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1955-05-17 第22回国会 参議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月十七日(火曜日)    午前十時四十二分開会     —————————————    委員の異動 四月十四日委員伊能繁次郎君、木内四 郎君、中川以良君西郷吉之助君、左 藤義詮君及び深川タマヱ辞任につ き、その補欠として平井太郎君、鹿島 守之助君、大谷贇雄君郡祐一君、重 宗雄三君及び杉原荒太君を議長におい て指名した。 四月二十二日委員羽仁五郎辞任につ き、その補欠として須藤五郎君を議長 において指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     石黒 忠篤君    理事            鹿島守之助君            鶴見 祐輔君    委員            大谷 贇雄君            郡  祐一君            平井 太郎君            梶原 茂嘉君            後藤 文夫君            佐藤 尚武君            佐多 忠隆君            曾祢  益君            須藤 五郎君            野村吉三郎君   政府委員    外務政務次官  園田  直君    外務省経済局長 湯川 盛夫君    外務省条約局長 下田 武三君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君   説明員    外務省経済局第    二課長     安倍  勲君    外務省条約局第    二課長     西堀 正弘君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○関税及び貿易に関する一般協定のあ  る締約国日本国との通商関係の規  制に関する千九百五十三年十月二十  四日の宣言有効期間延長するた  めの議定書への署名について承認を  求めるの件(内閣送付)(予備審  査)     —————————————
  2. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず理事補欠互選の件を議題といたしたいと思います。本委員会は先に理事鹿島さんが一時委員辞任いたされておりましたので、理事が一名欠員になったままであったでありますが、このたび鹿島さんが再び外務委員に戻られましたので、この際もとの通り鹿島さんを理事に指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それでは異議ないものと認めて、鹿島君を理事に指名いたします。     —————————————
  4. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それからちょっと申し上げておきますが、先般本委員会は、理事相談の上に、今期は議案もたくさん参るようで、ございますので、予備審査を毎週火曜十時から定例的にいたすということにきめましてございますので、さよう御承知おき願いたいと存じます。     —————————————
  5. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 本日は関税及び貿易に関する一般協定のある締約国日本国との通商関係規制に関する千九百五十三年十月二十四日の宣言有効期間延長するための議定書への署名について承認を求めるの件、これを議題にいたします。まず政府から提案説明を聴取いたしたいと存じます。
  6. 園田直

    政府委員園田直君) ただいま議題となりました「関税及び貿易に関する一般協定のある締約国日本国との通商関係規制に関する千九百五十三年十月二十四日の宣言有効期間延長するための議定書」につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国は、一昨年のガット第八回締約国団会議において採択されました「関税及び貿易に関する一般協定のある締約国日本国との通商関係規制に関する宣言」、すなわち、いわゆるわが国ガット加入宣言によりまして、実質上ガット加入したと同様の利益を享受しております。しかるに、仮加入宣言1(C)の規定によれば、同宣言は、わが国ガットへの正式加入の日又は別段の取りきめがなされない限り本年六月三十日に失効することになっております。一方、本年二月二十一日にジュネーヴにおいて開始され、現在も続行されております関税交渉会議において、わが国ガットへの一正式加入討議されておりますが、きたる六月三十日までには実現の運びとならない可能性が多いのであります。  よって、昨年十月二十八日からジュネーヴにおいて開催されました第九回締約国団会議におきまして、右の可能性を見越し、前記の仮加入宣言有効期間延長することとなり、本件議定書が、本年一月三十一日に、賛成二十六、反対なし、棄権五、欠席三をもって採択されるに至った次第であります。  この議定書は、わが国と仮加入宣言の当時国でこの議定書署名する国との通商関係を、わが国ガットへの正式加入又は本年十二月三十一日のいずれか早い時期まで引き続きガット規定により規制しようとするものでありまして、わが国はこの議定書署名することにより、継続してガットに基く利益に均てんすることができるわけであります。  この議定書署名のため開放されました二月一日には国会はちょうど解散中でありましたが、この議定書はもともとわが国利益のために、かつ、わが国署名を前提として作成されたものであり、また、時あたかもわが国ガットへの正式加入のための関税交渉を控えておる際でもありますので、率先わが国署名することが絶対に必要と認められました。よって、二月一日に政府の責任におきましてこれに署名し、国会承認は、憲法第七十三条三項但書の規定に従い、事後に求めることといたした次第であります。  以上の事情を御了察下され、御審議の上すみやかに御承認あらんことを希望する次第でありす。
  7. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 提案理由の御説明がただいまございましたが、この際便宜本件内容の概略について府府から説明を聴取したらいかがかと思いますが、本日は局長はやむを得ざる用事で出席がむずかしいようでございますので、安倍第二課長から……。
  8. 安倍勲

