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1955-10-20 第22回国会 参議院 外務委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年十月二十日(木曜日)    午前十時四十七分開会   —————————————    委員の異動 九月十五日委員戸叶武君及び堀眞琴辞任につき、その補欠として山口重彦 君及び須藤五郎君を議長において指名 した。 九月十六日委員永岡光治辞任につ き、その補欠として佐多忠隆君を議長 において指名した。 本日委員須藤五郎辞任につき、その 補欠として堀眞琴君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     石黒 忠篤君    理事            鹿島守之助君            小滝  彬君            羽生 三七君            鶴見 祐輔君    委員            遠藤 柳作君            岡田 宗司君            佐多 忠隆君            曾祢  益君            梶原 茂嘉君            後藤 文夫君            堀  眞琴君            野村吉三郎君   事務局側    常任委員会専門    会専門員    渡邊 信雄君   説明員    外務政務次官公 園田  直君    公 使    (外務大臣官房     審議室勤務) 朝海浩一郎君    外務省アジア局    長       中川  融君    外務省欧米局長 千葉  皓君    外務省条約局長 下田 武三君   —————————————   本日の会議に付した案件委員長報告国際情勢等に関する調査の件  (日韓関係に関する件)  (第三国軍人訓練問題に関する件)  (日比賠償問題に関する件)  (日英支払協定に関する件)  (サウジ・アラビアの在外公館に関  する件)   —————————————
  2. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それではこれより外務委員会を始めたいと思います。  最初に、開会の前に理事会を開きましたのでありまして、そのことをちょっと御報告申し上げておきます。  外務委員会は、国際情勢調査の広い範囲内において、いつでも開くべきであったのでありまして、いろいろ国際関係のことについて外務省の方から事情をお伺いしたいようなことも出て参ってきておったのでありますが、社会党、民主党、自由党、それぞれの事実上のいろいろな関係がおありになったために、委員各位からの御要望も全然出てこなかったのであります。けれども、私は委員長として、もうこの程度において一回開会した方が適当ではないかと、こう考えましたので、今日開会することに外務省交渉をいたしたのであります。前回からの間におきましていろいろ案件があるのでありますが、日ソ交渉に関しまして、この際開会をして、いろいろお伺いをすることが必要だと考えましたのがおもな項目であったのでありますが、不幸にして外務大臣が一昨夜から発熱をされまして、今に床に伏しておられるような関係で、あるいはよくなられるかと思いましたのでありますが、今日は御出席がありません。そこで理事会としていろいろ御相談をしたのでありますが、日ソ間の関係のことについての質問応答は、外務大臣出席をせられた委員会においていたすことにいたしまして、本日はこれを除外をすることにきめました次第でありますから、さよう御承知を願いたいのであります。  その他の案件に関しましては、外務省側から御報告をいただくこともござりまするし、またこちらからお伺いをすることも多々あるように思います。そういうことを順次に本日はやって参りたいと思うのであります。さよう御承知を願いたいと思います。
  3. 園田直

    説明員園田直君) ただいま委員長から申されました通りに、以前から本日の委員会について御連絡がございまして、準備を進めておったのでございますが、一昨日から大臣発熱をいたしまして、昨日の午後までは、何とかして出席だけはさせたいと思いまして、お答えがおくれておりましたが、昨日の午後になりまして、どうしても熱が下りませんのでお断りをしたわけでございます。大臣からも委員各位によろしくおわびを申し上げてくれということで、これだけお断り申し上げておきます。  なおこの際、日米原子力協定に関する御報告を申し上げますが、正式調印のためにその後準備をととのえておりましたが、正式案文は、両国の正文の準備がととのっておりまするが、先般の議会で、大臣からも私からも申し上げました通りに、細目取りきめを明らかにしてから正式調印に入りたいと思っておりますので、細目取りきめを明らかにするために若干おくれております。見通しといたしましては、十一月の初旬に正式調印をする運びに相なろうと考えております。  以上、御報告を申し上げます。
  4. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 何かただいまの原子力関係の件に関しまして御質問等がございますか。
  5. 羽生三七

    羽生三七君 そのこと以外でちょっと政務次官にお聞きしてよろしいですか。
  6. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) どうぞ。
  7. 羽生三七

    羽生三七君 きょうは大臣もお見えがないわけで、それから私もきょう質問するつもりで来たわけでもないのでありますが、この日ソ交渉の内容的なことは、いずれ大臣も来られると思いますので、それはその際として、ちょっときょうこの機会に政務次官にお尋ねしておきたいことは、最近の新聞報道なんかを読んでみると、政府日ソ交渉保守合同をどういうふうに考えておるかということに、私は相当疑問を持っておるのです。これを政務次官にお尋ねするというのは、いささかどうかと思いますが、お差しつかえのない範囲で一応明らかにしていただきたいと思うことは、単に日ソ交渉だけではない、フィリピン賠償もまた同様な印象を与えておるわけです。保守合同ができればフィリピン賠償は成立するだろうというような報道が、向うから逆に流れてきておる。ですから一体この国際問題を国内的なそういう政治問題とからみ合わして処理されようとするのかどうか、その辺どういうことになっておるのか、いささか次官にお尋ねするのは筋が違うかもしれませんけれども、おわかりになっておる範囲一つお知らせ願いたいと思います。
  8. 園田直

    説明員園田直君) ただいまの御質問は答える私もいささか困る問題でございますが、(笑声)鳩山総理は、しばしば言明しておりまする通りに、保守合同の問題は政策遂行の手段であると主張しておりまするし、保守合同に当りましても、合同目的ではなくて、政策を遂行することが目的であると、このように考えておるようでございまして、日ソ日比問題等につきましても、国民の世論その他の動向とにらみ合して最後の決定をする段階に来ておりますが、合同のために、今までの主張なり、あるいは折衝をやってきましたことが大きく変革されるべきではないと考えております。
  9. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 何か御質問がございますか。   —————————————
  10. 小滝彬

    小滝彬君 外務省側からぜひ説明していただきたいことは、韓国との関係において、特に日本漁夫が長い間向うで不当に抑留されておる。それに関しては先方からは大村収容所の問題を云々しておるということが新聞にも報道されておりまするし、また十月十五日、土曜日の官報にも、法務省大村収容所について説明をし、その中には、韓国側からこういうような申し出があったというふうなことをはっきり政府側として発表しておるのですが、これについて係の局長なりから説明さしていただきたいと思います。
  11. 中川融

