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1955-05-24 第22回国会 参議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月二十四日(火曜日)    午前十時七分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     石黒 忠篤君    理事            鹿島守之助君            小滝  彬君            羽生 三七君            鶴見 祐輔君    委員            草葉 隆圓君            郡  祐一君            梶原 茂嘉君            後藤 文夫君            佐藤 尚武君            岡田 宗司君            佐多 忠隆君            曾祢  益君            須藤 五郎君            野村吉三郎君   国務大臣    内閣総理大臣  鳩山 一郎君    外 務 大 臣 重光  葵君   政府委員    内閣官房長官 松本 瀧藏君    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正己君    外務政務次官  園田  直君    外務省参事官  寺岡 洪平君    外務省参事官  矢口 麓蔵君    外務省参事官  安藤 吉光君    外務大臣官房長 島津 久大君    外務省アジア局    長       中川  融君    外務省欧米局長 千葉  皓君    外務省条約局長 下田 武三君    外務省国際協力    局長      河崎 一郎君    外務省情報文化    局長      田中 三男君    通商産業省企業    局長      徳永 久次君    労働省労政局長 中西  実君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君   説明員    外務省欧米局第    二課長     安川  壯君   —————————————   本日の会議に付した案件国際情勢等に関する調査の件  (国際情勢等に関する件) ○日本国とイタリアとの間の文化協定  の批准について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付) ○日本国メキシコ合衆国との間の文  化協定批准について承認を求める  の件(内閣提出衆議院送付) ○日本国とタイとの間の文化協定の批  准について承認を求めるの件(内閣  提出衆議院送付) ○在外公館の名称及び位置を定める法  律等の一部を改正する法律案内閣  送付予備審査)   —————————————
  2. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それではただいまから外務委員会を開会いたします。  国際情勢等に関しまする調査議題にいたします。これに関しまして、羽生理事から総理及び外務大臣に今日の定例委員会に御出席を願いたいというお申し入れがありましたが、各理事ともお諮りいたしますひまがありませんでありましたので、直ちに総理の御都合を伺いましたらば、本日は三十分出席ができる、外務大臣またさようでございます。衆議院の方における、予算委員会関係かと思いますが、そういう事情でこの席においでをいただくことが三十分であります。そのおつもりで一つ有効に時間をお使いいただきたいと思います。  それを済ませまして、文化協定の方をやりたいと思います。これは衆議院から送付されてきておりますから。  そのあと曽祢委員からの米軍関係のことについての御質問がございますから、それをやりたいというふうに考えております。  なお、総理出席要望の向きも他におありのように思いますので、それは総理の御都合によってまた御相談の上でできるだけ早い機会にお願いをいたすということにいたしたいと思います。これに関しましては、後刻理事の各位とお打合せをいたしたいというふうに考えております。それでは御要望のありました羽生委員から。
  3. 羽生三七

    羽生三七君 発言をする前に、私も座ってやらせていただきますので、総理大臣もそのままでお答えをお願いいたします。  今日お尋ねをいたしたいのは、主として対ソ交渉に関する問題でありますが、その前にただ一点だけあとお尋ねする問題とも関係がありますので、当面の問題で首相心境をお伺いしておきたいと思います。それは最近民主党自由党の幹部の間で保守合同の話が進められておるようで、またそれに関連して首相の進退が論議されておるようでもあります。しかしこのことは、首相がもし健康が悪いためにおやめになりたいとか、あるいはまた政策が行き詰っておやめになるとか、あるいはまた少数与党議会運営が困難でおやめになるとか、そういう理由での辞任ということなら、私ども了解できるのでありますが、今伝え聞くように、この保守合同ということをやるために、首相地位というものが取引の員に供されるということは、私どもとしてはかなり不愉快なことなのであります。しかも、首相が先の総選挙の結果、少くとも第一党になって、単独政権というものを作られたことから考えますと、これは国民に対しも必ずしもいい印象を与えないと思うし、議会政治運営上から言っても、また民主主義のルールから言っても、私どもとしてはかなり疑惑を持たざるを得ない点があるのであります。このことをお尋ねすることは、民主主義議会政治運営の問題のみならず、あるいは首相が今後対ソ交渉なんかをおやりになる場合でも、かなり首相考えている点と方向が違った形で、つまり保守合同というような形で問題が進められていくならば、首相のお考え相当制約を受けるとも予想されますので、この際、当面の政局関連して、首相地位というものが保守合同条件として云々されていることに関しまして、首相心境お尋ねしたいと思います。
  4. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) お答えをいたします。私が引退する、引退するということが新聞によく出ておりますけれども、引退ということは今考えておるわけではありません。しかしながら、保守の連係とか合同とかいうことが政局を安定する上に非常に必要なことだと考えております。これができれば非常に喜ばしいことだと思っております。そのために適当な後継者ができて保守合同ができるならば、それも否定する必要はないと思っている心境でありまして、私が退いてそのために予算を通してもらいたいというようなことは、今四者会談において私は議題にはなっていないと思います。
  5. 羽生三七

    羽生三七君 このことでお尋ねした、いことがまだありますが、主要な質問の時間が制約されることになりますので、これはこの程度にとどめて、他日に譲りたいと思います。  対ソ交渉についてのお尋ねの第一点は、この交渉をする場合、まあ私どもしろうと判断ですが、二つ方法があろうと思うのであります。一つは、わが方として当然相手方に提起する条件とか希望とか、まあその他各種の問題があると思いますが、そういう場合には、それらの全部が合意に到達することが困難な場合、その場合に、とりあえず解決しやすい問題、話し合いの可能な問題から片づけて、それで正規外交交渉外交調整ができた場合、正規外交機関を通じて、留保された残余の問題について、ケース・バイ・ケース一つ々々片づけていく、そういう進め方一つあると思うのであります。もう一つは、やはり本格的なこの何と言いますか、講和条約のような形を想定して、重要な案件がすべて片づかなければ、日ソ関係国交調整はできないという立場をとる行き方もあると思うのであります。だから基本的に政府はどういう方針をとろうとなさっているのか、これをまずお尋ねをしたいのであります。と申すのは、もしこの非常に重要な問題で引っかかってしまって、話がなかなか進まない。その間に第三国からのいろいろな思惑が出てくるということで、首相が最初予期したようなコース対ソ交渉が進まないというようなことも考えられますので、今私が申しましたように、簡単な問題、話し合いの可能な問題、解決が可能な問題、そういう問題を先に片づけて、とりあえず正規外交機関を双方で持って、そうしてその正規外交機関を通じて残余の留保された案件についての交渉をするというやり方か。それからもう一度繰り返しますが、重要案件がすべて片づくまでは外交交渉、つまり正規国交回復ということはあり得ないというお考えをとるのか、どちらに重点をおいてお考えになるのか、これは総理大臣外務大臣御両所からお答えをお願いしたいと思います。
  6. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) とにかく、どういうような方法でもって話し合いをするのがいいかということは、私にはよくわかりませんから、外務大臣から答弁させてもらいますけれども、私としては、とにかくソ連戦争をして、その後そのままになっておりますので、この戦争状態を終結させるのには、たとえばソ連の占領している領土の問題であるとか、あるいは戦争によって抑留されている戦犯者とか、その他の人々、そういう問題とか、あるいはソ連の容喙によって入れなくなったような国連加入の問題とか、通商の問題だとか、すべての問題を話し合いながら国交を、戦争状態を終結させていくというのが当然進むべき途のように考えておりますが、どういうように話し合いを進めていったのが目的達成の上に最も便利であるかどうかは、私はわかりません。そういうような点については外務大臣から答弁をしてもらいます。
  7. 羽生三七

    羽生三七君 外務大臣の御意見を承わる前に、もう一度総理からお聞きしたいのは、その交渉進め方の細かい点について、細目については私が今ここでかれこれ言う考えは毛頭ないし、非常に技術的にむずかしい問題だと思いますが、その交渉の過程について、たとえば領土問題というのが出てきて、それも何か相手がすぐ了解できるような形ならいいが、非常に大きな形で問題が提起されて、それで引っかかって、それが引っかかっておるために交渉ができないというようなことも出てくると思うのですね、だからそういうような場合に一体、そういう問題がもしどうしても片づかない場合には、問題を後日に留保して、正規外交、つまり国交回復をやって、そしてしかる後に、その留保した条項を後日解決してやっていくというやり方をおとりになるのか、ここは非常にデリケートな問題だとは思いますが、一つ率直にお答えを願いたいと思います。
  8. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 領土問題についても簡単に片づく問題もありましょうし、たとえば占領されているようなところは、その占領問題というのは簡単に片づきやしないと思いますが、領土日本領土であると主張する地域についても、法律関係においてもいろいろ違うところがあるだろうと思いますので、中には非常な時日を要する問題もあるでありましょうから、領土問題だけを片づけたいとかいうことも、ちょっと一言にしては話ができないような気がいたしますので、それらの点については外務大臣からどうぞお聞き取りを願いたいと思います。
  9. 羽生三七

