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1955-05-16 第22回国会 衆議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月十六日(月曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 牧野 良三君    理事 上林山榮吉君 理事 重政 誠之君    理事 中曽根康弘君 理事 小坂善太郎君    理事 西村 直己君 理事 赤松  勇君    理事 今澄  勇君       有田 喜一君    宇都宮徳馬君       楠美 省吾君    小枝 一雄君       小島 徹三君    河本 敏夫君       齋藤 憲三君    椎熊 三郎君       楢橋  渡君    福田 赳夫君       古井 喜實君    松浦周太郎君       三浦 一雄君    村松 久義君       米田 吉盛君    相川 勝六君       愛知 揆一君    植木庚子郎君       太田 正孝君    北澤 直吉君       篠田 弘作君    周東 英雄君       高橋  等君    野田 卯一君       橋本 龍伍君    平野 三郎君       福永 一臣君    阿部 五郎君       伊藤 好道君    志村 茂治君       田中 稔男君    滝井 義高君       芳賀  貢君    武藤運十郎君       柳田 秀一君    井堀 繁雄君       小平  忠君    杉村沖治郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 重光  葵君         法 務 大 臣 花村 四郎君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         文 部 大 臣 松村 謙三君         厚 生 大 臣 川崎 秀二君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  石橋 湛山君         運 輸 大 臣 三木 武夫君         建 設 大 臣 竹山祐太郎君        国 務 大 臣 大久保留次郎君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 杉原 荒太君         国 務 大 臣 高碕達之助君  出席政府委員         内閣官房長官  根本龍太郎君         内閣官房長官 松本 瀧蔵君         総理府事務官         (恩給局長)  三橋 則雄君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     —————————————  五月十六日委員小川半次君、太田正孝君、倉石  忠雄君、篠田弘作君、久保田鶴松君、滝井義高  君及び水谷長三郎君辞任につき、その補欠とし  て齋藤憲三君、愛知揆一君相川勝六君、周東  英雄君、芳賀貢君、武藤運十郎君及び春日一幸  君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十年度一般会計予算  昭和三十年度特別会計予算  昭和三十年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 牧野良三

    牧野委員長 これより会議を開きます。  昭和三十年度一般会計予算外二案を一括して議題といたします。質疑を継続いたします。志村茂治君。
  3. 志村茂治

    志村委員 最初に住宅問題について質問申し上げようと思ったのでありますが、いまだ建設大臣出席がありませんので、濃縮ウラン受け入れの問題についてお聞きしたいと存じます。  政府は一月以来アメリカから濃縮ウラン供与についていろいろ連絡があったことを新聞等は報道しておりますが、いまだに政府からはその詳しい発表を見ておりません。この際これらについて外務大臣からその詳細の御発表を願いたいと存じます。
  4. 重光葵

    重光国務大臣 濃縮ウラニウムの提供がありましたことは事実でございます。それにつきまして今関係の方面と密接に連絡し、また協議をして、その条件その他について十分検討いたしまして、これを受け入れたいという考え方をもって進んでおるわけでございます。なおその一々の点につきまして、もし御入用ならば政府委員をして説明をいたさせます。
  5. 志村茂治

    志村委員 私がお尋ねしておりますのは、一月初めに口上書として外務省アメリカから通告があったこと、その後ファクト・シートなどもこちらに来ておりますこと、あるいは非公式に六月一日ごろには日本から何らかの回答に接したいというような要求があった、それらのことを聞いておりますがそれらについてお尋ねしたいのであります。
  6. 重光葵

    重光国務大臣 大体本月一ぱいくらいにはこの問題は決定をいたしまして、わが方の意向向うに通告いたしたいという手順、をもって進んでおります。
  7. 志村茂治

    志村委員 私は今までの外交上のいろいろな折衝をお聞きしたいと思うのであります。お手元になければ後ほど資料等によってお届け願ってもけっこうだと存じます。  次に濃縮ウラニウム受け入れについて、米国は、日本から正式の申し込みがあれば直ちに具体的な折衝に入りたいと言っておるのでありますが、米国国務省は、非公式ではあるが、六月一日ごろまでには何らかの回答に接したいと言っておられるような連絡があったというのでありますが、そのようなことは事実ありましたでしょうか。
  8. 重光葵

    重光国務大臣 今申し上げました通り、大体今月一ぱいにわが方の態度決定してもらいたい、こういう意向のようであります。
  9. 志村茂治

    志村委員 六月一日ごろまでに何らかの回答に接したいということは、アメリカは非公式であるが言っておるということを聞いておりますが、そのことを外務省では承知しておられますかどうか。
  10. 重光葵

    重光国務大臣 大体そういう意向であるということを承知をいたしております。
  11. 志村茂治

    志村委員 いずれにいたしましても、日本は近日中にその態度決定しなければならない事情にあることはわかっております。アメリカは、八月のジュネーヴ会議までに何とか自由諸国家申し込みを取りまとめるという考えらしいのであります。先般この問題について、わが党の成田議員から受け入れの意思があるかということを総理にお尋ねいたしました。総理は目下検討中であるというふうな、きわめて慎重な発表をされたにとどまっております。その後米国からいろいろな情報も来ておりますし、最近は大体受け入れの方向にも日本態度としては進んでおると考えられる節々が多いのであります。ただいま外務大臣お話によりましても、そのように伺えるのであります。この間政府機関である原子力平和利用調査会日本学術会議等との間にどのような懇談をされたか、またどのような話合いをしておられたか、これを伺いたいのであります。なお今後のことにつきましてもお伺いいたしたい、こう考えております。外務大臣でも経審長官でもよろしい。
  12. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。原子力平和利用につきましては、審議庁長官の方でとりまとめて、原子力平和利用準備調査会も発足いたしておりまして、先般アメリカの方から帰って参りました原子力調査団を中心といたしまして、いろいろ検討いたしております。ただいま外務大臣に御質問のようなぐあいに、アメリカの方では、なるべく日本濃縮ウラニウム等利用して研究を進めたい、こういう所存でおるようでございますが、それが五月一ぱいくらいに日本態度をきめて、向うへやると、一カ月くらいは調査がかかる、こういうことを内報して参っておりますから、ちょうどアメリカ議会開会中、六月一ぱい中にこれを決定したい。そうしないと、一年おくれることになりまして、日本といたしましても、この濃縮ウラニウムが手に入るか入らぬかということは、一年おくれると、研究が大へんおくれることになりまして、実際今日までの研究の結果によりますと、濃縮ウラニウムというものをわれわれ日本の手でつくるということは、おそらく不可能と存じます、非常な経費が要りますから。それでこの際いろいろな条件がなければ、ぜひこれはことし中に受け入れたい、こういうことで着々進んでおります。大体今までの調査によりますと、いやな条件はついていないようであります。私どもが今一番おそれておる条件と申しますのは、秘密保持という名のもとに、将来自由な研究を阻害されるということが一番こわいのでありますが、そういう条件さえなければ、大体受け入れたい。こういうふうなことについて着々調査いたしておるのであります。これも先ほど申しました通りに、一日おくれては困る問題でありますから、大体三十日くらいまでに結論を出したいというので、進めておるわけなんであります。何しろ非常に重要な問題でありますし、協定に入るわけでありますから、よほど慎重にやりたい、こういう所存でございます。
  13. 志村茂治

    志村委員 ただいまのお話で二十日ごろとおっしゃるのは、今月の二十日でございますか。
  14. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 今月の二十日までにまとめたいと思って、急いでやっておりますが、おそくとも今月中にまとめたい、こういうふうに思っております。
  15. 志村茂治

    志村委員 ただいまのお話にもありましたように、濃縮ウラニウム受け入れについて、われわれの最も懸念しておりますことは、例のアメリカ原子力法第百二十三条、第二項の機密保全についてであります。これに対して米国政府当局は、最近四月三十八日でしたか、濃縮ウラニウム供与についての基本的態度を説明したということが新聞に載っております。ところが、これを伝えております新聞によって、その内容が多少異なっておるように解釈されるところもあります。たとえば朝日新聞を見ますと、双務協定原子力平和利用に限定される限り、秘密保持事項はほとんど問題にならぬ性質のものだということを言っております。多少その間に考えるところがあるということを育っておりますが、読売新聞で見ますと、原子力法百二十三条、特に第二項は当然適用されるのが一応建前である。しかしアメリカ国内においても公開されていて秘密事項にはなっていないから、実際は百二十三条の適用は免れるだろうとはっきり書いてあります。この二つの間でいずれが真相を伝えているのかということをお伺いいたしたいのであります。
  16. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。ただいまの御質問のごとく相当疑問がありまして、私どもは現在のところ秘密条項がない、こういうことの前提で考えておりますが、秘密条項があればよほど私どもは考えなければならぬと存じております。さよう御了承を願います。先ほど御答弁いたしました二十日ということにつきましては、非常に急いでおるわけでございますけれども、日にちをはっきりきめられると困りますが、非常な重要な問題でございまして、それくらいから交渉に入りたい所存でございます。
  17. 志村茂治

    志村委員 この際総理大臣に国策の基本としてお尋ねいたしたいのでありますが、おいでになりませんから関係大臣から御回答願います。日本学術会議原子力研究につきまして三原則決定しております。原子力はその利用方法いかんによっては人類を滅亡させもするし、また使い方によっては人類に対し無限の新しいエネルギー供給資源ともなるのであります。原爆の製造に参加しましたアメリカにおいて、これらの学者たち原子力が百万人の殺戮メガ・デスといわれておりますが、兇器となったのは、学問の領域に政治が入り込んで来ている。言いかえれば学問政治が支配したがための結果である。原子力はあくよでも人類の幸福のためのものでなければならないということを考えておるのでありますが、こうした苦い経験を再び繰り返すことがないようにというので、原子力研究は絶対に秘密を排除するというふうな建前をとっております。それと同時に自主性民主性を守らなければならないとして、原子力研究には公開性自主性民主性の三原則を立てておるのであります。これを原子力憲章といったような強力なものにしようと考えておったときもあったのであります。われわれとしましてもぜひそのようにありたいと考えておるのでありますが、政府はこの三原則をお認めになるのであるかどうかということを聞きたいのであります。
  18. 重光葵

    重光国務大臣 それでは私からお答えいたします。原子力をあくまで学術的に、平和的に使用するという根本方針は、日本側の特に重要視するところでございます。従いまして学術会議の三原則なるものは十分に尊重いたして施策をいたしたいと考えておる次第であります。
  19. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいま御質問原子力の問題は、これを武器として使用されたときに人類の破滅であるということを一番に認識し、世界人類の中で身をもって体験しているのは、日本民族であります。この意味におきまして、日本民族武器に使うことに断じて反対するという発言は、世界的に相当強い反響を及ぼしておるのであります。その意味におきましてわれわれ政府といたしましては、武器としてこれを使用することは反対であると同時に、このものが平和的に利用されたときには産業革命である。非常に大きな革命を来たすものである。日本のごとくエネルギー資源の少いところは、どうしても率先して使用したい。世界各国から、日本はこの犠牲者であると同町に、これを利用する上においては日本が第一にやっていいだろうというような同情も集まっておるときでありますから、日本といたしましてもこれはやっていきたいと存じますが、それにつきましては先ほどお話の三原則、つまり公開自主民主、この三原則はどこまでもなるべく尊重して進んでいきたい、こういう所存でございます。
  20. 志村茂治

    志村委員 ただいまの御答弁になるべく尊重したいということをおっしゃっておりますが、原則的にだけ尊重されるということになると、例外として何か尊重しなくてもいい場合を想定されておるのでありますか。
  21. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 原則的に尊重いたしますが、何しろ経済的な問題があるものですから、経済的の問題になりますと、経済上の意味から考慮していかなければならぬ、こういうわけであります。原則的には尊重いたします。
  22. 志村茂治

    志村委員 米国は、最近各国供与されるものは核分裂物質でもその他の原子炉構築のための資材でも、また資料でも技術でも世界の学会はすでに十分知っておることであり、秘密事項ではないのであるから秘密保全適用はないといっておるのでありますが、われわれが警戒しておるのは、米国交渉の実権がウラニウムのカーテンといわれる原子力委員会に握られておることであります。ストローズ委員長は死の灰をかぶった第五福龍丸スパイ扱いにした人であります。また久保山さんの死んだのを放射能症ではないと言った人であります。双務協定の第一号として発表されたトルコ協定を見ましても、こうした先入観を持って見ると、手放しでは安心できないと私たちは考えております。対トルコ協定の第九条には、将来原子力発電用に使用されるときには、両国はさらに協調して協定を結ぶことを期待することが記載されております。米国では発電用原子炉秘密事項になっております。将来発電用原子炉秘密でなくなるときが早く来ることをわれわれは期待いたしておりますが、それ以前に、もし日本研究原子力発電まで進むというようなことになったときには、私ばかりにトルコと同じような双務協定が結ばれるということを想定いたしておるのでありますが、そのときにはこの条項機密要求される場合があるのではないかというふうに考えるのであります。自衛力の増強を期待するといった協定が、いつの間にか義務に変ったということをわれわれは聞いております。またこの場合も、ここには明らかに期待するということが書いてありますが、これが義務づけられることになるかもしれない。外交は背後の実力によって規定されるものとするならば、よしんば濃縮ウラニウム受け入れには秘密がないといたしましても、この核分裂物質情報資料だけから機密保全内容は当面持たないとしましても、ここに次の拘束の種、日本原子力研究を拘束する種があるのではないかというふうに考えられるのでありますが、この点についてお伺いいたします。
  23. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。ただいま御注意のありましたことは私ども非常に慎重に考えておる点でありまして、そのほかにもフィリピンあたりとの協定につきましては、よほど警戒すべき点があるようであります。そういうふうな点も考慮いたしまして、どこまでもわれわれの研究が自由にできていけるようにいたしたい、こう存じております。
  24. 志村茂治

    志村委員 ただいまの機密保全のことについては、いろいろ内政干渉とも考えられるようなことがトルコ協定の第五条、第六条の中にも、考えればそういう点も考えられる節があるのでありますが、この点を十分御考慮の上、今後の折衝を進めていただきたいということを考えております。  なおまた他方から見まして、五月六日に発表されました海外原子力調査の報告によりますと、実験用第一号原子炉天然ウラニウム重水による重水モデレーター式原子炉だということがはっきり言われております。高価な濃縮ウラニウム軍事用か、さもなければ小規模の実験用にしか使用できません。アメリカが提供する濃縮ウラニウムは出力二、三十キロの小型実験用原子炉の原料にしかすぎないのであります。この原子力に期待するところは日本が現在考えております第一号原子炉、これに必要な技術の訓練あるいは原子炉用資材検査等のためでありますが、第一号原子炉のいわば補助的役割を果すものであるにすぎないと考えております。今日日本ではこの程度の役割しか考えられないのでありますが、濃縮ウラニウムについて日本の評価はあまりに高過ぎるのではないか。濃縮ウラニウムが入れば直ちに原子力発電が行われるのだというふうに考えておられるのであります。また濃縮ウラニウムがなければその種の研究は絶対不可能だというふうにも考えられておるのでありますが、この点はいかがでしょうか。
  25. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。ただいま私どもの存じております範囲におきましては、濃縮ウラニウム原子力実験する上において非常に便利なものだ、重水がなくてもできる、こういう簡単なものだ、もちろん今のお話のごとく第一次的な研究はやらなければなりませんですが、これがあればこの利用については非常に簡単に研究ができる、こういうふうな所存に考えておるだけでありまして、そんなに重要なものとは存じておりません。しかしこれを日本で作るということになると大きな資本が要るからなかなかできない、こういうものがあれば便利だというくらいのことでございますから、さよう御承知を願いたいと思います。
  26. 志村茂治

    志村委員 話はよくわかりました。  次にこの濃縮ウラニウム消費量に対する対価でありますが、濃縮ウラニウム製造過程は絶対秘密になっておるのであります。従って原価計算によるところの価格の請求というものは明示されないと思っております。この価格決定アメリカに一方的にきめられてしまわなければならないということでありますが、あらかじめその価格決定できないので、ただアメリカ要求に従わなければならないということになろうと思うのでありますが、その点はいかがですか。
  27. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。その点につきましては交渉してみないとはっきりわからないのでございまして、貸してくれるのか、あるいは消費量だけ払っていいのか、あるいは買い取りになるのか、それらの点はまだ交渉してみないとわかりませんので、できるだけ有利に交渉いたしたいと思っております。
  28. 志村茂治

    志村委員 濃縮ウラニウム貸与ということを大体聞いております。買付ということなら別でありますが、貸与の形式が普通になっておりますが、その場合には消費したウラニウム二三五、これにこれだけの対価を払うということになっておるのであります。いずれにしても対価は払わなければならないと思っておるのでありますが、それが原価計算によって日本にははっきり明示されない、ただアメリカのこれだけになっているということで日本は応諾しなければならないということになるのであります。その点がわれわれに懸念されるところでありますが、それについてお答えを願いたい。
  29. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいま御注意がありましたから、できるだけそういうことも考慮いたしまして有利に交渉いたしたいと存じております。まだ交渉に入っておりませんから、何とも申し上げかねます。
  30. 志村茂治

    志村委員 双務協定内容として、原子力法第百二十三条第四項によって受け入れ濃縮ウラニウムは、他国に渡らないようにということが書いてございます。こういうふうに義務づけられておりますが、このことは当然の国際的義務だといって何とも疑ってはおりません。しかしながらそのために原子炉のまわりには鉄条網が張りめぐらされ、出入口は自衛隊が銃剣で立番するような行き過ぎた警戒もなされるかもしれません。また実験に参加するリアクターは身分の審査を受けなければならないかもしれません。研究所の内部では何が行われておるかは国民は何にも知らないことになるかもしれません。研究の結果はまずアメリカの目を通してから発表することが要求されるかもしれません。リアクター資料技術が中共、ソ連等アメリカ仮想敵国に行くことを防ぐために、それらの国々の人々と会うことが制限される、またそれらの国へ渡航することは禁ぜられるというような窮屈な取扱いを受けることになるかもしれません。政府はこのようなことが起らないことをぜひとも前もって保証していただきたいというふうに考えております。学者の中では第二のオッペンハイマー事件が起るかもしれないことを極度におそれておるのであります。これらのことが杞憂であるようにはっきりとここで保証していただきたい、こう思っております。
  31. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 御質問にお答え申し上げます。ただいまのような詳細な点につきましては、まだ交渉に入っていないのでございますから、先ほどお答え申し上げました通りに、われわれはどこまでも秘密保持ということにつきましては、これはお断わり申し上げたい。そして研究の自由を妨げない範囲でやっていきたい、こう存じておりまして、詳細のことにつきましては交渉に入りましたときに、ただいま御注意のあったような点はよく注意してやっていきたいと存じております。
  32. 志村茂治

    志村委員 原子力法百二十三条のB項には、提案された協定の履行が国家の防衛と安全保障を促進し、ということが書いてあります。これこそすべての協定に対するアメリカの哲学であるというふうに考えております。その基本観念に至っては、MSA協定やあるいは余剰農産物に共通するものでもあります。われわれはすでにこれらで苦い経験をなめておるのであります。しかも協定の相手が原子力委員会であることを思うとき、憶病に思われるほど警戒しなければならないと考えております。今日日本で最も重要なことは、自主的な原子力開発であり、そのためには民主的に衆知を集めて基本的な研究をすることこそ必要欠くべからざるものであると考えておるのであります。目先の問題にとらわれ——なるほど濃縮ウラニウム原子力発電研究のために非常に便利なものであるということはわかりますが、一方においてウラニウムはやがて自由取引が行われるであろうということがきょうの新聞にも出ております。そういうことを考えてみました場合に、日本産業を外国の支配にあるいはまかすかもしれない重大な危機にあると私は考えております。日本アメリカの方式による、そうして制限された状態において、日本エネルギー資源開発が行われるんだということになれば、火力発電あるいは水力発電原子力発電の発展に応じてあるいは減って参るだろうと思います。そのときにアメリカに完全に原子力発電が抑えられておるということになれば、日本産業アメリカに掌握されるという状態になるだろうと思います。この点は十分考えなければならぬと思っておりますが、協定に入る前に当然閣議決定が行われるであろうと思いますが、その際には一そう厳重に注意してもらいたいということを私は希望いたします。
  33. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。ただいまの御希望の点は、私ども全く同感であります。よくその点につきましては、慎重に検討いたすつもりでございます。
  34. 志村茂治

    志村委員 次に住宅問題について建設大臣にお尋ねしたいと思います。この問題については暫定予算の際にお尋ねいたしました。その際はまだ未確定であるからとの理由で十分な説明を聞くことができませんでした。本予算では四十二万戸建設の計画も発表されておるのでありまして、再びこれをお尋ねしたいと存じます。  第一に、この前住宅建設の重点をどこに置くのかということを私はお尋ねいたしました。公営住宅に重点を置くのか、公庫住宅に重点を置くのかということをただしたのでありますが、ついにはっきりした言明を承わることができませんでした。しかし発表された計画によりますと、公営住宅は昨年度からわずかに百戸を増加したにすぎません。公庫住宅は三万二千四百戸を増加いたしておりまして、極端な公庫住宅偏重になっております。さらにその建設資金の面から見ますと、公営住宅は昨年より十二億円が削減されております。第一種住宅の十二坪というのは八坪に削られております。また第二種の住宅の八坪というのが六坪に縮小されたと聞いております。われわれは公営住宅は犬小屋に近くなってくるのではないかというふうに考えておりますが、最も住宅難に苦しむ庶民階級は、公庫住宅の二割の頭金の出資能力さえ持っておらないのであります。また公営の賃貸住宅、しかも安い家質しか払えないのでありますから、公営住宅をこそ求めておるのであります。それにもかかわらず極端な公営住宅の軽視でありますが、これから進む日本の住宅政策はこれでよいのでございましょうか、将来とも政府はこの方針で進まれるのかどうか、これをお尋ねいたします。
  35. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 前回の質問のときは内容を申し上げなくて大へん恐縮に存じておりましたが、今回の予算の内容はただいま御質問もありましたが、われわれの考え方はいずれにも偏重をいたした考えはございません。従来の公営及び公庫の制度を原則的にこれを進めますほかに、この際それだけでは十分でないと考えまして、公団の制度をつけ加えたような次第であります。従って公営におきましては、お話のようにふえ方が少いとおっしゃられますけれども、われわれとしては一番政府の負担率の多い三分の二を政府で負担いたしますところの第二種公営におきましては、戸数を著しく増加をいたしまして、なおその上に不燃性の建物を多くいたしまして、特に家賃の安い八百円台の不燃性のアパートを多数つくりましたが、これはお話のように坪数が少いではないかとおっしゃられますけれども、木造の安いうちよりもこれで金は決して倹約をいたしておりませんし、内容その他は進歩したものだと考えておりますが、もちろんこれは地力あるいは都市の中心と、それぞれ地方的な関係で実際の面はその地方に適合をするような建て方をいたして参るつもりでありまして、公営は決して軽視をいたしておりません。なお多少金額的に移動をいたしましたのは、公営の第一種のうちの中層アパートの分は従来ほかで建てる方法がありませんでしたから、公営で多額の費用を使っておりましたけれども、むしろこれは今度公団方式のうちへ移しましたために、若干の金額の移動がありますけれども、むしろ公営としては今申すように、戸数を増してしかも第二種の八百円台に下げた低家賃のうちを数を多くつくる、そうしてその中で比較的程度の高いアパートは公団の制度でこれを増して行くというやり方をいたしました。  それから公債につきましては、お話通りかなりいろいろな面におきまして範囲を広げて参るほかに、今回五十偏の建物の金融保証制度も公庫にこれをあわせて行わせる等、この制度といりものは今後とも伸ばして参りたい。てれだけでは十分でありませんから、産労住宅及び従来公営でやっておりましたところの中層アパート等完全に不燃性のアパートは、全部公団で建てるというやり方にいたしましたから、従来の三つの制度に新たなる公団の制度を加えまして、全体がバランスのとれた、すなわち低家賃の公営住宅をある程度ふやすことと、あるいは多少高くなるかもしれませんけれども、耐火性のアパートを、公団を含めて内容を充実いたしまして、いわゆる耐火性の建物は前回よりも約倍額増加をいたしておりますし、全体の戸数は政府の直接対象となりますものが十七万五千戸と相なっておるような次第であります。
  36. 志村茂治

