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1955-05-27 第22回国会 衆議院 予算委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月二十七日(金曜日)     午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 牧野 良三君    理事 上林山榮吉君 理事 重政 誠之君    理事 中曽根康弘君 理事 小坂善太郎君    理事 西村 直己君 理事 赤松  勇君    理事 今澄  勇君       稻葉  修君    宇都宮徳馬君       北村徳太郎君    小枝 一雄君       纐纈 彌三君    楢橋  渡君       福田 赳夫君    藤本 捨助君       古井 喜實君    松浦周太郎君       三浦 一雄君    村松 久義君       相川 勝六君    植木庚子郎君       太田 正孝君    北澤 直吉君       倉石 忠雄君    周東 英雄君       灘尾 弘吉君    野田 卯一君       橋本 龍伍君    平野 三郎君       阿部 五郎君    久保田鶴松君       田中織之進君    田中 稔男君       滝井 義高君    福田 昌子君       武藤運十郎君    柳田 秀一君       井堀 繁雄君    小平  忠君       三宅 正一君    吉田 賢一君       川上 貫一君  出席国務大臣         法 務 大 臣 花村 四郎君         外 務 大 臣 重光  葵君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         厚 生 大 臣 川崎 秀二君         通商産業大臣  石橋 湛山君         運 輸 大 臣 三木 武夫君         建 設 大 臣 竹山祐太郎君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 杉原 荒太君  出席政府委員         総理府事務官         (自治庁財政部         長)      後藤  博君         防衛庁参事官         (経理局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 五月二十七日  委員眞崎勝次君、福永一臣君、野原覺君及び岡  良一君辞任につき、その補欠として楢橋渡君、  灘尾弘吉君、伊藤好道君及び吉田賢一君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員伊藤好道辞任につき、その補欠として滝  井義高君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十年度一般会計予算  昭和三十年度特別会計予算  昭和三十年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 牧野良三

    牧野委員長 これより会議を開きます。  昭和三十年度一般会計予算外二案を一括して議題といたします。質疑を継続いたします。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 大蔵大臣お尋ねします。先般当委員会で自由党の野田卯一委員質問に答えて、こういう答弁があったのです。いわゆる健康保険赤字補填の問題ですが、現在健康保険は非常な赤字に苦しんでおりますが、昭和三十年度にはいろいろ節約をしてもなお三十億の赤字が出る。その中で十億円は国庫から赤字補填の財源で補充をすることになる。従って二十億の赤字が出ますが、同時に昭和二十九年度赤字が四十億ありますから、六十億赤字が出るわけです。これを資金運用部から借り入れ補填をしていく。その資金運用部からの借り入れに当って資金運用計画の中に繰り入れられていないじゃないかという質問に対して、時期を見て、資金運用部計画には計上されていないけれども、年末までには必ず運用計画を修正して出します。とりあえず国庫余裕金でまかなう、こういう答弁があったのでございます。そこで大臣お尋ねをしたいのは、特別会計国庫余裕金を使用できるという法律的な根拠は、大体どこからきているのか、それをまず御説明願いたい。
  4. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えをします。各特別会計に一時借入金をなす、その場合に余裕金をもって借り入れをすることができる、こういうふうに考えております。
  5. 滝井義高

    滝井委員 大臣は今一時借入金ができるとこう言った。一時借入金ではないのです。国庫余裕金特別会計に使うことができるという法律的な根拠はどこにあるのか、こう言っているのです。
  6. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えをします。それは厚生年金特別会計法の中に規定があるわけであります。
  7. 滝井義高

    滝井委員 厚生年金特別会計法国庫余裕金を使うことができる、こういうことになっておる。そうしますと、この健康保険特別会計、つまり厚生年金特別会計を見ますと、歳入に六十億の借入金となっている。国庫余裕金ならば借入金ではないはずです。予算書借入金となっているのはどうしてです。
  8. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたします。この年度末に至りまして借入金に対する考えをいたしておるからであります。
  9. 滝井義高

    滝井委員 年度末に借入金にされるというが、現在余裕金を使っておるものを予算借入金として予算委員会に出すのはおかしいじゃないですか、大体そういうことができますか。
  10. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 政府委員から詳しく御説明を申し上げます。
  11. 森永貞一郎

    森永政府委員 健康保険関係で六十億歳入欠陥があるわけでありまして、その歳入欠陥長期借入金でこれを補填する、その借入金六十億円が歳入になっておることは、ただいまお話がございました通りでございます。この借入金をいたしますのは年度中にどこかですればいいわけでございまして、年度末までの間にこの借入金をして歳入補填することを考えておるわけであります。その借入金をいたしますまでの間は、国庫余裕金の繰りかえ使用によって一時これをつないでいこう、そういう趣旨でございまして、年度末までの間におきましてこれをいつの日か借入金にしなければ、それだけ穴があくわけでございますので、予算には借入金六十億を計上しておるわけでございます。
  12. 滝井義高

    滝井委員 大蔵大臣お尋ねしますが、国庫余裕金を借りた場合に特別会計利子につきますか。
  13. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 つきませんでございます。
  14. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、借入金利子がつきますね。
  15. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 つきますでございます。
  16. 滝井義高

    滝井委員 余裕金ならば利子がつかない、借入金ならば利子がつく。あなたの方の予算説明書には、資金運用部から六十億金を借りることになっておる。大臣は、特別会計資金運用部から金を貸すときには幾ら利子を取りますか。
  17. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 五分五厘を予定しております。
  18. 滝井義高

    滝井委員 そんな安い利子じゃないはずです。もっと高いはずです。
  19. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 政府委員から答弁いたさせます。
  20. 森永貞一郎

    森永政府委員 資金運用部から各方面に融資いたします場合の利率は、融資対象によってそれぞれ違っておりますが、政府部内の特別会計に貸し付けます場合には、五分五厘ということにいたしております。
  21. 滝井義高

    滝井委員 五分五厘にいたしましても資金運用部から六十億の金を借りれば三億以上の利子がつくのです。そうしますと、もし国庫余裕金で年々お金を厚生保険特別会計に繰り入れることができるならば無利子です。資金運用部から金を借りれば利子がつく。もし余裕金で泳ぐことができるならば——健康保険会計というものは赤字で苦しんでいるのだから、三億円利子を払うということは、会計にとって大きな打撃なんです。だから大蔵大臣、今後は余裕金で泳いでもらいたいと思いますが、それはできますか。
  22. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 まあ本年度はできますが、来年度はそういうわけにいかないと思います。
  23. 滝井義高

    滝井委員 それは大へんなんですよ。本年度余裕金でできるというけれども、本年度はあなたの方は余裕金じゃなくて資金運用部から借りることになっているのでしょう。どちらなんですか。資金運用部から金を借りるのですか、余裕金で今年はずっといってしまうのですか、はっきりしないと困りますよ。今の大臣お話のように、余裕金でいかれるということになると、あなたの方の資金運用部でまかなうという予算書に書いてあるのはうそになる。
  24. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えしてきましたように、年度末に借りかえる、こういうふうに考えております。
  25. 滝井義高

    滝井委員 それならば予算書資金運用部計画から借りるということをどうして書いたのですか。余裕金でまかなう、そうして年度末になって、おそらく予算の補正でも行われるでしょう。その時期になってこれは資金運用部でいこう、こう言ったらよいでしょう。
  26. 森永貞一郎

    森永政府委員 厚生年金特別会計政府管掌健康保険の収支のつじつまを合せますためには、どうしても借り入れに依存しなければならないわけでありまして、その六十億円を資金運用部から借りるわけであります。それはいつ借りるかということで、国庫余裕金の問題が登場して参ったわけでありまして、本年度はできるだけ国庫余裕金で泳いで参りまして、年度末には資金運用部から借りるということでございます。しからば来年度以降につきましても同じようなことができないかというお尋ねかと存ずるのでありますが、年度末に資金運用部から借ります場合には、これは五年なら五年という長期の期限の長期資金を借りるわけでありまして、これは本年度と違いまして長期のものを借りるわけでありますから、それを国庫余裕金で泳ぐということは、制度としてはちょっとできないわけでありまして、本年度はその借り入れ現実に実行いたしますまでの間を、とりあえず国庫余裕金で泳いでいこう、そういう趣旨に御了承を願いたいと思うのであります。
  27. 滝井義高

    滝井委員 とりあえず余裕金で泳ぐと言われるけれども、予算説明には、明かに資金運用部資金をもって充当するということになっている。ところが先般野田委員からも指摘されたように、ことしの運用計画にはそれが載っていないということなんですね。ことしの運用計画に載っていないものを、しかも予算書には借入金と書いておいて、そうしてしかもそれは借入金でなくして国庫余裕金でまかなっていく、大体われわれはどっちがほんとうかわからないのですよ。予算書には資金運用計画でまかなっていこうと説明しておきながら、しかし資金運用計画には載っていない。しかも予算書には、今度は借入金と出てきている。これはどっちがほんとうなのかわれわれはわからない、あなた方は今から十カ月先のことを——国会にはこれは資金運用部でやりますと来ているわけです。ところが大蔵大臣は、資金運用部資金計画を立てるときにはだれかにお聞きになると思いますが、自分が勝手にかえるのですか。
  28. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 資金運用部資金運用審議会にかけてきめます。
  29. 滝井義高

    滝井委員 そうしますとことしの千七百八十五億は、これは運用計画にかかったのですか。
  30. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この予算国会に出したあとで一応委員会にかけてあります。
  31. 滝井義高

    滝井委員 資金運用部資金法十二条には、「大蔵大臣は、毎年度資金運用部資金運用に関して必要な計画を定め、あらかじめ審議会の議に付さなければならない。」これは義務規定なのです。付さなければならぬことになっておる。資金運用部のその審議会にかけてこういう計画をきっちり出してこられて、出してこられた中に六十億の健康保険に貸し付ける金の計画がない。今まで特別会計で六十億の金なんか出したのは去年だってない。六十億というような金は、運用部計画からいけば相当莫大な金なのです。そういう莫大な金をかけていない。かけていなくても予算書の中には現実にここに借入金として出てきている。これは架空の金じゃないですか。こういう架空なものを予算書には出してきておって、しかも大事な公けの機関である審議会の議を経なければならないものは経てきていない。あとで経たということですが、経たものには出ていない。こういうことでは、この会計は空になる。特別会計は空ですよ。厚生大臣がおらぬのでちょっと困るのですが、保険局長でもいいのですが、これは大体大臣どういうことなのですか。
  32. 森永貞一郎

    森永政府委員 資金運用に関する審議会は、これは必要に応じて随時開いておるわけでございまして、資金運用部資金運用計画も、この審議会に毎年かけておるわけであります。本件につきましても最近の機会にこれを付議することを考えております。なお御参考までに申し上げますと、昨年も、たとえば漁船再保険特別会計でございましたか、資金運用部から借入金をいたしておるのでありますが、これは最初の計画でなくて、後日これを追補して決議をいたしておる、さような事情もあるわけでございまして、厳密な意味での財政投融資でもございませんので当初の案には載せておりませんでしたが、今後必ず適当な時期に資金運用審議会の議を経てこれを実行するつもりでおりますので、何とぞ御了承いただきたいと思います。
  33. 滝井義高

    滝井委員 それは技術的な問題としては将来それでいいと思うのです。しかしこうして予算書に実際に計画もないものを載せてくるということなのですよ。こういうごまかしは困る。だからもしあなた方がやっていなければ借入金ではなく国庫余裕金ですから、国庫余裕金ならば予算書には出てこないはずです。あるいは一時借入だって出てきませんよ。たとえばあへん特別会計なんか見てみますと、これは一時借入金でもって一億三千万円の一時借入金をやりましたけれども、これは予算歳入歳出には出てこない。国庫余裕金は全然出てこない。やり繰りだから出てこないものを借入金として書いておる。しかもそれは来年の三月になってから資金運用審議会にかけてつくりますという全く将来の仮定の問題を、これは予算書現実の問題として載せてきておる。それならば政府はこの借入金を撤回すべきであると思うのです。
  34. 森永貞一郎

    森永政府委員 一時借入金ないし国庫余裕金、これは歳入にはならないわけであります。全く文字通り一時のからくりにすぎないわけであります。健保の場合には六十億の赤字があるわけでありますから、これはそういう一時借入金ないし国庫余裕金で一時は過ごせましても年度は越せないわけであります。なおこれは借入金国庫余裕金でずっといくということでございますれば、年度末に六十億円の支払い資金が不足するわけでございまして、診療基金に対する支払いを停止するという問題が起るわけであります。さようなことではこの健康保険の運営が全く行き詰まるわけでございまして、結局やはり年度内には六十億円の借入金をして、歳入補填してそれらの支払いを実行しなければならぬ、そういう必要からこれは借り入れをすることが絶対に必要なわけでございます。この支払いをする時期を、年度末までのしかるべき時期に考慮するということでございまして、それまでの間は国庫余裕金で泳いで参るということでございますから、ただいま政府の出しております予算通りでなくては困るわけでありまして、もし借入金を落しますと、重大なる支障が起るということを御了承いただきたいと思います。
  35. 滝井義高

    滝井委員 国庫余裕金でまかなうことは現実にまかなっておって、そうしてただ名目的に予算の上だけで借入金にしなければこの帳面づらが合わぬというだけであって、現実余裕金でやっておるのであるから、それは詭弁ですよ。現実余裕金でやっているんだから、できないことはないはずです。しかも借入金でやるということになれば、なぜ資金運用部計画を立てないかということなんです。どうしてもこの問題は王手飛車取りです。
  36. 森永貞一郎

    森永政府委員 各特別会計運用の実態を申し上げるまでもないのでありますが、やはり国庫余裕金がございます間は、できるだけ余裕金を有効に差し繰るという考えから、余裕金を使って参りまして、どうしても借入金にしなくちゃならぬという時期に借入金をする、ないしは証券を発行する、これは食糧管理特別会計あるいは外為特別会計などにおきましても、同じような操作をいたしております。それによって国庫全体としての資金をできるだけ有効に差し繰るということをやっておるわけでございまして、それと同じようなわけで、今回の健康保険におきましても、国庫余裕金が利用できる間は国庫余裕金で差し繰って、国庫全体として資金を効率的に使っていく。しかしこれは年度末には年度を越せないわけでありますから、どうしても借入金をしなければならぬ。その借入金予算でお願いし、またこれは現実に適当な時期に資金運用部計画を改訂いたしまして、資金運用部から借りるわけです。これは借りなければ年が越せないわけでありますから、借りなければいけない。つまりそれにマッチするように資金運用部計画を必ず改訂するということを申し上げておるわけでございまして、決してからくりでもドレッシングでも何でもございません。そのことを御了承願いたいと思います。
  37. 滝井義高

