に必要な寝巻とか、傷ぶとんだとか油紙とか、いろいろなものを取りそろえまして、時間のある場合は患者といろいろ話し合いをして、なるべく患者と親しみを持つようにし、その際に自分患者さんの食事の好みとか、ふだんの習慣だとか、家族の様子などを知っておいて、手術前二、三時間で高圧の浣腸をします。それから排便するとか排尿させて、それからいろいろ手術に出かける際に検温、検脈、呼吸をはかって、その間に看護婦さんは血圧をはかりに来るのですけれども、それを看護婦さんに報告し、それから手術室に行ったあと病室整理をして、その間に脱ぎ捨てたものを全部洗たくをするわけです。それからベッドの位置だとか、電燈の位置や何かあれしまして、水や何か患者さんが手術した場合に飲んではいけませんから、手の届かない遠くの方へ置いておくとか、そういうようなことを注意して、それから手術が完了して病室に帰ってきた場合は、約十五分間ぐらいすると看護婦さんが血圧の検査にすぐ来るものですから、それをまた検温、検脈、呼吸やなんかをはかりまして、輸血するとかリンゲルをするとか、とにかく絶対に目を放せないんです。患者は、麻酔から意識不明の時間は大体二時間から四、五時間あるわけです。その間患者から少しも目を放せませんし、患者の症状は一刻も油断をしないで注意していなければなりませんし、酸素吸入や吸引器を配って、麻酔のさめつつある場合に、患者手術後の様子に始終注意して、手術の終了したことを聞かせ、安心を与えること、その場合に呼吸困難に陥るおそれがあるので、なるべく声を出させないように、目の動きや口の動きに絶えず心を配って、患者の意に沿うように努力する。麻酔がさめるに従って傷口の痛みとか、腰が痛い、口がかわいたとかいうことを訴えるものですから、たとえば腰が痛いときには腰のところに手を当ててあげるとか、気分を少しでもよくするために手当をするとか、口がかわいたときにはガーゼでもって口の中をぬぐってあげるとか、そういうことでもって絶対に目が放せません。  ずいぶん長くなりますからこのくらいであれしておきますけれども、それで絶対目が放せないときが、先ほども清瀬病院長がおっしゃいましたように、五日ぐらい、ややもすると一週間たって抜糸が済むわけです。そういう場合に、外科病棟のつき添いさんは、ほとんど二十四時間勤務です。それから看護婦さんや雑役さんが忙しいということは先ほど井上委員長の方から報告されましたからそれは省きまして、次に患者さんがどんなに苦しんでつき添いをたよりにしているかということをちょっとお話いたしたいと思います。これは一つの例なんでございますけれども、十一病棟でもって手術をした患者さんが、第一回に手術したのが七月末で、一回目の手術をしまして、喀血をしたのです。手術したにもかかわらず喀血したのですね。それからそのときについていたつき添いが、喀血をしたものですから血を手を入れてとっていたわけなんです。それでどうも変だというので第二回目の手術は八月二十四日にしたんですけれども、その手術の結果、神経がどうかなってしまったと見えまして、絶対に口もきかなければ、食べることも全然しなくなってしまったわけなんですね。それでまあ私たちもびっくりしたんですけれども、一週間もずっと食べないというのでびっくりしたんですけれども、獣のような声を出してうなり始めたわけなんです。それが夜昼ぶっ通しでうなるわけなんです。ちょっとの間もおかないんです。それでちょっと何とかうなるのをとめようと思いまして、お母さんが来ておりまして、もちろんつき添いがついていて、それで二人でどうにもできない。それで毎日々々だものですから内科のつき添いさんが全部交代々々でもって、内科の勤務を終えまして、八時から夜の十二時、一時ごろまで、全部つき添いが毎日じゃやりきれませんから、それで昼間仕事があるから交代々々でもっていたわけなんです。それが完全に二回りしたわけなんです。うなり続けたのが約三カ月です。それでそのときに厚生省の方へお願いしまして、何とか看護券を二枚出してくれないかというお願いをしたんですけれども、どうしても看護券は二枚出せないから、それで徹宵手当を上げよう、徹宵手当を出して下さったのはそれからもう約二カ月くらいなもので、いまだにその患者さんは全然歩けませんし、最初のうちは手術した直後だったものですからふとっていてとても力があって、手もこうやっちゃってそこらじゅうをかきむしって血だらけにしてしまうわけですよ。とにかく手を押えて傷をこさえさせないようにする。それから熱は出ている。汗をかく。それから足は動かない。手だけ最初は動いて足は動かない。三人もついていなければならない状態だったにもかかわらず、厚生省ではとにかく看護券は一枚しか出してくれませんでした。ですから内科のつき添いさんは何時間か、毎日々々五時間ぐらい奉仕しておる。全部無料奉仕でありましたし、それから今でもそうですが、夏だったものですから、傷がひどく悪くなって、これの処置なんかもほとんどつき添いさんがやっております。看護婦さんも手伝ってやるのですが、看護婦さん一人でもできないし、つき添いさん一人でもできないものですから、そうやっておる。それからプロンベの患者さんは、合成樹脂の玉を入れまして、それに玉ぬき成形のできる方は簡単にできていいのですが、体力がないために玉ぬき成形ができない患者さんもあるんです。それで体力が出るまで出るまでとおっしゃるのですけれども、なかなか病院の給食では体力なんかつきませんし、そういう人はやはり私たちは食事でも少しでも食べられるようにしてあげなければいけないと思いますしね。そういう患者さんはおしまいに膿がうんとたまって口から膿を出すわけなんですよ。そういうときに絶えず見ていなければならないわけなんです。そんな工合ですからほんとうに外科の場合でも、内科の場合でも、患者さんはつき添いはとられたくないわけなんです。それともう一つ、もしこれが完全看護にされた場合には、ふとんがずれ落ちても持ち上げられないわけなんですね。なぜと申しますと、内科の重症患者は肺活量が千以下に下っているわけなんです。千以下きりないわけなんです。千以下の人ばかりとはきまりませんけれども、健康者の大体五分の一ぐらいの肺活量しかないものですから、ちょっと動いても息切れがして、どうにもしようがないわけなんです。時間もございませんから簡単に申し上げたいと思うのですけれども、それで内科の患者さんにしても、外科の患者さんにしても、とにかく自分のそばからつき添いをとられるということは、ほんとう自分が死に追いやられるように思っているものですから、きのうも伺ってきたのですけれども、ある患者さんが食欲が減退してしまったものですから、つき添いをつけてくれつけてくれとたのんだのですけれども、とうとう死ぬ一、二時間ぐらい前にやっとつけていただいて、つけてもらったと思ったら死んでいたというようなことも、ずいぶんそこいらじゅうの病棟で聞くわけなんです。そういう患者さんが一病棟に一人や二人ではない。それが今の看護婦さんの定員だと、とてもそれだけ手が回らないのじゃないかと思います。  それからもし私たちが常勤に切りかえられた場合に、私たち大半が未亡人であること、子供を平均三人強持っていること、家のない人が多いことなどでもって、次の職につくまでに生保で見てもらわなければならないとか、住居のめんどうをどうしていただけるのか、職安とか労働省と緊密な連絡をして下さると厚生大臣はおっしゃっているのですけれども、健康な若い大学出の人たちでさへ失業している中で、何で私たち四十年輩の女の才能もない者が使ってもらえるかと思います。それから厚生省は、私たちを常勤に切りかえる場合に、すぐ年寄りだ年寄りだとおっしゃるのですけれども、年寄りの人がけっこう国家にかわって患者さんを救っているわけなんです。それを皆さん大ていの人がそうなんですけれども、身内に夫だとか子供だとか、兄弟とか姉妹だとか、大ていのつき添いさんがそういう患者を持っているわけなんです。それで常勤に切りかえた場合に、年寄りが首を切られるのは、年寄り自身も困りますけれども、その人の家の結核療養している結核患者の人だって困ると思うのです。  それから最後にお願いがございますのですけれども、何とぞ参議院の先生方にも、この亡国病といわれている結核というものが、いかにおそろしいものであるかということをほんとうによくわかっていて下さるとは思うのですけれども、ぜひとも保菌している患者さんたちを強制限院させるようなことのないように、家庭療養している重症者を早く入院させていただくような措置をとっていただきたいということと、またやっと元気になりかかった患者さんから、つき添いをとらないようにしていただきたいと思います。ぜひつき添い制度廃止に反対の決議をしていただきたいと思います。  ずいぶん長くなりまして、申しわけございません。
  92. 加藤武徳