    志村委員 建物を耐火性の方へ進められることはまことにけっこうであります。しかし問題は、ほんとうの庶民階級、最も住宅難に苦しんでおる人々は、千八百円あるいは千五百円といったような安い家賃しか払えない人々外あります。そのような人々に少しでも多くの住宅を恵んでやる——恵んでやると言っては悪いのですが、それを堤供するということが、住宅政策の本質でなければならないと思うのでありますが、ただいま公営住宅は公団の方式に切りかえられたと聞いております。この公団の方式で作られるいわゆる分譲住宅あるいは賃貸住宅というようなものは、光栄住宅と同じような家賃の計算をされているのであるかどうか、それを聞きたいと思います。
  37. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 私の説明が足りなかったかもしれませんから、誤解が起ってはいけませんのでちょっと繰り返して申し上げます。公営のうちの耐火の中層アパート、すなわち家賃の高い分を公団の方へ移したわけでありまして、公営は今お話のように、最低八百円台の家賃から千円台というように、一番安い分を数をふやしてやって参るということであります。それから公団のうちは、お話通り、従来公営のうちの一番程度のよかった分を公団に移したわけでありまして、これは従来の公営の分及び公庫の産労住宅の程度を大体基準にいたして参りたい。従って大まかに申しますと、公営が一番安い、それから公庫の分は、お話通り多少手持ち資金が要ります等の関係を含めて、科度から言えば一番高い程度のものになりましよう。その間を公団がねらってやって参るという態勢であります。
  38. 志村茂治

    志村委員 一体公団の家賃というのは、それではどのくらいお考えでしょうか。
  39. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 これは賃貸と分譲と二色あります。それから会社の産労住宅等は、会社が一時受け入れまして個人に分譲をする等の場合におきましては、民間資金と政府財政資金と資金運用部資金というように、いろいろの資金をまぜ合せて使います関係で、家賃を一本で幾らというように、公営で建てるようには参りませんけれども、今申し上げたように、従来の公営と公庫の間をねらったところに家賃を考えております。
  40. 志村茂治

    志村委員 もう御承知でしょうが、公営住宅は半額国庫で負担しております。これは無償になっております。従って、公営住宅は家賃が安かったのであります。こういうふうな安い家賃の住宅をふやしてやることが、日本の住宅政策でなければならぬと考えているのでありますが、この公営住宅があまり増加しておらない、資金的には減っておるというふうな状態になっておるのでありまして、それが公団に移されるということになると、やはりこれは政府の半額の出資というものがなくなると思いますので、原価計算が高くなると考えております。その点をお聞きいたしたいのであります。
  41. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 公団にもやはり政府の財政資金が投ぜられておりますから、公団の中のいわゆる賃貸住宅は、今申し上げましたように、従来の公営の中のアパートと大体似たものにするつもりで考えておりますので、そうえらい高いものになるとは考えておりません。それから、重ねて申し上げるようでありますが、公営は、われわれ実質的に軽んじた計画には決していたしておりません。公庫でふえました分等もさようなわけでありまして、なるべく安い家賃のうちを多数供給するという考え方はいささかも軽視いたしておりませんが、われわれとしては、一方においてある程度程度のよいといいますか、耐火性のアパートを建てろ、政府がせっかく金を使うならば安い木造の小さなうちではいけないではないかという時代の要請にこたえる面もこれにあわせましたために、予算的にはいろいろ変化をいたしておりますが、基本的な考えは今志村委員お話通りに考えております。
  42. 志村茂治

    志村委員 次に公庫住宅も、その融資の割合がそれぞれ五%引き下げられていると聞いておりますが、これは事実でしょうか。
  43. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 これはいろいろに伝えられております。予算折衝の過程におきましてはいろいろなことがありましたけれども、われわれは、最後の計画におきましては、土地を含めて従来のやり方よりもむしろ内容的によくなっておると考えております。
  44. 志村茂治

    志村委員 内容的にとはどういうことですか。
  45. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 内容的と申しますのは、資金の貸付の方法、率等におきまして、従来もいろいろありましたから、すべての段階を申し上げるとややこしくなりますから申し上げなかったのでありますが、土地を含んだ貸付の限度というものは決して悪くいたしておりません。
  46. 志村茂治

    志村委員 聞くところによると、耐火構造のものは従来八五%であったものが八〇%に下げられた、木造家屋は従来八〇%であったものが七五%に下げられたということですが、それはいかがですか。
  47. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 部分的には種類によりましてそういうものもありますし、そうでないものもあり、含めまして決して内君は悪くいたしておりません。
  48. 志村茂治

    志村委員 どうも内容がはっきりのみ込めませんが、もう少し具体的にお話願えませんか。
  49. 牧野良三

    牧野委員長 具体的におっしゃった方がわかりいいでしょう。
  50. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 具体的には、何十種類という種類があるものですから、私は時間の制約を考えて抽象的に申し上げておるわけで、どうか御了承をいただきたいと思います。
  51. 志村茂治

    志村委員 次に、建設戸数の中に増築等というのがございます。これは、私が計算いたしますと、一戸当り平均六万二千円程度を支出して、それで三万戸を建設するということになっておりますが、こういうような増築分を従来一戸というふうに計算されたことがあるのですか。われわれの従来の観念とは違っておりますが、増築すれば日本の住宅戸数がそれだけふえたと考えてよろしいのでしょうか、お聞きします。
  52. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 もちろんこれは、見方によりまして一戸でないと言えば一戸でないと思いますが、御承知通り、非常な過密住宅、一軒の家に三家族も四家族もおるということを住宅問題の対象として心配いたすようなわけでありますから、一戸建は十分に行かなくとも、この際二間でも増せということの要請が非常に強いわけで、従来も公庫等にその要求があったのでありますが、この資金の用意がなかったということが実情でございますので、主婦連等から非常な強い要求もありまして、今回はいわゆる国民の要請にこたえて増改築を認めたような次第でありまして、もちろんこれは堂々と一戸建でないことを承知の上でありますが、現状といたしましては、これで一部屋、二部屋ふえまして、一家族が独立の部屋に入れるということであれば、私は住宅問題解決の一つの足しにはなると考えております。
  53. 志村茂治

    志村委員 増築、改築のことについて前回私も要求しておりますし、けっこうなことだと思います。ただその増築、改築の戸数が三万戸ある。これが四十二万戸という公約の戸数の中に計上されているということです。これは四十二万戸増築という中へ計算していいものかどうかということを聞きたい。
  54. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 これはお立場の相違で、私も強調はいたしませんけれども、住宅対策の一環と考えた次第であります。
  55. 志村茂治

    志村委員 住宅公団をこの本予算が成立してから設立する、そうして年間に二万戸の賃貸あるいは分譲住宅を建設すると言っておられるのでありますが、果してそれができる可能性があるのでございましょうか。その見通しをお聞きしたいと思います。
  56. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 これは日限の少いことはまことに遺憾でありますけれども、予算の成立上いたし方ありませんので、最善の努力をいたして目的を達成いたしたいと考えております。
  57. 志村茂治

    志村委員 次に民間の自力建設について五万五千戸増加を見込んでおられます。従来の実績に比較して約三〇%程度急激に増築しようという計画であります。しかも今回の増築四十二万戸という大きな建設をするために、その増加の約半分を自力建設に求めておるというふうな計算になるのであります。十一万戸増加のうち五万五千戸は自力建設によるということになっておるのでありますが、この四十二万戸建設ということがおそろしく他力本願になっておるというそしりは免れないと思います。しかもその措置としてあげられておりますもののうちで、地代家賃統制令の緩和でありますが、この統制令の強い制限を受けておるものは戦前の住宅であった。戦後にできたものについてはそれほどでなかったのであります。その効果はあまり期待できないと思うのであります。また民間自力建設についていろいろな施策が予算の説明には載っておるのでありますが、このくらいなことで果して五万五千戸住宅が自然増築できると考えられるのでありましょうか。これは見解の相違と言われればそれまででありますが、この点について何か根拠がおありになるならばお示し願いたいと思います。
  58. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 二十三万戸と一万五千戸の増改築を期待をいたしておりますが、これはお話通りなかなか容易なこととは思っておりませんけれども、従来の実績約二十万戸に対しましては、何らこれに別の処置を講じなかったときに比べまして、われわれとしては税制の処置及び五十億のこれに対する建築資金の保証等を行うほかに、お話通り地代家賃統制令はこれから建つうちでありますから、この分に非常に大きな効果を期待はいたしておりませんが、全体といたしまして銀行の建築資金の融通の面等ともあわせ考えますならば、われわれは国民の住宅に対する各方面の非常な期待と熱意が成り上っておる今日、二十三万戸の民間建設というものは、決して不可能とは考えておりません。
  59. 牧野良三

    牧野委員長 志村君、残り時間が少いですから御注意を請います。
  60. 志村茂治

    志村委員 大蔵大臣にお尋ねをしたいのでありますが、あなたは一番先に四十二万戸住宅建設を力説せられた方であります。この苦しい予算の中からともかくも四十二万戸をはじき出されたという責任感について敬服いたしますが、しかしそれは戸数だけについてであります。戸数にあまり執着された一つの強情でもあると考えられるのであります。政策の内容はほんとうに住宅に苦しんでおる庶民階級のためではないようにわれわれは見ておるのであります。あなたはこれで満足しておられるのであるか、これをお聞きしたい。
  61. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。決して満足しておるというわけではありません。しかし三十年度には、まず従来ほんとうに真剣に取り上げられなかった住宅問題に出発を始めよう、そうして三十年度は、大体一応の計画としては、十年くらいのうちに何とかして住宅問題を全部解消とまではいかぬまでも、まあまあというところまで持っていきたいという一応の考え方から出たわけです。ですから今後の計画において十分お説の点も考えて、三十年度で足りなかったところは後年度で考慮を加える。そうして実際に即してやる。お説のように民間が三十四万五千戸になっておりますが、民間の方に期待いたしております。おそらく初年度はこういう民間の建築が非常に進むだろうと思っております。これは従来こしらえておりますから、そういうことができるならやろうということで、むしろ後年度に民間に多く期待するのは無理ではなかろうかという考え方をしてきておりますが、見通しとしては、初年度はできるだろうというように思っておるのであります。いろいろありますが、私どもとしては、ほんとうに住宅のない人に、今お説のように、なるべく家賃を安くして勤労大衆から入ってもらうようにしたい、こういうふうに考えてやっているわけであります。
  62. 志村茂治

    志村委員 お話のように確かに新しい政策がしかれると、それに応じてたくさんの家が初年度はできるということは今までの常識であります。ところが今後質的にも改良しなければならない、民間住宅にもたよらなければならないということは、相当将来大きな財政負担を必要とするということが考えられますが、大蔵大臣はそのことを十分考えておられますか。
  63. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 むろん後年度にわたっての財政負担を考えて計画を始めております。
  64. 志村茂治

    志村委員 確かに公約は四十三万軒でありました。公約だけは果されております。しかし内容は公約になかったからといって、どんな住宅であってもよろしい、あるいは増築を一戸建の勘定をしてよろしい、どんな住宅でも家は小さくなってもよろしい、こういうことであっては、私は住宅政策ではないと考えております。しかもこの四十二万戸の計算の根拠となっているのは、十カ年間に住宅難を解消する、初年度においては、国民所得の増加を考えて計算した場合に四十二万戸になるのだ、こう言われております。大体年年四、五%の建築戸数をふやしていかなければならないということになっておりますが、建設大臣は、今後ますます財政負担が大きくなることがはっきり想像されるこの場合に当って、今までのような内容で今後もまた進めていかれるのかどうか、これをお聞きいたします。
  65. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 大体国民所得二、三%の増加の計画が、御承知の六カ年計画の基本をなしておりますから、住宅政策もこの線に沿って大体十カ年を考えておりますから、国民の所得の増加と予算の率との並行になりますから、住宅政策も何ら無理はないと考えております。
  66. 志村茂治

    志村委員 私は今後の住宅政策はさらに庶民的なもの、低額所得者階級のためということを考えていただきたいのであります。ほんとうに住宅難、一口に三百八十万戸とかの大きな住宅不足がいわれておりますが、その大部分は低額所得者の場合であると考えております。従って住宅政策の重点は、低額所得者を対象にして考えてやらなければならないということであると同時に、あまりみすぼらしい住宅であってはいけない。ほんとうに文化国民らしい生活が送れるような住宅を考えてもらわなければならぬと考えております。私の考え方と建設大臣の考え方とは違っておらないと思うのでありますが、そういうような方向で将来の住宅政策を進めていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  67. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 低額所得者に安い家賃のうちを供給する、一方においては文化の向上に伴って不燃性の相当りっぱなアパートを建てる。この両方の考え方をわれわれは実現いたしたつもりであります。そういう考え方については志村さんと一致をいたしますが、今志村さんのお考えのように、これを政府の全額負担においてうちを建てて家賃を安くするというところまでは、われわれの考え方は三分の二程度が精一ぱいでございまして、私もこれ以上全額を国庫負担でやるというお考えがうちにおありと思いますから、そこまでは一致いたしかねると思います。
  68. 志村茂治

    志村委員 私は今の政府に全額住宅の経費を負担しろということは要求いたしておりません。ただわれわれが最も大きな期待を持っておった公営住宅の予算が十二億円も削減されておるということであります。いろいろ説明をされましたが、公団で建設される住宅は、決して従来の公営住宅と同じとは考えておりません。従ってむしろ内容的に見た場合には、自由党内閣当時に建設されたものよりも、私はかえって退歩しているのではないかというようにも考えておるのでありまして、それをある程度本来の住宅政策の姿にもどしていただけないかということを私はお尋ねいたしておるわけであります。
  69. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 その点はわれわれはそう考えておりません。公営住宅のうちで若干減りました分は公庫のアパートに持っていったと申し上げましたが、公庫では公営よりもプラスするに六十億の財政負担をいたしまして、そのうちの半分一万戸分は従来の公営と同様の賃貸アパートでありましてこれに力を入れます。この内容は、従来の公営と同様の考え方で進んでおりますから、従って公営の分の中で減った分は公団、及び一部は公庫に移ったと考えられますが、主として公団でいたしますから、これを一緒に考えていただけば、いわゆる低家賃の小さいうちを一方においてふやし、それから質のいいアパートを公団の分と公営の分とを合せてお考えいただくならば、前年度予算よりもはるかに量的にも質的にも増加をいたしておることを一つ御検討いただきたいと思います。
  70. 牧野良三

    牧野委員長 志村君時間が参りました。
  71. 志村茂治

    志村委員 これでやめます。これはいろいろ申し上げても見解の相違となってくるのでありますし、また公団なるものの組織それ自体から考えましても、公営住宅と同じになるということは大づかみに考えてみましてわれわれは考えられないのであります。半額を国庫が負担しておるというような構想のもとに建てられた住宅と、公団の形において、いわゆる分譲住宅あるいは賃貸住宅として建てられた形が、どう考えましても、家賃の計算において公営住宅より安いとは私には考えられないのであります。その点を私は申し上げたいのでありますが、いろいろ複雑した形になっておりますので水かけ論になるとも考えられます。しかし将来の日本の住宅政策は、さらに一層庶民的でしかも内容を改善されたものとなることを私はここに希望いたしまして私の質問を終ります。(拍手)
  72. 牧野良三

    牧野委員長 時間を正確にお守りいただいてありがとうございました。  杉村沖治郎君。杉村君、通産大臣がお急ぎですから……。
  73. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 通産大臣がお急ぎのようですから通産大臣に先に伺いましょう。  通産大臣に伺いますが、通産大臣は中小企業対策としてどんな対策をお持ちですか。財政投融資等において、非常に本年は中小企業のために融資を多くしておるというようなことが、民主党内及び大蔵大臣の説明の中にもあるのですが、私どもからみますと、なるほどそれは数字の上では形式的には多くなっておりますが、実際においてはどうも多くなっておるとは考えられないのであります。ことに一般会計からの投資と、資金運用部資金の融資についてはむしろ昨年度より減っております。数字の上でふえておると申しておりますけれども、それは自己資金がふえておると思うのです。自己資金がふえておるから財政投融資が多いということになりますが、この自己資金を回収して貸し付けるということになってきますと、非常に取り立てがきびしくなってくるわけであります。今日のデフレ下におきまして中小企業は非常に困っておるので、これをきびしく取り立てられるということになると非常に困るのですが、この回収率はどうなっておりますか。
  74. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 特に回収率が悪いこともありませんが、そうかといって別段取り立てを激しくしておるわけではない。実際は国定金融公庫などは、御承知のように非常に回転率が早いのですから、回収率を特に激しくして自己資本をふやしておるということはありません。炭鉱などは、回収が開銀などでは幾らか去年あたりは減っております。それで支払いが延期されているというようなことであります。
  75. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 しかしその回収率はどのくらいになるのでございますか。少くとも昨年度よりも自己資金の計上が多くなっておるのですが、この中小企業金融公庫の金庫の中に金があるわけではないのでありましょう。
  76. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 今回収率が幾らという数字はございませんが、中小企業金融公庫も貸し出しがふえておりますから、自然三十年度の回収は既定の返済計画に従ってふえておるのであります。
  77. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 多分そんないいかげんそうな御答弁だろうと思っておるのですが、これは取り立てて貸すのですから、これをよけい書いてあったからといって、決して融資がふえておるというわけにはいかぬのです。ほんとうに中小企業のために融資を増加してやるのであるなれば——一般会計の昨年度の二十五億を十億も減らして十五億にしてしまっておる。それから資金運用部資金の百五億を九十五億に減らしてしまっておる。これをふやしてこそ、ほんとうに中小企業の金融が豊かになっていくのでありまして、中小企業に貸してあるものを取り立てて貸してやる、その回転率を数字の上に多く表わして、それで財政投融資がふえておるから中小企業の振興にいいなどと、そういうごまかし的なことではわれわれはまこに納得することができませんが、これ以上あなたと議論をしても仕方がありませんから、御研究が願いたいと思います。  次にあなたは自動車の政策について、国産車を奨励するということを閣議の席上でも申されておるのであります。それはまことにけっこうなことでありまして、現在日本の自動車の数の多くなったのは実に驚くべきものでありますが、この自動車の多いということは、やはり占領下から続いて進駐軍などがおるために、進駐軍の払い下げ自動車がたくさんあるわけなんです。昭和二十八年においては一万八千台、実に国産車の生産高八千二百三十八台の二倍以上になっておるのであります。昭和二十九年におきましては、通産省の払い下げ見込みが三千台であったものが四−六月で九千九百六十四台、実に三倍強というような状態になっておる。これがために日本の自動車製造というものは非常に圧迫を受けておりまして、これをこのままの状態に置くなれば非常に困ることになって、機械産業の発展を非常に阻害する。日本におきましても自動車製造工業というものは、機械産業のうちでも最も優位なる地位にあるのですが、これに対してどういう御処置をなされますか。あなたは官公庁の自動車はすべて国産車にされる、こういうことを申されたようでありますが、日本の官公庁に今使っておるところの自動車が、外国車は幾らであって、国産車が幾らであるかおわかりでありますか。それらをあわせてお答えを願いたい。
  78. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 御指摘の通り日本の自動車工業ではあれが一番悩みなんです。何とかしてこれを制限いたしたいというのでずいずん厳格にいろいろな条件をつけまして、今駐留軍の方としばしば打ち合せて、現在打合せ済みのものは一年間に一人一台、あるいは年式が二年後でなければ払い下げられないというような条件をつけて、なるべく駐留軍の連中からの横流しと申しますか、払い下げをやかましくして、輸入して払い下げても利益がないような方法に向うと打ち合せておるわけであります。そういうことでだんだん減っては参っておりますが、御指摘の通り今の一番の悩みはその点にあるのです。  それから今役所が幾ら使っておるか。今数字を持ってりませんから、わかりましたら、調べてお答えいたします。
  79. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 それでは、ただいますぐお答えができなければ仕方がない。資料で出していただきたい。ということは、ただいま申しましたような各役所の自動車数、その区分として外国車、国産車と分けて、それから最近数年間におけるところの外国自動車の購入数量、それはドルをもって買い入れたやつ、今の払い下げは無為替で円で買っているやつですが、外国車の購入。それからいま一つ、これは政府としてやれることでしょうが、在外公館において使うところの自動車は国産車をもって充てるかどうか。これは私きわめて必要なことであろうと思うが、あなたの御所見はいかがでありますか。
  80. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 在外公館というのは日本の在外公館ですか。
  81. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 日本からよその国に行っているやつです。
  82. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 それはできるか、できないか、一つ調べてみます。
  83. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 今の通産大臣の答えはまことにどうも私は満足できません。あなたはどういう考えを持っておるか。外国の公館で国産車を使うということは、私はきわめて必要なことであろうと思うけれども、国産品奨励という意味からいってどうお考えになるかと申し上げておるのですから、今のような答えでなく、あなたの御所見を伺いたい。
  84. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 そういうことならお答えできます。それは使うようにいたしたいという希望を持っております。
  85. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 中小企業問題で今非常に大きな問題となっておるのは、大企業の圧迫を中小企業が非常に受けておる。一つの例をとって申し上げますなれば、たとえばデパートにおきまして資本がたくさんあるものだから、デパートの中で映画をやったり、いろいろな催しものをやって人を集める、あるいはまた下請人から品物を出させても、売れなければそのまま返品をしてしまう。金も売れた後でなければ払わない、あるいは売り子を出させる、こういうふうに、大資本、大事業家が下請その池中小企業に対していろいろな圧迫を加えておるので、わが党におきましても、百貨店法というようなものを今準備して、本国会に提出するという計画になっておりますが、これらについてあなたの御所見はいかがでありますか。
  86. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 百貨店の不当競争と認められるものは、今やかましく取締りを行なっておるのであります。それならば百貨店法を作って何かやるか、これはなかなかめんどうなことでありまして、百貨店が不当競争をするのは困りますが、そうかといって、また百貨店の機能を著しく制限するということも、消費者側からいえば問題が起る、こういう点で不当な競争だけはこれを取り締る、かような考えでおります。
  87. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 あなたに対する質問だけを長くやっておると、あとの質問ができませんから、この程度でとどめておきますが、どうかいま少し中小企業のために真剣にお考えが願いたいのであります。  次に大蔵大臣にお尋ねいたしますが、大蔵大臣のこの予算規模の中に、本年の税制改革によりまして三百二十七億の減税をする、平年度においては五百億減税の予定である、こういうのですが、どうして本年五百億の減税ができないのか。私ども日本の財政の上から見たときには、一千億くらいの減税ができるように思われるのでありますが、何ゆえ本年五百億の減税ができないのか、お答えが願いたい。
  88. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。これは今日の国民所得またそれに基く税収入から見まして、そういう程度のゆとりしかない、こういう考え方であります。これはそろばんをはじいての上なんであります。
  89. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 あなたの今のお答えによると、税収入から、こういうことを言われておるのですが、それで私の方からむしろその点を申し上げたいのであります。と申しますことは、これは三十年度の予算を編成なさるについては、昭和二十九年度の決算見込みを十分御検討になられた結果であろうことは、私が言うまでもなくここにちゃんと載っておりますから、その通りであろうと思うのでございますが、私は実際においてこの予算というものは、ほんとうに机の上だけの予算としか思われないのでありす。なぜならば、昭和二十九年度の一兆円予算とほぼ同様な規模において本年度も九千九百九十六億円の予算外をくんだ、こういうことを言われておるのでありますけれども昭和三十九年度の予算は決して一兆円予算じゃないのであります。一兆一千九百億余になっておるのであります。さらにその決算を見ますならば、これは私は昭和二十五年からさかのぼって申し上げますならば、昭和二十五年は一般会計において五百六十二億という未徴収がある。政府が予算面において計画しておって取るベきものを、一般会計において五百六十二億も取っておらないわけなんです。それから二十六年においては六百三十億取っておらない。二十七年においては五百四十五億、二十八年においては五百四十三億、こういうふうに取っておらない。しかも二十五年の未徴収五百六十二億のうち、最も大きなものは租税で四百六十八億が未徴収になっておる。二十六年には六百三十億のうち未徴収租税が五百五十二億であります。それから昭和二十七年には租税が四百四十二億未徴収になっておる。昭和二十八年におきましては一般会計の未徴収五百四十三億のうち租税の未徴収が四百三十八億であります。しかも租税の徴収すべきものを徴収しなくてもなおかつ歳入が支払いよりも超越しておる。昭和二十五年におきましてはその超過が一般会計において八百三十四億、昭和二十六年は一般会計におきまして一千四百五十六億、昭和三十七年におきましては二千四十八億、二十八年におきましては二千十八億、こういうふうに実際に取るべき税金をこんなに取らないでおって、さらに歳出よりも歳入の方が多くなっておるのでありますから、一千億くらいの税金を減税することは私は何でもないと思うのですが、これは一体どういうわけでありますか。さらにそのほかにいろいろな不当事項がたくさんあるわけであります。たとえば昭和二十七年度におきましては不当事項として会計検査院の指摘したものが一千八百十三件でありまして百二億九千万円、二十八年度におきましては二千二百三十二件でありまして、その不当事項と認められる金が百四十八億円もある。こういうような状態でありまして、ほんとうに政府が予算の執行を厳重に行なって役人が悪いことをしないでやりましたならば、私は一千億くらいの減税をすることは何でもないと思うのです。私の今申し上げたほかに、さらに役人の横領行為による金額はまだそのほかにもあるわけなんですから、これらの関係は一体どういうのでありましょうか、大蔵大臣一つ御説明が願いたい。
  90. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。ただいまお話がありましたように、租税等において未徴収も出ずに全部入ってくるという状況にありましたならば、私はまだ減税ができるかもしれぬと思いますが、そういうふうにやはり取れないものがある。従いまして今日ほんとうに財政の健全性を失わずして減税できる限度というものは、三十年度におきましては約三百億、平年度において五百億、こういうふうに考えておるわけであります。
  91. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 あなたのはそれが取れればという。そうじゃないのであります。私が今申し上げておるところのこの未徴収というのは、昭和二十八年度の一番近いところは——昭和二十九年度の決算見込みというのは私にはわかりません、まだそれが出ておりませんから。大蔵省ではわかっておるはずでりあましょう。そこで昭和二十八年度の五百四十三億という一般会計の未徴収のうちに、四百二十八億という租税を取らなくてもなお歳入の方が歳出よりも二千十八億も超過しておるのでありますよ。それなのにどうして税金が下げられないかと私はいうのです。これは数字の上でわかっている。
  92. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申し上げますが、ただいまお話になった数字のうちには、剰余金のほか翌年度への繰り越しも入っておるように考えられるのでありまして、それがすぐには減税にはならないのであります。
  93. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 どうも大蔵大臣も専門家であるのでしょうが、困ったものですね。そうすると本年の予算は明年度への繰り越しを見込んで歳入を組んでおるのでありますか。
  94. 牧野良三