    説明員中川融君) ただいま御質問のありました韓国人大村収容所抑留されております者の措置の件でございますが、不敏にして私、その法務省で出しました官報掲載事項を読んでおりませんので、どのようなことが書いてあったか存じておりませんが、従来問題となりました点を御報告申し上げますと、大村収容所に今千数百名の韓国人抑留されております。これはいずれも法務省により韓国強制退去処分を受けまして、船待ちの者でございます。そのうちの大体千百名ぐらいの者は、これは韓国から不法入国をいたした者でありまして、いわば密入国いたしました者がつかまりまして、それでそのまま退去処分になったという者でございます。それ以外の三百五十名程度の者は、これは終戦前から日本に居住しておりました韓国人でありますが、日本法規を犯した等の理由のために、出入国管理令によりまして強制退去処分に付せられておる者であります。いずれも日本法規に基きまして、韓国退去処分に付せられる者でありますが、韓国側がこれの引き取りを拒否しておりますので、大村収容所にいわばたまっておるわけであります。  韓国側態度は、そのうちの密入国者につきましては、これは原則として引き取るということでございます。しかしながら最近におきましては、その引き取りが中絶いたしております。なお、終戦前からおりました韓国人日本法規を犯した者につきましては、韓国側はこれの引き取りを全面的に拒否いたしております。これは韓国側理由としては、これかの者がどういうふうな処遇を受けるかということが、日韓間で話がきまらないゆえに引き取らないという態度をとっておるわけでございます。日本側態度は、これは韓国籍であることは、双方の実際措置あるいは会談における双方主張というようなことからもう当然はっきりしておる。従って韓国籍である以上は、日本法規を犯して、それも非常に情状の重い者と、こういう者は当然退去処分に処し得ることが、国際慣例上当然である。従って、協定ができるできないにかかわらず、韓国が当然引き取るべきであるとの主張に立っておるものでございます。この間の意見が合わず、従ってこれが引き取れないのであります。韓国側からはこれを全面的に日本において釈放してもらいたいという申し入れがあるのであります。  なお、これと直接韓国関連はさしておりませんけれども、御承知のように日本漁夫でいわゆる李ラインを侵犯して韓国につかまりました者が、先方の刑務所を出まして、なおこれが日本に帰されない。釜山に抑留されておる者がございまして、その数が大体二百五十人ぐらいに達しております。これはすでに長い者はもう十ヵ月ぐらいになるのでありますが、なお日本に帰されておりません。従って韓国側ではそういう日本人抑留して帰さない。それでこれは直接の関連ではないとは申しておりますが、われわれの見るところでは、この両者の間に何らかの関係があるのではないか、かように推察をいたしております。実際は関係があるのではないかと推察をいたしております。  日本側の今までの態度といたしましては、この大村収容されておる韓国人を無条件で釈放するというわけにはいかんというのが、今までの態度でございます。
  12. 小滝彬

    小滝彬君 ところがこの官報には、「目下大村収容中の一、〇〇〇人余りの不法入国者を引きとり、韓国抑留中の日本人漁夫約五八〇人中のうち刑期満了者のみ約二〇〇人も送還するというのである。」というふうに韓国側が言っているように、言っておる。ところで、一体その出入国管理令の規定はわかるのだが、従来外務省法務省とはこの点については交渉をしているはずだ。ところが相手方の考えがはっきりわからんけれども、そういうようにそんたくして交渉を始めているのか。それとも正式の文書はないけれども、相当なる信ずべき筋からすれば、これは緩和されるということになっておるのか、その辺がわれわれ特に知りたいところなんです。これはもうすでに二、三日前にも外務省へも多数が陳情に行ったと思うのだが、日本人漁夫家族なんか非常に困窮状態にあるので、国内措置もやらなければならないだろうし、何としてもこの不当に抑えられておる者を帰してもらわなければならない。いろいろ根本的な議論はあるが、何とか実際上の解決問題は、主義上の主張とは別個に考えてもらわなければならんということは、私の方からも何べんかこの委員会でも申し上げておるのですが、そういう話し合いが全然進んでおらないのか、あるいはここで言いにくいためにそういう答弁をせられたのか、一つもう一度その点をはっきりさしていただきたい。
  13. 中川融

    説明員中川融君) この問題につきまして、外務省法務省事務的に打ち合せをいたしたことは事実でございます。それは韓国側態度というものが、先ほど私が申しましたように、直接これと関連せしめてはいないということを申し上げたのでありますが、実際上はこれと何らかの関係があるのではないかと察知されると、こういうふうに申し上げましたが、これはわれわれとしても重大な点でございますので、理屈のあるなしということは別といたしまして、韓国側一体何を考えておるのかということが、どうしてもこの問題の解決の基礎になると思いますので、その点は相当向うといわばさぐりを入れておるのでございます。その結果私どもとしては、これは実質上は相当の関係ありというふうに判断をしておるのでございます。それ以上これがどの程度の、それではどういう根拠でどうということは、これは申し上げることを差し控えたいと思うのでございます。従ってこれは法律上、理屈のあるなしの問題とは別に、事実上相当関係ありというふうな判断がされますので、果してそういう事態に直面いたしまして、日本側で、ただいま小瀧委員の御指摘になりましたような何らか解決法考えられるものかどうかということで、法務省との間にごく非公式に事務的な打ち合せをやっておるのでございます。その結論は、先ほど申し上げましたように、日本側のただいまの考え方としては、これは全面的な釈放ということはなかなかむずかしいという、こういうところがただいままでの事務的な話し合いでわかっておるところでございます。  なお、政治的にさらにこれを実際問題として考えてみるべきではないかというふうないろいろな御意見につきましては、またさらにこれは事務を離れた、より大きな問題として研究いたさるべきものであると考えております。
  14. 小滝彬

    小滝彬君 先方全面的釈放を要求しているかのように、今答弁を聞いていると響くのですが、一体一九四五年九月一日以前の者を釈放すれば、大体話がある程度見通しがつくというような見込みじゃないですか。それとも密入国して、日本に永住的な権利を持たない者も全部日本国内釈放しろというような考え方先方は持っておるのですか。
  15. 中川融

    説明員中川融君) 全面的釈放と申し上げましたのは、終戦前から日本に居住していた韓国人大村抑留されている者の意味であります。こういう問題が片つけば、先方としては千余名の密入国者は当然引き取るということを明らかにいたしております。
  16. 小滝彬

    小滝彬君 しかりとすれば、これは法務省に対してそういう関係をもう少し強力に交渉できないか。一体前科五犯とか六犯の者を出しておくと非常に危険だというような言い分もあるようですが、しかし日本だって前科十犯の者も十二犯の者もおります。日韓交渉でこの問題が問題になったけれども、事実最終的な解決はしていないので、私は韓国側言い分に味方するわけではないが、しかし漁夫がこのために士気が非常に阻喪し、また留守家族も困っているので、こういう大きな人道問題であるから、そういう主張は、こういう日韓交渉において根本的の問題は話すことにして、一九四五年九月一日以前の者を出せば、話がつきそうな相当な見通しがあるとすれば、もう少し法務省に働きかけて、国民が非常に待望している漁夫帰還というものを一日も早く実現するように、外務省としてもっと努力してもらいたいと思うが、政務次官の御意見いかがですか。
  17. 園田直

    説明員園田直君) 外務省といたしましてもそのような方針でやっておりますが、その前提として、事務的な折衝を開始したわけであります。ただいまのところ、必ずしも事務的折衝で行き詰まった段階ではございませんので、さらに各方面と連絡をとって、強力に折衝したいと考えております。
  18. 堀眞琴

    堀眞琴君 今の韓国人抑留者引き取りの問題ですが、千何名の全部が韓国側に帰ることを望んでいるとか、それともそうでなくて、そのうちの何人かは韓国ではなくて、北の方に帰りたいというような希望者があるかどうかをお尋ねしたいと思う。
  19. 中川融

    説明員中川融君) 手数百名のうちの千百名程度密入国者は、いずれもこれは南鮮、つまり韓国から密入国したもののようであります。従って密入国したところへ帰すという原則で、これは送り帰すということになっており、それについて特に本人たちに異存があるということは——もちろん帰されることは不満なのでありますが、南鮮に帰されることを特に不満に思っておるということは聞いたことはございません。なお終戦前からおります三百数十名の中で、北の方に帰りたいという者があるかどうか、私は聞いておりませんが、これは日本におります韓国人の中での南北の割合というようなことを考えますと、そういう者もあるいはおるのではないかと考えます。私、実はその点の調べを見ておりませんので、的確にどの程度おるかということは存じておりません。
  20. 堀眞琴

