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1955-05-19 第22回国会 参議院 社会労働委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月十九日(木曜日)    午前十時三十分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小林 英三君    理事      常岡 一郎君    委員            榊原  亨君            高野 一夫君            谷口弥三郎君            横山 フク君            高良 とみ君            森田 義衞君            阿具根 登君            藤原 道子君            山本 經勝君            相馬 助治君            有馬 英二君   国務大臣    労 働 大 臣 西田 隆男君   政府委員    労働政務次官  高瀬  傳君    労働大臣官房    会計課長    澁谷 直藏君    労働省労政局長 中西  実君    労働省労働基準    局長      富樫 総一君    労働省婦人少年    局長      藤田 たき君    労働省職業安定    局長      江下  孝君   事務局側    常任委員会専門    員       草間 弘司君    常任委員会専門    員       多田 仁己君    常任委員会専門    員       磯部  巌君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働情勢に関する調査の件  (昭和三十年度労働省関係予算に関  する件)  (労働行政方針に関する件)   —————————————
  2. 小林英三

    委員長小林英三君) それではただいまから委員会を開会いたします。  本日は、労働情勢に関する調査を議題といたします。  労働省関係昭和三十年度予算及び労働行政方針につきまして、政府に対する質疑をお願いいたします。  なお資料提出について御報告いたします。前回の委員会におきまして、御要望になりました労働省関係資料は、提出がごさいましたからお手元に配付いたしてございます。御了承願います。  なお西田労働大臣は、午後はおからだの御都合によりまして御出席ができかねますので、同大臣に対します質疑は、本日は午前中だけにいたしたいと思いますから、御了承願いたいと思います。
  3. 榊原亨

    榊原亨君 この前のときに資料としてお願いいたしました総合経済六カ年計画内容について、資料をお示し願いたいということを要求しておいたのでございまするが、今日ちょうだいいたしましたこの一枚の資料を拝見いたしますると、昭和二十八年度の数と、昭和三十五年度数字しかないのでありまして、この間におけるところの数字が何ら示されておらないきわめて不親切なる資料であります。従いまして、私どもしろうとにおきましては、かようなものだけでは、大臣のこの間のお話を了解することができないのでありまして、これは少くとも各年度における数字を示されることと、その内容説明を懇切丁寧に書いた資料をお出しを願いたいと思います。
  4. 小林英三

    委員長小林英三君) 委員長から政府要求します。次回に提出させたいと思います。  では質疑につきまして、高野君から最初やらしてもらいたいということを委員長手元に申し出ておったのでありますが、高野君がお見えになりませんので、どなたかどうぞ。
  5. 相馬助治

    相馬助治君 先般の委員会において資料を求めましたところが、それに関して労働省より資料けさほど配布になりまして、これを眺めてみますと、当初労働大臣大蔵省に向って要求したもののうちで、最も大幅に削られているものは失業対策費でございます。従って私はこの資料要求した理由が、失業対質費がまことに少きに過ぎるという一つ考え方をもってこういう要求をしたのですが、労働省自体としては、失業対策については非常に熱心な努力をもってこれを要求したことはわかります。これに対しては十分敬意を払うにやぶさかでございません。そこで問題は、四百八億も要求したものが二百八十八億というふうに査定されておるのでございまするが、この費用をもってして、労働大臣においては現状に応じて失業対策を完全になし得る自信を持っているのかどうか。それらについて、かなりしさいに一つ御信念のほどを承わって、次の質問に入りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  6. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) 失業対策費労働省要求に対しての査定額は非常に少く、それで失業対策をやっていけるかどうかというお質問考えますが、これは基本的なものの考え方において、私の考え方大蔵省考え方とが非常に違っておる。今までの失業対策事業費考え方は、三分の一あるいは三分の二、二分の一ときわめて僅少な額を計上して、これを国が各地方補助することによって、地方にある程度負担をさせて失業対策をやっていこう、こういう基本的な考え方で今までの失業対策事業費というものが考えられておる。私が労働大臣に就任いたしましてからは、失業対策事業と申しましても、国が直接国の力でやっていかねばならないような、建設的な金の非常によけいかかる、きわめて重要な失業対策事業というものと、地方々々のローカル・カラーと申しますか、特質によって必然的に地方でめんどうを見なければならぬという性格の失業対策事業、言いかえますれば、労働力のきわめて低い人であっても、地方では職のない人に対して、何とか職を与えて生活の資をかせがせるという意味合い失業対策というものと二つあるわけであります。従って国が責任を持ってやらねばならぬような失業対策事業については、地方財政見地から考えても、非常に地方財政は苦しんでいる。全額国庫負担をもってこの際行わなければならない。それから地方が一部負担をやっております今いう低能力と申しますか、労働能力の低い人の、やむを得ざる失業対策事業というものに対しても、国が親心をもって負担すべきであろうという私の基本的な考え方に基きまして、実は全額国庫負担をすべし、しかも人員も認められましたのは三万人ですが、四万人ないし五万人程度のものは、そういうことで建設的な失業対策事業としてやりたいという基本的な、考え方を変えた上においての請求を、大蔵省にしたわけであります。ところが大蔵省としましては、御承知のように一兆円のワクで予算を組まねばならない、財政的に非常に窮屈だという理由で、全額国庫負担ということは、この際考え方としては一応了解できるけれども財政的見地からかんべんしてもらいたいということで、前年度並みというのを、いろいろ折衝いたしました結果が、五分の四の負担で三万人だけ一つ、そういう重点的に失業対策事業をやることを認めようということによって、一応査定ができまして、地方の十九万に対する失業対策事業については、前年度通りでがまんしてもらいたいということで、いろいろ折衝しましたけれども内容を聞いてみますと、一挙にそこまで持っていくということが、三十年度の段階においては、多少無理であるかもしれないということで、一応失業者を生ずるであろうと予定されている人員をどうにかまかない得る程度ならば、がまんせざるを得ないだろうという考え方の上に立ちまして、特に地方財政の非常に窮迫しているという点にかんがみまして、一般予算の面においての補助費の増額したものに対しては、特別な起債を認めるということを大蔵大臣は条件をつけまして、自治庁とも協議した結果、ある程度あれば何とか地方の方も、起債増加によって負担ができるだろうという最低限度数字ということで、必ずしもこれでのうのうとしてやっていけると考えておりません。非常にやりにくい、窮屈であると考えておりますけれども労働省失業対策事業予算内容としましては、一つ進歩をしたという観点から、私の方では遺憾とは考えておりますけれども、やむを得ないだろうということで二百八十八億という失業対策事業費承知した。こういう事情でございます。一つ御了承願いたいと存じます。
  7. 相馬助治

    相馬助治君 労働大臣大蔵省に向って努力されたことは、けさほど配布された資料でわかります。問題は、潜在失業者をしばらくおくとしても、顕在失業者の数が非常にふえており、かつ失業保険が切れる人たちというものが、本年度において非常に数を増しておることは御存じの通りです。その際において、大蔵省から査定された二百八十八億というものは、何としてもこれは少な過ぎる。しかも問題であることは、労働大臣は確かに地方自治庁長官もこの前おやりだと記憶します。そうですね。
  8. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) そうです。
  9. 相馬助治

    相馬助治君 そうしますと、今度の失業対策費というものは、非常に中央地方財政の連関において大きな問題をはらんでおります。と申しますのは、今日失業者がこういうようにふえるのは、一つは、自由党時代からのいわゆる一兆億に抑えるという予算組み方、そうして投融資というものを大幅に削減するという考え方補助金というものを整理をするという考え方、これは国の財政の規模の上からいえば、私はそのこと自体を直ちに悪いと言っているのではありませんが、要するにそういう結果、失業者がどんどんふえてくることは一目瞭然です。そこで、鳩山内閣においては、その失業対策については、相当画期的なことがなされるであろうということを、先般の衆議院総選挙を通じて、国民期待していたと思うのです。社会党のわれわれですら、何ほどかの期待を持っていたわけです。ところが、ここに現われたのを見まするというと、依然として一般事業においては三分の二の補助でもって、あと三分の一というものは地方におんぶしておる。それから特別事業に至りましては、これは五分の四、または三分の二ということになっておりますが、これとても地方に相当程度おんぶしておる。こういう形で私はどうしてもこの失業問題は解決し得ないまでに現在深刻だと、こういうように思うのです。従って、この問題につきましては、いずれ予算審議の際に、われわれはその意思を何らかの形で明白にしたいと思っておりますけれども、全きのことができないのであります。そこで今御説明になりましたことのうちで、三万人の分について五分の四、または三分の二の補助とありますが、この三分の二というのは、富裕県に対する補助率の問題でございますかどうか。それから今労働大臣は非常に大きなことをおっしゃった。重大なことをおっしゃった。それは特別起債について、地方自治庁長官大蔵大臣、それから労働大臣の間で何がしのこの話し合いがあるように聞き及んだのでございますが、もう少しこれについては具体的に御説明を願いたいと思うのです。地方が足らなくなったならば特別起債をしてやるなどというのんきな話でなくて、足らないことは明白なのですから、この特別起債については、どの程度話し合いがあるのであるか、これを一つ承わりたい。
  10. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) これはおしまいの方のお答えになりますが、特別な話し合いがあった、了解事項があったということでなくして、現在の地方財政の面における起債において、一般会計で、公共事業あるいは失業対策事業というもので予算がふえておる。予算のふえた部分に対しては、起債を認めなければ事業を実施することができないことは事実なんですから、それに対しては、予算の編成の最終の決定をみますときに、三十億円というものを地方債で、特にそういうものに対する補助金負担金としてふやすということで現在決定しております。地方財政の面、起債の方で三十億だけは失業対策その他でふえておる。一般会計分地方負担分として現在実はふえて、地方起債が成立っておる、こういうことであります。そのほかに足らない場合には、特別に起債を許すという意味合いのものではございません。
  11. 相馬助治