    牧野委員長 大蔵大臣でなければいけないですか。事実をお知りになったらいいのじゃないですか。
  95. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 見込んでおりません。
  96. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 政府委員でもけっこうです、わからなければ。
  97. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 ただいまお示しのございました数字は、翌年度への繰り越しないしはその年度の剰余金も含めた数字でございまして、確かにお示しのように歳入超過となっておりますが、それは一部が翌年度の剰余金といたしまして、翌々年度の財源に使用する、また一部は財源を翌年に繰り越しまして、これは歳出も繰り越されまして翌年度に使用されるということになるわけでございまして、お示しの数字全部が余っておるというわけではないわけでございます。余っておりますのは剰余金だけであります。この剰余金は財政法の規定によりまして、翌々年度におきましてその半額を国債償還に充てる、そういう規定になっておりますので、その通り予算を計上いたしております。残りの半額は一般財源に使用せられるわけでありまして、その残りの半額を含めました総歳入が、本年度は九千九百九十六億、これは減税後でありますが、減税前でありますれば一兆三百二十数億、そのうちから三百二十六億減税したわけでございまして、従いましてこの計画の中には二十八年度の剰余金も見込まれておるというふうに御承知をいただきたいと思うのであります。なおただいま最後にお尋ねのございました点でございますが、三十年度の予算、これは九千九百九十六億円を本年度内に支出する必要があるということで計上いたしておるわけでありまして、当然翌年度に繰り越されるという金額をこの中に含めておるつもりはないわけでございます。
  98. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 それは余れば翌年度へ繰り越されることは私も承知しておりますけれども、しかしこういった数字の上に表われてきて実際に歳入超過になっておるということは、歳出よりも取り立てた金の方が多いのでありますから超過しておることは明らかであります。そうしたならばその歳入をそんなに超過させなくても、歳出と見合うように取り立てておったらいいじゃないですか。それをこういうふうに毎年取れない金があっても、なおかつ歳入の方が多くなるというのは、一体予算がいいかげんじゃないか、こういうことになるわけであります。
  99. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 毎年々々剰余金を生じておるのは、歳入の見積りが少し辛過ぎるのじゃないか、そういうお尋ねかとも存ずるのでございますが、歳入当局といたしましてはもちろん甘過ぎる水増しの見積りはいたしておらないわけでございますが、さりとて実情を無視いたしまして、特別にこれを辛くして当然剰余金が出るというような形での局積りもいたしていないわけでありまして、適正な見積りに努力をいたして参ったつもりでございます。しかし予算編成後における経済界の変動等もございまして、毎年々々剰余金が出て参ったのでございますが、決してことさら意識的に見積りを辛くしているというわけではないのでありまして、そのときどきの情勢に応じまして、最も適正な見積りをいたしておる。現に二十八年は四百八億の剰余金がございましたが、三十九年は目下のところは三百億そこそこということでございまして、かくのごとき剰余金が減って参りましたことは、見積りもだんだん適正化して参っておりますし、また経済界の状況も反映しておるわけでございまして、決してことさらに見積りを辛くしているわけではない、その点は何とぞ御了解を願いたいと思います。
  100. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 ことさらに見積りを辛くしているのじゃないというお答えでありますけれども、こういうように昭和二十五年以降徴収しない金が一般会計でいずれも五百億以上、しかもそれでも歳入の方が毎年八百億以上、二千億を越す年もある、こういうようなことでは、実際の予算が事実とほんとうに遠ざかっておる、きわめていいかげんなことであるというようにしかわれわれには考えられないのであります。さらに私どもは役人がいま少しほんとうに官紀を振粛してやったなれば、もつともっとたくさんの財源ができているであろうと思う。国民の負担というものはもっと軽くして済むのじゃなかろうかと思うのでありますが、これをあまり長く議論しておりますと、ほかの人に対する質問ができませんから、この程度で私は大蔵大臣に伺うことはやめておきますが、いま少し実際にこんなことにならないように、あるいは本年のところ大蔵大臣が組んだこの予算の歳入歳出が、明年度におきまして取り立てない税金が五百億もあってもなお一千億も歳入が超過するというようなことのないように私はやってもらいたい、予算の執行をいま少し厳にしてもらいたいということを御警告申し上げてあなたに対する質問をやめます。  次に運輸大臣がお見えになりましたから運輸大臣に伺うのでありますが、運輸大臣がこの間御報告されました、あの宇高連絡船の紫雲丸の沈没について御報告があったのでありますが、平水航路であるために乗船名簿は備えつけないけれども、大体において乗客の数をつかみ得た、こういう御報告であったのですが、私どもが考えますると、この時節柄私はこの運輸大臣が御報告になられたような乗客数ではなくて、もっともっと多くして、また死亡者等ももっと多くなっているのじゃないかと思う。また行方不明者等も多くなっているのではないかと思いますが、この点変動があるかないかこれを伺いたい。
  101. 三木武夫

    ○三木国務大臣 ちょうど宇高連絡船について御質問がございましたので、私は十三日に東京を出発して現地におもむいて参りました。昨夜帰って参りましたので御質問の趣旨そのものではございませんが、この機会に御報告を申し上げておきたいと思うのでございます。  五月十三日に東京を出発して、十四日神戸より海上保安庁の巡視船で高松に参りまして、現地で遭難現場に弔意を表して高松に上陸をいたしました。四国鉄道管理局にて事故の原因、遺体の引き揚げ作業を初めとする諸般の処置について、関係出先機関より事情を聴取いたしました後、遺体安置所、四国鉄道病院に入院中の負傷者等を見舞い、遺家族、学校関係者一行も高松の宿舎にそれぞれ見舞いまして、夕刻には紫雲丸遭難者対策連絡協議会の代表者の方々ともお目にかかって昨夜帰って参りました。その結果遺体の引き揚げの状態につきましては、潜水夫七組、文鎮こぎ十二隻が全力をあげておりまして、船内には数回にわたって捜査をいたしまして、今後は船内で遺体を発見することはほとんど困難ではないかといわれておりますが、しかしなお船内の遺体捜査を続行していきたい。現在までに生死不明者は十六日午前八時現在で学童のうち十名となっております。今後も遺体捜査を続けていきたいと思っております。十六日の午前八時現在全体の遭難状態は死亡者百五十八名、生存者七百七十五名、行方不明十名、計九百四十三名となっております。現在までに遭難してから日がたっておりますので、香川県警察本部長とも話したのですが、この数字は大体これ以上ふえることはあるまいという見解で、私もそう考えました。  負傷者につきましては、五十一名ございまして、四国鉄道病院で加療しておりましたが、十四日午後四時、私が参りましたときは、もう二十六名になりまして、ほかは退院されていました。二十六名中特に重傷は一名でありますが、大体生命は取りとめるということを病院長も申されておりましたので、病院に入院された方は、犠牲者を出さないで済むのじゃないか、こう考えております。  また遺族の方々につきましては、それぞれまだ各宿屋に分宿をされて残っておられた方も相当におりましたので、この人たちが中心に、紫雲丸遭難者救護対策連合協議会というものが設けられて、いろいろな御要望を承わって、私もできるだけのことをいたしますということで、この連合会の方々にも了とせられたのでございます。  各種の輸送状態につきましては、旅客輸送については、十一日は関西汽船の舞子丸、十二日には関西汽船のひかる丸をチャーターいたしまして、輸送力の欠陥を補いましたが、十二日には広島三菱造船所に入渠中の鷲羽丸を緊急回航し、十三日以降は眉山丸、鷲羽丸面船にて、所定通りの輸送を行なつております。また貨物の輸送については、十一日は四国発本土行きの貨物の受託、発送停止を行いましたが、十二から十四日まで四割減、十五日より十九日まで二割減でございますが、二十日より所定のダイヤに直る見込みでございます。  今御指摘になりました平水航路に対して、乗客名簿が法律上必要でないために備えつけてなくて、今度のような事故が起りましたときには、正確な数字を把握することが非常に困難が出て参りまして、いろいろ対策上にもこれは遺憾でありますので、船客名簿を今すぐに備えるということは、法律の改正も伴いますので、現場で、たとえば入口を狭くして——御承知のようにあの連絡船の場合は、非常に多数の人々がホームからどっと行くわけでございますので、これを何カ所かに入口を小さくして、そうして数だけは正確に把握するようにということを、厳重に申して帰って参りました。
  102. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 まことに遺憾きまわりないところの事故でありますが、ただここで私はさらに運輸大臣に伺いたいのであります。何だか長崎総裁が辞任されたのについて、追い打ちでもかけるような感じがしないでもありませんけれども、こうしたことは、これはきわめて将来に対しても重大問題でありまして、私は国鉄の長崎総裁並びに天坊副総裁が、一昨年あの株式会社鉄道会館の不正問題について、われわれ決算委員が、長崎総裁の罷免勧告決議案を出したときに、運輸大臣の当時属しておった改進党が途中からひっくり返って、とうとうこれがわずかの差でわれわれは敗れた。こうした事故が起るということは、決して起るの日に起るのではありません。官紀が紊乱しきっておる。それがためにこういうことが起ったのである。私は今さら鉄道会館事件の不正を、ここでとやかく申し上げるのではありませんけれども、あの株式会社鉄道会館建設資本金というものは、会社の資本金はわずかに四億四千万、払い込みは一億一千万しかなかった。そうしてその工事費というものは三十二億もかかる。これを国有鉄道がこの株式会社から頼まれて、まず品川のそばの田町の駅から田端までの線路の増設費六千万円、全国の駅舎改築費二億二千万円、これをあの株式会社鉄道会館の工事費にないしょで使っておったじゃありませんか。そしてあのような不正を国民の前にさらけ出して、これをわれわれが不都合千万——まだそのほかたくさんあります。たとえば日本交通公社の切符売代金を、昭和二十八年の八月までに、昭和二十四年以降、長崎総裁就任以降十数億も、ただ無担保、無保証で使わせて、しかも浮き貸しをしておって、この浮き貸しが端となって、造船汚職まで発展してきたようなわけであります。さらに日本通運株式会社に対しては、昭和二十八年の八月までに四十九億、約五十億の運貸を、ただ無担保、無保証で使わして、これまた浮き貸しをしている。こういうようなことがあったために、われわれは長崎総裁並びに天坊副総裁の罷免勧告決議案を出したのであります。ところが、これが当時の改進党と自由党によってとうとうわれわれが敗れた。あのときに長崎や天坊を罷免しておったなれば、洞爺丸の事件も起らない。ここで引き締るわけです。国鉄の官紀紊乱が引き締った。それを自由、改進両党が、多数を頼んでとうとうこの罷免決議案を否決した。それが洞爺丸の事件となり、このたびの宇高連絡船の沈没事件となったのであります。このときにおいて長崎総裁が辞表を出したというが、これは長崎総裁が積極的に辞表を出されたのか。それとも政府から要請をして出したのか。この点につきましては本会議質問があったけれども、運輸大臣のお考えがなかったのでありますが、この点はいかがでありますか。さらにまた天坊副総裁は、まだ平気でそのままいるのだが、一体こういうようなことでこのままいったなれば、将来どうなる。責任政治ということについて今日全くゼロでありますが、運輸大臣いかがでありますか、この点承わりたい。
  103. 三木武夫

    ○三木国務大臣 長崎総裁は、みずから責任を感じて辞表を提出いたしました。今御指摘のように、責任をとる一つの形として、辞表を出したときに、辞表は待て、引っ込めろということで罷免をする形も、それは責任をとらす形でありましよう。しかし、こういう事件に対してみずから責任を感じて辞表を出す。これに対してその責任をとらす意味において、政府が辞表を認めるというのも、責任のとらせ方であります。政府は後者をとったのでございます。なお、天坊副総裁につきましては、これは御承知のように、日本国有鉄道法では、政府が副総裁に対する罷免権とか任命権を持っておらないのでございます。持っているのは総裁についてだけであります。副総裁は総裁の任命ということになっておりますので、でき得る限りすみやかに新総裁を任命いたしまして、新総裁を中心として御指摘の国鉄の人事等にも刷新を加えて、いろいろ世間の批判があるわけでございますから、この不幸な事件を契機といたしましてこの際世の批判にこたえたい、こういうことで副総裁等の問題も国有鉄道法の法規の上からもそれはできないのでございますから、新総裁の任命を通じて国鉄の刷新を行いたい、こう考えておるのでございます。
  104. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 私は三木運輸大臣一人を決して追及するものではありません。これは前吉田内閣の石井運輸大臣に大いに責任があるのでありまして、あなた一人にとやかく申し上げても仕方がありませんが、運輸省としては十分官紀を振粛していただきたいのであります。  さらに造船に対するところの開発銀行のこの三十年度の融資について、私は運輸大臣に聞いてわからなければ開発銀行の総裁に聞きたいと思うて、特に出席を永めておったのでありますが、開発銀行の総裁がきょう来ておらないそうでございます。運輸大臣に伺ってもおよそわからぬのじゃないかと思いますからいずれこの点は後日に譲りますが、日本の汚職疑獄の大本山は実に運輸省でございます。一つ運輸大臣におかれましてはこの点を十分お考え下さいまして、運輸行政については官紀の振粛を一段と私はお願いしたいことを警告いたしまして、開発銀行の総裁が来ておりませんから、運輸大臣に対するところの質問を打ち切りますが、ただ一つここであなたに伺っておきたいことは、あなたの構想として、造船に新構想、株式会社を作る、こういうことをあなたは新聞に御発表になられました。どういうところの御構想からかこれは非常な重要問題なんです。三月二十三日の読売新聞に御発表になっておりますが、あとの質問関係もございますから、どうか簡単に要点だけを一つお話しを願いたいと思います。
  105. 三木武夫

    ○三木国務大臣 前段御指摘になりました運輸省の綱紀の粛正ということにつきましては、お話しの通り一段と意を加えていきたいと考えております。  なお読売新聞の今後の海運に対して株式会社などの新構想を持っているという新聞記事を通じてのお話でございましたが、御承知のように日本の海運、これは将来国際収支の改善のために大きな役割を果さなければならぬのですが、資本の構成がほとんど自己資本というものではなくして、財政資金あるいは市中銀行の融資等によって、そうして他人資本を大部分運営しておるということは、国際競争力あるいはまた企業自身の責任感、いろいろな点でこれは将来において資本の構成を改善しなければならぬ、こう考えましていろいろな案を検討しておる一つの案が新聞にそういうふうに報道されたのでしょうが、まだ結論は出ていないのであります。これは大問題であって、日本の全体の企業の姿でありますので、これは単に海運界のみならず、全体の日本のいわゆる資本の構成が非常に悪化しておる。これは政府全体としての政策にも関連をしますので今後検討していきたい。一つのそういう考え方も考えられるということで申し上げたので、結論が出た問題ではないと御承知おきを願いたいのであります。
  106. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 あなたの今のお答えであればけっこうですが、こんな簡単な考えでおったら——あなたが研究だとおっしゃられるからよろしいですけれども、これは実に重大な問題で、たった五億円ばかりの株式会社の資本金で、この造船関係を一切片づけようなんて、きわめてこれはちゃちな考えであります。あなたがそうおっしゃられればそれ以上は申しませんが、どうか十分御研究を願いたい。いずれ関銀の総裁が出てきたときに私は伺いたいと思っておるのであります。  次に文部大臣に一つお尋ねを申し上げるのでありますが、これはきわめて簡単なことなんです。実は今日本の全教師のうちに女子教員が二十四万人もおることは、これは文部大臣も御存じであろうと思うのですが、この二十四万人の婦人教師が今非常に困っておる。ということは、生理休暇の問題である。分べん前あるいは分べん後、こういう時期に際会しても教員が不足なために休むことができないのであります。それで、それについては二十四万の婦人教師は何とかして補助教員を作るように法制化してもらいたいということの陳情をされておるのです。これは現在の状態におきましては、ほとんど休むことができない。それがために婦人の先生は非常に健康を害して、生まれた坊ちゃんが発育不良になる、あるいは赤ちゃんを生んでからはいろいろな病気が起って健康を害してしまう、こういうような状態になっておるのでありまして、大体において分べん後は六、七週ぐらいしか休めないということになっておるのでありますが、この婦人教師の生理休暇の場合におけるところの補助教師の問題について一つお伺いしたい。単にこれは女子教官ばかりではありません。児童の教育にも大きな影響を来たすわけであります。自由をさせたり、遊ばせたり、あるいは合併して授業をする、こういうようなことに相なっておるのでありますが、これに対して文部大臣の御所見を一つ伺いたい。
  107. 松村謙三

    ○松村国務大臣 お考えを申しますが、お話のような次第でございまして、文部省といたしましても十分の注意をいたしておるわけでございます。現在の状態では、文部省の勧告に従って補助教員を置きましてやっている府県も相当にございますが、中には県財政の関係からしてそれが十分にいかないというようなところもありますことは遺憾でありまして、できるだけこの補助教員の半額の助成を私どもの方でいたして、こういうことのないように努めておるわけであります。これを法制化するということになりますと、地方財政の関係その他いろいろのことがありまして、今直ちにこれを法制化するということを申し上げるまでには参っておりませんが、文部省といたしましては、これらに対しては十分の注意、努力をいたすつもりでおります。
  108. 牧野良三

    牧野委員長 杉村君にちょっと申し上げますが、時間が迫りましたからどうぞ……。
  109. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 いま少し、そう長くはなりません。  これは予算の関係からおっしゃられるのでありましょうが、予算は先ほど私が申しましたように、まだまの一千億くらいの減税ができる。あるいは減税しなかったならば、先ほど申しましたようにこんなに金が余ってくるのでありまして、これくらいのことはどうにでもできるのでありますから、どうか一つ十分お考えが願いたい。あなたの御懸念になるのは、予算の関係であろうと思う。さらに危険校舎の予算がきわめて少いのでありまして、なるほどこの予算には組んでおりますけれども、これらにつきましてもいま少しく予算の組みかえ等をなされまして、そして危険校舎の改築に御努力願いたいと思います。お答えを願っておりますと時間がなくなりますから、その程度であなたに対する質問は終ります。  次は厚生大臣に一つ伺いたい。日本は戦争が済んでからもう十年もたつのですが、まだこのごろ電車の中、汽車の中、あるいはデパートの入口で、戦争で足がなくなり、手がなくなり、めくらになった人が物ごいにもひとしい行為をしておるのでありますが、これに対して厚生大臣はどんなお考えを持っておりますか、お伺いしたいのです。
  110. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 電車、汽車の中におきまして、また交通のひんぱんな途上におきましてああいう姿を散見することは、厚生大臣としても実に残念なことと思っておりますが、取締り法規はやはり電車並びに交通機関の取締り法規によって行う以外にはないと考えておるのであります。
  111. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 私が伺っている趣旨とはどうも非常な懸隔があるので実に驚いた。取り締るというようなことを私は聞いているのじゃない。私どもは取り締るどころの騒ぎではありません。私も昭和十二年の初頭に召集を受けて四年間の陣中生活をして帰ってきた戦友の一人としますと、この人たちを覚るときに涙なくしてはおれない。それをあなたは取り締るなんということはとんでもない話だが、こんなことはだれも好きや道楽でやっている者はない。なぜこんなことをさせておくかということを伺っておるのであります。
  112. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 御趣旨の中に取締り云々というお言葉があったかと私勘違いをいたしましたので、まことに恐縮をいたしております。厚生大臣の精神といたしましては、もちろんかかる人人が十分なる国家の補償ないし給与を受けるようにしたいのが本旨であることはもとよりであります。しかしながら、それが十分でありませんためにああいう姿を出しているということはまことに遺憾にたえない、かように考えております。
  113. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 あなたから遺憾の意を表されただけではこれは何とも処置がつかないのであります。しかも本年度の予算で遺家族の受給年金の予算を減らしておるのであります。これは実に重大問題でありまして、しかも受給者が減っている、権利を失っているというのですが、この権利を失っているのは、死亡によるもの、あるいは手続を知らないために誤まって時効によって失っているものと、私ども調査したところによるといろいろあるのでありますが、その種別はいかがでありますか。
  114. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 一番しまいに受給者の種別ということでありましたが、それは直ちに調べてお答えをいたします。すぐお調べいたしますが、それまでのお話は、数が減っているということでありますが、これは当然失権者が出てくるのでありまして、昨年から相当な失権者が出ているということを勘定に入れてお考えを願いたいと思います。しかしながら、軍人恩給そのものは決して減ってはおりません。昨年度に比べまして当然失権を予想されたものを除いても十三億ふえているということは本会議の席上において私が言明した通りであります。これは数字は間違いございません。
  115. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 戦死された、あるいは戦病死されたところの遺族が、年金をもらえないで異議の申し立てをしている者が今八千人もあるのであります。そうしてこれの審査をするのが一カ月に一回です。戦争が済んで十年もたってまだ片づかない。一カ月に一ぺんしかあの審査会が開かれない。この間行って聞いたところが、これからは二回ずつ開かれるということを聞いているのですが、いま少しこれらの遺族あるいは戦病兵等に対して厚生省は十分一つ御研究が願いたいと思うのであります。それから手続上において、手続が誤まったから、あるいはおくれたから時効にかかったというようなことで、役人の通り一ぺんなことで与えておらない人がいる。これらについても一つ厚生大臣は十分御研究せられて、ほんとうにこの予算などはわずかな予算でありますから、こういう予算などは減らさないで、まだまだ不服の申し立てをしている者があるのでありますから、どうか十分御検討あって、遺家族に一つあたたかい気持で接していただきたいのであります。あなたに対する質問もまだしたいのですが、時間がない時間がないと言われるから仕方がない。  最後に副総理にお伺いするのですが、総理大臣がきょうはお見えになりませんから、総理大臣にかわってお答えが願いたいのであります。あなたは戦争犯罪人の一人としてかってその刑罰をお受けになったのですが、この戦争犯罪人につきまして、日本の国内法上あなたはどうお考えになっておりますか、それを一つ伺いたい。総理大臣としてのお答えが願いたい。
  116. 重光葵

