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1955-03-28 第22回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年三月二十八日(月曜日)   午前十時二十三分開議  出席委員    委員長 牧野 良三君    理事 上林山榮吉君 理事 重政 誠之君    理事 中曽根康弘君 理事 小坂善太郎君    理事 西村 直己君 理事 赤松  勇君    理事 今澄  勇君       赤城 宗徳君    稲葉  修君       宇都宮徳馬君    北村徳太郎君       河本 敏雄君    小枝 一雄君       床次 徳二君    楢橋  渡君       福田 赳夫君    藤本 捨助君       古井 喜實君    堀内 一雄君       松浦周太郎君    三浦 一雄君       三田村武夫君    村松 久義君       相川 勝六君    植木庚子郎君       太田 正孝君    北澤 直吉君       久野 忠治君    倉石 忠雄君       周東 英雄君    野田 卯一君       橋本 龍伍君    平野 三郎君       福永 一臣君    阿部 五郎君       伊藤 好道君    久保田鶴松君       志村 茂治君    田中織之進君       田中 稔男君    福田 昌子君       武藤運十郎君    柳田 秀一君       井堀 繁雄君    岡  良一君       小平  忠君    杉村沖治郎君       西村 榮一君    水谷長三郎君       川上 貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         法 務 大 臣 花村 四郎君         外 務 大 臣 重光  葵君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         文 部 大 臣 松村 謙三君         厚 生 大 臣 川崎 秀二君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  石橋 湛山君         労 働 大 臣 西田 隆男君         建 設 大 臣 竹山祐太郎君         国 務 大 臣 大麻 唯男君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 杉原 荒太君         国 務 大 臣 高橋逹之助君  出席政府委員         内閣官房長官  根本龍太郎君         内閣官房長官 松本 瀧藏君         内閣官房長官 田中 榮二君         法制局長官   林  修三君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         国税庁長官   平田敬一郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (為替局長)  東條 猛猪君         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ――――――――――――― 三月二十八日  委員今松治郎君、植木庚子郎君、滝井義高君及  び三鍋義三君辞任につき、その補欠として堀内  一雄君、久野忠治君、伊藤好道君及び武藤運十  郎君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和三十年度一般会計暫定予算  昭和三十年度特別会計暫定予算  昭和三十年度政府関係機関暫定予算     ―――――――――――――
  2. 牧野良三

    牧野委員長 これより会議を開きます。  昭和三十年度一般会計暫定予算外二案を一括して議題といたします。質疑を継続いたします。  重光外務大臣から御申し出でございまするが、本日はタイ外務大臣が午後の三時に公式訪問をされるという予定でありますから、三時から約三十分間本委員会退席せられること、並びにエカフェ総会カクテル・パーティが、かねて皆さんにも御案内いたしておる通りに九時から一時間半催されることになっております。なおかつ晩は八時からタイ外相公式訪問をされることに対する招宴を用意してありますので、ここで約一時間半、これだけ委員会出席ができなくなりますることの御承認をあらかじめ得たいと存じます。  赤松君より議事進行に関する御発言の要求でございます。お許しいたします。
  3. 赤松勇

    赤松委員 この際私から一点政府に対しまして質問をしておきたいと思います。  それは、先般来この暫定予算につきましては、私どもできる限りの協力をして参りました。しこうして政府都合につきましても、でき得る限り私どもはあるいは質問時間を制限し、あるいは質問者を制約するというように、いろんな点で協力して参ったのでございまするが、昨日政府及び与党懇談会総理大臣の私邸において行われたようでございます。本日の新聞を見ますると、この会議におきましては、国会運営がもし行き詰まる場合には、衆議院解散も辞せずとの決意を固めて進む必要があるとの強硬意見が主張された。しかしこの重大決意については、今後の含みとして了解するとの空気ではあったが、しかしまだこれを表面に出すのは時期尚早で、当面はなお自由党に対する協調策を従来よりさらに積極的に行い、国会運営円滑化をはかるとの方針で進むことに一致した。このためとりあえず三十年度本予算については、自由党に対し事前折衝を働きかけるほか、憲法調査会の設置、小選挙区制の問題なども自由党に呼びかけて、これら保守派に共通な問題をとらえて、民自協調のきっかけを極力作っていくことになった。憲法調査会の問題については、今国会中に民主党からこれを国会に設ける法案を提出するとともに、三十年度本予算でとりあえずこれに関する一部経費を計上し、自由党の出方を打診する意向である。こういうことが新聞に報道されておるのでございます。先般来同僚議員が、たとえば憲法問題につきまして鳩山総理質問をした。そうすると鳩山総理は、国会の中に憲法改正に関する調査会を設ける意向は今のところはない、民主党内部にその調査会を設けたいと考えておるというような答弁でございました。三十年度予算につきましては自由党とは話し合いをしない、こういうことがしばしば今まで政府で繰り返し強調されてきた点である。これは今後の国会運営に非常な大きな影響を及ぼしますので、一つ政府基本的態度をばこの際明らかにしていただきたいと思います。そこで鳩山総理質問をするのがほんとうなんですけれども総理はただいまお見えになっておりませんから、重光総理よりお答えをお願いしたいと思います。
  4. 牧野良三

    牧野委員長 ただいま赤松勇君の議事進行発言はお聞き及びの通りでありまするが、これに関し政府においては御発言がございますか。
  5. 重光葵

    重光国務大臣 当委員会における野党各派の御協力は、政府側としても非常に多としておるところでございます。これはぜひ熱心に一つ暫定予算を討議して、なるべく早く御承認を得たい、こう考えております。昨日の政府並びに与党幹部会合におきましても、私は終始出席をいたしておりました。これは議会の運営について、また予算をめぐっていろいろな意見交換をいたしました。雑談もいたしました。しかし何らの決定をいたしたことはございません。新聞にいろいろあるようでございますが、そういった決定をしたものは少しもないことを申し上げて、ただ雑談及び意見交換をしたということで、結論としてもしあるならば、できるだけ早く暫定予算を成立さしたい、誠意を披瀝して一つやろう、こういうふうな考え方で進むということでございます。
  6. 赤松勇

    赤松委員 それでは重ねてお尋ねいたしまするが、三十年度予算につきましては、自由党との間に事前話し合いはしない、従来の政府態度はそうであった、そういうふうに了解しておいてよろしゅうございますね。
  7. 重光葵

    重光国務大臣 私もその席におりましたが、その問題については何も話し合いはございませんでしたことを申し上げます。またほかの政府当局も同様なことを申しております。
  8. 赤松勇

    赤松委員 昨日問題になったかならないかということを私は質問しているのではないのです。政府の基本的な態度について私は質問している。と申しますのは、数日前鳩山総理各派を訪問されまして、そして協力方をば懇請されておるのです。三十年度予算につきましては、政府の方としましては、政府及び与党の独自の立場でお進みになるのか。あるいはこの新聞に報道されておるように、自由党との事前了解工作をお行いになるのか、話し合いをされるのかどうか、この点を一つ明らかにしておいていただきたいと思います。
  9. 重光葵

    重光国務大臣 その問題につきましては、従来の考え方方針を少しも変えておりませんことを申し上げておきます。
  10. 赤松勇

    赤松委員 それでは、今までしばしば御声明になりましたように、三十年度予算につきましては、自由党あるいはその他の会派との事前工作はやらない、政府及び与党独自の立場国会に臨む、このように了承しておきます。  次にお尋ねいたしますが、憲法調査会の問題につきまして、しからば鳩山総理の御答弁通り、今国会におきましては国会内に憲法改正調査会を設ける、その一部の経費をば三十年度予算に組むということはない、かように了解しておいてよろしゅうございますね。
  11. 重光葵

    重光国務大臣 この問題については、過日総理からお答えした通りでございます。
  12. 赤松勇

    赤松委員 総理お答えになりましたのは、国会内に今国会におきましては憲法改正調査会は設けない、従ってそれに伴う経費も三十年度予算には組まない、民主党の中に憲法改正調査会を設けたい、こういう御答弁でございましたが、それでよろしゅうございますね、今あなたは、それでいいとおっしゃった。よろしゅうございますね。
  13. 重光葵

    重光国務大臣 総理の答えられた通りでございますから、さよう御承知を願います。
  14. 赤松勇

    赤松委員 それでは午後総理大臣が御出席になりまするので、憲法問題はそれでよろしい。三十年度予算の問題に関し、かつ国会運営に関する基本的な政府態度につきまして、再度私から総理にその所信を伺いたいと思います。従って私の質問は保留しておきます。
  15. 牧野良三

    牧野委員長 今澄勇君より議事進行について発言を求められております。これをお許しいたします。今澄勇君。
  16. 今澄勇

    今澄委員 議事進行について質問をいたしておきますが、きょう理事会は開かなかったのですけれども総理大臣の本委員会欠席方について各党の理事申し入れがありました。実は一昨日、鳩山総理大臣ハル司令官会見をするから、二時から四時半まで休ませてもらいたいということで、われわれは暫定予算のことでもあるし、政府協力意思をもってこの予算審議を一日も早く上げたいという建前からこれを了承いたしたのでありますが、嶋山総理大臣はこのハル司令官との会見という私どもとの約束にたがって、いろいろわれわれの調査によるところでは、ほかの会合等に出ておられるが、政府鳩山総理は一体何と何との会合に出たのかということを、一つここで重光外相から確実な報告を願いたいと思います。
  17. 牧野良三

    牧野委員長 ただいまの議事進行発言に対し、政府において御発言がございますか。
  18. 重光葵

    重光国務大臣 その事情をよく確かめてみました。それは米軍司令官ハル大将が今回更迭するので、ハル大将にも会い、かつその後任者であるテーラー大将等に面会することが必要となったわけで、そのために欠席したそうでございます。どうぞ御了承を願います。
  19. 今澄勇

    今澄委員 私ども暫定予算審議において、まず防衛分担金の削減の問題が非常に重要である。補助金の打ち切りの問題も大事であるが、それらの重要な防衛分担金等折衝で、この開会中の予算委員会を中座して、ハル司令官会見をされるという国務のために、われわれは予算委員会退席了承したのであるが、ハル司令官と会った時間はわずかに二十分程度であって、フリーメーソンの鳩山氏個人に対する表彰その他の会合へ出る時間が、実に一時間半にわたっておったと私どもは見ておるのである。私はかような、われわれ予算委員会理事に対する与党申し入れが、総理行動についてまるっきりうそであったということを遺憾といたします。今の副総理でありますあなたのここにおける説明は事実と相違いたしております。きのうの鳩山総理行動について、あなたがここに事実の報告をなさり、釈明がない限り、本予算委員会休憩をして、政府釈明をぜひ求めたい、その誠意を示されんことを動議として提出いたします。これに対して副総理から何か御答弁があるならば聞きたいと思います。――答弁がなければ本委員会休憩を願います。
  20. 牧野良三

    牧野委員長 今澄勇君に申し上げます。誠意をもってこの予算審議しょうというのでありますから、政府に多少の不誠意な点があると指摘されましても、どうぞこの委員会だけは、時間も乏しいことでありますから進行せしめ、適当な機会において適当な措置をお申し出願いたいと思います。
  21. 今澄勇

    今澄委員 私は委員長に申し上げておきますが、冒頭この動議を提出いたしましたのは、少くともわれわれ野党側に対して虚構の事実を申し述べて、総理退席せしむるがごときは、従来の予算審議には見られなかったところであります。だから私はここにおいて政府答弁がない限りは、本委員会休憩動議を提出いたします。これは委員長として当然採決すべきものでありますから、直ちにお取り計らいを願いたいと思います。
  22. 牧野良三

    牧野委員長 申し上げます。動議は当然採決いたしますが、その事前におきましてあなたに何とか御再考を願いたいと思って申し上げる次第であります。どうぞ一つ了解を願います。
  23. 今澄勇

    今澄委員 答弁がなければ休憩を願います。
  24. 牧野良三

    牧野委員長 それではこのままで理事会を開くことにいたします。  重光外務大臣より発言を求めておられます。重光外務大臣
  25. 重光葵

    重光国務大臣 先ほどの問題について釈明をいたしておきます。一昨日の予算委員会中に、渉外事項のため、公用のために一瞬退席を許可されたのでありますが、総理大臣がその際に引続き私的会合に先方の都合で若干の時間を用いまして、そうしてそれが若干長引きましたことは、ほんとうに遺憾にたえません。私からそのことについておわびを申し上げておきます。
  26. 今澄勇

    今澄委員 ただいま副総理釈明がありましたので、今後総理大臣並びに閣僚の当委員会における行動等は十分お慎しみいただいて、いやしくも予算審議に際して虚構の言を弄せられることのないように、今後かかることがありました際は、当予算委員会が重大なる決意をするであろうことを警告をいたして、私は議事の継続を了承いたします。
  27. 牧野良三

  28. 相川勝六

    相川委員 まず重光外務大臣にお伺いいたします。外交上のことはほかの委員からもたびたび質問いたしておりまするし、再び繰返しますことは多少くどいようでありますが、私現内閣の施政のうちで一番心配なことの一つは、やはり外交問題じゃないかと思うのであります。そこで再び若干の質問を試みたいと思うのであります。まずこのたびの日ソ交渉につきまして、鳩山総理は日付もあて名もない文書ドムニツキー氏から受け取っておられまするが、そのこと自体も非常な変則でありまして、このドムニツキー氏に会見する前に、外務大臣にはあらかじめ会見しようと思うがどうだろう、こういうお話があったかどうか、一つお伺いいたします。
  29. 重光葵

    重光国務大臣 鳩山総理ドムニツキー氏の文書を受け取られ、その会見は、実は唐突の間に、初めから前もって準備の時間なくして起ったものでございます。従いまして私はその前には存じませんでした。
  30. 相川勝六

    相川委員 鳩山内閣方針は、従来通り自由主義の陣営とよく協調をしながら、ソ連圏とも何とか国交の調整をしていきたいという、きわめてこれはめんどうな外交なのであります。従ってこういうめんどうな外交処理については、最初出発のときに念を入れてきわめて慎重な態度をとるべきであると思う。承わればドムニツキー氏は重光外務大臣及びその他の外務省当局とも、数次会見のいろいろの行動に出たのでありますけれども外務省の方々は、いろいろのことでこれを避けておられる。これはおそらくきわめてめんどうな事件でありまするから、容易にこれは会うことができない、こういうことじゃないかと思うのです。いずれにいたしましても、これだけの重要な問題ならば、当該の主管大臣にあらかじめ打ち合せて、これは会おうと思うがどうだろうか、どういう考えでやったらいいか、こういうようなことは、この慎重な外交処理する上に当然打ち合せるべきものだと思いますが、今の大臣のお言葉によると、唐突なことであって、あらかじめ外務大臣にはお話がなかったということを承わります。いかにもやり方において私は慎重を欠いておると考えるのであります。  その次にドムニツキー氏に鳩山総理が会われたときに、何でもわれわれの聞いたところでは、交渉地モスクワでも東京でもどっちでもいいよう、こういうようなお話があったことを聞くのであります。ところがあとになって外務省の、ことに澤田大使の御意見によって、これはアメリカとの関係もあるからニューヨークで開いたらいいだろう、こういうことで、ニューヨーク交渉地をかえるべく交渉した。そうして向うの方では、それは日本側考えでもよかろうといって、まだはっきりニューヨークでやるということがきまっていないと聞いておりますが、どうでございましょうか。
  31. 重光葵

    重光国務大臣 鳩山総理ドムニツキー氏の書簡を受け取られて、それをそのままこれは外交交渉の問題であるからと言って、すぐその文書を私に渡されました。そうしてその後の処理方を私にすべて委譲されました。そこで私はその文書の中の主題である国交正常化ということについては、鳩山内閣考え方向う文書とは一致するのでありますから、その趣旨を了承しました。しかし交渉地の問題につきましては、その文書の中にありました東京またはモスクワと書いてあるところで少し意見を異にしました。なぜ意見を異にしたかというと、これは内部の往復ということは、実は内部のことを申し上げても、それはないのでございます。私はかような国交を調整するというような平和事業は、国際連合の最も重きを置くところでありますから、国際連合の所在地で、互いに機関を持っておる所で話し合いをするということが、最も公明にして、また目的を達するのに好都合であると考えまして、その提案をいたしました。ソ連側からは、日本の希望する所で交渉をしても異存はないという返事を受けたわけでございます。
  32. 相川勝六

    相川委員 そこで鳩山総理ドムニツキー氏に対して、東京でもモスクワでもどちらでもいいということを言われたのでございますか。それは御本人がおいでにならぬからわからないと思思いますが、その辺が私あとで――外務省の今重光大臣の御方針はけっこうだと思います。鳩山総理のそのときの話の模様は、実は総理おいでにならぬとわかりませんが、お聞きになりませんか。
  33. 重光葵

    重光国務大臣 私は鳩山総理からすぐ今の文書を受け取った。そのときのお話では、このことはアメリカ関係においても重要であるから、アメリカとの連絡も手落ちなくやってもらいたい、こういう御希望がありました。そのときに交渉地はどこでもいい、向うの言う通りでもいいというようなお話は少しもございませんでした。鳩山総理は、私が考えておるニューヨーク交渉地とすることについて終始賛成の意を表せられて、その総理考え方を私は受けて、すなわちその指示によって処置を取った次第であります。
  34. 相川勝六

    相川委員 私は今はっきりした資料をここに持っておりませんが、鳩山総理の、交渉地東京でもいいじゃないかというような御意見が、ある新聞に出たことを記憶しておりますが、こういうことはないですか。
  35. 重光葵

    重光国務大臣 その点は、私は少しも承知をいたしておりません。
  36. 相川勝六

    相川委員 それではこれは総理に直接お聞きしなければわからないことでありますから、将来また機会を見てお伺いをしたいと思います。これは当然ニューヨークでやる方がけっこうであると思います。外務大臣の御所見は正しいと思います。  その次に、本委員会等鳩山さんの御答弁によりますと、千島樺太返還を要求しない、こういうことがあったようでございますが、これについて重光外務大臣の御所見はどうでございましょうか。
  37. 重光葵

    重光国務大臣 日ソ交渉はこれからやろうというのでございます。今実はその準備をしておるのでございますが、鳩山総理の述べられた歯舞、色丹というのは、サンフランシスコ条約でもきまっておるところであるとわれわれは解釈しておるのでございます。それでこの問題については、サンフランシスコ条約体制を維持するということからいっても主張しなければならぬことである、それは当然と考えております。しかしそのほかにどういう日本立場を主張するかということについては、これは交渉に属することでありまして、いまだ最終的の決定を見ておりません。その方針を慎重に検討し、それを決定して、これから交渉に移す考えでございますから、どういうことを今交渉に持ち出すかということを、この席で、たとい私見でも、私は私の口からは申し上げる時期ではないように考えますから、御了承を願います。
  38. 相川勝六

    相川委員 その御意見も私は外務大臣の御意見賛成であります。交渉に、かかるときに、軽々しく千島樺太の問題について言及するというのは早いと思います。大体大戦最初ころと思いまするが、大西洋の軍艦の上でルーズヴェルトとチャーチルが会見して、今次大戦においては領土割譲は認めないということを相談したと聞いておりますが、これはどうでございましょうか。
  39. 重光葵

    重光国務大臣 さようなことがあったようにも記憶いたしておりまするが、はっきり私今申し上げられません。
  40. 相川勝六

    相川委員 私は今ここではっきりした資料をお出しできないけれども、確かにそれを記憶しております。  そこでヤルタ協定というのは、これは日本は関知しない協定で、しかも協定自体が正確な協定であるか、非常な論議がある問題であるが、もし大戦の初めに領土割譲を認めぬという相談があったならば、この相談に反する一つ協定であったと私は思う。それでこれからいよいよ日ソ交渉をやる場合に、果して鳩山さんの考えておられる通りに早期に解決ができるかどうかわからない。あるいは五月になるか六月になるか、妥結はわからぬと思う。はたして妥結ができるかどうかもわからない。妥結するにしてもこれは相当時期がかかります。それで四月一ぱいに妥結ができぬとすれば、サンフランシスコ条約に制限されないで別個条約ができると考えても差しつかえないのでございましょうか。
  41. 重光葵

    重光国務大臣 サンフランシスコ条約には、たしか四月の二十八日だったと思いますが、二十八日以前にソ連は加入ができるようになっております。ソ連が加入すれば、サンフランシスコ条約体制ソ連は加わるわけであります。もしそれまでに加入しないということになれば、もしくは加入しない意思を明らかにして、その前においてもこれは別個交渉はできることになる、こういうのが条約上の解釈のようでございます。
  42. 相川勝六

    相川委員 ゆえに四月二十八日か九日までの間に日ソ交渉妥結せずして、その後に延びますれば、サンフランシスコ条約にこだわらない、別個の条件の協定を作ってもいいことになると思うが、そう考えてもいいのでありましょうか。
  43. 重光葵

    重光国務大臣 さようなことに相なろうかと私は考えます。
  44. 相川勝六

    相川委員 そうなりますれば、サンフランシスコ条約では日本千島樺太領土権を放棄するということを言っておるが、日ソ交渉においては必ずしもこれにこだわる必要はない。ことにヤルタ協定においては――これが正しい協定なりやいなやは世界の論議のあるところでありますが、かりにこれを正しいものと考えましても、南樺太については、これは返還という言葉を用いている協定の精神からいえば、南樺太はロシアの領土であったのを返還することになる。ところが千島の問題については引き渡すという言葉があるから、これは日本領土を引き渡すということになる。そこに南樺太千島とおのずからヤルタ協定自体でも異なった取扱いをしておると考えていいと思う。そういう場合にわれわれは、単純にこの南樺太及び千岳の領土権返還を要求しないというような鳩山総理の声明は、外交上きわめて重大なる、不謹慎な発言であると思うが、これについてどうお考えでありますか。
  45. 重光葵

    重光国務大臣 お話ヤルタ協定は、日本は何も関知しておらぬということは御承知通りであります。ヤルタ協定は、日本はこれに加わっておらぬわけでございます。従いまして日本はそのことを関知しないわけであります。しかしサンフランシスコ条約は、これは日本が調印したもので、そのサンフランシスコ条約ははっきり責任を負わなければなりません。しかしながらサンフランシスコ条約といえども条約に調印しないほかの国に対して、日本が責任を負う必要のないこともむろんのことでございます。しかし今後行われる日ソ交渉は、お話領土権の問題だけを取り上げてみても、これはずいぶん大きな問題に関係をし、また多くの国々の意見にも関係を持つ問題であろうかと思います。すなわちやはりこれは世界の納得する方向に進まなければならぬ。納得する結束によってこれが終末を告げなければならぬということにも相なるのではないかと考えられます。そこで今サンフランシスコ条約に調印したその責任をほかの国に対してとる必要はないという法理論がここにございます。それは私法理論としてはその通りであると思う。しかしそれにもかかわらず日本の主張をどれだけ通し得るかという難易の点は、やはり日本サンフランシスコ条約によって負うた責任いかんの点にかかると思います。さようなことで、私は鳩山総理が見解を披瀝されたことは、さようなことに関係をしておるのだろうと思いますが、私はそれは正しいと思います。しかし今日の場合にさような交渉の題目になる可能性のあることを、今この席でこれ以上論議をすることが、交渉のため、すなわち国家のために果して有益であるかということは、私は疑わざるを得ないのでございますが、いかがなものでございましょうか。
  46. 相川勝六

    相川委員 外交上の問題でありますから、われわれ議会においてもいたずらに交渉中のことをしつこく承ろうとは思いません。従ってこの交渉の問題については、総理大臣としても、交渉の内容について軽々に自分の意見を外部に発表すべきではないと考える。今のような、千島樺太返還は要求せぬとかいうようなことは言うべきではありません。この点において、私は重光さんの態度が正しい、鳩山総理態度は慎重性を欠いておると断ずるのであります。  その次に鳩山総理はこの委員会で犬養氏の質問に対しまして、このたびの日ソ交渉が成功するかどうかは、やってみなければわからぬ、こういうことをおっしゃった。これは確かに私もそう思う。相手はソ連であるし、複雑な問題も持っておりまするから、果してこれが成功するかどうかわからないし、いつできるかもわからぬというのが普通の見方であります。ところがこれに対して鳩山総理は、ドムニッキー氏に面会いたしました翌々日、すなわち一月二十七日でございますが、日本橋の公会堂の演説会におきましては、国民の前にこういうことを誓っておられる。自分は近き将来においてソ連及び中共と平和関係を回復し、抑留者の返還も実現することを諸君の前に誓うものである、こうはっきりと誓っておられます。ドムニツキー氏の日付もあて名もない文書を受けて、その翌々日においては、近いうちにこれができるということをはっきり誓っておられる。さらに二月の十日長崎市の宿舎におきまして、記者会見のときの談話においてこういうようなことを言っておられる。総選挙の前に私は全権が派遣できると見ておる。二十七日の総選挙までには二週間あるから十分間に合う、こういうことを言っておられる。鳩山総理は選挙前において、国民の前にこの日ソ交渉は近く妥結するのだ、あるいは選挙前にも、戦争終結の宣言をソ連はするかもわからぬ、こういうことを言って、この日ソ交渉を一枚看板として選挙に臨んでおられる。そこで国民は、多年要望して来た日ソ交渉が、選挙の前後を通じて現内閣の手でできるということを考えて、鳩山内閣に大きな支援をしておるのであります。しかるにドムニツキー氏に会ってから、約二カ月になってもまだ全権団もきまらないし、派遣もできない。交渉地さえきまらない。そして御本人自体がこの委員会におきましては、交渉妥結するかどうかわからぬ、こういうことを言っておられる。これもまことに慎重を欠いた選挙における声明だと私は考える。こういう一連のことを考えますると、鳩山総理外交上の発言は、まことに軽率である。われわれは不安にたえないのであります。この際私は外交の専門家たる重光総理に信頼いたしまするから、鳩山総理をよくお助けになって、外務大臣総理大臣との意見の扞格のないように、一体となって日本外交を進めてもらいたいということを切に切に国家のために希望するのであります。この委員会における私の質問に対する電光さんの御答弁は、おおむね私は満足でございまするが、鳩山さんの従来おやりになったことは多少違うようであります。またこの際国民の前に選挙の公約として大きく出された日ソ交渉が一日も早く妥結することを真に希望するものであります。内閣としてもあらゆる努力をやるべきであります。先般日ソ交渉のわが全権にだれをするかという問題について、杉原荒太氏が選に上ったことを聞いておる。私は外務省内部の話をいろいろ聞きますと、この日ソ交渉はなかなかめんどうだ。そこでその首席全権なんかは恵んで引き受け手もないとか言われておる。幸いに外交の専門家である杉原荒太氏が最初からこの主張者であるし、鳩山総理とともに熱心であった杉原氏が一番適任であるとすべてが見ておる。重光さん自身が、杉原荒太氏を推薦しておられる。これを真に国民に公約した通りに、一日も早く真剣にこの問題を妥結させるつもりならば、何ゆえに杉原荒太氏を全権に予定することをやらなかったか。防衛庁長官の仕事も必要でございます。大事でございます。しかし私は年来の日ソ交渉を円満に妥結するということは、国家のためには防衛庁長官の仕事よりももっと大きいので鳩山内閣はこれに全力を集中するならば、何ゆえに適任者の杉原荒太氏を全権の一員に予定しなかったか。また副総理として、外務大臣として、重光さんは何ゆえにこれを強く推さなかったか、この辺の事情をお聞きしたいのであります。
  47. 重光葵

    重光国務大臣 日ソ交渉方針をきめまして、当初これを推進して行こうという熱意を非常に持っておりました。そのために、その熱意を当時表示いたしたのでございます。私も、さようなことにおいて、鳩山総理と全然その気持を一にしておりました。しかしながら、やはり交渉の段取りをだんだん進めて行くに従って、初めの思う通りには行かなかったということ、これははっきり申し上げられます。しかし今後も同じ気持でもって進めて行きたい、こういう点においてはかわりはございません。その点においては、御了承を得たように拝聴いたしました。  全権の問題は、正式にはその後今日まで何もきまっておるわけではございません。しかしながら、現防衛庁長官の杉原大臣をわずらわしたいというふうに内定をいたしておったことも事案でございますが、これは、どちらが重要であるということはしばらく別問題といたしまして、――私はどちらも重要であると思います。しかし内閣の組閣ということは、国の政治の中心の問題でございますから、どちらかといえば、私は内閣組閣をりっぱにするということが、いずれの場合においても優先すべきだ、こういうふうに考えました。そこで、杉原君が入閣をされた、これはまた他の意味において私の歓迎したところでございますが、同君に劣らないようなりっぱな交渉代表を選任いたすべく、今手続を進行いたしております。さようなわけで、日ソ交渉は当初の筋に沿うて進め得るもの、私は目下のところこういうふうに考えておる次第でございます。
  48. 相川勝六

    相川委員 ぜひすみやかに交渉妥結するよう、この上とも御努力を願いたいと思います。  なお、小さい問題のようでありまするけれども、どうも鳩山総理重光外務大臣との間に、外交上の問題で十分緊密な連絡がとれていない節が、以上の問題についてもありますが、対外声明において両者の意見に食い違いがあることが、またわれわれ非常に不安であります。というのは、鳩山内閣は、その成立の翌日、一二月十一日に外交方針を世界に声明しておられます。その一齣に、「アジアの現状に対しては力による平和の政策こそ最も適切である。」ということを、内閣の中外における声明として発表されております。力による平和政策、これが現内閣の政策であります。ところが鳩山総理は三月十四日、外人記名クラブの原爆問題に関する質問について、こういう談話を発表いたしておる。もし現在の力による平和を正当として是認するならば、原爆貯蔵も認める。力による平和を是認していいかどうかわからぬが、是認するならば、原爆貯蔵の問題も認めなければならない。こういうわけで、自分の声明したる力による平和を正当とするならば、是認するならばというふうに言っておられます。さらに、三月十六日の記者会見においても、この原爆問題について同じようなことを言っておられる。力による世界の平和維持が正当であるならば原爆貯蔵も考える。逆に、力による世界平和の維持が正当でなければ原爆を持つことは考えられない。こういうようなことも言っておられる。外交の基調として、方針として、力による平和の維持が正当なりやいなや自分はわからないというような態度を声明している。しかも自分の内閣では、すでに内閣方針として、力による平和の維持こそ最も適切であると言っておられる。その鳩山さんの外交上の言明というのは、まことにそのときそのときの声明であって、われわれ国民はもちろん、外国の者も、鳩山総理はどこに日本外交を持って行くのか、まことに不安にたえないでおると思うのであります。こういうことに対して、副総理である外務大臣は、もう少し鳩山総理と緊密な連絡を持って、こういうことが二元、三元にならないように努力せられることが最も大事であると思うが、鳩山総理のかくのごとき声明に対して、外務大臣はいつも黙っておられていいのかどうか質問いたします。
  49. 重光葵

    重光国務大臣 今の声明、また鳩山総理の言明等、これは一つその当時の事態に即応して、そうして声明文のごときは、全面的に全文をよく検討して御判断を願わなければならぬと思うのでございます。私は、日本外交に、力をもってする外交を是認したことは一度もございません。政府においてもさようなことはございません。もしそういうふうに誤解を受けたとすれば、非常に残念なことでありますが、よく検討して調べてみましょう。しかし私は、力による平和の維持ということは、今、世界全体の情勢としてこれを判断すれば間違いのないことだと考えております。世界全体は、今、力による平和を維持しているわけであります。これは事実の問題であります。しかし私どもは、現政府外交は平和外交であるということを、絶えず繰り返して申しておる次第でございます。私は、その当時はそういう誤解はなかったと思いますから、従いまして何も手段はとりませんでしたが、そういう誤解はないはずでございます。そこで、あくまでも平和的手段でもって進んで行きたい、こういう外交方針をとっておるのであります。この点は、私は十分さように力説したいと思います。
  50. 牧野良三

    牧野委員長 この際相川君に申し上げます。時間が四十分間もなく参りますので、質問をどうぞ適当に御考慮願います。
  51. 相川勝六

    相川委員 時間がございませんからあまり長く申しませんが、今、そのときそのときの事情と、何だか気になったようなことをおっしゃったが、しかしながら、あなたは、鳩山内閣直後に、対外声明としてこういうことを言っておられる。「アジアの現状に対しては力による平和の政策こそ最も適切である。不安定なるアジアに対しておそらく将来共産主義の圧力はますます強く加えられる」、云々、「このような情勢下で、われわれは日本列島の戦略的重要性を十分認識し、日本の経済力の許す範囲で防御力を備える考えである。」これはそのときそのときの声明じゃありません。そうして鳩山総理は「力による平和の維持が正当であるならば」という仮定的のことを言っておられる、この食い違いはどうですか。
  52. 重光葵

    重光国務大臣 この文句ならば私の今の御説明した通りです。アジアにおいてもさような情勢で平和が保たれておるという現状を指摘しておるのでございますから、その通りでございます。しかし私はそのことについて、日本の政策が力によって政策をやるのだということは何にも言っておるつもりはございません。その情勢に応じて経済力の許す範囲内において防衛力もこれを作らなければならぬということを申しておるわけであります。
  53. 相川勝六

    相川委員 時間がありませんから、この問題、もう少し深く掘り下げたいのでありますが、次の問題に移ります。  いずれにいたしましても、私、現内閣外交については鳩山総理の独断な不用意な言動、それから外務省のやり方、これがどうもちぐはぐになっておるような気がしてしかたがない。そこで鳩山総理はまことにお人柄もいいし、われわれ個人としては好ましい大先輩と考える。しかしながら、それだけで外交はできません。私は、つらつら考えまするのに、人柄が大衆的で、ルーズヴェルトにどうも鳩山さんは似たような人じゃないかと思う。しかしながら、ルーズヴェルトは幕僚の意見も聞かずして、アメリカ外交をぽかぽかやってしまった。最後にはヤルタ協定で大しくじりして、アメリカのためにも世界のためにも大きなしくじりをした。しかも両方ともある程度おからだが御不自由な立場です。しかもヤルタ協定後ルーズヴェルトは二、三カ月の間になくなられた。まことに私はよく似ているような気がする。どうか重光外務大臣外交の専門家として――私が今まで言いましたことは、えげつない質問をいたしましたが、将来のために申し上げる。どうか鳩山さんを十分助けて日本外交をしてルーズヴェルトの失敗外交に終らしめないように、内部において一体の一元外交をしかれんことを切に希望するのであります。  その次には、一萬田大蔵大臣質問いたします。このたびの暫定予算におきましては、災害復旧費、及び緊急就労対策費のほかは、補助費は一切計上になっておらぬようであります。ところがこれは御承知通り建設省関係、たとえば道路、河川、港湾、砂防、水道、県営電力の開発、その他厚生省の関係では簡易水道、農林省の関係では土地改良、干拓、開墾、砂防、漁港、いろいろな補助事業があるが、こういう補助事業の補助額は相当多額に上ると思うのです。どういうふうにしてこういう継続した事業を支障なくやらせるお考えでありまするか。実はわれわれも地方におりましてよく事情を知っておりまするが、地方公共団体その他団体での継続事業というものは、どうしても雨季に入る前の四月、五月、この間にぜひ完成しなければ継続事業が台なしになることがあります。ところが四、五月の予算が当てがつかなくなってくると非常な混乱を来たすと思う。これについてどういう対策を講ぜられるつもりでありますか、承わりたいのであります。
  54. 牧野良三

    牧野委員長 この場合重光外務大臣より答弁をいたすというお申し出があります。お許しいたします。
  55. 重光葵

    重光国務大臣 外交の運用について御忠言はまことに謹聴いたしました。総理との間に外交問題について食い違いがあるように言われますけれども、それは方針において少しも食い違いはなかったのであります。それからまた、私も総理考え方については、全然同感を表しておる次第であります。今後いろいろな交渉事もある、お話通りであります。これについては、いやしくも誤解を世間に与えないように総理との連絡と申しますか、総理の指示を受けて私は十分に努力をいたしたい、こう考えておる次第でありまして、その点については十分御了承を願いたいと思います。
  56. 相川勝六

    相川委員 どうかそういうふうにお願いいたします。
  57. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいまの御質問、ごもっともな御心配だと思っておるのでありますが、補助費の事業につきましては繰り越しの多いのがありますし、それから他のたとえば地方交付税、交付金、義務教育費国庫負担金、生活保護費、こういうふうなものについて特に三カ月分計上ということにして、手元を楽にしたつもりでございます。なおしかしそういうことでも至らぬ場合があろうかと思います。それは短期の融資をしていく、こういうふうにして十分心を配っておるわけであります。
  58. 相川勝六

    相川委員 繰り越しによってやれることもありましょうが、繰り越しだけでやれぬ事業もございます。大体この間も小坂委員から質問しましたが、政府の直轄事業については、暫定予算を認めて、そうして公共団体の方面については継続費の暫定予算を認めないというような、その事情をもう少し承わりたいと思います。
  59. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 その点につきましては、やはり地方においていろいろと主体になってやる点もあろう、こういうふうに考えたわけであります。
  60. 牧野良三

    牧野委員長 相川君に重ねて申し上げます。時間が今日は大分詰まっておりますので、遺憾でありますが、適当の御考慮を願いたいと思います。
  61. 相川勝六

    相川委員 なるべく急ぎます。片一方の公共団体は補助金でやる、それから国は直接自分でやるからということでございますけれども、これは補助を受けておる団体といえども補助がなければやれないのでございます。自分でやれるのは、これは実は国と公共団体が一緒にやる仕事で、補助がないなら絶対にやれない。補助金があってからこそ初めてやる。補助金がどうなるかわからないで地方はやっていけない。その点においては公共団体の事業も国の事業も実質上同じです。ことに何か承わればその辺を少し甘く見ておられるのじゃないか。
  62. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 先ほどの大蔵大臣の御答弁を若干事務的に補足して申し上げたいと思います。暫定予算の性格から申し上げますと、公共事業につきましては、あるいは直轄についても計上を差し控えるべきかというふうな御議論もあろうかと思いますが、何分にも直轄事業につましては、各省それぞれ数千人の人員をかかえておるわけでありまして、これらの人たちが路頭に迷うようなことがあってはなりませんので、少くとも賃金分は、従来の暫定予算でも計上いたして参った。賃金を計上いたしますと、やはりただで遊ばしておくというわけには参りませんので、最小限度のものを直轄事業につきましては組んだわけであります。府県あるいは団体の補助事業につきましても、大なり小なり同じような事情があるわけでありますが、そこは直轄事業と補助事業が違っておることから来る相違があるわけでございまして、府県なり団体におきましては、補助金予算がきまります前に、それぞれの骨格予算あるいは暫定予算なりによりまして、ある程度の事業の執行を予算に計上しておるのが大体の例でございます。補助金が本ぎまりになりました後に、その骨格予算を補正して一年の事業を計画するというのが大体の例でございまして、従来の例から考えましても、この補助金が本ぎまりになりますのは、大体早くて七月ごろ、例年四、五月ごろにはほとんど補助金の現実の交付は見ていない、そういうような実情になっておるわけであります。つまり府県なり団体なりでそれらの人間をかかえてやっていくことが、従来の慣例からいたしましてお願いできておるわけでございまして、この暫定予算につきましても、そういう考え方で目下せっかく補助金予算を査定中でございますので、計上をいたさなかったような次第であります。ただし金繰りにつきましては十分配慮する必要がある。そこで交付税の四分の一、あるいは義務教育職員の三カ月分、生活保護費の三カ月分というようなぐあいに、若干ゆとりを持たせる意味で他の経費につきまして増額計上いたしております。なおさらに必要がございますれば、資金運用部の短期融通をもって金繰りの方は十分めんどうを見る、さような考え方をいたしているわけでありまして、直轄と補助との違い並びに金繰りについてそういう配慮をいたしておるという点を御了承願いたいと思うのでございます。
  63. 牧野良三

    牧野委員長 どうかこの程度で御了承を願います。
  64. 相川勝六

    相川委員 もうちょっと。今いろいろの御説明がありますけれども、これは短期融資でやるとか何とかおっしゃるけれども、実際上金融機関というのは、書類を出して審査にかかる、中央地方で連絡する、なかなかうまく間に合うものではございません。また骨格予算を組んでから何とかするとおっしゃるが、本予算を組んだって、それが通過するのは六月でございます。果してどのくらい補助金をもらえるかわからない。地方は非常に不安で動揺いたします。そこでこの点についてわれわれは非常な異議がありますが、希望としては、ぜひ地方の事業が混乱しないように――これは時間がありますれば、もう少し堀り下げて質問したいのですけれども委員長から御催促があって、もう少しほかのことも聞きたいからこれでやめます。その金融の措置なんかどうなっているか、私厳にこれを監視いたしまして、今度は本予算審議のときまたあらためて質問することに一つ留保いたしておきます。  時間もありませんが、私この際農林大臣にぜひ聞きたいことは……。
  65. 牧野良三

    牧野委員長 農林大臣は時間が参りまして、農林委員会に出ました。
  66. 相川勝六

    相川委員 そこで農林省の食糧増産あたりの予算も、土地改良とか開墾干拓というような予算もやはりつぶれております。これもちょうど植付期を前にぜひ完成しなければならぬような仕事がたくさんある。こういうことについて農林大臣の特段の――農林大臣はおられませんか。
  67. 牧野良三

    牧野委員長 時間が経過しましたので、今農林委員会へ出ることをお許しいたしました。
  68. 相川勝六

    相川委員 しかしどうですか、もう少し待ってくれたら……。
  69. 牧野良三

    牧野委員長 もう少し待ちたいと思いましたが……。お許しを請います。皆さんお待ちになっています。
  70. 相川勝六

    相川委員 私重大な質問をしようと思っていたのですが、ではまたあらためてこの問題は質問します。大臣がいなければ私の質問はできない。これはまた留保します。単に補助の問題だけではありません。  それでは労働大臣一つ、これは一言だけです。最近御承知通り日本のストライキというものが非常に激化いたしまして、何かお互い話し合いできるというような情勢でなくして、直ちに最後通牒をする、そして問答無用式なストライキが次々ある。だいぶん政治的様相を帯びてきたストライキがある。労働大臣もさぞ御苦心だろうと思う。こういうストライキをやられては、日本の脆弱なる産業経営はやっていけない。またほんとう考えてみたらば、労働運動の指導者あたりはいろいろやられるだろうけれども、労働大衆の希望に果して合っているかどうか、われわれは深刻に考えなくちゃならぬと思う。これについて険悪なるストライキの情勢をどういうふうにして回避していくか、新労働大臣としての御抱負を承りたい。
  71. 西田隆男

