○羽仁五郎君 今
政府のお
考えになっておるような仮調印が、今御
説明になりましたような
意味において
政府の行政権内で行えるものかどうかということについて御
説明ですが、その御
説明の御
趣旨に従いますと、もし正式の調印を
国会が否決をした場合には、
外務省はどういう責任をおとりになるのか、それを伺っておきたいと思います。しかし、これは
外務省がどういう責任をおとりになるかというだけの問題ではないと思う。これは、もう
条約局長はよく御
承知のことだと思いますが、憲法において究極の点が明らかにされているというように
考えることはできない。すなわち、もしも
条約というものを
政府が結んだ、それが
国会において
承認が得られなかったという場合にはどうなるのかということは、サンフランシスコ
条約の討議の当時からなかなかこれが決定せられない問題であって、
国際的な儀礼という点から申せば、
国会がこれを否認するということは容易でないことです。従って
国会としては、せっかく
国際的に話合いのできたものを
日本の
国会が
承認を与えないということは容易でないことです。これはよく御了解下さると思う。
従って、
国会としては、相当問題があるけれども、
国際的にある程度まで話し合いの進んだものだから
承認をしようということにならざるを得ないのです。事実上これは憲法においても、その
条約とそれから憲法及び
法律といずれが優先するかということが明らかになっていませんから、従って
条約が優先するというようにも解釈できるし、憲法及び
法律が優先するというようにも解釈できるし、それについては定説もないし、明らかな解釈もないのですから、そうならばどうしてそうなっておるかといえば、やはり
国際的な取りきめというものは、わが憲法及びわが
法律というものに明かに違反するものでない限り、また
政府もそういうようなわが憲法やわが
法律に明かに違反するような取りきめをなさるような相談をなさるはずはないし、従って
国会がそれを
承認を与えないということもないだろうという
希望的な
考え方のしに立って今まで運ばれているんです。しかし今回のような場合には、あるいはそれが明かにわが憲法あるいはわが
法律に触れるということでないかもしれないけれども、しかし国の
外交の
方針として、あるいは国の学問、技術の発達という面から、場合によって正式調印という場合にそれが
国会の
承認を得られないということが起るかもしれない。起った場合にはあるいは
日本の
外務省は責任をおとりになる、
日本の
政府が責任をおとりになるつもりがあるかないかは、今から仮定の問題だからわかりませんが、かりにおとりになったとしましても、
国際的にはあまり好ましいことじゃない。そういう
アメリカと話の進んだものを
日本の
国会が否認するということになることは好ましくないことだということは、これは
政府もよく御了承下さることだろうと思う。ですからそういうことが起らないようにしていただきたいというのが私の
質問の要点なんです。そういうことが起らないようにするにはどうしたらいいかといえば、現在
考えておるような仮調印に当然将来
国会が
承認するかしないかという、
条約局長のお言葉を拝借すれば、
国会が活殺の劍を握らなければならないような事態が発生することが明かであるような仮調印を結ばれることは、つつしまれた方がよろしいのじゃないかというのが第一点。
それから第二の点は、十分御研究の結果の御答弁と思いますけれども、トルコその他の
国々においてはこういうものをまかない得る
法律がございます。御
承知のように
日米相互防衛
協定に基きます
アメリカから
日本に武器を貸与せられました場合も、御
承知のようにその
日米相互防衛
協定の中には
日本に立法
措置を求めるということがなかった。これは当時は岡崎君が外務大臣でありましたが、
アメリカ側から
日本に向って立法
措置は要求していないけれども、
日本にはこれをまかない得る
法律がない。従って
日本としては立法しなければならないということで、御
承知の防衛秘密法というものを作らざるを得ないということに追い込まれたのですが、現在のトルコなどをもし
政府がモデルになさっておるとすれば、それはどうでも
アメリカの原子力法に従えば、私は今御
説明のようなことではいかないのではないか、今御
説明のようなことでゆくのならば、私は自分の杞憂であることをむしろ幸いとするものなのですけれども、実際問題としては今御
説明の第一の点ですが、軍事
目的に
使用しない、わが憲法がそういうふうにいっておるけれども、それにどういう罰則があるか。もし軍事
目的に使った人がある場合には、これはどうもはなはだ済まんことをしたということで済むのです。
それから次に、これは放射能その他の
関係もありますが、もう少し重要なのは、いわゆるそれが盗まれたりあるいは許可されていない人の手に渡ったり、それからもう少し具体的には濃縮ウランが燃焼してそこにできたもの、いわゆる灰、その灰の分量及び性質を変えないということを約束しなければならないのですが、その分量及び性質を変えた、変ってしまったようなことがある場合は、あるいはその濃縮ウランが盗まれたような場合に、これはいわゆる刑法にいう窃盗罪に関する
法律だけでまかなえるものでしょうか。そして
アメリカに対してはどうも相済みませんが、盗まれました。盗んだ本人は窃盗犯として取調べ中でございますということで済むというお
考えでございましょうか。これらの点についてやはりもう少し慎重にお答えを願っておかなければならんと思うのです。