○曾祢益君 私は最近起りました特需車両事業の富士モーター大量解雇の問題について通産省、労働省、外務省等の当局に伺いたいと思うわけであります。
簡単に、この
委員会の同僚
委員の方にも御関心を持っていただく
意味におきまして、経過を申し上げますが、この富士モーターというのは山本惣治という人が会長で、
アメリカ軍の軽車両といいますか、一般乗用車、ジープなんかの修繕と改造をやっておる大きな事業でございまするが、おもなる工場は追浜にございまして、それからボデーを作っている工場が鶴見にございます。そこで従業員は七千人くらいあるのでございますが、この事業はすべて
アメリカのいわゆる特需でございまして、会社と毎年米軍当局との契約がありまして、ある生産量を引き受け、それに労務を提供する、こういう
やり方でやっておるわけであります。丁度ただいまは七月から
アメリカの会計年度がかわるので、生産星が減るという心配を持っておったのでありますが、これらの問題について、労働組合側に何ら事前に会社側から通告があるいは予備
交渉等が行われておらなかったのに、突然五月十八日に会社側から組合に対しまして、大体こういうような通告を出したわけであります。七月一日から以降は六割の減員を
アメリカ側から要請された。そして五月の十一日になって追浜におりまする兵器廠の代表者ブラック中佐から、このことについて七月以降人員を六割減らせ、それから
アメリカの今会計年度の仕事については追浜だけでやれ、従って鶴見のボディ工場及び下請の事業は全部やらん、こういうようなことを
アメリカ側から言われたということで、会社の方しても翌五月十二日には
アメリカ側に対して、これは非常な重大な社会問題になるから、何とか少くとも人員整理は漸減的にやってほしいということを申したと、会社側は組合員には言っているそうでありますが、結局会社側の言うところによれば、軍がこれをいれるところにならず、十七日には七、八、九の三か月の作業計画が示され、これに基いて会社側と軍との話合いによって三千五十四名、これは追浜工場の人員が総員で六千五百九十四名のうも主千五十四名、それから鶴見工場から七百八十二名、合計三千八百三十七名を首を切る。まあ半数以上首を切ることを通告してきた。そこで組合としてはさような抜き打ち的な大量解雇には賛成できないというので、ただいま直接には会社を
相手に団体
交渉に入っております。しかも本日くらいにはいわゆるスト権を確立してストをもってこれに対抗せざるを得ないという絶対のピンチに追い込まれておるような状況でございます。申し上げるまでもなく会社の従業員の半数をいきなり首を切ることになり、さらにこの下請工場に与える影響が甚大であり、また追浜という町の商店に与える影響も非常に大きいのであります。小さい問題のようでありまするが、これはすべての特需工業の姿の
一つの現われでもございまして、大きな社会問題になっておるわけであります。そこでかような
状態のよってきたるゆえんは、言うまでもなく、私も申し上げましたように、特需工業の持っている弱味であります。これに対比いたしまして
アメリカ軍に直接雇用されておる労働者の方の解雇問題は、まだ私がはっきりつかんでおりませんが、さすがにこの方は来会計年度においても、そう多量の解雇の模様はないようであります。これは
アメリカとしても自分が直接に雇用しておる労働者の問題はかなり神経質に政治的影響も
考えておるかに思いまするが、どうも特需工場に働く労働者は最も不利な状況に置かれるわけです。
日本の雇用主の方に
交渉いたしましても、
アメリカからの生産計画が減ってくるならば、雇用量が減るのは仕方がない。訴える場所がない。その工業そのものが毎年々々のベースで行なっております。従ってその雇用に対する永続性がない。いわゆる訴えるところがないというような状況であるわけであります。しかも昨年のころからすでに特需に対する発注が漸減するということは、態勢としてこれはわかり切っていることである。また特需
関係の座間にある兵器本部のリンド准将のごときも、わざわざ声明を発して特需が減るだろう。それからこれからオープン・ビッドにしてやるというようなことを、すでにそういう警告を発しておる。従いましてこの富士モーターの経営側がいかに無責任であり、無能力であるかということがわかるわけでありますが、今日はこの経営者をとらえて云々するのではございませんが、一体このような特需工業の現状及び将来の見通しをもって、しかも
アメリカ側との間にいろいろ接触もあり、先方がこれが減るという
意向も示しておる。こういう情勢に対処して、この特需工業に関しては、まず私は
日本の官庁の窓口というものは当然に通産省ではないかと思う。そこで通産省の企業
局長が来ておられるようですから、この最近における特需工業の趨勢をどういうふうにキャッチし、それに対応してどういう業者等に対する指示なり、あるいは転換の奨励なり、どういう対策を国内的にとってこられたかをまず伺いたい。