    堀眞琴君 私がそういう質問申し上げたのは、従来密入国者の中には韓国に帰されると重い罪に問われるというようなこともあり、それからまた自分の考え方としては、韓国方針とどうも一致しがたいというような人が、これまでかなりあったように私は聞いているのです。今のアジア局長お話ですと、本人希望等についてはまだ調べておらぬという話ですが、いよいよ千何名かを帰すということになりますと、その問題がまた出てくるのではないかということが考えられるわけです。その場合に外務省としては、韓国から密入国したのであるから韓国に帰すという方針をあくまでも貫こうとされているのかどうか、そのことを重ねてお尋ねしたいと思います。
  21. 中川融

    説明員中川融君) 密入国者を帰す場合には、やはり密入国してきた向うの出発の港が属している国に帰すのが原則であります。従ってその原則はやはり順守しなけりゃいかんと思うのですが、なお密入国者の中で、これはいろいろな事情から日本に置いておくことがむしろ人道上も好ましいと思われるようなケースもあるのでありまして、たとえば日本に妻子がおるというようなことで密入国してきた。それから生活の本拠を持つ親族がおるために密入国してきたという者もあるのであります。そういうような者を必ずしも帰してしまうというようなことは気の毒でありますので、日本に滞留を認めるということは、例外的にあるのでありまして、必ずしも冷酷一点張りのやり方でもないのであります。そこらのことは、各ケースケースに応じて処理していくことにしております。   —————————————
  22. 堀眞琴

    堀眞琴君 それから原子力協定についてちょっと一点だけお尋ねしたいのですが、先ほど政務次官お話で、細目の取りきめの折衝中である。大体十一月の上旬中には調印運びになるであろう、こういうお話ですが、その細目の、現在の折衝段階で問題となっている点を大まかでもいいですから、具体的に御説明願いたいと思います。
  23. 園田直

    説明員園田直君) 細目取りきめは折衝中ではございませずに、すでに折衝は終っておりますが、これを明らかにして公開するためには、両者の打ち合せが必要でありますので、その打ち合せについての相談がまとまっておりませんので、それがまとまり次第御報告いたします。
  24. 曾禰益

    曾祢益君 例の第三国軍人等日本における訓練を許容する問題について、その後の進展をちょっと伺いたいと思うのですが。
  25. 園田直

    説明員園田直君) 第三国軍人訓練につきましては、申し出がありましてから検討をして返答すべく、返答を保留しておったのでございますが、その間、返答するまでに、ごく小部分の者が短期間訓練をやりたいということで、若干新聞に発表になって、訓練を実施しております。その後問題となりまして、正式の態度決定するまでは、米軍の方でも遠慮をし、直ちに計画を中止し、渡航中の者等帰還を命じておるのでありまして、その後某国よりさらに入国のための査証許可も出て参りましたが、これも許可をいたしておりませずに、根本的なこれに対するわが方の態度決定すべく検討中でございます。
  26. 曾禰益

    曾祢益君 それで検討中なことはわかるのですが、これは事実かどうか知りませんが、新聞報道によると、外務省の方では、いわゆる例のMSA協定によって日米両国が相互に援助をし合う以外にも第三国にも両国相談によっては援助を伸ばしていく場合がある。そういう条項がどこかにありましたね。そういうところに根拠を置いて、この種の第三国に対する援助ということの道が条約上あるということを外務省の方からむしろサジェストしているという新聞報道が伝えられている。そういう果して御見解であるかどうか。また基本的な考えとしては、そういう何か認めてやろうというような気持でやっておられるのか、やはりそういうものは、一つの全然新たな政治問題として、日米間の現在の軍事協定の問題とは別途に、新たな問題とする。そこまで事実上アメリカ友好関係を持っている、あるいはアメリカ軍事協定を持っている国の援助を、わざわざ日本国内で貸してやらなければならないという考えであるのか。そういうことはもう全然別個の問題として、それは迷惑だからお断りするという考えであるのか、そこら辺のところはどうなんでしょうか。
  27. 園田直

    説明員園田直君) 外務省としてこれは許可する方針の方向に議題を進め、あるいは決定したわけではございません。この問題は、事自体は別として、その方針はきわめて重大な問題でございますので、事務的な問題でなくて、内閣として方針決定をして、許可するなら許可する、許可しないなら許可しないと、はっきり態度決定しなければならぬ、こういうことで、外務省としては事務的に果して許可する場合に、これが各条約その他の違反等にたるかならぬかという研究を進めている段階でございます。
  28. 曾禰益

    曾祢益君 そういたしますと、これはもちろん仰せ通り政府の政治的な判断の問題ですが、従ってその点はまだきまっておらない。同時に外務省としては別に、新聞に伝えられているように、こういう道があるじゃないかというような、MSA協定解釈でその道を開いてやるようなことをやっているわけではなくて、現行条約解釈論としてのそれが漏れたのか、そこら辺のことが世上うわさを招くわけです。今おっしゃったように、内閣としては重大な問題だから、まだ政治的判断ができておらない。ところが一方においては、外務省の方からこういう道があるじゃないかと言わんばかりの、——それはそういうおつもりでおるかどうか知りませんが、新聞には、こういう現行法上やってもいいのだという道を示しているような記事になっているのです。その点をもう一ぺんはっきりおっしゃっていただきたい。
  29. 下田武三

    説明員下田武三君) 正直に申し上げまして、この問題はMSA協定やあるいは行政協定締結のときに予想しておらなかった問題であります。でございますから、ただいま仰せのように、こじつければ既存協定説明できるかもしれません。しかし実は白紙に起りた問題であって、もし政府において許すということにきまりますれば、むしろそのための取りきめを締結するか、あるいは取りきめの締結を要せずして、既存法令でまかなえるか、あるいは国際慣例説明がつくか、そういう問題であると思うのであります。  それから先ほど政務次官お話にもございましたが、政治的の面から申しますと、何も国府軍訓練だけではないのでありまして、東南アジアのたくさんの国——現に問題になっておりますのはタイの生百人の日本における訓練、これは実は日本査証を拒否したわけではないのでありますが、査証をとめておりますために、タイ新聞では非常なセンセーションを起している。われわれはアメリカに行って訓練を受ける費用もない。だから近い日本に行って訓練を受けたいのだ。日本に行けば、タイのいろいろな鉄砲でありますとか兵器、その他の注文を将来、日本でとるために日本兵器工場も見せてもらいたい。日本を実は頼みにして、将来日本特需発注のチャンスを日本にも与えるかもしれないのに、日本がその査証をくれないということは、実は日本を非常な頼みにしておって、親日空気の強いタイとしては非常なセンセーションだった、そういう面も私やはり考える必要があるのじゃないか。でございまするから、何も行政協定MSA協定の問題だとして、その協定との関係だけをほじくって考えていくのではなくて、仰せ通り全く白紙に起った新らしい問題として、法律的にも政治的にも考えなければならん問題だと、そういうふうに存じております。
  30. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 私も多少疑問があるのですけれども、質問をするというと、席を譲って質問をする程度のものでもないので、議事進行の形で質問をしますが、訓練の申し入れば、新聞の伝えるところでは、昨年の三月にあった。ずいぶん長い間研究されておるのでありますが、その間の研究の主たる項目を御説明になるようなことが、質問をなくすゆえんではないかと思うのですが、いかがですか。
  31. 千葉皓

    説明員(千葉皓君) この問題は今年の三月に合同委員会におきまして初めて話がございました。今年の三月からと申しましても、相当な時間になるわけでございます。その当時あまり詳しい話はなかったのでありますが、ごく人数も少ないし、訓練期間も非常にあまり長くないように思いましたので、その程度のことなら別に差しつかえはなかろうということで、実は応諾を与えておった。別にその問題についていろいろな法律的、あるいは条約関係など研究しておったわけではなかったのであります。  で、今年の七月でございましたか、これは相当大幅なものらしいということがわかりました。それから急に、急にと申しては何でございますが、これはやはりそう簡単なものではないということに気がつきまして、米軍側に申し入れまして、とりあえず中止をしてもらったような次第でございます。しかし米軍側としては依然その希望があるということでありますので、今、目下研究しておるという、そういう状態であります。  なおその後いろいろアメリカ側に当ってみますと、従来つまびらかでなかった向う訓練計画の内容とか、あるいは来ます第三国軍人に対する待遇について、アメリカ側がどうしようというようなことについて、十分明らかでないような点もあるということがわかりましたので、目下照会中でございます。
  32. 曾禰益

