○受田新吉君 ただいま
上程せられました
恩給法の一部
改正法案に対しまして、
日本社会党を代表して、
提案者並びに鳩山首相以下
関係各
大臣に
質疑を行いたいと存じます。
まず第一に、
恩給法そのもののあり方、
考え方について、
政府の所見をただしたいと存じます。もともと
恩給法は天皇の文武官に対する特権的
措置として考慮されたもののようでありますが、現に
国家並びに地方公共団体に勤務する
公務員が、
国民全体の奉仕者として有形無形のうちにその経済的獲得能力を
犠牲にして
公務に従事している、その損失を補てんするというのが
恩給法の真意だと
考えております。しかしながら、新しい角度から日本の
公務員制度の全般を
考えまするときに、民主化されだ日本の
公務員制度を古い
恩給法の観念で律することは大いなる矛盾が発生することをおわかりいただけると思うのであります。ことに、現在の
公務員のうち高級
公務員は
恩給法の規定を受け、新しい
公務員は相互扶助の精神のもとに立つところの
国家公務員共済組合法の適用を受けておるのであります。かくして、
公務員の
立場は、古い観念と新しい感覚とが調整せられた
立場より、少くともこれらの
公務員に対する
恩給的
性格を持つ諸
給与は
国家公務員退職
年金法なるものによって取りまとむべきであるとして、人事院は、去る
昭和二十八年十一月十七日、
政府並びに
国会に対して勧告を
提出したのでございます。これは
国家公務員法第百八条に基くもので、注目すべき
提案でありましてその案の内容を見ますると、旧官吏と雇用人による身分差を撤廃し、
国家公務員全体にひとしく適用されること、健全な保険数理によって運用されること、
公務員の醵出
制度を明確にしていること、年
金額は最終給料額に比例し勤続加算を設けること等、これらの案によりまするならば、少くとも
公務員に対する退職金並びにその
年金は、国の総合的観点のもとに
社会保障制度的な
性格を取り入れたものに
発展をしているのであります。
政府は、現に
公務員制度調査会なるものに諮問いたしまして、その答申を求めておるようでありまするが、勧告後一年有半にわたって遅々としてその答申が
政府の手元に届いていないという現状はどこにあるのか、大久保国務
大臣から、この点について詳細なる現況を御報告願いたいのであります。
なお、この
機会に
鳩山総理大臣にお尋ね申し上げたいことは、
国家公務員並びに地方
公務員全体を通じて
給与体系の統一、一元化をはかり、いろいろな職種によるところのばらばらの
給与体系を取りやめて、総合的な理論と現実に基く
給与体系を打ち立てる用意はないか。また、この
機会にあわせて御意見を承わりたいことは、
恩給法にも直接関連を持つ非常勤の委員会
制度の委員長等の
給与が不当に高いところに置かれておる現状といかに是正されようとするかという点につきましても、御所見を伺いたいのであります。
なお、
政府は、これらの
国家公務員並びに地方
公務員に対する
給与並びに
年金等の諸
制度を、将来
社会保障制度の一環として拡充強化させるために一歩前進させつつあると、
川崎厚生大臣を通じていろいろな会合で申しておられるのでありますが、
国民年金制度への
発展強化はいかなる段階においてこれを実施されようとするか、御所見を伺いたいのであります。(
拍手)
いま一つ、全般的問題として
総理並びに
川崎厚生大臣にお伺いしたい点があります。それは
軍人恩給に対する見解であります。川崎さんは、
大臣就任以来、経済的な諸団体及び
国会の委員会等において、しばしば、
軍人恩給や
公務扶助料は当然将来
社会保障制度としてこれを採択すべきものであると言明されております。
先ほどの
下川君の御
質問に対しまして、川崎さんは、現段階においてはさよう
考えておらぬと仰せられましたけれども、過去において、幾たびか、明らかに旧
軍人の
