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1955-07-13 第22回国会 衆議院 法務委員会社会労働委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月十三日(水曜日)    午前十一時一分開議  出席委員   法務委員会    委員長 世耕 弘一君    理事 山本 粂吉君 理事 三田村武夫君    理事 馬場 元治君 理事 福井 盛太君    理事 古屋 貞雄君 理事 田中幾三郎君       椎名  隆君    高橋 禎一君       長井  源君    林   博君       松永  東君    眞鍋 儀十君       猪俣 浩三君    神近 市子君       細迫 兼光君    淺沼稻次郎君       細田 綱吉君    吉田 賢一君       志賀 義雄君   社会労働委員会    委員長 中村三之丞君    理事 大石 武一君 理事 中川 俊思君    理事 大橋 武夫君 理事 山下 春江君    理事 吉川 兼光君       植村 武一君    小川 半次君       亀山 孝一君    菅野和太郎君       草野一郎平君    横井 太郎君       加藤鐐五郎君    小林  郁君       高橋  等君    中山 マサ君       野澤 清人君    八田 貞義君       福田 昌子君    横錢 重吉君       受田 新吉君    神田 大作君       山口シヅエ君  出席国務大臣         法 務 大 臣 花村 四郎君         文 部 大 臣 松村 謙三君         厚 生 大 臣 川崎 秀二君  出席政府委員         警察庁長官   石井 榮三君         警  視  長         (警視庁刑事部         長)      中川 董治君         法務政務次官  小泉 純也君         検     事         (刑事局長)  井本 臺吉君         文部事務官         (社会教育局         長)      寺中 作雄君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巌君         労働政務次官  高瀬  傳君  委員外出席者         労働事務官         (婦人少年局婦         人労働課長)  谷野 せつ君         労働事務官         (婦人少年局婦         人課長)    高橋 展子君         参  考  人         (警視総監)  江口見登留君         参  考  人         (警視庁防犯部         長)      養老 絢雄君         法務委員会専門         員       村  教三君         法務委員会専門         員       小木 貞一君         社会労働委員会         専門員     川井 章知君         社会労働委員会         専門員     引地亮太郎君         社会労働委員会         専門員     浜口金一郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人招致に関する件  売春等処罰法案神近市子君外十八名提出、衆  法第一四号)     —————————————   〔世耕法務委員長委員長席に着   席〕
  2. 世耕弘一

    ○世耕委員長 これより法務委員会社会労働委員会連合会を開きます。  先例により私が委員長の職務を行います。  売春等処罰法案議題とし、審査を進めます。まず提案者より趣旨説明を聴取いたします。提案者神近市子君。     —————————————
  3. 神近市子

    神近委員 ただいま議題となりました売春等処罰法案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  戦後の混乱期におきまして、社会不安、道義の頽廃等の影響を受け、売春をする婦女の数が著しく増加いたしましたことは、すでに御承知通りと存じますが、その後わが国独立を獲得し、社会秩序も追々に回復して参りました今日においても、なお、売春をする婦女の数がおびただしいものがありますことは、まことに遺憾のきわみと存じます。  申すまでもなく、売春は、健全な性道徳を破壊し、善良な風俗を乱し、また、おそるべき性病を蔓延させる原因となるものでありますが、一方、それは婦女の純潔を害し、その基本的人権を無視する行為でもありまして、現代の文明国家におきましては、ぜひともその絶滅を期さなければならぬものと考えるのであります。  ところで、わが国における売春形態を概観いたしますと、古くからいわゆる公娼私娼とが存在しておりましたことは、御承知通りでありますが、占領時代に、一九四六年一月二十一日付連合国最高司令官の、日本における公娼廃止に関する覚書によりまして、表面上は一応公娼その他契約に束縛された私娼制度廃止を見たのでありますが、事実におきましては、依然として娼家及びこれに隷属する私娼と認められるものが、形を変え公然と存在しているといわざるを得ない実情にあるのであります。かかる実情というものは、とりもなおさず、一面においては身体及び意思の自由を拘束されて日夜売春を行うことを余儀なくされている女性があり、他面においてはかかる白色奴隷ともいうべき女性搾取して、その肉体的精神的苦業による利得をむさぼる業者があることを示すものでありまして、かかる事態は、日本国憲法基本的人権を確立し、個人の自由と尊厳とを宣言し、その奴隷的拘束を排除している趣旨に全く背反するものといわなければなりません。わが国独立を獲得し、民主主義国家として鋭意再建に努力を払っておりますときに、かかる封建的な暗黒面の存在を許すことは、根本的に矛盾する事態であるばかりでなく、将来国際連合に加盟した暁におきまして、世界人権宣言の目的を実現し、他の民主主義諸国家と肩を並べて、国際社会に名誉ある地位を占めようとするためにも、重大なる障害となるものと申さなければならないのであります。  以上のような事態に対処いたしまして、売春売春をさせる行為等絶滅を期するためには、もとより国民一般民主主義的自覚道徳的観念の高揚、衛生思想普及向上にあわせて、民生の安定のための諸施策に待たなければならないことは言うまでもないのでありますが、これと同時に、売春及び売春をさせる行為等処罰する立法措置を講ずべき必要のあることが痛感されるのであります。  現在におきましては、昭和二十二年勅令第九号婦女に売淫をさせた者等処罰に関する勅令が、昭和二十七年法律第百日十七号ポツダム宣言の受諾に伴い発する法務関係諸命令の措置に関する法律によりまして、独立後も法律としての効力が与えられているのでありますが、この勅令は全文わずかに三カ条に過ぎず、その効果はあまり期待できないのであります。さき昭和二十八年三月三日、第十五回国会において売春等処罰法案が参議院において議員から提出されましたが、これは同年三月十四日、衆議院解散のため廃案となりました。その後、昭和二十九年五月十三日、第十九回国会において再び売春等処罰法案衆議院において議員から提出されましたが、この法案は第二十回国会継続審査措置をとられたものの、同年十二月九日をもって廃案となりましたので、同年十二月十日、第二十一回国会において三度同法案衆議院において議員から提出されたのであります。しかしこの法案も、昭和三十年一月二十四日、衆議院解散のため廃案となりました。  以上が最近における売春等処罰に関する法律案の立案並びに審議の経過でありますが、ひるがえって諸外国立法例を見ますれば、今日の民主主義諸国家におきましては、売春及び売春をさせる行為等処罰するために法制を具備しているものが多いのでありまして、さきにも申し述べましたように、将来わが国国際連合に加盟いたすためにも、この際、国際連合が採択いたしましたところの人身売買及び売春により利益を得る行為禁止に関する条約の趣旨を尊重した法律を制定いたしますことは、きわめて必要なことと考え、また、今日世論において売春及び売春をさせる行為等処罰に関する法律の制定を要望する声が高まっておりますので、この世論ここたえるために この法律案を立案提出いたした次第であります。次に、この法律案内容概略につき御説明申し上げます。  第一に、この法律案におきましては、売春の定義を掲げて、婦女が対償を受け、または受ける約束で不特定の相手方と性交することをいうものとし、その売春をした者及びその相手方となった者をともに処罰することにいたしました。  第二に、売春の周旋、勧誘及び売春を行う場所を供与した者も処罰することにいたしました。  第三に、婦女を欺き、もしくは困惑させて、または親族、業務、雇用その他の特殊関係を利用して売春をさせた者も厳重に処罰することにいたしました。さらに、その者が婦女からその売春の対償を収受し、要求し、約束した場合には、刑を加重して、一年以上十年以下の懲役または五十万円以下の罰金に処することにいたしました。  第四に、婦女売春をさせることを内容とする契約の申し込みまたは承諾をした者を処罰することにいたしました。これは、当然公序良俗に違反する行為でありますから、かかる契約が無効であることは論を要しないのでありますが、これに刑罰規定を設けることによって、人身売買を防ぎ、婦女を奴隷的に拘束するがごとき関係成立を防止しようとするものであります。第五に、売春施設を経営し、または管理した者、及び売春施設の経営に要する資金、建物その他の財産土利益を供与した者を処罰することにいたしました。なお、以上の罰則には、情状により懲役及び罰金を併科し得ることとし、さらに第六条から第八条までの行為については、取締りの徹底を期するため、いわゆる両罰規定を設けることにいたしました。  以上、立法趣旨及び本法案の要点につき御説明申し上げました。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことを希望する次第であります。
  4. 世耕弘一

    ○世耕委員長 これにて趣旨説明は終りました。  次に質疑に移りますが、質疑は通告に従ってこれをお許しいたします。中川俊思君
  5. 中川俊思

    中川委員 ただいま議題となっております売春等処罰法案でございますが、ただいま提案者提案理由を拝聴いたしまして、まことにもっともなことだと私は感じておるのでございますが、ただ問題は、売春を行なった者、あるいはこれに関係した者を処罰するだけでこの売春絶滅できるかどうか、こういうことでございまして、私ども法制関係に今日まで委員としてやってきたものといたしましては、この問題か一番大きな問題でございます。そこでまず提案者お尋ねいたしますが、現在売春婦総数全国でどのくらいお見込みでございましょうか。さらにまたこの売春婦売春をいたしました際にこの懲役の刑に処せられる程度の者がどのくらいあるお見込みでございましようか、まずそれからお伺いをいたしたいと思います。
  6. 神近市子

