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1955-06-03 第22回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第1号
公式Web版
会議録情報
0
本
分科員
は
昭和
三十年六月二日(木曜日)
委員長
の
指名
で次の
通り
選任された。
主査
藤本
捨助君
纐纈
彌三君
中曽根康弘
君
松浦周太郎
君
三田村武夫
君 倉石 忠雄君
小坂善太郎
君
周東
英雄
君 赤松 勇君
阿部
五郎
君
柳田
秀一
君 岡
良一
君
三宅
正一
君
—————————————
会 議
昭和
三十年六月三日(金曜日) 午前十一時二分
開議
出席分科員
主査
藤本
捨助君
纐纈
彌三君
松浦周太郎
君
三田村武夫
君
小坂善太郎
君
周東
英雄
君
八田
貞義
君
阿部
五郎
君
柳田
秀一
君 岡
良一
君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 川崎 秀二君 労 働 大 臣 西田 隆男君
出席政府委員
文部政務次官
寺本
広作君
文部事務官
(
大臣官房会計
課長
) 北岡 健二君
厚生政務次官
紅露
みつ君
厚生事務官
(
大臣官房会計
課長
) 堀岡 吉次君 厚 生 技 官 (
公衆衛生局
長) 山口 正義君 厚 生 技 官 (
医務局長
) 曾田
長宗
君
厚生事務官
(
薬務局長
) 高田 正巳君
厚生事務官
(
社会局長
) 安田 巌君
厚生事務官
(
児童局長
) 太宰
博邦
君
厚生事務官
(
保険局長
) 久下 勝次君
厚生事務官
(
引揚援護局
長) 田辺 繁雄君
労働政務次官
高瀬 博君
労働事務官
(
大臣官房会計
課長
) 渋谷 直蔵君
労働事務官
(
婦人少年局
長) 藤田 たき君
分科員外
の
出席者
厚 生 技 官 (
公衆衛生局環
境衛生部長
) 楠本 正康君
—————————————
六月三日
分科員小坂善太郎
君及び
三宅正一
君辞任につ き、その補欠として
八田貞義
君及び
水谷長三郎
君が
委員長
の
指名
で
分科員
に選任された。
—————————————
本日の会議に付した案件
昭和
三十
年度
一般会計予算
中
文部省
、
厚生省及
び労働省所管昭和
三十
年度
特別会計予算
中
厚生
省及び
労働省所管
—————————————
藤本捨助
1
○
藤本
主査
これより
予算委員会
第二
分科会
を開会いたします。 この際一言ごあいさつを申し上げます。私が当
分科会
の
主査
の職務を行うことになりましたが、性来乏しいものでありますので、皆様の御
協力
によりまして
議事
の
運営
に大過なきを期したいと存じております。何とぞよろしくお願い申し上げます。 なお本
分科会
は、御承知の
通り昭和
三十
年度
一般会計予算
中、
文部省
、
厚生省及
び
労働省所管
、並に
昭和
三十
年度
特別会計予算
中、
厚生省
、及び
労働省
の
所管
の
審査
を行うことになっておりまするが、
審査
の都合上、まず
所管
全部につきましてそれぞれ
政府
の御
説明
を聴取したる後、一応の
予定
としまして逐次
各省別
に質疑を行い、
理事会
の申し合せ
通り
、四日中には
審査
を終了いたすよう
議事
を進めていきたいと存じますから、何とぞ御
協力
をお願い申し上げます。 それでは
昭和
三十
年度
一般会計予算
中、
文部省
、
厚生省及
び
労働省所管
、並びに
昭和
三十
年度
特別会計予算
中、
厚生省及
び
労働省所管
を一括して
議題
とし
審査
に入ります。 まず
文部省所管
につきまして
政府
の御
説明
を求めます。
寺本政府委員
。
寺本廣作
2
○
寺本政府委員
昭和
三十
年度
文部省所管
の
予算
の
大要
につきまして、御
説明
申し上げます。
昭和
三十
年度
文部省所管
の
予算額
は、千二百三十一億千十二万五千円でありまして、これを前
年度予算
額千百九十一億六千七百九十五万四千円に比較いたしますれば、三十九億四千二百十七万千円を
増加
いたしております。 なお前
年度予算
額のうち、
義務教育費国庫負担金
の
昭和
二十八
年度
給与費負担金精算分
八億二千八百二十九万二千円、
国公立文教施設災害復旧費
六億四千九百三十三万五千円、
国立フランス美術館創設費
五千四百五十万円の当然
減少額
及び本
年度予算
として
国立フランス美術館建設費
の
国庫債務負担行為額
一億円を考慮いたしますれば、実質的には五十五億七千四百二十九万八千円の
増加
となっております。従いまして、
文部省予算額
を
一般会計
総
予算額
に比較いたしますと、その
比率
は前
年度
一一%が一二%強となっております。 次に
昭和
三十
年度予算
額のうち、重要な
事項
について申し述べたいと存じます。 第一に、
義務教育費国庫負担金
に必要な
経費
であります。
義務教育
の
機会均等
と、その水準の
維持向上
とをはかるため、
義務教育費国庫負担制度
を確立し、
公立義務教育
諸
学校
の
教職員給与費
の実
支出額
の二分の一及び
教材費
の一部を負担するため必要な
経費
でありまして、
給与費
として、本
年度
は七十七万六百九十四人の
児童
、
生徒
の
増加
に伴いまして、
教員数
の増一万二千五百十人の
人件費
を含めまして、七百二十四億二千万円、
教材費
として十二億八千万円を計上したのであります。 なお、二十九
年度
における
地方税制
の改正及び
地方財政
の現状にかんがみまして、本
年度
からは
昭和
二十八年政令第一〇六号を改正いたしまして、その適用を
地方普通交付税
の不
交付団体
である
東京
都、大阪府及び神奈川県にとどめ、その他の府県につきましては、
義務教育費国庫負担法
の趣旨を完全に実施し、前
年度
奄美群島復帰処理費
として別途計上いたしました分をも吸収し、
原則通り
実
支出負担
に切りかえることといたしたのであります。 第二は、
文教施設整備
に必要な
経費
であります。
国立文教施設
につきましては、戦災を受けました
国立学校
特に
大学付属病院
その他の
建物
の
復旧
と、
老朽校舎
の
改築
と、前
年度
に引き続き
原子核研究所
の
建物
を新営するための
経費
二十一億三千九百七十九万円を計上し、また
公立文教施設
につきましては、これが
整備
に必要な
経費
五十四億九千百七十六万千円を計上したのでありますが、
単価
並びに木造、
鉄筋比率
は前
年度
を踏襲するとともに、全体として
工事量
も昨年同様四十一万坪
程度
を確保したのであります。 なお
危険校舎
の
改築
は、八千四百九十二万九千円が増額されておりますが、これは
高等学校分
について
予算執行
上考慮することとなっており、
特殊教育
の
振興
をはかるため
養護学校施設整備費
として、新たに千七百四十八万二千円を計上し、また
僻地教育振興
の
見地
から
僻地小
、中
学校
の
集会室
に八百六十九万八千円を、不
正常授業解消
のため千五百八十七万五千円を、それぞれ増額計上いたしましたが、このほか
昭和
二十九
年度
発生災害
、
鉱害復旧対策
に必要な
経費
六億七千六百九十九万七千円をそれぞれ計上したのであります。 第三は、
育英事業
の
拡充
に必要な
経費
であります。優秀な
学生
、
生徒
で、
経済的理由
により修学困難な者に学資を貸与する
事業
を行なっている
日本育英会
に対して、
奨学資金
の
貸付
と、その
事務費
の
補助
に必要な
経費
四十一億二千七百六十七万千円を計上したのであります。 なお
貸付金
のうち、大
学生
については、従来
採用学生
の一〇%が
月額
二千五百円を貸与されたのでありますが、本年はこれを三〇%に
拡充
し
月額
三千円に
引き上げ
、また
新制大学院
の
博士課程
の
学生
に対しましても、
修士課程学生
と
同様月額
一万円または六千円を貸与することとし、さらに
定時制高等学校生徒
の
採用率
を
生徒総数
の一%から二%に
引き上げ
たのであります。 第四は、
科学
の
振興
に必要な
経費
であります。人文、自然両
科学部門
におきまして、不断に
基礎的応用的研究
をつちかうため
研究者
に
重点
的に
交付
または
補助
するため必要な
経費
十億五千万円を計上いたしたのであります。特に本
年度
は
わが国
の
産業
を
振興
し、
国民生活
の
充実
、
向上
に密接な
関係
を持つ
化学研究促進補助金
として一億五千万円を、従来の
総合研究
及び
機関研究
に
原子核
、
放射能障害
の
研究費
として五千万円をそれぞれ増額計上したのであります。 なお
民間学術研究機関等
に対する
助成
に必要な
経費
七千四百六十六万千円を、
国立大学等
の有為な教官、または
研究員
を海外に派遣留学させるための
経費
六千万円を、また
学術情報資料
の
整備拡充
に必要な
経費
八百四十七万八千円を、それぞれ
科学振興費
の項に計上したのであります。 第五は、
私立学校
の
助成
に必要な
経費
であります。
私立学校教職員
の
相互扶助
とその
福利厚生
をはかるため、
私立学校教職員共済組合
に対し、その
給付費
の一部及び
事務費
の
全額
を
補助
するため必要な
経費
三千二百二十七万八千円を、
私立学校振興会
に対し、
私立学校
の
施設
、
設備
を
応急最低基準
まで
引き上げ
るに要する
資金
の一部を
政府出資金
として七億五千万円をそれぞれ
私立学校助成費
の項に計上したのであります。 第六は、
社会教育
の
特別助成
に必要な
経費
であります。明るい平和な住みよい
社会
を建設し、新
生活運動
を
推進
するため必要な
経費
五千万円を、
青少年団体
の
社会活動
を育成促進する等
社会教育
の
振興
のため必要な
経費
七千万円を、それぞれ
社会教育特別助成費
の項に計上したのであります。 第七は、
文化財保存事業
に必要な
経費
であります。
文化財保存事業
は、終戦後逐年その成果を上げてきておりますが、本
年度
も前
年度
に引き続き国宝、
重要文化財
のうち特に
建造物
の
保存修理費
に
重点
を置きまして、その
充実
をはかるため必要な
経費
三億五千三百四十五万七千円を
文化財保存事業費
の項に計上したのであります。 なお、前
年度
に比較いたしまして六千三百三十五万八千円の
減少
を見ましたのは、
法隆寺保存事業
が一応完了し、また
災害復旧費
の
減少
したためであります。 第八は、
国立学校運営
に必要な
経費
であります。
国立大学
七十二、
国立高等学校
八、
大学付置研究所
五十六、
大学付属病院
十九を
維持運営
いたしますのと、新たに大阪大学に薬学部を、弘前大学及び
佐賀大学
にそれぞれ
農学部
を、鹿児島大学に
県立工業大学
及び
県立医科大学
を合併して工学部、医学部を、香川大学に
県立農科大学
を合併して
農学部
を設置し、また
茨城大学
及び
静岡大学
にそれぞれ
夜間短期大学
を、さらに
東京大学
に
原子核研究所
を
創設
する等の
措置
を講ずる等のため必要な
経費
三百九億三百十七万五千円のうち、二百二十九億六千九十八万円を
国立学校
の項に、五十六億七千三百三十五万四千円を
大学付属病院
の項に、二十二億六千八百八十四万円を
大学付置研究所
の項に計上したのであります。 このほか、
産業教育
、
理科教育
及び
学校図書館
の
振興
、
定時制高等学校
及び
通信教育
の
整備
、
特殊教育
の
振興
、
僻地教育
の
振興
、
学校給食
の
助成
、
外国人学生
の招聘、
在外教育学術文化担当官
の設置、
幼稚園教育
の
振興
その他
文部行政
に緊急欠くべからざる諸般の
施策
を講ずるため必要な
経費
をそれぞれ計上したのであります。 以上は、
文部省所管
に属する
昭和
三十
年度
の
予算
の
大要
につきまして御
説明
申し上げた次第であります。何とぞ御
審議
の上御賛成あらんことを希望いたします。
—————————————
藤本捨助
3
○
藤本
主査
次に
厚生省所管
について
説明
を求めます。
紅露政府委員
。
紅露みつ
4
○
紅露政府委員
ただいま
議題
となりました
昭和
三十
年度
の
厚生省所管予定経費
の
要求額
の
概要
について御
説明
申し上げます。
昭和
三十
年度
の
厚生省所管一般会計予算
の
要求額
は、八百三十六億五千八百七十五万九千円でありまして、これを
昭和
二十九
年度
の
補正予算
を加えての
予算総額
八百三十八億一千六百三十七万六千円に比較いたしますと一億五千七百六十一万七千円の
減少
となっておりますが、これを前
年度
の当初
予算
七百五十三億六千一百九十四万七千円に比較いたしますと八十二億九千六百八十一万二千円の
増加
と相成ります。また、これを
一般会計
の
予算総額
に対比いたしますと、その八・三八%を占め、前
年度
の八・三六%に比べまして、むしろ微増を示しているのであります。 さらに、前
年度予算
中には、
生活保護費
の
過年度不足分
及び
災害関係
の
臨時的経費
合せて三十六億二千万円が計上されていたのでありますが、本
年度
におきましては、これらに相当する
臨時的経費
は
生活保護費
及び
児童措置費
の
過年度不足分
として十二億円が見込まれておりますほかは、少額の
過年度災害復旧費
が計上されているにとどまり、これらを通計いたしましても十二億一千余万円にすぎないのでありまして、これらの
経費
を控除して前
年度
に比較いたしますと、実質的には二十二億円余の
増加
となっているのであります。 次に、右の
予算
のうち、特に重要な
事項
についてその
概要
を御
説明
申し上げます。 第一は、
社会保険
の
整備育成
の
施策
に必要な
経費
についてであります。
社会保険
は、
社会保障制度
の主柱をなす
制度
として今日きわめて重要な意義と
役割
をになっておりますので、これを育成助長して参りますことの緊要なことは申すまでもないことであります。従いまして、前
年度
に引き続いて各
社会保険
を通じて、その
事務費
の
全額
を
国庫
において負担することとし、これに必要な
経費
として四十億九千一百余万円を計上いたしますとともに、
厚生年金保険
及び
船員保険
の
長期
と失業の
給付費
に対しましても、
従前
と同様、その
給付財源
の一部を
国庫
において負担することとし、これに必要な
経費
として十四億八千三百余万円を計上いたしているのでありますが、本
年度
の
施策
におきまして、特に
重点
となっておりますものは、まず
政府管掌
の
健康保険
及び
船員保険
の
医療給付
に対する
国庫負担
であります。
政府管掌
の
健康保険
の
財政
につきましては、前
年度
において約四十億円、本
年度
において三十億円の
赤字
が予想されるのであります。これは、
医療機関
の
普及発達
に伴ってその
利用度
が高められたこと、医学の進歩による
医療内容
の
改善
によって
医療費
が
増高
の一途をたどっているに反し、
保険料収入
が
デフレ施策
の浸透に伴い
鈍化傾向
にあることに基因していると考えられるのであります。この
赤字財政
の
再建整備
をはかりますための抜本的な
施策
は、
学識経験者等斯界
の
権威者
をもって構成する
審議会
を
臨時
に設置いたしまして、その
審議
を待ってこれを確定する
予定
でありますが、当面の前
年度
及び本
年度
の
赤字合計
七十億円につきましては、
国庫
において負担することとしたのであります。ただ本
年度
において、その
全額
を
一般会計
において負担いたしますことは、
財政規模等
から見て困難でありますので、さしあたり本
年度
においては十億円を負担し、残余の
不足財源
は一応
長期借入金
によって操作し、
明年度
以降において毎年十億円
程度
を
借入金
の
償還財源補てん
のため、
一般会計
より
厚生保険特別会計
に繰り入れることといたしたのであります。これとともに、当面の不均衡な
保険財政
の
改善
をはかるため、
保険料率
を
現行
の千分の六十より六十五に
引き上げ
るほか、
標準報酬
の
等級改訂
を行うことを
予定
している次第であります。
船員保険
におきましても、
疾病保険部門
の収支不均衡による
赤字
が約一億五千万円見込まれますので、
健康保険
と同様、この
不足財源
の
補てん
を
国庫
において負担することとし、とりあえず本
年度
において二千五百万円、
明年度
以降においては毎
年度本年度
と
同額程度
を
一般会計
より
船員保険特別会計
に繰り入れることに
予定
しております。これとともに、
健康保険
と同様、若干の
保険料率
の
引き上げ
と
標準報酬
の
等級改訂等
を行うことといたしておる次第であります。 次は、
日雇労働者健康保険制度
の
強化充実
であります。 同
保険制度
は、発足後いまだ日が浅いこと、その特異な
雇用形態
と被
保険者
が低
所得階層
に限られていること等のため、その
給付内容
は
一般
の
健康保険
に比して劣っておるのでありますが、
創設
後最近までの
実施状況
に照らし、これを
改善
することが適当と考えられますので、
給付期間
を
現行
の六カ月より一年に延長いたしますとともに、新たに
療養給付
に歯科の補綴を加え、
埋葬費
及び
分娩費等
の
現金給付
をも実施することにいたしたのであります。これらの
給付内容
の
向上
の裏づけとして、従来と同様に、
療養給付費
の一割を
国庫
において負担することとし、これがための
経費
として一億九千八百余万円を計上いたしたのであります。 さらに、
国民健康保険
につきましては、
従前
に引き続き、子の健全な
運営
を
助成
することを目的として、
療養給付費
の二割に相当する金額を各
保険者
に対して
助成交付金
として
補助
するため、四十八億二千九百余万円を計上いたしますとともに、
赤字
の
保険者
に対し前
年度
同様、その
再建整備
を促進するための
貸付金
として三千万円を計上いたしたのであります。 第二は、
結核対策
の
強化
に必要な
経費
についてであります。 過般の
実態調査
によりますと
わが国
の
結核患者
は二百九十二万人と推計され、そのうち、
入院
を必要とするものは百三十七万人の多きに達していることが明らかにされ、その
禍害
の広さと深刻の度は想像以上のものであることが察知できるのであります。従いまして、
結核撲滅
の
施策
を一段と
強化
することといたしたのであります。まず、
患者発生
の
予防
と発病の
早期発見
のため、
健康診断
及び
予防接種
の
強化徹底
をはかることとしたのであります。すなわち
健康診断
の
実施対象
を従来の
学校
、
収容施設
、
事業所等
の
集団生活者
と
指定地域
の三十歳末満のものより学齢に達したもの以上の全
国民
に拡大したこと、
要注意者
に対しては六カ月後に
精密検査
