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1955-07-14 第22回国会 参議院 建設委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月十四日(木曜日)    午前十時三十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    理事            石井  桂君            赤木 正雄君            近藤 信一君            武藤 常介君    委員            石原幹市郎君            小沢久太郎君            西岡 ハル君            横川 信夫君            北 勝太郎君            村上 義一君            湯山  勇君            田中  一君   政府委員    建設政務次官  今井  耕君    建設大臣官房長 石破 二朗君   事務局側    常任委員会専門    員       菊池 璋三君    常任委員会専門    員       武井  篤君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○建築士法の一部を改正する法律案  (田中一君外二名発議)   —————————————
  2. 石井桂

    理事石井桂君) ただいまから建設委員会を開会いたします。  建築士法の一部を改正する法律案議題に供します。  まず、本案の提案理由の御説明を、発議者を代表して田中一君から御説明をお願いいたします。
  3. 田中一

    田中一君 ただいま議題となりました建築士法の一部を改正する法律案について、発議者の一人として、その提案理由並びに内容の概略について御説明いたします。  建築士法は国民の生命、財産に至大の関係を有する建築物災害等に対する安全性を確保し、質の向上をはかるため、昭和二十五年第七国会において制定されたものであります。  同法は建築物設計工事監理等を行う建築技術者資格を定め、その業務の適正をはかることを内容としておりますが、五年間の法施行の実績にかんがみ、建築士事務所業務に関する規定を整備するため、今回の改正を必要とするに至った次第であります。  改正内容について申し上げますと、第一点といたしましては、建築士事務所の開設について、都道府県知事に対する従来の届出登録に改め、登録有効期間を三年とし、引き続いて業を営む者については更新登録を行うことといたしましたことであります。これは登録を行うことにより不良建築士事務所を一掃して、建築士社会的信用の確保をはかるためであります。  第二点といたしましては、従来、建築士事務所届出を必要とする場合は、業として設計または工事監理を行うときに限られておりましたものを、建築士法建築士業務とされているその他の業務、すなわち建築工事契約建築工事指導監督建築物調査鑑定建築に関する法令に基く手続の代理の業務を加えまして、建築士事務所業務上の責任明確化をはかったことであります。  次に第三点といたしましては、建築士事務所登録制実施に伴い、登録申請手続登録の拒否の場合、登録簿公開閲覧設計図等関係図書の保存、標識の掲示、登録の取消、抹消の場合、報告検査等についての規定を、他の登録制度の例にならって設け、業務適正化をはかったのであります。  最後に第四点といたしましては、法施行の際現に都道府県知事に対して事務所届出をしている者について所要の経過措置を定め、実施上の円滑を期したことであります。  以上が改正法律案内容の大要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを切望する次第であります。
  4. 石井桂

    理事石井桂君) 引き続いて、内容の詳細な御説明をお願いいたします。
  5. 田中一

    田中一君 お手元に差し上げてありますところの資料として、建築士免許年別集計表建築士事務所届出数年別集計表がございます。もう一つ資料として、改正案建設業法宅地建物取引業法対照表がございます。大体要綱で御説明申し上げたように、従来の届出制登録制に変えて、不良建築事務所の一掃を企て、従来の建築士法になかった業務をこれに加える。当然これは建築士業務としてきめられておるものでございますが、詳しくそれをこれに盛り込みまして、あとは事務的な手続の問題を現わしたものでございまして、もしできるのならば、内容がそういう簡単なものでございますから、逐条審議の過程に御説明したいと思います。
  6. 石井桂

    理事石井桂君) それでは、御質疑のおありの方は、順次御発言をお願いいたします。ただいま政府からは今井政務次官石破官房長小宮建築指導課長が御出席でございます。
  7. 田中一