    説明員安倍勲君) 御承知通りと思いますが、ガットと申しますのは、関税及び貿易に関する一般協定という名前のごとく、その趣旨といたしましては、貿易をできるだけ自由にするというのが趣旨でありまして、その自由を仮にやむを得ず阻害といいますか、完全な自由にしない場合は、関税をもって貿易というものを調整するという建前をとっておるのでございます。これはちょうど一九四八年でございますか、戦争が終って間もなくでございますが、戦時におきまして、各国貿易というものが戦争中いろいろな必要に基いて歪められた形になっておった点を、戦後これを改善するという目的のために出廃したのでございまして、そのために一九四七年十月に、まずこの考えが、ハヴァナの、いわゆる同様の目的でございますが、ハヴァナ憲章というものの関連によって発生したわけでございます。御承知通りハヴァナ憲章は極めて広汎な内容を含みましたために、米国を始め各国の了承するところとならないために、それは現在発効しておらないのでありますが、ただいま申し上げました貿易をできるだけある原則に基いて自由にするという点は、これは是非必要であるということが主要貿易圏の間に了承されまして、現在三十四カ国がこれに加盟いたしまして、法律的には暫定的な適用ということになっておりますが、現に実際的には、この一般協定と申しますのは、三十四の国の間に適用になっておる次第でございます。その三十四の国は、主としていわゆる米国英国等世界貿易の約二〇%以上も占める国を含めまして、大体世界貿易額の八〇%になんなんとする国がこれに参加加入しておる次第でございます。  ただいま申し上げましたガット原則を申しますと、まず今の関税を除きまして、現在貿易の自由を阻外しておりますのは、最も大きいのは数量的な輸出入制限でございます。これは、ぜひともできるだけ撤廃すべきである。と申しますが、やはり各国はおのおのの国内経済事情、符に国際収支のバランスを維持する必要がございまして、あるいは国によりましては特定の産業をある程度保護する必要があるということもございまして、現にほとんどの国は数量的な輸出入制限を行なっているのでございます。これをなるべく最小限度の範囲にとどめる。それから、いわゆる輸出入補助金でございますが、あるいは国家貿易といいますか、専売、そういうようなものもなるべく乱用しないで、そういう貿易の自由を阻止する要素は少くも漸進的にこれを減らして行くということをモットーとしているわけでございます。それが仮に漸次なくなるということになりますと、日本には関税だけ、しかも関税につきましてはこれをなるべく低いほうに持って行く。そして低いほうに持って行きました関税は、別の加盟国の間におきましては、いわゆる関税上の最恵国待遇を与える。いずれの国に対しても等しい待遇を与える。それから関税をかけましたのちに、国に入りまして、いわゆる内国税という問題がございますが、これにつきましては、いわゆる内国民待遇という原則を出しておるわけでございます。これは今の関税上の最恵国待遇及び内国税の内国民待遇につきましては、従来の通商航海条約原則をあらためて確認したものでございますが、現在はこれは大体国際的にも認められた原則で、これをガットがそのままのせておるわけでございます。  そういうことでございますと、日本としてどういう関係になりますかと申しますと、戦後日本は、通商航海条約によって、今のような待遇を確保するという点が平和条約関係においてある程度ございますが、はなはだあいまいな点もございます。それから同時に、その他の先ほど申しました貿易上のいわゆる障害になる諸条件というものが、日本貿易国民所得の二〇%以上も占めるという、いわゆる貿易の非常な重要性にかんがみて、特に輸出貿易を振興させるためには、ただいま申し上げましたような待遇をぜひとも法的にも確保したいというのが一つわが国にとっての大きな利益であるのでございます。輸入につきましては、もちろんわが国にとってやむを得ざる制度というものは認めなければなりませんが、特に原料その他わが国はきわめて輸出貿易に必要なものを輸入するわけでございますから、そういうものをなるべく自由にするということは、またわが国利益に合致すると思われる点がございます。そういう意味で、一九五一年から、日本はこのガット加盟国といたしまして、数次にわたって加盟の種々な工作を行い、それからガットと申しますのはまだ国際機関の体をなしておりませんために、総会とかあるいは執行委員会というようなものはまだできておりませんで、年に一度、大体原則としましていわゆる締約国一つ総会に似た締約国団というものの会議をいたします。その会議において、今のような日本加入申請というような問題は討議するわけでございますが総会に当ってそのアプローチをしたわけでございます。ところが、国によりましては、特に日本貿易上非常な競争をします国におきましては、ガット日本を入れたためにそのような待遇を全面的に与えるということは、いまだ適当でないという見解がございまして、ガットメンバーが全部日本加入を支持するという状況にならなかったわけでございます。そうしてガット規定によりますと、今のような待遇、特に関税上の最恵国待遇加入の結果受けますためには、加入国既加盟国との間に関税交渉を行なってある程度関税を引き下げるということをしなければならないことになっております。これは明示的な規定はございませんが、今までの不文律によって大体きまっているわけでございます。そこで日本としても関税交渉をしたいという用意があるということを再度申し入れたのでございますが、これも御承知通り世界で最も関税の高い国はアメリカでありまして、米国関税が漸次引き下げられるということがありませんと、あまり実益はないという観点がございますので、主として米国を加えたいわゆる多角的な各国間の関税交渉というものが行われるということになっているわけでございます。現に今まで大体三回、そういった交渉が行われておりまして、その結果、ただいま申し上げました米国に対して各国輸出しております重要な商品に対するアメリカ輸入税というものが相当引き下げられる、そういう結果を来たしているわけでございます。日本におきましても、もちろんそういった点を目途として、また同時に、必ずしもアメリカに限らず、日本のいわゆる貿易が伸び、あるいは現に輸出が伸びていると思われる地域に対しましては、できるだけ関税を下げてもらう、少くも現在のガット関税といわれているものの最恵国待遇はぜひ適用を求める、こういう趣旨でアプローチしたわけでございますが、先ほど申し上げました、それでは日本輸出が急に振興することによって迷惑をこうむるというような意見がございまして、全面的な賛成を得なかった次第でございます。そこで日本は、しかしながら実効的にはぜひともそういったものを獲得したいというのが仮加入に至りました経緯でございまして、仮加入につきましては、現在何らガットには明示的な規定はございません。しかしながらこれはいわゆる締約国団会議においてこういった形式で日本の仮加入というものを認めることは妥当であるという結論に一九五三年の十月に達しまして、その結果、日本は仮加入を認められることになったわけでございます。仮加入が認められますと、ガット締約国団会議あるいはその間にございます会議間の委員会というのが年に二回ございます。そういうところで先ほど御説明いたしましたガット原則及びその適用について種々の論議がございますが、それには各国なみ参加できる。ただし先ほど申し上げましたガット加盟国日本との間に完全なガット適用によって生ずる——特に関税上の最恵国待遇を生ずるかという問題につきましては、別途解決するということになりまして、それについては、ただいま問題になっております仮加入宣言署名した国については、日本との間に法的な関係を生ずる、しない国については生じない、こういった解決によって日本の仮加入というものが生じたわけでございます。大体これで……。
  9. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) ただいま安倍課長から内容的の御説明をいただいたのでありますが、これに関しまして関連いたしまして御質疑がございますれば、御発言を願います。
  10. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ただいまの提案理由説明賛成二十六、反対なし、棄権五、これはどういう国でございますか。特に棄権五というのはどういう国で、どういう意味棄権をしたのか。
  11. 西堀正弘

