運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1955-05-25 第22回国会 衆議院 予算委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月二十五日(水曜日)     午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 牧野 良三君    理事 上林山榮吉君 理事 重政 誠之君    理事 中曽根康弘君 理事 小坂善太郎君    理事 西村 直己君 理事 赤松  勇君    理事 今澄  勇君       井出一太郎君    宇都宮徳馬君       小川 半次君    北村徳太郎君       小枝 一雄君    河本 敏夫君       纐纈 彌三君    高村 坂彦君       椎名  隆君    福田 赳夫君       藤本 捨助君    古井 喜實君       眞崎 勝次君    松浦周太郎君       三浦 一雄君    村松 久義君       米田 吉盛君    相川 勝六君       愛知 揆一君    植木庚子郎君       太田 正孝君    北澤 直吉君       倉石 忠雄君    周東 英雄君       野田 卯一君    橋本 龍伍君       福永 一臣君    阿部 五郎君       伊藤 好道君    久保田鶴松君       志村 茂治君    田中織之進君       田中 稔男君    福田 昌子君       柳田 秀一君    井堀 繁雄君       岡  良一君    小平  忠君       杉村沖治郎君    西村 榮一君       三宅 正一君    川上 貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         法 務 大 臣 花村 四郎君         外 務 大 臣 重光  葵君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         文 部 大 臣 松村 謙三君         厚 生 大 臣 川崎 秀二君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  石橋 湛山君         運 輸 大 臣 三木 武夫君         労 働 大 臣 西田 隆男君         建 設 大 臣 竹山祐太郎君        国 務 大 臣 大久保留次郎君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 杉原 荒太君         国 務 大 臣 高碕達之助君  出席政府委員         内閣官房長官  根本龍太郎君         内閣官房長官 松本 瀧藏君         内閣官房長官 田中 榮一君         法制局長官   林  修三君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 五月二十五日  委員稻葉修君、楠美省吾君、纐纈彌三君、永山  忠則君、平野三郎君、松野頼三君、足鹿覺君、  淡谷悠藏君、石田宥全君及び稲富稜人君辞任に  つき、その補欠として椎名隆君、高村坂彦君、  小川半次君、北澤直吉君、相川勝六君、福永一  臣君、伊藤好道君、阿部五郎君、武藤運十郎君  及び井堀繁雄君が議長の指名で委員に選任され  た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十年度一般会計暫定予算補正(第1号)  昭和三十年度特別会計暫定予算補正(特第1  号)  昭和三十年度政府関係機関暫定予算補正(機第  1号)     —————————————
  2. 牧野良三

    牧野委員長 これより会議を開きます。  昭和三十年度一般会計暫定予算補正(第1号)外二案を一括して議題といたします。  質疑を行います。愛知揆一君
  3. 愛知揆一

    愛知委員 六月の暫定予算審議が行われるに当りまして、私は自由党を代表いたしまして政府の各般の施策につきまして総括的な質疑を行わんとするものであります。  三十年度予算案が五月の六日に当予算委員会におきまして審議を開始されましてから、すでに二十日近くの日数が経過いたしておるのでありますが、その間におきまして外交問題、財政問題その他各種の問題につきまして、政府側説明あるいは答弁におきましては、非常な不一致があり、また不十分であり、資料の提出もきわめて不満足な状況でありますし、符に予算を伴う法律案は、二十四日現在におきまして、実に二十五件の件数がいまだに提出されておらないのであります。またさらに、去る二十日以来農林水産委員会で問題になりました減収加算の問題につきまして、これまた政府側見解がきわめて不一致であり、また昨日の質疑応答を伺いましても、私にも全く了解ができないような状態である等々の事情の中におきまして、本予算審議がきわめて遅延をいたしておりますことは、今さら申し上げるまでもないことでございます。この環境の中にありまして、六月暫定予算審議が行われるということは、私はきわめて遺憾千万と存ずるところでございます。この調子で参りますと、好むと好まざるとにかかわらず、またわれわれ野党側として審議にいかに協力の実を示しましても、よります本予算案審議がおくれまして、結果におきましては七月についても暫定予算を組まざるを得ないような状態に追い込まれると私は思うのであります。  私はまず第一に、総理大臣が、ただいまあげましたようなこの三十年度予算を提案され、その審議を求められておりますけれども、その基礎になりますような、たとえば法律案提出状況がかくのごときことであるというようなことを御存じであるかどうか。また御存じであるといたしますならば、結果において七月の暫定予算というものも組まざるを得ない状態に立ち至るものと思われるのでありますが、これに対して総理大臣はどういうふうにお考えになっておりますか。まずこの点をお伺いいたしたいと思います。
  4. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 法律案提出が幾分かおくれている傾向にはありますけれども、従来の例に比して、それよりもおくれておるとは思っておりません。全部の法律案はこの月のうちにはむろん提出するつもりであります。
  5. 愛知揆一

    愛知委員 従来の例というようなお話がございましたが、今月の二十一日現在では三十六件というように非常に多くの数でありまして、今日に至りまするまでまだ二十数件が提案されていないということは、前例にもまれなところでありまして、そういう状態において参議院の予算審議期間ということも考え合せますと、七月も暫定予算に追い込まれるおそれが非常に濃化してきた。このことにつきまして総理はどういうふうなお考えでありますか、重ねてお伺いいたしたい。
  6. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 できる限りすみやかに全部を提出いたしまして、間に合うようにいたしたいと思っております。
  7. 愛知揆一

    愛知委員 私はこの点はかかって政府貫任であると思うのでありまして、経済界もとよりでありますが、地方自治体その他いろいろの関係におきまして、国民の要望は、暫定予算は六月でもうたくさんである、七月からは本予算が成立することを非常に希望いたしておることは、これも申すまでもないことであると思うのでありますが、この上特段の御努力がなければ七月も暫定予算になるかもしれない。万一なりまする場合は、その責任はかかって政府にある、こういうふうに私は考えざるを得ないわけでございます。  ところで去る十八日の総理大臣の定例の新聞記者会見におきまして、新聞報道するところによりますと、総理大臣はこの予算の問題につきまして、こういう感じを受けるような発言をなされておったように思うのであります。それはほかでもございませんが、こういう状態であって、そうして予算審議対象もさだかでないこの時期において早くも総理は、この予算案の将来の補正、しかもこれは割合近い機会におけるところの補正ということを考えておられるような印象のある発言をなさっておるように拝見したのであります。私は、およそ三十年度予算案というものをここに提案され、そうして国会にその審議を求めておられる政府としては、これに全力を傾注すべき時期であると思うのでありますが、その段階のさなかにおいて、この予算案の将来における補正ということをすでに前提として、補正をやることがあるかもしれないというようなことを御発言になっておりますことは、私は一つにはいかにも総理大臣がのんびりされておるという感じを受けますし、また一つには本予算審議中に将来のそれに対する補正というようなことを総理大臣が言明されるというようなことは、これは前代未聞のようなことに思うのでありまして、非常にこの点はわれわれとしては心外に思ったのでありますが、この本予算案審議について、まあだめならば補正でやるというような、こういう気持総理がお持ちになっておるかどうか、この点につきまして総理のお気持を伺いたいと思うのであります。
  8. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 とにかく民主党過当数を持っていない党派でありますから、他党の意向に従わなくてはならないとも考えております。他党の意向を聞いてみますと、補正予算の必要の場合が生ずるかとも思ったものですから、ああいうような発言をした次第でございます。
  9. 愛知揆一

    愛知委員 繰り返して申し上げますが、この三十年度予算案審議に際しまして、そう一そう一つ政府側におかれても十分なる説明に努め、また誠意を尽してこの審議の進行に当られることを希望いたしておきたいと思います。  さて六月の暫定予算の問題でありますが、この予算案の内容の審議に際しまして、私はまず第一に、三月の末に、正確に言えば二十八日に、四月、五月両月分暫定予算が可決されたわけでありますが、そのときに当委員会におきまして四月、五月の暫定予算を可決するに際しての附帯決議を付したのでございますが、その附帯決議が付せられてあるということについて総理は御記憶でございましょうか。この点をお伺いいたしておきます。
  10. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 記憶しております。
  11. 愛知揆一

    愛知委員 御記憶を下さっておれば非常に仕合せでありますが、念のため三月二十八日の附帯決議をここに読み上げてみたいと思います。  それは一つは、公共事業補助事業につき、継続的な事業については、四、五月分の補助費計上する。第二点は、その他の補助金につき、昭和二十九年度予算計上されたる項目のものについては、昭和三十九年度までに必要のなくなったもの以外は、四、五月分の補助費計上する。こういうことに附帯決議は相なっております。これに対しまして大蔵大臣は「附帯決議の御趣旨を体しまして最善をいたしたいと思います。」かくのごとく発言をしておられるのであります。そこで私は、この六月の暫定予算編成に当って、このときの附帯決議並びに大蔵大臣の「最善をいたしたいと思います。」という御発言、これが十分今回の暫定予算に盛り込まれておるかどうかということについてお尋ねをいたしたいと思います。
  12. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申し上げます。今回の六月暫定予算は今御審議を願っております本予算案、これをもととして編成をいたしております。そして一般補助費につきましては四、五月を含めて大体年度の四分の一、三カ月、それから公共事業費食糧増産対策費等につきましては、これらの事業の性質にかんがみまして、四、五月を含めて年度の三分の一、四カ月分、それから災害復旧費及び北海道等寒冷地に関する事業につきましては、特に季節関係を考慮いたしまして、四、五月を含めて二分の一、従って四、五月に計上されなかった補助金は全部計上になっていることを御了承願います。
  13. 愛知揆一

    愛知委員 私はただいまの御説明に関連いたしまして、この附帯決議というものの趣旨を守って六月暫定予算編成されたということでありますならば、先ほども読み上げましたが、補助金等につきましては、二十九年度予算というものを基礎にして編成すべきものではなかろうか、こういうように考えるのでありますが、その点はいかがでありましょうか。
  14. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申し上げます。本予算がまだ国会提出されていないというようなときにおきましては前年度、すでに本予算案国会提出されておりますので、この補助費につきましては三十年度予算に基いてやるのが至当である、かように考えております。
  15. 愛知揆一

    愛知委員 その点は、決議趣旨の問題並びに暫定予算というものの性格の問題からいたしまして非常に私は疑義があると思うのであります。三十年度予算案基礎にしたということでありますが、そういたしますと、具体的な問題になります。御承知かととも思いますが、次のような補助金につきましては、これは二十九年度予算には盛られておったけれども、この暫定予算には盛られていないのであります。すなわち生活改善普及事業費、これは補助金全廃になっております。それから主要食糧作物採取事業補助金、これも全廃になっておる。あるいは水道の補助金関係では上水道の関係全廃されておる。さらに大幅に補助率が削減されたものとしては、農業委員会補助金というようなものがある。こういうような種類のものは、附帯決議趣旨から申しますならば、当然二十九年産予算基礎といたしまして計上すべきものであると私は思うのでありますが、これらが大幅に削減されたり、あるいは全廃されたということはどういうわけでございましょうか、この点を重ねて伺いたいと思います。
  16. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申し上げます。附帯決議におきまして、二十九年度中に必要のなくなったもの以外は計上するという御趣旨であったと考えるのでありますが、その趣旨を盛りまして、この三十年度予算案もとにして六月の暫定予算を組んでおるのであります。従いまして三十年度予算案計上しなかったもの、あるいは整理する予定のものにつきましては、今回の暫定予算にも計上していない、こういうことになっておるわけであります。
  17. 愛知揆一

    愛知委員 大蔵大臣の言われるのは、三十年度予算基礎にして、三十年度予算に盛り込むべきものは盛り込み、しからざるものはこれを削除した。要するにこういう趣旨なのであります。ところが私のお尋ねいたしておりますのは、三十年度予算を基準にして編成したということであれば、その三十年度予算案というものには、私が今あげましたような補助金はこれを整理するということの、いわゆる政策が盛り込まれることになるのであって、私は、暫定予算性格並びに特に先般の附帯決議趣旨から申しますならば、二十九年度予算基礎にしてすべきものである。従って先ほどあげましたのは、一、二の例でございますが、こういうふうな例としてあげたようなものについてはあくまでこれは計上すべきものであったのだ、こういうふうに考えるのでありますが、そういう点は決議趣旨に違反しないとお考えになるのであろうかということが一点。  それからいま一つとしては、暫定予算というものの性格は、政策的なものを盛り込まない、すなわち補助金整理というようなことは、政策の大きな一つである。その政策が盛り込まれた予算をここにお作りになったということは、私は暫定予算性格に反するものではなかろうか、こういうふうに考えるのでありますが、この二つの点についてもう一度明確にお答え願いたいと思います。
  18. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えを申し上げます。第一点の補助金決議趣旨を体するか体せないか、この点につきましては、先ほどから申しましたように、二十九年度中においてその必要のなくなったもの以外は計上するようにということでありまして、私ども見解といたしまして、こういうものは必要がなくなったというように考えて、計上しないものがあるわけであります。またこの整理については、法律を必要とするものは、法案提出して御審議を願って処理をする、こういうように考えておりまして、私は決議趣旨を体して補助金計上しておるというように考えます。  もう一つは、暫定予算政策的ないろいろなものを計上しておるという御質問と思うのでありますが、これはできるだけ新しい法律を作るとか、あるいは法律の改正をしておるものはむろん計上すべきである。なお新規のものにつきましても、御直間のように、本予算案審議にある程度の影響が場合によっては免れぬと思いますが、極力件数も少くし、かつまた季節的関係等、六月にどうしても支出負担を必要とするというものに限りまして計上してある。なお金額等におきましても、この六月暫定予算にすべて出るというわけでもありませんので、今後において調整も可能である、こういうことでこの程度の新規計上はやむを得ない、かように考えておるわけであります。
  19. 愛知揆一

    愛知委員 この点は非常にくどいようでございますが、私にはまだはっきり納得ができないのであります。それならばさらに問題を変えまして、補助金等整理に関する法律というものがございますが、この法律については四月、五月の暫定予算編成の際には、五月一ぱいまでその期限を延長いたしたわけでございます。ところが今回の六月の暫定予算につきましては、補助金等整理に関する法律についてはどういう扱いをされておるのでありますか。
  20. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申し上げます。あの当時は、まだ本予算案国会提出してありませんしいたしましたので、同時にこの本予算案が五月には御支持を得まして国会を通過できるだろうという見込みで、五月までの期限にいたしてあるのでありますが、その後におきまして本予算案国会提出し、そして諸種の事情からこういう補助金に対する臨時特例等法律をなお一カ年間延長することを必要とし、かつ適当と考えましたので、今回三十年度末まで延長する法案を御審議願うことにいたしておるわけであります。
  21. 愛知揆一

    愛知委員 この点は実際の問題としては、六月の暫定予算を出すのであれば、やはり前例と同様に、五月一ぱい延ばしたように六月まで延長するという法律案を、同時に国会審議を求めるのが私は筋であると思うのでありますが、その点はいかがでございましょうか。
  22. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申し上げます。すでに本予算案国会提出しまして御審議を願っておりますし、そしてこういう法律はもう一カ年間ぜひとも延長を必要とし、かつ適当と思うということに決定をいたしましたので、それで法律を一カ年間延長いたしておるわけであります。
  23. 愛知揆一

    愛知委員 その点はまだまだ追及しなければならぬ点でありますが、時間の関係もございますから、さらに進んで、それではこういう観点からお尋ねをいたしたいと思います。やはり補助金の問題でありますが、たとえば防火地帯の造成に関する補助金という問題がございます。これは建設大臣もおられますが、今度御自慢の四十二方戸の住宅建設につきましても、防火建築ということを非常に重視しておられる。それで耐火建築促進法というものが議員提出法律でもってすでに成立をいたしておりますことは申し上げるまでもございません。ところがこの耐火建築促進法というものが厳として存在しているにもかかわらず、この法律に基いて出すべき補助金は全然盛られておらないのであります。  それからいま一つの問題として、国立公園関係の問題があります。これまた議員立法国立公園法というものがあることは御承知の通り。その第五条によりましてやはり補助金を出すことになっておる。この二つのごときは典型的な例でありますが、実体法律があって補助金を出すことになっておって、しかもこれはこの暫定予算におきましては全然顧みられていない。この点は特に議員立法であって、しかもそういう規定があるのに、これを殺すことをしないで、実体法がありながら補助金が組まれないということは非常な大問題だと思うのであります。この点につきましての御説明を伺いたいと思うのであります。
  24. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。ただいまの二つのことにつきましては、これはやめることについての法律案をすぐ出すように今いたしております。
  25. 愛知揆一

    愛知委員 この両法律案提出はいつに予定されているのでありますか。そういたしますと、先ほど私が総理お尋ねしましたように、現に予算を伴う法律案がただいま現在で三十五件も出ていない。さらにこういう法律廃止法律案が用意されているとすれば、プラス二件と相なるわけでありまして、ますますもってこれは審議対象が非常に不足である。こういう状態でありますと、六月の暫定予算についてすら組みかえを要求しなければならないというようなことになる、非常に大問題だと私は思うのでありますが、いかにお考えになりますか。
  26. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申し上げます。今明日中にただいまの件は決定いたしまして、法案議題に供する、かように考えております。
  27. 愛知揆一

    愛知委員 私は次に、この機会に、鳩山内閣の施政の全般にわたりましていろいろとお尋ねをいたしたいと思うのであります。まず第一に、最近の新聞の伝えるところによりますと、鳩山総理大臣は、七月ごろでございますか、重光外務大臣アメリカに派遣されるというような報道があるようでございますが、この真相はどういうことでございますか、お尋ねをいたしたいと思います。
  28. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 重光君が七月ごろ渡米するかどうかということについては、何ら考えを持っておりません。ただかつてそういうような話があったときに、アメリカでは七月ころならば会うことができるというようなことを言ったために、そういう話が新聞に出たことと思います。
  29. 愛知揆一

    愛知委員 五月二十二日のある新聞報道するところによりますと、重光外務大臣を派遣されるということにとどまらず、むしろ鳩山総理みずから出馬されたい、また出馬させたいと民主党首脳部が計画しておるというような記事が出ておりますが、総理はこういう点についてどういうふうにお考えになっておりますか。
  30. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 愛知君のただいまのお話は、私の関知するところではございません。
  31. 愛知揆一

    愛知委員 ところがこのごろ総理大臣の御関知なさらないかと思われるようなことがしばしば新聞にも報道され、またいろいろの機会国民の間に話題になっております。たとえば最近のいろいろの会合等を通じて放送せられておりますところを見ますと、何か政局の安定というようなこと、あるいはまた非常に具体的な問題といたしましては、三十年度予算案取扱い等に関連いたしまして、鳩山総理が引退される、あるいはその引退が前提になっておるというようなことが伝えられておるようでありまして、ことにこういう話が与党である民主党幹部の方々の間から出ておるということが、非常に話題になっておるのでありまして、民粛党幹部人たちがこういうことを言うその不見識さは、驚くにたえたものだと思うのであります。私は、これは民主党幹部の人に今ここで質疑をするわけではございませんが、総理は、さような与党幹部の間で話が出ておるというようなことをどういうふうにお考えになるのでありますか。また時によりますと、これらの話に鳩山総理みずからも追従されるかのような印象をすら受けることがあるのでありますが、こういうような民主党のはなはだしく不見識な態度、またあるいはこれに追従せられるやに思われるような鳩山総理のいろいろの御盲動というものに対して、私どもは非常に不可解に考える。またこれが果して民主主義のあり方であるか。鳩山総理が大いに主張され鼓吹されておるところの友愛精神というような点から考えましても、私どもは実に不可解に感ずるのでありますが、一つ総理の率直な御見解をお聞きいたしたいと思います。
  32. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 愛知君が不可解にお思いになるのは当然のことだと思います。私が政界を引退することを条件として予算の通過をはかるとか、あるいは鳩山内閣の延命を講ずるとかいうようなことは、公明なやり方とは私は思いませんので、断じていたさない覚悟でございます。
  33. 愛知揆一

    愛知委員 それでは、この点につきましてはさらにあとでお尋ねをいたすことにいたしまして、次の問題に進みたいと思います。  その次に伺いたいと思いますることは、日ソ間の交渉のこれからのやり方の問題でございます。これもまた新聞を引き合いに出すようで恐縮でございますが、報道によりますると、昨日の閣議において、二十八日に松本全権が出発するに際して、松本全権に事える訓令というようなものを中心として閣議の決定があったようでございますが、これはどういう内容でございますか、伺いたいと思います。
  34. 重光葵

    重光国務大臣 日ソ交渉を始めることになった段階までは、すでにすべてを公表いたしておりますから御存じの通りであります。また今お話の通りでありまして、松本命権を任命して派遣することになっておるわけでございます。松本全権は、六月の初めには向うに到着をして交渉を始めるという段取りに相なっております。これも発表をいたしておる通りでございます。そして松本全権に与うる政府の訓令を決定したことも事実でございますが、その訓令を、まだ交渉に入らない前に申し上げるということは、果していかがかと思います。しかし、実はその訓令はきわめて簡単なものでございます。日ソ国交を正常化する目的をもって、日ソ町に存在する諸般の問題について解決を期する、こういう趣旨の訓令でございます。これは松本全権の使命を要約してその形にいたしたものでありますが、その要約した使命に基いて全権が交渉をする、こういうことに相なっておるわけであります。これが方針でございます。  それならばどういう交渉をするのであるかという次の疑問になることは当然でございますが、その交渉に当って、政府を代表して、外務省と全権との間に詳細に打ち合せをして今後やるつもりでございます。大体の結論的な方針をさようにきめて、これを松本全権に派遣の基礎的の訓令としたわけでございます。
  35. 愛知揆一

    愛知委員 そこで、ただいまの外務大臣の御説明でございますと、きわめて基礎的な、また結論的な内容のものである、こういうお話でございます。ところが五月二十二日の毎日新聞におきまして、日ソ交渉の政府の方針、全権に与える訓令の内容と想像されますものがきわめて詳細に報道されておるのであります。私は、政府の部内においてどういう検討が加えられておるか知りませんが、常識的にこれを見て、いかにもさもありなんと思われますものの内容が、きわめて詳細に出ておるのであります。たとえばそのプリアンブルでありますが、「本交渉は日ソ両国の国交正常化を目的として行われるもので、日ソ間の諸懸案を解決しつつ日ソ平和条約の締結へ導くことを最終目標とする」これが前文であるといたしまして、そのほか懸案の内容として、交渉すべき懸案としてはかくかくのものであるということが、抑留者の釈放を初めといたしまして、あるいは北洋漁業の問題、あるいは通商問題、あるいは国連加入の問題、あるいは領土の問題、あるいはその他平和条約中に挿入すべき規定として、かくかくのものをぜひ希望するというようなことが非常に詳細に報道されておるのでありますが、大体ここに報道されておるような、こういう記事が出るということと、それから今後の交渉は、その時宜に応じてよろしくやらなければならぬということで詳しくは発表できないということと、これはまことに矛盾するように思われるのでありますが、どういう関係になるのでありましょうか。
  36. 重光葵

    重光国務大臣 その新聞記事は、私は全然関知をいたしておりません。それから、今私の申し上げる順序で交渉を進めたいと思うので、その内容についての検討は、実際のことまだ終っておらないのでございます。そして検討は、むろんこの問題が始まってから外務省でも細心の注意をもって進めておることは事実でございます。しかしその新聞記事は、何らこれと関係のないことをはっきりと申し上げておきます。そこでまだ終っていない検討をさらに進めて、そうして全権の出発までには十分にその検討の結果を全権に含めるという段取りに進めたい、こう考えておるのでございます。
  37. 愛知揆一

    愛知委員 私は、この新聞にも取り上げられておりますようないろいろな懸案について、これをできるだけ解決をする、この努力を一生懸命にやっていかなければならないということは、私も非常にけっこうだと思うのであります。そこで当委員会におきましても、しばしばこの点については質疑応答があったのでありますが、これらの懸案というものは、その一つ一つがいずれも解決の非常な困難さを予想されるもののみでございます。従ってこの懸案の解決ということと、それから今後始まるところの交渉というもののやり方について、この懸案の解決がどの程度まで進捗したならば交渉を妥結するというのであるか。大よそどのくらいの交渉の期間と考えられているのか、その点についての御意見を伺いたいと思います。
  38. 重光葵

    重光国務大臣 日ソ関係は、周知の通りに戦争状態の継続という関係におります。従いまして、戦争状態から平和状態にこれを移して国交の正常化をはかろうとするためには、これは国際間の通例として、日ソ両国間に横たわっておる諸般の問題の解決を期さなければならぬということは、これは大体諭として当然のことだと思います。それをどこまで解決したならば国交の正常化がなり立つか、こういう問題は実際的の問題でございます。そこでその実際問題をどうするかということを、交渉に入らぬ前に公開の席でこれを議論することは、果して私は利益であるかどうかということを疑うものでございます。しかしながら、ごく理論的にこれを申しますれば、すべての問題が解決しなければ国交の正常化の目的を達しない、こう断言するわけにもいかないと思います。たとえば過去において経験を持っておりますが、ソ連革命後において日ソ関係の正常化をいたしました日ソの基本協定というものを、五年もかかって北京で協定をいたしました。その基本協定には通商条約をこしらえるということ、しかしそれはそのときに解決をせずして、将来の交渉にゆだねたのであります。しかしその将来の交渉はついに成立をいたしませんでした。しかしそれはそれにして、私の申すのは、さような問題も将来の交渉に残すということがあり得るということは、これはそのときの情勢に応じあると思います。そのときの情勢——国際情勢も考えなければなりますまい。また特に日本の向うべきところをよく考えて、そして衆知を尽して、その国の利益に従って判断をすることが必要であろうと思います。しかしながら、いやしくも交渉をやる以上は、両国に横たわっておる問題は、これはあくまで解決をするという意気込みをもって、また減点をもって交渉に臨み、最善の努力を尽すべきだ、こう脅えておる次第でございます。そこで交渉の結果どうなるかということは、今日ここで予言していろいろ議論をすることは、私は交渉を有利に導くゆえんでないと思いますから、このくらいな程度で御説明を打ち切りたいと思います。
  39. 愛知揆一

    愛知委員 私は、外務大臣の言われる、その交渉の予想でありますとか、見通しであるとかいうことを伺いたいということが主眼ではありませんで、むしろただいま外務大臣も御指摘になりました通り、日本として、日本の向うべき道がこうこうでなければならないということをここでがっちりと、いわゆる自主的に腹がまえをほんとうに固めるということが絶対に私は必要なことだと思うのであります。また同時に、この相手国が特殊のソ連という国であるということに重大な関心と注意を払わなければならないと思うのでありまして、私はやはりあくまで懸案の解決ということが第一で、これが前提である。そうして、それから国交関係の回復ということになるという段取りで私は考えるべきものだと思うのであります。私はことにその点については、見通しの問題とも触れるわけでありますけれども、相当この懸案の解決のために長引く、あるいは青い方は悪いのでありますが、その関係で交渉を引っぱられる、その関係で非常に長引くというようなことになりますと、一方において日本の自主的に向うべき道とは相当距離の離れるような事態になることをおそれるのであります。たとえば懸案の解決をいいかげんにして、戦争終結宣言というようなことで、その後に日ソの間で、たとえば通商部の設置を両方でやるというようなことだけになると、これは私はゆゆしき事態かと考えるのでありまして、私はやはり日本の立場として、懸案の解決をあくまで第一にする。こういうような自主的な態度でもってやるべきものである。この腹がまえが何より大事なことであると考えるのでありますが、この点は総理大臣はどういうふうにお考えになっておりますか、特にお伺いいたしたいと思います。
  40. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、日ソ関係は、戦争をしましてそのままになっているのであります。それで戦争忠に起った占領問題であるとか、あるいは未帰還の問題であるとか、戦争中に起ったいろいろの懸案については、解決して平和条約を結ぶというような形をとるのが当然だしいう考え方をしております。
  41. 愛知揆一