    羽生三七君 それじゃ外務大臣の御意見を承わっておいて、また総理お尋ねいたします。
  10. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 日ソ交渉はまさに始まらんといたしておるのであります。その際、今お話しの点は、日本の持ち出す条件が通った後に国交を回復するのか、通らん先に国交を回復するのかということに帰着するだろうと思います。今、交渉を始めるときに、条件をどこまで通していいのかという腹をこっちは言ってしまうわけには私はいかんと思うのです、それをどうしてもこの委員会で言えとおっしゃるのは、少し私は無煙なような気もいたしますししかし、まあそれはそれにしておいて、ごく理論的にわれわれの考え方を、まあかりに述べることもでき得ないこともないと思うのですが、今まででも、国交が回復していないときでも、やさしい、でき得ることは事実上やるということは私はいいことだと思う。やってもいい。しかし、国交を回復する、国交を正常化するということは、これはおのずから国際間にはしきたりがあることなんです。戦争状態から平和状態に移るというのでありますから、これは平和条約を締結することが常識であることは疑いをいれない。どこの国の間でも、戦争状態から平和状態に移るということになれば、平和条約を締結する。平和条約を締結するということである以上は、相手方がどういうものであるか、たとえば相手方領土は一体どういう領土であるか、領土の主権の尊重、これはまず第一にやらなければならないと思う。これは相手が互いに一体どういう基礎的な骨格を持っておるのかということは、これは明らかにしなければ、戦争状態から平和状態になれないと思う。従いまして、軍票なことについて了解経ずして、平和条約の締結ということは私は考えられぬことだと思う。こう理論的に申し上げられます。それならば、こちらの重要なことが通らない、上向う了解を得ることができない、できないというままに、いつまでもこれを放任することがいいか悪いか、何かほかに方法がないかということを考えなければならぬ事態に、日本中心として国際情勢が押し迫られることがあり得ることも、これは理論考えなければならぬ。しかし私は、そのときはそのときに一つ事態を見て、国の利害のおもむくところを慎重に考慮して差しつかえない問題であると思う。今日のところでは、国際関係条理に従って、戦争から平和状態に移るのだから、基礎的なことについては、はっきりと了解をつけて進むのが、私は理論的であり、また条理であろう、こう思うのです。そこで問題は、今たとえば左の方、ソ連側の方と言ってこれを説明申し上げれば、これはなしくずしにやろうという考え方が多分にある。第一、通商代表部を置いてこれを認めさして、それによって代表権を得て、だんだんと日本の国内の宣伝にも機関を据え置き、だんだんそれでなしくずしにいこうという考え方もあり狩る。またそれに同調する意見もあり得ると思います。しかしこれは実際的利益の伴なう場合においては、私は承認問題とは別に具体的の利益交換の問題として考え得ることではないかと思うのです。平和状態を回復するという問題については、さような、なしくずしの何で満足するというわけにはいかんように思うのですが、これは理論です。そこでそれじゃ実際はどうかというと、私は、具体的に、方針としてはこちらの要求をしなければならぬこと、また互いに了解し合わなければならぬことは率直にこっちは持ち出していって、了解を求めることに努めることがいいと思う。それでどこまでいくかということを押し進めていって、あくまで国際間の条理に従ってやることがいい、そのことが不可能な場合には、また不可能な場合として国家の利益のおもむくところに従ってこれを判断する、こういう態度がいいように考えておるのでありますが、いかがで、ございましょうか。
  11. 羽生三七

    羽生三七君 私もこの委員会で無理を言って、政府立場をしいて困らせるというような考えは毛頭ないのでありますが、ただ、問題は、そうやって話が進んでいく、なかなか問題が片づかない、先ほど申上げましたように、第三国思惑も出てくる、なかなか片づかないうちに、結局日ソ交渉が成立しなかったのは、こちらのせいではない、向うのせいだというような理屈もときには出てくることもあって、はたして最初考えられたような日ソの正常なる国交を回復するという目的地に到達することができるかどうか疑わしいということが起らぬとも限らない。そういうことを心配して私は申上げるので、それよりはむしろ問題は、もとよりわが方の条件をできるだけ通すことはいいにきまっている。またそう政府が努力することを希望しますが、しかしどうしてもむつかしい問題があれば、後日に留保して、そうして簡単な片づきやすい問題から手をつけて、それで適当なところで外交交渉を成立さして、正規機関を通じて自余の問題を解決するということの方がいいと思うのでお伺いしたのでありますが、途中で話がちょっとそれるのですけれども鳩山首相にお伺いしたいのは、一部新聞に外電として伝えられておりますが、先日鳩山首相アリソン大使と会う際に、テーラー極東軍司令官と三人お会いの際に、何か日ソ交渉に関して、相手国外交機関日本へできるということは、日本のために好ましくないというようなことを相手側が発言された云々というようなことが新聞に載っておったのでありますが、そういう事実があったかどうか。
  12. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そういう話はいたしませんでした。
  13. 羽生三七

    羽生三七君 けっこうと思います。それではもう一点だけお伺いして、あと同僚議員がお待ちになっておるのでありますから、その方へお取り運び願いたいのでありますが、首相最初超党派外交ということを言われておったようでありますが、その後昨日の根本官房長官の談話を承わると、結局まあそういう交渉はおやめになって、各党個別に党首の方と話合いされるというような、そういうコースを進めておるようであります。これは非常にけっこうなことでありますが、問題を限定して、ある種の目的について特定な限定された問題について相手側意見交換をし、共通点を見出すということはこれはあり得ると思う。私はけっこうなことだと思うのでありますが、しかし保守合同の過税として、もし民主党自由党だけの話合いが非常に中心題目になったというような場合には、かなり首相のお考えになっておる日ソ交渉とはほど遠い結論が出てきて、あなたが足を引っぱられるようなことも起ってくるように考えられるのでありますが、その点は首相はいかがにお考えになっておるのでありますか。今後どういうふうにして、超党派外交機関というようなものは作らないにしても、その種の構想で何か新しいお考えがあればお伺いしておきたいと思います。
  14. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はまあ超党派外交というような外交委員会ができれば最もいい、そういう制度が日本に置かれれば最もいいことだと思うのですけれども、打診した結果はそういうことがなかなか成立しそうもない。そこでとにかく懇談会という形式において各党首相談をしてみたい、そうして政府考え方も話をしてみたいと思ったのでありますが、自由党社会党両派と一緒に話をするということは、各派がやはり気が向かないというようなことを聞いたものですから、それならば各別にでも会いたいと思って、今は各別に会うというような方向に進んでおるのであります。
  15. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 日ソ交渉態度に対する方式ですが、今鳩山総理、あるいは重光外相から一応の御説明があったのですけれど、なおはっきりしませんので、もう一つ少し視角を変えてお尋ねをしてみたいと思うのですが、今の重光外相お話によると、日ソ間に懸案になっている重要問題は全部一応話合う、話合うことはけっこうなんですが、しかし少くともほとんど全部、あるいは少くとも領土問題については日本主張がいれられなければ国交を回復すべきでないという考え方が一方にあるし、その領土問題は特に重要に解決をしておくべきだというふうな強い主張もなされておりますが、こういうことを外務大臣はお考えになっておるのかどうか。あるいはこれまでのいろいろな衆議院予算委員会、あるいは外務委員会総理の御答弁によると、そういうむずかしい問題をいつまでも固執していたのでは、国交回復なるものはできないので、むしろ国交回復をすることが前提条件にならなければならないし、国交回復をすることによって、また逆に領土問題の解決条件も整ってくるのだから、むしろその方に力点をおいて、従ってソ連との戦争状態を満算をして国交回復に入るということをまずやって、しかる後に諸懸案の残されたものを逐次解決をしていくという方がいいじゃないかというような御意向のように、総理大臣の御意向は私たちは受けとるのですが、その点をもう一ぺん総理からはっきり御答弁を願いたいと思います。
  16. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 領土問題を解決し、しなければ国際関係を正常化するということはいたしませんというようにただいま申し上げるあれはないと思うのです。しかしながら戦争をしたままでありまして、その戦争をしたままでいくということはいけない。どうしても国際関係を正常化したいと思う。その根本となるのはやはりこの戦争によって引き起された、あるいは現在ソ連が占領しておる地域だとか、あるいは戦争によって抑留されている人々であるとか、あるいは戦争によって幾分侵害されたという北洋漁業関係であるとか、その他のいろいろの問題、通商問題にしても、国連加入の問題にしても、戦争によって引き起された懸案解決していって、初めて戦争をしないもとの状態に戻るものと思いますから、原則としては、これらの諸問題を解決することが、日本方針でなくてはならないと思っております。ただどういう点でまず国交調整をして、幾つかのむずかしい問題はあと回しにするかというような事柄については私には意見はございません。そういうこまかい点につきましては、まあ外務大臣なり、あるいは外務大臣としても詳細なことについては申し上げにくいこととは思われますけれども外務大臣の方から答弁をしていただきます。
  17. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そのこまかい問題はあとにしまして、特に重要な、基本的な問題、領土条項の問題についてでありますが、これまでのお話を聞いていると、特に重光外務大臣お話を聞いておると、まず領土問題を解決し、これが相当解決しなければ、国交回復はできないんだというような御意見を承わったように思うのですが、この領土条項の問題は非常に重要な問題であることは私から申し上げるまでもないと思うのです。ことにこの領土の問題、または歯舞、色丹の問題もありますが、これは当然に北海道の一部として返還主張しなければならないことは、われわれも全く同感であります。さらに千島南樺太の問題もあると思いますが、これらの問題については、それの軍事的な意味が非常に重要な問題として関連をして参る。たとえばアメリカ側領土問題に対して同じように、非常な関心を示しておって、今年の一月三十日の朝日新聞でありましたか、特派員が報ずるところによると、「日本はまず千島の南半分の返還を要求するだろうし、そうなれば、米国はアラスカから東南アジアへの防衛線千島が加わることでもあり、陰からの応援を加えるに違いない」という見方をアメリカがしているということを報じております。さらに二月二日の毎日新聞によりますと、「上院外交委員のハンフリーは、ソ連日本が帝国主義的な侵略で奪ったものでない島を、一方的に軍事占領しているのだから、この点日本は絶対に譲るべきでない」、こういう主張も言っております。それから考えられることは、アメリカ千島を大そう軍事基地といった観点から注目をしているということが言えるのじゃないかと思うのです。一部にはこういう具体的な考え方を基礎にしながら、領土返還の問題を積極的に取り上げて、これを解決する方向を推し進めなければならないという主張が、国外でも欄内においても相当強く主張をされていると思うのですが、もしこういう考え方と同調をしながら、この問題を取り上げようとすれば、問題が解決をしないことは三才の童子でもはっきりわかることだと思う。従ってこういう見地から領土問題を取り上げるべきでもないし、主張すべきでもないし、もし領土問題を取り上げ、主張をし、解決をしようとすれば、むしろこの軍事基地を置かない、駐留軍を置かない、あるいはさらに用事施設をしないというような問題として、この問題の解決主張をしなければならないし、従ってそれはサンフランシスコ平和条約、あるいは日米安保条約、あるいは日米行政協定の破棄、廃止、あるいは改訂の問題とも関連をした問題である。われわれはそういう問題と関連をして、この問題は強くソ連に対して主張をしなければならないと思いますが、そういう問題は今ここで数カ月間で解決をするような簡単な問題でなくて、非常にむずかしい重要な問題である。そうであるとすれば、そういう問題は、むしろ国交回復の後に、もっと本格的な問題として解決をするというような態度で事に処することが、ほんとうの意味における国交回復に資するゆえんであり、また国交回復をすることが、そういう領土問題解決の第一歩であり、前提条件になるというようなふうに考えるのでありますが、この点は対ソ交渉における基本的な態度の問題でありますから、特に明瞭に総理から、この点の態度について、どうお考えになっているかの御答弁を願いたいと思います。
  18. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 領土問題についても、割合に解決が早くできるようなところもありましょうし、ただいまおっしゃる通りに、なかなか解決のできない、後に回した方がいい場合も生ずると思います。それはただいまのところ、それ以上のお答えはできないような気がいたします。御了承願います。
  19. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 とにかく総理が繰り返しおっしゃっていることは、この際、日ソ国交を回復することが国際間の緊張緩和の第一歩であり、しかもそれが戦争を避ける唯一の道なんだから、そのことだけはぜひやらなければならんということを繰り返し御主張になっていると思いますが、そういうお考え方からすれば、おのずからさっき申しましたような意味における国交回復に最重点をおかれるという態度でしかるべきだと思いますが、その点はどういうふうにお考えになりますか。
  20. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 国交回復という、つまり先刻外務大臣が申しましたように、国交を回復して、領事館なり大使館なりの交換をするということだけではやはり足りないと思いまして、やはり国交を回復するにあたっては、どうしても解決しなくてはならない問題もあると思いますので、それらの問題はあまり時間をとるものとも思わないのであります。領土問題を全部解決するとなると非常な長時間を要すると思いますから、先ほど羽生さんに申しましたように、領土問題についての解決の容易にできる部分もあると思うから、そういう問題を解決する。解決のなかなかできない部分については後日に回すというような態度でもって、戦争後に当然しなくてはならない講和条約みたいなものを作りたいと思っておりますと申したのも、その意味でございます。
  21. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 御出席の時間も相当過ぎて、ただいま衆議院予算委員会から、総理出席を求めておりますから、この程度で御満足を願いたいと思います。
  22. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 きょうはこの程度であれしますが、あとまだ問題をたくさん残しておりますので、いずれ他の機会にお願いいたしたいと思います。
  23. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それはあとで追って御相談いたします。   —————————————
  24. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 次に日本国とイタリアとの間の文化協定批准について承認を求めるの件、日本国とメキシコ金策国との間の文化協定批准について承認を求めるの件、日本国とタイとの間の文化協定批准について承認を求めるの件、以上三件を一括して議題といたします。  まず、政府から提案理由の御説明を願います。
  25. 園田直