    ○理事(加藤武徳君) ありがとうございました。  それでは五人の参考人の方の御意見発表が終りましたので、ただいまから参考人の御意見に対する質疑を行いたいと思います。
  93. 相馬助治

    ○相馬助治君 私は五人の方に質問する前に、特に千種君につきまして、あと参考意見を述べていただく都合上、またただいま述べられたことについて質問する都合上、二、三点確かめておきたいことがございますので、千種君から御答弁を願いたいと思うのです。  通知でも御存じだと思いますけれども、つき添い婦制度について当委員会が問題にして、川崎厚相ならびに医務局長等を初めとして、政府側の答弁を、再三にわたって尋ねて今日に至ったのです。しかし事の重大性にかんがみて政府側の答弁のみをもって足れりとしない状況に立ち至ったものでございまするから、本日参考人の皆様をお呼びして隔意ない御意見を聞こうとするのが、私どもの見解、立場なのでございます。従いまして千種さんの場合には、そのお述べになったことにつきましてこの際触れませんが、次の点を私お尋ねしておきたいのでございます。あなたは医務関係の技官でありますか、それとも行政官でございますかという点が一点。それから二番目には、これは研究してくればわかることだったのですが、あなたの口から聞いた方が早いのでお尋ねしますが、行政系統から申しますと、あなたは厚生省の何人に監督される立場にあって、かつまたあなたの位置は何人を監督する位置にあるのでございますかということをお尋ねしたいことがその第二点でございます。それからあなたが提示された資料は、参考人意見を述べるために、あなた自身の責任において収集された数字でございますか、それとも厚生省にもすでに報告済みの政府資料としてこれを受け取ってもよろしい資料と見るべきでございますかということがその三点です。それからあなたは病院入院した経験があるというお話でございますが、どんな病気で、どこにどのくらいの期間入院して、しかもそれはつき添い婦制度とどのような連関をお持ちであったでございましょうかということをお尋ねしたいのでございます。そうしてそのことをお聞かせ願った上で、私はあと一点だけお聞きしたいと思いますので、千種さんから以上四点にわたって、簡単でけっこうでございますから、お教えをいただきたいと思います。
  94. 千種峯蔵

    参考人(千種峯蔵君) ただいまの御質問にお答えいたします。第一、私は厚生省の技官であるか行政官であるかというお尋ねと拝聴しました。私は厚生技官であります。医者であります。第二の何人に監督され、何人を監督しておるかという御質問ですが、私どもは医務局長の監督支配下にありまして、管内の病院及び療養所のお世話と申しますか、指導監督という使命を帯びております。第三の、私の申し上げました資料は、私が随意に自分だけで作ったものか、それとも厚生省のよりどころのある政府資料として差しつかえないものかという御質疑でありますが、大体厚生省の資料によりましたが、この特定の病院と申しますのは、これは特定の、私の申し上げましたT病院と申しますのは、これは小さい資料でありますので、私自身調べたと申し上げます。それからO療養所と申しますのは、当該療養所の報告に基いております。その他の療養所全体、病院全体の資料というものは、これは厚生省において病院療養所かにおいて作成した資料であります。それを拝借したものであります。それから私の私病、自分の病気は何であったか、どこでという御質問でありますが、病気は肺結核であります。入りましたのは国立東京第二病院結核病棟であります。つき添い婦さんとの関係と申しますと、私には直接つき添い婦のついたことはありませんので、そのような関係はありません。しかし当時私の入りました病棟には、二人の優秀なつき添い婦がおりまして、個人的にじっこんにしておりましたし、またこの方たちの働く実態というものを十分に観察して参ったのであります。入院しておりました期間は一カ年半であります。  以上お答え申し上げます。
  95. 相馬助治

    ○相馬助治君 よくわかりました。そこで私は一点だけ確めておきたいのでございますが、この参考人方々はいかなる意見を述べるのも、いかなる結論をここで出すこともきわめて自由でございます。従いまして御意見について、後ほど質問はありますけれども、ここで別段のことは申し上げません。ただ千種さんは、管内の病院ないしは療養所を指導監督する立場にあるとのことがただいまのお言葉で明白でございます。従いましてあなたは国家公務員としての立場と、管轄区域内におけるこの種療養所の指導監督をするという重大な立場と、この二つの観点から私が確めておきたいことは、あなたの参考意見の中に、つき添い婦の勤務状況きわめて悪いものがあるという御証言がございましたが、これはしかとさように考えておいて差しつかえないものであろうと存じまするが、再確認をしておいてほしいと思いますことが一点。それから第二点は、眠っていたつき添い婦があって、ベッドをたたいても目ざめずに遠くの看護婦がかけつけてきた、こういう事例があげられました。私はさようなることはあると思います。残念ながら、つき添い婦の諸君には失礼だが、あると思います。しかし私聞き捨てならなかったことは、かようなることがしばしばあると、かように申されたのであります。従いましてしばしばあると申すからには、どこの病院においてそういうことがしばしばあったのか、ここではっきり申せなかったならば、後ほど資料にしてでも何でもいただきたいと思いますので、その点について簡単に御答弁が願えるならば、はっきりさせておきたいということが一つと、それからこれは松島君、井上君、後藤君——村田さんの場合には、先ほどの証言でしばらく関係が薄いという証言でございますから……。
  96. 加藤武徳

    ○理事(加藤武徳君) ちょっと相馬君に申し上げますが、先ほど身分についての御質問と、かようにおっしゃっいましたが、引き続き参考人の御意見に対する御質問もおやりになりますか。
  97. 相馬助治

    ○相馬助治君 身分に関連して確かめておきたいのでございますので、もう二分ほどお許しを願いたいと思います。  村田さんを除外して、松島君、井上君、後藤君は、指導的な立場にある方のこういう言葉、この参考意見に対して御見解があろうと思う。今ここでたちまち述べろとは言いませんけれども、そういうことについてあなたたちは発言する自由を持っておるのでありまするから、あなたたちの立場からも、これについての発言を後ほど聞かせていただきたい。しかし私はここでは千種君に御質問しておりますので、それらを勘案して、先ほどの参考意見について、しかとさようであるということを再確認をしておきたいと思いますので、千積参考人の御発言をあえて求めます。
  98. 加藤武徳

    ○理事(加藤武徳君) 相馬委員、千種参考人の発言をお求めになったわけですね。
  99. 相馬助治

    ○相馬助治君 国家公務員としての千種さんに聞いておる。
  100. 加藤武徳

    ○理事(加藤武徳君) 千種君、いかがですか。
  101. 千種峯蔵

    参考人(千種峯蔵君) 先刻冒頭に申し上げましたように、これを申し上げますが、私の立場は、いかにもただいまお述べいただきましたように、公務員としての公けの立場並びに二十数年間この方面に経験を持つ自分の立場、私人と申しますか、その経験を持つ経験者としての立場並びにそれに自分が病人としての体験を参照して申し上げるとお断わり申したのでありますが、その言葉には修正の必要を感じませんです。それから今お尋ねいただきました二つの念を押された点でありますが、つき添い婦についての意見はだいぶ深刻であるが、しかとその通りかと、こういうことであります。私は、このつき添い制度というものに対して頭を突っ込んだのは昨今のことではありませんので、つき添い婦そのものに対して、むろん人身攻撃ということは厳に戒しめて発言したつもりでおります。しかし、つき添い婦として避けがたいところの弊害と申しますか、そういう点について申し上げた点は、しかとその通りだと申し上げて差しつかえないと存じます。それからベッドをたたいてつき添い人を呼んだが、看護婦の方が先に聞きつけて飛んで来たというようなことを言ったが、しばしばとはどうかと、よそにも事例があるのかというお尋ねでありますが、私は一度ならず聞いたというような意味で申し上げたと思いますが、私自身入院中一度ならず聞いたと、こういうように御了解いただきたいと存じます。
  102. 加藤武徳