    愛知委員 私は、どこの国とも国交の正常化をはかりたいというこの考え方について、とかく申すわけではございませんが、たとえば未帰還者の引き揚げの問題、あるいは領土の問題、その他戦争によって起って、まだ調整のせられざる懸案の諸問題があるのであります。その解決にいたずらに比重を大にして、重大な問題としていつまでかかっても、この懸案の解決に努力を続けるということで、相当ここに時日の経過ができる。そういうことによって、その間に日本の向うべき道として、あるいは自由主義国家群との関係等におきまして、今でも私は相当の問題が山積していると思うのでありますが、なお一そう日本の外交政策の上に非常に複雑多岐な道が前に山積してくるのではなかろうか。それらの点が、ここでソ連の交渉を始められるときによほど考え方を整理し、かつ先ほども申しましたように、腹がまえをがっちりしてかかるということが絶対に私は必要なことだと思うのであります。この点について、私はさらにお尋ねいたしたいと思うのでありますが、国際間の懸案の問題としては、あえて日本とソ連の間だけではないのでありまして、これを対蹠的に例をあげて考えますと、たとえばアメリカとの間におきましても、現に日本側として希望しておりますが、なかなか妥結を見ていないところの懸案は、相当の案件に上っております。しかもこれは相当具体的に、現在の日本の経済の自立、あるいは日本の国力の充実ということに直接目に見えて積極的なよい結果を表わすことが確実であるような、さような問題が解決されていないということが多多あるのであります。たとえば領土問題につきましても、アメリカとの間に小笠原の問題、あるいは琉球の問題というものもあることをここに指摘しておきたいのでありますが、さらにこれを経済上の問題といたしましても、余剰農産物の処理の問題、関税その他通商上の問題、あるいは防衛分担金の今後の折衝の問題、あるいは借款につきましては、いわゆる移民借款もあれば世銀の借款もある、そのほか外資導入の問題もある、これらはいずれも停頓状況である。さらに新たなる問題といたしましては濃縮ウランの協定を結ばなければならないという問題もある。原水爆貯蔵の問題というようなことも懸案になっておる。あるいはさらに進んで東南アジアの経済開発についての協力というような問題もある。私はむしろこういうような切実な、しかも自由主義国家群の中のリーダーであるところのアメリカとの間のこういう懸案について、もっとどんどん具体的な解決促進をはかるということが、当面における外交上の非常に大きな問題ではないかと想うのであります。それにつけましても、これも報道等によることでありますが、先般鳩山総理大臣がアリソン大使、あるいは国連軍司令官等と懇談をされました機会に、ソ連との交渉もけっこうだけれども、損をしないようになさいということを言われたと伝えられておるようでございますが、これは報道の伝えるところでございますから、果して真相であるかどうかは別問題として、この記事を見て考えますことは、損をしないようにしていただきたい、これはひとりアメリカ人の言うことだけではありませんで、われわれ日本人市井の人々に至るまで、対ソ外交もけっこうだけれども、ほんとうに日本として損をしないようにしたい。私どもとしては、先ほど申しましたように、自主的に日本の向うべき道がこういうことによって阻害されたり、わき道に入ったりすることがないように、一つ鳩山さんにしていただきたい。こういう気持が市井のいわゆる庶民感覚の上にも非常に濃厚なる問題であると思うのであります。この考え方、それからまた対米のいろいろの懸案の解決の問題につきましては、私が冒頭にお尋ねいたしましたように、やはりこれを総理大臣もあるいは外務大臣も非常に御心配で、あるいはみずから渡米をしてもこの問題の解決に当るという、そういう気持を持たれておるのかと思ったわけでありますが、さようなことはないようでありますけれども、この対米関係の懸案解決ということについて、一体どういうふうな態度で、——具体的には、これは後に時間の許します限り個々の問題についてお尋ねしたいと思うのでありますが、基本的に対米関係等についてどういう態度と心がまえで考えておられるのか、この基調を一つ総理大臣からお聞かせ願いたいと思います。
  42. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 対米関係においては協力をしていく、これを外交の基調方針とするということはたびたびここで申しましたが、はり対米関係については、そういうようにお答えをするよりほかに道はないと思います。
  43. 愛知揆一

    愛知委員 次に総理大臣に引き続いて伺いたいと思いますが、外交のやり方の問題でございます。去る五月の六日の当委員会におきまして、同僚の橋本委員からの質疑に対しまして、総理大臣は、実は超党外交ということについて、各派から委員に出てもらって、外交調査会というようなものを作りたいと思っておった、ところが各派の主張が相当違うようであるからこの考え方は中止した、こういうふうに言うておられるわけでございます。ところがその後記者団との会見、あるいは国会対策委員会等を通じての総理のお考えというものは、あらためて外交懇話会というようなことを御提唱になっておる。こういうふうに承っておるのでありますが、この関係はどういうふうにお考えになっておりますか。
  44. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外交方針の全面にわたって外交調査会をこしらえ、あるいは外交懇談会ができて調整することができれば非常にいいことと思いますけれども、今般にわたってそういうふうなことをやってもなかなかまとまりがつかないと思いますので、ソ連に対しての日本の要求についてだけは、超党派的に一致した意向を持ってソ連と交渉することが、日本のために非常にいいと考えまして、そういうような事柄について自由党並びに社会党と相談をしたい。外交調査会ではなくて、私の方からも個々別々でも同時でもかまいませんが、相談をしたいというような気持を持って、ただいま折衝中でございます。
  45. 愛知揆一

    愛知委員 私はこの点について非常な必配を持つのでありますけれども、ただいまのお話でも、総理のお気持はいろいろ想像はされるのでありますが、先ほども申しましたように、私どもの心配しますところは、対ソ交渉ということに非常にいわゆる血道を上げて、そうして若しまぎれに左派といいますか、相当考え方、イデオロギーの違った人だまでも引き込んで、そうして対ソ親善外交というような結果に陥ることになりますと、これは私は非常な一大事だと考えるのであります。私は、大体総理大臣が非常な善意でお考えになっておることが、往々にしてその考え方が、客観的に見れば甘いことであるということのおそれがいろいろな問題に現われるような感じがするのでありますが、特にこの共産陣営側からの平和攻勢、あるいは間接侵略と前々から呼ばれておったようなこういう攻勢に対するに、あまりに善意にお考えになり、その結果日本共産党の活動を国内で非常に活発にさせる結果になるというようなことについては、特にこれは心配になる点でありまして、この超党派外交というようなものの扱い方につきましても、そういう点は特に御注意を願わなければならぬと思うのでありますが、この点はどういうふうにお考えになりますか。
  46. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私がソ連との国交調整をしたいということを、ある評論家が容共政策というようなことを申しておりますけれども、これは全然観察を異にしておる誤解だと思っております。そういうような意味は全然持っておらないのであります。
  47. 愛知揆一

    愛知委員 その点は、総理はなるほど善悪でそうお考えである、こういうことを前提にして考えてみましても、結果において、総理がそう思われないような結果になるということを私は非常におそれるわけでございます。  さて時間の関係がございますから、私は次に経済問題の大綱に移りたいと思うのであります。対米関係において従来論議がしばしば繰り返されておりましたが、防衛分担金の問題についてまず一点お伺いをいたしたいと思います。この点はきわめて簡潔でよろしゅうございますから、お答えをお願いいたしたいと思います。防衛分担金についての日米共同声明の法雄的な性格という問題についてはしばしば論議がかわされましたが、これを要するに、防衛分担金あるいは日本の国庫の負担となるべき契約等を含むところの防衛支出の諸費についての日米両国の合点が成立した、このことは間違いのないことであります。しかしその合意が声明によって成立したということと、日本の国会におけるところの予算審議というものは、これは完全に区別して考えられるものである、政府考え方も大体こうであると思うのであります。ところで私は端的に伺いたいのでありますが、昭和三十一年度及び三十三年慶等にまたがるところの国庫の負担となる契約百五十四億八千万円について、もし国会がこの案件を否決いたしました場合にはどういうことになりますか、どういうふうに政府はその場合に考えられますか、この点をお伺いいたしたいと思います。これはどなたでもよろしゅうございます。
  48. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申します。あるいは後に防衛庁長官がお答えになるかもしれませんが、防衛力増強につきまして、わが国力に応じてやる、これが基本の政策になっておるのでありますが、具体的には今回は制服三万を中心にして防衛力の増強をはかる。もしも今申されたようなことが起れば、この必要といたします日本の防衛力の増強ができなくなるということになると思います。
  49. 愛知揆一

    愛知委員 さらにその点はお尋ねしたいのでありますが、防衛力の増強ができなくなるというお答えでありますけれども、三十年度予算において三十年度の計画はできるわけであります。それから予算外の契約をなさらないでも、国庫の負担となる契約をなさらないでも、大体三十一年度、三十二年度の計画をお持ちになって、そのつもりで今から準備をされておけば、三十二年度にまたがる契約を何も三十年度でする必要はないのではないか。たとえば賠償の問題その他にいたしましても、年度を経過して将来に長く延びるものがある、しかし予算化するのは当年度だけなのであります。私はなぜこういうことをお尋ねするかと申しますと、これは意地悪くお尋ねするわけではないのであります。しかし日米関係の問題はともかくとして、日本の財政の確立という点から考えれば、これは旧憲法時代でいえば継続費的なものだ。その当時の問題でいえば、軍事費のためにその当時の軍部の要請によって、継続費を大きく将来の年度にわたって取りたいという軍部の要求に対して、非常にいろいろの経過から予算外契約ということにしばしば逃げて、しかも逃げたけれども予算の後年度に対する負担が非常に重加したということは、最近の日本の財政史上に明白に示しておるところであります。従って日本自体の財政の立場から考えましても、もし来年度、再来年度というように、二年度以上にわたって予算外の契約をするというような場合には、よほどこれは慎重な上にも慎重に検討すべきものだと思います。そういう点から申しまして、何も二年度にわたって、かつ金額の相当大きなものをここで契約をして国会の承認をおとりにならなくてもいいのではないか、なおよく検討の余地があるのではないか、これは将来の日本の財政確立という点からいっても、よほどよくお考えになった方がいいのではないかこういう点からお尋ねいたしておるわけであります。
  50. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。非常にごもっともな御注意でありまして、何も私はここでそれに異論を言うわけではございませんが、この予算外国庫負担は百五十四億に上ります。これは先ほど申しましたように、防衛力増強に三十年度にどうしてもそういう契約をする必要があるのでありまして、特にこの百五十四億のうちで、三十二年度までにというのは、ごく少額にとどまっております。なお今後の予算計上について、先ほど特にかつての軍の予算に対する要請ということについての御注意は、これは当然私は注意をして行かねばならぬと考えております。
  51. 愛知揆一

    愛知委員 さらにこの点について、もう一つの角度から伺いたいのでありますが、たとえば百五十四億八千万円の国庫の負担となる契約の中には、申すまでもなく航空機の購入もあります。施設の整備もあります。艦船の建造もある。あるいは装備品購入もある。これらの大きな項目について三十一年度あるいは三十二年度、三十三年の三月までにこれらを購入したり施設するということには、ずいぶん先が長い。ところでこの中には、たとえば航空機の購入という項を一つあげてみましても、これは昨日政府から提出された資料によりましても、若干は国産機の購入ということもあるようです。そうだとすれば、防衛庁が発注いたします発注先は、一体どこの会社にどれだけの施設をさせなければならないか、あるいは資金計画はどういうふうにしなければならないか、あるいは物的施設はどういうふうにしなければならないか、さらに根本においてはどの会社を選ぶべきかというようなことが、これは後代にわたる継続費と同じようなものでありますから、国民の納得のもと国会審議をされ、可決をされるためには、せめてそれだけの裏打ちとなるところの資料がなければ、これはそう簡単には私どもとしてはオーケーすることができないと思うのです。日米の関係においては、なるほどこれは両国の合意に基くものであるから、一種の義務費として支出されなければならないという、その成立してきた過程はわかります。それは別問題として、国内の財政上の問題あるいは産業政策の問題から言うて、せめて、たとえばT33、F86はどこの会社にどれだけの期限で作らせるのか、その価格はどうか、そのコストはどうか、さらにまたその会社はどういうふうな、政府予算外契約と即応したような事業計画を持っておるのか、これらについてはぜひ一つ、すぐとは申しませんが、戸出な政府の意図する計画をお示し願いたいと思います。またそれができなければ、われわれとしてはそう簡単にこれをのむことはできないということを、私はここに留保しておきたいと思うのであります。  さて、私は次の問題に移りたいと思うのでありますが、それはほかでもございません、経済六カ年計画の問題について、ただいまの防衛の問題とあわせてもう一度伺うことにいたしたいと思いますから、その点を保留して、次の問題に進みたいと思います。  私は実は総選挙前の参議院の本会議におきまして、一月の十八日に、鳩山内閣が打ち出されたところのいわゆる総合経済六カ年計画の構想なるものにつきまして御質疑をいたしました。ところがその当時は、この内閣はできたばかりである、また三十年度予算案も全然構想ができていない、いろいろの関係から——各般の観点から質問を試みたのでありますが、政府側からは、きわめて抽象的な答弁しかいただけなかったのであります。しかしその後、半年経過せんとしております。しかもその間においては予算編成もできた、またこの年次計画の初年度として、四月の十九日には三十年度の経済計画の大綱というものも発表された。そこで私はこれらの三十年度の計画の大綱なりあるいは予算案なり、こういったものから多くの積極的な示唆や政策を伺うことができると思ったのでありますが、ただいままでの予算委員会審議におきましても、一応この問題に触れられた質疑はありましても、やはり政府の答弁というものは全く抽象的なのであります。従って私は簡潔に、系統を追いまして、この六カ年計画というものについてお尋ねを続けて参りたいと思うのであります。  私はまず第一に六カ年計画、いわゆる経済の総会計画なるものの性格について伺いたいと思います。これはその作文にはっきりいたしておりますように、経済の自立ということと完全雇用ということを二つの目標に並列させてある。そして総合的かつ長期的な計画を樹立して個人及び企業の創意はこれを生かしつつも、必要な限度において規制を行うという経済体制を基調として前進する、こういうふうにうたってあります。しかもこれは単なる見通しの構図を描いたものではなくて、具体的に実行するものであるということが他の章において明白になっておる。そうすると、まずこの文章の解釈でございますが、これはいわゆる経済統制手段によるところの計画経済を行わんとするものであるかどうか。この点は非常に大切な経済政策性格の問題であります。そこで、これは統制経済、統制手段によるところの計画経済をおとりになるつもりであるのかどうか、その根本的な考え方について総理大臣のお考えを伺いたいと思います。
  52. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 高碕国務大臣から答弁してもらいます。
  53. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。今回の六カ年計画は、資本主義の経済の体制におきまして、この計画自身におきましても、政府だけできめるのでなくて、できるだけ民間の意見を聞いてそれを取り入れて、その計画を立てていきたい。ただいまのお話のごとく、六カ年後に増加する人口に対してできるだけ完全雇用し、かつ、自立経済を達成いたしたい、こういう所存でございます。従いましてこの資本主義経済の体制のもとでやっていくのでありますから、お話しのごとくいわゆる計画経済とか統制経済とかいったふうな政府の力を直接用いるということは相なるべく避けたい。そうして間接的に、あるいは為替の操作なり財政の投融資なり、あるいは民間の資金を調整するなりして、国民と相談ずくで納得ずくで、この計画を実行に移したい、こういう所存でございます。
  54. 愛知揆一

    愛知委員 どうも作文以上に抽象的なお答えなのでありまして、具体的な方策というものは、どういう手段をとられるのであるかということがこれではわからない。ただいまの御答弁でも、間接的な手段によって納得ずくでやっていくというお話でございますが、たとえばこれは議論の問題として伺ってみてもいいと思うのでありますが、およそ物事を計画的に進めていくというような場合におきましては、経済の問題の場合においては、特に金融というものが第一に考えられる。ただいま為替ということもおあげになりましたが、それも一つでありましょう。また税制ということもそうでありましょう。しかし資金の規制といいますか、そこから入っていくことが、経済を計画的におやりになるという以上は、最も最初に具体的にとるべき方策である。ところが納得ずくで、しかし規制をする、こういうことは、具体的な方法論としてはどういうことをお考えになるのでありますか、この点を一つ明白にしていただきたいと思います。
  55. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。この計画を実行いたしますにつきましては、まず輸出を増進し、輸入を防遏しなければならぬということに相なりますので、かりに輸入品につきましては、ぜいたくな品物とかあるいは生産に寄与しないようなものにつきましては、為替の割当をもって規制して輸入を防止する、こういう方針をとればよいと思います。また資金面におきましては、国民の貯蓄を増進せしむるために、税制をそのように変えまして、できるだけ資金を集中する。その資金をどうするかということになりますれば、これはよく民間の意見を聞きまして、どういうふうなところに重点的にその資金を投ずるか、不急不要なところには投じない、こういうふうな方針を定めまして、まず民間の意見を聞いて、それから後金融業者とよく折衝いたしまして、御協力を願ってこれを実行に移したい、こういう所存でございます。
  56. 愛知揆一

    愛知委員 これではますますどうもわからないのでありまして、それならばもう少し具体的にお尋ねいたしたいと思います。三十年度の経済計画の大綱の中では、文章でもこう書いてあるのであります。資金の重要産業への流入を確保するため、適切な措置を講ずる。でありますから資金の重要産業への流入を確保するためには、何か計画としても具体的な措置がこのあとに予想されなければ、産業資金の計画などというものは立つものではない。一体産業資金計画というものは、それならば希望を羅列しただけのものであるか、こう言わざるを得ないわけでありますが、そういう点はどうでございますか。
  57. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。目下検討中でございますが、かりに私どもの方で今考えておりますことは、審議庁の中に審議会というのがあります。その中にあるいは一部門を設けて、そして民間の意見をよく聞きまして、まず最初いずれが重点的の産業であるか、どこにまず持っていくかということをよく相談いたしまして、それを聞く、そして後、さらにその金をどういうふうに配分するかということは、金融業者などともよく相談いたしまして実行いたしたいと考えております。
  58. 愛知揆一

    愛知委員 私は時間が惜しいのでそういう抽象論議はやめたいと思います。そこで私は具体的な資料の問題に入らなければならない。私は一体経済六カ年計画というものを本気で政府考えているかどうかということを言わざるを得ない。私はもう少し具体的に地道に、方法論等について詳細に伺いたいと思ったのでありますが、そういうことであると、これはこれ以上はお尋ねしても無益だと思う。そこでわれわれはかねがね経済六カ年計画の各年度別の計画、食糧、電力、石炭、鉄鋼、防衛産業、肥料、人造繊維、国土保全、開発及び資金については特に詳細なものを、当委員会審議のための参考資料として、冒頭から要求してあるのでありますが、そのうちのほんの申しわけの一枚ぐらいの資料が出ているだけだと記憶いたします。この六カ年計画の各年度別の計画というものはどうなっておりますか。
  59. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 六カ年計画につきましては、三十三年度と三十五年度とはここに大体の目安を、皆さんのお手元に配付しておるはずでございます。それで三十年度がきまりましたから、三十一年、三十二年というものについてただいま検討いたしまして、急速にこれを皆さんのお手元に差し上げたい、こういうことでございます。
  60. 愛知揆一

    愛知委員 そうなりますと、よた先ほどの問題に返るのでありますが、そういうことでありますから、私は防衛分担金の関係の国庫の負担となる契約についても、しつこく質疑を続けざるを得なくなる。基本となる経済六カ年計画についても、三十二年度あたりはすますもって何が何やらわからなくなるというようなことで、全体の計画の上でもその程度のことであるから、いわんや直接予算関係し、しかもそれは三十一年度、二年度国民の負担になることがこれほど明確なものはない。それなのにたとえば艦船を購入する、飛行機を購入するということなっておるけれども、どこの会社にどういう機種を作らせるか、またその資金の計画や、物的設備がどういうようになっておらなければならないかというようなことを全然示さずして、予算外契約をのめといわれても、これは立場を変えてみても、国民の立場からいったらのみようがない、というよりも審議のしようがない。従ってこの経済六カ年計画についても非常な不満というか、実にこんながっかりすることにないと思うのであります。しかしこれから資料をお作りになるか、あるいはどういう御説明をなさるかわかりませんが、私はさらにその御参考ともなるようなことを、こちらから一つ具体的に伺ってみたいと思います。  まず私は石橋大臣にお伺いいたしたいと思いますが、産業資金の問題であります。そもそも三十年度予算案によりますと、財政投融資として三千二百七十七億円を計上されてある。これは政府説明によりますと、前年度の実行額よりも四百二十七億増加しておるというて、非常にこれは大きく語られておるのでありますけれども、その増加資金の源は、余剰農産物の処理によるところの円資金が半分程度でございます。どうしてもこの増加の資金源というものは、この点からみても、民間の蓄積資金にたよらざるを得ない。また私はこの余剰農産物についても、もっと伺いたいことがあるのですが、私の見解をもってすれば、二百十四億円をまるまるこれを依金源として計上することは、見積り過大であると思うのであります。それはともかくとして民間資金に非常に依存度が強い計画である。それからさらに特に通産省の関係においての資金の需要という点からみますと、通産省の試案として新聞、雑誌等に出ておりますところを拾ってみますと、三十年度の産業資金計画として六カ年計画に照応する設備の近代化、自給度の向上のために、三千七百二十六億円という資金を要請されておる。これがなければ三十年度の諸般の合理化計画ができないということになっておるのです。これは三千七百三十六億円といっても、そう簡単にこの資金が調達できないということで、先ほど言ったこととは逆になりますが、逆に産業官庁としては、財政資金の方への依存度を非常に高めておる。三千七百二十大億円に対して千百七十八億円まではいわゆる財政資金へ依存しなければ、これらの計画はできないというて、繊維工業を初め、各種重要産業の諸般の産業計画を、この六カ年計画に照応して立てておられるが、この千百七十八億円の財政資金への依存によって、果してこれができるかどうか、また石橋通産大臣は、こういう産業資金の計画をお持ちになって、この六カ年計画に照応するところの諸般の産業について十分これを合理化し、育成していくことができるのであるか、その辺に確信をお持ちかどうかということをお尋ねいたしたい。
  61. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 理想的に申せば、なかなか司りもないのですが、しかしこれは財政一般のほかのバランスもありますから、そう通産省だけの希望を全部通すというわけにいかぬと思います。が、三十年度の今の計画は六カ年計画の中において、その初年度として十分にやっていける、かような確信のもとに立てたわけであります。
  62. 愛知揆一

    愛知委員 これは時間をかけて、ゆっくり数字の上でさらに追究をいたしたいと思うのでありますが、それはともかく、ごくそのうちの大ざっぱなところだけでも、もう少し具体的な御意見が伺いたいのであります。  今度は問題を開発銀行ということにしぼってみまして、私の調べましたところでは電力、海運、石炭、鉄鋼、自家発電、合成繊維、硫安、機械その他というような、いわゆる重要なる部門を合計いたしますと、これが先ほどからいっておりますように、六カ月計画に照応するものであると私は思う。二十九年度の実績で開銀の融資の上でも五百九十五億円が出ておるのです。ところが三十年度予算の上でそれと同額の五百九十五億円しか計上されていない。増減ない。  それからさらに今度は電力と海運を除いて石炭、鉄鋼以下の基幹産業をとってみますと、通産省としてあるいは開銀の当局として、あるいはこれらの諸産業の立場はもちろんのことでありますが、どんなことをしても三十年度に三百億円の資金がなければ、この計画は遂行できないということをいっておる。それに対して今あげました数字の中で、これに割り当てられているものはわずか百四十億円、石橋大臣は口では確信を持ってとか、善処とか言われるけれども、具体的に出てきている百四十億円を二百億円にするということは、これは昨日の減収加算の問題ではないけれども、出ないものは出ないのだから、この差額というものは何とかしなければ、私は通産省の所管であるところの産業計画は動かないと思う。  もう一つ続けて申しますが、今分けた電力の問題を取り上げてみても、予算の上では二百八十億円がこの計画の、開銀の計画に組まれてあるだけであります。ところがこれにつきましては、世界銀行の借款の関係もあって、奥只見、田子倉、御母衣の開発、その他機械技術の導入等のために、世銀から約千万ドルの融資の申請をしておるわけでありますが、それの基礎になるところの電力計画では、どうしても三百二十億円の財政投資を前提としなければならない。これを前提として世銀の融資にも申し入れをしておる。いわゆる円のファイナンスがこれだけできなければ、世銀の千万ドルという問題は前提がくずれてくる。こういうふうに一つ一つ具体的に例をあげてお尋ねをするわけでありますが、これについては一体どういうふうな成算をお持ちでございましょうか。
  63. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 その資金のほかに、たとえば開銀の保証融資というようなものも考えております。それから開発銀行については先ほど愛知君のいわれた市中の金融をもって、これに必要な部分だけはまかなうつもりでおります。
  64. 牧野良三

    牧野委員長 愛知君、時間が大分迫りました。
  65. 愛知揆一

    愛知委員 まことに不満な御答弁でありますが、一応先へ進むといたしまして、私はさらにこういうことをお尋ねいたしたいと思います。これは大蔵大臣お尋ねいたしたいのでありますが、今回の財政投融資の計画の立て方は、いわば純粋の財政的な面に比重が多く置かれて、事業資金的なものには比重が少く置かれているのではないか。すなわち産業の計画は立てておる、財政投融資への期待は多い、しかし六カ年計画で期待しておるところの、合理化資金というようなものは十分これでみられない。みられない分は合理化を進めようとすれば、どうしても民間の蓄積資金にたよらざるを得ないような、そういう現在の構想になっておるように思うのでありますが、その点はいかがでございましょう。
  66. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。大体基本的な線といたしましては、終戦以来の日本の経済の客観的な必要、実際の事情からして、政府が財政資金でもって多くの事業をしなくてはならぬ、これはその通りになっております。従いまして今後経済並びに金融の正常化が進むにつれまして、従来財政負担に多くなったところを一般の金融並びに民間の経済活動に移していくというのでありまして、そういう基本的な考えを持っておることはそうであります。従いましてそういうことが政策の上にも現われていきます。今回のこの具体的な予算だけについて申し上げますれば、私といたしましては、財政投融資について、できるだけ重点的にこれを配分いたすということを基本にしております。これはデフレがすでに一カ年半経過いたしまして、日本の経済もこれに適応性といいますか、そのデフレの一年半の政策の間に経済がよほどこれに歩調を合せてきておる、こういう面からも資金量についてやはり考える必要がある。そしてなお今後経済の地ならしを継続していく必要がある。そこで問題は資金量も重点的にしたい。従いまして先ほど御指摘の開発銀行につきましても、お説のように鉄鋼、石炭、それから硫安、繊維、その他のものにつきまして百四十億でありますが、これも昨年に比べますとやはり四割くらいこの部面においてふえておる。なるべく重点的にいたしたい、こういう考え方をいたして参っております。
  67. 愛知揆一

