運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1955-05-17 第22回国会 衆議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月十七日(火曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 牧野 良三君    理事 上林山榮吉君 理事 重政 誠之君    理事 中曽根康弘君 理事 小坂善太郎君    理事 西村 直己君 理事 赤松  勇君    理事 今澄  勇君       有田 喜一君    宇都宮徳馬君       楠美 省吾君    小枝 一雄君       小島 徹三君    河本 敏夫君       纐纈 彌三君    齋藤 憲三君       楢橋  渡君    福田 赳夫君       藤本 捨助君    古井 喜實君       松浦周太郎君    三浦 一雄君       村松 久義君    米田 吉盛君       相川 勝六君    愛知 揆一君       植木庚子郎君    北澤 直吉君       周東 英雄君    野田 卯一君       野澤 清人君    平野 三郎君       福永 一臣君    阿部 五郎君       伊藤 好道君    志村 茂治君       田中織之進君    田中 稔男君       福田 昌子君    武藤運十郎君       柳田 秀一君    井堀 繁雄君       小平  恵君    春日 一幸君       杉村沖治郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         法 務 大 臣 花村 四郎君         外 務 大 臣 重光  葵君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         文 部 大 臣 松村 謙三君         厚 生 大 臣 川崎 秀二君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  石橋 湛山君         運 輸 大 臣 三木 武夫君         労 働 大 臣 西田 隆男君         建 設 大 臣 竹山祐太郎君         国 務 大 臣 大麻 唯男君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 杉原 荒太君         国 務 大 臣 高碕達之助君  出席政府委員         内閣官房長官  根本龍太郎君         内閣官房長官 松本 瀧藏君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         国税庁長官   平田敬一郎君  委員外出席者         日本開発銀行総         裁       小林  中君         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 五月十六日  委員井出一太郎辞任につき、その補欠として  纐纈彌三君が議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員有田喜一君、椎熊三郎君、北澤直吉君、周  東英雄君、高橋等君及び芳賀貢辞任につき、  その補欠として藤本捨助君北村徳太郎君、綱  島正興君、篠田弘作君、野澤清人君及び久保田  鶴松君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 五月十七日  昭和三十年度一般会計暫定予算補正(第1号)  昭和三十年度特別会計暫定予算補正(特第1  号)  昭和三十年度政府関係機関暫定予算補正(機  第1号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十年度一般会計予算  明和三十年度特別会計予算  昭和三十年度政府関係機関予算  昭和三十年度一般会計暫定予算補正(第1号)  昭和三十年度特別会計暫定予算補正(特第1  号)  昭和三十年度政府関係機関予算補正(機第1  号)     —————————————
  2. 牧野良三

    牧野委員長 これより会議を開きます。  この際、御報告をいたします。理事会協議によりまして、公聴会公述人を次の通り選定いたしましたので、御報告を申し上げます。御了承を請います。  財政関係としましては、経済同友会常任幹事日本生産性本部専務理事郷司浩平君、武蔵大学教授芹沢彪衛君、東京大学教授武田隆夫君、長野県知事林虎雄君、農業関係としましては、農林中央金庫副理事長江沢省三君、全国農業会議所事務局長楠見義男君、次に中小企業関係といたしましては、慶応大学教授伊東岱吉君、さらに労働関係といたしましては、日本官公庁労働組合協議会長柴谷要君、全国繊維産業労働組合同盟会長滝田実君、さらに国際法関係としては早稲田大学教授一又正雄君、さらに原子力利用関係といたしましては東京教育大学教授藤岡由夫君並びに大阪大学教授伏見康治君、以上十二名でございます。なお、公聴会はかねて御報告申し上げております通り、十九日の木曜日、二十日の金曜日両日とも午前十時より開きたいと存じます。さよう御了承を請います。     —————————————
  3. 牧野良三

    牧野委員長 それではこれより昭和三十年度一般会計予算外二案を一括して議題といたします。質疑を継続いたします。井堀繁雄君。
  4. 井堀繁雄

    井堀委員 私は昭和三十年度の予算審議に当りまして、世界市場開拓、並びに輸出貿易振興のための対策雇用増大労働資質の向上のための対策を中心といたしまして、関係大臣お尋ねをいたそうと思うのであります。  まず第一に外務大臣お尋ねをいたしますが、世界市場開拓につきましては種々方法がありますことは、ただいままで当国会においてもいろいろと論議されておりますので、なるべく重複を避けてお尋ねをいたそうと思います。私ども考え方からいたしますと、今日の世界市場開拓して日本輸出貿易振興することなくして、日本民族自立も、経済自立達成もあり得ぬと考えて、このことは申すまでもなく基本的な政策となると思うのであります。この政策につきまして、従来委員質問政府の明らかにいたしましたところによりますと、おおむね宣伝に主力が置かれて、その実行性に乏しいことを非常に遺憾に思うのであります。私がお尋ねしようとすることは、直ちに実行に移していただかなければならぬ点を選んでお尋ねしようと思うのであります。  そこでまず第一に、日本通商の自由をどう開拓していくかということが非常に喫緊な問題だと思うのであります。通商の自由を開拓していくためには、いろいろと当国会においても論議されました。たとえば中共向けのココムの解除の問題でありますとか、あるいは関税の引き下げ、あるいは通貨の交換性の回復等々、あげてみますと、通商の自由を開拓するための外交上の問題はかなり山積をしておると思うのであります。こういう問題に対しましては、私は本日触れる意思はございません。しかしこういう点についても従来の答弁ではどうも納得できかねますので、もっと積極的、具体的な対策がおありであるならば御発表いただきたいと思うのであります。ここで私のお尋ねしようとすることは、世界市場開拓するために政治的な障害を排除することが可能になることはもちろんだと思うのであります。またすみやかにそうしなければならぬのでありますが、ここで通商の自由が完全に保障された暁においても、一体日本世界市場に対する進出というものが一番先に当面するのは、日本輸出製品品質の問題だと思うのであります。よい品物ができなければ、いかに通商の自由が与えられても市場開拓ができぬことば申すまでもありませんが、この簡単な事柄について政府政策は一向に徹底していないと思うのであります。そこで、日本現状からいたしますと、そういう市場開拓について通産大臣経審長官にあとでお尋ねいたしますが、外務大臣お尋ねいたしたいのは、日本市場開拓の上に一番大きな障害になるのは、日本の低貸金、長労働時間で、これはあまりにも国際的に有名であります。このチープ・レーバー、世界のおそれておりますソーシャル・ダンピングの傾向というものは、単に日本をいろいろと憶測してこれをおそれておるものでないことは、残念ながら認めなければならないと思うのであります。こういう意味で、国際的には国際労働機関やあるいはその他の機関においてこのことはたびたび論ぜられ、特に国際労働機関にあっては、勧告や決議案などがたくさん審議され、決定をされておるにもかかわらず、日本政府の態度はこれに対して忠実であるとは思われぬとわれわれ思うのでありますが、まずこの辺について外務大臣所見を伺って、質問を続けて参りたいと思うのであります。
  5. 重光葵

    重光国務大臣 お話通り通商振興をやりまして、そうして各相手国日本との経済関係について疑惑をなからしめ、最も公平な競争を日本側でやっておるということを示すことが、基礎的の政策でなければならぬと考えます。  そこで労働問題でございますが、労働問題につきましても、国際的に労働基準がございます。その示された基準条約等は忠実にこれを守っていくということが必要になるわけでございます。そこで日本はその点に従来とも重きを置いて、御承知通り戦後いち早く国際労働機関ILOに復帰したのでありますが、復帰してその後積極的に協力を続けてきたために、昨年は右理事国にも加えられることに相なりました。そこでILOの総会、理事会のみならず他の各種産業委員会にも昨年から加わって、積極的にこの方面協力をいたしております。そして今国会で御審議をお願いする予定をしておる条約はずいぶんたくさんありますが、提出予定労働関係条約四つ五つほどございます。それは船員の補償金の規定をいたしておりまする条約、船舶の滅失又は沈没の場合における失業の補償に関する条約というのが一つございます。また海員の雇入契約に関する条約というのもあります。第三には海上で雇用することができる児童の最低年令を定める条約というものもございます。第四に海員体格検査に関する条約、かようなものがございまして、これは今回の国会に御承認を得るために提出しておるものでございます。その他関係条約等について日本が加入をすることを適当と認めておるものはできるだけ早く手続をいたしまして、遅滞なく提出することに努力をいたします。
  6. 井堀繁雄

    井堀委員 報告決議案国会承認を急がれることは、国際信用を増す上に最も重要なことだと思いますので、一日も早く手続をおとりになることを希望いたしておきます。  通産大臣 経審長官見えておりますので 通産大臣お尋ねをいたそうと思いますが、先ほどあなたのお見えになる前に、世界市場開拓重要性についてお尋ねをいたすための前段のお話を申しましたが、時間の関係で端的にお尋ねをいしたいと思います。日本は、やはり輸出貿易振興をはかる基礎的の条件については、輸出製品品質を改善していくという以外に道がないと思うのであります。その改善をはかる方法でありますが、前の暫定予算審議の際にも通産大臣お尋ねをし、また通産大臣経審長官を代理しての御意見発表もありますが、いずれも抽象的でありますので、具体的に一つお答えをいただくためにお尋ねするのですから、そのために一つ御用意いただきたいと思うのであります。  日本の現在の産業構造では、とうてい私ども世界市場で打ち勝つ態勢でないことは、否定はできまいと思うのであります。そこで製品品質を引き上げていく方法としては、おおむね二つあると思うのであります。一つ設備近代化、他の一つは優秀な労働生産性に期待する道以外にないと思うのであります。たとえば設備近代化をはかるにいたしましても、日本経済力を正しく評価いたします場合に、アメリカが行なっておるような莫大な資本を導入して、設備近代化をはかるというようなことはとうてい望めないと思うのであります。さりとて西ドイツが行なっておるような外資に、あるいは高度の労働技術に依存する、こういう科学的な態勢を整えるということを日本ににわかに求めることも困難であろうと思うのであります。それではこういう困難な状態をそのまま見送ることになれば、言うまでもなく日本世界市場における状態は、いかに通商の自由が得られたとしても、実質的には世界市場開拓どころではなくて落伍しなければならなくなると思うのであります。こういう点からいたしまして、今度の予算を拝見いたしますと、どこにもこういうものを打開していく点を見出すことができないのであります。この点について通産大臣はこういう方法でという御意見がございましたら、一つこの機会に伺っておきたいと思います。
  7. 石橋湛山

    石橋国務大臣 お答えいたします。この予算を見まして、こまかいものがたくさん出ておりますから、目に立つ非常に顕著なものというのが見つからないわけでありましょうが、私から見れば、もうこの中小企業対策というものは、ほとんど全部がそれだと思います。それからもう一つは、石炭企業合理化というようなものを今検討しておりますが、そういう基幹産業製品のコストを下げるとか、それから重機械国産化でありますとか、それから重機械技術相談室というようなものは、日本輸出貿易を伸張し、また日本製品の質を向上するのにやはり役に立つものであろう、こう考えております。それから市場の拡張については、今御承知のように、日本国際見本市を東京でやっておりますが、海外においてもこれをやろうということで、日本製品海外に対する宣伝と同時に、国内の製品品質の改良には、通産省としてはほとんど全力を注いでやっておる、こう申してよろしいと思います。
  8. 井堀繁雄

    井堀委員 ただいま御披露になりましたことは、万々承知をいたしておるのでありますが、私の今お尋ねしておりますのは、そういう程度のもので世界市場に臨む態勢としては、通産大臣も不十分だということは心得ておるだろうと思うのであります。そこで問題は、やはり予算全体の制約を受けるという結果を私どもはある程度了承しておるのでありますが、その少い予算の中で、その問題を解決していく案でなければ案にならないわけであります。今のでは、少し失敬な言い方ですけれども、従来歴代の政府やり方と私はそう選ぶところはないと思うのであります。ただ予算を多少上げたり下げたりするとかいうことでは、問題は解決できないと思うのでありますが、私ども政府との立場の相違はここで論じようとは思いません。私ども考え方からすれば、日本資本主義後進性や、あるいは封建性というものはもう骨がらみになっておりますから、社会化するとか民主化するとかいっても容易にできるものでないと私は思いますが、しかしその中にあってもこういう方法社会化をはかる、民主化をはかろという案が保守派から出てこなければ、決してこの際の対策にはならぬと私は思うのであります。そういう点では石橋さんもお考えになっておると思う。こういう点に対して良心的な発表があってしかるべきだというのでお尋ねをしておるわけであります。もし用意がなければ私のきょうお尋ねしようと思う中心問題ではございませんので避けたいと思いますが、あなたの日ごろからの講演や所見発表を、私は文書などで拝見いたしまして、現在の予算案に盛られておるものとは相当違うものがあるのではないかというので、好意的にお尋ねをいたしたのでありますが、御発表がないようですから、これ以上お尋ねしようとは思いません。  ただ一言申し添えておきたいことは、あなたは口を開けば中小企業対策を言っております。日本産業構造の中で、悪く言えばネックでありますが、家内工業中小企業というものをどうするかということは、これは保守、革新の、あるいは社会定義資本主義立場を離れて、解決をはからなければならぬ問題であります。この点に対して前回の委員会であなたはお約束をされましたので、予算に相当飛躍的なものが、たとい小さくても現れるかということを期待しておりました。これに関して私から見ますと、見るべきものはありません。具体的に論議する時間がありませんので申し上げませんが、もしこれに対してこの際お答えが願えるならば、ここに従来のものと異なった斬新的な中小企業対策、あるいは日本産業構造にメスを入れておるということを御発表になる御意思があるなら伺っておきたい。
  9. 石橋湛山

    石橋国務大臣 お答えしますが、私は産業政策経済政策は、そんな飛躍的なものはないと思います。従ってここにありますような、平凡といえば平凡でありますが、あなたがどういうことをお考えになっておるか知らぬが、お考えになっておるような、そんな一刀両断にすぱっと割り切れるような案はございません。
  10. 井堀繁雄

    井堀委員 それではもう一つお尋ねしておきますが、何も私は保守派政府中小企業問題を一刀両断解決できるなどということは夢想だにいたしておりません。特に石橋さんにそういうことは期待しておりません。しかし現在の政府の責任において、今壁にぶつかっておる問題をずらしていく義務があると思う。あなたはあれで、中小企業対策に対しては一応保守党なりに問題の解決になるというふうにお考えになっておるとするならば、何をか言わんやであります。そこでお尋ねをしたわけでありますけれども、もう一つもし御発表になるならばというのは、こういうふうにお尋ねしたらどうかと思う。今世界の全体の傾向を見ていきますと、さっき申し上げましたが、アメリカのように莫大な質本を算入して設備近代化をはかる、あるいはフランス、イギリスがとっているように、苦しい財政の中で、かなり新しい、保守党保守党なりに機軸を打ち出していることは、私が申すまでもないと思うのです。こういうものに比較して、日本のどこにその新しさが見られるかということであります。それからもう一つずらして、たとえば西ドイツのように、日本と同じあるいはそれ以下の悪い条件の中にあっても、たとえば外貨を活用するに当っても、また労働技術の活用に当っても、かなり積極性を見せた対策が幾つも出てきていることは申すまでもないと思う。あるいはスカンジナビアあるいはスイスのような小さな国々にあっても、やはり労働創意工夫に大きく期待した政策がとられていることも言うまでもない。そういうものに対して、一体これはとっぴな飛躍的なものでも何でもありません。今あなたは今日の政府予算に対して、不満足な発言はできないのでありましょうが、何かこういう方法でという発言があってしかるべきだというのでお尋ねしたわけであります。しかしあなたに対して、私はあまり期待しておりませんから、御意見を伺いたいと思いません。  そこで経営長官お尋ねをいたしたいと思うのでありますが、問題は先ほど来申し上げておりますように、部分的な対策ではどうにもならぬ。特に日本のように経済の底の浅い現状にあっては、もっと積極的に労働創意工夫に期待をかけるような対策というものがマッチして出てこなければ、石橋さんのようにのらりくらりというような考えではなおさらです。こういうものに対して経審長官として総合的な計画で、経済庁の総元締めでもありましょうから、この点に対する御見解が何かあったら伺いたいと思います。
  11. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。日本輸出産業振興いたします上につきましては、もちろん設備近代化合理化をやらすことが必要でありましょうが、大体日本輸出産業の根底を見てみますと、中小工業者、その人たち製品によって輸出増進される数量が非常に多いのであります。これは日本の労力が現在におきまして、外国と比較して非常に手先きが器用である、こういうような問題が認められておりまして、その生産技術もほかの国と比較いたしまして非常に精巧である。これを利用して輸出産業振興いたしたい、こういう所存でございますが、それにつきましてはただいまお話のごとく、各労働者自身技術精巧度を向上する、また創意工夫を生かしていくということは、輸出産業の増進におきまして最も必要だということを痛感いたしております。
  12. 井堀繁雄

    井堀委員 それでは一、二具体的のものをお尋ねいたそうと思います。政府発表いたしております総合六カ年計画の中で、雇用増大をはかる道が明らかにされております。従来の統計に見まする労働人口増加率雇用の吸収に対する数字でありますが、この数字の根拠についてお尋ねをいたそうと思います。この資料によりますと、昭和二十八年の労働人口増加率を、三十二年を一〇〇に見て三十五年には一一〇・五の比率で、その増加は四百十七万一千人と押えているようでありますが、この労働人口増加率は、私どもの推定では、総人口の点については大体こういう線をたどるのではないかと思うのでありますが、労働人口はこれとは異なった、もっと高い比率を示すのではないか。総人口の逓減に対して労働人口はそう逓減して来ないのではないかと思うのであります。もちろんその労働人口抑え方にもあると思う。今日の労働人口押え方についてはかなり漠然としており、政策の面も従ってそういう点で漠然としてくると思いますが、この問題をはっきりする必要があると思う。それは失業問題を解決するためにもこの数字から明らかにして参らなければならないと思う。  そこでお尋ねするのでありますが、一体こういう比率で計算されるやり方については、ここで議論しても仕方がありませんけれども、四百十七万一千の増加率を見込んでおりますが、この数字に対して御自信があるか、自信があると同時に大体同数のものを雇用できるという日本産業経済発展を見越しているようでありますが、その経済発展の見越しであります。ことしの予算を見ますると、とうていこういうものをカバーできるような態勢、地固めというものは思いもよらぬと私どもは憂えているのでありますが、何かこういうものに対する資料が相当おありだと思います。大まかでけっこうでありますが、その二、三の点についてまずお尋ねをいたしたい。
  13. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答えいたします。詳細の数字は多少記憶違いで誤りがあるかもしれませんが、大体の数字は間違いないと思っております。日本人口増加は厚生省の人口問題研究所数字基礎としてこれをやっております。それから働き得る人たちの数をどうするかというと、これはアメリカの例をとりまして、十四才以上の人が幾らあるかというのでこの数字を出しておりますが、この数字は相当大きな数字になります。その数字基礎に置きまして、そのうちの何パーセントの人が働くか、この問題でございますが、これは最初私ども六七・六%ということでやっていって、順次これを減していきたい。三十五年には六五%くらいにしたい、こう存じておったわけでありますが、これはどういうわけかと申しますと、アメリカなどでは十四才以上の労働可働数のうちの五六%くらいをもって需要者の数といたしております。これは生活程度がいい結果であろうと思います。従いまして日本も漸次そういうふうに減していきたいという考えでおったのであります。ところが査定いたしまして以来各方面意見を聞きますと、それはあまりぜいたく過ぎるぞという意見がありまして、多少これは変更いたしまして、六七くらいでとめたいと思っておるわけでございます。六七%にいたしますと、今申し上げました通りに、労働人口が三十五念には四千三百万、こういう結果に相なります。これが第一のお答えであります。しからば、それに対してどれくらいの仕事を与えたらいいか、こういう問題になりますが、日本産業機構状態から申しまして、ただいまでは原始産業農林水産方面におきましては、あまり大きな生産増加することはできない。大体私どもの今の統計は二十八年を基準にいたしまして、農林水産つまり第一次産業の方では一〇%近くの増加をいたしたい、こういう考えでございますが、一方輸出産業のおもなる事業になっておるところの工業生産製造品の方におきましては、三十五年を二十八年に比較いたしまして、大体の数字に、三・五%増加いたしたい、こう存じております。そこにおきまして、将来そういう方にふえる労働可能の人口をどういうふうに吸収するかということに相なりますと、主として第二次産業、つまり製品を作る製造工業の方にこれを吸収いたしたいと思いまして、その方面に大体二〇%吸収する。そういたしますと、輸出は八八%ふやす考えでございますから、輸出も増進するということになりますと、輸送、通信あるいはそのほかサービスの方面に当然人がふえますから、これには一八・一%ふやす、こういうことにいたしたいと思います。この数字を簡単に申しますと、三十五年における需要者総数が四千三百二十八万四千になっております。第一次産業の方には千七百六十一万、第二次産業には千七十八万二千、第三次の方には千四百八十九万二千、こういうふうにこれを持っていきたいという考えでございます。
  14. 井堀繁雄

    井堀委員 時間の都合がありますから、こまかくお尋ねいたしたいのでありますが、残念ながらごく一、二点にとどめておきたいと思います。  今御説明にあります労働人口増加率を押えました二つの根拠でありますが、一つの総人口の逓減に比例した数字の出し方は、私は正しいと思うのです。しかし今一つの、日本労働の姿のつかみ方が、アメリカを例にとりましたり、ヨーロッパの例をいろいろとることができると思いますけれども、やはり日本経済現状やいろいろな社会的な環境などから考えますと、そういう資料でこういうものを扱っては、大へんな失敗をすると思います。そういう意味で、こういうものはもっと大きくつかんでいかなければならぬという材料はいろいろこちらにあります。もしこういうものを根拠にして日本経済の長期計画をお立てになるということでは危険だと思いますので、もっと御検討なさることを私は希望しておきます。  そこで、次にお尋ねをいたしたいのは、完全失業であります。政府は完全失業を昭和二十九年の場合に平均六十七万と押えておりますが、それが最後の六年目の昭和三十五年には四十三万五千、こういうふうに現しております。その数字の引き出し方については、大体想像ができます。そこで私のお尋ねいたしたいのは、完全失業というものが、一体今日政治上の失業問題として扱うべきものであるかどうか。私の見解からすれば、完全失業というのはごく限られたものである。念のために伺っておきますが、一体完全失業を把握される基調は何か。また調査の方法は何か。この点をお尋ねすれば明らかになると思いますが、まずこの点をお答え願いたい。
  15. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。現在の調査によりますと、現在の完全失業は大体六十三万人くらいでありますが、これを三十正午には大体労働可働数の一分にとどめない、こういうことで、四十何万人ということがそ、のときのわれわれの希望数字でございます。それに持っていきたい、こういうことを原則としてやっているわけでございます。
  16. 井堀繁雄

    井堀委員 今お尋ねしておりますのは、一体今の失業者の数をどういう方法で、またどういう基礎に基いてお調べになっているかということをお尋ねをいたしております。
  17. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これは私は必ずしも完全と思いませんけれども、現在われわれが得られる数字は、就業希望者の数字が出ます。これに対しどれくらいの就業をやったかというものを差し引きました残りをもって完全失業者とみなしております。
  18. 井堀繁雄

    井堀委員 長官はよく御承知ないようでありますから伺おうとは思いませんが、今の失業統計というものは、労働省の傘下にある各地の職業紹介所の窓口を通じて集めているものなんです。その窓口をお調べになればわかるのであります。私ども詳しい現地調査のあれを持っておりますが、窓口に就業を希望して来られる人、あるいは求人開拓のために出先の末端の公務員諸君の涙ぐましい努力が行われている。私は数府県のことを実際に当って調べております。それによりますと、これは一府県の例でありますけれども、求人開拓のために毎月千五百軒から二千軒の雇用主のところを訪問して雇用開拓をしている。年額の延べを見ますと、一万九千五百三十一、これは某県の昭和二十九年一年の統計であります。それだけ訪問して雇用開拓をしているのであります。それから求人の問題については、窓口では、この県でいきますと、二七%の失業者しか扱い得ないということなんです。あとのおそるべき七三%のものは縁故募集や、あるいは縁故をたどって、あるいはこういうところによらないで就職その他があるということを考えなければならない。こういう二七%そこそこ、それと今言うように戸別訪問して開拓しているもの等が集録された統計であります。それが完全失業。さらにその完全失業のワクのほかにありますそういうずさんな根拠に基づいて統計がとられておりますもののうちから、短時間就業者の数が出ておりますが、短時間就業というのは一週三十四時間以内——このつかみ方もまたおかしいと思いますが、とにかく三十四時間以内、一週一時間働いても今日の失業統計には出て来ない。  一体こういう短時間就業者というものがどれくらいいるか。これが総理庁の統計局の資料に基いて、三十年の二月には千百四十一万人、さらに追加の就職希望者という統計の出し方でありますが、これは短時間就業者の中でもいろいろなものが入っておりますけれども、その中でも約七十四万人というものが、正規の就職をしておりましても生活をささえるに足らぬということで、追加就職を求めるといったようなものが出てきておるわけであります。こういうものを今のずさんな根拠に基いて二七%そこそこの把握しかできない範囲内の完全失業と、それから不完全労働というものだけを見ても、あなた方がお使いになっておりまする完全失業者というものをもって失業対策の対象といたしましたら、大へんな間違いが起る、潜在失業とか、あるいは不完全労働とか、半失業とか、いろいろな言葉が使われております。しかしわれわれがここに必要といたしますのは、たとえば職場にあってもその働いた収入によって最低の生活——最低ということも語弊がありましょうけれども、大体やや生活ができるというものでなければ、私は正規な職業についているものと考えることはできぬと思う。ここで失業というのは一週一時間や二時間働いても失業者じゃないというような、こういうワク外にたくさんの失業の状態が氾濫しておるわけであります。こういうものを解決していくというのでなければ失業対策にならないと考えておる、この点に対する長官所見を伺っておきたい。
  19. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。ただいま詳細なる実地の御検討を聞かしていただいて、私は非常に参考になったのであります。私は観念的に考えておりますことは、完全失業をもって失業対策ができたとは断じて考えておりません。潜在失業というものを解決することが一番大事なことだ、こう存じておりまして、私どものただいま入っております資料におきましては、一千万と称し、八百万と称する数字が入っております。特に日本は外国と違っておりまして、家族主義の考えがまだ相当あるのでありますから、一般にいって失業するよりも、自分は親戚の方へ行って、五人で働いているところを六人で働く、あるいは七人で働くというように、これは中小工業者あるいはまた農業の方面に相当吸収されておると存じますが、これについてはよほど考えなければならぬ、こう存じておるのであります。しからばこれに対してはどうするか、こういう結論でございますが、これは結局日本全体の生産増加して、国民一人当りの収入をよくするよりほか方法がない、そうすればこれは収入が増加することでありますから、これによってこの問題は解決する、こう存じておりまして、経済六カ年計画におきましても、大体の国民総生産は三十五年度には二三・一%増加する、同時に国民所得におきましても二四%増加する、こういうことを目安といたしまして、これに邁進いたしたいと存じております。従ってこれによって潜在失業を緩和いたしていきたい、こういう所存でおります。
  20. 井堀繁雄

    井堀委員 失業の統計についてはもうあまり論議する必要はないと思いますが、とにかくわれわれの常識で言う失業というものは、生活をささえることのできないようなものをどうするかということも含めなければならぬということを、一つ考慮の中に入れておいてもらいたい。実際の状態をどういうぐあいにつかんでいるかということが前提になりませんと、予算案の上に現われてきております失業問題を論ずることは、私はずさんな議論になると思うのでお尋ねをしたわけです、しかし私どもの懸命の努力も今日の統計をもってしては正確な数字で論議することができませんので残念に思っておるわけでありますが、しかし勘の上では今あなたも私の考えと一致しているようでありますから、それでまずよいと思います。  そこで労働大臣お尋ねをいたしますが、日雇い労働者の対策として予算が上程されております。この日雇い労働の問題は先ほどの失業統計に対する論議でおわかりになったと思いますが、ごく顕著な窓口に殺到してくる人々を相手とするものでおります。これについて一体労働大臣といたしましては、今年度の予算に組んでおります額をもって一番尖鋭な状態に現れておりますものを解決するについての御自信があるかどうかを、まず伺っておきたい。
  21. 西田隆男