    ○理事(加藤武徳君) ただいまから参考人の御意見に対する質疑に入ります。
  103. 高野一夫

    ○高野一夫君 私は、しばらく各位に御辛抱願いたいと思います。一連の問題について、村田さん以外の各参考人から御意見を聞かしていただきたい。最後に厚生省の政府委員のはっきりした明快なる御答弁を要求したいと思います。  これはつき添い婦の廃止に反対をするか、その廃止が是であるかということでなくして、その是非をきめる前の基本の問題だと私は考えております。それに重要なる関連を持つ問題であって、どうしても私が理解しておきたいと、こう思うことがございますので、まず千種さんと松島さんに伺いますが、それは今日午前中の参考人のお話にもあったわけでありますが、先ほど千種さんのお話にもあったように思っている。それはどういうことかというと、どのつき添い婦を、どれだけどの患者につせるかということをきめるについては、先ほどの午前の方のお話では、それは組合が、このどっちでしたか、二つ組合が出ておりましたが、組合が病院の中に事務所、本部を置いておいて、そうして組合がきめるのだと、こういうようなお話、そして清瀬病院長の島村さんはやはりその通りの御証言で、院長の方ではどうもそれは関係がないと、こういうように私はメモをとっておらないから違っているかもしれないが、そういうように聞き覚えている。そこで、先ほど千種さんのお話を伺いましても、この病院から見ればこれはきわめて重宝なことであって、しかしながら、この看護という点については、その実態はきわめて不分明である、こういうお話を伺ったように私は記憶しております。そこであらためて千種さんと松島さんに伺いたのでありますが、どの患者にどの看護婦を何人どういうようにつけるかということをきめるのは、どこできめるのでしょうか。松島さんは国立病院医官であられるから、療養所医官であられるから、あなたの療養所においてはどうなっているか。それから千種さんは、関東信越のそういう方面の監督者であられるから、そのあなたの所管における療養所においてはどうなっているかということを一応お尋ねいたします。
  104. 松島良雄

    参考人(松島良雄君) お答えいたします。必要の有無については、患者の受け持ちの医官がきめます。人選については、それにはタッチいたしておりません。つき添い婦は組合の方できめております。
  105. 千種峯蔵

    参考人(千種峯蔵君) 松島さんと前段は同じでありますが、つき添い人を要するという指定は、これは医師がなすべきものというふうにいたしております。それからつき添い婦を、いかなる人を選んでつけるかということは、私の方から直接指導はいたしておりません。
  106. 高野一夫

    ○高野一夫君 そこで伺いますが、そうするとつき添い婦をつけるべき患者については医局の、医官の方でおきめになるということである。そうすると、そのつき添い婦にも伺うというと、看護婦の資格を持ったつき添い婦もあれば、そうでない人も、知識をお持ちでないつき添い婦もおありになるということである。そうするといかなるつき添い婦をどういうような重患の、あるいは手術をした患者につけなければならぬかという、そういう点については、やはり組合なら組合が勝手にきめるのであって、医官は御関係はないわけでありますか。松島さんにお伺いいたします。
  107. 松島良雄

    参考人(松島良雄君) 私どものところでは、看護婦の資格を持ったつき添い婦の方が来てくれるような立地条件ではないものでありますから、いわゆるつき添い婦といわれている方のみがおられます。ほとんど全部そうであります。でありますから、資格の有無をこちらが考えることは現在のところはありませんです。
  108. 千種峯蔵

    参考人(千種峯蔵君) つき添い婦の運用といいますか、これにつきましては非常にところによって事情も違いますし、またきわめてデリケートないろいろ複雑な関係もあると思いますので、これは私どもの方では施設所長、すなわち療養所長に御一任しておるのであります。
  109. 高野一夫

    ○高野一夫君 どうもその辺があいまいなので、私どもどうしても理解できない。それで千種さんは、医務出張所長の立場において療養所長に一任しておるとおっしゃる。その療養所医官は、たとえば今の埼玉の療養所においては、看護婦の資格を持ったつき添い婦がいないから、みんなそうでないつき添い婦だからということで深くお考えにならない。午前中のお話はそれでまた違ってくると思う。これはこれで一応おきますが、そこでまたお二人に伺うのでありますが、埼玉療養所においては、いかになっており、関東信越医務出張所においてはいかようになっているかという点について伺いたい。それはとにかく、つき添い婦がついてそのつき添い婦に支払わなければならない金、費用、これは何人がどこを通してどこに請求するのでありますか。埼玉療養所では、どういうような方法をおとりになっているか。また千種さんの所管においてのあなたの療養所はどういう方法をおとりになっているか、これを伺いたい。
  110. 松島良雄

    参考人(松島良雄君) ただいまの御質問の前にちょっと申し上げておきたいことがあります。それは先ほどの、ただいま御質問がありました中に、資格があろうとなかろうとどちらでもいいと軽く考えているというふうに言われましたが、そういうことは決してありません。できれば資格のある方が非常に望ましいとは思っておりますけれども、ただ得られないだけであります。  それから費用の点について申し上げます。つき添い婦のついている患者はいろいろありまして、生活保護、社会保険、それから自費の患者、いずれもつき添い婦はついておりますし、まただれでもつき得るものになっております。それで自費の患者は自弁いたします。それから社会保険の患者は、社会保険の方から支払われる。それから生活保護患者は国家及び県、両方から支払われる。それはつき添い婦の手に入ることになっております。
  111. 高野一夫

    ○高野一夫君 私はそれを伺っているのじゃなくして、社会保険なりそれから生活保護を受ける金がどこから出るかということくらいはそれはわかっている。その書類を何人が作って、あるいは院長がそれを検査して、そうして医務出張所長を通して厚生省なら厚生省、あるいは支払い銀行に請求するのか、あるいは東京都ならば東京都に請求するのか、私はこのルートを伺っておる。あなたは埼玉ですから埼玉の場合として御答弁願います。
  112. 松島良雄

    参考人(松島良雄君) これは書類医者が作成いたします。それを生活保護の場合を申し上げますと、各福祉事務所に持って参りまして、それが各県へ参りまして、そこで審査されて許可、不許可がきまることになっております。
  113. 高野一夫

    ○高野一夫君 しからば、あなたは国立療養所医官であるから、やはり国家公務員である。そこで病院長その他医官方々がその請求書をお作りになるということならば、その請求書については責任をお持ちになる覚悟でありますか、その点は……。
  114. 松島良雄

    参考人(松島良雄君) ただいま御質問ありましたのはあれでございましょうか、請求書の……。
  115. 高野一夫

    ○高野一夫君 請求書でございますが……速記をとめて下さい。
  116. 加藤武徳

    ○理事(加藤武徳君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  117. 加藤武徳

    ○理事(加藤武徳君) 速記を起して下さい。
  118. 松島良雄

    参考人(松島良雄君) 請求書については、その金額が正しいかどうかということを認めることにはなっております。それは何日から何日まで、どのような方法でついたかということを認めるということに解釈されてやっております。
  119. 高野一夫

    ○高野一夫君 千種参考人から……。
  120. 千種峯蔵

    参考人(千種峯蔵君) この一々の請求は私の方の役所は経由いたしません。直ちに福祉事務所もしくはその方に流れていきます。
  121. 高野一夫

    ○高野一夫君 千種参考人に伺いますが、あなたのところを通らなくても、あなたの所管の、あなたが監督なさる療養所においてはすべて適正に行われているものとお考えになりますか。またお考えにならなければあなたのお仕事は勤まらぬわけですが、その辺はいかがですか。
  122. 千種峯蔵

    参考人(千種峯蔵君) 指定された手続によって適正に運用しておるものという信頼を持っておりますが、万々一のこともあり得るので、常に心がけてその検査もしくは指導ということに努めておるつもりであります。
  123. 高野一夫

    ○高野一夫君 各位にはもうしばらくごしんぼう願いたいと思います。  後藤さんに伺いたいのでありますが、あなた方がいろんな、今度は非常に広範にわたり、長期間にわたる廃止反対の運動をなさっておるわけなんでありますが、これは団体としておやりになっておるわけでありましょうけれども、あなた方がとりあえず一番身近に、直接あなた方が組合員なり、会員としてお作りになっておる団体はどれですか、全国看護労働組合でありますか。
  124. 後藤しづ