    滝井委員 どうも納得がいきません。そうしますと大蔵大臣お尋ねしますが、実は昭和二十八年度に大災害が起った。そうして九州各県はつなき融資がなくなった。そこで資金運用部に行って二十億の金を貸してくれぬかというお願いをした。ところが当時やはり百二億くらいしがなかった。その百二億の残っている金の内訳も、きわめて怪しいものだったんですよ。ここでいろいろ分析すると時間が長くなりますから、理財局長の阪田さんがおるとわかりますが、実は郵便貯金の増加やその他でやっと百二億の繰り越しをしておる、帳面づらを合わしておるから、とても二十億の金は出来ませんといって、あのときわずか二十億の金が、帳面づらでは百二億の繰り越しがあるにもかかわらず、なかった。それが今度は六十億ですよ。二十億の金さえ出なかった。もしこの六十億を年度末で無理をして資金運用部の原資の中からとるとすれば、昭和三十年度地方財政運用ができなくなる。そういう点、あなたは来年になれば年度末に六十億を出す自信がありますか、はっきり御答弁願いたい。
  38. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは理財局事務当局ともよく相談をいたしまして、年度末に六十億出せるという結論になるのであります。
  39. 滝井義高

    滝井委員 理財局長がおると、おそらくそういう答弁はできぬと思うのですが、なおこの問題は厚生大臣に……。
  40. 牧野良三

    牧野委員長 厚生大臣は今来ます。
  41. 滝井義高

    滝井委員 これは大臣が来るまで留保しておきます。  それから、どうも質問のやり工合が悪いんですが、防衛庁長官お尋ねいたします。自衛力漸増が相当に進んで参りまして、航空機、艦船兵力等も相当充実してきたようでございます。そこで私がまず長官お尋ねしたいのは、船舶保有量でございます。大体日米艦艇貸与協定によって現在何隻借りて、そのトン数幾らあるか、それから日本自体が今まで持っておった保有量幾らなのか、それから艦船建造は主として昭和二十八年から始まったと思いますが、二十八年以来の建造トン数と隻数、これを一つ説明願いたいと思います。
  42. 杉原荒太

    杉原国務大臣 ただいま保有しておりますトン数は約六万四千トン、それからアメリカ側から貸与ないし供与を受けておりますのが約四万数千トン。アメリカ側から供与を受けておるもののおもなるものは、船舶貸借協定に基く十八隻のフリゲート、五十隻の上陸支援艇LSSL、それから艦艇貸与協定に基きまして駆逐艦四隻、その内訳はDDというのが二隻、DEというのが二隻でございます。その他きわめて小型のものが多うございます。  それから新しく、これは今おっしゃったように、二十八年度から建造に着手いたしておりまするが、二十八年度新造計画といたしまして、千六百トン型の護衛フリゲート艦二隻、それから千トン型の三隻を主にいたしまして、それを含めて十六隻、トン数にして約九千トン。それから二十九年度が、三百トン型の駆潜艇が主でございますが、これが八隻、これを含めて十四隻だったと思います。トン数にして約二千六、七百トン、七百トン近くと思います。こういう状況になっております。  それから二十八年度からの新造の分の進捗状況でございますが、これは初めての型の船が非常に多うございまして、従来日本でまだ建造した経験のないというようなもので、設計等にも非常に時間がかかりました。時間がかかった原因といたしましては、御承知でもございましょうが、これに搭載する武器はアメリカ側から供与を受けておるものが多うございまして、それに関する資料だとか、あるいはそれの引き渡しの時期がおくれておる、そういう点計画設計等が遅延した大きな一つ原因になっております。それからまたこれらの建造をどこにやらせるかということも非常に慎重を要する点で、いろいろな点からよく検討いたしまして、その選定等にも相当時間がかかっております。そうして大体昨年の十一月ころ二十八年度計画分建造契約は終っております。それから二十九年度分は、二十八年度が全面的におくれたために、その影響を受けまして、まだおくれております。エンジンの方はすでに契約を済ましておりますけれども、船体の方につきましては、まだ契約をするに至っておりません。以上のような状態でございます。
  43. 滝井義高

    滝井委員 大蔵大臣、今の防衛庁長官の御説明お聞きになった通りです。そうしますと、大体二十八年度以来日本で作った船のトン数は、防衛庁長官幾らですか。できておるのは幾らですか。一つもできていないのですね。今のお話では一つもできていないと受け取れるのですが……。
  44. 杉原荒太

    杉原国務大臣 今申しましたのは新造の中で——そうでございます。艦艇の方はまだできておりません。ごく小さな雑船はできております。
  45. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、今大蔵大臣もお聞きの通り艦艇の方はできていないということなんです。小さな雑船とかいわゆる掃海船みたいな六百トンかそこらの小さいのはできているが、大型警備船と申しますか、甲型警備船は二十四億くらいかかる、乙型でも十六億円くらいかかる、そういう大型のものは一隻もできていない。ところが、できていないにもかかわらず、毎年この艦船建造費というものは着々と予算を食っていっているのです。昭和二十八年には九千四百九十九トン作るために予算は三十六億一千三百四十万計上されて、しかも国庫債務負担行為限度額が八十九億、いわゆる予算外契約が八十九億、二十九年は二千六百七十トン作るために二十八年の予算外契約をどけても予算額が約二十四億、しかも同時に予算外契約を三十三億結んだ。今年は二十九年度予算外の三十三億をのけてもなお二十一億予算を組んでおります。しかも予算外契約は六十億組んだのですよ。そうすると大臣、現在あなたの方が出した資料によっても、二十九年の防御予算繰り越し見込みの中の船舶建造費は、九十一億くらい余っています。そうすると実際に二十八年、二十九年と、予算外契約をのけて実行予算として組まれたのは百四十九億円なんです。百四十九億円の中で九十一億円残っているのですから、実際今注文しているのは五十八億円しかない。二十八年度いわゆる実行予算予算契約をどけてもですよ。それがなおできていなくて、国民の膏血を九十一億もためておきながら、なおまた年々艦船建造のために予算外契約までしなければならぬのですか。大蔵大臣、大体あなたは一兆円の予算を組んで、国民耐乏生活を要請し、予算健全化をやる大蔵大臣が、なぜこういうロスの金を認めるのですか。余って金を積んでいるのですよ。小笠原大蔵大臣は私の質問に対して、今後はこういうことがないようにいたしますということを言った。あなたはまた同じことを繰り返しているが、どういうわけです。御説明を願いたい。
  46. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今お話のように、そういう性質のものにおいて繰り越しが多いということは、望ましいことではないことは言うまでもありません。従いまして大蔵当局としてはできるだけそういうことのないように努力を払っておるのでありますが、今日日本において防衛力漸増を必要とする、しかもその性質が、今話された艦船にしても、相当長期にわたるというようなことから、やむを得ず今日さようになっておるのであります。
  47. 滝井義高

    滝井委員 答弁にならぬ。長期になるからこそ、何もあなた、予算を先取りする必要はないじゃありませんか。また来年必要ならば来年組んだらいいのであって、何も二十八年のものができていないのにかかわらず二十九年、三十年と予算をなぜためなければならぬのですか。そのためなければならない理由を言って下さい。
  48. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは二十八年度の分が非常におくれてきておる点もあるのでありますが、結局において防衛力を増大していくその基本テンポにこれは基くので、大蔵当局としてはできるだけしぼって、なおかつこれを必要といたしておるわけで、こういう防衛費のテンポの必要なりそういうふうな具体的なことについては、防衛庁長官から話された方がいいと思います。
  49. 滝井義高

    滝井委員 私はそのテンポを尋ねておるのではないのです。ことしは予算は必要ないのじゃないのですか。なぜ必要なのですか。今年二十一億とか六十億の金は必要はないのじゃないですか。まだ二十八年の建造もできていない。日本の造船所に行って、この軍艦を作れといったってできないのですよ。二十四億も十六億もかかる軍艦を作りなさいといって、第一設計がむずかしい。日本の造船技術は一つのブランクがあって、こういう設計さえもむずかしい。それをなぜ予算を先取りしなければならないか。この理由を言ってくれというのです。現在まだ健康保険赤字があり、結核患者は療養所からほうり出されて、予算をどんどん削られておるときに、何も必要のない軍艦を作る予算を先取りする必要が、この一兆円のワク内予算の苦しい中から、どこにあるか、その理由を述べてくれというのです。なぜそれを置かなければならぬか。もっと明白な答弁がなければわれわれは納得ができない。国民もおそらく納得できない。昨年私がこの問題をついたときに小笠原大蔵大臣は、御説ごもっともでございますので、そういうことのないように注意をいたしますと言った。速記録をごらんになって下さい。これは森永さんもそこで聞いておったはずなのです。そうしたらやはり同じことを繰り返してきておる。これはなぜかというのです。しかも九十億の金がためられておるのじゃないですか。こういうためることが許されるならば、この九十億の金はすべからく社会保障にまわして、川崎さんを喜ばしたらいい。
  50. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。それは基本には防御力の増強を必要と認めたことによるのでありますが、その財源は従って今回は防衛分担金の削減に求めておるわけであります。
  51. 滝井義高

    滝井委員 財源の削減を尋ねておるのではなくて、九十億の金が現実に余ってきておるわけなのです。ことし予算をつぎ込んだために、二十八年の船もできていないのに、何で二十九年、三十年に国民の膏血を、莫大な金をつぎ込まなければならないか。その理由を言ってくれと言っているのですよ。それを尋ねているのです。
  52. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは私の考えでは、防衛力をやる場合に、たとえば今の艦船にいたしましても、その艦船を作る場合にその艦船の工事がおくれておる。これは従って繰り越しにおくれておりますから、それを完成するまでは、何も着工せぬでいいとなれば、これは私は別だと思うが、そういうふうなことがあるにかかわらず、やはり新しい艦船の着工を必要とする、こういうふうなことからきておるのであります。
  53. 滝井義高

    滝井委員 新しい艦船の着工を必要とするというなら、それでは防衛庁長官お尋ねしますが、昭和二十九年度の二千六百七十トンというものは、もう設計もできてそれぞれ造船所に注文されましたか。それはされていないはずです。
  54. 杉原荒太

    杉原国務大臣 二十九年度分は先ほど申し上げましたように、二十八年度の影響を受けましておくれております。エンジンの方は注文しておりますが、船体の方はまだ注文するに至っておりません。
  55. 滝井義高

    滝井委員 今おっしゃったように船の一番大事な母体さえもまだ注文していない。そういうときに、この予算だけはどんどんとっていくということは、これは大蔵大臣の態度が弱いのですよ。もう少しあなたがはっきりしなければいけませんよ。そういうように莫大な金を毎年々々横と積ましておって、一方においては国民はやせ衰えて苦しんでおるのです。こういうことはこれはここで幾ら責めたってもしょうがないが、これはいけない。  さらにお尋ねしますが、百五十四億八千万円の予算外契約を結んでおります。そうしますと、今まではことしの予算外契約というものは来年度で片づけておったのです。大がい一年限りであった。ところがことしの予算外契約というものは二カ年にわたって、昭和三十一年と三十二年に国庫負担になることになっているわけです。しかも三十一年に百三十億と三十二年に二十四億、こういうようになっておるのであります。なぜことしは二年にわたらなければならなかったのですか。その理由を言って下さい。
  56. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは二十四億の方がさようになるわけですが、これは飛行機を作る、こういうことになるわけであります。
  57. 滝井義高

    滝井委員 飛行機を作らなければならぬという理由だけで、なぜ二年にわたらなければならなかったのですか。理由にはならぬでしょう。今までは一年でよかった。なぜ今年二年にならなければならなかったか、それを言ってくれというのです。
  58. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは一括して長期にわたって契約する必要があるからです。
  59. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、甲型警備船は二十四億——設計だけでも甲型警備船は一年ではできません。この前の木村大臣は、日本の造船技術というものは非常にまずいので、設計だけでも半年や一年はかかります、こう言った。設計だけで半年も一年もかかるものが、二十四億の船が一カ月や二カ月ではできませんよ。飛行機どころじゃない。なぜそのときに二年にしなかったか。軍艦を作るときに二年にせずに、飛行機を作るときに二年にしなければならない理由はどこにありますか。
  60. 森永貞一郎

    森永政府委員 百五十四億のうち、二十四億が昭和三十二年度の現金支出になる分の契約でございますが、これは飛行機の関係でございまして、飛行機はアメリカから部品の供与を受けまして、それを日本で組み立てる。アメリカから部品の供与を受けるということは、やはり生産量の一つの単位がございまして、たとえばF86Dにつきましては七十機が一つの単位であるとか、T33についてはどうであるとかいう、生産量の単位があるわけであります。その単位のものをバラして契約することができないわけでございまして、やはり一つの単位のものは一括して契約をしなければならぬ。そういうような観点からF86Dにつきましては七十機というようなことになりますと、やはりそれの引き渡しを受けます時期は三十二年度にもまたがるということになるわけでありまして、そういうような生産技術上のやむを得ない関係上、三十二年度にわたる予算外契約を御承認願うということになったわけでございます。詳細は防衛庁当局からお聞き取りいただきたいと思います。
  61. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 大体ただいま主計局長お答えになったことで尽きているかと思うのでありますが、つけ加えて申し上げておきますと、先ほど滝井委員お尋ねのございました船舶でさえ設計に時間がかかるのだからということでございますが、この点はライセンスをもらうことになっておりますので、船舶の場合にございましたような設計上の問題はございません。ただ何分にも、先ほど主計局長お答えいたしましたような単位のものを作りますのに、これはいろいろ設備をいたしましたり、準備に時間がかかるものでありますので、三十二年度まで及ぶということに相なるわけでございます。
  62. 滝井義高

    滝井委員 これは三十一年度じゃなくて、三十二年度まで及んでいるのです。三年になるのです。そんなに理論上かかるはずはない。今三十一年までと言われたけれども、三十二年までです。そうすると、航空機が、ジェット機その他にしても三年もかかるはずはありません。幾ら僕らがしろうとだといっても、飛行機というものは一年でも、どんどん設計が変るために、役に立たなくなってしまう。日本の飛行機だけ、今年頼んだものが三十二年度でなければ注文品ができてこないような飛行機なら、使いものになりません。そういうごまかしを言うもんじゃない。
  63. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 先ほど三十二年というように申し上げたつもりでございましたが、御指摘のようにまさに三十二年であります。先ほども申しましたように、設計の問題は今のようにライセンスの問題があるのではありませんが、これをF86について申しますと、二十七機が三十一年、四十三機が三十二年にでき、T33の方について申しますと、三十年度に九機できまして、三十一年度に六十七機、三十二年に二十一機ということになる予定であります。この飛行機のでき方は、先ほど主計局長から御説明がございましたように、アメリカから部品をもらいまして、これをライセンスに従いまして組み立てをいたします。それに先ほど申し上げましたようなツーリングの関係、あるいは治具工具の関係、そういうような治具工具もアメリカから供給を受けるわけであります。そういうものを据え付けまして生産いたしますには、先ほど申しましたように、F86につきましては、三十一年になりまして初めて機体ができ上るという関係であります。従って、きょう注文してすぐできるというものでございませんので、そのための時間を必要といたすわけであります。なおでき上りますまでに時間がかかるということにつきましては、これはどこでも新しい飛行機をやりますときには相当時間はかかるものでございますので、このわれわれが見ておりますところのテンポが非常にゆるいものであるというふうには考えません。これはライセンスをもらいまして、そこら辺のところを非常に精密に考えてみまして、やはりこの程度の時間がかかるということを申し上げたのであります。
  64. 滝井義高

