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1955-06-04 第22回国会 衆議院 本会議 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月四日(土曜日)    —————————————  議事日程 第二十二号   昭和三十年六月四日    午後一時開議  一 自作農維持創設資金融通法案内閣提出)の趣旨説明  二 恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明  三 健康保険法の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明  四 石炭鉱業合理化臨時措置法案内閣提出)の趣旨説明    —————————————  第一 昭和二十八年度国有財産増減及び現在額総計算書  第二 昭和二十八年度国有財産無償貸付状況計算書  第三 毒物及び劇物取締法の一部を改正する法律案内閣提出)  第四 結核予防法の一部を改正する法律案内閣提出)  第五 国立学校設置法の一部を改正する法律案内閣提出)    ————————————— ●本日の会議に付した案件  日本放送協会経営委員会委員の任命について同意を求めるの件  日程第一 昭和二十八年度国有財産増減及び現在額総計算書  日程第二 昭和二十八年度国有財産無償貸付状況計算書  日程第三 毒物及び劇物取締法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第四 結核予防法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第五 国立学校設置法の一部を改正する法律案内閣提出)  自作農維持創設資金融通法案内閣提出)の趣旨説明及びこれに対する質疑  石炭鉱業合理化臨時措置法案内閣提出)の趣旨説明及びこれに対する質疑    午後二時七分開議
  2. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより会議を開きます。    ————◇—————
  3. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) この際、新たに議席に着かれました議員を紹介いたします。  第二百三十四番、岩手県第一区選出、山本猛夫君。   〔山本猛夫君起立〕   〔拍手〕    ————◇—————
  4. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) お諮りいたします。内閣から、日本放送協会経営委員会委員に遠藤後一君、佐々木長治君及び三輪常次郎君を任命するため、放送法第十六条第一項の規定により本院の同意を得たいとの申し出がありました。右申し出通り同意を与えるに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって同意を与えるに決しました。    ————◇—————  第一 昭和二十八年度国有財産増減及び現在額総計算書  第二 昭和二十八年度国有財産無償貸付状況計算書
  6. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第一、昭和二十八年度国有財産増減及び現在額総計算書日程第二、昭和二十八年度国有財産無償貸付状況計算書、右両件を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。決算委員会理事山田長司君。    —————————————   〔報告書会議録追録に掲載〕    —————————————   〔山田長司登壇
  7. 山田長司

    山田長司君 ただいま上程されました昭和二十八年度国有財産増減及び現在額総計算書、同年度国有財産無償貸付状況計算書につきまして、決算委員会における審査経過並びに結果を簡単に御報告申し上げます。  まず、昭和二十八年度国有財産増減及び現在額総計算書について御説明申し上げます。昭和二十八年度中に増加しました国有財産は、行政財産三百六十六億千百余万円、普通財産四千五百七十六億六千二百余万円、計四千九百四十二億七千三百余万円でありまして、本年度中に減少しました国有財産は、行政財産百三十八億七千余万円、普通財産千三百七十四億九千余万円、計千五百十三億六千余万円であります。前述の増加額から減少額を差し引きました総額三千四百二十九億千三百余万円が本年度における本計算書上の国有財産の純増加額でありまして、これを前年度末現在額四千百六十四億五千四百余万円に加算いたしました七千五百九十三億六千八百余万円が本計算書における昭和二十八年度末現在の国有財産総額であります。なお、国有財産法第四十一条の規定によって、朝鮮、台湾、樺太、南洋、関東州及び外国所在財産のうち三十七億千余万円については、本計算書に掲記することが省略されてあります。また、昭和二十八年法律第百九十四号国有財産法等の一部を改正する法律によって公共福祉用財産という種類が廃止され、新たに公共用財産という種類が設けられたので、本計算書における前者の減は一億四千七百余万円、後者の昭和二十八年度末現在額は一億二千六百余万円となっております。  次に、昭和二十八年度国有財産無償貸付状況計算書について、その大要を御説明申し上げます。国有財産法第二十二条及び同条を準用する第十九条及び第二十六条の規定により地方公共団体等無償で貸し付けてある国有財産の本年中における総額は一億一千九百余万円でありまして、減少した総額は一億五百余万円でありますので、差し引き千四百余万円の純増加となっております。これを前年度末現在額一億七千五百余万円に加算いたしました一億八千九百余万円が昭和二十八年度末現在における無償貸付してある国有財産総額であります。  以上が右二件の大要でありまして、本委員会は五月三十一日政府当局及び会計検査院の説明を聴取し、その後慎重審議いたしました。その詳細につきましては速記録について御承知願いたいと存じます。  以下、委員会における質疑または要望されたおもなる事項を二、三申し上げます。  第一、各省、各庁においてなお活用のできる国有財産民間等に売却し、他方、政府所要を満たすために財産を購入する等のことがあり、国有財産処分取得等の間における連絡を欠き、ためにきわめて不経済な結果を来たしておる事例が見受けられるのであります。その一例として、大蔵省において富士製鉄株式会社平郡漁業協同組合等に一括売却した沈没駆逐艦「梨」については、その後防衛庁において自衛力増強のためにこれを取得しようとしているのであります。大蔵当局は、この売買契約を解除すると説明し、あわせて遺憾の意を表し、今後この種の事項の絶滅を期するということでした。この沈艦「梨」の払い下げの当否については、本委員会において今後なお審議を進めることになっておりますことを申し添えておきます。  第二、前に申し述べましたごとく、昭和二十八年度末における国有財産の現在額は七千五百九十三億六千八百余万円でありますが、その大部分は、再評価されていないために、時価とほ大きな開きがあります。その事実は木計算書価値を少からず減殺しているのでありますから、すみやかに資産の評価がえをして適正なものにすべきではないかとの質疑がありました。これに対して、政府は’その作業のために昭和三十年度所要予算を積算しているとの答弁がありました。  第三、大蔵省管財局管理している国有財産中、旧軍用財産は最も重視すべきものでありますので、特におもなる不動産とかあるいは施設などの転用、売却、貸付等管理処分に関する問題については、十分検討して最善を尽さねばならないのでありまして、かの数億円を投下された四日市燃料廠跡利用問題のごとき、これ一つを取り上げてもまことに重要な事項でありますが、当局者のこれに対する態度はいまだにはっきりせず、今なお利用の方針が確立されていないという実情であります。今後この重要な国有財産管理処分する上に、現在の大蔵省の一部局である管財局関係機構では十全を期しがたいのではないかという懸念さえあるので、政府はその必要に応じ機構を充実強化するなどの方途を講じ、国有財産管理処分の適切を期すべきであるとの御要望日本社会党吉田委員より提出され、それに対し自由党山中委員の全面的な御賛成があり、全委員またこれに御賛成なさいましたので、本委員会政府に対する深い要望としてここに御報告申し上げる次第でございます。  次いで、本委員会は、討論を省略し採決の結果、右計算書二件をいずれも是認すべきものと議決した次第であります。  以上、御報告いたします。(拍手
  8. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 両件を一括して採決いたします。両件は委員長報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって両件とも委員長報告通り決しました。      ————◇—————  第三毒物及び劇物取締法の一部を改正する法律案内閣提出)  第四 結核予防法の一部を改正する法律案内閣提出
  10. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第三、毒物及び劇物取締法の一部を改正する法律案日程第四、結核予防法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。社会労働委員会理事大石武一君。     〔大石武一登壇
  11. 大石武一

    大石武一君 ただいま議題となりました毒物及び劇物取締法の一部を改正する法律案及び結核予防法の一部を改正する法律案について、社会労働委員会における審査経過並びに結果の大要を簡単に御報告申し上げます。  まず、毒物劇物取締法の一部を改正する法律案について、そのおもなる点を申し上げますと、第一に、現在、毒物のうち毒性の特に強烈な数種の毒物については、政令でその使用面一般毒物よりも強く規制を加えておりますが、現行法では比較的簡単な手続によって何人も容易に入手することができますため、保健衛生上不測の危害発生が避けがたい状態であり、しかもこの種毒物増加の傾向にありますので、特殊の毒物につきましては、毒物劇物営業者等の一定の資格ある者以外に対して、その製造、輸入、使用、譲り渡し、譲り受け、所持等を禁止し、その取扱い等について規制しようとするものであります。  第二は、毒物劇物廃棄方法につきまして現行法では何らの規制も行われておりませんので、保健衛生の立場より、技術上の基準に従って廃棄方法を行うよう新たな規制を加えようとするものであります。  本改正案は、五月十三日本委員会に付託せられ、同十七日政府委員より提案理由説明を聞き、数回にわたり慎重審査を行い、同三十一日質疑を終了して、六月三日、討論を省略し、全会一致原案通り可決すべきものと議決した次第であります。  次に、結核予防法の一部を改正する法律案につきまして申し上げますと、現行法においても結核予防と適正な医療の普及を目的としてはおりますが、さらにこれらの措置を強化改善するため所要改正を行おうとするのが、本案提出理由であります。  本法律案のおもなる内容は、第一に、市町村長の行う定期健康診断対象者範囲を拡大し、区域の指定並びに年齢の制限を撤廃し、小学校就学の始期に達しない者を除くすべての一般住民に拡張しようとするものであります。  第二は、定期健康診断は従来一律に年一回でありましたが、結核実態調査の結果、一回の健康診断では不十分でありますので、今回対象者の区分に応じ適当な回数を政令で定めようとするものであります。  第三は、病院の管理者に対し、結核患者が入院したときは、所定の事項保健所長へ届け出る義務を課し、所長が行う家庭訪問指導その他患家対策を一そう強力かつ円滑ならしめようとするものであります。  本法律案は、五月十六日本委員会に付託せられ、同二十四日政府委員より提案理由説明を聞き、結核予防対策及び公費負担等について熱心なる質疑が行われましたが、六月二日質疑を終了し、同三日討論を省略して採決に入り、全会一致原案通り可決すべきものと議決した次第であります。  以上、御報告を申し上げます。(拍手
  12. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 両案を一括して採決いたします。両案は委員長報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって両案は委員長報告通り可決いたしました。      ————◇—————  第五 国立学校設置法の一部を改正する法律案内閣提出
  14. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第五・国立学校設置法の一部を改正する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。文教委員長佐藤觀次郎君。     〔佐藤觀次郎登壇
  15. 佐藤觀次郎

    佐藤觀次郎君 ただいま上程になりました国立学校設置法の一部を改正する法律案につきまして、文教委員会における審議の過程及びその結果を御報告申し上げます。  まず本案内容を簡単に御説明申し上げますと、国立大学学部及び大学院並びに国立短期大学開設等について規定しております。すなわち、弘前大学及び佐賀大学に農学部を、大阪大学に薬学部を開設することとし、次いで香川及び鹿児島の県立大学国立大学に吸収移管するとともに、東京工業大学の工学部を理工学部に改称せんとするものであります。第二に、群馬大学等九つ大学に新たに医学、歯学に関する大学院を開設し、第三には、茨城大学及び静岡大学夜間短期大学を併設しようとしております。そのほか、大学付置研究施設として、東京大学原子核研究所を新設し、東京天文台目的の表示を整備する等のことを企てております。  本案は、去る四月二十八日委員会に付託となり、以来、慎重に審議を重ねて参りました。  本委員会審議に当りましては、一、国立大学整備充実、二、短期大学の現況と今後のあり方、三、国立大学夜間学部、四、原子核研究等について、辻原弘市君、竹尾弌君並木芳雄君、野原覺君、平田ヒデ君、米田吉盛君等から非常に熱心な質疑が行われました。その詳細については速記録によって御承知を願いたいと存じますが、そのおもなるものは次の通りであります。  すなわち、原子力の平和利用の発展に協力する問題、濃縮ウラン受け入れ等関連してその研究の所管について、さらにまた、国立大学の文理学部について今後のあり方国立大学を新設した当時に約束した寄付金に関する地元負担履行状態等について、詳細にわたって検討が加えられたのであります。また、大都市における夜間学部の新設、学芸大学学芸学部教育学部等国立教員養成機関の拡充、運営等に関しては、政府において各地の実情に即するよう格別に措置すべきであることを強く要望された次第でございます。  次いで、六月三日質疑を終了、討論を省略して採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定した次第であります。  右、御報告を申し上げます。(拍手
  16. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 採決いたします。本案委員長報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって本案委員長報告通り可決いたしました。      ————◇—————  一 自作農維持創設資金融通法案   (内閣提出)の趣旨説明
  18. 益谷秀次

