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説明員(
安倍勲君) 御
承知の
通りと思いますが、
ガットと申しますのは、
関税及び
貿易に関する
一般協定という
名前のごとく、その
趣旨といたしましては、
貿易をできるだけ自由にするというのが
趣旨でありまして、その自由を仮にやむを得ず阻害といいますか、完全な自由にしない場合は、
関税をもって
貿易というものを調整するという
建前をとっておるのでございます。これはちょうど一九四八年でございますか、
戦争が終って間もなくでございますが、戦時におきまして、
各国の
貿易というものが
戦争中いろいろな必要に基いて歪められた形になっておった点を、戦後これを改善するという
目的のために出廃したのでございまして、そのために一九四七年十月に、まずこの考えが、
ハヴァナの、いわゆる同様の
目的でございますが、
ハヴァナ憲章というものの
関連によって発生したわけでございます。御
承知の
通りハヴァナ憲章は極めて広汎な
内容を含みましたために、
米国を始め
各国の了承するところとならないために、それは現在発効しておらないのでありますが、ただいま申し上げました
貿易をできるだけある
原則に基いて自由にするという点は、これは是非必要であるということが
主要貿易圏の間に了承されまして、現在三十四カ国がこれに
加盟いたしまして、法律的には暫定的な
適用ということになっておりますが、現に実際的には、この
一般協定と申しますのは、三十四の国の間に
適用になっておる次第でございます。その三十四の国は、主としていわゆる
米国、
英国等、
世界貿易の約二〇%以上も占める国を含めまして、大体
世界貿易額の八〇%になんなんとする国がこれに
参加、
加入しておる次第でございます。
ただいま申し上げました
ガットの
原則を申しますと、まず今の
関税を除きまして、現在
貿易の自由を阻外しておりますのは、最も大きいのは数量的な
輸出入の
制限でございます。これは、ぜひともできるだけ撤廃すべきである。と申しますが、やはり
各国はおのおのの
国内の
経済事情、符に
国際収支のバランスを維持する必要がございまして、あるいは国によりましては特定の産業をある程度保護する必要があるということもございまして、現にほとんどの国は数量的な
輸出入制限を行なっているのでございます。これをなるべく
最小限度の範囲にとどめる。それから、いわゆる
輸出入の
補助金でございますが、あるいは
国家貿易といいますか、専売、そういうようなものもなるべく乱用しないで、そういう
貿易の自由を阻止する要素は少くも漸進的にこれを減らして行くということをモットーとしているわけでございます。それが仮に漸次なくなるということになりますと、
日本には
関税だけ、しかも
関税につきましてはこれをなるべく低いほうに持って行く。そして低いほうに持って行きました
関税は、別の
加盟国の間におきましては、いわゆる
関税上の
最恵国待遇を与える。いずれの国に対しても等しい
待遇を与える。それから
関税をかけましたのちに、国に入りまして、いわゆる内
国税という問題がございますが、これにつきましては、いわゆる内
国民待遇という
原則を出しておるわけでございます。これは今の
関税上の
最恵国待遇及び内
国税の内
国民待遇につきましては、従来の
通商航海条約の
原則をあらためて確認したものでございますが、現在はこれは大体国際的にも認められた
原則で、これを
ガットがそのままのせておるわけでございます。
そういうことでございますと、
日本としてどういう
関係になりますかと申しますと、戦後
日本は、
通商航海条約によって、今のような
待遇を確保するという点が
平和条約の
関係においてある程度ございますが、はなはだあいまいな点もございます。それから同時に、その他の先ほど申しました
貿易上のいわゆる障害になる諸
条件というものが、
日本の
貿易が
国民所得の二〇%以上も占めるという、いわゆる
貿易の非常な
重要性にかんがみて、特に
輸出貿易を振興させるためには、ただいま申し上げましたような
待遇をぜひとも法的にも確保したいというのが
一つの
わが国にとっての大きな
利益であるのでございます。
輸入につきましては、もちろん
