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1955-05-13 第22回国会 衆議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月十三日(金曜日)     午後三時五分開議  出席委員    委員長 牧野 良三君    理事 上林山榮吉君 理事 重政 誠之君    理事 中曽根康弘君 理事 小坂善太郎君    理事 西村 直己君 理事 赤松  勇君    理事 今澄  勇君       井出一太郎君    宇都宮徳馬君       臼井 莊一君    小川 半次君       楠美 省吾君    小枝 一雄君       小島 徹三君    河本 敏夫君       椎熊 三郎君    楢橋  渡君       濱地 文平君    古井 喜實君       堀内 一雄君    松浦周太郎君       三田村武夫君    村松 久義君       山手 滿男君    山村治郎君       山本 正一君    米田 吉盛君       相川 勝六君    植木庚子郎君       太田 正孝君    北澤 直吉君       倉石 忠雄君    橋本 龍伍君       平野 三郎君    阿部 五郎君       伊藤 好道君    久保田鶴松君       志村 茂治君    田中織之進君       田中 稔男君    滝井 義高君       福田 昌子君    武藤運十郎君       柳田 秀一君    岡  良一君       小平  忠君    杉村沖治郎君       川上 貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         法 務 大 臣 花村 四郎君         外 務 大 臣 重光  葵君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         厚 生 大 臣 川崎 秀二君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  石橋 湛山君         労 働 大 臣 西田 隆男君         建 設 大 臣 竹山祐太郎君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 杉原 荒太君         国 務 大 臣 高碕達之助君  出席政府委員         内閣官房長官  根本龍太郎君         内閣官房長官 松本 瀧藏君         法制局長官   林  修三君         調達庁長官   福島慎太郎君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         専  門  員 小林幾太郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 五月十三日  委員赤城宗徳君、稻葉修君、北村徳太郎君、福  田赳夫君、藤本捨助君堀内一雄君、三浦一雄  君及び武藤運十郎辞任につき、その補欠とし  て椎熊三郎君、小島徹三君、米田吉盛君、山本  正一君、楠美省吾君、楢橋渡君、臼井莊一君及  び滝井義高君が議長指名委員に選任された。 同日  委員小川半次君、楠美省吾君、山本正一君及び  米田吉盛辞任につきその補欠として堀内一雄  君、山村治郎君、濱地文平君及び山手滿男君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員堀内一雄辞任につき、その補欠として小  川平次君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十年度一般会計予算  昭和三十年度特別会計予算  昭和三十年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 牧野良三

    牧野委員長 これより会議を開きます。  昭和三十年度一般会計予算外二案を一括して議題といたします。質疑を継続いたします。柳田秀一君。
  3. 柳田秀一

    柳田委員 私は社会党を代表いたしまして、主として原水爆の問題、綱紀粛正の問題、地方財政の問題、社会保障問題等について、鳩山総理以下関係大臣にお尋ねをいたしたいのですが、その前に、昨日北富士演習地射撃の問題で現地に行ってこられた調達庁長官にお尋ねいたします。  この問題は、本日も参議院の本会議において、話し合いができた、こういうような御答弁でありましたが、話し合いができたということは、細部の協定、あるいは調整等については後日に譲るとしても、一応射撃は中止する、こういうように解釈してよろしゅうございますか。その点のはっきりした御言明が参議院でなかったように思いまするが、この点を確認いたしておきたいと思います。
  4. 福島慎太郎

    福島政府委員 北富士演習場の問題につきましては、昨日先方話し合いをいたしたのでございますが、これは現地でいたしたわけではございませんので、神奈川県の座間にございます米国極東陸軍司令部最高首脳者と話し会いをいたしたのでございます。御了承を得たいと思います。  またその結果によりまして、実質的な話し合いはついたのでございますが、実は肝心の天野山梨県知事が昨日来山梨県の方へお帰りになっておられまして、目下御上京中でありますので、御到着を持ちまして、県知事承認を得た上で確定させるということになっておりますので、それまでは確定ということに参らないと考えております。ただ内容的には、御承認をうるものであると確信している次第でございますので、話し合いそのものは大体ついたというふうに伝わりましたわけでございます。従いまして、それの正確な条件その他につきましては、天野知事の御了解を得た上で御報告申し上げることにいたしたいと考えております。従いまして、知事の御了承を得られないと射撃がとまらないことになりますので本日が最後の日でありますけれども、現地の情報を聞いておりませんが、射撃は行われておるか行われておらないか知りませんけれども、行われておることもあり得るのでございます。御了解を得たいと存じます。
  5. 柳田秀一

    柳田委員 この問題に関しては、調整という言葉の解釈がアメリカ軍当局日本側において食い違っておる。この食い違いに対しては、それぞれあるいは言い分があるかもしれません。しかしながら現地の人間は、知事以下あげて反対なんです。反対しているものをどんどん打ち込むというんだから、調達庁長官は、一応事後の折衝折衝としても、現地にお行きになるんだから、撃ち方やめだけは現地司令官に言ってくる、それだけの意気で行かなければ、何のために行ったのかわからぬじゃないか。その点もう一度伺います。
  6. 福島慎太郎

    福島政府委員 調整という文字について御指摘がございましたが、アメリカ軍射撃をする権利というものはあるわけなんです。そういうふうに予定された協定ができておる。ただし射撃をする場合には、山梨県と調整をすることになっておりますことは、射撃をするについては、アメリカ側の申し出た日では都合が悪ければ、この日にはしないとか、その地点では都合が悪ければ、別の地点にしないかというような調整をすることが、文字の上では明らかになっているわけでありまして、その点では、誤解米国側に関する限りはないのでありますが、不幸にして県側誤解がありまして、射撃を十日から四日間したいというアメリカ側の申し出に対しまして、その四日間は都合が悪いとか、従って何月何日ごろにしろとか、そういう返事が出る筋合いでありましたところ、永久に、将来とも射撃には絶対応ぜられないという返事が出ましたので、それでは、日本側調整しないというわけであるから、調整は片っ方がしなければできないのでありますから、調整ができない。できないということは、アメリカ側がしないからできないのではなくて、日本側がしないという文書を出すくらいだからできないんだということになっております。従って、四月以来若干の話し合いをいたしまして、五月まで伸びた射撃予定でありますので、調整したということで射撃が始まったということになります。それとても、できればやめさせたいわけでありますけれども、水かけ論でありますので、完全な議論、十分な議論ができないということでございまして、きょうの射撃はやっておるかおらないかという見通しはちょっとつきませんけれども、やっておることもあり得ることだと申し上げたのであります。
  7. 柳田秀一

    柳田委員 新聞の伝えるところによると、最初には、この調整という文字じゃなしに、協定ということになっておったらしい。そうすると、いつの間にかこれが調整ということになっておる。これはそういうことが原因で、現地においては日米双方了解条件が違っておる。そこでアメリカ側には、調整というのはどういう字句で申し入れてあるのか。その点を承わりたいと思います。
  8. 福島慎太郎

    福島政府委員 この協定が二十八年に出ましたときから、調整という文字になっております。英文の方ではコーディネートということになっております。またそのできますときには、山梨県の承諾をも得てできた次第であります。
  9. 柳田秀一

    柳田委員 コーディネートというような言葉じゃなしに、少くともコンサルテーション程度言葉を使っておかぬから、こういう問題が起ってくるんで、調達庁は、日本の農民には向う意気が強いが、アメリカさんには腰が低い。だから、ここには問題が起ってくる。はっきり言うならアグリーメントアグリーメントまでいかなくても、コンサルテーツョンでいかないで、コーディネートというようなあいまいな言葉を使っておるから、こんな問題が起ってくる。これは済んだものを幾ら言っても切りがありませんから、次に移ります。  先般わが党の赤松議員から、今回の日米予算折衝共同声明に基いて拡張予定米軍使用飛行場について、資料要求した。ところが出て参りました資料は、はなはだおざなり一方。「一、拡張予定米軍使用飛行場の名称 小牧調査中)、新潟調査予定)、木更津立川横田検討中)」だということになっておる。木更津に関しては、すでにかような通牒を東京の調逮局長から千藥県知事に出しておる。「木更津飛行場整備拡張ノタメノ地役権設定要求ニツキマシテハ予テヨリ協力方煩ワシリ深謝致シテオリマストコロ、今般更ニ調達庁長官カラ協力方オ願イ致スコトト存ジマスガ海面側ニッイテモ別添図面地域ニッイテソノ埋立使用要求ガナサレマシタ。ツキマシテハ、ソノ具体的内容ニッイテハ参上ノ上詳細御説明申ゲル所存デアリマスガコレ等土地提供及ビ海面埋立使用ノ目的及ビ必要ノ事情等高察下サイマシテ、更二格別ノ御配慮ヲ重ネテオ願イ致シタク、取敢工ズ書中ヲ以ナ御依頼申上ゲマス」。これは三十年五月六日に出ておる。こうなって参りますと、すでにかねてから御協力をわずらわしておるこのような問題が、われわれに出された資料には検討中だという。しかもこの木更津におきましては、海上に三千フィート、陸上は現在の国有地の上にさらに一千フィートくらいは滑走路を延ばされるらしい。海上においては、そのために四百人から五百人のノリ採取業者生活権を脅かされる。陸上にはいわゆるクリアランス・ゾーンというので、四万坪、十六戸ほどの人家が立ちのかなければならない。地上十フィート以上の物は全部立ち払え、こういうような要求すら出ておる。こういうようなものが検討中だという。しかも本日の朝日新聞を見ますと、これと同様なことが横田基地あるいは立川基地においてもある。しかもこれらの予算については「約十二億を(組織)大蔵省(項)防衛支出金に計上」これだけの簡単なことになっておる。私たちが要求した資料はこんなものではない。十二億なんというものでできるとは思いませんが、かりにこれが正しいとしても、この十二億を積算する基礎がなければならぬ。坪数、単価、あるいは補償費、そういうものの積算基礎単価があって大蔵省折衝されたものと思うのでありますが、このようなまことに、ただ申しわけ的の資料を提出されたのでは、われわれは予算審議ができない。もう少し詳細に御説明を願いたいと思います。
  10. 福島慎太郎

    福島政府委員 お答え申し上げます。木更津飛行場に関連いたしましてお手元に差し上げました資料中に、検討中と書いてございまして、千葉県に出ております通牒に、かねてからお願いを申し上げましたと書いてあるということでございますが、これは問題が二段に分れておりまして、木更津飛行場につきましては、背後地と申しますか、クリアランス・ゾーンと申しますか、これを拡張したいという話が前にございまして、そのときに千葉県知事ともいろいろ相談したことがあるのでございます。これは滑走路の問題ではなかったわけでございます。その後本年になりまして、滑走路として海面を埋め立てたいという話がございまして、その際にあらためてただいまお示しの手紙を出したわけでございまして、かつて背後地の問題で話をしておった木更津飛行場に、新たに滑走路の問題が起ったからと、そういう意味でありますので、御了承を御たいと思います。従いまして、木更津飛行場の問題は、検討中ということに間違いはございません。県知事にお願いしておりますのは、その検討をするために立ち入らしてもらいたい、見せてもらいたいということを言っておるわけでございます。なお飛行場関係一般予算等につきまして、防衛支出金のうちに十二億とあげてあるだけで、明細がないというお話でございましたが、これはアメリカ要求通り先方要求通りにいたしますのであれば、すぐにでも明細はつけられるわけでありますが、それでは膨大な予算も必要となりますし、実行も困難になりますので、アメリカ要求はございますけれども、せんじ詰めるところ、滑走路が長くなって、飛行機が飛べさえすればいいわけであります。申し上げました通りに、滑走路を現在のものからさらに二千尺ないし三千尺延ばすということであります。従いまして、その二千尺ないし三千尺と、滑走路の幅が千尺になりますか、千五百尺になりますか、そういうものとの面積最小限度の必要の面積になるわけであります。二千尺ないし三千尺と申しますことは、四百問でございますが、幅が百間あれば四万坪になる。それが五つあれば二十万坪になる。それはほんとうに骨でございますから、そのスケルトンに、さらにどれくらいの承認しなければならない付属地がつくか、いろいろな計算ができるわけでありますが、どの飛行場を一群小さくして、どの飛行場を正当な付属地、その他を承認するかということは、一々今後の交渉に待つわけでございます。従いまして、一つ一つに分けて、これが幾ら、これが幾らということがきまりませんので、絶対の必要滑走路そのもの面積に一定の率をかけまして、五つの飛行場でございますから、それが何十万坪ということになる、それに適当な単価をかけて、総括して算出したものでございますので、総括して十二億とはございますが、積み上げて作り上げた予算でないことは御承知置きを願いたいと思います。
  11. 柳田秀一

    柳田委員 調達庁長官は、今そのような御答弁になりましたが、すうすでに立川基地においては、約五万坪の宅地を買収したいとの内示に来た。横田基地では、十五万坪の拡張と五万坪の借り上げを予定、こういうふうにもうすでに積算基礎ができておるでしょう。それがただ単に十二億だけだというのです。大蔵大臣にお尋ねしますが、このように積算基礎も何もないものを大蔵省はお認めになるのですか。おそらく大蔵省としては、こういう問題は事務当局の間ではすでに折衝されておると思う。よその省のことでも、このように検討中のもので、しかも積算基礎のないものでも今後予算にお認めになりますか、大蔵大臣からお聞きしたい。
  12. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。大蔵省といたしましては、大体概算で出しておるのであります。調達庁の方でさらに交渉の上で具体的にやることになります。
  13. 柳田秀一

    柳田委員 それでは、今後他の各省検討中のものを概算要求して、大蔵省予算書に盛られますね。重ねてはっきりとお答え願います。——大蔵大臣より御返答願います。   〔「大蔵大臣」「大蔵大臣」と呼ぶ者あり〕
  14. 牧野良三

    牧野委員長 しばらくお待ち下さい。   〔「委員長、陰の声は質問時間に入らぬ。質問時間は考慮してくれ」と呼ぶ者あり〕
  15. 牧野良三

    牧野委員長 相応のことは考慮します。
  16. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。たとえば飛行場にしても、初めからこの飛行場ときまっているわけでないのでありまして、一応こういうようなところというところでやる。それから調達庁で具体的にきめていく、こういうふうになるわけであります。
  17. 柳田秀一

    柳田委員 私はそんなことをお尋ねしているのではない。これはもう陰の声を聞かないで、大蔵大臣の、あなたの大臣としての責任ある御答弁を願いたい。このようなことをお認めになるのならば、ほかの省から今後検討中のものでも、積算基礎のないものでも予算要求したときには予算書にこれを認めて、ちゃんと出されますかということを聞いている。
  18. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。これは先ほど長官からお話がありましたように、特殊なものであるのであります。
  19. 柳田秀一

    柳田委員 大蔵大臣にはっきり御答弁願いますが、それじゃ予算の中でどれとどれが特殊であって、特殊であるというのはどういう法的根拠に基いているか、その点をはっきり御答弁願いたい。
  20. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。先ほどから長官からも御説明申し上げますように、これは特別なケースでありまして、ほかの各省にあるというわけでもなし、地元の関係においても、県との関係においても、初めからきまっておりませんので、いさいは具体的に交渉した上で初めてやる、予算概算で出す。こういうことを御承知願いたい。
  21. 柳田秀一

    柳田委員 私が尋ねているのは、そういうことじゃない。特殊なものだということは——常識論では国会では通用しない。憲法と法律と、それに基いてわれわれは審議している。従って財政法会計法のどの個条によってこういうことを認めるか、その法的根拠を明らかにお示し下さいと言っている。
  22. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。法的根拠はむろん財政法に基いてやっておるのであります。なお詳しいことは政府委員から御答弁申し上げます。
  23. 柳田秀一

    柳田委員 政府委員答弁要求していない。   〔赤松委員議事進行について」と呼ぶ〕
  24. 牧野良三

    牧野委員長 赤松勇君より議事進行について発言を求められました。これを許します。
  25. 赤松勇

    赤松委員 ただいま柳田君の質問大蔵大臣の責任ある答弁要求しております。主計局長には要求いたしておりません。従って大蔵大臣答弁があるまで暫時休憩願います。
  26. 牧野良三

    牧野委員長 ただいま赤松勇君よりお聞きのような動議が出ました。動議賛成諸君起立を求めます。   〔「反対反対」「委員長の宣言通り立たぬか」と呼ぶ者あり〕
  27. 牧野良三

    牧野委員長 賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立〕   〔赤松委員委員長、採決に異議あり」と呼ぶ〕
  28. 牧野良三

  29. 赤松勇

    赤松委員 予算委員であるかないかということを委員部において一つ確認をさしてもらいたい。これを要求します。
  30. 牧野良三

    牧野委員長 では今のは起立少数でございます。そうして予算委員資格に関して御異議あるそうでありまするから、資格の実情を調査いたします。
  31. 柳田秀一

    柳田委員 私は、この問題に関してはただいまの答弁では納得できません。従いまして、この問題に関しては権利を留保しておきます。   〔「委員長、今の確認の報告をしてないじゃないか」と呼ぶ者あり〕
  32. 牧野良三

    牧野委員長 いや今確認しておりますから……。   〔「委員長わきを見ておってはいかぬ」と呼ぶ者あり〕
  33. 牧野良三

    牧野委員長 わきを見なければいかぬ。あらゆる方面を見まして決定をいたします。しばらくお静かに願います。——赤松君、あれでいいですね。
  34. 赤松勇

    赤松委員 しようがありません。
  35. 牧野良三

  36. 柳田秀一

    柳田委員 それでは質問を続けます。先般鳩山総理のいわゆる原爆貯蔵発言は、国民にも大きな衝撃を与えましたが、わが党の同僚諸君からも数次にわたって質疑をいたしました。その結果わかって参ったことは、国民は心配しておるだろうが、現実の問題ではないということです。米国の一方的意思日本原子兵器を持ってくることはないと思う。行政協定によって米国原水爆弾日本に持ち込み得るかどうかは法律的に疑問があるが、しかし重要問題だから事前に相談があると思う。米国原水爆内地貯蔵する意思はないと思う。しかし重大な問題だから、原爆貯蔵内地でしないようアメリカ側言質をとっておきたい。大体要約するとこうだと思うのです。これで日本原子戦の渦中からのがれて、国民諸君ほんとうに安心してくれるとしたならば、私はあえて質問いたそうとは思わないのです。しかし事実は逆で、この問題をだんだんと掘り下げていけばいくほど、かえって不安が増してくるのです。鳩山総理は、それは取り越し苦労だとおっしゃるかもしれません。しかしながら、それならこれほど幸いなことはないのです。ところがわずか数発の水爆がこの日本に落ちただけでも、この狭い日本ではいかにせん、頼む木陰に立ち寄れば、天が下には隠れ家もないのです。原子戦のそばづえを食うのではないかということは、これは国民の大きな不安だと思うのです。一度ならず二度、三度もこのとうとき体験をなめた日本人としては、これは当然だと思うのです。  そこでまだ数点明瞭になっていない点をお尋ねしたいのでありますが、どうかそういう意味で、一つ率直に明確に総理からお答えを願いたい。午前中から引き続きでありますから、非常にお疲れでありますので、どうぞ御着席のまま御自由に御答弁下さってけっこうだと思います。  第一は、総理は、私はアメリカ原水爆内地貯蔵する意思はないと思っておる。こういうようなお考えなんですが、これはどういう御信念でこういうお考えになってきたか、私はこれを承わりたいのでありまするが、時間を急ぐ関係上私の考えを申し述べるならば、これは私は逆だと思うのです。アメリカの最近のいわゆるニュールック政策というものは、まだダレスもバンコック会議で、アメリカ極東戦略では、原子兵器通常防衛兵器として認めるということを堂々と言明しておる。むしろソビエトの周辺に原爆水爆基地を作るというのが、私はアメリカ考え方ではないかと思う。現に沖繩原水爆基地が設けられておることは周知の事実でず。だから総理も用意周到に、先般の赤松君の質問には内地にというような言葉を使っておられます。しかし沖繩では、地理的に見て対中国に向ってはこれは向いておるでありましようが、対ソビエトに向いてはちょっと遠い。対ソ連、特に沿海州だとか満州の重工業地帯というようなものに対しての戦略戦術を練ったときには、沖繩では役に立たない。そこで総理の言われる、内地アメリカとしての戦略上の基地として浮んで来ることは当然だと私は思うのです。一つの証拠に、先般拡張予定米軍使用飛行場でも、小牧新潟木更津立川横田、そう思って地図を見てみると、ちゃんと新潟というのが入っておる。不思議に北海道はないと思ったら、それはそうではない。北海道においては、すでにもうそういう拡張工事が完了しておるということは、僕らから見ればちゃんとわかるのです。そこで総理は、一つ機会があれば日本原爆貯蔵することのないように、アメリカ側とも話し合いをして言質をとっておきたいとこう言われた。おきたいだけでは、総理希望だけでは国民諸君は納得してくれぬと思う。だから総理は、ほんとう言質がとれる自信があるかどうか、一つ確信のあるところをここでお示し願いたいと思うのであります。
  37. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 原水爆貯蔵するということは、国民にとって非常に重大な問題でありますから、アメリカ日本にこれを貯蔵したいという希望を持っておるならば、当然に日本承諾を得にくるものと思っております。日本承諾なくして日本原水爆貯蔵することはないと私は考えておるのであります。
  38. 柳田秀一

