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1955-06-09 第22回国会 参議院 建設委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月九日(木曜日)    午前十時四十七分開会     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     石川 榮一君    理事            石井  桂君            赤木 正雄君            近藤 信一君            武藤 常介君    委員            石原幹市郎君            小沢久太郎君            西岡 ハル君            酒井 利雄君            宮本 邦彦君            横川 信夫君            前田  穣君            村上 義一君            田中  一君   国務大臣    建 設 大 臣 竹山祐太郎君   政府委員    建設政務次官  今井  耕君   事務局側    常任委員会専門    員       菊池 璋三君    常任委員会専門    員       武井  篤君   参考人    日本建築学会会    長       武藤  清君    東京住宅協会    管理部長    吉沢 孝治君    生命保険協会財    務委員長    本間 喜一君    清水建設株式会    社研究部長  久良知丑二郎君    東京大学教援  杉村章三郎君            楠木なつ子君    長野県知事   林  虎雄君     —————————————   本日の会議に付した案件国設住宅法案田中一君外一名発  議) ○日本分譲住宅公社法案田中一君外  一名発議) ○日本分譲住宅公社法施行法案田中  一君外一名発議) ○日本住宅公団法案内閣送付予備  審査) ○住宅融資保険法案内閣送付予備  審査)     —————————————
  2. 石川榮一

    委員長石川榮一君) ただいまから建設委員会開会いたします。  本日は政府提案になりました日本住宅公団法案住宅融資保険法案並びに社会党提案国設住宅法案及び日本分譲住宅公社法案、同施行法案並びに住宅問題全般につきまして参考人各位から御意見を聴取いたしたいと存じます。  開会に当りまして、本日御出席を賜わりました参考人各位にごあいさつを申し上げます。  本日は非常に皆様御多忙のところ、貴重な時間をおさき下さいまして、御出席をいただきましたことを厚くお礼を申し上げます。申し上げるまでもなく、本住宅問題は戦後最も大きな問題の一つでありまして、過去十年間にわたりまして約三百九十万戸程度の住宅建設されたと称されておりまするが、年々の人口の増加火災、風水害、老腐朽等によりまして、現在なお今日では二百八十数万戸の不足をきたしておると言われておる次第であります。  今回現政府は、鳩山内閣が総選挙に当って公約をいたしました三十年度四十二万戸の住宅建設施策といたしまして、日本住宅公団法案及び住宅融資保険法案等の立法の措置、あるいは六坪以下の簡易耐火アパートの新設、国税、地方税等におきます各種の措置、あるいは危険家屋増改築等に対する融資、あるいは住宅金融公庫融資率引き下げ等一連住宅対策を考慮しておるのであります。  一方社会党からは、現在の公営住宅にかわる全額国庫負担のもとに国設住宅建設し、世帯収入の五%の家賃供給しようという国設住宅法案、また住宅金融公庫を改組いたしまして、日本分譲住宅公社を新設いたし、低コスト耐火アパート建設して分譲しようという日本分譲住宅公社法案が提出せられておるのであります。  本委員会におきましては、これらの法案国民生活に直接関連する非常に重要な案件でありますので、今後の住宅対策に与うるところの影響はすこぶる大であるということにかんがみまして、各界の方々をお招きいたしまして各位の御専門立場からこれらの法案につきまして、あるいは住宅問題全般につきまして隔意のない率直な御意見を拝聴いたしたいと存ずる次第であります。法案審議に遺憾のないようにいたしたいために、皆様方の御高配を願うわけでありますが、各位におかれましては、その立場々々によりまして全く腹蔵のない御意見の御開陳をお願いいたす次第であります。つきましては杉村参考人からは主として法律の面を中心といたし、武藤参考人からは建築学の面から、林参考人からは地方公共団体住宅行政中心に、また本間参考人からは民間住宅金融の面から、吉沢参考人からは住宅経営管理中心に、久良知参考人からは施工、技術等中心に、楠木参考人からは家庭の主婦としての立場から、それぞれ専門的な御意見をお聞かせ願えれば大へん仕合せだと存ずる次第であります。なお、その他参考になりますとおぼしめす点がありましたならば、御遠慮なく御意見を御発表願いたいと存ずるのであります。  なお、参考人方々にあらかじめお願いしておきますが、発言を求められます際は、委員長の許可を得てから御発言を願うように願いたいと思います。  次に、参考人発言の時間でありますが、大体十分ないし十五分くらいにしていただくということに御了承を願い、参考人皆様から逐次御意見を述べていただきましてから、最終にその意見開陳を終りました後において委員から御質疑を申し上げたい、かように存ずるのであります。その間、杉村参考人林参考人等は十一時四十分あるいは午後一時半に参られますので、そのときに適宜御発言を願うようにいたしたいと存じます。
  3. 田中一

    田中一君 今委員長の御発言の中に、社会党提案国設住宅法案並びに日本分譲住宅公社法案または、一方社会党からは現在の公営住宅にかわるものという御発言がありましたが、社会党という政党からは提案いたしておりません。社会党右派に属する田中一と左派に属する近藤信一の二人が出しておるのでありますから、御訂正を願います。
  4. 石川榮一

    委員長石川榮一君) わかりました。ただいま田中君の発言ごもっともと存じます。これはプリントの誤りでありますから、訂正いたします。私の発言中に、「社会党からは」とありますものは、議員提出をもってということに訂正いたします。  まず、武藤参考人から御意見を御開陳願いたいと存じます。武藤参考人
  5. 武藤清

    参考人武藤清君) 私建築学会長武藤清でございます。建築学会を代表いたしましてできるだけ意見を申し上げたいと思います。  初めにお断わりしておきたいと思いまが、私大学の教官をしておりまして、長年学生を相手にしておりますものですから、丁重な言葉を知りませんで、提案趣旨説明書などを拝見しますと、非常に御丁寧なお言葉をお使いのようでありますけれども、言辞粗暴の点はあらかじめ御了承願います。  建築学会会員一万六千以上を持っております大きな学会であり、建築学に関する全般研究並びに技術の促進というようなことについて日夜努力しておるわけでございますが、住宅問題についても非常に大きな関心を持ちまして、特に昨年度におきましては建設省の委嘱によって住宅建築要覧という膨大なる書物を刊行しております。この中には住宅政策に関する貴重なるデータが全部集まっておるのでございまして、こまかい学会意見、学術的な意見というようなものは要覧の中に網羅してございます次第でございます。先般建築学会総会を五月初めに開きましたのですか、その節に会員意見がございまして、この現下の住宅問題について政府意見を具申すべしということの決議がなされまして、その結果をもちまして私会長としまして政府、国会並びに各政党意見書を提出したわけでございます。  初めにその問題つきまして学会考えております現在の住宅政策につきまして少しく申し上げさせていただきたいと思います。  昨年末から住宅政策が大きく論ぜられまして、各政党において重要政策として取り上げられましたことについて、私たち国民全般とともに非常な期待を持っておったわけでございまするけれども、次第に予算化されましてから新聞に伝えられるところを拝見いたしますというと、住宅の戸数においては非常な増加が見られたのでございますけれども、質的に考えてみまして、いささか低下している点があるのを非常に遺憾と考えたわけでございます。と申しますのは、私たちが非常な期待を持っておりましたことは、終戦後年々、応急的の住宅政策から恒久的な対策にと変りまして、質的にも量的にも非常な向上を見せておりました。昨年末から今年こそわという期待を持っておったわけですけれども、その現在盛られております内容については、量においては非常な躍進が見られたのでありますが、質的にいささか後退をしているんじゃないかという点が私たち一番心配したわけでございます。そのような意味合において総会においては会員の総意によって次の三点にまとめました意見書を提出することになっているのでございます。  第一は、狭少住宅の占めている建設割合が余りに多い。その結果として狭少な住宅増加によって庶民階層住宅水準が低下するのではないか、その計画規模配分を適正な割合にしていただきたい。言葉をかえて申し上げますと、大きなものをなお含めていただきたいという点でございます。六坪の簡易耐火構造、あるいは八坪の木造、あるいは簡易耐火の占めている割合があまりに多いということ、狭少な住宅がふえますことは、必然的にきわめて近い将来において過密化するおそれがある。あまり多人数の者が少数の家屋の中に密集するという危険があるのでございますし、ことに、公庫あるいは公営的の施設として一地区に小さいものだけが造られた場合には、不良化してしまうおそれがあるのでございます。大きいのと小さいのと混在をしている場合には、さほどの危険はないと思いますけれども、そういう不良化という点を第一に考えまして、実際の建設に当っては、規模配分について十分の御注意をいただきたいということを要望いたしました。  第二の点は、都市にあっては、全面的に耐火構造といたしましまして、質的の向上をはかり、そうして災害防止国費の合理的の使用をはかっていただきたい。耐火建築の採用ということは、これは世界都市のすべての常識でございまして、私申し上げるのもむしろ専門皆様にこっけいでございますけれども、今から約三百年前、二百九十年前にロンドンに火事があって以来、ロンドンにおいては木造を禁止して耐火都市建設に乗り出したわけです。これが三百年前であって、そしてまた近いところでは五十年前にサンフランシスコの地震で町が全部焼けてしまった。それは植民地として木造が多かったのでありますけれども自来アメリカにおいても耐火建築が法的に規定されまして、世界各国とも今日では大都市における木造というものは禁止されているのであります。東京について考えてみますと、関東大地震のときに手痛い震火災を受けまして街が焼かれた。そのときに政府並びに民間人の非常な協力によって、当時としては画期的な土地区画整理法が採択されて、市街地の整理が行われたわけでございます。この実現については非常な障害があったのでございますけれども、当時の政府の非常な努力によって、土地区画整理という例を開いて、今日戦災地の処理にも非常な効力を発揮しておるわけでございます。同時にできましたのが防火地区がございまして、防火地区の指定の方は年とともに緩和規定がなされまして、ついに何らの規定のないような現状で、一向に威力を発揮しなかったのであります。三十年間のあと考えてみましても、初期のいき込みはどこへやらで、今日では依然としての都市ができておるようなわけでございます。  しかし、戦後における住宅政策がだんだんと本格化いたしまして、四層の中層アパート建築というようなことも常識的になり、また耐火助成法によります防火建築帯の育成というようなことが普及するにつれて、民間においては耐火建築に対する認識が非常に改まってきたようでございます。この時期に政府施策として、なお本腰を入れて耐火建築を取り入れるという方向に進めていただきたい、こういう点でございます。それからまた、よく四層アパートはぜいたくだというような気持を持っておるのではございますが、私たち考えてみますと、あの四層アパート建設費というものは総合的建設費から考えてみますと、平屋建よりはるかに低康なものであり、また二階建のものよりもまた経済的なものでございまして、水道ガス電気、道路、その他の公園の施設というようなものをあわせて考えてみますと、今後の都市の行き方としては、どうしてもあのようなアパート生活でなければならない。もちろん世界的に見ましても、すべての都市生活様式というものはアパートである。鳩山内閣で叫ばれております新生活運動というものがございますけれども、都市における新生活運動というものは、アパート生活でなければならないという世界常識日本にも当てはまるのではないか、こんなふうに考えておるわけでございます。外国では個人住宅を持ち、個人の庭を持つということは、非常にぜいたくとされておるわけでございます。  さて、四層の施設について見ますと、住宅というものがただ別個として取り上げておられますために、住宅だけが与えられまして、住居区としての施設子供たち公共施設とかあるいはまた浴場とか、あるいはこれに伴う商店街というものが全く手がつけられないというような状態でおるように見受けられますが、こういう点は今後の問題としてぜひ総合的に考えていただきたい点でございます。  第三の意見として申し上げますのは、大都市では火急的に高層集団住宅形式を採用して土地利用度を高め、地域の膨脹を抑制して、都市経費の節減をはかっていただきたい、こういう点でございます。日本都市現状のようにぼうばくとしたままでございますけれども、これでは都市機能としての形態維持することが非常に困難でございます。ある程度まとまっていなければ、一つ都市としての機能は発揮できないかと考えます。ことに狭い国土でありますわが国においては、土地利用というものを最も真剣に考えなければならないところでありますし、また高層化によってこれを解決すれば、同時に地域が縮小いたしますから、それによって都市経費が非常な節約になるはずでございます。このような恒久的の対策というものは、今取り上げられてももうよろしいのではないかということが、私たち建築家考えであるのでございます。  これらの意見を申し上げたのでございますけれども、これを総合いたしまして本日の議案に関連したことにつきまして申し上げますと、この現状都市状態というものが、全くぼうばくとした状態であって、いわゆる外国で言っております中心都市衛星都市というようなものが存在していない状態である。私の私見でございますけれども世界ができ上る前は、混沌たるケイオスだとかいうようなことが言われておりましたが、この混沌たる状態からやっと星ができ上った状態で昨年まで進んでいったところ、今度ことしはまたさらに混沌たる状態に突っ込んでいくのではないかというような点を考えるわけでございます。どうしても今までの応急策のような住宅政策から、今度は総合的な近代都市改造に一歩を踏み出してもいいときではないか。このように考えまして、根本的の問題としては震災後の土地区劃整理と同じように、これからは都市を全く改造するというような意味合いで都市改造整理法というようなもので、都市改造を行なっていかなければならないのではないか。そのためにはぜひとも政府並びに政党の御配慮によって、総合的の日本都市建築建造計画改造計画をお立てになる機関を設置される第一歩としては、調査機関の設置というようなことを私たちは切に希望しておるのでございます。  本年度のこの事業計画について申し上げますと、住宅供給についての組織としてはいずれの案においても大へんけっこうだと思うのでございますけれども、住宅供給、特に公的色彩を持っておる住宅供給が、政府案によりますと公営公庫公団との三本建てで行われることになっておりますが、この三本建でいく結果、一元的の計画性が欠けてしまうという点があるのではないか。少くともこの三元の運営が一本の計画のもとにまとまるための住宅区の計画をするような総合的の計画をする。恒急的の機関、はっきりした機関をもちまして計画性を与えていただきたい。そのようなことが行われますれば、現在欠点とされます住宅のみ供給されて公共施設ができてこない、あるいはまた店舗がないというような点も解決されるのではないかとこのように考える次第でございます。以上で終ります。
  6. 石川榮一

