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1955-06-01 第22回国会 衆議院 予算委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月一日(水曜日)     午前十一時一分開議  出席委員    委員長 牧野 良三君    理事 上林山榮吉君 理事 重政 誠之君    理事 中曽根康弘君 理事 西村 直己君    理事 赤松  勇君 理事 今澄  勇君       赤城 宗徳君    井出一太郎君       稻葉  修君    宇都宮徳馬君       北村徳太郎君    小枝 一雄君       纐纈 彌三君    高村 坂彦君       楢橋  渡君    福田 赳夫君       藤本 捨助君    古井 喜實君       村松 久義君    愛知 揆一君       植木庚子郎君    太田 正孝君       大橋 武夫君    北澤 直吉君       倉石 忠雄君    周東 英雄君       永山 忠則君    橋本 龍伍君       平野 三郎君    松野 頼三君       阿部 五郎君    北山 愛郎君       久保田鶴松君    志村 茂治君       田中織之進君    田中 稔男君       滝井 義高君    福田 昌子君       武藤運十郎君    柳田 秀一君       小平  忠君    杉村沖治郎君       中井徳次郎君    西村 榮一君       吉田 賢一君    川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 重光  葵君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         厚 生 大 臣 川崎 秀二君         通商産業大臣  石橋 湛山君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 杉原 荒太君  出席政府委員         防衛庁参事官         (経理局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         大蔵事務官         (管財局長)  窪谷 直光君         厚生事務官         (保険局長)  久下 勝次君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 金治君     ————————————— 五月二十七日  委員笹山茂太郎君、灘尾弘吉君及び滝井義高君  辞任につき、その補欠として河本敏夫君、福永  一臣君及び伊藤好道君が議長指名委員に選  任された。 六月一日  委員米田吉盛君、相川勝六君、小坂善太郎君、  西村直己君、福永一臣君、伊藤好道君、田中稔  男君、井堀繁雄君及び三宅正一辞任につき、  その補欠として赤城宗徳君、永山忠則君、大橋  武夫君、松野頼三君、愛知揆一君滝井義高  君、北山愛郎君、岡良一君及び中井徳次郎君が  議長指名委員に選任された。 同 日  委員大橋武夫君及び松野頼三君辞任につき、そ  の補欠として小坂善太郎君及び西村直己君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十年度一般会計予算  昭和三十年度特別会計予算  昭和三十年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 牧野良三

    牧野委員長 これより会議を開きます。  昭和三十年度一般会計予算外二案を一括して議題といたします。質疑を継続いたします。吉田賢一君。
  3. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私は主として国の決算の立場から、数個の質疑を試みたいと思うのであります。  第一に伺いたいことは、軍艦なし」の購入に関する予算措置の問題であります。一応事実を明確にするために、防衛長官から、昭和三十年度において海上自衛隊増強の一環として、沈んでおった軍艦なし」を購入する計画を持っておりまするので、これに関する予算購入費の出所、そういったものを中心にしまして一応の御説明を聞きたい。
  4. 杉原荒太

    杉原国務大臣 昭和二十九年度におきまして防衛庁計画し、そして国会の御審議を願いました二十九年度艦艇増強計画は、御承知通り三百トン型の駆潜艇八隻を含めまして、国内建造が約二千七百トンぐらい、それに駆逐艦七隻を、主としてアメリカからの供与を期待いたしておったのでありまするが、その駆逐艦七隻のうち、現実にはアメリカ側から供与が確実になりましたのが四隻と相なった次第でございます。その結果、二十九年度において計画いたしました艦艇増強計画欠陥を生じたのでございます。ところが一方艦艇建造予算に若干捻出の余裕が生じまして、たまたま旧駆逐艦なし」を取得してこれに改造を加えていきますならば、乙型の警備艦程度の用をなすという見通しがつき、かつまた新しくこの種の艦艇建造いたしますのに比べまして、比較的小願の費用をもって措置できる見込みがつきましたので、防衛庁計画し、かつ国会の御審議を願いました二十九年度艦艇増強計画の一部にこれを充てたいと考えている次第でございます。
  5. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 二十九年度艦艇建造計画の一端になしていると言われるのだが、そうすると、二十九年に予算措置を論じた内容をなす、こういうふうに了解していいのですか。
  6. 杉原荒太

    杉原国務大臣 ただいま申し上げた通りでございますが、この二十九年度におきましては、二十九年度新造計画分として約二十二億、それから二十八年度国庫債務負担行為歳出予算化分が八十億、二十八年度繰り越し分三十五億、合計予算原額が百三十七億、こういうことに相なりまして、そのうちで支出済み額が四十六億、繰り越し額が九十一億、大体見込まれる状態でございます。その繰り越しの中で契約済みの分が五十六億、契約未済の分が三十五億というような状態になっておる次第であります。
  7. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうなりますと、あなたの方の経理局長参議院予算委員会において説明なさった内容とだいぶ違ってくるのです。参議院予算委員会における説明によりますと、二十八年度建造計画、これは御承知通り十六隻でありますが、この十六隻にさらに加うるに本船が入る、こういうことになっているのであります。そこで、これは申し上げるまでもないことでありますけれども、二十八年度計画をあなたの方の資料によりまして見ますと、予算といたしましては三十五億円、国庫債務負担行為が八十九億円、計といたしまして百二十四億円、これが二十八年度使用されておりません。三十五億円は二十九年度繰り越しておる。八十九億円につきましては、これは結局補正等関係がありましたので、二十八年度建造計画分といたしましては百十五億一千万円ということになっております。そしてこの十六隻というのは、これは警備船の甲型、乙型、丙型、補給工作船掃海船の大型、中型等でありますが、これは大体において今建造中と承わっております。これに加うるに今のただいま問題にいたしております「なし」が入るのじゃありませんか。二十九年度といたしましては、二十九年度建造計画は、これは艦艇十四隻でしょう。そして三百トン型の駆逐艦、六十トン型の哨戒艇、三十トン型の掃海船その他計といたしまして十四隻、結局三十年度へ繰り越すべき予定になっておりますもののうち、二十八年度建造計画分がこれに充当されるべきものである、そういうことになるのじやないですか。あなたの御説明が少し混雑するようで、私にははっきりいたしませんので、むしろこっちからあなたの御説明なり資料なり集計いたしましたものを申し上げたのですが、そうなるのじゃないですか。
  8. 杉原荒太

    杉原国務大臣 二十八年度系統の分で、そして二十九年度予算化しているもの、たとえば二十八年度系統の分、こういう意味でございます。
  9. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そういたしますと、結局「なし」を購入する経費はどこから出るものに、よってなされるのですか。予算化している経費を充当するというのですか、あるいは繰越金があるのでそれを使うというのですか、それをはっきりしていただきたい。
  10. 杉原荒太

    杉原国務大臣 繰越金の方でございます。
  11. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 その金額を言って下さい。
  12. 杉原荒太

    杉原国務大臣 大体二十八年度系統のが約二十三億程度見込んであります。そのうちで「なし」の改装等に要しますものとしまして、今若干の歳出余裕ができましたと申しますのが大体三億八千八百万円程度でございます。
  13. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そういたしますと、今御説明になりました二十八年度から繰り越しました二十三億円という金は、二十八年度建造計画の十六隻の予算繰り越しじゃないですか。
  14. 杉原荒太

    杉原国務大臣 経理局長から説明いたさせます。
  15. 石原周夫

    石原(周)政府委員 長官から御説明がありましたことを補足して申し上げます。三十年度に対します二十九年度からの船舶建造費繰り越しは九十一億三千万円であります。そのうち未契約繰り越しが三十五億ございまして、このうちに三億八千八百万という「なし」に充てます金額を見ているわけであります。長官は二十八年度計画にかかります分と二十九年度計画にかかります分と両方合せて申し上げたわけでありますが、そのおのおの金額が三十五億円のうちに一応内訳としてあるものでありますから、長官は二十八年度建造計画分の二十三億に入るものを申し上げたわけであります。これは二十九年度、現年度予算としては一本に相なっておりますので、三十五億四百万という全体の未契約繰り越しの中に三億八千八百万という数字があるわけであります。私が決算委員会で申し上げたときに、あるいは言葉が不十分であったかと思いますが、そういうふうに御了承願いたいと思います。
  16. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうしますと、なお確かめておきますが、長官説明では、二十八年度建造費繰り越し分の二十三億という数字が出たのでありますが、二十八年度繰り越し分によって、「なし」の購入費として三億八千八百万円を予定されている。あなたの御説明によると、これは二十八年度建造費繰り越し分と、二十九年度建造費繰り越し分の九十一億三千万円で支弁する予定である、こういう御説明である。そういうふうに了解してよろしいですか。
  17. 石原周夫

    石原(周)政府委員 当然九十一億の繰り越しのうちでございます。ただ契約をまだいたしておりませんので、その未契約のうちだということを申し上げまして、そのために三十五億という数字を申し上げたのですが、その三十五億のうちで考えるわけだということであります。繰り返して申し上げますが、この三十五億の中には、御承知のように八十九億という二十八年度建造計画に着手いたしました分の予算と、二十二億という新年度に着手いたしました分とございます。これに対しまして、御承知のように一割節約をいたしたわけであります。従いまして、機械的に二十八年度計画分、二十九年度計画分に一割の金額をマイナスいたしまして、そのおのおのでどれだけの金額が未契約に一なっているかということを計算いたしますと、長官のおっしゃいましたように、二十三億という数字が三十八年度建造計画の八十九億の方から出てくるわけであります。しかしこれは二十九年度、現年度一本の予算でございますから、一割の節約をいたしました後におきましては、あるいは一括して三十五億という金額の方で申し上げました方がいいかもしれません。ただ繰り越しておりまするそれ以外の項目につきましては、たとえば二十八年度計画にかかりまする千六百トンの警備船甲、これの残りの分が幾らであるか、あるいは駆潜艇の分が幾らであるか、こういう内訳が一応ございます。ございますが、一ぺん二十九年度、現年度予算ということになりまして、それに一割の節約を食いましたから、あるいは三十五億という数字全体についてお考えになった方がより正確であろうということを申し上げたわけであります。
  18. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこで大体この「なし購入経費の出どころが明らかにされたのであります。大蔵大臣に伺いたいのですが、申し上げるまでもなく、予算財政法の規定によりまして、国会承認された項目に従って使用されなければならぬ。ところが二十八年度建造計画は、警備船等十六隻であることはもう明確にされている。三十九年度建造計画は、また駆潜艇等十四隻であることも明らかにされている。そこで今問題になっている「なし」、これは千五百トン余の旧駆逐艦であります。この駆逐艦を三億八千八百万円をもって本年度購入せんとするのが防衛庁計画である。もちろん大蔵大臣は、予算執行の監督の責任もあるし、また当初予算作成についての責任もあるし、また本年における各般の防衛庁関係予算作成についての責任も持っておられるわけであります。ただいまのこの軍艦なし」を購入する財源として国会承認したものは一円もないのであります。大体繰り越し予算は、当然当該年度におけるそれぞれの目的に従って使用せねばならぬことは申し上げるまでもありません。これがそこにある机一個余分に買うとか、あるいは何かさまつな小さなものを防衛庁が余分に買うというときなら別でありますけれども、いやしくも軍艦一ぱいを三億八千万円で新たに購入せんとするには、これはやはり国会承認を得なければいけません。国会承認を得た形跡はごうもない。過表の繰越金は、それぞれ予算目的があって国会承認してきたのであります。そうしてそれが残ったのであります。残ったものを新たに使おうとするのが、今の防衛庁長官等説明なのであります。こういうことは許さるべきであるかどうか、申し上げるまでもございませんけれども財政法の三十二条によりますると、各省各庁の長は、歳出予算については「各項に定める目的の外にこれを使用することができない。」すなわち目的外使用は法律が厳禁しておる。そこで、この「なし」を購入する目的国会承認した予算はないのであります。明らかにこれは財政法違反措置と申さねばならぬ。国会の議決を経ない予算を使うことは許されない。大体防衛庁予算というものが、いろんな角度から決算上におきましてもずいぶんと乱脈が現われるのは、年々繰り返しになっておる。そういうような慢性的な乱脈がここに一つ露呈しておるのじゃないかと思う。大蔵大臣は、こういうような膨大な金額目的外使用されんとしておることが国会で明らかになっておりますが、どういうようなお考えを持っておりますか。この明らかな違反をこのまま見のがしておくということでありますならば、予算秩序というものはありません。大蔵大臣の御明答を願いたい。
  19. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申し上げます。それは、今問題になっておりまする関係は、二十九度の繰り越し艦艇費のうちから出る、かように考えております。なお詳しくは政府委員から申し上げます。
  20. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 大蔵大臣は、財政法の趣旨、精神はもちろん御承知なんであります。今繰り返して申しましたごとくに、二十八年度建造計画というものは、警備船甲型千六百トン以下十六隻なんであります。この中には千五百トンの「なし」は入っておらぬのです。二十九年度建造計画は、三百トン型の駆船艇以下十四隻なんであります。これにも「なし」は入っておらぬのであります。そこで「なし」がこの机のような小さいものならば、この際は問題にしませんけれども、いやしくも三億八千八百万円を投じて購入せんとする、このような大きな予算を、国の経費を使わんとする問題でありまするから、予算によって承認せられました目的外の使途でないか、こういうのであります。でありますから、今あなたは二十九年度建造計画の一部としてこれが購入されるような、そういう御答弁答弁になっておらぬ。そんなものは二十九年度のどこを見たってありませんよ。——他から教えてもらってお述べになることは、まことに私も不愉快であります。こういう重大なことは、これは何もここで始まったことではないのです。この間参議院予算委員会におきましても、あなたの部下は説明しておる。この間決算委員会におきましても、若干これに触れてきたのであります。だから、その後におきましても十分検討されなくちゃならぬ。これは重大な財政法違反を犯しておるのです。二十九年度建造計画の中に入っておるという、そんなしらじらしい答弁はできませんよ。いかがですか、はっきりおっしゃって下さい。
  21. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申し上げます。私が承知しておる限りにおきましては、アメリカからくる船がありまして、もらう船がある。これと、日本国内建造するために、それで建造費が出ておりますが、今度の問題になっておるこの船を建造費のうちから購入する、こういうふうに考えておるわけであります。なお詳しいことは政府委員からお答えいたします。
  22. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 アメリカからもらうのか、借りるのか存じませんけれどもアメリカから受け取る軍艦と、日本建造する軍艦とは、それはおのずから違います。日本建造する軍艦には、それぞれ大蔵省に予算要求の際には、積算書もこまかく出るのでありますが、その中に入っておらぬ。そこでアメリカから軍艦がくるのがこなかったので、それにかえるという、そもそもそんなむちゃな予算執行はございませんよ。それこそ新たに国会承認を経なければならぬ。アメリカから贈与を受けるならば、贈与を受けるということは無償で所有を取得することであります。それと新たに予算を使い、国費を使って軍艦購入せんとすることは全く違う。こういうような重大な違いがありますことを、それをあなたはいいとお思いになるのだろうか。あなたの今のお説の通りとするならば、いよいよもって奇怪です。アメリカから軍艦がこなかったことに便乗いたしまして、予算を濫用いたしまして、目的外使用いたし、予算秩序を乱してしまう、こういうこと以外には何もない。どうです。
  23. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申し上げます。アメリカから贈与される船があるということが、これがこなくなったので、防衛力がそれだけ欠陥を生ずる。それで、どうしてもそれを補うために船を作らなければならぬ。ちょうどそのときにこの「なし」の引揚げがあった。これを買いまして、建造費の一部をもって「なし」を改造していく、そして使用しよう、こういうことであります。
  24. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あなたの答弁答弁になっておりません。軍艦アメリカからくる予定が狂ってこなくなったので、それでこちらで作るのだ。こういうような理由、事情を伺ったのではないのであります。よしんばアメリカからくるのがこなくなっても、またくるのがおくれておっても、それに取りかえるに新たに軍艦購入するということは、新たに予算措置をするのでなければ、予算外予算行使でないか、こういうのであります。問題ははっきりしておりますのです。そこでもしそうであるならば、あなたは財政法違反であるということをお認めになるのかならぬのか、それを聞きたいのです。財政法にはそれは違反しないのである、こういうことであるならば、それはまた一つあなたの責任も問うていかなければならぬ。違反であるならば、違反であるとして、あやまちを改むるにやぶさかでなければそれでよいのです。それも一つの方法なんです。何も今日買い取っておるのではありませんから、あやまちを冒さしめないという一つの心組みもありまして、質問しておるのです。だから、そういう予算措置は、財政法違反になるということははっきりしておるのですから、それをお認めになれば、それでよいわけです。それを認めないごとくに他の事実をもってきて弁明せんとすることは、これは全く間違っておる。間違ったことで答弁にならぬ。筋違いです。だから、この点について一つ明快にあなたの御所信を聞いておきたい。
  25. 森永貞一郎