    柳田委員 私の問うたのは、言質をとっておきたい、こういうような総理の御発言でありましたが、果して言質をとるだけの自信がありますかどうか。イエスかノーか、それをお答え願いたい。
  39. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 アメリカは自分の軍艦の上にこれを貯蔵し得るのでありまするから、日本にそういうような要求はしてこまいと思っておるのであります。
  40. 柳田秀一

    柳田委員 それはおよそナンセンスなんです、鳩山さん。原子爆弾は、なるほど小型飛行機にも積めましょう。水素爆弾は、従来飛行機にはなかなか積めなかった。最近それが積めるようになってきた。それにしても、いわゆる戦略原子爆弾というものと戦術原子爆弾というものとは違うのです。軍艦に積めるから、それは陸上に積めないというようなことは、オール・オア・ナッシングの論法なんです。軍艦に積める原子兵器陸上に積める原子兵器とはものが違うのであります。軍艦に積めるから陸上には必要はない。こういうような考え方でものをやられたらたまったものではない。総理はそういうふうにものをお考えになるならば、とんでもないことです。軍艦に積めるものは軍艦に積む。陸上に置くものは陸上に置く。陸上に置くものでも、戦闘機が積むものと爆撃機が積むものがある。これくらいは常識なんです。そのようなことを総理がお考えになるならば、これははなはだ甘いと思う。また総理は音質をとっておきたいというが、音質をくれることはないと思う。むしろ日本の方が、アメリカにいつでも原爆を持って来なさいと言質を与えている。それが日米安全保障条約であり、行政協定だと私は思う。そこで、外務大臣にお尋ねいたしますが、外務大臣は、先般本委員会で、行政協定によってアメリカ軍原水爆日本に持ち込むことには、法律上多少疑義がある、こうおっしゃいました。その法律上多少の疑義とは、どういうことをお指しになっておりますか、この際承わりたいと思います。
  41. 重光葵

    ○重光国務大臣 私のさように申しましたわけは、行政協定のできましたときに、原水爆の問題がまだ十分討議に上っていなかった時代でございます。原水爆は、その後に問題がやかましくなりました。従いまして、私は原水爆のことは新しい問題として行政協定の適用の問題が起る場合には、これは当然問題になるものと、こう思っております。
  42. 柳田秀一

    柳田委員 それは概説的な考え方、私の問うておるのは、法難上疑義があるとおっしゃるのは、法律上どの条文に疑義があるかをお示し願いたい、こういうのです。
  43. 重光葵

    ○重光国務大臣 行政協定日本側の義務を規定しておるところについて、概説的に私は申し上げましたが、それが私の疑義があるところでございます。
  44. 柳田秀一

    柳田委員 それならば、あなたが法律的に疑義があるとおっしゃったのとそれは話が違うじゃないですか。安保条約の第一条には、「アメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍を日本国内及びその附近に配備する権利を、日本国は、許与し、アメリカ合衆国は、これを受諾する。」とあり、その第三条によって行政協定が結ばれておる。行政協定は、主としてその軍隊の構成員あるいは施設、区域、そういうものに関する権利義務をきめておるのであって、その軍隊そのものに対しては何も規定しておらぬ。それじゃ重ねてお尋ねいたしますが、この安保条約並びに行政協定に書いてある軍隊という内容、軍隊というものをあなたはどういうふうに理解しておられますか。軍隊の説明をしていただきたいと思います。
  45. 重光葵

    ○重光国務大臣 軍隊は、陸海空軍の戦闘力だ、こう思っております。
  46. 柳田秀一

    柳田委員 その軍隊の内容を、物と人とに分けて、一つ具体的にお示し願いたい。
  47. 重光葵

    ○重光国務大臣 そういうことについて、私が答弁をする専門的の知識を持っておりません。
  48. 柳田秀一

    柳田委員 驚き入った答弁で、およそ条約を結ぶ担当官であるところの外務大臣が、専門的知識を持っておらない。行政協定には御丁寧に、軍隊の構成員とは、軍属とは、家族とは、みなそれぞれ定義がつけてある。軍隊だけ定義づけしてない。こんなものは定義づけする必要はない。国際法上の通念です。教えて上げます。軍隊とは、およそ戦闘行為に関係したところの軍人ですなわち人、それから兵器、弾薬、糧秣、訓練、装備、こういう戦闘行為と関連のある人と物なんです。これはあなたの党の辻政信君が私に教えてくれた。その中に訓練が入っておるのはどうも気に食わぬが、その訓練を入れてくれと辻君が言ったから、人と物とのついでに訓練まで入れた。これが軍隊というのです。兵器、弾薬の中には当然原子兵器が入ってくるでしょう。しかも原子兵器は、この行政協定や安保条約を作ったときには、まだ問題になっていなかったと言うが、そうじゃありません。昭和二十年の八月六日には広島に落ちている。この行政協定、安保条約を作る前に原爆はすでに落ちている。ちゃんと既成事実ができている。だからこの軍隊の中に入っている。あなたの兵器弾薬の概念の中に原子兵器が特に入らないというような根拠は、どこからも出てこないでしょう。
  49. 重光葵

    ○重光国務大臣 私は条約の正当な解釈は、条約締結当時のいきさつが一番重要だと思っているのでございます。それが私の条約の知識でございます。その場合にかような重要な原子爆弾の問題が問題になっていないということは、私が疑義があると申し上げたわけであります。
  50. 柳田秀一

    柳田委員 このような国民が非常に心配し、不安がっている問題について、何も政府を追及しようと思っているのではない。だからもう少し率直にお答え願いたい。原爆そのものはすでに広島に落ちている。  それじゃ突き進めますが、この問題について総理は、法律上の問題ではなしに道徳の問題だとおっしゃいましたね。
  51. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 道徳の問題とともに常識の問題である。
  52. 柳田秀一

    柳田委員 よろしゅうございます。それから外務大臣は、これは法律上疑義がある。しかし追及していくと答弁ができない。しかも昨年いわゆる秘密保護法が問題になったときに、参議院の法務委員会で下田条約局長はこう答えておる。その前に安保条約だとか行政協定の意義が書いてありますが、「従いましてこの目的のために必要である武器兵器でありまするならば、これは米軍が持って来得ることは当然であると考えるのであります。日本にどういう兵器、武器を持って来てはいかんという制限は安保条約にはございません。でございまするから、理論的には如何なる兵器でも持ち得るのであります。」総理大臣はこれは道徳の問題である、外務大臣は法律上疑義がある、条約局長は法律上はいかなる兵器を持ったって文句がいえないと言う。一体どれが政府の定説なんですか。
  53. 重光葵

    ○重光国務大臣 私は私の解釈が正しいと考えております。
  54. 柳田秀一

    柳田委員 そうすると、下田条約局長答弁したことは間違いだとおっしゃるのですね。
  55. 重光葵

    ○重光国務大臣 この問題については私は矛盾はないと思います。条約の解釈は、その締結当時の状況において正確にしなければなりません。しかしてもし原爆の問題をはっきりとそれに入れる場合においては、当然その問題が議論に上っておらなければならないと私は思います。しかしそれがないのでありますから、そこに私は疑義があると思います。疑義があるならば、そういう場合においては、必ず条約の問題として両国の間に取り上げらるべき問題だと思います。
  56. 柳田秀一

    柳田委員 それじゃあなたの立論の根拠は、原子兵器というのは今重大な問題だから疑義があるとおっしゃるのですか、どうなんですか。
  57. 重光葵

    ○重光国務大臣 条約締結当時のそういう問題は、当然議論になるべき問題だと私は思っておるのであります。
  58. 柳田秀一

    柳田委員 それではガス兵器と細菌兵器はどうなりますか。疑義があるかどうか。とにかく軍隊には私が今言った定義——先般私は質問をするために法制局長官に確かめたら、大体それでよろしかろうと法制局長官は言っておった。だから兵器は軍隊に含まれるのです。だからガス兵器とか細菌兵器はどうなりますか。
  59. 重光葵

    ○重光国務大臣 さような問題が重要な問題として取り上げられる場合にはむろんこれは取り上げられ得る問題だと思っております。
  60. 柳田秀一

    柳田委員 私が尋ねておるのは、ガス兵器や細菌兵器もやはり原子兵器と同じ範疇に入って、やはり法律上疑義があるかどうかということを尋ねておる。
  61. 重光葵

    ○重光国務大臣 ガス兵器、細菌兵器等は国際法上禁止されておりますから、この中にはむろん入っていないと思います。
  62. 柳田秀一

    柳田委員 それならば、なぜ千歳の飛行場にイペリットをアメリカ軍は持ってきておるのですか。この作業をやっておる従業員がイペリットの被害をこうむったのですが、あなたはあのとき何か抗議を申し込みましたかどうですか。
  63. 重光葵

    ○重光国務大臣 その問題については私、存じておりません。
  64. 柳田秀一

    柳田委員 ますます驚き入ったことです。これではわれわれまじめに審議ができません。先般千歳で日本の軍労務者がイペリットによる被害をこうむっておるのです。これに対してあなたに報告も来ておらぬというのなら、これはもう怠慢です。信賞必罰を明らかにする内閣においては、即刻何らかの処置をとるでしょう、また当然このことは知っておらなければならない、また当然抗議を申し込まなければならぬ。新聞にも出ておるが、どうですか。
  65. 重光葵

    ○重光国務大臣 今聞くところによりますと、その問題は禁止の武器に入っていないそうでございます。
  66. 柳田秀一

    柳田委員 最初は国際法上禁止だと言い、今は禁止に入っていないと言う。何を言っているのかさっぱりわからない。そうして重光さんは、日本に持ってくるようなときには事前に相談があるとおっしゃった。こういうような原子兵器日本に持ち込んでくることは法律上疑義があるけれども、非常に重大な問題だからあらかじめ相談がある、こういうふうにおっしゃいました。ところが最近日本に持ち込まれておる事実をあなたは御存じですか。御存じがあるかないか、相談があったならば御存じあるし…….。
  67. 重光葵

    ○重光国務大臣 持ち込まれた事実はございません。
  68. 柳田秀一

    柳田委員 それでは、今から約十日ほど前、横須賀軍港にミッドウェーが入ってきておる。このミッドウェーは原爆を積んできておる。横須賀のロータリー・クラブの連中がそこのアトホームに招かれて、ある将校から原爆を積んできておると聞いてきておる。またミッドウェーが原爆を積んできておることは、アメリカを出て台湾海峡に行ったときからアメリカの周知の事実ではありませんか。日本の領土権の中にやはり原爆を持ってこられたことには変りない。あなたに何ら事前の通知がなかったかどうか。   〔発言する者あり〕
  69. 牧野良三

    牧野委員長 お静かに願います。私語を禁じます。
  70. 重光葵

    ○重光国務大臣 私はそのことを的確に知っておると申し上げるわけではありませんけれども、しかしアメリカ側日本内地に、日本の領土の上に原爆を持ってきたことの事実のないということを申し上げる十分の理由を私は持っております。
  71. 柳田秀一

    柳田委員 総理にもう一度確認しておきますが、どうも追及していっても少しもはっきりした御信念がない、またはっきりした御回答がいただけないはっきりした御見解を持っていらっしゃらない。もう一度伺いますが、とにもかくにも日本アメリカとの安保条約あるいは行政協定によって原子戦争に巻き込まれることを国民は一番おそれているのですが、そういう場合にはあなたにアメリカから事前に通背なり相談がある、かように今でもお考えになっておりますかどうか、再確認しておきます。
  72. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その通りであります。
  73. 柳田秀一

    柳田委員 その通りだという話でしたが、昨年の冬でしたか、イギリスの国会で労働党のアトリーが、ノーホークというアメリカ基地がイギリスにあるのだそうです、そこから原子爆撃をどこかの国に行うときに、チャーチル首相はアメリカからあらかじめ通知を受けるよう一つ要請されたい、そうでなくては英国民は滅亡に瀕する、これは党派を超越した問題だからチャーチル首相は全力をあげて努力されたい、こういうふうに声涙下る質問をした。これに対しチャーチル首相は目に涙を浮べて、この重大な心配に自分はあくまで努力はするが、しかしながらマクマホン法、現在の原子力法によって、米国大統領は自分に向ってその原爆水爆に関してあらかじめ相談することは禁止せられておる。従っていかに努力しても相談を受けることはできないように思う。このことを自分は悲しみかつ憂えると、ほんとうに率直に、偽わらざる苦衷を訴えておる。イギリスとアメリカ関係においてもなおかつそうであるが、鳩山総理は今もあなたに相談があると思っておりますか。
  74. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はかつて申し上げた通り考えております。
  75. 柳田秀一

    柳田委員 私がこのようにしつこく尋ねるのも、そうしたもとをただしてくると、やはり日本の安保条約、行政協定という不平等条約に基因しているのです。そこで総理にお尋ねしますが、安保条約、行政協定を——私たちは廃棄ですが、あなた方のこれを認める立場に立ってもこれを改める御意思はありませんか。きょうの参議院の本会議では、富士山麓の問題にして重光さんは、この問題に関してだけは解決する意思はない、こうおっしゃった。御意思はございませんか。
  76. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日本は独立の完成ということを政治の目的にするわけであります。独立の完成ということは、見方によっていえば、占領中にできたところの法令の改正ということが一つのやり方であります。そういう意味において行政協定、安保条約は改正したいと思いますが、日本の自衛力が遅々として進まない間は、これは無理だろうというような考え方をしております。
  77. 柳田秀一

    柳田委員 なお追究したいのですが時間の関係でこの機会に濃縮ウラン受け入れの問題を一点、通産大臣と高碕長官にお尋ねしておきます。先般、表現は違うが、受け入れの態勢に進んでいるような御発言をなさっております。通産大臣の方は藤岡さんが帰ってこられたときに受け入れられるような表現をされておりますが、高碕さんは今澄君の質問に対して、ひもがついてなければこれを受けてもいい、こういうふうにおっしゃった。そこでこの問題は、私は非常に大事だと思います。われわれしろうとでわかりませんが、原子力の平和利用ということ、このことだけは大へんけっこうなことであります。ただ相手がアメリカである場合には、どうも日本人はことさらにやはり何といっても神経過敏にならざるを御ない。しかし相手がアメリカであるからといっても、そう感情的になってもいけないと私は思う。日本の今後の産業にも影響し、経済にも影響し、また文化にも影響する大きな問題は、冷静にしかも科学的に判断しなければならない。しかも国民はこういうものを冷静に、科学的に判断するだけの素養を持っていない。だからひもがついていなければということを判断することは、これは非常に大事なんです。だからひもがついていなければというのを判断するのはどこで判断するか、もとより最後の責任は政府がおとりになるのでありましょう。そのために特別何らか政府に諮問機関でもお作りになるのか、そういう点を一つ高碕さんから……。
  78. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。ただいま審議庁が大体幹事役になりまして、内閣の中に原子力利用準備調査会というものがございまして、その中に総合部を置きまして、最近アメリカから帰って参りました人たち、及びわれわれが調査いたしました材料を基礎にいたしまして、これはひもつきでないということを十分調べたいと思います。ひもつきの限度は何だ、こういうことでございましたが、これにつきましては秘密保持というような問題があると非常にめんどうだと思います。もう一つは、研究の自由を束縛するというふうなことになると困りますから、そういうことのないように十分調査をいたしまして、これを受けるかどうかをきめたいと思っております。
  79. 柳田秀一

    柳田委員 次に、もう一つ原子力関係で、今月末から来月にかけまして、世界の十カ国から一流の医学者、科学者を迎えて、日本側都築博士以下第一線の科学者が参加して、放射線影響国際学術懇談会というものを、主として東京、大阪、広島、長崎等で開くわけです。これには世界の各権威も来られます。共産圏からもやって参りますが、この問題に関して政府の方では——これは当然政府の方でも原爆の被害をこうむり、さらに水爆の被害をこうむった日本としては、政府の方がこういう問題をもっと積極的にやらなければならぬ。これが逆なんです。日本アメリカとの発表に食い違いがある、一つ真相を見せてもらいたい、そうしてわれわれも参考にしたいというので日本でこういう学術懇談会を開くわけです。  そこでこれは文部大臣にお尋ねしますが、こういうものに対して私は物心両面から援助を与えるべきだと思いますが、それに対するお考え一つ承わっておきたい。
  80. 松村謙三

    ○松村国務大臣 お答えをいたします。もちろんこういう会議につきましては、文部省といたしまして十分に関心を持っておりますが、まだそれをやっておられる方から何らのお話を承わっておりませんので、お話を承わりました上で善処をいたしたいと思います。
  81. 柳田秀一

    柳田委員 外務大臣に伺いますが、この会議には中、ソ、チェコと三国からも参りますが、そういう場合にビザ等の問題で外務省の御協力を願えることと思いますが、いかがですか。
  82. 重光葵

    ○重光国務大臣 もしこれがお話通り純粋な学術会議であり、何ら政治上の策動的な意図をもっていないということならば、これは喜んで旅券の心配をいたしたいと思っております。
  83. 柳田秀一

    柳田委員 次に少しく地方財政の問題でお尋ねいたします。現在地方自治体が非常な財政危機に襲われておることは、これはもう皆さん御承知の通りなんです。そこで昭和三十年度における地方財政に関して、地方財政審議会では十三日に審議会を開いて、三十年度の地方財政計画を審議した結果、三十年度の地方財政は、大体従来の財政計画と財政運営の実態の差を何ら是正せずに組むと、百五十四億財源不足になる。さらにこれを給与費あるいは国庫補助単価など財政計画と実際の財政運営との食い違いを、二十八年度の決算を基準として是正して組むと、三百六十一億の赤字になる、こういうような意見書が出ておるわけなんです。この問題は今日われわれは国民であると同時に区民であり、県民であり、市民であり町民であり、村民なんです。だから私たちの生活というものは、まず最初の基盤である市町村において守らなければならぬ、私は非常に重要だと思うんです。  そこで自治庁長官にお尋ねいたしますが、地方交付税が地方団体の独立財源と考えておられるか、国家からの恩恵的に与えた財源と考えておるか。これは根本なんです。これから出発しませんと、私は地方財政の問題は論議できないと思うんです。この観点がまず明瞭になってから初めて地方財政の問題がいろいろと論議されてくる。この根本的な問題についてどういうふうにお考えになっているか。
  84. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 地方交付税は独立財源と考えて処置いたしております。
  85. 柳田秀一

    柳田委員 そうなって参りますと、独立財源ならば今度の国家予算において国は減税をなさいます。所得税、法人税、酒税、それの二二%が地方交付税になるのですが、国が減税をなさいますその減税した額を基礎として二二%をおかけになるわけでしょう。そうなって参りますと、ここに少し独立財源としての意義はおかしくなる、独立財源ならば当然減税前の二十九年度の額を元に計算して、その額と減税後の主税の二二%を比較して、そうしてそれを調整した額の二二%というものを修正しなければいかぬ、今度の主税減税額に二二というものを元にするのでなしに——そうしなければ独立財源の意味はなくなってくると思いますがどうお考えですか。
  86. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 減税を御審議願った国会のときに、すでにそういうことを計算をしてやっておるわけであります。
  87. 柳田秀一

    柳田委員 そうなって参りますと、これは独立財源にならない、これは地方の独立財源ならば減税前の三税の二二%の額と、減税後の三税の二二%の額とを勘定して、そうして減税後の三税に何%かけたならば減税前の三税の二二%になるかと、そういうところから率をはじき出してこなければなければならぬと思うのですが、そうでなかったら独立財源の意味はなくなるじゃないか、これは国の財源につられて地方の財源ということになってくる、これは独立財源ではないでしょう。従属財源でしょう。その点を承わりたい。
  88. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 独立財源でありますが、やはり国家の財政とにらみ合わしてやっているのでありまして、現在の二二%を基礎にして地方財政をいろいろ計画するより方法がないのであります。
  89. 柳田秀一