    愛知委員 昨年度よりふえておるということは事実に反するのでございまして、これは数字をあげてそのしからざるところをお教え申し上げたいのでありますが、時間がもったいないので先に進みたいと思います。  私は次に大蔵大臣に対しまして、財政政策の問題、財政投資費の問題について若干補足的に伺いたいと思います。この点については、すでに同僚の各委員からもそれぞれ指摘された点に重複するところがございますから、ごく簡単に申し上げますが、私は結論的に申しまして、三十年度予算の組み方というものは、二十九年度に比べてもっとデフレの要因を強くするものである、超デフレ予算であるというふうに考えるのであります。それが一つ。いま一つは、従って経済六カ年計画ということを一方に考えておられるけれども、それと平仄が合わない。この二点を指摘したいと思うのであります。その第一点は申すまでもございませんが、昨年度の一兆円予算の場合は、すでに指摘されておりますように、千二百七億円というような繰り越しがあった、あるいは政府対民間の払い超が千九百億もあったというような、よかれあしかれこういう背景のもとに一兆円予算というものが施行されて参った。ところが昭和三十年度におきましては国民所得もふえておる。また支払い超過は、大蔵大臣説明では七、八百億円と見ておられるようでありますが、国際収支のこれからの進行状況によっては、さらにこの額は少いか、引き揚げ超過的な要因が相当出てくると私は思うのであります。そのことは、現に三十年度経済計画の大綱や構想におけるところの輸出の輸出の見通し等と照応して考えましても、こういうことが指摘できるかと思うのであります。従って今年度同じく、何とかの一つ覚えでありましょうが、一兆円ということにあまりに固執するということは、昨年度に比べて、もっとデフレ的になる、もっと不景気になる。拡大均衡ではなくて、縮小になる。そうしてその影響というものが、産業その他の面で拡大均衡へ何とか持っていこうとするけれども、歩調が合わない。従って六カ年計画などと言っておられるけれども、その第一年度であるところの三十年度は、むしろ昨年度よりもスタートがもう一歩後退してきておる。そこで六カ年計画などと言うけれども、財政の画から見れば、むしろ六カ年計画は来年か再来年から始まるような計画になっておる。こういうふうに私は考えざるを得ないと思うのであります。この点はるる御説明は伺いましたけれども、私の考え方が違っておるとすれば、どういう点とどういう点であるかということを、できるだけ簡潔に御答弁願いたいと思います。
  68. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えしますが、まず第一の点で、三十年度予算が二十九年度に比べて一そう超デフレでないか、こういう御質問であります。これについてはごく簡潔に申し上げますが、一つには日本の経済の客観的な事情が違うということがあります。二十九年度におきましての一兆円は、あれは初めての一兆円で、日本の経済が膨脹傾向にあった。そうしてここで何としても一兆円でデフレをやらなくちゃならぬという急カーヴと描いて、同時にこれに呼応して金融もぐっと引き締めてきた。こういう客観情勢がある。三十年度は、先ほど申しましたように、すでに一年出を経過して、日本の経済のデフレに対する適応性というものがよほど違った状況にあるということが一つ。  それから財政の払い超の問題がありましたが、これは同時に、この金融操作と相呼応して総合的に考えてみなければならぬ。昨年度はなるほど財政から千九百億の支払い超過がありましたが、しかし一方、日本銀行は千九百億を引き揚げておる。その引き揚げるために、ここでやはりバランスをとる金融政策をやってきた。ことしの三十年度の財政は、これは財政自体がすでに引き揚げ超過でありますれば、これは私ほんとうにデフレの予算と言い得ると思うのでありますが、財政自体がすでに七百億の散超の予算であるということになれば、これは財政だけから見ると、決してデフレの予算とは言いがたい。ただ昨年度に比べてどうかという問題になるのであります。従いまして同時に今回は、金融面におきましてのやり方が従来とは違ってくる、こういうふうに考えてみますと、私はこの三十年度予算が三十九年度に比べて特にデフレであるという形ではなくて、実際上の経済に及ぼす効果という点から見れば、そうも考えておらぬわけであります。  それからもう一つの六カ年計画との関係におきましては、先ほどからしばしばありましたように、やはり六カ年計画において、私は率直に申しまして、今年からすぐにいわゆる拡大経済の方向はとっておらないのであります。まず地ならしをする。御承知のように、日本の国際競争力の培養ということがまず緊要である。今日においてすでに将来の輸出について懸念があるというような状況でもあるのであります。従って日本経済の地ならしを一そう進めていくとともに、デフレもすでに二年目に入りますから、一年半を経博して相当長期にわたる。従いましてここにいろいろと社会上の障害を生じてくる点も見のがせない。これに調整を加えていくという予算的措置も講ずる。同時に投融資は、先ほど申しましたように、ふやすように、そうしてこれを重点的に使って将来の日本経済の発展の基礎をここで強化培養していく、こういう考えでいく、これは六カ年計画の初年度の構想に私は合致するものと考えておるわけであります。
  69. 愛知揆一

    愛知委員 ただいま大蔵大臣の言われましたように、デフレが長期化する、そうして将来の拡大経済に持っていかなければならないというところに私は矛盾があると思う。私は、第一にデフレというものがそう長期化してはたまらない。従ってこの辺でもう少し積極性を持った財政に対する考え方をしていかなければならない、またそういう考え方をすることがあなたの言われるところの、将来の拡大に向うそれこそ地固めになるのだ、ここで萎縮するということが非常に困ることだと思うのであります。この超デフレ予算ということのもう一つの観点を申し上げますならば、たとえば三十年度の配分国民所得は、経審の調べでは二%上昇と計算しておるのです。ところが二十九年度の引き締め予算でさえも三・九%の上昇を見たのです。だから、三・九%の上昇を見たような昨年度に対して今度は二%の上昇を見ておる。これは総合的に見ると、どうしても私は超デフレ予算と言わざるを得ないという点がここからも出てくる。これから政府対民間収支の関係におきましては、これは国際収支の見通しの問題にもかかってくる点であると思うのでありまして、この点は私は必ずしも大蔵大臣の言われるところに同調することはできない。  そこで、その次に私がお尋ねをいたしたいと思いますのは、私の今申しましたような考え方からいけば、いわゆるドッジ・ラインで考えられたような、国民から当年度の税金をとって、その税金でインベントリーをする。あるいは税金で回収が当然可能な生産的、産業的な資金までもまかなうというような考え方は、この際はとるべきではないのではなかろうか。先ほどちょっと申しましたように、純粋の財政投融資といいますか、純粋な財政的な観点から必要とするような投資というものは別といたしまして、そのほかの問題については、これは別個な構想によることが適当ではないかと思うのであります。またさらに申し上げますならば、昨年の一兆円予算というものは、先ほども指摘いたしましたように、背景において相当のゆとりがあったが、今年度の一兆円予算というものは背景においていわゆる調整弁がない。そこでそういったような安全弁というものを作るという意味合いから申しましても、ここに新しい一つの構想を出すことが必要ではなかろうか、こういうふうに私は考えるのであります。これを具体的に申し上げますならば、産業資金的な投融資の関係は一般会計から思い切ってはずされたらいいであろう、そうして一面におきましては、政府の案によりますと、銀行預金の利子等については相当思い切った資本蓄積の考え方をとっておられる。従来の答弁や説明によりますと、これによって的確に何百億円の資金がここに集まるか増加するかはにわかにわからないにしても、相当多額の預貯金というものの増加が期待できる。また相なるべくんばいわゆる自己資金を充実するという意味におきまして、株式配当等についても税制上の何らかの措置をあわせ講ずるというようなことによって、とにかく資本蓄積には政府も一歩前進しておられる。今の株式配当の問題は政府考えておられませんが、私はバランスをもって考えるべきだと思う。ともかく政府も資本蓄積に一歩前進してきている以上は、その増加する資金について——先ほどの高碕さんとの間に応答をいたしましたけれども、せっかくこの三十年度の大綱の中でも重大産業に流すところの資金については適切な措置を講ずるまで言っておられますから、政府は一歩これを踏み切って、あるいは法制上の規制手段ということをここで考えて、そうして国民の税金の負担はこの際もう一段減らすことによって民力を涵養する、そうして足らざる産業資金に対する方面は、これは金融界の協力を得ることによってここに一つの規制措置を講ずるということが、どんな観点から考えても今日とるべき最善の方策だと私は存ずるのでございますが、これらの考え方につきまして大蔵大臣の率直なる御批判をいただきたいと思います。
  70. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 率直にお答えしますが、私は今愛知さんが申されたことがいつのときでも悪いというのではありません。大体そういう方向に日本が進むべきであるという点においても私は反対はない。ただ三十年度という年においてそれはできないということを申し上げるだけであります。
  71. 愛知揆一

    愛知委員 私は基本的な考え方について大蔵大臣が賛成されたことは非常に愉快とするところでありますが、それならなぜ三十年度にはそういう考え方がとれないでしょうか。たとえば六カ年計画の問題にいたしましても、あの六カ年計画の基本的な考え方の中の最も批判さるべきものは、六カ年の中の前半三年が大体水平であって、あとの三年に非常な直線的な上昇を期待しておる、これが私は非常に批判されるところだと思う。大蔵大臣も基本的な考え方が私らと同じであり、御異論がなければ、もう一歩思い切って、最初の一カ年から六カ年間なだらかに、しかしこういう斜線の進行ぶりをするように、そういう方向をとられることを私は非常にお勧めしたいのでありますが、なぜ三十年度にそのことがとられないのでありましょうか。これはもし大蔵大臣が踏み切れば、経審長官も通産大臣も他の経済閣僚も非常に喜ばれるし、これは異存のないところだと思うのです。なぜ三十年度にいけないかということをお聞かせ願いたいと思います。
  72. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたします。これはそういう点になると、今日の日本の経済をどうするかというやはり先ほどの基本的な認識の問題になるので、意見の相違、いわゆる考え方の本質は違っていないのですから、結局三十年度の今日の経済をいかに把握するかという相違に帰すると私は思うのであります。ここでいろいろと条件をあげることもいかがかと思いますが、愛知さんよくおわかりと思います。
  73. 愛知揆一

    愛知委員 どうも私にはなかなかわからないし、おそらくお聞きの皆さんにもさっぱりわからないと思うのでありますが、それではもう一つ具体的にお尋ねしたいと思います。大蔵大臣は日本銀行法を改正されて、大蔵省の金融の統制と申しましょうか、金融に対する権限をいま少し強化されるお気持はないかどうか、この具体的なお問いを一ついたしたいと思います。
  74. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたします。私が申すまでもなく、日本銀行法というものはやはり日本経済の最も基本の、ある意味で憲法になるようなものであります。しかし今日の日本銀行法はやはり戦時中の法律であります。従いまして、これを改正しなくちゃならぬ必要のあることは申すまでもありません。ですから、できるだけ早い機会に改正できることを希望いたします。従いまして、今日改正をどういうふうにしてやるかということを研究さしておる過程にあります。
  75. 愛知揆一

    愛知委員 さらに具体的にお尋ねいたしたいのであります。憲法のようなものというお話でありましたが、たとえば日本銀行政策委員会というようなものは、今日この時期においては、いかなる意味合いから申しましても、もはや廃止しているのではなかろうか、私はこういうふうに考えますが、いかがでございましょうか。
  76. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。そういう点も含めまして今研究をさしておるわけであります。
  77. 愛知揆一

    愛知委員 次に私は、時間の関係もございますからきわめて簡単にあと一、二点お伺いいたしたいと思います。それはやはり六カ年計画の問題でありますが、これは経済審議庁、通産省また外務省にも関係のある問題でございます。六カ年計画では輸出の規模を三十二年度は十八億八千万ドル、三十五年度は二十三億四千万ドル、こういうふうに計画をされておるわけでございますが、三十年度の輸出の規模は、二十九年度に対して三千万ドルしか増加していない。そうして先ほど出しましたように、後年度にいって、一年間に一億四千万ドルとか一億六千万ドルとか増加をやろういうふうな計画になっている。日本経済の一番大事な問題である一つの輸出についても、初めは今年と同じ程度だ、あとの三年でぐっと伸ばそう、こういうふうな作業が行われておるのであります。ところがこういうことがどうして可能なんだろうか。これはたとえば経済外交の問題もございましょう。国内のいろいろの輸出の振興策の問題もございましょうが、しかし今年二千万か三千万しか伸びないものが、あと恒常的に三十二年から先は一億四、五千万ドルずつ伸びるということは、いかに計画であり、いかにおざなりであっても、私どもとしてはなかなか納得できない説明であり、計画であると思うのでありますが、これについては、三十二年度、三年度になりますとこういうことが起るから、それで輸出がこういうふうに伸びるのだという、何か具体的な根拠があるのでありましょうか。
  78. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 先般どなたかにもお答えした中にありましたが、三十年度の輸出の計画は、ごく内輪にした。というのはなぜかと申しますと、御承知のように、昨年度の輸出は相当に伸びましたが、それは砂糖とかいろいろな、御承知の通りの特殊な処置をして伸びた部分があります。それで本年度はそれを全部やめまして、ほんとうのやり方の正常貿易の形にもどしましたので、その影響もあろうと思いましたから、内輪にはしておりますが、実は私自身の考え方としてはもう少し伸びると思っております。それから同時に、これまた御承知の通り、賠償問題をはたから片づけようと今努力しております。こういうものも賠償問題が片づけば、自然通商関係もよくなりますし、また本年度予算に十分とは申せませんが、輸出のためには相当の費用も昨年よりふやしまして、見本市その他の努力を十分にいたすつもりでありますから、そういう効果もすぐに今年に現われない、来年から現われるということが予想できますから、そこで本年度は内輪にしておいて、来年度からの期待を大きく見ておるわけであります。
  79. 愛知揆一

    愛知委員 まことにどうもおざなりな御答弁で、私は満足ができないのでありますが、さらに二点だけお尋ねをいたしたいと思います。  その三点のうちの一つは、これは労働大臣に伺いたいのでありますが、やはりこの六カ年計画の上で見ますと、三十年度の労働人口は四千百五方へというふうにあげられておる。ところで三十年度の推定生産年令人口は六千百五十六万人なんです。これに二十九年度、すなわち昨年度の労働力率を六七・五%としてこれをかけただけでも四千百四十七万人になる。これは政府が三十年度の労働人口としてあげ、ておるところの四千百五万人の間に四十二万人の開きがあるわけなんです。これでは政府の推定のように、就業人口が増加いたしまして、かりに四千四十三万人になったといたしましても、完全失業の人口は百万人を突破する。申すまでもなくこれに潜在失業の問題を加味して考えますならば、一方三十年の経済計画で失業対策を二十万人の救済ということにしておられるのでありますが、これではまことに内輪に控え目に計算した私の試筆によりましても、非常に食い違いがあるように思いますが、これはどういうふうにお考えになりますか。
  80. 西田隆男

    ○西田国務大臣 お答えいたします。労働省で失業対策の対象として考えておりますものは、経審の計画によります三十年度の労働力人口、その増加する人口をいかにして吸収するかという問題を考えまして、経審の案によりますと、三十年度で二十万ないし二十四万程度の失業者が見込まれるということになっておりますので、三十年度の労働省予算では、その人員を対象にして、万全ではありませんけれども、一応これでどうにか吸収できるではないかという経費を計上して計画したわけでございます。
  81. 愛知揆一

    愛知委員 労働大臣、もう一つついでにお尋ねいたしたいのでありますが、この労働力率というものが、どうも私は六カ年計画あるいは労働省の計画では故意に減少させて、失業者の現われてくるであろうところの数を故意に少くするような推定をされているように思われるのでありますが、それについてはたとえば二十八年度には六七・六%であり、三十二年度には六六%であり三十五年には六五%である。こういうふうに断定的に労働力率をきめておられるように思いますが、それには何か理論的な根拠があるのか、あるいは他の総合的の経済指標から割り出された根拠があるのでありましょうか、この一点だけ伺っておきます。
  82. 西田隆男

    ○西田国務大臣 お答えいたします。最初経審で立てました案は六五%という率で出しておりますが、この案についてはいろいろ学者間その他にも議論がありますので、これを六五にするか六七幾らにするかということにつきましては、ただいま経審でも慎重に議論をして検討しているようであります。従いましてこの率の問題がきまりますと、愛知さんのおっしゃる労働力人口が増加して参ります。失業対策としては、ふえた人間を対象としての施策も考えなければならぬ、かように考えております。
  83. 愛知揆一

    愛知委員 それで私は、以上いろいろ伺いましたところを総合して、この六カ年計画というものについてはこういうふうに考えるのであります。今さら申し上げるまでもございませんが、大体最近アメリカのゲルハルト・コルムが一九六〇年の米国経済というものを作って、その著書が非常に西欧諸国で受け入れられている。このゲルハルト・コルムの「一九六〇年の米国経済」という葉書が、今度の政府の六カ年計画の種本だと私は思うのです。そうしてこのゲルハルト・コルムの考え方というものは、まず第一に六カ年先に人口がどうなるか、コルムに従えば、一九六〇年の総人口がどれだけになるか、それから労働力人口を割り出し、それから一人当りの生産額を割り出し、その国民が全部働いて生産がどれだけできるか、そのためには輸入がどれだけであって輸出がどれだけできるか、こういう関係国民経済計算として割り出したものだと思う。そのゲルハルト・コルムの方式を使って六カ年計画を作ったら、まず第一に六カ年先には、普通に伸びていけば、日本の人口が幾らになるかその中で労働力に化するところの人口はどれだけあるか、それから生産はどうか、輸入はどうかといってだんだん逆算して考えたもの、これがいわゆる経済構想の六カ年計画であります。私はこう断定してかまわないと思う。ところがアメリカなりあるいは西欧諸国なりの経済組織においては、なるほどこういう方式も非常に役立つであろうと思う。というのはいろいろの条件が日本と違っているから、一つ一つの企業においても今のコルムの方式を使って遠いところからだんだん接近したところまでの計画を逆算して立てることは可能であると思う。ところが今度三十年度の計画や年次別の計画を作るということになると、これは非常に具体的な問題であるし、同時に手段が必要である。しかも日本経済を論ずる場合には、そんな単純な総人口から逆算して割り出してきて、しかも完全雇用するなどということはなかなか言うべくして行われない。それは基礎条件が違うからである。ところが年次計画を作ることになると、政府は具体的の手段を政策に現わさなければならない。ここに私は非常な矛盾が起ってきたと思うのです。私は時間の関係で、二、三の例だけで広汎にお尋ねすることはできませんでしたが、個々の問題になると非常な矛盾が起ってくる。また手段や政策がほかの財政計画その他と合わなくなる。そこで先ほどから指摘しておりますように、まず三十年度の財政計画と六カ年計画の初年度とは合わない。資金計画ともマッチしない。またさらに進んでは、初めの三カ年はかなり具体性を帯びて、政策を基準にしておるようであるが、そうするとうその数字は出せないから、非常に貧弱な水準の線になる。そうして最後にぶっつけの仕事でもって六カ年の目標につけようとした、ここに私は根本的な経済六カ年計画の欠点があると思う。私はこれを広く国民各位に訴えたいと思うのです。あるいは拡大均衡といい、あるいは完全雇用といい、あるいは経済自立といい、これは鬼面人を驚かすところの六カ年経済計画のようであるが、あにはからんやこの六カ年経済計画は、ゲルハルト・コルムの引き写しである。あくまでも政策であり、手段に立脚しなければならないが、政策の問題としては、これは完全に馬脚を現わしたものである。私はこう断ぜざるを得ないのでありまして、もしお答えがありますれば、お答えを伺いますが、私は自分の見解を最後に申し上げまして、私の質疑を終りたいと思います。(拍手)
  84. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。ただいまお話のごとく、経済六カ年計画は、愛知さんが経済審議庁におられたときに、ゲルハルト・コルムの式を持ってこられて、それによって逐次いろいろ研究していることは事実でございます。これは現在のアメリカ状態、それから西欧各国の状態をつぶさに調べまして、非常にいい計画だと思って、愛知さんの御計画については、私は賛意を表した一人であります。ただ、ここで違っておりますことは、アメリカの方におきましては、労働力率というものを五六%くらいしか見ておりません。これはアメリカは生活が豊かでありますから……。そこで私は六七%幾らということを見ておりましたが、だんだん日本の生活も豊かになれば、将来はアメリカに近く、六年後には六五%くらいに持っていきたいという考えでおったのでございますが、これはいろいろ批評がございまして、ただいま愛知さんのお話のごとく、これは改訂いたしたいという考えでおります。またゲルハルト・コルムの式は、お話のごとく先の問題を、人口の増加率、これに対して完全雇用するのには幾らの生産を上げればいいかと、これは金高だけで見ているのであります。それを、現在われわれが見ておりますものは、一人当りの労働力に対して一時間七十五円、こういうように見ておりますが、これを六年先には一時間八十四円六十銭ぐらいに上げたい、こういうふうな計画で数字を持ってきたのでございますが、これはどこまでも金高だけで見ておりますから、ここに非常に欠陥があると私は存じでおります。つきましては、これを実行に移す場合においては、過去における実績、現在の状況等を積み立て式によってやって、それとこの計画とをマッチさせなければならぬ。こういうことでただいま努力しているのですが、これはなかなかむずかしい問題でございます。どうかこの意味におきまして、愛知さんのようなりっぱな御経験のあられる方の、御協力あらんことを切にお願いいたします。
  85. 牧野良三

    牧野委員長 それでは午後二時より再開することとしまして、暫時休憩いたします。    午後零時五十四分休憩      ————◇—————    午後二時四十三分開議
  86. 牧野良三

    牧野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。福田昌子君。
  87. 福田昌子

    福田(昌)委員 四月、五月の暫定予算審議におきまして、その際六月暫定予算をお出しになることはないかということを、念を押して鳩山総理にお伺い申し上げたのでございますが、そのとき、絶対に六月暫定を出すようなことはないというお話でございました。ところが残念なことには、遂に六月の暫定予算を出さなければならないというような情勢に相なりました。この六月暫定予算をお出しにならなければならないような態勢になったその理由はどういうところにあるのでございましょうか。総理の御答弁をお伺いしたいと思います。どうぞおかけになったままで御答弁して下さい。
  88. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ありがとうございます。本予算が五月中に通る見込みがなくなりそうでしたから、六月の暫定予算提出するようになりました。やむを得ざる措置として、いたし方ないと思います。
  89. 福田昌子

    福田(昌)委員 本予算が五月中に成立しないというような状態に相なりましたのは、それはどういうことに原因しておるのでございましょうか。
  90. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 いろいろの原因がありましょうが、そういうようなことになってしまったんですから、その原因については人々によって見解が違うと思います。
  91. 福田昌子

    福田(昌)委員 総理も御心配をしておいでになられたにもかかわりませず、やむなく六月暫定予算提出になりましたが、その理由といたしましては、総理の御言明はございませんでしたが、巷間ではいろいろな、その理由として伝えられておりまする多くの事項がございます。一つには、本予算編成に当りまして、一つ基礎的な条件になる防衛分担金削減の折衝の問題が手間取ったこと、あるいはまたアメリカの余剰農産物買付の交渉がひま取ったこと、さらにはまた民主党が選挙の際におかれまして、非常に大衆向けの、しかも実際には不可能な公約をたくさんされましたために、予算編成において党内においても議論が沸騰して、なかなか決定ができなかったというようなこともその理由であると申しておりますが、これは当然その理由になると思うのでございます。ところが、本予算提出がおくれたばかりでなく、予算関係がある重要法案提出も非常におくれておりますが、これは先ほど愛知先生からも御指摘がございましたがも実際におきまして、新聞紙上におきましても取り上げられるほどに、重要法案提出がおくれている。このことは何に原因があるのでございましょうか。
  92. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 さあ何に原因があるか、いろいろありましょうが、ちょっと頭が悪くて今列挙して言えません。   〔「官房長官いないのか、法案をいつ出すかという質問じゃないか、官房長官を呼んでくれ」と呼ぶ者あり〕
  93. 牧野良三

    牧野委員長 この点に関しまして、すでに官房長官から答弁済みであります。(「再質問だ」と呼ぶ者あり)最質問に関しましては、追って官房長官をここへ出席させまして、その上で答弁させます。質問をお進めいただきます。
  94. 福田昌子

    福田(昌)委員 官房長官の御答弁をいただきたいと思いましたが、御出席がないそうでございますから、そのつまびらかな、政府御自体としてお考えいただいている理由がはっきりいたしませんが、この法案提出のおくれました理由も、結局第二次鳩山内閣はまさに群割割拠の内閣であって、総理御自身におかれても押えがきかない。各省がそれぞれに勝手な予算の要求をやり、大蔵大臣の権限もこれを統制するに及ばない。しかも法制局におかれても困るほどに、朝きめたものが夕方は変ると、こういうように閣内が不統一であるばかりでなく、政府与党との間の関連もきわめて緊密を欠いておるというようなことが、この法案提出がおくれている理由だと見ておるのでございます。いずれにいたしましても、政府に御見解の御発表をいただけませんでしたから、政府のそのおくれました理由というものはよくわかりませんが、しかし私どもといたしましては、かような状態でございますので、法案の今後の御提出も、そしてまた本予算の通過成立ということに対しましても、政府は非常に御苦心されるであろうということが考えられるのでございます。そこで本予算は一体いつごろ通過成立いたすか、これに対します総理の御見解を伺いたいと思います。
  95. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 六月中にはぜひ成立させたいと考えております。
  96. 福田昌子

    福田(昌)委員 六月中にはぜひ成立させたいという御意思で、まことに政府の御熱意においては当然だと思いますが、御承知のように予算案は、最短期間でありましても、衆議院で約三十五日、衆議院を通過いたしまして参議院に回りますと、約三十日が最短の期間でございます。衆議院の今の情勢では、本予算は少くとも六月初めにしか成立しないという状態にございますが、そうなりますと、それから参議院に回付されました予算案というものは、慣習から言いますと、当然六月一ぱいに成立しないということが断言できます。こういう状態にあるにもかかわらず、総理がぜひ六月中に予算案を成立させたいという御意思であれば、それ相当の御努力と方法をお講じになることだと思うのでございますが、どういう御努力をなさるおつもりでいらっしゃいますか。
  97. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 努力と誠意以外にございません。
  98. 福田昌子

    福田(昌)委員 いつも努力と誠意という非常に抽象的な御答弁をいただきまして、四月、五月の暫定予算審議の際、六月暫定予算をお出しにならないかどうかというときの御答弁も、誠意と努力に待つというようなお話も入っておったのでございますが、私ども、そういうような漠然とした誠意と御努力だけを信じて、予算の成立を漠然と考えるというわけには参らないのでございます。そこで、従来の慣習からいたしますと、当然七月も暫定予算、残念ながらそういう態勢に相なると思うのでございますが、七月も暫定予算ということに相なりますると、政府が選挙の際に主張しておられました減税政策というものはどういうような変化が起って参るのでございましょうか。大蔵大臣にお伺いいたしたい。
  99. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申し上げます。ただいま総理大臣からも御答弁申し上げましたように、本予算を御支援を得まして、ぜひとも六月中に通過させるという考えであります。
  100. 福田昌子

    福田(昌)委員 七月暫定予算ということになりましたら、減税はどうなるかということをお伺いしたのでございますが、御答弁がなかったようでございますけれども、重ねて伺います。
  101. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。七月の暫定ということは考えておりません。
  102. 福田昌子

    福田(昌)委員 七月は暫定予算をお出しにならないということでございますから、私どももそうあることを願っております。ところで、この六月暫定予算でございますが、先ほど愛知議員から御指摘がありましたように、補助金の問題におきまして多くの疑問が残されておりますけれども、それはさておきまして、二十九年度予算編成の精神にのっとりまして、二十九年度を基準にいたしまして、月額の比率から見ました場合におきましても、ことに六月暫定予算は、失業対策費とか、あるいはまた生活保護費の面におきまして、非常に減額されておるわけでございます。また地方交付金、あるいは業務教育国庫負担金の面におきましても、非常に減額されております。のみならず、あるいは大衆の要望でありますところの、ことに公務員の大きな要望であります例年度の夏季手当の分につきましては、ことに非常に冷淡な措置が見られるのでございます。私どもはかような点にかんがみまして、せっかく六月暫定予算をお出しになられるのでございましたならば、こういう社会保障関係の必要経費を増額され、そうしてまた、一般勤労者のたっての願いでありますところの、ことに人事院の勧告さえ無視されて低賃金にあえいでおります大衆の生活の困難にこたえまして、夏季手当の分だけ一カ月分支給するようにこの法案を修正なさる御意思はあるかどうか、この点伺いたいと思います。
  103. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたします。ただいまの御趣旨の、たとえば失業に対する対策、こういうものは、むしろできるだけ多くを計上いたしておいたのです。大体この六月予算に対しましては、季節的な関係で、この六月に支払い負担を必要とするものについては、相当ゆとりをもって計上しておるつもりをいたしております。
  104. 福田昌子

    福田(昌)委員 大蔵大臣の御答弁は、きわめてありきたりの通り一ぺんの御答弁で、熱意がない点におき決して、私ども非常に遺憾といたしますが、時間がございませんので先に進みます。  もし自由党が、本予算審議におきまして大幅修正、をなさるというような事態が起きて参るといたしますれば、予算の成立というものはますますおくれて参るということに相なって参りますが、自由党が大幅修正をいたして参りました場合には、政府とされてはどういう態度をおとりになるのでございましょうか。鳩山総理の御所見を伺いたいと思います。
  105. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 大幅修正が出たときに意見をきめるよりしようがないと思います。
  106. 福田昌子

    福田(昌)委員 そのときに御態度を御決定になるというお話でございましたが、その際には、解散することもあり仰るのでございますか。
  107. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その際に決定するよりいたし方がないと思います。
  108. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういうことは伺わなくても、出たときに処置をなさるということだけはわかるのでございますが、その処置を、どういう御処置をなさる御予定があるかということを伺ったのでございます。
  109. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それ以外に、ちょっと答弁がしにくいです。   〔「ちらほら解散の声が出ているじ   ゃないか」と呼ぶ者あり〕
  110. 牧野良三