    説明員西堀正弘君) ただいまの仮加入宣言有効期間延長の決定については、二十六カ国がこれに賛成投票を行なっております。それで英連邦諸国の四国、すなわちオーストラリア、南アフリカ連邦、ローデシア二国、そのほかにチエッコスロバキア、この五国が棄権をいたしたのでありますが、棄権は結局反対投票と同一の効果を持つことになります。それからそのときにペルー、ニカラグア、ハイチ、この三国が欠席をいたしました。
  12. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 これが棄権するに至る事情をもう少し御説明願いたいことと、それから本年二月二十一日にジュネーヴにおいて開始され、現在も続行されておる関税交渉、これがどういうふうになっているか、御説明願いたいと思います。
  13. 西堀正弘

    説明員西堀正弘君) ただいま申し上げました英連邦諸国、これは御承知通り加入の際にも棄権いたしております。で、これはわれわれの推測いたしますところでは、英国綿業界その田過去におきましてわが国との競争に悩んだ業界方面反対が依然強い、こういう理由によるものであろうと観測されます。それからチエッコスロバキア、これが棄権いたしたのでありますが、これはまあ政治的理由によったものと考えております。現在の正式加入のためのジュネーヴにおいて二月二十一日から行われております交渉に当りましては、現在のところ十五カ国、これが関税交渉参加いたしております。名前を挙げますと、アメリカドイツイタリアカナダデンマーク、ノルウェー、スエーデン、ビルマ、インドネシア、セーロン、パキスタン、ウルグァイ、 ペルー、ドミニカ、チリー、こういうことになっております。で、御承知のように正式加入ということになりますと、締約国の三分の二、これがこの加入議定書に書名しなければならんわけでございますが、現在の、締約国の数は三十四カ国、それの三分の二ということになりますと二十三カ国、これの賛成が得られなければならないわけなんでありますが、今申し上げましたように、交渉に現に参加しておりますのは十五ヵ国に過ぎないわけであります。しかしこの交渉参加していない国のうちに、オーストリア、フィンランド、ギリシャ、トルコ、インド、ブラジル、チェッコスロバキア、この七カ国は結局わが国加入を支持する旨を表明いたしておりますので、結局二十二ヵ国、これが現在のところはっきりと支持することになっております。で、まだ先ほども申し上げましたように二十三カ国、これには一国足りないわけでありますので、わが国といたしましては、さらにこの交渉には参加しないまでも、わが国加入を支持する、こういう国を獲得すべく鋭意交渉を進めている状況でございます。
  14. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 先の提案理由説明の中で、関税交渉会議においてわが国ガットヘの正式加入討議されておるという御説明がありましたが、どういうふうに討議されているのか。内容を御説明願いたい。
  15. 下田武三

    政府委員下田武三君) ただいま討議内容につきまして、ちょうど二、三日前に、ガット会議出席しておりました安倍経済局第二課長が帰って参りましたので、一番最近の状態を知っておりますので、経済局第三課長から御説明さしていただきます。
  16. 曾禰益

    曾祢益君 ちょっと関連して。御説明を口頭で伺うことは賛成なんですが、やはりガット加入に関する交渉全体、それから関税交渉の概要を書きものにして出していただきたい。
  17. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 承知しました。今お聞きのような交渉経過、それからほかの関税交渉の現状ですね、それを書面にして一つ出していただきたい。それは後日でいいのですが、今の安倍課長のお話を……。
  18. 下田武三

    政府委員下田武三君) 実はジュネーヴで現在やっておりますコンセッション交渉内容は絶対に洩らしては困るということが主としてアメリカ政府の強い希望でございまして、各国政府とも絶対に秘密を守るという約束をしておるのでございます。と申しますのは、アメリカ各種業界に、もし話の内容がわかりますと、アメリカ利害関係を有する業界から猛烈な反対が起るおそれがありまして、そのためにせっかく日本を入れてやるためにやろうとする条件交渉が、国内反対のために御破算になるおそれがあるということを申しております。従いまして、曾祢委員の御要求に対しましては、具体的の税率その他の数字、品目等は差し控えさしていただきまして、大きなトレンドだけを書いて差し上げたい。それでお許しを願いたいと思います。
  19. 曾禰益

    曾祢益君 けっこうです。
  20. 安倍勲

    説明員安倍勲君) 二月二十一日から始まりましたガット関税交渉におきましては、先ほど申し上げましたように十五カ国の国がパラレルに並んで日本交渉するという建前をとっておるのであります。従いまして御承知のようにある、一つ品目についての税率の引き下げが討議されますときには、もっぱらその品物について主要なる輸出国がその権利を持つということになっております。たとえば日本からアメリカおもちゃがかりに出ますといたしますと、そのおもちゃについて日本アメリカからコンセッションを得るという建前になるわけでございますが、同時に、おもちゃ日本だけが輸出しておるわけではないのでございます。ドイツとかイギリスもまたこれに輸出しておる。そういう関連で、たとえばアメリカ日本との間に税率交渉をいたしますと、その間接的な利益というものはよその国が必ず得る、こういう意味で、絶えず十五カ国は並行いたしますが、同時に関連品目を互に討議し合うという格好で交渉いたしております。従って非常に時間がかかりますということとともに、きわめて技術的な、詳細な討議が行われておるわけでございます。それが関税交渉のやり方でございますが、日本を正式に加入せしめることについての討議と申しますのは、その間に十五カ国の国は関税交渉委員会というものを中で組織いたしまして、その交渉発展段階を時折持ち合って、そうしてなるべくこれを円滑に行わせる、そうして同時にそれに対して日本正式加入の主としてタイミングでございますか、時期ということについて討議をして、十五カ国につきましては、これは日本加入を支持するということは、これは規定上も当然でありますから、加入の是非については論議はないわけでございます。
  21. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その時期についてはどういう討議がなされておるのですか。
  22. 安倍勲