    柳田委員 それでは次に伺いますが今度の予算で入場譲与税十三億、地方道路税七十何億でしたか、これは特別会計から直接出しておられますね。地方交付税のみは一度一般会計をくぐらせて出しておられますね。これはおそらく一兆予算というものを大蔵官僚というものがごまかす手段として用いたのだと思いますが、入場譲与税や地方道路税は、特別会計から直接出して、そうして交付税は一般会計をくぐらしてそうして地方に与えるという、こういう理論的根拠はどうですか。
  90. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 お説の通り地方交付税は一応国家をくぐってやるのでありますが、今日の税法の立場がそうなっているので、自治庁といたしましては大蔵省の方針を受け入れてやっておるわけであります。
  91. 柳田秀一

    柳田委員 それじゃ入場譲与税やら地方道路税は直接にすぐ特別会計に入れられる、その理由はどうですか。
  92. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 これまでの地方財政の方針がそういうやり方をやってきておるわけであります。
  93. 柳田秀一

    柳田委員 これまでの地方財政のやり方がそういう方針をやって来ておりますか、もう一度重ねて問います。おかしいでしょう。
  94. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 この問題は地方自治庁の問題でありませんで、大蔵大臣の問題なんでありますから、大蔵大臣の方からその点御答弁を申し上げます。大蔵省の方針としてそういうことをやっておるのですから……(発言する者あり)そういうことを申し上げます。
  95. 柳田秀一

    柳田委員 それでは大蔵大臣にお尋ねいたします。自治庁長官から大蔵大臣に聞いてくれということでありますから。入場譲与税と地方道路税を特別会計から直接出しておられる理由はどういうわけですか。
  96. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申します。先ほど自治庁長官がお答えになった通りで、独立財源であるのでありまして、これを一応国の税収にしておる、こういうような考え方は、これは徴税の技術から来ておると思います。
  97. 柳田秀一

    柳田委員 国の税収にしておるから、こういうわけですね。大蔵大臣もう一度確かめますが……。どうもはっきりわからない。国の税収にしておるから、そういうことですか、もう一度はっきりして下さい。
  98. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この点についてはしばしばお答えを申したのですが、地方道路税、こういうものはむろん地方税の本質から地方税にやります。たとえばたばこの益金をやっておる、こういうようなものもこれは地方税の性格を持っておる、そういう意味から地方税にやるわけであります。
  99. 柳田秀一

    柳田委員 入場譲与税や地方道路税は地方税に近い、だからこれは特別会計から直接に交付しておる。それじゃたばこ専売特別地方配付金三十億は、なぜ一般会計をくぐらせないのですか、それじゃ理屈が合わぬじゃないですか。
  100. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。これはたばこ消費税の本質を持っておるのでありますが、今日会計の途中でもありますので、徴税の便宜上今回こういう方法をとったわけでございます。
  101. 柳田秀一

    柳田委員 幾ら言われたところで、これはほんとうの目的は一兆億の予算をごまかすための手段であることはみな同知なんです。これは幾ら言ったって、そのことはこれは一兆億のごまかし手段であるとは言い切りませんから私はこのくらいにしておきますが、政府の説明いかんにかかわらず、このような単に形式上の一兆億というものにこだわっておる。そしてごまかしておる。この点だけでも地方財政には大きなしわ寄せが来ておる。そのために先般地方財政審議会から意見書を出したように、少く見ても百五十四億、普通に見れば三百六十億の赤字が出て来る、こういうのです。こういうような無理をしておりますから、これは当然私は今年度においては、地方団体においては補助金等の返納が起って来ると思うのです。こうしてせっかく国家が一つの基本方針を立てていろいろ施策をやろうとしていっても、地方において破綻が起きて来る、こういうふうに私は憂えるのであります。  次に災害復旧事業についてお尋ねいたしますが、建設大臣はお越しになっておられますね。災害復旧事業というものは、私はこれは最も迅速にやらなければならぬと思うのですが、今度の予算書を見ると、昭和二十八年災については六五%の復旧率だ、こう言っておる。これはあなたも御存じのように昭和二十八年非常に大災害が起ったときに、われわれ国会においては、これを三、五、二の比率にして、三カ年において復旧することを決議したはずです。従って三カ年というと本年が満了期です。従って復旧率は一〇〇%にならなければならぬと思うのですが、いまだ六五%を目途としていることは、これは院議を無視するもはなはだしいと思うのですが、この点はどうですか。
  102. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 本年の災害費が、昨年の災害が少かったためもありますが減額はいたしております。しかしこれで昨年の進捗率よりは、三十年度の予算では残事業の進捗率は上回っておりますので、お話通りなるべく早くやりたいということはわれわれも考えておりますが、財政の許す限り昨年度よりは歩をよくして、これでできるだけ早く完成をいたしたいと努力をいたしておるようなわけであります。
  103. 柳田秀一

    柳田委員 私が問うたのは、三、五、二ならば本年は一〇〇にならなければならぬが、それを六五を目途としておるというようなことは、これは院議を無視しておると思うがどうかということなんです。
  104. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 これは昨年からずっと続いておる問題でございまして、今年ただちにそういうことをいたしたいことはやまやまでありますけれども、なかなかできません。そこで昨年よりは幾分か歩をよくして国会の御趣旨に沿いたいというのが、今年の予算編成の方針であります。
  105. 柳田秀一

    柳田委員 その点は多少私もわかります。これは自由党内閣の責任でもあると思います。昨年の復旧率は予算書に何パーセントと書いてありましたか、御存じですか。これはお教えしますが、六〇%なんです。多少でも違うといっても、たった五%ふえただけなんです。これは申しわけですね。ちょうど災害が起ったあとで災害臨時国会というのがございましたね。あの災害臨時国会で、改進党を代表してあなたは代表質問に立っておられます。そのときにあなたは、金がないからできないというのは、これはファッショだ、民主的じゃない、そういうことを言っておられるのですが、どうですか、今あのときの演説を思い出してどういう御感懐ですか。
  106. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 われわれも、できるだけ早く完成をしたいということには御意見の通りでありますが、なお私はこれで満足しておるわけではありませんので、明年度予算には災害は継続費の制度をとる等、今いろいろの方法を考えて、現在の地方及び中央の財政におきまして可能な最大限度の努力をいたしたいと考えております。
  107. 柳田秀一

    柳田委員 野党時代はトラのごとく、与党になればネコのごとく、こういうことになりますが、しかも問題になるのは、実被害額を多少水増しして報告をしたところもあるかもしれませんが、それを一方的に取り上げて、年々実被害の額を過小に査定して来るのです。最初は千八百億、それが千五百六十五億、一千百何ぼになった。こうしてどんどん大蔵省で一方的に査定してくる。その結果、地元の方ではどうしても災害復旧をしなければならぬのに、仕越し工事がだんだんたまってくる。こういうようになってくることも、考えてみるとやはり立法に不備があると思う。だから災害復旧工事の施行年度割合を法定化する意思があるかどうか、この点を一つ
  108. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 先ほども申し上げましたように、これは占領政策の一つとして災害及び公共事業費等が一年きりの予算になっておりますことが、非常に国費を使用する上からいっても満足でないし、また地方の要望にも沿わないと考えまして、今年度からと思いましたけれども、時間的に十分の準備ができませんので、今大蔵省とも話しまして、お話のように、継続予算の制度に法制化したいという希望を持って準備を進めております。
  109. 柳田秀一

    柳田委員 なおこの機会に私は建設大臣に申しておきます。このようにだんだん災害復旧が遅れてくるということも、私は建設省の予算の立て方にもあると思います。本年度の建設省の予算を見ますと、本省の総予算の九五%までも、甲の項目から全部繰越明許費に出しております。建設本省の総予算、人件費を除いた以外は、全部甲の項で繰越明許費になっておる。それはわからぬでもない。建設省の仕事もありますし、地方の関係もありますから、わからぬでもないが、これでは会計法の精神も何もあったものではない。だから建設災害復旧というものは年度心々ごちゃごちゃになってきて、全然一貫した方針が立たないのです。こういうような方針をとっておられるとろに災害復旧工事がだんだん延びて来る大きな原因があると思います。この点建設大臣はお考え願いたいと思います。  それから自治庁長官にもどります。今日、地方財政再建整備特別措置法をお作りになるので、要綱もまとまったようであります。ここで問題になるのは、再建整備そのものを幾らやっても根本は地方財政計画そのものなんです。地方財政計画そのものが実情に合っていかなければ、一方では再建整備をやる、片一方ではどんどん赤字を作ってくる、これはイタチごっこなんです。従って、再建整備もけっこうでありますが、再建整備より以前になすことは、もう今後赤字を出さない、地方財政計画というものを根本的に再検討しなければならぬ、こういうことなんです。そこで一番大事なことは、再建整備に名をかりて、地方公共団体の自主性を不当に圧迫するんじゃないか、中央集権の実をだんだん握って、やがては内務省復活の下地を作るんじゃないか、こういう点をわれわれは憂えているのですが、一つ川島さんから明快に御答弁願いたい。
  110. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 近く国会に提出しまして御審議を願うことになっております地方財政再建整備特別措置法案の中には、赤字に悩んでいる府県に対しましては多少財政上の監督を強化する規定は入れてございますけれども決して地方を圧迫いたしまして再び昔の内務省に返るような考え方で法案を作っているわけではございません。
  111. 柳田秀一

    柳田委員 それくらいにして、今度は社会保障にいきますが、厚生大臣にお尋ねいたおます。民主党はさきに社会保険の適用範囲の拡大、給付費の一定割合の国庫負担、社会保険の充実ということをうたわれました。そこでお尋ねいたしますが、厚生省が社会保険審議会に諮問した改正案によると、健康保険、船員保険においては扶養家族を三親等まで縮小した。それから継続給付を受ける資格を六カ月から一年以上に給付のワクを狭めた。こういう具体的の事例は社会保険の適用範囲を拡大したものとお認めになりますか、それとも縮小したものとお認めになりますか、一つ答弁いただきたい。
  112. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 今回の予算編成において、御承知の通り、社会保険の問題につきましては、編成の途上におきまして、党の公約に基いて十分に政策に盛り込むために努力はいたしたつもりであります。不幸にいたしまして、一定率の国庫負担ということが実現をいたさなかったのは、はなはだ残念に思いますけれども、しかしながら十億の国庫負担を行い、同時に長期債の借り入れを行いまして、国といたしましては一応十分の措置をいたしたわけであります。従って国がかような負担をいたします以上は、赤字が出ております今日の健康保険の財政といたしましては被保険者の方におきましても多少の負担をいたしてもらわなければならぬ、かように考えた次第であります。
  113. 柳田秀一

    柳田委員 どうか一つ時間の関係がありますから、答弁は御簡潔に願いますが、今川崎厚生大臣からお答えの分はあとでお尋ねします。私が問うたのは、こういうのは社会保険の適用範囲を拡大したかどうかということなんです。これは率直に、遺憾ながら縮小しました、こう御答弁になったらそれでああそうですかと言うのですが、どうですか。
  114. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 一方において拡大をいたしておりまして、片方においては御承知の通り、多少残念な措置でありますが、こういう措置をとらなければならなかったということは正直に申し上げます。
  115. 柳田秀一

    柳田委員 なお保険料率を標準報酬の千分の六十から六十五に引き上げたり、保険料の標準報酬を三千円から四千円に、三万六千円から七万円に引き上げられた。こういうようなことは社会保険の充実じゃなしに逆行だと思います。これも川崎さんから、遺憾ながらまあその点は逆行した、こういうふうに、正直な方ですから、御答弁になると思いますので、時間の関係上わざわざ念は押しません。そこでこのように選挙中の公約を破って社会保険の適用範囲を狭めたり、また被保険者の負担増を来すということは、これは社会保険の逆行だと私は思う。これは全部現内閣の責任とは私は申しませんが、根本的に考えてくると、社会保険財政の赤字の問題はこういうような点で解決するとは私は思わないのです。社会保険の赤字そのものは、日本の結核対策そのものにメスを入れなければ解決しない。これは川崎国務大臣御存じの通りなんです。しかしとにもかくにも赤字の上に今回は十億出したとおっしゃる。そこでその十億ですが、これは医療給付費に対する国庫の負担ですか、それとも赤字補填の財源ですか、その性格を一つお示し願いたい。
  116. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 赤字が出ましたことを契機にいたしまして問題が発展をいたしたのでありますけれども、私としては医療給付費に対するところの——これは赤字が出ると出ないとにかかわらず、国庫負担をなすべきもの、かように考えておる次第であります。
  117. 柳田秀一

    柳田委員 その考え方は私も同感なんです。大体社会保障という以上は国家が責任をとらなければならぬ。従って赤字が出る出ないに関係せず、国庫が一定割合の負担をしなければならぬこれはまことに川崎さんのおっしゃる通りであります。従って川崎さんとしては、これは医療給付費に対する国庫負担というふうに考えておる。それならば社会保険の中には、御存じのように、政府管掌の社会保険もあれば、組合管理の健康保険もある。そうするとこれは現在政府管掌の健康保険に対するところの十億円の医療国庫負担——ただ社会保険にはそのような片手落のことは許されぬと思う。赤字が出る出ないにかかわらず負担するものならば——これは組合管理の方が赤字が出ておらぬじゃないか、政府管掌の方だけは医療給付費を国庫負担し、そうして組合管理のものは負担しない、こういうようなことは許されぬと思うが、組合管理の方はどうなっておりますか。それに対して政府は十億くらいの医療給付費をお出しになるおつもりですか。
  118. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 この社会保険全般を強化する意味合いからいいますれば、御指摘のように、政府管掌の健康保険、組合管理の健康保険の問題にかかわらず、さらに健康保険組合に対しても、当然医療給付費に対して補助をいたすべきだと私は考えておりますが、これらは非常に窮屈な今日の財政事情からいたしましてワン・ステップずつ踏みたい、かように考えておる次第であります。
  119. 柳田秀一

    柳田委員 そうすると、先ほどの厚生大臣答弁のように、社会保険、健康保険の医療給付費に対する国庫負担こういうような性格ならば、これは政府管掌だけにこれを出すのではなしに当然組合管理にも出さなければならぬ。そうでなければ十億の性格がぼけてきます。もう一度重ねて問いますが、十億は赤字補填のための財源ですか、医療給付費に対する国庫負担ですか、もう一度はっきりお答え願いたい。
  120. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 先ほど御答弁申し上げました通り、赤字問題が契機となりました。しかしながら私としましては医療給付費に対する国庫負担である、かように考えて措置をいたしたのであります。
  121. 柳田秀一

    柳田委員 医療給付費に対する国庫負担ならば少くとも一定割合の国庫負担ということを民主党は公約しておるが、どのくらいの割合になりますか。
  122. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 私は一割の国庫負担ということを申しております。一割というのは三十九億ちょっと頭を出るかと思います。従ってこれはパーセンテージで申し上げれば〇・二五に当るわけであります。
  123. 柳田秀一

    柳田委員 あまりそう言うのはやめましょう。問題は、私は健康保際の赤字に対して、結核の方をほったらかしてここを補ったということが問題だと思う。何といっても結核に対して国家が本腰を入れて国庫の金をつぎ込まなければ、このことは同時に健康保険の財政にも影響してくる。また生活保護法の医療扶助の面にも影響してくる。しかも結核の死亡率というものは年々減って参りましたが、結核によるところの国民の被害というものは年々ふえてきておる。しかも現在健康保険が赤字になってきたのも、もとをただすならば結核に対するところの医療費の向上した。医療費が向上したというのは結核に対するところの治療費が進歩したということです。国民にとってはむしろ喜ぶべき現象なんです、従ってここにやはりほんとうに国庫の金をつぎ込む、これが社会保障の充実なんです。これを忘れて健康保険に十億つぎ込んでも、ことしはそれで一応めどはついても、来年はまた同じことをやらなければならぬ。抜本塞源的な解決にはならない。しかも本年度は結核予算は減少しておる。このあおりを食ってつき添い看護婦が廃止になっておる。閣僚の皆さん、どなたでもよいですから、一ぺん国立療養所に行ってらこんなさい。結核で大手術を受けてまだ一週間もたっておらぬ者が、かわいそうにベッドの上で洗たくをしておる、自分で御飯を運んでおる、これはもう人道問題です。その費用がわずかに三億七千万円です。それも無残に切っておって十二億の方では、まだ積算基礎のないものでもぽんと大蔵省は出しておられる。おそらく大蔵大臣は、こういうような高尚な社会保障のゆえんがおわかりにならぬと思います。銀行の世界ばかりにおってはこういうことがおわかりにならぬのは無理ないかもしれませんが、政治家の社会に入ってきたらもう少しこの点は御勉強願わなければならぬと思います。次に、健康保険の赤字の第二の原因は、現在の医療費というものがどんどんふえておるからです。その原因は、抗生物資とか注射薬とか、その他新薬とか衛生材料というものを自由放任にまかしておくから上ってくるのです。現在、新聞の広告を見ると、新聞の広告で一番多いのは医薬品、化粧品で、一七%、図書が一九%。そのほかにアメリカに高い特許料をとられている。われわれは広告料に痛い注射をし、苦い薬を飲んでいるようなものである。こういうものを規制しておかないで、自由放任、野放しにしておくから医療費がどんどん上る。ここにメスを加えなければ、医療費というものは、どの政党が内閣をとっても、これを社会保障の面からつぶれて参ります。従って現在の社会保障を守ろうとするならば、現在の薬そのものに対して、薬の販売、流通過程というものに対して、やはりメスを加えなければならぬ。河野農林大臣は、現在の米価の問題を考えるには、やはり肥料の問題を追求しなければいかぬというので、申し訳的であっても肥料の問題に手をつけられた。川崎君の兄事された農林大臣は手をつけられている。だからあなたもやはり薬の問題に手をつけなければならぬ。これを野放図に放任しておいたのでは、今後健康保険の赤字というものはますます増大してくると私は思うのであります。従って何らかこの現在の医薬の流通過程に規制を加える意思がありますか。あるいは健康保険も、これは一つの、一定のプールしたものからそういうような医薬品を集めて、そうしてなるたけ中間のそういうようなマージンを少くしていく。そうして国民の医療費を少くしていく、これが一番大事ではないかと思いますが、厚生大臣のお考えはいかがですか、お聞きします。
  124. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 薬価の高騰につきましては、一昨年あたりから非常にこの問題が指摘されておるのであります。従いまして、厚生省としても、従来薬価を下げて行くことについては、いろいろの措置を講じてはおります。また事実、一部分については相当に下ってきておる部面もあるのであります。しかし一部においては、この際思い切って、ストレプトマイシンであるとか、パスであるとかいうような、いわゆる抗生治療法については、一つ国家の手で経営してはどうかというような意見が、特に社会党の各位あたりから出ておることも私ども十分了知はいたしております。しかしながら、これをただちに今日実施することは、相当研究しなければならぬ問題もありますので、目下検討をいたしておる最中でございます。
  125. 柳田秀一

    柳田委員 いずれにいたしましても今回の社会保険の改革は問題だと思うのです。社会保障の拡充強化をうたわれた民主党内閣としては、これは問題だと思う。これを厚生大臣の諮問機関であるところの社会保障審議会あるいは社会保障制度審議会等にかけられても、私はかなり難航すると思う。もしそういうような諮問機関がこれを否定したり否決したならば、この予算は根本からくずれることになりますが、そういう場合はどう対処されますか。
  126. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 社会保険審議会は、もし料率を引き上げたり、あるいは先ほど御指摘のありました標準報酬の改訂のみを出した場合においては、相当反対的な機運になるものと思います。しかしながら、その前提としては、今回健康保険については、先ほど私が申し上げましたように、十億の国庫負担も行い、同時に赤字補てんにつきましては、昨年度、本年度を通じて六十億の長期の融資等も行って、これが解決に対して国が誠意を示しつつあるのでありますから、決してそのような結論が出るとは思っておりません。
  127. 柳田秀一

    柳田委員 なお今回、健康保険の赤字の問題に引き続いて、国保の方が多少おざなりになっていると思う。国民健康保険も同様に財政が苦しい。従って現在国保には、助成措置費として二割出ておりますが、これは法定根拠がないために、実際は二割−一割五分にも達していない。今回わが党は、健保、国保を含めて一定割合の法律案を出そうと思っております。これは厚生大臣喜んで御賛成下さると思いますが、御所見いかがでありますか。
  128. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 国民健康保険の二割国庫負担をやれということを申しましたのは、実は私どもも在野時代にこれを強力に主張し、かつ最初にこれを取り上げましたのは改進党で、ちょうど私どもの主張しておったときに大体その線が出たと思うのであります。しかしながら、厚生大臣としては、ただいまの御趣旨の点はけっこうとは思いますけれども、これを法律にするときは十分検討さしていただきます。
  129. 柳田秀一