    牧野委員長 そんな不謹慎なことを言ってはいけません。
  111. 福田昌子

    福田(昌)委員 私どもは、そういう抽象的な御答弁では了承できないのでございまして、もう少し具体的な御答弁を伺いたいと思います。
  112. 牧野良三

    牧野委員長 総理大臣お困りでしょうな。
  113. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいまの答弁によって御了解をしていただきたいと思います。
  114. 福田昌子

    福田(昌)委員 自由党が大幅修正を出さ、れた場合に、大蔵大臣としては、どういう態度をおとりになりますか。
  115. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたします。その点については何も承知いたしておりません。   〔「原案が通るつもりでいるのかね」と呼ぶ者あり〕
  116. 福田昌子

    福田(昌)委員 予算の原案をそのままお通しになるということでございますが、どういう努力によって成立させるという御自信があるのか、その御自信の御見解のほどを承わりたいと思います。
  117. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先刻申した通りに、誠意と努力以外にございません。
  118. 福田昌子

    福田(昌)委員 予算提出におきましても非常におくれ、審議におきましても手間取り、しかも、予算関係のある重要法案提出さえもおくれておりまして、しかも政府の御答弁は統一を欠いておりまして、しかもあいまいもこといたしております。こういう中で予算審議し、できるだけ好意的に政府に協力して予算審議に当っておるつもりでございますが、政府自体が非常に熱意を欠いており、不親切である。そうしてまたあいまいもことしておられる。こういう状態では、私どもは、六月暫定予算審議もできませんし、また本予算審議も非常に困難だと思います。従いまして、総理のもっとはっきりした明確な御答弁と、大蔵大臣の御答弁を重ねて要求いたします。
  119. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 六月中には本予算が通るつもりでおります。(「通らなかったらどうするのだ」と呼ぶ者あり)通らなかった場合には、そのときに決心をいたします。
  120. 福田昌子

    福田(昌)委員 では六月中に本予算が成立しなかったときは決心をなさるということでございますから、これ以上お伺いいたしましても、この問題は困難と思いますから、次に移りますが、本予算提出が非常におくれましたその一つの大きな理由に、アメリカ側との折衝でひま取りました防衛分担金削減の問題がございますが、この防衛分担金削減に当りまして、日本政府は当初百八十億から二百億減額を要求しておるということを御発表になっておられましたが、そのお出しになりました減額要求の百八十億から二百億は、何を基準にしてそういう額をお出しになったのでございますか。
  121. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。この防衛に関する支出総額を前年度のワクのうちにおさめるというのは、これは予算編成の大綱であったのであります。従いまして、防衛庁費について、この日本の国力に応じて、防衛を増強する、こういうことで、防衛庁費がどうしてもふくらんできます。それそのふくらんだところを、——日本の経済がなかなかこれに耐えない、それを分担金の削減に求めた、こういうことであります。
  122. 福田昌子

    福田(昌)委員 と申しますと、最初百八十億から二百億円減額するという御発表をなさいましたのは、結局防衛費全額から見て防衛庁費かふくらむから、一方防衛分担金をその分だけ減らしてよろしいという御見解で百八十億から二百億をおきめになったということなのでございましようか。
  123. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほどから申しましたように、幾ら分担金を削減するかという金額につきましては、防衛庁費とのにらみ合いにおいて、これはなったのであります。結果的に百七十八億になりまして、お説の百八十億に近寄っております。そういう意味から来ておるのであります。
  124. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういたしますと、この行政協定二十五条の(b)項にあります、大体日本の分担金として最初にきめられました一億五千五百万ドルというものの決定の基準は、何によってきめられたのでございましょうか。
  125. 重光葵

    重光国務大臣 行政協定がどうしてできたかということは、私どもの時代の前の時代ではございます。しかし行政協定は、御承知の通りに安保条約の適用としてできたものであって、すなわち共同防衛の責任からできたものであります。その共同防衛の責任から、日本側において一億五千五百万ドルの分担金を背負うことになったのでございます。
  126. 福田昌子

    福田(昌)委員 私、行政協定が生まれて参りました歴史を伺ったのではないのでございまして、要しまするところ、行政協定二十五条の(b)項にある、日本の防衛分担金の基礎として一億五千五百万ドルがきめられておるが、それは何を基礎にしてその一億五千五百万ドルをきめられたのか。これがわかりませんことには、その後の削減に対しまする政府自体の基準というものがきめられないはずだと思うのでございます。当てなしに、勝手に防衛分担金を負けてもらいたいといって、そういったきめ方をなすったわけではないと思うのでございます。従いまして、その基準をお伺いしておるのでございます。
  127. 重光葵

    重光国務大臣 その当時の基準は、大体米軍の維持費の約半分ということで、これが決定した模様でございます。しかしこの分担金については、その後にわが方の防衛力の漸増とともに、これを減額するということの交渉をし得ることになっておる。これが行政協定の趣旨でありますから、その漸増によってこの減額を交渉したわけでございます。
  128. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういたしますと、大体この一億五千五百万ドルが決定したその当時の基準というものが、いわゆるアメリカ駐留軍の分担金として、その必要経費の半分を日本が持つということできめられたということがございましたが、その駐留軍経費の必要量が相当少くなった。従ってその駐留軍の必要経費の半分と見積ってこの百八十億から二百億の減額の要求を政府は御提出になったのでございますか。
  129. 重光葵

    重光国務大臣 そうではございません。今申し上げます通りに、わが方の防衛力の漸増に見合ってこれを減額するということになっておるので、それで減額をいたしたのであります。
  130. 福田昌子

    福田(昌)委員 それは、政府の御答弁も大へん苦しいことと存じますが、防衛分担金の削減は、御承知のように、アメリカ側が日本の防衛力の増強を承認した場合に、初めて分担金削減の要求に応ずるのでありまして、日本の防衛力の増強ということがアメリカ側の了承を得なければ、分担金の削減にはならないのでございます。当然のことでございますから、この百八十億、二百億を大体きめられまして、そうしてそれをアメリカ側に要請されるというような立場に立たれた政府とされては、当然アメリカ側に防衛増強の計画というものを示さなければ、この交渉はできないはずだと思うのであります。従いまして、その準備としてぜひ防衛計画なるものが必要であったのです。その防衛計画なるものをこの際御発表願いたいと思います。
  131. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 この共同声明にうたってありますように、日本側では三十年度予算案の中にこれこれの額を計上する、こういうことをきめまして、その事態のもとに、今度の分担金の減額について合意が成立した次第でございます。そういう次第でございまして、前から申し上げておりますように、今までもたびたびこの委員会でも御質問がございましたが、防衛についてのいわゆる長期計画、こういうものは今ほんとうに研究中でございます。さらにまた、前にも申し上げましたように、内閣としましては長期の計画を立てていく方針だということは、向うにも申した次第でございます。
  132. 福田昌子

    福田(昌)委員 長期の防衛計画も示さずして、アメリカが分担金の削減に応ずるはずがないのでございます。常識で考えましても、そういうばかげた、でれでれしたことが通るはずがないのでございまして、しかも政府がいかに強弁なさろうとも、大体政府とされては、三月十四日に決定した防衛六カ年計画なるものをすでにアメリカ側に示しておられるのでございます。アメリカ側に示された防衛計画なるものをなぜ日本の国会にそれを御発表になれないのでございますか。それが決定版でなくとも、またアメリカ側からきらわれたといたしましても、アメリカ側に示した防衛六カ年計画であれば、国会に当然示されると思うのでございますが、なぜそれをお示しにならないのでありますか。
  133. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 ただいまも申し上げました通り、事実まだ防衛庁自体としても、実は研究中でございます。
  134. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういうのんびりした防衛計画の漸増の姿でありますから、防衛分担金の削減交渉がひまが要るのは当りまえだと思います。六カ年計画をお示しにならなかったという強弁でございますから、それを了解いたすといたしましても、日本の防衛計画に対して何らかのアメリカ側の了解事項がなければ、アメリカが分担金削減に応ずるはずがありません。日本でお出しにならなかったといたしますれば、アメリカ側から日本の防衛力増強に対する何らかのアメリカ側の計画があったと思いますが、どういう計画が要求されたのでございますか。
  135. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 私はそういうアメリカ側の計画なるものを受けておりません。   〔「外務大臣、外務大臣」と呼ぶ者あり〕
  136. 重光葵

    重光国務大臣 私も今防衛庁長官と同様に、そういうことを存じておりません。
  137. 福田昌子

    福田(昌)委員 この防衛分担金削減の問題は、今後も当然予算編成の場合には問題になってくるわけでございますが、その交渉におきまして、今後はどういう態度でお臨みになるのでございますか。やはり防衛計画はお出しにならなくて、誠意と熱意でアメリカ側と交渉なさる、こういう御意思でございますか。
  138. 重光葵

    重光国務大臣 長期計画は、今後できますればこれはむろん議会にも御承認を得る機会があろうと思います。アメリカ側ともそれを基礎とするわけでございます。しかし今はないのでございますから、今はそれを考えておりません。
  139. 福田昌子

    福田(昌)委員 日本の予算編成というものがアメリカ側からだんだん制約されて参るということは、私たちが非常におそれておった点でございますが、この第二次鳩山内閣になりまして、明らかに日本の予算編成権もアメリカ側から非常な制約を受けておる。日本の国民の要望である独立の方向とは、まさに逆行しておるということをはっきりと国民に示しました。それどころでなく、第二次鳩山内閣は、アメリカの側に示されました資料さえ日本の国会提出なされない。いろいろ弁解されまして提出をなされない。ほかの委員も要求されました防衛分担金削減の問題にからみましてのいろいろな資料、ことに防衛計画の資料というものは多くの議員が要求されたのでございますが、その資料を決してお示しにならない。こういうように国会審議権を無視して、しかもまことに冷淡な御答弁で押し切ろうという政府のこの態度に対しましては、私どもといたしまして全く当然了承できないところでございます。国会審議権の無視という点におきましても、これは許すべからざる政府の態度だと思うのでございます。  そこで重ねてお伺いいたしたいと思うのでございますが、防衛計画なるものがおできにならない——お出しになったけれどもアメリカ側から認められなかったというのが本音だろうと思うのでありますが、そういう意味で、鳩山総理大臣は防衛計画の設立のために国防会議の設置を急いでおられるのでございますか。
  140. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 国防会議は作らなくてはならないと思っております。非常にお疑いのようでありますけれども、防衛計画というのは実際ないのです。従ってアメリカにも示したことはありません、ないのですから。
  141. 福田昌子

    福田(昌)委員 防衛六カ年計画が立たなければ、日本の経済の基盤になる防衛経費というものがきまらなければ、経済の六カ年計画というものができないはずだと思うのでございますが、その基本になる防衛計画がきまらなくてどうして経済六カ年計画を御決定になられたのでございますか。
  142. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。経済六カ年計画におきましては、六カ年間に、国民の所得その他いろいろな点から考慮いたしまして、日本の経済力に応じて防衛計画を増減するようになっております。従いまして、経済力がふえればそれだけ防衛計画をふやす、こういう計画を立てております。
  143. 福田昌子

    福田(昌)委員 経済力がふえれば防衛計画をふやすという御答弁でございましたが、それをそのまま了承いたしましても、六カ年の経済計画をお立てになれば、結局防衛計画というものはどういうことになるかということは、大体御発表になれるはずだと思うのでございます。従いまして、経済六カ年計画をお立てになる意味におきましては、それはどちらが先であるかは別といたしまして、いずれにいたしましても、防衛六カ年計画が必然的に考えられなければ経済六カ年計画はでき上らないはずだと思うのでございます。その間のもっと正直な御答弁を伺いたいと思います。
  144. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。防衛にどれくらいの負担ができるかという金額をきめるのが経済六カ年計画であります。これは経済力に応じてこれをふやします。防衛計画というものはこれと全く違っておりまして、その数字にあるいは金額を合わさなければならぬかもしれませんが、飛行機を幾らにするとか、船を幾ら作るとか、人間を幾らにするか、こういうようなことは私どもにはわかりません。金額だけは私どもにわかっております。
  145. 福田昌子

    福田(昌)委員 経済計画から割り出して防衛費の負担分がきまるということでございますから、その決定されました経済六カ年計画のワク内で防衛費として決定されました、そのワク内における防衛計画なるものの御説明を伺いたいと思います。
  146. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。国民経済の伸びの工合によりましてこれを決定するわけでありますから、今具体的の数字は持っておりません。
  147. 福田昌子

    福田(昌)委員 政府自体が経済六カ年計画を御発表になっておるのに、なぜ防衛の六カ年計画だけ御発表になれないのか、私ども非常に了解に帯しむのでございます。はっきりとしたこまかな数字でなくても、概略の防衛六カ年計画というものがあるはずでございますが、なぜそう固執して御発表にならないのか、重ねてお伺いいたします。
  148. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 先ほどからお答え申し上げた通りでございます。
  149. 福田昌子

    福田(昌)委員 時間が制約されておりますし、むだな浪費をしても何でございますから、先に移りたいと思います。  日ソ国交調整に対しまする政府の基本政策というものが新聞によりまして了解されてきましたが、そこでお伺いさせていただきたいのでございます。懸案事項の解決をはかるとともに、国交調整の方も両方推し進めて、日ソ国交回復の事務的な折衝をやって参りたいという政府の御見解でございましたが、懸案事項があって、その折価に非常にひまどったというようなことがあるといたしましたら、それが片づかない限りにおいては、平和条約を結ぶということをお考えにならないのかどうか、この点重光外務大臣に伺いたいと存じます。
  150. 重光葵

    重光国務大臣 この点は、けさほど当委員会において相当詳しく御答弁申し上げたつもりでございます。戦争状態を平和に切りかえる、すなわち平和条約を結ぶということに相なります。これは国際上の通則であります。その場合において、いろいろな懸案を解決しなければならぬという方針をとるのは、これは当然のことだろうと思います。それで今日は、交渉に今入らんとするときでありまして、この懸案の解決はあくまで成功さしたい、成就をいたしたい、こういう考え方をもってこの交渉に臨もうとしておるわけでございます。
  151. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういう御答弁をけさほどすでに伺ったのでありまして、従いまして、私がただいまお伺いしました点は、その懸案事項が片づかない場合、ことに領土の問題なんかは相当困難でございますが、この問題が片づかない場合には、平和条約なるものはお結びになるのでございますか。あるいはまた、それは領土問題が片づかない限りはお結びにならないのでございますかということをお尋ね申し上げたのであります。
  152. 重光葵

    重光国務大臣 その点もけさほど申し上げた通りでございます。すなわちそれは、交渉をした後にわかるべき問題であって、交渉前に交渉がどこまで行くかとか、また問題が解決しないとかいうようなことを予想して、それについて意見を申し上げることは、私は今時期ではない、こう思うのでございます。
  153. 福田昌子

    福田(昌)委員 政府は超党派外交を考えておられまして、各党に働きかけておられるようでありますが、新聞によりますと、自由党は政府の超党派外交の申し入れに対して断わられたというようなことでございますが、自由党が政府の申し入れに応じないといたしますれば、結局この超党派外交におきましては、両派社会党は、鳩山外交の日ソ国交調整に乗り出されましたその点につきましては賛成をいたしておるのでありますから、社会党だけとも絶えず交渉をなさって、この日ソ国交調整に対する懇談会をお打ちになる意思があるかどうか、この点を伺わせていただきます。
  154. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 意思があります。
  155. 福田昌子

    福田(昌)委員 それは当然のことだと私は思うのでございます。なぜかと申しますと、日ソ国交調整というものは、国民の大多数の要望であり、国会におきましても、両派社会党は当然賛成をいたしておりますし、また民主党——現第二次鳩山内閣日ソ国交調整に乗り出してこられたということでありますならば、国会の勢力が、過半数の日ソ国交調整に非常に積極的であるということでありますし、むしろこれに反対しております少数の自由党こそ、国民の輿論を代表しないということさえ言えるのでありまして、政府自体が日ソ国交調整に当りまして、社会党とより一層緊密な連絡をおとりになるということは当然のことだと思うのでございます。そこで根本的な問題としてお伺いさしていただきたいのでございますが、政府日ソ国交調整に当りまして、心がまえとしてきめておられます態度といたしまして、ヤルタ協定はこれは否定しておる、承認しないという御見解でございましたが、ポッダム宣言、あるいはカイロ宣言というものは、当然これは承諾されておると思うのでございますが、そうでございますか。
  156. 重光葵

    重光国務大臣 ヤルタ協定に日本が何らの関係を持っていないということは、御承知の通りであります。また日本が降伏文書によってポツダム宣言を受諾しておるということも、これまた御承知の通りでございます。そのポツダム宣言はカイロ宣言を引用しておるということも御承知の通りだろうと思います。以上。
  157. 福田昌子

    福田(昌)委員 懸案事項であります領土問題を政府日ソ交渉の場合に強く主張なされば、これは日ソ間の平和条約の締結が非常に困難になり、結局平和条約成立の障害になると思いますが、政府のこれに対する御見解を伺いたいと思います。
  158. 重光葵

    重光国務大臣 その交渉がどこまで困難であるかということは、今私にも予想がつきません。しかし領土問題のごとき、日本の主張は、正当と信ずることに従って十分主張しなければならぬことだと思っております。
  159. 福田昌子

    福田(昌)委員 ソ連が百歩譲歩いたしまして、千島、樺太を日本に返還するというようなことが成立いたしましたならば、この返還されました千島、樺太がすぐアメリカの軍事基地になるというおそれはございませんか。
  160. 重光葵

    重光国務大臣 私は千島、樺太のごときも、日本の領土に返ってくる結果になることをほんとうに希望いたします。さような場合において、これが他国の軍事基地になることは、これは断然防がなければならぬ、こう考えております。
  161. 福田昌子

    福田(昌)委員 返還されました千島、横太が他国の軍事基地になることはできるだけ防がなければならないという御答弁でございましたが、これは当りまえのことでありますが、これをできるだけ防ぐためには、講和条約と行政協定を改訂する以外にはないのでございます。現行の融和条約と行政協定のもとでは、これは当然アメリカの軍事基地として、アメリカの望むところとして、要求されて参るということは火を見るよりも明らかでありまして、すでにアメリカの官憲ではそういう意見も発表いたしております。今年のお正月の外電の伝えるところでも、千島、樺太が返還されたら、結局アラスカから東南アジアへの防衛線にさらに千島が加わって、アメリカの防衛線は強化されるのであろうということを発表しておるのでございまして、当然アメリカはここを軍事基地として利用いたします。従って外務大臣のただいまの御希望をかなえるためには、どうしても日米行政協定、講和条約の修正が必要になって参りますが、それをなさる御意思がありますかどうか。
  162. 重光葵

    重光国務大臣 私は、領土返還の問題と行政協定というものは直接の関係を持っておるとは思いません。これは領土返還の場合に、どういうふうに返還を受けるか、もしそれができるならば……。できることを私は今希望するわけでありますが、そのときには十分にこれに対する手当ができることと思っておりますので、行政協定はそのために改訂をしなければならぬという結論は出てこないと思います。
  163. 福田昌子

    福田(昌)委員 外務大臣ともあろう方がそういう論弁を弄されまして納得させようというのは、非常に無理でございます。講和条約そのものにすでに千島、樺太の権利を放棄したことが規定してあるじゃありませんか。そういう条約を知っておられる外務大臣が、領土の返還の問題は講和条約に関係がないとか、行政協定に関係がないとかいう詭弁を弄されるのは、あまりにも侮辱した御答弁だと思います。もう少し……。
  164. 重光葵

    重光国務大臣 それはどういう御議論か私にはわかりません。講和条約に領土問題が規定してあるということは、私は存じております。講和条約に規定があっても、その講和条約にはソ連が調印をしなかったのでございます。従ってソ連との間においては、領土問題を解決するということは、これは当然のことであります。未解決の問題を解決しなければならぬ。しかしその解決の場合に当って、わが方の希望通りにその結果がなるように努力もするし、また希望を持つということは当然のことであろう、こう思うのであります。行政協定は、これはソ連との関係でないことは御存じの通り、アメリカとの関係であるのであります。
  165. 福田昌子

    福田(昌)委員 鳩山総理大臣は、この点につきまして、再三千島、樺太の領土の返還の場合には、講和条約もあるいはまた行政協定も修正する必要があるということを御答弁なさっておられるのでございますが、ただいまの外務大臣の御見解とは非常に食い違っておるという気がいたします。総理のこれに対する御見解をあらためて伺いたいと存じます。
  166. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいま外務大臣が答弁をいたしました通りに、アメリカとの間には、行政協定その他において規定されておることがあるけれども、しかしながらアメリカとの行政協定等によって生残する要綱を制限するような規定を領土の返還のときに考えることは、余地が十分あると私も思っておるので、そういう答弁を私はいたしたと記憶をいたしております。
  167. 福田昌子

    福田(昌)委員 講和条約や行政協定をお変えになるとは言明されませんでしたが、考える余地があるという御答弁でありまして、この点だけでも外務大臣のただいまの御答弁とは非常に食い違っております。鳩山第二次内閣におきまして、外交政策総理重光外務大臣との間に食い違っておるというのは、これは毎度のことでございますから別に驚くに当らない。ということは言えるかもしれませんが、しかしながら国民として向えました場合、日本の外交政策における方向というものが、一体だれが言われているのがほんとうであるかということを考えます場合、非常に国民の名において遺憾しごくに思うのでございます。こういう状態でありますから鳩山内閣は二元外交だということの非難を受けるのでございます。先ほど日ソ国交調整の基本的な態度の問題におきましても、外務大臣の御見解は、昨日の参議院の外務委員会の記録を見ましても、領土問題の解決ができない限りにおいては、平和条約の締結というものはよほど考えなければいけない。これは領土問題の解決が先で、そのあとに平和条約というもの結ぶべきだ、という意味の御答弁がなされておりますが、総理の御見解は、同じ外務委員会の御答弁におきましても、多くの懸案事項の解決が望ましいが、それが非常にとまどるときには、懸案事項を残しても平和条約というものは締結したい、こういうように御発表になっておりまして、日ソ国交調整の基本的なお考えにおきましても、総理と外務大臣とはすでに異なっておるのでございます。日ソ国交調整におきまして困難な領土の返還の問題をたてにとり、しかも一方、もし返還されますると、直ちに日米行政協定によりまして、アメリカの軍事基地になるおそれのあるこういう立場における日本に、ソ連が領土を返還するというようなことは、非常に困難な問題でなければならないのでありますが、そういう困難な問題を日ソ国交調整に当って外務大臣が固執なさるということは、私は結局外務大臣の御意思というものは、日ソ国交調整というものに対する正真正銘の熱意がないのだ、これを好んでおられないのだということの証左だと思うのでございます。そうして日ソ国交調整が結果においてなかなか困難であり、成立しないその責任というものは結局ソ連側にあるのだという、その責任転嫁をこの領土問題の返還にかこつけて考えておられるということが想像できるのであります。かような状態におきまして、鳩山総理大臣がせっかく国民の要望にこたえて考えておられます日ソ国交調整というものも、あなたの内閣自体におきまして、あなたの外交政策において手を引っぱり足を引っぱる閣僚がおられるということは、これは非常にあなたの外交政策を困難にしており、そうして先ほど申し上げましたような、世間から二元外交というような非難を受ける理由になっておるのでございます。従いまして大衆の要望にこたえての日ソ国交調整を、あなたがしかも御自分の使命としてやっていきたいという御熱意を持っておられますならば、少くとも閣内におきましてこういう協力をしない閣僚というものは、情においては忍びないでしょうけれども、この際泣いて馬しょくを切るだけの御英断があるかどうか、この点特に伺いたいと存じます。
  168. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は参議院の外務委員会において重光外務大臣の答弁を聞いておりましたが、全然一致しておりまして、講和条約を締結するような意味において日ソの国交を調整したい。全くどこも違っておらないのであります。しいてあなた方がどこか端を見っけてとつつかまえて、違った違ったとおっしゃいますけれども、別に違っておらないのでございますから、そういうような御心配は御無用でございます。
  169. 福田昌子

    福田(昌)委員 私が御心配申し上げているのじゃないのでございまして、新聞も伝えておりますし、世間一般が二元外交、鳩山第二次内閣には外務大臣がたくさんおるということを伝えておるのでございます。私の見解、個人の意見として申し上げたのじゃないのでございまして、世間一般がそう見ておる。従いまして鳩山内閣の外交政策を強化するためには、閣内の統一をはかる必要があるのじゃないか。その意味で鳩山内閣鳩山総理に協力しない閣僚のお取扱いに対する御見解を私は伺ったであります。
  170. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は閣内に協力を拒む閣僚はいないと考えております。
  171. 福田昌子

    福田(昌)委員 政府は講和条約の成立の際に自由党、民主党の方々は、鳩山総理を初めといたしまして千島、樺太について日本の権利の放棄を規定いたしました講和条約を富んでのまれておるのでございます。こういう領土放棄の規定をのまれて、千島と樺太を一たん放棄された鳩山総理及び重光外務大臣が今さら千島、樺太の領土の返還を要求されるということは、私は、それは個人におきましてもまことに信念がふらふらであるという気がいたしますし、また内閣自体といたしましてもよく、そういう一たん堂々とけった、放棄した権利というものを、またのめのめと要求できると思うのでございます。しかしながらこれは、国民の要望において額土返還を要求していただくのは私ども大賛成であります。   〔委員長退席、重政委員長代理   着席〕  しかし過去の鳩山総理及び重光外務大臣の行動からいたしまして、まことに信念のない、そうしてまたまことに勝手な行動だと考えざるを得ないのでございます。そこで、まあいずれにいたしましても、領土の返還を中心にいたしまして、日ソ国交調整に乗り出されるということは、好ましいことでありますが、一体この日ソ国交調整の成立のお見通しは、どういう状態であるかということを重ねてお伺いいたしたいと思います。
  172. 重光葵

    重光国務大臣 日ソ交渉はぜひ国交の正常化の目的を達したいという熱意を持って交渉を進めるわけでございますが、しかしその交渉がどういう見通しになるかということは、私は不敏にして今申し上げる自信がございません。しかしぜひともこれは成立をさせたい、こう思って進んでおる次第でございます。
  173. 福田昌子

    福田(昌)委員 講和条約の際に千島、樺太の放棄に賛成をなすった鳩山総理大臣が今さらこの千島、樺太の返還要求をされるということは、これはもうまことに思想的にも無定見だと思うのでありますが、返還を要望いたしておりますのは、私ども日本国民として当然のことでありますから、返還そのものには非常に賛成でありますが、締結されるその当時に、なぜ千島、樺太は日本に返還してもらいたいということを政府鳩山総理大臣は個人としても御主張にならなかったのでございますか。
  174. 重光葵

    重光国務大臣 サンフランシスコ平和条約は御承知の通りに、当時の全権が調印いたしたのではございますけれども、全権は国家の全権として調印をしたのでございまして、これには、私は日本及び日本国民は当然その条約によって規制されることと考えております。従いまして、私ども日本国民の一員としてその条約を認めておるわけでございます。しかしながら今お話の通りに、それはソ連とは関係はございません。従いましてソ連との間に領土問題を議題にするということについては、今あなた自身も御賛成のようであります。私どもも日本の国民としてそうなければならぬ、こう考えてやっておる次第でございます。
  175. 福田昌子

    福田(昌)委員 講和条約だって、安保条約だって、行政協定だって、全部直接ソ連には関係がなくても、領土問題において関係があると思うのであります。それをなぜ関係がないと強弁されるのか私には理解できないのでございます。今さら千島、樺太の返還を要求される御意思があるならば、講和条約締結の当時、講和条約の中にはっきりと千島、樺太を放棄するという規定が書かれてあるのでありますから、その規定を削除するために、なぜそれだけでも取り上げて反対をなさらなかったか、この点を伺っておきます。
  176. 重光葵

    重光国務大臣 その点は今も十分に御説明いたしましたから、それを繰り返すことはいたしません。
  177. 福田昌子

    福田(昌)委員 外務大臣の御答弁を聞いても、結局あいまいもことした、実にごまかしばかりの御答弁でございますから、重ねてお伺いいたしません。  鳩山総理大臣にお伺いいたしますが、鳩山総理大臣が講和条約締結前にダレス長官と個人的にお会いになっておられる。このことはせんだっての委員会においても発表されておりましたが、このダレスとお会いになりましたときに、千島、樺太の領土返還の問題につきまして、講和条約の内容に規定しないこの千島、樺太は日本に当然帰属すべきものだという意味合いの主張をなすったかどうか、この点伺いたいと思います。
  178. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ダレス氏と面会した当時においては、このことはまだ問題になっておりませんでした。
  179. 福田昌子