    重光国務大臣 戦犯の問題について私が最も痛心をいたしておりますということは御想像をいただきたいと思います。この問題は何とかして片づけたい、こう考えております。今お話の点、これは国内法上どういう法規関係になっているかというはっきりしたことは、一つ法制局長官にお答えしていただきたいと思います。しかし私はこれは国内法的に——私の知識ではこれは国内法の問題はこの中に含んでおらないと考えております。すなわち国内法的のものではない、ただこれは敗戦の結果起った戦争の一つの犠牲の現われだ、こう考えている次第であります。
  117. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 あなたとしては総理大臣のかわりとしても、あなた御自身の関係があるので、十分ざっくばらんなお答えもできないかもしれませんけれども日本におきまして戦後たくさんに戦争犯罪人ができてしまった。しかし私どもから見ましたならば、これを全部いわゆる犯罪人と見るということはまことに気の毒であると考えるのでありまして、むしろそれよりも、これらの戦争犯罪人を作ったところの戦争犯罪人がなくちゃならぬ。日本においてこれだけの大きな悲劇を起して、このままでよろしいか。日本は独立したのであります。独立国家になったのだから憲法を改正しなければならない、アメリカから与えられた憲法だからこれは改正しなければならないというようなことを、あなたの政党も自由党も叫んでいるのだが、独立国家となってほんとうに日本が将来世界の平和の根源国として立ち上っていこうとする場合におきまして、この大悲劇を起したその責任者はだれであったか、それを伺いたい。それからあなたは国内法上何でもないと言うけれども、しからば刑法の第五条、外国において裁判を受けた者は、その同一行為について、国内法上罰すべきものであったなれば罰しなければならない、こういう規定もあるのでありますが、私はこれにそれを持っていこうとするものではありません。すべて戦争犯罪人の行為をそういうふうに見て、刑法第五条に持っていこうという考えは持っておりませんが、少くともこれだけの大悲劇を起した戦争責任者というものをほんとうに、究明してこそ、日本の将来の平和ということが世界に向って要望されるものではあるまいかと思うのでありますが、あなたはこの大悲劇を起した日本の戦争責任者はだれであるとお考えになりますか。
  118. 重光葵

    重光国務大臣 私はかような大きな戦争に国家が突入したのでありますから、それに対する責任は十分に明らかにしなければならぬとこう考えるのでございます。しかし今日それを法的にどういうぐあいに扱っておるかということは、これは今法的には扱ってはいない、こう思っております。しかしその責任は十分に究明をいたすことがいいと考えております。その点はむしろ主として歴史家の職務に属するのではないか、こういうふうに私は考えております。
  119. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 歴史家の仕事じゃないので。どうも非常にピントがはずれておるのですが、私が特にここで申し上げたいことは、あなたも戦争犯罪人でありますが、あなたも大臣になられる前には多額の恩給をもらっておったろうと思う。これから先大臣をおやめになったら、やはり多額の恩給をもらうでろうと思う。これがもしも日本の国内法上からいろいろ研究の結果、あなたも国内的にいわゆるこの戦争の責任者であるということになったなれば、あなたは恩給をもらえるはずがない。来集未亡人が今五十六万円の年金をもらっておるというが、これは法規上から見てですが、事実もらっておるか辞退しておるかは知りませんけれども、そのような、国際的に見て戦争犯罪人として処刑を受けた者の遺族が、この莫大なるところの年金を受けておる。しかるにもかかわらず実際においてかり立てられて出て行ったところの兵の遺族の年金が幾らでありますか。わずかに年額二万五、六千円にしかなっておらない。こういうようなばかばかしいことで、果して将来日本がほんとうに民主国家として世界平和の根源国として、根源国民として立って行けるかどうか。今憲法を空文化して自衛隊をやっておる。自衛のためであれば軍備はよろしいと言うけれども、どこの国の憲法でもよその国を侵略していいという憲法はありはしない。明治憲法だって、明治天皇が作ったあの憲法の軍術でも決してよその国を侵略するための軍備ではなかったのでありましょう。これは日本の自衛のための軍備であったのであります。しかるにもかかわらず憲法を曲解して、そうして自衛のためならばというようなばがばかしいことを言ってどんどん軍備を拡張しておる。一方においてはこの戦争のためにかり立てられて行って戦死したところの兵隊の遺族はわずかに二万数千円である。それにもかかわらず戦争犯罪人として処罰された者の遺族が六十万円に近い莫大な年金をもらっておる。こんな不合理なことがどこにありますか。政府は少くとも戦争責任者を明らにして、戦争の責任者がかように国民の血税をはんでおるというがごときは是正しなければならぬと思うのでありますが、これについて副総理の御所見をいま一応承わりたい。
  120. 重光葵

    重光国務大臣 さような戦争の跡始末について公正なる取扱いをし、また公正に処刑していこうということについては、私はお話の御趣旨に御同感をいたします。  なお私自身のことについてお話がありましたが、このことについては私自身としては国会、皆さん方の御判断にすべておまかせすることにいたしますから、その心境を申し上げておきます。
  121. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 開発銀行の総裁が来ておりませんで聞くことができないではなはだ残念ですが、他の機会に質問することを留保して、これで私はやめておきます。
  122. 牧野良三

    牧野委員長 それでは午後一時四十五分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時四十六分休憩      ————◇—————    午後二時十一分開議
  123. 牧野良三

    牧野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。この際原子力問題に関し、午前中志村茂治君から留保質問がございましたのでそれをお許しいたします。志村茂治君。
  124. 志村茂治

    志村委員 高碕経審長官から、午前中の回答に追加しての回答がありますようですので、それを一つお聞かせ願いたいと思います。
  125. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答えいたします。けさほど御質問の、いつごろからどういうような交渉に入っているか、対米交渉のお尋ねにつきまして、外務省の連中、及び経審の連中等を呼びまして取り調べました結果、一月の初めに国務省からアメリカ日本大使館あてに、口頭をもちまして濃縮ウラニウム日本受け入れる気がないかということを聞いてきたのでありますが、その後一月の十一日に今度はこちらのアメリカの大使館から外務省に対しまして原子炉研究、訓練、そのほかの計画について、これは文書で申し出がありまして、その中に濃縮ウラニウムの問題があって、それをどういうふうに配分するかというようなことも付帯条件として聞いてきておったのです。それだけが今まで私のところに文書で来ておったのですが、それが四月の十八日になりまして、濃縮ウラニウムのことについて一月の十一日に申し出た書面を正式の申し出として、それについての意見を聞かしてくれということを口頭で話があったのです。それが今日までのアメリカからの濃縮ウラニウムについての交渉のてんまつでございますが、こちら側といたしましては昨年来内閣の中に原子力利用準備調査会というのを作りまして、その中に総合部を作って、これに官庁では大蔵、外務、通産、工業技術院、それから文部省等の方々、業界ではその方の関係の人たち、それから学者の方々、これだけに寄っていただきまして総合調査会を作ったのであります。その結果昨年の暮れからことしにかけまして、原子力調査団というものを海外に派遣いたしまして、それが帰って参りまして、その報告が五月の五日に出たわけであります。それを基礎といたしまして、最近では四月の三十日に最後に回答したのでありますが、きょう一時半から急速にまたこれを基礎として、どういうふうな条件受け入れるかというようなこと等も調査しておるわけであります。ただいま外務省の手を経まして、アメリカトルコとどういう協定を結んだか、フィリピンとどういう協定を結んだか、こういうことの細則等も今取り調べ中でありまして、一部分の報告は参っております。その方の報告を見まして、日本側とすればこれくらいの条件なら受け入れたらいいということを、ただいまの総合部でよく取り調べて決定いたしたい、これが今日までの状態でございます。
  126. 志村茂治

    志村委員 大へん詳細な説明で経過ははっきりいたしました。  次いでお聞きいたしたいことは、米国濃縮ウラニウムの平和的利用は、国内でも国外でも秘密事項はないのだから、双務協定の中には秘密保全事項は入れないというようなことを言っておるのであります。ところが一昨十四日原子力民間使節団として来られたハフスタッド博士が、濃縮ウラニウムには低い程度のものではあるが秘密がある、こう言っております。少くとも中ソに対しては絶対に秘密にしてもらわなければならないような秘密があると言っておるのであります。政府はこれを知っておられるのかどうか、またこうした秘密があってもなおかつ受け入れられるお考えであるかどうか、これを聞いておきたいと思います。
  127. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 詳細な責任者から報告を開いておりませんですから、それははっきりした条件になっておるかどうかということは、まだ私ははっきり申し上げかねます。しかしながら政府の方針といたしましては、研究の自由を束縛するようなそういう秘密保持協定には応じないことはもちろんであります。
  128. 志村茂治

    志村委員 多少なりとも秘密があるということになりますと、日本原子力研究を総動員、してやる必要のときに、それがために一部の学者が参加できないというような場合には、大きな損害になると思いますから、その点を十分御考慮願いたいと思っております。  さらに同じくハフスタッド博士の言葉によりますと、日本政府濃縮ウラニウム受け入れの準備として、すでにアメリカに二百六十万ドルを用意しておるということを言っております。なぜそのように急いで日本受け入れ準備をするのであるか、あるいはすでに受け入れ決定しておるのではないかというふうにも考えられますが、その間の事情をお尋ねいたします。
  129. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまの御質問にお答えいたします前に、ちょっと伺いたいと思いますが、日本側アメリカに二百六十万ドルそれがために金を準備しておる、こういうのですか。
  130. 志村茂治

    志村委員 そうです。
  131. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 私はそういうことはちっとも聞いておりませんでした。私の知る範囲においてはそういうことはないと思います。
  132. 志村茂治

    志村委員 それでは実はこのことは読売聞新にも録音にとってあるそうでありますから、それを一つ御調査願いたい、こういうふうに考えております。  最後に一つお聞きしたいのですが、アメリカは昨年五月に発表されました国務省の原子力平和利用に関する報告書というものの中に、日本原子力平和利用に関しては最も大きな期待をかけておる、日本原子力平和利用のモデル・ケースとしょうというようなことを述べております。これはもう御存じだろうと思います。今度の使節団の態度はきわめていんぎんではありますが、何か日本に対して圧力をかけておるという感じを、すべての人は受けておるようであります。さらに濃縮ウラニウムはもう普通の商品であるとはわれわれ考えておりません。いまだ純然たる政府商品であるというふうに考えておるのでありますが、アメリカがなぜそこまで熱心に日本に対して供与しようとしておるのか、この理由については政府はどのようにお考えになっておるか、この点は問題の核心だろうと思いますが、一つお聞かせ願います。
  133. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。私はアメリカ日本に対して相当同情的だ、こう感じておりますことは、現在まで、先ほど御説明いたしましたように、日本人だけがアメリカの力によって原子爆弾の損害をこうむっておるのだ、そうしてこれがいかに悲惨であるかということをほんとうに体験したのは日本民族である。これに対しては一方また日本は資源が少いとか、電源開発にしてもたくさんの金がかかるのだ、石炭はないのだ、油もないのだ、こういう国が原子力利用することはいいじゃないか、そういう意味で私は好意的にアメリカが考えていることと、こう解釈いたしております。
  134. 志村茂治

    志村委員 アメリカがそういうふうに日本にほんとうに同情的な態度で、濃縮ウラニウム供与するということが真実であるならば、私はけっこうだと存じております。しかし先ほども申し上げましたように原子力法の鉄ワクとも考えるべきものは、協定の履行が国家の防衛と安全の保障を促進するというふうな建前をとっておるものであることから考えてみまして、簡単に日本に対する同情だけというふうには考えておられません。いろいろ経審長官の方でも慎重にお考えになると思うのでありますが、これらの趣旨等も考え合わされまして、今後の受け入れ決定については、十分慎重な態度で臨んでいただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  135. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 原子力というものが兵力に使用されるということになれば、これはもう大へんな問題です。これは日本国としても大反対でございます。これが兵力でなくて工業に使用されるということになりましては、私どもの考えておるところは、その意味からは賛成いたしたい、こう思っておりますから、さよう御了承願います。  なお御注意の点は、私ども十分検討いたしまして、この交渉に当りたいと存じておりますから、どうぞ御了承願います。
  136. 牧野良三

    牧野委員長 志村茂治君の質問は終了いたしました。  次に高橋等君。
  137. 高橋等

    ○高橋(等)委員 私は遺家族、傷癖者、旧軍人の処遇に関しまして、いわゆる軍人恩給問題を中心として、その他諸般の関連問題につきまして所信をただしたいと存じます。  まず恩給制度の本貫につきまして大久保国務大臣にお伺いをいたしたいと思うのであります。恩給制度は、公務員の在職中に一切の兼業を禁止せられまして一身を国のためにささげ、奉仕をした、そのために経済上の所得能力を失ったことに対しまする国の補てん、補償である、すなわち国家補償であると私は考えておるのでありますが、この点について大臣はいかがお考えでございますか、まずこの点から伺わさしていただきたいと思います。
  138. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 恩給の性質は今高橋さんの言われ女通りであると私も信じております。
  139. 高橋等

    ○高橋(等)委員 しからばこの恩給制度を将来社会保障制度の一環として改廃するお考えをお持ちになっておられますかどうですか、その点を伺いたいと思います。
  140. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 将来の問題としてはあるいは起るかもしれませんが、ただいまのところは起っておりません、またやる考えはございません。
  141. 高橋等

    ○高橋(等)委員 次に川崎厚生大臣にお伺いをいたしたいのでございますが、五月六日の経団連の総会におかれまして、あなたはいわゆる軍人恩給は将来社会保障の一環として考えるべきであるという重大な発言をなさっておられる、これは事実ですかどうですか。
  142. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 この問題につきましては、先日社会労働委員会でも自由党の大橋武夫君から質問がありまして、その際約一時間にわたって質疑応答をいたし明白にいたしております。この際、多少時間をとりますけれども、誤解を避けるために経団連におきまする私の発言を要約いたしまして、大体申し上げてみたいと思うのであります。  経団連の総会におきまして、私は本年度の社会保障全般にわたっての説明をいたし、特に健康保険を中心とする社会保険の強化の問題についてお話をいたしたのであります。軍人恩給、遺家族の補償というものは、当日の主題ではなかったのでありまするが、結論をつけます前に、自分の所管とも若干関連をいたしておりますので、旧軍人恩給についての将来への考え方を次のように申し述べておきました。すなわち本年度予算は旧軍人恩給の経費六百五十一億であって、一兆円予算のうち相当の額を占めておる。しかしながら民主党並びに政府といたしてはこの額をもって満足をすべきものでなく、ことに遺家族の心情を思うとき、まことに同情掬すべきものがあって、ベース・アップその他の措置ができなかったことは、遺家族からも要求があると同時に、世論も大体これに対して支持をしておると思うので、その意味では一そう増額をするように将来取り計らいたいと考えておりますという話をしましたついでに申したことでありますが、軍人恩給の経費は毎年次第に増大をするものと思われる、四年後ないし五年後になるならば、あるいは受給権者が失格をするというような場合も出てきて、その当時になると減ってくる向きも若干はあるけれども、ここ二、三年は相当に増額をするものと見なければならぬ、また増額をするのが当然であると思う。すると旧軍人恩給の経費は六百五十一億であって、これに文官恩給の経費を入れますと八百二十三億になります。さらに恩給関係の付属経費などを入れますと——これは新しい数字でありますが、九百八十二億という数字になるそうでありまして、もしこの内訳が御必要でありまするならば直ちに政府委員から提示をいたさせます。そのようなことでありますので将来国家財政に与える影響というものは相当に考えなければならぬ、また今日増額をするにしても、自分としてはなるべく社会政策的意義をもって真に困窮しておる者に厚く用いるべきものであると思うから、従ってここに社会保障の問題と関連をして考えないと、軍人恩給というものは純粋には取り扱うことができなくなるであろう、こういうような見解を申し述べた次第であります。
  143. 高橋等

    ○高橋(等)委員 厚生大臣は一般恩給についても、同じことを考えておられるのでありますか。
  144. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 今日は恩給制度の一環として軍人恩給も文官恩給も取り計らわれておるのですから、従ってこの恩給制度を改革せざる限り、文官恩給と軍人恩給というものは同じような程度に引き上げて、そうしてこれを法制化するのは当然である。しかし将来もし社会保障制度というものが、国民の世論によって一切を包含したものにしなければならぬというようなことになりまするならば、そのときにはまた別途に考えなければならぬと思いまするけれども、本日ただいまのところは、恩給制度の一環として文官恩給も軍人恩給も考えをいたしております。
  145. 高橋等

    ○高橋(等)委員 どうも私がお尋ねしたことと今のお答えは何かピントがはずれておるように思うのですが、今御説明になりましたように、困窮者に対して厚くしようとかいうようないろいろなお考えというものは、これは経団連では、新聞で拝見すると、旧軍人恩給ついてお話になったように承わりますが、一般の文官恩給についても同じようなお考え方をお持ちになっておるかどうか、これをお伺いいたしておるのであります。
  146. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいまも申し上げました通り、経団連におけるところの発言というものは、社会保障制度全般にわたっての発言が主たる内容でありまして、これに付随して旧軍人恩給の問題を取り上げたのでありますが、しかしながら将来旧軍人恩給を社会保障と関連を持った考え方をいたしますならば、文官恩給も当然これと並行して取り上げなければ、公平を失することに相なると思います。
  147. 高橋等

    ○高橋(等)委員 そうすると大臣は将来こういうことをやった方がいいとお考えになっての御発言ですか、どうなんですか。
  148. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 現在私どもの所属をいたしておりまする民主党は、国会で制定されました国家保障としての旧軍人恩給の精神を支持しておりますので、従って今日のところ恩給制度をそのように、たとえば社会保障制度の一環ということを、私は申した覚えはありませんけれども、そういうような取り上げ方をいたす考えは今日のところございません。
  149. 高橋等

    ○高橋(等)委員 ただいま大臣は、一般に恩給というものは金額が国家財政上占める分野が非常に多くなる、従ってこれに対して将来社会保障的な考え方を取り入れなければならぬと思う、ことに困窮者に対してはこれを厚くいたすことが必要である。これはこの前の社会労働委員会におきまするわが党の大橋君の質問に対しましても、同じようなお考えの御発表があった。そうすると一体今民主党では社会保障の一環としてこれをやるんだから、そういうことになっているから、自分は、将来改めることがあればそのときはそのときだが、今はそういうことは考えておらない、こういうふうにおっしゃっておるように聞くのでありますが、あなたのほんとうの考え方はどういう思想であるか、そして今御答弁になっておるようなことであるならば、なぜ経団連であんな御発言をなさらなければいかぬか。大臣としては非常に軽率じゃないかと思う。一つ御心境を聞かしてもらいたい。
  150. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 問題をもう少し分析をして御発言をしていただきたいと思うのであります。ただいま私が答弁をいたしておりまするのは、恩給制度の体制を今日くずす考え方はない。しかしながら恩給制度の中においても社会政策的な考え方を加味するということの必要は、今日といえども私は認めております。従って先日民主党の党部とそれから政府との間に、いよいよ予算の最後の案をきめます場合におきましても、財政的にこれだけの費用がないということが大蔵省から提示をされた際には、われわれはやはり社会政策的な見地からして、兵長以下の者にとりあえず公務扶助料を出すべきだ、こういう思想を出したのでありまして、その意味でもやはり今日の恩給制度の中においても社会政策的、あるいは多少言葉は言い過ぎるかもしれませんけれども、たとえば社会保障の中には公的扶助という部面も非常に拡大しつつあるのでありまするから、これと同じような規模をもって、社会政策的ないし社会保障的な考え方をすることが妥当ではないかというふうに今日も考えをいたしております。
  151. 高橋等

    ○高橋(等)委員 そうすると、あなたの思想を分析してみると、現在も制度的には、たとえば高額所得者の控除であるとか、あるいはまた年齢の制限であるとか、いろいろな考慮が払われておる、しかしながら下級者に対してはなお引き上げを行わなければ、ほんとうの恩給としての恩典を与えることはできないであろう、こういうことと、いま一つは、先般遺族会の団体の人々がいろいろと手を尽して、ようやく鳩山邸であなたの方の総理に会われた、その直後においてもあなたは、下級者に対して引き上げを行わなければならぬということを言われておる。そうして大橋君の質問に対しては、財政上の膨張を防がねばならぬ、これが自分の考え方の一つの根拠であるということを言われておる。これはその通りなんですか。
  152. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 将来恩給制度が充実をし、旧軍人恩給が真に国民の眼から見て充実をした段階においては、そういうことを考えなければならぬ時節が来るであろうということを予見したまででありまして、今日私がここで答弁をいたしておりますことが、責任ある厚生大臣としての言明であるということにお聞き取りを願いたいのでありますが、さらにつけ加えさしていただきますならば、今日財政の非常に窮乏した折柄ではありますけれども、軍人恩給の増額については、予算編成の途次においても努力をいたしましたし、また今後においても増額の必要を認めておるのであります。決して財政上の圧迫の方に支点を置いてはおりません。私の考え方としては、今日の財政では六百五十一億というものはそんなに多額なものではない、むしろ内容をもっと充実をして行くべきだという考え方でありまして、そのうち特に下属の者対して厚くしなければならぬ、ことにパーセンテージで見ますと、下士官、兵、特に下士官の層が、予想されておるよりも非常に多いのでありますから、その意味合いにおきまして、兵長以下に重点を置きつつ、下士官の方も順次増大をさして行きたい、こういうふうに考えをいたしておるのであります。
  153. 高橋等