    田中一君 できるならば、こういう今申し上げたような簡単なものですから、議員提案になっておりますから、政府にこれに対する質疑を行なっていただければもっと内容の的確な御説明があると思いますから、一つ政府に向って御質疑いただくようにお取り計らい願いたいと思います。    〔理事石井桂君退席、理事赤木正雄君着席〕  この実態を申しますと、まあ非常に率直に申し上げます。この法律改正しようという意図は、御承知のように、たとえば清水市庁舎というものをある学校先生設計監理をしている。そうしますと、莫大もない数千万円の設計勘定というものを取っている。これは一応、名目実験研究という名目でやっております。しかしながら、数千万円の設計勘定を取っている。あるいは各役所の、建設省にもあると思いますけれども、役所方々内職に、自分の権力をもって取るんじゃないでしょうけれども、一番信頼される技術を持っているからという理由でありましょうが、内職建築士という資格を持っているからできる。そうしてまあ報酬をもらっておるのではなかろうかと思う節がたくさんございます。そこでこの法律は、報酬をもらってやる場合には建築事務所を持たなければならないということがはっきり建築士法に書いてあります。書いてありますけれども、盲点といいますか、この法律資格法業法と二つ織り込んであるために、その点が資格を持っている者が報酬をもらわずに仕事をする場合と、資格を持っている者が業として報酬をもらいながらその仕事をやっていくということが、同じものなんです。同じものでありながら、今言うように、法律が今までの法律ですと、完全にそれが守られない。いわゆる闇の建築士事務所的な行為が建築士の間に行われて、これを何とかして正しい方向に、間違いのないように、盲点をなくしていこうという考えでもって、立案されたものでございます。しかしながら、これが改正されましても、やはり信頼に基くところの依頼者というものが、学校先生なり、役人なり、建築士資格を持っている方々に御依頼することはあり得ます。あり得ますが、それはどこまでも報酬をもらわないでやる場合に限る。報酬をもらう場合には必ず建築士事務所を持たなければならない、かように規定してあるのでございます。  他の条文につきましては、もうその形、その目的を、何というか、織り込むための事務的な条文でございます。  実態としてはたくさんございます。現在お手元資料にありますように、一級建築士免許を取得している方は、これは資格でございますが、集計しまして二万二千七百四十一名でございます。二級建築士の方は四万一千七百六十一名、現在ございます。そのうち、一級建築士が業として建築士事務所を営んでいるものはどうかと申しますと、一級建築士二万二千七百四十一人に対しまして、五千三百四十八人にしか過ぎません。そうして二級建築士の場合を御覧になればわかりますように、四万一千七百六十一名の資格を持っている方々がいるにもかかわらず、業務を営んでいる者は六千百七十六人しかございません。その六千百七十六人と五千三百四十八名だけがこの業務を営んでいるわけでございます。六万に上るところの方々が、やはり同じように報酬をもらいながら、設計監理をしているという実情が明らかになっているのでございますから、そこでいわゆる保護法という、業務を営んでいる者を保護するという面もございますけれども、もしも十分な責任が持てぬものですと、あるいは台風その他でもって大きな災害があるのじゃないかという点を考慮いたしまして、この改正を出したわけでございます。
  8. 村上義一

    村上義一君 賛成者にすでに署名しておって質問するのはどうかと思うのですけれども、今の御説明に関連するのですが、この事務所を設けるについては相当の経費がかかると思うのですが、これは要するに建築士のサービスについてのコストに入っていると思いますが、このために建築費が非常に高くなると、こういったようなことはこれはやむを得ない経費だと思いますけれども、そう大きく響くというようなことはないかどうか、一応その点をお伺いしたい。
  9. 田中一

    田中一君 一応建築関係の団体と申しますと、日本設計監理協会というのがございます。これは多くの一級建築士のうちのなお上層部に位するところの者が約百名足らず、百事務所くらい登録されておりまして、これなどはっきりと登録といいますか、設計監理報酬というものをきめております。それからなお、建設省の方が指導いたしまして妥当なる線というものが一応出ております。それは一つ政府当局から御説明願いたいと思います。
  10. 石井桂