    説明員安倍勲君) 関税交渉は大体六月の上旬ぐらいまでを一応予定しております。その後日本ガット加入に関する議定書というものが作成される予定でございます。その議定書につきまして、一定の期間、これに対する署名期間というものを置きまして、その間に三分の二の国が署名すると加入が成立するというのが大体の構想でございます。ただいまのところでは九月の上旬ぐらいまでには、うまくいけば効力が発生するというふうに見込んでおるわけであります。
  23. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) ちょっと私から質問したいのですが、はなはだ幼稚な質問ですが、主だった国でこれに参加しない国がございますか。ありましたら述べていただきたいと思います。
  24. 下田武三

    政府委員下田武三君) 交渉参加国は現在アメリカドイツイタリアカナダデンマークその他の十五カ国が参加しておりますが、遺憾ながらイギリス初め英連邦関係諸国参加いたしておりません。主な国としましては英連邦関係諸国でございます。
  25. 曾禰益

    曾祢益君 この最初議定書は、仮加入議定書は二十一カ国だったのですが、今度の延長のほうは二十六カ国賛成になったわけですね。そうすると最初の数より殖えたわけですか。
  26. 西堀正弘

    説明員西堀正弘君) 殖えておりません。あの場合には、仮加入議定書にはたしか二十五九国が仮加入宣言署名しております。そのうち現在までに延長議定書署名いたしましたのは二十一カ国でございます。
  27. 曾禰益

    曾祢益君 英連邦フランスなんかとは別に関税交渉をやっておるのじゃないかと思いますが、あるいは議定書参加する、あるいは宣言参加する、要するに支持のほうに廻ってくれというような交渉もされておるのではないかと思う。それはどうなんですか。詳しい点は大体経過報告を出していただきたいと思いますが、簡単にその点について……。
  28. 安倍勲

    説明員安倍勲君) 法律的にはそういったことも可能でございますが、ガット建前といたしましては、加入を支持する、今後その国がガット上のメンバーとして加入することを承認する、これは先ほど御説明申し上げました少くとも関税上の最恵国待遇を与えるということが、実質的には不可能の関係になっております。従って法律的には可能でありますし、あるいは友誼的な意思表示として、そういった最恵国待遇については約束はしないけれども、加入については賛成するということは、あるいは政治的には可能であるかも知れません。そういう点については目下話合いはしておる次第であります。
  29. 曾禰益

    曾祢益君 法律的に、たとえばイギリスなんかは、最恵国待遇を法律的に約する、条約上約することをいやがっておるわけですね。日本ガット加入を支持するということが理論的には可能だということもわかるのですが、私が伺っているのは、要するにイギリス英連邦、それからフランスなんかと日本ガット加入に関していろいろ交渉をやっておられるだろうと思うのです。そういう場合に形式的にはどうなるのですか。例の宣言加入し、今度の議定書加入するという形もあろうけれども、直接的な交渉をやっていくという方法も依然として残っているのでしょう。仮加入というのはむしろ異例なやり方なんですね。ガットのあれから言うと、むしろ個々に関税交渉をやって、そして賛成するということに、個々に交渉してその賛成を得て、最後に加盟国団の会議で三分の二以上の議決をすることになる。従ってそういう解釈が正しいかどうか、正しければイギリスフランスとはどういうふうに交渉しているのか、現に。その点伺いたい。
  30. 下田武三

    政府委員下田武三君) 仰せの通りイギリスフランスは非常に難色を示しておりますので、これらの国をつかまえまして、いわゆるガットのワク内に引張り込んで話をつけようということはどうしても無理ではないかと思います。そこでイギリスに対しましては、講和発効直後、日本側のほうからすみやかに通商航海条約を締結しようじゃないかという提議をいたしまして、その一返答を非常に渋っておりましたが、幸いわが国の申し出の効果がございまして、先般東京におきまして、英国大使館側のほうから通商航海条約交渉を適当なときに始めたいという意思表示がございました。従いましてこの通商航海条約交渉に入りまして、そこでイギリスが不満があるならば、通商航海条約の問題といたしましてある妥協を諮りまして、そうして根本問題の解決をはかった上で今度は問題なくガットのワク内に持っていって話をしょう。やはり根本問題の解決から先に着すべきであると考えております。フランスにつきましても、前吉田総理がフランス出張中に話された通商条約締結問題というのはペンディングになっておりまして、このほうもまだ進んではおりませんけれども、やはり通商航海条約の話から入ろうということに相なっております。
  31. 曾禰益

    曾祢益君 それでどうなんですか。イギリスとの通商航海条約交渉フランスとの通商航海条約交渉、そういうやり方が並行的に努力されているとは思うけれども、手っとり早いことは二十三カ国の日本加入賛成を……。どうでございましょうか。今の課長のお話を聞くと、七カ国は無条件賛成、それから十五カ国ももちろん賛成しているのだけれども、これは正規の加入のためには、関税交渉をやって、特に厄介なアメリカ関税引き下げの問題、双方に関係のある問題、それを今やっておられるわけでしょうが、二十三カ国との関税交渉を終えて、二十三カ国を加えた正式加入が今度の議定書によって、かりにこの間の宣言の効果を延ばしますね、ことしの暮まで、大体そのくらいの期間に二十三カ国と関税交渉を終えて、正式加入という見通しは現在じゃなかなかどっちとも言えないだろうけれども、大体はどうなんですか、可能性ありと見ておられますか、多いと見ておられますか。
  32. 下田武三