    柳田委員 先般黄変米配給で、イスランディアの方はともかくとして、タイ国黄変米の方は一〇%つき直したならば配給してもよろしい、ただし条件があるといって農林省にお渡しになった。農林大臣の方では、今余っているからすぐには配給しようと思っておらぬ、こういう御回答のようであります。ところが最近よく聞いてみますとタイ国黄変米を一〇%つき直しても、必ずしもこれが安全であるというめどがどうもないらしい。厚生省の方では食品衛生調査会の方の答申をとられたかもしれませんが、わが党が過日公聴会を催しましたところ、農林省の中にも、あるいは東大の中にも、予研の中にも、まだ批判があるのです。なるほど一〇%つき直したならば表面一〇%よくなることは事実である。しかし、中に毒が入っておらぬかどうか、中にかびが生えていて、かびから出る毒が入っているかどうか、これに対してはまだ検討ができていない。その調査のサンプリングした、抽出の方法に問題がある。現在厚生省の出された結論では、これを国民に配給して絶対に有害であるという論拠も今のところはちょっと乏しいようでありますが、無害であるという根拠はさらにないと思うのであります。この点厚生大臣としてはどうお考えになっておるか。
  130. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 五月六日に、食品衛生調査会なるものから厚生大臣に答申が参りまして、再搗精するならば無害であるという結論が出たということであります。食品衛生調査会の結論は、学者もそれに入りまして出した結論であるから、十分尊重いたさなければならぬと思っております。
  131. 柳田秀一

    柳田委員 これは大分問題があるようでありますから、私はここでくどく申し上げませんが、どうかもう一度慎重にお考え願いたいのであります。これは国民全体が非常に不安に思っております。そこで、社会保障そのものはやはり今度の民主党内閣の公約のうちの、一枚看板のうちの大きな一つだったと私は思うのです。ところがふたをあけてみると、羊頭を掲げて狗肉を売るということがありますが、これは羊頭を掲げて狗肉も出しておらぬ、羊頭を掲げてかえって被保険者から奪い取ったのです。それではかっての社会保障審議会の重要メンバーであった川崎さん、民主党内閣に最も清新な気風をつぎ込まれたという若手の前途有為の川崎さんとしては、大臣になられてさぞかし御不満と思います。確かに私はあなたの御本意ではなかった、そう了承したい。しかし、かつて遺家族援護の問題があったとき、厚生大臣の橋本君は、このようなお燈明料程度で厚生大臣が勤まるかと言って、ぽんと辞表を出してやめた。私はそのとき、橋本という男は、からだは小さいがやはり骨だけはあると思った。あなたは幸いりっぱな体格もしていらっしゃいますから、このように社会保障予算がこてんこてんやられているのに、のんべんだらりとこの内閣にとどまっていられるとは思われない。私は春秋に富まれる川崎さんのために惜しみても余りあると思う。  次に一つ綱紀粛正で一点だけお尋ねします。鳩山首相は一月の施政方針演説で、政界、官界の綱紀粛正、議会政治の信用回復等を声を大にして叫ばれました。私はその点は非常にけっこうだと思うのです。その点から私はお尋ねしますが、第二十一国会の冒頭で、緒方自由党総裁はあなたをこう言っておる。あなたは自由党を出たり入ったりまた出たりと言って、あなたの出処進退の不明朗な点を難詰したときに、あなたは私が出たくなくともあなた方が汚職をやったり指揮権発動をしたりするから出ないわけにはいかない、これは私の責任ではなく、あなた方が悪いとおっしゃった。そういう点で私はあなたにお尋ねするのですが、指揮権発動は、あれは昨年の春なんです。だから指揮権発動をする一日前にでも、吉田とはともに天をいただかずと、自分の同志を引き連れて自由党をおん出て、そうして新しく新党を結成されたならば、私は国会におけるあなたの答弁は光ってくると思う。しかしあなたが新党を結成して自由党を出たり入ったりまた出たりしたのは秋なんです。そうすると、そのことは消極的には指揮権発動をお認めになったことと思って私はあなたのためにはなはだ遺憾にたえないのですが、これは指揮権発動を消極的にお認めになったことになりませんか。
  132. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は指揮権を発動するということを知らずに入りました。
  133. 柳田秀一

    柳田委員 ところが昭和二十九年四月二十四日、内閣不信任案が出た。そのときにはこの指揮権発動を中心にして不信任案が出た。わが党は鈴木委員長が提案理由を説明し、当時の改進党は三木武夫君が不信任案の提案理由を説明した。そのときにめったに院内に入って表決に加わらぬあなたが、わざわざ吉田に信任投票をしておるということは、積極的に指揮権発動を認めたことになると思うのです。知らぬということにならぬと思う。しかし私は何も執拗にあげ足をとったりあなたの政治行動をどうこうというのではないがまずあなたが政界粛正、官紀粛正あるいは議会政治の信用回復ということをほんとうに率直にお考えになっておるならば、こういうことを思い出していただいて、いよいよほんとうにやっていただきたいというために、多少こういうような意地の悪いことを申したのですが、私はほんとうにおやり願うために御決意を固めようと思って言うのですが、それならばお尋ねしますが、昨年疑獄、汚職が起ったときに、両派社会党は、これは何としてもまず議会人みずからがやはり自分の身辺をきれいにしなければならぬ。そのためには今の法律では不備だ。現在の刑法ではいけない。いわゆる顔がものを言っておる。今の刑法によるところの収賄罪では、職権を利用した場合には収賄罪が成り立つ。ところが顔を利用した場合、地位を利用した場合にはあっせん収賄罪として収賄罪が成り立たない。だからあっせん収賄罪を適用しよう、こういう法律を出しました。ところがその後民主党、自由党の方で積極的に御審議願えませんので、一たびは継続審議になりましたが、国会解散で廃案になった。このたびの国会でまた両派社会党は出す予定になっておりますがこのあっせん収賄罪、これは本来ならば刑法の一部改正案ですから、政府提案として出されて一つもおかしくないのです。あなたは民主党総裁でありまするが、もしも民主党が御同調願えまするならば、自由党が反対されても、両派社会党と民主党でこの法案は成立します。しかし私どもは本来は自由党、民主党、両派社会党満場一致で通したい。総理大臣としてかつまた民主党総裁としての総理の御見解を承わっておきたいと思います。
  134. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あっせん収賄罪については可否とも議論があると思います。それで検討中でございます。
  135. 柳田秀一

    柳田委員 これには可否ともに議論があることは承知しております。ことにドイツ立法を日本は受けておって、ドイツ立法の観念では多少否の方の意見が強いようであります。しかしながらわれわれがこの法律案を提出しまして、参考人としてお呼びしました刑法の大家の牧野博士、小野博士、あるいは栗本東京地裁の判事、安平最高検の検事、評論家の中島健蔵氏、参考人は全部賛成なんです。しかも佐藤検事総長は、これがなかったら政界の粛正はされぬといっておる。新聞報道陣は、最近の国会で別にほめることは何もないが、あっせん収賄罪、あれを出したことだけはほめておく。これだけは、賛成した議員と反対した議員を新聞にはっきりと名前を出そうじゃないか、こういっておるのです。もうこれは研究の域を出ておるので、ほんとうにこれを否決されたり審議未了にされたりするということは、政界粛正の御熱意がないと認めざるを得ない。今すぐに御返答をいただこうとは思いませんが、いずれわれわれ社会党からこの法案は提出いたします。多少の問題があるかもしれませんが、少くとも少々問題があっても、中国のことわざに曲った弓を直すときは、逆に曲げろということがある。われわれは多少窮屈になっても、われわれ議員がみずから自分の周囲を多少窮屈にするくらいな法律を作って、そうしてわれわれが範をたれて、そうして官紀の粛正ということをしなければ、われわれの方は野放図にほったらかして、小さな役人の方ばかりに官紀粛正をやってみたり、新生活運動というようなもので、国民の精神を作興、振起しようと思っても、これは本末転倒しておると思う。どうかこの点は総理に十分私はお考えを願って、できるならばわれわれの出しますところのあっせん収賄罪に、一つ自由党も民主党も全会一致で御賛成になって、これは時限立法でもけっこうであります。そうしてまず議会人みずからがこの政界粛正、議会の信用回復ということに対して、熱意を持っておるということの範を国民全体に示していただきたい、私はかように思います。別に御答弁は要りません。
  136. 牧野良三

    牧野委員長 岡良一君。
  137. 岡良一

    ○岡委員 私は日本社会党の立場から特にわが国の独立の完成という問題について、総理並びに閣僚の率直な所信を伺いたいと思うのであります。なお時間の制約もありまするし、先ほど来いろいろ質疑応答も重ねられましたので、私は簡潔にお尋ねをいたしますので、政府の方におかれましても率直な所信を御披瀝願いたいと思います。  まずすべての道はローマに通ずるという言葉がありますが、現在のわが国の当面する現状においては、内外一切の施策はこれ独立の完成に通ずる、そこに連ならねばならない、こう私は信じておるのでありますが、総理の御所信を承わりたいと存じます。
  138. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 岡君と同様に考えまして、私も現在の政治の目的は、第一の目的は独立の完成にある、こういうふうに考えております。
  139. 岡良一

    ○岡委員 そこで私ども今年度の予算等を拝見いたしまして、政府の独立を達成するがための基本的な政策は、数えてみればまず経済六カ年計画をもって経済の自立への道を進む、防衛力を整備する、同時にまた自主独立の平和外交を展開して第三次世界大戦を回避する、このようなことが政府の独立完成への基本的な政策と承知いたしておるのでありますが、この点間違いはないでありましょうか。
  140. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あなたの今おっしゃったような三大項目のほかに、占領中にできたところの諸法令の改正というようなこともあげることができようと思います。
  141. 岡良一

    ○岡委員 そこで私はこの経済六カ年計画について政府の御所信を伺いたいのであります。  まず総理にお伺いいたしたいのは、何と申しましても、このような国家的な経済自立計画というものを推進をし、実施をし、遂行するということのためには、わが国の労働階級の積極的な協力というものが不可欠の条件であろうと思いまよすが、この点についての総理の御所信はいかがでありましょうか。
  142. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私も労働者諸君協力を得なければ経済の再建はできないと思っております。
  143. 岡良一

    ○岡委員 それでは総理はいかような具体的な方法によって労働階級の協力を求められるのでありますか。
  144. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はすべてよく話し合いをしたい、了解をしたい、お互いに誤解のないようにやりたいというような考え方をしております。
  145. 岡良一

    ○岡委員 しかしながら今日まで経済六カ年計画の立案の経過を見ておりますと、これはいわば経済審議庁の一角において、机の上で数字のつじつまが合わされておる、このようなでき上ったものをもってこれに協力をしろ、こういうふうな態度でありまするか。
  146. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 立案をするのには、立案をするのに長じた人たちが相談をしてやった方が便利と心得ております。
  147. 岡良一

    ○岡委員 しかしながら私は、各国において、特殊な事例かもしれませんが、国家的な建設計画においては事前に、立案の当初において労働階級の協力を求められておる事例を幾多承知しております。しかしその点が借款であったので、私はその意味において、もしこの計画について日本の労働階級が積極的な協力を惜しまないとしても、その責任の重大な一半は政府にあろうと思うのであります。それはさておきまして、この場合やはり労働階級、労働組合が職場の現場においてこの計画に協力をするということに相なって参りますると、当然労働組合の経営参加権というものが大きな前提になろうと思うのであります。それはすでに西ドイツで、アデナウアー政権でさえも労働者の経営参加権を認めて、これが西ドイツの経済復興の大きな原動力になっておることは政府の御存じの通りであろうと思う。その意味でこの経済建設計画を推進されるためには、労働組合に対して経営の参加権を認めて、現場における経営についての発言権を法律で保障する、このような御意図があるかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  148. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その問題については検討を要すべきだと思っております。
  149. 岡良一

    ○岡委員 検討を要されるということではなるまいと私は思うのであります。ぜひとも協力を実質的に得ようと言われるならば、当然労働組合の経営参加権というものは法律によってこれを保障するということなしには、この計画の円滑な発展的な推進は期待できないと私は信じております。  次にお伺いいたしたいのでありまするが、政府の計画によりますると、合理化資金のうち余剰農産物の円資金とか、あるいは世界銀行の借款等に期待するものが相当多額に上っておるようであります。一体これはどの程度の額を期待しておられるのか、あるいはまたこれらの借款なりあるいはまた円資金等の使用については、何らかの条件なり制約を受けておるのかどうか、この点経審長官から承りたいと思います。
  150. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。大体余剰農産物につきましては二百十四億円ということを目標にいたして、これを利用するということにいたしております。  それから世界銀行のことについてはまだせっかく交渉中でございますから全体の額はわかりませんが、農業開発だとか、あるいは産業方面の合理化資金に使用いたしたいということで交渉中でございます。
  151. 岡良一

    ○岡委員 私ども伝えらるところによると、鉄鋼の合理化については三百五十億、また石炭の縦坑等のためには、しかも機械をアメリカ側から輸入するということで八十八億、なお機械等は三百八十二億、このようなものが日本側の合理化資金としての期待の額の総額であるというふうに承知しておるのでありますが、数字の総額は別といたしましても、これらの合理化資金というものが、主として、あるいは鉄鋼については、八幡、富士、日本鋼管、川崎製鉄、住友金属、あるいは石炭等についても、三井を除いたほとんどの大手筋、あるいは機械産業にいたしましても、新三菱重工とかあるいは東芝だとか日立とか、三菱電機、日本電気というふうな有名な大手筋の各社の方に、これらの資金が投入されるということになっておりますが、こういう事情を考えてみますると、結局これらの円資金があるいはまた借款による資金というものが、日本の基幹産業のいわば独占化を強化するのではないかという懸念を持ちますが、この点についてそういう懸念がないというならば、ないという具体的な保障、同時にまた先ほどお尋ねいたしましたが、何らかの条件が使用のためにつくのではないかという、この点をもあわせてお答え願いたい。
  152. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。基幹産業につきましては、ただいまのごとく世界銀行の資金を使いたいという所存でございます。中小工業その他の産業につきましては、別の資金をもって充当いたしたいと思っております。従いましてこれは基幹産業なり独占企業だけを援助するわけでもございません。
  153. 岡良一

    ○岡委員 私がお尋ねしておるのは、このような円資金なりあるいは世界銀行の供与する借款を日本で使用する場合に、何らか外からの条件なり制約を日本が受けるのではないかという点です。  それから第二点としてお伺いをしておきたいのは、こういうように現実にすでにある程度まで独占的な性格を帯びているところの基幹産業に対する政府の特に重点を入れての資金の供与、投融資というものが、ますます独占を強化する懸念はないか。これはおそらく経済の大きな一つの原則的な推進の姿として起り得るのではないかということを心配するのでありますが、この点ないというならないということについての具体的な保障を承わりたいと思います。
  154. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 基幹産業につきましては、ただいまのごとく世界銀行の資金を硬いたいと思っておりますが、これに何ら制約を受けておりません。従いましてそれがいろいろ社会政策上問題があればこれは断わることができることでありますから、いろいろな点から考慮いたしまして、かくあるべきことが国のためにいいと信じた場合に実行いたしたいと思っております。
  155. 岡良一

    ○岡委員 余剰農産物の円資金については条件はありませんか。その使用目的等については、アメリカの指図を待たなければならないとか、あるいは承認を受けなければならないというような条件はついておるのでございますか。
  156. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。余剰農産物につきましては、大体大きなワクにつきましては先方了解を得る必要があります。何となればこれは低金利で長期に借りるという点もありますから。この意味におきまして小さな細目の問題につきましては自主的にやりますが、大ワクにつきましては、日本のこれこれの産業、ただいまは電気事業、電力を開発するということと農地開発ということに使いたい、こういうような大ワクをもってやっております。
  157. 岡良一

    ○岡委員 政府の産業六カ年計画を通してみて私どもが感ずることは、とにもかくにもこうして鉄鋼、電力、石炭、機械、しかもその投融資の対象がそれぞれ大手筋であるというふうな点で、この方面には非常な努力を集中しておられる。ところが日本の産業構造からみて中小企業は無視できないし、現在最も深刻ないわば危機の中にあると思うのでありますが、これに対する政府の努力が、経済六カ年計画の中においては非常に低調であると私は思うのでありまするが、この点はどういうふうに措置しておられますか。
  158. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 経済六カ年計画の根本方針としては、御承知のごとく六年後の日本の労働力に対して比較的完全な雇用関係を持続すると同時に、日本の経済を自立せしめるということが根本主眼であります。この意味におきまして、現在基幹産業を十分に発達せしめて輸出貿易を振興し、産業を合理化しなければ、これだけの雇用関係を持続することはできないのであります。その意味におきまして基幹産業に重点を置いておりますが、同時に中小工業というものは輸出産業を振興いたします上において最も重要な役割をいたしておりますから、それについてはそれぞれの方法を講ずるという考えで立案をいたしております。
  159. 岡良一

    ○岡委員 経済六カ年計画の数字の中には、中小企業向けということに関連して、特に私どもが着目すべきようなものを拝見いたさないのでありますがこの計画の中では、何か具体的に特にこういうようなことをやっていくというような対策はあるのでございますか。
  160. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答えいたします。輸出を振興いたします上においては、中小工業者というものがよく結束いたしまして、輸出貿易を増進する、こういう方針をとっております。
  161. 岡良一

    ○岡委員 長官は経済六カ年計画の目標として、これは昨日もおっしゃいましたが、完全雇用という言葉をよくお使いになりますが、御序じの通り、今日本の国には、政府の統計でも大体八百万近いいわゆる不完全就労者がおります、いわゆる潜在失業者というものがおります。六カ年後に行っても、これはそのまま引きずっておるようなかっこうであります。これがほんとうに完全な雇用の中に吸収されるということは、少しもうたわれておらない。日本における完全雇用ということをうたう限りは、この潜在失業者の大量の在存が、日本の現在の就労の実態において一番大きな特色なんです。これを吸収するめどというものが何らうたわれていない。これでは完全雇用の計画としては、きわめてずさんであると私は考えるのでありますが、その点はどう思われますか。
  162. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 現在数字に上っております数は、完全失業者のことを言っておりますが、潜在失業者というものは、お説のごとくよほど考慮しなければならぬもので、これは八百万、あるいは一千万という人もあるでしょう。この多くは中小工業あるいは農村の方に吸収されておるようでありますが、これは五人で働いていいところに六人おるとか、七人おる、こういうことになっておりますから、どちらかというと、これは収入の増加という問題が一番大きな問題だと存じまして、できるだけその方面の収入を増加するようにしていきたい、こう考えております。
  163. 岡良一

    ○岡委員 しかしそれは言うべくして期待すべくして、事実上行い得ないと思うのです。なお完全雇用計画について、相当数の増加労働力、その吸収分野、これを産業別に第一種、第二種、第三種と見ると、商業サービス部門というところに圧倒的に吸収される計画になっておる。完全雇用計画とうたわれる以上は、もっと直接的な生産の面に労働力がどんどん活用されることが望ましいのであるが、これが商業サービスの方に圧倒的に配置をされるというかっこうになっておる。この点でも政府の言われる完全雇用計画は、少くとも正しい意味の完全雇用ということからほど遠いのではないかと私は思う。サービス作業といえば、かつぎ屋もそうでありましょうし、パチンコ屋の従業員もそうでありましょうし、あるいは競輪や競馬の場外券売りだってそうだ。そんな不健全な例は別といたしましても、およそきわめて消費的な分野にこの労働力が大量に吸収される。一体そういう確信は、何を根拠にお持ちになるのでしょうか。
  164. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答えいたします。大体私どもの計画といたしまして、六カ年間に人口は七・七%ふえる。それに比較いたしまして、労働し得る人口の増加が一〇・五%、正確な数字とはちょっと違っているかもしれませんが、一〇%近くふえる、こういうことになっております。それで、これに対してできるだけ仕事を与えるためには、六カ年間に鉱工生産品を三二・五%ぐらいふやしたい。それから輸出は八八%ふやしたい、こういうのがめどでございます。そういたしますと、農業方面、原始産業の方、第一次産業の方にこれを吸収する力は、先ほども申した通り潜在失業者が相当あるのですから、よけいないのです。主として第二次産業、鉱工生産の方に持っていきたい、こう存ずるわけです。鉱工方面に持って参りますと、それの販売だとか、輸出だとか、いろいろな方面に従事する人が多くなる。こういうことで、今農業方面、第一次産業に吸収するのは、ほとんど吸収率をふやしておりません。鉱工方面には多分一八%か二〇%近くまでふやしていきたい、第三次産業の方は一八%ぐらい、こう記憶いたしております。多少数字は間違っておるかもしれませんが、さよう御承知を願いたいと思います。
  165. 岡良一