    神近委員 その点で労働省の御調査が昨日の新聞に発表されましたので、正確を期するために、労働省側から御答弁をお願いいたします。
  7. 高瀬傳

    高瀬政府委員 集娼地域に集まっている人たちは十二万九千人ばかりあります。
  8. 中川俊思

    中川委員 きわめて少い数のように伺うのでありますが、そういう地域に集まっておる者だけが十二万九千人、しかし全国各地におきまして、この法律がもし実施されました場合に処罰対象になる者等は一体概数どのくらいか、その点おわかりになりませんか。
  9. 高瀬傳

    高瀬政府委員 大体推定された総数は三十万から五十万程度だろうと思います。
  10. 神近市子

    神近委員 ただいまの御答弁通り、さしあたってこの法律成立によってある取締りが行われますのが十二万九千、あとの三十七万という数は、一応青線とか、あるいはその周辺の同じ業務に携わっている人たち推定数でございまして、これは表面飲食店でございますとか、あるいは飲み屋でございまして、一応営業形態は持っているのでございます。ですから、この法律ができますと、その人たちはそこの従業婦、たとえば出前でございますとか、料理の手伝い人でございますとか、そういうような業務に即刻そのまま移ることのできる形態でございます。
  11. 中川俊思

    中川委員 提案理由の中に、諸外国立法例を見ても、今日の民主主義諸国においては、売春及び売春をさせる行為等処罰するための法制処罰するための法制が具備されておるものが多い、こう書いてございますが、確かにそうだろうと思うのです。にもかかわらず欧米先進国におきましてもやはり売春が行われておる、ここに大きな根本問題を究明しなければならない点があるのではないかと実は私ども考えておるのであります。売春婦は家庭の事情によってなった者も多いと存じますが、そればかりでなく先天的の性格異常者もまた多いのではないかと思うのであります。そこで、ただ単に罰金懲役、拘留もしくは科料のみによって彼女らを更生せしむることはきわめて困難ではないかということは、実は冒頭申し上げた通りでございます。しかるに、本法案を見ますと、本法案中には売春をした者に対しては、罰則規定があるのみで、積極的に売春婦を更生せしむるための規定がきわめて薄弱のように感ぜられるのでございます。売春に対する取締りの強化と相待って彼女たちを更生せしむるための特別な更生施設を充実することが大事なことは冒頭申し上げたのでありますが、これがすなわち健全な社会秩序の維持に寄与するものだと実は私ども考えておるのであります。こういう問題に対していかなる対策をお持ちでございましょうか。さらにまた予算関係等はどういうふうにお考えになっておるのでございましょうか。その点をお伺いいたしたいと思います。
  12. 神近市子

    神近委員 諸外国の例を見ましても売春がなくなった国はないのじゃないかということはしばしば繰り返される議論でございます。しかし日本のように集団となって大っぴらに営業しているという国はないのでございまして、その集団であるというところに一番大きなガンがあるのでございます。組織化されている、そうしてあくなき搾取がその女の人たちから行われている。きょう私が社会労働委員の方々のお手元に差し上げました参考豊科は、その例としていかに搾取がひどいか、そうしてそこにいる人たちはあしたどうして食うかということよりは、きょう抑圧されて、いじめられているどん底の生活、泥沼の中から早く助けてくれというのが、今私が受け取っている手紙の全部でございます。それで、第一に集団営業組織企業組織とまでなっているものを置いてはならない、そこがあるために人身売買が行われ、貧乏だ、貧乏だということが理由になっておりますけれども、結局そこに落ち込む人が多くなるということ、それから外国の例でございましたが、これはほとんど禁止が多いのでございまして、日本黙認制度でございますけれども公娼制度の残っているところはトルコとコスタリカにすぎません。そうして国連の調査によりますと、公認制度あるいは日本黙認制度でございますけれど、そこに人身売買が、最もひどく行われている。それで私どももこれに予算をつけたいということは心からの希望でございますけれど、議員提案でございまして予算をつけることは不可能であるということ、そして今これは修身法案だというような御非難も受けておりますけれど、まだこの意味で、このことは悪いのだ、やってはならないのだということを国家が明示するだけでも効果は半ばあるというところに立脚して私ども考えたのでございます。幸いにただいまの厚生大臣は非常にその点で御考慮があるという方だということで知られておりますけれど、幸いにしてもしこの法案が通った場合にはこうしようという御成案を厚生省で内々御審議ということが新聞に二回伝わりましたので、私どもは非常に喜んでおるのでございます。今申し上げました通り、十二万九千人でございますが、この施設収容しなければならないという入は今までの例によりますと非常に少いのです。そうして法律ができればどこかに職を求め、縁故をたどって働く場所を作るということが今までの例として多いのでございまして、私どもも約千人ぐらいかというような目測を立てております。これはたとえば、婦人団体で、たったそのくらいのことならば、われわれが一人が一人を引き受けるというようなことをしようじゃないかということもありましたけれど、これは国家がするべきことで、個人にそれほどの負担をお願いするというわけにはいかないだろうといって差しとめたこともございます。二千人であれ、三千人であっても、一人が一人をめんどうを見るという婦人の間の運動が起りますならば、これは何とかなるんじゃないかということも考えました。それから私どもがこの法案婦人議員団相談をして作成することになりましたのは、全国婦人たち要望が強くてそうして私ども婦人議員団という名前がついておりますので、この婦人たち要望を無視することができなかった。そうするとわれわれに立法だけ請願して、そうして自分たちはその協力態勢をやらなければならないということは私はなかろう、婦人団体にある呼びかけもできるというようなことで苦しいながら、処罰面だけの立法をしたのでございます。
  13. 中川俊思

    中川委員 神近さんのお話を聞いておりますと、きわめて簡単なように思われるのですが、諸外国におきましても公娼制度は認めておりませんが、しかし欧米先進国に参って視察をしてみましても、こういう問題はしばしばどこの国でも私娼がはびこりまして問題になっておるように私どもは実は伺っておるのであります。更生施設に対して議員立法であるから予算にはあまり関係していないということでございますが、これも一応やむを得ないといたしまして、ただいま伺うところによりますと、厚生当局におきましては、もしこの法案が議会を通過することになればある程度腹案があるように今伺ったのでございます。もしありといたしますならば、むろんまだ法案が通過していない現状でございますから、詳細なことはおきまりになっていないと存じますが、三十万から五十万に及ぶこの売春婦に対する予算は一体どのくらいに見込んでおられるのか。さらにまたこの更生施設としてはどういうような点をまず取り上げて、この三十万から五十万に及ぶ売春婦の処置を考えておられるのか、概略でよろしゅうございますから、一つお聞かせを願いたいと思うのであります。
  14. 川崎秀二

    川崎国務大臣 先日の法務委員会においてもお尋ねがあったのでありますけれども、ただいま重ねて予算の問題につきましてお尋ねでありまするから厚生当局考えておりますことにつきまして明らかにいたしておきたいと思うのであります。これは今日売春状態につきましては、今回は売春等処罰法案として議員提案になっておりまするけれども、もとより社会不安あるいは経済的事情のために今日のごとき残忍なる状態が起っておることについては他の役所よりも一そう責任を感じなければならぬ立場にあることは事実でございます。従いましてこういう状態がなくなるように国の施政を持っていくことが何といたしましても必要だとは考えておりまするけれども、不幸にしてかような状態でありますが、もしこの法案が今国会において両院の通過を見るということになりますれば、これは非常に重大な社会的変化を及ぼすものでありまするから国の施策根本に触れまして、財政状態ともにらみ合せて相当な検討をしてみなければならぬことになると思うのであります。従って果して私どもの今日素朴に考えておりまするものが明年度予算に計上し得るかということになりますると、それは国の世論あるいは相当な政府の決意を持ってしなければ実行はなかなか期しがたいとは思いまするけれども、今日国警労働省等調査によりますと、この法の対象となっておりまする売春婦はおよそ五十万名と推測されるということでありまして、司法警察当局等取締りの状況に応じて相当の収容保護施設を与えなければならぬ、こういう考え方を持っておるのであります。そこで現実的にどの程度収容しなければならないかということはいまは明らかでありませんので、はっきりしたところはつかみ取り切れないのでありますが、この間この委員会におきまして国警当局が表明されたところによると、年間五万人を送検する見込みだ、こういうことがありましたので、それならば一体どういう計算が成り立つかということで、私どもの方の計算といたしましては、かりに五千人として約八億円要りまするから、五万名とすれば約八十億、この内容につきましては施設設置費におきまして、建物を二寮当り五十人収容として一寮が千二百万円でありますから、千寮で百二十億、そのうち二分の一国庫負担として六十億収容施設費にかかるわけであります。それから収容しましたる場合に国がどういう給与をするか。それに対しては、やはり食費、事務費等の十分の八を持ったらどうかという考え方を持ちまして、二割は地方負担ということになるわけでありまが、この費用が十九億二千万円、そこで六十億プラス十九億二千万円として、約八十億の費用を大体計上いたしまして、もしこの国会において両院を通過するというような非常な事態が起りますれば、厚生当局としてはそういう措置をいたしたいということを先般答弁をいたした次第でございます。
  15. 中川俊思