    ○高橋(等)委員 だいぶお考えがはっきりして来たと思うのですが、とにかく財政の膨張を防ぐということと、下級者の給与を厚くするということは、これはなかなか両立しがたいものなんです。少くとも下級者というものが非常なパーセンテージを占めておるのでありまして、上級者を幾ら整理をいたしましても、これが財政上の膨張を防ぐことはできないと思う。むしろ下級者に対しましての増額を行うということは非常な膨張を招く原因になると考えている。しかしそれなるがゆえにこれをほうっておいていいという問題ではありません。また申すまでもなく恩給制度というものは、退職前の給与の一つの延長でございますので、現在の公務員の給与体系をそのままにしておかれて、そうして恩給制度のみを社会保障的にお扱いになるというようなことは、首尾一貫を欠くことになる。よほど御研究を願わなければならぬ。またこれはもちろん社会保障制度といえば、国家対困窮者の関係が本質的なものであります。恩給は国家対使用人の関係である。しかも恩給につきましては、自分らは国家に尽したのだという誇りを恩給を受ける人々は持っておる。ことに遺家族その他の方々の持っておられる誇りというものは、これをあなたが社会保障制度的なものにするというようなことを言われましたために、全国の遺家族や旧軍人がどれだけ憤慨しておるか、この人々の精神的な方面も十分に考えていただかなければならぬと思うのです。この思いつきの、軽率なる発言をなさるというようなことでなしに、どうぞじっくりと、お若いのですから勉強なさらて、鳩山さんの悪い放言癖のようなものはまねられないで、そうして慎重におやり願いたい。この間の経団連での発言のようなことは、いたずらに摩擦を招くだけである。益がありません。  次に本論に入りまして、いわゆる軍人恩給についてのお伺いでありまするが、これは大久保国務大臣に伺いたのであります。いわゆる軍人恩給はポツダム政令前の、あの前の恩給権の復活と考えてよろしいかどうか、この点はどういうようなお考えでおられますか。
  154. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 軍人恩給は戦争後新たに制定したものでありまして、前の恩給の継続とは見ておりません。法律的にもその通りであります。
  155. 高橋等

    ○高橋(等)委員 あまり詳しい法律論をやりますと時間がありませんから次に移りまするが、それでは旧軍人恩給を復活いたしました理由はどこにありますか。どういうわけでこれを復活いたしましたか。
  156. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 戦争に伴って国家に対して忠誠を励んだ点を考慮して、その生活を救済する意味において必要であると信じたからであります。
  157. 高橋等

    ○高橋(等)委員 先ほどの過去における恩給権の復活ではないという御答弁は、ポツダム勅令いわゆる六八勅令によりまして過去の恩給権は消滅したのだ、そして新たにここに恩給を作ったのが今のいわゆる旧軍人恩給だ、こういう考えにお立ちになっておられることと思うのです。しかし一面今お話しのように、過去における——大臣は忠誠という言葉をお使いになった。この忠誠に対しまして国が補償をいたすために復活をした制度である。そうしますと、これは道義的といいますか、どういいますか、そういう観点に立って考えまするときに、過去において国が約束をしておったものの実行をこの際やるということは、国としてそういう義務があり、また遺家族、旧軍人、傷痍軍人の方には、それを要求する権利があるとお考えになりますか、どうですか、この点を伺わせていただきたい。
  158. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 別に要求する権利はないと思います。
  159. 高橋等

    ○高橋(等)委員 国として、そうしたことをやる義務があるとお考えになりますか。
  160. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 それは法律によって義務が発生したと信じます。
  161. 高橋等

    ○高橋(等)委員 ちょっと話がピントがはずれるのですが、別に恩給の復活の話をしているのではないのです。国家に功績があった人々に、過去において国家は戦死をした場合は幾ら幾ら出す、こういう場合は幾ら出すということを国が約束をしておった。それが敗戦のためにポツダム政令によって中止になったのです。そこで独立後の今日におきまして——戦時中文官の恩給は停止をやらないで、今日までずっと続いておるのです。そういうようなものとのいろいろなことを考えあわせてみますると、国として旧軍人関係、遺家族、傷痍軍人、旧軍人に対しまして、過去において約束したものを復活をいたすところの道義的責任と義務が国にあると私は考えておる。われわれ自由党はそう考えてやっておるのです。あなたは一体どうお考えになっておるかということをお伺いをいたしておるわけなんです。
  162. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 これは約束に基いて云々ということは解釈できぬと思います。それから道義上の責任といえば責任はあると思います。   〔委員長退席、上林山委員長代理着席〕
  163. 高橋等

    ○高橋(等)委員 この戦争犠牲者の補償問題、ことに戦争で一家の柱をなくされたり、あるいはまた子供さんをなくされたりしたこうした遺族の方々、あるいはまた戦争で、傷ついて生まれもつかぬかたわになって非常に苦労なさっておられる傷痍者の方々、あるいはまた年をとられました旧軍人の方々、こうした方々に対しまして、いわゆる英霊の問題とこれらの方々の補償の問題、これを手厚くいたすということが平和国家を作り上げ、道義国家を作り上げるためには、非常に大切な問題であるとわれわれは考えておる。そこで自由党としましては、これを重大な国策として取り上げております。非常に困難な財政の中から二十九年におきましては七百八十一億円、予算の約八分に当るものを支出いたしておるのであります。そこで自由党はこれを重大国策として取り上げておりまするが、民主党はどうお考えになっておるか、この内閣はどうお考えになっておるか、これは給与担当大臣の大久保さんに伺わせていただきます。
  164. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 これは非常に重要な問題であると存じまして、三十年度の予算におきましても合せて三十余億の増加になっております。相当に重く見ております。
  165. 高橋等

    ○高橋(等)委員 それじゃ伺いますが、このたびの選挙におきまして旧軍人処遇関係、すなわち遺家族、傷癖者、旧軍人に対しまする処遇について民主党はいかなる公約をやったか、具体的にあなた方がなされた公約の内容をここでお聞かせ願いたい。
  166. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ……。
  167. 高橋等

    ○高橋(等)委員 いや給与担当大臣からお伺いいたします。
  168. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 ここで政党の政策の論議はいかがかと存じております。国務大臣として答弁しているのであります。
  169. 高橋等

    ○高橋(等)委員 そういうふうにかたくならないで、民主党の公約は、こうだったんだということをおっしゃっても別に、——ここで何だか学生の問答をしているようだ、あなたも政治家ならそういうことでなしにお話しになったらどうですか。御存じないのですか。御存じなければお教えいたしますがいかがですか、私は給与担当の大臣にお伺いしたいのです。——お答えはないようでありますから、それじゃ私から披露いたしましょう。あなた方は、要約をいたしますると受給権者及び公務死の範囲の拡大、次に文官恩給との不均衡の是正また通算加算制度を認める、遺家族、傷痍軍人の授産就職、遺児教育についての特別の措置をするというような項目がおもな項目で、五項目になっておると思います。そこでただいま大臣は党の問題は話さない、こういうことでございますから、党の公約はこれくらいにいたしておきますが、先ほど非常に重大な国策だということをおっしゃった、そうであるといたしますると、ただいま遺族団体や傷痍者団体いわゆる傷痍軍人の団体あるいは生存旧軍人の団体がたびたび大会を開催したり、あるいは大ぜいの方が上京されて、各方面へ陳情、要求をしております。その陳情、要求のおもなる項目はどれとどれであるかということを、大臣、あなたはどういうようにお考えになっておるか、御存じならばお教え願いたい。——給与担当大臣に聞いているのです。厚生大臣は関係ありません。それは断わります。
  170. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 民主党は今度の選挙におきまして、遣家族、傷病軍人等の処遇改善を行い、文官恩給との不合理を是正し、財政の許す限り恩給法の精神によってその待遇を回復すると言いまして、大体三つのことを約束いたしたのであります。第一は、文官恩給制度との不公正を漸次公正なものに回復をする。第二は、恩給者、応召者等の加算通算制というものを認めて、これを合理的に調整して、権利を回復する。それから第三には、公務死の範囲の拡大ということ。これらを約束いたしたと思いますが、その際におきまして、党の中でもいろいろ議論がありました。三十年度予算からこれを全面的にやることはできないではないかというような議論があったが、これは細目にわたって新聞紙上にも発表になりましたけれども昭和三十年度においても、扶助料のベース・アップをできるだけ実施する。ただし、予算のわくがあるので、旧制に完全に復元することはできないが、でき得る限り行う。なお三十一年度以降は、文官恩給の線に向って復元すべく努力するということを、あらかじめきわめて慎重な態度で臨んでおります。従って、公約は、これを増額し引き上げるということの約束はいたしておりますけれども、どれだけ計上するとか、文官恩給の線に向って全部三十年度の中でやるというような、予算のわくを無視した公約は行なっておらぬということをこの際明らかにいたしておきたいと思います。
  171. 高橋等

    ○高橋(等)委員 先ほどの私の質問につきまして、大久保国務大臣から、給与担当大臣の責任において御答弁をお願いいたしたい。どうなんでございますか。
  172. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 どの問題ですか。
  173. 高橋等

    ○高橋(等)委員 各団体が要求している項目のうちで、最も重大な項目ですね。そう何もかもおっしゃっていただきたいと言っているのではないのです。何を一番お願いしておるのか、あなたのところにも遺族団体やその他がたくさん陳情に来ているはずです。
  174. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 文官を初め、軍人の恩給、各項目にわたって来ております。そのうちで遺族が一番気の毒だと存じました。
  175. 高橋等

    ○高橋(等)委員 これ以上お伺いするのは、何だか私があなたに対して故意に何かをしているように思うでしょうが、あなたは、給与を担当なさっておられる大臣ですよ。全国の関係者はあなたをたよりにしておるのです。それをあなたは、どうも遺族さんが気の毒だったとおっしゃる。なるほどこれは一歩気の毒な方でございます。しかし、どういうことを政府にしてくれと言っておるのかということぐらい存じておられないで、重要な国策であるとなぜあなたはここで言われるか。重要な国策ならば、それくらいのことは知っておるのが当りまえじゃないか。
  176. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 お尋ねがあれば幾らでもお返事します。それは決して軍人の恩給ばかりではない。軍人の恩給にしても、生存者の恩給もあります、一時金の恩給もあります、ほんとうの恩給もあります。また扶助料もあります。すべての点にわたって要求が来ております。けれども、一番気の毒に思い、増加の必要ありと信じたのは遺族の扶助料です。その点を申し上げます。
  177. 高橋等

    ○高橋(等)委員 大臣はちょっと問題を取り違えられておるようでございますから、もう一ぺん伺います。遺族団体や傷痍者、旧軍人の方々がいろいろな要求を今いたしておる。大会を開いたり、上京したり、われわれのところへもずいぶん陳情が来ているし、あなたの方にも来ているが、その要求の大きなものは何であるかということ、その中でどれが一番おもなものだとお考えになっているかをお伺いいたしておるわけなんです。
  178. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 今遺族の気の毒に思った以外に、文官の恩給との権衡を失しているという点もあります。
  179. 高橋等

    ○高橋(等)委員 私はもう質問を継続する勇気がなくなりました。鳩山内閣の給与担当の大臣さんが、この重大な問題について、重大な国策であると考えられてはおるが、いろいろお伺いしてみみと、何を要求しておるかはっきりしたことは答えられない。ちょっと耳打ちをされて、文官恩給と同じようなことが要求になっていると言う、それはその通りであります。そこで、これだけ重大な国策とお考えになっておられますならば、これらの要求に対しておそらく予算的な御検討をなさったろうと思うのでありますが、これらについての予算的検討を大臣はなさいましたか、どうですか、それをお伺いしておきたい。
  180. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 検討いたしました。検討いたしまして要求した結果、増加しましたのは、先ほど申しました通り、三十余億円増加しています。
  181. 高橋等

    ○高橋(等)委員 それではもう一つお伺いするのですが、今これらの方々が要求さなっておるところの、文官恩給との不均衡を是正しろと言われておりますうちのおもな項目は三つある。このうちの二つを考えてみまして、大体四号俸、文官恩給と比べて軍人恩給が低いのでございます。この四号俸を引き上げようとします場合に、幾らぐらい金がかかりますか。あなたは、それを検討した上で今度のような予算をお組みになりましたか。それくらいのことはおわかりになるはずです。
  182. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 恩給局長が来ておりますから、あなたの納得のいくまで説明をいたします。   〔「委員長、だめじゃないか」と呼び、その他発言する者あり〕
  183. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 事務的なことのようですから、政府委員から答弁するそうであります。   〔「委員長、高橋委員が発言を求めているじゃないか」と呼ぶ者あり〕
  184. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 政府委員に発言を許可いたしました。   〔「委員長代理、だめだ」と呼ぶ者あり〕
  185. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 委員長代理は規則に従ってやっております。   〔高橋(等)委員「問題を整理するために発言を求めているのですよ」と呼ぶ〕
  186. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 大臣が、政府委員をして答弁させますと言っておるのですから、御了解願います。
  187. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 今あいにく資料を手元へ持ってきていませんので、はっきりしたことは申されませんが、私の記憶に残っておりますところを申し上げますと、七十億前後の金額と推定いたしております。
  188. 高橋等

    ○高橋(等)委員 大体四号俸の引上げの場合は、私も七十億くらいはかかるのじゃないかと考えます。もう一つ、これも資料がないかどうか知らぬが、また、大臣ももちろんお答えにならぬと思うが、一万二千円ベースに引き上げた場合はどのくらいかかりますか。
  189. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 公務扶助料の金額は百五十五億前後の金が要る予定ではないかと存じます。
  190. 高橋等

    ○高橋(等)委員 今のは四号俸引き上げてなお一万二千円ベースをやる場合にですね。私の聞いたのは九十億じゃありませんか。
  191. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 今のは一万二千円ベースの引き上げをし、なお四号俸引き上げた場合の金額でありまして、間違いました。
  192. 高橋等

    ○高橋(等)委員 そこで大臣さんに返ってお伺いいたしますが、民主党の内閣はこのたびの給与の引き上げにつきましては、兵長においては年額千五百円ですけれども、伍長は四百七十円、軍曹は驚くなかれ年額二百十円、一月に直すと十七円くらいで、コッペパン二つ買えないのです。私はこれは引き上げというにははなはだどうも変なことだと思うのですが、こうした引き上げをなさった根拠が何かあるのでございますか。この金額の根拠があれば承わりたい。またその引き上げの理由を一つ聞かせて下さい。
  193. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 それはもう高橋さんの言う通りです。私から言わなくても全く少いにきまっている。しかしながら数が多いから、そういう少い金にかかわらず総額においては十三億になっている。ですから少いということは万々承知しておりますけれども、総額においてはそういうふうに相当の金になり、できるだけ尽したつもりであります。
  194. 高橋等

    ○高橋(等)委員 今大臣は十三億と言われましたが、これは今年度予算に十三億というものが載っておりますか。
  195. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 それは一カ年の計算であります。今年度はそう載っておりません。
  196. 高橋等

    ○高橋(等)委員 ただいまいろいろとこの問題について政府態度をお伺いいたしたのでが、私は全く憤慨にたえぬというよりも、もうがっかりいたしました。あなた方は、川崎さんの言われた文官恩給との不均衡を漸次是正するという、漸次という字がいつの間にやら入ってしまった。しかし選挙演説のときにはそんなことを言わずにみんな演説をされて、あなた方は旧軍人、遺族さんからたくさん投票してもらっている。しかも、漸次でもよろしゅうございますが、一定の公約をこの内閣が実現をする熱意は、この問題についてだけ考えましても、公約を実現する熱意がなかったということはわかる。きょうの給与担当大臣が、この問題は重大な問題であり、国策であるということをおっしゃりながら、一体どういうことを、これらの団体の人々が長年の間にわたって要求をしておるかということもつかまえておらない。しかもそれをやるのには予算的にどのくらいかかるのか、これは常識的に見て、これをやろうと考えておる人なら、四号俸引き上げの場合が約七十億だ、一万二千円ベースを引き上げようとすれば九十億、両方合わしてしょうとすれば百七十億くらいかかるのだ、こういうようなことぐらいは大臣が知っておらないで、努力しているということが言えますか。国民を欺補するのが鳩山政府の常套手段とはいいながら、どうも友愛政治というものは口先だけでごまかす政治であるような気がする。公約を実行なさる、また実行する努力をする。そこに初めて責任政治というものができます。道義国家というものはそこから生まれてくるのです。繰り返して言いますが、(発言する者あり)椎熊さん私の言うことをヤジられておるようだが、一体からいつて、これがヤジられる問題ですか。あなたはこれをヤジって一体良心に恥じないですか。   〔「そんなばかなことがあるか」と呼ぶ者あり〕
  197. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 委員同士の応酬はやめて下さい。
  198. 高橋等

    ○高橋(等)委員 国民を欺瞞してたくさんの票を得られて、そうしてあなたはそれらの国民に対してどうして本日のこの処置について謝罪をされ、大臣は担当大臣としてどういう責任を負おうとされるのか、責任をお考えになっておりませんですかどうですか、聞かせて下さい。
  199. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 さっき申しました通り、総額においては相当の予算をとっておるのであります。なるほど公約においては云々ということを申されますけれども、一カ年になかなか実行できるものではありません。そのうち機会を見て実現に努力いたします。
  200. 高橋等

    ○高橋(等)委員 次に通算、加算についてお伺いをいたしたいのです。通算、加算はなさるおつもりですかどうですか、またなさるとすれば予算が幾らくらいかかりますか。
  201. 大久保留次郎

    ○大久保国務大臣 通算も加算も一つの案ではありますけれども、今これを生入行することはなかなか予算が許しません。非常に多額に上ると思いまして計上いたしませんでした。
  202. 高橋等

    ○高橋(等)委員 予算が多額になると言われますが、川崎さんが党の立場を代表して公約を言われた中には、通算、加算はやるということが言われておる。しからばこの予算がどれくらいかかるか、御研究なさったことがありますか、そうしてその概略の見当がついておりますかどうですか、これは事務当局でもけっこう、厚生大臣さんでもけっこうです。
  203. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 通算、加算は党の非常な強力な主張でありますけれども、しかしながら、この中で順序をつけての考え方からいたしますれば、まず第一に文官恩給との不合理を是正するということをいたし、第二には公務死の範囲は厚生大臣の裁定によってきまることでありますから、少しでも拡大をいたしたい、こういう考え方になりまして、応召者の通算、加算制はまず今日当然やらなければならぬ政策ではありますが、とにかく遺族、それから戦争で犠牲を払ってなくなった方に対する補償をやって後という考え方になりました。応召者の通算、加算制を実施をいたします財源といますと相当膨大なものになります。これを全部の応召者に対して適用し、従来の恩給法に基く、たとえばシナは三年、南方は四年というような通算、加算制などを認めますと、おそらく二百億以上の費用が要るものと考えるのであります。その際党で研究をいたしたものは、まず倍率をもって実施をしよう、しこうして四十五才以下の弱年にはこれを停止するという考え方でいくと、初年度はそう大きな費用はかからないのではないかと思ったのでありますが、これもまた計算をしてみますと、四十億以上の費用が要るということになりまして、それでは今日は実施できないから、従ってまず遺家族のうち兵の公務扶助料の引き上げだけは一歩ずつでも実施をしていこうというので、先ほど以来御指摘のような些少な金額であって、世間から相当な批判があるということも承知をいたしております。先ほど自由党の立場を代表されてお話のあったことは、われわれ内閣としても同感でありますけれども、今日の予算からいたしまして、三十億以上の費用を戦争犠牲者の遺族の処遇に出すということの窮屈を感じましたので、従いまして三十四億という数学にとどまったのであります。従ってただいま御質問の点について最後に端的にお話をいたしますならば、まず文官恩給との不合理の是正を行い、次に公務死の範囲を拡大したい、こういうことであります。今日公務死の範囲の拡大はこの予算の中で多少は実現をすることができるようになっております。
  204. 高橋等

    ○高橋(等)委員 この通算というのは、七年以上兵役に服した者だけに恩給通算するという非常に矛盾した制度だ。われわれは内閣委員会におきまして、恩給法の改正を審議いたしまする際に、実際問題として兵籍輝その他がないので、ここまでしかやれないのだ、今後はいろいろと整備をして、この通算年限というものをだんだん圧縮していくのだという政府側の答弁があり、これを納得をいたした記憶がある。しかし今民主党としては通算加算の公約をなさっておる。加算については、二百億くらいかかるといわれたが、これは一つ恩給局長でけっこうですから、一体この通算について、予算積算をやってみたことがありますかどうなんですか、できるのですか、できないのですか予算がこれで。
  205. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 お答えいたします。通算と一口にいわれておる中には、旧軍人の方々の在職年と旧軍人以外の公務員、すなわち警察官とかあるいは教職員とか、あるいは私たちのような一般文官の在職年とを通算する問題と、それから旧軍人としての在職年相互に合算する、一日にこれをまとめて通算々々といわれているように承知いたしておるのであります。旧軍人の在職年と他の公務員としての在職年との通算、これだけを取り上げて考えてみましても、私はかなりの金額を要することになるのではなかろうかと思っております。と申しまするのは、軍人恩給の廃止せられました昭和三十一年二月一日から、従来軍人の在職年と軍人以外の公務員の在職年とを通算をされて、そして恩給を給されておられたような方々で、軍人恩給廃止のために恩給がなくなった人、そういうような人で、かつて恩給を給せられておったということで、今度の改正法律でもってわずかばかりではありまするけれども恩給を給されるようになった方、そういうような方々の恩給の金頭は五億円内外と今計算してなっております。そういうことから想像いたしまして、旧用人の在職年と、旧軍人以外の在総年を通算しただけでも、相当の金額になるのじゃないかと思っておりまするが、これにつきましては、確とした資料がございませんので、はっきりとした数字を申し上げるまでに至っておりません。  それからまた軍人在織年のいわゆる合算の問題でございますが、これにつきましても相当の金額になるのではなかろうか、合算を認めました場合においては、恩給の経費が相当ふえるものであるということは想像されておるのでございますが、これもはっきりとした資料がございませんので、はっきりここでどれだけということを申し上げるまでの資料を持ち合せておりません。
  206. 高橋等

    ○高橋(等)委員 この通算加算については、いろいろとむずかしい要素があることを私はよく了承いたしておる。しかしもう恩給法をやりまして、政府のあのお答えをいただきましてからも二年からたっておる。その間に政府は実態調査の何ものもやろうといたしておりません。もし積算の基礎がわからないとか、あるいはいろいろむずかしいことがあるなら、せめて実態調査費くらいこの予算へ組むだけの熱意があってこそ、公約を実行するという準備があると甘える。何もしなければ、来年の予算審議のときに同じ御答弁しかいただけぬじゃありませんか。もう少し勉強してもらわなければ困ると思う。  次に文部大臣にお伺いいたしたいのですが、遺児の育英の問題です。遺児の育英の問題は、私は非常に大切な問題であると考えております。民主党におきましても特別の施策をするとお答えになっておりますが、遺児の数は年年歳々ふえて参ります。要するに就学適齢期の子供がこれからふえていくのであります。そこで軍人遺家族の遺児につきましては、特別のワクを援護法当時より育英資金の中に作っていただいて御処置を願っておる。これは非常にけっこうなことなんですが、この金額を今年度の予算で見まして、まず人員数を調べてみますると、二十九年度の人員数が、約二万二千人程度の者が高等学校以上に出ております。しかも三十年度におきましては、少し減って一万九百人ほどですが、しかしこれは実際問題として、あとで整理をしますと、今年度分くらいの人数は出ると思うのです。そこで予算も人数も去年とほとんど同じものを計上されておりますが、先ほど言いました就学の適齢期に達する遺児の数が年々歳々ふえてきていうということを御調査にならないでこうした予算が出たのじゃないかと思うのですが、これは私は非常に残念だと思う。金はたくさんかかりませんが、未亡人家庭その他の遺児の育英の問題は国家として大切な問題なんです。これについて大臣の御所見を伺わしていただきたいと考えます。
  207. 松村謙三