    ○西田国務大臣 お答えいたします。三十年度におきまする完全失業者の増加の数を約二十万という見当をいたしております。従って失業対策事業費としましては、労働省の失業対策事業費の中に昨年よりも四十八億七千万円増額いたしまして、これは特別失対事業の方に二万人、それから一般の失対一業の方に十九万人、計二十二万人を一応対象といたしております。そのほか建設省の中にありまする道路整備事業等によりまして、予算で四十一億円増加いたしております。これと鉱害復旧によって四万五千人の吸収を予定いたしております。それから国勢調査、統計調査等によりまして約二万人を予定いたしております。結局総数十万五千というものを一応ただいま事業の対象にいたしております、これが二十五日間で組まれておりますので、これを二十一日間の就業にいたしますと約十四万人という人間が対象になっております。従ってあと残りまする六万名の者は職業補導所に入れまして、これは六カ月ずつやるのですから年に二回収容することによって、就職の機会と、それから就職が容易になるようなことをやることによって一応完全ではありませんけれども、二十万人くらいの失業者に対しては何とかやっていける、かように考え予算措置をいたしております。
  22. 井堀繁雄

    井堀委員 私は労働大臣にそうこまかいことをお尋ねして困らせようと思いません。しかし労働大臣として一番重要なことは、失業対策に対する大筋が立っていなければならぬと思う。それでお尋ねしておるのです。日雇い労働というものは表に出たものですから論議しやすいから最初に伺ったのです。今のあなたの御答弁は事務当局の数字上の説明なのです。だから私はこれは大した問題じゃないと思うのです。五十歩百歩です。二十万を三十万にふやしてということはあるかもしれません。そういう臨機の処置が講じられなければならぬわけであります。私は失業対策労働省の機構を改めようとする考え方については批判はあります。いろいろやり方はありますけれども、とにかくそういう努力の現われであるということに対しては好意をもって見守っておるわけであります。むしろこういう臨機の処置をとれるような態勢を整えておかないと、もう今日の失対事業法ではこれからの失業対策にはとうてい問に合いません。これから新しく起ってくる失業対策については、労働省としては少くともいま少し予算化ができぬにしても、準備態勢だけは整えておかなければいかぬ。そのことを実はお尋ねいたしたいと思って今申し上げた。  それからついででありますからもう少し申し上げますが、労働省の機構を拡大していこう、これは失業対策のためにいいことです。しかし中央だけを拡大いたしましても、さっき私が一例をとりました一番大事な末端にあって失業問題と取り組んでおります地方の職業安定所というものは、ちょうど中途半端な公務員制度、地方予算にも左右を受けます。もちろん中央の予算にも影響を受ける、でありますから、今地力の府県ではそれぞれ財政上の理由で整理が行われておりますけれども、やはりその対象に浮び上って出てきていることを御存じですか。こういうものをマッチさせるのに何かしかるべき手をお打ちになるかどうか、この予算の中に出ておりませんからお尋ねいたします。
  23. 西田隆男

    ○西田国務大臣 お答えいたします。私勘違いいたしてさっきの答弁をいたしましたが、現在労働省の失業対策をやっております範囲内で今後の失業対策解決をつけていくということば非常に困難だと考えまして、実は一局をふやしたいと考えましたけれども予算関係上失業対策としては部を作りまして、これに二課を設けて、中央を一応整備して、新しい観点に立つ失業対策を研究し実行に移したいと考えております。  それからあなたのおっしゃったように、末端が非常に窮屈な状態で仕事をやっておるということもよくわかっております。これには事務費等三千万円ばかり予算に計上いたしますことによって、現在常勤労務者として六百四十名ばかりを末端で一応増員を考えております。しかし決してこれで満足すべき仕事ができると考えておりませんが、一応そういう手を打つことによって、今まで非常に忙しい目にあわしておりました末端の業務を多少なりとも進捗させたい、かように考えて、一応そういう構想に基き、予算を、わずかばかりでありますが、とってやっていきたい、かように考えております。
  24. 井堀繁雄

    井堀委員 次にお尋ねをいたさなければならぬ事柄はたくさんございますが、時間がございませんので、要約してお尋ねをいたしますから、一つ能率的に御返事をいただきたいと思います。  今まで私のお尋ねいたしましたことで明らかになりましたが、日本労働人口に対するつかみ方についても、あるいは失業問題についても、非常に重大な問題をはらんでおります。その解決については、政府、野党の名の相違はなく、政治を志す者としては、このことについて一様に努力を払わなければならぬことは申すまでもありません。こういう意味で与えられた範囲内において問題を解決するという立場で一々お尋ねをいたしますから、こだわらないで御答弁をいただきたいと思います。  そこでその対策一つとして、日本労働者の生活を完全に保障する経済力が乏しい場合には、他の道をもってこれを与える。その点では私は一つには生活協同組合の行き方があると思うのです。その消費生活協同組合法の精神は私が説明するまでもありませんが、これをもっと活用しなければならぬ時期にあると思う。ところが予算を見ますと、わずかに二千二百五十万円ばかりの予算を一千万円に削っている。こういう点は小さなことのようでありますけれども、大体政府の性格を表わすには非常に大きなものだと思う。これに対する厚生大臣所見一つ伺っておきたい。
  25. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 消費生活協同組合法ができましたのは、御承知通り昭和二十三年の十月一日でありまして、当時消費生活協同組合法をつくることには最も熱心に参画をし、むしろ原案者の一人であったと記憶をいたしております。この厚生省の仕事を受け持ってみますと、消費生活協同組合に対する熱意が、薄いというのではありませんが、逐年生活協同組合に対するところの政府の施策が積極的でなくたりつつあったということは、厚相就任のときに認めたのであります。たとえば予算編成の当初におきましても、実は本年は貸付金あるいは補助金の非常な整理が行われまして、特に最初の原案などではこれを全部落すような考え方も生まれておったのであります。それで私は就任と同時に、勤労者階層の日常生活の合理化に非常に大きな影響を与える消費生活協同組合の運動というものは助長していかなければならぬので、一昨年の二千五百万円、昨年二千二百五十万円、ことしはまた二千万円と毎年削られておりますけれども、とにかく一応落しておったものを復活をすることには協力をいたしたつもりでありまして、今日消費生活協同組合は、当初のすべり出しが非常に順調だったにもかかわらず、やや停滞しておることの別状は認めざるを得ないのであります。しかし全般的に見ますと、生活協同組合は、井堀さんとも非常に御関係のようでありますが、とにもかくにも今日組合数が約一千六百、それから職域組合などばかなりの発展を示しておりまして、ここで活を入れるならば相当に伸びることもできるのではないか、かように考えておる次筋であります。
  26. 井堀繁雄

    井堀委員 生活協同組合については予算が格別要るわけではありません。自主的にやるわけでありますから、こういうけっこうな組織をどんどん拡大していくというような政治が行われなければ、金は出さぬし仕事はしないわということでは相済まぬと思うのです。こういう仕事こそ、予算を削るどころではなくて——五百万円削ったって何になりますか、全体では何にもなりません。そういうやり方が非常に大事なのです。厚生大臣としてはこれはえらい失敗なのです。これを復活するように御努力いたされたいと思います。もっとふやした方がいいのです。そういう仕事をおやりになることが大事なので、その点希望しておきます。
  27. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 初め二千万円すらなかったのをとにかく復活をいたしたのであります。しかし昨年から落ちておりますことははなはだ遺憾であります。その点は十分認識をいたしまして、その他の方法によっても助長していきたい。中小企業公庫法が生まれましてから、対象の一部には生活協同組合もなりまして、ただいま調べてみますると、一件だけ昨年中小企業公庫法によって貸付をしたという事実もありますので、これらの施策と相まちまして、いよいよ助長をしていきたい、かように考えております。
  28. 井堀繁雄

    井堀委員 大蔵大臣お尋ねをいたしますが、資金運用部のことについて、他の委員から質問があってお答えがあったようでありますが、資金運用部の原資のうち一体どういうものがおもなものであるかということについて、数字をちょっと明らかにしておきたいと思いますのでお尋ねをします。そちらに御用意がなければけっこうであります。この前の資料によりますと、郵便貯金、振替貯金あるいは簡易保険の郵便年金、厚生年金というのが一番大きな数字で、全体のうちの約八割を占めておる。この数字には間違いがないか。それがどういう性質のものであるかということは私がお尋ねするまでもないと思うのでありますが、勤労者の零細な金であることには相違がないと思う。それから資金の運営面でありますが、そちらの方からいただきました資料のうちでは、開発銀行、輸出入銀行、電源会社、さらに帝都高速度会社といったような、営利を対象とし、あるいはそれに近い、営利を追求できるような方面にかなり多額の運営が行われておるようでありますが、こういうものについて私どもはどうしても納得がいかぬわけです。そこでこういう実態から見まして、当然勤労者の零細な金が大蔵省にこういう形で管理されておりますから、その運営に当っても、勤労者のために大幅な還元連営が行われるというのが当然ではないかと思うのでありますが、この点に対する大蔵大臣所見を伺っておきます。
  29. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。ただいま御指摘の数字につきましては、後ほど差し上げますことにいたしたいと思います。借金運用部の資金が零細な資金から集まっておるということはその通りであります。従いましてこれが運用につきましても、できるだけそういう預金の集まった方向に運用していくということは、私はやはり考えるべきことだと思っております。
  30. 井堀繁雄

    井堀委員 数字の点については大事でありますから確認をしておきます。そちらからいただいた数字に基いたのでありますが、総原資が七千七百二十四億余円でありますが、そのうち零細な郵便貯金、簡易保険、厚生年金の積立金が総額で六千八百五十八億余円になっております。この点は間違いないだろうと思いますが、これをまず確認をいたしておきます。それから開発銀行、輸出入銀行、電源会社、帝都高速度等のこういう方面に運用されておるということも間違いないと思いますが、これを確認された上で、今御答弁のありましたように、こういう原資の性質からいって、還元融資をすることを御同意されましたが、そこで具体的に一つお尋ねをいたしたいのであります。  先ほど来の私の質問全体から想像していただけばわかると思うのでありますが、日本経済復興のために一番重要な、しかも一方には制約を受けて設備の積極的な近代化を行うということがむずかしい時代には、労働の資質を引き上げて、労働生産性を高めていくということが、今の日本にとって一番容易な道であると思う。それを行うためには、労働者の、働く人々の生活の安定をはかることが急務であります。さらに今日の工業は組織的なものでありますから、やはりばらばらな労働者の扱い方ではなくて、組織的な人格を尊重して、これを有機的に組み立てていくというやり方が好ましいのでおりまして、これは申すまでもありません。こういうことをやるためにあとう限りの処理を講ずる——私はないものを持ってこいとは申し上げません。今のように七千億に近い労働者の零細な金が集まっておるのでありますから、そういう金を還元融資するということは決して不可能なことじゃないのであります。それが消費生活協同組合の運転資金になったり、あるいは労働者の保護のために積極的な活動をしておりまする労働金庫のようなものに預託するというような道は、私は当然だと思いますが、こういう具体的な措置をおとりになる御決意があるかどうかを、この機会に伺っておきたい。
  31. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。具体的な例として労働金庫の方に運用するか、こういうお話が出ましたが、今それについて、長期的の融資については考えておりませんが、必要があれば短期で融資をするということは考えてもいいと思います。これは要するに必要があればやります。二十九年度でもある程度の融資が行われておったと思います。
  32. 井堀繁雄

    井堀委員 私は、大蔵大臣の無誠意な態度はどうも遺憾に思います。はなはだ失礼な言い方ですけれども。今申し上げたようにこれはむずかしいことじゃない。一兆円の予算をどうするとかいうようなことじゃないのです。労働者の金を大蔵省が預かって、これはあなたの意思で動くのですよ。そういう金をすぐやろうというくらいの御返事ができなければならぬはずだ。こういうことをおやりになるのに何かむずかしいことでもおありですか。もちろん諮問機関はあるようですけれども、諮問機関といえども次官クラスはごく一、二の者が入っているだけで、実際活用されておりません。あなたがおやりになろうとすればできるのですが、この辺についてもう一ぺんはっきりお答え願いたい。
  33. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします、これはいろいろと考えようがあると思いますが、現在の資金の運用方法によりましても、できるだけ勤労大衆に対しまして雇用の機会を与えるように——御承知のように産業資金は非常に不足をいたしておる。従ってこういうふうな方向に回すことは、何も勤労大衆の生活向上に反するわけではないのでありまして、まず雇用の機会をつくろう、こういうような考え方です。しかし今のお考えのような点については、今後原資の集まり状況等において考えることはむろんいいだろうと思っております。
  34. 井堀繁雄

    井堀委員 大蔵大臣は今けしからぬことを言うと思うのです。雇用の問題についてあなたができるものですか。さっき数字の上で議論されたように、事実は動かぬのですよ。あなたが言おうとすることはきっとこうでしょう、労働者の金をしぼり上げて、日本の大口資本家に貸して雇用増大をはかる、こうおっしゃるのだろうと思う。私は資本主義を否定するものではありません。現実を認めてかかっている。だから全体的の操作の中でやるのはいいのです。しかしこういうように明らかに労働者のために積み立てられておる金なんです。厚生年金法をあなたは御存じでしょう。郵便貯金や簡易保険のことを知っておるでしょう。日本資本蓄積を援助するという行き方は私ども否定するものではありませんけれども、そういう金まで動員してそっちに持っていって雇用増大するという答弁はおかしいと思うのです。その点は大事な点ですからこの機会にはっきり伺っておきたい。
  35. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。決してお考えを否定しておるわけじゃないのでありまして、なるべくそういうふうにするように、たとえば勤労者の住宅についても、むろん満足のいく状況じゃありませんけれども、できるだけふやしていく、こういうふうな資金を出しておる、こういうふうなことで、決して否定しているわけじゃないのです。
  36. 牧野良三

    牧野委員長 時間がないのでこの程度で……。
  37. 井堀繁雄

    井堀委員 時間がないので残念です。住宅の問題は建設省の関係に伺おうと思ったのですが、今大蔵大臣から発言がありましたが、——もちろん住宅資金の問題について一番いい方法は、公団とか営団その他の方式はあると思うのですが、自主的にやるのが一番いいわけです。そういうものに安全な、しかも確実な方法で資金の道をつけてやることが一番望ましいということは、そう議論はないと思います。そういう場合に、今日労働金庫の制度は私は一番合理的なものでないか、こういうあるもの、活用する道まで開けているものにそういうものを動員してやることが望ましいということを申し上げておきまして、趣旨には反対されぬと申しますから議論はいたしません。ぜひ実行を要望しておきたいと思います。  最後に、総理がいらっしゃればぜひ明らかにしたいと思いましたが、総理がいらっしゃいませんけれども、これは非常に重大な国際的な関係を持つと思いますのでお尋ねいたしておきます。それは昨日のICCの第十五回総会の開会式に鳩山さんが、総理の立場であろうと思いますが、あいさつをいたしております。そのあいさつの中で、いずれの新聞にも大体同様の趣旨が書いてありますが、アジア地域は人的物的に膨大な資源を有しながら、資本及び技術の不足のために開発が十分に進展し得ず云々、こういう言葉を使っているわけであります。その全体の趣旨は私どもはよく了承ができるのでありますが、ここで聞き捨てならぬことは、アジア地域——日本だけてありません、アジア地域と言っておりますが、その人的資源という言葉を使っている。この人的資源という言葉はたびたび、戦争中にも問題になり戦後にも問題になったのです。不用意にお使いになったんだと思いますが、しかし公式の場、しかも国際的な会議日本の国を代表してごあいさつをなさったのでありますから、それについては慎重に原稿をとりまとめたものと私ども思います。もちろん閣議に諮ったかどうか、それは知りませんけれども、こういう公式の場において人的資源というような言葉が使われるということは——日本の国際的な地位が非常に微妙であります点から判断いたしまして、こういう言葉の趣旨を一体どういう工合におとりになって発表されたのか、この機会に副総理からでけっこうでございますから、伺っておきたい。
  38. 重光葵

    重光国務大臣 この文字を用いました趣旨は、これは御了察を得ると思いますが、多くの人員を持ち、多くの労働力を持っておるということなのでございます。文字そのものが用語としてあるいは不適当であったかもしれませんが、それは精神はそこにないことを一つ了承願いたいと思います。
  39. 井堀繁雄

    井堀委員 私もそういうふうに理解をいたしたいのでございますが、しかしここに人的あるいは物的と、物と入間を一緒に並べておる。これを私がやかましく言うのは、先ほど来も言っておりますように、テープ・レーバーだとかあるいはソーシャル・ダンピングだとかいうことは、形に現われてきて問題になるのではない。民主主義、民主主義と口に説き、また私は特に鳩山さんの友愛精神は耳にこびりついておりますが、友愛精神は表現の仕方はちょっと古いけれども、言うまでもなく民主主義につながる。民主主義というものは人格尊重の上にある。物と人間とを並べて考えるということは、単に不用意だということでは許されまいと思う。もし副総理のようなお考えであるとするならば、もうこれは世界に電波で通じておりますから、そういう誤解を一体どうして解消される御意思ですか、その点だけ一つ……。
  40. 重光葵

    重光国務大臣 私は鳩山総理のさような問題に対する精神は、世界に対してはあまり誤解がないと実は考えております。ただ用語の不用意な点は御指摘の点があるかもしれませんが、それについて非常に多くの誤解はまだ生じておりませんので、なお用語の点においても十分注意をして万一の誤解を解きたい、こう考えております。
  41. 井堀繁雄

    井堀委員 私は今後のことを伺っておるのではありません。あなたはこういう誤解を与えていないとおっしゃいますけれども、これは実はたびたびあったことなのです。そういう考えだとすると、さっきあなたのおっしゃられたこととまるで意味の変ったことを御答弁なさることになる。不用意でこういう言葉を使ったという以上は、不用意は不用意なのです。それをとがめだてするのではありません。しかしそれが大して影響はないということになると、また問題は別なのです。私は影響は甚大だと思う。影響が甚大でないと言われることは、私はますます誤解をたくましくすると思う。ここは公けの場所でありますから、そういう点で私は対外的の影響をおそれるので、もう一度善意にあなたの考え方をただしておきます。
  42. 重光葵

    重光国務大臣 私の申し上げましたのは、さようなことで鳩山総理自身の精神について誤解を与えしめてはならぬから、それについては十分な努力もし、必要ならば手段も講じたい、こういう意味のことを申し上げたつもりであります。
  43. 牧野良三

    牧野委員長 どうぞこの程度におとどめを願いたい。
  44. 井堀繁雄

    井堀委員 私は影響が非常に甚大だと思いますので、十分善処されんことを要望いたしまして、私は終ります。
  45. 牧野良三

  46. 野澤清人

    野澤委員 総理大臣質問しようとして通告しておいたのですが、おいでにならないようでありますので、副総理に、きわめて簡単な事項でありますのでお尋ね申し上げたいと存じます。  鳩山内閣の厚生行政、特に社会保障の面に関しまして、選挙時における公約は非常に広汎な内容をもって公約されたのでありますが、この鳩山内閣の一枚看板とも称すべき社会保障制度というものは、一体どういうふうになったかという点であります。そして本年度の予算編成に際して社会保障を意識的に効果あらしめようとしました政府の意図は、どういうところに現われているかということについて、第一にお尋ねをいたしたいと存じます。
  47. 重光葵

    重光国務大臣 鳩山内閣として予算編成に当って社会保障制度の重点をどこに置いたかというお尋ねと拝聴いたしました。予算編成におきましては、本年度は失業対策を中心とした社会保障制度の強化に努めたのでございます。しかしもとより社会保険の内容を充実させるためにも努力をいたしまして、それぞれ所要の経費を計上することに努めたのでございます。
  48. 野澤清人

    野澤委員 今年度の予算編成に関しては失業対策を重点にしたということであって、それに付帯して社会保険等の問題も取り上げたということでありますが、それでは副総理としまして社会保険等に対してどういう点がこの予算に盛られてあるとお気づきになっておりますか、お答えを願いたいと思います。
  49. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 私から……。
  50. 野澤清人

    野澤委員 あなたに対して質問しているのじゃないのです。
  51. 牧野良三

    牧野委員長 外務大臣でありますから御存じないと思います。厚生大臣からお聞きになる方が適切だと思いますが、いかがでしょうか。
  52. 野澤清人

    野澤委員 委員長横暴だと思います。私は総体的な予算編成の方針を少くとも内閣の責任において立てる以上は、社会保障制度としてあれだけ国民に公約をしておきながら、どこに重点を置いたかということを尋ねるのであります。委員長のおとりなしはしごく御親切でけっこうでありますが、私は副総理にお尋ねをいたしております。
  53. 牧野良三

    牧野委員長 横暴でなくて親切であります。御了承を請います。
  54. 重光葵

    重光国務大臣 私ははなはだふなれで御満足の行くような御答弁ができるかどうかわかりませんが、今の問題につきましては健康保険を中心にして進んで参ったのでございます。
  55. 野澤清人

    野澤委員 それだけ聞けば十分であります。  せっかく川崎厚生大臣が答弁したくてうずうずしているようでありますから、厚生大臣に一応お尋ねをしたいと存じます。社会保障制度の問題について、昨今のわが国の国情といたしましては、失業問題あるいは社会保険の問題、さらに住宅等、国民の生活向上、生活の安定という面について、多種多様な面から取り上げられることは当然であります。ただいまも副総理のおっしゃられたように、本年の予算編成に際しては失業対策や健康保険を重点とされてやってきたということでありますが、わが国のこの社会保障制度の進路について従来から今日までながめますと、果して一定の方針と企画がされておったかどうかと疑わざるを得ないのであります。しかも今日わが国の政治の自主性が十分に保持されないような政治情勢であり、わが国の経済もまた自主経済を確立するには至っておらないのでありますから、もちろん社会保障制度のみを責めるわけには行かないと思うのでありますけれども、今度の社会保障制度として政府が打ち出しました中において、この社会保険等に対する予算上の措置並びにこれに対する対策として、厚生大臣はどの程度予算をお組みになり、どの程度の企画をお持ちになっておられるか、明快な御答弁を願いたいと存じます。
  56. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 本年度の予算編成の要綱につきましては、副総理からお話になりましたように、社会保障制度の拡充ということは、まず第一に、昨年以来とられてきておるデフレ政策のために出ておる失業者に対して手当をしなければならないという考え方から、失業対策というものが緊急な繰越として登場してきましたので、これは労働省の専管でありまして、私の力とは直接の関係がないにもかかわらず、社会保障制度の推進という積極的な部面からすれば、はなはだ遺憾なことではないかと私は考えております。しかしその消極的な部面である失業対策を一応片づけなければ、積極的な面の開発ということもなかなか今日の情勢からしてはできないのでありまして、そのような意味合いからいたしますれば、今年度の予算は民主党が選挙で約束をいたしましたことに対して、十分にこれを果したとは私も思っておらないのであります。しかしながら、民主党が約束をしました公約のうち、序列をつけて一番、二番、三番というような、歳出予算を組む際における重点をどれに置くかということについては、閣内においてもいろいろ議論がありまして、決して、どれが第一、第二ということはありませんけれども、公約の建前からいたしまして、住宅政策、減税、社会保障というような大体の序列がついたように思うのであります。そこでその際におきまして私が閣内に入りますとともに配られました要綱の中には、失業対策を中心とする社会保障ということが書いてある。この予算編成の要綱に対して、当時の選挙に臨んだときの民主党の考え方から疑義を抱きましたので、私は失業対策と並行して、社会保険を中心にする積極施策の方にも振り向けなければならぬということを閣議でも申して、その社会保険の強化ということについては、一応当面する健康保険の赤字財政というものを食いとめなければならないというふうに考えをいたしたのであります。もとより今後の社会保障制度の推進に当りましては、健康保険というような一定の職場に限られたものだけを強化するのではなく、やはり終局の目標としては、全国民を対象とする保険制度の強化の方にむしろ重点を置くべきではないかというような意味合いからいたしますならば、今度の予算をながめてみますと、もとより国民健康保険等に対する助成は相当のことをいたしておりますが、これをもって満足をいたしておるのではありません。しかし全体的に考えますと、今まで社会保障費は、大体総額におきまして九百二、三十億の程度に低迷しておったのでありますが、本年は失業対策費全体を含めて、少くとも一千億の山を越さなければ、国民に対して社会保障制度が前進をしたという印象も与えないし、また充実した施策もとっておらないという非難をこうむるのではなかろうかということを考えまして、種々予算編成の途上に、この予算の前進に努力いたしたつもりでおります。しかしこれをもって満足をいたしておるのではありません。  さらに、御質問の点に、将来どういうような施策を中心にしてやっていくかということでありますから申し上げますが、私は社会保障制度の中心はあくまでも社会保険の強化にあるという考えをいたしております。
  57. 野澤清人

    野澤委員 非常に懇切丁寧な御回答ですが、実は時間がないので、今後の御答弁はもう少し簡単に、要領よくお答えを願いたいと思います。  次に、本年度の予算を見ますと、ただいま川崎厚相の言われましたように、重点的に国民健康保険の赤字解消というような対策が打ち出されておりますけれども、この問題を拾ってみますと、どう見ても一時的な弥縫策にしか見えないような感じがいたします。そこで私は振り返ってみて、昭和二十八年の国会だったと記憶いたしておりますが、国民健康保険の赤字対策の際にも、二割補助するかどうかということで、かなり議論が尽された。しかもその後この国民健康保険の二割補助が確定して、現在までやって参っておるのでありますが、最近健保の赤字が想定されるということで、大臣は軽率にも国庫負担する、こういうことを言明されております。しかも新聞紙等を見ますと、民主党の青年将校川崎大臣が、ということで非常にほめられております。七十億からの裏づけをとったということでほめられておりますが、この国庫負担を便宜主義的にやられるということ自体が、国家として将来大きな禍根を残すのじゃないか。特に大蔵大臣お尋ね申し上げたいと思うのでありますが、今後社会保険あるいは国民健康保険等の財政の窮迫を告げてきた場合には、これを一つの慣例として、今後国庫で長期資金を貸し出したり、また無意味に国庫補助をやるお考えがあるのかどうか、この点について、簡単でけっこうでございますからお答えを願いたいと存じます。
  58. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えを申します。今後の財政のいき方にもよることでありますが、私の考えでは、保険はやはり与えられたる要件において保険の会計が収支の均衡を得るようにするといういき方がいいだろう、こういうふうに考えておるのであります。今回の措置を、とりあえず臨機の、一応の赤字の解消、赤字を始末しよう、こういうふうに考えておるのであります。今後の問題については、これは財政の力とも関係がありますので、十分検討を加えなければなるまいと存じます。
  59. 野澤清人

    野澤委員 それでは川崎厚生大臣お尋ねいたしますが、過去の実績と今後の問題と対比しまして、健保の赤字というものは、すでに一昨年あたりから想定されていた問題であり、しかも抗生物質の使用等によって、あるいは入院費の点数値上げ等の問題から当然想定されていたにもかかわらず、政府はこれに対して積極的な対策をとらないような感じがいたすのであります。この点に対して大臣としてどういう御所見がおありでありますか、お伺いいたしたいと存じます。
  60. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 野澤さんには、はなはだこの問題だけは失礼でありますか、これはおととしのときに赤字が予想されておったのでありますから、これに何も処置をしなかったのは、自由党内部の責任でございます。
  61. 野澤清人