    滝井委員 時間がありませんから——二年間にわたった点につきましては、今の説明では納得できません。しかも予算が莫大に食いためてあるので、何も予算外契約を二年間にわたる必要はないと断ぜざるを得ない。  そこで大蔵大臣お尋ねしますが、今言ったように、飛行機も艦船も、自衛艦も相当充実してきまして、そうしますと来年三十一年度の防衛費というものは、千三百二十七億という今年のワクはとうてい守れないと思うが、大臣は千三百二十七億のワクは来年も守るつもりですか。
  65. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私のただいまの想定では、今回の防衛の増強をいたしまして、そうして来年度その兵力を維持するに要する防衛費といいますか、これが約八百五十億未満、こういう程度はどうしても要る。大体八百四十四、五億と私は考えておりますが、これ以上どうなるかということについては、今後におきまする日本の経済力その他を十分勘案して考えていかなくちゃならと考ぬえております。
  66. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、千三百二十七億のワクをこえることになるのですか。これは防衛庁の費用だけが八百五十億で、これに一億五千五百万ドルの分担金を加えると、これはちょっと上るようでありますが、どうですか、その点もう少しはっきり……。
  67. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。来年度のことでありますから、防衛庁費あるいは分担金がどうなるかということは、今ここで私は答弁できない。ただ来年度において日本の防衛力を維持するために少くともどういう金額が要るかということだけは、ぜひとも今後考える場合に押えておかなければならぬ。それがただいま申しましたように、私の計算では八百四十億ないし五十億、これがおそらく来年度の防衛関係支出に対しての基盤になる、かように考えております。
  68. 滝井義高

    滝井委員 外務大臣がおらぬので外務大臣のところは保留さしていただきたいと思いますが、大蔵大臣いいですか。四月十九日の日米共同声明の中に「日本の自衛隊を、漸進的に増強することが日本政府の基本政策である。このような期待と政策に従って、昭和三十一年およびそれに引続く年間において、自己の資力のより大きな部分を防衛目的のために振向けることが、日本政府の意向であり、政策であることが明らかにされた。」こういうことになっておるのです。そうしますと、昭和三十一年には自己の資力より大きな部分を振り向けることになっているのですから、従って昭和三十一年には千三百二十七億よりも増加することは当然なんです。また増加しなければうそなんです。あなたは今わからないと言ったが、大体七月、八月には来年の予算の基礎ができる時期がくるのです。そうしますと今の八百五十億ではことしよりか少くなる、それでいいのですか。
  69. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。今申しました八百五十億というのは、それでいいというのじゃないのでありまして、来年度において日本の防衛力を増強するものではなく、現状を維持するために必要なる費用が八百五十億ぐらいになる。それは増強しようがしまいが、現有勢力を維持するためにはどうしてもそれだけの金がいるということを申し上げた。それが基礎であって、その基礎の上にどういうふうに増強していくかというのでいろいろと金額がかさんでくる、こういうことを考えておるわけであります。今お示しになりました声明書は、むろんインテンションとして来年において十分考慮しなければならぬと思いますが、決定的なことば来年度において考慮すべきだ、こう考えております。
  70. 滝井義高

    滝井委員 わかりました来年度の防衛庁の自衛官や船や航空機が増加して、その維持費が最低八百五十億になる、こういうことならば話はわかります。そうすると防衛庁長官お尋ねしますが、今の大蔵大臣の八百五十億というのは維持費なんですね。これを基礎にして来年度の防衛費というものは大体どの程度になるとお考えになりますか。これは出るはずなんですが、幾らですか。
  71. 杉原荒太

    杉原国務大臣 来年度の増強をどういうふうにやっていくかにつきましては、ただいま検討中でございまして、本年度計画したのを実現した場合、いわゆる来年度も現体制を維持するものが、先ほど大蔵大臣が申されたところでございます。なおはっきりどの程度増強するかについては検討中であります。
  72. 滝井義高

    滝井委員 どうもはっきりしないですが、私が一つ一つ尋ねますから、イエス、ノーを言ってください。来年は防衛分担金の削減がないということは、日米共同声明で間違いないですね。そう理解していいですか。
  73. 杉原荒太

    杉原国務大臣 私はその点はないと断言はできない。そういうものじゃないと思います。
  74. 滝井義高

    滝井委員 実はこれは外務大臣が必要なんですが、大蔵大臣も来年は防衛分担金の削減があるものと考えておりますか。
  75. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは来年において考えなければならぬことだが、私はあると考えております。
  76. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、来年は防衛分担金の削減がある、これは今言いましたから言質としていただいておきます。来年は防衛分担金の削減があると考えられる、これが内閣の態度ですね。
  77. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。先ほども申しましたように、来年の防衛分担金のことは、決定的には来年度にならぬとわからぬが、私としては単に防衛分担金だけをどうという意味じゃありません。それは条件にかかりまして、防衛庁費との関係、防衛力増強の関係、いろいろなことに関連して初めて防衛分担金の削減というものは考慮される、それだけ独立しては私は考えられないのであります。
  78. 滝井義高

    滝井委員 日米共同声明では、防衛分担金の削減は三十年度限りということになっておるのですね。あの共同声明については、少くとも鳩山内閣のあとにできる他の内閣を法律上は拘束しないが、道義的な責任を負ってもらわなければならぬといっておる。いわんや鳩山内閣においては道義的にもまた法律に近いような束縛を受けると考えておる。鳩山さんもそう答弁をした。そうしますと、防衛分担金の削減はあなた方はあると言っておるが、——私はあと一つ一つ尋ねますが、あると防衛庁長官も言われたし、あなたも言われたが、そう言っていいですか、もう一回はっきり答弁して下さい。
  79. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 誤解があると悪いですからお答えしますが、防衛分担金について来年度は削減しないということは何もないのでありまして、ことしのような削減は来年はない、こういうふうに解釈してよろしいのであります。それで来年はやはりいろいろな条件はありますが、防衛分担金削減には努力を払うべきだと思っております。
  80. 滝井義高

    滝井委員 共同声明はことし限りになっておる。これは「防衛分担金を、本日本会計年度に限り一七八億円減額すること、」こうなっておる。従って来年は当然一億五千五百万ドルをしなければならない、こう政府は了解していないのですか。
  81. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。そうではありませんと思います。それはここにお読みになったように、百七十八億の削減は今年度だけである、こういうふうに御了解願います。
  82. 滝井義高

    滝井委員 内閣がそういう認識であるならば私は喜ばしいことだと思います。従って来年も一応防衛分担金の削減はあり得る、こういうことが一応確認できたことは非常に国民とともに喜ばしいことだと思います。そこで防衛庁長官、一応削減がなかったものと考えてみますと、来年の防衛分担金は五百五十八億出さなければならぬことになるわけですね。そうしますと、防衛費はことしは八百六十八億で、現在の陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊あるいは内局の付属機関等の維持費が七百四、五十億要することは当然なんです。そのほかに予算外の百三十億がことし予算化されてくる。これだけでもう八百七十何億くらいになってしまう。現在の自衛隊が十九万六千人、航空機が四百何十機くらい飛ぶことになる。それから船が今言ったように六万四千トン、これがおそらくことしの中ころから終りころに近づくにつれて一、二隻くらいできてくるかもしれませんが、こういうものから見ると、七百四、五十億は維持費だけで要る。それから予算外の百三十億が入ってくる。三十一年度には新しく今言った航空機ができてくる。この航空機のガソリン代、その他運営費だけでも十三億要る。こういうもので八百九十億になってしまう。それに防衛分担金が今おっしゃったように五百五十八億そのまま加わったにしても千四百四十八億になってしまう。そうすると、このほかにいろいろ施設の提供費というものが別にまた必要になってくる。ことし少くとも百二十五億の防衛費の増強があった、去年は百二十九億の増強があった。おそらくあなた方の日米共同声明から見ても、来年度並びにそれに引き続くところの年度においては、より大きな資力をつぎ込むということになっているのです。そうしますと、こういう点から考えても、これは最小限度に計算をしてみても三十一年度の防衛分担金の削減がなかったとすると、五百五十八億円、それから防衛庁は今年のままで八百五十八億、今年と同じ程度に増強すると百二十五億、これで九百八十三億、それから施設の提供費が三十年度と同じだとすると約八十一億、分担金と防衛費を加えると千六百三十一億になるのです。約三百億程度増強することになるのですが、これはどんなに見積っても最小限度の見積りだと私は思うが、防衛庁長官どうですか。今言った程度で、防衛分担金の点、それから防衛費の予算八百六十八億のワクがふえるかふえないか、それから増強の百二十五億の点、それから施設提供の問題、この四点についてあなたの総合的な見解とおよそのワクををお示し願いたい。
  83. 杉原荒太

    杉原国務大臣 先ほど申しましたように、現体制を維持すれば約八百五、六十億はいるだろうと推定いたしております。これは予算外契約の歳出からの分も含めてです。それから今おっしゃったいろいろな施設の関係なども含めまして大体そういうふうに推計いたしております。そうして来年度におきましてどの程度どういうものを増強するかということは、まだきまっておりませんが、今研究中でございますので、具体的にそれがどの程度になるかということは申し上げる段階でございませんけれども、現在よりも若干の増強は必要かと考えております。従って分担金の方もそれに伴いまして、実は私はこれをできるだけ減額するように努力したいと考えておるのです。そうして先ほどから共同声明の文句がちょっと読み方によってはっきりせぬようになっておるものですから、いろいろ御疑問の点があったと思いますが、あれの趣旨は、今年減額したあの額は今年限りですぞ、あれは来年にもそのまま適用するのじゃないのですよという意味でございまして、来年は拘束しておらないのでありますから、私はこれをできるだけ減額するように努力したいと考えております。
  84. 滝井義高

    滝井委員 来年度の維持費八百五十億だけの数字は出たけれども、それから先がさっぱりわからない。もうすでに昭和三十年度予算を編成する下地、基礎数字は大体作る時期が来ているはずなんです。それを今になって防衛庁は国会で来年の構想も述べることができない、こういうことならば大蔵大臣は金をやる必要はないと私は思う。不確定な用途で、しかも金を九十億も百億も艦船のことでためておる。しかもまた来年のことでわからないという。もし同じように八百六十億であるならば、来年は大蔵大臣、出してもらったら困ると思うのですが、どうですか。
  85. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私としては非常にありがたく存じます。できるだけがんばってみます。
  86. 滝井義高

    滝井委員 できるだけがんばるそうでけっこうなことです。そこで大蔵大臣お尋ねしますが、がんばったつもりで一つ……。大蔵大臣自衛力漸増ということはどういうことだとお考えになりますか。自衛力漸増というのは毎年々々増強しなければならぬものなのか、それとも毎年増強しなくても自衛力漸増ということになるのか、大臣どういう見解ですか、防衛庁長官と二人とも答えてもらいたい。
  87. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私の考えでは、あの条約を私が知っておる知識の範囲におきましても、日本の経済力あるいはまた政治社会に不安の生じない限りにおいてやるという大きなワクがあって、従って自衛力の増強については日本で自主的に考え、そういう範囲内でやる。ただそういう増強が日本のために必要であり、かつまた外国からそれを期待する、こういうふうに私は考えておるのであります。
  88. 杉原荒太

    杉原国務大臣 今は日本の自衛隊の実勢力をみまして、それと日本の、つまり独立国として少くとも保持しておかなければならぬというものと比載してみまして、やはりアメリカとの関係とかなんとかじゃなく、日本独自に考えましてもう少しは持つ必要があるだろうと思うのであります。ただしかし漸増々々というのはどこまで行くかわからぬ、そういうことは考えておらぬ。ほんとう日本の国力といいますか、国民生活を圧迫しないように、その辺のところは十分考えてやっていかなければならぬ。たとえば海の方にしましても、先ほどからいろいお話がございましたが、今海上自衛隊の主力をなしておるものは何かと申しますと、アメリカから借りておりますフリーゲート艦、あれが実は主力でございます。あれは、戦時中に急造した性能の上からも非常に古い型のものでありまして、もう艦齢が十二年程度になっております。そういう状態ではいかぬ。もう少し性能において新しいものを整備したい、こういうふうに考えておるのであります。
  89. 滝井義高

    滝井委員 どうもお二人の間に漸増の見解が大分違うように思います。私のお尋ねしたいのは、現在日本は経済の再建に非常に苦しんでおります。日本自衛力漸増の目的はやはり防共体制確立のためです。そのためにアメリカは血眼になって日本自衛力の増強を要請しておると思う。日本はみずからの経済の再建に一生懸命になっておる。アメリカは反共体制の確立に血眼になっておる。こういう考えの開きというものがこの増強の一つの悩みとして出てきておるのじゃないかと思う。  そこで私大蔵大臣にお聞きしたいのは、もう年々われわれは増強してきました。自衛力漸増というのは、たとえばことし十九万六千ばかりの非自衛官も加えてふえてきました。これはことしその人数になって、来年になると訓練が積んで自衛力の増強になると思う。そうすると来年一年くらいは訓練を日本は一生懸命やる、だから増強はこれでこらえてもらいたいというようなことで一年くらいは息をつかしてもらうわけにいきませんか。自衛力の増強、漸増ということは、私は訓練でも自衛力漸増だと思う。全然突撃を知らなかった人間が突撃を知ることになる、これは戦力としてはプラスになる、あるいは航空機を操縦することのできなかった人間ができるようになるというのは、やはり自衛力漸増です。そういう点から考えると来年一年だけ待ってもらって、日本のいわゆる拡大均衡のほんとうの地固めをやるということは、大蔵大臣どうですか。
  90. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。私は今の御意見を非常に傾聴いたします。むろん大蔵大臣としては意見がありますが、しかし今の質問の点は、防衛庁長官が責任を持って自衛力に当られておるのですから、私から答弁すべきではなかろうと思っております。
  91. 滝井義高

    滝井委員 それでは防衛庁長官はどうですか。
  92. 杉原荒太

    杉原国務大臣 それは訓練の上から日本の海上自衛力について一例をとってみますと、今日本の海上自衛力は実際どういう点を任務として訓練しておるかといいますと、非常に限定された目的でございます。有事の際潜水艦によって日本の商船が攻撃を受ける場合とか機雷、そういうものに限定して今考えておるわけであります。それ以上のことは別といたしまして、たとえばそれを訓練いたしますのにも、今対潜訓練用の潜水艦がございません。そういうわけで、訓練の上からしても、実は非常に困っておるような状況でございます。そういう訓練それ自体の上から見ましても、たとえばF86にいたしましても、これがなければそれの訓練ができない、こういう状況でございます。しかし今おっしゃった、それだからといって計画的にただ増強する、そういうのではない。しかし財政状態などとにらみ合せて、最少限度どうしても必要なところにだけやっていきたい、こういう考えであります。
  93. 滝井義高