    委員長石川榮一君) 次に、東京住宅協会管理部長吉沢孝治君にお願いいたします。
  7. 吉沢孝治

    参考人吉沢孝治君) 東京住宅協会管理部長吉沢でございます。今武藤先生からは建築学会を代表した御意見ということでございましたが、私は住宅協会意見を述べるつもりではありませんで、私個人意見を申し述べようと思います。  ただいま武藤先生のお話しのように、都市形態アパート生活がこれから先の住宅常識になる、そういうことが普遍化する傾向にこれからあるだろうと思います。それを経済管理の面から見まして、私ら実際実務を担当しておる者から見まして二、三の御意見を申し述べたいと思います。  今回、この問題になっております、提案されております法案の中に分譲住宅ということが出ておりますが、分譲住宅はもちろん所有権移転目的としたものだろうと思いますが、ああいう下層の住宅となりますと、今までの木造平屋建、または二階建の観念での分譲というものは、もはやないのではないかと、そういう気がいたします。どういうことかといいますと、結局多層でございますから、上下左右に他人の所有のものがあるわけです。それで、まあ法律のことはよくわかりませんけれども、隣り合した壁は二人の共有だとか、または壁のしんまでがおのおの所有の範囲だとか、こういうことになっておると思いますが、多層住宅では、そういう観念では成り立たないのではないか。そういうことで、もし隣り合せた人が勝手な行動をして、その部分に非常な改造を与えると、そういう場合には、建物全体として成り立たないということになりやしないか。それで、ああいう建物分譲の場合は共有部分というものを、私は専門家じゃありませんが、法律の面からもう少し再検討していただきまして、そういうものは共有にするのだ、少くとも個人有にはしない、そういうことが必要じゃないか。非常にとっぴな言い方でございますけれども、そういう考え考えてみますといろいろな問題があるわけでございます。たとえば百戸の住宅一棟ございます場合に、その外郭はだれの所有かというような問題も起りましょうし、いろいろな問題がそれから派生してくると思います。それで今回御審議の対象になっておりますこの法案と並行いたしまして、共同住宅利用について、ある程度の規定が必要じゃないか、そういうふうに考えます。たとえば今申し上げましたように、個人有に帰せられない部分維持管理をどうするかとか、それからまた、その維持管理に要する費用をどういうふうに負担すべきかとかこういうようなものがありませんと、多層住宅分譲方式というものはむずかしいのじゃないかと思うのであります。まあこれは私の私見でございますけれども、廊下、階段、そういうふうなものは、もちろん現在の法律でいえば、これはたとえば百戸なら百戸の共有という形で現在は行われておるようです。ところがこの共有は、なかなか厄介な問題がありまして、私の考えでは、これをぜひ法制化していただきまして、共有部分協同組合式法人格を持った団体所有にしていただく。そうしまして、それには法律でもって強制加入ということにする、任意の加入じゃない、脱退も任意ではできない、そういうふうな規定がない限り、なかなかむずかしい問題がこれから先起る。これからそういう生活様式が普遍化すればするほど、そういうものが数多く問題化するのじゃないかと思うのです。それでしかも、その組合有にいたしまして、たとえば登記面でも非常に簡単な手続でできる。共有の場合だったら、相続、譲渡その他の場合には、そのつど、非常な事務的な煩瑣な手続が要るわけですが、それが組合有でありますれば、一本でできるわけであります。一本じゃない。組合が存続する限り、所有権移転はないわけですから、あと、そのメンバーの出入りを規約でもって縛っておく、そういうふうな方式でやるのが一番よろしいのじゃないか。  それからなお共同部分維持管理に要する費用の分担、これもなかなか実際取り扱っておりますと、いろいろな問題が起ります。そういうような場合にでも、一方にそういう強制加入を法制化していただきますれば解決するというように考えております。  なお、ああいう数戸ないし数十戸集まって一体となっておる建築物でございますから、環境維持、たとえば外壁、さっき申し上げました外壁所有はだれにあるか、こういうような問題にも関連しますが、外壁といいますか、建物外郭を勝手に各自変えちゃいかぬ。それからまた自分の今、専用しておりまする部分も、当初の目的以外に使ってはいかぬ。もし、かりに住宅以外の目的に使われまして、これが騒音を発したり、またその他、共同生活に非常な不都合が起っても、おのおの所有権者でありますからこれは追い出すわけにもいかない。そのいうものがあるために、ビル全体が、環境が悪くなる。こういうようなことがこれから先起るのじゃないか。そうしますと、せっかく多額の国費を使い、そういう一生懸命になって住宅の数はふやしたが、片っ端からそういうように不良化することがありますれば、これは目的に反するのじゃないか、こういうような気がいたします。  それから次に、住宅政策を孤立化させないでいただきたい。何か非常に奇矯な言葉でおそれ入りますが、従来、住宅は金あればよろしい、金があればできるのだ、こういうことではいけないと思うのです。金があっても、金だけでは解決つかない。今の現状では資材、労力、資金、それは大丈夫のようでございますけれども、そのほか、住宅建設管理経営について隘路になる点はまだ多々あります。そういうものがそのままで放置されますと、むだな回り道をしなければいけないとか、むだな経費が要るとか、そういう結果になります。たとえて申しますと、まあ多層住宅の場合なんかを考えまして、どうしてもこれには電気ガス水道の設備がなければいかん。その場合に、電気でございますが、あそこの生活機能中心は、どうしても電気施設でございます。照明はもちろん、 エレベーター、それから水を揚げる動力、それから排水ポンプ用動力、こういうものが基幹になっております。その場合に、今の電力事情で、いつ停電その他の事故が起らないとも限らないような状況でございます。その場合に、各官公署並び駐留軍施設関係には、停電のない動力線が入っております。そういうものがあるのですから、一定の規格以上のビルには必ずそれを入れるのだ、これは通産省関係のことでございましょうが、そういうふうに側面から住宅建設の達成に、各省ともお力添えを願ってしなければいけないのじゃないか。たとえばそれを停電を防ぐためには、自家発電の装置があります。それは施設費は大したことじゃないんですが、管理費はこれはつまらぬ費用なんですね。何分か、せいぜい何時間くらいの停電のために、常時人を置かなきゃいかぬ。こういうのがみんな家賃にはね返ってくるわけです。ですから建築費がいかに低廉にできても、そういうものが改善されない限りは、家賃、いわゆる居住者負担は減らないだろうと思うのです。これはほんの一例でございますけれども、そういうものが見渡せば方々にたくさんあるのじゃないか。ですからこれは所管が建設省でございますが、建設省だけの御努力だけではいかぬ点がまだまだあると思うのです。そういう点をこれは法制化するわけにはいかぬでしょうか。そういうことを一つ円満にいくような方途をお考え願いたい、こういうふうに思います。  それから最後に、私は今東京住宅協会に奉職しておりますが、この法案を拝見いたしますと、社会党田中さんの御発案の日本分譲住宅公社法案、こういうものがありますが、これはただいまの住宅金融公庫を改組して、こういう組織にしたい、しましょう、こういう案のようでございます。ところが住宅金融公庫の現在の業務の中には、いわゆる自己所有住宅建設資金の貸付ばかりでなくて、耐火構造の賃貸住宅建設資金の貸付もやっております。そうしますと、もしこの法案が通りますと、現在主要各都市にあります住宅協会というものの資金の道がとだえるということになります。それに政府案にいたしましても、それからまた国設住宅法案にいたしましても、この不足の住宅を充足させるためには数年を要するということでございますから、その間の暫定的な存在でもよろしいのでございますが、これはぜひ過去四年の経験を持っておりまして、実績も相当上げておりますので、これをぜひ存続させる。むしろこれに主力を注いで、一翼をになわしていただきたい。現在では民法三十四条による単なる財団法人であります。これでは実は公団法による住宅家賃なんかに比べて低廉にはならないのです。というのは、地方税の免税の恩典もありません。その他いろいろハンディがあるわけです。ですからこの際これと並行いたしまして、従来存在いたしております住宅協会のような組織のものを、でき得れば特別法を制定していただいて、特別法による法人、そうして国の十分な監督が行き届くというような組織、またある程度の力を与えていただいて、十分な活動ができるような組織に強化していただきたい、こういうふうに考えております。  はなはだ雑駁な意見でございますが、以上で終ります。
  8. 石川榮一

    委員長石川榮一君) ありがとうございました。次に、生命保険協会財務委員長本間参考人から御発言願います。
  9. 本間喜一

    参考人本間喜一君) それでは私も個人としまして、この私の考えの一端を申し述べてみたいと思います。  私どもの会に、前に参議院の議員の方が役員をしておられたことがありまして、そのときに、生命保険というものは非常に長期の金のものである、これを住宅方面なんかに向けたらどうかということを非常に主張されたことがありました。ところで、それじゃ今までどういうことになっているかというと、生命保険の金は一向住宅なんかには回っていない。ところが米国を見ますというと、非常にまあ生命保険の住宅金融というものは発展しておる。米国では、ことにメトロポリタン会社ですか、大きな貧民窟を改造いたしまして、りっぱな、健康的な住宅アパートを作ることができたというふうな、輝かしい業績を上げている。それに対して、どうも日本の長期資金とか、生命保険の方は、一向いかぬというふうな議論がありまして、まあ戦後われわれの実力が非常に低下したということも原因ですが、だんだんにそれも盛り返してきているのだから、こういう方面にも金を向けたらどうかというようなことなんであります。ところが米国と多少事情が違うということをここで皆さんに申し述べてみたいのです。この米国の住宅関係の法律なんてものは、実に至れり尽せりのもので、いろいろな法律がありまして、保証をするとか、保険をつけるとかということが行われております。それがまた年々にだんだんますます保護が手厚く加わってきている。おまけにあれだけの国ですから、あれだけの経済力を持っていて、それだけの保護が加えられるのだから、これはますますふえるのが当然なんで、たとえば一人ないし四人の住宅抵当貸付残高、これは小さな住宅の抵当貸付残高ですが、一九二五年に百二十九億ドルであったものが、だんだんにふえていって、一九五〇年には四百六十九億ドル、一九五四年には、推定で七百五十億ドルというくらいのことになっておるのです。まあその一例としましては、たとえばつまり債務者が不履行だという場合には、直ちに、たとえば生命保険会社は抵当権を実行する、そういう手続をいたしますと、連邦住宅局というのが、抵当物件をすっかり買い取ってくれる。で全部肩がわりしてくれる。それから肩がわりして、そして現金をくれる。またはそこの債券をくれるというふうな格好になる。この保険の法案を拝見しますと、何か債権者はその債務の取り立てに大いに協力しなくちゃいかぬと書いてありますけれども、あまり協力しなくとも、すっかり向うでやってくれるというふうなことになっているから、非常にそういう点でも大したもので、頭金なんかもしまいには要らないことになっちゃっている。まあそれはしかし……。  それからまた重要なことは、生命保険会社の米国の総資産利回りというものがずっと出ていますが、これが三分というものを上ったり、下ったりしております。二分九厘何毛、それから三分何毛というようなことで、その三分前後のところで利回りがとってある。でありますから、住宅の貸付というものはどういうものかというと、これが大体四分から六分くらいのものがある。で保険の方は米国では保険料が〇・五%ですから、日本として見ると三%というように出ているが、米国では〇・五%ですから、だから幾ら高い六分のものでも、六分五厘で借りられるというような格好になっております。ですから生命保険会社全体として利回りが三分前後というのが、住宅に貸し付けるというと四分から六分に回っていくから、どんなことをしても、住宅抵当金融に力を入れざるを得ない。のみならずどうころんでも間違いないということになっておりますから、ですから勢いそういうことになる。今度の保険の法案なんかは、これはなきにまさるもので、とにかくそういうことになってきたということは非常にけっこうなことだと、その点からも私は思っております。日本の生命保険会社というものは、保険料というものは初めから四分で割り引きされてある。四%にはどんなにしても回さなくちゃならない。ところがお客さんに対して利益配当を行わなくちゃならないというので、積立金の四分四厘に相当するものを現に利益配当金として出している。だから最低のコストが八分四厘というコストに縛られてしまう。それはもう生命線で、それを下ることはできないというので、一生懸命経営の合理化もやっておりますけれども、まだまだむ駄が多いというようなことで、できるだけよけいなところへ金を回さないということでないと競争場裡から脱落するというような事情がある。ところがやはり住宅金融というものになってきますというと、今度はなかなか、日本の場合は逆に現在全体をひっくるめての利回りは一割一分見当じゃないかと思いますが、それを回っているのにとにかく今度の九分何厘かの公団融資四十億円というものを生保会社から出すということに約束したわけなんですが、この金利は非常に高いと言われているのですけれども、これは私どもから言うとまあ一般の水準、現在一流会社に対する貸付でも今三銭一厘が中心ですから、一割一分三厘くらいに回るものを多少金利の面では御奉公と……。しかしこれはだんだん長期的な金利も下ってくるという情勢であれば、これもけっこうな投資に数年中にはなるかもしれませんので、私はまあそのくらいのことはがまんしなくちゃいけないということを言っているのですけれども、そういう工合で、日本と米国と非常に力の入れ方が違うのですね。その点を御了承を得たい。それでそれでは少し犠牲を払ってやったらどうかということになると、その犠牲を払ってやるということには限度がありまして、たとえばここで、公団法の中で債券を発行するというようなことを書いてありますけれども、債券を発行するとなると、国鉄、電々債なんかとやはり歩調を合せた利率の証券を政府保証かなんかでお出しになるのだろうと思うのですが、ところがあれはもてあましものになっている。七分四厘の利回りという国鉄、電々債というものは、あれは国鉄も電々のほうもその消化にお苦しみですし、証券会社としてもえらく困っているのです。あれは実際七分四厘というのは実に無理な金利なんです。金利のことをお話申し上げるとおかしいけれども、金利というものはやはり日本の国力とか経済力というものが今の金利を作っているので、そこのところはどうしようもないのですかね。ですからたとえばまあ寒暖計で見ると、今日の温度は二十五度だ、少し暑いといったところでその寒暖計を引き下げるわけにいかない。長期の金利は三銭だ、三銭一厘だといっても、それはどうしようもないことになりまして、これがまた住宅金融なんかに際しましては遺憾なことである。ですから私どもも七分四厘利回りの国鉄、電々債を政府の方からぜひ消化しろと言ってこられると、日本として国鉄、電々というのは一番大きな企業体であるから、生保会社全体で何とか少し協力しなくちゃいけないのではないか。では各社で少しずつ一億円ぐらい消化しようではないかということでお義理ではできる。住宅だってそうです。お義理だとか、ちょっと体裁をつくろうという意味において、わずかの財産を投じて広告みたいなことはできるのだけれども、実際力を入れてやるとなると、やはり利率というふうな点が相当問題になるのじゃないかと思います。まあそんなことで、住宅債券というふうなものの消化については、これは私はどうもどうかというふうに思われるのです。  それからここでちょっと例の五十二億というのは、民間資金で公団法で何するという……そのうち四十億というものをわれわれの方でお引き受けする。ところがわれわれずっと業界のものに相談してみたのだけれども、実際の実力は二十億円くらいだろうということだったのです。しかしまあこれは何とか、これから法案審議して、お建てになるということであるから、時期も少しずれるかもしれぬし、何とかがまんをしても四十億だけ出そうじゃないかということで、これを承諾したという格好になったわけです。ところでその内容を見ると、あと十億がまた保険会社の投資ということになっております。多分損害保険あたりを対象にしていられるのかと思いますが、二億というのは地方銀行かなんかじゃないのですかね。私はそれを考えると、今だんだん生命保険というものの地位が上ってきまして、割方資産の伸びもいいのですけれども、なんといっても今生命保険全体の財産が幾らかということになると千三百億か千四百億くらいのものですから、全体の財産が、まあそれは富士銀行なり三菱銀行の一行の予金にもはるかに及ばない。そういう巨大な金融機関に集中してきているのですから、その富士銀行、三菱銀行というのは短期の金融だということで、そういうのは住宅金融には向かぬと言ってしまえばそれまでなんですけれども、しかしいわば巨大な象みたいなものからわずかばかり出させて、そうしてわれわれのようなネズミみたいな小さなところが非常に大きく出すというのもどうかと思う。米国あたりでも、これは性質が違うのでしょうけれども、商業銀行というものが、やはり住宅抵当貸付の債権者別分布というのを見ると、貯蓄貸付組合というのが二割九分二厘、個人その他が二割四分五厘、商業銀行が二割二厘、生命保険が一割七分九厘、相互貯蓄銀行が八分二厘、こういうようになっておりまして、商業銀行というものが米国なんかでは相当大きな活動をしている。それだけに巨大な金があるのだから、やはりそういうふうなものも少し動かさなくちゃ、日本住宅問題は解決しないのじゃないかということを私は考えているのでございます。  まあざっとそんなところでございます。
  10. 石川榮一