    曾祢益君 ちょっともう一点だけ、これは多少意見になるかもしれないのですが、やはりこういう問題は、過去のことを言ってもしようがないけれども、一体日本は安全保障条約によって、また行政協定によってアメリカ軍の駐留を許しているわけなんですが、そのアメリカ軍隊による日本国内における第三国軍人等訓練というようなことまで、それは簡単に量質の問題とか、第三国人の受入れ待遇、あるいはそれに与うべき、あるいは与えざるべき特権の問題とかというようなことを離れて、やはり主権国日本としての立場から考えますならば、簡単にそれはいきなりオーケーする方が実はどうかしている。条約上の根拠があるなしの問題の前に、常識的に、一体主権国として積極的に国府であれ、東南アジアの国であれ、そういうところにそういう便宜供与した方がいいのだという政府の御方針だというなら、これまた一つの別の議論でありますが、アメリカの要請をただそのままいいだろうというふうに考えるというところに、ものの考え方のちょっと曲っているところがあるのじゃないか、私はそういうふうに考える。  そこで条約局長意見に対してあえて卑見を述べるならば、なるほどタイの場合なんかについても、日タイ関係上、それは積極的に、もし日本に現実に自衛軍ができているのですから、日本の自衛軍の方が教育してやるために、同時に武器の売り込みが日本の国策上日本のためにいいという観点に立ってやるなら、これは一つの行き方だと思うのであります。ただそうでなくて、日本におけるアメリカ軍隊による訓練なんです。だから日本からタイに武器を送るとかということとは関係ないことなんであります。だからどうもそこら辺のことが非常に頭が混乱しているきらいがありはせんか、そうなってくると、根本問題として、今日本として、アメリカ関係を除外して、日本と国府、あるいはタイとの関係において、そういう軍事的な便宜供与をするのがいいかどうか、これも非常に大きな一つの問題だと思うのでありますが、私自身は必ずしもそういう面の援助をしない方がいいのじゃないかというふうに考えておりますが、そんなわけでありますから、どうも少くとも最初の、外務省がきわめて事務的に問題を取り上げてしまったことに実はつまずきがあった。今や、政務次官が言われたように、政治的な判断の問題だと言われている。確かにその通りなんですが、だからその政治的判断については、ただ単なる、まあ条約上の根拠があればいいとか、待遇についての話がきまればいいとかというように考えずに、あるいは別の政治的利益があるからいいじゃないかというように考えないで、やはり主権国日本の外交という総合的見地から、やったらいいとか悪いとかという、大局に立って判断するのが正しいのじゃないか、私はそういうように考えます。
  33. 堀眞琴

    堀眞琴君 ただいまの曾祢君の御意見にも若干関連する問題ですが、本年の三月、合同委員会でこの問題が出たときに、外務省当局としてはきわめて簡単な気持でこれにオーケーを与えられた。しかも新らしい問題であり、条約等の問題についてはそのときは考慮しなかった、こういうお話、それから七月に至って、これを大幅に訓練するということが大体明らかになったので向う側へ申し入れた、こういうお話ですが、実は七月新聞に発表されまして、八月ですか……、それで日本国民も非常に重大問題だということに気がついて騒ぎ出した。こう見ることができる。日本国民が騒ぎ出したので、初めて外務省はこの問題について考えるようになった、こういうことになったのじゃないかと思いますが、先ほど委員長からの議事進行に名をかりての御発言の中にも、三月からとにかく七月、八月までの間相当の時間があったわけです。その間に当然条約等に関して法律上の外務省としての見解もまとめておかるべきが当然ではないかと思うのですが、その間の事情はどういう工合になっているのでしょうか。三月日米合同委員会にこの問題が持ち出され、ただ事務的にだけオーケーを与えたというだけでは、その間の事情があまりはっきりしないのです。それから七月に大幅にこれをするというので、外務省の方でこれに対して中止を申し入れた、こういうのですが、もしも新聞等にああいう問題が出てこなかったならば、そのままこれを済ましておくという考え方でいられるのかどうか、その辺のことも重ねて御答弁を願いたいと思います。
  34. 千葉皓

    説明員(千葉皓君) 新聞に出ましたので急に気がついたのだろうというお話と思うのでありますけれども、実はそれまで米軍側から十分訓練の進行状況については通報を受けておらなかったという実情でございまして、もとより第三国軍人入国の状況については、入国管理局の方でも見ておるわけでありますから、実際に相当大幅なものになったならばすぐにわかったことであろうと存じますけれども、新聞に出ましたので、これはやはりある程度大幅になりそうに思われ、米軍に実情を問い合せたというわけでございます。
  35. 堀眞琴

    堀眞琴君 そうしますと、新聞にもしも出なければ、この問題はそのままほおかぶりしていこうというお考えだったのですか。
  36. 千葉皓

    説明員(千葉皓君) そういうことはございません。ただいま申し上げましたように、どこまでもきわめて人数の少い、しかも少い人数の者が短期間しか受けないものであるという、そういう頭で初めおりましたし、そういうふうに了解しておりましたので、そういう事実でないということがわかりましたならば、それは直ちに問題にするところであると思います。
  37. 堀眞琴

    堀眞琴君 重ねて大へんな恐縮なんですが、お尋ねしなければならぬのは、前にも説明があり、今もお話しにあったのですが、数も少いし、訓練期間も短いということならば、その問題は外務省としてはそのままに過ごそう、こういうお考えでおられたように今承わるのですが、数が少いにしろ、あるいは期間が短いにしろ、行政協定あるいはMSA協定等々の日米間の取りきめの中に、そういう問題は何ら入れられていないことはいうまでもないことなんですが、そういう問題に関して、そういう協定上の何らの取りきめもないのに、これを期間が短いから、数が少いからというような理由だけでほおかぶりするということは、私は日本の外交の方針としてはとるべき態度ではないと思うのですが、その点はいかがですか。
  38. 下田武三

    説明員下田武三君) 仰せのように数が少い、短期間であるという場合と、そうでなくて、数が多くて、これが定期的になる場合とでの違いということを法律的に御説明申し上げたいと思うのでありますが、戦前からあるのです。いつでも、日本に限らず、どこの国でも外国の役人や軍人が国内に来るということは平生あるわけでございます。それで外国の軍人、特に制服の軍人に対して入国を認めた場合には、国際法上当然の礼譲と申しますか、また特権も認める、ある得度の治外法権も認めるという、国際法できまったしきたりがあるわけでございます。でございますから、少しの人間がぽつぽつと来る場合には、国際法の一般原則と、国際法の慣習で処理できるわけでございます。  ところが、それが何百人というような大ぜいの者がある一つの計画のもとに定期的にやってくるとなりますと、これはなかなか一般の国際慣習や何かで処理し切れなくなる、また問題が大きくなるので、国家としても、対外問題としてのある政策的な方針のもとに、これをどう扱うかという決定を必要とするに至ることは、先ほど曾祢先生の御指摘の通りだと思うのでございます。  でございますから、国家の対外関係というものは、結局すべてが条約で処理せられるのでなくて、むしろ条約や取りきめに関係のない、一般国際法や国際慣習にまかされている事象という方がはるかに多いわけでございまして、お話のぼつぼつと来るという場合は、まさに一般の国際的の慣習なり国際法なりの処理にまかされた分野の問題であるわけであります。これがだんだんに米軍との接触によりまして、米国の対外援助計画の一環としてまだまだ相当大きなものを考えておるということでありますので、それなら日本としても、単にこれはMSA協定とか行政協定の問題に限らず、対東南アジア諸国に対する政策の問題としても取り上げなければならぬ新たな一つの大きな問題になっている、そういう状態なのであります。
  39. 堀眞琴