    政府委員(園田直君) ただいま議題となりました日本国とイタリアとの間の文化協定批准について承認を求めるの件、日本国メキシコ合衆国との間の文化協定批准について承認を求めるの件及び日本国とタイとの問の文化協定批准について承認を求めるの件の三件につきまして一括提案理由を御説明いたします。  まず、わが国とイタリアとの間には、戦前昭和十四年三月に署名された文化的協力に関する協定が存在しておりましたが、第二次大戦後両国間の文化交流が再び活発になるに従い 現実の状態に即した新たな文化協定を締結する要望が両国政府の間で漸次高まった結果、昭和二十八年一月から東京で具体的交渉を行なって参りましたところ、昨年五月に至って両国政府間で意見の一致を見るに至りました。よって、同年七月三十一日に岡崎前外務大臣と在京イタリア大使との間に、この文化協定の署名調印が行われたのであります。  第二に、メキシコ合衆国については、政府は昨年日仏文化協定及び日伊文化協定の締結交渉の進展とともに、メキシコとの間にも文化協定々締結する話し合いを進めたところ、先方においても、同国がアジア諸国のうちで最初に結ぶ文化協定をぜひわが国との間に締結したいとの熱心な態度を示し、昨年九月より両国政府間で具体的折衝を行い、同十月末までに政府間で意見の一致を見るに至りました。よって、十月二十五日、メキシコ市において、当時中南米諸国を訪問旅行中の岡崎前外務大臣と先方の外務大臣との間でこの文化協定の署名調印が取り運ばれました。  第三に、タイとの関係につきましては、わが国とタイとの間には、昭和十七年十月に署名された文化協定が存在しておりましたが、戦後タイとの文化交流は、仏、伊等と並んで最も活発なものがあり、かねてから新たな文化協定の締結の必要が痛感されておりましたので、本年三月両国政府間で具体的交渉を開始しました結果、四月六日に東京において、本大臣と来朝中のタイ外務大臣との間でこの協定の署名調印々了した次第であります。  これらの三協定は、いずれもほぼ同様な規定を内容とし、わが国とそれぞれの相手国との間に伝統的に存在しております密接な文化関係を今後も維持すると同時に、いよいよ緊密にすることを目的としております。これらの協定の実施により、相手国との文化交流を通じて両国民間の相互理解は一そう深められ、ひいて両国間の政治的及び経済的友好関係の増進に資すべきことを信じて疑いません。また、これらの協定の効力発生により、わが国が戦後締結した文化協定は、昨年五月に署名された日仏文化協定を加えて、四協定となるわけでありますが、これによって日本文化の諸外国に対する紹介の機会が著しく増大されることが期待できることと存じます。  よって、ここに本件三協定批准について御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、本件につき、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  26. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) ただいま御説明のありました三件について、御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  27. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 これらの文化協定の締結に引き就いて、どういうことを実施しようとしておられるのか、具体的な諸方策を御説明願いたい。
  28. 田中三男

    政府委員(田中三男君) 大体この協定の中に大筋がうたってあるのでございますが、学者の交換であるとか、あるいは学生の交換であるとか、あるいはまた美術品の展覧の交換であるとか、そういうふうな事柄を大体予定いたしておるのでございます。しかしまだ具体的にどうというのではございませんので、この協定によりまして、ある国との間には、それらの国と我が国との間に混合委員会を作りまして、この委員会によりまして、これは民間のそれぞれの知識経験者の方を選びまして委員にお願いするつもりであるのでありますが、この委員会において具体的なプログラムをたてて、これに基きまして順次実行していく、こういうような考えでおるわけであります。今のところこれによって何をするという具体的なことは今後のことになっておるわけであります。
  29. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 実施は今後のことになって当然でしょうが、しかしプログラムとしては少くとも日本側はどういう具体的なプログラムを持っておるのだということぐらいは、もっと具体的な準備があって、その上でこういう協定もお作りになったのだろうと思うし、ことに日仏文化協定はすでに先に締結されており、それらの先例に徴しても、もっと具体的なプログラムはできていいし、また作っておかれなければならないと思うのですが、その辺の事情はどうなっておるのですか。
  30. 田中三男

    政府委員(田中三男君) 先ほども申し上げましたように、直ちに実行いたして、もう現に実行しておる面もあるわけでございまするが、もっとも今までも行われ、今後も計画しておりますのは、学生の交換、それから学者の交換等でありますが、そのほかに図書の交換もやっております。また古美術の紹介、美術展覧会、こういうことも計画を順次進めていきたい、かように考えておるわけであります。
  31. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それに対して予算的にはどういうふうにお考えになりますか。
  32. 田中三男

    政府委員(田中三男君) これは現在私どもの情報文化局に配付を受けておりまする予算の範囲内でやり得るものと、今後の計画に伴いまして新たに予算の必要なるものと、こうあるわけでございまするが、実際ありまする予算の範囲内でやり得るもの、これも外務省と文部省との方との関係があるわけでございまするが、外務省に配付の予算、あるいは文部省でお持ちの予算の中でやり得るものは、この予算の範囲内で実行いたしまするし、さらに予算の必要とするものにつきましては、そのつど大蔵省とお話をしまして、予算をいただいた範囲内で交流していきたい、かように考えております。
  33. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、その予算は、たとえばこういう文化協定批准をされたに伴って、新たにイタリアとか、メキシコとか、タイとかには、別途新規に三十年度あたり予算をお考えになっておるのか、そうでなくて従来あった、去年もあった、今年もそのままだ、そのうちから若干これにさこうというふうにお考えになっておられるのか、その辺を金額的に言って、どれくらいの額を用意しておられるのか、その点をもう少し詳しく御説明していただきたいと思います。
  34. 田中三男

    政府委員(田中三男君) 具体的な予算の数はちょっと手元に持っておらないのでありますが、大体私どもの方で配付を今受けておりまする年間の予算は二千万円程度でございます。この二千万円程度の予算をもちまして、単に、これは文化協定の作られた国だけではないのでありまして、その他の国にも必要に応じてこの範囲内において文化の交流をいたしておるわけであります。そのワク内でやり得るものはやりまするし、さらにたとえば特殊の問題が起りました場合、具体的に申しますると、松方コレクションの返還を受けるために美術館が必要であるというような問題も、現に具体的な問題があったわけであります。これは大体文部省の方で予算的措置を講じていただいたわけでありますが、そのつど文部省その他の関係省とも相談をいたしまして、予算をとっていただいて実行に移す、こういう考えでおります。
  35. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうするとこの二千万円というのは去年もこうであったし、今年もこうで、こういう協定ができ、あるいは批准ができたから、特例にどうだというようなことは行われていないのかどうか。
  36. 園田直

    政府委員(園田直君) この協定の計画を見越しまして、外務省としては特に留学生の問題、これは外務省の、御承知のように外郭団体の国際学友会が当っておりますので、この方面からの熾烈な運動もありまして六千五百万円の第一次予算の、要求をいたしましたが、予算折衝の結果、御承知の通り各省ともなかなか各項間に亙って削除を受けまして、二千万程度に削られたわけでございます。なお、展覧会あるいはその他の行事等は、そのつどできるものでございますので、そのつどの分はそのつど御審議願って御援助願いたい、かように考えております。
  37. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、もう一ぺんはっきりお聞きしたいと思いますが、二千万円という金は、これよりはるかに多いのを要求されたのに、これだけに削られた、しかしこれだけは、今度こういう文化協定その他を批准するに伴って新たに二千万円とられたのか、そうでなくて去年もこの程度あったのに、それをただ適当に配分するというおつもりなのか、そこのところをはっきり願いたい。
  38. 園田直

