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参考人(林虎雄君) 本国会におきまして
住宅問題が大きく取り上げられまして活発に討議されておりますことに対しまして、深く敬意を表し、その動向を私ども注目しておったのでありますが、今回
委員会におかれましても、特にこの問題に関して
意見を申し上げる機会を与えていただきましたことを感謝申し上げる次第であります。
いわゆる
生活の三要素であります衣食住の問題のうちで、衣食の点はようやく戦前の水準に達したように思われますが、住いの問題は依然として御承知のように解決されないで、まことに憂慮にたえない次第であります。私も知事といたしまして過去八年間
住宅問題を、県政の最も大きな
施策の
一つとして取り上げて参ったのでありまして、この点が国においても認めていただきましたためか、一昨年は国から表彰されたような次第でございますが、それでもなおかつ、長野県の
住宅事情はほとんど戦災を受けていないにもかかわらず、現在においていまだ六万一千戸の不足、老朽
住宅が一万八千戸計七万九千戸というものが不足であるという数字を示しておるような次第でありまして、今後も私も未解決の
住宅問題に対して、全力をあげたいと思っておりますが、それにつけましても、国の
住宅政策を強力に推進していただきたいということを切望申し上げる次第であります。
さて一口に
住宅問題と申しましても、この問題は
住宅の困窮の起因、需要の事情等にも相当の差異がありますので、これを合理的に解決するためには、多額の
費用と長い年月を要することは申し上げるまでもございませんが、今やこの問題は
生活問題でありますとともに大きな社会問題であります。従いまして
住宅問題は勤労者、小企業者、零細農民等に対する問題としてこれに重点を置かなければならないというふうに
考えておるわけであります。
ところで
住宅問題解決の方法といたしましては、自己
住宅を
建設させるか、あるいは安定した借家を与えるかに大別できると思います。これに対しまして国におきましても、それぞれ
施策が講ぜられておるのでありまして、自己
住宅解決策としては、
住宅金融公庫によって
建設資金の一部を融通さして
建設をさせるという方法であります。これはまことにけっこうな方策でありまして、大いにこの制度に
期待しておりますが、この制度を
利用できないさらに下層の階層に対する積極的な
施策が望ましいというふうに思うわけであります。
また第二の安定した借家を与えるという方法につきましては、国の
施策としては
公営住宅の
建設というものがありまして、相当の成果をあげておりますことは御承知の通りでございますが、これも借り受ける資格がないためにせっかくの制度が
利用できないで、依然として
住宅の困窮に苦しみ続けておりますところの多数の階層に対する
対策もまた必要であると思うのであります。本県のことを例に引いて恐縮でございますが、長野県におきましては国の
施策を百パーセントに受け入れておりますことはもちろんでございますが、ただいま申し上げました階層の
住宅問題の解決策といたしまして、地方財政は非常に御承知のような困難の折柄ではありますが、県独自の
施策として過去八年間、次に述べるような
施策を行なってきておるのであります。すなわち一といたしまして、自己
住宅を
建設したいけれども、
住宅金融公庫から資金の融通を受けられない者が相当あるわけであります。これに対しまして県があっせんと保証をして市中銀行から資金の融通をいたしておるのであります。その要旨は需要者に
住宅組合を組織させまして、この
組合に対して必要な資金を日歩二銭七厘、償還期限五カ年で買し付けるものでありまして、この実績は別紙、裏に書いてありますが、戸数が三千四百四戸、金額は三億二千万円というような数字を示しております。
その次に二といたしまして、
公営住宅の借り受け資格のない者の
住宅供給については、市町村に補助金を交付いたしまして、厚生
住宅、母子
住宅というものを
建設させておりまして、これも裏面にありますように三千戸以上に達しておるのであります。厚生
住宅は対象を低額所得者、母子