    滝井委員 無計画的に増強するのではなくて、計画的にやるのだと言っておきながら、しかもそれならば来年の計画はどうだというと、来年はまだ研究中でわかりません、こういうことで、どうもまるっきり答弁になっていないですね。そういうふまじめな答弁では困りますが、時間がありませんから次に移ります。  次に通産大臣お尋ねしますが、これはどうも外務大臣がおらぬと工合が悪いのですが、生産性本部についてであります。生産性の向上という問題は、最近国際的に非常に大きく浮び上って参りました。国連でも、インタナショナル・レーバー・オーガニゼーション、国際労働機構でも取り上げられて、ヨーロッパはもとより、ソ連圏でも生産性の向上の運動というのが広く行われております。特に後進国では、経済開発のために生産性向上が重要な条件となってきました。日本においても、日経連を初め経営者団体というものは、窮迫した日本経済を打開していくためには、どうしてもコストの引き下げと貿易の伸張が必要だ、そのためには生産性の向上以外にないというような考えのもとと、それから国際的なそういう背景をもって、日本生産性本部というものが生まれました。私は、生産性の概念というものは、祖国を持たない概念だと思っております。また政治色彩のない概念だと思っております。それぞれ世界の各国において、あるいはそれぞれ社会の中において、社会的なイデオロギーはお互いに鋭く対立しておっても、その生産性を向上するという概念は、共通の概念だと思っております。そういう意味で大臣お尋ねしたいのですが、現在日本においても生産性本部ができたのですけれども、今まで、不景気になれば、能率の増進とか産業の合理化、企業の合理化ということが言われてきた。今登場してきた生産性本部におけるこの生産性の向上という新しい概念と、今まで日本なんかで行われてきた、不景気になって出てくる能率の増進や企業の合理化ということとは、大臣はどういう点が異なるとお考えですか。同じですか。
  94. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 生産性を上げるということでは、不景気の場合に起るのも同じでありましょうが、今日取り上げられておるのは、不景気だから生産性を上げて不景気を切り抜けていくというのではなくて、日本の経済自立をするためには、どうしてもコストの引き下げをして、海外の競争国と相拮抗し得るだけのものにしなければなりません。つまり日本の拡大均衡をやるための一つの手段として、生産性の向上をはかろうというのでありますから、不景気の場合の生産性の問題と全然違うということもないと思いますけれども、しかしながら、今申し上げるように、考え方は現在は不景気だからこれをやろうというのではない、積極性を持っております。
  95. 滝井義高

    滝井委員 私は、今までの合理化運動とか、能率の向上の運動というものは、主として私企業の利益を中心とした考え方が濃厚だったと思うのです。今度の生産性本部のいわゆる生産性向上の運動というものは、むしろ立場が私企業の立場よりも国民経済的な立場に立っておると思うのです。そこに国際的な意義が生まれてくるのではないかと私は思うのです。そういう点で、大臣も御存じのように、わざわざ生産性の向上に関する日米交換公文というものがあるわけです。大臣はこれを御存じでしょう、どうですか。——そうしますと、この交換公文の中には、三節に、「日本政府は、非政府機関である生産性本部であって、労資の適当な代表を含み、かつ、」云々とありますが、生産性本部には労資の適当な代表を含むということが、重光さんとアリソン大使との間にかわされた交換公文には出ておりますが、日本にできている生産性本部というものには労組の代表が入っていない。これについては労働大臣もちょっと必要だった、外務大臣も必要なんですが、とにかく入っていない。しかも通産大臣の所管の予算には五千万円出している。また大臣が高碕さんのかわりにやった経済演説においても、あるいは内閣から経済審議庁が出した経済計画の大綱の中にも、企業の合理化と生産性の向上の中心は、日本生産性本部だということが書いてある。だから日本で今後コストを切り下げ、輸出の拡大をやるというのは、一にかかって日本生産性本部が中心になるということにこれはなっている。しかもそれには、労組の代表加入ということを日米交換公文は書いている。そのために、いわゆる余剰農産物の資金の中から一億五千万の金が出ているはずなんだ。しかも、通産省の予算には五千万円の予算が組まれている。おそらく、民間から金を一億ぐらい集められた、こういうことなんですが、これは大臣の所管だと思うのですが、生産性本部には労組の代表が入っていないのです。これはどういうことなんです。
  96. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 労働組合の一部に誤解がありまして、生産性本部へ参加しないとかいう空気があるそうでありますが、しかし顧問にはすでに労働組合の方でも入っております。ただ一部の人が入っていないということであります。  それから今度のチームを送る場合にも、労働者の方の代表といっていいかどうか知りませんけれども、労働組合の方の人も入っております。
  97. 滝井義高

    滝井委員 日本の労働組合で一番大きな総評も入っておりません。全労会議もオブザーバーしか入っていないと思います。そうしますと、日米交換公文には、アメリカもFOA、対外活動本部を通じてこれにはあらゆる援助を惜しまないと言っているが、おそらくチームがアメリカへ行った場合には、幾分FOAは金を持つのではないでしょうか。旅費ぐらい持つと思います。日本政府もこれに対してあらゆる援助をやるということを交換公文にはくどくど書いておる。そうすると、そういうものが入っていない生産性本部にとうとい財政投融資の一億五千万円というものを大蔵大臣は出している。しかも、五千万円の補助金を出している、農村のいわゆる季節託児所のわずかに三千万円の金を断ち切ったけれども、そういう実業家団体だけで作っているようなものに、日米交換公文があるからでしょう、一億五千万円の余剰農産物の資金を出したり、あるいはわれわれの血税の五千万円をやっているのです。これはどういうことです。
  98. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 それは、われわれが労働組合の参加を拒んでいるわけではない。ただ労働組合の一部に、残念ながら今までまだ誤解がありまして、正式に総評の方は参加してくれない、これは非常に遺憾に考えております。でありますから、これはなお大いに話し合いをするつもりでおります。現に代表者とはいえないかもしらぬが、個人的といいますか、とにかく、チームにも労働者側から入ってくれましたし、また生産性本部の中にも、オブザーバーといいますか、顧問といいますか、そういう形で入ってきておりますから、われわれとしては非常に努力をしております。
  99. 滝井義高

    滝井委員 実は、これはやはりいろいろ誤解もあるかもしれませんが、大臣あたりの生産性本部に対する認識が不足ではなかったかと思う。労働大臣なんかは、先般私が社会労働委員会でいろいろ質問したが、知らない。きょう重光さんが来られたら、この交換公文をやられているのだから重光さんに尋ねたいと思ったが、おそらく重光さんも、自分で署名をされているが、これほどの詳しいことは知っていないのではないかと私は想像しておったのです。なぜ労働組合に誤解を生むかということなんです。それは対外活動本部というものがMSAの変身であって、技術援助というような名前をかりているけれども、実はそれは軍事援助になるようなおそれがあるのじゃないか。日本の平和産業の技術の向上ではなくして、軍需産業の技術の向上をやるのじゃないか、あるいは大企業中心の技術の向上をやって、日本の一番大事な中小企業の技術の向上やその経理内容の改善について生産性本部は役立たぬのじゃないかという一つの疑義がある。これがまず第一点。第二番目は、その生産性の向上ということが労働強化にならないかどうかということ、第三番目には、それによって、生産性を向上することによって生じた成果の配分が、果して労働者に来るかどうかということ、それから生産性を向上することによって今までの日本というものは多くの失業者を生じた。たとえば今度の石炭鉱業の合理化においても、失業者が五万七、八千、約六万人近く出てくる。現実にすでに炭鉱失業者がたくさん出ておる。三、四年前までは四十万人炭鉱労働者があった。これが現実には二十七万人に減った。その多くの者は失業になっておる。しかもその二十七万人に減った炭鉱労働者が、炭鉱合理化という名のもとにさらに二十五万人に減らされようとしておる。しかもその失業対策というものが必ずしも納得の行くものであるかということはわからない。こういうことで生産性の向上というものは、それがそのまま労働強化に通じたり、あるいは失業に通じたり、利潤は上ったけれども、その利潤の配分が来るかどうかわからないところに、労働組合がちゅうちょする理由がある。今までの日本の資本家の行き方というものは、生産性の向上をはかるということが即そのまま労働の強化であった。そういう過去の苦い経験というものが、働く人たちの身にしみておるのだと私は思う。あるいは一面それはあつものにこりてなますを吹くという形になるかもしれませんが、それだけの納得が——日本の企業の合理化と生産性の向上は、一にかかって日本生産性本部が母体になり、中心になると書いておられる。だからその点を大臣はこの機会にもっと鮮明にするとともに、そういう点をはっきり労働組合に約束する必要がある。この点大臣からこの機会を通じて明確にしていただきたいと思うのです。
  100. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 第一の、生産性本部の活動がアメリカの援助を受けるということから、何か軍需産業云々とか、大企業云々と言われますが、これは英国の例を見ましても、この問題がそうでないということは、日本はこれからやるのでありますが、英国はすでにやっております。その歴史を見てもはっきりしておると思う。そういう例はないと思う。  それから第三に、生産性を上げるということは、ややもすると労働の強化になるということは、過去の例にもありますが、それがそうでないのだということも過去の例で明らかでありますし、またわれわれとしてもそういうことはやらない。それには、どうもわからないからといって反発せずに、労働組合側から大いに積極的に入ってそうならないようにしてもらう必要がある。政府としても組合の了承を得るように現に努力をしておるわけでありますが、積極的に入ってきてもらうということがぜひ必要だと思うのです。どうもおかしいからわれわれは別になっておるという態度をとらないように、あなたからもぜひ説得してもらいたい。
  101. 滝井義高

    滝井委員 大臣はヨーロッパの例を引きましたが、実はヨーロッパと日本とは非常に条件が違う。欧州においては労働力というものが比較的少くて、完全雇用に近い形が出ている。日本は国土も狭いし、労働力が多過ぎる。しかも失業が多い。それで生産力の向上にはヨーロッパとは非常に違った特殊性がある。これは過去の経済の発展の歴史を見ても、そういうヨーロッパの歴史とはっきり違った形が出てきている。そういう意味でイギリスあたりが協力しているからといって、すぐ日本が協力していいという状態が出てこないところに勤労階級の悩みがあるわけです。そういう点われわれも努力して参りたいと思います。どうせ日本は、生産性の向上をする以外には、特に第一種産業というものは、失業の救済はできません。第三種産業もできません。そうすると第二種産業である鉱工業の拡充強化をはかって生産性を向上する以外にないことはわれわれにもわかっておる。そういう点でこれはわれわれも努力をしますが、たっとい金をつぎ込んで生産性本部を作っておるのですから、政府はもっと積極的にやっていただきたいことを希望します。  最後に、川崎厚生大臣がお見えになりましたので、保留しておった質問をいたします。実は健康保険特別会計の中に六十億の借入金があるわけです。ところがそれは資金運用部計画の中には載っていない。これはこの前、野田さんから質問があって、森永主計局長はそれを国庫余裕金でまかなう、こういうことであった。それでこれは、借入金ということになりますと、利子がつく。ところが国庫余裕金ならば利子がつかない。健康保険特別会計というものは非常に赤字で苦しんでおるわけです。従って、利子がつかないなら、来年も、昭和三十一年三月三十一日になったならば六十億の金を国庫にぽっとお返ししまして、そうして明けの日にまた余裕金をお借りになる。そうするとこれは利子を一文も払わずに泳ぐことができる。資金運用部なりその他の借入金から金を借りますと、五分五厘ですから三億円の利子がつく。これは健康保険会計のためを思うなら、余裕金はいつもあるのですから、余裕金で行くべきだと思うのですが、厚生大臣はどうお考えになりますか。
  102. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 これは先ほど大蔵大臣からすでに御答弁があったそうでありまして、私は大蔵大臣の措置に一切信頼をいたしておりますが、この際あらためて申し上げるならば、一応国庫余裕金年度末まで行きまして、年度末に修正をするということになっておる、主計局長の先般の答弁で御了承願いたいと思います。
  103. 滝井義高

    滝井委員 そうすると川崎さんにお尋ねしますが、先般あなたは社会労働委員会で、ことしは一般会計から十億の赤字補填であった。ところが本年は、自分は少くとも最低の線としては一割を要求する、こうおっしゃいました。その通り来年一割実現の確信がおありになりますか。
  104. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 そのときの政治情勢にもよりますけれども、今日の経済展望と申しますか、来年度予算に対する大体の考え方からいたしまして、一割国庫負担は実現の見込み十分であります。
  105. 滝井義高

    滝井委員 一割の国庫負担実現十分だということでございますが、大蔵大臣どうですか。
  106. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは来年度予算の規模、財源全体としての予算考える場合に十分考慮はいたしますが、これは来年に待たないと、何とも今返事はできません。
  107. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、厚生大臣聞いていただきたいですよ。今回政府から厚生保険特別会計の一部改正という法律案が出ております。この法律案の中の十八条の六に「政府ハ本会計ノ健康勘定ノ歳入不足ヲ補愼スルタメ必要アルトキハ昭和三十年度以降七箇年度間毎年度一般会計ヨリ十億円ヲ限り同勘定ニ繰入ルルコトヲ得」、今あなたは一割すると言ったし、大蔵大臣もそうしたいとおっしゃっておりますが、これは必要あるときは十億円を限ってなんです。もうきめられてしまっている。だから川崎厚生大臣大蔵大臣が十億以上すると言ったって、一般会計から特別会計に金を入れる場合には法律の規定が必要なんです。あるいは余裕金や一時金を使う場合でも法律が必要なんです。ところがこれは十億を限ってすることになっておるのです。それならばことし何もこういう法律を出す必要はない。来年改正する方がよかった。なぜこういう法律を出したかということなんです。
  108. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 私が明年度一割国庫負担ができるという見込みは十分であると申しましたのは、私の信念とまた見通しであります。しかしながら責任ある政府といたしましては、本年のところは明年以降に対しての措置はそういうことよりできない。今日責任ある政府の措置としては一応そういうものを出したのであって、われわれの将来の信念と主張に従えば、それは法律改正をすることになります。
  109. 滝井義高