    森永政府委員 財政法の問題がありましたので、私から補足してお答え申し上げたいと思います。駆逐艦なし」を改造するに至りました理由につきましては、先ほど来防衛長官または大蔵大臣からお答えがあった通りであります。要するに昨年度防衛庁艦艇増強計画に穴があいたわけでありまして、防衛庁としては、それをたまたま引揚げ作業が行われつつあった駆逐艦なし」を改造して、警備船乙程度の性能を持つ船に復元した方が、その穴を埋めるためにも一役立つし、また新たに建造いたしますよもり経済的であるわけでございまして、さような計画をもって私どもの方に御相談があったわけでございます。そこで問題は、船舶建造費という費目で改造費が出せるかという問題になるわけであります。改造と申しましても、この駆逐艦なし」の引揚げられましたものを買い上げて、それを改造するので、この買い上げ、ないしは契約解除をいたしまして、それを補償するわけでありますが、その補償する金は、全体の改造費から比べますと、きわめて一部の一割にも満たない金でございます。建造という観念をもってこれを律することができないような大きな買い入れ費が必要であるということなら格別でございますが、一割にも満たないような少金額でございますし、かつこれを活用することによって、全体としての予算の効率的な使用も達成せられる。防衛庁で当初予定いたしておりました艦艇増強計画も、これによって一部の穴が埋まるということでございますので、私どもといたしましては、船舶建造費使用目的に反しないものと認めまして、この計画につきましては同意をいたしたわけでございます。しかしこれは、二十九年度じゅうに実行には至りませんでした。三十年度になりまして所要の手続をとりまして、この改造を実行するということが明確に予定をされておりましたので、二十九年度からの繰り越しの中に、この分も含めて繰り越し承認いたしたわけでございまして、その間何ら財政法違反の疑いを招くようなことはないと考えておる次第でございます。何とぞ御了承をいただきたいと思います。
  26. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 主計局長の詭弁は、もうあまり聞かぬ方がいいと思いますから、別の機会にこまかい議論はすることにいたしまして、大蔵大臣に重ねて聞きたいのですが、この建造費軍艦を買うというようなことは、財政法、もしくは予算、あるいは財政執行、そういうような常識で許せるでしょうか。そういうことで国民は納得するでしょうか。改造費軍艦購入もしくは軍艦建造ということとは明らかに観念が違います。その内容におきましても、また予算的な積算におきましても一切内容は違います。そういう観念の違ったものをすりかえてここに説明せんとすることはもってのほかだと思う。これはあなたは御承知かどうか知らぬのだけれども、国の所有であったものを昨年の六月の二十一日に三百五十四万円で某々社に売り渡したのであります。これはまた別の機会で問題にしますけれども、さる有力な人も介在いたしまして、そうしてここに国が買い上げんとする問題なのであります。でありますから、あとから問題を法律的に合理化しようというような考え方は一掃しなければいけません。私がここであなたに聞くゆえんもそこからくるのであります。ですから、ありのままの事実を平明に解釈して結論に持っていき、政府として腹をきめ、方針を下していかなければならぬのであります。改造費建造費購入費とは違います。これは軍艦の体をなしております。私も見てきましたが、中身の機械もりっぱです。みがきをかければ動くのです。軍艦なんです。この軍艦を新たに購入せんとするのです。改造費に流用するなんて、予算の流用も財政法は禁止しております。目的外使用は厳禁しておる。こんな財政秩序の破壊の顕著な例は最近珍しいことでありますので、重ねてあなたの御意見を聞いておきます。今主計局長がいろいろと御説明でありましたけれども、あれは説明にならぬ。やはりあなたが大蔵大臣責任において国会答弁せなければならぬ。今のような御説明によっても、これは明らかにわれわれは納得できない事実なんであります。財政法違反になるのかならぬのか、もう一ぺん大蔵大臣及び防衛庁長官のお二人から、はっきりした御答弁を願っておきたい。
  27. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えを申し上げます。私は主計局長から説明をいたしました通り財政法違反にならぬと考えております。
  28. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あなたから重ねて根拠をはっきりしておいてもらいたい。こういうものが、白昼公然と財政法違反にあらずとして大手を振って国民の血税が使われていくということを見のがしては、大へんなことになりますので、その根拠をもう一ぺんはっきりしておいてもらいたい。
  29. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申し上げます。これはいろいろと御意見もあり得るとは思いますが、私は建造費の一部と考えていいという考えをいたしております。
  30. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あなたの御答弁は結局答弁にならぬ。答弁ができない。建造費の一部と解するというような、そういう常識を越えました、また財政法を無視したあなたの答弁というものは、国会におきましては実に聞きのがしがたいことであります。そこで防衛庁長官に聞きますが、あなたは一体この「なし」を三億八千万円をもって購入することは、新たに国会承認を経なければならぬ重要な費目であるとお考えになりませんか。
  31. 杉原荒太

    杉原国務大臣 購入費としては三億八千万円ということを考えておりませんが、購入ないしあるいはこれがたとえば契約解除にでもなって、大蔵省の所管になりましたら、その所管がえを受けるわけでございます。その後に改造を必要としますから、三億八千万円のうちの大きな部分は改造のためにあとで要する費用、こういうふうに考えております。
  32. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 これはまたごまかしになって参りました。軍艦購入するということ、その軍艦購入した後にこれが種々の改造がなされるということはわかるのでありますけれども、私が尋ねんとするのは、この軍艦なし」を購入する終局の売買価額は、まだきまっておらぬようでありますけれども、少くとも約四億円がこれに振り当てられておることは事実なんであります。これは一々ここで問答はしませんけれども、事実なのであります。そこで四億も出してこれを取得するということは、「なし」という新しい軍艦政府は取得するのでありますから、これは過去の二十八年度にも九年度におきましても、国会予算的な承認を得た事実がないじゃないか、こう言うのであります。この軍艦なし」を取得するということは財政法違反するのじゃないか、こう尋ねておるのであります。でありますから、この軍艦購入するという予算措置が、従来国会承認を経ました中には出てこぬということだけは、これは裏から見ても表から見ても、どこから見ても明らかなのであります。中身の改造費と取得する軍艦経費とどちらが大きいかということはまた別でありますが、すでにこの軍艦は、現状をごらんになったらわかりますように、体をなしております。中身もそのまま使えるのであります。そのまま使えることになっておりますので、これを取得しようとしておる。これを取得しようとする予算的な承認は、かつて得た事実はないのであります。これで一応は終りますけれども、重ねてあなたの所信を伺っておきます。これはこのままで済みません。これでほおかぶりして押し通して、この軍艦を取得しようというのは、横紙破りであります。そんなむちゃな予算執行をやられたら国民はたまらぬ。国会は黙って見のがすわけには参りません。もう一度あなたの信念を聞いておきたい。
  33. 杉原荒太

    杉原国務大臣 私の方の考え方を申し上げますと、最初申し上げましたような事情で、昨年度私の方で計画いたしまして、そうして国会の御審議をわずらわしました艦艇増強計画に予期せぬ支障が生じた。ところがたまたま繰り越しの方が余裕を生じたから、それをもってその欠陥を補いたい。そうしてそれは、新しく作るならば、たとえばあの大型を作ればおそらく十六億くらいかかるのではないかと思いますが、そうするよりも「なし」を取得してやった方がかえって経済的だ、こういう考え方でございます。
  34. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そういう答弁になりますと——くどくどしくそれをおっしゃるから、どうしてもこれは言っておかなければなりません。国が軍艦を取得する上におきまして、より経済であり、より効果的であるやいなやという問題と、財政法の筋を通して、予算の法的な秩序を維持していかなければならぬという問題とは違うのであります。これは申し上げるまでもございません。だから得になるから、経済的であるから財政法を無視してでも予算執行できるのだというような、そういうことは政府はできないのであります。政府は、国会承認を経なければ予算執行できないのであります。国会承認ということは——申し上げるまでもなくその経費目的がきめられております。目的以外に使うことはできません。ですから国会承認ということは——目的金額、時期等それぞれ規定いたしましたものが、この膨大な予算書であることは申し上げるまでもございませんです。ですから、予定計画が狂った。アメリカから入らないので、狂ったので、その方が得がいくのだから、経済的であるから、安いから買うのだ。十六億とするのが三億八千万なら安いじゃないか、だから買うのだということは、これはやはり予算秩序として許すべきものではないのであります。それは国会承認を経ておらぬのであります。でありますから、外国から、アメリカから入って来なかったのでそれを補う、穴埋めする。この穴埋めするということは、ただちに国会承認を得たものであるということにはならぬのであります。アメリカから来なかったという事実と、国会承認を得ておらぬということは、財政上の見地からいたしましたら、別に切り離して考えなければいけません。ですから私は、今予算措置に対する財政法的な角度からこれを検討しているのです。あなたらのお立場なりお考えを追及しておるのです。でありますから、経済的であるかないかということを問うておるのでないのです。よしんばこれが一億円であろうとも、問題は同じことです。二億円であろうとも、問題は同じことです。国会承認を得ないで予算目的以外に予算を使っていけないということは、厳として守ってもらわなければならない。防衛庁は守らない例があまりに多いのです。そしてこの例がまた出ておるのではないか。しっぽをつかまえておりながら、なお今日しゃあしゃあとしてこれをほっかぶりして通っていく態度は、黙過することができない。だから穴埋めするから経済的だという、そういうお考え方は許すことができないのですが、今なおそういうお考え方で行かれるのですか。もしそれが財政法上いけないのだということをお認めになったら、それから後にあなたのおっしゃるような適当なる措置を講じなさったらいい。それさえ認めないという行き方は少しあつかましくないのではないですか。そんなにまで横紙破り的な答弁で押し切っていこうという態度は、私はよくないと思う。防衛庁長官、あなたしっかりして下さい。あなたはこれから大きな予算をまかれようとしているのです。そんな大きな予算をまかされようとしているのに、今のような態度で行かれたら大へんです。予算外目的使用することは禁じております。ですから、いけないならいけないで、認められたらよいのです。御両人とも、こんなわかり切ったことに部下のいろいろな助言によってしらを切って行かれようとする態度は、よくないと思います。しっかりして答弁して下さい。
  35. 杉原荒太

    杉原国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、昨年度予算審議の際御説明申し上げ——もちろん予算書に船舶建造費内訳というものは出ていないわけでありますが、私たちの方で増強の計画を御説明申し上げまして、そうして船舶建造費予算認めていただきましたわけでございますが、先ほどから申し出すように、国会で御審議を願いました建造計画増強計画欠陥を生じた、それでただいま申しましたように措置したい、こういう趣旨でございまして、これは財政法との関係にいろいろ御意見がございましょうが、私らの方といたしましては、財政法違反する措置というふうには、こういうことに違反する措置をとろうというような考えは持っていない次第であります。
  36. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それでは、なおその問題は後日に残しまして、次に質疑を進めたいと思います。  第三は、同じく防衛庁予算についてであります。防衛の予算及び予算執行の状況を過去数年にわたりまして検討いたしてみますと、第一に気づきますことは、予算の総額のうちに占めております防衛庁の扱う、また防衛に関する諸経費があまりに巨額に上っておるという事実であります。毎度トップを占めて参っておりますという事実であります。そこで第二に大蔵大臣に聞いておきたいのでありますが、当委員会におきまして、五月四日でありましたかのあなたの本年度予算の概略の説明の中に、防衛関係の諸費が千三百二十七億に限定されて、その範囲内で予算執行するということを相当明確に言っておられる。これはいろいろな機会に繰り返しておられるのであります。そこであなたに伺いたいのだが、防衛関係の諸経費が千三百二十七億円を超過するようなことになりましたならば、相当責任を負うべぎじゃないかと思います。この点につきまして、あなたはなおこの線を明確に堅持して行かれる御所信であるかないか、これをまず聞いておきたい。
  37. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申し上げます。本年度予算におきましては、私は、防衛全体の費用は千三百二十七億の線を堅持いたしておるわけであります。
  38. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 今の点につきましては、なお少し伺う機会を持ちたいと思いますし、これは外務大臣の関係もありますのであとに譲ることにいたします。  そこで私は、なお防衛庁予算関係をめぐりまして聞きたいのですが、防衛庁予算は、ここ数年の間、はなはだしく繰り越しがたくさんにあるのであります。この予算繰り越しの問題は、これは最近社会の視聴を集めておりまして、非常に日本予算の上に重大な関心を持ちつつあるのであります。私は防衛庁予算を典型的な一つのものといたしまして、少し予算繰り越しの点に問題を限定いたしまして、伺ってみたいと思うのであります。  試みに二十六年以来の繰り越し額を調べてみますと、二十六年から二十七年にわたりましては、百五十一億八千二百万円、二十七年から二十八年にわたりましては、二百八十億六千四百万円、二十八年から二十九年にわたりましては、二百五十二億四千九百万円、二十九年から三十年にわたりましては、最終の確定数字ではありませんけれども、二百三十五億二百余万円、こういうことになっておるのであります。また国全体の繰り越しの状況を見てみますと、これまた実に大きな額に上っております。試みに予算についてみますと、二十八年度予算の上におきましては、これは一般会計、特例会計を通計いたしまして、予算の三六%、これが繰り越し明許費になっております。また二十九年度についてみますと、一般会計におきましては四三・三%、特別会計におきましては二七%ということになっております。三十年度の一般会計におきましては、約四〇%、こういうことになっております。この膨大な繰り越しができるというのはどういうわけであろうか。それからまたこの巨額な繰り越しから、ひいては歳計剰余が実に巨額に生じております。これは申し上げるまでもないことでございますけれども、歳計剰余が多額に生じまして、そのまた中身を調べてみますと、実に過大な不用額が現われてくるのであります。大蔵大臣も、同僚の質問に対し、また私の別の委員会における質問に対しましても、繰り越しの巨額に上るということにつきましては、それは避けるべきである、なるべくこれを少くしたいというような御意向のことは、これは私もよくわかるのであります。しかしながらそういうようなことの御説明はあり、またほかの政府責任者の説明答弁によりましても、やはり繰り越しが少いことを欲するということは一応言われる。一応言われますけれども、しかし現実におきましては、今申し上げましたような、実に巨額な繰り越しが毎年々々行われております。これで一体いいのでしょうか。この繰り越しが巨額に上るということは、従って歳計剰余が巨額になり、その中には不用額もあり、国民の不要な税金が吸い上げられるというようなことにも結果的にはなるのであります。でありますので、この繰り越しが非常に巨額であるという問題は、これはやはり日本予算の上におきましては、一つのガンでないだろうか。大きな盲点でないだろうか、ここにいろいろと財政が紊乱するところの一つの原因があるのではないか、こういうことにさえ考えるのであります。でありますので、実に巨大な繰り越しにつきましては、大臣はほんとうにどういうようにお考えになるだろうか。また防衛庁長官にいたしましても、あなたの方の予算は実に目立って繰り越しが多い、実に剰余金が多い、実に不用金が多い、どうしてこうだらしがないのだろうかということを、私ども予算決算を通覧して、予備隊以来、保安庁、防衛庁とどこを見ましても、あなたの方の関係の丁寧、決算に現われるのがこの問題なんです。この繰り越しが巨額になっておるということに対する、御両所のほんとうの偽わらざるお考えをまず聞いておきたい。
  39. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申し上げます。今お話がありましたように、繰越金が多い、これにつきましては、面会にも申し上げましたように、私もこれははなはだ遺憾に存じており、できるだけこういう繰越金を少くするように努めていかなくてはなりませんことは申すまでもありません。幸い最近の情勢は、この繰り越しが若干ではありますが、年々低下の情勢をとっておるのであります。こういう繰り越しがどうして起るか、これはしさいに検討を加え、そしてよってくるところをよくきわめなくてはならぬと思っておりますが、おおむねただいままでの私の考えでは、特に終戦後における国家活動の非常な複雑多岐にわたっておるところからもきておるのではなかろうかというように考えておるのでございます。今後十分に検討を加えまして、御意見のように、繰越金を適正なところに、少しでもこれが乱用されるということのないように努める覚悟をいたしております。
  40. 杉原荒太

    杉原国務大臣 予備隊時代から保安庁、今の防衛庁にわたりまして、繰り越しが確かに多いというのは事実でございます。二十九年度から三十年度にかけて約二百三十五億くらい、そしてそれの約八割が施設整備費と船舶建造費、あとの二割が機材関係というように大体なっておるのでございます。施設関係におきましては、御推察の通り防衛庁で一番原因の生ずるのは、用地の選定、取得ということに非常に時日がかかるということ。それから御承知通り防衛庁では、たとえば火薬庫だとか、射的場とか、特殊の施設を要しますので、特に用地の点等には問題があります。それから船舶建造につきましては、普通の商船と違いまして、これは吉田委員特に御承知でありますが、新しく日本で作っておりますのは、戦後初めての計画にかかるものもありまして、これが基本計画を作るまでに意外の日数がかかる。また原価積算等にまだ経験がないので、非常に意外の日数を要するというような実情でございます。また機材関係につきましては、これはほかの各省の機材費と違いまして、装備費の点等につきましても、特に厳格な性能の要求がありまして、使用規格の決定等にも意外の日数を要する。また使用実績からみましても、新たに試作研究をして、またやっていかなければならぬというようなものなど非常にございます。そういうことが原因になっておるわけでございます。  それからまたもう一つ特殊な関係としては、たとえばアメリカ側との関係でございますが、施設などにおいても、最初予定しておりました施設の解除の時期が、予定よりもおくれるというような場合がよくあることでございまして、それからたとえば船舶建造などの場合、武器はアメリカから貸与を受けるわけでございます。それが、予定よりも実際にこっちの供与を受ける時期がおくれる、いろいろそういった特殊の原因がある次第でございます。しかしいずれにしましても、吉田委員御指摘の通り繰り越しということは何といっても年度独立の原則からしても例外でありまするし、なるべく少くしなければならぬということはその通りでございますし、実は本年度予算編成に当りましては、従来のそういった実績等からいたしまして、できるだけ実はそういう点を留意いたしております。たとえて申し上げますと、施設関係、それから船舶建造関係にいたしましても、器材関係におきましても、そういう点、実は留意して予算編成に努めておる次第でございます。
  41. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 大蔵大臣に伺いますが、あなたの根本のお考えといたしまして、予算繰り越しを少くするということについて御同意であることは、これは当然のことでございます。しかし私は、ここ数年来の予算決算の経過にかんがみますると、特に防衛庁関係、保安庁関係などの予算繰り越しがルーズである、こういうことを痛感するのであります。そこであなたに伺いたいのでありますが、あなたもそれだけの信念、誠実さを持って予算作成をなさった責任者といたしまして、お伺いするのです。本年度一般会計予算の百九十三ページによれば、防衛庁といたしまして、器材及び被服費が繰り越し明許になっておる。ところが一方警察庁並びに国家消防本部の予算におきましては、被服などのごときは繰り越し明許費にはなっておらない。さかのぼってみると、二十六年ごろには、警察予備隊の食糧費が繰り越しになっております。そういたしますと、人間が着る衣類が防衛庁だけ繰り越し明許になり、あるいは場合によりますと食糧まで繰り越しされておる。もっともこの食糧の繰り越しは、事故繰り越しと思います、詳しくは今わかりませんけれども……。そこで防衛庁に限って、なぜ一体被服費まで繰り越さなくちゃならぬか。あるいは人間が集まるかどうかわからぬので繰り越したのだというようなことであるならば、また問題は別に生じてきます。なぜ一体警察にしても消防にいたしましても、同じく制服を着ました公務員であるこれらの両者と異なりまして、同じく総理府管内の予算であるのに防衛庁だけを繰り越し明許にするか、これは一体どういうわけなんですか。できるだけ繰り越しというものを多くしておくということがアメリカに対するゼスチュアでもあるのか。そういうようなことがほんとうはよって来たる原因であるということであれば、また問題は別であります。しかしほんとうは、財政法執行というような角度から、一律平等に同じように予算を査定するというのであるなら、なぜ一体防衛庁だけ被服費のようなものまでも繰り越しにするか。そういうだらしのないことをしておるから、防衛庁繰り越し剰余が巨額に出てくるのだ。こういうように考えるのですが、その点についてはどういうようにお考えになりましたか。
  42. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申し上げます。器材、被服、こういうものが防衛庁だけ明許に入っておる、特に被服が入っておる、これはどういうわけか、こういう御質問であると思うのですが、これは、防衛庁の被服は、やはり他の被服と違いまして、防衛力、兵力ということと非常に関連を持つものである等に基きまして、この発注その他製作におきまして、時間的にも他とは非常に相違する、こういう状況下にあるわけであります。
  43. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 わからぬ。そういう説明では答弁にならぬ。もっと誠実に答弁しなければいけません。
  44. 杉原荒太

