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1955-06-17 第22回国会 参議院 外務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月十七日(金曜日)    午後二時四十一分開会   —————————————    委員の異動 六月十五日委員羽仁五郎君辞任につ き、その補欠として須藤五郎君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     石黒 忠篤君    理事            鹿島守之助君            小滝  彬君            羽生 三七君            苫米地義三君    委員            草葉 隆圓君            梶原 茂嘉君            後藤 文夫君            岡田 宗司君            佐多 忠隆君            曾祢  益君            須藤 五郎君            野村吉三郎君   国務大臣    内閣総理大臣  鳩山 一郎君    外 務 大 臣 重光  葵君   政府委員    内閣官房長官 松本 瀧藏君    法制局長官   林  修三君    外務省参事官  矢口 麓藏君    外務省参事官  安藤 吉光君    外務省アジア局    長       中川  融君    外務省経済局長 湯川 盛夫君    外務省条約局長 下田 武三君   事務局側    常任委員会専門    員       渡邊 信雄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○連合審査会開会の件 ○国際情勢等に関する調査の件  (日ソ交渉賠償濃縮ウラン受入  れ、日韓関係及び日中関係等の諸問  題に関する件)   —————————————
  2. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) ただいまから外務委員会開会いたします。  まず農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、農林委員会委員長から連合審査会にしてもらいたい御要求がありました。これを連合審査会にいたすことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 御異議ないと認めます。さように決定いたしました。  ただいまの決議に基きまして、承諾の旨を農林委員会報告いたしますと同時に、日時等につきましては委員長に御一任を願います。   —————————————
  4. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) これより国際情勢等調査に関しまする件について、自由党鹿島委員
  5. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 まず日ソ交渉の問題についてお伺いしたいと存じます。  日ソ交渉が六月十四日のソ連提案によって重大な難関にぶつかったと伝えられておりますが、日本には日本独自の立場があり、次の四原則が不退転の決意をもって実現ないし解決せられることを切望いたします。  その一つは、領土問題の解決であります。ソ連側提案にかかる歯舞、色丹両島返還拒否を含む領土現状維持では困ります。この両島はもとより、千島、南樺太返還日本国民の一致せる要望であります。その二は、われらは共産主義及び共産主義生活様式には絶対反対であります。この点は自由党だけでなく、民主党はもとより社会党の大部分もそうだと思います。従ってソ連との取りきめには、共産主義破壊的宣伝を行わない、また暴力的革命に訴えないという確たる保証が与えられねばならないと存じます。その三は、日本中立化することには絶対反対であります。オーストリアのような小国は中立化が可能でありますが、ドイツのような大国においては中立化は絶対反対の意思を表明しております。日本もその政治的地位、人口、経済等の点よりするも大国でありますから、中立化には絶対反対であります。現にソ連要求として伝えられるところの日本の軍備及び防衛力に対する制限、津軽、朝鮮両海峡の自由航行権等は、これに対する制限は受諾することは困難であります。われわれは自主独立要望するものであります。その四は、われらはサンフランシスコ講和条約日米安全保障条約及び日米行政協定等を廃棄してまでもソ連との国交を希望いたしません。われわれ日本の将来は、米英初め自由主義諸国との政治経済上の密接な提携によって期待できると確信しております。日ソ国交調整はいかなる場合においてもこれら米英自由主義諸国との国交をそこなわない範囲内で行わるべきものと思います。  以上の四原則は、大体すでに政府のしばしば声明せられるところと聞いておるのでありますが、ソ連の新たなる提案に接し、総理大臣、または外務大臣より再び明確な言明がいただければ幸いだと存じます。
  6. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それではこの席から器答えしてよろしゅうございますか。
  7. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 どうぞ。
  8. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それではそうお許しを願います。  今、最近の日ソ交渉について御質問がございました。また御意見の開陳がございました。この機会日ソ交渉の最近の発展について私の方から事情の許す範囲内において御報告を申し上げたいと思うのであります。まずそれによってお答えに移りたいと思うのでございます。  日ソ交渉は実質的に去る七日に行われて、そうして日本側要望立場を全面的にソ連側に示して討議に入ったということは御報告をもう終った次第でございますが、その後の状態お話しいたさなければなりません。七日の日本側の提出した日本側立場及び主張全面的主張に対して、ソ連側はこれを検討して、これに対して意見を次回に述べたいということで次回に移ったということを申し上げました。その次回というのは去る十四日の会合でございます。その十四日の会合において、日本側の全面的の立場及び主張に対して、ソ連側が同様全面的にソ連側主張及び立場を明白にいたしました。しかしその内容がどんなものであるかということは、私は実は公けの席でこれを申し述べる自由を持ちません。それは交渉に際しましてすべて一致した、合意をした発表でなければしないということになっておりますから、その内容について一々説明をいたすことは不適当でありますから、お許しを願いたいと思います。  しかしながらこの重要な、日本にとりましては国民こぞっての関心を集めておるこの交渉に対して、大よその方向等を示さずしてはいろいろの端座憶測等が入りまして、かえって交渉進捗によくないと私は思います。のみならず日本側一般国民側としては、大よそのことはこれは知る権利を持っておると言っても差しつかえないと思います。従いまして私はその範囲内のことについて申し上げたい、そういう範囲内の気持をもって申し上げたい、こう思うのであります。  このソ連の全面的の主張及び立場ソ連側が開陳したと申し上げました。これは日本側提案に対する向う側の考え方を申し出たのでございます。その内容について詳細な検討はまだ時間を要するのでございますが、大体においてこれまでソ連が繰り返しておった範囲を脱しない。特にサンフランシスコ平和条約の調印の場合にソ連が持ち出した考え方がその基礎になっておる。ほとんど大同小異のものであると、こう申し上げて差しつかえないと思います。むろんサンフランシスコの場合には、日本関係のない問題がありました。そういうことは今度は除外されておることは言うまでもありません。しかし、先ほど申されましたいろんな問題のごときは、大体その中にあると御承知を願って差しつかえないように思います。そこで会議といたしましては、そのソ連側提案日本側全権が受けて、そして内容についてまた意見を申し述べる前に、松本全権ソ連に抑留されておる、いわゆる抑留者帰還問題を熱心に持ち出したわけであります。戦争後十数年を経ておる、未帰還者一つ早く——交渉とは元来関係のない問題であるし、少くとも交渉に入る前に未帰還者帰還は、一つ釈放帰還をできるようにしてもらいたいということを力強く、かつ熱心にこれを要請をいたしたのでございます。それに対してソ連全権は、その問題は自分はもうすでに解決をしておる問題だと思っている。今残っておるのは戦犯関係者等、やむを得ざる者のようであるというようなことでありましたから、松本全権は、戦犯もといっても、これは戦争のために起ったものであるから、それらを含めて全部早く釈放して返してもらいたい。さようなことができれば、日ソ交渉自体に非常にいい影響を及ぼして、そして交渉もますます友好的に進め得ると思うから、これはぜひとも交渉の主題に触れる前に返してもらいたいということを重ねて強く要請をいたしました。ソ連側は、まあこの問題は平和条約ができれば当然解決せられる問題だと思うからというような意見を述べたのでありますが、松本全権は、そういうふうに軽く扱うわけにはいかぬ、これはぜひ交渉に入る前に一つ解決をしてもらいたい。こういうふうに強く要請をしまして向うの注意を促した。ソ連全権も十分その問題も一つ研究し考慮に入れましょうということで、もうすでにそのためにそれまでに二時間半以上も費したというので、あとは次回に譲るということでこれは閉会になっております。  さようなことを一々申し上げましたが、これはさようなことについて、今私説明をいたしましたことについて内外の方面から誤解をした。誤報が伝わってはかえって交渉進捗に妨げがあると思うので、私はさようなことを明らかにしたわけであります。一々それがロンドンで発表するということに同意したわけではございません。しかし私はさようなことを申し上げることがすべてのために工合がいい、彼我のためにも工合がいいと考えて申し上げるわけでございます。  さて、そういうようなわけでありますから、今御質問になりました点及び開陳せられました御意見の点、御意見は四点ございます。その御意見の四点は、いずれも交渉内容題目になる問題でございます。そこで私は今その問題についてここで私の、もしくは政府意見をこの際申し述べることは差し控えなければならぬと思います。しかしながら、すでに政府態度は、私が交渉に入る前に政府方針として御報店をし、申し上げておったことによって尽きておるのであります。その方針々堅持して交渉に臨むわけであります。  それでお答えになっておると思いますけれども、今日かような交渉題目になっておる問題について、この席でいろいろ申し上げることは差し控えたいと思います。あしからずどうぞ。
  9. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 次にソ連との条約信頼度の問題について伺いたいと存じます。  ソ連との条約及び取りきめは、これを信頼することができるでしょうか。ソ連との条約は、ただ一般ソ連の都合のいいときだけ守られるのであります。かつてトルーマンは、ソビエト政府締結した四十近くの協定のうち、ヤルタ会談日本との戦争に参加すると約束した協定がたった一つ履行されただけだと述べましたが、しかしこのたった一つ協一定履行は、その半面日ソ中立条約の侵犯であったのであります。してみれば何一つ約束を守らなかったことになります。総理大臣が御多忙中に翻訳せられましたクーデンホーフ・カレルギー伯爵の自由と人生、原語はトータリタリアン・ステート・アデンスト・マン、著者はクーデンホーフ・カレルギー伯爵、この伯爵はお母さんが日本青山光子さん、お父さんはオーストリー・ハンガリーの日本代理公使でありました貴族でありますが、パンヨーロッパ創始者としてヨーロッパの平和の統一に尽した功績で本年度チャーチルに授賞されましたシャールマーニュ賞の第一回の受賞者でございますが、しばしばその著書及び演説におきまして、ソ連との平和は条約によっては保障されない。ただソ連に対する武力の優越によってのみ保障されると繰り返し言っておるのであります。従ってドイツその他ヨーロッパ諸国の安全はパンヨーロッパ、すなわち欧州連合の総合された兵力及び米国の加わるNATOの存在によって初めて可能であるとも申しておるのであります。日本の安全もまたソ連との条約あるいは取りきめによってではなく、米国初め自由主義諸国との集団的安全保障によって初めて可能であると信ずるものであります。従って今回ソ連提案に接し、引揚げ問題、通商経済問題等日本ソ連とだけで交渉し、妥結せしめなければならない問題も多々ありますが、他面日本の防衛問題、安全保障の問題、こういう死活の問題は日米安全保障条約精神にかんがみまして、日米共同してソ連交渉してはいかがなものでありましょうか。この点に関する総理大臣、または外務大臣の御意向を伺いたいと存じます。
  10. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はやはり自由主義諸国国際連合精神によって集団安全保障をしていなければ、保障を受けていなければ世界平和は維持できないと思っております。従って自由主義諸国とも連携は保ちつつ、また日本防衛力もそのために漸増していかなくてはならないと思っております。ただソ連との条約信頼性というものは全くたよりにならないとして、ソ連との関係戦争状態終結未確定の事態に放置するということは、やはり世界平和を維持するゆえんではないと考えまして、ソ連友好関係はとにかく結びたい。条約でも平和条約が結べるものならば結んでおきたい。そうしてやはり力による平和ということにも日本は熱心でなければならないというように考えております。
  11. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 次に、総理大臣は、友愛外交を提唱せられておられますが、これはしごくけっこうと存じます。総理は私同様、今申しましたクーデンホーフ・カレルギー伯から影響を受けておられるのではないかと思います。彼クーデンホーフ・カレルギー伯爵は、今から約三十年前、第一次大戦直後から今日に至るまでドイツ、フランス、その他ヨーロッパ自由主義諸国に対するソ連の重大なる脅威にかんがみ漢して、友愛によるパンヨーロッパ、すなわち欧州連合を提唱したのであります。自由と平等、さらにこれに加うるに友愛に基くパンヨーロッパを強調したりであります。しかしソ連に対しては友愛外交を提唱してはいないのであります。いな、その友愛外交は、ソ連脅威を防止するためにヨーロッパ二十六カ国の連合に、自由主義の二十六カ国の連合友愛を強調したのであります。総理大臣わが国においてアジア反共隣接諸国、すなわち南朝鮮、台湾並び東南アジアフィリピンシャム等SEATO参加国に対しての友愛同盟を提唱される御意向はございませんでしょうか、お伺いいたします。  またこれに関連して、同時に伺っておきたいのは、SEATOに参加する御意向はありませんか。ダレス国務長官日本SEATO参加を切に希望していることは、その累次の演説で明らかであります。この点につきましてもあわせてお伺いいたします。
  12. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はいずれの国家とも自分かってのことばかりを主張するということは悪いと思います。とにかく自分権利主張するが、同時に向う立場考えてやるというのが友愛精神根本でありますから、こちらのことも主張するが、向う立場にも同情をして、そうして世界の紛争をできるだけ避けていきたいと思います。特に東アにおきまして日本先進国でありまするから、ほかの国たちとと、特にそういう志において友好関係を続けていって、東洋においてできるだけの友好関係を増進いたしていきたいと思います。  SEATOの問題は、ただいま問題になっておりませんので、直ちに入るというような考え方は持っておりません。
  13. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 次に賠償問題についてお伺いいたします。フィリピン賠償資本財五億ドル、役務三千万ドル、現金二千万ドル、長期開発借款二億五千万ドル、合計八億ドルと伝えられておりますが、総理はこれを受諾される御意向ですか、お伺いいたしたいと思います。
  14. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はフィリピン要求が、どの程度フィリピン承諾をするかという基本ができなければ、日本態度はきまらないと思いまして、先方の最低の要求はどの程度であるか、それをまずきめてきてもらいたいということをフィリピン代表者に話したことがあります。こちらでの態度はまだ明確にきまってはおりません。
  15. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 次に、日本の支払う賠償は、サンフランシスコ講和条約第十四条(a)項によれば、その性質役務賠償であることは明らかにしておりますが、伝えられる案によりますと、役務はきわめて少く、資本財による賠償が非常に大きいが、沈船の引揚げ、マニラ市の復興、電源開発その他役務賠償を多くした方がその本旨に沿うゆえんでないでしょうか。この点伺いたいと思います。  またかような役務賠償は、国際連合その他の未開発地域援助計画趣旨にも沿うゆえんではないでしょうか。この点に関する政府の御意見を伺いたい。
  16. 重光葵

    国務大臣重光葵君) われわれも今お話し趣旨通り考えております。フィリピンはまだサンフランシスコ条約を批准しておらぬわけでございます。サンフランシスコ条約そのものに対する拘束はフィリピンはないわけでございます。われわれは、この賠償の問題ができればフィリピン平和条約の批准はやってくれる。またそれが非常に大きな目的のためにフィリピンとの平和条約を樹立するということを考えておるわけであります。従いましてサンフランシスコ条約役務賠償主義があります。大体そういう工合考えておりまするが、さて資本財の問題もありますけれども、これはビルマ賠償にも資本財は御承知通りでございます。資本財賠償するということは、今お話し趣旨にもこれは合致するのではないかと思っておりますが、現金賠償ということは実はほとんどこれは頭においておらぬわけでございます。しかし交渉の結果全然金をやらないで済むかどうかということは、まだそこまではきまっておりません。われわれの考え方としては、ビルマ式でいきたいと、こう考えております。
  17. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 次にインドネシアに対する賠償はどういうふうに進行しておるでしょうか、お伺いします。
  18. 重光葵