    ○岡委員 人口ではずいぶん多いように私も数字で拝見して驚いたのでありますが、これは私も一ぺん調べ直したいと思いますけれども、大体、資本主義社会で、産業の合理化をやりながら完全雇用が実現できるというのは、私は、これは経済学の常識から見たって不可能だと思うのです。それをあえてやられるということは、非常な政府の冒険か、あるいはから手形じゃないかと私は思うのです。経済学にはマシナリー・アンエンプロイメントという熟語さえできておるのでありますから、合理化していけばいくほど失業ができてくるというのは原現です。現に炭鉱でも、今度の合理化計画によって六万人の失業者が出るというので、炭鉱労働組合は非常に不安にかられておる。こういう合理化の過程において、重要な基幹産業に出てくる失業者、かなり大量に発生してくる失業者に対して、何か政府の方としても具体的な対策はあるのでしょうか。
  166. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。ただいまのお話しのごとく、従前の産業合理化は、いかにして人間の数を減らして機械にかえるかということだけが考えられておったのであります。私どもの考えております産業合理化は、かくのごとくして生産を増加し輸出を増進する、そうして従業員の絶対の数字は減らさない。ただいま申し上げました通りに、一〇%近くふえてきている人に対して、三二%の鉱工生産をふやすとか、あるいは輸出を八八%ふやすとかしなければ、産業を合理化して生産原価を安くしなければ、輸出は増進することができません。輸出を増進しなければこの国の生産をふやすことはできません。従いまして、輸出を増進するということが根本問題でありまする上におきましては、生産原価を切るためには、あるときには、今のお話しのごとく、ある程度の失業者が出るかもしれませんが、これをおそれておって実行しなければ、永久に日本の国は生きられない、私はそういう所存でございます。
  167. 岡良一

    ○岡委員 私は何もそういうことを聞いているのではないのです。今の高碕長官お話を分析するというと、第一点は、国民の総生産を高めねばならぬ高められた生産は国民の福祉に還元するのだ、これは社会主義の原理なんです。ところが後段であなたが言われることは、それが逆転している。合理化するためにはそのような犠牲もやむを得ない、それをあえて、犠牲を犠牲のままに顧みないで輸出の増進をしなければならぬと言われる。そこで私は後段の犠牲について申し上げるが、現に炭鉱労働組合の諸君にしても、今度の政府の計画による合理化計画によって六万人の失業者が出るといって、きのうおととい、われわれは陳情を受けておる。計数をそろえて、資料をもっての陳情を受けておる。こういう事態が機械方面に、電力方面に——電力方面にはないでしょうが、あちこちに起ってくるととうようなことは、これはやはり起り得る不可避な必然の悪です。これに対して具体的な対策をあなた方は用意しておられるのか、これを聞いておるのです。
  168. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。これはそのときそのときによって考えなければなりませんが、さしあたる問題といたしましては、来年度の問題でございます。現在の労働力人口は来年度は八十万ふえる。今六十何万人の失業者がおりますが、この失業者の数をふやさないでいきたい、少くともこの程度でもっていきたい、こう存ずるわけなんでございますが、八十万の増加する人で来年度はどういうふうな数字になるかと申しますと、従前のまま捨てておけば二十万人の完全失業者が増加いたしまして、今の六十何万人というものが八十何万人になるだろうと懸念しております。従いまして、この二十万をどういうふうにして吸収するかということにつきまして、明年度の方針といたしまして、失業対策の事業を起すとか、公共事業を起すとか、あるいは鉱害対策事業を起すとか、そういう方面におきまして十三万人を吸収いたしたい、こういう方針でございます。それからあとの七万人はどうするかということになりますと、これは転業対策本部というものを作りましてやっていきたいと思います。
  169. 岡良一

    ○岡委員 合理化を進められる過程において免れ得ない失業、これは必ず起る。すでに炭鉱労働組合ではこの合理化計画が推進されれば、六万の失業という不安におびえておる。これは今申された本年度は六十三万の完全失業者を持ち越しておる、来年は七十六万の労働人口がふえる、これに対して云々という計画以外に合理化によるところの失業が出てくる。これに対する対策の御用意があるかということを聞いておるのです。ないという観点に立ってのあなたの完全雇用政策なんですか。
  170. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答えを申し上げます。ただいまのお話のごとく、合理化等によって、中間的に起ります失業者につきましては、公共事業対策を作りまして、そちらの方に持って行きたいと存じます。
  171. 岡良一

    ○岡委員 公共事業にどれくらい吸収されるのですか。ということは、やはり合理化を進める過程で、失業者が相当大量に発生するという予想の上に立てておられるのですか。
  172. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申し上げます。ただいまの御質問通り、失業者が出ると思って対策を立てております。
  173. 岡良一

    ○岡委員 それでは今年度は六十三万の完全失業者を来年度まで持ち越した、なお本年度は七十六、七万の労働人口が今度はふえる。そのふえるものについては今内訳を申されて、こういうところに吸収をさせるという御計画をなされた。それ以外になお六万なら六万の失業者が炭鉱あるいは機械から出てくるかもしれない。これは公共事業に対して計画的に吸収する対策があるのかどうか。
  174. 西田隆男

    ○西田国務大臣 お答えいたします。あなたの御懸念はごもっともでございます。炭鉱の合理化促進法が国会に提案されます場合におきましては、当然最終年度までに五万ないし六万の職を離れる人が一応考えられております。従って国が立法をすることによって、当然職を失うものが考えられるような場合には、その法案を通す場合において並行して必ずその人員を他に吸収する方策をとるべきだという観点に立ちまして、経審と労働と、大蔵と通産の四省で石炭合理化法案に対する打合協議会をただいま開いて、最終的な決定を来週中にはする考えでおりますが、この問題に対しては労働省の考え方といたしましては、各地区別に職を失う人々を想定いたしまして、そしてそれにある意味における継続雇用の状態においてのある一定の職を与えて、そして予備費の中からでも予算措置をして万全を期したい、かような観点に立ってただいま連絡協議会でもって打ち合せております。最終の結論が出ました場合において、また委員会において御報告いたします。
  175. 岡良一

    ○岡委員 御説明はわかるのですが、そうすれば政府のいわゆる自負せられる完全雇用計画は、事実上完全雇用計画じゃない。経済自立のために合理化を推進され、その間に発生する失業者群に対する対策はこれから考える。ただ自然増加する六年間の労働人口に対しては、一応形の上、数字の上でつじつまの合う雇用吸収ができるということなので、完全雇用ではないと思う。しかもこの問題は経済自立計画に伴う完全雇用の中では特に解決しなければならない問題だと思う。その点は一つ十分に責任のある対策を講じていただかなければならないと思うのであります。  次に、さらに合理化によって予想されることは、いわゆる労働条件の悪化、あるいは強化という問題であります。賃金の問題あるいは労資間の問題、いろいろ問題があると思いますが、私は特に最近政府の御発表などとして、伝えられておるところを見ると、何か生産性本部とかいうお役所を作る、あるいは生産報奨制というようなものを賃金の体系の中に取り入れていきたい、こういうようなことを承わるのでありますが、この事実についてはいかがなんですか。
  176. 西田隆男

    ○西田国務大臣 お答えいたします。生産性本部と申しますのはこれは民間にできます団体でございまして、各官庁からは次官クラスの者が相談役、顧問みたいなかっこうで入っておるようでございまして、まだ総会も何も開かれておりません。近日第一回の総会が開かれるそうでありますが、この生産性本部が将来どういう方針に基いてどういうことを具体的にやっていくかということについては、まだ決定はみておりません。  第二の生産報奨制の問題でありますが、これは賃金問題の衝に当り、国民経済的な観点から労働生産性に見合う賃金を事えるようにいたしたい。すなわち、言いかえますならば、能率賃金を中心とした合理的な賃金制度を樹立するということでありまして、労働意欲の向上をはかるために、労働者の実質賃金の向上をはかるということがねらいになっておるのでございます。従って最低賃金制その他の問題とは直接な関係はございません。また最低賃金制の実施につきましては、調査会からの答申が出ておりますが、これは実効ある処置の決定と相まって、これを実施せよということになっておりまして御承知のように現在のようなデフレの進行段階におきましては、実効性ある措置の決定が非常に困難な情勢にありますので、ただいまのところただちに最低賃金制を実施するという考え方は持っておりません。
  177. 岡良一

    ○岡委員 どうも私の尋ねることをトラの巻をとられて先にお答えになったのでありますが、生産計画というものをお立てになって、これを実際に実現しようという場合には、当然最低賃金制というものが大前提だと思うのです。これもペダンティックに申し上げるわけではありませんが、現に最近のフランスのモネ・プランなんかで、最低賃金制によりあのように盛り上る労働階級の協力をかち得た。ところが政府はこの点はまだ検討中であると述べられる。そういうようなことで、しかも一方生産報奨制をとり、能率給的な要素を加味しようとするならば、そのベースとしての最低賃金制がなくてはほんとうに合理的な能率給というものは生まれないのじゃないですか。だからこの生産計画を国家的な規模で推進すればするほど、どうしてもこの最低賃金制というものは国の責任においてとるべきだ。いわんや能率給を加味しようとするならば、大前提としての最低賃金制をどうしたってとらなければならぬと私は信ずるのでありますが、重ねて労働大臣の御意見を承りたい。
  178. 西田隆男

    ○西田国務大臣 お答えいたします。理論的には全くあなたのおっしゃる通りでございます。しかしながら終戦後今日に至りますまで、日本の労働の生産性、日本における現在決定されて支払われております賃金というものに対しましても、一つの企業における能率給という問題がいまだ解決されないままに残されておりまして、現在の給与体系はいわゆる生活給という体系をとっておりますので、これを今おっしゃるように、最低賃金制をしくためには、これだけでも現実にやりますと大変な作業だと考えております。従ってその準備をするにしても相当な長期の期間を要します。日本の産業の一応の目安がつくまで、最低賃金制というものをここに決定するということは、非常に実際問題として困難があると考えておりますので、この程度で一つ了承いただきたいと思います。
  179. 岡良一

    ○岡委員 困難はあろうけれども……。ですから審議会が答申したときにも、最低賃金制については、特に賃金体系というもののずさんな分野をだけ責めて、最低賃金制を採用してほしいということで審議会は答申しておるはずだと思うのです。そのような特定な産業の調査会さえもいまだ設けられておらない。ああいう小規模な最低賃金制、必要不可避な最低賃金制の実施ということについての審議会の答申さえも、まだ労働省としてはサボタージュしておられると私は見受けておる。そういう点、ただ言を左右にして、最低賃金制は理論的には必要である、しかし採用するかどうかについては検討するということで、私は非常にあなたの御説明の良心を疑いたいと思うのですが、この問題はこの程度にいたしましよう。
  180. 牧野良三

    牧野委員長 岡さん厚生大臣がちょっと差しつかえがあるようですから、先に……。
  181. 岡良一

    ○岡委員 私はやはり労働階級の積極的な協力を得るには、まず第一に経営参加権を与えなければならぬということ、次に最低賃金制というものは、やはり当無政府はその責任において実施すべきである。  次に私は社会保障制度というものをもっと完璧なものにして、働く諸君が誇りを持って安心をして働けるという制度を作っていただきたいと思うのです。これが不可欠な第三の条件だと私は思う。先般、厚生大臣は、だれかの本会議における質問に対して、社会保障費が千億を越えた、これはまことに私のメリットであるというふうなお話かあったように私は新聞で拝見をいたしましたが、増加した重要な費目とは何と何でありますか。
  182. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 新聞の一部にも出ておったでありましようけれども、この際千六億と私が申し上げました内容について申し上げます。うんとありますけれども、早口で申し上げます。  第一に生活保護費三百四十八億三千五百万円、第二に児童保護費及び社会福祉費七十四億三千六百万円、この中には児童保護費、母子福祉費、身体障害者保護費、社会福祉諸費、災害救助費、社会福祉事業振興会に対する出資金というものも入っております。第三は遺族及び留守家族援護費四十四億三千七百万円、これは旧軍人恩給は入っておりません。それから第四に社会保険費百二十億三千八百万円、その中には社会保険国庫負担金、健康保険組合補助、国民健康保険助成費というものが入っております。第五に結核対策費百二十九億九千五百万円、これが厚生省の関係の費用でありまして、これを統計いたしますと七百十七億四千百万円になります。それから他省の関係の分が失業対策費、これは労働省の関係でありますが、二百八十八億八千四百万円、その中には失業対策費の補助、それから政府職員失業者退職手当金、失業保険費、こういうものが入りましてすべてで一千六億二千五百万円、こういうことになっております。
  183. 岡良一

    ○岡委員 大体私の調べた通りの数字でございますが、これについて私は厚生大臣に特にお考え願いたいと思うのは、一千億をこえた、なるほど数字の上ではこえておりまするけれども、それじゃ事実上項目にわけて何がふえたか、国の義務費的なものが非常にふえておる。いま一つは失業対策関係費が非常にふえておる。社会保険については十億ふえておる。失業対策費がなぜふえねばならないかという原因は、これは当然です。無準備なデフレのままに就職の門が狭くなり、首切りがあって外へほうり出される、生活保護費の適用を実質的に五%ふやす。これはやはりそれだけ大衆の生活が窮乏したということです。そのための準備費なんです。だからこういう費目がふえたということは、社会保障制度としての政府の健全な努力の結果とはいえない。むしろ日本国民大衆の生活の貧困化の一つの指標としての数字だと私は解釈するのです。その点いかがでしょう。
  184. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいま御指摘の点も相当肯繁に値する御議論であろうと私は思います。本年の一千六億をこした社会保障費のうち特に増大をしたのは、厚生省関係というよりはむしろ労働省関係の失業対策費がふえたということに大きな原因がありますけれどもしかしながらこれと並行いたしまして、やはり社会保険の経費であるとか、あるいは児童保護及び社会福祉の費用というものは相当にふえております。減りましたもので世間に多少の非難がありますものは、結核対策費が二億九千万円減っておる。これについてはいろいろな議論がありますが、これは御議論があったときに申し上げることにいたしまして、とにもかくにも社会保険費あるいは生活保護費等も充実をいたしました。先ほど私が申し上げましたのは、大蔵省が認定をいたしました千六億の費用でありまして、その中には実は公衆衛生及び医療費などは入っておらないのであります。これは厚生省の見解としては、八十二億六千六百万円の公衆衛生及び医療費というものは当然社会保障費ということに考えておりますので、厚生省の考えとしてはむしろ留守家族及び遺族援護費を落して、そうして公衆衛生及び医療費の方を入れるべきである、これを差し繰りしますと、やはり千二十億ほどになりまして、かなり進出をしておるのではないか、かように考えておる次第でございます。
  185. 岡良一

    ○岡委員 御苦心には敬意を表しますが、ただ私は、そうすれば、特に申し上げたいのは、今も柳田君が申しましたけれども、やはり現在の健康保険、これをなぜ十億しか出せなかったかということです。これはこの間の暫定予算予算委員会でも、当然予想される赤字でありますから、大蔵大臣にもお願いしておいたわけです。   〔委員長退席、中曽根委員長代理着席〕 特に政府は経済六カ年計画で雇用量を増大して完全雇用だ、一体労働者には生活の資本といえば健康なんです。国の生産の原動力は何といったって労働者の健康です。憲法二十五条ではっきり、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利がある書いてある。これがよりよきものにいとうのじゃない、より悪くなろうとするものを、完全雇用政策を掲げて進もうとする政府ならば、当然政府の責任においてこれを増しでやるくらいのことはやるべきだ。これがわずか十億に打ち切られたということは、私は柳田君とともどもに非常に遺憾に思うので、いずれ私の方としても国庫負担を明文化して、しかもその率を明確に出して、立法の府において私どもは政府案と対決をしながら国民の批判を仰ぎたいと思う。  なお三親等以外はこの適用から除外された。これも私は重大な問題だと思う。これも柳田君が指摘されましたように、現に一月十日でしたかに御発表になった民主党政策要綱には、全国民を対象とする医療保険制度を実施したいと書いてある。この間の予算委員会で現に川崎厚生大臣は私の質問に対して、そのための方法は何をせられるかと言ったら、五人未満の工場にもこれを普及したいからその調査費を計上するとはっきりおっしゃった。ところがふたをあけてみたらば、六十億の赤字だからというので三十年度からは三親等以外は保険の適用を除外する。これでは政府の公約の違反、厚生大臣のりっぱな食言だと私は思うのです。これはどう思われるのですか。現に私はここでお聞きしたお言葉なんですから……。
  186. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 先ほど社会保険全般のことに対してお答えをいたし、ただいまの御質問の点につきましては、私はこの三親等の問題についてこれを拡大するとかあるいは制限するとか言ったことはございません。これは五人未満のものに対しても、国民健康保険というものを将来は拡大したいということは申した事実はありますから、その点は御指摘の通りだとは思いますけれども、この問題は健康保険の赤字の処理につきまして新たに起きてきた問題でありまして、健康保険に対しましては十億の国庫負担と、昨年度並びに本年度を通じて六十億の長期の融資を行い得たのでありますから、従って一方においてこのような被保険者が多少の負担をしていただくということについては御了解を願えるものと思って、今保険審議会に出しておるのであります。しかし保険審議会でどういう結論が出まするか、その結果によって今度の国会に対する措置はいたしたい、かように考えておる次第であります。
  187. 岡良一

    ○岡委員 くどくどしく申し上げませんけれども、何も私はこの間の本委員会において別に三親等以下云々と申し上げたのではない。政府が全国民を対象とする健康保険をしきたい、こう公約されておられるが、具体的にどうされるかと言ったら、五人未満の事業場にも強制適用の方法を講じたい、その調査費を計上する、こう言われた。ところが今度はいよいよ赤字におびえて三親等以外は保険を適用しないということで、全国民に広げようとするどころか、逆に今度は現在適用を受けておる者さえも削って落してしまう。これでは私はやはり川崎さんの大きな黒星だと思うのですよ。しかしそれは言いません。ただ私は、この際総理にお尋ねをしたいのですが、今お聞きの通り経営参加権を認めるかどうかということについても御答弁はあいまいです。最低賃金制についても検討中、健康保険の問題にしても、労働者の健康を国がもう少し責任を明らかにして守るという対策からはむしろ逆行するわけです。経済六カ年計画の当初に当って、こういう労働者の協力を得るための基本的な条件というものが全く無視されておる。むしろまっこうから三親等以外は切り捨てるというふうなことで保険の適用の除外をする、こういうことで労働階級の上にまっこうから水をかけておる。こういうようなことで一体この経済六カ年計画に日本の労働階級が協力し得るかということです。総理大臣の所信を承りたい。
  188. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 でき得る限り労働階級の協力を得るように政治をやっていきたいと思っております。
  189. 岡良一

    ○岡委員 私は、具体的に協力を得る道が講ぜられておらないという点が、さっきからあなたの閣僚との間の問答を通じて明らかになりましたので、政府の所信をお聞きしたわけです。しかし次に移りましょう。  次は、時間が制約されておりますので、私は経済六カ年計画について、さらにアジアにおける貿易、経済、外交という点についていささかお伺いをいたしたいのですが、私は、特にまず第一点として、最近東南アジア諸国、ビルマ、インドあるいは中共もそうでしょう、あるいはインドネシアにしてもそういう傾向がかなり強く出てきたようにも承知しておるのですが、このような形で社会主義的な経済建設計画というものが発足しておる。これに対して日本のこの態勢のままでは、経済外交を推し進めていくことに、やはり一つのズレが起ってきておる事実がある。このズレをどう調和するかということは、やはり将来のこの東南アジア諸地域に対する経済、外交上の大きな課題だと思うのですが、この点は外務大臣なり経審長官なりは、いかなる根本的な方針をお持ちでしょうか。
  190. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 経済六カ年計画におきましては、初め三年の間に、東南アジア貿易の一番ガンでありますところの賠償問題が、大体解決するものだという前提で進んでおります。それで今のお話のごとく、相手国はおいおい社会主義経済をしいております関係上、貿易等も国営が行われております。つきましては、わが国の態勢もできるだけこれに適応するように窓口を一本にしたい、こういう方針で進みたいと存じております。
  191. 岡良一

    ○岡委員 窓口は一本にされても、しかし現場においての取引はやはり日本の貿易資本の自由競争にゆだねられる。フィリピンの沈船引き揚げで日本は面目を失したと聞いている。ビルマにおいても現在の経済協力には相当不信の声を聞いておるのです。あるいはあなたが面接御担任になったインドの鉄鋼合弁についてもソビエトがとってかわろう、こういう形で日本の経済提携というものが日本のそういう貿易資本の自由競争、無統制な自由競争の姿にまかしておくということで、いかに国同士では窓口を一つに締めても、現場においてはやはりそうした東南アジア諸国の経済建設計画に打ち込んで進んでおる国々とマッチしないのじゃないか、ここを私は心配するのです。これについて私どもの納得のいく何らかの、こういう対策があるというもっと具体的な保証を与えていただきたいと思う。
  192. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまお答え申しました通り輸出組合法なり、そのほかの方法をもちまして、できるだけ国内の無謀な競争を防止するような方針で進みたいと考えます。
  193. 岡良一