    政府委員(園田直君) 遺憾ながら昨年と同じでございます。
  39. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうしたら、こういう協定をお結びになる、しかも批准を求められている態度というのは、非常に熱意がないように思うのですが、これは意見でございますから、他の機会に申し上げます。  それに関連して、別にタイとの文化協定をお作りになったようですが、今度バンドンのアジア・アフリカ会議で、アジア諸国の文化協力の問題が非常に問題になったのでありますが、インドであるとかビルマであるとかインドネシアであるとか、あるいは特にインドあたりとの文化協定その他をお結びになる用意なり努力はないのかどうか、その辺の事情はどうなっているか。
  40. 田中三男

    政府委員(田中三男君) この文化協定につきましては、相手国がこういう協定を作って文化交流をやろうという方針をとっておる国と、別段協定なしに個々の問題について文化交流を進めていこうという方針の国とがあるわけでございまして、私どもといたしましては、東南アジア、特にアジア関係の国との文化交流をやるために、こういう協定を作りたい、作っていきたいという方針をとっておるのでございますが、今のところお尋ねのインド、インドネシア等ではあまり相手側に熱がないので、具体的な運びに至っておらないのであります。しかしイラン等はかなりこれに熱意を示しておりまするので、私の方でも目下出先の大使を通じまして、よりより話を進めておるような状況でございます。外務省といたしましてはなるべくこういう協定を作って、これを基礎にして文化交流を進めることが便宜であり、いい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  41. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 他に御発言もございませんようですから、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
  42. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 イタリアとの文化協定の案の中に九条ですか、この協定関連しての委員会の設置の条項がある。この条項は他の文化協定にはない条項のようでありまするが、この委員会の性格といいますか、これはどういうふうに考えていいのか。一つ外交上の機関として考えるのか、単純な民間の機関と見るのか、あるいはそれぞれ政府機関と見るのか、またこの委員会の権能といいますか、職能というものはどういうものか、条約に根拠を持つ委員会でありますから、一応具体的に御説明をお願いたしたい。
  43. 下田武三

    政府委員(下田武三君) この委員会は御指摘の通り日伊間の文化協定のみにございます。
  44. 小滝彬

    ○小滝彬君 フランスは……。
  45. 下田武三

    政府委員(下田武三君) フランスもございます。しかしタイとメキシコの間にはございません。これはおのずからこの文化交流の事業の繁閑に応じまして、こういう委員会を設置することが適当であるかどうかという見地からきまったわけでございますが、混合委員会の性質は他の条約に基く委員会と全く同様でございまして、その委員会のメンバーは必ずしも民間のみでなく、また必ずしも政府の役人のみでもなく、両方の代表が入っておるものでございますが、しかし委員会のメンバーは、この条約に基くものであるから官吏の身分になってしまうということはございません。これは官民で条約に規定された事務を行うということに相なっております。
  46. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 多少の経費もいるわけですけれども、それは当然現在の外務省の既存の経費予算で賄うわけなんですか。
  47. 田中三男

    政府委員(田中三男君) この民間の委員になっていただいた方には、ごく少額でございますが、手当を出すことになっております。
  48. 佐藤尚武

    ○佐藤尚武君 映画のことについて少し伺いたいのですが、このイタリアとの協定の第一条には、こういうことをやるのだということを挙げられて、その中に「科学的、教育的又は文化的性質を有する映画」ということになっておる。その前の(b)項には「講演、演奏会及び演劇」となっておって、この演劇というのには何ら、もちろん何ら制限はない、あるわけもないのであります。しかし映画に限ってなぜ文化的性質を有する映画というふうに限られたのか、そこを一つお伺いしたいのであります。  それからもう一つは、外国の映画を日本に持ってくるということの基礎はどういうところにおいてあるか、つまり現実の問題としてわれわれが市中の映画劇場でアメリカの映画はずいぶんだくさん上映されておるようでありまするけれども、フランスなりイタリアなりその他の国々の映画の数はきわめて限られた数にとどまっております。これらは何か映画を輸入するに当っての科学的な割当みたいなものがあるやに聞いておりまするけれども、その割合は一体どこできめられるか、どういうふうにしてきめられるのか、何ゆえにフランス、イタリアの映画の数が極端に制限されているか、そういうようなことについて御質問申し上げたいと思うのであります。
  49. 田中三男

    政府委員(田中三男君) ただいまお尋ねの第一の点でございまするが、映画の件に「科学的、教育的又は文化的性質を有する」という前置きがありまして、講演、演奏会及び演劇等に別段これがないのでございまして、別段これは深い意味があるのではないのでございまするが、ただ映画の場合はかなりコンマーシャル・ベースのものが多いようで、この点かなり各国ともやかましい問題になっております。ここではそういうものを除く、そうしてただ科学的、教育的、文化的、そういう教育的、文化的なものだけに限ったという意味でつけたのでございます。それ以上の深い意味はないのでございます。  それから第二の御質問の各国の映画の割当の問題でございまするが、これは大蔵省の方に委員会があるようでございまして、これによって各国の割当基準がきまっておるようでございまして、その間の事情をよく詳しいことはわからないのでございますが、ただ米国が非常に多くて、ヨーロッパ各国の映画の割当が非常に少い、私どもも始終それらの国から心情を受けるのですが、大体過去の実績が基準になっておるようであります。
  50. 佐藤尚武

    ○佐藤尚武君 この(c)項にあげられている映画は、一般に映画としてコンマーシャル・ベースのものが多いからして、ここには文化的な映画に限ったのだという御説明でありますが、まあそれはそれでいいとしましても、もし日伊文化協定あるいは日仏文化協定等ができて、そうしてお互いに他の国の文化を理解する上に便宜を与えるんだ、またこれを奨励するんだという意味からいうならば、そのコンマーシャル・ベースによるものでも、そういう種類の映画ももっとたくさん輸入して、そして日本国民にこれを見せるというようなことにしなければ、その文化協定を結んだ趣旨にかなわないように思うのです。つまりここでは文化映画に限るということになっている。それはそれとしてよろしいけれども、それなら一般のコンマーシャル・ベースの上の映画をもっと余計に日本に輸入するということに自然結論としてなってこなければならぬように思うのです。今伺えば大蔵省で何かの委員会があって、そこでもって割当の基準をきめるということですが、その基準は詳しいことはわからないけれどもということを言われましたが、しかしその基準としては、過去の実績がものを言っているのであって、過去の実績によってその基準をいつまでもきめて行くというようなことであっては、フランス、イタリア、その他の、つまりアメリカ以外の国からの映画の輸入というものは、いつまでたっても限られて行く、こういうことになってくると思うのですが、その辺は私としてはふに落ちない。こうやって文化協定をわざわざこしらえておいて、そうして肝心の映画の数は過去の実績でもってそれを制限して行くんだというと、どうも趣旨に合わないような気がいたします。それらについてこれは管轄がお違いでもって、十分御説明おできにならぬとするならば、この次でもよろしゅうございますから、一つ調べていただいて、過去は過去としても、今後はそういう点についても何か改善をする余地はないものかどうか、そういうことについても、一つ説明を願いたいと思います。
  51. 田中三男

    政府委員(田中三男君) 大体各国の映画のコンマーシャル・ベースによります映画の割当は過去の実績が基準となっておるようでございまするが、しかし特別の場合はある限度がございまして、われわれの要求を聞いてもらえる範囲があるのであります。その範囲におきまして、われわれも御質問のような御趣旨に従いまして、大蔵省方面とも折衝いたしておるわけであります。ここにこういう文化協定ができまして、こういう条項がありますると、実はこれを基準にいたしまして、これをもとにいたしまして、大蔵省方面と折衝をしてお願いをする、特別の割当をお願いするというのに非常に便利なわけであります。現にこの四月にもイタリア映画祭が東京で行われたのでございますが、これなどもこの協定の趣旨に従いまして、われわれのほうもかなり大蔵省なり、その他の国内官庁にもお願いをいたして、あれが実行できた。そういう意味でこれはこの協定の中にこういう規定があるということは、今後そういう特別の便宜をはかってもらえるために、非常に便利な規定になっておるわけであります。
  52. 園田直

    政府委員(園田直君) ちょっと補足いたします。今御質問された趣旨はわれわれも同感でございまして、ただいままで大蔵省の委員会で、このメンバーは大蔵省と、外務省からも出ております。それから民間からも出ております。そういう委員会の割当によって決定されておりますが、為替管理の立場から、どちらかというと商品としての割当の点を重視されておったので、過去の実績による割当を基準としてやって来ておるような次第でございます。従って今おっしゃいましたようないろいろな方面から、今後、逐次改善されつつある方向に向っておるのでありまして、今後とも、われわれ外務省でも幸い文化面の割当として入っておりますから、そういう方面から、単なる商品としてではなくて、一つ文化財としての面からいろいろな意見を出して、今の割当を逐次日本国内の文化向上、並びに各国との文化交流に資したいと考えております。なお、参考のために申し上げますと、ただいままでイタリアの映画は一年間七本。メキシコからは輸出映画ボーナス割当以外が一本も入っていないという状況であります。御趣旨はよくわかっておりますから……。
  53. 佐藤尚武