を新たに行うこととしたこと、最も感染のおそれのある
患者家族
の
予防措置
の
強化
、特に狭隘な住宅に
家族
と雑居している
患者
に対して
隔離療養室
の
無償貸与制度
を試験的に設けたこと、
一般住民
に対する
健康診断
及び
予防接種費用
の
減免率
を
従前
の一〇%から五〇%へと大幅に
引き上げ
たこと等でありまして、これらの
施策
に必要な
経費
として約四億八千三百万円を計上いたしたのであります。また、
結核療養所
の
病床
につきましては、いまだ
不足
を告げている
実情
にありますので、
国立
一千床、
公立
三千六百床、
法人立
五千四百床、
合計
一万床を前
年度
と同様に増設いたしますとともに、
結核回復者
の後
保護施設
二カ所を新たに設置いたしますほか
国立結核療養所
の諸
施設
の
整備等
に必要な
経費
として十一億三千六百余万円を、
結核回復者
後
保護施設
の
経営費
の
不足財源
に新たに、二分の一の
補助
を行うに必要な
経費
及び
国立結核療養所
の
維持運営
に必要な
経費等
として九十九億二百余万円を、従来と
同様医療費
の
公費負担
に対する
補助
に必要な
経費
十六億一千二百余万円を、その他
結核予防従事者
の研修、
実態調査等
に必要な
経費
を含め、
結核対策
のため
総額
百三十一億五千五百余万円を計上いたした次第であります。 第三は、
覚醒剤
及び
精神衛生対策
の
推進
に必要な
経費
についてであります。 まず、
覚醒剤対策
につきましては、さきに内閣に
覚醒剤問題対策推進中央本部
を設けて、
覚醒剤
に対する
総合施策
の樹立と
推進
をはかって参ったのでありますが、さらに、取締りを一そう
強化
いたしますとともに、広く
国民
に
ヒロポン禍害
のおそるべきことの認識を深め、
青少年
の
施用防遏
に
協力
を求めるため、一段と
広報活動
を活発に展開することにいたしたのであります。特に、
覚醒剤中毒者
を収容してこれに必要な
医療
を行うため、
精神病院
に二千百床の
病床
を併設することにいたしたのでありまして、これら
覚醒剤対策
に必要な
経費
として、一億二千六百余万円を計上いたした次第であります。 次に、
精神衛生
の面におきましては、
患者保護
の立場より、また
公安
上より見まして、
保護
収容すべき
患者
に比べて
病床
の
不足
が顕著でありますので、
公立
及び
法人立
に二千二百床の
増床
を行いますほか、
国立精神頭部療養所
の
施設整備
のための
経費
を含め、一億八千九百余万円を計上いたしたのであります。また、
国立療養所
の
経営
のための
経費
及び
都道府県知事
が本人の
保護
と
公安
上の必要に基いて命令する
措置入院
の
経費
並びに
精神衛生相談所
の
運営
に要する
経費等
、七億三千三百余万円を計上いたした次第であります。 第四は、
受胎調節
に必要な
経費
についてであります。
受胎調節
は最近における
人工妊娠中絶
の
激増傾向
にかんがみ、従来主として
母体保護
の
見地
よりその
普及指導
をはかって参ったのでありますが、さらにこれを促進いたしますことが
人口対策
の
見地
からも緊急不可欠と認められますので、
家族計画思想
の一そうの
普及徹底
をはかることにいたしたのであります。このための
施策
として、さしあたり
受胎調節普及度
の最も低いと思われます
生活困窮者
に対しまして、
受胎調節
に必要な器具、
薬剤等
を
無償
または低廉な
経費
で提供することとして、三千二百余万円を新たに計上いたしましたほか、前
年度
に引き続き
保健所
が中心となってその
普及
と
指導
を行なって参るために必要な
経費
として、二千六百余万円を見込みました次第であります。 第五は、
水道施設等公衆衛生関係施設
の
整備充実
に必要な
経費
についてであります。まず、
公衆衛生
の
基礎施設
であります
水道施設
の
整備普及
は、
公衆衛生
の
維持向上
を期する上におきましてきわめて重要でありますので、その
整備
に意を用いてきたのでありますが、特に
下水道施設
は
整備
に巨額の
経費
を必要とするため、その
普及
がはなはだしく渋滞いたしておりますとともに、
事業費
の中に占める
労務費
が比較的高い
事情等
をも勘案いたしまして、本
年度
より
緊急就労対策
の一環として
整備
することとし、
従前
に倍する四億一千八百万円を計上いたしたのであります。また
飲料水
に基因して
消化器系伝染病
の多発する
農山漁村
に対し、
簡易水道
の布設を
助成
するため六億四千万円を計上いたしましたほか、
特別鉱害復旧臨時措置法
及び
臨時石炭鉱害復旧法
に基いて、
特別鉱害
及び
一般鉱害対策事業
に対し
補助
を行うに必要な
経費
並びに
南海地方
の震災に基因する
地盤変動対策事業
に必要な
経費等
一億六千五百余万円を見込んだのであります。 次に、
公衆衛生
の
第一線機関
として重要な
機能
と
役割
をになっております
保健所
につきましては、
C級
から
A級
への格上げを九カ所行いますとともに、
老朽施設
十カ所を改良
整備
し、さらに
エックス線等
の
重要設備
の
整備
をはかる等のための
経費
として一億三千四百余万円を計上いたしまして、その
機能
の
強化
に努める所存であります。さらに
運営費
におきましては、
委員
の
充足状況
を考慮して、実人員を
経費算定
の
基礎
といたしました反面、
給与
の
単価
を
実情
に即して若干の
引き上げ
を行うこととしまして、その
所要経費
十六億一千七百余万円を計上いたした次第であります。 第六は、
国立病院等医療機関
の
整備
に必要な
経費
についてであります。
医療機関
の
整備
につきましては、
医療体系
の
中枢機関
としての
国立病院
をして名実ともにその
指導的役割
と
効率的運営
を遂行せしめるため、相当大幅な
整備改善
を行いますに必要な
経費
として十二億二千二百余万円を見込みましたほか、
一般地方病院
の需要に応じて貸し出しを行うため、ラジウムを
設備
するための
経費
一千六百余万円を新規に計上いたした次第であります。 また
公立一般病院
につきましても、
医療機関整備計画
にのっとって、その
整備
を
助成
促進するため四千五百万円を計上いたしますとともに、引き続き
国立病院
の一部を
地方
へ移譲することとし、これを促進するための
経費
として一千八百万円を計上いたした次第であります。さらに無医村または
医師不足町村
の
解消
と
国民健康保険
の健全な
運営
に資するため、
国民健康保険
の
直営診療所
の
整備拡充
を行うこととして、これに要する
経費
として二億円、
伝染病
の
予防
上必要欠くことのできない
隔離病床
一千八百六十六床の
整備
のための
経費
として一億五千余万円をそれぞれ計上いたしました。 第七は、
生活保護
に必要な
経費
についてであります。
生活
に困窮する者に対してその
最低限度
の
生活
を保障し、その自立を
助成
するために必要な
経費
でありまして、扶助の種類は同様であり、
保護
基準につきましても
結核患者
に対する栄養加算の
改善
を行いましたほかは、
従前
と同様といたしているのであります。反面、不況の進行過程にかんがみ、
保護
人員は前
年度
補正予算
算定の
基礎
人員に対し、各扶助とも五%の上昇を見込んで
所要経費
の算定を行いました結果、扶助費は合せて三百四十三億九千四百余万円となり、前
年度
に比して十七億四千四百余万円の
増加
となっているのであります。しかしながら旧軍人恩給及び日雇い労働者
健康保険
の実施に伴う
減少
見込額十九億円、前
年度
不足
見込額十億円をそれぞれ加除一たしますと、扶助費の純計は三百三十四億九千四百余万円となり、かえって前
年度
より八億八千二百万円の
減少
となっているのであります。これは旧軍人恩給の裁定進捗に伴う
減少
見込額の
増加
が六億四千万円、過
年度
赤字
計上分が前
年度
より十九億八千六百万円の
減少
となっているためであります。 右のほか、
保護施設
の
事務費
に七億二千七百万円、
生活保護
法施行のための
経費
に四億三千余万円が見込まれ、これらすべてを合せまして
生活保護
に関する
経費
として三百四十六億五千二百余万円を計上いたした次第であります。 なお
保護
の実施につきまして、洩給または濫給の防止をはかってその適正な運用を期するとともに、
指導
的職員の資質の
向上
をはかるため、都道府県の基幹
委員
の
人件費
として
全額
国庫負担
の委託費を
交付
することとし、これに必要な
経費
として新たに八千九百余万円を計上いたしたのであります。 第八は、
児童
保護
に必要な
経費
についてであります。まず
措置
費につきましては、
施設
の増設に伴う
児童
の
増加
を見込みますとともに、
デフレ施策
の影響をも考慮して、保育所及び母子寮の援護率を若干
引き上げ
ることといたしましたほか、前
年度
不足
分二億円を含めまして算定いたしました結果、その
所要経費
は五十六億四千余万円となり、前
年度
に比べまして八億三千余万円の
増加
となっているのであります。 また盲児及び肢体不自由児等の身体障害児に対し、育成
医療
を施し、あるいは義肢等の補装具の支給を行うための
経費
、
児童
相談所及び一時
保護
所の
運営
に必要な
経費
並びに保母養成所に必要な
経費等
三億二千二百余万円を計上いたしているのであります。 第九は、世帯更生運動の
推進
に必要な
経費
についてであります。疾病、失業または
事業
の失敗等によって経済的破綻を来たし、あるいは自立の道を失って被
保護
階層に転落するおそれのある世帯に対し、その再起更生のため適切な
措置
を行いますとともに、必要な
資金
を低利で融資してその
生活
意欲を振起せしめて自立更生をはかることと、たしたのでありますが、その実施につきましては、都道府県をして都道府県
社会
福祉協議会を通じて右に述べましたような
生活困窮者
に対し自立更生に必要な生業、技能修得、
事業
継続及び支度等に必要な
資金
の
貸付
を行わせることとし、国はこれに必要な
経費
の二分の一を
補助
することとしたのであります。このための
経費
として、三千万円を計上いたしたのであります。 第十は、
社会
福祉
施設
の
整備充実
に必要な
経費
についてであります。
生活
保護施設
の
整備
につきましては、養老
施設
に
重点
をおいてその増設
整備
をはかりますとともに、
老朽施設
の補修改良のための
整備
をもあわせて行うことといたしまして、これに要する
経費
一億八千二百余万円を、
児童
福祉
施設
におきましては、前
年度
に引き続いて保育所及び母子寮の増設を中心として
整備拡充
を行うこととして、四億円をそれぞれ計上いたしておりますほか、身体障害者の更生援護
施設
、同和地区の
生活
改善
をはかる総合福祉
施設
、公益質展の
整備等
のため四千九百余万円を計上いたしたのであります。また、民間
社会
福祉
事業
の
振興
をはかるため、昨年設立されました
社会
福祉
事業
振興
会に対する出
資金
として、さらに一億円を計上いたしまして民間の
社会
福祉
施設
の
整備充実
を期している次第であります。 第十一は、戦傷病者戦没者遺族及び留守
家族
等援護のための
経費
についてであります。戦傷病者戦没者遺族等援護法に基く遺族年金、障害年金及び障害一時金の支給等に必要な
経費
といたしまして三十億四千八百余万円を、また未帰還者留守
家族
援護法に基く留守
家族
手当、障害一時金及び療養費等に必要な
経費
として十四億二千七百余万円をそれぞれ計上いたしました。右のうち、遺族年金及び留守
家族
手当は、旧軍人恩給の公務扶助料の
引き上げ
に対応して本年十月以降若干の増額を
予定
いたしておるのであります。また療養の給付を受けるもののうち、大部分のものは本年十二月二十八日をもって法定の
療養給付
期間を経過することとなりますので、なお三カ年間これを延長することを
予定
しているのであります。 第十二は、引揚者の援護に必要な
経費
についてであります。昨
年度
中の海外からの引揚人員は、集団及び個別を含めて三千二百七十四人となっておりますが、中共及びソ連地区には未だ相当数の残留者が帰還を待望しているものと想像されますとともに、両地区とも残留者の帰還が引き続き期待されますので、一応集団三千人、個別五百人、戦犯釈放百人を
予定
いたしまして、その輸送、帰還手当の支給、食事、被服、日用品及び
医療
等の
給与
を行うに必要な
経費
のほか、集団
収容施設
の補修
整備
のための
経費
を含め、六千九百余万円を計上いたしまして、その受け入れ援護に遺憾のないことを期しているのであります。 なお、引揚者の定着援護に必要な住宅
施設
につきましては、建設省
所管
に計上されております第二種公営住宅のうちより、八百五十戸を引揚者用に建設する
予定
にいたしている次第であります。 右に申し述べましたほか、らい
予防
及び
国立
らい療養所の
経営費
等らい対策に必要な
経費
として十七億三千四百余万円を、法定
伝染病
予防
費の
補助
として七億円を、アヘンの専売
事業
の円滑な
運営
をはかるために新たに設けられたアヘン特別会計の固定運転
資金
に充てるため、同特別会計に対し繰り入れを行うために必要な
経費
として三千五百万円を、戦傷病者及び身体障害者に対し更生
医療
の実施または補装具の支給等諸種の援護を行うために必要な
経費
として三億四千四百余万円を、母子世帯の経済的自立を助長してその福祉の増進をはかる母子福祉
貸付
資金
に必要な
経費
として五億円等をそれぞれ計上いたしたのであります。 以上、
昭和
三十
年度
厚生省所管
の
一般会計予算
のうち、若干の重要な
施策
につきまして御
説明
申し上げたのでありますが、このほか保健衛生、
社会
福祉の各費目につきましても、それぞれ所要の
経費
を計上いたしておるのであります。 次に、
昭和
三十
年度
厚生省所管
の
特別会計予算
の
大要
について御
説明
申し上げます。 まず第一は、
厚生保険特別会計
についてでありまして、さきに申し述べましたように、
健康保険
においては、前
年度
及び本
年度
の
赤字
を
補てん
とするため六十億円の
長期
借り入れを見込みますとともに、収支均衡を失いました
保険財政
の
改善
に資するため、
保険料率
の
引き上げ
の
標準報酬
等級の改訂を
予定
いたしております。また日雇い労働者
健康保険
におきましては、
給付期間
の延長と給付の
改善
を行うことといたしました。 右に要する
経費
として健康勘定におきましては、歳入歳出とも五百三十二億七千九百十二万円、日雇い健康勘定におきましては、歳入歳出とも二十二億二千三百二十八万三千円、年金勘定におきましては、歳入四百五十億一千九百九十二万円、歳出九十二億九千五百六十二万八千円、業務勘定におきましては、歳入歳出とも二十八億三千五百六十一万四千円を、それぞれ計上いたしました。 第二は、
船員保険特別会計
についてでありますが、
健康保険
について申し述べましたと大体同様の
措置
をとることといたしておるのであります。これに要する
経費
といたしまして、歳入四十五億九千八百二十五万八千円、歳出四十億六千七百六十五万三千円を計上いたしました。 第三は、
国立病院
特別会計についてであります。さきに述べましたように、
国立病院
の
施設整備
を行うために必要な
経費
を大幅に計上いたしましたほか、三億円の債務負担行為を計上いたしているのであります。前
年度
に引き続きまして、血液銀行、高血圧の治療センター、ガンの治療センターをそれぞれ若干個所
整備
いたしますとともに、もっぱら
地方
の
一般
病院に対し貸し出しを行うためにラジウムを
設備
することといたしまして、これら総体の
経費
として、歳入歳出とも七十八億五千四百六十六万八千円を計上いたした次第であります。 最後は、アヘン特別会計についてであります。アヘン法に基いてアヘンの輸入、売り渡しの
事業
を独占的に行うため、
昭和
三十年七月一日を期して設置することといたしており、本
年度
は、輸入三十五トン、国内産の収納二・五トン、製薬原料としての売り渡し三十二トンを
予定
いたしまして、所要の収支を見込みました。すなわち歳入歳出とも一億九千六十三万七千円を計上いたしました。 以上
昭和
三十
年度
の
厚生省所管
一般会計
及び各特別会計の
予算
につきまして概略御
説明
申し上げたのでありますが、何とぞ本
予算
案の成立につきましては、格別のお力添えをお願い申し上げる次第であります。
—————————————
藤本捨助
5
○
藤本
主査
次は
労働省所管
の御
説明
を求めます。高瀬
政府
委員
。
高瀬傳
6
○高瀬
政府
委員
今回提案されました、
昭和
三十
年度
一般会計
及び特別会計の
予算
中、
労働省所管
分につきましてその
概要
を御
説明
申し上げます。 まず第一に、
一般会計
におきましては、歳入において、
総額
三億十五万九千円で前
年度
の二億三千四百十九万四千円に比較して、六千五百九十六万五千円の
増加
となっておりまして、この主たるものは、国家公務員等退職手当暫定
措置
法に基いて受け入れる特別会計等の失業者退職手当負担金であります。一方歳出におきましては
総額
三百三十九億七千七百三十三万八千円で、前
年度
の二百九十二億六千八百五十七万三千円に比較して、四十七億八百七十六万五千円の
増加
となっております。なお、このほかに建設省
所管
の官庁営繕費に五千六百三十二万七千円を
労働省
関係
分として計上いたしておるのであります。 次に、この歳出の内容について概略を申し上げますと、その一は、失業対策の拡大
強化
であります。経済諸
施策
の進展に伴いまして、失業情勢は必ずしも楽観を許さない
実情
にありますので、
現行
、失業対策
事業
のワクの拡大をはかり、これを再編成するとともに、新たに特別失業対策
事業
として建設的な
事業
を大規模に実施するのほか、失業
保険制度
を
改善
し、適用範囲の拡大、
給付内容
の適正化等の
措置
を講ずることによって失業者の
生活
の安定を期することとし、これに必要な
経費
として、失業対策
事業費
補助
百六十八億二千万円、失業保険費負担金百十七億四百万円
政府
職員等失業者退職手当三億六千万円、
合計
二百八十八億八千四百万円を計上いたしております。 その二は、労使
関係
の安定促進であります。
国民
経済の自立達成を期するためには、労使、
関係
の安定をはかり、
産業
の平和を確立することが強く要請されている現情にかんがみまして、民主的労働組合を育成し、健全な労使
関係
を発展助長するため、労働教育の
整備充実
をはかるとともに、労働組合の福祉厚
生活
動の促進、労働金庫の適正なる
運営
等の
施策
を強力に
推進
することとし、これに必要な
経費
として、六千百七万五千円を計上し、なお労使
関係
の合理的かつ、円滑なる調整をはかるため、中央労働
