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1955-09-14 第22回国会 参議院 外務委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年九月十四日(水曜日)    午前十時十六分開会   ―――――――――――――   委員の異動 九月十三日委員須藤五郎君辞任につ き、その補欠として堀眞琴君を議長に おいて指名した。 本日委員佐多忠隆君及び山口重彦君辞 任につき、その補欠として永岡光治君 及び戸叶武君を議長において指名し た。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     石黒 忠篤君    理事            鹿島守之助君            小滝  彬君            羽生 三七君            鶴見 祐輔君    委員            遠藤 柳作君            梶原 茂鶏君            後藤 文夫君            佐藤 尚武君            永岡 光治君            曾祢  益君            戸叶  武君            杉原 荒太君            堀  眞琴君            野村吉三郎君   国務大臣    外 務 大 臣 重光  葵君   事務局側    常任委員会専門    員       渡邊 信雄君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査の件  (日比賠償に関する件)  (日米関係に関する件)  (日ソ交渉に関する件)  (海外派兵に関する件)   ―――――――――――――
  2. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それではこれより外務委員会を始めます。  本日は外務大臣のおいでをいただきまして、これより大よそ二時半まで委員会をやりたいと思いますが、十二時から三十分ばかり休むことにいたしたいと思います。  それでは理事会でいろいろお話し合いをいたしましたことに基きましてこれより御質問を願います。
  3. 小滝彬

    小滝彬君 大臣、今度御渡米中はいろいろ御苦労が多かったことと御同情申し上げます。実は本日は時間が制約せられておりますので、私は日米問題に先だって、わが自由党の非常に重要視しております日比間の交渉について二、三御質問いたしたいと考えます。  フィリピン側からはすでにマグサイサイ大統領の書簡も来ておって、近く日本側が正式な回答をすべき段階に来ているということでありますが、政府はこれまで第二十二国会を通じて総理並びに外務大臣から、八億のワク承認したわけではない、自由な立場交渉ができるという御答弁を繰り返されておったのであります。一体これは近く回答せられるお考えでありますか、この八億ドルのワクにタッチしてこれを再交渉をせられる御意向であるか、まずその点を簡単にお伺いしておきたいと思います。
  4. 重光葵

    国務大臣重光葵君) お答えいたします。  日比賠償について先方から正式の提案が参りましたことはあるいは御報告申し上げたかと思います。そういうわけで、今わが方からこの提案に対して回答をする段取りに相なっております。これは向う提案でありますから、こちら、わが方としてはこの提案に対してわが方の意見を言うことは自由であることは当然でございます。しかしながら、その提案内容は、御承知通りに、先方交渉委員が東京に参りまして、いろいろと日本側意向を聞いた上での提案であったことは、これまた御説明をいたしておいた通りでございます。今賠償額が八億である、こういうふうに言われますけれども、そういう説明は私はしておらないのでございます。賠償額としては五億五千である、民間借款として二億五千の民間借款を行うふうに大体の意向日本側も了承しておる。そうして向うが正式の提案をなしてきたわけでございます。そこでこの提案につきましては、回答を与うる場合に、十分政府といたしましては議会、すなわち国民代表的意見によってこれが是認されるようなことにならなければ、実はこの取りきめをいたしましても、その取りきめにつきまして議会承認を得るということが困難になります。従いまして、これは国家的の重要な外交問題でありますから、今日までの経過を十分に御説明を各党にいたして、そうしてこの案に対して御了解を得るように今努力いたしておるわけでございます。
  5. 小滝彬

    小滝彬君 私は賠償順が五億五千万ドルであるという説明は承服しがたいわけであります。向うもインディレクト・レパレーションというような、間接的な賠償支払であるといって二億五千万ドルを掲げ、しかも、これはなるほど民間業者の取りきめによるところの借款であると申しましても、この取りきめを見ますというと、第一に、日本政府借款を容易にし、かつこれを促進する義務を負うことになっておりまするし、第二に、その借款政府出資輸出入銀行を通じて行うということは、フィリピン大統領府が発表いたしました八月十六日の発表にもはっきり出ておる。ことにある重要な日比間に取りかわされた公文の中には、両国協定した年次別借款である。すなわち、毎年五千万ドルときまれば、その五千万ドルの最高限度まで借款が行われるよう両国政府は必要な措置をとるという取りきめがある。これでもまだ日本政府は、この取りきめは財政支出義務を逃れ得るものだと解釈し得るかどうか。鳩山首相は昨日軽井沢において、これは単純なる民間資金によるローンであるとおっしゃっておるけれども、その点については非常に大きな国民ミス・リードするような言い分がまじっておるのじゃないかと思いますが、その点もう一度御説明を願いたいと思います。
  6. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私は民間借款日本賠償に全然関係がないとは決して申し上げません。これはやっぱり賠償交渉一つの助成的なものとして話し合いがあったことは事実なんでありますから、これは当然関係はあります。ありますけれども、これは政府もできるだけそれが成立をするように――また現に民間借款事業が行われておるのであります。さような基礎のもとに進めていくことを政府も努めてやろうと、だからそれはどこまで政府がやるという義務を、はっきり二億五千ができなければ政府負担するのだというふうな義務を負うているわけではないということを申し上げておるのであります。そうして実質的には五億五千が賠償額になると、こう申し上げておるわけでございます。
  7. 小滝彬

    小滝彬君 その点で私は大臣と残念ながら非常に意見を異にしておるわけでありまして、実質的にこそ八億ドルの賠償支払になるということを強調いたしたいのであります。できるだけやるというような考えでいけば、おそらく今後日比間でこれを承認した場合、実施した場合に大きな問題が起ってくるかもしれない。これを締結したことがかえって日比間の友好関係を害するおそれなきやを私は憂えるものでありまして、ことに、現に日比間にこういう借款が行われておるとおっしゃいまするけれども、この協定において取りきめようとする借款なるものはよほどその性質を異にしておる。すなわち、この借款決定にはフィリピン政府が関与することができる、許可した場合に行うということになっておるのでありまして、しかも借款を受けた会社から手数料を取り立てる権利もあるはずであります。従いましてこれは単なる民間借款取りきめでないことは明らかであって、このように政府が関与するということになりますれば、あるいは場合によってはビジネスの見地からいえばあまり健全でないような事業でも、あるいは先方が政治的に利用し得るような会社の申し出ならば、これを許可するというおそれもなきにしもあらずと考えられまするし、日本会社との間においても、あるいはリベートのような取りきめができないとも限らない。しかも日本商社は相手方の経営に干渉することもできませんからして、この借款というものはあるいは返ってこないかもわからない、そうすれば結局日本政府負担になる、こういうような関係でありまして、これは民間の方で出資金が余っているわけじゃない。必ず、フィリピン政府も発表しているように、政府資金によるところの、輸出入銀行の借り入れによる、しかも輸出入銀行の資金こいうものは政府財政投融資によってまかなわれているものである。しかりとすれば、これはむしろ大臣がおっしゃるのと反対に、形式的に五億五十万ドルとおっしゃるけれども、実質的に八億ドルの負担をしなければならないということにほかならないものと思うのであります。  しかし、この点は議論しても終りませんから、私の見解を述べまして、もう一つ、それでは五億五千万ドルが、かりにそれだけが借款義務であると仮定いたしましても、これはしばしば政府側大野ガルシア協定よりもむしろ有利であるとおっしゃっているけれども、私はこの点が了解できないのであります。鳩山首相は昨日も、大野ガルシア協定とは違ってかえって有利であるとおっしゃいましたけれども、その理由を一つ承わりたいと思います。
  8. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私は今、今回のこのフィリピン側提案を、大野ガルシア協定に比較することは好みません。私は、総理新聞記者会見がどうであったかということは、これはしばらく別にしていただきたいと思います。私は総理意向を聞くいとまもまだないのでございます。しかし私自身といたしまして感じを申し上げれば、大野ガルシア協定というものは非常に貴重な協定であったと私は思っております。かようなものが締結されて、取りきめられて、それはつまり御破算になったわけであります。御破算になったわけでありますけれども、さようなものがやはり締結されたということが、その後の交渉に私は非常に大きな指針を与えていると思います。そこでわれわれも、最初は日本は四億以上の賠償総額は払えないのだというようなことを主張する根拠も、そういうところからやはり出てきたのであります。これはネゴシエーションでありますから、そうその初めから妥協点がすぐ発見されるわけじゃない。だんだんネゴシエートしていく間に妥協点が発見されるわけであります。そこでさようなる協定があったから私はこれはいい影響を与えるものと実は考えております。考えておりますが、さて、それじゃその協定と同じようなものであるかというと、少しこの内容が違っていると、違っているならばどっちが有利であったか、私はその議論はあまりしたくないのであります。なぜかというと、やはりこれは前内閣遺産である。それと今現内閣のやっておることとこれをあまりに比較することは、私自身としては好まないのでございます。しかしながら、私はそうその間に大きな差があるというふうには、大まかに見て考えておらないのであります。  大野ガルシア協定、これはまあ御承知通りに四億の支払いをする、そうして十年間でこれを支払う、しかし二十年間に支払うということも、あとからこれを変更することも考え得る、こういうことになっておりますが、しかしともかくも四億を十年に払う、そうしてその付帯的の何では、これは受け取った方から見るというと、十億にするんだ、十億の価値のあるものにするんだという了解事項もあるのであります。私はこれをあまり、これは国際間のことでありますから、協定を成立せしめる上においては、そう何もかも日本国内法のようにはいきませんから、私はこれはなかなか上出来だったと思う。しかしながら、それが四億で払うものを結局は十億にしようということについても、決してそれは非常に明確な何ではないように思います。まあ今回の借款問題について今不明確である、それは実際は二億五千万の現金を政府が払うようになるのじゃないかという御議論でありますが、私はそうは考えない。これは民間話し合いでやるのだという建前であるので、これはよほど明確になっております。政府としてはむろんいろいろこれに対してあっせんもしなきゃなりますまい。しかしそれは表面の義務とは違うと私は思います。それは今お話しの通り、御議論の何であるから、議論は別にというお考えでありますから、私もそれに御同意をいたします。  そこで今御質問の点は、大野ガルシア協定を引き合いに出された御質問でございましたが、私はやはり大野ガルシア協定というものを非常に貴重なものとして、ある意味においての出発点とし得たということの意味において、私は非常にこれを重要視しておるので、決して一方がいけなくて一方がいいんだといって、私は詳細に今議論をしたくない気持でおることを申し上げます。
  9. 小滝彬

    小滝彬君 先ほどの借款の問題につきましては、依然としてこれは民間でやることであって、政府には責任は、そこまで必ず払わなきゃならぬ義務があるのじゃないとおっしゃいますことは、私はどうしても承服できません。商社をしてこれを受けさすように必要な措置をとるというような話し合い政府できまっておるようでありますから、自然そうなれば、それが輸出入銀行の方の支出になってくると思うのでありますが、これは先ほど申しましたように、これ以上議論いたしません。  大野ガルシア協定と比較するようなことはしないとおっしゃる。これはなるほど、これもうまく成立しなかったのですから、それより違ったものが出るのは当然であり、その言は了承いたしますが、しかし今の御説明にありました四億ドル十年で、あとの話しでは二十年にもなり得るとおっしゃいましたが、これは多少大臣のこの大野ガルシア協定の行き違いじゃないかと思います。この協定によれば、どちらか一方国の要求によって二十年にもなし得ると書いてあるのでありまして、日本は二千万ドルから二千五百万ドル以上は絶対に払えないということを主張してきた。現内閣もそれを主張してこられたはずでありますから、そういう日本立場でありまするから、当然これはかりに二十年であるから、年割にして二千万ドルと、自分でもとにかく二千五百万ドル以上は払えないということで、大体向うも了承したのではないか。少くともこの協定というようなものは、条文によって解釈をするものでありますから、条文にはっきりとコントラクティング・パーティのどちらかのリクウェストによってそうするということになっておりますから、日本はそういう意向を持っておったことは知っておるはずであります。もう一つは、その大野ガルシア協定ではサービス、役務ということを言っておったにもかかわらず、今度は非常な膨大な資材を提供するようになっておる。これは私は大臣がおっしゃったと言うのじゃありませんが、与党の方、その他いろいろ政府関係の向きが宣伝せられておりますので、特にこういう点を明らかにしておきたいと思う次第であります。  なお、十億ドルに見積られるような価値を生まなきゃならぬということはなるほど書いてありますが、日本支払義務は、あくまでその協定の第一項に書いてある、日本が支払うべきアマウントとして四億ドルであるというようにはっきりとここに出ておるのでありまするからして、その使用方法によって十億ドルの価値を生むようにしなければならないという趣旨の規定であって、鳩山総理の発言には責任を負わないとおっしゃいまするから、それは外務大臣に申し上げるのもいかがかと思いまするが、昨日も、十億ドルに見積らるべき性質のものであるから、これは今度の方がいいというようにおっしゃるのは非常におかしいのであって、支払額はあくまで四億ドルという点においても、今度の協定と、今度締結せられようとする協定との間に大きな開きがあるということを、この委員会を通じて国民に知っていただきたいと思うわけであります。  一体これは私どもから見れば、とにかく八億ドルというように見えまするし、少くとも二億五千万ドルの性質いかんは別といたしましても、こういう協定ができました場合、一体これがインドネシアビルマにどういう影響を与えるか。昨日の新聞を見ますと、ビルマの方ではすでにこの増額を要求するというようなことが出ております。これに対するお見通しはいかがでありましょうか、この関係求償国に対するお見通し、これについてお伺いいたしたいと思います。
  10. 重光葵

    国務大臣重光葵君) この今問題になっている案が私ども解釈通りでありとすれば、これはビルマが再び増額を要求するという根拠はないと思います。これはビルマとの条約は、これはもう前内閣がこしらえたもので、これはわれわれはそれをりっはな遺産として受け継いでおるのであります。それにはほかの国にうんとよけい支払えば自分らも増額するということは書いてあるのであります。これは書いてあったことがいい悪いは別として、私はそれは尊重しなければならぬと思います。しかしながらその意味は、こう書いてあります。ほかの国の賠償問題が全部解決した後にこれは検討しようということが書いてあります。フィリピン賠償も考慮しなければならぬし、インドネシアに対する賠償も考慮しなければならぬ、そういうものがすべて解決した後に考慮しようということになっておるので、これはしごく穏当な何であります。それはそのときに考慮して検討する、私はこれは条約上の義務でございますから、これはやって差しつかえないことだと思います。しかしながら、フィリピンの今の提案についてそういうそれでは議論ができるかというと、私はそれはできぬと思います。それは心配がないと私は実は考えております。しかしながら、これはそうじゃない、お前の言うのはうそで、これは八億の賠償じゃないかといって、日本側が八億の賠償だということを認めてしまえば、これは言ってくるかもしれない。私はそうじゃないと思います。そこでその点は私は十分防ぎ得ると、こう考えております。
  11. 小滝彬

    小滝彬君 いや、かりに八億ドルの賠償でないとして、大臣のおっしゃることをそのまま受けましても、二億五千万ドルという借款条項があるわけです。今それが新聞に出たことがすぐ実現できるかということを聞くのじゃなくて、再検討条項もあることだし、私もその条項を読んでおります。しかしその際に向うは五千万ドルの経済協力ということで一応話がついたのですが、それじゃ再検討する場合も、二億五千万ドルが、それが賠償額と算定すべきやいなやは別といたしまして、少くとも二億五千万ドルの借款が、ああいう一方で有利な形で提供されるとすれば、ビルマとしてはそれを基礎として、それに均霑すると申しますか、それと待遇があまり異ならないそういう条項を入れてくれということを要求するおそれが十分あるのではないかということが私どもの懸念でございます。幸いにして大臣がおっしゃるようにそういうことがないとすればけっこうでございますが、インドネシアにいたしましても従来からパリティを要求している。こういう点を考えますると、今度の案はその額を幾らと解釈するかは別といたしましても、大蔵省としてもこうした影響考えられるときに非常に大きな頭痛の種ではないかと思います。一体今の、大体内諾せられるかせられないかは別といたしまして、今のような額で、性質解釈は別といたしましても、今のようなラインで受けることを大蔵省とは始終話し合いをされて、その承認と申しますか、十分な閣内の統一が行われているものかどうか、その点についてお伺いいたしたい。
  12. 重光葵

    国務大臣重光葵君) その点は御心配はないと思います。むろんこれは国家の重大な外交問題でございます。そうでありますから、たといこれが財政関係するものであるとしても、このすべてが財政見地から動かさるべきものじゃないと思います。これは国家全体の方針として進んでゆかなければならぬと思います。その意味で必要なる協議は財政当局ともいたして今日まできているのであります。さようなわけでありますから、その点は御心配はないと思います。
  13. 小滝彬

    小滝彬君 それでは大臣、一体今二億五千万ドルというのは賠償性質の問題じゃないとおっしゃいましたが、私どもから言えば、八億ドルのワクというものはすでに大蔵省承知している、そして大体それを受けようという気持になっておるという御答弁了解して差しつかえないのですか。
  14. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 政府はまだ正式には決定はいたしておりません。おりませんけれども、これは先ほど申しました通りに、こういうものがこの日本国として承認すべきものであるかどうかということの大よその意見をまとめる必要がございます。政府部内は今申し上げた通りでございます。御心配はございません。しかしこれは議会承認を経なくちゃいかぬ、国民承認を経なくちゃいかぬ、その手続を今やっておるわけでございまして、しかしこれがわれわれの説明を十分御納得を得ずして、これは日本が八億出すのだからということにすべてなれば、これは私どもから言えば国内的に非常にまあ迷惑をかけるようなことになります。それだけでなくして、対外的にも先ほど御指摘にあったような、そんな支払い能力があるならば一つおれにもよこせ、おれにもよこせということになりかねないと私は思う。私は何もこれを事実以上に小さいものとしてお目にかけたい、こういう考え方はございません。しかしながら、これはまっすぐ一つ事実上の賠償額はこれである、借款はこういうものであるということを御検討願いたいと、こう思うのであります。  こういう問題は、私は内閣が違っておるとか、党派の差をもって私は考えておらないのであります。どうか十分に御検討願いたい。しかし私は今ここでさような借款の内部の値打ちがどうとかこうとかいうことは、これに対して説明をする人は私以外にまだ適任者があると思います。しかし私は外交全般責任者として、今日フィリピン賠償問題を、ともかくも日本がまあがまんし得る程度の意味においてそれをまとめていくということが、国家の前途のためにきわめて重要であるということだけは私は責任をもって申し上げます。御承知通りフィリピンとの平和関係を樹立することも賠償問題が前提になっておる。それから日本が東南アジア、もしくは隣国方面経済外交を進めていく、経済発展を進めていく、貿易を進めていく、これも賠償問題の解決ということに多分にかかっておるのであります。私は日本の将来を一日も早く貿易の進展を得て経済発展をする。それからまたアジアの、隣国等については一日も早く平和関係を設定して、すべての方面において日本の平和的の発展ができるように進めていかなければならぬ。この点においては私はむろんどなたも御異存はないことと思う。しかしその点の認識をはずしてはこの賠償問題は考え得られないことを、私は外交全般関係から強く申し上げておきたいと、こう思うのであります。
  15. 小滝彬