    堀眞琴君 今の御説明ですが、外国の軍人がたとえば日本にやって参りまして短期間逗留する。その場合に国際慣習に従って特別の便宜を供与するということを、私どもは何も否定するわけじゃないのです。ただしその場合は、一定期間を限っての訓練というのではなくて、むしろ視察とか一まあ視察が中心になっていると思いますが、そういう目的のために私は日本入国してくるものだと思う。たとえば日本の自衛隊の職員がアメリカへ参る場合も、これは行政協定等もありますから、若干別かもしらぬが、ほかの国に参る場合も、日本の軍人あるいは自衛隊の職員の参るのは視察で、それ以上の目的を持っているものではないと思う。従って国際慣習上そういうものに対しては特別の便宜を与えることになっている。しかし数が少いといいましても、一人や二人のことでなくて、相当数の人々が一定期間ですね、二週間とか三週間とか一定期間日本に来ます。そうして日本訓練を受けるということになるというと、単なる視察とは私は違うと思うのです。従って、国際慣習上の視察の考え方をそこに及ぼすということは、私は必ずしも適当ではないのではないかという工合に考えるのですが、その点はいかがですか。
  40. 下田武三

    説明員下田武三君) 実は仰せ通りでございます。それが先ほども申し上げましたように、相当の人数がある計画に従って定期的にやるという事態がはっきりいたしましたので、それなら全然新たなる問題であるということで外務省としては取り上げたわけであります。それ以前の場合、数人の、しかもこれはみんな将校でありまして、部隊として訓練をして、大砲をぶつ放す、そういう問題ではないのでありまして、結局将校が米軍兵器なり何なりを見せてもらって、視察即トレーニングという程度のことでやって来ておるわけでありまして、そういう場合には国家のフェイバー、好意の問題としてその入国を認めて、ある程度の公務の遂行についての便宜を与えるということは、これはもう日常ひんぱんに行われておる国際間の慣習でございますので、それは許した。しかし仰せのように、それが人数が多くなり、定期的に一定の計画でやるということになりますと、これはやはり一般国際法や慣習の処理にまかし得ない問題でありまして、ある一定の政策的の考慮のもとに、法律的にもきちっときめて、そうしてそれを認めるなり、あるいは拒否するなりという態度決定を迫られる、そういう段階にこの夏に相なったわけであります。何もずっと初めの考えで最後までずるずるべったりにほおかぶりしていこうというような態度であったわけでは毛頭ございません。
  41. 堀眞琴

    堀眞琴君 もう一点だけその点に関してお尋ねしますが、そうしますと今年の三月、合同委員会でこの問題が出たどきには、将来は相当の人数で、そうして一定期間訓練をするということまでが含まれた問題として、それを提出されたのですか。それともそうではなくて、単に視察を目的として、少数の人々をきわめて短期間日本に呼ぶということで問題が出されたのですか。
  42. 千葉皓

    説明員(千葉皓君) 訓練並びに視察という話はございました。ただし計画的に一定期間区切ったというのじゃございません。ごく短期間に小人数ということで、目的は視察並びに訓練ということもございました。ただし計画的に誰がいつからいつまでといったような、そういうふうな話ではございませんでした。私どももそういうふうには了解しておらない。
  43. 園田直

    説明員園田直君) 追加してお答え申し上げます。今御報告申し上げました通りに、本件に関しましては、当初向うからの申し出は具体的な計画がなく、その後日米の間に連絡不十分な点もございましたが、外務省事務としては、訓練許可するかどうかの問題ではなくて、入国許可するかどうかの問題に重点があったために許可して参ったわけでありまして、今日におきましては、早急に、きわめて近い期間に政府態度決定したいと思っております。
  44. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) この問題の取扱いは、将来の委員会としての議事進行上の関係に連関すると私は思うので申し上げるのですが、新聞の伝うるところによるというと、米軍の将校が日本訓練することの方が、金がかからなくていいのだといったようなことを明らかに言っておる。また今下田局長お話でいうと、タイ国自体も金がかからなくていいのだというようなことを言っている。こちらも兵器の購入にも関係すると、この金の問題をこの問題に連関させて、あまりお考えになるというと、外務委員会の審議としては、だいぶ議論が出るのじゃないかというふうに思います。その点を将来の議事進行のために(笑声)御注意申し上げます。何かほかに御質問ございませんか。
  45. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ちょっと今の園田さんの補足的な御答弁関連して。将来決定するということなんですが、今までは入国の見地、今度は入国の見地でない立場ということになって御決定になるという。どういう方針をおとりになるか。まあ幾つかあるでしょう。それをまず上げていただいて、そのうちでどれに落ちつきそうなお見込なのか、それを一つ伺いしたい。
  46. 園田直

    説明員園田直君) 外務省自体で決定する問題ではなくて、政府全般として方針決定すべき問題でございますから、ここで政府方針を申し上げるわけには参りませんが、外務省としては、ただいま申請をしてある各国に対する好意を表明する意味において許可してもよかろうという大体方針を持っております。
  47. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 許可してもよかろうというのは、入国の手続きという意味で許可してもよかろうというのか、そういう訓練を行うことを政治的に認めてよかろうというところから許可なさるのか。
  48. 園田直

    説明員園田直君) それは入国事務的な問題ではなくて、各国の訓練許可するかどうかという政治的な問題でございます。
  49. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 これは日米安全保障条約にそういうことがありますか。あるいは行政協定のうちに外国の軍人を日本許可してもいいということが出ておりますか。
  50. 園田直

    説明員園田直君) 本件はMSA協定またはその他の条約関連のある問題ではなくて、全く白紙で判断すべき問題であると考えております。もしこれを許可するとなれば、免税その他の点の問題が若干あるだけでございまして、その他に関しては何ら関連はないと考えております。
  51. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 免税その他の点で関係があるというと、これは入国手続だけの問題になります。そうして今のあなたのお話だというと、政治的な問題になる。政治的な問題ならば、これはやはり何にもなしでもってそういうことをぽかぽかやられては困るので、条約に基くとか協定に基くとかでなければならぬ。それなしで勝手に政治的判断でも政府がおやりになるというのは、政府みずから条約なり、あるいは協定なりを無視しているということじゃないですか。
  52. 園田直

    説明員園田直君) この問題については条約その他と関係ございませんので、かりにこれを許可したといたしまして、方針決定して許可しましても、条約もしくは協定の違反になることはないと考えております。
  53. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 まあなるほど行政協定にも安保条約にもない。ないものなら何でもやってもいいという態度で、こういう重大な問題をおやりになるということは、私は非常にけしからぬことだと思います。これはただタイなりその他の国の若干の軍人が来て、まあアメリカの武器を視察して、そこでごく短い訓練を受けるというだけの軽く考えられる問題じゃない。こういうことが一たん道が開かれるというと、そのうちに相当な人間も一つここで訓練しようじゃないか、こういう問題がきっと起って来ると思うんですよ。それも含めて僕はものを考えなければならぬと思う。で、今日アジアにおける形勢が微妙なときに、とにかく少数でもよその国の軍人をアメリカ日本訓練するということは、単なる技術的な問題とだけ考えるわけにいかぬので、私どもはこの問題について政府はもっと慎重に考えてもらわなければならぬと思うし、ことにアメリカの軍人の言う、今石黒委員長の言われたようなことでぽかぽか勝手にやられたのじゃ、これは政府の言うような簡単な考え方許可してもらっちゃ困る。私どもはそういうような許可はまっぴらごめんこうむりたい。それはもう反対しなければならぬ、こう思っております。   —————————————
  54. 小滝彬