わが国にとってやむを得ざる制度というものは認めなければなりませんが、特に原料その他
わが国はきわめて
輸出貿易に必要なものを
輸入するわけでございますから、そういうものをなるべく自由にするということは、また
わが国の
利益に合致すると思われる点がございます。そういう
意味で、一九五一年から、
日本はこの
ガットの
加盟国といたしまして、数次にわたって
加盟の種々な工作を行い、それから
ガットと申しますのはまだ
国際機関の体をなしておりませんために、
総会とかあるいは
執行委員会というようなものはまだできておりませんで、年に一度、大体
原則としましていわゆる
締約国が
一つの
総会に似た
締約国団というものの
会議をいたします。その
会議において、今のような
日本の
加入申請というような問題は
討議するわけでございますが
総会に当ってそのアプローチをしたわけでございます。ところが、国によりましては、特に
日本と
貿易上非常な
競争をします国におきましては、
ガットに
日本を入れたためにそのような
待遇を全面的に与えるということは、いまだ適当でないという見解がございまして、
ガットの
メンバーが全部
日本の
加入を支持するという
状況にならなかったわけでございます。そうして
ガットの
規定によりますと、今のような
待遇、特に
関税上の
最恵国待遇を
加入の結果受けますためには、
加入国は
既加盟国との間に
関税交渉を行なってある程度
関税を引き下げるということをしなければならないことになっております。これは明示的な
規定はございませんが、今までの
不文律によって大体きまっているわけでございます。そこで
日本としても
関税交渉をしたいという用意があるということを再度申し入れたのでございますが、これも御
承知の
通り世界で最も
関税の高い国は
アメリカでありまして、
米国の
関税が漸次引き下げられるということがありませんと、あまり実益はないという観点がございますので、主として
米国を加えたいわゆる多角的な
各国間の
関税交渉というものが行われるということになっているわけでございます。現に今まで大体三回、そういった
交渉が行われておりまして、その結果、ただいま申し上げました
米国に対して
各国が
輸出しております重要な商品に対する
アメリカの
輸入税というものが相当引き下げられる、そういう結果を来たしているわけでございます。
日本におきましても、もちろんそういった点を目途として、また同時に、必ずしも
アメリカに限らず、
日本のいわゆる
貿易が伸び、あるいは現に
輸出が伸びていると思われる地域に対しましては、できるだけ
関税を下げてもらう、少くも現在の
ガット関税といわれているものの
最恵国待遇はぜひ
適用を求める、こういう
趣旨でアプローチしたわけでございますが、先ほど申し上げました、それでは
日本の
輸出が急に振興することによって迷惑をこうむるというような意見がございまして、全面的な
賛成を得なかった次第でございます。そこで
日本は、しかしながら実効的にはぜひともそういったものを獲得したいというのが仮
加入に至りました経緯でございまして、仮
加入につきましては、現在何ら
ガットには明示的な
規定はございません。しかしながらこれはいわゆる
締約国団の
会議においてこういった形式で
日本の仮
加入というものを認めることは妥当であるという結論に一九五三年の十月に達しまして、その結果、
日本は仮
加入を認められることになったわけでございます。仮
加入が認められますと、
ガットの
締約国団会議あるいはその間にございます
会議間の
委員会というのが年に二回ございます。そういうところで先ほど御
説明いたしました
ガットの
原則及びその
適用について種々の
論議がございますが、それには
各国なみに
参加できる。ただし先ほど申し上げました
ガットの
加盟国と
日本との間に完全な
ガットの
適用によって生ずる——特に
関税上の
最恵国待遇を生ずるかという問題につきましては、別途解決するということになりまして、それについては、ただいま問題になっております仮
加入の
宣言に
署名した国については、
日本との間に法的な
関係を生ずる、しない国については生じない、こういった解決によって
日本の仮
加入というものが生じたわけでございます。大体これで……。