    委員長石川榮一君) 次に、清水建設株式会社研究部長久良知丑二郎君にお願いします。
  11. 久良知丑二郎

    参考人久良知丑二郎君) 清水建設研究部長の久良知でございます。私の個人としての御意見を申し上げたと思います。また参考人としてのお呼び出しがありまして、調査する期間もございませんので、あまり御参考になることも申し上げられないと思いますが、気のついたことだけを申し上げます。  技術的な面をというお話でございましたが、結局どうしたら安くていいものが作れるかというお話だと思います。この資金、資材の不足している現状でございますから、むだのないように、また大きな資金を使わないで作るということは非常に必要なことでありまして、これについてわれわれも日夜研究しておるのでございますが、この住宅建築におきましては、他の建築よりも節約になる部分が多いのではないかと思います。と申しますのは、費用がかかるということの一つの原因は、ぜいたくな建築は別でございますが、最低限度をねらった建築におきましては、設計上いろいろまちまちなものができるということが非常に費用がかかるわけでございます。もう一つは、作る技術者、職工がその建物に習熟する、熟練するということが一つの節約することになると思います。それからもう一つは、その作り方でございます。たとえば土木のダムなんかの工事を見ますと、ダムにかかるにはまず第一に道路を作ります。そうして材料の運搬をできるだけ低廉になるようにする。ところが建築計画を見ますと、建物そのものの設計は非常にこみますが、その実施施工計画というようなものは、設計者の頭に占める部分が非常に少いのであります。そのためにこの建築工事は大体アッセンダリング、マニュフアクチュアでありまして、材料をもっていってくっつけて組み立てるというのがおもなものであります。ですからその部分になります運搬という部分は、かなりな面を占めるわけであります。そのために砂利、砂を運ぶにしましても、仮設道路を作っております。そうして建物ができ上って、もうあとは歩くのは、乗用車かあるいは徒歩で歩く人だけというようなことになってから、りっぱな道を作るというような、逆のやり方になっておるのじゃないかというふうに考えまして、ですから外部の仕事、道路及び下水その他を先にやってということは、建物の個個の設計がまとまらなくても、まず配置を先に考えられると思いますが、そういうことがきまりましたら外部の仕事を先にやりまして、何トン自動車でも通れる道路を作ってから建築にかかる、そういうふうにすれば、建築そのものの費用はかなり節約ができるのじゃないかというふうに考えられます。  それから材料の規格統一でありますが、これはすでに田中さんにも聞かれましたが、そういうことを考えていられるというふうなことでございます。これはぜひ必要だと思います。たとえば普通に寸法を勝手にきめましたサッシュと規格統一をして作ったサッシュでは値段に雲泥の相違があるわけでございまして、こういう点は作られる方、計画される方で十分考えられる必要があると思います。窓をはめるにしましても、ガラスの寸法、製品はきまっておりますから、そういうガラスの切りむだのなるべく出ないような寸法にサッシュを作るというようなことが必要であると思われます。それからまた同じ値段の品物でありましても、建具、金物は比較的日本では軽視されておりますが、こういうものでも大量に規格統一して作れば、たとえば三年もつものは五年もつものと同じ値段でできるというふうになるのではないかと思います。これは沖繩の一つの例でありますが、外国品が注文になっておりまして、ところがそれと同様であれば日本の品物でもいいというようなことで、日本の品物を見本に出しまして、それで許可を得て作ったわけです。ところがその品物は数年ならずしてこわれた。それでそれを取りかえるためにまた日本に注文をしたところが、その建具、金物を作っておった会社は、もうその型を作ってなくて、ほかの型を作っていて、それでかわりのものをもっていってはめることができないというようなことで、その維持、管理をしておられた人は非常に困ったために、その次の工事からは日本品は絶対禁止だということになって、エールを使うというようなことになったそうですが、こういうことも国家で建てる建築では、長い目で見て、こわれたときの対策というようなものまでしておく必要があるのではないかというふうに考えられます。  それから技術者が熟練するということは非常に大切でありまして、いろいろなむだを省く上に大切でありますが、現在の施工では一年々々で注文になりまして、Aのむねは甲の請負業者、Bのむねは乙の請負業者というふうに注文をしておられます。ですからせっかくAのむねで習熟せられた技術でやれば、欠点のところや注意しなければならぬところはわかりますが、そういう技術がBのむねでは生かされてないというような結果になるわけであります。これが非常に高くつくということになるのではないかと思います。  それからまたもう一つの施工そのものの方法でありますが、仮設材についてみますと、仮ワクというものが鉄筋コンクリート建物には重要なファクターになっております。これに鉄板の仮ワクを使えば、有利であるというようなことまでわかっております。ところが鉄板の仮ワクはある一つの寸法がありまして、非常にたくさんの種類を作るということはこれはできない。ですからアメリカあたりでは、床の高さを一定にして、八尺というふうにきまっているそうです。そういうふうに床の高さがきまりますれば、その寸法に丁度合うように仮ワクを作って、そうしてそれを何十回でも使うということができるわけです。ところがそういう規格統一ができてないために、鉄板仮ワクの有利なものを使いましても、今度はそのために木材の補助を使う。だんだん積み重ねていって足らないところは木材を使う。これに要する職人の費用は相当かかります。また資材もかかります。現在では鉄板仮ワクをアパートなんかに使っても、二割から三割までは木材の補助が要る。森林資源の方でも木材を節約しようということになっておりますので、いろいろ研究がなされておりますが、そこでもそういう規格統一、そういうような補助板を使わないでやるということが必要だということは認められて参ったのでありますが、そういう点、それからまた同じ建物をたくさんやれば、その他にもまだまだ仮設の方で十分節約になる点がありますが、ただ一軒だけやるのではどうにもならない。同じものを繰り返して使うというところで安くなるというふうになるのでございまして、五カ年計画あるいは三カ年計画でどんどん作られるということになれば、そういう熟練と材料の点を考えられた施工計画建築計画を立てていただきたいというふうに考えるのであります。  また、耐久的に考えてみますと、建物は、大体このころ二十年くらいたった建物は非常にいたみがはなはだしくなっております。外部のタイルをやりかえるとか、あるいはサッシュに大きな穴があいて、取りかえるという必要に迫られて、東京都内でも方々にそういう改修工事がこのごろやられております。アメリカでもやはりそういうふうなことがあったらしゅうございまして、大体鉄筋コンクリート造が普及し始めてから、ちょうど今の時期が欠陥の出始める時期だというふうに考えられます。これからみますと、仕上げにおきましても、窓のサッシュその他におきましても、鉄筋コンクリートは永久的だと考えておられるにかかわらず、その重要部分が二十年くらいの寿命しかないというようなことになりますと、非常にそこに長期の計画に誤算ができると思います。そのために建てるときは少しくらい金がかかっても、これが何年くらい持つか、二十年持つのが四十年になるか、八十年になるかというようなことを考え計画を建てられていただきたいと思います。たとえば外部にモルタルを塗って仕上げるということになった建物、そのモルタルのかわりにセメントガンを吹きつけるということになりますと、セメントガンは御承知のように相当費用がかかりますが、その耐久力……。中に入っておる鉄筋の防さびの点から考えまして、非常に有利な点があります。こうい点非常に長期的に計画を建てていただきたいというふうに考えるわけであります。  はなはだお粗末でございました。
  12. 石川榮一

    委員長石川榮一君) 楠木さんにお願いいたしますが、ただいま東京大学の教授の杉村先生がおいでになって、非常にお急ぎなっていらっしやるので、武藤先生もお帰りを急がれている事情がありますのですから、はなはだ申しかねますが、杉村先生の発言を先にお願いをしていただきたいと思いますが、御了解願えますか。
  13. 楠木なつ子

    参考人楠木なつ子君) けっこうでございます。
  14. 石川榮一

    委員長石川榮一君) 次に、東京大学教授の杉村章三郎君にお願いいたします。
  15. 杉村章三郎

    参考人杉村章三郎君) 勤務者の住宅建設を目標とする現在五つの法律案につきまして私の意見を徴されておるわけでありますが、問題が非常に多岐にわたっておりますので、私は焦点をしぼって二つの法案における公団、あるいは公社、あるいはまたは公共企業体、そういうものの事業形態につきまして、今まで私ども研究しておりました点に照らして意見を申し述べたいと思います。  言うまでもなく、公団とかあるいは公社、あるいは公共企業体というような公共企業の形式はわが国におきましては終戦後まず初めて正式には採用されたと言ってよいのであります。その成立過程にもいろいろありまして、たとえば戦後多く設立をみられました公団というようなものは、これは一つの経済統制の方式として生まれたものでありますし、また鉄道、専売公社というようなものは公務員のストライキの禁止というようなものを機会としまして、司令部の書簡によって形成せられたものであります。現在におきましては、法律上正式の公共企業体といたしましては、国有鉄道、専売公社及び電電公社の三つでありますが、同じような性格を持っております企業体としましては、国民金融公庫といったような、あるいは住宅金融公庫といったような各種の公庫、それから放送協会、あるいは日本育英会、あるいは高速度交通営団といったようなものをあげることができるかと思います。日本において公共企業体にそういういろいろな類型がありますように、比較法的に見ますと外国の事例に徴しましても、その成立過程や目的などは千差万別と言ってよいと思います。第二次世界大戦後いわゆる社会化の政策によって実現せられたイギリス、フランスにおける公共企業のいわゆる国有化というものが、最も広範な領域において公共企業体の方式を採用したものと言えるのでありますが、アメリカその他の国家におきましても公共企業体方式は相当広く採用せられておりまして、しかしながらその成果については、ある程度の批判の対象となっております。  わが国の場合におきましては、まあ、占領下において一応創設されたというような点においても、一つの特殊性を持っているのでありますが、今、まあそういうような正式の公共企業体たる公社のほかに、公団公庫というような、そういう類似の、これに準ずるような企業形式を含めて公共企業体を観察の対象としますと、これを事業別に分類してみますと、三つの類型に分けられるかと思います。  その一つは、国鉄、電々というような、いわゆる私企業をもってしても成立できるような、私企業として成り立ち得るような公共事業を目的としたものがこれであります。まあ、これを企業的公法人ということもできるかと思います。この場合は公共企業体でこれを経営する以上は、やはりそういう企業面ばかりでなくして、公共性ということを重視しなければならんという点におきまして、まあ私企業の場合とやり方が違うかと思います。ことにわが国の場合におきましては、そういう公共企業体は全額国庫出資でありますから、この点からも企業方式としては特色があると思われます。  第二は、公庫、金庫あるいは開発銀行といったような、いろいろな金融操作を事業とする、まあいわば金融的な公法人というべき部類でありまして、これはまあ、融資関係によるいわば採算というものを中心として運営されているというところに特色があるわけであります。  第三は、行政的公法人とでも言うべき類型でありまして、これは企業として成り立ち得るとか、あるいは金融による採算というものは一応度外視しまして、住宅建設というような一つの特定の行政目的を達するために、それをいわば経済的になるべく能率的に処理するために設けられるところの企業方式でありまして、それがしかも国家と別の独立した公法人で事業を遂行しよう、こういう場合でありまして、まあ、今国会において問題になっておりますような住宅公団でありますとか、あるいは愛知用水の公団……、公社でありますか、そういうようなものはこういう類型に属するかと思います。  この第三の類型に属するいわば事業の処理ということが、まあ問題になるわけでありまして、これはすなわち公共企業体というような、あるいは公団、公社というふうな独立した法人で処理するのが適当であるか、あるいは通常の行政官庁で特別会計を設けてそこで特別に経理するということによって目的が達せられることではないかというふうな問題があるのであります。もちろんこうして政府事業を公社とする、あるいは公団とすることによって、官庁的な束縛を受けない、また役職員というものは民間人をもって採用するとか、あるいは民間人からなる経営委員というものを設けて、そこの経営委員の企業的感覚というものによって事業を指導してゆこう、そういうふうな、そうしてまあある程度自由な、官庁のいろんな拘束にとらわれないところの自由な事業活動をする、あるいは事業に必要な資金というものを独自の信用によって獲得しようそういうふうな利益があると思います。しかしながら他面事業の遂行に莫大な資金が必要であり、これに対する国庫資金や地方団体の出資金というものの裏づけが果して十分であるかどうか、また将来においてそういう資金の獲得というものができて、円満に事業を遂行できるかどうかというそういう危険性もあるのでありますし、また事業の遂行に際しては、役員初め相当数の職員が必要であろうと思いますが、そういうような職員がかりに公務員であるならば、定員法の適用を受けて、そこで非常にしぼられることになるわけでありますが、そういうような制約もないというような点で、まあいわば国家公務員の一つの安息所になるというようなおそれもあるわけであります。従ってこういうようないわゆる行政的な公法人というものがうまくいくかどうかということは、しばらく時期を待たなければその結果が現われてこないのであります。アメリカのTVAのように、ああいうようないわば行政事業というものについて公共企業体としてりっぱにその使命を果しておるものもあるのでありますけれども、そういうようなことも未定の間は、あるいはそういうことに自信が持てない間は、まあ国鉄でありますとか、あるいは郵便事業の場合のように特別会計による政府の直営事業として経営する方が無難ではないかというようなことも考えられるのであります。  この点でこの議員提出日本分譲住宅公社法案といいますか、これは現在あるところの住宅金融公庫を引き継いで一つの公社を作ろうという案のようでありまして、この点は別に公社を作るということではないのでありまして、まあ機構の拡大を防止するということから言えば、こういう方式の方が適当ではないかというように考えられるのであります。これは全般的のことでありますが、主として住宅公団の方の内容についてちょっと気のついた点を二、三申し上げてみたいと思います。  それは第一点は、この公団は国と地方公共団体共同出資ということになって、今までの公団、あるいは公共企業体と違った方式をとっております。これも一つの特色であろうと思います。国の出資額が六十億円で、地方公共団体の出資額が本年度十億円程度であるといわれておりますが、この出資者たる地方公共団体をどういうようにして選択するのか、また市町村はどういう場合に、まあ市町村といいましても、大きな都市に限られると思いますけれども、どういうふうにして出資者となるかということについて私詳細なことを知っておりませんので、何とも申しかねるわけでありますが、そこに一つ問題があると思います。  もう一つ地方公共団体をこういう国の法人に加えしめるということが、果して適当であるかどうかという問題もあろうと思います。と言いますのは、その地方公共団体が出資をして、どれだけの全体言い分がそこに採用されるか、利益がどれだけ代表されるかということが問題であろうと思います。むろんこの場合管理委員会に参加しておりますが、その以外の点におきまして規定がありませんので、まあこの点一つの問題点ではなかろうかと思うのであります。  それから地方団体としては管理委員会のうち、五人のうち二人を出資者たる地方公共団体の長が共同推薦する、そのうちから選任するというようなことになっていますが、もう一つ住宅の設計計画、あるいは宅地の造成計画というようなものについて地方公共団体の長の意見を聴取するというような規定もあるようでありますが、これだけのことで果して地方団体がこの住宅計画に自己の意思を持って十分に参加できるかどうかという問題があると思います。  それから第二の問題は、組織でありますが、まあ公共企業体なり、公団の組織というものは、これは官庁組織と違いまして民間的な要素を組織のうちに十分に入れるというところに特色があるのでありまして、それでこの公団法におきましても管理委員会というものを設けておりますが、この管理委員会の権限はあまり大きくない。まあ三項目ばかり掲げております予算であるかと、企業計画であるとかいうようなものについてその議を経なければならないというような規定になっております。ところがその選任方法などにつきまして、従来の公共企業体よりさらに官治的な色彩が強いのでありまして、たとえば管理委員会委員の任命選任について建設大臣がもっぱらこれを任命する。従来のやり方ですと国会の同意を得て任命することになっておるのでありますが、こういう点もかなり官治的な色彩が強いように受けられます。  それでその次は、その役員につきまして、その役員の数が理事五人以上、監事三人以上というような規定になっておるようですが、どうもこの「以上」というのは、どれだけこの役員が設けられるかわからないので、あまり適当な表現ではないように思われます。むしろ数をもう少し多くしましても、何人以内というふうにしたほうがいいのではないかというように考えられますまた、理事五人で監事三人以上というような、この理事と監事との間のつり合いも適当であるかどうかは問題であろうと思います。  それからこの公団法につきまして全体的に考えられるのは、建設大臣の権限が非常に大きいということであります。前に申しました管理委員の任命にしましても、あるいは総裁、監事の任命にしましても、すべて建設大臣が独断で処理できるわけでありますし、また副総裁、理事というものも大臣の認可を要するというようなことになり、また財務、会計などにつきまして、建設大臣の認可権というものの範囲が非常に広くなっております。この点は一つの特色でありまして、これは従来の公共企業体が監督責任が非常に明確になっておらない。鉄道の場合でいえば、運輸大臣とか、大蔵大臣、あるいは行政管理庁長官とかいうようなものの監督を受けるというようなことで、非常に監督なり監査というものが多岐にわたっておるというところから、一つに統一したというような意味があると思いますけれども、しかし建設大臣の権限が非常に大き過ぎる。むしろ官治的色彩がかなり強いというように感じられるのであります。従来は国会につきましても国会もこれに対する監督権を公共企業体に対しては持っておる。これはポピュラー・コントロールといいますか、そういうふうな国民を代理しての国会が監督するという立場を持っておるわけでありますが、この点がほとんど認められておらないということは、この公団法の一つの欠点ではないかというように考えられるのであります。こういうような見地から申しますと、その議員提出の公社というものが現在の公社と大体歩調を合わせておるようでありまして、そういう点で民主的な色彩が強いというように感ぜられるのであります。  以上ごく簡単に申し上げたつもりでありますけれども、時間がきてしまいました。私のちょっと気づきました点、ことにその問題を公団というところにしぼってお話したということを、ここでもう一ぺん申して私の陳述を終りたいと思います。
  16. 石川榮一