    ○岡委員 端的に言えば、日本の政府も社会主義の党が政権を担当するということにもなろうかと思います。それではなおこの問題についてお伺いをいたしたいのですが、政府のこの六カ年計画における国際収支を見ますると、非常に繊維製品が多い。そうして化学製品、機械製品が少いのです。三十二年度として伝えられておるものでも、やはり繊維が四億五千四百万ドル、三十五年度では五億一千六百万ドルというように繊維が王者なんです。それに対して化学製品、機械製品というようなものが三十二年度は八千二百万ドル、三十五年度では四千七百万ドル、繊維製品に比べて化学製品、機械製品の比率が非常に劣っております。やはりこれらの国々が——御存じのように非常にモノカルチュア的な経済構造をとった東南アジア諸国が独立をして、今こそ国の経済は多角工業化という道を一生懸命進んでおる。そのときにこういう繊維品というふうな消費財を中心にし、これに重点を置いたそういう貿易計画、貿易構造というものであってはならないと思うのだが、これは一体どういう根拠に基き、またどういう意図でこういう数字が出てきたのでしょうか。
  194. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまのお説はごもっともでございまして、できるだけ私どもはプラント輸出に重点を置きたい、こういう所存でございまして、それがためには、来年度におきましても輸出入銀行の資金を充実いたしまして、今後はやはりプラント及び化学工業品、こういうふうなものに重きを置いていきたいと存じております。また繊維製品におきましても従前の実績から論じまして、これも大きな重点を置いておりませんけれども、従前の実績に応じてこれを増加していきたい、こういう所存でございますから、東南アジアにおきましては特に、この国々は自分の国たちがだんだん自給政策をとり、消費物資のごときはやはり自分たちの力で作りたい、こういう方針で進んでおるのでありますから、これに対しましてはできるだけ協力して、プラント輸出をもって充実をいたしたい、こういう所存でございます。
  195. 岡良一

    ○岡委員 そうすると経審長官の御説と、そうして六カ年計画に現われた国際収支の数字の上の御計画とは食い違うじゃありませんか。今申しましたように、繊維はもう圧倒的に多い。それに比べては六分の一、七分の一というのがいわゆるプラント輸出の内容を占める化学、機械製品だ。こういうことではあなたの御説と計画とは全然ずれてしまっているじゃありませんか。
  196. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申します。ただいまお答え申しました通りに、できるだけプラント輸出に重点を置いていきたいと思っておりますが、これは必ずしもすぐに実行に移すことは困難だと論じまして、従前の経験からいたしまして、従前の実績を基礎といたしまして、繊維製品も相当増加をいたしていきたい、こういう所存でございます。
  197. 岡良一

    ○岡委員 三十五年度の計画数字を見ても繊維製品が全く機械製品や化学製品に比べては問題にならないほど多い。そのことを私は申し上げておるのです。それはここ一年、二年の計画数字だというのじゃないのですから、経済自立六カ年計画の最終年次において、なおかつまだ三十二年よりも多いぐらいな数字が出ております。こういうことでは、この経済六カ年計画が国際収支のバランスをとるといわれますけれども、これが一体可能なのかどうかということについて私は非常な疑問を持つわけなんです。  なおそれでは関連してお尋ねいたしまするが、長官は先般もアジア・アフリカ会議に御出席になって、新聞で見ると、日本代表はあの会議の経済委員会に対して、東南アジア諸国の特産物の取引の安定に努力をするという旨の提案をなされたということが出ておりますが、それは事実でありまするか。
  198. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お説のごとく東南アジア諸国は、大体国際収支計算において輸出をいたしておりますのは、原料品がおもな物でございまして、これが従前中間賛助業者のためにいろいろ策略を講じられて、高くなったり安くなったりして非常に困っておる。これは私どもといたしましても、できるだけ取引を単純化することによって、この価格を安定することに努力いたしたい、こういうことで、われわれはその意見で進んだのであります。
  199. 中曽根康弘

    ○中曽根委員長代理 岡さんに申し上げますが、時間があと五分くらいになりましたから、結論をお急ぎください。
  200. 岡良一

    ○岡委員 それでは私は、政府の政策として非常な矛盾を感ずるのです。一方では、農作物に依存をしている、原料に依存をしている東南アジア諸国の特産物の取引の安定、価格の安定に努力したい、こうアジア・アフリカ会議という公開の席で東南アジア諸国の代表の前で提案しておる。一方では、アメリカの余剰農産物を買い入れておられる。これは明らかに大きな矛盾ではありませんか。現にタイにしたってビルマにしたって、去年からおととしにかけての豊作は御存じの通りなのです。百万トンからの過剰米を抱えて弱っておると伝えられておる。カンボジア、ヴェトナムにしても、一帯が豊作でしょう。そういうときに大量な余剰農産物をアメリカから買い入れるという協定日本は進める。これでは、これら東南アジア諸国の特産物の価格や取引の安定に努力をするどころか、ますます価格を引き下げる、こういう結果になるではありませんか。これは明らかに非常に矛盾した政策であると私は思いますが、これは経審長官、どう思いますか。
  201. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 余剰農産物を受け入れますことにつきましては、全く別途の観点からいたしておりますが、しかしそれもただいま御指摘のごとく、東南アジア諸国に対して非常な迷惑がかかるということは感じておりません。その範囲において実行いたしております。
  202. 岡良一

    ○岡委員 私の聞いております情報によれば、現にタイ国では、日本アメリカから余剰農産物を買い入れるならば、日本商品は買わないとバンコックの何か有力な新聞が社説を誓いておるということも私は開いておるのです。ビルマのごときも、やはりアメリカの余剰農産物を売ろうという政策に対しては、まっこうから反対をしておる。これは現地に行かれた長官としてはよくお聞きだろうと思う。ところが日本はそれを買おうという。これは、やはり東南アジア諸国の世論というものをわれわれは考えなければならぬと思うのですが、政策的には、ドル地域からポンド地域の方へ貿易の大転換をやろうというので経済六カ年計画を立てながら、その当初において、東南アジア諸国の不信を買う日本の貿易政策というようなことでは、これはやはり羊頭を掲げて狗肉を売るというか、まことに矛盾した政策だと私は思うのです。どこのところで東南アジア諸国に打撃を与えないとおっしゃるのでしょう。
  203. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お答え申します。ただいまのような見方もあるでしょう。これは事実でございましょう。けれども、私どもはそれをよく話し合いをつけまして——御心配になるほどそんなに悪い感情を持っていないと私は存じております。
  204. 岡良一

    ○岡委員 私は、今現地の声が悪い感じを持っておるという事実を申し上げて政府の反省を求めたわけなのです。だから悪い感じを持っておらないとただ主観的に自己欺瞞をされるということでは、この事実を押えることはできないのです。十分御反省を願いたいと私は思うのです。  次に総理にお伺いいたしますが、自主独立の平和外交ということを独立の条件として御主張になる。そこで私どもは、アメリカの世界政策というものを吟味しなければならなくなるわけです。これに日本協力を惜しまない、この協力を基調とするということになれば、当然アメリカの世界政策というものを吟味しなければならぬ。もちろんこれを一々事こまかに論ずるということでは、とても時間が許しませんので、簡潔に私はお尋ねをいたしますが、アメリカの世界政策の根本は、今日の段階においては、いわゆる力による平和の維持である。これがアメリカの世界政策の根本の一つであると私は思うのです。総理はいかがにお考えでございますか。
  205. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 アメリカはやはり平和を欲しているのでありますが、その平和目的をいかにして達せんとするか。あなたのおっしゃる通りに、アメリカの現在考えておるところは力による平和だと思います。
  206. 岡良一

    ○岡委員 日本が対米協力を基調とする、しかもアメリカは力によって平和の維持をはかろうとする建前に現段階はおるとすれば、日本は対米協力としては、力による平和の維持というアメリカの世界政策に、いかなる具体的な方法によって協力をなさろうとするのか、この点を承わりたい。
  207. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 自衛力の増強によってアメリカと協調するのが適当だと思っております。
  208. 岡良一

    ○岡委員 それでは安保条約、行政協定、MSA協定、またこれらを通じて防衛力を増強する、これが結局政府の対米協力の具体的な政策の裏づけである、こうおっしゃるのでございますか。
  209. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そうです。
  210. 岡良一

    ○岡委員 それでは、こういう批判がありますので、総理の御見解を伺いたい。それはかって長い間英連邦の代表として対日理事会に携わっておられたマクマホン・ボール氏の話ですが、日本で最近公刊されているあの人の著書を見ると、結局アメリカの対日政策というものは、日本を反共の軍事基地化しようとすることに尽きるのである、これが自分の八年間対日理事会に理事として連なっておっての結論であるという。しかも去年でしたか、おととしの暮れでしたか、マクマホン・ボール氏は日本の大新聞を通じて、日本国民にアピールを寄せておられる。その中で依然として、アメリカの対日政策は日本アメリカの反共軍事基地化しようとする政策であるというこの考えを変える必要を認めないとおっしゃっておる。マクマホン・ボール氏のこの見解に対して、総理は同調なさいますか。
  211. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はアメリカがそこまで考えてはいないと思います。とにかくアメリカは、日本を無防備にしておいて、防備なきを奇貨として日本に侵略軍が出入するというような危険だけは防ぎたいと思う考えだろうと思います。
  212. 岡良一

    ○岡委員 私は、事実で総理にいま一度御見解を伺いたいと思うのですが、朝鮮動乱が勃発した、そこでマッカーサー司令官から一片の書簡がきて、七万五千の警察予備隊が生れた、そして安全保障条約、行政協定、十一万数千の保安隊ができた、MSA協定、そして自衛隊、防衛力の漸増計画、こういうふうに常にアメリカのイニシァチブのもとに次々と日本の防衛力というものが作られていっておる。最近は、総理のあのいわゆる三月の原爆言明のようなものに対しても、また共産圏に対する政府の考え方の食い違いなどについても、海を一つ隔てた向うでラジオや新聞で日本を相当批判しておる。これらの諸国にしたところで、何も憲法違反だからといってあなた方の防衛力増強を批判しておるわけではない。事実やはり自国への侵略に対する脅威を感じて批判をしておる。しかも総理は、これらの国々には侵略の意図はないものと認めると言っておられる。であるからして、この一連の事実を見た場合に、やはりこれは憲法問題というふうなことを越えて、すでに日本が反共の防衛基地として、アメリカの政策のまにまに基地化されてきたという事実は否定できないと私は思う。それはそれといたしまして、外務大臣は先般、今総理もおっしゃいましたが、安全保障条約あるいは行政協定は改訂する必要はあるが、今はその時期ではないという。その今はその時期ではないというのは、どういう理由に基くのでございますか、総理から御返事をいただきたいと思います。
  213. 中曽根康弘

    ○中曽根委員長代理 外務大臣にお尋ねですか。
  214. 岡良一

    ○岡委員 外務大臣でもいいです。
  215. 重光葵

    ○重光国務大臣 私のさように申しました理由は、それらの防衛問題は、日本を中心として見ることはむろんでありますけれども、これは世界の情勢によって決定しなければならぬ問題だと思っております。そしてその世界の情勢の変化ということ、またまた防衛問題に変化を与え得るだけの世界情勢の変化、また好転と申しますか、そういう時期を持つことが外交としては穏当なしかるべきやり方である、こう思ってその時期を待ちたい、こう考えております。
  216. 岡良一

    ○岡委員 それで、なぜその時期じゃないのかということをお尋ねしておるのです。私は、むしろ今がその時期ではないかとさえも申し上げたいのです。先般来各委員からも申し上げましたように、アジア・アフリカ開義では平和十原則というものが採用された。これは尊重するということを総理も言明されておる。あの中の第五番目にはそれぞれ独立国は個別的、集団的な防衛の権利はあるが、しかし大国の利益に奉仕したり他国を脅かしてはならないということを強くうたっておる。このような原理そのもの、原則そのものにしたって、何も新しいものじゃない。おそらく外務大臣に申し上げるまでもなく、こういう国際法的な原則などというものは、クラシックなもう十八世紀の原則なんです。平和三原則にしたって、平和十原則にしたってそうです。ただそういうことが今言われなければならないというところにアジアの現段階がある。アジアの不幸がある。しかもこの不幸を脱却しようとするアジアがこのことを言い切ったというのが、アジア・アフリカ会議における諸コミュニケだと私は思う。これを尊重すると言われるならば、大国の利益に奉仕して、他国を脅かすおそれのある日本の防衛に関する外国との諸協定、諸条約などというものについては、今こそこれを改訂をする、ここまで踏み切られるのが当然ではないかと私は思うのです。重ねて外務大臣の御所見を承りたい。
  217. 重光葵

    ○重光国務大臣 御意見は十分に承わりました。しかし先ほども言われる通りに、今では力の平和だというようなことも言われておる。これは単にアメリカだけが言うのじゃないのです。ソ連の政策もそういうことになっておる。さような場合に、世界の政治家がいろいろな会合で集まって、そうして平和の方向に世界を向けようとしてしきりに努力をいたしております現状は、お話通り認めざるを得ません。たいへんけっこうなことだと思いますけれども、そういう傾向の少し熟するのを待つことが最も防衛問題については安全な方法だ、こう考えておるのは当然だと思います。
  218. 中曽根康弘

    ○中曽根委員長代理 岡さん、既定の時間を五分も経過しました。なるたけ縮めて下さい。あと何分くらいかかりますか。
  219. 岡良一

    ○岡委員 五分ということにいたしましよう。
  220. 中曽根康弘

    ○中曽根委員長代理 ではどうぞ。
  221. 岡良一

    ○岡委員 それでは重ねてお伺いをいたしますが、安全保障条約や行政協定の改訂の意思はあるが、今その時期じゃない。しかし私は、日本の一連の防衛の漸増の過程というものを見ると、日本の防衛努力というものはMSA協定の受諾で大きく性格が一変しておると思うのです。これによって完全に安保条約への期待は義務になってしまっておる。従って私は、安保条約や行政協定、さらにMSA協定というものに重大な改訂を加える、こういうところまで行かなければ、われわれはこの義務から脱却できないのではないか、こう思うのですが、MSA協定の改訂についてどう思われますか。
  222. 重光葵

    ○重光国務大臣 MSA協定日本の防衛を充実する一つの手段になっておることは御承知の通りであります。私は今日の場合、平和を守るために、防衛力の漸増ということはまだまだやむを得ざる段階にある、こう考えております。しかし今お話のように、でき得るだけ平和の方向に踏み出していきたい、こういう方針は、全く私はその御趣旨に御同感でございます。しかしながら今申し上げました通りに、まだそこまでの時期に及んでいないという判断でございまして、MSAの協定のごときも、これを今すぐ改訂するの時期ではない、こういう判断をいたしております。
  223. 岡良一

    ○岡委員 それでは三点だけお伺いをいたしたいと思いますが、MSA協定をアジアで完全に受諾している国は、私から申し上げるまでもなく大韓民国、中華民国、タイ、フィリピン、この四カ国ですね。あとはみんな有償で兵器等も供与を受けております。しかもアジアでは、よく皆さんが自由主義陣営と言われるが、自由主義陣営と言われるもの、アジアのいわゆるアメリカ的カテゴリーにおける自由世界というのは、この大韓民国、中華民国、タイ、フィリピン、日本、これだけしかない。しかもアジア・アフリカ会議で、私ども新聞から察するに、このアジアのコロンボ・グループを中心とする平和勢力というもの、第三勢力地域と申しましょうか、このコロンボ・グループを中心とするものと共産圏との歩み寄りというものは非常に強化されたのではないかということをおそれるのです。おそれるというよりも、事実強化されたのではないかと思う。周恩来の態度のごときを見ましても、きのうも高碕長官お話になった。もう共産主義者としてよりも平和主義者としてふるまっているというが、こういうことが共産圏と中立国というものの関係、提携というものを非常に緊密化しているのではないか。そういうようなアジアの生きた動き——外務大臣は外交は動くものだと言われるが、アジアの生きた外交の中で、コロボ・グループなり共産圏というものがだんだん提携を緊密化していこうとしておる。いこうとすればするほど、今外務大臣が御説明になった通りの形で、日本が防衛努力をやりながらMSAに縛られていくという姿は、だんだんとこれらの中立国、共産圏、しかも提携を緊密化しようとするグループから孤立してくるのではないか、この心配を私は持つのです。これは日本の東南アジア外交、アジア外交の炭木的な問題の一つではないかと思うのですが、この点外務大臣はいかがお考えになりますか。
  224. 重光葵

    ○重光国務大臣 バンドン会議あたりで、非常にアジアの平和安定の方向に空気が進んできた、こういうことは私は非常に喜ばしいことだと思います。そしてただにある一部分のグループだけじゃない、アジア全体、またアジア、アフリカの諸国が互いに提携し合い理解し合うというふうな空気が起ったことは、事実でございます。これは大へんけっこうなことだと思います。そこで今お話のように、共産圏の国々とコロンボ・グループでございますか、その国とが密接な関係を持って、そしてアメリカのもとにおける民主主義のグループと申されましたが、それが孤立する。日本もその一員として孤立するというふうな傾向にはないと私は思います。またさようなふうなことになりますれば、これはアジアの平和、安定というバンドン会議全体の空気とは違う方向に向くわけでありますから、私は努めてさようなグループ、グループの何でなく、そして全体的に各国との間に親善関係了解を進めていくことがいいことである、またそうやらなければならぬ、こう考えております。
  225. 岡良一

    ○岡委員 実は時間がないので、外務大臣の御答弁も簡潔にお願いしたいと思います。しかし簡潔にと申しながら、私からまたくどくどしく申し上げるようですが、私は確かにこのコロンボ・グループ諸国、それから自由主義諸国というもの、そうしてまた共産圏というものとのブロック的な対立はいなめないと思う。現にアメリカと相互防衛条約を結んでおる国々、MSAを完全に受諾しておる国々というようなブロックがあるわけです。かと思えば、これに対立をして、むしろ中共と平和五原則で手を握った国がある。インドもあれば、ビルマもある。おそらくセイロンだって、インドネシアだって、そういう慈恵があるのではないか。しかもこれらの諸国は有償で兵器供与を受けており、ひもつきを断わっておる。しかもアジア・アフリカ会議における大きな立役者は、舞台裏でも表でもやはり周恩来とネールだと思う。だからそういう形で、アメリカに対して政策的にも大きな対立をする中共を承認しておる。防衛条約においてしかり、MSA協定においてしかり、このようにはっきり対立しておる。こういうブロック、しかも中立ブロックと共産樹というものの歩み寄りが強くなれば、どうしたって置いてきぼりを食う。しかも国際連合の統計を見ると、これらの自由諸国というものは、全アジアで面積で八%、人口で一八%、それに対して中立国が面積で三八%、人口で三六%、共産圏が五四%に四六%、さように人口においても、面積においても、資源においても非常に大きな力を持っておる中立国と共産圏がだんだんと近寄ろうとしておる。これに対して日本が、いつまでもMSAに縛られ、いつまでも中華民国との政府承認関係に縛られ、いつまでも日米相互防衛協定に縛られ、日米安全保障条約に縛られるということは、求めてアジアにおいて日本が孤立化することになるのではないか。これは、日本の東南アジア外交に対する根本的な問題として非常に大きな問題であろうと私は思うのです。重ねて外務大臣の御所見を承わりたいと思います。
  226. 中曽根康弘

    ○中曽根委員長代理 簡潔に御答弁願います。
  227. 重光葵

    ○重光国務大臣 私はごく簡潔に御答弁申し上げます。私はバンドン会議によってそれらの意味の対立は減じたと考えております。そうしてそれがいい方向であったと考えます。またいい方向に進めていかなければならぬと考えております。
  228. 中曽根康弘