    ○西田国務大臣 お答えいたします。労働問題は、経済問題の一環として総合的に片づけていかなければならぬ問題だと考えております。現在春季闘争と称しまして賃上げのストライキが行われております。本来賃金の問題は、労使双方の話し合いによって解決をつける本質のものでございます。しかしながら労働賃金の問題につきましては、ただそれだけでなく、国民経済の実情について深い認識を持って、その上に立っての労使双方の話し合いによって、良識に基いての賃金が決定されることを期待いたしておるのであります。政府としましても、この問題に関しましては深い関心を持っております。従って最初に申し上げましたように、今回の争議につきましても、そういう観点に立って労使双方の善処を期待いたしておりますが、政府としましては、経済問題の一環としての総合的見地に立って、何とかこういう問題についても考えてみたい、さように考えております。
  72. 牧野良三

    牧野委員長 相川君、どうかこの程度で自粛していただきたい。
  73. 相川勝六

    相川委員 これも鳩山内閣一つ方針だと思いますが、ちょうど鳩山さんが民主党の総裁となられた翌日でございますが、昨年の十一月二十五日、読売新聞社主催の座談会で、民主党方針としてこういうことを述べておられる。鳩山さんは、ぼくの党は政権をとっても多数党でないから、多数党でなくて政治の運営をやっていこうとするには、どうしても超党派的委員会というものをやっていかなければならぬ、政権をとったら超党派的委員会をつくるに限ると思う。これはここにおいでになる石橋さんも御同席であったと思う。おそらくこういう一つ考え方から外交調査会のようなものもお考えじゃないかと思いまするか、おそらく私は、外交上の基本問題において社会党と民主党とは一致せぬだろうと思うから、思うようにいくまいと思う。まあおやりになってけっこうです。ところがその席上、石橋さんはこういうことを言っておられる。労働立法や労働政策などについては、社会党と必ず話し合えるという確信を持っておる。これは新聞の報道するところです、速記だからおそらくほんとうだろうと思う。今私は石橋さんに質問するだけの時間がございませんが、いずれにしても、かくのごとく超党派的にものをやっていきたい、というのが民主党の少数内閣としては特にお考えになるところではないかと思う。そういう空気があるわけです。そうすれば石橋さんのこういう一つ考えをもとにして、新労働大臣も労働問題についての超党派的の委員会でもつくって――ことに最近の労働争議が政治様相を帯びておるので、社会党なりわれわれ自由党なり、こういう超党派的の大きな委員会を持って、そうして労働三法の問題なり、その他の労働政策なり、労使双方の立場考えた、思い切った対策を講ずる考えはないか。鳩山民主党内閣の出発のときには、そういうお気持も多少あったかと思う。この線を入れて、どういうお考えになっているか、この点を聞きたい。
  74. 牧野良三

    牧野委員長 この場合相川君に申します。あなたの超過時間は、あと自由党委員から時間を差引くということが理事会の申し合せなので、さよう御承知を願います。
  75. 相川勝六

    相川委員 承知いたしました。
  76. 西田隆男

    ○西田国務大臣 お答えいたします。超党派的な委員会をつくってはどうかという御質問でありますが、私は本質的に、日本の資本と労働というものはかたき同士ではないという感覚の上に立っております。従って、国会として超党派的委員会をつくるとか、あるいは労使公益三者を入れて委員会をつくるとかいうことは、現在すでに賃金問題に関しては政府機関としてもありますし、民間機関としても、また地方の機関としても、もちろんそういう構成によっていろいろのコミッティが持たれておりますので、もし日本の労働組合の諸君が、資本は労働組合の敵であるというような観点からの労働争議を行なっておるとすれば、これは他の法律的な方法で考えるべきである、決して私は今の段階においては、資本と労働とは融和点の見出せない立場にはないというかたい確信を持っております。
  77. 相川勝六

    相川委員 では委員会をおつくりになる考えがあるかどうか。
  78. 西田隆男

    ○西田国務大臣 あなたのおっしゃった委員会というのは、現在の社会機構の中には、地方は地方に、中央は中央にいろいろ委員会ができて、そうして賃金問題に対しては話し合いもしますし、あるいは勧告もし裁定もするという仕組みが現在でき上っております。従ってあなたのおっしゃるのは国会の中で超党派的なものをつくったらどうかというお考えだと思いますが、そういうものは今直ちにつくっていくという考え方は持っておりません。
  79. 牧野良三

    牧野委員長 相川さんこの程度でどうぞ……。
  80. 相川勝六

    相川委員 私は実は――これは私の希望のようなものでございますが、この情勢は、とうてい今までのような……。
  81. 牧野良三

    牧野委員長 この程度にお願いいたします。
  82. 相川勝六

    相川委員 ちょっと待って下さい。お願いします。とうていやっていけないので、だから少し政治的な大きな、労働三法の改正でも何でも思い切っておやりになったらどうですか。
  83. 牧野良三

    牧野委員長 相川君に申し上げます。ただいまの超過時間は自由党質問者から差し引くということになっておりますから……。
  84. 相川勝六

    相川委員 承知しました。
  85. 牧野良三

    牧野委員長 阿部五郎君。
  86. 阿部五郎

    ○阿部委員 まず大蔵大臣に。けさの朝日新聞で見たのでありますが、三十年度予算の一般会計に、平和回復善後処理費で百五十億程度御計上になる。そのうちの一部がガリオア援助の資金に対する金利である、四、五十億御計上になる御予定である、こういうことを見たのでありますが、その通りでございますか。
  87. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 その数字については私は関知しません。その数字は正しいものではありません。
  88. 阿部五郎

    ○阿部委員 平和回復善後処理費を三十年度の予算で相当計上なさるということは、間違いないことだろうと思います。そのうちへガリオア援助に対する金利を御計上になるということは、お考えになっておるのでございますか。
  89. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今の御質問はちょっと聞えなかったのですが。
  90. 阿部五郎

    ○阿部委員 昭和三十年度の一般会計予算に計上されるでありましょうところの平和回復善後処理費の中にガリオア援助資金に対する金利を組み込まれるお考えをお持ちでありますかどうか。
  91. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 このガリオアについては、まだ何もきまっておらないのでありますから、それについて金利として特に計上することはないと思います。
  92. 阿部五郎

    ○阿部委員 御計上なさるお考えがないとすれば新聞の誤報でありましょうが、とにかくガリオア資金の支払をするという御方針はきめておると承わっておりまするし、それに対する若干の金利もお払いになるお考えであると聞いておるのでありますが、いずれそれがきまりましたならば、一般会計のこの平和回復善後処理費としてお払いになるお考えでございますかどうか、この点どうですか。
  93. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 さように考えております。
  94. 阿部五郎

    ○阿部委員 それが私には納得がいかぬのであります。大体ガリオア資金というのは、政府は援助を受けたでありましょうけれども、一般国民といたしましては、これはそれぞれすでに支払い済みなのでありまして、すなわち小麦粉にしろ、トウモロコシにしろ、当時いずれも国民に配給された時分には国民は支払いをしておるのであります。そうしてその国民の支払うた金は、対日援助見返り資金として特別公計によって経理せられて、それが諸般の企業等に融資せられたこともわれわれは承知しておるのであります。それでもし政府がこれを支払いなさるとすれば、われわれはその当時アメリカ人から援助であると聞かされており、支払うものとは思っておらなかったのでありますけれども政府がそれを支払いなさるとしましても、一般会計の中からお支払いなさるのは筋違いである、その資金は、対日援助見返り資金として民間その他公共団体などにも融資されておるので、その金の回収があれば、またそれには金利もついているのでありますから、当然その金をもって支払いができるはずなのであって、すなわち国庫の負担として支払いをするという筋合いのものではないかと思うのでありますが、それが一般会計から支払われ、すなわち国民がさらに税金を負担して、それで支払うという形になりそうに思われるのは、一体どこからそういうわけになったのであるか、この点を伺いたいのであります。
  95. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 そういうふうなお考えの見解もたくさんありますが、私はこれは一般会計からやはり支払うべきだと考えます。
  96. 阿部五郎

    ○阿部委員 これはどうもふしぎな御答弁でありまして、それでは当時国民が支払って、国民が配給を受けて、その代金を支払った金が莫大に上り、それが特別会計で処理せられておって、たくさんいろいろな方面に融資されておったのでありますが、その金は一体どこへ消えてなくなったのでございますか。
  97. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは見返り資金に残っておるわけであります。
  98. 阿部五郎

    ○阿部委員 残っておるとしたならば、元来アメリカから借りた金が残っておるのでありますから、それをもって支払いをしたらよいわけでありまして、今この重税のさなかに国民が膏血をしぼって出したところの税金で支払う必要はないはずなのであります。残っておるとおっしゃるのでありましたならば、それはどういう会計によって経理せられ、どこにどう残っておるのであるか、その詳細を承わりたいのであります。
  99. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 残っておると申し上げましたが、それは別に現金で残っておるわけではないのでありまして、投資になっておるわけであります。
  100. 阿部五郎

    ○阿部委員 私も現金で残っておるとお尋ねしたのではないのであります。何の形にしろ、とにかく政府の民間に対する、あるいは公共団体に対する債権の形なり、あるいはその他のいろいろな資産として残っておらなければならぬはずでありますが、それがどこに幾らどう残っておって、それがどう経理せられ、どういう金利がつけられておるか、そういう詳細を承わりたいのであります。そうして支払いをするのでありましたならば、それをもってアメリカへ支払いをすればいいのであって、この重税に国民が苦しんでおるさなかに、国民の税金によって支払う必要は毛頭ないと思うのであります。大蔵大臣の御見解はどういうのでありますか。
  101. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お尋ねの点は予算技術の面に関するように存じますので、政府委員から詳しく答弁させます。
  102. 阿部五郎

    ○阿部委員 詳細のことは政府委員から承わってもよろしいのでありますが、私は根本の方針大臣からお答え願いたい。一体一般会計から支払うか、あるいはアメリカから援助を受けた物資を売って、その金が集まって、それを特別の会計で経理しておるのでありましょうから、その金で支払うか。債権であるとしましても、すなわち手元に現金がないにしましても、債権であれば期限があるはずであり、その期限が来れば回収されてくるのでありまして、おそらくアメリカに返すに当りましても、一ぺんに全額元利合計耳をそろえて払うという筋合いのものではありますまいから、ぼつぼつ払うことになるのでありましょうから、その合計に資金が回収されてくるに従って払うことができるはずなのであります。そういう方法で支払うのが常識でありますが、その常識に反して、現在の国民の重税の中から払うという方針を立てられた。いかにすべきかという方針政府が立てるのでありますから、政府を代表して大蔵大臣から、なぜそういう御方針を立てられるのか、その点をお答え願います。
  103. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。財政投融資になっておりまして、もしもその金を財政投融資に使っていない、あるいはそれを引き揚げて払うとすれば、まず財政投融資に一般会計から繰り入れていかなければならぬ、こういうような関係から来ておると考えております。
  104. 阿部五郎

    ○阿部委員 驚き入ったお答えを承わりましたが、すでに財政投融資として、国民から集めた金を計上して、それを投資しておるのでありますから、払うに当っては、その投資しておるものが回収されたならばそのとき払えばいいのであって、新たに国民の税金からさらに財政投融資の方へ繰り込まなければ払えないという理由はないはずです。経理の御専門家であられるところの大蔵大臣が、どうしてこういう御答弁をなさるのか、私には不思議にたえない。
  105. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 財政技術の面からお答えいたします……。   〔「だめだ、だめだ」と呼ぶ者あり〕
  106. 牧野良三

    牧野委員長 発言を求めましたから、今発言を許しました。補足をするのです。(「補足をするならなぜ質問者了解を得ないか」と呼ぶ者あり)了解は得なくてよろしゅうございます。ただいま発言を求められましたから、質問の内容を明らかにするために、委員長は必要だと認めました。どうぞ御答弁願います。しかる後に大臣の御答弁を求めます。
  107. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 財政技術の面に関係した問題でございますから、私から事務的に補足することを何とぞお許しいただきたいと思います。  見返り資金は特別会計として、現在は産業投資特別会計ということで融資いたしました元本の回収金、運用利殖金、これを財政投融資に充てるということで、年々の財政投融資の貴重な財源をなしておるわけであります。今後ガリオアにつきまして支払いの協定ができました場合には、その協定についてあらためて国会承認を得まして、これを支払うということになるわけでございます。その場合に、御説のようにこれを産業投資特別会計で管理いたしております見返り資金の元本の回収金、あるいは利殖金から払うというのも確かに一つ考え方かもしれません。しかし一方、せっかく産業投資特別会計を設けまして、これを日本の経済の発展振興のために必要なる産業投資に充当しておるわけでありまして、元本が返りました場合にはその元本も、また利殖金が入って参りました場合にはその利殖金も、年々再投資に充てておるわけでございます。その再投資が必要であるという状態は今後当分続くのではないか。もしこれをお説のように、ガリオアの支払いに充てるということにいたしますと、現在財政投資に非常に多額の金額を必要とする時代でありますから、結局それが一般会計に振りかかってくるわけでありまして、一般会計からの財政投融資をもつてこれを補わなくてはならぬということになるわけでございます。そういたしますと、産業投資特別会計を設けました趣旨にかんがみまして、産業投資特別会計の方は依然としてその回収元本、ないし運用利殖金をもって投資を続けていき、一方ガリオア資金の方は一般会計から支払うということが、財政技術の面から申しましてきわめてスムーズに参るわけでございます。さような観点から、もし将来ガリオア債務の支払い協定につきまして国会の御承認を得ました暁には、これは一般会計の方から払っていくということにいたすのが、財政技術の筋道じゃないかと考えておるわけでございます。技術的な問題として若干補足的に申し上げた次第でありますから、何とぞ御了承いただきたいと思います。
  108. 阿部五郎

    ○阿部委員 今承わったのも技術上一つの方法であることは認めますが、ただしその方法は、これは二十億ドルというのでありますから日本の金にすれば七千億にも達する莫大なものなのでありますが、それだけ別に切り離して、その収支を明らかにしないでおいて、はなはだまぎらわしく、これがいかに経理され、いかに支払われるかということが明確を欠く技術的な方法であるように思うのであります。それで私がこの際お尋ねしておきたいのは、財政投融資の金としてほかの金も一括して運用されておるというのでありますが、一時この金だけを切り離して、対日援助見返資金特別会計として経理された時代がたしかあったと思うのであります。私はそれを記憶しております。それをいつのまにかほかの財政投融資資金と一緒にされたようでありますが、いつどういうように一緒にされたのであり、それが現在どういうように投融資されておるのであるか、その投融資条件はどうであるか、これはあらましをここで承わりたいのであります。そしてさらに、ガリオア資金を得た当時から現在に至る経過を明確ならしむるところの、文書による御回答を願いたいと思います。そして現在その金がいかに投融資され、いかなる状態にあるかということを明確に示すところの、文書による御答弁を願いたいと思います。あらましをここで承わります。
  109. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 見返り資金はただいまもお話のように、当初は米国対日援助見返資金特別会計ということで、見返り資金だけを経理する特別会計になっておりました。その時代におきましてはこれはまだ占領中でございまして、一々の投資につきましていわばひもがついておったわけでございます。占領が解けまして独立いたしましてから、そのひもつきということも当然なくなったわけでございまして、その機会にこの見返り資金の運用につきましてもわが国独自の見地からこれを有効に利用するという必要がございましたのと、もう一つは産業投資につきまして、場合によりましては他の財源も注入する、それによって所要の財源を確保するというような必要から、昭和二十八年に産業投資特別会計というのを設けたわけでございます。二十八年の予算にはこの見返り資金から引き継ぎましたもの、これが大部分でございますが、そのほかに減税公債というのを発行いたしまして、百億何がしの金をそれに追加して投資いたしました。しかしその減税公債はその後やめましたので、現在は見返り資金から引き継ぎましたものがほとんど大部分と申してもいいわけであります。そういういわばほかの投資とは切り離した形で独立に経理されておる、それが現状でございます。なおこの資金が現在いかに投融資されておるか、それらの点につきましては後刻資料をもちまして御説明申し上げたいと思います。
  110. 阿部五郎

    ○阿部委員 それに関してついでに一点だけ。その投融資されておる全体が二十億ドルというのでありますから、日本の金にすれば実に莫大に上るのでありますが、それだけの金が債権として残っておるのでありますか。
  111. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 いわゆるガリオア、イロア資金と申しますものの総額につきましては、日米間の交渉によって確定されるべきものでございまして、金額はまだ確定いたしておりませんが、大体十九億というようなことが言われております。その十九億のすべてが見返り資金として残っておるわけではございません。見返り資金が設定されましたのは占領後だいぶ進みました昭和二十四年くらいからでありまして、二十四年以後の分がこの対日見返り資金特別会計に積まれておるわけでございます。従いまして十九億から昭和二十四年までの分を差し引きました残りの、たしか十億前後であったかと思いますが、その金が対日見返り資金特別会計に積み立てられ、それが今日産業投資特別会計の力に引き継がれておる、さように御承知をいただきます。
  112. 阿部五郎

    ○阿部委員 それではほとんど半分というものは空に消えたことになるのでありますが、一体それはどうなるのでありますか。
  113. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 その点につきましては前の国会にも問題がございましたが、当時わが国はいわば国営貿易をやっておりまして、貿易特別会計が通産省に設けられておりました。そこにアメリカから援助のガリオア物資あるいはイロア物資を受け入れておったのでございます。それを国民に売り払いました場合に利益が出るわけでありますが、その利益はわが国の輸出についてのいわば間接的の輸出補助金ないしは外国から輸入いたします物資につきまして、国内の価格をそれより低く、安く定めて、国民生活の安定を期するという意味の輸入補給金、そういった使途に貿易特別会計の中でプールになって使われておったわけでございます。もちろんこれは全部はございません。貿易特別会計におきましては若干の利益金が残っております。この利益金は外為特別会計の方に引き継がれて、外為特別会計の持っております外貨の一部をなしております。さようなことで、当時としてはやむを得ない事情にこれが充てられた、外貨として蓄積された分は外為特別会計に残っておりますが、かようなことになっておりまして、対日援助見返り貸金特別会計ができました後の分ははっきりそこに積み立てられて、現在産業投資特別会計の中に引き継がれておる、さような現状になっております。
  114. 阿部五郎

    ○阿部委員 その昭和二十四年以前というのははなはだややこしい御説明であって、とうてい納得がいくものではありませんから、これは十分詳細なる文書によるお答えを願いたいと思います。  そこで大蔵大臣にお尋ねいたしたいのであります。今回のアメリカの余剰農産物の買い入れでありますが、これを買い入れるに当りまして、ドル条項と金利につきましては御交渉なさった上で、ドル条項の方は日本の方が譲歩し、金利の方はアメリカに譲歩してもらった、大体こういう御解決に至ったというような御答弁を過日承わったのでありますが、聞くところによると、この物資は、その輸送の半分はアメリカの船舶によらなければならぬという条件がついておるとか聞いておったのでありますが、この点についての御交渉はなさらなかったのでありますか。
  115. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 輸送に関しましては、従来ともするとこういうものにはフィフティ・フィフティというような話し合いがあったのでありますが、今回はそういうことがないように申し入れて、ただいま折衝中と心得ております。
  116. 阿部五郎

    ○阿部委員 日本の海運の復興が急務であることは申すまでもございません。そのためには国民の負担を忍んで利子補給までやっておったのでありますが、こういう物資を運送するに当って極力日本の船舶によるべきであることは申し上げるまでもないと思います。それでこの点についての強硬なる――強硬といいますと語弊があるかもしれませんけれども、十分なる御交渉が必要であろうかと思うのですが、この点御交渉をなさったのかどうか、またその経過並びに結果はどうであるか、今の御答弁でははっきり私にわからなかったのでありますが、いま少し明確なる御説明を願いたいと思います。
  117. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいまさような言葉を使いましたのは、実はこれは経審長官が直接に交渉しておって、私は相談にあずかっておる、こういう立場にありますので、私が相談にあずかっておる限りでは今申したようで、御意見の趣旨を貫徹いたしますように努力をいたします。こういうことであります。
  118. 阿部五郎

    ○阿部委員 経審長官はおられないようでありますが……。
  119. 牧野良三

    牧野委員長 今エカフエの会議に出ております。あらかじめ了解を与えたわけであります。
  120. 阿部五郎

    ○阿部委員 それではやはり大蔵大臣にお尋ねいたしますが、大体アメリカの余剰農産物を買い入れるということが、日本の経済自立にとっていかなる効果があるか、またいかなる犠牲があるかという点を十分お考えになった上で決定せられたこととは存じますが、われわれが考えるところによると、なるほど一時支払いを延期し、しかもそれが四十年賦という長期に延期してくれるという有利な点があることは認めますけれども、それが日本の農業に対しては相当不利益な影響をもたらすものであるのみならず、こういう品物の輸入をアメリカからするというのは、たださえ不足なドル不足にますます輪をかけるものであって、アメリカと経済協力もよろしいけれども日本アメリカとの貿易は、申すまでもなく輸入ばかりであって、輸出はその半分そこそこなのでありますから、アメリカと貿易しておればドル不足になるばかりなのであって、政府もたびたびおっしゃるように、アジア貿易に重点を置かなければならぬのでありますが、こういう品物をアメリカから輸入いたしますると、アジア、特に東南アジア方面からの輸入がそれだけ減少し、東南アジア貿易の振興という観点からいいましたならば、これはあまり好ましくないものじゃなかろうかと思うのでありますが、それらの点を御考慮の上で、なおかつ有利なりとして御決定になった、その御判断の根拠を承わっておきたいのであります。
  121. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御承知のように、わが国は食糧につきましては非常にたくさんな輸入を平常時三億ドルから四億ドルにわたってしておる。これは外貨を払って現金で買っておるわけであります。その状況がありますので、ある程度アメリカからこういうふうな条件で入れるということは好ましいことである。もっとも今御指摘のこういう点にいろいろと考えて行く点があるのではないかという点は、私ももっともと常々思っております。そういう点を十分考慮してやっておるということを申し上げておきます、
  122. 阿部五郎

    ○阿部委員 どうも十分お考えの基礎がわからないので、ありますけれども、これは話しておれば議論になるおそれがありますから、やめておきますが、一つ伺っておきたいのは、前のガリオア資金もそうでありますが、どうもその後の経理がはっきりしないのでありまして、これなども将来四十年にわたって支払うというようなことになって参りますると、この余剰農産物の見返り資金がいずれはまた各方面に投資せられるのでありますが、それが一体どうなったかはっきりしないうちに期限が来ましたならば、将来またその当時の国民の税金のうちから支払われるというようなことになるおそれがあると思うのであります。これは最初政府がこの扱い方を厳格にしておかれて、将来そういうことの起らないような確かな経理の仕方をやらなければならないと思うのでありますが、ガリオア資金と同じようなことになっては困るのでありますが、それについて大蔵大臣はどうお考えになっておられるか、聞きたいのであります。
  123. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私も全たく同意見であります。
  124. 阿部五郎

    ○阿部委員 同意見と言っても、私は何もどういうふうにやるということを申しておるのではないのでありまして、政府がどういうふうにやるお考えを持っておるか、こう聞いておるのでありますから、どうかお答えを願いたい。
  125. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これがいよいよ成立いたしました場合に、今御指摘のような趣旨をもちまして明確にする方法をとる。言いかえれば、特別会計を設けてやる、こういうふうに考えておることを申し上げます。
  126. 阿部五郎

    ○阿部委員 この問題はこれくらいにしておきまして、次に地方財政について伺います。国家財政の規模は一兆円で押えるということを承知いたしました。ところが地方財政の規模はどれくらいになさるお考えであるのでございますか。私たちが常識的に考えますると、地方財政は去年と比べて、去年以下に押えるなどということは絶対にできなくて、少くとも六百億や七百億は当然に膨脹することはやむを得ないものであると思いますが、政府におかれては地方財政の規模について一体どうお考えになっておりますか、伺いたいのであります。
  127. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 地方財政の現状からかんがみまして、できるだけ規模を押えたいと今検討を加えております。
  128. 牧野良三

    牧野委員長 大分時間が近づきましたようでありますから、適当に御考慮を願います。
  129. 阿部五郎

    ○阿部委員 お答えがないのでありますから、時間がいたずらに延びるのははなはだ迷惑なんでありますが、これは大蔵大臣からお答えがないから、自治庁長官からお答えを求めたいと思います。地方財政の規模をどれくらいにお考えになっておりますか。また私は膨脹は必至である、やむを得ないと思いますが、膨脹すればそれだけ財源が必要でありますが、財源をどこに求めるお考えであるか、これを伺いたいと思います。
  130. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 お答えいたします。二十九年度のまま補助事業その他を遂行するといたしますと、相当支出の増がします。また一面において地方税制の改正その他におきまして収入減もございまして、大体六百億円近くがふえるのではないかと考えておりまするが、国庫補助事業がどうなりますか、国の予算とにらみ合せなければならないと思いますから、まだその点は決定いたしておりません。
  131. 阿部五郎

    ○阿部委員 六百億円程度ふえると予想なさっておると承わりましたが、それだけふえましたならば、それに対する財源を考えなければなりませんが、その財源をどこにお求めになる御構想でありましょうか。もちろん決定はなさっておらぬと思いますが、お考えはあるはずと思います。私たちが過日来本会議における同僚議員質問に対する答弁などから考えましても、相当増税を考えておられるのではないか。これは税法を改正なさっての増税と、もう一つは、何と言いますか、やみの増税と言いますと、はなはだ悪い言葉になりますけれども、事実上税収を増加させるということをお考えになっておられるのではないかと思います。  そこで伺いたいのは、過日も本会議で問題になりましたが、所得見積りを高めることによって所得税の増収をはかっておる形跡があるのでありますが、こういうことを政府の方でなされると、当然それに見合うところの地方税としての住民税が上って来るのであります。税法に手を触れなくして、事実上の増税が行われるのでありまするし、また過日固定資産税について、固定資産の値上りが五〇%もあるが、それをまず一ぺんに上げては気の毒だから、二〇何%とかに見ているとかいうような御答弁があったようでありますが、そんなことをなさるのでございますか。それが直ちに地方の増税と相なって参るのでありますが、その点もっと明確にお答えをいただきたいのであります。
  132. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 大蔵当局とはまだ交渉中でありまして、結論は出ないのでありまするが、地方財政の立場から見ますると、地方交付税をある程度上げてもらいたい、並びにたばこ収益金の中から地方に交付するのを相当増してもらいたい、並びに揮発油税が二十九年度限りで終るのでありますが、新しく地方道路税を創設いたすことなどいろいろ考えておりまして、ただいま事務当局として折衝中であります。  なお固定資産税の評価基準でありますが、これは昨年十月自治庁から各府県庁へ指示いたしまして、大体二八%の評価基準の値上げをいたしたのでありますが、一方におきまして昨年の税制の改革によりまして相当税率が減っておりますから、これは差引いたしまして国民の負担が増すということはないのであります。
  133. 阿部五郎

    ○阿部委員 ただいまのお答えによって、政府は国税においては公約によって減税をなさるけれども、地方税においては増税を考えておられることがわかりましたが、中でも固定資産税については二八%程度固定資産の評価基準を引き上げる、こうおっしゃるのでありますが、これはわれわれにとってははなはだ意外なのであります。これは税法をさわらずして事実上の増税をなさるのであって、すなわち去年と今年とでは固定資産の価格においては値上りは私はないと存じます。これは数年前から考えましたならば、相当の値上りがあったでありましょうが、去年課税の基礎となった価格と昭和三十年の価格との間には変動はないはずでありますにもかかわらず、去年よりも二八%も上げるということになりましたならば、これは大へんな増税でありまして、税率を多少下げたとかそんなくらいのことでは帳消しになってしまって、はるかに増税に相なるのでありますが、そういうことをなさるのは、これは税法上の税率を上げること以上の増税であると存じます。それを増税にならないとおっしゃる自治庁長官の御意見は、一体どこから出た御意見でありますか。
  134. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 私どもといたしましては、国税の面において減税をして、地方税においてこれを上げるという考えは毛頭持っておりません。ただいま御指摘の固定資産税でありますが、これは法律に、固定資産税の評価基準は毎年一月一日の時価によってきめる、こうはっきり書いてありまして、毎年これは改訂すべきものなのであります。そこで大体勧業銀行等の資料を総合的に集めまして、値上り、値下りを決定するのでありますが、昨年夏におきます調査によりますと、前年度よりも田畑などにおきまして五〇%ないし六一%値上りをいたしております。ただしこれをすぐそのまま評価基準にすることは、納税者の負担が重くなるのでいかがかと考えまして、その当時の当局者はまず二八%程度の値上げにとめておこう、こういうのでもって全吉田内閣時代に各府県へ通牒を発したのであります。私はこの問題につきましてはいろいろ考えまして、毎年一回ずつ評価基準を変えることは不都合であるから、今後においては少くとも三年ぐらいごとに変えたらどうかということを考えておるのでありまして、この点につきましては成案ができますならば、この国会に提出して御協賛を求めるつもりであります。
  135. 牧野良三

    牧野委員長 時間が大分迫りました……。
  136. 阿部五郎

    ○阿部委員 税法の上においてそのときの価格に課税するということは、それは当然そう書いてありますけれども、その基礎になりましたところの一年間に五〇%ないし七〇%値上りしたということは、これは常識上考えられません。去年は御存じの通りデフレ時代でありまして、一般物価においては政府自身も値下りがした、こうおっしゃっておるのでありますが、それが田畑に限って五〇%ないし七〇%ですか、とにかく十万円したものなら十五万円ないし十七万円に上った、こういうことは一体何を基礎としておっしゃるのでありますか。これは実に不可解きわまるお話のように承わるのでありますが、その点重ねてお尋ねをいたします。
  137. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 大体物価の値上りは土地が最後になったのでありまして、近年土地が著しく暴騰したことは御承知であると思うのであります。昨年一月の状況に比べて物価基準が五〇%ないし六一%上ったわけでありまして、家屋の方は比較的値上りがないという考えからそのまま据え置いたのであります。土地だけに限って基準を上げたわけであります。
  138. 阿部五郎

    ○阿部委員 この問題ははなはだ納得しがたいものでありますけれども、この程度にしておきます。  次に、たびたび問題になった補助金のことであります。これは大蔵大臣は整理合理化をなさるとおっしゃるのでありますが、もちろん整理合理化すべき部面もございましょうけれども、大部分は民生安定に欠くべからざる事業を行うがために従来補助をしてきたのでありますから、その整理合理化の仕方のいかんによりましては大へんなことになろうかと思うのであります。そこで整理合理化をなさる大体の御方針、基準、これだけはもうお立てになっておるだろうと思いますから、できるだけ詳細に承わりたいと存じます。
  139. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 整理の方針は、補助金ほんとうの効果を上げていないもの、あるいはまた補助金があるためにかえって負担を増加させるもの、こういうものについて考えたいというわけでありますから、補助金がなくてはどうしてもやっていけないようなものまで補助金を取り上げるというような趣旨ではないのであります。
  140. 阿部五郎

    ○阿部委員 どうもこれは複雑な問題でありますし、ここで短かい時間に質疑応答をすることは無理かと思いますから、あまり深くは追及いたしませんけれども、さしむきこの暫定予算において国の直轄事業だけは計上なさって、地方団体に対する補助は計上なさらなかったのでありますが、先ほどの御説明によりますと、直轄事業を計上しなければ失業者が出るからというようなことを承わりました。ところがこれは地方団体においても事は同じことでありまして、政府が従来継続してやっております公共事業におきましても、今回は政府の方で整理合理化をなさるというような方針が示されておりますし、来るか来ないかわからないのでありますから、予算に計上することはできません。そこで地方団体としては事業がやれなくなっておるのであります。失業者も出るわけであります。そこでこういう乱暴なことをせられては、地方団体としてははなはだ迷惑をいたすと思うのであります。   〔委員長退席、上林山委員長代理着席〕 ことにこれに対して、計上しないがために金繰りが困難になるから、それを救うがために、義務教育費国庫負担金とか生活保護費などは二カ月分でなくて三カ月分計上しておる、こうおっしゃるのでありますが、こういうことをなさっても、地方団体において予算に計上ができない以上は、それは使うわけにはいきませんので、こういう生活保護費や義務教育費を一カ月分よけいに渡してくれたところで、流用しろというならば格別でありますが、流用することは地方財政法で許されないことでありまして、違法なことであります。それのみをもってしては何らの解決にもならないのでありますが、これは大蔵大臣はどういうお考えのもとにおっしゃっておることでありますか。
  141. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大体こういう補助金の事業につきましては、相当な繰り越しを持っております。それからまた地方公共団体の資金繰りということもやはり考えてあげなければならない。資金繰りという点においては三カ月分の計上、それから実際事業の遂行に支障があるということならば、資金運用部資金その他の資金によって短期融資をしていく、こういうふうな考え方を持っております。
  142. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 時間が経過しておりますから、できるだけ簡単に願います。
  143. 阿部五郎

    ○阿部委員 大蔵大臣は私の質問を誤解しておられるのでありますから、どうもはなはだ困るのでありますが、それではこの過日の御説明で再建整備債の発行というようなことをおっしゃっておられるように思います。これはおそらく地方財政再建整備法というような法律を御提案なさるお考えを持っておられることを前提として、おっしゃっておられることと思うのでありますが、その地方の赤字財政を再建整備する方法の問題であります。これは方法は大体において二つしかないことは言うまでもありません。特別に収入を多くする方向へ持っていくかあるいは経費を切り詰める方向へ持っていくか、この二つしかないことは言うまでもないことであります。収入をふやす方面へ持っていけばこれは当然増税になるのでありまして、鳩山内閣の一般方針に反するわけであります。ところが経費を節約するという方向へ持っていくとしましたならば、当然行政整理や補助金の打ち切りその他によって、公共事業を打ち切ってやらないことにする。すなわち民生安定に反するような方向にいかざるを得ぬわけでありますが、主としてどちらに重点を置くお考えを持っておられるのでありますか。それを承わっておきたいのです。
  144. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 いかにして地方の財政をりっぱにするかという具体案は、これは長期にわたるものもあれば当面の問題もあるのでありまして、この具体化についてはまだ関係の方々ときめておるわけではありません。しかし私の考えとしてはやはり当面何としても地方庁において仕事が多過ぎるといいますか、ずいぶん――むろん必要なことはやらなくてはならぬが、しかしそれほど必要でなくてやっておる仕事も相当あるだろうと思うのです。やはり財政的に健全化するには仕事と財源というものが見合うように持っていかなくては無理がある。そこにメスを入れるのがよい。それは基本的には行政機構の問題もありましょう、いろいろありますが、そういうことはしばらくおきまして、今言ったような方向に持っていきたい、かように考えます。
  145. 阿部五郎

    ○阿部委員 どうも明確ではありませんけれども、大体経費の節減に重点を置かれるような御意向であるやに承わりました。  それはそれといたしまして、地方財政の健全化をおはかりなさると過日御説明になりましたが、地方財政の健全化は現在の地方自治団体の実情をもっていたしましたならば、これはどうしてもその機構に手を触れなかったら、健全化はできないところにまで来ておると存じます。そこで前内閣においても地方制度調査会をつくられて、根本的な改革の方針を諮問しておられるようであります。ところが前内閣のやり方は答申が出ましても、そのうちで政府の気に入る部分だけを御採用になって、気に入らない分はそのまま放置するという、いわばえり食いなさるというような御処置をとっておったようであります。そして特にわれわれの注目したのは、前の吉田総理大臣はこの答申いかんにかかわらず、府県知事は官選にするという御方針を示しておられ、それに従って自治庁長官ども、知事は官選がよいというようなことを言うておられました。今まさに知事は選挙をやらんとしておりますが、もし政府にこれを官選にしてしまうというような御方針があるといたしましたならば、おのずから選挙に対する心構えも違って参るはずなのであり、また選挙が終って就任をいたしましても、その行政のやり方についても影響があろうかと思います。そこで現政府はこの問題についていかなるお考えを持っておるか、これをはっきりお示しをいただきたい。これは全国に大きな影響がある重大問題であろうかと思うので、はっきり承っておきたいのであります。
  146. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 地方制度の改革問題につきましては、ただいま地方制度調査会で熱心に研究中でありまして、まだその結論の報告を得ておりません。従いまして府県制度をどうするかということについては何らの考えもないのでありますが、さしあたって知事公選、知事官選ということにつきましては、内閣といたしましては決定をいたしておりません。(「方針を示せ、」「答申案はどうした、」と呼ぶ者あり)答申案はまだ出ておりません。従いまして私どもといたしましても、その答申案の出た上に、よく検討しまして、政府としての方針決定いたします。
  147. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 阿部君に申し上げますが、申し合せの時間が経過しておりますから、どうぞそのおつもりでお願いいたします。
  148. 阿部五郎

    ○阿部委員 それではまだ残っておりますが、またの機会を待つことにいたしまして、これで打ち切ります。
  149. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 井堀繁雄君。
  150. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私は中小企業並びに労働関係について、関係閣僚の各位にお尋ねをいたそうと思うのであります。  中小企業対策につきましては、選挙前におきまして、民主党の政策もかなり広汎にわたって発表されておりますが、中小企業の問題がきわめて重大化しておりますことは申すまでもございません。中小企業のわが国における経済産業に占めておりまする比重を統計の上から見ましても、全産業の九九・八五%というきわめて大きな比重を示しておるのであります。さらに輸出貿易や国内の生活必需物資の生産等の面を見ますると、その半ば以上が中小企業に依存しておることも、きわめて明らかであります。さらに中小企業のもとに従事しておりまする労働人口並びに企業者の数等を見ましても、非常に莫大な数字に上っておるのでありますが、こういう日本経済のいわば背骨のような役割を演じておりまする中小企業の現状は、このような重大な使命を担当しておりまする企業といたしましては、あまりに悲惨な現状であります。多く説明するまでもないと思いまするが、今日の中小企業を維持しておりまする経営者の多くの人々は、ほとんど毎日のように金融と手形の始末に奔命いたしております。賃金の遅欠配や税金の未払いのために、差し押え、あるいは破産、倒産、ひどいのになりますと一家心中といったような全く今日の社会的悲劇を一身にしょっておるような姿であります。ごく最近の事例でありますが、私の居住しておりまする川口市の一鋳物業者、これは土地柄からいたしましても非常に一般から尊敬を集め、かつ政治的には自由党の有力、有能な幹部として尊敬を受けておりました人ですが、わずかの手形の決済に詰まりまして、この春自殺をいたしました。まことにお気の毒にたえない次第でありまして、これはただ単なる一つの事例ではございません。こういつたようなことはひんぱんに新聞にも伝えられておりますし、また陰に非常に多くの犠牲が積まれておることは説明を要しないと思うのでございますが、このような中小企業の悲境を放置しておきまして、日本経済の自立も、ひいては貿易再開などといいましても、私は不可能だと考えるのであります。この中小企業対策については、非常に喫緊な処置を要すると同時に、思い切った政策の転換をいたさなければ、わずかな金融などで私は糊塗すべきではないと思う。それは、たとえば百円以上の注射をしなければならないような病人に仁丹を含ませるがごときもので、そういう一時的な政策では、私はとうてい中小企業問題は解決できない。この点については十分な対策がおありだと思いまするので、実はその点について、通産大臣所見をお伺いし、かつは大蔵大臣のこれに対する処置をお尋ねいたしたいと思うのであります。
  151. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 お答えいたします。大へん包括的な御質問でありますので、なかなかその全般にお答えすることはむずかしいかと思いますが、御説のように、中小企業を今のままにほうっておいていいとは、だれしも思わないのであります。これに対する対策は、古くからずいぶん唱えられたにかかわらず、その効果がなかなか上らないということにはいろいろな原因があると思います。単に一時的金融だけで済む問題ではありません。今お話のような非常に悲惨な状況ということに対しては、各地に相談所、あるいは診断所というものを中小企業のために作っております。それらのところに一つ相談していただけば、できるだけの手は打つように準備はいたしておるわけであります。ですから、いきなり自殺をするような人が起らぬように、これはわれわれの方でも常に言うておるのです。各商工会議所その他に相談所、また各府県には企業のための診断所もございますから、そういうところに一つ相談をしてもらいたい。ずいぶんいろいろな相談が参ります。相談してくるのについては、十分できるだけの手当はしておるつもりであります。さらに全体の中小企業の強化としては、どうしても団結してもらわなければいかぬので、組合を強化する。そのためには府県単位に中央会を作るとか、それをさらに全国的にまとめるとかいうことも考えておるわけであります。  それから金融の面では、御承知のように中小企業金融公庫、あるいは商工中金等の融資額をできるだけふやすと同時に、その融資の方法をもっと適切に行うように、たとえば中小企業金融公庫においても、今までは地方に支店、出張所がございませんで、これもまたにわかに作ることは人員の関係でできませんが、これもだんだんふやして、直接貸しというようなこともいたしたいというふうに考えておるわけであります。
  152. 井堀繁雄