    滝井委員 ぜひ一つ法律改正を必要とするようにしていただきたいと思います。  そこでこういう工合に政府は来年のことまで法律でぴしぴしときめる確かな手を打ちながらも、資金運用部の六十億だけはどうして手を打たなかったかということなんです。こういう十億、来年入れて七カ年間のための法律はぴしゃっと手を打った。しかもそれは来年は一割だから少くとも四十億になる。そういう四十億という金を一般会計から入れるような考えを持っておる人が、ことしの六十億については、資金運用部計画には落したのか、わざと落したのかもしれませんが、そういうことなんです。こういうように、私は政府のこういう対策というものが、どうもばらばらと言ってはおかしいが、納得ができないところが非常に多い。そこで納得のいかない点をもう一つ川崎さんに伺いたいのですが、民主党はかつて健康保険赤字を補てんするために患者に一部の負担をさせるという案を出した。同時にその当時国庫負担の少くとも五%を実現するということを公約をいたしました。そのうち、それは政務調査会の一部の人の意見であって、党の全部の意見ではなかったということで、川崎さんは一応われわれの了解を求めました。ところが今度はその後川崎さんの所管のもとにおける厚生省は、大蔵省に一割五分の国庫負担の予算を出したはずなんです。これも大蔵省にけられたのか、自分で引き下ったのか知りませんが、とにかく今度は保険料の率を千分の六十から六十五に引き上げる、それから標準報酬を現在三千円から三万六千円のものを四千円から七万円に引き上げてきたのです。こういう工合に実に二転三転をした政策のとり方をやってきておる。ところが最近聞くところによりますと、社会保険審議会においては、いわゆる経営者の方から、とんでもない、七万円なんかに上げたのでは大へんだということで、聞くところによると、また四万八千円とか四万五千円とかにその上限を下げるということも聞いておる。こういうように実に健康保険赤字対策というものは二転三転をしてきている。少くとも日本における社会保障の一番バック・ボーンをなしておる健康保険赤字対策というものが、こういうように全く方針がない。こういうことでは国民は大へんなんです。少くともやはり自衛力漸増が着着毎年増加していくように、社会保障費も一つ着々としてもらわなければ困る。こういうものはぴしっと、アメリカにも相談しなくてもいいのですから、打ち出してもらわなければ困るのですが、川崎さん、ほんとうのところはどうなんです、下げることなんですか。
  110. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいまの問題につきましては、少しく経緯もまた私の所信もさらに申し述べておきたいと思うのであります。御承知のように健康保険の財政は、ただいま御指摘の通りの非常な大きな赤字でありまして、それに対して一時民主党の政調会の一部の委員会が選挙中に、五分の国庫負担、同時に保険料率の引き上げ、さらに標準報酬のワクの引き上げ、さらにはまた今御指摘のあった患者の一部負担というような方針を一部できめたことは事実であります。そこでこれはその後党議に諮ります際に、私どもから非常に強い反対意見を申しまして、そうしてこれをくつがえし、一部患者負担だけはどんなことがあってもこの際避けるという方針のもとに、社会保障の推進強化という意味合いから、国庫において負担をする率を多くした方がよかろうというので今日のような措置となったのであります。もとより五分負担でありますから、正確に言えば二十一億五千万円という数字でありまして、それから比すれば十億の定額国庫負担は少な過ぎるではないか、こうおっしゃるのはもとよりでありますけれども、しかしそれにかわるに二十億の借り入れを当初より予定いたしたのでありますから、実質的には五分負担よりも国の受け持つ分は多くなったと思うのであります。従ってこの点は十分に御了承いただきたいと思うのであります。今社会保険審議会で問題になっておりますのは御指摘の通りでありまして、日経連を中心としまして猛烈な反対があります。これは昨年厚生年金保険法を改正いたします際に、日経連と当時の自由党内閣との間に非常に大きな食い違いがあったそうでありまして、その関係が今日もあとを引いておることが一つであります。また事務当局に対しまして日経連の方からいろいろ手続上の問題について相当に抗議が来ておることも事実でありますが、今日の段階におきましては、とにかく保険審議会の審議を終了するということは決定をいたしております。今重要法案のうち私の厚生省所管の健康保険の改正が一番おくれておるのでありまして、これは全く申しわけないことと思いますけれども、従来のいきさつが一番大きな原因になって今日まで延びておりまして、私は数日来日経連の幹部にも会いましたし、また片手落ちであってはいかぬというので、労働者の代表——これは大した大きな問題にはなっておらぬのでありますが、和田君初め海員組合の諸君と会いまして了解運動を続けました結果、きょうは結論を出す。しかし結論は私の予測するところでは、政府の原案に対しましては非常に強い反対のようであります。その結果政府といたしましては、この標準報酬のワクの引き上げについて労資双方の意見を十分聞いた後に慎重に国会に提案いたそうと思っておりますので、必ずしも原案そのものを固執する考えはありません。しかしそういうふうに変ってきておるのはどうかということの強いおしかりでありますが、これはやはり審議会を設けた以上は、世論を十分に聞いて、そうして最終的に決定をいたしたいというのが私の考えでありますので、この点十分に御了解を願いたいと思うのであります。
  111. 滝井義高

    滝井委員 私はこれで終りました。
  112. 牧野良三

  113. 田中織之進

    ○田中(織)委員 その前に準備の都合があるので……。きょういただいた三十年度地方財政計画資料について私らの希望しておるのは、都道府県と市町村とを別にした数字をいただかないと、この数字ではちょっと内容を検討しかねますので、自治庁長官もおられますから、至急委員長を通じて市町村別と都道府県別に分けた資料を同時にお出し下さるように資料要求をいたしておきたいと思います。
  114. 牧野良三

    牧野委員長 自治庁おわかりなりましたね。では灘尾弘吉君。時間が大へん無理なところで御迷惑ですが、閣僚はできるだけここに出ます。それから途中外務大臣が出ましたら、滝井義高君に質問をちょっと許してやっていただきたいと思います。御了解を願います。
  115. 灘尾弘吉

    灘尾委員 私は地方財政の問題につきまして主として自治庁長官並びに大蔵大臣お尋ねをいたしたいのであります。地方財政の問題が非常に窮迫しておりますことにつきましては、かれこれ申し上げる必要はないと思うのであります。五月十六日付の官報の付録によりましても、地方財政赤字はいかにして再建整備するかというような題のもとに、自治庁の名において地方財政赤字の実態と、それに対する自治庁の見解が紹介せられておるわけであります。また先日の地方行政委員会における自治庁長官の、三十年度地方財政計画の御説明中におきましても、長官は最近の地方財政状況がますますその困窮の度を強めるといっておられる。多数の地方公共団体が財源の不足に坤吟しておることは、まことに遺憾とするところであると申されておるのであります。坤吟しておるという言葉をお用いになりましたことば、私は遺憾ながら実に適切な表現であろうかと考えるのであります。地方団体といたしましても、申すまでもなく近年非常に財政の問題につきまして悲痛な叫びをもげておるわけでございます。地方制度調査会におきましてもこの問題を取り上げまして、すでに一昨年これに関する答申を政府に提出いたしましたような次第であります。国会ももちろんこの問題につきましては、しばしば政府に対しましてあるいは要望し、あるいは警告を発してきておるのであります。すなわち地方財政の問題につきましては、その困窮をいかにして打開するかという問題につきましては、関係者がひとしく憂え、その適切なる対策を求めて参ったのであります。直接この問題に関係を持っておられます自治庁長官といたしまして、この地方財政の現状が今や放置を許さぬ重大な段階にあるという事実については、十分御認識の上にこの国会に臨まれたことだと考えるのであります。御所見いかがでありましょう。
  116. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 現在の地方団体が非常に苦しんでおりまして、極端な言葉で申し上げると破局の一歩手前ではないかという感じさえいたすのでありまして、地方財政を建て直して、これを健全化することば絶対に必要と考えておるのであります。政府といたしましては、三十年度の国の予算の許す範囲内において措置をいたしました。しかしながらいろいろ機構の改革その他必要な処置をしなければ、地方財政の健全合理化はできないのでありまして、そういうこともあわせ考えまして、本格的には三十一年度において一切今の赤字を解消して、地方の財政を健全化しよう、こういう考え方で三十年度予算の編成に臨んだ次第であります。
  117. 灘尾弘吉

    灘尾委員 いろいろそれについてお尋ねをいたしたいのでありますが、念のために二十八年度の決算による地方財政赤字状況につきまして御説明を願いたいと思います。政府委員でもけっこうです。
  118. 後藤博

    ○後藤政府委員 二十八年度決算の赤字状況を丸い数字で申し上げます。二十八年度決算の赤字の総額は四百六十二億であります。そのうち県の赤字が二百二十億、それから市町村の赤字が二百四十億であります。市町村のうちで五大市が約五十億、市が百五十億、残りの四十億が町村の赤字であります。二十九年度はまだ決算の途中でございますので、はっきりいたしません。
  119. 灘尾弘吉

    灘尾委員 二十九年度状況については、まだ決算が出ないということで正確な数字を求めることは困難と思いますが、大体どのくらいに上ると認められましょうか。
  120. 後藤博

    ○後藤政府委員 お答えいたします。市町村の分がはっきりしないのでありまして、私どもの現在の予想では百億と百五十億の間ではないか、かように考えております。大体最小限度百億くらいは出る可能性があると私どもは思っております。
  121. 灘尾弘吉

    灘尾委員 昭和三十八年度の決算によって四百六十二億という厖大な赤字が出ているわけであります。二十九年度におきましてはただいま百億というような数字をお示しになりましたが、私はとても百億くらいのことでは足らぬのじゃないか、かように考えたのであります。いずれにいたしましても非常に大きな赤字をかかえて今日地方が悩んでいることは明瞭であります。ただ今申されましたところの数字は、地方団体全体に通ずる数字であります。これを一つ一つの団体について考えてみますと、その赤字状況につきましても非常にひどいところと、それほどではないところという区別があろうと思います。中にはずいぶん赤字状況がきびしくて現実に職員の俸給の支払いにさえ困難した同体がありましたことも御承知の通りであります。今日のような状況で進んで参りますならば、地方では職員の俸給を満足に払えない、あるいは遅配、欠配をするというようなことで、地方の公務員諸君にまじめな真剣な執務を要求することが無理であるというようなことにさえならぬとも限らぬと思うきわめて重大な段階に立っていると思うのでありますが、一体かようにおびただしい赤字の額、赤字の団体を見て、自治庁長官はその原因が一体どこにあるとお考えになっておりますか、長官の御所見を伺ってみたいと思います。
  122. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 赤字原因は根本的に申し上げますると、地方団体が自分の力以上の仕事をこれまでしてきたことでありまして、これには国の責任もありますし、また地方公共団体自体の責任もあろうとかように考えております。従いまして赤字を解消するのには、そうした原因をよく探究いたしましてこの原因を一掃することが必要だと考え、さらにこれに努力するつもりでおります。
  123. 灘尾弘吉

    灘尾委員 大体論から言いますとお話通りに、今日の地方団体がいわばやせ馬に重荷と申しますか、その力以上の仕事を負担しているというようなところからくるかと思うのでありますが、今もお話になりましたように国の方の責任に属することもあるし、また地方の責任に属することもあるようである、こういう仰せでありますが、実は私はその問題を探究いたしたいと思いまして、ここに立ったわけであります。従いましていかなる点について国が責任があり、いかなる点について町村に責任があるか、この問題について、もっと詳細に一つ原因をお聞かせ願いたいと思います。
  124. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 国の方の責任につきましては、大体国の仕事を地方公共団体に多数に押しつけているじゃないかというのでありまして、こういう点はぜひとも改良する必要があるのであります。また地方においては地方の長なり議会なりが、少し仕事をあせり過ぎまして、いろいろ拡張し過ぎてその結果赤字を出しているのではないか、こういうこともあるわけでありまして、両方の点からこれを責めまして原因をなくす必要がある、こう思います。
  125. 灘尾弘吉

    灘尾委員 ただいまやや長くお話しになりましたが、実はもう少し的確なお話を伺いたいと思うのであります。しからば今日地方団体の赤字原因たといたまして、国の責任に属する事項と、地方公共団体の責任に属すると認められる事項と、どちらにウェートがあるか、長官の御所見を伺いたいと思います。
  126. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 義務教育費などは大体国の仕事でありまして、教員の俸給半額も地方にしょわしておるのですが、教育費の割合は、公共団体において二七%近くでありまして、大きな部分を占めておるのであります。義務教育費の教員給の全額国庫負担という問題竜、長年論議されておる問題でありますが、こういう点から解消していきませんと、国の責任としてこれを果すわけにいかぬことでありまして、根本問題がありますので、なかなか簡単にはこれは解決できない、そういう関係にあります。
  127. 灘尾弘吉

    灘尾委員 ただいま自治庁長官から教育費に例をとってお話がございましたが、私の伺いたいと思いますのは、国の責任に属する部分と、地方の責任に属する部分と、どちらが重いか、どちらが大きいかということなのです。
  128. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 ここで数字的に御返答を申し上げる資料を今持っておりませんが、最近地方団体の仕事は国に属する仕事を代行しているのが多いのだ、私はかように考えるのであります。
  129. 灘尾弘吉

    灘尾委員 どうも、もう少しはっきりおっしゃっていただきたいのであります。教育の問題は一応わかったといたしましても、そのほかまだいろいろ国の方の関係が多いと思うのであります。しからば私質問を変えて申し上げます。人件費とか生活保護費でありますとか、あるいは公債費等、これらは義務的な経費なんです。それから公共事業、国庫補助事業等、国の施策に伴う費用も相当ある。これらが、地方の歳出の構成の上におきましていかなる部分を占めておるでありましょうか。地方歳出の中で、こういうふうな義務的な経費ないしは国の施策に伴う経費が、どの程度のパーセンテージを占めておるか、これをお示し願いたい。
  130. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 大部分が公共事業に属しまして、地方の単独事業は五%内外であります。
  131. 灘尾弘吉

    灘尾委員 現在の地方財政における歳出の構成上、地方団体としては義務的な経費ないしは国の施策に伴う経費が大部分で、地方独自の施策による仕事はわずかに五%にすぎない。ほとんど全部が現在自治体の名において国の仕事をやっておると申しても差しつかえないような状況であります。そういたしますれば、大部分の赤字が国の関係の経費から出ておるものと称してよろしいと思いますが、いかがでありましょうか。
  132. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 国が地方に補助する事業、これの地方への負担割合が完全に行われおれてばよろしいのでありますが、これまでのやり方を見ますと、たとえば単価の計算にいたしましても、半額負担という場合に実際は半額は行かないで、それ以下しか行っていない事例がたくさんございます。たとえば学校にしても今日大体坪三万円以上かかるにかかわらず、単価の見積りは二万七千円で配付されているというようなことでありまして、その差額はどうしても地方が負担しなければならぬというようなことが重なりまして、赤字一つ原因になっておることは事実であります。
  133. 灘尾弘吉

    灘尾委員 長官赤字原因をまことに小出しにおっしゃっていらっしゃるようですが、ただいまのような国庫の補助の単価が安過ぎるとか、あるいは補助率が適当でないとか、そういうような関係上、地方としてはやむを得ず継ぎ足してやらなければならぬ、これがたくさんあることは明らかな事実であろうと思います。しかしそのほかにもたくさんあると思う。災害の復旧事業のごときも、実際の災害復旧の工事と国庫補助の支払いとの間には非常なズレがある。地方ではほっとくわけにはいかない。従って災害復旧工事としては完成しておっても、国の補助の方はうんとおくれている。やむを得ず地方では仕越し工事をしておるというような例もあるのであります。二十八年度の決算で、この仕越し工事がどのくらいになっておるか、お伺いしたい。
  134. 後藤博