    ○中曽根委員長代理 岡君、それではこの一問だけで……。
  229. 岡良一

    ○岡委員 私はそれでは重ねてお尋ねはいたしませんが、少くとも以上お尋ね申し上げたところで、政府の御所見はことごとく納得できませんでした。経済六カ年計画についても、労働階級の協力を得るということが何としても大前提であろうと思う。これに対しては、その重要な前提条件である、あるいは経営の参加権についても、最低賃金制についても、あるいはその健康を守るとりでである健康保険についても、むしろかえって労働階級にまっこうから挑戦をされるような社会保障の逆行をあえてされる。あるいは日本の東南アジア外交を見ても、経済外交の面できわめてずさんである。アジア諸国の実態——独立のかけ声のもとに経済自立のために工業を興し、自国内産業を盛んにし、経済外交を強力に展開しようとするアジア諸国の実態に対して、日本ほんとうにアジアの一員となって協力するという気持がないように私は思われる。それはアジアにおける力関係と、今申し上げたようなブロック別に見ても、それに対する見方が私は違う。  最後に私がお願いしたいことは、特にアジア外交においては、かっては日本は英国資本主義の番犬となって日英同盟を結んだ。あるいはまた日本の資本主義の戦争への協力者としてあの日独伊防共協定というものがあった。今日本がまた太平洋というあの遠い距離を隔てたアメリカとの間におけるあらゆる条約協定によって、いろいろな意味で義務と拘束を受け、そしてアジアの孤児となるというようなことでは、日本の生きる道はないと思う。私は中共問題についても伺いたかったのであるが、日本の将来というものは、すなおに考えて、実に私は端倪すべからざるものがあると思う。これからは、実に中共の経済建設というものが日本の運命を決する上において大きな意義があると思う。われわれはこういう問題をすなおに、ほんとうに白紙の心境において考えて、まじめにお国の将来、お国の平和と安全な道を求めることについて政府の誠意が足らぬじゃないかという点を、以上の質問を通じてしみじみと感じたことを遺憾に思う次第であります。  これで私の質問を終ります。
  230. 中曽根康弘

    ○中曽根委員長代理 川上貫一君。
  231. 川上貫一

    ○川上委員 私は主として総理大臣、外務大臣にお尋ねいたしたいと思うのでありますが、私の時間は一時間であります。時間が非常に短かいので、簡潔に私も聞きますから、簡潔に御答弁をお願いしたいと思う。  まず第一にお聞きしたいことは、政府がアメリカ折衝をなさいました防衛分担金の削減の問題、参議院で外務大臣は、これは協定第二十五条b項による定期的検討であるというふうに答えておられますので、その通りだと考えておるのでありますが、ここでもう一度その点についてお伺いいたしたいのであります。この交渉行政協定第二十五条をもととした交渉でありましょうか、どうであろうかという点であります。
  232. 重光葵

    ○重光国務大臣 御質問の点がよく聞えませんでしたから、もう一度……。
  233. 川上貫一

    ○川上委員 今度の防衛分担金の対米交渉は、行政協定二十五条の規定をもとにした交渉でありますかという点であります。
  234. 重光葵

    ○重光国務大臣 全く行政協定によってやった交渉であります。
  235. 川上貫一

    ○川上委員 そういたしますと、ちょっと疑問が起るのです。このたびのその取りきめが行政協定二十五条b項による定期的再検討の結果による取りきめだという御答弁でありますが、そうであるとすれば、二十五条b項によると、新しい取りきめが行われるまでは一億五千五百万ドルを分担するという規定になっておるのであります。ところが今回の取りきめもまた二十五条による取りきめであります。ところが先日来鳩山総理は、また外務大臣も、これは鳩山内閣限りの約束であって、日本のすべての政府を義務づけるものではない、こう言うておられる。そうすると、二十五条そのものが問題になると私は思う。なぜなら、今度の政府の取りきめは二十五条に基く取りきめであります。それが鳩山内閣だけの義務づけにすぎないということになると、二十五条そのものがこれは歴代内閣を義務づけるものじゃないということになる。そう解釈しなければ理論上解釈できない。二十五条はすべての政府を義務づけるが、このたびの取りきめは鳩山内閣だけしか義務づけぬというのは、これはどういう論拠によるのであるか、この点であります。
  236. 重光葵

    ○重光国務大臣 この二十五条の趣旨によって、今回日米の間に防衛分担金の交渉をやりまして、そして共同声明を発したのであります。その共同声明が条約であるかないかという問題が起ったと思います。これは条約の新しい契約ではなくして、二十五条の趣旨によってできた行政的の措置である、こう申し述べたわけであります。すなわち新しい契約としてこれを取り扱う趣旨でないということを申したわけでございます。
  237. 川上貫一

    ○川上委員 そういたしますと今度の取りきめできめられました防衛分担金が、今度の共同声明では一億六百万ドルになると思うのであります。つまり減額を差し引きまして一億六百万ドルというものは、今政府がかりにかわるとします。そうしたらこれは次の政府は一向義務を負わないでもよいのであるかどうか。そのときには日本が負うべき義務は分担金として幾らになるのでありますか。
  238. 重光葵

    ○重光国務大臣 この約束は、内閣がかわってもあとの内閣において尊重する、こういうことを期待をいたしておる次第でございます。
  239. 川上貫一

    ○川上委員 そんな期待など聞いておるのじゃない。法的の問題を私は聞いておる。法理上、それから条約上、これを聞いておるのでありまして、期待や主観を聞いておるのじゃない。
  240. 重光葵

    ○重光国務大臣 その共同声明のうちにおいて、政策の表明とはっきり政府との間に合意したという部分がございます。合意した部分においては、むろん政府として将来もこれを合意の通りに行うということになっておるわけであります。
  241. 川上貫一

    ○川上委員 きわめてわからぬのです。あの共同声明というものは、鳩山内閣だけの約束であって、日本国政府それ自体のものじゃないというのが今までの答弁です。ところが政府の御答弁では、このたびの折衝は、行政協定二十五条b項による折衝であるというておられる。そうすると、行政協定二十五条は、行政協定によってきめられた定期的の取りきめなんです。この定期的取りきめというものは、その取りきめた間だけの義務であって二十五条というものはすべての内閣を義務づける点、これはどんなにしてもりくつがつかぬ、簡単に言えばこうです。このたびの政府の折衝は、二十五条b項によるものではない。ほかの形で折衝したのであるから、政府は鳩山政府だけの約束である、こういうか。もしくは二十五条b項による定期的取りきめでありますから、共同声明による分担金その他は、歴代内閣を拘束するのでありますか、この二つしか答えがない。その答えが出ていない、これはどっちなんです。
  242. 重光葵

    ○重光国務大臣 分担金の交渉、合意は、二十五条の趣旨によってやったことを繰り返して申し上げます。分担金の削減については、両政府が合意した内容に関する共同の意思表示であるわけであります。しかしそれによってただちに両国間に一定の権利義務が新たに発生して、拘束力を持つというものではなくして、その意味で法律的文章ではない。しかしながら政府としては、右声明に掲げられたる事項を実現する政治的責任を有することは言うまでもないことである、こういうのが解釈であります。
  243. 川上貫一

    ○川上委員 そこでいよいよわからなくなる。そうするとこの一億削減された結果の六百万ドルというものは、あれは債務なのですか何ですか、この金額。
  244. 重光葵

    ○重光国務大臣 合意によって約束したことでございます。
  245. 川上貫一

    ○川上委員 そうするとはっきりさしておきたいことですが、国が責任を負うた債務ではない。行政協定二十五条b項によった債権等による結果の取りきめであるにもかかわらず、国はこの一億六百万ドルは債務じゃない、これは鳩山内閣の約束だ、こういう御答弁でありますが、行政協定一億五千五百万ドルは、それならば債務でありましょうか不債務でありますか。
  246. 重光葵

    ○重光国務大臣 それは支払いを約束した額でございます。
  247. 川上貫一

    ○川上委員 そうすればここではっきりお伺いしておきますが、この行政協定二十五条による一億五千五百万ドルというものは、国会において全額削減してもよろしいという、国会には審議権があるという結果になると思いますがそれでよろしゅうございますか。
  248. 重光葵

    ○重光国務大臣 これは国家と国家との約束でありますから、それは約束に反することになります。
  249. 川上貫一

    ○川上委員 政府の答弁ならば、政府と政府の約束であって、国会が義務を負えません。もし義務を負うというならば、このたびの共同声明、こんな結果出たところの防衛分担金一億六百万ドルは義務を負わなければならぬ。これは義務を負うておらぬ。鳩山内閣だけの約束だ。そうすれば今一億五千五百万ドルは国家が義務を負うている負債、一億六百万ドルは債務じゃない、これはどういうことです。そういうことになっている。
  250. 重光葵

    ○重光国務大臣 私は国内法的な債務であるとか債務でないということは申しません。これは支払うということを約束した額でございます。その額は支払うことにしなければなりません。
  251. 川上貫一

    ○川上委員 そこまではわかるのです。それは鳩山内閣が約束したのでしょう、何も国会を拘束せんでしょう。そうすれば全額削減する、この審議権が国会にはあるじゃありませんか。これはどういうことなのです。徳義の問題は別ですが、国会の審議権の上で分担金一億六百万ドルは全額削減することが可能であるという結論にならなければ、一つも理屈にならぬ。
  252. 重光葵

    ○重光国務大臣 もしこの約束を国会において承認されなければ、この削減はないことになります。
  253. 川上貫一

    ○川上委員 そうすれば今国が負担しなければならぬ願はことしはなんぼなんです。政府の約束は別にして、日本国家が負担しなければならぬ額は、一億五千五百万ドルなのか一億六百万ドルなのか、どちらなのか。
  254. 重光葵

    ○重光国務大臣 国家として負担しておるものは、今度は予算に提出している額面の通りであります。
  255. 川上貫一

    ○川上委員 この答弁はちとむちゃです。共同声明鳩山内閣だけの約束であって、ほかのものを拘束しない。たとえば今政府がかわるとする、これは拘束しないというのです、これは明らかに国が負うた義務でないという証拠なんです。鳩山内閣だけの負うた義務なのです。その義務を国会に押しつけるわけにはいかない。
  256. 重光葵

    ○重光国務大臣 私の見解は先ほど説明した通りであります。
  257. 川上貫一

    ○川上委員 見解にならぬのです。そうすれば一億五千五百万ドルというものはどういうわけで国の債務でありますか。国が出さなければならぬ義務がどこから出てくるのですか。
  258. 重光葵

    ○重光国務大臣 条約で約束した額であるということは、たびたび申した通りであります。
  259. 川上貫一

    ○川上委員 行政協定は条約でありますか。
  260. 重光葵

    ○重光国務大臣 広義の条約であります。この条約はわれわれは守る建前を持っております。これは当然のことだと思います。
  261. 川上貫一

    ○川上委員 そうすると一億五千五百万ドルというものは、憲法八十五条の国会の審議権とどういう関係になるか。
  262. 重光葵

    ○重光国務大臣 私はさような問題は、もう過去において解決しておる問題だと思う。そして大きな意味の、広義の条約においては、国会の承認を経なければならぬものもあり、また国会の承認を経ずして効力を発生するものもあるわけであります。おのおのその何によって、行政協定は効力を発生しておるのであります。
  263. 川上貫一

    ○川上委員 一億五千五百万ドルというものは、二十五条に書いてありますけれども、これは国会の承認を経てないのです。行政協定全体がないのです。憲法八十五条によれば、国の債務に属するものは国会の承認を経なければならぬのです。そうすると一億五千五百万ドルというものは、いつ国の義務になったのかということです。
  264. 重光葵

    ○重光国務大臣 行政協定が効力を発生したときであります。
  265. 川上貫一

    ○川上委員 二十七条には、予算に必要なものは予算に出すとあるのです。行政協定二十七条に、法律が必要なものは法律をつくるとあるのです。ところがこれは債務に属する問題であって、条約ならば一億五千五百万ドルは国の義務という、こういう解釈になるのです。そうすると一億五千五百万ドルというものを国の義務にするためには、憲法八十五条によって国会の承認を経なければならぬのです。この関係はどうなるかということを聞いておるのです。
  266. 重光葵

    ○重光国務大臣 それは行政協定を扱ったときに解決しておる問題だと思います。そのときの当局者に聞いていただかなければならぬと思います。
  267. 川上貫一

    ○川上委員 そういう答弁というものは驚くべき答弁です。その時分にきまっていると言いますが、私はその時分に国会議員じゃありません。われわれは何も了承しておりません。それからその時分の当局に聞けというが、それはむちゃです。今の政府がこの日本国民の政府としてここにおるのです。この政府の見解を言わなければ、元の政府に聞けなんというたら、第一にこれはもう吉田さんが怒ってしまう、そんな答弁というものはないです。
  268. 中曽根康弘

    ○中曽根委員長代理 法制的解釈ですから、法制局長官答弁させます。
  269. 林修三

    ○林(修)政府委員 ただいまの点お答えいたしますが、行政協定は、御承知のように、安全保障条約第三条に基きましたものでございまして、形式的には安全保障条約第三条が国会の承認を得たことによりまして、行政協定も広い意味の条約として国会を拘束するものと考えております。ただし二十五条の点、その他この行政協定日本として義務を履行すべきものにつきまして、国会の議決を要する予算の点あるいは立法の点、これは御指摘のように、二十七条によりまして、日本としても国会の議決を経あるいは承認を経る手続をとることになっております。従いまして一億五千五百万ドルは、国としては一応の義務でございましょうが、毎年度国会の議決を経た上でこれを支出する、こういうかっこうになっていると思います。ただいまの一億六百万ドルでございますが、これは二十五条二項のbによりまして一応定期的再検討の結果、両国政府が一応合意に達した点でございますが、もちろんこれにつきましては、国会の御議決を経た上で二十五条の二項のbの補充的な取りきめが行われた、かように思っております。
  270. 川上貫一

    ○川上委員 わかりました。事態は非常に明らかになったと思うのです。そういたしますと、二十五条の一億五千五百万ドルという防衛分担金の額は、国会の承認を経なければ国民にとっては何らの義務はない。政府と政府の約束であるけれども国会は責任を負わないのです。従って国会には全額削除の審議権があるという結論になる。これは質問しません。こう言われたのでありますから、さように議事録に残して置いていただきたい。  これは私は非常に重大な政府は発言をなさったと思いますので、今後この問題についてはいろいろ各党の委員の皆さんから御意見が出るであろうと思いますが、そういたしますと、このたびの共同声明は、二十五条b項によったものであるにもかかわらず、鳩山内閣だけの責任である、こうなりますと、かつての岡崎・ラスク会談の公式議事録というものがあります。この公式議事録は、日本政府に対して拘束力を持つものではなく、吉田内閣とアメリカ政府との約束である、こう解釈してよろしゅうございますか。
  271. 林修三

    ○林(修)政府委員 先日日米共同声明についてお答えがありました点でございますが、あのときに私伺っておりましたが、あのときの御質疑あるいはお答えは、日米共同声明の中に、両国政府の意向と方針を表明した部分が後段についております。いわゆる三十一年度以降のものであります。これについての御質問とお答えと私たち了承しておったのでございます。これはまさにこういう共同声明をしたときの政府の方針及び意向を表明したものと思っております。それで、あの中には三十年度の防衛支出金についての合憲に達した点がございます。これはまさに政府として合意をした点で、これを国会の御承認を得て実現に移すという責任を負っておるものと思います。で、先ほど御質問の岡崎・ラスク交換公文——議事録、これはもちろんおのおの政府を代表してやったものである、かように思います。結局これは条約の一応の立法当時における解釈として相当重きをなす文章だ、かように考えるわけであります。  それから先ほどちょっとお答えいたしました点で、二十五条のb項の一億五千五百万ドルでございますが、これはまさにあの行政協定の性質からいえば、国の義務でございます。国の義務でございますが、二十七条によりまして、毎年度国会の議決を経てやることになっておりまして、もちろん国会としても、この条約上の義務については十分御尊重に相なること、かように了解されるものでございます。
  272. 川上貫一

    ○川上委員 国会がその義務を了解するんじゃなんじゃいうことは、あなたが言うことは要らぬのです。その指図を国会にするものじゃない。国会にはこれを削減する審議権があるということをはっきり言うた。だから国会でちいと考えてみいというような、こんなことは、政府委員なんか答弁することは要らぬ。要らぬことを言うておる。それといま一つは、今の答弁は違うのです。共同声明そのものが、鳩山内閣限りの約束であると答弁になっておる。何も分担金の問題だけをはねたとか何とかいう問題じゃない。そこでこの問題は、御説明されぬでも、前の議事録ときょうの答弁で私は明らかになったと思うのでありますが、それならば岡崎・ラスク会談が、なぜ日本のすべての政府を拘束するかということを聞いておる。共同声明とどこが違うかということを聞いておる。共同声明は二十五条b項によるもの、岡崎・ラスク会談も行政協定によるもの、どこが違うのか。この点で、これは外務大臣にお聞きしたい。
  273. 重光葵

    ○重光国務大臣 私はかような約束は、そのとき限りのものにしないで、お互いにこれを尊重しなければならぬ、こう考えております。
  274. 川上貫一

    ○川上委員 それは政府としての御答弁じゃないです。尊重する、せぬということは道徳上の問題です。私は法理論を聞いておる。道徳を聞いておるのじゃないのです。どういう理由で共同声明鳩山内閣だけのものであり、岡崎・ラスク会談は全政府を拘束するかという、この法的根拠を聞いておる。これは外務大臣にお聞きします。
  275. 中曽根康弘

    ○中曽根委員長代理 ただいまの御質問は、法制的解釈でありますから、法制局長官答弁させます。
  276. 林修三

    ○林(修)政府委員 岡崎・ラスク公式議事録は、いわゆる公式議事録でございまして、両方の代表が、その条約の解釈につきまして、お互いの合意に達した点を記録にとどめたものでございます。条約は、御承知のように、常にその締結した当事国の意思というものが、相当重要な解釈の指針でございます。従いまして、この公式議事録というものは、その条約の解釈上最も重要な文書である、かように考えるわけでございます。
  277. 川上貫一

    ○川上委員 そうすれば、共同声明は国と国との正式機関でやったものじゃないのですか。
  278. 林修三

    ○林(修)政府委員 もちろん共同声明は、お互いの国と国との政府がやったものでございますが、先ほどお答えいたしました通りに、共同声明の中には、両国政府が合意に達したという本年度の防衛分担金に関する部分と、明年度以降おのおの両国政府の意向と方針であるという、いわゆる政策と方針とを表明した部分とがある、こういうことを申し上げたのであります。政策と方針を表明した部分は、まさにその当時政権を担当して、その声明をした政府の意向と方針に異ならないものと思うわけでございます。
  279. 川上貫一

    ○川上委員 それでは少しも答弁になりません。今度削減した分担金の額一億六百万ドルというもの、これも鳩山内閣限りの約束だと言うてある。何でこれをはねる。これは前にそういう答弁をしておるのです。共同声明、これと岡崎・ラスク会談とが違うという根拠はどこかということを聞いておる。
  280. 林修三

    ○林(修)政府委員 岡崎・ラスク公式議事録は、あの行政協定を締結した両国の政府代表が、お互いにその行政協定を締結するにつきまして、その締結した文審を作成し、またその文書を作成するについて、お互いにどういう意味でこれを締結したか、どういうわけでこういう文句になったかということの、経過等をお互いに確認する意味で、その合点した部分を公式議事録として記録にとどめた部分でございまして、これそのものは、もちろん広い意味においては一つの外交文書でございます。これが条約の解釈の最も重要な指針となるべき文書である、かように考えております。従いまして、この解釈に従って、行政協定そのものは広い意味の条約でございますから、あとの政府も当然その解釈については、締結当時の両当事国の政府代表の意見に拘束されて、それに従ってお互いに解釈をしていくべきものだ、かように考えるわけであります。
  281. 川上貫一

    ○川上委員 時間がないから、なるべく簡単にお答え願いたいのです。岡崎・ラスク会談は、条約同様のものであるという答弁をしているのです。従来その答弁をしてきている。あなたの解釈は違うのです。これはそういう解釈をしなければならぬように追い込まれてきてしもうたと思う。大体共同声明というものが、これは歴代内閣を拘束しないと言うてしもうたものだから、えらいことになりおるのです。これは私は時間がないからやらないが、時間があれば幾らでも追及ができる。法理的に考えてこれはむちゃくちゃです。それだから、私はこれ以上言いませんが、その結果わかったことは、この共同声明が政府限りの約束であって、岡崎・ラスク会談とかその他のものは、これは政府限りじゃなくて、日本国そのものを拘束するという結論になってきた。今の御答弁でもそうなっているのです。これはもうそれ以上の弁解は、長く時間がかかるから求めません。  そこで、時間がないから私は次に進みますが、行政協定は条約だと言われている。これはどういうわけですか。安全保障条約第三条で、行政協定できめると書いているから条約だと習われるとすれば、行政協定というものは白紙委任の条約である。その当時全然内容はわかっておらぬのであります。そうすれば、この行政協定という条約を、安全保障条約第三条で、内容の具体的なことが一つもわからぬものを、これを白紙委任した、こういう解釈になるのですか。
  282. 重光葵

    ○重光国務大臣 私にお尋ねのようですから、私からお答えしますが、これは条約の普通の常識であります。一つの条約で、その条約の委任条項というものによって委任されていることは、他の協定なり約束なりでこれをやることができることは当然のことであって、それはやはり広義の意味における条約でございます。
  283. 川上貫一