    福田(昌)委員 問題になっていてもいなくても、総理御自身が一つの意見書をお出しになった、この前の委員会でそういう御答弁をしておられたのでありますが、その意見書の中には、向うが問題にしなくても当然千島、樺太の帰属に対する日本国民としての主張があってしかるべきだと思うのでございますが、こういう点を取り上げてなすったかどうかということでございます。
  180. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その当時において、まだサンフランシスコ条約はなかったと思います。
  181. 福田昌子

    福田(昌)委員 はっきり申し上げれば、千島、樺太の領土の返還などは、それがソ連領になろうと関心を持っていなかったということに相なるわけでございますが、これ以上重ねてお伺いするのはやめさしていただきまして、次にお伺いさしていただきたいのは、政局安定についての総理大臣の御見解と御構想を伺いたいと存じます。
  182. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 政局安定についてこのごろ新聞によりますと、政界を隠退することを条件として予算の通過をはかる、あるいは鳩山内閣の延命を策するというようにとれるような記事がございますけれども、そういうやり方はやみ取引と言えるでしょうね。そういうような不公明なやり方は私はいたしません。しかしながら保守勢力を結集して、政局を安定するということは非常に必要なことだとは思っております。
  183. 福田昌子

    福田(昌)委員 保守勢力を結集して政局の安定に備えるということは必要だという御見解でございましたが、保守勢力の結集に当っては、まずどういうことをしなければならないか、この点総理大臣の保守勢力結集に当っての御見解を伺いたいと思います。
  184. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私もどういうようにしたらいいか、目下検討中であります。わかりません。
  185. 福田昌子

    福田(昌)委員 保守勢力の結集について当事者であられる鳩山総理自身に、まだお考えがおきまりになっておられないということを伺いまして、私ども非常に不思議に思うと同時に、はなはだ失礼でございますが、まことにだらしがないことだという感じがいたすのでございます。保守勢力結集に当りまして必要な条件となるものは、ある程度自由党、民主党政策の一致ということが少くとも条件になるのでございましょうか、その点はあまり条件にならないというのでございましょうか。
  186. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 政策の一致が最も重要なる条件になると思います。
  187. 福田昌子

    福田(昌)委員 保守連携におきまして、政策の協調が最も大きな条件になるというお話でございましたが、政策の協調ということになりますと、ほかの点はともかくといたしまして、最も問題になるのは外交政策の点だと思うのでございますが、外交政策は自由党の外交政策民主党の外交政策とは相当に開きがございます。これた調整なさらなければ、保守連携ということも困難であろうと思うのでございますが、この調整をなさる場合にはどういう形で歩み寄りをなさるのか、その限界を伺いたいと思います。
  188. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私の外交政策について自由党が何となく同意していないように見えるのは、誤解に基いておるものと考えますので、よく話し合いをすれば、必ず一致するものというような考え方をしております。
  189. 福田昌子

    福田(昌)委員 新聞でも自由党は外交政策ははっきり異なっておるから、鳩山内閣は外交政策を変換しない限り同調できないというようなことが、記事に相なっておりますが、それは単なる誤解であるということだけ伺いましたのでは、私は十分御答弁として理解するわけには参らないのでございますが、百歩譲りまして、それが単なる誤解であるということであれば、話し合えばわかるでありましょうし、結局根本的には自由党も民主党も外交政策においては百歩変った隔たりを持っているものではないということにも相なるのでございますが、さように解釈してよろしゅうございますか。
  190. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はそういうような考え方をしております。
  191. 福田昌子

    福田(昌)委員 国民は、あなたのその根本的なお考えを十分理解いたしませずして、あなたが選挙の際に述べられました、いかにも自由党とは異なった、積極的な共産圏に対する国交調整に乗り出されておるということを多といたしまして、あなたを支持し、その結果民主党が第一党になったのでございます。ところが今日になりまして政権をおとりになれば、外交政策もきわめてふらふらされて参りまして、日ソ国交調整においても自由党とあまり変らないというようなことをお甘い出されになるといたしましたら、これは国民を裏切るのもはなはだしいと思わなければならないのでございます。国民日ソ国交調整を初めといたしまして、共産圏に対する国交調整というものに大きな期待をかけ、そしてまた民主党のまことに実現不可能な膨大な公約のから手形の発行に惑わされまして民主党を支持し、第一党になったのでございますが、予算編成において見ましても、選挙の際に公約された民生の安定に関する予算は大幅に削られておる。しかもたった一つの自由党と非常に違った特色であると言われておりました外交政策においても、何ら自由党とは変りがないということになれば、これはもう総理自身が選挙の際において国民をまっこうからだましたと言われても仕方がないと思うのでございます。こういうような裏切り行為を鳩山総理大臣自身がなさるということは、私ども国民の一人といたしまして全く心外にたえない、善良な国民こそ非常にかわいそうなものだという気がいたします。  時間がございませんから、次に進んでお伺いいたしたいと思いますが…。
  192. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あなたにそういうことを言われると、黙っておるわけにはいかない。国民と約束したソ連との国交調整については、昔と今と変らず熱意を持っております。それはソ連との戦争状態——戦争をした両国がそのままになっておるというようなことは、そのままにしていていいはずはないのでありますから、戦争状態を終結さすためにはできるだけ早くしなくてはならないと思っております。この根本については私は自由党も私と違うはずはないと思っております。ただ私の考え方を自由党は、共産主義と妥協でもして、日本が共産化されるということについて私が少しも心配をしていないというように考えて、日ソの国交調整そのものについては反対ではないけれども、国交調整をしたことによって、日本の共産党が勢力を得る結果になっては困るという危険を感じておるわけなんであります。それで何となく自由党は日ソの国交調整に反対であるように見えるのでありますけれども日ソの国交調整をするということについて、日本の国民が反対する理由は私はないと思っております。ただそれによって日本の共産党が勢力を得るような結果になっては困るというような危惧の念を持っておるわけなんであります。その危惧の念の要らないということが明らかになれば、そうすれば自由党といえども日ソの国交調整を双手をあげて歓迎することは日本国民として当然だと思っておるわけです。そこに誤解があるのです。そこに誤解があるのですから、その誤解を——共産党が勢力を縛るようにはなるはずがないじゃないかというようなことを言えば、私は自由党も了解すると思います。特に私はソ連のこのごろの外交政策というものは非常に劇的に変化があったと思っておるのです。ソ連はこのごろでは世界平和政策、世界に第三次世界戦争が起きては困るというような考え方を持っておるのは、ソ連もなかなか熱があると思っております。それはオーストリアに対してのソ連の政策をとってみても、今までは自分の国の政府に反対した自分の国民に対しては非常な迫害を加え、シベリアで殺された人は千五百万をこえているとか二千万に達しているとかいわれるくらいに、自分の国民にして自分の政府に反対した人には非常な迫害をしておった。ところがこの迫害をしていた態度を改めて、オーストリアにいたいわゆるレフジー、すなわち逃げ回っているロシヤ国民に対して、それはお前の国にとどまってもいい、あるいは他の自由国に行って安全な生活を営んでもいいといって、迫害をする態度をやめてしまった。そのくらいにソ連の態度というものは違ってきたのでありますから、今日はソ連と日本とが国交を調整することについては最良な機会だと私は思っておるのであります。そういうわけでソ連との国交調整をぜひしたい、今がいいチャンスである、こういうように思っておるのでありまして、そういうようなことに対して自由党がよく了解をしてくれるならば、何も心配をして、共産党の勢力が伸びる、日本が共産化せられるというような危険などはなくなるだろうと思うのです。そこに誤解があると言ったのでありまして、根本の外交政策について違いがあるはずはないと思っております。そうしてなおもう一つは、アメリカに対して、アメリカが非常に日ソの国交調整について反対だというように自由党の人は思っておるらしいのですけれども、そのおそれは一つもないのですから、そういう点の誤解が氷解すれば、ソ連との国交は調整せられ、世界の平和については確実な根拠ができるというふうに思っておるわけであります。どうかあなた方が勝手にぼくらの言うことを解釈されて、私ども日ソの国交調整に対して熱意がなくなったというようなことを言われれば、私としては非常に迷惑千万に感ずる次第であります。
  193. 福田昌子

    福田(昌)委員 私は総理が熱意がなくなったなんぞと申し上げたことは絶対ないのでありまして、それどころか総理の御不自由なおからだで日ソ国交調整に非常に積極的であられるということに敬意をこそ失しておるのであります。ただ遺憾に思いますのは、自由党側とは非常に外交政策において食い違っておるが、この食い違いというものは、総理お望みの保守連携の場合にも相当障害になると思うけれど、その際この外交政策というものをめぐって、総理大臣のその主義、政策をお変えになるということはないかというような意味からお尋ね申し上げたのでございます。ただいまの御見解を伺いまして全く安心をいたしました。どうかその御決意をもって自由党に対して十分了解工作をなさるように、日ソ国交調整政策に対します首相の見解を披瀝されまして、自由党もそれに同調するように御努力願いたいと思います。これは自由党側の誤解ではなく、自由党との見解の相違であると思いますので、どうか熱心に御説明をお願いいたします。
  194. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 努力いたします。
  195. 福田昌子

    福田(昌)委員 次にお尋ねいたしたいことは、目下問題になっております沖縄の問題でございますが、沖縄の琉球政府の比嘉主席は、沖縄の接収地の買収問題を取り上げまして、アメリカ側に呼ばれて渡米をされるために、ちょっと日本に立ち寄られたという記事が新聞に出ておりますが、この沖縄におきますところのアメリカの軍用接収地の買い入れに関する件につきまして、日本政府アメリカ軍からか、あるいはまた琉球政府からか、どこからかこれに関するお話し合いをお受けになりましたでしょうか。
  196. 重光葵

    重光国務大臣 沖縄の行政は米軍に属しておる。アメリカに属しておる。これは条約上定まっております。そこで沖縄の借地の問題は、沖縄の土地所有者と米軍、米国政府関係になっております。そこで情報は十分に持っております。そしてその借地料についてアメリカ側はいろいろ予算的処置までも講じておるような状況でございます。しかし御承知の通り、沖縄にはアメリカも日本の潜在主権を認めておる、そして沖縄人についてはわれわれは特別な関係を持っておるので、これは従来の歴史から考えても、日本として沖縄人の希望をも十分に考慮して、達成させるように努力することは当然必要でございます。でありますから、これらの問題についてはアメリカ政府と接触をいたしまして、東京でもまたはワシントンでも交渉をいたしまして、その沖縄住民の福祉をはかることに努めておるわけであります。
  197. 福田昌子

    福田(昌)委員 国会でも沖縄の問題はたびたび問題になったのでございます。その際いつも政府の御答弁は善処するとか、考えておるとかいうような御答弁ばかりを続けて承わったのでありますが、ただいまもまた沖縄の立場というものはよく了承しておって、沖縄の人たちの擁護のために努力をしているという御答弁でございましたが、具体的に一体どういう問題に対してどういう努力をしたかという例が示されないと、私どもそういう抽象的な言葉では了解できないのであります。具体的なこういう場合にこういう援助をやった、こういう場合にこういう措置をやったという例をお示しをいただきたいと存じます。
  198. 重光葵

    重光国務大臣 政府政府との間の折衝の結果はいろいろな方面に現われており、これは詳細なことは調査して申し上げてもよろしゅうございますが、アメリカも最近は特に人を日本経由で沖縄に派遣して、土地の問題を調査しております。そしてそれに善処しようという詳しいことを連絡して参りました。さようなことがございますので、若干この点は改良されることだと考えております。
  199. 福田昌子

    福田(昌)委員 アメリカ軍が沖縄の調査に、日本を経由して出かけられた。それくらいのことは何も日本の政府の琉球問題に対します非常な関心と、そしてまた琉球問題に対して政府が積極的な措置をとったということにはならないと思うのでございます。具体的な御答弁がいただけないということは、結局琉球問題に対して政府御自身何らなす手がなかった、何らしておられないということにしか考えられないのでございますが、何かしておられることがございましたら、もう少し具体的な御答弁を伺いたいと思います。
  200. 重光葵

    重光国務大臣 今向うに折衝をしておると申し上げました土地収用の問題についても、契約の期限についていろいろアメリカに住民の希望をいれるようにというようなことも申しております。しかし、なるほどそれならばどういう効果を上げたか、こういう御質問でございますが、今その効果はどこまで上げたということを、私は具体的に申し述べる材料を持っておりませんことを遺憾といたします。しかしこの問題については、沖縄住民をぜひ側面から援助していきたいという熱情を持ってこの交渉を進めていっておりますし、いかなければならぬと思っております。なお材料を整備して、整備ができました上はまた御報告をいたすことにいたします。
  201. 福田昌子

    福田(昌)委員 沖縄問題に熱意と誠意を持たなければならないという抽象的なことばかりは伺いましたが、実際具体的な問題においてどういう援助をしたかというようなことは全然伺えなかった。この点沖縄に対しまする政府の態度というものがきわめて冷淡であるということで、非常に遺憾に存じます。重ねてお伺いいたしたいのは、先ほどの外務大臣の御答弁にもございましたように、日本には沖縄に対する潜在主権があるという御答弁でございましたが、この潜在主権とは、国際法上一体どういう主権をいうのでございますか。
  202. 重光葵

    重光国務大臣 国際法上どういう意義を持っておるかということは、専門家の答弁に譲りたいのでございますが、私はアメリカ側が今統治をしておる目的が終了した場合には、これはどこにも帰属するものではなくして、当然日本に返ってくる、これが日本の潜在主権を認めた意義だ、こう考えております。
  203. 福田昌子

    福田(昌)委員 外交の専門家であると思いまして、重光外務大臣にお伺いしたのでありますが、潜在主権というものに対する国際法上の御解釈を十分お伺いすることができませんでしたが、ともかく、最終的には領土が日本に返ってくるというのが潜在主権の意義だということの御答弁でございました。といたしますと、現在のこの琉球の領土権というものはどこにあるのですか。
  204. 重光葵

    重光国務大臣 領土権の行使は米国政府に属しております。
  205. 福田昌子

    福田(昌)委員 簡単に申し上げますと、ただいまのところでは、沖縄は日本の領土でないということになるのでございますか。
  206. 重光葵

    重光国務大臣 潜在主権が日本に属しておるということを認めておるのでありますから、これは理論上領土権は日本にある、しかしその行使はアメリカがやっておる、こういうことだと解釈をいたします。
  207. 福田昌子

    福田(昌)委員 最終的には領土権は日本にある、それをアメリカが使っておるのであるということになりますと、では、その最終的に領土権を持っておる日本の土地に対しまて、日本の土地の一部である琉球におきまして、アメリカの軍当局がその琉球の土地を軍事基地として接収されたり、あるいはまた今度のような買い上げか、あるいはまた九十九カ年の期限を切っての租借かは存じませんが、そういう問題が起って参っておるということになりますれば、こういう問題は当然その潜在主権者である日本の政府に相談をしてしかるべきだと思うのでございますが、こういう点について御相談をお受けになっておられるでございましょうか。
  208. 重光葵

    重光国務大臣 それは米国の行政権の行使に属しておる問題でございますから、その範囲内において相談は受けておりません。
  209. 福田昌子

    福田(昌)委員 まことに抽象的な御答弁で了解に苦しむのでございますが、今度の土地買い上げ、あるいはまた九十九カ年の租借に関します問題につきましても、政府にはこれに対する何らの交渉はなかった。比嘉主席も政府にはお話の申し込みがなかったのでございますか。
  210. 重光葵

    重光国務大臣 今申し上げました通りに、法律問題としては相談はしておらないわけであります。しかしこちらがその状況を問い合せる場合においては、アメリカ側は日本に十分情報を供給いたしております。九十九カ年ということも、新聞報道にすぎないようでございます。九十九カ年は正確でないように承知をいたしております。
  211. 福田昌子

    福田(昌)委員 まことにだらしがない御答弁で驚き入ったのでございますが、沖縄に対して潜在主権があるということを、アメリカ側とも了解して認め合っているのでしたら、この潜在主権のある、最終的には領土権というものが日本にあるこの沖縄の土地が接収されたり、あるいはまた買い上げられたりするという場合には、当然日本政府が出向いて行ってアメリカ側と交渉してしかるべきだと思うのでございます。なぜそれだけの熱意をお持ちにならないのか、この点まことに遺憾でありますが、今までそういう措置をしておられかなった。しかしながら今後はこういう土地接収の問題についても政府自体が積極的になさる御意思があるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  212. 重光葵

    重光国務大臣 今申し上げました通り、これは法律問題を離れて、米国政府とは絶えず沖縄の問題等について意見を交換しておるわけでございます。さような手段によって沖縄住民の福祉を保護しよう、こういうふうに考えておるわけでございます。
  213. 福田昌子

    福田(昌)委員 法律問題を離れてアメリカ側とは絶えず折衝して沖縄住民の福祉をはかろうとしているというようなことは、まことに詭弁でありまして、アメリカ当局と絶えず折衝しておられるなら、どういうことを折衝しておられるか御説明いただきたいということで申し上げたのに、その具体的な御答弁がいつまでもなくして、抽象的なことばかり繰り返されておられる。このことは結局政府がそれだけの措置をこれまで沖縄問題に対してとっていなかったというふうにしか解釈できないのでございます。この私の解釈が間違っておるということでありましたらら、具体例をあげて御説明をいただきたいと思うのであります。
  214. 重光葵

    重光国務大臣 沖縄の問題についても、沖縄住民のために工合のよくなるように十分努力はいたしておるつもりでございますが、これについて御批評はあることと思います。
  215. 福田昌子

    福田(昌)委員 沖縄住民のために非常に御努力いただいているという抽象的な御答弁だけで、非常に了解に苦しむのですが、では、その非常に御努力をいただいております問題の一つとして、沖縄では軍用地として接収されました土地の賃貸料の問題におきましても、絶えず人権問題まで惹起いたしまして問題になっているのでございますが、   〔重政委員長代理退席、委員長着席〕 こういう問題に対しまして、政府はどういう折衝をされ、どういう援助をされたか、具体的に御説明いただきたいと思います。
  216. 重光葵

    重光国務大臣 土地の問題についてはまず第一に借地料の値上げでございます。借地料は事実買い上げ料みたいなことになっております。それを増額させようということ、それからそれを一度に払って済ませたい、こういうアメリカ側の考え方を毎年払うようにする、こういうようなことについていろいろ住民の意向を取り次いでおる次第でございます。
  217. 福田昌子

    福田(昌)委員 ただいまのお話は今度問題になりましたアメリカの軍用地の買い上げの問題についての、政府の御処置を御説明になったのでございますか。
  218. 重光葵

    重光国務大臣 米国政府との話し合いの内容を申し上げた次第でございます。
  219. 福田昌子

    福田(昌)委員 今外務大臣の御説明になりました米国政府との話し合いというものは、今問題になっております買い上げに関する問題について話し合われたのでございますか。
  220. 重光葵

    重光国務大臣 さようでございます。
  221. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういたしますと、これまでの沖縄の土地接収、借り上げの問題については、政府は何もしておいでにならなかった、何ら関心を持って積極的なアメリカ側との折衝に動いていなかったということでございますが、政府の熱意のなさにはあきれて沖縄の人は涙を流すでありましょう。  それはともかくといたしまして、次にお伺いいたしたいのは、新聞によりますと、アメリカ側が沖縄の土地約五万二千エーカー、これは沖縄の全領土の一四%に当り、耕地面積の七〇%に当るといわれておりますが、これを買い上げようといたしております。この買い上げに対してアメリカ側では日本の見返り円を使おうというような意見が出ておりますが、見返り円を使おうというその見返り円はどれをさしておるのでございましょうか。
  222. 重光葵

    重光国務大臣 それはそうじゃないようでございます。アメリカ側はドルで払うということで、予算にもちゃんと計上しておるようでございます。日本円を借地料支払いに充てるということは事実上非常に困難なことで、かようなことはないようでございます。
  223. 福田昌子

    福田(昌)委員 これはまだいろいろと今後に残された問題でありますし、その買い上げか借りるのかが今後の問題でもありましょう。従ってその支払いの価格においても問題があるわけでございますが、いずれにいたしましてもアメリカ側から日本の見返り円をもってこれに充てるというようなことがうわさに出るくらいならば、結局その領土というものは日本の領土であり、主権というものはやはり日本の主権が及ぶのだということをアメリカ側が認めている、こういうことが言えると思うのです。それでなくても当然潜在主権が日本にあるということを外務大臣自身も了解しておられますから、沖縄住民の土地の接収、借り上げの問題に対しましても、今までなぜ日本の外務大臣はもう少し積極的にこれに対して交渉に乗り出し、沖縄人を保護する立場をおとりにならなかったか、潜在主権というものをどういうふうに解釈されていたのか、この点伺いたいと思います。
  224. 重光葵

    重光国務大臣 さようなわけでありますから、これまでもでき得る限り沖縄住民の福祉を増進するように努力してきたわけでございます。今後もそのつもりでやるつもりでおります。
  225. 福田昌子

    福田(昌)委員 時間がなくて大へん恐縮でございますが、この沖縄問題に対しまして政府はまことに熱意がないということは非常に遺憾でございますが、人権問題でありますからお尋ねいたしたいのでありますが、沖縄の住民は一体これは日本人でございますか、国籍はどこにあるのでございましょうか。
  226. 重光葵

    重光国務大臣 潜在主権を認められておるのであります。従いまして沖縄住民は日本人としてわれわれは考えております。
  227. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういたしますと、外国におきまする沖縄人は、日本の在外公館で日本人として保護されるのでございますか。
  228. 重光葵

    重光国務大臣 さようでございます。
  229. 福田昌子

    福田(昌)委員 アメリカはカイロ宣言にもその対象国となっており、そうしてこのカイロ宣言では何らの利得も求めず、領土に対する欲望もないということを申しておりながら、沖縄に対しまするアメリカの態度というものはまさに利得を求め、その領土に対しまする欲望があると見られても仕方がないと思うのであります。こういうようなアメリカ自体がカイロ宣言違反行為をやっておる。このことをそのまま黙認し、しかも日本の潜在主権があるということを知りながら、沖縄の問題に対してきわめて冷淡な政府の態度というものを私どもは全く了解に苦しむのであります。鳩山総理大臣も信義、友愛を説かれ、そうしてまたまことに人情的な言葉をときどきお吐きになるにかかわりませず、この七十七万の沖縄人というものをかくも見殺しにされてきたということは、これは鳩山総理にとりましても大きな責任問題だと思うのであります。今後この沖縄問題に対しましてどういう積極的な措置をおとりになるか、この点を伺いたいと思います。具体例として、その熱意、御好意の一端としてやり得る範囲としてお尋ねいたしたいことは、たとえば沖縄の土地買収の問題に対しまして、沖縄に調査団を派遣する御意思があるかどうか、そうしてまた沖縄の日本返還の問題が非常に要望されておりますが、この日本返還要望に対しまして、日本政府はどの経度積極的に援助していくか、この点。それからこまかな点といたしましては、沖縄人は日本人でありながら日本の国に参りますときに、旅券の許可がなければ外人と同じように旅券法に制限がされておるというようなこと、これは日本人であればそういう旅券法の制限を受けなくてもいいと思うのでありますが、これに対してどういう処置をなさるおつもりか。またさらに学生なんかも休暇中一々帰ります場合に、なかなか許可がなくて帰れない、こういうことに対してどういう処置をおとりになっておるか、こういう点を一括して御説明いただきたいと思います。
  230. 牧野良三

    牧野委員長 福田さん、もう時間です。
  231. 重光葵

    重光国務大臣 沖縄住民に対して、これは重要なことだから非常に熱心な御同情のある御質問と承わって私は傾聴したのでありますが、御質問の調査団は今派遣するように実は話し合いをしつつあるのでございます。これはやはりそういうことをして十分事情も調べてみて、できるだけのことはしたい、こう考えております。  それから交通のことでございますが、これは船の便とか飛行機の便とかいうものが十分思う通りにいかぬので、これは不便がございます。しかし旅券は要らないのでございます。旅券の問題は心配がないと思います。
  232. 福田昌子

    福田(昌)委員 旅券が要らないというお話がございますが、いつから要らなくなったのでございますか。
  233. 重光葵

    重光国務大臣 今係の者から聞きましても、これは初めから要らないのだそうでございます。但し沖縄の住民であるという証明書は必要なのであるそうでございます。これは当然のことでございます。
  234. 福田昌子

    福田(昌)委員 いろいろ沖縄問題で伺いたい点がたくさんあるのですけれども、時間が制約されまして、非常に残念でございますが、沖縄の問題はまたあとの議員に御質問願うとして、私もう一点だけ別の点で承わっておきたいのは、今度の三十年度の本予算におきまし、は、民主党の公約にもかかわりませず、国民の社会保障的な面に使われます費用が全部押えられておりまして、大衆生活が非常に困難に追い込まれております。結局、予算面には軍事予算の犠牲をこうむったということに相なりまして、そういう点から、いろいろお尋ねしたいことがあったのでございますが、時間がないということでございますから、一応省かせていただきたいと思いますが、ただ一点この際お尋ねさしていただきたいのは、いつも社会福祉的な団体の会合に参りますと、社会保障制度の予算に使ってもらいたいということで、日銀の倉庫に眠っておりますところの、戦時中日本の軍隊が接収いたしまして、その後アメリカ軍の管理下に置かれておりました接収貴金属の処置、それを社会保障の財源にしてもらいたいという意見が出るのでございます。この日銀の地下に眠っております接収貴金属の量、そしてこれに対するいかなる御処分をなさる御意思か、これを社会保障にお使いになる御意思があるかどうか、この点を伺わせていただきたいと思います。
  235. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたします。これは、金、銀、ダイヤモンド等を加えまして、約七百億円程度あるわけでございます。そのうちで、私今正確な数字はわかりませんので、保留いたしますが、ダイヤモンドが約七十億で、あとは金、銀、金貨等の貨幣であります。今回この処理につきまして、法律案国会に御審議を願うことにいたしております。そして、まずこの処理について、接収された相手方の明確にわかる方にはお返しをして、そうでないものについては国庫に入れる。そして、一応今のところ一般の歳入に立てまして、これをいかに使用するかということは、さらに考えていく、かように考えております。
  236. 福田昌子

    福田(昌)委員 最初、接収貴金属は四千億からのものがあるということを聞いておったのでございますが、ただいまは七百億というような御答弁で、私どもがうわさに聞きました額面とは非常に開きがあると思います。また一方、町ではこの接収貴金属が相当横流しをされておるというようなこともよく聞くのでございまして、マレー大佐のようにアメリカの軍人でそういうものを盗み出した人もありますが、これはそういう意味合いにおきまして、最初四千億であったものが、だんだんなしくずしに減って参ったということでございますか。
  237. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたします。占領軍が保管したというか、接収をしておったときにおいては、若干いろいろなことがあったようですが、日本側に移った後におきましては、これは今日日本銀行の金庫、それから大阪の造幣局並びに東京支局の倉に入れております。横流しなんか絶対にありません。  なお今ここに数字が事務から来ましたから、はっきり申し上げておきます。政府が今日保管しております数量は、金地金で八十トン余、約二百二十五億円、金貨が二百六十九万枚余で五十一億円、銀地金が三千八十一トン余で二百三億余、銀貨が千六百六十三万枚余で十億円余、白金地金が一トンばかりで九億円余、合金の地金が三十八トン余で三十七億余田、ダイヤモンドが一六万一千カラット余で約七十三億円、それから貴金属の加工品が九百キロ余で二億余円、その他見積られる額は総額七百億余円、こういうことになっております。
  238. 福田昌子

    福田(昌)委員 その七百億余のうちで持ち主がはっきりして返せるものはお返しになるということでありますが、そういう措置をおとりになりましても、国家に帰属するものは何ほどになりますか。それを社会保障のためにお使いになる意思があるか。たとえば遺家族援護のために使われたり、結核のベッドの増床に使うとか、そういう社会保障のためにお使いになる意思があるかどうか、法律をもって御規定になる意思があるかどうか、この点伺わしていただきたいと思います。
  239. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは先ほど申しましたように一般会計に入れます。これをいかに使うかは慎重に考慮したい。特にこの性質が戦時中に出したような特殊な事情もありますので、なるべくそういう意味の使途に用いることができればたいへんよろしいがと私は考えておりますが、具体的にはそのとき慎重に考慮するつもりであります。
  240. 福田昌子