    中川委員 大へんなことだと思うのですが、聞けば聞くほどむずかしくなる。第一、十分の八を国庫が持って、あと地方負担だといっても、御承知通り目下地方財政は非常に逼迫いたしておりまして、こういうものが果して持てるかどうかということも、私は一つの問題だろうと思うのです。さらに五万人というものを一カ年間に送検する、そうしてその施設を作って、これに要する費用が八十億、こういうようなことで、なかなか五十万人からおりますものを処置していくのには、大へん国庫負担、並びに地方負担になると思うのでありますが、一応厚生当局のお考えはお考えとしてお聞きをいたしておくといたしましても、提案者といたしましては一つ国とよく御相談の上——私は先ほども申しました通り更生施設が一番根本の問題だろうと思う。ただ処罰すればいいというのならこれはできるかしりませんが、現に検察当局におきましても、とてもこの法案ができても処罰はできないということを言っておる。そういう状態でございますから、一つ政府と十分に御研究の上更正施設等において私どもの納得の行くような法案を研究していただきたいと思うのであります。さらに売春婦保護窓口でございますが、これは一体どういうふうにお考えになっておりますか。たとえば警察もございましょう、それから先ほど来言っております面から考えられることは、福祉事務所であるとか、あるいは民生委員をどういうふうに活用するとか、あるいは職業安定所関係もある。少くとも当分の間は保護のために特別の統一の窓口を作る必要があるように私は考えておるのでございますが、これに対してはどういう御腹案がございましょうか。
  16. 神近市子

    神近委員 さっき私が五十万の人を今すぐに収容するとかあるいは調査するとかいうことにつきまして、集娼と散娼との区別を申し上げたことは、お耳に入っているでしょうか。その点を強く考えていただきたい。それから政府との話し合いによってこれを進めろということは大へんありがたい御忠告でございまして、私どもも機会さえ与えられれば、進んで政府と御協議いたしまして、そしてこれをなお容易であり、なお効果のあるような法案にしたいということは同感でございます。どうかそういうあっせんの労をとっていただきたいと思います。それから窓口の問題でございます。これは厚生省関係民生委員、あるいは警察の方からはおそらくこの相談所、都庁のような自治体からは民生局、そういうような機構はあると思います。厚生省の方はそういうお話を今なさって下さるそうですけれども婦人少年局で三千人でございましたか、協助員というものを昨年あたりから委嘱してございます。それはもともと転落防止の場合、農山村の端々に至りますまで、そういう場合の相談所にこれを使いたいというのが御意見であったと私は考えます。各方面、この法律ができないものですから、今までなかったものですから、そういう機構が全部うまく運営、あるいは活発に動くことができなかったのですが、今度これができましたために、そういう制度も急に活気を帯びて活動することができるようになるのだと考えます。
  17. 川崎秀二

    川崎国務大臣 法案が通過しました場合におきまする措置でございますが、ただいま主でのところの更生保護施設というのは、もうすでに中川委員においては御承知と思いますけれども、従来までの更生保護施設は、御承知のように全国で十七施設、定員約七百名程度を入れております。これの入寮者の経路でありますが、これは警察関係、第二に各種の相談所、第三に社会福祉事務所、第四に裁判所、観察所、第五に病院、第六に社会事業施設団体、それから最後には本人のかけ込みといいますか、本人の訴えということになって今日まで取り扱ってきておるのでございまするけれども法案が通過いたしました場合、さっき申し上げました予算措置を実施する場合の機構でありますが、その場合はやはり統一した婦人相談所というものを設けまして府県内における婦人保護関係の統一的窓口にする、こういう考え方でございます。
  18. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 厚生大臣にちょっとお伺いしますが、もしこの法案が通ったとするならば約六十億と十九億二千万円、八十億程度かかる、こうおっしゃいましたのですが、実際は今度、今まで各業者から税金をとっておる、それが十数億になりておる。さらに売春婦連中が国もとの兄弟あるいは親に送っておる、それらを総合すると八十億程度ではとうていできないと思う。入る金が入らない。それを考えなければならない。出すものは出すということになりますと、少くとも百数十億になるようなことに考えられるのですが、どうでございましょうか。
  19. 川崎秀二

    川崎国務大臣 先ほどお尋ね婦人保護施設についてどう考えておるか、その費用は幾らかということでございましたので、一応の目安といたしまして五十万人の対象ではあるけれども国警のあげた五万人送検ということに基いてこの程度考えられることであるということで御答弁を申し上げたのでありますが、ただいまのお尋ねは職業転換あるいは本人が親もとに送っておるというような総合的な経済基盤といいますか、そういう問題についてお尋ねでありますので、それはまことにその通りでございます。これは厚生大臣の所管ではございませんけれども政府として統一的見解を申し上げるならば、そういう大きな変化というものを予定してかからなければならぬことはもとよりでございます。
  20. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 私はこう考えておるのですが、これの問題はひとり厚生大臣の所管ばかりでなく、こういうような社会問題は、政府も与党も並びに野党も、各協力を願って、そうして国民全体の協力を願わなければこの問題は私は解決しないと思うのですが、厚生大臣、いかがでございましょうか。
  21. 川崎秀二

    川崎国務大臣 まことにお尋ね通りであります。従って政府といたしましても売春問題に対しましては吉田内閣以来、これはひとり各政党の政策というのではなくして、超政党的な大きな問題でもありまするし、売春問題対策協議会というものを設けまして今日具体的な草案を練りつつあるというところであったのであります。その最中でありますが、今日社会不安の状況からみて、また諸外国に与える影響からみて、売春問題対策協議会の答申を待つことができないというようなお考えであろうと思います。これは推測でございまするけれども、そういうような意味合いで議員提案がされておることと思いますので、政府としてはいま少しく十分に検討をいたしまして、各種の角度からこの問題を取り扱って結論を出そうとしておるのが今日の状況だと私は承知をいたしておるのでございます。
  22. 世耕弘一

    ○世耕委員長 ちょっと中川君に御相談申しますが、文部大臣は参りましたが、他の委員会もあってお急ぎのようで、退席を望んでおられますから……。
  23. 中川俊思

    中川委員 私はもう一点だけです。  これは大きな問題でございまして、今厚生大臣のおっしゃる通り、なかなか厚生省だけの問題でもなく、また労働省だけの問題でもなく、文部省だけの問題でもないと思いますから、せっかく政府においてそうした総合的な観点から御研究されておるときでもありますので、今かれこれ言ってみたところでまだ研究の成果が上っておるわけではないのでございます。そこで御答弁もむずかしいと存じますが、せっかく提案者がこれだけの熱意を持ってやっておられるのでありますから、一つ政府においても早急にこの問題については結論をお出しになって、何といっても国家予算を伴う問題でございますから、一つ完璧を期する意味で拙速もいいかもしれませんけれども——拙速と言うとおしかりをこうむるかもしれませんが、とにかく慎重に考慮を願いたいと実は考えておるのであります。  そこで私は最後にお尋ねをいたしますが、この法案の第二条に「不特定の相手方」ということがあるわけでございますが、「不特定の相手方」とは一体どういうものをさすのか、これを一つお聞かせ願いたいと思います。
  24. 神近市子

    神近委員 今までいろんな法案、あるいは外国立法例を見ましても、この文字が使ってあるのでございます。これは対償を受けても特定しているとめかけとかオンリーとかになりますけれども、不特定で、あしたに源氏を迎えてゆうべに平家を送るというようにアトランダムで、お金を持って来さえすればどういう人でも相手にする、そういうような意味でございます。
  25. 中川俊思

    中川委員 具体的なことになりますが、駐留軍用のオンリーなんかは不特定ですか。
  26. 神近市子

    神近委員 そのオンリーのことがいつでも問題になるのです。非常に工合よくいって国際結婚が行われて幸福にアメリカで生活しているという例も多多ございます。そういうような人間的な関係、あるいは感情がより多くそこにある場合には、これは結婚予備の行動だというふうに考えなければなりません。しかしオンリーといわれる人たちで、三人も五人も、この週は月曜日にはA、火曜日にはBというような状態を持っている女の人、これは、私は不特定と数えてよろしいと思うのです。それは芸者さんなんかの場合もそうでございます。たとえば二人なり三人なりのだんなを持っている。そのだんなが今は特定しているかもしれませんが、よそへ転任するとかあるいは何かの事情によって財産がなくなる、そういう場合には今度はEあるいはFというような候補者が出てくる、こういうことを予想しますと、私どもはこれは不特定の数に数えるべきだと考えているわけでございます。
  27. 中川俊思