    委員長石川榮一君) 時間の都合がありますので、大へん御迷惑と思いますが、中食を少しごがまん願いまして、杉村先生と武藤先生がお急ぎになっていらっしゃいますので、この際武藤先生と杉村先生に質疑があります方は御質疑を願いたいと思います。
  17. 武藤清

    参考人武藤清君) なお皆さんの御意見も伺いたいと思いますので、最後まで残りましてけっこうであります。
  18. 石川榮一

    委員長石川榮一君) 速記をやめて下さい。   〔速記中止〕
  19. 石川榮一

    委員長石川榮一君) 速記を始めて。  それでは杉村先生に御質疑のある方は逐次御発言を願います。
  20. 田中一

    田中一君 杉村先生に伺いますが、先ほどおっしゃっていました公団に対します出資というのは、地方公共団体が出す分ですね、これは政府としての答弁は起債で充当してやる、こう言うのです、御承知のように現在の国会では地方公共団体の赤字克服のために特別法を出そうという状況でありまして、地方財政というのは非常に追い込まれている現状なんです。そこで非常に不思議なものでして、どうしてこういうものが出るかというわれわれの質問に対しましては、起債でもってやっていくが、同時にまた赤字の県ではないということを言うのです。赤字の県ではないというのは、今の地方交付金をやっていない、たとえば東京とか大阪とか、そういう地方財政の豊かなところから出資させる。それでもしなおかつ赤字ならば、起債を認めるという。東京都では五年間の公営住宅の中で四年分は住宅補助金を返している、こういう現状です。そうして先般五月でしたか、予算委員会で質問しますと、十二億程度のものを東京都に出してやろう、こうして初めて住宅起債が東京都に承認されたのです。そのような形でどっちみち地方公共団体は赤字です。それを出資させるということは非常に危険だと思う。それをかつ起債でもって貸してやればいいじゃないかというような答弁であったのですが、こういう点は学問的に見てごまかしじゃないかと思うのですが、先生の御意見はどうですか。
  21. 杉村章三郎

    参考人杉村章三郎君) 私はその方の専門家でないものですから、そういう点よくわからないのですけれども、そういうようなことであるとすれば、法律の面でいかにも国家と並んで出資者となっているような形をとっているのは、ちょっとやはりおかしいのじゃないかという気もするわけです。ただ、公営住宅というものは結局地方団体の事業でもあるのだから、従って地方団体もそれ相応の分に応じたものを出したらいいじゃないか、そういうような趣旨だろうとおそらく思うのですが、お説のように掘り下げていけば、そういうことになるかと思います。
  22. 田中一

    田中一君 今の問題と関連しますけれども、この起債はこれには償還期限は地方公共団体にはないわけです。民間資金は五年間という償還期限を持っていますけれどもこれにはないわけです。しかしどっちみち資金運用部資金の融資というのは、これは償還期限があるわけです。それを一体どうするのかもないのですが、それはそういう面から見てどっちみち資金運用部資金で貸してやるならば、資金運用部資金を多くして地方出資というものをなくしてもいいわけだと思うのです。あくまで、そういう点は現在の公団のような形をとらなければならない根拠というようなものは何か発見されるのでしょうか。
  23. 杉村章三郎

    参考人杉村章三郎君) 私はそういう出資の面というか、むしろ事業がやりやすいということが公団にする、独立して事業を行うということが、普通の国家というものの役人でもって たとえば住宅局なら住宅局というところでもって事業をするよりは、やはり独立した事業体で、その資金を事業体として借り入れるというような方法もあるでしょうから、そういう意味で従来公団方式なり、公共企業体方式というものがとられておったと思うのです。だからそれと類する考え方でこれはいっておると思いますけれども、私の疑念とするところは、まあ現在事業ができるかということなのです。普通の企業法人、鉄道とか専売とかというふうなものは当然企業なのですね。企業ですから、公共企業体にするということには問題ない。まあいろいろ公共性で制約されるから、問題がそこにあるので、ただしかし、こういう行政的な事業を法人というようなもの、これはかなり危険性がある。よほど事業の関係を、ことに資金計画を十分先まで見通してやらぬと、従来の公団のような、従来、戦後できましたああいう、公団のような二の舞を踏むおそれがあるということは、まあばく然ながら考えております。
  24. 田中一

    田中一君 それから今御指摘がありました、役員、監事の無制限という条項なんですがね。これは政府はどういう考えをもってこれを書いたか。外国の例などでは、こうした団体が無制限な役員、監事を持つことができるということは考えられるでしょうか。またそういう事例がございますか。
  25. 杉村章三郎

    参考人杉村章三郎君) 私、外国の例はあまりそういうこまかい点までちょっとわからないのでございますけれども、理屈としまして、前に何かそういうわが国においては例があるようですが、どうもちょっと……。今の件はおもしろくないと思います。どういうふうな意味を持つか。私、それを聞いておりませんですけれども、理屈としてはどうもおかしいのではないかという気がいたします。
  26. 近藤信一

    近藤信一君 先ほど杉村教授が指摘されまして、私も質問やったのですが、いわゆる公団が独立したような形に見えるけれども、実際においては大臣に大きな権限がある。そういう点で将来公団が独立して総裁なんか置かれても、やはり大臣が大きな権利を持っておるから、これがもし将来政権が変わるたびに、建設大臣かそれそれ一番大きな権限を持つのだから、そうすると政争の具に供せられるような危険が将来生まれると私は思うのですが、そういう点、先生はどうお考えになっておられますか。もう少し突っ込んで、ただ権限が大き過ぎるということでなしに、将来の見通し、御意見があれば御意見を聞かしていただきたいと思います。
  27. 杉村章三郎

    参考人杉村章三郎君) これは私の将来の見通しということはちょっとむずかしいと思うのですけれども、組織的な構造から見まして、経営委員会を執行というものですね、それを分けるということは、これは経営委員会に非常に権限を持たせて、そこでいわゆる民間的な意識による、政党なども離れ、そういう政治勢力というものを離れて、純粋な民間人としての指導をして、その指導に従って総裁以下の役員が仕事をする。事業を経営するというのがまあ経営委員会というもののほんとうの意味におけるあり方だろうと思うのであります。しかし、これはわが国の従来公共企業体などの現実から見ますと、必ずしもどうもそういうふうにいっておらない。経営委員会というものがやはり何となく浮いてしまうような形というのは、これは経営委員会というのはしょっちゅう仕事にタッチしておるのではなくて、その一定の議決事項の範囲においてそれを議決するだけであって、そうして一週間に一ぺんとか、あるいは二へんとかいう一定の会議期日にだけ参集して意見を述べるという程度のものでありますから、それでどうも浮きがちになりまして、従ってその経営委員のうちの一人は特別委員として総裁か入る、あるいは正副総裁二人加わっておるところもありますけれども、そういうことでまあ経営委員会と執行部、最高の執行部との間の連絡をとっておるというのが実情であるわけであります。これはある程度やむを得ないと思うのでありますが、それにはそれとしてやはりある程度の独立性というものを持っておらないと、やはり御指摘の官治統制がそこに非常に行われる危険性が多いというふうに感ぜられるわけであります。まあそういう感じがするだけのことで、見通しというようなはっきりしたことは……。
  28. 田中一

    田中一君 公社と公団の性格というものは、政府の見解ですと、民間資金を導入するために公社であってはならない。公団にしなければならないというように私伺っておるのですが、今お話しのように公団の今この法案に現われておる公団は、官僚臭がある。それから公社の場合ならば、非常に民主的なにおいがあるというような御見解のように伺ったのですが、民間資金を導入するために公団にしなければならないというような根拠がありますか。
  29. 杉村章三郎

    参考人杉村章三郎君) いや、必ずしもそうも言えないじゃないかと思いますけれども、まあこの公団、これはまあ民間資金を入れるためということは、今、私初めて伺ったわけでありますけれども、とにかく公社という、政府の見解では、全額出資でないと、いわゆる公共企業体ではない。こういうような見解のようにちょっと聞いておるのでございますけれども、実体としては必ずしも民間、全額出資だから公共企業体で、そうでないものは公共企業体でないとは言えないと思うのであります。公共企業体にしても、まあ鉄道債とかいうようなもので民間資金を得ておるわけでありますから、その点、別に区別の標準にはならぬのではないかというふうに考えております。
  30. 石川榮一

    委員長石川榮一君) この程度で休憩をいたします。午後は一時から再開いたします。    午後零時二十八分休憩      —————・—————    午後一時三十四分開会
  31. 石川榮一

    委員長石川榮一君) ただいまから委員会を再開いたします。  長野県知事林虎雄君に参考人として御出席いただいております。午前中出席されておりました参考人のうち、杉村参考人本間参考人は都合上お帰りになりました。  楠木なつ子参考人から御意見の御発表を願いたいと思います。
  32. 楠木なつ子

    参考人楠木なつ子君) 楠木でございます。私専門的なことはなに一つわかりませんので、これからお話申し上げますことに対しまして、大へんお聞き苦しい点が数々ございますことを最初におわび申し上げておく次第でございます。  まず、主婦の立場から見ましたものでございますね、そんなものの二、三を申し上げてみたいと思います。  まず最初に入居の条件について、特に家賃の問題でございます。それについて二、三申し上げてみたいと思います。主婦の立場から見まして一番私たちが望んでやまないことは、第一に家賃の安いことでございます。お家賃の安い住宅がたくさんできることが一番望ましいのでございまして、また希望している次第でございます。  次に、独立した生活ができるような住宅でございます。その次に、危険性の少い住宅でございます。次に、将来自分のうちになるような仕組みの住宅でございます。  それらを考えますと、ただいまこの手元にいただきました案をいろいろ読んでみますと、政府案による住宅の入居の条件ですね。条件は何ら明らかにされていないのでございます。それでは私たち大へん不安なんでございます。やがてりっぱなアパートが建ちまして、さあいざ入りますときに非常にお家賃が高かったり、サラリーマンでございますから、お家賃の支払える限度というものはきまっておりますので、四千円も五千円もするようなお家賃アパートでございますと、幾らりっぱなアパートでございましても、私たちサラリーマンの主婦には手が届かないわけでございます。その点から申しますと、社会党案なるものを見ましたときに、家賃は所得の五%ということがうたってございますのでございます、はっきり……。この点私大へんよろしいんじゃないかと思います。  それから次に、私も都営住宅に住まわせていただいております関係上いろいろな点で経験し、また悩んでおる一人でございますけれども、管理についての事務でございます。管理についての事務というのがはっきりしないんでございます。居住者と管理者との職務のなすり合いということがたびたび起りまして、ただいまも居住者の一人としてそういう問題にぶつかっておるんでございますけれども、事務を業務に切りかえていただきたいのでございます、この際はっきり……。結局私たち居住者として何か管理人の代行のようなことをたびたびさせられるのでございます。まず水道代とか、電気代とか、それは各戸メータになっておりませんので、管理人のところへ一括で参りますので、管理人がそれを計算してめいめいの家庭に配っていただくわけなんでございます。そういたしますと、その居住者がめいめいに当番制なるものを作って集金からいろいろな管理人の遂行するような仕事を私たちが今している現状なんでございます。そういう点で管理人はお家賃だけを取扱うなんていうのでなく、もっとここをはっきりしていただかないと、何かすっきりしないと思うんでございます。  それから次に、これから建てられますアパートは、現在私たちが住まわしていただいておりますアパートは、終戦後初めてできたアパートです。その時代には本当に近代的な設備も完備され、皆さんからも本当にうらやましがられたようなりっぱなアパートでございましたのですけれども、今になってみますと、あとからあとから研究されて、もっと住いよいアパートがたくさんできているのでございます。そういう点でお家賃にも制限がございましょうが、もっともっとよく研究して、私たちの希望に沿うような住宅をどんどん建てていただきたいと存じます。  とりとめのないことで大へん失礼でございますけれども、これでもちまして御報告を終ります。
  33. 石川榮一