    福田(昌)委員 慎重に考慮してできるだけそういうふうに使いたいというお話でございましたので、できるだけ社会保障のためにお使いになるように要望いたしておきます。  もう一点お伺いしたいのでありますが、新生活運動として、今度政府は社会教育特別助成費として一億三千万円ほど予算を組んでおられますが、これは何にお使いになるのでありますか。また五千万円の予算を使ってスタートしようとしている新生活運動とは、どういうことをなさる運動でございますか。
  241. 松村謙三

    ○松村国務大臣 新生活運動の予算は、五千万円を予定いたしております。それは現在も民間の団体があっていろいろ新生活運動をやっておりますが、それらの各階層の人に呼びかけまして、そこで新生活の規正をやっていただきたい。その事業政府として資金的に援助する、こういうことでございます。
  242. 福田昌子

    福田(昌)委員 新生活運動をやっている団体の事業に助成するというようなお話でございましたが、その新生活運動をやっている団体というのはどういう団体がございまして、その運動はどういうことをやっておられるのか、伺いたいと思います。
  243. 松村謙三

    ○松村国務大臣 その団体へ補助をするというのは、個々のものに補助するというのではございません。一つの民間の新生活をやる団体ができるでしょうから、そこでいろいろな計画も立ちましょうししますので、それへ援助をして、そうして今日の複雑な生活を規正いたしたい、こういうことなのであります。
  244. 牧野良三

    牧野委員長 もうこれでやめて下さい。
  245. 福田昌子

    福田(昌)委員 この新生活運動の点をさらに伺いたいと思いますが、新生活運動とか複雑な生活を解消したいとかいうようなことでは、了解ができないところでございまして、この点また重ねてお伺いすることといたします。
  246. 牧野良三

    牧野委員長 三宅正一君。
  247. 三宅正一

    ○三宅委員 吉田内閣にかわりまして鳩山内閣ができまして、国民は少くとも三つの面で鳩山内閣に期待をしておったと思うのであります。その第一は占領行政を切りかえまして、自主独立の体制を確立して、吉田内閣のアメリカ一辺倒政策を改めて、アメリカに対して自主性を主張されるであろうという点が一つの大きな国民の期待であったと思うのであります。第二は中ソ両国との国交を調整されるという点が大きな国民の期待であったと存ずるのであります。さらに第三は内政の面におきまして、旧時代的な無計画な放任経済をやりますのを改めまして、これを計画経済に切りかえ、経済自立と国民生活の安定を計画的にはかるというこの体制に対しまして、大きな期待をいたしておったと存ずるのであります。私はこの三点を追いまして、鳩山内閣が今日までやられましたことにつきまして、いろいろ御質問をいたしたいと考えるのであります。  第一は、アメリカに対する自主性の回復という点につきましては、これはむざんに国民の期待が裏切られたと思うのであります。今度の予算編成がおくれまして、そうしてそのために六月の暫定予算も出さなければならぬというような事情になりました点は、本予算提出がおくれた結果であります。本予算提出がおくれました点は、防衛分担金を削って、内政費、特に社会保障費に回すという鳩山内閣の公約が完全に裏切られて、あまつさえ予算編成に干渉される例を作った、将来にわたっても内政干渉をされる結果となったのであります。本予算提出がおくれたのはここに原因がある。重光外相が渡米を拒否されたという不始末も、またこの防衛分担金の問題のごたごたから来ておると存ずるのであります。さらに同僚議員から突っ込みましたように、日米共同声明、これは声明の形ではあるけれども、徳義的には少くとも条約と同じようにわれわれはこれを守らなければならない義務を持っておると存ずるのでありまして、そういう点についても日本の将来の予算を拘束するという意味におきまして、私は鳩山内閣は重大な責任を負われたと存ずるのであります。この責任を鳩山氏から御答弁をいただきますけれども、時間を急ぎますので、なお鳩山重光両氏に対しまして私は次の点を聞いて、一括して御答弁をいただきたいと存ずるのであります。  毎年予算編成期に当って、防衛分担金の削減と、防衛力増強のアメリカ側との折衝をするために予寡の提出がおくれたり、そうしてまた自主的に内政費をきめることもできないということでは、独立国とはいえないと存ずるのであります。この一点のみでも防衛協定、安保条約に対しまして、これを根本的に改訂する必要があると存ずるのであります。安保条約を必要と認められても、こういう点についての根本的改訂がなければ予算の自主性というものはあり得ない。そうして提出がいつもおくれるという状態であったのでは、鳩山内閣に対する期待はここに裏切られるのであります。防衛協定をこういう点について改めなければ——安保条約を改めなければならないという三点についてのお考えを承りたいと存ずるのであります。かつ、このことが内政面におきましては防衛予算におきまして予算外契約百五十四億というのがことしの例でありますけれども、こういうことに関連いたしまして、明年以後の予算編成が防衛費優先ということになりまして、かつて戦時下の軍事費優先の姿を再現してきつつあると存ずるのであります。さらに国防会議を設置するということになりますならば、内閣の中に内閣を作って、それが行政的にも軍事優先という結果を招来することになりまして、非常に日本の方向を、いわゆる戦争に日本が突入いたしましたあのころと同じような悪い状況に追い込められることをわれわれは憂慮いたしておるのであります。この三つの点につきまして、重光氏及び鳩山氏の御答弁をいただいておきたいと存じます。
  248. 重光葵

    重光国務大臣 お答えします。私は防衛分担金の問題から日本の予算主権と申しますか、予算審議権が制肘を受けたとは考えておりません。またそういうことのないことは、従来御説明を申し上げた通りでございます。  そこで行政協定、安保条約が今日日本の主権を維持するために変えなければならぬ状態に差し迫っておるとは考えておらないのでございます。むろんかような協定が将来大きな国際情勢の変化によって、これが改変されるというような時期が来るかもしれませんが、今日はさようには考えておらないことを申し上げます。
  249. 三宅正一

    ○三宅委員 総理大臣にあとから承わりますが、今の重光さんの答弁に対しまして私は了承いたしません。すなわちおそらく予算閣議その他におきまして、あなたが外交上の慣例を破って一週間あとに行くからというような窮余の渡米交渉をされたという事態を見ましても、いかに防衛分担金の問題並びに防衛計画等の問題で、日本の予算が制約を受けるかということについては痛感せられたと思うのであります。少くとも毎年年次的に幾ら幾ら下っていくというようなことはきめておかなければ、次の内閣等も非常に困ると思うのであります。私はあとから防衛協定の弱点等につきまして、私は少くともこれを認める立場においても直さなければならぬ点を指摘いたしまして、あなたの御意見を伺いたいと思うのでありますけれども予算編成の自主性という見地に立ちましても、私はこの点について少くとも条約を改訂するのでなければ、了解におきましてこれを直していくという交渉を積極的にされなければ、毎国会、毎年こういう醜態を暴露すると考えるのでありますが、いかがでありますか。
  250. 重光葵

    重光国務大臣 その点について私は先ほど説明を繰り返すことになりますが、今日ではまだその時期に達していないと、こう申し上げたのでございます。
  251. 三宅正一

    ○三宅委員 総理大臣いかがですか。
  252. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 安保条約、行政協定はある時期が来たらば改正したいと思っております。とにかくしかし、今自衛力がないのでありますから、自衛力が漸増されていって、だんだんその機会が来たときには、どうしても安保条約と行政協定を改訂したいと思っております。とにかく自衛力のないときにはやむを得ず安保条約を結び、従って行政協定も生きていくより仕方がないと思っております。それからこの間のアメリカとの折衝によって予算提出がおくれたのは、事実その通りであります。とにかく防衛庁費の漸増ということがありまして、その漸増の金の出どころができませんと予算が作れないような状態にあったものですから、防衛分担金の削減ということとからみ合ってしまったのであります。そのためにおくれました。しかしおくれたことによって日本の予算審議権が自主性を失ったということは、絶対にないのであります。
  253. 三宅正一

    ○三宅委員 鳩山さんは非常に率直な御答弁をされますので、私は追及のほこがある程度にぶるのでありますが、鳩山さんが認められておる通り、自衛力漸増の有無は別といたしまして、毎予算編成期にこういうことで時間をとりますことは、国民のプライドからいったって非常に忍び得ないと私は存ずるのであります。われわれは安全保障条約には反対する立場ですけれども、かりに必要と認められましても、こういうことでは、アメリカにとっても反米的感情をいたずらに培養させるだけでありまして、これでやられなければいかぬと思うのであります。そのほかにも私は幾らでも言いたいことがありますから、あとからさらに追及したいと考えます。鳩山さんは自主権が侵されたとは思わぬと言われますけれども、そういう答弁をされることは当りまえのことでありますが、われわれが客観的に見ておれば、いかにもみじめな、それこそ恥かしくてかなわないという憤りを感ずるのでありますから、私はこの点についても考えていただきたいと存ずるのであります。  時間の関係もありますから、次に移りますが、鳩山総理大臣が原水爆の基地を場合によれば認めなければならぬと言われた問題は、非常に国民の心配を大きくいたしまして、本会議委員会等を通じまして重要な質問があったわけであります。しかしながら、今日まだ論議がとことんまでついておらぬと思いますので、この点について一つ私の考えを申し述べまして、法律的解釈だけは、少くとも朝野両党が一致した見地に立たなければいかぬと思いますので、その点を明白にしていただきたいと存ずるのであります。  原水爆は非常な破壊兵器であることは明白でありますが、今日国際公法上禁止兵器にはなっておらない。毒ガスであるとか細菌兵器のように国際法上禁止兵器になっておらぬのであります。従って軍事基地を認めるという安全保障条約があって、軍事基地を提供いたしました限りにおいては、法律上の解釈からいえば、鉄砲を持ってくるのと同じことでありますから、鉄砲を持ってきてはいかぬとか、飛行機を軍事墓地に持ってきてはいかぬということと同じことであって、川上委員がその点をついておったのでありますが、行政協定、安保条約は、日本を自動的にアメリカの原爆基地とすることができる協定であると法律の解釈上は見なければいかぬと思うのであります。国民感情等を顧慮いたしまして、アメリカが自省をするならば別であります。法律上から行きますならば、この条約を結んで基地を提供した限りは、アメリカが禁止兵器でないものを持ってくることは当然の話でありますから、この点の解釈からまず明白にしておくことが私は必要であると思うのでありますが、これは専門的なことにもわたると思いますので、外務大臣、これに同意でありますか。
  254. 重光葵

    重光国務大臣 私はその点は明らかにすることがいいと思います。しかしその点も、これは一度ならず私の意見を申し上げておいた通りであります。この原爆のような問題につきましては、条約の締結の場合には当然問題にならなければならなかった問題であります。しかし行政協定の当時には、まだそれが問題にならなかった。従いまして、これはちょっと国内法の考えとは違いますが、条約の問題といたしましては、さような問題があるときには、必ずこれは相談があるもの、こう期待して差しつかえないと私は思います。そこでその相談のときには、十分にわが方の立場を考慮してこれに回答することができる、こう考えておるのでございます。
  255. 三宅正一

    ○三宅委員 外務大臣の答弁は顧みて他を言っておられると思うのであります。私が今指摘いたしました点は、これは禁止兵器ではないのであります。従ってこの条約を認めておる限りは、何らかの措置をとらなければ持ってこられても当然文句の言えない点であるという点を指摘いたしたのであります。向うが国民感情等も考慮して、持ってくるとすれば必ず相談するであろうというあなたのお見込みは、お見込みとして拝聴いたしますけれども法律論とすれば、持ってくることを押える筋はないじゃないかという点をお伺いしたのであります。  そこで私は、さらに一つその点を明白にするために法制局長官に伺います。第一に原水爆は禁止兵器であるかどうかということであります。きまっておることだけれども法律専門家から一つ私は解釈を確定しておきたい。原水爆は禁止兵器なりや。第二、基地を与え、軍の駐留を許して、禁止兵器以外のものの持ち込みを禁止するというような法的根拠があるかないか。駐留軍がある兵器を基地に持ち込むことを禁止するという条項が現在の安保条約、行政協定のどこにあるか、あるかないかという点を法制局長官に確認させまして、その上で外務大臣と議論をいたしたいと存じます。
  256. 林修三

    ○林(修)政府委員 お答えいたします。ただいまお尋ねの点の第一点の、原水爆が国際的な禁止兵器であるかということにつきましては、現在そうなっておりません。これは御承知の通りだと思います。ただ今禁止すべきかどうかということについて、現在国際間でいろいろ話し合いがされておることだと存じます。それからただいま、しからば行政協定なり安保条約上そういう武器を当然持ってこれるじゃないかというお話でありますが、これは、規定の表面上は原水爆について何ら規定したところはございません。しかしそれは直ちに持ってこれるという結論になるとは限らないわけでございまして、先ほどから外務大臣もお答えなさった通りに、原水爆というのは、国際法的な禁止兵器ではございませんけれども、国際法的に非常に大きな問題の兵器でございます。従いまして、これが条約なり行政協定上にはっきりうたってないということは、当然できるという解釈に直ちになるとは限らないと思います。これはやはり条約を結んだときなり行政協定を結んだときの当事国の意思、こういうものが重要な要素をなしまして解釈をされるべきものだ、そういうものだと私は思います。
  257. 三宅正一

    ○三宅委員 法律の解釈を間違いないようにする法制局長官として、そんな答弁は私はなっておらぬと思うのであります。政治的な解釈を加えた答弁などをされるとは僣越しごくだと思うのであります。この点は閣僚の諸君とわれわれは議論をするのでありまして、純法律的に見るならば、第一に認められたのは、原水爆は禁止兵器ではないということを認められた。もとよりわれわれは、これを最大の禁止兵器にしなければいかない、製造も使用も禁止する国際条約を作るために努力をしておるのであるが、法律的には、現状において禁止兵器でないということは認められる、それでよろしい。その次には、今度の安保条約、行政協定等のどこの中にも、表面上はこれを禁止する条項はないと言っておられるのでありますが、禁止する条項がないのに対して、持ってこれないとか持ってこないだろう、そんな解釈をあなたがされるのは僣越だし、どういう根拠があってそういう解釈をされますか。
  258. 林修三

    ○林(修)政府委員 それは条約というものの性質から来ると思うのでございまして、国内法であります場合にも、あることが禁止されてないということは、直ちにできるという反対解釈を生む場合と、そうではなくて、必ずしもそれは許すものではないという、全体の法理から直ちに反対の解釈が出てくるとは限らないと思いますが、国際条約の場合は、まして当事国のお互いの了解、当事国の意思というものが重要な要素をなすものでありまして、従って国際法的に、原水爆兵器というのは実はきわめて重要な問題でございます。それを何らうたってないということにつきましては、直ちにそれをもって当然許容したものだという解釈にはならない、かように申したわけであります。
  259. 三宅正一

    ○三宅委員 法制局長官に聞きますけれども、それは安保条約、平和条約等を結びましたときに、日本の政府が政治的に、たとえば広島で原爆を受けたというような事態もあって、これは重光さんが言っておられる通り、時の政府が、政治的にこの点についての制限でも基地提供の際につけておりますならば当然の話であります。制限をつけた事実がありますか。そういう事実がないのに、何のために一体持ってこれないのだとかいう理屈が出ますか。純法律的に一つお伺いしたいと思います。
  260. 林修三

    ○林(修)政府委員 御承知のように安保条約なり、これに基く行政協定、これは施設区域の提供のことをうたっておるわけであります。その中に、持ってくる兵器のことは実は直接にはうたっておりません。従いまして、当時におきまして原水爆を直ちに持ってくるというようなことが予見されれば、当然そういうことについて話し合いがあったものと、こういうふうに考えられる。そういう点について具体的な話があったかなかったか、実は私よく存じませんけれども、そういうことが今までなかったということは、当然それが予見されていなかったことではないかと存ずるわけであります。
  261. 三宅正一

    ○三宅委員 これでもう明白だと思うのであります。重光さん自体も、時の条約締結の当事者が思いをここにいたして、何らかの留歩条件をつけるべきであったという意味の発言先ほどされたのでありますが、現実には禁止兵器にもなっておらず、持ち込みを禁止する規定もないのでありますから、しこうしてもしこれが持ち込まれて、万一これが使われたり、持ち込むことによってその前線基地として爆撃をされたりというようなことになりますれば三回目の大きな殲滅的影響をこうむることになるのでありまして、この点について、私はこの一点だけでも、さきの予算編成の問題だけでなしに、この一点だけでも、条約締結の責任を持っておられない鳩山内閣が、占領継続以来独立してからできた内閣として、当然行政協定ないし安保条約のこれに対する禁止の了解なり、あるいは条約の改訂なりをされなければいかぬと思いますが、その点いかがでありますか。
  262. 重光葵

    重光国務大臣 今の条約論につきましては、私は先ほど説明を繰り返すよりほかに私の言うことはありません。しかしそういう場合に、その条約論によりましても、さような原子爆弾を持ち込むというような必要が起ったときには、必ず協議がされるということを私は解釈し、また信じておるのでありますが、さような場合においては、十分にこれを日本の立場によって、その協議に対処しなければならぬと思います。もっともそういうわけであるならば、平素からさようなことに対する用意をしておいたらいいじゃないかという御趣旨かもしれません。私はさようなことは十分考慮したいと考えております。
  263. 三宅正一

    ○三宅委員 今外務大臣は、もし持ち込むというような事態が起きれば必ず——これは民主主義のいいところでありましょう。国会等でこういう議論があるということが向うへも響きますから、おそらくあなたとしてはそういう関係もあって、国民感情等も顧慮して協議を期待するという意味のことを言われましたが、それでは私は非常にたよりないと思うのであります。やはりこの問題については、一つ行きがかりのない鳩山内閣が、積極的にそういう問題についての言質をとっておかれますことは、国民を安心せしめる意味において絶対に必要だと思います。これをやられるかやられないか、これを一つ鳩山さんと重光さんの二人に伺っておきたいと存じます。
  264. 重光葵

    重光国務大臣 今申し上げたことに尽きておると思います。全部お答えしておるつもりでございます。   〔「総理々々」と呼ぶ者あり〕
  265. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私もこの問題については、重光君と同じような答弁をすでにここでやっておったと記憶しております。とにかく原爆や水爆というようなおそろしい威力のあるものを無断で持ってくることはない、必ず相談があると思う。そのときには日本の立場を顧慮して、そういうようなことの起らないようにいたしたいと思う。こういうような答弁をしておると記憶しております。ただいまも同じ考えを持っております。
  266. 三宅正一

    ○三宅委員 なおお伺いいたしますが、総理はこの委員会においても、その他の席におきましても、現在の平和は原子力兵器の均衡で保たれておるということを言われておる。そうして原爆基地をアメリカに許す場合もあるということを言われておる、これが誤解であれば、ここで取り消していただきたい。この均衡が破れたとき、もしくはこの間の公聴会でもある学者が言っておりましたが、もし米ソ首脳部の頭が狂ったとき、最初に被害をこうむるのは、原爆を持っておる本国ではなくして前線基地だと思うのであります。日本がそのために被害をこうむるというようなおそれが百万分の一でも千万分の一でもありますならば、これに対しまして、私どもは正式な申し入れをされることは当然な話であって、期待するなどというようなことでなしに、当然申し入れをさるべきであると考えますが、この点についていかがでありますか。
  267. 重光葵

    重光国務大臣 先ほど申しました通りに、その点については、十分にそういう機会をとらえるべく考慮すると私は申し上げました。
  268. 三宅正一

    ○三宅委員 急速に一つその機会をとらえていただきたいと存じます。  さらに私は、これに関連いたしまして、日米安全保障条約の規定には、日本の運命に関する重大な条項があることを指摘いたしまして、総理及び外相の注意を喚起いたしますとともに、この点についても急速に対策を立てられることを要望いたしたいと存ずるのであります。それはすなわち安保条約第一条におきまして、同条約によって日本国内及びその付近に配備されたアメリカ合衆国の陸海空軍は、「極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、並びに、一文は二以上の外部の国による教唆又は干渉によって引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じょうを鎮圧するため日本国政府の明示の要請に応じて与えられる援助を含めて、外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するために使用することができる。」と規定しておることは、これは条約でありますから御承知の通りであります。そこの中におきまして、日本が外敵に侵略された場合及び外国の教唆によって大規模な内乱が起きて日本の方からアメリカ軍の出動を要請した場合については、これは行政協定の二十四条によりまして、協議をするというような項目が出ておるのであります。この点についても、掘っていきますればいろいろな問題があると存ずるのでありますが、それよりもっと重大な項目は、すなわち安保条約第一条における「極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、」という点であります。すなわち日本の基地におりますアメリカの軍隊が、朝鮮において極東の安全が脅かされておると思っておりますれば、協議も何もせずにその陸海空軍を朝鮮へ出し、台湾水域において極東の平和と安全が脅かされておるという向うの解釈において、日本の基地、沖縄の基地から船なりあるいは飛行機なりを出す、こういう場合におきまして、そのときは相談も何もこの条約ではすることを規定しておらないのであります。そういうことによって、たとえば朝鮮の例は少し古いけれども、マッカーサー元帥が朝鮮において原爆を使おうということを決意しかけたことがある。それは非常に大きな影響を及ぼすからということで、英仏を中心にいたしまして直ちに強硬な抗議をアメリカ当局に申し込んで、これを押えたことは御承知の通りであります。さらに今度の台湾水域の問題におきましても、場合によれば原子兵器を使うということを、ダレスなどは公言しておる。極東の安全が脅かされておるという向うの主観的解釈において、勝手に沖縄の基地なり九州の基地からして、空軍を出したり、海軍を出したりして、そうして原子兵器でも使われまして、基地であるからということで、何も責任を持たない日本がはね返りの水爆でもかぶりましたら、これは実に重大なことであると存ずるのであります。私は、その意味におきまして、第一に外務大臣に伺いたい点は、条約第一条によるところの「極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、」という、このために出動いたします場合には、この条項では協議の必要がないのであります。協議されずに勝手に出ていって、そうして予防戦争の観点などからして原子兵器などを使われて、そのはね返りが日本に来るということでありましたならば、大へんなことであります。もし私の法文の解釈が正しいといたしますならば、これは根本的な問題として、直ちに条約を根本的に改訂させなければならぬ問題だと存ずるのでありますが、第一には、私のこの法文の解釈は大臣もこれを認められるかどうか、そして、もし認められるとすれば、これをほうっておくということは非常な怠慢でありますが、この点について御意見を伺いたいと存じます。
  269. 重光葵

    重光国務大臣 今お話のような事態が起れば、これは国家の存立にも関する問題に相なります。さような場合においては、協議どころじゃない、こちらが、その状況について当然向うに話し合いをしなければならぬ問題であります。この問題は必ず外交交渉によって決定する問題だ、こう考えております。また、その機会があると考えております。
  270. 三宅正一

    ○三宅委員 これはどうもとんでもない答弁をしておられると思うのであります。非常な的はずれですよ。私の聞いておりますことは、こういうことです。条約で基地を提供する。それで日本の安全が脅かされたときには、日米協議をして共同措置をとる。これはよろしい。これにも問題がありますけれども、非常に危険なのはその前の方にあります。極東の安全とその防衛のために、向う独自の解釈において基地から飛んで行って、あやまって台湾水域等において衝突する、飛行機が落ちたことがあるとか、あるいは先ばしって落したやつがあるとか、原子兵器を落したなどということで、その報復爆撃で、出撃した基地がやられるということになれば、日本は何の責任も負わずにひどい目にあうことになります。従って、この点だけは根本的に考えてやられなければならぬと思うのでありますが、第一に、その法難解釈は私と同じでありますかどうかということ。第二は、それが同じであるとすれば、国家の存立にもかかわるとあなたは言われましたが、確かに国家の存立にもかかわることでありますから、法律解釈について明白にしていただきたいと思います。
  271. 重光葵

    重光国務大臣 法律解釈といたしましても、さような危険な場合は必ず両国の間の交渉によって決定する問題だと私は考えております。
  272. 三宅正一

    ○三宅委員 私はおかしいと思うのですよ。質問を誤解しておられやしないかと思うのであります。アメリカが安全保障条約の第一条によりまして——もう一ぺん読んでみます。「平和条約及びこの条約の効力発生と同時に、アメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍を日本国内及びその附近に配備する権利を、日本国は、許可し、アメリカ合衆国は、これを受諾する。」これが第一条であります。そして、その軍隊がやる仕事が二つある。一つは日本の内乱の問題、日本が侵略された問題、これについては、行政協定二十四条でありますが、これによって協議をして共同措置をとるときまっておるのであります。もう一つは、アメリカ自体が考えて、「この軍隊は、極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、」というこの見地からして、日本に相談せずに——現にたとえば、台湾の水域などには、現実にやはり出ておると思うのであります。出ております場合に、衝突をいたしまして、ダレス自体が、場合によれば原爆も使うのだということを、威嚇か何か知らぬが言っておる。だから、もし米ソの強国の指導者の頭が狂ったという場合に——その場合がないとは言えない。その場合に、何ら責任のない日本にはね返りが来て、報復爆撃を受ける。しかも、水爆など受けましたら、日本全体が滅びてしまうということになりますから、これは一つ冷静にもう一ぺん法律論から解釈をいたしまして、確かに私の言う通りの解釈であるとするならば、その解釈を両方に誤解のないようにする。法律を改正することがすぐできないならば、解釈をちゃんと文書にいたしまして、両方にやっておかなければいけない。イギリスが基地を提供しておりましても、もし向うが哨戒に出るとか——いろいろの演習などは別でしょうけれども、こういう紛争区域に哨戒の意味をもって出動いたしましても、必ず申し入れをしているに違いないと思うのであります。これは占領の継続中の吉田内閣がようやれなかったことかもしらぬけれども、そのくされ縁のないところの内閣においてはやっていただかなければならぬことであります。だから、もう一ぺん聞きますが、法律の解釈は、私の解釈の通りで正しいと考えられますか、どうですか。正しいとするならば、どういう措置をとられますか。
  273. 重光葵

    重光国務大臣 これは今申し上げる通りに、私も法律論というか、条約論をしているわけです。東亜の平和安寧に寄与する行動であるかないかということについては、その判断を、その条約では、アメリカ側の一方的な判断ですべて日本はやらなければならぬとはどこにも書いてありません。その判断は、日本も、条約の当事者である以上は当然し得る地位におります。その日本の地位をもって、そのときには、さような重大な問題については必ず交渉を進めます。それでありますから、その交渉の結果によってそれが動くということになるという解釈をいたしております。しかし、今申される通りに、それらのことについて念にも念を入れて、前もって十分意向を明らかにして、これに準備をしておくということについては、少しも異存はございません。これは先ほど申し上げた通りであります。それらのことについて、適当な機会において手段をとっていいと私は考えております。   〔「明快々々」と呼ぶ者あり〕
  274. 三宅正一

    ○三宅委員 明快じゃありません。私はなお一つ承わりますけれども、要するに「この軍隊は、極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、」という文句については、国内の防衛以外のことにつきましては、アメリカが独自の立場でやるのであります。これに関して、現に台湾の水域でやっている。朝鮮戦争のような、あの苛烈な、押し返されたり押し戻したりした最中においても、原爆兵器を使用するというアメリカ側の動きに対しては、直ちにイギリスなどが重要な申し入れをいたしておるのであります。現に、台湾の水域のことでダレスがあれだけのことを言っている。それに対しましてインドも動き、イギリスも動き、そうして中共自体も話し合いをしようじゃないかということをともかく言い出してきているときにおきまして、これは、日本が一番被害を受ける立場でありますので、申し入れをしておかなければいけない。法律の解釈につきましても、こういう点で疑義を残すようなことじゃいけないのであります。私は、この法律の解釈からいけば、確かにその通りだと思う。やるときには相談するだろうといいますが、それでは、台湾の水域にアメリカの海軍及び空軍が出た場合に——その中には、九州からも行っておるでありましょうし、また、沖縄からはもちろん行っていると思うのでありますが、そういう場合において、何かの話し合いが向うからありましたか。危険だから出しておるが決して原水爆などは使わない、威かくには行っておるけれども使わないとかなんとかいう話し合いがありましたか。あるいはこちらから、そういう場合に危ないからということで——こういう点については、たとえば、保守党であっても、イギリスのチャーチルなんというのは非常に敏感だと思うのであります。それが当りまえなんです。そういうときにこそ大きな手を打たなければ、一億の国民の運命を預かっておるほんとうの外務大臣じゃないと私は思うのでありますが、何かやられましたか。そして向うから話がありましたか、それを伺います。
  275. 重光葵