    ○佐藤尚武君 ただいまの政務次官の御説明、非常に、少くとも私には満足すべき御説明であったと思います。ぜひそういうように努力していただきたいのですが、先ほどの情報文化局長の御説明の中に、去る四月、イタリアの映画の特別の催しがあったというお話でありましたが、これも承知しておりますが、しかしあの映画は大へんいい映画であったにかかわらず、あの限られたる催しが済むとすぐ本国に返してやらなければならぬというようなことであったそうでありますが、つまり結果としては、きわめて限られた人たちのみがこれを鑑賞したということであって、一般の民衆はそれを見る機会がなかったというようなわけでありまして、今伺えば一年中を通じてわずかに七本のイタリア映画の輸入ということでありますが、これはずいぶん少い数だと思うのであります。映画界におきましてはいろいろな複雑な事情があるというようなことも、多少は承知しておりますが、今政務次官のお話のごとき、文化的方面から見た映画の交換ということは非常に必要なことと思います。ぜひ今後一つそういうような努力をお続け下さるようにお願いいたします。
  54. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 今佐藤さんのおっしゃった点は、非常に重要な問題がたくさんあると思うのでありますが、今アメリカの映画は大体一年に百五十本余り来ていると思うのです。そしてヨーロッパの映画は非常に少数だ。で、そのアメリカの映画が、実績だ実績だということで、大蔵省の為替管理の問題で解決されておりますが、このアメリカの映画の実態というものはよほど検討しなきゃならぬ問題だと私は思っているのです。共産党必ずしもアメリカにけちをつけるために言っておるわけじゃないのですが、(笑声)しかし皆さんもこれはよく御無知と思うのですけれども、ギャング映画から、エロ、グロ映画というものがアメリカの映画の中に一番多いわけです。これを単に実績として片づけて、このままずっと同じような状態を続けるということは、日本の将来にとって、青少年に対する影響の上からも、非常に大きな問題だと思うのですが、それに対して外務省はどういう方針で臨み、どういうふうにやって行こうと考えておるか、一つ園田政務次官から……。
  55. 園田直

    政府委員(園田直君) ただいま佐藤委員並びに須藤委員から申された御意見は、全く同感でございまして、外務省では実績問題による割当概念というものを是正すべく努力しております。ただ問題がありますのは、実績による割当という面と、もう一つはこの業者の採算がとれるか、とれないかという点で、非常に障碍も多うございます。で、そういう点につきましても、外務省としては、外務省の意見、並びに厚生省、文部省の意見も聞きまして、一つ文化財として、またもう一つは、いろいろな思想、風紀上の問題からも、いろいろな悪い映画をなるべく締めて、いい映画を入れるというふうに努力したいと考えております。
  56. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 現在の実績で割当てられたる数というのは、義務的な数なんですか。どうなんでしょうか。そういう義務をもし負わされているとするならば、それに対してどういうふうに対処しようとするのか。今アメリカのあのギャング映画がたくさん入ってくるために、単に日本の青少年が毒されているのみならず、日本映画、日本の映画政策上にも非常なマイナスを受けているということができると思うのです。アメリカ映画に押されて、日本の映画会社は非常に困難を来たす、そういう状態にあるのですが、それに対してどういうふうにやって行こうという考えでいらっしゃいますか。
  57. 園田直

    政府委員(園田直君) この割当は毎年許可はしておりますが、割当の問題の基準はドルの割当でございますから、割当てられたものはほとんど義務みたいになっております。そのほかに優秀映画のボーナス制及び輸出映画のボーナス制というものは、これはまた割当と別個の問題になっておりますので、今のところは割当てられた割当てのドルによって、各業者が割当の中から買うということになっております。
  58. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、割当がドルの割当によって処理されているというふうになりますと、アメリカ映画は今後減らすことができないというような状態が続くのでしょうか。業者が輸入を欲しなかったならば、輸入をしなくても済むのでしょうか。どういう点でしょうか。
  59. 田中三男

    政府委員(田中三男君) もちろん業者が希望しなければ輸入をしなくてもいいわけであります。私どもも実は佐藤委員がおっしゃいましたように、欧州方面の東京におりまする大公使からいろいろ陳情等がございまして、現にスイスなどは、どうしても一本だけは入れてもらいたい。日本の映画ばかりスイスに輸入しておるのだから、是非入れてもらいたいというような要請がございまして、いろいろ実情を調べてみますと、日本の輸入業者のほうで、どうもこれは採算上面白くないというのであまり進んで輸入をしなかった。しかしこれもスイスの関係がございまするので、われわれの方からいろいろ折衝いたしました結果、最近一本入れるということに成功したわけでございまして、かように努力はいたしておるわけでございます。
  60. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 その割当内のドルの、割り当てた額をアメリカから買う義務というものはないのか。それを業者が減らした場合は、業者が報復的な処置をアメリカの映画会社から受けるというようなことはないのか。どうなんですか。
  61. 田中三男

    政府委員(田中三男君) 業者が輸入を欲しなければもちろん輸入しなくてもいいわけでございます。
  62. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 その場合にアメリカから報復手段を受けるというようなことはないのですか、営業上……。
  63. 田中三男

    政府委員(田中三男君) さようなことはないと思っております。
  64. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それからもう一つ、混合委員会の問題ですが、これはそのつど何か問題が起ったとき委員を選定するのですか、どうなんですか。
  65. 田中三男

    政府委員(田中三男君) これは恒久的な委員会でございます。
  66. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうしますると、外国から演奏家を呼ぼうと思う場合、また日本からいろいろな舞踊家を送ったりする場合、呼ぶことが適当な人であるか、また送ることが適当なものであるかということを認定する場合、その恒久的な委員だけで、四人の委員だけで果してそれが可能なものであるかどうかということは、私は問題が起ると思うのですね。日本代表の舞踊家のごとき顔をして外国へ行って、そうしていかがわしいものもときには出てくるわけですね。そういう場合にどういうふうなやり方でそれを適当と認定をするのか。その恒久的な委員だけで果してそれが可能であるかどうか。
  67. 田中三男

    政府委員(田中三男君) 各一般の文化関係の方が一つのコンマーシャル・ベースで、舞踊とか歌手等が海外へ出て行かれる。これは実はこの協定に基く仕事ではないのでございます。われわれとして両国の間で、国として取り上げて文化交流をやる、それにほどういうことをやったらいいかということを審議し、あるいはまたその計画を進めていくときに相談にのる、これが委員会の仕事でございます。一般の民間のやられまするいろいろな海外行きとは別でございます。
  68. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それはわかっておるのですが、国としてやる場合も、その音楽を送る場合、舞踊を送る場合、演劇を送る場合、いろいろな場合が起ってくると思うのですが、それを認定するには恒久の四人の委員で果してうまくいくのかどうかということは、私は大きな問題があると思うのですが、その場合に何か特別な方法をとられるのですか、どうですか。
  69. 田中三男

    政府委員(田中三男君) もちろん四人という限られた委員だけでは知識が足りない面が多いと思いますので、そういう場合には、もちろん民間の各種の団体あるいはそれぞれ経験を持っておられる方々の意見をよく聞きまして、その上で委員会にはかってきめていく こういうふうに進めたいと思っております。
  70. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) ほかに御質疑はございませんか。——御発言はないようでございますから、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  71. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——御発言がないようでございますが、討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  72. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。  日本国とイタリアとの間の文化協定批准について承認を求めるの件、日本国メキシコ合衆国との問の文化協定批准について承認を求めるの件、日本国とタイとの間の文化協定批准について承認を求めるの件、以上三件を一括して問題に供します。本件を原案通り承認することに賛成の諸君の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  73. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 全会一致でございます。よって本件は全会一致をもって原案の通り承認すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第百四条により本会議における口頭報告の内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成その他、事後の手続につきましては、慣例によって、これを委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  74. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 御異議ないと認めて、さように決定いたします。それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりまするから、本件を承認された方々の順次の御署名をお願いいたします。
  75. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は最近起りました特需車両事業の富士モーター大量解雇の問題について通産省、労働省、外務省等の当局に伺いたいと思うわけであります。  簡単に、この委員会の同僚委員の方にも御関心を持っていただく意味におきまして、経過を申し上げますが、この富士モーターというのは山本惣治という人が会長で、アメリカ軍の軽車両といいますか、一般乗用車、ジープなんかの修繕と改造をやっておる大きな事業でございまするが、おもなる工場は追浜にございまして、それからボデーを作っている工場が鶴見にございます。そこで従業員は七千人くらいあるのでございますが、この事業はすべてアメリカのいわゆる特需でございまして、会社と毎年米軍当局との契約がありまして、ある生産量を引き受け、それに労務を提供する、こういうやり方でやっておるわけであります。丁度ただいまは七月からアメリカの会計年度がかわるので、生産星が減るという心配を持っておったのでありますが、これらの問題について、労働組合側に何ら事前に会社側から通告があるいは予備交渉等が行われておらなかったのに、突然五月十八日に会社側から組合に対しまして、大体こういうような通告を出したわけであります。七月一日から以降は六割の減員をアメリカ側から要請された。そして五月の十一日になって追浜におりまする兵器廠の代表者ブラック中佐から、このことについて七月以降人員を六割減らせ、それからアメリカの今会計年度の仕事については追浜だけでやれ、従って鶴見のボディ工場及び下請の事業は全部やらん、こういうようなことをアメリカ側から言われたということで、会社の方しても翌五月十二日にはアメリカ側に対して、これは非常な重大な社会問題になるから、何とか少くとも人員整理は漸減的にやってほしいということを申したと、会社側は組合員には言っているそうでありますが、結局会社側の言うところによれば、軍がこれをいれるところにならず、十七日には七、八、九の三か月の作業計画が示され、これに基いて会社側と軍との話合いによって三千五十四名、これは追浜工場の人員が総員で六千五百九十四名のうも主千五十四名、それから鶴見工場から七百八十二名、合計三千八百三十七名を首を切る。まあ半数以上首を切ることを通告してきた。そこで組合としてはさような抜き打ち的な大量解雇には賛成できないというので、ただいま直接には会社を相手に団体交渉に入っております。しかも本日くらいにはいわゆるスト権を確立してストをもってこれに対抗せざるを得ないという絶対のピンチに追い込まれておるような状況でございます。申し上げるまでもなく会社の従業員の半数をいきなり首を切ることになり、さらにこの下請工場に与える影響が甚大であり、また追浜という町の商店に与える影響も非常に大きいのであります。小さい問題のようでありまするが、これはすべての特需工業の姿の一つの現われでもございまして、大きな社会問題になっておるわけであります。そこでかような状態のよってきたるゆえんは、言うまでもなく、私も申し上げましたように、特需工業の持っている弱味であります。これに対比いたしましてアメリカ軍に直接雇用されておる労働者の方の解雇問題は、まだ私がはっきりつかんでおりませんが、さすがにこの方は来会計年度においても、そう多量の解雇の模様はないようであります。これはアメリカとしても自分が直接に雇用しておる労働者の問題はかなり神経質に政治的影響も考えておるかに思いまするが、どうも特需工場に働く労働者は最も不利な状況に置かれるわけです。日本の雇用主の方に交渉いたしましても、アメリカからの生産計画が減ってくるならば、雇用量が減るのは仕方がない。訴える場所がない。その工業そのものが毎年々々のベースで行なっております。従ってその雇用に対する永続性がない。いわゆる訴えるところがないというような状況であるわけであります。しかも昨年のころからすでに特需に対する発注が漸減するということは、態勢としてこれはわかり切っていることである。また特需関係の座間にある兵器本部のリンド准将のごときも、わざわざ声明を発して特需が減るだろう。それからこれからオープン・ビッドにしてやるというようなことを、すでにそういう警告を発しておる。従いましてこの富士モーターの経営側がいかに無責任であり、無能力であるかということがわかるわけでありますが、今日はこの経営者をとらえて云々するのではございませんが、一体このような特需工業の現状及び将来の見通しをもって、しかもアメリカ側との間にいろいろ接触もあり、先方がこれが減るという意向も示しておる。こういう情勢に対処して、この特需工業に関しては、まず私は日本の官庁の窓口というものは当然に通産省ではないかと思う。そこで通産省の企業局長が来ておられるようですから、この最近における特需工業の趨勢をどういうふうにキャッチし、それに対応してどういう業者等に対する指示なり、あるいは転換の奨励なり、どういう対策を国内的にとってこられたかをまず伺いたい。
  76. 徳永久次

