運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1955-07-26 第22回国会 参議院 外務委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月二十六日(火曜日)    午前十時二十二分開会     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     石黒 忠篤君    理事            鹿島守之助君            草葉 隆圓君            羽生 三七君            苫米地義三君    委員            梶原 茂嘉君            後藤 文夫君            佐藤 尚武君            岡田 宗司君            佐多 忠隆君            曾祢  益君            井村 徳二君            野村吉三郎君   国務大臣    内閣総理大臣  鳩山 一郎君    外 務 大 臣 重光  葵君   政府委員    内閣官房副長官 松本 瀧藏君    法制局次長   高辻 正巳君    外務政務次官  園田  直君    外務省参事官  安藤 吉光君    外務省アジア局    長       中川  融君    外務省経済局長 湯川 盛夫君    外務省欧米局長 千葉  皓君    外務省条約局長 下田 武三君    外務省国際協力    局長      河崎 一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       渡邊 信雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査の件  (国際情勢に関する件) ○日華平和条約附属議定書第二項の有  効期間の延長に関する議定書締結  について承認を求めるの件(内閣送  付、予備審査) ○特別円問題の解決に関する日本国と  タイとの間の協定の締結について承  認を認めるの件(内閣送付予備審  査)     —————————————
  2. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それではこれより外務委員会を開きます。  本日は総理大臣の御出席をいただいたのでありますが、総理大臣は十一時半まで御在席下さるそうであります。それで、お申入れの委員諸君は順次御質疑を願いたいと思います。
  3. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ジュネーヴにおける四巨頭会談が済んだのでありますが、これはいろいろな意味を持っていると思います。われわれとしては、適当な機会に、この会談に対する意見あるいは希望その他を総理大臣自身から表明をしていただいて、日本の今後の国際関係に処する態度といいますか、決意を十分に披瀝していただきたいということをお願いをしていたのですが、どういう事情であるか、そういうことがなされなかった。まことに残念だと思うのですが、しかし、すでに過ぎ去ったことでありますからやむを得ません。しかし会談が済んだ現在において、ここへ集まった四巨頭おのおの国際緊張緩和に対してどういう気持態度を持っているかということは、おのおのはっきりとなって参りましたし、ことに会談が終ると同時に帰って、おのおの自国においても国会あるいは議員との会談において、おのおの態度を明瞭にされるはずになっておる。さらに会談に出なかったインドであるとか、中国であるとか、その他ドイツ等々においても、責任のある首相あるいは外相が、おのおのとの会談評価と、これが将来へ及ぼす影響をいろいろ説明している、その意見も述べておると思います。従って私はこの機会に、鳩山総理が、この会談をどういうふうに評価をされ、冷戦世界平和、そういう問題を、今後どういうふうに見通されるかという、大きな見通しの問題をまず第一点としてお尋ねをしたいと思います。
  4. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は、四巨頭会談が、世界平和のために一歩前進した成果を収めたということを非常に喜んでおります。佐多君の言われるように、ある機会をつかまえて巨頭会議に対するわれわれの期待する信念を発表した方がいいというようなことを考えたのでありますが、議会における本会議あるいは委員会における質問応答によって、われわれの考え方が表明せられましたものですから、特にわれわれの希望を述べることの必要を感じなくなったので、ちゅうちょしてしまったのでございます。四巨頭会談の結果、冷戦の収拾がどの程度においてつくものかは、まだ確実ではないと思いますけれども、とにかく冷戦が終局の方に一歩前進したということだけは疑いがないような気がしております。どうかヨーロッパにおけるこの空気が、アジアの方面にも伝わって参りまして、アジアにおいても同じように、冷戦影響というものが少くなることを希望している次第でございます。
  5. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 とにかく冷戦が終止されたかどうかは別問題として、冷戦終止方向に、方向は大きく切りかえられたということは、ひとしく認められた点であると思います。そういうことを前提にして、さらにその方向を積極的に推進をし、平和の確立の方途を具体的に講ずるということが、日本をめぐる周囲の情勢としてだけでなく、日本自体もその中にあって、ある意味での積極的な動きをしなければならない時期、段階であると思うのでありますが、そこで、こういう環境こういう方向前提にして、一体、日本は、これまでのアメリカとの関係、さらには他方の中国あるいはソ連との関係を、この情勢を前にして、さらにどういうふうに推進するとお考えになるか。方向としてどういうふうにやろうとお考えになるか。と申しますのは、日本アメリカとの共同防衛、従ってそれを前提にする日本防衛力漸増という方針は、無責任軍国主義が横行をしている、従って場合によっては直接侵略もあり得るということを前提にして、そういう国際情勢判定のもとに立って、との方針がきめられたと思うのであります。しかるに、との会談を契機にして、そういう情勢、形勢が非常に大きく切りかえられたというふうに思いますので、そういう関連において、それらの点をどういうふうにお考えになるか。次にその点をお伺いしたいと思います。
  6. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) とにかくソ連中共との関係におきましても、やはりとの冷戦影響を少くしなくてはならないのでありまして、現在日ソ交渉中におきましても、とにかく両国の間において、お互いに領土を尊重し、主権を尊重し、そうして国際関係を正常にしようということだけは、お互いの間に合意が成立をしまして、ほとんど成立しておるのでありまするから、冷戦関係というものは少くなっていく。そとにもしも貿易その他の交通関係が成立して、増進いたしましたならば、お互いの疑惑も去って、ほんとうの国際関係正常化が事実上実現できると考えるのであります。
  7. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 特に私がお尋ねをしたいのは、日米関係日本アメリカとの協力関係という面においてはなるほど違わないとおっしゃるでありましょうが、その内容として、先ほど申しましたように、無責任軍国主義が未だ横行しているという認識、あるいは従って直接侵略もあり得るのだという問題、そういう国際情勢判定、これは対日講和条約が結ばれたあの前後、朝鮮動乱が未だ火を吹いていた時代国際情勢判定としては、あるいはその現実の認識としては正しかったかも知れないが、しかしその後の推移、特に今度の会談以後は、そういう判定を大きく変えなければならんという情勢に立ち至っておると思うのでありますが、その点をどうお考えになるか。従って、もし変えなければならないとすれば、それに照応した日本方向、あるいは日米協力内容等について、どういうふうな変更なり改訂をしなければならないとお考えになるか、その辺をもう少し、方向だけでよろしうございますから、その内容の詳しい点はさらに外務大臣にお聞きしたいと思いますから、方向をどういうふうにお考えになるかをお答え願いたい。
  8. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 現在の世界の平和が、力による平和というか、力のバランスによる平和ということを考えざるを得ないと私は思っておるのであります。ところが力による平和というものは決して確定的のものでもなく、永読性があるわけでもないのでありまして、友好関係が諸岡との間に成立して、国際関係正常化してこそ、初めて真の平和がくるわけでございますから、真の平和を追求するために四巨頭会談というようなものも生れてきたのだろうと思います。従って、もしも友好関係が復活いたしまして、国際関係が、友好関係によって平和をもちきたす、正常化されるというような度合が深くなりますれば、力によっての平和を希求するということはできないはずである、それであるから、世界の平和が、国際関係お互い信頼して、誤解が消えて、そうして平和が希求で送るというような度合が深くなれば深くなっただけに、力による平和に対する重みというものは減ってしかるべきだと考えております。それですから、もしもアメリカソ連の間において、原爆や水爆の使用の禁止だとか、あるいはこれを使用する場合の制限だとか、その他において約束ができたならば、その他において国際関係正常化せられることについて何か取りきめができますれば、力によっての競争は自然なくなるだろうと思うのであります。それがやはり東アの天地にもその影響が必ずくると思います。そういうふうな動きこそ、日本自衛軍をどの程度にするか、あるいは空軍や艦艇の部隊にするか、そのときがくるであろうと思う。現在におきましては、まだそういう期待の時期には達していないと私は考えております。
  9. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 戦争を避けなければならん、絶対に戦争をやらないというような話し合いの問題は、大体今度の巨頭会談その他でも、ほぼ方針として、態度として、気持としては、四巨頭の間には話し合いが一致したものというふうに考えていいのじゃないかと思う。特に軍縮の問題についても、軍縮をしなければなら安い、また軍縮が可能であるという方向の問題としては、ほとんど原則的な了解、一致に到達した。ただ問題は、どういう方式でどの程度においてそういう問題を処理するかということは、あるいは今後の外相会議なり、軍縮小委員会なり、あるいはさらには専門家会議触り、そういうものにまかせられると思いますが、しかし方向自体は、はっきりきまったと見ていいのじゃないかと思うのですが、その点について総理の御答弁は非常に、あいまいでありますが、そこをどういうふうにお考えになるか。従って、さらに兵力量の問題、その他防衛方式その他をどうするかというような具体的な内容の問題になれば、今総理お話しのように、この秋になり、あるいは年末になり、来年にならなければ、逐次具体化していかないかも知れないけれども、方針としては、今ここで切りかえ、あるいは方向を、見当をつけなければならないチャンス日本としても来年度の予算編成その他について、どうしてもその方向をはっきり総理大臣がまず明示をされなければならない段階にきておるし、ちょうどいいチャンスでもあるから、この辺で総理大臣がはっきりした態度を指示される必要があると思うのですが、そういう点をどういうふうにお考えになりますか。
  10. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 現在の日本が計画しておりまする自衛のための戦力というものは、これは一つ独立国が大体において常に保持していなくてはいけない程度戦力だろうと考えております。それですから、現在の国防計画を変更するのには、よほどの成果ジュネーヴの四巨頭会談が出してくれないと、現在の国防方針は変更するという程度にはいかないではないかというような感じがしておるのです。
  11. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 国防力内容をどうするかというような問題は、なるほどいろいろ見方その他によって見解があると思うのですが、しかし私が特に首相にさっきからしつこくお聞きをしておるのは、今の国防力内容あるいは方向は、さっきから申しますように、朝鮮動乱が火を吹いていた時代、従って、いまだ無責任軍国主義が横行しておる、従って直接侵略もあり得るのだということを前提にして問題を考えていたと思うのですが、その前提ががらっと変ったと、むしろ考えるべきじゃないか、その点をどういうふうにお考えになるか。従って、それが変ったとなれば、そういう国際情勢判定の下に立てられた今の方針が変えられなければならない。そういう点を総理はどういうふうにお考えになるか。
  12. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 第一の佐多さんの質問に対して答えましたように、ジュネーヴ会議がだんだんと成果をおさめて参りまして、米ソ関係がもう少し鮮明に、戦争状態戦争をあるいはしないかというような危惧が鮮明に払拭せられたというような場合になりましたならば、日本もその成果にかんがみて考案をしなければならないと思っております。ただ現在におきましては、日本国防程度というものは、ごく僅少なものでありまして、一つ独立国が常に保持していかなくてはならない、おもんぱからざる事態に処する用意を常に持っておる方がいいと思いますが、現在の国防計画程度のものは、今変更する意思は私としてはただいまの状態においては持っておらないのであります。
  13. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その防衛力内容、限界の問題よりも、もっと方針なり、態度気持の問題であります、それも、もう少し進まなければよくわからないとおっしゃるんですけれども、われわれが現在の平和憲法を持ち、その平和憲法を持つときの国際情勢判定なり、気持は、お互い国際紛争武力によって解決をしない、国際紛争解決には武力の行使を絶対にやらない、そして国際間においては平和的な信頼警戒面の払拭が可能なんだということを前提にし、その信頼感の上に立って、あの現在の平和憲法ができたと思うのであります。その後、朝鮮動乱その他があったために、その信頼感自身が失われつつあるというような判定の下に、従ってまたさっきから言うように、無責任軍国主義の問題だとか、直接侵略の問題だとかいうことを前提にして、今の憲法の改正すらやらなければならないというような方向を、前政府、あるいは現在の政府がおとりになり、さらに鳩山総理もそういうふうにお考えに今でもなっておるように思いますが、その認識をこの際改められる必要が絶対にあるのじゃないか。そうしてやはりわれわれの考えとしては、あの平和憲法の前文にうたった考え方戦争は絶対にあり得ないのだ、またすべきでないのだ、そうしてそれを避けるということが現実的にも可能なんだ、そういう点における国際的な信頼関係は、十分に回復できたのだというふうな考え前提にしなければならない。そういう意味で、総理自身考えを大きくお変えにならなければならない時期、段階であると思いますが、その点をどういうふうにお考えになるか。
  14. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は先刻申し上げました通りに、現在においてはまだ私の意見を変更するという程度にまで事態進行していないと思っております。
  15. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それでは、現在、今度の四カ国巨頭会談の意義をほとんど評価しておられない、まことに残念な事態であると思いますが、この点は意見になりますので、これ以上お話し合いをすることは差し控えます。  そこで、次の問題として、こういう情勢に立ち至りましたので、ソ連との国交回復の問題、あるいは中国との国交調整の問題、こういう点においても大きく考え方を転換をし、あるいは大きく積極的に進めなければならないと思いますが、この点は総理どういうふうにお考えになりますか。
  16. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ジュネーヴの四巨頭会談の結果、日ソ交渉並びに日中の交渉も好転するもののように考えております。
  17. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 好転するもののようにお考えになり、さらには好転させるべく積極的な努力をなされる必要が非常にあると思います。そのためには、さらにはこれは外交は内政の問題でもありますから、国内の国民大衆の世論の支持、これが非常に必要なことじゃないか。今度の四巨頭会談において、四巨頭がああいう態度をとり得た、あるいは、とらなければならなかったゆえんのものは、その背後の国民大衆というか、人民大衆というか、それがあくまでも戦争を避けて平和を確保しなければならないという非常に強い念願をむしろ反映をしたものと思うのです。そういう意味において、総が国民全体の気持をさらにいかに汲み取って、それを押し出していくかということが必要であると思うのです。幸いにして総理は、日ソ会談が始まります直前に両派社会党委員長会談をされて、日ソ交渉に臨む基本的な態度なり気持をいろいろお話になったのでありますが、そのときに、さらにこの会談はどういう方式でいつ開くかは別問題として、随時開きたいということをお話になったと私たちは聞いております。そこで、今、日ソ交渉段階がどういうふうになっているか。巨頭会談その他で、ある意味では停頓をしたようにも思いますが、きょうさらに第八回会談ですかが行われ、そこで、それからまた国会もやがておしまいになろうとしている。そこで、もう一ぺんとの機会両派社会党委員長とお会いになって、その辺の進行がどうなっておるか、さらに今後の見通しをどうお考えになるか、社会党の側はどういう希望をもっているか、それらのお話し合いをされる必要が、これは政治的な責任として、お約束をされた責任としてあると思うのですが、この問題の扱い方をどういうふうにおやりになるおつもりですか。
  18. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は両派社会党並びに自由党の総裁と話をしたいと、最初から約束したときからその機会考えていたのであります。何か松本君とマリクとの話し合いがある程度まで進んだならば、話し合いをしたいと思っていたのでありますけれども、進行が思ったよりも遅々としておるものですから、それで、ただいままでちゅうちょしていたのでありますけれども、国会終了になりまするから、国会終了前に三党首と会談をして、今日までの経過を御報告をして、同時に私がどういうことを考えているかということをお話しをしたいと思っております。
  19. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 佐多委員に申し上げますが、あと十分ばかりでお申し込みの台湾の件なども含めて……。
  20. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 はい。……ぜひそういうふうな機会を早く持っていただきたいと思います。  それから、実は本日総理に御出席を願ったのは、台湾の問題を中心にして御意見を聞きたいと思ってお願いいたしましたので、その点に移りますが、この四巨頭会談で、極東の問題が、ただ単にソ連のブルガーニンから提案されただけで、ほとんど取り上げられることなしに終りました。これに対しては私たち非常に遺憾の気持を持っておるのですが、しかし極東問題の話し合いという点は、やはり消えたのではなくて、今後何らかの形において次に大きく取り上げられるような傾向にあると思うのですが、特に台湾の問題、あるいはインドシナの問題、さらには朝鮮問題等をめぐっての会議が必ず行われることになるだろうし、また日本としても行われなければならぬと思う。特にバンドンアジアアフリカ会議中共周恩来が強調をしていたことは、アジアの問題はアジア諸国のイニシアティヴにおいて取り上げ解決していく方向態勢をぜひ作りたいものと思う。そういう意味において、日本もぜひその中に一枚加わってほしいということを、実はたびたび周恩来自身が話しておったのでありますが、そういう態勢がこれまでとられておらないことを非常に遺憾に思うのでありますが、これからそういう態勢になると思います。すでにインドあるいはビルマの総理がいろいろその折衝をいたしておるようでありますし、さらには中国アメリカとの直接会談を開くべしという問題のときには、コロンボ・グループ五ヵ国がその中に入ったのみならず、フィリピン、タイの代表もその中に入って話し合いを進めたのでありまして、その結果が、周恩来アメリカと直接に折衝に入る用意ありという声明になって出て参った。今後あの問題は非常に大きく展開をしていくと思いますが、従ってそういう傾向にあるときに、日本もまたその中に入って主導権をとると言っては少し語弊があるかも知れませんが、それらの問題を積極的に推進する一国となる必要がぜひあるのじゃないかと思うのですが、その点を総理はどういうふうにお考えになっておりますか。
  21. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 各国とも台湾海峡における緊張が平和的に解決せられることを希望していると私は信じています。その台湾海峡における緊張緩和のためわれわれもまた努力をせねばならないと思っております。そういう機会がいつ来るかはわかりませんけれども、そういう機会のありまするときには、日本としてもこの世界平和に対する日本国の義務を果して参りたいと考えております。
  22. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その機会があったときにはというような情勢待ちという態度は、もはや許されないのじゃないか。特に極東の問題、あるいは台湾をめぐる諸問題については、そういう情勢待ちでなくて、日本自身が積極的に入っていって、そういう情勢を作り上げる。そうして、そういう会談が行われる空気日本も一員となって作り上げるにあらずんば、その会談が始まったときには、ついに、つんぼさじきに置かれ、たな上げされておるという結果になると思う。これはバンドン会議のときにおいてすでに試験済みであると思うのですが、従ってわが国は、今からこの積極的な話し合いの場を作るように積極的に働きかけなければならぬ。特に昨日、その前ですか、あたりでも、すでにジョージ・アメリカ上院議員外交委員長は、中国アメリカとの話し合いを積極的にやるべきだということを向うですでに発表をしております。さらには今日あたりの新聞によると、中国アメリカとは直接な話し合いをやる。これはもちろん大使級話し合いではありましょうけれども、大使級話し合いをするという。しかも八月一日からやるのだ、その場合には、単に捕虜の釈放の問題だけでなく、今までに懸案になっておる問題についても話し合うのだという態勢になっている。このことはすぐ引き続いて外相会議なりなんなりに発展していくことを意味しておるし、さらにこれがそういう会議発展すれば、単に直接にアメリカ中国だけの会議でなくて、アジア諸国会議発展をし、利害関係諸国会議というやうなものに発展もする、そういう情勢は非常に近づいてきていると思うんですが、従って、その情勢待ちでなくて、日本自身が直接にその問題の中に介入をしていって、ある意味での主導権をとるという必要がある。その端緒になるのは、今政府の方でお始めになっておる在留邦人帰還の問題の交渉であると思いますが、この交渉を、単に領事間の、あるいは総領事間の話し合いでなくて、もっと上級話し合いに移すのみならず、この問題だけでなくて、今いろいろ中国との間には懸案の問題があります。それらの諸懸案をさらに討議をするというような議題についても拡げるし、さらには、それに参加する人についても上級に上げてゆくということが、この際至急に必要であるし、その準備を至急になされなければならないと思うんですが、その辺は総理大臣はどういうふうにお考えですか。
  23. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 政府情勢待ち態度について佐多君は当らないと思いますけれども、とにかく国論が一致して、そうしてわれわれが東亜の諸国と緊密な提携を得て、そうして問題が解決できるというような幾分かの手がかりというか、自信を持つんでないと、なかなか飛び出しましても結果がうまくいかないような気がしております。たとえば朝鮮問題などについても、北鮮南鮮との融和を非常にこいねがっておるわけで、両方とも交渉したいような気運におるのでありますが、ただいま飛び出して北鮮話し合いをすれば、南鮮は非常に悪感を持つというような状態でありまして、飛び出すということが必ずしも成功を持ち来たすとも考えませんので、しばらく構勢を待って行動をとるのが私は安全ではないかというような考えを持っておる次第であります。
  24. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 朝鮮の具体的な問題をお出しになりましたが、そういうふうな場合に、日本だけがそれに働きかけるというような形になれば、今みたいような情勢が出てくると思んですが、そういう方式でなくて、関係国会議その他で問題を打開してゆくというような方式をとれば、必ずしもそうでない、むしろ緊張は緩和してゆく方向になると思います。少くともそういう用意を大至急にやられなければならない。どういう解決の方途なり、どういう方式考えるかというようなことの準備、検討は大至急になされなければならないと思いますが、そういうふうなことをどういうようにお考えですか。
  25. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 佐多君と同じように考えます。準備や用意は常に必要だと思います。
  26. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 私だけ時間をとりましても何ですから、一応総理にはこれぐらいにして、あとは外務大臣に……。
  27. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それでは曽祢委員
  28. 曾禰益