    杉原国務大臣 なるほど、被服についてちょっと奇異にお感じになるかもしれませんが、もちろん一般被服について、そういうことを予想されておるわけではございません。被服の中で、ジェット機用の被服、これは今まで日本で製作の経験もございませんので、場合によっては、これはこの秋の発注までに意外の日数を要するかもしれぬ。それからもう一つは、北海道在勤者の耐寒用被服、これは北海道に部隊が入りますのに、その前提といたしまして施設が必要なわけでございます。その施設の関係があるいはおくれるかもしれないというそういう特別のものに限って、実はその懸念がございますので、被服費をお願いしておる次第でございます。
  45. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 しかしそういう懸念があるというようなことでは——あなたの方の経理局長からは、財政法十四条の三の前段の経費の性質上、繰り越し明許費として要求してあるのでという御説明が別の機会にあったのでありますが、しかしそういうような耐寒用であるとか、ジェット機に関連がある被服というようなものが繰り越し明許になるということは、全く繰り越し明許を認めました法律制度の精神というものをじゅうりんしておることになります。あなたのようなそんなお考えでいくならば、一体国の予算というものは、一切百パーセント繰り越し得る、そうなりますね。あるいは耐寒用であるとか、耐熱用であるとか、あるいは火災が起るかもわからぬ、あるいは事故が起るかもしれぬ、腹痛が起るかもわからぬ。いろいろな世の中のできごとを一々懸念いたしましたら、一体会計年度予算というものはできぬです。会計年度を無視するということであるならば、憲法が八十六条によって会計年度の独立を明示しておるということは一体何の意味があるのか。こういうことを守っていくというのが予算の秩序ではないだろうか。大蔵大臣並びにあなたにも聞きますが、一体根本的に個人あるいは会社の予算と同じようにでもお考えになっておるのだろうか、その信念から聞いていきましょう。国の予算というものは、少くとも法秩序あるいは法規範を持ったものであると考える。法律とは同一でありません。いろいろな条件が違いますけれども、少くとも法規範としてこれを考え遵守していくというところに、財政秩序が維持されるのだろうと思う。この点どうです。これは根本の信念であります。そこがぐらついてはっきりしないから、こんな問題が起ってくる。繰り越しというようなものが実に乱用されておる。繰り越しの乱用というのは脱法ですよ。あるいは財政法違反です。繰り越しに対して漫然としたお考えを持っておっては大へんであります。一体この予算というものは、少くとも法規範的な性格を持ったものである。こういうふうに厳格に考えなければならぬものだということを、大蔵大臣並びに防衛庁長官はお考えになっておりますか。
  46. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申し上げます。先ほどから申し上げますように、繰り越しについては厳格に考えておるわけでありますので、明許繰り越しにいたしましても、実際これを実行する場合におきましては、やはりこれは厳重に考えなくてはならぬと思っております。なお防衛庁関係につきましては、私も先ほど十分に御説明申し上げなかったのでありますが、防衛庁の仕事の性質から、真にやむを得ない繰り越し認めておかなくては、私の考えとしては、いろいろの仕事の上においてなかなかうまくいかないと思います。たとえばこれは一例でありますが、病院の看護婦の被服とかいうふうな問題、その他こういうふうな類似の問題で、繰り越し認めておかなくてはならぬものもあるわけです。そういうふうな現実に即して考えて、この程度繰り越し認めておかなくてはなるまい。こういうふうな考えでおるのでありまして、決して繰り越しを厳重に考えてないというわけではないのであります。
  47. 杉原荒太

    杉原国務大臣 繰り越しについての根本的な考え方は、吉田委員のおっしゃっる通りに私も考えております。そしてまた明許繰り越しにしましても、事故繰り越しにしましても同様でありまして、また実際上においても、その点は財政法などでも特に厳格にきめられておりますので、その精神は私も十分守っていかなくてはならぬことだと思います。ただしかし、先ほどから申しますように、防衛庁の施設とか器材とかは、そういう特殊なものが相当多いということは御了解願いたいと思います。
  48. 牧野良三

    牧野委員長 吉田君、時間を御考慮願います。
  49. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それでは、防衛庁の問題は今のところしり切れトンボになりまするので、私は別の機会に伺うことにしまして、質問を第三に転じたいと思います。  巨額な繰り越しがあり、従ってまた実に巨大な国庫剰余が生じておりますことは、これは私よりもあなたの方がはっきりしておるのじゃないかと思う。国庫剰余につきましても、これはまことに大きなものでありまして、二十八年度のごときも、八百十一億円に上っております。あるいはまた大蔵省から出しましたこの資料によりましても、三十年度への純剰余は七百四十八億円に上っております。膨大な剰余であります。そこで巨大な繰り越しができ、また巨額な歳計剰余が生ずるというようなことで、また問題が次に派生しておる。これは年来一部では問題にされておりましたが、例の指定預金の問題であります。これはよほど最近は減額して参ってはおりますけれども日本銀行の本年五月十日の国庫金の貸借対照表の残高によりますと、指定預金は百十七億円余になっております。もっとも内地指定預金は六十二億二千百万円ということになっております。この数字は正確でありましょう。そこで、一体こういう指定預金が行われるというところに、私は日本財政執行の盲点があるのじゃないかと思うのです。一体大蔵大臣、これはどの法律に基いてこういう予算上の国庫金が使われるのでありましょうか。この指定預金につきまして、法律上の根拠をこの際はっきりしておきたいのです。
  50. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。私の基本的な考えを申し上げますれば、財政においてこの国庫剰余金が非常にたくさん出るということについては、これは一見財政の健全を示すようで、非常にいいようでありますが、しかし他面国民生活、あるいは経済の関係考えますと、必ずしもこれはたくさん残るからいいというわけにはいかないと思います。従来これが起りましたのは、やはり歳入関係があると思うのでありますが、自然増収等で自然剰余金等が出る。そこでこういうものについては、今後経済、国民生活等から考えまして、正常な形をとり——これはしょせん減税に向けるのがいいじゃないか、私はこういうふうに考えているわけでありますが、現在すでにあります国庫剰余金については、これを日本経済のために必要な面、特に中小企業等に手を差し伸べる意味におきまして預託をやっているのでありますが、本質からいうと、私は、こういう国庫余裕金をもってそういう経済行為をやることがいいか悪いかについては、非常な検討を要するというふうに考えているわけであります。
  51. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 その点につきましては、やはり財政秩序を確立するという観点から、筋を通していきたいと思うのであります。私はこの問題は、中小企業等に対する各般の施策の必要上国庫金を用いるということであれば、これは法律を作るとか、あるいは別の角度から制度を整備すればいいと思います。数百億円からだんだん減ってはきておりますけれども、この減るというゆえんも、おそらくこれは非常に不当である、あるいは財政法考え方からいたしますと、違反であるというようなことが内在しておったのじゃないだろうか、こうも考えるのです。そこで私に言わしめますれば、これはやはり財政法の八条の違反になるのじゃないかと思います。これに対するあなたのお考えを伺っておきますけれども、八条によりますと、国の債権の効力を変更するには法律に基かなくちゃならぬとある。そこで国庫金がこのように指定預金になるということは、これは一つの運用の形から見ましても、単純に国庫金としてあるのではないことはもちろんでありますから、こういうことは、一種の国が持っております日銀に対する預金債権の効力を変更しているのに当るのじゃないか。こういうこともやはり厳に筋を通しておかなくちゃならない。政策は政策、必要な施策は施策といたしまして、財政法を守っていくという上からいいまして、これはやはり筋を通さなくちゃならぬ、こう思うのであります。だからこの点もすみやかに何らかの措置をとっていかなくちゃならぬ。これは漫然とあなたが思っているということでは、許すことのできないものであろうと思う。この財政法に対する考え方ですが、これは一つ明確にしておきたいと思います。
  52. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申し上げます。この指定預金のことは、すでに長い間の慣行ともなっております。そういう意味から申しましても、十分研究の上でもあるし、財政法違反しておるとも考えておりませんが、しかしこういう法律関係は、やはり私も御意見のように明確にいたしておくことがいいと思いますので、十分検討を加えることにいたしたいと思うのでございます。
  53. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 この繰り越しの問題は、やはり一応はある程度の結論的な方向だけでも一つはっきりせぬといけないと思いますので、少し飛躍いたしまするけれども、結論的に一応聞いておきたいと思うのです。  繰り越しが現在防衛庁経費のごとくに四割になり、それからまた国の全体の予算から見ましても、さきに申しましたように厖大な繰り越しができる。こういうことは、申すまでもなく会計年度の原則を破るという重大なことになるわけであります。これはただに法律の趣旨を乱すというだけではございません。憲法によりまして国会の財政の監督権を持っておる。財政民主主義の基本的なものは、国会予算審議する、国会が財政について一切の監督権を持っておる。行政府といたしましてはこれを執行する。こういうことであります。ところが繰り起しなるものが巨額に出て参りますと、国会の持っておりまする財政の審議権、財政に対する最高の監督権、こういうものが行政府によって乱されてしまいます。そうして一番大きな点は、やはり会計年度の原則を破ることであります。もし五割以上の繰り起しができるということでありましたならば、原則は例外によってつぶされてしまうことになります。繰り越しは例外であります。憲法によりましたならば、予備費のみが年度独立会計の例外になっておる。ところがやはり実際の必要によりまして、継続費、その他繰り越し制度ができております。できておりますけれども、それはあくまでも例外なのであります。防衛庁のごとく四割も繰り越し認める——四割も繰り越し認め、あるいは五割認め、六割認めるということになってきましたならば、国会が財政をコントロールすることの根本的な原則はくつがえされてしまうのではないでしょうか、これは重大なことなのです。一体どこに限界を置くことが妥当なのだろうか、この原則を保持することになるのだろうか。原則をくつがえしてしまうようなことはでき得ないと思う。ここに予算編成の根本方針といたしまして、本年度における繰り越しはどういう限度が妥当であるかということも考えなくちゃいかぬ。これも必要である、あれも必要である、これも理由がある、これもやむを得ないのだということになりましたならば、原則はなくなってしまいます。ひさしを貸しておもやを取られると同じことになります。そういうことになる危険があるのであります。そこなのですよ問題は。それをはっきりしておきたい。同僚議員の質問に対して、財政法欠陥だというふうに大蔵大臣は御答弁になっておる。そんならそれを聞いておきたい。財政法欠陥があるならば、どこに欠陥があるのか、どうしようとしておるのか、そして財政法をあなたは整備しようというお考えがあるのか、そんならその改正案でも今国会に出すような御用意まであるのか、その点を聞いておきたい。さかのぼってどの辺に妥当な線を引くのがいいのか、そもそも数額において可能性があるのであるか、性質をもっと制限する必要があるのではないか、あるいは思い切って繰り越し明許費というものを制度上なくしてしまおうということさえわれわれは考えるのであります。そういうふうに抜本的に対策を講じていくのでなければ、憲法の八十六条並びに八十三条の財政法の基本原則なるものは維持されません。これは予算繰り越しによってだんだんと侵害されて参りまして、遂に原則はこわされてしまうのであります。重大な関頭に立っておると思う。本国会におきましてこういう点を明瞭にするということが、私は予算の将来のために最も必要だと思う。また国会予算審議権の上から見ましても必要だ、こういうふうに考えております。このような角度から検討いたしますときに、抜本的に、もう繰り越し明許費というものを制度的になくしてしまったらどうかとさえ考えますので、これに対するお考えと、財政法欠陥があるときにはもっともだが、財政法欠陥があるというならば、財政法欠陥はどういうふうに是正しようというお考えがあるのか、その用意でもあるのかどうか、改正法を出そうとなさるのかどうか、その点までも私はあなたにはっきりした御答弁を願いたいと思います。
  54. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えを申し上げます。私もただいまの御意見に全く同感いたします。御意見のように今後やるべきだと私は思います。ただこの繰り越し制度を全然なくしてやるということは、財政運営の上から事実上困難である。従いまして、お説のようにこれをどういうところに持っていくかということを、制度的にも十分検討する必要があろうかと思います。そして今日の事態におきましては、今後この繰り越し承認についてきびしい態度をとっていくようにいたします。私は、お説はもっともですから、十分研究をしまして、これはあまり画一的にやることは非常にむずかしい問題でもあろうと思うのでありますが、しかし原則的には、おっしゃるような御意見に従うことがいいだろう、かように考えております。
  55. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 なおお尋ねしたいことがありますけれども、一応これで打ち切ります。
  56. 牧野良三

    牧野委員長 それでは午前中の質疑はこの程度にとどめ、午後は一時半より再開することとして、暫時休憩いたします。    午後零時二十八分休憩      ————◇—————    午後一時五十分開議
  57. 牧野良三

    牧野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。滝井義高君の留保質疑がありますので、この場合お許しいたします。時間は厳重に二十分を限ると御本人から仰せられますからまことにけっこうであります。滝井君。
  58. 滝井義高

    滝井委員 外務大臣にお尋ねいたします。先日多分二十五日の当委員会であったと記憶いたしておりますが、三宅委員の質問に対して、台湾の問題については米側と常に情報の交換を行なっており、原水爆を使う考えがないという意思表示をアメリカ側から受けておる、こう御答弁に相なったのであります。台湾の問題に関してアメリカは原水爆を使わないということは、日本の基地から原水爆を使わない、こういう解釈なのかどうか、これを一つこの機会に明白にしていただきたいと思います。
  59. 重光葵

    ○重光国務大臣 私の申し上げましたのは、全く今お話しの通りであります。そのときの問題は、日本を基地として原水爆が使われるか使われぬかということが議論の根拠にあったわけであります。台湾の問題に関してもその続きでありまして、私は台湾の問題についても、大戦争がもしあっても、日本を原水爆の基地にする考えはない、そう言える理由を持っておる、こう申し上げたのであります。   〔委員長退席、重政委員長代理着    席〕
  60. 滝井義高

    滝井委員 それならばそういうアメリカの意思表示は、日米合同委員会でそういう意思表示があったのか、それともアリソン大使からそういう意思表示が外務大臣に対してあったのか、それともアメリカ国内で井口大使を通じてあったのか、これをもうちょっとはっきりしてもらいたいと思います。
  61. 重光葵

    ○重光国務大臣 いずれのところでそういう意思表示があったということをはっきりと私は申し上げないでもいいと思います。これだけは申し上げられます。合同委員会などでしているのではない。アメリカ責任者から私自身がさように申し上げる理由を聞いた、こう御了解願いたい。
  62. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、日米合同委員会というようなところでなくして、それはアメリカ責任者から文書で外務大臣に来たのか、それとも単に口頭で、台湾の水域においては日本の基地から原子爆弾を使いませんということをお聞きになったのでしょうか、それはどちらですか。だれから聞いたあるいはだれから文書をもらったということを言う必要はありませんが、文書か口頭か、この点だけ一つ明確にしておいていただきたいと思います。
  63. 重光葵

    ○重光国務大臣 それはどういう意味でお聞きになっておるのか私はわかりませんが、はっきりとそういうことを——それは文書で、契約的のことではございません。
  64. 滝井義高

    滝井委員 文書ではないということになると、それは何かお茶飲み話とか雑談のうちに簡単な意思表示があったのか、それとも正規に外交上のお話として、あなたのいわゆる談判としてあったのか。国会での答弁だからまさかお茶飲み話ではないと思うのですが、正規の外交交渉であるならば、それは口頭でもかまわぬと思いますが、口頭でもあったのか、これを一つ明白にしておっていただきたい。
  65. 重光葵

    ○重光国務大臣 御質問の意味が私にはよくわかりません。わかりませんけれども、ただ無責任な茶飲み話ではないということは、はっきり申し上げておきます。
  66. 滝井義高

    滝井委員 まあアメリカの政治的な責任者から、台湾水域においては原子爆弾を日本の基地から持っていって使うことはない、こういう言明があったと、こう了解いたしておきます。  次にお尋ねいたしたいのは、日米共同声明に関してでございます。先般二十七日の当委員会でそこにおられます大蔵大臣並びに防衛庁長官に、この問題についていろいろ御質問をいたしたそのときに、日米共同声明の中に行政協定第二十五条第二項(B)に定められた防衛分担金を本日本会計年度に限り百七十八億円削減することとこうなっておりますが、これは私たちはもう来年からは削減できないと思うておったんです。ところが防衛庁長官並びに大蔵大臣の御答弁では、三十一年度もこれは削減ができるのだ、またその努力をやっていきたい、こういう御答弁があったんですが、外務大臣もその通り来年もこれは削減できるという御確認を持っておられるかどうか、これを一つ答弁願いたい。
  67. 重光葵