    国務大臣重光葵君) インドネシア賠償交渉は、何と申しますか、今ほんの探り合いという程度でございます。インドネシア国内政局関係もありまして、なかなか内交渉程度までも参りませんでした。バンドン会議機会としてだんだん空気が変って参りまして、今インドネシアにおります日本代表者向う当局者との間に、ぼちぼちこの賠償問題などについて意見の交換があるぐらいな程度でございます。まあこれは大体常識として、フィリピンの問題が片づいて、それからインドネシアということになるのが常識でございますが、そういうような意味においても一つ々々これは片づけたいとは考えております。
  19. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 最後に、われわれの見解によれば、賠償は単に過去において日本が加えた損害の補償というだけの意味でなく、これによってこれら賠償を受ける諸国との親善関係を確立し、また通商経済発展、さらに進んでは政治的責任にまで及ばなければならないものと信じます。われわれは東南アジアと通商しなければなりません。また同時にアメリカの未開発地域援助計画、英国のコロンボ計画、国連の技術援助計画等と同調しまして、これらアジア諸国開発を行い、常を増加し、貧乏を根絶することが、日本経済的及び技術的使命であり、賠償は単に支払えばよいというだけでなく、これらの偉大な世界的構想実現の端緒とならねばならないものと考えるのでありますが、これに対する政府の御意向を伺いたいと思います。
  20. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私も今お話しの点は、もとより日本としてはそういかなきゃならんと思います。これは単に私は政府とかまた党派の考え方じゃないと思います。日本人として、さような考え方でこの問題を処理しなければならぬと真にそう考えておるわけでございます。従いまして、その大局から参りまして、そこでこの賠償の実際の交渉をその見地から考えなければならぬので、日本側にとっても相当私はいろいろ勉強しなければならぬということにもなるのでございます。さような考え方を持って、将来フィリピンのみならず、東南アジアに対する経済発展、また大きな意味において政治的の日本側考えを持って進みたいと、こう考えております。
  21. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 どうもありがとうございました。
  22. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 私は日ソ交渉に関連いたしまして、中ソ友好同盟条約についての総理の御所見をお伺いしたいと思うのであります。  中ソ友好同盟条約は、日本及び日本連携をしている国を対象とした一つの軍事的の同盟条約であろうと思うのであります。実体につきましてはいろいろの見方があるわけですが、それはしばらく別といたしましても、とにもかくにも日本という国を明示してこれをその対象にしておることは、これは言うまでもないところであります。そしてソ連はこの中ソ友好同盟条約基礎にして、その基礎の上に対日平和条約を提唱して参ったことは、これは御承知通りであります。もちろんわが国日米安全保障体制の上にあるわけでありますが、中ソ友好同盟条約立場ソ連と、日米安全保障体制のもとにおける日本というものは、これは現実的にも、また実体的にもこれは根本的に私は性質を異にしておると、かように思うのであります。私は総理の常に言われる友愛精神、それを外交に推し及ぼすというお気持は、これは理解ができるのであります。しかしながら、問題は相手側にもあると思う。私は日ソ国交が正常に調整されるということに対しましては、非常な期待と希望を持つわけでありまするけれども、果して中ソ友好同盟条約、これをそのままにして、換言しますれば、中ソ友好同盟条約におけるソ連考え方は、日本はかつての帝国主義を復活するのだ、再びまた侵略というものを繰り返すんだと、そういう観念のもとにそれに対処しようということが中ソ友好同盟条約に現われたソ連の対日観なのであります。もちろんサンフランシスコ平和条約締結の前の条約でありまして、その後相当時間はたっておりまするけれども、その根本ソ連の対日観というものはどうもそう変ってないように思われるのであります。こういうソ連考え方、対日観、またそれが具体的に現われておる中ソ友好同盟条約、そういうものをそのままにして、そうして鳩山総理の言われる友愛精神、現実の日ソ国交を正常化していくということに私は非常な疑問を実は持つのであります。総理は中ソ友好同盟条約に対してどういうふうな御見解を持っておられるのか、ソ連日本に対する考え方、それをもどういうふうにお考えになっておるのか、そういう点を一つその御見解を伺いたいと思うのであります。それが一点であります。
  23. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 中ソの同盟は、アメリカ日本とを侵略国家考えまして結ばれたものと私は解釈しております。そういうように数日前の新聞紙にも外交における先輩者が話をしておりましたが、私もそう思います。けれども、その当時においてはたとえアメリカなり日本なりを侵略国家として、世界征服者として、世界征服を希望するものとしてそういう同盟を結んだにせよ、今日においてはそれは誤解であったということをだんだんと認識してきてくるはずであります。アメリカ日本世界征服などを考えておるはずがないのでありまするから、真実はだんだんと認識せらるべきものと思うのであります。誤解をおそれて友好関係を結ばないということになれば、ますますみぞを深くするものでありまするから、そういう誤解を一掃して、友好関係を中ソと結ぶべきものと私は考えておるのであります。
  24. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 中ソ友好同盟条約ソビエトの非常に誤解に基くものであり、誤解は解かれるべきものであろうという御見解でありますが、日ソ交渉を開始するに当って総理とされましては、その誤解が解けつつある、あるいは解かれるであろうと思われまする何らか——証拠というと言葉はかたいのでありますが、何かそのしるしがあるのでありましょうか。
  25. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は別に証拠を握っているというわけではありませんけれども、事実全くそういう考え方アメリカ日本も持っていないことは、あなたも御承知通りのことであります。ソ連態度世界的に少しずつ変っておるということは認識されておることと思うのであります。たとえば四巨頭会談といい、あるいはオーストリアに対しての態度といい、オーストリアに逃げておりました自分の国の国民に対してのソ連のとった態度といい、ソ連態度が幾分転換しつつあるということは認識できると思います。それですから私は、中ソの同盟のときには日本も仮想敵国と考え同盟を結んだにせよ、幾分かソ連は変ってきたと思うのであります。ソ連も正常関係を回復したいということは、このたびの松木君との会談におきましてもそれは明瞭に現われておりまするから、私はソ連態度は少しは変っておるということを認識しなくてはならないと思うのであります。
  26. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 ソ連は中ソ友好同盟条約においても、日本を仮想敵国と申しますか、日本帝国主義の復活ということを前提にしながら、対日平和条約を早急に締結することを提唱しておるわけであります。従って日本を仮想敵国視するということと、それから平和条約締結するということとは、ソ連立場においてはそれは両立しておるわけなんです。特に私は中ソ友好同盟条約をそのまま読めばそう解釈せざるを得ないのであります。言いかえれば、対日平和条約締結しても、中ソ友好同盟条約の期限は三十年くらいあるのですから、依然やはり、国交は正常化するけれども、日本は仮想敵国というか、侵略を再びするという目をもって見ておるのであると、こう解釈しておるのであります。総理の言われるように、向う考えが若干変ってきて、総理の言われる誤解が解かれつつあるということであるならば、この日ソ交渉に当って、そのソ連考え方を是正させる措置を何かおとりになる必要があるのではないかと私は思うのでありますが、いかがでありましょうか。
  27. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ソ連誤解をしないように努力するのは当然なことだと私は考えております。
  28. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 すでにこれはこの前の本会議でも総理に伺ったことでありますが、日ソ国交を調整し、正常化していく上には、私はどうしてもやはり日本と中共との関係に触れざるを得ないのではないかという観測を強く持っておるのであります。中共と竹本との関係は、地理的にいっても、いろいろな点からいいましても、ソ連よりは私は密接な関係にあると思う。また中ソ友好同盟条約におきましても、中共とソビエトは対日平和条約については話し合いといいますか、一緒にやろうという趣旨が現われておると思うのであります。従って、日ソ国交調整をしていく上において、どうしても中共と日本との関係というものをいま一段、困難なことではありましょうけれども、正常化の方向に進めていくことが必要と思うのであります。先般総理はこの問題について、中共との関係はまあ貿易の相互の増進をはかるという程度お答えがあったのでありますが、果してそういう程度で今後日本ソビエトとの国交調整の話し合いを進めていく上においておさまりがつくのかどうか、私は相当実は疑問を持つのであります。いま一歩日本と中共との関係を進めた調整の方法を考える必要がありはしないか、かように思うのでありますが、総理の御見解をもう一度承わりたいと思うのです。
  29. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私も中共と日本との関係のますます何というか、協力関係というか、親密関係になることを希望をしております。ただいま中共との貿易の増進をはかることを目的としておるということを申しておりますが、中共との貿易の増進によって中共との関係がますます友好関係になるように希望をしておるわけであります。この間アメリカの人たちが、ジョージその他の人たちが、中共との関係について緩和をするというようなことが出ておりましたが、そういうような動きがアメリカの上院議員の間にあれば、これは非常に私は歓迎すべきものであると、それによって中共との関係がますます正常化せられんことを希望しておる次第でございます。
  30. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 質問を終ります。
  31. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 フィリピンとの賠償問題でございますが、先に大野・ガルシア協定が調印まぎわになってフィリピンの内政上のことからこれがこわれた。そして今回ネリ大使が来まして、こちらでいろいろと交渉が行われた。ネリ大使がフィリピンに帰りますというと、例の八億ドル案というものが出て参りまして、そしてその八億ドル案が出たときに、これは鳩山総理大臣が了承したものだというようなことが向うから伝えられて参ったのであります。こちらの方ではまあそれを否定しておったような形であります。どうもフィリピンとの交渉に当りましては非常に不愉快な問題が起っております。そしてまたフィリピン側の方の内政上の問題からいたしまして、いろいろと複雑怪奇な動きも現われておるのでありまして、ビルマの賠償と比べると、どうもすらすらいっておらないように思われる。先ほど鹿島委員へのお答えによりますというと、首相はネリ大使に対して、フィリピン側の最終案をまとめてこいというようなことを言われたとお答えになった。ところが向う側では八億ドル案について鳩山総理大臣が一たん了承したのだ、それで向うではこの案をまとめておるのだ、こういうことでありますし、その後の外務大臣の御答弁等を見ましても、あの八億ドル案なるものは、すでにネリ大使が東京におりました間に何べんか案を示され、そしてこれは総理大臣外務大臣も大体においてその内容等については御承知になっておる。そして向う総理と会見した際に、まあこれならよかろうというふうに受け取っておったんじゃないかということが僕らにも予想されるのでありますが、総理大臣はあの五億五千万ドル、それから借款二億五千万ドル案につきまして、大体これならば話の基礎になるんだというふうな意味お答えをされたものであるかどうか、まずそれをお伺いしたい。
  32. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はネリ氏に対してこの案ならば日本政府は同意ができるということは言ったことはありません。それから先方に、こちらではたびたびあなたの方ではなかなかまとまっていないということでありますから、まとめてきて下さい、そういう話をしたのであります。まとめてくればこちらでも決定をいたします。その談話の間において、たぶんこの程度ならば鳩山は同意なんだろうということを看取したかもしれませんけれども、合意ができたということは絶対にございません。
  33. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ただいまのお話ですと、談話の間において、たぶんこの程度ならば鳩山も同意見だろう、こういうことを向う側が感ずるような話し方をされたということが首相の口から言われたわけでありますが、そのネリ大使との話の間に、今向う側でもってまとめております八億ドル案というものは、首相に示されたものであるかどうか、それをお伺いしたい。
  34. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はネリ氏と賠償の話し合いをしたことはないのです。高碕経審長官がネリ氏と会って話をしておりましたので、ネリ氏が東京を帰るときに初めて私はネリ氏と賠償について話をしました。ネリ氏が帰る日、国会において、三時の飛行機で帰るときに十時ごろに話をした。談判がまとまりませんものですからいよいよ帰る。君の方ではっきりした案を出さないからきまらないのだ。正確なる案を出してくれれば、政府の方ではイエス、ノーは言えるのだということで話をした。あまり長い時間ではなかったと思っております。それでその話の間にネリ氏は、私がこの程度ならば話になるということも考えたのかもしれないのですが。
  35. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そういたしますというと、高碕経審長官には、今問題になっておりますフィリピン側の案と称するものは内示されておったのかどうか、その点はこれは外務大臣にお伺いしておきます。
  36. 重光葵

    国務大臣重光葵君) その間の事情は私もよく承知をいたしておりますが、いろいろな案の出たことは事実でございます。いろいろな案を言いました。大体におきましてはわが方としては、すなわち高碕長官の方としては、総額としては四億だ、年額で支払うのは二千五百万以上は支払えんのだ、こういうことをもうずいぶん長くそれで話をしておる。向うは十億はもらわなければいかんと言って出てきておるのであります。そこでその間にいろいろな案、こうもしたり、ああもしたり、それで八億には向うは正式に下ったわけですが、そこでどうしても何とか顔を立ててくれといって、いろいろな案の出たことは事実でございまして、そうしてそこでビルマ式一ついこう、借款と分けて一つ。そこで五億とか五億五千万とかいう数字も出ました。しかしそれはその内交渉意見の表示であって、正式にこうであるということはまだ出ておったわけではございません。さような数字を、向うの希望する数字をネリが立つときに、自分の希望はこれだと言っていったことはございます。それはあの数字に近いものを言っておりました。しかしそれはそういう程度のものでございまして、それで向うの方に帰って、一つ十分にどこまでゆけるか一つ一案をまとめてくれなければ、また大野・ガルシア協定のような二の舞はしたくないというような考え方は当然あるわけであります。それでまあ帰ったわけでございます。
  37. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そういたしますと、今度フィリピンから出される案を基礎にして日本側が検討をする順番になっておるわけでございますが、向うの案は、日本が内諾をしたものでも何でもないということになりますれば、向うの案を検討いたしまして、そうして日本側の支払い能力、あるいはまた他国への賠償等の振り合いから、これは向う側の案と別なものに落ち着く可能性があるかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  38. 重光葵

