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1955-06-03 第22回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科委員昭和三十年六月二日(木曜日)委員 長の指名で次の通り選任された。    主査 重政 誠之君       井出一太郎君    河本 敏夫君       小枝 一雄君    三浦 一雄君       北澤 直吉君    平野 三郎君       福永 一臣君    滝井 義高君       福田 昌子君    今澄  勇君       小平  忠君     —————————————    会 議 昭和三十年六月三日(金曜日)     午前十時四十八分開議  出席分科員    主査 重政 誠之君       井出一太郎君    小枝 一雄君       北澤 直吉君    平野 三郎君       福永 一臣君    滝井 義高君       福田 昌子君    今澄  勇君       小平  忠君  出席国務大臣         外 務 大 臣 重光  葵君         国 務 大 臣 高碕達之助君  出席政府委員         経済審議政務次         官       田中 龍夫君         総理府事務官         (経済審議庁次         長)      石原 武夫君          総理府事務官         (経済審議庁総         務部長)    酒井 俊彦君         総理府事務官         (経済審議庁総         務部会課長) 塚本  茂君         総理府事務官         (経済審議庁調         整部長)    松尾 金蔵君         総理府事務官         (経済審議庁         計画部長)   佐々木義武君         総理府事務官         (経済審議庁調         査部長)    須賀 賢二君         外務政務次官  園田  直君         外務事務官         (大臣官房長) 島津 久大君         外務省参事官  寺岡 洪平君         外務省参事官  矢口 麓蔵君         外務省参事官  安藤 吉光君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (欧米局長)  千葉  皓君         外務事務官         (経済局長)  湯川 盛夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (国際協力局         長)      河崎 一郎君         外務事務官         (情報文化局         長)      田中 三男君         農林政務次官  吉川 久衛君         農林事務官         (大臣官房長) 安田善一郎君         農林事務官         (大臣官房会計         課長)     武田 誠三君         通商産業政務次         官       島村 一郎君         通商産業事務官         (大臣官房長) 岩武 照彦君         通商産業事務官         (大臣官房会計         課長)     出雲井正雄君  分科員外出席者         予算委員会専門         員       園山 芳造君     ————————————— 六月三日  分科員滝井義高君辞任につき、その補欠として  足鹿覺君が委員長指名分科員に選任され  た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十年度一般会計予算経済審議庁外務  省、農林省及び通商産業省所管  昭和三十年度特別会計予算農林省及び通商産  業省所管     —————————————
  2. 重政誠之

    重政主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。私、本分科会主査に選任されましたが、各位の御協力によりまして、円滑に議事を進めて参りたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  さて本分科会は、昭和三十年度一般会計予算中、経済審議庁外務省農林省及び通商産業省所管昭和三十年度特別会計予算中、農林省及び通商産業省所管審査を行うことと相なっておりますが、審査の都合上、まず所管全部についてそれぞれ政府より説明を聴取いたした後、一応の予定として、本日は経済審議庁及び外務省所管について質疑を行い、明四日通商産業省及び農林省所管について質疑を行いまして、明四日には審査を終了するよう進めて参りたいと存じますから、御了承をお願いいたします。  それではただいまより、政府から各省庁別に順次説明を聴取することにいたします。  まず最初に一般会計予算中、経済審議庁所管について説明を求めます。
  3. 田中龍夫

    田中(龍)政府委員 経済審議庁に関しまする予算を御説明申し上げますが、ただいま大臣が閣議中でございますので、政務次官の私からかわって御説明申し上げます。  ただいま議題となっておりまする経済審議庁予算案につきまして御説明を申し上げますと、歳出予算要求総額は三億四千七百七万六千円でございまして、これを前年度予算額三億二千七百六十七万四千円に比べますと、一千九百四十万二千円の増額と相なっております。  次に、経費の内訳を申し上げますと、第一に、経済審議庁の項におきましては、要求額は二億三千一百五十五万五千円でございまして、前年度一億九千五百七十六万二千円に比べますと、三千五百七十九万三千円の増額と相なっております。この増額となりましたおもな理由は、本年度より施行いたしまする国富調査に要しまする経費二千八百九十八万五千円が新規に計上せられておるためでございます。  この要求経費内容を御説明申し上げますと、人件費一億五千六百二十八万三千円と、事務費の七千五百二十七万二千円でございます。この事務費は、一般庁務の運営経費並びに次に申し上げまする内容のものでございます。  第一は、わが国経済に関する長期計画作成いたしまするとともに、半年ないし一年程度の短期間の経済についての計画策定ないしは見通し作成に要しまする経費国際経済協力推進をはかりまするに必要な経費並びに本年度から実施いたしまする経済六カ年計画推進をはかりまするため拡充強化されまする経済審議会運営に要しまする経費等でありまして、これに必要なる経費として三百六十八万六千円を要求いたしております。  第二は、産業財政金融貿易、物価、失業対策等の諸基本政策計画につきまして、総合調整を行い、あるいは審議庁として総合経済政策企画立案いたしまするための経費としては、一百三十三万四千円を要求いたしております。  第三は、わが国内外経済の動きを的確に把握し、また必要な統計指標作成いたしまする等、経済動向調査分析に必要な経費といたしましては、一千三百二十三万三千円を要求いたしております。この経費は、毎月の定期的な月報類と臨時的な印刷物及び年報にまとめて発表する経済白書等の印刷に要しまする経費がおもなものでございます。  第四は、国民所得調査推計して、各種経済政策計画の基盤といたしまするための経費として、一百六十万三千円を要求いたしております。  第五に、国民所得統計と並んで総合経済施策基礎となるべき国富統計につきましては、戦前昭和十年の調査以後一度も企画されたことがなく、戦時中から戦後にかけまして著しく変化いたしました最近の国富実情は全く明らかにされておりませんので、本年度より調査実施いたしまして、国民資本の状況を部門別に明らかならしめるとともに、各種経済施策樹立基礎資料たらしめる必要がございますので、本年度経費として二千八百九十八万五千円を要求いたしております。  次に、国土開発調査費の項におきましては、要求額一千二百八万七千円でありまして、前年度の一千三百三十八万三千円に比べますと、一百二十九万六千円の減額と相なっております。  国土開発調査費内容を御説明申し上げますと、この経費は、国土総合開発法電源開発促進法特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法離島振興法等の各法律に基きまして、それぞれの災害防除生産力向上並びに離島後進性を除去、発展せしめるための諸施策樹立いたしまするために要する経費及び次に申し上げます審議会運営に要しまする経費であります。  まず国土総合開発審議会でありますが、この審議会は、委員会と六専門部会のほか、各種分科会特別委員会から成り立っておりまして、それぞれ国土総合開発計画と、その実施について調査審議の上、内閣総理大臣に報告し、または勧告することをもって目的といたしております。  電源開発調整審議会は、電源開発に関しまする基本計画、費用の振り分け、開発担当者決定水利権水没補償等の事項を審議決定いたしますることが目的であります。  特殊土壌地帯対策審議会は、特殊なる土壌におおわれまして年々災害をこうむり、また特殊土壌なるため農業生産力が著しく劣っておりまする地域について、災害防除生産力向上をはかりまするための諸計画審議決定することが目的でございます。  また離島振興対策審議会は、本土から隔絶せられておりまする離れ小島の後進性を取り戻しまするため、産業振興経済力の培養、島民の生活力の安定、福祉の向上をはかりまするための各種施策審議決定の上で、内閣総理大臣に提出することが目的でございます。  次は、土地調査費の項におきましては、要求額一億三百四十三万四千円でありまして、前年度一億一千八百五十二万九千円に比べますと、一千五百九万五千円の減額と相なっております。  土地調査費は、国土調査法に基きまして、国土開発、保全、利用の高度化をはかりまするため、国土の実態を総合的に調査いたしまする経費でございます。  その内容を申し上げますと、基準点測量水調査土地分類調査地籍調査に要しまする経費でございます。  基準点測量は四等三角点新設でございまして、本年度予定点数を一千七百点といたしまして、その経費は五千四百六十九万七千円を要求いたしております。  次に、国土調査法第九条の規定によりまして、地方公共団体土地改良区等が国土調査を行いますときの補助金として四千六十万円を要求しております。  なお土地分類調査水調査については、前年度補助金でありましたが、本年度委託調査を行うこととして五百万円を要求しております。  以上で経済審議庁予算説明を終りますが、なお御質問に応じて詳細御説明を申し上げたいと存じます。  何とぞよろしく御審議の上、すみやかに可決せられんことをお願いいたします。     —————————————
  4. 重政誠之

    重政主査 次に、一般会計予算中、外務省所管について説明を求めます。園田外務政務次官
  5. 園田直

    園田政府委員 外務省所管昭和三十年度予算について、大要を御説明いたします。  予算総額は五十八億三千三十六万円で、これを大別いたしますと、外務本省二十二億一千六百七万八千円、在外公館三十六億一千四百二十二万八千円であります。その内容について御説明いたします。  第一、外務本省一般行政に必要な経費五億九千九百九十万円は、外務省設置法に定める本省内部部局及び付属機関一般事務処理するための職員千二百四十一名の人件費及び物件費等でございまして、前年度に比し三千百九十五万三千円の増加となりますが、そのおもなるものは事務量増加に伴う職員及び事務費等増加によるものであります。  第二、外務行政連絡調整に必要な経費一億五千四百五十五万八千円、これは本省在外公館との事務連絡のための電信料郵便料及び旅費等でありまして、前年度に比し二千七百二万円の増加は、在外公館増加連絡事務増加したためであります。  第三、外交文書編さん公刊に必要な経費四百二十八万五千円は、明治以来の日本外交史実編集し、公刊するための経費でございます。  第四、外交電信に必要な経費二千六百三十七万四千円は、在外公館に対する電信事務の的確なる処理及び通信施設改良整備等に必要な経費であります。  第五、外交運営の充実に必要な経費二億二千八百万円は、各国との外交交渉により幾多の懸案の解決をはかり、また各種条約協定締結する必要がありますが、これらの交渉わが国に有利に展開させるため必要な工作費であります。  第六、アジア諸国に関する外交政策及び賠償実施政策樹立に必要な経費千百六十三万七千円は、アジア諸国に関する外交政策企画立案、その実施及び賠償実施政策樹立のため必要な経費であります。  第七、アジア諸国との経済協力に関する事務に必要な経費七千四百二十七万一千円は、アジア諸国との経済協力をはかるために企画立案し、及びその実施のための事務総合調整するに必要な経費と、財団法人国際学友会補助金三千八十万八千円、アジア協会補助金千三百四十六万二千円及び技術協力実施委託費二千九百五十一万円でございます。前年度に比し千二百十九万三千円の増加は、技術協力実施委託費増加によるものであります。  第八、賠償実施連絡業務処理等に必要な経費二百二十一万九千円は、日緬賠償の円滑かつ統一的な実施をはかるための事務費等であります。  第九、欧米諸国等に関する外交政策樹立に必要な経費千五百七十七万三千円は、北米、中南米、西欧及び英連邦諸国に関する外交政策企画立案及びその実施に必要な経費と、在パリ日本会館補助金百二十三万六千円でございます。  第十、日米合同委員会日本側事務局事務及び国連軍協定実施に関する事務処理に必要な経費五百四十八万二千円は、日米安全保障条約第二条に基く行政協定実施機関である合同委員会日本側事務局事務及び国際連合軍との協定実施に関する事務に必要な経費であります。  第十一、国際経済情勢調査並びに資料収集等に必要な経費六百七万四千円は、世界経済の正確な把握を期するため、内外資料文献を広く収集整理するための経費であります。  第一二、通商貿易辰興に必要な経費二百十八万六千円は、通商利益保護増進をはかるため、通商貿易に関する調査等のための経費であります。  第十三、条約締結及び条約集編集等に必要な経費六千六百六十二万九千円は、国際条約締結条約集等編集条約典型作成条約及び国際法並びに内外法規調査研究のため必要な事務費等であります。前年度に比し五千三百七十四万円の増加は、諸謝金及び外国旅費等増加によるものであります。  第十四、戸籍法及び国籍法関係事務処理に必要な経費二百七十五万七千円は、在外邦人身分関係事務及び二重国籍者日本国籍離脱に関する戸籍法上の事務に必要な事務費であります。  第十五、国際連合への協力に必要な経費七千四百五十四万八千円は、国際連合機関に参画し、あるいはその調査研究等に必要な事務費と、後進国経済開発技術援助拡大計画醵出金三千二百四十九万二千円、国際連合国際児童緊急醵出費三千五百二十八万円及びパレスタイン難民救済計画醵出金三百六十万八千円であります。  第十六、情報啓発事業実施に必要な経費一千七百十五万七千円は、国際情勢に関する資料の入手、海外に対する本邦事情啓発及び国内啓発等のため必要な経費であります。  第十七、国際文化事業実施に必要な経費一千二百二十万八千円は、文化交流を通じて国際間の相互理解を深めるため必要な啓発宣伝資料作成、購入の経費及び国際連合協力の意思を盛り上げることを目的とする財団法人日本国際連合協会に対する補助金五百四十五万一千円と日本文化海外紹介事業を主として行う財団法人国際文化振興会に対する補助金二百十八万九千円であります。  第十八、海外渡航関係事務処理に必要な経費一千六十五万三千円は、旅券の発給等海外渡航事務経費とその事務の一部を都道府県に委託するための委託費五百七十七万八千円であります。前年度に比し百六十二万円の増加は、委託費等増加によるものであります。  第十九、旧外地関係事務処理に必要な経費七百十五万二千円は、朝鮮、台湾、樺太、関東州等旧外地官庁職員給与、恩給の支払い、その他残務整理に必要な経費であります。  第二十、旧外地官庁引揚職員等給与支給に必要な経費四千万円は、三十年度中の旧外地官庁引き揚げ見込み職員百名と未引き揚げ職員五百四十一名の留守家族に支払う俸給、その他諸給与であります。  第二十一、移民振興に必要な経費五億八千百七十六万円ば、南米開拓移民等五千五百人を送出するための渡航費貸付金五億一千四百五十万円及び移民事務民間団体に委託するための経費五千三百七十六万二千円等であります。前年度に比し二億一千二百六十七万五千円の増加は、送出移民増加に伴う渡航費貸付金及び移民事務委託費増加によるものであります。  第二十二、移住あっ旋所事務処理に必要な経費三千二百七十一万四千円は、移民本邦出発前における健康診断、教養、渡航あっせん等事務を行うため必要な経費であります。前年度に比し二千二百四十四万五千円の増加は、移民送出数増加に伴い横浜移住あっ旋所新設するためであります。  第二十三、国際会議参加及び国際分担金支払い等に必要な経費二億三千九百七十四万一千円は、海外で開催される各種国際会議わが国代表を派遣し、また本邦国際会議を開催するに必要な経費と、わが国が加盟している国際機関分担金であります。  第二十四、在外公館一般行政に必要な経費三十五億二千二百十六万九千円は、既設公館七十二館一代表部四百八十一名と三十年慶新設予定の在アフガニスタン大使館、在ボリビア、在エチオピアの二公使館、在ベルリン総領事館、在カサブランカ領事館及び大使館に昇格する予定の在スイス公使館のために新たに必要となった職員十二名及び既設公館職員増加二十九名、計五百二十二名の給与、赴任、帰朝、出張旅費事務費交際費等であります。  第二十五、対外宣伝及び国際文化事業実施に必要な経費四千三百六十九万六千円は、わが国アメリカ合衆国及び東南アジア諸国との親善に寄与するため、わが国の政治、経済文化等実情を組織的にアメリカ合衆国及び東南アジア諸国に紹介するための資料作成費講演謝礼及び事務費並びに日仏文化協定実施混合委員会運営等に必要な経費であります。前年度に比し一千五百二十万九千円の増加は、対外宣伝事業の拡充に伴い、事務費等増加したためであります。  第二十六、在外公館営繕に必要な経費三千七百十七万九千円ば、在ホノルル総領事館事務所の改築並びに在外公館駅務所及び館長公邸建物修理費等であります。  第二十七、国際会議事務処理に必要な経費一千百十八万四千円は、在外公館所在地で開催される国際会議事務処理に必要な事務費であります。  以上がただいま上程されております外務省所管昭和三十年度予算大要であります。詳細御審議のほどお願いいたします。     —————————————
  6. 重政誠之