  19. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 自作農維持創設資金融通法案提案理由を御説明申し上げます。  御承知通り農地改革の結果といたしまして、二百万町歩をこえる小作地自作地となり、四百二十万戸をこえる農家がその売り渡しを受け、自作農として農業に精進することになったのであります。この農地改革の成果の維持につきましては、現在農地法がその法制的部面を担当しているわけでありますが、自作地維持するため必要な資金融通措置についての制度はいまだ十分確立されるには至っておりません。これがため、すでに政府昭和二十六年度から自作農創設特別措置特別会計余裕金の運用によりまして、農地または採草放牧地の買い取り、売り渡し形式により、とりあえず農民の窮境を救う一助として参りましたが、とうてい農家資金需要を満たすに至っておらないのであります。  近年、農村における資金難から、自然災害はもちろん、疾病その他の個人的災害相続等による臨時支出をまかなうために農地または採草放牧地を売却するのやむなきに至る自作農が逐年増加しており、特に経済的に弱い農家転落の危機にさらされているのであります。従いまして、この際新たに農業経営の安定、農家転落防止のための措置制度的に確立することは刻下の急務と考えられるのであります。よって、政府は、農地及び採草放牧地農業経営の基盤であり、かつ農業者がこれらを所有することがその農業経営の安定をはかるための要件であることにかんがみまして、農林漁業金融公庫がその取得維持または細分化防止のために必要な資金長期かつ低利で貸し付けることにより農家経営の安定をはかることとし、このための立法措置を講ずることといたしたわけであります。  この法律案のおもな内容について御説明申し上げますと、第一に、貸付金といたしまして、農業経営を安定させるため、農地または採草放牧地取得するのに必要な資金、小作農が小作地または小作採草放牧地取得するのに必要な資金農地または採草放牧地相続による細分化防止するのに必要な資金疾病、負傷、災害等のため自作地または自作採草放牧地維持することが困難な場合にこれらの土地を維持するのに必要な資金の四種類について貸付を行うことといたしました。  第二に、貸付条件につきましては、この資金性格上、さきに申し上げましたように長期低利とし、年利五分五厘、償還期間は十五年以内といたしました。  第三に、貸付を受けようとする者の適否の認定都道府県知事が行い、その認定を受ける場合には、農業経営安定計画を作成せしめることといたしました。都道府県指導及び援助のもとにこの計画を確実に実施することによってその経営を安定せしめ、おのずから償還財源を確保し得るようにし、もって本制度目的の達成をはかることといたしたいのであります。  なお、この法律案の施行に伴い、この法律案規定する業務公庫業務に加えることにいたし、これに伴い、農林漁業金融公庫法につきまして必要な改正を附則で行うことといたしました。  以上がこの法律案のおもな内容でございますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願い申し上げる次第でございます。(拍手)      ————◇—————  自作農維持創設資金融通法案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  20. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより、ただいまの趣旨説明に対する質疑に入ります。平野三郎君。     〔平野三郎登壇
  21. 平野三郎

    平野三郎君 私は、自由党を代表いたしまして、ただいま政府から提案せられました自作農維持創設資金融通法案に関しまして若干の質問をなさんとするものでございます。  河野農林大臣は、去る選挙中において、農地担保金融を大々的に推進をする、それがためには農地銀行を作るのだというふうな大みえを切られ、多年農村の懸案でありました農地担保金融に関し農民に多大の期待を与えられたのであります。われわれといたしましても、河野大臣があれだけの大言壮語をされる以上は相当のことをなされるであろうと、いささか待望をいたしておったのであります。現に、予算編成当初におきましては、農地銀行法案とか農地担保融資法案を作るというようなうわさをちらちら耳にいたしたのであります。しかるに、本日御説明を承わりますれば、農地銀行創設はおろか、農地担保金融の影は全く姿を消して、自作農維持創設資金融通法案と称し、インチキきわまるごまかし法案と変形して、河野農林大臣の得意中の得意である常套手段とはいいながら、例によってまた全国農民に幻滅の悲哀を与え、鳩山内閣農民に対する冷酷性欺瞞性本質的に遺憾なく暴露するに至っておるのであります。(拍手)  本法案によりますれば、農地銀行創設などということは影も形も消えてなくなり、わずかに、農林漁業金融公庫を通じて、それも二十億円というはした金を貸し出そうというのであります。全国農地を四百万町歩と見まして、これを時価かりに一反歩十万円と見ても、実に四兆円の担保価格を持っているのであります。現に、昭和二十六年の農林省の調査によりましても、五百億円の希望があることになっております。これに対しわずかに二十億円というようなことでお茶をにごそうと政府はいたしておりますが、民主党の数限りなき公約違反実態は、この面においてもまたボロを出しておるのであります。(拍手)私は、大蔵農林大臣に対し、選挙中にあれだけの大口をあなた方はたたかれたことを思い起し、本日かくのごとき情ない法案を出されるということでは、おそらく普通の人間ならば心中さぞかしじくじたるものがあるべきはずでありますが、あなた方はどのような御心境にありますか、まずそれをお伺いいたしたいのであります。  次に、本法案内容農地担保金融と銘を打つにははなはだしきごまかしがあり、参私にはとうてい理解することができませんので、いささか本案基本的性格についてお尋ねを申し上げてみたいのであります。  まず、本案農地に対し抵当権を設定することになっておりまするが、およそ、抵当権は、所有権のように物の実体を直接につかまえるものではなく、担保物が持っている交換価値だけを目的とし、その交換価値を金銭にかえるために物を支配するところの権利であります。言いかえますならば、抵当権本質物的信用であり、抵当権担保物価値によって資金の調達を媒介する権利と申すことができるのであります。すなわち、抵当権の性質がかようなものであるといたしまするならば、農林漁業金融公庫農地担保に徴し資金融通するとき、農地の持っている価値を問題としなければならないはずでございます。この場合において、政府農地の持つ担保価格融資額とはいかなる関連を持つとお考えになっておりまするか。現行特別会計方式におきましては、農地所有権価格をもってその評価額とし、これを平均五千円といたしておるのでありまするが、もし直接の関連がないといたしまするならば抵当権本質に反すると思いますが、この点はいかがでございますか。  次に、農地法本案とは根本的に矛盾するものと思います。現行農地法のもとでは、農地担保金融形式をとるといたしましても、耕作者から耕作権を取り上げて一般市場で売ることはできない建前になっております。また、所有権だけを耕作権から分離しても、これまた一般市場で売ることはできませんから、農地物的信用力というものはきわめて薄弱なものであります。従って、農地物的信用力を与えるために農地法改正し、現在の一町歩の在村地主範囲を越えて所有権耕作権から分離するようにすれば、ここに新地主発生を認めることになり、また農民から耕作権を取り上げることにすれば、農地改革の精神を根本から破壊することになると思います。従って、現段階において農地法根本原則を堅持する以上は、農地担保金融制度制定の意義ははなはだ少いと思われますが、政府はこの点をどのように解釈いたしておりまするか。言いかえますならば、農地担保金融制度を完全なものにするためには、この際農地法大幅改正を必要とすることになると思われますので、この点を特にお尋ねを申し上げるのであります。  次に、本制度政府資金二十億円を供給して実施しようといたしておりまするが、かように政府機関農地金融を行うのでありますから、農地担保に取る必要が果してありましょうか。私は、むしろ、いかなる農家に貸し付けるか、言いかえますならば、適各農家の選定ということが問題の中心であると思うのでございます。現に、本案の題名も、当初の農地担保融資法案から後退して、自作農維持創設資金融通法案などというへんてこなものになっておりまするし、ただいまの河野農林大臣の御説明でも、さような趣旨でございました。かように見まするならば、政府の真の腹の中は、おそらく、農地担保に重点を置かず、むしろ自作農維持対策がほんとうのねらいのように思われるのであります。かように考えますると、以上の理由から、抵当権の設定ということは重要ポイントではないと思われまするが、この点、政府はどのようにお考えでございまするか。逆に申し上げますれば、農地抵当権を設定しなければこの種の資金融通は絶対にできないとお考えになっておられるか。  また、本法案によって一町歩農地に対して幾らぐらい御融通になるのでありまするか。伺いますれば、約二十万ないし三十万、こういうことでございます。これを十五年年賦で償還することになっておる由でありまするから、一年間に一万五千円ないし二万円になります。この金額は中農層における農家の経済余剰の約半分に相当する金額であります。この考え方によりますれば、農林漁業金融公庫農家資金融通するのは、農地価値そのものを問題にするのではなく、その農家の生産能力あるいは経済的余裕を生み出す能力を問題にしていることになります。そういたしまするならば、農地担保として金融するという本案の仕組みは単なる見せかけにすぎないものであると断定せざるを得ませんが、政府は一体何を考えて、かかる奇々怪々なる法案を御提出になったのでございまするか。  現に、本法案の第一条を見ましても、本法の目的、それには農地担保に関する字句は全然使用せられておりません。しこうして、農家経営安定のための資金融通であることは明らかにうたわれております。また、本資金融通に当りましても、都道府県知事から農家経営安定計画についての認定を受けるということが条件になっておりまするが、これでは、農地担保金融の本来の性格から申しまして、かくのごとき行政庁の認定は全く不要であると言わなければなりません。また、言いかえれば、本制度による融資は農地を抵当とするかいなかは全く第二義的なものであって、都道府県知事認定に重点が置かれねばなりませんし、現にそうなっておりまするが、この点に対する政府の明確なるお考え方をお伺いいたしたいのであります。  最後に、本法案を実行した場合において、はなはだしく奇妙なことが起るように思われるのであります。すなわち、抵当権の執行については、農地法にもまた本法案中にも何らの規定がありませんから、結局民事訴訟法中の強制執行または競売法による競売にまかせられていると解釈せられます。この競売による競落人は、農地法第三条の買受人の資格制限のあることはもちろんでありまするが、買受資格を有する農民の中では最高価格をつけた者に落札することになっております。この結果、抵当権の執行により農村の階層分化を促進することになると思いまするが、この点はいかがお考えでありまするか、お伺いをいたします。  もしまた競売価格の申し出がないときは、農地法第三十三条「競売及び公売の特例」によりまして、競売を申し立てた者、すなわち農林漁業金融公庫が、農林大臣に対し、国がその土地を買い取るべき旨を申し出ることになっておりますが、この場合においては、国は、農地法施行令第二条、すなわち五千円の額をこえて農地を買い取ることができません。そういたしまするならば、公庫貸付金額と国の買い取り金額の差額はどのようにして処理するお考えでありまするか。また、国がさらに農民にこの土地を売り渡す場合においては、その売り渡し価格は幾らになるのでございまするか。  要するに、農地担保金融の重要なることは申し上げるまでもありませんけれども、今日さらに重大なることは、従来すでに取り上げられておりまするところの諸種の農林漁業金融政策の充実にあるのであります。しかるに、政府は、本年度において本法案に提出したることに籍口して、本来農林金融として推進すべき諸政策を意識的に怠り、しかも、その犠牲の上に政府の取り上げたこの農地担保金融の実体は、以上申し述べました農地法の改善に何らの考慮を払うことなく、絶対に説明のつかない矛盾撞着を内蔵するものでありまして、全国農民を無視しかつ愚弄する河野農政の欺瞞性を端的に露呈するものであると思いますが、大蔵農林大臣の率直なる御答弁を要求いたすものでございます。     〔国務大臣河野一郎登壇
  22. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 平野さんからいろいろとお尋ねでございますが、その重要な点についてお答えをいたしまして、なお詳細にわたりましては委員会においてお答え申し上げたいと思うのであります。  第一には、農地銀行を作るというようなことを言っておったが、どうして変えたのかということでございます。御説の通り、私といたしましては、農地担保金融をいたしまするのに、農地銀行のような制度が妥当ではないかということを考えたのでございますけれども、御承知通り、あまりに機関をたくさん作りますることはどうかと考えまして、現在、政府として二十億程度の資金を扱いまするには、現在の制度の中においてこれを扱うことの方が資金的に経済である、またいたずらに制度を作るということも差し控えなければならないということにいたしまして、将来この資金が充実して参りましたらば、もちろん農地銀行等に転換していく必要が起ってくるかと思うのでございますが、それまでの暫定処置といたしまして、この制度によって参りたいということでございます。  第二には、農地担保にすることについていろいろお尋ねでございましたが、農地担保にして資金を調達するということよりもほかに方法のない人たちで、農村の方々でぜひ資金が必要であるという人のために、この制度をぜひ考えなければならないということで、この制度をとったのでございます。御承知通り、人的信用において貸し付けるということも必要でございます。これはすでに制度といたしまして連帯責任で借りられることもあるのでございます。せっかく自作農創設によって農地法によりまして取得いたしましたる農地担保化いたしまして、これによって資金を得て、これで積極的に農業経営の改善をはかることも必要であるというような御要望が各農村にありますることは、御承知通りであります。従いまして、ただ農地担保金融化するということだけをいたしましては、あとで、お説の通りに、これの返還について疑問が起り、返還について不能な点が起りまして、そうしていろいろ問題の起ることを差し控えなければなりませんから、この返還計画について十二分の注意を払うということに制度を加えたわけでございます。  また、この制度農地法と矛盾しやしないかというようなことについても、だんだん御意見がございましたが、本制度は、経済的に弱いところの農民転落防止するものでありまして、そこに重点を置いておるのでございまして、農地法の精神を維持することに努力をして参るということで御了解を願いたいのでございます。また、農地担保といたしてこれを処分する場合に、現在の農地法では五千円になっておるから、いろいろ矛盾が起ってくるではないかというようなことでございましたが、これらにつきましては、すでに政府におきましても適当な調査研究等を行なっておりまして、これに矛盾の起らないように善処することにいたしておるのでございます。(拍手)     〔国務大臣一萬田尚登君登壇
  23. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 農林大臣は今各般にわたりまして詳しく御答弁なさったのでありますが、私も若干補充をいたします。  御承知のように、この農業資金長期を必要とし、かつ金利の安いことを必要とすると思います。従いまして、当然これは財政資金から多くを出さなくてはならぬというような条件があるように思うのであります。ところが、今回は、緊縮財政の関係もありまして、そうも行きませんので、二十億程度になりました。それで、この程度の資金の運用は現存の農林漁業金融公庫で十分である。かように考えまして、運用をここにさせることにいたしたのでありまして、私は、将来必要に応じてあるいは独立の銀行にしてもいいだろう、かように考えておるわけであります。  なお、この資金融通によりまして、農地担保にして金を借りた結果、かえって農地を手放すような危険はないか、言いかえれば、担保権の実行にあうというようなことがありはしないか。こういうことは、私はこの制度について非常に考えなくてはならぬところだろうと思います。これに関しましては、やはり農業所得でもって借りた債務の元利を償還し得るということが私は絶対要件になると思います。従いまして、金を貸す場合の担保価格ももちろんその範囲内において掛目をかけて貸す、かようにいたしましたならば、そういう弊害も除去せられるのであろうと思うのであります。  補足申し上げまして答弁にかえます。
  24. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 淡谷悠藏君。     〔淡谷悠藏君登壇
  25. 淡谷悠藏