    野澤委員 青年将校の御答弁しては少し行き過ぎじゃないかと思いますが、そうした赤字の予想される内閣を引き継いできまして半年間、私は川崎さんはどのような考え方をもって厚生大臣の職におつきになったか。しかも今度の赤字補填の問題として七十億の国庫支弁ということを考えられましたが、それでは今後赤字を解消するためにどういう構想と企画とをお持ちになっておるのか。簡単でけっこうであります。
  62. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 昭和二十五年の十一月でありますか、社会保障制度審議会が、将来日本の社会保障制度を推進していく上におきましては、国民健康保険、つまり一般国民に付する健康保険に国庫補助をなすべきと同時に、一方被保者に対する保険、すなわち健康保険に対しても補助をなすべきであるという建議勧告を行なっております。私は自分の考え方として、社会保障制度審議会がいたしました勧告の線には同調をいたしております。そういう考え方でやりたいと思っておりますから、従って二割の国庫負担を理想といたしておるのであります。今日の段階では、今日の財政状況がそれを許しませんのでありますが、将来はやはり赤字といなとにかかわらず、この問題を契機にして国庫負担というものを多少でも増していきたい。国民だけにあるいは被保者だけに責任を負わすのでなしに、政府もまたこれだけの組織に対しては医療給付費の一部国庫負担はなすべきだ、かような考えをいたしておるのであります。
  63. 野澤清人

    野澤委員 ただいまのお答えで医療給付費の一部を国庫負担するというお話が出て参りましたが、現在の日本の社会保障制度が無計画であり、無企画であり、無統制であるといわれて、ややもすれば現在のままでいくならば、社会保障制度のために国費の乱費がかさんでしまうというような見方が多いのであります。従ってこれらを整理統合しようではないか、こういうような意見も出ておるのでありますが、川崎大臣としていろいろな献策もあり答申等もありましょうが、それらの中で整理統合の問題を直ちにやる御意思があるのかないのか、お尋ねをいたします。簡単でけっこうでございます。
  64. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 これは確かに御指摘の通りでありまして、整理統合をする方向へ向けたいと思っております。向け方は被保険者の保険が一本、それから国民全体を対象にする保険、こういう二つの系列へ向って今までの非常に複雑多岐な社会保険の形態を整備していくことが理想ではないか、かように考えております。
  65. 野澤清人

    野澤委員 重ねてお尋ねいたしますが、それでは赤字の根本原因というものが三つあげられておりますが、どれを最大の原因とごらんになっておられますか。医療機関の普及発達による利用度が増強したことが一つ。医学の進歩による医療内容の改善、つまり医療費が増高したということが一つ。第三には保険料収入が減少している。この三つの問題が大臣から説明になっておりますけれども、どれを最大の原因とごらんになっておられるか、一応承わりたいと任じます。
  66. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 最後の収納率の不足の方は一番大きな原因ではないと私は考えております。医療費の増し高ということの方がむしろ医療機会が増大したよりも多いかとも思いますが、これは大体同列に考えております。
  67. 野澤清人

    野澤委員 そこで医療費の増大が並行して考えられるということでありますが、医療費の増大に対する現内閣の施策は、どういう具体的な案をお持ちになっておりますか。
  68. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 医療費の増し高については、ストレプトマイシンとかあるいはパス、ことに結核の方の医療に対する医療費が非常に高くなった。ことに保険医が緊急の対策としてこれに主力を置くものでありますから、従来よりも非常に増し高になってきたということもありますので、その点に対しては患者の容態その他に応じて適当な抑制を加えていかなければならぬというように考えるのでありまして、その内面指算はいたしております。
  69. 野澤清人

    野澤委員 医療費の問題についての具体的なことをお伺いしたのですが、たとえば医療保障というようなものを今後考えていきますと、第一には結核対策考えなければならない。第二には医療保険の整備統合の問題も当然起きてくると思うのであります。さらにまた診療費の合理化の問題等も当然起きて参ります。あるいは診療報酬の支払い制度の改革の問題もあり、さらにひいては保険医の制度の根本的な対策等もあると思うのであります。いろいろな課題がありますが、この赤字を単に民主党内閣において七十億補てんしたというだけでは、日本の将来の社会保障制度の中核をなすこの医療制度というものが、根本的に手当がされないのじゃないか。従ってこうした点について、もっと具体的に、たとえば審議会を設置するとかあるいは特別な調査会を作るとか、またそれに対する推進を講ずるというような方途が必ずあると思うのであります。この点についてごく簡単でけっこうでございますからお願いいたします。
  70. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 御指摘の通りでありまして、ことしの赤字対策につきましては、一応七十億の問題に処理をいたしたのでありますが、これだけでは抜本的な措置とは言えませんので、そこで医療保険の収支財政に関する審議委員というものを設けまして——これは社会保障制度審議会とは違いますけれども、いわゆる健康保険七人委員会というものを先般設けまして、これによってただいま御指摘になりました諸種の問題に解決を与えていきたいという考え方であります。この七人委員会は、先日稻葉秀三君、今井一男君等の七人の方にお願いをいたしまして、五月十日に第一回の会合を開きました。その際いつごろまでに結論を出したらよいのかという委員の方の御質問がありましたので、私はやはり来年度の予算関係もあるから、とにもかくにも七月の末くらいまでには具体的な案を出してくれということを要望いたしておきました。
  71. 野澤清人

    野澤委員 七人委員会お話が出ましたが、この間厚生大臣は、厚生予算の説明の中に「抜本的な施策は、学識経験者等斯界の権威者をもって構成する審議会を臨時に設置いたしまして、その審議を待ってこれを確定する予定であります」と述べられております。今の通りで七人委員会が不服だというのではありませんが、特にこの斯界の権威者というものが、国会外にしかないというお考えで、こういう御決意をなされたのでありますか、国会内部におけるこの社会保険等の権威者と目される方々には御相談しなくて原案を作って直ちにこれを厚生大臣の決意としたいお考えなんでありますか、簡単でけっこうでございます。
  72. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 御承知通り、この社会保障全般の問題については、社会保障制度審議会という権威ある——これはまあ審議会では今日一番権威のある審議会ではないかと私は思っておるほどであります。その審議会もありますし、そこには有力なる国会議員の方々も多数参加されておりますので、その方々には、最後には社会保険審議会並びに社会保障制度審議会にこの問題はかけるつもりでありますが、早急に七月を目途として結論を出さなければならぬ関係で、先ほど申し上げました財政の権威者あるいは医療関係の権威者等の学者にお集まりを願って、手っとり早く仕事を進めていきたいというので、七人にいたしたのであります。
  73. 野澤清人

    野澤委員 よく趣旨はわかりましたが、ただ私一番心配しておりますことは、各内閣とも——これは自由党の時代においてもそうだったと思いますか、一つの施策を生み出す場合に比較的無責任な行動が多いと思うのであります。従って七月までに答申が来るということで発表しておるうちに、あるいは昨今の情勢では鳩山内閣がつぶれてしまうのではないか、あるいはまた七月か九月に延びたというので対案ができてなかった、対策ができなかった、こういうことではせっかく青年将校とほめられる川崎厚生大臣の施策としては、私もの足りないのではないかという感じがいたします。厚生大臣の責任を回避するような好都合な材料をなるべく作らぬように、強力に推進していただきたいと存じます。  次に、最近の日本の医療機関の末端において各種の医療団体が結成されておりますが、保険医を中心に幾多の問題がわきかかっておりまして、きわめて活発なる各団体の活動が開始されております。これに対しまして政府全体の責任として、どなたでもけっこうでありますが、特に日本共産党のこれら医療機関や組織に対しまして特殊な指道部を設けて、全国的な党活動を、合法的にあるいは非合法に浸透工作を行なっておるというこの平出夫に対して、全国民がほとんどこれは承知の上でおり、しかもまた憂える点であると思うのであります。これらの共産党の対策に対して、この内閣はいかなる対策をお持ちになっておるか、どなたでもけっこうでありますからお答えを願いたいと存じます。
  74. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 これは私は昨日の答弁のように間通えて答弁するとしかられますから、取り締り当局ではありませんから、私どもの実情だけを申し上げておきたいと思うのであります。最近、医療機関が多く設けられまして、たとえば集団面会あるいはアジ・ビラの配布、集団陳情による関係職員のつるし上げ、執務中の面会強要などの形をとりまして、相当に威嚇行為あるいは関係職員に暴行を加えたという事例の報告も受けておりまして、最近の様相は、ひとり政治的な問題だけでなしに、こういう医療問題を中心にして共産党系統の陳情などが行われておるという事実は、これを認めざるを得ないのであります。団体陳情といたしましては、生活を守る会だとかあるいは在日朝鮮統一民主戦線たどというものがありまして、その陳情内容などを見ますと、きわめて急進的、政治的な色彩の多いものであります。こういうような事態に対しましては、われわれは、もし非常に政治的な圧力によって、ただいま申し上げたようなことで暴行を受けるというような脅威にさらされたときには、治安当局との連絡を緊密にいたしまして、かようなことを未然に防ぎたいということが厚生省としての考え方でございます。
  75. 野澤清人

    野澤委員 所轄違いの川崎さんからお答えを願ったのですが、それでは川崎さんは、現在日本共産党の浸透作戦というものによって下部の各医療機関に働きかけがあるとお認めになりますか、ならないですか、この点お伺いいします。
  76. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 そういう傾向があるように見受けられます。
  77. 野澤清人

    野澤委員 傾向だけでございますか。
  78. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ええ。
  79. 野澤清人

    野澤委員 それでは大麻国務大臣お尋ねいたしたいのですが、警察権を指揮されますあなたの立場から、これらの共産党対策に対してどういう手を打たれておるか、またこういうことを御承知なのか承知していないのか、お伺いしたいと存じます。
  80. 大麻唯男

    ○大麻国務大臣 お答え申し上げます。警察当局といたしましては、不法行為がある場合には厳重な態度をもって取締りをいたしております。
  81. 野澤清人

    野澤委員 きわめて不満足な答弁でありますが、この点はゆっくり勉強をしていただきたいと存じます。ただ私がなぜこの問題を出したかと申しますと、今度の国庫負担の問題が、ややもすれば医療制度を中心にして共産党の戦術に乗せられやしないかという心配のためであります。それはどういうことかと申しますと、社会保険の医療保障ということを中核にしまして、国民の健康をめぐってきわめて巧妙に共産党が活躍をいたしておるのであります。しかも国内の攪乱はもちろんのこと、平和闘争の美名のもとに発展するであろう革命への一大温床になるのではないかと憂えておるのであります。たとえて申しますならば、昨年の大阪における保険監査の闘争や、東京における点数引き下げ反対の闘争等で明白な通り、これら社会保険医療の内部に浸透を続ける赤い魔の手に対し、さらに深刻にして絶好のチャンスを与えつつあると思うのであります。鳩山内閣はこの点に関しまして、単に国庫補助をするから、国庫負担をするからということで赤字を片づけておりますけれども、その温床となります医療費算定の基準やあるいはまた社会保険の点数改正等の問題について、どうして積極的な施策をとる決意をされないかという点であります。もしもこのまま放任されますならば、おそらくこの赤い魔の手というものは巧みに、安かろう、よかろうという診療を国民に要求をして、宣伝する一方、国費の乱費をはかるために、いわゆる国庫負担ということを強く打ち出して参ります。この国庫負担というものは、単に保険財政ばかりでありません、これらの健康保険や国民健康保険ばかりでなしに、今後幾多の社会施設に対しては、ぐんぐん強い力を持って、大衆の力によって、国庫負担というもののわくを広げようとねらっておるのであります。しかも一方において広げておいて、他方において医療費算定の基本となるべき細部の対策ができてないとするならば、巧みにこの共産党の宣伝に利用され、党勢拡張に利用されるということを憂えておるのでありますが、この点に関していかなる御所見をお持ちでありますか、お答えを願いたいと存じます。
  82. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいま指摘をされたような傾向が見られないことはありませんけれども、国庫負担の問題も一つの、たとえば共産党がそういうことを要求する大きな目標にはなっておろうかと思いますが、財政状態と十分に密接をいたしました要求でありますならばともかく、たとえば今日共産党などの申しておりますのは、国庫負担五割とかあるいは四割かと言いまして、ほとんど実情に即しないことでありますので、財政事情と十分照らし合した内部においての要求であるならば、私は国庫負担というものは当然やるべきではないか。そういう財政と密着をした議論をしておる民主党であるとか、自由党であるとか、あるいは社会党の御要求の程度であるならば、決して不安な様相はこれによってみなぎって来るとは私は考えておらぬのであります。しかし国庫負担をする以上は、やはり一方において被保険者も保険財政の危機を救うために料率の引き上げに応じてもらいたいという意味で、一方においては料率の引き上げなどを行い、標準報酬の改訂などを行おうとしておるのでありますから、従ってその意味では三者負担といいますか、国家も、公共団体も、同時に被保険者も負担をするということになりますれば、決して国庫負担を非難をするような議論は起ってこないのではないか、払はかように自信を持っておるのであります。
  83. 野澤清人

    野澤委員 もっとものように聞えますが、川崎君のお考えとしては少し足りないのではないかと思うのです。それはどういうことかというと、国庫負担そのものは何ら差しつかえありませんが、共産党の機関誌の「組織者」というものの号外にこういう記事が載っております。これは「社会保険改善の闘いを国民的闘争に発展させよ」という三月会メモの一節でありますが、「こんどの闘いの特徴点は次の三点である。(1)闘いが病院を含めて十一万の全医師の闘いとして発展していること。(2)医師自身が自分達の要求をしっかりと身につけ、その本質を理解しはじめていること。(3)この闘争が最初から党グループによって意識的に準備され、指導されたこと。この三つの事実は、闘いを国民と医師の側に有利に導く保障となっている。周知のように、この闘争は大阪における監査闘争と東京における点数引下げ反対の闘争がきっかけであった。この部分的な闘いが、直ちに全保険医の闘いに発展した根拠は、各種の医療社会保険制度をめぐって、米日反動と保険医との間に、基本的に対立する矛盾が存在し、しかも、この矛盾がのっぴきならないところまで深まって来ていたからである。この闘いに動員されている医師の要求は、現在単価引上げ、点数改正、制限診療反対、税金、の特別措置、ファッショ的強制監査反対、医薬分業反対などの要求となって現われている。これらの要求の中で、保険診療価格、即ち単価、点数改正の要求こそは、保険医と米日反動との対立をのっぴきならないものにしている当面の基本的要求として発展している。」と出ておるのであります。さらにこれに語を継ぎまして、「MSA再軍備政策を平和政策にかえさせないかぎり、実現しない内容をもつ要求となっている。つまりこの要求は国庫負担なしには闘いとれない要求であるからである。」と解説をいたしております。さらにまた「医療保険制度の改善、つまり、国庫負担の要求は、国民各層の要求である。だからこそ医師の闘いは、現に労働者、農民を中心とする国民共同の戦いの方向に発展しつつあるのである。」とかように解説をいたしております。従って共産党の内部指令と申しますか、こうしたものから判断いたしてみますと、ここにも指摘されております通り、単価の引き上げとか、点数改正、制限診療反対、税金の特別処置あるいは強制監査反対というような問題を指摘しております通り、これらに対する根本施策が行われないで、果たして医療制度あるいは社会保障制度というものが完全なる状態に持っていけるかどうかという点であります。従って私が温床と申し上げたのは、一方において内部のこうした整理をしないで、単に国庫負担するしということは、むしろ共産党戦術に乗せられるすきを与えやしないかと心配するのであります。この点について簡単でけっこうでありますから……。
  84. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいま御指摘の点は種々ごもっともな点がありまして、事実銀座街道などにも、日本共産党の支部の名前をもって、国庫負担何割獲得要求などという、ビラやパンフレットなども散見をいたしまするし、相当熾烈な要求になって、それがいかにももっともであるかのごとき宣伝をなしつつある傾向については、十分戒心をいたさなければなりません。しかしながら国会の社会労働委員会の各位などの非常な御協力によりまして、立場の違いこそありますけれども、また主張の差異こそありますけれども、大体できることとできないことについては、相当に御認識をいただいておるのではないかというふうにも考えておりますので、それらについては十分戒心をいたしますとともに、ただいま御指摘の諸般の政策を整理しろということはごもっともでありますからわれわれは十分に他の大臣とは違います——他の大臣というのは今の他の大臣ではございません。前任者である厚生大臣のごとき安逸なる今日までの諸施策とは違いまして、十分にそれらの体系を整えていきたい、かように存じております。
  85. 野澤清人

    野澤委員 非常に明快な御答弁を得ましたけれども、これらの幾多の大きな問題を包蔵しています事柄に対して、川崎さんがどんなに馬力があっても、そう簡単に私は片づかないと思うのであります。これに対してそれほど安価にいけるならば、今日のような事態は発生しないと思うのであります。特にMSAの再軍備政策と社会保障制度の関連性については、おそらく今後の共産党戦術としては、民主党内閣のこれらの両面作戦についても、かなり深刻な闘争が起きてくると思うのであります。従って川崎さんが馬力をかけて、前厚相と違い完全にまとめあげますというだけの決意は十分にわかりますが、その具体的方法については、きわめて私心配をいたしておるのであります。従ってこの点に関しましては、ぜひとも川崎さんの馬力にプラスするところ、施策をできるだけ早くお示し願いたい。特に政府の態度を見ますと、従来厚生省は、先ほども申し上げました国民健康保険の赤字対策の場合にも、全く投げやりであります。出たとこ勝負で、赤字が出てしまったから何としてくれと国会に持ってきております。今度の建保の対策について示せと先ほど申し上げましたところ、それは一昨年からそういう予想がついておったと大臣は答えていますが、大臣を私は責めるのではありません。要するに政府内部の局、課長が、少くとも今年は四十億いく、来年は七十億の赤字になるという予想がついたならば、なぜもっと具体的にそれらの問題についての対策を積極的に誠意をもってやらないか。つまり厚生行政の最も欠陥であるとされる予算交渉の上において、常に割が悪いといわれるほど弱体であるということは、大蔵大臣予算を要求する際に、対案としてしっかりした政策を持たないから、こういう結果になるのだと思うのであります。しかも役人がそうした弱腰であるがために、こうしな欠陥が生まれる。そこでこれは希望でございますが、どうかそうした事柄について、一つ一つ問答は避けたいと思いますので、ただ今後厚生大臣立場として、十二分に細部の点にわたってお進み願いたいと希望いたすのであります。  ところで従来のこの厚生行政に対しましては、社会保険の点数問題とか、あるいは点数単価の引き上げの問題、さらにはまた医薬分業等の問題について、世間一般では、ややともすると国会に対する政治的な圧力ということが問題になっております。新聞紙にもよく出まして、医師会のいわゆる政治力というようなことも大きく取り上げられております。こうした問題について、少くとも政府の諸公は、果してそういう圧力がかかったことがあるとお考えになっておりますか、なかったとお考えになっておりますか。これは副総理にお尋ねするのが至当だと思います。
  86. 重光葵

    重光国務大臣 そういうことが種々取りざたされておったことは私もよく存じておりますが、その真相については十分触れておりません。私はそういうことによって動かされたとは考えておらないのでございます。
  87. 野澤清人

    野澤委員 それでは一応具体的に申し上げたいと思うのですが、実は昨年の汚職、疑獄あるいは乱闘国会等の影響を受けまして、国会議員も国民も、ひとしく政治家だけ自粛が叫ばれておる。過ぐる総選挙の際にも、中央、地方を通じて、国民にとってきわめて暗い影を投げ与えられた部面があると私指摘いたします。それはどういうことかと申しますと、各都道府以内に大きな組織を持つ全国的な組織を基盤にしまして、相当の政治資金がばらまかれたという事実であります。これらの事柄は、私が単に一つの団体による政治的圧力と申し上げたことは語弊があるかもしれませんが、白昼堂々と国会に現金がはらまかれたとか、良識ある議員が買収されたという事柄ではありません。堂々と法網をくぐりまして、きわめて巧妙にこの選挙戦に対して相当の資金が各団体から使われているということであります。この事柄に対して、法務大臣でもあるいは大麻国務大臣でもけっこうでありますが、そうした事実があると私は思うのでありますが、これらに対してどういう御見解をお持ちになっているか、お尋ねをいたしたいと存じます。
  88. 花村四郎

    ○花村国務大臣 お答え申し上げます。ただいまお話のありました医師会が選挙に対して多大の金をばらまいたという話はいまなお聞いておりませんが、もしもそういう事実がございますならば、具体的に指摘をしておっしゃっていただけば、またそれに対する考え方もあろうかと存じます。
  89. 野澤清人

    野澤委員 語るに落ちるという言葉がありますが、私は、各都道府県に組織を持つ全国的な大きな規模の上に立った組織によって金がばらまかれたということだけを申し上げておきます。医師会という言葉は一つも使っておりません。どういう根拠から、大臣は、医師会というお言葉をお使いになったか。それを釈明していただきたい。
  90. 花村四郎

    ○花村国務大臣 実は今金をばらまかれたというお話があったのですが、何人がばらまかれたのかその主体がわかりませんでしたので、私は実はお隣の川崎大臣にお聞きをしたところが、医師会ということを言われた。こういう話であったものですから申し上げたのですが、もしさような御発言でなければ、それは取り消すことにいたします。
  91. 野澤清人

    野澤委員 責任ある大臣がしかも簡単に厚生大臣から聞いて取り消すというようなことは、これは国会を侮辱する大きな事柄だと思います。何ら団体を指摘もしていないのに、医師会ということを指摘されたということは、おそらく速記録にも残りますから、未来永劫この医師会の政治献金というものが、少くとも鳩山内閣の一閣僚の脳裡にも深く刻まれているという事実は残ると私は思うのであります。そこでこうした事柄について的確な資料を出してほしいというのでありますから、それを国務大臣に申し上げ、お尋ねをいたしたいと存じます。  従来の政治献金というものの内容中には、ある種の団体が政治資金規正法に基いて政党に献金したり、あるいは一部の候補者に提供するというような事柄でありますので、何らこれは陣中見舞として個人に献金しても差しつかえないと思うのであります。しかしながら、今のように特に医師会と称してばらまかれた事実があるなら出せということよりも、監督の立場におられます大臣としては、少くとも自粛選挙であるならば、そうした事実をお調べになって、そうして比較対照されることこそ最も選挙が粛正される原因だと思うのであります。選挙管理委員会等に届け出でたからそれで差しつかえないというような考え方でなしに、私はただ通俗的な常識論として政党にある団体から献金される金額の多寡を申し上げているのじゃありません。各個人の候補者に一万円とか三万円、五万円というような献金が出ておりますが、現在法務大臣なり国務大臣なりの立場からしまして、今日の貨幣価値から見て、政治献金、いわゆる陣中見舞というのは、政治常識から判断してもどのくらいが適当な額かということをお伺いいたしたいのであります。そうして事実については後ほど申し上げたいと存じます。
  92. 花村四郎

    ○花村国務大臣 選挙に関します寄付については、何らの制限がございません。
  93. 野澤清人

    野澤委員 それではお尋ねいたしますが、ある候補者が公職選挙法によって実際に支出し出した決算面を三十五万と届出をいたしております。そしてある特殊な団体から五十万の献金をもらったと仮定いたしますと、十五万は不当所得になるのでありますか。またその所得は何ら差しつかえないというお考えでありますか。五十万マイナス三十五万イコール十五万というものの所得は、どういうふうに大臣としてお考えになりますか。
  94. 花村四郎

    ○花村国務大臣 ただいま申し上げましたように、寄付については何らの制限がございませんから、従って支出よりも多い寄付を受けたからというて何らの違法性はないと申し上げていろわけであります。
  95. 野澤清人

    野澤委員 不得要領でありますが、制限がないことは先ほど来承知いたしております。私のお尋ねいたしていますのは、政治常識から考えて、そうした差額の出るような献金というものは一般国民が誤解しやすい。従って誤解されないような政治のあり力に持っていくべきであり、選挙のいわゆる献金というようなもの、支出というようなものも、一般選挙民から誤解されないようにやっていきたいというのが私の心づかいでありますから、この点もう一度お願いしたいと存じ出す。
  96. 花村四郎

    ○花村国務大臣 選挙の支出に対してなるべく誤解を避けるというお考えは、私どもも賛成でまことにけっこうでありますが、しかしさればというて選挙に関する寄付には制限がないのでありますから、この点は得付金が多いからというて、それに対してとやこう言うことは不適当だろうと思います。
  97. 野澤清人

    野澤委員 大体はっきりお答えが出てきたようであります。誤解を生じないようにすることは賛成だと言われますが、現に誤解を生ずるような金の使い方をし献金をしているとすれば、これに対して、将来選挙法の改正その他について政府は誤解を生じないような対策をとるお考えがあるかどうか、この点お伺いいたしたいと存じます。
  98. 花村四郎

    ○花村国務大臣 ただいまお話の改正については、今のところ何ら考えておりません。
  99. 野澤清人

    野澤委員 全国的な組織をもって活動している特定の団体と私は申し上げたのでありますが、この社会保険の医療問題については、とかくのうわさが新聞紙上その他に出ております。特に医師、歯科医師、薬剤師等の団体は、近年健保の一点単価、あるいは保険診療の課税の問題、医薬分業の問題等をめぐりまして、幾多の重要な問題を中心にして、各団体がいわゆる政治活動をしておるのであります。明朗なるべき民主政治の渦中において、ややともすれば一般国民に誤解を招くような行動が行われつつあるやに思われますので、この点に関して私は特にお尋ねをしたのでありますが、こうした点につきましても、何ら差しつかえないということであればこれはやむを得ませんが、たた国民に大きな疑惑を残し、将来の厚生行政上にも大きな汚点を残すと考えますことは、今度の選挙の際に、たとえば薬剤師協会から立候補いたしました会員としての立候補者に対する献金なら意味があります。医師会の会員の立候補者に対する献金なら意味がありますが、何ら関係のない立候補者に相当の黄金がばらまかれたということは、決して正しい政治のあり方ではないと私は思うのであります。この点につきましては、ただいま国務大臣の方でそうした問題についての具体的な例をということでありますから、事実根拠のあるお話を私は申し上げたい。それは東京都の選挙管理委員会に対しまして、日本医師会の別働団体である日本医師連盟、また日本歯科医師会の別働団体である日本歯科医師政治連盟、日本薬剤師協会の別働団体である日本薬政会、この三つの団体から届出を行っておりますが、その内容は日本医師連盟が約五千万円であります。日本歯科医師政治連盟が千二十二万円であります。日本薬政会が四百八十八万円であります。この三つの団体の政治資金の使い方は個人々々を明細に書き上げられております。たとえば日本医師会の提供いたしました総金額は四千九百何方で、五十万にやや近い数字でありますが、これらの金が何人にばらまかれたかと申しますと、正式に届け出たものだけでも百三十三名の候補者に贈っております。しかも口数にいたしまして百五十二日であります。百五十二日に分けまして百三十三の方に分けております。しかもまた歯科医師政治連盟の力では千二十二万というものを約五十四名の力に差し上げております。しかもこれらはほとんどそれらの団体とは何ら関係のない方であります。日本薬政会は十一名の力にこれを差し上げております。こうした政治資金の使い方というものについて、どんなに出しても差しつかえないという考えでおありならばこれはやむを得ませんが、この政治資金の使い方を個々に調べてみますと、ある府県の候補者のごときは、正式に日本医師会が届けている金額にもかかわらず、本人の収入には無届けであります。こうした事実をそのまま放任して選挙の粛清を叫んでも、とうてい満足な選挙粛正はできない。しかもまたこれらの献金が、やがては国会一つの政治圧力としてかかることも事実であります。昨今の医系の議員の秘密会議に、全然しろうとの人が参画しているやにも聞いておるのであります。これらは何を物語るかと申しますと、選挙の際における合法的な政治資金の使い方がこうした疑惑を生み、国民に誤解を投げ与えるものであると思うのでありますが、こうした点において、法務大臣といたしまして、あくまでどれだけの金額を出しても差しつかえないというお考えかどうか。この点はっきりした御答弁をお願いしたいと存じます。
  100. 花村四郎

