○曾祢益君 ただいま私から
総理にお伺いしたいような多くの要点については、同僚の
佐多委員から御
質問があり、またある
程度総理の御答弁もありましたので、なるべく重複を避けて御
質問したいと思っております。
四
巨頭会談の結果に対する
総理の
評価といいますか、これは大体私たちも同感の意をもって迎えておるわけであります。またただいまの質疑応答の中で、
国際情勢が、いきなり
緊張の緩和から、
戦争あるいは
戦争の脅威というものがなくなるような理想的な平和の
段階に入っているか、入っていないかということについての
総理と同僚
佐多委員との
認識の相違が私は現われておったように思います。遺憾ながらわれわれが
希望した
程度に、一挙に四
巨頭会談が直ちに
世界の
情勢を理想
状態まで持っていったとは
考えられないのであります。その点は、われわれの期待、
希望と現実の歩みというものとズレがあることは、われわれは理想を追求しながらも現実に
評価をしていかなければならないと思うのであります。私は
防衛問題について
意見をたたかわすつもりはないのでありまするが、しかし同様な
国際情勢の
評価の上に立って、言いかえるならば少くとも大国同士が原子
戦争の絶壁の上に立って
戦争はできない。少くとも自分からは積極的な
侵略戦争をやらないということを、ほとんど
世界の
大衆の前、人類の前に誓ったと言ってもいい
状態にあることは、非常に危険から遠ざかる
方向に進んでおると思います。しかし同時にまだ力のバランスの上に立った
状態が一挙に解消したものではないと思う。
そこで私が御
質問したい第一点は、たとえば四
巨頭会談の中心課題は、ドイツの統一、あるいは
軍縮及びヨーロッパの安全保障の問題だと思います。そこで、まあ従来は
お互いに共産圏は共産圏内の軍事
防衛同盟を持っておる。また自由陣営といいますか、西欧陣営は西欧陣営の軍事同盟を持っておる。これを一挙にとりはずすというほどまだ
信頼を回復しておらない。しかし同時に、この両陣営のそれぞれ持っておる軍事同盟のにらみ合いと、また軍事競争というものが、遂に水爆
時代に入ってしまうと、その安全保障だけではかえって安全保障のにらみ合いの
緊張を増しておるような
傾向すらあると思う。従ってそこに、今度の四
巨頭会談の
一つの今のこの行き詰まりをどう打開するか、
お互いに自分の安全保障をしているだけではなく、しかも自分の安全保障措置が相手側に脅威となる
状態になったときに、どうしたならばこの自分の安全保障を捨てないで、相手側にも安全感を与えるかというととろに問題がきている。こういう
意味において、まだこれは十月の
外相会談・あるいはその前に開かれる
軍縮小委員会等に作業が残されてはおりますが、安全保障の形式の方からいいますならば、少くとも二つの軍事同盟の上に立って
お互いが不可侵を
約束したら一応はどうか、暫定的な措置、
ソ連もまた
アメリカもそういうこと自身に必ずしも反対ではないと
考えている。さらにもっと進んで、いわゆるチャーチルが約二年前に唱導し、われわれ
両派社会党も少くとも去年以来基本においては一致している。それは対立する両陣営を含めて、両方が入って、
お互いに不可侵を
約束する。ただ不可侵を
約束しただけではまだ
信頼感が十分ではございません。従ってもしそれでも侵す者があったならば、
侵略国を助けない、そうして
侵略された国に各国の
憲法等の範囲内において必要なる援助を与える、こういった
意味の新ロカルノ
方式といいますか、従来の安全保障のほかに新たな安全保障をし、両陣営が加わった相互不可侵、相互安全保障の
方式はどうだということ、今回も少くともイーデンによって明瞭にこれが提示されておるのでございます。それぞれの思惑は違いますが、まあ
ソ連の言っておる全ヨーロッパ安全保障体系というものも構想そのものとしては理論的には正しい。ただ
ソ連の方はNATOをやめさせる、あるいは
アメリカの軍事基地を追っぱらうことが終局の目的である。しかし経過的には一応全欧州の安全保障条約を作る。ここ二、三年の間はまあNATOも、赤いNATOも存続するというような過渡的なことを
考えて、逐次こういったようなとの軍事同盟の対立からのがれていくような、しかも安全保障を自分も持ちつつやっていく
方向に進んでいきつつあるやに
考える。やはりこのことは
世界的に大きな新らしい方法ではないか。
さらには
佐多君が指摘された各国の
防衛力の問題も、今直ちにそこまではいかないにしても、真に原子兵器の査察制度が何らかの
米ソ間に
話し合いができれば、それをきっかけとして各国の
軍縮ということも具体的に日程に上り、われわれとしてはそういうことを念頭におきながら、
日本の
防衛問題についてはやはり
憲法の理想を追求すべきだと思うのですが、
防衛問題は別として、そういう
意味からこの安全保障の形式の問題は、これは確かに
佐多君が指摘されたように、
日本がサンフランシスコ条約でとにかく
独立国になった。そのとたんにおいては、確かに今の
国際的
情勢に比べればまことに険しい、もう第三次
世界大戦に
発展しかねまじき
朝鮮動乱が
日本の目の前で起っている。そのときに全く非武装である
日本がどうしたならば安全保障を得られるか、その
状態においてできたのが、よかれ日米安全保障条約である。もっともその前に中ソ友好同盟条約が先にできており、これらの
事態は一応歴史の事実として、われわれは観念から否定しても、これは政策にならん。しかしその上に立っていつまでも同じ軌道の上に走っているというととは、これは少くとも一国のステーツマン
鳩山さんがいつまでも同じレールで走っておられるはずはない。
そこでそういうところから
考えまして、一方における四
巨頭会談、あるいはヨーロッパにおける新らしい安全保障の
考え方はどう出るか、これはやはり
日本の方にも移して
考えていつまでも日米安全保障条約、中ソ友好同盟条約の対立のままでやっていく、またその上に立った再軍備の強化ということだけで問題を
考えていくのではなくて、真にあなたの言われる友愛
外交の精神を生かそうとするならば、
極東におけるやはり新ロカルノ
方式というような方に頭を切りかえていく必要がある。私はこの点については、今回申し上げるのではなく、もうすでに数回にわたって本
会議における
質問、あるいは
外務委員会における
質問等においてあなたにも、また
外務大臣にも申し上げた。何も私は先見の明を誇るわけでも何でもないのですが、確かにそういうことは
一つの具体的日程に上らんとしつつある。
政府とされては、
総理大臣としては、こういったような
日本の安全保障をいきなり捨ててしまうというのではなく、さらに進んだ形式としての新ロカルノに入っていく、そうしてその新ロカルノによってほんとうに
国際情勢が、真に、
希望でなくて、現実に緩和していくならば、これは日米安保条約や中ソ友好同盟条約は解消していく。こういったようなことをこの際十分にお
考えになり、適当な措置をとるような御準備があるかないかということをまず第一点として伺っておきたい。