○楠見
公述人 全国農業会議所の楠見でございます。
昭和三十年度
予算案における農林
関係予算につきまして
意見を申し上げて、
皆様方の御参考に供しますとともに、善処方をお願いいたしたいと存ずるのでございます。
まず結論的なことを冒頭に申し上げますと、ただいま御審議をいただいております農林
予算につきましては、全国の農民及び農業団体は、あげてひとしく非常に不満を感じ、また遺憾の意を表しております。その理由は、もちろん従来といえども、毎年度の
予算につきましては、部分的に多少の
意見のあったことは事実でございますが、しかし大局的に申しまして、農業施策の根本的な方向につきましては、それほど大きな不満はなく、またときにかりにあったといたしましても、それはたまたま占領行政中のやむを得ざる特殊事例に属したものが多かったのでございます。しかし今回の
予算案においてわれわれが端的に感じますことは、従来の農業政策に百八十度の転換が行われんとするやに看取せられ、事実それが具体的に数字の上にも現われておるということでございます。
従来の農業政策と申しますのは、
国内食糧自給度の向上という、わが国経済自立の根幹に通ずる基本的な方向をさすのでございますが、このことは歴代内閣がいずれも強く打ち出した政策でございまして、今申し上げましたように、ときに消長はございましたが、いずれもその方向に向って
努力をしてこられたところでございます。この内閣におかれましても、もちろんその方針についてはしばしば言明をせられており、従ってこの基本方針に変革が加えられようというようなことは、農業
関係者はもちろんのこと、一般的に申して、真にわが国の経済自立をこいねがう
立場の者にとりましては、夢にも
考えておらなかったところでございますが、最近世界的な農業事情の好転等のこともあってだろうと思いますが、
国内食糧自給の調整を外米とか、あるいは外麦等のいわゆる
外国食糧に依存せんとするやの声が政府部内からもちらほら聞えるようになり、かねて私どもは少からず憂慮しておったのでございます。しかしこのような心配は、あくまで杞憂に終ることを念願いたしておったのでございますが、
昭和三十年度
予算案におきまして
現実に政府の態度が表明せらるるに及びまして、われわれはこの内閣の性格に、前申し上げましたように農業政策の大転換を見せつけられたような気がいたすわけでございます。
本年一月十八日の閣議決定によりまする
昭和三十年度
予算編成大綱によりますと、これはすでに御案内のように、すみやかにわが国経済の自立発展を期し、その実現をはかるために、拡大均衡を目標とする長期かつ総合的な経済計画を樹立するものとし、
昭和三十年度
予算の編成に際しては、この計画に沿い、わが国の経済基盤の強化充実をはかるというふうに述べておられまして、その
内容としての農林漁業の振興と食糧対策の刷新という項におきましては、総合的な食糧自給態勢の強化を目途として食糧増産を確保し云々、もって食糧輸入の負担軽減に努めるということを言っておられます。
ところが今回の
昭和三十年度
予算を見ますと、輸入米麦の数量は前年度よりは逆に十万トン余り増加いたしております。米だけで見ましても、二十万トンに近い増加の計画でございます。このことと照らし合せまして、
国内食糧増産のための経費、すなわち食糧増産対策事業費を見ますと、前年に比べまして、農林省所管において約九億五千万円減少いたしましております。この経費は、御承知のように主として土地改良、灌漑排水、開墾干拓等の費用でありまして、そのほか食糧増産のためには、これらのいわゆる公共事業費とあわせまして、たとえば種子対策、耕土培養、健苗育成、植物防疫等のいわゆる耕種改善に関する経費がございますが、その経費も同様に、前年に比較いたしまして実質的に五億円余り減少いたしております。
かつて二、三年前かと思いますが、御承知のように食糧増産五カ年計画というものが政府部内において策定せられたことがございます。この食糧増産五カ年計画は、年々人口が増加していく、一方農地が、たとえば工場敷地であるとか、住宅地等に転換せられたり、あるいはまた耕地
自身が老朽化することによりましての
生産減等の事情で、毎年二百数十万石以上の食糧自給量の穴があくので、この
生産減を埋めまするとともに、人口増に伴う需要の増加をまかなうために必要な数量を増産し、さらにそれ以上増産いたしまして、年々増加の傾向にある