  7. 吉川久衛

    吉川政府委員 昭和三十年度農林関係予算案について、その概要を御説明申し上げます。  本予算、案は、米麦等主要食糧を初め、畜産物、水産物を含めて、総合的に国内食糧自給力を高めるよう各施策を効率的に実施して、合理的な増産をはかり、あわせて食生活改善を進めることによって、国民食生活の安定に資しまするとともに、農林畜水産物の価格安定と農林漁業経営生産性向上及び多角化を進める等、諸般の措置を講じてその所得確保を期し、農山漁家の安定をはかりまするほか、農畜水産物等の集荷、その他流通取引改善及び消費の増進をはかる等の施策をもその重点といたし、編成したものであります。  三十年度農林関係要求予算につきましては、一般会計及び特別会計を通じ、従来の施策であって引き続き実施すべきものは、その継続実施をはかりますとともに、新規に着手実行すべきものは、あとう限りこれを実施することとし、重点的効率的な運営をはかるよう特に留意して参りたいと存じておるのでおります。  まず一般会計における農林関係予算案の総体について申し上げます。  農林省所管合計といたしましては、八百四十九億五千二百万円(前年度九百六十六億一千六百万円)となっております。  また総理府所管公共事業費五十七億九千六百万円(前年度五十六億八千九百万円)及び大蔵省所管農林漁業金融公庫出資九十五億円(前年度九十五億円)を加えました農林関係予算合計は一千二億四千九百万円となり、金額において前年度千百十八億六百万円に対し百十五億五千七百万円の減となるのであります。  かように関係予算におきまして、減額を見ましたのは、災害復旧事業費において四十四億三千六百万円の減、農業保険費において赤字補てん金繰り入れ減少等による二十六億三千八百万円の減、食糧増産及び公共事業費において九億四千万円の減、開拓者資金融通特別会計に対する一般会計からの繰り入れ(前年度十五億一千九百万円)が、本年度資金運用部よりの借り入れ十億円に切りかえられたことによる減、農業委員会補助金において十四億七百万円の減、二十八、九年度における被害農家に対する米麦の安売に伴う損失補てん費において四億七千六百万円の減等、計約百十四億円に達する減額となる実質上の原因があったことによるものであります。従ってこれらを除けば、農林省関係予算は、実質的にはおおむね前年度に近い規模になっておると存じます。  関係予算の中で比較的に重要な地位を占める補助金につきまして申し上げますと、前年度は、公共事業関係で四百二十億九千五百万円、公共事業以外の一般経費で百五十二億四千二百万円、計五百七十三億三千七百万円の補助金が計上されておりましたが、今回の予算案では、公共事業関係三百七十四億四百万円、一般経費で百三十八億八千百万円、計五百十二億八千五百万円となりまして、六十億五千二百万円の減少と相なったのでありますが、これは災害復旧事業費補助及び農業委員会補助の大幅な減少によるものでありまして、その他は特に大幅な減額はなかったものと考えます。  次に、主要経費について簡単な説明を申し上げたいと存じます。  まず第一に食糧増産対策経費についてであります。  いわゆる土地改良開拓事業等の農地の拡張改良による食糧増産経費は、関係予算としましては二百三十七億五千百万円で、前年度二百四十五億三千四百万円に比し七億八千三百万円の減となっております。  なお財政投融資計画中において余剰農産物見返円資金より農業開発用資金三十億円が予定せられておりますほか、本年度におきましては、世界銀行から農業開発のための資金をも別途考慮しております。  土地改良事業費は、関係予算に関する限りでは百十六億八千八百万円で、前年度百二十三億九千九百万円に比し七億一千百万円減となっております。そのうち国営灌漑排水事業は五十五億五千五百万円(前年度六十億五千六百万円)、都道府県営灌漑排水事業は二十九億九千万円(前年度三十二億六千万円)、団体営灌漑排水事業は十四億五千九百万円(前年度十五億七千四百万円)で、いずれも前年度に比し若干の減額を見ているのでありますが、継続事業早期完了をはかる等、重点的に配分し、事業実施はできるだけ効率的に行うように努めて、食糧増産基本施設造成確保を行いたいと考えておるのであります。  特に三十一年度以降におきまして、一段と食糧自給度向上を期するための準備として、土地改良調査計画費は前年度一億五千万円でありましたが、これを二億一千六百万円に増加し、その他防災関係事業につきまして九億六千五百万円(前年度八億四千百万円)とし、重点的に計上いたしております。  次に、耕他整備事業費につきましては、暗渠排水、客土、区画整理農土索道等、従来の事業のほかに新たに区画整理確定測量費を加えまして二十一億三千百万円を計上いたしておりますが、前年度二十三億二千五百万円に比し、一億九千四百万円の減となっております。  開拓事業につきましては、前年度七十億三千九百万円に対し七十億七千六百万円を確保しております。このうち開墾建設事業が三十八億六千万円、(前年度四十億九千二百万円)干拓建設事業が二十五億八千四百万円(前年度二十五億二千百万円)計画費が二億三千八百万円(前年度一億八千四百万円)開拓事業費補助が三億九千三百万円(前年度二億四千万円)計上されております。  開拓に伴う新規入植戸数としましては、五千五百戸を予定いたしましたが、前年度の七千戸に含まれた一部非助成一千月でありますが、この制度は取りやめ、全部が助成入植となっております。入植助成のためには、以上の開拓事業費のほかに、開拓実施費として二十五億四千三百万円(前年度二十五億八百万円)を計上いたしております。  なお開拓事業に関連いたしまして、開拓者資金融通及び開拓融資保証の点について一言申し上げますれば、営農資金及び役畜乳牛導入のための中期資金につきましては、十四億五千九百万円(前年度十四億八千五百万円)を従来通り開拓資金融通特別会計で貸し付けることとなっております。これは別に申し述べますように、本年度一般会計からの繰り入れによりませんで、同特別会計資金運用部資金十億円を借り入れる方法によることとなっておるのであります。  さらに開拓者の短期資金融通の円滑化をはかるため、前年度の五千万円に引き続き、中央開拓融資保証協会への一般会計からの政府出資を引き続き今回も五千万円計上いたしております。  以上の一般的な食糧増産対策経費のほか、鉱害復旧事業といたしまして九億四千万円(前年度四億四千百万円)、災害関連事業といたしまして八億三千万円(前年度八億五千三百万円)を計上いたし、これら事業の促進をはかることといたしております。従って前述の食糧増産経費二百三十七億五千百万円にこれらを加えますと、二百五十五億二千百万円(前年度二百五十八億二千八百万円)と相なります。  なお新規経費として小団地開発整備促進に必要な経費一億一千六百万円を計上いたしましたが、これは農山村の小団地を対象として該当市町村等が計画的に行う小規模の土地改良等に要する事業費の補助を行うものでございます。  第二に耕種改善に要する経費でございますが、まず農産物種子対策につきましては、米麦、大豆、緑肥作物の原々種圃、原種圃の設置、災害対策用農産物種子の予備貯蔵のほか、米麦等主要食糧農作物の原種決定試験事業を引き続き実施いたすこととし、総額において五億八百万円(前年度四億六千七百万円)を計上しております。なお稲以外の採種圃については、前年度限り国の補助事業を休止し、地方公共団体等の自主的な実施にまかせ、国としてはそのための指道にもっぱら力を入れることといたす方針でありますが、水稲健苗育成のための保温折衷苗代設置補助につきまして、さきの国会で成立を見ました水稲健苗育成施設普及促進法に基き、右の経費のうちに二億二千六百万円を計上いたしております。  次に、土壌対策につきましては、低位生産地解消のための調査費、秋落ち水田及び酸性土壌並びに特殊土壌対策の経費として三億七百万円(前年度三億一千三百万円)を要求いたしております。  次に、農業改良普及事業につきましては、十六億七千五百万円(前年度十四億九千九百万円)を要求いたし、農業改良普及員、生活改善普及費及び専門技術員の給与単価を引き上げますとともに、普及事務所の運営費として新規に四千三百万円を計上いたしております。  次に、植物防疫事業につきましては、総額においては五億四百万円(前年度六億九千六百万円)を要求いたしておりますが、前年に引き続き、病害虫の発生予察、防除組織の整備に努めるとともに、農薬備蓄制度を強化することといたしました。次に、農業関係試験研究事業につきましては、その整備と内容の充実強化に努めることとし、農業技術研究所及び農業試験場の経費として十二億七千百万円(前年度十一億五千五百万円)、都道府県指定試験、育種試験、旋肥改善試験、営農試験地の事業及び都道府県農業試験場拡充強化等、試験研究関係補助として二億百万円(前年度二億一千二百万円)を計上いたしております。  なお西南暖地における水田生産力増強のため、水稲早桶栽培施設の助成のため五千五百万円(前年度五千七百万円)を計上いたしております。  次に、北海道農業振興につきましては、前年度に引き続き六千六百万円をもって心土耕、混層耕用の機械購入をはかるとともに、テンサイの生産確保のために前年度同額の一千三百万円を計上いたしております。  以上のほか、耕種改善事業としては、輸出振興の一翼として、特殊農作物及び園芸農作物の生産確保改善経費として二千四百万円(前年度三千百万円)を計上いたしております。  第三に、畜産振興経費につき御説明申し上げます。まず家畜の導入についてでありますが、集約酪農地区の設定につきましては二億円(前年度二億三千四百万円)を計上し、継続四地区のほか、新規二地区を加え、計六地区に千八百頭のジャージー種乳牛を導入することといたしております。また品種改良のための種畜購入費として二千三百万円(前年度六千九百万円)、同じく補助として三千五百万円(前年度四千九百万円)を計上いたしますとともに、有畜農家創設資金利子補給に必要な経費として二億九千三百万円(前年度二億五千万円)を計上しておりますが、これにより本年度約九億八千万円の融資が行われるものと考えております。  次に、自給飼料対策でもりますが、まず牧野改良対策として、草地改良に一億五千三百万円(前年度一億二千五百万円)、牧野改良センターに四千四百万円(前年度四千二百万円)、北海道に補助として八百万円(前年度千二百万円)を計上いたし、牧野改良事業の機械化を急速に推進することといたしましたほか、自給飼料増産のため、飼料自給経営施設補助として、前年度と同額の一千五百万円を計上しております。  また畜産技術の振興をはかるため、畜産技術振興補助として新規に二千万円を計上いたしましたが、これは全国及び県における畜産共進会及び畜産技術講習会の経費等内容とするものであります。  さらに第四といたしまして、蚕糸業の振興に要する経費についてであります。生糸の輸出増進のため昨年設置されました中央蚕糸協会ニューヨーク事務所における宣伝事業費を七千万円(前年度五千万円)に増額いたしますとともに、国内における原料繭の合理的増産と生産費低減の措置として、従来の経営改善特別指導施設費補助として六千五百万円(前年度六千七百万円)、老朽桑園の改植の推進目的とする桑園能率増進施設に対する補助として六千二百万円を新規に計上いたしましたほか、蚕糸の技術改良関係の経費として二億三千七百万円(前年度二億三千七百万円)を計上いたしております。  第五といたしまして、農畜水産物等、並びに生産資材の流通改善及び価格安定に関する経費について御説明申し上げます。  農林漁業の経営の安定と所得確保をはかりますためには、農畜水産物等の価格安定、生産費の低下をはかることが何よりも急務であることはいうまでもないところでございます。  これらに関する予算措置といたしましては、まず化学肥料につきましては、一般会計におきまして臨時肥料需給安定法に基き、まず需給調整のための肥料保管措置による欠損補てんの経費、及び肥料市況調査等経費として一億四千五百万円(前年度六百万円)を計上し、購入飼料につきましては、食糧管理特別会計において、海外の市況調査費として百万円を計上いたしましたほか、同会計におきまして輸入飼料の売買操作により、需給及び価格の安定をはかることといたし、そのために要する欠損額約四億四千万円を負担することとなっています。  また生鮮食品流通改善の対策としまして、生鮮食料品の取引を公正にし、生産者及び消費者の利益を増進するための流通施設の新増設の経費補助として、一般会計において一億円を計上いたしました。  砂糖につきましては、特殊物資納付金処理特別会計大蔵省所管で設置され、農林省その他関係省において所要の施策を講じたいと考えておりますので、一般会計におきまして、その適正な標準価格を設定するための調査費(四十五万六千円)を計上いたし、関係措置に資することとした次第であります。  また牛乳乳製品につきましても、現在の需給事情の改善に資することは緊要と認めまして、一般会計において農業協同組合に簡易な牛乳処理施設の設置を助成することとし、その経費を二千二百万円計上いたし、廉価な牛乳の供給と消費の拡大をはかることといたしておりますほか、今般国内産脱脂粉乳が学童給食に使用されることとなり、その購入費補助として六千六百万円を計上いたし、この面からも消費の促進に資したいと存じております。  第六に、農林漁業関係の団体の経費について御説明申し上げます。まず農業委員会関係につきましては、全国農業会議所、都道府県農業会議に対する事業活動促進に必要な助成を前年に引き続き行うことといたし、五千万円(前年度四千二百万円)を計上しておりますが、市町村農業委員会費補助につきましては、本年度からは、職員二人の担当する業務のうち、二分の一人分の事務に相当するものに対し補助することとし、残り一・五人分については、地方財源計算に組み入れることといたしました。これによりまして、前年度二十四億一千六百万円に対し十億一千三百万円に縮小をいたしております。  次に、農業協同組合につきましては、同中央会の事業活動促進補助五千万円(前年度二千万円)を要求いたしますとともに、農林漁業組合の検査指導につきましては九千七百万円(前年度九千九百万円)を要求いたし、その監督に遺憾なきを期しております。またそれらの組合に対する増資、奨励金等に充てるため四億五千七百万円(前年度四億六千六百万円)を要求いたし、その再建整備を促進するとともに、調整勘定益金を見返りとしまして、農業協同組合役職員奨学資金としまして七千万円、全国養蚕農業協同組合信用保証協会基金補助としまして三千二百万円を要求いたしております。  右のほか、沿岸並びに内水面の漁業調整委員会に要する経費といたしましては、ほぼ前年同額の一億一千七百万円を計上いたし、また養蚕技術員に対する補助金もおおむね前年度に準ずる一億一千八百万円を計上いたしました。  第七には、農業災害補償関係の経費でおります。  農業災害補償制度につきましては、前年度以来農業災害補償制度協議会を設けて制度改善につき検討いたして参りましたが、いまだ全面的結論を得るに至らず、また一部中間答申がありましたが、これについても実施上なお研究と準備を要しますので、三十年度は現行制度に即した形で予算を編成いたすとともに、現行制度につきましては、その運用と指導面においてできる限りの考慮を払うことといたしたく存じております。この関係予算は総額百四十五億八千五百万円(前年度百七十二億二千四百万円)を計上しております。  このうち農業共済再保険特別会計繰入分としては、水稲、陸稲、麦、蚕繭、家畜の保険料国庫負担分及び業務取扱費として九十二億八千七百万円(前年度七十九億九千百万円)を、同特別会計再保険金支払い財源不足補てん金として二十八億円(前年度六十七億円)を計上いたしました。なお以上のほか、農業共済事業事務費負担金として二十三億一千百万円(前年度二十三億八千万円)を要求いたしております。  第八には農林漁業における財政投融資と営農資金等の利子補給関係経費について申し上げます。  まず農林漁業金融公庫でありますが、一般会計の出資九十五億円(前年度同額)、資金運用部からの借入金百五億円(前年度同額)に償還金五十五億円(前年度計画二十五億円実績五十二億円)を加えて二百五十五億円を確保し、従来に引き続き土地改良、林業漁業並びに農林畜水産共同利用施設等に対する融資を行うほか、自作農の維持創設に資するため、新たに農地担保金融の道を開き、本年度はさしあたり右のワク内において二十億円を充てることとし、将来の拡充を期することといたしたのであります。  特別会計による農林省関係の政府融資ないし融資保証の制度としましては、開拓者資金融通及び中小漁業融資保証保険の両特別会計があることは御承知の通りでありますが、開拓者資金融通特別会計の融資予定額としては十四億五千九百万円を計上いたし、また中小漁業融資保証保険特別会計においては年間百五十億円の保証を予定しております。  一般会計による利子補給金といたしましては、昭和二十八年及び二十九年発生災害被害農家に対する営農資金利子補給、十勝沖地震による農業施設災害復旧資金に対する利子補給並びに水産関係のルース台風、十勝沖地震、カムチャッカ沖地震等による漁業災害及び昭和二十九年発生漁業災害に対する復旧資金の利子補給等を含めて十八億九千二百万円(前年度十八億四千万円)を計上いたしましたほか、有畜農家創設資金利子補給につきましては、さきに述べた通りでございます。  第九といたしまして、林業振興のための経費について御説明申し上げます。  まず山林公共事業費につきましては、治山事業に四十四億五千九百万円(前年度四十六億六千二百万円)、造林事業に三十億八千四百万円(前年度三十三億二千九百万円)、林道事業に十六億五千六百万円(前年度十七億三千六百万円)計上いたしましたが、治山事業の中では、新たに水源林造成補助事業長期計画的に拡充実施することといたし、本年度は前年度三億一千四百万円に対し、約二倍である六億二百万円を計上いたしております。  またこれに関連しましては、国有林野事業特別会計におきまして、公有林野の官行造林事業を大いに拡充し、特にその中で水源林の造成に重点を置くことにいたしました。この両者をあわせて水源林造成事業強化の初年度といたしたいのであります。  一般民有林対策としましては、森林計画に五億四千六百万円(前年度五億七千九百万円)、保安林整備計画実施に三千六百万円(前年度三千四百万円)、森林病害虫防除に二億三千七百万円(前年度二億四千百万円)、林業改良普及に一億四百万円(前年度九千八百万円)等を計上いたしております。  第十といたしまして、水産業振興経費につき御説明申し上げます。水産業振興のためには、沿岸及び沖合いにおける資源枯渇の傾向にある現状にかんがみまして、従来の水産増殖事業を継続するほか、海外漁場への発展、新漁場の開発に特段の努力を払うことにいたしております。  水産資源の増殖につきましては、一億二千万円(前年度一億三千四百万円)を計上いたし、前年に引き続き内水面における種苗生産及び放流施設、貝類増殖、浅海増殖を実施いたす方針であります。  新漁場の開発につきましては、沿岸及び沖合いにおけるものに対し新規に一千万円、インド洋開発のため一千五百万円(前年度三百万円)、アルゼンチン沖合いにおける調査開発のために新規三千万円を計上いたしております。  また漁業取締り関係につきましては、北洋関係一億百万円(前年度九千八百万円)、太平洋及び東支那海関係一億八千四百万円(別年度二億九百万円)、沖合い関係八千七百万円(前年度八千八百万円)を計上いたしております。また新規国際関係の調査取締りとして生物調査、アラフラ海白蝶貝採取取締り等のため三千七百万円(前年度七百万円)を計上いたしておりますほか、漁場開発調査のため官船一隻(五〇〇屯)の建造費一億八千万円を計上いたしております。  次に、漁港施設の拡充につきまして、既着工地区の早期完成をはかることに重点を置き、十八億三千九百万円(前年度十八億四千万円)を要求いたしております。  第十一として農地、林野、漁港関係の災害復旧費について申し上げます。農地及び農業公共施設の災害復旧に百二十七億七千六百万円(前年度百六十七億六千万円)、治山施設及び林道の災害復旧に七億三千百万円(前年度九億八千五百万円)、漁港の災害復旧に十三億二千六百万円(前年度十五億二千四百万円)、合計百四十八億三千三百万円を計上いたしましたが、前年度百九十二億六千九百万円に比し四十四億三千六百万円の減少となっております。もっとも前年度予算には、補正予算で計上された当年度分の災害旧復費十七億九千百万円が含まれておりますので、これを差し引きますと、減少額は二十六億四千五百万円となるわけであります。  本年度におきましては、これによりまして、二十七年以前の災害につきましては残事業量の三分の一を完了し、二十八年災害につきましては総事業量の六五%、二十九年災害につきまして同じく五五%まで完了いたすことを目途としておるのでございます。  以上をもちまして農林省関係一般会計における主要な経費についての御説明を終ります。  引き続いて昭和三十年度の農林関係特別会計予算について御説明いたします。  第一に食糧管理特別会計について申し上げます。この会計の歳入、歳出ともに七千二百四十五億九千七百万円(前年度七千百四十九億六千三百万円)となっております。  米穀の管理制度につきましては、先般の米穀懇談会の答申の趣旨を極力尊重しまして、三十年産米については、集荷制度を新たな事前売り渡し申込み制に切りかえることといたしまして、その集荷数量は二十九年産米の集荷予定数量と同量の二千三百五十万石と予定し、来米穀年度におきましても本年度程度の配給量を確保する計画となっております。  国内産麦については、ほぼ二十九年産買い入れ実績程度の数量の買い上げを予定しております。  輸入食糧につきましては、配給外米の品質の向上に留意することといたし、準内地米の輸入数量を増加することとし、小麦も若干輸入量を増加して、内地食糧の不足を補うことといたしました。  生産者価格について申し上げますと、米につきましては、米価審議会の専門委員会におきまして算定方式その他を検討いたしておりますので、予算上の価格としては一応前年産米の生産者価格決定時における想定農家平均手取り価格を計上し、麦につきましては、予算上の価格として前年産の価格を計上いたしております。  また消費者価格及び政府売り渡し価格につきましても、予算上ば米麦ともに現行通りの価格で算定することといたしました。  食生活改善のための学童給食用小麦の廉価払い下げに伴う損失補償金として十六億九千三百万円及び前年度の風水害、冷害による被害農家に対する飯用米麦の特別価格払い下げに伴う損失補てん分として一億二千万円(前年度五億九千六百万円)を一般会計より繰り入れることといたしております。  米麦以外の農産物等につきましても、前年に引き続き、澱粉、テンサイ糖、カンショ、生切干、菜種、飼料の買い入れ費を計上し、農産物等の価格の安定及び農家所得の確定をはかる措置を講じたいと考えております。  第二、農業共済再保険特別会計について申し上げます。この会計の各勘定を通じまして、歳入、歳出はともに百四十六億六千二百万円(前年度百七十三億八百万円)となっております。このうちまず農業勘定でありますが、三十年度特別会計予算では、前年度の同会計予算に比べまして、予算算定上の米の基本価格と繭の推定価格が変更いたしました。その結果共済掛金の国庫負担額は増加を来たしております。また二十九年度の風水害、冷害によります再保険金支払い財源の不足補てん分として、さしあたり二十八億円を予定いたすこととし、この経費を含めまして百十四億二千二百万円(前年度百四十億三千九百万円)を一般会計より受入れることといたしております。  次に、家畜勘定につきましては、死亡、廃用事故と疾病傷害事故の共済掛金の国庫負担額につきましては、一応予算上におきましては前年度程度を予定いたし、五億七千四百万円(前年度五億五千五百万円)を一般会計より繰り入れることといたしております。  第三に森林火災保険特別会計につきましては、歳入、歳出ともに三億二千七百万円(前年度二億九千百万円)を予定いたしております。  第四、漁船再保険特別会計につき申し上げます。まず普通勘定につきましては、歳入、歳出ともに十二億六百万円(前年度九億七千六百万円)でございます。三十年度より新たにこの勘定におきまして搭載漁具の保険をも引き受ける道を開くことといたしました。  特殊保険勘定は歳入歳出ともに五億七千万円(前年度五億九千三百万円)を計上いたしております。  また給与保険勘定につきましては、特殊保険と同様の考えのもとに、保険事故が発生した場合の再保険金の財源として、資金運用部より三千五百万円の借り入れを予定し、歳入歳出とも六千五百万円を計上いたしております。  第五に自作農創設特別措置特別会計につき申し上げます。この会計の歳入歳出は二十五億五千八百万円でありまして、土地の買収につきましては、既墾地四千町歩、未墾地一万七千百町歩、牧野千五百町歩を、またその売り渡しにつきましては、既墾地六千町歩、未墾地四万九千町歩、牧野三千町歩を予定いたしております。  なお、従来この特別会計の余裕金によりまして、自作農維持のため農地の買収、売り渡しの方式による資金融通を行なっておりましたが、三十年度よりは農林漁業金融公庫において農地担保金融を行うこととし、その資金計画中に二十億円のワクを確保することといたしましたことは、さきに申し述べた通りでございます。  第六に開拓者資金融通特別会計につき申し上げます。この会計の歳入歳出は十七億三千八百万円(前年度十九億五千五百万円)でございます。三十年度は、新規入植者五千五百戸を予定いたしております。二十八、二十九年の入植者を含め、これらに対し営農資金及び共同施設資金として十億七千五百万円を貸し付けることといたしております。また営農促進対策資金のうち、乳牛の貸付につきましては、従来入植後五カ年以降の者に限っていたのでありますが、特に一年早め、入植後四年目の者に対しても融資いたすこととし、乳牛三千二百頭(前年度七百七十頭)、役畜四千八百頭(前年度五千五百頭)、計大家畜八千頭(前年度六千二百七十頭)を導入させるため三億八千四百万円を計上し、既入植者の安定をはかることといたしました。これら資金は、渡来一般会計よりの受け入れによりまかなっておりましたが、三十年度は、償還金と借入金によりこれをまかなうこととし、十億円を資金運用部より借り入れることといたしております。  第七に国有林野事業特別会計につき申し上げます。この会計の歳入歳出は四百七億八百万円(前年度三百五十四億一千万円)で、前年に比し増加いたしましたのは、主として二十九年度十五号台風等により北海道等に発生いたしました風倒木を、前年に引き続き処分いたすための歳入増でありまして、歳出におきましても、この処分に必要な諸施設の増強を行うと同時に、百行造林事業を強力に行うため、種苗養成費を含めて十億四千三百万円を予定いたしておりますこと等のため、増加いたしておるわけであります。また治山治水対策の重要なる一環として、前年に引き続き治山治水上重要なる地域における民有保安林を本会計をもって買い取り、これに対し治山工事を施行することとし、この経費三十一億七千六百万円を計上いたしております。  第八に糸価安定特別会計につきましては、歳入歳出ともに六十八億九千二百万円(前年度三十二億八千七百万円)を予定いたしております。生糸の価格は、現在のところ急激な変動はないかと思われますが、本特別会計予算におきましては、三十年度政府の買い入れは一応三万俵(前年度一万七千俵)とし、買上価格は一応十九万円と予定して算定いたし、買入費として五十七億円を計上することといたしたのであります。これは現状に即し、特に繭糸価格の安定措置を強化するために、この会計の現在保行する資金のみでは事態発生の際は買入費に不足を来たすおそれがありますので、別途糸価安定特別会計法を一部改正いたし、借入金の道を開くことを予定しております。  また蚕糸業の経営の安定をはかるため、繭価が異常に低落のおそれある場合には、養蚕農業協同組合連合会をして乾繭の共同保管をなさしめることといたしました。このために要する経費は、本特別会計の予備費より適時支出する方途を講じて参りたいと考えております。  第九、最後に中小漁業融資保証保険特別会計について申し上げます。この会計は二十七年度五億の基金で発足いたしましたが、二十八年、二十九年度ば保険金の支払い少く、基金は利子とともに繰り越されて参りました。三十年度は保証額を百五十億円、これに伴う保険金支払いは四億三千四百万円と推定いたしまして、歳入歳出ともに八億二百万円を予定いたしております。  以上をもちまして農林省関係の一般会計及び特別会計予算のおもな事項についての概要の御説明を終ります。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。     —————————————
  8. 重政誠之