    参考人(後藤しづ君) そうでございます。
  125. 高野一夫

    ○高野一夫君 ところであらためて、全国労働組合からいろんな名前においてちゃんと印刷してある文書、その他が配布されておりますから、そこで一応全国看護労働組合なるものについて伺っておきたいのでございますが、これはどういうわけなんですか。これの組織ということをいうわけですが、幹部、組合長、あるいはそのほか委員長と申しますか、そのほかの幹部を御選任になるについては、あなた方はどういうような方法でおやりになるわけでありますか。それが一つ。組合は組合としていろいろ運営していかなければならない、事務員も使わなければならぬ、書類も作らなければならぬ、あるいはこういうような活動もやらなければならぬ、そういうような費用も要るわけです。そういうような費用というものはあなた方がしかるべき一定の組合費なり、負担をなさるのか。あるいはあなた方がおとりになる、国家なら国家からおとりになる費用の、あるいはほかからおとりになる費用の何割か、何分かというものをその組合に戻す、こういうような方法でもおやりになるのであるか。その組合活動についてあなた方はそういう会費制度でおやりになっておるのではあるか。あるいは歩戻しというようなことでおやりになっておるのであるか、そういう点をちょっと伺っておきたい。
  126. 後藤しづ

    参考人(後藤しづ君) 役員の選出につきましては、年に一回大会を開きまして、全国から集まりまして、あるいは東京で、あるいは大阪で開くこともございます。そのときによって、その場所は組合員の意見を聴取しまして、何と申しますか、(「会費のこと」と呼ぶ者あり)意見の多い方に賛成するわけなんでございます。(「組合費、組合費」と呼ぶ者あり)はあ、役員の選出ですから。それから、そこで役員の選出をいたします。そのときには各分会がございまして、その分会から十名に一名の代議員を選出して、その選出された代議員が大会に集まりまして、その代議員の選挙によって選出されるわけでございます。  それから運営の費用につきましては、各組合員が組合費を納めまして、その全部を運営費に使っております。
  127. 高野一夫

    ○高野一夫君 もう一つ後藤さんに簡単なことですが、一点伺って、あと厚生省に伺いたいと思いますが、あなた方の労働組合は、いわゆる労働組合としてのお活動をなさるわけでありましょうが、こういういろんな文書をお配りになるものですから、ともするといろんなデマも飛ばぬわけでもないので、これははっきりおさせになっておいた方がいいと思うから、特に伺うわけなんでありますが、別にほかの政党関係なり、そういう面との、外郭団体と申しますか、あるいは元の親の団体と申しますか、そういうものとの御関係は別にないのですか。
  128. 後藤しづ

    参考人(後藤しづ君) 党派的なあれはございませんですけれども、婦団連だとか、そういうようなところから会員になってくれないかと申し込まれまして、そういうものの会員にはなっております。
  129. 高野一夫

    ○高野一夫君 私がまあ一つは政党としたのが言い過ぎて間違っておったのですが、別な意味のことを伺いたかったのですが、これは一応保留いたします。  厚生省に伺いますがこの所管の局長である社会局長にまず伺いますが、結核療養所から医官、院長の責任において請求書が出る、こういうお話である。それはあくまでその点については、何人のつき添い人が、何人働いて、そうして正式に監査をして、監査には当然責任を負うと、こういうような国家公務員としての埼玉療養所松島医官のお話である。そういう請求書が来た場合に、所管局長である社会局長は、あるいは課長がおやりになるのかしらぬが、責任者として局長はどういうような方法をおとりになっているのか。この書類について、また厚生省の方では何らか審査、監査の方法でもあるのか。あるいはまた請求額が適正であるとするならば、直ちにお支払いになってつき添い婦に迷惑のかからないように、生計に不安を与えないようになさっているのか。あとはその御答弁のいかんによって伺います。
  130. 安田巌

    政府委員(安田巌君) 私の所管は生活保護の中の医療扶助でございますが、その中で医療扶助を受けておりますところの患者のつき添いの問題かと思うのであります。それでつき添いを要するかどうかということをきめる場合につきましては、先ほど御説明があったようでございますが、それが福祉事務所へ出て参りました場合に、福祉事務所におきましては、それを私ども形式的に書類審査をいたすわけでございます。そこに書かれてあることが一応真実なりということにいたしまして、支払いをいたすのでございますけれども、実際はもう少し実態について監査をする必要があるというふうに感じておりますが、なかなかそこまで手が及ばない実情でございます。
  131. 高野一夫

    ○高野一夫君 それで引き続いて社会局長にお尋ねしたいんですが、その前に井上参考人に一言だけ伺いたい。あなたがこれを完全看護、完全給食といろいろ言うけれども、それは実際はその療養所なり病院側が点数の加算をしたいがためというようなお話があって、そうしてその加算をただ病院側がしたいと、いかにもその加算されたる点数を換算したその金というものが別途に流用されているといいますか、そういうような印象を受けて拝聴したわけなんですが、その辺のところをもっとはっきり御説明願えませんか。あなたの考えなり、御調査になっている結果を聞かしていただきたい。
  132. 井上五郎

    参考人(井上五郎君) 現在これを実施しているところは国立病院でございますが、特別会計制ということになっておりますが、一応これは施設におさまらない。施設に入りますとそれがすぐそのまま大蔵省の方に戻されることになっております。でありますから、私たちとしては四点加算したならば、それだけの内容を上げることに使わるべきだという意見を持っているのに対しまして、それは食費なり、それから人員なりというものは定員法、それから一年間の予算の中で食費がきめられている、四点加算されたものがそのまま大蔵省あるいは特別会計の中に吸収されていく、こういうことでございます。
  133. 高野一夫

    ○高野一夫君 実は先ほどのあなたのお話はもっと私は深刻な意味で受け取ったわけなんです。いわゆる四点加算に関する金というものが、どうも何となく完全看護なら完全看護に十分に使われていない、使われていないということは、その金がほかの方に利用されていることになる、そういうようなことで何かあなたが調査のデータをお持ちになっているかということで伺ったわけですが、今のお話で一応深く追及しません。  そこで厚生省の医務局長か社会局長かしりませんが、どちらでも所管の方に御答弁をしていただきたい。これは一つはっきり聞かしていただきたい。私が調査している限りにおきまして、昨年、昭和二十九年三月における会計検査院の第二部長が清瀬病院、東京、それから中野、三病院の会計検査をやった。この会計検査をこの国立の三療養所がやられたということは、これは私は重大な問題だと思う。結果いかんはさておいて、重大な問題だと思う。これは中間の監督者である医官なり、病院長はもちろん、医務所長、もちろん最後は厚生省の所管局長といいますか、大臣というかしらぬが、ここにこれは責任があるべき筋合いのものと考えるから、はっきり厚生省から御答弁を願いたい。この昭和二十九年三月に清瀬、東京、中野、三療養所を会計検査院の第二部長が検査をした。その結果について詳細に御報告願いたい。それはあなた方は最後の責任者であるから、この資料はお持ちでなければならぬ。もしお持ちでなかったならば、私はまた再び当委員会として会計検査院第二部長の出席を求めて詳細な資料の提出を求める腹をきめなければならぬ。また当院の決算委員会においても当然この問題について追及さるべきだと思う。そこでそこまではやりたくないから、とりあえずあなたたちが責任者として御承知になっておらなければならないと思うから、御承知になっている限りにおいて、詳細にその第二部長が調査して発表した結果を一つ御答弁願いたい。
  134. 安田巌