    ○曾祢益君 ただいま私から総理にお伺いしたいような多くの要点については、同僚の佐多委員から御質問があり、またある程度総理の御答弁もありましたので、なるべく重複を避けて御質問したいと思っております。  四巨頭会談の結果に対する総理評価といいますか、これは大体私たちも同感の意をもって迎えておるわけであります。またただいまの質疑応答の中で、国際情勢が、いきなり緊張の緩和から、戦争あるいは戦争の脅威というものがなくなるような理想的な平和の段階に入っているか、入っていないかということについての総理と同僚佐多委員との認識の相違が私は現われておったように思います。遺憾ながらわれわれが希望した程度に、一挙に四巨頭会談が直ちに世界情勢を理想状態まで持っていったとは考えられないのであります。その点は、われわれの期待、希望と現実の歩みというものとズレがあることは、われわれは理想を追求しながらも現実に評価をしていかなければならないと思うのであります。私は防衛問題について意見をたたかわすつもりはないのでありまするが、しかし同様な国際情勢評価の上に立って、言いかえるならば少くとも大国同士が原子戦争の絶壁の上に立って戦争はできない。少くとも自分からは積極的な侵略戦争をやらないということを、ほとんど世界大衆の前、人類の前に誓ったと言ってもいい状態にあることは、非常に危険から遠ざかる方向に進んでおると思います。しかし同時にまだ力のバランスの上に立った状態が一挙に解消したものではないと思う。  そこで私が御質問したい第一点は、たとえば四巨頭会談の中心課題は、ドイツの統一、あるいは軍縮及びヨーロッパの安全保障の問題だと思います。そこで、まあ従来はお互いに共産圏は共産圏内の軍事防衛同盟を持っておる。また自由陣営といいますか、西欧陣営は西欧陣営の軍事同盟を持っておる。これを一挙にとりはずすというほどまだ信頼を回復しておらない。しかし同時に、この両陣営のそれぞれ持っておる軍事同盟のにらみ合いと、また軍事競争というものが、遂に水爆時代に入ってしまうと、その安全保障だけではかえって安全保障のにらみ合いの緊張を増しておるような傾向すらあると思う。従ってそこに、今度の四巨頭会談一つの今のこの行き詰まりをどう打開するか、お互いに自分の安全保障をしているだけではなく、しかも自分の安全保障措置が相手側に脅威となる状態になったときに、どうしたならばこの自分の安全保障を捨てないで、相手側にも安全感を与えるかというととろに問題がきている。こういう意味において、まだこれは十月の外相会談・あるいはその前に開かれる軍縮小委員会等に作業が残されてはおりますが、安全保障の形式の方からいいますならば、少くとも二つの軍事同盟の上に立ってお互いが不可侵を約束したら一応はどうか、暫定的な措置、ソ連もまたアメリカもそういうこと自身に必ずしも反対ではないと考えている。さらにもっと進んで、いわゆるチャーチルが約二年前に唱導し、われわれ両派社会党も少くとも去年以来基本においては一致している。それは対立する両陣営を含めて、両方が入って、お互いに不可侵を約束する。ただ不可侵を約束しただけではまだ信頼感が十分ではございません。従ってもしそれでも侵す者があったならば、侵略国を助けない、そうして侵略された国に各国の憲法等の範囲内において必要なる援助を与える、こういった意味の新ロカルノ方式といいますか、従来の安全保障のほかに新たな安全保障をし、両陣営が加わった相互不可侵、相互安全保障の方式はどうだということ、今回も少くともイーデンによって明瞭にこれが提示されておるのでございます。それぞれの思惑は違いますが、まあソ連の言っておる全ヨーロッパ安全保障体系というものも構想そのものとしては理論的には正しい。ただソ連の方はNATOをやめさせる、あるいはアメリカの軍事基地を追っぱらうことが終局の目的である。しかし経過的には一応全欧州の安全保障条約を作る。ここ二、三年の間はまあNATOも、赤いNATOも存続するというような過渡的なことを考えて、逐次こういったようなとの軍事同盟の対立からのがれていくような、しかも安全保障を自分も持ちつつやっていく方向に進んでいきつつあるやに考える。やはりこのことは世界的に大きな新らしい方法ではないか。  さらには佐多君が指摘された各国の防衛力の問題も、今直ちにそこまではいかないにしても、真に原子兵器の査察制度が何らかの米ソ間に話し合いができれば、それをきっかけとして各国の軍縮ということも具体的に日程に上り、われわれとしてはそういうことを念頭におきながら、日本防衛問題についてはやはり憲法の理想を追求すべきだと思うのですが、防衛問題は別として、そういう意味からこの安全保障の形式の問題は、これは確かに佐多君が指摘されたように、日本がサンフランシスコ条約でとにかく独立国になった。そのとたんにおいては、確かに今の国際情勢に比べればまことに険しい、もう第三次世界大戦に発展しかねまじき朝鮮動乱日本の目の前で起っている。そのときに全く非武装である日本がどうしたならば安全保障を得られるか、その状態においてできたのが、よかれ日米安全保障条約である。もっともその前に中ソ友好同盟条約が先にできており、これらの事態は一応歴史の事実として、われわれは観念から否定しても、これは政策にならん。しかしその上に立っていつまでも同じ軌道の上に走っているというととは、これは少くとも一国のステーツマン鳩山さんがいつまでも同じレールで走っておられるはずはない。  そこでそういうところから考えまして、一方における四巨頭会談、あるいはヨーロッパにおける新らしい安全保障の考え方はどう出るか、これはやはり日本の方にも移して考えていつまでも日米安全保障条約、中ソ友好同盟条約の対立のままでやっていく、またその上に立った再軍備の強化ということだけで問題を考えていくのではなくて、真にあなたの言われる友愛外交の精神を生かそうとするならば、極東におけるやはり新ロカルノ方式というような方に頭を切りかえていく必要がある。私はこの点については、今回申し上げるのではなく、もうすでに数回にわたって本会議における質問、あるいは外務委員会における質問等においてあなたにも、また外務大臣にも申し上げた。何も私は先見の明を誇るわけでも何でもないのですが、確かにそういうことは一つの具体的日程に上らんとしつつある。政府とされては、総理大臣としては、こういったような日本の安全保障をいきなり捨ててしまうというのではなく、さらに進んだ形式としての新ロカルノに入っていく、そうしてその新ロカルノによってほんとうに国際情勢が、真に、希望でなくて、現実に緩和していくならば、これは日米安保条約や中ソ友好同盟条約は解消していく。こういったようなことをこの際十分にお考えになり、適当な措置をとるような御準備があるかないかということをまず第一点として伺っておきたい。
  29. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 曽祢さんの考え方佐多さんの考え方もよくわかります。決して中共ソ連の言う友好同盟条約で常に考え、あるいはアメリカとの共同防衛によって日本防衛をしていくというように固まっていまして、そうして変更しないというような考え方は持っておりません。ソ連とのただいまの交渉におきましても、ソ連とはもう不可侵の条約みたいなことはお互い話し合いをしておるのでありまして、決して、お互いに領土を尊重し、お互いに侵犯しない、お互いに内政には干渉しないというようなことは、ソ連みずから進んで主張しているのであります。ソ連との友好関係というものは、国際関係正常化という点からだけならばすでに目的を達しているように私は思っているのであります。そういうような方向からいって、戦争のため、侵略戦争というか、侵略戦争という名前をつけなくても、戦争を目的としての軍備の充実というようなことは考えておりません。ただ一国として言えます点は、ただ不時の事柄に対しての幾分かの兵力を持っておる必要があると思っております。その程度の軍備をしたいというような希望を持っているだけであります。決して国際紛争解決手段として軍備を持ちたいというような希望は持っておりませんし、現在仮想敵国をこしらえて、それに対応するだけの軍備を持ちたいというような希望を持っておるわけでもありません。軍国主義の行き方になるようなことについてはより注意を払う必要があるとは思っております。あなた方お二人のような考え方もよくわかります。そういうような方向になることを望んでおります。  現に今日の世界各国においては貿易を振興すればいいというような話し合いをして、日本の価格を下げ、優秀な品物を出すということだけでは貿易も何もないのでありまして、結局貿易を振興すると言えば、相手国から何を買うかということが第一問題で、買ってそうして売るというような考え方でなければ貿易はできないのであります。国際間の非常に何といいますか、世界が小さくなってしまって、国際関係が互いに影響するということは深刻でありますから、結局お互いに平和の方が利益だ、お互いに平和によってわれわれは利益を得ておるのだということを体験することが必要でありますから、ソ連との国交を正常化するといえば・ソ連から何を買うかと、そういうことをまず考えるぐらいになってこそ初めてソ連との国交も調整されるのでありまして、そうしてお互いに平和の方が住みよい世界を作るのだということを体険するような方向に政治をやってゆかなければならないと思っております。
  30. 曾禰益