    重政主査 次に、一般会計予算及び特別会計予算通商産業省所管について説明を求めます。島村政務次官
  9. 島村一郎

    ○島村政府委員 ただいま議題となっております通商産業省予算各案について御説明を申し上げます。  まず三十年度通商産業省所管一般会計予定経費要求額は七十四億四千百四十八万七千円でありまして、これを二十九年度総額六十七億七千九百六十四万二千円に比較いたしますと、六億六千百八十四万五千円の増額となるわけであります。  次に三十年度予定経費中重要なものについて御説明を申し上げますと、第一に貿易振興対策といたしまして総計八億九千七百七十三万九千円を計上いたしましたが、これを前年度予算額三億一千四十五万二千円と比較いたしますと、五億八千七百二十八万七千円の増額を見ております。  増額の重点は、わが国貿易商社等がいまだ弱体であり、従ってその海外における活動も十分とは申せない現状にかんがみ、海外市場の開拓と販路の拡張とをはかるため、主として海外貿易振興施設の充実をはかったものであります。  まずわが国商品の展示、紹介及び貿易あっせんを行う貿易斡旋所については、前年度に引き続き、既設のニューヨーク、サンフランシスコ及びカイロの三カ所を維持いたすとともに、その活動をさらに活発化せんといたすものであります。  次に、国際見本市参加等補助については、前年度の約三倍強の二億二千九百九十万三千円を計上し、カナダ、アメリカ、タイ、ビルマ等八カ所の見本市への参加及び即売会の実施予定いたすとともに、その規模、内容の強化充実をはかりたいと存じます。  次に、プラント輸出の促進対策といたしましては、現地における機械設計、技術相談等の便宜を供与する重機械技術相談室の活動を活発化するため、近くその機構を拡充強化いたし、従来の海外施設のほか、国内機構についても整備を行い、積極的な活用を期す所存であります。  海外市場を開拓し、わが国商品の販路の拡張をはかることは、輸出を振興するための根本でありますので、海外市場調査のため、前年度の二千八百九十三万八千円を約三倍増額いたし、七千五百七十九万八千円を計上いたしまして、海外における諸情報の迅速なる収集をはかるとともに、わが国商品及び産業経済の実態を海外へ紹介宣伝するための海外広報宣伝費を大幅に増額いたしまして、一億八千七百二十四万一千円を計上いたした次第であります。  さらにわが国中小企業製品が輸出に占める役割はきわめて重要でありますので、その輸出商品の品質の向上をはかるため、新たに三千八百万円を計上いたし、意匠の改善新規試作品の奨励等を活発に実施いたしたいと存じております。  その他、日本国際見本市補助、国際商事仲裁委員会補助等については、前年度に引き続きまして、それぞれほぼ同額を計上いたしました。  第二に資源開発対策であります。まず石油試堀費等補助については、最近における石油消費量の激増状況等をも考慮いたしますと、国産石油の開発増産をはかることがきわめて重要であると存じますので、前年度一億一千七百万円を約三倍の三億円と大幅に増額いたした次第でおります。  次に、砂鉄、磁硫化鉄鉱、銅、水銀等重要鉱物の生産維持をはかるための探鉱費補助については、前年度とほぼ同額の二千万円を計上いたしております。  第三に、技術振興対策でありますが、まず科学技術研究助成費については、五億四百万円を計上いたしましたが、別に株式会社科学研究所につきましては、わが国における綜合研究所としての同所の重要性にかんがみ、これを積極的に助成することが必要であると存じ、新たに一億円の国庫補助を行うことといたしております。  次に、原子力の平和的利用研究につきましては、前年度二億三千七百六十七万五千円が計上されたのでありますが、そのうち一億六千八百万円余は三十年度に繰り越し、使用せられることとなりましたので、これらの点をも考慮いたし、三十年度二億円を計上いたした次第であります。これにより、原子炉の構造及び重水の製造等の研究、ウラン鉱の探査を強力に推進いたしたいと存じます。  次に、発明実施化の重要性にかんがみ、従来の貸付金制度はこれを廃止して、補助金を相当程度増額いたしますとともに、新たに外国特許出願に対しても補助を行う道を開き、四百二十七万円余を計上いたしております。  また当省所属の試験研究機関については、それぞれの基礎的研究に必要な研究費のほか、特別のテーマにかかる特別研究費として、総計一億九千八百十五万円を計上いたし、これにより航空原動機及び機体、合成繊維、含チタン砂鉄、海水利用、電子技術等、わが国経済にとって喫緊の重要事項に関する研究の促進をはかる所存でございます。なお優秀なる国産機械の試作を促進するための工作機械等試作補助につきましては、三十年度におきましても九千二十五万円を計上いたしました。  第四に生産性向上対策であります。わが国産業生産性は、年々逐次向上しつつあるとは申しながら、これを諸外国に比較いたしますと、遺憾ながら相当の立ち遅れを示しておる現状であります。この立ち遅れを回復するためには、経営者の創意、工夫のみならず、従業者の積極的なる協力と国家的支援とが必要と存ずるのであります。従いまして、三十年度においては新たに五千万円を計上いたしたほか、財政投融資計画による一億五千万円の融資をもって、欧米先進諸国への視察団の派遣、技術専門家の招聘による先進技術の導入、普及をはかる等、わが国産業生産性をさらに向上せしめる措置を講ずる所存であります。  第五に、中小企業振興対策で断ります。まず中小企業に対する金融対策でありますが、中小企業金融公庫につきましては、一般会計よりの出資十五億円、資金運用部よりの借入金九十五億円、計百十億円のほか、回収金等の自己資金等百三十五億円を加えますと、運用資金総額は二百四十五億円と相なり、二十九年度における実行計画二百十五億円に比し、相当程度の増額となるわけであります。  さらに商工組合中央金庫につきましては、三十年度新たに一般会計よりの出資十億円を追加いたし、これにより商工債券の発行の基盤を強化するとともに、将来民間出資増額基礎を与え、もって中小企業に対する金融の円滑化をはかりたいと存じております。  なお、両金庫に対する一般会計よりの出資金は、形式上大蔵省所管に計上されてございます。  中小企業振興対策の第二は、中小企業協同組合等補助でありますが、これは前年度とほぼ同額の三億二千万円を計上し、引き続き中小企業の協同化並びに近代化を縦進いたす方針であります。  次に、中小企業相談所補助についてでありますが、中小企業にとりまして、懇切なる指導と、よき相談相手とが必要なことはいまさら申し述べるまでもないところであります。かかる見地から、各地にすでに中小企業相談所が設置せられ、相当の成果をおさめておる現状でありますが、より一層その機能を強化し、中小企業の要望にこたえるため、三十年度三千一百二十万円を計上いたした次第であります。  また都道府県に対する中小企業振興費補助については、前年度の約五割増に当る六千七百万円余を中小企業診断指導を中心として計上いたしており、さらに先年からの風水害に伴う小企業者に対する復旧資金利子補給につきましては、必要額一千五百七十四万円余を計上いたした次第であります。  なお中小企業の輸出振興補助につきましては、貿易振興対策のところですでに触れましたので、ここでは省略させていただきます。  次に、当省所管特別会計について、その歳入歳出予算大要を簡単に御説明申し上げます。  まずアルコール専売事業特別会計でございますが、三十年度の歳入予定額は三十一億六千四百十一万二千円、歳出予定額は二十七億五千二百八十三万九千円でありまして、資産、売掛金等の関係を加減しますと、三十年度の益金予定額は三億五千八百万余円となります。  なお、公共企業体等仲裁委員会の裁定にかかる地域給の改訂につきましては、裁定通り実施いたすことにしております。  第二に、輸出保険特別会計について御説明申し上げます。三十年度歳入歳出予定額は、ともに四十億八千八十五万四千円でありまして、歳入のおもなるものは、保険料収入四億三千三百二十九万五千円、資金運用収入一億四千八百五十万円、雑収入一億七千五百三十二万八千円、前年度剰余金三十三億二千三百七十二万一千円等であり、歳出のおもなるものは、支払い保険金六億三千十四万四千円、予備費三十四億二千六百三十六万円等であります。  第三に、中小企業信用保険特別会計について御説明申し上げます。  三十年度歳入歳出予定額は、ともに三十五億六千六百九十万二千円でありまして、歳入のおもなるものは、保険料収入四億三千九百六十二万六千円、資金運用収入一億八百万円、雑収入一億六千四百七十三万九千円、前年度剰余金二十八億五千四百五十三万七千円等であり、歳出のおもなるものは、支払い保険金五億六千六百七万二千円、予備費二十九億六千六百四十一万三千円等であります。先ほど中小企業振興対策について御説明申し上げましたが、右振興対策の一環としての本特別会計の運用といたしましては、保証保険及び融資保険の範囲の拡大、保険てん補率の引き上げを行うため所要の法律改正を実施いたしますとともに、それに伴う保険契約額の増加を予想いたしまして、保険契約限度の引き上げをはかっております。  第四に、特別鉱害復旧特別会計について御説明申し上げます。  本特別会計は、戦時中の石炭増産に伴う特別鉱害を復旧することを目的とするものでありまして、三十年度の歳入歳出予定額は、ともに八億一千一百三十七万六千円でありますが、歳入のおもなるものは、納付金収入六億六千六百四十一万円であり、歳出は、その大部分が鉱害復旧事業費であります。  なお、本特別会計のほか、鉱害復旧事業全般としては、国庫補助金十三億六千七百万円を建設、農林等の各主務省に計上し、総額約二十七億円に上る復旧事業量を予定し、鉱害地帯における失業対策にも万全を期しております。  以上をもちまして一般会計および特別会計予算の概要について御説明いたしましたが、この際当省関係の財政投融資計画について簡単に御説明いたしたいと存じます。  まず開発銀行でございますが、これに対する投融資額としては、自己資金を合せ前年度と同額の五百九十五億円を計上いたしまして、重要産業の合理化の促進と資源の開発及び自給度の向上に努めるとともに、その資金の運用に当っては、極力重点的効率的運用に留意いたしまして、投資効果の万全を期したいと存じております。  次に、輸出入銀行につきましては、プラント輸出の振興に必要な資金として、自己資金を合せ四百八億円を計上し、所要資金の円滑なる供給をはかっております。  次に、電源開発会社につきましては、電源開発促進のための所要資金として、自己資金を合せ三百一億円を計上し、電源開発計画の達成に努めたいと存ずる次第であります。  中小企業関係金融機関につきましては、すでに中小企業対策のところで触れましたので、ここでは省略させていただきます。  以上で、通商産業省所管一般会計及び特別会計予算の御説明を終りますが、なお御質問に応じて詳細に御説明申し上げたいと存じます。  何とぞよろしく御審議の上、可決せられんことをお願いいたします。
  10. 重政誠之

    重政主査 これにて本分科会所管全部について政府より説明を聴取いたしました。  午前中はこの程度にいたしまして、午後は一時半から経済審議庁外務省所管についての質疑を行いたいと思います。    午後零時十五分休憩      ————◇—————    午後一時五十三分開議
  11. 重政誠之

    重政主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  まず昭和三十年度一般会計予算中、経済審議庁所管についてこれより質疑を行います。質疑の通告がありますので、順次これを許します。小平忠君
  12. 小平忠

    小平(忠)分科員 経済審議庁長官に、経済審議庁所管に関します予算内容につきまして、若干お伺いをいたしたいと思うのであります。  第一点にお伺いいたしたいことは、当初経済審議庁が三十年度経済審議庁計画として大蔵省に予算要求をされました総額と、おもな項目についての要求額をちょっとお知らせいただきたいと思うのであります。
  13. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 数字に間違いがあると困りますから、政府委員より詳細なことを答えさせます。
  14. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 総額は約十五億でございますが、詳細につきましては、後ほど調べまして、資料によりましてお答えさせていただきたいと思います。
  15. 小平忠

    小平(忠)分科員 実は、私は次の御質問を申し上げる基本的な材料として、経済審議庁が当初大蔵省に要求せられた大体大きな費目についての金額を知りたかったのでありますが、後ほどでけっこうでございます。  そういたしますと、総額で十五億の要求をされたのに対して、大蔵省がこの国会に上程された査定額は三億四千七百七万六千円の歳出予算である。こういうように大幅な削減を受けた、問題は十五億の要求に対して三億、五分の一である、こういう結果に相なっておりますが、私は、これは現高碕長官が経済審議庁長官として就任せられて、その上で経済審議庁の構想を考えられまして、さらに予算の要求もされたと思うのでありますが、私が大臣にお伺いいたしたいことは、経済審議庁は、かつての安本時代のこともいろいろと検討をし、その後紆余曲折を経て、今日の経済審議庁に至ったということ、そこで最も重要なことは、わが国自立経済達成の基本的な問題を経済審議庁は扱っておるわけであります。そういう経済企画庁というような観点から、われわれ戦後にできた安本も総合経済企画庁というふうに考えておったわけであります。そこで大臣は、一体この経済審議庁を今後どのような形でこれを運用し、どういう性格と任務を持って推進いたしたいとお考えになりますか。
  16. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 今の御質問にお答えいたしますが、私は経済審議庁の任務というものは、非常に重要なものと考えております。どうしても国家の経済運営につきましては、計画性を持たせなければならぬものだ、こういうことを私は痛切に考えるわけでございます。特に今日の世界の情勢は、どの国でもほとんど経済計画性のないところはない、みな逐次この計画性を持ってやっておるわけでありますから、その計画性を持たすことは絶対に必要であります。しからばこの計画を遂行するためにどれだけの力を加えてやっていくかということは、そのときの政情に応じて変えなければならぬと思いますが、政府が考えております計画というものは、経済計画性を持たせて、できるだけ国民の意見を尊重し、そうして納得づくでやっていきたい、こういう考え方であります。それにいたしましても、現在経済審議庁がやっております調査というものはすこぶる不十分でありまして、計画経済の目標を立てる上においても、もっと各方面における適切な数字をとっていかなければならぬ。今やっておりますことは、六年後のかくあるべしというだけの形態は得ておりますが、これを実情に即していく上においては、過去の実績、現状における日本の経済状態というものを正確に把握し、そうして各部ごとにおける六カ年計画を立てるということにしていかなければほんとうの数字は出ない、こう思っておるわけでありまして、私は、これを実行するということになれば、経済審議庁予算も相当ふやしていただいて、人をふやしてやっていきたい、こういう所存でおるわけでありますけれども、今日の日本の状態が、全体から申しましてどうしても緊縮財政を持続していかなければならぬ、こういうときでありますから、やはり一ぺんに庁として大きな予算が通らないということも、これはやむを得ない、こういうようなことで、私はあきらめて、できるだけ現状に即したもので進んでいき、逐次国家の力が強くなり、財政の負担力がふえれば、経済審議庁の名前も企画庁に変えてもらい、そうして逐次これを増強していきたい、力をふやしていきたい、こういう所存でございます。
  17. 小平忠

    小平(忠)分科員 大臣の構想は、先般の予算の総括質問の際も承わっておるのでありまして、どうしてもこれを強化しなければならない。問題は、きょうは分科会でありまして、審議庁予算内容につきましても、具体的に説明を受けまして今伺うわけなのでありますが、ただいまの大臣のお考えからいきまして、一体このような予算で思うようなお仕事ができるとお思いになりますか。
  18. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 まあ程度の問題でございますが、私はこれだけの予算をちょうだいいたしまして、そうしてできるだけみなが努力して一つの方向に進んでいけば、この六カ年計画の初年度である三十年度、これの状態をよくながめまして、そうして逐次進めていきたい、これでさしあたりの仕事はやっていける、こう存じております。
  19. 小平忠

    小平(忠)分科員 閣僚の一人であられる関係上、やはり御答弁はそのような御答弁しか表明できないと思うのでありますが、高碕さんの御心境は、とてもこんなことではできない、結局この三億四千万の予算、これだけを与えられればこれだけの仕事しかできない、おそらくそうお考えになっていると思うわけでありますが、私は、今日日本がすみやかに自立経済を達成して、国際社会にあらゆる面で復帰をするというようなことの根本は、やはり何といっても国内の産業経済、文化、あらゆる面の実態を把握して、あくまでもこれを計画的に推進していく行き方をとらなければならないと思う。欧米の先進国の実例を見ましても、やはりこの調査というもの、計画というものに非常に重点を置いております。ですから、私は午前中にこの御説明をいただきまして、この程度のものならばほんとうにおざなりで、結局中途半端な計画しかできないというふうに考えるのであります。しかし一応国家財政の見地から、与党、政府である鳩山内閣がいろいろ相談をされて、このような原案を国会に提出されたわけであります。そこで私は、しからばこの範囲内でもって本年度は何に重点を置いておやりになるのか、一応ここには各種計画に基く審議会とか、その他の子算の計上もございます。長官は、本年度の最も重点的事業として何をお考えでございますか。
  20. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 いろいろな仕事がありますが、私はどうしても、この六カ年計画をどういうふうにすれば一番正しい数字が得られるか、これに重点を置きたいと思っております。それにいたしましても、私は、現在国富というものが十年間調べられていない、こういうふうなことは大きな間違いだと思って、これのごときも、今回ことに予算もふやしていただきまして、従前やっている仕事以外にやっていかなければならないということを考えておりまして、現状をいかに把握するかということが、この計画を立てる上に一番大事でございますから、現状を把握することに重点を置いていきたい、こう考えております。
  21. 小平忠