    政府委員下田武三君) 二十一カ国の賛成は得られることは確実だと存じますが、残る国、そのきわどいところにおりますのがベルギー、オランダ、ルクセンブルグの、ベネルックス三国であります。従いまして最近は萩原代表もブラッセル、へーグにとまりまして、折衝をしておられますが、ベネルクス三国のうちでもオランダが最も難色を示しております。これは多分政治的な問題もからんでおりまして、純経済問題として離しがたいような事情もございますけれども、オランダが難色を示しておりますが、ベルギー、従ってルクセンブルグも難色は示しておりますが、こちらの方はまだ話し合いの道があるように考えております。従いまして御指摘の期間までに成立ができるかどうかという点は、必ず大丈夫だというようには申し上げられませんが、まずチャンスはフィフティ・フィフティではないかと思っております。
  33. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) フランスはどんな状況ですか。
  34. 下田武三

    政府委員下田武三君) フランス関税交渉参加することを欲しませんので、従いまして現在、ジュネーブの交渉には入っておりません。これもやはりイギリスと同じように日本品の競争をおそれるという建前から、非常に妥協をしてこないわけであります。
  35. 曾禰益

    曾祢益君 今の条約局長のお話の中で、非常にデリケートだったと返事がありましたが、オランダとのガット交渉について、どうもオランダが非常に賛成せぬ。むしろ反対的な、相当決定的な意思表示を最近してきたというような話を聞いたんですが、それは、どういう経緯かというと、この前のバンドン会議に例の西イリアン問題が議題になったときに、日本として西イリアンに対するインドネシアの主張を積極的に賛成すべきであるという、これは私の考え、こういう意見とガットの問題は非常に機微である。オランダを不必要に刺激したくない。従って棄権するか、黙っておって、結局ユナニミティでインドネシアの主張が通ったという形が、主張がだいぶあったと思うのですが、ところが僕ら知らないもんで、そういうデリケートなものかなと思ったが、あとでオランダの方が決定的にガット問題については、決定的にということは、時間の問題を無視して言えないんでしょうけれども、こっちが大いに希望していても、向うとしては最近の経過では相当はっきり断わってきている。今さらオランダに気がねしてみても始まらんじゃないかというようなことも聞いたんですが、非常にオランダの関係がむずかしいのでしょう。
  36. 下田武三

    政府委員下田武三君) 仰せの通り非常にオランダとの間がこじれておりまして、実はオランダを含む、ベネルックス三国にキャスチング・ボートを握られておるわけでありまして、今お話のバンドン会談における西イリアン問題の決議文の問題も、最近のオランダの日本ガット加入に対する態度を硬化させた原因になっていることは確かでございます。
  37. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今の御質問ではそれとは無関係に、その以前にすでにそういう態度が決定していたのではないかという御質問なのです。
  38. 下田武三

    政府委員下田武三君) その以前には非常に否をといいますか、ともかく難色を示したオランダが、だんだん好転しつつあったところでございます。
  39. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならばそういうことをおもんばかられたからこそ、日本代表は積極的に発言その他をしなかったと思うのですが、その辺の事情はよく御説明になったのですか。
  40. 下田武三

    政府委員下田武三君) へーグにおきましてオランダ政府から相当強硬な申し出がございまして、これに対しましては委曲を尽して岡本大使より説明いたしておりますので、だいぶ納得してきておるようでございます。
  41. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 きわめて平凡な質問でございますけれども、このガット加入によりまして日本の経済自立といいますか、日本の国際貸借上大体どのくらいな改善ができる見通しですか。
  42. 安倍勲

    説明員安倍勲君) 貿易の方から申し上げますと、第一には関税が低くなるという点がまあ一番の目的でございますが、現在関税について最恵国待遇を与えておる国はすでにもうございますものですから、そういう国とはガット日本加入しました後も、その面においては格別な変化は起きないわけでございます。  ただ最も期待できますのは、現在行われておりますアメリカとの関税交渉の結果、わが国の主要輸出品に対するアメリカ側の輸入税が相当引き下げが行われるとしますと、日本貿易は相当伸びる。こういう点が最も期待されておるわけでございます。
  43. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 おもにアメリカですか。
  44. 安倍勲

    説明員安倍勲君) 実質的にはアメリカが一番大きな面であります。
  45. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 今、日本では、もと幕末に不平等条約を結んで、それが治外法権と関税の自主権でしたが、今日本関税の自主権というものは持っておるのですか。保護貿易のために、ガットヘの加入反対するような国に対して、自由に高い税率をかけてどうするということはできるのですか。
  46. 安倍勲

    説明員安倍勲君) 現在日本関税自主権は持っております。関税及び関税定率法に基きまして、わが国に対して差別待遇を与える国に対しましては二重関税、複関税をとる規定もございます。  ただ協定に基きまして作った税率につきましては、関税定率法のいかんにかかわらず、それが適用になるという点は従前の通りでございます。
  47. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 だから日本にかりに反対するような国に対しては、報復関税を与えて威嚇することはできるのですか、できないのですか。法律上はできるも、実際上、経済上それはできるものですか。
  48. 安倍勲

    説明員安倍勲君) それはもっぱら輸出入品目の実態について考えなければならないと存じますが、特に原料品につきましては大体無税を主としております。そういう国に対しましては差別のつけようもまあないわけでございます。そういう点がまあきわわめてむずかしい点もございますが、原則的にはもう法的にもできるようになっております。
  49. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 今、下田条約局長が言われて、もう通商条約によって日本関係フランスとかイギリスとの通商貿易を改善すると思いますが、昔、日本関税自主権があってもなかなかその交渉がむずかしかったのですが、現在はどうですか、通商条約はスムーズに行くのですか、登録の問題なんかでもなかなか面倒な、実情はいかがですか。
  50. 下田武三

    政府委員下田武三君) 現在の通商航海条約の締結交渉におきましては、登録の問題はそう問題になりませんでございます。むしろイギリスとの間におきましては商標の保護であるとか、意匠の保護であるとか、イギリス側が日本品の競争をおそれております結果、そういうような問題になりまして、イギリス側としては十分の保証を得た上で最恵国待遇を含む条約を締結したいと、そういうように考えているんではないかと思っております。
  51. 佐藤尚武