    ○川上委員 私は議論はしませんが、そういう法理論は成り立ちません。委任の原則は具体的でなくちゃならぬ。この行政協定というものは、安全保障条約を審議する時分には、吉田総理大臣さえも、中身はおれは知らぬと言うておられる。全く何もわかっておらぬ。ただ安全保障条約三条では、行政協定できめるということを承認したきりであって、行政協定の具体的内容を委任したものじゃありません。これはもう明らかな法理論で、これをもしも全部委任したというのならば、白紙委任の原則が違法であり、違憲であると同じように、この行政協定は違法であり、違憲であると言わなければならない。この点外務大臣はどうお考えになりますか。
  284. 重光葵

    ○重光国務大臣 私はそれは当然委任ができることだと思いますが、御納得のいくように、一つ法制局長官から説明をさせます。
  285. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは御承知のように、当時の安全保障条約御審議の際、非常に議論になったところでございますが、この第三条によりまして、アメリカ合衆国軍隊の日本国内及びその付近における配備を規律する条件行政協定できめる、こういうことでございます。配備を規律する条件、その範囲内でこの行政協定が委任されている。一応範囲は制限されている。そういう意味で全然の白紙委任ではございません。
  286. 川上貫一

    ○川上委員 そういう答弁をなさるならば、二十四条における一億五千五百万ドルというものもこの中に入っている。これはあらためて国の予算審議にかけないでも、条約ならば当然国の債務になっておらなければならない。債務になっておらぬ。国会の審議によって初めて確定するということはさっきからの答弁で明らかなんです。条約であれば、賠償条約と同じようにこの二十五条の全額というものが国の債務として確定しておらなければならぬ。条約でないから確定しておらぬ。国会の承認を経ておらぬから確定しておらない。債務になっておらない。だから国会の承認を経なければならぬし、これを全部削減する審議権も国会にあるというような答弁をしなくちゃならぬ。条約でない証拠だ。これはどういうことになりますか。
  287. 林修三

    ○林(修)政府委員 今申しましたように、行政協定は安保条約第三条に基きましてきめたものでございますから、広い意味においてはもちろん条約であります。従って国家を拘束するものであります。ただし行政協定の三十七条では、その点につきまして、逆に、この行政協定中にお互いの国で立法を要する事項、あるいは予算上国会の議決を要する事項については、おのおのその手続をとる。従ってその手続をとって初めてお互いに実施するのだ、こういうことを書いておるわけです。これに従いまして今毎年やっておるわけでございます。
  288. 川上貫一

    ○川上委員 法理論になってこまかくなりますけれども、その答弁は間違いなんです。二十七条にいうところの予算措置をとらなければならぬというこのことは、賠償でも予算措置はとらなければならぬ。それは事務的な問題なんです。けれどもが、予算措置をとらなければ賠償も出せませんから、予算措置をとる以前に、たとえば賠償ならば国会の承認を経ておって国の債務として成立しておる。ところが、二十五条の一億五千五百万ドルは国の債務として成立しておらぬ。この二十七条の予算措置というのは事務的措置じゃない。国会審議権なんだ。だから二十五条というものは、元来これだけ考えても条約たる資格を備えておらぬのです。いいくらいな言い抜けじゃなしに、法理論的に明確に答弁してもらいたい。
  289. 林修三

    ○林(修)政府委員 たとえば日本とビルマの賠償協定につきましては、二億ドルなら二億ドルということがはっきり条約上書いてございます。従いましてそれによって国会の御議決を経ておりますから、あらためて別の債務ということはやっておりません。行政協定の場合は、もちろん条約の委任を受けてやったわけでございまして、この点は広い意味の条約であります。従って国の債務でございます。但しこれにつきましては別に国会の御議決を経るという意味で、毎年々々定期的に再検討するということとそういうことと相待ちまして、二十七条で毎年予算について国会の御議決を経た上で実施する、こういう建前をとったわけであります。
  290. 中曽根康弘

    ○中曽根委員長代理 川上さん、その二十五条と二十七条の点はずいぶん前に論議がありまして、あなたの質問は時間がもったいないですから、進行して下さい。大へんけっこうな質問だとは思いますけれども、時間がもったいないので……。
  291. 川上貫一

    ○川上委員 私はもったいないと思わないけれども、それでは一言だけ言っておきましょう。二十五条の一億五千五百万ドルは国の債務である、こう言う。国会の承認を経なければ確定しない、こんな債務というものはありません。債務であれば、国会がこれを否決した場合には、これは国の義務を国会が怠ってしまったのであって、これは国会が責任を負わなければならぬ。二十五条の一億五千五百万ドルというものは、国会の承認を経て初めて確定するのでありますから、債務じゃない。債務でないものが条約のうちにちゃんと載っておって、それは国会の承認を経なければ確定しないというようなものは条約でない証拠だということを私は言うておるのです。法理上今のような答弁では少しも答弁になりませんが、私は、これは正直なところを言えば、答弁ができぬのだろうと思う。そこで……(発言する者あり)与党は大へん私の質問に心配しておられますが、これ以上質問すると大へんな穴があきはせぬかという御心配だろうと思いますが、そういう御心配なしにやはりじっと聞いておって下さることが、紳士らしくてまことにけっこうだと思うのであります。
  292. 中曽根康弘

    ○中曽根委員長代理 その点は川上さん、今まで行政協定締結のときに議論になりまして、過ぎた議論です。ですから時間がもったいないから……。
  293. 川上貫一

    ○川上委員 私は行政協定の時分にはおりはしない。国会議員です。これを十分に聞く権利を持っておる。政府はこれに答えなければならぬところの義務を持っておると思う。だからこれは議員として明らかになるまで幾らでも聞く権利がある。前に済んでおったからそれでよいというようなものではありません。  そうすれば、この問題は今に関する限りはこの程度にしておきましよう。行政協定の中にある二十四条で、日本地域でアメリカが戦争を起した場合には、日本はそれに共同の措置をとらねばならぬ、こういう内容になっております。共同措置とは戦争のことであります。ほかにはありません。あくまでも条約、こう解釈されるというと、日本地域でアメリカが戦争を起した場合には、必然的に日本はこれに共同措置をとり、協力する義務があるのでありますが、そう解釈してよろしゅうございますか。外務大臣に聞きたい。
  294. 中曽根康弘

    ○中曽根委員長代理 条約の解釈の問題ですから、条約局長、答えなさい。
  295. 下田武三

    ○下田政府委員 そういう仮定の御質問でございますが、法理論といたしましては、二十四条に書いてございます通り協議する義務があるだけでございます。措置をとる義務があるのでなくて、措置をとるための協議をする義務があるだけであります。
  296. 川上貫一

    ○川上委員 文章の全体を見るとそうなっておりません。共同の措置をとるということと、これについて協議するということとは別です。「共同措置を執り、」と独立しております。その共同の措置をとるために協議するのであります。
  297. 下田武三

    ○下田政府委員 日本語のテキストで「措置を執り」のあとにポツがついておりますが、これは日英両文でできておりまして、英語の方には措置をとるということの協議をするとつながっておるわけなのであります。この点は当初からはっきりいたしておりまして、措置をとる措置の内容について協議する、その義務を負っておるわけであります。
  298. 川上貫一

    ○川上委員 協議するという内容があるということを言うておるが、富士のすそ野の実弾射撃で明らかだ。一方的にやっておってこれが調整だというようなことを言うのです。これは明らかに共同措置をとるとあるのです。その共同措置をとるために協議するにすぎない。これは議論になりますから言いませんが、政府としてはそういう答弁しかできぬのじゃろうと思います。  総理大臣にお聞きいたしますが、アメリカ日本地域で戦争を始めた時分にこれに協力するかしないかということを、日本政府は自主的に決定し、必要に応じてこれを拒否することがありますか。拒否し得ますか。
  299. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 安全保障条約は、日本のためにアメリカ日本協力をして日本を守るというのですから、日本に戦争が起るときは外敵が日本に侵入してきた場合に限られます、そういう場合には当然日本アメリカ協力してこれに当るものと思います。
  300. 川上貫一

    ○川上委員 そうすれば総理大臣のお考えではその時分には拒否するというようなことは起きてこないのであって、そういう戦争が起きた時分には直ちに日本政府は協力の措置をとる、こういう御返事だと思いますから、それでけっこうでございます。  その次にお聞きしたいことは、安全保障条約並びに行政協定の中で、アメリカが義務を負うておる条項がありますかどうですか。この点をお聞きしたいのであります。これは外務大臣にお聞きいたします。
  301. 重光葵

    ○重光国務大臣 政府委員から説明いたさせます。
  302. 下田武三

    ○下田政府委員 安全保障条約の前文に根本精神がうたってありますように、日本は米軍の駐留を希望し、アメリカはこれを受諾しておるわけでございます。そして第一条に掲げてあります目的のために必要な場合には、米軍を使用する義務を負っておることは明らかだと存じます。
  303. 川上貫一

    ○川上委員 前文並びに全部の文章を通じて、アメリカの軍隊におってもらいたいということを日本が頼み、アメリカはおってやろうということを承諾した。つまり駐兵権を獲得しただけです。義務条項は一つもありません。日本が頼んだからおってやるだけです。どこの双務協定を見てもこのようなものはない。義務条項がありますか。日本におってやるというだけの権利しかないじゃありませんか。
  304. 下田武三

    ○下田政府委員 何のために日本に駐留するかということは、安保条約の前文並びに第一条で非常に明白でございます。そして日本希望いたしましても、米軍がいやだということができたわけであります。それを受諾するということは、その安保条約の目的のために兵を使うということを引き受けた。これ以上大きな義務はないと存ずるのであります。
  305. 川上貫一

    ○川上委員 これも議論になりますから言いませんが、法文の上で解釈上はそういうことを言うておるだけであって、この条約の上では義務条項は一つもないということが、答弁ができないのだから私は明らかになった。解釈上義務があるだろうというだけであって、これこれの義務をアメリカは負うという条項はないのだ。これは行政協定にも一つもないのだ。日本は山ほど義務を負うておる。だからアメリカでも行政協定は国会の批准を経ておりません。アメリカの憲法でも、アメリカ国民が義務を負う条項があるならば、国会の承認を経なければならぬ。ところがこの行政協定は、アメリカの大統領がこれを権能でやっておる。これはアメリカ人が一つも義務を負うておらぬ証拠なんだ。ところが日本では山ほど義務を負いながら、これが国会の承認を経ておらぬ。そうしてこれを条約だと言うておるのです。ところが一億五千五百万ドルが債務でないというこの結論によって、条約でない証拠が明らかになった。私は鳩山内閣がこれ以上いいかげんなことを言うのじゃなしに、この安全保障条約、これは条約でありますが、行政協定は条約たる資格がないということをはっきり言われる方がほんとうの法理上の解釈であるし、またほんまに、世界の平和とアジアの安全を守ろうという、こういう政治をするのなら、それでなければ私はできないと思うのでありますが、これは議論にわたりますからこれ以上は申しません。  そこで元来この安全保障条約、行政協定を見てみればわかるのです。これは一言申し上げておきたいと思う。駐留軍は無制限です。こんな条約をした国は、南朝鮮はどうか知りませんが、ほかにはありません。基地は無制限なんだ。幾ら基地を置くやらわからぬのです。フィリピンでも基地の数はきめてある。期限は無期限なんです。いつまでおるやらわからぬ。そこで最近でも基地を全面的に広げる。きょうの参議院答弁でもまるで演習地はどんどんふえておる。飛行基地がどんどんふえておる。総面積はどんどんふえておる。どこまでふえるか、これはわからぬのです。協定にきめてないのです。第二には国民意思ではなく、アメリカが戦争をしたらこれに協力しなければならぬ、こう政府はおっしゃっておるのです。分担金は、今まで強制されてきたのでありますが、本日これは国会において否決権があるということが明らかになりましたから、それでもこの日本の防衛費をふやさなければ、アメリカは分担金を削らぬぞというような、岡崎・ラスク会談というものもあって、これはすべての政府を拘束するというような答弁をして.おられるのだ。アメリカに相談をしなければほんとう予算も組めないようなことになっておる。これが安全保障条約、行政協定です。繰り返して言うが、その上にアメリカは何一つ義務を負うてない。駐兵権だけをアメリカは持っておる。日本は山ほど義務を負うておる。これが協定の実態です。しかもこの協定が国会の承認を経ていないのです。自主でも独立でもない。自主外交などということは夢のような話なんだ。こういう安全保障条約や行政協定が存在する限り、そうしてこの行政協定を理由なくして条約だなどというて国民に押しつける限り、日本は永久にアメリカに隷属することは明らかだ。  そこで私は鳩山総理にお聞きしますが、総理は中国やソビエトは侵略勢力じゃないということを言うておられた。そうすると安全保障条約というものは、その条約締結の趣旨、これは全部なくなったというてしまったら言い過ぎかもしれませんけれども、ほとんどその大部分の意義がなくなったと思う。この点については鳩山総理大臣はどうお考えになりましょうか。
  306. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はソ連が直ちに日本を侵略するとは思っておりません。しかしソ連が、あるいはその他の国家が日本に絶対に侵略をしないという確信も持っておりません。とにかく一国をなしている以上は、他の国がいつ侵略をしてくるかもしれないという用意を持っておることが必要だと思います。仮想敵国はありませんけれども、なお自衛力を持たなくちゃならないと思うのです。自衛力が一つもない日本が、安全保障条約をアメリカとするのは、日本を守るために当然な用意だと思います。
  307. 川上貫一

    ○川上委員 安全保障条約、平和条約を審議する時分の国会でそういうように言うていないのです。平和条約、安全保障条約の説明書がある。これは政府の説明書です。その説明書には、共産主義の圧迫と専制に伴う危険な勢力が、今極東において不安と混乱を広めておる。かつ各所に公然たる侵略をしておる。だからこの集団的の目の前の侵略に対して、安全保障条約を締結しなければならぬ理由があると説明してある。ところが総理大臣は、今中国、ソビエトは侵略勢力じゃない。そうすると安全保障条約を結んだ時分のこの根本精神が、私がさっき言う通り、全部なくなったとは、あなたの立場に立って極端には言いますまい。われわれの立場は全部なくなっておる、初めから必要はない。けれども政府の立場に立ってみても、なおかつ安全保障条約というものの必要がなくなったといわなければならぬ。吉田総理大臣はサンフランシスコでも演説しておる。この演説の中でも、共産主義の侵略を防止することに同点せられたことはまことに多とすると言うておるのです。これはその時分の特別委員会で草葉次官も、共産主義の武力侵略に対してさっそく何とかしなければならぬのであって、これで安全保障条約を結ぶんだ、こう言うておる。ところが鳩山総理も外務大臣も、ソ同盟も中国も侵略勢力じゃない、これは違うのです。そうすれば安全保障条約というものは、この説明から見ても、吉田総理大臣の演説から見ても、その必要は総理大臣の立場に立ってもほとんどなくなったのではありませんかということを聞いておる。総理の答えは、将来心配だから——将来ではない、今心配だから作るんだと、安保条約時分の説明でははっきり説明してある。この関係はどうなりますか。
  308. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 吉田内閣がそういう説明をしたときには、吉田内閣がそういうように感じる筋があったと思うのです。その当時においては、日本の共産党は、日本の暴力革命を企図いたしておったのであります。最近日本の共産党は、日本の暴力革命を言わなくなったのであります。ですから、国際関係というものは、そのときそのときによって変化しますから、吉田内閣がそういうような考え方をしたのは私は無理はないと思う。その当時においてはコミンテルン、国際共産党というものが表面的にあったのであります。今はコミンテルンというものは、とにかく表面的には解消したのであります。ですから、国際共産党というものがあって世界革命を企図し、世界の人たちが共産党の世界革命を信じて、日本には暴力革命があると思っていた時代に安全保障条約や行政協定をやったということは、今日よりはもっと理由があったかもしれません。しかし今日においても、これをやめるというような勇気は私には持てません。
  309. 中曽根康弘

    ○中曽根委員長代理 川上君、あと三分ですから……。
  310. 川上貫一

    ○川上委員 私はできるだけ瞬間の申し合せは尊重したいつもりでやっておりますが、私の質問は簡単でありますが、もう二つある。一つは、沖繩の漁夫がインド領海でインドに抑留された事実があるかどうか、これを外務大臣にお聞きしたい。
  311. 重光葵

    ○重光国務大臣 インドに抑留せられた纂実は、私は知りません。
  312. 川上貫一

    ○川上委員 インドに抑留されておって、アジア法律家会議のメンバーの諸君がインドの日本領事館に行った時分に、日本政府から何とも言わぬのでどうも仕方がないということを言うておるのです。そうすると、これは沖繩の漁夫がインド領海でインドに抑留されたにもかかわらず、外務大臣は知らぬ、日本の政府はこれを知らぬ、こういうことになるのですが、これは相当問題があると思う。しかしこれをいろいろ長く質問しておる時間がありませんからしませんが、政府はこれを知らぬという、これは私は重大な問題だと思う。沖繩には日本の主権あるがはずです。沖繩日本人に対しては、日本は人権保護の責任、義務があるのです。在外国民に対する人権擁護の国際慣習法があると同じように、いわんや日本の領土である沖繩の同胞に対しては、政府は責任を持たなければならぬ。それがインドに抑留されておる、こういう時分に政府はこれを知らぬ、これじゃもう話にならぬと思う。  私は時間がありませんから、一緒に答えてもらいたいために、もう一つ聞きます。四月八日にソビエトの通商代表部のドムニッキー氏から外務省の欧米局長あてに、海馬鳥海岸で日本人漁夫と思われる四人の死体を発見した、仮埋葬しておるという通知を受けたことがありますかどうですか。
  313. 下田武三

    ○下田政府委員 その通知を受けた事実はございます。
  314. 中曽根康弘

    ○中曽根委員長代理 川上君、もう時間ですから急いでください。
  315. 川上貫一

    ○川上委員 はい。それを五月五日ないし六日まで放任しておったのはどういうわけですか。
  316. 下田武三

    ○下田政府委員 外務省といたしましては、ただちに関係の国内官庁に連絡いたしております。
  317. 川上貫一

    ○川上委員 それはうそです。そういうことをおっしゃれば、証人を出してこなければならぬ。そうではないのです。五月四日に、私はここで名前を言いませんけれども、その人が外務省の寺岡参事官を訪れた時分に、どこにも言うておりません。水産庁にも言うておりません。日赤にも言うておりません。そうしてその時分に寺岡参事官はどういうことを言ったか、この手紙を持ってきたシャレブニコフ氏をメッセンジャー・ボーイだと言うておる。こんなものは取り継ぐ必要がないということを言うておる。なぜ日赤にでも早く通知しないかという質問に対して、忙しいからやれないと言うておる。これは寺岡参事官が言うておる。この時分までほっておるのであって、今下田条約局長は、それぞれに言うておると言いましたが、私は時間があれば何月何日にどこで言うたかということを聞きたい。材料は出ないのだ、言うていないのだ、ほっておったのだから。これをそれぞれのところに言うておるというようなずうずうしい答弁をしちゃいけないと思う。私はもう時間がないし、残念ながらこの点について追及することができませんが、そういう答弁をなさるということになれば、これは他の機会において十分にこのことを明らかにしなければならぬと思う。沖繩日本人の問題といい、あるいは鳩山総理は日ソの国交の回復、親善と言うておられるが、その時分にこのような取扱い、いやしくも日本人の人命、死体に関する問題なんです。これを言うてきておるのに返事をしてない。どうしますということをドムニッキー氏にも答えてない。ほってあるなぜせぬかと言うたら、忙しいということを言うておる。そうして突っ込まれて仕方がなくなって、その五月の四日ないし五日になって初めて日赤へこれを通知している事実がある。この事実を総理大臣お知りになりませんか。
  318. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 知りません。
  319. 川上貫一

    ○川上委員 外務大臣はお知りになりませんか。
  320. 重光葵

    ○重光国務大臣 そのことは相当事実に違っておる点があるということを、今報告を受けました。
  321. 川上貫一

    ○川上委員 私時間がありませんから、これで打ち切ります。
  322. 中曽根康弘

    ○中曽根委員長代理 条約局長、政府は連絡してないという話ですが、お答えを願います。
  323. 下田武三

    ○下田政府委員 一応事態を明らかにしたいと思いますが、川上先生のおっしゃいますことは、非常に事実に違っております。第一申し出は欧州参事官にあったのでございませんで、もっと下の者にありまして、これは人道問題に関する問題でありまするから、国内の官庁に即時連絡いたしております。
  324. 中曽根康弘

    ○中曽根委員長代理 明十四日は午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時八分散会