    ○井堀委員 大蔵大臣にもお尋ねいたしたいと思いますが、融資に対する何か基本的な方針をお持ちであるかどうか。
  153. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大蔵大臣といたしましては、中小企業に対しまして、税の点、それから金融、あるいはまた金利負担の点において今後適切な措置を取りたい。特にそういう点に関連して私の考え方としては、大蔵大臣というよりも、金融的、あるいはそれに類似の救済といいますか、あるいは補助的な措置よりも、ほんとうに中小企業を生かしていく、それには中小企業に対してマーケットを与えるということが、私は一番大切じゃないかという考え方であります。マーケットという点については、今後十分考えていかなければならぬ。特に、たとえば今回の大衆の住宅というような場合、あるいはまた官庁の用品等についても、私はできるだけ中小企業にマーケットを与えるというような観点から考えていきたい。これは一つの私の考えでありますが、通産大臣の具体的な施策には、大蔵大臣として十分協力していきたい、かように考えます。
  154. 井堀繁雄

    ○井堀委員 そこで一、二具体的な点をお尋ねいたしたいと思いますが、特に通産大臣の中小企業に対する積極的な意図を、私はぜひ具体的に推し進めていただきたいという意味でお尋ねいたしたいと思います。  まず第一に、協同組合化の問題を取り上げておりますが、現在の中小企業等協同組合法については、多くの欠陥があると思う。これを改正する御意思があるのか、あるいはどのように欠点を補おうとされておるか、この点をまずお尋ねいたしたい。  いま一つの問題は、融資の点について、今大蔵大臣にも積極的な御共鳴を得ておりますが、今回の中小企業の金融は、かなり多岐にわたっていろんなものが設けられておりますが、実際にはから回りをしておる。たとえば手形の決済なども、大手筋の金融を全部中小企業がしょい込んで、今日九十日の手形などというものはほんの珍しいものでありまして、年越しの手形というような、全く手形の意味をなさないようなひどい手形を親工場なりあるいは問屋筋から預けられて、そして金融は実は名目的なものになって、ほとんど必要なところに回ってこない。これには金融政策の根本的な問題もあると思うのでありますが、こののりを越えて適当な政策を打つのでなければ、いかに中小企業のために金融のプールを予算化しても、実際には必要な中小企業の手には入ってこない。この事実を認めておいでになるか。これを解決する措置が講じられなければ、言いかえれば、いかにタンクに資金を呼び込んでも、その途中のパイプに私は無理があると思う。これを打開する具体的な方針がなければ、それはただ単なる抽象論に終ると思う。今日の段階は、そういう具体的な処置を取るべき段階にあると思うのでありまして、この点について通産大臣の具体的所見を伺いたい。
  155. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 第一の組合の問題につきましては、御指摘のようにずいぶん眠っている協同組合があります。十分活動していない向きがあるようであります。それらを大いに活力を入れるために、先ほど申しましたように、各府県ごとの中央会とうものを作って横の連絡をつけ、そしてさらにその協同組合を通じて、いろいろな設備の改善等にも十分力を尽せるようにいたしていきたいと考えます。  それから金融の問題でそういうお話も私伺って承知しております。親工場などから回ってくる手形が非常に悪い、これは全般的に日本の金融が今詰まっておりまして、悪意をもってそういう手形を出すものもあるかもしれませんが、大体は観工場自身が非常な金詰まりであるために、だんだんやむを得ずそういうことになるのだろうと思います。これは中小企業だけの問題ではなく、全体の金融の問題にからむことと思いますが、しかしその点も信用保険、信用保証等の制度を今後強化いたしたいと考えます。そういうところで救えるだけは救って参りたい、かように存じます。
  156. 井堀繁雄

    ○井堀委員 重ねて伺いますが、既存の金融機関をフルに活用するというこでは、従来と同じことなんです。金融の問題に関する限り、これをどう切りかえていくかという措置がなければ、中小企業の具体的政策にならぬと私は思っておる。一方にはやはり思い切った融資を行うと言いながら、私は量の問題、額の問題もあると思うのでありますが、そのことよりは、実際に中小企業を潤すやり方というものは、今どういう立場にあろうととれると思う。これを持たなければ、中小企業に対しては全く言うだけであって、実質的には何も考えられないと思う。この点の通産大臣の御意見の発表がなかった。これでは中小企業対策はから回りすると思う。くどいようですけれども、この点についてお考えがあれば伺いたい。さらに大蔵大臣がそれに対して、予算化する熱意を持って三十年度予算の中に何か新しい計画をお立てになっているか、この点をお伺いしたいと思います。
  157. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 先ほど申し上げましたように、ただいま考えておりますのは、中小企業金融公庫の活動をもっと活発化して、また直接貸しもできるようにしたいとか、あるいは商工中金の資金をふやしたいという程度のことを考えております。なお御指摘の点は、十分御意見を伺いまして研究をいたすことにいたします。
  158. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 中小企業の金融で特に財政の問題としましては、中小企業専門の中小企業金融公庫、国民金融公庫、あるいは住宅金融公庫、こういうものの資力を増加する、これは予算にも増額を計上するようにいたしております。大体この中小企業の金融につきましては、私の考えでは、ずっと日本の経済組織には問屋があった、これが敗戦後すべて一掃されてしまった、ここに私は大きな欠陥が生じておると思います。それで問屋にかわるようなことを、新しい組織としてだれがやるのがいいか。従来系列化、いわゆる中小企業も系列に属するがいい、あるいは組合とか金融機関が特にめんどうを見るというようないろいろな方法も行われております。私は新しい金融機関を特にふやす必要はないと思う。しかし問屋にかわる機能、これを近代的な感覚といいますか考えに置いてやる、こういうふうな点に結論を考えてやっていかなければならぬというふうに考えております。
  159. 井堀繁雄

    ○井堀委員 中小企業の問題につきましては、ぜひ三十年度予算については、具体的な芽を出すように御努力を希望しておきたいと思います。  そこで中小企業にもう一つ重要なことは、大蔵大臣も触れられましたように、マーケットの問題があると思います。これは国内向けのものと貿易に分けることができると思うのでありますが、私は貿易の点で一、二お尋ねいたしたいと思いますのは、貿易を再開した場合に、もちろん政治的ないろいろな障害はあるにいたしましても、日本がこれを越えて世界市場において自由な競争に打ち勝とうとする場合に、やはり日本の中小企業をこのままにして自由競争に勝つなどということは、とうてい望めないことではないか。大企業だけに生産を依存するというようなことは、日本経済としてはにわかに考えられぬことだと思う。ここで私は二つの問題が出て来ると思うのです。一つは中小企業の設備を近代化するとか、あるいは一つには労働関係を改めていかなければならぬ。日本の低労働条件、チープ・レーバーというものは、私は中小企業に最もはなはだしい傾向が見られると思う。今日賃金遅払いの問題や、あるいは労働時間にいたしましても、基準法の適用を疑われるような深刻な低労働条件が中小企業にはざらにあるわけです。こういう問題をこのままにしておいて、世界市場において公正な競争ができると考えるものはないと思うのであって、私はこの間間の解決のための具体的な措置が必要だと思うのです。これは、一方には企業の設備を近代化するための計画がなければならぬと思う。他方には労働条件を切りかえていかなければならぬ。労働条件といえば、すぐ賃金値上げのことをいうのでありますが、もっと実質的な生活を改善していくための労働条件というものが取り上げられて来なければならぬと思うのであります。この点につきまして、すぐ実行のできるものでやっていない問題がたくさんある。たとえば、国際労働機関の総会で採択されました議題で、まだ批准されていない多くのものがあるのであります。こういうものは、すぐ政府国会に提出してくるべきではないか。さらに技術を向上していくための労働者の自主的な協力を求めていく、これは労働政策になってくると思いますので、あとで一、二お尋ねいたしますが、こういう点について総合的な計一画が行わなければ、私は今後の世界市場に臨む態勢にはならぬと思う。特に日本のような荒廃した経済の中で、世界競争にすみやかに立ち向おうとする場合、世界の市場に、量ではとうていかなわぬとするならば、何か質的な優秀を誇るものがなければならぬ。これは世界のいずれの国々にも例があるのであります。   〔上林山委員長代理退席委員長着席〕 スイスにしても、その他スエーデン、デンマーク、ノルウェーのような小国においては、世界に一、二を誇るような時計であるとか、工作機械であるとか、あるいはチョコレート、チーズ、バター、あるいは農業を誇るデンマークでは、世界一を誇る大型のディーゼル・エンジンがどんどん輸出されている。スエーデンは電話機のごときも世界市場を押えておるといったような、これは、言うまでもなく労働の質的な問題が市場競争においては高く評価されておるからである。日本の現状は、低賃金あるいは賃金据え置きを強行するような政策がたくさん累積されて重荷になっておると思うのでありますが、こういうような問題を総合的に考えて処置をしていかなければならぬのでありまして、この点について経審長官に伺おうと思っておりましたが、御出席がございませんので、日本経済、日本産業の近代化ともいうべきものに対して、こういう方面にまでそれぞれ配慮した通産大臣の何かお考えなり、構想がおありになると思いますが、時間の関係がございますので、多くを望めないと思いますが、この点について伺います。
  160. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 お答えいたします。これはお話通り、どうしても中小企業を振興するためには、製品の改善、良質のものを安価に作るということが必要でありますから、設備の改善ということは努力をいたし、先ほど申しましたように、組合その他を通じて、通産省としてはできるだけの援助をしていきたい、こういう計画を持っております。  それから労働の問題については、いろいろ議論がありまして、あなたとちょうど反対の意見によって中小企業を救えという議論も、なかなか出て参りますが、私は生産性の向上、労働の質をよくするということがやはり中小企業のためにも必要だと思います。今回政府がやろうとする生産性向上本部というものも、単に大企業だけの問題でなく、中小企業の生産性の向上ということも十分注意を払っていきたい、大体さような考えであります。
  161. 井堀繁雄

    ○井堀委員 そこで外務大臣にお尋ねいたしたいと思いますが、国際労働機関の採択した条約について、国会に出される御意思あるかどうか。
  162. 重光葵

    重光国務大臣 今その問題について準備をいたしております。関係各省と打ち合せをしております。
  163. 井堀繁雄

    ○井堀委員 通産大臣なり大蔵大臣の中小企業並びに貿易に対する積極的な御意図はわかったのでありますが、これを具体的にしていくための事柄について、お尋ねをいたしていきたいと思います。まず労働大臣にお尋ねいたしたいと思いますが、日本の労働条件を改善していくために、それぞれ三つの問題が今出てきていると思うのです。一つは、一体労働条件を世界的などの水準に持っていくことが適当か、この問題にはいろいろ意見はあると思いますが、この点を一つ伺っておきたい。  それから次には、労使関係の問題が出てくると思う。この労使関係については、すでに賃金値上げをめぐって私鉄のストライキまで発展しておりますが、こういうような形においてもし賃金問題が争われなければならぬとするならば、日本経済にとっては決して仕合せじゃないと思う。もっと平和的に、しかも労働者の生活にはどの水準が必要かという所見がもし政府にあるとするならば、ああいう問題については、私は適切な処置が生れてくると思う。何も政府が直接手を出さなくても、労使間の解決も容易になってくると思う。こういう労働政策に対する政府方針というものは、不明確からくるものではないかと思う。こういう点について、労働大臣として何か方針でもお立てになっておるかどうかをまず伺っておきてたい。
  164. 西田隆男

    ○西田国務大臣 お答えいたします。  第一点の世界的な観点における日本の労働水準がどうあるべきかという問題は、非常にむずかしいものでございます。私が本委員会で午前中にお答えしましたように、労働賃金、労働問題というものは、その国の経済の一環として総合的に検討しなければならぬものであることは、あなたも御承知通りと思います。今の日本経済の実態を考えてみますと、いろいろ改善しなければならぬような複雑な条件がまだたくさん残っておりますので、今直ちに日本の労働賃金の水準をどういうところに置くかということを決定することは、非常に困難な情勢でございます。しかしながら、御承知のように最低賃金制に関する答申が中央賃金審議会から出ております。従って、政府としてはこれを尊重いたしまして、何とか労使の間の紛争がなくなるような賃金制度がきめられるならば、そういう方面に持って行きたいと思って善処しておりますが、通産大臣がおっしゃいましたように、答申の中にも実行性ある処置の決定にまって最低賃金制を考えろ、こういうふうな答申が出ております。実行性ある処置と申しますのは、さっき申しましたように、金融の問題とか、設備の改善の問題とか、いろいろ法令の改正の問題等々が解決がつかなければ、最低賃金制の問題を実行しても、それは不可能な情勢でございますので、実行性ある処置の決定を相まって最低賃金制の問題は解決して行きたいというので、今せっかく関係者で研究しておる次第であります。  それから第二の、今のようにストライキになっては困るじゃないか、それはごもっともでございます。しかしながら、今の日本の状態から考えまして、賃金の問題と申しますものは、労使双方が国民経済の深い認識の上に立って善処してくれれば、そう大した紛糾なしに片づくのではないか。ただ賃金闘争、賃金値上げという問題をほかの意味合いと結びつけてあおられる。その結果、国の経済に対して非常に重大な影響を及ぼすということは、これはまことに遺憾に考えております。さっき申しましたように、もし日本の国民経済の中において、資本と労働というものが常に敵対的な感覚の上に立って賃金問題を論議するというようなことが今後はっきりいたしましたならば、私はこれは何らか法的措置もとらざるを得ないと考えておりますが、現段階においては、資本と労働の関係は、国民経済的観点に立って見ましたならば、これは必ず融和点が見出される、かように考えております。
  165. 井堀繁雄

    ○井堀委員 具体的な事柄について明らかにしたいと思いますが、労使関係の問題につきましては、まず政府のもとに経営されております三公社、五現業の問題について、一応お尋ねいたしたいと思います。去る一月の二十九日に仲裁裁定が行われましたアルコール専売の地域給の問題でありますが、これが暫定予算案に盛られていないのであります。大蔵大臣はこの点に対して、どういうわけで今度の予算案にお出しにならなかったのか、この点を伺いたいと思います。
  166. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私からくどくどしく申し上げるまでもないことでありますが、地域給は、大体戦後の経済が非常に混乱をしておりまして、地域によって生活の条件が非常に異なっている、そういう場合に、これを調整する意味で行われたものと考えております。その後の経済情勢はよほど安定しまして、そう大きな違いもだんだんとなくなりつつありまして、全体とすれば、地域給は今後なるべく廃止して行く。これはまた全体の給与関係とも関連いたします。時間的にもむろん考慮を加えなければならない。そういう考え方が基本になっておりまして、この暫定予算には組んでありません。
  167. 井堀繁雄

    ○井堀委員 重ねてお伺いしますが、仲裁裁定を実施しますと、どのくらいの願を暫定予算の中に必要とするかを、ちょっとお答え願います。
  168. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 かりに入れるとすればどういう額になるかという御質問でございますが、どのくらいになりましょうか、アルコールの分は大きな金額ではない。おそらく五、六百万円というようなところじゃないかと思います。
  169. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私の伺いたいことは、先ほど労働大臣発言されましたことは、はなはだ不穏当だと思いますが、それを責める前に、政府全体の態度を実は明らかにしたかった。それは労使関係というものは、申すまでもなく労使の誠意ある交渉が前提にならなければならぬことは、説明を要しないわけであります。ところが今私のお尋ねしておりますアルコール専売の仲裁裁定の問題は、公企労法によって、仲裁が下ったときには両者がこれに応じなければならぬ最後的なものなんであります。御案内と思いますが、団体交渉をやり、さらにそれが不調に終って調停に持ち込み、調停がうまくいかないで、最後の段階が仲裁裁定であります。この仲裁裁定については、労使いずれもこれに服せねばならぬことば、裁判の精神を説けば明らかであります。法律を無視するということであれば、おのずから別であります。法律を守ろうということになる以上は、今回のアルコール専売の仲裁裁定は、明らかに政府暫定予算に組んで議会の審議を求めることにたる。これは合法的なたった一つの道であります。それを行わないということは、意識的に行わないのであるか。大蔵大臣がそういうものに対して全く不勉強であったのか。この点をまず一つ伺っておきましょう。
  170. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 不勉強というわけではないのでありまして、考えた上でいたしているわけであります。
  171. 井堀繁雄

    ○井堀委員 もし今御答弁のように、これを押し切るということであれば、明らかに公労法の違反です。昭和二十九年度については、予算の範囲内において判断する、政府にその裁量を許している。ところが一月二十九日の裁定は、この暫定予算に組むべきことをあの法律の精神は命じているわけであります。これを承知の上で提案しないということになりますと、鳩山内閣は、みずから法律をじゅうりんしてもあえて顧みないということを公けにする、最もおそるべき行為であると私は思います。こういう考え方がもし鳩山内閣の全体の意向であるとするならば、これはもう先ほどの労働大臣発言は、序の口だと思うのであります。私はこいう点で、この問題は非常に重要だと思いますので、具体的にお尋ねをいたしたわけであります。なおお考え直す余地がありますならば伺いたいと思いますが、特に総理おいでになりませんので、副総理の地位にあります外務大臣のこれに対する所見を、一つはっきり伺っておきたいと思います。
  172. 重光葵

    重光国務大臣 私は、この問題は十分慎重に労使の関係を考慮して処理しなければならぬ問題だと一般的に考えております。しかし今の暫定予算関係する問題については、他の閣僚から御答弁することが適当だろうと思いますから、どうぞ御了承を願います。
  173. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私が伺っておりますのは、きょう総理おいでになりませんから、その地位においてあなたにお尋ねしておるのであって、今の大蔵大臣発言を、私に善意に解釈してお尋ねをしているのです。これは何も議論の余地のない事柄なんです。公労法を読めば明らかだ。最終の決定が下ったのであります。そうしたら、これを実行に移すための予算を組んで、国会に出すのは当然なんだ。国会がこれを否決すればおのずから別だ。これは法律の上に疑義も何もないわけです。それを出さないということは、大蔵大臣考え方であるのか、あるいは内閣全体の意向であるかということをあなたにお尋ねしているので、その点だけをはっきりしていただけばいいのです。
  174. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私から、私の言葉について若干補足をいたしておきます。私は暫定予算の性質からいたしまして、暫定予算には計上しなかったので、別に仲裁を尊重しないとか、そういうことではないということをご了承願います。
  175. 井堀繁雄

    ○井堀委員 今の大蔵大臣答弁は、事実と全く相違した答弁だと思う。あなたの方は、国会にすでに仲裁裁定に対する審議を要求して提案しておる。こういう問題について、法律違反であることは明らかだ。だから、法律違反を押し切るというのであれば、これは別だ。そういうことを、一体鳩山内閣はやるかどうかということを私は伺っている。大蔵大臣は繰り返し行うということを言っているわけでありますが、それを副総理は、内閣を代表してその通りだというなら、その通りだということを言明していただけばいい。そのことをまず伺うわけであります。それは改める御意思があれば、改めるということをここで明らかにしたらいい。
  176. 重光葵

    重光国務大臣 むろん現に法律になっているものを忠実に行うということについては、われわれは少しもそれをちゅうちょするものではありません。ただその法律をどういう工合に予算に盛り込むかということについては、本予算を構成するときに考える、こういうふうに思っているわけでありますが、詳細なことは大蔵大臣からお答えすると思います。
  177. 井堀繁雄

    ○井堀委員 この問題は、今副総理によって明らかにされましたが、法律を正しく執行していくということであれば、当然今国会に出しております裁定に対する議案は間違っておる。これはあらためて撤回されて、新しく本予算に出す、あるいはこの暫定予算を組みかえするなり、それが間に合わないとするならば本予算にというふうにいたすべきでありまして、この点に対する大蔵大臣のはっきりした御答弁を、一つ伺っておきたいと思います。
  178. 牧野良三

    牧野委員長 政府委員から説明したいということでありますから、お許し願いたいと思います。
  179. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 法律問題がからんでおりますので、事務当局から一応お答えいたしたいと思います。アルコール裁定の問題は、これは制作上非常に重要な問題でございますので、暫定予算にはその所要額を計上いたしておらないわけでございます。従いましてこれを四、五月の間に実施いたしますことは、予算上、資金上不可能ということにならざるを得ないわけであります。一方公労法の規定によって、国会が始まりますと、十日以内にこれをどうするかということについての議案を出さなければならぬということになっております。従いまして、この暫定予算のもとにおきましては不可能でございますので、不可能であるという理由を付して、国会の御裁断を仰いでいるというのが、ただいま労働委員会で御審議を願っておりますあの案件でございます。この案件そのものを撤回するということは、法律的に考えられないわけでございます。あくまでも国会の御審議を待つという、そういう手続を考えておるわけでありますから、御了承を願いたいと思います。
  180. 牧野良三

    牧野委員長 時間がだいぶ迫りました。
  181. 井堀繁雄

    ○井堀委員 政府委員答弁は、先ほどの副総理答弁とは全く背馳する。これは政府委員が当分の判断で違法であるとか、ないとかいうことをきめるべき地位にありますのならば、おのずから別個です。あなたが公労法の精神を自由に判断することは許されぬはずだ。でありますから、もしそうだとすれば、最後の裁断が下ったのでありますから、当然それに応ずるという態度に出るべきであります。それをやらぬというのならば、鳩山内閣が、この問題に関する限りは、法律を乗り越えても力で押し切るということを表明する以外にないのであります。これは事務当局の答弁によることではないのでありまして、大蔵大臣のこの点に対する考え方をこの機会にはっきり承わりたいと思います。
  182. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 たいへん繰り返すようになって悪いですが、私は暫定予算の性格からして、新規のものは計上しないという立場をとりまして、暫定予算に計上してありません。
  183. 井堀繁雄

    ○井堀委員 今明らかにされましたように、暫定予算には困難であるが、本予算でこれを考慮されるというふうに解してよろしゅうございますか。
  184. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 十分考慮することにいたします。
  185. 井堀繁雄

    ○井堀委員 時間がございませんので、重要なことを二、三残しておりまするので、ごく簡単にお伺いしますから、簡単にお答えいただきたいと思っております。それは、先ほど来非常に重要な問題になっておりまする労使関係の問題であります。労使関係の問題につきましては、今の一事実で、私は政府態度をはなはだしく疑っておりましたが、次に出てくる問題は、公務員の地域給の問題であります。これも人事院の勧告が行われております。この勧告を尊重する御意思があるかどうか、この点に関してはっきりした答弁をいただきたいと思います。
  186. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 地域給のことにつきましては、私の考えは先ほど詳しく申し上げた通りであります。
  187. 井堀繁雄

    ○井堀委員 くどいようでありますが、仲裁裁定もまた法律の精神からいって、尊重することになっております。これを尊重されて、三十年度予算の中に考慮を払うというふうにとってよろしいですか。
  188. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、地域給ということにつきましては、先ほど申しましたように、これは経済が非常にでこぼこのときの制度なんで、その後これが平均化しつつあるのであります。むろん俸給全体、給与全体について考慮は加える場合もあるかもしれませんが、こうよう地域給については、むしろ廃止した方がいいという考えを持っておることを申上げておきます。
  189. 井堀繁雄

    ○井堀委員 これは、先ほどの副総理発言なり仲裁裁定に対しましては、もうすでに勧告が行われていることでありますから、十分考慮をお願いすることにしておきたいと思いますが、時間の関係で、先ほどの西田労働大臣発言は非常に重大だと思いまするので、この機会大臣のこれに対する御意見をもう一度ただしておきたいと思います。賃金問題につきまして労使が相争うということは、今日の憲法の上から行きましても、労働法の上からいっても当然なことであります。その当然なことに対して、敵対行為という言葉がありましたが、敵対行為ということはどういう意味か知りませんが、労使が利害を異にして相争うということは当然なことであります。労働者の団体行動権、罷業権が憲法で確認されていることは説明を要さない。そういうことが行われることについて、何か断固たる別の方針をとるような御意思でありましたが、容易ならぬことだと思うんです。もしそれが御本心でありまするなら、もう一ぺんここではっきりいたしておきたい。
  190. 西田隆男

    ○西田国務大臣 お答えいたします。私の言葉が足りなかったかもわかりませんが、敵対行為をとるというようなことは、速記録を見てもらえばわかると思いますが、言っておりません。資本と労働というものは調和点を見出して行けるものだと私は信じております。しかしながら資本が労働を敵視し、労働が資本を敵視する、お互いにかたきだというような感覚でもし賃上げ闘争が行われるということになれば、それは何とか法的措置をとらざるを得ない、かように申したのでありまして、現在行われている労働行為が敵対行為の感覚で行われているということを申した覚えはございません。さよう御了承願います。
  191. 井堀繁雄

    ○井堀委員 今のお言葉は、同じことを繰り返しておるわけです。労使は対立しておるんだ、敵対という言葉をどう使うかという表現の問題は、おのずから別なんです。相争うということは当然の建前なんです。その争うことに対して、何か別の方法を講じなきゃならぬということは、一体どういう意味ですか、もう一度伺っておきたい。
  192. 西田隆男

    ○西田国務大臣 お答えいたします。どうも私の言うことを曲解しておられるように思いますが、労使が賃金問題に関して話し合いをするということは、別に相争うという意味じゃないと私は思います。これは労使双方の立場において、国民経済的な認識のもとに、われわれの賃金を値上げしてくれという要求が労働組合側から出る。経営者側は経営者側として、資本の立場から賃金の値上げはできるとかできぬとかいうことを労働組合側と話し合う、これが現存行われておるストライキだと思っております。従って、私の言っておることをあなたの方で曲解されておるように私には受け取れるのですが、もしそうでなかったら、またお答えいたします。
  193. 井堀繁雄

    ○井堀委員 決して私は曲解も誤解もいたしておりません。あなたが労働大間の地位にあるから申し上げておる、他一の閣僚が不用意にそういう言葉を使ったならば、これは失言で許されると思うのですが、一国の労働行政を責任をもっておやりになろうとするあなたが、賃金問題を、労使がもちろん紛争によらないで誠意を尽して妥結して行くということは、望ましい姿であります。しかし今日の社会制度のもとにおきましては、遺憾ながら雇い主の方でも自分の主張を貫き、労働者側の方も、正しい主張を要求していれられないときには直接行動に出ることは、これは法律も認めておる、これはもう基本的な事柄でありまして、それを、何か労使がそういうものを話し合いでやらなければならぬようなものの考え方をお持ちになるとするならば、鳩山内閣の労働行政というものはおそるべき結果になる、決して労使関係は争うことを好むものでないことは、何人も否定はしない、しかし、それはどうしても平和にできないというところに、今日の世の中の欠陥があるわけです。その欠陥を認めなければ、労働行政などというものは正しく行われません。これは基本的な思想において、労働大臣の私は資格を云々する大きな問題になると思うのであります。総理大臣がもしおいでになりますならば、この労働大臣に対する今のお考え方をお許しになるのかどうか聞きたいと思いますが、不幸にしていませんから、この点に対して、副総理のこれにかわるべき御答弁を伺っておきたい。
  194. 重光葵

    重光国務大臣 私は、労使の利害関係は調整する方向に努力をしなければならぬ、こう思っております。
  195. 牧野良三

    牧野委員長 井堀君、時間が参りました。どうぞ調整していただきたいと思います。
  196. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私は重要なことでありますから、はっきりさしておきたいと思います。これは、先ほど労働大臣が不用意に言われたと言って、あっさり取消されるならば別でありますが、重ねて念を押されているわけであります。今お聞きの通りであります。私が説明を加える必要はないと思うのでありますが、今日の世の中で、どこの国でも、資本主義のもとにおいて賃金の問題を労使が争うときには、まず好ましい姿は、お互いに了解の上に話し合って行くということであります。しかしそれは不可能であるということを前提にして、直接行動を許しておる。企業家から言わせますならば、ロック・アウトをやるのです。労働者の方から言うならば、労働力を売るのでありますから、これは団結権、罷業権の問題であります。その罷業権の行使が何か労使のかたき同士の争いで、その争いがけしからぬから法的措置を講ずるだの、何か行政的措置を講ずるがごとき発言があった。そういうような発言は、これは不穏当というよりは、全く法律を無視した発言です。こういう点に対して、副総理は一体そういうような労働行政をおやりになるつもりであるか、伺っておきたい。
  197. 西田隆男

    ○西田国務大臣 お答えいたします。私は決して罷業権を否認するようなことを言った覚えはございません。速記録をお調べになっていただけばわかると思います。
  198. 牧野良三

    牧野委員長 井堀君、時間が参りました。どうぞ調整を願います。
  199. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私は議論を好むものではありませんが、私は何も言葉じりをとらえて議論をしているのじゃございません。これは非常に重大なことです。労働行政をどういうふうにお考えになっているかということを、端的に表現した一つ言葉だと思うのであります。何も私は、あなたがこの問題を、労使が敵対行為で片づけるということはけしからぬといった意味にはとっていないのであります。すなわち、こういう問題の解決については、少くとも力関係に訴えないように善処するという御趣旨は、もう私は当然だと思うのです。そういう趣旨はわかる、それならなぜさっきのような、何か特別の措置を講ずるかのような、誤解を生むような発言をなぜあっさりお取り消しにならぬか、それを取り消そうとしないで四の五の言うところに、問題があるのです。他の閣僚でありますなら、私はとやかく言わない。労働行政の専任じゃありませんか。そのことが非常に重大だから、繰り返し私はあなたに前言をお取り消しにならぬかということを勧めておるわけです。何か理由があるなら、はっきりそうおっしゃったらいい。
  200. 西田隆男

    ○西田国務大臣 私が最初答弁申しましたことに対して、もし不穏当な点がありましたら、それを取り消すにやぶさかではございません。
  201. 井堀繁雄

    ○井堀委員 もう私の言っておきたいことはおわかりになったと思いますが、ただ今後労働行政をやる上について、私はいろいろな疑問を抱かざるを得ないと思う。そういう意味で今後注意いただきたいと思うのであります。  時間が過ぎて恐縮でありますが、棒書きで一、二お尋ねしておきたいと思います。それは、今非常に深刻な失業問題でありますが、雇用の問題につきましては非常に重大でありますから、この一問だけ伺って終りたいと思います。これは貿易関係にも関連して来まするが、日本の労働人口が加速度的に増大しておるということは、もう明らかにされております。その労働人口を移民という形で、今度の暫定予算の中にも、あるいは予算大綱の中でも強調されておりますことは、私どもも非常に関心を持っております。そこでもし移民を行う場合に、企業移民でありますとか、農業移民というものが従来行なわれておりますが、さらに技術的な意味においての移民計画なり、あるいは積極的な移民に対する方針なり見通しが実は伺いたかったのであります。時間がありませんので、多く聞くことはできませんが、アメリカから約一千五百万ドルと伺っておりますが、これがまだ受け入れがはっきり明らかにされておりませんが、その辺の慕情はどうなっているか。受け入れ態勢等についてどうなっているか。それから今後移民に対しましては、企業移民については中小企業庁、農業移民については農林省といったように、移民問題についてはあちらにひっかかり、こちらにひっかかって、時期的に非常に重要であるにもかかわらず、そういうところに障害がたくさん出て来ておる。今日の日本の労働問題なり、あるいは人口問題なりの、今後移民に関する一つのチャンスだと思う。こういうときに、こういうものに対するそれぞれの方針が明らかになっておりませんと、せっかくの機会を逸すると思う。そういう意味で、非常に重要だと思いまするからお尋ねをいたします。  それから次に、労働大臣にお尋ねをいたしたいと思います。今日失対事業に対する特別の措置をおとりになろうとしておいでのようでありますが、失対事業については、すでに御案内のように、今日の失対事業では、とうてい今日の失業者を緩和するということには役立たなくなってきておる。これに対して抜本的な切りかえを行う時期が来ていると思う。こういうものを次の予算の中に盛り込む御準備があるかどうか。  さらに、文部大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、新制中学なり高等学校を卒業されても、就職が非常に困難であります。こういう特別な就職について、何かの措置をおとりになろうとしておるかどうか。それから特に大学卒業生に対しましては、問題が幾つもあると思います。一番大きな問題は、東京に官立女学校が集約されておる、特に大学は百二十に近いものがあります。こういう問題を解決されなければ、失業問題については、筋が通らなくなると思うのであります。こういう点に対する文部大臣のお考え、特に官立大学を優先しておるような傾向は、これはいろいろな意味において障害になっておる。こういうものを地方に分割するとか、あるいは官立についても東京に限る必要はないと思うのであります。こういうような点に対する方針一つ伺っておきたい。
  202. 重光葵

    重光国務大臣 移民の問題について簡単にお答えいたします。移民の問題が人口問題に関係し、失業問題に関係するというだけでなくして、非常に広汎な国家の対外経済発展に重要な位置を持っておるということは、私から御説明申し上げる必要はございません。今日海外移民と申しますと、大体中南米でございます。その中南米各国、ブラジルを初めアルゼンチン、パラグァイ、ドミニカ、こういうような国々に至るまでも、昨今は非常に日本の移民を歓迎する空気になっております。これは非常に貴重なことであると私ども思っております。この貴重な時期を失わず、またこれは排日に逆転されては困りますから、十分移民問題を注意深く取り扱って、そうしてできるだけ実現をしなきゃならぬという考えでおります。それから、そのために移民の取扱い等を一元的にやるとか、能率的にこれはやらなければならぬように考えて、せいぜい努力いたしておるわけであります。  それから移民に関する借款のお話がございました。これは、実は米国でいわゆる銀行借款なるものが今持ち出されておるわけでございますが、その借款の問題につきましても、移民をこの際できるだけ送りたい、こういう見地に立ってこれを考慮して行かなければならぬ、こう考えておる次第でございます。
  203. 西田隆男

    ○西田国務大臣 失業対策の問題は、暫定予算の中では、前年度が十七万でありましたのを十九万にいたしまして、予算の増額をやっております。緊急就労対策事業で一万五千人、鉱害復旧専業で一万人、これだけ一応暫定予算では計上いたしております。就労手帳を持っております失業労働者に対しては、これである程度暫定期間内は何とかまかなって行ける、こう考えております。将来の通常予算の場合においては、住宅の建設とか、あるいは失業対策事業の拡大、雇用量の増大等につきまして、大蔵省と今相当金額を増加してもらうように折衝をやっておりますので、ある程度増額された予算が実現される、かように考えております。
  204. 松村謙三

    ○松村国務大臣 大学の問題につきましては、これはよほど検討を要するものがあると私も考えております。それで、これにつきましては十分に研究をいたしまして、あるいは中央に集まっているのを地方に分散するということもありましょうし、それから大学のほかに、今短期大学の問題があり、それから大学院の問題があります。けっこうではありますけれども、内容が充実しないもの、力の足らないものをむやみに手を広げるのもどういうものか、お話のように、就職の問題もありまするし、これは一つ十分に研究をいたして、さっそく措置をいたしたいと考えております。また学生の就職の問題につきましては、これは重大なことでございまして、とりあえず労働省とも連絡をいたし、就職について現在全国にあっせんをいたしておるわけでございますが、この上とも努力をいたしたいと考えます。
  205. 牧野良三

    牧野委員長 午後二時半より再開することとし、暫時休憩いたします。再開の時間は厳守いたします。    午後一時五十一分休憩      ――――◇―――――    午後二時四十七分開議
  206. 牧野良三

    牧野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。志村茂治君。
  207. 志村茂治

    ○志村委員 政府は重要政策の第一に住宅建設の拡充をあげておられます。まことにけっこうなことと存じます。従来は国民は国家のためといわれて、常に犠牲だけを負担させられておったのでありますが、このたびの住宅政策によって、国民特に勤労大衆が求めていた住宅難解消が約束せられたのでありますから、国民は大きな共鳴をしたのであります。私たちも賛成するものであります。ぜひともこれを実行に移していただきたい、実現していただきたいと考えるものであります。こういう意味で、以下私は住宅政策について質問しようとするものであります。  まず第一に、政府は前国会の財政方針演説におきまして、大蔵大臣が四十二万戸の住宅の建設を約束されております。その後もたびたび繰り返しておられるのであります。また竹山建設大臣も、これこそ自分が建設大臣となったその最大の責務であるというようなことを各所で発表せられておりますが、この四十二万戸の住宅建設、これをどういうふうにして実現されようとしておるのでありますか、各方面では今日この実現はほとんど不可能だと見ているようであります。国民もそのために大きく失望いたしているような状態でありますが、これを一掃するために、政府は一たん発表した公約は責任を持って果す、こういう確固たる態度を示していただきたいと存ずるのであります。この意味で、まず竹山建設大臣にお伺いしたいのでありますが、政府は住宅難解消についてどのような具体案を持っておられるのか、できるだけ精密にお示しを願いたいと思う次第であります。
  208. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 住宅問題については、鳩山内閣の重要施策の第一に取り上げておりますので、建設省の仕事だくらいに考えておりません。そこでただいま御質問の輪郭は、すでに大蔵大臣から申し上げてありますように、四十二万戸を目標として来年度実行に移りたいと考えておりますが、その大体の構想は、今予算編成とともに進めておりますので、具体案の詳細の発表は、いずれ別の機会にあると思いますが、大まかに申せば、従来の公営住宅の制度というものは、低家賃制を維持するためにも必要な措置と考えて、これは従来通り進めていく考えであります。なお公庫による金融処置も、これも制度としては続けて参る考えであります。そのほかに、この二本建では十分に目的の達成が困難である部面を担当するために、公社の制度を新しく考えたいと考えております。この公社のねらいは、大体宅地の造成という問題が困難な問題の一つでありますから、これを担当することが一つと、それから従来の公営住宅等のやり方からいいまして、一つ一つの行政区域の制約を受けまして、たとえて申せば、東京都民が隣県の千葉、埼玉、神奈川等に住宅地を建設するというような場合におきましては、なかなかスムーズに参りません。そういう行政区域を越えての住宅地の建設をいたしますために、この公社制度をとりたいと考えております。そのほかいろいろ新しいプランは公社の中へ盛り込んで参りたい考えで、これは単純な単一なものではなく、いろいろなものをこの中でやって参りたいと考えております。なお資金の面については、大蔵大臣からあるいはお話があるかと思いますが、今予算編成の点において検討中であります。土地の問題につきましては、今日までも一番の難点でありまして、いろいろな施策が必要と考えますけれども、新しい宅地の造成を国家の援助のもとにやって参りたいというのが一つと、また今までの制度を改めてやっていかなければならぬ点もあります。たとえ申せば、緑地の問題が終戦後取り上げられました、これはなかなか制度としては必要でありますけれども、一利一害がありまして、これで全部規制をされますと宅地が制限をされますので、部分的には検討をする必要もあろうかと考えて、その方面も進めておりますが、全部やめるわけにはいきませんし、全部維持するということもなかなか実態に合わないというようなことで、宅地の問題をいろいろな面から進めて参っております。なおそのほか税制の問題でありますとか、あるいは民間の資金を集めるいろいろな処置でありますとかいうことも考えておりますが、いずれ詳細は予算とともに御説明を申し上げたいと思います。
  209. 志村茂治

    ○志村委員 私は、四十二万戸の住宅を建設することについての具体的な計画をお伺いしたのですが、政府はいまだ具体案を発表する段階になっておらないということを言われております。しかし前の国会の施政方針演説では、四十二万戸というきわめて具体的な数字を示しておられるのであります。たとえば、合計三十万であるとか五十万であるとかいったようなばく然とした概数を示されるのであるならばともかく、四十二万戸というように端数までも示されたのでありますから、何か具体的な基礎があっての建築戸数の発表であったと国民は考えているのであります。それだけに、裏には具体的な計画があったものとわれわれは受け取っておったのであります。おそらく何らの具体策もなしにこのような数字は発表できないし、また施政方針演説としても発表できないはずであります。それでは、考え方によっては一片の放言であったと言われても仕方がないと思うのであります。また一方政府は、今日の住宅難を十カ年間で解消すると言われております。建設省の発表によると、世帯数の増加とか、家屋の老朽であるとか、災害等によって年々新規需要として二十五万戸、十カ年間では二百五十万戸、さらに現在の不足数が、この一月で二百八十四万戸といわれておりますから、合計五百三十四万戸十カ年間には不足するわけです。その十分の一と見ましても年五十三万四千戸を必要とするわけであります。四十二万戸という数字がはじき出されました根拠だけでもお示し願いたい、こう思う次第であります。
  210. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 われわれは、予算決定を見ませんと、具体的な数字を申すことは、かえって混淆をすると思いまして申さなかったのでありますが、計画は着々と進めているつもりであります。なお四十二万戸につきましては、今お話通り、現在の不足と将来不足をするであろうというものを、約十カ年を目標に、だんだんと国民所得の増加に応じて増加率を考えて大体の目安を立てますと、計画的には四十二万戸というふうに考えたわけでありまして、この中を、今申し上げたように公営住宅、公社住宅、公庫の制度その他政府の各関係機関の厚生年金等の制度による戸数、及び民間の住宅建設戸数というようなふうに、いろいろ細別をして考えておりますのが四十二万戸でありますが、この内訳の数字を今一一検討をいたしているというわけで、大筋の組み立て方については、先ほど申し上げた線で着々準備を進めているつもりであります。
  211. 志村茂治

    ○志村委員 ただいまのお話によりますと、十カ年間には五百三十四万戸ですか、これだけ不足するという見込みのもとに、将来の国民所得の増加等を見合せて、そしてその傾向を考えて、おそらくは十カ年間に国民所得が二倍近く達するのだというふうな考えでお立てになったのでありますか、それをお聞きしたいと思います。   〔委員長退席、中曽根委員長代理着席〕
  212. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 これは、経済審議庁で立てました六カ年計画の線に沿って進めておりますので、われわれの住宅計画だけが別個の国民所得の計算でやっているわけではありません。
  213. 志村茂治

    ○志村委員 具体的数字につきましては、いまだ発表の段階でないということを、私はただいまの御説明から聞き取ったのであります。具体的な計画はまだないとしましても、先ほど竹山建設大臣から住宅難解消についての一応の構想は、その大体の発表を伺ったのでありますが、以下その一つ一つについてお伺いしたいと思います。そこで住宅政策の基本方針に関する構想を聞きたいのでありますが、政府は今後の住宅建設を、賃貸公営住宅に重点を置かれるのか、それとも融資あるいは建て売り等による自己住宅の建設に重点を置かれるのか、この点をお伺いします。
  214. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 いずれもみな必要と考えますので、先ほど申し上げましたように、公営住宅の制度、公庫の金融による制度、民間資金を集めてやる公社の制度、これらはそれぞれの目標に応じてやって参るつもりでありますので、どれだけが特に必要だという考えはありません。しかし先ほども申し上げたように、公営住宅というものが家賃をきめる一つのベースと考えておる点は従来と変っておりません。
  215. 志村茂治