    ○佐藤尚武君 今の問題に関連して一つお伺いしたいのですが、今の意匠盗用の問題でありますが、イギリスからは繊維品について苦情が来たとかという話も聞いておりますが、その辺の実情をお話し願いたいのと、それからまたそれに対応する対策の問題、二国間での交渉は、通商条約関連した交渉の中に意匠盗用の問題も含まれるのか。あるいはまた別個に当業者同士の間で何らか統制が進められているものであるか、そこらの問題について御説明願いたいと思います。
  52. 下田武三

    政府委員下田武三君) 仰せのように戦後イギリスは政治的の感情も入りまして、純経済問題である点につきましても非常な難色を示しておりまして、それが打開には非常な苦心をいたしている次第でございますが、特に御指摘の意匠の盗用等につきましては、これは何と申しましてもイギリス側で日本の実情がわかっていないというのが最大原因だと思いまして、先に陶磁器の専門家に日本に来てもらいまして、そうして愛知県その他の日本の陶器の生産地を見てもらいまして、それでだいぶ日本の実情がよくわかってきた。別に日本人ばかり悪いんじゃない。外国のバイヤーが来て勝手なものを注文して、こういう物を作れと言って、善良な日本の陶器生産者が、何らの悪意なくして注文に応じて作っているものを、向うに行ってみると、これは意匠の盗用であるという苦情を受けている。そういうのでこれはお互いに考えなければいかんということで、日本の方でも十分な注意をし、先方も日本の実情を了解してくれるということで、陶磁器の方につきましては成功をおさめ得たと存ずるのであります。  そこで織物の方の意匠の盗用問題につきまして、ただいまマンチェスターのやはり関係者に来てもらいまして、やはり日本関係業界の実情をよく見てもらっております。そこで今当事者同士の間で話をしております。これはなかなかイギリスの方もめんどうなことを申しております。たとえばきれ地の見本を持ってきて、この見本に従って織物を作ってくれという注文があったら、これはすべて盗用の問題になり得るものとして買ってくれということでございます。きれ地の見本というものがすでにできているなら、これはだれかがやはりデザインを初め考えた人があるので、必ず盗用の問題が起り得る危険があるということで、もしそういうような場合であったら、まずマンチェスターに盗用になるかどうか問い合せてくれというようなむずかしい条件も持ち出しているようでございます。しかしこれにつきましては、まだ先方の要求に百パーセント応ずるというようには関係業界のほうで腹をきめておらないようでございます。  そこで通商航海条約の場合にこういう問題に触れないで、業者同士の間で解決するかといいますと、やはりそうは参らないと思います。通商航海条約規定自体、あるいは付属の議定書等におきまして、必ず商標権、意匠権の保護ということを条約中の規定として設けることがなくては、イギリス側は条約の締結に応じないだろうと、そういう見通しを持っております。
  53. 佐藤尚武

    ○佐藤尚武君 重ねて簡単にお尋ねいたしますが、その商標権とか意匠の問題とかいうのは、これは特許権について私は多少知っておりますが、同じようになりますか。日本側に、日本の当業者にも明らかになっている問題でしょうか。というのはイギリスにはこういう商標権がある、登録された商標権があるとかいうようなことが、日本の当業者にも一々また容易に判明することができる問題であるかどうか。ということは、きわめて善意で日本の業者が作ったものがイギリスにそういったような意匠の登録があるということを知らないでやったとして、そしてそれが問題になるというようなことがまま起るのじゃないかと思うのです。その意匠の登録とか商標の登録とか何とかいうことは、日本ばかりでなし諸外国に通知されるような仕組みになっておるのかどうか、これは私はなはだ幼稚な質問ですけれども、お尋ねしたいと思います。
  54. 下田武三

    政府委員下田武三君) 実は仰せの通りの問題があるのでございまして、当初日本側はイギリスの業者がもし意匠の盗用をおそれるならば、その意匠なり商標なりを日本関係法律に基きまして日本で登録してくれればいいだろう、日本に登録してくれれば、日本の業者は直ちにそれを知ることができるということを申したのであります。ところがそこが商慣習の相違でございまして、日本ですと登録しないものは権利がない、国内法上の保護がないのだから勝手に作ってもいいという考えであります。ところがイギリスの方の商売上のモラルは、法律に従って登録されておるとおらないとを問わず、他人の考えたものを黙って模写することはこれは罪悪であるというのが商業上のモラルになっておる、これを主張するものであります。そこで先方の何ももっともでありますが、しかしそうかといって善良な日本の業者の方の立場としましては、そんな理想的なモラルを日本の業者にしいるわけには参りません。そこでいろいろ議論をかわしたのでありますが、結局そんな議論をかわすよりも、とにかく実情を見てくれ、百聞は一見にしかずというので、向うのエキスパートに来てもらって、そうして実情に基いた解決をするより以外にないと考えまして、先ほど申しましたようにまず陶磁器で成功をおさめました。ただいま織物についての話し合いをしておる次第であります。
  55. 佐藤尚武

    ○佐藤尚武君 いや御説明でよくわかりましたが、それはイギリスならイギリス一カ国内の問題とするなら、なるほど一定の商業上のモラルに従ってやりおおせることができると思うけれども、実際的には非常に商売になるというと、なかなかイギリス流では行かないのが普通じゃないかと私は思うのです。そうなりますと、そういう点については日本国内法の建前はもちろんのこと、常識に基いた日本側の主張、これはかなり強く主張せられるべきものじゃないかと、しろうと考えとして感じるので、ちょっと私の考えだけを申し上げておきました。
  56. 下田武三