    委員長石川榮一君) ありがとうございました。  次に、長野県知事の林虎雄君から御発言を願います
  34. 林虎雄

    参考人(林虎雄君) 本国会におきまして住宅問題が大きく取り上げられまして活発に討議されておりますことに対しまして、深く敬意を表し、その動向を私ども注目しておったのでありますが、今回委員会におかれましても、特にこの問題に関して意見を申し上げる機会を与えていただきましたことを感謝申し上げる次第であります。  いわゆる生活の三要素であります衣食住の問題のうちで、衣食の点はようやく戦前の水準に達したように思われますが、住いの問題は依然として御承知のように解決されないで、まことに憂慮にたえない次第であります。私も知事といたしまして過去八年間住宅問題を、県政の最も大きな施策一つとして取り上げて参ったのでありまして、この点が国においても認めていただきましたためか、一昨年は国から表彰されたような次第でございますが、それでもなおかつ、長野県の住宅事情はほとんど戦災を受けていないにもかかわらず、現在においていまだ六万一千戸の不足、老朽住宅が一万八千戸計七万九千戸というものが不足であるという数字を示しておるような次第でありまして、今後も私も未解決の住宅問題に対して、全力をあげたいと思っておりますが、それにつけましても、国の住宅政策を強力に推進していただきたいということを切望申し上げる次第であります。  さて一口に住宅問題と申しましても、この問題は住宅の困窮の起因、需要の事情等にも相当の差異がありますので、これを合理的に解決するためには、多額の費用と長い年月を要することは申し上げるまでもございませんが、今やこの問題は生活問題でありますとともに大きな社会問題であります。従いまして住宅問題は勤労者、小企業者、零細農民等に対する問題としてこれに重点を置かなければならないというふうに考えておるわけであります。  ところで住宅問題解決の方法といたしましては、自己住宅建設させるか、あるいは安定した借家を与えるかに大別できると思います。これに対しまして国におきましても、それぞれ施策が講ぜられておるのでありまして、自己住宅解決策としては、住宅金融公庫によって建設資金の一部を融通さして建設をさせるという方法であります。これはまことにけっこうな方策でありまして、大いにこの制度に期待しておりますが、この制度を利用できないさらに下層の階層に対する積極的な施策が望ましいというふうに思うわけであります。  また第二の安定した借家を与えるという方法につきましては、国の施策としては公営住宅建設というものがありまして、相当の成果をあげておりますことは御承知の通りでございますが、これも借り受ける資格がないためにせっかくの制度が利用できないで、依然として住宅の困窮に苦しみ続けておりますところの多数の階層に対する対策もまた必要であると思うのであります。本県のことを例に引いて恐縮でございますが、長野県におきましては国の施策を百パーセントに受け入れておりますことはもちろんでございますが、ただいま申し上げました階層の住宅問題の解決策といたしまして、地方財政は非常に御承知のような困難の折柄ではありますが、県独自の施策として過去八年間、次に述べるような施策を行なってきておるのであります。すなわち一といたしまして、自己住宅建設したいけれども、住宅金融公庫から資金の融通を受けられない者が相当あるわけであります。これに対しまして県があっせんと保証をして市中銀行から資金の融通をいたしておるのであります。その要旨は需要者に住宅組合を組織させまして、この組合に対して必要な資金を日歩二銭七厘、償還期限五カ年で買し付けるものでありまして、この実績は別紙、裏に書いてありますが、戸数が三千四百四戸、金額は三億二千万円というような数字を示しております。  その次に二といたしまして、公営住宅の借り受け資格のない者の住宅供給については、市町村に補助金を交付いたしまして、厚生住宅、母子住宅というものを建設させておりまして、これも裏面にありますように三千戸以上に達しておるのであります。厚生住宅は対象を低額所得者、母子住宅は対象を未亡人とその家族といたしまして、八坪ないし十坪程度の住宅を市町村営として建設をさせておるのであります。  さらに、今後実施いたしたいと思いまして、実は今計画中でございますが、この次の八月県会に提案いたしたいと思っておりますものに、住宅改造計画がございます。住宅は新築はもちろんでありますが、既存住宅の老朽を防止することも大切でありまして、これも消極的ではありますが、住宅建設であると思います。僅々三万円か五万円の金融がつけば、老朽を防げる住宅か私どもの県でも約五万戸あると推定されております。この老朽防止の方法といたしまして、希望者をもって住宅改造組合を結成させまして、無尽式に一定の掛金をさせまして、そうして一部は金融機関から連帯融資等によって順番に住宅改造させるという方法でありまして、自主的に行わせ、県としてはこれを指導するのであります。できれば一部は、金融機関から借りる場合は相当利子が高いわけでありますから、県が利子補給をしたいというふうに考えておりますが、今のような財政難ではそれも困難でございますから、こういう点についても国において積極的にお考えを願いたいというふうに思うのであります。  今申し上げましたように長野県としては、いわゆる計画住宅と自己住宅の比率の関係を調べてみますと、全国平均をみますと、自己資金住宅の方が六割で計画住宅、いわゆる公営的な計画住宅は四割でございますが、長野県は逆に計画住宅が六割で、自己資金の住宅が四割というような比率になっております。今後の住宅政策というものが国の経済力の現状からいいまして絶対量を増して参りますためには、どうしても公営住宅に特に力を入れなければ、解決が至難だろうというような考え方から、微力をいたして参ったのであります。  以上国の施策から漏れたと思われますような階層に対して、県のとっております政策の一端を申し上げたのでありますが、御承知のように地方の団体は独立体とはいっておりましても、財政面ではそのほとんど大部分を国に依存しておるような現状であります。しかも年ごとに、ここで申し上げることは恐縮でございますが、国の地方財政計画が非常に無理でありますために、全国の地方団体はほとんど赤字にあえいでおる。ことに農村県においてはこの傾向が顕著でございます。私は自治体の長といたしまして、赤字問題に対しても十分に責任は感じておりますが、一面勤労者であるとか、あるいは小企業者等の住宅問題が社会問題である点にも思いをいたしまして、あえて今まで申し上げたような政策を遂行して参ったような次第であります。しかし県の財政もほとんど行きついたような現状でありまして、限りがありますので、この点を御了察をいただきまして、今申し上げますような県の施策について、もし適当と思われますものは大きく国の施策として取り上げていただきますならば、住宅問題の解決は一そう早いのではなかろうかというふうに思うわけであります。  さてそこで次に、現行の公営住宅法に対しまして事業主体としての意図を申し述べて国に改善方を要望いたしたいと思うわけであります。  第一に、基準建設費のうちで、敷地の取得費及び付帯工事費の基準が、実情に比べまして低いために、毎年多額の県費を継ぎ足しておるような現状であります。特に敷地は住宅確保の重要な部面でありますから、実情に即した算定をお願いいたしたいと思います。これも裏面に参考に表を示しておりますが、毎年この差額を県費で補てんしておるというようなことで、これもまあ赤字の一因になっておる次第であります。  第二に、起債の償還期間が短いために、年間の償還金が家賃収入をはるかに上回っておるわけであります。つまり起債の償還を短くして、家賃による償還は年限がずっと長いわけでありますから、結局においては相殺ができるような計算になっておりますが、現在においてはそれが地方財政圧迫の原因となっておりますので、現行の公営住宅法を続ける場合には、何らかの措置を講じていただいて、地方財政の面を考慮をお願いいたしたいと思うわけであります。  第三といたしまして昭和三十年度の公営住宅についてでございますが、新婚者アパートの八坪、母子アパートの六坪はただいまも御意見があったようでありますが、特に長野県のような寒冷地におきましては、狭過ぎていわゆる安定した住生活をなし得るとは考えられないのでありまして、この点を特に御考慮をお願いいたしたいと思うのであります。また、現行の住宅金融公庫融資につきましては、自己負担金の増大と、宅地取得の困難から利用者が逐次減少しつつありますので、この二点の解決を御考慮をお願いいたしたい、かように思うわけであります。  次に、今回提案になっております住宅関係諸法案について意見を申し上げたいと思います。  第一に、住宅融資保険法案についてでございますが、住宅金融公庫融資を受けられない者に対する補いの意味において適切な方途であると存じます。しかしながらこの法案によりますと、利率の限度を定めてありませんので、地方の金融機関においては一般貸出利率並びてそれ以上を要求するおそれもあると思われますので、公庫の五分五厘に比較いたしまして場合によっては倍以上となってしまう。貸付期間が六カ月以上では、短期に過ぎる、しかも保険料が保険金の年百分の三負担では、公庫資金利用者に対しまして格段の差別がつき過ぎるというふうに思います。ただし既存住宅の修理、模様がえ等にも融資できることは一つの進歩であるというふうに考えるわけであります。  第二に、日本住宅公団法案について意見を申し上げたいと思います。これは六大都市に重点を置くようでありますから、長野県には直接関係がないといいますか、しかし趣旨としてはけっこうだと存じます。ただ、長野県のような場合には、高額所得者の少い地方においては、現在の公営住宅家賃がせいぜい限度でありまして、その二倍近い家賃の賃貸住宅建築は実情に沿わないものがあると存じます。従いましてこの中小都市における公営住宅建設については特に御考慮をお願いいたしたいと存ずるわけであります。また、公団が地方の公共団体に対しまして出資を求めておりますが、財政逼迫の折からなかなかこれも容易ではないというふうに考えられるのであります。  第三に、国設住宅法案についてでありますが、地方公共団体の財政負担にならないこと及び低額所得者も利用できるという点から全面的に賛成でございます。なお土地取得費を都道府県が負担することになっておりますが、この場合においては起債は別ワクとして認めていただきませんと、他の公共事業等が圧迫されるというおそれがありますので、この点も御考慮をお願いいたしたいと思います。この法案がもし実現ができないというような場合には、次善的な対策といいますか、現在の公営住宅法を改正されまして、第三種の公営住宅というようなものを新設していただいて、そしてこの法案要旨の住宅建設期待しておるというような次第でございます。  第四に、日本分譲住宅公社法案についてでございますが、立法趣旨からいたしまして、立案趣旨からいたしまして全面的に賛成でございますが、自己住宅を希望しております地方の農民、あるいは中小企業者等の敷地が限定されているものの住宅供給が欠けておるというように思われるのでございます。  以上をもちまして各法案に対する意見を終りましたが、最後に特につけ加えたい点は、いずれの法案を実施するに当りましても、御承知の通り住宅建設の隘路は、近年特にこの宅地価格が高騰しておるという点であります。この宅地価格の高騰を何らかの施策によって抑制することができなければならないと思います。たとえば農地改革のようなあの抜本的な法的措置が講ぜられない限りにおきましては、住宅対策費の一部がいたずらに地主の不当利得となってしまうおそれがある、かように思うのでありまして、ぜひこの宅地に対する法的措置をとっていただくということが必要ではなかろうかというふうに思っておるわけでありまして、この点特に御考慮をお願い申し上げたいと存じます。  なお、私の要旨に印刷してあります裏面に参考に数字等を示してございますので、御参考にしていただけば、幸いだと存じます。  以上簡単でございますが、私の陳述を終りたいと思います。
  35. 石川榮一

    委員長石川榮一君) 林さん、ついでにお話下さいませんか。この最後に数字を現わしていらっしゃる別紙の見方について一応御説明を願いたい。
  36. 林虎雄

    参考人(林虎雄君) 別紙をちょっとごらん願えばわかりますが、第一の県営住宅による起債償還と賃貸料収入の比較でございますが、二十七年、八年、九年と起債による元利償還額が最初に示してあります。それで使用料中に占める、家賃収入の中で償還引当額が第二番目に書いてあります。二十七年の場合には四百五十五万四千円とあります。従ってその差額が一番右にありまして二百三十七万四千円、二十八年が五百十八万一千円というように合計三カ年で純県費の差額の負担というものが一応千二百八十三万円になっているという算定の数字でございまして、その下に起債の償還年次がございますが、木造で九年、あるいは耐火造で十三年とありますが、家賃は御承知のように二十五年、あるいは七十年というようになっておりますのでこの差額でございます。こういう点を御考慮願いたいと思います。  それからその次がただいま申し上げました県営住宅の敷地の代金の超過負担額でございまして、左が決算額、そうして二分の一が国庫補助ということになっておりまして、百七十九万七千円でありますから、その差額が相当大きくて、結局右端にありますように、二十七年度では五百三十七万円の地代金、宅地、敷地の代金の超過額でざいます。これの合計が三カ年で二千三十九万というような数字になっておるわけであります。  最後は、これは長野県が終戦後から二十九年までにおける住宅建設の各種目の数字でございまして、御参考までに示した次第であります。簡単でございますが……。
  37. 石川榮一

    委員長石川榮一君) 各参考人に対しまして、ただいままで意見の発表をしていただきましたことに対しまして、各委員から質疑のあります方は逐次発言を求めていただきたいと思います。
  38. 田中一

    田中一君 武藤さんに伺いたいのですが、まあ立場があるので微妙な御意見開陳で、もう少し承わりたいと思ったのですが、結局先般の学会としての態度をきめたという案の中から見ましても、都市の不燃化ということは、まず大きな問題になっているのじゃないかと思うのです。次は、防火建築帯の育成ということを、もっと強力に推進しろという御希望、それからアパート高層化した住宅というものを建てなければならんのじゃないか、今の時代ではもう共同施設さえ完備されるならば、アパート住宅は今の時代に合っているのじゃないかというような御意見と思う。そこでそういう観点から、今昔さんの御意見を伺っておりますところの法案を、あなたの考えていらっしゃるところの考え方で解釈しますと、どの法案にはどの部分、自分の抱負のどの部分が盛り込んであってこれはよろしいが、これがないというような形の御意見を伺えませんか。
  39. 武藤清

    参考人武藤清君) いつも抽象的に考えますので、具体的にはなはだ申しにくいのですけれども、法案との直結に非常に困難と思いますが、共通的な欠点は、先ほど申し上げましたように、いずれも単に住宅供給するという点だけに重点が置かれて、住区といいますか、一団地として都市生活をするための施設の手落ちがありまして、いつも、先ほどから皆様から御意見がありましたように、まず家をぽつんと作って、それからほかの費用で道路が作られたり、庭が作られたりというような、非常に無計画なことが行われておりますのですが、これらの経費住宅の中には入っておりませんで、都市の潜在的な負担になっておるわけでございます。その辺の点をすっかり考え合せて、やはり根本的な総合的な住宅計画というよりも、むしろ住区計画の点を取り入れられるように、いずれの法案にもこの点に欠点がございまして、何とか考え直していただきたい。ことに公団の場合で考えてみますと、公団が責任を持って都地区整理を行いますとしますと、都市と別々になってしまう。従来の公営住宅の場合には、都市あとまでめんどうをみたが、今度は公団公団でやったのだからということで見捨てられてしまって、非常に運営において混乱が出てくるのではないかというふうな点が一番心配される点でございます。
  40. 田中一