    政府委員(安田巌君) 実は私このことを申し上げるのもいかがかと思って今までそういうことを積極的に申し上げなかったのでありますけれども、実は今日午前中に委員会に参りましたところが、全国看護労働組合関東支部という名前でもって「附添看護料のプール制度について」という資料が出ておったのでございます。これは私は委員の方からいただきましたので、おそらく配られたものではないかと思うのでありますが、その最初のところに「東京療養所及び清瀬病院で附添婦が二人、三人附を行って看護料を二重、三重取りしていると言いふらしていますが、事実は全く逆で、」ということが書いてございます。それから終りの方を見ますというと「以上申述べましたように厚生省の宣伝は「ためにせんがための言いがかり」で、「重症者の生命をどうしたら守ることができるか」ということからは全く離れたものなのです。」これは言いがかりであるというようなことでございます。私は特にこのことを申し上げますのは、実はつき添い婦の方なりあるいはこの労働組合の仕事をおやりになっている方々はこのことを十分御承知ではないかというふうに考えておったのでありますけれども、こういうふうなことが出て参りますというと、おそらく委員の皆さん方も御判断にお迷いになるのではないか、こういうふうな感じがあるわけでございます。今高野委員の御指摘になりましたことは、二十八年度の決算検査報告という会計検査院が出した資料の中にも実は出ております。これはごく簡単でございますけれども、その百三十五ページに厚生省というところの冒頭にそのことが出ておるのであります。これは決算委員会でも私どもおしかりを受けたのでありますが、その内容を詳しく申しますと時間がかかりますから簡単に申し上げたいと思います。これは会計検査院の検査報告がございまして、指摘もされましたし、行政管理庁からも同様な御指摘を受けております。それから私どもそれに基いて調べました点でも、そういうことを確認をいたしております。なおまた直接所管の庁でありますところの東京都がそれに基いて調べましたところの結果の資料も詳細なものがあるわけでございます。  簡単に申しますと、国立療養所について会計検査院が検査を実施したところ、昭和二十七年四月において、兼帯による重複請求が十三件あったとあります。また国立療養所清瀬病院に検査を行なったところ、同様の例が昭和二十七年四月から九月までの六カ月間に三百二十五件あった。しかして右看護料に関する一切の手続は右療養所内にある看護労働組合が行なっており、福祉事務所より受領したこれら看護料をプールしている。看護婦には別途組合の定めた基準によって支払われているため、東京療養所つき添い組合にあっては百十数万円を組合に保有していた。  次に、国立中野療養所について会計検査院が検査を実施したところ、兼帯による重複請求及び実際につき添った日数より多く請求した等がある。これら超過請求受領の金額は、昭和二十八年四月から十一月までの八カ月間に、五十七万余円に達しており、右看護料は前記同様つき添い組合がプールしている。  それからそのほか北海道あるいは埼玉療養所等もございます。それから東京都内の国立、私立病院三十六カ所について私どもの方で調査いたしました結果も、そういったような件数が百二十件ばかりございます。これが約百五十五万円でございます。そのほか全国的にこういう事例があるのでございます。たとえて申しますと、その後調べました調査によりまして、一人々々の名前と、そうしてそれがどういうふうな架空の名義を使っておるとか、あるいはつき添った日数よりか水増しのものがあるとか、あるいは一人が二重、三重に請求しているとか、全部の金額が出ているのです。そこでその金額を申し上げますと、たとえば国立の東京療養所におきましては、昭和二十八年の四月分だけで三十一万円になっております。国立清瀬療養所におきましては、二十七年四月から九月まで計百七十六万八千七百十六円、月平均二十九万四千八百円となっております。それらの金が先ほど申し上げましたように、中野療養所において百十余万円プールされており、東京療養所においても百余万円がプールされているというような数字になっておるわけでございます。これがいろいろ調べてみますというと、問題の禍根は、一つは兼帯患者一人について、一人のつき添いがつくということでなくて、患者三人なり、あるいは二人に対してつき添い婦が一人つくというようなことから、患者の住所地の福祉事務所の書いたものとの組み合せによりまして、同一福祉事務所に請求が行かないことになっているのがございます。それからまた生活保護と、そのほか社会保険とが組み合せになっておって、発見ができなかったというようなこともございます。あるいは中国筋の某県におきましては、患者と、それからつき添いの方と一緒になりまして、不正の請求をし、それを両方で分けておったというような例もあるのでございます。詳細な資料はここに持ってきておりません。細かい名前まで全部わかっておりますけれども、時間もございませんから、この程度で一つお許しを願いたいと思います。
  135. 高野一夫

    ○高野一夫君 このことはつき添い婦の制度の問題を考えるのに重要なことである。そこでただいま社会局長のお話の中に、埼玉療養所もその中に今出てきた。私は東京だけのことしか知らなかったのでございますが、そこであなたは請求書の作成監査について責任を負う立場であるということを確認された。それで千種出張所長は、自分の所管の療養所は正しいことをやっていると、こういうふうに確信されておる。こういうお話です。そこでこういう不正なる請求が行われて、国費がむだに使われる。しかも、それが何とか組合の金庫の中におさまっておった。そうして返還を命じられた。こういう事実があるとするならば、医務出張所長なんというものは、自分の所管の療養所のそういうあり方について、何ら監督ができていない。そうして国立療養所病院長医官も、少くとも会計検査院に洗い出されたところはその責任がある。負わなければならない。厚生省もそうである。そこでもう一ぺん私は伺いたいのでありますが、そこで松島さんは責任者でないから、院長でないからやめますけれども、千種さんにもう一ぺん伺って、あとで安田さんにあわせて伺いたいが、こういうような会計検査院が発表して、そのような架空のつき添い婦の名義を使ってそうして日数を重複して、あるいは書類の誤まりであるかもしれませんけれども、少くとも非常な金額というものが不当に国から支出されなければならない、こういう国立療養所のあり方、これに対してあなたは今まで何事もなく、適正なことが行われておると思って、自分責任を果しておると、こういうふうにお考えになっておるわけだが、こういう事実をごらんになって御承知になっておったか。先ほどの御答弁は、おそらくこれを御承知になっておらなかったのだ、こういう重大で、少くとも去年、一年前に摘発されたこの事件を、担当の医務出張所長が御存じであったかどうか。そうして、これに対していかなるお考えをお持ちになり、いかなる処置療養所に対して、あるいは、あなたの監督者の医務局長あるいは社会局長に対し、どういう態度をおとりになったか、これを一つお聞かせ願いたい。
  136. 千種峯蔵

    参考人(千種峯蔵君) 支出官の支出に対しましては、信頼をもって臨んでおることは先刻申し上げましたが、間々いろいろ事故が生じまして、まことに恐縮もし、あとで、それらについての今後の方針について極力努力しておるわけであります。ただいま御指摘の点につきましては、まことに申し上げにくいような状況でありまするが、先刻申し上げました通りに、私が病後であって、本年の三月末まで、ちょうど昨年のその期間は、私の事務代理を置いて事務を処理してもらった関係上、件名についての報告は聞いた記憶がありますが、委細のことにつきましては、はっきりと御答弁いたしかねる次第であります。あしからず。
  137. 高野一夫

    ○高野一夫君 もうしばらく、各委員にはあと二、三分ごしんぼう願います。  そこで千種さんにもう一つ伺いますが、あなたが病気でおありになったということは、御同情申し上げるのですが、その間は、あなたは国家公務員として、監督者として責任ある立場におありになるのだから、その間、あなたが病気で療養されておる間は、何人かあなたに代って代理をしなければならぬ。そういうふうに医務出張所はなっていないのですか。
  138. 千種峯蔵

    参考人(千種峯蔵君) 私の次席の、補佐役の事務官がおりまして、これが私の休んでおる間、私の事務代理をしておりました。これは上司のお許しを得てやっておるわけであります。
  139. 高野一夫

    ○高野一夫君 私どもは一昨年の行政機構改革のときに、医務出張所は廃止すべきだという議論がだいぶ出た。そこで、それはそれとして、現在残っておりますが、今のあなたのお話を伺っておるというと、あなた方は、その自分の管下の療養所に対して厳重なる、適正なる監督指導をなさっておるとは考えられない。私どもは、つき添い婦の生活問題を考え、いかにして、不安のない生活状況に置きたい、こう考えておるわけで、しからばなおさらのこと、個人についても、あるいは、つき添い婦の組合にしても、こういうような会計検査院から摘発されて、百十何万円の金がその金庫の中におさまっておった、こういうようなおもしろからざることがあってはいかぬので、こういうことがないようにしてもらって、そうして初めてつき添い婦の問題について、一つわれわれはあなた方の生活を脅かさない方法を考えたい。そこで、つき添い婦の方々も、この点については十分一つお考え願わなければならないわけでありますが、何人からも、すでに発表された事実について、午前午後を通じて、この問題にお触れにならなかったことは、私は非常に遺憾に思う。  ところで厚生省に伺いますが、あなた方は、摘発されて、これをどういうふうに処分されたか、これに対して、ただ会計検査院が摘発して発表した、こういうことになっておる。そこで厚生省は、この問題を裁判ざたにするのか、あるいは組合の金庫の中におさまっておったものを返還を命じて戻ってきて、それでいいとお考えになっておるのか。その辺はどういう処置をとられて、どういうお考えであるか。今後もあることであるから伺っておきたい。当然この問題は、われわれ決算委員会に持ち出して、このことを追及しなければならないから、現在どういうお考えで、その後どういうような方法、処置をおとりになったか、これを伺いたい。
  140. 曾田長宗