    ○淡谷悠藏君 私は、日本社会党を代表して、自作農維持創設資金融通法案に関し、内閣総理大臣農林大臣大蔵大臣並びに法務大臣に質問いたします。  ただいま農林大臣が言われました通り農地改革は二百万町歩をこえる小作地自作地とし、四百二十万戸をこえる農家がその売り渡しを受けておりまするが、せっかく創設いたしましたその自作農が金に困って転落し始めたという真の原因は一体どこにあると考えておられますか、まず農林大臣にお伺いいたしたい。  この転落の原因について、疾病、負傷、災害による以外の原因について何かお考えになってはおりませんか。農地改革以前にも、自作農創設し、これを維持しようとする規則はございました。それにもかかわらず、自作農創設維持される以上に転落する者が多く、その原因としては、自作農に対する高率の公租公課の圧迫と、創設した自作農維持する政策が的をはずれて経済条件が少しも備わらなかったこと、特に小作料の重圧に追われる小作農の飢餓生産とは、こうした自作農の生産が経済的に競争し得なかったためであるといわれております。農地改革によって小作地が急激に減り、小作農による農業生産がきわめて少くなった現在もなおこの法律案を提出せざるを得ないほどに、自作農が再び農地を手放さなければならなくなったというその原因を一体どこに大臣は求めておられるのか。すでに経験済みの自作農維持のための法律をまた作り出すというのには、新しい農業状態に伴いまして、せっかく作った自作農転落することのないような何か特別な法の性格があると思いまするが、その点について大臣のお考えをはっきりと伺いたいのであります。  農地改革後の自作農が高い生産資材、高率の公租公課にしぼられることは、あたかもかつての地主間度下の小作料の重圧にひとしく、しかも、低米価による強制供出と相待って、かつて地主が小作人に加えたと同様の圧迫を政府みずから自作農に加えているといわれております。もし、かりに、この法案が通過を見て、転落せんとする自作農に金が貸し付けられ、一時これを防ぎ得たとしましても、こうした根本的な原因が究明、是正されざる限り、再び三たび同じことが繰り返され、いかに資金融通いたしましても、さいの河原の石積みのように、積んではくずし、作ってはつぶし、まるでふちにぬかを投げ込むにひとしい施策に終ることをおそれますが、その点どうお考えになりますか。(拍手農地改革後、自然的災害はもちろんのこと、疾病その他個人的災害相続等による臨時支出をまかなうためというよりは、こうした政策の貧困から農地または採草放牧地を売却するのやむなきに至っている自作農が非常に多いと思いますが、その点いかがに考えておられますか。農地改革転落した自作農の実際の数とともに、あわせてお教えを願いたいのであります。  次に、大蔵大臣お尋ねいたします。  この法案の名称は、最初農地担保資金融通法案として出す予定であったと聞いておりまするが、農村が大そう金に困っておるのはむろん事実でございます。大蔵大臣が以前に総裁をしておられた日本銀行の窓口などには、こうした農民は立ち現われないでしょう。しかし、零細な生活資金や、目の前に迫った農薬、肥料の金にも困りまして、それを高利のやみ金融にたよっているのが実情でございます。こうした零細高利の生活資金、生産資金の借金の累積が、ついには、ただ一つの生活の頼みである土地をさえ手放さざるを得ない状態に突き落してしまっているのでございます。そうした農村負債の現状を、大臣は一体どう把握されておりますか。聞くところによりますると、農村の負債は百億円といわれております。具体的に数字をあげて大臣のお考えを承わりたいと存じます。  特に、農村金融の名に隠れて山林地主や富農ばかりが利用するようになっている農村金融は、一体このままでいいのか。一番苦しんでいる勤労農民を救うために、真の農村金融はどうあるべきか。大臣はこれまで一度でもお考えになったことがございますか。考えてみられたことがありますならば、その具体的な構想をお伺いいたしたい。  もし考えられた結果が農地担保資金融通法案、一名自作農維持創設資金融通法案であるというならば、あえてお伺いいたします。日本の農業は、ただ借金の肩がわりをするくらいの資金融通で救われる状態でありましょうか。資本が効率を上げるほど日本の農業の諸般の状態は整っておりましょうか。しかも、この法案は、農業経営に対する資金融通ではございません。土地の買い入れのため、土地を抵当に金を貸そうとするものであります。土地に対する投資は農業経営に直接役立つものでないことは当然でございまして、その結果は、本来耕作の対象であるべき土地をいたずらに商品化し、土地の価格をせり上げ、小作料引き上げの口実を作り、固定資産税を高くし、金を借りたはいいが返せなくなるほどの負担を増す。これが、果して、農民を救い、農民の期待にこたえる道でありましょうか。農地改革の精神であったでありましょうか。農村の負債百億に対しわずか二十億の資金を、しかも土地担保で貸し付けることは、とれなくなった貸し金を肩がわりをするやみ金融業者を喜ばせましても、農民自身のふところにはちっとも残らない、かえって資本を土地にしばりつけて経営面への融通を窮屈にするものだとはお考えにはなっておりませんか。  しかも、この法案では、都道府県知事認定してよしとするような農事経営安定計画を立てることが貸付の条件となっております。借金をしなくても経営が困難で、土地を手放さなければならなくなった農家が、借金の元利払いを、しかも一年五分五厘という、農村金融としては、ことに造船融資等に比べて実質において決して安いとは言えない利子を払って、果して安定する計画が立つでございましょうか。都道府県知事認定してよしとするような農業経営安定計画が立てられる農家が一体どれだけあるか、承りたい。かつて農家を借金の重圧から救おうとして作った農村負債整理の諸規則等も、このような経営安定計画を基礎にして打ち出されたものでございましたが、ほんとうの経営の姿を打ち出せば融資が受けられず、融資を受けようとすれば机の上で作り上げた安定計画となり、結局、経営安定を土台とした融資ではなく、融資を受けるための安定計画書になったことがございます。安定計画は、ついに農民生活を安定せしめ得なかったのであります。今度の資金融通法にも、そのおそれはないか。農民が金に困っているという現象的なことはわかっておりましても、なぜ金に困るようになったかという根本原因の究明がなかったということにお気づきにならないかどうか、お伺いいたします。  特に、この際農林大臣に対しまして、安定した農家経営を続けるために要する耕地の適正規模をどうお考えになっておられますか、法案第三条の貸付を受けられる者の規定は、現行農地法のワク内にとどめるものかどうか、確認しておきたいと存じます。法案によりますると、「その耕作又は養畜の事業に供している農地又は採草放牧地の面積、生産力等の条件及びその家族労働力等の農業経営能力を考慮して、農地又は採草放牧地の面積を増加しなければその経営の安定を確保することができないと認められる農業者」、こうなっておりますが、一体どれだけの耕地を条件とする農業者のことを適正規模の農業者と言うのでございますか。現在におけるわが国の立地条件、農業技術、農機具の発達、または国際的農業との競争の観点から、耕地の適正規模をどれだけに押えられるつもりか、お聞きいたしたい。ことに、その経営に不足な農地取得する、つまり土地を買う農民がある場合に、当然土地を売る農民もあるはずでございます。適正規模にはるかに遠い小農、零細農の土地は、これを売る方に回すおつもりでございますか。あるいは、そうした零細農にも、適正規模に達するまでは金を貸し付けて、国有地でも買わせるつもりか。それとも、ブラジルへでも行けというのか。一体、この法律は、自作農維持に重点を置かれておるのか、それとも、土地兼併を覚悟の上で、安定する自作農創設に重点を置かれておるのか、お伺いいたしておきたいのであります。  以上、資金融通を受けた農家も、なおその経営を安定させる要素のはなはだ少いことは指摘いたしました。また、貸付金の償還条件、たとえば、半年ごとに元利金の支払いを求めるという条件が、一年一度の収入を見る農家実態に即せず、金利等に至っても、あながち今日の農業実態からは安いとは言えない。その結果、法案第三条の三項に規定されます貸付金につき償還の請求を受けたものの、返還が不可能になった場合、この耕地はどう処理されましょうか。所有権耕作権は、抵当に入れる場合、また競売等に際してはどう扱われますか。あわせて法務大臣にもお伺いいたしたい。農地改革の精神から見まして、耕作権が第一に尊重されるのは当然であります。万一、従来の民法等に規定されるままに、冷やかにこれが処理されますならば、農地は零細な農民の手を放れて富農あるいは地主の手に落ち、土地兼併は必至となるに至るでございましょう。融通を受けた資金を返せなくなった農家の土地を競落する者の資格規定等について、従来の農地法を変更する意思があるのかないのか。特に、競落者のない場合、土地は国家あるいは公庫がかわって競落したといたしましても、それまでの自作農耕作権はどう扱われるのでございましょうか、伺いたいと存じます。万一こうした施策が一歩誤まれば、超保対象となる所有権のみがいたずらに偏重され、やみ地主が現われるおそれが十分ございます。従って、金利に引き合う小作料の改訂等も考えられますが、小作料改訂、ことに、近来各地に続々と現われました地主組合の保有地制限撤廃や、公正の名に隠れての小作料引き上げ運動と相呼応し、あるいは、それと気づかずして、これを助長すると疑われる点がたくさんございますが、十分なる御解明を願いたいと思います。  最後に、総理大臣に質問いたします。あなたは常に愛情の政治を説かれます。国民の四割六分を占める農民の大部分は、今日、国家財政施策の面からは除外されておるのでございます。こうした現実に対し、私はあなたにこの際特にお聞きいたしたい。金に困らせておいて金を貸し付け、返せなくしておいて土地を取り上げるという手は、昔から地主がとった古い手でございます。実際には、農民が救われない金を振り回して、逆に農地法の根幹をゆるがし、地主制の復活を助ける法案よりは、もっと端的に、土地などは担保に取らず、耕作権を主体とする農民経営体あるいはその連帯保証を信用対象に、当面農家の借金に見合う百億の融資を行いまして、利子についても、国家が造船融資等にとった利子補給等の措置をとって大幅に引き下げて農林金融の根本的改革をする方が、自作農安定のためにも日本農業の発展のためにも早道であり、かつ合理的であると考えます。百億という融資も、造船融資百六十億、その利子補給だけで三十五億という現状に比べてみまして、国民の四割六分を占める農民四千万の生活安定のためには少な過ぎると申しましても絶対に多からざる金額であると思いまするが、その辺の御意見をお伺いいたしたいと思います。  しかも、これまでの補助金や融資など、いずれも実際には働く農民の頭上を通り過ぎて、農民を食いものにする農村ボスのふところに入る例は枚挙にいとまありません。私は、この自作農維持創設資金融通法も、農民救済に名をかり、地主制復活、土地の兼併を行わんとする者のための法律となることを心から憂えるのであります。
  26. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 淡谷君に申し上げます。申し合せの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
  27. 淡谷悠藏

    ○淡谷悠藏君(続) もう少しですから……。  最近、農地改革で土地を失った地主が各地で旧制度復活の連盟を作り、すでに保有面積の増大、小作料の引き上げ等の決議をしております。しかも、農地法を踏みにじって、強迫的な手段を用いてまで土地を取り上げている例、たとえば、福島県の鏡石等において最近訴訟になっております事件のように、小作人が承諾しないのに土地を取り上げようとし、農地改革以前にさえなかった土地への立ち入り禁止仮処分を行い、しかも地主だけに耕作を許す等の事件が起っているのを総理大臣は知っておられるでしょうか。愛情の政治を説くあなたに、私は、二千年来政治的に孤児であった黙々として働く農民実情をさらに認識し直し……
  28. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 淡谷君、淡谷君に申し上げます。簡単に願います。
  29. 淡谷悠藏

    ○淡谷悠藏君(続) この疑点多い法案を、農地改革の精神にはずれた地主制度復活の逆コース的法案となすことなく、農民を真に救い得るものとする決意あっての提案かどうか、確かめておきたいと存じます。  以上、各大臣の御答弁を求めます。(拍手)     〔国務大臣鳩山一郎君登壇
  30. 鳩山一郎