    ○後藤政府委員 お答えいたします。二十八年度の終りではたしか四十億くらいだったと思っております。
  135. 灘尾弘吉

    灘尾委員 災害復旧だけでもかなり大きな部分が常に地方の負担として出てきておる。いずれ何とかするということではありましょうけれども、これが地方の財政を圧迫することは間違いないことであります。そのほかよく言われることでありますが、現在の学校の建築にいたしましても、全く実情に沿わない単価のもとに補助金を出しておる。大蔵省ではこれでできると考えていらっしゃるのかどうか、非常に疑わしいのでありますが、とにかく事実と合わない補助をやっており、地方ではかたわな学校が作られる。従いまして、そういう意味におきましてどうしても継ぎ足してやらなければならないという部分が少くない。そのほか国が役所を作ったりなんかするときに、地方の寄付を求めるというふうなことも、しばしばやっていることであります。そういうふうな国の財政運営上のまずい点からして地方の赤字が出ているということは、これは明らかな事実であろうと思うのであります。しかし私はまだもっと大きな原因があるように思う。伺いたいのでありますが、昭和二十八年度の決算と二十八年度の財政計画と、その間にどのくらいの開きがありましょうか。私はかなり大きな開きがあるのじゃないかと想像するのでありますが、長官お答えを願いたいと思います。
  136. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 これは数字の問題でありまして、間違った御答弁を申し上げてもいけませんから、政府委員から詳細に答弁いたします。
  137. 後藤博

    ○後藤政府委員 お答えいたします。約千億の開きがございまして、そのうち経常費が六百億くらいであります。
  138. 灘尾弘吉

    灘尾委員 約千億の開きがあるということであります。そのうちでも経常費の開きが約六百億、こう言われるのでありますが、しからば六百億の内訳はどういうことになっておりますか。
  139. 後藤博

    ○後藤政府委員 お答えいたします。六百億のうち給与費が約四百億、それから恩給費が約四十億、そのほか物件費であります。給与関係経費、そういうものがその差額であります。
  140. 灘尾弘吉

    灘尾委員 これだけ大きな開きが出ておるのであります。長官に伺いますが、財政計画と実際の決算との間になぜこういう大きな開きが出ておるのでありましょうか、その理由を伺いたいと思います。
  141. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 ただいま政府委員からお答え申し上げた通り、一番大きな開きは給与でありまして、給与は二十六年の財政計画を立てます際に、地方の実態と違いまして、国家公務員のベースを適用いたしまして計算を立てて、地方財政計画というものを作ったのであります。それが原因で給与費に大きな開きができたのでございます。これが根本だと私は考えております。
  142. 灘尾弘吉

    灘尾委員 こういうふうな大きな開きがあるところを見ましても、私はこの辺に地方財政赤字の一番大きな原因があるのじゃなかろうかと思うのです。この開きに対しては長官とせられましてはどうなさるおつもりでありますか、いかにしてこれを処理していかれるつもりでありましょうか、そのお考えを伺いたいのであります。
  143. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 この開きがありますために、地方財政計画上の財政規模と実際の財政規模とが必ずしも一致しないわけであります。地方財政計画上の財政規模と実際の財政規模とを一致させることが、地方財政健全化させる道でありまして、どうかしてこの開きをなくなすようにしたいと思うのでありますが、地方の給与の実態が明瞭でありませんので、昨年以来地方、国家を通じまして公務員の給与の実態調査をいたしております。これができますれば、これに従って適当に処理する、こういう方針でやっております。
  144. 灘尾弘吉

    灘尾委員 一番大きな問題が給与費のようでありますから、給与費をもととして伺ってみたいと思います。これまでにもなくこの問題は常に言われている問題であります。しかもこれに対しては今長官お話のような状態でありまして、今日まで何らの財源措置もせられておらない。ここに非常に大きな赤字原因があるのであります。この点は大蔵大臣に伺ってみたいと思うのでありますが、こういうふうな状態の場合に、どうして今まで財源措置がせられなかったか、大蔵省としてはどんな考えを持っていらっしゃったのか、これを承わりたいと思うのであります。
  145. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは今長官から御説明がありましたように、実際に計上してある給与と給与の実勢の開きが出ているということであります。これはどうしても給与について調整する方途を講じなくてはならぬが、しかしその実勢を下げるというわけにもなかなか行きがたいと思いますので、私どもとしては、これの財政の関係もありまして徐々にやっていくというはかなかったわけであります。
  146. 灘尾弘吉

    灘尾委員 財政の関係もあるので徐徐にやっていくというお話でありますが、徐々じゃ実は困るのです。現に大きな赤字を出している。これからもこの状態でいけば、いくらやっても赤字は尽きない非常に大きな原因一つであろうと私は思う。これを財政の都合で徐々に片づけていくということでは、地方の赤字の問題は解決しないと思う。私は給与費でありますとか、恩給でありますとか、こういうふうなものは申すまでもなく、地方団体にとりましては一種の義務的な経費だろうと思うのであります。地方団体の給与が高過ぎるというのでありましたならば、すみやかに適正にする措置を講ぜらるべきだろうと思うし、基礎が低過ぎるというのなら上げることも考えてもらわなければならない。今自治庁長官は実態調査をやるということを仰せられたのでありますが、一体いつごろ実態調査が済みましょうか。ことしもすでに四月、五月とたっております。だんだん遅れれば遅れるほど、また来年に赤字を残すことになるのでありますが、この実態調査は一体いつごろ完了する見込みでありましょうか。
  147. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 公務員の給与の実態調査は吉田内閣時代に始めまして、すでに全国から集計が集まっておりまして、今統計局でもってこれを整理いたしております。これは九月ごろには完成するという状況でございます。
  148. 灘尾弘吉

    灘尾委員 実態調査が九月ごろに完成するというお話でありますが、その実態調査の結果、今日まで政府がおやりになりました給与費に対する財源措置が不十分であるという結論が出ました場合においては、すみやかに是正の措置をとられるものと考えますが、いかがでありましょうか。
  149. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 国の一般財源とのにらみ合せもありますけれども、自治庁長官といたしましては、すみやかに適当に処置をしまして、地方財政健全化をはかることが必要だと考えております。
  150. 灘尾弘吉

    灘尾委員 自治庁長官としてはすみやかに適切な措置をとるという御答弁でありますが、さような場合には一体どういう方法によって措置をおとりになるおつもりでありますか。税源を賦与せられるのか、あるいは交付税の増額を考えられるのか、いろいろ方法が考えられるのでありますが、どういうふうな方法によってこれを是正せられますのか、これを一つ伺いたい。
  151. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 財源の関係がありますので、私から政府の的確な方針を申し上げるわけにはいかぬのでありますが、私の立場から申し上げますれば、交付税の率を上げるなり、あるいはたばこ消費税の方で考究するなりしまして、地方団体に財源を与えることが必要だと考えております。
  152. 灘尾弘吉

    灘尾委員 財源を与えることが必要だということだけでは困るのでありまして、そうなってくれば、せっかくの実態調査でありますから、ぜひ何らかの措置を講じてもらわなければならないのですが、大蔵大臣はどういうふうにお考えでありましょうか。
  153. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 せっかく長い間かかって実態を調査して得たのでありますから、この調査は私はやはり今日の地方財政状況から見ても生かさなくてはなるまいと考えております。従いましてその結果に基きまして、財源的にも適切に——私今どの税をどうするかということは申し上げかねますが、財源的に十分考慮するつもりでおります。
  154. 灘尾弘吉

    灘尾委員 この問題は赤字対策のうちでも、実際問題といたしまして一番重要なポイントじゃないかと実は私考えております。どうしても出さなくてはならぬ経費であります。いくら国の方で財政計画の場合に切り詰めた計画を立てましても、実際人を使っておる地方団体といたしましては、そうむちゃくちゃにこれを切るわけにはいかない。どうしても適当な給与だけは続けて参らなければならぬわけでありますので、これがうまく片づきませんと、結局地方は苦しいながらも赤字赤字でやっていかなければならぬということになる。どうしてもこの問題は、ぜひ今度の実態調査を機会に、政府においても片づけていただきたいと思います。ただいま大蔵大臣は適当な措置を講ずる、こういうことでございますが、それは、やり方につきましては地方に財源を賦与するという方法もございましょうし、あるいは交付税の増額というふうなことが考えられると思うのであります。私はおそらくこの二つ以外にないと思う。まさか公債でそれをやれということはおっしゃらぬと思う。ちゃんとした財源をお与えになると思うのでありますが、これは大事なことでありますので、この結果が出ましたらすみやかに是正の措置をとる。九月に結果が出るというのでありますれば、年度内における補正予算ぐらいはぜひやってもらわなければならぬと思う。必ずその措置をとるということを、この際全国の地方団体のために言明していただきたいと思います。
  155. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 実態調査をやって、事態がもしはっきりすれば、足らないところを国でこれを措置しよう、あるいは中央の犠牲においてこれを解決しよう、こういう意味でありますから、実態調査をやったのをそのまま何にも使わぬということは意味ないことでありまして、私たちといたしましては、ぜひ適当な措置をとりたいと考えておりますが、これは一般の全部の国の財源に関係することでありますから、私限りで責任を持ってお答え申し上げるわけにはいかぬのでありまして、やはり政府一体となって考えて、希望に沿うようにするのが必要だと労えております。
  156. 灘尾弘吉

    灘尾委員 もちろん政府一体となってお考え願わなければならぬ問題であります。特にお台所をあずかっていらっしゃる大蔵大臣は、適当な措置を講ずるとおっしゃいましたから、重ねてお伺いいたしますが、結果が出ましたらすみやかに適切な措置を具体的に講じていただきたい。今申しましたようにこの点がはっきりいたしませんと、われわれの予算審議につきましても、また地方財政再建整備の問題につきましても、重大な影響を持ってくる問題だと考えますし、審議の都合上もありますので、この点につきましては明確な御答弁を重ねてお願いいたしたいのであります。
  157. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほど答弁いたしましたように、調査の結果を見て十分検討を加えるのでありますが、そして財政の許す場合において、なるべく早くするということも十分私は検討を加えたい、かように考えております。
  158. 灘尾弘吉

    灘尾委員 どうも大蔵大臣の御答弁を伺っておりますと、まことに御用心深い御答弁のような気もするのであります。財源の都合とにらみ合せてというふうな御答弁では、実は私満足できないのであります。財源を何とかしてこしらえていただきたいのであります。ほかの仕事があるから地方は財源ができないというのでは、私は今日の地方財政赤字を克服することはできぬと考えます。何とかして財源をひねり出してもこれについては措置を講じていただかなくてはならぬ。政府もせっかく地方財政健全化をはかる、赤字の克服をやる、こう言って、意気込みを持ってこの国会に臨んでおられるということは、先ほど自治庁長官がおっしゃる通りであります。でありますから、これにつきましては財源があればする、なければやらぬというふうなことではなくて、またただ地方のいわゆる自然増収であるとか、あるいは地方税の増税であるとか、さようなことで片づけるというのではなくて、いわんやまた公債なんかによって片づけるというのではなく、積極的に国の方としてはっきりした財源措置をぜひ講じていただきたいと考えます。この点重ねてお伺いいたします。
  159. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。財源があればする、そういう意味では決してありません。むろん財源を積極的に考えていいと思います。私は、今日地方財政の困窮は、何とかしなければ非常に困ったことになりはしないかと心配しておることは同じであります。しかしずっとこの委員会で申し上げておりますように、今日の財政状況がなかなか苦しい状況にありますので、それだけは御了承を得ておきたいと思います。
  160. 灘尾弘吉

    灘尾委員 財政状況が苦しいということは、私もよく承知いたしておるわけであります。しかし国の財政以上に苦しいのが地方の財政であります。まさに崩壊せんとしつつあると申し上げてもよろしい段階であると思いますので、そう重ね重ねお尋ねはいたしませんが、大蔵大臣の誠意に信頼いたしまして、私はこの点はこの程度で打ち切りたいと思います。ぜひ地方の実情につきまして十分にお考えを願って、結果が出ましたら必ずそれに即応ずる適切な措置を時を移さずにやっていただきたい。遅れれば遅れるほど赤字を残すことになり、再建整備も意味をなさぬということになります。そういうことでありますので、大蔵大臣も自治庁長官もまた政府一体となって実行していただきたい。また実行せられるものと固く信じて、私はこの質疑を打ち切りたいと思っております。  次に参ります。今度の地方財政計画でありますが、この地方財政計画を検討することによって、先ほど来自治庁長官が仰せになりました馘首の減員に応ずる対策というものが入っておるのか、入っていないのかということもわかると思うのであります。いろいろお伺いしたいこともたくさんございますが、時間の関係もございますので、一、二重要と考えられる点について伺いたいと思うのであります。  その一つは、公債費の問題であります。昭和三十年度における地方団体の公債費は、どのくらいのお見込みでありましょうか。
  161. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 元利合計しまして五百十億に相なっております。
  162. 灘尾弘吉

    灘尾委員 この公債費が毎年々々ふえていっておるのが今日の実情でございます。一般財源の方にあまり変りがないといたしますれば、公債費がふえればふえるだけ地方の財政の弾力性というものはなくなってくる。これからの経済界が一体どうなりますか、お互いに心配な問題でありますが、今後地方税というものが、どんどん増収ができるということならいざ知らずでありますけれども、現在の状態でもっていたしましては、公債費が増せば増すほど地方財政の困窮度が大きくなる、これも今後の赤字の問題としては、よほど気をつけなければならぬ問題だと思うのでありますが、この公債費の累増の傾向に従って、またこれによって生ずる地方財政の圧迫というふうな事柄について、大蔵大臣はどういうふうにお考えになっていらっしゃいましょうか。
  163. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は率直に申し上げまして、地方債が年々ふえまして、そうして公債費が累増する、こういう事態をずっと継続していきますれば、これはもう公債費でもって地方の財政はどうにもならなくなる、こういうふうに考えておりまして、心配いたしております。
  164. 灘尾弘吉

    灘尾委員 心配はしておるとおっしゃるのでありますが、この事態に対しまして、何か対処するというふうなお考えはございませんか。
  165. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいまのところこれにどういうふうに対処するか、率直に申しまして私も具体的にないのであります。三十年度におきましては、財政の許す範囲内におきまして、どうにもならぬところを、一応今後赤字が出ないような措置をとる。私の意見ではなはだ恐れ入りますが、基本的には地方の全体の制度自体についてまで考えてみなくてはならない、かように考えております。
  166. 灘尾弘吉

    灘尾委員 地方財政全体のことになりますれば、今お話通りです。先ほ来話がありましたように、現在の財政の赤字というものは、一つには国の財政運営の拙劣さからくる。たとえば補助率の問題その他そういうふうな財政運営の面から考え直さなければならぬものがございます。同時にまた、地方団体それ自体の財政運営の面におきましても、もちろん反省すべきものがあり、是正すべきものがあるということは申すまでもありません。同時にまた、終戦後のいろいろの制度が積み重なってきて、これが地方団体に大きな重圧になっておるということも間違いのない事実であります。仕事がふえ過ぎておる。それと同時に、先ほど来議論をいたしておりましたような地方の現実の財政の状態と、政府がお示しになるところの地方財政計画、この間に非常に大きな開きがある。これがさしあたって一番大きな問題だろうと思うのであります。これらはみな考えてもらわなければならぬ点であります。従って制度の問題につきましても、私言及しませんでしたけれども、政府としては十分に御検討になる必要がある。また実際の財政運営の面についても御検討になる必要がありますが、そのうち公債費の増加の傾向に対しまして、政府の方では起債のワクを縮小する。その起債のワクを縮小することによって、公債費の累増というものをストップさせていくといいますか、調節していく、こういうふうなお考えがあるやに、ときに伺うのであります。事実はどうでございましょう。
  167. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 三十年度の起債のワクは二十九年と同様一千百四十億にとどめたのでありますが、そのうちには百十億の再建整備に要する金が入っておりますから、公共事業その他に使える金は昨年よりそれだけ減っている、こういうわけであります。
  168. 灘尾弘吉