    小滝彬君 ぜひなるべく早目にまとめたいというお気持まことにごもっともでございまして、私どももぜひ妥当なところでまとまったもので御賛成申し上げたいという気持は十分持っておりますが、しかしまあこれまで二千万ドルとか二千五百万ドルが最高限度支払い能力であるというようなところでまあ大蔵省もしていたし、前内閣、また現内閣もこれまで主張してこられたと思うのですが、それが急に、今の二億五千万ドルが賠償でないとかりにいたしましても、結局日本財政投融資ワク内に入らなければならぬとすれば年々国民負担する、財政の方でもまかなわなければならない額というものは相当額に上るのです。それを急に引き受けるということになれば、今まで言ったことがうそになる。まるでブラフを使っておったということになって、非常に将来悪い影響もありゃしないかという点も私はおそれているところであります。  一体私どもの党の方で非常に不満に感じておりまするのは、今申しましたような内容の点ももう少し検討して、慎重にやられなければならないということが第一でありまするが、特に本件の取扱いぶりについて私どもはなかなか了承しがたいものがあるわけであります。どうも八億ドルというものは内諾を与えておられて、そうしてそれを何とか正当化しようとして、きわめてミスリーディングに、まぎらわしい説明を相当責任のある人が加えてきておらるるようでありまするし、内諾を与えておらないと言っても、相当信ずべき筋からいうと、これは松本瀧藏君が何か文書を持って羽田に走ったとか、あるいは向うからの回答が来るのを議会中だから待てということを言ったとかいうことを外国筋からも、相当有力筋からも聞かされておるので、これらの手続と申しまするか、今までのやり方についてもう少しまじめに、できたものはできたものとして私どもに、議会にももう少し懇切に話してもらえばよかったではないか、この取扱いぶりについて何か不明朗なものがありやせぬかということ、そうしてもう少し今申しましたような内容について、ことに全額についてはこれだけでとまればけっこうでありまするが、他の追ってくる賠償もありまするし、そうなりますと現内閣で非常に強調せられておりまする社会保障費などというものは果してどこまで出てくるかわからないというような懸念もあるわけです。また、ことに今の時期において早くこれを調印するということ、代表団を派遣するということ、これは原則的に言えば、まことにけっこうなことでありまして、双方妥結を急ぐことは必要でありますけれども考えなければならないことは、たしかフィリピンはことしは選挙のある年でありまするし、日本においてもあるいは年内に選挙があるかもしれないというようなことがいわれておるのでありまして、こうした際に議会の多数の意見をかりに無視して、がむしゃらに協定調印へ突入せられるようなことがあっては、今後に重大なる国際問題も起りはしないかという点をおそれるのであります。この点は幸いにして大臣非常に御懸念になって、ぜひみんなの了解を得たいとおっしゃっておられますので、私はこの大臣の言を信頼するものでありますが、かりに議会の方はまとまらないが、いろいろな考慮からして、ぜひやらなければならぬ、そこで議会を解散する、そうして選挙をしてみるということになっても、果して現在の与党が過半数を占めるかどうかについては私はいささか疑問を持っておるのでありまして、もしそうなって、調印はしたが、これが批准できないということになれば、こういうことによって、日比関係は調印したことによってかえって悪化するというおそれがあるのでありまして、この点はぜひ十分慎重に取計らわれまして、そうした間違いの起らないようにお願いする次第であります。幸いにして大臣は非常に慎重な方でありまするから、そういうことはないことを確信いたしますけれども、どうぞ閣内においてそうした意見がプリベールできるようにお願いしたいと思います。
  16. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 御注意はまことに私も同感で、そのつもりでやっておりますことを御了承下さったように思います。全体としてこういう問題は大きく考えてやらなければならぬという御意向を表示されたのでありますが、私非常にそれを力強く思います。不明朗な点があったといろいろ言われます。私もこれは外交問題でありますから、実は日本の国内のことも考えなきゃいかぬ、新聞のことも考えなきゃいかぬ、議会のことも考えなきゃいかぬ、そうして向うの相手の政府の内部、議会のこと、相手の新聞のことも考えなきゃいかぬそこにあんまりそういう考えなきゃならぬことが多いものでございますから、つい私は今のような御不満を買うようなこともあったかと思います。しかしながらそれは全局の、大きな大局の問題で私はないと思う。それから二千五百万ドル以上は払えないといつも言っておったじゃないかと……、その通りです。いつも言っておった。そうして二千五百万ドルは、これ以上払えないと言って、私も非常に向うを説得したのであります。結果どうなったかというと、今度の案も二千五百万ドル年額支払う、十年間はそうなっておるのであります。まあさようなことを一々内容のことに入るのをやめまして、今、全体的の御趣旨は私は全くその通りであろうと思いますから、一つ大局について十分御考慮を願いたいと、こう申し上げておきます。      ―――――――――――――
  17. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) この際、申し上げますが、外務大臣が日米会談を終えて帰られまして、その件に関しまして委員諸君にお話しになりたい件がございますから、これより外務大臣のお話しを願いたいと思います。
  18. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私の渡米について、この委員会で大要を御報告申し上げたいと思います。どうぞしばらく時間をおかし願いたいと思います。  私は八月二十三日に出発をいたしまして、九月の八日に帰って参りました。私の渡米の目的は、出発に当って声明しておきました通りに、わが外交政策の基調である米国との協力関係を増進するために、米国政府当局を初め朝野の有力者と隔意ない意見の交換をして、双方の了解を深くし、両国国交の一そうの親善をはかるという大体の目的でございました。  向うに到着いたしまして、直ちに国務長官ダレス氏を主とする米国側関係者と会談に入りました。八月二十九日、三十日、三十一日と三回にわたって会談を行いました。この会談には日本側から私のほかに河野農林大臣、岸民主党幹事長及び松本内閣副官房長官も参加をいたしたのであります。そのほかに井口在米大使、その他外務省関係者も数名参加をいたしました。その三日間の会談の結果は、日米共同声明で発表いたされた通りであります。これによっても明らかな通り、この会談では日米間における大小の問題について隔意のない意見の交換が行われましたけれども、具体的の取りきめはなかったのでございます。日本側新聞の問題になりました海外派兵の問題の約束のごときは、もちろん何ら秘密の合意もいたされなかったことは申すまでもないことでございます。  第一日目、八月二十九日は一般問題を話題に上せたのであります。この第一日の会談におきまして、世界情勢の判断についていろいろ日本側もアメリカ側も意見を述べました。世界情勢の判断について、大局論としてはゼネバ会談、いわゆる巨頭会談によって大戦争の心配は一応遠のいておるけれども、なお不安な要素は依然として残っておる。これはヨーロッパ方面だけではなくして、東亜方面においても同様であるので、将来の平和の見通しをつけて、この平和の見通しを維持していくためには、どうしても自由民主諸国の結束がこの上とも必要であるというふうに話し合いがなったのでございます。  米国側の観察は、共産陣営の方で態度を緩和したのは、決して共産陣営の力が強くなったから緩和したのであると見るべきではなくして、むしろ民主陣営側の方の力が強くなって、そして共産陣営側に対する圧力が加わったからであると、こう見ておるのでありまして、それがために、民主陣営諸国の結束を固めて押していけば、平和はますます確保されていくのであるというふうに見ております。中共に対しても全く同様な見解をとっておることが説明されました。  日本側説明は、もちろんサンフランシスコ条約以来、日米の協力関係日本の対外政策の基調であるという従来の方針を明らかに強調したのでございます。日米両国は東亜における安定及び平和を確保するためには、ますます緊密な協力が行われることが望ましいので、両国政府が共通の閥心を持つ問題についてはこの上とも連絡及び協議をすべきであるという意見に落ちついたのであります。  さて第二日目の防衛問題、第二日目は日本の国防問題について、防衛問題について意見の交換がございました。この第二日目には、米国側は国務省関係者のほかに、国防省からロバートソン次官、ラドフォード統合参謀本部議長等が参加をいたしました。日本側の見解は、日本の国防力は現在相当な程度にもう達してきたのである。なお今後も日本の能力の許す範囲内においてこれは増強する意向である。防衛庁も一生懸命にそういう方向に力を尽しておる。よってこれまでのような日本の防衛力のないときに立てられた安保条約、行政協定のような仕組み、特に日本の国防を米国だけに負担せしめるような一方的な仕組みは改めて、なるべくこれを双方の負担になる仕組みにこれを改めることが適当ではないかと思う。特に毎年そのために日本の防衛分担金の問題を折衝するような非常な困難な折衝を繰り返すというのは、一体日米協力関係を論じておる際に非常にこれは困ることである。こういうことがないような方向を立てて、今までの仕組みを変えていく気はないか、こういうことをわが方から主張したのでございます。これに対して米国側は、日本の防衛力増強については、日本がこれを考えておることはけっこうであるが、アメリカ側もできるだけのこれに対する援助を惜しむものではない。これについては一つ軍事問題、専門的の問題もずいぶんあるのでありまして、東京において日米当局の間に連絡協議していって、その目的を達するようにしたい。そうして自衛軍備が充実ができる暁においては、お話のような条約の改訂ということも一つ考えてみようじゃないか。しかし今日はその準備の期間であるので、その準備を完了すべく、一つ双方の代表者においてこれを協議、検討をするようにしたらばいいと思う。さらにまた日本の自衛軍備が増強せられるに応じて米国の、アメリカの地上部隊も漸進的に撤退をすることを考うべきである。そういうことも双方の代表者において検討するようにしたいものであるという意見でありました。また防衛分担金の問題についてはごもっともであるから、今後数年にわたる一般的漸減方式を一つ案出したらどうかという意見を述べて、それはそういうふうにいたしたい、こういう意見が双方の合致点であったのであります。  それから三十一日の第三日目は、主として経済問題が討議されるという予定でございました。そこで米国側の方では国務省関係者のほかに、国際協力庁長官ホリスター氏、これは国際協力庁長官というのはスタッセン氏でございました。数カ月前に日本に参りましたスタッセン、そのスタッセン氏が今は国際連合の軍縮問題、最も今重要な軍縮問題の方に回って、その後任に、銀行家出身でホリスター氏がなったのでございます。この国際協力庁長官ホリスター氏、その他経済関係の人々、国務省の方ではフーヴァー次官等が国務省側に加わって出ました。日本側は従来通りであります。  そこで日本側から経済問題に関する日本側の要請をいろいろにやりまして、そうしてガット加入について米国政府が非常に尽力をしてくれたことについては日本側はこれを非常に多とすると言って、謝意を表しました。その日本側の経済問題に対する要請の重要なものはどういうものであるかというと、日米片貿易の是正の問題が重要な問題でございます。そうしてその片貿易を是正するためにこれに関連する諸問題、たとえば特需の問題であるとか、いろいろな問題がこれに関連して出てくるのでありますが、それらの問題について米国側に十分日本側に有利になるように考慮してもらったのであります。そのほかに東南アジアの貿易発展の問題、さらには中共貿易の問題等も持ち出したのでございます。  そこで米国側は、東南アジアの開発の問題を日本側が非常に重きを置いているので、これについては全くその通りである。そこで東南アジア諸国の経済開発をアメリカが援助する上においても、常に日本貿易伸張にこれは役立つように日本側とも十分協議をして、これを進めていくことにしよう、こういうふうに意向を表明いたしました。そこで国際協力庁長官のホリスター氏がスタッセン氏にかわって東南アジアの経済開発の問題を受け持つのでございます。それがために近く開かれる、十月ですかに開かれるシンガポール会議にはこの人が出る模様でございます。その前後に日本に来て、十分また協議をしようというふうに言っております。  その他日本側の提出した米国側との貿易、片貿易の問題についても話し合いが十分ありまして、米国の事情等も説明がございました。でき得る限りの考慮を払うという結論でございました。中共貿易については、中共に対する一般政策について態度を緩和することは、これは今日の状況ではできないと、こう申します。が、しかしながら日本の希望する品目の拡帳等については、品目を実をいうと十分検討してみよう、そういうものを出してもらいたいと言っております。経済問題は大要右の通りでございます。  第三日はその他の問題にも話が移りました。特に戦犯釈放の問題については、私自身として非常な関心をこれに持っておるわけでございますから、従来機会あるごとに米国要路の人々に対して戦犯の全般的釈放を要望して参ったのでございますが、今回も、戦犯釈放は日米協力上から見ると、これは精神問題であります。戦争の創痍はこれはすみやかに一掃しなければならないと思っておるのであります。これを強く主張しまして、国務長官自身においてその実現のできるように一つ善処してもらいたいということを実は訴えた、アッピールいたしました。ところが国務長官はよくその点はわかっておる。が、しかし米国内の一部には、まだ戦時中の一部日本軍人の行為に対してまだ非常に反感を持っておるので、そういう人間がすぐ反対の気勢を示すようなことがあっては非常にまずい。まずいから、さしあたって二十二名のB、Cクラスの釈放をやる。そうして今後もすみやかにこれを善処するようにいたしたい、こういうふうに話をしてくれまして、そのときに、米国限りで処理のできない戦犯の七名を、これについては他国の釈放についての承諾を得るように今交渉している、まさに終らんとしておるところだ、これも不日釈放の手続をし得ることであろうというようなことまでも述べてくれました。  そこで日米の間に横たわっておる大小の問題について全面的に意見の交換をして、それが終ったわけでございます。そこで共同声明がああいうふうに出たわけでございます。共同声明は今さら繰り返しませんけれども、「両国が相携えて、かつ、他国とともに世界の平和と自由の強化のための任務を遂行しうるために、この協力関係をさらに拡大せんとする両国政府の決意をあらためて確認した」というふうに述べておるのでございます。さようなわけで、私の渡米の意図しておったところにこれは合致する次第でございます。  なおこれは正式会談でございますが、この正式会談のほかに米国の朝野の有力者、たとえばニクソン副大統領、スタッセン氏とか、その他の人々にもできるだけ時間の許す限り、多数に会いまして、いろいろ意見の交換をいたしてみました。大体ダレス長官の意見、すなわち共同コミュニケに表わされた意見とその軌を一にするものでございました。正式会談の後にニューヨークに参ったのでございますが、ニューヨークでも多数の人に約三日間ほとんどひっきりなしに会いました。その中で特に御報告をいたしておきたいと思うのは、ハリマン知事との会見でございます。ハリマン知事は、御承知通りに民主党のルーズベルト大統領の非常に親任を得ていた外交通、ロシア通でございます。そうして次の民主党の大統領候補にはこの人が推されるのであるというふうにもっぱらいわれている人でございます。例の日露戦争後に満州の鉄道問題であるいは御記憶のハリマン氏の息子でございます。日本には子供のときにお父さんと一緒に来たことのある人だそうでございます。このハリマン氏が私がニューヨークに着きましたときに、すでに飛行場に迎えにきておりまして、ぜひ話をしたいということで話をいたしました。相当な時間話をいたしたのでございますが、その話の大部分は一般論でございました。特にソ連との関係等に対する一般論でございましたが、そのハリマン氏の言うのには、自分ら民主党はと、こう言います。絶対にアイゼンハワー大統領の外交政策、つまりダレス長官の外交政策を支持するものである。これを忘れないでおいてもらいたい。こう私に申します。いわゆるバイ・パーティザン政策でございます。これは非常に私の一つの知らんとしたところでございます。それはアメリカの政策が選挙ごとに変るとか、よくアメリカの政策が変りはせんかという危倶が相当従来外交界にはあるのでございまして、果してアメリカの今の政府の政策が将来続くのであるかということを見きわめるためには、一番ハリマン氏のごとき人の意見が有用になるのでございますから申し上げるわけでございますが、どうしても外交は、対外政策はしょっちゅう変えちゃいかぬ、今のアイゼンハワー、アイゼンハワーと特に言います。アイゼンハワーのやり方は、自分らの全幅的に支持するところであるから、すなわち自分らがやっても同じことをやるということになりますが、そういう意味をもって強く言っておったことでございます。これは私に印象を与えました。以上のようなことでニューヨークを引き上げて、西海岸に行って帰ったのでございます。  大体において私どもが戦争前に経験しておったところよりも、今日はアメリカ人の日本及び日本人に対する了解は相当良好である、進んできておるというふうに感じました。いろいろな原因はこれはございましょうが、そういうようなわけで、日米間の一般的の了解を進めるということには私の使命も若干役に立ったのではないかと、こう私は思っておるのでございます。  以上でございます。
  19. 小滝彬

