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国務大臣(
重光葵君) 曽祢
委員の新口カルノ構想につきましては、かつて伺いまして、その御
趣旨に、
鳩山総理だけでなく、私もこれは御賛成を申し上げております。しかしそれと同時に、私はこういうことをその当時申し上げたことを記憶しております。
ヨーロッパにおいてもゼネバで最近行われた四大国
会議の
議題のうちで、ドイツの統一問題、これに関連して
ヨーロッパの安全保障の問題、すなわち
ロカルノ構想の問題、それから東西の
陣営の交流の
問題等々がございました。
ヨーロッパにおいてもこの
ロカルノ構想をチャーチルが言い出して以来、もうやがて二年近くになるかと思います。これは結局両
陣営の融和、緊張緩和はむろんのこと、さらに融和をしていくというふうにしていくためには、どうしても
ロカルノ構想ということは、これは穏当なしかして最も筋道の立った構想であると私は思うのであります。しかしながらなかなか実際政治として国際
関係を扱う上において、いい構想もすぐは実現できぬということにあることは、これは言うを待たないのであります。それでチャーチルが言い出して以来、すでにさような長い時間を経ておる。そうして今日
ヨーロッパについても、四大国
会議でその問題が具体化したところまではまだいっておりません。おそらくその問題は来たる十月にゼネバで開かれる
外相会議において取り上げられて、いろいろとこれは
検討されることと思います。
ヨーロッパのような従来、第一次世界戦争以来その点に関してはいろいろな経験を持っておる地域においても、いろいろなまあこれは困難もあり、実現までには相当な手かずがかかるのである。今その手かずを踏んでおる階段であると思います。四大国
会議が十月の
外相会議となり、またさらにいろいろな国際
会議も開かれ、また国家間の
交渉もあって、だんだん進むことじゃないかと思います。アデナウアーのモスコー訪問というようなこともその中に入ってきます。
その
考え方、これは共通な
考え方でありますが、われわれいかにアジア、東洋
方面が国際
関係において何と申しますか、ある意味においてはおくれておるとはいいながら、いいことの
方向は私はやっぱりこれはいいことだと思う。しかしながら、
ヨーロッパの状況と比較してこれを見ますというと、相当これば時間のかかる問題でありまして、これを東洋に適用していく、その
考え方を東洋に適用していくのには相当時間もかかり、また手数を要する。私
どもがたとえば日ソの間に戦争状態を終結さしたいという
考え方も、これはやっぱり共通の
考え方でございます。さらにまたバンドン
会議において、一切の紛争は平和的に
解決するのだといって、台湾の状況が急迫しておるその時期に、
日本がこれを言い出すのも同じ
考えに基いておるのであります。私は今まではそういうようなことを必要の、もしくは
情勢の許す限り、実情に即して実際的に進めていって積み上げ、いわば積み上げ方式によって今はいって、他日の
機会を待つのがいいと、まあこう従来は
考えておりました。今日も大体その
考えでおるわけであります。またそういう私の
考え方を御議論したと、こう記憶しておるのであります。しかし
お話しの
通りに、今
中共の問題を中心にしても、米国と
中共は、ゼネバにおいて大使級の
レベルで
交渉しておるのでありまして、またその場合の
議題の拡張ということも現実に強く言い出されておるものである。それから東ア
方面の問題としては、朝鮮の問題もありましょうし、仏印の問題もこれは大きな問題としてあるのでございます。
さような問題にはどういうふうに処理されべきであるか。これは何と申しますか、
極東会議というような大きな
会議を開いて、
関係国とみんな集まってこの
話し合いをするということが実際的であるかどうか。台湾における
国民政府もありましょうし、
中共の
政府もありましょう。
韓国においては
韓国政府もあるし、北鮮の
政府もあるというような状況であります。さようなことについて、一般問題として、私が
渡米に際して
アメリカ側との間に
意見の
交換をしたり、情報の
交換をするということは、私としては有益なことだろうと
考えます。そういうことによって何かわが平和外交にいい
一つの有力な道を発見するということができれば私は好都合と思っております。今、それならばすぐに
日本がいい
考えを、ロカルノ方式を生かしてこれが成立をする、
日本のために非常にやるべきことであるかということについては、少しく私は
検討を、今申し述べたような意味で
検討をしたいと、こう
考えております。