    ○志村委員 融資あるいは建て売りによる自己住宅というのは、現状では、かつては自力で住宅建設をした階級の人々が主として利用されるのであって、大衆はその頭金さえも支出することができないような状態にあるわけであります。大衆は賃貸住宅をこそ望んでおるのであります。いわゆる家主業者というものが減って参った現在では、その必要は特に痛切に感ぜられる次第でありますが、こうした状態にある今日でありますので、今日の比率を民間住宅以外のものについてはどのように変化をされる考えであるのか。建設大臣ばかりでなく、予算の構成上についても大きな関連があるところでありますから、大蔵大臣からもお聞きしたいと存じております。
  216. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいま具体的な数字につきましては建設省の方と相談をしておる途上にありますので、ここではっきり申し上げかねます。しかし大体建設省のいわれる公営住宅の資金の裏づけはしょう、三十年度は増額をしょう。また住宅公庫の資金も増額をいたします。その他特に従来民間で家を建てる場合に資金の融通が丙種になっておる、この丙種というのはむしろ住宅を作るなという方式になっております、これを甲に――これはすでに実施をいたしておりますが、甲にいたしまして、住宅に対して資金の融通の道も比較的開く、さらに税の上におきまして特別償却の方法を認める、かようにいたしておるわけでありまして、この四十二万戸の住宅の補充といいますか、十年計画に基く初年度の公約については、資金面からこれを実現するようにやって行こうという運びをいたしております。
  217. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 ただいま大蔵大臣が述べられた通りでありまして、そのやり方等につきましてはなお具体案がきまり次等申し上げます。
  218. 志村茂治

    ○志村委員 私のお聞きしていることは、公営住宅あるいは金融公庫住宅につきましてどのように努力されるかということではなくて、従来よりもさらに公営住宅に重点を置いていただきたい、こういうことをお願いしておるのですが、その従来の比率をさらに公営住宅に重点を置いて下さるお考えであるのかどうか、これをお聞きしたいのであります。
  219. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 先ほども申し上げましたように、公営住宅を重要視しておる点はいささかも変っておりません。
  220. 志村茂治

    ○志村委員 重視しておるかどうかということは住宅金融公庫等の比率です。今後はどっちをより重く見て進めていかれるかということをお聞きしたいのであります。
  221. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 今まで住宅が十分建たなかったという原因はいろいろあります。土地の問題もあるし、また公営住宅だけで家が十分に建ち切れるというわけのものでないと思いますが、公営住宅の制度は重視はいたしますけれども、それを補っていく制度をいろいろ組み立てて四十二万戸をやろうというのがわれわれの考えであります。
  222. 志村茂治

    ○志村委員 もう一つお伺いしたいのですが、賃貸住宅と建て売り住宅、あるいは融資による住宅、これをどっちに重きを置かれるか。いわゆる賃貸住宅に大衆は特に期待をいたしておるのでありますが、その賃貸住宅と自己住宅との割合はどういうふうにお考えになっておりますか。
  223. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 先ほど申し上げましたように、両方とも重要視してやって参りたいと考えております。
  224. 志村茂治

    ○志村委員 政府は国民がどのように賃貸住宅を望んでいるか、あるいは国民の生計画がどのようであるか十分御存じないように思います。今の国民生活の実情をお知りになったら、そのような何らの重点の置きどころも考えずに、ただ今まで通りやられるということはないはずだと思っております。私たちはこの国民生活の実情を見て、ぜひとも賃貸住宅に重点を置いていただきたい。さもない限り、たとえば戸数がそれだけよけいできたといたしましても、国民の住宅への期待は満たされないものと思っておるのであります。  次にこれと関連する問題でありますが、家賃の問題なのであります。御承知のように日本国民のエンゲル係数は五〇に達しようとしておるのであります。このような超貧乏生活をしております日本の大衆には、建築原価から算出されました家賃を支払う能力はほとんどないのであります。家主業者というものが成立しない一半の原因もここにあるのであります。所得の七%ないし一五%程度の家賃しか払えないというような状態が現状であります。そうして月収二万円以下の所得者が大部分であります。このような人々には、先ほど申しましたように建築原価による家賃は払えないのでありますが、そうした家賃をどのように処置されようとしておるのであるか。特にこの点をお聞きしたいと思います。
  225. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 従来の家賃の方向を変える考えはありません。
  226. 志村茂治

    ○志村委員 政府は国民の生活の現状について非常に考え方が甘いようだと思っております。今新築家屋が方々でできております。建て売り住宅もできております。しかしながらそこへ入ることができないという実情を十分お考え願いたいと思うのであります。その点はどうしても私は納得いきませんが、時間の都合もありますから質問を進めて参ります。  政府は今度の住宅政策の新しい機関として、先ほど建設大臣お話にもありましたように、住宅公社案というものを考えられておるようでありますが、その構想をもう少し詳しくお話願いたい、こう思うのであります。
  227. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 その前に今家賃の問題を申し上げましたけれども、これは決して私は実情を知らないで考えておるつもりではございません。最も実情を考えて現在の経済情勢の中で努力をいたしておるつもりでおります。  なお公社の問題につきましては、先ほど申し上げましたように土地の造成をやることと、それから行政区域を越えての住宅の建設をやることをまず中心に考えて参りたいと思っております。これには政府の財政資金と民間資金とを合せてやりたいと考えておりますが、こまかい点は今制度、立法処置等を考究中でありますので、いずれ成案を得ましたならば詳細申し上げることといたします。
  228. 志村茂治

    ○志村委員 今追加の答弁の中で、国民生活の実情を考えてやっておると言われるのでありますが、それについて家賃の問題も考えておられない。家賃を考えられれば、当然公営住宅に重点を置かるべきであると私は考えておったのでありますが、金融公庫住宅と公営住宅のどっちに重点を置くかということもはっきり申されません。また家賃の措置についてどういうふうなことを考えられておるかということもはっきり申されません。それについての構想はないものと私は考えて先ほど申し上げたのであります。今後の住宅建設につきましては十分この点を御考慮願いたいということをつけ加えて申し上げておきます。  この住宅公社というものにつきまして、私は一昨年住宅公社案というものを国会に提出いたしました。それはついに審議未了になったのでありますが、この公社案の私の最も大きなねらいとして考えておりましたことは、今の勤労大衆の所得の状態では建築原価から算出しました家賃は当然払えないのであるから、政府がこの家賃の半額は負担してやる、こういうことによって公営住宅と同じ家賃の程度になるのであるという構想でやったわけです。公社を設立します場合には、民間資金の動員ということももちろん考えております。今回の公社においてもその点は考慮されておるようでありますが、その方法はただ一方だけ資金ができればよろしいのであるということではなくして、その家賃というものも考慮しなければとうてい国民の要求を満たすことができないというふうに私は考えておるのであります。これの政府の出資金であるとか、あるいは民間資金をどのくらい動員することができるのかというようなことをお聞きしたいと存じておったのでありますが、これは今発表できませんでしょうか。
  229. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 今検討中でありますので次の機会に申し上げることにいたします。
  230. 志村茂治

    ○志村委員 今新しい住宅建設の機構として公社をつくられるということをお聞きしましたが、これが六月末にでき上ると予定されておる本予算によって設立に着手されるということになりますと、その公社ができ上るのは九月か十月になるだろうと思います。この公社によって本年度において一体何戸の住宅ができるのか、また年間公社に予定されております建設数の何割くらいができ上ると予定されるのか、その点をお聞きします。
  231. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 もちろん予算、法案等が通りますれば一日も早く実施に移す準備を進めて参るつもりでありますから、できるだけ早くやりますが、その戸数等は先ほど申し上げましたように、全体との関連におきましてきまった際に申し上げたいと思います。
  232. 志村茂治

    ○志村委員 今のような差し迫った住宅不足のときに――三年、四年の後にはあるいは役に立つかもしれない、また一方においてはこの公社をつくることによって大体一割程度の人件費もかかるだろうと思うが、そういう大きな犠牲を払っても、なおかつただ民間資金を動員することだけで満足して、こういうような公社を建てることがはたして得策であるかどうか、この点をお聞きします。
  233. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 これはいろいろ研究の結果、今日までの公営及び公庫の制度だけでは不十分だという各方面の御意見もあり、われわれもそう考えて、その欠陥を補う意味において公社制度がいいと考えてやっておるわけでありまして、もちろん公社だけで完全だとは考えておりません。いろいろなもの全体が盛り上って住宅政策全体になろうと考えている次第であります。
  234. 志村茂治

    ○志村委員 次に、まず最初政府は住宅難の解消方法として新築一点ばりでいかれるのか、それとも諸外国で採用いたしておりますように、現在の家屋の改良を行おうとするのか、この点が第一。第二番目として、その構造も従来は二〇%ぐらいの割合である不燃化住宅あるいは耐久構造の住宅の比率を、この際高められるつもりであるかどうかということ。第三番目には宅地の負担とも関連するところでありますが、英国が採用しておるところのいわゆるスラム・クリアランス、あの方法を採用されるつもりがあるのか、この点をお聞きしたい。
  235. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 今の不燃化の問題については、われわれとしても国費を使って住宅の建設をいたします以上は、不燃化にいたしたいことはやまやまでありますが、一方地方の経済情勢、また志村さんがお話のように、低家賃を維持するという両面のことを考えますと、全部をこれに集中するわけに参りませんので、その割合等は今後実情に応じて考えて参りたいと思っております。なおイギリスの例等のお話は新しい制度として公社等で今後も検討をいたして参りたいと考えております。それからもう一つ、新築を原則といたして考えておりますが、増築、修築等の希望も各方面から述べられておりますので、これもある程度あわせて考えて参りたいと思っております。
  236. 志村茂治

    ○志村委員 その土地の問題につきまして、これは具体的な事例でございますが、東京の砧、あそこの緑地をゴルフ・リンクにするのかあるいは宅地にするのかということが長い間争われておったのでありますが、最近それがゴルフ・リンクに使われることにほぼ決定されたと聞いておるのであります。これは宅地をふやさなければならないという現状においては逆な方向ではないかと思うのですが、それはどういうふうにお考えですか。
  237. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 先ほど申し上げましたように、この緑地の問題はなかなかむずかしい問題でありまして、宅地の方からいえばみな解放して宅地にしろという注文が出て参りまして、個人の希望通りにしておきますれば緑地はなくなってしまう。しかし全体的に考えれば緑地をどうしても置いておきたい。その調整のためにあるいは公園であるとか、児童遊園地であるとか、そういうようなものを公共施設として残すというようなことが今いろいろ考えられておりますが、これがまあ最小限度の抵抗線ではないかと言われております。われわれとしては両方考えなければならぬ立場でありますので、よく実情に合うように検討をしてもらっておりますが、東京都は東京都の都市計画として考えて、また首都建設審議会等においてもそれぞれの権威者が慎重に審議してくれて、今具体案を進めておってくれますので、われわれは原則的には両方が調和をとって、宅地もほしいが緑地も壊滅をしないようにというような範囲において、今あるいは志村さんのお話の問題もそういう一つの具体案として考えられておるのではないかと思いますが、よく取り調べまして今御注意の点を守って参りたいと思っております。
  238. 志村茂治

    ○志村委員 大衆が使える緑地であるならばけっこうですが、これがゴルフに使われるということについて私たちは賛成できません。  それから次には地方起債の問題ですが、これは自治庁長官にお伺いしたいと思います。軍京都は公営住宅の建設の起債が不能であったために、二十九年度におきましては割り当てられた公営住宅の半数を返上しておられます。この事案はその通りでありますかどうか。またそういうような事実を長官はどのようにお考えになっておりますか。従来は住宅起債というものは五〇%ないし六〇%しか認められておらなかったのでありますが、三十年度以降の住宅起債はできるだけ別ワクとして全額認めるというような方法をとるようにお考えになっておるかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  239. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 東京都に対しましては二十九年度の当初の割当が六千戸でございましたが、二十八年度でできなかった戸数が約千五百戸ありますので、四千五百戸――端数は少し違いますが、四千五百戸くらいの割当にいたしまして、合計六千戸を作るということで、これに対する資金は土地代を入れまして約四十億円でございます。そのうち国庫負担額は十五億九千万円、その他は都でまかなうのでありますが、当初東京都といたしましては十五億を起債でまかないたい、こういう話がありまして、いろいろ折衝の結果、大体四億だけの起債を許しまして、あとは、東京都は赤字財政でもありませんので、一般都費から支出するという考えで出発いたしましたが、その後都費のやりくりがつきませんで、最近になりまして十一億起債を認めてもらいたいということを言って参っております。これにつきましては大蔵省並びに建設省とただいま相談中でありまして、いずれこれはやらなければならぬのでありますけれども、これを本年度に許すか、あるいは来年度のワク内で許すかということについてはまだ決定をいたしておりません。なお来年度の問題といたしまして、住宅建設に対する起債は前年度のワク以外で認めるかどうかというお話でありますが、この点につきまして私どもそういう必要が起るのじゃないか、こう考えまして、それを考究いたしております。
  240. 志村茂治

    ○志村委員 今後の住宅難解消の一つとして、民間住宅の建設を促進するということが言われておるが、その措置として考えられておること、あるいは建設省の一部で唱えられておることに、登録税の免除であるとか土地の譲渡所得税の免除、固定資産税の免除、不動産取得税の軽減というようなことが言われておるのでありますが、これらを建設大臣は実行されるようなお考えであるのか。また大蔵大臣はこういうことを認められる考えであるか、それをお聞きしたいと思います。
  241. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 われわれはいろいろ研究をいたしておりまして、今お話のような点で大蔵省と折衝をいたしております。
  242. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいまのところ特別償却は大体決定いたしておりますが、そのほかのことについては今検討中でございます。
  243. 志村茂治

    ○志村委員 特別償却以外は大蔵省はお聞きにならぬということは私も聞いております。おそらくそういうような措置であれば、民間住宅はさらに計画として二万戸の増築ということを考えられておりますが、むしろ昨年より減るのではないかと私は考えております。ぜひこのような特別の措置をとっていただかない限りは、四十二万戸どころではありません、昨年より減るではありませんかというように考えております。どうかそういうような、ただ一部で考えられているだけでなくて、大蔵省と建設省の対立によりまして実行ができないような結果にならないように、ぜひお願いをいたしたいと思います。  次に宅地価額の暴騰が住宅建設を困難にしておる最も大きな理由だと言われておりますが、 この事実にかんがみまして、農地法に類するような宅地調整法というようなものを制定して、民間住宅や融資住宅の建設を促進するような措置をしていただきたい、こういうことが一般に大きく言われておりますが、建設大臣はどういうようにお考えになっておりますか。
  244. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 農地法と同じようなことをということは今考えておりません。ただ農地法との間に調整をとって、一定の区域内において住宅地となるような地帯においては、制度的に当然簡易な方法をとろうということで、関係省との間に話を進めております。
  245. 中曽根康弘

    ○中曽根委員長代理 志村君に申し上げますが、約束の時間が二十七分になっておりますから、御結論を急いで下さい。
  246. 志村茂治

    ○志村委員 私は時間はとりたくないのですが、どうも政府答弁が核心を常にはずれておりますから、自然延びて参ります。  それでは私は結論を急ぎまして、大蔵大臣にお聞きしたい。以上いろいろな構想をお伺いしたのですが、二十九年度の実績は民間住宅も入れまして三十一万戸にすぎません。それを四十二万戸まで建設するのには、さらにおよそ十一万戸の増加をしなければならないのであります。しかも政府は、大蔵大臣は、以前は八十億程度は用意すると言われたと聞いております。また過日は、同僚が質問いたしましたときに、百億円程度は考慮するとも言われております、どうもその程度がほんとうのところではないかと私は考えておるのでありますが、一戸三十万円といたしましても三百三十億が要るのであります。さらに質的に向上させるということをすれば、四百億以上の経費がいろいろの形で、あるいは収入減となる、あるいは支出の増加となるというような形で捻出されなければならないのであります。一兆円のワク内で、しかも国債は発行しないのだというふうな予算の建前の中で、はたしてこういうことができるのであるかどうか、鳩山総理は、かって防衛分担金によってこれを出すのだと言っておられますが、そのような不確定な財源によって住宅建設は私たちは期待はかけられないと思っております。予算の大きな重点化をぜしされなければならないと思っておりますが、それだけの大きな決意を持っておられるかどうか、ここではっきりとお伺いしたいと思います。
  247. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今数字をあげられましたが、私の申し上げたのは、従来の住宅建築にやはり相当の財政資金が出ておる、それに加えて先日は少くとも百億以上のものを追加したい、こういうふうに私は申し上げたつもりであります。  なお防衛分担金が減額されるというようなことになりました場合に、それが財政余裕金になって来れば、それだけ浮いて来ればけっこうですが、それを目当てに住宅を建てるというふうには考えておりません。今日の歳出におきまして住宅建設というものを最も重点的に考えておるわけでありますから、これは必ずやります。さよう御了承願います。
  248. 志村茂治

    ○志村委員 三月十八日の読売新聞の記事を見ますと、政府は、住宅対策は選挙公約四十二万のうち財政負担は十三万戸程度――おそらく十六、七万戸を計画しなければできないと思うのですが、十三万戸程度として、本年度よりも約三万戸の建築増加を見込んでおるというようなことを言われておるのであります。実際十一万戸ふやさなければならないというときに、民間住宅ではわずか一万戸か二万戸しかふえないのですから、そのような方法によって十二万戸ふやさなければならないというときに、あと七万戸なり八万戸をふやさなければならないときに、そのようなことで、はたして、四十二万戸できるのでありましょうか。その点をお聞きしたい。
  249. 竹山祐太郎

    ○竹山国務大臣 われわれは四十二万戸建つ計画を今進めておりますので、その内訳はきまりました際によく御説明申し上げたいと思います。
  250. 志村茂治

    ○志村委員 どうも幾ら進めましても計画が何もないようでありますから、私ここで質問を大体打ち切りますけれども、今政府は四十二万戸という具体的な数字を出されながら、その根拠は何も持っておられないのだ。またいろいろな客観情勢から考えましても、それだけの予算はないのである。ただいま私がお聞きしました限りにおきましても、約束は実行できないんだということが裏書きされたような結果になったことはまことに遺憾と存じております。どうかこのような心配が杞憂に属しておるんだということを、今後の本予算においてぜひとも実行していただきたい。このことをお願いいたしまして私の質問を終ります。   〔中曽根委員長代理退席委員長着席〕
  251. 牧野良三

    牧野委員長 ただいま赤松勇君より発言を求められました。これをお許しいたします。
  252. 赤松勇

    赤松委員 総理に二点お伺いします。第一点は、昨日の政府及び与党懇談会におきまして、新聞の伝うるところによりますと、昭和三十年度予算について自由党事前了解工作を行う、すなわち予算の問題を中心に政策上の話し合いを進めるということが報道されておるわけです。今まで政府はしばしば、三十年度予算については政府の独自な立場に立って予算を編成し、かつ無策の策をもって国会に臨むのだと声明された。そこで私はけさほど副総理に対しまして御質問を申し上げた。副総理からさようなことはない、依然政府態度は変りません、昭和三十年度予算については、事前自由党と政策上の調整を行うというようなことはいたしません、こういう御答弁がございます。これは政府を代表してございました。この点につきまして総理は、むろん政府を代表されての副総理の御意見でございますから、間違いはないと思いますが、さよう了承してよろしゅうございますか。
  253. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 昨日はそういう話はございませんでした。
  254. 赤松勇

    赤松委員 昨日の話を言っているのではないのです。三十年度予算について日中常との間に事前に政策の調整を行うというような工作を行わないかどうか。副総理は行わないとおっしゃるのです。
  255. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいまそういうことは考えていません。
  256. 赤松勇

    赤松委員 考えていないということは、そういうことはしないというふうに了解してよろしゅうございますね。
  257. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私の言ってことによって御了承願います。
  258. 赤松勇

    赤松委員 それでは第二にお尋ねします。田中織之進君の憲法改正の問題の質問に対しまして、総理は、今国会におきましては、国会内に憲法改正調査会を設ける意思はない、民主党の中にあるいは設けるかもしれないが、今国会国会内に憲法改正調査会を設ける意思はない、こうおっしゃいました。ところが新聞によりまするというと、きのうの懇談会では、国会内に憲法改正調査会を設け、かつその経費の一部をば三十年度予算に組み入れる、織り込む、こういうことを報道しております。むろんさようなことはないと思いますが、先般の内閣総理大臣の御答弁通り、今国会にいわゆる憲法改正に伴うところの所般の手続を国会に求めてこられることはない、かように了承してよろしゅうございますか。
  259. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 情勢の変化がなければ議会内に置くということはできないと思っております。
  260. 赤松勇

    赤松委員 情勢の変化とは一体何でございましょうか。
  261. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 他党の同意のことであります。
  262. 赤松勇

    赤松委員 先般田中君の質問に対しましては、あなたは明確に、今国会にそういう手続をとる意思はないと、こうおっしゃった。これは違いますか。
  263. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 他党の同意が得られないということを考えておりましたからかように答えました。
  264. 赤松勇

    赤松委員 そういたしますと、自由党あるいはその他の会派の同意が得られる状態、そういう情勢の変化があった場合には、今国会憲法改正に伴う何らかの手続をおとりになりますか。
  265. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういう提案が通過する見込みが十分ありましたならば、やりたいと思っております。
  266. 赤松勇

    赤松委員 これは田中織之進君に対する御答弁とだいぶ食い違っております。この点は私ども質問を保留いたしまして、同僚議員からさらに質問をしていただきたいと思います。
  267. 牧野良三

    牧野委員長 ただいま総理タイ外務大臣に会う時刻が参りましたので、委員会の御了解を得まして暫時休憩いたしたいと存じます。四時十分まで休憩いたします。     午後三時五十六分休憩      ――――◇―――――     午後四時十九分開議
  268. 牧野良三

    牧野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。北澤直吉君。
  269. 北澤直吉

    ○北澤委員 私は外交問題、貿易問題等を中心といたしまして、鳩山総理及び関係閣僚に対しまして総括質問をいたしたいと存じます。閣僚諸公におかれましても日本の内外に対しまして政府の所信を明確に表明する、こういうおつもりで明快率直なる御答弁を希望いたします。  総理にお尋ねしたい第一点は、世界の平和確立に対する根本的の考え方についてであります。総理はある場合には世界のどこの国とも仲よくして、これによって世界の平和を促進する、あるいは外国との貿易によって、たとえば共産圏諸国とは貿易の促進によって平和を確保したい、こういうふうに申されております。ところがある場合には、世界の平和は力の基礎の上に立ってできておる、いわゆる力のバランスの上に立って世界の平和は維持されておる、こういうふうに申されておるのであります。私どもの見るところでは、是非善悪は別といたしまして、現在の世界の平和は自由、共産二大陣営の間の力のバランスの上に立って維持せられておる、こういうふうに考えるわけであります。従ってこの世界の両陣営間の勢力のバランスを維持していくことが、世界の平和を維持するゆえんだと私は思います。もしこのバランスがくずれるならば、世界の平和は一朝にしてくずれる、こういうふうに考え、おるのでありますが、その点に対する総理のお考えを伺いたいと存じます。
  270. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 現在の平和が力による平和であるという考えを持っておることは、私と同じような御意見のようであります。しかしながら力による平和というものは、決して永続性のあるものではないし、これが確定的の平和を作るというようなことは考えられません。それですから、一面において力によって平和が維持されていくということは認めなくてはなりませんが、同時に国際関係正常化いたしまして、戦争が起らないようにすることも必要だと思うのであります。両々相待って初めて世界の完全なる平和が立てられると思います。
  271. 北澤直吉

    ○北澤委員 もちろも世界の平和が力によらずして維持できますならば、それに越したことはないと思うのでありますが、第一回の世界戦争の後におきましても、国際連盟を作って、これによって世界の平和を確保しょうということになったのでありますが、御承知のような経過をたどって第二次の世界戦争になった。第二次の世界戦争のあとにおきましても国際連合の組織によって、力によらない世界の平和な確立しょうということであったのでありますが、これもその通りに参りません。御承知のように、現在世界は自由、共産面陣営に分れて激しい、冷たい戦争をやっておる。これが現実の姿ではないかと思うのであります。従いまして、そういうふうにこれまでの世界の歴史を見ますと、力のバランス、勢力均衡による以外に世界の平和が保たれた時代はあまりないと思うのでありますが、ただいま総理お話によりますと、力に基く平和は永続しないというふうな非常に高い理想を持っておられますが、世界の現実はまだそこまで参っておらない。従って日本外交考える場合におきましては、この力のバランスの上に立った世界の平和、国際関係、こういう現実の事実を基礎にして考えなければならぬ、こういうふうに思うのでありますが、その点について総理のお考えを承わりたいと思います。
  272. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先刻の答弁で御了承願いたいと思いますが、力による平和の永続性につきましては、チャーチルなども、一九六〇年まで続くか続かないかくらいに考えているようであります。それですから、それ以後についての平和を維持するのには、われわれがもっと考えなくてはならないと考えております。
  273. 北澤直吉

    ○北澤委員 先般総理は外国記者団との会見におかれまして、もしこの力に基く平和が正当であるならば、ジャスティファイされるならば、原水爆貯蔵問題云々、こういうふうに申されておるのでありますが、そういう力に基く平和というものが正当化されるならばと言って、総理は仮定のもとに議論をされておるのでありますが、総理の信念としまして、ここしばらくの間、あるいは相当の長い期間、どうしても世界の平和は力のバランスの上に立てられなければならないというふうにお考えでありますか。それとも総理は近い将来において力以外の平和が確立できる、そういう場合には原水爆の貯蔵の問題もお考えになる、こういうふうに考えるのでありますか、はっきり伺いたい。
  274. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は原水爆の貯蔵については、原水爆を持っておるということが平和を維持するということになるのならば、所持されても仕方がないだろうと言ったのであります。
  275. 北澤直吉

    ○北澤委員 そこで論旨を進めまして伺いたいのでありますが、私ども考えでは先ほど申しましたように、世界の平和は力の基礎の上に維持されておる、現に国際連合がありますが、国際連合が世界の平和を維持するのに十分でない、そういうことで国際連合の規約自体におきましても地域的の集団安全保障機構を作って、これによって国際連合の機能を補完するということになっておるわけであります。そういうことでヨーロッパにおきましては北大西洋同盟条約、東洋におきましては東南アジア防衛同盟あるいは白米の安全保障条約、あるいはアメリカと韓国との間の日韓軍事援助に関する協定、あるいはアメリカとフィリピンとの間の軍事同盟、こういうもろもろの地域的な集団安全保障機構によって力のバランスを保って、世界の平和を維持しておると思うのでありますが、こういう状態において、もしも日本外交のやり力がこの東西両陣営の間の力のバランスをくずすようにいくならば、これは私は世界の平和を促進するゆえんでなく、逆に世界に戦争を誘致することになりはせぬか、こういうふうに思うのであります。  これに関連してお尋ねしたいのでありますが、今回の日本ソ連との交渉でございますが、総理日ソ間になるべくすみやかに貿易あるいは文化、こういう面で連絡をつけて、これによって日ソ間の今の状態をより平和にしたい、こういうふうに考えられておるのでありますが、私ども考えでは、もし日本日ソ交渉の結果いかんによって英米その他の自由陣営から遠ざかり、中ソの共産圏諸国の方に接近するということになりますならば、世界の自由陣営と共産陣営との力のバランスに大きな影響を及ぼすのではないかと思う。私どもの研究の結果によりますと、ソ連におきましては、東洋においては日本、ヨーロッパにおいてはドイツというものを自己の勢力範囲に入れて、これによって世界の指導権を握ろうというふうに考えておると思うのでありますが、もし日本のやり方いかんによって、日本が自由陣営から全然離れるのではありませんが、それから遠ざかって中ソの方に接近するということになりますと、世界の力のバランスに大きな変化がある、これが世界の平和にも大きな影響があるというふうに思うのでありますが、その点について総理のお考えを伺いたいと思います。
  276. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 北澤君のお考えになるような御心配が、私の発言で起きたならば非常に残念に思います。私どもは米英等自由主義国家群と緊密なる提携をやっていくということを基盤としての考えで言っておるのであります。なお東南アジア諸国との善隣友好の実をあげていきたいというその考え方の上に立って、ソ連や中共と国交を調整したいということを考えておるものでありますが、そのうち外に飛び出していって勝手に考えておるわけではないのであります。米英自由主義国家群との協力関係を基盤としての考え方でありますから、誤解のないようにお願いいたします。
  277. 北澤直吉

    ○北澤委員 総理のお考えはわかったのでありますが、ただ問題は、ソ連の方におきましては、いかにして今の日米の協力関係にみぞをつくろうか、日米をいかにして離間するかというのが、ソ連の指導者の考えているところではないかと私は思うのであります。それからまた、今回の政府日ソ交渉に関する態度に対しまして、アメリカ新聞の論調などを見ておりますと――日本はこれまでのような英米との協力態勢を多少変えて中立主義の方針をとるようになったのではないか、こういうふうな論調がアメリカ新聞に出ております。それからまたイギリスあたりの新聞を見ておりますと、この日ソ交渉は、結局ソ連の日米離間に関する謀略に乗ぜられたのではないか、そういうふうな論調になっておりまして、日本日ソ交渉に対する態度が、英米の世論に非常に大きな衝撃を与えて、いかにも日本が中立主義になったような誤解を与えておると思うのであります。こういう点につきまして、もし鳩山総理のお考えが先ほどのお話通りでありますならば、そういう誤解は全部一掃して、日本外交政策の根本について、日本の内外において誤解のないように、政府は即座に措置をとるようにすべきだと思いますが、これについてお考えを伺いたいと思います。
  278. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、こういう誤解は今世の中にないと思っております。
  279. 北澤直吉

    ○北澤委員 どうも今のお話では、総理の国際関係に関する考えは非常に甘いと私は思うのであります。現に外国の新聞の論調に出ておりますし、また今回の日ソ交渉の結果、日米関係にある程度の影響を受けておる、従って日米間のいろいろな問題、たとえば防衛分担金の問題にしましても、あるいは東南アジアの開発に対しまする日米の協定問題にしましても、そういう日米関係に相当大きな影響を与えておる、そういうものはなかなか解決ができない状態になっておる、それでありますから、政府アメリカに対しまして特使を送って、そういう米国の誤解を解くというふうなことも考慮中のように新聞には出ておるのであります。私は今回政府のとられたやり方が米国あるいは英国、そういう方面に相当大きな誤解を与えておるというふうに見ておるわけでありますが、その点についてもう一ぺん総理のお考えを伺いたいと思います。
  280. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 誤解を与えていないと考えております。
  281. 北澤直吉

    ○北澤委員 この点は意見の相違になりますからこれ以上申しませんが、私ども考えでは、政府日ソ交渉に関する措置をとるについて、米国側と十分の了解をつけないで、ああいう措置をとったために、日米関係に悪影響を与えておる、こういうふうに考えておるわけでありますので、政府におかれましてもこの点は十分調査されて、こういう誤解が絶対にないような措置をとられることを希望するわけであります。  それから次に伺いたいのは、私ども日本ソ連との間の国交正常化するという問題については、根本的には依存がございません。ただ問題は、その条件いかんであります。今後いよいよニューヨークあるいはその他におきまして、日ソ交渉が始まるわけでありましょう。その交渉の内容あるいはそれに対しまする日本政府の腹がまえというようなものを、ここで聞いてもしょうがないと思うのでありますが、私どもの見るところでは、ソ連の希望しておりますことは、日本ソ連の代表部を置くということがソ連日ソ交渉の一番大きな目的ではないかと思うのであります。これに対しまして日本の方では、あるいは領土の問題あるいは北洋漁業の問題、あるいは抑留邦人の引き揚げの問題とかいろいろそういう希望を持っておるわけでございます。私どもは、ソ連の希望に応じましてソ連の代表部を日本に置くというふうな場合におきましては、他面におきまして日本領土に関する希望あるいは漁業に関する希望、そういうものにつきましても十分主張をして、ソ連の同意をとらなくちゃならない、単なる代表部の交換だけではおもしろくない、こういうふうに考えておるわけでありますが、この点について総理のお考えを伺いたいと思います。
  282. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 北澤君と同じような考え方をしております。
  283. 北澤直吉

    ○北澤委員 結局は代表部交換の問題が、最も大きな問題になると思うのでありますが、私どもの心配しますることは、もしソ連日本に代表部を置いて、たくさんの代表部員を日本に入れまして、そして日本におきまするソ連の代表部が日本の国内撹乱の根拠地になるというようなことは絶対にあってはならないと思うのであります。たとえばビルマの例を申しますと、ビルマにおきますソ連大使館には、百数十人のソ連人が入っております。インドネシアのソ連大使館にも八十人くらいソ連の大使館員がおるわけであります。こういうふうに、ソ連が代表部を置きますと、たくさんのソ連の人が入って来まして、ソ連の大使館あるいは代表部を根拠地にしましていろいろな工作をすることを、われわれ心配しているわけであります。しかもそういう人たちは治外法権を持って日本のどこでも歩ける、特権を持って日本を歩けるわけでありますが、日本の今の国内態勢ではそういうことはよほど警戒を要する。現に中共の通商使節団が日本に参りましたけれども日本政府におきましては、中共使節団の視察地を京浜地方あるいは京坂神地方、名古屋、こういうぐあいに限りまして、それ以外の助力には参らぬようにしておるわけであります。こういうことを考えましても、もしソ連の代表部ができて、そこにたくさんのソ連人が来まして、治外法権を持っていろいろな活動をするということにつきましては、十分の警戒を要すると思うのであります。そういう点につきましては、もちろん政府の方において十分考えられて、日ソ交渉考えていると思うのでありますが、この上とも御注意あるように、その点について総理のお考えも伺いたいと思うのであります。
  284. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 北澤君と同じような心配もあります。同じような意見であります。
  285. 北澤直吉

    ○北澤委員 この機会総理にはっきり一つ伺っておきたいのであります。昨日かのこの委員会におきまして、総理は、日ソ交渉に関しまして日本領土の問題、千島の問題あるいは南樺太の問題等について言及せられまして、歯舞、色丹諸島は、これは日本領土でありますからこれを要求するのは当然であるが、千島南樺太は、日本は講和条約によってこれを放棄しているからして、これはなかなかむずかしいと、いかにも何か千島樺太の方は断念されたような答弁があったのでありますけれども、歯舞、色丹はもちろん日本領土でありまして、これを不法にソ連が占有しておるわけでありますので、これは当然日本に返してもらう、それから千島南樺太の問題につきましても、日本は講和条約でこれを放棄しておりますけれども、決してソ連千島南樺太の占有等は認めておりません。日本が放棄したのは平和条約に調印した国にだけでありまして、ソ連はこの平和条約によって利益を得る立場にありません。従って日本におきましても、また平和条約に調印した国におきましても、ソ連千島南樺太を領有することは認めておらぬのであります。そういうわけでありまして、私どもソ連に向ってこの歯舞、色丹はもちろんのこと、千島南樺太につきましてもこの返還を要求しますと同時に、また一方においては桑港平和条約の改訂といたしまして、こういう民族的、歴史的に日本領土であったものは日本に返してもらうように、平和条約の改正運動を起すと同時に、それに向っては事実上占有しております千島南樺太ソ連は手放せというように私は要求すべきものでありまして、千島樺太日本は放棄しておるのであるからして、ソ連には要求がむずかしい、こういうふうにこの間御答弁があったのでありますが、こういう問題についても、民族的、歴史的に日本領土であった、こういう領土日本に返してもらうように日ソ交渉の際には強く主張願いたい、こういうふうに思うのであります。この点について総理もしくは外務大臣のお考えを伺いたい。
  286. 重光葵

    重光国務大臣 それらの領土問題は交渉の際にいろいろ検討をして、交渉の爼上に上せるようにしなければならぬかと思って、今準備をいたしております。そういう状態であることを御了承願いたいと思います。
  287. 北澤直吉

    ○北澤委員 先ほど総理よりの御答弁によって、日本はどこまでも自由諸国との連繋を緊密にして、その範囲内において中ソとの国交調整をはかる、こういうふうにお話があったのであります。もちろんこれができればそれに越したことはないのでありますが、御承知のように自由陣営と共産陣営とは、先ほど申しましたように冷たい戦争をやっております。ことにきのうはフランスの参議院がいわゆる西ドイツの再軍備を認めました。パリ協定を批准して、いよいよ西独の再軍備が実行に移される、こういう状態になっておりまして、ヨーロッパにおきまする両陣営の対立抗争というものは、今後ますます激化するというふうに私ども考えます。それからまた東亜におきましても台湾の問題あるいは南ヴェトナムの問題、こういうふうな問題から、この両陣営の対立関係というものはますます激化するというふうに見ておるものもあるようでありまするが、そういうふうに二つの陣営が激しい冷たい戦争をやっておる今の時代におきまして、日本が両方と仲よくする、そういう八方美人はなかなかできないのであります。ある場合にはどうしてもそのうちの一方、どっちかの方にウエートがいく、両方できないのでありまして、片方をやるためには片方を犠牲にしなければいかぬ、こういう状態が起ってくると思うのであります。そういう場合におきましては、総理のお考えは、もし日本と自由諸国との協力関係で悪影響があるような場合には、中ソとの国交の調整はやらない、こういうふうな考えでありますかどうか、その点伺いたいと思います。
  288. 牧野良三

    牧野委員長 総理大臣、そのままお答えになってもいいという了解を得ております。
  289. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 失礼でございますがこのまま答弁いたします。私が今まで答弁したことによって御了解を得たいと思います。いろいろのことを仮定いたしましてその場合のことを申しますると誤解を生じますから、現在まで御答弁いたしましたことによって御了解いただきたいと思います。
  290. 北澤直吉

    ○北澤委員 日ソ交渉問題はこれからいよいよ具体的に交渉に入るわけでありまして、それについての詳しい議論をここであまりいたしますることは、日本の国家のためにもあるいは有利でないというふうに考えますので、私は日ソ交渉問題についてはこれ以上は申しません。しかしながら一つ総理に御注意申し上げたいのは、こういう大きな外交問題を処理する場合におきましては、交渉に入る前に、日本千島樺太を返してもらう、あるいはどうこう、こういうふうに申されますことは、これからの日本交渉に相当大きな悪影響があろうかと思いますので、どうぞこういり重大な日本の国の運命を決するような大きな外交交渉に入る場合におきましては、あまりにも交渉の内容なり、あるいは交渉に対する日本方針というものにつきましては、軽率に外部に発表なさらない方がよいと思うのであります。そういう点について私の希望を申し上げて、次の中共の問題に移りたいと思うのであります。  中共の問題は、御承知のようにソ連よりきわめて複雑でありまして、日本は台湾の国民政府を中国の代表政府と認めておる。一方中国大陸には中共政府が存在しておる。そこで世界では、アメリカ初め世界の約半分は台湾の国民政府を中国の代表政府と認めておる。それからイギリス初めその他の約半分は中共政府を中国の代表政府と認めておる。こういうふうな複雑な状態になっておるのでありますが、総理は先般外国新聞記者との会見におきましても、日本ソ連ばかりではない、中共とも国交の正常かをはかりたい、こういうふうに申されておるようであります。そこで問題は、日本が一方において国民政府承認し、一方において中共政府承認する、国交正常化ということは結局承認ということになるわけでありますが、そういう場合には、一つの中国を二つに分けて、片方は台湾、片方は中共というふうに両方承認する、こういうふうなお考えでございますか。あるいは台湾の国民政府承認は取り消して、中共を中国の代表政府考え承認するわけでありますか。その点について総理のお考えを伺いたいと思います。
  291. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 中共の承認をすべしということはまだ主張しておりません。ただ事実として中共はあるのですから、これと戦争状態にあるということは非常に戦争誘発のおそれがありますから、それで中共とも国際関係正常化を欲しているわけです。これを承認するかどうかという問題ですと、これはやはり民主主義国家群の一環としてわれわれは行動しなければならないと思いますから、そういうような国際関係を考慮いたしまして、承認の問題は決すべき時期には決しなければならないと考えております。
  292. 北澤直吉

    ○北澤委員 ただいまの総理の御答弁では、中共とは国交正常化したいが承認はしない、こういうふうなお話でございますが、国交正常化すれば自然これとの外交関係をもってきて、結局それを承認するということになると私は思うのでありますが、その点についてどう誓えていますか。
  293. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外務大臣から答弁していただきます。
  294. 重光葵

    重光国務大臣 実際の問題として政治的にこれを取り扱うのと、法律的に取り扱うのと少し区別しなければならぬと思います。実際中共が大きな支那大陸に権力を持っているということは否定はできません。これはやはり政治的に考えて、これと貿易を進めていくというふうに行くことは、一つ関係正常化する、こういうふうにいって差しつかえないことではないかと思います。しかし法律的に条約的に一つの国に対して二つの政府承認するということは、これは世界の大勢がすっかり変って参りまして、そうしてさような国際的な雰囲気になる場合があると仮定して、その上で考えられることでありまして、また一方に日本は法律的に、条約的には国民政府承認しておるのでありますから、それを今取り消すという考え方はむろん起っておらないわけでございます。従ってそれらの法律問題は、将来の国際関係が非常に大きく変ってくる、その場合に日本国際連合その他の多数の民主国の態度を参考にしてきめればよい問題であって、今日では政治的、実際的に考えて、貿易の増進等によって、この関係を進めて行きたい、こういうふうにするのが一番常識的であると考えております。
  295. 北澤直吉