    ○重光国務大臣 防衛庁長官並びに大蔵大臣の御説明通りでございます。
  68. 滝井義高

    滝井委員 両大臣の言明の通りだという御確認をいただきました。そうしますと、同じ共同声明の中で、本会計年度日本経済安定の成否を決する年であるにかんがみ、米国政府は特別の協力措置として、本会計年度以降には適用されない前記の防衛分担金削減に同意したものである、こう書いておりますが、これは今の大臣の御確認から、百七十八億円は削減をしないけれども、百七十八億円以下ならば削減があり得る、こういう解釈になると思うのですが、そう解釈して差しつかえありませんか。
  69. 重光葵

    ○重光国務大臣 これは本年度は、こういう工合で特別の協力措置としてこうやった、このことは来年は同じようなことじゃない。こういうことであって、今御答弁申し上げたことは来年の削減の交渉が杜絶したということでは少しもないのであります。それじゃ来年どういう防衛分担金の軽減を得るかということは、全然新たな見地で来年の状況に応じて交渉し、また向うもそれに応ずるということに相なっておるわけであります。
  70. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、ことし削りました百七十八億円以上も来年の交渉では削り得る、こういう解釈になるのですが、そう解釈して差しつかえありませんか。
  71. 重光葵

    ○重光国務大臣 それ以上になるか以下になるかわかりませんけれども、私はそれ以上も一つ勉強してもらいたいと、こう実は考えております。
  72. 滝井義高

    滝井委員 外務大臣ぜひ一つ百七十八億以上削る努力をしていただきたいと思います。ところがそういう御努力をしていただかなければならないが、同時にこの共同声明の中には——この前もいろいろ御質問をいたしたのでございますが、——昭和三十一年及び引き続く年間において、自己の資力のより大きな部分を防衛目的のために振り向けることが日本政府の意向であり、政策であることが明らかにされたと、こうなっておるわけであります。そうしますと、防衛分担金は御努力によって百七十八億以上は削減できましょう。ところが一方、風船をこっちをつぶしたらこっちにふくれ上ってきたというのでは、これは国民にとってはその外交交渉はちっともありがたくないわけです。そこでことしのワクは千三百二十七億というワクで御交渉いただいた。これは大成功であったということを、たびたび大蔵大臣はこの委員会の席で御言明になった。そうすると、来年は百七十八億円より以上の減額があっても、これはより多くの資力をつぎ込むということでは、ちょっと矛盾をしてくる感じがするのですが、より多くの資力という意味は、私はことしの七百六十八億の防衛分担金よりか多くなる、こう解釈されるのですが、外務大臣はそうお考えになりませんか。
  73. 重光葵

    ○重光国務大臣 防衛分担金か多くなる、こういうのですか。
  74. 滝井義高

    滝井委員 いや防衛庁費です。
  75. 重光葵

    ○重光国務大臣 それは行政協定にあります通りに、防衛力の増強をやる、こういうことに見合って防衛分担金の軽減の話ができるわけであります。こちらの方は来年はことしよりも防衛費を増加するという考えを持っておる、こういうことを、約束ではございませんけれども意思表示をいたしたわけであります。それでありますから、そういう防衛費の全額がことし通りに行くか行かぬかということは、これは来年になってみなければわかりません。しかし分担金はことし軽減を見たから、それ以上は軽減を要求することはできぬということじゃないわけですから、そちらの方は先ほど御答弁した通りであります。しかし防衛費の全額がどうなるかということは、ちょっと今予想がつきませんことを申し上げます。
  76. 滝井義高

    滝井委員 その問題は時間がありませんからこれ以上突つ込みませんが、そうしますと、現在日ソ交渉が行われようとしておりますが、この日ソ交渉によって、反動的に日米安全保障条約というものが強化されて、たとえばやがて来年度予算編成期が八月終りごろからやってきますが、来年度における防衛分担金の削減の交渉に影響を及ぼす、いわゆる支障を及ぼすというようなことはないかどうか。この点を一つこの機会に念のために聞いておきたいと思います。
  77. 重光葵

    ○重光国務大臣 日ソ交渉の結果がどういう影響を及ぼすかということは、これをお答えするとすれば、影響がないと私はお答えするよりしかたがありません。それがまたどういうふうに世界情勢に大きく反映してくるか、また深刻に反映してくるかということは、今日予想して見るのに、そう大きな影響はないと思いますけれども、これはその変化を待たなければわからぬと申し上げるよりしかたがないと思います。さしあたっては、それは全然この問題には関係なく取り扱い得る。またそうしてさしつかえない、こう思っておることを申し上げます。
  78. 滝井義高

    滝井委員 ぜひそうありたいと願うのですが、時間がありませんから次に進みます。  次に生産性本部についてでございますが、外務大臣は、生産性向上に関する日米交換公文というものを、四月七日に交換されたことを御記憶になっておると思いますが、あなたとアリソンさんとの間に取りかわした文書で、米国政府は具体的にどのような援助を日本にしてくれるというのですか。
  79. 重光葵

    ○重光国務大臣 この取りきめが日本に対する技術援助の一部分であるということは御承知通りでございますが、その援助のうちにはいろいろなことがございます。それは文書の中にあるかと思いますが、各種専門家の派遣とか、諸技術の資料の提供を受けるとか、情報を交換するとか、ある場合においては、そのために必要な経費の分担のことまでもあるように承知をいたしております。しかしこの生産性本部を今日実際どういう工合に動かしておるかということについては、他の経済閣僚、特に通産大臣にお願いして御説明をいたしてもらいたいと思いますが、そういう各種の援助計画を持っておる、こういうことを私から御説明をいたします。
  80. 滝井義高

    滝井委員 私案はこの前通産大臣にもいろいろ尋ねたいと思ったのですが、外務大臣がおられませんでしたので、深く突っ込むことができなかったのですが、実はこの交換公文によりまして、日本政府は、この計画に基いてアメリカの合衆国が供与する援助の効果的な利用を確保するため適当な措置を講じなければならぬことになっておるわけです。しかも、そのいろいろの計画に基いて活動したならば、アメリカ合衆国にどういう活動をしたという十分な情報を提供しなければならぬことは、この七節に書いてあるので、外務省としてはこういういろいろの計画に基いて起ったところの活動の結果は、当然アメリカに報告する義務が出てきていると思うのです。こういう点についていろいろ報告をされなければならぬと思うのですが、これは外務大臣がわからなければ事務当局でもけっこうですが、少し御説明願いたいと思います。
  81. 重光葵

    ○重光国務大臣 その条文の交換は、むろんしなければなりません。しかしまだそこまでには進んでおらぬことを私も知っております。そこでわが国の場合は、技術援助が主となっておるのであるが、その内容は御承知通りに援助、国内資金の醸出によって国内諸生産の経営者、技術者、労働代表等の派米、視察等——視察もあるようでございます。また必要に応じてアメリカの専門家の招聘もする、米技術情報の散布、技術情報をこちらで受けて、それを配布する、企業の科学的管理方式の普及、能率増進指導というようなことによって、企業の生産性を向上するものである、これはその趣旨がおそらく交換公文のうちにも大体書いてあると思いますが、さようなことによってこれをやろうという、このことについて情報の交換をし、また互いに通報をし合うということはございますが、その実績を通報する。まだそこまでに進んでいないように考えております。
  82. 滝井義高

    滝井委員 原子力の平和的な利用に関する技術というものは、この交換公文の技術交換計画の中に入るか入らぬかということなんです。
  83. 重光葵

    ○重光国務大臣 私はそれは今のところ入っていないと思っております。これは原子力の別の取りきめに関係するので、この問題はそこまで入っていないように考えます。
  84. 滝井義高

    滝井委員 私はそれはちょっとおかしいと思うのです。これは何も原子力を入れるとも入れないとも書いておりません。しかし少くとも一国の生産を向上せしめるということは——われわれが現在濃縮ウランの受け入れあるいは原子炉の問題を論じておるということは、日本の不足しておるエネルギー資源の開拓の一環としてそれを論議しておるのであって、決してこれは日本の生産性の向上と無関係ではないはずです。そうしますと、この広汎な生産性の向上に関する日米の交換公文というものは、そういうものも何も考えられないとは、このどこを読んで見ても出てこないと思うのです。外務大臣勝手に入らない、こうお考えになっているのではないか。それともアリソン大使と交換公文をつくるときに、そういうものは入らぬということを御確認になってのことなんですか。
  85. 重光葵

    ○重光国務大臣 いや、私はそう厳格な意味で今申し上げたのではございません。原子力の問題については別にやっておるわけであるから、そっちでこれを処理することができると思ったわけであります。しかし今言われた解釈が、この解釈としてはおそらく正しいように考えます。特に今これをどう解釈すべきものであるか、政府、外務省の解釈はどうであるかというお尋ねになれば、よく一つそれを研究してはっきり申し上げることにいたしましょう。しかし私はお話のような解釈でさしつかえないのだと今は思っております。
  86. 重政誠之

    ○重政委員長代理 滝井君に申し上げます。もうお約束の時間も参りましたから……。
  87. 滝井義高

    滝井委員 大事な点ですからもう少し……。そうしますと、生産性向上に関する日米交換公文で、原子力の平和利用に関する技術の問題が入るかどうかということについては、なお不明な点もあるので御検討をいただくという御言明ですから、ぜひ検討していただきたいと思います。  そうしますと、現在トルコとの原子力の協定が特に九条において問題になっておるわけなんです。ああいう義務条項があれば、もはや受け入れはしないという意見もはかれておるようであります。ところがトルコとの協定を調べてみると、九条ばかりではなくして六条なんかにも非常に問題がある。たとえば「委員会が貸与した同位原素U—二百三十五を濃縮したウラニウムがこの協定に従って合意される目的のためにのみ使用されることを保証し、」と、こういう保証しというような文句がある。こういう保証をするということ、あるいは六条のC項なんかを見ると、たとえば「トルコ共和国政府は、委員会の要請があるときは、随時、委員会の代表者が、貸与された資材の状態及び使用並びにその資材が使用されている原子炉の運転状態を観察することを許可する。」こういうことがあるのです。その借りた濃縮ウランというものをどろぼうに取られたり、あるいはとにかくそれがいろいろ悪用されないようにすることをおそらく保証しなければならぬということになるのでしょうが、そういう保証は大体どういう範囲のものが保証されるのか。善良な管理者としての保証なんだろうと思うが、具体的な保証はどういうことになるのか、あるいはその原子炉の運転状況について、今度は向うの原子力委員会というものは、いつでも来てこれを視察するということになると、必然的にその研究というものは指示される。たとえば現在フリゲート艦を借りる、あるいはアメリカの兵器を借りるということにおいて、軍事顧問団というものがついております。そうしますと、もしわれわれが濃縮ウランを借りるということになれば、ちょうど軍事顧問団と同じように、研究顧問団というか、そういうものがつく可能性があるのですが、そういう点については、外務大臣全くそういう懸念はないと、こう御言明できますか。まずそういう保証の問題、それから施設の運転状況の観察の問題、それから顧問団の問題、この三点について御説明願いたい。
  88. 重光葵

    ○重光国務大臣 そういう点については十分注意をしなければならぬと、実は思っております。それで今その点は、トルコと同じようにできたわけではございません。トルコの条約は一つの参考の条約として今検討しておるわけでございますから、さようなことはついても、万一にも不都合がないようにしたいということで今努力中であるのでありますから、できたものとして今説明をするわけには参りませんが、さような趣旨で一つ十分こちらの不都合のないように目的を達しよう、こう今やっておる次第であります。
  89. 重政誠之

    ○重政委員長代理 滝井君、もう時間が経過しました。厳格に守るという約束ですから……。
  90. 滝井義高

    滝井委員 もう一つだけ、大事な点ですから……。実はなぜ私がそういうことを申すかと申しますと、今生産性向上に関する日米交換公文でさえも、単に漠然とした生産性本部というものが中心になって、日本のいろいろの工業や農業や商業の技術を向上しようというものに、わずかに対外活動本部を通じて資金の供与をしよう、こういう交換公文でさえもが、一つ一つ計画について、その計画に基いた活動については、政府アメリカに対して情報の一々の報告の責任を負っているわけなんです。いわんや大事な濃縮ウランというものを燃料にして原子炉で使う。そうしますとそこには、使ったあとには灰が出てくる、その灰というものが一番大事だと思う。これは放射能を含んでいる灰だ、いわゆるビキニの灰と同じだ、おそらくアメリカが売ってくれないで貸すということは、この灰が、兵器で使われるところになかなか売られない理由があると思う。このウランは今から二、三年もすればおそらく今のアメリカに使う状態から見たら生産過剰になって安い商品になってくる。今だってウランは高くありません、そうしますとこういう生産性の向上に関する日米交換公文でさえもそういうものがついているのです。いわんやそういうものは私は非常に問題になってくると思う。これは一つぜひともこういうものでも注意していただきたいと思う。  そこで最後に、これは少し離れますが、今度は副総理として私はあなたにお尋ねしたいのですが、現在あなたの方の民主党と自由党との間にいろいろと予算の折衝が行われております。民主党の基本的な方針は少くとも現在の日本のデフレ政策というものは、このまま維持していって日本の経済の地固めをやる、そうして来年ころから拡大生産に持っていくというのが、民主党の選挙公約の基本的方針であったはずである。ところが現在公債発行論が自由党の中から起ってきている、これは政府としては公債を発行しないということは基本方針として貫いていく考えであるかどうか、これをまず第一に御答弁願いたい。
  91. 重光葵

    ○重光国務大臣 政府といたしましては昭和三十年度予算編成上公債を発行しないことを基本方針といたしておりまして、この際基本方針を変更することを少しも考えてはおりません。
  92. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと現在民主党は自由党に対して公債発行の代案として金融債の発行を言っているようでございますが、金融債と公債とは私は本質的には変りはないと思う。従って公債を発行しないということが基本方針であるとするならば、金融債も同様だと思います。金融債を発行するということについてもこれは政府としてはやらない、こう確認してさしつかえございませんか。
  93. 重光葵

    ○重光国務大臣 基本方針は今申し上げた通りでございますが、金融債のことについてはここに大蔵大臣が見えておりますから、大蔵大臣からはっきり申し上げることにいたします。
  94. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申し上げます。金融債はおそらく開銀債、輸出入銀行債の——それでしたら発行する意思を持っておりません。
  95. 滝井義高

    滝井委員 開発銀行債あるいは輸出入銀行債は発行しない。もし発行するとすればどうですか、興業銀行債券や長期信用銀行債券というようなものは、これは場合によっては発行するという意思をお持ちなのですか。
  96. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えしますが、これはもうしょっちゅう発行いたしておるのであります。今年も去年もおととしもこれは発行いたしております。ただ公募というのと預金部の方とありまして、これをどういうふうな割合にするかという問題が常にあるわけであります。
  97. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、一応確認しておきたいのですが、政府としては公債並びに金融債については断じて発行はやらない、そうして依然として予算編成の基本方針に従って、ことしはあくまでもデフレ政策、すなわち経済の地固めを遂行して、インフレ的な質素のあるような政策はやっていかない、こういう確認をしてさしつかえありませんか、その御答弁だけ聞いて私の質問を終ります。
  98. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 本年度におきましては大蔵大臣としては、今お話の通りやることにいたします。
  99. 滝井義高

    滝井委員 了承いたしました。
  100. 重政誠之

    ○重政委員長代理 久保田鶴松君、
  101. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 大蔵大臣にお尋ねしますが、大臣は、二十五日の本委員会におきまして同僚福田委員の質問に対しまして、接収貴金属は日本に移管されてから絶対に不正はないと断言されましたが、もちろんこの答弁には責任をお持ちになるのでしょうね。それからお伺いしたいと思います。
  102. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申します。七月の暫定予算……。
  103. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 暫定予算じゃありませんよ。あなたはしっかり聞いて下さいよ。同僚福田委員が二十五日の委員会において接収貴金属の問題に対して尋ねましたときに、あなたがお答えになったことは間違いないか、こう私は質問しております。
  104. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 答弁した通りであります。
  105. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 それではお伺いいたしますが、あなたが日銀の総裁であった当時、私たちが行政監察委員といたしまして五回ほど日銀の方に参りました。そのときにあなたもおられまして、一緒にあの金庫の中にお入りになった。あなたも見ておられるはずなんです。あの貴金属、ダイヤ等を見ておられる。それに対して、あなたは当時私らが日銀に参りました折に、何しに来たのか、不正とかあるいは何かあったんじゃないかということをお考えにならなかったのですか。ただ物見にわれわれが行った、こうお思いになったのですか。そのときのあなたの感じを私に聞かしてもらいたい。
  106. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えを申します。むろん私は御案内もいたしまして、御調査においでになったと考えております。
  107. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 それで私たちが調査に行ったのは、何の調査に行ったとあなたはお考えになったか。どう感じられたか。
  108. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 当時私はダイヤモンドを御調査においでになったように、今記憶いたしおります。
  109. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 ただダイヤモンドを調査に来たと思っていると、こうあなたはおっしゃるが、私たちはそうじゃないのです。むろんダイヤモンドもそうなんです。けれども、金、銀、白金等の問題について、非常に当時は問題になったのだから、われわれ行政監察委員はこの問題をぜひ調査しなければならない。そこに不正があったのだ。その不正を調査しなくちやならぬというような意味において、われわれが行ったのに対して——あなたは同僚福田君のこの質問に対して絶対という言葉をつけ加えられた。絶対に不正はございませんとあなたはおっしゃった。それは責任を持てるかと私は劈頭に聞いておる。それはどうなんですか。
  110. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えを申します。不正はないと考えております。
  111. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 不正はないとあなたがおっしゃるのなら、私はあなたに教えなければならぬのでありますが、あなたは新聞に出ておりまする総額七百億を返しまして、七月から受け付けるという法案を大蔵省が用意しておる、こういうふうなことからして、ダイヤと金、銀、白金等の問題を法律案としてお出しになるのですか。そういう用意をしていらっしゃるのですか。それからまず伺いましょう。
  112. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 接収貴金属の処理について、法案を出しまして御審議を願う予定でおります。
  113. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 それでは行政監察委員会におきまして調査をして、党派を超越して決議いたしましたことを、あなたは御存じですか。
  114. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 承知いたしております。
  115. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 承知してそれをお出しになるということであるなら、行政監察委員会において決議した決議をあなたは無視しておるとお思いになりませんか。
  116. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申します。おそらく御質問の御趣旨は、この決議の、この資金の用途について何に使うかという点についてであると思うのであります。今回は一般歳入に一応入れるのでありますが、この使途につきまして決議の趣旨もよく体しまして、とりあえず一般歳入に入れておく、こういうような考え方でいたしております。
  117. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 そういう意味とは違います。私の尋ねておりますのは、ダイヤ、貴金属等に対して不正があるから、その不正のあるのに対しまして、行政監察委員会において一応荒筋だけではありますが、きまりましたものはダイヤの問題だけなんです。その他はきまっておりません。そこでまだ調査中なんです。調査をしなくちゃならない問題を、これを法案として出して、そうしてまた一部の人にはこれを返してやるんだということを、あなたが言っていらっしゃるから、こうした問題については行政監察委員会でいろいろ調査をして、またこの問題について行われております不正を御存じか御存じないかということを私は聞いておる。あなたが答えられたようなことを私は聞いておるのではない。それをはっきり答えてください。
  118. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 政府委員から詳しく御答弁いたさせます。
  119. 窪谷直光