    ○曾祢益君 私の申し上げた点は、多少何といいますか、外交上の安全保障のテクニックに入っておるので、今の総理のお答えはちょっと見当はずれだと言っては失礼ですが、平行線になっていると思うのです。要するにたとえば日ソ交渉についても、総理が言われたように、お互いに国交を回復して平和関係を結ぶ以上は、お互に不脅威とか不可侵とか、内政不干渉ということはこれは当然です。問題はそこじゃなくて、総理も言われたように、私は防衛力のことを質問しておるのではないのですが、防衛力のことについてならば、ソ連はむしろ日本防衛力を持つべきである、ある程度、そのことはソ連日本との関係じゃ問題にならぬ、ソ連の少くともこの間のマリクから示されたと称せられる立場と、従来とってきた立場をそっくりそのままに受け取るならば、私はそれは最終的な態度だとは思わない。防衛力は持ちなさい、しかし外国の軍事某地は置くな、すなわち露骨に言えばアメリカとの、いかに防衛的と言っても防衛協定を結んではいけない。つまり言いかえれば、条約によって日本を中立化する、そのかわりもちろん非武装中立ほんということはあり得ません。空想では持ってよろしい、こういう一つのあれがソ連の立場だと思う。そういう安全保障の方式日本として私は適当でない。であるから日本としては防衛力を持つという前に、日本外交上の安全保障、集団安全保障をどういう形で持っていったら日本の安全にもなり、また同町にソ連中共との和解にもなるか、との安全保障の方式というものをもう少し真剣にお考えになる必要はなかろうか。防衛力の問題ではなくて、防衛協定の性格と相手国の問題を、この点をお考え願いたいと、このことを申し上げたわけです。
  31. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 新ロカルノ条約、このような形式において進展してゆく方がよろしいと考えるが、お前の考えはどうかという御質問ですか。
  32. 曾禰益