    ○花村国務大臣 公明選挙の線に沿うて選挙を進めてもらいたいことは、何人も異論のないところでありますが、しかしただいまの選挙に関する寄付については、先ほども申し上げた通りであります。
  101. 野澤清人

    野澤委員 川崎厚生大臣お尋ねいたしますが、この問題に関しまして、選挙直後三月の、多分二十九日だと思いますが、ある県から選出された議員が、そこの町の医師会の者を集めまして、医薬分業の問題について二、三話をした際に、分業を実施しても、二十万からの都市において完全に調剤のできる薬局は一軒しかないということを、しろうとの代議士がはっきりと申し上げた。それからおかしいというので、その人の状況を選挙管理委員会で調べてみますと、十万円の献金をもらっている。こういうふうに選挙直後の、単に懇談会の席上であっても、わずかの献金がそれほど迎合しなければならない、おせじを言わなければならぬ、ここに今日の戦後における民主政治の腐敗堕落の根拠があると思います。従って少くとも今後の厚生行政を遂行する上においては、こうした面について的確な調査も必要でありましょうし、また一部の政治的圧力によって、保険監査に手心が加えられたり、一点単価の値上げが問題になったり、分業法案がやみからやみへと葬られるというような、こうした事実を再び繰り返さないようにしてもらいたい。特に昨年の十二月三日におきましては、保険医のいわゆる保険診療に対する減税のような問題も、これは自由党内閣の末期的な一つの現象だと私は思うのでありますが、その際にもすでに減税というものが打ち出され、しかもその際に働いた議員が二名、医師会の雑誌にはっきりと載っております。この二名の方の政治献金を調べてみますと、驚くなかれ八十万円も献金をもらっております。こうした政治と請託というものがかみ合っていくということが、今日の厚生行政の行き詰まりを招来しておると思いますので、こうした点について、川崎大臣は少くとも進歩的な青年将校であり、またりっぱな大臣でありますから、こうした圧力に抗して、あくまでも先ほど申された馬力によって、あなた白井今後の平生行政を完全に遂行する、立案する、対策を講ずるという御決意かどうか。こうした点についてはっきりした御言明をちょうだいしたいと存じます。
  102. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 先ほど以来法務大臣との間に、各種の政治団体が政治献金をした、その勢いをもって法案を阻止したり、あるいは社会保険の問題に対しまして圧力を加えるというような傾向があるという御指摘がいろいろありました。私はこういう情勢があるということだけは承知いたしておりまして、十分に戒心をいたしております。そうしてそういうようなことがかりに、政府国会に——国会はまた国会自身の御判断でおりましょうが、政府の上にかけられるようなことがありましても、それによって当然出すべき法案を出さなかったり、あるいは社会保険の問題を著しく一つの政治団体に有利に解決をするようなことは断じていたさないつもりでおります。
  103. 野澤清人

    野澤委員 御決心のほど承わりました。先ほどのこの細部の事項について一日も早く政府が積極的に施策をやっていただきたいと思うのでありますが、特に大臣の方で御承知かどうか存じませんが、最近民医連の保険医の監査反対闘争についてという指令が全国に出されております。保険監査を厳重にしなければならぬということに赤い魔の手が伸びておりますので、これらを去る十二月二十七日付保険局長の通達で、健康保険財政緊急対策要綱というものを発表したものに対する一つの現われであります。これらの保険監査を厳重に実際に昨年度やってみまして、その実際の結果どういう数字が現われて、おりますか、この点厚生省当局でも大蔵省でもけっこうでありますが、監査を厳重にした結果どのくらいの節約ができたかお答え願いたいと存じます。
  104. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 赤字問題が突発をいたしましたのは、もとより小さな数字で出ておったのは昨年の春ころから出ておったわけであります。大きな問題になりましたのは十一月ころであったと思いますが、そこで前鶴見大臣の時代におきましても、このような赤字を抑制するためには、将来国庫負担あるいはその他の措置によって財政を収支均衡していかなければならぬけれども、その前に厚生省みずから努力をすべきことは収納率の引き上げ、保険医の監査の実施であるというような点から、本年二月ころから相当その内容につきまして検査を厳重にいたしました。その結果ただいま数字をもってお答えをいたすことと思いますけれども、相当の成果をあげましたが、本年は大体九十億の赤字と見ておりましたのが、六十二、三倍に変化をいたしましたのは、その検査の非常に厳格になった証拠でございます。
  105. 牧野良三

    牧野委員長 野津君、時間が経過いたしましたから……。
  106. 野澤清人

    野澤委員 この保険監査をめぐる問題については相当の実績ということでありますから、いずれ社会労働委員会等でも詳細にお聞きしたいと思いますが、ぜひともこの点は共産党対策とあわせて御推進願いたい。その理由は、今度の通牒に対しまして、民医連が一月二十日付で全国の民医連ニュースに載せてあるのでありますが、いわゆる団体の内部機関に対する指令であります。それは基本方針と当面の具体的闘争方針という中に詳細に載せてあります。「保険医の監査強化の本質が米日反動政策のしわ寄せであり、国民の健保破壊政策の現われであることを労働層を初め国民大衆に周知せしめて、国民の生活と健康を守る闘争を初めその他の社会保障闘争と結合させて、労組を初め民主的諸団体との提携を強化して社交保障制度確立闘争として闘うこと。」これが基本方針であります。これに対しては具体的の指令が出ております。しかも聞くところによりますと、保険監査をめぐる各地の動向の中で特徴的な事例を申し上げますと、石川県におきまして、厚生省では去る三月二十八日、金沢市のしろがね診療所の生保医の医療監査を実施したが、患者、看護婦、労組員等約二十人が監査場に押しかけまして、患者の声々聞いてもらいたい、不当監査反対などと抗議し、監査場を混乱させたので、監査の実施が困難となり、中止したという事実であります。  第二は、東京都におきまして、去る三月十六日、東京都民政局保護課では、数日前、医療費節減による健保破壊の監査に反対しましょうなどのビラを、事前に地域の各戸に配布して宣伝するとともに、当日は労組員、患者、居住細胞など約四十名ぐらいが監査場に押しかけて、反対アジ演説や監査実施の賛否討論会などを開いて気勢をあげ、監査実施の妨害をはかったという事実であります。こうした問題が頻発いたしておりますので、単に傾向があるとか、そういうことを漏れ承わったというような生ぬるい態度でなしに、少くとも日本の社会保障制度を確立するこの社会保険の対策としては、根本的に一日も早く対策をするのが妥当な行き方だと思うのであります。従ってこの点に対し川崎厚生大臣を中心といたしまして、ぜひとも強力な推進をされるよう希望いたします。つきましては、駐留軍委員の健康保険組合の料率変更に関する問題、この点に関しまして川崎厚生大臣承知いたします範囲で、簡単でけっこうでありますが、お答え願いたいと思います。
  107. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 駐留軍の健康保険組合の料率を千分の五〇から五八に上げる、これは組合の決議で逆に上げようとしておるのであります。それは内容を充実したいという労働者非常にまじめな考え方に基いたものでありまして、事務当局もたびたび私の方にも連絡に来ております。従ってこれは妥当だと思っておりますので、調達庁の方で折衝をしてもらっておりますが、駐留軍の方ではその内容の監査等について発言権を持ちたいような意向なども聞いておりまして、非常に問題が解決をしにくいような状態にあったのであります。しかしその後調達庁の非常な努力によって、今日では最後の解決点に到達をしかかろうとしておりますが、なお妥結をするまでに至っておりません、というように聞いております。なお詳細は労働大臣の方がむしろ知っておられるかと思っております。  なおさっきお尋ねのありました保険医の監査あるいは収納率を引き上げて、どのくらいの節約ができたか、できるようになっておるか、一月分で一億五千万円、二月分で一億二千万円ぐらい、これは正確な数字でございませんが、大体こういうところで予算額より少くなっているということであります。
  108. 野澤清人

    野澤委員 時間がありませんので簡単に。駐留軍の委員に対します健康保険組合の料率変更についての手続の問題でありますが、これはすでに各省の連絡会議も開いておるのだと存じますが、再三、再四にわたってこの料率の変更を申請しましても厚生大臣の力で許可にならない、しかも三月二十一日付では、日米合同委員会あてに覚書をもって、健康保険組合関係分科会を設置し、ければできないというようなことまでになりまして、政府が米軍の方との折衝をしているようでありますが、最近になってこのお互いのメンバーを交換したにもかかわらず、日本側の提案には同意しがたい、現在の状態では分科会も設置する必要がない、こういう回答が二、三日前に来たようであります。きょうも日米合同委員会があるというお話でありますけれども、この組合の料率を十分の五〇から五八に上げる。しかもこの組合は特殊な組合でありまして、半額ずつ負担いたしております。従って雇い主は調達庁でありますので、日本政府が雇い主であります。しかもこの〇・八を上げるということは、金額にしてわずかに二億七千万円であります。しかしながらこれがどうしても厚生省の方で許可にならないということになりますと、すでに新年度に入って支出をいたしております。しかもこの新年度の予算を運営するについて、どういう風の吹き回しか厚生大臣の方から保険法の第三十七条の、いわゆる強権発動によって暫定的に支出を命じられたという事実であります。この三十七条をどういう理由でお出しになったのか、この点について厚生大臣からお伺いしたいと存じます。
  109. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 厚生大臣の認可によってこれを決定するというのは、最終的に厚生大臣としての権利があるということでありまして、実際には折衝して話がまとまれば私の力は認可をするわけであります。しこうして五八%に上げるということに対しては、われわれの方は支持を与えておるわけでありますが、折衝につきましては、ただいま労働大臣の方で御答弁があるそうであります。  それから強権発動云々というお話でありましたが、強権発動のことは話題には乗りましたけれども、実際には発効はいたしておりません。
  110. 野澤清人

    野澤委員 これは労働大臣と厚生大臣と所管上の連絡をなすべき事項でありますので、追ってまた委員会等において十分明快に御答弁を願いたいと存じますが、ただ一点大蔵大臣にお願いしたいことは、わずか二億七千万の予算でありますが、すでに本年度は出発いたしております。万一現状のままで千分の五十以上に上らないとすれば、この組合は今年中にあるいはつぶれるかもしれません。しかもつぶれた場合には、十六万五千という労務者は現在駐留軍の中に診療所等を持ってやっておりますところの保険団体であります。従ってこれらの診療等も受けられなくなると同時に、またつぶれないにしましても、すでに四月、五月と経過いたしておりますから、六月、七月に至りまして妥結がついて千分の五八に値上げになったといたしましても、その間の支出はマイナスになります。しかも三カ月もさかのぼって個人負担の被保険者の保険料をとることができないのでありますから、そうした場合に対して、大蔵大臣は臨時的な処置として、これらの赤字に対して補てんするだけのお考えを持っておるかどうか、また持ってないとするならば、今後この組合の運営に対してどういうふうに処置をされますか、この点についてお伺いいたしておきます。
  111. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 十分検討してみることにいたします。
  112. 野澤清人

    野澤委員 十分検討するというのは責任を持つということでありますか。
  113. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今私は補てんすることは考えておりませんが、具体的に事情をよく聞きまして、その上で判断いたします。
  114. 野澤清人

    野澤委員 最後に一つ。最近第三次ソ連地区から引き揚げました者について簡単に御質問をいたしたいと存ずるのでありますが、今度の引揚者八十八名が帰りましてから、いろいろと健康状態が問題になりまして、すでに厚生省におきましても、これらについては詳細な統計もとられておるようであります。しかもまたハバロフスクその他の地域に約千二百名からの残留者が予想されておりますけれども、最近とみに健康状態か悪くなって参っております。再開されました昭和二十八年の十二月に第一次の引揚者がありましたが、そのときの引揚者八百十一名の中で、入院入室の患者の率は三三%、第二次の二十九年五月の場合には、四百二十名中二八・三%、第三次は三十年の四月でありますが、八十八名で、そのうち四〇%というものが入院加療中であります。こうした状況でありますので、体位の低下と申しますか、当地の抑留者の話を聞きますと、給与も医薬品もないために非常に衰弱の極に達しておる。しかも労働はさっぱり低下しない、こういう状況でありますが、政府といたしまして、今後ソ連における抑留者に対する救いの手をどういう方法でやられるか。国交を回復するというようないろいろな会議等も持たれているのでありますが、十年この方ソ連に抑留されている方々の健康状態に対して、もう少し積極的な対策を講じてほしいと思うのでありますが、責任ある方の御答弁をお願いしたいと存じます。
  115. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいまだんだんの御指摘でありまして、詳しい資料もありますけれども、簡単明白に答弁せよというお話でありますから、特に御質問の最後のところで、ソ連に残っておる抑留者に対してどういう措置をとるかという点だけお答えいたしておきます。ソ連から引き揚げました者の栄養が次第に悪くなっておる。それから単に消化器系統の病気だけではなしに、歯が非常に悪くなった患者が多いということであります。これらの疾病につきましては、もとより過度のノルマあるいは粗食による栄養不良等に基因するものと考えられますので、残留者に対しましては、とりあえず今回日本赤十字社より、みそ、しょうゆ等の食料品を慰問品として送付することといたしておりますけれども、さらに今後も引き続いて、都道府県及び関係団体等を通じまして、この種の慰問品を豊富に送りたいというふうな考えをいたしております。
  116. 野澤清人

    野澤委員 最後に、できるできないは別といたしましても、よく視察団あるいは使節団等の問題もありますので、この抑留者については、少くとも積極的にこれらの対策を講ずると同時に、ソ連に入国をします政治家等の参りますときにも、十分にこの医療品あるいは医者の議員等を送りまして、健康状想に対しても十分手当をしていただきたい。かつて私は三年間の抑留生活を続けておった男でありますので、あちらの情勢についてはよく承知いたしております。全く物資のない、いわゆる医療品等の与えられない現状でありますから、十年も待たされて、衰弱して帰る彼らの立場考えますと、この内閣においてせっかく親ソの政策を打ち出しているのですから、そうした面についても積極的に働きかけを願いたい。  最後の結論として申し上げたいことは、たとえば先ほどの駐留軍労務者の健康保険の問題にいたしましても、米軍側が案外冷淡な態度をとってきている現状、あるいはまたこうしたソ連当局に対する交渉等を考えてみますと、鳩山内閣の本質的な、いわゆる対米、対ソの両面作戦というものが、今日のような事態に陥っているのではないかというような感も深くいたすのでございますが、どうかこうした面については、せっかく新しい道を開かれて、国民も相当の期待を持っておるのですから、鳩山内閣の生命にかけても、一つがんばっていただきたい。特にお伝えいたしたいことは、残留日本人が決意のほどを内地に知らせて参りました。それは、残留日本人は右のような困難な生活の中にも、なお日本人としての誇りを持ちまして、自分たちが人質であるため、万一母国が日ソ国交回復交渉に不利を招来するようであれば、自分たちはいさぎよく自決しようと決心しているということであります。遠く異郷の空にあって、こうして日本とソ連との一日も早く国交回復のできることを願っているのは、彼らの切々たる願いであると同時に、じゃまなら自分たちは死んでもいいという決意まで持っているのであります。かような状態でありますから、どうか残留されておりますソ連の抑留者につきましても、もう少し積極的にあたたかい手を差し伸べていただきたいと存じます。  以上希望を述べまして、私の質疑を終ります。
  117. 牧野良三

    牧野委員長 それでは午後二時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時二十七分休憩      ————◇—————    午後二時五十三分開議
  118. 牧野良三

    牧野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際今澄勇君より、政府に対する資料要求に関して発言を求められております。これをお許しいたします。今澄勇君。
  119. 今澄勇

    今澄委員 暫定予算政府の説明に先だって、まず本予算委員会においてわれわれが要求をいたしました資料がいまだに私どもの手元に渡っておりません。よって私は、以下資料についての要求をいたします。  まず第一に、暫定予算が出て併託審議ということになれば、私どもは本予算と並べていよいよ審議の本格的な過程に入ります。それに最も重要な、予算を伴う法律案の政府から出された資料を見ると、六十幾つの法律案があるが、いまだこれらの法律案はほとんど出ておりません。その中でどれとどれはこの国会に出すのか、どれとどれは出さないのか、いわゆる予算を伴う法律についての詳細なる資料を御提出願います。  第二点は、先般来の質問において、米国との交渉経過については——これは防衛分担金に関する米国との交渉であります。政府は、アメリカ側とも相談をして、その経過を本予算委員会報告するとの答弁でありましたが、いまだにこれらの経過についての答弁がありません。私どもは、この米国との防衛分担金に関する交渉の経過を、二十一日のわれわれ暫定予算に対する総括質問をするまでに、政府側からの提案を要求いたします。  なお私が要求いたしました資料の中で今日まで出ておりませんのは、本年一月初旬米軍顧問団ハーディ少将から上村航空幕僚長あての航空五カ年訓練計画、これは書簡がきているはずであるが、全然これが提示がありません。この書簡についての全文の写しを要求いたします。本年三月十四日に決定され、米国側に提示された防衛六カ年計画の全文の写し、なお先般私の質問に対して重光外務大臣から答弁のありました、アリソン大使から重光外相にあてられた防衛分担金に関する覚書の全文写し、以上の資料は、どうしても今後の暫定予算、本予算審議に必要であるから、暫定予算審議に関する総括瞬間のときまでにこれらの資料が出ないという場合においては、私どもは暫定予算審議といえども、これに応ずることは困難であります。以上の資料の提出をぜひ政府に強く要望いたしておきます。     —————————————
  120. 牧野良三

    牧野委員長 この場合、本日付託されました昭和三十年度一般会計暫定予算補正(第1号)外二案を一括して議題といたします。まず政府より提案理由の説明を求めます。大蔵大臣萬田尚登君。     —————————————
  121. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 昭和三十年度暫定予算補正(六月分)についての御説明を申し上げます。  昭和三十年度予算につきましては、目下国会において御審議をお願いしているわけでありますが、諸般の情勢からいたしまして、五月中に、その成立を期待することは困難と認められますので、今回四・五月分の暫定予算に追加いたしまして、六月分の暫定予算を提出することといたした次第であります。本日から予算委員会において御審議をお願いするに当りまして、その概要を御説明申し上げたいと存じます。  一般会計の六月分暫定予算は、歳入総額六百六十億円、歳出総額千二百八十九億円でありまして、差引六百二十九億円の歳出超過となりますが、これは国庫余裕金の使用によりまして十分まかなえる見込みであります。なお、万一不足を生ずるような場合に備えまして、大蔵省証券を二百億円の限度内におきまして発行できることといたしております。  四・五月分の暫定予算は、その編成当時いまだ本予算案ができ上っておりませんでしたし、その内容は政策的なものは除外し、ごく事務的な経常費の人について最小限度の所要額を計上するという方針をとっておりましたが、今回の六月分暫定予算におきましては、三カ月間にわたる暫定予算に伴いまする経済界等への影響をも考慮いたし、原則としてただいま御審議中の三十年度の本予算案基礎といたしまして、それぞれの経費につき、六月中に支出または支出負担を必要とする額を計上いたしたわけであります。  ただ新規経費につきましては、法律の制定ないし改正を必要といたしますものを除いておりますことは言うまでもありませんが、その他のものにつきましても、時期的な関係その他の理由により、特に六月中に支出負担を必要といたしますものに限り、所要額を計上することといたしております。  以上が今回の暫定予算編成の基本方針でありますが、この基本方針に基く編成要領につきまして、なお若干御説明を加えたいと存じます。  まず人件費、事務費、その他の経常的経費につきましては、一カ月分を計上することといたしておりますが、人件費におきましては、六月に支給する職員特別手当〇・七五月分をあわせて計上いたしております。  補助費につきましては、四、五月分の暫定予算には原則として計上せず、義務的なものであって、特に四、五月中に支出を必要とするものに限り計上することといたしましたが、今回は原則として、すでに計上いたしました額と合せ第一・四半期分の所要額となるように補助金を全般的に計上することといたしております。  次に公共事業費及び食糧増産対策事業費につきましては、四、五月分の暫定予算と合せて、年額の三分の一程度となることを目途とし、また北海道その他の積雪寒冷地の事業費及び災害復旧事業費につきましては、四、五月分の暫定予算と合せて年額の二分の一程度となることを目途として、今回の暫定予算に合計三百六十六億円を計上いたしております。これらは年間の事業計画が円滑に遂行できるようにとの配慮のもとに、過去の実績等を勘案して所要額を計上することといたしたことによるものであります。  住宅施設費、文教施設費、官庁営繕費等の施設費につきましても、公共事業関係費に準じまして、その所要額を計上したすことといたしております。  失業対策事業費につきましては、特別失業対策事業費をも含め、一カ月分程度を計上し、公共事業等への就労とあわせ、失業者の吸収に遺憾なきを期しております。  地方財政につきましては、公共事業関係費及び一般の補助費等につき前に申し上げました通り、所要額を計上いたしますとともに、地方交付税交付金のうち打通交付税分につきまして年額の四分の一、三百十九億円を計上いたしました。  特別会計及び政府関係機関の六月分の暫定予算につきましても、一般会計に準じ所要額を計上することといたしておりますが、特に企業会計につきましては、事業の円滑な遂行を阻害することのないようにに配慮することといたしております。  さらに財政投融資につきましては、年間計画、過去の実績、原資の状況等を勘案いたしまして、資金運用部資金等により所要資金の配分をいたすこととしております。そのうち、政府関係機関または特別会計に関するものは、農林公庫十億円、国民、中小企業、住宅各公庫五億円ずつ、国有鉄道三十億円、特定道路二億二千万円、開拓者資金二億六千万円でありますが、電源会社、金融債、地方債等につきましても、原資の状況等を勘案いたしまして、年間計画の一部として必要に応じ所要資金を配分することといたしております。  以上をもちまして六月暫定予算の概要の説明を終ります。何とぞ政府の方針を了とせられまして、本暫定予算案に対し、すみやかに御審議、御賛成あらんことを特にお願いいたす次第であります。
  122. 牧野良三

    牧野委員長 これにて暫定予算補正三案に対する提案理由の説明は一応終りました。  これに対する質疑は、理事諸君とのお打合せによりまして、公聴会を終る翌二十一日に行うことといたします。     —————————————
  123. 牧野良三

    牧野委員長 本日は、ここに直ちに昭和三十年度一般会計予算外二案を一括して議題といたし、質疑を継続することにいたします。阿部五郎君。
  124. 阿部五郎

    ○阿部委員 まずウラニウムのことでありますが、これにつきましては、すでに新聞での他の言論機関でも十分論議が尽されておりますし、この委員会においても、過日わが党の志村委員から相当検討を加えたのであります。私はごく幼稚な質問で恐縮でありますが、アメリカが濃縮ウラニウムを日本その他の諸国に対して提供をなさるというのは、一体どういうわけであるか、その目的、意図というようなものは何であろうかと思うのであります。アメリカはこればかりではなしに、軍事援助も経済援助も、その他余剰農産物の提供もいたしておりますけれども、それらのものにつきましては、それぞれアメリカの意図するところは、ほぼわれわれにも常識的にもわかるのでありまして、ことに余剰農産物のごときは当然明白になっております。しかし、この濃縮ウラニウムのことにつきましては、論議されておりますところの機密条項とか、あるいは自主性を保ち得るかどうか、まずこういうようなことの前提として、どういう目的でアメリカは各国に濃縮ウラニウムを提供するのであるか、この点を知っておかないと、われわれは安心してこれに対処することはできないと思うのであります。われわれは、人からこちらのほしいものを提供せられましても、たとえば金を提供せられても、何のつもりでくれるのか、それがわからなければうっかりもらえません。そこでこの点を、政府が御承知になっておる限り正確にわれわれに知らせていただきたい、かように思うのであります。
  125. 重光葵

    重光国務大臣 ウラニウム提供の米国側の趣旨、言い前は、ウラニウムの国際的研究を有効に進めていくために提供するのだ、こういう趣旨でございます。
  126. 阿部五郎

    ○阿部委員 外務大臣からお答えをいただきましたが、それはわれわれの常識から考えますと、いずれの国も自国中心の諸政策をとっておるのであります。今のお答えによりますと、アメリカの方針なるものがあまりにも博愛的で、世界文化の向上に寄与したいというような、あまりに善意過ぎるというような感じもいたすのでありますが——高碕経審長官はおられないようでありますが、おられませんか。
  127. 牧野良三

    牧野委員長 出席を求めます。
  128. 阿部五郎

    ○阿部委員 これは経審長官からも伺いたいと思うのですが、今外務大臣お答え下さいましたけれども、それでは日本人の常識を満足させることができないのではないかと思います。そこで、アメリカの意図が明確でないものですから、世間ではいろいろな揣摩臆測が行われていることは、政府の各大臣におかれても御存じだろうと思います。あるいはアメリカは、私はしろうとであってよく存じませんけれども世界の原子力というものの生産の型をアメリカの型にしてしまうのが目的であるとか、それを通じて、将来の原子力を、少くとも世界の自由諸国側の原子力をアメリカが支配せんとするものであるとか、あるいは、生産過剰に陥っているから、将来ともアメリカがその供給を確保し、それを通じてさらに原子力を動力とするところの諸産業を支配せんとするとか、いろいろな揣摩臆測が行われているのであります。そこでこの点は、それらの世間で論議せられており、あるいは疑惑を抱かれておるところのものを氷解させるに足るだけの御答弁が願いたいのであります。そうしてさらに、そればかりでなく、われわれ委員がこの問題について議決をしまするにつきましても必要なることであると思いますから、もっと突っ込んだ御説明をいただきたいと思います。
  129. 重光葵

    重光国務大臣 それでは私の承知いたしている限りのことを御説明申し上げます。こういうことにアメリカ側の意向はなっております。米国大統領は、米国の原子力平和利用計画の一部として、特定の諸外国における小型実験炉の建設その他の研究目的に使用せしめるために、百キログラムのウラニウムを割り当てんとする米国原子力委員会の勧告を承認して、その勧告に基いてウラニウムを提供するという甘い分でございます。今お話のようないろいろな観測、観察は、われわれも聞いてはおりますけれども、しかしアメリカの言い分はこういうことでございますから、これをそのまま受け取るわけでございます。
  130. 阿部五郎

    ○阿部委員 今のお答えでは、先ほども申しましたように満足はできませんから、高碕経審長官が御出席になってからさらにお尋ねをすることにいたしますので、質問を保留いたしておぎます。  それにつけ加えまして外務大臣に伺いたいのでありますが、近く濃縮ウラニウムに関してアメリカと御交渉なさると承わっておりますが、この御交渉が進みまして結論に達しましたならば、それは条約あるいは協定となって締結されると思いますが、その時分には国会承認を求めることになるのでございますかどうか。すなわちその形式が条約であるか協定であるか、それらの点を承わりたいと思います。
  131. 重光葵

    重光国務大臣 その結末がいかなる形式になりますか、まだ今のところはむろんわかりません。しかしながら、これは新たな約来になるという見当でございますから、むろん国会の御承認を得ることに考えております。
  132. 阿部五郎