    国務大臣(鳩山一郎君) 淡谷さんの御質問に対してお答えをいたします。私も、自作農の地位を安定させ、これを維持育成するということは非常に必要だと思っております。そうして、そのためにはいろいろのやり方もありましょうけれども、今回提出した法案は、この理想的な形の自作農維持育成する上に最も適したる法案考えております。(拍手)     〔国務大臣河野一郎登壇
  31. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 淡谷さんにお答えを申し上げます。  ただいまお尋ねになりました点は、本制度を施行いたす上におきまして十分注意をして参らなければなりません諸点であると私は考えます。さればと申しまして、本制度は、先ほど御説明申し上げました通り、今日の農村実情に即しましてぜひ積極的にこの制度を運用して参るということが、われわれは農家のために非常に有益なことであり必要なことと考えるのでございます。でありまするから、必要な制度を十分注意をして御趣旨に沿うように運用することによって本法の目的を達することが真に農民のためであると私は思うのでございます。(拍手)  なお、御指摘になりました、自作農転落して参るという実態、ないしはまた本制度運用の目的、これにつきましては、たびたび申し上げまする通り、今日の自作農を育成強化いたしまするには、金を貸し付けるということで足らぬことは申し上げるまでもありません。われわれといたしましては、これらの資金を真に有効適切こ——農村の多角的経営でありますとか、ないしは農村経営の合理化でありますとかいうようなことにつきまして、それぞれ案を立てて、これについて十分の検討をいたしまして、転落いたすことのないように、ないしはまた資金の還元の遅滞することのないように努力して参りたいと思うのでございます。  その他につきましては、いずれ委員会で詳細お答えを申し上げたいと思います。(拍手)     〔国務大臣一萬田尚登君登壇
  32. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 農村経営についての御質問であったように思うのでありますが……(発言する者あり)違いますか。——それでは、今回の金利が五分五厘で少し高いじゃないかという御質問でありました。この五分五厘という金利は、長期の金利でもありますので、日本の今日の金利水準全体から見まして、私は、決して高いものではなくて、できるだけ安く考えておる、かように存じておるのであります。(拍手)     〔国務大臣花村四郎君登壇
  33. 花村四郎

    国務大臣(花村四郎君) 農地の移転につきましては、農地法規定によりまして都道府県知事の許可を要することになっているので、農地について抵当権を実行する場合には、都道府県知事の許可を受けた者でありませんと競落人になることができない建前になっておるのでございます。しこうして、その他のことは民法、民事訴訟法並びに競売法等の規定によるのでありまして、特別なる扱いを受くるものはございません。(拍手
  34. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 伊瀬幸太郎君。     〔伊瀬幸太郎君登壇
  35. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬幸太郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案せられました自作農維持創設資金融通法案に対し、鳩山総理大臣以下、各関係大臣に若干の質問を試みんとするものであります。(拍手)  まず第一にお伺いしておきたいことは、鳩山内閣の農政の根本政策についてであります。すなわち、敗戦後の農地改革は、耕作者の地位の安定と農業生産力の増強をはかるために、地主農地制度を改革したのであります。この光栄ある歴史的事業が、旧地主階級や保守勢力の間には、異常なるものとして今日なお強く反対する向きがあり、加えて、多年政権を担当した保守党は、資本主義的な産業復興の手段として、低米価供出制度を推進し、自由経済に基く農産物価格の低落にもかかわらず、農民に重税を課しておるのであります。その結果今日再び農村が危機に見舞われんとしているのが現状でございます。鳩山内閣も、前吉田内閣のこの誤まれる農村政策に拍車をかける政策を相次いで行なっているのであります。すなわち、今年度予算米価は昨年水準の九千八百五十円を下回る九千七百三十九円で押え、食糧増産を叫びつつも、現実には百十六億の減額を行い、加えて小作料の値上げすら言い出しているのであります。今や、全国各地におきましては、青田売りから娘売りへと進み、それでも食えない農民は、せっかく農地解放によって得たところの土地をどんどん手放さなければならないような現状に立ち至っております。政府は、農地担保金融というこの法によって解決できると思われるのであるか。むしろ農民には金を借りる必要のない農村救済のための抜本的対策をお持ち合せでないのか。あるらば、その具体的政策をお示し願いたいのであります。(拍手)  さらに、私は、これらの問題に関連いたしまして、特に大蔵大臣の御所見をこの機会にお伺いしたいのでございます。それは、今国会に提出された三十年度予算並びに政府が今後行わんとする諸政策を見るに、農村に対して財政上ほとんど考慮を払っておられない点であります。考慮を払っておられないばかりでなく、かえって財政上の一切のしわを農村に転嫁しようとしているのであります。前年度に比して食糧増産費は十億を減じ、一般補助金も十三億を減ずるというように、農政に関する限り前内閣以上の後退をしていることは否定し得ない事実でございます。(拍手)さらに、最近の減収加算の問題が示したように、政府が当然義務として支払わなければならぬにもかかわらず、あわよくばほおかむりで済まそうとする意図すらうかがわれるのであります。従って政府は、その財政支出を通じ、農業生産を増加し、農家経営を安定せしめる考えを全く放棄していると断ぜざるを得ないのであります。このような政策にかかわらず、二十億の農地担保金融を行うことによって、果して農村は救われると考えでおられるのであろうか。あらためて、大蔵大臣に、農業に対する財政支出の役割をどう考えているか承わっておきたいのであります。(拍手)  さらに、高碕経審長官にも伺いたい。経審長官は、さきに経済審議庁の作った経済六カ年計画が、決して絵に描いたぼたもちでなく、政府が確実にこれを実現しようとする目標であることを述べられているのであります。それによると、食糧については年平均二百八十万石の増産をいたさなければならないのであります。それには五百億の国庫支出と二百五十億の融資を必要とする。しかるに、本年度予算では、国家支出は二百五十億、融資は百二十億。計画の半分にも足らぬのであります。これでは六カ年計画は全くから宣伝でありまして、施政演説でうたった農林水産の増産は、政府みずからこれを否定しておるのであります。わずかの融資によって農民に土地取得を与えても、生産上のマイナスの政策が行われるならば、日本経済の自立はないと思うのでありますが、この点、経審長官の所信を伺いたいのであります。  次に、農林大臣に本法案内容についてお伺いしたいのであります。  第一点は、年利五分五厘、償還期間十五年という点であります。特に金利の点を申し上げますならば、無利子同然の国庫資金で五分五厘の高利をとることは、あまりにも高いのじゃないかと思うのであります。また、資金額についてもさらに増額し、たとえば、金融機関が集めた農村資金を還元するという意味でこれに協力せしめ、これに対して金利の引き下げまたは利子補給の措置を講ずべきであると思うが、その用意ありやいなやを承わりたい。  第二点は、農地担保による融資のワクであります。現行自作農創設維持資金制度では、特別会計の余裕金に依存いたしまして、その金額が一定せず、真にせっぽ詰まって農家が希望するときには、希望通り融通されぬ欠陥があります。この欠陥を除去するのが本法案のねらいではなかろうかと存ずるのでありますが、果して、政府は、反当貸付額を幾らにお考えになっておりましょうか。さらに、本法施行の暁には、政府は融資総額を二十億と見積っていると聞くが、この少額では目的の達成はできないと思うが、政府は十分なりと考えておられるのか、お伺いしたいのであります。もし借りる金額がたった二万や三万の少額であるならば、北海に漂う氷山を灯明の火で溶かさんとするようなもので、その効がないばかりか、かえって土地が担保に流れはしないかとの不安を農家に与えるもので、経済的にも心理的にも百害あって一利ない措置と一言わねばなりません。  第三点は、農地所有権耕作権を切り離しておやりになるお考えはないかという点であります。もし、借り入れた農家が、事情やむなく再起不可能に陥り、十五年たっても返済能力のなき場合、もちろん担保物件である以上、所有権の取り上げられるのは、これまたやむを得ないといたしましても、耕作権をそのまま存続させなければならないと思うのであります。所有権耕作権を混同して、不用意に農地政策を打ち出されるならば、耕作権所有権に吸収され、悔いを千年に残すおそれがあります。この問題に関し、大臣の所信をお伺いしたいのであります。  第四点といたしまして、農地の買収価格が引き上げられて農地解放の推進のガンにならぬかという点であります。現在五十万町歩小作地が残存し、昭和二十八年度においても、これら小作地中、田は九千余町歩、畑七千町歩の売買が行われており、これらを購入する農家中には、よんどころなく高利の借入金をもってする者も相当あります。伝えられるごとく、もし政府が抵当価格を引き上げんとするならば、一般の土地売買価格はさらに一そう高騰して、これから土地を手に入れる農民は、農業経営資本の不足を来たし、あるいは借入金の利子負担に苦しむことが予想せられるのであります。加えて、政府の買収、売り渡し価格に影響することはまた当然であり、今後の農地解放に赤信号を示す結果と相なるという危惧の念を抱くものであります。すなわち、政府は、農地法による農地の買収、売り渡しに当っては、現在の最高五千円の買収価格を維持せられる決意ありやいなやを承わりたいのであります。  最後にお伺いしたいことは、小作料引き上げのための方策の一助ではないかという点であります。本法案による農地価格の引き上げが、やがては小作料引き上げの理由となることも容易に予想せられるのであります。そこで、政府は、昭和二十五年にきめた統制額を堅持せられる方針でおられるのか、お伺いしたいのであります。さらに、現在の残存小作地五十万町歩を解放して、これら一切の危惧を根本的に一掃する勇気をお持ちであるかどうか、あわせてお伺いしたいのであります。  夏上をもって私の質問を終らんとするものでございます。(拍手)     〔国務大臣鳩山一郎君登壇
  36. 鳩山一郎