    政府委員(曾田長宗君) ただいまの御質問に直接関係はないかと思うのでありますが、ただいま私どもの千種所長に対して御質問がございました点、また千種所長の答弁の中に少し明確でない点があったように思われますので、つけ加えさしていただきたいと思いますが、その点は、医務出張所長療養所の監督をいたしておりますが、つき添い婦をつける必要がありやいなやということの証明はいたすのでありますが、事後におきましての、このつき添い婦料の請求書の作成ということには、再々参考人も申し上げておりましたように、関係はございません。その点を御了承を願いたいと思います。  なお、ただいまの御質問については、社会局長から御答弁申し上げた方がよろしいと考えます。
  141. 高野一夫

    ○高野一夫君 あなたは、この請求書の検査には、医務出張所長は当らぬ。だから責任はないとおっしゃる。これはとんでもない間違いだ。療養所を監督するとあなたは言明しておる。そうして療養所医務出張所長が監督して、そうして療養所長が請求書に責任を負う。こうならば、請求書に対して責任を負うか負わないかということは、その療養所長責任を負う。その療養所を監督すべき医務出張所長が、療養所長のすることに対して何ら責任を負う必要はないというのは、どういうわけか。そんなわからぬことがありますか。
  142. 曾田長宗

    政府委員(曾田長宗君) 療養所長は請求書を作成いたしておりません。
  143. 高野一夫

    ○高野一夫君 請求書を作成していないけれども、請求書というものについては、院長なり療養所長責任である。その療養所長医務出張所長が監督しておる。指導監督しておるだろうから、療養所長がやっておることを一々あなたが、医務出張所長がやる必要はないのじゃないか、この請求書に限らず、病院診療であっても、薬の仕入れであっても、そんなことは医務出張所長はやる必要がない、療養所長を監督しておるのは、医務出張所長だ。その療養所長責任下にある。その責任をもってなさなければならない仕事に対して、出張所長が責任を負う必要がないということはどうか。そのくらいのことで医務局長が監督できるわけはないでしょう。
  144. 曾田長宗

    政府委員(曾田長宗君) 私が所長と申しましたので混乱が起ったと思うのでありますが、私の申しておりますのは、療養所の所長は、つき添い婦の申請はいたしますけれどもその療養所長はつき添い婦料の請求はいたさないのであります。従いましてその仕事を監督しております医務出張所長も監督の責任がございません。さような意味でございます。
  145. 高野一夫

    ○高野一夫君 この問題はいずれ決算委員会に持ち出しましてあらためて一つ吟味したいと思います。ただしかし、あなたは先ほど松島さんが何とおっしゃいましたか覚えていらっしゃいますか。請求書はちゃんと医官なり院長なりが検査をして、そうして書類は院長、医官が作ると証言していられる。だから私はそのことを言う。療養所長責任を持たないはずがない。その療養所長を監督する医務出張所長が何で責任がないということが言えるか。この問題はきょうはやめます。これは決算委員会の方でやります。
  146. 安田巌

    政府委員(安田巌君) 今のお話は、埼玉療養所でそういうふうにおやりになっていただいていることは、非常に私どもといたしましてはけっこうな手続なんでありますけれども、普通は患者申請する形をとります。療養所はつき添いが必要な容態であるという証明をするわけでございます。それに基いて私どもの方で判断をいたしましてつき添いをつける、つけないということをいたすのでありますが、その療養所のお医者さんの御判断自体に、また私どもあとで調べますと、これは国立の療養所のことを申しているわけではございませんけれども診療書に書いてあることと違っておることもございますので、そういう点も私ども気をつけておりますが、そうして出されたものを私どもの方で形式的に審査いたしまして、払うということになっておりますので、あるいは大部分の療養所におきましては、所長がそのことを知られないことが多いのではないかというふうに考えておりますので、これは医務局長の方の御説明に補足させていただきたいと思います。  それからこういうような事件があったのについて、いかなる措置をとったかということでございますが、私どもほんとうに監督が不十分でございまして、申しわけない次第でございます。会計検査院からも指摘いたされますし、行政管理庁からもお小言をちょうだいいたしております。参議院の決算委員会におきましてもその点を指摘されて、あやまったようなわけで、ただ私どもは相手が、該当者がいろいろ未亡人でありますとか、あるいは引揚者でありますとか、いろいろ御苦労なさっている方々でありますし、まあまあお気の毒ではあるし、お金を一つ還付命令を出して返していただけるなら、そう表ざたにしなくてもいいのじゃないかというような実は気持があったわけであります。しかしこういうふうに、そういう事実はないのだと言われますと、決算委員会の報告が出ておりますのに、何か厚生省がうそをついているようなことになりますし、あるいは会計検査院の報告が間違った報告をいたしているということにもなりますので、そうすればこれが事実であるのか事実でないのかということにつきまして、もう一ぺん何とか措置をとらなければいかぬかということも実は考えられるのでございます。そういった状況でございます。
  147. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 四時にちょっと急ぐ仕事がありますので、出なくちゃならない会合を持っておりますので、いろいろ伺いたいのですけれども、一つだけにしぼりまして……。  たびたび千種参考人にお尋ねして恐縮ですが、あなたがそういう立場で、実は厚生省の立場で証言されたわけなんで、これはことにつき添い婦制度を現在廃止することが適当だという立場からの発言なんで、私は重要視しているのですが、あなたがつき添い婦反対の理由の第一にあげられた点ですね、今の看護婦というものは非常な高度の技術を要求されている。それで、高度の技術を要求しているからして、現在のつき添い婦よりは常勤になったところの雑仕婦の方が適当であるということを言われたわけですが、しかしながら、またあなたはその点は、大体私どももそういう考えはどこでも通用する考えだと思いますが、しかし同時にあなたはまたあとのところで、現在の看護実態がはっきりしていないために、現在の療養所においては看護要員が非常に不足しているということも認められているわけなんですが、そういう場合に、つき添い婦を廃止することによって、すなわち高度の技術を必要とするようなそういうところに、十分の、雑仕婦といいますか、今度の新しい改正によるところの看護員が充足されると思っておられるのですか。まずその点をお伺いしたい。
  148. 千種峯蔵

    参考人(千種峯蔵君) お答えいたします。私の申し上げましたことは、二段になっておりまして、第一段の方針と申しますか、つき添い婦を廃止するという段階においては、理想としてはこれにかわって看護婦が当るべきであるというふうに申し上げました。それから現実の問題に近づいて、つき添い婦廃止後における看護力の影響問題につきましては、今問題となっている常勤労務者を対象として申し上げました。これは理想はあくまで看護婦一本であります。しかし現段階において、それの次善策として、まずもっと常勤労務者をもって前進するということについて、次善の策として常勤労務者ということを繰り返している次第であります。従って、常勤労務者は高度の教養あるいは技術ある者とは申し得ませんですが、ただ前のつき添い婦と異なるところは、完全にこの病棟における看護体系の中に入って、婦長もしくは主任のもとに一本の指令系統で動く、統制ある活動ができるという、いわゆる病院医療意図が一貫して届くということを認めました。従って常勤労務者をもってしても、はるかに現状よりの前進である。しかし願わくば将来のことを申しますと、将来全部看護婦一本でありたいのだというのであります。
  149. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 あなたの理想論というものを、今机の上のことを言つておるのじゃないのですが、あなたはそれをつき添い婦の廃止理由の一つにあげられたわけなんですが、ところが常勤の要員というものは、現在のところ厚生省が出しておるのは二千二百七十、しかももし現在のつき添い婦が二十四時間という勤務なんですけれども、これをかりに半分の十二時間としましても、二千二百七十という数字はほとんど半分の千百人くらいにしか当りませんね、計算してみると……。それでもってあなたは先ほどのお言葉をもっていえば、ほぼこれが置きかえられる、代置されるというふうに言われたのですが、そういう根拠は、どうしてそういうことをあなたは言われるのですか。
  150. 千種峯蔵