    政府委員(徳永久次君) 特需工業というものは、ただいまお話のございましたように、日本立場からみました場合に、ある意味で安定性のない仕事でもあるわけであります。ことに朝鮮事変とか、あるいは仏印事変とか、そういうものに関連した需要というものが相当大きな需要を占めておりましたので、(「聞えぬぞ」と呼ぶ者あり)従いましてそれの永続性ということには政府としましても大きな期待を持てない。同時にこの目先特需のありました間の期間で、日本の外貨収支に寄与する面もあるわけであります。しかし永続的なものでないのに依存する形というものは不健全な姿でありますので、役所としましては、通産省としましては、外貨収支のバランスは合せなければならない。そのためには基本的には輸出を伸ばしてゆくという線を努力しつつ、特需につきましては目先に相当の数でもありますので、輸出を伸ばすといっても、それが急激に伸ばすということも、なかなか実際問題にむずかしい点もございますので、また特需に関係している人たちに及ぼす影響もあり、特需は減るべきことは覚悟しつつも、しかしそのスロー・ダウンのカーブを極力ゆるくしてもらう、そういう方法より仕方がないではないかというような考え方で望んでいるわけであります。  具体的なこの車両工業の問題につきましては先ほどお話のございましたように、昨年の秋から具体的に数字はわからないけれども、来年度になったら、すなわち本年度になりますと減るじゃないかというような話もあったのであります。そのことは日本の車両、特需を受けております車両工業関係者にとっても大へんな問題でもあり、また政府としましても大きな問題になるおそれがありますので、極力その減るべき見込みがどの辺になるのかということをつかみたいと思いまして、いろいろと努力したわけであります。その大勢として、減ることは、客観情勢をみましてもそのように思われまするし、極力スローダウンのカーヴをゆるくしてもらいたいということと、それからなるべくその具体的な見当を早く渡してもらいたいというようなことは、たびたび先方にも言っておったのでありますが、なかなか具体的な数字につきましては、われわれ把握することができなかったわけであります。ただ大ずかみの特需の全体のスケールがどのくらいになるだろうかというようなことにつきましては、通産省は、最近のいろいろな傾向からいろいろな試算をいたしてみまして、昨年は御承知のように五億八千万ドルの特需があったわけでありますが、三十年度はこの数字が今のところ私ども二億二千万ドルぐらいにとどまるのではなかろうかというような見当をつけまして、こういう数字はもちろん参考でありますけれども、経営者にとりましてあるいは一つの指標になる数字でもありますので、役所の十分な根拠はございませんけれども、いろいろな変化からの推測的な推算でございますけれども、そういう数字を発表いたして経営者の一つの指針にいたしておるわけでございます。昨年の五億八千万という数字も、これも見込みではございましたけれども、実績はほぼその数字に推移したような趨勢でもあるわけです。役所としまして具体的な方法としましては、特需の本質が減るということは何人も理解しておられることだと思いますが、それの具体的な見当がどの辺になるかというような推算をしてみて、それを民間の経営者の参考にもし、また政府としての国際収支の見込みを立てる一つの目安とするということもあるし、同時に他方米軍に対しましては、ことにこれの問題に関連の深い面につきましては、その大勢として減ることはやむを得ないというような気もするけれども、減る程度を極力ゆるやかにしてもらいたいということを申しておるというような態度で、今まで参っておるわけであります。
  77. 曾禰益

    ○曾祢益君 そういう一般的なことでなくて、具体的にその車両工業、またその特定の車両工業等にどういうふうな指導をせられたかということを伺いたいのですが、その前に、アメリカ関係の方を言われたから、どういうふうに具体的に、どの程度にスローダウンをしてくれと、どこへ持っていってどういう交渉をせられたか。それから具体的な数字、これはアメリカの新会計年度とも関連するのですが、これを示してくれということを、九月十五日のリンド声明以来今日までどういうふうにとってこられたか。その点を伺いたい。
  78. 徳永久次

    政府委員(徳永久次君) リンド声明は昨年の秋に出まして、御承知の米軍側と日本側と、特需の問題に関連いたしまして、一つの連絡委員会みたいなものを持っておるわけですが、その声明が出ました直後に、まあ相当大きな問題でもありますので、さっそくこの委員会を通じて先方に照会いたしたわけであります。その当時の先方の回答は、昨年の秋のことでございますが、米本国から何も数字が来たわけではないけれども、ただ来年度、本年度のようにはいかんという、予算が削減されるぞというような情報を受けておるので、数字は、はっきりしないけれども、そのことは、しかし日本側にも相当の影響があることであると思うので、一応発表したんだというようなことでありまして、まあ日本側としましてはその際に、先ほど申しましたごとく、車両関係というような、相当大きなところをかかえておるものでありますし、極力米側としていろいろなやりくりをしてもらって、その削減の程度をゆるやかにして、もらいたいということを申し入れしたわけです。その後、年が明けましても何らかの情報はないのか、見当はつかないのかということを催促いたしておるわけでありまして、私ども最近までのところの範囲におきましても、この問題については、はっきりした見当はまだ立たないんだということしか、その日米の委員会におきましてはその程度の連絡しか出ていない。今回会社側に、具体的な、ある程度の減る数字が米側から知らせがあったようでありまして、私ども実はこの数字も大きいのでびっくりしておるようなわけでありまして、近くその根拠につきましては正式に先方の意向をたしかめた上、極力できるだけのことはいたしてみたいという考えでおります。
  79. 曾禰益

    ○曾祢益君 今までの連絡等において、非常に誠意もなければ熱意もない、非常に不満な私は答弁だと思うんです。それで、具体的にこの問題が、御承知のように七月にこの予算が切りかわり、解雇手当は一カ月、アメリカからもらっておる予算の中で会社はただ払うということだけです。五月の末になれば首切りが起るのはきまっておる。それを去年の九月十五日のリンド声明以来、しばしば特需対策連絡委員会を開かれたんだろうけれども、こういう形勢を察知しながら話を詰めていかなかった点において、これは非常な責任であり失態である。で、今この問題を私が今日申し上げるまでもなく、当然に業者からも連絡があったろうし、これは五月十八日、少くとも十九日に問題が起っておるのに、今日に至るまで具体的にアメリカ側がこの特需連絡委員会ではっきりしたことを言わなかった。現地のある工場では、富士モーターではこういう具体的な数字まで、生産量はこのくらい減る、而も半分減る、六割減る、こういうことは通告が来ておる。であるから、早速連絡委員会をもうすでに開催いたしまして、そうしてアメリカとの交渉に入っていなければならん。二、三日のうちにやるというのじゃ、五月の末になったら労働者は放り出されるでしょう。一体そんな不届きな感覚というのは私は実際承服できない。外務省の国際協力局はこういうアメリカとの連絡窓口だ。特需工業のほうについては通産省の大なる責任であるけれども、日米連絡の当事者である外務省としては、この今の企業局長お話関連して、リンド声明以来今日までどういう措置をとってこられたか、またこの問題に次いでほかの問題が起ったら今後どういう措置をとられるか、今後またどういうふうにアメリカ交渉するつもりであるか、はっきりと伺いたいわけです。
  80. 安川壯

    説明員(安川壯君) リンド声明が出まして以来の経過は、ただいま通産省のほうから御答弁がございましたが、私からも敷衍して申し上げますが、リンド声明が出ましたときに、たまたま特需対策の協議会をやっておりましたので、その席上でも、もっと軍としての正式の方針を聞きたいということを申し入れましたところが、先方は、リンド声明は極東軍全体としての正式の意向なり方針を声明したものではない。軍としての正式な見通しなり方針というものは、当時の段階においてはまだ何とも言えない。見通しがつけばその都度必ず日本政府に連絡をするということでありました。しかし全般的には、これは車両工業その他特需工業、車両工業に限りませず、当時の特需の将来の見通しにつきましては、一貫して向うの言っておりましたところは、客観情勢の変化に応じて全般的に特需が将来先細りになることは、これはもう必須であるということは、基本的には一貫しておったところの態度であります。その後、軍からは、車両ばかりではございませんが、一般の修理工業に対する見通しというものについては何らの情報にも接しなかったのでありますが、はっきりした日付は忘れましたが、本年度に入りましてからも、だんだん年度末も近づきますので、さらにこちらから申し入れをいたし、まして、特に車両その他の修理工業に対する新年度の見通しはどうか。これに対する見通しをなるべく早くほしいということを申し入れたのであります。それに対する回答は、たしか五月の二日頃だったと思いますが、一応書面で回答が参りまして、まだ今年度に関する限りは大体既定の予算でいっておるので、七月以降の作業量については、いまだ本国から予算に対する指示がないので何とも言えない、ということでありました。それが公式なチャネルを通ずるアメリカ側の情報のレイテストなものであります。その次に五月十八日でございましたが、富士自動車の問題が現実に出てきたわけであります。これは実を申しますと、政府としても最初は新聞で知ったわけでありますが、それから追っつけまして、大使館のほうを通じまして外務省のほうにも同じような情報が入っておる。そこで予算の削減に基いてどうしても作業量を削減しなければならないということを言ってきたわけであります。それと前後いたしまして、会社側からも事情の御説明を受けたわけであります。そこで外務省としましては、これは予算の問題である限り、この作業量削減そのものをここで食いとめてもとに戻すということは、これはもう客観的に考えてとうていできないことでありますので、当面の問題は、要するに、それに伴う労働問題であるという観点に立ちまして、さらに大使館を通じまして、問題は要するに労働問題というものにシリアスな問題があるから、これに対する何らかの対策、そういうものは考えられんだろうかということを大使館を通じて昨日も話したのでありますが、大使館のほうとしましては、その問題の所在はよくわかったけれども、どういうふうにしてそれに対処するかは一つ軍のほうと面接話をしてもらいたいということで、その間、関係各省とも相談をしておったのでありますが、時日の遷延も許しませんので、さらに軍と直接話し合いをいたしたいと思っております。ただ軍に対しましてただ何とかしてくれと言ったのでは問題の解決にはなりませんので、至急に関係各省と、これは当面の失業対策と申しますか、労働対策と申しますか、どういう具体的な措置を向う要望すべきかということを相談いたしまして、その結果に基いて軍の中央部に直接申し入れたいというふうに考えております。
  81. 曾禰益