恩給並びに
公務扶助料は
社会保障制度的な
性格のもので、この方向へ当然振り向けなければならぬと言明されております。いやしくも一国の国務
大臣としてかく言明されておる以上は、この
軍人恩給及び
公務扶助料は当然
社会保障のワク内に入れるべきものと
政府の所見を解釈してよろしいかどうか。
いま一つの問題点は、この旧
軍人恩給に関する問題といたしまして、
社会保障的な
性格のものと解釈をするならば、旧
軍人恩給と相対応する自衛隊の今後の
恩給は、これを古い形の
軍人恩給として取り残すと
川崎厚生大臣が仰せられたことを覚えておりまするが、この間の意見調整を新しい角度より御
答弁願いたいのであります。私は、再
軍備計画をお進めになられる保守党の民守党といたされましては、
軍人恩給を何らかの形で残す、そのためには自衛隊の
職員には新しい角度からの武官
恩給を残すべきであるという御所見があることはやむを得ないと思うのでありまするが、現に日本の
公務員の
恩給並びに
年金制度はすべて
文官としての
立場であることを十分御検討の上、御
答弁を願いたいのであります。
次に、
提案者であられまする高橋さんにお伺いいたします。
あなたが御
説明になられました
改正案は、われわれ
社会党が今
考えておりまする
公務死の範囲拡大、受給資格の拡大、その他
遺族の範囲を広げる問題等につきましては一歩前進をしておることを認めます。しかしながら、その
恩給額においては、われわれが納得し得ない点がここに明らかに示されたのであります。その第一点は、ただいま
下川君よりも御指摘になられました
通り、大将の
恩給額は一挙に七十二万円をこえる仮定俸給が設けられておる。兵はわずかに八万円を二十円ほどく
ぐる低い線に置かれておる。この大いなる
階級差が明瞭に示されたことは、下に厚く上に薄い
考えでこの案を作
つたと仰せられたその御意見とは逆に、下に薄く上に厚い。その比率を見ますると、大将から大佐の場合においては五〇%ないし四〇%の
増額であり、兵並びに下士官においては三〇%前後の
増額という、下に薄く上に厚い現実が現われておるではありませんか。この
号俸調整並びにベース・アップにおいて、かくも大いなる矛盾を展開したことは、要するに、旧
軍人の
階級差というものは、かつて兵隊はわずかに一カ月四円五十銭という
給与の時代があったのでございます。その低い
給与の時代の
給与体系がそのまま現在武官の
給与体系として取り残されておるのであります。
階級差のはなはだしかりし昔の軍国時代がそのままの姿で今日この
恩給法の
改正案の数字となって現われたことに対して、いかなる
責任をお負いになりますか。(
拍手)
われわれは現にこの
恩給法の
改正案を数字的に現わしまするならば、一人当り、一
階級差を撤廃するとするならば、四万三千円という
扶助料になるのであります。四万三千円という
扶助料が出されることになれば、下級者に厚く
上級者に薄い観点よりこれを立論いたしまして、
佐官級及び
将官級は少くとも
号俸調整をやるべきではなかった、削除すべきであったと思うが、高橋
議員の御意見はいかがでありますか。
私たちは、
公務扶助料を受ける尊い
戦死者の御
遺族が、わずかに三万円前後の
国家の
支給額によってどうして生命の保持ができるかということを
考えるときに、最低少くとも四万円をくぐらざる線の
公務扶助料額の
支給を
考えられて、上に振り当てられる額について、よし該当者が少数であろうとも、
国民から、高額所得者である
階級の高い人に莫大な
恩給を付与するような印象を抹殺する
責任はないか、御
答弁を願いたいのであります。(
拍手)
私はいま一つ高橋
議員にお尋ねしたい点があります。それは
文官恩給との比較であります。旧
文官にして、かつて小学校長、中学校長等をなした者で、八十、九十の老齢にして今日四万円、五万円の
恩給を取つているにすぎない