    小滝彬君 今の訓練の問題は一応済んだようでしたから、政府の方から係の人が見えているようでありますので、日英協定のことでお話を承わりたいと思うのです。  ただ、その前に私はきわめて簡単に口比の問題をお伺いしたいのです。内容については質問をしないということは理事会でも話し合いいたしましたから、内容を聞くわけじゃございませんけれども、昨日の鳩山総理の記者会見におけるお話を見ますというと、フィリピン側は自由党首脳との話し合いのラインに大体同意を与えるらしいというふうな発言があり、それに対しては根本官房長官が、首相はフィリピン側で応諾を与えて来たように言っているけれども、しかし首相の言わんとするところは、日本側意見でフィリピンも納得するのが当然だという気持を表わしたものだというような注釈を加えておられます。これを見ますと、少くとも最近においても相当交渉があるのじゃないか。そうしてマニラに行っております事務所長代理というのですか、それを呼び返すとか呼び返さぬとかいう話もありますので、多少何か進展しているようにも見えます。私はまあその内容にふれたいのじゃございませんが、せっかくこの係官も来ているようですから、フィリピンとは今全くデッドロックになっておるのか、何かやっておるのか、その程度のことだけでも一つ聞かしてもらいたい。
  55. 中川融

    説明員中川融君) 日比賠償の問題につきましては、御承知のようにフィリピンの大統領から提案が来ておるのであります。それに対して日本側からまだ正式な回答を出していないのでございます。日本側政府といたしましては、最終的な案が出た場合は国会の御承認を得るという見通しが大事でございますので、その間その意味合いにおきまして、国内的にいろいろ各方面の御意見を聞きまして調整をはかっておるのでありまして、従ってその国内における御意見をも取り入れまして最終的解決をはかりたいと思っておるのでございます。なお、今政府とフィリピン政府との間の話し合いがどのような段階になっておるかというような点につきましては、御承知のようにフィリピンにおきましては、十一月の初めに国会議員の中間選挙がございまして、今や選承戦の最中でございまして、非常にデリケートな政治情勢でありまして、その後交渉をしておるかどうかという、あるいは交渉の様子がどうかというような点につきましては、これを当分の間言及することを避けたいということに今なっておりますので、それにつきましては、これ以上御報告を遠慮さしていただきたいと思います。
  56. 小滝彬

    小滝彬君 それならそれでけっこうなんだが、総理自身がそれなら今しゃべっておるのは遠慮さしていただきたい。実に現内閣のやっていることはつじつまが合わないことおびただしい。その点厳重な注意をしてほしい。(「放言総理だな」と呼ぶ者あり)   —————————————
  57. 小滝彬

    小滝彬君 それでは日英交渉について伺いたい。
  58. 園田直

    説明員園田直君) 日英交渉については、当事者の朝海公使が来ておりますので、政府委員ではございませんが、お許しがございますれば、説明さしたいと思います。
  59. 朝海浩一郎

    説明員(朝海浩一郎君) 今度成立いたしました日英交渉は、これは平和条約ができましてから、イギリスとの関係において二度目の交渉でございますが、今度の交渉が前の交渉と煙います点は、これは私どもがいつも苦労するのでありますけれども、日本のポンドの貿易は非常に伸びないときもございますし、伸びますときには非常に伸びる。伸びないときにはポンドの赤字が出まして貿易のファイナンスにも差しつかえる。ところが伸びますときには非常に伸びて、今度は向うに言わせますと、不当にポンドを蓄積するという非難もございますほどでありまして、これはほかの国との貿易もさようでございますが、ことにポンド地域はそれが著しい。この四年、五年の間に極端から極端に貿易が動いておる。しかもその貿易が非常に大きな量でありますので、これをどういうふうにして規制していくかということは非常に大きな問題になって参りますわけであります。  そこで今度の交渉の特色を申しますというと、これは昨年一月ロンドンでやりました交渉の際に、日本がポンドは非常に少くて、植民地が締められておりまして、その前にどんどん植民地に出たものでありますから、そうして日本の方におきましても、朝野におきましてポンドは紙屑なんだから、これ以上ためてはいけないというふうな議論も出たものでありますから、イギリスの方も自分の方の植民地を締める。従いまして、今度は非常に貿易が落ちて、ポンドの手持ちも二千万ポンドというふうな非常に困った状況になっておったのであります。従いまして、私どもの受けました訓令は、何とかして二千万ポンドでは困るから、もう少しやりくりのつくような金融の措置を講ずるようにかけ合えということが一点と、それから植民地が締っておるので、もう少し日本の品物が出ていけるように、ポンドがかせげるように交渉しろというような、この二点だったのであります。ところが一年半たちまして、今度の交渉の場合には状況がまた非常に違って参りまして、もう金融の方は頼まなくていいわけであります。ユーザンスを含めますというと、一億ポンド前後のポンドを蓄積いたしておりますので、金ぐりの方はもう大丈夫だ。しかし今度はポンドを蓄積しております関係上、向うの方からお前の方が困っておったときには植民地をあけてやったじゃないか、しかし今度はおれの方は非常に困っておる、とは言いませんでしたけれども、とにかくお前との関係上非常にバランスが悪い。だからお前の方は積極的にイギリスの方から物を買ってくれなきゃ困るのだ。今度はこちらが受身に立ちました交渉になって参ったわけであります。  そこで約三ヵ月ばかりいろいろ交渉いたしまして今度の取りきめができたわけでございますが、その取りきめの一番の要点は、日本が今度の実際の予算に一億五百万ポンドの予算をつけたこと、これはイギリスの要求がございまして、これだけは買おうという予算をつけた点でございます。一方にそういう約束をいたしまして、それから他方に、今後日本がスターリング地域に輸出をしてポンドを得た場合には、その得たポンドはスターリング地域から物を買ってポンドをこれ以上不当に蓄積しないようにするという、そういうこともうたってありますのが大体の要点であろうと思うのであります。つまり一億五百万ポンドの予算をつける。つけるということは買うことではないわけでありまして、イギリス人がその交渉中しょっちゅう言っておりましたように、資金をなるたけアヴェイラブルにすること、買うか、買わないかはそれは競争力にもよりましょうし、いろいろな条件もありましょう。日本の方も買うことは約束しない。約束しないが、これだけは予算をつけましょう。予算をつけるのだから買わなくてもいいじゃないかということになると思うのでありますが、そうもいかないのであります。何と申しますか、その理由は、第二項でなるたけスターリング地域からかせいだものはスターリング地域で使うということを言っておりますから、日本が今後積極的にスターリング地域から物を買ってバランスをとるように努力をいたしませんというと、お前の方は依然としてスターリングを蓄積しているじゃないか、スターリングの蓄積という問題は、これは大きな国際経済の問題に関連すると思いますが、イギリスといたしましてはおそらく、これは推測でございますが、交換性の問題というようなこともございますので、そう簡単に日本がためてもいいじゃないかというように考えるわけにいかないのじゃないかと思いますので、そういたしますと、今後一年あるいは一年半の間にどんどんスターリング地域から買いませんというと、お前の方は依然として買わないからおれの方もお前の方の収入のもとをもう少し考えなければいかぬじゃないかということを言って参る危険があると思いますので、この点は今後の大きな問題として残って参ると思います。  それからもう一つの点は、日英の通商交渉はほかの国の通商交渉の場合と違いまして、ほかの国の場合には大体一カ月くらいでありまして、お互いにうまくいった、うまくいったと申しまして祝杯をあげて別れるのでありますけれども、今度の場合は、いつも毎回そうでありますが、日英間の単なる貿易の数字の問題ばかりではなく、日本の海運の競争の問題も取り上げましたし、それからもうイギリスで非常に問題にしております日本の人為的な輸出振興の問題も取り上げましたし、それからまた日本のいわゆる不正競争、ことに模倣の点でありますが、例を申しますというと、繊維とかあるいは陶器の事業におきまして、イギリスのいわゆる不正な模倣が行われておることから生じます日本の不正競争の問題、そういう問題も取り上げられて、洗いざらい日英の関係を論議いたしたというのが現在の経済交渉でございまして、従いまして単なる経済的なやりとり以外に相当全般的に日英関係に影響を及ぼすような論議が行われたわけでございます。  大体それが主たる概観でございますが、さらにこまかく一、二点申し上げますというと、今度の交渉は、日本から物を出さなければならない。この前の協定でできておるワクはそのままでよろしいのでありますが、日本から物を新しく出さなければならぬ。それに対してイギリスの方は、よろしい、しかし今のイギリスの状況からいって、お前の方が一ポンド出すならおれの方も一ポンド出す。ボンド・ツー・ポンドの基礎で交渉をやろうじゃないかということになりましたものでありますから、こちらの新しい輸出に対しましてはイギリスの方からもまた何かそれだけの価額の輸入をしなければならない。そういう原則が立ちまして、そこで大へん問題が二億ポンドとか三億ポンドというような大きな貿易を扱いながら、そういう二十万ポンドとか三十万ポンドという僅かな金額につきまして、いつまでもやりとりを重ねたという関係ができたわけでございます。  今度の交渉を通じまして、私意見にわたりましてはなはだ恐縮でありますが、将来の交渉という見地からいたしまして、今の、先ほど申し上げました、これからポンド、スターリング地域から相当物を買っていかないというとまた困難な問題ができるということが一つと、それから日本とイギリスが幸か不幸か原料国と製造国という関係にございませんので、イギリスと日本も同じようなものを出して参ります。だからイギリスを満足させるためにはどうしても日本の産業との関係が出て参ります。しかし日本がどんどん輸出を伸ばすには植民地を締められたり本国を締められては困りますという事情から、こちらも積極的に輸出を伸ばすためには、こちらの要らない物資もある程度入れなければならぬ。そういう関係が出て参りますので、それを今後どういうふうに調整して参るかということが非常に大きな将来の問題ではなかろうかということを、交渉をいたしながら考えておった次第であります。先ほど申し上げましたように、ポンドの貿易は一たん下向きになりますというと、非常に下向きの速度が早くなりまして、これを上に向けるのにかなり時間がかかります。これはイギリスの植民地も別に好んで日本品を歓迎するというわけでもございませんから、やはり政府の命令が徹底いたして、下向きのカーブが上向きになるには一年ないし一年半という時間がかかります。従いまして一ぺんこのカーブが下に向きますとなかなか上には向かない。従いまして交渉をやって、しかも日本のポンド地域に出しております物資を見ますというと、非常にこまごました、これはアメリカもそうでありますが、こまごました物資の集積でございます。たとえば具体的に申しますというと、陶器なら陶器はわずか五万ポンドしか出ておりませんが、その五万ポンドがずっと続けて出ておるか、あるいは途中で切れてしまうかということは、これは非常に大きな問題なのでございまして、私どもといたしましては、そういう集積した物資を、なるほど一つについては金額は少いのでありますが、それをできる限り落さないようにして、上向きのカーブを少くとも下へ向けないように、上に向けるようにするということが今度の私どもの受けました訓令でございまして、その訓令に基きまして折衝をいたした次第でございますが、折衝の結果達成し得たかどうかは、これは御批判を受けるほかはないのでありますが、そういう方針交渉に当った次第でございます。
  60. 小滝彬