    ○曾祢益君 そうです。
  33. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私もあなたと同じように考えております。
  34. 曾禰益

    ○曾祢益君 これも佐多委員から御質問になった点、また繰り返すことになって恐縮なんですが、やはり私は佐多委員と全然同感であって、どうも今後アジア問題が、どうしても国際会議の形においてアジア緊張緩和の措置がとられなければならぬ。それにはアメリカ中共がどうしても席を交えて話してみることが絶対必要である。こういう形勢になりつつある。しかもこれは非常に私は不幸なことだと思いまするが、また議題をあまり拡げて失敗しちゃならなかったところの四巨頭会談であったので、極東問題を次に回したことはやむを得ない点もあったかもしれません。現実には火のつきそうな台湾問題あるいはインドシナ問題等について、少くとも外相会談なり関係会談の原則だけはきめて、そうして四巨頭会談が別れるのが、日本の立場からいっても望ましかった。しかしそれはそれとして、そういうふうにアジア緊張緩和国際会議が開かれそうな形勢にある。そうなってくればこれはただウェイト・アンド・シーだけでなくて、もちろん大きく言えば準備の時代でしょう。大きく言えば準備の時代で、今直ちに日本がこのアジア関係国会議を主催する、あるいは主唱するといったならば、これはロンドンのエコノミストに笑われるような、日本はいつまでも子供じゃない。そういう子供らしいことじゃなくて、そういうふうに大きく変りつつある。しかも台湾の問題については、日本は領土としては終局的に私は広い意味中国に返すつもりで放棄しておると思うのです。その中国がだれであるかは別として。しかしこの台湾問題をめぐる国際緊張が緩和するかしないか、これは日本にとって死活の問題なんです。朝鮮の問題と台湾の問題は日本の死活の問題です。であるから重大なる関係国の一人として、従来のアメリカのとってきた態度、従来の蒋介石の態度、また最近の人民共和国の態度等を総合的に見て、しかし日本の平和希望の立場が、日本みずから台湾はこうすべきだ、海峡の停戦はこうすべきだ、それから台湾の暫定的な処分、どういう地位に置かれるかということは大体こうすべきだ、中共中華人民共和国はどういうような国際的地位を与えらるべきかというようなところについて、日本独自の見解でもって、そうして適当な方法で、今鳴りもの入りでやることを佐多さんも言っておられるのじゃないと思う。  たとえばウ・ヌーさんが来たときにお話があったかもしれませんが、外交上のことですからお尋ねしませんが、それにコロンボ・グループとも折衝をし、イギリスにも話しかけ、またアメリカにも話しかけ、同時に日本と中華人民共和国との間にももう少し、ただ引揚げ交渉とか、あるいは民間団体等を通ずる貿易の協定の促進をやるだけでない。もう少し政治的な段階に入った交渉がなされなければならない時期が来ているのではないか、私はこう思う。従いましてお答えをこれ以上求めるのは困難かもしれませんが、できるならばそういう意味においてこの情勢にマッチした具体的な準備、あるいはこれに対する構想を持って、そうして準備並びに施策に当っていただきたい。このことを申し上げているわけなんです。何かそれについてさらに総理から伺うことができれば幸いです。
  35. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) アジア問題に関しまして国際会議というか、そういうようなものを開催する機会においてとるべき方針を明確にするというようなことについては、佐多君にお答え申した通りに、これから準備をし研究をしますが、そういうような機会を逸しないように、そういうような機会を持つように努力するということを申し上げまして、私の答弁とする次第であります。
  36. 曾禰益