    石井桂君 なお、私からも補足したいと思いますが、りっぱに事務所を備えておられるのは、このうちの何人でもないと思うのです。自宅建築士事務所にしている方がおそらく九分九厘でございまして、何々ビルのうちに大きな床面積を、あるいは相当のものを使って、建築事務所を経営しているというのは、もう数かぞえるほどしかございません。従って、まあそういうりっぱな事務所を経営していく人は相当の経費がかかると思いますが、ここに問題となっている法文についての大部分の人は、自宅の一部を土間にして、そうして机を持ち込み、一人か二人を使って建築事務所の看板を下げている、そういうのが多いのです。  それからもう一つ、先ほどの田中さんからの御説明のありましたことにも関連をいたしますけれども、そういう多くの人々のうちで、登録者が実は専業なんでございまして、登録していない者は、他に正業を持っておって、そして建築士登録をしている者がつまり非常に数が多いのです。たとえば会社の社員でありまして、会社に使われて月給をもらっていて、建築士登録はするけれども、いわゆる開業をしていない。それから官庁の職員、これもかなり大きな数でございまして、官庁から月給をもらっていて、それが正式の職業ですが、建築士登録はしておる。たとえば、私のごときは役所におったときも建築士登録はいたしましたが、役所をやめて開業届を出した、こういうようなことで、実際に開業をして、それを専業として御飯を食べているという人は非常に数が少い。で、おそらくここに書いてある二級、一級合計して一万一千というのが専業でありまして、他の六万から引いた残りの者は兼業の人が多いでしょう。こう思います。
  11. 武藤常介

    武藤常介君 地方実情は大体、事務所を設置してあるのは土建業兼業者がほとんど大部分です。ところが、県にもよりましょうが、私の県のごときは、大体大工、これがほとんど二級建築士の免状を取っているのですが、こういうものに新たにこの事務所を設置させるということになれば、相当そこに余分な経費もかかり、なお非常に手続やなにかがおっくうになるというようね関係で、建築士の進んでこれをやるというような人が少くなる。その結果、地方心々建築者に多少の不便を来たさしめるというようなととがあるのじゃないかと思うのですが、その点はいかがでございますか。
  12. 田中一

    田中一君 これは、そういうことは新しく今度きめません。建築士法の第五章の建築士事務所には、届出義務は必ずあるようになっております。たとえば二十三条の二項に「前項に掲げる者が、建築士事務所を移転し、休止し又は廃止したときは、十日以内に、都道府県知事届出をしなければならない。」こうなっておるんです。従って、今度はその点は改正しておりません。従来通りでございます。その届け出る、これは旧法でもありまして、今度はそれを登録制にしたにすぎません。従って、報酬をもらってその職業をするならば登録をしてくれと、こういう点でございます。だから、今御質問のような、うんと経費がかかるとかなんとかということはございません。現在でも届出をしております。
  13. 武藤常介

    武藤常介君 公務員は他の業務をすることは法によって禁じられておると思うのですが、たとえば、学校の教員が実際研究はしておる。これを実際に移そうという関係から、やはり設計等を委嘱されてこれをやった、こういうふうな場合に、あるいは手続上めんどうなことがありはしないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  14. 田中一

    田中一君 これはもうたくさん事例がございまして、先ほど申しましたように、東大教授岸田日出刀さんが清水市庁舎建築をやった。そうしてこれが相当ね、数百万あるいは一千万に近いような設計監理費を取っております。これは数億の建築でございますが、この場合には、いわゆる実験と申しますか、研究所という形でもって、技術上学問上の研究だということになっているのです。しかし、これがやはり税金の方の問題で問題になりまして、これは税金をとられました。従来までは実験研究実費をもらってやっている場合には、報酬をもらわぬのですから、これは当然税金の対象にならぬのですけれども、あのような大きな問題になりますと、税務署の方もだいぶやかましく言いまして、たしか税金をとられたように伺っております。このようなことがないようにしよう、こういう考えでいるのでございます。従って、学校先生あるいは公務員の諸君が、設計をし、監理をし、届出をするという、この建築士法に盛られております仕事をすることは一向差しつかえございません。ただ、報酬をもらう場合には、登録して事務所を持たなければならない、こういう工合にはっきりさせようというのがねらいであります。
  15. 石井桂