    相馬助治君 私はこれに連関して続けて質問があるのですが、何か先ほどの話では、高野さんがどうこうということでしたが……、よろしゅうございますか。それでは失業問題だけ取り上げて……。
  12. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) もう一つ、第一の御質問であります三分の二、もしくは五分の四、これは三分の二は富裕府県、五分の四はその他の府県、そして、この特別失対の方では、材料費が二十九年度が四十五円何がしであったものが、今度二百十円、材料費を何倍かふやしております。従って地方負担というものをそういう面でも軽くしておる。そうして事業内容そのものは、今までよりもぐっといい内容事業が行われるというように一応考えて、予算措置をいたしたのであります。
  13. 相馬助治

    相馬助治君 この問題については一つ、意見になって恐縮ですが、失業対策の問題は単に労働省の問題というよりも、現内閣の大きな一つの基本的な問題としてこれを、土地の生産性を高揚するとか、あるいはまたその他国家にとって、将来に向って利益になるような大きなことをこの際やって、一方には失業問題を解決するという熱意を示していただきたいと思うのでして、ここに御説明になった失業対策費というものは、労働大臣が別途説明したところでは、大そうよくなっているようですけれども数字そのものは全く満足できないということを私ははっきりここで申し上げておきたいと思うのです。失業保険費負担金のごときは、これは明白なものであって、何人が計算をしても、この受給人員月平均額というものは明瞭だと思うのですが、一方的に大蔵省によって人員を削られた、そして労働省もこれをのまざるを得ない、こういうことは何としても私は困ったことだと思うのです。従いまして失業対策費につきましては、全く私は不満であるということを申し上げて、こまかいことについては、いずれ局長課長等がお見えのようですから、細目についての質問あとでいたしたいと思います。
  14. 阿具根登

    ○阿具根登君 関連して質問いたしますが、相馬君から先ほども言われたように、要求額については、相当大臣の方でも考慮されているようでございますが、今年の三月の失業者は八十四万であった、戦後最高だということを言われている。去年の三月から比べるならば倍近くにふえている。ところが今度の予算では、人員にして五万人あるいは特別失対で三万人、こういうことも言われているようでありますが、五分の四に引き上げればもっとこれは減るものだと私は思うのです。そうでございますならば、八十四万人にふえた失業者に対して、民主党国民に公約したのは、失業者を極力減らすということであったが、その公約と相反して失業者端極にふえてきた。ところが予算はわずかの増だということしか言えないと思うのですが、これに対するどういう対策を持っておられるのか、お伺いしたいと思います。
  15. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) 総理府の発表によりましての人数を今阿具根さんは言われたようです別、労働省でとりました三月の集計は、新規失業保険受給者は七万五千人しかふえておりません。そして求職者その他の数も例年と比較いたしますというと、パーセンテージにおいては、ことしの方が昨年よりか少いパーセンテージ労働省調査ではなっておりまして、八十四万人という完全失業者ができたということは、一応モデル・ケースの調査によって出た推定数字考えておりますが、労働省としまして、八十四万という完全失業者推定されるということを反発するに足るだけの統計資料をただいま持っておりませんけれども、詳細な労働省のとっております統計その他の数につきまして、一つ政府委員から説明させますから、それをお聞き願いたいと思います。
  16. 江下孝

    政府委員江下孝君) ただいまの阿具根委員からの御質問にお答えいたします。完全失業者八十四万、三月発表されました通りでございます。この八十四万人は戦後最高ということになります。昨年の八月に七十一万、これが最高でごさいましたが、その後若干平衡を保ってきまして、この三月に八十四万ということに相なりました。で、二月には御承知通り六十六万でございますので、十八万の増加でございます。この内容につきましてはなお詳細取り調べておりますが、今まで私どもの方で承知いたしております点につきまして申し上げてみたいと思います。この八十四万の内容は、男が四十四万女が四十万であります。二月は六十六万で、男が四十万で女が二十六万。で、男で四万ふえ、女で十四万ふえておるのでございます。これを年令別に見ますと、十四才から十九才までの年令層におきまして九万ふえております。すなわち十八万の半分の九万はこの弱年令層でふえている。その内容を見ますと、男四万、女五万と相なっておるのでございます。御承知のように例年三月は特に学校卒業者の入職期でございます。従いまして例年この二月から三月には完全失業者の数がうんとはね上るのが例でございます。昨年の例を見ましても、昨年は一昨年と比べまして、率といたしましては三四%、二月から三月はね上っておりまして、今年は率から申しますと三一%しかはね上ってない。しかし実数におきましては、仰せの通り相当な大きな数字になっておりますが、今申し上げましたように、これは主といたしまして学校卒業者新規就職者増加がここに出ておるということであるのでございます。  そこで労働省関係統計を申し上げたいと存じますが、大臣から先ほど申し上げましたように、失業保険初回受給者数はこの二月に八万九十でございましたのが、三月には七万五千に減っております。これは一月、二月は季節的な労働者が相当多いのでございますので、まあ私どももある程度減少することは予想いたしておったのでございますけれども、一応三月は新規受給者七万五千ということになっております。受給人員前月からの繰り越しで五十六万六千人、おおむね前月と同じような状態でございます。  企業整備人員でございますが、これは実は二月に一万を割りまして九千二百五十八名で、これは最近にない実は数字でございましたが、これは一時的なものでございまして、三月にはやはり約二万程度企業整備人員が出ておるのでございます。  それから職業紹介公共職業安定所の窓口の状況でございますが、二月には求職者が百五十万、求人者が五十四万ということでございましたが、三月には求職者が百四十四万、求人者が四十九万五千ということで、これはすでに学卒者就職が漸次きまりつつございますので、若干この点については減少を示しておるという状況でございます。  いずれにいたしましても八十四万という数字は相当な数字ではございますし、私どもも今後は慎重に失業情勢数字を見守ってこれの対策考えていきたいと思います。
  17. 榊原亨

    榊原亨君 政府失業対策予算をお組みになりました場合に、予想されます一年間の顕在並びに潜在失業者人員の各月別人員をお示しを願いたいと思います。
  18. 江下孝

    政府委員江下孝君) 予想いたしましたのは本年度完全失業者が大体六十三万、月平均六十三万程度であろう、まあ来年度におきましてはこれは非常に、予想でございますので、作業が困難だったのでございますけれども、一兆円予算のもとにおきましては、相当失業情勢も深刻になるであろう、新しい雇用面期待もそう大きくはできませんので、まあどのくらいふえるかという的確な数字というのは押えにくいわけでございますが、大よそ私どもといたしましては二十万程度はふえるのではないだろうか、これはないだろうかということでございます。そこでこれにつきましてのいろいろ失業対策としましての予算的な措置をある程度考えるということでございます。
  19. 榊原亨

    榊原亨君 そういたしますと、今年度におきましては、月平均六十三万でありますから、そして来年度が二十万増すというのでありますから、そうしますと年度の中間においてはどれくらい御予想になっておりますか。あるいは季節的な変動があると思いますが。
  20. 江下孝

    政府委員江下孝君) これは実は各月別には、正直申しまして的確な数字を出しておりません。ほんとうの予想でございますので、その点は御了承願いたいと思います。
  21. 榊原亨