    ○阿部委員 それではウラニウムの問題は保留いたしまして、政府経済政策の基本的な考え方について少し伺いたいのでございます。まず大蔵大臣お尋ねいたしますが、大蔵大臣は過般の施政方針演説におかれても、世界の大勢は大体貿易の自由化、通貨の交換件の回復という方向へ向っておる、こういうお話でございまして、まことにその通りだろうと思います。そこで日本としても、やはりこれを目標として諸般の経済政策を進めていかれる御方針でありますかどうか。従いまして、そのためには日本の物価水準を国際間の物価水準に合致させ、あるいはそれより高過ぎない、少くとも日本の商品が国際間に流れるについて障害にならない範囲にまで物価の引き下げをあくまで遂行していく、こういう御方針をとっておられるのであるかどうか、この点をまずお尋ねいたしたいと思います。
  133. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私の考えお話通りでありまして、国際的な情勢に日本経済を順応させよう、その結果今お示しの一つである国際的な物価の問題については、国際的物価と十分競争し得るようなところまで日本の物価を持っていきたい。むろんこれは、単に物の値段を安くするというのではなく、生産コストが下って、それに伴って物も安くなる、こういう形においていたしたいと思います。
  134. 阿部五郎

    ○阿部委員 そういたしますと、日本は英米その他の経済力の強い国と違って、貿易の自由化、通貨の交換性の回復などということは相当大きな困難があると思うのでありますが、なおかつ政府の六カ年計画を遂行なされば、この交換性の回復などというものが実現されるとお考えになっておられますか。
  135. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 六カ年計画を見ましても、日本の国際収支が六カ年計画を遂行した結果、将来にわたって収支の均衡を得る、こういうことになるのであります。従いまして、通貨の交換性についてもあくまで努力をする。そして具体的にこれをどうするかということは、ほんとうの日本の国際収支の見通しが具体的にはっきりつかめてから、その時期を選ばなくてはならないと思います。
  136. 阿部五郎

    ○阿部委員 一般の生産物に関して、ことに重要産業の大きな生産物については、あるいはそういうことが可能かもしれませんが、日本の農業生産物に関して、やはり国際物価水準に合致させ、通貨の交換性を回復して、国際間に自由な取引をすることによって、なおかつ日本の農業を存立させ、農家経済を維持していくことができるとお考えでございましょうか。これは大蔵大臣のみならず、農林大臣の御意見も承わりたいと存じます。
  137. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私が申すまでもなく、今日日本は、食糧だけを取り上げましても、約四億ドルくらいの輸入をしなくては相ならぬのであります。そこで農業については、これはいろいろの意見はありましょうが、私の考えでは、狭い国で人口も多いので、できるだけ国内資源を開発する。極端にいえば、ほんとうに一握りの土地もむだにしておくことができるようなゆとりのある国ではないので、そういう意味において農業の自給力というものを高めることが先決であろうと思います。
  138. 阿部五郎

    ○阿部委員 今のお答えは、ちょっと私のお尋ねしたことに対して的をはずれておるのであります。ほかの鉄鋼、石炭とか肥料、そういう大企業の生産物はともかくとして、日本の独特な零細なる農家によって経営せられるところの農業生産物に関しましては、国際物価水準にまであくまでも合致させていくということは非常な困難があるのみならず、農家経済を破壊させる危険が伴うものであると思っておるのであります。すなわち国際物価水準に一致させるといいますが、なるほど生産費を引き下げて合致させるというのも一面ではありますが、一面では国際物価水準の圧力のもとに、弱い生産を切り捨て、すぐれた、能率の高い、利潤を上げることができる企業を伸ばしていくというようなことによっても、一面物価水準を下げることになるのであります。この農業に関しましてそういうようなことをやりましたならば、すなわち国際物価の圧力によって日本の農業生産物の価格が左右されるということになりましたならば、強い企業——農業では企業ともいうべきほどのものがないのでありますから、それが残って、弱い方が淘汰されるということになるのであって、農業全体が破壊されるという危険があると思うのであります。危険というよりも、むしろ確定的であろうと思うのであります。そこで日本の農業に関してだけは、少くとも国際物価水準の圧力のもとに、その生産合理化や発達がはかられるというような性質のものではなく、国際経済状態がどうであろうとも、とにかく農業生産物に関してだけはその生産費を償うところの価格を、政府の保護によってでも維持していかなければならぬ性質のものであると私は思っておるのであります。そうしてその価格の引き下げは、もっぱら生産費の引き下げによって行うこと、すなわち農業に必要なる肥料とか、あるいは農薬、飼料、そういうふうなものの価格の引き下げによって生産費を償うところの価格に維持していかなければならぬと思っておるのでありますが、この点農林大臣の御意見はどうでございましょうか。
  139. 河野一郎

    ○河野国務大臣 全く同意見でございます。ただでき得れば、なるべく可能な範囲におきまして、増収、品質の改良によりますところの品質の向上等もはかっていきたいということを考えております。
  140. 阿部五郎

    ○阿部委員 そういたしますと、経済政策と一口にいいましても、農業とその他の重要産業方面とはよほど異なった政策をおとりになるということをお認めになるのでございましょうか。私は少くともそうでなかったならば、日本経済全体の調和ある発展は不可能でなかろうかと思っておるのでございますが、大蔵大臣いかがでございますか。
  141. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私の考えは、原則的に申し上げれば、農業なら農業にしても、やはり世界的な趨勢に逆行せぬがよろしい。やはりそれに向っていくがよろしい。しかし大企業と農業、インダストリーと農業というようなことになってくると、これは特殊性が違いますし、また日本においてはそれに特別な違った意義があるので、これはまた違った見地で政策をすべきである、私はかように考えております。   〔委員長退席、上林山委員長代理着席〕
  142. 阿部五郎

    ○阿部委員 私がお尋ね申し上げたいのは、農業に対しては特別の政府の保護を要する、こう私たちは思うのでありますが、その点、認識の程度の差もありましょうが、今回の予算を見ますと、その点において従来よりも一歩後退した点があるのではないかと思うのであります。そこで、この点を大蔵大臣お尋ねいたしたいのでありますが、農業だけは、なるほどおっしゃる通りに国際水準に近づけていかなければならぬのはもとよりのことでありますけれども、そのために、逆に国際経済の圧迫によって近づけるということは、あくまでも避けなければならない、先ほども申しましたように、農業には、ともかく一時的ではあろうとも、あくまで保護を加えて、その生産費を償うだけの価格は補償してやらなければならぬ、こういう前提に立たなければならぬと思いますが、その点大蔵大臣はいかにお考えになっておられますか。
  143. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今御質問の点は、これは私必ずしも一がいに言えないんじゃないかと思う。保護といいますが、その保護の具体的な事柄による。国が保護をするから必ずしもその結果がいいとは限らぬものもあろうかと思います。ですから、何としても農業というものについては、これは農林大臣のお考えもあるでしょうけれども、これは私の一つ考えなんですが、生産コストを下げる。それには、米の値段というものがあまり上りましては、その結果一般の給与ベースもまた上っていく、これが循環をして、また米の値段を上げなくちゃならない。肥料が上るからまた米の値段が上る。こういうかっこうはとるべきじゃないと私は思います。むしろ国民生活の安定の上からいっても、こういう農産物というものの価格はあるところで安定するがよろしい。従って、その安定を得ていくように農業生産資材そのものについて政府が特に考慮を払う、こういうことがいいんじゃないかというのが私の一つ考え方であります。
  144. 阿部五郎

    ○阿部委員 端的に私はお尋ねいたしますが、近く米価の決定をなさらなければならぬと思います。もちろんむやみに米の価格が高いのは国民全体の迷惑であります。しかしながら、それが生産費を償うものであるということはどうしても必要であろうと思うのであります。そこで私がお尋ねいたしたいのは、米価の決定などはできるだけ低いのがよろしいけれども、それをあくまでも低くしようとすれば、その生産費をまず引き下げて、すなわち肥料、農薬、水利費その他の諸掛りを引き下げて、生産費が低くなって、その低い生産費を償うものでなければならぬ、かように思うのでありますが、大蔵大臣は、もし米価が高い場合に、国際水準に近づけるがためには、その生産費を多少切り込んでも決定しなければならぬというふうなお考えなのでございましょうか。その点を明確に伺っておきたいのであります。
  145. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私が今申しましたように、米価が高いというような場合、特に肥料なんかを農家が安く入手できるというような施策にむしろ行くべきじゃなかろうかというのが、これは私しろうとですから、的がはずれておるかもしれませんが、私はそういう考えでございます。
  146. 阿部五郎

    ○阿部委員 問題を変えまして、日本産業はその資本構成において、自己資本が少くて借り入れ資本が多いということがその大きな欠点をなしておるので、その点からも、今回分予算案においても資本の蓄積ということ、ことに企業がその資本を蓄積するということに重点を置いて立案されておるように見受けるのでございますが、この点であります。日本は戦争によって産業が一時破壊されたのでありまして、蓄積しておった資本はそこで壊滅してしまったのでありますから、資本の蓄積が十分でないのはもとより当然であります。しかもその後の復興は、ほとんど資本家の資本ではなくて、国民の資本によって復興されております。大体今までの産業が復興してまたのは、そのきっかけは復金の融資でありました。それからその後においても、企業自身が蓄積をした資本とか、あるいは民間から株式によって集めた資本とかいうものではなくて、おもなる基礎的な重要産業は、ほとんど財政投融資によって建設され、復興されて参っております。すなわち日本における今の産業状態は、その資本は、国民の資本によってまかなわれておるといわなければならぬと思います。ところが、それらの企業がこれから大いに資本を蓄積して、その資本によって自己資本を多くしていくということは、すなわち国民の資本によって運営されておる産業が、その産業の運営によって利潤を得て——利潤というのは、ある意味においては国民全体を収奪しておるのでありますが、それをまた積み上げていって、今度自己資本にしていく。こういうのは、企業の性質からいったならば当を得ない意味があるのではないかと思うのであります。すなわち国民の資本によって復興されておる事業、企業は、いわば国民の事業なのでありますが、その国民の事業が製品を売って利潤を上げて、その利潤を蓄積して、今度は企業自体の資本を築き上げていく、こういうような結果になるのであります。すなわち私が思いますのは、一たん資本が壊滅に帰して、それが国民の資本によって復興した以上は、それは国民の企業になる、公企業体に近いものにだんだん近づけていくべき筋合いのものではなかろうかと思うのであります。しかもその企業の性質自体も、たとえば金融業のごときものは、大蔵大臣自身もその施政方針演説において、その公共性を強調しておられます。その他鉄鋼とか石炭とか電力とか、こういうような肥料にしたって、大いにそういう性質を持っておるのであります。しかも企業の性質が公共性を持っておるのみならず、その資本の構成が公共の資本、国民の資本の節約によって、財政投融資によってまかなわれておるということになると、その企業はだんだん公企業の方向へ進めていくのが至当ではなかろうかと思うのでありますが、御意見はいかがでありましょうか。
  147. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。企業が国民からの蓄積の資本によってまかなわれておる、これはいつのときも同じだと思う。ただ最近におきましては、戦争に負けたという異例な社会情勢からいたしまして、インフレが続いたというような点もありましょうが、任意的な貯蓄というのが後退をいたしまして、自然税金という一つの強制的な貯蓄方法によって、これがある程度産業をまかなっておる、これは否定することができない。そういうような資本蓄積の方法について問題があるのであって、であるからそれはすべて公企業になるべきだというのには資本ができないのでありまして、公企業にするかせぬか、やはりそういうまかなう資金よりも、企業自体の性質によって考えるべきだ、そういうように考えております。
  148. 阿部五郎

    ○阿部委員 企業は元来資本家自身がその欲望を節約して、蓄積した資本によってまかなわれてこそ、初めて資本主義的な産業形態が成り立つのであって、今おっしゃったように、国民にインフレによって、あるいは財政投融資の資金によって強制的に蓄積をさせて、その蓄積された資本をもって運営されるものが企業家の所有物になってしまうという形態は、決して健全な形態であるとは言えないだろうと思うのです。大体資本蓄積の不十分なところで、産業を急いで起そうとしたならば、どうしても公共の資本によって起さざるを得ないのでありまして、東洋の諸国が、たとえばビルマにしてもインドネシアにしても、中国はもとよりでありますが、元来資本主義が発達しないで送れた国でありますが、最近に目ざめて急いで産業発展させようとした国々は、いずれも社会主義の形態をとっております。これは、何も単にイデオロギーからきておる問題ではなくて、資本の蓄積のない国において産業を起そうとすれば、国民全体の節約によって、大蔵大臣が言われる強制的蓄積によらざるを得ないでありまして、それはすなわち国民全体の資本なのでありますから、おのずからこういう社会主義的な形態をとらざるを得ないものだろうと思うのであります。日本はこれらの国から比べましたならば、よほど資本主義的に発達いたしておりますから、まず欧米諸国との中間くらいだろうと思うのでありますが、それにしても、現在のようにほとんど重要なる基礎産業が、国民の資本によってまかなわれておる。しかもそれらの重要な基礎産業は、その産業自体の性質からいいましても公共性を持っておる。こういうような形のもとにおきましては、これから資本を蓄積させて、それらの企業を私企業にあくまでももり立てていって、そのもり立てていく過程におきましては、ある意味において、見方によれば国民から収奪して利潤をあげて、その利潤を蓄積させる、こういう形になるのでありますから、その言い方というものは、あまり健全なものとは言えないのじゃないかと思うのでありますが、重ねて御意見を伺いたいと思います。
  149. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。結論から申せば、意見の相違だろうと思う。結局考え方の相違で、これは幾ら議論してもしょうがないと思いますが、私の考えを一応申し上げますれば、税金という一つの強制的な貯蓄によってまかなわざるを得なかったということは、戦後における日本の臨時的な特殊事情に基いてそうせざるを得なかったのでありまして、従って、そういうことがあったから日本経済を、産業を社会主義的にやれというのは、私は飛躍をしすぎていると思うのでありまして、日本の国自体の本質、日本 経済の本質が社会主義に適するやいなやということから判断をすべきで、そういう一時の現われました現象から本質を決定されることは、私は妥当でないと考えております。
  150. 阿部五郎

    ○阿部委員 それでは、大蔵大臣あくまでも企業に資本を蓄積させて、自己資本に近づけていくという御方針をとられるようでありますが、それでありましたならば、まず一番になさなければならぬことは資本の再評価をなされて、それによって資本の償却をすみやかにされるような御処置が必要であろうかと思いますが、これは世間でも相当論議をされており、経済界の一部には強く要請せられて、政府が資産再評価を強制し、資産の減価償却を強制するような処置をとるべしというような意見もあるのでありますが、それらの御処置をなさるお考えでありますか。今のところ予算案その他にはそういう傾向が見えておりませんが、どういうふうになさるお考えでありますか。
  151. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。資産再評価を厳格にやって、できるだけ償却をやる、当然やるべきだと思います。
  152. 阿部五郎

    ○阿部委員 当然やるべしとお考えになっておられましたら、立法措置をおやりになって、再評価を強制させ、減価償却を一定の率において強制的にやらせるというような立法的な御処置をなさるのでありますか。
  153. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。私はやる方法について、すぐに強制とか、こういうことは考えておりません。ただしかし、それができるだけ再評価をやる、そうして償却をさせる、そういう指導は十分するつもりであります。
  154. 阿部五郎

    ○阿部委員 政府がなさる、あくまでも事業として重要産業を育成していくという御方針をおとりになると、まず一番先におとりになる施策としましては、豊富な資本金を提供してやることでありますが、すなわち予算案においても強調しておられるように、財政投融資を確保して、それを豊富に重要産業に提供する、こういうことがまず一番になると思います。現にそうやっておられるようでありますが、しかしそれのみをもってしては、現状のもとに産業はそのまますくすくと育っていくとは思われないのでありまして、現に資本を提供しましても、それが二重投資になったり、むだに使われたりするような危険は多分にあるのであります。大蔵大臣は、これが重要な方面に流れるような施策をとるというようなこともちょっとおっしゃっておったようでありますが、具体的には、そういう資金調整の方法をおとりになるのにどういう施策を持っておられるのでありますか、どういうことをなさるお考えなのでございますか。
  155. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。その点につきましては、今回経審庁において産業計画をなし、日本経済を総合的に考える。そうしてどういうふうな企業にどういうふうなウェートを置き、どういうふうな規模において今後やっていくという産業計画が確立されて、おそらく私はそれについての順位もつくだろうと思う。それを受けて資金が流れていく、こういうふうにやっていこうと考えております。
  156. 阿部五郎

    ○阿部委員 政府が貸し出すところの財政投融資のごときは、それによって完全にやっていくことができましょうけれども、民間資本の流れを——何といいましても量からいいましたならば、民間資本の方が多いのでありますが、民間資本の流れを規制する方法をおとりになる考えはないのでございますか。
  157. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、それを法的に規制する考えは今に持っておりません。今金融界に自主規制委員会——融資についての自主的な委員会ができております。これを十分に活用して、そして所期の目的が達し得ないような情勢でもありますれば、その際に考える、こういうふうに私は考えるわけであります。
  158. 阿部五郎

    ○阿部委員 資金によって産業振興をはかる方向は、そういうふうになさるというお考えはわかりましたが、産業を興していく上において、それのみをもってしては足りないことは申すまでもないと思います。そこで政府におかれても、たとえば石炭産業のごときは、合理化法案をお考えになっており、近く国会に提案なさるとか承わっておりますが、これは石炭ばかりに必要なものではなくて、ほかのいろいろな産業に対しても必要があろうと思います。たとえば肥料産業につきましても、その合理化によって価格を下げるということについては、農林大臣などはずいぶん御努力をなさっておると思いますが、それをやろうとしましたならば、単に財政投融資を与えるからというだけでは十分でないと思うのでありまして、やはりこれも石炭と同様に、鉄鋼にも肥料にもそれぞれの合理化を強制する。強制というと強過ぎるかもしれませんけれども、それを行わせるところのいろんな処置が必要と思いますが、その処置たるや、ほとんどみんな何らかの意味でカルテルを作らせて、計画的にその生産の量や、あるいは増強の度合いや、あるいは原材料の買い入れの価格や数量や、そういうものを計画的に統制する、こういうことを伴うのでなかったならば、十分なる産業振興の効果を上げることができないと思うのであります。そして、それは直ちに戦後続けてきましたところの独占禁止という考え方とは矛盾するわけでありますが、その点について、どの程度合理化その他の振興策をお考えになっておるのか。石炭についてはわかっておりまするし、近く御提案があるだろうと思いますが、そのほかの産業についてどういうお考えになっておられるか、通産大臣から伺いたいと思います。
  159. 石橋湛山

    石橋国務大臣 お話しのように、石炭についてはただいまかなり具体的に考えて案を作っております。そのほかのものについては、まだそこまで固まっておりません。ただし貿易のごときは、取引に関しては一種のカルテルみたいなものが作られるような方策を必要と考えております。なるべく企業者自身の発意に待ち、いわゆる官僚統制的に外から、政府あるいは役人が権力を用いて、ああせい、こうせいというのでなくて、業者自体が発意的に自分もその中に入りまして——むろん政府の方でも、それを指導するとかなんとかいう必要もありましょう。しかし業者自身の発意でもって、みずから統制をしていくという方向に進めていきたいと思っております。
  160. 阿部五郎

    ○阿部委員 そういうお考え方でありましたならば、たちまち現行独占禁止法とはまっこうから矛盾すると思うのであります。現に通産省でとっておられる紡績に対する操業短縮の指令といいますが、指示といいますか、あれなども、独禁法違反の疑いは多分にあり、私は違反だと思っておるのでありますが、こういうふうに、多くの産業にだんだんこういう傾向を助長していきますると、どうしても独禁法そのものに触れていく実情が起ってくるのではありますまいか、この点独占禁止法をどうなさるお考えを持っておられるか、お伺いいたしたい。
  161. 石橋湛山

    石橋国務大臣 お話しのように、かなり最近は独占禁止法に穴をあけておる。また穴をあけざるを得ない状況になっております。しかしながら独占禁止法そのものが、今やはりあることが必要でありますから、これはこれで、独占禁止法そのものに手をつけるつもりはありません。ただ必要に応じて独占禁止法に除外例を作るということでございます。
  162. 阿部五郎

    ○阿部委員 そういう行き方でいきますると、どうしても重要なる定業の方面にいずれもカルテルが作られ、独占価格が行われるようになって、大衆を収奪するという方向に進んでいく危険が大いにあるということは、争われない事実であると思います。少くともその危険はお認めになるだろうと思うのであります。しかも、それにもかかわらず、そういう施策をとることが必要であるということでありましたならば、一歩進んで、そういう私的独占でなくて、公的独占になるように、すなわち企業に公共性を持たしていくという方向に進むのが正しい方向でなかろうかと思うのでありますが、通産大臣はいかがお考えになりますか。
  163. 石橋湛山

    石橋国務大臣 重要企業は言うまでもなく、およそ企業というものは、反面において公的性質を持ったものなのであります。ただその経営の上において、私的なイニシアチブを持たせるということが有努かどうかということで判断すべきものと思います。私どもは現在の段階においては、一面においては公的性質を持っていますから、それは今の独占禁止法の適用を除外する場合もあるし、同時にまた除外でありますから、従ってそれに対して価格のある程度の統制とか、あるいは生産の調整とかいうものにも公的な制限が加えられる。しかしながらそうかといって、全部これを公共事業にしてしまえば、私的な経営としてのうま味がなくなります。うま味というのは、つまり自由な企業者自身の発意をもって振興していくという——つまり型にはまった企業になりますから、そういう型にはまった企業でない。やはり私的な活動力というものを十分に利用ができるようなことにして、同時に公共性を持たせるようにする。かようなのが今のわれわれのねらいであります。
  164. 阿部五郎

    ○阿部委員 通産大臣は、やはり昔の状態現状とを混同しておられるのじゃないかと思うのでありまして、現在も、私的企業であっても、その管理をなさっておる人々は、ほとんどがサラリーマンでありまして、決して企業家自身で創意を発揮するというふうな状態からは、よほど遠ざかっておると思うのでありますが、それはそれといたしまして、別の方向で、こういう重要産業は、通産大臣もお認めになりました通りに、その性質はほとんど公的な性質を持っております。ところがそれが、あくまでも形式上は私企業ということになっておるのであります。そこでその間の矛盾からいろいろな問題が起って参ります。たとえば昨年問題になりました造船疑獄のごときにおきましても、官公吏の方は涜職罪が成立しますけれども産業の企業に従事しておられる方は、同じようなことをいたしましても、それは何ら罪を構成しない。そうして企業の方の取締役とかいうような人々にとっては、その企業を自己の私的利益に利用するくらいのことは当然のこととして世間では認められておる。ところが一方、それに関係を有するところの公務員においては、たちまちそれが犯罪になる。これではとうてい綱紀の粛清などということは望まれないのではないかと思うのであります。すなわち両方とも公的な性質を持っておるにもかかわらず、そうしてそれが密接な関係があるにもかかわらず、一方は涜職罪であり、犯罪を構成し、一方は公然とやっても何にもならない。こんな状態ではとうてい綱紀の粛正などは望まれないと思うのでありますが、法務大臣は、これらの点の関係につきましてどういう御見解を持っておられますか。
  165. 花村四郎

    ○花村国務大臣 お答え申し上げます。公務員にあらざる者でありましても、涜職罪が成立しないというわけではございません。御承知のように、経済関係罰則ノ整備二関スル法律というのがございまして、銀行、会社等の役職員等も、やはりこの法律に基きまして、公務員の涜職罪に匹敵するところの規定がありまするので、その規定に違反したる場合においては、やはり取締りを受けるというような結果に相なっております。
  166. 阿部五郎

    ○阿部委員 法務大臣お答えを承わりましたが、御存じの通り、最近銀行の金利が問題になっております。そして表面上の金利のほかに、両建とかあるいは歩積みとかいろいろなものがあることが論議をされておりますが、世間で実際に行われておるのは、それらのほかに、事実上は金利でも何でもないにもかかわらず、機密費のごときものが要るのであります。銀行から金を借りるについては、いろいろな雑費が要るのでありますが、それらは、今法務大臣がおっしゃった法律によって、当然犯罪を構成するのではないかと思うのでありますが、いかがでございましょうか。お金を借りるについて、銀行の役職員に何か贈与のごときものをしなければ借りられないというのが実情でありますが、これはいかがでございましょうか。
  167. 花村四郎

    ○花村国務大臣 ただいま申されました事案は、要するに経済関係罰則ノ整備二関スル法律という中に、特殊銀行も普通銀行も包含されておりまするので、従って、その銀行員が特に業務上利益を亨受したというような場合におきましては、涜職罪に匹敵する犯罪に問われますることは、法規に照らしてきわめて明瞭でございます。
  168. 阿部五郎

    ○阿部委員 そういうふうにきわめて明瞭であるにもかかわらず、事実は世間に公然と——公然とではないかもしれませんけれども、ほとんど広く行われておるのでありますから、この一事をもってしても、それくらいの法律があることによっては、この腐ったといいますか、はなはだ好ましからざる実情、慣習を是正することはできないということを現わしておるものと思うのであります。そこで、公共的性質を帯びるところの企業については、それに明白に公共企業としての性質を持たせるのが、全体をよくするゆえんのものではないかというのが私の考えでありますが、法務大臣の御所見いかがでございますか。
  169. 花村四郎

    ○花村国務大臣 大体公共的の企業に関しましては、やはり公務員と同一に認められる規定がありまして、その仕事に関して利益を享受したというような場合においては、涜職罪と同様に処罰をせられることになっておりまするから、決してそういう点は御心配はなかろうと思います。
  170. 阿部五郎

    ○阿部委員 私のお尋ねとは違うのでありますが、まあこれでおいておきましょう。それから外務大臣は、私は御質問はございませんから、私に関する限りでございましたら、どうぞ御退席を願います。  農林大臣に伺いたいのでございますが、最近事業継続中の土地改良事業が難関に逢着しているものが、相当多数に上っているかと思うのであります。すなわち、何億円もの事業計画を立てて、何年か事業をやってきたが、さて事業の途中に至って、その土地改良区の一村とかあるいは村の半分とかいうような、相当多数の農民が脱退を申し出る、こういうような問題を起している産業が、相当全国的には多数にわたるのではないかと思うのでおります。そしてその原因が、最初事業に取りかかるときに、利益を受けることが割合希薄なところの農民までも、いろいろうまいことを言うて説得して加入をさせた、こういうことが原因になっているようであります。しかも、そんなことをしなければならなかったというのは、政府が一定の受益面積を持っておらなかったならば補助金を出さない、こういうようなところからきている。それが半半を何年か遂行して、そして地元負担金がだんだんかさばってきた時分に農民の自覚するところとなって、そして脱退を申し出る、こういうような問題が相当たくさん起っていると思うのであります。しかも最初は、加入をしても負担金はとらないというふうなことを言うて、一種詐欺的な説得方法も使っている事実もあるやに聞いております。こういう問題が全国的に相当あると私は思いますが、どれくらいあるものでありますか。それから、これに対してどういう御処置をおとりになって問題を解決なさるお考えか、この点を承わりたいと存じます。
  171. 花村四郎

    ○花村国務大臣 ただいま御指摘のような原因が、間々あったところがあるかもしれないと思います。それは御指摘の通り、施行面積が相当の制限をつけてありますので、それを取りまとめる上から参りまして、多少の無理があったところがあるかもしれないと思います。さらにまた、工事をなるべく急いでやるということのために、設計その他において十分でなかったところもあるかもしれないと思います。しかしこれらにつきましては、当局といたしましては、それぞれしかるベく善後処置を講じているので、ただいま御指摘のように、全国に何カ所あるというようなことにはなっておりません。しかし地方の実情によっては、そういう不平不満があるところがあるかもしれないと思います。実は私もそういう地域におりますが、直接表面に出た何カ所という数字は、今当局にありませんので、御指摘下さいますれば、実情を調査いたしまして、しかるべく善処いたしたいと思います。なおこの際つけ加えて申し上げておきますが、そういう点を勘案いたしまして、今回小団地の開墾をつけ加えて、そして無理に規模を広げなければできないというよりたことのないように、処置をとっているわけでございます。
  172. 阿部五郎