委員
会並びに公共企業体等労働
関係
調整
委員
会に必要な
経費
として、一億一千二百六十三万五千円を計上いたしております。 その三は、労働経済に関する統計調査の
整備充実
であります。労働経済に関する統計を迅速かつ、的確に収集
整備
してこれを分析し、労働行政
施策
の
基礎
資料とするとともに、労使その他
関係
方面に提供し紛争議の合理的解決、生産の増強等に寄与するため、前
年度
に引続き毎月勤労統計、労働生産性統計、職種別賃金
実態調査
及びその他労働事情に関する統計調査を実施するほか、新たに地域的に発生する失業情勢を迅速的確に把握し、失業対策に万全を期するための地域別等就業失業調査を実施することとし、これに必要な
経費
として、一億八千九百十九万九千円を計上いたしております。 その四は、労働
関係
における国際
協力
の
強化
であります。国際労働憲章に規定されている義務を履行し、積極的にこれに
協力
するために、必要な分担金及びILO
関係
の諸会議への出席旅費等の
経費
並びに
わが国
の労働事情に関し海外
広報活動
を実施するための
経費
として、九千五万九千円を計上いたしております。 その五は、労働
保護
行政の円滑なる
運営
の確保であります。労働者の
保護
と福祉を積極的に
推進
し、労働生産性の
向上
をはかるため労働基準行政を一段と刷新
整備
するとともに、
産業
災害の防止と、職業病けい肺等この種疾病の特殊性にかんがみまして、これが
予防
及び特別
保護
の方途を講ずるほか、中小企業における労働者の技能水準の
向上
をはかるため技能者養成
施設
に対し
助成
を行うこととし、これに必要な
経費
として、十二億五千七百二十四万六千円を計上いたしております。 その六は、婦人及び年少労働者の
保護
助長であります。婦人及び年少労働者の特殊性にかんがみまして、これら労働者の
保護
と福祉の増進をはかるとともに、
一般
婦人の
社会
的地位と
生活
の
向上
をはかるため、
地方
婦人少年室の行政
機能
を
強化
するほか、前
年度
に引続きまして、各種調査の実施、啓蒙資料の発行等を行うための
経費
として、六千百十万九千円を計上いたしております。 その七は、就職の促進と職業補導
事業
の
拡充
であります。現下の雇用情勢にかんがみまして、就職の促進をより一層強力に実施する必要がありますので、公共職業安定所の職業あっせん
機能
を
強化
して、これが
効率的運営
をはかるとともに、
産業
界の要求する技能労働力の円滑なる需給調整をはかるため、前
年度
に引続き
一般
公共職業補導所を
運営
するほか、新たに家庭婦人、未亡人等を対象とする家庭内職、家事サービス等の職業補導
事業
を実施することとし、これに必要な
経費
として、三十億百十九万二千円を計上いたしております。 その八は、その他
一般
行政事務に必要な
経費
であります。 以上の
経費
のほか、大臣官房等における行政
事務費
として三億二千八十二万三千円を計上いたしておるのでございます。 第二に、労働者災害補償保険特別会計につきまして申し上げます。この会計の歳入、歳出はいずれも二百三十二億五千六百七十三万円で前
年度
の二百四十億四千八百二万九千円に比較して、七億九千百二十九万九千円の
減少
となっておりまして、歳入の主たるものは、
保険料収入
の二百九億九万九千円と、支払い備金受け入れの十五億円であります。また歳出の主たるものは、労働者災害補償保険
給付費
の百七十五億三百五十五万一千円でありますが、本
年度
は労働者の業務災害被災者に対する
療養給付
の適正
充実
をはかるため、前
年度
に引き続き労災病院の
整備拡充
を行うとともに、懸案
事項
でありましたけい肺病罹災者等の
予防
及び
保護
を
強化
するため、今国会に提出し
審議
をお願いしております「けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別
保護
法」に基き、けい肺
患者
及び外傷性せき髄損傷
患者
に対する療養、休業、配置転換給付並びに、けい肺
健康診断
を実施する等のため十二億八千四百六十五万五千円を計上いたしております。 第三に、失業保険特別会計につきまして申し上げます。 この会計の歳入、歳出はいずれも四百五億九千三百五十八万四千円で、前
年度
の四百二億九千六百五万一千円に比較して二億九千七百五十三万三千円の
増加
となっておりまして、歳入の主たるものは、
保険料収入
の二百五十億六千七百五十八万二千円と、
一般会計
より受け入れの百十七億四百万円であります。また歳出の主たるものは、失業保険
給付費
の三百四十二億四千二百万円でありますが、特に本
年度
におきましては、本会計の積立金より生ずる運用利子収入のおおむね二分の一を充当することにより、労働者の福祉増進をはかるため、職業補導
施設
及び宿泊
施設
等の保険
施設
を
拡充
整備
することとし、これに必要な
経費
として、五億五千万円を計上するのほか、失業保険法の一部を改正し、適用範囲の拡大と、保険給付の適正化をはかることといたしております。 以上をもちまして、
労働省所管
関係
予算
の
大要
の
説明
を終ります。 何とぞよろしくお願い申し上げます。
藤本捨助
7
○
藤本
主査
これにて
昭和
三十
年度
一般会計予算
中
文部省
、
厚生省及
び
労働省所管
、
昭和
三十
年度
特別会計予算
中
厚生省及
び
労働省所管
の
政府
説明
は全部終了いたしました。 午前はこの
程度
にとどめ、午後は一時から会議を開くことといたします。それまで暫時休憩いたします。 午後零時四分休憩 ————◇————— 午後一時四十三分
開議
藤本捨助
8
○
藤本
主査
休憩前に引き続いて会議を開きます。
昭和
三十
年度
一般会計予算
中
文部省
、
厚生省及
び
労働省所管
並びに
昭和
三十
年度
特別会計予算
中、
厚生省及
び
労働省所管
を一括して
議題
といたします。 これより質疑に入ります。質疑は通告順によってこれを許します。
八田貞義
君。
八田貞義
9
○
八田
分科員
厚生
大臣に御質問いたします。四月における自然休会明けの本会議におきまして、河野農林大臣は、
厚生
大臣との間に昨年十二月末覚書を交換して、高温殺菌乳の消費奨励を促進することになったと言われましたが、どのような内容を持った覚書か、それを一つお知らせを願いたいのであります。
川崎秀二
10
○川崎国務大臣 ただいま御質問の点は、河野農林大臣が昨年の暮れに、私の前任者であります鶴見
厚生
大臣との話し合いで、牛乳の処理問題について、農村方面におきまして、なるべく販売を自由な形で、かつ積極的に行うような仕組みにしてほしいという要望が高くなりましたので、特にこの問題について何分の結論を出すことにしようということに、双方の申し合せは一応なったそうであります。しかしながら、これについてどういう申し合せの内容にするかということにつきましては、
厚生省
側と農林省側との間に意見を具体的に交換するという段階に入る前に、たとえば市部は低温をするとか、あるいは農村部は高温殺菌でも差しつかえないとかいうような問題があったり、さらに集団給食に対して参議院の方から、
厚生省
が考えておったようなことに対して、御反対の意見などがありまして、その結果具体的な取りきめをするに至らずして今日に至っておるのが
実情
であります。その際何とか取りまとめしょうということで、両者の意見は一致をした。ところが具体的な内容に入らぬうちに大臣が更迭し、そしてその後この問題に対しては、参議院の
厚生
委員
会もそうでありますが、
委員長
を中心として国会側において、
厚生省
の考えておることに対して、ちょっと待てというような有力な意見が台頭してきましたので、それらの事情もありまして、今日までのところ具体的な取りきめになっておらぬというのが
実情
だそうであります。
八田貞義
11
○
八田
分科員
今のお話によりますと、農村方面においては高温殺菌乳を認めようという申し合せであったように伺いましたが、農村方面に高温殺菌乳を許そうということは、省令五十八号が五十二号に改正されましたときに、すでに次官通牒といたして出ているのでございます。それをさらに申し合せ
事項
として、中小都市にもやろうという申し合せがあったように私は伺っているのであります。その点について
厚生
大臣からもう一回、中小都市も対象に入れてそういう申し合せをなすったかどうかお聞きいたしたいのであります。
川崎秀二
12
○川崎国務大臣 そういう申し合せばまだいたしておらぬそうであります。
厚生省
としては、とりあえず市部は低温殺菌としても、農村部では、食
生活
の
改善
とかあるいは消費の
普及
という建前から、高温殺菌でも差しつかえないことにしようという考え方を持っているのでありますが、これを具体的に取りきめするに至らずして今日に至っておりますので、もとより中小都市に対しても、こういう
措置
を講ずるという段階には至っておらないのであります。
八田貞義
13
○
八田
分科員
そうしますと、農林省のこのたびの本
予算
におきまして、中小都市を対象とするところの高温殺菌乳の奨励について、二千二百八万円を計上いたしております。ここに問題があるわけでございまして、この省令五十二号において、農村に高温殺菌乳を認めるという次官通牒は、大体一石から二石限度内の消費を目的としている。すなわち家庭能力を対象とした高温殺菌の処理方法を考えているわけであります。ところが中小都市になると、一石、二石というような少量では済まないはずであります。相当大量の牛乳を処理しなければならぬ。従って高温殺菌乳を中小都市に認めるということになると、
施設
費において低温殺菌乳の処理費と何ら変らないという結果になってくるわけです。この点について、農林省は
予算
面に中小都市をはっきりと対象としてうたっておるのであります。これにつきまして
厚生
大臣といたしまして、どのようなお考えでこの中小都市を対象とする高温殺菌乳の
補助
費というものを認められるか。これをいかぬことであるといたしまして、これの撤回を迫られるかどうか、大臣の所見をお伺いいたします。
川崎秀二
14
○川崎国務大臣
予算
措置
としてただいま御指摘のようなものが農林省の
関係
に載っておることと思うのでありますが、農林省は具体的に実施する場合におきましては、いずれ
厚生省
と十分連絡して取りきめるということになっておりますので、それに対してもとより私どもは今日の日本の食
生活
の
改善
あるいは牛乳というものを奨励するということの基本方針に対しては、農林省とそう考え方が違うわけではないのでありますが、これが処理の具体的実施について一応そういう計上になってはおるものの、具体的な実施プランというものについては相談をするということになっておるそうでありますから、相談があるものと思っておるのであります。その際においては
厚生省
の考え方も十分に申し述べて、この実施が円滑にかつ
国民
の食
生活
改善
の上に大きく役立ち、かつ牛乳の需給
関係
が円滑なるバランスをとって進む方向に進めたいというふうに考えてはおりますが、詳しくは環
境衛生部長
から御答弁をさせていただきたいと思います。
八田貞義
15
○
八田
分科員
大臣は農林省の方から申し出があった場合に、それについて自分の考えを言うというような態度でありまするが、そうじゃなくて、中小都市に高温殺菌乳を認めることは消費の面においても高い値段につく、決して十円牛乳というものにはならない、しかも衛生の点から考えてみても非常に欠陥が多いということによりまして、十分にこれは考えられることであります。あとでまた私は申し上げようと思いますが、このような中小都市を対象とすることは間違っておるということで、お待ちになっていないで、まず
厚生
大臣の方から積極的に農林大臣の方に働きかけまして、中小都市を対象とする高温殺菌乳の奨励を撤回していただくようにお願いいたしておるのであります。
川崎秀二
16
○川崎国務大臣 私といたしましては、第一に考えなければならぬことは、
厚生省
としての立場から申せば保健衛生の点でありますから、その点について農林大臣が食
生活
改善
という
見地
からのみ実施をいたすことに対しては、保健衛生の立場から具体的な意見を申し述べたいと思っております。ただいま御要望の点は十分に私どももしんしゃくいたしまして善処するつもりであります。
八田貞義
17
○
八田
分科員
高温殺菌乳の大量消費ということは衛生上あるいは経済上から無理があるということで、低温殺菌乳の処理方法が発達して参ったのであります。それを中小都市まで高温殺菌乳を及ぼしていくということになって参りますと、三十年前に逆行するということになって参ります。高温殺菌乳というものはバック式によって処理を行うのでありますが、牛乳びんはガラスでできておりますから、ガラスびんの外側が熱くなりましても熱はガラスを浸透することが弱いのであります。たとい外側は熱くなりましても内部の方へは熱が浸透しない。従って牛乳びんの中の細菌は殺菌されないという状態が起って参るのであります。しかも高温殺菌乳の中におけるところの細菌層の動態というものは、処理工場の方法によりまして違って参ります。だから画一的にこうなるというふうには言い切れないのでございます。ただし概括的に言いまして、大切な乳酸菌は死滅するか
減少
いたしまして、アルカリ生成菌は逆に増すということになって参りまして、腐敗を早めるような結果になってくるわけであります。私がこのように申し上げているのは、バック式によって牛乳消費量を高めるということは保健衛生の面からいって非常に遺憾にたえない、心配にたえないということを大臣に御認識願いたいので申し上げておるのであります。しかもこの高温殺菌乳をもしも中小都市に許すことになりますと、製品ルートが非常にふえて参りますので、サンプルを一体どういうふうに集めていくか、またその個々のプラントにつきましてどのような監督をやっていくか、現在の人員ではプラントの監視が月一回やるように定められておるのでありますけれども、年一回中小都市において行われているというのが現状であります。このような状態におきまして、高温殺菌乳の処理工場が多数ふえたような場合に一体どういうふうにして処理していかれるか、この点につきまして環
境衛生部長
に衛生監視の点からお伺いいたしたいのでございます。
楠本正康
18
○楠本
説明
員 お答えを申し上げます。ただいま大臣からもお話がございましたように、なるほど
予算
の面では中小都市に集団給食を対象として
施設
をするように農林省で計上してあるようでございます。しかしながらこの具体的な実施に対しましては当方に相談をいたすことに相なっております。従いましてその場合に十分衛生上安全な
措置
を講ずるよう農林省と相談をいたしまして決定をいたす所存でおります。従いましてただいまの御指摘のように今後非常にたくさんのいかがわしい処理場ができて監視に困るというようなことのないようにいたしたい、かように考えておる次第であります。
八田貞義
19
○
八田
分科員
私が時間をつぶして申し上げておりますのは、中小都市に高温殺菌乳を許すということになりますと、現在の衛生検査実施員でばとうていまかない切れない。しかもその処理方法におきましても非常に衛生上疑わしい点がたくさんあります。このような欠点を持った高温殺菌乳を中小都市に許すということは
厚生省
の立場におきまして強く農林省を啓蒙していただくように私、お願いいたしましてこれに関するところの質問は打ち切ります。 それからもう一つ
厚生
大臣にお願いいたしたいのでありますが、ラジウムの購入費といたしまして
予算
が千六百五十万円計上されております。その理由といたしまして、ラジウムは高いので個々の医者があがない得ない、それを国家においてあがなって
一般
医師の便宜に供するんだ、こういうことが会計
課長
の御
説明
であったように伺っております。ところが原子力の研究発達の結果、安価なコバルトなどが応用されるに至って参りましたので、かような高価なものを購入する必要がない、コバルトをもって十分にラジウムのかわりとなし得るということが今日の医学の常識になっておるのでございます。ですからこのような高いラジウムを買う必要を認めないので、お医者さんが買っておらぬのであります。決して高いから買わないのじゃなくて、必要性を失ったので買うことをやめておるのです。この点につきまして大臣の御所見をお伺いいたしたいのでございます。
川崎秀二
20
○川崎国務大臣 ただいまのラジウムに関する御質問でありまするけれども、これは純技術的な問題でありますので、ただいま
医務局長
を呼びまして答弁をさせますが、主要用途に対するところの相違ではないかと私は考えますので、たとえばラジウムにかわってコバルトだけでも十分にそれをまかない切れる、そういうものは今日ではコバルトでやれるのだということも言い切れないのじゃないかと、私は常識的には考えておりますけれども、しかしこれは
医務局長
が参りまして十分に答弁をいたしまするから、御了承願いたいと思います。
八田貞義
21
○
八田
分科員
それでは健保の
赤字
問題について大臣にお伺いしたいのでありまするが、今日
社会保険
が崩壊の危機にあり、
赤字
問題が大きく取り上げられております。
厚生省
はその対策といたしまして、
医療給付
の圧縮の方途に出ておりまして、
指導
、監査を
強化
し、
審査
もいよいよ引き締めていく方針のようでございます。われわれが
指導
、監査の
強化
に憂いを抱くのは乱診、不正を行なっている医師をかばうとか、自己が恐怖を感ずるからではございません。保険の
赤字
支払いの原因が乱診と不正のために拍車をかけられたという
厚生省
の宣伝に対し、そうではなく、
社会保険
の危機は
政府
自身の
施策
の当然の結果であり、
赤字
は
社会保険
発展の
増高
の数字であって、これを私的保険
事業
と同じ営利性の
基礎
に立って
赤字
克服を言われるところに問題があるのでございます。
健康保険
は掛金をかけて金額を給付する性質のものではなく、一定の金額を月掛いたしまして、健康にして文化的な
最低限度
の
生活
を保障するレアルタームでなければなりません。従って
健康保険
は当然営業としては存在できないものでありまするから、国家が補償すべき性質を本来持つものであります。
厚生
大臣は三十
年度
の
予算
編成に当って、
医療費
に対する
国庫負担
の問題について大蔵大臣と折衝されたと言われまするが、どのような観点からまたどのような折衝をなされたか、ここに明らにしていただきたいのでございます。
川崎秀二
22
○川崎国務大臣
健康保険
の収支均衡につきましての根本的な御質問でありますので、詳細にお答えをいたしたいと思うのであります。ただいま御指摘の中に、
厚生省
が、健保の
赤字
は主として乱診並びに不正行為の起ったことにあるのだと言ったようなお話でありましたが、私はさようには考えておりません。第一の原因はやはり何と申しても
医療
の機関が非常に多くなってきたということでありまして、これは