外国食糧の輸入量を逆に年々縮小せしめて、経済自立の達成をはかろうとする計画であったのでありますが、この内閣がお立てになりました経済六カ年計画では、それよりはだいぶん後退いたしておりまして、せめて輸入する食糧の数量を現在以上に増加させないために、最小限度必要な増産をはかろうとする案でございますが、今度の
予算案で参りますと、それすらも達成できず、
予算委員会等でも御
質疑があったようでございますが、せいぜい米麦百万石程度の増産しか確保できないことになり、はなはだしい後退だと
考えるのであります。これは前年度に比べましても、約二十万石程度の
生産減でございまして、前に申し述べました、一方で需要がふえていく、供給が減っていく、このような趨勢と思い合せましても、まことに残念なことだと
考えるのでございます。昨年の
昭和二十九年度
予算は、
昭和二十八年産
予算一兆二百七十億を九千九百九十八億に圧縮したいわゆるデフレ
予算であったのでありますが、しかしこの場合におきましても、なおかつ食糧増産対策に関する経費につきましては、いろいろと御苦心をせられ、少くとも経済自立達成への道についての御
努力の現われは、あちらこちらにあったと思うのでございます。今回の
予算において、政府は経費の減少をもちまして、事業の重点的施行と効率化をあげておられるのでございますが、
現実の増産効果は今申し上げました
通りでございまして、まことに残念に存ずるのでございますが、なおこの点は、
予算案御審議の過程におかれましても、特に前年度との比較を十二分に御検討願いたいと存ずるのでございます。そして拡大均衡のための地固めの年というならば、本年はせめて輸入食糧を従来以上に増加せしめないというようなくらいの方策は、ぜひ
考えていただきたいと存ずるのでございます。
昭和三十年度
予算案に対して、農業
関係者がいだいておりまする不満の根本的な、かつ具体的な事事の第一に掲げるものは右の点でございます。
食糧増産
関係予算に関連いたしまして、去る四月四日
全国農業会議所外八中央団体は、
昭和三十年度農業政策及び
予算に関する声明を発したのでございます。時間の節約上その
内容をここに繰り返しますことを省略いたしますために、その声明文を、
委員会の御了承をいただきましてお手元に配付していただいたのでございますが、この声明につきましては、とくとごらん置きいただきたいと存ずるのでございます。要は、われわれはわが国経済自立を衷心から熱望いたしておりますがゆえに、このような主張声明を強くいたしておるのでございまして、むしろこのような要望は、農業外から起ってしかるべきものと
考えておるようなわけでございます。従来このような主張に対しましては、いわゆる農本主義的なものとして取り扱われる傾向にあったことは、まことに遺憾でございます。
このことに関して、御参考までに申し上げておきたいことがございます。それは世界銀行の農業
調査団の報告でございます。御承知のように、
日本政府は世界銀行に対しまして、
日本農業の現況と実態を十分に知ってもらうとともに、政府の増産計画について検討を依頼し、あわせて世界銀行の融資対象に適する事業の判定を願い、それにつけ加えて、でき得れば
昭和三十年度
予算編成に間に合うよう、特に付言いたしまして
調査勧告を依頼いたしたのでございますが、その世界銀行
調査団は昨年参りまして、その
調査報告書が本年の一月七日、世界銀行のガーナー副総裁からワシントン駐在のわが井口大使を通じて、
日本政府に出されておることは御承知の
通りでございます。それによりますと、
日本は現在の食糧不足の悪化を防ぐためにも、この十年間に一五%以上の増産をはからなければならない。現在の不足のみならず、将来の不足分を補うための方法として、さらに輸出の増大をはかることにあまり腐心することは無理である。というのは、現在の国際収支バランスのギャップを埋めるのに当然必要であるところの輸出の増大をはからなければならないし、また
国内で
生産できない原材料の輸入を増大しなければならないからである。
日本では、工業
生産に比し、食糧の
生産にはほとんど原料の輸入を必要としたい。従って食糧増産は、
日本の国際収支バランスの改善のために最良の策であることが一見して明瞭である。すなわち、現在
日本の正常な輸出入収支は、輸入を補うのにも年々五億ドル余の不足を告げてある。人口が増加するので食糧以外の原材料の輸入も増加してくる。これから十年後には、おそらく一億五千万ドルの増加となるであろう。