    国務大臣(鳩山一郎君) 伊瀬君の御質問に対してお答えをいたします。根本の政策は何かという御質問でありますが、これは、先刻申しましたように、自作農維持育成と小作農の地位の安定をはかるということにあると考えております。一言にして言えば、農地法を遵守するということになるのであります。対策としては、今回提出いたしました法案農民の欲望を達し得るものと考えております。(拍手)     〔国務大臣一萬田尚登君登壇
  37. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 三十年度農林省関係の予算が少い、食糧対策費あたりも減っておるじゃないか、こういう御趣意で、農村を少し軽く見ておりはせぬか、こういう御質問であったのでありますが、決してそうではございません。私どもは、農村、特に食糧増産等については人一倍関心が深いのであります。ただ、今回の予算において若干の削減を見ておりますのは、これはいろいろな理由もありまして削減になっておりまするが、しさいにごらん下されば、実質はそれほど減っておるとは私考えておりません。  なお、今回二十億程度の金を財政から出して、そうして自作農創設維持に関して融通をする、そんなことで救われると思うかという御意見でありますが、決してそんなことを思っておりません。ほんとうは、農村の特殊性も考えまして、長期の安い金利の資金をなるべく必要に応じて出すようにいたしたいのでありまするが、全体として国の財政等の関係もありまして、思うように行かなかったのであります。しかし、ともかく各年の懸案を今回解決いたしまして、こういう制度創設いたしましたことは意義が深いだろう、私ほかように思っております。今後、農村金融その他について格段の注意を払うつもりであります。(拍手)     〔国務大臣高碕達之助君登壇
  38. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 御質問にお答えいたします。明年度の食糧増産の資金が少くて、果して六年計画が達成し得るだろうか、こういう御質問でございまするが、経済六カ年計画におきましては、食糧につきましては、年々増加する人口に対する需要、農地の壊廃による減産等を見込みまして、二十九年以上に輸入をしない、こういう原則のもとに、六カ年間に約千三百五十万石を増産する、こういう計画を立てております。明年度におきましては、これは、御説のごとく、限られたる予算で実行いたします関係上、合理的にこの資金の配分をいたしまして、六年間における増産の基本に支障ないようにいたす考えであります。(拍手)     〔国務大臣河野一郎登壇
  39. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お答えをいたします。  価格は時価の三割程度にいたすつもりでございます。  次に、二十億が少いということでありますが、これは大蔵大臣からお答えがあった通りであります。  次に、所有権耕作権の問題についてお尋ねがございましたが、これにつきましては、所有権耕作権が一体になっておりまする自作農民を対象として貸付をいたしまするが、これを処分いたします場合に分割してどうかということについては、そういうことはいたさぬということに考えております。分割はしないということに考えております。  次に、小作料の点についてお尋ねがございましたが、これは小作料とこの制度とは全然関連性を持つと考えてはおりません。特に小作料についていろいろ御意見がございましたが、これは、すでにお答え申し上げました通りに、適正なる委員会によって目下検討中でございまして、不日決定することにいたしておる次第でございます。(拍手
  40. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————  四 石炭鉱業合理化臨時措置法案内閣提出)の趣旨説明
  41. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 次に、順序を変更して、石炭鉱業合理化臨時措置漢案の趣旨説明を求めるに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よってその通り決しました。  石炭鉱業合理化臨時措置法案趣旨説明を求めます。通商産業大臣石橋湛山君。     〔国務大臣石橋湛山君登壇
  43. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) ただいま議題となりました石炭鉱業合理化臨時措置法案につきまして説明を申し上げます。  一昨年以来、わが国の石炭鉱業は深刻な不況に悩まされまして、休廃止炭鉱ば続出いたし、未払い賃金は累増し、失業者は集団的に発生いたす等の容易ならざる問題が相次いで起っておりますことは、まことに遺憾の次第でございます。しかも、この石炭鉱業の不況のよって来たる原因ははなはだ深く、幾多の悪条件が累積いたしまして今日の事態を招いたのであります。従って、この際一時的応急措置をもってしては、これを克服することはとうてい困難であると認められるのであります。ゆえに、この際ぜひとも行わなければならない必要な処置は、長期の見通しに基く抜本的な再建方策を講じまして、もって石炭鉱業の安定と発展とをはかることだと信じております。基礎産業中の基礎産業でありますところの石炭業が、かようにいたしまして、幸いに安定と発展との方途を見出すことができ、ますならば、そのわが国国民経済全般の健全なる伸張に寄与するところはきわめて多いものがあると存ずるのであります。  元来、わが国の石炭は、その賦存状況及び品質等におきまして、必ずしも良好の条件のもとにあるとは申されません。従って、その生産費は、諸外国の石炭に比べまして、ややもすれば割高なることを免れないのでありますが、ことに地下資源産業に通有の特性といたしまして、採掘現場が年々深部に移るに従いまして、採掘条件は次第に悪化いたします。従って、適時に大規模な若返り工事を行い、生産費の累増を抑止する必要があるのでございます。しかるに、御承知通り、戦時、戦後を通じまして何をおいても石炭の増産をいたすことが国の最大必要事でありました時代におきましては、右のごとき適切なる若返り工事を行う余裕がございませんでした。その結果、炭鉱内外の施設は荒廃し、固定資産の償却は閑却され、生産費は漸次増加して、企業経理は逐年悪化して参ったのであります。  昭和二十四年に至りまして、一応戦後における石炭の増産要請が達成せられました。需給の関係も好転いたして参りました。そこで統制は撤廃せられたのでありますが、戦時中からの諸種の炭鉱業における弱点はほとんどそのままに包蔵されておりまして、生産費の割高に基く高炭価問題は依然未解決のままに推移いたしておる次第であります。たまたま、昭和二十五年の朝鮮動乱によります好況によって、一時この問題は影をひそめた感がありましたが、昭和二十六年動乱の休止とともに、問題は再び表面化しまして、競争エネルギーたる重油や外国炭が、割高なわが石炭の需要分野に進出し始めることとなったのであります。のみならず、昭和二十七年末に長期にわたって炭鉱ストライキが行われましたことも、また重油や外国炭の進出を一層促進する結果を招きました。このため、国内炭は、生産費を下回る価格をもってこれら競争エネルギーと対抗せざるを得ない事態になったのであります。加うるに、昭和二十八年下期以来経済界全般に浸透いたしました不景気によりまして、石炭の需要は減退の一途をたどり、その需給は一段と均衡を失するに至ったのであります。この際何らかの方法によりまして抜本的対策を講じ、炭価を引き下げ、局面の打開をはからないならば、あるいはわが国の石炭鉱業は衰滅の悲運に陥り、せっかくの天然資源は利用の道を失い、多数の企業者と炭鉱労務者とは、ともにその生活の根拠を奪われまして、産炭地一帯に重大なる社会不安を醸成するに至るおそれなしとしないのであります。  政府は、かような見地からいたしまして、石炭鉱業を合理化し、生産原価を低下するとともに、その安定をはかることを企図いたしまして鋭意検討を進めて参ったのでありますが、今回ようやく成案を得るに至りましたので、石炭鉱業合理化のために法的規制を必要とする事項をまとめまして石炭鉱業合理化臨時措置法案といたし、また別に、総合エネルギー対策の見地から、重油ボイラーの設置の制限等に関する臨時措置に関する法律案を作成し、あわせて本国会に提出して御審議を仰ごうとしている次第でございます。  本法案は、以上申し述べました通り、石炭鉱業の合理化、換言すれば、その生産性の向上によりまして炭価の引き下げを意図しておるのでありますが、これによって生ずべき過剰労働力につきましては、現在すでに問題となっておりますところの炭鉱失業者と合せまして、これが吸収に十分なる対策を講ずる計画でございます。すなわち、従来より実施して参りました産炭地一帯における鉱害復旧事業、失業対策事業等を一そう強化いたしますとともに、それぞれの炭鉱地帯に新たに河川改修、道路、水道、鉄道建設等の諸事業を起しまして、労務者の計画的配置転換をはかること等を行う決意でございます。  石炭鉱業合理化臨時措置法案内容につきましては、今後御審議の途上におきまして、さらに詳細にわたって申し述べる所存でございますが、以下簡単にその概要を申し上げますと、この法案は、第一章から第五章におきまして、石炭鉱業を合理化するための措置を定めました。第六章におきましては政府の諮問機関たる石炭鉱業審議会の件、第七章におきましては法律実施上の補完規定、第八章におきましては罰則を定めております。  まず第一章は、目的と定義についての規定でございますが、これを具体的に申し上げますと、この法律案は、縦坑開さく等の合理化工事を実施いたしますとともに、坑口の開設の制限及び非能率炭鉱の整理を行いまして、生産体制を集約化し、石炭の生産費を引き下げることをはかるのでございます。さらに、この合理化の効果を石炭の価格の上に反映させるためには、標準炭価を設定、公表いたしまして、合理化の進捗に応じまして逐次これを低下せしめるとともに、著しくこれを上回る石炭価格の生じました場合には、価格場引き下げの勧告を行なって、これを一定水準にとどめ、もって国民経済の健全な発展に資することを目的といたしておるのであります。  第二章は、石炭鉱業合理化計画に関する規定であります。通商産業大臣は、石炭鉱業合理化のための諸施策を総合的に実施するために、昭和三十年度から三十四年度に至るまでの長期の石炭鉱業合理化基本計画と、その年度別の石炭鉱業合理化実施計画とを策定、公表することといたしております。さらに、この計画達成のために必要な資金につきましては、政府が適切な措置を講ずることを規定いたしておるのであります。  第三章は、石炭鉱業整備事業団についての規定でございます。合理化工事の実施は、必然的にこれら炭鉱の操業度の上昇を必要といたしますので、需要に対応した適正生産規模に生産体制を集約化するために、非能率炭鉱の整備を行うことといたしました。その実施機関として石炭鉱業整備事業団を設立いたします。この事業団は、炭鉱の事業主の申し出に応じまして、炭鉱の採掘権と鉱業施設を買収するのでありますが、炭鉱の買い上げに伴い離職する労務者に対しましては、事業団から平均賃金の一月分に当る離職金を支給いたしますほか、未払い賃金がある場合には、これも事業団が炭鉱の事業主にかわって支払うことといたしました。  第四章は、坑口の開設の制限についての規定であります。前述の生産体制の集約化の措置といたしまして、非能率炭鉱の買収とあわせまして、新規に非能率炭鉱の発生するのを抑制するために、石炭の採掘を目的とする坑口の開設につきましては許可制を設けることといたしました。ただし、この措置は、その性質上、必要最小限にとどめるために、特に三年間に限り実施することといたしたのであります。  第五章はへ石炭の販売価格及び生産数量の制限についての規定でございます。合理化の効果を炭価に反映させるために標準炭価の制度を設けるとともに、石炭鉱業の現状にかんがみ、炭価が暴落し合理化計画の達成に重大な支障を生ずるような事態に対しましては、通商産業大臣の指示により、生産業者が、独禁法の規定にかかわらず、生産数量と販売価格について共同行為を実施し得るようにいたしました。  第六章は、石炭鉱業審議会についての規定であります。通商産業省に石炭鉱業審議会を設置いたしまして、合理化計画、標準炭価、坑口の開設の制限等重要事項につきまして、これに諮問することといたしました。  以上のほかに、第七章にこの法律実施上の補完規定とも申すべき雑則を、第八章にこの法律の違反行為に対する罰則をそれぞれ規定いたしたのであります。  以上、はなはだ簡略でありますが、この法案の構成につきまして説明申し上げた次第でございます。  政府といたしましては、公正無私に考えまして、この法案が少くとも現段階においてはわが国石炭鉱業の実態に即し最も適正なりと信じて、御審議をお願いする次第であります。幸いこの法案が制定の運びになりました暁には、これが実施を厳正適切にいたすことは言うまでもなく、また炭鉱の採掘技術及び経営等につきましては十分科学的検討を加える準備をいたしております。かくて、石炭の消費者の利益を擁護するとともに、石炭鉱業の健全な発達と、その従業者の福祉の増進とに一意努力する所存でございます。諸君におかれましても、何とぞ政府の意の存するところを了とせられて、本案に御協賛下さらんことを切にお願いする次第であります。(拍手
  44. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより、ただいまの趣旨説明に対する質疑に入ります。神田博君。     〔神田博君登壇
  45. 神田博

    ○神田博君 私は、今回提案になりました石炭鉱業合理化臨時措置法案につきまして、自由党を代表して政府の所信をお伺いしたいと存ずるものでございます。  本法案を一覧して痛感いたしますことは、苦境にあえぐわが国の炭鉱業界の救済について政府は何らの熱意も対策も持ち合せていないということでございます。今日、わが国の炭鉱のことごとくが極度の経営難に陥り、もはや自力ではいかんともなし得ないまでに疲弊し切っておることは、周知の事実でございます。この窮状を脱するため、業界はあげて政府の適切なる施策を待望してやまないのが現状であります。政府は、当然この行き詰まりの原因を追及して抜本的なる救済対策を樹立すべきであるにもかかわらず、炭鉱業界の現状を把握する能力が欠如しておるのか、あるいは安きにつかんとして故意に現実を無視しているのか、要するに、おおむね的はずれの、こそくな対策に終始して、解決を遷延せしめることによって当面を糊塗しておるとしか考えられないのであります。本日は、本会議のことでもあり、時間の制約もありますので、詳細なる質疑委員会に譲ることとし、主要な二、三の点について政府の所見をただしたいと存ずる次第であります。  まず第一は、今日の行き詰まりを生じた原因をどういうふうに考えておるかという点であります。設備の改善によって能率が上昇したといたしましても、その成果の大部分は大幅な賃上げ闘争のために組合側に支払われる結果となり、炭価の引き下げは実現しないのみならず、さらにまた、合理化の推進によって生じた過剰人員の整理に際しましても、組合側がまっこうからこれに反対して、深刻なる闘争が惹起されるために、合理化の断行はついに経営を一そう困難ならしめるという奇怪な結果を招来するのが過去における実情であります。(拍手)しかも、これらの背景をなすものは、日本の弱体化をねらった占領政策の落し子である、世界にかつて類例を見ない、かの労働三法にほかならないのであります。(拍手)従って、この根本問題を解決するにあらざれば、石炭鉱業の安定はとうてい期待し得られないと思うのであります。この点について政府の所見を伺いたい。  次に、本法の施行に即応する労働対策についてであります。自由党の低物価政策が効を奏して、生活必需物資は漸次値下りしているにもかかわらず、未曽有の苦難にあえぎつつある炭鉱の現状を無視して、いたずらに賃上げ争議や解雇反対闘争のために経営を窮地に陥れるのみか、保安要員の引き揚げを断行して炭鉱を壊滅せしめるがごとき無謀きわまる手段をもあえて辞さないといったような従来の態度が改まらない限り、この法案が実施せられたといたしましても、炭鉱の合理化や安定化は絶対に期待し得られないのみならず、合理化のため投下せられた膨大な資金の償却や金利負担のため、高炭価にさらに拍車をかけるという、およそ当初の目的と相反する結果を招くおそれさえもあるのであります。私が特に政府に伺いたいのは、これらの点に関する労働政策に確信があるのかどうか。さらに、現在の賃金ベースは適正なりと考えておられるのか。合理化完成の賃金ベースをいかに想定しておられるのか。これらのことは毎年標準炭価を決定する上にも必要なのであります。また、過剰人員の失業対策について、予算面その他諸般の受け入れ態勢は整っておるのでありましょうか。ただいま通産大臣説明によりますと、いかにも万事手回しよくやっておられるような御説明でありますが、この点については、特に関係大臣から十分な御説明をお願いいたしたい。  次に、需要喚起についてであります。石炭鉱業を安定せしめる第一の要件は、何といっても需要の拡大による生産の増大と、これに伴う生産原価の低下をはかることでなくてはならないのであります。積極的に用途を拡大する努力を怠って、不自然な競合物資の輸入関税や消費節約を法律によって規制するがごときことでは、政治の妙を得たものではないと考えるのであります。(拍手)需要の問題は、もちろん価格とからみ合うものであり、価格が安定し、コマーシャル・ベースにおいて重油や輸入炭と対抗し得るようになりますならば、求めずとも消費は増大するのであります。  一例をあげますならば、都市における家庭ガスの使用は、価格の面と便利の点におきまして薪炭や石油コンロにまさるので、都市におけるガス供給設備を拡充いたしますならば、薪炭原木の伐採防止による治山治水の効果をあげ得られるだけではなく、あわせて石油の消費規正問題を解消することになるのであります。このような観点から、ガス拡充計画を強力に推進するとともに、コークス問題解決のために完全ガス化の推進をはかるべきものであると考えるのであります。電源開発の問題にいたしましても、一部の人々が提唱しておるように、新鋭火力発電機を活用することによって、かの不当に高価な買収費の問題も、これが牽制のための工期遷延の問題も、あるいはつぶれ地等による食糧問題等々も解決することが可能になるわけであります。  政府の施策を拝見いたしますと、石炭の需要拡張に対する努力がいまだ十分とは認めがたいのであります。特に石炭の需要喚起については、ただ単なる燃料としてではなく、化学工業の原材料としての方面に活路を開くべきものでありまして、これには当然石油化学との競合問題を解決する必要が生じてくるわけであります。しかるに、民間会社がきそって石油化学工業に進出せんとしておる今日、いまだこの調整に関する権威ある国策の樹立が見られないことは、まことに遺憾しごくでございます。政府は、わが国の石炭化学工業並びにこれと石油化学工業との関係をいかに考えておられるのか、それを伺いたいのであります。  次に、鉱区整理の問題であります。石炭の鉱区は、多くの場合、その境界が入り乱れておるのでありまして、はなはだしきに至っては同一鉱区内においてすら炭層別の鉱業権が二重設定というような現状を、あるがままの姿で縦坑開さくに着手するということは、境界線にはなはだしく争いをもたらす結果となりますので、まず鉱区を整理統合した後、合理的開発計画による縦坑開さくに着手すべきであると考えるのでありますが、政府は、おそまきながら、この際この鉱区整理統合について強力に推進する意図があるかどうか、お答え願いたいのであります。  次は、不良炭鉱買い上げの問題であります。いわゆる不良炭鉱の原因は、一面において自然の悪条件に左右された結果であることはもちろんでありますが、他面、企業計画のずさん、経営の不適正等のため経営困難に陥ったものであります。政府は、これら没落の運命にある炭鉱に対して、開銀融資の利率引き下げを行うほか、残存同業者の出炭量に比例した納付金による全面買収を行い、これを休眠鉱区として、いたずらに放置せんとしておるのであります。デフレ経済の今日、倒産に瀕したものはひとり炭鉱ばかりではなく、価の基幹産業あるいは貿易産業の中にも、さらに深刻悲惨なるものが少くないのでありますが、同じく私企業であるところの炭鉱に対してのみ、なぜに特別の取扱いをなすのであるか、他のものに対しても順次同様に救援の手を伸べんとするのであるか、あるいはまた、石炭鉱業は基幹産業中の基幹産業であるから、炭鉱国管制を復活する第一歩であるか、そういうように解釈してよろしいのか、明確なる御答弁をお願いしたいのであります。  要するに、わが国石炭鉱業の真の安定は、コマーシャル・ベースにおいて外国炭や重油と競争し得るところまで炭価が下って、初めて実現せらるべきであると考えるので茂ります。この見通しさえ判然といたしておるならば、それに至る過渡期二年、三年の間は、競合物資の消費規正や関税賦課等の方法もやむを得ない、いな、むしろその基幹産業である炭鉱業の合理化を促進する手段として、過渡期における暫定措置を強力に推進すべきであると考えるのであります。しかるに、政府は、これらの根本原因を正確に捕捉してこれにメスを当てることをしないのみならず、過渡期における関税や消費規正等も、反対側の強硬陳情に押されて、申しわけ的こそく手段によってお茶を濁し、根本的なる解決は後日に見送ろうというような態度では、せっかくのこの法案も多きを期待し得ないのではないかと思うのであります。カルテル関係等、当然考えなければならない事項をおそまきながら織り込んだ点については、多少の前進を認めるのにやぶさかではないのでありますが、今申し上げたような根本的なる対策を閑却して十分なる成果を望もうということは、これは望めないことでございまして、もし一歩を誤まるならば、逆の結果を生ずる危険が多分にあると考えられるのでありますが、これらの点に対する鳩山総理の総括的な見解及び関係者大臣の見解を詳細かつ懇切に承わりたいのであります。(拍手)     〔国務大臣鳩山一郎君登壇
  46. 鳩山一郎