健康保険
に加盟をしておる被
保険者
自身の関心が高まり、常に健康な状態において日常公私の
生活
に献身したいという気持が
国民
全体に高まった結果であろうと思うのであります。従って治療を早期に実施をしていくという
国民
的な自覚が、かような大きな
医療費
の増し方になってきたのであって、御指摘の
通り
社会
保障の実態というものが、
制度
そのものを乗り越えて進みつつあるということが第一の原因だと思っております。もとよりこれに伴って医者が行うところの治療の方法が医学の進歩とともに最もよくきく薬を使用するというようなことや、あるいは第三、第四の原因といたしましては、乱療、乱診などということもあるかとも思うのでございます。従いましてただいまの
八田
委員
の見解は、
厚生省
はそういう乱療、乱診、不正の行為が多いからこういう増し方がきたのだというようなことに押しつけておるというようなことはございませんし、ことに私が就任をいたして以来の
厚生省
の見解は、ただいま私どもが申し上げました線に沿って処理をいたしたい、かような考えをいたしておるのであります。従ってこれに対する対策といたしましては、当然かような
医療
の機関がふえ、
社会
保障の実態が進みつつある状況に応じて、国が相当部分の責任を持つべきであるということは、かねがね
社会
保障
審議会
から勧告をされました趣旨に基きましても十分体得をいたしておりまするし、私は
財政
の状況が許し得るならば、
医療給付
に対するところの二割の
国庫負担
が理想であり、これを一日も早く実現したいということは第一回の
社会
労働
委員
会で申し上げて以来、少しもその気持に変化はないのであります。しかしながら御承知のように、本年の
予算
は一兆円というワクの中にしばられまして、中には積極的な
振興
政策である、たとえば住宅政策であるとか、あるいは
社会
保障の中におきましても、さらに前進をしなければならぬ
施策
などもありまして、
国庫負担
があのような十割というまことにかぼそい姿で実現をしたことははなはだ遺憾に思っております。そこでこれを
制度
的な方面から見るならば、単に
赤字
解消
ということだけではなくして、国が一定額を負担するということの露頭が本年において現われたことでありまして、これとあわせて二十億の
長期
融資によって国が直接負担をするということは言い切れませんけれども、少くとも国の責任において処理をするという額もまた二十億に上っておりまして、これらを合せますと、
赤字
負担に対しますところの国の負担行為というものは、半額
程度
に上っておるわけであります。六十一億と見られる
赤字
に対して、三十億の負担行為をなした以上は、一方において被
保険者
におきましても、十分にこの
赤字
の実態というものについて、責任をもって処理をしていただく必要があるというので、これに伴っての料率の
引き上げ
その他の
措置
を行なった次第であります。これが私の今回とりました
措置
でありまして、種々世上には御批判もありましょうけれども、今日の三十
年度予算
における
政府管掌
の
健康保険
に対する処理としては、国と被
保険者
が責任を分担することの意味において、十分御了承をいただけるものと考えておる次第でございます。
八田貞義
23
○
八田
分科員
大臣の今の御答弁によりまして大体わかったのでありますが、そういたしますと、定額の
国庫負担
と収支面の均衡処置の両建によって行うということになったわけでございますが、それでは健保の
赤字
処置というのは、その六割から七割を
長期
融資によるところの応急策で切り抜けて、残余を被
保険者
、
事業
主の負担によって解決しようというのが、今の
赤字
対策であるというように了解いたしますが、かりにこれらの対策が
関係
方面の反対を押し切って実行されたといたしましても、四〇%前後という給費の
増高
率に一、二年間対処し得るにすぎないと考えるのであります。そこで一体保険の
赤字
に占める
医療費
のパーセンテージ、そして支払い基金より支払われたところの、二十六年より二十九年にわたる各
年度
における
総額
についてお知らせ願いたいのであります。
川崎秀二
24
○川崎国務大臣 ただいまの後段の数字につきましては、後ほど申し上げますが、本
年度
の
赤字
対策といいまするか、本
年度
の
健康保険
の
財政
に対する
政府
の責任ある
措置
としては、先ほど述べましたことで御了解を願いたいと思うのであります。将来にわたる恒久対策、少くとも三十一
年度予算
以降における、ここ二、三年の
健康保険
財政
の収支の均衡化につきましては、御承知とも思いますが、
厚生
大臣の諮問的機関といたしまして、このたび新たに学識経験者を中心とする七人の
委員
を委嘱申し上げまして、鋭意研究を続けておる次第でありますから、これも御了承おきを願いたいと思います。 それからただいまお尋ねになりました
昭和
三十
年度
の保険
給付費
でありますが、これは五百十九億、
医療給付
費がそのうち四百三十一億であり、
現金給付
費が八十八億でありますから、五対一という
関係
に立つのであります。それで、
昭和
三十
年度
におきまして
赤字
が六十億でありといたしますれば、大体
医療給付
費の
赤字
ということは、五十億前後と見込めば、大体正確ではないか、もとより端数の数字まで出してお答えすることは、今日のところ見込めませんけれども、五十億と見込んでいただけばよいのではないかと思います。 それから診療報酬の支払い基金の支払い
総額
の調べでありますが、こういうふうになっております。
政府管掌
の分だけ申し上げます。二十八
年度
が二百五十七億九千三百五十五万七千円、二十九
年度
が三百五十億二千九百二十二万三千円であります。
八田貞義
25
○
八田
分科員
二十六、二十七
年度
はどうでありますか。
川崎秀二
26
○川崎国務大臣 申し上げます。二十六
年度
が百三十七億二千百万円、それから二十七
年度
が百九十六億八千百五十一万円であります。
八田貞義
27
○
八田
分科員
そうしますと、今の
医療費
の支払いというものが、大体二、三〇%以上くらい
増加
率を示してきているようであります。しかるにこの
増加
率に対しまして、
国民
所得のそれは大体一〇%内外というように承知いたしておりまするので、当然破綻は起ってくるわけであります。これはいいますならば、
国民
的悲劇でございまして、生命という絶対的なものを守る、
医療
技術の進歩に伴う費用の
増高
を、
国民
がまかなえないという現実にほかならないと思われます。物は経済事情によって変化高低を見ますが、
医療
技術というものは日に進歩の一途をたどって、後退せざる事実を為政者は知るべきであります。保険
施策
ほどこまでも経済係数の上に立てられるものではありますが、
医療
は常に医学の進歩によって
拡充
されねばならぬのが本質でございます。ペンキ屋のかいた富士山の絵も、横山大観のかいた富士山の絵も、同じく評価されるところに、すなわち
医療
技術を全く認めないというところに問題があります。
政府
は物だけの操作にたよって、
赤字
克服を考えられておりますが、一定
年度
の経験を経た医師を保険医に指定しようとするところのお考えがあるかどうか、この点について大臣のお考えを伺いたいのでございます。
久下勝次
28
○久下
政府
委員
私から現在まで検討しております事情を申し上げて、お答えにかえたいと思います。
現行
の保険医
制度
につきましては、いろいろな御批判もございます。私ども自身もその欠陥のあることを認めておるのでございます。昨年でございましたか、参議院の
厚生
委員
会におきましても、保険医
制度
について再検討すべしという決議が行われまして、その旨を私ども伺っておるような次第でございますが、ただ保険医
制度
の改正ということになりますと、いろいろ問題は複雑になって参り、ある意味では
健康保険
制度
の根本にも触れて参る部分も出て参りますので、実は私どもとしても、真剣に今検討をいたしておるところでございます。今回の法律改正にも、できればその一部分でも間に合わしたいと思って勉強いたしておったのでございますけれども、各方面の御意見が必ずしも一致しない部分がありまして、次の機会に譲らざるを得なくなったのであります。先ほど大臣から申されました、
健康保険
制度
の根本に触れた検討をいたします際には、当然保険医
制度
の問題につきましても具体案を得るように努めまして、いずれ御
審議
をわずらわす機会があると考えておる次第でございます。
八田貞義
29
○
八田
分科員
今保険医の資格の問題について検討されているという御返答があったのであります。保険医の資格について、どのような内容について検討されておるか、その点についてお伺いいたしたい。
久下勝次
30
○久下
政府
委員
まだ結論になっておりませんので、こういう機会に申し上げるのはいかがかと思いますけれども、たまたま御指摘のありました点に触れないで大へん恐縮いたしておりますが、医師の免許をとりましてから、一定年限経ちましたものだけを保険医にするというところまでは考えておらない次第でございます。現在御案内だと思いますけれども、医師免許をとりました人で、保険医になることを希望いたしますものにつきましては、保険医の指定前講習というものをやりまして、
社会保険
の
制度
について、十分な御理解を願うようなことは積極的にやっておるわけでございます。国として
医療
を行う権能が、医師免許によって与えられました限りにおいて、それ以上は
社会保険
の
医療
手続でございますとか、
制度
でございますとか、そういうものに対する御理解があれば、これを保険医としての指定を拒否するという理由はないものと考えておるのでございます。従いまして、私どもの検討は、ただいま御指摘のような趣旨ではなくて、現在の
制度
は個々の保険医を指定することになっております。
生活保護
法などでは、御案内の
通り
いわゆる機関指定という
制度
もございます。そういうような問題について検討をいたしておるのであります。 それからなお一部には保険医の定員制を設けたらというような強い意見も述べられておりますが、まだこれについては私どもは積極的な結論は得ておりません。検討の材料としては話題に上っている
程度
でございます。いずれにいたしましても、まだそれらの点につきまして十分な結論を得ておりません段階でございますので、もうしばらく検討の機会を与えていただきたいと思っております。
八田貞義
31
○
八田
分科員
それでは質問の方向を変えまして、
政府
の監査の企図するところは、わかりやすく言いますと、診療費の支出を少くすることが目的の全部のように考えられます。いわゆる過剰診療、濃厚診療を保険医の大多数が行なっているとの前提に発して、当局の欲する方向に
指導
し、果ては監査し、処分に及ぼうというのでありますから、監査の効果は点数の下降したという当局談ともなり、診療の実際面は
一般
に萎縮して、必要にして十分な域に達しないものの多くなるのは容易に想像されるところでございます。
赤字
克服策として打ち出されたことによる影響というものがすでに現われてきておると思いますが、参考までにお知らせ願いたいのでございます。
久下勝次
32
○久下
政府
委員
監査の問題につきまして私からお答え申し上げます。実は御参考にちょっと数字を申し上げてみたいと思いますが、最近の保険医の監査の結果の数字が出ております。
昭和
二十七
年度
におきましては千四百九十七名の監査をしております。
昭和
二十八
年度
におきましては四百八十七人、
昭和
二十九
年度
におきましては九百二十六人の保険医に対しまして監査が行われておるのでございます。監査に対する私どもの根本的な考え方は、
赤字
であるから監査をするというような考えは毛頭ないのでございます。大多数の保険医は
社会保険
制度
に対する深い理解を示されまして御
協力
いただいておるのでありますが、しかしながら多数の保険医の中には、一部不正の診療をしたり、あるいは不正請求をしたりする事実があるのでございまして、大多数の誠実な、
協力
的な保険医に対しても迷惑を及ぼし、ひいては保険医
制度
の根本の考え方にももとるような方なしとしないのでございまして、そういう方々につきましては、いろいろな事実を
基礎
といたしまして監査を行なって、反省を求めるというような態度に出ることは、私どもとしては当然のことであると考えておるのでございます。そういう考えのもとに監査をいたしておるのでございまして、特に
赤字
になったから監査をやるということでなく、当然やるべきことをやっておるわけです。一昨年の秋ごろ以来保険医の監査の問題について出先の医師会などとの間にいろいろ意思の疎通を欠くものが若干ございまして、必ずしも十分な成果を上げておらなかったと思います。これがたまたま
赤字
が大きくなりまして大騒ぎになった際に出てきたものでありますから、何か
赤字
のために私どもがやったようにお取りになるかもしれませんが、そうではないのでございまして、
赤字
であろうとなかろうと、先ほど申し上げましたような趣旨におきまして、当然一部の不正不当な保険医の方々に反省を求めるのが至当であるという考え方のもとにやっておるだけのことでございます。数字的に先ほど申し上げましたように、
昭和
二十八
年度
には他の前後の両
年度
に比較して監査の数が非常に減ったのでありますが、これは相当感情的な問題があり、根本的な監査の批判などもございまして、
地方
庁の実施も鈍りましたような事情で、これに対する反省もし、その理解も得まして、当然やるべきことを力を入れてやっているにすぎない次第でございます。
八田貞義
33
○
八田
分科員
今私の質問いたしたのは、
赤字
対策といたしまして、診療の監査とかあるいは
審査
とかいった問題について強く出るというような対策が講じられて参ったので、診療点数が減ってきた、しかもことしの二月、三月ごろから京都には三点くらいずつ下ってきておる事実があるということを聞いておるのでありますが、その点について質問申し上げておるのでございます。
久下勝次
34
○久下
政府
委員
何か先ほどの御質問を保険医の監査ということと
医療費
の支払いの低減が直接結びついておるというように仰せになったように聞きましたので、先ほどのようなことを申し上げたのであります。私どもといたしましては、保険医の
指導
監査のみならず、被
保険者
の中にも被
保険者
でないものが不正の受診をする場合も相当あるのでございます。そういう問題でありますとか、あるいは
事業
主は正しい報酬の届出をなすことになっておりますのに、保険料の納付を少しでも逃げようとして虚偽の報酬の届出をするような場合がございます。そういう問題につきましては、全体の
保険制度
を正しく守っていきますために、当然私どもとしてはやるべきことであります。それと特に
赤字
になったことでもありますから、そうした不正不当の
事項
につきましては、全被
保険者
の福利のためにもこれを排除していくべきであるという考えのもとに、昨年来特に力を入れておることは事実でございます。それで、その結果であろうとほ思うのでありますけれども、この一月、二月くらいの二カ月間の診療報酬の支払いが私ども予想したよりも若干下回りました。一月に約一億五千万円、二月分が一億二千万円
程度
下回りまして、三月分は実は逆に見込みよりも少しふえておりますけれども、一応とにかく二カ月間にわたりましてさような数字が出たものでありますから、そういうことも若干の効果を上げておるのではないか。また同時に、
関係
者が
健康保険
制度
というものを正しく利用するような機運が、そうした一連の行政
措置
に伴って現われてきた結果ではないかというふうに考えておるわけであります。診療費の支払いが減りましたことは、とりもなおさず監査を
強化
したりあるいは不正受診を抑制したりする結果だというふうに簡単に申し上げたつもりではないのであります。
八田貞義
35
○
八田
分科員
私はむしろ今の御
説明
と反対の考えを持っておるわけであります。不正ということは、被
保険者
とかあるいは
保険者
とか医師にも若干はあり得るということは容易に想像されます。しかしこれはいつでも一定率に存在を免れないということは
社会
一般
と同様でございます。それが今回のように
赤字
対策として大きく打ち出されるところに問題があるのであります。
医療費
請求の低下現象というものは、医師の犠牲において言うならば、
赤字
解消
に
協力
して出た数字なのであります。どだい無理をして作った数字なのでありますから、従ってこのような
医療
請求点数の低下現象というものは一時的なものでありまして、今もお話のありましたように、一カ月か二カ月くらいのものでありまして三カ月を出るというようなものではございませんで、またもとに戻ってくる性質であります。まして開業保険医は
社会保険
の件数の八割を分担し、数において九割を占め、官
公立
その他の病院よりも圧倒的な
医療機関
となっておるのであります。しかも大臣御承知のことと思いますが、全体として受けておる
医療費
は五割にも満たないのであります。さらに外来一件当りの点数は大学病院の半分、五十点を少し上回るにすぎないようなのが現状であります。このような病院の治療に比し萎縮した診療は、さらに萎縮し、監査により多くの善良な医師の業務に暗い影を投ずることは、崩壊に瀕した
国民
医療
にとどめをさすことになりほしないでしょうか。大臣の所見をお伺いいたしたいのであります。
川崎秀二
36
○川崎国務大臣 先ほどからだんだんの御指摘でありまして、ただいま
八田
委員
の申されたような要素も相当にあるものと私も認めざるを得ません。しかしながら一方におきまして乱療乱診、不正行為というようなものも数多く指摘をされておりまして、これらに対してはそれぞれの
委員
会あるいは本会議におきまして、むしろ今日そういうことになってきたことの原因は、その点にあるのだという論者も中にはあるのであります。私は先ほど申しましたように、今日
赤字
をなしたる大きな原因は、
医療
の機会の増大であるというような点に
重点
は置いておりまするけれども、また一方におきましてそのような不正行為あるいは乱療乱診というものがあるということも認めないわけには参らないのであります。従ってこれらはそれぞれ論者の見解の相違によることと思いまするので、ただいま御指摘のような点については十分気をつけて、これが医師を萎縮せしめたり、あるいは
医療
の機会を縮減させるという、そのために
国民
医療
が非常な危機に立つというようなことのないように牽制を加えますことは必要ではありまするけれども、これらの
施策
を全然行わないとか、あるいは保険医の監査というものを、今日考えておるより著しくゆるめるような方策をとったならば、
健康保険
の
財政
というものもまた非常な危機に遭遇するわけでありますから、これらは多少見解の相違もございましょうけれども、私どものとっておりまする方針が、今日のところ大体妥当ではないかと考えておる次第でございます。
八田貞義