    ○阿部委員 ちょっとついでに、しかるべく処置をおとり下さるというお話でありますが、そのしかるべく処置というのが、あの土地改良法を見ましても、なかなかその処置が困難じゃなかろうかと思うのであります。それで大臣は一体どういう処置によって、この脱退を望む者が多数に及んでおる土地改良区の紛争を解決することができるとお考えになっておられるか、その点伺いたい。
  173. 河野一郎

    ○河野国務大臣 現実に具体的な事実が出ましたならば、それに対応いたしまして、必要があれば法律の改正もする場合があるでしょうし、予算措置をとらなければならぬ場合もあるでしょう。具体的な問題に遭遇いたして考えます。
  174. 阿部五郎

    ○阿部委員 それから、最初に経審長官がおられませんでしたから、保留しておりました件について伺いたいと思います。濃縮ウラニウムをアメリカから提供してくれるという申し出がもったということでありますが、私が伺いたいのは、アメリカは、何の目的で、どういう意図を持って、日本その他の各国に濃縮ウラニウムを提供しようとするのであろうか、これであります。表向上の理由としましては、ただいま外務大臣から承わったのでありまして、原子力の平和利用の世界的な普及をはかるというような目的で各国に提供する、こういうような申し出であるそうでありますが、それではあまりにアメリカという国が善意に過ぎるのであって、ちょっとわれわれ国民の常識を納得させるには及ばざるものがあろうかと思うのであります。アメリカの濃縮ウラニウム提供の意図はどこにあるのであるか、これが明らかになりませんと、どうも人からものをただくれるという申し出を受けたような感じがいたしまして、何だか薄気味が悪くて、どうもちょっと納得しかねるのでありますから、この点できるだけ明確に、政府のお調べになって御承知になっておるところをお話し願いたいと思います。
  175. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 原子力は初め殺戮兵器用として発達したものでありまして、これが殺戮用に使われるということは、もうほとんど全世界人たちが反対しておることは事実であります。その意味におきまして、アメリカはせっかくこれだけ研究したものを平和的産業に利用するということについては非常に熱心でありまして、特にわが国に関する限りにおきましては、これは私の見方は少し甘いかもしれませんが、先般アジア・アフリカ会議に参りましたときも、世界の人類の中で日本人だけがあのアメリカがやった原子力によって非常な損害を受けておる、で、日本人は永久的に最初の犠牲者であって最後の犠牲者たらんことを希望する、こういうことをわれわれは主張したのでありますが、このことは、現在アメリカの朝野におきましても相当深刻に響いておりまして、日本が原子力によって非常な犠牲を払った、この犠牲は原子力の平和利用によって何か報いなければならぬ、こういうふうな気分が一部分に台頭しておるということも事実であります。同時に、日本は現在どの国よりもエネルギー資源に恵まれていないのであります。水力電気を開発いたしましてもだんだん高くなる、石炭は、これは相当あってもだんだん高くなる、特に油がない。このことについては、今日経済的工業的に発達しておるどの国よりも、日本はエネルギー資源においては、アメリカよりもイギリスよりもどこよりも少いのだ、この国においてまず原子力が利用されるということは、世界一つの範を示すことではないか、こういうような意味から日本に特に強く働きかけておるものと、私は善意に解釈いたしております。
  176. 阿部五郎

    ○阿部委員 私の疑問が解けたとは申し上げかねるのを遺憾といたします。日本のみならず、私が新聞で知ったところによりましても、トルコとはもう提供の協定ができたとかいう話でありまするし、イタリアとは交渉中であるとも聞いておりますが、あえて日本だけではないことは事実のようでございます。それでただいまの御説明は、日本だけであればまあそうかとも思うのでありますが、どうもまだはっきりしないところがあるのでございますが、いかがでございましょうか。
  177. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答えいたします。ただいままで私どもが調査いたしました範囲におきましては、たとえば濃縮ウラニウムのようなものを持ってきて、これを実験用に供するというようなことは、これは何ら秘密はない。秘密を保持すべき条件がない。従いまして研究の自由、これを民主的に、自主的に使用して何ら差しつかえない、こういうふうに私は解釈いたしておりますが、この原子力を動力に使うということになりますと、これは兵器に使われる心配がある。こういうふうな点は今まではっきりしておりまして、その点につきましては相当秘密の条項が付与されるかと存じておりますが、これはまだはっきりはわかりません。そういうふうな問題が大体わかっております。
  178. 阿部五郎

    ○阿部委員 もう一つだけ。それでは伺いますが、アメリカ側として濃縮ウラニウムを日本初め各国に提供することによって、アメリカ側の得るものは何ものもないのでございましょうか、どうでしょうか。
  179. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。これはアメリカ技術を研究する、その技術ついてはある程度報償を払うべきものであると思っております。どの程度に払うかということにつきましてはまだ折衝いたしませんからわかりませんが、何ほどか彼はそれによって、利益を得るもの、こう思います。
  180. 阿部五郎

    ○阿部委員 その利益とおっしゃるのは対価を得るということだけでございましょうか。くどいようでございますが、濃縮ウラニウムの対価を得るというだけが、アメリカの利益でございましょうか、その点を……。
  181. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 代価を払ったとか何とかというお話しでありますが、そういうことは断じてありません。そして今後どのくらい払うのだ、またそれを貸してくれるのだ、どれくらい払ったらよいかというようなことは、今後交渉に入るつもりでおりますが、その交渉に入る前に私どもはもっと研究すべき点があります。研究の自主性が持てるかとか、いろいろな点が前提的にもっと研究されなければならぬのでありまして、まだそこまでの交渉に入っておりません。
  182. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 阿部君、時間の関係がおりますから適当にお願い申し上げます。
  183. 阿部五郎

    ○阿部委員 大蔵大臣一つ。昨日でしたか、たしか杉村委員質問にあったと思いますが、近ごろ予算と決算との間に、歳入において差が大きい、こういうことなのであります。すなわち予算で税収入を計上しておる以上にはるかに大きい税収入が事実上ある。それが毎年続いておる。この点なのでありまして、御説明は経済界の変動などによって、最初はできるだけ甘くなく、辛くなく、正当に見積っておるけれども、実際上課税をしてみると増収になる、こういうようなお答えであったと思うのでございます。しかしそれは所得税や法人税の点でありますが、特に申告所得税やあるいは法人税におきましては、これは経済界の変動といいましても、相当前から見積りを立てて納税令書を出すのでありますから、そう二月や三月の経済界の変動に応じて多くかけたり、少くかけたりは事実上なかなかできないのではなかろうかと思います。そこで、実際上のお扱いは、これは予算がかけられまして成立しても、最初法人税や申告所得税を課税するに当りましては、予算以上に相当大きく盛りかけて、税務署の方で課税しておるのではないかと思うのであります。その結果としまして、いろいろ異議の申し立てがあったりなどして、黙っておる者は盛りかけた水増しの税金をとられる。強硬に交渉する者などは割合に軽い負担で済む、こういうような事実がたくさん起って参って、その結果全体を総合して、予算で見積ったよりも多くの収入が上っていく、こりいうふうなことの結果を生じておるのではないかと思う点が多々あるのであります。それでこの点につきましては別に大臣お答えでなくてもよろしゅうございます、政府委員でけっこうでありますから、できるだけこの点々具体的に、どういう方法で課税をし、なぜこんな大きな増収が生まれてくるのであるか。この点御説明をいただきたいのであります。
  184. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいまの御質疑については、数字をもってお話しした方がいいと思いますので、政府委員から答弁させます。
  185. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 毎年税の実収が予算数字と違うじゃないかということでございますが、これは御承知通り予算は成立しますのが大体年度の初めでございまして、今お話がございましたように、その後課税物件の消長がだいぶんあるわけであります。御承知通り、税はきまった税法に基きまして実は賦課徴収しておるわけでございまして、ももろん予算の見積りに当りましては、大体どれぐらいの収入があるだろうかということを、いろいろなできるだけ詳細な資料に基きまして見積っておるわけでございますが、実際徴収しました結果とは毎年若干の差が出てくることは、どうも私どもこれはやむを得ないことではないかと思っております。日本だけではなくして、これは各国におきましても見られる現象だと思います。税務行政におきましてはわれわれはできるだけ予算にとらわれないで、むしろ正しく各個人にあるいは各課税物件に税法を適切に適用いたしまして、円滑に徴税いたしていくということを、実は一番大切な点だと考えておるわけでございまして、そういう趣旨で税務行政を運用しておるわけであります。その結果、実際の見積りと結果に差が出てくるということは、ある程度はいたし方がないことと存ずる次第でございます。今水増しその他の点がございましたが、一時そういうような御非難を受けたときがございましたので、最近はそういう点につきましては特に厳正に注意いたしまして、あくまでも個々の納税者の所得を的確に調査いたしまして、それに基いて申告をしあるいは徴税するということに心がけておる次第でございます。なお、十九年度若干自然増収が出るだろうということは、主税局長からかつて説明いたしたと思いますが、二十九年度は主として間接税の方に自然増収が出まして、申告所得税、法人税は若干予算より減るのではないかと見ております。二百億前後の自然増収になろうかと思いますが、その大部分は酒税と砂糖消費税と揮発油税、これによりまして出てくることになろうかと思っておる次第でございます。
  186. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 阿部五郎君、結論にどうぞお願いいたします。
  187. 阿部五郎

    ○阿部委員 それでは地方州政について一点伺いたいのでありますが、今年度の地方財政計画については、閣議で御協議中であると新聞などで承わっておりますが、その御協議の内容がどうか知りませんけれども、百四十隠円ばかり自治庁の調べによっても地方財政には本年度赤字が出るということになっておるそうでありまして、それを最初から政府が赤字のままで財政計画を出すというのは当を得ないから、紙の上でそれを調整して消すということをするとかせぬとかいうようなことが新聞に載っております。もちろんこれは新聞のことをどうこう言うのではございませんけれども、実際上常識で考えましても今年度の地方財政が非常な苦境にあることは申すまでもないと思います。そうして計算上つじつまが合わないで赤字が出ておるものを、政府が紙の上で調整するとかいうようなことが新聞に載ること自身がはなはだどうもおもしろくない。政府としての権威を失墜するものではなかろうかと思うのであります。(「その通り」)しかしそれはそれとしまして、事実上非常な難局にあるのでありますから、このままでいきましたならば、各省とも政府の施策が実際上末端に行って——地方自治体の行為によってそれが具体化していくのでありますが、その最末端におけるところの自治体の財政窮乏のために、事実上政府の施策が実行されないというような結果が起るおそれが多分にあるのでございます。それで、私は時間もないから、そう一々各省にわたって具体的にお尋ねはいたしませんけれども、地元負担金を伴う政府の施策は、地方起債が許される部分につきましては、起債さえできましたならばそれは実行ができるでありましょう。しかしながら起債の伴わない、半額補助なら半額補助で、あとは地方財政でまかなわなければならぬ事業がたくさんありまするし、厚生省関係のごときは、あるいは八割まで国の補助であって、県が一割、市町村が一割というような、たとえば生活保護法に基く扶助料の支払いのごときもの、こういうようなものさえ、実際上末端に行ったならば、地方自治体は財政が苦しいものでありますから、百人扶助しなければならないものを七十人に落したり、六十人に落したりというようなことが起ってこないとも限らないのであります。このままでいったならば、私はそんなことになるだろうと思っておるのであります。そうしてそれは一つや二つのものではなくて、ほとんど政府の施策の全般にわたって、こういり実行ができない、あるいはそれは切り捨てて規模を小さくしてでなければ、実行ができないという問題が起ってくるに違いないと思うのでありますが、自治庁長官並びに各省の代表という意味で厚生大臣の御所見を承わりたいと存じます。
  188. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 地方財政計画は、二十九年度の地方財政計画に、三十年度におきまして当然減少されるものと、当然増加されるものとを計算いたしまして、一方歳入の方におきまして交付税並びに国庫支出金、地方税、地方債その他いろいろ計算したその差引が、約百四十億前後になるのでありまするが、現在の地方財政現状にかんがみまして、三十年度、三十一年度は、もう極端に事業その他の事務費等を節約しまして、地方財政の健全化をはかりたい、かように考えまして必要なる法案等を今議会に提出するつもりになっております。ただいま御指摘の補助事業などはどうなるかというお話でありまするが、失業対策事業でありますとか、生活保護事業のごときは一種の義務費でありますから、ぜひ遂行するようにいたしたいと考えておりまするが、その他の公共事業につきましては重点的にこれを施行いたしまして、経費の節約をはかりたい、こう考えておるわけであります。(「それでは説明にならないじゃないか」と呼ぶ者あり)
  189. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいま御指摘になりました点は、ごもっともな点が多々あると思います。ことに厚生省施策の補助金の地方分担分につきましては、交付税の計算の中に十分入っておりまするが、しかし厚生行政は、たとえば生活保護にいたしましても、あるいは伝染病の予防などにいたしましても、これは民生安定上欠くべからざる経費でありまして、生活保護は、大体昨年とほぼ何様な地方と国との関係になると思うのであります。従って従来でも公共団体は苦しい財政状況の中からやりくりをいたしまして、こういう施策は十分に実行しておりまするから、差しさわりのあったことは今までにもなかったわけであります。今後も民生安定上最も重点と見られる生活保護等の施策が、これがために影響を受けるということになれば、きわめて重大でありまするが、ただいま自治庁長官から御答弁のありましたように、重点的施策に対しては十分にやるし、その他の問題に対しては節約をする、こういうことでありますから、安心をいたしております。
  190. 阿部五郎

    ○阿部委員 もう一点だけ法務大臣に伺います。法務大臣はきのうおられたかどうか存じませんけれども、戦犯の問題について、戦犯を即時釈放したいというのはわれわれも同じようにそう思っておるのでありますが、きのう外務大臣お答えでは、戦犯というのは、日本の国内法の立場から考えるとどうもないように思う。こういうお答えがあったのであります。私たち戦犯の即時釈放はもちろん希望しておるのでありますが、あの戦犯というのは名目の上からは捕虜の虐待とか、あるいは戦場における非戦闘員の殺戮とか、村落への放火とかいう名目がたくさんについておるようであります。そうして日本の当時の軍刑法からいいましても、これらはいずれも当然犯罪であったと思うのであります。そこで戦犯というのは国内法からいえば罪にならないものだという考え方をするといたしますと、現在自衛隊というものができて、実際上の軍隊がどんどん拡大されつつあるときに、こういう非戦闘員の殺戮とか捕虜の虐待というがごときものを、全然罪でない、こういう考え方にまで行くとしましたならば、これは将来のためにまことにおそるべきものだろう、こういう感じがいたしましたから、この点についての法務大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
  191. 花村四郎

    ○花村国務大臣 お答え申し上げます。大体外務大臣の昨日の意見と同様ですが、戦犯というのはわが国内法にはございません。しかしただいまあなたが言われたように、軍人が非戦闘員を殺戮したという場合においては、これは軍刑法に触れて所罰をせられておったことは当然でございます。しかし今いわゆる戦犯と称せらるる人々に対しましては、わが国の国内法の適用はございません。
  192. 阿部五郎

    ○阿部委員 時間もないそうでありますから、私にこれで打ち切っておきます。
  193. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 春日一幸君。
  194. 春日一幸

    ○春日委員 私は中小企業問題を中心といたしまして、貿易、金融税制等をめぐる諸問題について、時間の許します限り政府所見をお伺いいたしたいと思うのであります。  第一点は、貿易振興対策のうちで、中共貿易に関する事柄についてであります。すなわち鳩山内閣は過ぐる二月選挙において、中ソとの国交の調整、それからそれらの国々との貿易の促進、これを公約されたことは天下周知の事柄でありまして、これらの公約に刺激をされて中国から貿易使節団が参られ、過ぐる、五月四日にその協定が成立をいたしたのであります。これはすなわち鳩山民主党の年来の宿願の一つがここに達成された事柄であると思われるのでございまして、この協定の実現のためには、政府は当然全面的な協力をなさるものと期待をいたしておるのでございます。しかるところ、先般来の予算委員会の論議を通じて伺ったところによりますと、その貿易協定の第五条、双方の支払い協定の条項について政府に難色ありとのことでございますが、この点について政府の見解を明確に伺っておきたいと思うのでございます。すなわち第五条は「双方の取引上の支払と清算は、日本銀行と中国人民銀行との間に支払協定を締結し、清算勘定を開設して処理する。」こういうことがうたわれておるのでありまして、しこうしてこの協定の裏書きともなっておりまする交換文書の中に、これらの協定の各条章については四月二十七日鳩山内閣総理大臣に会見したとき、鳩山内閣総理大臣はこれに対して支持と協力を与える旨明言したという文書が、日本代表から中国代表でありまする雷団長に提出され、雷団長から返し文書といたしまして、鳩山内閣総理大臣はこれに対して支持と協力を与える旨明言したとの文書をちょうだいした、しかと了承いたしましたということが、日本代表に交換文書として取りかわされておるのでございます。そこでお伺いをいたしたいことは、日本銀行がこの支払いの衝に当るということについて、政府はどのような見解をお持ちになっておりますか、まずこの点についてお伺いをいたします。
  195. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。中共との貿易決断について日本銀行が相手になるということそれ自体について、何も原則的に反対する理由はないと思う。ただ今日その時期でないということであります。
  196. 春日一幸

    ○春日委員 今日はその時期でないという御答弁でありますが、それならばその時期はいつごろ至るであろうか、またこの協定は一カ年間有効といたしております。従いましてその時期があまり遠い将来でありましては、事実上日本銀行がその衝に当ることは差しつかえないと大臣は言っておられますけれども、実際的な効果はこの協定に及ばないわけであります。従いましてこの日中貿易の協定を有効に処理いたしますためには、日本銀行がその衝に当ることがいけなければ、当然これにかわる何らかの変った処理が必要となって参るのでございましょう。従いましてその適当な時期はいつであるか、この点をお伺いいたします。
  197. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。それではいつ可能であるかというお話と思うのでありますが、これは日中の国交がどういうふうに進展を見るかということと相にらんで考えなくてはなりません。私はむしろそういうような日中国交の調整の外交的な措置が先行すべきだと考えます。
  198. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、この貿易協定は一年間有効とするということになっておることは御承知通りであります。しこうして一萬田大蔵大臣もそんなに早く日中相互間の国交が調整されるとはお考えでないでございましょう。従いましてこのビジネス・スケールにおいて、この協定が実施され得るように政府が支持と協力を与えようとするならば、何らかの方策が考えられなければならないでございましょう。大臣の御見解によると、日本銀行がその衝に当るにふさわしい時期というのは、すなわち日本と中国との間に平和関係が回復されてから後でなければならぬというのでありましょうか、この点を伺っておきます。
  199. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私が申したいことは、日中の国交の関係が今の状況下においては、中央銀行が決済の相手になるということはできない、こういう考えであります。
  200. 春日一幸

    ○春日委員 しからばどういうときならば第五条にいう日本銀行が決済の衝に当ることが差しつかえないとお考えでありますのか、その点を一つ具体的に明確に御答弁を願います。
  201. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは実は率直に申し上げますが、取引の上の関係から見れば、そういうふうに大体中央銀行間の決済をやるということは、これはどこの国でもやっているところが多いのでありまして、取引の上からはなるほどいいのではないか。えてしてこれは国際法上とか、あるいは外交の問題、日中の国交に関連しての問題でありますから、私からいつどうということは答弁いたしかねるわけであります。
  202. 春日一幸

    ○春日委員 それでは石橋通産大臣にお伺いをいたしたいと思います。いずれにいたしましても、日中相互間の貿易の促進、これは民主党の公約でありますのみならず、特に四月二十七日に鳩山総理と日本側代表とが会見をしたとき、総理はこれに対して協力と支持とを確約され、しかもその協力と支持とは半ば交換の文書となって両国間にこれが取りかわされておるのでございます。従いまして、ある意味におきましてこれはすでに国際的な一つの背景を持つに至っておるのでございます。公約を実現する立場におきましても、またこれが国際的な一つの影響力を持つに至っております立場におきましても、この第五条の問題はただいま一萬田大蔵大臣が答弁されておりますようなヒョウタンナマズのような答弁では、問題の解決にはならないと思いますし、また何人もそれでは了解ができないと思うのであります。従いまして、民主党はその公約を実施する立場と、鳩山総理の協力、支持の実行、そういう立場から、第五条にいう日本銀行がその支払いの衝に当ることが現在不可であれば、何らかの形でこの協定実現のための政府としての措置をとらなければならないでございましょう。従いまして、日本銀行がだめならば、それの対案を何かお持ちであろうと思うのでありますが、それに対する構想を一つお述べいただきたいと思うのであります。
  203. 石橋湛山

    石橋国務大臣 現在でも日中貿易は行われておるのでありまして、従って支払いは行われている。できるだけその支払いの方法を合理的にすることが両者の利益でありますから、第五条にうたってあるような方針は一つの考案としてけっこうだと思います。ただし相手力が日本銀行がいいか悪いかということはなお検討を要する点がありますので、通産省としてもなお大蔵省あるいは外務省と十分連絡して、この問題の解決をできるだけ早くはかりたい、そう考えております。
  204. 春日一幸

    ○春日委員 よくわかりました。現在は日中貿易が東京銀行によって行われ、これがポンド建てによってロンドン決済が行われていることは私も承知いたしておるのであります。しかしながら、今度の協定はそういうような現在の変則的な取引ではなくして、一歩前進したものにしようとするところに格別の意義があるのでございまして、しこうしてこれらの画期的な内容を持つこの協定は、特に繰り返して申し上げますが、総理の協力と支持を得ることによって中国代表団は満足して国に帰られておるような事情もあるのであります。そこで今お話のありました現在やられている事柄が多くの困難な問題を持っていることは御承知通りでございまして、現状に安んじておるわけには参りません。従いまして、中国側が要望しておりますのは、とにもかくにも一歩進んだ形、すなわち彼らの特に主張いたしておりますのは、日本銀行——中央銀行がその衝に当るということでありますが、しかしながら現在の立場におきまして、日本銀行がその衡に当ることに難色がありといたしますならば、とにもかくにもそれにかわるところの次善、三善の案というものが当然政府の責任において考えられたければならぬと思うのであります。この点について石橋通産大臣は何か御検討のようでありますが、この際私案と申し上げましては何でありますが、この国立銀行、すなわち国家の責任と保証においてその決済を行うということでありまするならば、中国側の了承も非常に得やすいのではないかと考えられるのであります。国家の責任と保証という形になってその衝に立つ金融機関ということになりますと、日本銀行のほかには、とりあえず日本輸出入銀行という銀行があろうと思うのであります。これは貿易の振興あるいは国際通貨価値の安定というような、いろいろの目的のために作られた金融機関であるのでございまして、従いましてこの日本輸出入銀行法の一部を改正されて、そういうような為替事務をも取扱うことができるということにして参りまするならば、国家の責任と保証において、すなわち中国側の要望いたしまする日本国の責任と保証、これによってその決済の衝に当るという機関がここにでき得ると思うのであります。   〔上林山委員長代理退席、委員長着席〕 もとより現在輸出入銀行はプラント輸出に対するところのウエートが置かれておりますけれども、これは日本の貿易の振興のために作られた金融機関でありまして、法律の一部を改正すれば、そういう特別勘定の設定もあえてこれは矛盾するものではないと思うのであります。なおこれは百パーセント国家出資という立場で、国家の保証と責任の上においてその衝に当ることも疑義のないところであろうと思われるのでありますが、こういう問題についてどのような御見解をお持ちでありましょうか。石橋通産大臣から御答弁を願いたいと思います。
  205. 石橋湛山

    石橋国務大臣 ただいま、今の問題について何か具体案を持っているかというお尋ねでありますが、今のところ具体案を持っていると申し上げかねるのであります。中共との貿易についてはかれてたまたま雷団長という人にあるとき会いました。そのとき、もう少しあわてずにお互いにしんぼうしてこの問題の解決をはからないと、なかなか急に問題の解決をはかろうとしてもうまくいかないだろうということを中したのですが、私は現在もそう思っている。もう少し研究もし、いろいろクライメートがありますから、全体の空気がそこへいかないとなかなか解決がむずかしいだろうと思います。現状においては国家の機関が相手方になることはむずかしいのではないか、かように考えております。それから輸出入銀行は御指摘のように現在プラント輸出の金融だけをやる機関としてできているわけでありまして、もしこれにやらせるとすれば、輸出入銀行の性格そのものを変更しなければならないということになります。
  206. 春日一幸

    ○春日委員 いずれにいたしましても、その雰囲気ということでありますけれども、中ソ貿易の振興ということを強く公約として掲げられた政党が政権をとったのでありまして、まさにその客観情勢はここにおん熟をしていると申さなければなりますまい。こういう雰囲気が成熟した中において、なおかつその具体案というものがないということでは、これは全く公約の裏切りと申しましょうか、から宣伝と申しましょうか、とにかく民主党のこの公約に刺激されて参られた中国のこの諸君に対しまして、全くこれは国際的に欺いた感じになるというそしりを免かれないと思うのであります。従いまして総理大臣がかりそめにもこれに対して協力と支持を与えられたことであり、しかも協力と支持を得たということに対して、これを裏書きとしてこの協定が成立をしておるのでありますから、ただ単に機運が成熟していないとか——自分で公約として掲げておいて、自分で政権をとって、なおかつそれで機運が成熟してないなどというようなことは、私はこれは言いのがれであって、何人も納得でき得ないところであろうと思うのであります。従いましていろいろな関係において、日本銀行がその衝に当ることがふさわしくないといたしますならば、それにかわるところの国家の責任と保証という、相手方が求めておりまする対案というものが政府において考えられるということは、当然の責任であると思うのであります。従いましてどうかこの問題について、一つすみやかに日本銀行がその衝に当り得るような方途を講ぜられるか、これにかわるところの適切な方途を講ぜられまして、せっかく成立をいたしましたここ協定が成功裏に実現することのできまするよう、政府に対して強く要望いたしておくものであります。  次は韓国貿易に関する事柄についてお伺いをいたしたいと思うのであります。今外務大臣かお見えに相なっておりませんが、韓国との間の外交関係ば、先年けんか別れをしたまま今日に至っておるように伺っておるのでありますが、同時にそのような影響を受けて韓国貿易がはなはだ渋滞をいたしておるのであります。遠い親戚よりも近い隣という言葉もありまする通り、歴史的にも、経済的にも、地理的にも、日韓貿易の問題の解決こそは、わが日本経済自立のためにもすみやかに処理されなければならない一大要素であろうと思うのであります。当然石橋通産大臣は御就任以来この問題についてそれぞれの処理をお進めに相なっておると思うのでありますが、現在これらの問題はどういうような工合に具体的に進められておるのであるか、この点を一つつまびらかにお示しを願いたいと思うのであります。
  207. 石橋湛山

    石橋国務大臣 先ほどの中共貿易についての御意見は、はなはだごもっともと存じますので、大いに一つ研究いたしたいと思います。  それから韓国貿易は、ことしの三月の末で四千八百万ドルほど日本が輸出超過になって、いわゆるこげつきになって、向うの代金がとれないでおります。そういうことから前内閣時代にはそのこげつきをどうしても処理をしなければ、新しいこちらからの輸出もできないというような態度をとっておりましたが、昨年十二月ごろ韓国から米を買ってくれということを言うて参りました。前の内閣の方針でありますと、米を買えば、その買った代金は今の四千八百万ドルのかねてのこげつきに支払わせろということでありまして、そこがなかなか問題でありました。これはしかしながら韓国と特殊な関係もあるから、前の借金は決して放棄するわけではないけれども、これを何か徐々に支払ってもらうというような一時たな上げ的な方法をとって、今度の米の問題はそれはそれとして、新しい貿易として始めていこうじゃないかという方針で韓国と話し合いをしました。ただこれは米の値段の協定がなかなかむずかしくて、今もって——最近やっとできるようでありますが、幾らで韓国が米を輸出するか、向うの言い値とこちらの希望値段と非常に違いまして、そのためにだんだんおくれて最近に至ったわけであります。近いうちにもその米の値段は解決するだろうと思います。従ってそれが糸口になり、だんだん韓国との貿易が広がるであろうというふうに希望をいたしております。外務省の方の問題は私よく知りませんが、外務省は外務省として、日韓会談を開始しようと努力しておられることは御承知通りであります。
  208. 春日一幸