日本は年々増加する食糧輸入代金支払いのため必要な金額を輸出の増加に待とうとすることは荒唐無稽なことである。
〔
委員長退席、中曽根
委員長代理着席〕
いずれにせよ、不当に輸出を強化し、他国の輸出競争を激化し、やがては一方的に課せられるであろう貿易制限の波に
日本をゆだねる結果となろう。従って
日本では、食糧増産をはかることが一番正しい道を進み、かつ経済自立達成のため
日本の推進すべき絶対に必要な方策と思われる。報告書の概要は大体以上の
通りでございます。これは、
日本の農本主義者の
意見書ではなくて、政府が辞を低くして招聘いたしました、しかも最も経済的採算に敏感な
アメリカ銀行の報告であることに御注意いただきまするとともに、
日本政府があえて荒唐無稽の愚を行わんとしておることに、われわれはまことに残念に思う次第でございます。
食糧増産
関係費の削減によりまする影響は、今申し上げましたように、
国内食糧自給度向上政策の後退として、経済自立の基本に触れる大きな問題でありまするほかに、農家経済の上から申しても看過できない問題がございます。御承知のように、農家経済は終戦後一時好転いたしましたが、
昭和二十三年、四年のいわゆる税金攻勢を契機といたしまして、次いでドッジ政策以来の低米価政策、さらには最近のデフレ政策のしわ寄せ等により漸次悪化しつつあることは、御承知の
通りであります。従ってせっかくの農地改革の成果も、漸次その維持に困難を感じつつある実情でございます。従って農家経済も、一方において全国的に階層分化の傾向を強めつつありまするとともに、個々の農家収支を見ましても、最近農業外収入、いわゆる農外収入に依存する部分が、逐年多くなりつつあるのでございます。このことは、農林省の農家経済
調査によりましても明らかであり、あるいは毎年政府の発表せられる経済白書にも指摘せられておる
通りでございます。御承知のように、農家を便宜上区分いたしまして、いわゆる専業農家、第一種兼業農家及び第二種兼業農家にわけまして、第一種兼業農家は農業収入が主で、農業外収入を従といたしまして農家経済をささえておるものでございますが、いわゆる公共事業費と農業外収入との
関係は、きわめて密接な
関係がございます。そこで本年度
予算における公共事業費の削減は、この第一種兼業農家の収入減を招来いたしまして、その経済に大きな影響があろうと思われるのでございます。
同時に、このようなことからいたしまして、現在農村側では、本年度の
予算総額は九千九百九十六億円で、前年度とほとんど変らない。ただ農林
予算だけが百十七億削減せられまして、それが都会の住宅政策その他の社会保障費に回されておる。もちろん住宅政策、あるいはその他社会保障費に回されることについて、それらの政策に対して反対を唱えるものではございませんが、このように農林
予算の削減、
予算におけるしわ寄せが農村と農家の犠牲において行われておるということに対して、非常に遺憾に思い、またかこっておるのが実情でございます。また政府は本年度をもって、いわゆる来年度以降の拡大均衡のための地固めの年であると言っておられるのでありますが、一体明年度以降どれだけ拡大せられるかは、全く不明であるというよりは、現在のようなあり方で参りましては、はなはだ不安にたえないと存じております。
予算規模全体について
意見を申し上げることは、私の本日の目的外ではございますが、少くとも本年の防衛費折衝の経緯に徴しましても、はなはだ心もとなく、結局また内政費において農業
関係の犠牲、しわ寄せによってつじつまが合されるのではないかと心配されるわけでございます。私はあえて防衛費について批判をいたしたり、ないし独立国としての防衛の必要性を否認するものではございませんが、政府の言われる国力に応じた防衛という、国力とは一体何をさすのか。経済自立の道が遠のき、農村が犠牲になり、しかも増加せられる自衛隊の演習地その他で農地紛争が絶えず起っておるこの実情が、果して国力に応じた自衛力の増加であり、かつ背後の
国民の信頼と協力を得ることのできる真の自衛力漸増であるか、はなはだ疑いなきを得ない次第でございます。
次に、この内閣は選挙公約におきましても、地方財政の確立、負担の軽減を唱え、それにつながる農家経済の安定を唱えておられるのでございますが、農林