    榊原亨君 それでは六十三万というものをお組みになりましたその組んだ基礎はどういうところで六十三万とお組みになりましたか。
  22. 江下孝

    政府委員江下孝君) これは経済審議庁が主といたしまして担当いたしましした事柄に属しますが、実はそのた方面から御説明申し上げ方が適当かと存じますが、一応私ども計算といたしましては、来年度雇用見込み数就業者数が全体としてどのくらいになるだろうという数字を出します。たとえば今年度は四千万の数字でございましたならば、来年度は四千五百万なら四千五百万という数字を出しまして、そして各産業別にある程度雇用量推定いたします。それと全労働力人口との差を完全失業というふうに割り出しておるのでございます。推定でございますけれども、一応そういう操作によって数字を出しておるようなわけであります。
  23. 小林英三

    委員長小林英三君) 委員長手元に前もって質問の通告があったものですから、その順序によって許します。高野一夫君。
  24. 高野一夫

    高野一夫君 大臣にちょっとお伺いしたいのですが、大臣のこの間の御説明によりますと、労働問題をお考えになるについては、経済問題と総合的関連を持って解決しなければならないという考え方考えている。殊に労働大臣自身経済閣僚の一人として、経済的に各省と連絡のもとに総合的な経済施策、それから労働施策の調整ということを必要として、現に努力しつつある。こういう御説明を伺ったように記憶しておるのであります。ところでこのことはまことにけっこうなことで、われわれ異議の差しはさむべき余地はございません。大いに賛意を表する次第でございますが、そこで今労政局長からちょっと問題にお触れになったようでありますけれども、この民主党内閣総合経済六カ年計画なるものを盛んにうたっておられる。労働大臣の御説明の中にも出ておる。そしてまた完全雇用という問題もうたっておいでになるわけです。それで私が伺いたいのは、失業対策なり、あるいは失業保険なり、あるいはほかの問題を検討する前提の基礎資料として、考え方材料になるものとして、大臣のお考えを伺いたいのでございますが、現在並びに今後あなた方がお考えになっておる総合経済六カ年計画というものを土台にいたしまして、今後日本の農業とかあるいは鉱工業とか、あるいは商業その他公務員とか、こういうような実際の産業別業務別に分れての今後の勤労者就業状況、こういうものについて、今現内閣がお考えになっておる経済六カ年計画と、あるいは完全雇用という問題とにらみ合せて、どういうような見通しをお持ちか、これを私は大臣の口から伺いたい。
  25. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) 経済審議庁で御承知のように作っております経済総合六カ年計画年次計画の詳細なものがまだ発表になっておりませんので、あなた方によくおわかりいただけないでおると考えておりますが、私自身も詳細な一年年次計画年次計画の中の月々計画というものをまだ承知しておりません。で、国会に提案しておりまする総合六カ年計画のまあ抽象的と申したら悪いかもしれませんけれども、総括的な書類によりまして、一応最終年度では、国民の総所得が二四%増加する、まあこういう結論を得るための年次計画が当然経審から発表されると考えておりますが、まあそういう観点に基きまして、まず初年度の三十年度失業者雇用者、それから潜在失業というような問題についても、まあ労働省で一応の案は出しております。が、しかし今ここで私自身としては産業別雇用量と申しますか、それに対する詳細な数字は持ち合せておりません。政府委員の方で持っておりますれば説明させますが、そういう観点に立ってやっておりますので、私がこの前委員会のときにお話し申し上げました内容は、まあ抽象的ではありましたけれども、これを具体的な例をとって申しますというと、今までの各産業生産の増強とか、合理化という問題を論議いたします場合においては労働問題というものが何かのけものにされたようなことで産業政策が取り上げられておったことは、これは事実であると考えております。私がなりましてから、申し上げますまでもなく、今の日本産業政策を決定する場合に、労働問題を除外視して、その形において産業問題の方針を決定しようというようなことではとても合理化も何もできやせん。従ってまず第一、労働問題というものと産業施策というものとは並行して同じものであるとしての観点に立って考えなくちゃいけない。で、せめて国で立法することによって生ずる雇用状態の変化に基いて、国は当然その場合においては失業者ができてくるという想定が成り立つ場合においては、必ずその失業者失業者たらしめないような方法においてこれを救済するということを並行して考えていかなくちゃならない。そういう考え方に基いてのこれから先の日本のいわゆる経審の案による六カ年計画を遂行すべきである、こういう観点に立って私盛んに懇談会等においては主張しているわけでございまして、今までのような法律さえ作って産業部面さえ片づければ労働問題は必然的に片がつくという古い感覚では、今後の日本産業の確立は不可能であろうという基本的な考え方に立って、今後の産業経済一つ考えていきたい、こういうふうな考え方をこの前ここで申し述べたわけでございます。
  26. 高野一夫

    高野一夫君 そういうお考え方については、私は異存はないのでございますが、現在少くとも第二次鳩山内閣でこういうような労働省のいろいろな予算をお組みになるについては、経済問題とも関連して考えなくてはならぬという考え方について、その基本になっている総合経済六カ年計画なるものをさらに本会議でもうたっておいでになる、それから各委員会においても説明になっていらっしゃる。私ども考えるのには、これが基本になっていろいろな厚生省の予算を編成され、労働省のいろいろな対策考えられているのじゃないか、実はこう考えておったわけです。ただそれは抽象論であって、ただ六カ年総合計画、こういうことをただ考えていて、現在何もその案はできていないんだと、説明はできないんだと、こういうことになるわけですか。ただそういう計画を、六カ年計画を立てなければならぬということを考えて、現在審議庁なら審議庁で立案中である。そうして現在においてはまだその説明材料ができていない。そうしてただとりあえず三十年度はこういうふうな対策考え、こういう予算を編成したのだと、こういうことになるのですか。
  27. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) そういう意味合いではありませんので、私が申し上げましたのは、経審で作っておりまする経済六カ年計画というものの初年度から最終年度まで、詳細に御説明申し上げる材料を私は今持ち合しておりません。しかし最終年度において二四%の国民総所得の増加ということを一応目標に経審の案はいたしております。従って三十年度労働省予算につきましては、経審の六カ年計画に基く初年度の構想に対して、一応の雇用状態を考えて、失業状態を考えて、三十年度分は予算を組んでおりますけれども、三十一年度、三十二年度というふうに、個別的に最終年度まで御説明申し上げるだけの資料手元に持っておりません。事務局の方で資料があれば説明させようと思いましたけれども、これは経審の方で説明するのが当然であろうということでございます。三十年度につきましては、経審の構想に基いて雇用状態を考えてやっております。
  28. 高野一夫

    高野一夫君 三十一年度から先の説明材料がないと、それが説明できないというお話でございますが、それはそれとしてあと回しにいたしまして、とりあえず本年度失業保険なり、あるいは失業対策なり、そのほかの問題について、対策をお考えになり、予算をお組みになっている。これについてはことに大臣の基本的なお考えとして、経済計画と調整をしなければ、本当の労働問題の対策はできないと、こういうようなお考え方からゆくならば、先ほど私がお伺いしました産業別について、現在の労働者がどういう就業状態にあるかということを御説明はできるはずだと思います。聞かしていただけると思うのですが。
  29. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) 政府委員にお答えいたさせます。
  30. 江下孝

    政府委員江下孝君) 二十九年度から三十年度までの、それじゃ経済審議庁考えました一つの目標につきまして、簡単に申し上げます。総人口におきまして、二十九年度が八千八百三十四万、三十年度が八千九百三十七万、それから生産年令人口、二十九年度五千九百五十五万、三十年度六千九十一万、労働力人口は二十九年度四千三十四万、三十年度四千百十八万、完全失業者は一応本年度程度の六十三万と見ております。就業者四千五十五万、昨年に比べまして八十三万人の就業者の増加、簡単に申し上げますと、そういうことになります。
  31. 高野一夫

    高野一夫君 私はこの問題は、労働政策をお立てになる基本の問題だと思うので、実は大臣にお伺いしているのです。そこで今政府委員から御答弁だから、まあやむを得ませんが、これは伺いたいのでありますが、産業別、たとえば農業はどうなっているか。それから農業においての現在の就労関係状況はどうなっているか。そうしてそれが来年、再来年、少くとも現内閣が立てる六カ年計画は別といたしましても、最低六カ年後どういうような見通しになるのか。鉱工業その他商業、一切のサービス業を含めて、あるいは公務員の増減、そういうものについては大体一応の見通しは労働省としてあるはずだ。だから現在の少くとも実情がどうなっているか。これからまず御説明願いたい。できるなら資料あとで御配分願いたい。一応口頭で御説明願いたい。
  32. 小林英三

    委員長小林英三君) 労働大臣にですか。
  33. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) 数字ですから……。
  34. 高野一夫