    田中一君 御承知のように、法律を作る形として、これは住宅を建てようという形なんです。住区法案というのができ上って、その区域全体の計画的なものがくればいいんでしょうけれども、まあそこまでわれわれは発展した考え方を持っていなかった。いや、事実でき上るものは、あなたのおっしゃる通りのものができ上ると思うのです。しかしながら法案そのものには、その点は政府案にしましても、私の出している法案にしましても現われておりませんけれども、必ずそういうものが別にあるということをお覚えおき願いたいと思うのです。法律を作るためには、住宅だけを取り上げて法律を作ったという、これは政府の代弁をするわけではありませんが、政府もそういうふうな意図のもとにこの法案を出したと思うのです。従ってその両方に共通している欠点というお言葉はちょっと困ると思うのですがね。これは住宅を建てるための、法案でありまして、区域そのものを作ろうという法案ではないと思いますから、その点を一つ御了解願います。
  41. 武藤清

    参考人武藤清君) 承知いたしました。次に第二点として不燃化の普及の問題ですけれども、耐火建築促進法が二十七年から実施されまして、年々その成果を上げて参りました。ところがこれが本年度においては消えるかと思いましたけれども、工合よく浮び上り、また融資も受けられるようになって、再び日の目を見ることになりましたのですが、先ほども申し上げましたように、これが一般都市生活者に対して、都市建築耐火建築でなくてはいかんという気持を植えつけた点において非常に効果があったと思いますし、事実災害防止というような点では非常に役立って注目されておるようなわけでございます。その事例といたしましては、門司で水害がありましたときに、耐火建築のために土砂崩れが防げたとか、あるいは洪水のときの人命救助になったとか、そういう事例は多々あるのでございますが、こういう気分になったときてございますから、なお一段と一般都市生活者の耐火建築意識を高揚される方向に、ちょうど盛り上ったところでございますから、なお努力をしていただきたいと思うのでございます。  それから中層アパート程度については、これはもう政府関係においても十分に吟味されておることと思いますけれども、平屋建を建てますことは、非常な敷地の浪費になりまして、たとえば一例を申し上げますならば、十二坪程度の家を作った場合に、平屋建の場合ですと、敷地のみでも平均最低五十五坪程度を使っておるのが現在の公営住宅の平均になっておるようでございます。で、それが連続した平屋建、長屋でございますが、あれを二階その他にするに従って、四階のアパート程度になりますと、十分に日照も考えられて、一戸当りわずかに十五坪で十二坪の四層の建物を収容することができる。非常に能率が上ります。平屋一階建に比べますと三分の一以下の敷地になるのでございまして、これをかりにさらに高層の、百尺程度までのアパートまでまじえるといたしますと、一戸当り十二坪を作るのにわずか六坪、そこで建物相互間の間隔を六、七十メートル離すことができる。その間にりっぱな緑地も取れるし遊園地も取れるし共同施設も設けるというような勘定になりまして、これを平屋に比べますというと、実に八分の一に縮小することができるという数字になるわけでございます。このような点から考えまして、東京現状住宅を全部整理するといたしますと、大体環状線に接しておる区に四層アパートを建てますと、現在のそのほかの工場とか一般の建物はそのままにしておいて住宅だけを建てかえるだけで、全東京を収容することができるというような数字になっております。さらに高層をまじえれば、なお合理的な配置ができると思うのでございますが、これらの点を考えまして、先ほども申し上げましたように、もう今日に至っては根本的な都市建築対策、それにはどうしても宅地の整理ではいけないのであって、住い方の整理をも含めた立法による都市構造という方向まで推し進めていただく、少くともその調査に入っていただきたいということが私たちの希望でございます。
  42. 田中一

    田中一君 私ども考えております宅地の問題ですけれども、大体御説の通りなんです。この防火建築帯の指定を相当大幅に建設大臣の権限で指定していただいてそこに建てよう、そうして一石二鳥の考え方をもって宅地の高騰と申しますかをとめよう、抑制しようというような考え方を持っております。こういう考え方で今宅地造成に関する法案を作るために作業をしておりますけれども、そういう点はどうでしょう。私どもはどこまでもまあ都心地においては現在指定されている防火建築帯の方を高層化するという考え方を持っているのですが、この点はまあこれはいいですか、悪いですかということと、それからまあ公団法はどこの方に建てるかまだ審議しておりませんから知りませんが、公営住宅は御承知のように木造の比率が非常に高くなっております。そういう点も法案と両方比較して御答弁願いたいと思います。
  43. 武藤清

    参考人武藤清君) まことに相済みませんが、資料をちょうだいいたしましてからわずかに三日でございまして、一生懸命勉強いたしましたのですが、私いただいた資料のうちでは、現在のところ御意見を申し上げることもできかねるわけでございます。
  44. 田中一

    田中一君 吉沢さんに伺いたいのですが、先ほど共有部分のことにつきまして非常に不明確だというようなお話がございまして、現在東京住宅協会は、現在ではそれが何か共有部分を含むアパート部分的な部屋の分譲ということが、現在は行われてないんですか、あるんですか。
  45. 吉沢孝治

    参考人吉沢孝治君) 現在東京住宅協会では分譲住宅はまだ実施しておりません。ただいま私の方の事務所は、たまたま渋谷の宮益坂の中途にありますが、あれが東京都で実施されました最初の気運になっております。あれの実情を見ますと、あれは今田中先生のおっしゃるように、結局共有部分まで含めた価格で分譲しているようです。ところがさっき申し上げましたように、共有部分という考え方がちょっと不明確であります。それで共有部分に関する使用、分担その他問題が起っているようでございます。そういう意味で申し上げたのでございます。
  46. 田中一

    田中一君 私この日本分譲住宅公社法案を書きまして、その点を非常に苦慮したんです。そうして民法の二百四十九条の共有というこの規定ですね、これを考慮しまして、この点民法の上から見ればこの問題は解決されている、こういう工合に僕らは理解しているんです。ここでこの条文は読みませんけれども、こういう点があるんですね。共有物の管理という点がありまして、二百五十二条に「共有物ノ管理ニ関スル事項ハ前条ノ場合ヲ除ク外各共有者ノ持分ノ価格二従ヒ其過半数ヲ以テ之ヲ決ス但保存行為ハ各共有者之ヲ為スコトヲ得」ということになっておりまして、大体まあ宮益坂のアパート考えますと、あれが五十軒なら五十軒に分割される場合、先ほど御説明のようにコンクリートの壁のしんからしんまでということは一応わかるんです。だから共有部分も、買ったものが当然共有部分は買うものである。しかしながらそれは自分だけのものではない、共有部分である。自分だけの持ち分のものもあるというように解釈しているんです。それで、従ってこれを運用する場合には、まあ組合なり何なりが必然的にできるんじゃないか、管理機関が……。その管理機関でものをやれば、むろん利益も守れる。それから権利も主張し得るというように考えておるのです。この民法二百四十九条の共有という節ですが、この法に対してどういう考えを持っておられて、現在宮益坂アパートを運営なさっていらっしゃるか。
  47. 吉沢孝治

    参考人吉沢孝治君) 実は宮益坂ビルの管理は現在東京住宅協会は関係がなくなっております。これのいきさつをちょっと具体的な事例が出ましたので、ちょっと申し上げたいと思いますが、これは東京都で計画いたしました建売り住宅でございまして、御承知のように、あれは短期分譲住宅でありますから、皆さん東京都から買い取ったわけです。そうして持ち主だけがあのビルに寄ったわけであります。それで東京都であのビルの開設をするに当りまして、その管理についてアンケートを取りまして、大体管理の方式は皆さんしろうとだから、たまたま買い主の中に東京住宅協会がおるので、それにまかしたらいいだろう、こういう御意見がほとんどでありました。それで実は住宅協会で第一回居住者大会といいますか、その買い取り人の大会の世話役のような格好で出まして、いろいろお世話を申し上げたのでありますが、実は買い取るまでの御意見は、ほとんど九分通りまでが協会におまかせする、こういう御意見でありましたが、実際ふたをあけると、なかなか議論百出で、御承知のようにあそこは地下と一階が店舗区になっております。二階から四階までが事務所区、それから五階以上が住居区になっておりまして、この三つがそれぞれ利害関係が必らずしも一致しない。それに東京都の譲渡価格が下にいくほどウエイトがついている。それで私らの方で用意したあそこの管理費の総額というものを分担する方法といたしまして、買い取り価格の比率を二と、専有する面積を八と こういう割合で、あそこでかかる全体の管理の費用を割りつけたのです。それに対しても、今のようにいろいろ事情の違う三地区のことでございますから、その分担の方法それからまたいろいろ議事を進めるについて表決権の問題とかいろいろなことがありまして、これは私が関与したのは三回くらいしか存じませんが、ほとんど何もきまらずにしまった、そういう状況でありまして、これから先ああいう形式のものがどんどんできます際には、どうしても指導的な立場をとっていただいて、現在住宅所有目的とする住宅組合法というのがございますが、ああいう特殊な共同ビル利用するものについて利用組合法といいますか、そんな意味の法制的措置がどうしても必要じゃないか、こういうようなことを考えたのです。そうしますと、まあ準則でも定めていただきまして、組合規約のあり方の標準を示していただく。そうしますれば、今の共有問題とか、共有部分維持費の負担方法、そういうようなものは自然にきまるわけでありますから、そういう方向にいっていただいた方が、問題があまり複雑にならずに解決できやしないか、こう考えるわけでございます。
  48. 田中一

    田中一君 それは今の問題は非常にむずかしいのでして、私どもはこの法案を作りますのに、業務の範囲を、これは分譲する、分譲してしまうのですが、第二十九条の三号に、共同施設建設及び管理ということを一項を業務の主要目的に入れてある。これは根拠は何かといいますと、今申し上げたところの民法二百四十九条をたてにとりまして、おのずからそういうものが生まれる。ここに法律に明文化しなくても、当然これが生きてくる、活動するのだ。共有部分の権利を主張すれば、この法律で規制されるのだというような解釈をしているのです。従って明文化する方が非常に端的でいいかと思いますが、当然これはこの民法の規定が動いてくるのだという解釈をとっておるのです。従いまして今御指摘になりましたように、この点を法的に明文化せよということは、こういうものができた場合には、おのずからこの民法の規定によって、そういうものが生まれてくるという前提に立っているのですが、その点は宮益坂をまとめようとされましたあなたとしては、こういう問題についてはお調べになったのでしょうか。
  49. 吉沢孝治

    参考人吉沢孝治君) これは実は協会といたしましては、三回ほどの総会出席して、実はさじを投げた格好でございまして、これはどうしても持ち主の皆さんが、今田中先生のおっしゃるように、自主的に盛り上った団体にしたのでなければ、これは解決しない。こういうことでさきのアンケートの結果は絶対支持でございましたが、実は現在手を引いておりまして、あすこを自主的に、そういう団体ができるように、そういう方向に現在進んでおるわけでございます。それで今の私は法律的な措置と申し上げましたのは、別に分譲住宅に限らず、まあ分譲はもちろん一番直接の所有権がすぐに移転するのですから、すぐ派生する問題でございますが、ああいうふうな多層住宅ですね、そういうものの管理についてこの法案へ盛り込めと申し上げたのではなくて、そういうものを何らかの形でやっていただきたい。これはまあ法律のことはよくわかりませんですが、現在は私の方でまあ経営中の賃貸住宅、三千三百戸ほどございますが、それは御承知のように三千三百人と協会との間の契約はあるのです。ところが賃貸人同士の関係を覊束したものは一つもありません。それでこれは分譲でありませんで、共同住宅の秩序を乱るものだと、こういうことがあれば、それを解約の条件に取り上げて解決はできるでしょうが、しかしこれはそういうお互い隣同士の関係を覊束するようなものが将来必要になってきやしないか、非常にひんぱんに起るんじゃないかと思うのです。そういう意味でこの法案に盛り込んでいただきたいというのではなくて、別途でも何でもけっこうでございますが、将来こういう多層住宅が、生活の本来の形式になってしまって、例外的の存在でもはやなくなると思うのですが、そういうことになったら、そういう問題が頻発することだと思うのです。そのためにまあなるべく早い機会にそういう御考慮をお願いしたい。
  50. 田中一

    田中一君 私が申し上げておるのは、この法案の中にはそれが十分盛り込んでありますということを申し上げたのであります。これはちゃんと入っておるのです。共有部分に対するその管理をどうするか、お前らの権利はどれか、というようなことが盛り込んであると申し上げたのであります。それがないじゃないかというようなお話のように伺ったものですから、それは盛り込んであると言った。ことに業務方法書にはっきりとこういう形の管理組合を作って、これでよければ、お売り  いたしましょう、こういうことになりますから、むろん一つの自分の権利と共有部分というものを明確にした条件で買っていただく。こういうふうに考えておりますから、そのように一つ御了承願いたいと思います。
  51. 吉沢孝治

    参考人吉沢孝治君) ただいまの田中先生のお話でよくわかりました。私は不勉強で、そういうことまで見落しておりましたのですが、そういうことがありますれば、私の先ほどの心配いたしましたことは一つもないわけでございます。
  52. 田中一

    田中一君 本間さんはお帰りになったので、久良知さんにお伺いしたいのですが、従来ある木造住宅の、現在やっておるような木造住宅、昔のように柱が、大黒柱があるようなそういう昔のものじゃなくて、今あるような公営その他の住宅というものの耐用年限が技術的に見て何年くらいが一番正しいのであって、また建ててから何年たったらば、維持管理を、普通にしてどれくらいな費用改造しなければならぬかという点を、技術的に一つ手を加えるときの費用なり何なりを勘案して、どれくらいになるものですか、ちょっとお伺いしたいのです。
  53. 久良知丑二郎

    参考人久良知丑二郎君) その点は私の方ははっきりわからないのでございます。土建の方だとよくわかるかもしれませんが、維持管理の年限、それからその費用、そういう点がまだ調査未了でありまして、はっきりわからないのであります。
  54. 田中一

    田中一君 私どもは国設住宅というものに対しまして一坪四万円程度のものを供給しよう、こういう考えを持っている。それから分譲住宅は、この法律にはっきり示してありますように中の仕上げもしません。いわゆる仕上げ工事はしない。中の間仕切りもしないという形で、坪二万五千円程度のものを供給しよう、こういう考えを持っているのです。そういう点はいわゆる先ほどあなたがおっしゃったように本工事にくるまでの外部の、住宅部分じゃない、外部の、道路とか何とかいうものを整備する費用を別に見た場合、そうしてすべての材料、そうして工法その他の規格統一をした場合、そうして計画性のある生産、施工というようなことを考えた場合に、私が今申し上げたような四万円ないし二万五千円というものは可能でしょうか、不可能でしょうか。
  55. 久良知丑二郎