    ○曾祢益君 最後に一点だけ、日ソ交渉について総理国会終了前に三党の党首の会談をされて、経過の報告並びに意見の交換をされることは、非常に私は、まさにそうなきゃならぬ、非常にステーツマン・ライクなことで、けっこうなことです。それでぜひそういうふうにやっていただきたいと思う。総理はまあ全体的な国際情勢から見て、日ソ国交調整問題が進展あるいは好転するだろう、あるいは四巨頭会談の作った、雰囲気が日ソ交渉をも好転させるだろう、こういうふうに言われました。私たちもそういうふうに希望します。また一般的に決して空気は悪いとは思いません。しかし同時にこの日ソ交渉については、今、先ほど申し上げましたような、これは日本及び極東の安全保障の方式をどうするかという問題ですね、こういう問題。それから何といっても領土の問題、これはそう簡単に解決するような国際情勢にあるとは思いません。ことにソビエトが、今度四巨頭会談に出たあの態度を見るならば、われわれは決して弱いから出てきたのじゃないと思う。欧米陣営が言ったように、ソビエトの内部に弱点があるから何かものごいにきたという態度ではないということを言っておりますし、これは決して架空な強がりじゃない。それだけの自信の上に立っている。従ってこの交渉は、ことに領土問題等については相当な困難が、日本の正しい主張貫徹に困難があるということをこれはやはり率直に認めながら、ただ好転しそうだというような甘い考えで行って、もしぶつかったときにはもうこれはやめたというようなことでは、これは四巨頭会談と同様に、そういうことは国民も許さない。世界も許さない。会談を始めて、これはデッド・ロックだからやめるということは許されないということを、これは十分にお考えになっていらっしやるだろうと思いますが、だから私は決して暗いことを言うのではありません。単なる楽観放送だけではいけないということについての深い御認識を持っておられるかいなかについて最後に伺いたいと思います。
  37. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ソ連との国交調整、このくらい必要なことはないと思いますので、ソ連との国交調整についてはきわめて執拗に忍耐強くやっていくつもりでございます。
  38. 羽生三七

    ○羽生三七君 両派社会党外交責任者からそれぞれ当面の外交問題について適切なお尋ねがあったわけで、それに対して総理大臣のお答えがあった。ところが総理大臣、ぜひ敢行していただきたいことは、この日ソ交渉が、曽祢委員からもお尋ねがあったが、日ソ交渉が成功するか、保守合同の話合いがどういうことがあっても、総理大臣が現職で仕事を完成するという保証があるかどうか。これははなはだ立ち入った、質問で、外務委員会としてはどうかと思いますが、しかし私は国民の中ではやはりそういう疑問を持っておる人もありますし、それから食堂の中でざっくばらんに話しておっても、そんなことまじめくさって話しておっても、そういうことをいつまでやっておっても、まじめに一体総理大臣がいつまでやっておられるかという話も実際に食堂では出るのです。それから今申し上げました保守合同の問題も、一体自由党の大野さんは十一月にはどうとかこうとか、三木さんは来年の三月であるとか、こんなことであるからこそロンドンの松本全権が一体後向きでものを言うということも起るし、それから議員のささやきも、一体、絶対にまだしばらく続くという総理大臣でないという人に、何をあなた方ばかな質問しておるかということも起る。国民もまたいろいろ疑問を持っておる。だから今両委員にお答えになったお考えを、あなたがぜひ実行し、あるいはそれをし遂げる意味でも、あるいはことに日ソ交渉を完成させる意味でも、その問題が片づくまでは現職にとどまるのだというかたい約束がないと、松本全権だって身が入らないし、私どもだって何か頼りないのですが、責任者、総理大臣がちょっと簡単にお答えになったということではなしに、あなたが責任を持ってお答えになったことをやるのならば、十分に交渉を取りつけて、保守合同なら保守合同をされるべきだし、そういうことを確約されないでやっている保守合同というものは日本の場合よくないと思う。どうですか。
  39. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は日ソ交渉をやりたいということを考えましたのは、ちょうど私が病気になりました年ですから四年前なんです。それでその当時はアメリカにおいて一九五二、三年ごろがどうも米ソ戦争が始まるだろうという年だったんです。そういう本を寝床の中で人に読んでもらって私は聞いていたのですが、私はどうしてもソ連日本との国際関係戦争状態に置いておいたならば、これはとんだことになると思いまして、それで日ソ間の戦争状態を終結せしめるということをこれは果さなければならないとこう考えて、病気になった年の九月の十二日に保守合同の……、そのときはやはり日ソ交渉をして、そうして戦争状態を終結させなければいけないと考えまして、それ以来一生懸命努力をしている。それですからどうしてもこの問題だけはやりたいと思っております。
  40. 羽生三七

    ○羽生三七君 やって下さい、ぜひ、社会党も応援しますよ。(「全国民が応援しているからやりなさい」と呼ぶ者あり)
  41. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それでよろしうございますか。
  42. 羽生三七

    ○羽生三七君 ええ、よろしいです。     —————————————
  43. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それではこれより日華平和条約附属議定書関係および特別円問題解決に対するタイ国との協定関係の問題に入りたいと思いますが、羽生委員の御質問は特別円でしたね。
  44. 羽生三七

    ○羽生三七君 特別円自体ではないのですが、それに関連してですが、よろしいですか、この外債問題。
  45. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それでは特別円問題の解決に関する日本国タイ国との間の協定の締結について承認を求めるの件に関しまして御質問を願うことにいたしまして、この件に連関して広く一般的説明及び賠償に関する件等についてもお尋ねを願うことにいたしましょう。
  46. 羽生三七

    ○羽生三七君 実は私のお尋ねしたい外債に関する問題は、この間予算委員会外務大臣お尋ねしたことでありますので、私はきょうはごく簡単にお尋ねをしたいと思います。  この前もお尋ねしましたように、日本のこの外債という問題になりますと、まあビルマが済み、現にこのタイ国の円問題が上程され、それからフィリピン、それからインドネシア、アメリカのガリオアその他のこまかい問題もたくさんあって、しかも各国から日本に外債の問題が殺到するという情勢にあるわけです。しかもそれは場合によると年間三百数十億円の支払い額に上るであろうといわれて、日本の予算に関連する点も重大なことがあると思うのです。そういう場合に、私は日本の総合的な経済力を判断して、その一環として、年間日本が支払い得る外債の額はどの程度のものであるかという想定の上に立って、まだ残された他の諸国との交渉に当るべきであろう。その意味で外務省が他の関係省とも連絡をとって外債支払いに関する一般的な総合対策を持つべきであろうという考え方を持ってきたわけであります。委員長ちょっと速記をとめてもらえませんか。
  47. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  48. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 速記をつけて。
  49. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) その点については過日予算委員会でしたか、同じ質問に対して私がお答えをいたした通りであります。これはもう終戦後十年以上になり、独立国となった以上、外国の補償要求、賠償を含めたいろいろな金銭上の要求、これがもし条約上日本の義務であるならば、また条約にはっきりしなくても日本責任となるべきものであるならば、これは日本としてはその補償について十分誠意をもって解決するということでなければ、敗戦国の国際信用を立て直していくということも困難だと思います。そこでこれはぜひやらなければなりません。その点は日本の財政上困難なことが非常にあることはむろんのことと思います。それでありますから、それに対するあんばいはいろいろ考えなければならぬし、またあまり財政上に不可能な負担にならんように交渉も気をつけなければなりません。しかし、大体において相当な負担になることは、敗戦国の国民として、将来国を立てていかんとする以上は、どうしても負担していかなければならぬ国の責任だと、こう考えるのであります。そこでこの問題を全般的に総合的に考えていかなければならんということは当然のことであります。また総合的に考えていかなければ案も立ちません。そこでこれを総合して考えるのにはどうすればいいかということでございます。  この点についてはいろいろ私も慎重に研究をいたしてみました。終戦後たしかある時期においては賠償庁とかいうのがあったのでありますが、そういうような機関を新たに起してこれに処理させるということも一つの案でございましょう。案でございましょうが、たとえそういう機関を起しても、金のことは大蔵省に相談しなければならん。それから将来賠償を通商上にどう生かすかということは、これは通商産業大臣に相談をしなければいかん。それがまた日本の農産物にはむろん関係がございますから、そのときはやはり農林大臣と相談しなければならん。対外折衝はどうしても外務大臣責任を離れるわけにはゆきません、一般的に。そうしますというと、うっかり新たな省を作るということは、ただ機関を複雑にするということに過ぎないことになります。事物的にも政治的にも相談する機関がそれだけふえてくる。そこでまた意見がそれだけ多くなって、内輪のまとめ方がそれだけむずかしくなるということにもなる。これはうまく行けば非常な力に触るからいいようなものでありますが、ややともすると機構を複雑にするということが能率を上げ得ないということにもなるのでありますから、この問題を今何というか、機構いじりのおもちゃにされちゃ私は大へん困ると考えておるのでありまして、それかといって従来のように関係各省が集まっていろいろ話をする、おざなりの話をしちゃこれはやはり何もならん。大いに積極的に推進力を、つまり事を進めてゆく精神を吸き込まなくちゃいかんと思うんです。  そこで私は今考えておりますことは、やはり今ある機構をいかに連絡を密接にし、考え方を統合し、総合して、そうして内閣の責任としてこれを積極的に推進してゆき得るかということの組織を考え出すことが必要だ、こういうふうに考えておる。そこで今内閣の方で考えてもらっておることは、どうしたって必要な各省大臣は……、その上に総理、特に外務大臣としては中心的責任を持っていかなければならん、これを中心として、そうして四つ五つの主として経済閣僚をこれに集めて、これに配するに有力な事務当局がやはり下部機構をこしらえて、しょっちゅう定期的に集まって検討をする。それには財政全般から考える。また個個の問題については外交折衝をそのつどこれに報告してゆくというような考え方をもって、つまり考え方はやはり何というか、あまり新式ではございませんが、しかし能率を上げるために、画期的に一つこれに活力を入れてやるという方向に進んだ方がいいんじゃないか、一応それでやってみようじゃないかというので、今内閣において考究、検討をしておるわけでございます。そういうようなとともして案を立ててゆく。これに対しては国会の開会中はむろん参衆両院の外務委員会とは実質的に十分連絡をして、そうして内外の御協力をいただいて積極的に進めてゆく、こういう考案がいいんじゃないかと考えておる次第でございます。
  50. 羽生三七