    高野一夫君 労働大臣に伺いたいのですが、やむを得なければ、政府委員でけっこうです。
  35. 江下孝

    政府委員江下孝君) それでは概略の御説明をいたしますが、六カ年計画の基本といたしまして、日本の新しく出て参ります労働力を、どういう産業に吸収してゆくかという問題でございます。一応基本的な考え方といたしましては、農林関係はこれは現在も相当潜在失業者の温床になっているという実情もございますので、農業関係については、ほとんど増減なしで、大体現状維持程度にとどめることを目標にいたしまして、もし新たに出ました被雇用者があるとしますれば、それはできるだけ第二次の産業部門、と申しますのは、鉱工業等でございますが、この方面に振り向けてゆくと、そのほかなお商業、サービス、公務といったようなものも、おおむね二次産業増加に伴いまして若干増加いたしますので、それらも考えまして、主として二次産業を中心にふやして参る。それからそういたしましても全体としては雇用が非常に窮屈でございますので、相当建設的な事業を大幅に実施して参る。で、特に六カ年計画の前半におきましては、建設的な事業に相当重点を置いていく。で、失業対策事業も同様に、この期間におきましては相当労働情勢も深刻になりますので、ウエートを置いて考えていく、こういうことで、先ほど大臣が申し上げましたように、六カ年の終りには、完全失業者労働力人口の一%、四十三万程度に押える。そこでまあ途中の年次別の計画でございまするが、これは実はまだ経審でも明確に年度別のものを作っているようにはまだ聞いておりません。先ほど申し上げましたように、一応のそういう目標をおいて、とりあえず三十年度におきましては、先ほど申し上げましたような数字で、完全失業者を大体前年度通りにとどめるということで、必要な財政措置を講じております。
  36. 高野一夫

    高野一夫君 政府委員に伺いたいのですが、今あなたは、農業は大体現状維持、こういうようなお話でありましたが、農業の就業人口というのは幾らありますか、農林、水産合せて。
  37. 江下孝

    政府委員江下孝君) 本年の三月でございますが、農林業関係の就業者が、内閣労働力調査によりますと、総数で、これは農林業——林業も入りますが、千五百九十九万、その内訳といたしまして、自営業主が五百十八万、家族従業者が千三十四万、雇用が四十七万であります。
  38. 高野一夫

    高野一夫君 そこで大臣に伺いたいのですが、農業の方が、大体今のお話を伺いましても、現在千六百万人、そこで農村の方では二、三男問題なんかもいろいろやかましいようでございますが、東京に出てまず仕事にありつきたい、こういうことでいろいろ騒いでいるようなのですけれども、現在の千六百万人が農林業で働いているということについてどうお考えになりますか。これはこのままでいいとお考えになるわけですか。それともこの中のどのくらいかは鉱工業の方に収容しなければならないものじゃなかろうか、こういうふうにでもお考えになりますか。
  39. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) お答えいたします。大体日本労働情勢で、いわゆる潜在失業者と呼ばれておりまする人たちが、農業、それから中小商工業方面に大体吸収された形で、まあ過剰労働人口みたいな状態でおることは間違いないと思います。完全失業者以外の潜在失業者の数はどれだけであるかということは、なかなか日本経済実態では、それをつかむのに困難でございますけれども、そういうふうに、いわゆる潜在失業者が農村に一応吸収されておるという実態を考えますというと、農林水産業に従事しております千六百万近い労働者諸君の中に相当数入っておると考えます。従ってこれは経審の六カ年計画があの考えのように実際に実行されますれば、第二次産業方面に当然農村の方から出てくる人たちもおると思うのであります。なおまた農林水産業の所得の増加がある程度見込まれますならば、個人々々の所得がふえますので、いわゆる現在考えておりまする低額所得による潜在失業という形はある程度緩和されていく。両々相待って将来の日本完全失業者というものの数を四十三万五千と推定し、潜在失業者も相当数緩和されていくという見解をとっているわけであります。
  40. 高野一夫

    高野一夫君 この農林水産業方面で、千六百万の就業人口の中で、どれくらいのものがしからば潜在失業か。相当数といのでも、これは五十万もあれば、百万もあれば、三百万もございますから、だからその数字いかんによっては、将来鉱工業に収容しなければならない数の基底というものも非常に狂ってくるわけなのです。そこで、いろいろ失業保険にしましても、失業対策にしましても、従って数字的に狂いがくるはずだと思うのでありますが、相当数でなくて、現在日本の農村とか、林業とかいうものはどれくらいの人間が食っていかれるかというようなことは、あなたは経済閣僚の一員でおありになるのだし、そういう方面との御折衝もあるのだから、およそ見当がおつきになって、現在並びに将来についてこの労働問題の対策をお考えになっているのじゃないかしらと思うのでありますが、ただ相当数ではわからないのであります。これは五十万も、百万も、三百万もあるのであります。その辺はどういう御見当をおつけになっておるのでありますか。
  41. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) これはあなたも御承知のように、日本では現在統計というものがほとんどないといってもいいくらいで、相当数という言葉はこれはきわめてあいまいな言葉なのですが、これはどこどこに、どれだけの、はっきりしたこの程度潜在失業者が、こういう状態でおるということは、今の日本では実際はつかみにくいのであります。従って経審経済六カ年計画におきましても、潜在失業というものをまつ正面から取り上げて、潜在失業の状態を具体的に一々こういうふうにして解消していくのだという具体的な案は、遺憾ながら経審の六カ年計画には出ておりません。一応完全失業者というものと、現在の状態における失業は、潜在失業であっても雇用されておるという一つの形を基礎に立てまして、そうしてどうしていくかという問題が考えられている。潜在失業の問題は、見方によっては一千万という人もありますし、あるいは五百万という人もありますし、あるいは三百万という人もありますし、現在統計をやっておりまするのは、各省でもやっております。行政管理庁では統計部があって、やっておりますけれども、これに対する的確な統計資料はございません。だから遺憾ながら、あなたに伺われましても、私ははっきりした数字を申し上げる材料を持っておりません。
  42. 高野一夫

    高野一夫君 私は今の御答弁を伺って、非常にどうも遺憾千万に思うのでございますが、現在日本の農林水産業で、どれくらいの者が飯が食えるのだということは、農林省あたりでも大体算定ができているはずだと思う。農学関係の専門家は、そのくらいの見当はおつけになっているはずだ。それでは、政府委員に伺いますが、あなたはどういうふうにお考えになっているか。
  43. 江下孝

    政府委員江下孝君) 先ほど申し上げました数字からいたしますと、いわゆる潜在失業と言われておりますものは、家族従業者一千三十四万のうちにあるものと思われるのでございます。ただ数字的に。それでは潜在失業者というものをどういうことで定義づけるか、その前提をどういうふうに見るかということによって、おのずから潜在失業というものの数も変ってくると思います。この点は日本国民所得の問題等とも実は兼ね合わせて考えていかなければならない問題でございまして、私といたしましても、農林関係でどれだけの潜在失業があるかということについての的確な数字はもちろん持ち合わせておりません。
  44. 高野一夫

    高野一夫君 私は、大臣はともかく、労働省のそういうような専門の政府委員の方では相当の資料をお持ちになっているものと実は予期しておったわけです。それがたとえば見方の相違は別問題、たとえばこうこういう見方をするならば、いわゆるこういうふうな判定の材料、こういう条件で行くならばこのくらい。その前堤、基礎は別問題として、いずれにしても、たとえば一千六百万人のうちのどれくらいがこうなっておる、こういうようなことがおわかりにならないで、今後の鉱工業に対する勤労者対策ができますか。  そこで私の伺いたいのは、だんだん移っていって、そこで今度は鉱工業方面に収容し得る就業者が年々どのくらいになるか。ことに経済六カ年計画をお考えになるならば、六カ年後にどうなるか。果して収容し切れるのか。こういうようなことを伺うためには、現在とりあえず私は農林水産業における、実際においてあぶれているのはどのくらいあるか、こういう実情をつかまずして鉱工業だけ問題にしたところで始まらぬと思うのです。
  45. 江下孝

    政府委員江下孝君) 以上の点につきましては、実は日本の国の雇用の基本的な問題でもございまするし、経済審議庁に答弁させた方が適当と思います。
  46. 榊原亨

    榊原亨君 先ほど私冒頭に、総合経済六カ年計画という政府計画の詳細なる資料を出していただきたいと先日要求したにかかわらず、昭和二十八年度と三十五年度数字と、三十五年度は理想論だと思うのですが、そこで各年度におけるところの詳細な数字と、その説明ということを委員長を通してお願いしたはずでありますが、今政府のお話を聞きますと、その間何もわからぬのだというようなお話でありますが、そうするとこの次までにその資料をお出し願えるのか願えないのか、委員長からお聞きを願いたい。
  47. 小林英三

    委員長小林英三君) どうです政府委員、さっきの榊原君の……。
  48. 江下孝

    政府委員江下孝君) 私の承知しております関係では、さっき榊原委員がおっしゃいましたような、六カ年間を通ずる月別の詳細の計画というものはまだできていないやに聞いております。ただ五年、三年先につきましての一応の見通しというものについては、一応の成案があるように聞いておりますが、私から申上げますより、その点については、経済審議庁から一つ資料等も提出させて説明さした方が適切であろうと思います。
  49. 榊原亨