    小滝彬君 質問を継続いたします。  外務大臣が出発せられます前に御警告申し上げました、河野、岸両氏も行かれる、三者ばらばらになってはいけないという点につきましては、副総理として非常な意を用いられたと見えて、そうしたこともなかったように聞き及んで、外務大臣の労を多とするものでございます。ところが九仭の功を一簣に欠いたような気がいたしますのは、海外派兵の問題が新聞紙上でいろいろ云々されるに至りまして、日本側の某高官、それは新聞によっては註釈をつけて、閣僚の一人であるといっておりますが、某高官が共同通信に漏らされた言葉があります。これは産業経済新聞にも出ておりましたが、あれを見まするというと、いろいろ会談の間における言葉のやり取りの一つ一つまで出ておる。これは全部が正しくはないかもしれませんが、確かにその話があったということは、これは共同通信だけでなしに、ほかの人も聞いておるようでありますからうそではないようであります。しかもそのあと重光外務大臣は戦犯釈放以外何ら見返りを得ることができなかったというようなことを言って、自分内閣の副総理をけなすような言動もあったように思いますが、その詳細はいずれにいたししましても、そのような会議の内容が相当結論的に、今の大臣の話ならいざ知らず、相当詳しくあばかれることになるというと、一体アメリカに対する影響はどうであろうかと思っておりました。ところが果せるかな、こういうことでは日本側の代表とは打ち解けた話ができないといったようなことを言っておるような人もありましたようで、私はこういうやり方というものは、実に何か悪いことがあれば他の閣僚にこれをなすりつけるというような、閣内の不統一を暴露したものであるばかりでなく、日本の対外信用にもかかわることであって、せっかく大臣が相互の了解をつけ、親善を増進しようという目的をもって行われたにもかかわらず、その目的に逆効果をもたらすものではないかという点を非常におそれるものであります。これはおそらく大臣は憤慨せられておることと思いますが、おそらくこのような内閣において外交の責任をとり得るかどうかという点についてもみずから非常に苦悶せられておるのではないかというように想像いたす次第でありまして、この点についての忌憚なき感想をまず承わりたいと考えます。
  20. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私の出発前に小滝君から御忠告を受けておりまして、これはまことに私もありがたい御忠告だと感じておりました。むろん外交は何と申しますか、ユナイテッド・フロントと申しますか、一致してかからなければなりません。これは相手あってのことでありますから、こちらが乱れるようなことがあってはいかんことはわかり切っております。その点についていやしくも注意を払わなければならんと思って、私も及ばずながら努力をいたしました。そうして今回の渡米のことについては、正式会談に入る前にはみんな集まっていろいろ相談をし合って臨んだわけで、国内的の問題を説明するのには私よりも他の人々が適任であるという点にもかんがみまして、さように取り計らったわけであります。そうしてそれは相当私は先方に対しても理解を進める上において非常に役立ったと思っております。私の一般的の説明をさらに他の人々の口から詳細に的確に説明をしたわけでございますから、その効果は大へんあったと考えております。むろん会談のことでございます、議事録も何も取っておらん会談でございます。ただ双方の内容が、こういうことに話がなったという結論が共同コミュニケになって、これは話し合いで共同コミュニケをこしらえたのでございます。その他は議事録も何もございません。ただ私の手、もしくは私の随員の手で取ったこれらのメモはございます。そのこちらのメモをも参照いたしまして今御報告をいたしたわけでございます。  しかしこういうような会議のときなんぞには、これはまあいいことではむろんございません。ございませんが、まだ日本としてもそれまでの外交的の全般的訓練もないためか、いろいろな派生的の事件もあるということも、これはどうもそうあまりこれをあげつらうこともなかろうかと思います。アメリカの方でもそうそれに重きを置いておるわけではありません。アメリカ側の新聞の論調等はぼつぼつお手もとにだんだん到着しておるのではないかと思います。よく一つ御検討を願っていただきたい、こう思のであります。アメリカ側も非常に日本の地位を重く見、私のいろいろな説明はこれを重要視して、そうして将来の日米関係を円滑に、また親善関係を進めてゆくことに非常に役立ったとして喜んでおることは、これは事実のように私には見えます。  それからまたアメリカ側に対して言うべきことは実はずいぶんもうはっきりと申しました。この委員会の席上でいろいろな御意見が出ましたが、それもその通りとは申しませんけれども、ずいぶん私は失礼かもしらんが、それを利用していろいろなことは申しました。しかしそれは了解を進める善意をもって申し上げたのでありまして、了解を進めるのに役に立ったと私は思っておるのであります。こういうようなわけでありまして、今の不統一があったといっていろいろ新聞記事やなんぞに御引用になりましたけれども向うの議事録も何もないのでございますが、こちらのメモは取ってございます。そのメモによりましても、今のような御心配の点はないようにはっきりするのでございます。そこで内閣もしっかりしろ、こういうお話、これはもうごもっともなお話で、大いにしっかりしなければやれません。外交は十分に一つ国民的の背景をもってやらなければやれない、それだけはまさにその通りであります。私ども大いに反省をして努力をしてみたいと、こう考えております。
  21. 小滝彬

    小滝彬君 今いろいろるる御説明がありました。これは私ども派生的な簡単な問題とは思わないのでありまして、閣僚の一人がそういうふうな発言をせられておることは明らかのようでありまするので、その点を心配したわけであります。幸いにして大臣がおっしゃるように、悪い影響はなかったというなら幸いでありまするが、そうした点はぜひ副総理として、不慣れだからこういうことになったのだろうとおっしゃいましたが、十分に注意するように御留意を願いたいと思います。  しかし日米会談の内容は全部共同声明に出ておるということでありますので、この点について一、二お伺いしたいのでありますが、この正訳の第三ぺージ目には、「日本の防衛能力増強に関する諸計画を説明した。」とあります。従来議会ではこれは部内限りのものだから説明できないとか、あるいはまだ確定してないということでありましたけれども、こういうふうに書いてある以上、相当詳細に計画は発表されたのじゃないかと思います。われわれ国民を代表する議員に対しては説明がないけれども、アメリカに対してこういう計画は説明されたとするというと、われわれはまるでつんぼさじきに置かれたような感がなきにあらずでありますが、それはさておきまして、一体どの程度の説明をされましたか、具体的にもしお差しつかえなければこの点をお伺いしたいと思うのであります。
  22. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 外交問題についていろいろ折衝する場合において、すべて折衝する内容議会に前もって御承認を得なければならぬということも実はないのじゃないかと思います。さように申し上げたからといって、私は議会に秘密にしたものを持っていって、すべてこれはアメリカ側と協議をしたと申すのではございません。しかし増強計画、防衛力の増強ということは、これは当然やらなければならぬ。条約上の義務からでもそうなっております。議会においてもこれはやるのだということは十分に御説明をいたしておったわけでございます。しかし防衛計画の的確、詳細な計画はできていないということも事実でございます。今日までできておりません。しかし議会が済んで私が渡米する前には、何とか早く一つ防衛庁でも計画してもらわなければ話のしようがないじゃないかということで、ずいぶん私も防衛庁の長官に頼んだわけであります。そこで防衛庁は――それがためだけではございません。従来から研究をいたしておることがありまして、経済六カ年計画に間に合わしたどうしてもいろいろな防衛計画を立てなければならぬといって、ごくあらましの考え方を、私は防衛庁の考え方を知りました。それはまだむろん予算の関係もあるのであります。それからまた米国の援助計画もその中に織り込まなければならぬ。それでこれはすべて未定のものでございます。未定のものでございますが、大よその考え方として、地上軍は今現在大体十五万ある。これを年々一万ずつふやしていって十八万に大体することに急ぎたい、こういう考え方を持っておるということを私は承知をいたしたのでございます。これは何もそういうことがはっきりきまっておるというわけではございません。しかし大よその、大体地上軍はこのくらい考えておるのだということをアメリカ側へ示さなければ、またこれは私個人の外務大臣考えとしてもこうだということを言わなければ外交になりません。そこで私はさようなことを申したのでございます。申したのでございますが、これは何も日本政府がこれを最終的に確定したのであるというふうに持っていったわけではございません。それはそうでないから、一つ私はもう正直なところそうなんです。しかしそのくらいのことを言わなければ、アメリカ軍隊をそれじゃ引いてくれ、日本がこれだけに増すからだんだん引いてくれという論拠にはならないので、さような意気込みをもってアメリカ側に折衝をいたしたのでございます。そこでアメリカ側もそれならばということじゃございません。それならばということじゃございませんが、そういうことはよほどまたこれは検討もしなければならぬのだが、しかしまあとにかく日本側も非常に防衛力漸増に熱意を持ってきたのだということで、アメリカ側も地上軍の漸進的撤退ということまで考えなければならぬというところまでコミュニケに入れるようになってきたわけでございます。「諸計画」とありますが、これはまあ「諸」の字が日本語では複数になっておるということでありますが、ごくそういうあらましのことを申して、日本側の決意を決してこれを何しておるのじゃない、なおざりに、等閑に付しておるのじゃない。これはもう必ずまじめに増強をやるのだ、こういうことを主にして申したわけでございます。
  23. 小滝彬

    小滝彬君 まあ「諾計画」と書いてありまして、相当詳細な説明が行われたのじゃないかと思ったのですが、まあそういう工合ですから、これは防衛当局が最近作成したということが書いてありまするので、防衛当局へ聞くことにいたしまして、次に移ります。  その次に書いてある「第一次的責任を執ることができ、かくて西太平洋」云々というのは、これはまあ非常に国内で世論を刺激した問題でありますが、一体私はこの正訳はまだできぬというように外務省は言っておられる。まあ今度来たのは正訳だろうと思うのですが、非常にこの訳に時間を取られたということは、かえって何か作為を用いるのじゃないかというので、そのためむしろ世論に疑惑を与えたおそれがありはしないか。まあこれは曾祢君あたりも新聞などに書いておりましたが、「かくて」というのではどうしてもわれわれは了承できない。第一次的責任をとることそのことによってという意味とすれば、どうもおかしいと思うわけであります。一体この西太平洋は東亜とか極東というのと同じだということを大臣はきのうも言っておられますが、そうなるというと、この安保条約の第一条に「この軍隊は、」、この軍隊、米国の軍隊は、「極東における国際の平和と安全の維持に寄与」するという義務が書いてある。これを日本が背負って、その責任日本の方が肩がわりするということになるのでありまして、しかりとすれば、これまで問題になった海外派兵というものも当然の問題として起り得るわけです。がしかし、もちろん外務大臣おっしゃる通り海外派兵するなんと約束せられたはずはない。がしかし、まあこれにはあくまでそうした実行諸条件を確立するために努力するということは、まあ約束と申しまするか、双方の意見の一致があったのでありまするから、この点でいろいろ問題を生じたものと思います。がしかし、一体ほんとうにこれを討議される際に、第一次的責任をとることができることが、すなわちそれによってこうしたその次に書かれた目的を達成するものであるという趣旨で討論を進められたものであるかどうか、私はどうも「かくて」は事実あとで書き直されたものだし、その辺で国民の疑惑を買っておりまするから、この点を簡単でけっこうですから、御説明お願いできたら幸甚と存じます。
  24. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 今訳文がどうとかこうとか申しますが、私はどういう経緯か一切知りません。これはむろん英文でできております。その訳文が東京でいつできたかということは私は知りません。しかしこれは訳文がどうとかこうとかいうのは、それは私はむしろ何と申しますか、本筋の何じゃないと思うのですが、これは英文で書いてある通りに私も信じておるのであります。そうして西太平洋とか東亜だとか極東だとかいう文字が出ております。これはしかし小瀧委員が十分御存じの通りであります。極東というのはイギリスでこしらえた言葉であります。東亜というのは日本でこしらえた言葉であります。日本で東亜という字を使いなれるまでにはよほどの何を要したということも御存じの通りであります。日本中心に考えた東亜というものであります。アメリカは西太平洋ということをアメリカから見てよく言うようであります。それじゃどこからどこまでかと、こういうようなことは結局は政治論になると思います。私は大体そういうところでいいんじゃないかと思います。  そこで日本がその日本の特に位置する地域において平和安定の責任を負わなければならぬことは国をなすには当然だと思います。しかし何もそれだから兵隊を出していってすぐいろいろな国外のことに関与する、そういうことは少しもないわけであります。世界の平和に貢献するということも書いてあります。世界の平和安定に貢献しなければならぬ、どこでもここでもそれじゃみんな軍隊を出すことを約束したかというと、私はそういうものじゃなかろうと思います、これはあくまで私は日本の国柄として、また日本の国の国民気持として、自分は世界の一員として、その位置する地域内における平和を守るところの責任を負う、これに寄与しなければならぬものであると、こう私は考えます。しかしそれは今日本が今日やっておる具体的の問題としては自衛軍備をいま少しちゃんとこしらえなければならぬ、独立の完成をやるということが先決問題であります。それをやることがすなわち平和のために寄与することであることは言うを待たぬと私は思います。私は一体自衛軍というものは海外に派遣するということは、従来とも、改進党時代から反対をしておるのであります。私はその主張を今日忘れてはおらないのであります。自衛軍というのは国土の防衛軍であって、海外に派遣すべきものではない。しかしながら、自衛軍を設定して日本の国土を守るということは、大きな意味において平和安定に寄与するものであるということは、これまた争いの余地はないと、私はこう考えておるのであります。
  25. 小滝彬

    小滝彬君 時間が参りましたから急ぎますが、一体これは茫漠とした表現を使われたらこれほど問題にならなかったと思います。西太平洋は安保条約の第一条にも極東と同じ意味だと書いてあるし、そうしてこれには軍隊の任務は、日本に配置して、そうしてこういう極東全体についての平和に寄与するという任務を持っていることが書いてある。それと同じ文句がここに使われているからそういう議論が出てきたわけであって、あるいは大臣としては考えられなかったでしょうが、そういう議論が出るもとはこれにあったものであるということは、大臣も認められるだろうと思うのです。双務協定になる、そうしてそうした責任を分担するということになりますれば、そうすればたとえば朝鮮事件のときに、ノルウェーやあるいはトルコも自分の兵隊を出している。だからそういう可能性も生じてくるということを一般の人がおそれるのだろうと思います。  一体私は行政協定より一歩進んで、安保条約も改訂しようというように大臣考えられたことは、議会答弁などで非常に慎重な態度をとっていらっしゃる大臣気持としては、そういうところまで進められるだろう、こういうふうに思っておったのです。が、しかしなるほど基地の問題がある、また分担金問題などがあるから、結局ここまでいかなければ、日本へ帰ったときにみやげ話もできないといいようなところから、サンフランシスコへいらっしゃったときに行政協定云々ということを言っておられたけれども、だんだん安保条約の改訂というようなことも述べておられる。そういうようなことで、相当大臣としては相互の了解を増進するとか、あるいは親善関係を育てるとかおっしゃっても、何か手みやげが持ちたい、そうして大衆のかっさいも博したいというような気持で進んでいかれた。ところがしかしよく考えてみると、国内に憲法問題もあるし、あるいは経済、財政の問題もある。そういうところへひっかかってきて、大臣が予想せられないような世論の反駁があったのじゃないか、こういうように思うのですが、大臣のこういうところへ進まれたお気持をお伺いいたしまして、私の持ち時間は来たようでありますから、これで打ち切って、他の諸君の質問に時間を譲りたいと思います。
  26. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私の心境を非常にえぐって手みやげだとか何だとか……、どういうことでしょう、私はそんなつもりで仕事をやってきたのじゃございません。私は一体この安保条約にしても行政協定にしても、私はこの委員会でもずいぶんいろいろな方の意見を聞いてみると、私はなるほどだと思う。一体日本が国防をアメリカに委任して、そうしてそれがために防衛分担金を日本が払っている、こういう状態でいつまでいっていいものであるかということが、私は御議論の根底であったと思っている。またそうでなければならぬと私は思っている。かようなことは一日もすみやかに独立の完成といいますか、何といいますか、こういうことはやめて、そうして新しい仕組みにしていかなければならぬ、私はそれは実は党派の別にかかわらぬと思う。日本人として日本の国を立てている以上はどうしてもやはりそういうふうに考えて進んでいくべきだと、こういう御意見がずいぶんあったと思う。私もそれに非常に共鳴した。そこで私は、それからまた実際の問題といたしましては、ここにもコミュニケにも書いてあります通り、防衛分担金の問題にも、ああいう交渉は実に因る、毎年こういうようなことをやらぬようにするには、やはりこの仕組みを変えるというくらいの頭を向うに起させよう、私はそこまでいかなければいかぬと思う。そこで私はこれは正論だと思っている。実は機会のあるときには、この考え方を向うに徹底せしめていきたいと、こう思っておったのでございます。しかしながら、今それが即海外派遣を容認するのだといろところまで皆飛躍して考えられるとは者えませんでした。これは私の不敏でしょう。不覚でしょう。しかしながらそれは少し無理な話なんであって、そういうことは今約束する必要も何もない。向うもわれわれはそんなことは要求したことはないと言っている。さようなことでありますから、それは実は今そういう問題は起っておらんのであります。しかしながら私はそういう新しい義務を負わずして、今の協定をいま少しく何と申しますか、ここにあるグレイター・ミューチュアリティの方向に向けて日本の地位を全うするというふうに私はゆき得る考案ができ得ると思う。しかしその考案はそれじゃ何か、お前どういう考案を持っておるのであるかということを今私に聞かれても、私はそれはここだと申し上げる何を持っておりません。しかしこれは必ず私はでき得ると思う。それを一つ今後米国側とは話し合いをして編み出してゆきたい、こう考えておるのであります。そういう何で、私はこの問題は急に途中で、サンフランシスコから思いついたとか何とかという問題じゃ決してございません。思いついた初めは何かとしいて聞かれるならば、この委員会における御議論の反映と御承知を願いたいと思います。
  27. 佐藤尚武