    国務大臣重光葵君) これは可能性はむろんあるわけでございます。ただ向うがそれをどういうふうに譲歩するか、これはまた別問題ですな。
  39. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そこで問題になってくるのですが、向う側の方の最終案というもが出されて、こっち側では他との振り合いを考えた対フィリピン賠償案というものがなきゃならんと思うのですが、まあ向うの方に案をまとめて出せということでありますから、こちら側で大体フィリピン側に対してこういうふうな工合ではどうだというような案を示されたのであるかどうか。日本側の案というものが、大野・ガルシア協定のときにはこちら側からも示したようでありますが、今度の場合に、日本側の案というものを示して、向う側にそれについてまあいろいろ意見も求め、あるいはそれと突き合わせるようなことをしたのか。ただ向う側だけの案をまとめてこいということであったのか。最後的にはそうであったのかどうか、その点をお伺いしたい。
  40. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 先ほど申し上げました通り、内交渉の際に、日本側は四億、あの大野・ガルシア協定は御承知通り四億であります。そうして大体十年であります。そうして実際はこれを十億の向うの何にする、こういう付帯の希望がついていることは御存じの通りであります。それはまあなかなか、四億をこっちが払って、結局向うの受け取る分が十億になるということにするには、どういう案でありましたか、われわれも非常にその点は検討はしてみましたが、なかなか困難なことなのです。そこでそういうような案について、大野・ガルシア協定といってやかましくいわれる案もそういう案であるので、そこでフィリピンとの間の内交渉の際にいろいろな意見が出たことは先ほど申し上げた通りに事実であります。いろんなことは申しつつ、五億までしたらどうかと、五億の線も出ますし、五億五千という線も出る、また六億というような、六億にはもうどうしても向うの方で折れるわけにいかぬとか何とかということがあったことは事実でございますが、さて、日本の最後的と申しますか、決定案はこれだといって提出するまでには至らなかったのでございます。決定案として提出したというならば、日本は、先ほど申す通りに年額二千五百万ドル払い、これが日本の今の案だといって、まあずいぶんこれは大野・ガルシア協定案と同じことで問題にならぬということで大へんもみ合った経緯がありますが、まあさようなわけであります。
  41. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 今日の新聞等で見ますというと、この賠償案は、大体いろんな新聞の伝えるところによれば、賠償案が日本側でもだいぶ譲歩しておる、そして支払いの年限についてこっちが二十年を主張して向う側が十八年を主張しておるとか、それから二千万ドルの現金賠償の点について、これは現金でやるわけにいかないから、消費財を向うにやって、それを売り払わしてそれを向うに、フィリピン政府から渡すのだというようなこまかいことまで新聞で伝えられております。そういたしますと、われわれの方としては、もうこういうことは外務省である程度成立したようなものとしか受け取れないのです。そういうことは全然ないかどうか、はっきり否定できるかどうか、この点を伺いたい。
  42. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それは今申し上げたことで尽きておりますが、そういうような考え方が出ました。またそれ以外のこともいろいろ、専門委員もたくさんきておるのでありますから、そういう話も出ました。戦争被害者に対する直接の慰安のために、慰謝料として二千万ドルを現金でもらいたいということを強く向うが言うのであります。しかし現金賠償ということはこれは困る、そういうようなことはまあとうてい考えられぬ。そうしてまた二千万ドルというけれども、それは一つ賠償の中で、全体の額の中でしておいてもらったらいいだろうという考え方もいろいろ申し述べました。まあさようなことを向うは頭に置いて向うの案を作っておるものとみえます。しかしそれは内交渉のときにそういういろいろな考えが出た、それを基礎としておるのであって、それが日本側で、話し合いをしてすべて決定したものであるというわけでないことは、繰り返し申し上げます通りであります。
  43. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 今度の賠償交渉に当って、高碕経審長官が当られたようですが、伝うるところによると、大蔵大臣は何も知らなかった。大蔵大臣はこれについて払えないというようなことを言ったということである。また伝えられるフィリピンでもそれを問題にしておるような状況なのです。払う問題はこれは大蔵大臣としての責任のあるところでありましょう。そこでそういうようなことは閣内不統一と思われるのですが、総理大臣はこの問題について大蔵大臣と話されたことがなかったのか、そうしてまた大蔵大臣はほんとうにフィリピンとの賠償交渉のときに、経過について知らせられなかったのかどうか、それをお伺いしたい。
  44. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は先刻申しました通りに、ネリが帰るまで知らない。ネリが帰る前には大蔵大臣、経審長官外務大臣、この三人が賠償問題にかかっていました。それですから大蔵大臣がどの程度において関与しているかは存じませんが、帰る日には大蔵大臣はいなかったのです。ネリが来た日には——もう談判不調で帰るというときだったのですから、その時期まで大蔵大臣がどれだけ知っておったか知りません。
  45. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そういたしますと重光外務大臣にお尋ねしたいのですが、それは賠償交渉の経過、それから大体の向うで示された案等について大蔵省側とは何ら打ち合せがなかった、大蔵大臣との間の話し合いは行わなかった。
  46. 重光葵

    国務大臣重光葵君) この交渉は高碕長官と私に大体まかされた形になってずっと進んでおりました。まだ成案ができない前に一々これを他の閣僚に言うことはいたしませんでした。そうして専門家会議がずっと開かれておりまして、この専門家会議には、最後にネリ大使がやってきたのでありまして、この専門家会議には各省の何が皆これは参加してやっているわけなのです。ただこれは最後の会議にネリがきたのでありますが、そのときにいろいろそういう試案をもって内交渉をしておる。このことについてはすべてそのつど他の閣僚に相談するということはいたしませんでした。そうして話は進んでいって、話がまとまらないままにネリ氏が帰るということになったのです。帰るときにどういうふうにして別れるかということの相談は、これは経審長官、私、通産大臣、それから大蔵大臣はむろんおったわけです。そうして逐次向うの案を固めてもらって、固めるというか、向う意見をよく何してもらって帰ってもらう。まあなるべくきげんよく一つ帰ってもらわなければ、これでは破裂したというわけで、また日比関係が逆転するということも非常に困るから、まあとにかく帰って一つ十分意見を固めてもらって、それからまたこちらに提案してもらえば、こちらも一つ検討してみよう、こういうことで帰ったのであります。
  47. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それでは大蔵大臣は交渉の過程においては重要な問題について全くつんぼさじきに置かれていたとしか思えないのでして、これではあとになって問題が起ってくるのは当然だろうと思います。これは鳩山首相の私はやはり責任であろうと思いますが、それはさておきまして、賠償の支払い能力が日本にあるかどうかという問題を——これは大蔵大臣にお伺いしなければならない問題でありますが、これは大蔵大臣の御出席がありませんから、いずれ他の機会に譲るといたしまして、これからくるビルマとの賠償関係で再検討条項がございますが、これが向う側がこれを持ち出してくるおそれもあろうし、またインドネシアとの賠償も相当な額を要求されてくるおそれがあると思うのですが、これらとの関係、それからその見通しについてどうお考えになっておるかお伺いしたい。
  48. 重光葵

    国務大臣重光葵君) ビルマとの今言われる再検討条項でございますが、それはこのフィリピンとの賠償の額がどういうときに至った場合に再検討するかというはっきりしたものがございません。そこでフィリピンとの賠償額がきまった後に、それならば従来の話し合いによって再検討すべきであるかどうかということが、これらのそれの後にくる賠償協定のきまった後に話し合いが起り得るかもしれません。しかしその何は、全部の求償国との話し合いがついた後に再検討するということになっておりますから、フィリピンとの賠償が済み、インドネシアとの賠償協定ができ上って、その上で検討しなければならんわけでございます。その検討の場合に、それじゃどういう標準によってするかということは、はっきりした決定は、標準はございませんから、そこに話し合いが起ってくるわけでございます。しかしこれはどういう程度にこちらが応ずるか、また応じなければならんかということは、そのときに検討をしなければならぬ問題だと思います。
  49. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ちょっと関連しまして。どうも今までの総理大臣外務大臣のお話を聞いていると、あまりに何というか、無制約な手放しなお話で、むしろぞっとするような、実は率直に申しまして感じを持ったのです。と申しますのは、お二人のお話を聞いておりますと、五億五千万ドルの賠償、あるいはさらに二億五千万ドルの経済協力をひっくるめて八億ドルの問題、そういうものはすでに向うからは数額も出されており、場合によってはそれは応ぜられるかもしれないのだというような非常に、何というか、手放しな楽観的な印象を与えるというような折衝なり話し合いをしておられる。われわれ日本人が考えてもそういうふうな感じを持つのですから、向うが非常に大きな希望を持って話し合いをしていれば、必ずそれがもうほとんど了解済みの問題かのように受け取ることも当然のようなお話し合いのように私たちは今も聞きました。しかも向うから、フィリピンからやってくる電報は、どの電報もどの電報もほとんど、総理大臣もあるいは外務大臣も、あるいは高碕経審長官もほとんどそれを了解されたような電報が次々に参る。今のようなお話を聞くと、それもまた当然じゃないかというような感じがする。ところが今の五億五千万ドルあるいは八億ドルというような問題が、日本経済力、あるいは財政の支払い能力からいってどれくらいの意味を持つものかというようなことについては、今のお話によると、ほとんど検討がなされていないのじゃないか。あれほど総合的に経済政策はやらなければならないとか、長期にわたって検討をしなければならないとかということを一つ看板にしておられる現内閣のやり方としては、われわれはどうもその辺が承服できない。全くてんでんばらばらにお考えになっておるし、一つ一つフィリピン賠償自体としてしか問題を考えておらないのじゃないか。今のビルマの問題、あるいはフィリピンの問題、インドネシアの問題、それ以外の特殊債務の処理の問題等を考えれば、かりに五億五千万ドルあるいは八億ドルの負担をかけるとすれば、非常に膨大な財政支出になることははっきりしている。しかるにこれまでわれわれが予算を審議して参ったときに、賠償等の特殊債務処理費として考えられたことは、一年に百五十億見当のものを毎年考えてきておる。それらの金額を見当にすればほとんど問題にならないような膨大な金額であるということもおのずからはっきりしておるのです。そういうことを一体十分にお考えになって対処しておられるのかどうか。あるいは少くともそういう問題については高碕経審長官あるいは外務大臣、さらには大蔵大臣の間で大きな一応の腹づもりがあって、その上でいろいろな個別の折衝の問題がまかせられているはずなんです。そこらをほとんどもう検討もせず、お考えになりもしないで、無責任な話し合いなり、無責任なやりとりをやっておられるという感じしか持てないのでありますが、これらの点はどういうふうになっておるのか。
  50. 重光葵

    国務大臣重光葵君) むろんこれはフィリピン賠償解決する場合に、全局面のことを考えてやらなければならぬことは、これは当然のことであります。しかし、その全局面というのは、私は予算の問題だけが全局面の問題じゃないと思うのです。これは日本の将来の経済であるとか、東南アジア方面、フィリピンだけじゃない、全局面を考えなきゃならぬと、私はそう思っておる。  それから金の面の問題は、実際は日本は毎年二千五百万ドル以上は払えないと、能力がないという建前で、二千五百万ドルの中で賠償の問題も一つ片づけたいという考え方で進んでおったわけでございます。そこで、それが全体の額が少くなれば少くなくなるほど早く払える。それからまた期限を延ばせば延ばすほど年額は少くなる。しかしまあ二千五百万ドルは一つリミットにして考えようじゃないか、こういう輪郭のもとに進んだわけであります。  そこでそのかね合いがいろいろあると思います。むろんこのフィリピン賠償を片づければ、将来フィリピンとの通商関係がどうなる。それがまた将来どう開けるかということは、これは一々そろばんにはじき上げて出すわけには私はいかぬと思います。だれもできぬと思う。しかしながら大体においてフィリピンとの間に平和関係を樹立していくことが、東南アジアに向って日本経済発展をやるという一つの重要なるかぎであるということは、これは争うことのできぬ問題だ。そのかぎを一つ持って、その重要な日本の行く道を開いていくということは、これは大局上どうしても考えなければならぬ問題だと私は思う。しかしその大局を考えるために、日本の予算上のことやなんぞを全部無視するということは、これはいけないことはわかりきっておる。しかしながら予算の関係で、そろばんがこうはじくから、その大局は無視してよいとだれもいえないと私は思う。しかしこれは大体日本のできる範囲内において努力をして、フィリピン賠償問題を解決して、平和関係を開いていく、国交を開いていく、そうして日本東南アジアに対する経済関係もだんだん道を開きたい、こういうことについては、私は日本の国として今日だれもこれについては異存がないと思います。その見地に立ちまして、私どもは大体二千五百万ドルということの見地で進んでいったのでありますが、それがいろいろフィリピン側としては非常に不満足なんだ。さて、それをどうやって妥協すべきかという問題になる。妥協しなくてもよい、すべからずという御判断が議会においてあるならば、これは今からでもおそくないのであります。それはそういう御意見ならばそれでもいい。しかしそうでなくて、大いに努力してでもこの問題を解決すべしという御意見ならば、私はこの問題についてまたいろいろ努力する方法も考えなければならぬ、こう考えておるわけであります。
  51. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 非常にわからない点ばかりですが、今お話しのように、問題は大蔵大臣との関連の問題もあります。私はただ関連質問ですから、ここで一応質問は打ち切っておきますけれども、今外務大臣のおっしゃった、向うとの友好関係を保持し、さらには発展せしめるためには相当ゆとりのある考え方をしなければならないのだというお話は、交渉を開始する第一歩の基本方針としてはまことにその通りだと思うのです。しかし問題が非常に具体的な問題になってきているときに、しかも二千五百万ドルあるいは八億ドルの場合はどうなるのか、そういう問題もあります。さらに期間の問題等を考えると容易ならぬ問題に発展をしてきていると思う。そういう問題のときに、今のような一般方針で何とか増えればいいじゃないかというルーズな考え方は許されない問題だと思います。これはもう少し具体的に大蔵大臣とも御一緒にお話し合いを願わなければならぬ問題だと思いますので、ここで私は一応質問は保留しておきます。
  52. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 これは外務大臣にお伺いするのですが、まだビルマ賠償の細目協定が結ばれておりません。暫定協定だけができたように伺っておるのでありますが、このフィリピン賠償のいきさつがビルマとの賠償の細目協定等の交渉影響を及ぼすことが私どもは考えられるのじゃないかと思うが、ビルマとの賠償の細目協定が一体どういう状況になっているか、いつごろこれがまとまるのか、その点についての見通しはどうなのですか。
  53. 重光葵

    国務大臣重光葵君) この前も御報告したと思いますが、もう大体まとまります。支払方法についていろいろ困難があり、議論もあったわけでありますが、これも大体関係の方面において意見がまとまって、遠からずまとまるように私は報告を受けております。なお、この問題の詳細について御希望ならば、一つアジア局長に御説明させます。大体できつつあるようであります。これはどうしてもやらなければならぬ問題であります。
  54. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 大体の輪郭をお伺いしておきます。
  55. 中川融

    政府委員(中川融君) ただいま御質問のありましたビルマ賠償の実施細目の現況でございますが、大臣が御説明申し上げました通りに、おもな点は最初三つあったわけでございます。そのうちの一つは、年額の支払い額が一体協定に予定せられておるだけ払えるかどうかという問題。第二は、個々の協定の具体的な契約におきまして、その価格が不当に安い場合これを政府が押えるという問題。第三は契約に基きまして品物が調達されました際に支払いをどういう方法でやるかという、この三つの問題があったのでございます。そのうちの年額支払いの問題はいろいろ議論はございましたが、日本としても協定にきめられましたような平均金額というものを年々支払うことにはもちろん異論はない、こういう方針をはっきり向うに伝えておりますので、この問題は解消いたしました。  第二の契約の内容におきまして価格が安過ぎるという場合にこれを押えるという問題につきましては、これもいろいろ議論はありましたが、結局日本側といたしましては、そうこまかなことは言わないことにしよう。日本の品物を通常の貿易によって輸出する場合に適用される程度の法令の適用は、これはいたし方ないけれども、それ以上の価格をチェックするということはしないようにしようということになりました。これも片づいたわけでございます。  あと残っておりますのは支払いの場合に、日本政府が金を持っていて、それを個々の支払いの場合、業者に払ってやるということにする。あるいはビルマ側の要求するように金を一応ビルマ側に渡して、ビルマ側が自分の手で業者に支払いをするのだという問題が残されておる唯一の問題でございますが、これについても一般市中銀行に入れてビルマ側に安心感を与えるというような方法をまず考えまして、目下折衝しておりますので、遠からずこの問題も解決に至るものと、かように考えております。  なお、暫定取きめというものをいたしまして、今月限りでございますが、今懸案になっておりますいろいろの案件は、この暫定の方式で、一応協定ができる前の暫定の方式で解決をはかろうということで話がついております。従って遠からずこの問題は解決するであろうと期待いたしております。
  56. 曾禰益