    榊原亨君 それでは次回におきましては一つ私にお示しを願う資料は、経済審議庁と十分御連絡の上、私どもに納得のいく数字を示していただきたい。ならびに今高野君がおっしゃいました産業別のものにつきましても数字を出していただきたい。わからぬならわからぬでいいのだ。わからなければ、そういうことがわからないでいいのであります。わからなければ、最後の昭和三十五年においてどうだこうだということは、選挙当時言った、民主党内閣が公約をなすったのは、鳩山さんと同じ理想論ですか。
  50. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) わからぬと申し上げておるのではなくて、ただいまここに数字を持ち合せておりませんが、経審の方で詳細の計画を当然立つべきであるし、作っておると思います。経済六カ年計画というものは、これは経済計画による計画を年々実行することではなくて、あるいはそうしたいという一応の希望図を経済六カ年計画で描いておりますので、その線に沿って実際の政治をやっていきたい、こういうことだと私ども考えておりますが、経審の六カ年計画月別の詳細な数字ができておるかどうか、私自身承知しておりませんが、御要求でございますので、経審の方と連絡をとりまして、そういう数字を持ち合せておりましたら、委員会提出するようにいたしたいと思います。
  51. 榊原亨

    榊原亨君 なお、次回において、私、とっさに資料をお出しになりましても、そこで質問できないのでありますから、もしもこの次までに、二、三日のうちこの数字がお出し願えますならば、次回に私質問さしていただきたいと思いますが、次回まで出ないということになりますれば、私の質問は保留さしていただきたいと思います。
  52. 江下孝

    政府委員江下孝君) 相談してみなければちょっとわかりません。
  53. 小林英三

    委員長小林英三君) 速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  54. 小林英三

    委員長小林英三君) 速記を始めて下さい。
  55. 高野一夫

    高野一夫君 それでは大臣にまたお伺いしますが、今も相馬さんからもお話がありました通りに、あなたは初年度には経済六カ年計画が盛ってある。こういうお話である。しかし三十一年度から三十五年度については、今説明ができない、こういうようなことのように私はこれは誤解かもしれぬが、たびたびそういう印象を受けておるのですが、そうするとあなたはやはり雇用問題の解決はきわめて重要である、しかしまあ困難な問題とは言っていらっしゃるけれども、この雇用問題、ことに民主党内閣完全雇用ということを盛んに言っておって、これも大事な公約の一つであります。そうすると雇用問題ということについて、何も今後三年、五年、六年先についての雇用問題の見通しというものはおわかりにならぬわけですか。先ほどの産業別就業状況についても、どうも政府委員の方からもしっかりした答弁が得られない、こういうような状態においては雇用問題ということも考えられないと思うのですが、これはどういうふうに大臣考えになっておるのですか。
  56. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) 経済六カ年計画と無計画に三十年度予算を編成したのではないので、経済六カ年計画は、先ほど申しますように、潜在失業者の問題は非常に重要な問題ではあるが、現在ではなかなか的確な数字がつかみにくいので、経済六カ年計画の中にも潜在失業者というものは的確な解決の方法は見出されておりません。従って完全失業者というものを一応対象にしての雇用という問題は解決されております。労働省としましては、経審の初年度計画に基きまして二十万人三十年度では失業者がふえるであろうという、そういう想定を基本にいたしまして、そうして二十万人分失業者を失業させないように、いかにして失業対策事業に吸収するかということに重点を置きまして、三十年度失業対策を一応考えておるわけでございます。
  57. 高野一夫

    高野一夫君 私は経審長官にお尋ねしているのではないのでありまして、労働大臣にお尋ねしておる。そこで今のお話でございまするけれども、この三十年度にはそういう計画が盛られておる、こういうことはたびたび伺っておりまするから承知しております。そこで、その雇用問題について、今御説明が一応あったわけですけれども、しからば今後労働省としては、何も将来に対しては、三十年度はともかくとして、来年度から先何年計画、そういうような見通しですね、見通しというものは現在の労働省には何もないわけですか。たとえばここであなたもたびたび言っていらっしゃる通りに、労働省のいろいろな施策というものは、やはり経済施策と調整して、関連して考えなければならぬ、こういうわけでありますから、それで私は特に伺いたいわけですけれども日本の農林水産業の実態、鉱工業の実態ということも現在労働省考えておらない。そうして勤労者就業状況、失業問題とか雇用問題について見通しが立つはずがない。これはどうですか。これは政府委員からでもけっこうです。
  58. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) ごもっともなお話ですが、あなたも御承知通り、私労働大臣に就任しましてまだ時日がきわめて短かいのでして、その間に日本の全体の六カ年計画の片をつけてしまわないとだめだと言われても、実際問題としては、なかなかそういきませんので、今三十年度予算の問題を取り上げていろいろ御検討願って、三十一年度以降については、あなた方の御意見も十分に聞いてやりたいと思いますが、現在は三十一年度以降のことをどうするかという具体的に決定した案を持っておりません。
  59. 高野一夫

    高野一夫君 御答弁ができなければ、それでやむを得ませんけれども、しかし、あなた、大臣予算説明に当って、あなたがお述べになっております。それが基本になっているはずです。あなたの施策の根本というものは、あなたは、こうこう、こういう精神、こういう趣旨のもとに私は考えているということがちゃんとうたってある。ちゃんとガリ版で刷ってある。何ページか書いてある。そこでそういうことから考えても、現在は現在、来年から先は知らぬ、こういうようなことであるのか。今のお話を承れば、単にそういうことであるようにも聞えるのですが、それともそういうことではいけないので、将来に対して一応誤りがないのかどうか、こういう見通しを立てている……、そういうだけの見通しも何もないのであるかということを私は……。あなたは、見通しは立てられない、現在はこうだ、現在だけ、こうおっしゃっておりますが、その基本において経済閣僚としてこういう努力をしている、こういう精神で予算計画をやり、事業計画を立てている、こうおっしゃっているから、それを真に受けてあなたにお聞きした。私は正直なものですから、お聞きしたのです。
  60. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) 私は三十一年度以降の問題をうっちゃって、やりませんと申しておりません。知らぬとも申しておりません。現在は三十年度のことで、経審が六カ年計画の初年度分を十分に考え計画を立てております。三十一年度以降につきましては、これから立てることになっておりますから、今具体的に説明しろと申されましても、私、説明するだけの資料等も持ちません。考え等もまとめておりませんので、これから先は私は知らぬということを申し上げているのじゃありませんので、この点を御了承願いたいと思います。
  61. 高野一夫

    高野一夫君 政府委員労働省では、大臣の御答弁はまあその是非は別として、理解するか理解しないかは別として、わかりましたけれども労働省の事務当局においては、将来に対する何らの見通しもお持ちになっておらないわけなんですか。そしてただ三十年は三十年、二十九年は二十九年と、これだけの現実に現われたる問題ということだけでもって処理されて、来年はどうなるだろう、三年後、五年後はどうなるだろう、こういう想定は何もおつけにならないでいろいろな施策をお考えになっておるのかどうか。
  62. 江下孝

    政府委員江下孝君) 私どもといたしましては、経済審議庁がまあこの総合的な計画につきましての責任官庁でございますので、経済審議庁と相談をいたしまして六カ年計画を策定するわけでございます。そこで先ほど申し上げましたように、二十九年から三十年度へのどういう指標の動きがあるかということにつきましては、先ほど申し上げました。それから六カ年全体の大きな考え方としてはどういう考え方であるということも先ほど申し上げました。そこでまあ三カ年計画についてでございますが、あるいはこれはまだ少し手直し等が経審等で考えられておるかもしれませんが、一応私の承知いたしております範囲で申し上げますと、労働力人口につきましては、昭和二十九年、三十年は申し上げましたが、三十一年におきましては四千百九十六万、昭和三十二年度に四千二百八十三万、完全失業者にいたしますと三十年度に六十三万、三十一年度に六十万、三十二年度に五十五万ということでございます。それからそのほかこの国民所得にいたしましても、まあ相当のパーセントの増加を見込んでおります。対外収入等も暦年まあ上る計画に相なっております。雇用面といたしましては、先ほど申しましたように、完全失業者は三十年はおおむね本年と同じ程度数字を見るであろう、三十一年度以降若干低下するということで計画考えておるのであります。
  63. 高野一夫