    ○春日委員 先年韓国国会の外交委員長をやっておられまする黄成秀という人が参られまして、私ども社会党の代表とたび重ねて日韓通商の話について、プライベートでありましたが、意見を交えました。向うの言うところによりますと、韓国においては年間三百万石の米が過剰状態であり、しかも売り先がない、従って韓国内においては物資が非常に不足にもかかわらず、米だけは過剰状態で、輸出する先がないので、国内消費でこれを使ってしまっておる、こういうような意見を述べておりまして、もしもこの三百万石の米を日本が買ってくれるような正常関係が樹立されるならば、それにかわるところのいろいろな物資を日本から輸入することによって、少くとも年間一億ドルをこえるところの商売ができるであろうということを韓国側も指摘いたしまして、強くそういう要望をして参ったのでございます。いずれにいたしましても、これは外交と関連をいたしまする問題でございまして、ただ商売の話だけをとっぴに進めるわけにも参らぬでありましょうが、ただいま申しました通り、歴史的にも、経済的にも一衣帯水の韓国であります。どうか一つ政府は全般的に協力を願いまして、今日本の行き詰まっておる経済を打開する一大要素として、韓国貿易の問題を取り上げられて推進されんことを強く要望いたしておるのであります。  それから次は外資法関係の諸問題について通産大臣に伺っておきたいと思うのであります。これは昨年の初頭以来日米通商条約をたてにとってでありますか、セメント工業におけるアメリカのジョンス・マンヴィル、シンガー・ミシン会社等が日本に企業の進出をもくろみまして、外資法に基く認可の申請を申し出てきておるのであります。御承知通りアメリカの巨大資本がもしも日本に大挙進出するということに相なりまするならば、これは日本の国内における大企業といえども当然太刀打ちはできないのみならず、中小企業は全面的に斃死するということは火を見るよりも明らかであります。私どもの調査によりますと、シンガー・ミシンの進出を許したイギリスにおいては、ミシン工業に関する限り町工場においてはネジ一本の生産すらとまってしまったということが言われておるのであります。従って日米通商条約関係がどうありましょうとも、日本にはやはり民族産業保護、国の産業を育成するという独自の立場がなければならぬと思うのであります。これらの諸問題は一体どういうような経過をたどっておるのであるか、さらには政府の方針としては、前吉田内閣はこれに対してときに許可すると言い、ときに不許可すると言い、そういうような中途において内閣の更迭が行われました。問題は大きな件数にまたがって、ペンディングになっておると聞いておるのであります。最近さらにアメリカ方面からこういう問題についてそれぞれ運動が新しく展開されておるやに伺いますので、この際政府はこういうアメリカ資本に上る大企業の日本国内進出についてどういう方針を堅持しておるのであるか、この点明らかにしていただきたいと思うのであります。
  209. 石橋湛山

    石橋国務大臣 私は、原則的に申しますれば、アメリカだけに限りませんが、外国の資本技術も、日本に必要な限りは入れた方がいい、こう思っております。しかし今お話しのシンガーの場合のごときは、これは日本のミシン工業というものは、中小企業として相当発達をしております。技術の上においてシンガーがすぐれているということも言いますが、しかし特にシンガーを入れなければならぬというような技術的の必要も認めません。そこでこれは不適当という判断を下して許可をしない、こういう方針にきまっております。  それからもう一つのジョンス・マンヴィルですか、スレートみたいなものを作る、あれは技術的には確かに向うの方がすぐれておりますから、そこで入れてもいいものと考えておりますけれども、現在まだその入れる方法については、結論に達しておりません。目下研究中であります。そのほかにそういう懸案は今のところではございません。
  210. 牧野良三

    牧野委員長 春日君、高碕国務大臣は本会議が要求しておりますから、ちょっと席をはずしてよろしゅうございましょうか。
  211. 春日一幸

    ○春日委員 いけませんね。
  212. 牧野良三

    牧野委員長 それではこのまま継続いたします。
  213. 春日一幸

    ○春日委員 質問を継続いたしますが、それではシンガー・ミシンの外貨法に基くところの申請は不許可と決定し、不許可という処理がなされておるのでありますか、二の点一つ明らかにしていただきたいと思います。
  214. 石橋湛山

    石橋国務大臣 まだ最後の処理はしておらないそうであります。
  215. 春日一幸

    ○春日委員 不許可という方針が決定して、すでに長い時間が経過をいたしておると思うのであります。しかるにその最終的処理が行われないということについては、しかじかの理由があろうと思うのでありますが、それは一体どういう事情によって最終的に処理が行われていないのでありましょうか。この点も明らかに願いたいと思います。
  216. 石橋湛山

    石橋国務大臣 これは通商航海条約ですか何かの関係などがありまして、いきなり不許可ということを言い切ることは、対外的にめんどうな問題があるそうであります。そういう点から実際上は不許可であって、向うももうあきらめておるようでありますから、向うの方から自主的に取り下げることを待っておるというのが実情だそうであります。
  217. 春日一幸

    ○春日委員 日本経済自立をはかるためには、問題の処理をてきぱきとやっていただきたいと思うのであります。特にただいま触れられましたジョンス・マンヴィルのフレキシブル・ボードの問題でありますが、これなんかも大へん長い問題でございます。全国のセメント関係労働者は一致団結をいたしまして、この外国貸本、アメリカ資本の企業の導入に対して、猛烈な反対をいたしておることはすでに大臣も御承知通りであります。一般的な考え方として大臣は、特にアメリカ資本アメリカ技術を導入することは、基本的に賛成であると言われておりますけれども、特に一つ慎重を期していただかないなければならぬと思います。特に外資の導入については、石橋をたたいても渡らんというくらいの慎重さがありませんと、あとで取り返しのつかないことになるのでございます。一つの事例として、私はシンガー・ミシンにおけるイギリス国内の、特に中小企業の大きな惨害を申し述べたのでありますが、かりにアメリカの企業が日米通商条約に基いて続々申請し、それが続々許可される、こういうことになりますならば、しょせん大資本に対して中小資本が対抗できないことは明らかなことでございます。そういたしますと、ほとんどアメリカ系の企業が日本産業を支配するというような形になってしまうことを、私どもは最もおそれるのであります。日本技術後進性がありといたすならば、その後進性こそはあらゆる行財政の施策をこらして、そうしてアメリカのレベルに追いついて、これを追い越す、こういうところへ政府の施策はこらされなければ相なりません。それをどんどんとアメリカのものを許可するということになりますれば、それが基準となって民族産業というものが転落をしていくということは、必然の事柄でございます。このフレキシブル・ボードの問題にいたしましても、これは重要な問題でございまして、国内の技術者たちは長も遜色のないところの品物を、しかも安価に作り上げることができるということを、いろいろ論争して政府に反対の証拠を出しておるわけであります。従いまして一たんそういうような外資が導入される、外国資本日本に進出するということになった暁の、その乏しい結果ということをよく想定されまして、こういうような問題は特に特に慎重を期されることを強く要望いたしますが、そのためには現在国内法に明確でない点が多々あると思うのであります。この外資法によりますと、第八条の中の第一項に許可しない場合が制限列挙いたしてあるのでございますが、そこの中の第三号目に、「日本経済の復興に悪影響を及ぼすものと認められる場合」こうあります。けれども日本経済の復興に悪影響を及ぼすというようなこういう規定の仕方は非常にあいまいもこといたしておるのでありまして、従って政府がこの問題を取り扱われる場合にいたしましても、私は、大きな障害を来たすのではないか、まだ時間をかけてそれぞれの証拠固めをしなければならぬと思います。従いまして今後こういうような事例を防ぎますことのためにも、この外貨法の一部に適切な修正を加えまして、特に日本中小企業に悪い影響を与えるような場合には許可しないとかなんとかいうような法律の改正を加えて、そうしてあらかじめこういうような事柄に対処する態勢を作られる必要があると思うのでありますが、政治にこの際そういうようなお考えはないかどうか、この機会に伺っておきたいと思います。
  218. 石橋湛山

    石橋国務大臣 御指摘のようにその法律適用の場合には疑義が相当ございます。判断に迷う場合がある。ですが、この法律をまた修正するということになりますと、やはり通商条約等に同時に影響を及ぼしてくるというような問題がありますので、慎重にやらなければならぬと考えております。  それから外貨の入ることを非常に危険に感じて、いろいろ説は承わりましたが、実際は私はそんなに入ってこない、たまたまシンガー・ミシンというものと今のフレキシブル・ボードの問題がありましたが、入ってこいといってもなかなかそう入ってくるものではないから、そうおそれるに足らぬと思います。フレキシブル・ボードの方は確かに反対がたくさんありますが、これは日本の業者の中が二つに分れて反対をしておるのでありまして、技術の点から申しましても、何もアメリカのものを弁護するわけではありませんが、これは公平に技術的に研究をさせましたが、その結果は確かにアメリカ技術の方がすぐれておるということは証明されておるのであります。でありますから、技術的に申せば入れていいと私は考えておりますが、しかしいずれにしましても向って今出願しておるような方法で入れることは好ましくありませんので、そこで現在まだ裁断をしておらぬわけであります。
  219. 春日一幸

    ○春日委員 これはいずれ通産委員会の方にでも移して、さらに詳細な論議を交えなければ明確にならぬと思いますが、これは東京工業試験所でありますか、その試験所ではいずれとも優劣は断じがたいという試験結果が出ておりますし、もう一ぺん検査をし直して最後の判断をしようというような段階にあるのでございまして、非常にデリケートな内容を含んでおるのであります。いずれにしても技術がすぐれたから入れるというのではなく、やはり国の産業を保護育成していくというところに力を用いられまして、そうして日米通商条約の規定もいろいろありましょうけれども自立経済達成というところに問題のかなめがあろうと思うのであります。従いまして、アメリカ資本によって国内産業が大きな被害を受けるようなおそれのある措置ということについては、特に慎重の上にも慎重を期されまして、また具体的にこのジョンス・マンヴィルの取扱いにいたしましても、そのよってもたらすところの影響等もよく検討されまして、さらに慎重を期されることを強く要望いたしておくものであります。  それから次は、外国為替管理法の運営について二、三の問題をお伺いいたしておきたいと思うのであります。これは民主党の公約を拝見いたしますと、貿易自由化の趨勢にかんがみ、外貨割当制度を再検討し、これを厳格に行う、こういうことがうたわれておるのでありますが、これは具体的にはどういうことを指摘されておるのでありましょうか。この点通産大臣からお伺いをいたしたいと思います。
  220. 石橋湛山

    石橋国務大臣 その一つは、たとえばAA制を大いに拡張するというような問題であります。また今まで外貨の割当をいたしますと、これをかなりこまかく公表しておる。こういうことから取引に種々なる支障を来たしますので、そういう公表についての考慮、あるいはなるべくAA制を拡張して自由化をする、それから商社割当というものを考えるというような点をさしたのであります。
  221. 春日一幸

    ○春日委員 この外国為替管理法の目的としておりますところは、国際収支の調整、国民経済の円滑な運行、それから通貨価値の安定、こういうことにあるのでありますが、この吉田内閣、鳩山内閣と続く資本政府のもとにおきましては、この法律がもっぱら独占企業の利益のために壟断されておるきらいなしとしないのであります。特に重大な問題は、この輸入原料の外貨割当についてであります。結局それは輸入為替の割当が主として原料の加工設備を対象として今まで行われて参りましたために、勢いその企業体におきましては設備拡張競争を誘発をして参りまして、これが結局二重投資、過剰投資で資本を食いつぶしました。こういう弊害を起したのであります。その結果としまして、結局生産協定を行なっていく、それからカルテルの締結、こういうようなことで、基礎産業に対する大資本の独占支配というものが、今や完了したのではないかと思われるのであります。こういう状態でありますから、輸入原料に待つところの産業におきましては、中小企業は進出しようにも、介在しようにも、もうその余地がなくなってしまってきておる。たとえば綿花、パルプ、鉄鋼あるいは原油、原糖、塩、まあこういうものでありますけれども、いずれにしても一年間十億になんなんとするこれらの輸入原料が、わずか六十数社によって独占されてしまっておる。中小企業の窮乏の原因は、実に外貨為替の管理制度、ここにあるのではないかと、われわれはこれを分析をしておるのであります。政府はこの際一つ原料割当、それから輸入為替割当に当っては、もう少し抜本塞源的な再検討を加えられて、具体的に申しますならば、二次原材料、三次原材料というようなものの輸入を、一定歩合を見て許す方針はないかどうか。たとえば原料独占によって、カルテル価格によって国内の価格が支配をきれておるが、そこに国際価格によるところの二次原料が入って、参りますならば、国際価格の刺激を受けることによって独占カルテル価格がそれぞれの影響を受けるのではないかと思うのでありますが、こういうような方途を講ずることによって、二次原料、三次原料の価格をカルテル価格から防衛することをお考えになったことはないかどうか。またこういう問題について大臣はどういう御見解をお持ちになっておりますか、お伺いいたしたいと思うのであります。
  222. 石橋湛山

    石橋国務大臣 外貨割当のやり方のために設備に応じて割り当てたということにある程度の弊害があったということは、御指摘の通りであります。そこでこれを改めて、いわゆる商社割当にして、原料等の輸入されたものが必ずしも設備だけに向って配給されないという方法をとるというやり方を、今年から始めておるわけであります。ただ特殊の例として紡績のようなものは、特に名古屋付近の、むしろ中小紡績あるいは中小企業者から非常な陳情がありまして、どうしても商社割当でなく、やはり今まで通り設備割当にしてもらいたいという話がありましたので、繊維に関する限りは、今年半年だけは特別にもう少し様子を見ようということで延ばしておりますが、大体商社割当にしております。  それからお話のように、もし原料の関係で、それが高くなるというような場合には、三次原料でも三次原料でも、大体今年は輸入については、相当余裕を見て、輸入にあまり厳重な制限を加えない、こういう方針で外貨予算を組んでおります。
  223. 春日一幸

    ○春日委員 現在の大企業は原料を独占いたしまして、値下りがあれば操短をやる、あるいは投機的操作によって、みずから欲するところの高値を維持する、こういうようなことで膨大利潤を貪欲に確保いたしておるのであります。こういうような二次原料、三次原料を使用いたしますところの中小企業、これは結局国際価格に比較をいたしまして、二割なり三割なり高いものをすでに使っておるのでありますから、こういう高いものを原材料として作りまするところのこの中小企業製品が、国際競争に落伍するということは、当然の事柄でなければ相なりません。従いまして、私どもは、経済自立するためには、どうしても輸出を伸ばさなければならぬ。そのために、こういうような二次原料、三次原料の価格を国際価格にまで圧縮していくためには、どうしても潜在いたしておりますところのカルテルを弾圧して、これを撃破しなければならぬと思うのでありますが、政府はこれに対してどういうようなお考えをお仕付ちになっておるか、率直な御意見を伺いたいと思うのであります。
  224. 石橋湛山

    石橋国務大臣 御承知のように、今独占禁止法がありますから、勝手にカルテルを作ってやるというわけにいかない、いわゆるカルテル的なものが今できておりますのは、いずれも法律によりまして、やむを得ず、たとえば、ことに中小企業の保護のために中小企業安定法による一種のカルテルのやり方をやるというようなことになっておるのでありまして、お話のように、そのためにいわゆる大資本が非常に横暴を働いて、中小企業が困難をなめておるという事実は、おそらくないだろうと私は思っております。
  225. 春日一幸

    ○春日委員 私は、中小企業安定法だとかその他の法律に基いてできておるカルテルのことを言っておるのではありません。すなわち法律に違反をして、たとえば独占禁止法その他の制限に違反をして潜在しておるところのカルテル、こういうようなものに対して弾圧を加えていくことによって、そういう独占価格というものを打ち破って、そうしてこれを自由競争に基くところのほんとうの自由価格になるように、政策指導が行われなければならぬ、行政管理が行わればならぬ。そうしてそれが国際レベルにまで競合できるようなものでなければ、日本中小企業者というものはその製品によって国際的な競争をすることができない、こういうことを申し上げておるのでありますから、どうかこの点を十分御検討を願いたいと思うのであります。  そこで問題となって参りますのは、そういう大きな任務を果すために、現在は公正取引委員会がその衝に当ることに相なっております。この独禁法で禁止しております凡百の事柄を、ときには行政機関とし、ときには司法機関として、公取はその大きな任務を遂行しなければ相ならぬのであります。ところがそれにしてはあまりにもその機構が小さ過ぎます。全部の定数は二百二、三十名のものでありましょうか、少くともこの経済憲章たる独占禁止法の規定事項を厳重に管理して参りますためには、全国にまたがるその執行——これは行政と司法の領域にまたがって執行するにいたしましては、あまりにも規模が小さ過ぎます。従いまして不公正取引とおぼしき事柄が随所に行われておるのでありますけれども、しかしながら、それらの事柄に対する行政上の指導も断片的なものであり、いわんやゆだねられておりますところの司法権の執行ということもほとんどなされてはおりません。従いまして潜在しておるカルテルが随所に横行して、これがただいま申し上げましたような、日本の貿易の行き悩みの根源をなしておるのではないかと思うのであります。そこでこの基本法である独禁法が禁止しております事柄は、これを取り締ることは当然のことであり、さらにそのためにはやはりそれだけの機能——それだけの仕事を言いつけたら、やはりそれだけの規模でもってこの官庁が運営されなければならぬと思います。私は公取の規模が現在わずか二百二、三十名の諸君でそんな大きな任務を遂行し得るとは考えられませんし、あまりに小さ過ぎると思う。これでは何にもできませんということは、公取の内部の諸君がみずから詠嘆しておる事柄であります。この際私は日本経済の民主的規模を確保していく立場におきましても、公取の機構を必要にして十分なものにまで大拡張するの意思はないかどうか、この点経審長官から一つ伺っておきたいと思うのであります。
  226. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 一方では公正取引委員会というものは、どうも無用だというような意見もずいぶんありますが、これはただいまのお話のごとく産業を公正にやっていきます上におきましては、どうしても必要だと私どもは存じておりますが、さしあたりこれを非常に強化するということまでもただいまは考えておりません。
  227. 春日一幸

    ○春日委員 独占禁止法という法律が日本経済憲章である。そこで規定されておりまする事柄を管理するために公取があるわけてありますけれども、それがわずか二百数十名ではてんでやれないのだ。実際的に効果は上っていないのです。そこで何とかして独占禁止法の精神と、その規定しておるところをやはり現実に処理していくためには、その機能の拡充強化をはからねばならぬということは、これはもうほうはいとして起っている世論であります。大きな仕事を言いつけておいて——極端な例を申し上げますならば、大きなビルディングを作れという仕事を言いつけておいて、五人か六人の人夫しかそこに配していない、こういうことであれば、そういう大きなビルディングは作ろうにも作りようがございません。だから独占禁止法の厖大な仕事をこなし得るためには、やはりそれにふさわしいところの機能を持たせるのでなければ、独占禁止法というものは有名無欠になります。どこから手をつけていいのかわからないから、いっそ全部やめておこう、こういうことから公取が開店休業、惰眠をむさぼるような形に相なって参っておるのであります。独占禁止法をいっそ廃止してしまうか、公取をなくしてしまうか、あるいはまたこういう独占禁止法がある限りは、公取の機能を必要にして十分な域にまで拡充する必要が大いにあろうと考えられますが、この点については、とくと御検討願いたい。現在日本の貿易が行き悩んでおりますところの根源は、潜在カルテルによって、国際価格よりもうんと高く建値されておりますところのこの問題に原因があろうとわれわれは分析をいたしておりますので、この点についても十分一つ御検討を願っておきたいと思うのであります。  次はまた石橋通産大臣に返りますが、あなたの方の選挙公約によりますと、中小企業対策の中で、親企業と下請企業間の系列を整備し、下請中小企業合理化と安定のため必要な法制の整備等を考慮する、こういうことを掲げておられます。それから第七項目に、百貨店の売り場面積の拡張、店舗新設、不当販売方法等の抑制、これをしなければならぬ、するんだ、こういうことを選挙公約として掲げられておるのであります。この選挙公約におびき寄せられて、中小企業者の票数は多分に民主党に瞞着された気配があると思うのでありますが、具体的にどういうような措置を講じて、この公約を果さんとされておるのでありますか、この点を明らかに願いたいと思うのであります。
  228. 石橋湛山

    石橋国務大臣 親工場と下請との系列化については行政指導で——機械工業のごときは今通産省でもっぱらやっております。  それから百貨店の問題は今公取の方で取締りを相当しておりまして、不当な競争と認められるものは、かなり制限されたと思います。それ以上にさらに何か法律を作って百貨店を取り締るかどうかということは、関係するところがなかなか大きいのでありますから、ただいままだ検討をいたしておる段階でございます。
  229. 春日一幸

    ○春日委員 これは昨年の暮れでありましたか、あまりに百貨店が大資本の暴威、暴力をほしいままにいたしまして、次々と新百貨店を作り上げて売り場面積が続々と拡張されていく。そういたしまして中小企業者の売り上げ高が日に減少して参りますので、これでは困る、こういう要望が世論となって高まって参りました。そのとき公取は特殊指定という事柄を明示いたしまして、これこれのことをやってはいかぬという、すなわち法律の中で許された範囲で、不公正取引とおぼしき事柄を規制したかと思うのであります。しかしながらそれはあなたの方の公約に掲げてありまする売り場面積の拡張、店舗新設、こういうことを抑制する事柄には触れておりませんし、またそういう事柄には触れ得ないのでございます。従いまして、現行独占禁止法の範囲内におきましては、民主党が公約をいたしておりまするところの売り場面積の拡張と店舗新設の事柄は、企業自由の原則の上に立って考えましても、これは規制することができません。すなわち単独立法を行うことなくしては、この公約は果しがたいのであります。従いましてこれは、先年旧改進党時代、百貨店法というものを改進党の議員立法として考えられておりました経緯にもかんがみまして、当然百貨店法が政府案として提出されるのではないかと、中小小売り業者は期待をいたしておるのでありますが、ただいまの大臣の御答弁によりますと、この公約にもかかわらず、百貨店法というものは政府から御提案になる意思がないのでございましょうか。あるいはその単独立法を行うことなくして、いかにしてこの第七項の、すなわち百貨店の売り場面積の拡張と店舗新設の抑制措置を講じられるのでありますか、この点を一つ明らかに願いたいと思うのであります。
  230. 石橋湛山

    石橋国務大臣 百貨店法は研究をいたしておりますが、ただいままだ提案をするところまでになっておりません。  それから百貨店の売り場面積等の問題については、そういう百貨店法みたいな法律でやるか、それとも各地の商工会議所等の自発的な相談によってそういうことを行うがいいかということも問題になっておりまして、これはもっぱら研究をいたしております。今まだどちらともきまっておらないのであります。
  231. 春日一幸

    ○春日委員 選挙で公約をされ、政権を取られました民主党が、公約をされた事柄を実施されるには、それぞれの法律処理をなさるのが当然の事柄であろうと思うのであります。しかし研究中ということでございまして、これは提案の御意志もあろうかと思われるのでありますが、これは自由競争というよりも、すでに百貨店の膨張工合は、弱肉強食の域にまで参っておるのでございまして、不公正な取引とおぼしき事柄は随所に行われております。今にしてこれを規制するのでなければ、すでに重税と金詰まりであえいでおります中小企業者は、さらにこの百貨店の膨張によって一そうの重圧を受けるでありましょう。従いまして私ども日本社会党は、百貨店法を議員立法で提出をいたしまして、この天下の輿望にこたえる考えでありますので、そのときはどうか一つ公約に従って御協力を願いたいと思うのであります。
  232. 牧野良三

    牧野委員長 春日君に申し上げます。時間が参りました。どうぞ適当に御制約を願います。
  233. 春日一幸

    ○春日委員 では一つ大蔵大臣にお伺いをいたしますが、銀行法についてでございます。ただいま阿部君からいろいろと御意見がございました中にも強調されておりましたが、現在市中銀行の集中融資、偏向融資というあり方がはなはだ謙著でございまして、口に余るものがあるかと思うのであります。昭和二十八年度の銀行年報によりますと、鉄行の自己資本の一割をこえて同一企業に集中融資されておりまするものが、その貸し出し総金額の中に占める歩合が三〇%、それから銀行の自己資本の二五%をこえて同一企業に貸し出されておるものが、総貸し出し額の一七%という工合になっておりまして、一週間ばかり前に政府からもらいました資料によりましても、この計数はあまりに改善されておりません。この数字によりますと、一年間の総貸し出しをかりに二兆七千億と押えますと、大体において九千五、六百億から一兆円、こういう巨大な金額が、銀行と特殊の関係のある大企業に系列的に流されておる、こういうことが理解されるのでございます。で、今や銀行の任務は、大企業に対しまして資金を調達するための資金調達局に成り下ったきらいなしとしないのであります。ただいま阿部君が指摘されました通り、この二兆数千億の資金源こそは大衆の預金であり、足らざるところは日銀からの借り入れであり、これは公的なものであるのであります。こういう公けの資金源が、銀行の窓口を通ずることによって、大企業一辺倒の形で縦断されておりますことは、これはすみやかに法の規制が加えられなければならぬと思うのであります。一方中小企業は非常に金詰まりであえいでおりますし、昨年米手形の不渡りは非常に激化いたしまして、今日なお改善されておりません。五月の東京手形交換所の一口当りの不渡り件数も、やはり千五百通前後を上下いたしておると思うのであります。中小企業がこんなにも金詰まりだということは、銀行に貸す金がない。貸す金がないのは、大企業にこんな形で偏向的に流れておるからであります。そこで私は、世界の銀行法をいろいろと見てみたのでありますが、アメリカの連邦準備法、各種金融業法、西ドイツにおきましても全部規制いたしております。これはやはり銀行の自己資本の一割をこえて同一企業体に集中融資をしてはならぬ、こういり規制がいたしてありますのに、ひとり日本の銀行法だけは、銀行家がどこへどういう工合に金を貸そうと、銀行家の気随気まま、自由勝手、まさに金融無政府であります。私は、こういうような状態で銀行を野放ししておくことは、金融機関の持つ公共性、この本質をこわされるばかりでなく、これでは中小企業の金詰まりがいつまでたっても解決をしないように思う。従いまして、資本主義の本山でありますアメリカですらこういう銀行法の規制が行われておりますし、日本と同じような経済自立のために戦っておりまする西ドイツも同様の立法を行なっております。なお日本の国内法におきましても、貯蓄銀行法、相互銀行法、その他の銀行法が同様の集中融資を規制いたしておりますのに、ひとり銀行法だけが野放し状態に置かれておることは、まことにくしきことと申さなければなりません。これは手落ちと言っても過言でないと私は思うのであります。従いまして、この銀行の偏向融資を是正して、そうして金融を広く産業に均霑せしめ、そうして足らざる中小企業の域にまでそれを及ぼさせしめる、こういうことでこの際銀行法を改正して、この偏向融資の傾向を是正するの意思はないかどうか、この際大蔵大臣から一つ御見解を承わりたいと思うのであります。
  234. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。特に戦後におきまして、日本の企業の借入金への依存度が高くなりましたことから、自然大きな企業の借入金が多くなっておる、銀行から見れば、ある企業に対する貸し出しが偏しておるという傾向は、これは私否定いたしません。そういう状況が、これは戦後の状況から特にこういうふうに出ております。そこで今言うところは、なるべく借入金への依存度を減らして自己資金を増大させる、こういう方向をとる、他面資本の蓄積をはかって、なるべく各方面に資金が回るように、こういう一般的な方向をとっております。今御指摘の中の、この銀行法という法律に基いてそういう点はどういうように是正するかという点につきましては、銀行法を改正する場合には、私はやはり銀行の一取引に対する貸し出しについては、ある程度の制限を加えることがよかろうかと思って、銀行法改正の場合にはこれを十分考慮しようかと思っております。
  235. 春日一幸