    ○佐藤尚武君 私から主として日米会談、ことに共同声明に発表された点について一、二私の感想も述べてみたいと思いますので、それに対して大臣がどういうふうに受け取られるかということを承わることができれば幸いだと思います。そして最後に一つ、一点について私は御質問申し上げて、そして私のよく理解しないところをお尋ねしたいと思っておりまするが、その問題は、今の安保条約なり行政協定たりの相互的の基礎においてこれを改訂したいというその点であります。今大臣はそれに触れられましたが、あらためて私からもお尋ねしたいと思います。  概して今回の外務大臣のアメリカ訪問は、先ほど来の御説明を承わりましても、日米両国の間に重要な点において、と申しますことは、一般の国際情勢の判断の上からいっても、日本を中心とした防衛の面からいきましても、はたまた日本の経済問題から申しましても、種々重要な了解両国の間で成り立ったということを承わったのでありまして、私はこれは日本にとりましても非常にいいことであったと喜んでおるのであります。そういう了解が成り立ってこそ日本の極東におきまする政治的の安定の上にも、また今後の日本のあり方につきましても、大きな意味を持ち得るのでありまして、今度の外相がアメリカを訪問されたという、これは大きな収穫であったと私は見ておりまするし、その点で外務大臣の労をねぎらいたいと思うであります。この発表された共同声明が、日米会談の結末としてすべてであるということを大臣は言っておられまするが、この共同声明の中でもってはからずも日本国内でいろいろな問題を起したということもすでに御承知通りであります。これは私から申しまするならば、まことに遺憾なことであります。ことに海外派兵の問題でも、外務大臣はそういうい約束をした覚えは全くないし、日本でそういった点でもって問題が起きたについては自分は驚いたというような感想を漏らしておられまするが、私自身も実は同じような感想を持ったのであります。共同声明が英文で書かれて、そうしてその書かれたということは、日米両国の人たちが起草したのでありましょうが、同じ一つ協定された文句でもって声明が発せられましても、書いた人たちの気持がお互いに違うということはこれはあり得るのであって、アメリカ側ではこういうふうに思った、日本側はこういうふうに感じたというふうな食い違いが起きるということも、これは私はあり得ることだと思うです。そういう事例も多々私は見てきております。日本でもって新聞なり各方面でもってやかましく言い出したのは、私が了解しているところによりますというと、アメリカの国務省のスポークスマンがこの共同声明を発表したすぐあとでこれの説明を加えた中に、将来日本が西太平洋における安全の責任を分担するということがあり得るというような意味の発表をしたことからして、アメリカの新聞、その中にはニューヨーク・タイムスなどもあったようでありますが、あたかも日本が将来西太平洋に出兵をする可能性がそこから出てきたというような書き方をした。それが日本に大きな影響を与えて、そうして日本新聞あたりでも書き立てた。右からも左からもこの問題をつっついて、そうしてかなり神経質な書き方をしたというようなことにしまいはなってきたというような傾向が見られたので、これは先ほども申しました通りに、あるいはアメリカ側で一時そういうふうに考えたかもしれませんが、日本側においては、第一今すぐ西太平洋におきます防衛の責任をとろうといってもとれない日本の現状におきましては、大臣が言われたごとく、そういうことを約束するはずもない。遠い将来のことはいざ知らず、現在においてそういうことはあり得ないといことを私も信ずるものであります。いわんやその後日米両国間に問題となった点についてお互いに意見を交換した結果一つ解釈に達して、そうしてその解釈について両国とも間違いがないのだということを共同的に発表したのでありますからして、その誤解は今では全くなくなったはずだと思っておりますし、またそれはいいことであったと考えております。この日本語に訳された「かくて西太平洋における国際の平和と安全の維持に寄与することができるような諸条件を確立するため、実行可能なときはいつでも協力的な基礎にたって努力すべきことに意見が一致した。」云々とある点が問題となったわけでありまするが、私から申しますならば、この最後の。パラグラフでもって、今次の会談を通じて日米両国の代表は、日本がアジアにおける大国として他のアジア諸国と友好的に協力をして、アジアの安全と平和とに貢献する積極的役割を演ずべきことを認めたということがありますが、これも同じことを意味しているものだと私は思うのであります。しかして今最後に読みましたこの最後のパラグラフの数行は、日本国内においてもこれをもって日本海外派兵を約束したのだ、そういう義務を背負ったのだというように解釈する者はだれもいなかったのでありまして、そして単に先ほど述べたこの問題の点、「かくて西太平洋における」云々というそのパラグラフだけを論じて、そうしてあたかも海外派兵義務を背負ったかのように日本では論じ立てたのでありますが、これは私は間違いである。その声明の全文を通じて見ましても、そういったような義務を背負ったというように解釈する点は私は一つもないというようにまあ見るのであります。  元来この海外派兵の問題、これは今外務大臣の御説明によりまして、民主党としては自衛権を主張するけれども日本の軍隊を海外に派兵する、派遣するというようなことは民主党としても一切考えていないというような御意見のようであります。なるほど現在においてはそうでありましょう。しかしこの点はもっと深く私は与党においても考えていただかなければならんと思いますることは、元来日本はこの国際連合に加盟を申請をしておる国であり、かつまた平和条約にもうたってありますが、国際連合憲章の原則はどこまでも尊重するのだ、順守するのだ、あらゆる場合を通じて順守するのだということを誓っておるのでございます。国際連合に加盟を申請するくらいの決意があるならば、連合憲章の原則を順守するということはこれは当りまえの話で、しかしてその憲章の原則の中で最も重い原則は何かといえば、いわゆる集団安全保障の原則でなければなりません。それが国際連合憲章の中で国際連合の目的、原則という章において第一に掲げられておるところから見ましても、私はこの集団安全保障に最も国際連合としては力を入れておる問題だというふうに信じておるものでございます。しかして日本はいつのことか存じませんが、国際連合に加盟をしたとしまするならば、この憲章によって縛られるのでありまして、憲章によって権利も得るかわりに義務も背負うわけであります。今の集団安全保障に対しても日本は一役買わなければならんということになりましょう。もっともその集団安全保障に対して各国が寄与する実質の問題については、あるいは兵力を提供し、その他の援助をなし、あるいは便宜を供与すると、いろいろあることが憲章において予見されており、かつまたそのつど国際連合は各国と特別な協定を結んで、そうしてその国の負担すべき義務の範囲をきめることになっておる。またその協定はその国の憲法の規定の範囲内において批准さるべきものとなっていることはすでに御承知通りであります。でありますからして、海外派兵に反対をする向きにおきましても、この国際連合の憲章の原則は承諾し得たということはなぜかと申しますると、それは憲法の規定によってできるだけのことをすればいいのであって、それがすなわちその批准ということがうたってあるゆえんである。その根拠があるから自分たちも国連憲章の原則に賛成をしたのだというふうに今解釈するでありましょう。それもまた実際であります。しかしながら、私のこれは個人的見解になりまするけれども日本がほんとうに今度の声明にありまするように、極東におけるこの大国として、アジアにおける大国として日本が他日国際連合に参加をする、加盟をするというようなことになりましたならば、ほかの国と同じだけの義務を私は背負おなければならないというふうに感ずるものでありまして、現在でこそ自分の国の自衛もまだできていないことでありまするからして問題にはなりませんけれども、他日この自衛力が増強されたという場合には、他国と同じように海外派兵ということも考えなければならん。今からこれは考究しなければならん問題であるということを申し上げたいのであります。  国際連合軍という考え方がこの憲章によって生じて参ったのでありまして、国際連合としては自分の力で国際連合軍を組織して、そして自分が、侵略が起きた場合にその国際連合軍でもって処置をしなければならんというような考え方が国際連合の中で行われておることも御存じの通りでありまして、第一回の総会の決議の中にその国際連合軍なるものをできるだけ早く組織して、そうしてこれを安保理事会のディスポーザルに置く、指導のもとに置くとでも訳しますか存じませんが、とにかく安保理事会の使用し得るような形にすることは必要であるという決議ができておるのも、今申し上げました国際連合憲章の原則からくる当然の帰結でなければならないのであります。日本が他日国際連合に加盟するといたしましたならば、その国際連合軍に実力をもって寄与するということも他国並みに考えなければならんということに私は当然なると思うし、そうなれば海外派兵ということは当然ついてくる問題になる。  もとよりこの問題は日本の憲法を改正してからでなければ、私はそういう義務は背負えないと思うのでありまして、この憲法において国際連合にほんとうに協力をして、そうして国際連合の他の加盟国と同じ程度の義務を背負うということを承認するようなふうにこの憲法を書きかえて、その上で初めて私は国際連合軍に寄与するということを考えれば考え得るのだというふうに思うのでありまするが、いずれにしましても、私は海外派兵ということをそう日本としては全然考えないで済む問題であるかのように国民を誤まって考えさせるということは、これは私は間違っていると思うのです。国際連合というものはこういうものである。日本はこういうふうにして国際連合に加盟を申請しておるのだ。その原則はこういったことになっておるということを私ははっきり国民了解をさせて、そうしてその了解を得た上で憲法を改正し、他日の用に資するというふうにしなければならんというふうに私は考えておるものでありまするが、また繰り返して申し上げるようでありまするが、今回の共同声明に関係した日本新聞の論調なりあるいはその他の言論なりが、いかにも海外派兵ということは今度初めて起きてきた問題であるかのように取り上げて、そうして神経質にこれを論じたということは、私から言いまするならば、これはおかしいことであったと思うのであって、国際連合を云々するぐらいならば、海外派兵ということはすでに頭の中に入れて云々しなければならん問題であって、海外派兵の問題は何もそう足元から水鳥が飛び出したように騒ぎ立てる問題ではなかったはずだと思うのです。  アメリカの問題となりまするというと、どうも日本では神経質に考えすぎるような傾向があることを私は痛感させられておりまするが、たとえば今度の日ソ交渉におきましても、日本の防衛問題の上からいい、もしくは東アにおきまする勢力の均衡の上からいいましても、非常に大きな問題がその中に含まれておると思うのでありますが、それに対しまして一、二の新聞はなるほどそれをそうした条項について報道したことがあるように私は拝見しました。しかしその問題について深く論議する新聞の論説などは私は見たことがないのであります。非常にその点については日本の世論は落ちついて、ロンドンの交渉の結果を待っているというような状況であります。これは私はいいことだと思う。私が信頼するも信頼しないも、そういうことは役に立ちませんけれども、私は外交の問題につきましては、外務大臣を信頼し、ことに今度の日ソ条約につきましては、松本全権に対して全幅的な信頼を私捧げているものでありまして、その松本全権は私も戦前一緒に働いたこともありまするので、その人物についてはよく御存じ申し上げている。そういう人でありまするがゆえに、私は全幅的な信頼を捧げることができるのであります。今申し上げましたような重要な問題につきましても、私はこういう人たちにおまかせしておけば間違いないというふうに感ずるのであります。もっともその結果については他日大いに論じなければならぬというようなことが出てくるかもしれませんけれども交渉の途中においては私どもこの問題を取り上げて云々するということ、それによって外務大臣の手足を縛るというようなことは絶対にやりたくないというふうに感じているのであります。日米会談の問題についても、日本の世論が日ソ交渉において冷静に見守っていると同じ態度をとり得たとしましたならば、今度のようなこういうふうな騒ぎはよしんば起きたところで、ほかの形でもって、もっと落ちついた形でもって起きたと思うのであります。これは私から申し上げますならば遺憾なことであったと思うのであります。そういう問題につきまして外務大臣のお考えを伺うことができまするならば幸いであります。  最後に、私は付け加えてこれは質問の形でもって伺うのでありまするが、ほんの数分間の質問をお許しを願いたいと思うのであります。それは先ほど言及されました安保条約の双務性であります。外務大臣自身これをもっと双務的な形にしたいが、どういうふうな形になるのやら、自分でも今的確な考えを持っていないと、今御説明になったようであります。外務大臣がこの問題を持ち出しておいて、そうして自分でもまだはっきりわからないんだと言われるくらいでありますから、私どもがわからないのは当りまえだと思うのであります。あの交渉のいきさつから見まして、どういう点でもって外務大臣は安保条約を双務的な問題にしたいと言われるのか私には実はわからない。と申しますることは、安保条約なるものは、もともと日本が自衛力も防衛力も何もないからこそ、ああいう条約をこしらえたのであります。アメリカが日本の国内の重大な騒擾であるとか、あるいは外国からの侵略に対して日本を守るという責任をアメリカが背負ったので、これに対して日本は自衛力てを増強し、防衛力を増強し、そうしアメリカのお手伝いを不要なものとするという時代があるいは来るかもしれない。そうなったらアメリカの軍隊は帰って行くのであって、これは何も双務的な問題は一つもないと思うのであります。行政協定にいろいろ不都合な点がある模様でありまして、私もこれはずいぶん聞かされておりますので、そういう点を改訂するということは、これは何も妨げないことであり、日本としては必要なことであろうと思いますけれども、これもまた双務的な基礎のもとにおかなければならぬという問題ではないように思うのであります。ほんとうに双務的に安保条約を改訂するということでありまするならば、アメリカが日本の安全を保障すると同じように、日本もアメリカの安全保障をするということになりまするならば、これは立派な双務的……。しかしそんなことは日本の国力からいって、もともと国力の上において非常な違いがありまするし、日本の現在のおかれた国力ないしは近い将来においても盛り返えすべき日本の国力から申しましても、アメリカの安全を保障するということはとうてい考えられない。しからばアメリカが極東におきまする安定の上から言いまして中心勢力になっている。この極東におけるアメリカが安全を保障している。それを日本が手助けをするということであったならば、なるほどある意味においての双務の形になわ得るでありましょうが、しかしそれは遠い将来のことであって、今すぐわれわれがそれをどういうように、国力が急速に回復するとは思えませんし、またほんとうにそういう意味でもって西太平洋におけるあるいは極東においてアメリカと一緒になって日本も安全保障の上で一役買うということでありますならば、先ほど来、るる申しましたように、海外派兵という問題が突然伴ってくるし、それなら憲法を改正してかからなければならないということになるのであります。でありますから、これはいずれの道遠い将来のことでなければならず、それを今急いで双務的な基礎に安保条約を書き変えなければならぬという必要がそこからも出てこないように私には考えさせられるのであります。この点は一つ外務大臣は、自分にはまだはっきりした考えを持っていないということを言われましたけれども、そういう根本的な考え方について一つ、私はこれは間違って考えているかもしれませんが、外務大臣のお考えをお聞したいと思うのであります。
  28. 重光葵

    国務大臣重光葵君) お答えします。非常に大きなまた根本的な問題でございますから、できるだけこんがらがらないようにお答えしたいと思います。  国際連合に加入するという方針はこれは日本国民の意思としても決定をしておると私は考えております。国際連合に加入したいということはもうずいぶん長い間の公式の日本の希望であると思います。そこで国際連合に加入する以上は、いい方ばかりこちらがとって、義務一つも負わないというような考え方も成りたたないことは、これは申すまでもないことであると思います。従いまして、今言われるような国際紛争の処理についていろいろ義務を負うことは、これは当然のことであると思います。しかしその問題は私の当面の日米会談の問題と直接に関連はいたしておらないように考えます。国際連合に対する今のお考えは私も全然御同意でございます。ただ憲法の改正の問題までどういう工合に波及するかということについては、私は意見を保留したいと思うのでございますが、大体の考えはその通りと思います。  さて、日米会談において私が企図したところは、日本の防衛をアメリカだけに頼んで、そして日本はその費用を払って、全部ではございません。私はなんと言っても、これは片務という言葉で表わすのが、今お話しのような御議論、正確な法律、条約上の議論として適当であるかどうか、これはしばらく別問題といたします。しかし何といっても、これは片手落ちのことで、日本がまだ一本立ちになっておらぬということを示すもの以外の何ものでもないと思います。私はこれは少しでも早く是正するのが日本としての行くべき道でなければならぬと、私はこう考えたのであります。それをどういう工合に、それではその片手落ちと申しますかの仕組みを変えていくか、これを変えるのにはどうしても私は片手落ちでない方法をとりたいと考えております。それが今お話しのような集団安全保障条約の地域的の条約とかいうような工合で、はっきりと今法理的に言われる双務協定になる時期がくるかもしれません。しかし今の問題は、私は日本の自衛軍備までまだ完全になっておらぬのです。これから築き上げようというような状態において、まだそこまではいかんと思う。ただしかしこの片手落ちの点は、これは少しでも改善していかなければならぬと思います。それはどういう方向に改善していくかということは、やはり片手落ちでない方向に改善していかなければなならぬと思います。そこでその言葉を言い表わすのに、これはミューチュアル・アグリーメントとは書いていません。グレーター・ミューチュアリティに向っていこう、少しでも片手落ちでない方向に向っていこう、こういうふうに、ここに注意して書いております。日本語として双務協定にすぐ押し出していこうというふうには、私は今双務協定というのは今お話しのような双務協定に向ってこれはすぐいかなければならぬという意味ではございません。特に防衛分担金のごとき、何といっても私はこれは日本としてもう防衛、ある程度といいますか、日本としてはもうこれで大体満足な防衛力を持ったと、こういうふうに早く持ってきて、そうして防衛分担金も、それであるから防衛分担金などはもうよしてもらいたい。こういうことになれば、これは少くともグレーター・ミューチュアリティの意味を持ち得ると私は思いますので、私の腹案はないと申し上げたのは、何も私は全然考え方を持っておらぬという意味で申し上げたというわけでも実はないのでございますが、少しはそういう点は儀礼的にも御了承願いたいと思います。さような意味でもって、これは少しでも片手落ちのないように日本も防衛力を充実してきたのだ、こういって、そうであるならば、一つ地上軍ぐらいは引き揚げてもらいたい。そうすれば行政協定も、相当そこに改善する余地があるかもしれない。グレーター・ミューチュアリティの一つ精神でもって改訂していきたい。もしくは新しい見地でこれを進めていきたい。そこでこれはそういう意味で、私は、これはアメリカの人によく了解をさせなければなりませんということを言います。政府だけではいけません。そうですから機会あるごとに私は今までのような何でなくして、一つアメリカ側も、日本側の十分に一本立ちになっておることを認めて、一つ双務的に考えを直してもらいたいということを絶えず言って、新しい傾向に向ってもらいたいということを言ったのでございます。それは一つその言葉を今法律的に解して双務的でない、双務的という意味ではないじゃないか、双務的というのはこういう意味ではないかと言われれば全くその通りであります。その通りでありますが、私の意味はそういう意味で、アメリカの世論をそこに起して、幸いアメリカ人は、それはもっともだと言ってくれる人が多いのでございます。おそらく政府もそういう考え方を持って、将来私は安保条約、駐留軍の問題その他について、日本側の希望するところも相当私は理解を持って処理するように、してくれるんじゃないかという希望を持って帰ったわけであるのであります。  国際連合加入も、将来のそういう理論的な問題はお話しの通りでありますから、それが問題になりますときには、憲法問題までも十分に一つ御討議を願わなければならんと私はこう考えております。しかし今の問題はそういう憲法をどうするとかという問題に入る前の問題で、差し当って今の日本の置かれた片手落ちのこの何を、一つできるだけ有利に日本のために改善をいたしたい。そのためには日本の地上軍ができたという立場をもって、これを処理していったならば、非常に有利であろう。より一そうミューチュアルな格好に取り組んでできるであろうと、こういうことを希望して、それの実現にこれから尽くしたいと、こう思っておるのでございます。
  29. 佐藤尚武