    ○曾祢益君 今のお話ですと、五月二日の回答は、これは連絡委員会の回答ですね。
  82. 安川壯

    説明員(安川壯君) これは直接外務省に対する回答です。
  83. 曾禰益

    ○曾祢益君 それではまだ何もわからなくて、新予算もわからないのに十八日に急にこういう事件が起ったわけですね。一体予算のはっきりわかるというのは、いつなんですか。こういう現地の八百万ドル程度の割当まできまるのは。アメリカのほうの話ですが。
  84. 安川壯

    説明員(安川壯君) その点は私も実は、はっきりつかみたかったところでありますが、これは大使館にも一体今年度の、普通に特需のほうで申しますと七月から年度が始まるわけでございますが、七月に向う予算がきまりますと、実際に下部機構に割り当てられるのがその年度の終りになるわけです。それでたとえば弾薬とかそういう域外調達の発注というものは、大体向うの年度終りに近づいて本国政府から割り当てられまして、年度終りにバタバタと発注が集中して行われるのが大体の例ということになっております。いわゆる車両の修理その他につきましては、七月の契約更改というものが、前年度の予算に基いてあと一年の契約ができるのか、あるいは七月新年度の予算に基いて契約されるのか、その点、実は私もよくわからんで、先日来大使館と話をしている際もいろいろ開いたのでありますが、大使館でもその点がはっきりしなかったのであります。私の感じといたしましては、新年度の予算というものは、いずれにしましてもアメリカの国会の審議を経てからきまるのでありますから、いわゆるアメリカの来会計年度の予算というものは現在まだきまっていないと思います。従ってこれは私もう一問チェックしてみないとわかりませんが、おそらく来会計年度の一年間の契約というものは、その前の年度の予算の範囲内でやるのだというふうに了解しております。それで一般にそういう現地部隊に対する予算の割当が確定しますのは、大体五月の末から六月というのが毎年の例になっております。それから実際のサービスは一年を通じて契約いたしますが、物資の調達などはほとんど七月に予算がきまりましてもずっと発注は行われなくて、いよいよ最終段階の五月、六月になって発注が行われるということが現状でございますから、サービスのほうにおきましても、おそらく毎年の例によりますと年度末になって一年の予算の割当がくる、こういう向うのしきたりになっているのじゃないか。これは私の想像でございますから、その点はもう一回直接今度は軍にお伺いしてみます。
  85. 曾禰益

    ○曾祢益君 とにかく連絡委員会のほうの通知と、大使館からの情報というか、大使館から直接ですか、通告なんですか、やはり情報なんですか。
  86. 安川壯

    説明員(安川壯君) これは、こちらから申し入れましたときには、一応まあ特需会議というのは、去年九月に始まりまして、約三カ月くらい続いたかと思いますが、それで当面の一応議論は尽されたのです。その後中絶されておったわけでありますが、本年度、あれは三月か四月だったと思いますが、特に車両その他の修理作業の面について、もう一回特需会議を開催してよく向う方針その他も聞いてみたいということで、従ってそういう会議を開きたいが、こちらの知りたいことはこの点だということを文書にして申し入れたわけです。それに対する回答といたしまして、今会議をやっても、まだ現地の軍としては、本国政府からなんらの指示もないので、会議をやっても今当面議論するだけの用意がないということで、その意味のことを書面にして外務省に出しております。
  87. 曾禰益

    ○曾祢益君 大使館からこの富士自動車に関する情報がきたというのは、いつで、どういう情報なのか、通告なのかをお聞きしたい。
  88. 安川壯

    説明員(安川壯君) これは口頭の通告であります。
  89. 曾禰益

    ○曾祢益君 それで外務省としては、特需連絡委員会、結局、軍と直接交渉するような形をするのか。大使館とやってみましても、今の調子では、結局最後の点になると、軍の方の責任だと言って逃げてしまう。今後は軍と直接交渉していく、こういうことですか。
  90. 安川壯

    説明員(安川壯君) 全般的な問題を論議する場合には、これはやはり特需会議、大使館も入れた一つの会議の形式でやるのが私はいいと思っておりますが、何分今回の問題につきましては、時間的にも急を要しますので、直接軍とやることが一番適当だと思います。
  91. 曾禰益

    ○曾祢益君 軍という場合には、結局ただいまの軍の事務所ですか。
  92. 安川壯

    説明員(安川壯君) 東京の極東軍司令部と直接やりたいと思っております。
  93. 曾禰益

    ○曾祢益君 もう一つ安川君に伺いたいのですが、先ほど申し上げましたように、この現地軍というのは、追い工場のコマンディング・オフィサーと申しますか、五月十一日の通告は私はまだコピーをもらっていないのですが、それによると、現在のストレンクスの直接工と間接工のマン・パワーの六〇%を減らすということを言ってきた。これは私は非常におかしいといってはあれですが、普通の契約だったらば、こういう特需車両工業のごときものは、大体ユニット・プライスできめているのです。マン・パワーの形式をとっていない。従来は、米軍が直接に雇用量をこうしろ、何に使えということは、契約の本質からいってあり得ない。ところが今度はこういうことを言ってきた。私はそこに相当の疑惑がある。会社側の方のなれ合いというか、ではなかろうかという疑惑を持っているのですが、もしこういうことが本当だとするなら、これはアメリカ、少くとも現地当局としては、非常に重大な道義上の責任を問われるということをやったわけです。ただ作業量はこれだけだ、あと人間は業者が勝手にという従来の方式でなくて、人間のことまで責任を問われるような踏み込み方をもししているならば、それをつかまえて、もっと人員の問題について直援軍の責任を私は追及すべきだと思います。こういうことがちょっとおかしいと思うが、そういうことがあり綴るとお考えか、伺いたい。
  94. 安川壯

    説明員(安川壯君) 私も、軍の出しなした通告と申しますか、それは現物を見ておりませんから、何とも申し上げられませんが、これはあくまでもサービスのコントラクトであります。軍が直接人員を何名減らせと言ってくることはおかしいと思います。そういうことはないんじゃないかと思いますが、会社からもそういう意味の通告だというふうには私は聞いておりませんが、もしそうだとすれば、これはサービス・コントラクトでありますから、あくまで作業量で、人員を何名減らすということは会社側においてやるべきものだと思います。
  95. 曾禰益

    ○曾祢益君 あなたの方では、この通告等に関して、何か文書で会社のほうからもらっておりますか。向うから来た通告というか。
  96. 安川壯

    説明員(安川壯君) 文書ではもらっておりません。
  97. 曾禰益

    ○曾祢益君 しかし、少くともアメリカがこういう人員を幾らにしろと言って来たということは聞いておられないわけですか。
  98. 安川壯

    説明員(安川壯君) それは私の記憶では、作業量をこれだけ減らすという説明だったと記憶しております。
  99. 曾禰益

    ○曾祢益君 外務省でアメリカとの交渉をやっていただくのですが、さらにこの問題について労働省に伺いたいのは、労働省としてはこの対策をどう考えておられるか。それからいま一つは、これは外務省も御承知のように、解雇される、あるいは自発的にやめる方もあるだろうと思いますが、そういう場合に、退職金の問題で非常にアメリカとの間に懸案があって、つまり労働協約によれば、やめるときに、基準の給料に年月を加算して、それをフルにもらうことになっているが、アメリカと会社との契約は年々であって、そうしてそういう過去の部分は全部もらえないというようなことになっていることが一つと、それからいま一つは税法の関係で、結局会社としては税金をとられたからというので、現実に労働者に与えるべき退職金を実は内輪にしか与えない。これはコントラクトによって違うわけです。たとえば直傭の場合なんかはそういう問題は起らない。相当いい退職金をもらえる。それから相手方空軍との特需契約なんかのほうは直傭と同じくらいである。それからその他契約によって違って、規模工業の重車両の場合はこれほど悪くない。ところが富士の場合など、最も悪条件だという問題があるわけです。従ってこの契約の、日本の労働法に基く契約がフルに行われないというようなことについて、アメリカ及び経営者との関係をどういうふうに調整していくか。これらの問題について労働省と外務省から伺いたい。
  100. 中西実

    政府委員(中西実君) 今回の富士自動車の解雇問題は、少くとも日本の慣行、また日本の常識からしますと、きわめて適切を欠いておるように考えまして、私ども早急にやはり外務省なりそれぞれの担当の個所を通じまして目安をつけてもらいたいというふうに考えております。ただいまの退職金の問題でございますが、これは私のほうで会社から聞きましたところに上りますると、従来からずっと毎年積立金をしておりまして、これが十分に今回の退職規定に従った退職金を払う額を十分に持っておる。従ってこの点については、会社としましては、取引銀行との関係で若干の問題があるようには聞いておりますけれども、約束通りの退職金は何とか出せるというふうに私の方では聞いております。
  101. 曾禰益