    ○曾祢益君 鳩山総理にお伺いしますが、この六月十四日の日ソ国交調整に関するソ連の回答がたしか一昨日ですか、その要領が重光外務大臣から御報告があったことと思うのであります。そこでこのソ連日本側一般的な見解に対するソ連の回答、言いかえれば、日ソ国交調整というものについて、ソ連の大体の基本的な考え方というものがここに示されたものと考えられるわけであります。もとよりこれは各項目にわたって最終的なものだとかないとか、そういうことの軽々なる予断はすべきことではないでしょうが、とにかく基本的なソ連態度というものが示されたわけでありまして、従って総理はこの報告を聞かれ、どういうふうに日ソ交渉の前途に関するあなたのお考え、まずどういう感じがされたか。さらには今後日ソ交渉についての従来の熱意等に何ら変化がないかどうか、この点をこの機会を通じてはっきりとお示しを願いたいと思うのであります。
  57. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) とにかく領土の問題については、わが方の要求に対して応じそうもないと思いまして、非常に遺憾に思います。けれども国際関係を正常化するとということについては、平和条約の形においてソ連は話し合いを進めたいというのでありまするから、とにかくソ連平和条約の形で条約を結びたいという考え方をしているからして、戦争状態を終結することについては、異存がないということを悟ったのであります。でありますから、私は先刻重光外務大臣お話しを申しました通りに、抑留者及び戦犯者については、ソ連は返えすつもりであろう。けれども領土問題についてはまだなかなか同意しそうもない、この点は私は非常に残念に思いました。けれども決して希望を失わずにもっと交渉をしなくちゃならないと思ったのでありまして、今にわかに失望した、ある程度において打ち切るというような早急なる考え方はしておりません。
  58. 曾禰益

    ○曾祢益君 私も鳩山総理が、いわゆる落胆し、あるいは悲観視されることなく、今後とも根強くソ連との国交調整についてのあなたの考え方でやっていかれるという御決心のように承わって、その点は非常に心強く感ずるのであります。ただ、ただいまのお話のように領土問題とか、あるいは抑留者の問題のほかに、今度のソ連の基本的な態度というものは、非常に重大な問題を含んでいると思います。ただいま総理がおっしゃいましたように、あるいは総理は過般の衆議院総選挙中においては、ソ連の意図はまず終戦宣言を発するのではないか。ことに総理は選挙中には——選挙投票日の前にも、あるいはソ連から一方的に終戦宣言が出されるのではないかというようなことを少くとも発表されておりまして、ほんとうにそうお考えになったんだろうと思います。それでなくて、われわれも賛成し、また鳩山内閣の基本的な方針としても、そういう終戦宣言を先に打つということではなく、基本的には平和条約を作るべきだ、この点においてはソ連が少くとも形の上ではまず終戦宣言でなくて平和条約を作るという態度で応じてきたことは、これは確かに私たちからみてもプラスの面だと思う。ただしかし同様に今度の交渉にといいますか、総理日ソ交渉をやるべきだと考えられたことには、もとよりしばしば総理が言われたように、ソ連日本との間に終戦後十年もたっているのに、不自然な法律上の戦争状態が残っていることはおかしい。これをやはり平和の見地から直していくという基本的な考えのほかに、やはりソ連サンフランシスコ条約、あるいは日米関係等を基本的にぶちこわすような、かつてのサンフランシスコ会議におけるソ連態度というものは、確かに変ってきたのではないか、従ってそこに国交調整の転機がつかめるという私は判断があったんだろうと思う。またそうでなければならないと思う。何でも昔のサンフランシスコ会議ソ連態度で、それでも国交調整をやるということならば、これは少くも私たちとしては賛成できかねる。われわれが少くともそのくらいの柔軟性といいますか、情勢の変化といいますか、国際情勢の変化に対応する、ソ連のやわらかい態度ということを相当な期待を持ち、少しでもソ連側にそういういい意味態度の変化があるならば、われわれはただ拱手傍観すべきではなくて、積極的に平和のチャンスをとらえるという、そこに積極的外交があってしかるべきだと思う。その意味で、そのことも総理日ソ国交調整をやろうという決心された一つの大きな私は動機であったと思います。もし果してしかりとするならば、これは先ほどからるる申し上げますように、一回限りの基本的な態度の表明があったから、それで動きがとれないと考えるべきでなくて、なお、根強くやるべきであるけれども、少くとも初めてこのニュースを聞かれたときには、総理としては相当予想がくるった、こういう必ずしもプラス面ばっかりでない、悲観的な面も確かにある、こういうふうにお考えになったのじゃないかと思いますが、あらためてその点をはっきり伺いたいのであります。
  59. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) それは曽祢君のお考え通り気持を持っております。
  60. 曾禰益

    ○曾祢益君 外務大臣にお伺いしたいのですが、私は何も外交が頭から秘密だとか、あるいは全部ガラス張りでやれというようなことを議論するわけじゃございませんが、この日ソ国交調整の、この六月七日のわが方の一般説明、それから十四日のソ連の回答、これは非常に重要な機微な交渉だと思う。ところがその内容というものは、これは外務大臣の御判断によって適当と認められる場合には、これはソ連との打ち合せがなくとも、ある程度国民に知らせることも、私はこれは外交の当局とされて、あなたの御判断が最終的なものであるから、あるいは第一義的なあなたの責任であるから、私は一般的にそういうことは悪いとは申しません、しかしどうも私は今度のこの十四日のソ連の回答に関連する外務大臣の御発言、きのうの衆議院の外務委員会における御発言等を見ておりますると、どうもその前に国会を通じてその概要を話すという前に、きのうの朝の東京の大新聞に全部大体同趣旨のことが載っておる、これは一体どういう事情でこういうことになったのか、この点について外務大臣に伺いたい。
  61. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私は先ほど申した通りに、かような問題について共同コミュニケ以外は、一切言わないということは、実は良心的でないと思う。そこに先ほど申したような事情から、繰り返しませんが、かような理由をもって私は説明をいたしてきたのでございます。むろん第一に国会にこれは説明することが当然いいことと思っておる。しかし国会に説明する前に、いろいろな誤報や錯雑した報道にわずらわされるということも、これは考えなければならぬ、そういうことは防がなければならぬ。そこでこれは私の方から何も積極的に説明をしたわけではございません。ございませんが、きのう、おとといでしたか、外務省が定期的にやっている新聞社の人びととの会合がございます。これは定期的にいろいろな外交問題について差しつかえのない範囲内において情報を交換し、意見を聞いて、そうして理解を深めようという意味会合でございました。そのときにまだ聞に合いませんでしたが、日ソ交渉の何が頻々として外国からもう電信が入るのです。電信がロンドンからも入れば、サンフランシスコからも、ニューヨークからも、モスコーからも、北京からも入ってくる、こういう状況なんです。そこで質問があることはこれは当然のことであります。そこで質問に応じて若干の、まだ外務省では全部の何は何もそろいませんでしたので、若干の説明を与えました。しかしながらそれはむろん議会報告のようにまとまったものではございませんでした。そこに新聞社としては新聞社の情報をたくさん持っております。われわれの情報以上に持っておる、外国からどんどん来る、それらをもって新聞には書かれたものと私はこう判断します。その書かれた書きぶり等においては私は必ずしもそれが私どもの何と言うか、希望と申しますか、期待しておったようには理解をしてくれていないのじゃないかと思われる節がたくさんあったわけであります。たとえば戦争終結を先にしなければいかぬとかいうような意味のことがずいぶんありました。それを一々申し述べることの煩を避けますが、そういうことで昨日の衆議院の外務委員会に臨んだのでございます。そこで外務委員会に臨んでいる以上、私から進んで説明を加えるという私は義務と責任があると考えてこれをしたわけであります。これは事実を客観的に申し述べることに努めたのであります。そこでこれはこういう工合に両方から出合って、これからねじ合うわけです。交渉してねじ合う、交渉を進めなければならぬ、それで一つこちらの方針はもうきまっておる。たびたび申したようにきまっておる、こう申し上げて、それによって一つどこまで主張が通るか、私としては全部の主張一つ通すべく最善を尽さなければならぬ、こういうつもりなのであります。そこで考えてみたのですが、今後の交渉の一々はこれはなかなか今日までのように御説明はできぬかもしれない。これは交渉なんだから、今まではこっちも出し、向うも出したということは、これはもう私は申すことがむしろ交渉を今後進める上において、世界の正確な理解を得て進める上においてはいいことだと信じております。これは外交上それだけの手段をとるべきだと思う。そこでもう私は大体のことをそういうわけで申し上げたわけであります。それは新聞が先で議会があとだという何もございましょう。党からいえば党のおれの方が先だ、それを与党をあとにして野党を先にしたという議論も出てきますが、それは私は一つ大体において大目に見ていただきたい。これは時期の関係、ときの関係もありますし、そういうつもりで私は説明をしておることを御了承願いたいと思います。
  62. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は外務大臣が新聞社の編集局長クラスの方たちと定時あるいは随時お会いになっているオフ・ザ・レコードの御自由を云々するのではありません。ただそれは私の想像かもしれませんが、オフ・ザ・レコードのはずのものが実は新聞に出てしまった。そうしてそのあとに衆議院の外務委員会でそれとほとんど実質的に内容の同じことを話されておると思うのであります。これはやはり対外的関係からいっても、これはもう釈迦に説法になりますが、交渉のある段階で、細目に入ったから、勝手にプレス・キャンペーンといいますか、向うと相談なしに発表していく、まあまあ両方土俵の上でやあやあいっているところだから、かまわないということは即席にはならない。それはやはり普通の常識でいえば、これはやはり先方から見ても、これは日本外務大臣がプレス・キャンペーンをやっているのだ、こういうふうに見るのが当然であろう。必ずしも新聞に先に漏れたからいいとか、議会があとだからいかぬ、その点もありますが、私はその点から言っても、議会を先におやりになる方が私はいいのじゃないかと思うけれども、まあまあプレスの方が先で議会の方があとだということで、私は不平を言っているのじゃないのですが、もしそういう状態を、一方的に明らかにする必要がありとするならば、それはやはり相当国際的関係考えた上で相当な決意をもっておやりになっていると思う。私はその内容のまだ概要しか伺っておりませんが、ちょっと総理に対する質問でも申し上げましたが、かなり基本的なソ連態度が非常に固いということが、この回答だけから見れば、そういうふうにとられるわけであります。このことはある程度そういう事態が明らかになることは、とかくわれわれ日本人はのぼせ性でありますから、一方的な見方から、ソ連が非常にやわらかくにも出て来る、こういう考え方をしている人に対してはある種の反省の資料になるかもしれない。同時に、外務大臣がこういう固いところを示して置く必要があるということは、あなた自身がやはり国論の行き方、あるいは率直に言えば、はなはだ失礼な言い方であるけれども、鳩山総理がどうも少し考え方が甘過ぎるから一つにがい薬を飲ましておこうというような、あるいは政党の中でも甘い考えを持っている人々、あるいは冷水三斗を浴びせておいた方がいいというような、やはり相当な政治的な私は意図によってあなたがプレス・キャンペーンならプレス・キャンペーンに続く、衆議院に出て、言葉は悪いかもしれませんが、多少暴露戦術だったと思う、これをおやりになったのだと思う。私はそのことをあなたに伺っても、あなたはなかなかそうだとおっしゃらないのですけれども、私はそれで心配するのは私の立場も明確にしておきたいのですけれども、一方における甘っちょろい考え方に対して、これは世論を啓発していくことは当然に私は必要だと思うけれども、同時に何かこのプレス・キャンペーンや暴露戦術みたようなことをやったために、まだまだ引き出せば引き出せるものを、この程度で、交渉にみずからの行為によって難点を作ってしまう、もちろんそういう意図はないと思うけれども、少くともそういう結果を招来する危険のあるのがこのプレス・キャンペーンというものです。この点については外務大臣はそういう意図はおありにならないと思うけれども、はっきりとこれを外に明らかにしたことによって、交渉をむずかしくするという意図は毛頭ないという点を一つ明快に御説明を願いたいと思う。
  63. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私は日本外交をやっているわけで、これは非常に重要な責任であります。そして、私の気持は、かような外務委員会で、両院の委員会を通じて外交をやっておるという気持で、実はお話もし、またやっておるわけでありますが、その際に、その責任者の意図を何とかもじるとは言いませんが、いびって、この席で世界に向ってそういうことを日本の議会から発言されるということは、私はあまりいい趣味じゃないと思うのです。しかしながら、私は何もこれをもってプレス・キャンペーンをやろうとか、また苦い薬を飲ませようという、そんな考えはもっておりません。しかし、ものを客観的にまず国民に知らせなければ、国民の判断はもちろんのこと、世界の判断はできんと私は思う。客観的な事実は事実として、これを甘いとか辛いとかいうのじゃない。これはソ連がそういうことを出してきたことが問題になるので、これはそのソ連が出してきた問題を私がコンメントをつけて、それはどうだとか、こうだとか言うならば、これはキャンペーンになるけれども、それは実態は大体これであるのだ。それも実態を暴露したわけではない。大体ソ連考え方はこういうことになっておるということをみんな考えて、それで判断してもらいたい。私が判断を左右しようということは、私は考えておらんのです。それからまた日本の国内においても日ソ交渉については、これは衆議院の方でも申し上げたんでありますが、これは、やはり、いろいろ考えがまちまちです。まあいわばあなたの言われる甘い方の考えもあるし、また非常に苦がい方の考え方もある。私はこれは十分一つ意見を戦わせて意見を言うのがいいと思う。しかしながら、誤った情報、誤った題目について私は意見を言うときには、これは無価値だと思う。そこで、ややともすると、新聞でもそれから何でも、実態を見ずして、いたずらに感情的に判断をして結論を急ぐということが弊害を件う。いわんや外交問題ではそれは私は禁物だと思う。だから、これは日本方針としては、私は何もさらけ出しておるのです。日本はこういう立場でもって会談に臨んでおるのだと、そこでソ連日本に対してどういう態度をとってくるかということは、大いに意のあるところを言って、そして一つ議論を十分していただいて、そして今後交渉を進める上においても、私はさような考えでいきたい、こう思っておるのです。私はこの問題については、国民の角を聞いてやるべきであって、また実際外務省が、われわれがまたある意図をもってキャンペーンをやってみたって、それは今の日本の進んだ何においてそれがきくわけじゃございません。そのくらいのことは私もキャンペーンをする意向は少しもない。ただし、そのものそれ自身について誤解のないように、客観的の材料を出すということは、外務省としてはこれは、義務をもっておると思うし、またそういうことがこの交渉を促進する私は一番有力なもとになると、こう考えておるのであります。さようなわけで私はやっておることを申し上げておきます。
  64. 曾禰益