    ○佐藤尚武君 いや、外務大臣の御説明を承りまして、るるお話しがございましたが、率直に申しまして、私はわかったようなわからなかったような感じなんです。これはエチケットに反するかもしれませんけれども、どうも私はそういったような感じを持たざるを得ないのであります。  今のミューチュアリティの問題に関しましては、アメリカ側に言い足したが、実ははっきりとした腹案としたものはなかったと言われましたから私は申し上げたのであって、しかし今の御説明によると、いや、考えは持っておるのだというお話し、もしそうでありますといたしますならば、それはけっこうなことでありますが、ただ引証されました防衛分担金の問題を削減するとか、あるいは全廃するというようなこれは、どうもミューチュアリティの問題の中に入らなかったのじゃないかということを私はおそれるのでありまして、どうも私は外務大臣のように英語に堪能でありませんから、ミューチュアリティという問題の本当の意味はどういうものかわかりかねますけれども、先ほど申し上げましたように、私は行政協定に不都合な点があるならば、それは改訂さるべきである。またこの問題についてはいろいろ国論が沸騰しておる点もあるから、それはお取り上げになるのは今の防衛分担金の問題もそれでありましょう。しかしながらこれは行政協定をそういうような点において改訂するということであって、何もアメリカと双務的に何か協定をするというような、双務的な精神でもって行政協定なり安保条約なりを取り扱うという問題とは違うように私には了解されるのであります。しかしながらこの問題はこれは他日の問題でありまして、政府においてもこれから研究を進められるのでありましょうし、また私といたしましてももっともっとこれは掘り下げて研究をしてみたいというようにも今考えております。  先ほど言い残したことが一点ございまするが、今のそしてまた外務大臣は過般あたかも今度の日米共同声明と国際連台の憲章と何か関係があるかのような話を申し上げたというふうにお取りになった模様でありまするけれども、そうではなかったのであって、ただ海外派兵という問題は、今度の共同声明からは出て来ないという点が一点、私の了解によりましても……。しかして海外派兵の問題は、すでに国際連合憲章の中にそれが予定されておるのだということが一点。従って国際連合に日本が加盟を申請するくらいでありますならば、海外派兵の問題は、そんなに飛び立つほどびっくりする問題ではないということが他の一点であります。それを申し上げたかったのでありまして、そうしてまた、よしんば、他日どういうふうなことになるかもしれませんけれども日本心配したごとく、この共同声明からして、日本が西太平洋における安全維持の責任を分担するということになったと仮定いたしまして、これは仮定の問題であります。そうではないということに御説明でもなっておりますし、私もそう思いますが、よしんば、そういうふうな責任を分担するとかりにいたしましても、その際には、日本とアメリカとの間にりっぱな協定ができなければならぬ。その協定は憲法の規定に従って国会によって批准されなければならない。であるから、国会としてはこれをチェックする機会を十分持つわけであります。それは国際連合憲章の海外派兵の問題、つまり集団安全保障の問題に対しましても、国会が憲法上の手続によってチェックすると同じだけのポシビリティー、チェックの可能性はあるわけであります。その点を申し落しましたので、一言つけ加えさしていただきまして、まだ時間がございますけれども、私の質問はこれで終ります。
  30. 重光葵

    国務大臣重光葵君) ありがとうございました。
  31. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) これで午前の委員会を閉じたいと思います。  こういうような行き方で行きますと、予定の時間に十二分しか余りません、食事は抜きで……。そこで、ここで食事のために二十分費すといたしまして、一時十分前にお集まりを願いたいと思います。  それでは休憩いたします。    午後零時三十三分休憩    ――――・――――    午後一時一分開会
  32. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それではこれより午前に引き続いて外務委員会を開きます。
  33. 羽生三七

    ○羽生三七君 独立の完成という外相の意図は私は正しかったと思います。しかしはなはだ失礼な言葉でありますが、惜しむらくはその独立を完成するための主体的な条件や国際的背景について見落すところがあったのではないかと考えられます。私これからお尋ねしたいのは、日米会談の発展いかんでは日本国民の運命に重大な影響を与える事態が起ることも予想されますので、この際問題を明らかにしておきたいと思うのであります。  また私はこの日米安保条約の改正問題に関連して外務大臣海外派兵などを簡単に約束したとは考えません。またそんなことを信じたくもありません。しかし現在の日米安保条約を双務協定的なものに改正しようとすれば、約束をするとしないとにかかおらず、海外派兵の問題に必然的に突き当るのではないかと考えるのであります。それで、この問題はたまたま重光外務大臣が今度の渡米で突き当った問題であるというに過ぎないので、どの内閣が、あるいはどの外務大臣が問題を処理されようとも、必ず私はぶち当る問題であろうと思います。だからその意味で本委員会を通じて問題の所在を明らかにしておくことは、遠い将来の問題だと政府あるいは外相が言われておるかも知れませんけれども、しかし私はやはり日本国民の将来のためにも、この際事態を究明しておくことがきわめて喫緊の要務であろうと考えるわけであります。そこでお尋ねの要点を申し上げますというと、海外派兵を伴わない、そういう双務協定というものはどういう形のものか、まずこれを最初にお伺いしたいと思います。どういう形を想定されておるか、海外派兵義務を伴わない双務協定とはいかなる形を想定されておられるのか、これを最初にお伺いしたいと思います。
  34. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私は日本の国土を守ることについて、日米が共同して責任を負うということについて双務的になり得るとこう考えております。
  35. 羽生三七

    ○羽生三七君 それならば現在の安保条約もそのことに少しも変りはないわけです。日米双方協力して日本の安全を守るということになっておるのです。ただ日本はまだ自衛力が弱いから、当面基地を提供し、外国軍隊の駐留を認めるということで片務協定ということを言われるわけです。従ってもし双務協定ということになるならば、先ほど佐藤委員が指摘しましたように、必ず日本義務を伴わない双務協定というのは一体どういうものであるか、私と佐藤委員とのお尋ねする観点は違うかも知れませんが、しかし意味するところは同じだろうと思います。日本義務を伴わない、しかも派兵の義務も何もない双務協定というものは一体どういうものでしょうか。
  36. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 日本義務を伴わんのであります。日本の国土を防衛するということは双方の、日米の責任であり、これは希望であるという建前になっておるのでありまして、それについて日本側もアメリカ側もともに義務を負うわけです。これはでき得ると思います。今のはそうじゃないのです。今のは、日本は軍隊を持っておらん、それでアメリカが日本の防衛の義務を負うという建前でできておる、これはかえなければいかん、一体そういうことはかえるということを希望される御意見じゃなかったのですか、そういう御意見は十分伺い得たと私は思います。
  37. 羽生三七

    ○羽生三七君 私はこの委員会を通じて外務大臣の渡米前もしかも数回にわたっていろいろ意見を申し上げたことはあります。しかし私は主として行政協定の改訂について、私これはあとから少し詳しく意見を述べたいと思いますが、行政協定の改訂について主として外務大臣に要望したんです。私は安保条約はわれわれの立場からいえば好ましくない、ただ対等のものということになれば必ず双務協定になる、双務協定になれば必ず義務を負う。今負っておる義務は先ほど申し上げたように基地提供と駐留軍の駐留、米軍の駐留という義務なんです。だからそれ以外の新たなる双務協定により付加される義務とは、そもそも何であるかということになると、先ほど、くどく申し上げますが、佐藤委員の指摘されたと同じ問題にぶつかると思う。そこで先ほど外務大臣は片手落ちを直す、今の日米安保条約の中にある片手落ちの点を直すと言われましたが、片手落ちの点ということになりますと、どういうことになるんでしょうか。何が片手落ちになるのか、アメリカ軍隊におってもらうということが片手落ちになる、それではアメリカ軍隊に撤退してもらう、そうすると撤退してもらうだけならいいが、さらに今度新らしく日米共同声明においては西太平洋に対する責任の分担を私は付加せられておると思う。声明でありますから拘束するわけではありませんが、しかし外国の侵略に対して自国を防衛するのは、立場は違っても自国の義務でありましょう。しかし西太平洋の安全保障に日本責任を分つということになれば、向うにも出てゆかないで責任を分てるはずはないのですから、当然私は日米行政協定意味するものは、今はともかく、将来は必ずその方向を指向しておる結果になると思いますが、いかがでありますか。
  38. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 将来日本が自衛力を充実して、そうして十分独立を完成したのちにどういう条約をこしらえるかということは、私は将来考えるべき問題だと思います。しかしながら今はいわば独立完成の途中にある、しかし日本は少くとも地上軍は相当できておる、できておる以上は、日本の国土防衛についてアメリカだけにこれを防衛してもらうという仕組みのことは改めて、少くとも地上軍は日本で防衛をする、まあ空軍とか海軍とかいうことは、これはまだ私はなかなか容易じゃないと思う。日本の国土を守る上において双方の責任を分ち合うということは私は考案としてでき得ると思う。そうしてそれがために防衛分担金の問題等をも日本の有利に解決をすることは考案ができ得ると思います。私はこれをやりたいと思う。それは私は今日本人の希望だと考えておる次第であります。
  39. 羽生三七

    ○羽生三七君 私は今度の日米共同声明で、単に西太平洋に対する安全の維持以外にも、私いろいろ意味するものがあると思うんです。たとえば日本の自衛力の増強に応じて米駐留軍が漸減的に撤退をしてゆく、そういうことが一応今までの議会の論議で明らかになったわけです。ところが今度は日米共同声明の中には、さらにアジアにおける関連した事態を考慮しつつ米国の地上部隊を漸進的に撤退させる、こういうことになったわけです。そうしますと、単に日本の自衛力の増強だけではないんです。アジアにおける関連した事態――あるいは台湾がどうとか、あるいは朝鮮がどうとか、あるいはどこがどうとか、そういうアジアにおける諸外国の動きいかん、それを考慮しながら米地上軍の撤退も考えるというのでありますから、新しい問題がここに出て来たわけです。でありますから、西太平洋に対する日本の新しいこの共同責任の問題と言い、さらにアジアにおける関連した事態を考慮して、米国が地上部隊を撤退させる、こういう問題と二つを考え合せますと、これはもう従来の消極的な意義以外に何らかの積極的なものを意味するのではないかと考えられます。この問題はどういうふうにお考えになるのでありますか。アジアにおける関連した事態を考慮するということは……。
  40. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それは私は当然のことだと思います。アジアにおけるアメリカ軍を撤退する場合において、今何のためにアメリカ軍が日本におるかというと、直接、間接の侵略がある場合に、これに対して用意をするために、防禦するためにアメリカ軍がおるということははっきりしている。さような直接、間接の侵略があるという事態を考え、またそれがいかにそういう事態が変化するかということは、アジアの事態が変化することだと私は考えます。これは当然のことだと思うのです。
  41. 羽生三七

    ○羽生三七君 そうなりますと、アジアの事態がアメリカが見て好ましくないと考える限り、日本の自衛力の増強があっても、必ずしも米駐留軍の撤退ということにならないのです。アメリカが好ましからざる事態がアジアに存在しておると解釈すれば、日本の自衛力が増強されても撤退しなくてもよろしい。だから十五万を十八万にすれば、あるいは二十万にすれば、そのときにアメリカが撤退するかというと、それはアメリカが考えてノーマルだという状態のときだけです。アメリカが考えてみて、これは好ましからざる事態であると考えれば、これはそのまま駐留できるわけです。だからこれはそのまま日本の自衛力の問題とは全然別個に私は制約を受けておる点があると考えますが、それはいかがですか。
  42. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それは私は非常に非論理的だと思います。日本の自衛軍備が何のために必要であるか、アメリカとの共同の防備が何のために必要であるかというと、これは直接、間接の侵害に備えるためであるから、これは当然日本の自衛軍備というものは、そういうものを考慮して自衛軍ができたに違いない。そういうことがなくなって、初めて自衛軍備もしくはそういうことを考慮して自衛軍備が増強されてしっかりしてくれば、どういうことになるかというと、そういう事態は危険は少くなると私は思う。だから同じことだと思います。それはさように、しいて議論をされなければならぬ理由は一体どこにあるのですか。
  43. 羽生三七

    ○羽生三七君 しいてではない。それは外相の方がむしろ非論理的で非常におかしいと思うのです。たとえば自衛力をどの程度まで増強すれば米駐留軍が撤退するという目安がなければ、アメリカの判断でいつまでもおられるでしょう。それはもう当然出てくる結論です。
  44. 重光葵

    国務大臣重光葵君) いや、それはそういうことはない……。
  45. 羽生三七

    ○羽生三七君 いや、それは論理的にそうなります。それは外相の方が非論理的ですよ。
  46. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それは実際問題としてそうむずかしいことではないのです。それはすぐ解決しますよ。
  47. 羽生三七

    ○羽生三七君 私はむずかしいことではないと思いませんが、問題はそうすると、日本の派兵の義務を伴わない双務協定、そういうものは実際にできるのですか。できるとすればどういう形か。たとえば基地だけを提供して派兵の義務は全然負わない、しかもそれが片務的でなしに双務的で対等な意味でと、そういうようなものが、どこかの国にそういうケースがありますか、あったら教えていただいて、これは私の個人、社会党の主観だけではない。どの内閣であろうが、どの外務大臣でもぶつかるであろう問題だと思うのですが、だから私はここで問題を明らかにしておくことは緊要だと思いますので、そういうケースがあったら一つお示し願いたい。
  48. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それは私はあり得ると思う。
  49. 羽生三七

    ○羽生三七君 たとえば……。
  50. 重光葵

    国務大臣重光葵君) たとえば、しかしそのケースを今私ちょっと申し上げる先例を記憶しておりません。しかしながら、派兵の義務を伴わなければ双務的観念が入らない、こういうことは私はないと考えます。日本の防衛ということについて双務的の考えはあり得ると思います。それじゃアメリカが日本に来ているのだから、日本向うに行かなければ双務的でない、こういう議論だ法理的に立て得るかと思います。それは私は否定しません。しかしながらそういう意味でない双務的ということは考えられると思います。日本だけが、アメリカだけがやらなければならぬ、こういっても、日本も自衛軍備ができているので、十分にこれを活用してそうしてやる。たとえば地上軍は日本がやる。海軍、空軍は、日本もやろうけれども、主としてアメリカがやる、これも私は双務的な一つ考え方だと思います。いわんや防衛分担金のごときものは、よほどまだ処理していかなければならないと考えます。
  51. 羽生三七

    ○羽生三七君 今たまたま外務大臣が防衛分担金の問題に触れられましたが、私はその何か新しい義務を付加されたような形の双務協定を結ぶということでなければ、現在のままであるならば、むしろ安保条約の問題よりも当面する行政協定に多くの問題があると思う。だから私は委員会で外相にしばしば要求しまた希望を述べたことは、行政協定の中の基地問題第三条、補償の問題十八条の3、それから防衛分担金の問題二十五条と、こういう現実的な問題を解決することこそ私は外交の何といいますか、生きた外交になるだろうと考えて、あえて安保条約の問題に触れずに、行政協定の問題を渡米前の外相に御努力を希望したわけです。ところがたまたまこれはあとからお伺いしますが、外相はこの問題に触れられたかどうか知りませんが、安保条約に触れられた。そこでもう一度申し上げますが、私はもし新しい形でこの双務協定にする安保条約というもの、安保条約を双務協定にしていく場合、さらに発展すると、何か私は一種の軍事同盟的なものになるのではないかという感じがするのです。これは攻守同盟というような積極的な意味じゃなくても、外相自身も言われたように、何にもこっちは義務を負わずに向うだけは何かの援助をする、こっちだけは義務を負わない。私は立場は違いますから、勝手に評論ができますが、政府立場においてはそういうことがあり得るのかどうか、これをぜひ一つ明らかにしていただきたい。
  52. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 今のはちょっと……
  53. 羽生三七

    ○羽生三七君 もう一度繰り返します。つまり向うからは、事があれば日本に援助にくる、日本からは向うに対して援助をする義務を負わない。そういうものが、単に自衛力増強以外に、そういう何も義務を負わないというような形での双務協定なり、あるいは集団安全保障というものがあり得るのかどうか、これはぜひ明らかにしていただきたい。何にも義務を負わない……、
  54. 重光葵

    国務大臣重光葵君) ちょっと私まだよくつかみかねますが、私の申すのは、現状において米国側だけが日本の防衛ということに当る建前になっているのは、日本の自衛軍備ができたときには、これは当然のこととして日本のその状態を認めて双方の責任においてこれをすべきだ、こういう考え方なんですね、しかしそれが同盟に進むとおっしゃいますが、同盟に進むどころではない。今日米の関係日本の国防をアメリカにやってもらっていると、これは何と申しますか、おそらくそういう方面においては同盟よりもより深い深刻な形になっていると私は思います。そうでないでしょうか。これはやはりそういうことから離れて、双方の立場をでき得るだけ平等な立場に置いてすベてやっていくということが、私は日本としては最も望ましいことだと考えます。
  55. 羽生三七