    小滝彬君 今朝海君の説明されたその趣旨は私は全面的に賛成なんですが、しかし実際問題として、私自身は木内信胤の言うような非常に極端というのですか、議論はしないつもりなのですけれども、もう少しポンドの蓄積されたものを利用するような方向に動かし得なかったか、この点を私は遺憾に思うわけなのです。なるほど産業界ではいろいろそれによって打撃をこうむることをおそれる向きもあるでしょけれども、赤字から黒字に非常に変る、動く。こっちの方が押されるとまた急に変ってくるおそれがある。しかりとすれば、今の通産大臣の常に主張しておられるような拡大均衡というものをもっと積極的に考える余地があったのではないかと思われますね。それは私の想像では、おそらく交渉者などが拡大均衡に反対したのではなしに、むしろ、しかりとすれば、通産省の現局というような方面から強い反対があったのではないか。それにもかかわらず、根本官房長官は、今度の日英交渉は各省との連絡をしないで勝手に外務省がきめたのだというようなことを新聞に漏らされておるように、僕は新聞で読んだのですが、一体今度の交渉については交渉者としては非常に苦労したのだろうと思うのだが、通産省は一体どういう考えを持っておるか。それで満足して……その主管の方によって違うのでしょうが、もう少しこれを拡大していこうということは非常に不可能とか、非常に困難な状況であって、やむを得ずこうなったのか、その辺もう少し品目をあげられてもいいから、一つ説明してもらいたいと思います。
  61. 朝海浩一郎

    説明員(朝海浩一郎君) これは私と申しますか、外務省といたしまして、今お話しの拡大均衡の基礎で貿易協定を結ばなければならないという趣旨は、これは同感なのでありますが、しかしことに日本の立場といたしまして、イギリスの植民地に非常に大きな輸出をする。そうして植民地から少ししか買わないというような状況におきましては、少くとももう少し日本の方から買えるような態勢をととのえませんと、将来困ることになりはしないかということを非常に心配するわけであります。今の拡大均衡のラインは同感なのでありますが、ただ実際問題といたしまして、これを実行に移すことになりますというと、いろいろ国内の産業の関係を見ていかなければならない主管の省といたしましては、またおのずからその理屈通りには行かない。たとえば急にある物資が入るということになりますというと、また困難が出て参るわけなので、それはある程度やはりにらみ合せまして、また同時に日本といたしましてもあんまり不要不急の品物が入るということは、これはいろいろな意味からもおもしろくないということもございますので、そういう貿易政策と産業鼓舞をにらみ合せまして、結局それを統合した訓令が出て参るということに相なるわけであります。  それから最後に御質問のありました各省との連絡の問題でありますが、これは十分に連絡いたしております、もちろん私どもは交渉いたしますについて関係の省と連絡なしに交渉ができるわけのもので当然ないのでありまして、非常に影響するところも広範でありますから、関係の省とは十分に打ち合せまして、それを総合いたしまして、その訓令をいただきまして交渉いたしたわけでありますから、その点については私は何ら疎漏はなかったと存じます。これは閣議でもまあ十分に御審議の結果決定を得たわけであります。それからことに通産省方面のお話がありましたが、通産省の希望は、私の今お話しました貿易政策と産業政策とのにらみ合った結果の結論でありますが、その結論は私もよく了解いたしまして、まず通産省がお考えになっております趣旨は大体貫き得たとは今具体的にちょっと申し上げかねますけれども、ある物資が非常に入ってきては困るというものは、そう急激に入れない。しかしこっちの輸出は確保する。たとえば植民地に対しまして植民地の市場は依然として日本に開放するのだ。また植民地でない独立国としてスターリング地域の独立国についても、少くとも市場の面から日本からの輸入に対して制限を加える理由はないのだということをイギリスから言ってもらうという、そういう結論を得まして、通産省の要求は私はほぼ貫徹いたしたのではないかというふうに考えております。
  62. 小滝彬