    小平(忠)分科員 私も、六カ年計画に重点を置いて、すみやかに現状を把握して、これを最も約確なものにしたいという御意見に賛成であります。そういう面から、私は政府が具体的な総合経済六カ年計画を、構想や大綱でなくて、すみやかに確立していただきたいと思います。そのために要求されておる予算はどれだけかというと、結局三百六十八万六千円、これも使い方によって御苦心されることであろうと思うのでありますが、私は場合によるならば、この予算で少ければ、財政法において許される予算の流用というようなことも考慮の上で、すみやかにこれを確立していただきたい。同時に私はこの機会に、六カ年計画の問題が出たので、お聞きしたいのでありますが、予算委員会に出た資料によると、総合経済六カ年計画の構想というのが一月の十八日の閣議了解事項で出され、その後四月十九日に、総合経済六カ年計画の大綱というのを閣議で決定されておるわけでありますが、その四月十九日の大綱決定後、さらに具体的な内容を閣議で決定され、あるいは決定されなくても、経済審議庁として何かおきめになったり、あるいは作成されたものがございましょうか。
  22. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまやっておりますことは、二十九年度、三十年度、それから三十二年度はありますが、三十一年度を三十二年度にどういうふうに渡りをつけるか、この数字をできるだけ正確にやろうじゃないかというて、一生懸命に研究しておるわけなんですが、困った問題は、根本の問題がだいぶ狂ってくるのです。たとえば人口なんというのは、われわれはそう考えていなかったものが、急に十万ふえる。どうしてふえるのだと思って調べてみますと、今度奄美大島が合併した。これで人口の統計が根本的に狂ってくる。そうかと思いますと、一方、大体が労働力というもの、つまり十四才以上の人口の六七%何分というのを、三十二年度は六六%に下げようじゃないか、三十五年は六五%に下げよう、順次アメリカのような工合に、学校に行く人もあるし、働かなくても済む人もあるから逐次、国民生活を向上せしめる意味においてこれを下げていきたい、こういうふうに考えておったのでありますけれども、今度審議会を開きましたら、皆さんの意見は、日本の現状はそんなことではいかぬ、どうしてもこれは六七という数字を変えちゃいかぬ——六七・四になっておりますか、六七・四という数字を持っていけ。こういうふうなことになりまして、そういう意味から、初めに立てておりますもの、つまり一月の閣議で決定いたしたものとはだいぶまた変ってくるのです。  そういうふうな意味で、そういうふうな研究こそ一番大事だと思っておりまして、閣議の意見をお聞きしておったようなわけであります。
  23. 小平忠

    小平(忠)分科員 お考え方は、非常に大臣率直でけっこうなんですが、やはり何といってもそういう問題を早急に計画を立ててもらうことが、国の政治を一日も早く軌道に乗せて、国民の生活安定のために努力するという方向に参ると思うのでありますが、そういたしますと、四月十九日の閣議で決定されました大綱以外には、具体的におきめになったことはないのでございますか。
  24. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 まだ閣議で決定するまでにはいきませんが、逐次数字はまとめております。
  25. 小平忠

    小平(忠)分科員 現在まとまっている数字はございませんでしょうか。いただけるようなものはないでしょうか。
  26. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 まだ全体としてのまとまりかついておりませんから——部分部分には、人口はどうだというようなことは何でございますが、まとめてから、なるべく早くごらんに入れたいと思います。
  27. 小平忠

    小平(忠)分科員 いつころまでにまとまりまして、いただけるか、その見通しをお聞かせいただくことが一点。  次に、四月十九日に閣議決定されておりまする大綱の中で、ただいま大臣は人口問題に触れられたのでありますが、これは非常に大事な事項でありますので、この際具体的に内容を承わっておきたいと思うのでありますが、四月十九日閣議決定の総合経済六カ年計画の大綱でありますが、人口の増加のところで、二十八年度の八千七百七万人に対して、二十九年度は八千八百三十四万人となっておりまして、百二十七万人の増加となっております。ところが三十年度は八千九百三十七万人で、二十九年度八千八百三十四万人に比較いたしますと百三万人の増となり、前年の増加数に比較いたしますと、二十四万人減少しているというようになっておるわけであります。三十年度は昨年から急に二十四万人増加数が減るというような数字は、一体どういう根拠でこういうようなことになったのでございましょうか。具体的にいろいろ計画を立てておられると思うのでありますが、私はあとで外務省に対しまして、移民政策などについても予算の上から具体的にお伺いしたいと思っておりますが、人口問題は非常に大事なことであろうと思うので、お聞かせ願いたいと思う。
  28. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 数字の問題でありますから、その基礎につきまして政府委員からお答えいたさせます。
  29. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 二十八年につきましては、実績——実績と申しましても、もちろん推定が入るわけでありますが、三十年につきましては、最近内閣の統計局で人口の推定をしておられますそれを基礎にいたしまして、三十年度の推計をいたしたわけであります。
  30. 小平忠

    小平(忠)分科員 それでは二十四万人昨年より減るという理由がわからない。この理由を聞きたいのです。
  31. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 ただいま手元に今御指摘の人口の増加数が減っておる資料を持ち合せておりませんので、調べまして、できるだけ早くお答えをいたしたいと思います。
  32. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまの御質問は非常に重要な問題だと存じます。白状いたしますと、これは内閣の統計局のものをそのままとっておるわけでありますから、そういう点について、私自身はそのままうのみにしておりましたわけでありますから、自分でよく勉強してお答えいたします。
  33. 小平忠

    小平(忠)分科員 長官がきわめて率直な御答弁でありますので、これ以上追及いたそうとは思いません。
  34. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 今の総人口の増減の問題でございますが、これは御承知のように、出生率と死亡率の差を引きまして、いわゆる自然増というものを出して、これで計算しておるわけでございますが、統計局でやっておりますのは、五年間ごとにやっておりまして、毎年は実はやっておらぬのでありますから、おのずからこの間に推定が入るわけでございますけれども、今までの持っております数字をお話し申し上げますと、これは千人について何人というように出す数字でございますが、二十八年は出生が二一・四、死亡が八・九、二十九年は出生が二〇・四〇、死亡が六・四〇、三十年は出生が一八・六〇、死亡が六・六〇、その差を引いて参りますと、二十八年は一二・五、二十九年は一四、三十年は一二、こういうふうに減っております。なぜこんなに減るのかというという御質問でございましたが、この減る原因は、この表でもわかりますように、出生の方が非常に減って参りまして、死亡の方は逆に率が上っております。言いかえますと、生まれる方が減って死ぬのが減らない。ですから、人口がだんだん老齢になっていくような感じがいたします。それではなぜ出生がふえないのかと申しますと、これは、いわゆる積極的な家族計画というものは今まで——本年度から予算がつきまして進めるわけでございますけれども、今までは政府が意識的に家族計画というものをやっておらないわけでございますが、それにいたしましても、やはり相当な人口調節というものは自然に行われておりまして、特に都市などでは相当程度行われております。農村まで合せて、六割から七割ぐらいは自然人口調節が行われておるわけでございまして、これから意識的に家族計画を進められるにしても、ことしくらいの歩みを見ますと、大体こういう歩みになっておるわけでございますので、これを総人口にかけてみますと、さっき小平委員の御指摘のような数字になるわけでございます。
  35. 小平忠

    小平(忠)分科員 ただいまの説明でも了解できない。二十八年が出生が二一・四、死亡が八・九、二十九年が出生が二〇・四、死亡が六・四、三十年が出生が一八・六、死亡が六・六、こういう形になって減少率が二十八年が一二・五、二十九年が一四・〇、三十年が一二・〇、こういう減少率からいうと、安本でお作りになりましたこの表で、二十八年は八千七百七万人、二十九年は八千八百三十四万人三十年は八千九百三十七万人という数字になっております。その数字で二十八年と二十九年の開きが百二十七万人、それから二十九年と三十年の開きは今度は百三万人にがた落ちしている。一挙に二十四万人も減っているわけです。この率からいって七、二十四万人減るという数字にならないので、私は実際問題としまして、二十八年から二十九年に百二十七万人の増加をした。ことしはこれを一挙に百三万人に減らすのだという計画ば、これは三十年度末のことですから計画なんです。これは現在厚生省がやっておりますところの、すなわち産児調節あるいは移民政策——移民だって三十年度に六千人です。ですから、こういう数字からいって、私はこういう表は出てこないと思うのであります。だから内閣のそういった統計の立て方は、現実とあまりに離れ過ぎるのではなかろうか、こういうように思うのですがいかがなものでございましょうか。
  36. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 先ほど申し上げましたように、家族計画をかりに組織的にと申しますか、国の政策としてやって参りますと、三十五年までに百五十万人、年間大体三十万人ぐらいは出生率を減らし得るという見通しでございますが、しかしこの三十年の数字に限りましては、まだこれを大きくは打ち出しておりません。従ってこれを織り込んでこういうふうに減ったとば見ていないのでございますけれども、しかしただいまのお話であまり減り方がひどいのではなかろうか、どうも自然減というだけではちょっと理解できないというような御説明でございますので、場合によりましたら私はもう少しお調べしまして、その点、今度の家族計画など盛り込んだ数字かどうか、御報告申し上げたいと思います。
  37. 小平忠

    小平(忠)分科員 ただいまの御答弁で私は大体了解いたします。ということは、これは十分に検討していただきたいと思うのです。この割合で減らしていくのだったら、六カ年後においては、人口問題はもう問題ないのです。こんなに減るものではないのです。結局、今度は逆に一年間に二十四万人も減ってくる。ですから私は、この人口問題解決ということは、わが国の食糧問題の解決と同様にきわめて重要な問題だろうと思いますので、これは十分に検討なさいまして——やはり移民政策、あるいは土地改良、開拓等によって新たに入植をするとか、いろいろな関係からこれは非常に重要な問題であろうと思いますので、すみやかに再検討の上、的確なる計画を立てられたいと思うのであります。  次に、この六カ年計画推進をはかるために、三百六十八万六千円の要求をされておりますが、先ほど申し上げましたように、この予算の使い方は、何といってもすみやかにやることであって、本来からいうならば、この国会の審議中にもある程度の計画を立てて御提示願えれば、われわれも国会の予算審議、あるいは法案審議の上に非常に役に立つのではなかろうかと思うのです。  しかし私が次にお伺いいたしたいことは、現在の経済審議庁の陣容であります。現在こういう計画のために専念でき得るところの職員の配置とか陣容は、一体どのようになっておりましょうか。
  38. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 現在三百七十人くらいおります。その配置等につきましては、政府委員から御説明申し上げます。
  39. 石原武夫

    ○石原(武)政府委員 お答えいたします。御承知のように、経済審議庁は総務部、調整部、計画部、それから調査部と四部にわかれております。そのうち総務部に百五人、調整部が六十二人、計画部が百四人、調査部が百七人、合計いたしまして三百七十八人おります。
  40. 小平忠

    小平(忠)分科員 これは従来の安本時代から見ますと、いろいろ検討なり批判の余地はあろうかと思うのであります。私は見方によっては、まず人が少いという見方も成り立つのではなかろうかと思いますし、また反面に、物事を重点的にやる場合においては、決して少いとは言えない、こういうふうにも考えます。しかし従来の官庁機構から言いますと、所管外の事務に——これは戦時体制とか非常体制ならいざ知らず、平時においてあまり所管外のことまで協力するなどということは、なかなかできない問題であるというようなことから、経済審議庁が実際にこの六カ年計画をすみやかに立てて、これを的確な計画として発表するというお考えにおいては、ある程度人も必要じゃなかろうか。ですから私は大臣において、現在の三百七十八人を最も有効適切に——ただいま大臣がおっしゃられたように、本年度の重点は、まず総合経済六カ年計画を早く立てるのだという、そういう場合において、この三百七十八名の範囲内で、別に配置転換というような必要はないでありましょうが、この人によって有効にやり得る御自信があるのか、根本的にこれではとてもできないのだ、足らないのだというお考えでございましょうか、そのことについてお聞かせ願いたいと思います。
  41. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 私はこれを重点的に配置をかえてやっていけば、現状において相当仕事ができると思っております。ただ審議庁には差し迫った問題が起るわけでございまして、あるいは各省間の連絡も——審議庁はまるで各省の苦情を解決するというふうな問題がたくさん起ってくるものでございますから、そういうもので多少手をとられるようでありますから、それは別において、重点的にいけば、私はこれは逐次相当の仕事ができると存じております。
  42. 小平忠

    小平(忠)分科員 私は、問題はそこにあろうと思うのであります。本日は、別にあまり掘り下げた根本問題までもお伺いしようとは思っていない。すなわち経済審議庁が本年度予算三億四千七百七万六千円を要求いたしておりますこの予算の範囲内で、今考えておりますような事業実施に支障があるかないかという根本問題について、私は聞きたかった。今問題になりました点は、長官として、現在の三百七十八名の定員をもってして、この人を重点的に有効に動かすならばできるのだというお考え方を聞いて、私もその点は同感であります。しかしながら、その次におっしゃられたように、各省からの要求があって、臨時にこれこれこういう要求があって、これをやってくれ、あるいは各省間の調整の役割をやってくれと言われるということ、これは安本時代からずっと継続されている問題なんです。そういう雑用に追われておったのでは、経済審議庁の任務を果すことができない。大臣は次回の閣議にでもはかって、経審へ何でもかでも持ち込むなと言うべきだと思う。今大事な経済総合六カ年計画とか、さらにここにありますところの国土開発計画とか、もうたくさんあるのです。経済審議庁がやります仕事は非常に多いと思う。こういうことはその雑用の面と切り離して、従来の慣例から断ち切って、そうして固定的にこの計画を立てるという方向にみっちり専念できる体制を大臣に作っていただく、これが経済審議庁の今日置かれた一番大事な任務でなかろうかと思うのであります。  以上の諸点を特に長官にお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  43. 重政誠之

    重政主査 小中君の質疑に関連して質問の御要求があります。これを許します。北澤直吉君。
  44. 北澤直吉

    北澤分科員 経済六カ年計画について簡単に伺いたいのです。ソ連や中共やアメリカのように、国の経済が外国に依存する度の少い国におきましては、そういう長期の計画も立ちゃすいと思うのでありますが、日本のように外国に依存することが非常に多い場合には、世界の情勢の変化に国内の経済が非常に影響を受けるわけであります。従って、日本のような国でそういう長期の経済計画を立てるにつきましては、ソ連やアメリカに比べて非常にやりにくい点が多いのじゃないかと思いますが、そういう点について、日本のような国でも、一、二年はともかく、六年くらいにわたってそういう計画が立ち得るものでありますか、ちょっと伺っておきたい。
  45. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お説のごとく、自給自足をし得る国と、日本のような工合に、海外の事情に非常に左右される国、つまり輸出入貿易によって国を立てる国とは、よほど計画の立て方が違って、自分の国がいかにやっておっても、外国の状態によって変るわけであります。特に現在のごとく、国際情勢がある点においては緊迫しておるとも言えますし、国際情勢の変化によっては非常な変化を来たす。そういうことでありますから、これは、どうしても自由にいつでも変えられるということでなければならぬ。そこで六年間における経済の一つの目安をつけて、六年後にはこうならなければならぬという目安をつけておりますが、その目安をつける前提条件としては、国際情勢は現状のまま続いていくのだ、物価は幾らか安くなる。世界各国がもっと輸出をどんどん増進することによって輸出競争が行われ、特需関係はなくなるものである。こういうふうなある一つの仮定を前提といたしましてこれをやっておるわけでありますから、この前提に狂いがくるということになれば、この計画は、そのときは一ぺんに変えなければならぬ。そこで、つまりこれは経済計画としてはっきり立てると、そこに非常に危険性がある。そこでよく経済のめどをつけておいて、毎年計画を立てて、実際に近いものを立てていく。こういう工合にいくわけでございますから、たとえていえば、富士山でも絶頂に上るという目安はつけておりますが、風のぐあいによってこっちに回る、あっちに回るという工合にしなければならぬように、これだけのことを考慮して運営していかなければならぬ。こういう所存でございまして、今御指摘のごとく、ソ連、中共、あるいはアメリカ等とは、よほどその点は違っておりまして、どちらかというと、イギリスの状態に相当似ておるわけであります。イギリスは、今日よほど困っておるわけであります。今まで植民地からとっておりましたが、これが得られないため、それが相当の参考になるだろうと思っております。
  46. 北澤直吉

    北澤分科員 今大臣からお話がありましたように、国際情勢の変化によって、六年計画というものもそれとにらみ合せていくということですが、御承知のように、来月いよいよ英米仏ソの四巨頭会談が行われまして、その結果今の世界の冷戦というものはどういうことになるかによって、たとえばアメリカあたりの国防費の支出がどうなるか、対外援助がどうなるかによって、世界の貿易に非常に大きな影響があると思う。そこでこの日本の六カ年計画も、貿易面から非常に影響を受けはしないか。六年計画によりますと、ことしは去年よりも輸出が大体五千万ドルふえて、十六億五千万ドル、三十二年度には十八億ドル幾らでしたか、そういうふうなことになって、その上で六年計画というものができておりますが、最近の日本の貿易の状況を見ておりますと、どうも政府の考えているような工合に進まないのじゃないか。ことしの輸出貿易額は大体去年と同じくらいいけばいい方じゃないか。特にオープン・アカウント地域、ドル地域に対する輸出もあまり思わしくないようであります。そういう点から申しますと、ことしの輸出貿易は、大体去年程度いけばいい方じゃないか。そうすると、三十二年度に十八億ドル幾らに進めるためには、よほどの努力を要するし、そういうふうな仮定のもとに六年計画を進めるということについては、よほど考えなければならぬと思うのでありますが、日本の貿易の見通しについての大臣のお考えを伺っておきたいと思います。結局その面から六カ年計画が崩れていきはしないと心配しておるのであります。
  47. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これは非常にむずかしい問題でございますが、私は中共との間にも相当話し合いもつき、またソ連との問も逐次緩和するものだ、こういうことを前提に置いております。それから東南アジア地域におきましても、賠償問題が解決すると同時に、相当これは前途がある、こういうふうな一つの考えを持っております。本年は昨年と比較いたしまして、その割に伸びないということは、昨年はああいうふうなデフレの政策によって投げ売りの傾向などもあり、異常に伸びたと思うのであります。しかしことしは、通産省あたりの見方では、十八億ドルやるんだ、こう言っておりますが、それは目安を大きく置くのはいいですが、大きく置くと、かえって輸入の方がふえてしまって、支出もふえることになるが、ことしは十六億五千万ドルには大体こぎつけていけるという目安を持っております。一年に億ドルずつふやしていきまして、三十二年には十八億八千万ドルということには、私は大きな無理はないと思う。これくらいできぬようじゃいかぬ。家業家あたりに聞きますと、これはあまり低いじゃないか、これをもっと大きくしろという意見が、審議会でも現在非常に多いのです。これを大きく置くということはいいようですが、大きく置くと、一方の支出の方で、これだけの金が入るものとして、使う方をそれに見合ってやられてしまっては困る。それで使う方を押える意味におきましても、あまり大きく立てなかったわけであります。私の個人の考えといたしましては、これができぬようなことなら、日本経済に立っていかない、こう思っております。私は必ずできるというふうに存じております。だから少し内輪目に見ているような気がいたします。
  48. 北澤直吉

    北澤分科員 もう一点だけ伺いますが、ただいまの大臣のお話では、日本の貿易の前途は非常に明るいようでありますが、先ほど申しましたように、世界情勢の変化によって、国際情勢の緊張の度がだんだん緩和していくようになりますれば、各国の国防支出も減り、アメリカの対外援助も減る。そうなると、世界的にドル不足になるというようなことになる。それから日本とイギリスの貿易を見ましても、今日本は非常に輸出超過になっている。そこでどうしても貿易のバランスをとるために、向うで輸入を制限するということになって参りますと——去年は特殊な状態で非常に伸びたわけであります。つまり日本国内において、特に輸出促進の措置をとったのでありますから、貿易の見通しというものは、私どもは悲観的かもしれませんが、どうも今大臣のお考えになっているようにはいかぬ、少し用心を要する、こう思うのであります。どうも政府などは、少し大きく見過ぎているのじゃないかと思いますが、ぜひその予定計画によって貿易増進をはかっていただきたいことを要望しておきます。
  49. 滝井義高