    ○羽生三七君 これは私自身ももっと大いに研究していかなければならぬと思いますが、外相からもうちょっとやっぱりはっきりさしていただかなければならぬと思う。というのは、今日本の自衛力を増強するだけが日本義務だとこう言われました。だから自衛力が足りない、持っておらないということでアメリカ軍が日本におるわけです。ところが自衛力が伸びていけばアメリカ軍は撤退するわけですね。そうすると、何の協定が残りますか。そうでしょう。日本に自衛力ができれば、漸減的にアメリカ軍が撤退するというのでしょう。そうすればどういう協定が残りますか、双務協定……
  56. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それはその点は、私は今の言われたことだけならば、その通りだと思います。これはだんだんして日本が空軍までもできる。海軍までもできれば、もうこれならばアメリカ軍の何もかもなくなるのです。しかしそれはまあ当然そうなります。それだからそのときは私は何だけでいいと思います。自然になくなれば協定も何も要らぬわけだ。しかし私はそこまでいく間に、実は防衛分担金の問題も大いにしておきたいし、その他の問題も、できるだけ行政協定もお話しのように、そういう趣旨によってアメリカの地上軍もなくなれば、行政協定なんというものはよほど形の違ったものになるし、また実際的にそうなります。そういう工合に事態を持ち来たしたいというのが私の考え方であります。
  57. 羽生三七

    ○羽生三七君 そうすると、こういう問題になりますよ。外務大臣はあるいはお気付きになっておっても、そういうことを表明されておるのかどうか知りませんが、たまたま外相が安保条約の改訂、しかもそれは対等な日本の独立の完成をそこに見つけようと、そういう非常にいい意図で考えられたのです。ところが今外相が触れられたのは、全部行政協定内容です。防衛分担金は二十五条なんです。その中に、安保条約の中に出てくる各条項を見ても、今外相が言われておるようなことは一つもないのです。だから今安保条約の中にある問題は、アメリカ軍が日本の自衛力ができ上るまでここにおる。日本の自衛力ができるまでは、日本が基地なりをあるいは提供するということでしょう。そうすると、それを今対等という場合には、今私が先ほど申し上げたように、何らか新らしい義務が付加されない限り、何ら対等の条約ということは起らないでしょう。行政協定だけの関係なんです。
  58. 重光葵

    国務大臣重光葵君) わかりました。あなたの言われるところは行政協定を改善すべきだ、それで事足りるのじゃないか、こういうことに帰着するのだと思います。(「方向は大体そうだ」と呼ぶ者あり)
  59. 羽生三七

    ○羽生三七君 いや、いや、そうではないのです。行政協定はもちろんやってもらわなければならぬが……。
  60. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それでよろしゅうございます。行政協定で安保条約のことじゃない、行政協定のことをよく考えてアメリカへ行ってもらいたい、こう言われたと、なるほどそうでしたろう。しかし私はもうそ関係は行政協定も安保条約も密接不分離のものだという考え方でおったわけです。というのは、行政協定も安保条約から出てきたわけですから、それですから、私は安保条約について、アメリカ側の考え方を私の言うように是正してもらえば、行政協定もおのずからこれはそれによって是正ができると、こういうぐあいに考えておるのであります。そこで行政協定を、私はそういうことを私の言うように改訂すればいいじゃないかというお話しについて、私は決してこれをいなむものではありません。そういうふうに考えております。そうすると、ある場合においては新たなる取りきめになるかも知れない。しかしそれはそれでいいのであって、新たなる取りきめにしてもそれはそれで少しもかまいません。
  61. 羽生三七

    ○羽生三七君 私は行政協定だけを改正すれば安保条約はどうでもいいというのではない。安保条約をとにかく対等なものにするために、声明書にもある通り、対等というのはどういうことなんですか。具体的に言えば、条約的にどういう項目を条約にうたおうとなされるのか。そういう構想もなしに、ああいう国際間の規律をやる声明をなされるということは、私は非常な冒険だと思います。必ず構想がおありになると思う。
  62. 重光葵

    国務大臣重光葵君) いや、その御批評は非常にありがたいのですが、しかし私はこれは繰返して申しますが、これはアメリカだけが守るという、これをこれから改正して、日本も自衛軍ができて、地上軍ができたという建前で一つその責任を分つ、これがグレーター・ミューチュアリティの考え方であるのであります。それでいいじゃないですか。それでそれはできると思う。
  63. 羽生三七

    ○羽生三七君 そうすると、もう一度繰り返してお伺いしますが……。
  64. 重光葵

    国務大臣重光葵君) しかし、それはそういうことをしては悪いのでしょうか。私はいいように思うが、悪いのでしょうか。
  65. 羽生三七

    ○羽生三七君 いや、私は立場は違いますが、今の民主党内閣重光外務大臣のもとにおいて、派兵の義務を全然負わない双務協定ができるというなら、立場は、私たち社会党は安保条約反対ですから、立場は違うが、今のそれは保守なら保守の立場においてそれは非常な成功だと思うのです。それはできますか。できればぜひそれは外相の努力でそれをやっていただきたい。それは非常な国際的妙手だと思うのですが、やっていただきたい。
  66. 重光葵

    国務大臣重光葵君) そこで、それは私の言うのは、条文にして第一条から第何条まですっかり私にあるというわけじゃないかということを先ほども申し上げたのであります。しかしながら、こうやって議論を拝聴しておるうちに、だんだんとそれが固まって、いい何か構想が浮ぶということを私は信じて疑わない、それはもう……。しかし輪郭は今の輪郭で私は尊重していきたい。それからまたこれをしいて双務協定という言葉で定義をするしないはこれは別です。これは実際外交は現実の取引でありますから、その取引で少しでも有利な取引をやることは当然だと私は考えておる。それをやらしてもらうのに御異論が私はあるのが不思議だと、こういうことなんです。しかし御異論はないようです、実際。
  67. 羽生三七

    ○羽生三七君 いや、これはどうももっと問題を整理していかなければいかぬと思うのです。結局対等の協定に直す、今は片手落ちだとさっき外相は繰り返して言われた。片手落ちだから直してやると言われた。そうすると、どこが片手落ちかというと、アメリカの軍隊が日本におるということが片手落ちということになるわけですか。
  68. 重光葵

    国務大臣重光葵君) そうです。
  69. 羽生三七

    ○羽生三七君 そうすると、アメリカ軍隊の撤退ということですね。
  70. 重光葵

    国務大臣重光葵君) いや、撤退ということにはならない。たとえばですな……いや、そうです。撤退ということです。私は地上軍の撤退ということを意味しておりました。地上軍の撤退を意味しております。地上軍が撤退をすれば、よほど違ってきます。
  71. 羽生三七

    ○羽生三七君 そうすると、外相の頭の中にあるものは、アメリカの地上軍は撤退する、それに見合う日本の陸上部隊をふやす。それで空海はできればアメリカにまかして、それで日本の地上部隊にアメリカの空海を加えた一種の軍事同盟と言っても変ですが、何かそういうものを想定されておるのではないですか。
  72. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 軍事同盟というか何か知りませんが、今よりもよほどそういうことは日本の独立の完成という方に向い、かつまた利益になると私は考えております。しかしそれは軍事上の知識なり何なり、これをよほど打ち固めて、その事態を検討してみないというと、私は成案はなかなか出るまでには検討を要する、こういうことを申し上げておるのであります。
  73. 羽生三七

    ○羽生三七君 私は国際法上のことをあまり知らないので、これは先輩の御列席の委員にむしろ承わりたいと、しょっちゅう思ったことなんですが、何か特別の除外例というものを設けられぬ限り、何も義務を負わないというような、そういう新しい意味協定というものはできるのか。それから今の安保条約そのものを直していくなら、今おっしゃったように、アメリカ地上部隊は撤退する、空海はまかせると、それだけのことなんですね、せんじ詰めるというと。外務大臣考えられていることをぐうっとせんじ詰めていくと、アメリカ地上部隊の撤退を期待する、日本にそれに見合う地上部隊をふやす、空海をアメリカに頼んで。この組み合せですね、日本の治安を守ると、こういうことが対等というのか、片手落ちを是正すると言われるのか、そういうことなんでしょう。
  74. 重光葵

    国務大臣重光葵君) よほどそれは片手落ちを是正するということになると思います。しかしそれもそう実際問題として何もかもきれいさっぱりに私はいかぬと思うのです。たとえば空軍といったって日本はこれから若干の空軍をこしらえるのです。それから海軍だって当然りっぱな海軍はないのです。だから何もかも、海軍と空軍は全部アメリカで、地上軍は全部日本で、こういうわけにいかぬと思いますが、そこは専門家の知識でいろいろなにしていくといい案がだんだだん出てくると私はそう思う。
  75. 羽生三七

    ○羽生三七君 これはかりにそういうことが起ったとしても、それは私は国民感情上の問題で、アメリカ地上部隊が撤退するとかしないとかは条約基礎にはならぬと思う、そういうことは。それは地上部隊であろうと、空軍であろうと、海軍であろうと、私は意味するものは同じことだと思う。だからそれは条約的にそれが対等になったとか、平等になったとかそんなことにはならぬと思いますが、これは何としてもこれ以上やりましても、外務大臣がそういうことを考えておらないのだと言われれば、これはやりようがないので、あとの他に控えられている委員あとの問題をこれは徹底的に追及する。追及するというよりは、外相を追及するのではなくて、問題を究明する。どの外務大臣であろうとぶち当る問題であろうと思う。
  76. 重光葵

    国務大臣重光葵君) ほかに御意見があればさらに伺いたいと思います。
  77. 羽生三七

    ○羽生三七君 これは時間があったらもう少し繰り返しますが、その前に時間が迫っているのでもう少しお伺いしたいことは、東京会議はいつおやりになりますか。
  78. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 東京会談……。
  79. 羽生三七

    ○羽生三七君 日米会談です、東京に持ち帰って……。
  80. 重光葵

    国務大臣重光葵君) これは外交機関によって絶えずやる。会談といってこれは別に開くようなことはやるわけではないので……。
  81. 羽生三七

    ○羽生三七君 どういうクラスで……。
  82. 重光葵

    国務大臣重光葵君) クラスも何もありません。それは必要に応じてやります。
  83. 羽生三七

    ○羽生三七君 それから日米合同委員会との関係は。
  84. 重光葵

    国務大臣重光葵君) あなたの言われるのは、軍事上のことではなくて……
  85. 羽生三七

    ○羽生三七君 今度の声明の中にある日米会談……。
  86. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それは防衛当局を主にして考えております。そうしてそれは今後アメリカ大使と打ち合せをしなければなりません。その上でやります。これは主として、何というか諮問会議ですか、専門家を中心としてやりたいと、こう考えております。
  87. 羽生三七

    ○羽生三七君 非常に外相、残念なんです。持ち時間が少いためにこの問題を途中でほかに転換しなければならぬのは遺憾ですが、また日を改めて一つ聞かしていただくことにして、そこで次に伺いたい問題は基地拡張に関連する問題であります。現に砂川町でああいう問題が起っているわけですが、どうもいかに日米協力といい、閣議決定といいましても、外国の基地拡張に日本の警官が二千名も出て、そうして日本の民衆をああいう形で抑圧せねばならぬという姿は私は非常に情ない姿であると思う。そこで根本的な問題になりますというと、基地拡張が必要なんだ、滑走路の延長が必要なんだ、そういう判断が一体どこから出てくるかというと、私はやはりアメリカとの約束もありましょうが、国際情勢の判断であろうと思う。やはり国際情勢に、アジアに何らかの危機が存在しているというようなことから、アメリカの要請にもこたえなければならぬということであろうと思う。ところがきのう鳩山さんは記者団との会見で、軽井沢でこういうことを言っておりますですね。「大体今の世界情勢は、戦争の準備どころか、戦争をなくしたいという時代で、各国が互いに派兵して助け合うといった時代ではない。私は共同防衛のため共同演習をするような時代でもないと思う」、こう言っておられるわけです。私は実際問題として、この世界情勢を考えた場合に、軍備の拡張以外にもう祖国の安全という方式はないのだという立場をとられれば別ですが、その他にやはりいろいろな一国の安全保障を求める場合に、たとえば外交手段においてなり、あるいは他の条約協定なりで自国の安全を保障する。そういう立場に立てば、日米の関係を必ずしもそこなわなくても基地拡張に対する問題でアメリカと十分話し合いし得る余地があると思う。だから軍備拡張以外には絶対にいかなる場合にも問題を解決する手段がないのだという立場をとれば別ですが、そうでない限りは私は他の手段によって祖国日本の安全を守り得る道はあると思う。そういう立場に立てば、しかもアメリカが何もここ十日や二十日問題の解決を急がなければ日本の安全は守れないと考えておるわけでもないのですから、このような重大な問題を起し、しかも住民をああいう姿で押えつけて、しかも国民感情をそこない、ひいては日米の関係もよくなくなったというような状態のもとで砂川町の基地拡張を強行することは、これは私は政治にならぬと思う。だから私は国際情勢に対する判断は、外務大臣が君とおれとの見解の違いだと言われればそれまでですが、これでは私は政治にならぬと思います。もしか政府がもっと積極的に努力される、調達庁長官をつかわして幾日までに聞かなければすぐどうするのだという、そういうような高圧的なことでなしに、アメリカと直接、外務大臣が直接アリソン大使とひざを交えてこの問題について積極的に話し合いをする御用意がないのでありますか。きょうもあすこでみなが大きな騒ぎをやっておると思いますが、そういうことをいつまでも長く継続することはよくないと思う。お伺いいたします。
  88. 重光葵

    国務大臣重光葵君) お答えいたします。砂川町の問題を世界の平和の、世界情勢の問題にひっかけて、関連して御議論になりましたが、この問題はそういう大きな政治問題……大きなというか、そういう問題を離れて研究すべき問題だと私は考えております。むろん日本とアメリカとのこれは感情上の問題にもなるわけでありますけれども、日米の間において外交上の手段によって十分話し合いをするということは、これは異存のあるわけの問題ではございません。これはもう初めからそれでそういうことをやって、その後に今日のような状態になっておる。そこでそれを今すぐ大きな日米の全体の関係とか、世界の形勢がどうなっておるとか、そこに関連してこれを今考えるのは少し当を得ていないと私は考えます。この問題については十分にこれについて一般国民情理のおもむくところ、みなの納得し得るところによって、これは進んでいかなければならぬと、こう考えております。
  89. 羽生三七

    ○羽生三七君 だから、私は国際情勢に対する判断はこれは見解の相違になりますから、あえてこれについてはお答えを求めておるわけではないので、ただこれでは政治にならぬと思う。ほんとうの政治をやるというなら、調達庁長官にまかして、調達庁関係の者にお使いをさして、政府責任者は横の方で見ている、見物しておる。あるいは指令だけを出す、そういうことでああいう大規模な騒ぎを起してそのままに放置しておくということは適当でないと思う。前の米当局とお話し合いになったでしょうが、さらにこの問題についてもっと解決の道を見出すような努力をされる御意思があるかどうか、これを承わっておきたい。
  90. 重光葵

    国務大臣重光葵君) この問題は日米の外交問題を私は離れておると思います。もし日米の外交問題で問題解決に幾分かでも役立つという問題があれば、私どもとしてもむろんそれは辞するところではありません。しかし今日はその外交問題でなくして、すでに国内の問題となっておると一応判断をいたしております。しかし御趣旨のあるところは私は少しも異存はございません。私も全面的にいろいろなことについて努力をいたしたいと思います。
  91. 羽生三七

    ○羽生三七君 もう一つ最後に一点だけお伺いいたします。それは日ソ交渉の問題ですが、この外相の渡米と関連していろいろな動きもあるように、マリク全権もいろいろなことを言っておるように聞いておりますが、それは別として、とにかく外交は技術的に非常に、特にこういう国際間の平和条約の取りきめの場合には非常に技術的には困難であろうということは私も察します。しかし私はある程度国の実力とかあるいは誠意とか、そういう背景もあると思う。きのう鳩山首相は年内に妥結したいと思うと言い、それから続いて外務大臣は、外交交渉に期限をつけるのはこれは笑止千万だというお話があったのですが、しかし私は外相の御意見もわからぬわけではないが、マンデス・フランスがやはり期限付外交で成功したという例もあるので、必ずしも期限付のものは全部笑止千万ともならぬと思うのですが、内容的にどういう取りきめをしょうかというようなことは国際的な問題ですから私はここではお尋ねをいたしません。ただ外相にそういうような御発言があったのですが、ほんとうに取りきめをやろうという熱意を持ってやっておられるのか、今どういう段階にあるのか、それだけを最後に一言聞かしていただきたい。
  92. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 日ソ交渉の今日の段階はもう相当議論を尽したという段階にあります。そこでいわば非常に重要な段階になっておることは事実でございます。そこでこれを将来どう考えるか、そうして意見がまだ十分に合致しないことも事実であります。合致すればこれはすぐ交渉がまとまるわけであります。合致しない――これをどう取り扱うかということについては非常に慎重にやらなければならぬと私は考えております。そこでこの際は、特に私としては、外務大臣としての発言はいかなる場合においてもよほど慎重にやらないと、すぐ交渉の運命にかかわることになるのであります。私はこの交渉については少しも悲観も楽観もしないという態度は、今日もそういう意見でございます。しかし今すぐこれはまとまるのだということを言えば、その結果は何かと言うならば、日本が主張しておることを譲歩することを意味するのじゃないでしょうか。それからどうもこれはまとまる見込みがないと言えば、これはまた反対の結果を明らかに言うことになる。私は全体的の考え方としては、日ソ交渉はあらゆる努力をしてまとめたいと考えます。そのまとめたいという目的を達成するためには尽す手段が今日といえどもまだ残っておると、こう考えております。期限を切って云々ということは、私の新聞記者会見でいろいろ記者諸君からとっちめられて、私もそういうことを言ったんで、総理のなにとかけ合いで言ったことでも何でもないのであります。私はそういう信念を持っておる。交渉をやるのに期限付ということになったら、初めから何というか破壊する方面の力を余計使うことになる、これは私はやるべきことではないと思います。あくまで熱心に終局の目的を達するまで努力をしなければならぬと考えます。現在はそういう段階にあると思います。小し抽象的になりましたことはあしからず……。
  93. 羽生三七