    政府委員下田武三君) まあイギリスが一番競争相手として日本をおそれておりますためにわいわい言って参りますが、実はイギリスだけでございませんで、陶磁器、織物につきましては、アメリカにおきましてもカナダにおきましても、また、ベルギーにおきましてもスイスにおきましても、ドイツにおきましても同じような意匠盗用の問題が起っておるのでございます。ただ声がイギリスほど大きく上っていないというだけでございまして、そこでたしかに仰せのようにあまり向うの無理な要求に応ずる必要はないと思っておりますが、何分にもこの問題が解決いたしませんと日本品の締め出しを食う危険があるという現実に直面いたしております大きな危険を避けるという意味で、やはり何とか善処しなきゃならないという必要を生じておる次第でございます。
  57. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 先ほどの御説明で、ガット加入をした場合のプラスの問題は、関税の問題であり、しかもアメリカとの関係における関税の問題だという御説明があったように思いますが、そうだとすると、アメリカのほうは、まあ原則的に加入賛成をしておるんだから、ガットヘの加入の問題としてでなしに、アメリカとの間に単独に関税交渉がもっと積極的に、具体的になされて、その障害の除去は解決されるのじゃないかと思うのですが、そういうふうにはいかないのかどうか。もしいくとしてそういう折衝をしておられるのなら、それがどういうふうになっているのか。その辺の事情を御説明願いたい。
  58. 安倍勲

    説明員安倍勲君) ただいま申されました点は、アメリカ国内法でも可能でございます。日本国内法でももちろん可能でございます。ただ実態といたしましては、もしも日本アメリカだけが関税交渉をいたしますと、先ほど例示いたしましたように、一つ品目について必らず間接的利益というものが他国に生ずるわけでございます。そうしますと、アメリカとしましては、よその国とは交渉しないで一方的に利益を与えるという結果になりますので、その点がガットにおいて多角的な交渉をするという点がもっとも関税引き下げを容易に実現するという点になるわけでございます。従ってもしも日本アメリカだけになりますと、もっぱら日本の特産品というものに限られて、日本がよそと並んで出るものについては関税の引き下げの可能性が減ると、こういうおそれがあるわけでございます。
  59. 曾禰益

    曾祢益君 今伺っていて、質疑応答の中でこういう点が問題じゃないかと思うのです。さっきの安倍課長の御説明だと、ガット加入する利益というところに、いきなりまあアメリカを中心とした高関税を引き下げさせるということに利益ということを集約して言われたと思うのです。それはまあ終局的にはそういうことになるだろうと思うのです、しろうと考えですが。ただその前にこれはもちろんイギリスも、あれは今反対しているけれども、こういうものが入ってくれば、まだ、正式の最恵国待遇ですら、いわゆる現在のガット税率程度のそれすら正式に与えないという国がある。それを同意させて、最恵国待遇、その税率が高いか低いかは別として、待遇内容に触れずに、最恵国待遇を与えることに肯んじない国との直接交渉によって最恵国待遇約束させてしまうことが可能ではないか。そういう利益一つある。さらにはこの関税交渉を通じて実質的の狙いは、アメリカ関税を、日米間の一対一の交渉よりも、アメリカ国内にも、議会にもやりやすい形でアメリカ関税を下げさせるという、この利益がある。こういうふうに二つの利益があると僕は考えるのだけれども、そうじゃないのですか。
  60. 安倍勲

    説明員安倍勲君) 全くその通りでございます。ただ、おっしゃいましたよその国との現在の段階の程度における関税最恵国待遇としましては、きわめて実益が少い。特に平和条約に基、きまして事実上は与えているという点がございます。それから通商航海条約復活、リヴァイバルによりまして与えておる国が相当ございます。その点に実益が少いというわけでございます。
  61. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 それに関連しまして、アメリカでクーパー法案の修正ですか、経団連あたりで直接電報を打っていたようですが、あれはどうなっていますか。効果はあったのでしょうか、どうでしょうか。
  62. 西堀正弘

    説明員西堀正弘君) 現在のところ、御承知のように当初下院で提出されまして、それから下院を通過いたしましたクーパー法案、これが日本にとって非常に利益であったわけなんでありますが、その後上院に回りましたところがジョージ修正法、これが上院を通過して、従って下院にこれが回付された、これが現状なんであります。で、初めから御説明申し上げますと、現存の互恵通商協定法、これによりますと、一九四五年の一月一日の税率、これの五〇%まで関税を引き下げる権限が大統領にあるわけでございます。それで諸外国におきましては、この利益にすでに均霑しておるわけなんでありますが、日本の場合には占領行政に災いされまして、この現行法上における利益というものを何ら受けていない。そこでクーパー法案、これが互恵通商協定の現行法の延長法案として下院を通過したわけでありますが、これによりますというと、今年の七月一日の税率、これを向う三カ年間に五%ずつ、合計一五%、これを引き下げる権限を大統領に与えると、こういうことになっていたわけであります。それで日本としましては、七月一日まで、この六月一ぱいに現行法のもとにおきます五〇%の引き下げを受けております。そういたしますと、その上さらにこのクーパー法案によります七月一日の税率、これが下った税率になりますから、それにプラス一五%の引き下げの均霑を受ける、こういうことになるわけであったのでありますが、それが遺憾ながら上院に参りましたところが、ジョージ修正法案というものが出まして、それによりますと、今の七月一日の基準年月日、これが今年の一月一日に遡らされたわけであります。そういたしますというと、現在ジュネーヴ交渉いたしております関税譲許、これで受けますところの関税譲許というものは、この最初のクーパー法案の七月一日という基準年月日が一月一日に遡ります関係上、一五%の均霑で受け入れない。要するに諸外国に比べまして日本が立ち遅れた、その立ち遅れを解消してやろうというのが最初のクーパー法案の狙いであったのでありますが、その立ち遅れを解消することができなくなった、こういうことになるのであります。それでこのジョージ法案が下院に回付されましたので、何とか初めのクーパー法案に戻すように上下両院の協議会で何とかできないであろうか、こういう懇請が経団連から今アメリカに出された、こういうことになっておる次第でございます。その見通しにつきましては、何分にもアメリカのことで、ございますし、ちょっとわれわれには判断はつきかねるわけでございます。
  63. 湯川盛夫