    参考人(千種峯蔵君) 先ほど申し上げましたように、実際的検討に入る前に、一応申し上げると、こういうふうな観点から一応これを是認して前進するという意味において申し上げたつもりであります。従って私はここでもって百パーセントこれはこの通りでよろしいという確信を持って臨んでおるわけではありません。今後この施設長、すなわち療養所長とともに実態をきわめつつ検討を加えていって、最後に、妥当なりやいなや、いわゆる個々の事情に照らして、実情に即した最も無理のない数字というものをつかんだときに初めてこの正しい検討が出てくる。しからばそのときにそれに対する対策をどうするかということを先刻も申し述べました際に、時間が来ましてカットしましたので、そこのところが切れたような格好になっておりますが、具体的にあなたのところのこの病棟に対する患者の分類、収容をどうするか、あるいはこの手術病棟に対する看護婦の配置をどうするかというようなことを、一つ一つ実際的に当っていって初めてこれの具体的な生きた批判がつかめていくと思うのですが、それは現段階ではまだそこまで行っておりません。
  151. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 そういう考え方が、ちょっとあなたの頭が少し変だと私は思うのですが、絶対数がもうほとんど足りないことがはっきりしておるのですよ、ねえ。半分にもならない、半分にも。現在のつき添い婦の看護労力、看護力というものは二千二百七十人が、八時間労働であるから、その三分の一かそこらしかならないのですね。それをもって幾ら個々に当ってみてもそれが出てくるはずがないと思う。あなたは個々についてみれば、何かそこに手品みたいに出てくると思われるのですか。
  152. 相馬助治

    ○相馬助治君 関連して。千種さんに今竹中委員からお尋ねしておることに連関して私もお聞きしておきたいのです。つき添い婦制度が今日持っておるいい点、悪い点、そういう抜本的改正のための基本論争としての問題の取り上げ方も、一つは問題としてあろうと思う。ところが竹中委員が今問題にしておるように、今この委員会が問題にしておりますことは、政府提案に対して、これをどうするかということ、政府提案というのは、すなわち何だといえば、四千人のつき添い婦を二千二百七十人のものに置きかえるということが、これはもうはっきりしておる。それを竹中先生が、二十四時間を半分にした場合には、今申したように、四千人が二千二百七十人の二分の一の人数になるという、それで一体病人の立場からも、医者の立場からも、看護が一歩前進したと言い得るのか、むしろ後退するのか、こういう問題が一点なんです。  そこでもう一つの問題は、今度は現実に首を切られたり、あるいは配置転換をされるつき添い婦の生活権の問題があるのですが、今問題にしておるのは、その第一点のことなんですが、あなたの立場から見て、大量観察による平均値に基けばこれは差しつかえない。これは実に暴論で、そんな講釈をわれわれは聞こうとしておるのではなくて、現実に四千人を二千二百七十人にするというこの事態がいいのか悪いのかということを、われわれは参考人から意見を聞いておるので、そこをはっきり見解をお示し願いたいと思うのです。もっとも、竹中委員があなたのお考えがおかしいと言ったのは、私はあなたの考えがおかしいとは思っていない。あなたがここに来て参考人として意見を言う立場は実は妥当でないということは私は気づいていて、あなた自身がきわめて迷惑しておると思う。これはあとで私はこの委員会において、どうしてあなたのような方を参考人に選んだかは、これは別途問題にしますが、これはこちらの問題で今問題にしませんが、そこのところを大胆におっしゃっていただきたいと思うのです。今の厚生省はまずいならまずい、理屈でなくて。つき添い婦制度そのものの抜本的な論争は別途にわれわれは譲るのです。どうかお願いします。
  153. 千種峯蔵

    参考人(千種峯蔵君) 少し私の考えております考え方と竹中先生のお考えと、出発点といいますか、基本点が、私の考えと違うために、そういう開きになったかと思いますが、竹中先生のお考えは、現状を是なりとしてのお考えのようでありますが、私の考えは、現状において改善の余地ありという立場に立っております。しかし私先ほども何べんも断わって申しましたように、一応大量観察で平均値的見方をしてもこうこうだ、一応こうだということを申し上げましたが、最も具体的な例として、実はただいまそこにあげましたT病院のこの二百二十六床、それから看護婦三十二、この病院は私の療養した病院でありまして、ここの看護内容というものは、これはつぶさにわかっております。それで私はただ単に理想論とか何とかということでは、これはもう現状を無視した際限のない話でありますが、一応私は現在の病院状態病院結核病棟状態ということについては、一歩前進でないかというふうに、目標を現在の国立病院における結核病棟状態という現実の標準に置いての考え方であります。従ってそれと対照しても非常に大きな、とても驚くような開きはないのじゃないか。それから私の体験したこの病院実情からしますと、これは実にりっぱなものであります。今はつき添い婦はおりません。先刻二人と申しましたが、あれは私のおります途中でつき添い婦を廃しまして、後半はつき添い婦はおりません。現状は一人もおりません。これはまことにお手本にするに足ると思われるような状態にあると私は見ております。それを対照してみますというと、現状を一応是なりとせずに、これを基礎として割り直してみるというと、不可能じゃないと、こういう結論が私としては下されるのであります。
  154. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 議論になるとどうもこれは切りがないことですが、私は何も是なりとしておるのではない。非常に現状はまずいということを前提としてやっておるのです。現状ですら不足だということで出発しておる。これはだれが見ても常識でもはっきりしておる。現状がこれでいいとだれもおそらく思っていないでしょう。それであなたは非常に公式論を言うかと思うと、また非常に狭い、あなたの入っておった具体的な病院だということでものを考えるというような、そこらが私にはふに落ちない。私の中学校の漢文の先生のところに私らが十人くらい遊びに行くと、塩せんべいを十枚出して、君ら腹一ぱい食べたまえと言う。塩せんべいは十枚しかない。それとあなたの議論は同じですよ。はっきり足らないことはわかっておる。現状を半分以下のものに置きかえようというのだ。それでもって個々についてやるなら工合よく行くという議論は、これはもうなっていないと、私はそういうふうに思うのですよ。だからこの点は私はもう質問しません。ただあなたがつき添い婦が現在の程度のものであれば、病院の反対の理由の三番目に、あなたはこういうことを言われた。現在のつき添い婦くらいであったらいいかもしれないけれども、これが人数が多くなると、病院の秩序が乱れるということを言われたのですが、そういう例があるのですか、その点を一つ。
  155. 千種峯蔵

    参考人(千種峯蔵君) 相当たくさんあるので、実は非常に平素苦慮しておるようなわけであります。特に地方に参りますと、この秩序の乱れた状態というのが顕著にあります。しかしここ二、三年来、つき添い婦も可及的、婦長、主任の統制下に、病院の一つの体系の中で動けるようにという指導を極力お願いして参ったので、二、三年前とは非常に趣きが変っておりますが、今でも、しかしつき添い婦の多いところでは非常に乱れた状態を呈しております。
  156. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 それはつき添い婦の数がふえたから秩序が乱れたのですか。先ほどあなたの言うのは、数が多くなれば秩序が乱れると、ところが全国的に見て、秩序が乱れておるところがあるというのは、それは必ずしも、特につき添い婦がふえてきたから、つき添い婦の数と関連してあなたはそう考えられるのかということが一つの点ですが、それからもう一つの点は、今あなたが言われたように、統制がだんだんとれるようになったので、このごろは秩序がよくなったという見方。統制がとれれば、別に数がふえたから秩序が乱れるということにはならないのじゃないですか。また統制がとれるものであれば、それは問題じゃないじゃないですか。つき添い婦がふえることによって秩序が乱れるということは、統制がとれるならば別に問題にならない。反対の理由にならないじゃありませんか、その二点。
  157. 千種峯蔵

    参考人(千種峯蔵君) 数が多くなるとどうして乱れるかというお話でございますが、数が少い場合には、どうしてもその病院看護婦のやり方なりあるいは婦長、主任の、つまり大きい方に同化されると言ってはおかしいが、乱れにくいといいますか、しかし数が多くなりますと、どうしてもそのために、たとえばさっき補食をして患者さんの食事をしつらえる場所、そういうものも、つき添いさんのための特別の施設というものも作らなければなりませんし、またつき添いさんの寝泊りする場所も、多いところは全部いれるだけの特別な施設を持っておりませんので、自然病棟の中で寝起きをする。それは一人、二人という少数のときは非常にきれいに、他に迷惑を及ぼさないが、大ぜいになるとどうしても乱れが出てくるという意味で、多いほど乱れが出ると、見えるということを申したわけであります。  それからもう一つの統制のお話でありますが、二、三年前と比べて非常にお行儀がよくなったと、統制下に動く傾向が出てきたということを申し上げましたが、それはその通りでありますが、しかし一番先に申し上げましたように、それには限界があるのでありまして、どうしてもその限界以上に職員と同様に規律ある、統制あることは望めないと思います。
  158. 相馬助治