    ○北澤委員 ただいまの外務大臣お話によりますと、貿易を増進することが国交正常化になるというお話でありますが、これは今でも中共貿易をやっておるわけであります。従ってもし貿易ができるならば、それが国交正常化ということなら、今でも中共と国交正常化ということができると思うのであります。鳩山総理の申される国交正常化というのは、日本と中共との戦争状態を終結して、そして正式の外交関係を作るということであると思うのでありますので、今外務大臣の申しましたような、中共との貿易を盛んにするということではないと私は思うのであります。もしそういうことならば、これは今でも中共との間に国交正常化がされておる、こう申してもいいのでありますが、その点が非常に不明確であります。私の了解では、政府としましては、中共貿易を促進して行くが、国民政府承認は取り消さぬ、それから中共の承認もしないんだ、中共との間に正式の外交関係も設定しない。ただ貿易の増進を考えておる、こういうふうに了承してよいのでありますか、この点伺いたいと思います。
  296. 重光葵

    重光国務大臣 私は貿易関係等を進めて行けば、だんだんと国交正常化の方向に向く、こういうふうに政策的に考えておる次第でございます。
  297. 北澤直吉

    ○北澤委員 ただいまのお話によりますと、結局中共との国交正常化の問題は、これはなしくずしにやって行くというふうに私は受け破れるのであります。今度の中共の通商使節団の日本訪問に際しましても、政府は渡航証明書の中に、最初は中国と書いてある。ところがそれではいかんというので、国名を書かないことにした。ところが中共側の要望によって中華人民共和国というように日本の領事館の発行する渡航証明書の中に書いております。しかもその渡航証明書の中には、中共使節団は日本の民間業者と貿易協定を締結するために日本に来るんだ、こういうふうに書いたそうでありますが、そうしますと、これは一種の中共の事実上の承認、デ・ファクトの承認じゃないかと思うのであります。こういうふうに一歩々々中共側の要望によって、今の日本と中共との関係が、ちょうど外務大臣の申されましたようになしくずし的に一歩々々既成事実を作られて、中共の承認に行くのではないか、こういうふうに心配するのでありますが、その点については外務大臣はどうお考えでありますか、お伺いいたしたい。
  298. 重光葵

    重光国務大臣 旅行券の問題が起ったことは事実でございます。旅行券には従来の例といたしまして、中国と書いてある例もございました。また中華人民共和国ですか、そういうような今回先方の要求したような名前にしてあった例もございます。そこでこれは向うの魂胆と申しますか、その趣旨はそれはしばらく別といたしまして、日本側としては中共との間の貿易関係を少しでも増加したい、増進したい、こういう関係でございますので、さような旅券の文面などにとらわれない。しかしそれが何も大きな国際間の承認問題とは全然関係のないということを明らかにいたして、この貿易使節団の目的は貿易の増進にあるんだ。民間団体との交渉に、話し合いに来るんだ、こういう旅行の目的を明らかにしまして、そして日本に渡来することを、われわれは貿易増進のために必要なことであると思ってさような処置をとったのでございます。
  299. 牧野良三

    牧野委員長 ちょっとこの際お諮りいたします。質問者並びに皆さんにお諮りしたいのでありますが、本日五時より、外務大臣は国際会議出席者並びに衆参両議員皆さんを招待されております。従って適当な時刻に外務大臣が席をおはずしになることのお許しを請うておられます。これをお許しいたしましてよろしゅうございましょうか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  300. 牧野良三

    牧野委員長 御異議なしと認めます。いましばらく質問を継続いたします。
  301. 北澤直吉

    ○北澤委員 それでは時間の関係もありますので、中共の問題は一応打切りもまして、次に東南アジアの問題に入りたいと思います。  御承知のように日本といたしましては、共産圏諸国との貿易もできるだけこれを増進するということはもちろんでございますが、統計の示すところによりますと、共産圏との貿易というものは大きな期待は持てないのであります。去年の昭和二十九年度の統計を見ましても、日本の総輸入は二十三億九千九百万ドル、そのうち中共から来たものは四千万ドルであります。従って総輸入の一・七%であります。輸出の方を申しますと、昨年の日本の総輸出は十六億二千九百万ドルでありますが、日本の中共に対する輸出は約二千万ドル、従って総輸出額の一・二%であります。それからソ連との貿易額はきわめて少いのでありまして、第二次世界戦争の始まる前のまだ日ソ間に中立条約がありまして、国交関係のよかったときにおきましても、日ソ貿易は輸出入合せまして全体の日本の総貿易額の〇・五%であり、ソ連との貿易というものは、昔からの経済統計によっても大きな期待はできないのであります。中共との貿易は戦争前は大へんなものであったのでありますが、終戦後は御承知のような状況でなかなか伸びない。一昨年は四百五十万ドルのが、昨年は約二千万ドルに伸びたのでありますが、先ほど申しましたように、日本全体の貿易から申しますと一%くいら、従ってどうしても日本の貿易は、東南アジア及び中近東方面に新しい市場を開拓しなければならないわけでありますが、こういう点から申しますと、東南アジアの経済開発、発展ということは、日本の経済の自立から申しますと、どうしても必要なものであろうと思います。問題はこの東南アジアの経済開発をするについての資金の面であります。その資金をどこから調達するかという問題でございますが、昨年白米両国の首脳者の話し合いによりまして、アメリカにおきましても相当多額の資金を東南アジアに出してもよろしいというところまできたようであります。ところがその後の状況を見ておりますと、これはなかなか進展しない。最近の話によりますと、スタッセン長官も海外援助本部の長官をやめる、それから海外援助本部もなくなる、こういうような状態でありまして、せっかくアメリカが東南アジアに相当の資金を出して東南アジアの経済開発をやって、国民の生活程度を上げて、そうして日本の貿易を進め、また世界全体の貿易を促進しようという見地から、ああいうふうなことになったのでありますが、それがその後なかなか進まないというのはどういう状況であるのか、この点を外務大臣に伺いたいと思うのであります。
  302. 重光葵

    重光国務大臣 東南アジアの貿易増進並びに経済力開発の必要なことは申すまでもございません。お話通りでございます。これに向ってできるだけ施策を進めなければなりません。まずこれらの地域における国々との間における国交を回復し、さらに経済的な施設を増進しなければならぬ、こう思います。その背後におきましてアメリカの各種の援助は非常に必要だと思います。今、日本が資金をみずから調達するということは容易なことではございません。日本のやり得ることは主として技術援助並びにある種の生産品の輸出ということ、また事業の共同ということもございましょう。漁業とか農業とかいうことでございます。それも技術援助が主であります。しかしそれのみではむろん足りない。これらの地域の開発をやるには、どうしても大きな外部の援助が必要である。その援助は金銭的な援助がむろん中心になるわけでございます。アメリカは御承知通りスタッセン氏の主宰しておる軍事援助機関でこれをやっておる。ところがイギリスの方は御承知通りコロンボ計画でやっております。その差は、要するに一方は軍事援助と言い、一方コロンボ計画なるものは、その中におる各国が自発的に要求する援助によって援助を与えよう、こういうことでありますからコロンボ計画の方は非常に民族主義に合致するもので、非常にやわらかい。そこで過日スタッセン氏が参ったときに、アメリカ一つコロンボ計画でやりたい、日本もせっかくアメリカの勧めによってコロンボ計画に入っておるのだから、一つコロンボ計画によってやってもらいたいということでございます。すなわちアメリカもコロンボ計画の一員でありますから、それによって開発計画を進めていこうという方向に向いてきたものと思います。これは私は非常に実際的やり方で、けっこうだと思います。日本も今申し上げる通りに幸いコロンボ計画に入っておるのでありますから、その一員として、技術援助その他日本のできるだけの力を出して経済開発及び間接に日本の経済進出に資したい、こう考えておるわけでございます。
  303. 牧野良三

    牧野委員長 北澤委員にお諮りいたします。なるべくこの時間に席をはずされることをお許しして、そしてあとに関連質問もありますから六時までに帰る、そういうお取り計らいをいたしたらどうでございましょうか。
  304. 北澤直吉

    ○北澤委員 この東南アジアの問題は非常に大きな問題でありますので、もっとお尋ねしたいのでありますが、外務大臣は五時にどうしてもお立ちにならなければなりませんか。
  305. 重光葵

    重光国務大臣 いましばらくは……。
  306. 北澤直吉

    ○北澤委員 ただいま外務大臣から詳しくお話があったのでありますが、御承知のように東南アジアには資源は十分にある。労力はある。それから技術は日本が出す。結局問題は資金であります。従ってこの資金を求めるのには、もちろんこれはイギリスその他の国も出すのでありますが、その大きな部分はどうしてもアメリカから出すより道がない。こういうふうになっておりますが、せっかく昨年の日米間の話し合いによって、アメリカの方でも相当多額の資金を東南アジアに投下しょうというところまできたのでありますから、どうぞ今後政府におきましては、この機運をもっと助長して、なるべく早い機会に、なるべくたくさんの資金をアメリカが東南アジアに投ずるように、今後においても御努力願いたいと思うのであります。最近の新聞など見ておりますと、アメリカの東南アジアに対する資金投下の問題が、アメリカ自身の国内財政の問題とも関連して、どうも少し乗り気でなくなったようにも見えるのでありますので、どうぞ政府におかれましても、この上ともアメリカとの間に話し合いを進め、できるだけ早く、しかもできるだけ多くの資金をアメリカが東南アジアに投下するように、この上とも御努力を願いたいと思うのでございます。  もう一点外務大臣に伺いたいのでありますが、東南アジアの問題に関連して、近い将来にインドネシアのバンドンで開かれまするアジア・アフリカ会議につきましてお尋ねしたいのであります。政府の力におきましてもこの招請を受けて、代表を出席させるということになっておるようでありますが、御承知のようにこの会議には各国とも総理もしくは外務大臣出席する。中共からは周恩来総理出席する。インドはネール首相が出席する。あるいはビルマはウー・ヌー総理出席するというわけで、総理もしくは外務大臣というものが出席するようであります。鳩山内閣はアジア外交を大いに重視するということはたびたび言っておるのでありますが、もしそういうふうなことなら、また私どもはそうせねばならぬと思いますが、このアジア・アフリカ会議にも、総理の御出席は無理と思うのでありますが、せめて外務大臣くらいは出席されて、日本は大いにアジアを重要視するのだということを世界に示す必要があると思うのであります。アメリカなどではニクソン副大統領が東南アジアを旅行される。あるいはダレス長官などは二へんも三べんも東南アジアに行かれ、スタッセン長官も行かれた。イギリスのイーデン外務大臣もこの間のバンコック会議に行かれたというわけで、各国とも総理級あるいはほんとうの第一流の政治家が行かれるのでありますが、どうも日本の方ではなかなかこれまで行っていないのであります。せめて今度のアジア・アフリカ会議というものは、ほんとう日本がアジアに対する日本独自の政策を打ち出す絶好の議会であり、日本がアジアの安定勢力としての独自のアジア政策というものを、世界の諸国に知らしめる最も絶好の機会でありますので、わが国におきましても、鳩山内閣あるいは日本がアジアを最も重く見るという見地に立って、せめて外務大臣くらいはこれに出席しなければいかぬと私は思うのでありますが、その点について外務大臣のお考えを伺いたい。
  307. 重光葵

    重光国務大臣 来たる四月十八日からバンドンで開かれまするアジア・アフリカ会議、この具体的な議案はしばらく別問題として、重要な意義を持つものであるという御趣意は、私も全然同様に考えます。特にまたアジア善隣の国交に力を入れるという現内閣考え方もむろんそうでございます。それでありますから、これに出席決定をいたしました次第でございます。そしてこれに対しては十分りっぱな代表を送りたいということで今選考中でございます。私自身出席したらどうかというお話がございます。これが日本のため、国家のためにいいということならば、私はその労を辞するものでは少しもございません。ただ考えなければならぬことは、国会における私の仕事でございます。これは皆さん方と十分にお話をして御了解を得るものであるならば、そしてまたそれがいいということなら、私自身としては少しもこれを辞するものではございません。しかしこれも一つよく考慮のうちに入れておいて、そうして正式の決定をしたいと思います。いずれまた御相談のことにも相なるかと考えます。
  308. 北澤直吉

    ○北澤委員 それではこれはしめくくりの御質問でありますので、もう一点だけ総理にお尋ねをしまして、私の質問を終ります。  先般のこの委員会におきまして、総理は原水爆を日本に貯蔵する問題につきまして、先ほども申し上げたのですが、力による平和が正当化されるならば、原水爆を日本に貯蔵することもやむを得ないであろう、こういうふうに外国新聞記者に申されたし、ここでもそういう答弁があったのでありますが、私ども考えでは、とにかく日本は直接原爆の被害を受けた世界の唯一の国であります。のみならず私どもの見るところでは、アメリカの戦略から申しましても、必ずしも日本に原水爆を置く必要はないと思います。必要ならばグァムあるいはサイパン、ああいうふうなところに置けば十分であると思うのでありまして、必ずしも日本に原水爆を置く戦略上の必要もないと考えるわけでありますが、私どもはそういうふうな立場から、日本の原爆に対する国民感情、あるいはそういう戦略上の考慮から申しましても、よしアメリカの方から原水爆を日本に貯蔵したいというふうな申し入れがあったにしましても、日本に原水爆を貯蔵することにつきましては日本は絶対反対をする、こういうふうにしたいと思うのであります。総理お話のように、力による平和が正当化されるならば原爆貯蔵もやむを得ない、こういうふうなことでは非常にあいまいでありまして、私ども立場から申しますれば、いかなる場合においても日本に原水爆を貯蔵しては相ならぬ、それについてはもし万が一アメリカの方から要求がありましても、これは拒絶すべきである、こういうふうに考えておるのであります。この点について総理のお考えを伺いまして、そして私の質問を終りたいと思います。
  309. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 原爆の貯蔵については、昨日この席で申しました通りに、アメリカはそういうようなことは日本に要求はしまい。イギリスに対してはアメリカは要求いたしまして、相談をいたしまして、イギリスはこれを許したわけであります。イギリスに対してはそういう必要があったでしょうが、日本にはないだろうと思う。それですからその場合を想像して、今からこれを許すとか許さないとかいうことを論議する必要はないと思います。どうかそれによって御了承を願いたいと思います。
  310. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 関連質問
  311. 牧野良三

    牧野委員長 野田卯一君、時間が五分しかないのです。そのおつもりで……。
  312. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 外務大臣に簡単にお尋ねする次第でありますが、最近の新聞情報によりますと、アメリカの亘恵通商協定法の延長案であるクーパー法案が、現在アメリカの上院において難航を続けておるということであります。このクーパー法案は、わが国の貿易振興に非常に寄与するというような条項を含んだまま下院を通過いたしまして、現在上院にかかっておるのでありますが、上院におきましては、アメリカ国内産業の保護というような観点から、多くの、議員諸君がこれに徹底的な改修正を加えよう、日本に非常に不利な修正を加えようとしておるという情報がございます。これにつきましては、新聞の情報では必ずしも正確にわかりません。おそらく外務省におきましては、日本にとりまして非常に重大な問題でございますので、詳しい正しい情報が入っておると思いますから、それを一つ御説明願いたいと思います。
  313. 重光葵

    重光国務大臣 情報は参っておるようでございます。お話通りに下院を通過したのでありまして、これはその内容は御存じでしょうが、関税低減の歩合のこともありますけれども、それはそれにしておきまして、下院を通過いたしました。これは非常に喜ばしいことだ、こう考えます。今上院において難航しておるような状況であることは事実であります。そしてこれに対して若干の修正を加えたいという提案もあるようでございますが、見込みといたしましては、若干の修正はやむを得ぬとして、これは通るものだ、こう考えて今おるわけでございます。
  314. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 この上院における修正は、新聞の伝えるところでは、日本に相当不利な影響を来たすということでございます。この不利な修正を阻止するために、現在外務省あるいは大使館等においては、いかなる措置をとっておられるか、それについてご説明を願います。
  315. 重光葵

    重光国務大臣 これはアメリカのいわば国内的の手続を今経ておるのでありますから、これに直接介入はむろんできないのでございます。しかし日本立場を間接に十分に向うに説明をし、国務省にも説明をして、有利に展開するようにあっせんを頼んでおるわけであります。
  316. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 こういうようなケースは日本ばかりでなしに各国にあるのでありまして、アメリカ国会におきまして、外国に関するいろいろな法案が審議され、外国にとって不利な結果を招くであろうというような場合におきましては、その政府はもちろんのこと、その国の人々があらゆるルートを通じまして、国会その他に働きかけて、それを阻止するということが常例でございます。おそらく外務省の出先官憲におかれてもその努力をしておられるだろうと思いますが、どうか外務大臣からも強力に督励されまして、できるだけの手段を尽してこれが阻止、緩和に当られんことを特にお願いする次第であります。民間におきましては、日本関税協会の村田省蔵氏は、御承知のように、この問題に関連いたしまして、ニューヨークタイムズに寄稿いたしまして、アメリカの関税引き上げ阻止、片貿易是正という問題をひっさげてアメリカの民論に訴えておられる。今日の日本の貿易は非常な入超になっております。これを是正しなければ日本の経済の復興はない。それについては貿易で一番大きな部分を占めるのはアメリカである。しかもアメリカ日本の貿易は三対一とか二対一とかいうような非常な入超になっている。この片貿易を是正しなければ真に日本の国際収支の改善はできない、こういう観点から村田会長はニューヨークタイムズにその点を詳しく述べて、朝野の反省を求めた。民間人でもこの気持を持っておる。どうか特に外務大臣におかれましては、この問題を日本に有利に解決されるように、最善の努力を賜わらんことを切にお願いしておきます。  もう一つお願いしたいことは防衛分担金交渉の問題であります。これにつきましては、ほかの委員からもお尋ねをいたしまして、一応の御回答はございました。われわれの仄聞するところによりますと、この防衛分担金交渉はきわめて難航をしておるという話でございます。私はこの問題が難航するについては、それぞれのしかるべき理由もある、かように考えるのであります。しかしながらこの防衛分担金が本予算の大きな項目を占めるという観点からいたしまして、この防衛分担金交渉の遅延が本予算の編成に非常な影響を及ぼす。先日もわれわれの同僚である小坂委員質問に対しまして、鳩山総理は、本予算は四月十五日ごろには提出するということをここでお約束なさいました。しかしながら新聞紙の伝うるところによりますと、防衛分担金交渉がなかなか難航を続けておるから、場合によっては本予算の提出がさらにおくれるかもしれない、かようなことを申しております。われわれといたしましては、本予算の提出がすでに非常におくれておるのに、防衛分担金交渉がおくれるからというわけでこれがさらにおくれるということになりますと、これはゆゆしい大問題と考えるのであります。防衛分担金交渉がいつまでにまとまるかという見通しがはっきりつかないままに、日本の本予算の提出がずるずるべったりにおくれるのでは、国民としてもやりきれぬと思うのであります。これにつきまして、防衛分担金交渉がおくれる場合には、当然に本予算の提出がおくれるものかどうか、その点をどう考えておられるか。これは総理大臣にお尋ねしたいと思います。
  317. 重光葵

    重光国務大臣 今の御質問総理大臣に御質問されましたが、しかしこの問題は現在の状況をお話するのには私の方が便利だろうと思いますから、お許しを願いたいと思います。  まず第一点のアメリカの議会にかかっておる関税低減法の問題でございますが、これは全くお話通りでございます。いろいろな適法なる手段をもってできるだけ目的を達するように努力をすることについて、私どもも及ばずながら全力を尽してやってみよう、こう考えております。出先においてもそのつもりでやっておる次第でございます。  それから防衛分担金の問題、これは昨日でございましたか御説明申し上げた通りに、今交渉中であるわけでございます。まだ結末がついたという報告を受けておりません。しかしこれはお話通りに、予算関係上できるだけすみやかにこの結末をつけなければならぬと思って、連日係の者が努力をいたしておる次第でございますから、不日片がつく、こう思ってやっておるのでございます。もっともそれを論理的に言ってみれば、相手のあることでございますから、絶対にこうということは、これは申し上げられる筋のものでもございますまい。しかし私の見込みでは遠からず結末をつけて支障なく本予算を組むことができるように措置したい、こう考えておる次第でございます。
  318. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 外務大臣のお気持はよくわります。わかりますけれども、この問題はいろいろな問題に関連をいたしておりまして、なかなかむずかしい問題であります。従ってこちらの思うような工合にいかないということも、これまたわれわれとしては当然想像しておかなければならぬと思う。その場合に、防衛分担金の問題が片づかぬから予算がおくれるということが当然視される、当りまえだというふうな気持でこの問題を取り扱われますと、まことに国民は迷惑しごくでございます。そこで私はこの際、時間もございませんので、特に政府のはっきりした言明を求めたいのでありますが、総理大臣は四月の十五日ごろには出すとおっしゃる。もし防衛分担金交渉がおくれまして、それに間に合わぬという場合におきましては、政府独自の考え防衛分担金を計上して、国会にお出しになるのでありますか。この点について責任ある御答弁をお聞きしたいと思います。
  319. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今の御質問お答えします。今の交渉の段階で、今防衛分担金ができないからどうということを申し上げる時期でないように思います。今の段階ではできるというのが一番いいと考えております。
  320. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 ちょっと大蔵大臣にもう一ぺんお尋ねいたしますが、しからば必ず十五日には出す、もし十五日に出さなかったら責任をとるという御答弁でございましょうか。
  321. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今その交渉中で、それができるかできないかという交渉の成否にもかかわる一番重要な段階にあるときに、交渉しておる政府が、できぬときにはどうというふうに言うのは適当でないと増えております。
  322. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 これはアメリカとの交渉の内容ではございません。これは政府国会との間の問題であります。交渉がどうあろうかということと、政府国会との関係は私は別の問題だと考える。従ってわれわれは国民の代表として――予算の提出がすでにおくれておる。御承知のように本来ならば十二月の初めに出すべきものである。少くとも一月の二十日ごろに出すべきものが、いろいろな事情で順次おくれまして、そうして今日に至っておるわけであります。政府としては何としてでも早く本予算を出すということに、責任を感ぜられなければならぬと私は思う。これは交渉が難航しておくれたから、それでおくれてもやむを得ないというような態度は、私は国会としては許せないと思います。現に暫定予算をごらんになっても、政府は明瞭に防衛支出金を計上して出しておられる。これがきまっておらない、きまっておらなけれども、ちゃんと盛って出しておられる。しかも昨年度の予算の四分の一という予算をあげてわれわれの前に出しておる。これがきまらないから出せないというなら、暫定予算はできないはずであるが、暫定予算にちゃんと出しておられる。でありますから、政府が出す決意があれば出せるのです。これは大蔵省の官僚に聞いてみればよくわかるのです。出せるものを出さないということは、あくまでも政府の責任だと思います。でありますから、ほんとうに責任を重んぜられるならば、政府独自の考えで、四月十五日に出す、そのあとできまったならば、補正予算の方法もありましょうし、予備金という道もいろいろございましょう。であるから、私は国民に対する義務を果すという意味において、十五日ごろにはぜひとも本予算を出すべきであるということを、強く要望するものであります。
  323. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今のところ来月の十五日ごろに出すという総理の御答弁、これは私は実行するという決意でおります。
  324. 野田卯一

    ○野田(卯)委員 明瞭にお答え下さいましてありがとうございます。これで私の質問を終ります。
  325. 牧野良三

    牧野委員長 福田昌子君。
  326. 福田昌子

    福田(昌)委員 総理に重ねてお尋ねさせていただきたいのですが、三十年度の本予算は四月の十五日ごろまでに御提出になるのでありますか。
  327. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 四月十二日ごろ提出したい考えでおります。
  328. 福田昌子

    福田(昌)委員 それは防衛分担金の削減の問題、あるいはまたアメリカの余剰農産物の買付に関しまする見返り円の使用分のドル条項、その他いろいろの問題が片づいていなくても、本予算別個考えて四月十二日までに出す、こういうことでございましょうか。
  329. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それまでに解決いたしまして提出いたしたいと思っております。
  330. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういたしますと、やはり本予算の提出にはアメリカの余剰農産物の買付の問題と防衛分担金の削減の問題の解決にかかっておるというように考えられますが、そういうことでございますか。
  331. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 解決をいたしまして提出いたしたいと考えております。
  332. 牧野良三

    牧野委員長 総理大臣、おすわりのままでけっこうです。
  333. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういたしますと、防衛分担金削減の問題が、それまでに片づかないことがあり得ると思いますが、そういたしますと本予算の提出が遅れることも考えられますが、かようなこともあり得るということが言えますか。
  334. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいまの状態においてはどうしても解決をいたしまして、そうして出したいと思っております。
  335. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういたしますと、大体四月の十五日までに本予算をお出しになって、六月暫定予算を組むということは絶対ない、かように確信してよろしゅうございますか。
  336. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういうように想像なさるよりしょうがないと思います。
  337. 福田昌子

    福田(昌)委員 これは私の想像ではよろしくないのでございまして、政府の御信念のほどをお尋ね申し上げておるのでございますから、その点お答えいただきたいと思います。
  338. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私たちの見通しはただいま申した通りでございます。
  339. 福田昌子

    福田(昌)委員 根本官房長官は、三月十五日でしたか、閣議の後にその閣議は防衛分担金削減問題をめぐっての閣議の後に、アメリカ防衛分担金の削減の問題に対するアメリカ側との交渉は、日本政府が防衛計画に対してさほど詳しい計画を出さなくても、日本政府が防衛に関する誠意と熱意を十分披瀝すれば、アメリカはきっと防衛分担金削減の要求に応じてくれるだろうということを記者団会見において発表されておられますが、鳩山総理もそのようにお考えになられましょうか。
  340. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 さような考えを持っております。
  341. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういたしますと、この誠意と熱意、――防衛に関する誠意と熱意というようなことはいかなることでございましょうか。
  342. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 誠意と熱意は、あなたのお考えと同じだろうと思います。
  343. 福田昌子

    福田(昌)委員 私総理と必ずしも考えが一緒でないと思うのでございます。たとえば私ども考えられますのは、鳩山総理は、三月十四日でしたか、外人との記者団会見におきまして、外人記者団の質問に対しまして、たとえば台湾海峡の情勢が風雲急を告げて参る場合に、アメリカ日本の軍事基地を基地として、戦線に参加するというようなことがある場合、日本の基地を使用することもやむを得ない、またアメリカ日本に原爆を貯蔵することも、それはやむを得ないだろうというようにお話をされたと伺いまして、この委員会におきましてもこの問題をめぐりまして、いろいろと御論争があったようでございますが、こういうようなことがその誠意と熱意の一部だと考えてよろしゅうございましょうか。
  344. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 全然違っております。私はそういうことを申しておらないのです。アメリカが要求した場合に許容することは当然だというようなことは申しておりません。先刻野田君でしたか、その前の北澤君でしたか、そういうことがジャスティファイされるならば、そのときに考慮をしたければなるまいと言ったのです。決して結論的のことは申しておりません。それが誠意と熱意に関係があることでしょうか、私には理解ができないことです。
  345. 福田昌子

    福田(昌)委員 私は総理誠意と熱意というものがよくわかりませんので、その誠意と熱意というものとしては、たとえて申し上げればこういうことでございますか、ということでお尋ねを申し上げたのでございます。ほかに具体的な例で総理の熱意と誠意の例をお示しいただければ、私はなおさらけっこうなのでございます。その例をお示しいただきたい。
  346. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 誠意の例と熱意の例というのはどういうことでしょうね。誠を尽くして言うことが誠意であり、熱心に言うことが熱意であります。
  347. 福田昌子

    福田(昌)委員 その誠意と熱意の例はあとで御説明いただきたいと思います。私の質問時間が限られておりますので、お待ちさせていただくわけに参りませんから、あとで聞かせていただきまして、先を急ぎます。  鳩山総理大臣は、お正月でしたか、婦人雑誌の記者のインタビューにお答えになられまして、共産勢力の暴力に対しても軍隊を拡大しなければならないのは言までもないことであります。この軍備をせずにほかに何とかかとか言われるのはわがままではないでしょうか。軍備をするためには、国民はどういう艱難辛苦にも耐えていただかなければなりません。ということをおっしゃっておられるのでございますが、こういうようなインタビューをされたのでございましょうか。
  348. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は現在においても、国内の暴力革命に対し、あるいは外国の侵略に対して、日本国民が、やはり防衛軍を持たなければいけないというような気持に、早くなってくれればいいと思っております。
  349. 福田昌子

    福田(昌)委員 国民が早くなってくれればいいというご希望であるところは、総理御自身がすでにそういうお気持である、国民が防衛に対してはとやかく批判せずに、あらゆる艱難辛苦を忍んでこれに協力してもらいたいという御意思であるということでございましょうか。
  350. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 さようであります。
  351. 福田昌子

    福田(昌)委員 さようにいたしますと、よく総理は、国民生活を明るくしたい、社会保障制度を全身させたいということをお考えになっておられ、また選挙中にはそのことをおっしゃっておられたわけでございますが、総理ほんとうのお考えは、社会保障、国民生活安定よりも明らかに軍備が優先するということに相なるのでございます。私どもは平和主義者であるといわれる総理、民主主義者であるといわれる総理が、そういうお考えを持っておられるということは、今日まであまり考えていなかった点でありまして、非常に遺憾に思います。  次にお尋ねさせていただきたいことは、総理は二つの中国というものを事実上認めなければならないではないかということを仰せになっておられます。二つの中国を認めるということに相なりますと、これは政治的にも法律的にもいろいろな問題が出て参りましょうが、その上からいろいろな点をお伺いいたしたいと思ったのでございますが、時間の制約がございますので、残念でございますが、一点だけお尋ねいたしたいのは賠償の点でございます。日華条約の上からいたしますれば、中華民国は、日本からの戦争によつて受けたところの被害に対する賠償請求権を放棄しておるのでございますが、この賠償請求権の放棄というものは、中共にも及ぼされておるとお考えでございましょうか。
  352. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 伺いますが、賠償請求権を中共が日本に対して放棄をしたと考えるか、というのですか。
  353. 福田昌子

    福田(昌)委員 そうでございます。
  354. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 台湾の放棄したことがですか。
  355. 福田昌子

    福田(昌)委員 日華条約で賠償請求権というものが放棄されているのでございますが……。
  356. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 中共とはまだそういう話をしていないでしょう。
  357. 福田昌子

    福田(昌)委員 もちろん日本政府はしていないですよ。
  358. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういうように考えません。
  359. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういたしますと、中共側から賠償の請求があった場合、これに応じるということでございますか。
  360. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 とにかく今日まで戦争状態終結末確定の事態でありまして、賠償請求権について、まだ何にも交渉もしておりませんが、国交が調整せられることに必要なことはやらねばならないと思っております。
  361. 福田昌子

    福田(昌)委員 国交調整にこれから入る段階であるから、賠償請求の問題などまだ将来の問題だというお話でございますが、全くその通りでございます。私どもといたしましても、将来中共が賠償請求をしてくるとは考えませんが、しかし日本政府としては、もし中共が賠償要求をして参りました場合に、当然日本がこれにこたえるというお考えがあるかどうかということだけ伺わせていただきたいと思います。
  362. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいまさような考えは持っておりません。
  363. 福田昌子

    福田(昌)委員 将来中共から賠償要求があってもそれに応ずる考えはない、こういうことでございましょうか。
  364. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 仮定の事実でございますから、ただいまのところお答えができません。
  365. 福田昌子

    福田(昌)委員 私も仮定の事実を想定してお尋ね申し上げておるのでございますから、仮定のお答えをしていただいてけっこうだと思います。どうぞはっきりしたお答えを願います。
  366. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 仮定の答えはいたしたくありません。
  367. 福田昌子

    福田(昌)委員 民主的と仰せられる鳩山総理大臣から、前吉田総理以上のきわめて非民主的な御答弁を伺いまして、非常に遺憾に存じます。  次にお尋ねさせていただきいたのは、この暫定予算としていただきました書類についてでございますが、この暫定予算予算書の組織項目というものが、二十九年度の組織項目と非常に変っておるのでございます。私どもこれを検討いたします場合に、政府は純然たる事務費であり、政治的な政策が含まれていないとおっしゃっておられますが、そうであるかどうか、非常に検討をするのに困難をきわめておりますが、どういうわけで組織項目をお変えになったのでございますか。その理由、そして変られた項目の概要を御説明いただきたいのであります。
  368. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大へん恐縮ですが、どういうふうな御趣旨でございますか、それによりお答えいたします。
  369. 福田昌子

    福田(昌)委員 暫定予算にお出しいただいた書類の組織項目が、二十九年度に政府が出された組織項目と非常に異なっておりまして、予算の比較検討において困難をするのでございますが、なぜこういうように組織項目をお変えになったか、その理由を伺いたいのであります。
  370. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 組織項目が、この前のときと違って比較しにくい、こういうことですか。
  371. 福田昌子

    福田(昌)委員 はあ。
  372. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 おそらくそうした方がごらんになるのにいいだろうということでしたことだと思いますが、それはあと政府委員に答えさせますから、どうぞごかんべん願います。(笑声)
  373. 福田昌子

    福田(昌)委員 大へん素朴な答弁をいただきましたが、私どもがその方が見やすいだろうということでは説明がつかないのでございまして、大体三十年度の予算の中で、四月、五月だけは暫定予算としてお出しになるのであれば、大体三十年度の予算の大綱も、数字の上において知りたいと思っておったのでございますが、そのこまかな御説明もございませんし、しかも前年度とのいろいろな予算上の比較をしようといたしましても、こういうように組織項目が違った形で出されますと非常に困るのでございます。従いまして、予算審議におきましても私どもがむだな努力を必要とするということに相なって参ります。本予算におきましても、やはりこういう変った組織項目でお出しになる御意思であるかどうか、この点も伺わせていただきたいと思います。
  374. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 本予算については、今お説の点をよく考えまして、十分研究してみましょう。
  375. 福田昌子

    福田(昌)委員 年々防衛庁の予算乱費の事件が伝えられておりますが、これに対しましてまだ政府の確信ある措置を伺ったことがないのでございますが、鳩山総理におかれましては、防衛庁内におけるこういう例年の予算の乱費に対しまして、どういう処置をおとりになるお考えであるか、この点伺わせていただきたいと思います。
  376. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 防衛庁長官からではいけませんか。
  377. 福田昌子

    福田(昌)委員 総理のお考えを伺わせていただきたいのです。
  378. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 もし乱費があれば、厳重に調査いたします。
  379. 福田昌子

    福田(昌)委員 これから御調査いただくということを伺いましたが、その御調査の上で、非常に乱費が歴然として――もちろん歴然としたものがすでに明らかでありますが、こういう乱費をいたした事件に対しましては、御調査の上どういう処置をおとりになる御所存でございましょうか。
  380. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 厳重なる処置をとります。
  381. 福田昌子

    福田(昌)委員 厳重なる御処置をおとりいただくということでございますから、さようにお願いいたします。ところが各省の予算の使用内容につきましても、こういう防衛庁のように非常に乱れてルーズになっているところがあるかと思います。たとえばアルコール専売に対する仲裁裁定の問題におきましても、この公共企業体においては、予算上、資金上わずか年間六百万しかかからないと予想される仲裁裁定が、尊重できるかできないかというようなことが論議されておりますが、こういう各官庁に対しての取扱いを、予算的にも非常に不平等に扱うということはよろしくないと思います。話は少し飛びますが、アルコール専売に対しまする仲裁裁定に対して、労働大臣は、これはもちろん承認する、これを実施するということを御答弁されたと伺っておりますが、ただいまもさような見解であるかどうか、伺わせていただきたいと思います。
  382. 西田隆男

    ○西田国務大臣 お答えいたします。アルコール専売の仲裁裁定の問題は、暫定予算であったがために計上いたしておりませんので、従って本予算に対しましては、午前中大蔵大臣お答えしましたように、考慮することにいたします。
  383. 福田昌子

    福田(昌)委員 その考慮されるということは、この裁定の趣旨を尊重されて、これを実施されるということに解釈してよろしいでございましょうか。
  384. 西田隆男

    ○西田国務大臣 お答えいたします。仲裁裁定が決定した以上、これを尊重するのは、私は当りまえであると考えております。従って大蔵大臣が通常予算で考慮すると言われたことは、そういう意味だろうと考えます。
  385. 福田昌子

    福田(昌)委員 大蔵大臣のお考えもその通りで、仲裁裁定を承認するということでありますか。
  386. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 裁定はむろん尊重いたします。
  387. 福田昌子

    福田(昌)委員 尊重するということと実施するということはまた違うと思うのでありますが、尊重されて実施されるということでございますか。
  388. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 いろいろと考えてみなければならぬことがたくさんありますので、この四、五の暫定予算には計上いたしていない、こういうことであります。
  389. 福田昌子

    福田(昌)委員 本予算には実施されるということでございますか。
  390. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今それについて考慮をいたしておるわけであります。
  391. 福田昌子

    福田(昌)委員 西田労働大臣とお考えが少しずれておるように考えるのでございますが、労働大臣のお考え方から申せば、当然実施するということに相なるのでございます。閣内不統一の感が強いのでありますが、一体どちらを私どもは信じたらいいのでございますか。
  392. 牧野良三

    牧野委員長 政府、尊重と解してよろしゅうございますか。
  393. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大蔵大臣としては、今のところでは検討を十分加えるというところでとまっております。
  394. 福田昌子

    福田(昌)委員 私は労働大臣にお伺いいたしたのでございます。大蔵大臣は、尊重するということを検討するというようなふうに解釈しておられるし、労働大臣は、尊重するということは実施するということに御発表になっておられるが、これは閣内での意見が不統一であるから、どっちをわれわれはとっていいのか、労働大臣の御見解を伺っておるのであります。労働大臣の御説明をお願いいたします。
  395. 西田隆男

    ○西田国務大臣 お答えいたします。別に意見が違っておるとは私考えておりません。本予算をただいままだ編成中でございますので、決定をいたしておりませんから、大蔵大臣は考慮するということをお答えいたしたものと思っております。
  396. 福田昌子

    福田(昌)委員 裁定はすでに出ておりますし、そして労働大臣自身は、これまでいろいろな会合におきまして、裁定案は尊重してこれを実施するということを御言明になっておられるのであります。そうなりますと、労働大臣の御言明というものはきわめて信用性がないものであるということに相なって参りますが、かように解釈してよろしいのでございますか。
  397. 西田隆男

    ○西田国務大臣 私の申し上げたことが信用ならないというお話でございますが、福田さんも御承知のように、通常予算の編成が確定いたしません限り、私の申し上げることがうそであるかどうかということは、あなたの御解釈にまかせるより仕方がありません。
  398. 福田昌子

    福田(昌)委員 私ども、労働大臣のただいまの無責任な御答弁を非常に遺憾に存ずるのでありますが、労働大臣が裁定を尊重するという意思であれば、これを実施するような三十年度の予算をお組みになればいいのでありまして、そういう予算を組んでおられるかどうかというところで、私どもは責任を追及いたしておるのでございます。どうかそういう予算をお組みになるようにお願いをいたします。  次は大蔵大臣にお尋ねさせていただきたいと思うのでございますが、今度の選挙におきましては、民主党御自身社会保障制度を非常に前進させるのだというスローガンをお掲げになりまして、それが非常に大衆受けされたのでございます。たとえば社会保険に対しては国庫の負担を増額するとか、失業者に対しましての失業対策を拡大するとか、さらにはまた四十二万戸の住宅を建てるとか、電気料金を下げるとか、大衆が喜ぶようなことをお並べになりまして、それで非常に民主党が人気を博したわけでありますが、この社会保障の前進につきましていろいろと伺わせていただきたいのでございますが、時間がございませんのでその、中心になります社会保険の問題をまず取り上げてお尋ねさせていただきたいと思います。その中でもことに保険医療の問題でございますが、この問題を中心にいたしまして、国民が健康を保持いたしまする場合の、何と申しますか、総医療費でございますが、この総医療費は国民所得に対しまして何%くらいが適当であるとお考えになっているか。また健康保持のためには将来どういう計画を持っておられるか、この点をまずお尋ねさしていただきたいと思います。
  399. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 社会保障の点につきましては、今御質問の趣旨に全く賛成でありまして、今日の乏しい財政の中におきましても、本予算におきましてあらゆる――あらゆると言うと、これを一々取り上げられると困るのでありますが、たとえば今お話の例にありました失業対策あるいは生活保護費、あるいはまた失業に関係しまして緊急就労事業費、こういうものにつきまして、できるだけ増額をはかっていきたい、そして社会の力の弱い方々のために少しでも手を差し伸べたい、こういうふうに思っております。
  400. 福田昌子

    福田(昌)委員 それは当然のことでございます。私はその具体策の一つといたしまして、国民総医療費というものは国民の総所得に対して何%くらいとれば、つまり医療費にかければ国民の健康保持ができると大蔵大臣としてお考えになっておりますか、この点をお尋ねいたしたいのであります。その具体的な、予算的な数字をお示しいただきたいのでございます。
  401. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 国民所得の、あるいはまた予算についてそういう社会保障費が幾らを占めればいいかという点、これは学問的なことになると思いますので、私はそういう十分な研究を持っておりませんことを率直に申し上げます。しかし大蔵大臣として、予算の中において民生安定のために、特に社会保障というような費目がどういうような割合を占むべきか、これにつきましては、私は今日の日本の財政の実際からいたしまして、常にこれだけというお約束をするだけの力がない。ですからこれはそのときの情勢を考えまして財政をあんばいしていかなければならぬ。ただ今日は三十年度予算について、民生の安定ということが非常に重要だと考えるので、三十年度における民生安定の費目にできるだけの力を注ぐということを考えておるわけであります。今の御質問で私は非常に教えられたと思っておりますが、そういうふうな何%占めればいいかということにつきましては、十分研究いたしましてこの次の機会お答えいたしたいと思います。
  402. 福田昌子