    中川委員 駐留軍のオンリーについては神近さんだいぶお詳しいようですね、私はよく知らないのですが。ABCとある場合に、三人もあるからこれは不特定というふうに解釈するということである。しかし人間的に将来国際結婚するとかいうような場合には、これは不特定と解釈しない、こういうふうに伺ったのでありますが、ABCとあっても、そのうちでAとは一つ将来国際結婚をしようという考えを持っておった場合はどうなんですか。
  28. 神近市子

    神近委員 それはきわめてデリケートなことでございまして、私は、もしAという人に対してそれだけ愛情が深ければ、給与の面、扶養の面でどんなに薄くてもがまんするだろう、女の心というものはそんなものだろうと思います。BとかCとかは受けつけないだろう。そういう場合、この三人のうちでAとはほんものの恋愛だと称していても、そこに非常に不純な來雑物がある。私はその場合も不特定という数に数えます。
  29. 中川俊思

    中川委員 それはそうかもしれないが、処罰する警察官、検察当局におきましては、一人でもって三人も四人もの駐留軍を相手にしておるという場合には、これは不特定のものとして処罰しないですか。私は、警察官はおそらく処罰するのではないかと思うのです。
  30. 神近市子

    神近委員 その点は私はあなたと同じことを申し上げたのですよ。処罰対象になるだろうと申し上げたのです。
  31. 中川俊思

    中川委員 それから今芸者のだんなについてお話がございましたが、これもなかなかデリケートな問題だと思います。芸者は、今神近さんのおっしゃる通りにオンリーと違って、あるいは将来結婚をしないという者が大部分じゃないかと思うのです。する者もあるかもしれません。あるかもしれないが、まずあれは芸者という商売でありますから結婚しない者が大部分だろうと常識上考えられる。しかし特定のだんなを持って、そうして毎月幾らかずつの仕送りを受けておるとか、あるいは最初に相当の金をもらって、その特定以外の男とは一切関係しない、こういう場合は一体どうなんです。これはやはり不特定なんですか。
  32. 神近市子

    神近委員 この条交に、「対償を受け」とかあるいは「受ける約束で」という言葉があるのですけれども、やはり対償を受ける者は売春ということになると思います。  また今のめかけさんの場合ですけれども、これは一人ではあっても時期的には、たとえばそのだんながよそへ行ってしまうという場合は、今度は次のだんなということを考えれば、その人は今はAだけがだんなでありますけれども、時期的に通ずれば不特定の相手、金さえたくさん持ってくる人はどういう人でもだんなにするという状態になりますから、これは解釈上給与を受け対償を受ける性交というところでやはりこれにかかると私は思います。
  33. 中川俊思

    中川委員 そうすると芸者は全部この売春等処罰法にかかるわけですか。
  34. 神近市子

    神近委員 芸者は、御存じの通りに建前としては芸能人でございます。そうして売春というものは何といいますか、その補助労働として行われているわけです。(笑声)大体二割というものは芸一本でやっている。私どもは、芸者さんは芸一本でやっていってもらいたいと考えるのでございます。
  35. 中川俊思

    中川委員 もう一点だけ。それではますますわからなくなってくるのです。神近さんに最近の芸者の実情をもっと御研究願っておきたいと思うのですが、なかなか芸一本でやっておる芸者なんというものはそういないのですよ。率直にいえばほとんどみな売春です。京都あたりの一流の芸者といえどもみんな特定のだんなを持っておる芸者です。ですからそういうような点を十分に一つ御研究をいただきまして、もしこの法案が通過するということになりますと、まじめな意味で将来結婚の道に進もうというようなオンリーであるとかあるいは芸者というような者も処罰対象になるわけでありますから、そういうような点も一つ慎重に御考慮いただきまして、そうして私ども厚生関係の者といたしましては、冒頭に申し上げました通り更生施設の問題が一番大きな問題でございますら、これからも十分に御研究をいただきまして完璧を期せられるようお願い申し上げて、私の質問を終ります。
  36. 神近市子

    神近委員 大へん御忠告ありがとうございました。私どももこれは決して悪意を持ってだれを痛めよう、だれをいじめようというような立法でないことは御了承いだきたいと思います。  それで芸者さんの問題でございますけれども、さっき申し上げたように約二割がそれでやっている、芸一本で立っているのです。職業として打ち出されている芸というものがあるのですから、その方面で今までのようなぜいたくな服装とかあるいは道具立てがなくても、踊りなら踊り、音楽なら音楽でやっていく方に邁進していただき、そしてついでに日本の男性の方の趣味ももう少し向上したものとして、日本の固有の芸術や何かを鑑賞するという態度によって芸者さんを使っていただきたいと私からも御要望申し上げます。
  37. 世耕弘一

    ○世耕委員長 文部大臣に対しての質問の通告がありますからこれを許します。中山マサ君。
  38. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 私は、文部大臣がお忙しくいらっしゃいますので、ほかにも質問がございますけれども大臣にだけ先に質問をいたしまして、そしてお帰りを願ってあとで継続したいと思うのでございます。  売春等処罰法案というものが出ておりまするが、結局いろいろな罰則だとかでちょうど網を張りまして、そうしてウサギをそこへ追い込んでいって、その中に首を突っ込ませてそれだけで済むものではないと私は思うのでございます。結局売春という問題につきましてはもいわゆる貧困ということが一番大きな原因であることは中川委員もおっしゃったのでございますが、この貧困とそれから性道徳というものが二つつき回わされ、その貧困の部に当る者におきましては、ことに私どもが聞きますところでは農村で貧農がどうしてもやっていけない、それで牛を売るよりも娘を売ろうというような、まことに人権をじゅうりんいたしました考え方を持っておりまする親たちが現存しておる、しかもその子供たちもどうやら学校には出してもらっているようですけれども、長い間の道徳観念と申しますかそういうものがつきまとっておりまして、自分一人がいわゆる苦界に身を沈めるということが親孝行になるのだというような観点からいたしまして、こういうものにひっかかってくるということを承知いたしておるのでございまするが、このいわゆる親孝行というような封建思想、これを取り去らない限りにおいてはいかなる法律が出ましょうとも、それをくぐるような施設もまたできてくるのではないかということを非常に心配するものであります。文部大臣の御管轄下にありまして今度この内閣で新生活運動というものを打ち出すということをおっしゃっていらっしゃいますし、どういうところに七千万円でございますか、そのお金を使うかということがあらかたきょうの新聞に出ておるようではありまするが、むろんそういうことも大事であり、各婦人団体にまかせて天下り的ではないところの方法によって、新生活運動を展開するのだというようなこともちらほら聞いておるのでございます。それよりも最も切実なる問題であるところの不道徳のうしろにございます封建思想、それを除き去るために、私はそういう地方に向けて強力にこの七千万円のお金を広報活動なりあるいは指導員なり、そういう人たちに向けまして、この最も基本をなす問題を打ちくだく御運動にそのお金を使いになる御意思はないかということが一点。  それから私が今日憂えておりますることは、そういう業態の女の人たちはこの罰則によって数が減ってくるかもしれません。また厚生省の御施策によって保護もあるいはできるかもしれない。——私はこれに大きな疑いを持っておるのでございまするができるかもしれませんが、今日こういうふうな紊乱した性道徳というものは敗戦後単なる貧困から来るということだけでなしに、私は一般社会の生活に困らない、あるいは男女の間にも反米の動きをする人たちは占領軍の三S政策の一つである、日本の青年たちをそういうふうに性的に惑わして、そうしていろいろなる方面へ向けていって、日本のいわゆる堅実なる思想を骨抜きにするのだというようなことすら流れておる今日でございまするが、わが党の時代にも文部大臣がいろいろと倫理的なものを社会科とか学校のいろいろな教科書に織り込むということもございましたが、世間ではすぐにそれを逆コースだというようなことを申しまして、これを打ち破ることをいわゆる文筆に携わっている人たちが一生懸命にやったのであります。私はまことに残念なことに思いまして、たとい世間が、あるいはそういう学者層が、あるいは新聞雑誌がそういう反論を書きましょうとも、私はこの大きな壁にぶつかっていくだけの勇気のある文部大臣をほしいと思っておったのでございますが、まことに現文部大臣は政党の活動におきましても、非常に筋金の入ったお方だと私は思っておるのでございます。行政監察委員会なんかにおきましてもいわゆる教科書の問題でいろいろなる混乱が私どもの目の前に見せつけられております今日、このいい機会をつかまえて、何とかそういう問題を一つ改革してもらいたい。この間も東京新聞でございましたか、放射線のところで、わが国から中共あるいはソ連へ出ていく学者たちはいわゆるソ連、中共べたぼれである、向うでは頭のいい人間だけを大学にとどめておいて、頭の悪い者はみんな追い出す、そうしてそういうふうなことに対しては非常なる礼賛をするけれども、同じことをもしわが日本でやったならば学者たちは全然反対をするだろうというような、まことに皮肉なことを書いてあったのを私は見受けておるのでございますが、今日混乱せる性道徳の問題、そういうふうな男女間の問題をもこれに関連して、この機会に文部大臣は何とかそういうふうな文部行政を通じて一つ洗っていただく御意思はないのでございましょうか。ソ連、中共あたりでは洗脳ということで非常に教育するそうでございますが、向うで洗脳をいたしましても向うの学者、識者たちは全然これに悪口を言わないのでございます。いわゆる覚悟次第では向う側がやっておることも日本ではすればできる、こういう考えを私は持っておりますが、この時期にこの性道徳、親たちの封建性あるいは男女学生間にございますところの問題——あの四国におきましては高等学校の女の子、十四才でございましたか、ああいう人たちが懐妊をしたというような問題は、私はやはりこれに関連性を持つものであると思うのでございまするが、大臣はこういう問題について筋金のある大臣として、抜本的なお考えはないものか私は伺っておきたいと思います。
  39. 松村謙三