    国務大臣(鳩山一郎君) 神田君の御質問に対してお答えをいたします。  国民経済の実情を正しく認識いたしまして労使協力態勢を確立するよう努力することは、あなたのおっしゃる通り、最も必要な事柄だと思います。  その勉の御質問に対しては、私よりも関係当局から答弁した方が適当だと思いますので、関係閣僚から答弁してもらいます。     〔国務大臣西田隆男君登壇
  47. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) 神田君にお答えいたします。  労働組合法及び労働関係調整法につきましては、これを改正すべしというような意見も非常に各方面に起きているようでありますが、私としましては、まず労使関係者が相協力して国民経済の実情を正しく認識された上で、合理的な労使関係の確立に努力されることを強く期待しております。法の改正につきましては、今後なお慎重に検討して参りたいと考えております。  なお、労働基準法につきましては、わが国の実情に即さないから改正すべきだという意見が各方面に相当強く出されておることは承知いたしております。しかし、労働基準法の改正は、国際的な影響も大きいので、臨時的に学識経験者による審議会を設けまして、改正の要旨、改正をすればいかなる点を改正すべきかという点を検討したいと思いまして、ただいま労働省ではその人選を準備中でございます。  それから、賃金の引き上げをめぐっての労働争議が繰り返されておりまするような現状では、御説のように企業の合理化も実効を上げ得ないことは、全く同感でございます。私は、生産が向上し利益が上った場合、企業の労使双方だけでこれを分配するということではなくて、商品価格の引き下げ等によって、他産業及び消費者一般にも利益を分け与えるという考え方へ考えを変えてもらいたい、こういう措置によりまして、経済の安定を通じての実質賃金の向上、労働条件の引き上げ等をはかっていくべきである、かように考えております。  第三のお尋ねの、石炭の合理化による失業者の問題でございますが、一応、労働省としましては、三十年度に生じまする炭鉱整備の離職者は四千七百名、三十一年度が一万四千二百人、三十二年度が八千三百人と想定いたしております。従って、この離職者の中で失業対策を講じなければならない人間は、三十年度で四千二百四十九人・三十一年度一万五千三百三十一人、三十二年度一万七千二百九十九人を推定いたしております。従って、今までのように、ただ漠然とした失業対策を講じることは考えておりません。  詳細に御説明を申し上げます。  まず、北海道地区によって三十年度に生じまする失業者を吸収する予定人員は五百名、しかもその人員は、電源開発に対して四百名、道路工事に百名、三十一年度で電源開発に五百名、河川に二百人、道路工事に千百五十人、三十二年度は電源開発に六百人、河川に二百人、道路に千二百人、こういうふうな年度別に吸収する予定を立てております。  それから東部におきまして、河川で三百五十人、道路で百人、計四百五十名、三十一年度が河川が六百、道路が千百、計千七百、三十二年度で河川が六百、道路が千七百、計二千三百、西部におきましては、三十年度において河川で二百、道路が百、計三百、三十一年度で河川四百、道路七百、住宅五十で千百五十、三十二年度で河川が四百、道路八百、住宅五十、千二百五十、こういうことを想定しております。  特に失業者の数の多い九州におきましては、三十年度で河川が遠賀川で五百、その他で七百、計千二百、道路で七百五十、鉄道建設で九百、三十一年度が河川が二千八百五十名、すなわち遠賀川の工事で二千名、その他八百五十、それから道路で四千五十、北九州の水道で五百名、鉄道建設で二千五百名、住宅が百五十名、計一万五十名、三十二年度で総計一万一千二百五十名を予定いたしております。  これらを、資金的な措置によって、かつ現在の失業対策事業等の対策として吸収する予定をいたしております。     〔国務大臣一萬田尚登君登壇
  48. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えいたします。石炭合理化に基きまして失業者が出る、それに対して予算措置はどうなっておるか。今度の措置で、失業者は来年になってからたくさん出るだろう、私はこういうふうに考えておるのでありますが、政府といたしましては、三十年度におきましても、できるだけの措置を講じたい所存であります。三十年度予算におきましても、失業対策費は大幅に増額いたしておりまして、一日平均吸収人員は五万人増加をしてもいいようになっております。なお、各種の公共事業等を炭鉱地方に重点的に施行していく、かようにして失業者の吸収に遺憾なきを期しておるわけであります。(拍手)     〔国務大臣石橋湛山君登壇
  49. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 神田君の御質問に対しては、もう労働大臣大蔵大臣から、あらかたお答えをいたしまして、つけ加えるところがあまりないと思います。  第一の、合理化をせっかくしても、それでコストが下れば、それだけ賃上げされちまうんじゃないか、あるいは、過剰労力の整理、に対して労働組合が反対して、これはできないで、依然としてこの過剰労力をかかえていかなければならぬじゃないかというお話であります。現在の日本の石炭鉱業の状況にかんがみまして、なるほど今までは多少石炭の方面の労働組合にも行き過ぎがあったかもしれませんが、私は、今度の合理化法案には必ず労働組合、労働者も協力をしてくれるものと確信しております。(拍手)もしこの協力がなければ、日本の石炭鉱業をつぶすということなんです。石炭鉱業をつぶしたら、労務者にも決して利益ではないのですから、これは、みんなの利益のために、必ず社会党の諸君も双手をあげて御賛成下さることだと私は確信いたします。(拍手)  失業問題については、すでに労働大臣から詳細に申し上げましたから繰り返しません。  それから、石炭の需要の拡大が大切じゃないかということは、ごもっともでありまして、私どもも、これを決して閑却しておるわけじゃございません。家庭燃料としてガスを大いに奨励する、あるいはさらに石炭化学工業を興す——石油化学工業と石炭化学工業ではおのずから分野が違いますから、これは双方とも育成をしていくことができると存じております。また、火力発電を大いにやるということも、お説の通り、現在すでにそのつもりで着々実行に移しつつあるわけであります。いずれにしましても、石炭の価格が安くなければ需要はふえないのでありますから、その需要を増大するという面から申しましても、すでに神田君自身のおっしゃる通り、この法案によりまして価格の低下をはかるということが根本対策と考えます。  それから、鉱区の整理については、むろん考えております。これは、ただし強制的に鉱区を動かすということはいたしませんが、しかしながら、この交換分合をいたそうと存じております。  それから、国管にするつもりはないか、そういう含みじゃないかということを申しますが、これは、そういう考えはただいま毛頭持っておりません。ただ、それなら何ゆえにかような法案を作って石炭について特に心配をするかと申しますと、これまた御田君の言われる通り、石炭鉱業は基礎産業中の基礎産業でありますから、これがよく行くか行かないかということは、日本の全産業に重大な影響を及ぼしますので、とにかく石炭鉱業というものに特別にわれわれが関心を持たねばならぬというところから、かような法案を提出いたした次第であります。  それから、むろん、この法案によって、ただ石炭の合理化だけですべての問題が解決するものではございませんので、経済六カ年計画等によりまして、日本の経済全体の拡大均衡をほかるという上に立って、初めてこの合理化法案もその実績を上げ得るものと存じておりますから、さような方面にも、われわれはむろん努力をいたすつもりでございます。  以上、お答えをいたします。(拍手
  50. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 永井勝次郎君。     〔永井勝次郎君登壇
  51. 永井勝次郎