    ○羽生三七君 私のお尋ねに対するお答えは、他の委員の方がまだ外務大臣に特別の御質問があれば、あとから事務局からお答え願ってけっこうですが、それは特別円の問題のみならず、先ほど申し上げたビルマ、インドネシア、フィリピン、ガリオア等のほかに、日本が対外債務として相手国から今現に要求を受け、また要求されんとするような問題はどこの国々、それから債務の内容というものはどういう性質のものかということについてかなりこまかくお知らせ願いたいと思う。これは外務大臣でなくても、事務当局からでもけっこうでございます。
  51. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) それは調査できております。私も大体頭にあります。お答えできますが、あるいは資料を差し上げてもいいですね、正確に……、その方がかえってよくはないですか。
  52. 羽生三七

    ○羽生三七君 それでけっこうです。
  53. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 資料を差し上げましょう。それで御研究願いたいと思います。
  54. 羽生三七

    ○羽生三七君 資料を出していただくときに、これはこういうものがあるというだけでなしに、そこにいっている額はどういう程度かということも、それは上と下との幅はいいですが、そういうこともお願いしたい。それは政治的の問題も何もないのですから、そういうこともおよそ……。
  55. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) それはこの委員会で言われることは当然お出ししなければならないと思っております。
  56. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 本日まず伺いたいのは、特別円問題の解決に関する日本国タイとの間の協定に関する件でござい捜すが、この第二条に関しまして、日本国の資本財及び日本人の役務の提供に関し、今日すでに合意された条件及びその態様ができているでしょうか、その点伺いたい。
  57. 中川融

    政府委員(中川融君) ただいま御質問の点でございますが、タイとの間の経済協力の内容でございますが、これにつきましては今お手元において御審議願っておりますこの条文に書いてあります以上のことは、何らまだ先方との翻し合いができておりません。これは時間の関係もありまして、かつまたタイ側におけるいろいろの準備、タイ側におけるいろいろの経済計画、これらの準備ができておりませんので、タイ側にお送ましても、もう少し瞬間的のゆとりを持たしてもらいたいということでありますので、ここにありますように、条件及び態様は将来合意されるということだけで、詳細はまだきまっていないのでございます。
  58. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 次に、現在日本政府考えとしては、いかなる事業に投資またはクレジットを与えようとお考えになっておられまするか。またいかなる種類の資本財及び役務を提供しようと考えておられますか。この点伺いたい
  59. 中川融

    政府委員(中川融君) その点もただいま御説明いたしましたところと関連するのでございますが、要するに先方におきましては、目下タイにおける経済開発計画というのを今作っております。従いまして、これに最も合致するように、日本から提供される経済協力を利用したいという考えのようでござざいますが、その内容につきましては、まだ先方で検討中でございまして、こちらに示されておりませんので、われわれとしてもどのようなことにそれが使われるかということについては、まだ確たる観念を持っていないのが実情でございます。  なお日本側から出しますものといたしましては、ここに書いてありますように、サービス及び資本財ということになっておりますので、それに該当するものであれば、いわば何でも向うの要望に応じまして相談の上できめていくということになります。
  60. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 フィリピンの方はかなり具体的に積み上げ方式で、いろいろな要求している資本財、役務が出ておりますが、タイの方はそういう具体的のものはございましょうか。
  61. 中川融

    政府委員(中川融君) タイからはまだ何ら申してきていないのでございます。また内容についても、話し合いができておりません。しかしながら、一応タイにおきましての経済開発計画というものを、われわれが聞知している限りにおきましては、たとえば紡績でございますとか製糸、造船、製油、製糖、港湾建設、鉄鉱開発、製鉄、橋渠の建設、冷凍倉庫、製塩、このようなものが一応重点的に項目として先方の計画にあるようでございます。これはしかし正式に通告を受けているというわけではないので、いろいろの情報で聞知しているわけであります。
  62. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 この問題に関連いたしまして、ビルマの賠償の問題の実施の状況につきまして伺いたいのでありますが、まず第一に日本とビルマとの間の賠償及び経済協力は円滑に実施されつつあるのでしょうか、これは総括論としてどういうふうに考えておりますか。
  63. 中川融

    政府委員(中川融君) 前々からこの委員会でもしばしば御質問がございました。また御説明もいたしてきたのでございますが、ビルマとの間の賠償協定はすでに発効しておるのでございますが、実施の態様につきましては、こういう方式でやるという実施細目をすでに数ヵ月にわたって先方と協議いたしております。これがほとんどできましたけれども、一点ほどまだ話が合わない点がございます。そのために実施細目がまだ最終的には締結をみておりません。  なおビルマ側から実施したいという事業の内容につきましても、これまた最近まで内容の提示がなかったのでございますが、ごく最近に先方から一応の案が提示されましたので、それに基きまして今、日本政府部内で検討いたしております。従ってだんだんごく最近の機会にこのビルマ賠償が実施の運びに至る段階にきております。  なおすでに現在ビルマ側との別個の商業ベーシスで話し合いができましたものにつきましては、これらのものとは切り離して、今からでも実施し得るという手はずになっておりますので、その方の手はずも着々進んでおるということは御承知の通りでございます。
  64. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 未解決の問題はどんな問題でございましょう。大体の見通しとしていつごろ解決できるか。
  65. 中川融

    政府委員(中川融君) 実施細目につきましては二つ、三つ大きな点がございましたが、いずれも解決いたしました。今の両国政府間の大体の話し合いにおきましては、日本政府が現地の契約に基いて、日本の業者から物品の提供がありました際に日本政府が支払うわけでございますが、その支払いの態様を、大体先方の要望を入れまして、一応現実の支払いの一週間ないし十日前に日本政府からビルマ政府が指定する日本の一般為替銀行にこれを入れまして、ビルマ政府名義の口座に入れまして、その口座からビルマ政府が直接日本の業者に支払いをする、かような方法を合意したわけであります。  今残っておる唯一の問題は、その支払い事務を担当いたします日本の為替銀行を日本側は一行にしてもらいたい、これは御承知のように為替銀行は十二行ございますが、たくさんの銀行がこれに当りますと非常に複雑になり、かつ競争等も激甚となりますので一行にしたいというのがこちらの案でございますが、向うは必ずしも一行に限定しないで、複数にしてもらいたいということを言っております。この点は現実の支払い事務の便宜の問題等関係いたします。いわば専門的なことになりますが、一応その点につきましてまだ先方との話し合いがつきませんので、これだけが支払い方式について残っておる唯一の相違点でございます。しかしこれも程度の問題でございますから、目下ビルマと交渉中でございますが、ごく近い期間に何らかの形に話し合いがつくのではないかと考えております。おそらく来月初めにはこれの話し合いがつきまして実施のすべての準備ができる、かように考えております。
  66. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 経済協力についていろいろ問題があって、最初乗り気であったものがちゅうちょして、今は断念したものがあると聞いておりますが、ほとんど経済協力はだれもやり手がない、それはほんとうでしょうか。
  67. 中川融