    小滝彬君 これは各省との連絡がよかっただろうと私は思う。それだからああいうことになっていった。それにもかかわらず、樹木が大いに外務省に厳重に申し入れをするということはほんとうだろうと思う。ただ、今の説明で通産省の主張を貫き得たという私のねらいはそうでなしに、通産省は為替制限の面に行き過ぎていやせぬか。しかりとすれば、ガットの協定の精神に背反しはしないか。関税とか通貨の状況が悪い場合に、こういう措置をとるなということが僕はガットの精神だと思います。ところが一方の声が、力の強いやつの声が多いので、この点でこの主張を貫き得たので満足するのではなしに、あまり主張を貫き過ぎたんじゃないかということをわがはいはおそれておるので、その点は行き違いがあると思う。これは朝海君と議論したってしょうがないので、私が特に注意したいのは、ガット加入には非常な力を入れて外務省はやったのだが、この協定を見ると、やっぱり日本の行き方は昔に返ってきた。通商産業省を作ったときは貿易を非常に重要視しなければならないということで創設に私も関与したのですが、ところが最近になると、また昔の商工省と同じような格好になっている。それに対しては貿易関係をにらんでいる方がもっと積極的に働きかけて、いろいろ国内的な困難もあるだろうが、全面的にただフリーにしろという議論をするのじゃないが、もっと協定を拡大均衡へ持っていくよう今後さらに努力してもらいたい、こういう趣旨なんです。  それから今、不正競争の問題も非常にあったと思うのですが、これも実際問題としてみるというと、どうも日本法規で取り締り得ない。そこで業者間の協定のようなものも、これはけっこうなことなんです。日本の特許法なり、ああいう実用新案に関するようなものについて、交渉を通じて何か法律的に日本の法律を改正する必要を感じられなかったか。僕はこういう点について交渉者としての率直なる意見をお聞きしたい。
  63. 朝海浩一郎

    説明員(朝海浩一郎君) そういうことは実は交渉をいたします前から外務省といたしましては三、四年考えておるのでありまして、日本の法制の許す、法制で認められた範囲措置は講じておるわけであります。さらにそれを一歩進めて法律の改正にまで持っていかなければならぬのじゃないかという御意見につきましても、外務省で研究はいたしておるのでありますが、これはそういう法制の面と、それからもう一つは今意見を聞かれましたので申し上げますが、私の見るところではやはり戦後の非常な混乱、日本の責任のある商社がなくなりまして、無責任と言ってはあれですけれども、一旗組の外国の商社もあったでありましょうし、またいろいろの商社もございまして、これらが細みまして何でもいいから一応出せばいいのだ、出してからあとは逃げてしまうのだ。たとえば外国の商社が日本の瀬戸物がもうかると言って瀬戸物を輸入してもうける。瀬戸物から変って繊維に移って非常に無責任な商売をしていたことが大きな原因ではなかろうかと思うのであります。たとえば外務省が非常に心配いたしまして、一番、少くとも問題になっておりましたのは陶器でありますが、名古屋方面に参りまして話を聞いてみますというと、やはり外国の業者がやって参りまして、むろん一流の業者でなく無責任なる業者が戦後やって参りまして、たとえばメイド・イン・ジャパンと書くのは非常に売れなくなって困る、そこでメイド・イン・エス・エイと書け、どういうわけかと陶器業者が聞きますというと、メイド・イン・セト・アイチの略語で、ちっとも不正業者じゃないという話を聞いたことがありますが、そういう事例があったのであります。これは私どもも心配いたしまして、単にこれは法制で取り締れるだけでなく、やはりその基本には戦後低下いたしました道徳と申しますか、そういうことが非常に根底をなしておると思いますので、そういう具体的な事例のありますたびに関係方面と十分相談をいたしまして一々それを取り上げまして、イギリスの言っております不正な競争のうちには、必ずしも私どもの納得し得ない点もありますけれども、納得し得る、誰が見ても客観的に不正であるというふうな問題につきましては、行政的にできるだけの措置をいたしております。またさっき御指摘の法制上の点につきましても、さらに研究を進めていきたい、そういう方針であります。
  64. 小滝彬

    小滝彬君 まことにその通りなんですが、法制で全部縛れるもんじゃない。根本になる実際的な事情というものを改善しなければいけないのですが、だから輸出組合というようなものも大いに活用してもらわなければならない。いろいろあるけれども、私ども直接見ておる事件を見ましても、法制的にもぜひもう少し考えてもらう余地がありはせぬかということを感じておるわけです。それは日本としてはどうせ貿易をやらなければ立っていけない国なんだから、いろいろ産業界あたりには異論も出てくるだろうけれども、その辺今がんばり抜く立場に置かれておる外務省の諸君は、ぜひそうした点を強調してもらって、貿易がもっと拡大されるように、そうして結局外国の品物が入ってきて生活程度を向上するところへもっていく方向へぜひ努力してもらいたいと思うのです。  なお、これに関連して実はサケ、マスのカン詰だが、河野農林大臣がロンドンで交渉されたということなんでわが党の方からも私に対して実はあれは日英交渉関連してあれを交渉したのか、それとも個々の業者の希望によって、ただ別個に独立的立場において交渉されたかということについては相当執拗な質問を受けてきたのですが、その点の連絡はいかがであったか、お尋ねしておきます。
  65. 朝海浩一郎

    説明員(朝海浩一郎君) それはせっかく小瀧委員の御質問でありますけれども、それはどうも私といたしましてちょっとお答えいたしかねます。(「そればそうだろう」と呼ぶ者あり、笑声)
  66. 小滝彬

    小滝彬君 いや、政治的に答えてもらわぬでもいいですが、あのときには在英大使館が協力し、また今度の協定というものも当然予想してその中にはめ込む意味でやったんでしょう。それだけちょっと。
  67. 朝海浩一郎

    説明員(朝海浩一郎君) それは前から非常に多額のサケのカン詰を出さなければ困るという要請は日英会談の始まります前にありましたので、それは今御質問通りであります。   —————————————
  68. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 大体御質問は済みましたですが、前々から委員会を開く際に、会議の折御要求で議に上せたいと思っておりながら、ほかの方が重要なために上げておらなかったのでありますが、サウジ・アラビアの在外公館に関しますることについてこの際伺ったらどうかと思います。
  69. 園田直

    説明員園田直君) サウジ・アラビアに公館を設けたいということで御相談を申し上げる準備をしておりましたが、その後相手国よりしばらく待ってもらいたいという申し出がございました。そういう関係交渉段階にきておりません。
  70. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) これは大使館設置ということにまだきまらないのでありますか。
  71. 園田直

    説明員園田直君) まだきまっておりません。
  72. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 委員会に御相談になるような段階にきていたのが同国の事情で変るという、しかも経済上の事情で変るという、これは同国との交渉についてわかり切ったことのように思うのでありますから、当委員会及び衆議院の委員会でも、在外公館の格上げということについてはやかましい議論があったのでありまするから、外交上の機会を逸してはなりませんと思いますが、経済上の点といったようなわかり切ったようなことで、中途で話が変るようなことには、初めから応ぜぬようにしていただいた方がいいのじゃないかといったようなことを私は感じます。これは外務委員会での論議が、国会と政府との関係、法律と政令との関係について、今研究すべき点を持っていることに関するのでありますから、御注意を申し上げておきます。  それではこれでもって今回の外務委員会を閉じたいと思います。    午後零時二十三分散会