37
○
八田
分科員
この問題についてはまたさらにお伺いしたいのでありまするが、方面を変えまして、今私が申し上げましたように、善良な医師、不正をやらない善良な医師の
生活
状況というものは、非常に悲惨な状態にあるのであります。そこで保険医の所得税額と源泉徴収税額についてちょっと触れてみたいのでありまするが、今
社会保険
診療報酬のみによって
生活
している医師の場合について、たとえば月収六万円の人すなわち年収七十二万円の人は、所得税法第四十二条第二項の規定によって百分の十の源泉徴収税がかけられ、五万七千六百円の税額を納めることになっております。
基礎
控除、扶養控除を受けまして課税所得額は三万六百円となり、申告所得税額は四千八百七十円となります。そこですでに源泉徴収で五万七千六百円を納めてありまするから、差し引き五万二千七百三十円の過剰納入となるわけであります。これは月収を増したものについて見ましても同じことでありますし、また
社会保険
報酬八〇%、
一般
診療二〇%としまして、収入の比例の場合について見ましても同様のことが言われるのであります。従って所得税法第四十二条第二項の規定を百分の五の税率とすることによってこの過
不足
の矛盾はなくなってくるのであります。一つ御調査の上、租税特別
措置
法
昭和
二十一年法律第十五号の一部を改正する御意思があるかどうか。この点について大臣の御意見をお伺いいたしたいのであります。
川崎秀二
38
○川崎国務大臣 ただいまのは所得税法の改正の問題でありますが、今日まで保険医の性格から見まして、国は数次にわたりまして、なるべくこれを
保護
したいという考え方をもって、諸般の法律あるいは税制改正なども行われてきたことは御承知の
通り
であります。ただいまのような、たとえば年収七十二万円の収入のある者に対して、実際にはこういう源泉所得税がかかり、さらに他の税がかかっておるので非常に
生活
は苦しいのだというような具体的な事例をあげてのお話がありまして、これらについては、
厚生省
の方としては、医者の今日の立場を勘案をいたしまして十分に検討はいたしておりまするけれども、
財政
当局などの考え方においては、今日これを直ちに改正をして、さらに保険医の立場を守ろうというような考え方にはなかなか同調をしてくれる傾向はないと私どもは大体観測をいたしております。しかし御要望の向きにつきましては、常にこれらの
実情
を勘案をいたしまして、これは
国民
各層との均衡もとらなければならぬとは思いまするけれども、今日の
医療
行政の建前からいたしまして、保険医の立場を擁護するという
施策
は必要であると考えております。
八田貞義
39
○
八田
分科員
大臣にさらに申し上げたいのでありますが、私の申し上げた意味がはっきりしなかったと思いますけれども、今の月収六万円で年収七十二万円、この人は結局納め過ぎになっておるのが五万二千七百三十円なのであります。これが返ってくるには相当の日数がかかります。もちろんこの五万二千七百三十円というのは月収六万円についての例でございまするけれども、これからずっと多い人は、もっともっと金額がふえてくるわけであります。この金額が無利子で返ってくる。医者はこの間、この過剰納入につきまして、その金だけは銀行から利子を払って借りなければならぬということになっております。それを
解消
するためには、今の百分の十を百分の五に下げることによってこれが調整できて参るのであります。その点につきまして大臣に格段の努力をお願いいたしたいのでございます。 それから
昭和
二十六年以来総
医療費
は一八%
増加
いたしておりますが、
健康保険
の外来一件当りの平均点数は、
昭和
二十六年以来大差がないのでございます。例を申し上げてみますと、二十
年度
における外来一件当りの平均点は五〇点でございます。二十七
年度
においては五三、二十八
年度
におきましては五二・四であります。これに対しまして総
医療費
を見て参りますと、二十六
年度
におきまして五百五十億、二十八
年度
が九百四十億となっております。これをさらに
入院
費についてわけますると、二十六
年度
は五百五十億の中の百三十七億を
入院
費で占めておるのでございます。二十八
年度
では九百四十億の中の五百十七億を
入院
費でもって占めておる。すなわち
医療費
の
増加
というものは
入院
費の
増加
でありまして、三倍となっておりまして、その四六%が結核の
入院
費であるということになって参ります。この際
医療
問題の核心は
結核対策
にあることをあらためて認識する必要があります。現在結核ベッド数は、国費の支出、または
補助
による
増床
の限界にきたのではないかと考えられますが、
厚生
大臣のお考えをお伺いいたしたいのでございます。
川崎秀二
40
○川崎国務大臣 ただいまお読み上げになりましたお考え方は、私どもも多く肯綮に値するお話であろうと考えております。
結核対策
の問題が今日
医療
問題の中心問題であることは、何人も否定することができない現実でありまして、これを
強化
するということが今後の
医療
行政のテーマにならなければならぬというふうに考えをいたしております。本年の
結核対策
費は全体におきましては二億円ほど
減少
いたしておりまするが、これは新規の
事業
に対しまする
政府
の全体の抑制政策を行いまして、総選挙で公約したる三つの政策の
重点
的使用ということに振り向けられたために、犠牲になりました部分が出て参りましたので、新規
事業
に対する抑制はされましたけれども、従来の線はなるべく
充実
をさせたいという考え方のもとに、
結核対策
におきましても、たとえば従来行なっておりました
病床
の
増加
ということにつきましては特段の
措置
を講じまして、
従前
と同様の域にまで復活要求をなし、これを実現をせしめたのであります。今後といえども一そう
病床
の
増加
ということによって、これらの
結核対策
の中心であるところの
患者
の収容に対して、計画的な
推進
を行なっていきたいことが第一の問題であります。もとより本年は
健康診断
の対象なども大幅に広げまして、新たに認められたこともあるのでありまして、かれこれ勘案をいたしますれば、
結核対策
に対しては
総額
において二億二千万円の減になっておりますけれども、内容的にはそう後退をしたとは私どもは考えておらず、御承知のごとく本年は経済地固め期でありますから、そのためにやむを得ず犠牲にしたものはありますけれども、これは来
年度
の躍進のための一時の屈曲であると考えまして、今後一そう
結核対策
の
充実
に向って進みたいと思っております。
八田貞義
41
○
八田
分科員
大臣から、
結核対策
はベット数の
増加
にあるから、それに対して努力をするんだというようなお話があったのでありますが、私は国家
予算
から考えまして、このベット数の
増加
という問題はもう限界にきておるのではないか、こういうふうに考えておるのであります。もちろん要
入院
者は、
厚生省
の調査によりますと百三十七万ある、こういうふうな推定数があげられておるのであります。従って多数の
入院
できない
患者
がおるということは事実であります。これは決して
病床
が
不足
しているからではないのでありまして、他の事情によって
入院
できないでおるのであります。ですから単にベット数をふやしたから、この問題は解決できるんだというのではないのでありまして、その点をよくお考え願いたいのであります。 さらにまた現在の
国立病院
におけるところのいろいろなベットについて考えてみますると、多数の
入院
できない
患者
がおりまするのに、逆に
病床
はあいておるという状態があるのであります。さらにまた現在
入院
している者につきまして、もう
入院
の必要がない、退院すれば退院できるというような
患者
が、現在ベットを占領いたしておる。これを入退院基準によって規制すれば、空床は減ってくるということは当然考えられることであります。さらに公人立と
法人立
の九千床の
増床
は、現在のような空床の
増加
の傾向と不適正な
入院
診療費では、
増床
の意欲を押えるために、実現困難でありまして、
予算
の不消化に陥るというふうに考えられます。今後は
入院
費、診療費の適正化による自然増で十分と考えられまするので、結核の治療を
社会保険
から切り離し、結核
予防
法一本として、統一ある効率的国家の援助を与えることによって、
社会保険
の
赤字
を
解消
し得ると考えられます。そこで肺結核の根本対策を検討し、結核治療の経済的統一をはかるため、結核
予防
審議会
とは別に、国会内に特別
委員
会を作って、この問題について検討される御意思があるかどうか、大臣の御意見を伺いたいのであります。
川崎秀二
42
○川崎国務大臣
医務局長
よりも答弁をしてもらいますけれども、ただいま御指摘になりましたようなことは、確かに一部分的にはあるのではないかというふうに私どもも考えておりまするし、そういう報告を聞いてはおります。しかしながら
わが国
の現状からいたしまして、
増床
計画を中断して、これは限界線にきたなどというような考え方には私ども立っておらず、現に相当多数の
入院
を要する
患者
が自宅療養をしておるという
実情
もありまして、
結核対策
の積極的な
推進
政策としては、でき得る限り
財政
とマッチさせつつ、
増床
計画はやはり既定方針
通り
進めていきたいと存じておるのであります。もとよりただいま御指摘のあったような入退院基準というものを十分に守りて、それがために長く
入院
をしておるという、いわば療養の行き過ぎといいまするか、療養の期間が相当
長期
にわたるような傾向に対しましては、ただいま御説諭の
通り
、当局としても十分考慮を払っていくつもりでおります。 最後に御指摘になりました問題でありまするけれども、これらについては十分検討をしてみたいと思っております。
柳田秀一
43
○
柳田
分科員
議事
進行。この
分科会
でありまするが、非常に出席率が悪うございます。現在
政府
あるいは民主党の方においては、自由党と
予算
のやみ折衝をおやりになっておる。しかも実際に
予算
を
審議
すべき本来の土俵であるところのこの
分科会
において、与党側を見ましてもこの
通り
の出席である。私は各
分科会
を見て回りましたが、どの
分科会
もこの
通り
であります。従いましてこれは国会法、衆議院規則によりましてこの
分科会
は成立いたしておりません。従って暫時休憩の動議を提出いたします。
主査
においてしかるべく善処されんことを望みます。
藤本捨助
44
○
藤本
主査
それでは暫時休憩いたします。 午後二時五十分休憩 ————◇————— 午後三時二十一分
開議
藤本捨助
45
○
藤本
主査
休憩前に引き続き会議を開き、質疑を続行いたします。
八田貞義
君。
八田貞義
46
○
八田
分科員
児童
施設
の処置費が遅配しているということについて質問いたしたいと思います。 乏しきを憂えずひとしからざるを憂えるといいますが、そうでなくてさえ足りぬ足りぬの嘆きを繰り返している委託費を遅配して、そのようなことはないというようではお役所仕事といたしましてもはなはだひど過ぎるのであります。幾ら委託費がおくれましても、生きた人間を預っている以上一日だって食事抜きにしては置けぬし、
医療費
がないからといって
医療
を放任できるものではございません。神奈川県の肢体不自由児を預っている
施設
が、昨年の十一月以降療養費をもらえず惨たんたる苦労をしているのを初め、委託費の遅配は当然のごとく常識化するに至っております。万策尽きた
施設
は、いたし方がないから食糧その他の納入者への支払いを延ばすことによって調節しているのが現状であります。支払いが悪くなれば納入者ほそろばんをはじいて百円の値段のものは百五十円に売りつける結果となるようになって参ります。
東京
の場合三月の
事務費
を四月十日前後にようやくもらった。四月分の
事務費
は五月七日現在まだ
施設
に到着していない。ことにひどいのは肢体不自由児の
施設
でございまして、ここでは
医療費
の支払いが非常におくれ、神奈川では十月、十一月分以降がまだ到着しておらない、三月分以降の未達は青森、山梨、福井、石川、神奈川、千葉、宮城、
東京
の八都県にわたっております。どうしてこんなふうにおくれているかということについて会計
課長
からお答え願いたいのでございます。
堀岡吉次
47
○堀岡
政府
委員
そういう事実がありますといたしますと非常に恐縮千万であります。四半期ごとに
予算
は令達をいたしておりまして、府県の方からいく仕組みになっておりますが、現実にそういうことがありますならば、調べましてなるべくそういうことのないように努力いたしたいと思います。
八田貞義
48
○
八田
分科員
次いで
医療
報酬の支払いについて質問いたしたいのでございますが、一体保険医に対する
医療
報酬支払いというのはどのような順序で支払われているか、これについて一つお知らせ願いたい。
久下勝次
49
○久下
政府
委員
私からお答えを申し上げます。
社会保険
の、特に
健康保険
の
医療費
の支払いのやり方について申し上げます。医師は前日の
社会保険
診療につきまして各一件ごとに請求書を作って翌月の五日までに支払い基金の各都道府県の支部に提出をすることになっております。それを受け取りました支払い基金支部におきましては、それぞれの支部に所属しております診療報酬
審査
会に付議いたしまして、そこで個々の診療報酬の内容につきまして五日から十日前後の期間を設けまして
審査
をいたします。
審査
をいたしました結果、今度は各保険医から参りました請求書を
保険者
別に区分をいたします。
健康保険
組合なら個々の
健康保険
組合ごとに、
政府管掌
であれば
政府管掌
を一括してそれを集計いたしまして、請求書をつけて各
保険者
に
資金
の支払いを請求するわけでございます。大体そういうような段取りを経ておりますので、
資金
の請求は、先月分をその翌月の二十日前後から各
保険者
に請求をするようになっておるわけでございます。各
保険者
は
資金
の状況に応じまして、その要求に基きましてこれを支払い基金に送るわけでございます。これは大体は現金の取り扱いではなしに、たとえば
政府管掌
の保険組合の例で申しますと、銀行を通じまして、銀行の口座に払い込むことによって基金に支払いをいたします。
健康保険
組合と
政府管掌
の保険組合とは、この辺の手続きが若干違いまして、各都道府県の基金支部におきましては、
政府管掌
分についてはこれを一括して
資金
の要求を基金本部に持って参ります。基金本部はこれを取りまとめまして、取りまとまりました都度
厚生省
の方に
資金
の支払いを請求して参ります。私どもの方では主として保険料の収納による
資金
の都合を見まして、逐次これを分割して基金に支払うわけでございます。それを受け取りました基金本部は、さらにこれを府県にやりまして、各府県基金支部では、この基金が集まりますと、これは各県によって多少の違いはございますけれども、各保険管掌別に支払いをすることは非常にめんどうでございますので、保険医を地域ごとに区分をして、一括して保険医に基金のあるごとに応じまして順次支払いをしていく、従って月によって遅速が出て参りますので、地域を漸次かえるというような方法をとって、長い目で見ますと公平に支払いが行われていくようにしているわけでございます。従来までの実績を見ますと、この
赤字
問題などが起きましたために支払いに遅速はできておりますけれども、大体ある月の分の診療報酬はただいまのような手続きを経まして、翌々月の終りまで二カ月おくれで支払うというのが慣例でございまして、最近はおおむねそういう状況になっておるわけでございます。
八田貞義
50
○
八田
分科員
今の順序はよくわかったのでありますが、しからば保険医に支払われるのは銀行から支払ってもらえるわけなんですか。
久下勝次
51
○久下
政府
委員
支払い基金の取り扱い銀行は一応全国的に一銀行扱いでありまして、同時に各都道府県で一ないし二の都道府県ごとの取り扱い銀行をきめております。そういうところにお医者さんは大てい口座を持っておられますので、そのお医者さんの口座に払い込むことによって支払いをするのが原則でございます。
八田貞義
52
○
八田
分科員
そうすると
東京
都の場合は一体どことどこの銀行を支払い基金では指定しておられますか。
久下勝次
53
○久下
政府
委員
富士銀行、住友銀行、三菱銀行、千代田銀行、これだけの銀行が取り扱い銀行になっております。
八田貞義
54
○
八田
分科員
幾つですか。
久下勝次
55
○久下
政府
委員
四カ所でございます。
一般
の全国的な扱い銀行が富士銀行でございますが、合せて四つでございます。
八田貞義
56
○
八田
分科員
東京
都の場合を聞いているのです。全国の場合でなくて、
東京
都の場合に、どことどこの銀行を指定しているか。
久下勝次
57
○久下
政府
委員
大へん失礼いたしました。
東京
だけで申し上げますと、富士銀行は全国的な基金の扱いをしておりますと同時に、
地方
的な扱いもしておりますので、
東京
の場合にもやはり取扱い銀行に入っております。そのほかに千代田銀行と三菱銀行であります。
八田貞義
58
○
八田
分科員
この三カ所になったのはずっと前からでございますか。私の調査では、三菱と富士だけと聞いておるのでありますが、間違いないのでありますか。この点はっきりしてもらいたい。いいかげんに答弁されないで、はっきり答弁していただきたい。
久下勝次
59
○久下
政府
委員
どうもはっきりしないことを申し上げて恐縮でございました。富士銀行と千代田銀行は当初から扱い銀行になっております。私もうっかりいたしておりまして、二つの名前を重ねましたけれども、千代田銀行は最近三菱銀行に改名したそうでありますから、従って結局最初から
地方
銀行として千代田が入っており、全国的な扱い銀行として富士がやっておるわけであります。
八田貞義
60
○
八田
分科員
もう一つ伺いたいのですが、
東京
都の一カ月の支払額は、金額にしまして、また件数にしてどうですか。
久下勝次
61
○久下
政府
委員
東京
だけの数字は今持ってきておりませんが、すぐわかると思いますので、後ほど調べまして御報告申し上げます。
八田貞義
62
○
八田
分科員
自分の調査によりますると、一カ月の
東京
都におけるところの支払いは十億、件数にしまして百件以上ということになっておるわけであります。この十億の支払いをたった二つの銀行に許しておるということは、これは想像すればもちろんいろいろなことが想像されます。外米の輸入問題につきましても、輸入商社を二、三カ所にきめておったために非常な問題が起って、最近は、七、八カ所にふやしたというふうになっておるのでございます。しかも月十億の支払いをするような厖大な金を扱うのに際しまして、たった二カ所の銀行しか許していない、またそういうような事情にあるということにつきまして、お考えになったことはありませんですか。
久下勝次
63
○久下
政府
委員