    窪谷政府委員 お答えします。行政監察委員会で決議がありましたことはよく承知いたしております。その決議によりますと、まずダイヤの問題を処理をするということに相なっておるのでありますが、政府側といたしましては同じような状況において接収をされましたものの処理は、同時に処理をすることが適当であるということで、目下法案の準備をいたしておるような状況でございます。
  120. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 窪谷さんは局長としてお答えになりましたが、あなたも当時を御存じじゃない。どなたかからお聞きになってそうした答えをしていらっしゃる。あなたは当時は大阪の財務局の局長か何かをしていらっしゃって、当時のことを御存じじゃない。私がいろいろ伺っておりますことを皆さんよく御存じじゃない。知らなくて、でたらめなことをこの予算委員会において答弁をされることは困るので、一応教えてあげますから聞いて下さい。  戦時中に兵器生産の必要上、政府が半ば強制的に国民から買い上げた貴金属、ダイヤ類である。従ってこれが使用するに至らずして終戦となり、占領軍によって接収されたのであります。また平和発効前にはこれが保管を日本政府に移官された。さらに平和発効と同時にこの処理権は完全に日本政府に移管された。ところがこの貴金属並びにダイヤモンド等については、十六国会以来行政監察特別委員会において約一年にわたる詳細な調査をなし、また買い上げ状況、保管状況、さらに接収当時の状況等については綿密なる調査を行なった。そこで委員会を開くこと八回、十数人の証人を喚問し、また公法、私法等、の専門学者の意見をも聞き、その結果この処理については、きわめて慎重に取り扱わねばならぬという結論に達したのである。その理由の第一は、国民の意思の尊重である。貴金属、ダイヤ類は国民にとっては、非常に大切にされていたものである。特に婦人にとっては命から二番目のものと言われておる。これを半ば強制的に買い上げたものが、戦争完遂には役に立たずして、そのままうやむやに葬り去られんとすることは、またこうした印象を与えることは国民感情上絶対に許せない問題である。これが第一であります。  第二には、不正の追及である。この不正の追及については、これらの貴金属やあるいはダイヤの買い上げ 保管、接収等の問題については、非常に多くの不正があったのであります。はなはだしいものといたしましては、皇室から払い下げられました白金とダイヤの宝冠が行方不明になった。従ってこの問題については行監においていろいろ調べたところ、大阪で二十一カラットの菊花の御紋章入りのケースに入ったダイヤモンドを発見することができた。その他数えますとこれは際限がございません。そこでこれを処理する前に、一応これらの不正の事実を国民の前に明らかにせねばならぬということになった、これが第二の理由であります。  第三には法律上の問題である。これが貴金属、ダイヤモンドの所有権の帰属等については、公法上、私法上幾多の問題があるので、これらの点についても法律上判然とさせねばならぬということであります。  第四には、日本政府の移管後の調査あるいはその鑑定上の問題であります。日本政府が引き渡しを受けた後これを調査した。その調査に当らせたものは、当時これらの払い下げ等について醜い運動を起していた。全国の貴金属商から組織されました組合の幹部を当らせて、大蔵省はきわめて低い評価をさせている。その間幾多の奇怪千万なことが次々とあったのであります。当時の行監の証言に現われておることはこういうようなことです。従って占領軍の行なったこの調査、アメリカから専門家を呼んでMPが拳銃を持って厳重な監視のもとに綿密なる調査を行われましたが、日本のそれは机の上に放り出されましたダイヤ、これは大臣御存じでございましょう、あなたが日銀総裁当時に行われたことですから……。はなはだしいものについてはダイヤが机の上に放り出されてころがっておる。それを大蔵省の役人がうしろに立ってはおりますけれども、これら業者との間において、その払い下げ運動にあらゆる手を尽しておる。だから大蔵省の役人は十分業者に取り入られておりますから、そのズボンのすそに悪いものをしのばせまして、そうしてころがったダイヤを拾うような格好をして、これをいいものとすり変えますことは、むずかしいことではなかったのであります。このようにきわめてずさんなものであった。現に不正がこうした意味において行われておる。だから市中にはあれだけりっぱなものがたくさん出ているのです。銀座あたりの貴金属店を呼んでその店に飾ってありますものを——これはいろいろ百万円以上のものもございますが、こうしたものをどこから手に入れたのだ、こう聞いてみますと答えられなかった。答えられないはずである。これは不正な品以外には、正常なルートでは決して入らないのであります。従って元軍需省の役人で、現在ある局におる人でありますが、当時はダイヤ横流しに関係のある人たちが、常に業者と飲み歩いておる。そうした場所やあるいはその金額等は、こちらではちゃんと調べ上げてあります。そうした不正があるからこそ、あのように立派なものが店に出ておるのであります。御承知と思いますが、前の総理大臣吉田さんの令嬢和子さんが渡米の際の豪勢な首飾り、また佐藤榮作さんの奥さんがこれまた盗まれまして、ずいぶん問題になりました二百万円からのダイヤモンド、これは普通のルートでは得がたいものである。こうしたものを外国から買うなり、あるいは外国から取り寄せたか、あるいはおみやげにもらったのか、あるいはその他横流しの品物を知らないで買われたものか、あるいはまたどこからかごきげん伺いに持ってこられたものか、私はそんなことは知りません。しかし普通では買えない品物であることだけはこれは間違いない。とにかく以上のような各種の観点から、行監におきましてはこの処理に関しまして、最も厳正かつ公平にせねばならぬ、こういうことになったのです。従って一般国有財産の処理のような例によらずして、国民の納得する結論になるように考慮したい、こう思っている。当時国民の愛国心に訴えまして戦争完遂目的としてしたことであるのであります。せめて戦争犠牲者の援護のために使用することこそが最も適切であるとの結論に行監ではなったのであります。こういうふうなことから、今決議を御存じないのに知っているとか申されましたが、その決議はこういうことを決議いたしております。一、このダイヤモンドの所有権は国家に帰属せしめること。二には、交易営団等におきまして当時買い上げに協力して損失を受けた者に対しましては、これを立証せしめて補償すること。三には、ダイヤは適宜換価処分すること。但し、現品については業者を除く専門家によって再評価をすること。四、換価処分した収入金をもって戦争犠牲者のために支出すること。五は、これが支出については国会議員等をもって構成する委員会を設けて審議すること等が決議せられました。もっともこれが立法化については議員立法とすることといたしまして、前国会におきましては本委員会外の各党の代表者二十一名から、この接収解除ダイヤモンドの処理等に関する法難案を大蔵委員会に提出されまして大蔵委員会に付託、遂に三回の審議を終ったときに御承知のように解散となったのであります。従って審議未了となったのでありますが、当時政府はこのダイヤモンド処理については他の貴石類のほかに金、銀、白金等も合せてこれが処理に関し接収貴金属等の処理に関する法律案として提出し、ともに大蔵委員会において審議中であったのであります。しかるに政府は、この法律案の内容をなすその貴金属については幾多の問題があり、当時この法律案の成立までには、さらに慎重なる審議をいたさなければならないという意向であったのでありますが、これについて先ほどいろいろ答えられましたこと等は私は間違っていると申すのであります。従って第一に この問題について当時の行政監察特別委員会におきましては、当国会における行政監察特別委員会と異なるとはいえ、その構成員は大体同様な委員でありますから、当国会においても、本委員会にこうした問題に対しておそらく反対される方々はなかろうとわれわれは考えるのでございますが、申しましたような点等についてでたらめなことを申されずに一応具体的に答えてもらいたいと思うのであります。
  121. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申します。あの物件の占領期間占領軍が保管をして、その後において大蔵省の保管になっていますが、その占領軍の保管中に私も一、二新聞等によりまして、ダイヤモンドについてとかくの話があったことは承知いたしております。大蔵省の保管に移った後に、いろいろと不正があったということは私承知いたしておりません。これは十分厳重に管理されておったと確信をいたしておるのであります。  なお今いろいろとお話がありました点は私は十分報告を聞いておりません。なお十分聞くことにいたします。
  122. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 私がいろいろ申し上げたことに対する具体的な答えがございません。私が今申しましたようなこと等は非常に重大な問題であります。こうした問題は重大な問題であるだけに、またその委員会において決議されております問題をあなたがでたらめに勝手なことを申されますから、そういうことをわれわれは黙っているわけにいかない。各党が出ましていろいろ決議された問題等に対しましても、それをあなた、無視していらっしゃる、無視どころじゃない、大きなうそをついていらっしゃる。福田君の説明いたしましたのとあわせて私はあなたのはうそだということを、ここに申し上げてみましょう。  あなたから話されましたのは金が八十九トン、三百六十億と申しておられます。私たちの調査いたしましたところによれば、金は一〇二・七七六トンになっている。これが一グラム五百八十円とわれわれは計算している。そういたしますと、五百九十六億一千八万円になる。一グラム五百八十円ならば高いことはありますまい。銀は二〇三五・九四〇トンとなっております。そういたしますと二百三十八億二千五百万円、こういう金額が出てくる。ダイヤにいたしましても十六万一千カラット余、これは数は出ておりますけれども、いいものと悪いものとすりかえられた、ダイヤにおいてはこの点なんだ。これがわれわれの見方では一カラット平均二十万円としている。そういたしますと、三百二十三億になります。あなたの方はダイヤは七十二億と出していらっしゃる。ひどい差がある。われわれはこの調査に当りまして、神田の貴金属問屋で徳力という問屋がありますが、この貴金属問屋に行監の方でいろいろこれを調査させた。世界的な相場の見積りであります。ダイヤにつきましては一カラット二十万円か三十万円、いいものになると五十万円から六十万円になるのがあります。それを平均いたしまして二十万円を出しているのであります。そういたしますと三百三十三億、白金一・三トン、九億六千二百八十八万円、これらを合計いたしますと、千二百九十七億九千九百四十七万五千八百円となるのであります。われわれはここまで調べている。それをあなたの発表されましたのについては七百億、こういう数字を出していらっしゃる。これはどこで違うのですか。なんでこんなうそをおつきになるのか、一国の財源をお預けいたします大蔵大臣がこんな勝手なことを考えられて、こんな大きなうそをつかれるということになりますと、三十年度予算審議するに当りましても大蔵大臣を信用するわけにいかない。あなたがでたらめな、うそをつかれますと、この三十年度予算をわれわれは審議することができなくなってしまう。この点をはっきり答えてもらいたい。
  123. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申し上げます。決して私はうそをついたのではないのでございまして、この点については政府委員から詳しくお答えを申し上げます。
  124. 窪谷直光