    福田(昌)委員 私、選挙の際に、社会保障制度を前進拡大するというスローガンをお出しになっておられましたから、一萬田大蔵大臣としては当然そういうことをすでにお調べになった上での、責任ある選挙用のスローガンであると思ったのでありますが、そうじゃないというお話で、これまた御検討になるということを伺いましたが、それにあわせてぜひ重ねてお尋ねさせていただきたい点は、民主党の総裁である鳩山総理大臣が、再軍備のためには国民はあらゆる犠牲を払うべきであり、これに対していろいろと言うのはわがままだというお話がございましたが、やはり一萬田蔵相もそういうふうなお考えでございましょうか。
  403. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は再軍備のためには国民はあらゆる犠牲を払えということを言った覚えはありません。また再軍備をすることと福祉行政との優劣を論じたこともありません。誤解のないようにお願いをいたします。
  404. 福田昌子

    福田(昌)委員 先ほどの雑誌のインタビューにはそういうことが載っておりまして、それを御了承いただいたのでございます。一萬田大蔵大臣に私はお尋ねをいたしたのでございまして、一萬田大蔵大臣は、再軍備と社会保障を一緒にいつも取り上げてお考えになるというようなご説明をなさいましたが、実際はそうじゃない、いつも再軍備の方が先であって、社会保障というものはあと回しにか考えておられない。その証拠には防衛問題については御研究がなされておりますが、社会保障については何ら御研究がなされていない。国民の総医療費の額面さえ御存じでないということでございましたら、まさに再軍備だけには熱心であるという以外にないのであります。そこで私は一萬田大蔵大臣にぜひ御勉強をいただきたいと思うのでございますが、国民の総医療費は、大体現実におきまして二十九年度で二千八百億程度使われておるのであります。これは国民総所得の約五%であります。しかしこの国民総医療費というものは年々増加の傾向にございまして、年間約三〇%ずつ増加いたしております。かような傾向をたどりますと、昭和三十年度になりますと、おそらく国民総所得に対しまして五%をもっと越えるところの総額ということにも相なって参るかと思うのでございます。ところで諸外国の例を見ますと、国民総所得に対する医療費の総額というものは、同じく戦争に負けました西ドイツを例にとりましても、国民総所得の一七%が国民の総医療費ということになっております。日本の場合に比べましてその比率はまさに三倍以上の高い大きな額面が国民の健康維持のための総医療費だということになっております。これが政策として認められておるのであります。ところで日本ではただいま申し上げましたように五%である。ところがこの五%でさえも厚生省は多過ぎる、もっと医療費の負担分を減せということで、国民総所得に対して三%程度にとどめたいということで、いろいろな点で総医療費に対する圧力を加えて参っておるのであります。社会保険の支払い基金が赤字で非常に焦げついておるということに対しては、当然国が負担すべきものであるにもかかわらず、医療費自体が不必要に膨張しておるのであるから、五%などは多過ぎるというような見解をとっておられるのでございます。ところでドイツなんかは国民総所得に対して一七%の総医療費を認めておる、日本ではわずかに五%さえも多過ぎると認めておる、このとり方、こういう医療費に対する考え方が正しいかどうか。どういうふうにこれに対しまして大蔵大臣はお考えになるか、この点をまず伺わしていただきたいと思います。
  405. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。大体の考え福田さんのお考えとそう違うところはないのです。ただ何さま貧しい国で、税金もずいぶん支払っていただいておって、しかもやらなければならぬことがたくさんあるものですから思うにまかせず――これはまた政治のとり方にもいろいろよるでしょうが、私は今後におきましては十分御趣旨に沿いたいと思います。
  406. 福田昌子

    福田(昌)委員 国が貧しければ貧しいほど、国民総所得に対する総医療費の負担分というものは大きくなるのであります。それは世界各国共通でございまして、西ドイツは国民総所得に対して十七%の医療費をとっております。国が少し豊かになっておりますスエーデンというような国になりますと、国民総所得に対しまして医療費の負担分というものはわずかに一一、二%でございます。英国なんかも一一、二%の水準をとっておるのであります。貧乏な国ほど医療費の負担というものが大きい。これは個人の家庭におきましても御想像になるような点でございます。従いまして日本におきましては、総医療費がもっと大きく増額されてしかるべきであるということがこの常識から生まれてくる。それにもかかわらず、厚生省は従来の御見解において、医療費を圧縮しよう、圧縮しようという態度をとってこられ、大蔵省がさらにそういう態度をとってこられるということは間違っておる。これはお認めになりますか。   〔発言する者あり〕
  407. 牧野良三

    牧野委員長 お静かに願います。
  408. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御趣旨に沿うわけですが、今回鳩山内閣で特に困難な住宅問題を、ああいうふうにあえてやらなくてはならぬという決意でやるのも、全く今福田さんのお考えの趣旨に沿って――社会保障もあるが、家がなくて不安にさらされている家族がある、ここに病気のもとが起る、また社会的ないろいろの悪のもともここに発する。こういうところを何としても解決していこうというのも、全くお考えとそう違わない趣旨ではないかと私は思っております。そういうところから一つ御賢察願いたいと思います。
  409. 福田昌子

    福田(昌)委員 私、社会保険の問題をお尋ねしておるのでございますが、それに住宅問題なんかをわざわざ持ち出されまして、焦点をぼやかしておしまいになりましたが、私どもが主張いたしておりますところと大蔵大臣のお考えとは非常にずれておるのでございます。大蔵大臣のこの医療費に対する御認識がないという点を、私どもは非常に遺憾に思ってお尋ねしておるのでございます。  さらにお尋ねいたしたいのは、よその国では、国民総医療費の中におきまして、負担分として国が相当額を出しておるのでございます。その国庫負担分というものは、欧米諸外国では平均いたしまして、大体総医療費の二〇%前後になっておるのでございます。ところで日本では社会保険を中心にして考えましても、わずか八%しか国が負担をいたしていない。他の医療費の負担分というものは全部民間人におっかぶさっておるというような形に相なっております。こういう医療費の無理な考え方というものはよろしくない、これをお考え願いたいというのが私ども考えです。これに対して大蔵大臣の今後の御研究をお願いいたします。  かような状態でございますから、国民総医療費の膨脹、ことに社会保険の上から参りますところの赤字というものは、何と申しましても国が負担する以外には、これは道がない、半熟負担すべきものだと考えるのでありますが、これに対する大蔵大臣の御見解を伺います。
  410. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 国が当然負担すべきものである場合においては、これは当然私は国が負担するのがいいと思います。しかし国が負担するということは、結局税金でまかなうのでありまして、やはり全国民の負担になるということもお考え願わなくちゃならない。そうしてみると、全国民の負担においてやるということになれば、やはりそれ以外にほんとうにミステークはないのか、その赤字はほんとうに全国民が税金で負担していいのかということがはっきりしないと、私はやるべきではないと思う。今日この保険についても、この運営においても、あるいはこの組織においてもはたして欠陥がないのか、私はそこをはっきりしてほしい、こういう立場をとっておるのであります。
  411. 福田昌子

    福田(昌)委員 私が今申しましたことは、大蔵大臣の今後の御趣旨に対する一つの参考資料として申し上げたのであります。その程度のことはぜひ大蔵大臣としてお調べおきいただきたいと思います。私は、そういうことをまだお考えになっていられない大蔵大臣が、選挙の際には、社会保険に対しての国庫負担の増額ということを打ち出しておられたのでありますが、これはどういう御趣旨で打ち出しておられたのでありますか、この点を伺いたい。
  412. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 選挙のときにといいますことは、私の選挙ですか。(笑声)
  413. 福田昌子

    福田(昌)委員 いや、民主党の選挙の際です。
  414. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは社会保障については、重ねて申し上げましたように、最も力を入れておるからであります。
  415. 福田昌子

    福田(昌)委員 伺えば伺いますほどに、民主党が選挙のときにお述べになりました公約というものは、責任がない、ほんとうに選挙用の公約であったということを強く感じます。先ほど志村委員に御答弁になっておられました住宅政策におきましても、またこの社会保険の国庫負担の問題におきましても、あまりにも無責任だと思うのでございます。私は鳩山内閣というものはもう少し国民に対してまじめであっていただきたいと思います。このことをまず要求いたします。  次にお尋ねしておきたい点は、選挙の際にやはり民主党の方々は電気料金をお下げになるというようなことを御発表になっておられましたが、この電気料金の引き下げに対しましてのただいまの対策を伺わしていただきたいと思います。――通産大臣がおいてにならないようでありますので、あとおいでになってから伺わしていただきたいと思います。
  416. 牧野良三

    牧野委員長 福田さん、通産大臣に対してはあなたの要求がないのですが、通産大臣はどうなっておりますか、今調べてみます。
  417. 福田昌子

    福田(昌)委員 それではおいでになる大臣の方にお尋ねいたします。昨年黄変米の問題が非常に巷間をにぎわしておりまして、現在黄変米としてストックしておる十三万トン程度のものは配給を停止するというようなお話が一応あったのでございますが、その後巷間に配給されておりまする配給米を調べてみますと、その配給米の三分の一以上に黄変菌を発見できるのでございます。かような黄変菌が相当量町に配給されておるということは一体どういうわけであるか、配給米には黄変米をまわさないということを一応御発表になりました前吉田内閣とは違って、今の内閣としてはこのストックしておる分を配給されておるのか、あるいはまた黄変米と称して一応たな上げになっておる分がそのままになっておるにもかかわらず、巷間にはなお黄変米が出回っておるのかどうか、この間の事情を御説明いただきたいと思います。
  418. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 先ほど大蔵大臣にいろいろ御質問をいただきましたが、私は厚生大臣立場として一応お答えというより、私の考え方を申しておかなければならぬ問題に非常に関連しての御質問でありました。福田さんとしては、財政を握っておる大蔵大臣から答弁を得たいという御趣旨もあったでありましょうが、たとえば先ほど開いておりますと医療費の問題で、従来の厚生当局は非常に医療費を圧縮しょうとして努力をしたというような御質問もあったのでありますが、これは健康保険の医療給付費が非常に増大をした。これについて一応保険医の監査というものも厳重にしなければならぬではないかというような観点から、確かに医療費の内容について検討したり、あるいは引き締めをする必要のあることは認めておりますが、一方医療補給費というものが自然に増加するところの傾向については、厚生省としてもこれを否定するものではなく、むしろ福田さんの御主張のように、医療給付費が増大をするということは当然西ドイツあるいはその他の敗戦国に見られ、かつ財政の非常に窮迫しておるところにおいてこそ医療給付費が増大するのだということは私も当然の御見解だと思い、そのようなことに対する圧迫などは、今度の厚生省は断じていたしませんことを言明いたしておきます。  その他いろいろお答えをしなければならぬこともあるのでありますが、ただいま急に黄変米のことについて御質問でありました。これは配給をいたさぬということの方針になっておりますので、これははっきり言明をいたしておきます。なおその配給の実情につきましては農林省の所管でありますので、農林大臣が来られて御説明があると思います。
  419. 福田昌子

    福田(昌)委員 黄変米は配給してないにもかかわらず、町には黄変菌があるということは、結局今配給しておりまする配給米が、実は検査漏れで、黄変米であるものがそのまま見過ごされて配給されておるということに相なると思うのであります。こうなりますと、結局厚生当局の黄変米に対する検査がまことに疎漏であるということに相なるのでございます。従いまして国民の健康保持の上から、こう言った蓄積毒であり、そして肝臓及び腎臓に非常な障害を及ぼすような黄変菌がついた黄変米の配給というものに対しては、今後一そうの厚生大臣の熱意ある御処置をお願いしたいと思います。  同じようなケースで重ねて要望いたしておきたいのは、学童給食の中毒の問題でございます。この学童給食の中毒に対して厚生当局としてはどういう処置をされたか、この点伺いたいと思います。
  420. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 学童給食において中毒があったということは、最近の新聞紙上においても、私まだ厚生大臣にならぬ前の事件としても十分承知をいたしております。従ってこれは文部省の直接所管ではありまするけれども、われわれとしても御指摘のような事情については十分監督をいたしまして、善処いたしたいと考えております。
  421. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういうことは非常にこまかい問題だなんというような声がうしろから出ておりましたが、私どもはそういう政治の上におけるものの考え方というものが、まことに根本的に間違っておると思うのであります。こういう国民の健康をあずかる問題は、黄変米にしても学童の給食の問題にしても、決して小さい問題ではないのでありまして、非常に大きな問題だと思います。こういう大きな人命に関する、健康に関する問題につきましては、政府当局はもっと大きな熱意を持っていただくことを要望いたします。
  422. 牧野良三

    牧野委員長 この場合今澄勇君より関連腰間の申し出がありました。お許しいたします。今澄勇君。
  423. 今澄勇

    今澄委員 私は福田議員が質問しましたアルコール専売の仲裁裁定の問題について、先ほどわが党の委員からも質問いたしましたが、大蔵大臣に特に聞いておきたいことがある。これは非常に重大な、この暫定予算案の性格そのものにも関係することで、金額は七、八百万のわずかなものであるけれども、法律的な疑義があります。一月二十九日に仲裁裁定が下ったのであるから、大蔵大臣は今、三十年度の本予算にこれを盛るべく考慮するという答弁をされましたけれども、この暫定予算案に盛らなければならない理由があるのです。政府としてはなぜこの暫定予算案に盛らないでもいいと考えたかという根拠を私は聞きたいのです。  時間がないから申し上げますが公共企業体等労働関係法三十五条に、仲裁裁定には両者とも最終決定として服従しなければならないという明確な規定がありまして、十六条の一項に、予算上、資金上これを拒むことができるというただし書き的な解釈がついておるのであります。ところが専売労組と通産大臣との団体交渉において、通産大臣は資金はある旨を団体交渉の席上答弁をして、資金的には問題はない、ところが今回はこれは最初のケースであって、すなわち予算がない、新しく予算をこの国会に提案をしようというときには、この法律解釈からすると、政府はこの暫定予算の中に計上をして、それをこの予算委員会へ出し、それを与党の多数の力で否決をして初めてこの仲裁裁定に対する対抗的な要素が出るものと私は思うのである。しかるに政府はこの暫定予算の中にこれを織り込んでおらない。これは明らかに公共企業体等労働関係法三十五条並びに十六条二項のただし書きを通じて法律に違反しておる予算案であるといわなければならぬのであります。これに対する大蔵大臣の御見解並びに法制局の見解を聞きたいと思います。これは大臣答弁を求めます。
  424. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私はこの暫定予算には新規のものは組まない、こういう考であります。そして裁定というものは尊重しますが、この暫定予算に組まなくては法律上ならないとは解釈しておらないわけであります。これは法律の問題でありますから、政府委員より説明いたさせます。
  425. 今澄勇

    今澄委員 政府委員の説明の前にもう一言私は聞きますが、大蔵大臣並びに民主党態度は非常に欺瞞的である。あなたがもし昭和三十年度の本予算に盛り込むというつもりがあるならば、なぜ労働委員会にこの仲裁裁定を諮っておるのですか。おそらく政府としては労働委員会でこの仲裁裁定は妥当なものでないという断定を下しておいて、そして三十年度の予算案では言い抜けをしようとする考え方なんです。少くとも労働委員会なり衆議院においてこの仲裁裁定が妥当なものでないという裁定が下るまでは、政府は新しく組む暫定予算の中にこの金額を組み込まなければ、公共企業体等労働関係法の法律違反になるのであります。これについて労働大臣答弁を求めたいと思います。
  426. 西田隆男

    ○西田国務大臣 お答えいたします。国会に提案いたしましたのは、裁定が下りまして、資金上暫定予算に組み込めないということがきまりましたので、五日間のうちに公労法十六条によりまして国会の議決を求めなければならないという規定がありますので、その規定によって国会の議決を求めるべく提案をしたのであります。
  427. 今澄勇

    今澄委員 労働大臣にもう一度お伺いしますが、国会でこの裁定が予算上不当なものであると決定をするまでの今のこの段階においては、予算の中にこれを組み込まなければ、現実に公共企業体等労働関係法三十五条並びにただし書きの十六条から見て、政府の方のこの予算の組み方には疑義がある。これに対する労働大臣の見解を求めます。しかもなお通産大臣は財源はあるということを団体交渉の結果確認をしておるのです。これは大きな問題だから労働大臣意見をもう一ぺん聞いておきます。
  428. 西田隆男

    ○西田国務大臣 お答えいたします。今今澄委員からいろいろ御意見がありましたが、今までの解釈は、私がさっき申し上げましたように解釈しておりますので、法律解釈に対して疑義がありましたら法制局長官の方に御質問願います。
  429. 今澄勇

    今澄委員 それでは私は法制局長官に伺いますが、今度の場合は最初のケースなんです。大てい今までは予算ができておって、その予算の中で仲裁裁定の決定が無理な場合とかいろいろあったのですが、今度はその予算がまだ組まれておらぬのです。しかも国会においてはこの裁定に対する意思がきまっておらぬのです。そして資金は通産大臣答弁で、あるのです。しかもこの場合に、政府がこれを組まないということは、日本の労働学者の見解は全部これは法律違反であると言っておるが、内閣法制局の見解を聞きます。
  430. 林修三

    ○林政府委員 この公共企業体等労働関係法十六条の解釈といたしましてはいろいろの説がございますが、今までの大体の実例上の取扱いといたしましては、また政府の解釈といたしましては、予算がないという場合には予算上、資金上不可能な場合であると考えまして、従来本予算があって、その本予算では支出し得ない場合、補正予算を組むべきであるという御議論もございましたけれども、こういう場合には一応不可能として国会の御議決を願って、その結果によって予算を出す場合には出す、こういうふうに解釈して参っております。今度の場合もこれはまだ御承知のように昭和三十年度予算は成立しておりません。従いまして予算上、資金上不可能であるという考えで、国会の御議決をお願いしておるわけであります。国会の議決があればそれに従ってやるわけであります。こういうふうに予算がなお成立しておらないときに、こういう扱いをした例は過去の第二回国鉄裁定の場合にも同じことがあるのであります。
  431. 今澄勇

    今澄委員 それは間違いである。関連質問であまり時間をとるのは恐縮ですが、その国鉄の裁定の場合も、今回の裁定の場合も、これは明らかなる公共企業体等労働関係法三十五条の違反であります。金額はわずか七、八百万であるけれども、この専売の地域給の裁定を認めるならば、その他の全部の予算について大蔵大臣としては困るから、おそらくはこれは本来ならば暫定予算の中の予備費なり資金の繰り回しで払っておくということが、法律的な建前からいくと正しいからそういう措置がしたいところであろうけれどもあとの及ぼしてくる資金源等々とにらみ合せて、おそらく大蔵省当局はこのわずかな金額を組み込まなかったものであると思う。私は、大蔵大臣が今日答弁した本予算に組み込むということは大きな欺瞞的な答弁であって、今国会に諮って、その諮った結果によって大蔵省は言いのがれをしようと考えている、これは公共企業体等労働関係法という法律に違反した考え方だと思います。今の法制局長官の見解などはまるきり話になりません。もし労働関係法規をかように勝手な解釈をするということであるならば、幾多の労働関係法規で疑問的な問題があるものを、こういう解釈のやり方で労働組合側が活動をするということに対して、政府は何らの抗弁ができなくなるという重大な問題をこれははらんでいるのです。だから私は、政府としてはそういうふうな拡張解釈を労働組合がやって戦ってもいいのかどうか、そういう点に問題が出てくると思う。金額はまことに小さいけれども、解釈の問題は非常に重大であります。私は総理大臣のかような問題に対する御見解を聞いておきたいと思います。
  432. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 主管大臣から答弁をしてもらいます。
  433. 今澄勇

    今澄委員 主管大臣はどなたですか。
  434. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 労働大臣です。
  435. 今澄勇

    今澄委員 これは労働大臣だけの問題ではないのです。これは法規解釈上の大きな問題なのです。もう一度あなたの御答弁を求めます。根拠を示して下さい。
  436. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はよく存じませんから……。
  437. 今澄勇

    今澄委員 それでは大蔵大臣から答えて下さい。(「予算上、資金上不可能だという根拠を示しなさいよ」と呼ぶ者あり)総理大臣は自分はよく事情を知らないとおっしゃっておられますが、形式的な問答はいたしません。知らないのはごもっともかもしれません。それじゃ私は大蔵大臣予算上、資金上これが困難であるという一つの確然たる証拠をここにお示し願いたいと思います。
  438. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは法律問題であるのでありますから、私は法律家の意見に従っているわけであります。
  439. 今澄勇

    今澄委員 この法律によると、予算上、資金上の理由がなければこれを拒むことはできない、こういうことになっているのです。だからあなたはこれを載せないためには、予算上、資金上の拒む理由があったからこれを載せなかったのであるから、その大蔵大臣が拒んだ理由は何だということを聞いているのです。
  440. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今回出しているのは暫定予算でありますので、法律的に見た場合に新規のものは計上しなくてもよい、こういう見解でありましたので、それに従ったわけであります。
  441. 今澄勇

    今澄委員 法律上は計上しなくてもよいという根拠は、どこにもありません。文字通り解釈すると、これは法律上の重大な疑義であります。私がこの質問をいたしましたのは、労働組合運動の今後のあり方について、予算委員会におけるこの仲裁裁定の議論を通じて、今後の公共企業体労働法のみならず、一切の労働法規についての解釈の問題を、今政府がとっておるような態度でこれから労働団体も行うであろうということを警告を申し上げておるのです。資金は、通産大臣はあると言っておるのです。そうすると大蔵大臣としては、国会がこの裁定は資金上不当であるとか、困難であるとかいう結論を下すまでは、この暫定予算に盛り込んでこれを国会に出すということでなければ、この法律解釈は断じて通らないのです。だからこの暫定予算というものは、少くとも公共企業体労働法の三十五条、十六条に対して大きな疑義があることだけは確かであります。今の林法制局長官報告においても、今度が最初のケースであると言っておる。この前の国鉄もありましたけれども予算を組みかえる前の最初のケースなんですから、私どもは今回においてこれが解釈を一つ明らかにしたい、かように考えておるのであって、どうぞもう一度御答弁を願いたいと思います。
  442. 牧野良三

    牧野委員長 今澄勇君に申し上げます。これは法律問題と存じますから、林政府委員より答弁させたいと思います。
  443. 林修三

    ○林政府委員 結局先ほど御答弁したようなことになるわけでございますが、公労法の三十五条と十六条の解釈につきましては、この仲裁裁定は十六条にいっております団体協約の成立と同じようなものとして取り扱っておるわけであります。団体協約につきましては、予算上、資金上その支出が不可能なものについては政府を拘束しない、こういうことでございます。従いましてただいまのところ予算がないという事実は明瞭でございます。予算がない範囲においては、結局資金上、予算上支出不可能であります。こういうことにつきまして、国会にその議決をお願いしておる次第であります。国会の御議決に従って政府は措置する。これが今までの解釈であります。性質からいえば、補正予算の場合も全然新しい予算の場合も、法律問題としてはそう大きな差はないものと考えております。先ほどの第二回国鉄の仲裁裁定の場合も大体こういう考え方で、国会に御議決をお願いしておるわけでございます。予算がないから支出不可能である、予算上、資金上不可能である、こういう考え方で御議決を願っておるわけであります。
  444. 今澄勇

    今澄委員 時間がありませんから、簡単にお伺いしますが、今の林長官の説明には全然承服することはできません。少くとも法律上の解釈をする限りには、政府国会の議決がきまるまでは、政府原案の中においてその裁定に服さなければならぬのであるし、通産大臣も財源はあると言っておるのであるから、盛り込むことが正しいと思います。  ただ最後にもう一ぺん聞いておきますが、大蔵大臣、あなたは先ほど本予算にこの金額を盛り込むと言われましたが、それは間違いありませんね。
  445. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほどの私の答弁では、その点は十分考慮する。なぜかと申しますれば、まだ全体の予算審議中であるのであります。一つ一つについてどれがきまった、どれがきまったというわけにいかない。十分考慮する。
  446. 今澄勇

    今澄委員 そこで労働大臣にお聞きしますが、大蔵大臣は今度の本予算で考慮しようと言っておるのである。さすれば国会におけるこの裁定の審議は、本予算を編成するときまでこの結論を下さずに待っておる、こういうことでいいわけですか。
  447. 西田隆男

    ○西田国務大臣 それは国会のおきめになることで、私がそうして下さいということは申し上げることはできません。
  448. 今澄勇

    今澄委員 答弁は何とでも言えましょうが、今の政府は、この仲裁裁定の問題を非常にゆがめて国会に出して、法律的な切り抜けを今度の本予算ではやろうと考えておるけれども、私は大蔵大臣の今の答弁も、労働大臣の今の答弁も、非常にけしからぬと思います。われわれ野党各派としては、この仲裁裁定に関する国会態度は、本予算が組まれるまで、当然今の大蔵大臣態度なり答弁からいくならば、時を待つ、こういうことにいたしたいと考えております。  なお林法制局長官並びに労働大臣の本日の答弁には全然承服できません。私どもは公共企業体労働法三十五条の明確なる違反であるということをここに付言して、これは引き続いて本予算の出たときにわれわれはなお質問をするということで、質問を留保して、関連質問でありますからこれで終ります。
  449. 牧野良三

    牧野委員長 これで時間が参りましたから、御了承願います。
  450. 福田昌子

    福田(昌)委員 今のは私の党の時間ではありません。
  451. 牧野良三

    牧野委員長 むろん別であります。が、先ほどでなくなっておるので……。   〔発言する者多し〕
  452. 牧野良三

    牧野委員長 応じます、お静粛に願います。
  453. 福田昌子

    福田(昌)委員 もう一、二点だけ。農林大臣がお見えになっておられますので、先ほどの黄変米のことにつきまして重ねてお伺いさせていただきたいと思います。十三万トン余の黄変米は一応配給してない、別ワクにしてあるにもかかわらず、市中には黄変米が出回っておる、これが現状でございます。市中の配給米に黄変米があるということに対して、農林大臣はどういう処置をとりになるかという点が一点と、すでにたな上げされております十三万トン余の黄変米はどう処分なさる御所存であるか、この点をお伺いいたしたいと思っております。
  454. 河野一郎

    ○河野国務大臣 黄変米の問題につきましては、最初のお尋ねの市中に出回っておるということでございますけれども、私たちはそういうふうに考えておりません。御承知通り、黄変米の輸入の際に決定をいたした十三万余トンについては全然別にいたしております。第二の、別にしておるものについてはどう考えておるか、どうするつもりか。これは御承知通り、厚生省でこれをどういうふうに処置したらよろしいかということについて研究をしていただいております。この研究の結果、配給してよろしいということにならなければ、配給するつもりはありません。しかしこれはいつまでもその通りにしておきますと、あまり国庫の負担が大きくなりますから、どうしても他の方面に向けなければいけない。たとえば無水アルコールの原料にいたしますとか、これをつぶしまして飼料にいたしますとか、全然食糧と隔絶できるような方法で処置したらよろしいのではなかろうかと考えておるのでありまして、今確固たる方針はきめておりません。さよう御了承願います。
  455. 福田昌子

    福田(昌)委員 もう一点だけ重ねて……。農林大臣の御答弁によりますと、市中に、配給米の中に黄変米が出ておることはおかしい、そういうことは考えられないというようなお話でございました。ところが実際には黄変米が相当出回っておる。政府機関では御検査になっておられないようでございますが、大学の研究室で随時配給米を検査してみますと、黄変米菌が出て参るのでございます。かような状態はどこで検査されたにいたしましても、黄変米が配給されておるということは争えない事実でございます。これに対しまして農林大臣としてはどういう御処置をおとりになる御所存であるか。人命健康にも影響する問題であり、重大でありますから、これに対する対策をお伺いいたしたい。
  456. 河野一郎

    ○河野国務大臣 お答えいたします。そういう話を私別の機会にも承わったことがありますので、せっかく調査をいたしまして、これを何とかしなければいかぬと考えておりますが、御承知通り、われわれの方といたしましては、輸入の際に検査をいたしまして合格したものを配給する、こういうことになっておりますので、決して検査が遺漏であるというようなことではないと思うのであります。万一そういうものが調査の結果あるといたしますれば、その後にそういうふうに変質したものであろうと思うのでありまして、これはまた別途考慮しなければならないと思うのでございますが、今すぐどうすると言うわけに参りません。せっかく今調査中でございますから、さよう御了承願います。
  457. 福田昌子

    福田(昌)委員 輸入いたします際の検査は十分であるとは思うが、もし黄変米があるとすれば、その後発生したものであろうというお話でございましたが、この点も私どもとはいささか実際の判断が違うのでございまして、事実黄変米に対します検査というものは、政府当局の検査は非常に疎漏でございまして、大体輸入米に対する検査というものは百パーセント完全に行っておるとは考えられないのでございます。人の御意見によりますと大体四〇%くらいしかこの検査を通らない、あとはほとんど検査されずに輸入米が配給米になっておるということを伺いますが、そういう点もあるかと思うのでございます。従いまして、こういう点から考えまして、検査というものをもう少し厳重になさるということが必要だと思います。それからすでに、いかなる形にもせよ検査漏れをいたしまして配給をされているこの黄変米に対して処置をおとりになるということでございましたが、その具体策といたしましてどういうことをなさるおつもりであるか。再び今の配給米を全部検査なさる御意思があるかどうか、この点も重ねてお伺いさせていただきます。
  458. 河野一郎

    ○河野国務大臣 御承知通り輸入米は非常に多量に入って参りますので、しかもこれは大体産地を積み出します場合に一応検査をするのでございます。その際にむろん合格したものが積まれて来るのでございますが、大体従来の傾向としましては、積んで参ります時期が、いつとはなしに非常に窮迫しておりました場合でもございましたし、あまりこちらの一方的な意思で買うようなことはできなかったのでございますが、昨年あたりからその点が非常に楽になりました。ことにこれからはこちらの希望、こちらの意思によって選択買いができるようになっておりますので、そういう点を十分考慮いたしまして、大体申しますと輸送中に雨季を避けて積んで参れば、黄変の危険が非常に少いということが従来の一般の意見でございます。そういうものでございますから、そういう点について十分注意いたしましてこちらに持って参りますれば、比較的少い。従いまして、入れます際に船を一ぱいごとに検査をしてみれば、大体この船にはそういう危険があるとかないとかいうようなことが割合によく出るのであります。これらのことを十分によく考慮いたしまして、十分なる調査をして現在検査をやっておるのでありますが、最近ただいまお話のようなことを私も別な機会に伺いまして、それでは妥当でないからもっとよく調査をするようにということで、いたしておるのでありますが、それは最近の出来事でございますので、今せっかく調査中でございまして、決して昨年はどうであるとか一昨年はどうであるとかいうことをなおざりにしてあるのではないのでございまして、この黄変の問題はやかましくなりましてから、政府といたしましても、十分万全を期しまして検査をいたしております。最近また市中に出たとかそういう話を聞いておりますが、はたしてこれがどの程度のものがどうということは確認できませんで、調査をしておるということを申し上げておるわけでございますから、さよう御了承願います。従いましてその結果につきまして、もしわれわれの方といたしましてとるべき措置がすみやかに必要であるということになりますれば、遅滞なくそういう措置をとることにするつきりでございます。申し上げました通りどうするかという段階にまでまだ入っておらぬ、こういうことに御了承を願いたいと思います。
  459. 福田昌子

    福田(昌)委員 こういうことは民生安定にとって非常に大切なことでございます。こういう民生安定、国民の健康に重大なことにつきましては、ことに今後予算編成上においても十分お考えいただきたいと思います。  時間がございませんので、これで終らしていただきたいと思いますが、一点だけ重ねてお伺いいたしたいのは、余剰農産物の買付から生まれて参ります大体二百十四億の借款の問題でございます。これを政府のお考えでは財政投融資資金の方に回しておられるようでありますが、この借款の分の二百十四億というものは、日本政府の自由な意思でこれを融資できるものでございますかどうか、この点をお尋ねいたします。
  460. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 余剰農産物の問題につきましては、今条件その他について交渉中でございます。
  461. 福田昌子

    福田(昌)委員 その条件と申しますのは、MSA協定の五百五十条による余剰農産物買付の際のいろいろ贈与借款の場合の条件と大体類似の条件でございますか。  それともさらに重ねてお伺いいたしたいのは、あのMSA協定の五百五十条の余剰農産物買付の条約によって買いました五千万ドル分のうちの一千万ドル分は、日本に贈与されたことになっておりますが、その三十六億の見返り円というものは大体今日までにどのような形で使われておるか、それに対してはアメリカの監督と申しますか、運用に対するアメリカ側の指示というものはどういう形であったのか、この点伺わさせていただきたいと思います。  それと今度の分の一億ドルの借款のうちの二百十四億との関係でございます。
  462. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今お尋ねの一千万ドルにつきましては、これは三十六億になるのでありますが、全部ではありませんが、大体兵器産業に使用されておるものと御了解を願います。
  463. 福田昌子

    福田(昌)委員 三十六億の一部が兵器産業に使われている、聞くところによると、大体九億円ほどのものが使われているということを聞いておりますが、二百十四億の使途につきましても、そういうふうに重点的に兵器産業に使われなければならぬというアメリカの示唆があるのでございましょうか。この点お伺いいたしたいと思います。
  464. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいま若干記憶違いをしておりましたので、訂正いたします。三十六億の中で七百五十万ドルが借り入れが実現しておりまして、これが兵器産業に使われるわけであります。その他についてはなお交渉しておる、こういうことでございます。  それから二百十四億につきましては、私ども考えとしまては電源の開発それから農業の開発、そういう方面に使用したいと考えております。これは今後も政府自体交渉するわけでございます。
  465. 福田昌子

    福田(昌)委員 時間がございませんので、これで終ります。
  466. 牧野良三

  467. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 総理大臣にお伺いいたします。総理が中ソとの平和国交回復をいろいろとお考えになられておるということは、私はまことに敬意を表するのでありますが、この中ソとの国交回復につきまして、総理が何か思うように行かない支障があるとお考えになるとするならば、どういうところに支障があるか、それを一つお聞かせ願いたいのであります。
  468. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 中ソとの国交回復は、別にただいまのところ、どこに支障があるということはないと思っておるのであります。
  469. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 アメリカとの関係において、何かあなたが中ソとの国交回復について制肘を受けておるというようなことはございませんですか。
  470. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 とかく中ソとの国交回復に対してアメリカが神経質になって、これを妨害するというようなうわさがありますけれども、事実においては全たくないと私は思っております。
  471. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 そういたしますとさらに進んで伺いますが、アメリカは大へん神経をとがらしてをおるのですが、中共やソ連日本を攻撃してくるというようなことはわれわれには考えられない。今日におきましては、中共におきましてもソ連におきましても、非常に平和を要望されておるのでありますが、そういうことについての総理の御判断はいかがでございますか。
  472. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 米ソ戦争が万一始まった場合のことを考えますと、その際に米軍が日本におりますし、そうして日本ソ連との間がまだ戦争状態終結未確定の事態あるということは非常に危険だと思いまして、戦争状態終結末確定の事態を早くなくなして、戦争状態集結確定の事態に持って行く必要があると思って、中ソとの国交調整を非常に重要な仕事であると思ったのであります。
  473. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 ただいまの総理の御意見は大へんけっこうでありますが、私が伺っておりますのは、米ソ戦ではなくして、中共あるいはソ連が直接日本に攻撃してくるというようなことが考えられるかどうか、こういうことと伺っておるわけです。
  474. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それは私は考えておりません。
  475. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 そういうことをお考えになられないということは、私は大へんけっこうだと思うのであります。さてそこで私は伺いたいのでありますが、日本が独立国であるということを民主党自由党の諸君は声を大にして言われて、自衛隊問題なども、どうも独立国では戸締りがなくてはというようなことを申されるのでありますけれども、私どもから考えますと、日本の今日の状態は全たく不愉快きわまるのでありまして、とうてい独立国であるというような考えがせないのであります。政治問題につきましては、これは国民が全部わからないから別といたしましても、アメリカの駐留軍でありますが、これによって日本にどういう利益があるか、駐留軍がおるということは、私は、総理がお考えになっておるような中共との国交回復についても障害になりはしないかと思うのであります。駐留軍が日本におりましても何ら日本には利益がありません。百害あって一利なしであります。でありますから、私は駐留軍がおるということは、日本が独立国と申しましてもさながらアメリカの属国のような感じがするのでありますが、中ソとの国交回復の促進の意味合いからいいましても、総理は、撤退してもらいたいという交渉をなさるお考えはございませんですか。国民の大部分は、もうアメリカの兵隊に早く帰ってもらいたいという気持でおるのでありますが、総理の御所見はいかがでございますか。
  476. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 とにかく少しも防衛力を持っていないで一国が存在するということは、私は無理な話だと思います。戦争が現実にあるかないかということを度外視いたしましても、日本としては相当の防衛力を持っていなくてはならないと思っておるのであります。そこで安全保障条約やその他の条約もできているのでありまして、だんだんと自衛隊を増強いたして参りまして、そのうちに米軍の駐留ということがだんだんとなくなってくることを理想とすべきだと考えております。
  477. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 ただいま総理が申されておることも、あるいは総理の御意見かもしれませんが、いま少しく具体的に伺いたいのであります。このままで行けば、どうも今総理のおっしゃられるようなことでありますと、いつまでたってもアメリカの兵隊に日本から帰ってもらえないというようなことになるのでありますが、この安全保障条約第四条から行きますならば、これは個別的に交渉しても平和が守られる、たとえば中共あるいはソ連日本が個別的に話し合いをつけて、そうして平和が保たれるということになれば、この安全保障条約第四条によってアメリカに対してもこの安全保障条約の廃棄を求めることができるのでありますが、そうでないと、いつまでたってもこれはこのままでおるということになるのです。そうすると総理は、どういう状態になりましたならばアメリカの兵隊に帰ってもらうことをアメリカに請求することができるとおぼしめしになりますが、具体的にお示しを願いたいのであります。
  478. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 とにかく自衛隊がだんだんと増強せられていけば、やがては駐留軍が撤退する時期が来るであろうと思います。とにかく本年度はアメリカの駐留軍一個師団は帰るのでありますから、だんだんとそういう事態になってくるものと思います。
  479. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 ただいまの総理の御説で、だんだんと自衛隊が拡張されればとおっしゃられるのでありますが、そうなって参りますと、勢いこれは憲法第九条の問題に入っていくのであります。総理はこの間、わが党の片山委員の憲法第九条の問題についての質問に対して、いろいろとお答えがあったのですが、この憲法第九条の問題につきまして、総理は何か御心境に変化でも生じたのでありますか。昭和二十九年十二月十九日の朝日新聞の記事による総理新聞発表によりますと、どうしても憲法改正をしなければならないということをはっきりと申されておるのであります。ところがこの間のわが党の片山委員質問に対して、今日では事実問題としてその必要がなくなったというように申されておるのでありますが、ただいまの御意見を伺えば、現在の状態ではアメリカの駐留軍に撤兵してもらうことの要求ができる状態ではない、さらにこれから拡張してというようなことを申されたのであります。   〔委員長退席、重政委員長代理着席〕 そうすると、憲法は改正しないで、なおやはり自衛隊を拡張なさるという御意見でございますか、伺いたいのであります。
  480. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 とにかく現在の日本の憲法は、防衛力を持っては悪いということは書いてないのです。軍隊を持ってはいけない。その軍隊を持ってはいけないという意味は、自衛のためならば、兵力を持ってもよいというように解釈されておるのであります。かつて自衛隊法のないときには、面接、間接の侵略に対して防衛力を持ってもよいという法律がない場合には、どうしても憲法を改正しなくては軍隊は持てないのでありますから、憲法第九条の改正を必要と考えておりました。しかしながら、自衛隊法ができて、国会意見が自衛のためならば軍隊を持ってもよいということになった今日におきましては、さほどに急がなくてもよいだろうと思いまして、私の第九条の改正に対する熱度は薄らいで来たのであります。
  481. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 憲法の第九条の論争をいたしておりますと時間がなくなりますから、これは避けますが、ただ簡単に私は総理の御意見を伺っておきたいのは、今日文化国家におきましてどこの国でも持っておる軍隊というものは、いずれも自衛のための軍隊であって、よその国を侵略するという軍隊を文化国家として憲法に規定する国はおよそないだろうと思うのであります。従って、日本の憲法といえども、たとえば九条を改正しましたところが、よその国を侵略する軍隊を持っていいのだというふうに改正のできようはずは、私はないと思う。そうしたなれば、自衛のための軍隊であれば持っていいということは、これはきわめて憲法を曲解いたしておるのであります。また総理は自衛隊法ができたからとおっしゃられますけれども、自衛隊法を自由党や改進党が多数で通過させて来たところが、それは憲法を無視しておるのでありまして、決して憲法が死んではおらないのでありますから、自衛隊法ができたから憲法第九条はもうそれを認めるのだというのは、私はいささか本末転倒の感がありはしないかと思うのでありますが、その点はいかがでありましょうか。
  482. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あなたのような解釈も成文の上からは適当だろうと思います。しかしながら成文がどうあっても成文の中に無抵抗主義をとったということも明らかになってはいないのであります。侵略を受けたならば防衛すべからずというところまで書いてあるわけではないのでありますから、自衛隊を持っていましても、憲法の改正必ずしもするものではないという解釈もできるはずであります。
  483. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 憲法論争はその程度にしておきまして、まず駐留軍の撤退は、ただいまのようなことで、総理がまだ交渉の過程にないとおっしゃられるのでありますならば、それはそれとしておきまして、アメリカの軍隊が日本に来ておって費用がいろいろかかるということについては、私どもは少くとも防衛分担金を、アメリカの兵隊が日本において使う金というものは、私は一切アメリカに支払ってもらいたいという交渉をしてほしいと思うのであります。なぜなれば、われわれ日本民族は、今申しましたように、独立国として、アメリカの軍隊にいてもらいたくないのです。そうしてまた総理が先ほどおっしゃったように、中共からもソ連からも攻撃してくるおそれもないのであります。何のために日本におるのか。それでも安全保障条約があるからといって、アメリカが何らかの目的でおるとするなれば、せめてこれに要する費用くらいは、真にアメリカ日本を愛し、日本に対して親切であるとするなれば、日本の食うものについてまでも心配をしておるのでありますから、自分の国の軍隊が使う費用くらいはアメリカが全部負担してもらえないだろうかということを、日本の経済の状態を話してこれをアメリカに訴えるだけのお気持があってもいいのじゃないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  484. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 とにかく日本の防衛力の不足を補っておるものはアメリカの軍隊でありますから、日本の防衛力が十分でない限りは、アメリカの軍隊の駐留に対して相当の分担金を出すのは適当でおろうと考えております。しかしながら、そういう事件の継続を決して喜ぶものではないことは、もとより当然であります。
  485. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 私は総理と論争をする意思はございませんが、日本の防衛をアメリカが手伝ってくれるというただいまのお言葉でありますけれども総理は先ほどソ連も中共も日本を攻撃してくるということは考えられないと申され、かつ御自分でもソ連、中共と平和国交の回復を促進しておる。こういう状態であるにもかかわらず日本の防御を手伝っておるというのは、どういうことについてアメリカの兵隊が日本の防衛を手伝っておるのでありましょうか。
  486. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 とにかく日本では暴力革命をしようとする共産党もおりますし、それからソビエトの世界革命政策というものが全然なくなったということを決定してしまうわけにも参りません、日本の国土を守るためには万全の策を講じていかなくてはなりませんから、防衛力がない日本アメリカと約束をして防衛をしてもらうということは、適当であろうと思うのであります。
  487. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 ただいまの御説で申しますと、日本の共産党が暴力革命を企図しておる、こういうように申されるのでありまするが、これは私は大へん総理が国民を見るのに何か色めがねでもかけて見ておるような感じがするのであります。たとえばこのたびの選挙におきましても、共産党の候補者がたくさん各選挙区で立ちましたけれども、当選されたのは川上君と志賀君だけであります。日本の国民がこのわずかな人たちに教唆されて暴力革命を起すというようなことをお考えになるということは、私は少し色めがねで国民を見過ぎるのではないかと思うのでありますが、その点はいかがでありますか。
  488. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 共産党が民主的闘争をして候補にどんどん立って争って、多数によって日本を交配しようというような考え方で出てくるならば、私も安心するのであります。ところが共産党が地下にもぐって、議会政治闘争をやめて、議会政治の闘争ではなくて議会否認的の闘争をするということがあり得ると思うのであります。それを心配しておるわけであります。私の心配が空虚のものであれば非常に喜びます。
  489. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 ただいまの総理はそういうふうに想像をしてとおっしゃられるのであります。そうすると全く確たる根拠なくして、国民が今日これほど生活の状態に困っておるにもかかわらず、不生産的なこの自衛隊を、しかも憲法に非常な疑義があるにもかかわらず共産党に対するところの空想的、想像的――空想と申してはあるいは語弊があるかもしれませんが、そういうような想像に基いて自衛隊というようなものを置き、アメリカがそれに手伝っておるというふうにお考えになるのは、いかにもそれはアメリカの何らか、言葉が適当でないか知りませんが、手先のような気がするのであります。この聞もドムニツキーの書類をあなたがお受け取りになって、これを外務大臣にお渡しになった。ところがこれについての問答はありましたが、そのときにあなたは、すぐにこれをアメリカに知らせるようにというて重光外務大臣に渡された、こういうお答えなのですが、何も日本総理大臣がソビエトからの書面を受け取ったからといって、そんなことを一々アメリカに知らせる必要はないと思うのです。これは日本が政治において国民の知らざるところにおいても、このようなアメリカの鼻息を常にうかがっておる、ごきげんをうかがっておる。総理が中共、ソ連に対して旧交回復を御希望になられてお考えを及ぼされておることは大へんけっこうでありますが、そのようなお気持であるのでは、私はソ連、中共との日本の平和国交回復はとうてい至難と思うのでありまするが、ドムニツキーの書類を受け取って外務大臣に渡したことをすぐにアメリカに知らせるようにということは、どういう意味合いでそういうことを外務大臣に申されたのでありますか。あなたの御心境を伺いたいのであります。
  490. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はソ連や中共との国際関係正常化を熱望するあまりそういう手続をとったのであります。アメリカに正解をしてもらえば、ソ連や中共との国際関係正常化せんとする日本の希望は、アメリカがそれに反対する理由はない、ただその間にソ連や中共との国際関係正常化を欲する日本誠意を誤解されては困ると思いまして、誤解を防ぐにはこういうような交渉をするのだということをアメリカがちゃんと知ってくれることが、ソ連や中共との国際関係正常化する目的を達成するゆえんになると考えたからであります。
  491. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 それでは次の問題に移りますが、本日も問答があったのでありまするが、ガリオアの問題について、午前中この支払いの方法等が論争をせられたのであります。私は支払い問題よりも、まずさかのぼってこのガリオアを総理は債務とお考えになっておりますかどうか。またこのガリオアの数量は幾らであるか、これを一つ伺いたい。数量の点につきましては大蔵大臣でもけっこうでございますが、まず総理としましてはこのガリオアを債務と認めるのか。われわれ国民はアメリカに占領されまして、牢獄なき日本島に押し込められたようなものであります。昭和二十九年におきましても外国米を百十四万トンも買い入れなければ日本人は食っていけない。そのほかに大麦、小麦の買い入れもしなければ食っていけない、こういうような状態であります。それをアメリカ日本を占領しておって、よその国とも行き来をすることは相ならぬ、交渉もすることは相ならぬと言うてしまったなれば、日本人は干ぼしになるよりほかに仕方がない。占領しておるなれば占領しておる国は当然その被占領国の人間に食わせたり着せたりするのはあたりまえであります、例は適切ではないかしれませんけれども、強盗殺人をやったような人間どもが、国家がこれを獄舎につなぐなれば、いかに強盗殺人をやった人間でもこれを餓死させていいということはありますまい。これに食事を与え、着物を着せなくちゃなりません。さりとてこれが刑期満了のときに、あのときにお前に飯を食わせた、着物を着せておいたからあれを政府に払えということは言いますまい。アメリカ日本に救援をしてくれた、これについて本国会は感謝の決議までもしておるのであります。でありますかう、このガリオアを日本が債務と認めるなどということは、これはとんでもないことであろうと思うのであります。今日もこれについて支払い論争が行われましたけれども、私はそんな問題ではない。これは当然に日本がちょうだいしたのである。むしろちょうだいというよりは、アメリカが占領国の兼務として日本に提供した品物である、物資である、こう考えるのでありますが、総理の御所見はいかがでありますか。
  492. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外務大臣から答弁してもらってはいけませんか。
  493. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 数量等についてはそれは外務大臣でけっこうですが、ただ総理がこれを債務と認めるか認めないか、この点につきましては前国会におきましてもみな区々でありました。吉田総理、大蔵大臣、あるいは外務大臣等、御意見ほんとうに一致しておりませんから、総理がこれに対して債務と認めるか認めないか、これはきわめて重要な問題ですので、ただそれだけでけっこうですから、一つ意見が伺いたい。
  494. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 お願いしますが、その当時においては私はほとんど政界を隠退しておりまして、ガリオアがどういうような関係によって成立したものであるか、よく知らないのです。だから希望としては、アメリカがあなたのおっしゃるような事情をよく了解してくれることを欲してはおりますが、よく知らないのですから、外務大臣から答弁していただきたいと思います。
  495. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 なるほどあなたは政界から追放されておったので、その点は了といたしますが、私がただいま申し上げましたことは、これは間違いのない事実でありまして、あなたが将来アメリカにこの事情を訴えて、そういうものを債務として取り立ててもらいたくはないという御希望があるということだけは申されますか。
  496. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そうです。その通りであります。
  497. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 それではこのガリオアの金額について外務大臣一つお答えを願いたい。
  498. 重光葵