    ○羽生三七君 まだ意を尽しませんが、時間の関係で……。
  94. 曾禰益

    ○曾祢益君 外務大臣は日米間の大局に関して隔意ない意見の交換をやられるという目的でアメリカに行かれたわけであります。一方においては国内において、ただいま羽生委員も指摘されましたように、砂川問題等に現われた日本国民とアメリカとの関係の紛争が起っておるのであります。さらにはこれも最近起ったことでありまするが、国府軍の将校を日本におけるアメリカの基地内で訓練をしておったという事実が現われたりいたしました。すなわち外務大臣が一方においては政府当局の話し合いにおいて日米間の国交をよくするという話をしておられる、そういう目的でやられておったのですが、一方においては、ただいま外務大臣は、これは砂川の問題のごときは外交交渉の段階を離れたと言われましたが、交渉の段階を離れたか離れないかは別といたしまして、日米間の非常に大きなまた好ましからざる問題となっているのであります。そこで非常に国民気持からみた日米間の関係をよくするということと、政府当局がやられたこととの間にズレが出てきているような感じが深い。そこでどうしてそういうズレができたかということを私たちは考えてみると、私はこの前の委員会におきましても外務大臣に申し上げたつもりでありますが、今度アメリカにおいでになったならば、この戦後十年間、特にサンフランシスコ条約ができたころの、従って日米安全保障条約ができたころの日本の情勢並びに国際情勢に非常に大きな違いが出てきている。従ってこの日米間の関係をほんとうに対等な協力関係にするというならば、この行政協定をいじくるのもいいでしょうが、もっと基本的に、日本をめぐる平和と安全保障というものについて、国際情勢に即応して新しい観点から一つ考え直すように、アメリカにも話していただきたい。これには中国の問題もありましょう。特に新しい安全保障の一つのいき方としては、いわゆる両陣営を含んだ集団不可侵及び安全保障の方式、いわゆる新ロカルノ方式といいますか、そういうような基本的な方向について大きな大局的な話をしていただきたい、こういうことを申し上げたわけであります。それについて外務大臣は、それも一つの構想であるが、情勢がそこまで必ずしも熟しておらないからと、こういうようなお話でありました。これは見解の相違でありましょうから、いたし方ありませんといたしましても、少くとも私たちの見るところでは、そういう大局から話を起していただきたかった。そうでなくて現象にとらわれて、早くアメリカの地上軍を撤退させれば防衛分担金も減るだろう、基地問題も何とか解決つくだろう、しかしそういう格好で話をしていけば、今日問題になっているような、いわゆるより対等な、より双務的な条約というようにかわれるとすれば、またそこに一つの新たな問題が出てくる。いわゆる不完全な独立状態を完全にするということについては、これは私は各党各派一致だと思う。ただ安保条約というものを日本の再軍備を強化して、アメリカの地上軍を帰して、そのあとの格好はいわゆる片務的なものから格好上対等にするという取り上げ方がいいのか、羽生君も指摘しておったように、基本的に安保条約というような態勢が解消するように、ただしそうかといって、日本の再軍備強化とかあるいは無防備、無抵抗主義の状態に走らないようにするにはどうしたらいいか、こういうような観点から問題を取り上げていただきたかった。  これは今から申し上げてもしようがありませんが、そういう観点に立って、今度の外務大臣のやってこられたことを考えてみますると、まず第一に、この防衛問題については、先ほど小滝委員からも指摘されましたように、とにもかくにも国会に対して説明されてなかった防衛六カ年計画が、アメリカには提出された。そういう外交は結局吉田、岡崎秘密外交のお株を奪ったような格好になってしまった。国民としてはそれは納得できない。それはさておき、この共同声明の中で今中心の課題になっているこの安全保障条約をより双務的なものに変える条件としてのこの西太平洋云々の問題について考えてみましても、まず第一にわれわれが、これは非常に外交のテクニックのようで恐縮ではありますが、これだけ重要な問題がなぜ英文のステートメントだけで作られたのか。これは当然に、外交官であり政治家であられる重光さんとしては、日本語で十分に読んでみて日本国民がどう受けるかという感じを十分に検討されてから、この共同声明をお出しになるはずであると思う。それが、あまりに英語にたんのうであられるからかもしれないけれども、少くとも自主独立の外交を言っておられるあなたが、英文だけで共同声明を作られたということは、新聞の報ずるところによると、河野一郎君が非常に憤慨したそうですが、これはたまには河野君が憤慨しても正しいこともある。(笑声)それは一体どういうわけで英文だけでお作りになったのか、まず伺いたい。
  95. 重光葵

    国務大臣重光葵君) これは初めから英語で、私の不完全な英語で交渉をいたしました。そうして英語で交渉して英語の結論を得たわけでございます。これは従来ともそういうことであって、これは何にも自主外交だとか何とかいうことに関係は私ないと思います。要するにその内容の問題でございます。
  96. 曾禰益

    ○曾祢益君 これはちょっと、しかし英文と日本語と解釈問題が現実に起っておるから特に問題になるのですが、しかし外務大臣のお言葉とも思えません。両国共同声明という場合に、日本文、その国の言葉以外の第三国語でやる場合はほとんどないと思いますが、日本文を使わない共同声明の例というのはあるのですか、共同声明の場合に。
  97. 重光葵

    国務大臣重光葵君) その点これはずいぶんあったと思います。われわれが書記官時代に仕事をしておったじぶんにはずいぶんございました。パリ会議だとかどこだとか、これは国際会議でございますけれども、それはこういう第三国語でやったこともございますし、それは私は何も関係はないと思いますが、しかし日本語でやっても、事実だれも日本語がわからぬところへ日本語を持ち出していっても、日本語のわかる通訳が向うにいても、これは日にちのかかることでお気の毒です。しかし共同声明、条約文ということならばこれは違います。御承知通り条約文となる以上は、これは正文の関係もありますし、これは対等の言葉でやるということになります。それからまた条約文に近いいろいろなアグリーメント、それからまた共同声明にしても、これはそういう際に双方の言葉でやるということがずいぶんございましょう。しかしそうでないからといって、それはそう重く見ないからでもございます、重く見ないからでもございますが、そういう両国の言葉でやらないからといって、対等でないということはこれは私は言えないのじゃないかと思います。
  98. 曾禰益

    ○曾祢益君 これはどうも今のお話ではちょっと受け取れないのですが、多数国との間の会談等においては、それは三国語なりだけでおやりになることもある。両国の、二つの国でやった会談、とりわけ重要なステートメントを、相手国の国語だけでやられたということは、ちょっと私としては例がないと思います。その点については私は非常に失態だと思います。しかしその形式論だけが問題ではなくて、実質的に最も問題になっておりまするこの外務省の訳文は、外務大臣は知らぬ、そんなものは知らぬとおっしゃいましたけれども、ここのいわゆる「日本が、できるだけすみやかにその国土の防衛のための第一次的責任を執ることができ、かくて西太平洋における国際の平和と安全の維持に寄与することができるような諸条件を確立するため」云々、この「かくて」なんという訳文はどうして出てくるのか。これはどう考えても非常に私は無理な訳文であり、あなたの留守中に外務省のやった訳文にはこんなことは書いてない。すなわち、共同声明をすなおに読めば、これは小瀧君が言われた通りであって、ここには二つの要件が書いてある。一つ日本がすみやかにその本土の防衛についての第一次的な責任をとる。第二には西太平洋における平和と安全の確保に貢献する、この二つのことが完全に並列してあるのであって、いわゆる外務省の最後の日本の訳で書いておるような、これは訳文だと言われましたが、本文ではない、訳文で言えば、ごまかしておるといっても過言でないと思うのです。第一の本土についての第一次的責任を負うということが、すなわち西太平洋に対する平和と安全の確保に対する寄与にもなるんだと、むりにそういう意味を出そうとして、英語で「アンド」と書いてあって「ザス」が入っていないのをむりやりに「かくて」と入れられておるのは明瞭と思う。なぜそういうことをしなければならぬか、そういうことをしなければならなかったそのことはすぐ次にありますように、こういう諸要件が整って、初めて今さっきからいろいろあなたがおっしゃっておられるより相互的な、相互性の強い条約に安保条約がかわる、安保条約がかわるのにはこの二つの要件が整わなければならなかったのだ、そういうことに事実上合意されておる。だからこの訳が非常に決定的に重要だということになるわけです。そうじゃございませんか。
  99. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 実は私はこの訳文のことは私関係しませんから知りませんが、しかし今伺うところによってこれを判断してみてもですな、別にそういう問題となるように考えておりません。第一「かくて」という字があるからいかぬという、「かくて」でなくてもいいですよ(笑声)「かくて」でなくてもいい。(「内容が違って来る」と呼ぶ者あり)内容が違やしない、「アンド」なら、その「アンド」がほかの訳文でいいというならほかの訳文でもいい、原文は「アンド」になっている、何のことはないじゃありませんか、アンドということは、それがどこがいけない、そういう第一次的責任をとることができて「アンド」、だからそれが全然並列といっても、同じ意味になると思うのですね。そういうことができて、そして太平洋上の国際の平和安全の維持に寄与する、私はそれが……、
  100. 曾禰益

    ○曾祢益君 外務大臣の御答弁はどうもはなはだ失礼ですけれども誠意ある御答弁と思いません。しかし私は訳文のよい悪いが中心ではなくて、英文で読んだこの意味ですね、これはどう考えても安保条約がより双務的な条約にかわるところの要件は二つあり、それはただ単に日本の本土の防衛に対する第一次的責任を持つだけでなくて、そのことによって云々というのではなくて、別に西太平洋の平和と安全の確保に寄与し得る、それだけの準備がなくちゃいけない。こういうことになると思う。これはどう考えても、そこでです、先ほど来問題になっておる。然らば西太平洋の平和安全の確保に寄与する条件を整えるということは一体どういうことになるのか、ここでは。
  101. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 自衛軍をこしらえて、そうしてなにをやるとここに書いてあるじゃありませんか。
  102. 曾禰益

    ○曾祢益君 それは違います。それは第一の要件。それじゃ外務大臣、一体安全保障条約で何のためにアメリカ軍は駐留しているんですか。一つ日本の防衛、いま一つは極東の国際平和と安全の維持ということは書いてある。
  103. 重光葵

    国務大臣重光葵君) だからここにちゃんと書いてある。
  104. 曾禰益

    ○曾祢益君 そこで安全保障条約が死ぬといいますか、終結する条項がありますね。第四条、これをごらんになれば、私はこれを一々読み上げなくてもおわかりだろうと思うのですけれども、要するに日本附近、日本地域です、日本地域について国際連合が十分な安全保障ができるか、あるいは個別的あるいは集団的な安全保障体制ができ、これで大丈夫だと両国が認定したときに、安全保障条約が死ぬということになる、そうでしょう。そこで安全保障条約はこの趣旨からいえば、先ほど小瀧君も指摘されたように、アメリカ軍がいることは、日本の安全保障だけではなく、彼らが見た極東の国際平和、安全の保障という意味もあって駐留しているのだ。安全保障条約を殺す条件といっては語弊がありますが、これは日本附近の、日本地域の安全について大丈夫だということになれば、これは安全保障条約がなくなるということになっておる。それは西太平洋のことまで書いてやしないのです。
  105. 重光葵

    国務大臣重光葵君) これは西太平洋というのは日本のいる地域のことですよ。
  106. 曾禰益

    ○曾祢益君 それは違いますよ。日本地域ということと西太平洋、極東とか何とかということは、それは地歴的な観念として常識上違うじゃありませんか。日本地域ということはどんな広く考えたって沖繩とか小笠原の程度であって、西太平洋と極東というものと日本地域というものと同じだということは、あなたどういう根拠を持っておっしゃるのですか。
  107. 重光葵

    国務大臣重光葵君) いや、それは私は同じだとは言いません。
  108. 曾禰益

    ○曾祢益君 違うでしょう。
  109. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 言葉が違うから違うことはわかりきっているはずです。(笑声)しかしこれは西太平洋というのは、それじゃどこからどこまでで、東経何度で、西経何度で緯度がどうで、そういうことじゃない。政治的に見て、太平洋の西の部分だと、こういることなんですよ。極東ということも、イギリスから見て極東といえば、昔は日本と支那ということにしょっちゅうなっておった。われわれの東亜というのは何というかというと、いつもシンガポールからべーリング海峡までだと私どもは今まで言っておった。これはしかし何も地域をそこにするのじゃない。日本のおる地域について、その地域一般のことについて平和安全を確保するように努力をすると、こういうことで、政治的の言葉にこれはなっておるわけであります。
  110. 曾禰益

    ○曾祢益君 日本本土でいいんですよ、初めのほうにある……。
  111. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 日本地域ということは、日本本土ということですか。
  112. 曾禰益

    ○曾祢益君 ちょっと違いますが、そのはうがまだ狭いですよ。シンガポールからべーリング海峡まで入れたのじゃ目も当てられない。
  113. 重光葵

    国務大臣重光葵君) その地域じゃないです。そこで日本を中心としておる西太平洋の区域と、こういう政治的のこれは言葉の表現であって、そこに日本は世界の平和について貢献したいと思っている。東亜の、西太平洋の平和について貢献したいというのは当然のことだと思います。
  114. 曾禰益

    ○曾祢益君 先ほどそれに関連して、はなはだ失礼ですけれども、佐藤先輩が言われた、この終りのほうにありまする「日本はアジアの大国として、アジアの安定と平和とに貢献する」、これだったらだれも反対ないのです。問題はそうじゃないのです。問題は日本の防衛に関連した問題です。しかも平和と安定じゃないのです。これは安全保障、これについては当然にしかも安保条約にかわるものですから、日本の防衛分担の義務日本地域にあるか、西太平洋までゆくのか、これが海外派兵云々を起す前に、日本の一体防衛分担区域は何であるか、そんなことが不明確になるようなことで、こんな共同声明を出されたんじゃ、これは国民が迷惑です。ですから、あなたがおっしゃるのは、いくら言ってもわからないのですが、本土の防衛に当る防衛力ができればそれでいいのか、その結果が同盟国みたいなアメリカの西太平洋における負担を軽くする結果になるのだから、それだけでいいのか、それとも本土の防衛プラス非常な不明確な区域で、非常にその意味日本の本土は危険であるけれども、西太平洋についても何らか防衛の義務があるような双務的な条約ができるということの予定で、あなたはこの共同声明をイエスと言われたのかどうかということを明らかにして下さい。
  115. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それは繰り返し繰り返し言っているじゃありませんか。日本の国土を防衛する自衛軍ができるということが先決問題であって、そのことによってこの西太平洋における国際の平和と安全に寄与する、そういうことになって初めてそれができる、こう言っているわけです。
  116. 曾禰益

    ○曾祢益君 どちらが初めかということはわかります。そのことによってということは私にはわからん。そこで先ほど河野一郎君のすっぱ抜きについて話がありましたが、これはほんとうにより対等な双務的な条約ということを今言っておられるけれども、あなたは先ほど羽生君やなにかに対する答えとして、それは日本地域について日米が共同防衛すればいいのだと言っておられるけれども、河野君のすっぱ抜きによると、これほほんとうに双務的ということになれば、日本海外派兵のことをできますかというような話が出て、一体それは憲法の範囲内でできるかというような話まで出て、あなたはそれに対して明確な返事をされなかった。それが一つ。しかも第二には、この共同声明の案文で西太平洋ということに普及している点について、ダレス氏みずからそこまで言及したら、日本国内のほうでいいですかというだめ押しというか、念押しがあった。それに対してあなたのほうは、いや、これはより平等な、より双務的な性質条約になるという点が重要だから、西太平洋でもいいだろうといって、この案文ができたのだ、こういうふうに河野君は言っている。非常にこれは重大なことですから、これは外務委員会にも河野君を証人として呼んで、われわれは真相を確かめなければならない。しかし、それは別として、そういうふうな経緯は全然なかったのですか。なくてあなたの言っておられるようなことか。それともアメリカのほうで国務省当局が確かにこれは海外派兵の予約だということをしゃべったことが、まさしく国内が騒ぎだしたゆえんで、現在日本のプレスが火のないところに煙を立てて騒いでいるのじゃないのだという、そういういききつを明らかにしていただきたい。
  117. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それは明らかにします。この会談では議事録はございません。しかし私のメモがあります。このメモをもって私は申し上げるわけであります。それは河野君がどういうふうにそこを説明したか私はわかりません。それで今もってこうじゃないかと言われるならば、それは河野君にも聞いてもらわなければならん。しかしこれは政治問題で、日本海外派兵の問題が問題になったことは事実であります。事実でありますから、一体それじゃそういうことをアメリカ側がどう了解しているのかということをアメリカ側に聞いてみたわけです。そんなことは話にも出ないし、そういう了解はないとアメリカ側が言っている。それはどういうことでしょうかね。私のなにでは派兵問題を議論したことはないです。憲法の問題についてはこういうことはあります。今までは一体軍隊もこしらえることができぬということであったのだが、民主党内閣以来は自衛軍はこしらえて憲法に違反しないのだという立場をとっているから、われわれは自衛軍をこしらえておるのだということを説明いたしました。しかしそれでもってこの西太平洋の平和及び安全の維持に寄与するということは、これに対して派兵を意味するのだという話は少しも出ません。
  118. 曾禰益

    ○曾祢益君 明確にイエス・オァ・ノーではっきり答えていただきたいのですが、非常に問い方が失礼ですけれども時間がないので……。  この河野君が言っているように、会談の途中に、より双務的なものにしてほしいという外務大臣から希望を述べられたわけですね。それに対して、そういうことをすれば、まあ西太平洋に対する責任日本地域でなくて、もっと広地域の共同防衛でなければ、いわゆる、より双務的なものにならない、そうなれば海外派兵という問題も起りやせんかというような話はなかったわけですね。その意味において河野氏が共同通信に言ったことは、うそである、事実無根であるということでございますか。
  119. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 会談の模様は私がお話した通りであります。
  120. 曾禰益