    窪谷政府委員 お答え申し上げます。今久保田委員から仰せになりましたことは、評価の単価の見方の相違ということが中心であると思います。大蔵大臣から申し上げました評価につきましては、金の地金は四百五円ということで見ております。これは国際市場相場でございまして、それで一応出ているのでありますが、仰せのように国内の価格で見ますと、現在五百八十円前後いたしておるかと思います。従いましてこれを小売と申しますか、小口で国内で消化をいたすことになりますと、久保田委員の仰せのような数字になろうかと思います。  なお、ダイヤモンドにつきましては、先ほど御言及になりましたように、占領中に一応評価いたしましたものを、かりの評価として見ておるのでありますが、これを十分にいたします場合には、行政監察委員会の御趣旨もございますので、さらに公正な中立委員で再評価をいたしたいということで見ておるのであります。そういうふうな単価の見方の相違から出てきておるというふうに考える次第であります。  なおダイヤモンドも国内で小量ずつ処分をいたすという場合には、相当高く処分できるという面があろうかと思いますが、相当量にこれを処分いたすという場合には、一種の卸売価格で処分をしなければならぬだろうというふうな事情もございまして、これは果して幾らに処分できるかということは、さらにその売り払いの計画等も具体的にした上でなければ、明瞭なことにはならないのではないかと考えておる次第でございます。
  125. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 それでは今窪谷さんから話されました問題でございまするが、これを私は大臣にお伺いしたいと思います。それはいろいろ先ほどから申し上げましたが、その申し上げたことについて特に委員会で決議いたしております問題は、いろいろ不正等がある問題でありますから、これは政府の提出ということでなくて、この決議の中にありますようにこの問題は議員提出法案としてもうすでに出したのでありますからそれを出さなければならない。ところが議員提出法案を出すことと同時に、また政府の方でも出すんだというようなお考えはやはり持っておられるか。あるいは委員会で決議いたしましたその決議を尊重されまして、議員立法として出されることにする方がよいとお思いになりますか、この点を大臣から伺いたいと思います。
  126. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申します。これにはいろいろ考え方もあると思うのでありますが、私ども政府から提出した方がよかろうと考えておるわけです。
  127. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 政府から提出しようとすることは、大蔵官僚と業者の中の不正を、あなた方はやみからやみへ葬ろうとすることなんです。その不正をおおい隠そうとすることなんです。だから私たちはどうしてもその不正を——まだ金、銀、白金等については調査はできておりません。ダイヤだけは先ほど申しましたように一応調査はできております。これは大筋な調査でございましたけれどもできております。ここに資料がこれだけあるのですよ。これはダイヤの関係ばかりなんです。あなたは不正はないとおっしゃるが、不正はこの中にあるのです。日本政府が引き継いでから不正があるのです。大阪の心斎橋の仲庭という貴金属屋に、先ほど申しましたように御紋章入りの箱に入った大粒のダイヤを三百五十二万円で売りに行った人があるのです。これもやはりその不正なんです。日本政府が引き継いで後の不正なんです。こういうことがあるから、政府がこういう問題を十分調査を行えないうちに、政府提出としてこの法案を出されることは不正をおおい隠すことである、こう申すのです。どうしても政府がお出しになるというのですか。
  128. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申します。私はあの法案を出しましたが、決してそれで不正を隠すとかいうようなことは毛頭考えておりません。もし不正があれば、これは私あくまで明らかにしたらよろしいと思います。特に先ほどお話がありました大蔵省の関係において、そういうふうな不正があるとは私は考えておりませんが、ただああいうにダイヤモンド、貴金属等が長く放置されていることはいろいろの面から好ましくないので、すみやかに適切な処理をいたしたい、そういう意味合いにおきまして、この国会に法案を出して御審議をお願い申し上げておるようなわけであります。かりに不正があるとすれば、これをあくまで明確にいたしていきたい、かように私は考えております。
  129. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 この問題に関連して私は川崎厚生大臣に伺いたいのですが、今申しましたようなことで、政府としては一兆円以内の予算においていろいろ仕事をしていこうと言われるわけであります。ところが川崎厚生大臣は特に厚生上の問題といたしまして、いろいろ各種の革新的な御意見を述べておられますが、今遺家族の方々等は——これはちょっと私の問うことがあなたと違ってくるようなことになるかもしれませんが、文官並みに遺家族の方々の恩給等の問題がやかましく言われておりますとき、申しましたような財源が余っております。たくさんの財源があります。この財源によって、遺家族の人たちがいろいろ申しておられますようなことに、あなたはお使いになる考えがございますか。それを使うように考えてやりませんか。その点をあなたに伺いたい。
  130. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 先ほど来接収金属の問題につきまして、大蔵大臣と久保田委員との真剣なる質疑応答を拝聴いたしておりました。私もすでに個人的に、かつ厚生省としても非常な関心を持っておりまして、将来これが政府提案あるいは議員提出の法律案で提出をされて、その売り上げ分等について、社会保障に使途を向けるべきであるという考え方を 実は基本的に持っておるのであります。ことに社会保障のうちにおきましても、これは戦争後に政府が接収したというようないきさつからいたしまして、当然戦争犠牲者に重点が置かるべきでありますから、遺族等の保障にこれが活用されるということは、厚生省並びに私としては非常に熱望いたしておるわけでありまして、これは大蔵大臣にもすでに申し入れをいたしておるほどでございます。しかしかりに法律案が出ました場合におきまして、これが社会保障のみに適用されるということに果して委員会などでなりますかどうかは、私としても、今日のところ見通しはございません。しかしそういうふうに熱望はいたしております。
  131. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 次に大蔵大臣に伺いますが、七百億の中で三億八千万円、これは買い戻しを条件としてこの問題を解決するのだというようなことを聞いておりますが、そういうことを考えていらっしゃいますか。
  132. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申します。戦時中に、買い戻す条件で、主として金であると思いますが、これはありました。金額幾らか私記憶しておりませんので、政府委員の方から答弁させます。
  133. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 金で、金の中のどういうものですか。
  134. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。私の記憶では、これは金の純分をとりまして——これらのもののうちにはずいぶん骨董品的なものがありますが、そのうちの純金だけを計量しまして買い入れた、こういう状況であります。
  135. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 それでは一般の国民の中から、御婦人の方にいたしましても金のかんざしとか、帯どめ、金の指輪、あるいは金ぶちのめがねとか、時計の金側とかいうようなものを出したが、こういう人たちがお出しになったのはどうされるのですか。
  136. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 そういうものを買い戻し条件づきで、当時私も扱ったと思いますが、戦争が済んで一年以内に返すとかいうことでありまして、これは当時の買い入れ値で返すことになっております。それで戦争が済みました直後、アメリカの占領軍が進駐する前に、半分くらいまでは返すことができたのでありますが、当時戦争でみな離散をしておりまして、新聞の広告の道もなく、どこへ行ったかもわからぬということで、それがはかとらず、半分くらい残っておると思っております。これは買い入れの約束が、戦争が済んだ後一年以内にまた売り戻すという約束をしておりますので、これは売り戻してやらなければならぬと考えております。
  137. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 大臣、私の聞いておるのはそうじゃないのです。私の聞いておるのは金の指輪とか、かんざしとか、帯どめとか、金側とか——中身を抜いたものです。あるいは金ぶちのめがねとか、国民多数が戦争に勝つことのために協力して出した、そういう人たちのをどうするかと聞いているのです。
  138. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。御質疑の趣旨はわかりました。要するにそういう多数の方々が、苦しい中から戦争に勝つために出した。これを調べまして処分した場合に、この処分代金は、なるべくやはりそういう趣旨に従って使う。そのことは、たとえば先ほどからお話がありましたように、これを社会保障、あるいは遺家族、こういうようなところに使うのはいい、私もそれには何にも反対しておりません。ただこれを財政的見地からお考えを願っておきたいことは、これは臨時的といいますか、一時の収入で、金額は相当大きくありますが、一時の金でありますから、非常に長期にわたる継続的な財源に充てるということについては工夫もいるだろう、こういうように考えております。それだけ申し上げておきます。
  139. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 さきに大臣が話されましたのは、払い戻しを条件として買い上げたものは返すけれども、それは一年以内ということであったが、一年は済んでしまったのだ。そこであなたが返すというその品物は、金杯とか、あるいは金のかぶととか、金の茶がまというものが残っております。これを返そうというのと違いますか。
  140. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 条件のついておるものは、大体お話のようにそういうものであります。買い戻しといいますか、売り戻しといいますか、そういう条件で買い上げたものは、そういうものがおもであります。
  141. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 私はそれは反対です。それをお出しになった人も、やはり戦争に勝つためにということからお出しになった。戦争のためになくなられた人たち、この人たちは、やはり戦争に勝つためにということから大事なむすこ、大事な夫、孫、こういうような人たちらが戦争に出ていかれた。特に一般国民の中から、先ほど申しましたように、困る生活をしておられる人たちでも、やはり持っておられる帯どめとか、金のかんざしとか、そういうようなものを出した。この人たちのものは、一〇二・七七六トンの金の延べ棒になっておる。これを返してやるわけにいかない。おまけにむすこや夫や孫を殺されておる。ところがそれと反対に、金杯とか、金のかぶととか、金の茶がまというようなものを出された人たちは、むすこも殺されていない、夫も死んでいない。この人たちは、こんなものを返してもらわなくても困る人ではない。そういう一部の特別な階級の人たちらにのみこれを返してやる。そんなことは不公平ですよ。あなたがこれをお返しになるのなら、なくなった人の命を返してやりますか。片腕をなくした人、片足をなくした人の足や腕を返してやりますか。私はこういうような点から考えていくと、この金の茶がまや金のかぶと、あるいは金杯というようなものは返すべきではない。従ってこれを戦争のために犠牲になった人たちらの費用に充てるべきである。戦争犠牲者を補償する法律を作ってここに充てるべきである。こういうふうにわれわれは考えておりますが、それはどうなのでありますか。
  142. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申します。気持といたしましては、私も全く同様と申していいと思います。ただしかし、国家が当時国民に約束をいたしまして、これは戦争が済んだら一年以内に返してやるんだ、それでどうぞ出してくれ、こういうふうに国家が意思表示をして、そうしてやったことでありますから、やはり国家としてその約束を守ることがいいだろう、こういうふうに私は考えるわけであります。
  143. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 戦争が済んだら一年以内に返してやるということは約束されておりますが、戦争が済んでもう何年になりますか。戦争が済んで一年後ではございませんよ。戦争はいつ済んだと思いますか。だからそんなものは守らなくてもいいのだ。一年以内に申し出られた方があるなら、それは返してやるのだということは約束されておる。今日はもう戦争が済んで十年たちますぞ。だからそういう約束はもう守らなくてもいいようになっておる。それを返してあげなくても困らない人なのである。これは戦争犠牲者のために使えと私は申しておる。それはどうなんだということを聞いておるのです。
  144. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申します。先ほどお答え申しましたように、これはやはり国の約束でありますから、戦争が済んで一年といいますのは、なるべくやはり早く返すという意味合いで——その後、戦争に負けまして、同時に占領軍が占領をいたしまして、すべてのことが停止されたというような事情で返すに手間がとれておる、かように解しておるわけでありますので、これはやはり国としてそういう約束で買ったのでありますから、約束を守るべきだと私は考えております。
  145. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 川崎厚生大臣、お聞きの通りに、今申しますような財源があると同時に、また出されました貴金属等についても——これはあなたも厚生大臣として、遺族の方々からいろいろの陳情も聞いておられると思いますが、大蔵大臣からは、私が申しますることに対するすなおな答弁がございません。あなたは民主党の中でも革新的な方であります。どうですか、厚生大臣として川崎さんなどは、この千二百九十七億九千九百四十七万五千八百円という隠し財源がありますが、これを一つ社会保障事業等に対して、あるいは戦争犠牲者の方々等に対して——また金、銀、白金等の中において整理ができておりません。特に金杯、あるいは金のかぶと、あるいは金の荒がまというようなものに対しても、私は断じて返してはならぬと思います。さようなことを国民が知ったら承知しません。特に遺族の方々等がこういうようなことを知ったら、承知すまいと思う。だからそういう点について、あなたは閣内においてこういうことに協力されまする御意思がありますか、一つ革新的な意見を持っておられる川崎厚生大臣に伺いたい。
  146. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいまこの法案を政府提案として出すという傾向にありまするけれども、その最終決定に向うまでに、その道程におきましては、私としても、ただいま御指摘になりました方向に向って努力は続けていきたいと思っております。ただおあげになりました数字につきましては、いろいろ民間側の調査によりますると、そのような数字も出ておる部面もあり、また大蔵大臣がオーソリティの立場からされました調査によりましては、若干数字が違っておるようにも見受けられますので、大蔵大臣責任を持って答弁をされた数字については、信頼をいたす以外に厚生大臣としては方法はございません。しこうして、もしこれをもとの者に返すという原則が政府の部内において確立をされますれば、われわれとしてもこれに従わざるを得ませんけれども、なお残りについては、当然これを国家のものとして売り払うという方針が立てられる時期もくるのではないかというふうにも考えられるのでありまして、これらの問題を総合勘案をいたしまして、その中において、多少なりとも戦争犠牲者並びに社会保障の用途に向って使うべきものだと考えておる次第であります。
  147. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 私が聞いておりますことに対する答弁は、政府側としてみな満足にされません。私は抽象的なことを申しておるのではない。ここにはっきりしたものがあるのです。この財源をもって、これをこういうふうにせよということを私は具体的に話をしておるのです。川崎厚生大臣は、そうしたことをはっきり答えられませんが、大蔵大臣に遠慮なさらなくてもいいと思う。あなた、その点を遠慮せず、もっとはっきり答えて下さい。答えられるでしょう。抽象的なことじゃなくして、私の具体的に申しておりますことを、あなたが具体的にこうこうするということを、私の納得のいくように答弁をしてもらいたい。
  148. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ここで答弁をいたしました限りにおいては、私の厚生大臣としての立場は、大蔵大臣答弁をいたしましたことと同様でございます。しかしながら、閣内におきまして今後この問題が最終的に結末がつきます道程におきましては、御指摘の線に沿ってむしろ努力をすべきが厚生大臣としての建前であろうと思いますが、十分に努力いたします。
  149. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 大蔵大臣は、金、銀、白金、ダイヤ等の問題につきまして、こうしたものが、あなたが日銀総裁であられた当時、日銀の金庫に眠っておる、だからこれをもってどうするか。あなたは、七百億というようなことをいってうそをついていらっしゃいますけれども、こういうような財源があるのであります。これに対する福田君の質問に対しましても、あなたは、一般会計にこれを入れます。そうして戦争中に出したような特殊な事情等もありますので、なるべくそういう意味に沿うようにいたしたいと思いますと答えていらっしゃる。だからこの問題について、今川崎厚生大臣が話されましたことと、あなたのお考えと、これをどうかということをもう一ぺん聞いておきたい。
  150. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。決して私はあいまいに答えていないつもりでありまして、今お読み上げになりましたようなああいう考え方でおりますから、そういう趣旨に沿うようにやりたい。ただ財源は、先ほどから申しましたように、一時にこれを全部使ってしまうのでは、あとで継続ができない財源でありますから、従ってそういう意味をよく勘案して、長期にわたる財源には、工夫が要るが、なかなかなりがたい、そういうような意味合いから申しただけであります。よく御趣旨は承知いたしております。
  151. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 私はこれを一ぺんに使えというのではない。こうしたものがあるから、従ってこの問題につきましては、いろいろ話しましたようなこと等も考えてもらって、そうしてこの使い方についても、川崎さんの言っていらっしゃるのとあなたの言っていらっしゃるのとは違うから、その点はどうかと私は聞いておる。あなたは一般会計と答えていらっしゃいますが、私は一般会計に入れて、大蔵官僚の人たちと商人の間においての不正をごまかす手段には反対だ。これは、別途に特別会計をお作りになってこれを使うべきであると考える。こういう財源があるにもかかわらず、この委員会において私たちがこうした問題をついていかなければ、いつまでも隠しておって答えられない。だからその点の閣内不統一の意見を統一されるかということを聞いておる。
  152. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。たびたびお答えいたしますように、ごく端的にいえば、こういう金を社会保障費に振り向けるというのには、何も反対しておりません。ただどういう程度、どういうふうにやるかというような事柄については、なお検討してみよう、こういうふうに申しているだけであります。
  153. 重政誠之

    ○重政委員長代理 久保田君に申し上げます。もうあと四分で時間であります。
  154. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 宮中における御紋章入りの非常に高価なダイヤ等に対する不正の問題、あるいは大蔵省の中における金庫のかぎの取扱いの問題等いろいろあるのでありますが、こうしたことを伺っておりますと時間がないので、私はこの問題についてまた別な機会に伺おうと思います。ただこの問題について特に大蔵大臣に伺っておきたいと思いますことは、私たち委員会におきまして決定されましたこの問題については、どうしても議員立法としてこの問題の結論を出さなければならぬと思うのであります。そうすることが、大蔵官僚と業者の間において取引なされているいろいろな不正について、国民が疑うことをなくすることになるのでありますから、どうしてもこうした問題については、政府からお出しになることはおやめになって、議員立法としてこれを出すことにして、この問題の結論を出したいと思うのであります。  最後にこの問題について大蔵大臣に伺っておきたいと思いますが、大蔵大臣はこれに対する一つお答えをしてもらいたいと思います。
  155. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたします。もしもこのことにつきまして何らかの不正があるとすれば、これはあらゆる方法手段で事を明白にすべきだと思います。特に先ほどからお話がありましたように、国民全体が愛国の至情に燃えて出しました物件に関することでありますから、これは私はほんとうに国民が納得するような手を打たなければならぬと思います。しかしこの物件をこのまま放置せず、この処理については、私はこれはやはり政府から提案をするのがよろしかろう、かように考えております。
  156. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 あなたは私が何回尋ねても同じことばかり答えられる。あなたは日銀において総裁であられた当時、このことはよく知っておるはずだ。とぼけなくてもいい。あなたは日銀の金庫番をしていらっしゃって、そしてそれをおやめになったとき、それじゃ退職金を何ぼもらったか。六千万円もらった、七千万円もらった、あるいは三千万円もらったと言う人がある。やめたときにはそんな大きな退職金をとっている。そして困っている国民に対して使うべき金があるのに、それをまた大蔵官僚の一部の人たちの味方をしてごまかそうとするのはいけないと私は言うのです。あなたが私の答弁に答えてくれないから、私は退職金を何ぼもらったかと聞くのです。答えて下さい。自分がもらったんだからわかるでしょう。   〔「答えろ、答えろ」「それは侮辱だよ」と呼び、その他発言する者多し〕
  157. 重政誠之

    ○重政委員長代理 お静かに願います。
  158. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申し上げます。ちょっと誤解もおありになると思いますが、日本銀行の庫にああいうダイヤモンドその他が保管されておる、これは事実でございます。事実でございますが、これはすべて大蔵省の方で——これは日本銀行としては部屋をただ貸してある、貸室のような格好になっておったわけでございまして、日本銀行総裁が当時そのことについて関知しておったわけではございません。  私がやめたときに幾らもらったかという御質問でございますが、(「覚えぬだろう」と呼ぶ者あり)どうも覚えぬこともありませんが、十年ばかりおりましたから、一千万円くらいいただいたかと思いますが、なお詳しいことは、いずれまたあとで個人的にでもお話し申し上げます。
  159. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 この問題については、まだいろいろ問題があるのでございますが、これはまた後日にいたしまして、次に外務大臣に伺いたいと思います。  政府提出の資料の中において、合衆国軍の日本側交付金支出表によりますと、日本側の防衛分担金で、労務者の給与が二十八年度から支払われておりますが、二十七年度はこれがないので、従って、二十七年度には労務の調達があったはずでありますが、これは当時どこから支払われたものでありますか。またなぜ二十八年度より日本側が分担金で支払っておるようになったの、であるかを外務大臣に伺いたい。
  160. 重光葵

    ○重光国務大臣 その点は私今十分心得ておりません。実は調達庁の関係でございますから、私の管轄に属しておりませんが、管轄の主管の方から御答弁をいたすことにいたしたいと思います。   〔「政府委員がいないじゃないか」と呼ぶ者あり。〕
  161. 重光葵

    ○重光国務大臣 さっそく連絡をとっておりますから……。    〔重政委員長代理退席、委員長着席〕
  162. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 この問題は非常に重大な問題でありまして、私は労務者の給与を日本側の分担金中の交付金で支払うのは、行政協定第二十五条三項の(a)項、(b)項の規定に反するのでありまして、これは当然米国側の分担金で支払うべきものと思っております。ところがこの問題に対しまして答えてもらう人がおられないのなら仕方がありません。それでは、この問題は調達庁の方が来られましたらそのときに伺うことにして、保留いたしておきます。  時間も過ぎましたので、一応私の質問を終ることにいたします。
  163. 牧野良三

    牧野委員長 まことにありがとうございました。永山忠則君。久保田鶴松君の例にならって時間を厳守していただきます。
  164. 永山忠則

    永山委員 時間厳守といっても、前の人で三十分も水増しをした人がおりますので、そう言われてもいけませんから、その点あらかじめ御了承を願います。  社会保険の赤字対策に対して質問をいたしたいと考えております。そのうちで健康保険の方の赤字関係でございますが、大蔵大臣にちょっと聞いてみたい。健康保険の赤字関係は、実に二十九年度が四十億でございまして、さらに三十年度は、実際は厚生省の内部でほんとうに憂慮いたしておるのは、七十三億の赤字でございます。しかしこれはどうしても政府の方で処置しなければならぬ状態になっておりますので、六十億預金部から結局借り入れて、そして毎年十億ずつ返す。しかもその返すというのは、一般会計から受け入れる国庫負担であるのであります。健保の方で赤字を克服して、黒字にして返すというところへ至らぬのでございます。そこで本年は十億円の国庫負担金を出しておるのでございますが、これは重大な関係予算でございますので、この赤字の中に標準報酬の等級改訂によって、すなわち旧来の二等級を二十八等級にいたしまして、最高七万円にしたわけでございますが、これによってこの予算書には約五億ばかりの予算を見積ってあるのでございます。その点は大体御存じでございますか。——もちろん御存じであることと了承いたしますが、しかし今回提案になりました健康保険の方は、この二十八等級を二十三等級に下げて、結局最高を四万八千円で押えたのでございますが、それによって財源の不足を生ずると考えられますが、その金額はどれだけでございますか。
  165. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 私から答弁いたします。  国民健康保険の方の長い間の貢献者であり、また専門家である永山さんから各種の質問が行われると思いますので、きょうは十分にお答えをいたしたいと思っております。  まず第一は健康保険の方でありますが、これは概要はすでに御承知通りであります。本年度の赤字に対しましては、しばしば答弁もいたしておりますように、また新聞紙上にも報道せられておりますように、今日六十億の赤字に対しては、十億の国庫負担をし、さらに、表には載っておりませんけれども、六十億を一時は国庫余裕金をもって振りかえ、最後には資金運用部資金から長期融資をするという建前ができておるわけであります。今回標準報酬のワクを上げましたのは、いうまでもなく国庫負担、それから長期融資、この二つの政策で国が半分程度責任を負うたのでありますから、一方被保険者たる人々にもこの赤字財政に対してはその処理について責任を負ってもらいたいという考え方から、健康保険の料率を引き上げるとともに、標準報酬も財政上の措置といたしまして引き上げをいたしたのであります。しかるところ、御承知のごとく社会保障制度審議会並びに社会本保険審議会におきましては、厚生省が出しました措置に対しまして労使双方が非常に御反対でありました。反対の理由は、もとより労働者にも相当な料率の引き上げが影響いたしますとともに、経営者側も相当な負担になるのでありますから、自分たちの立場から考えれば、反対の意見が出るのがまあ当然ではなかろうかと私は思っております。しかし幸いにしまして、学識経験者、中立委員等から、大体政府の原案に対して労使双方が反対をしたことに反対であるという御意見が相当多数に出まして、ただ政府原案を一部修正して出した方がよかろう——厚生省は標準報酬の一番上を七万円にして出したのでありますが、七万円にいたしますと、部課長級の人人で大体一カ月四千八百円ほどの保険料を払わなければならぬ。これは今日の経済上から見て、はなはだ当を失しておるということから、かれこれ勘案をいたしまして、四万八千円という頭を抑えての修正的な意味で、国会には社会保障制度審議会並びに社会保険審議会の意見をも尊重して出したのであります。最後の御質問のポイントでありますこの欠陥がどれくらいかということは、一億五千万円程度と御認識願ってけっこうであります。
  166. 永山忠則