    参考人久良知丑二郎君) 四万円でできるかどうかというお話でございますが、現在私の方でやっておりますアパートの価格は大体六万円くらいなものになっております。それから全国建設業協会と建設工業経営研究会、日本建築学会経済委員会、この共同研究によります都市の標準建築費指数が昭和二十五年からずっと出ておりますが、それによりますというと、鉄筋コンクリート造アパートが、現在三十年の四月におきまして五万七千七百円になっております。約六万円でございます。一番高い時が二十八年の終りから二十九年の初めにかけまして、同じものが六万二百円ということになっております。現在幾らか下って五万七千七百円ということになっております。大体私の方で建築しておる、私のほうが請負をした単価と大体同じくらいな単価になっております。それで今の四万円の出たもとは、今申し上げましたようなアパートが五万円前後でできる、その程度を落して、四万円くらいでできると、こういうふうなお考えじゃないかと思います。これがさいぜん申し上げました大量生産、あるいは規格統一、あるいはパブリック経営というような、いろいろな単価を下げる方法をとりましていきましても、ちょっと無理ではないか、もう少し上げていただきたい。しかし現在五万七千何ぼでできておるのは、確かに安くはない、こういうふうに考えております。それから同様に今の二万五千円でやるという造作抜きの場合でございますが、これも同様でございまして、さいぜんの比率でやはりこれも非常に高度に、私のさいぜん申し上げましたようなことが行われるようなことになれば、あるいはできるかもしれませんが、現在の技術と生産方法ですぐにこれでやるというのでは、やはり少し無理ではないかというふうに解釈しております。
  56. 田中一

    田中一君 これは私政府機関の、ある権威ある研究所からデータをもらってきたのですが、大体今の労銀並びに材料の時価でもってやって、一坪五万九千八十円でできる。たとえばセメントに対する手を打つとか、あるいは先ほどお話しのあったような建具の規格統一してですね、大量生産するとか、あるいはガラスのサイズに合わすとか、いろいろな手があると思うのです。簡略の問題もあるでありましょうし、そういうものを落せば、十分四万円にはいく、そうしてそれはあなたがちょっと言われたような品を落すとか、家を落すなんという考えは毛頭持っていないのです。そうしてもっといいうちを建てたいと思っております、落すのではなくて……。あなた失礼な言い分ですが、請負人としての考えで自分としての商売で利益も何も入っているから六万円ということになるので、建築屋、研究所長として僕はあなたに伺いたいのですが、清水建設のやっておるものにはやっぱり利潤が入っておる、いろいろなものが入っておる。従ってこれはネットで技術家が良心的に計算してみても、四万円でできるのじゃないかというような資料を私持っておるのですが、そこのところどの程度のものが六万円でという、何かでき上ったものをちょっとお示し願えませんか。いや言い過ぎたら失礼しますよ。
  57. 久良知丑二郎

    参考人久良知丑二郎君) お答えいたします。これは会社の名前は省かしていただきますが、あるデパートのアパートが七万五千円かかっております。それからある会社のアパートがこれが約六万円かかっておる。それから東京都内ではありませんが、郊外でやったので、これもある会社ですが、それが五万六千円ぐらいかかっております。それからこれも一つの会社ですが、それは六万九千円ぐらいかかっております。まだほかにもありますが、まあ代表的なのはそういうふうなことになっております。それから今の利潤の件でございますが、まあわれわれが会社でやっておるので利潤の少いのは住宅アパート関係が一番少いのであります。それは手間ばかりかかるのでございます。たとえば大きいビルですと、タイルを注文いたしますのに、千坪なら千坪まとまってあるわけであります。ところが住宅ですと、そのタイルを注文するのに五坪とか十坪とかいうように注文をするわけです。ところが注文手続なり何なり、それを積算するにしましても、ほとんど大数量のものと同じ手数がかかるわけです。ですから、大量に同時に建てられるということになれば、大きいビルをやると同じような手数でできるということになって、非常に少くなります。こういう小さい建物ですと、大業者がやるよりも、小さな業者がやった方が安くできるというような点が多少そこにあるのじゃないか。大組織でやるのに小さ過ぎるというようなことがあります。だから、その大組織を生かしたやり方でやるかどうかというような点もあるのじゃないかと思います。それから全然利潤がありませんと、業者も立ちいかないわけですから、その点はやはり必要程度の利潤はこれはコストの中に入れていただきたいというふうに考えております。
  58. 田中一

    田中一君 私があなたに伺うのは、清水建設あたりのような大きな会社がやるのに適当なる建物なので伺うのであって、一軒二軒建てるのじゃないのです。御承知と思いますけれども、年間二十五万戸建てようと、こういう計画なんです。従って一棟や二棟建てられるのじゃなくて、清水建設のように大きな会社だから、一ぺんに計画的にやれば……、今銀行の例やなんか言っておられますけれども、そういうことを考えていないのですよ。四万円程度で一ぺんに千戸二千戸建てるわけですね。そういう意味で伺っているのです。それから東京都の調べを見ますと、大体現在やっておる実例ですが、四万九千約四十円程度ならできるだろう、それは二十四戸の団地の場合ですね。主体工事費が二万二千九百十円、これは比率で言いますと四七%、それから造作工事費が一万四千八百四十円、これは三〇%に当るわけですね。ほかは付帯工事ですね。従ってその三〇%という造作工事というものが相当簡略されるということも考えられますし、この上になおかつ大量に作るのですから、規格生産なり何なりしていけば安くなるのじゃなかろうかということを実は伺っておるのです。ですから、一軒や二軒建てるようなつもりでいるのじゃないのです。二十五万戸建てるつもりで計画を立てているのですから、その点一つ御理解願って御意見を伺いたいと思うのです。
  59. 久良知丑二郎

    参考人久良知丑二郎君) 今まで申し上げました例はお話しのように、非常に少い分で、独立して一軒の家を建てるというようなものでありまして、確かに大量同じようなものが建つ場合は減ってくると思います。それから例に申し上げましたアパートもある程度いいアパートというふうにも考えられます。これは大体造作が二万五千円くらいかかっております。ですからその点においても多少違うと思います。またそれを今度大量にやった場合、どのくらいになるかというはっきりした計算は時日がございませんので、積算はしておりませんが、確かにかなり安くなると思いますが、それでできるということは今申し上げられないのでございます。
  60. 赤木正雄

    ○赤木正雄君 それに関連して林知事さんにお伺いしたいのですが、そういう小さいことは御承知にならないかもしれませんが、あなたの方ではお建てになったのですが、どのくらいのかかりですか。この単価が今五万円とか六万円とか言っておりますが、あなたの方ではどれほどかかったのでしょうか。
  61. 林虎雄

    参考人(林虎雄君) 今までの公営住宅の単価でできております。
  62. 赤木正雄

    ○赤木正雄君 そうですが。
  63. 田中一

    田中一君 もう一ぺん久良知さんに伺いたいのですがね、私はいろいろこの法案を作るために、ずいぶん資材その他の方面も歴訪して当ってみてきたのですが、スチール・サッシュの場合、鉄製ドアと窓ワクの場合は規格生産するならば四割安くなりますということを言っている、セメントはなかなか頑強であります。でありますが、場合によれば公営セメントを、公共企業体が公共用のセメントを、住宅用のセメントを作ってもいいのじゃないかという構想を持ちます。そうしますと大体六千円でできます。砂利等は林知事さん、ずいぶん昔からやっておりますが、河砂利を使わないで火山砂利を使おうという考え方で、軽量コンフリーでいこうという考えを持っております。こういう点からずっと勘案いたしまして、今御承知のようにうちの中をペンキを二へんも塗ったり、セメントガンを使ったりというようなぜいたくなことは……、これはいい悪いの問題じゃない、ぜいたくの問題です。ぜいたくのことはいたしません。そういう形のものでやりまして、大体四万円ならば現在の公営住宅の程度のものはできる。同時に部屋の中とか、今のような都営住宅のような三割も造作にかけるということはしないつもりでいるのです。こういう点から見まして、どうお考えでございますか。これはあなたを四万円にぎゅうぎゅうに押し込もうというのではないのです。これはあなたの技術的な良心からお答え願いたい。
  64. 久良知丑二郎

    参考人久良知丑二郎君) 今のサッシュのお話ですが、さいぜん申し上げました例の中には、すでにたとえば三機工業の規格品と称するものを使っております。その値段になっております。それから今のぜいたくだと考える程度の仕上げは落していく、必要だという仕上げはやっていくというお話でありますが、まあ現在たとえばコンクリートの壁をしっくいで塗る、プラスターで塗るということでなしに、しっぱなしにする、見られる程度のお化粧をするということになれば、またそこに安くなる点がある。それは設計上の問題になってくるわけです。そういうふうにまああらゆる方面から検討していくと、だいぶ安くなるところはありそうだと思う。しかしそこの究極のところはどこにいくのだということは、時日もございませんし、調査もできていない、だから確実に申し上げられないということになります。
  65. 田中一

    田中一君 林知事に伺いますが、だいぶ長く何をやっていらっしゃいましたね、火山砂利の使用を……。それでどういう工合に実績があがっておるか。それでもってブロック建築のほかにコンクリートのうちをやったことがありますかどうか。私は今申し上げたような程度のものがどのくらいでできるか、お話願いたい。
  66. 林虎雄

    参考人(林虎雄君) 軽石ブロック住宅でございますね、あれはだいぶ長野県でもやりまして、評判は割によろしいようでございますが、お尋ねの点がちょっとはっきりしませんが、聞き落しましたが、成績があがっておるかどうかということですか。
  67. 田中一

    田中一君 あの単価が一坪当りでどんなものでできているかということです。
  68. 林虎雄

    参考人(林虎雄君) 三万八千円くらいでできております。
  69. 田中一

    田中一君 それは土地から何から一切……。住宅外のものも全部含めたものですか、それとも建物だけの問題ですか。
  70. 林虎雄

    参考人(林虎雄君) 建物だけであります。
  71. 石井桂

    ○石井桂君 私は武藤先生にちょっとお聞きしたいと思いますが、先ほど先生の御意見の中で、住宅建築だけでなくて住区の設定、そういうもののめんどうをみることが必要だという御意見がありました。これは私も長く住宅を作る方の側に立った場合の、ほんとうのやはり希望だったのです。たとえば例を戸山ハイツとか、戸山アパートにとりましても、雨の日は、大通りに行くわずかに二、三町の間を長ぐつはかなければ行かれないというような都営住宅ができてしまう。それは今の予算が結局家を作るだけの予算でありまして、住宅を集団的に作るのには、やはりそれによるところの道路とか、下水、あるいは給水、排水、さらに大集団になると、ガス水道等の敷設の費用等も要すわけです。それがほとんど入っていない。そういうところに作る方の悩みがあるわけでありまして、大きくなればなるほど、私は団地計画によるところの、いわゆるいろいろな諸施策が必要だと思うのであります。それがありません。それで先ほどの、住区のめんどうをみるような機関、あるいはそういうものが必要だというようなお説に、私は非常に共感を覚えるわけであります。今建設省住宅建設のほとんど大部分をやっていらっしゃるのですが、都市計画施設については計画局、その他の住宅は主として住宅局ですが、ああいうような集団住宅の団地計画都市計画的なめんどうというものは、もう計画局でやるほどの規模がないのですから、結局住宅局でやらなければならん。ところが今度はそのうちの通路に例をとってみますと、それはもちろん国道でもなければ府県道でもない、区道でもない、でき上って舗装でもしてくれたら、区で引き継ぐというのが東京の実情であります。そうすると家はりっぱですけれども、結局雨の降った日は、鉄筋コンクリートのうちから長ぐつをはいて大通りに出て、長ぐつをぬいで預けて出動するということであります。そういうことでありますので、やはり住宅を集団的に建設するめんどうを住宅局でみていると言うのは、少しまあ恥かしいくらいの私は仕事だと思う。それについてやはり機構やなんかのこともぼくは関係があると思うのですが、住宅に関するそういうめんどうをみるような住宅庁のようなものですね、そういうものを、別にこの際機構改革だとか、簡素化というときに、私はためにするために発言しているわけじゃなくて、住宅をほんとうに建てようという気があれば、やはり住宅が困らないような機構が必要じゃないかと私は思っているわけであります。日ごろ思っているわけであります。そういうことに対するお考えはありませんかどうか。先ほどの御発言に多少関係があると思いますから、武藤先生から御意見があると思いますので、御意見ございましたら……。
  72. 武藤清

    参考人武藤清君) しごく同感でございましておっしゃる通りであります。われわれの友人その他も、実際に住宅供給業務に携わりながら、住宅建設という任務だけが与えられて、その他の権限が全然ない。自分の作ったものがどろんこのたんぼの中にあるような状態であり、これを何とかしたいと思ってさまざま動かしましても、道路の方もうんと言ってくれない。公園は公園でそっぽを向いておるというような状態でありまして、これが今まで住宅を作ってやりさえすれば、何とかいいという考え方で応急対策をやったときの流れのままだと思います。もう今となってしかも集団的に大量にやるときになりますと、住宅建設の機構をもっと広げて、おっしゃるように団地計画というところまで一歩を進めるのが必要なことではないかというように考えております。
  73. 石井桂

    ○石井桂君 なおそれに関連しまして私は楠木さんにお伺いしたいのですが、お住いになっているアパートあとのほうの部分は、私はその当時責任者として作ったものなんですが、それであの当時も建設費も非常に安かったから家賃も安い。現在できるようなりっぱな住宅からいえば、はるかに悪くなっているようなお話でしたが、ああいうアパートに対して主婦として先ほどいろいろこうしてもらいたい、ああしてもらいたいという御希望がありましたが、団地計画としてこういうものが欠けているというようなことがございませんでしょうか。今たとえばあそこのアパートは水を使うのは水道でございますね。だから水道は差しつかえないのですが、ほかの戸山アパートなんかは水道がありませんから、井戸を使っております。あるいは会議場とか集会場とか、いろいろな集団住宅を運営してゆくのに必要な施設がずいぶんあるだろうと思うのです。そういうものがずいぶん欠けているように、私はやりたくてもできないで今日まできてしまった。何か主婦としてのお考えがあれば、一番長くあそこにいらっしゃる方なんで、御主人と違いまして、あそこに長くいらっしゃって不自由を感じておることですから、一番していただきたいというようなものがあるかどうかお伺いします。
  74. 楠木なつ子