    ○松村国務大臣 お答えをいたしますが、遺家族の子弟に対してワク内では実は弁じ得ないのでございます。そこで一般の方へこれらの人も繰り入れまして、そして大体各学校の校長から推薦してくるのだけはほぼ支給し得る予定でおるのでございます。これは数字を申し上げてなんだけれども、ごく簡単ですから申し上げますと、昨年度におきまして、高等学校の生徒でいわゆる別ワクでやっておりますのが二千五百八十八人、それから一般のワク内で採用いたしておりますものが二千七百六十九人、少しよけいでございます。それから大学生は、別ワクの採用が千百八十一人、一般のワク内でやっておりますものが千五百四人でございます。それから教育奨学生の方では別ワクが九十二人、一般のワク内採用は五百五十五名、こういうことになっておりまして、一般のワク内で四千八百二十八人、別ワクで三千八百六十一人、合せて八千六百八十九人、こういう数字が出ておりまして、大体希望の申し入れだけは弁じておるのでございますが、今年もこういうやり方によってはずっと弁じ得ると思います。ただしかし、あとに残ります問題は、これは一般もそうでございますが、今大学生において二千円です。それから高等学校の方では七百円というような数字でございますが、物価がこのようになりましては、何とかいま少し増加しなくちゃならぬとは思いますけれども、これは今後ぜひもう少し増していきたいと思います。
  208. 高橋等

    ○高橋(等)委員 学校から推薦をされた人はほとんど、取られると言いますが、実際学校には大体常識的に割当的なものがあって、これは文書で行っているか内示されているか知りませんが、断わられている者が学校にはすでに多い。ところが遺児の場合には、やはり遺児に不良児はできぬと言いますが、遺児には不良児が実際少い。ところが母親が就職したり母親が働かなければいかぬものですから、能力は持ちながら一般の家庭ほど学業が進まない人もある。父が戦死をしたために自分は学校へ行けないのだというこの気持はほんとうにかわいそうだと思います。そこで実際の需要はまだ多いと思いますので、私はぜひこの予算は、金額においても——これは一般の問題でもありますが、単価もふやさなければいけませんが、人員について特に考慮を払わなければならぬと考えております。これはお考えおきを願いたいと思います。  それから次に労働大臣に傷痍者や遺家族の授産、就職についてお伺いをいたしておきたいと思うのです。授護法を制定いたしました当時、傷痍者の就業についてもなかなか就職が思うようにいかない、そこで一つ法律で就職の規制をやったらどうかということを考えた。ところが当時、法律を作るのは最後の問題であるから、職業安定所で十分なるあっせんをさすことによってその成果をあげたいということだったわけなんです。それでそれをわれわれは待っておるのですが、その後数年間の情勢を見ると、この傷痍者についての就業状況もどうもあまり芳ばしくないし、ことに遺族の子供につきましては、銀行その他の会社へ高等学校あたりを出た子供が就職しようとしますと、父親のいない子供は採用しないのだ、こういう不文律があって、実際に採用してくれない。われわれのところへは未亡人たちがどれだけくやしがって来ているかわからないのです。こうした問題について職業安定所へいろいろな指令も出されておると思いますが、職業安定所でどういうあっせんをされたかという統計でもおとりになっておるか、そこまで政府が熟慮を持って御監督になっておるかどうか、それともう一つ、特別立法を作られる意思はありませんかどうか、その点を伺いたいと思います。
  209. 西田隆男

    ○西田国務大臣 お答えいたします。お説のように、一時は一般の両親のそろっております高等学校卒業生あるいは中学卒業生等と、戦争に行かれた人たちの遺児とは限っておりませんけれども、御両親のおそろいになっていないお子さんたち、あるいは片親のお子さんたちの就職状況が非常にバランスがとれていなかったということは事実でございます。そういうことがございましたので、労働省としましては、孤児、母子家庭児童等の就職の援護に関する実施対策要綱というものを定めまして、職業の安定につきまして非常に熱心に各方面を回って勧誘をいたして参りました。最初の間はなかなか実効があがりませんでした。特にあなたのおっしゃるように、銀行等においては全然受け付けないというような情勢でございましたけれども、内閣でもこの問題について取り上げますし、身分保証その他についても責任を持てるようなことを話しまして、業界その他に呼びかけました結果、最近では特に孤児、片親のない人等の就職の状況は一般の人たちよりもよい理解を得られまして、それより就職の率は確かに凌駕いたしております。全国的にまだ統計は集まっておりませんけれども、最近東京都でとりました統計を申し上げますと、一般の中学校卒業者の就職の率は七六・八%、これに対しまして今申し上げました片親、両親のない人たちの就職率は七八・六%で、若干こちらの方がいいようであります。高等学校の卒業生につきましては、一般が四一・六形、それから孤児その他の方面は四四・六%というふうに、一般の人たちよりもよく協力をしていただきまして最近ではよくなっております。労働省としましては、今までの考え方に基いて促進して、今後ともますますそういう方面に努力いたしたい、かように考えております。
  210. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 馬橋君、もう時間がきております。
  211. 高橋等

    ○高橋(等)委員 時間がだんだん超過してきますから、もう二点だけお願いをいたしておきますが、労働大臣に対します質問は他日社会労働委員会におきまして詳しくお尋ねをいたしたいと思いますので、どうぞできるだけ資料をおそろえ置きを願いたいと思う。どうもうまくいかなければ特別立法でも相談してやらなければいかぬと考えております。  それからこれは所管が非常にはっきりいたしませんものですから、副総理にお尋ねをいたしておきたいと思うのです。それは靖国神社の合祀についてであります。終戦以来靖国神社へ合祀されました英霊の柱数は八十五万柱と承わります。現在未合祀のものが大体百十五万柱くらいに上るじゃないだろうかと、これはまだはっきりした数字じゃありませんが、考えられます。ところがこれらの遺族の人々は一日も早く靖国神社に合祀される、要するに神しずまることをひたすら持ちかねておるわけなんです。そこでこれを何とか急いでやってもらわなければいかぬというので、いろいろと靖国神社その他へもお話をいたしてみるのでありますが、何分にも経費が相当かかる、総額として三億円くらいの金がまだかかるのであります。そこで、政府としてはこれをお気づきになって、何か手を打たれておるかどうか。また今後どうなさろうとお考えになっておるか。何かいい知恵があればこれは一つぜひしぼっていただきたい問題だと思うのです。これはほんとうに遺族の心情を思いますと、ぜひやってやらなければいかぬと思うのですが、国の予算を正面切って出すわけにいかない点のあることも万々了承いたしております。何かお考えがあれば承わっておきたい。また何かそういうことでなさろうとしたことがあれば承わっておきたいと思います。そうして何とかこれをやってもらいたいと思う。
  212. 重光葵

    重光国務大臣 終戦後十年、国民全体の気持を融合して協力一致の方向に向けなければならぬ今日におきましては、お話通りに、戦没者の英霊を靖国神社に御奉祀するというようなことは、精神上非常にけっこうなことだと私は考えます。ただ政府といたしましては、御承知通りに政教分離の関係がございます。これは例の終戦以来のことでございます。そこで直接手出しをするということにはまだ相なっておらないようでございますが、しかし神社のことは神社の管轄、また遺族の関係は厚生省というような工合にして、おのおのできるだけの手段を講じてその全体的な方針に合するように努力はいたしておる次第でございます。また今後そういう方向に向って何かと考えを出して努力をいたしたいと考えております。
  213. 高橋等

    ○高橋(等)委員 今副総理の努力をいたすということは、お互いにいろいろ知恵をしぼりまして、われわれも大いにこの問題の解決に協力をいたしたいと思っておりますので、また御相談いたしたいと思います。  最後に大蔵大臣に伺うのですが、先ほど来旧軍人恩給予算についての質疑をお聞き下さったと思うのですが、ごらんの通りの体たらくであります。この予算を組みかえてやり直したらどうですか。どういうお考えですか。
  214. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 その前に靖国神社関係で厚生大臣から発言を求められております。川崎厚生大臣。
  215. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 これは先ほど所管の問題について微妙の点があるからという前提を置いてお話がありましたが、私の方に少し関係のあるところがあるのであります。御指摘の通り、第二次大戦の戦没者約二百万のうち、まだ合祀されないものは約百十五万柱であります。そうして靖国神社において合祀する場合に祭神の資格決定のために、経歴など種々問い合せを厚生省にいたしてきまして、そういう際におきましては、積極的に協力をいたしておりますし、これに対して所管事項に照して回答をいたしておるわけであります。何か積極的な施策はないかということでありましたが、これは副総理から御答弁をいただきましたことで御了承願うほかはないのでありますが、率直に申し上げるならば、私も高橋さんと同じ気持でありまして、厚生省においてはなるべく合祀者が多くなるということだけは希望いたしております。ただ御承知通り憲法三十条の関係もありまして、こちらで力を加えてやるということができないのを非常に残念に思っておる次第であります。
  216. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたします。組みかえる考えはありません。
  217. 高橋等

    ○高橋(等)委員 組みかえの御意思はない、もっともそうした御答弁はそうであろうと私も考えております。しかしいろいろと旧軍人恩給の問題は、掘り下げてみれば重大な国策であるということは、所管大臣がはっきりとここで盲われておる。しかも何を要求されているのかと言っても御返事は承われない。またそれならおもな項目で、一体予算はどれくらいかかるのですかと聞いても、それも答えられない。そうすると重大な問題であると口先だけでは言っておるが、実際にやろうとする熱意がなかったのだとしかわれわれには受け取れない。ですからわれわれ自由党は、絶対にこの程度のことではがまんできません。私は必ず組みかえなければならぬと考えております。これを申し上げまして私の質問を終らしていただきます。
  218. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 芳賀貢君。
  219. 芳賀貢

    芳賀委員 私の本日の質問はもっぱら農業政策等が中心でありまするが、まだ農林大臣がお見えになっておらぬので大臣が出席するまで発言を保留いたします。
  220. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 大臣はすぐ来るそうですが、ほかの大臣ではいけませんか。
  221. 芳賀貢

    芳賀委員 いけません。
  222. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 それではしばらくお持ち下さい。
  223. 芳賀貢

    芳賀委員 私は冒頭に、総理大臣がお見えになっておらぬので、一点副総理に所見をお伺いしたいと思いますが、政府は長期総合経済計画の構想というものを発表になっておりますが、これはいわゆる総合経済六カ年計画と称する政府の財政経済計画の基本的なものであるかどうかというその認識はいかがでありますか。
  224. 重光葵

    重光国務大臣 私は、経済はどうしても企画をもってやらなければいかぬという考え方によりまして、六カ年計画は近き将来の経済計画の基本になるものだ、こう考えております。
  225. 芳賀貢

    芳賀委員 そういたしますと、三十年度の予算の編成の基本には、この六カ年計画なるものが底流をなしているというように判断してよろしゅうございますか。
  226. 重光葵

    重光国務大臣 そう私も考えております。しかし六カ年計画につきましては、詳細のことは担当の閣僚から説明申し上げることにいたしたいと思います。
  227. 芳賀貢

    芳賀委員 経審長官は来ておりますか。経審長官にお尋ねいたします。先ほど重光総理は、経済六カ年計画なるものは、本年度の予算編成の基本的な支柱になっているという御答弁があったのです。そういたしますと 政府の示された総合経済六カ年計画の構想というものは、もう少し具体的に解明される必要があると思うのです。そこで私のお尋ねしたい点は、この構想によりますと、昭和三十年から昭和三十五年の六カ年間に、輸出振興、岡内自給度の向上、通貨価値の安定をはかりながら、経済の自立と完全雇用を実現しようというのが一つのねらいであります。そうして最終年度の三十五年におきましては、国民経済を二十八年の七兆一千五百億から八兆八千億の水準に引き上げる。国際収支を特需なしに二十六億六千万ドルで均衡させようというのが主たる考えであるというふうに考えますが、経審長官のお考えはいかがですか。
  228. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 御質問にお答え申し上げます。ただいまのお話のごとく、六カ年後に増加いたします日本の人口は、大体七・七%ふえる。労働力人口が約一〇・五%ふえる。それだけの人を完全に雇用するということのために、漸次生産力を増加していって、そうして大体失業者の数を労働力人口の一%程度にとどめたい、こういうことが主眼でございまして、同時に日本の経済力というものも順次特需関係がなくなってきて、三十五年度には特需はほとんどなくなり、八兆八千億円の国民生産に対しまして、輸出は約二十四億、こういうふうなところに目安を置いていきたいと考えております。
  229. 芳賀貢

    芳賀委員 今のこの構想の中において、私はもっぱら農林水産業関係の発展構想をお尋ねしたいと思うわけでありますが、これは昭和二十七年度を一〇〇として見た場合、三十二年度にはわずかに五・三%の生産水準の増ということになるわけです。最終年度の三十五年度にはわずかに一〇・一%の増というのが原始産業であるところの農林水産業の生産性の上昇の度合いということになる。これは鉱工業関係の生産性の向上と比べて非常に均衡を失っておるというふうに私は考えておるわけでありますが、そういたしますと、政府のこの経済六カ年計画の構想というものは、この原始産業の面に非常にしわ害せを意図されておるというふうに判断されるわけです。それはいかなる理由に基くものであるかということを私はお尋ねしたいのであります。
  230. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 御説のごとく、大体の生産を、鉱工業の生産の方に重点を置きまして、これは少くとも、三十幾パーセントふやしたい。そこで農業の方におきましては、食糧増産自給政策というものはやはり持っていきたいと思っておりますけれども、今日緊急に増加いたします人口をいかにして処分するかということが非常な問題でございます。それがためには輸出を増進する、鉱工業製品をふやす、こういうふうなことに重点を貫きました結果、大体におきましては鉱工業製品は三〇何パーセントふえる、輸出は少くとも八八%ふやしていかなければならない、こういうふうな難局にぶつかっておるわけなんでございます。その意味から申しまして、農業の方は比較的増産計画に重点を置かれていないことになっておりますが、しかしこれは捨てたわけではありません。どうしても用次永久の策といたしましては、総合開発と同時にやっていきたいと思っておりますが、大体そういうわけで、人口の吸収、採用、人口の割当の方面は、農業及び水産のような原始産業の方にはあまり吸収できないものだ、こういうふうな計画を立てております。
  231. 芳賀貢

    芳賀委員 そういたしますと、原始産業の面の生産性の向上に対しては期待は持っておらぬというようなことになりますと、今後のわが国の食糧自給計画というものは、この六カ年計画の構想の中においてはどういうことになりますか。特にかかる構想を持っておられる場合においては、この裏づけとして、たとえば食糧増産の六カ年計画なら六カ年計画、そういうものが当然あると私は思うわけです。それで食糧増産の総合計画の裏づけになる六カ年計画というものがすでに策定されておるとすれば、その概要をお示し願いたいわけであります。
  232. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 この食糧増産計画を全然等閑に付しておるというのではございませんけれども、ただ食糧増産の目標は、少くとも基準年度である二十八年度における主食の輸入量を増加することなく、人口増加に伴う主食の需要度を、農地の荒廃しておるものをよく直すとか農地を開発するとかいうことによって、米麦の減産分をカバーしつつ、それを目途といたしまして、六年の増産量を米麦あわせて換算いたしまして、千三百五十万石増加いたしたい、こう存じております。従ってこれは決して等閑に付しておるわけではございません。さよう御了承願います。
  233. 芳賀貢

    芳賀委員 経審長官にお尋ねしますが、おそらくこの六カ年計画の初年度というものは本年から始まると考えるわけであります。今言われたそのような食糧増産の構想を持っておられる場合において、この三十年度の予算編成の中で、特に農林関係の予算が大幅に削減されておるわけです。そういたしますと、これは食糧増産六カ年計画をおやりになるすでにもう当初において、この六カ年計画というものはくずれておるというふうに私は考えるわけですが、本年度の食糧増産に対する国の財政支出を通じて、明年度の増産期待量というものを果してどのくらいお考えになっておりますか。それから六カ年計画が明年度に期待するところの増産量というものはどういうふうになっておりますか。
  234. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。その点につきましては、本委員会においてたびたび農林大臣が答弁において述べておりまするように、明年度予算において農林省の予算が幾らか減ぜられておるということも事実でございましょうが、これは長短相補っていって、さしあたり急速に増産計画のできるものはその方に持っていき、将来性のあるものについては、将来の計画に農地開拓等は、持っていきたい、こういうふうなことでやっておりますから、明年は多少初めの計画よりは減っておるかも存じませんが、基本的には方針は変っていないと思っております。
  235. 芳賀貢

    芳賀委員 長官の言われたことは非常に要領を得ないのですがね。とにかく食糧増産の場合には、今年度の財政支出がただちに今年度の増産効果ということになかなかなってこないのです。それは明年度に現われてくるわけですが、今年度の政府の食料増産費を通じて、明年度にどの程度の増産量を期待して六カ年計画の明年度に期待する数字というものはどういうことになるか、その御説明を願いたいわけなんです。
  236. 河野一郎

    ○河野国務大臣 私でわかりませんでしたら、あとから経審長官がお答えいたします。  実は今年度の予算によりまして増産可能に期待いたしております分は、昨年度の予算の増産可能量よりも幾らか減っております。これは私から申し上げれば少し言い過ぎになるかもしれませんが、今年度の予算の編成が、御承知通りに財政の立て直しと申しますか、自立経済の基礎づけと申しますか、そういうような角度からいたしまして、一応一兆で押えて予算を組むということになっておるものでございますから、そこで明年度に大いに期待をいたしまして、第一年度にそういうことでは六カ年計画はくずれるのじゃないかという御意見でございますけれども、私といたしましては、今年どうしてもやっておかなければいけないと思いますものにつきましては、これを緊急にこの予算に盛り込みまして、そうしてただいま経審長官からも申しました通り、土地改良費等につきましては、決して今年度の予算でやらなければならない——やった方がいいのでございますけれども、たとえば五カ年計画のものを四カ年にいたしまして、明年度から四年分でこれの完成期を同一にする等々の処置をとってやればいけるだろうというような考えからいたしまして、特に小団地の開墾等につきまして、当面早急に間に合わすべきものに特に重点を入れていたした次第でございます。この点一つ御了承いただきたいと思います。   〔上林山委員長代理退席、委員長着席〕
  237. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいま農林大臣から御説明がありましたが、私のお尋ねしているのは、そういうことでなくて、六カ年計画の裏づけとしての食糧増産六カ年計画は、明年度にどの程度の増産期待量を考えているかというその数字ですね、それから今年度の食糧増産の支出等を通じて、明年度どの程度の食糧増産の期待効果が上るのかというこの三点を、ただ簡単に数字をもってお答え願いたいということを言っておるわけです。
  238. 河野一郎

    ○河野国務大臣 本年度の予算の期待数量は、先般この委員会で申しました通り、百万ちょっとの数字でございます。明年度につきましては、いずれよく計画を立ててやるつもりでございまして、六カ年を通じて完成年度は、ただいま経審長官から申されましたそれに合せることにしていくつもりで考えております。
  239. 芳賀貢

    芳賀委員 私の承知しておる範囲では、この六カ年食糧増産計画を速成するためには、まじめにこれを達成しようとする考えがある場合においては、少くとも明年度においては百六十一万石程度の増産が可能になるように、本年度の財政的な支出を行なっておかなければ、これはもう最初から単なる実行不可能の計画であるということになるのではないかと、これを憂えておるわけなんです。しかも昨年の政府の予算の場合においても、今農林大臣が言われた通り、やはり一兆円の財政規模の中においてこれが組まれているわけなんです。しかも同じような一兆円の予算編成の中において、どうして自由党内閣の場合よりも、今年度の政府の食糧増産に対する予算が削減されておるか。一兆円の同じますの中で、民主党はなぜ食糧増産関係の費用を削減しなければならぬのか。そうしてさらに一方においては、長期計画と唱えて、食糧増産の六カ年計画を持っておる。初めからこれは大きく食い違っておるわけなんです。こういう良心のない六カ年計画と称するものは、これは完全に実行不可能であるということをすでに認められておるかどうか、この点は経審長官、いかがですか。
  240. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。たびたび申し上げました通りに、六カ年計画に満つるように、今年度はあるいは多少減っておるかも存じませんが、これは必ず取り返して、六カ年目にはその目的を達したい、こういう所存でございます。
  241. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで私は参考までに申しておきますが、昨年の二十九年度予算の中においての食糧増産に対する政府の財政支出は、今年度およそ百十三万石ぐらいの増産が出てくるというようなことになっておるので、この点は鳩山内閣に対しては非常に遺憾千万であるということを、私は申しておかなければならぬと考えるのであります。  そこでこの計画に沿って申し上げておきたいことは、これはすでに御承知通り、わが国の国民の人口の自然増加というものからくるところの食糧の需要の増大、それともう一つは、毎年のように二万町歩以上の農地が壊廃されておる。農地の壊廃によって生ずるところの減産、これを合せますと、およそ一年に百六十万石ぐらいの増産が行われても、なおかつ外国からの食糧依存の度合いを節減することはできないわけです。ですから少くとも増産計画を立てる場合においては、この自然人口の増加と、それから農地の壊廃等によるところの減収と、この二つの数量を合算した最低数字というものを、一応増産量の基礎に置かるべきであるというふうに私は考えるわけでありますが、こういう点に対しましては、経審長官基本的にどう考えておられますか。
  242. 河野一郎

    ○河野国務大臣 ちょっと私から先に申し上げておきたいことがあります。先ほどの今年度の増産計画、予算に伴うものの数字をこまかく申し上げます。  農地改良によって増産期待が百二万石、耕種改良によって二十万石、百二十万石ということになりまして、そのうち農地の壊廃による減産が大体八十万石、差引四十万石の増加ということを期待いたしております。
  243. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいま農林大臣からお答えいたしましたごとく、人口の自然増、それから耕地の荒廃、そういう点を計算に入れまして、それにマッチするような計画を立てたいと思います。
  244. 芳賀貢

    芳賀委員 私はこの長期計画を通じて指摘したい点は、先ほども経審長官が率直に言われたように、原始産業の画に一つの圧迫を加えるといいますか、重要度を考えないという、そういう形の上に立って、今後の経済自立を考えておるというふうに、私は理解したわけであります。そういうことになりますと、今後のわが国の原始産業、いわゆる農業を中心とした一番生活水準の低い階層に置かれたこれらの人たちの、今後の所得の増大とか、あるいは生活水準を高めるというような政策は、全く放置されるようなことになるのじゃないかと思いますが、それらに対する配慮というものは、これは農業政策を通じて行われるか、あるいはそれ以外の社会政策等を通じて行われる考えであるか、その点はいかがでありますか。
  245. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 原始産業を等閑に付するという考えではございませんので、農業の方の生産もふやしますと同時に、水産業のごときも約二〇%三十五年度までにふやしたい、畜産業のごときは二五%増加いたしたい、こういう考えでございまして、要は国民の生活水準を幾らかずつ上げる。そうして国際収支をよくして、今日外国に依存しておる経済から脱却するということを主眼に置いておるわけなのであります。多少その間に厚薄はありましょうが、根本の国家の総合的見地から考えまして、これが一番いいと信じて立てたのでございますが、ただこの方針等につきましては、私は経済六年計画というものは、現在われわれがやっていることが必ずしも最善だとは存じません。それはこれから皆さんの御検討によってさらに修正すべきものは修正すべきだろう、かようにも考えておるわけでございます。
  246. 芳賀貢