    ○春日委員 私の意見と大体大臣の御見解も近いようでございます。いずれにいたしましても、銀行がその資金を得るのに増資なりあるいは社債発行なり、どんな方法でもとれますのに、最も安易な方法、日銀からの借り入れによってこれをまかなっておるということは、最もカンニングな事柄であろうと思うのであります。ただいま大臣は銀行法を改正するときに規制を加えたいとのことでありますが、その銀行法改正法律案が国会に上程されますのはいつごろでございましょうか。大体のお見通しについてこの際明らかにしておかれたいと思うのであります。
  236. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 申すまでもなく、銀行法はやはり経済に対する根本的な法律であるのでありますから、客観的な状況をよく見きわめた上でやります。今国会に提出するという考えは持っておりません。
  237. 牧野良三

    牧野委員長 春日君この辺で……。
  238. 春日一幸

    ○春日委員 それでは、重光外務大臣一つだけ伺っておきますが、日韓関係は先年けんか別れしたままに相なっておると思うのでありますが、善隣友好を強く標榜されております鳩山内閣は、この李承晩政権とその後国交調整 のためにどういうような手続を踏んでおられましょうか、その経過並びに大体の見通し等について、この際明らかに願いたいと存じます。
  239. 重光葵

    重光国務大臣 今申されましたような趣旨で、日韓両国間の諸縣案を大局的見地から解決せんために、本年初め以来在京韓国代表部との間にもう数回にわたって非公式の会談をやっております。この話し合いにおいて、相互の立場はかなりよく理解をされてきましたが、しかしまた打ち切られております正式会談を再開する段取りには参りませんことを遺憾といたします。政府といたしましては、この非公式会談を続行して、過去の行きがかりを一掃する努力をいたしまして、諸懸案の現実的な解決に今後努めて参る方針でございます。
  240. 春日一幸

    ○春日委員 この日韓通商の問題は、大へん長年にわたってデッド・ロックに乗り上げておりますが、これもやはり日本経済自立のために解決を急がなければならない一大要素と考えられますが、このためには、それに先んじて日韓国交がすみやかに調整をされなければなりません。伺いますに、一月以来この交渉に着手されたとのことでございまして、すでにもう半歳になんなんといたしております。両国はともに西欧民主主義陣営についておりまして、客観的にも話し合いがもう少し急テンポで、能率的な解決が期待されておると思いますので、どうか一つすみやかにこの日韓関係だけは何とか早く解決されまして、日韓貿易をすみやかに軌道に乗せていただくことを強く要望いたしまして、私の質問を終ります。まだたくさん残っておるけれども委員長横暴だ。
  241. 牧野良三

    牧野委員長 横暴と統制の間をやっております。どうぞ御了解願います。この際開発銀行総裁に対する昨日の杉村沖治郎君の保留質疑に関しまして、同君より発言を求めておられます。これを許します。杉村沖治郎君。
  242. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 大へんおそくなりまして皆さんに御迷惑ですが、きのう開発銀行の総裁が来てくれればこういうことにはならない。実に昭和三十年度の財政投融資の三分の一を日本開発銀行は占めている。本年度の財政投融資は、私が申し上げるまでもなく千八百億、開発銀行に対する財政投融資が五百九十五億、約六百億でありまして、その三分の一を占めている。日本財政経済にいかに重大なる影響があるかということは私が申し上げるまでもないのである。それにもかかわらず開発銀行総裁は、きのうの出頭を求めたのは、きのうでもなければおとといでもない。その前でもない。ずっと前に、特に重要であればこそ、開発銀行の総裁だけには一週間も前に、昨日の出席方を求めておったのでありますが、この点について私はきわめて遺憾しごくと思うのであります。  ただいま私が申し上げましたように、昭和三十年度の予算におきまして、開発銀行に対する財政投融資は実に五百九十五億であります。かような莫大なる融資をいたすにつきましては、大蔵大臣、あるいは運輸大臣、ことに事件関係から申し上げますならば。総理大臣はもとより、これに関係あるところの大臣は、開発銀行の今日までの実績を御調査なされたかどうか、これはきわめて重要な問題であります。しかも国民をして驚かしたところのあの造船汚職は、この開発銀行の融資に関する金であります。決算委員会においてわれわれが調査したところによりますならば、海運会社に融資した金はほとんど返っておりません。それにもかかわらず、本年またここに五百九十五億というような融資をするのであります。あれだけ大きな、日本始まって以来いまだかつてなかった汚職疑獄事件が起ったこの開発銀行の融資につきまして、この計画を立てるにつきましては、総理大臣はどのように御調査をなされましたか、それが伺いたいのであります。外務大臣に副総理として答えていただきます。
  243. 重光葵

    重光国務大臣 政府といたしましては、この問題について善処いたしたわけでありますが、今その的確なことにつきましては、主管の閣僚から御説明を申し上げたいと思います。
  244. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 それでは大蔵大臣に伺いますが、大蔵大臣がこの予算編成については、私が申し上げるまでもなく中心的な最も重要な関係があるのでありまして、あなたは、特に開発銀行に対しては監督の地位にあられるのでありますが、この日本開発銀行の融資関係についてどのように御調査をなされましたか。またこれに対してどのような御措置をとられましたか。一つあなたのおとりになられましたそれを伺いたいのであります。
  245. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたします。開発銀行につきましては、申すまでもないのでありますが、常に不断の注意をして、大蔵省としては監督を十分にいたしているわけであります。
  246. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 ただいまの大蔵大臣お答えは、何らちっともわけがわからないのですが、いま一度はっきり大きな声でわかるように答えていただきたい。常に開発銀行については注意をなさっていると言うけれども、とにかくあなたは、この予算を組むについて、昨年々の融資関係がどうなっているか、ことに海運会社に対する融資の回収等がどうなっておるか、そういうことにつきまして御調査をなさったことがありますか、ありませんか。これについて御注意をなさったことがあるか、ありませんか。それを伺うのです。
  247. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それにつきましては十分調査をいたしております。
  248. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 調査をなさって、御注意をなさいましたか。どういう御処置をとられましたか。調査をなさったというのであれば、この三井船舶、三菱海運初め、五十四の船会社に対するところの九百九十二億一千九百万円のこの貸付金の償還がない。それにもかかわらず、ここにまた五百九十五億という金を昭和三十年度において貸すのですから、これについてあなたは具体的な何らかの方法か処置かをとられないはずはないと私は思うのですが、いかがですか。
  249. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 船会社の償還能力については、十分調査をさしたのであります。がしかし、一方その償還がないから新しい造船ができぬということであれば、日本の海運政策の遂行ができたくなります。いろいろと従来の貸付についてはできるだけ回収したい。これは今後における海運の状況、たとえば船賃がどうふうになるとか、最近は幸いに相当好転いたしておりますので、今後回収が相当見込まれてくると考えております。そういうふうにして回収をはかる、同時に新しい船も作っていく、これは日本の全体の海運政策からくるわけであります。
  250. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 回収をはかられたというが、回収はされておらないじゃありせんか。それからあなたは、回収されないからといって、貸さなければ船ができないから。こういうことを申されまするけれども、そんなことでよろしいのでありますか。日本開発銀行方には何と書いてありますか、回収の見込み確実なるものでなくては貸してはならないということが書いてあるではありませんか。しかもそれが、あなたが監督しなければならない立場にある四十条並びに四十二条、これはどうお考えになりますか。回収になっておらないじゃありませんか。本日私が資料を要求しておるが、どこに回収になっておりますか。それからあなたは、非常にとんでもないことをおっしゃる。そういうようなことでよろしいのですか、まずそのお答えを聞きましょう。回収にならなくても貸すというのですか。そうしてそれは、開発銀行法に反しても貸すというのでありますか。
  251. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、回収については今後の見通しを若干申し述べたのでありまして、新規の資金の融通と回収という点については、回収しないから全然新しい造船ができないというわけにはいかない、こういう考え方であるのであります。
  252. 牧野良三

    牧野委員長 時間をできるだけ節約して質問して下さい。
  253. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 はっきり明確なる答えをしてもらえば、私はそんなことを繰り返さなくていいのです。日本開発銀行の定款第十五条にも、償還の見込み確実なるものに限って貸すということが書いてあるのだが、あなたは償還がなくても貸すというが、それでいいのですか。国民の血の出るような金を、そんないいかげんなことで貸し、いいのですか。大蔵大臣いかがです。
  254. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は回収が見込みがない、確実でないとは考えていないのです。これは御承知のように、国際的な関係が非常に強いのでありまして、ある一定の時期において、国際的な情勢からなかなか船の収入がつかなくなるということはあり得るのでして、そうであるからといって、これが常に回収が不確実であるとは断定はいたしかねるのであります。
  255. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 見通しの問題について、あなたは不確実だとは思わない、こうおっしゃいますけれども昭和二十九年三月二十九日の運輸省の海運局長の答弁にこういうことが出ておるのです。「ただいまの御質問ですが、十次造船に関連いたしまして私どもの一番頭を悩ましておるのはお尋ねの点でございます。もう船会社には担保余力がない。従って市中銀行としてはもうこれ以上融資すると、銀行としてあるいは背任罪を構成するかもしれぬというふうなことが言われておる。開発銀行自体も担保余力がなくて貸せない、」こういうふうに運輸省の海運局長がはっきり言っておる。その当時のことがまだたくさん書いてあります。これほど運輸省の海運局長が決算委員会に来て、もう船会社には担保力も何もない、これ以上金を貸すことは背任罪を構成するとまで言っておるのであります。あなたは何によって将来回収の見込みがあるとおっしゃるのでございますか。
  256. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたします。申し上げるまでもないのでありますが、船を作ると非常にたくさんの巨額の金が要るとは言うまでもない。従いまして、大体この償還は長期にわたりまして償還していくという建前になっておるのでありまして、相当長い期間を見て回収可能かどうかということを考えなければならぬと思います。
  257. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 長期にわたってということは、あなたの御説明なさることは、大体日本開発銀行というものがどういうものであるか、よく知らないのじゃないのですか。日本開発銀行こそは、長期にわたって貸し付ける金でしょう。三年間据置、十年賦償還、十五年賦償還、電力会社については五年間据置、三十年賦償還というようなことになって、長期貸付になっておる。さような寛大な貸付であります。しかも国民の金、それが償還期が来てすらも入っておらないじゃありませんか。本日ここにもらった資料についても入っておりません。九百九十二億一千九百万円貸した中で、実際にここで返したということを言っておるのはわずかに二十一億百万円ではありませんか。それから本年度において六億九千九百万円であります。ところが、やはり同じこれは開発銀行の松田理事並びに運輸省の岡田海運局長が言っておる。五次、六次は完全に償還期が来ておると思います。その金額は二百四十億である。しかし元加をまぜるというと二百五十億になる。こういうようなことを言っておるが、この元加というのは、なすべき金をなさないで、元金に加えたということであって、返しておりません。本日開発銀行からお出しになったものはみなそうです。元加々々で返していないじゃありませんか。いかに長期で貸し付けるからといって、償還期が来たところの元金並びに利息等は返さなければならない。くれるという性質のものではありますまい。その点はいかがですか。あなたはこういうふうに返さなくても、次へ次へとそういうふうに帳簿だけ元へ加えていって、それで一向差しつかえないというお考えでありますか。
  258. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたします。お考えは私とそう違わないと思うのです。決してそういうことがいいというのでもなんでもないのです。同じような心配も批判もやはりなし得ると思うのでありますけれども、御承知のように、そういう長期にわたっての償還の過程において、特に船というものには国際関係からくる特殊性がありまして、たとえば貿易量がずっと減ってくるというふうな国際的な情勢によっては、どうしても船賃収入というものは少くなる、そうすると思うように償還が……。
  259. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 発行中ですが、そういうことを私は聞いておるのじゃない。
  260. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ですから、一時償還を不可能ならしむる事態が生ずるということを私は申し上げておるわけです。ですから、それだからといって、国際情勢の変化もあるのですから、船賃も最近のようにずっと上ってくれば、これまた償還能力が出てくる。さらにこれが、今後の国際貿易の見通しとしてずっと繁栄が国際的にくれば、これは利子も払えるし、元金も払っていける、こういうふうなことになるのであります。そういうふうなものを見通して新しい船を作っていかなければならない。こういうことを私は申上げておるのであります。
  261. 牧野良三

    牧野委員長 杉村君に申し上げます。六時まで御発言を協定しましたから。
  262. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 あなたのような経済論を聞いているのではないのです。あなたは日本開発銀行法も、日本開発銀行の定款もそっちのけでそういうことをやっておるのですか。こういうことをあなたがおっしゃっておると——この点についてはほんとうに政府においても怠慢であったとでもおっしゃられれば、私はこれ以上追及しようとは思いません。しかしながら、この間の私の質問のときに、あの赤坂の中川に、昭和二十七年七月十日の晩、あなたは呼ばれて行ってごちそうになっておるじゃありませんか。そういうようなことをやっておる。こういうふしだらなことをして、さらに本年も六百億に近い融資をしようとしておるのではありませんか。こんなことは言いたくはありませんが、あなたの言うことが、われわれの言う開発銀行法、しかも開発銀行の定款をも無視したところのことをおっしゃられるから私は言うのであります。(「そんなものとは関係ない」と呼ぶ者あり)関係がないことはない。そういうわけでありますから、私はこういうようなことも言いたくなる。  それから運輸大臣に伺いますが、連輸大臣は就任日なお浅くしてこれはわからないでしょうが、しかし、あなたの方の海運局長がやはりああいうようなことを言っております。さらにまた、何といっても、あなたの力は船会社に対しては、きわめて密接なる関係にあって、ある範囲においては運輸大臣は監督権を持っておるわけであります。あなたは前年までのことはわからないといたしましても、本年この三十年度の予算を組むにつきまして、五百九十五億という莫大なる融資をすることについて、どういう今までの御調査があって、これは適当であるとお認めになったのかどうか。
  263. 三木武夫

    ○三木国務大臣 お答えをいたします。今年は五百億と申しますが、造船の資金は百六十億で、これは予算に計上されております。御承知のようにやはり日本の海運は戦争の犠牲によって壊滅したわけですから、従ってどうしても国策として船を作らなればならない。ことに国際収支の改善ということは日本経済の焦点になっておる問題であります。それにはやはり貿易外の収入として、海運収入というものは自立経済に欠くべからざる要素になっております。海運の市況も今まで悪かったが、去年あたりからだいぶ持ち直して参っておるので、今までに開発銀行に返済したのは二十一億円です。しかしこれは長期のものでありますから、弁済期限を延期してもらったのが四十六億と私は記憶しております、しかしこれはそういうことが可能であり、踏み倒しておるわけではないので、いろいろな市況の関係で、返済期のおるものを延ばしてもらっておるのです。将来において、海運の市況等もにらみ合せまして、これは返還のできるもの、こういう見通しと、自立経済のために海運界をどうしても拡充していかなければならぬ、外航船舶を拡充していかなければならぬという国家的な要請と、将来において海運の好転によってそういうことが可能であるという点から、運輸省としても計画造船を続けていきたいという考えでございます。
  264. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 あなたの言う外航船舶の建造の必要性については、私どもも十分承知しておるのです。承知しておるけれども、それかといって、この国民のとうとい金を、法規を無視してまでも回収しないで、次々に貸してやるというようなことはきわめて不都合である。しかもあなたの方の海運局長が、もうこれ以上金を貸せば背任罪を構成するとまで言っておる。担保力も何もない。そういうようなところで、しかも日本開発銀行の定款も、回収の見込み確実なるところでなければ貸してはいけないということを書いてある。銀行法にもそう書いてある。それをあなた方はあえて貸させて、そうして経済論を振り回しておる。そういうことでは国民は納得しないであろうと思うのです。ことに今日の場合どうです、私はこれは通産大臣にも伺いたいのですが、中小企業に対するところの財政投融資を昨年よりふやしたというけれども、それは自己資金だけの話であって、むしろ産業資金及び資金運用部資本の金というものは昨年より減って、わずかスズメの涙みたようなものであります。一方、全国の中小企業者に対するところの財政投融資がこんな状態で、通産大臣は、このようなずさんきわまるところの開発銀行の融資に対して、何ら御異存はございませんか。
  265. 石橋湛山

    石橋国務大臣 私も、経済的観点から申せば、今の運輸大臣お答え通り考えております。やはりこの際日本としては海運を立て直さなければならぬ。中小企業の方は、なるほど自己資本をふやして、直接のほんとうの意味の財政投融資はあまりふえておりませんが、しかしこれで間に合うのですから、決して中小企業者に昨年以上に金融を詰まらせるようなことはしない、のみならず、相当に豊かにやれる、ことに、商工中金にも資金をふやしましたし、できるものと私は信じております。
  266. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 次に、開銀の総裁に伺いますが、開銀総裁は、決算委員会のときも一ぺん出てきたきりで出てこない。私は、あなたはきわめて責任を感じていない人だと思う。あれだけの造船疑獄の重大問題があったときも、とうとうあなたは出て来ぬ。しかも、開発銀行の理事並びに大蔵省の銀行局長に対して、私どもは、運輸省の岡田海運局長から、もう船会社には何の担保力心ない、これ以上貸せば背任罪を構成するというようなことを聞きましたから、それでは船の融資について、各会社のいわゆる担保力、各会社に貸し付けてあるところの貸付金額、並びにその貸付金に対するところの担保がどういうふうになっているか、これを説明しろと言ったところが、何といっても説明しない。それを説明するということは、会社の信用に影響があるからどうも説明はできないと言う。それでは資料を出しなさいと言ったけれども、とうとう資料も出さない。大蔵省の河野銀行局長も、私のあとをついて回って、かんべんしてもらいたいと言って、出さない。とうとう最後に、三井船舶と三菱海運の二つであったと思うが、それを出しただけでは、他はとりとう出さないのです。そういうようなわけで、この海運会社に対するところの融資関係というものは、今日に至るも明確になっておりません。実にゆゆしき問題なんでありまするが、あなたは、こういうよりなことを国会報告してはならぬというようなことを、やはり松田理事に言い聞かせておったのでありますか。またあなたは、この国会に対してどんな考えを持っておりますか。無責任きわまると思う。私どもは、これは大蔵大臣が監督しているのであって、内閣が任命しているのだから、あなたのような無責任な人はほんとうに罷免してもらいたいと思いましたけれども、何分にも、自由党と改進党はあなたを保護しているのだからどうもなりゃせぬ、国会に出ていなくてもどうもなりゃせぬ。あなたはこの国会をどうお考えになっておりますか。また今のようなこんなだらしのない融資状態を、国会にも報告をしてはいけないということを言っておったのでありますか。いかがでありますか。
  267. 小林中

    小林説明員 ただいまの御質問に対してお答えいたす前に、私は昨日やむを得ざる用事で出席をしなかったことを衷心からおわびをいたします。  昨年の決算委員会において、開発銀行の融資先の明細書の御要求かあったと私も存じております。ただし私どもは仕事の立場の上からいきまして、大蔵省を経由してそういう書類は国会に提出するということが慣例になっておりますので、そういうふうな関係で大蔵省と意見を交換いたしまして、私の考えでは大体において融資の内容は国会に御報告をしてあると今記憶しておりますが、実は当面の責任者であります松田理事がただいま席におりますので、松田理事から詳細の御報告を申し上げさせたいと思います。  開発銀行の融資がだらしがないという今のおしかりでありますが、私ども十次造船を融資いたしました際に、あるいは岡田海運局長は船会社に担保が全然ないのだとおっしゃったかもしれませんが、私ども各船会社を調査いたしまして、その結果におきまして、十次造船の融資に対しては十分なる揖保を徴しました上で、これを貸し付けておることを明言いたします。
  268. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 それではただいま十次造船についても確実なる担保をとって貸し付けておる、こういうお言葉があったのですが、実はその点は私が今資料を要求しておるのであります。今日まで五十四の船会社に対して貸し付けておる金額並びにそれが提供した担保、その揖保の優先順位及び償還期がきて償還した金額あるいはその償還残金、こういうものを書いて出してもらうように、委員長を通して要求しておるのですが、それが出てこない。それで今あなたが特に言うのには、担保をとって貸し付けておる、こういうのです。これはわれわれ国民としてはきわめて重大なことであって、今まで返っていないじゃないか。返ってないからわれわれはそれを聞くのです。特に先ほどから申し上げますように、回収が確実なる場合に限って、貸すということになっておる。それにもかかわらず、今日まで次々に延ばしておるではありませんか。ほとんど現実に返ったのは二十一億、これも現実に返っておるかどうかわかりません。みんな原価計算になっておりますから、おそらく返っていないんじゃないかと思います。  そこで大蔵大臣に伺いますが、やはり今開銀の総裁が答えたことについて、大蔵省としてはそういったよりなことは国会から報告を求められても、報告しなくてもよろしいというお考えであるかどうか、その点を伺いたい。
  269. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私の考えでは資料等については、できる限り国会に提出したらよかろうと思っております。
  270. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 次に高碕経審長官に伺いたいのでありますが、それはこの間電気料金の問題について聞いたのですが、実はあなたがお見えにならない。(「散会々々」と呼ぶ者あり)君たちは二時間やらしておるじゃないか。(「もう時間が過ぎている、散会々々」と呼ぶ者あり )
  271. 牧野良三

    牧野委員長 協定はその通りでありますが、もうしばらく……。
  272. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 高碕長官に伺いますが、電気料金の問題であります。昨年の四月、吉田自由党内閣時代に一四・四%の電気料金値上げについてこれにわれわれが反対するというと、今度七・七%の値上げをしてきたのです。われわれは数字的にその不合理を主張いたしました。と申しますことは、本日ここに提出を求めましたところの資料によりましても、九電力会社に国民の金を貸しておるのは、実に二千四百八十一億七千万円であります。こういうような莫大な税金を電力会社に貸しております。そしてこの会社が、この間も申し上げたのですが、一割二分ないし一側五分の利益配当をいたしております。これは私が説明するまでもなく、あなたは所管のことでありまするから御承知でありましょうが、私は実に不都合千万だと思います。しかもこの会社の資本金はいかがでありますか。わずかに九電力会社で四百三十億じゃありませんか。それにもかかわらず、国民の税金で、このような甚大な税金で、独占事業をやっておって、一割五分というような利益配当をさせておくということは不都合千万である。でありますから、少くとも電気料金を下げるか、あるいはそれでなかったなれば、これを減配しなければいかぬと私は考えるのであります。ほとんど国民の税金でやっておるのでありますから……。
  273. 牧野良三

    牧野委員長 いい質問ですからお聞きしますが、杉村君この程度にしておいて下さい。
  274. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。直接監督は通産大臣がやっておりますから、通産大臣からお答えするのがほんとうだと思いますが、しかしせっかくの御質問ですから、私の考えだけを、申し上げたいと存じます。  御説のごとくこういう公共事業でありますから、できるだけ電力料金を安くしたいということが私どもの所信でございます。ただ今後いろいろ電気を開発しなければならぬ、そして供給を円滑にしなくてはならぬ、こういうことも考慮いたしまして、料金は相なるべく引き下げるという方針でおりますが、直接のことは通産大臣からお聞きを願います。
  275. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 もう少しでやめます。通産大臣にこの間このことを伺ったのですが、通産大臣お答えは、きわめて経営者が言うようなことをおっしゃられていたので、石橋さん、これはまことに満足できなかったのです。ところが電力会社に本年も実に三百一億という融資をするわけです。今二千四百八十一億七千万円も融資してある上に、さらにこれだけの金を貸すのです。もとより国家の重大なるところの基幹産業でありますから、それが悪いとは申しません。しかしながら今日の社会状態はいかがです。あなたは中小企業担任の大臣ですけれども中小企業者は全部自分のふところの金でやっておる。そしてデフレ政策のために倒産に次ぐ倒産であります。さようなわけでありますから、この電気料金を下げられてはどうか、そうしたなれば、いわゆる政府のとっておるところの低物価政策にもなっていくのでありますが、この電気料金を下げる意思があるかないか。もうイエスかノー、あまりいろいろな説明はいりません。一つお答えを願いたい。  それからこれの経営です。これを一部資本家、大財閥にやらせておかないで、これはよろしく国営にすべきじゃないかと思う。そしてこれから上る利益で一割二分とか一割五分の利益配当をするには、あなたは会社に関係があって十分おわかりでありましょうが、三割以上の利益がなかったならば、断じてこんな一割二分とか一割五分の利益配当をすることはできません。いかがでございますか。
  276. 石橋湛山

    石橋国務大臣 お断わりしておきますが、私は会社に何も関係はありませんから、会社のことはよく知らないのです。しかしながら現在の電力の開発には資金が要るということはすでに御承知通りで、国家資金もこれだけでは足りないから、どうしても民間資金を集めなくてはならない。そうすればある程度の配当をつけることもやむを得ないと思います。一割五分の配当をするのに三割というのは、これはあとは大体税金なんです。何も三割株主に払っておるわけでないと思います。
  277. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 最後に法務大臣に伺います。法務大臣は、この国民のとうとい金を開発銀行に融資をして、そのうちから本年も百六十億も融資をするんですが、その融資関係についてはあまりあなたは御関係はないでしょうけれども、少くとも閣僚の一人として、検察庁があの大きな捜査陣を張って捜査をした。その結果がついに指揮権の発動と、吉田内閣の無責任なるところの一片の内閣声明によってうやむやにされてしまいまして、今日天下をあれだけ騒がした事件について、だれ一人政府当局にして責任を負うた人もないのである。かような重大問題であったのでありますが、あなたは法務大臣として前法務大臣からこの造船汚職についての金銭の出入り等について、どういうようなお引き継ぎがありましたか。リベートが、われわれの知っておるところ、政府の与党であるところの自由党の田中彰治君がはっきり出しておるのですが、三十二億リべートがあったということを言っておる。それで検事総長は刑事責任を負うべきものが二億六千七百万円ということに相なっておるというのでありますが、これは本年また百六十億も融資をすることについて、過去の事実をわれわれはやはり知っておきたいのでありまするが、あなたは法務大臣としてあの造船疑獄に関するところの金銭の船会社の出入り関係について、お知りの範囲において一つお答えが願いたい。
  278. 花村四郎

    ○花村国務大臣 お答え申し上げます。指揮権の発動に対しましては、御承知のごとくいろいろと論議をされておるのでございまするが、私といたしましては前任者が行いました行為に対して、とやかくの批評はこの場合に避けたいと存じます。  なおまた、ただいま汚職事件に関する引き継ぎがあったか、あったろう、その数額を知っておる範囲において述べろというお話でありましたが、御承知のごとく汚職事件はすでにその捜査を終了し、不起訴に相なっておりまして、大体事件はすでに締めくくりがついておりましたので、従ってこれに関する引き継ぎはございませんでした。
  279. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 これでもう質問はいたしませんが、ここで資料の要求をいたしておきます。先ほど申しましたように、開発銀行関係で船会社に貸し付けた貸付金を各会社ごとに、また担保はどういう担保が入っておるか、それから償還期がきてどれだけ償還しておるか、どれだけ残額があるかということについて、明細なる文書を一つ提出せしめられたいことを要求しまして——私の質問はきわめて時間がなくて、これは本来であれば、私が一日かかってもなお足らないところの問題でありますけれども、仕方がありません。これは仕方がないから、これだけを要求いたして、私の質問を終ります。
  280. 牧野良三

    牧野委員長 よくわかりました。承知いたしました。  本日はこの程度にいたし、次会は明十八日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時十五分散会