    ○曾祢益君 労働省としては、この解雇される富士自動車のみならず、この下請工業のほうに波及するのであって、どういうふうにこの人員整理を食いとめるかということについて、まずよほどこれは真剣に取りかかってもらいたい。ただいまのお話だと、アメリカとの交渉はまあ外務省にまかせたというような気持でなくて、この重大な失業、社会不安に対処して、このままじゃとうてい済ませない。政府としても、これは労働大臣の問題であり、また通産大臣、外務大臣の問題でありますが、もっと積極的な意欲と熱をもってこの問題を何とか食いとめるように考えてもらいたい。会社の態度は先ほど申したように、アメリカのあれを利用して、まるで労働組合をペテンにかけて、アメリカから注文を減らすからという命令があったからというような高飛車な態度です。従って退職金の方でどういうふうに考えているか知らないけれども、これを幸いとばかりに、半分以上も首切りをする。不届き千万です。従ってアメリカとの交渉、また会社に対しても、民需に転換できる部面もあるわけです。鶴見工場のごときは、ボディー工場は民需転換をやっているわけです。そういう点についてもっと真剣にやっていただきたい。それから企業局長にも、私はさっきこの点をまだ申し上げなかったのですが、従来から特需工業に対する転換なり指導ぶりが具体的でない。特需全体はアメリカの生産量によって何ともしがたいということはわかる。しからばこれを民需なり、それから輸出なり、あるいはやむを得ない場合には、実際上、自衛隊の業務というものがあるのであるから、そういうものに転換するように、過剰生産に陥っているかもしれないこの車両工業を、これをどうして行くんだということについて、もっと真剣な、責任をとった指導と方針がなきゃならない。アメリカ交渉してみても、結局向うが作業量を減らしてくれば、結局首切りという形をとらざるを得ない。その間、その企業の整備、あるいは転換に関する監督及び指導というものが、決して十分じゃない。ほとんどやっておらないというのも同然じゃないか。今度の機会に、現在の不届きな会社であるけれども、何とかこれを通じてでも人員解雇にならないように、一つ作業量の業務転換ということについても、これは労働問題ばかりでなく、企業の見地からも、企業局の方でもっと積極的にやってもらいたい。私、まだこの問題については大臣に質問したいことがありまするが、時間の関係もありますので、きょうのところはこれだけにしておきます。   —————————————
  102. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案について、外務省の方から提案の説明だけでもしてもらいたいという要望がありますので、提案の御説明を願います。
  103. 園田直

    政府委員(園田直君) 在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案の提案理由及び内容を説明いたします。  まず提案理由を説明いたします。  外務省といたしましては、在外公館の昇格、新設及び廃止につきまして、目下次の方針を持っているのであります。  第一に、わが国とヴェトナム、カンボジヤ、セイロン及びイランの各国との間におきまして、既設の公使館を相互に至急大使館に昇格せしめることにつきましては、本年二月彼我間の合意が成立し、わが公使館を至急大使館に昇格せしめる必要がありましたので、「在外公館の種類の変更に関する政令(昭和三十年二月二十一日政令第十七号)」をもって右の昇格を実現せしめたのでありますが、今般右の四大使館を法律上正式に大使館にしたいのであります。  第二に、在ラオス日本国公使館は、法律上は設置されておりますが、実際には設置されていないのでありまして、今般先方から大使交換の申し出があり、わが方としても、ヴィェトナム及びカンボディアの両国と大使を交換している関係もあり、アジア地域重視の見地からも、この際同公使館を昇格せしめて大使館としたいのであります。  第三に、最近スイスに各種の国際機関が設置せられ、及び種々の国際会議が同国において開催される等、在スイス公使館の使命がますます重大となりつつある状況にかんがみまして、米、英、仏、白、伊、加が大使をおいている現状に習い、既設のわが公使館を昇格せしめて大使館としたいのであります。  第四に、在アフガニスタン日本国公使館は、法律上は設置されておりますが、予算措置が伴わなかったため、及び、かねてから先方が大使派遣を希望して来たものの、隣国イランには公使を派遣していた関係上、同国との振り合いもあり、実際上の開設は現在まで見送ってきたのでありますが、今般在イラン公使館の大使館昇格も実現しましたので、この際同公使館を昇格せしめて大使館としたいのであります。  第五に、イスラエルとの外交関係開始につきましては、先方の熱心な要望に答え、昨夏「在外公館増置令(昭和二十九年八月二十四日政令第二百四十三号)」をもって、在イスラエル日本国公使館(在トルコ大使兼轄)を設置したのでありますが、今般同公使館を法律上正式に設置したいのであります。  第六に、グァテマラ及びニカラグァとの国交回復に伴い、彼我の通商貿易関係の緊密化のためにも、また、国連、各種国際機関等においてわが国に対する支持を獲得するためにも、この際わが公使館(在メキシコ大使兼轄の予定)を新設したいのであります。  第七に、エチオピアとわが国との戦前からの親善友好関係にかんがみ、また、通商貿易の拡大のためにも、この際わが公使館を新設したいのであります。  第八に、ベルリンの国際政治上における重要性にかんがみまして、わが総領事館を同地に新設したいのであります。  第九に、カサブランカは、西アフリカにおける重要都市でありますから、同地にわが領事館を新設して、西アフリカにおけるわが貿易市場の拡大をはかりたいのであります。  第十に、在ラングーン日本国大使館は、昨年十二月一日に法律上の設置手続を完了し、同日から大使館としての職務を行なっているので、従来の在ラングーンのわが総領事館は廃止することとしたいのであります。以上でありますが、この方針を実際に実現するためには、法律上の措置を必要とし、これがためには、昭和二十七年法律第八十五号「在外公館の名称及び位置を定める法律」、昭和二十七年法律第九十三号「在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律」及び昭和二十九年法律第十一号「外務省設置法等の一部を改正する法律」、以上三つの法律の一部を改正する必要がありますので、今般右三法律の一部改正をうたった本法律案を今次の第二十二回特別国会に提出する次第であります。以上が提案理由の説明であります。  ついで官房長をして本法律案の内容を説明いたさせますが、右の事情を御了察せられまして、慎重御審議の上、すみやかに御採択あられんことをお願いいたします。
  104. 島津久大

    政府委員(島津久大君) 次に本法律案の内容を説明いたします。  本法律案の要目は、「在外公館の名称及び位置を定める法律」の一部改正、「在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律」の一部改正、「外務省設置法等の一部を改正する法律」の一部改正及び附則の四つであります。  第一に、第一条の「在外公館の名称及び位置を定める法律(昭和二十七年法律第八十五号)」の一部改正であります。  本条の要旨は、次の一から九に掲げる各在外公館の名称及び位置を法律上定めること及び十に掲げます在外公館の名称及び位置を消滅せしめることであります。  一 在ヴィエトナム、在カンボディ   ア、在セイロン及び在イランの各大使館の名称及び位置を法律上定めること。  二 在ラオス日本国公使館を昇格せしめて大使館とし、その名称及び位置を法律上定めること。  三 在スイス日本国公使館を昇格せしめて大使館とし、その名称及び位置を法律上定めること。  四 在アフガニスタン日本国公使館を昇格せしめて大使館とし、その名称及び位置を法律上定めること。  五 在イスラエル日本国公使館の名称及び位置を法律上定めること。  六 在グァテマラ及び在島カラグァの各日本国公使館の名称及び位置を法律上定めること。  七 在エティオピア日本国公使館の名称及び位置を法律上定めること。  八 在ベルリン日本国総領事館の名称及び位置を法律上定めること。  九 在カサブランカ日本国領事館の名称及び位置を法律上定めること。  十 在ラングーン日本国総領事館の名称及び位置を法律上消滅せしめること。  第二に第二条の「在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律(昭和二十七年法律第九十三号)」の一部改正であります。  本条の要旨は、前記の一から九までに掲げました各在外公館の名称及び位置を定めること及び十に掲げました在外公館の名称及び位置を消滅せしめることに関連しまして、これら各在外公館に勤務する大公使、総領事その他の外務公務員に対し支給する在勤俸の額を定め及び廃止するため、「存外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律」の一部(別表)を改正せんとするものであります。  第三に第三条の「外務省設置法等の一部を改正する法律(昭和二十九年法律第十一号)」の一部改正であります。  本条の要旨は次のとおりであります。  昨春在アフガニスタン日本国公使館を法律上設置する方針が決定されましたところ、同館の名称及び位置を定めまするには「在外公館の名称及び位置を定める法律(昭和二十七年法律第八十五号)」の表に同館の名称及び位置を新たに追加する必要がありまして、また、同館に勤務する外務公務員の在勤俸の額を定めますには「在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律(昭和二十七年法律第九十三号)」の別表に在勤俸の額を新たに追加する必要がありました。これがため「外務省設置法等の一部を改正する法律(昭和二十九年法律第十一号)」第二条及び第四条をもって右二法律の一部改正が行われたのでありますが、アフガニスタンとの現実上の外交関係開始は、提案理由の四ですでに説明しました通り、現在までその機が熟していなかったので、法律第十一号をもってする右二法律の一部改正中在アフガニスタン公使館に関する部分の施行は、政令で定める日からするように措置されており、この施行期日に関する政令は未だ公布されていないのであります。一口に申し上げれば、在アフガニスタン日本国公使館設置の法律関係に、その効力が未発動のまま存続しているのであります。  しかるに、今般公使館設置の方針を変更し一挙に大使館を設置する方針のもとに、この法律案をもって右二法律の改正を行う場合には、公使館設置の法律関係と大使館設置の法律関係との競合を避けるため、前者の法律関係を消滅せしめる必要があるので、本条において右消滅の措置をとらんとするものであります。  第四に附則であります。  附則は、本法律の施行期日をうたっているのでありますが、この施行期日につきましては、公布の日から施行する措置をとらんとするものであります。
  105. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) ただいまで提案の理由及び内容の御説明が済みました。  本日はこの程度で散会をいたします。    午後零時二十五分散会    ————・————