    ○曾祢益君 あまりこの点については議論になりますが、やはり、望ましいことは、この前、議会で政府の大まかな態度はお示しになりましたが、しかし、私の質問なんかにも十分なお答えを得ておりません。サンフランシスコ条約との関係はどうだ、こういう点についても一般的、抽象的なものであって、松本全権をして言われた日本態度も発表し、これに対応するソ連一般的回答もこれは相互の同意によって発表する。必ずしも各段階に応じて全部発表する必要はないですけれども、一等いいやり方は、それはプレス・コミュニケにおいて両方から発表すべきものはどんどん発表していく、この方がいいんであって、少くとも今度の外務大臣の、プレス・キャンペーンでないという御意図はわかりますが、少くともこういう発表の仕方は、あまりノーマルなものではないのじゃないか。交渉している以上は、両交渉当事者をして、政府の訓令に基いて、共同コミュニケで内容を発表するというやり方の方が少くともノーマルであって、また基本的なことはどんどん国民にもまた国内にも知らせながら、私はガラス張りの中でやっていただきたい。まあ、今後の問題としてはそういうふうに申し上げたいのであります。少くとも国民及び議会等に対してはあまり知らしたくない方の問題はなるべく秘密にしておいて、知らしたい方だけは発表するという結果を少くとも招来しないように希望を申し上げたいのであります。  そこで私は、従ってこの内容について詳しくお聞きするのは私は適当でないと思うのですが、外務大臣の御説明の点、重要な点だからはっきり伺いたいのですが、ある新聞等に出ておる、すなわち衆議院における外務委員会における御説明等によれば、領土の問題についての、まあ大体否定的な態度、それから宗谷海峡、根室海峡、津軽海峡、あるいは対馬海峡、これを、要するに日本海の入り口においては商船は自由であるけれども、軍艦はソ連、中共だけである、こういった点。こういう点について、まあサンフランシスコ会議におけるソ連主張とほとんど大差ない、大同小異であるということを言われたんですが、だから言いかえるならば、こういうふうに理解して間違いないかということを伺いたいわけです。これは、サンフランシスコ条約に関連する基本的な問題で、日本海を、そういうような中立化するという以外に、日本そのものに対して、やはり旧連合国との間の集団安全保障条約を作らないという意味の、いわゆるニュートラライゼーションということも当時と変らない基本線として、ソ連態度はそうであると、この点は、やはりそうであるかないか。これは非常に重要な点であるから、もし伺えるならば、宗谷海峡、根室海峡、津軽海峡あるいは対馬海峡の非武装化よりも、より重要な点でありますからその点と、さらには、やはり同じくサンフランシスコ会議における提案である、ソ連主張である日本防衛力に対する数的、質的の制限という点についても、これまた当時と同様な考えであるかどうか、この点。それからもう一つ賠償の問題についても、基本的な態度サンフランシスコと変らないか、こういう点について、もしお示しが願えるならば明らかにしていただきたいと思います。
  65. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私は衆議院でその内容について、領土問題について、こうであるということを申した覚えがございませんが、そういう印刷があるのでしょうか。これは議事録じゃないでしょう。つまりサンフランシスコのときに主張したのと大同小異ということからたぐったことだろうと思います。私はそれは、私としてそこに何というか、一線を画して、そして内容はこうであるとは私は申さないし、また申されない立場におるわけであります、そこで、今お示しのようなことは、非常にこれは重大な問題だと思います。と思いますが、それも一般的な私の答えとしては、一般的のお答え——すなわちその当時のなにと大同小異であるというか、全部同じというわけにはいかないかもしれませんが、そのラインのもとに私は感じたことを申し上げて、それで一つ御了承を願いたいと思うのでございます。
  66. 曾禰益

    ○曾祢益君 まあ、重要な基本的な事項については、当時のいわゆるグロムイコ案と称せられるソ連の案と大同小異である、基本的か問題についてはこう了承して伺ってよろしいですか。
  67. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私はそう感じました。これを両方読んでみてそう感じました。しかし、研究しますと、その間にはいろいろななにがあるでしょう。それからまたソ連意向としては、サンフランシスコ条約の場合に表示した意向があり、その後御承知通り去年の九月モロトフの演説にもあって、日本国交を正常化したい、それは日本の問題もサンフランシスコ体制をすぐこわすという意味ではないのだということを言って、イズベスチュア、プラウダがそれをさらに敷衍したこともあります。だからそういうことも入っておるんだろうと思うのです。それでなければ今回の交渉に入っていないわけですから、入っておるだろうと思います。しかし今回提出したのは、いかにもあのときのなにによく似ておるということを申し上げておるわけです。
  68. 曾禰益

    ○曾祢益君 もう時間ありませんか。
  69. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 時間はもう尽きております。
  70. 曾禰益

    ○曾祢益君 それでは一問だけ許していただきます。
  71. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) よろしゅうございます。
  72. 曾禰益

    ○曾祢益君 そこで少しまあ明るい方の話にしたいのですが、今外務大臣からも言われたように、なるほどまあ大体今度出したやつは、これは出し方がずいぶんごついように思います、正直に言って。やはりサンフランシスコ会議の当時のように一応出してはおるけれども、今も外務大臣が言われたように、その後責任ある当局あるいは政府あるいは党の機関の新聞で、必ずしもそのサンフランシスコ体制をぶちこわす意図ではないということも言っておるのですから、一応初めの仕切りにはそういう態度で出してきたけれども、必ずしもこれでにっちもさっちもいかないものとそういうふうに考える必要も私はないと思うのですが、その点については外務大臣も一応そのことはそのこととして、まあ大方の心構えにしておくけれども、大いに今後とも公正な主張ソ連が口火を切ったときのまじめな意図というものをたぐって、そうして妥当な条件による平和条約締結にまだもちろんめどもあるし努力するんだと、こういうお考えだと思うのですが、いかがでしょうか。
  73. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私もそう考えております。しかしあまり、相手方の意向が非常にいいのだとか、また非常に悪いのだとかいうようなふうに私は考えておりません。出てきたものをそのままこれをよく冷静に判断して進むことが私は一番適当だと思うのです。それはいろいろないきさつがありましたです。モロトフの演説等は非常にいわばわれわれの気に入って、そうして外交交渉を開くようになった、それは非常にいいことです。それは認めなければならぬ。それで今度出てきたものは出てきたものとして、これをよく冷静に見て判断をして進む、そうして日本としてはもうわれわれが見て非常に公正だと思う方針を決定しておるのでありますから、その方針に従って主張をあくまで押していくと、こういうことでよかろうかと思うのでございます。これですぐ暗くなるとか、前途は暗いとか何とかいうことをこの問題について何にも私は考える必要はないと思うのです。あくまでソ連との国交は正常化したいという希望でもって、困難なる交渉を熱心に続けていくと、こういうことをやるべきだと私は思っております。
  74. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は最初鳩山総理にお伺いをしたいと思います。というのは、この日ソ国交回復問題は、これは現在日本国民すべての希望だ、国民感情だと思うのです。あるアメリカを代表し、またアメリカに追従しておる勢力の方からは、日ソ国交を妨害しようという動きがあるようでありますが、しかし国民のほとんどすべては国交回復を希望しておる。そうして鳩山さんもおそらくその国民感情にこたえるという立場から日ソ国交回復をお考えになったと、そういうふうに私たちは理解しておるのです。と申しますのは、昨年の夏私たち各党議員がモスクワを訪問しましたとき、一日ヴィシンスキー外務次官にお会いした。会う前に私たちは書類で五つの質問要綱を出してあったのです。一つ国交回復、日本国民ソビエトと一日も早く国交を回復したいと希望しておるが、それに対するソビエトの御意見はどうかということ。それから国交回復といえども、経済の交流、それから文化の交流はできるものと思うが、これを増進さしたいと思うが、それに対するソビエト政府のお考えはどうか。それからもう一つは、在ソ戦犯を減刑あるいは釈放をしてもらえないだろうかということ。それからもう一つは漁業問題で、領海問題を含んだ漁業問題、北海道方面の漁業問題、この五つに関して書類をもって質問書を提出したのです。それのあと、私たちはヴィシンスキー氏にお会いした。そのときにヴィシンスキーさんの言うには、今日は大へんけっこうな話を伺いました、日本国民の皆さん、また国民を代表する国会の皆さんが見えて、日本国民ソビエトと一日も早く国交を回復したいということを述べられたということは、私たちはとてもうれしい、こんなうれしいことはない、私たちは大いに努力いたしましょう、しかし残念ながら吉田内閣は国民の意思に反した方向に政治を持っていこうとしておると、こういう意見だったのです。(「共産党でなければだめだろう」「自由党よく聞いておけよ」と呼ぶ者あり)だまって聞きなさい。それから経済交流は国交を回復せんでもやれるから大いにやりましょう、問題は日本の国内にあってわれわれの側にはないのだから、日本がこれをやろうと思えば大いにやりましょう、通商代表もお互に交換しましょうと、文化交流も同じことです。それから戦犯者は自分の管轄下にないから言えないが、これはソビエトの裁判所の管轄下で、今裁判所で研究しております、日本国民感情を尊重した結論を出すように努力しましょうというような意味の返事です。それから漁業問題につきましても、大いにけっこうですから、日本の申し入れを受けましょうというので、魚族の保護の問題それから研究の交換の問題、暴風のときにソビエトの港に日本の漁船が避難する問題、いろいろなことを了承した。ただそこで問題になったのは、領海三海里と十二海里の説です。これは皆さんが日本政府の代表ならば、ここでその話し合いをしましょう、しかし皆さんは国会の方ですから、皆さんとこの問題で討論をすることはできませんから、この問題は後日に譲りましょう、そのためにも一日も早く国交を回復しようじゃありませんかということです。これは五つの項目は書類で出してありましたので、満足する回答を得たのでありますが、そのあと領土問題に関してこういうことを各党納得の上で出したのです。というのは、日本は千島、歯舞を返してもらいたいと思う、しかしこれは日本が完全独立して、日本国内にアメリカの軍事基地がなくなって、沖繩を日本に完全に返還されて、アジア諸地域に戦争の危険のない平和が確立したときに、そのときには一つ歯舞も返してもらえないだろうかと、こういう申し入れをそのとき口頭でしたのです。領土問題だけは口頭でいたしました。そのときにヴィシンスキーさんは、この領土問題は今日突如として出ざれた問題であるからお答えをすることができないと、そうして私たちは別れてきた。私たちがそのときに受けた印象は、非常に友好的であって、日本が無理なことを言わなければ必ずソビエト日本との国交を回復することができる、そういうふうに私たちは考えて帰った。それが動機になって、モロトフ声明となり、周恩来声明となって、そうしてそれを鳩山さんが受けてこたえられた。これは鳩山さんが日本国民感情を代表して、日ソ国交回復に乗り出したものとして私は敬服しておるわけであります。今日もうすでにいろいろの妨害が起っておるようでありますが、鳩山さんはあくまでもこの国民感情を尊重して、日ソ国交回復のために一意努力されるという決心を今日もなおお持ちであろうと思うのでありますが、あらためてこの機会に伺っておきたい。(「うまいぞ」と呼ぶ者あり)
  75. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は日ソ国交関係を正常化したいと考えております。
  76. 須藤五郎

    須藤五郎君 それから重光外相にお伺いしますが、昨日の新聞発表を、重光さんはきょう午後の答弁によりますと、自分が発表したのではないという意味お答えでありましたが、確かにあなたが発表したものではないのでしょうか、昨日の新聞に書かれたことは。
  77. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私は昨日大体衆議院で説明をした趣旨によって、新聞発表をやりました。
  78. 須藤五郎

    須藤五郎君 すると昨日の朝の新聞に出た記事は、あなたの発表記事だと思って差しつかえありませんか。
  79. 重光葵

    国務大臣重光葵君) そうではございません。
  80. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると、非常に不思議なことには、各新聞を見ますと、一様に記事の内容がほとんど合致しておる。そうしますると、日ソ国交回復に反対する反動諸勢力の圧力に促されて、あなたがうわ言でも言ったのを新聞社が聞き込んだのでしょうか。
  81. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それはそうかもしれませんが、(笑声)そこは新聞社に十分お取り調べを願って差しつかえございません。
  82. 須藤五郎

    須藤五郎君 私たちは外交交渉を別に秘密にしなければならぬという見解も持っていないのです。しかしこの交渉の経過というものは、お互いに国際信義を重んじて、ソビエト日本との合意のもとに発表するならばともかく、最初にこの話し合いのなされる前に、絶対にこれは口外しないということを約束した上で、話し合いが進められておる、それが合意のもとでなく、あなた個人の意思において、きのう国会で発表されたことも、私はゆゆしい問題だと思う。これに対してあなたはどういうふうに考えられますか。
  83. 重光葵

    国務大臣重光葵君) その問題については、先ほど私は詳細にわたって申し上げた通りであります。私はそれが私のやるべき責任であると思って、私はやりました。そうしてこれは決して国際交渉における常軌に反したことでは私はないと思っております。
  84. 須藤五郎

    須藤五郎君 では、あなたは先ほどこういうことを言っていらっしゃるのです。共同コミュニケ以外言わないことは良心的ではない、こういうことを言っていらっしゃいます。最初交渉を開始するときに、合意でなければ発表しないという約束をまずしておきながら、その約束を破って合意でない発表をすることが良心的だというような言葉になるわけでありますが、これは国際的に驚くべき私は発言だと思うのです。あなたはこんな発言を訂正ないし取消す意思はないのですか。
  85. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それは驚くべきことでも何でもございません。(笑声)私はそういうことについて相当な場合をよく知っております。それは大体そういうことは常識で取り扱われております。あまり誤ったことを自由に報道したり、書いたりするということを防ぐ方法は十分にとらなければなりません。過去におけるソ連との交渉についても、みなそういうことで、私よりもむしろソ連の方がそれはよくそういうことは承知してやっております。(笑声)
  86. 須藤五郎

    須藤五郎君 それが決して誤ってないと、そうして誤って報道されるおそれがあるから、そういうことをするとあなたはおっしゃるが、それではこれに関して誤った報道がいつなされたのでありますか。
  87. 重光葵

    国務大臣重光葵君) いや、そういう報道がなされちゃいかぬというわけです。
  88. 須藤五郎

    須藤五郎君 なされてはいけないということは、しかしなされちゃいけないという感じから、国際的な信義にもとるような行動を一国の外務大臣がして、それで差しつかえない、それをしないことがかえって良心的ではないのだというような国際的な発言をあなたがここで言うことは、重大な問題じゃないですか。
  89. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それが国際信義を立てるゆえんであります。
  90. 須藤五郎

    須藤五郎君 私はつい四月に中国の代表と通商協定の調印をしたときにでありますが、日本側の代表はとかく絶対発表してはいけないということを、もうすぐその晩に業者などに発表してしまうのです。そうして中国代表から、再三それに関してわれわれは苦情を持ち込まれた。そうしてそのために山本さんなんか頭を下げてあやまっておるのです、あの人は外交官出身ですから。そういうことは決して国際信義に反しないとあなたはおっしゃるが、そうじゃないのです。
  91. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それとこれとは違います。(笑声)
  92. 須藤五郎

    須藤五郎君 それはあなたとんでもないことです。そんなこと言ったら世界の人に笑われますよ。日本国務大臣としてそういうばかなことは言うべきことじゃない。そういうことを言うのはあなた何か魂胆があるのでしょう。私は前にこの報告がなされた本会議におきましても、いろんな問題を質問しました。日本戦犯釈放の問題をまず第一に取り出すこと、領土問題を出すこと、一向差しつかえない。私は何もそれに干渉はしない。立場も違うし、いろいろ違うから何でもないのですが、しかし日本の巣鴨になお戦犯があるときに、それを知らぬ顔をして放置して、そうしてソビエトにおける戦犯問題をまず国交回復の条件に出すということには、何か魂胆があるだろう。沖繩をそのままにして——沖繩は今世界第一の軍事基地になっていますが、その沖繩に対して、何ら返還要求せず、要求しようともしないで、それは口をつぐんでおいて、そうして歯舞を返せという、これは何か意図をもってやっていることです。すなわち鳩山さんの考えていることと違った考えをあなたがもっておるのじゃないだろうか。この国交回復をむしろ不成立に導こうとするような意図が、あなたの心の中にあるのじゃないだろうか。そういう心配が私にあるから、私はあのときそういう質問をしたのです。ところがあなたはそれに答えようとしない。答えられないのでしょう。現にあなたは沖繩やそういうものに対して何ら発言していないでしょう。だから私に答えようとしないで、須藤君は反米親ソであるということであなたは片づけようとして、知らぬ顔をしている。冗談言っちゃいけない。(笑声)私は日本の将来を考えて、日本のために発言しておるのです。あなたもっとまじめに御答弁しなければだめです。どうです。
  93. 重光葵