    永山委員 その一億五千万円程度という金額は、あるいは二億と言い、二億五千万円と言われておりますが、予算にそれだけの穴があくわけでございますが、これの処置はどうする考えでございますか。
  167. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 これは国家予算の方には直接関係ありませんが、健康保険の特別会計の勘定に一億五千万円の赤が出るわけでありますが、予備金を九億七千九百万円と押えておりますから、その中でも操作はできるのであります。しかしできればやはり九億四、五千万円程度はどうしても予備金として残したいと思いますので、この穴埋めにはやはり収納率の引き上げというものを伴っていかなければならない。今日九三%という予定をいたしておりますが、さらに徴収を強化するという方法に出なければならないと思います。しかし今日社会保険の各局長は、今回の健康保険の赤字財政に関連しまして、非常に責任感を持ち、同時に国のとりました措置に対しましては相当協力をしてくれる態勢にありますので、徴収の強化並びにその他の行政措置によりまして、十分にそのカバーはできるものと思っております。
  168. 永山忠則

    永山委員 すでに七十三億の赤字のうち十三億円は徴収強化ということでフルに見積っておるのでございまして、これが徴収強化はただ言葉の上でありまして、さなくても赤字はこのままでも累増するだろうという場合において、これが最高を引き下げるということは、赤字対策としては最も危険なものであると考えておるのであります。すでに最初から七万円の最高という決意をしてお進みになっておるのでありまして、労使双方が退席するということは、それ自体が公正だと学識経験者が育っておるという状態であるならば、その経験者の中で一部修正をして出すことが適当だという答申がありましても、川崎厚生大臣としては、ことに社会保障ということの理念の徹底しておる——力のある者が強くない者を包容してやるというこの理念のもとに、ことに閣僚のうちで最も若くして推進力のある革新的な大臣が後退されるということは、この赤字を克服する上において最も遺憾であると考えますので、この赤字対策についてはさらに委員会で検討を続けたいと考えておるのでございます。健保の赤字があるのでありますが、国民健康保険についてはどういうような赤字状態になっておるか伺いたいのでございます。
  169. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 国民保険はすでに永山委員の御承知通り、全体とするよりは各市町村で行っておるものでありますから、従って赤字の町村もあれば、これに反して十分に経営のうまくいっておる町村もあるわけであります。しかしながら今度の内閣におきまして、今御質問はただ赤字の問題だけでありますが、健康保険に主点を置きましたために、国民健康保険の今日一部分出ておる赤字に対して十分なる措置が講ぜられなかったではないかという御批判のあることは、承知をいたしております。しかし今日内閣の政策の重点は、御承知のように、社会保険の強化のうち特にくずれかからんとする健康保険の収支状況というものを食いとめるということに最大の力点を置いたものでありますから、そのような措置になったということを御了承願いたいと思うのであります。
  170. 永山忠則

    永山委員 大臣は、国民健康保険の本年度の想定される赤字というものはどれだけあるかということを、健保の赤字が重大であると同じように、社会医療保険の赤字問題は、今日の社会保障制度を根本的にくつがえすか建て直さねばならぬという全く岐路に立っておる状態でございますので、御存じでなくてはならぬと思うのでありますが、権威ある川崎大臣がその赤字の数がわからぬようでは、全く健保主義に忙殺されて、国保の庶民大衆、しかも健保よりはより多く実に倍の大衆を持っているこの社会医療保険に対する関心が薄いということになる。これは驚き入る次第でございます。
  171. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 御答弁申し上げます。国民健康保険というものは、市町村が主体になってやっておることでありますから、その市町村が赤字はこれだということを統計をして私どもの方に報告するとか、あるいはそのことに対するところの責任のある数字を出すような組織には、今日なっておらぬのであります。従って今日そういう報告にも接しておらなければ、われわれの方としては助成交付金をもってこれを育成していこうというのでありますから、この点を十分に御承知おきを願いたいと思うのであります。
  172. 永山忠則

    永山委員 国保がどういう赤字状態で市町村はいかに困っておるかというような、その状態を報告がないからわからないということでは、全く驚き入る次第でございますが、ここに今日川崎厚生大臣は、健保の赤字に幻惑されてしまって、全く国民健康保険の問題にきわめて冷淡であるという世論がごうごうとしておる。従ってこういう状態でありますから、本年度予算におきましてわれわれが全く想像することのできないような国保を虐待した予算措置、すなわち国保の犠牲において健保が浮き上ったというような非難を受けるのでございますが、わからぬということでは仕方がありません。
  173. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 各都道府県からこういうような状態になっておる、しかして仕事はこういう状態であるからこれだけの補てんをせよというような意味におけるところの統計的なものはないということを私は申し上げたのでありますが、厚生省として一応推定しておる数字はあります。それを申し上げましょうか——六十二億になります。
  174. 永山忠則

    永山委員 六十二億というこういう赤字は、健保の方は政府の方がめんどうを見てくれるのでございますが、国保の方は二割の給付があるからということで、これに対して当局としては健保のごとく真剣にお考えになっていないことを残念に思うのでございますが、これらの赤字はだれが負担いたしておるかといえば、この苦しい赤字財政の市町村が議会として全く血の出るような激論のもとに一般会計からの繰り入れをいたし、しかもなお被保険者がみずから保険税を上げて赤字を克服いたしておるのでございますが、自治庁長官はどれだけの市町村が赤字克服のためにやむを得ず一般会計から国保特別会計へ繰り入れしたかを伺いたいのであります。
  175. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 一般会計から国保の特別会計へ繰り入れている額は、これは法規上当然にやるのでございませんので、国保が非常に赤字で苦しんでおるのでこれを助ける意味でやっておるのでありまして、市町村によっても違いますし、そういうことを集計しました統計は、自治庁としては今までに取っておりません。
  176. 永山忠則

    永山委員 ここに全国の健保に恵まれざる大衆、実に六千万の関係者が政府当局に対してふんまんおくあたわざるものがございまして、自治庁が市町村が赤字に悩んでおる根本原因の一番大きなものとして取り上げねばならぬ国保の特別会計へ繰り入れておる一般会計の統計が出ていないということは、おそらくそれは大臣が御存じないので、下は知っているだろうと思うのですが、もし事務当局でそういうこともできていないということになれば、これはおそるべきことであると考えます。
  177. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 繰り出し金という項目でまとめて市町村で決算をしておるので、特に一般会計から国保へ出した金額としては、決算で出ておらぬそうでありますから、これはただいま調べてございません。
  178. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 永山委員からは、今国民健康保険の赤字はどうかということの御質問だけであったものでありますから、それに焦点を合せた答弁をいたしておりましたが、この際所信を明確にいたしますならば、政府としては国民健康保険の運営というものに対しては、健康保険に劣らず、むしろ将来は国民健康保険を一番大きな柱にして、社会保険というものを強化していきたいというふうにさえ思っておるのであります。しかしわが国の保険制度ができました由来を尋ねてみますると、その由来の第一の原因でありましたものは、いうまでもなく政府管掌の健康保険並びに健康保険組合連合会の組合管掌の健康保険が発達をし、それにつれて終戦後国民健康保険という新たなる制度ができたのでありますから、その歴史の由来からいたしましても、また今日最も医療の機会に恵まれない中小企業の労働者を救う意味からいいまして、今年はこれが崩壊の段階に立っておりまする健康保険に重点を置いて施策をいたしたのであります。しかしこれは本年におけるところの特殊的な現象とお考えをいただいて、国民健康保険については逐年これを強化する。しこうして国民健康保険の方に重点があるとさえ私たちは考えをいたしておるのであります。しかし国民健康保険は御承知のように市町村が主体になって運営をいたしておりまするので、非常にすぐれたる財政能力のあるところは国民健康保険について大きな実績があがり、むしろ黒字であるという市町村もなきにしもあらずであるのであります。しかるに一部の市町村におきまして相当な赤字が出つつあるという状態承知をいたしております。さらにもっと詳しく申し上げるならば、昨年度、これは自由党の内閣のもとではありますが、すでに三十七億程度の赤字が、その当時出ておりまして、その延長として今日国民健康保険が相当な危機の前触れみたいな前兆にあることは明らかでありまするから、私といたしましては、今年は健康保険の赤字財政に終止符を打つような政策をとるとともに、国民健康保険の将来に対し、ましても確実なる恒久策を講じたい、かように思っておる次第であることも、この際あわせて政策の基本につきまして宣明を申し上げたいと思っております。
  179. 牧野良三

    牧野委員長 永山委員に申し上げます。保険局長が出て参りました。
  180. 永山忠則

    永山委員 川崎厚生大臣は特に社会保障の権威でありまして、ただいまの厚生当局の基本方針について述べられました社会医療保険の中枢としての国民健康保険に重点施策をもって臨むというお考えに対しては敬意を払うものでございますが、しかし本員は少し議員が古うございまして、昔のことをよく存じておりますが、国民健康保険は健保におくれて発達したのではございませんで、昭和十三年にともに発足いたしまして、同じような歩みを続けてきたのでございます。終戦後においてというようなお考えでございますならばひとつお取り消しを願いまして、そこで……。
  181. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 そういう意味ではありません。
  182. 永山忠則

    永山委員 そういう意味ではないと承知いたしておりますが、しかしその負担能力といいますか、被保険者の関係は、健保よりはなお弱い無組織庶民大衆でございますので、健保が今日赤字のために崩壊の危機にあるとするならば、それ以上に国保がまた崩壊の危機にあるということは論を待たぬのでございます。この点に関しまして、本年は崩壊の危機にある健保を第一主義だというところにわれわれと認識を異にいたしておるのでありまして、健保と国保と相ともにここに重点的な施策を盛られてともに発達していくところに、社会医療保険の完遂の実が上るのであると考えるのでございますが、それはそれといたしまして、基本方針を言われたのでありますが、ここに自治庁長官及び自治庁に申し上げるのですが、元来国民健康保険の特別会計へ一般会計からの市町村繰り入れを平衡交付金の対象にすべきである、いわゆる基準財政需要額に入れてもらわねばならぬということは、血の出るような叫びで、終戦後今日まで決議もいたし、陳情もいたしておるのでございますが、それにもかかわりませず等閑に付しておいて、その計数さえも整理してないというようなことでは、全国市町村を自治庁は自分の子供として育成しなければならぬ立場におりながら——市町村は今日ほんとうに一般会計からの繰り入れば血の雨を降らすような議会の騒動をしてやっておるのであります。これを国家のためにつぶすわけにいかないということで全く市町村当局は非常に苦しい立場においてこの経理を進めており、そうして平衡交付金の対象にしてもらいたいというような陳情をいたしておるのですが、大体そういうことはお聞きになったことがあるのですかないのですか。それに対するまた考え方を聞きたいのでございます。
  183. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 国民健康保険の運営は、市町村によって非常に違いまして、非常に財政的にうまくいっておる市町村もありまするし、また窮迫しておる市町村もあります。加入者の税の納入の状況を見ましても、非常によくいっておる市町村もあれば、非常に成績の悪い市町村などもありまして、非常に地方の条件はまちまちでありますために、これを従来の平衡交付金、今日では交付税でありますが、その計算の基礎としなかったのではないかと思うのでありまするけれども永山さんのお説はまことにごもっともでありますから、私といたしましてはよく今後考究いたします。
  184. 永山忠則

    永山委員 自治庁長官が大いに研究してということは、これがどうしても実現するように御研究を願わなければならぬのでございますが、ただいまのお言葉の中にも片鱗が現われるのでございますが、全く自治庁というのは、国民健康保険は市町村がやるんだからというようなことで、ほとんど関心事でないということが現われるのでありますが、それは長官でなくして部下の方のどうも補佐が悪いのじゃないかと考えられますが、元来運営がよくいっておるのと、悪くいっておるのがある、こういうことを言っておられるのでありますが、運営がよくいっておるという市町村は、どういうような市町村が運営がよくいっておるかという概念的なことでもおわかりになれば言ってみてもらいたいと思います。
  185. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 大体におきまして負担金を完全に納付します町村並びに医療が適正に行われている市町村におきましては運営がうまくいっておるのであります。が、負担金の納入が非常に悪いところもあるのでありまして、そういうところは健康保険としては赤字に苦しんでおります、こういうふうに申し上げられるわけであります。
  186. 永山忠則

    永山委員 長官のお考えは公式論を言われておるのでありますから、下の方から一つメモをもらっていい答弁をされねばならぬのですが、下の方の当局はメモさえもよう出きぬだろうと思うのです。よくいっているということは、保険料の徴収がいい、そういう町村は一般会計からの繰り入れを多くしているわけなんです。すなわち保険経済をよくするために一般会計の繰り入れを多くして、特別会計の国保の会計に多く入れている。そういう指導力のある市町村がよくいっているのであって、この意味において一般会計から繰り入れるということを、厚生当局がむしろ指導をされてきておると考えるのですが、どうですか大臣、そういう育成と行政指導をなさっておりますか。すなわち一般会計から国保会計への繰り入れをできるだけ多くやるということを厚生省は指導をしておるのかしていないのか。
  187. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 大へん微妙な質問でありまするけれども、われわれの方で積極的に一般会計から繰り入れろという指導というか、そういう指令を出したり、あるいはそういう統制を行うということは今日までやったことはないのであります。ただ前年度と同様な、また前年度を下らないような措置をとらなければいかぬ。そういうことを考えて、内面的には、実質的にはそういう効果が現われることはねらっております。
  188. 永山忠則

    永山委員 それは大臣がよく御存じでないので、やむを得ないのでございますが、理論的にいいましても、保険経済をよくするということは市町村の責任であり、厚生当局の責任であり、保険経済をよくするためには保険料を安くして、そして一般会計の繰り入れをよくするということが経済内容がよくなることでありますので、行政指導として厚生当局が進められておる点に対しては、これはよく存じております。先ごろまで市長をやっておったのでございますし、国民健康保険は、法案が出ると、昭和十三年から、村長として、自分の村でいち早く始めて今日に至っておりますので、当局のこの行政指導を私は適正と考えておるのでございますが、結局一般会計の繰り入れというものと保険税を上げて、この苦しい状態を克服いたしておるのでございます。いわゆる健保は政府の金でやってもらえますけれども、国保は被保険者の担税によって、すなわち保険料によって、あるいは市町村の一般会計の繰入れによって、この苦しい赤字の処理をいたしつつあるというこの状態を、目をおおうて見ないということではいけないのであります。しかもその赤字は、いわゆるわれわれの中央会の方で調査をいたしておりますのでも、昭和二十八年度関係で繰り入れは二十六億一千四百万円という数字になっておるのでございます。そうして保険料は二十七年は八十二億一千三百万円でありまして、これが年々いかに保険料が上り、そして一般会計繰り入れが多くなっておるかということの統計も出ておるのであります。二十七年度におきましては一般会計の繰り入れは十五億七千万円で済んでおりましたのが、先刻申しましたように二十八年度は二十六億六千万円に上っておるのでありまして、保険料にいたしましても六十七億四千万円が二十七年度の保険料でございますが、それが二十八年度には八十二億一千三百万円という数字に上ってきておるのであります。健保が赤字に悩む以上に国保は赤字に悩んでいるのであります。すなわち二割の給付負担をしていただいてもなおこの苦しい赤字を、こういう増加率によって市町村なり被保険者は処理をいたしておるのであります。この赤字対策に対しては、抜本的な考え方を大臣はしなければならぬと思うのでございます。ただ、赤字が出れば、苦しければ市町村の方の一般会計でまかなってやれ、被保険者から取ってやれということで済むとお考えになっておりますか。健保に対して赤字対策をお立てになるならば、国保に対してもこの赤字対策を立てて、そうして国民の前にお示しにならなければいけないと考えるのでありますが、これに対する対策をお伺いしたいのであります。
  189. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 だんだんの御教示でありますが、率直に申し上げれば、現在国民健康保険は、医療費に対する二割の国庫負担をいたしておりますが、これが民間並びに連合会方面からの意見では、実際には二割になっておらぬというようなこともしばしば聞いております。従って実質上二割に該当する数字を年々の予算に組むということが、今後におけるところの対策の最重点にならなければならぬと思います。しかし国民健康保険につきましては社会保障制度審議会から、将来わが国の社会保険の中核体は、あくまでもこの国民一般を対象とする国定健康保険にあるのであるから、被用者の保険、すなわち健康保険を充実することに偏重することなく、国民健康保険をさらに国家的な施策として取り上げなければならぬという勧告があり、将来に向っては二割負担はおろか、財政の状況が許すならば逐次これを繰り上げて、そうして社会保障制度審議会の勧告に沿うように努力をするのが厚生大臣としての務めであることは、十分に承知をいたしております。が、今日の予算においてかような十分な措置がとれなかったところの原因は、御承知のごとく国家財政一兆という歳出のワクがきまっておって、その中において社会保障の中心は何であるかといえば社会保険の強化である。その社会保険の強化ということは、今日ただいまのところ、くずれ落ちんとする健康保険の財政の危機を食いとめるということが、今日の立場としてはやむを得ずとらなければならぬ措置であったと思うのでありまして、その点で国民健康保険に十分なる施策を行われなかったことは御指摘の通りであります。しかし助成交付金は昨年は四十七億二千万円でありましたものが、本年は四十八億二千九百万円と、一億四百万円数字が伸びております。もとよりこれは保険者も伸びた、被保険者も伸びたといういろいろな要素もありましょうけれども、ともかくも充実強化をいたそうという方針の片鱗は現われているのであります。しこうして赤字の問題は先ほど来申し上げました通り、厚生省としては一応の見込みを持っております。これは非常に、市町村によってもでこぼこがあるという状態は御承知おき願いたい。もとより国民健康保険につきましては、私より永山委員の方が長い間この仕事に御従事を願ったのでありますから、実情を御承知だと思うのであります。そこで私は厚生大臣の立場としては、十分に閣内におきましても要求はいたしましたが、今日の実情としては直営診療所などの予算が削られたりして、はなはだ不十分であることの状態は認知せざるを得ないという正直な答弁をいたしておるわけであります。どうかこの点を十分に御認識をいただきまして、今日の社会保険に対する一番の危機は、国民健康保険こそ危機であるということも承知をいたしておりますが、その危機以上に政府管掌の健康保険が非常な崩壊状態にある。これを救わなければならぬというので、ああいう措置をいたしたということを御承知おき願いたいと思います。
  190. 永山忠則