    芳賀委員 もう一点経審長官にお尋ねしておきますが、そういたしますと、現段階におきましては国民人口の中において農業人口の占める地位というものは約四四%ぐらいになっております。しかしながらそういう人口配分でありながら、国民所得の配分においてはこれは約一七%ぐらいということになっておる。この点から見てもこれは所得が非常に過小であるといいますか、それによって生活水準が低いということが立証されるわけです。それを今の経番長官のお言葉によると、三十五年——六カ年後の将来においてはわが国の総人口の中で農業人口というものがどのくらいになって、配分所得はどのくらいになるということを、これは数字をもってお示し願えれば大よそ政府の長期計画というものはどういうことを考えているかということが明白になると思うのです。その点だけを具体的にお示し願いたいと思います。
  247. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。大体の方針は先ほど申し上げました通りでありますが、詳細なる数字はただいま手元に持っておりませんですから、あらためて御報告申し上げます。
  248. 芳賀貢

    芳賀委員 これはそれほど複雑な資料は要らないと思うのですね。頭の中でどの程度になるかということはお考えがあると思うわけなんです。昭和三十五年にはわが国の総人口の中で農業人口がどのくらいになるか、それから所得の分配は大よそどのくらいになるかというこの二点だけなんです。計画の初めと終りの数字ぐらいは把握されておらないと、中身が非常に空疎になると私は考えます。
  249. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 先ほど御説明いたしましたごとく、農業に対する収容人員に対しては、六カ年間にはあまりふやさない、こっちに収容しない。大体鉱工業、いわゆる第二次、第三次の産業の方にこの増加する人口を吸収していきたい、こういう所存でございます。
  250. 芳賀貢

    芳賀委員 農業の労働人口をふやさないということになると、農民の所得の増大というようなことに対して、生活水準の向上というようなことが、この六カ年計画の中においてはどういうふうに組み上げられておるかという、その点を私は聞いておるのです。
  251. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。この六カ年間に農業に吸収する人口はほとんどふやさないで、そうして農業の生産はやはり一割、それから水産物は二割、畜産物は二割五分ふえる。それだけの生産がふえるわけですから、従ってそれだけ農民の個人当りの所得はふえるわけです。
  252. 芳賀貢

    芳賀委員 次に私は具体的な問題に対して農林大臣並びに大蔵大臣にお尋ねしたいと思います。  まず第一点は、米穀の集荷制度と米価の問題であります。これを申し上げる前に、昭和二十九年産米の——これは御承知通り、全国的に冷害によって、平年収量よりも実収の指数が非常に下っておるわけです。そういう場合においては、当然これは減収によるところの凶作加算金というものを政府は支払わなければならぬ義務があるわけですが、この点に対しましては河野農林大臣は、御就任直後に、農林委員会において、二十九年産米に対する凶作加算金の支払いに対しては十分配慮する、すでに事務当局等においては試算ができておるというような御説明があったわけでありますが、今日におきましてもいまだにこの凶作加算金の支払いが開始されておらないわけです。それでこの点に対しましては、どのような都合で今日まで凶作加算金の支払いが遅延しておるか、経過に対する御説明をまず願いたいと思います。
  253. 河野一郎

    ○河野国務大臣 お答えいたします。ただいまお話しの通りでございまして、私といたしましても大蔵大臣としばしばお話し合いをいたしたのでございますが、御承知通り昭和二十九年産米価決定の際に二百円の特別加算をいたしております。この二百円の特別加算の中に税引き当てが大体百四十何円でしたか、百五十円ほど、それから他の残額を減収の際の加算に引き当てるというような配意があって、そういういう趣旨で決定されたそうであります。そういうことになっておりますので、大蔵当局といたしましては、この減収の実情に対してにわかに加算の挙に同意しがたいというようなことのために、なお今大蔵大臣といろいろ話し合いをいたしておるのでございまして、これを今年度の米価と申しますか、三十年産米価の決定とにらみ合せて目下談合中でございますから、はなはだ遅延いたしておりますが、さよう御承知をいただきたいと思います。
  254. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいまの農林大臣の御説明によりますと、これは政府は支払う意思があるということを前提とされて御答弁なすったように考えてよろしゅうございますか。
  255. 河野一郎

    ○河野国務大臣 ただいまお答え申し上げました通りに、そういう含みで今大蔵大臣と話し合い中でございます。これは三十年産米価の決定とにらみ合せて明確にその結論を得たい、こういうつもりで話しておりますから、さよう御承知いただきたいと思います。
  256. 芳賀貢

    芳賀委員 幸い大蔵大臣が出席されておりますが、この凶作加算金の支払いに対する大蔵当局の御所見はいかがですか。
  257. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申します。支払い得るか検討を加えております。非常に困難に考えておりますが、今検討を加えております。
  258. 芳賀貢

    芳賀委員 大蔵大臣は、この凶作加算金が何物であるかということを御存じですか。検討を加えておると言われますが、これは申し上げますが、現行の米価の算定方式の中には、基本価格の算定等に対しては凶作加算金を勘案するという、そういう算式がないのです。ですから、その年の凶作等があった場合は、特別に米価の算定方式の中に減収加算の算式によるところのその金額を加算しなければ正当なる政府の米価支払いということにならないわけです。ですから、これは時の内閣の政治的な配慮によって出すとか出さぬとかいう態度をきめるのでなくて、当然実収の指数が一定の限度を下回った場合においては、理論的な計算の上に立った凶作加算金を支払わなければならない、そういう義務政府はしょっておるわけです。ですからそれが今年度の予算編成上においては配慮されておらないわけですね。まだ考慮の段階であるということを言われておるけれども、すでに昭和二十九年度の産米の実収はわかっておるわけです。ですからこれは一日も早く支払うべき手続が必要と思いますが、これはこの年度中には——過ぎたわけですが、どのくらいの時期に大蔵大臣は態度をきめてお払いになるか、その点をこの際御説明願います。
  259. 河野一郎

    ○河野国務大臣 ただいま御質問でございますが、少し事情が違うように私は考えますので、一言私に発言をさせていただきたいのです。それは先ほど私がお答えいたしました通りに、昭和二十九年産米の価格決定の際に、二百円御承知通り加算されて決定されたのであります。これは政治的な配意によって二百円の加算をした。その二百円の加算をきめる際に、農林、大蔵両省の間で合議いたしました際に、この加算する二百円は、税引き当てが一部であり、残部は、今申しまする通りに、減収のあった場合の加算を考慮するのであるという申し合せになっておるのでございます。これは私はあとで知ったことでございますが、そういうことがありまするので、今申し上げまするように、農林、大蔵両省の話し合いが、いろいろな意味において渋帯いたしておると、こういう実情を私は申し上げたのでございます。なお今お示しでございますが、それは米につきましては、法律で義務づけられておるわけではございませんので、前例が、昨年そういうことをいたした。二十八年産米については、あの凶作でございましたから、そういう減収加算をいたした。そのことのよしあしは——私はいたすべきものだと考えておりますから、そういうことを大蔵省当局と交渉しておる、こういうふうに御了承いただきたいのであります。ただいまお話のように、そういう当然なすべき義務政府はなさずにほうっておくということにはならないと私は思うのでございますから、この点御了承願いたいと思うのであります。
  260. 芳賀貢

    芳賀委員 もちろん食管法の中には、こういう凶作加算金を出すとか出すなとか、そういうことは明記してないのです。今農林大臣は、この特別加算金を二百円つけてあると言われますが、これは今までのパリティ計算によるところの米価の算式というものが、すでに時代に適合しなくなってきておる。ですからこれは、パリティ計算にさらに特別加算額というものをプラスして、そうして基準米価というものをきめるようなことが今日採用されておるわけです。ですからこれは、この凶作加算金の算式とは全然別個なものであるということを御理解願いたいと思うのです。  それから、この凶作加算金は、特に昨年の十二月二十三日に、米価審議会が政府に対する答申を行なっておるわけであります。減収加算額算定方式に関する答申なる案を作って、そうして答申をしておる。昨年の自由党内閣においてさえも、この答申を尊重して、金額においては若干のズレはあったわけでありますが、とにかく五百五十五円という凶作加算金を支払っておるわけであります。これは現行の米価の算定方式の中においては、豊凶度によるところの減収加算額の算式というものが包括されておらないので、凶作年の場合においては、ことさらにそういう算式を採用して、そうして凶作加算金を出さなければ、これは農民に対する政府の責任ある米価の支払いにはならないというのがこの答申の内容なのです。ですから、これはもうすでに論議の余地がないのです。それで、先ほど農林大臣が言われたように、農林大臣はこれは支払うべきものであるということをすでにお考えになっておるわけです。ですから、ただ大蔵当局においてはこの理解が足りないと思うのです。一日も早くこの問題を解決して、全国の凶作によって困窮しておる農民に対して、凶作加算金を支払うという態度を明らかにしていただきたいと思うのですが、どうです、大蔵大臣、大体おわかりになったと思いますが、いつごろこれは支払いができるか、その点を明らかにされたいと思うのです。
  261. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいまのところ、いつごろというわけにも参りかねます。農林大臣とも十分話し合いたいと思います。
  262. 芳賀貢

    芳賀委員 お出しになる御意思はあるわけですね。
  263. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 検討を加えて、出すべきものであるという結論に達しますれば出します。
  264. 芳賀貢

    芳賀委員 この検討は、すでに事務当局においては、およそ一石百十四円というような、そういう数字がもう用意されているわけなんです。ですから、これに昨年政府が買い上げられた総量をかけると、およそ財政的にはどれだけ出せばいいということがすぐ出てくるわけです。ですから、こういうふうに簡単に解決のつく問題ですから、これは一日も早く、現内閣が存在する期間内において、ぜひともお出し願いたいというふうに私は希望しておきますが、いかがですか。
  265. 河野一郎

    ○河野国務大臣 先ほど来お答え申し上げましたが、私は減収加算は出すべきものなりという現行の制度であります限り、出すべきものなりという立場をとってきたのでございますが、前の内閣で米価を決定いたします際に、ただいま私が申し上げました通りに、一部減収加算金を含めて二百円というものを算定して出しているということは、前内閣時代の農林、大蔵両当局の決定でございます。従いまして、その交渉の過程において、すでにこれは加算されているという意見がありまして、そこで今お示しのような、確かに百何円という数字も出ますが、数字のはじき方で、これはまた多少違いも出てくることもあります。そういうことで、せっかく大蔵省ともたびたび話し合っているのでございます。しかし何といたしましても、先ほど申し上げました通りに、三十年産米の米価の決定の方式等も、今せっかく話し合って、数日のうちにこれを決定いたそうといたしているのでございますから、これとあわせまして、両者の結論を出したい。こういう段階に入っておりますから、しばらく最終答弁を御猶余願いたいのであります。
  266. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいまの農林大臣の御答弁は、出すというようなことを言っておられながら、特に特別加算の二百円の中に、すでに凶作を見越して米価がきめられたというような、非常に誤謬を犯したような判断をされているのですが、それは農林大臣違うのですよ。昨年凶作であったという最終的な決定というものは、これは十二月二十五日の実収高の確認によって認識されることになるわけです。ところが二十九年度の米価はそれ以前にきまったわけです。そのときの米価の中には、凶作加算金というものは包括されておらないのですよ。この点は賢明なる農林大臣も何か誤解されているように考えるのですが、そこだけ是正してもらえば、あとの凶作加算金を出すという点に対しては明確になったからよろしゅうございますが、その点だけの理解を少し改めておいてもらいたいと思います。
  267. 河野一郎

    ○河野国務大臣 今御指摘でございますが、昨年の米価を決定いたします際にすでに一部の地方に凶作の地帯があったのであります。それらを全部勘案いたしまして、前内閣が昨年の米価を決定いたしまする際に、二百円を特別に加えた。その加えた中には、たびたび申し上げますが、百五十円前後の税の引き当てと、五十円前後の減収加算——減収加算という言葉ではございませんが、減収に対する手当という意味で、それを含めて二百円つけるということが、農林、大蔵両省の決定でございます。それは当時の両大臣が話し合いの上で、そういう引き合いで二百円を加えたということになっております。私は組閣早々でこの事情を存じませんが、今お話通りに、十二月二十五日の決定によりまして、減収加算の対象になるべき数字をわずか上回った今の数字が出たのでございます。そこで大蔵省と話し合いの結果、実は現在の米価の決定には、これこれしかじかの経緯があるから、大蔵省としては同意しかねるという話であったのであります。そこで大蔵省の同意しかねるという話と、私の主張と、今せっかく談合中である。こういうことでございまして、この結論につきましては、いずれ三十年度の米価の決定と合せて最終決定を得て、今申しますように御回答申し上げたい、こういうふうに御了承いただきたいと思います。
  268. 芳賀貢

    芳賀委員 大蔵大臣いかがですか。
  269. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。ただいま農林大臣から詳しく話があったと思うのですが、私といたしましても、当然出すべきものを出さぬというわけではないのであります。しかし大蔵大臣はまた大蔵大臣の立場がありまして、十分検討を加えなくちゃならぬ、こういうことであります。
  270. 芳賀貢

    芳賀委員 次に今年度の集荷制度の問題に対して若干お尋ねします。これは通称予約売り渡し制度といわれておるわけですが、最近何かこれに非常にむずかしい名前をつけて、事前売り渡し申し込み制度とかというふうになされるようでありますが、この基本的な構想を一応私は確かめておきたいのであります。  今度の集荷制度は、食管法を改正しないで行おうというのですね。食管法の第三条というものは、大臣も御承知通り、農民に対して生産した米穀を必ず政府以外に売り渡してはならぬということを、権力で命令しておるわけです。こういう食管法第三条というものを前提にしておいて、これをそのままにして、そうして農民の自主的な予約買付制度を行うということなんですが、この中に非常に大きな矛盾を私は感ずるわけです。それで、この解明を農林大臣はどういうようになさっておるか、まずその点をお尋ねいたします。
  271. 河野一郎

    ○河野国務大臣 お話のような考え方はむろんできるのでございます。しかし何分にも早々の際に制度を改変していかなければならぬ立場に立ちましたので、各方面の意見を尊重して、ただいま実行いたそうとしておりまする予約買付制度にいたした次第でございます。従いまして、私といたしましては、第三条によって強制命令を出してやろうというような考えは持っておりません。あくまでも農民諸君の協同組合精神によりまして協同して、一本になって政府に売り渡しをしていただくという精神の高揚によって、所期の目的を達成いたしたいというふうに考えておるのでございます。でございますから、またわれわれの方といたしましては、農民諸君の協力を得られるような条件を整える必要があるということで、せっかく勉強しておるような次第でございまして、結論として、今申し上げますように、三条の発動というようなことは考えておらぬのであります。
  272. 芳賀貢

    芳賀委員 私のお尋ねしておる点は、食管法を改正しないということは、第三条の権力的な命令というものをあくまでも生かしておくわけなんです。これを発動する、しないということではないのです。必ず政府以外に売り渡してはならぬというこういう命令をそのまま温存さしておいて、権力を温存さしておいて、そうして農民の自主的な予約買付制度をやるということに矛盾がないかということを私は聞いているわけです。その点はいかがなんですか。
  273. 河野一郎

    ○河野国務大臣 今申し上げますように、三条をやめてしまって、自由に政府に売ってもよければ民間の売買もよろしいということになれば、自由販売に非常に前進することになります。そういう処置をとることのよしあしについて各方面といろいろ協議いたしました結果、今のような処置がよかろうというのが農業団体の指導者各位の御意見であったので、そういう処置をいたしたわけであります。そこで、それならば予約買付一本で、三条をやめたらどうだということにもなるかもしれませんが、これはやっぱり初めてのことでございますから、農民諸君の自覚、御理解は得られるとは考えますけれども、万一の場合も考えまして今のようなことで行きたいというのでございます。しかし私といたしましては、あくまでも最善を尽して、そういう処置をとる必要のない事態に持ち込むように努力するつもりでございます。
  274. 芳賀貢

    芳賀委員 そこでお尋ねしたい点は、政府が今考えて行おうとするところの予約買付制というのは、これは段階として、この次の段階には統制を撤廃するというお考えの上に立っておるのか。今までの集荷制度の一つの前進としてこの方が最良であるからして、今後この制度でやっていきたいという、そういうお考えであるか。基本的な考えというものは今まで明らかにされておらないのです。統制撤廃の一つの前提として、段階として予約買付制を考えておるのか。今までの集荷制度の一つの前進という形で、あくまでも統制を撤廃しないという考え方の上に立ってこの構想を実現しようとしているのか、その点はいかがなんですか。
  275. 河野一郎

    ○河野国務大臣 御承知通り、従来の集荷制度が非常に不適当であるということは、どなたも御異存のないことであるとともに、われわれといたしましても、従来の制度をもってしては現行の配給は満足にしかねるというような見地に立ちまして、これを改変しなければいけない。改変するとすればどういうふうにすべきかということで、いろいろ考慮いたしました結果、今の予約買付制度で行こうということにきめたのでございます。そこで基本的にはしからばどうだという今お尋ねでございますが、私は米の問題について考えますときに、自由販売にするか、統制を強化していく、極端に申せば専売につくか、このいずれの方向か、終点は右、左、前と後ということになれば、このいずれかだと思います。もっとも社会党の皆さんのように、二重価格制度によって従来の方途で行けるという御意見もあるようでございますけれども、私たちの考えではそういう考えがいたすのであります。そこでその考えに立ってやる場合に、専売はとるべきでない。してみれば自由販売の方向にいくべきであるということに考えまして、しかし食糧の問題でありますし、内外の食糧事情ないしは国内の国民生活の安定等々を勘案いたしまして、まず現在の制度をあまり急激に改変するよりも、十分なる準備と用意を整えていくべきであるというような考えからいたしておるのでございます。そこでしからばこの方法はうまくいくと失敗するとにかかわらず、続けるか、続けぬか、こういうことになると思いますが、この制度でうまく目的を達することができれば、ある期間続けていくことがよかろうと私は考えております。なぜこういうふうに考えるかと申しますと、自由販売に行くにいたしましても、準備には万全を期する必要があるということから、その準備期間はなるべく長い方がいい、その意味合いからそう考えまして、今の予約買付制度が成功を納める限りにおいては、この制度を続けていって差しつかえないのではなかろうか、こう思うのであります。なおまだあとは御質問によってお答えいたします。
  276. 芳賀貢

    芳賀委員 農林大臣に申し上げますが、時間の制約がありますから、御答弁はなるべく簡明に願いたいと思います。  それで今成功した場合には当分のうちこれを存続する、失敗した場合のことは何も言われませんでしたけれども、この統制を今後継続するかということは、もちろん配給制度もこのまま継続していくか、あるいは廃止するかということに、これはつながっていることなんですね。今日配給制度の場合には、国民は一カ月に十五日分しか配給を受けていないわけなんです。生産地においては内地米十五日、消費地においては七日ないし八日くらいしか内地米の加給を受けておらぬというのが現状なんです。ですからこれはもちろん失敗して直ちに配給制度を廃止するというような、そういう暴論は出てこないと思いますが、ただ予約買付制慶の問題はこれがうまくいくか、いかないかというところにかかって問題があると思うのです。私たちの判断は今のように不明確な態度によるところの集荷制度にした場合には、これはおそらく政府が考えたり、宣伝しておるようには成功しないだろうというふうに見ておるわけなんですが、農林大臣はこれに対して自信をもって、これでうまくやれるというそういうお考えがありますかどうですか。
  277. 河野一郎

    ○河野国務大臣 私はもちろん、先ほど申し上げましたように、政府としての態度を十分農民に親切に考えて、最善を尽してこれに当るならば、失敗はしないだろう。これはただひとり私の自信だけでなしに、農業団体の指導的立場に立っておられる諸君も、この成功を期待して協力していただくことになっておりますから、私は所期の目的を達成できる、そういうふうに考えております。
  278. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで次にお尋ねしたい点は、政府の集荷制度の考え方は、これは政府が全然責任を感じていないのです。集荷に当ってもただもっぱら集荷業者に責任を転嫁するような思想が非常に強いのですね。これは農林大臣も否定されるわけにはいかぬのですね。今月の七日に持ち回り閣議でこの集荷制度に対する政府態度をきめて、これによって実施するということを決定なされたわけでありますが、これは内容を見ると少しも具体性がないのです。たとえば予約制度をやるという一番前提は、早期に米価を決定して、そうして生産農民にこれを納得させて、自発的に積極的に政府に売り渡すという態勢を、まず整えさせる必要があるわけです。ところが予算米価というものは一応示されておりますけれども、今年度の事前買付に対する基本的な米価がこうであるというような態度決定は、いまだになされておらないわけです。それからまた予約の売り渡し契約に対する完遂の奨励措置であるとか、あるいは税の配慮であるとか、そういうような点に対しても、具体的な数字というものはまだ現われておらないわけでありますが、これは一日も早く御決定になる必要があると思いますが、どの程度まで作業が進んでおりますか。
  279. 河野一郎

    ○河野国務大臣 お答えいたしますが、それらにつきまして、まず第一に米価の決定をどうするかということにつきましては、今赤来専門家の委員会を作りまして、主として学界の人でありますが、その御意見によってどういう米価の算定方式がよろしいかということの結論を今待っておるわけであります。大体この二十四、五日までに最終決定の答申を受けることになっております。それまでに予備的に大蔵、農林両省で準備をし、話し合うべき点につきましては、順調に話し合いを進めております。従いまして、この専門委員会の答申を待ちまして、その答申によって、おそくも今月中に最終決定をする。私は大体二十七、八日ころという見当をつけております。その他税の点ないしは奨励金という名前はやめまして格差云々ということにいたしておりますが、いずれにしましてもこれらの点につきましても、今月中には最終的に一切の決定をいたしまして、農林団体の協力を得て、政府とともに所期の目的を達成するためにやる、こういう順序に考えております。
  280. 芳賀貢

    芳賀委員 そういたしますと、今月の末までには米価審議会を開いて、そこに政府は諮問をされて、今年度の米価の算定の方式と、それから米価、この二点に対する答申を求める、それによって予約買付制をいよいよ実施する、そういうお考えですね。
  281. 河野一郎

    ○河野国務大臣 そういうわけではないのであります。順序は、政府部内の今年度の米価の見込みを決定いたしまして、米価審議会の懇談会を今月中に開きまして、そうして米価の最終的決定を今やるがいいか、出来秋に延ばすがいいかということ等についても、その懇談会の御意見を拝聴いたしたい。なぜこう申すかと申しますと、豊凶の結果が今では出て参りませんから、そこで豊凶の現実をある程度つかんで、最終決定をすることがよかろうという意見も有力にあるのでございます。そういうことでございますから、今予約買付の契約に先だってほんとうの米価の決定をするがいいか、それとも豊凶のある程度の見通しをつけた上でするがいいかということについても、その懇談会の御相談の結果によってすべてをきめていきたい、こういうわけでございます。
  282. 芳賀貢

    芳賀委員 今の大臣のお話では、相当ズレるわけですね。予約買付があるいは秋になるかもしれぬということになるように私は考えるわけです。これは私が先ほど言ったように、豊凶の最終的な判断は年末にならなければわからないわけです。ですからその分は、やはりその年に予期しないような凶作等が生じた場合には、これは当然あとで凶作加算の支払い等をやれば事足りると私は考える。ただ問題は、事前に生産農民と約束をして、そうして買付契約をするわけなんですから、早くその内容が具体的に示されないと、農民はこれに対していつどのような形で米価がきまるものであるか、あるいはその奨励金の内容であるとか、あるいは税に対する配慮であるとか、それから予約分以外の米は、やはり政府に出さなければならぬことになっているわけですが、その格差がどうなるかということは、一日も早くおきめにならぬと、非常に不安と混乱が生ずると思いますが、最終的に農民に具体的に示せる時期はいつですか。  それからもう一つお尋ねいたしたい点は、過去において事前割当制というものを採用した年があるわけです。それともやや類似しておるような点がありますが、この政府の実施要綱によりますと、農民の自主性にたよるということが一点。それから集荷業者、これは協同組合が中心であると思いますが、それに登録業者も入ると思います。この業者に契約をさせるということにいたしまして、なお地方公共団体とか集荷業者が推進機関を作って、そうして契約の推進をやる。こういう三段階の計画を持っておられるようであります。そういたしますと、この生産計画の上に立った具体的な買付契約というものが行われないような場合も出てくると思いますが、このような点はどう考えておりますか。たとえば今までの米の買い上げとか割当の場合においては、市町村段階の農業委員委員会等が、みずからそれを担当した所在だったわけですが、今度はそういうことがあまりうたわれていないのです。集荷業者が熱意を持って米を契約して集めるということが主眼のようなのです。こういうような点に対しては、政府はそこまで具体的な考えが及んでおりませんようですが……。
  283. 河野一郎