人々があります。老後、余命幾ばくもないこの
人々は、武官に比較してもはるかに低い線で
恩給をもらつておるのであります。この
文官の低い線の不
均衡、すなわち、
昭和二十三年六月以前の退職
公務員のあまりに悲惨なる姿を、文武官の調整の
立場から、いかがお
考えになっておられるか。
文官に接近するために武官
恩給を
考えるという御
提案であったようでありますが、すでに
文官の方が武官より下回っているという現状を御確認になるのでございますかどうか、お伺いいたしたいのであります。
さて、次に
政府に対して重ねて本
提案に対する御
質問をいたしたいと思います。
川崎厚生大臣は、
援護法及び
恩給法の関連から、
援護法の中にどうしても取り入れなければならない
戦争犠牲者を、少くともこの
機会に法的
措置によって守らせると、しばしば仰せられてお
つたのでありますが、この
提案によって、十全満足されるような
援護法の
改正が
考えられておるかどうか、ことに、学徒動員もしくは
国家総動員法に基くいろいろな動員者、従軍看護婦、
警察官等で
国家の意思のもとに動かされた
人々が、この
恩給法の恩典に浴することなく、
援護法においてすら恩典に浴していないこの現状をいかに救済ようとしておられるか、御所見を伺いたいのであります。同時に、
援護法と
恩給法との
関係において、
援護法に吸収された該当者はそつくり
恩給法の適用者としてこれを転換させるという、これが本筋ではないかというわれわれは意見を持っておるものでありますが、
川崎厚生大臣は依然として
恩給法、
援護法の二本建がよろしいとお
考えになられるかいなかを御
答弁願いたいのであります。
さらに、大久保国務
大臣に伺いたいのでありますが、大久保国務
大臣は、
給与担当の国務
大臣として、
国家公務員共済組合法、あるいは厚生
年金保険法、
援護法、
恩給法等のいろいろな
法律によって、その
扶助料を
支給される対象の
遺族が、十八才未満の未成年者、六十才以上の父母とか、あるいは
恩給法に規定するごとき二十才未満の未成年者、六十才に足らなくても父母があればよろしいとか、その範囲がばらばらになっておりますが、この
遺族の範囲の統一解釈をやりまして、最も有利な条件のもとにこれを取りまとめるという
考え方が、
給与体系を打ち立てるのには正しいとお
考えにならないか、御
答弁を願いたいのであります。
私は、さらにこの
機会に
政府に対して見解をただしたい一、二の点をお尋ねいたしまして、
質問を終ります。
昭和二十八年
改正の
恩給法附則には未
帰還公務員の規定がありまして、未帰還
期間を通じて十七年に達した者は
普通恩給が
支給せられることになっておりますが、しかし、これらの
人々は、若年停止規定によって、事実上恩典を受けておらないのであります。また、未
帰還公務員が
死亡した場合の
遺族扶助料支給は
死亡判明の日の属する翌月となっているのでありますが、
政府の調査の慎重のため、あるいは現地調査困難なために、実際
死亡の日より数年もおくれてこれが確認せられ、あるいは今後さらに長期にわたって
死亡確認がおくれることが予想されるのであります。この間
死亡者として当然受くべき特典を剥奪する結果となるのでありまするから、これらの
人々に対する有利な
改正は、
予算上の考慮もごく簡単であると
考えまするので、即時
措置すべきであると思いまするが、いかがでありまするか。目下、日ソ交渉に、引揚げ問題をまず第一にお掲げになって努力しておられることをよく承知しておりまするが、その
政府といたしましては、長い間不安定な生活に終始しておるこれら未
帰還公務員及びその家族の
方々の上にあたたかい心づかいをお寄せになって、常に細心の注意を払
つた法的
措置を講せらるべきであると思いまするが、御所見を伺いたいのであります。
[「時間だ」と呼び、その他発言する者多し〕