    灘尾委員 時間の関係もありますので、あまりくどいことを申し上げるわけに参りませんが、地方の公債費の累増を押えますために起債のワクを減らすということは、これは一つ考えだろうと思う。ただこの場合に御注意を願いたいと思いますことは、ワクだけ減らされたのではどうにもならぬ。やはりさような場合におきましては、一面において地方財源の増強ということを考えていただかなければならぬ。その方のことが全然行われないで、ただ起債のワクを縮小するということになりましたら、先ほど来ちょっとお話がございましたが、地方団体というものは結局給料支払い団体になってしまう、ほかのことは何にもできぬ、極端にいえばこういうことにもなるわけであります。そういうふうな公債費の前途につきまして心配があります限りにおきましては、われわれは地方の財源をもっと充実し、もっと増強することに特にお考願いたい。それなくしてただ起債の方面からのみ攻めていくということは、一つお断わりいたしたい、かように考えておる次第であります。  次に、最近公債関係で公債費が非常にふえてきた。そこへもってきて赤字は非常に大きくなってくる。公債の償還にえらく困ってしまいまして、この公債の償還を一つ一句くらい延期してくれというような声も、あちらこちらに上っているようであります。きわめて悲痛な叫びと私は受け取るのであります。この一年間公債償還を延期してくれという声に対しましては、政府はどういうふうにお考えになっておりますか。
  169. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今地方債の償還を延ばすということは考えておりません。
  170. 灘尾弘吉

    灘尾委員 地方債の償還の延期ということは、これはなかなか重大な問題だろうと私も考えております。ただそういうふうに苦しい叫びを上げなくちゃならぬほど金繰りに困っておる、財政に困っておるということだけを一つ大蔵大臣に御了承願いたいと思います。その上でとくと地方財政の根本について御検討願いたいと思っております。  それから、次に伺いたいと思うのでありますが、三十年度の財政計画を検討してみますのに、地方交付税の交付率と申しますか、これが従来のままで二二%になっておるわけであります。それから本年度になりまして警察費の平年度化に伴うて、交付税率の算定の基礎について何か考えなくちゃならぬのじゃないかと私どもは考えるのであります。こういうふうな問題につきまして、一口に言えば、今日の財政計画から申しまして、私は地方交付税の率について検討を要するものがあると考えます。たとえて申しますと、今度政府は所得税、法人税等の減税をお考えになっております。この所得税、法人税あるいは酒税の税収の二三%が交付税の中に入れられる、こういうきまりになっておるわけであります。今回はこれに対しまして約三百数十億の減税が行われるということになっております。そうしますと、そのままの率の二二%で交付税を計算するということになりますと、本来一応企図しておりましたところの交付税が入らないということになってしまいます。この関係で生ずる減収が約七十億くらいになるのじゃないかと想像いたしております。こういうふうに政府の方で交付税算定の基礎になりますところの所得税なり法人税なり、さようなものにつきまして税率を変更された場合には、地方交付税の交付率についても同じく調節をとらるべきじゃないか、そうしないと政府の方で勝手にこの三国税について税率を変更せられるということが、直ちに地方の方に響いてくるのであります。かような明瞭なものについては、何らかの措置を講ぜられるべきであったと思うのでありますが、これが講ぜられておらぬようでありますが、この点についてはどういうふうにお考えでありますか。
  171. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。この問題は二つの点にあったかと思うのでありますが、一つは、地方財政のために地方でいろいろと財源を求めておる、その場合に交付税の税率を上げるというか、一応地方に有利に変えたらどうかという考え方は、私は非常に考慮を要すると思う。むしろ交付税の税率の妥当性を考えて、その財源の範囲内で地方がやっていく、こういう考え方の方が正しいかと思っております。これはもちろん御議論があるかもしれません。  それからもう一つは、今回の減税の後のことですが、これはやはり実際問題に即して——非常な減税でもしたというような場合、地方に渡す税収入が確保されないというような場合は考えなくてはならぬかと思うのですが、今回は間接税の増収もありまして、地方に渡す税収といいますか、それは十分確保されておると考えますので、変更する要はないと思います。
  172. 灘尾弘吉

    灘尾委員 昔の平衡交付金制度と今日の地方交付税制度と、その間に趣意において多少の差意がある、これは私も了承いたします。しかしながら今日の地方交付税の税率というものは、いかなる成り行きによってこれが決定せられたかということも、一つ考えを願いたいと思うのです。これはやはり地方の財政需要額を基礎といたしまして、交付税法の制定当時きめられたものであります。一応の考えといたしましては、大体この程度の税率でやっていけばまずまずやっていけるだろうということで始められたことと思うのであります。もちろん平衡交付金と違いますから、その年その年の三国税の収入状況によって、あるいは交付税がふえることもある、あるいは多少減ることもある。これは考えられる。従いましてこの制度をとりました以上は、一々のことをかれこれ申し上げるわけには参らぬと思うのであります。しかしながら根本の三国税の税率というものが変更せられる——そのとき、そのときの景気とか不景気ということでなく、税率そのものが変更せられるというような場合におきましては、やはり考慮のうちに入れていただかなければならぬものと考えます。毎年々々今までの平衡交付金のように、最後に要るものだけを平衡交付金でやるという制度ではなくなくなりましたけれども、やはり交付税制度のもとにおきましても、これが地方財政の実情と非常にかけ離れた場合におきましては、これは是正するということになっている。そういう意味からすれば、その年では解決しませんでも、交付税法によりましても多少長い目をもって見れば、やはり地方財政の需要額と交付税というものの間に、何らかの合致点を求めておるということは私は言えると思う。そういうわけでありますので、平衡交付金のときと今度の地方交付税になった場合と政府の御配慮の仕方において、根本的にそう違うものではない。一年々々勝負をつけるということではないにしましても、長い目で見ればやはり地方の状況というものに合致するような交付税を出すという趣意は依然としてあるものと考える。そのことを申すわけではありませんが、国が勝手に——勝手にと言っては語弊がありますが、国の方が一方的に税率を変更することによって、地方の交付税がそのためにただちに減ってくるというふうなことは、これはおかしいと思う。わずかなことならともかくでありますが、しかし今回の場合におきましても、数字の上からいいますと七十一億以上の相違が出てくると思うのです。今の地方財政の上から申しますと、この七十一億というものは決してばかにできる数味ではない。一般財源として七十一億がもらえるかもらえぬかということは、地方の財政の上から申しますと非常に大きな影響を持つものと考えるのです。そういうことでありますので、この三国税の減税に伴う地方交付税の減額は、ぜひ一つ補正していただきたいものの一つであります。それからあるいは奄美群島の経常経費の算入に伴う一般財源の増加を必要とする額でありますとか、警察費の是正額の平年度化に伴う一般財源の増加を必要とする額でありますとか、それから先ほど問題となっておりましたような、いわゆる給与残その他の地方財政計画の算定が之に伴う既定財政規模の是正に伴う一般財源の要増加額、こういうふうなものがいろいろ考えられる。これらの問題につきまして、給与の問題については実態調査をしてその上で何とかしよう、こういうお答えをいただいたわけでありますが、今後の地方財政計画を見ます場合におきまして、こういうふうに税率のの変更からきておる問題、あるい奄美群島とか警察費とかというふうな関係で当然考えられなくちゃならぬ点について手が加えられておらなない。私どもはこの点からいたしましても相当な補正を必要とするように考えるのであります。これは一つ数字にわたりますので政府委員でけっこうでありますが、今私が申しましたような国税三税の減税関係、あるいは奄美群島の関係、あるいは警察費の関係、その他地方財政計画の算定がえに伴う既定財政規模の是正、こういうふうなことから生じて一体どのくらい本来ならば財政計画の中に盛り込むべき数字があるか、あるいは政府の方じゃそれは必要がないんだとお考えになりましょうが、それが入れる必要があるかないかは別といたしまして、さようなものについてもしこれを財政計画の中に入れるといたしましたならば、一体どのくらいな金額になるか、また交付税率につきましてどの程度の増率をしなければならぬか、計算だけを一つお示しを願いたい。
  173. 後藤博

    ○後藤政府委員 お答えいたします。ただいまお説の国税三税の減税に伴う地方交付税の補てん額は七十一億七千五百万円であります。率にしまして一・一四%になります。それから奄美大島群島の経常経費の算入に伴う一般財源の増加額は八億六千三百万円、率にしますと〇・一四%であります。それから警察費の是正額の平年度化に伴う一般財源の増加額は五十三億五千二百万円であります。率にいたしますと〇・八五%になります。それから既定規模の是正によるところの一般財源の増加額は三百三億四千五百万円でありまして、率は四・八一%になります。計で申しますと要財源措置額は四百三十七億三千五百万円になりまして、率で申しますと六・九四%に相なります。
  174. 森永貞一郎

    森永政府委員 ただいまのお尋ねに対しまして計数的には自治庁当局からお話しがあったのでございますが、率の改訂をいたしておりません根拠を一言申し述べさしていただきたいと存じます。  三点ぐらい問題がございます。  第一点は所得税、法人税における減税によって減収がある。その分を率の増加でカバーすべきであるという点でございますが、この点につきましては一方所得税、法人税、酒税の自然増収がございまして、昨年度の当初の三税収入に比べますと相当増額になっております。つまり減税によりまして昨年度補正後の税収入の規模を下回っておるというようなことにはなっていないわけでございまして、補正後の収入に維持しておるわけでございます。交付税の考え方、すなわち軽々にこの率を改変すべきでない。引き続き著しく過不足が起った場合は別でございますが、みだりにこれを改訂すべきでないという交付税の考え方から考えまして、収入が維持せられておる今日の状態におきましては、これをただちに交付税率の改訂に持っていくべきものでないというふうに考えたわけでございます。  それから第二点の警察の関係、奄美大島の関係でございますが、警察の関係では昨年当初の計画に若干の財政需要の見積り不足がございまして、補正の際にそれを是正いたしました。その場合に経常費に属するものが三十億、臨時費に属するものが十億、この十億の系統は臨時費でありますので、本年度にはあとを引かないわけであります。三十億の問題、これは経常費でございますが、歳出の方におきまして見積り不足があったのと同じような程度におきまして、主税収入の見積りにおきまして見積り不足がありまして、それによって前年度においては補てんせられたわけでございます。但しこの三十億が本年度以降平年度化して参りますと、そこに若干の不足が出るわけでございますが、その金額は比較的に少いわけでございまして、大体十億見当ではないかというふうに考えております。奄美大島関係でも、若干の当初計画の見積り漏れがございまして、約八億円くらいのものがあったように考えられるのでありますが、いずれにいたしましても、警察と合せまして十七、八億くらい、市警察の県警察移管の関係考えましても、これも六、七億でありまして、せいぜい二十四、五億になるわけであります。この二十四、五億の増加に対処しまして一々交付税の税率の変更でいくかどうか、これはやはり先ほど申し上げましたような交付税の趣旨から考えまして、みだりにこれを変えるべきでないという方針を——ことに昨年交付税が創立されたことしでございますので、これを維持して別の方法でこの分を満たせばいいんじゃないかというようなことを考えたわけでございまして、入場税譲与税配付の繰り上げであるとか、一割国庫納付金の取りやめであるとか、その他たばこ、地方譲与税、諸般の財源措置を講じまして本年度といたしましてはこれらの財源不足を補てんする、さような方針で本年の地方財政を処理いたしておりますことを申し上げまして、一応の根拠を申し上げた次第であります。
  175. 灘尾弘吉

    灘尾委員 交付税の税率というものをそう簡単に動かすべきものでないということはこれは私も了承いたします。そういうつもりで交付税というものはできておるはずであります。毎年毎年そのために率が変るとかなんとかいうふうなことを考える必要はないと思います。しかし今年度の交付税の問題は実は去年からの引き続きの問題があるのです。昨年の交付税の税率を決定する際にも、主計局長は十分記憶していらっしゃると思いますが、衆議院といたしましては二五%を必要とするという修正をしたのであります。これが参議院に行きまして、また参議院の方で修正になり、国会の会期の関係その他がありましてあまり議論する余地もなかったので、一応二二%ということで折り合いをつけたのであります。そのときにたばこの方から何とかしたらどうかというような話も出まして、当時の大蔵大臣が善処するということが出て、ここにことしはたばこの三十億円というものが繰り入れられておるようであります。そういうふうないきさつがある。昨年初めて交付税率を決定した際から実は基礎について問題がある。あれは衆議院といたしましては、みな十分なりと考えて賛成した人は一人もおらぬのです。もっと高い率を出すべきであるということが実は強く主張せられたのでありますが、いろいろないきさつでこういうことになっておるわけであります。従いましてこの三二%という問題につきましては、われわれ自身があまり権威を感じておらない。これは必ず是正を要すべきものであると実は考えておる。ちゃんとした基礎の上に立ってできました交付税でありますならば、今主計局長の仰せになりましたように、これを軽々に動かすべきものじゃないと考えております。しかしながら基礎そのものに重大な問題がある。その当時の財政需要というものを基礎として立てられたものでありますけれども、それ自体にすでに問題を含んでおる。そういうことでありますので、この問題は軽々に動かさないという御趣旨につきましては私も了承しますが、しかしただいまの交付税の税率につきましてはもっと一つ考えを願いたいと実は私は考えております。ことに今回の場合のように、基礎となるべき法律が改正せられ、それによって明らかに減収になってくるというような場合におきましては、大蔵省におかれましても、ただ国の財政だけでなくて、この問題は同時に地方財政に響く問題であるということくらいは考えてほしいと思う。税率を下げられました結果、少くとも今日の計算で七十一億円の差異が生じてくるならば、その点については私はお考えを願っておくのが適当じゃないかと思う。もっと基礎を正す理由が明らかなものについてはやはり計算をして、そうして税率の問題について考えていただきたい。もしこれがほかの都合によって、ほかの事情によって所得税の税率は下げたけれども、ほかの方の収入がたくさんあるからいじらぬでいいのだ、こういうふうなお考えがあるといたしますならば、地方交付税というものと地方財政平衡交付金というものとが同じようなことになってしまうのじゃないか。ほかのものがあるから、差し引きしてみたところで結局これだけなんだ、だからこれでもってやっていくというふうなことを考えられるといたしますならば、私は平衡交付金的になってくると思う。大蔵省のせっかくのお考えではむしろ矛盾した結果となってくると思うのでありますから、年々の上げ下げということをかれこれ申すわけじゃございませんが、正すべき理由の必要なものについては一つちゅうちょすることなく絶対正していただきたいというのが私の言いたいところであります。  だんだん時間が過ぎて参りまして、同僚諸君にも御迷惑をかけておるようでありますから私は次の質問に移りたいと思うのであります。とにかく今まであまり不十分でありましたが、今度の財政計画においては、本来正すべき基礎を正さないで、今までのままに財政計画を作っておられる、今までの財政計画の基礎が不で分であるがゆえに地方が大きな赤字を出している、この点に対しましては、政府としては考慮が払われておらないというような気持が私はいたすのであります。  それからもう一つ伺いたいと思いますが、今度のこの財政計画の樹立に当りまして、どういういきさつがあったかは存じませんけれども、自治庁で初めにお立てになりましたところの財政計画においては、歳入歳出においてバランスがとれておらない、歳出の方より歳入が百四十億ほど足らぬという勘定が出ておったように思うのであります。これは政府部内のことでありまして、部内のことをかれこれ申し上げるのもどうかと思いますけれども、しかしこれも世間へ出ておる。百四十億ほど足らぬという計画を自治庁では一応お作りになったように思う。それがどういういきさつか存じませんけれども、一夜にして歳出面を約百四十億減らして、そうしてバランスのとれた計画として国会に御提出になった。このいきさつは一体どういうことでありましょうか。
  176. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 三十年度地方財政計画を立てますには、二十九年度の財政計画を基礎にいたしまして、当然減るもの、また当然増加すべきものなどを計算して歳出を推定しました。また収入の面におきましても計算をいたしました。その結果が大体百四十億程度不足になりました。これは地方の単独事業費の節約、行政機構、事務などの合理簡素化、公共事業の重点的施策などによってこれだけのものを生み出すのだ、こういう方針でありました。一応初めそういうことできめたのでありますが、いろいろ考究してみました結果、やはりその百四十億というものは一体どの項目で減らしたらいいかということを明示した方が地方財政運営の上においてよかろう、こういう考えになりまして、今お手元へお配りしたような地方財政計画を作ったわけでございます。
  177. 灘尾弘吉