    参考人楠木なつ子君) 希望より、今現在痛切に感じますことは、あれにはひさしがないのでございます。ひさしがございませんので、鉄筋コンクリの住宅に住んでおりまして、畳からキノコが生えるような現在なんでございます。それに物置がございません。地下室がないものでございますから、一坪のお台所のお野菜も、食器も、それからこれから冬になりますと使いますお炭、みんな一緒に置きますので、衛生上非常に困るのでございます。それとその他のあれが、終戦直後でございましたから、いろいろな不備もございましたでしょうけれども、これから新しく建てます建築につきまして、鉄筋のアパートでネズミが出るなんというの私驚きましたのでございます。それはどこからネズミが出るかと申しますと、最初外から、窓を閉め忘れて窓から入るのかと思いまして、夏暑いのをがまんしましてぴったり締めてやすみましたんでございますけれども、だんだんいろいろやりまして、初めて気がつきましたことは、水道管、ガス管が鉄筋コンクリートの中を通っておるのでございますね。その通っております排水管の底を、外から排水管が入っておりますところがその排水管だけの、通しましたらきっちりそこを詰めなければいけないわけでございますね。それを大へん失礼な言葉でございますけれども、手を抜いたわけではございませんけれども、ぐるりがこんなに大きくすいているのでございます。普通の住宅以上にネズミが入りまして、鉄筋コンクリートでございますから、今度この床の下へ入りまして夜分やすんでおりましても、お台所が板の間でございますから、立っておりましても足の裏がむずむずするくらいにネズミが出て非常にひどいのでございますけれども、そういう点を何とか考慮していただきたいと思います。  それと、水道でございますけれども、私どもの館は一号館と二号館と二館、一館が二十四世帯ございます。その二館に貯水槽が、一つしかないのでございます。その貯水槽もそんなに大きいものでないのでございます。それで貯水槽のある方の館は水の不自由はございませんけれども、貯水槽のない方の館は、かなり離れておりますものでございますから、それをこちらの館からこちらの館に水が来るのでございますけれども、そうしますと上まで水が上らないわけでございます。現在でも終戦後みたいにお洗濯しますのにも、三階四階の方はみなさんが水道を使うころの時間には洗濯しないで、夜分になってからなさるという現状でございます。その点をよくごらんいただいて、もっとこれはほんとうにお家賃の安い都営住宅に入れていただいて感謝しているのでございますけれども、そういう点から申しましても、不足ではございませんけれども、これから建てますためにも、一つぜひみなさん御参考までにごらんいただいて、よく研究なすっていただきたいと思います。  それから集会所ですね。娯楽設備というのじゃないのでございますけれども、集会所なんかも、屋上があいておりますのでございまして、屋上に洗濯場もないのでございますね、私たちの方の館は……。裏の新しい方の館は洗濯場もございますし、物置もございますけれども、物干もございません、洗濯場もございません。ただ屋上がぼーっとあいているのでございますけれども、ああいうところでもけっこうでございますから、簡単なものですね、でなかったら地下室は下へ作れませんから、屋上でもせめてお炭を入れる小さい、俵一俵ずつでも入るようなものでもけっこうでございますから、屋上へぜひそういうものをしていただいたら、ほんとうにけっこうだと思うのでございます。
  75. 石井桂

    ○石井桂君 ただいまの楠木さんのお話は、これは設計と費用の問題ですから、だんだん改善されると思います。それからもう一つ、あなたの今の非難の点の建築は、私が責任者でなかったのです。局長になってからは新しいやつをやりましたので……。これは申し上げておきます。なお、私はお考えとしてお聞きしたがったのは、さっき例にとってあげましたように、住宅を、お宅の場合は八棟か九練しかありませんね。これは戸山アパートのように何十棟と建つところは、ほんとうに街造りです、そういう街造りみたいな区分をしないと、住宅として使うのは非常に不自由だというわけです。そういう場合に、今の機構だとなかなか動かないことになるのです。そういうことの御意見を聞きたかったのですが、けっこうです。  それから関連してもう一つお聞きしたいことは、これは吉沢さんにお聞きしたいのですが、先ほど吉沢さんは日本分譲住宅公社案、これを出したときに、公社案の方は分譲だけだから賃貸する計画がないというなら、そのまま金融公庫に引き継いでもらう。そうすれば賃貸する鉄筋コンクリートの仕事をやるところがなくなるから、自分の方のような協会を強化してもらって、そうして建設の一翼を買いたい、こういうお話がございました。具体的に、これを強化して一翼を買いたいというお考えですから、どういうふうにしてほしいということを考えていらっしゃるのですか。
  76. 吉沢孝治

    参考人吉沢孝治君) 実はその意見住宅協会を代表して申し上げたのではなくて、私見でございます。今の日本分譲住宅公社法案によりますと、現行の住宅金融公庫をそのままそれに移行させる、横すべりさせる、こういうようなふうに拝見いたしましたのですが、そうしますと、現在の住宅金融公庫のお仕事のうちには、個人で自分の家を所有する人のために貸金をするほかに、鉄筋コンクリート造の賃貸住宅をやるもののために融資をしておるわけです。その部分が抜けてしまうじゃないか、そういうことを申し上げたのでございまして、それからまた最後に私申し上げました、すでに四年の経験を持っております全国の主要都市にあります住宅協会といいますのは、相当の実績をあげておるわけでして、もしかりに今の分譲住宅公社法案が通りますと、住宅金融公庫からの融資はとだえてしまう。それでまあそのことを申し上げた。もう一つは現在私の方の私ごとを申し上げて恐縮でございますけれども、現在三十億近くの融資を受けております。それをただ単に民法三十四条による財団法人という組織でなくて、もっと国の監督が十分行き届き、それから国が直接指導していただくような格上げをしていただきたい。こういうことを、これは少し虫のいい話だろうかと思いますが、そういうことを将来お考えいただきたい。これは今の公団法による公団がそれにとってかわると、こう言われれば、それまでのことですが、ただそれは現在の非常に不足しておる住宅を充足するには今後数年を要すると思います。それでその間の暫定の措置としてでも、とにかく今既存のそういう組織を活用していただきたい、そういうふうに御希望申し上げたのでございます。
  77. 石井桂

    ○石井桂君 今度は林知事さんにお伺いしたいのですが、この林知事さんの御意見は非常に私どもの気がつかない点までも行きわたっておりまして、非常に敬意を表する次第でございます。実は国設住宅法案とかいろいろ、またほかの日本分譲住宅公社法案、こういうのが田中さん、近藤さんの御発議のもとに出ておりまして、なかなか非常に内容はよくできていると私は思うのです。ただ疑問とするところは、実際にこれだけやると非常に大きな費用になるわけですね。これは林知事さんが長い間の行政の御経験もありますし、それから非常に進歩的な思想を持っていらっしゃいますし、実績もあげられておるというので、御意見を聞くのは一番適切だと思うのですがね。今のような経済状態で実際に国設住宅法案あるいは日本分譲住宅公社法案、こういうようなものは今のような状態では私どもむずかしいじゃないかと、こう端的に、大へん失礼なんですが、考えているわけなんです。あるいは、世の中が変ってきて、実際に革新政党でも内閣を取るようになれば、私はできるのじゃないかと思いますが、その辺大へん失礼な言い分ですがね、御意見が発表でさましたら一つ……。
  78. 林虎雄

    参考人(林虎雄君) ただいまの国設住宅法案日本分譲住宅公社法案についてでありますが、私も先ほど申し上げますように、きわめて理想的な案だと思います、まあ理想に近い案だと思います。しかし、御承知のように、その裏づけとしての財政ということを考えますと、国の立場考えると、なかなか全体の予算の面から、直ちにそれが成立して実現するということにはちょっと私も見通しはっかないのが現状でございますけれども、しかしながら、何と言いましても、方向としては自己資金の住宅というよりも公営住宅というものへ重点を指向していくことが、日本のやっぱり住宅問題を解決する一番近道ではなかろうかというふうに思いますが、長野県でもずいぶん無理をいたしまして、その結果赤字の一因をなしまして大蔵省からもおしかりを受けておりますが、しかし住の問題は重要ですから、力を入れておりますが、国におきましても住宅問題のもう少し見通しのつきますように、財政的にも力を入れていただきたいということを希望しておく次第でございます。
  79. 田中一

    田中一君 これはまあ楠木さんや林知事には御質問する必要はないと思うのですが、ただ、公団住宅政府の説明によりますと、大体家賃が十二坪あるいは十三坪で四千二百円ないし四千五百円程度になるそうです。御承知のように銀行から九分五厘の利子でお金を借りるそうですから、従ってわれわれが考えておりますところの住宅というものとほど遠いのですね。従って、まあ林さんの方でも、単価の問題はやかましく言うようですけれども、まあ何も造作が何ぼもするような家をお考えにならないで、住んでいる者が自分でできる範囲の造作を、足りないところはやっていくというような考え方のものでもっていいのじゃないかと思うのです。で、そのような考え方でもってやった例はございませんか、長野県で……。
  80. 林虎雄

    参考人(林虎雄君) ただいまお説のように、住宅公団法案については、今までの国庫補助というものはなくなるわけですから、家賃が従来の倍近くになるというふうに予想されるわけであります。従いまして、まあ東京とか、あるいは大阪、名古屋というような大都市においてはあるいは高い家賃でも借りる人ができると思いますが、おそらく長野県のような場合には中小都市の薄給生活者、いわゆる高額所得者は少いわけでありますから、とうていこの日本住宅公団法案が成立いたしましても、地方としては直接この恩恵を受けるということはないように思うわけであります。そこでできるだけ金をかけないで、とにかく住むに家のない人が多いわけでありますから、まだ傾向としては、まあ順に落ちついてきておりますから、りっぱな、整った住宅を作る人もありましょうが、地方的にはまだ応急の住宅を与えるということも相当に残されておるわけであります。そういう意味で、長野県でやっております分譲住宅とか、あるいは融資住宅というような点も、できるだけ力を入れていきたいと思っておりますが、特に農家住宅の老朽家屋でございます。これが長野県のような積雪寒冷地帯でありますと、非常に痛んでおりまして、これがだんだん使用にたえなくなるわけであります。こういうところに私どもが着目いたしまして、特に農家住宅改造計画をこれからやろうと、これは三万円か五万円でもあればまあ土台なり、あるいは軒なり、あるいは窓なり、簡単な修理ができて、それが今後多少でも若返りができるというような簡単な措置考えて、一方において絶対量を減らさないという、大きくいえば数をふやすことになりますが、そういう点も力を入れようと思います。五万戸程度でありますので、これを四、五年のうちに全部やりたいと思っておりますが、まあ財政的な問題があって非常に心配しているわけでありますが、国におきましてもこういう消極的のようではありますけれども、住宅政策の大きな力、一環になると思いますので、こういうわずかな資金でもやっていけるという面についても、何らか施策を考慮していただきたい、このように思っております。
  81. 田中一

    田中一君 武藤さんに伺いますが、私分譲住宅法案で盛り込んであるものは、いわゆるスケルトンなのですよ。部屋の中でコンクリートを打ち放しで、多少の余裕があれば普請ぐらいしてもかまわんと思うのですが、床と壁と天井とスチールサッシュ、ドアーと動脈線がそこへ入っているというだけのものを考えておるわけです。そこで国民の協力、財政措置というのがだいぶ問題になりましたが、こうしますと、かりに四万円としましても一万五千円は国民が負担するわけですね。こういうような住む者の負担で自分のうちを作るという以外には、どんなに日本の財政が豊かになっても、特定なる人間に対して幸福な生活、住居を与えるということは考えられないというのがわれわれの考え方なのですよ。従って住む者は足りないところは補ってやっていく。そして自分の生活の切り詰めもしないで……。少くとも娯楽費程度のものはがまんして、その娯楽を楽しむ気持を家を作るための気持に変ってもらたい、こういうような念願で僕らは考えておるのです。従っていろんな点におきまして追求されると、今言う完全なうちを供給するのじゃない現象になりますけれども、しかし住む者だけが自分のうちを建設するという考え方に対しては、技術家としてどうお考えになりますか。そういう形で多少政策面に入りますけれども、そういう考え方が正しいのじゃないかと、こう考えております。どうお考えになりますか。
  82. 武藤清

    参考人武藤清君) 前からお説は建築界の御意見一つとして伺っておりますけれども、御趣旨のように大量的生産、合理的生産によって、今度の四万円またはその近くにまで下げることができましたら、その住宅の、その建物には最適であって、これを改めて個人個人の契約で仕上げるというようなことになりますと、そのまま住んでいわば四万円でいくところが個人負担でいくと意外な経費がかかり、特別扱いになっていかがでございましょうか。
  83. 田中一

    田中一君 二万五千円ですよ。
  84. 武藤清

    参考人武藤清君) 二万五千円プラス一万五千円で四万円のものになった場合は、量産的に一方においては造作まで入ってしまう機構があるならば、その勢いでやはり全部お建てになった方が結局の経済になるのじゃないかというようにも考えられる。
  85. 田中一

    田中一君 私が考えておる対象というものは、一万五千円のものを生み出すだめにも、金を持っている人だけを対象に考えていないんです。やはりその程度のものから出発しなければならぬ階層を考えているわけです。さっき林知事が言ったようにほんとうに持てない、その四千円、五千円の家賃も払えない階層の人をねらって、住宅金融公庫の金をもってうちを造る。これは金を持っている、土地を持っている、そういうようなものを持っている人は対象に考えていないんです。今言うように低家賃で、しかも分譲ならばうんと安い、二十年月賦、月二千円払えば二十年間で自分のものになるというようなものを考えております。従って現在あるような住宅というような形のものを、またそれを求める人を対象にしていないわけです。全然うちのない者にうちを持たせようじゃないかという考え方です。うちのない者に住まいを与えようじゃないかということを、またそう低く考えていいのじゃないか、そういうふうに考えておりますから、むろんあなたのおっしゃるように二万五千円のものを買って一万五千円かけて四万円にすると、これは欲の出る階層にうちを与えようという考えを持っておらないんです。これはどうです。
  86. 武藤清

    参考人武藤清君) どうも私お話がはっきりわからないのでございますけれども、私たち心配しますのは、まあ同潤会時代に建てられました住宅でも、戦争中に荒れてしまったところに住んでいた者の生活が荒れまして、いささか貧民窟化するような傾向の者があちらこちらに出て、下町方面に出ているのでございます。それは窓が痛んだまま売ってしまったかしれませんけれども、板戸をぶっつけたりというような点から見て、ある程度まとまった環境を与えてやりませんと、ともするとそれで酒なんか飲んでおりますから、官能的享楽の方に走ってしまって、同じ金をうちに回せるのに回さずに間に合せてしまう。たとえば側だけもらって中にアンペラを敷いたままそれでいいというような生活態度に落ち込んでしまうような者が集まりはしないかというような点を心配いたしまして、できるならばまとまったものを与えてやって居住者の品位といいますか、つまり住い方はこうだというような気持になってもらって、その建物をかわいがっていただくように、国民的な雰囲気を作りたいというような気がいたすのでございますけれども、まあその程度で一つごかんべんいただきます。
  87. 石川榮一

    委員長石川榮一君) 長い間参考人各位には熱心に御意見や御質疑に対する御答弁をいただきまして、まことにありがとうございました。今後ともよろしくこの住宅政策につきましは格別な御支援と御協力をお願いいたしたいと思います。まことにありがとうございました。本日はこの程度で散会いたします。   午後三時十七分散会