    ○永井勝次郎君 私は、日本社会党を代表しまして、ただいま提案説明のありました石炭鉱業合理化臨時措置法案に対しまして、鳩山首相を初め関係各大臣に対し二、三お尋ねをいたしたいと存じます。  本法案は、石炭鉱業の深刻なる不況と石炭労務者及びその家族の悲惨なる生活を背景として提案されたものでありますが、その考え方は、石炭鉱業を日本経済自立の基礎産業として確立しようとしておらないのでありまして、大手鉱山の独占支配の機会として利用しようとしておるのであります。その日のかてにも困っております、一家飢えに泣いております労務者及びその家族にあたたかい救いの手を差し伸べようとはしないのでありまして、首切りの好機としてメスをといでいるのであります。(拍手)     〔議長退席、副議長着席〕 われわれは、この法案にひそめられておるこれらの野心を賢明に見通して検討しなければならないと考えておる次第であります。  第一は、石炭鉱業合理化計画に基く石炭鉱業整備についての諸問題であります。政府は、能率の悪い中小炭鉱三百万トンの生産分を買いつぶして大手炭鉱に集約し、労務者二十八万人を二十二万人に整理する目的をもちまして、炭鉱整備事業団を作り、政府出資四十億円、残存鉱山負担分四十億円、合計八十億円の資金を作りまして、この仕事を推進する予定のようであります。政府は、今回の措置を通じまして、中小炭鉱を買いつぶして大手炭鉱の独占化を強化し、労務者の首切りを正当化して、大手炭鉱中心の安定をたくらんでおるのであります。  そこで、中小炭鉱の整理の問題であります。政府は三百万トン程度を公表しておるのでありますが、実際はもっと多く、五、六百万トン程度をねらっておるのではないかと考えられるのであります。現在の炭鉱数は八百八十ありまして、そのうち、年産五万トン以下の小鉱山は七百三十、生産高にしまして六百二十万トンとなっております。年産五十万トン以上を大手鉱山としまして、十八社、一千三百万トン、五万トン以上を中鉱山としまして、百二十六、生産高一千九百万トンでありまするが、縦坑その他の合理化施策は中鉱山以上に重点的に行われるのでありますから、生産能力がぐっと向上して参りますことはもちろんであります。需要量は生産能力の増強に比例して拡大されるかといえば、生産過剰の苦しみはなお相当長期にわたって続く見通しであります。そういたしますと、買いつぶし三百万トンは少な過ぎる計算となるのでありまして小鉱山六百二十万トンはそのまま整理対象にならざるを得ないではないかと思うのであります。整理資金は八十億よりありません。一応この資金に見合う整理量を公表して、あとは買い上げの実際を通して手かげんを加え、今年買ってもらいたいというのが再来年にならなければ買えないというような時間的なズレによって自殺を待ち、あるいは金融なり石炭価格の評価措置なりによりまして自然淘汰をさせるなど、整理資金を使わないで整理の実効をおさめようとする底意をこの案の中にはひそめておるのではないかと思うのであります。また、労務者の整理、二十八万人を二十二万人にする六万人首切りの計算におきましても、買いつぶし三百万トン、生産四千九百万トンの基礎に基くものでありますから、最小限度の数字でありまして、これらの計算の動きによりましては、さらに出血多量の公算が大であると考えられるのでありますが、この点はどうでありますか。  このような中小炭鉱の買いつぶしと労務者の出血の上に、大手鉱山の集約が行われ、その独占が強化されるわけでありますが、その助成に至りましては、実に至れり尽せりの措置が講じられておるので、この点は一驚せざるを得ないのであります。縦坑六十八本、四百億円、これを含めまして、合理化資金政府投融資は一千二百九十億円であります。もっとも、この中には若干の自己資金を含んでおるのでありますが、一千二百九十億円、金利は五分五厘であります。復金その他旧債三百二十億円はたな上げをして、税金におきましては損金認容範囲の拡大、鉱産税、固定資産税など大幅な減税措置が予定されておるのであります。現在三井、三菱、住友、北炭、常磐の大手五社の生産は、全生産高の四〇%を占めております。合理化完成時におきましては、五〇%目上の独占が完成される見通しであります。もし大手五社を含めた大手十八社といたしますならば、現在でも全生産の七〇%を占めておるのでありますから、合理化完成時には八。彩以上を支配することとなるのであります。中小炭鉱の労務者には金一封の香奠で引導を渡し、どさくさまぎれにこれを残存大手鉱山に集約いたしまして、その経営の安定のためにあらゆる優遇措置を講じようとすることは、独禁法の趣旨に照しましても傍若無人なやり方ではないかと思うのでありますが、これに対して通産大臣の明確なる御答弁をわずらわしたいのであります。(拍手)  第二は、石炭の需給量とコスト引き下げの問題についてであります。需要量は合理化完成時に四千九百万トンと見込まれております。二十九年度は四千二百万トンの生産で六百万トンの貯炭となり、生産過剰が今日の危機の原因になっておるのであります。新しい需要面の開拓に積極的でないこの合理化計画内容から見ますと、重油の消費規正を考慮に置きましても、需要予想は過大に失するのではないかと思うのであります。一方、生産能力は今後の合理化措置によって急激に増大されるのでありますが、需要がこれに伴わないので、生産能力は操短によって死蔵するほかに道はないのであります。コストの五〇%は労務費であり、投下資金の償却や金利負担の増加、炭質の低下及び採掘費の上昇などを予定されるのであります。そして、政府は標準価格を指示することができるのでありますけれども、相手は独占を強化した大手炭鉱であり、営利会社であります。生産原価を無視した計算を押しつけるわけにはいかないし、また、ある程度の適正利潤も見込まなければならないとするならば、コストは引き上げられても下る根拠はどこにもないと思うのであります。もしコストの引き下げができないとするならば、この法案の実施は全く無意味になってしまうのであります。(拍手)残るのは中小炭鉱と労働者の犠牲だけであり、得をするのは大手炭鉱で、その独占と政府のそれに対する財政投融資や減税措置だけでありまして国民の犠牲は断じて承服し得ないどころであります。(拍手)生産計画量は政府が指示することができることとなっておるのでありまするが、合理化完成年度において、もし予定の四千九百万トンを消化し得ない事態となりました場合は、その過剰分を政府が買い上げるとか、その損失を補償する用意があるかどうか、また、二割のコスト引き下げが不可能となった場合は、その政治的責任をどうするのか、この点を明らかにしていただきたいと思うのであります。  第三は、労働対策についてであります。政府の合理化計画によりますと、今後労働者の賃金は上げない、現在員二十八万人は二十二万人に整理をするということになっておるのであります。現在の労働条件は、不況にあえぐ鉱山の経済的条件に圧縮せられまして、非常に低下しておるのであります。請負制のごとき、一日十一時間あるいは十二時間労働というようなひどいところも少くないのであります。自分の生命にやすりをかけるようなこの労働条件を放任しておいて、この土台の上に石炭鉱業の合理化を建設しようと考えておるのでありますか。驚くべきことは、石炭鉱業合理化計画内容には、賃金をストップするという定めだけがあるのでありまして、労働条件の合理化のごときは全然話題にもなっておらないということであります。こういう労務者を生き埋めにするような石炭鉱業合理化計画の合理性を、通産大臣と労働大臣から承わりたいと思うのであります。(拍手)もし労働条件を正常な形に是正しようといたしますならば、現在の二十八万人は整理をする必要がなくなるのではないかと思うのでありますが、この点はどうでありますか。  政府は、整理される労働者を失業対策として吸収しようとしておるのであります。鉄道工事の川崎線のごときは、まだ未確定であります。一般公共事業も、鉱害復旧工事も、現在程度の予算をもってしましては、申しわけにもならぬ程度の些少なものにすぎません。現地鉱山はすでに深刻な様相を呈しまして、三食を満足に食べられる家庭がなくなっておるというような状況であります。これが受け入れと生活保障について、政府はいかなる用意を持っておるのであるか。単なる失業対策としてではなく、計画的な職場転換として、将来明るい希望の持てる方向への動員態勢の確立が今日ほど重要な時期はないと思うのであります。政府の誠意ある答弁を求むる次第であります。(拍手)  最後に、石炭鉱業の合理化を徹底しようとするならば、このような中途半端なものではいけないのであります。経済の総合計画の中における石炭鉱業の合理化であり、総合燃料対策の一環としての石炭鉱業の性格において推進せられなければならないと考えるのであります。縦坑のごときも、何か縦坑を掘ればそれですべてが解決されるような安易な考え方を持っておるのでありますが、縦坑は、まず入り組んでおる鉱区を整理統合して、整理統合された鉱区の中の一番合理的な地点に縦坑をおろす、こういうことから出発しなければならないのに、現在は入り組んだ鉱区を不合理な条件そのままに縦坑をおろそうとしております。これでは効果は半減であります。また、大手炭鉱といっても営利会社であります。営利会社に集約し、その独占を強化しても、国民経済の上にそれが生かされて参らないのであります。また、需要の開拓につきましても、都市のガス事業の強化であるとか、石炭化学工業の振興であるとか、画期的な拡大施策を推進しなければならないのでありまして、この場合、油に対抗するための深刻な諸施策が強力に行われなければならないと考えるのであります。また、石炭産業が国の基幹産業として、その安定振興をはかるためには、現政府のやっておるような私企業の形態においては、この目的は達成できないと思うのであります。最終的には国有、国営を断行し、そろばんをはずして国の基幹産業としての経営を確立し、最も合理的な形における、国民経済の立場における強力な推進が必要であろうと思うのであります。政治の民主化、これは経済の民主化の基盤の上に確立されなければならないと考えるのでありまして、この点について鳩山総理大臣の御所見を承わりたいと存ずるのであります。(拍手)     〔国務大臣鳩山一郎君登壇
  52. 鳩山一郎

    国務大臣(鳩山一郎君) 永井君の御質問に対してお答えをいたします。  本法の提案が独占事業のおそれはないか、独占支配を強化するおそれはないかという御質問でありますが、石橋君が説明いたしました通り、基幹産業として重要であり、経済自立を達成するために緊要と考えたからでありまして、決して独占を強化することは考えておりません。かつ、独占によっての弊害はあくまで排除するつもりでございます。  最後に御質問がありました、国有、国営ということを考えているかということでありますが、国有、国営はもとより考えておりません。  その他の質疑につきましては関係閣僚から答弁してもらいます。(拍手)     〔国務大臣石橋湛山君登壇
  53. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 永井君の御質問にお答えいたします。  もし、永井君が言われるように、われわれが中小炭鉱をつぶしたり、労務者を苦しめたり、そうしてただ大手だけを助けているのなら、何もこんな心配はしない。現状のままうっちゃっておけばそうなる。現状のままで中小炭鉱はおのずからつぶれ、惨たんたる状況になり、労務者も困る。でありますからこの法案を出したのです。  縦坑を掘るのは大炭鉱と言われましたが、いかにもそうです。それは、鉱区の関係上、大炭鉱会社の鉱区が縦坑の対象になるのでありますが、しかし、石炭の最後の五年目の計画によりますと、その縦坑の対象になります山の出炭量は二千二百五十万トン、それから縦坑の対象にならない山の出炭量は二千六百五十万トン、縦坑の対象になる山の方が出炭量から言えば少い。すなわち、半分以下なんであります。だから、縦坑の対象にならない中小炭鉱でも相当いい方が残るのであります。そうして縦坑にも金はむろん要りますが、しかし、この中小炭鉱においてはどういう標準で整理をするかといえば、いずれそれぞれの専門家にかけてやるのでありますが、大体コストとその炭の質を考えて整理をいたします。中小炭鉱の方は坑道が大体浅いのでありますから、縦坑は必要がないが、しかし、運搬設備その他の合理化はやはりいたしまして、相当の資金をめんどうを見るつもりでございますから、お話のように、ただ大炭鉱だけを救済して中小炭鉱をおっぱなすようなことは、第一考えておりませんし、実際にそんなことはできないのであります。だから、どうぞ御了承をお願いします。  それから、石炭が需要が少ければだめだというお話、これは当りまえの話でありまして、先ほど神田君にお答えしたのと同じです。それにつけても炭価が上ってはだめなんでありますから、輸入エネルギーと競争できるだけの炭価にいたさなければならぬ、それには合理化が必要だ、こういう考えでございます。今永井君自身も言われたように、五〇%が労務費でありまして、それで、先ほどの神田君の心配のように、むやみに労務費が上るから、コストが上って困るじゃないかという心配が起りますので、どうか一つ、永井君その他の社会党の各位、あるいは労働組合の諸君のぜひとも御協力をお願いしなければならぬと思います。  それから、需要増加の方法については、むろんできるだけの処置を講じなければなりません。  それから、過剰石炭の処理。もしこの合理化をして石炭の生産がふえて、そうして過剰石炭が現われたらどうするかということ。これは企業者の方から始終心配されまして、これを買い上げるとかどうするとかいうことは、企業者側がしきりに心配している問題でございますが、私どもは、とにかく四千二、三百万トンの炭が処理ができないということに実は疑惑を抱いておるのでありまして、もっと日本の経済が発展をいたし、お互いが、この国民の多くの者が職場が持てるようになれば、言うまでもなく四千二、三百万トンの石炭は消化できるものと確信しておるのであります。その方策をやはり講じなければなりません。  重油規正の問題は、ある程度やるつもりでございますが、しかしながら、これだけにたよって石炭鉱業の発達をはかることは不自然と考えます。  それから、今総理大臣からも答えましたように、国営ということは考えておりませんし、いわゆる国営が万能薬だとほ思いません。国営をやったら、それじゃ石炭の値段が下るか。そういうことはないと思います。のみならず、それをそろばんをはずしてやれというお話であったようでありますが、そろばんをはずしてやれば、それはやれます。やれるが、そのかわりに、非能率の企業をやっていけば、国民の生活がある程度引き下る。さもなければ国際収支が非常な赤字になって、クローズド・エコノミーならやれますが、国際貿易をやっていく経済においては、そろばんをはずした企業というようなのはやれないのであります。これば国営であってもなくても同じことであります。(拍手)さように私は考えております。  それから、賃金ストップということは考えておりません。そんな規定もないつもりであります。賃金のストップをする——これは、ただ石炭だけがむやみに上るということは、私どもは要請しておりませんが、全体の物価あるいは全体の賃金水準とともに石炭労務者の賃金が上ることはむろん当然でありまして、それは何ら石炭鉱業の合理化に支障を来たすものではございません。ただ石炭鉱業だけが特別にもし賃金が上るとすれば、それは石炭の合理化に非常な妨げを生ずるのであります。しかし、そうかといって、われわれはそれを今法律でとめようとはしておりませんから、ぜひともその点は皆さんの御了解を得たい。  それから、職場転換の問題はむろんでございまして、失業対策として、われわれは過剰労務者を処理することは非常に希望するのであります。できるだけ職場転換という形で、つまり失業者の処遇をしたいという点に最善の努力を尽すように、ただいま労働省等とも協議をしている次第でございます。  以上、お答えをいたします。(拍手)     〔国務大臣西田隆男君登壇
  54. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。  ただいま労銀の問題については通産大臣から答弁しましたが、この法律案内容のどこにも労銀を引き下げるという規定はありません。従って、炭鉱企業の機械化、合理化、能率の向上によって消費炭価を下げるというのがねらいでありまして、労銀の引き下げを目標にして作った法律ではございません。(拍手)  それから第二の問題につきましては、先刻神田委員の質問に対しまして長過ぎるほど詳細に御説明申し上げましたから、それで御了承願います。(拍手
  55. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 田中利勝君。     〔田中利勝君登壇
  56. 田中利勝