当初から全国的な取扱い銀行一行と、各
地方
ごとに大体原則として追加して一銀行を取扱い銀行とするということにいたしてやってき おるわけでありますが、この理由は、主として支払い基金における支払いの事務の簡素化のためでございます。取扱い銀行が多くなり、保険医によって口座がまちまちになりますことは、支払いの事務の上にそれだけめんどうが加わりますので、別に深い理由はないのでございますけれども、そうした理由から、できるだけ取扱い銀行を限定しておきました方が、結局は事務が迅速に運ぶゆえんであると考えまして、その方針を続けておるのでございます。
八田貞義
64
○
八田
分科員
事務の都合からとおっしゃるのですが、金額にしまして非常に大きなものでございます。単に支払いの手続の面から簡素化するために二カ所にしているのだということは弁解にはならぬと思います。十億の金であります。しかも今日の支払いの状況を見てみますと、まず日本銀行で小切手を切って、支払い基金から本店にいく、本店から支店の方に回っていく、そうすると支店は一カ月、一カ月の月末において金を預かっている高が多いほど支店長の顔が広い、そういうようなことで、当然支店の方に回った本店の支払い金額をすみやかにお医者さんに払うべきものを、月末に払わないで月初めになって払うことが現実において行われておる。しかも銀行において一週間以上も支払いが押えられているというような現状であります。その点について十分お考え願いたい。盛んに支払いの簡素化をねらうために二カ所に指定をしておるのだとおっしゃいますけれども、十億の金です。十分に調査になって、このような二つの銀行に限定しないでもらいたい。二週間も銀行にとめておいてどのような利子がつくか。その点についても十分に御検討願いたいのであります。二カ所の銀行ではなくして多数にふやした方が、むしろ保険医の便宜がはかられるものであります。どうかこの点を十分にお調べになって、二カ所の銀行に定めておくことは、金額の面から考えてもいろいろな想像ができるのでありますから、早急に改めるようにお願いいたします。
久下勝次
65
○久下
政府
委員
御指摘の点につきましては、私どももそのためにいろいろな弊害が起らないために、厳重な注意をいたしておるのであります。この銀行指定の問題につきましては、
厚生省
自身の決定よりむしろ支払い基金の方針に一応まかせております。多数の銀行から取扱い銀行になることを要望している向きもありまして、この点につきましては、むしろそうした多数の要望を押えるのに苦心をしているような現状であります。しかしながらそのために問題があるようでありますればこれは重大なことでありますので、私ども厳重に注意をいたしたいと思います。またこの方針が、果してお医者さんの便宜のため、支払い基金の事務
運営
上絶対のものであるかどうかということにつきましては、御指摘の点もありますので、十分検討いたしたいと思います。
八田貞義
66
○
八田
分科員
その点を十分に調査されまして、保険医の希望をいれて、多数の銀行に支払いをさせるように持っていかれることを希望いたします。 さらにこの支払い基金の事務員の数をお聞きしたいのであります。
久下勝次
67
○久下
政府
委員
東京
に本部がありまして、各都道府県に支部がありますが、職員の総数は二千五百六十名であります。
八田貞義
68
○
八田
分科員
その職務
事務費
は、年間どれくらいになっておりますか。
久下勝次
69
○久下
政府
委員
ただいま申し上げましたのは、基金の籍のある職員でありますが、御案内の
通り
そのほかに
審査
委員
がございます。これに関しては、他に本務を持っておられる方が大部分でありますが、若干の手当を差し上げて
審査
事務をお願いしております。この数が全国で千二百三十名で、これらに対する手当等も含めて、主として基金の
予算
はこうした
事務費
であります。建設費として若干事務所の建設もありますが、ほとんど大部分は
事務費
でありますが、
昭和
三十
年度予算
は収支
総額
十二億であります。
八田貞義
70
○
八田
分科員
十二億という
人件費
のお話を聞きましたが、自分の調査と当っているので非常にびっくりしております。すべて
社会保険
事業
とか、慈善
事業
には、なるべく
人件費
を減らして
医療給付
の方にふやしていくということが必要であると思うのであります。このような膨大な人間をかかえていなければ支払い基金の
事業
が達成できないのでしょうか。少くとも慈善
事業
とか
社会保険
事業
というような問題につきましては、なるべく
事務費
を節約していくべきものであると考えております。
久下勝次
71
○久下
政府
委員
御趣旨の点はごもっともでございます。もちろん支払い基金の
事務費
と申しますのは、御案内でいらっしゃると思いますが、各
保険者
から支払いの委託を受けます契約の場合に、実際にこういう費用がかかるからということで、問題はいつも支払い基金の
理事会
で、提起されまして、交渉が行われた結果、一件当りの
事務費
、従来十二円五十銭ずつの支払いを受けて基金の
運営
をやっておるものでございます。私どもの見ますところでは、実は非常に能率を上げてきておりまして、取扱い件数の
増加
の割には増員を極度に押えて今日までやらしてきておるつもりでございますが、なお
昭和
三十
年度
におきましては、特に
政府
全般の
事務費
節減の方針にも沿いまして、一応各
保険者
との間におきましては、一件当り十二円五十銭という
事務費
の話がついておったのでありますけれども、ただいまの仰せになった趣旨と同様に、
事務費
は極力節減すべきである、かような考え方から、私どもの方から支払い基金の方に話をいたしまして、結局一件当り十二円、一件当り五十銭の
事務費
の節減をはかるようにして、実際上の一たんきまった
予算
を実行してもらうように要請をしておるような次第であります。
八田貞義
72
○
八田
分科員
今の
事務費
の節減につきましての御方針を聞きまして、ほぼ了解いたしたのでありますが、今日のように診療の
審査
とか監査を厳重にして収納率を高めていこうということになりますと、そうして支出もやっていこうということになりますと、これを銀行にゆだねましても十分やっていけるのじゃありませんか。二カ所の銀行にゆだねておりますから、このような膨大な人間をしょい込まなければならぬのであります。診療監査を厳重にして収入率をあげていくというその
人件費
は、そのまま銀行の方に移しましても十分にまかなっていけると思うのであります。さらにこのような、一カ月に十億というような金を支払うという場合、これの金利を十分に見込みましてもやっていけるはずであります。二大銀行だけじゃなく、五大銀行あるいは六大銀行の支払いを盛んに保険医は願っておるのでありますから、このような面において支払い銀行をふやしていただく。そうしてできるならば支払い基金の人員を
減少
するように、ある
程度
の事務は銀行の方に移しかえるというような方策もといっていただくように御研究願いたいと思うのであります。そのことを希望いたしまして、私の質問は終ります。
藤本捨助
73
○
藤本
主査
それでは曾田
医務局長
。
曾田長宗
74
○曾田
政府
委員
ラジウム購入費といたしまして、たしか一千六百五十万円でございましたか、明
年度予算
案に盛り込んでいただいておるのでありますが。この趣旨は
国立病院
自体が使うということを主眼点といたしておるわけではございません。ただいま
国立病院
で持っておりますのは、全
施設
で一・六グラム
程度
になっておるのであります。これは今日の診療といたしましては、病院としても
不足
をいたしておるのでありますが、今般組んでいただきましたのは、むしろ民間の
施設
からもいろいろコバルトの購入、輸入ということを希望しておられる向きがあるのでありますが、御承知のように国外から輸入しなければならぬというような状況でもございますし、また診療所といたしましても、比較的小規模の個人的な診療所におきましては、絶えず使うものでもない。しかし、ときどき使いたいというようなことがあるということを聞いておりますので、今般一グラムでございますが、これだけ購入いたしまして、使用の御希望があるものにお貸しをするという意味でこの
予算
に組んだわけであります。これに対しましてコバルトが適当ではないかという御質問のようでありますが、この点につきまして、ラジウムがいいか、コバルトがいいかということでいろいろ検討をしてみたのでありますが、今のように私どもの病院、特に大きな病院におきまして治療に使うという点でありますと、最近はラジウムをわざわざ買いますよりも、むしろコバルトの方が比較的安価で、治療の目的にもかなうというように考えられるのでありますが、趣旨が今申し上げましたように、かなり舞阪の地にもこれを配置しておきまして、そうして外からの御要望に応じてこれをお貸し出しするという趣旨でございます。こういう点になりますと、半減期の長いラジウムの方が使いやすい、一々この放射能を測定して使わなければならぬという点がコバルトにおいては非常に不便であるということと、もう一つは、比較的強度の照射を行いますときには、御承知の
通り
にコバルトが便利でございますが、非常に微量の、数ミリ、あるいは十ミリ、二十ミリ、せいぜいその
程度
の非常にわずかの照射を行うということになりますと、ラジウムの方がより使いやすい。コバルトは一時に比較的強い照射を行う場合に便利であるというような事情がございまして、ここで私ども考えておりますのは、むしろ一ミリのピンを買いたいというふうに考えております。比較的緩慢な効果というものをねらっております。そういう点からいきますと、ラジウムの方が便利である、しかも値段におきましても、大量になりますと、コバルトとラジウムとでは非常に価格の差が出て参りますけれども、一ミリ
程度
のものでございますと、その放射性物質それ自身よりも、御承知のように、これをピンにし、あるいは容器の中に入れますので、値段があまり変って参りません。たしか一方が一ミリ一万六千円で、一方が一万八千円かなにか、それくらいのものになっております。しかもこの使用の持続期が、一方は御承知のように半減期がわずか五、六年、一方は千年以上にも及び、ほとんど半永久的のものでございます。その目的から考えますと、ラジウムの方が適当であろうというふうに考えた次第であります。
藤本捨助
75
○
藤本
主査
柳田
秀一
君。
柳田秀一
76
○
柳田
分科員
大臣がおられませんけれども、ちょっと
政府
委員
にお尋ねします。先般
社会
労働
委員
会で問題になっておりましたけれども、
国立療養所
の付添婦の廃止問題に関する決議が行われました。今の段階ですぐに
厚生
当局が考えておるような結論を出すことは正しくない、こういうような決議があって、大臣もこの決議の趣旨に沿いたい、善処する、かように答えておられます。従ってこれに対して実際にどういうふうな処置をとられんとしますか。簡明直截に伺いたい。
曾田長宗
77
○曾田
政府
委員
御決議に対しまして、私どもがそれをどういうふうに受けて具体化していくつもりであるかというお話でございます。この点につきましては、大臣も一応の見解を
社会
労働
委員
会においてお述べになったのであります。私どもとしましてはあの決議の御趣旨というものは十分理解できるのですが、さてそれではそれを具体的にどういうふうに取り上げていくかということにつきましては、さらに慎重に考えさせていただきたいというふうに思っている次第でございます。
柳田秀一
78
○
柳田
分科員
それではちょっと決議を読んでいただきたいのです。
曾田長宗
79
○曾田
政府
委員
決議は次のようになっております。「付添婦
制度
に関する件。
昭和
三十
年度
において
政府
は
国立療養所
の看護
委員
の
充実
を計る意図であるが、これに伴って直ちに
現行
付添婦
制度
を全面的に廃止するが如きことは、
実情
にそわざるものと考えられる。よって、
政府
はこの
実情
を考慮の上、療養
所管
理の実態の
改善
のため、充分なる方途を講ずべきである。」
柳田秀一
80
○
柳田
分科員
それでもう大体結論は出ているわけです。直ちに全面的に廃止するということはいけない、こういうことなんです。だから、これを廃止するのかせぬのか、そのところを明らかにしていただきたい。
曾田長宗
81
○曾田
政府
委員
ここに出ておりますように、私重要だと思いますことは、「これに伴って直ちに
現行
付添婦
制度
を全面的に廃止するが如きことは、
実情
にそわざるものと考えられる。」というふうにうたってございます直ちに全面的に廃止するというようなことがないようにという御趣旨につきましては、私これはそらんじてもおりましたわけなんであります。直ちにあるいは全面的にというような御趣旨でございますが、これを今まで私どもが考えておりましたこととどういうふうにかみ合せて参るかという点について、いろいろ具体的のことはまた各療養所の
実情
というようなものをよくにらみ合せて考えさせていただきたいというふうに申し上げたつもりでございます。
柳田秀一
82
○
柳田
分科員
あなた方が考えておられたことはいけないということをきめたのです。そういうことは今
実情
に沿わない。だから、あなた方も虚心たんかいに、
委員
が決議したのですから、自分たちの考えたことを、何とかこの文案にひっかからぬように、少しでも言いのがれのできるようにやほりやっていこう、そういうような考えじゃなしに、今直ちにそういうようなことをやるのはいけない、そういう趣旨なんです。家康は国家安康とかいう鐘の文句をいろいろなふうにもじりましたが、そんなもじり方じゃなしに、その文章は、今
厚生
当局が考えておるようなことは
実情
に沿わない、こういうことです。従って当分の間現状
通り
でいくのか、それともやはりあなた方が考えておったことを、
委員
の決議を尊重しましたというような何とか理屈だけつくならばやっていこうというのか、どうなんですか。
曾田長宗
83
○曾田
政府
委員
ただいま申し上げましたように、この看護
委員
の
充実
をはかっていただきたいというのが私ども御
審議
願いました
予算
案の内容なのでありまして、この限りにおいては御賛成を得たものというふうに考えておるのであります。でありますから、私どもが考えておりましたことを別に全面的に御否定なされたものというふうには思っておりません。この御趣旨に従って、今回御承認をいただきますれば、この
予算
案の実施に努めたいというふうに考える次第であります。
柳田秀一
84
○
柳田
分科員
それは確かに理想としては完全看護、完全給食というようなことはわかります。また事実つき添い
制度
というものがいい
制度
ではないことは、この間参考人を呼んでいろいろ聞いたときでも言われておるわけです。ただ今の
社会
情勢の現段階の中であのような
政府
の考えておられることは無理だ、こういうことです。だから問題は、これをどうやっていくかということで、これはすぐ結論が出るはずです。当分の間は現状で参りますとおっしゃるのか、それともやはり常勤の日雇い労務者として
政府
が考えておられるようにやっていかれるのか、その中間の案でやられるというのか。行き着く先はそれくらいしかないのです。ごく簡単ですが、どうなんですか。
曾田長宗
85
○曾田
政府
委員
社会
労働
委員
会におきましても私どもはいろいろ御
説明
申し上げたのでありますが、私どもとしては、ちょうだいいたしました
予算
をできるだけ効率的に実施して参りたいというふうに考えておるわけでありますが、その際に各
委員
の御意見としましては、それを非常に窮屈に強行するということがあってはいろいろ支障を生ずるぞ、そういう点について十分注意をして、直ちにと申しますか、この直ちにというのを文面
通り
に解釈いたしますれば、
昭和
三十一年の一月一日からきっちりと直ちに実施するということ、またこの
予算
が通ったからということで付添婦を全部一気にやめてしまうということがあってはならぬぞというような御意見と見ておりました。その点について十分考えて、さようなことはいたすまいというふうに思っております。
柳田秀一
86
○
柳田
分科員
大体御意図はわかりますが、
予算
は足らぬことはありませんね。二本建でいけ、こういうような大体の要求がありましたが、あなた方の今度の定員の改正と申しますか、正確に日雇い労務者が定員に入るかどうか知りませんが、もう一つは
生活保護
によるもの、この足らず前は
資金
運用部
資金
から、あるいは予備金からでも支出できるのですか。これは
予算
の面では支障を来しませんね。
曾田長宗
87
○曾田
政府
委員
これは私の方からお答えをいたすべきかどうかわかりませんが、私どもの方としましては、療養所の職員の
人件費
が組んでございます。それから付添いの
経費
は
社会
局の方の
医療
扶助費の中に入っております。そちらの方は今まで
通り
ずっと残っておるというふうに私は了解しております。
柳田秀一
88
○
柳田
分科員
だから結局本
年度
の
予算
がかりに通ったとしますね。そうして先般の
社会
労働
委員
会の決議を尊重して、当分の間従来
通り
やっていても
予算
の面において執行上不都合を来たすようなことはないでしょうか、その点を聞いておるのです。
曾田長宗
89
○曾田
政府
委員
また私からお答えをいたしますが、私どもとしましてはさような事情が出ましても
予算
としては差しつかえはないものというふうに了解しております。
柳田秀一
90
○
柳田
分科員
予算
面で差しつかえなければ、あなた方はやる考えさえあればそれはやれるわけです。
予算
の面で差しつかえがあったならば、これはいかに行政当局がやろうと思ってもやれませんので、今の答弁を聞いて安心しております。だからあとはほんとうに
社会
労働
委員
会の決議を尊重する御意図か、実際に今後あなた方の行政
措置
に現われるかにかかってきているわけなのです。これ以上は申しませんけれども、十分せっかくの決議を尊重されるように要望しておきます。 それから久下さんにお尋ねしますが、先般も
予算委員会
で問題になりました駐留軍
健康保険
の料率、千分の五十を千分の五十八に改めるように一致した要求があったのですが、いまだにアメリカの方が何かそれをしぶっておるとかいうので、
厚生省
で認可をお与えにならぬようですが、どういうふうになっておりますか。
久下勝次
91
○久下
政府
委員
駐留軍の
健康保険
組合の
保険料率
の問題は、大体ただいま御指摘の
通り
でございます。一応駐留軍労務者の
健康保険
組合の組合会におきまして議決がありまして、議決としては有効に成立はいたしておるのでございます。ところが私から申し上げるまでもなく、日本の法律の上から申しますと、
事業
主は調達庁が代理して形式的には大体日本の
政府
ということになっておりますけれども、保険料の
事業
主の負担分は実質的にはアメリカ軍が負担することになっております。従いましてこの決議が有効に実施せられますためには、アメリカ軍の了解がないと結局