    永山委員 川崎大臣の基本方針には敬服をいたしておりまして、非常に信頼もしておるのでございます。ほかの大臣ではここまでの指導方針をはっきりさせないだろうと思うのでありますが、やはり少し勉強が足りませんので、もう少し勉強してもらいたい。健保の方は政府関係が強いのでありますが、国保は市町村でございます。市町村民も官僚も政府も同じ国民でございまして、同じような難儀をいたして苦しんでおるのです。健保の方がより以上崩壊過程にあるのだということは、これは逆なものであるということについて、もう一ぺん認識を新たにしてもらわなければなりません、そこで申し上げることは、これが根本的恒久施策というものと、現段階において赤字を克服するという二つの道があるのであります。これはすでに健保においては施策を立てられております。すなわち監査制度を強化するとか、いろいろの施策に対して御研究をされておるのでありまして、これに対しても議論はございますが、一応国保についての将来の方針に対して、ただいま二割の国庫補助は絶対の数字で行きたい、将来は財政の許す限りさらに公費負担を増していくというその指導方針には敬意を払いますが、しかしこの赤字対策の中枢をなすものは、赤字が出さえすれば政府が補助金を出してやる、給付に対する公費負担を多くしてやるという考え方で行ったならば、おそらく健保も国保も赤字々々、そうして医療費は増高する、これに対してただ政府の金の補助率を増してやるという考え方であるならば、実に危険なる財政に追い込むであろうということを考えるのでございまして、この給付の補助率を強化するということを中枢に考えられること、これはけっこうでございますし敬意を払うのでございますが、それと相並んでここに絶対な要素があるということに思いをいたさねばならぬのであります。そういう議論をしていてもいけませんから具体的に申し上げますが、結局直営診療所、この公的医療機関の整備強化でございます。ここにおいて初めて自由診療との間に医療費の合理的調整ができるのであります。われわれはこの自由開業医とともに手を握って、医療費を合理的に調整をしながら行くという方途に進まねぱならぬのでございます。しかるところ予算を見れば、この直営診療所の費用を昨年度の四億より二億に削減をする、こういう考え方、さらに監査指導をより以上に強化し、直営診療所を強化すること、外郭団体であるところの連合会、中央会、この指導機関を確立すること、保健婦を強化すること、保健所を強化すること、これらの総合運営によりてのみ医療費の増高を調整して合理化ができる、これが最も大切なる施策であるのでございますが、これらのものはすべて考えられぬのみならず、予算を削減するというような考え方が——大臣はほんとうに国保は社会医療保険の中核にするという信念でこれまで来られた国民尊敬の厚生大臣である。この厚生大臣を誤まらしたものは私は事務当局であると思う。赤字が出てくる、この赤字を克服していくために補助率を強化していくということでは、国家財政は成り立たぬ。医療費の増高が赤字の原因だ、これを合理化するということはまさに公的医療機関を整備することだ、あるいは監査指導を強化することであり、外郭団体を強化することであり、保健婦を強化することであるというこの議論をほんとうに大蔵当局と話し合ったならば、必ずや了解するものであると思う。不生産的な赤字へどんどん政府の金を流し出すということに対して大蔵省が賛成するはずはない。こういう予算になるということはもちろん大蔵大臣も御存じでなかったでしょう。国保に対する赤字対策をどう持ってくればいいかというようなことについて、真剣に御研究をなさらなかったでしょう。また事務当局はこの信念の士川崎大臣をして誤まらしておるということを私はまことに遺憾に思うのでございますが、これらの直営診療所を強化し、開業医との間の円満なる調整をはかって、そして医療費の増高を押えて合理的医療費によって治療をしていくという考え方に対しては、大臣はどういうようにお考えになりますか。
  191. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいま、国民健康保険の将来の恒久対策としては、単に医療給付費に対する国庫負担を増すというだけでは、かえって国の財政の大きな負担となってゆゆしい事態になる、もとよりそれは必要な施策であるけれども、それ以外にもとるべき手段があると申されまして、議論にわたるからと申されて御自分から具体的に列挙されましたことに対しましては、本質的に私も同意見でございます。ことに直営診療所の国庫補助というものが予算の編成の当初におきましてはほとんど落ちておりまして、これに国民健康保険連合会を初め各種の社会保障団体が甚大なる関心を持ちまして非常な復活運動があり、ことに私も予算編成の途上におきましてこの修正復活方を具申しまして、その結果大蔵大臣も十分に了知をいたしてくれて、今日の苦しい財政の中から、昨年までは行きませんでしたけれども、落すという方針をやめまして二億の国庫補助を復活せしめたのであります。もとよりこのことについて満足をいたしておるわけはございませんので、当然これらは近い将来において国民健康保険の充実策として取り上げられなければならぬと思います。今日私がこの席上におきまして不謹慎なる言辞を弄することはできませんけれども予算の修正などが国会において論議をされておるそうでありまして、そのような際におきまして、もとより政府は今日修正ということを考えてはおらぬのでありますけれども、しかしもし国会審議過程において修正がされるというような可能性があるならば、その際において国民健康保険というものが大きな問題として上ってくることは予想もし、ひそかに願っておるところであります。
  192. 永山忠則

    永山委員 赤字克服の対策としての所論に対して大臣と意見を同じゅうすることを喜ぶものでございますが、ここにいわゆる公的医療機関を整備するということは開業医との調整をはかっていく必要もございますので、これが調整に対しまして厚生当局としましては、科学的な計数のもとに何年計画でやればどういうようにこれが整備をしていくか、いわゆる中央病院、診療所、開業医、この三者一体の運営をいかに合理化するかということについて科学的な調査及び計画があらねばならぬのであります。それらを今議論いたしましても、時間の関係もございますからとうていできませんが、本年度はその過程にあるのでございまして、非常に不足しておる状態でございますから、少くとも昨年度の四億の数字にはぜひこれを持っていくということにわれわれも努力を続けつつあるのでございますが、大臣の方に特にお願いをいたしておきたいのでございます。  さらに先刻のお言葉で、二割の給付補助は絶対でなくてはならぬというそのお言葉に敬意を払うものでございますと同時に、昨年度改進党と自由党との予算の折衝の際において予算委員として川崎大臣が二割の国民健康保険の給付補助は絶対の数字でなければならないというので、大蔵当局が数字の魔術でもってごまかそうといたしたときに、わざわざ佐藤芳男代議士をお呼びになりまして、正しい計数で改進党は進まねばいかぬ、二割給付といって実際は一割七分なんという欺満した数字は断じて承知しないということで、昨年度二割給付は全く当時の委員であった川崎大臣の奮闘の力によって、正しい計数が編み出されたのに思いをいたしますときにおいて、本年度はそれが逆にきわめて正しくないところの大蔵省の魔術の数字に幻惑されまして、みずからは正しいとお考えになってこれをがんばらなかったということは、私は全く遺憾にたえないのでありますが、その責任たるや実に事務当局にある。すなわち事務当局が数字をよく大臣に説明をして、これは絶対の数字と違うのだ、大蔵省の魔術に押さるべきではないということを大臣に言えば、大臣はその経験を持っておられる人だ。その体験を持ち、指導理念を持っておられる大臣でありますから、必ずやこの数字に屈服されるものではなかったと考えるのでございます。実際事務当局は大臣補佐の責任を全うしていない。すなわち厚生当局は健保の赤字に腰を抜かしてしまった。この赤字対策のためにはあらゆるものを犠牲にしてしまっているところの、実に事務当局の腰の弱い、青白きインテリ的な厚生当局の態度に対して、大臣は十分目を光らせて、当局の言う数字をうのみにするということであってはならないと思うのでございます。この数字について第一に間違っているという抽象論だけを申し上げましても、昨年の十二月に点数改正をやりました。すなわち往診料、入院費等、点数改正をやった。それをやっただけでも医療費は上るはずである。この計数から見ましても五分上ってくれるとすれば十億である。それに対して二割補助なら二億円。実に医療費が上昇いたしていると同時に、国保も上昇いたしている。その上昇率は実に驚くべき上昇率である。これは前のことは言えませんが、自由党もその責任者でありますが、結局総合施策をやらないで連合会の方では打ち切る、あるいは審査費をぶち切る、監査指導費も少くするというような、ただ給付の二割補助ということだけに幻惑されてきた旧来の欠陥が、ここに現われてきているのでございます。いずれにしてもおびただしい上昇率であります。その点数並びに一点単価も事実上において上っている。実績を持っている。これらの単価も点数も二十八年度そのままに据え置いて、そうして受診率の上昇だけは安いので抑えて目をおおうて見ないというような、そういう数字でもってこれが計算をされているのであります。しかもなお、この点だけを一つ大臣に聞いてみたいのですが、現在国民健康保険の対象人員、被保険者は、恵まれているものがどれだけで、恵まれてないものはどれだけか。まだ今日社会保障なんかと大きなことを言っておりますけれども、社会保障の中心である、病気になって金がない、お医者にみてもらうことのできない、社会医療保険に恵まれざる層がどれだけいるか。健保の赤字対策に血まなこになると同時に、なお恵まれてないところのこの庶民大衆に対して、どういう施策をもってこれを恵んでやろうと考えられるのであるか。まずその数字を言うてごらんなさい。
  193. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 昭和二十九年三月末におきまして二千四百九十万六千人となっております。
  194. 永山忠則

    永山委員 二十九年三月末では二千六百八十五万人という数字に実際なっている。その事実の数字よりも非常に低い数字で大臣へ報告をしている事務当局を私は遺憾に思っている。そこで問題の焦点はどこにあるかといえば、二千六百五十万人という現在の数字でもって、その二割の給付という数字を計算されているのである。年々百五十万人内外は国民健康保険は伸びている。第一人口がふえている。再三、三十万人絶対にふえている。昨年度もふえている。この被保険者の数がふえているというこの事実を入れていない。このことは二重の問題が起きてくる。すなわち二割給付補助を絶対なものと考えると言われることに対して重大なる計数の過誤がある。さらにまた、恵まれざるところの大衆層を恵んでやるという政治がないではないか。社会保障制度を強化するということは民主党の一枚看板である。われらもまたこれを唯一の看板にして進んできているのでございますが、この社会医療保険に恵まれざるところの大衆層に対しては、どうして恵んでやろうと考えるのでございますか。
  195. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいま私の暗記しておった数字を申し上げましたが、今度は書類をもってお答えを申し上げます。昭和二十九年三月末で先ほど申し上げたように一千四百九十万六千人でありますが、二十九年六月末にはさらに伸びまして一千五百二十三万一千人に増加しており、本年の予算は二千六百八十五万六千という、いわゆる若干の伸びをも見て計算をいたしているということを申し上げますならば、この対象となる被保険者の数字についてはそう誤まりは私はないと確信をしているのであります。これは事務当局のあやまちではございません。従ってただいま申されましたことの中には、傾聴すべき御意見が相当にあったと、私どもも聞きまして、非常に参考になりますけれども、被保険者の数はただいまあなたのおっしゃった二千六百万を越えているではないかという、その通りでありまして、本年の予算の作成に当りまして二千六百八十五万六千人という数字をもって当ったのでありますから、被保険者に関する限りはあなたの御観測と同一であります。誤まっておらないということを申し上げ、さらに後段いろいろ御議論になりました、すなわちその他の階層はどのくらいか、これは政府管掌の健康保険が千四百万、健康保健組合連合会の方の人数は、今正確な数字を覚えておりませんけれども、これらを合算いたしますれば、五千万をやや越える数字が今日健康保険ないしは国民健康保険によって医療を受けておる数字でありますから、ほぼ五六、七%すなわち八千九百万の人口のうち四三、四%が、何ら国または団体の補助を受けず、個人的に医療を実施しなければならぬという機会に恵まれざる人々であるということも率直に申し上げておきます。
  196. 永山忠則

    永山委員 そこで人数の点については遺憾ながら計数を異にいたしておりますが、これを論争する時間を持ちませんけれども、大臣の今のお説によっても、すでに一千六百万人になっておるのだということになれば、結局来年の三月までの間の伸びを見ていないということになるのでございまして、また恵まれざる層実に三千万人、これに対してどうして社会、医療の被保険者を対象にして、医療保険を恵んでやるかということに対する政策がないではないか。この伸びを見ずして、どうしてそれの施策があると言われるのでありますか。私はこれらの点に対して大いに分科会において論議を続けざるを得ないのでありますが、全くただ大蔵省の計数の魔術だけではありませんか。厚生当局は健保第一主義のために、国保を不利に無視してはいけない。大臣、国保の問題はこれでいいのです。この数字で行くべきだ。健保が危ないというような全く官僚の繊細なる行政的意図に、大きいからだを持っておるところの雄大な思想豊富なる大臣は、甘やかされてはいけないと私は申し上げたいのでございます。  そこで申し上げたいことは、この社会保険の中核としての国民健康保険維持育成という指導理念に敬服をいたしますが、この恵まれざる地域大衆、庶民が三千万人もまだあって、どうしてそれが社会保険、地域保険の中枢として、将来強い力になり得るか。このままにほっておいてはなるはずはない。観念論である。すなわち地域保険へすべての保険を発展的統一をするというときにおいて今日の冗費が節減され、実に政府が使っているところのこの職域保険の補助金だけでも四十数億あるではありませんか。さらに補助金なしに官吏がこの仕事をやっておる。これらの国費を使っているものは、実に五十数億円ということがいわれておるのでありますが、精細にこれを計算すれば七十億円である。これらの諸種の職域保険の事務費というものが、地域社会保険に発展的統一をしたならば、ほとんど一割か二割で国保事務は済むというようなこの状態を、われわれは今計数にまとめておるのでありますが、結局抜本的施策は各種保険の統一であるということ、すなわち国民皆保険の実が現われて、初めてここに強い国家的組織によって、医療の合理的調整もできますし、諸費用の軽減もできるのであります。これに向って進まなかったならば、政府は今国保に対して二割の給付補助をする。さらに健保に対して七十億の金を出す。この金は年々増強していくでありましょう。この不生産的部門に増強するところの費用を押えます。そうしてほんとうに医療の合理的調整へ行きます。そうして社会保険の実を全うする意味からいいますならば、どうしても各種保険の発展的統一である。これに対して社会保障審議会はすでに四年前に答申をいたし、さらにまた政府に向ってこれが保険の統一を申し出ておるのであります。民主党の政策もまた保険の統一をいい、各党全部社会保険の統一を目ざしておるのでございますが、これに対して大臣はどういう考えを持っておるか、またこれにはどうしようという政策を持っておられますか。
  197. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいま国民健康保険にも加入をしておらない多くの国民があることは数字でも私が申し上げ、また永山委員の御指摘の通りであります。そこで将来はやはり保険の統合に向って進まなければならぬのではないか、全く同意見でございまして、まず社会保障制度審議会が勧告をしてくれましたように、医療保険は二つに統合すべし、第一は健康保険の系列に属するいわゆる被用者の保険を一本にまとめ上げるとともに、第一段階においては、国民健康保険との統合をも将来の理想としなければならぬということは、すでに勧告をせられておりますので、私もこの所信に向って邁進をしたいと思っております。そして国民全部が医療の必要が起った際におきまして平素から保険をかけておきますれば、そのことによって生ずるところの不安も混乱もないわけでありまするから、この理想の境地に向って邁進することが必要であると思っております。従って第一段階は、被用者保険の統合並びに国民健康保険の充実ということに目標を置きまして、少くもここ一、二年の後にはこれらの保険を一切統合するような施策に向って、いわゆる全国民保険的なものに進めるのがわれわれの理想ではないかと思いますが、その際におきましてはただ一つ強力なる条件があります。それは安定的政権でなければそれだけの大きな施策を行うことは困難でありまして、何とぞ自由党の御協力をお願いいたしておきます。
  198. 牧野良三

    牧野委員長 永山君に申し上げますが、時刻がすでに十分以上経過いたしました。
  199. 永山忠則

    永山委員 オーバーする人は、五割くらいオーバーする人もあるのであります。
  200. 牧野良三

    牧野委員長 どうぞ御自制を願います。
  201. 永山忠則

    永山委員 委員長は大先輩でございますので敬意を払いまして自重いたして、ただ結論だけ申し上げることをお許しいただきたいのでございますが、今日国保並びに健保は赤字財政で崩壊過程にある。これを救済していく上においては、政府出資の年々生産的に増さねばならぬという実態に追い込まれておる。このときから直ちに抜本的施策に向わねばならぬのでございまして、われらはこれに対しまして国民健康保険の第二条を義務設置とする考え方、第四十七条、公費負担二割を法制化するということに対して、分科全等において大臣と議論を進めたいと考えて、御答弁は分科会、その他また発言の機会がございますければ、そのときにお願いをするといたしまして、現実において後退するわけにはいかない、どうしてもやらねばならぬということになるならば、ここに踏み切って抜本的施策に向わねばなりませんが、これは超党派的に互いに手を握っていくときでございまして、安定政権以上の超党派的な各党の協力によってのみ、この社会保険の実があがると考えておりますので、大臣に協力をいたすことを申し上げまして、一応さらに中小企業の問題について申し上げることになっておりましたが、委員長もまた機会があれば発言を許していただくことにいたしまして、今日はこれで終ります。
  202. 牧野良三

  203. 北山愛郎

    北山委員 先ほどの理事会の打ち合せで、きょうはこれまでにして、あしたの午前やるという話ができたので……。
  204. 牧野良三

    牧野委員長 ちょっと待って下さい。今委員長のところにその正しい申し出がありませんから……。
  205. 北山愛郎

    北山委員 そのことがはっきりするまで発言を一つ……。
  206. 牧野良三

    牧野委員長 今せっかく大蔵大臣と川崎国務大臣がおいでになっておりますから、進めて下さいませんか。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  207. 牧野良三

    牧野委員長 速記を始めて。  本日はこの程度にいたしまして、次会は明二日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会。    午後四時四十三分散会