    灘尾委員 自治庁といたされましては、歳入と歳出のバランスのとれないものを財政計画とお考えになっていらっしゃるのでございましょうか。その点いかがでしょう。
  178. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 平衡交付金制度の時代でありますと、歳入の不足は平衡交付金でもってこれをまかなう、こういう方針でありますからして、歳入、歳出については必ず一致すべきものでありますが、交付税制度に変りまして交付税並びに国庫支出金、地方税その他の財源でまかなう、こういう方針に変っておるのでありますから、交付税制度のもとにおきましては、自治庁で立てまする地方財政計画というものは必ずしも一致することはないのであります。また実際問題といたしましても、各地方、地方の地方団体が予算を全部集めれば、これは一致しないことも事実でありまして、そういう性格がここにお示ししてある今日の財政計画であります。
  179. 灘尾弘吉

    灘尾委員 歳入と歳出のバランスがとれなくても、今日の制度のもとにおいてはこれが財政計画といえる、こういうふうな御趣旨に伺ったのであります。なるほど地方交付税が平衡交付金に取ってかわった今日におきましては、当時と趣きを異にする点もあろうかと考えるのであります。それでありますならば、私どもとしては、今回お出しになりました財政計画に一体何の価値があるかということを言いたいような気がするのであります。百四十億の赤字があるのならあるではっきりお出しを願いたいんです。そうすれば、われわれにも参考になるのです。これだけ足らぬから一体これをどうするかということの参考になるのでありますが、われわれといたしましては、政府のお出しになりました資料を見ては、一体どこがどうなっておるかということがわからない。自治庁といたしましても百四十億は足らぬ、こう言われておりましたものを、どこかで減らされてこれを出された。どこでどう減らされたかということを、もし伺えるものなら伺いたいと思う。
  180. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 私は百四十億が赤字とは考えていないのでありまして、これは地方の単独事業の節約なり、また行政機構の簡素化なり、もしくは公共事業の重点的施策なりによって解消するんだ、こういう考えで言っているのでありまして、それを今度示した財政計画において個々の中へ盛り込んだのでありまして、初めからこれは赤字でなしに、今日のような苦しい財政状態でありますから、地方も抜本塞源的ないろいろな施策をやってもらいたいんだ、節約もしてもらいたいんだ、こういう考えでありまして、地方の節約に期待しなければ、とうてい赤字は解消しないのでありますからして、こういうことを期待して、一応は一本にして百四十億というものを出したのでありますけれども、それよりも計画的に各項目の中に入れて、地方財政の運営の方向を示した方が、地方財政の運営にもよかろう、こういう考えになりまして、お示ししたような財政計画書を出しているわけでありまして、初めから百四十億を赤字として考えているわけじゃありません。
  181. 牧野良三

    牧野委員長 灘尾君、時間ですから……。
  182. 灘尾弘吉

    灘尾委員 時間の御注意がありますので、簡単にいたしたいと思いますが、今回の地方財政計画の成立の過程を通じまして、私は地方財政計画というものにいかなる意義、いかなる価値があるのか、政府はこの財政計画をお出しになったけれども、これに自信をお持ちになっていらっしゃるのかどうかというふうな点についても、実はお伺いしたいのでありますが、その点は時間の関係もありますので、この財政計画そのものについて、私は非常に重大な疑問を持っているということを申し上げるにとどめたいと思うのであります。ただ申し上げたいのは、今のお話によりましてもうかかえるごとく、一応自治庁で計算されたものを明確にするために、さらに各個の項目について明確に減らしていった、こういう仰せでありますが、その減らされたものは何かということについてお話も伺いたいような気もします。しかし時間もないので、長官の口うらから察するのに、あるいは単独事業でありますとか、あるいは失業対策事業でありますとか、あるいは職員の昇給をストップするとか、地方でできない節約まででかすかのごとき計算をしてやっておられる。すべてを地方の犠牲において、しかもまた地方でできないようなものまで計算上できるものとして御計算になっていらっしゃる。こういう批評がいたしたいのであります。こういうものの考え方では、とても長官がお望みになるような地方財政赤字の克服ということは思いもよらぬ。地方は第一線の仕事をして、国民生活に直結いたしておるのであります。政府が机の上におきまして、これこれの仕事はやらぬでもいいだろう、これは節約してもいいだろうと言われても、要るものは要るのであります。その、要るものを切ってしまっては、仕事ができぬのであります。そういう第一線の仕事に対する配慮をしていただきたいのであります。私はこの地方財政計画につきましては、別の機会に詳細に検討いたしたいと考えております。この計画は端的に申し上げますれば、ごまかしの財政計画である、数字についてごまかしをしていらっしゃるという気持がいたすのでありまして、別の機会にこの点についてはさらに論及してみたいと考えております。  もう一点伺いたい。いろいろな問題がありますが、きわめて簡単に申し上げます。今まで申し上げましたことは、主として将来の赤字をどうするかということについての論議であったように私は思うのであります。もう一つ長官の重要な政策として御提出になるべく予定されておりますところの、過去の赤字をどうするか、いわゆる地方財政の再建整備に関する問題でありますが、この再建整備に関する法律につきましては、これは別の機会に十分一つ検討させていただきたいと思う。ただこの再建整備を実行しまするために、いかなる資金を用意していらっしゃるか、これを一つ伺いたいと思うのであります。
  183. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 再建整備のためには約二百六十億の長期の起債——今短期で行なっておりますが、これを長期に切りかえまして、公募債については利子の補給をする、こういう考えでございます。二百六十億のうち、六十億は人員整理に要する資金でありまして、二百億が長期債に切りかえる資金であります。
  184. 灘尾弘吉

    灘尾委員 時間がありませんので詳しくお尋ねすることができないのが遺憾でありますが、一体地方債全体を通じまして公募債はどのくらいになっておりましょうか。
  185. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 全部で三百八十億であります。
  186. 灘尾弘吉

    灘尾委員 なかなか膨大な公募債であります。従来もややともすると政府は公募債公募債というふうに、むずかしいときには公募債で逃げておられる。その公募債の消化のためには地方はかなり苦労して参りました。現にこの四月、五月につきましては地方なんか金繰りに非常に困っておる。こういう状態でありますが、今度そういうふうに大きな公募債の計画をお立てになり、ことにそのうちのきわめて大きな部分が再建整備のために必要な資金として公募債が考えられておるということになりますと、事は重大だと考えます。この公募債がすらすらと消化できればけっこうであります。果してその点はどうなんでありましょうか。今までの実績から申しますと、なかなか公募債を消化するということは、言うべくして非常に困難だということをしばしば聞かされておるのであります。今度のような場合に再建整備法まで作って、再建計画を立てて、そのために必要な資金としてかなり大きな部分を公募債にたよっておるということで、果してやっていけるでしょうか。非常に疑問を持っておるのでありますが、いかがでありますか。
  187. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 御説の通りでありまして、私どもも完全に消化することについては非常に必配をいたしております。三百八十億のうち、百五十億は再建整備に要する公募債でありまして、この百五十億につきましては大蔵省と折衝いたしまして、何か政府の責任においてやるようなことを考えるつもりでございます。あとの二百三十億につきましては、大蔵省、日銀等を通しまして極力あっせんする、こういうふうな方針をとっておるわけであります。しかし過去の公募債の消化の状況を見ましても必ずしも安心ができないのでありまして、この点については一そう努力いたしまして公募債の完全消化をいたしたい、こう考えております。
  188. 灘尾弘吉

    灘尾委員 自治庁長官はなかなか苦しい御答弁をなさっておるように私は伺うのであります。ほんとうに今度の再建整備を実効あらしめますためには、いろいろ議論したいところはたくさんありますが、私はこの場合今の資金のことだけ申し上げます。公募債の消化ということが確実にならなければ、やっていけないと思う。その点で極力努力する、こう仰せになっておるのでありますが、これは大蔵大臣お尋ねする方がいいのではないかと思いますが、大蔵大臣とせられましても奮発せられて、いわゆる地方の赤字克服のために再建整備という問題を政府考えていらっしゃるといたしますなら、この公債の消化ということについては、格段の御努力を願わなくちゃならぬと思うのでありますが、どういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  189. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。公募が三百八十億で、百五十億が再建整備、これは現在銀行等から借り入れになっております、これを一応振りかえまして、同時に、振りかえたあとで、明年度におきましては、この百五十億の限度において政府資金で肩がわりしようという、そういたしますれば、むろんこれは確実に消化をすると思います。それから公募の方ですが、これは二十九年度の公募債が約二百億であります。それがこの五月ごろまで八十八億しか消化をしていない。この見地から見て非常に心配があることは、申すまでもありませんが、しかしその後調べましたところが、その残りの分については、やはり前借りをずっとしておりまして、この五月末までには、この前借りがあとの百十二億ですか、これに振りかわる、大体これで一応消化する、こういう考えを持っておりますので、来年はそれより三十億多いのですが、今後の金融情勢を見た場合に、先ほど長官が話したように、いろいろな促進協議会というようなものを作りまして——これは場合によっては地方にも作ったらいいのじゃないか、そういうふうにしてやりますれば消化はできる、私はこういうふうに考えております。
  190. 灘尾弘吉

    灘尾委員 こういう問題につきましては日本の権威でいらっしゃる大蔵大臣の御手腕に待つところが一番大きいのであります。これはうまく参りませんと、この内閣としてお考になっておりますところの地方財政健全化ということは不可能になってくる、こういうふうに考えますので、私はくどいことは申し上げませんが、とにかく今回の地方財政の再建整備をやろうとするならば、ぜひこの公債の消化ということについては、格段の御努力を願いたい。ただ努力だけでは済まぬのであります。むしろ政府は責任を持って、この点については片づけるというだけのお考えで進んでいただきたいと思います。これも地方のものといたしましては、再建整備にかかるなんということは、実は地方団体としては骨の折れることなのであります。かなり苦しい思いをしてこれをやっていかなければならぬといたしますならば、やる以上はこれはでかすようにしていただきたいと思います。ひとえに大蔵大臣の責任ある適切な御措置に待つ以外にないと考えます。十分に自治庁長官あたりとも御相談願いまして、国民の満足のいくようにお願いを申し上げたいと思います。  最後に私の所見を簡単に申し上げまして、質疑を打ち切りたいと思います。今まで伺いましたところによりましても、政府といたしましてもいろいろと御苦心にはなっていらっしゃると思いますけれども、今度の政府の財政計画を拝見いたしてみまして、一体自治庁長官は三十年度からは今後赤字は発生させないという、それだけの自信をお持ちになっていらっしゃるかどうか、おそらくお持ちにならぬだろうと思う。もし赤字はもう出ないという自信があるといたしますならば、それは地方団体を殺す場合なんです。地方団体をほんとうに生かして——御承知のように、政府がいろいろな施策を講ぜられましても、その大半は地方団体に依存いたしている。地方団体と協力して国政というものが行われている。せっかくあなた方が予算をお組みになり、法律をお出しになりましても、地方団体がつぶれてしまったら何にもならぬ。それほどの密接な関係に立っているわけでありますので、特にこのことについてはお考えを願わなくちゃならぬ。今のような状態で参りますと、政府の行き方というものは、地方団体の赤字原因はわかっておる。わかっておりながら、その赤字を埋める方法といたしまして十分なことをなさらない。そのために結局わが地方団体に寄せられる。その結果は、このままの勢いで進めば地方団体はつぶれてしまう。地方団体がつぶれてしまったら、財政上は御心配はないかもしれぬ。しかしそれは日本がつぶれるときなんです。そういうことでありますので、地方団体はぜひ堅実に生かしていかなくちゃならぬ。その意味から申しますと、この赤字の克服につきましては、三十年度からはぜひ将来に赤字を残さないというつもりでやってもらわなくちゃならぬのが、今日の財政計画から申しますと、決してこの赤字原因は排除されておらぬと私は考える。従ってまた赤字原因が掛除せられず、今後も依然として赤字が出るといたしますならば、今日自治庁長官考えていらっしゃる赤字の再建整備、つまり過去の赤字を克服するという法律は、これは未来永劫これを続けていかなくちゃならぬことになり、意味をなさぬ法律ということになる。従いまして自治庁長官がこの再建整備法を国会に提出せられる場合におきましては、再建整備法が完全に施行せられるというだけの自信を持ってお出しになる必要があると同時に、三十年度からは赤字は出さないという覚悟を持ってお出しを願わなくちゃならぬ。それが三十年度からも依然として赤字が出るのだというような、なまぬるい考えでお出しになったら、通過しないものとお考え願いたい、そういうふうに私どもはこの問題としては考えておりますが、繰り返して申し上げますけれども、地方はまさに財政的に崩壊せんとしておる。長官自身が、呻吟しているという言葉をお使いになっている、非常に苦しいことになっておりますので、大蔵大臣におかれましても、自治庁長官におかれましても、国の財政も地方の財政も一体としてお考えを願って、そうして国だけが健全であればいいのだというのじゃなくて、国も地方も一緒に健全な財政ができるように格段の御配慮をお願いいたしまして、私の質疑を終りたいと思います。(拍手)
  191. 牧野良三

    牧野委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十七分散会