    滝井分科員 今の貿易の問題に関連するのですが、昭和三十二年度には十八億八千万ドルくらいの貿易の規模に持っていきたいという計画ですが、私は、これはやはり技術の問題に関連してくると思うのです。戦前は、日本においては財閥会社がありまして、長官も御存じのように、それぞれ研究所を持っておって、そしてその研究所で具体的にできたものを、少くとも工場実験まで出すことができた。ところが財閥解体後においては、資本の蓄積も少いし、それらの優秀な研究機関も持っていない。従って現在の日本の技術水準から考えるならば、昭和三十二年に十八億八千万ドル——昭和二十八年は十二億四千五百万ドルですから、少くともその五割増しになるのですが、そこまで持っていくには、よほどの科学技術の振興をやる以外にはないと思うのですが、大臣はただ腰だめ的に、昭和二十八年に比べて昭和三十二年は五割伸びるのだというような感じではなくして、何か具体的なお考えがあるのですか。私は日本の輸出が伸びるためには、科学技術が具体的に工業の面で実用化されてくる計画がなくてはならぬと思いますが、何かそういう技術上の面まで持たれて、その自信ある発言をされるのか、この点を第一にお伺いしたい。
  50. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。お説のごとく、これには科学、技術を適用していくということは非常に大事でありますが、特に私はケミストリーの方、日本のような資源の少ないところでございますから、逐次電力を開発して——電力は今高いのですが、これをできるだけ安くして、電力が安くなりますと、そこで化学を重点に置いてケミカル・インダストリーを発達せしめれば、これは相当輸出の前途があるものだ、こう考えております。それからもう一つは、機械あるいはプラント輸出は、これはまだ前途があると私は思っております。特に東南アジア、中南米という方面におきましては、これは工業移民と相関連してやっていく必要があるだろうと思っております。それには、ただ単純に機械を売るというだけでなくて、ある程度輸出入銀行の資金を融通せしめて、長期にある程度の投資もするというくらいの考えをもって、移民関係と輸出とを相関連して考えていけば、これは私はできると思っております。私の現在の考えでは、機械工業方面と化学工業という方面に相当の力を注いでいく必要があるだろう、こう存じております。  同時にもう一つ、やはり中小工業でありますけれども、現在行き悩んでおりますが、雑貨とか農水産物の加工品というものについては、やはり日本が独特の技術を持ち、それから手先の器用さがありますから、これにいい指導をしていって、そして中小工業者が一つにまとまる。今中小業者は、資本がないために必要以上のべらぼうな競争をしてしまって、かえって物を安くして売れないという実情がざらにあるわけですから、これについては、輸出の方法について指導をよくすれば、これはもっと伸びるだろう、こういうふうな感じでおりますから、私は輸出貿易の促進につきましては、この三つの点を考えていけば決して悲観することはない、こういうふうに、どちらかというと楽観論者でございます。
  51. 滝井義高

    滝井分科員 たとえば財閥会社にかつて試験研究所みたいなものがあって、それがたとい損をしてでも相当の研究をやって、具体的に工業化の試験をやった、こういうようなことが現在の日本には欠けておるわけです。そういう点の質問をしたのでありますが、その点をもう一回答えてもらいたいと思い印す。  それから化学工業、機械工業を興していかれる、こういうお言葉がございました。現在北九州にしても、阪神にしても、京浜にしても、私は日本の古いこういう工業地帯というものは、たとえば北九州の特定地域総合開発という問題が取り上げられておるように、すでに立地条件が再編成されなければならぬ状態がきておると思うのです。特に北九州にしても、もはや人口を現在以上に吸収するということはほとんど不可能な状態が出てきております。それはどういう面から出てきておるかというと、水の面から出てきている。工業用水、飲料用水が飽和点に達してきているということです。しかも日本の水源林が多く伐採されて水がない。あるにしても、きわめて遠距離から工業用水なり飲料用水を持ってこなければならないという事態です。こういうことから考えてみますと、もはや総合開発をやるといっても水の問題で行き詰まらざるを得ない。あるいは今大臣がおっしゃったように、たとえば九州で言えば、石炭は出る、石灰石は出る、従って石炭と石灰石とを結びつければここに合成繊維というものができて、日本が輸入で多くの外貨を食う綿花、羊毛というものが、合成繊維のナイロン、ビニロンによってかえられるという事態ははっきりしている。こういうはっきりした構想があるけれども、しからばこれを具体的に平坦地において工業化するということになると、水がない、あるいは電力が非常に高くついてくる、こういうことのために工業化が進捗しないという事態があるわけです。ここに工業技術の問題とともに、日本の産業が輸出面に向って伸び得ない具体的な水の問題が出てきておる。しかもこの水の問題は、古い伝統的な農村水利の関係にからまってきておる。たまたま水を見つけても、それがいわゆる灌漑用水としての水利権とからまって、これの解決が重大な難関に逢着する事態が起ってきておるということなんです。こういう一連の問題を考えてみると、集約的に、結果として現われたところは、日本の輸出貿易が非常な困難に直面しておるのではないかと思うのです。水の問題、それから工業実験の問題、こういうものについて、何か国が具体的にそういう工業実験の金でも出して奨励する方法があるのかどうか、こういう点について御所見を伺いたい。
  52. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 第一の工業実験ということについては、これは非常に重要な問題でありまして、戦前においては各会社がやっております以外に、政府自身も相当やっておったのであります。戦後この問題は等閑に付せられているようでありますが、現在においては、悪く言えばスズメの涙と言われるかもしれませんが、幾らかずつ補助金を出しておるようであります。しかしこれは徹底しないと私は思っております。輸出貿易振興していきます上におきましては、どうしても科学技術の振興ということと同時に、これの実験ということにつきましても、国としても予算の許す範囲において十分にやっていきたい、こういう考えであります。アメリカ等の例を見ましても、この間もいろいろ話を聞きますと、もうかる会社がみな人間をとっていってしまうわけで、日本もそういうふうにいけば非常にけっこうでありますが、そういう傾向がぼつぼつあるようであります。今よい会社では、研究所に相当金をかけるということは、戦後になってから各社を見てみますと大分考えられておるようでありますけれども、これはまだ十分であるとは考えておりません。ただいま御質問のような工合に、政府も逐次できるだけの奨励をいたしたい、こういう考えであります。  それから水の方の問題につきましては、九州の方は、八幡の方が水が足りないということも私いろいろ考えておるのでありまして、この河川の問題を解決するについて、現在までは水力電気ということを主体において考えられておりますが、これは大間違いだと思います。これは電力会社にまかすべきではなくて、河川というものは、水をどういうふうに高度に利用するかということから考え、洪水をどういうふうにして調節するかということから考えていかなければならぬわけで、どうしても電力会社に河川というもののやり方をまかせてはいけない。そこで、電源開発会社というものができましたが、電源というような電気の原料として水を考えてはいけない、この水というものは工業用水、飲料用水、あるいは農業灌漑用水というような面から総合的に考えなければならないということから、これを実行に移しつつあるわけであります。これは今後洪水調節の問題とからんで、この天然の水をもりと有効に使うように考えていきたい所存であります。最近には、原子力ができるようになるから、もう水力電気の開発なんかやめればよいじゃないかというような意見も大分強いようでありますが、どうもそんな考えを持っては困る。どうしてもこれは、水力電気だけではなくて、ただいま申しましたところの水の利用ということから考えていきたいという所存であります。
  53. 滝井義高

    滝井分科員 実は現実に足りないこの水をどうするかということなんです。水が余っておれば、その水そのものについていろいろ考えられると思います。現在の筑豊炭田の状態を考えても、遠賀川のごときは水が流れておらない。この筑豊炭田には約八十万の人が住んでおりますが、鉱害のために井戸が出なくなって、飲む水が全然ないという事態が起ってきておるわけです。従って、単に五市ばかりでなく、筑豊炭田も含めた北九州総合開発の地点において全然水がないということなのです。これでは工業の開発、立地条件の再編成というものは行おうとしても行えない。たとえば筑豊炭田ですでに石炭が老朽化しておる。そうしますと、この石炭資源というものは、燃料としてではなくて、原料として使われる形を作っていく、これならば石炭の寿命が延び得るわけです。原料として使うためには、どうしても石灰石と石炭とを結びつけなければならない、石炭と石灰石を結びつけるためには、水が仲立ちをする以外には工業化ができないのだが、その水がない。従って、北九州においては二百万以上の人口があそこに包含されておりますが、石炭が掘られた後においては、その行き場がなくなるという状態です。ここにおそらく北九州特定地域総合開発の意義があると私は思います。古い工業地帯というものをどういう工合に再編成していくか、水のないところをどういうふうにして水を与えて工業化していくかという問題なんです。こういうことは何も北九州だけではなくて、阪神においても、東京地帯においても、いずれ起ってくる問題だろうと私は思います。この点を一つもう少し明白にしていただきたいと思います。
  54. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 水がないとおっしゃるが、雨が相当にあると思いますので、雨をつかまえることを考えなければいけない。山の上の木をみんな切ってしまうから、どうしても治山治水ということを根本的に考えていけばできる問題だと思います。この北九州の問題につきましては、政府委員の方から大体の具体案を申し上げます。
  55. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 ただいまの工業用水の問題でございますが、実は全国総合開発計画がございまして、この中で特に鉱工業地帯の問題で一番問題になりますのは、おっしゃいますような工業用水の問題でございます。これは至るところで足らぬのが現実の姿でございます。古い都市が足らぬのみならず、新しくこれから工業都市として発展しつつあるところでも、たとえば千葉のようなところでも、あらゆるところが足りないのでありまして、これは根本問題として非常に大きな問題でなかろうかと考えております。東京にいたしましても、小河内だけでは足りなくて、今奥只見から持ってこまうという計画を立てておるくらいでございますので、非常な問題でございます。特にこの問題で一番困っておりますのは、お説のように北九州でございまして、冬場になりますと、工業用水がないために操業度を低めるというところまで現実に参っておるのでございまして、これには早急に緊急対策を講ずる必要があるのではなかろうかということで、御承知のように北九州地区特定地帯開発計画というものを、去年閣議決定していただきました。その主体は、主として工業用水の問題をどう解決するかという点と、トンネルが通った場合に国道をどうするかというのが一番大きな問題でございます。筑豊の問題もありますが、特に川の問題、水の問題が一番大きい問題でございます。何と申しましても、あの地区には、水が御承知のようにあまりございませんので、どうしても遠賀川、あるいは筑後川の上流を締めて、そうして水をためる以外に今のところ方法がないのではなかろうかというので、調査費を盛りまして調査の最中でございます。なお問題点は、非常に工業用水の値段が高くなるように今のところでは計算が出て参りますので、もう少し何とか工夫いたしまして、少くとも向うの工業地帯が立っていける程度にまで何かの形で安い工業用水を同時に確保する方法がありはしないかということで、せっかく今調査中でございます。いずれにいたしましても、調査というだけでは済まぬ段階に来ておりますので、何とか至急実施の段階まで急いで行きたいと考えておるわけであります。
  56. 滝井義高

    滝井分科員 今の御説明の通り、大臣これはなかなか北九州だけでなくて、古い日本の都市というものは、全部そういう形が現実に出て、行き詰まりが水の問題から来ておるのです。従って、それは結局水の問題ではなくして、日本の輸出の問題に必然的につながってきておる。こういう点でぜひ一つ御研究を願いたいと思います。  それからいま一つ最後に御質問いたしたい点は、人口問題でございます。日本の人口構成というものが欧米並みの状態が出てきたということなんでございます。すでにヨーロッパにおいては、平均寿命が七十才になりましたが、日本においても、昨年は女子の平均寿命は六十七才、男子六十三才か四才、平均六十五才くらいになってきておる。こういうように、日本の人口構成の中における老人人口の比重というものが非常に大きくなってきたということ、人口の図というものはヒョウタン型——ちょうど戦争のために中が細くなって、ヒョウタン型の人口図が出てきたということです。従ってこういう状態が出てくると、日本の職場における定年の問題が、現在内閣においても、たとえば公務員の定年制というものが論議されている。地方自治体に定年制をしこう、そうして何とか財政の赤字をカバーしょうという問題が出てきておりますが、こういうように官庁で定年制が論じられることは、即そのまま民間においても定年制の論議を巻き起す一つの原因になると思いますが、とにかく現在の日本の一般的な状態を見ると、大体五十五才くらいで退職になるわけです。そうしますと、五十五才まではまあ職場があるわけですが、退職した後、五十五才以上になりますと、もう職場がないという状態が出てくるわけなんです。今までならば人生五十年で、昭和十年くらいの日本の平均寿命というものは四十六、七才だったと思う。あれ以来急激に、ここ十二、三年の間に死亡が改善され、平均寿命が伸びてきている。いわゆる老人人口がふえてきた。それで、五十五才で定年が来ると、昨年厚生年金保険が改正されて、六十才にならなければ厚生年金はもらえないことになりましたが、そうしますと、平均寿命が六十五才になったというと、十年間のそこにブランクが出てくるわけです。従ってこの十年間を御老人方はどこかで生活のかてを求めなければ、少くとも厚生年金をもらうまでにも最低五年はある、こういう事態になってくると、老人人口を収容する職場というものが当然考えられなければならぬということなんです。こういうものに対する何かいい対策というものを考えておるかどうかということなんです。もしそういう政策を考えていないとするならば、日本の現在の社会保障的な厚生施設というものは、今後老人で充満をして、ここ数年を出ずして壊滅する状態が出てくるということは、火を見るよりも明らかなんです。現在すでに健康保険というものは、赤字の状態でどうにもならぬ状態が出てきておるのでございますが、これは、むしろそういう状態の中に一つの問題があると思う。この赤字の問題は、即そのまま国民健康保険に拡大してくるということは明らかなんです。こういう老人人口一現在の日本の医療費——私は医者なんだから、ちょっと専門的になりますが、今までの日本の医療費のつぎ込み方というものは、乳幼児の死亡とか青年の結核につぎ込んでおった。最近は老人に医療費をうんとつぎ込まなければならぬことになって、たとえば現在の死亡率の最高というものは、脳溢血みたいないわゆる中枢神経系統の血管の損傷なんです。その次は、老人におけるガン、胃ガンみたいなもの、その次は老衰なんです。第四番になっているのが結核、しかも結核の死亡は、青年が死亡するのではなく、壮年層にふえてきたということなんです。こういうように、日本のあらゆる状態が欧米並みの老人的な状態が非常に出てきたということなんです。従って国の雇用政策というようなものも、今後老人というものをどういう工合に国の生産力の面に寄与させるかということが、重要な国の経済施策の上に私は反映していかなければならぬ時代が来たと思うのですが、そういう点、大臣はどういう工合にお考えになっておるか。
  57. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これは私の全くの私見でございますが、こう考えているのです。いろいろ民間の事業会社等にやらしているのは、人生で働き盛りは幾らかというと、五十才なら五十才、そこで五十才までは月給を上げていくが、五十五才になったら首を切るというのは、はなはだ不都合だ。だからそのかわりに、五十才が最高とすれば、それから順次月給を下げていったらいいじゃないか、それで六十五才になって保険金をもらえれば、そのときはただでもいいじゃないか。こういう工合に、初め上っていって、五十才なら五十才からは下げていく、こういうことをやったらどうか、こういうことを私は実際において私の関係している事業で二つ、三つ実行いたしております。もう一つは、ある一つの事業会社を作って、定年になった人間だけを雇う、これはまた存外いいのです。現状におきましては、定年になって首切られた人間だけみな持ってくる、こういう仕事を小さいながらやっているわけです。実際上それがいい成績を得ているということがあります。これは私、国務大臣としてお答えするのでなくして、私の実験のお答えでございますから、そういうようなことをやはり政策的に相当織り込んでいく必要があるかとも思っております。なお政府委員の方からお答え申し上げます。
  58. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 従来の生産年令人口の計算の仕方は、御承知のように十四才以上六十五才以下ということになっておったのですが、今度の六カ年計画では、お説のような点もございますので、それをやめまして、十四才以上の人間は、老齢のいかんを問わず、全部就業を要するものだというように、老齢の方の制限は撤去いたしまして、そうしてこの人間は全部働いて国の生産力を高めるんだという建前で、国民総生産計画というものを作っております。しからば具体的な政策は、老人に対してはどういう政策をやるのかということがこれから問題でございますが、一応そういう老齢の人も働く、そうして働き得る場所はできるんだという建前で計画を組んでいるつもりでございます。
  59. 滝井義高

    滝井分科員 これで終りますが、実はそういう老人層というものが、主として潜在性の失業者の形になっていると思うのです。従って、これは今後国のこういう施策を考える上において、必然的に今後老人層の人口は急激に増大してくるわけですから、当然考えなければならない重要な、あるいは現在盲点になっているところだと思うのです。やはりこれは、施策の上に考えておらなければならない問題だと思うのです。具体的には、おそらく答弁は得られないと思いますので、研究課題として残しておいて、これで私は質問を終りたいと思います。
  60. 小平忠

    小平(忠)分科員 議事進行について。御承知のように、昨日の予算委員会の理事会で申し合せました通り、今朝から分科会に入っております。午前中の各省の説明に対して、この分科会は一体何人出席しておるか。各省が大臣以下各局長、関係の政府委員が勢ぞろいしておるこの現状からいって、あまりにもこの分科会は権威がないと思う。特に私は与党の方々に申し上げたいことは、ただいま二人お見えになっておりますけれども、ほとんど留守のことが大半であります。今日、明日にわたりますこの分科会審議の上においても、私はここに警告を発したい。どうぞ主査は暫時休憩をして、ほかの分科会主査とも連絡をされ、与党はもちろん、野党もこの分科会委員はすみやかに全部出席するように、お取り運び願いたいと思います。
  61. 重政誠之

    重政主査 今すぐ御発言の通り警告を発して集めますが、このままでしばらく待ちましょう。  福田昌子君。
  62. 福田昌子

    福田(昌)分科員 簡単にお尋ねいたします。濃縮ウランをいよいよお引き受けになるというようなことになりまして、いろいろ交渉に入られるようでございますが、それにつきまして特にお伺いしておきたいことは、こういう放射能物質を取り扱います場合におきましては、これに携わる労働者に対しまする非常な保護政策というものがなければ相当危険だと思うのでございますが、この労働者に対しまする保護政策としてどういうことをお考えになっておりますか。この点をお伺いしたいと思います。
  63. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これは、現在のところまだ交渉には至っておりませんが、非常に重大な問題でありますから、よほど慎重に考えなければならぬと思っておりますが、今度濃縮ウランが参りまするにつきましても、これはほんの実験用でありますから、現在では、アメリカにおいても各実験場等で持っておるようでありますが、しかし将来この問題は大きな問題になる基礎を作るものだと思いますから、この従業員に対する考え方につきまして、外国の例等もよく調べまして、特別の方針をとっていきたい、こういうようなことを着々今調べておるようなわけでございます。
  64. 福田昌子

    福田(昌)分科員 これからいろいろと外国の事情も研究され、また日本における科学的な検討もなされまして、労働者に対するいろいろ保護政策をお考えいただくということでございますから、私どももそうしていただきたいわけであります。  この放射能の被害状況につきまして、やはり日本といたしましては、こういった濃縮ウラン受け入れの問題を抜きにいたしましても、原爆を見舞われた国といたしまして、またビキニの灰の事件もございますし、特に放射能物質によりますところの被害というも  のに対しては、御研究もまたそれに対する処置も、万全を期せられる御所存がおありになると思うのでありますが、これに対してはどういう御対策をお考えになっておられるか、伺わせていただきたいと思います。
  65. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 日本は、放射能の被害を受けた唯一の民族でありまして、日本の研究が対外的にはよほど重きを置かれておる状態でありますが、さらにこの研究は、日本といたしましても十分いたしたいと思いますが、具体的の案につきましては、政府委員からお答えを申し上げます。
  66. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 放射性同位元素につきます被害の防止の問題でございますが、問題は二つあろうかと思います。放射能そのものを取り扱う個人に対する災害の防止の問題と、もう一つ大衆的な災害と申しますか、ビキニのような問題等にからむ被害の対策の問題でございますけれども、しかしいずれにいたしましても、現在日本にはこの被害防止に対する保護法規というものは何らないのでございまして、現状はどうしているかと申しますと、スタックの方で一応外国の例等を中心にして、こういう専門の方にお集まりを願って委員会を作っているのでございますが、その委員会で、各専門の方たちからいろいろ御意見をちょうだいして、それを各省に移して、各省はそれが非常に広範囲になっておりますので、それぞれ下部機構に申し渡し、あるいは視察等をいたしまして、現実にはそれほど差しつかえないようにはしているつもりでございますけれども、何と申しましても元法規と申しますか、根本の基本法規がない関係上、どうしても施策がばらばらになるのはやむを得ない事情でございますので、一つ早くこの基本法を作って、そうしてその一定の基本法に基いて、それぞれ各所の特殊性に応じて実際的な取締りをすべきであるという方向に向うべきであるという議論が非常に強くなって参りまして、スタックが中心になりまして、ほぼ原案がまとまりつつございます。ただ今国会にその原案が提出し得るやいなやという点でございますけれども、せっかく検討中ではございますが、おそらくこの国会中の一月の間には法制局等の問題、あるいは各省等の手続の問題もございまして、間に合いかねる事態があろうかと思われまするけれども、何としても現実の問題として、アイソトープは現在どんどん輸入している最中でございますから、少しでも災害の少くなるように、かりに法案が提出されぬといたしましても、現実の問題として最小限度に被害をとどめたいということで、せっかく各省協議準備中でございます。
  67. 福田昌子