事業
主の保険料の負担分がないことになるのでございます。それで調達庁といたしましてはその点について組合会の決議が行われます前から折衝をしておりまするし、また私どもも側面から応援をしたりしてやっておるのでごいますが、今日のところいまだに米軍からその承諾を得られない
実情
でございます。そこで調達庁からも、この認可をしてもらいましても結局実行ができないから認可を待ってくれというような内面的な連絡がございますし、私どもといたしましても、かりにこれを認可しても有効に
事業
主負担分が支払われない結果になりますので、今日のところまだ認可をしておらない状況でございます。
実情
問題としましては困りますので、事実上従来の
保険料率
によりまして、その範囲内で
事業
が
運営
できるような便宜的な
予算
措置
を講ずるようにいたしておる次第であります。
柳田秀一
92
○
柳田
分科員
そうしますと
厚生省
の方で認可はしたいが一したいというと、これは少し私の言い過ぎかもしれませんが、そういう御方針でありましょう。片一方の現在問題になっております
健康保険
の方は千分の六十そのものが大体世界でも高いので、それをまた六十五まで上げようという
厚生省
ですから、五十八なんか文句はないと思います。ただ
事業
主の方が承知しないから認可しない、そういうことでありますと、現在の
健康保険
千分の六十を千分の六十五にする、これは行政
措置
でおやりになれると思いますが、六十五にするのにも御承知の
通り
事業
主が反対しております。従いましてやはり
事業
主の反対があるからこれはやめよう、同じ理屈になりますが、相手がアメリカ軍であろうと日本の
事業
主であろうと、
事業
主においては変りありませんか、理論的にどうですか。
久下勝次
93
○久下
政府
委員
私はその両者の間には性質上の相違があると考えるのでございます。
健康保険
法というか、国会のおきめになりました法律によってそういうことを行政上きめ得ることになっておりますので、これは法律的には差しつかえなくできるものと思うのであります。
健康保険
組合の場合には、本来ならば料率の
引き上げ
ということにつきまして組合会の決議が成立いたします前提としては、当然に御案内の
通り
組合会には
事業
主と
健康保険
組合の代表者が同数ずつ出ることになっております。それで普通の
健康保険
組合の場合には組合会の議決が有効に成立いたしました以上、
事業
主の反対ということは考えられないのであります。ただ駐留軍
健康保険
組合は少しその点性格が違うのでございます。言いかえますと、これは形式的な法律上の問題としては、
事業
主となっておる調達庁
関係
者の選定した
委員
が賛成した形になっておりますから、そういう意味におきましては
事業
主は賛成したということが言えそうでありますが、しかし私から申しますまでもなく、保険料負担という面から申しました実質的な
事業
主は米軍でございます。これは全然同意を与えてないわけでございます。従いまして、料率を
引き上げ
るということは私どもの問題ではなくて組合自体の問題でございますが、米軍の了解なしにかりに形式的に認可をしてみましたところで、実際問題として
事業
主負担分が支払われませんので、
事業
主負担分が支払われないにもかかわらず組合員、被
保険者
からは保険料を一方的に取り上げるというわけに亀参らないだろうというような考慮から、認可を差し控えているにすぎないのでございまして、ただいま
政府管掌
の料率を
引き上げ
る問題と対照してのお話でございましたが、私は性格的に差があると考えておるのでございます。
柳田秀一
94
○
柳田
分科員
これは実際はあなたに尋ねるより調達庁長官にお尋ねしなければならぬ。あるいはこれは日米合同
委員
会に持っていかなければならぬ問題です。しかしながら
厚生省
は少くとも片一方においては料率千分の六十を六十五にお上げになっておるのです。そうしてそれもちゃんと正規の機関として決定してあるのですから、とにかく一応認可しておかれて、それをもって調達庁をして米軍との交渉をせしめる、これは当然のことなのです。ただしその実施に関してはそこに少しのクッションを設けることはやむを得ない。それくらいのことは
厚生省
は堂々とおやりになったらいい。片一方は
事業
主——
事業
主といっても、これは今言われましたように、実際には
政府
の機関で代表して決定しているのですから、ほんとの
事業
主はアメリカの縄張りでしょう。私はあまり詳しく存じませんが、先般配られた資料によりますと、大体駐留軍の労務者の費用はドル払いなんです。そして実際はドルで払わなければならぬものを、二十七年まではドルで払っておったらしいが、二十八年、九年と円で立てかえられておるということを聞いている。
措置
は私はできると思うのです。円で立てかえ払いをしておいて、あとでドルで払うということもできるのじゃないか。
厚生省
は少くとも一応認可だけされておいたらいい。それによって現段階で片一方では千分の六十まで上げているのだ。千分の五十を五十八に上げることは当然の要求だ。
厚生省
が認可した、これに基いて調達庁は日米合同
委員
会で米軍と交渉してほしいとやったらいい。それがあなたの方が受身の立場に立って、ことに相手が米軍だとすぐそういう態度になる。私は認可してもいいと思う。しかしそれを行政当局の行き過ぎだとはだれも思わぬと思うのですが、どうですか。
久下勝次
95
○久下
政府
委員
その辺になりますと、あるいは見解の相違になるかもしれません。日本の法律に従って
健康保険
組合を
運営
するということは、根本的には米軍も了承しておるのでございます。従ってそういう意味で組合会が有効に成立いたしました以上、私どもは、申請があれば当然認可をしてもいいと思うのでございます。しかしながら、ただし書をつけさせていただきたいのでございますが、問題は調達庁からも現に私どもの方に認可をしないでおいてくれという内面的な連絡もあるのでございます。これは率直に申しますと、
政府
部内でこういうことを出すのはいかがかと思いますけれども、調達庁としては、結局実質的に保険料を負担するのは米軍でありますので、組合会にいわゆる組織的な
事業
主代表の形で出ましたときに、その案に同意をする前提として、組合会前に米軍の了解を得ておくべきだというのが私の見解であります。そういうことをせずに、ただ当然のことだから賛成をするといって、組合会の議決を有効に成立させておいて、あとから
委員
会を開いてくれというのはおかしい。同時にまた、私どもが認可をいたしましても、被
保険者
側の意見を聞きましても、米軍が
事業
主としての支払いをしない風上、われわれは保険料の増額分を払うのはいやだということを明確に表明しておるのでございます。そういたしますと、認可はいたしましても、
予算
の執行はできません。
予算
の認可と同時になりますから、執行の可能性のない
予算
を認可することになりますので、そういう意味で私は差し控えておるのであります。結果におきましては、先生のおっしゃるのと同じように、認可をしておいて交渉するのだ、認可は当然すべきである。私どもはするつもりで折衝しておりますし、また日米合同
委員
会にサブ・コミッティーを作りまして、私どもの方からも代表者が参画して、そういうことを米軍に申し入れておるのでございます。従って筋としてはこの際認可をしておいて交渉するのがいいか、あるいは認可をしないでおいて交渉するのがいいか、これは手段の問題でありまして、実質上の差はないものと思います。
柳田秀一
96
○
柳田
分科員
これは十六万人の組合員ですから、相当大きいのです。あなたと話しておっても始まらぬので、これは第一
分科会
の方で承わることにします。 それから、今度の
社会保障制度
改悪の
標準報酬
改訂、料率の
引き上げ
、被
保険者
の適用範囲の縮小、継続給付の資格の制限、こういう改悪の
政府
案ですが、私は
厚生
当局も好んでああいう線をお出しになったとは決して思っておりません。大蔵省から追い詰められて、やむにやまれずお出しになったことはよく察しております。しかし、これは現実には明らかに改悪です。その証拠には、
社会保険
審議会
ですか、それから
社会
保障
審議会
、どちらにも難色があるようです。先般
予算委員会
で、もしそういう諮問機関がノーという結論を出したらあなたどうするかと言ったときに、ノーとは言わないだろう、こういう大臣の答弁で、しかも結論が出ぬ先で水かけ論になりますから、それ以上追及しませんでしたが、現在ノーと出ているわけなんです。そうなってくると、立ちどころに
赤字
解消
の
厚生
当局の考えは根底からくずれてくる。料率の
引き上げ
だけで二十五億ほどの財源を見込んでおられる。
標準報酬
の改訂でやはり五億ほどの財源を見込んでおられる。そうすれば三十億です。七十億の
赤字
解消
の約半数は根底からくずれてくるわけです。大臣は労使双方に渡りをつけるために一牛懸命やっていると言っておられますけれども、おそらく労使双方ともそう簡単にのまないと思う。おそらく結論はノーであろうと思うがその場合どうされるのですか。
久下勝次
97
○久下
政府
委員
まず御指摘のような
赤字
対策、
財政
対策を考えまして、その一環としての法律案を国会に提案しておりますことは、御案内の
通り
であります。この問題につきましては、
政府
といたしましては、すでに
予算
にその趣旨を盛りまして、国会の御
審議
をわずらわしている次第でございます。従いましてそういう段取りに相なっておりますのに、諮問機関の意見が反対であるからといって、
政府
みずからが
予算
の修正に響くようた問題を出すことはいかがであろうかというような考え方もありまして、問題は国会の御
審議
におまかせをして、国会の御意見によって決する以外にはないと私は考えているものでございます。国会においてノーという結論が出たらどうかということでありますれば、これはそのときの問題でございまして、結局は
予算
がかりに
通り
ましても、その執行ができない。結果において、
昭和
三十
年度
は一応私どもは努力して
赤字
の出ないようなことをいたしましたが、この分だけ
赤字
が生ずるという結果にならざるを得ないじゃないかと思います。今から私そう悲観的なことを考えているわけじゃございませんけれども、何とか一つ御
説明
を申し上げて御了承を得まして、少くとも
健康保険
は今
年度
は
赤字
を出さないで済まし得るような対策を立てたいという考えでございます。
柳田秀一
98
○
柳田
分科員
今のあなたの答弁は大分重大な問題を含んでいる。実は国会の
審議
もあるんだから、
予算
に反するようなことを
政府
から言えない。
政府
はそうでしょうが、
審議会
の方もそういう線をお出しになることを期待するというような、表現は違いますが、多少そういうニュアンスの御答弁があった。これは私は重大だと思う。なぜ重大かというと、それは諮問機関であるから、諮問機関の決定
通り
やらなくてもいいんですが、順序が違っているのです。第一、諮問機関というトンネルを通じて、その諮問機関の決定を尊重されて、料率を上げろ、
標準報酬
を上げろ、適用範囲を狭めろ、そういうことを
厚生
当局案として、それに基く
予算
を国会に出されたならば、あなたの議論が立ってくるけれども、肝心かなめの諮問機関を通さずに
予算
を出されて、諮問機関にかけられている。ここに問題がある。これでは何のための諮問機関か。トンネルの機関ではなしに、ただ形式をととのえるためにあとでイエスを言ってくれという。これじゃ戦時中のいわゆる翼賛議会の精神とちっとも変らない。それじゃ初めから諮問機関は要らない。だからこういうように事後承諾を求めるといっても、諮問機関は事後承諾を与えない。国会の方も、今情勢を聞いておりますと、民主党の方でもあっさり否決されてもかまわぬというような空気があるらしい。そうなって参りますと、本
年度
健康保険
の
赤字
対策は、半分根底からくずれてくるのです。だから根本問題は
厚生
当局がトンネル機関を先に通じて、それからその諮問機関を尊重されて、−諮問機関の決定線を全部受けられるならなおさらそれに越したことはありませんが、諮問機関ですから十分尊重されて、そうしてそれに伴うところの
予算
措置
をつけた原案というものが出てこなければならない。逆になっております。ここに問題があります。だから私は今あなたがおっしゃるような
赤字
対策が何とかうまくいくだろうということはとてもできないと思う。従っておそらく現状では両諮問機関とも、
社会保険
審議会
も
社会保障制度
審議会
も、どちらもあなた方の御期待に反して、ノーという、あるいは全面的にノーというのでなくても、実質的にはノーという答申を出してくると思いますが、そういう際に、かりに国会の
予算
が多少修正されたにしても、とにかく
予算
が通った、ところが諮問機関の意思がかりにノーときた。そしてそれに
予算
措置
が合わなくなってきた、その場合にどうされますか。やはり諮問機関の意思は一応承わっておく、聞いておくというだけで、
政府
の考えておられるところの原案を強行されるのですか。
久下勝次
99
○久下
政府
委員
まず最初に御指摘のありました諮問機関と
政府
の方針決定とが前後しておるために問題があるという御指摘はごもっともであると存じます。その点は
社会保険
審議会
におきましても、繰り返し指摘をされた問題でございます。ただ現在の
政府
全体の、この問題のみならず全般的な問題の取り扱い方と申しますか、——かりに諮問機関があります
厚生省
としては、
政府
の
予算
方針の最終的な決定がなくても、ある種の対策を考えて諮問をすることは不可能ではないと思います。不可能ではないと思いまするけれども、正式に
政府
の意見として
予算
の決定をいたします前に、
予算
に
関係
のある方針を打ち出しますということは、実は従来の慣例からいきましてもできないと申してもいいくらいな
実情
であります。事前に意見を伺いましても、その意見の
通り
やろうと努力をしましても、最終的な
予算
の決定の際にはいろいろ政策全般の
関係
から、
審議会
等で事前に要望された
通り
にならない場合があるわけであります。そういう場合はもちろん、またかりに要望された
通り
になったといたしましても、最終的に
政府
の方針として正式に国会に提案をいたします場合には、法律の定むるところによって
審議会
の
審議
を経なければならないわけでございます。そういうようないきさつになっておりまするので、事前に案を考えてやればよかったという御指摘の点はごもっともでありまするが、実は
政府
全体の方針が
予算
の折衝の最終段階に至りますまで、正式には決定ができなかったのであります。しかももうきまったときには
予算
の大ワクはきまってしまったという段階で、御質問ではございませんでしたけれども、私どもは
社会保険
審議会
におきましてもその点は指摘されました。少くともこれから先
健康保険
についての根本的な対策を検討いたします際には、おそらくこういう慣例でありまするので、事前に財務当局等の了承を得て、
政府
全体の方針を必ず来
年度
の
予算
にはこういうことを盛るということまで約束は得られないかもしれませんけれども、少くとも非公式な意味でも事前に
審議会
の御意見を聞くことにいたしましょう。その御意見に基いて
予算
の折衝もし、その上であらためて正式な諮問をするような段取りを進めることだけはお約束申し上げたい次第でございます。
柳田秀一
100
○
柳田
分科員
大体あなたの言われる
通り
だと思います。大蔵省の方は
医療費
の一部自己負担というような原案を出してきて、それで
厚生省
案が一転、二転、三転しておるのですから、それは事務当局の御苦衷はよくわかります。事務当局は受身の立場で御苦衷はわかりますが、最後に大蔵省から
予算
のワクを示されてきてああいう決定線が出たときに、なおトンネル機関を経なければならないので、こんなものはとうてい通らない。かりに
予算
をおきめ願っても、われわれはこれからこういうトンネル機関を通さなければならぬし、こんなものではトンネル機関を通るなんて考えられないし、実際に行政執行できませんというような、強い腹で大臣を補佐されないと、
社会
保障政策というものは実際に
推進
できません。大臣も、民主党内においても閣議においても相当検討したと思います。思いますが、最後には大臣ものんできた。自分の考えていた
通り
にはいかなかったが、最後にはのんできた。しかもそれによってその中でやれということで、あなた方もしぶしぶこういう作業を始められたと思いますが、とうていそれではトンネル機関を満足に通過しません。
予算
がかりに通ったとしても、実際に執行ができません、これくらいの強い態度で補佐しなければ、どの大臣がきても——今の大臣なんか、
社会保障制度
についてかなり深い熱意と理解とを持った大臣だと思うのですが、どの大臣がこられても、事務当局がそのような弱腰では、
社会保障制度
というものは実際に
推進
されぬと思うのです。
社会保障制度
審議会
、
社会保険
審議会
にこんなものをかけられても、
社会保険
審議会
がそうですかとのむわけはない。それはわかっている話です。あなた方もよくおわかりになっておる。しかも仕方がないからというのでやっておられるのですから、実際行政事務に当る方の御苦衷はわかりますけれども、実際にこれは大きな穴が出るだろうと思います。しかしこういうことは根本的な問題ですから、今あなたにどうこう言っても仕方がない。今後はやはりトンネル機関があるものは、先に通すという率直な御答弁もありましたから、この問題についてはそのくらいにしておきましょう。 それからこれも仮定の問題にはお答え願えぬと言われるかもしれませんが、吉田さんほどでもないからお答え願いたいと思いますが、
国民健康保険
が今二割の
助成
措置
ができておる。法的根拠はございませんが、今までの状態ですと、おそらく
医療給付
に対しては二割
補助
しろ、こういう法律案が通過する見込みが大であると私は思っております。その際には現実においては今の
助成
措置
では二割になっていないのです。やはりここで
予算
的に執行上
不足
分が起ってくると思いますが、かりにそういう法律が通ったとしましたならばどういう
措置
をされますか。
堀岡吉次
101
○堀岡
政府
委員
その法律の内容によると思いますが、それが義務費であるということになりますれば、これは将来
予算
を執行してみまして、
不足
が出るならば予備金から支出をするなり、あるいは適当な機会があれば
予算
補正の
措置
をするなり、あるいはまた被
保険者
数や
医療費
がどの
程度
に伸びますか、その算定のいかんに上りますが、その中でやれれば、その中でやることになると思います。
柳田秀一
102
○
柳田
分科員
その答弁けっこうです。この問題は、一本釘をさしたのは、かりに法律が通っても、それを現在の
予算
の中でいわゆる事務的な操作をされて、当面本
年度