    高野一夫君 ちょっと一つお願いしておきたいのですが、先ほど榊原委員から資料要求がございましたが、付け加えて私もお願いしておきたいのでありますが、この産業別の就業人口、これについて一つ詳細なる私は見通し、労働省だけでもけっこうですから見通しをつけた資料がほしい。その中で、たとえば農林水産業については、現在千六百万だけれども、この次はどうだろう、そしてその男女別、と同時にそのほかの鉱工業、あるいは商業とかいうようなものについては、自営のものもありましょうし、あるいは勤労しておるものもありましょうししますから、そういうものを区別して一つ資料を、詳細なる資料を作って提出を願いたい。それをもとにして今後またお出しになっておる予算の問題について質問をしたいと思います。それだけ委員長にお願いをしておきます。
  64. 江下孝

    政府委員江下孝君) ただいまの資料要求でございますが、できるだけ私どもも正確なものを出したいと思います。
  65. 山本經勝

    ○山本經勝君 ただいままでの御質問と関連を持っておるのでありますが、大臣がせんだってごあいさつの際にお話しになりました労働問題が経済問題の一環であるという建前を基礎にしてお話しになったと記憶いたしておりますが、そこで私は二、三点伺っておきたいのは、労働問題と経済問題との関係について、先ほどちょっと触れられたようでもありますが、いま少しく詳しく伺っておきたいと思うのであります。それで先ほどからお話しになっておりますような経済六カ年計画の中で一定のワクをはめて労働問題にまた解決をつけていこうとされておるのかどうか、この点から伺いたいわけなんですが……。
  66. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) 山本さんのお尋ねの要旨は、経済六カ年計画を実施に移す場合に、労働問題との関連をどう考えているか、こういう御質問と思いますが、私は経済六カ年計画を実施に移していきます場合において、過渡期におきましては、結局企業の合理化、あるいは正常化という問題に関連して、一時的には失業者増加するということを考えなくちゃならぬと考えております。従ってそういう場合に失業者が生ずるおそれの考えられる場合においては、それが失業者として全然職を失ってしまうというようなことでなしに、当然政府としては、並行してそれに対する措置を講ずるということが前提となっての合理化を行わなければならぬ、こういうふうに考えまして、そういう基本的な考え方に基いて労働問題というものを取扱っていきたい、かように考えております。
  67. 山本經勝

    ○山本經勝君 そこで私が次にお伺い申し上げたいのは、労働問題と言われるものの中身を取り上げて参りますというと、失業問題、これは完全雇用を建前にして主張をされて参りました民主党としまして、当然完全雇用を前提にして進まれる、しかしながらここでは特に失業者が出るのだという想定のもとに、失業者をどうするかということを中心にした労働政策を考えられておるという点に、私ども理解しがたいものがあるのですが、この点次にお伺いしておきたい。
  68. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) 失業者を生じないように産業の規模の拡大ができていけば、これに越したことはないと考えております。そして現実にある失業者をどんどん規模の拡大に従って雇用の増大をはかっていく、これが理想的な姿であろうと考えております。しかしさっきも申しましたように、その計画の過程におきましては、日本のような経済実態から考えますというと、ある場合においては一時的に失業者の形になることが想定されまして、そういう場合においては、それを失業状態に置かないような対策を並行して樹立していくことによって、一時的に次の経済規模の拡大による産業労働者の吸収という段階までは、雇用状態の続けていかれるような対策政府としては考えなければならぬだろう、こういう観点に立って私は申し上げておるのであります。
  69. 山本經勝

    ○山本經勝君 そこで言われております労働問題が経済問題の一環であるという趣旨は、次のように理解してよろしいのでしょうか。つまり一定の経済のワクが考えられる。そのワクの中で起り得る労働問題、つまり雇用から賃金、一切の関係諸問題について処理される、こういうことになっていくと理解してよろしいのですか。
  70. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) 私の希望を申しますならば、現在の賃金はだんだん上げていく、そうして経済規模の拡大に従ってだんだん雇用を増大していく、そうして失業者のないような状態に持っていければ、これが理想的な希望でございます。しかしながら実際問題としましては、日本のような底の浅い経済実態においては、そういかないでトラブルが起きてくることが十分考えられる。そういう場合に労働条件の劣悪を招かないようなことを考えなければならぬし、失業の状態に陥っておる人に対しては、失業者として苦しまないような労働対策も講じなければいけない。こういうことは総合的に一貫して、並行して行われてこそ、初めて経済六カ年計画の達成の段階に進んでいける、こういうふうに考えておりますので、労働問題につきましては、そういう措置をとっていきたいと、かように考えております。
  71. 山本經勝

    ○山本經勝君 続いて一つ重大な問題についてお伺いをしておきたいのですが、これは失業問題とはやや趣きを異にしまして、一昨年以来非常に顕著に増大した問題でありますが、賃金の遅払い、不払いというのが慢性的に、しかも広範に現われておるわけであります。ところがこれについては、労働大臣の方は一向、方針を御説明になる際にも、何ら言及されておりませんし、またその実態についての資料の提供もなさっておらない。この賃金の遅払い、不払いというものは労働問題ではないとお考えになるのかどうか。
  72. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) お答えいたします。労働問題でないとは考えておりません。労働行政のうちの一つであることは間違いございません。労働省としましては、漫然手をこまぬいているわけではございません。それに対しては強固な方法をとってできるだけそういうものを少くするように労働省としても努力いたしております。数字につきましては、政府委員の方から説明いたします。
  73. 富樫総一

    政府委員(富樫総一君) 賃金の不払いにつきましては、ただいま労働大臣より申しましたように、労働基準局におきまして、特に重点的に取り上げまして、労働金庫を通ずる融資とか、あるいは昨年末におきましては石炭産業に対しまして二十三億に上る融資を出すなど、いろいろ努力しておるわけであります。現在におきまする賃金不払いの件数及び金額につきましては、今年の三月におきまして、約五千件の不払い事案を把握しております。金額におきまして総額約十六億に上っておるような次第でございます。なお要しますれば、あとで詳細な数字資料を御提示申し上げます。
  74. 山本經勝

    ○山本經勝君 続いてお願いしたいのですが、この基準法によりますと、御承知のように、通貨をもって直接一定の期日に支払わなければならないという明確な規定がございますが、それにもかかわらず、働いた賃金がもらえない、あるいは休廃止になりました工場、鉱山等において、規定された退職金の支払いがなされない、こういう状態について、この明確な規定に基く措置は、労働省としてはどのようになさってきたか、また今からどのようになさるおつもりか、その所信を伺っておきたい。
  75. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) 具体的な問題ですから、一つ一つ政府委員から。
  76. 富樫総一

    政府委員(富樫総一君) 法律におきましては、賃金は仰せの通り通貨をもって直接に一定の期日に払わなければならないということになっております。従いまして実際問題の扱いといたしましては、支払い能力があってなおかつ支払わないというようなものは、悪質なものとして送検し、処罰しております。ただ実際問題といたしまして、実際になかなかその支払い能力が出ない、税金もなかなか払えない、こういうものにつきましては、これを送検してみたところで、実質的に労働者の保護にはならぬおけであります。そこでそういうものにつきましては、監督官が現場に参りまして、労使と協議して今後における支払いの見通しを立て、あるいはそれに対しまする労働金庫の融資とか、あるいは先ほど申しました年末などにおいて困る場合には、二十三億というような融資をするとか、あるいは中小企業に対する金融措置のあっせんをするとかいうようなことを、具体的な状況に応じましてできるだけの、労働者にとって実質的な保護、実質的な賃金の回収になるような方途を講じておるわけでございます。
  77. 山本經勝

    ○山本經勝君 続いて、ただいまの御答弁だと、極端にいえば、支払い能力がないからやむを得ないのだと、そこで実質的な救済を考える、そうして労銀等の融資による何らかの方法あるいは中小商工業者、企業者に対する融資等の方法を考慮して、実質的な救済をされるというのですが、こういう状態をずっと継続していかれるつもりなんですか。そういう融資やその他労銀等を通じて未払い賃金で生活苦にあえいでいる労働者の家庭に対する救済を、これは救済というより貸付金ですから、これは返さなければならない、それはどういうふうにして解決がつくというお見込みでございますか。
  78. 富樫総一

    政府委員(富樫総一君) 継続的と申します意味は、感違いして受け取ったかも存じませんが、賃金不払い事件が、デフレ経済のもとにおいて発生して以来、労働基準局といたしましては、重点的にずっと措置を講じて参っております。将来ともずっと継続してやっていきたいと思っております。そうして具体的な案件につきましては、それが相当長期にわたって、一挙に払えない場合には、逐次払っていくような計画を立て、それを監視と申しますか、お世話をすると申しますか、ずっと保護して参っておるのであります。
  79. 山本經勝