    福田(昌)分科員 大へんけっこうなお考えでございまして、私どもぜひそういうお考えのもとに、基本法を早く御提出になられますようお願いいたします。それにつきまして政府におかれましても、こういう基本政策を打ち出されますまでに当りましてのいろいろな被害に対しまする研究とか、処置に対する具体的な方法というものに対しまして、十分御研究なされると思うのでございますが、こういうような御研究費はどこから出されるのでございますか。
  68. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 その研究費は、現在ではスタックの方へついております。それから例のビキニの灰の問題は、厚生省が主になりまして、厚生省の方で一つ処置し、対外的な折衝の問題は外務省が主となってやっております。
  69. 福田昌子

    福田(昌)分科員 今度予算でおとりになりました原子力平和利用研究費の中から——今後そういう措置その他の基本法に限りませず、全般の問題といたしまして、放射能の被害というものを調査するような研究項目も、この原子力平和利用研究費の中からお出しになる御意思があるかどうか、この点伺わせていただきたいと思います。
  70. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 審議庁の方で今度原子力研究費の中に盛られました経費は、総合部会の方で扱う、そのための経費でございますので、主力はどうしても法律的な面が主かと思います。半面通産省の工業技術院の中に原子力課というものができまして、そこでは実施のための予算を、今年度、昨年度の繰り延べを合せまして三億七千万ばかりございますので、その中の一部を利用いたしまして、二十九年度におきましても、実際の炉の建設に伴ういろいろな災害、さっき申しました災害の二つの種類の前者でございますが、個人的なそれを取り扱うための災害を防止することは、外国では非常に厳重な防護措置をしてございます。あらゆる炉を扱う人の中で、一番この炉が安全だというほど非常に厳密な防護措置なり、あるいは対策を講じておりまして、決して原子炉に携わる人はそのために災害をこうむることがないようにしてございますので、そういう方面をねらいまして、通産省といたしましては、予算の一部を出しましてその研究を進めさしてございます。
  71. 福田昌子

    福田(昌)分科員 今度おとりになりました原子力平和利用研究費の中で、一億数百万円というものがいろいろな調査委託費ということになっておりますが、この調査委託費というものはどういうところにお回しなって、どういう形の調査を御命じになるのか、この点承わらしていただきたいと思います。
  72. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 これは通産省の予算でございますので、私存じ上げてはおりますが、もし間違ったらぐあいが悪うございますので、できますれば通産省の御質問のときにお聞き願った方がよろしいと思います。
  73. 福田昌子

    福田(昌)分科員 この放射能物質によります人体への影響というものは、これは大へんな大きな問題でございまして、世界的に未知数の問題であることは御承知の通りでございます。ちょうどだだいま放射能物質が人体に及ぼします影響を取り上げまして、各角度から検討いたします医学大会が持たれておるわけでございますが、当然こういうことは、原子爆弾に見舞われました世界の最初の被害国である日本といたしまして、日本国民、また政府はこれに対して大きな関心を持っていただくということは当然だと思うのでございますが、この世界的な放射能影響の問題を取り上げました学会を開くに際しまして、外国からの学者も相当見えております。ことにチリーなんかから来ております代表者は、血液学者であると同時に、前厚生大臣であり、また履歴も、一部伝えるところによりますと、内閣総理大臣をやられた方だというような方が見えておりますが、こういう国際的な人物を迎えてのこういう放射線物質に対しまする影響を問題にいたしました学会に対して、政府は特別に御援助なさる御意思があってしかるべきだと思うのでございまするが、これに対するお考えを承わらしていただきたい。
  74. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまのお説は、私はごもっともだと思います。よく関係官庁とも打ち合せまして、御趣旨に沿うようにいたしたいと存じます。
  75. 福田昌子

    福田(昌)分科員 この学会は、長崎、広島の原爆の現場を視察いたしまして、大体十日か十一日で終るかと思うのでございますが、今度集まりました専門家の連中は、こういう学会というものを世界の医学会の常会にしたいということを主張いたしております。これは決して思想的に片寄った学会とお考えになってはいけないのでございまして、この点をよくお考えいただきまして、原子力を平和に利用するという大きな観点に立ちまして、また大きな見地から日本政府のこれに対する態度をおきめを願いたいと思います。そして政府のお立場におきまして、どうかこういう学会をできるだけ御援助願いたいと思うのでありまして、よくおはかりおきいただきたいと思います。そして善処方をお願い申し上げます。  次にお尋ねさせていただきたいことは、先ほどから人口問題に対しましていろいろとお尋ねがございましたが、人口問題というのは、これはずいぶん前から問題にされておりながら、しかも国としての人口対策というものは、ほとんどまだ見るべきものがないというような情勢でございます。長官におかれましては、日本の人口動態というものをどういう方向に持っていったらいいというふうにお考えであるのか、そしてまた日本の現在の人口というものは、これ以上ふやした方がなおいいと思っておられるのか、あるいは現状維持がいいと思っておられるのか、あるいは多少とも人口減少政策をとった方がいいと思っておられるのか、こういうようなごく概略につきまして、まずお伺いさせていただきたいと思います。
  76. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これは非常に重大な問題でありますが、私は現在の日本の人口につきましては、どうしても結局は家族計画を立てるべきものだ、こういうふうに考えておるわけでございます。そのままに捨てておくということは、これは対外的に考えましてもおもしろくない現象だと考えますのと、一方は、やはり自然的にどうしてもふえる、しかしそのままに放任すべきものじゃない、ある程度の統制を加えるべきものだ、こういうふうな考えでおるわけでございます。
  77. 福田昌子

    福田(昌)分科員 長官のお考えは当然でありまして、私ども全く同感でございますが、ただ惜しむらくは、そのお考えが政策の上において十分盛られてないという点を非常に遺憾に存ずるのであります。日本の人口そのものは非常に過剰であり、日本の現在の経済扶養力をもっていたしますと、それに人口扶養力が追いつかないほどに人口の増加というものが膨大なスピードでもって押し広げられておることは、これは当然でございまして、そのためにこそ、日本の人口問題というものをだれもかれもが問題にしなければならないような情勢に相なっておるのであります。従いまして、将来の人口というものをどういうふうに考えていかなければならないかということになりますと、これはやはりある程度人口の減少政策をはからなければならないということは、どなた様のお考えもそこに参るわけでございますが、人口減少政策となりますれば、当然一つには移民政策でありましょうし、一つには家族計画の受胎調節の問題だと思うのでございます。ところが昨年から今年にかけまして、移民制度には多少政府も相当な踏み切りをおつけになったような感がありまして、予算的に多少そういった英断がとられたという感じがあります。非常に御同慶にたえないのでありまするが、しかしそれにいたしましても、移民の数そのものから考えますと、とうてい六千や七千とかいう程度の移民にすぎないのでありまして、百万以上の自然増加を見ております日本の現状からいきますと、きわめて微々たるものでございます。従いまして、家族計画に相当大きな施策をこれまた持たなければならないという状態になっておると思うのでありまするが、御承知のように、ことしの予算を見ますと、家族計画に対しまして新しく盛られた予算というものは、昨年に比較いたしまして、わずかに三千二百万円ほどが受胎調節のために必要な避妊器具、避妊薬というものを、生活保護階級、あるいはそれのちょっと上にありますところのボーダー・ライン前後の人たちに無料で配給するというような程度にしか考えられていないのであります。そしてその対象人員にいたしましても、二十六、七万の有夫の貧困階級の婦人を対象にしておるというようなことでありまして、こういうようなバス・コントロールに対します計画案では、とうてい日本の相当の人口減少政策をねらうということは不可能だと思うのでちります。御承知のように、現在バス・コントロールを必要といたします有夫の婦人というものは、ざっと計算いたしまして、対象が約五百万あるということがいわれております。この五百万の婦人に対しまして、いかに受胎調節の直接の指導をしていくかということか問題であるので承りまして、御承知のように、民間のいろいろな普及宣伝によりまして、自主的に受胎調節を取り入れておる人はたくさんございますが、すでにもう限界にきておりまして、みずから進んで研究しようという人は、本を通じ、あるいは講習会を通じて相当熱心に研究しております。ただいまでは、こういう自主的に研究する人はもうほとんど限界に来ておるということが言われるのでありまして、従いまして、みずから進んで研究しようとしない人、あるいは研究しようにも時間的にも経済的にも余裕がなくなっておる、そういう人たちが約五百万あろうといわれておりますが、そういう人たちを対象にしなければ、日本の受胎調節のより一層の普及というものはできないと思います。ところが予算的に見ますと、二十六、七万しか対象としてないのであります。しかもそういう方々に無料で器具を配給したり、あるいは避妊薬を配給したりいたしましても、その指導というものが十分でなければ、そういう避妊薬、避妊器具をもらった人が徹底的にこれを活用するかどうか、はなはだ疑わしいのであります。そういうような点を考えますと、日本の人口対策、ことに受胎調節に対します政府の御見解というものは、あまり御熱心でないという気がいたすのでございます。従いまして私どもは、こういう人口対策の中で、ことに受胎調節に対しましては、もっと積極的な御関心というものをお持ちいただきたいのでございますが、長官におかれては、こういうような予算面におきまして、さらに一層増額をしていただくような御運動に対して積極的な御援助をいただけるかどうか、この点伺わせていただきたいと思います。
  78. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいま御質問の御趣旨は、私はごもっともだと存じます。現在バス・コントロールをやっておる人たちは、大体は都会の人たち、知識階級の人が多くて、自発的にやっておる人が多いのでありますが、実際問題として貧困階級の人、また無知識な人が放任の状態におかれておる。これが一番大きな問題だと思っておりまして、どうしてもその方面に重点を置いて、その方面によく徹底するように厚生省ともよく相談いたしまして、御趣旨に沿うように政策をとりたいと存じます。
  79. 福田昌子

    福田(昌)分科員 人口対策につきまして、もう一つぜひお考えおき願いたいと思うのであります。これも今度の予算の編成においてほとんど加味されておりませんが、もう一つ大切なことは、優生学的な見地からいたしまするところの人口動態ということであります。つまり日本人としての優秀な人物の増加ということこそ望ましいのでありまして、優秀ならざる日本人の増加というものは好ましくないという見地からいたしまして、優生学的な人口政策というものを考えなければなりません。かような意味で諸外国では、ことに経済的な大きな力もありますし、そういう意味で人口扶養力の大きいアメリカやヨーロッパ大陸の文化国家というものは、相当優生学的な人口対策というものを考えております。つまり遺伝的な気違いとか、遺伝的な犯罪素質を持ったそういう家系の犯罪者、あるいはまた精神病院に入院しておる人たち、こういう人たちに対しまして強制断種ということを相当強硬に実行しておるのであります。アメリカなんかも、かような見地に立っていろいろな施策を、今見渡しますと、カリフォルニア一州だけでも年間約二万に近い強制的な人工断種というものがやられておりまして、そういった素質上よくない人の子孫の繁栄を政府が強制的に押える措置をとっておるのであります。日本では、この膨大な人口増加の洪水に押し流されておりながら、こういう優生学的な人口の抑制をほとんど考えられていないのであります。ごく一部、精神病院に入院いたしておりまする遺伝的な精神病患者に、今日年間とにかく千名前後の強制断種手術が行われているにすぎないのであります。こういうことでは、日本の人口動態を考えてみます場合に、医学的に見ましても、非常にゆゆしい問題だと思います。従ってこういう方面にも今後ぜひ日本の人口動態、ひいては経済開発の上からいたしましても、心をお砕きいただきたいと思います。遺伝的な精神病患者、あるいは遺伝的な犯罪者、こういう精神変質者による犯罪は、子孫をふやさないことによってある程度絶やすことができるのでありますから、かような意味における人口対策をぜひ今後お考えいただきたいと思います。かような点を考えてみましても、今度の予算は実に微々たるものでありまして、こういう優生保護の意味において使われております予算が、せいぜい二千万前後でありまして、この点も非常に遺憾でありますが、どうか厚生省とよく御相談いただきまして、できるだけこういう方面の予算増額していただきたいと思うのでございます。  あわせまして、日本の人口動態を考えてみます場合、先ほど滝井委員も指摘されましたように、老人系の人口動態をとって参りつつあるのであります。従いまして、厚生年金の適用におきましても、また職場におきますところのいろいろな定年制の問題におきましても、また年々増加いたしまする就職希望の青年に対しましても、私は特別な対策が考えられなければならないと思っております。先ほど大臣は、こういった定年後の人たちの働く職場だとか、あるいは定年後の人たちの活用につきまして、新しい御私見の御発表を伺わせていただきまして、非常にけっこうだと思うのでございますが、これはでき得べくんば、特殊の形の職場ではなくて、こういう老人の方々が当然働ける職場、または老後の生活を保障する形をぜひ一つ施策の上で打ち出していただきたいと思います。この老人というものを念頭に置いていただかないことにおきましては、今日のたとえば健康保険の面におきましても、非常な弊害が出て参っておるのでありまして、今日の健康保険の赤字は、いろいろな点から考えられるのでございましょうけれども、その一つの原因といたしまして、被保険者の側に老人病が多いということ、また結核患者が、いろいろな抗生物質の発達によりまして、昔なら当然命を捨てておられた方々が、今なお病床にあるというような、病床期間が長くなった。そういう結核患者に相当に食われる。老人病と結核に今日の保険は食われて赤字になっておるということも一つの原因でございますから、そのような点をお考えいただきまして、日本の人口動態、人口構成に対して、特別な経済政策を御配慮いただきたいと思います。  次にお尋ねさせていただきたいことは、先ほど、日本のただいま置かれております国際収支の問題につきまして、いろいろと御質疑があったようでございまするが、これに関してお伺いさせていただきたいことは、アメリカでクーパー法の修正案が問題になっておりまするが、この法案が通りますと、日本の対アメリカ貿易はどういう状況に置かれるのか、この点一つお伺いいたしたいと思います。
  80. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 先ほどの人口問題、それから厚生問題等は、きょうこの委員会に出席いたしまして非常に収穫を得たと思っております。この間厚生大臣の方からも、社会保障六カ年計画を立てろ、こういうような注文もあったので、人口問題等につきましては、十分検討をいたしたいと思っております。  アメリカのクーパー法については、これはいずれ外務省から専門的にお答え願えると思います。ジョージ修正法が今度通過したようでありますが、アメリカの関税政策というものは、この六月の十一日までに大体話をつけてしまっておけば、六月以後については、クーパー法によって三年間に一五%、一年に五%ずつ関税を引き下げるというところの権利を大統領にやったわけであります。ところがそれの修正案が出まして、それが通過いたしました結果、六月でなくて、さかのぼって、一月に下げられたものの中にそれが加えられておる。こういうようなことになりますから、日本としては、これが通過いたしましたことば多少損でございますけれども、実際の問題といたしますと、最近にジュネーヴでやっておりましたガットの会議が、大体結末がついたようでございまして、これは非常に日本として有利な話がついたようであります。この現状は発表するに至っていないと存じますが、私はそういう意味から申しますと、クーパー法があるということは、一月以後に、六月までに下げられたものの項目については、これに適用されないと思いますが、それ以外のものは、クーパー法があるということは、一五%まで大統領が権能を持っておりますから、有利だと存じております。この問題は、いずれ外務省からまた御説明するだろうと思います。
  81. 福田昌子

    福田(昌)分科員 引き続き長官にお伺いしたいのは、ガット加入の問題がただいまどういうような状況になっておるか。今の情勢では、加入にはいろいろな条件がつくと思いますけれども、許されることになると思うのでありますが、そういう情勢になると、日本の貿易にとりましてどの程度プラスになりますか、あるいはまた損害があるのか、この点御説明いただきたいと思います。
  82. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 最近の情勢等は、非常に右利に解決したということの報告を聞いておりますが、これはその結果非常によくなるだろうと存じます。詳細のことは、外務省がちょうど今見えておりますから専門の方からお聞き願いたいと思います。
  83. 福田昌子

    福田(昌)分科員 ではあとでまた聞かせていただきます。時間がおありにならないようですから、引き続いてもう一点だけ伺います。  いろいろな状況によりまして、アメリカとの輸出入の状況というものは、多少変動が来るのじゃないかという感じがいたします。それと日本の駐留軍の人員も、多少減るというような意見もありまして、日本の国に落されるドルというものも非常に減って参ると思いますが、かような意味からいたしまして、アメリカ向けの日本の輸出入の現状、また日本の国内に落されます米軍のドル、また域外買付、全部のものをひっくるめまして、対アメリカ関係のドルの収支はどういうことになりますか。お見通しをお答え願いたい。
  84. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 今数字のはっきりした記憶はありませんが、大体駐留軍の特需関係というものは、順次減ることと思います。今年は大体四億ドルと見ておりますが、これはだんだん減る。三十五年にはゼロになる、こういう考えで私は計画を立てております。アメリカに対する輸出は、これは逐次増加しております。御質問の数字につきましては、よく取り調べましてあとでこちらから報告させていただきます。
  85. 福田昌子

    福田(昌)分科員 数字はあとでゆっくり聞かせていただきたいと思います。  もう一点だけ伺いたいのは、日本の経済復興に当りまして、ヨーロッパの文化国家並みの、また工業水準の高い国と同じような工業の発展を願うということも当然必要ではございますが、それと同時に、私ども日本人として考えなければならないのは、人口が多過ぎて、それゆえにまた他面合理化政策も非常に不都合を来たす国柄におきましては、また一面日本人の手先が非常に器用だというような点を考えてみますと、家内工業の育成ということは当然必要になって参ると思うのであります。かような意味合いで今度の予算の全般を見渡してみますと、家内工業に対する考慮というものはほとんど払われてないというような感じがいたすのでありますが、長官におかれましては、これに対しましてはどういう御構想を持っておられますか、伺わしていただきたいと思います。
  86. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これは私は非常にいい御質問だと存じますので、私の所感を申し述べたいと思います。  日本の輸出工業というものは、あるいは先ほど申しました大きな機械だとか、化学工業だとかいうようなことが必要であると同時に、この家内工業を増進するということは、単に経済問題でなくて社会問題なのでございます。特に日本は、まだ封建制が残っております結果、どうしても家族主義が残っているわけでございますから、失業した人たちは農村に帰り、中小工業の方に入る。これは潜在失業者として入っている者が非常に多い。これによく力を注ぐということは、社会政策上も非常に必要なことでありますし、また一方、現在の輸出工業を見ておりましても、日本人の手先の器用なことを利用して、できるだけ労力を金にする、こういう方面の仕事を一方考えなければならぬ。たとえて申しますと、真珠の養殖事業でありますとか、あるいは人造真珠を作るとか、あるいは手先でカン詰を作りますとか、またおもちゃを作るとか、いろいろこういう方面に日本の器用な技術を使うことは、輸出を増進するのに非常に大きな役割を果すと思うわけでございますが、それには現在一番大きな欠陥が一つあるわけでございます。それは、つまり資本が少くてやっておる結果、無謀な競争をする。無謀な競争をどうして防ぐかといえば、組合組織なり団体組織を持って、これに対する金融の道を講じ、お互いに助け合って、そして技術の向上をはかる、こういうことが必要だろう。そして従前独占禁止法などというものがあったのですが、その方面にはこれを非常に緩和してしまって、むしろ独占さす、中小工業に関する範囲においてはこれを一本にする、この方針で政府は進んでいきたい、こういう所存でございます。
  87. 福田昌子

    福田(昌)分科員 実は家内工業の点につきまして、具体的な点についていろいろお尋ねをさせていただきたいし、御構想を承りたいと思うのでございますけれども、たいへんお忙しいようでございますので、非常に残念ですが、また折を見て十分御説明いただきたいと思います。最後に一点、実は予算の全般を見渡しまして、結局こういった零細企業的な家内工業に対して、相当金融の道を開いていかなければ無理だということになると思うのでございます。ところが金融政策では、そういう人たちに対する恩恵は特別にないような気がいたすのでございますけれども、この点について重ねてお聞かせいただきたいと思います。
  88. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 現在中小企業のために特別の金融の道を開いておるのでありますが、これはさき申しました通り、やはりどうしても団体的に行動しないと、なかなかその恩恵に浴されない、こういった事実もあるようでありますから、できるだけこれを団体的に活動さすという指導方針をとっているわけでございます。
  89. 平野三郎