    ○松村国務大臣 お答えを申し上げますが、農村の子女の方々で、ややもすればそういう人身売買等のことが行わるということはかねて聞いております。しかし全体の面から見ますと、それらの原因が必ずしも親たち、子供の封建的の思想から来ておるということはありましても、それはきわめてわずかの例でございまして、やはり全国的に申しますと貧困、それから都会へのあこがれ、さらに大きく申しますならば社会のたがのゆるんだ形が農村にもすっかり浸透しておる、こういう面から来ることが多いと思うのでございます。農村の人たちがややもすれば封建的に流れますのは現在の実情でございますけれども、親が子供を売る、子供が親に対する孝行だからというようなせっぱ詰まった考えでこのことが行われております事例は割合に少いのでないか。そうして都会へ出てくる農村の子女は貧困のために東京で一働きしようというのが最も多い。都会にあこがれて家を抜け出してそうして東京へ来て堕落をするというのがやはり多い。こういうものに対する施設考えることが何よりであろう、こういうふうに考えておるわけでございます。従いましてこれに対しましては文部省といたしましてはもちろんでございますけれども、今日率直に申せば文部省はその面にあまり働いていないのでございます。多く労働省もしくは警察の御厄介になっておりまして、文部省が直接当っておるようなことはいたしておりません。これはこれまでの欠陥であろうと考えまして、今後その面に——そうして都会へ出てくる地方の子女の教養というような面に一つ力を入れたいと思いまして、次の年度までにその構想を具現いたしたいと考えておるわけでございます。何と申しましても、これは一つは農村あたりの貧困ということから、これは何とか手を入れて考えませんと、ほんとうの解決はいかような法律ができましてもなかなか困難ではなか、ろうかと思いまして、そういう面におきまして地方に対する社会的の保障と文教による大きな努力と相まってでないと、この現象は取り除き得ないものと心得て、そういう考え方でやっていきたいと考えるのでございます。  それから風教の問題を新生活運動の中へ早く取り入れたらどうかというお考え方、これは最も重要なこととは考えておりますが、新生活運動の構想はごく最近にずっと進めて参りたいとは思いますけれども政府からいわゆる上意下達の形だけはとりたくないと考えておりまして、それへ予算を使うということを今われわれから申し上げることはできかねますが、その新生活運動が起りましたならば、必ずそういう面を取り上げて施設をなさるることと私どもは期待をいたし信じておるわけでございます。
  40. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 教科書に関するお答えはちょうだをいたしませんでございましたが、今日そういうふうな問題を織り込んで、いわゆる倫理的なものを織り込んでやっていただきたいということが一つでございまして、ちょうどもうお休みにもなることでございますし、そんな上の方から下へ物事を運んでいくことはしたくないという文部大臣のお考えでございまするけれども、私はそういうことにおこだわりになる必要はないと思うのであります。いやしくも国会でこういう法案が出まして、どうせこれは上意下達になっていくのでございますから、たといどんなことでございましょうとも、悪いことを上意下達するのは、これはむろん反対をいたさなければなりませんけれども、いいことはだれがやっても非難はないと私は思うのでございます。今のうわついた世間のものの考え方から、あるいは一部には反対する人があるかと思いますけれども、特に私が文部大臣にお願いをしたいと思いまするのは、各学校にはPTAというものが存在するのでございます。教育というものは先生だけがやるんじゃない。親とともにやっていくんだということになっておりますが、PTAがおそろしく政治的に動いて、原爆運動だとかいって、十人ずつPTAの人たちが動いて、いわゆる教育二法案に反対した人は助けるというような運動をやっておるということを現に聞いておるのでございますが、そういうふうに政治的に動いておるPTAでございましたならば、私は日本の道義倫理化はぜひともPTAというものは協力すべき建前であろうかと思いますので、この夏休みを利用して学生にはいろいろ仕事を与えられるのでございますが、そういう意味としてPTAに一つ仕事を与えていただいて——この法案が通る通らないは別といたしまして、通ればいわゆるその跡始末として役に立てていただくし、もし通らないといたしますならば、この次に通るまでに準備の教育としてPTAをお使いになる御意思はないかどうかということを私は伺いたいのでございます。
  41. 松村謙三

    ○松村国務大臣 私近来PTAの方々と割合によくお目にかかっております。そういう学校に関する事柄については物質的の御協力のみならず、今お話のような点につきまして十分の御協力を得たいと考えております。その方針で今後もお願いをいたすつもりでございますから、さよう御了承をお願いいたしたいと思います。  それからもう一つ、教科書の問題でございますが、そういう点につきまして今日の風教の面から申して子供たちの教養になる点につきましては、今度社会科の中に修身というような科目も入ることになりましたので、これらについてはできるだけのことをいたしたいと考えております。
  42. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 文部大臣のまことに喜ばしいお言葉をいただきまして、私も婦人議員として、また子供を持っておりまする親として非常に喜ばしいことに思っております。それでぜひ一つ今お約束いただきました問題を実現化していただくように——私はあなたならば必ずできるという絶大なる信用を持っておる。これはお上手でも何でもありません。文部大臣は非常に筋金入りの人である。あなたによらなければこれがまたいつの日にできるかということが心配になるのは、私のほんとうの心でございます。ほかに関連の方がお二人ございますから、私はこれをお願いいたして、暫時打ち切ります。
  43. 八田貞義

    ○八田委員 文部大臣がお見えになりましたので、一、二点質問させていただきたいのです。売春行為取締りということも必要でありますけども売春行為をしないような社会を作るということがまず大切であろうと考えます。その中でいろいろな対策も考られて参りますが、教育ということが一番大切なことであります。文部大臣は中山委員の質問に対しましてその教育面において修身科の復活をお考えになっているようでございます。修身の復活もまことに大切なことではありますが、それを教える先生の人格ということが非常に大切になって参ります。もし大臣が、修身科を扱うような教育者の人格が必要であるということを認めておられるならば、もしも教育者の中に売春行為を正当化するような、あるいは使嗾するような言質を弄したりあるいは文章に書いたような場合、どのような取締りをされるか、あるいはまたどのような訓示をされるか、その点についてはっきりとした御答弁をお願いいたしたいと思います。
  44. 松村謙三

    ○松村国務大臣 今のお話でございますが、私は日本の教職にある人たちの中には、例外としては今お示しのような人がないとも限りませんけれども、全体的にはそういうふまじめな人はほんとうにわずかなものであろうと考えます。しかしそういうような不心得のことのないように、特に注意をいたして指導をいたしたいと思っております。しかしただいまのところでは、決してそれだから文部省に責任はないと申すのではございませんけれども、それはすべて地方の教育委員会にかかっておるわけでございます。すなわち私どもといたしましては、直ちに地方の教職にあるものを監督指導することはできないのでございます。教育委員会に対してこういうふうにやることを指導する、そういう不心得の者があったならば、それを適当に措置することを勧告する、こういう程度のことしかできないのでございます。たとえば先般起りました鹿児島における松元事件、こういうものが起ります。これに対して文部省としての措置としては、これは厳重に措置をなさることを勧告するということ、あるいは向うから上京を求めて、ぜひ出てくれといって頼んで事情を聞いて、そしてこちらからもそういう勧告をするということが精一ぱいでございまして、現在の制度におきましては、それをできるだけ、能率的に運用してやっていく、こういうことであり、さよう努めたいと考えております。
  45. 八田貞義

    ○八田委員 文部大臣のお話がちょっと焦点がぼけておるようでございますが、どのような処罰を与えるかをはっきり具体的にお示し願いたいということを申し上げておるのであります。特に今教育委員会を通して勧告をするというようなことをおっしゃいましたが、文部大臣の直轄教育機関であるところの大学の教授とか、そういった人がもし売春行為を裏づけるようなあるいは使嗾するような言辞を弄した場合、教育委員会を通しておやりになるということですが、大臣はただ勧告だけでおとめになるのか、大学教授に対しては大臣はただ勧告だけしかできないのか、その点をはっきりお聞きしたい。勧告だけじゃない、処罰をするならどのような処罰をするのか、ここではっきりお答え願いたい。
  46. 松村謙三

    ○松村国務大臣 今のような仮定の御質問でございますが、これに対してもやはり仮定の御返事を申し上げます。これに対しても、大学自治の関係からいたしまして、そういう面に対して強い力を文部省として使うことができない現在の情勢になっておることを申し上げておきます。
  47. 八田貞義