    政府委員(中川融君) ビルマの賠償につきましては、御承知のように純粋の賠償のほかに経済協力という項目がございまして、十年間に五千万ドルに相当するものを資本財、役務の形で積み出す。そのためには日本は必要なあらゆる手段を講ずるということになっております。その五千万ドルの中がさらに二口に分れまして、合弁事業の形で日本の筆者から先方の業者なり政府に出資するものが三千万ドルになっております。あと二千万ドルが日本国から先方の政府に直接借款の形で出すものが二千万ドルになっております。  今御指摘の点はその三千万ドルの、いわゆる合弁事業で民間ベースでやる分でございますが、これがビルマ賠償協定ができますころよりも非常に日本側の各業界においては、ビルマに進出しようということで期待を持って、先方に調査団を派遣したり、先方の政府あるいは業者といろいろ話合いが行われておったのでございますが、最近までこれといって実を結ぶというものは実はないのが事実であります。これはいろいろ先方に実地に調査団等を派遣してみました結果、あるいは先方のいろいろ条件等を聞きました結果、血かなかこれが事業として採算の合うものである、あるいは必ず利益を伴うものであるという確たる見通しをつけることが困難なために、やはり本腰を入れて出るまで決意する日本の業者の方が少いのではないか。なおそれに関連いたしまして、いろいろ日本側におきまして、たとえば日本の輸出入銀行から金を貸すという場合にも、もう少し低利にしてもらうとか、あるいは保証を緩和してもらうとか、いろいろの要望もだんだん出てきておるようでございます。実情といたしましてはさようなことで、まだ現実に実を結んだものはないと承知しております。
  68. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 日本の事業家がちゅうちょするのはいろいろありますが、まず第一に税金の問題でありますが、最初設備の購入の際の関税がビルマでは無税だ、こういうように稲垣ミッションは考えたようですが、どうもビルマは税金をかけるらしい。また日本ではそういう事業で収入をあげるまで二、三年は事業税を免除する、これも非常にあいまいなのであります。そういう税の問題について一つ
  69. 中川融

    政府委員(中川融君) 日本からビルマに合弁事業に投資する際に、先方の、たとえば税の点でありますとか、あるいは強制収用の点でありますとか、いろいろ先方の政府による措置というものについてある程度の緩和措置、あるいは優遇措置というものがなければ、日本からはねかなか進出しないということは、協定締結交渉当時からわれわれとしてはだいぶやかましく先方に言ってきたところでございます。その当時、先方のウー・チョウ・ニエン代表は、ビルマにぜひ来てもらいたい、事業については、業者についてはあらゆる保護措置を講ずる。しかしあらゆる事業に来てもらいたいわけでもないので、一般的には外資導入法と申しますか、ビルマにおける一般外資導入に関する規則なり法律なりで律するほかない。しかし個々のもので特に来てほしいものについてはいろいろ便益措置を講ずるつもりであるということで、協定自体には、日本の資本に対する優遇措置というものを、われわれの希望程度には書けなかったのでございます。  従ってそういうことから、たとえば今の関税を賦課する問題であるとか、あるいは向うにおける法人税を課する問題については確たる保障が今ございません。ビルマ政府におきましては、最近外資に対するビルマ政府の政策というものについての数ヵ条にわたる方針を声明いたしましたが、それにおきましても、必要な事業についてはできるだけ便益をはかるということは書いてございますが、しかし今のような関税を免除する、あるいは法人税をしばらくの間免除する、こういうようなことはその項目に出てい払いようでございます。従ってただいまのところでは、ビルマ側はさようなことは考えていないのではないか。
  70. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 合弁事業の株式を将来ビルマ側が買い上げる場合、十年たてば買い上げるでしょうが、その際の株式の評価の基準について伺いたいのですが、それは額面ですか、それとも時価によるものですか。それと、合弁事業が利益をあげましたときには、日本に送金はできるのでございましょうか。
  71. 中川融

    政府委員(中川融君) 合弁事業ができました暁におきましては、ビルマ政府は社会主義の国家でございますので、おもな事業は政府が自分で経営したいという考えが根本的にあります。従って、将来これが強制収用されるのではないかという懸念があるのでございますが、これにつきましては、ただいま申しましたビルマ政府の外資に対する政策、声明というものの中にも一ヵ条ございまして、合意された期間、通常は十年以上は、新らしい事業を国有化しないことを保証する。松お国有化する場合には適正な補償を支払うということでございます。従って、大体十年は向うに収用されないということはわかっておるのでございますが、収用の際の適正な補償が何であるかというととが次の問題でございますが、これについては何ら声明にはございませんが、これも交渉の過程におきまして、ウー・チョウ・ニエン氏に対しまして、こちらからはその際の株式の価格といういうものも補償してもらいたい、額面価格では困るということを申したのでございますが、それらの点については、結局個々の契約をする際にビルマ側が十分日本の当事者と話し合う、ビルマ側がぜひ来てもらいたいという事業ならば、十分その補償の際には日本の業界の希望に合うような契約をする。一般的原則として、そのときの価格でもって補償するというようなことは勘弁してもらいたいという話がございまして、従って、これは一般原則としてはまだきまっていないのでございますが、事業々々によりまして、個個の契約で合弁事業の契約をされる際に、そういう項目をビルマ側政府交渉いたしまして入れるということになると思います。  なお、送金の点は、これは協定の際にも問題となりまして、送金についてはこれは外資法に規定することになるけれども、これはある限度内の送金は当然認める。つまり毎年生じます利益をどの程度送金するか、こういうことは、これはまた全額送金ということはあるいは許されないかもしれませんが、一定のパーセントは送金を認められるわけです。将来強制収用されたような場合には、当然送金が認められるということが大体向うの観念であると主張しております。今回の先方の方針の声明にも、送金ということがたしか原則的には書いてあったと思います。しかし、これも結局個々の契約で、それぞれ送金の際の保障については契約で進めるというのが先方の基本的な態度でございます。
  72. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 以上の問題が末確定であるので、日本の事業家が非常に不安を感じておりますが、そのほかの大きな原因は、輸出入銀行は経済協力に対する融資に対し必ず担保を要求する、またその所要資金に対しては七割限度しか融資しません。実際問題としてこの経済協力は、協定によって定められた国策的なものであります。すなわち、協定第一条第二項には、「日本国は……経済協力を容易ならしめるためあらゆる可能な措置をとるものとする。」、こう規定してある。それで担保を必要としないとか、貸し付けの限度を拡張するとか、もっと貸し付けを寛大にすることはできないでしょうか、この点をお伺いしたい。
  73. 中川融

    政府委員(中川融君) この経済協力の具体的に日本がどのような便益を講ずるかという点につきましては、政府、事務当局といたしましても、まだ最初のケースというものがはっきりした意味では出てきていない。それからビルマと同じような形のものが、たとえば今回タイ等においても大体出てくる、そういうふうないろいろなことがございまして、いろいろ研究はいたしておりますが、まだ最終的な結論が出るに至っていないのでございます。これは今後のいろいろの状況を見まして、関係当局と十分折衝いたしまして、何とかこの協定に書いてあるように、日本政府としてはあらゆる可能の措置を講ずるということを約束しておるのでございますから、できるだけ日本の財政なり金融なりの許す限度におきまして、できるだけこれを促進するような措置をとることは当然であると考えております。従って、たとえば金利でございますとか、あるいは担保でございますとか、そのような点は、七割しか許さない、融資をしないというふうな点をもう少し拡げることでありますとか、いろいろ問題があると思うので、この点につきましては種々さらに十分検討いたしたい、かように考えております。
  74. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 またかような合弁事業が将来ビルマにおける政変、革命等その他天災、不可抗力によって全部または一部損失をこうむった場合、補償してもらう方法がありますか。たとえば輸出保険制度をこの投資にまで適用することを考えて、一定の年数、すなわち経済協力期間である十ヵ年間保険によって保護されることはできないものでしょうか。  また伝えられる海外投資保険制度の設置によってこの危険は十分カバーされるのですか。またビルマにおいて現に日本工営とそれから鹿島建設において測量及び施行中のバルーチャンとラングーンとの間においてはインサージャンがまま出没いたしまして、派遣員の生命財産の保護は緊急の問題となっておりますが、何かよい対策はないですか。
  75. 中川融

    政府委員(中川融君) ただいま御指摘になりましたように、ビルマにおけるたとえば政情の不安の問題、あるいは現地におきましても治安が悪いというような問題から、ここに事業をされる方々はいろいろの危険があるわけでございますが、これの危険負担をどうするか。これは全面的に政府があとでそういう場合の危険を全部負担するということにすれば一番簡単でございますが、これは一般貿易との関連その他におきまして、やはりそこまでいくのは適当でないように考えられます。従って一般貿易の場合の輸出保険、危険保険、これと同じように扱うかどうかということになるわけでございますが、この点につきましてもいろいろ研究はいたしておりますが、まだこの結論は出ておりません。いろいろ御指摘の点もあるので、さらに通産当局とも十分検討いたしまして、考えてみたいと思っております。
  76. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 以上のように民間の企業家においては、ビルマの経済協力に対しては非常な不安を持っておるのでありますが、できうべくば以上の不安を排除して、民間の投資を活溌ならしめることが急務であると思うのであります。それが困難な場合は次のような案が考えられます。政府の所見を伺いたいと存じます。  第一案はビルマに投資する公社または政府がこの株式の大部分を持つ、たとえば目下本外務委員会で審議中の日本海外移住振興株式会社のような特別会社を設置することであります。これをもって合弁事業に進出せんとする業者の窓口にするのであります。かくすると毎年十年間三百万ドルを支出する必要はなくなる。資金は国内的には公社または特別株式会社が株式触り社債で集めればよいことになります。こういう公社案ということを民間で、実業家で言っておりますが、いかがなものでございましょうか。
  77. 中川融