    石井桂君 ちょっと、私からなお補足いたします。報酬を得てこれを業とする者というところを落しているようですから……。業としないで、実費だということで報酬をもらうやつは、当らない。そこで、業とするということが非常に限界の問題になりますけれども、研究と称して一年中やっているというようなものは、まあかかると思いますが、なかなかそこらの判定はかなりむずかしいことに属するようにも思いますから、老婆心ながら、ちょっとつけ加えておきます。
  16. 武藤常介

    武藤常介君 その判定が非常にやかましくなるし、罰則がこういうふうについて参りますと、その間非常にややこしい。何だか、法律ができてかえって法律を犯すものが多くなるような結果を招来しないかというような心配があるのですが、どうですか。
  17. 田中一

    田中一君 その点は、現在あります法律にも罰則は適用されることになっているのです。なっておりますが、つかめないものですから、そういうことがつかまらないのであって、これは一種のまああらゆる法律盲点じゃないかと思うのです。
  18. 村上義一

    村上義一君 この法律案に対する建設省の御意見を、まず伺いたいと思うのですが。
  19. 石破二朗

    政府委員石破二朗君) この法案につきましては、まだ十分よく検討いたしておりません。一両日中には政府としての意見を決定しました上で、当委員会にお求めによりまして意見を申し上げる機会もあろうかと存じております。ただ、私ども担当の者といたしましては、まだ十分読んでおりませんけれども、当委員会の御意見等も承わった上で、一両日中には態度をきめたいと思います。
  20. 村上義一

    村上義一君 ただいままだ検討中に属するから、一両日中に意見をまとめたいという官房長お話であります。これはごもっともな次第であります。従って、この次にお話をよく伺いたいと思っております。
  21. 赤木正雄

    理事赤木正雄君) お諮りいたします。この法案に対する政府の御意見はお聞きの通りであります。従って、この委員会といたしましては、政府意見は別として、逐条審議をいたしますか、あるいは総体の質問といいますか、今までの程度で進みますか……。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  22. 赤木正雄

    理事赤木正雄君) 速記を起して。
  23. 田中一

    田中一君 一番大きな問題になりますところは、こういう点なんです。今までの法律には、設計図その他の関係書類を保存しなければならぬ義務はないのです。事務所を持っている者でも、何でもできます。しかし、これが何か事故がありましたときに、その事故というものを図面によって、あるいは関係書類によって、立証できないのです。ですから、今東京にある、都市にあるおおむねの住宅というものは、まあ主として住宅、小店舗というものは違反建築なんです。しかしながらこれを摘発できないというところに、今までの法律欠陥があったと思う。今度の改正案では、その点を非常に明らかに現わしている。事務所を持つ限り、必ず設計図、あるいは関係書類、そういうものを保存しなければならぬ義務を負わしている。従って、将来大きな台風があってその家がつぶれるという場合、その場合には、その設計監理した人は必ずその設計図並び関係図書を持っておりますから、これによって設計上あるいはその他の業務上の建築の失敗というか、欠陥があったかなかったかということが立証される。そういうことを非常に明らかに表わしておりまして、改正の趣旨がその辺にあるということを一つ御了解願いたいと思います。
  24. 赤木正雄

    理事赤木正雄君) いかがいたしましょうか。逐条審議に入りましょうか。皆さんの御意見、どうでしょうか。
  25. 武藤常介

    武藤常介君 逐条審議を省略して、なお、この次の委員会政府意見を伺って、その結果、審議を進めてはいかがかと思うのですが……。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  26. 赤木正雄

    理事赤木正雄君) では逐条審議を省略しまして、この次の委員会政府意見を聞くことにいたします。じゃ、この法案については本日はこれをもって打ち切ります。  速記をとめて。   〔速記中止
  27. 赤木正雄

    理事赤木正雄君) 速記を始めて下さい。  じゃ、本日はこれをもって散会いたします。    午前十一時八分散会    ————————