○井堀繁雄君 ただいま
議題となっておりまするうち、
失業保険法の一部を
改正する
法律案について、社会党を代表して反対の
討論をいたしたいと思うのであります。(
拍手)
この
理由は二つに要約することができると思うのであります。一つには、
本案は鳩山
内閣の政策の破綻を端的に露呈したものであると断言できると思うのであります。二つには、
失業保険法の本質を無視するものでありまして、真の労働政策及び社会保障
制度の
精神を理解することを欠いでおる無能をみずから暴露するものであると断ずることができるのであります。(
拍手)
第一の問題は、
政府は一兆円のワクの中において予算を組み、緊縮政策を遂行しようとしておりますことは申すまでもありません。これに伴うところの諸政策、
法律案がただいま国会で論議されておるのでありますが、こういう諸政策を実施しようといたしますれば、ここには当然中小企業者に対する金融上の圧迫が加わり、農民や小市民に対する生活を脅威する政策が当然派生してくるのでありまして、緊縮政策を行わんとする場合には、こういう事態を事前に是正する政策が並行して行われるというのが、政治の常識であります。しかるところ、ただいままで
政府が
提案されておりまする諸
法律案やそれぞれの予算の
内容はすでに検討済みでありまして、これらの被害をこうむるべき弱小中小企業者もしくは農民、労働者に対する対策はまことに冷淡であることは申すまでもございません。たまたま、
政府は、この
法案を
提案するに当りまして、当然失業の増大を見越し、その失業の救済をこの
法案の
改正に待とうという
説明をいたしたのには、驚くほかないのであります。それは、次に申し述べることでありますが、少くともこういう緊縮政策の上から派生してくるところの失業問題というものを、恒常的な保険
制度である失業保険でカバーしようとすることは、おそるべき無能を暴露し、政治を理解しない者の暴挙と言わざるを得ないのであります。(
拍手)
失業保険法の一部を
改正するという事柄は政治思想全体につながることであるし、鳩山
内閣の政策の破綻がきわめて露骨に現われているということを、ここに絶叫しなければならぬのであります。
私は必ずしもインフレ政策に対して賛意を表するものでありません。しかし、デフレ政策を強行する場合におきましては、どうしても、金融上の問題、あるいは企業の縮小、閉鎖といったような事態をどうして阻止するか、失業問題をどうして緩和し阻止するかという対策が強硬にとられなければならぬことはもちろん、いずれの国においても、このことは強調されると同時に強行されておるのであります。こういう政策を
失業保険法の
改正によってカバーしようとする
政府の
提案が無能であると同時に、そのことは次に述べるところの失業保険を根本的に否定するような危険をあえてはらんでおるのであります。
すなわち、失業保険の目的は、被保険者の相互扶助的な力と、これに社会的な力を加えて、労働者の失業に対して保険金で生活をカバーしていこうということは申すまでもありません。こういう
趣旨の上から出ておりまする恒常的な保険
制度でありますから、今日のように政策転換が行われまする場合に、こういう社会保険に対し、労働保険に対して、できるだけ手厚い保護的
措置が講ぜられるというのが当然であるのにもかかわらず、ここに
提案されておりますものは、先ほど横銭議員からも
説明がありましたから繰り返しませんが、その
改正の要旨はすでに明らかになっておりますように、季節労働者及び短期被保険者に対する従来の六カ月の失業を保険によって補償するという
制度を、三カ月に削るということは何事です。
中小企業の間には失業が増大するおそれがある。短期雇用を、雇い主も労働者も希望するはずはありません。雇用の安定をいずれも願っておりながら、政策のしわ寄せのために余儀なく
事業の縮小や工場閉鎖の被害を最も甚大に受けるのは弱小企業、中小企業でありますから、個々には
長期雇用を約し、
長期雇用の安定を願っておりまする労使が、余儀なく失業者を出して、これを保険によって保護を受けようという方向は、増大してきましても、決して少くはなってこないのであります。この分にもっと保険財源を補って、そういうものをカバーするように
改正するというのならば理解ができるのでありますが、せっかく六カ月の補償ができておりまするものを三カ月に削るということは、一体どういう根拠に基いてこういう議論が出るかということであります。これは、いかに弁解しようといたしましても、社会保険の
制度を理解する態度ではなく、社会保障
制度の
精神を理解する力を持たぬものか、あるいは故意にこれを破壊しようとするものでありますから、それはおそるべき政治面の上から出発したものと言わなければならぬのであります。これは
立場の相違ではありません。こういう
改正案でありまするから、われわれは何としても容認することはできません。
ことに、保険財源の問題はきわめて重要でありまするし、保険を強化し、拡大し、あるいは合理化していくという主張に対して、われわれはまことに賛成であります。しかし、その
趣旨からいたしまするならば、現に、今日の
失業保険法から申しまするならば、季節労働者は適用外に置かれておるのであります。しかし、事実上は、季節労働者であるか短期被保険者であるかということのけじめがつかないほど
日本経済の混乱が起っておるのでありまして、その混乱がこの失業保険の中にじわじわと割り込んでおるのでありまするから、これを受け入れて保険
制度を拡大強化していくというのでなければ、時代に適合する社会保険の
改正ではないのであります。これを切ってのけようというようなことは、これはむちゃくちゃと言わざるを得ないのであります。さらに、その名に隠れて、短期被保険者は六カ月の既得権がありまするものを三カ月に縮めるというに至っては、これはどう弁解しても弁解の余地はないのであります。
私は、ごく簡単でありまするが、以上の要点だけを取り上げてみましても、今回の
失業保険法の
改正というものは、わずか二、三カ条の条文を改めるということではありまするけれども、その基本的な政治的
精神というものについて、おそるべき破壊をみずから招くところの鳩山
内閣の政策の破綻を糾弾せざるを得ないのであります。(
拍手)
以上の
立場から、私は、
本案をわれわれの修正案に同調されて撤回されんことを
委員会で希望いたしまして、ついに
少数で敗れましたが、私は、当然こういうものに対して議員各位の十分なる御留意をいただき、社会保険の健全化のために協力を要望しまして、私の
討論を終る次第であります。(
拍手)