    平野分科員 お急ぎのようですが、関連質問を一つ……。親愛なる高碕さんにお尋ねしたいのでありますが、ただいま予算の問題について自由、民主両党の間において交渉が進行しておる。ところが仄聞いたしまするに、一萬田大蔵大臣がこれに対して反対をし、鳩山総理のところまでわざわざ行って、そういうようなことをされては困るというようなことで、与党たる民主党に圧迫を加えておるというような事実があることを聞いておるのであります。およそ政党政治の本義から申しまして、立法府は行政府に優先するものであります。この原則を破壊して行政府がさような行動をとるということは、実に奇怪もはなはだしいと思うし、国会の権威を失墜し、政党政治の本義にもとる行為ではないか、こう考えるのであります。あなたはそういうような一萬田とは月とスッポンほど違うりっぱな人で、鳩山内閣というのはろくな閣僚はおりませんけれども、その中で特に落第中の落第が一萬田でありますから、それから比較しますと、あなたなどはよほど上等だとひそかに敬意を表しておるわけなのであります。あなたはそういうことはおそらくなかろうと思いますし、すでに川崎厚生大臣のごとき、特に最近見直すべき点がありますことは、一昨日の予算委員会において、自民両党間の予算折衝を現職の閣僚としてこれを歓迎するということは、不謹慎のそしりを受けるかもわからぬが、あえて私は今日の段階においては、ここに話し合いが成立することを心から希望しておる。もし幸いにして話し合いがつく場合においては、社会保障関係の予算をできるだけいれるようにしてもらいたい、というような陳情もございました。きのうの朝も私のところへ電話をかけて参りまして、予算委員会でそういう質問があれば、ぜひそれを希望するということを言うくらいで、川崎君は鳩山内閣の中において、さすが若手閣僚としていいところを見せておる。あなたはそれ以上の大物閣僚であって、特に親愛なる高碕さんとして、必ずわれわれの期待に沿うような御答弁があると思う。また自由党が今申しておることは、石橋さんだとか、あなた方の平素思っておられることを代弁しておるわけです。拡大均衡論というあなた方のお気持をそのまま言っておるわけですから、心の中においては、自由党よくやってくれるといってあなたは感謝しておられると思います。もう今、両党総裁の会談をするというところまでいっておるわけですから、この段階においては、そんなけちな官僚的な態度でなしに、ほんとうに政局の安定、この国家の大問題という観点から、一つ腹蔵のないあなたの御心境の一端を御披瀝いただきたい。
  90. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 関連質問だからお答えせなければなりませんが、私は、政治に入ったのは御承知のように最近で、ごく一年生でございます。ただいま平野さんから落第点をつけられるか、あるいは偉いと言われるか、私はその点につきましては存じませんですが、しかししろうととして考えてみますと、日本の今日の情勢から考えまして、意見にあまり大きな相違がなく、また政策がそう大きく異なっていたい人たちが、お互いに相争っておって政局が安定しない、政局が安定しないということは、国のためにはなはだよくないことだ、私はこう存じまして、こういう話が一日も早く妥結して、そして政局が安定し——ただいま私が非常に心配しておりますことは、やはり政局が安定しないために、大阪付近におきまして非常な経済の動揺を来たしておるというふうなことも耳にいたしますから、私は一日も早く妥結せんことを希望するのでございます。
  91. 平野三郎

    平野分科員 そういうことばかりでなしに、私が前段において御質問申し上げましたのは、一萬田大蔵大臣が与党に圧迫を加えておる、これはけしからぬことだと思うのです。あなたはおそらくそういうことはないというふうに私は思いますので、閣内におきましてああいうばかなことを言われぬように——今日二百億程度でもって妥結するというところになっておるのに、彼は総理のところに行って会談するとか、そういうふうなことまで言っておるということを聞いておるのですが、どうか一萬田君とは見解が違うということを、ここで御答弁いただきたい。
  92. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 私は一萬田君が与党に圧迫を加えておるかどうか、それはよく存じません。存じませんが、私としてはそういうふうなことはでき得ないことと存じます。
  93. 重政誠之

    重政主査 関連質問ではないようだが、これでどうですか。
  94. 平野三郎

    平野分科員 ではよろしゅうございます。
  95. 重政誠之

    重政主査 別に質疑の通告がありませんから、経済審議庁所管につきましての質疑は、これをもって一応終了いたします。     —————————————
  96. 重政誠之

    重政主査 次に、一般会計予算中、外務省所管についての質疑を行います。  質疑の通告があります。通告順によりましてこれを許します。
  97. 園田直

    園田政府委員 ただいま大臣が出席する手はずをしておりますが、参議院の本会議に行っておりますので、すぐこちらに参りまして交代いたします。その間数分間敬意を表する意味で、政務次官大臣代理として御答弁いたします。
  98. 重政誠之

  99. 北澤直吉

    北澤分科員 それでは大臣の来られるまでの間御質問いたしますが、外務省におきましては、経済外交ということに非常に重点を置いて言われておるわけであります。今度の外務省予算を見ますと、貿易振興関係の予算は、本年は昨年度に比べてわずか七百万程度しかふえていない。通産省の方の予算を見ますと、貿易振興対策費として、本年度は昨年に比べて約五億八千七百二十八万円ふえていますが、外務省のいわゆる経済外交等に要する費用は、それに比べて七百万円しかふえていない。もちろんこのほかに在外公館新設する費用も入りますが、大体外務省本省経済外交に要する費用は七百万円しかふえていない。しかもその内容を見てみますと、大体会議費あるいは旅費というふうなものだけでありまして、とてもこういうふうなことでは、外務省が一枚看板とも申すべき経済外交というものを進めていく上におきまして、きわめて不十分であると思うのでありますが、この点について外務省のお考えをお伺いいたします。
  100. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 お答えいたします。経済外交の費用をできるだけ充実したいのでありますが、まず在外公館の拡充という方面に相当見ております。これは十分ではございません。戦後長い空白時代のうちに外交が再開されて、まだいろいろな予算上の制約もありますので、十分とは言いかねますが、できるだけ重点的に在外公館を充実する。そのためには、経済関係各省からも、たくさんそういう方面の出身者も収容するということになっております。そこでそのほかの費用としては、旅費というようなものだけという話がございましたが、経済外交の面で最も力を注いでおりますのは、やはり外務省としては協定関係の面であります。そこで貿易協定、支払い協定の締結、あるいは通商航海条約の網を早く張れるように努力する。あるいはまた国際経済機関会議にできるだけ参加して、日本の主張を通す。結局そういった人員の費用というのが主になるわけでありますが、今申し上げました各種経済関係の協定の締結、それから国際経済機関の関係、そういったものに一番  よけい割り当てられるわけであります。
  101. 北澤直吉

    北澤分科員 来年の四月までには、日本と各国との通商条約を全部済まさなければならない。御承知のように平和条約によって、平和条約発効後四年間は、一応通商関係の規定はあるのでありますが、来年の四月になるとその規定がなくたって、通商条約を結ばなければ無条約の状態になってしまう。先ほどのお話では、大体ガットに加盟ができるようであります。ガットに加入できれば一応いいのでございますが、ガット以外におきましても、各国との間に、日本は通商条約を結ばなければならぬ。しかも来年の四月までに結ばなければならない。こういう状態になって参りますと、たくさんの国との間に通商条約なり、ひいては防衛協定なり支払い協定というものを本年一ぱいには結ばなければならない状態になっておるのであります。そういう点から考えまして、今のようなこういう少額の経済外交費ではそれで一体十分まかない得るものかどうか、外務省はその点において確信な持っているかどうか、この点を伺いたいのであります。
  102. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 通商航海条約の問題につきましては、ただいまお話のありました通りでありまして、私どもとしては、できるだけ早くたくさんの国と条約を結びたい、こう考えております。御承知のように、戦前はずいぶんたくさんの通商航海条約がございまして、約三十六の国との間に通商航海条約を結んでおった。そのほかに十五カ国との間に一種の暫定取りきめ式のものがあったのであります。これは戦争中大部分は効力を一たん失ったのでありますが、現在わが国との間に通商航海条約の存する国というものには大体二つのカテゴリーがあります。一つは戦前の条約を復活したものでありまして、これが十三ございます。名前を申し上げますと、アルゼンチン、ウルグァイ、オランダ、西独、デンマーク、スエーデン、スイス、フィンランド、ギリシャ、ユーゴスラビア、トルコ、アフガニスタン、タイ、これは戦前の条約を復活したのであります。このうらでユーゴスラビアについては、一応復活はされましたが、現在さらにまた先方の希望もあって、新条約締結交渉中でございます。  もう一つの通商条約の現に存するものとしては、戦後新たに締結したものであります。これにつきましては米国、それからカナダも一種の通商航海条約的な条項を盛った条約ができております。それからインド、中国——これは国民政府でございます。これとの平和条約にも相当通商関係が行われております。さしあたりこの四つでございます。現に交渉締結中のものが九つございます。これについてはいつでき上るかわかりませんが、せいぜい努力して、なるべく早く作りたいと考えております。それはチリ、ペルー、ドミ二カ、イタリア、オーストリア、エチオピア、セイロン、ノルウェー、イエーメンであります。このほかに、先ほど申し上げましたように、ユーゴスラビアが復活したものをば新条約にかえるように交渉中でありますが、それを入れると十の交渉をやっております。十の交渉を同時にやるということは、相当なスタッフの関係では負担でありますが、一生懸命にやっております。なおそのほかに四つ、五つの国と近く始めたいと思って、これは当方で準備中でございます。そういった状態であります。
  103. 重政誠之

    重政主査 ちょっと議事進行について申し上げますが、外務大臣は五時より海外事務で外出をしなければならないそうであります。従って議事の進行上、三君の質疑の通告がありますので、大臣に対する御質疑を主君にやっていただいた方がよいのではないかと考えます。御了承願います。
  104. 北澤直吉

    北澤分科員 それでは大臣に質問いたします。大臣もだいぶお忙しいようでありますから、簡単に大臣に対する質問をいたします。  一つは外務省の組織の問題でございますが、日本も独立後三年を経過したわけでありまして、従って日本としましても、独自の外交政策を持たなければならない段階に入ったと思うのであります。終戦前におきましては、国の外交方針について、あるいは閣議決定とか、あるいは五大臣決定というものができまして、外務省、軍部、その他の各省本その閣議決定による大方針に従って統制をとった外交施策をやって参ったわけでありますが、現在におきましては、すでに独立後三年になっているにかかわらず、そういうふうな日本の大きな外交方針についての権威ある決定というものはないように私は思うのであります。そういうことで、日本の外交が二重三重に行われるというようなことになり、日本の外交政策に統一性がない、あるいは一貫性がないというふうなことになると思うのであります。そういうふうなことから、私はぜひとも外務省にそういう外交の大方針を平素から研究する一つの企画部門、アメリカの国務省にあるポリシー・プランニング・ボードのような、専門的に外交方針を調査、研究、立案する部局を持って、これによって政府の外交方針を立てて、各省ともこれに従って動く、各省がばらばらに動かないで、そういうふうなきまった大きな外交方針に従って政府の各部が動くようにしなければならぬと思うのであります。現在はそういうふうなきまった外交方針がないから、外務省外務省、大蔵省は大蔵省、通産省は通産省というふうに各省ばらばらの外交的な動きがあると思うのでありますが、そういう点から考えましても、私はぜひとも外務省の組織の中にそういう政策を立案する組織を至急に作って、そして先ほど申しましたような、そういうところで作った根本的な外交方針を閣議決定として、各省がそれに従って一糸乱れない外交施策をする必要があると思うのでありますが、これについて大臣のお考えを承わりたいと思います。
  105. 重光葵

    ○重光国務大臣 そのお考えは私は正しいと思います。そういうぐあいにできることならいたしたい、こう考えます。外交方針の統一というのは、結局政府全体のものでありますから、それは閣議その他の最高の機関における統一が必要であると思います。そのほかに、外務省内部においても、各部局、内外いろいろ複雑な機構があるのでありますから、それに対して十分統制をとり、また深く掘り下げて、研究の上に政策を樹立する機関がほしいのでございます。そのような考え方を持っております。
  106. 北澤直吉

    北澤分科員 大臣のお考えも大体わかったのでありますが、外務省の組織の中に政策の立案部門を作っても、そう大した経費でなくて済むと思うのでありますが、今度の予算にはそういうふうなものは上っていないのであります。せめてこの次の来年度予算におきましては、今大臣が申されたような考えで、至急に外務省の組織の中にそういう政策を立案する一つの組織を作ってもらいたいと思いますが、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  107. 重光葵

    ○重光国務大臣 外務省予算措置について、閣内において大蔵省との折衝がいつも非常に困難であるわけでありますが、せいぜいそういうように努めてみたいと思います。
  108. 北澤直吉

    北澤分科員 今度の外務省予算によりまして、幾つかの在外公館ができるので拠りますが、これによりますと、館長のほかにせいぜい二名、あるいは三名というふうな組織になっておりまして、いかにも組織が貧弱だと思うのであります。一つの例を申しますと、これは私は南米を旅行した人に聞いたのでありますが、たとえばベネズエラを見ますと、あそこでは西独は大体十五人ぐらいの館員がおって、しかもその大部分は通商の専門家が行っている。ところが日本の在外公館は、ベネズエラでは三人とか四人とかいうことでありまして、しかもその人たちはあまり専門家でない。そういう例を聞きましても、西独が経済外交、通商増強のために相当の人員を出してやっている。しかるにわが日本は、それに比べると非常に貧弱である、こう思うのであります。私はそういう在外公館を作る場合においては、もっと活動ができるように、もちろんそれには適材適所で、人を選ぶ必要はあるが、もっと人をふやし、そういう館員が十分に活動できるような運動資金と申しますか、そういう流動資金をやってやらないことには、日本の在外公館は働きができないと思うのであります。もちろんこれは、予算の面で大蔵省との関係があると思うのでありますが、私は在外公館を作る以上は、やはり十分な活動ができるようにその組織を強化しなければいかぬ、こう思うのであります。大臣の考えを伺いたい。
  109. 重光葵

    ○重光国務大臣 全く御同感で、その方向に向って非常に努力しなければ、さようなことも実現困難な実情にあることを非常に遺憾に思います。むろん財政困難な折柄でありますから、わずかな費用を十分に活用するということに全力を尽さなければならぬわけであります。それにしても、今の状況では活動部面について不便を感じていることは事実でございます。
  110. 北澤直吉

    北澤分科員 それでは次の問題に移りまして、この外交運営の充実に必要な経費、いわゆる昔の機密費に当ると思いますが、これが本年度予算には二億二千八百万円計上されております。私の記憶では、これは昨年に比べて減っていると思います。先ほども申しましたように、私は日本の外交の機能を十二分に働かせるためには、人件費や何かの固定予算のほかに、流動資金、いわゆる工作費が相当なければ、これは働きができぬと思うのであります。従って私どもの考えでは、外交運営の充実に必要な経費というものは相当多くあっていいと思うのであります。戦争前には、外務省は相当機密費を持っておったのでありますが、今は少いのであります。これはどういうわけで去年に比べて減ったのか。少し外務大臣は遠慮し過ぎるのではないかと思うのであります。これから日本が大いに外交をやる、特に経済外交をやるためには、外務省はもっと大蔵省に要求すべきだと思いますが、どういうわけで去年に比べて減ったのか、その理由を聞きたい。
  111. 重光葵

    ○重光国務大臣 減らしたくなかったのでございます。特に予算面においては、予算措置を講ずるときにずいぶん折衝いたしましたが、今日の財政窮乏の際に、一つ素手で働こうという決心をいたしたわけでございます。
  112. 北澤直吉

    北澤分科員 一つ外務大臣はもっと勇気を出して、大いに主張されるべきだ。もちろん大臣は非常な手腕があるから、素手でできるかもしれませんが、やはり裏づけがなければ外交はできませんから、この点は十分に主張されて、外交官の使える運動資金、流動資金をもっとふやすように願いたいと思います。  それに関連して一つ伺いたいのは、対外宣伝及び国際文化事業実施に必要な経費として、日本のアメリカ合衆国、東南アジア方面に対する宣伝の経費が出ておりますが、私ここで特に大臣に御注意願いたいのは、現在日本で一番大事なことはアメリカとの関係でありますが、対米関係がややもすると冷却しそうになっているのをどうして直すかということであります。もちろんこのためには、日本政府と米国政府との間の了解を深めることが大事でありますが、それよりもっと大事なことは、両国の国民の間の相互の理解を深めることであります。アメリカ人をしてもっと自本を理解させ、日本がアメリカを理解するということでなければ、単に日本の外務省とアメリカの国務省だけの話し合いで今の日米関係はよくならぬと私は思うのでありますが、そういう点から考えまして、対米の宣伝費というものをもっと大幅に取って、そうして日本をして十分に理解させ、また日本の主張をアメリカの民間にも十分理解させる、こういうふうな方法をとらなければ、今のこの冷却しつつある日米関係というものをよくすることはなかなか困難であると思うのであります。大臣はこれだけの予算でそういうものができるという確信を持っておられるのかどうか、この点伺っておきたいと思います。
  113. 重光葵

    ○重光国務大臣 その範囲内で最善を尽そうという決心を持っておる、こういうことだけを申し上げるほかにお答えの方法もないようでございます。
  114. 北澤直吉

    北澤分科員 外務大臣の苦衷はよくわかるのでありますが、一つ先ほど申し上げましたように、とにかく日本の外交の担当の主任者でありますから、もっと勇気を出されて、必要な予算は堂々と主張されてお取りになるように希望いたします。  最後に一点だけ伺いたいのは、この予算にございますが、日本の移民関係でございます。今度の自由党と民主党との予算折衝の結果、自由党の方では、移民会社に対する政府の出資というものを出しておるのでありますが、昨年吉田前総理がアメリカへ参りまして、いわゆる移民借款というものを一応話をつけて参ったわけであります。そういうものを基礎として移民会社をつくるという話が進んでおりまして、私もぜひともこれを早く実現をして、一日も早く日本の移民会社というものを強力に推進したいと思うのでありますが、この移民会社設立に関するこれまでの経緯、それからまた、これからどうするというような点について、大臣の考えを承わりたいと思います。
  115. 重光葵

    ○重光国務大臣 移民政策については、ぜひ一つ何か目鼻をつけていきたい、こういう考えを持って、非常に力を尽くしておるわけでございまして、そこで予算面にもわずかながら今回は出てきたわけであります。それを発足点として、一つやってみたいというふうに考えておるわけであります。そして移民の政策の原動力として、移住局等の組織をこしらえよう、全然なかったといって差しつかえないのでありますから、それから一つ始めて、移民政策の遂行をやろう、こういうことになっております。  それからまた今お話がありましたが、アメリカの移民借款の問題もものにしよう、こう考えてやっておるわけでございます。委細は関係事務当局から御説明をすることをお許し願いたいと思います。
  116. 北澤直吉

    北澤分科員 それでは、今の移民会社の問題はあとで政府委員から伺うことにいたしまして、もう一点大臣外務省の組織で伺いたいのは、前から外務省事務当局では、欧亜局を作りたいという希望があったようであります。今度の予算でも、中近東に関する課を作りたい、こういうふうに、中近東の問題は非常に大きな問題になってきますし、またソ連との問題も御承知のような状態で、非常に日本として重要性を持ってきたわけでありますので、今の欧米局を欧亜局とアメリカ局、こういうふうに二つに分けるような考えが外務省にあるようでありますが、今度の予算では残念ながらできてないようであります。これは、一体来年度あたりからばそういうようにこれ々分ける方針でおりますかどうか、この点を一つ伺っておきたい。
  117. 重光葵

    ○重光国務大臣 外務省の組織といたしましては、その責任の分担をはっきりするという関係からいっても、大体において地理的の部局を天筋とすることがいいと多年の経験で考えております。つまりアジア方面のことに関してはアジア局、アメリカのことに関してはアメリカ局というものがなければならぬと思うのです。それからその地理的なことでも、特殊な事項、たとえば条約の点であるとか、あるいはその他の経済問題というものは、横に全世界にわたった考え方を持っていかなければならぬから、特殊のそういう横に縫った局が事項別にこしらえられるということが、特殊の事項に関しては必要だ、こう考えております。そこで今お話のように、私がまた外務省に帰って事務をとってみても、それが非常に不完全な点がございます。極端な場合には、たとえばアメリカのことはどこが責任を持っておるかわからぬというようなことになる。それはアメリカ局だ、こうなれば責任の所在がわかる。しふしその地方の特殊事項は、別に引き離して経済局なり条約局なりでやるということになれば、主責任の所在がよくわかります。ところがアメリカのことをいろいろな細目の事項について分け散らかしておれば、どこに対米外交の責任があるかということは、省内ではっきりしない場合があります。だから、今お話のようなことはぜひ実現したいと思っておるのであります。次の機会においては、でき得るならその前で、そういうようなことがもし法規上許されるならばやりたい、こう考えておるような次第でございます。
  118. 重政誠之