    ○八田委員 今の仮定のことについては、はっきりしたお答えができないとおっしゃいましたので、今実例を申し上げます。大臣よく私の実例をお聞きになりまして、さっそく調査されまして、文部大臣として、われわれの納得のいくような処置を一つしていただきたいと思います。大臣は文芸春秋の八月号をごらんになりましたか、八月号の二百二十二ページには、現在の東京大学の教授並びに助教授が会しまして、「漫談と科学との間」と題しまして、座談会を催しております。詳しいことは申し上げませんが、調査されればすぐわかるのでありますけれども、その中で「穴があれば入りたい」という一つの題がございます。その中で、野ぐそをたれる場合にヘビはよく穴があれば穴をねらうよ、いや、同じヘビでもけつの穴をねらう。ねらうにしても女の穴をねらうんだ、女の穴にヘビが入れば括約筋がヘビの首を締めて、ヘビが気絶してしまう。ところがそのうちヘビがなれてしまうと穴を出たり入ったりするというようなことを書いておるのでありますが、文部大臣はこういう実例に対しまして何と思います。文芸春秋は少くとも多数のインテリ階級が読んでおる。しかもこれは青年も多数に読んでおる。しかも東京大学の教授と称する人がこのようなことを、ただ単に話すのならいいのでありますけれども、座談的に話すならばまた許しますが、記事にしたような場合、大臣は一体どういうふうに考えられますか。これでも大臣はぴったりしませんか。一つその点はっきりお答え願いたい。
  48. 松村謙三

    ○松村国務大臣 事は良書、悪書の問題にも関連をいたします。近来そのような悪書がはんらんいたしまして、子女の教養に非常な害毒を及ぼしておりますことは、これは御承知通りであります。これも近来社会のこれに対する反発によりまして、大分自覚はいたして参りましたけれども、今なお御指摘のようなことが出て参ります。こういうことに対しては、私はあるいは法規の力をもって、そういう風教を害する悪書は取り締らなくてはならないのではなかろうか、好ましいことではないけれども、風教に関することについては、そういうようなことも研究せらるべきではなかろうかと思っておるわけでございます。少しゆっくり調査をいたしたいと思っております。大学教授のことにつきましては、これは十分取り調べまして、その上に御返事を申したいと思います。
  49. 八田貞義

    ○八田委員 今の大臣のお話、大体了承いたしますが、どうか今の問題を一つ大臣は聞きおかれる程度でなく、必ず調査の上、この委員会に正しく御報告願いたいと思います。その点を要望いたしまして私の質問を一応打ち切ります。
  50. 世耕弘一

    ○世耕委員長 委員諸君にお諮りいたしますが、文部大臣は午前中という約束もいたしておりますので、なるべく長くいていただくようにお願いしておるのでございますが、関連質問等もおありになるようですから、どうぞ簡潔に、できるだけ多数の方に御発言を願いますように取り計らいたいと思います。福田昌子君。
  51. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 今大学教授の、そういう売春処罰法案が出ております折から、ふさわしくない座談の記事が取り上げられましたが、同じような問題といたしまして、地方の教育委員によく売春業者が出ておるというところがございますが、私ども売春業者の教育委員というものは、いかなる点から見ましても教育上よろしくないという感じがいたすのでございますが、これに対する大臣の御所見、またそれに対する御処置を承わりたいと思います。
  52. 松村謙三

    ○松村国務大臣 お答えをいたしますが、これは現在の選挙の方法といたしましては、やむを得ない現象であろうと考えます。そこでこの場ばかりではございませんけれども、かねて文教委員会でも申したことですが、教育委員会制度そのものは全面的に一度研究をいたして結論を出したいと考えております。
  53. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 教育委員会制度そのものを検討になるという御答弁でございますが、文教委員会でも問題になるでございましょうが、また現行の法律制度からいたしますれば、選挙法という点から見れば、売春業者であろうと被選挙権があれば選挙ができるのでありますから、やむを得ないことかもしれませんが、しかし教育という問題を行えて検討いたしますれば、そういう業態の人がしかも教育委員になるということは好ましくないことでございますから、いろいろなこれに関連する御検討も必要でございますが、それよりもまずその第一義といたしまして、教育委員会にそういうような業者が出ておるということに対しまして、今後の選挙の際において、文部大臣の御意思というものをある程度御発表になり、そして教育行政のためにもそういう業者が再度出馬することがないように、何らかの御措置をおとりになる必要があるのではないかと私は考えております。従いまして、これに対して何らかの、現行の範囲内において、大臣の権限において許される御措置をおとりになる御意思があるかどうか、この点を承わりたいと思います。
  54. 松村謙三

    ○松村国務大臣 これは選挙の方法であります以上は、ひとしく国民は同じ選挙権、被選挙権を持つことが当然のことでありまして、その結果につきましては、これはいかんともすることはできません。また業者といえどもそういうことを直ちに指摘できるわけでもございませんので、これは選挙民の良識に待つよりほかにいたし方がないと心得ておるものでございます。
  55. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 先ほど中山委員の新生活運動に対しまする御質問に対しまして、上意下達の方法は避けたいが、しかしやはり新生活運動として売春行為に走るような女性を未然に防ぐような運動を起してもらいたいというお話があったのでございまするが、これはごもっともなことであり、まことに当を得たお話だと思うのでございます。私はそういうように、売春に走るような女性がないように、また売春業者がそういう業態を得々として営むことがないように、また一般国民大衆が売春を悪として認めるような運動を新生活運動の中に盛り込んでいくというこの方向に関しまして、私は上意下達のそのやり方は必ずしも排斥すべきものだとも考えておりません。先ほど中山委員が言われたように、ある目的を指示されまして指導的な立場をとられてもいいのじゃないかと考えますので、こういう意味合いにおきまして、新生活運動を売春の予防政策のためにお取り上げ、御利用願うようにお願いしたいと思います。それとあわせまして私ども考えさせられますことは、一般国民大衆に対しましてはそういうお考えがあるやに伺えるのでございまするが、事売春に関しましては必ずしも一般の善良なる大衆だけが対象ではないのでございまして、よく高位高官あるいは民間会社の重役というような上層部の者が売春に対してきわめて認識がないというような事態が多いのでございます。閣僚の方々の中でも、好んで高級料理飲食店で芸者をはべらして、その芸者は先ほど神近委員の御説明では八割が売春婦だというお話でございましたが、中川委員は、いや、それよりもほとんど売春婦だという質疑応答もあったのでありますが、ともかく世間では売春婦とみなされるような芸者を相手にいたしまして、高級飲食店でまことにひんぱんに会合を持たれるということは、私は新生活運動にもとると思うのでございますが、かような意味合いにおきまして、閣僚や世間におけるいわゆる高位高官のこういうところの出入り、芸者をはべらしての会合というものを、ある程度粛正なさる御意思があるかどうか、この点あわせて伺いたいと思います。
  56. 松村謙三

    ○松村国務大臣 一がいに高位高官の者がそういうことをしておる、こういうお話でございますけれども、果してどの程度であるかというと、新生活運動ができましたならば、とにかくその新生活運動の本部でやりますいろいろの事柄につきまして、政府のいわゆる高位高官というところはもちろん、ずっと官僚のすべてに至るまで、そういう運動の指導するところに従ってやっていくべきものであると心得るものでございまして、新生活運動に事がきまりましたならば、政府官省におきましてもそれに準じてそれを実行に移すとしうことは各省ともいたす考え方でございます。
  57. 世耕弘一

    ○世耕委員長 福田君にお諮りいたします。文部大臣がだいぶ遅刻したので再三催促が来ております。何かほかに山下春江君からも御質疑の通告が出ておりますので、なるべくならばお譲りを願いたい。大臣に対する発言の機会はまだあろうと思います。本日はできるだけ提案者に聞いていただくような方針を立てていただくつもりだったのですが、よろしゅうございますか。
  58. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 ではもう一点だけ。先ほど、新生活運動の方向がきまったら、当然そういう高位高官に限っていないというお話でございますから、それに限らず、それに類似の人たちが、高級料理飲食店に出入りして芸者と称する人をはべらせる会合をひんぱんに開くことは、今後文部大臣の御見解においてある程度粛正される御意思があるというように伺ったのですが、そのように拝承してよろしゅうございますか。
  59. 松村謙三

