○原茂君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいまの
昭和三十年度
予算修正三実に対する
重政委員長のごく簡潔たる
報告に対し、重要なる数点に関しまして、
委員長並びに総理大臣、大蔵大臣等にその見解並びに所信を伺いたいと存じます。(
拍手)
まず、質問の前提といたしまして本
修正予算が運用せられようとするわが国
経済の
現状に対する
政府の見解と今後の見通しについて思いを新たにする必要があろうと存じます。まず、今年度
予算案、この性格を規定する前提といたしましては、総合
経済六カ年
計画があるのでございまして、その第一年度の
地固め予算と解せられるものと存じます。しかし、
鳩山内閣の成立は昨年十二月初旬であり、この六カ年
計画が閣議決定になりましたのは一月中旬で、その問わずかに四十日でありました。驚くべき超スピードで選挙に間に合したものと考えられます。この六カ年
計画は、昨年末
経済審議庁において完成いたしました「総合開発の構想」という、
昭和四十年の
日本経済を想定しての長期
計画を原案として、無理なる作業で短縮したものであろうということが言えると存じます。従って、この急ごしらえの六カ年
計画は、
計画実行に当っての自立政策の重点、
計画運営の機構、所要資金の調達とその配分、
経済統制に必要なその度合い等、先に解決さるべき大きな問題が幾多取り残されたままの、魂なき形骸だけのプランであると言っても過言でないと存じます。(
拍手)特に、わが国
経済自立への不可欠の問題の第一は、わが国のごとき、
資本に恵まれず、絶えずインフレの脅威がある
現状からいたしまして、通貨価値の安定を確立することでなければならないこと、第二は、今日のごとき特需収入が漸減しても収支のバランスがとれるように国際収支の均衡をはかり、これを通じて政治的独立を確保しなければならないこと、第三に、産業の近代化、資源開発、完全雇用等に政策の重点が置かるべきであること、
政府も、かかる観点から、
昭和三十年一月十八日、大蔵省において
予算編成大綱案を決定したものと思うのであります。従って、私は、原案と
修正案との比較を通じて、かつ本日の
予算委員会の
審議と重複することを避けて、逐次
質疑に入りたいと存ずる次第であります。
まず質問の第一は、財政収支の均衡について、形式的に一兆円で収支をまかなわなければならない根拠は一体どこにあったのか。ただいまも、
委員長の
報告に、一兆円のワクをくずさず
修正したことが端的に説明されましたが、
委員会の
審議を通じて、この一兆円のワクに対して財政論上の必然性が見受けられたかどうか、または、この一兆円のワクは単なる
国民に与える精神的な影響を考慮しただけのものか、それとも、大蔵省が各省の膨大なる
予算要求を圧縮するための道具として使ったものとお考えになるか、
委員長の見解並びに大蔵大臣の所見を伺いたいのであります。(
拍手)
質問の第二といたしましては、
財政投融資について、
政府は、前年度程度を確保し、重点的、効率的使用をはかる
方針をきめながら、果して重点確保ができているかどうか。特に、六十億に及ぶ民主、自由両党の
修正案の
内容を見ても、その
理由として基幹産業の合理化に重点を置くといたしておりますが、実質は、開発銀行、輸出入銀行関係を
増額しないばかりでなく、興業銀行、長期信用銀行などの金融債を市中銀行へ強制的に引き受けさせることによって、政治的色彩の濃い農林漁業、
国民、中小企業の三金融公庫、特定道路、電源開発、国有鉄道、
地方債に総花式にばらまかれていることこそ、重点的、効率的
方針にそむく、矛盾はなはだしきものがあると存じますが、これに対する大蔵大臣の御所見を伺いたいと存じます。(
拍手)
質問の第三といたしまして、財源の調達でありますが、基本的に租税等通常の収入によりまかなうことといたしまして、新たな
公債発行は行われないと決定していながら、何ゆえにこの原則をくずしたのか。本
修正案は、
公債は発行していないが、しかし、金融債だからいいとは言えません。
公債という言葉が与える心理的影響をおそれた結果であり、
経済的結果は変るものではないのであります。従って、基本的には
公債発行への道を開き、オーバー・ローン解消中途の金融の方向に支障を及ぼし、この二百数十億円のインフレ要因が七百億の財政払い超のコントロールを弱くしたことは争えないものであろうと存じます。もしも秋に例年のごとき補正
予算を組むとするならば、財政はますます膨張し、明らかにインフレへの大きな懸念を抱かざるを得ないであろう。
しかも、
歳出増加のうち、ごく小さな一働をあげてみましても、内閣官房調査費二百万円の使途に対する本日の
予算委員会における同僚石村委員の質問に対しまして、憲法調査会に要する費用なる旨の答弁がなされましたが、総理は、過日の
会議における答弁において、民主党内に憲法調査会を設置すると、はっきり本院における言明をいたしながら、民主、自画両党の
予算折衝過程において、これが内閣に設置されることに急変したのであります。本国会における、われわれ全
国民の代表を前にしての公約を、一部政党との野合により、かかる重大なる憲法問題
審議の形式を本
会議に説明もなしに変更するがごときは、国会の威信を損ずるもはなはだしいと存ずる次第であります。(
拍手)この重要なる課題に対する
委員長としての適切なる措置の講ぜられなかったことに対し責任を問うと同時に、総理の心境の変化を来たした