予算の具体的数字を見ましても、その公約とはなはだしく異なっておることが少くないのでございます。たとえば災害復旧費について見ましても、この間の事情がよくわかります。一例として
昭和二十八年度災害を見ましても、国会で特別立法の措置が講ぜられ、その復旧率、換言いたしますと災害復旧
補助金交付割合、これはいわゆる三、五、二の比率によりまして、本年度は、
昭和二十八年度災害については完成の年でございますが、本
予算案によりますと六五%でございます。さらに大蔵省の災害査定率と、それぞれ所管省の査定率との間には、相当懸隔のあることは御承知の
通りでございます。もちろん農民は、災害農地を一日も早く復旧して、次の
生産に間に合うよう
努力しておりまして、従って、事実大部分の耕地は復旧しておるのでありますが、このことは申すまでもなく、結局災害
補助金を繰り上げて、地元の立てかえ負担において行われているものでございまして、そのことはとりもなおさず農家の負担においてか、あるいは農業協同組合等の資金源の固定化、災害復旧のために農業協同組合から資金を貸す。従ってその資金源の固定化という犠牲においてか、あるいはまた市町村、都道府県の負担においてか、形はいろいろあろうと思いますけれども、いずれにしても地元の犠牲において行われていることは、疑いのないところでございます。
また農林
予算の削減の大きな部分を占めております、ただいまも
長野県知事と小平さんとの間に問答のございました、農業
委員会の経費についてもさようでございます。今申しますように、農業
委員会の経費約十五億円の削減は、今回の農林
予算削減の
一つの大きな部分を占めているのでありますが、この農業
委員会の経費は、法律上の必要機関に対する従来の国庫
補助金を、本年度は前年度に比して十五億円減少し、その分を地方交付税交付金に繰り入れたと政府は言っておられるのでありますが、地方交付税法第三条の明文に徴しましても、交付金にひもつけは厳に禁じられております。そこで、現在
予算に計上されております交付金でも、ただいまも
お話がありましたように、なお百四十一億円の下足を告げているのが地方財政の実情だといわれているときに、前年度国庫から
補助金として別に流しておりました十五億円の減少は、結局地方財政へのそれだけのしわ寄せになるか、しからずんば農業
委員会の機能停止になるか、あるいは職員の首切りになるか、いずれかの道によるよりほかなく、法律を現存せしめておいてしかもこのような措置は、全く本末顛倒の悪い事例だと
考えております。
以上、
昭和三十年度
予算案に対する大小の問題について、取りまぜて申し上げたわけでございますが、要するに結論は、冒頭に申し上げた
通りでございまして、かつまた衆議院の農林水産常任
委員会が、四月五日超党派的に、
昭和三十年度農林
予算に関しての決議せられたところと全く同様でございます。この
委員会の
皆様方におかれましても、とくとこの点を御検討いただきたいと存ずるものでございます。
それから次に、
予算ときわめて密接な
関係にあります
昭和三十年産米の集荷に関する問題について、
意見を申し述べたいと思うのであります。
昭和三十年産米の集荷方式につきましては、政府も去る五月七日の閣議において、いわゆる予約売り渡し制度を採用することに御決定になりましたが、問題は、米価を初めとして、この制度実施上のかぎとなるいろいろの具体的な条件でございます。もちろん米価がその中心となることは申すまでもないのでございますが、本
予算案におきましては、いわゆる
予算米価として石当り九千七百三十九円が計上せられております。この価格は想像いたしまするのに、前年度の
予算額を二千五百万石で割った石当りの単価であろうと思われます。米価につきましては、御承知のように、占領軍の価格計算方式といたしまして、いわゆるパリティ計算方式が採用せられておったのでありますが、この方式は、もともと
アメリカの現在行われておりまする農産物価格支持政策に準拠したものでありまして、
アメリカの経済事情及び産業構造のもとにおきましては、ある程度の妥当性があるのでございますが、わが国の農業
生産の実態、あるいは農業と鉱工業の
生産性の上昇率の跛行性と申しましょうか、それらの
関係からいたしますと、わが国に適用する場合は相当の修正を必要といたしたのでございます。しかしそれでも、インフレが進行いたしておりまする際は、相当の効果を上げたのでありますが、インフレ終息とともに、米価決定方式においても大きな改善が要求せられ、その