    政府委員(湯川盛夫君) 今の西堀課長説明をちょっと補足させていただきますが、このジョージ修正法案は現在ジュネーヴでやっております日米間の関税交渉には影響ありません。それが現在は大統領が一五四五年の税率から五〇%以内で相手国の譲許によって譲許を与えるという権限を持っておりますから、それに基いてやっておるわけで、この修正法案は影響ありません、ジョージ修正法案、これはもちろんただいま御指摘の通り、原案のクーパー法案そのままの方がいいのでありまして、ジョージ修正法案が、これは通らない方がそれはいいことはもちろんでございます。ただジョージ修正法案がもし成立した場合どうなるか。三つほどの結果が出るわけでありますが、それは第一に、目下ジュネーブで進行中の日米関税交渉で一五%以上の譲許をなされた品目はこれ以上の引き下げはない。それから第二に、日米交渉で話の出なかった品目、これについてはジョージ修正法案が通りましても、やはり一五%の引き下げの余地は残る。それから第三に、日米交渉、現在の関税交渉で譲許が一五%以内であった場合、たとえば七%とか、六%であるとかいうものにつきましては、一五%に達するまでアンユーズド・ポーションについては今後やはり引き下げの可能性は残る、こういうことになります。そうしてこの一五%については新聞報道等で多少誤解があって、若干は誇張されておる感もありますが、たとえば一五%の譲許を与える権限を持っていても、実際には一五%フルに与えるというようなことは必ずしも全部の例ではなくて、その範囲内で譲許するわけですが、かりに二〇%の税率の一五%減ということは三%ということになるわけです。三%−十五%をば三年間にわたって五%ずつの範囲内でということでありますから、三%の譲許ということになれば、毎年一%ずつ三年間にわたって三%になる。つまり二〇%の税率が一七%になるということであります。従ってまあ五〇%、一五%といいますと、非常に大きいように考えられますが、実際においてはそういうふうな大きなものではないのであります。また米国日本に与えている最恵国待遇、これは依然として残ります。米国がかりによその国にそういう譲許をいたした場合には、当然これには均霑はあるわけであります。もちろんさきに申し上げましたように、このジョージ修正法案が通らずに、下院を通過したクーパー法案のままで成立するということは望ましいことでもあり、そういう話し合いをしておりますが、しかしただこのジョージ修正法案の影響というのが少し誇大に報道されている傾きがないでもありませんので、ちょっと御説明申し上げました。
  64. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 アメリカ関税が高いことが日本輸出を阻害しておる非常に大きな原因になっているように御説明から受け取れるのですが、その場合にさっきちょっと触れましたが、日本だけが、ほかの国との関連なしに、日本だけが特に高いために阻害を受けている品目なり部分と、そうでなくて、その他の諸国とも関連して高くて、そのために輸出阻害になっている部分とどれくらいの割合、どういう比重になっているのか、その辺をもうちょっと知りたいと思うのです。
  65. 安倍勲

    説明員安倍勲君) 正確な数字的なところはただいま用意してございませんので、申し上げられないのでございまするが、日本が、たとえばある種のおもちゃ類で、これはアメリカ輸入量の七六%を一九五三年度では占めております。それにつきまして現在は三五%という三分の一の大体税が引き下げられておるわけでございます。それについては、たとえば日本は、これがさらに下げられて三五%というのはあるいは低い関税とは言えないわけでございますが、これがもう少し下ればいいわけでございますが、もしもこれについて下れば日本がもっぱら利益を受ける。しかし同時にドイツフランスイギリス利益を受けるということになります。日本がほとんど百パーセントぐらい輸出しているというものは、たとえばマグロくらいなもの、余りないのでございまして、ただ六、七〇%以上日本輸出しておりますれば、そうしてその品物について関税が高いという場合に、日本が損をするということになります。  御参考までにアメリカ関税が、たとえば日本関税と比較しまして、どの程度高いだろうかという点を簡単に申し上げますと、アメリカで非常に高いのは大体三〇%ないし五〇%という税が相当ございます。これが大体三百五、六十品目ございます。それから三五%ないし二五%という範囲のあれが大体五百三十くらいございます。それからあと下りまして一五%ないし五%、それから無税品目、特に無税品目がその中で多いのでございますが、大体二百、こういう状況になっております。これに引きかえまして、日本の場合には三〇%ないし五〇%のものというのは大体五十五、六でございます。それから三五%ないし二五%くらいの範囲のものが百三十くらいございます。しかして一五%ないし五%というのが日本では大体二百十五でございます。従って日本関税は大体一五%ないし二〇%という点が非常に多いのでございます。それでアメリカ関税はこの点で世界でも、一番、こういう例でいきますと高いのでございます。
  66. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それから御説明を聞くと、よけいに、どうも関税の問題はガットの問題であると同時に、あるいはそれ以前に日米の問題であるというような感じが非常に強くするのですが、現在政府は日米協力を基本方針とするということで、非常に高く打ち出してうたっておられる。それならばもっとそういう意味で日米協力の実をげるように、もう少しそういう点は対アメリカとの関係としても強く折衝をされ、打開をされることが必要なように思う。  これは意見、希望として申し述べておきたいのですが、今の関税状況を少し詳しく文書にして一ぺんお出しを願いたい。
  67. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) なお、御質疑がございますかもしれませんが、それらは本件が本院に回付されて、決定をお諮りする場合に願いますことにしまして、本件に関しましての予備審査は大体この程度で一応終ったものといたして、次回には三つの国との文化協定についての件が回って参っておりますから、それらについて御説明を承わり、御質疑を願うことにいたしたいと思いますが、いかがでございますか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それではそういうことにいたしたいと思います。  それでは本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十九分散会      —————・—————