    ○河野国務大臣 前段のお答えを先に申し上げます。先ほど私が申し上げましたのは、米価の決定を秋に延ばす、今やるということは、基本米価と申しますか、平年作を対象にした米価の決定を今いたしておきまして、それによって予約をするということがいいか、てれともすべての諸般の条件を全部整えて、最終的な米価の決定をして予約をするがいいかというだけであって、予約は、いずれにいたしましても六月、七月の交に一切予約をととのえるわけであります。ただ米価の決定は、十二月でなければもちろん最終的な豊凶は決定できませんけれども、いずれにいたしましても九月ということになりますならば、ある程度の見通しはつきますから、いつも例年いたしております九月の終りないし十月の初めに米価の決定をすれば、ある程度の豊凶の見通しがつきますから、それを考慮に入れて決定をした方がいいのではないかという意見と二つの意見がありますので、そのいずれの意見をとるかは今まだきまっておらないというだけであります。そのいずれをとるにいたしましても、六月からその予約を実施していくということには間違いないのでございます。  次のお尋ねについては、各種の農業団体が協力機関を作ってこれを推進していただくのであって、決して今の全販連系統の販売協同組合だけでやるというようなことは考えておらないのであります。そういうふうなすべての農業団体が一体になってこの組織、この制度を円滑にうまく発展さすように努力しようということになっておるわけでございますから、今お話のようなことにはならないと考えております。
  284. 芳賀貢

    芳賀委員 農林大臣の御答弁はだいぶズレておるのです。私の言っておるのは、今まで末端においては農業委員会というものがあって、この機関が米の供出の割当等に対して、非常に重要な役割を果しておったのです。ところが今度の構想、によると、この農業委員会の任務というものは、非常に閑却されておるようなことになるわけです。そういう点はどうなっておるかということを、先ほどの質問の中には加えておったのですが、その点はどうなんですか。
  285. 河野一郎

    ○河野国務大臣 お答えいたします。前回は割当供出でございますから、経済的な指導ではございませんから、農業委員会が主になってやったのでございます。今度は経済行為が中心でございまして、契約をしていくのでございますから、販売系統が中心になってやりますけれども——もちろん前回は農業委員会が中心になって、協同組合がこれの事務を実施し協力した、主客は多少転倒する形になりますけれども、いずれにいたしましても農業各種の団体が一体になって協力していただくということになっております。
  286. 芳賀貢

    芳賀委員 もう一点お伺いしておきますが、これが今までの供出制度と変っている点は、今までは義務割当以外の超過分というものは非常に優遇されておった。今度の場合には予約分以外は当然政府以外に売れないのです。予約分以外というものは優遇されないことになる。ですから、こういう認識を十分農民に与えることが非常に大事なんです。ところが農民側々の生産に対する計画であるとか、あるいは政府に売り渡すときの態度であるとか、そういうものはやはり農民の意思によって持たれておるところの、そういう任務を持った機関が中心になって運営されるということが非常に大事なんです。今の農林大臣の御答弁によると、これはもう経済団体だけが、あるいは集荷業者だけが中心になって動けばいいのだという非常に不親切な考えを持っておられるようです。そういたしますと、おそらくこの予約買付によるところの期待量というものは非常に少いと思う。ことしの予算では二千三百五十万石の買付ができるというふうに考えておられますが、今のような思想でいくと、どの程度予約買付によって米が集まると思っておりますか。それから予約以外の安く買う分は、果してどのくらいの差額をつけてこれをきめるお考えであるか、その点を明らかにしていただきたい。
  287. 河野一郎

    ○河野国務大臣 私は決して今御指摘のように農業委員会を軽視するというような思想は持っておりません。ただいまお答え申し上げた通りに、農業団体はすべて一体になってこれに協力を願うということになっておりますので、この協力機関の地位、構成等につきましても、決してそういうふうなことにはいたしていないのでございます。  それから第三の点でございますが、予約願うものにつきましては、予約に対して前渡金を払い出しますとか、ないしは差額金をつけるとかいうようなとこをいたしておりますが、基本的な米価の決定によりまして、その基本的にめきた米価で、この予約に該当しないものは政府は買い上げる、こういうことにするつもりでございます。
  288. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいま農業委員会を軽視しておらぬというようなお甘灘がありましたが、ことしは農林省関係の予算を見ると、農業委員会に対する補助金を約十三億円切ってしまっておる。二十三億のうち十三億切っておる。これはやはり農業委員会軽視の現われの顕著なるものだと私は思っておる。ですから農林大臣のお考えは、この米の集荷制度の問題あるいは割当に関するこういう仕事は、今後農業委員会はもう担当する必要がなくなってきた、結局市町村における農業委員会の機能を圧縮する一つの考え方の上に立って、この農業委員会に対する補助金の大削減をやったというふうに私は理解しておるわけですが、それに間違いありませんか。
  289. 河野一郎

    ○河野国務大臣 決してそうじゃないのでございまして、私が予算を復活する際にどのくらい努力したかということを御承知いただければ、農業委員会に対して私がどのくらいの希望を持っておるかということは、御了解いただけると思うのでありまして、一部これを地方交付金の中に入れてやろうという考えがあったのでございますけれども、それでは十分でないということで、その一部の人件費を農林省予算に復活したということ等を、一つ十分御輿解いただきまして、決して——今のようなことになりますと、地方の農業委員会の連中が非常に不安に考えますし、また農村全体の立場から申しましても非常に疑問を持つようなことになりますから、一つこの点は私の申し上げますことをそのまま御了承いただきたいと思います。
  290. 芳賀貢

    芳賀委員 農林大臣の御答弁は非常にこれは詭弁なんです。  それでは私は大蔵大臣にお伺いしますが、農業委員会の補助金の削減をあなたは行なったわけです。これはいかなる意図に基いてなされたか。農林大臣は、これはあくまでも復活したいと考えておったけれども、大蔵大臣に切られてしまったということをここで言っておられるのです。あなたは農業委員会の性格や任務も十分勉強なさって、これを削減されたと思うが、その意図はどこにあったのですか。  もう一つ不審にたえないのは、十三億分というものは、これは地方財政に対する交付金の形で支出することになった、こういうような一つの欺瞞的な態度政府はとっておられるのですが、この点に対する大蔵大臣の御所見はいかがですか。
  291. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申します。私は交付金から出す、こういう考えであります。
  292. 芳賀貢

    芳賀委員 大蔵大臣は交付税交付金の方がいいと思ったのですね。私はここでお伺いしたい点は、交付税交付金の制度というものは、地方財政の財政均衡の措置なんです。そうじゃないのですか。政府は農業委員会とか農業協同組合とか、そういう法の基礎に基いてできておる機関に対しては、政府の責任において財政的な支出をする、そうして機会均等の形で全国の市町村の委員会は運営の全きを期するというところにその考え方がある。それを財政均衡の形の交付金に転嫁するというこの意図は非常に理解に苦しむわけです。この点は自治庁長官はどう考えておられますか。政府の支出すべき補助金あるいは助成金を、ことごとく地方財政の責任に転嫁するような行き方といういうものは、自治庁長官としては希望されておらぬことだと思う。しかも全国の農業県、あるいは農業を中心としたところの市町村財政というものは非常に窮迫しておるのです。そういうような実情の上に立ってなおかつ農業委員会の経費の削減等をやって、これを地方財政の面に転嫁する、こういう傾向を自治庁長官はどういうように理解されておりますか。
  293. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 農業委員会に対する補助金は、お話通り十三億削減されました。そのうち約三億円は町村合併による技術員の減少によってなくなりました。十億だけが地方財政の負担になるのでありまして、農業委員会の重大性にかんがみまして、地方交付税の交付金を決定しますとき、基準の中に入れるつもりでおります。
  294. 芳賀貢

    芳賀委員 私がお伺いしておるのは、そういうつもりかどうかということでなくて、どういうような形で、それが確実に全国の市町村に渡るようになるかということなんです。おそらくぐういうことはできないと思う。その点はどうなんです。
  295. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 農業委員会に対する地方負担分は、地方交付金を計算するとき計算の基準の基礎に入れる方針を持っておるわけでございます。
  296. 芳賀貢

    芳賀委員 基準の基礎にするというようなことでなしに、そういうことになった場合においては、具体的に確実に全国の市町村に農業委員会の経費としてそれが届かないじゃないかということを私は言っておる。大蔵大臣は出したと言っておっても、あなたはまだ考えておるとか、思っておるとか言っておる。そういうことでは、交付団体は安心して今後農業委員会の運営を完全にやることはできないのです。財政が窮乏すればするほど、地方公共団体の意思によって、それを圧縮したり機能を停止するような事態も起きないとは限らない。そういう危惧に対してはどうお考えになっておりますか。
  297. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 交付金はひもつきで入りはいたしておりませんけれども、基準の内容は各府県市町村に示しますから、それによって適当に知事なり市町村長なりが支出することを私も期待しておるわけであります。
  298. 芳賀貢

    芳賀委員 そういう地方財政に対するしわ寄せは、これはおそらく逆行であるというふうに私は考えておりますが、時間がありませんから、私は最後に農林関係の金融問題を、これは非常に大事な問題ですから、一つただしておきたいと思います。  政府は農地担保金融制度を考えておる。これは法案を提出する予定になっておるわけです。それで私がお尋ねしたい点は、農地担保金融というこの制度の実現は、今の農地制度の上に非常に重大なる影響を及ぼすことになるのです。この点を判断からはずして農地担保金融をやるということは非常に危険なんです。これは農地制度をまた逆行させるというような意図があれば別なんです。しかし農地改革の上に立脚した現行の農地制度をあくまでも確保していかなければならぬということであれば、この農地担保金融制度というものは非常に危険なんです。農林大臣はそういうことをお考えになったことがありますか。
  299. 河野一郎

    ○河野国務大臣 御指摘の点がよくわからないのでありますが、私はその考えに逆行するというようなことは毛頭考えておりません。その点にも十分配意をいたしまして、あくまでも自作農創設維持という点に十分な意を注ぎまして、今回の点は二つに分けて、従来の制度に加えるに——従来でございましたらば、共同でなければ営農資金が借りられなかったというものを、共同では不便な場合がありますから、今回特別に増額いたしました分から、約七億ほどを分けまして、これは農業経堂改善のために個人で借りられる道を開いていきたいというものを、つけ加えていきたいというのでございまして、今御指摘のようなことは毛頭考えておも、そういうことにならないように十が配意をして、立案して、いずれ御審議を願うというつもりでおります。
  300. 芳賀貢

    芳賀委員 これは重大な点ですからもう少し申し上げますが、農林大臣はこういうことを考えておらぬと言っておりますけれども、この制度を実施すると結果的にはそういうことになるのです。御承知通り、現行の農地制度は、非常な制限をいろいろ設けているのです。たとえば所有の制限であるとか、あるいは財産権に対する制限も加えておる。今までは、農地を担保にして、これによって金融の道を開くということは制限されておった。今度は農地を担保にして金を借りることができるという道を、あえて政府は開こうとしておるのです。問題は、単に政府と農民との間における金融上の問題でなくて、農地が担保になるというこの現実が現われた場合においては、これは波及するところが非常に甚大なんです。私がお尋ねしたい点は、あくまでも今日の農地制度というものを厳存していくという思想の上に立った場合においては、こういう危険な農地というものは——これはもちろん資本財ではあるかもしれませんけれども、これは一般の企業のように、経営形態の上からいった資本とはちょっと違うのです。ある意味においてはこれは生産手段なんです。ですから、どうして農地を担保にして金を借りなければならぬかという事態は、これはいろんな原因があるのですよ。農地を維持することができないという事態というものにはいろいろ原因があるけれども、一つは今日の農に対して土地を維持することができないような条件をいろいろ押しつけておるのです。一つは農産物の低物価政策もそうであるし、もう一つは農業の所有形態というものは非常に零細化していくという点にも問題があると思う。ですから根本的には、農地を担保にしなくも済むような農業政策というものが確立されなければならない。金を貸せる道だけを幾ら講じても、農地を完全に——ここから生産性を高めるだけの、生産の手段としてこれを管理、維持することのできないような状態というものは、一日も早く排除しなければならぬということに気がついてもらわなければならぬわけです。ところが政府の今年度の予算を通じての政策というものはこれに逆行しておる。まさに農地を維持できないようなところに追い込んでおるのです。(拍手)そうして恩恵を売るような形で、今度は政府が農地に対して金融の制度を講じてやる、わずかに二十億と七億の二十七億程度を考えておるというような点でありますが、これは今後農地改革に対する一つの財産権の問題とか、あるいは農地の所有の制限とか、いろいろな基本的な問題に対してひびが入るようなことになるのです。この点はあくまでも私は、指摘すると同時に、今後当該委員会に付託になると思いますから、そこで十分なる論議をしたいと思うわけであります。ただ申し上げておきたい点は、今日までも、この今日の農地制度を基本にしたところの農地の維持創設に対する金融の道というものは講じられておったのです。しかしな特別会計の中において余裕金を運用することによって、農地の維持あるいはそういうような措置が講じられておったわけなんですが、これはただ余裕金だけを自作農維持のために充てるというような非常に根拠の薄弱な制度であったので、毎年度の年次計画というものが十分いかなかったのですね。これは二十六年から始まったのすでが、一年に大よそ五億円程度ずつの金融措置を、買い上げ、売渡しという形でやっていくというわけですから、これは余裕金の変化によって、非常に恒常性がなかったわけです。ですから、こういうような形で行われた場合においては、これは危険は非常に少いのです。ですから、政府の特別会計において一部運用されたあのような考え方というもの、思想というもの、これがほんとうに農地の維持とか造成に困窮しておる農民に対する場合の一つの思いやり、配慮になるというような考え方を延長していく場合においては、これは検討の余地があるわけですが、農地を完全に担保化してこれに金融の道を講ずるということは、これは農地制度の逆行であるということを私はあくまでも指摘するわけです。今度の政府の農業政策に対する思想というものは、自由党以前の農政である、逆行しておる、実にその点が多い。こういう点に対する所見はどうなんですか。
  301. 河野一郎

    ○河野国務大臣 お答えいたします。私はただいまの御貸間を承わっておりまして、非常に農民に対する施策が消極的であるというような気持がするのであります。私はこの際特に御了解願いたいと思いますことは、この予算を通じまして、従来よりも多少意図した方向を変えましたことは、米麦によるよりもさらに養蚕、畜産その他花卉、果樹等によって、農家の収入を増大する方法を見出す必要がある場合には、その方面に奨励の意図を用いなければならぬのではなかろうか。たびたび申し上げますように政府は農業経営の多角化に十分な意図を用いまして、農家経済の強靱性を強めるということに十分配慮を払って参りたいということに重点を置いておるのであります。あくまでも積極的に農家経済を改善して参りたいということに努力をしておるのであります。従いまして農家の諸君から非常に強い御要望もございまして、それらの方向に向いまするのに、その資金をどこに求めるかという意味からいたしまして、積極的に農家に資金源を与えて、そうして農業経営の多角化を意図して、これによって農家の収入を増大して参ろうというところにあるのでございます。従いましてこの方向が誤まりまして、農家に不測の災いを来たすようなことがありまして、そうして自作農の根底がくずれるようなことになりますれば、その際にはわれわれといえども、進んで自作農の維持に向っては全力を尽してこれについて助長の政策を講じなければならぬということにつきましては、決して社会党の皆さんの御意見と少しも灘わないということを、この機会に私は明確にいたしておきたいのでございます。こういう道を講じまして、農村をして知らず知らすのうちに、自作農を小作農に転落せしめるというようなことを放任するような考えは、毛頭持っておりません。あくまでも積極的に農業経営を合理化し、農家の収入を増大するという方向の一助にいたしたいという考えに出ておるわけでございますから、その点は御了解いただきたいと思います。
  302. 芳賀貢

    芳賀委員 農林大臣は非常に強弁されておるようですが、そうじゃないのです。一連の流れというものは明確になっておるのです。たとえば農林関係予算の大幅削減、これは農林大臣、今までのわが国の農政政策でとられた保護政策というものを一転しているという、そういう考え方なんです。こういう非常に生産性の少い、経済効率の上らない原始産業というものは、ここに国家財政を投入しても無価値であるから、保護政策というものはもうやらない。国内における食糧増産ができなくても、アメリカから余剰農産物を買い付ければ事足りるという、いわゆる河野農政の外米依存の恩赦というものが端的に現われている。そういうことになれば、やはり農家の窮乏というものが現われて、農地の維持ができなくなる、そうしてこれを担保化して金融措置を講ずるということは、農地が知らず知らずのうちにまた旧地主勢力に吸収されるという気配が非常に多いのです。これは幾ら弁明されても、この明確な思想というものを否定なさるということは絶対できないのです。  それからもう一つは、前内閣時代の政策は米麦偏重である、米麦偏重に堕しておったということを言われましたが、今度の政府の考え方は、米麦中心の政策の転嫁、あるいは畜産蚕糸のその重要度というものを引き上げるというのではないのです。むしろ米麦偏重というその線を下げるという思想の上にこれは立っておる、これは非常に危険な思想なんです。そうすればこの思想というものは、やはり河野農政の中においても、一日も早くこれを払拭してもらわなければならぬというふうに考えております。特に酪農問題等を重点に宣伝されておるけれども、今日乳価が三十円ぐらいにしかなっておらないのです。しかも今年はアメリカからジャージー種の小さい牛を千八百頭買い付けることになっておるのですが、これは大体一頭十万円ぐらいにつく。ところが国内においては今日牛の値段は幾らになっておるか、これは十五カ月ぐらいのホルスタインの子牛でも大体五万円か七万円で買えるということになっておるのです。ジャージーの倍も乳量のある牛が国内において半値ぐらいで買えるというところまで来ておるのです。そういう状態の中において何も苦しんで外国から千八百頭も二千頭も、非常に乳量の少い、適応性の少い牛を無理に買い付けなければならぬということは、これが河野農政の畜産行政であるということは、非常に信頼に欠ける点があるのです。時間がないから十分言いませんが、そういう点が米麦偏重の政策を多角経営に改める、そういうお考えなんですか。
  303. 河野一郎

    ○河野国務大臣 御質問でございますが、根底に実は非常に誤解があるように思うのであります。たとえば米麦偏重を他の方に改めると私が考えているということでございますが、米や麦の値段を下げるというならばそういうことになると思うのでありますが、私はたびたび申しますように、外国の米の値段がいかに下ろうと、麦の値段が下ろうとも、わが国内の米価、麦価の決定と何ら関係をして考えません。これを考慮に入れませんということはしばしば申し上げておるのであります。国内の米麦価の決定は国内の事情によってきめるのであって、国際的に何ら考慮はいたしませんということを申しておるのでございますから、この点はどうか誤解のないように御了解をいただきたいと思うのであります。  さらにただいま外国のジャージーを買ってホルスタインを云々というお話がございましたが、これは適地に的確なものを入れるということで、ぜひジャージーでよろしい、ジャージーで非常に成功しておる——たとえば、お名前を申し上げてはなはだ恐縮でございますが、先般も和田博雄さんから、これは非常にけっこうなことだから、大いに努力せよと激励されたのでありまして、これは人によって御意見が変りましたのでは、非常に困るのでございます。実はそういうことでございまして、これは全国各地々々によりまして、ジャージーで非常に効果をおさめている、非常によろしいというところもございますし、既存のホルスタインだけに依存しているわけには参らないものでございますので、これらは全国的にながめて適応性を考えてやっているのでございます。  なおまた乳価が非常に下落している、これはその通りでございます。さればと申して三十円というようなことはないと思うのでありまして、間々そういう極端なところもないとは否定もできませんが、おのずから常識もございますし、またこれを今日の状態でよろしいとは考えておりませんので、これにつきましては、近日中に乳価もしくは酪農製品の価格の調整に関するしかるべき施策を御審議願う段取りに目下準備中でございます。これによって相当に酪農製品の価格は維持できるようになると考えますし、また一方飼料につきましても、相当の施策を講じまして、昨年に比べますれば、今年の飼料は全体を通じまして相当に下落をいたしております。たとえばただいまふすまが少し上ってきておりますけれども、これも昨年のふすまに比べれば、末端の配給価格、販売価格は昨年よりまだ五十円以上安いのでございまして、麦ぬかに至りましては百円くらい安くなっております。決してこれでいいとは考えておりませんので、これらにつきましてもなお下げるような施策を講ずるつもりでありまして、いろいろ手配するつもりでございますから、どうか御了解願いたいと思います。
  304. 芳賀貢

    芳賀委員 もう一点でやめておきますが、最後に河野農林大臣は畜産界の大御所ということをいわれておるのでありますが、最近聞くところによると、何か畜産団体の新しい機構というもの考をえておるように私承知しておるのです。それで農林関係の予算の削減の中で一つ顕著な問題は畜産局関係でありますが、今年は新規に全国の家畜の共進会であるとか、そういうものを開催するために二千万円程度の予算を新規につけておる。そうして一番大事な飼料の採種の助成金等は全額削減しておる今の時代に、何も全国各地から東京とかあるいは中央に家帯を集めて、そこで大きな共進会等を開かなければ、家畜の増産とか畜座の奨励というような普及ができないのかということなんです。普及の段階を経たものは削減するというのは政府の大方針なんです。ところが畜産関係だけは、これから新規に予算をつけて、そうして今後畜産の奨励普及等の措置をやるというようなお考えをとられておるようでありますが、これは何か錯覚の上にそういうような予算を大臣自身がおつけになったというように私は判断しておるのでありますが、こういうことは相当慎重になされた方がいいと思う。  もう一点はふすまの値下げの問題でありますが、これは飼料審議会の答申を得て、おそらく今年は食管会計の方から四億程度の赤字補てんをやって、ふすまの値下げをやるというようなことなんです。ですから国の財政に転嫁させてふすまが若干下った場合においても、これは国民の負担においてふすまの値段を下げたのであって、何も農林大臣の手柄によってふすまが下ったということにはならぬのでありますが、そういう点をごまかさないで明確な答弁を願いたいと思います。
  305. 牧野良三

    牧野委員長 大体この程度で済むように御答弁を願います。時間が経過しておりますから。
  306. 河野一郎

    ○河野国務大臣 前段の畜産団体の補助奨励金につきましては、現在畜産団体が非常にたくさんございますので、これを単一化しようという畜産関係者の非常に強い要望がございましたので、これらにこたえていたしたわけでございます。  後段の四億の金を使って下げたのは国民の負担によってやるのではないか。その通りでございまして、御承知通り、ふすまは国際的に非常に高うございますから、これはわが国の畜産振興のためには、あの程度の国家の補助をいたさなければいかぬという意味合いからそうしたのでございます。その他いろいろな点について十分ぬかりなく考慮いたしまして所期の目的を達したいと考えております。
  307. 牧野良三

    牧野委員長 本日はこの程度にいたし、次会は明十七日午前十時より開会いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後五時十三分散会