    ○松村国務大臣 はなはだ失礼ですけれど、今のお尋ねは官僚においてもそういう粛正をやると心得てよろしいかというお尋ねでございますならば、その通りに心得ております。政府の方針もさようでございます。
  60. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 先ほど、修身の復活をしなければ性道徳、性教育というものはできませんという意味合いの御答弁があったのでございます。私は必ずしもそうは思いませんが、とにかく性道徳、性教育を教育の何らかの機会において指導すべきであるということは大臣と同感であります。この性道徳の指導、性教育の指導ということは、私は科学教育でも必要だと考えておるのでありまするが、こういう教育をお取り上げになる御意思があるかどうか。いわゆる性教育なるものを教育の課程において正式にお取り上げになる御意思があるかどうかということを伺いたい。なぜかと申しますと、日本の今日の一つの習慣いうものは、戦後のいろいろの混乱ともあわせまして、一つには何と申しましても性教育に対する教育が抜けておるというところに原因があると見なければならないのでございます。従来日本は、男性はまことに貞操観念がないということにおきまして、世界的にもある程度有名でありましたが、少くとも女性は世界に誇る貞操観念の強い女性であるということに相なっておったのです。ところが、戦後は遺憾なことには女性も、貞操観念がない、男性側に感染いたしまして、まことに貞操観念というものが薄くなっておる。性教育というものの必要がまことに端的に出て参っておるということを考えさせられますので、性教育というものを学校の正式な課程に織り込まれる意思があるかないか、その点を伺わせていただきたいと思います。
  61. 松村謙三

    ○松村国務大臣 今日といえども性教育のことは適当に指導をしていくということには今なっておりますが、実際の問題としてそれを教えるに適当な人が得がたいという点でございます。これは単なる生理の上からだけ教えたのでは何もなりません。かえって誤解もございますので、これを教える人を選ぶということが非常に大切でございまして、そういう面においてはなはだ遺憾な点があり、従ってそれの実効を上げるというところには参っておりません。性教育とあわせて道義的な純潔教育をやらなくてはならない、そういう感化力を持つ教師というものはなかなか得がたいというところに難点があるわけでございまして、そういう意味において十分実効の上りますように努めて参りたいと思っております。
  62. 小川半次

    ○小川(半)委員 議事進行について。きょうの連合審査会は、主として提案者に質問するということになっているのです。ところが提案者に対する質問よりも他の方に非常に派生してしまっておる。われわれが連合審査会を承認したのは提案者に聞くということで承認したのですから、もっと委員長しっかりやって下さい。
  63. 世耕弘一

    ○世耕委員長 関連質問がおありになるので簡単にお許しするようにいたしましたが、双方ともに熱意が入りまして、結局委員長はその取扱いに窮したわけでございますが、非常に性教育の問題、売春問題は重大な問題でありますから、できるだけの機会に各方々かり御質疑を願い、ことに女性の方は真剣にこの問題と取り組んでおられるようでありましたから発言をお許ししたような次第でございます。最後に山下春江君。
  64. 山下春江

    ○山下(春)委員 私はこの売春等処罰法の提案者の一人であるにもかかわらず、いろいろ重大な自分の仕事を持っておりますために、はなはだ不勉強でございますので、お尋ねいたしますことも、すでに尋ねられたことや、あるいは不勉強によってのいろいろなことがあろうかと思いますのを、あらかじめお断わりいたしておきたいのでございます。  先ほどから中山委員がるる申されました、文部大臣の今回の新生活運動に対する非常な御熱意、これはもう非常に時宜を得たお考えであることに、私ども敬意を表しておるのでありますが、中山、福田委員から上意下達が必ずしも悪くないのだということでございましたが、私はほんとうにその通りで、なおその点を念を押して大臣にお尋ねをし、御注文を申し上げたいと思ったので発言を求めたのであります。上意下達をやりたくないということでありますが、これは上意下達の悪い点が大臣の頭の中に、いろいろと考えられることがよみがえっての御発言だと思います。しかしながら今こういう大事な問題が持ち上っております際などには、特にみな迷っておりますから、大臣がこういう方面に予算を生かしたいという信念と確信を持って、その大事な予算が雲散霧消することのないように、せっかくの予算がほんとうに生きて使われるように一つの計画をお立てになりまして、それをお示しになって、あやまちなく使われることが望ましいのであります。ただいま大臣が、性教育は人を得るのがなかなかむずかしい、性教育だけやることがかえってつまらない反射作用を起すことがあるから人を得ることが大事である、つまり性道徳の観念がそれに伴わなければ何にもならないという答弁でありますが、福田委員が学校で直ちに性教育を取り上げる意思があるかどうかと言われましたが、今の状態で直ちに、今大臣が憂慮しておられるような点を抜きにしてこれを取り上げれば全く逆効果でありまして、それはやらない方がよっぽどよかったという結論になると思うのであります。私はこの点はあと提案者に伺うのでありますが、不勉強のために、私は法案の中の内容がよくわかりませんが、この中にはおそらく盛り込まれていないではなかろうかと考えますことは、この白昼、帝都のまん中で外国の軍人にぶら下って歩くのが、戦後十年、独立して三年、いまだわれわれの目の前で大っぴらにやられるということは、何としても耐えられない一つの屈辱を感ずるのでありますが、この法案でいろいろとお取締りになると、家の中からだんだん追い出されて、オンリーは残すとなると、だれもかれもオンリーになって、先ほど厚生大臣の言われましたように、直ちに今予算を獲得して、その人たちが希望するような十分な施設を作るということは困難になります。その困難なこととあわせて、この法律がもし世に出たといたしますれば、家の中からみな追い出されて、私たちが何とかして、もう独立して三年、あの姿だけはせめて目に見えるところから駆逐したいと思っているのにもかかわらず、街頭にオンリーでのがれるというようなことで、かえって私どもは非常な屈辱と苦痛を感じなければならないような事態が起ってくる将来性がこの中に含まれていないかどうか。今文部大臣の仰せられました新生活運動に取ってある予算というものが、そういった道徳観念——この性教育と性の問題ということになると、どうしても必然的に起ってくるのは必要悪という議論であります。そういう議論とこの問題と一緒くたにすることは、はなはだ当を得ないことでございまして、どうしても道徳教育というものが高度にならなければ、この目的を真に達成することができないと思うがゆえに、今文部大臣が人を得ることに非常に憂慮しておると言われることはその通りでございますが、しかしながら今回の新生活運動というものはそういった道徳観念を高揚するために、文部省で再三議をお練りになりまして、最一局の御決定になった方針によって使われる——みんなの世論にこたえるということでこの金が雲散霧消して、わけのわからないところに散ってしまうということでは全くこれは意味をなさないことだと思いますので、そういう意味で文部省でよく御研究になりまして、大臣が最後の、新生活運動に取ってある費用はこういう方へ使おうというように御決定をなさる御意思があるかどうかを大臣から承わりたいと思います。
  65. 世耕弘一

    ○世耕委員長 文部大臣にお願いいたしますが、簡潔に御発言を願ってどうぞ御退席を願います。
  66. 松村謙三

    ○松村国務大臣 私が上意下達をきらうということを簡単に申しますと、これは国民運動として広く展開せられないならば、実効が上げ得ないと心得まして、戦争前のあの翼賛体制というような上意下達ではほんとうに実効を上げ得ないと心得ますから申し上げたのでございます。しからばそこできめたことに何でも無干渉でまかせきりかと申しますと、そこできめられた仕事に対して政府として補助を出しますのには、もちろんその事柄について十分に検討をいたして効果があるものに対して助成をいたす、こういう方針をとりたいと思うのでございまして、さよう御了承をお願いいたします。
  67. 山下春江

    ○山下(春)委員 私はこの法案自体につきまして、たとえば貧困な農家から親をだまして娘を買ってくる、こういうブローカーを厳罰にしなければならぬこと、あるいはその売られた十四や十五や十六のほんとうの少女に売淫を強要するような業者を厳罰すること、あるいはそういう営業をやる者を助けるために金を貸してやるような不心得な金を動かす人を罰すること、あるいは帝都のまん中に温泉マークをごてごてとこれ見よがしにかけている、ああいったようなどぎつい宣伝などは一切撤去させること、これは私全く賛成でございます。先ほど申しましたように私提案者のくせに勉強しなくてまことに申しわけございませんが、この法案で取り締ろうとする範囲が屋内であるとすると、家の外に追い出される。なぜかというと、厚生省の万で援護施設をやるための予算が直ちにはなかなかとれにくいということですから、今日のまま何も施設なく追い出すということになると、それは町に出てこやしないか、私が最も見たくないと思っている、あのぶら下っているのがオンリーだというので、ずっとはんらんしてきて、今よりも非常に悲しい姿が出てきやしないか、これは神近先生が非常に御熱心に長い間御勉強になったので、不勉強な私に教えていただきたいのであります。
  68. 神近市子