一つの方法として、最近農業団体方面からもいわゆる限界
生産費方式によることが提唱されておることは、御承知の
通りでございます。このような事態にも即応いたしまして、米穀懇談会は、本年一月、予約制度採用についての答申を政府にいたしまするに当り、米価については
生産費方式とパリティ方式の両者をとって、相互補正作用によってできるだけ適正な米価を決定すべきことを原則といたしまして、ただ本年は、時期的の
関係もあって間に合わぬことが予想されましたので、さしあたりの方法として、
昭和二十八年産米及び二十九年産米の農家手取りの実際を基準とすべきことを提案しております。これによりますと、二十八年産米は農家の手取りは一万六百七十四円でございます。もっともこの中に減収加算額五百五十五円を含んでおりますので、それを差し引きますと、一万百十九円となります。二十九年産米は、実際に最近まで供出されておりました数量、一応計算上二千二百八十二万石をとっておるのでありますが、これによって推定いたしますと、約九千八百七十九円となり、さきに申しました減収加算額を除きますと、二年の平均は九千九百九十九円、減収加算額を加えますと一万二百七十七円となります。一方農業団体といたしましては、従来主張して参りました限界
生産費方式による価格として、一万二千五百円を参酌して決定せられんことを要請いたしておることは、これまた御承知の
通りでございます。いずれにいたしましても、米価につきましては、米価審議会において検討せられることとなるわけであります。それによって
予算に相当の影響のあることはもちろんでございますが、われわれとしては、要は適正に決定せられんことを希望しておるわけでございます。この場合に問題になることは、二重価格による財政負担の問題であります。消費者米価につきましては、現在の集荷方式は、現行食糧管理法の範囲内で、単に従来の割当が予約申し込みという格好になるだけでありまして、配給量において従来より相当増加せられるという見通しがない以上、現在の消費者米価を上げることは、消費者としてはとうてい納得のいかぬことであろうと思いまするし、事実政府も、消費者米価は据え置くことにしておられるようでありますから、結局財政負担の問題が当然起って参ります。現在も事実すでに三重米価による財政負担をしておられるわけでございますが、その財源にからんで、問題は今後相当深刻化するものと思われるのでありますが、この点も
予算審議に当っては十分掘り下げて御検討を願いたいと存じます。
すなわち米価につきましては、まずもって第一に、従来の米価は、いわゆる政策米価として低米価がしいられておったこと、しかもそれは供出制度という強権の裏打ちによって維持されておったということ。第二に低物価政策を推進するために、米価の高騰を防止する方策として、肥料、農機具、農薬等のいわゆる農業
生産資材や農家の購入生活物資の価格引き下げについて政府も御
努力中であることは、よく承知いたしておりまするが、それはさほどの大きな効果を上げることは困難ではなかろうかということ。第三に、従来強権の裏打ちがあったのでありますが、これがはずされて参りますると、問題は、結局純経済的にものを見て参らなければならないのではないかということ。第四に、しかも将来のことを
考えましても、今回の予約制度の訓練を経まして初めて大きな流通機構は確立し、整備せられるということ。すなわち結局現在の零細な、かつ無数の農民の販売を組織化することによって、この予約制度の訓練で、農村の販売流通機構を組織することによって、
生産者、消費者、いずれにとっても価格の安定、需給の安定上大きな寄与また役立ちが行われるということ。従って将来かりに統制撤廃をこいねがう
立場にある人々にとりましても、今回の予約制度はぜひ成功せしめなければならぬというようなこと等々の理由からいたしまして、米価問題は大きな
関心事でございます。
なお予約制度に伴う予約奨励価格差の問題、あるいは税の減免措置等につきましても、全く同様に予約制度成否のかぎをなすものでありまするが、今申し上げましたように、
予算とも不可分の
関係にあるようにも
考えられます。従って予約制度を成功せしめる必要があると
考える
立場におきましては、今後の御審議に関連いたしまして、これらの点はどうぞ十二分に御検討賜わりたいと思うわけでございます。
以上はなはだ粗略でございましたが、
意見を申し上げて御参考に供します。