    国務大臣重光葵君) お答えしますが、あなたは歯舞色丹などは、沖繩の問題が片づくまではソ連要求しない方がいいというお考えのようですが、私はそういうことを考えておらないのです。沖繩の問題はこれはアメリカに対して交渉をします。またしておるわけであります。それからまた歯舞、色丹の問題はむろんこれはソ連との関係であります。これはどうしても交渉に上せなければならぬと思います。
  94. 須藤五郎

    須藤五郎君 今重光さんはいい発言を一つしたと思うのです。沖繩の返還問題に関してアメリカに対して交渉をしておる、いつ幾日にどういう交渉をなさったかということをここではっきり伺いたい。
  95. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私は沖繩返還とは言わない、沖繩問題についてはアメリカ交渉しておると、こう言っておるのです。
  96. 須藤五郎

    須藤五郎君 僕が言っておるのは沖繩返還問題です。返還問題に対してかつてアメリカに対して要求したことがあるか、今後するのか、そういう二段の質問をしているのです。それに対してあなたは口をつぐんで答えない。そして今沖繩に関してアメリカ交渉したと言ったが、それは返還の問題ではないと言って逃げる。
  97. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 逃げるのではない。
  98. 須藤五郎

    須藤五郎君 それでは返還の問題に関しては何もしてないということではないですか。私は次の質問に移ります、時間がありませんから……。  濃縮ウランの問題に関して少し質問をしたいと思うのです。政府は原子力協定の仮調印を二十日にすると言っておりますが、国民反対の声の中に、また学術会議の申し入れを無視して、なぜそんなに急がなければならないのでしょうか。
  99. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 学術会議意見等をも参しゃくいたしましてこの問題を処理いたします。
  100. 須藤五郎

    須藤五郎君 学術会議意見をいれてとおっしゃいますが……。
  101. 重光葵

    国務大臣重光葵君) いれてとは申しません、参しゃくして……。
  102. 須藤五郎

    須藤五郎君 参しゃくしたとあなたは言いますが、学術会議はジュネーブ会議のあとでいいのだ、あとにしてもらいたいということをいっておるのですが、それで参しゃくしたということが言えるのですか。
  103. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 言えます。
  104. 須藤五郎

    須藤五郎君 そんなべらぼうな答えはありません。そんなに急がなければならぬようなものならば、なぜあなたはこの協定のウラニウムの問題をアメリカから今年の一月に公文書で受け取りながら、それを四月まで放置しておいたのですか。
  105. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 放置したことはございません。
  106. 須藤五郎

    須藤五郎君 放置しなければどうしておったのですか、一月に公文書を受けながら四月まであなたはどうしておったのですか、見なかったのですか。
  107. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それを検討いたしておりました。
  108. 須藤五郎

    須藤五郎君 あの公文書は、あなたは時に私文書だと言ったり何かしておるように聞くのでありますが、そういう重要なものを研究に日をかりていつまでも放置しておったということは、外務大臣の責任ではないのでしょうか。
  109. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 慎重に検討することが外務大臣の義務だと思いました。
  110. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうではないでしょう。実際は、四月十四日に朝日新聞にすっぱ抜かれてしまったので、あわてて公文書であったものを私文書だったというふうにあなたはすりかえてしまったのじゃないですか……。答弁なし、答弁できないのですね。なぜそのような重要なものを三ヵ月もほうっておいて、そして四月になって朝日新聞にすっぱ抜かれてあわててやり出したのですか、これはあなたはできることなら知らぬ顔で、あくまでも世間に発表をしないで、この協定を秘密協定のような形でやろうとした意図を持っておったのじゃないですか……、イエスともノーとも答えないのですね、答えられない……、よろしゅうございます。  次は協定内容の問題を伺いたいと思いますが、協定文の第九条をはずして交換公文書にすると言っておりますが、このはずすことと、交換公文書にするという二つの間にはどんな違いがあるのでしょうか。
  111. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 第九条の問題というのは、それはアメリカとトルコとの協約の第九条のことだろうと思います。たぶんそうだろうと思います。それの取扱いについては詳細もう御説明をいたした通りであります。それはこの協定の主題目関係がないからこれは入れない方がいいと思って、その趣旨をもってアメリカ側と交渉をしてはずすことにいたしました。
  112. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 須藤委員に申し上げますが、持ち時間は経過いたしました。
  113. 須藤五郎

    須藤五郎君 もう少しですが、お許し願えないでしょうか。
  114. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) きわめて少しおやり願います。
  115. 須藤五郎

    須藤五郎君 きわめて少し……。交換文書は条約とは違うものでしょうか、どうでしょうか。
  116. 重光葵

    国務大臣重光葵君) この場合においては違います。
  117. 須藤五郎

    須藤五郎君 違うのが当然だと思うのでありますが、日本アメリカの交換文書に関しては特に違わない面がたくさんあるわけです。過去において吉田・ダレスの国連協約に関する交換文書、岡崎・ラスクの行政協定に関する交換文書は条約と同じ効力を発生しておると思います。この点に関してアメリカ日本との交換文書というものに関して、日本国民は大きな疑惑を持っておる。
  118. 重光葵

    国務大臣重光葵君) さような疑惑は少しもございません。これは内容によって交換文書は協定と同じ価値を持つ場合もあるのであります。それは条約上、条約の知識を持っておる人は少しもこれは誤解はございません。この場合の協定とは同じではございません。
  119. 小滝彬

    ○小滝彬君 もうすでに各委員からいろいろ質問がありましたので、私は違った角度からソ連に関する問題について総理にお伺いをいたしたいと思います。  ただそれに先立ちまして、曽祢君、また須藤君から御発言がありました外務大臣の新聞に対する発表というものは、私は答弁を求めるわけではございませんが、これに対してコンメントを加えまするならば、対内的には重光大臣の措置は非常な勝利であったというふうに考えられるのであります。もちろんイギリスにおります松木君は何も発表しないでおるのに、突然連絡もなしにこちらだけで発表されて、松木全権立場は苦しかっただろうと思いますけれども、対外的にもいろいろ考えなければならぬ点があるかもしれません。ソ連も競争的にプレス・キャンペーンをするということになれば、あるいはもっと考えなければならぬ点があるでしょう。しかし対内的には少くともこれまで重光大臣が国際関係はますます緊張的な状態にあるということに対して、鳩山首相はそういうことを外務大臣が言ったのか、自分意見が違うというようなことをおっしゃいましたけれども、このソ連側反対提案を見れば、やはり副総理の方が総理よりも外交についてははるかにえらかったことを証明するものにほかならない。しかし同時に、これは鳩山総理は怒られる必要はない。鳩山総理にとっていいことであります。ソ連はこういう提案をしたが、これは日本の方も思うことを全部出せば、ソ連の方も自分の一番都合のいいことを出すのは、一面からいえば当然であります。しかし今後交渉してゆくならばだんだん内容もわかってゆくでありましょう。しかりとすれば、鳩山総理は、何が何でも自分の在任中にソ連との交渉はまとめたいとお考えになっておる際、国民が一応ソ連提案はこういうきついものであった、しかしこれだけ重光をしてやらせた、これは民主党内閣の勝利であるというふうにおっしゃるのには都合がいいのでありますから、重光大臣が今度発表されたことは、実は鳩山総理にとってもまことにありがたいことである、こういうように観測し得ると思います。  そこで私は、この問題について総理にお伺いいたしたいのは、いろいろ対外関係をこれまでの諸君が申されましたが、この交渉がだんだん進んでいきまするというと、おそかれ早かれ一つの決定的な段階に到達するだろうと思います。向うはあるいは今度申し出たものに対して、ある程度、相当程度の譲歩をするであろう、しかし彼らがあくまで固持したい点は日本側へ譲歩を求めるということになりまする際は、左へか右へかどっちか総理としてもおきめにならなければならないだろうと考えるのであります。そういう際におきまして、今までの総理の御答弁を伺っておりますると、まあ左派の諸君からいろいろ聞かれると、御無理ごもっともとおっしゃって、拍手でも、どの党よりも左派の皆さんからたくさん送られておるという事実は、総理は御承知通りでありますが、ところで一体、総理は、現在のような国内態勢において一つの決定的な段階に立ったときに、うまく国論をまとめ得る御自信をお持ちであるかどうか、この点をまずお伺いいたしたいと思います。今後交渉がある段階に来たときに。
  120. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいまちょうど交渉中でありますので、どの点においてならどうするというようなお話は避けたいと思います。
  121. 小滝彬

    ○小滝彬君 でありまするから、私は今内容のことを言っているのではなくして、今後、ある決断をせられなくちゃならないというような際において、現在のような国内態勢でうまく切り抜け得るかどうか。もっとわかりやすく申しまするならば、まあ予算などに関連しまして、保守合同ということを陰に陽に前提として、一つの歩みより、政策上の話し合いを行われたことは、総理も十分御承知のことでございます。しかるに総理の足元は非常にしっかりしておらない。党内でいろいろな議論が出ておる。そこで、保守連立がまず大前提であるというような考えから分派的な行動も行われたかに聞いております。一体、刻下の重大事、対ソ交渉のようなものをやりますのには、友愛精神もけっこうでありましょう、博愛衆に及ぼすのもけっこうでありまするが、何といいましても足元をしっかり固めておかなかったらばぐらついてしまう。そこで、こういう、もっと端的にいって、民主党と自由党との関係というものが非常に不要な状態になっている。予算委員会などでもいろいろ総理もお苦しみのようでございますが、この対ソ関係についてもそういうことが起りはせんかと思う。一体、総理はこうした状態に対していかなる感想をお持ちであるか、この点をはっきり伺いたいと思います。
  122. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 自由党との間には政策の協定をまずいたしたいと思っております。
  123. 小滝彬

    ○小滝彬君 それは総理は政策の協定をしなければなりませんけれども、まあ、たとえば連立によってやろうということになれば、数人の者が人質にとられたような格好で、それから進んでいくということになれば、なかなかほんとうの政策の検討もできないのではないか。現にそういう徴候も現われてやしないか。そこで、さらに私は突込んで言えば、一体こういう状況に対して、総理はもう少し具体的な措置ないしは調整的な措置をとろうという気持でもお持ちであるか。参議院にいたしましても、総理の与党は二十人をやっと出るにすぎないものであります。緑風会と協力されましても、それだけではいきません。この自由党に対する今までの出方というものは、結果的にみればペテンにかかったような格好になっておる。そこで総理といたしましては、ほんとうにこの大事業をなさんとせられるのには、足元をまず固められる必要がある。それに対して、ただこれは三木にまかせておく、岸にまかせておくということでは、なかなかそれは実現できないかもしれません。総理としては、責任の立場において、何かこれに具体的な措置をとろうとしておられるのですか。まあ、ほっとけば何とか予算も通って、あぐらをかいて四、五カ月は過ごせるという安易なお気持であるかもしれませんが、その辺の決意のほどを率直にお伺いいたしたいと存じます。
  124. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は誠意をもってできるだけ早く保守の結集をやりたいと思っております。
  125. 小滝彬

    ○小滝彬君 実は総理に申しましたのは、お気持はわかりますけれども、具体的な調整措置についても乗り出そうというような具体的な点もお考えになっておるかどうか。今の情勢ではなかなかこんとんたるものがありますので、その辺をもう一度しつこいようでありますが、御答弁を願いたいと思います。
  126. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は自由党の人がどういうことを一番欲しているか、それもわからないのです。自由党の人が最も欲しておる方向に近づいていきたいと思っております。
  127. 小滝彬

    ○小滝彬君 自由党の最も欲しておる方向へ近づいていきたいとお考えになっておるということを聞いて、私は、はなはだ意を強くしたのでありますが、自由党意向は、もうはっきり、すでに挙党一致で保守合同ということを申しておるのでありますから、その方へぜひ民主党を率いて行かれるということが、結局、総理が有終の美をなされるゆえんであろうと思いますので、私はこれに対しては答弁は求めませんが、どうぞそれについて、具体的、積極的なる努力を要望いたしまして、この点は打ち切ります。  次に、日比の交渉については、同僚佐多君、岡田君から、るる申されましたから、私は蛇足をつけ加えることを差し控えますが、とにかくこれまでの議会の答弁を見、またマニラからの毎日の報道を見ますというと、まず八億ドルということは、表現はいかがであろうとも、大体了承せられたというように私は考えます。これはみんな同感であろうと思います。私自身は、フィリピン戦争中におりまして、一日も早くフィリピンとの関係がよくなりたいということを念願しておるものであり、日本に対して非常に強いことを主張いたしました上院議員のレクト自身が、小瀧をよこせということを何べんも新聞にも掲げまして、日本の新聞にも転載せられたくらいでありますから、この妥結を急がれることに対して双手をあげて賛成であります。が、しかし、ただ向うが言うからというので、実施し得ないようなもの、これが完全に実施し得ないようなものであれば、かえって将来において恨みを買うこともある。また非常にきつい条件と日本国民考えるような、また、いろいろ大蔵省なり経済審議庁で考えるようなものを、これは政治的な立場、大きな立場から言うのだとおっしゃった外務大臣のお話のような立場から、無理を押しをいたしますと、かえって日本国民の中に対比反感を持つ者が出てこないとも限らないのです。これまで前キリノ大統領が戦犯に対してとられた措置に対しては、国民が涙をもって喜んできた。しかし、これが、むしろ向うが強制したのでなしに、こっちの内閣がそれでいいといってきまったことも、日本の大衆から見ると、フィリピンからこれを強制ざれたようになって、かえって悪い影響を及ぼしゃしないか、こういう点を考えますと、私はこの八億ドルというようなことが事実であるとすれば、あまりに軽率ではなかろうかという点において、佐多君と感じを同じくするものであります。一体、民主党内閣では、計画経済というようなことをおっしゃいますが、そうして経済六カ年計画というものを固持しておられますが、一体あの中には、対外支払いというものをどの程度に見ておるか。これは外務大臣でなくてもけっこうですが、外務省の係官も、そういうことをにらみ合せてこそ交渉しておるから、これは経審の問題だなどと言わないで、大体どれだけを予定して、総合的に見てどれくらいの支払いをする見当にして作られたものか、伺います。
  128. 重光葵

    国務大臣重光葵君) これは先ほどもお答えしたと思いますが、むろん、これらの問題について無計画に考えたというわけでないことは、これはもう申すまでもございません。それがためにも、経審長官が六カ年計画をやる、この問題についても、首を突っ込んで乗り出しておる、こういうことでもわかる通りであります。それで経済計画の全般にわたってどういう計画を詳細に作って、この問題に臨んだかということを、それはちょっと私から申し上げましても御納得もいくまいと思いますから差し控えますが、支払いのことにつきましては、その一部として、日本の支払い能力、年間二千五百万ドルで、一つあくまでその主張を貫きたいという方針をもって、ずっと一貫してやってきておったのでございます。その他の詳細のことは、ここで御要求があれば、またそれは調査もいたしますが、さようなことで御了承願いたいと思います。
  129. 小滝彬