住宅は対象を未亡人とその家族といたしまして、八坪ないし十坪程度の
住宅を市町村営として
建設をさせておるのであります。
さらに、今後実施いたしたいと思いまして、実は今
計画中でございますが、この次の八月県会に提案いたしたいと思っておりますものに、
住宅の
改造計画がございます。
住宅は新築はもちろんでありますが、既存
住宅の老朽を防止することも大切でありまして、これも消極的ではありますが、
住宅建設であると思います。僅々三万円か五万円の金融がつけば、老朽を防げる
住宅か私どもの県でも約五万戸あると推定されております。この老朽防止の方法といたしまして、希望者をもって
住宅改造組合を結成させまして、無尽式に一定の掛金をさせまして、そうして一部は金融
機関から連帯
融資等によって順番に
住宅を
改造させるという方法でありまして、自主的に行わせ、県としてはこれを指導するのであります。できれば一部は、金融
機関から借りる場合は相当利子が高いわけでありますから、県が利子補給をしたいというふうに
考えておりますが、今のような財政難ではそれも困難でございますから、こういう点についても国において積極的にお
考えを願いたいというふうに思うのであります。
今申し上げましたように長野県としては、いわゆる
計画住宅と自己
住宅の比率の関係を調べてみますと、全国平均をみますと、自己資金
住宅の方が六割で
計画住宅、いわゆる
公営的な
計画住宅は四割でございますが、長野県は逆に
計画住宅が六割で、自己資金の
住宅が四割というような比率になっております。今後の
住宅政策というものが国の経済力の
現状からいいまして絶対量を増して参りますためには、どうしても
公営住宅に特に力を入れなければ、解決が至難だろうというような
考え方から、微力をいたして参ったのであります。
以上国の
施策から漏れたと思われますような階層に対して、県のとっております政策の一端を申し上げたのでありますが、御承知のように地方の
団体は独立体とはいっておりましても、財政面ではそのほとんど大
部分を国に依存しておるような
現状であります。しかも年ごとに、ここで申し上げることは恐縮でございますが、国の地方財政
計画が非常に無理でありますために、全国の地方
団体はほとんど赤字にあえいでおる。ことに農村県においてはこの傾向が顕著でございます。私は自治体の長といたしまして、赤字問題に対しても十分に責任は感じておりますが、一面勤労者であるとか、あるいは小企業者等の
住宅問題が社会問題である点にも思いをいたしまして、あえて今まで申し上げたような政策を遂行して参ったような次第であります。しかし県の財政もほとんど行きついたような
現状でありまして、限りがありますので、この点を御了察をいただきまして、今申し上げますような県の
施策について、もし適当と思われますものは大きく国の
施策として取り上げていただきますならば、
住宅問題の解決は一そう早いのではなかろうかというふうに思うわけであります。
さてそこで次に、現行の
公営住宅法に対しまして事業主体としての意図を申し述べて国に改善方を要望いたしたいと思うわけであります。
第一に、基準
建設費のうちで、敷地の取得費及び付帯工事費の基準が、実情に比べまして低いために、毎年多額の県費を継ぎ足しておるような
現状であります。特に敷地は
住宅確保の重要な部面でありますから、実情に即した算定をお願いいたしたいと思います。これも裏面に
参考に表を示しておりますが、毎年この差額を県費で補てんしておるというようなことで、これもまあ赤字の一因になっておる次第であります。
第二に、起債の償還期間が短いために、年間の償還金が
家賃収入をはるかに上回っておるわけであります。つまり起債の償還を短くして、
家賃による償還は年限がずっと長いわけでありますから、結局においては相殺ができるような計算になっておりますが、現在においてはそれが地方財政圧迫の原因となっておりますので、現行の
公営住宅法を続ける場合には、何らかの
措置を講じていただいて、地方財政の面を考慮をお願いいたしたいと思うわけであります。
第三といたしまして昭和三十年度の
公営住宅についてでございますが、新婚者