    ○曾祢益君 そうすると、そういうことはないというふうに私は了解します。  次に、われわれ同僚委員みんなそうだと思うのですが、外務大臣が、かりにそういう話がアメリカから出ても海外派兵を約束されるなんということは全然信じられない。だけれども、そういう話がかりに出ておるらしい、少くともこれは国務省のあとの発表がそういうことを示唆、サジェストしているのですから。とすれば、ここの共同ステートメントに西太平洋云々が出てきたとすれば、やはりわれわれとしては、この共同声明によって先ほど来、るる申し上げるように、安全保障条約がかわるときの条件が、今までの安全保障条約が予定しておった第四条の条件以外に西太平洋というのは、広地域に対する日本の共同防衛の責任、これは通俗的に言えば海外派兵を起すような防衛責任を分担しなければ、安保条約がより双務的なものにならない、こういうふうに私は読むのが正しいと思うのです。それはどうしてもそうでないということをはっきりあなたは言われますか、この案文で。
  121. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私は今までの説明通り考えております。
  122. 曾禰益

    ○曾祢益君 そうすると、こういう案文があっても、あなたは、さっきから、るるおっしゃるように、日本本土の防衛について日米共同の形の防衛協定に変えるのだ、決して西太平洋云々ということは、この共同声明というものは、そういう防衛義務を地域的に広げる責任というか予約というか、そういうものは出てこない、これは断言できますか。
  123. 重光葵

    国務大臣重光葵君) その通りです。(「関連して」と呼ぶ者あり)
  124. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 曾祢さんの時間はだいぶ超過いたしました。関連は許しません。
  125. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 ただいま海外派兵の問題が出ておりますが、実は今日理事会で、この海外派兵禁止に関する決議案を、昨年参議院の外務委員会で取り上げましたときに、この禁止決議案を出せということで、私に、提案理由を説明しろということで説明しました。これは昨年の六月二日の国会でありまして、決議案の原文は非常に短かいものでありますから、ちょっと読んでみます。  「本院は、自衛隊の創設に際し、現行憲法の条章と、わが国民の熾烈なる平和愛好精神に照し、海外出動はこれを行わないことを、ここに更めて確認する。  右決議する。」  こういう決議が出まして、そしてほとんど全会一致で通過しております。それは前内閣のときであって、そのときに内閣の代表者が、その趣旨を尊重する、こういう声明がございました。今外務大臣としての考えを伺いましたが、現内閣としての御意見を聞いておいてくれということを、今日の理事会で要求がございましたからお伺いいたします。
  126. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それは何のときでしたかね……それは自衛隊法のときですか。
  127. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 そうです、あのときです。
  128. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私もそれに賛成した一員でございます。その通りに私は今日考えてやっておるわけでございます。
  129. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 それがつまり現内閣の方針だ、こういうお話ですか。
  130. 重光葵

    国務大臣重光葵君) ええ、現内閣の方針でございます。
  131. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 それでけっこうです。
  132. 堀眞琴

    堀眞琴君 私は、与えられた時間が非常に短かいので、今日は主として防衛問題だけについてお伺いいたしますが、その前に一点だけ外務省からいただきました第二のパラグラフの中にあるところで、日ソの交渉問題についての若干の言葉があるわけです。日本文で読みますと、重光外務大臣は「ソ連邦及び中国における自らの経験に徴し、自国の政策を解明した。」この点であります。この場合の、ソ連邦及び中国におけるみずからの経験ということはどういうことを意味するかということが一つ。それから、日ソ交渉の問題についてはどのような話し合いが行われたかということと、もう一つそれに関連して、あなたがナショナル・プレス・クラブで演説されているわけです。その演説の中で、ソビエトとの国交は調整するが、しかしそれはあくまでも技術的な戦争の終了を意味するのであって、何ら今後親交を結ぶ意図はないのだという意味のことが出ておったわけであります。この点に関して外務大臣としてはほんとうにそのようなお考えであるのかどうかという、この日ソ交渉の問題。みずからの経験というこの二つの問題を初めお聞きして、あとは防衛問題に移りたいと思います。
  133. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私は、ソ連に大使として日本を代表して数年在勤をいたしました。それが私のソ連における経験でございます。中国においては、だいぶ長く、前後数回にわたって在勤をいたしました。それが中国における私の経験でございます。さような経験から、いろいろソ連との関係、中国との関係を私の考え方を練ってきたのでございます。その考え方を申したのでございます。そこでソ連との関係は、これは今戦争――これはテクニカルに戦争の状態におるわけでありまして、これをまず直さなければいけない、これが国交の調節、正常化をはからなければいけない、その先のことを今飛躍的に考えたってそれはできることではございません。そこでまず正常化をはからなければならぬのである。その次のことはその次のことであります。こういう考え方だと私は常に人に話しておるのであります。それもそういう意味でございます。
  134. 堀眞琴

    堀眞琴君 声明の中に、ソ連邦及び中国におけるみずからの経験云々という言葉がありますね。その問題で具体的にどのような話し合いをされたか。それをお伺いしたい。
  135. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 具体的にといって……
  136. 堀眞琴

    堀眞琴君 この声明文にはきわめて簡単にですね……
  137. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 声明文のようなことを述べました (笑声)
  138. 堀眞琴

    堀眞琴君 声明文ではきわめて簡単ですね、「自国の政策を解明した。」ということだけなんです。これだけを見ましてもただ一行ちょっとしか出ていない。それで、どのような、たとえば日ソ交渉についてはどうする、あるいは日中の問題についてはどうする、こう簡単に、あまり長くやると私の時間がなくなりますから、ごく簡単に一、二分でお答えを願いたい。
  139. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 日ソ交渉につきましては、これはアメリカの意向を聞くことはございません。これは日本がやるということでございますから、アメリカもそういう態度をとっております。日ソ交渉につきましては、今日までこの委員会で私は説明した、ほとんどこれは公けになっているのでございますが、その線に沿うて説明をいたしました。
  140. 堀眞琴

    堀眞琴君 ナショナル・プレス・クラブでお話になりました点について先ほど御説明がありました。ただいまの戦争状態を終結することが目的で、その後のことについてはまた改めてというような意味に私は受け取ったのであります。当時あなたの演説が外国の電報でこちらへ参りまして、日本新聞などでは相当問題になった点であります。仲直りしようというのに、あなたは、仲直りはするが、そのあとは仲よくしていかぬのだというような、あなたの話は、どうも当を得ないのじゃないかという一般のジャーナリズムでの批判であったと思うんです。そこで私はお尋ねしたのです。
  141. 重光葵

    国務大臣重光葵君) その点は私の表現がまずかったと実は思います。実はそういう意味じゃ決してないんです。私は、ソ連とのことはあくまでも先ほど申しました通りにこの交渉を成立さして先に進んでいきたい、こういう考えをもってやっているのでありますが、まず正常化ということを一つやるんだ、こういうことで言ったのでございます。
  142. 堀眞琴

    堀眞琴君 今のお話ですけれども、ここに日本タイムスに載ったあなたのテキストがあるんです。それを見ますと、何らそういう仲よくしていこう、こういう何の意思も持たない、こういう工合にあなたは話をされているんです。それで私はその点をお尋ねしているわけなんですが、そういうお気持で今後とも日ソ交渉をおやりになる、こういう御意向なんですか。
  143. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 日ソ交渉は、私は今繰り返して申しました通り考え方で進めていきたいと考えております。
  144. 堀眞琴

    堀眞琴君 どうも、ぬかに釘をさすような御答弁で、満足できないのですが、時間がございませんから、防衛問題に移りたいと思います。  防衛問題についてはずいぶんいろいろな問題を向う側と話し合われたようであります。まず第一には防衛力増強の限界の問題、第二には共同防衛の範囲の問題、第三にはアメリカの地上軍撤退の問題、そうして第四には防衛分担金の問題、それらの諸問題等についてお話し合いをされたようでありますが、防衛力増強の限界については、先ほど小滝委員からか、お話がございました。それから羽生委員からも若干これに関連してのお話がございました。その際、日本側から提示した案についてはまた別の機会に譲るといたしまして、アメリカ側から地上軍三十五万を日本で持たなければ到底日本の防衛力を持ったということにはならない、こういうことが話し合いに出たということが新聞によって報道された。特にラドフォード統合参謀本部議長は、十八万ではとうてい不足なんだということが言われたと出ているんですが、この点についてその間の事情を簡単に御説明願いたいと思います。
  145. 重光葵

    国務大臣重光葵君) そういう新聞報道があったそうでございますけれども、実際はございませんでした。私も自分のメモを、これはもう写真のように十分私はメモをとっているのでございますが、それはございません。しかし十八万と言いますか、今日の状況ではまだ不満足であるという考え方を始終持って向うが話したことは事実でございます。三十五万とかいうようなことは少しも何に出ませんでした。
  146. 堀眞琴

    堀眞琴君 九月四日のニューヨ一ク・タイムス、その中に日米会談のことについて触れているのでありますが、その中でもやはり同じように、三十五万でなければと、これは米地上軍の撤退とも関連してニューヨーク・タイムスにも出ている。そういうお話がなかったと言いますが、しかし米地上軍の撤退という問題の中には、その条件として必ずや日本の自衛力がどのくらいになったならば撤退するのだということが当然話の中に出てくるのだろうと思う。おそらくはその話のときに、十八万ではだめなんだ、やはり三十五万あるいはそれに近いだけの力を持たなければ撤退はできないのだということになりはせぬかと思いますが、その点はいかがですか。
  147. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 今お話のようなことが将来出てくるだろうと私は思うが、この会談では出てきませんでした。それはニューヨーク・タイムスが書いておりましたかしりませんが、実際には出ておりませんでした。将来どうしてもこれは東京でいろいろ相談をしなければなりません。アメリカ軍の撤退その他のことについても、それはそういういろいろな考え方や何か出るかもしれません。それは将来出るでありましょうが。
  148. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) もう時間がございません。
  149. 野村吉三郎

    野村吉三郎君 先ほど外相がハリマンの言を引用されてお話がありましたが、ハリマンの言を待つまでもなく、私は日本としては、外交においては一元的でやってもらわなければならぬ。民主党の政府であろうが他の政府であろうが、国民に対して責任をもっている政府を支持して、挙国一致で外に向うのは当然であって、だんだんそういうふうになっていかなければならぬというふうに感じております。それにはやはり政府においてもまちまちのような感を与えるようなふしが時に新聞に現われるのは、私らは国民の一人として迷わざるを得ない。私は対ソ問題は非常に大きな問題だと考えております。領土問題、それからして帰還の問題をやっているのですが、津軽海峡あるいは対馬の自由通峡、ロシアの軍艦が自由に通峡する、北鮮の軍艦が自由通峡するというような問題、それからしてソビエトと支那が同盟を日本に対して結んでいるにかかわらず、日本がよその国と同盟を結んではならぬという問題、これらはまことに重大な問題であって、今それらの問題をどういうふうにお話になっておるかは知りませんが、私は日ソの国交が正常化することを望みますし、またなるべく早くできることを希望いたしますが、政府が今年内にまとまるのだというようなことを一部の方がおっしゃっているのですが、そういう点について向うの言いなりになるようなことになったら、私は日本の将来の運命に関する大問題だと思うのであります。これらの点についてはもとより慎重におやりになっていると思いますが、先ほど羽生委員に対するお答えも拝聴しまして、まあ慎重におやりになるであろうと思いますが、期限を定めて今年内にやってしまうのだというような安易な考えでおって、そうして向うの言う案をうのみにしたら、日本の将来に対してほんとうに国家の安危にかかわるような大問題を将来に残すというふうに考えておりますし、ここで当方の案、先方の案なんかも承りまして、そうしてこれを比較してみると、容易ならざる問題が多々あるように思っておりますので、本年内に期限をきめて早くやるのだというような安易なお考えであったらとんでもないのではないか。私はアメリカで大使をしておって、日本政府は実にあわて出して、いつ幾日までに向うの返事をもらえ、それまでにできねば、こちらからだんだん自然的に動き出すのだというような電報に接して、そして戦争に突入したのですが、そういうことを考えてみると、相手があるのですから、こっちで早くやりたいと思ったって、国家の安危に関する問題をそう軽々しく扱うわけにいかんのですから、まあいろいろ不統一にみえるような話を新聞で見て非常に心配しているのであります。で、外務大臣のこの点について、まあわが方の主張をことごとく通すというような考えは持っておりませんが、国家の安危にかかわるような、津軽海峡、対馬海峡の自由通行は、ソビエットの軍艦、北鮮の軍艦に限るというようなことにでもなれば、最近の軍艦は皆オネスト・ジョンを積むようになっておるから、新らしい船は皆オネスト・ジョンを積むように古い船でも改造しつつある現状でありますから、これは一つ考えを願うだけで、今これに対しては先ほどの羽生委員に対するお答えで私は満足しておきます。  次にいま一つ伺いたいのは、この共同声明です。共同声明を、私は外務大臣はよく努力せられてここまでおやりになったとして、私は多とするものであります。その文句についても今までいろいろの応酬を拝聴し、私は大体佐藤委員考えておるのが、国際連合に入ろうといって、よその国からは日本を助けに来い、日本はよその国に助けにいかんのだ、それは虫のいい考えで、それができればけっこうですけれども、そんなことは世界に通用しないと思っておりますから、国際連合に入る以上は、日本も応分の義務を尽さにゃならぬのが私は当然だと思う。それで佐藤委員の言われた説には同調いたします。ただちに日本がそれをやれるとは思っておりませんが……。  いま一つ伺いたいのは、グレイター・ミューチュアリティについてです。これも大体外務大臣の御説明で、これは国内の問題に結びつけているのだ。しかしこの問題は、このあとの章を見てみると、すぐ日米間の交渉にでもなりそうにみえる。そうすると、これは私はやはり大きな問題じゃないかというふうに思うのです。大きな問題でないかと思うと同時に、ウエスタン・パシフィックというのがえらい議論になっておりますけれども、私ら海上生活をやった経験ある者から考えれば、ウエスタン・パシフィックという字を入れるのは当然だと思う。何となれば、日本は孤独で生活できない国です。三千何百万トンのものを輸入している国、これには燃料も来るし、食糧も来るし、原料も来る。これは半分は日本の商船で運ぶ。この商船が日本に来なくなったら、また一合五勺の配給になり、木炭の自動車になるということは明らかです。それだから、ある事態に対して日本を守るということは、ウエスタン・パシフィックのあのウオーターを守らなければ、フリーダム・オブ・シーを守らなければ日本は生きていけないのですよ。そういうような観点から外務大臣はどういうお考えでお書きになったかしらんのですけれども、私はよく入れてくれたと思う。そういう頭をもっております。日本は孤立で住まっている。今は国家主義が盛んであって、そして自主独立けっこうだ、これはけっこうだけれども、自主独立には条件がつくのであって、油も輸入せなければならぬ。食糧はことしは豊年というけれども、やはり三、四百万トンは輸入しなければならぬ。砂糖の百万トンは輸入せなければならぬ。原料は多く輸入せなければならぬ。三千万トンのものを輸入して初めて喰っていけるのであって、そうだから自動車にもわれわれ乗れるのです。この四つの島に、じっとこうやって、ウエスタン・パシフィックはどうなってもいいということになった場合には、日本人は餓死するほかはないと思う。だから私は、重光さんがどういうお考えでお入れになったかしらんが、まあまあ、あれでけっこうだと思います。それでまあ集団保障の話しになるのでしょうが、それについてはいろいろ、憲法の先ほどの保障もありますし、これは国力に相当した寄与をするだけにすぎないと思いますが、これらの点については私はまあこれから集団保障というか、個別保障になるのか、グレイター・ミューチュアリティの問題で両国で話し合うということになってくると、これはなかなかむずかしい問題じゃないかと思いますし先ほどいろいろの委員のお話しがあったように、これはやはり慎重にお考え下さらなければいかぬのじゃないかと思います。国内問題もあるし、政治問題もあるし、まあ要するに、あまり政府のえらいお方がいろいろなことをおっしゃって、どっちがほんとうやら、外務大臣が二人、三人ぐらいあるような感があるのは、これはまあ私は日本のためによろしくないのじゃないか。それで、はっきりわれわれに向うところを知らして下されば、それについての意見があったら述べるし、そうしてそれに従って一元的に私は進むのじゃないかと思っておるのであります。
  150. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 今野村委員の御発言は大体御意見の御発表で、しいて御答弁を御要求になっておらないようでありますので、よろしうございますか。
  151. 野村吉三郎

    野村吉三郎君 いや、まあこれは質問応答で何かと思いますので、答弁して下されば体をなすのかもしれませんから……。
  152. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 今の御意見は十分私ども仕事の上に考え、参考にして御趣旨に沿うように努力をいたすことにいたします。
  153. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) これで一応質問は終ったのでありますが、自由党の鹿島委員質問の御希望がありますけれども、農林水産委員会外務大臣をお渡しする約束の時間がもう過ぎております。で、今日はこれで終りたいと思いますが、鹿島委員いかがでしょう。
  154. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 けっこうです。
  155. 曾禰益

    ○曾祢益君 けさほど理事会のときにちょっと申し上げておいたのですが、外務大臣がおられなくてもけっこうですが、私の方では決議案を用意しておるのですが、委員会においてその決議案の問題を取り上げていただけますか。それとも理事会等で、あるいは懇談会等においてこの問題を御懇談申し上げてもけっこうでありますが、会の締めくくりとして一つ御相談申し上げたいことなんです。
  156. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 今日これで終ることとすれば、しばらくこのままで懇談会に移りまして、そしてここできめたらどうかと思います。
  157. 曾禰益

    ○曾祢益君 けっこうです。
  158. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それじゃ速記をとめて下さい。懇談会に入ります。    午後二時三十九分懇談会に入る    ――――・――――    午後四時六分懇談会を終る
  159. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それではこれから委員会を再開いたします。  先ほど懇談会及び理事会におきましていろいろお話し合いをいたしました結果、委員会として決議をいたそうということになりました。その案文を読み上げます。   本委員会は、さきに行われた日米会談の結果発表された共同声明に関し、内外の誤解を招いた事実もあるのに鑑み、昨年六月二日の本院の「自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議」をここに更めて決議する。   右決議する。  こういうのでございます。これに関しまして御意見を伺いたいと思います。   〔「賛成」「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  160. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) 別に御意見もなく、御異議ありませんなれば、かように決議いたしたいと思いますが、いかがでございましょう。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  161. 石黒忠篤

    委員長石黒忠篤君) それでは満場一致決議をいたしました。  これにて本日の外務委員会は終了いたします。    午後四時七分散会