    ○小滝彬君 いや、詳細は聞かなくても結構ですが、考え方といたしまして、たえとば二千五百万ドルとすると、この八億というものについても、これは二億五千万ドルは民間の資本であるというような、うまい答弁の仕方もあるかもしれませんけれども、やっぱり少しそれを超過し、しかも、それによって、ビルマとかあるいはインドネシアの方にも影響を与えやしないかということを、私は実はおそれているわけです。たとえばビルマについても、いや、これは全部がきまってからやることだし、はっきりどの程度において再調整をするという条項もないという、どちらかといえば楽観的な御発言を聞いたのでありますが、これまでビルマとの交渉においても、どうもビルマの方は、少くとも平等に、二億にしても結局十年であれば二千万、こういうことになれば、総額がふえたら結局年限を長くしなければならぬという問題もあるでしょう。いろいろ出て参りまして、現在考えられておるような案が、実際フィリピンと話し合いがつくということになると、あとでは、かえってビルマとの関係を非常に悪くしやせんかということも非常におそれるわけでありまして、この辺はよほど慎重に考えてもらわなければいけないと思います。また平和条約はなるほどこれらの三国は批准していない。この点は鹿島君に対する答弁もありましたが、平和条約第二十六条の末項はどう読んでいいのか知りませんが、この解釈は外務省でも二つあるようですが、とにかくあの精神から申しますと、インドシナといえどもクレームを出さないとも限らない。こういうことを考えていく場合、ガリオアの問題もまだ片づいていない、従来の対外債務はある、一兆円で一方ではインフレは押えなければならない、いろいろな主張がコンフリクトを起す。これを考えます際に、私は、今度の話は、もし最終的にきまっておらなければ結構でありますが、フィリピンとの関係は早くできるだけ日本として最大限を尽してもらわなければならないが、そうした面を十分考えて、こちらからも、もう少し、しっかりした案を、必ずしも四億ドル、あの大野・ガルシア協定にこだわる必要もないでしょうが、もう少し、しっかりした案を出される意向はないか。鳩山総理は、さっき、この程度なら話をできるかもしれないが、向うのほうで話をまとめて、そしたら、こちらからイエス、ノーを答えられるが、——これでは本当の交渉者の態度ではなかろうと思いますので、その点について再考の余地はないか、と申しますか、日本側としてはっきりしたものを、もちろん方法としては、大野・ガルシア協定のときのように賠償一本立てでなしに、ビルマの方式を使われるような余裕も出てきましょうが、もう少し日本のきぜんとした自主的な点を明確にされたらどうかと思いますが、その点は外務大臣から。
  130. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私、今そういういろいろな御事情に対して、実はこれを一々、われわれのとっておる態度を弁解しようとは思いません。御批評はよくいただきたいと思います。しかしながら、こちらの立場は何も持っていなかった、そういうことは事実に反するので、私の先ほど御説明した通り日本は四億払う、これはずいぶんその点で、四億はよろしい。何も大野・ガルシア協定そのものではないけれども、四億は払う、年間二千二百万ドル、この線で突っぱったのです。突っぱったけれども、これは交渉ですから、相手あってのことで、こっちがそういう方針を立てて、それを動かさなければ、話はできんのです。幾らやっても、そういう話はせんから帰れと、そういうことで、すぐ決裂をして、日比関係を非常に悪化する。御承知のように、向うの心理状態ですから、これは一つ、それでいいかというと、それはそうじゃないのです。これはどうしても、いろんな問題を、意見を交換してもらう必要がある。そこで、いろんな会談において考え方がほかに出たということは、これは御想像にかたからんことです。それは向うもこうしたらよかろう。それなら、ぜひその数字がほしければ、労務という考え方もある。きまったわけではないけれども、いろんな考え方がある。その考え方向うも出る、こっちも出るということ、これは一体確固たる実質的な考え方がないからという、こういう御批評がありますが、それはそれとしておいて、日本立場は今申す通り四億二千五百万ドル、こういうことで進んでいったのです。これはそういうことで、それでビルマとの関係です。ビルマとの関係も実は非常に難儀な点です。難儀な点ですが、あれはなんです、小瀧君はビルマとの賠償契約をこしらえた責任者であるかもしれんが、どういうことになっているのですか、ビルマの……、そういうような、ビルマから逆にまた日本要求される、はっきりしたそういう工合の根拠を与えてしまっているのですか。私は前責任者からよく聞きたいと思っているのです。これは私はいろいろ調べてみたのです、外務省で。その調べてみた結果は、先ほど申した通りの結果になるのです。もしそうでなくて、いや、おれのときに、こう約束したんだ、四億ではなくて、五億なり六億だったら、またビルマに一億なり何なりやることになっておるんだということに説明がはっきりついていただけば、またわれわれも一層何しなければならぬが。
  131. 小滝彬

    ○小滝彬君 私は不思議な質問を受けたのですが、私が取り上げましたのは、一体、今まで、最初の段階においては、ビルマの損害等いろいろなことを考えまして、もう少し日比に対しては少額ですむのではないかという気持もないわけではなかったけれども、とにかく平等債務ということを非常に主張しておったことを、外務当局は十分外務大臣説明していないのです。もし、しないとすれば、外務省の官僚は怠慢きわまりないです。外交の継続性を主張せられる外務大臣に対して、保官がそういうことを説明しないのは実に驚くべきことです。そこに何も約束があるものはない。再調整の条項がある、そういたしますれば、そういう主張もあるから、よほど考えて、それに対して何億ドルをきめるか、やっていただきたいということを申し上げたのです。  もう一つは、四億ドルもいったじゃないかとおっしゃるけれども、やはり最高の責任者は鳩山総理でなければならぬのに、鳩山総理は、まあ向うの方に出せ、そうしたらイエスかノーか返事をするとおっしゃったのは、速記録に確かに出ておる通りでありまして、私は言葉じりをとらえて総理にかみつくわけじゃございませんが、そういう総理考えでは反省してもらいたいということを申し上げたわけであります。ついでに実は総理が目をさましていらっしゃいますからお伺いしたいのですが、(笑声)先ほども中共との親密関係はなるべく早く確立していきたいというような趣旨の御発言が梶原君の質問に対してございましたが、実は私ども日本海の方面で裏日本を代表しておる議員でございますが、私ども裏日本の方は非常に民度も低くて生活状態も悪い。ところが、何せ韓国との関係がいろいろな現内閣の発言によっておもしろくいかない。そうして貿易状態も、米を買おうとか、いろいろ当局ではお努めになっておりまするけれども、前よりずっと改悪せられておるのであります。日本タイムスの先週のにも、二日も続いて反日の暴動が京城で起ったというように出ておる。外務大臣はこのぐらいの情報は持っておるはずであり、総理にも報告しておるかと思いますが、だんだん情勢が悪くなっておる。その証拠には、私過日も外務省の係官に質問いたしましたが、船でつかまった人の、抑留者が最近三カ月は一人も帰してもらえないのであります。私の選挙区の者もひっつかまっております。こういう状態でありますから、鳩山内閣になってから非常に景気のよさそうな話を聞いたけれども、実際やっていらっしゃる点から見るというと、朝鮮でかわいい子供や孫がまだひっつかまって帰ってこない。前には一カ月、二カ月なりしたら帰してもらったのが、全部あそこへひっつかまっておる、帰れなくなっておる、こういう状況でありますので、いつも総理に同じことを申し上げてはなはだ失礼でありまするが、今の中共との親善関係云々なども、台湾との関係もございましょう。現に台湾との貿易について、当面はだめだが、まあ三菱商事にこの仕事をさしてやろうというようなことで、業界は相当騒いでおるという現実がございまするので、政府の最高責任者としてはこの点をよく考えていただきたい。そこで具体的な質問として総理にお尋ねいたしまするが、日韓交渉が非常にむずかしいということでございます。皆苦しんで来ております。非常にむずかしいけれども、最近になって特に改悪しておる。外務大臣は就任の当初日韓関係もだんだんよくなったとおっしゃったけれども、最近悪くなって来ておることは、過日も大臣自身がお認めになっておるぐらいでありまして、この点に対して特段の努力をしていただきたいと思いまするが、総理はあるいは自分が出かけて行ってもいいんだとおっしゃったこともあると記憶しておりますけれども、一体どういうお考えをお持ちでございましょうか、一つ日韓関係についてお伺いいたしたいと存じます。総理へお伺いいたします。
  132. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 日韓関係を改善をしたいという熱望は私も持っております。今日も金公使に会いまして、そのことについて話はいたしました。とにかく外務大臣がたびたび言っております通り、朝鮮は一番日本に近い国で、その最も近接しておる国家国交がうまくいかないということは、実に嘆かわしいことである、この点についてできるだけの努力を払う、重光君にはたびたび言っておりますが、私も金公使がときどき訪問してくれるので、その機を逸せず、常にその話をしております。金公使の話によれば、今朝も日韓関係は改善せられる余地は十分あるからして、お互いにその志でもって進みましょうというようなことを言っております。
  133. 小滝彬

    ○小滝彬君 ただ金公使とお話しになるだけではなかなかこれは解決されないのじゃないかということをおそれるわけであります。まあ総理の万邦共和的な考えもよろしいのですが、やはり足もとを固めてもらわなければならん、外務大臣はまず近い韓国の方と交渉するのだということを小坂君の質問の最後のときにおっしゃったことを記憶しております、僕はそれでなければいけないと思う。うまくいけば北鮮の方とも貿易、文化についてはやってよろしい、その用意があるということを、二月二十五日に総理お答えになっておりますが、そうした点はよく、実際上の貿易なんかについては、特に実際的な利害も考慮してやらなければならない場合でありますから、ぜひそうした点をお考え願いたいと思います。私どもの選挙区ではこれで非常に貧困がますます貧困になって困っておりまするので、特に私は地方の代表者としてこの点を総理にお願いしておく次第でございます。  次に、濃縮ウランの点について、まだ時間があるようですから、たった一言、これもあげ足をとるわけじゃございませんが、私過般の本会議において、羽生君の質問に対する外務大臣の御答弁がどうしてもふに落ちないので、この余った時間を利用してこの点お伺いしたいと思う。仮調印はあくまで仮調印であってイニシャルをするだけであるから、あとで変更することもできるというお言葉でございました。なるほど法律的にいえばその通りであることは私異議ございませんが、しかし現実のこの濃縮ウランの協定については、果してそういうことができるかどうかということについて、私は疑いを持つものであります。私自身の立場を申しまするならば、これまでるる同僚諸君が述べられましたけれども、この協定を今やられるということに反対しているものじゃございません。ただあの説明を私聞いておかしく思いましたのは、今度仮調印したのは十カ国くらいであるということです。この仮調印をしたものは恐らく原子力の合同委員会へかけられて、上院が開催中一カ月さらしておいて、別段異議が出なければ向うとしてはこれを実施してもいい態勢になるものだろうと思います。しかりとすれば、トルコとの協定はなるほど昨年の五月の三日に調印をして、六月にジョイント・コミッティーの方へかけております。がアメリカの国内的措置からいえば、今度の仮調印であり、トルコの本調印であっても、実質的には同じことである。そこでかりに日本の方であの内容を変えようということになりますれば、今度は内容が変ってくるから、今期において三十日、上院の会期中にあそこへさらしておいても、それは変更したものは新しいものだから、もう一度今度は新しい上院の国会にかけなければならなくなる。こういうことになるのでありまして、仮調印といえども、実はトルコにおける調印と同じ効果が少くとも相手国に対しては発生するものと思う。でありますから、私はむしろ外務大臣は自信をもって、いやそういう必要はない、なるほどこれに付帯するような細部協定についてはまだできていないから、いろいろ変える余地もあるかもしらんが、この本協定は何らひも付きでも何でもないのだ、それはわれわれは変える意思はないということを、もう少し自信をもった態度外交をやっていただきたい。一体今私が申し上げました手続について、外務大臣はいかにお考えになっておるか、どのような報告を事務当局から受けておられるか、お伺いいたしたいと思います。
  134. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 今の、法律的には仮調印をしても、あとから変えればいい、それは法律的にはその通り、私もその通りでございまして、しかしこの仮調印をしてから、あとからどう変えるかということを、今変えることが予想はできないわけです。予想はしておらんわけだ、予想しておらんわけだが、私はこの問題はもし将来このウラン受け入れの問題について、これがよくないという議論になったら、これは仮調印をしても本調印をしないがいいと思う、そうすればこの問題は解決する。よければ本調印するがいい、こう考えております。だからもうその中をどういじろうと、字句は随分いじっておるから、字句をいじる方法も実はわれわれのところでは考えられないのであります。トルコとの条約の第九条の問題は解決いたしておるわけでありますから、だから仮調印をして、これは法律的にはむろん本調印をした国においていろいろ変更をすることは不可能だということはむろんないけれども、私は政策としては、この問題については、工合が悪ければ本調印はしなければいい、それは完全にできるわけであります。それからまたアメリカの国内のさっきの手続等の問題は、よくわからんから、条約局長から……。
  135. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 御承知のようにアメリカは、原子力に関する協定はみなイニシアルしたものを国会に提出するという措置をとっております。これはアメリカの議会に対して承認を求めるという性質協定でないという見地から、ただ三十日間議会の参考に供しておく、その間にアメリカの議会側から異議がたければ、それで本調印に進むという考え方であります。ところが日本におきましては、イニシアルしたものを国会にお見せするという制度はございません。そこで日本といたしましては、あくまで国会の御承認を求めるのは正式調印をした決定的々協定でたければならないのでございます。そこで米国日本との制度の差から、どうしてもなし得ることは、アメリカの今議会に間に合うようにイニシアルした協定は早く作る。そうして三十日間の必要な期間を満たしてあげる。しかし日本としては、本協定だけできましても、細目のいろいろな点を確かめた上で、これでやってよろしいというところで本調印に持っていきたいわけでございます。従いまして、ただいまの段階では、イニシアルしたものがおおむねこれで可なりというものはできております。近々内閣におかれまして、その御決定を仰いで、イニシアルの運びになると思いまするが、それに基きまして細目協定の末まで慎重に考慮いたしまして、万全なものができ上ったところで正式本調印いたしたいと思います。ただいま外務大臣からお答えしました点、従ってまだ細目のすべてがきまっておらないのでありまするから、そのすべてをきめまして、これでいいといたしましたら、もちろん政府側といたしましては、これをあとから変えるというようなことは希望いたしません。完全な細目までの万全の措置をとりまして、大丈夫というところまできまりましたならば、もう変更しないというのが、政府方針であることは当然でございます。ただいま細目まで万全のものができたという段階にはまだ至っていないわけでございます。
  136. 小滝彬

    ○小滝彬君 トルコの協定について、外務省が出したと思うのですが、われわれが受け取ったのによれば、五月三日に作ったのに、米国の代表二人とトルコの代表が、イニシアルでなしに、サインをしているけれども、あのサインはあとで付けたものですか。あの協定はプロポーズド・アグリーメントと書いてあるけれども、あとで双方が正式に署名している場合に出てくるようだが、これは下田君にお尋ねいたします。
  137. 下田武三

    政府委員(下田武三君) これはプロポーズド・アグリーメントではございませんで、その内容交渉当事者間では少くとも決定したという意味で、交渉当事者がイニシアルをしているわけでございます。
  138. 小滝彬

    ○小滝彬君 名前が書いてある……。
  139. 下田武三

    政府委員(下田武三君) その点は、新聞発表の際にプロポーズド・アグリーメントと勝手な題が付いたものと承知しております。
  140. 小滝彬

    ○小滝彬君 こまかい点は議論しようというのではないけれども、ジョイント・コミッティに附議されたのは、裏のところに日本で言ういわゆる調印している。トルコに関しては昨年の五月三日に調印したということになってやせんかという点をお尋ねしたのですが……。
  141. 下田武三