    政府委員(中川融君) 御指摘のような開発公社案というのもたしかに一つの案ではあると思いますけれども、われわれといたしましては、当初の経済協力協定の趣旨から申しましても、できるだけ日本の民間の方が直接進出されて、そこでこの事業を営まれるというのがやはりいいのではないかと考えております。また先方の感触から申しましても、どうもこの一本の開発公社というような半官半民の公社のようなものができまして、その力でビルマとかあるいはフィリピンとかを開拓するという考え方につきましては、たとえば昔の満鉄の再現であるとか、いろいろそういう痛くない腹を探られるというような懸念もあるようにも考えますので、できるだけそういう形でない形で、何とかこれを促進する方法を考えてみたい、ただいまのところはさように解釈いたしております。
  78. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 第二案は、合弁事業のために定めた五千万ドルのうち、二千万ドルはビルマ側に貸与することになっておりますが、残りの日本側で支出する三千万ドルも全部ビルマにまかしてしまって、そうして全部ビルマ側の危険負担において事業を遂行せしめてはいかがなものでしょうか。むろん計画、設計等は全部日本で行うが、ビルマは五千万ドルの範囲内で事業の計画と資材の調達をすればよい。日本側は技術供与とサービスをして、これに対する報酬を受け取ることとする。この案につきまして、これも民間にあるのですが、いかがなものでしょうか。
  79. 中川融

    政府委員(中川融君) ビルマとの賠償及び経済協力協定は発効したばかりでございまして、現実にはまた先ほど申しましたような事情から、まだ現実にはこれから発足するのでございます。御承知のように本協定におきましては、この三千万ドルは日本とビルマとの間の合弁事業の形で日本から資材及び役務が出るという形になっておるのでございまして、との根本的な構想は、日本のこの業界のいろいろ創意とかあるいはいろいろ新しい考え方とか、そういうものをできるだけ生かして、ビルマにおいてこの開発に貢献したいというところにあるのでございまして、これを一括した金をビルマ側に渡してしまって、ビルマ側が賠償と同じように使う。むちろんこれも借款でございましょうから、あとから返すのでございましょうが、そういう形のものにしてしまうととは、どうも協定の趣旨から見て少しよくないのではないかと考えております。できるだけ協定の趣旨に従ったところで実施をするように努力して参りたいと考えております。
  80. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 最後に、日本輸出入銀行法を外国政府関係機関、外国公共団体、その他信用ある外国法人の発注にかかる建設工事、むろんそのうちには技術提供も含まれるものでありますが、かように外国において行う本邦建設業者に対して資金を貸すことができるように改正方を要望したいのであります。本問題については七月七日参議院決算委員会において、日本輸出入銀行の監査に当って、山田決算委員長より外国の実例を引用し、銀行の貸出範囲が沈船の引揚げ、土木建築事業等のサービス業にも及ぼすべきものではないかという質問に対し、山際総裁は否定的な回答をなされ、私からも念を押しましたが、現行法上は困難であるとのことでありました。しかし外貨収入の増加、賠償の円滑な実施等をはかるだめ、外国において行う建設工事、もちろん技術提供をも含めてでございますが、これらについては設備等の輸出を伴ってなされるものでなくても、これを促進するため日本輸出入銀行の業務範囲を改正することは必要であり、急務であると確信するものであります。これに対しまして政府の御所見を伺いたいと思います。
  81. 中川融

    政府委員(中川融君) この賠償の実施に関連いたしましては、との委員会で御審議を願いまして、すでに外務省設置法の一部改正がございましたが、あの賠償部の仕事をします際の機関といたしまして、関係閣僚からなる賠償協議会というものを作っているのでございます。ここにおきまして賠償の実施に関連して起るあらゆる問題を取り上げまして、これを推進すべく協議しているのでありますが、御指摘の点、つまりビルマにおきましていろいろ工事を日本の業者が行かれてされる、その場合の資金を輸出入銀行から出さないかというお話であると思いますが、この点まことにごもっともな御要望であると思いますので、できるだけそういう方向に向けるべく、われわれといたしましても大蔵当局その他と相談してみたいと考えております。
  82. 羽生三七

    ○羽生三七君 第二条の九十六億円を限度とする投資及びクレジットの形式は、これはまだ提案理由の説明のときにもお話し内容を承わっていなかったのですが、どうですか。
  83. 中川融

    政府委員(中川融君) これはただいまの鹿島委員の御質問にもあったのでございますが、との九十六億円の投資、クレジットがどんな形でどんな条件で先方に供与されるかということにつきましては、まだとの内容の合意はできていないのでございます。この第四条にございます合同委員会というものが、これで設置されますが、合同委員会におきまして十分先方の経済開発計画等とにらみ合せまして、投資及びクレジットをどんな形でやるかということを協議いたしまして、その上でこれについての細目取りきめを先方の政府といたしたい、かように考えておりまして、ただいまのところはここに出ております以上のことはさまっていないのでございます。
  84. 羽生三七

    ○羽生三七君 その九十六億円の内容は別として、投資にはどの程度を想定し、クレジットにはどの程度とか、そういうことはきまっているのですか。
  85. 中川融

    政府委員(中川融君) この投資及びクレジットでございますが、投資というのは、これは日本の民間から先方に投資すると、これは合弁事業のような形になると思いますが、投資するということを考えております。  クレジットの方は、これは二種類あると思いますが、一つはビルマにおける先ほどの話しの中で、政府が直接出す分、あれと似かよった形で日本政府関係機関、輸出入銀行のようなところから直接先方の政府、あるいは会社というものに借款を行うというのが一つでございます。そのほかに、さらに日本の民間から何らかの形で借款を向うの政府ないし業者に出すという形もあると思います。しかしこれらのいろいろの形のものが、どの程度の割合で九十六億円を構成するかという点につきましては、話し合いができておりません。これは先方のいろいろな都合等も勘案いたしましてきめていきたい、かように考えております。
  86. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 ちょっと今アジア局長が、言われた最後の輸出入銀行のワクをふやすというととは、今の賠償の問題に関連してということだろうと思いますが、むろんそれにも関連しますが、現在建設業はアフリカから中近東、それから南米、アリューシャン、全世界各地域にわたっての注文がきておりますけれども、ドルが手に入らないものですから、見にいくこともどうすることもできない。また仕事に着手するにいたしましても、プラント輸出と同じようにしていただければ、相当これで外貨が獲得できる。この間巨頭会談でも、割に日本では注目を喚起しなかったけれども、アイゼンハウァーの演説の中にも、フォールの演説の中にも、軍縮で浮いた金を未開発地の開発に使う。これは私も実は昨年の暮に海外を回ってみて実は驚いたのでありますが、今日英米仏等、そうした先進国が未開発、アフリカだとか中近東だとか、南米に、土木建設事業に進出しておるのは驚くべきほどで、われわれは考えなかったのですが、非常に進出しております。単にビルマとの問題だけでなく、もう少し広い視野でどうぞ御検討いただきたいと思います。
  87. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 特別円問題の解決に関する日本国タイとの間の協定の締結について承認を求めるの件、これは大体御質問はこの程度でよろしゅうございますか。
  88. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ちょっと一点、アジア局長にお伺いいたしますが、タイ国が外国からだいぶ借款あるいは合弁事業が現在でも行われていると思いますが、それらはうまくいって……。たとえば一口に言って、踏み倒すというようなことがないかどうか。非常にスムーズにいっているかどうか、現在よその国との間で……、その点どうですか。
  89. 中川融

    政府委員(中川融君) タイ国は御指摘のように歴史の古い国でございまして、特にイギリスその他ヨーロッパ諸国、最近においてはアメリカとの関連も深いようでございます。日本もまた戦前よりタイ国とは非常に経済関係が緊密だったのでございます。従いましてイギリス系のたとえば合弁事業というようなものも相当あるのでありますが、踏み倒すというような話は聞いたことないのでございまして、私はスムーズにいっているものと、かように考えております。
  90. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それでは特別円に関しまする御質疑は一応大体済んだことといたしまして、次にガットの問題が衆議院で特別円と共に本日の本会議に上りまして、こちらに送付されることが予想されるのであります。そこでガットに関しまして御質疑がございましたらば、それを済ませまして、衆議院からの送付を待つことにいたしたいと思いますが、ガットについての御質問いかがでしょう。別にございませんか一。  それでは本日の外務委員会はこれをもって散会いたします。    午後零時十七分散会