    ○相馬助治君 冒頭に私、千種さんに聞いたのは、今竹中委員質疑応答された一点なのです。つき添い婦の数が増すというとその扶序が破れる、これがつき添い婦と数字との間に幾何学的関係でもあるかのごときお言葉なんです。これは実に言葉をかえれば、今日乏しい手当のもとに病人の看護に当っている全国のつき添い婦を侮辱する言葉です。一人々々の例をあげれば看護婦の中にも不心得者がいるでしょう。医者の中にも不心得者がいるでしょう。国会議員の中にも不心得者がきわめて多い場合がある。(笑声)そこで私はやはりこのことを井上さんや後藤さんはどういうふうに考えるか、あとで聞きたいと冒頭に言うておいた。その辺の関係のない人が随筆風にものを言っているのではなくて、千種さんのような立場にある方が、責任ある国会の参考人陳述の中において、速記に残るのです。これは。その場所において、さようなることをおっしゃっているということは、私には解せない。そこで数が多くなれば騒ぎが大きくなる、こういう俗論に対して、だから何か秩序を正しくするための服務規程のようなものでも将来考えなくちゃならないというのなら私はわかる。しかしこれはつき添い婦を増すというと、秩序が破れて騒ぎが大きくなるから、つき添い婦を増さないでこの際一挙につき添い婦をなくしてしまおう、話は実に割り切ってしっかりしているようだけれども、かかる俗論を私は聞いたことはない。そこで千種さんの立場から、何らかの手を打てば、つき添い婦が増してもそういう危険が救済されるとお考えか。今の段階ではどういうふうに指導しても、どういうふうに服務規律を作っても、今のつき添い婦というものの数が増せばもう問題にならぬとやはりお考えかということを、明確にお聞きしたいと思うのです。同時に井上さんと後藤さんからも、またできましたならば松島さんからも、もしもこれに連関して御発言があったら私はお聞きしたい。特に私は後藤さんにお聞きしたい。そういう論をあなたは肯定されてお帰りになるかならぬかということについて、はっきり聞いておきたい。で、私はそのことを肯定されるというならば、私、現在の立場から言うならば、つき添い婦制度は残したいと、私個人は思っている。いろいろ反省しなければならないところはあるだろうが、残したいと思っているのだが、後藤さんがそれを肯定するというのなら、私も考え直さなくちゃならない。一つその点をよく聞かしてもらいたいと思います。
  159. 井上五郎

    参考人(井上五郎君) 私、今出張所長の答弁を聞いておりまして、非常にこういう点で矛盾を感じているわけであります。と申しますのは、今T病院あるいはO療養所という例を出されましたが、この前提になっているいわゆる今のつき添い婦の労働力、看護力というものを全然除外して、そうしてこの看護婦の数をはじいてある。私、先ほど半数だと言いましたのは、医務局の説明を聞きましても、二千二百七十名がそっくり看護力になるのじゃない。二千二百七十名の半分がいわゆる看護補助者としての看護力になる。その半分がいわゆる雑仕婦としての常勤労務者になる。そうしてこれが三交代を行なっていく。そうすると私の計算では八百人にもならない。百四十二人しかいわゆる看護力の増員にはならない。いわゆる千百三十五名を三交代でこれを割りまして、三百何十名の増員にしかならない。このような結論になるわけであります。で、私たちは現状をやはり肯定するのではなくして、これは私たちもっと労働を合理化しなければならないし、また現在の看護内容を向上させたい。これは先ほどから述べておられますように、定員法が定められました昭和二十三年当時よりも今の医療看護というものは数倍前進している。この状態の中におきまして、たとえば、今完全看護を実施しております国立病院の中からも、もうすでにパート・タイム制の人でもいい、どんな人でもいいから、一人分の人夫賃を二人で使ってでも人がほしい、こういう要求がどんどん上っておることは、医務局でも、出張所でも十分御存じのはずです。私たちは、これを改善するために、せめてどうしても看護婦定員の中に食い込まなければならない。これは定員外に置かなければならない。こういう常勤労務者ではなくて雑仕婦さんをなぜ定員化してくれないのか。このことを痛切に望んでいるわけです。このことが一点と、いま一つは、当分は常勤労務者看護体系を整えるけれども、将来はこれを看護婦にしたいということを言われました。しかし私たちは、これは現状を知らない論だと思います。と言いますのは、やはり看護体系と申しましても、非常に看護婦は雑多な用務を控えております。そして、ほんとう看護婦としてやらなければならないいわゆる身の回りの世話、あるいは診療介助というようなものが、現在雑多な用のためにおろそかにされておる。そのために非常に看護力が落ちておる。ですから、私たちは看護婦も足りないけれども、そのほかに看護補助者としてのものも、どうしても定員の中に現われなければならない。さらに、いわゆる間接看護にあたる病棟雑仕婦とか、こういうものも、やはり職種としてはっきり確立さしていかなければならない。看護婦一本で、看護補助者もなくして、あるいは雑仕婦もなくして看護体系の人員を割り出されて、そういう解釈をされることは、看護を考えておられるという出張所長のあれとは思われない。もっと看護を向上させるということを真剣に考えられたら、私はおそらくこういうような答弁は出てこないだろう、こういうように考えます。
  160. 後藤しづ

    参考人(後藤しづ君) ただいま千種さんから申された、つき添いがふえればふえるほど秩序が乱されるということを、どういう意味に解釈をしていいのか私にはわかりません。二度目に千種さんがおっしゃいましたことは、そこらにつき添い婦がいるために、炊事場も設けなければならないし、そのつき添いが寝泊りする宿舎も作らなければならないし、しちりんを置いて火をおこさなければならないという、そういうことが秩序を乱すということなんでしょうか、どうでしょうか。どちらなのか私ちょっとわからないんでございます。もしそれが療養所内における男女関係がどうのこうのと、もしそういう意味で秩序が乱されるとおっしゃるのでしたならば、それは療養所内ではやっぱり患者さんもお医者さんもいることですから、一人や二人の恋愛関係が全然ないとは申されませんけれども、つき添い婦がいたからそういうことになるとおっしゃるんなら、それはつき添い婦がいたからじゃなくて、看護婦さんと患者さんとの恋愛関係もあれば、先生と看護婦さんの間にだってないとは言えない。それはやっぱりいろいろとあるんですね。だからつき添い婦だけが秩序を乱すということにはならないと思うんです。私これは大へん憤慨しちゃうんでございますけど。つき添いの立場から一言申し上げます。
  161. 加藤武徳

    ○理事(加藤武徳君) 千種さんに申し上げますが、補足説明をされますか、いかがされますか。
  162. 千種峯蔵

    参考人(千種峯蔵君) 大体反復になると思いますが。
  163. 松島良雄

    参考人(松島良雄君) 現在のつき添い制度がいいか悪いかということは、これは検討される必要が一応はあると私も思っております。しかしながら、つき添い的な人が重症患者に対してぜひとも必要であるということは、これはだれに申し上げても過言ではないと思います。というのは、いつ死ぬかわからない状態になれば、だれでもたれかそばにいてほしいという感じを持つのはこれは当然であろうと思います。そして先ほど私がいろいろ数字をあげて申し上げましたけれども、いわゆる業務上完全、治療上、医学上最低という想定の人員を出しました場合に、一度の患者五名に対して一人ということを申し上げましたけれども、五名に対して一人ということが私は治療医学上最低と申し上げたのであって、これがほんとう完全看護であるなら、やはりそういうような、いつ死ぬかわからない人に対してやはり一名のつき添い的な人が必ず必要になってくるものと思います。そういう意味で、現在のつき添い制度はある程度の検討は受けましても、つき添い的な人が残らなければならないと医学的に考えております。
  164. 加藤武徳

    ○理事(加藤武徳君) それでは参考人に対する質疑はこの程度で終了いたしたいと思いまするが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  165. 加藤武徳

    ○理事(加藤武徳君) 異議ないものと認めます。  参考人各位には長時間貴重な御意見発表下さいましてありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  本問題に関する本日の調査はこの程度にいたしまして散会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  166. 加藤武徳

    ○理事(加藤武徳君) 異議ないものと認めます。  これで散会いたします。    午後四時五十七分散会