アパートの八坪、母子
アパートの六坪はただいまも御
意見があったようでありますが、特に長野県のような寒冷地におきましては、狭過ぎていわゆる安定した住
生活をなし得るとは
考えられないのでありまして、この点を特に御考慮をお願いいたしたいと思うのであります。また、現行の
住宅金融公庫の
融資につきましては、自己
負担金の増大と、宅地取得の困難から
利用者が逐次減少しつつありますので、この二点の解決を御考慮をお願いいたしたい、かように思うわけであります。
次に、今回提案になっております
住宅関係諸
法案について
意見を申し上げたいと思います。
第一に、
住宅融資保険法案についてでございますが、
住宅金融公庫の
融資を受けられない者に対する補いの意味において適切な方途であると存じます。しかしながらこの
法案によりますと、利率の限度を定めてありませんので、地方の金融
機関においては一般貸出利率並びてそれ以上を要求するおそれもあると思われますので、
公庫の五分五厘に比較いたしまして場合によっては倍以上となってしまう。貸付期間が六カ月以上では、短期に過ぎる、しかも保険料が保険金の年百分の三
負担では、
公庫資金
利用者に対しまして格段の差別がつき過ぎるというふうに思います。ただし既存
住宅の修理、模様がえ等にも
融資できることは
一つの進歩であるというふうに
考えるわけであります。
第二に、
日本住宅公団法案について
意見を申し上げたいと思います。これは六
大都市に重点を置くようでありますから、長野県には直接関係がないといいますか、しかし趣旨としてはけっこうだと存じます。ただ、長野県のような場合には、高額所得者の少い地方においては、現在の
公営住宅の
家賃がせいぜい限度でありまして、その二倍近い
家賃の賃貸
住宅の
建築は実情に沿わないものがあると存じます。従いましてこの中小
都市における
公営住宅の
建設については特に御考慮をお願いいたしたいと存ずるわけであります。また、
公団が地方の
公共団体に対しまして出資を求めておりますが、財政逼迫の折からなかなかこれも容易ではないというふうに
考えられるのであります。
第三に、
国設住宅法案についてでありますが、
地方公共団体の財政
負担にならないこと及び低額所得者も
利用できるという点から全面的に賛成でございます。なお
土地取得費を都道府県が
負担することになっておりますが、この場合においては起債は別ワクとして認めていただきませんと、他の
公共事業等が圧迫されるというおそれがありますので、この点も御考慮をお願いいたしたいと思います。この
法案がもし実現ができないというような場合には、次善的な
対策といいますか、現在の
公営住宅法を改正されまして、第三種の
公営住宅というようなものを新設していただいて、そしてこの
法案要旨の
住宅建設を
期待しておるというような次第でございます。
第四に、
日本分譲住宅公社法案についてでございますが、立法趣旨からいたしまして、立案趣旨からいたしまして全面的に賛成でございますが、自己
住宅を希望しております地方の農民、あるいは中小企業者等の敷地が限定されているものの
住宅供給が欠けておるというように思われるのでございます。
以上をもちまして各
法案に対する
意見を終りましたが、最後に特につけ加えたい点は、いずれの
法案を実施するに当りましても、御承知の通り
住宅建設の隘路は、近年特にこの宅地価格が高騰しておるという点であります。この宅地価格の高騰を何らかの
施策によって抑制することができなければならないと思います。たとえば農地改革のようなあの抜本的な法的
措置が講ぜられない限りにおきましては、
住宅対策費の一部がいたずらに地主の不当利得となってしまうおそれがある、かように思うのでありまして、ぜひこの宅地に対する法的
措置をとっていただくということが必要ではなかろうかというふうに思っておるわけでありまして、この点特に御考慮をお願い申し上げたいと存じます。
なお、私の要旨に印刷してあります裏面に
参考に数字等を示してございますので、御
参考にしていただけば、幸いだと存じます。
以上簡単でございますが、私の陳述を終りたいと思います。