    重光国務大臣 昨年五月以降、ガリオアに対して、今お話のような趣旨で希望を達成したいと思って交渉が行われて来手はおるのであります。この記録を見ますと、数ははっきり明確にはなっていないのでありますが、相互に資料を提出して、処理方式の意見開陳が行われたが、今日に至るまで、遺憾ながらいまだはっきりした結果を得るに至っていないのであります。政府といたしましては返済をしなければならない額について渋る意向はないが、経済の自立、賠償、防衛力増強等、わが国の当面する特殊事情について十分先方の了解を縛るよう努力しておる次第であります。こういうことになっております。今数額についてということでありますが、これはその交渉においてどういう先方の数字であり、こちらの数字であるかということをとくと調査した上で、申し上げましょう。私が今持っておりませんのははなはだ遺憾に存じます。
  499. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 外務大臣の御答弁は、どうもきわめていいかげんであります。この問題は何もついこのごろ始まった問題ではありません。もう前々国会から、これは非常に論議されてきた問題でありまして、今ごろ金額も御存じないというのでは、これは実に恐れ入った話です。今まで鳩山総理が最高顧問をいたしておりました自由党内閣政府が調べたところによりますれば、二十一億一千五百万ドルということに日本は計算しておる。ところがこれが実に不可思議きわまることには、アメリカ政府の一九四八年十二月現在の発表が十六億七千三百九十万ドルなんです。アメリカの方が日本に援助物資をこれだけやっておると言うのが、日本の方で発表しておる額よりも少いのであります。日本の方がそれを上まわっておる。こういうふうになりますと、われわれは何だか日本政府アメリカと何か話し合いをして、げたでもはかせておいて、今にうまいことをやるのじゃないかというような気がするわけです。しかもこれは外交問題でありまして、きわめて重大問題である。これを今重光外務大臣が御存じない、はっきりしないというのでは、何の交渉をしておったのですか。これはどうもいま少しあなたは対外関係について御勉強願わなければ、われわれ国民はいい迷惑ですな。少しやっていただきたいですね。  なお次に対米債権の問題ですが、対米債権四千七百万ドル、これはアメリカとの関係においてどういうことになっておりますか。総理はこれについて何か御研究になられるか、報告を受けておられるか、いかがでありますか。
  500. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外務大臣から答弁してもらいます。
  501. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 それでは外務大臣でもよし、大蔵大臣でもよし、この対米債権四千七百万ドルがどういうことになっておるか。この四千七百万ドルはどこの所管になっておるか。まずそれから一つ大蔵大臣に伺いましょう。   〔重政委員長代理退席委員長着席〕
  502. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この問題につきましては国会承認を得まして、外為会計の簿外の勘定において整理してやっております。正規の帳簿の外の整理勘定に相なります。
  503. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 大蔵大臣、いつの国会にこれをお出しになりましたか。
  504. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 政府委員お答えいたさせます。
  505. 東條猛猪

    ○東條説明員 お答え申し上げます。衆議院、参議院の決算委員会におきまして、主として御承知の、占領当時の朝鮮向けの日本からの輸出代金でありますが、これは何らかの形において国有財産としての整理をするのが適当であろう、こういう御意見を受けまして、大蔵省が所管をいたしておりますところの外国為替資金特別会計の簿外の整理資産として計上いたしまして、その旨当時の国会のそれぞれの委員会報告をいたしました。
  506. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 今政府委員が答えられたことは私は知っておる。そんなことを聞いておるのではないのであります。それは私が決算委員会で扱ったのだから、そういうことを私は聞いておるのじゃない。この対米債権四千七百万ドルは、実は日本の国有財産のうちのどこに入っておるかが自由党内閣でわからなかったのです。それでわれわれがいろいろ聞いたので、しまいにはその所在がわかった。今は通産省の所管になっておる。ただ所管だけはそういうことになっておる。日本がこれほど財政に逼迫しておるのにもかかわらず、この四千七百万ドルという対米債権は、これは商取引の金であります。しかもこれは昭和二十七年の四月十八日にアメリカの方から日本に対して、これだけ日本国がわが国に対して取る分があるということを通知してきておる。それにもかかわらずその財産の所在すら日本内閣じゃわからなかったのです。そこで、それの所在はしまいにはわかりましたけれども、しからばこれをアメリカに向って払ってくれるように請求したことがあるかないか。これを聞いておるのです。いかがですか、大蔵大臣
  507. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは対米の債務、日本の方からのアメリカに対する債務と心得られるものもありますので、それらはすべて一貫して処理する、こういうふうな交渉になっておると思うのです。なお交渉について詳しいことは外務大臣からお話がありましょう。
  508. 重光葵

    重光国務大臣 対米債権四千七百万ドルにつきましては、ガリオアの処理と関連して、これと同時に処理していくよう交渉することになっております。ところがガリオアの処理交渉が今停頓ぎみでございますので、この問題もまだ最終的の決定交渉の結末を見るに至らない状況にございます。
  509. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 これはどうも大へんなことでありまして、ガリオアの問題は、ただいま私が総理に御説明申し上げましたように、ああいう性質のものであります。これはアメリカが朝鮮戦争のために使うところの物資を日本が出してやった商取引の金であります。両取引の金を、しかもアメリカの方から日本にこれだけの取る分があるということを言ってきておるのにもかかわらず、そのガリオアと何か牽連をさせてこれを交渉しておるなどということは、私はきわめておかしな話だと思うのです。アメリカ日本の経済事情が悪いことを知っておるのだから、商取引をして自分の方で当然支払うべき金などはアメリカといえどもちゃんと日本交渉すれば払うと思うのであります。そこがこの日本外交アメリカ媚態外交であって、筋を通して言えない。遠慮をしておる。私は外人はそういうことは話がわかるのじゃないかと思うのですが、どうしてそういうふうにガリオアと牽連させて、これを請求しないのですか。われわれ国民はきわめて納得することかできない。いま一度お答えが願いたい。
  510. 重光葵

    重光国務大臣 今の対米債権とガリオアと同じ性質のものであるとは一つ考えておりません。しかしながら向うはガリオアを債務であるという建前を持ってきておるのでありますから、それとこちらが債権であるとしておるものと、額はともかくとして、同等に置いてこれを差し引くという意味ではなくして、やはり交渉には関連してくるということを申し上げたのでございます。
  511. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 きわめて不得要領なお答えで、納得はできませんが、これを論争しておると時間がかかりますから、これはこの程度にいたしておきます。  次は、通産大臣が見えましたから、通産大臣に伺いたいのであります。民主党鳩山内閣は、電気料金の値下げをすることについて、大臣新聞発表された。これは私は非常にわが意を得たと思っておるのであります。自由党内閣では、当時は値上げはどうかということを考えられたようでありまして、この値下げをされるという額はどの程度まで値下げをされますか、どういう根拠に基いてこれを申されたか、一応あなたの御意見を伺ってから私もなお一つ申し上げてみたいと思うのですが、通産大臣の御意見一つ拝聴さしいただきたい。
  512. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 電気料金の値下げの問題はこの内閣になって始まったのではございません、前内閣が、御承知のように、十月かに電気料金の改訂をいたしました、これは相当の値上げであります。そのときには夏料金と冬料金を一本にした。ところが一本にした値段をそのまま四月以降も続けますと、前の夏料金に比較いたしまして、相当大幅の値上げの格好になる。それで当時大分世論がやかましかったので、前内閣は四月から何らか租税もしくは金利の引き下げ等の方法によってその料金の値下げをするという意味のある程度の約束みたいなものをしておるのであります。その跡始末を一つしなければならぬ。これは前内閣のやったことであるから知らないというわけにいきません。そこで四月から何らかの方法をもってある程度の値下げをしたい。ただし植下げと申しましても、積極的に今の料金を値下げするというところまでは、ある程度はいきますけれども、前の値上げをしたものを積極的に下げるというところまではいかない。大体今私ども考えておることは元の夏料金に比較してこのままでいくと、三割以上の値上りになるところが家庭の電燈料金にありますけれども、それを三割程度で頭打ちをしょう。それから産業方面の料金は前から一部三割頭打ちになっておりましたが、しかしこれが今年の九月末日かで終るわけでありますが、それも少くとも来年の三月三十一日まで継続する家庭料金の三割頭打ちを来年の三月三十一日までやる、産業電力の方は現に三割頭打ちになっておるものを来年の三月三十一日まで続けよう、こういう程度のことを考えております。そしてその間に、御承知のように、日本の電力はだんだん水力を開発しておりますから、開発するに従ってと言っては語弊がありますが、とにかく設備資金が高いので、その関係上このままで参りますと五カ年計画が終ります昭和三十三年度には、料金がそれまでは二割ぐらいどうしても上げなければ償わないというふうな状況になっておるのでありますが、それはどうも困る。そこでとりあえず来年の三月三十一日まで三割値上げ頭打ちということにしておきまして、その間に金利、租税その他の問題を考えて、電力会社の合理化をして、そして二割値上げになる、それをできるだけチェックする、こういうことで今研究をしております。
  513. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 私は通産大臣の今のお答えを聞いて、いささか失望を感ずるのであります。今のあなたのお答えは基本の問題に一つも触れておらないのでありまして、多分そんな程度じゃなかろうかとは思っておったのでありますが、私はこれは総理大臣にも一つ意見を伺いたいと思うのですが、日本の産業の興隆というものは何と申しましても電気でございます。私はこの電力事業につきましては、これを国営にすべきじゃないかと思うのです。と申しますことは、今通産大臣が、このままでいけばまだ二割も上げなくちゃならぬとか何とかいうことをおっしゃっておりますけれども、電気事業会社は、私が説明申し上げるまでもなく、日本に九つありますね。この九つの電気事業会社に国民の税金を、昭和二十九年三月現在におきまして一千三百億貸しております。これは五カ年間据え置き、三十年賦償還でございます。しからばこの九つの電気事業会社の自己資本が幾らあるかといえば、みんな合せてわずかに四百三十億であります。国民の税金の資本、その三分の一にも満たない自己資本である。さらに昨年度において約五、六百億の融資をいたしております。それにもかかわらず、この会社が昭和二十八年度においては一割五分の利益配当をしておるではありませんか。昭和二十九年度の上半期におきましては一割二分の利益配当をしております。あなたは通産大臣といたしまして、中小企業者をこのままの状態で置いては大へんだということを、本日の他の委員質問に対してもお答えになったが、日本の中小企業者は全部が自己資本で、このデフレ政策のために倒産に次ぐ倒産であります。しかるにもかかわらず、日本の財閥が独占事業で、国民の税金でほとんどこの公社を運営しておって一割五分、一割二分の利益配当をしており、さらにその上昨年の四月に一四・四%の値上げをしてくれということを経済審議庁に申し出たが、われわれはとんでもないと言ってこれに反対した。とうとうその次には、今度は七・七%の値上げをしてくれということを言うてきた。けれども、これもわれわれは反対したのであります。そのようなわけでありますから、こういうような国民の血税でほとんど独占事業を一部財閥の特権階級がやって、一割五分、一割二分の利益配当をさしておくなどということはとんでもない話なんです。私は少くとも利益配当をさせるとすれば五分あればせいぜいであります。私が説明するまでもなく、通産大臣も会社については十分御研究になっておるでありましょうが、少くとも一割二分以上の利益配当をするには、三割ぐらいの利益がなかったならば、一割二分、一割五分の利益配当ができないことは私が説明するまでもありません。そうでありますならば、このような国家の経済の根底をなすところの電気事業を、国民の血税でやっておるのでありますから、こういうのはよろしく国営にして、その利益をいわゆる社会保障制度、他の事業に――今日教育問題につきましても、松村文部大臣がどうしても予算の増強を要望しなければならぬということを、この新聞に御発表になっておる。私はまことに敬意を表しておる。ところが他の予算を見れば全く貧弱なものであって、一方においては独占事業にこのようなぼろい金もうけをさしておって、まだその根本も見きわめないでおるのであります。私はこれに対して一つ総理大臣、いかがでありましょう。こういう状態ですが、私はこれらはよろしく国営にすべきじゃないかと思います。そして電気料金を下げればおのずから物価は下っていきます。電気料金が少しでも上ればそれは全体の物価に影響して来るのであります。少くとも低物価政策をとる以上は、電気料金というものを、これは利益などというものは少しも見ないで、国が実費で配給をするということにしなかったならば、産業の興隆をはかることはできないと私は思うのでありますが、総理大臣の御見解はいかがでありましょうか。
  514. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私よりは通産大臣の方が妥当な答弁ができると思いますから、そのように願います。
  515. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 けっこうです。
  516. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 お説はよく承わりましたが、国営にして果して料金が下るかどうかということは問題だと思うのです。現在なるほどお説のように国家資金がうんと入っておりますが、これはしかし国策として電源の開発を強力にやらなければいかぬということでやらしておるのです。それから同時に、配当がある程度あることはこれも事実であります。しかし国家資金で全部開発ができるのならば、それは配当をする必要もないかもしれませんが、現状においては、民間資本を相当に吸収しないと予定通りの開発ができない。こういう状況にありますために、ご承知のように、日本全体の金利が高い場合、やはりある程度の配当をしないと民間資本が集まらない、こういう困難がありますので、ある程度の配当は許さざるを得ないと思っておるのであります。しからばそれを全部国家資金でやって国営にすればどれほど料金が下るかと申しますと、なるほど配当だけは下るように考えられますが、しかしながら実際においては建設費が、御承知のように、以前と違って非常に高くなっております。この建設費をまかなうためには、料金はやはりある程度高くならざるを得ない。現在は古い物価騰貴以前の設備がありますから、それを食いつぶして辛うじて現在の料金を維持しておる。今の電気が新しい設備によって全部供給されるということになると、先ほど申し上げたように、二割ぐらいの値上りになるというのが現況であります。これは国営にいたしましても、民営でありましても、この点は大差はないと思う。むろん民営にしたって、放漫な経営をしておるということでありますと、そういう点はわれわれは十分取り締らなければなりませんが、むろん国営問題は研究してけっこうでありますけれども、私は議論するわけではありませんが、国営にしたら必ず料金が下るということは言えないと思います。
  517. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 私はあなたとこれを論争しようとは思いませんけれども、私が今申し上げたのは政府調査しておるところの数字によって私は申し上げているのであって、国営にしたならば、果して下るか下らないかわからないというのは、あなたの仮定の論であって、少しもあなたの下らないという根拠がない。しかしながら、私はこれをこれ以上論争しようとはいたしませんが、どうか少し御研究が願いたい。少くとも、これは日本の産業にとりましては非常に重大な問題であります。どうか御研究が願いたい。  次に、これはきわめて大きな問題でありますが、外航船舶建造の融資関係でありますが、これが今度新聞を拝見いたしますと、公庫案を修正して株式会社を設立する、こういうのでありますが、吉田自由党内閣が国民怨嗟の的であってついに崩壊した。これは鳩山総理初め日本国民の大多数が喜んだのでありますが、この吉田内閣が崩壊したということは、この自由党吉田内閣の失政によって国民が非常に生活に苦しんだ。一方におきましては、国民の血税を政治家と役人たちが寄ってたかって横領した。これが非常に国民のふんまんを買って吉田内閣は崩壊したのでありますが、今度新聞を見ますと、さらに造船融資について別な方法で株式会社を作ってやろう、こういうのです。この株式会社の資本が幾らかというと五億円だという。私はただ新聞の上で申し上げるのでありますから、はたして真否のほどはわかりませんが、とにかく昨年までに三井、三菱を筆頭といたしまして、五十四の船会社に国民の血税を貸し出したこと、実に九百九十二億一千九百万円であります。これが償還期が来ても、元金はもとよりほとんど利息すらも払っていない。帳面を見ると、なるほど利息は払っておるようになっておるけれども、元金の方に加えておるのですから、これはちょっと見たってわからない、なかなか巧妙なことをしておるのですが、これに対して総理一つ十分御研究が願いたいが、あなたが自由党内閣の最高顧問でおる時分に、自由党の党員であった田中彰治君は、われわれとともに決算委員会調査いたしたのでありますが、三十二億円というリベート――三十六億ということになっておるのですが、四億は別の方で、芸者や赤坂の中川等で使ったことになっておって、実際に政界、財界、官界に流れた金は三十二億ということを、あなたの属しておった自由党田中彰治君がはっきり申されて、これがためにこの問題を調べていったところが、とうとう田中君は除名をされてしまったのですが、この造船融資の九百九十二億一千九百万円についての償還関係がどうなっておるか、これは私が決算委員会政府に対して質問をいたしましたけれども、とうとう答えができない。さらに開発銀行法によりますれば、必ずこの償還は可能であるということの見通しを立てた上で貸し付けなければならぬということに開発銀行法で定められ、開発銀行の定款にもさように定められておるのであります。しかるに、貸付をしておるのに担保もとってないらしい。担保がどういうふうについておるか、書いて出せと言っても出さない。出さないままにあの疑獄事件となって、ついに吉田自由党内閣は検察庁法を乱用し、指揮権を発動して、一片の内閣声明によってこれをうやむやにしてしまった。この九百九十二億一千九百万円の償還関係あるいは三十二億の行方関係等がわからなくなってしまったのでありますが、運輸大臣一つこの九百九十二億一千九百万円の償還関係等を御説明願いたいのであります。   〔中曽根委員「運輸大臣は要求がなかったから呼んでない」と呼ぶ〕
  518. 牧野良三

    牧野委員長 杉村さん、それにだいぶ時間が……。
  519. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 運輸大臣がおらないというのですから、これは一つ総理におかれましても十分――さらにここで何か会社を作るというのです。そして私はきのう自分の部屋に行ってみると、外航船舶建造促進協会というものを作るから入ってもらいたいというのが、私のところにやってきておるのだが、これは変な代議士が集まってやられたのでは困るのですが、この前は海運議員連盟というのがあって、この海運議員連盟というものが中心になって造船疑獄、汚職事件が起ったのですが、これは総理におかれても十分御研究になって、再び造船疑獄が起らないようにしていただきたい。  最後に私が伺いたいのは、先ほど申しましたように、自由党吉田内閣の崩壊は、あなた初め国民大多数が喜んだ、それは先ほど申しましたように、この汚職議員に国民が苦しんだ、それだけ喜ぶと同時に、次期内閣に対する期待というものは、非常に国民は大きかったのであります。ところがあなたが首班におなりになられたので、鳩山ブームなどということになって、一時は非常に景気がよかったのでありますが、まずそれはそれといたしまして、あなたがこの吉田自由党内閣あとを受けて、吉田自由党内閣の崩壊の原因をあなたも御存じだろうと思いますから、組閣に当りましてはあなたは少くともこの政界、財界、官界の腐敗を粛正するということについて、どういうようなお気持、お心がまえで組閣に当ったか。たとえば閣僚の選考につきましても、こういうようなことについて疑惑を受けるような人について、あるいは新聞紙上等にそういう疑惑を発表されておるような人たちに対して、そういうことをお調べになって閣僚の御選考をなされたかどうか、そういうことについて一つ伺いたいのであります。
  520. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あなたと同じような考え方をしております。
  521. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 これ以上申し上げてもなんですが、ただ非常に遺憾なことは、この造船融資の問題は、大蔵大臣はきわめて重要な関係がある。ところがあなたは御存じないかもしれませんけれども、一萬田大蔵大臣は一昨年の七月十日の晩ですよ、赤坂の中川で石井前運輸大臣と保利前農林大臣、山縣前厚生大臣、こういうような人たちとともに、飯野海運の俣野健輔、これは三井、三菱を筆頭とするところの五十四の船会社の総務委員長でありますが、この総務委員長の俣野健輔の招待を受けてあなたがおいでになったということは、昨年の二月二十四日の本院の決算委員会において、前石井運輸大臣がはっきりと答えられておるのである。ここに速記録がある、持ってきておる。これは、石井前運輸大臣がまさかあなたが行かないものを行ったなんということを言うはずもない。しかも石井前運輸大臣の答えにいわく、それは俣野健輔の招待で行った、こういうことがはっきりこの速記録に書いてある、言われておるのだが、あなたもそのときに、やはり当時の石井運輸大臣が言われたように、俣野健輔の招待で赤坂の中川に行ってごちそうになりましたかどうか、伺いたい。
  522. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 日は記憶いたしておりませんが、その日に行ったことは事実です。それはたくさんの人がおりましてごちそうになりました。それは事実であります。
  523. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 どういう人ですか。
  524. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今私どういう人か覚えませんが、今ちょっとほかの人の記憶を覚えませんけれども、参りましたことは事実でございます。
  525. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 あと一点だけ。次は花村法務大臣が来ておるので伺いますが、この造船汚職、疑獄に関連しまして、本院が前内閣総理大臣吉田茂君を告発いたしておるのであります。これに対しまして取調べをされたかどうか。されたとするなればその結論はどうであったか。されないとするならばいかなる理由で取調べをされないか、これの事実について一つお答えが願いたい。
  526. 花村四郎

    ○花村国務大臣 お答え申し上げます。この問題はただいま捜査中に属しますので、ただいまその内容について申し上げますことのできないことは、あなたが御了承下さることであろうと存じます。取調べは証人を二十数名、並びに本人につきましても最近取調べをいたしたという報告が参っております。この程度で御了承願いたいと思います。
  527. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 最後に鳩山総理にお聞きしたいことは、とにかく日本において憲政しかれていまだかってないところの大汚職、大疑獄事件でありますが、これがついに指揮権の発動と、一片の内閣声明によってうやむやにされておるような状態なんです。だからこれについて一つ総理は、ほんとう日本の財界、官界、政界を粛清しようとするのであったなれば、この三十二億の国民の血税を、どういうふうにだれが分けたかということを、一つ国民の前に公表してもらいたいと思うのであります。これはきわめて重大な問題であります。ただ口だけで政、官、財界を粛清するといったところが、これだけの大疑獄事件であります。これがしり切れトンボで終るということは、これは私は日本のためにはなはだ嘆かわしいことであると思うのであります。本来であったならば、あなたが組閣のときに、われわれの同僚の決算委員長であった、あなたの部下であります田中彰治君でも一つ法務大臣にして大いにこれを発表してもらいたかったのでありますが、それもできなくて仕方がありませんが、特に今即刻ということでなくても、少くともあなたは今期議会中にでも、この三十二億のリベートの行方を国民の納得するように発表をさしていただきたいと思うのであります。われわれがこれを聞こうとするなれば、吉田総理一つも聞かせない。しまいには内閣声明を出して、全部だめにして聞かせないことにしてしまったのであります。どうかあなたは明朗なるところの政治をやって行きたいとおっしゃられるのでありますから、これをこのままにしておるのでは、くさいものにふたがしてあるので臭気ふんぷんとして、決して明朗なる政治は行われないと思いますから、一つあなたがこれを御発表願いたいと思っておりますが、簡単でけっこうでありますが、御所見はいかがでございますか。
  528. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あなたのは質問ではなくて希望ですね。――あなたの希望はよく承わりました。
  529. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 それではまだたくさん聞きたいことがありますが、時間の制限がありますので、これでやめます。
  530. 牧野良三

    牧野委員長 この際農業所得の問題につきまして、社会党の阿部五郎君、同じく社会党の小平忠吉、御両君より十分ずつを限っての質問がございます。これをお許しいたします。阿部五郎君。
  531. 阿部五郎

    ○阿部委員 大蔵大臣にお尋ねいたしますが、今回減税をなさる御計画を承わりました。ところが一面でその穴埋めは大体消費税をもって充てるということになっておりますから、国民から払う税金を直接税と消費税と両方合せましたならば、実質上の減税にはなっておらないことを過般お認めになっております。ところが面接税の減税をなさる二面において、所得の見積りを高くいたしましたならば、それだけ増収が行われるのでありまして、前内閣が通常やって来た方法がすなわちこれでありました。そこで現内閣は減税をなさるというのでありますから、今度は実質上のほんとうの減税をなさるというお考えであると思います。そうすれば、所得の見積りをふやすということはなさらないであろうと私たちは思っておるのでございますが、その点お約束をしていただくことはできようと思います。いかがでございますか。
  532. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたします。所得を特に高く見積るということはいたしておらないのであります。
  533. 阿部五郎

    ○阿部委員 それではもう一つお尋ねいたしますが、農業所得につきましては、これを税務署が査定いたしまして、見積って課税をいたしまする時分には、農民の所得の中で所得として見積らない部分があるのが、今までの慣習になっております。たとえば供出の完遂奨励金であるとか、あるいは早期供出の奨励金、超過供出の奨励金とか、こういうものについてはなるほど所得には遅いがありませんけれども、税務署がお調べになるのも相当複雑でもありましょうし、理由はともかくといたしまして、こういうものの一部は所得として見積らないという習慣になっておるようであります。もしこの習慣を破って、これらも厳格に所得として認めるということになりますと、実質上の増税が行われるということに相なりますが、そういう御処置は減税を標榜しておる現内閣においてはなさらないだろうと存じますが、これもお約束していただけるでありましょうか。
  534. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 税務署におきまして、決して不当な所得の見積りはいたしていないと存じます。
  535. 阿部五郎

    ○阿部委員 そうなりますれば、現在新潟県あたりで農家の所得が昨年に比べて三倍ないし五倍というようなことをいたしておるというようなことが伝えられておりますが、それらはおそらくその土地の税務署のやり方が悪いのではないかと思われる点がございますから、その点については国税庁を督励して、とくと御調査を願いたいということを希望しておきます。  それから自治庁長官にお尋ねいたしたいのでございますが、国税の方ではそういうふうに所得見積りを増加することによっての実質上の増税はなさらないということでありますが、他方財政の方を見ますと、その規模がどうしても拡大することのやむを得ない実情が見えるのでありますから、それにはどうしても財源を求めなければならぬというところから、地方税の増税が行われるという危険があるのであります。これは全国の自治団体がこの点を心配しておると存じます。これについて地方税について増税いたさないというお約束をしていただけるでございましょうか。
  536. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 この点につきましては、先ほどもお答え申し上げたのでありますが、自治庁といたしましては、地方財政を救うために交付金並びにたばこの消費税において相当程度の増額を大蔵省に要求しております。まだ結論に達しておらないのでありまして、折衝中でありますが、これらをいろいろ考えまして、さらに事務費、行政費、その他事業費等に圧縮を加えまして、健全な財政の基礎を作りたい、かように考えております。
  537. 阿部五郎

    ○阿部委員 その点は先ほど承わったのでございますが、交付税のことにつきましては、これは国から交付を受けるのでありますから、地方税の増税にはなりませんし、またたばこの消費税にいたしましても、増徴をするとしても、たばこの価格を上げるということにはしない。そうして国の所得になる部分と地方の所得になる部分とを合せれば、現状に変更はないのでありますから、私はそれを申すのではありませんが、実質上国民の負担となるところの地方税の増徴、たとえば道府県税、あるいは市町村税のごときものを税率を変えるとか、あるいは固定資産税の税率の変更をするとか、こういうふうな地方税の増税をもくろむところの、地方税法改正を企てられるような御意思は絶対にないと承わってよろしゅうございますか。
  538. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 固定資産税につきましては、昨年引下げをいたしております。住民税につきましては、ただいまのところ改訂をする考えはございません。
  539. 阿部五郎

    ○阿部委員 それではもう一点。固定資産税については先ほどもお伺いいたしたのでございますが、大臣お答えは、勧業銀行の調査部の報告によって、農地の価格が昨年と本年とを比べると五〇%以上も騰貴しておるから、税法に基いて当然税の増徴が行われるところであるが、それを一挙に行なったならば過酷であるから二八%に押えた、こういうお話でございます。私は勧業銀行の調査部の報告をそれほど信用いたすことができないのであります。常識から考えましても、このデフレ時代に――なるほどおっしゃるように、土地の価格の値上りは、ほかの物資の値上りよりもおくれるといたしましても、このデフレの世の中に、去年とことしとで、地価が五〇%も上るなどということは考えられないのでありますから、この点はさらに御検討を加えて、御調査の上、もっと正確なる認定をなさっていただくということを承われましょうか。
  540. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 二八%基準を上げたのは、昨年十一月自治庁から県に通達し、これに基きまして、すでに各府県とも三十年度の予算を編成いたしておるのでありますから、大体既定の事実とかように御了承願いたいのであります。
  541. 阿部五郎

    ○阿部委員 それではもう一つ大蔵大臣にお尋ね申し上げますが、予算を御編成なさるに当っては、当然国民所得を幾らと見るかという見積りをなさっておると思いますが、昭和三十年度の国民所得は、昨年に比べて幾らとお見積りになっておられますか。
  542. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大体これはそうたくさんは見ないのでありまして、六兆一、二千億というふうに考えております。これは、今詳しくは経審で出しておるところでございますが、大体の押えはそういうところでございます。
  543. 阿部五郎

    ○阿部委員 最後に、農村関係には、各般の情報によりますと、実費上大幅な増税が行われつつあるというようなことを聞くのでありますから、どうか関係大臣におかれましては、農民に対して過酷にならないように、格段の御注意をお願い申し上げまして、私の質疑を打ち切ります。
  544. 牧野良三

    牧野委員長 小平忠君。
  545. 小平忠

    ○小平(忠)委員 農業課税の問題につきましては、その緊急重大性から、過日衆議院の本会議におきましてわが党の日野吉夫君から質問いたしたのに対して、大蔵大臣も農林大臣も、きわめて重要な問題であるからして、速急に実情を調査して善処するということを御答弁なさっておるのでありますが、すでは数日を経過しておりますので、本問題の重要性から、この暫定予算案の最終審議、討論に入る前に、あえて各派相談いたしまして、政府の所信を明らかにいたしたいというところから御質問申し上げたいと思うのであります。  時間がありませんから単力直入に申し上げたいと思いますが、この農業課税の問題、特に農業所得の問題については非常に緊急を要する問題であります。御承知のように、この確定申告の期日は三月十五日ということから、現実の姿は、地方によっては本年は昨年よりも三倍から五倍の増税になっておるということが問題になっております。これは漏れ承わるところによればとか、そういう話であるとかいう問題ではありません。現に私は具体的な数字を持っております。これは新潟県のいわゆる早場地帯において、具体的に県が調査した資料でございます。これによりますと、中蒲原郡の白根町におきましては約四倍弱。というのは、その町で、二十八年の収量は七千九百八十五石でありますが、二十九年は八千二百四十二石、二百五十七石が現実増収になっておりますが、昨年のいわゆる税制の改正、さらに米価の決定に当りまして不都合なやり方をしたために、結果はどういう所得税になるかというと、二十八年度は百十七万二千円。これはこの町だけのことであります。二十九年度は約四倍の四百十一万円という所得税を納めなければならぬという問題が起きているわけであります。さらに同県の北蒲原郡の中浦町においては、二十八年は三百五十万円という所得税に対しまして、二十九年は千八百万円という約五倍強の税金を納めなければならぬという問題が起きております。これはどういうことから起きたかといいますと、問題はいわゆる米価の決定について矛盾があります。というのは、基本米価は、確かに二十九年は二十八年よりも上っております。二十八年の基本米価は七千七百円、それが二十九年は九千百二十円に上っております。上っておりますけれども、ここに基本的な点は、いわゆる奨励金の中身が変化したのであります。どういう点が変ったかというと、すなわち従来基本米価の中に入っていなかったものを基本米価の中に入れたり、あるいは減収加算という問題をたくしたり、そういうことの操作をいたしております。従って基本米価は九千百二十円に上っておりますけれども、農家の現実の手取りは、早場奨励金をいわゆる一期、二期、三期、四期に分けて平均すると、二十八年は七百六円でありますが、二十九年はこれが大幅に減額して二百七十三円と、四百三十三円も減っておる。さらに超過供出奨励金においては、二十八年は二千七百円という金額が出ているのにかかわらず二十九年は千二百八十円というように、千四百二十円も減っておるというようなことから、現実農家の手取りは、二十八年は一万二千四百六十一円であったのに対して、二十九年は一万六百七十三円、すなわち差し引きまして一千七百八十八円という金額が減っております。こういうように手取りが減ったところへ持ってきて、さらに非課税対象となっておるところの早場米、あるいは超過供出奨励金、これらが逆に減っておるというようなことから、ただいま私が冒頭に申し上げたように、農家が所得税を四倍も五倍も納めなければならぬという姿になっております。これは非常に緊急を要する問題でありますから、大蔵大臣はこれを速急に国税庁に通達をして、これを直ちに改めるという方針をとってもらわなければ、これはきわめて重大な問題でございます。大蔵大臣のこれに対する御所見を承わりたい。
  546. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいまのお話は二、三日前に聞きまして、特にまた新潟県からは陳情にも来られました。それでさっそく国税庁に申しまして調べさせたのであります。その答えが――これはたしか新発田税務署の管内だと思いますが、調査した結果を、一応のところでございましょうが御報告させましょう。
  547. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 二十九年分の農業所得に対する課税の問題につきまして、だいぶ国会で問題になっておりますので、この機会に簡単に御説明申し上げまして、御参考に供したいと存じます。  実は本年は、一般的に申しますと、昨年の実績で課税するわけでございますが、昨年は一昨年に比べまして災害が一般的に少かった。これは東日本の方に特にそういうことが言えると思うのでありまして、西日本の方は、やはりことしも相当な災害が実収高におきましてございまして、それほどではないと思いますが、大体東の方の系統が、一昨年に比べまして昨年は災害が少かった。従って、それだけ税務署で、見ておりまする実収高が相当増加した、これが一つ事情が変った大きな点でございます。それからもう一つは、米価の点につきまして、実は昨年供出奨励金の一部が基本米価に変るなどの関係によりまして、米価が約一割ほど上っております。すなわち一昨年の課税では八千二百円の米価でございましたのが、昨年は九千百二十円、これを基本にいたしております。その二つの関係が一番大きく響いていると思いますが、その結果といたしまして、今年はだいぶ増加しそうだというので、私どもとしましては、事前になるべく多く話し合いをいたしまして、納得を得て納税してもらうようにと、だいぶ督励いたしたのでございますが、所によってはうまくいっている所もございますが、話い合いがうまくいかないで、いまだになお若干問題になっておる所がございますことは、御指摘の通りでございます。新潟県につきましては、先日私のところにも陳情がありまして、一応話をお聞きしたのでございますが、新潟県全体といたして見ますと、たしか一昨日この委員会でお尋ねがあったそうでございますが、実収の見方は、県全体として見ますと、作報と比べまして無理な見方はしていないということができそうでございます。と申しますのは、作報の方では、昨年の実収を四百五十万五千四百石に見ておりますが、税務署の調査によりますと、四百四十三万九千七百八十一石ということになっておりまして、むしろちょっと税務署の方が下回っております。ほとんど大差はございません。それから面積の点におきましては、作報が十七万六千町歩、これに対しまして税務署側は十七万一千、ちょっと少くなっております。これは、税務署は土地台帳を基本にせざるを得ない状況でございまして、それによって見ます関係でございます。そこでそういう関係がございまして、いろいろ問題があると思いますが、しかし先般新潟県につきましても実情調査をしますと、納税者の大体九割程度は――だいぶふえましたが、いろいろ税務署で話し合った結果でございましょう。大体申告是認ということになっておるようでございまして、若干が残っているようでございます。この間伺いましたところは、特にその増加の激しい所だと思うのでございまして、そういう点につきましては、私どもさっそく関信局に連絡しておりまして、実情をさらによく念査に入れるところは十分入れまして、そうしてよく話い合いまして、納得のいくところできめるように、早く一方的に更正決定などの措置はやらないようにして円滑にやるようにということを、とりあえず指示いたしております。なお私どもといたしましても、そういう点につきましてよく調査いたしまして善処する考えであります。  なおこの点につきまして、全国の統計をちょっと参考に申し上げておきますが、大体三月十五日までの確定申告でまとまりましたものでございますが、これが実は、一昨年の課税は百二十三億三千三百万程度農業所得税が課税になっておりますが、昨年は一昨年の災害の影響を受けまして、四十五億六千五百万、約三分の一程度に昨年の課税は激減いたしております。それが今年の課税では、今まで報告を受けましたところによりますと、七十九億七千八百万、全国的に見ましても、これは相当の増加でございます。倍ではございませんが、八割程度――七割四分増加をしております。納税人員も、一昨年が百十三万四千人に対しまして、昨年は五十一万人に激減しましたのが、今年は六十六万四千人程度に増加しております。これは、実は所得がこんなにふえているわけではないのでございまして、実は所得が三割、四割ふえますと、所得税のいろいろの控除の関係で、税額がやはり二倍、三倍になる場合があるのであります。これは勤労所得者の場合に、年末に際しまして賞与をもらいますと、賞与に対する税額が非常に高くなるのとちょうど同じ関係になるのでございますが、所得がふえますと、ふえた部分に対しましてはあまり控除の恩典がなくて、所得の上に乗っかりましていきなり税率がかかる、こういう関係上、増加した分に対しましては所得税が相当高くなりまして、その結果、もとと比較しますと相当の増加になる。一昨年の農業の平均所得が一人当り二十二万でございます。扶養家族が大体五人ぐらいございまして、控除を十六万五千ほどいたしております。それを差し引きますと、課税所得は五万五千になります。それに対する税額は一万円、こういう一つの例がございますが、これに対しまして所得が三割ふえますと、税金は二万一千円になりまして、実は二倍一割増加する、そういう関係になりまして、私ども所得自体をいいかげんに水増しして課税するということは、最近絶対避ける方針でやっております。所得の実際をよく把握いたしまして、それに応じて合理的に課税するという考えでございまして、そういう点につきまして、もしもさらに今後におきまして――各地で若干問題があるようでありますが、なお未解決の問題につきましては、よく指導いたしまして適切を期する考えでございます。税額の動きが、そのように控除と平均所得と家族数の関係で所得以上に動きますので、税額から見ますと非常な変動があるようになります。しかしまた全体の所得に対する税額から申しますと、もちろん相当増加いたしますが、勤労所得に比べまして決して高いものということはできないと考えております。なお非常にふえますので、ふえた分につきましては、昨年よりも三割以上ふえますれば、そのふえる分につきましては、五月までどうしても税が納まらない場合は、延納を認めるという法律がございまして、その法律につきましても、実情に応じまして十分適用をはかるようにいたしておる次第でございます。それによりまして、未解決の問題につきましてはなおよく指導いたしまして、適切を期したいと思う次第でございます。
  548. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいま国税庁長官から一応の説明がございまして、現に増徴ということを認められております。これは、民主党内閣が選挙におきましても、五百億減税を公約して選挙に戦ったわけでございます。ところが現実の姿は、このように地方によっては極端な増徴を来たしている。そういう現実の問題に関しまして、今国税庁長官も説明されているように、善処するということにおいては、もちろんやってもらわなければなりませんが、ただ善処するだけではおさまらないと思う。具体的にもっとこれに対してどういう処置をとるかを、私は大蔵大臣に聞きたい。と申しますのは、現に昨年のいわゆる基本米価、あるいは奨励金、この米価の決定に際して、このようないわゆる税金が相当ふえるという、こういう結果を招来しているこの問題についてどう処理されるか。さらに確定申告の期限はもう過ぎている。一応この確定申告に対して、もし延納していったならば、これに対して当然延滞利子というものがかかる、こういう問題も起きてくるわけであります。これを一体どう処理されようとするのか、お考えを聞きたいのであります。
  549. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 先ほど申し上げましたように、新潟県の場合でも大体九割程度、全国的に見ますと九割五、六分程度は大体申告が話し合いがつきまして、解決しているようでございます。残余の分につきましては、先ほど申し上げましたように、あまり早く一方的な更正決定をやらないで、よく話し合いまして、調査し直すべき点があればもちろん調査し直しまして、円滑にいくようにいたしたい。  それから延納の分につきましては、三カ月延ばす分につきましては、利子税が二銭かかることになっておりますが、金額が非常に少い場合は課税しないでもいいというようなことになっておりますので、農業の場合におきまして、金が最近供出の関係でだいぶ入っている関係もございますが、そうでないようなところ、ことに営農資金として次の資金に相当要るような場合におきましては、その辺の事情も考えまして、延納の制度は十分活用したい、こう考えております。
  550. 小平忠