  119. 福田昌子

    福田(昌)分科員 アジア諸国との経済協力に対しまして、非常に御熱心にお考えいただきまして、昨年に比べて多少でも予算増を見ておりますことは、御同慶にたえないことでございます。ことにアジア諸国との経済協力におきまして、技術協力実施委託費というものが多少ふえておりますが、これはどういうことにお使いになる費用でございますか。
  120. 中川融

    ○中川(融)政府委員 コロンボ・プランに日本は参加いたしまして、本年度はこれを大いに推進いたしますために、従来千三百万円ほどでありました経費を倍以上にいたしまして、約三千万円を計上いたしておるのであります。この方法によりまして、日本からも優秀な技師の人を東南アジアの各地に派遣する。また東南アジアの関係からも優秀な人物を日本に派遣いたしまして、いろいろ経済、技術というようなことも援助する。かようなことを推進いたしたいと思っておる次第でございます。
  121. 福田昌子

    福田(昌)分科員 ただいまの御計画の、派遣いたします人員の点、相手国の状況などにつきまして、もう少し詳しく御報告をいただきたいと思います。
  122. 中川融

    ○中川(融)政府委員 現在考えておりますところでは、大体十一カ国コロンボ・プランに参加しております。日本はこれに援助を供与する立場にございます。従ってこれらのいずれの国からか日本に対して経済援助、技術援助の申し出があった場合におきましては、日本の経費の許す限り、予算の許す限りこれに応ずるという態勢をとっております。個々の具体的な申し入れがどうなるか、また内容がどうなるかということは、今後一年間のそれらの国々との話し合いの内容によってきまるわけでございまして、一応大ワクといたしまして、この三千万円という金額を予定いたしておるのであります。これを使うに当りましては、日本から機械とか、その他の費用のかかるものを持っていくということは考えていないのでございまして、大体人間を派遣いたしますことと、人間を向うから呼びまして、これにいろいろ訓練、教育等をいたすということを考えております。従って、個々の具体的な計画内容は、今後の話し合いによってきまるわけでありますが、もしこれを普通に実施いたしますれば、先方からは大体三十人ぐらいの人間は呼んでこれる。日本からも、やはり三十人程度の人間は向うに出せるということになっております。しかしながら日本から出す人間の方が単価が高いのでありまして、従って日本から出す人間が少くなれば、それに応じて先方から来る人間は多くなる、こういうような相関関係になっております。なお経費の分担につきましては、日本が負担いたしますのは、日本における円の費用ということを原則といたしまして、外貨につきましては必要最小限、すなわちあるいは船に乗り、あるいは飛行機に乗って先方に赴任いたします際、また向うから来ます際の旅費程度は負担することを考えておりますが、先方におきまして要する滞在費は、大体それらの先方の国が負担する、先方の国と日本の国との経費の負担割合は半々ぐらい、かように計算しております。
  123. 福田昌子

    福田(昌)分科員 その技術というのは、どういう方面が一番考慮されておるのでございましょうか。
  124. 中川融

    ○中川(融)政府委員 今東南アジアの各国で日本に一番期待いたしておりますのは、農業の技術でございます。すでにセイロンにおきましては、日本から優秀な農業技師の派遣をしてもらいたいという申し出が本年一月、二月のころにございまして、日本から二人優秀な農業方面の専門の人を派遣いたしました。この人、が約一カ月半セイロンに滞在しまして、セイロンの農業をどうやって今後発展さしていくかということについての報告書を書きまして、先方の政府に提出し、先方も非常に喜んでおります。なおインドにおきましても、これはコロンボ・プランによったのでございませんが、別途すでにコロンボ・プランに日本が入る以前より、日本の農業技術を導入したいということで、日本の農業技術者が参りまして、先方で実地にこれを試験的に試みまして、非常な好評を博しておるという事実があるのであります。またカンボジアにおきましても、日本の農業技術をぜひ導入したいということを、いっております。  従って、ただいまのところ東南アジアの各国は、農業技術に非常に興味を持っておりますが、日本としてはさらに各方面の工業の技術、ことに中小工業というものに重点を置いていきたい。これは、これまでにも東南アジアの諸国、たとえばセイロンあるいはパキスタン等におきましても、日本の中小工業の方法をぜひ導入して、自分の国の工業を発展せしめたいということは考えておるのでありまして、今後におきましては、農業のほかにさらにこの中小工業の技術導入ということが行われると思うのであります。もちろんこの中小工業のみならず、さらに大規模の工業、重工業等におきましても、日本は、先方から要望があれば必要な技術を出す考えは持っておるのであります。
  125. 福田昌子

    福田(昌)分科員 フィリピンとの賠償交渉はちょっと中休みの状態に入っておるようでございますが、このフィリピンとの賠償問題の今後の見通しについて、御見解を伺わせていただきたいと思います。
  126. 重光葵

    ○重光国務大臣 フィリピンとの賠償交渉は、ずっと進んでおったのでございます。そして技術専門委員が参って、技術方面から賠償の品目等について検討をいたしまして、その仕事が終って、いつでございましたか、約一週間ほど前に帰りました。そして、あるいは新聞紙上でごらんになりましたか、ネリ大使が——この人は賠償の主任官の地位を持っておった人でありますが、やってきまして、いろいろな方面から賠償問題を検討し、総額についてもいろいろ希望が出たのでございます。  さようなわけで、賠償交渉は実質的に非常に有益でありました。双方の意見が今までよりもさらによくわかってきたのであります。しかしまだ妥結はいたしません。そこでネリ大使は、この有益な意見交換を持って帰って、そうしてさらに交渉を普通の外交機関で続けていこう、こういうことになって帰ったわけでございます。  その見通しはどうであるかと申しますと、まずだんだん妥結のできる方向に向いておる、こうはっきり申し上げて差しつかえないと存じます。むろんそれについて日本側も勉強しなければなりません。しかし向う側も従来の考え方とは違って、相当実際的に考えてこれをまとめようという努力をしつつあるようでございます。
  127. 福田昌子

    福田(昌)分科員 今度の賠償交渉の再開に当りまして、大体そのお見通しですが、いつごろ賠償問題は調印できる運びになるか、もしお漏らしをいただければ、それをお知らせいただきたいと思います。
  128. 重光葵

    ○重光国務大臣 見込みは、実ははっきり申し上げるのは、少し言いにくい点だと思います。しかし今非常に順調に進んでおりますから、あるいはそう遠からざる間に、これが妥結を見るのじゃないかと考えておるようなわけでございます。決して逆転はしていないということを申し上げておきます。
  129. 福田昌子

    福田(昌)分科員 インドネシアとの賠償問題はどういうことになっておりますか。
  130. 重光葵

    ○重光国務大臣 これはまだ実際に交渉に入っておりません。緒論的に意見の交換はしょっちゅういたしますけれども、交渉の域に入っておりません。これも大体フィリピンの何ができて、それからということになるのが実際的じゃないかと思える状況です。
  131. 福田昌子

    福田(昌)分科員 インドネシアの賠償問題かなかなか軌道に乗って参らないのは、どういうところに理由があるのでございましょうか。  それから重ねて伺いますが、フィリピンとの賠償問題は年内に妥結できるようなお見通しがございましょうか。
  132. 重光葵

    ○重光国務大臣 むろんそういたしたいと思っております。そうしたらインドネシアの方も気合いがかかって、だんだん実際的の交渉に入ることができやせぬか、こう思っております。
  133. 福田昌子

    福田(昌)分科員 沖繩のことにつきましてお尋ねさせていただきたいのでございますが、沖繩の人たちは、国籍は日本にあると思うわけでございますが、やはりそのように解釈してよろしゅうございますか。
  134. 重光葵

    ○重光国務大臣 沖繩の問題につきましては、本会議並びに予算委員会でだいぶ私は申し上げたつもりですから、むしろ関係の当局からいさい御説明をさせた方がよくはないかと思いますから、アジア局長から御説明いたさせます。
  135. 中川融

    ○中川(融)政府委員 沖繩の住民が日本国籍を持っておる日本人で、あるということは、日本政府といたしまして、一貫して主張しておるところで、アメリカ政府もまたこれを承認しておると考えております。
  136. 福田昌子

    福田(昌)分科員 私どもは、この沖繩の人たちが、同じ日本人でありながら、ただいまの置かれておりまする立場からいたしまして、いろいろな国際的な人権問題まで引き起しておるということにつきまして、日本人同士として、何よりもまず日本の問題として考えなければならない、当然関心を持たなければならないと思っておるのでございますが、この沖繩に、御承知のような土地買い上げの問題が起っております。ことにその買い上げの問題をめぐりまして、比嘉主席がアメリカに行っておられるようでございますが、日本人である沖繩人の土地が買い上げられるということでありますので、日本の政府たるもの、この日本人の権益を擁護するという意味におきまして、この沖繩の土地買い上げの問題につきまして、もる程度交渉の責任者になっていただくのは当然ではないかという気がいたすのでございます。これに対しまして、外務当局のはっきりした御見解を伺わせていただけなかったのでございますが、外務当局は、この沖繩の土地買い上げにつきましてどういう御方針をただいまお持ちであるか、この点重ねてお伺いしておきたいと思います。
  137. 中川融

    ○中川(融)政府委員 この問題につきましては、日本政府といたしましても、従来から米国政府に対して交渉を行なっておるのでありまして、これはフリーで行なっておると申していいと思います。今度行政主席の方が向うに行かれまして、これは米国の国会で証言をするために行かれたようでありますが、外務省といたしましても、比嘉主席の今度のミッションと申しますか、使命については、ぜひ側面から援助するようにということを、現地の大使館に訓令いたしております。日本政府としては、沖繩の同胞のいろいろの要望事項は、常時これを入手いたしまして、これを現地に伝えまして、ワシントンにおきましても、また東京におきましても、アメリカ側にこれを連絡いたしますとともに、アメリカでもそれを考慮して、ぜひ実現するようにということを強く要望してきておるのであります。最近アメリカの政府、国会等におきまして、沖繩に関する立法措置をいろいろ考究しておるということも、ある意味で、沖繩の同胞の地位をできるだけ向上するという要望を実現するようにという、この日本政府からの従来の申し入れの効果が出てきておる証拠ではないか、かように考えておるのでございます。
  138. 福田昌子

    福田(昌)分科員 昭和二十七年からですか、琉球に御承知のような琉球政府というのができましたが、この琉球政府と日本政府との関係は、一体どういうことになっておりますか。
  139. 中川融

    ○中川(融)政府委員 御承知のように平和条約によりまして、琉球諸島はアメリカが行政を行う地域である。日本の主権は残ってはおりますが、現実の施政というものばあげてアメリカ政府が行うということになっておるのであります。アメリカ政府は、ここにおいて施政を行うに当りまして、現地の住民からなります琉球政府というものを組織いたしまして、これを通じて行政をしておるのであります。しかし、これはあくまでもアメリカ軍当局の施政の一つの機関としてできておるのでありまして、日本政府とは何ら直接の関係はないのであります。しかし人的その他のつながり等によりまして、琉球における状況につきましては、日本政府といたしましても、常時これの情報を入手することに努めまして、その結果、それは実際問題としてぜひ是正してもらいたいというような事情があります際には、アメリカ政府外交交渉として申し入れを行なっておるというのが現状でございます。
  140. 福田昌子

    福田(昌)分科員 日本の外務省御自体が沖繩の問題に対しまして御関心をお持ちいただいておるということを、私ども非常に多とするものでございますが、この沖繩の問題は、外務省のそういった非常な御努力にもかかわりませず、いろんな点で人権の侵害問題が起っておりまするし、沖繩人の身分に対しましても、権利に対する保障というものにつきましても、保護される規定が非常に少いというのは、私ども非常に気の毒に思うのでございます。  最も身近かな一つの例といたしまして、沖繩は、御承知のように終戦直前に上陸作戦が行われたところで、いわば日本本土の犠牲になったところでございます。従いまして、沖繩の戦争によりまするところの被害、あるいはまた戦争によりますところの戦争犠牲者、未亡人といったような人たちの数は、とうてい日本内地の比ではないのでございます。こういう戦争遺家族に対しまする補償、あるいはまた未亡人に対しまする救済というものは、日本の内地におります人よりもむしろ優先的にでも取り上げて保護すべきだと私たちは思うのでございますが、こういう戦争犠牲者及び未亡人に対する保護政策というものは、日本政府としてどの程度のことをしておられるのでございましょうか、この点承わらせていただきたいと思います。
  141. 中川融

    ○中川(融)政府委員 沖繩におります同胞の戦災によって受けました被害、またたとえば軍人の方で死亡された人の遺家族というような方々に対する保護措置というものは、内地のおきます、内地の同胞に対する保護措置と同じものが、そのまま沖繩に適用されておるのであります。このための連絡機関といたしまして、南方連絡事務局というものを総理府に設けまして、沖繩に出張所を設けて、これらの恩給あるいは遺家族援護金の支給事務というものは、全部その事務所が取り扱っております。その点につきましては、米国政府も十分理解いたしまして、内地における援護措置と同じものをそのまま適用しておるというのが実情でございます。
  142. 福田昌子

    福田(昌)分科員 ただいま沖繩の学生が相当日本内地に参って勉強しておりますが、こういう学生が帰国いたします場合におきましても、いろいろパスポートの問題がありまして、休暇中の帰国もなかなかできがたい状況にあるのでございます。従ってせっかくの休暇中も郷里に帰れないというようなことで、非常に困っておりまするが、これに対しまして何らかの便宜をおはかりいただきたいと思うのでありまするが、外務御当局のこれに対するお取扱いを承わらせていただきたいと思います。
  143. 中川融

    ○中川(融)政府委員 今内地の学校に沖繩出身の学生が相当数留学しておるのでございます。この沖繩出身の学生の現地との交通ということにつきましては、従来さして支障ないとわれわれ了解していたのでございます。ただいま福田委員の御質問によりまして、これらの学生が、休暇に沖繩に帰るのが困難であるということでございましたが、これは、実は私ども承知いたしておりません。この関係の事務は、直接には総理府の南方連絡事務局が当っておりますので、ただいま御指摘のような事実につきましては、さらに南方連絡事務局に問い合せまして、調査いたしまして、もしもそれが現地のアメリカ当局の何らかの方針によって困難な実情になっておるということであれば、あらためてこれを簡易にするように交渉いたしたいと思いますが、まずその前提である、果してそのような事実があるのかどうか、あるといたしますれば、どのような理由によってそういう障害が出ておるのか、これをまず調べたいと思います。従来問題になっておりましたのは、沖繩から内地に送金することにつきまして、いろいろ支障があるという事実は聞いていて、これの是正方についてはいろいろ交渉しておったのでありますが、ただいまの、たとえば帰りますときに、これはパスポートは要らないはずでございまして、証明書を持って参っておるのでございますが、その証明書の発給等について何か支障があるのかどうか、外務省ではまだそれを聞いておりません。従って調査した上で研究いたしたいと思います。
  144. 福田昌子

    福田(昌)分科員 沖繩からの送金問題、ただいま申しました学生の休暇中の帰国の問題、そういう点はお聞き及びでなかったと思うのでございますが、学生が非常に悩んでおるようでございますから、十分御調査いただきまして一ぜひ便法をはかっていただきたいと思います。どこに障害があるかよく調査していただきまして、同じ日本人でありますから、ぜひ便宜をおはかりいただきたいと思います。  重ねてお伺いいたしますが、当面の問題であります、この沖繩の土地買い上げに対しまして、外務省御当局は、このうわさが起りましてからアメリカ側とどういう御交渉をなされましたか、この点具体的に承わらせていただきたいと思います。
  145. 中川融

    ○中川(融)政府委員 一番根本の問題といたしましては、アメリカ軍が沖繩におきます軍用地を借り上げる際に、その代償が非常に低廉であるということでございまして、これはいろいろな事情がございましょうが、内地の土地と同じような場合の代価と比べましても、確かに低廉のように見受けられるのであります。これにつきまして、まずこれを適当な価格まで引き上げるということが交渉の第一の内容でございます。第二の内容といたしましては、この軍用地を買い上げるといううわさがいろいろ流れております。これは、沖繩の住民が自分の所有地というものに対して非常な愛着を持っておる事実、これは沖繩ではなかなか地面というものが手に入らない。一たんこれを強制収用でもされますと、なかなかかえ地というものが手に入らないという事情がございますので、それらの事情にかんがみまして、この農民の土地所有権というものを奪うことのないようにということが第二の要望事項でございます。さらに第三といたしまして、所有権はたといとってしまわない、従って買い上げということはしないといたしましても、長期に借り上げるということになりますと、事実上買い上げと似たような結果になりますので、長期の借り上げということもしない、できるだけ毎年ごとの契約による借り上げ、あるいはさらにやむを得ない場合におきましても、三年とか五年とかいう短期間の借り上げということにしてもらいたいというのが交渉内容の第三点でございます。これらの交渉は、大体一カ年前から交渉を行なっておりまして、ある程度効果があったのではないかと考えております。なお最近アメリカの議会に上程されております沖繩に関する法案の内容等について、伝えられるところによりますと、土地所有権の買い上げはしないけれども、相当長期にわたる借り上げをするというようなことも新聞記事として出ておりますので、それらについては、重ねてアメリカ側に善処を要望しておる実情でございます。
  146. 重政誠之

    重政主査 次に、政府委員に対する北澤直吉君の質疑が保留になっておりますから、北澤君に質疑をお許しいたします。
  147. 北澤直吉

    北澤分科員 先ほど移民会社の問題をお聞きしたのですが、一つ政府委員からお答え願いたいと思います。
  148. 矢口麓蔵

    ○矢口政府委員 移民会社といいますか、移民公社と申しますか、この問題は、主として中南米の受け入れ機関の問題であります。これは日本政府、特に民主党側では、これを作りたいという意向を持っておりまして、われわれはその意向を受けて大蔵省と予算の折衝をやったのでありますが、遺憾ながらその移民公社ないしは会社たるべきものの資本金一億五千万円は全然とれませんので、わずかでもと思いましたけれども、それもとれず、結局今国会には移民会社も移民公社も提案できないような事態に一応相なったのであります。しかるにその後民主党内部におきまして、本件移民借款の成立に非常な関心を持たれまして、一方野党の自由党側でも、もともと本借款は前吉田総理が口火を切られた関係もありまして、自由党側でも非常な関心を持たれておりまして、うわさによりますと、今両党の間で寄り寄りお話中だと承知しております。一方われわれ事務当局といたしましては、大蔵省と種々話し合いを進めておりまして、いわゆる予算の修正によりまして若干の資本金がとれた場合に、いかなる形態をもって本件移民借款を遂行するかということにつきましては、大蔵省と事務当局と話し合いをいたしております。ただ大蔵省側は移民公社を主張しておりますし、外務省事務当局ば特別会社——厳重なる政府の監督下に立つところの移民会社を主張しておりまして、この点につきまして両者の意見が一致しておりませんが、これも自由党と民主党の問で種々論議中だと承わっております。
  149. 北澤直吉

    北澤分科員 その移民会社の構想はどういうものですか、資本金がどのくらいとか、資金量、それによって一体どのくらいの移民の世話をどういうふうにするか。それをちょっと……。
  150. 矢口麓蔵

    ○矢口政府委員 この金額は千五百万ドルでありまして、これを受け持つ銀行は三つの銀行であります。バンク・オブ・アメリカ、チェース・マンハッタン・バンク、ナショナルーシティ・バンク、この三つの銀行がおのおの五百万ドルずつを出しまして、一年間に三百万ドルずつ使用する。すなわち五カ年間で千五百万ドル使うという内容であります。  この金をもちまして、われわれが現在考えておりますのは、一つの公社ないしは会社を作りまして、これは外貨でありますから、主として現段階におきましては中南米においての農業並びに工業その他漁業のいわゆる企業的な部分に対する貸し出しをやりたい、一つの金融的な仕事をやるという機関に相なると思います。しかしこれは原則でありまして、また例外的にば何がしの直営的なものをやる。一例をあげますれば、近くドミニカに企業並びに農業移民を送出する計画でございますが、ここには、御承知の通り日本人は公使館員以外に全然一人もおりませんので、そういう場合には、今の移民会社か公社が直営をやるということも考えております。すなわち東京に本社を置きまして、各主要移民受け入れ国にその出先機関を置いて、何がしの担保をとりまして金融の便をはかる、これによって農業並びに企業の、特に企業関係の移民の進出を促進する、こういう計画であります。
  151. 重政誠之

    重政主査 他に質疑の通告がありませんから、外務省所管に対する質疑ばこれをもって一応終了いたしました。  それでは本日はこの程度にいたし、次会は明四日午前十時より開会をいたしまして、農林省及び通商産業省所管に対する質疑を行いたいと思います。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十八分散会