    政府委員(下田武三君) その点は、私、日付をはっきり記憶いたしておりませんが、あるいはそうかもしれません。
  142. 小滝彬

    ○小滝彬君 そこで本会議で羽生君の質問したのは、実は法律的や何かの問題を離れて、一体仮調印をして、また変えるというようなことをおっしゃるが、一体そういうことはできますかということを、羽生さんは実質を言われた。ところが、まだはっきりした細目協定ができない、やめるかもわからんという工合だったから、それは仮調印するのもいかがかと思われるので、私が外務大臣に注意を喚起したいのは、そういうあいまいな態度でなしに、いろいろこっちの主張も聞いてもらって、これは差支ない、原子力の、日本が平和的利用に有効であるから、自信を持ってやるのだ、このイニシアルをした文書など変えるというようなことは絶対ありませんと答弁してもらいたかったのです。もうすこし自信を持って、ただ左派からいろいろ突つかれるから、それじゃやめることもできますというような自信のないことでは困るということを申し上げまして、私の質問を終ります。
  143. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 次は左派に移ります、(笑声)羽生君に申し上げますが、あなたの番ですが、先ほど岡田さんの質問と佐多さんの連関質問で時間をだいぶ食って、残っている羽生さんと佐多さんには十分ずつということになっておりますが、幸いに梶原さんが時間を残して下さったので、それを多少振り向けまして、曽祢ざん、須藤さん、小瀧さんの超過に均霑することにいたしますから、なるべく簡単に願います。
  144. 羽生三七

    ○羽生三七君 日ソ交渉内容的な問題はこの際すべて省きますが、あの経過が、ソ連見解が新聞に発表になったことのよしあしはこれは別としまして、ああいうことが出たことは私は驚くことはない。日本があれだけのことを言ったのだから、向う自分の言いたいことを言ったので、交渉の初期の段階では当然なことでありますから、格別驚くことはない。そこで、そういうことに驚かずに、政府は大いに努力されると思いますが、お伺いしたい点は、わが党の鈴木委員長鳩山首相と、日ソ問題について適当な機会に再び会談する話し合いがあったとか旅先で談話を発表されておりましたが、そのことは別として、正規で言うならば今月で議会が終るわけです。延長がなければ終るわけでありますが、そういう場合に、この適当な段階が来たときに、党首会談なり、あるいは衆参両院の外務委員会を開いて、中間報告をやるというような、あるいはお考えになっているのかどうか。妥結する最後まで、国会が閉会になれば何も国会には知らさずにおくのか、どういうお考えでありましょうか。その辺を総理大臣にお伺いしたいと思います。
  145. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は、かつて三党首とお目にかかったときに、三党首と同じことを約束しております。それは、日ソ交渉が始まったならば、その途中において、重要な点についてあやまちのないようにいたしたいから、そのときにはどうぞ差し繰って会って下さいというように言っておきましたから、それは日ソ交渉の途中においても、そういう約束は果したいと今日は思っております。
  146. 羽生三七

    ○羽生三七君 その次にお伺いしたいことは、この交渉が一カ月や二カ月で成立するとは予測できないわけであります。さりとて一部の人の言われるように、非常に長期になるということもまた予測されないわけです。近い機会、数カ月間、三、四カ月間くらいのうちにもし話し合いがついたというような場合、そういう場合には、次の通常国会においてその報告をして、承認を求めるのか。あるいは場合によっては十月とか何とかという時期に一応の妥結ができれば、臨時国会でも開くお考えがあるのか。この点もう一つ総理からお答え願いたい。
  147. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) それは交渉の経過によりまして、開かなければならないというような場合には開きたい。開かなければならないと思います。交渉工合によって決定して参りたいと思っております。
  148. 羽生三七

    ○羽生三七君 先ほど自由党の小瀧委員の、質問で、今の鳩山内閣は、へっぴり腰だから、保守合同をやって足場を固めようというお話があった際に、政府でも自由党と政策協定をやりたいと首相は今お答えになりましたが、その政策協定の中に日ソ交渉は入っているのかどうか、これをお伺いいたします。
  149. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 羽生さんのお話ですが、実は自由党との交渉について、一体自由党がどういうことを考えておるのか。私の友だちのいろいろの人に会って参りました。そうしたらば、その人たちの多くの人と会った結果が、政策の協定をやってからでなければ、保守勢力の結集ということは容易に進むまい、政策の協定から入った方がいいと思うというような返事があった。それは私も同じような意見を持っている、今朝そういう話を聞いたのです。それですから、先刻小瀧君の御質問に対しても、政策の協定から結集問題に入りたいということを言ったのでありまして、その交渉中ではないのです。そういうような方針に進みたいと思っておるだけであります。
  150. 羽生三七

    ○羽生三七君 そこで、そういう方針でお進みになるのは御自由ですが、先ほど来の自由党議員各位の御質問から察して、もしそういうことが将来の外交……、日ソ交渉はその条件になっていくとすれば、相当私は鳩山首相の考え方は制約を受けると思う。自由党側から……。そういうことは予測されませんか。
  151. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はないと思うのです。それは緒方君と会いましたときに、一体、君は日ソ交渉について、何でちゅうちょするのかというような話まで起きましたのですが、私の日ソ交渉についての方針については、自由党も同意してくれるものと確信をしておる次第であります。
  152. 羽生三七

    ○羽生三七君 次の問題に移りますが、実は、次にお尋ねしたいことは、先ほど岡田委員、佐多委員等が触れられた問題に関連するのですが、大蔵大臣、あるいは経審長官が同席しないと、質問しても余り意味のないことになりますが、しかし総理大臣お答え願える点もありますので、その点だけに限って御質問をいたします。その前に、昨年の吉田内閣時代に、私が本会議で、対米債務と言われるガリオア、イロアの返還問題で質問した際に、吉田内閣ではその当時、ガリオア、イロア総額が約二十億五千万ドルと言われておりますが、その後、六億ドルないし七億ドルということに話がつきそうだということが報道されておる。数カ月間この問題は全然取り扱われておらないのですが、対比賠償との関係で次の質問をする順序からぜひお聞きしておきたいのですが、ガリオア関係は今どの程度交渉が進んでおりますか。これは外務大臣から……。
  153. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 今交渉継続中でございます。この問題については、その後、最近と申し上げては少し何ですが、ちょっと前にアメリカからも案が提出されて、関係方面とよくこれを検討いたしておる最中でございます。
  154. 羽生三七

    ○羽生三七君 額の点はわからなければそれで結構でありますが、実は、先に締結いたしましたビルマとの賠償協定、今問題になっているフィリピンとの賠償問題、次のインドネシアとの賠償問題、さらに対米債務、ガリオア問題、それから連合国の補償費の問題、こういういわゆる対外債務ですけれども、総計いたしますと年間支払額は私は相当なものになると思う。そこで、先ほど外務大臣は、佐多君の質問に答えられて、予算だけがこの問題を規制するのではないと言われましたが、これはある程度外務大臣気持はよくわかります。しかし、今の鳩山内閣というものが、均衡財政を踏襲すると言い、一兆円予算のワク内で問題を処理すると言われておる際に、今申し上げた各種の対外債務を年間支払いで見ていきますと、およそ年間三百億円をこすのではないかと思います。それを一兆円予算のワク内でおやりになるのかどうか、あるいは一兆円予算を越すのかどうか、これはぜひ承わりたいのでありますが、これはなぜお尋ねするかというと、一兆円予算のワク内でこれを処理するとすれば、他の民生費は非常な圧迫を受ける。このワクをはずせば当然これは均衡予算を一応御破算にしなければならないし、またインフレの傾向も出てくるわけです。だから、これは私、大蔵大臣や経審長官に聞く技術的な問題じゃない、根本的な問題であろうと思うし、これはもし時間があれば継続したいのですが、防衛問題、自衛力の規模の問題、そういう問題と関係するのでありますが、そういうこまかい問題は別として、今の一兆円予算のワク内でこの対外関係、年間およそ三百億を越すであろうこの問題を処理されるお考えであるのかどうでありますか。これは総理大臣からお答え願いたい。
  155. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 大体において今年度の予算は、昨年度の地固め予算と大蔵大臣がたびたび言っておりますので、来年度は一兆円の範囲内においてぜひ予算を組むというような態度ではないと、大蔵大臣に聞いたところでは、大蔵大臣はそういう態度ではないと私は了解しておるのです。これは聞いてみないとわからん。
  156. 羽生三七

    ○羽生三七君 これはなかなか重大なことで、これは聞いてみないとわからんと言われても、非常な重要な問題ですよ。総理大臣の施政方針根本問題です。
  157. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) これは大蔵大臣から答弁を聞いて下さい。
  158. 羽生三七

    ○羽生三七君 これは大蔵大臣でなければならんと言われても、鳩山内閣の施政方針根本になると思う。
  159. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 根本になることは大体私もわかるのです、意味は。けれども大蔵大臣に聞かなければその根本はきめられないと思いますから……。
  160. 羽生三七

    ○羽生三七君 いや。それでは次のことをもう一つ申し上げてみたいと思うのです。というのは、政府は減税計画を立てられて、その結果、財政収入において、これを平年度化すると年間六百億の減収になるのですよ。財政収入は六百億減ってきて、今度は逆に今の対外債務の支払いで年間約三百億ぐらいをみていくというようなことになって、これを一兆円予算のワク内で処理ぜんとすれば、これは民生費は非常な圧迫を受ける。これは鳩山首相が本年申された施政方針演説に相当社会保障を強化しようと言われたことと矛盾することになる。もし一兆円予算のワクをはずせば、これは首相としては地固め予算を根本的に破壊することになると思うので、私は非常に重要な問題であると思うのです。しかしこの問題を私がここで申し上げても、実は二十分や三十分の間で片づく問題ではありませぬし、同僚議員もまさにこの問題については待機の姿勢でおられますので、私はこの問題でこれ以上多く申し上げようとは思いません。よく次の機会までに御検討おきをお願いいたします。  次にお伺したいことは、先日の衆議院の内閣委員会の質問に若干関係のあることですが、私は戦力問答をここでやろうとは考えておりませんが、日本のこの自衛隊をどの程度までふやすお考えであるのか。つまり特に陸海空と分けておりますが、地上軍でいうならば、どの程度まで増加させようというお考えになっておるのか。これも次の機会に、経審長官や大蔵大臣を呼ぶ場合には参考になりますので、防衛庁長官がおらないときに聞くのは、はなはだどうかと思いますけれども、しかし首相から一応お答えを願いたいと思います。
  161. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は具体的の数字でお答えはできません。ただ抽象的に、日本に直接侵略があった場合に、これを防衛する最少限度の自衛力の漸増をやるつもりでございますという以外には、ちょっと答弁できません。地上部隊をどのくらいの限度、空軍をどのくらいというようなことについては、ちょっと答弁ができかねます。
  162. 羽生三七

    ○羽生三七君 この、今の自衛隊の、特に地上部隊の問題なんかも伺いましたこの主要な目的は、この鳩山民主党内閣が、先ほど申し上げた一兆円予算と関連するのですが、予算を編成されていく場合に、日本の自衛力を一応この程度にしようということを想定されて、それに見合う予算を毎年編成していかなければならぬと思います。だから一応、努力目標というのもおかしいですが、目標というものがなければならぬと思う。その目標がない場合に、いや、金がない場合に、本年は財政上の都合でこの程度しかできない。ことしは財政上余力があったから幾らかふやす、私はふやすことに賛成するのじゃない、反対するのですが、立場をかえてみても、そういうことなら話はわかると思う。しかし、今のように、ただ外敵が侵略した場合には自分の国が守れるだけというのでは、これで日本の防衛問題を論議されるということは、非常に暴言だと思いますが、もう少し何か具体的なことをお示し願えませんか。
  163. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ああ、そうですか。それは自衛力の漸増ということが、経済の六カ年計画を、それを見合いとしての防衛力を増強する。日本防衛力の増強についても、防衛六カ年計画というようなものを国防会議で作って、その計画は経済の総合六カ年計画に呼応して作るべきものというような考え方を持つわけであります。
  164. 羽生三七

    ○羽生三七君 それでは、この憲法第九条との関係にもなりますが、自衛のためならば軍備を持てる、軍備という言葉がどうかは別として、軍備を持てるという御解釈ですが、そういう解釈でいくと、日本の自衛力というものは無制限にどこまでもいけるのではないか。もし経済が許すとすれば……。ただ、あなたのお考えでは、経済が許さぬから仕方がないというだけで、経済が許すならば、この自衛のための戦力、あるいは自衛力というものがどこまでも自由にふやせるということになりそうな気がするのですが、いかがですか。
  165. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) その点については、かつて答弁したことがあるのですが、ずっと前に……。どうしても今日の日本に対する侵略を、日本単独の防衛力でもってこれを防衛することは不可能なことであります。日本に対する直接の侵略についても、やはり共同防衛、集団保障、集団防衛というような形においてでなくては、日本の防衛はできないということです。しかし集団防衛、集団で防衛してくれるからといって、日本で防衛を怠るということは、やはり世界平和に対する日本の熱意が足りない、義務を尽さないと思うのです。直接侵略があった場合において、集団安全保障を受け得る期間くらいの間は、日本で防衛しなければならないと思うのです。日本を防衛し得る最少限度の防衛力という意味は、そういう意味を言っておるのであります。
  166. 羽生三七

    ○羽生三七君 首相が先ほどから言われている、また今も言われた集団保障方式というのは、日本の場合では日米二国間のことを言うのですか。まだほかの地域も考えておられるのですか。
  167. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 今日では米国との共同防衛の約束を考えておりますけれども、やがて日本国際連合に入ることと思うのであります。ソ連もこの点については反対することをやめるだろうという観測をしておるのです。集団安全保障、国連に入って集団安全保障を受け得るようになれば、それもまた考えておるわけであります。
  168. 羽生三七

    ○羽生三七君 もう一点だけ伺ってやめたいと思いますが、今なぜ私がその点を伺ったかといいますと、これは前の吉田内閣のとき、吉田首相も木村防衛庁長官もよく言われたのですが、たとえば日本の自衛力の漸増に応じて米軍の撤退ということを考える。そういうことを言われたわけです。ですから、この集団安全保障アメリカ日本を保護するならば、それに応じて日本も義務を果さなければならないというお考えからいうならば、どの程度まで日本の自衛力がふえたならばアメリカ軍が必要でなくなるのかという限界がなければ、これは永久駐屯を意味することになってしまう。だから、その限界がある。たとえば経済が許さないからこの程度、しかし経済が許すならばこの程度、この程度ならばアメリカ軍も日本に駐留することはなくなるだろうといろ、その程度を明瞭にしなければならぬと思うのですが、御答弁を願います。
  169. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) あなたのおっしゃる通りだと思いますが、アメリカもまあ日本の駐留軍を減らしたいという気分は持っておるようであります。本年度においても五千人ばかり減らしたいということでありますが、減らしたいという希望は持っておるのでありますから、日本防衛力が、ことし一万人ぐらいふえると、そうしますと五千人減らすというのでありますけれども、大体のめどはアメリカとの間に話し合いはつくものと思います。それはどの程度が具体的の数字か、ちょっと私、ただいま申し上げかねる。知らないですから。
  170. 羽生三七

    ○羽生三七君 実は首相に、きょうは、まあ御承知のようにヨーロッパで近く四巨頭会談も開かれるそうだし、それから、いろいろな動きもあるので、そういう国際情勢をアジアにおいてどういうように今後展開されようとするのか、終戦後十年の日を経過した今日、独立国家になった日本外交のあり方について、首相なり重光外相から、単に対ソ問題だけでなく、広範なアジア政策全般について、詳しく伺おうと思っておりましたか、時間がないので残念ですが、これで終ります。
  171. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 次に苫米地委員の御質問があるのでありますが、苫米地委員は最後にして、その最後の様子で質問をしてもしなくてもよろしいということを委員長におまかせになりましたが、委員長は、きょうはこの程度で御質問を下さらないことを希望いたしますが、よろしうございますか。
  172. 苫米地義三

    苫米地義三君 はい。
  173. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それでは本日の外務委員会はこれにて散会いたします。    午後六時六分散会