    ○田中利勝君 私は、日本社会党を代表して、ただいま政府より提案説明された石炭鉱業合理化臨時措置法案に対して若干の質問を行い、かつ政府に対して重大なる警告をいたそうとするものであります。(拍手)  私が政府にまず伺いたい第一点は、政府の石炭コスト切り下げ対策の背景となり土台となる総合経済政策とは何かということであります。政府は、なるほど、総合経済計画の本年度計画として石炭と鉄鋼の合理化を行い、石炭生産は四千三百万トンにふやし、すなわち前年度よりも約百五十万トンの増産を見込んでおるのであります。この増産を裏づける需要を政府はいかにして保証するか、少しも明らかにされておらないのであります。鳩山内閣にこの保証を裏づける政治力は全く認められないのであります。鳩山内閣の政治の方向が、経済自立ではなくして、アメリカ追従から従属への道を進んでいる限り、たとい石油関税は引き上げられても、世界石油カルテルは、日本の物価高につけ込んで、国際相場よりも割高な価格でわが国に石油を供給してくるのであります。しかも、この供給量は、昭和二十六年には重油輸入二百五十万キロリットルであったのでありますが、昨年度には五百五十万キロリットルにふえたのであります。そのために、国内石炭生産減は、昭和二十六年には百二十五万トン、昨年度には六百万トンに達しておるのであります。このように、米英石油資本に圧迫されて、国内石炭の生産は計画通り確保できないばかりではなく、戦前は年間百万トンの日本石炭輸入力を持っていた中共の上海のごとき大消費都市に対する国内石炭の輸出はココムによって妨害されておるのであります。このように、経済自立の方向とはおよそかけ離れた政治力しかない鳩山内閣が、前年度に比べて本年度で百五十万トン、昭和三十五年には八百五十万トンも出炭をふやして、この需要はどこで保証するのか、この需要増加のうちには中共等に対する輸出をも含まれておるのか、国内需要増加はいかなる消費部門でふやすのか、この内容を詳細に経審長官より伺いたいのであります。(拍手)  質問の第二点として、私は政府の石炭産業に対する見解をお伺いいたしたいのであります。わが国の石炭層は、地質的に新世紀層が多いので、炭層も薄く、かつ粘結性の少いところの低品位炭が多いのであります。今や、戦時中や戦後の朝鮮動乱の当時までのように、低品位炭は出炭すればすぐ消費された時代はすでに去っておるのであります。従って、低品位炭のみならず、国内炭全体にわたって、坑内から消費地まで運搬してきた今日までの経営をやめまして、消費地までの運搬コストを節約して、山元で工業原料として活用する対策を、都市ガス、火力発電、石炭化学、家庭用燃料への普及等の面で積極的にはかることが肝要でないかと思うのであります。しかるに、政府案は年次計画として何らの積極的な石炭需要増加対策を持っていないのであります。安定した需要を確立する方策をなぜ立法化して国会へ提出しなかったか、通産大臣にお伺いいたしたいのであります。また、政府の石炭の工業原料化についての政策も詳しくお伺いいたしたいのであります。  次に、政府の中小炭鉱に対する基本的見解をお伺いいたしたいのであります。今さら申すまでもなく、わが国の石炭鉱区の優秀部分はほとんど大手筋炭鉱に独占され、中小炭鉱は自然条件の悪い鉱区で経営されておるのであります。石炭のごとき鉱業では、鉱区という天然に与えられた自然条件そのものが経営内容を左右する大きな経済条件となっておるのであります。従って石炭鉱業における中小企業問題も、商業や工業の場合と同じく、大企業に比べて不利な経済条件に置かれている中小炭鉱をいかにして保護しかつ指導するかということが中心課題となってこなければならないと思うのであります。しかるに、片山内閣の石炭国管が廃止されて以来、石炭鉱業の生産も販売も全く自由に放任されておるのであります。不況になればなるほど中小炭鉱は経済的に不利であり、このような不利な状態のままでは、大手筋と一列に並んで合理化法の適用を受けますならば、中小炭鉱はますます不利の差が深刻となり、拡大されるばかりとなるのであります七政府は合理化実施の前提として中小炭鉱をいかにして生かしていくのか、この基本方針と具体的対策を明らかにされたいのであります。(拍手)  私の質問の第三点は、今回の合理化法案内容についてであります。  第一に、政府は、この法案で合理化という文句を盛んに使用しておりますが、この手段がいかなるものであるか少しも明らかにされておりません。何ゆえに合理化のための生産方法を一切網羅的に法文に明記しなかったか、これを通産大臣にお伺いいたしたいのであります。(拍手)このままでは、合理化融資とは相も変らず大手筋炭鉱の縦坑開さく融資の優先となるだけではないかと思うのであります。昨年中に、中小炭鉱は、開銀融資を十六企業が申し込んで、融資されたものはそのうち六企業だけであります。融資ワクの五億円のうち三億九千五百万円しか融資されません。この審査実情について、大蔵大臣にお伺いいたしたいのであります。  第二に、政府は、石炭整備事業団を業者に設立させて、非能率炭鉱の買い上げを行うこととしておりますが、業者は、これに対して、トン当り十八円程度の均等割賦課金と開銀利子引き下げによる負担軽減分を特別賦課金として分担することになっておるのであります。しかるに、一方では、合理化促進のために五カ年間に四百億円の資金を調達することが必要となっておるのであります。本年度の開銀の石炭融資も六十億円にふえております。本年度は六十億円融資を受けることでありますが、本年度中に返済期限が来る借入金は七十二億円であります。差引十二億円の引き上げとなるのであります。幾ら金利が二分引き下げられても、借入金の総額がふえるのでは、毎年の融資よりも返済金の方が上回ることに相なるのであります。しかも、石炭産業は、不況のどん底にあって、好転の見通しは今のところないのであります。このときに、一体、大手筋にせよ、中小炭鉱にせよ、トン当り十八円の負担に耐えられるかどうか。政府はいかなる見通しを持っておるか、お伺いいたしたいのであります。  第三に、標準炭価の問題についてお伺いいたします。政府は一応上級の一般炭について安定帯価格をきめようとしておりますが、現在では平均してトン当り四百円の赤字を出しておるときに、この標準価格に政府の言うごとく適正なる利潤が織り込まれるかどうか、すこぶる疑問とするところであります。まず、適正なる利潤とはトン当りいかなる金額であるか、及びいかなる利潤率であるか、お伺いいたしたいのであります。また、大手筋炭と中小炭とでは、同一銘柄につきトン当り一千円の価格差があるのであります。これは、中小炭鉱の販売機構が直接大口需要に結びつきが薄いので、中間商人にマージンを搾取されているからであります。従って、標準価格を一応設定いたしましても、中間商人の手に握られている中小炭の価格は、必ずこの標準価格の裏をかいて価格潰乱を行うことであろうと思うのであります。従って、石炭価格安定のためにも、また中小炭に対する中間商人の悪質なる不当利得を抑制するためにも、中小炭の共同販売機構を確立する必要があると思うが、どうか。この点もお伺いいたしたいのであります。(拍手)  第四に、政府案は五年間に五万七千人の人員整理を予定しております。これに対する雇用受け入れば全くの作文にすぎないのであります。その作文も、不安定かつ一時的な失業救済的需要が多く、国鉄新線工事や重要産業間の雇用転換のごときは、まさに絵にかいたもちが横に並んでいると言っても過言でないのであります。石炭地帯の習慣として、大手筋の失業者は中小炭鉱に転入することができますが、中小から大手筋に転入することは絶対にあり得ないのであります。北九州、長崎、常磐、北海道等の炭鉱地帯では、ボタ山の谷間に、電気の配線も打ち切られたあばら家の、廃坑となった炭鉱の社宅の長屋がひっそりと並んでおります。その家の中には、満足に三食もとることのできない親子が、まっ暗やみの中で、ろくに畳もふとんも敷かない床の上に力なく横になっておるのであります。これがまじめに増産に努めてきた石炭労働者諸君に対する政府のおそるべき贈りものであります。(拍手)私は、このような政府の完全雇用という公約とまさに正反対の産業政策には断じて承服できないのであります。現在炭鉱関係の失業者が幾らいるのであるか、これが本年度中に幾らにふえるのか、これに対する失業対策の予算措置はいかに行われておるのか、労働大臣に具体的にお伺いいたしたいのであります。  私は、この政府案は大手筋保護のための首切りと中小整理の犠牲によってなされるものと思うのであります。これは、政府が意図している鉄鋼、機械、硫安、造船その他の基礎産業に対して行う合理化法の作成の第一着手であるのであります。すなわち、わが国の産業資本編成を独占資本中心に再編成するための、労働者と中小企業の出血を法律の名によって行わんとするものなのであります。(拍手)何ら根本的な産業安定対策や雇用拡大対策は用意されていないのであります。従って、この法案は、保守勢力がわれわれ革新勢力の台頭に対して投げつけた挑戦であると思うのであります。  私は、最後に総理にお伺いいたしたいのであります。経済自立、拡大生産の前提として、生産の合理化、集中化、価格の適正化の必要なることは、勤労国民全般は承知しているのであります。ただし、資本家と政府のみが一方的に取りきめて、これをわれわれに押しつけることには反対しておるのであります。(拍手)総理は、重要産業政策に対する国民の協力態度をいかにして作り上げていく方針か、明らかにされたいのであります。今回の石炭合理化法案は、全くその準備に欠けておると思うのであります。総理の所見をお伺いいたしたいのであります。  私は、ここで質問を終了するに際しまして、わが党はこの法案に絶対反対することを表明します。わが党は、石炭産業安定についての具体的な構想をあらためて政府並びに国会に提出し、政府案と対決することを、勤労国民諸君に約束するものであります。(拍手)     〔国務大臣鳩山一郎君登壇
  57. 鳩山一郎

    国務大臣(鳩山一郎君) ただいま、最後に、田中さんから、国民の協力を求めないで案を出したような御質問でございましたが、決してそうではないのであります。この法案を出すに当りましては、経済界及び学識経験者等の意見を徴しておりまして、十分世論をくんだつもりでございます。(拍手、「それで終りか」と呼ぶ者あり)その他については私に質問はないのです。(拍手)     〔国務大臣高碕達之助君登壇
  58. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 御質問にお答えいたします。基幹産業中の基幹産業であるこの石炭鉱業につきましては、総合エネルギー対策の一環といたしまして、これを合理化して、そして価格を低くし、価格を安定せしめるという方針をとっておるわけなんでございます。その結果、需要についての計画があるか、こういう質問でございますが、これにつきましては、石炭がすべての産業の基礎になっておりますから、この価格を引き下げて安定せしむることによりまして、すべての産業が、輸出産業といたしまして、価格を低下することに相なるわけなんであります。従いまして、さしあたり、石炭の合理化ができますまでの間は、現在多少輸入されておりますところの石油  の輸入につきまして規制をいたしまして、ボイラーの重油規制という法規も提出せんといたしておるわけなんであります。そういうふうにいたしまして、輸入する石油のかわりに石炭を充てると同時に、山元におきまして、低品位炭を用いまして、火力発電用に使うということと、あるいは製塩事業を起すというふうなことを考えますと同時に、石炭の化学工業用ということにつきまして十分の措置を講じたいと存じます。(拍手)     〔国務大臣石橋湛山君登壇
  59. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 需要増加の裏づけがあるかというお尋ねについては、ただいま高碕長官からお答えがあり宮した。その通りでありまして、これは、概括的に申せば、日本の経済全体が繁栄するということがすなわち裏づけになるのであります。日本の経済が衰微いたしたら、石炭の需要もおのずから減少するのは当然であります。われわれとしては、経済六カ年計画によって日本経済全体の発展をはかるということに努力すべきものと思います。  それから、石油の規制というものは、実は非常に不自然なことだと私は思います。これを規制してようやく日本の石炭を助けるというようなことで日本の石炭は助かるものじゃない。けれども、これは過渡的措置としてやむを得ないと思いますが、お話の通り、もし日本の石炭がほんとうに自立をする、そして日本の経済の基盤になるというのには、やはり炭価のコストが下らなければいかぬ。そのためにこの法案を出したわけでありまして、御趣旨と何ら相違がないと思う。  山元にて石炭を利用することをやったらということ、これはむろん考えておりまして、できるだけのことを処理いたし、今後もそれに進んで参るつもりであります。  それから、合理化によりまして中小炭鉱が不利に陥るということは私はないと確信しております。それは、さっきも申しましたように、これをやらなければ、中小炭鉱の中の弱いものがおのずからつぶれてしまう。これはかえって非常なことになる。そうじゃない。われわれは強制的につぶそうとか買おうとか言っているのではないのでありまして、炭鉱主がどうしても経営上買ってもらいたいというものに対しては、買い上げてその救済をする。同時に、中小炭鉱が生きるということは、すなわちそこの労働者が生きるということであります。それから、さっき申したように、中小炭鉱は縦坑に要らないかもしれぬけれども、やはり運搬その他の設備の合理化をいたすのであります。そうして、中小炭鉱にしてコストの下るものはどこまでもやっていくようにするのでありますから、特に中小炭鉱が不利に陥るということは絶対ございません。  それから、中間取扱い業者の問題は、確かにそういう弊害も石炭には特にあるように存じますから、これは十分に注意して、できるだけ中間取扱い業者が不当なことをいたさないようにいたしたいと存じます。  それから、炭鉱労務者が非常な悲惨な状態にあるというお話、これもわれわれ重々存じておりまして、そのために暫定的な措置もとるようにただいま努力いたしておりますが、しかし、それにつけても、やはり中小炭鉱その他をあわせて日本の炭鉱業全体を生かす工夫をすることが、やがて今の悲惨な状態を改める方法だと私は信じております。  国民の協力態勢については、先ほど総理からお答えがありました。これは、国会の御審議を受けるということも国民の御協力を願うことなんでありますから、決してわれわれは勝手にやっておるわけじゃございません。  それから、日本社会党は絶対これに御反対だということは、実に私は意外であります。反対される理由はないと思います。いずれこのことは委員会等において御了解があることと存じますが、絶対反対ということは、私は実に意外なんであります。これだけ申し上げておきます。     〔国務大臣一萬田尚登君登壇
  60. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 中小炭鉱に対する融資の問題でありますが、中小炭鉱と地元銀行との関係は非常に密接な関係にあります。今日、地元銀行の中小炭鉱に対する融資は、銀行に対してはむしろ重圧になるくらいに出ておるのであります。政府機関といたしましては、昨年度、中小企業金融公庫から約十億程度出ております。もっとも、開発銀行から三十億くらい出るはずですが、これは、はなはだ申しわけないですが、若干審査に手間を取っておるようであります。それで実際に金が出るのがおくれております。今督励をして早く出すようにいたしておる。これが今日の中小炭鉱に対する金融の状況であります。(拍手)     〔国務大臣西田隆男君登壇
  61. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。失業者の吸収に対する方策はペーパー・プランじゃないかというおしかりでございますが、決してペーパー・プランではございません。実行するつもりで計画を立てております。さよう御承知を願います。詳細にわたっては神田議員に御説明申し上げた通りであります。(拍手
  62. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  63. 長谷川四郎

    ○長谷川四郎君 恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案及び健康保険法の一部を改正する法律案趣旨説明は延期し、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  64. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  65. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって動議のごとく決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時八分散会