    重光国務大臣 日本の国土が原水爆の被害を受ける危険の起るような行動を駐留軍がやる場合、日本としてこれをそのまま黙認するということはとうていできぬわけであります。これは条約上それが東アの平和に寄与するゆえんとはわれわれは考えない。これは十分に交渉もし、考え方を協議もしなければならぬと思います。それは当然のことであります。それはやらなければならぬと思います。  台湾の問題については十分に情報も交換をいたしております。日本の承諾なくして日本を基地として原水爆を使うことはないという意思表示を受けております。それでこの点は私は別に問題は起っておらぬ、こういうふうに思っております。
  276. 三宅正一

    ○三宅委員 それでは私は正直に使わないという意思表示を受けたという大臣のお言葉を了承いたしましよう。いたしますが、非常に危険な条項でありますから、この点についてはさきの問題と関連して一つ安全の措置をとっておかれることはあなたの当然の義務であると思いますので、それを直ちに措置されたいということを希果しておきます。  同時になお私の質問についての答弁は不満足でありますが、次に移ります。バンドン会議に対しましても私は総理大臣に聞きたいと思うのでありますが、日本の態度というものは実に消極的だったと思うのであります。高碕さんが行かれたのでありますが、国会の始まったのは四月十五日であります。向うの終ったのは四月の十四日でありますから、外務大臣は当然行けたと思うのであります。本来ならば総理大臣が行くべきだ。私は総理大臣、外務大臣一緒に行かれたらいいと思うのであります。ともかく台湾問題の平和的解決ということが、今におきましてはアジアにおける一番大きな戦争の危機を防ぐことであり、これは日本にとりましては一番大きな運命の岐路でありますので、ああいうところにこそ出まして、そうしてほんとうにアジアの各国とともにそういうことについてわれわれが相当なる働きをいたしますことが、これは最初の機会なんだから政府として当然やらなければならぬことだったと思うのであります。  ごらんになったと思いますが、インドのニューデリーからの電報で、インドの日本に対する評価を毎日新聞が打電をしているのでありますが、これなど私は確かに当っておる批評だと思うのでありまして、これを一つ読んで、御答弁を願いたいと存じます。「鳩山内閣が成立以来手がけてきた一連の対米、対ソ、対中共交渉、さてはA・A会議を通じて示された政府の「腰の弱さ」はインドをいたく失望させている。なかでもインドを刺激したのは過般の重光外相の渡米拒否と、A・A会議に対して示された日本の「冷やかな態度」である。そもそも一国の外務大臣の渡米が「延期」との理由にしろ事実七拒否されたことは、日本にとってのみならずアジア諸国にとっても屈辱的であると考えている。」こういうことを第一にいっておるのであります。重光さんはよくおわかりになるだろうと思うのでありますが、植民地主義の桎梏で抑えつけられておったアジアの大衆の気持というものが、その植民地主義を払拭するという見地からも、こういうアメリカの無礼な態度等に対しましても、これはアジア全体の恥辱と考えるということをいっておる。その感情というものは私は大く評価しなければいかぬと思うのであります。その次に「またA・A会議への重光外相の欠席が「国会開会中のため」の理由であったことは国際的には通用せず、むしろほんとうの理由は米国に対する遠慮から出たものに違いないときめつけている。最近の中共通繭使節団との交渉に示された消極性も鳩山内閣の真の性格を疑うに十分なものであると見ている。民主党が第二次政権を獲得したのは国民が吉田内閣にあきたというより、東西貿易拡大の公約に魅力があったわけで、ここにも国民に対する裏切りがあると考えている。もし政府が積極的に好意を示していたら、少くとも五千万ポンド程度の協定は可能であったに違いないと信じている。同様の考え方が対ソ交渉をも支配しているようだ。第一に憲法改正、再軍備を立党の指針としている民主党として、対ソ交渉を積極化すること自体が矛盾であり、対ソ交渉は鳩山首相の人気取り政策から発したひょうたんからこまが出た存劇ともいうべきで、むしろいかにして責任をソ連にかぶせつつ打ち切るかという方向に進むのではないかと見る者も多い。知日派といわれる人たちが特におそれるのは、現政府の本拠からして、ファッショ勢力が米国の下請的性格を持った軍需産業を跳躍台として、さらに伸びるのではないかという点である。米国の日本再軍備政策鳩山内閣の本質的な保守性が互いに因果関係を深めつつ、内に保守合同、外に国際防衛機構への参加と、国際情勢の変容にはかかわりなく既定の路線を歩むのではないかと考え、将来への禍根を憂えているわけである。」という電報を打電いたしておるのであります。  そこで私はバンドン会議の問題について申しますけれども、積極的に台湾問題その他アジアと手を握ります絶好のチャンスであります。高碕さんが経済外交の問題で行かれたことはけっこうでありますが、総理なり重光さんなりがなぜ行かなかったか、この点についてもう何回も質問のあったことでありますが、簡単に承わっておきたいと存じます。
  277. 重光葵

    重光国務大臣 バンドン会議に対しましては、政府としては非常に熟慮を持ってこの問題は処理したつもりでございます。そうして私といたしましても、実は最後まで私自身が出席をしたいという希望を持っておりました。しかし予算拠出も迫って施政演説もやらなければならぬ、議会の仕事というものはこれは最南の仕事と心得ておる関係上、ついにその志を果さなかったのでございます。しかし私が参りませんでも、高碕大臣を首席とする十分実力を持った強力な代表団を送りまして、われわれから見ると目的はよく達成したと、こう考えております。  それから台湾問題でありますが、台湾問題においてもこの会議において、すべての紛争を、いやしくもそれが国際問題となった以上は、その紛争を平和的手段によって解決して武力を排してやらなければならぬという日本代表の強い主張は、中共の態度によほどの影響を与えたと、私はこう考えております。  それから今読み上げられたそのインドからの通信は、これは新聞通信としてわれわれもむろん参考にいたさなければなりません。しかしながら、それについて今私は論議をすることは差し控えたいと思います。
  278. 三宅正一

    ○三宅委員 外務大臣は時間がないそうでありますから、私は日ソ国交調整に対する態度につきまして承わりたいのでありますが、それは総理大臣に譲りましてもう一点外務大臣に承わりたいと思うのであります。  それは世界情勢に即応する極東平和保持の方策として、私はかつてチャーチルが提唱いたしました新ロカルノ構想というがごとき構想を具体化すべき段階がきておると思うのであります。方向をそういう方向に脅えていくべき段階がきていると思うのであります。この点について外務大臣の御意見を承わりたいのであります。またヨーロッパにおきまして、オーストリアが、両陣営の共同保障によりまして中立国となって独立を回復した。そうしてこれらの空気は四巨頭会談等の開催を促進いたしまして、かつてチャーチルが唱えておったように、陣営は別であるけれども、両陣営がヨーロッパ全体の安全を相互に保障するという——敵対的軍事同盟の両方が対峙する関係でなしに、大きなワクをかけて双方の陣営が一つ新しい平和体制を作ろうというこの新ロカルノ構想が、ヨーロッパにおいても一つ機会を見つけつつあると思うのであります。私は、アジアにおきましても日米安全保障条約、中ソ友好同盟条約という二つの軍事同盟を作って対立しておるという形がいつまでも続くという状態において、ほんとうの平和はあり得ないと存ずるのであります。幸いにいたしまして、あとから総理大臣に承わりたいのでありますが、この際ソ連との間の国交調整が努力される。これがどういう形においてできるかは別問題といたしまして、こういう機会に当りまして、両陣営ともに保障し合う、そうしてインド等も加えて保証人にならせる、すなわち軍事同盟で対立するのでなしに、少くともこの上に両陣営がそろって日本の安全を保障し、そしてインドもこれを保証するというがごとき、アジアにおける新ロカルノ構想というものを、外交施策の大きな方向として政府考えらるべき時期がきておると私は存ずるのであります。幸いにしてこういうものができ上りまして、それで双方の猜疑と危機感がなくなりましたならば、両方の軍事同盟を両方一緒に廃棄いたしまして、もっと新しい形の平和地帯を作る、こういう方向がわれわれの考えなければならぬ方向ではないかと存じておるのでありますが、これに関する外相の御見解を承わっておきたいと思います。
  279. 重光葵

    重光国務大臣 今のお話は私は非常に有意義な御説だと考えております。ヨーロッパにおけるオーストリア問題と同様に、日本も同じようなふうにいったらよかろうということならば、これはオーストリアの地位と日本の地位はよほど異なっております。しかしながらお話のロカルノ思想というものは、私は正しいものだと思う。正しいものでありますが、これは情勢の進展をよほど実際的に勘案して対処しなければ、いいことでも実現することはできぬと思います。お話の通りチャーチルの新ロカルノ構想が結局成り立たなかったのも、構想が悪いのじゃない、全く時期を得なかったからだと私は判断します。東洋においてこのような構想が実際問題としてすぐ取り上げらるべきかどうかということは、これはよほど慎重に考究を要します。私はさような構想が理論的に大へん価値のある構想であるということを認めるとともに、今日まだその時期がきておらぬ。それよりも、私どもが実際問題として提起をいたしております国際関係の紛争の処理を、まずもって武力を排して平和的手段によってこれを解決するということを、どこの国とも、特にアジア諸国との間にさような構想を進めていくことが、具体的の方法としまて、た日本に対する了解を進める方法として、実際的方法だと今日のところは考えております。しかしながらお話の点は、私は非常に貴重な御意見だ、こう考えております。
  280. 三宅正一

    ○三宅委員 外務大臣は時間の御都合がございますので、これでけっこうであります。  なお私は申し上げておきますけれども、とにかく鳩山さんなどもあやまって言っておられるように、原子力の力の均衡化などということをやっておりますれば、どこまでも軍拡競争でいき、そうして最後に爆発する、これは人類破滅の道程であることは明白であります。従いまして、日ソ、そして日中の国交を調整するとともに、一つその上に立って、両陣営が軍事同盟で対峙するという形のない——これも経過が要りましょうけれども、新ロカルノ構想というようなものについて相当熱意をもってお考え願いたいということを希望いたしておきます。
  281. 重光葵

    重光国務大臣 さらにつけ加えて申し上げます。われわれの旧敵対の国一国とでも戦争状態を終結せしめたい、国交回復、正常化をしたいというこのわれわれの考え方も、全く今お話の通りのような趣旨によってこれを進めておるわけでございます。さようなことを一言つけ加えておきます。
  282. 三宅正一

    ○三宅委員 次に私は国防会議に関しまして総理大臣及び関係大臣に伺いたいと存ずるのであります。  第一は、政府は国防会議を設置することを決心されたそうでありますが、これは事実でありますか。国防という以上、武力の存在を予定しておるが、政府は現行憲法のもとにおいてこういう機関を設置することが差しつかえないと考えておられるのであるか。自衛隊は軍隊でないとか、いろいろの議論を言いますけれども、少くとも憲法第九条の違反にあらずと強弁をしてこられておるのでありますが、ここにさらに国防会議なるものが設けらるるということに至りましては、そうして国防会議においては国防の基本方針、防衛計画の大綱、自衛隊出動の可否等をはかるということでありますが、これは明らかに昔の陸海軍大臣の任務と参謀本部、軍令部の任務とを兼ねたようなものであると考えるのであります。軍隊の保持を禁じておる憲法のもとにおいて、軍の編成と用兵のための機関を公然設けるということは、あまりにも憲法をべつ視する立場ではないかと思うのであります。これで政府はあえて憲法に忠実なるものと考えられますか。まずこの点を伺いたいと存じます。
  283. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 国防会議を作る必要があると思ってはおりますが、まだそれに対しては検討中であります。これが憲法違反になるかどうかということでありますが、国防会議は自衛のためを目的としておりますから、憲法には違反にならないと考えております。
  284. 三宅正一

    ○三宅委員 もうこの議論は幾らやっても水かけ論になりますから、私はさらに進みますが、政府は、独立国家が国防を考えるのは当然だ、自衛のためなら違憲でないと、こういうことを言うておられるのでありますが、なお私は国防会議の問題について承りますと、国防会議が首相を議長にいたしまして、国務大臣及び有識者を入れるという。民間人を入れるか入れぬかということは一つの問題でありますけれども、こういうことでもって用兵の可否をきめるというような点は、よその国国の例から見ますならば、憲法上の宣戦の布告にもひとしいと思うのであります。これを、国防会議と首相の独裁にまかせるということは非常に危険なことであって、どこの国におきましても、いやしくもほんとうの民主主義国でありますならば、こういう大きな問題は国会の議に付することが当然であります。それを諮問機関で事実上きめてしまう、しかも罷免権を持っておる総理が議長をやって、そこできめるというようなことは、これこそ憲法上にも非常な疑義があり、国会を軽視するもはなはだしきものであると根本的に考えるのでありますが、この点いかがでありますか。
  285. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 国防会議は単なる諮問機関にすぎないのであります。
  286. 三宅正一

    ○三宅委員 それはよく承知しております。諮問機関でありますけれども、実質上、先ほど申しておるように用兵問題などを決定するのです。しかも首相が罷免権を持っておられる国務大臣が過半数である。こういうことできめてしまったら、国会に諮らずに宣戦をやると実質においては同じことだと私は思うのであります。こういう点においてこれは実におかしな話であって、私は間違いだと思うのでありますが、その点いかがですか。
  287. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はそういう心配はないと思いますが、詳しいことは防衛庁長官からお聞き取りを願いたいと思います。
  288. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 防衛出動の場合には総理大臣国会の承認を求めることになっておることは、三宅委員承知の通りであります。
  289. 牧野良三

    牧野委員長 三宅さん、林法制局長官から補足説明をしたいということですから……。
  290. 林修三

    ○林(修)政府委員 今杉原国務大臣からお答えいたしましたことで実は尽きるわけでございますが、御承知のように、自衛隊法では、防衛出動を内閣総理大臣がきめます場合には、国会の承認を得ることになっております。単に国防会議の諮問を経るだけではないわけでございます。ただ非常に急速な場合には、事前に防衛出動をきめて、あとから国会の事後承認を得る、こういう手続も定められております。
  291. 三宅正一

    ○三宅委員 私は日ソ国交調整の問題を承わりたいと思ったのでありますが、時間の関係がありますのでこの問題はあとに回しまして、内政問題に移りたいと存ずるのであります。  多くの委員によって説かれておりますように、経済再建六カ年計画というものが、防衛増強の六カ年とのうらはらになることは明白であります。これを作らずにその経済再建六カ年計画というものを作りましたって、実質上これはほんとうのペーパー・プランだと思うのでありますが、もう一ぺんこの点についてお伺いをいたしたいと思います。
  292. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。経済の六カ年計画は経済方面から見て立てたのでありますが、これに要する防衛力というものにつきましては、国民の経済力に順応して防衛費というものを見ておるわけでありまして、防衛計画というものが立ってこなければ実数はわからないのであります。ただいま防衛計画は立っていませんから、それが立ちますれば、経済力と相調整をいたしましてこれを定めたい、こう存じております。
  293. 三宅正一

    ○三宅委員 どうせ答弁はきまっておりますから、私はこの問題はもう触れません。  そこで経済再建六カ年計画というものを御策定になって、経済の再建をはかられますが、その裏になりますのは、防衛計画が一つ裏になり、さらにこれに関連をいたしまして社会保障拡充六カ年計画というようなものが当然になければならぬと存ずるのであります。私はこの際高碕さんと川崎氏に承わりたいと思うのでありますが、厚生大臣は社会保障の体系をどう持っていこうという構想を持っておられるか。日本の社会保障は、疾病保険だけにつきましても、官庁の共済組合からあらゆる方面にわたって、幾つもの体系に混雑しておりますことは御承知の通りであります。これらの体系を何々にまとめて、どういうふうに持っていくかという点の構想があろうかと思うのであります。そうして経済再建六カ年計画において当然国防費が幾ら幾らときめられると同じように、社会保障費を何%に押えて、そのときには何々の社会保障ができておるかという点が予定されておると存ずるのであります。この点についての御答弁をお伺いいたしたいと思うのであります。  さらに、時間を急ぎまする意味で進めますが、大体疾病保険の関係におきましては、国民健康保険の二つに大別をするか、これを一本にするかということが統合の根本だと思うのでありますが、私はこれについての厚生大臣の構想をも承わりたいと思うのであります。そこで私ども国保と健保を調べまして非常な不公平があると思うのであります。健保の力におきましては、ともかく病気をいたしますれば給料の六割というものが入院中ももらえる、そして入院いたしましても疾病給付が全額もらえるのであります。国民健康保険の方は独立の生産者がおもになって組織いたしておりますから、給料の何割というようにはもちろんもらえませんが、さらにその上に入院等の大きな金の要るときには、本人の入院でも五制以上とられるという点に非常に不公平があると思うのであります。少くも日本で社会保障として一番発達いたしました疾病保険の関係におきましても、国民健康保険の給付内容と、健康保険の給付内容を一本にするということが、私は絶対に必要な条件ではないかと考えておるのであります。こういう点について、まず厚生大臣から一つ承わっておきたいと存じます。
  294. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 お答え申し上げます。わが国の社会保障制度を、これからどういう方向へ持っていくかということでありますが、第一にはやはり社会保険を中心にして強化をはかりたいと考えております。この社会保険の内容でありますが、ただいま御指摘の通り、被用者の保険と、それから国民一般を対象とした保険、つまり健康保険と国民健康保険の二つの系列は、一応尊重していかなければならぬと思っております。健康保険と国民健康保険を直ちに統合せよという意見も一部にはありますけれども、私はそれよりも前に、やはり健康保険を主軸にして、船員保険であるとか、その他の健康保険の系列に属するものを、一つの被用者の疾病保険として一本にまとめ、しかる後国民健康保険との問題が起ってくる、こういう考えをいたしておるのでありまして、御指摘のように、国民健康保険の内容というものが健康保険に比して、給付内容が著しく低いということは事実であります。従ってこれは年月をかけまして漸次健康保険の水準にまで国民健康保険の給付内容を引き上げる努力をいたそうと思っております。  それから第二は、やはり生活保護の充実、これは最低生活保障という根本思想に立ちまして、国民に飢ゆる者なからしめるという理想に向って進んでいく意味において、生活保護の内容を充実させるということが第二の問題であろうかと思います。もとより児童保護であるとか、あるいは母子福祉などの問題も他にありますけれども、社会保障の中心は、あくまでも社会保険の強化並びに生活保護の充実ということになりましょう。  これと並行して問題になってきますものは、やはり年金制度というものをどう合理化するかということであります。  この三つを大体主軸にして今後の社会保障の充実に邁進をしたい、こう私は考えをいたしておるのであります。その際、社会保障六カ年計画というものを作ったらどうかというような御示唆でありました。私も同感であります。今日のところ社会保障六カ年計画というものは実際のところございません。ございませんので非常に不満でありまして、先般経済審議庁の中で経済六カ年計画を立てられたときに、社会保障という一つの柱が抜けておったのであります。これを発見いたしまして、ぜひこれは一つの大きなカラムとして入れてもらいたいということを直接に私から要望いたしまして、審議庁の方ではこの意見を相当くんでくれたのでありまして、社会保障が特に大きな問題として取り上げられております。しかし六カ年計画というものがありませんので、事務当局に命じまして、まず厚生省としての考え方をまとめてみろ、その結果、経済審議庁の方に連絡をして防衛六カ年計画と並行して社会保障六カ年計画を作れということを申しておる次第でございます。
  295. 三宅正一

    ○三宅委員 そこで私は厚生大臣を中心にいたしまして、大蔵大臣にもお伺いをいたしたいと思うのでありますが、今申しましたように疾病保険の系列におきましてはともかく、まだ国民保険の被保険者が非常に少いという点があります。こういう点も拡充していかなければなりませんし、給付内容を引き上げるという点もありますけれども、ともかく疾病保険の関係におきましては、一つの相当な実績ができたと思うのであります。私は今厚生大臣が御指摘になりました通り、国民年金制度をこの際ほんとうに取り上げなければならぬ段階になっておると思うのであります。御承知の通り官庁の官吏に対する恩給、そうして労働者に対しまして厚生年金の制度がようやくその実効を発揮して参りまして、給付を受けるような段階になってきた。しかるにその他の農民、市民等は、年金問題については全く放置されておるのであります。厚生大臣などは特にお気づきでありましょうが、ともかく十年前には四十四、五才の平均年令でありました日本人の平均寿命が、今六十四、五才まで大きく延びてきておるのであります。平均寿命は六十四、五才まで延びたが、家族制度も変ったり、生活関係もあったり、住居の関係等もありまして、老人問題というのは、今日日本の社会問題としては非常に大きな問題だと思うのであります。この間も私は実にはだえにアワを生じたことがあるのでありますが、六畳の部屋におじさんと夫婦子供三人とで六人が暮しておった。そのおじいさんが中気になった、それで一年寝ておる。便の世話をさせるので子供の遊ぶところがない。家族六人六畳で中気になったら、どうにもこうにもならない。まわりに気の毒するからというので、その中気になったおじいさんは自殺をしようと首をつろうと思ったけれども、からだが動かぬというので、私は自殺の自由も失ったといって嘆いたという話を現実問題として聞きまして、私はもう国民年金の問題は非常に重大な関係だと思うのであります。しかしながら日本の経済の要求が、今大きな国費を、一兆三千億、一兆五千億というふうに広げ得ないといたしまして、私はそういうときにこそなおさら老人問題の解決と、国民に希望を与える意味において、国民年金などを考えられるときではないかと思うのであります。御承知の通り厚生年金は、給付を始めますのは、年金制がしかれましてから一定の年限がたたなければ給付をしない。従いまして現在一千億に近い積立金を持っておるのであります。厚生年金にしましても、軍人恩給のように無醵出年金で、積立金がないのに、すぐ出せといえば大きな財政の圧迫になります。しかしここで国民年金を始めまして、十年積んだらば、六十をこした者には国の金を出すということになれば——今労働者の厚生年金でも、ピークにおいては二兆円の積立金ができるだろうといわれておるのであります。厚生年金の積立金なんというものは、厚生方面に使えと私どもは言っておるのでありますが、今大蔵省は預金部に持っていってしまいまして、一括して使っております。今日ここで国民年金を始めまして——無醵出年金ということは、今考えると、六十五になっておるからといって、積立金なしに金は払えないが、しかしながらこれら十年のあとには払えるという建前において積立金をさせていきますならば、何年かの間には何百億、何千億という金が集まりまして、その金はある年限を経るまでは年金としては出ないけれども、しかしながらその金が運用におきまして療養所に行ったり、老人ホームになったり、厚生施設に回っていくということになりますと、国の経済にとりましても非常一に大きいし、結核問題なども解決すると思うのであります。こういう意味になければならぬところの社会保障、一番大きな体系は川崎君の言われた通り国民年金だと思う。そうして財政の上においても非常に大きな寄与をするだけでなしに、国民に希望を与えるとともに、その老人ホームだとか、結核療養所とか病院だとか、施設の拡充には資金の運用でもって非常にうまくいくということを考えますときに、これはどうしてもやらなければならぬ、この際における大きな一つの仕事だと思うのであります。この点について厚生大臣及び大蔵大臣の御所見を承わっておきたいと思います。  なお時間の関係がありますから同じ性質のものとして私の意見を申し上げまして、大蔵大臣と文部大臣に意見を承わりたいのであります。それは育英会の仕事であります。学費の乏しい優秀なる学生に対しまして日本育英会というものができておりまして、本年の予算においては四十一億幾らの金が出されまして、二十万人以上の学徒がともかくその恩恵を受けているのであります。しかしながら育英会の弱点はどこにあるかといいますと、今日日本が敗戦の結果全部の国民が貧乏してしまいましたから、二千円やそこらもらいましても、学生はみなアルバイトしている状態であります。これは戦前において二十万の学生に学費が出たということならば大へんなことでありますけれども、恩恵が少いのでありまして、といって私は今日直ちにこれ以上、もう五十億育英会の費用をふやせといっても、事実上予算関係でできないことは私ども認めます。そこで私は大蔵大臣に伺いたいのでありますけれども、今は四十億の国費を出している、そうして国が貧乏ですから返すという制度でやっておりまして、あとから文部大臣からも報告を受けてけっこうでありますが、私の承知している範囲では返還金は非常に成績よくいっているのであります。もちろん死んで返さない、失敗して返せないものもあるけれども相当に返っているので、従いまして金額はだんだん多くなりつつあると思います。この際政府が金を出して、貸費している育英会の制度に加えまして、もう一つ保険会社等から、ちょうど住宅建設政府考えておられるように、年五十億なら五十億の金を育英会の運用費につぎ込ませまして、利子補給と損失補償だけを国がする、そうして返ってきた金で返すという形になりますと、国の負担としては一億で何十億の金になると思うのでありますから、この際私は国民年金の制度の拡充と、育英会の拡充を今言ったような形において考えらるべき段階ではないかと存じますが、この点についてまず一つ川崎君から御意見を承わり、その次に大蔵大臣から第二点について、それから文部大臣からも御意見を承わりたいと存じます。
  296. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいま年金問題につきまして非常に御熱心な御意見がありまして、ことに年金問題でそういう総合的な意見が出ました際に、私の考えを申し述べる機会を得たいと思っておりましたので、この際明白にいたしておきたいと思います。現在年金は厚生年金保険を主軸といたしておりますが、これらは工場や鉱山の労働者あるいは商店や事務所の被用者の生活の保護、それから老齢になって働けなくなった後の生活を保障するために保険という一つの組織にまとめて、いわゆるエンプロイアの老後の不安をなくすることを目的にしておるのであります。しかし中小企業、それから自由職業者、農民という膨大な階層は、その恩典に浴することはできないのでありまして、その点は、年金の関係は医療保険と比較いたしますと、国民健康保険というものが一方にはありますから、従ってそういう比較から考えましても、漏れている国民の数ははるかに大きく、国民各層の間に老後の生活保障において、このような差異のあることははなはだ遺憾であります。従ってただいま御指摘の通り、国民全体を対象とする国民年金制度を創設したらどうかということは、当然課題に上ってくると思うのであります。これは社会保障制度審議会からも一、二度勧告がありまして、段階的にやれという勧告が出ておりますが、私は今度の予算にも関係はなかったのでありますけれども、少くとも二、三年後には国民年金制度というものを断然創設して、真に日本が福祉国家としての道を踏み出す大道を切り開かなければならないと考えておるのであります。その理想的体系は——ちょっと二、三分かかりますけれども、失礼をいたしたいと思うのであります。わが国では一般にはイギリスを目標といたしておりますけれどもアメリカが一九三七年以来、老齢年金制度を中核として社会保障に独創的な行き方をいたしておりますのを、われわれ学ぶべきではないか。ことに一九五一年の大改正以来、アメリカの老人は六十五才以上になりますと、生活に絶対不安がないというところまで今日はきておるのであります。フランスや西ドイツ、あるいはスエーデン三国の年金制度も、われわれにとって相当大きな示唆を与えておるのでありまして、この年金制度を創設するということは、わが民主党の政調会としてもただいま十分に考えて、近く政策として打ち出したいということでありますので、厚生省としてもこの問題について、今日検討を始めておるわけであります。これをやります場合には、当然この恩給制度の問題にも関連をしてくるのでありまして、先ごろ私は経団連で、旧軍人恩給、遺家族扶助は、将来社会保障と深い関係を持って考慮さるべきであると申しましたことは、決して現在の軍人恩給の額が多いからというようなことではなく、むしろ軍人恩給は今日の予算では足りない。年々拡充をしていかなければならぬけれども、これが文官の恩給とあわせて将来一千億というような大きな数字に上ってくることが予見されるのであります。そうなりますれば、国家財政に甚大な影響を与えるばかりでなく、年金給付もない一般国民から見れば、どういう心証を与えるかということについては、深刻に考えをいたさねばならぬと思います。そういう見地から申したことでありまして、この国民年金制度というものがもし提唱をされますならば、無醵出年金制度たる恩給はもとより文官、武官を問わずでありますが、十分これと関連して、深刻な検討を行うべきであると考えております。いずれにいたしましても、退職金あるいは恩給と関連して、すべての国民が老後の社会保障を国家から与えられるようになりますことは一大進歩でありまして、こういうようなことをぜひとも公平な見地で、一大改革を行うべきではないかと考えておるのであります。社会保険の統合が、社会保障制度の確立のきっかけになりましょうが、やはり年金制度の確立したときに、御指摘の通りに初めて社会保障制度が完成をされるのだ、こう私は考えておる次第であることも、この際明白にしておきたいと思います。
  297. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今日のところ年金、共済組合保険、恩給等で約一千五百万人くらいの人がこの恩典に浴しておる、こう思っております。今お話国民年金制度には、私も異論はないのであります。ただこの実施については、いろいろと具体的に考究すべき問題が多々あるだろうとは思っております。そういう問題を慎重に考慮しつつ、できるだけ早くこういうことが実現できるように考えていきたいと思っております。(三宅委員「育英会、育英会」と呼ぶ)育英会、これも今日非常に大きな役割を果しておることは、申すまでもありません。それで今回の予算でも、乏しい予算ではあったのでありますが、二億五千万円を入れまして、そうして給付の金額も、給付を受ける人の範囲も拡大をいたしておるわけでありまして、今お示しのように、そういう大切な制度だから、もう少し資金を集める上において、保険の金を使ったらどうだ、こういう御意向でありますが、この点については、育英会の本質から見まして、育英会の使う資金を保険会社の金によることがいいのか、あるいはまた保険会社が果して出すかといういろいろな問題がありますが、これはおそらく保険会社とお限りでもないと思います。なるべく所要資金をふやすように考えてやったらどうかというお言葉と思いますので、そういう点につき、十分今後検討を加えてみたいと思います。
  298. 松村謙三