理由の詳細なる言明と、改正の焦点である憲法第九条に対し、常に総理が、今は考えていない、今は考えていないと言う徴兵制の施行を、いかなる条件で、いかなるときに考えようとするのか、明確に答弁せられたいと存じます。(
拍手)
次いで、
一般会計からの投融資を運用部資金等に振りかえる結果は、間違いもなく一般中小企業、農林漁業者などへの金利高となるか、または、今蔵相の決意しておられる金利
引き下げの恩恵に浴することができず、この四苦八苦する中小企業者等の没落破産に拍車をかける一助になることは言を待たぬところと存じますが、ここで、これに関連いたしまして、税制改正に対する
委員会の
審議経過等をお尋ねいたしたいと存じます。
その第一は、今回の
修正を通じて、果して最も重い課税の対象である勤労所得者に対してどの程度の
減税がなされるのか、また、これと事業所得者との
減税比率はどのようになるのか、第二に、農民一人当りどの程度が総合的に
減税になるのか、第三に、
国民一人当りにしてどれだけ
減税されるのか、第四に、臨時にする預貯金利子、配当等の源泉課税の減免は一企業体当りどれだけ
減税となるのか、しかも、これは、大企業、中小企業、零細企業の三つにわけてどういう数字になるものか、第五に、片方で
大衆課税たる間接税の
増収が具体的にどれだけ不足財源をまかなうために見込まれているのか等々、当然
審議されたものと思うが、かかる
国民的課題がどの程度に明確化されたか、詳細に
審議の経過を
委員長より御答弁願いますとともに、大蔵大臣よりもあわせて明快なる答弁を求めたいと存じます。(
拍手)
ただいまの
委員長報告におきましては、これらの点がまことに不明確であり、再
報告をお願いせざるを得ませんが、総じて、今回の無節操なる民主、自由両党の
修正態度は、ひいては日ソ
外交交渉におきましても、かつて
鳩山総理がいみじくも言われましたソ連等からの赤いバチルスと同じように、
アメリカからの白いバチルスに侵されている人士の多い
自由党から、再度これに対する圧力なり反保守連合の強い気合いがかけられるなら、この
修正案と同じく、日ソ
外交の基本的
態度はぐらつき、中途から思わざる方向に向きを変えて、単なる選挙における公約を一応はやりましたと言訳をする程度の材料に終らしめる危険のあることを、今から
国民ひとしく心配いたしておりますが、今後何もかも保守連携のために
自由党と野合して、
内政に、
外交に、倒れず走らずの、よたり、よたり内閣の本領を発揮するのではないか。明確な今後の民主党内閣のあり方を、この日ソ
外交に例をとって総理から御答弁願いたいと存じますが、
委員長からは、この
審議を通じて、やはりそのおそれがありそうかどうかの観察をお伺いしたいと存じます。
また、一萬田大蔵大臣は、当初、辞表をちらつかせながら、絶対に
自由党の
修正に応ぜずとの強硬なる
態度をおとりになっておられたと聞きますが、何の
理由でこれに応じたのか。去る四日の朝日新聞紙上に、この保守結集の動きがなければ、自分としては今度の
予算修正には応じられなかった、かように言明しており、さらに、本日の
予算委員会におきましては、全般的情勢から
修正に賛成しましたと言明をされましたが、果してこれは何を意味すると
委員長は解釈せられましたか、この点まことに不明瞭であったと存じますが、
委員長の御解釈を承わりたいと存じます。それと同時に、大蔵大臣より、この全般的情勢とは何かを率直にお聞かせいただきたいと存じます。私どもの解釈するところでは、保守合同、保守提携こそがこの全般的情勢なのかと考えておりますが、いかがか、明瞭にお答え願いたいと存じます。
総じて、
牧野前
委員長は、民主、自由の正式結婚への助力者ではなくて、一昨日までの一週間、
政府与党、
自由党の国会軽視・議会無視の
態度に対して、じんぜん、その野合に、裏面交渉に時日をかしまして、しかも、
修正妥結がなるや、
委員会審議を短時間に強行終了せしめる
態度をもって臨み、まさに
国民の信頼を裏切り、本日はまた、まことに、それこそ戦前戦後を通じて初めての失言を演じ、ついに
委員長を辞任いたされましたが、今日までのその業績に薄しましては心から敬意を表しつつも、またやむを得ざる結果の招来かとも存じます。かかる
委員長のもとに通過いたしました本
修正案が直接間接に与えるであろう
国民に対する不
利益に対しましては、
委員長としていかなる責任をとろうとなさるのか、
委員長の所信を伺いたいと存じます。
かつて改進党は
自由党に対する招かれざる与党であったが、今や民主、自由両党とも、招き招かれつつありながら、明るみでは堂々と抱き合うことのできない封建的無理解な親を持つ、暗い、みじめな子供たちとして動き回るものとも批判をされ、その影響は、政界をしてますます不明朗にし、困難なる国際
経済下に、再生産を伴わぬ軍備費を骨格とする不健全財政による
国民生活窮迫化をもたらし、今や一途に少数
資本家への奉仕のための再軍備強化という、国際的にも大きな逆コースをたどりつつあることを考えますとき、たとえて申しますなら、赤のバチルスや白のバチルスどころか、わが国全勤労
大衆のバチルスに転落しつつあるものと言えますが、これに対し公正なる立場からの
委員長の総括的な見解を承わり、あわせて、弁明がなさりたかったら、総理以下いずれの閣僚からでも御所見を承わることにいたしまして、私の質問を終りたいと存じます。(
拍手)
〔
重政誠之君
登壇〕