は糊塗するというようなことをされる危険が多分にあるので、その点一本釘をさしておきたかったのです。足りなかったら予備金から出すという御
説明
ですからけっこうです。 それから従来
社会保険
の
単価
の問題が盛んに取り上げられましたが、
健康保険
全体の
赤字
の問題に隠れて、少しこれが従来ほど論議されておらぬのです。あの当時
保険局長
の御答弁では、もう漸次満足すべき御答申をいただける段階にまできておる、こういう御答弁でありましたが、これもこの諮問機関ですが、どの
程度
まで作業が進んでおるか。昨年の秋にはもう大体満足すべきところまで各先生方も勉強していただいておって、
審議
が進んでおる、こういう御答弁でありましたが、どうですか。
久下勝次
103
○久下
政府
委員
単価
の問題の跡始末としてできました
臨時
医療
保険
審議会
が、昨年の九月以来構想を新たにいたしまして、熱心な
審議
を継続いたしておりますことは、今日もまだ続いております。雑誌等に出ておったので、ごらんになったかと思いますが、小
委員長
の今井
委員
が、今井メモなるものを出して、いろいろ長い間それまでに論争のありました問題なり自分の意見なりを書き加えまして、相当長いものを、問題点をたくさん含みましたものを
議題
にいたしまして、それでずっと論議が続いておるわけでございます。この前の——先月の中ごろだったと思いますが、その次の小
委員
会がいろいろな都合で延びてしまいまして、一回抜けた格好になっておりますが、また近く開く
予定
でございます。この前の小
委員
会におきまして、もうあのメモの最後の項目——最後といいましても、個々の項目はたくさんございますが、最後のパラグラフといいますか、その辺のところまで話が進んでおります。しかしながら、実は話がそういうふうに進んでは参りましたけれども、また今日のところでは、個々の問題については議論がしっぽなしになっておるのでございます。ずいぶんいろいろな意見が出て、それを整理しつつ前へ進んでおりますけれども、議論の分れましたような問題を、最後にけりをつけながら前へ進むということではなしに、とにかく一応全部問題点を議論していこうということでやっておりますので、だいぶ時間がかかったのでありますが、最後のパラグラフにただいま到達しているというような状況でございます。そのあとどういう運びになりますか、もう一、二回やってみなければわからないと思いますけれども、小
委員長
がひそかに漏されたのでは、ある
程度
のところで意見をまとめて、最終的な決定をしないで、経過的に総会に報告して、さらにその後の方針をきめようじゃないかということを二、三回前に漏らしておられたことがございますが、どういう運びになりますか、そういうこともございましたので御参考までに申し上げます。
柳田秀一
104
○
柳田
分科員
今井メモが出ましたのは昨年のことでございます。今の御答弁のような段階はもう昨年私も聞いておるのです。これも三、四年来の懸案の問題なんです。従って、
臨時
という名前がついておるわけですが、三年も四年もかかってやったら、これはもう
臨時
ではない。大体こういうような諮問機関は、諮問された側から、いつまでに答申を出してくれということを言わなければ、いつまでたっても出ないと思う。むしろあなたの方は、いつまでも出ないのを希望しておられるのかもしれませんけれども、それでは私は嘱職のそしりを免れぬと思う。大体いつごろまでに結論を出せ……。これはかってサムソンがおりますときに、
臨時
医薬
制度
調査会ですか、何とか調査会というようなものを一月か二月で昼夜兼行でやって、諮問案の結論を出しております。それと同じことで、これは出そうと思えば一月か二月で出せる。引っぱろうと思えば、一年たって二年たっても出ない。もう三年、四年越しになっているのです。いつまでも出さない。実際いつまでに結論をつけるつもりですか、その見通しを伺いたい。
久下勝次
105
○久下
政府
委員
この
審議会
の
運営
につきましては、前に何度も申し上げた機会があると思うのでありますが、実は
厚生省
から具体的な問題を提起して、その会の意見を問うというような形の諮問機関の扱いをしておらないのであります。問題を
委員
からそれぞれ持ち寄って、それによってどういう方向でどういう
審議
をしていくかということは、
審議会
自体の発意によってやっていこうじゃないかということが、最初から申し合せになっておりました。従って私どもといたしましても、行政当局が、こういう問題をいつまでに結論を出してくれというような態度には出ないという考え方で扱ってきております。決して結論の出ないことをいいことにして、漫然としておるつもりはないのでございますけれども、
審議会
の
運営
の基本的な方針としてそういうやり方を従来しておりますので、ただいままでのところ、実はいつまでに出してくれというところの要求も従ってしておりません。
柳田秀一
106
○
柳田
分科員
私はやはりこれはほおかむりするのでなく、一定の時期を切ってやらなければいかぬと思う。実のところ
単価
一つ取り上げても、
社会保険
というものは非常な危機に見舞われる、
単価
の問題なしにしても、現在
社会保険
というものは危機に見舞われている。そこへ持ってきて
単価
の問題を入れると、二重に危機が来る。それだからといってほおかむりすることはいかぬ。危機は危機として大きく打ち出したらいい。現在の
社会保険
を正しく発展させるためには、現在の療養担当者にも反省を求めなければならぬ点は多々あると思う。今のように療養担当者が野放しではいけない。あれはもっと反省を求める必要がある。あるいはまた被
保険者
そのものにも、ただかかればいいんだというような考え方では、私はいかぬと思う。被
保険者
も、やはりこういうような保険組織というものはみなが守っていくんだというような考え方をもう少し
指導
育成するということが必要になってくると思う。同時にやはり
政府
も本腰を入れて、
社会
保障には金をつぎ込むということで、そうしてこのいろいろな危機というものをもっとさらけ出した方がいい。現在の
単価
は
実情
に沿わぬのはわかり切っている。これをほおかむりしたのでは、いつまでたっても
社会保険
の危機は乗り切れない。現在の
社会保険
の危機はこの形で乗り切れても、
単価
の問題が出たらまたこれによって危機が出てくる。それで危機のファクターをみなさらけ出して、そうしてこれでどうやって日本の
社会
保障を
推進
していくんだ、しかも
財政
規模は今のところ一兆円のワク内であって、その中で
社会
保障費というものは大体このくらいという目安はつくのです。
社会
保障だけで五千億も七千億もということはだれも思っていないのだから、どうして危機を乗り切るかについて真剣な取っ組み方をやらなければいかぬ。ただ漫然とやっておったのでは危機は乗り切れない。だから七人
委員
会をお作りになって、いろいろな
社会保険
の危機の問題に対して御検討を願っている。その中には
単価
の問題も入るでしょう。しかしながら私は
単価
の問題は、それに関しては
臨時
医療
保険
審議会
において従来から懸案になっているのだから、そこの結論を早く出させて、その結論をもって七人
委員
会に行かれて、そうしてそれを検討した方が
社会保険
の危機を乗り切るのに早道だと思う。それを今ほおむりしちゃったのでは、現在七人
委員
会が出した結論——七人
委員
会は
単価
の線は幾ら幾らの線まではお出しにならぬと思う。
単価
の問題は今のままではいかぬという原則論は出されても、実際
臨時
医療
保険
審議会
という
制度
がある以上は、そこまではお出しにならぬと思う。そこへまた出てきたら二重の危機になります。もう少しくさいものにふたをせずに、堂々と四つに取っ組まれて、そうして療養担当者にも被
保険者
にも、要求するところは堂々と遠慮なしに御要求になったらいいと思う。そうしてみなで乗り切っていかなければ、
社会保険
の危機というものは、今
政府
がやっている小手先では実際乗り切れません。危機は危機として大きく出されたら、大蔵当局ももっと目が開けてくる。それを
厚生省
が隠そう隠そうとするならば、大蔵当局はいつまでたっても目が開けない。それで七人
委員
会の方はどうですか。これもやはり
委員
会の自主性にまかして向うさんの方で結論をお出しになるまで待とうという考え方で、そういう諮問機関に臨まれるのですか。大体これはいつごろまでに結論を出してくれという態度で臨んでおられるのですか、どちらですか。
久下勝次
107
○久下
政府
委員
健康保険
の大幅な
赤字
を契機といたしまして、この
制度
の
改善
につきましての、あるいは反省につきましての根本的な態度につきましての御意見はごもっともでありまして、私どももさような気持で問題と取っ組んでいるつもりてございます。そこで七人
委員
会につきましては、先日第一回の会合の際に大臣みずから出席されまして、七月末ごろまでに結論を出してもらいたいということを明らかに要望しております。これは八月には御案内の
通り昭和
三十一
年度
の
予算
を編成いたさなければなりません。そういうための資料として必要であるからということを申し加えて要望しております。
柳田秀一
108
○
柳田
分科員
そこで七人
委員
会が真剣に現在の
健康保険
の
赤字
を
解消
できるような御
審議
を願う上にも一番いい資料として、やはり
単価
の問題を——
臨時
医療
保険
審議会
の方の結論は、このままでは私は今
年度
中も出ないと思う。これは
昭和
二十六年
単価
会計以来の懸案ですから、これはいつまでたっても出ません。だからそこは期限を切られたらいいと思う。ある
程度
昨年の秋のお話では、もう大体において結論が出るような話もあったのですから、少くともこれを七月までに出してくれ、こう言うならば、その方もお出し願ってあわせて
審議
された方がいいと思う。それくらいしなければ
健康保険
の危機は乗り切れませんよ。 それからもう一つビキニの補償ですが、これは大体一人当りどれくらい補償するのですか。
久下勝次
109
○久下
政府
委員
資料が見つかりましたらば正確にお答えを申し上げますが、
一般
的な考え方を申しますと、福龍丸乗組員及び福龍丸以外の船舶の乗組員でありましても、ビキニの水爆実験によりまして身体に傷害を生じました船員に対しましては、
船員保険
法の定めます期間中の
医療費
は
全額
船員保険
の筋から支払いをするという建前で、それに要します費用、同時に御案内の
通り
傷病のため労務に服し得ない期間は傷病手当金を支給することになっております。傷病手当金も当然支払いをするということにして、これも
船員保険
から支払いをいたしますが、その所要額を合せまして、全体で約三千万円——すでに支払いましたものと将来いろいろの判断に基きまして支払うべきものと予想されます金額三千万円くらいが、二百万ドルのうちから留保されておるわけでございます。すでに支払いました分につきましては、
船員保険特別会計
の中に繰り入れられることになっております。
柳田秀一
110
○
柳田
分科員
それは治療費さらに傷病手当金、そういうものですね。いわゆる補償費というか、お見舞金というか、そういうものは出さないのですか。
堀岡吉次
111
○堀岡
政府
委員
たしか主管は農林省で扱っておると思っております。
柳田秀一
112
○
柳田
分科員
そうすると、まあ言えばわれわれ日本にとっては何ら責任も何もない、向うの禁止区域でないところでとっておったのにああいうような被害になった。そういうものによって犠牲をこうむって金が要った、その費用も
船員保険
でというと、
船員保険
に入っておられるすべての方々、あるいは
事業
主がそれぞれ醵出された金をもって会計をやっておるのですが、そこから出すのは、前から私はいけない、一応アメリカから金が来るまでは立てかえて
船員保険
から出しておいても、アメリカから金が来たならば別途出すということをやかましく言っておった。たとえばこういうことでございましょう。私が
健康保険
に入っておる、そうして自分の意思に反して戦争に引っぱられた。そしてけがして帰ってきた。そこでその治療費を
健康保険
から払ったのでは、
健康保険
の他の
保険者
はたまりませんよ。それは自分の意思でも何でもない。
健康保険
と
関係
ないのだ。ただ本人が
健康保険
の組合員であったということです。それと同じことです。立てかえは
船員保険
から出しておいても、
船員保険
の会計から払うべきではないと思う。そうでなくとも
社会保険
がこれだけ
赤字
に苦しんでおるのに、ビキニの実験の被害を
船員保険
から払ったのでは、ビキニのようなものが三つも四つもあったら
船員保険
はたまらない。こんなものは
船員保険
の会計からはずして、アメリカから来たところの金で支払うべきである。立てかえは時間的
関係
では仕方ありません。
船員保険
の会計で払うのは悪例を残すことと思うのですが、どうですか。
久下勝次
113
○久下
政府
委員
結局結果におきまして、
船員保険
で払いました金は全部二百万ドルのうちから
船員保険特別会計
が受け取ることになっておりますので、おっしゃる意味の立てかえ払いになっております。ただいずれも、福龍丸乗組員その他の船舶の乗組員につきましても、
船員保険
の被
保険者
でありまして、しかもこれは漁業のために出漁中の被害でありますので、法律上の解釈は職務上の傷病ということになっております。そういう
関係
もございまして、
船員保険
法でこれに給付をしないというわけにも参らない。特に金が出ません当初は米国との話し合いもつきませんでしたので、当然これはアメリカから補償が来る場合のことを予想しまして、
船員保険
において支払いをしておったのであります。二百万ドルがきまりましたので、先ほど概数で申し上げましたが、
船員保険特別会計
へ二千九百十八万六千円、
国立病院
特別会計へ百五万円、それぞれ療養費として繰り入れることになったのでございます。この中には先ほど申し上げました傷病手当金も含んでおりますが、結果におきまして、
船員保険
法の建前からいって、これに保険給付をしないというわけにも参りませんからいたしますけれども、その所要額
全額
はアメリカからの補償によりまして支弁をされるということになるわけであります。
堀岡吉次
114
○堀岡
政府
委員
関連して御答弁申し上げます。ただいまの金は会計
課長
が預っておって、もう船員特別会計なんかへ入れたかと思っております。その手続のことは忘れておりますが、私の方でいただいております。
柳田秀一
115
○
柳田
分科員
最近また新聞に問題になっておりました給血者——血液を血液銀行に売ったりあるいは病院に売ったりする、これについて、私は昨年給血者に対して何らか制限する立法の意思があるかどうか尋ねておいたのですが、これは何らか法的に立法
措置
をやっておかないと、現在のような野放しにしておいたのでは非常な問題が多々あると思う。一々の問題はここでは申しませんが、あるいはその血をとる、あるいはそれを販売するブローカーその他すべてに関して、この給血に対する何らかの立法
措置
をとられる意思がありますかどうですか、それを一つ承わりたいと思います。
曾田長宗
116
○曾田
政府
委員
この問題は先般も国会でいろいろ御討議がございましたのですが、私どもはその後もいろいろと検討いたしてみております。また最近新聞に一、二この問題が伝えられておるのでありますが、私ども根本的には輸血あっせん業者というものを一応認めて取り締りの法規を整えるべきか、あるいはかようなものを表向き認めることそれ自身がいろいろ弊害を生ずるものではないかということが一番の問題でございまして、私ども先般も申し上げたかと思うのでありますが、趣旨といたしましてはいろいろ条件をつけるといたしましても、なかなか取り締りは困難である、むしろかようなものを公然と認めることに伴ういろいろな弊害というものが起ってくるのではないかというふうに考えておりまして、御承知のようにただいまにおきましては、輸血を行いますときには輸血をいたす医師が全面的に責任を負うということになっておるのであります。ただこの間にあっせんというものが考えられましても、これはただ単純にその人を紹介するというような意味のものであって、その輸血といいますか、給血者が健康なりやいなやということまで、あっせん者が責任を持ち切れないのではないかというふうに考えておるのであります。
実情
は、いろいろ特定の検査所のようなところに頼んで、そこで血液検査をした証明書というようなものをもらって、それをそのあっせんされました給血者が持っていったりしているようでありますけれども、これにつきましてもただ血液検査をしたということだけで、それが給血者として十分支障のないものだというふうにも言い切れませんし、これは全面的に健康状態等を見、またいろいろな事情を勘案してきめなければ、血を受けます受血者も、あるいは給血者も、十分健康上万全を期し得ないということになります。私どもとしてはやはり新鮮血を輸血いたします場合には、輸血をいたす医師が十分責任を持ってやっていただかなければならぬ。従ってそこにあっせん業者というものが入ることは好ましくないというふうに見ております。身体検査あるいは血液の検査の機関というようなものについては、いろいろ都道府県立の
公立
、あるいは民間でもしっかりしたものがございますけれども、試験機関というようなものについての規制は、今後考えていかなければならぬのじゃないかというふうに考えております。
柳田秀一
117
○
柳田
分科員
やはりこの問題については、血を売る人を食いものにする、ほんとうにそれこそ吸血業者、血を供給するのじゃなしに血を吸う悪徳なるブローカー、ここに一つ問題点があるのと、それからやはりおっしゃったように、その血そのものが新鮮なる健康血であるかどうか、マラリヤ、梅毒というようなものを持っていないかどうかということと、最近は名前を二つも三つもかえまして連日のように血を売っておる、これは職業というよりは
生活
のためにやっておる。こういう点の規制は何らか立法
措置
をしておかななければいかぬのじゃないか。立法
措置
をすることによってかえって何とかというような御議論もありましたが、私はある意味において少し窮屈に規制をしておかなければいかぬのじゃないかと思います。多少窮屈に規制をいたしましても、乾燥プラズマもありますし——くどいようでありますが、そこを何とか立法
措置
をしておかなければ、今のまま野放しに放置しておくことはいかぬのじゃないかと思いますが、ごく簡単でけっこうですから、お答えを願いたいと思います。
曾田長宗
118
○曾田
政府
委員
今お話のありましたプラズマの問題、血液銀行等の
整備
によって、この問題の範囲をできるだけ縮小して参りたいというふうに考えておりますが、今も御意見として拝聴いたしました点十分勘案して、さらに詳細に検討いたしたいというふうに考えております。
藤本捨助
119
○
藤本
主査
他に御質疑はありませんか——それでは本日はこの
程度
にとどめまして、明日午前十時より会議を開きます。 本日はこれにて散会いたします。 午後四時五十三分散会