    ○小平(忠)委員 今国税庁長官が、大体新潟の場合でも九割が済んでいる、全国的に見ても済んでいるというようにおっしゃったのでありますが、これは私は、新潟県の場合の実例を申し上げたのでありまして、この問題は全国的な問題であります。もちろん米価決定に対してのいわゆる課税基準というもの、あるいは非課税対象になる奨励金等の金額が減った、そういう問題は全国的に及ぶ問題であります。従いまして、この問題については、単にこれを善処する程度では、私はゆゆしき問題が起ると思うことが第一点と、それから大蔵省が、特に国税庁において非常に簡単に考えておりますけれども、地方のいわゆる徴税事務に当っておる税務署の吏員が、一体どのような態度でもってこの徴税に当っておるかといいことは、これはわれわれの想像以上のものがあるのであります。もっと厳粛であり、きびしく、そうしてその九割のいわゆる決定を見ておるということにおいては、おそらく全国の中に、この税金を納めるために非常な経済的な、あるいは家庭的な、中には一家心中というような問題さえも起きて確定されておる実情等も十分考えなければならぬ。従いまして、私はもう一応この問題について大蔵大臣からはっきり御答弁をいただきたいことは、この件はすでにもう問題の重要性にかんがみまして、超党派的に話し合っておる。すでにあなたの耳には入っておると思うのでありますが、問題になっておる点は、今国税庁長官から、いわゆる延納を認める、さらに検討してこれを是正するということの説明がありましたけれども、これはいわゆる確定申告の期日を、単に現在のままの形ではいけない、やはり五月なら五月まで確定申告の期日を延ばすなら延ばすというふうに通達を願うことが一点であるし、さらにその際には、いろいろ地方でトラブルが起きると思いますが、そういう問題がきまるまでは、やはり延滞利子というものは取らないということを、私はこの席上においてはっきり御回答いただき、直ちに国税庁に対してその通達をしていただきたいということを申し上げ、大蔵大臣の確たる答弁を願いたいのであります。
  551. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これはただいまお話がありましたように、非常に重大な問題であります。むろん税を納める方の方から見ても、大へんな問題であります。そうしてまた同時に、徴税の方から見てもなかなか重大な問題であります。これはやはり私としては、具体的にどういうふうに実際にやっているか、これを調べた上でないと何とも今軽々にここで申し上げることもできないと思いますから、よく調べた上で公平適正にやる、こういうふうな処置をとりたいと考えております。
  552. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいまの大蔵大臣の御答弁で、すっかりもとに戻っちゃった。これでは何にもならない。せっかく国税庁長官が現実の調査をして、結果が現に税金がふえている。そういうような観点から、これは納得のいく公正な更正決定をした上でなければ税金は取れないし、さらに現在の確定申告の期日も、これは考えなければならぬ、そういうことについては十分にやる、そういうふうに説明されたことを、あなたは最後の答弁によって、従来の答弁と何ら変らない、結局実情を調べ善処する、これでは何にもならないのです。現にこれは新潟県から出ている資料です。米価の決定の線からも、現に所得の関係からも、四倍、五倍に税金はふえている。民主党内閣は、すでに選挙においても五百億の減税をするということを全国民に主張されている。そういうやさきに、一昨年よりも昨年が四倍、五倍もの税金を取られるというような形においては納得し得ない。従って、これをどうするかということを私は伺っている。無理なことは申し上げません。納得のいく私は御答弁をいただきたいと思います。
  553. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今私が答弁をいたしましたのは、全般的なお立場の議論がありましたから、それでその点について、今のように実際の調査が済みまして、そうしてこれをどうするかという問題について、これは支障がない限り納税者の立場考えてやるということに、むろん異論はないのであります。国税庁とよく相談しまして、できるだけ納税者の立場考えてやる、こういうふうに申し上げておるのであります。
  554. 小平忠

    ○小平(忠)委員 大蔵大臣も十分実情を御承知のはずだし、国税庁長官からも実情の報告があったわけであります。先ほど国税庁長官が御説明され、また御答弁なさったように、直ちに処置をしていただきたい。  それから時間がありませんが、先ほど自治庁長官から、いわゆる固定資産税に対する評価がえの問題について、きわめて理解のいかない答弁があった。そういうことはすでに自治庁長官から、これは昨年、この三十年度のいわゆる地方公共団体の徴税方針ということで、自治庁長官名をもって通達されておる。その実態は、収益性のないいわゆる農家の家屋、土地等について評価がえをする、このことが、地方によっては三〇%も上回るという姿が現われて問題になっておるのであります。その点をあなたは非常に簡単に、そんなことはないかのごとく説明されておりますが、きわめて重大な問題でありますから、その点について、あなたは十分にこのようないわゆる不均衡きわまる現実を無視した評価がえ、あるいは徴税方針について、従来の自治庁長官としての通達をどのようにこれを改められるか、あるいはどういうふうに善処されるか。私はもっと納得のいく御答弁をいただきたいと思います。
  555. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 ただいまのお話は御意見として承りまして、よく考究いたします。
  556. 牧野良三

    牧野委員長 これにて質疑は終局いたしました。九時より再開して討論、採決を行うこととし、暫時休憩いたします。    午後八時二十九分休憩      ――――◇―――――    午後九時十二分開議
  557. 牧野良三

    牧野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  暫定予算三案に対する質疑はすでに終了いたしております。  この際日本社会党両派の共同提案として、赤松勇君外十六名より、昭和三十年度一般会計暫定予算昭和三十年度特別会計暫定予算及び昭和三十年度政府関係機関暫定予算の編成がえを求めるの動議が提出せられております。その趣旨説明を求めます。小平忠君。
  558. 小平忠

    ○小平(忠)委員 趣旨弁明を申し上げる前に、配付された印刷物の修正個所につきまして説明を申し上げます。配付されておりまする印刷物の最後の備考欄を削除いたしまして、この事項を別刷りの七と書いてありまする印刷のように、この編成がえを求める動議の三ページの六の次に七としてこれを挿入するよう、印刷の誤まりがありましたので、修正いたすことをまず冒頭に申し上げます。  私は日本社会党両派を代表して、政府提出の昭和三十年度一般会計暫定予算案外二案に反対し、これが撤回を求め、かつ両派社会党によって作成した政府予算案組みかえの動議をここに提出し、これが趣旨を明らかにするものであります。(拍手)  われわれが政府提出案に反対する第一の理由は、今回の暫定予算案は、四、五月分の純事務経費のみを計上した事務予算であるという名目に隠れて、年度予算の編成方針についての説明を怠り、事実上政府国会に対し予算審議上不可欠なる資料の提出を拒否しておるからであります。一萬田蔵相は、再三にわたる野党三派からの要求によって、閣議に付されざる一萬田蔵相の明年度予算構想なるものを説明いたしましたが、この内容たるや、総選挙中の民主党の宣伝文書を一歩も出ていないのみか、きわめてお粗末きわまるものであります。あのようなガリ版刷り三枚程度のおざなりな作文をもって、予算審議に最も重要なる資料提出上の形式的つじつまを合せることは、予算審議上かって例を見ない最悪の前例を鳩山内閣が残すものでありまして、国会の民主的運営の見地より見て、きわめて、遺憾に思うのであります。  政府提出案に反対する第二の理由は、今回の政府提出暫定予算案は、四、五月分の純事務経費のみを計上した予算案としても、きわめてずさんであるからであります。われわれは暫定予算の編成というものは、財政支出の空白期を来たさないように、一日も早く審議通過せしめるためには、歳出予算経費は、最低必要とする純事務的な経常費のみを計上すべきことを原則と考えます。従って、現在進行中の日米交渉における防衛支出金の分担額問題のごとく、現在検討されつつある経費について、機械的に前年度予算の月割額を計上するのは、国民に対しては純事務的計上を装いながら、米国に対しては阿諛追随の媚態を呈する鳩山内閣独特の二枚舌外交の現われなのでありまして、断じて見逃しあたわざる事実なのであります。  また暫定予算編成に当っては、前年度歳出経費では明らかに不足となって赤字を出した主要項目については、不足額を補うに足る経費を計上することが、純事務的にも必要なる処置であるとわれわれは考えるのであります。この見地に立って今回提出された政府予算案を検討してみますると、社会保障関係の生活保護費、社会保険費、失業対策費、結核対策費の四項目並びに業務教育費国庫負担金、地方財政に対する交付税交付金、補助金関係、公務員給与の地域給における一部の不均衡是正など各種項目にわたって、事務的経費の計上としてもきわめて不十分である事実を指摘し得るのであります。特に今回の政府提出案において著しい事実は、昨年中の深刻なる経済不況によって失業名や生活困窮者が急激に増加し、中小企業の疲弊、倒産はますますひどくなってきているという憂うべき事態に対し、暫定予算案においては何らの考慮も払っていないことであります。具体的に政府予算案に計上された失業対策費四十六億一千五百万円の経費について検討してみますると、まず失業対策事業費の補助については、前年度予算が一日平均十七万人分を計上していたのに対して、わずかに二万人分を増額したのみであります。失業保険費においては、保険金受給実人員を前年度の月平均四十九万四千人から、わずかに九千人分増額したのみであります。これによってみれば、失業対策費の増額はわずかに二万九千人分が計上されているだけであります。しかるに政府作成の失業統計によってすら完全失業者数は六十万人台に固定化しており、実際の就職を希望する失業者数はこれを数倍も上回っていることは、天下周知の事実であります。しかるに政府は失業対策費の若干の増額の必要を認めながらも、その増加額たるや深刻なる失業難の現実を無視したごまかし以外の何ものでもないのであります。われわれは鳩山内閣のいわゆる公約と実際の政策実施面との矛盾については、無数に指摘すべき事実を握っております。われわれはこれらについては日を改めて政府を追及することとし、本日は政府提出の暫定予算案について、この考え方、この案について反対し、政府がこれをすみやかに撤回することを要求するものであります。  われわれの方針は、お手元に配付された資料通り、両派社会党によって共同組みかえした予算案をもって、政府案にかわる暫定予算として提出するものであります。  われわれの組みかえ動議は、組みかえ増額すべき項目としては、生活保護費においては、前年度予算三百五十七億円の三カ月分を最低必要額として計上するものであります。  社会保険費においては、前年度予算の二カ月分相当額と、厚生省事務当局が認めている明年度の健康保険赤字約九十億円の二カ月分相当額を計上するものであります。  また結核対策費は、前年度予算百三十五億円の二カ月分を計上いたしたのであります。  次に、失業対策費においては、一日当り吸収人員を五十一万人とし、失業保険費においては受給実人員を月当り五十五万人に増加せしめ、これらに要する二カ月分経費として百億九千万円を計上したのであります。  文教関係歌においては、明年度の小学児輩数七十万人増加に伴って、教職員数を最低一万七千人増員する必要に迫られておるので、これに必要なる義務教育費国庫負担金の増額三カ月分十一億円のみを計上したのであります。  地方財政に対する交付税交付金関係では、これらの社会保障関係費や文教費関係における経費増額によって、地方財政の負担額も増額せざるを得ないので、この地方財政の負担増加分だけを地方財政困難の折から、これを国庫負担によらんとするものであります。  われわれは以上にあげた項目以外に公務員給与の地域給等において、ぜひとも暫定予算において組みかえの必要を認めておるのでありますが、これらは年度予算においてこれを計上し、四月にさかのぼって支給するように措置したいのであります。  ただこの印刷物の七項目に明記いたしましたように、地方財政は、年度初めに短期資金三百億円を必要とするのでありますから、政府はこれを資金運用部資金または預託金などによって融資することを、ここに強く政府に要求し、さらに公共事業費あるいは食糧増産、失業対策等の補助事業について、継続的な事業については、既定方針通りこれを支出することにいたしておるので、あります。  次に、われわれの組みかえ動議において、組みかえ減額する項目は、第一に防衛支出金百四十七億三千六百万円の支出は、日米交渉において、わが国側の分担額が確定するまでは支出の繰り延べをはからんとするもので、これは日米安全保障条約並びに日米行政協定にも何ら矛盾するものではありません。組みかえ減額せんとする第二の項目は、防衛庁費でありまして、われわれの要求は前年度予算七百八十八億円のうち、事務的経常費五百四十五億円のうちで最低必要とする経費として給与、庁費等のみ約五十九億円を計上し、政府案より十億円だけ減額せんとするすこぶる常識的かつ穏当なる主張なのであります。  以上の組みかえ増減によりまして、暫定予算全体の歳出歳入額は変動せしめぬようにわれわれは配慮し、一日も早く暫定予算案の審議を終了せしめんとするものであります。  何とぞ本予算委員会においては、われわれの組みかえ動議を慎重検討され、これを採択されんことを強く切望いたしまして、私の趣旨弁明を終ります。(拍手)
  559. 牧野良三

    牧野委員長 これにて暫定予算三案の組みかえを求める動議の趣旨説明は終りました。  次に、昭和三十年度一般会計暫定予算昭和三十年度特別会計暫定予算及び昭和三十年度政府関係機関暫定予算の各原案、並びに赤松勇君外十六名より提出されました暫定予算三案の組みかえを求めるの動議を一括して討論に付します。討論は順次これを許します。小枝一雄君。
  560. 小枝一雄

    ○小枝委員 私は政府提案にかかる昭和三十年度一般会計暫定予算、並びに昭和三十年度特別会計暫定予算、並びに昭和三十年度政府関係機関暫定予算につき、日本民主党を代表して賛成の討論を行います。  まず政府の三十年度予算の編成方針は、一月十八日閣議決定以来、日本民主党においてもすでにこれを承認しておるところであって、わが国の自主独立を完成し、経済の復興と繁栄を達成するためには、すみやかに経済の自主発展を期し、国民生活の安定と向上をはかることは喫緊の要務であります。従ってその実現をはかるためには、拡大均衡を目標とする長期かつ総合的な経済計画を樹立しなければならないのであります。しこうして昭和三十年度予算編成に際しましては、その方針にのっとり、わが国の経済基盤を強化充実することを主眼とし、健全なる財政金融の政策を堅持し、通貨価値の安定、物価の引き下げ、資本の蓄積を推進しつつ、住宅の建築の拡充、失業対策の強化等、民生の安定をはかるとともに、企業の合理化を促進し、食糧自給の対策を立て、貿易の伸展を期するとともに、大いに国費を節約いたしまして、国民負担の軽減をはからねばならないのであります。このためには、政府が国と地方財政の均衡を確保するために、一般会計予算の総ワクを一兆円の範囲にとどめようとしておることは、当を得た処置というべきであります。  ここに提案せられておる暫定予算は、政府の三十年度予算編成の方針に従って、これを前提として作られたものであって、この暫定予算は、年度初頭の、しかも政府がすでに成案を得つつある昭和三十年度本予算を近く国会に提出して成立するまでの四月、五月二カ月分の国及び地方の経常的な事務、事業の運営に支障がないための意図に基くものであって、その規模が最小限度にとどめられて、いわゆる政策的な経費等を織り込んでないことはこの暫定予算の性質上やむを得ざるところであります。従ってまず一般会計暫定予算の歳出総額が一千六百八億円で、歳入総額が一千二百八十三億円となっており、歳入不足額の三百二十五億円は国庫余裕金をもってこれをまかない、また必要に応じ百億円までの大蔵証券発行の措置をとることにおいて、まず暫定的予算措置としては当を得たものといわざるを得ないのであります。  以下私は項を追ってこの予算について簡単に議論を進めたいと思います  が、まず第一に、暫定予算の中に政策的な諸経費を除外し、新規の事務、事業に対する経費が原則として除外されておることであります。これは多少の議論の余地はあるといたしましても、総選挙の結果、去る二月下旬現内閣が生まれまして、直ちに政府はこの暫定予算とともにすでに本予算の編成に着手して、鋭意その成案を急いでおるところであって、おそくも四月中旬までには国会に提案することは明らかでありますから、これら政策的な経費は、来たるべき通常国会において、十分な審議を尽し検討を行なった上、慎重に国の施策として決定せられ、実行に移すという方法をとることが、最も当を得たものであり、政策に対して忠実なものであると考えるのでありまして、このたびの暫定予算に政策的な経費を除外したことは、やむを得ざる当然の措置というべきであります。  第二に補助費についてでありますが、政府は義務的なもので、現実に国から資金の交付を必要とするものに限りこれを計上し、一般の奨励的な補助金の計上を避けておりますが、補助金のうち公共事業関係費については、災害復旧費において前年度の四分の一、緊急就労対策費を二カ月分のほか計上していないことは、この予算の建前からすればやむを得ないことではありますが、公共事業関係諸費の中には、あるいは産業経済に、あるいは社会保障にきわめて重要なものがあり、また土地改良等についても、県営、団体営等につき関係者の意欲を阻害せざるよう、本予算成立までの短期間といえども、十分なる考慮を払い善処されんことを強く要望しておく次第であります。  第三に、補助費を原則として計上せざる結果、地方公共団体の資金操作の困難を予想し、これを緩和するため、地方交付税交付金、義務教育費国庫負担金、生活保護費等について、それぞれ三カ月分程度の予算が計上されており、またこれらのほかに政府は、資金運用部資金による短期融資等の方法をもって、地方公共団体等の財政に対し適切なる考慮を払っておることは当然であると考えます。  第四に、昭和二十九年度限りで有効期限の切れる財政関係諸法令につき、政府は、歳入歳出関係ともそれぞれ暫定予算の期間中、適当な処置をすみやかにとられんことを要望しておきます。  第五に、財政投融資については、電源開発、住宅金融公庫の事業を継続することはもちろんでありますが、政府は資金運用部資金を活用して、十分なる効果をあげるよう努力せられたいのであります。  次に歳入関係についてでありますが、予算案の示すところによれば、総額一千二百八十三億円の内訳は、主として印紙収入一千百五十七億円のほか、官業、官業益金、政府資産整理収入及び雑収入等でありますが、これら歳入関係について政府は適切なる方法をもって、歳入の的確を期すべきであります。  最後に、この予算政府の説明にもありましたが、いわゆる政策を盛らざる暫定的予算措置でありますから、政府は、一日も早く本予算をつくって国会に提案し、その成立によって、かねて政府の企図する政策を遺憾なく実行せられんことを強く要望いたします。  以上申し述べましたところにより、日本民主党は、政府提出昭和三十年度一般会計暫定予算並びに特別会計暫定予算政府関係機関暫定予算に対しまして、ともに適当なるものと認め、原案に賛成するものであり、また両派、社会党提案の昭和三十年度各種暫定予算の編成がえの動議に対して反対するものであります。(拍手)
  561. 牧野良三

    牧野委員長 西村直己君。
  562. 西村直己

    西村(直)委員 自由党を代表いたしまして、ただいま提案されております昭和三十年度の四、五月暫定予算三件につきまして、以下述べまするところの意見を付して、政府の原案に賛成、両派社会党の組みかえ案には反対を申し上げます。  その第一点でありますが、意見でありますけれども政府の説明にもございましたように、この暫定予算は四月、五月にわたる経常的事務や事業の運営に支障を来たさざる程度の、いわゆるこま切れ骨格予算である。こういう見地から考えますと、日本経済や国民経済の建設的発展のためという点からいえば、暫定予算という措置はできるだけこれを回避するというのが、政府の当然の責務でなければならぬのであります。ところが第一次鳩山内閣が旧冬成立早々、あるいは解散を行っておるとか、あるいは進んで三十年度の本予算をあの当時提出しておりましたならば、今日この四月、五月分の暫定予算を、しかもこうした年度切れの切迫しした状態のときにあわてて提出をするような必要はない。いわんやその通過を四苦八苦しながら、そうしてしかも国民経済の活動に対しては消極的に、ある意味ではこれを阻害するような財政上の措置は避け得られたと思うのであります。ことに第一次鳩山内閣は、組閣の早々社会党と野合いたしまして、選挙管理内閣の名のもとに、約一ヵ月の間というものは政治空白の期間を作ったのであります。しかもその間財政的な裏づけや見通しのない派手な選挙公約を振り回したのであります。今日私どもが幾多の欠陥を本暫定予算に発見いたしましても、年度末に追い詰められました今日としては、やむを得ず本院を通過せしめましても、やがて提出されるところの三十年度の本予算に関しましては、その内容をわれわれは十分検討をいたし、同時に政府誠意のあるところも十分に検討し、そのいかんによっては、下手すると六月、七月も暫定予算になるという危険性もあり、またそれも想像し得るのであります。これは国民経済の円滑なる運行ということにおきまして、私どもはまことに残念に思うのでありまして、これは、そもそも第二次鳩山内閣成立の経緯からこういうような状態が出てきている。しかも現在の第二次鳩山内閣は、総理も、副総理も、経済閣僚もそのまま残っておられるならば、この暫定予算の国民経済に与えるところの悪影響、ないしは本予算がその内容、あるいは政府の出方いかん、誠意いかんによってはおくれるという責任は、一にかかって第一次鳩山内閣、それを続いて受け継ぐところの第一次鳩山内閣が負っていただかなければならぬ、私はこう思います。これが私の一つ意見であります。  次に、この短かい予算委員会論議を通じまして、各委員から政府の施策をだいぶ、できる範囲は掘り下げられたのであります。それであなた方総理初め閣僚が非常に非難し、反対されましたところの吉田自由党内閣時代の施策に、だんだん掘り下げてみるとどうも近づいてくるような感じがするのであります。野にありますときには、ずいぶん今の政府の方も勇敢にほえていらしったのでありますが、一たび責任ある政府立場に立ちますと、だいぶおとなしく、場合によっては萎縮してくるように私どもには見えるのであります。従って、こういう状態ですと、鳩山内閣というものの公約、それから施策を掘り下げて参りますと、国民は何ら新鮮味を感ずるどころではなくて、逆に再び自由党内閣の実行力に期待するようになると考えているのであります。たとえて申しますと、あれほど選挙戦当時に派手に宣伝されました総理の中ソ国交調整、これも自由党内閣と同様、大体対米、あるいは自由民主陣営との協調を基調とした性格から見てみますと、この中ソ国交調整論も今日漸次掘り下げてみると後退してくる。そして一方では、逆に米国側にはある種の不安感を与えているような感じもするのであります。特に、中共との国交調整の問題がだいぶ議論されたようでありますが、これはわずかな短かい国会論議におきましても明らかにされたごとく、現在の日本政府とそれから台湾政府との間の正常国交がある以上は、結局中ソ、特に中共との関係におきましては、わずかに貿易の拡大促進が、現段階に残され、おるところの政府の施策のようになってくるのであります。それも実際のところは、しぼって参りますと、ただココムの禁輸物資の品目の緩和があって初めて可能である。しかもこの現在の出内閣になってからもう百日以上もたっているのに、何らの進展も見ていないのであります。こう考えて参りますると、防衛分担金の問題におきましても、この暫定予算におきましては、前年度の三カ月分を予定されておりますが、かっていろいろこれを大削減して住宅に回すんだというお話でありましたが、今日それが果して御期待のように行けるかどうか、私どもはこれを鋭く注目して参りたいと思うのであります。またこの間示されました昭和三十年度の本予算の骨格に関する大蔵大臣の構想、これは予算の総額を一兆億円に押えて、減税は今年度三百億、その他は数字的に裏づけはなく、大体われわれ自由党内閣のやってきた健全財政を踏襲しているようであります。あの選挙前後の派手な公約説明とはだいぶ隔たりを感じておるのであります。特に第一次鳩山内閣以来宣伝して参られました住宅政策、社会保障費の充実、軍人恩給の引き上げ等の公約は、その財源を、大体私ども暫定予算政府が事務的だと言われるこの予算を通じても、だんだん調べて参りますと、卸物価が現在二%上っておるのに、旅費、物件費を二割削減する、それ以外は主として補助金等の大幅な整理にこれを求めていくというような傾向が見受けられるのであります。従って、一応事務的予算として主張はされております。しかし生活保護費や義務教育補助、地方交付税交付金、災害復旧補助金等の三カ月分は計上されております。また公共事業のうち、直轄事業の二カ月分は計上されておりますが、それ以外の公共事業の補助金や普通補助金は全部切り捨てておる。土地改良については、県営、団体営等は、先ほど民主党の方も言われたように、政府において善処しなければならぬというような状況になっておる、二十八年度の暫定予算の先例を見ましても、継続的な補助費や、こういうものにつきましては、必要最小限度は盛っておったのが恒例なのであります。従って政府は、口ではこれを交付税交付金や金融措置で一応穴埋めすると言っておりますけれども、今日の窮迫した地方財政のもとにおきまして、いわゆる従来一応認めてきた継続的補助金等を押えてしまう、暫定予算に出さぬということは、これをささえとしてやってきた継続事業や、その他の地方行政が手持ちになってしまって、手あきになったり、むだが出たり、あるいは行く先がきまらないというような状態が起ると思うのであります。  こう考えてみますと、ある意味においては、この暫定予算は事務的予算といいながらも、補助金整理という線においては、将来への財源確保の道を開くという政策的考え方を秘めておる、いわゆる政策がちょっぴり頭を出していると考えなければならぬと思うのであります。これを極論いたしますと、住宅や社会保障等のいわゆる民主党の一枚看板の公約も、結局は農業や漁業や山村、治山治水等の政府の施策をある程度犠牲にして初めてこういうものができるというような考え方に漸次近づいてくるわけであります。特に先般河野農相が言われましたが、外国から安い米を買ってくればよいので、土地改良などにあまり金をかける必要はないと言っておられる、この放言放談というものは大分批判されたのであります。この点がやはりこういうところに出ておると思うのであります。わが党といたしましては、もちろん放漫な非能率な補助金政策というものは、これを検討することにやぶさかでありません。しかしながら日本農業の特異性、日本漁業の特異性というものを十分に考えて、これが必要な限度においては保護、助長の立場をとって、補助金の無暴な圧縮に対しては、厳重な監視と警告を政府に申し上げておきたいと思うのであります。  かく考えて参りますと、これがたとい暫定予算にしましても、さらにさらに私どもは検討しなければならぬ。言いかえれば、時と場合によっては組みかえ動議、あるいは修正ということも考えられるのでありますが、いわゆる三月三十一日という会計年度というものを持っております以上、今日これに対しましては、会計年度末を目捷に控えておる以上、いわゆる鳩山選挙管理内閣以来の、悪い財政政策がしわ寄せになってこうして参りましたこの暫定予算というものには、一応この段階では賛成はしておきたい。しかしながら、この際に特に附帯決議をつけて、そうして昭和三十年度本予算編成提出の際の現内閣の責任を、ここで国民の前に明らかにさせておきたいと考えるのであります。  ここで私は暫定予算に対する附帯決議案を申し上げたいと思うのであります。案文を朗読いたします。   暫定予算に対する附帯決議案  (一) 公共事業の補助事業につき、継続的な事業については、四、五月分の補助費を計上すること。  (二) その他の補助金につき、昭和二十九年度予算に計上されたる項目のものについては、昭和二十九年度まで必要のなくなったもの以外は、四、五月分の補助費を計上すること。  右決議する。  私どもはこの決議案を出しますにつきまして、実は、でき得るならば予算修正あるいは組みかえ、あるいはできなくとも暫定予算の補正という考え方を持ったのでありますが、今日一応この暫定予算に対して、こういうような状況下における補助金は、少くとも四月、五月分から計上する、この附帯決議案を決議され、また皆さんの御賛成を得ることによって、政府の将来三十年度本予算に対する責任をこの際明らかにしておきたいと思うのであります。  次に、両派社会党の組みかえ提案でありますが、これは防衛分担金百四十七億の金額を削除して、これを社会保障費や義務教育費その他に振り向けてありますが、たとい防衛分担金は今軽減するということで折衝中でありましても、これを全部すっぱり切り落してその他の費目に充てるということは、現在の国際環境を急激に変革することであって、これについては、われわれは党の立場において、この提案には反対であることを申し上げたいのであります。  以上がわが党の態度でございまして、どうぞこの附帯決議案の提案に対し、御賛同を願う次第であります。  以上をもちまして、私の討論を終る次第であります。(拍手)
  563. 牧野良三

  564. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 私は日本社会党両派を代表いたしまして、政府提出の昭和三十年度暫定、予算案に反対し、両派社会党提出の組みかえ案に賛成意見を述べたいと思います。(拍手)  政府原案に対する反対の理由の第一は、この暫定予算と本予算との関係についてであります。御承知のごとく、暫定予算は本予算の一部であり、その先がけをなすものであります。ところが政府野党側の要求に応じて提出いたしました新年度予算の概想を見ますると、具体的なる計数は少しも明示されていない。単に事務的な作文が示されておるのにすぎないのであります。しかもそれは、去る一月、総選挙前に発表されました予算編成大綱と称する選挙の宣伝を目的とした文章を、ただ縮小して要約したものにほかなりません。それには公約を誠実に実行するための熱意が足りないのみならず、宣伝した公約をどうしても実行できないので、いかなる口実を設けてその言いわけをしようかという、政府の苦悶が表象されておるのであります。たとえば住宅建設四十二万戸のように、大部分は民間側の資金によるものであることをみずから暴露いたしておる。一歩進んで、その民間側の住宅建設を容易にする土地、あるいは資材、労務等の問題について、何らの建設的措置を講ずる意図さえ見られないのであります。従いまして、このようなまだとらまえようのないような、星雲状態にありまする新年度予算の一部としてこの暫定予算案を政府が提出するということは、物事の本末を転倒しているわけであります。(拍手)いかに事務的、あるいは義務的経費のみの暫定予算と申しましても、まず政府は本予算案の骨格を計数的に明らかにし、その一環としての暫定予算であることを明確にする必要があったのであります。これこそ最も民主的な予算編成の態度であり、政府が真に予算の民主化を心がけるならば、このような方法をとるべきであります。  反対の第二の理由でありますが、この暫定予算の内容についてであります。暫定予算と申しましても、今述べましたように本予算の一部でありまするから、今後の日本の経済、政治情勢の方向に多大の影響を与えるのであります。また政府の施政方針が片鱗だけでも計数的に暫定予算に盛られておらねばなりません。ところが生活保護費、社会保険費、あるいは失業対策費、結核対策費の金額は、前年度の月割り比率から見ましても、著しく不足をいたしておるのであります。これは政府の政策がどんな性格を持っておるかをよく表わしたものであって、現在デフレ政策のもとに最も多くの犠牲を受けている人々に対し、いかに政府のヒューマニティーが足りないかをも証明しているものにほかなりません。  また学年進行伴う義務教育国庫負担金にいたしましても、著しく不足をいたしております。政府は、今度の新内閣成立に当りまして、文教政策に重点を置くと申しましたが、それは天下り的、官製的な、反動的な色彩の強い新生活運動を始めることでありまして、児童数の増加に伴う教職員の給与の完全なる支給を怠り、最も重要な文教の経済的な基礎をも脅かし、またそのしわ寄せを地方財政にいたすというような逆転した方策のことであることをも、みずから証明しておるのであります。(拍手)  次に重要な反対の理由は、この暫定予算を編成した政府基本的態度についてであります。政府はこの予算委員会におきまして、原爆貯蔵の問題について、アメリカに断わり切ることのできないようなことを、みずから申しておられるのであります。従いまして、民族の運命を危殆に陥れまするような、かかる重大な問題につきまして、何たる優柔不断、何たる民族的気魄のない態度でありましょうか。日本の完全独立と予算編成権を自主的に、確固として持つためにも、政府は何ゆえに一歩進んだ政策をアメリカに対してとれないのでありましょうか。これでは前吉田内閣と全く同じであります。変化したのは、ただ吉田内閣鳩山内閣という名称だけにすぎないのであります。このこともまた天下に証明したのであります。  また中ソ貿易問題等についてでありますが、選挙当時の公約をみずから無視し、種々の妨害を通産官僚等々をして行わしめ、あるいは在日米国側の官僚主義的な圧力に屈して、貿易商社の牽制をいたしておるのであります。  さらにアジア・アフリカ会議の代表派遣問題等にいたしましても、――外務大臣は今いらっしゃいません。また今晩の夕刊にも出ておりましたが、外務大臣みずからその出席を拒否し、好んでアジアの孤児になる道を選び、民族独立の希望に燃えたアジア・アフリカ諸国との親交を深め、通商を盛んならしめる機会をみずから放棄しようといたしておるのであります。  私はこうした問題に対しまして、この防衛支出金の削減について申し上げたいのであります。この問題等につきましては、駐留費折半の当初の申し合せから見ましても、最近の実績から勘案いたしましても、四百億円程度の削減の根拠があるにもかかわりませず、その削減の要求はきわめて弱く、先方のわがままな主張を押えることができない現状にあります。この暫定予算にもかかる未確定な経費を計上いたしまして、他の民生安定費を圧迫いたしておるのであります。  以上のことから見ますならば、鳩山首相の友愛精神なるものは対米一辺倒の友愛であって、吉田内閣の対米一辺倒の延長であることを、再び証明いたすものと断ぜざるを得ないのであります。  両派社会党は、政府提出の暫定予算案に対しまして、以上述べましたような理由から賛意を表することはできません。われわれがここに組みかえ案として提出いたしました暫定予算案は、鳩山内閣の最大の弱点である経済的、政治的独立のための政策の欠陥を補わんがために、まず防衛支出金を日米交渉決定後まで計上する必要なしとし、また会計検査院の昭和二十八年度決算報告が摘指するように、国費の乱費、浪費、その極に達しておりまする防衛庁費を大幅に削減し、人件費と食費のみにとどめることにいたして、これらの財源を社会政策的経費、また文教対策費に充当し、さらに地方財政の困難を軽減せんがために支出せんとするものであります。(拍手)  以上の理由によりまして、政府提出の予算案に反対し、両派社会党の組みかえ案に賛成するものであります。(拍手)
  565. 牧野良三

    牧野委員長 川上貫一君。
  566. 川上貫一

    ○川上委員 私は政府原案に反対をし、両派社会党から提案されております組みかえ案に賛成意見を述べます。  政府原案の昭和三十年度一般会計暫定予算外二案は事務的な予算と申しますけれども、その基礎となっておるところは、多年にわたりまして平和と独立を放棄した吉田内閣の政策に基いておるのであって、鳩山内閣がこれをそのまま遂行しようとする、こういうものでありますから、この予算案には反対であります。  次に、両派社会党から提案されております組みかえ案につきましては、政府提案の暫定予算の全体の性格は根本的には残っておりますし、また外航船舶建造資金貸付利子補給等も残されておりますけれども、しかしこの組みかえ案は、今日のアメリカの占領制度を認める防衛支出金を削減しております。また防衛庁経費に削減を加え、生活保護費や失業対策費等の社会保障費を増額する、こういうものでありまして、その意向は国民の要求を取り上げて日本の政治を平和と独立、繁栄の方向、へ一歩々々切りかえていこうとする、こういう精神に基いておりますから、私はこの組みかえ案に賛成の意を表するものであります。  以上で政府原案反対、両派社会党提案の組みかえ案賛成意見を申し述べます。
  567. 牧野良三

    牧野委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。まず日本社会党両派の共同提案として赤松勇君外十六名より提出されました昭和三十年度一般会計暫定予算昭和三十年度特別会計暫定予算及び昭和三十年度政府関係機関暫定予算の編成替を求めるの動議を採決いたします。右の動議賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  568. 牧野良三

    牧野委員長 起立少数。よって本動議は否決されました。  次に昭和三十年度一般会計暫定予算昭和三十年度特別会計暫定予算及び昭和三十年度政府関係機関暫定予算の三案を一括して採決いたします。右の三案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  569. 牧野良三

    牧野委員長 起立多数。よって昭和三十年度一般会計暫定予算昭和三十年度特別会計暫定予算及び昭和三十年度政府関係機関暫定予算は、いずれも原案の通り可決いたしました。(拍手)  次に西村直己君より提出されました暫定予算に対する附帯決議を採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  570. 牧野良三

    牧野委員長 起立多数。よって西村直己君提議の附帯決議は決定いたしました。  この際政府より発言を求められております。これをお許しいたします。大蔵大臣萬田尚登君。
  571. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 附帯決議の御趣旨を体しまして最善をいたしたいと思います。(拍手)
  572. 牧野良三

    牧野委員長 委員会報告書の作成は、先例によりまして委員長に御一任を願いたいと思いますが、護異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  573. 牧野良三

    牧野委員長 御異議なしと認めます。よってその通り決しました。  これにて暫定予算三案に関する議事は終了いたしました。  この際一言ごあいさつを申し上げます。本暫定予算審議を開始しまして以来、皆様議事運営に対し御理解ある協力を示されまして、ここに無事その議事を終了いたしましたることに対し、委員長はまことに感謝にたえません。厚くお礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後十時七分散会