    ○山本經勝君 先ほど基準局長の方からお話がありましたが、三月現在で未払い、不払いの賃金件数が五千件ですか、金額にして十六億円と言われたのですが、私ども地方の実情からいいましても、およそ十六億円程度の遅払いではないと思う。で、もっともっと実際には多いと思うんですが、これについては、一応資料提出方をお願いしたい。この件数、産業別、それから経営規模別の実情について、具体的な資料提出をお願いしておきたいと思う。  それから賃金遅払い、不払いについて昨年度非常に問題が起りました。特に炭鉱では九州で大問題を起したものでありますが、この際などに、労働省あたりにあります資料につきまして、まことに不備な、しかも古い資料であって、三月現在とかりに今言われますけれども、これはおそらく今年の一月か、あるいは十二月ごろの資料ではないかと判断せられる、そういう状況がありませので、この資料について特にお願いをして、正確な最も新しい資料を、産業別に分類した実態の資料提出をお願いしたい。
  80. 富樫総一

    政府委員(富樫総一君) 承知いたしました。
  81. 阿具根登

    ○阿具根登君 時間がありませんので、失業問題についてあるいは重複するかもわかりませんけれども大臣に御質問して、あとは次回にいたしたいと思います。要求額が四百億になっておりますが、これを要求されたときには、民主党の公約に従ったお考えで出されたと思う。私どもはこの数字だけでもまだ納得できないところがあるのでございますが、これが百二十億も削られて三分の二になってきた。そうしますと大蔵省の削減によって、民主党が公約した失業者の救済は、完全雇用はできなかったんだ、こういうふうに解釈してよろしいかどうか。
  82. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) これはさっき相馬委員からの御質問のときにお答えいたしましたが、私がこの失業対策について特に考慮を払いました点は、地方財政との関係ももちろんございます。ございますが国自身が行わねばならない失業対策事業については、現在のような、あまり生産効率の高くない失業対策事業をやっておったのでは、ただ金をくれるというような結果に終るおそれが多分にありますので、これは国が全額を国庫負担をいたしまして、そうして材料費等においても十分給与して、生産に寄与できるような方面に失業対策を重点的に行うべきだという私の基本的な考え方に基いて、実は全額国庫負担で相当数の人間を予定いたしまして、そうして労働省で実は請求したわけです。いろいろ折衝いたしました結果、さっき申し上げましたように、人員は三万人に減らされるし、金額は五分の四に減らされ、材料費も二百億程度に押えられ、事務費の値上げもできなかったというような状態で、労働省としまして、経審の方では約二十万ぐらいであろうとは考えておりましたけれども、これはお互いに自分の責任を持っておりまする役所に行きますと、経審が二十万といったって、こっちは二十五万ももらいたいという希望もあります。そういう関係予算が削減されたという結果になっておりますが、はなはだ残念とは思いますけれども、どうにかこの程度なら切り抜けていくことはできはしないかと、かように考えております。
  83. 阿具根登

    ○阿具根登君 そこで先ほどもちょっと質問したんですが、それでは今までの惰性をそのまま踏襲されておる。この予算案の説明を見ましても、自由党が今までやってこられたのと何が進んでおるか。民主党が公約されたのとどこが一致しておるのか。自由党で今までやられた通りなんです。しかも今度は八十四万人もふえている。こういう点から考えまして、失業対策ということは、まず現在以上の失業者を出さないことだ、今出ている失業者を吸収することだ、こういうことを考えてみます場合に、ただこの予算を幾分ふやされて、そして土木事業等が少しふえておるようですが、これでは少くとも公約された失業者の雇用ということは私は不可能だと思うのですが、どういうことになるでしょうか。
  84. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) 労働対策としまして、失業者を出さないような労働対策がとれればこれに越したことはございません。これはまあ理想でございましょう。そういうふうにできることをわれわれは念願しておるわけでございますけれども、そういうことを念願しながらも経過の過程においては、失業者が出てくることが想定されますので、その想定される失業者に対して拱手傍観、何ら手を打たないというのでは、これは全く労働対策にはなりません。従って金額の点が少かったとか、あるいは考え方が自由党と変りはないじゃないかという御批判は、これはありましょう。ありましょうけれども、私から言いますと、今までやってこられたことよりも、基本的な考え方において一歩前進しておる。そして自分が考え通り予算はとれなかったけれども、まあ窮屈な財政の中からある程度予算をとって、これは必然的にいいまして義務経費と同じようなことでありますから、計上するのが当然なんです。その当然なことが今までやられていないというような実情にあったのが、今度は当然のことはやらなければならないという考え方に変えての金額の計上がされておるということで、一歩前進したと、うぬぼれじゃありませんけれども、私自身はさように考えております。あなたのような御批判がありますのは無理ないと思いますけれども、実際問題というのは、そう考えておる通りに解決つくものじゃないことは、阿具根さんも十分御承知考えます。
  85. 阿具根登

    ○阿具根登君 私はそういう点はわかるのですけれども民主党が公約された、また西田労働大臣の新しい感覚から、また今までたびたび御意見を伺っておりますあの考え方から行くなら、何か抜本的なことを考えておられるのではないかという私は期待を持っておった。たとえば、こういう事業を起すためにどれだけ金が要るのだ、それは通産省関係じゃないかと言われるかもしれないけれども、ただしわ寄せられた失業者だけを考えておられるのじゃなくて、私が言ったように、失業者を出さないこと、吸収することという原則からいったって、経済閣僚として、もっと抜本的な考えを持って、これだけの予算は計上したけれども、削られたのだというならわかるけれども、この予算を見ても、ちっとも自由党のときと進んでおらない、こう指摘しておるわけなんです。何か吸収するための抜本的な考え方を持っておられたならば、それを一つお知らせ願いたいと、こう思うのです。
  86. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) 労働大臣財政投融資とか、将来の日本産業、企業の希望図を描いて、その方面に労働力の吸収を要請するということは、これは決して所管外の問題じゃないと考えております。いろいろ懇談会等においては話し合っておりますけれども、こういう問題は短時日に具体的に解決のつく問題ではございません。一応三十年度予算の編成に当りましては、経審の六カ年計画の初年度の構想に基いて、一応この予算を作ったのでありまして、今後の問題として、将来増加する労働人口というものをどういう方面に吸収していくかという問題は、当然今あなたのお話のあったような観点に立って、どの産業に、第二次産業というようなものも、どういう産業を将来財政投融資の対象として助成発展させていくかということは、今後論議されるだろうと考えておりますし、そういう場合に、労働行政を担当しておる私としては、いわゆる失業者がふえないような形において産業の開発、規模の拡大をやるように強力な提言をし、努力をするということは、これはもう当然のことでございます。
  87. 阿具根登

    ○阿具根登君 ちょっと特別失業対策の問題についてお尋ねしますが、これは継続になっているようでありますが、これの責任はどこにあるのか。建設省にあるのか、あるいは労働省にあるのか。一例を申し上げますと、特別失業対策事業というものを取り上げているけれども、これは建設関係の土建業者が握ってしまって非常な不正が行われていることを私は知っている。それでこの特別失対については、直営でやられるつもりか、これを土建の方にまかして土建の請負業者にやらせるつもりか、それをお伺いしたい。
  88. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) 昨年度までは、この特別失事業というのは五千人分しか予算に計上してありません。きわめて少い人数で、金額もわずかであります。本年度は三万人で、予算も相当金額が上っております。従って建設省がやるのか、労働省がやるのかというと、具体的に申し上げますと、労働省が実権を握っております。と申しますのは、かりにどの地方失業者が何百人、何十人いる。この失業者労働能力を十分に持っているということになりますれば、その失業者を対象にして、その失業者の通っていける範囲内において、道路の補修、改修、舗装というようなものを労働省考えまして、そうしてその計画を作りまして実施官庁である建設省に、ここの道路を舗装せよ、ここの道路を改修せよ、失業者はこれだけの失業者を吸収せよという条件をつけまして、御承知のように、労働省は実施官庁ではありませんので、その実施方を建設省にお願いする、こういう形態で進むのが特別失業対策事業になっております。
  89. 阿具根登

    ○阿具根登君 それはきわめてけっこうだと思うのですけれども、去年の五千人分のうちの大部分は建設省関係で握られていると私は聞いておりますが、関係課長の方からはっきりと御説明願います。
  90. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) 阿具根さんのお尋ねになっておりますのは、緊急失業対策の方ではございませんか。特別失対の方ではないと思いますが。
  91. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうでした。その点について……。
  92. 江下孝