    ○松村国務大臣 ただいまのお言葉は、先般の文教委員会でも承わり、一つやり方だと考えまして、ただいま事務の方へ命じて具体的に研究をさせているところでございます。
  299. 三宅正一

    ○三宅委員 厚生大臣も御答弁がなかったのですが、特に大蔵大臣は私の趣旨を非常に取り違えられておるのじゃないかと思うのであります。すなわち、私ども国民年金のことを言っておりますのは、国費はふえずに、かえって強制貯金のようなものであって、十年先に給付するという厚生年金と同じような行き方でいきますれば、非常に資金が集まって、かえって国費のためになるというお話を申し上げたのであります。育英会の問題についても、あなたが努力して、あの予算の中で二億幾らふやされたことは、これは私どもも感謝しております。しかし予算をふやすには限度がありますから、従って、生命保険の金は長期の金だから一番いいと思いますが、そういう金を何十億か出させまして、そうしてこれは草生に貸すのだから戻ってきます。死んだ場合や失敗した場合は、利子補給、損失補償だけ国が引き受けるという画面でいきますと、今の倍くらいの仕事が、あと一億か二億ふやしてできるということになって、非常にいいことじゃないか。これは学生にアルバイトなどさせて、ほんとうの失業者が仕事がなくて困るというようなことのないようにする意味におきましても、つまり完全雇用という点からもよろしいと私は思うのです。時間がないからくどいことは申しませんけれども、私どもの言う建設的な話については、もう少し熱構を持って相談に乗られなければ——私どもはただ攻撃するだけでやっているのじゃありません。一つほんとうにやっていただきたいと思って申し上げているのです。時間がありませんから、これは答弁はよろしゅうございますが、なお建設的なことを二つ三つ申し上げたいと思うので、次に移ります。  そこで私は高碕経審長官を中心にして、その他三木運輸大臣、石橋通産大臣、それから川崎厚生大臣等に承わりたいと思うのでありますが、経済再建六カ年計画というものは、人口の分散、工業の分散等についても、やはりそれにうらはらになる構想を持っていかなければうそだと思うのでありますが、一体これができているかどうかということが第一点であります。  時間の関係で私は続けて質問をいたしますが、第二は、過大都市の抑制ということが、今日の日本におきましては根本的な問題であります。これは何といっても工業の地方分散と関連しなければ、食えぬところに人口は行きませんから……。従いまして、過大都市の抑制、工業の地方分散、そして人口の分散等は、当然日本としてやらなければならぬ。これは経済再建六カ年計画の裏づけだと思うのであります。たとえて申しますと、私はこれも具体的な例を申し上げますけれども、木曽川水系におきまして丸山というダムがある。あの丸山ダムは名古屋に一番近いところにあって、御承知の通りそのダムは十何万キロ出す相当大きな木曽川水系の発電所でありますが、これを関西まで持っていっておる。そのために、木曽川のすぐそばにある名古屋におきましては火力発電を使っている。御承知の通り水力発電のロスというものは、距離によって正比例いたしますから、非常にばかな話であります。こういうばかなことをやっているところに、私は資本主義の大きな浪費があると思うのであって、これは通産大臣にも関係いたしますけれども、そういう意味において、電力の国家的な規制、管理ということが非常に必要だと思うのであります。同時に、この丸山におきましては電気を関西まで持っていくために、かりに二割のロスが出たとしますならば、その近接地で政策料金で二割安くする——これは当然な話でありますが、安くいたしますれば、工業が、電力料が二割安いとか一割安いといったら、非常に地方へ分散する。このように産業の動脈においてそういう計画化をやらなければ、ほうっておいたならば、東京などしまいに二千万というような人口になりましたならば、それこそほんとうに日本の国は、私は過大都市から滅びると思うのでありまして、こういう見地からいっても、この点について石橋さんなどはどう考えておられるか。またこれは高碕さんにも伺いたいのであります。  なおまたこれと関連いたしまして、三木運輸大臣にも伺いますが、御承知の通り国土開発縦貫自動車道路建設法という法律を、これは一つ各党超党派的にやろうじゃないかという空気がありますことは御承知の通りであります。これは御承知の通りまだ開発されておらないが、東京から行きますならば、甲州へ出まして、そして信州の飯田へ出て、中津へ出て神戸まで行きますのが第一期でありますけれども、そういう縦貫線を北海道から九州までずっとつけまして、側線もつけまして、未開発地帯の、たとえば酪農に非常にいいところがあるが、それが高速自動車でもって一時間で東京まで来るということになれば、富士山麓の山梨県、静岡県側でも酪農地帯として非常に伸びてくる。こういう意味における人口の分散、過大都市の抑制、そして工業の地方分散、それから奥地開発というような見地からいたしまして、私どもは狭くなった土地を広く使いますためには、こういう点について積極的な経論を考えられなければならぬと思うのであります。小澤君が建設大臣のときにも非常な熱情を持ってやっておられたようでありますが、こういう点についてどういうお考えがあるかということを承わりたい。これは積極的な面であります。  それから消極的な面といたしまして、産児調節の問題などにつきましても、本格的に国が取り組まなければいかぬと思うのであります。指導がないから堕胎だけしておるという状態であります。しかも知識階級が産児調節をやって、逆選択の多い方はやらないという状態については、保険所側にも広がっております。これに対しては、国民健康保険や健康保険の給付内容でやらしてもできるのでありますから、本格的にやらなければならぬ。少し生んでほんとうにりっぱに育てる、自分が中学だけ出た親であったなら、子供は大学へ出す、十五貫しかない親だったら十七貫の健康なものにするという、知脳においても、健康においても、教育においても、自分よりは時代が進むのだから、いいところに持っていくという感覚において、少く生んで、よく育てるという実践を、積極面とともにほんとうに考えなければいけないと私は思うのでありますが、経済総合六カ年計画として、かような裏づけのない案というものはない。私は、時間がないから切り上げますけれども、たとえば北海道において、六年目には人口をどれだけにするか。九州はもう石炭としては老廃地帯だが、北海道における鉱工業を、そうして人口を、そうしてさらに農業水産をどれだけ上げて、それが六年計画の中にどうマッチするかというくらいなものをお作りにならないと、ほんとうに私は見せかけだけだと思うのであります。これらの関係について、それぞれの関係大臣から御答弁を得たいと思います。
  300. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。経済六カ年計画におきましては、ただいまお話の人口及び工業の分散ということは非常に重要な問題だと存じておりまして、今の御意見とは全く同感でございます。それにつきましては、国土総合開発あるいは都市計画等がございまして、それなんかと一緒に相並んで具体的の案を立案いたしまして、その案にマッチするように順応していきたい、こう存じております。
  301. 三宅正一

    ○三宅委員 今できていますか。まだできていないのですか。
  302. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 今せっかく計画の途中でございます。
  303. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 三宅君のお説には、もう全部賛成であります。通産省の関係はさしずめ電力でございますが、電力については、お話しのように、できるだけ地方的に分散するようにいたしたいと考えております。中央道路のことも、私はかねがね賛成であります。
  304. 三木武夫

    ○三木国務大臣 国土開発縦貫自動車道路という構想については、奥地の開発あるいは生活領域の拡大、あるいはまた産業の振興、そういう点から考えまして、三宅委員の縦貫自動車道路を建設すべきであるという構想には賛点を表するものであります。しかしながらこれは日本の陸上における交通の一つの大きな変革を意味するものでございますから、鉄道と自動車との調整、あるいは既設の道路整備計画とのバランスをどうするかという、いろいろその間に調整を要すべき問題もございますし、資金の問題もございますと思います。そういう点で現在の国土開発のためには交通という面からいろいろ計画を立てなければならぬというように思うのですが、道路の建設等については、現在の法規上からは道路運送法だけで、道路の建設等がその法規だけにつながっている現状は不備がある。いろいろそういう大きな道路を計画するにしても、どういうところでこういう計画を立てるかというところに、法規上の不備もありますので、運輸省としては自動車通路法というような法規等もただいま検討を加えて、そういう大計画の道路建設に対して総合的な計画を持ちたい、こういうことで検討を加えておる次第でございます。
  305. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 ただいまの中央道路の問題につきましては、かねがね三宅委員お話もよく承わっております。現実の問題として、法案よりも資金の処置だと考えまして、先般来アメリカの民間資金をこれに導入することにつきまして、大蔵大臣、高碕長官と数回にわたって話し合いをいたし、また向うに人も参りまして、現実の話し合いを進めておるような次第であり、またそれに対応いたしまして、さきに立てました計画について、アメリカの技術者に依頼をいたしまして、とりあえず名古屋−神戸間の実地踏査をし、なおその問題についてその後の準備を進めておるような次第でありまして、これはぜひともすみやかに実現をいたしたい。法律問題よりも安い資金を十分裏打ちすることに、今懸命の努力をいたしておるような次第であります。
  306. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 人口問題は、御指摘の通り、非常に重大な問題でありますし、消極的な施策として受胎調節をもっと普及さしてはどうかという点は御意見の通りであります。ことに今までの受胎調節は、割合に上層部の階級あるいはインテリなどは相当実施をしておる面もあるわけですけれども、貧困家庭、実際に必要と認められるところが実施をしておらなかったので、本年は特に三千三百万円の新たな経費を出しまして、従来の優生保護相談所に出しておる二千六百万円と合せて、五千八百万円の経費で、新たに巡回指導あるいは避妊器具の無料配布などもやりまして、相当に成績を上げるつもりでございます。これは厚生省が今年から始めておることであります。なお先般こういうモデル地区を一ぺん見ろということでありまして、常磐炭鉱などへ行って見ますと、ここは非常に発達しておりまして、去年、一昨年の成績からだんだん下って、人口千人に対する出生率が、今まで四九%くらいあったものが、去年は二四%、ことしは一四上%まで落ちておる。これが一三%まで落ちれば日本の人口問題は問題にならなくなってくるのではないかというふうに考えるのであります。これは言論機関その他にも御協力を得るために、各大新聞、放送局等にも啓蒙宣伝をやるように、私は直接出かけて話をしておる次第であります。政治家の各位が率先躬行してやっていただきたいと思っておる次第であります。私は実践躬行いたしております。(笑声)
  307. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 北海道の話が出ましたので一言申し上げておきます。御承知の通り、北海道は開発五カ年計画を立てて今実行中であります。本年がちょうど四カ年目でございます。もう一年あるのであります。そこへ六カ年計画が参りましたので、この次に起ります五カ年計画について、十分この考えを取り入れて進みたいという考えを持っております。人口の問題でありますが、大体五カ年計画から類推いたしまして、現在は四百八十万の人口でありますけれども、六カ年後におきましては、まず七百万人見当できるのじゃないかという目途を持っております。なお石炭の問題でありますが、これは現在の状況から推しまして、約二千万トンを目途としておるわけであります。電気でありますが、電気は現在五十万、この二、三年の間に八十万キロできる予定であります。六カ年後におきましてはおそらく百十万キロくらいの電気を出し得るという目途を持っております。米でありますが、米は現在五百万石程度のものでありますけれども、六カ年後におきましてはおそらく九百万石を目途とし得るという見込みを持っております。
  308. 三宅正一

    ○三宅委員 いろいろありますけれども、御迷惑だと存じますので、最後に一つ酪農問題、学校給食、食生活改善と関連をいたしました問題を各大臣にお伺いをいたしたいと思います。  わが国農業における酪農の地位をいかに評価しておるか、こういう点から一つ承わりたいのでありますが、わが国農業は狭小な耕地で、多数の農民が生きていかなければならないという条件があり、あわせて九千万人近い国民を養わなければならぬという立場からいたしまして、第一には土地の生産力を高めて、一毛作は二毛作に、さらに有畜立体農業に持っていって、土地の最同慶利用とその生産性の最高度引き上げが必要であることは喋々を要しないと思うのであります。わが国農業は土地改良、耕種改善、肥料の大量投入等によりまして、おおむね年に二%ずつの収穫をふやして参りまして、半世紀五十年の間に反当収穫が倍になるというのが、今日までの趨勢であったことは御承知の通りであります。しかるに金肥を入れ過ぎるということが一番大きな原因だと思うのでありますが、最近中国、九州等におきまして土地の生産力が逆に逓減してきつつあるということが、統計上出て参りましたことは、実にゆゆしい大事だと思うのであります。客土、土地改良等によりまして土地を若返らせますとともに、大量なる地厩肥を投入いたしまして、土地をよくするためにも有畜農業は絶対に私は必要であると思っているのであります。  しかるに農家経済の立場から申しますと、一年に二十日か一月しか使わぬという牛馬では採算がとれないのであります。土地改定ができて、労働が平均して、農繁期のピークが平均されました今日においては、どうしても今までの耕牛馬を乳牛に変えまして、そうして酪農形態に入り、農業の機械化をやるという、これが農業近代化の方向だと思うのであります。しかも酪農が入りまして、農にが米麦をとり過ぎておりました、米の食い過ぎで胃拡張と栄養不良をやっておったというこの状態を直しますことが、私は大きな増産運動だと思うのであります。さらに農民の健康保持の大きな運動であることも申すまでもないところであります。胃拡張、痔疾、早老、脳溢血というような現象が、米食を食い過ぎます結果から来ておりますことは、御承知の通りであります。ある学者はもしほんとうに酪農が普及されますならば、外国食糧の輸入分だけが食い方が減るだろうと言っておるのでありまして、私はそういう意味におきましては、食生活改善運動というものは、大きな増産運動だと認識をいたしておるのであります。理論としてはその通りであります。  しかるに酪農の現実というものは、今日空前の危機に瀕しているのであります。飼料は高い、乳は安い。ようやくふえた牛が投げ売りをされてまた激減をしようとしているのであります。その過程において農民は犠牲となりまして、もうけるのは博労だけという現象がずっと繰り返されてきているのであります。戦前二十五万頭をピークとし、今日四十万頭まで来ましたが、私はほんとうなら少くとも農家一戸に対し乳牛一頭という線までは行かなければならぬときに、わずかに四十万頭まで上ったときに、飼料高と乳価の安いためにこういう状態になってきておることは、非常に残念に存ずる次第であります。これは私は酪農振興に対する政府の指導が誤まっているからであると思うのでありまして、やはり経済再建六カ年計画を作られました立場に立ちましても、牛がふえても飼料は高くならない、乳の値段も下らないという確固たる政策の裏づけを持ちまして、酪農振興政策をやらなければいかぬと思うのであります。漫然と乳牛をふやすという奨励の方針でなしに、原則としては七割までは自給飼料で飼う、あと三割なり二割が購入飼料であるが、しかしながらそういう建前で奨励しながら、牛の値段も乳の値も下げない、そうして飼料の値段も上げないという確固たる方針の上に立って、酪農を進めなければならないと思うのであります。大体農民の手取りについていいますならば、私はたとえ乳価の支持価格をつくるといたしますれば、一升四十五円ないし五十円の乳価は、農民の手取りとしてこれを保証しなければいけないと思うのであります。ほんとうに政府がわが国農業の土地の生産性の引き上げ、食生活の改善、体位の向上、そうして食糧自給という観点に立たれまして、酪農政策を推進されるというならば、乳の値段については一升四十五円ないし五十円は農家の手取りとして、必ず手に入るという支持価格を考えられなければいかぬと思うのであります。それとともに今度は飼料については、今日七百八十円から八百円程度だそうでありますが、少くとも八貫目六百円よりは上げない、飼料は八貫目六百円、乳の値段は一升四十五円よりは下げない、この辺でなるべく自給飼料を中心にしてやるという、基本的な政策を立てなければいけないと私は存じておるのであります。こういう確固たる政策のなかったところに、先ほど申しました通り、二十五万頭をピークにして、それより日本では戦前はふえなかった、戦後は、今四十万頭をピークにして、また崩壊しつつあるというのが、今日の状態だと思うのであります。  こういう状態のときにおきまして、私どもはどうしても本格的にこの問題について政府が取り組んでいただきたいと存ずるのであります。このためには学校給食にいたしましても、すでに多年の努力によりまして、六百万人近い学校給食が行われておりまして、これが教育上、子供の栄養上、食生活改善上持っておる意義というものは、私は大きく評価していいと思うのでありますが、その学校給食におきましても、アメリカの脱脂粉乳だけ飲ませるというやり方でなしに、内地で生産いたしましたなま乳も飲ませる。ことしからは内地の脱脂粉乳もある程度出されることになっておるのでありますが、そうしなければならないと私は考えるのであります。私は学校給食は非常に高く評価をしておるのでありまして、アメリカが残しました施策の中で、唯一とは言わないけれども——唯一のよき方策であると考えておるのであります。現在六百万近い小学校児童に実施しておりますが、乳牛生産地におきまして、農村の児童にも飲ませる意味におきまして、農村へ学校給食を広げる、そうしてパン食になり、なま乳を飲むという線ができますならば、これは供出だって非常にふえてくると思うのであります。学者が言っておる通り、輸入食糧の大部分が食生活改善で解決するというような面が出て来ますならば、非常に大きいと思うのであります。農村に学校給食を持っていきましても、学校給食、酪農振興、食生活改善、そうして子供の体位の向上という三位一体的な施策を、この際私は酪農危機を突破するという意味においても、ようやく実績を持って参りました学校給食をほんとうに振興するという意味においても、そうして食生活を根本的に改善するという意味においても、私は新生活運動が説教であっては問題にならぬと思うのであります。やはり食生活改善運動でも、こういうほんとうにやる施策を通じておのずから広がっていくという線をとらなければならぬと思うのであります。現在東京、大阪、名古屋等の消費地から離れました地帯におきましては、河野君よく御存じでありましょうが、一升二十五円でなま乳を出しておるというような場合もあるのであります。私は現実に見てきておる。そんなばかなことをしておってはしょうがないのでありますから、せめて四十五円一升に保証する、それを学校給食に回す、なま乳で処理いたしますれば直ちに足らなくなる、だから私はたとえば集団酪農地帯におきまして二日ずつなま乳をやる、それに対して助成措置をやる、脱脂粉乳の値段と同じ線でいくという線が出ますれば、四円五十銭、五円という線は保持できると思うのであります。そうしてそれでふやしていく、また牛がふえたならば、それに応じて支持価格を四円五十銭、五円に買いて、それで学校給食をふやしていく、乳が足らぬときには脱脂粉乳でいく、脱脂粉乳もアメリカだけにたよらずに、内地の加工業者の脱脂粉乳もとることにすれば、バターもチーズもふえてくるということになるのでありまして、これが私はわれわれの今日やらなければならぬ一番大きな仕事だと思うのであります。  こういう意味におきまして、この際松村さんのような農村問題のわかる人が文部大臣になっておられるし、川崎君が厚生大臣でおられるし、また畜産のことがわかる河野君がやっておられるのでありまして、この際内閣の意見として統一せられまして、これに一つ集中してやるという線を考えていただきたいと思うのであります。  私が松村さんに進言をいたしておりましたのは、外国の麦と内地の麦の値段では、外国の麦の方が安い。それを内地の価格維持のために高く売っている。その価格差補給金、これは私の計算では、大麦、小麦合せて今年約三十五億ぐらい出る計算であります。どれだけ出るか別として相当のものが出る。これを回したいと思っておったけれども、この間の凶作加算でもって食管の特別会計の金がなくなりましたから、おそらくそれは出ないでしょう。出ないでしょけれども、今日大蔵省が考えておられるようでありますが、そのミルクの砂糖を税金を免税しておったのを税金をとる、十億くらい税金をとることを予定されておるそうでありますが、かりにとられるといたしまして、おもにあれは菓子の原料になりますが、その十億は酪農振興の見地から、学校給食に回して、なま乳を生産地で飲ませるという線をやっていただきますならば、私は今日これは非常に大きな善政であろうと存ずるのであります。新生活運動に五千万円計上しておられるようでありますが、私は新生活運動もあまり散漫なことをやられたら、問題にならぬと思うのであります。たとえば冠婚葬祭の費用を安くしようという婦人会の運動などは、八千万円計上しておられます社会教育の方でやられまして、五千万円の内閣の一つの施策としてやられる新生活運動においては、私は私の考え方といたしますならば、ヒロポン禍を撲滅する運動と食生活改善運動に全部集中して使ってしまう。この院内におきましても、私どもはこの点については超党派的に同志がありまして、この前も大きく進言して、自由党内閣のときも五千万円や六千万円は出そうといっておられましたのが、政変になってだめになった経験がある。私どもは攻撃する点は攻撃いたしますけれども、ともかく一つでも二つでもいいことをほんとうに進めなければ、日本国民は不幸であります。一つこの際松村さんが文部大臣になられたし、ちょうど河野君や川崎君もおられるし、一萬田氏などもこの点だけは考えられまして、そうしてほんとうにやっていただきたいと思うのであります。一問一答でいろいろなことを伺いたいけれども、御迷惑でしょうから、私は全部くるんで申しましたけれども関係大臣の御答弁を得て、不満足でありまするならば、なお質問若いたしたいと存ずるわけであります。
  309. 松村謙三

    ○松村国務大臣 今のお話でございますが、これは学校給食というものには、一石二鳥といいますけれども、一石五鳥くらいの考え方で現在やっているわけなのであります。すなわち給食は単に食を給するというだけではございませんで、共同生活を規律するという面からいいましても、栄養の面から申しましても、さらにお話の通りの畜産等の振興の意味から申しても、いろいろの意味が加わって、はなはだ大きな価値を持つように今日なってきているのであります。従いまして今お話の有蓄農業に関することは、これだけにウエートをおかけになることは、これは無理でありますけれども、これとあわせていくということは、最も考えねばならぬことと思うているのでございます。それで三宅さんのお話もありまして、文教委員会を中心といたして、一つこの給食の問題全体に対する検討をしようということで、委員会を設けることにいたしております。これはひとり文部省関係だけではございません。農林省、厚生省もとどもに一緒になって一つ検討をいたして、いい結果を招来いたしたい、こういうふうに考えておるわけでございまして、どうぞさよう御了承願いたいと思います。  それから新生活運動については、お話の通りに、ヒロポンなどというのは、これは実際ほうっておけぬような形になっておりますことは御承知の通りであります。従いましてそういうことが新生活運動の中心となることは当然であると考えますが、しかしその新曲活運動はかねて申し上げております通りに、政府の機関としてやるのではなくて、民間の盛り上る団体としてやることでございますから、今私の方からこれこれをやるということは申し上げませんけれども、当然それらが主体になることであろうとは、私ども期待をいたしておるわけであります。
  310. 河野一郎

    ○河野国務大臣 お答えいたします。畜産関係の問題、酪農の問題につきましては、三宅さんの御指摘の通り、また御意見につきましては私全く同感見でございまして、ただこれが今日の状態になっておりますることにつきましては、政府の施策につきましても遺憾な点もあったと思うのであります。と申しますのは、家畜の導入でありますとか、家畜の増殖にあまり急であって、これのうしろのかまえが足りない点があった。たとえば戦後インフレ時代に畜産製品が非常に高騰いたしまして、大へん有利であった。従ってむやみに畜産が盛んになり過ぎた。そのためにしろうとまでがむやみに畜産に食いつきましたが、一たび条件が変って参りまして、非常に打撃を受けるようになったが、これに対する裏づけが足りなかったということでございますので、これにつきましては早急に確固たる裏づけをして、基本的に出直しをしていく格好にしていかなければなるまいと私は考えております。そういう意味からいたしまして、たとえば酪農製品にいたしましても、御指摘のように乳価を四十五円ないし五十円——これは四十円ないし四十五円と申した方がよろしいか、そこには議論があろうと思いますが、いずれにいたしましても、現在のような状態では決して酪農のためにならぬことはもちろんでありますから、これに対しては適切な処置を講じなければならぬということは、常に三宅さんにも申し上げてある通りであります。これとまた相関連いたしまして、学校給食の問題、食生活改善の問題——食生活改善の問題はこれも御指摘の通り学校給食から影響いたしまして、今日わが国の食生活が非常な角度で変りつつありますことは、食糧問題、すなわち米の問題が、米の需給の数字等につきましても、従来の観念が非常に急角度に変っておる。たとえば十年前と申したら少し離れ過ぎるかもしれませんが、戦争前の需給の数字が、今日の需給の数字に当てはまっていない。これは戦争前に一人当り一石八升から一斗くらい必要であったものが、今日では全然そういう数字ではありません。これは一にかかって学童給食の影響だと見ておるのでございます。そういうふうに食生活が変って参りましたから、また変りつつあるのでございますから、これに動物蛋白を十分に供給して参らなければいけないという意味からして、食生活の改善と、そこに畜産の振興、酪農の振興というようなものを考合せまして食糧政策を樹立し、農村経済についても、御指摘のように変えていかなければならぬ。この面に農林行政を強く推進していかなければならないということは、かたがた私が申し上げますように、農業経営の多角化というような面からいたしましても十分に考えていかなければなりませんし、強力に推進していかなければならぬと思うのでございます。  ただこの機会に最後に一言つけ加えておきたいと思いますことは、学校給食のために、アメリカから余剰農産物として参ります酪農製品とわが国内の酪農製品との関係について、特別の配慮をいたさなければいけないということにつきましては、また議会の諸君の御協力、御審議も願って考えていきたい。こういうふうにいたしておるのでありまして、幸い文教委員会等において強力にそれらの点について御意見を伺っておりますことは、はなはだ仕合せと考えております。われわれといたしましても、ぜひそういう方向でこの際総合的に考えて、文教もしくは農林、厚生あたりが一体になって、そうして低温殺菌を高温殺菌に変えて、学童の方にもこれを飲ませるようにしていくということにして参りたいと考えておる次第でございます。
  311. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。大へんいい御意見で傾聴いたしました。関係大臣の相談に対しまして、できるだけ協力いたしたいと思います。
  312. 三宅正一

    ○三宅委員 もうこれでやめますが、先ほど申しました通り、学校給食と食生活改善と酪農振興を結びつけました施策について、関係の三省におきまして、閣僚間でも御相談を願い、われわれはわれわれで一つ考えますから、これは本当に大蔵大臣も答えられましたように、施策化していただくことを一つこの際強く要望いたしまして私の質問を終ります。大へんおそくまで失礼いたしました。
  313. 牧野良三

    牧野委員長 これにて昭和三十年度一般会計暫定予算補正(第1号)外二案に対する質疑は終局いたしました。  本日はこの程度にいたして、次会は明二十六日午後一時より開会し、暫定予算補正三案に対する討論、採決を行うことにいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十三分散会