    政府委員江下孝君) 昨年度予算におきましては、御承知通り道路事業といたしまして、緊急就労対策費というものを組んでおります。この予算は当初から建設省所管の予算になっていたのであります。そこでただ緊急就労といたしましたのは、一般の失業対策事業のみによりましては、なかなか失業者の吸収が実情に沿わないということから、過渡的な形といたしまして、一部公共事業を緊急就労という形で実施をするということになりました。従いまして予算も建設省にありますし、実施の方法等も建設省的な色彩が非常に強かった。私どもももちろん緊急就労については、実施の場所その他につきましては十分協議をしてやっているわけなんですけれども、やはり請負等もやらざるを得ないというような事情にあったわけです。今度の特別事業は、これは現在労働省予算に組んであります。これを実際使いますときは、ただいま大臣も申し上げましたように、建設省に移しかえて労働省と建設省で計画を両方で立てまして、それによって実施するということになります。従って請負等はほとんど私はないというのが実情じゃないかと思います。
  93. 阿具根登

    ○阿具根登君 緊急特別失対の問題につきましては、一、二の例も上っておりますから、次回に関係の方に御質問申し上げます。  それからちょっとはずれますが、大臣が最初に言っておられるのは、大臣も一応は経営者でございましたので、労使関係のことを非常に深くここで書いておられますが、労使関係で年中行事的に労働争議が起ってくるのはけしからんというようなことを、最初から念頭に置かれておられると思うのですが、労使関係の紛争が那辺にあって、どういうことでこういうことをお考えになったか。だれも労使関係の紛争が起るのを好んでいるものはおらないと思います。ところが、紛争をやってならないとするならば、紛争をやらないでいいはっきりした御見解があるものと思っておりますが、ここに書いておられるのでは、私たちは納得できないから、もっとはっきりした御見解を承わりたい。
  94. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) 別にこだわって考えてもらわないように一つお願いしたいと思うのですが、実際に、最近と申しますと語弊があるかもしれませんが、今まで労働争議というものは、これはもう阿具根さんに言わせれば理屈があると思いますが、一般国民から見ますというと、またやっておるのか、あすこでまたやっておるのかというふうに、国民全体が労働争議があまり多過ぎるというふうな感覚を持っておることは、これは事実間違いないと思うのです。従って私はこれはもうきわめて抽象的に、観念的に、概念的に申し上げたのですが、そういうふうに労働争議がきょうもやっておる、あすもやっておる、またかというように新聞を見るたびに起るような状態で、この労働争議が起きますと、紛争の解決に労使双方とも全力を尽していかなければならない。そうして日本経済の復興も、自立も、その方法を研究しようにも何もそういういとまもない。労働争議ということだけに追われ通しているというようなことでは、日本経済の自立を叫んでもなかなか達成は困難ではなかろうか。従って労働争議が頻発するというような経済実態そのものは変えなくちゃならないけれども経済実態がそうであるから労働争議というものはしょっちゅう起きておってもよろしいという考え方の上には立っておっちゃ困るというのが、私の大体基本的な考え方なんです。労働争議が起きないで済むような世の中ができれば一番いいと思うのです。しかしそうでない世の中であっても、日本経済基盤を確立して、自立の達成を期する上においては、双方ともに、これは良識を持って一つ十起さなければならぬものは八つでもがまんしなければならぬ、八つやらなければならぬものは、五つぐらいでがまんしてもらわなければならぬという心組み一つ持っていただきたい。そういう考え方で実はこのごあいさつのときに申し上げたのです。
  95. 阿具根登

    ○阿具根登君 常識で考えれば確かに私もそうだと思うのです。しかしその前になぜストライキをやらなければならなかったかという問題について触れずに、ただそういうこれはスト規制法が出されたときの、時の政府から世論という言葉でさんざん言われた問題でございますが、だれだってそういうことをやりたくないのに、そういう片よったところに片よったストライキが起っておるという現実をどういうふうにお考えになるか。特に炭鉱の問題につきまして、それではお前らは黙ってしんぼうして、そうして安い品物を生産して国民に与えろ、これ以外にこれを解釈することには私はならないと思うのです。そういう感覚でいいかどうか。
  96. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) これはなかなか、阿具根さんも労働組合の委員長をしておられたこともあるし、終戦直後の日本の石炭産業の実態から現在までの推移をお考えになると、必ずしも理論的に労使双方とも適正妥当な道を歩いてきたと私は考えておりません。ある場合においては双方とも行き過ぎがあった、ある場合には双方ともにやらなくていいところまでやったこともあるというふうに私は考えておりますが、決して私自身労働大臣になって、労働行政を担当する上において、労働者の賃金を安くしなくちゃいかぬ、労働者の賃金を値下げしなくちゃいかぬというようなことは考えておりません。しかし、一つ一つの個々の企業の実態を考えると同時に、日本経済全般に対するやはりものの見方を総合して、そうして労働組合運動というものの賃上げを、具体的に申しますならば、賃金値上げというようなことも行われるのが適正ではなかろうか、ただ自分たちの企業だけを考え日本経済全体というものを考えないままで、資本家の考え方、あるいは労働組合側の考え方も基本的には達せられぬというような実態は好ましい実態ではない、かように私は考えております。従って現在の情勢における石炭鉱業がどういう難局に立っておるかということは、これは阿具根さん十分御承知と思います。実際において賃金値上げのできる状態ではございません。何とか国家的に救済する方法を講じるか、根本的に燃料対策というものを、将来の見通しをつけて抜本的な方法を決定するか、いずれかしなければ、石炭鉱業自体の維持が困難ではなかろうかと思われるほど、石炭鉱業は現在行き詰っております。大手筋の炭鉱こそ、まだ銀行から多少の融資を受けておりますけれども、中小炭鉱のごときには、銀行は一銭も融資をしません。昨年の年末ごろ、中小炭鉱がわれわれに陳情に来まして、そうして保険料の納入とか、あるいは税金の未払いというようなものを各省に連絡をつけて、一時しのぎの方法で延納を現在認めさしておりますけれども、これはとてもそう強化はできぬと思います。従ってそういう問題については、政府がただどうするかという問題ではなくて、労使双方が自分の産業をどうしてやったらいいかということを考えなければならぬ段階に来ておる。そういう観点から考えますというと、最近行われております賃上げは、この際そうそう、産業が気息えんえんとしているにもかかわらず、なお賃上げしなければならないというだけの大きな生活問題に対する理由の発見に私は苦しんでおります。
  97. 阿具根登

    ○阿具根登君 もう時間もないようで、委員長からせかれておるようです。本問題は大臣とどこまで行っても並行線ですからこれ以上やりませんけれども、そこまで来たということが、国がやる問題でなくてお前たちがやる問題だということは私は聞えませんというわけです。そこまで来たということは、この企業は成り立たない、そうすればこの企業は成り立たないから捨ててもいいか、それはできない。そうする場合は国がやることが第一だ。私は言外にもそういうことを大臣考えられておられると思う。これをただ見ただけでは、日本経済実態から見てしんぼうしていきなさいと、今の言葉でもあったようでありますが、このしんぼうには限度がある。実際は食えないでおる、福岡あるいは山口地区の現状を御存じであるはずであります。親子五人も六人もそろってアンペラを敷いて寝ている人にしんぼうせいということが言えるかどうか。日本人の生活に中におってどれだけの水準におる人に対してそういうことが言えるかということになってくると、あえて私はここで一時間や二時間大臣と討論してもおさまらないと思う。また人にも御迷惑だと思いますので、これ以上質問いたしませんけれども、ただこれを受ける私たちの感じは、こういうお考えに対して反駁を申し上げたい、こういうことです。
  98. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) 御説ごもっともで、私もお困りになっておるのをしいて知らぬ顔をしておるということを申し上げたのではありません。従ってただ労働者諸君に、ここに行き詰りが来たから、お前たちがまんしろというつもりはありません。何らか政府としては当然措置をとらなければならぬと、そう考えております。今までとられてきた燃料対策、特に石炭対策というものは、誤っておった、だからこの際誤っておったやつを抜本的に将来石炭産業の安定、石炭産業が安定すれば、労働問題も安定するといっても間違いないと思いますが、その安定を目ざして、何らか抜本的対策をとらなければ困るだろうと思って、内閣として、通産省でおこるかもしれませんが、案の内容は別問題として、政府としては、こういう方策をとっていかなければならないのじゃないかということで検討して、今法律を出す準備をいたしておりますが、遺憾ながら、労働問題をどう処理するかという点については、解決がつきませんので、提案の運びになっておりません。それで私が最初申し上げましたような本立法において、労働者側に不利益をもたらすことのないように、何とかしてせめて並行してそれに対する大綱の措置が決定した上で法律案として提案いたし、御審議をわずらわしたいと、今せっかく努力中であります。政治力が足りませんので、あるいは私の考え方が通らないかもしれませんが、その点は一つ御了解を願います。
  99. 小林英三

    委員長小林英三君) 本日の質疑はこの程度にいたしまして、他は次回に譲りたいと思います。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  100. 小林英三

    委員長小林英三君) 御異議ないようでございますから、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時九分散会    ————・————