    神近委員 今山下さんがおっしゃる通り、私どもが御協議いたしましたのは、あの婦人たちを利用して人身売買をするブロカー、あるいは。ポン引き、あるいは業者、そこに対して最も重圧が加えられなければならないということは御協議の際によく御了承いただいていると思います。それからその結果についてでございますけれども、これは非常に参考になる御意見が法務委員会でいろいろ出ました。たとえば都の条例が二十四年でございましたか実施されますと、その目標は有楽町、新橋、ああいうか面のあなたの最も見たくないとおっしゃる方向にその攻撃が集中した。それで住宅地にみんな入ってしまった。そうすると、今までの経験ではあそこで立って自分で働いてかせいだ金はあらかた自分の身についたのです。ところが今度は屋内でなければそれができいとなれば、第一にポン引きが要ります。客引きが要ります。そしてこれが大体一割から二割をちゃんと契約して客を持っていったときに前金で受け坂っている。それから家の中に入らなければならないから施設が要ります。それでだんだんとそういう散娼が集娼化して、そこに組織形態を持ち始めて、これが企業形態となって今のあくなき搾取が行われることになっているのでございます。それで私どもは、この法律ができましたらどちらかというと赤線、あるいは基地周辺のパンパン・ハウスが一番先にこれにかかることになると思っております。そこで多少散るということがあると思っておりますけれども、それは今の状態よりはよい。たとえば婦人がかせいだものの搾取を少くする効果がある。今これが出ればすでにある施設のことも考えられているし、無法律のままであそこを手入れしたというような状態にはならないと私は思います。多少は散るかもしれない、だけれどもこの法律があればその率は少かろう、そうしてたとえばあなたの御想像通りわれわれの目の前に出てきましたところが、この法律があればこれを検挙することもできる、そういうふうに私ども考えるべきであり、そして私どものこの法難のねらいが集娼あるいは集娼制度の根幹をつくということにある以上、一時クモの巣を取り払ってそのクモの子がそらこに散らばるというような現象を見ても、それはやむを得ない。そしてそれはがまんのしがいのある——ちょっとはそれがあるかもしれないけれども、逐次このクモの子を掃蕩していくことができるというふうに考えていただきたいと思います。
  69. 山下春江

    ○山下(春)委員 御説明よくわかりました。非常に御苦労であります。ただイタチごっこにならないように、散らばっているのを集中して追っかけたら家の中に入って組織化された、その組織をこわすとまた外に出てくる、また追っかけるというイタチごっこが始まりはしないかということでありますが、それは多少減るということも考えられますし、厚生省も熱心にこの施設予算をとることに努力するということを大臣も言われておりますから、漸次よくなると思います。それで私は提案者の一人でありますけれども、明日からまた遺家族援護法の審議に入りますがために参られませんから、特に御苦労を願っている提案者に心から希望を申し上げておきます。それは本国会におきましてこの法案が流れるというようなことは、提案者にとりましても耐えられないことでありましょうし、一般といたしましても非常に残念なことであります。従いましてどうかこの問題は各党各派どのような人でも、この程度はぜひとも賛成しなければならないという必要欠くべからざる法案一つお骨折り願って、そうして本国会で流れることのないように、みなが賛成してこの法律が打ち立てられますように、やはりこの法律にはいろいろな議論もありましょう、ありましょうけれども、しかしないということではいけないのであって、やはりできなければならないものでありますから、それには提案者の方でも最大限に御譲歩を願い、全く悪だとだれが見ても思われるようなところは厳罰に処するというだれも賛成できる法案におしぼりを願って、ぜひ通過できるように念願をいたしまして私の発言を終ります。
  70. 神近市子

    神近委員 御趣旨はよくわかりました。私どもこの法案を提出いたしましたときの御相談は、ともかく原本を出して、この案で皆さんのお考えの違う、あるいは出たり入ったりというようなことの御審議を願いたいというのが趣旨でございますから、御意見は承わって、私どもは謙虚にこれを成立させる方面に努力しなくちゃならぬと思います。御協力をお願いいたします。
  71. 世耕弘一

    ○世耕委員長 横錢重吉君。
  72. 横錢重吉

    横錢委員 時間がたちましたので簡単にお伺いいたします。提案者にお伺いをいたしまして、かつ問題によりまして当局の方より御答弁をいただきたいと存じます。  まず第一に、この法案を提出されましたことに対しては、日本における戦前戦後を通じて非常な問題であります売春絶滅をはかるために大へんな御苦労をされ、人権立法としてこれを提出されましたことに対して、心から敬意を表する次第でございます。  そこでこの法案を提出されるに当りまして、ただいまもプリント等を拝見いたしましたが、提出者の方に対しまして関係の業者とか、しいたげらられているところの人々の声とか、あるいはそういうものの動きとか、こういうような点についてお承わりいたしたいのであります。さらにまたこの法案の通過を希望しておる人々の団体であるとか、あるいは背景であるとか、そういう人々の熱意であるとか、こういうような面についてお聞かせいただきたいと存じます。
  73. 神近市子

    神近委員 今お手元に配りましたのは三通だけで、やはり現在何とか早く助けてくれというようなお手紙なんですけれども、私は、業者からのこれに反対の意思を示すお手紙らしいものは、一通以外にはもらっておりません。あと五通ぐらいが、実際にそこに働いている女の人で、これはみんな助けてくれ、一日も早く助けてくれというような手紙でございます。あとは主婦とか婦人団体、これは私はここに始終持って参っておりますけれども、各地の婦人協議会が大会を催しまして、群馬県だとか鹿児島県だとか青森県だとか、山梨県だとかから、そういう要請の電報が来ております。そのほかに婦人団体から立法化を促進してくれというお手紙が参っております。これはどなたにでもお目にかけるつもりで、私はここに持ってきております。それからもう一つ今回に限って非常に違っていることは、労働青年の手紙だと思われるものが来たことでございます。当りまえならば、普通の考えならば独身青年の性欲をどうするかということが始終論議されるのですけれども、私のところに参りました労働青年の手紙というものは、早くあれを立法化してくれ、通過するように努力をしてくれ、われわれにとっては、あの状態は遊ぶ者も女自身も目ざわりで、勤労精神を阻害されることが非常に大きいということが書いてある、こういうことが今度の法案提出にあたって目立った現象でございます。
  74. 横錢重吉

    横錢委員 次にお伺いいたしたいのは、日本の国民病の二つとしては、一つには性病であり、一つには結核でございます。この結核が、在宅治療を要する者が約二百万近くありましてこの人々に対するいろいろな施設については、若干はされておるけれども、肝心なものはほとんど行われていない。たとえば二百万近くの者が入院を必要としておっても、十七万程度しかベッドはないというような現状であります。あるいはまた同じく廃転業の場合においても、たとえば連発式のパチンコを整理したために、パチンコ業者はこれによって大打撃を受けておる、あるいはまたヒロポン患者等についても、これまた取締り当局の対象となりましたが、その善後処置といいますか、この場合における者の転業等の措置はほとんど講ぜられていないのであります。ところが今度この売春法案が通過したならば、厚生省としては八十億の金がなければ転業させることができない、またこのための施設が必要だということは——これができたならば当然その善後処置にも応ずるというよう態度であるならばけっこうでありますが、こういうことのためには、多額の金が必要であるから、この法案を通しては大へんなのであるというような、印象を受けないとも限らないわけでございます。ところが今申し上げましたように、他の事例の場合においてはほとんど無放任の状態でありきすものが、一たびこの売春法の場合だけにおいては至れり尽せりの施設をしなかったならば、転廃業に応ずることができないというような考え方を持つことは果してどういうものであろうか、またそれだけのことをしなかったならば、この社会悪として考えられる問題が文明国の日本として解決できないものなのであろうか、こういう点に対しまして提出者のお考え、あるいはまた当局のお考えをお聞かせいただきたいと思うのでございます。
  75. 神近市子

    神近委員 性病と結核のことでございますけれども、結核よりも性病は、発見の統計の数字を取ることが非常に困難なのです。それは必ず隠しますし、そうしてお医者様が、性病予防法によって性病にかかった者を届け出なければならぬことになっておりますけれども、これがなかなか実行されていない。その患者の名誉を救うためにこれが実行されていない。厚生省の権威者がおいでになりまから、この数字の大よそのところはお答え下さると思うのですけれども、ただ結核と性病との相違を認識していただきたい。結核は時間がかかります。しかし性病は、今日よほど悪質なものでもほんとうに効能薬、ペニシリンのようなものを使って治療すると大体三カ月で直るというふうに言われております。その点でこれは結核よりも扱いやすい病気であるということ、それで民族の明日の姿を考えてたくさんの性病者を出すということの危険を防ぐ。勤労精神の喪失、性病の蔓延、教育への効果、こういうことをなくするということがこの提案の最大理由でございます。それでこの間東大の市川博士のおっしゃった夫婦生活以外の性交というものは全部危険であるということをどなたも覚えておいていただきたいと思います。そして私どもの提案の大きな理由もそこにあります。  それから今の施設の問題でございますが、この施設がないということが第二回国会政府提案が衆議院においてつぶされた理由になっております。私どもは今までの審議の中でも、あの方方の善意というもの、生活に困った人人の善意というものは一点も疑ってはおりません。今日は社会労働委員会との連合ですから、職安の日雇い労働者がどういう生活をしておるか、特にあの方々の三分の一を占める女の人たちの労働状態はよく御承知だと思います。私は職安にはしばしば行っておりますけれども、満州国時代に課長であって、りっぱな家庭生活を戦前に送っていた人たちが、今あの日雇い労働者に大勢出ているのです。行ってごらんになるとわかりますけれども、りっぱな知識階級です。昔はこの人は貴族の端くれにいた人だなというような人たちが今日雇い労働者をして、二人、三人あるいは四人の子供を養っているのです。今あの人たちが一日に二割かあぶれております。それで、私はそのつり合いを考えていただかなくてはならない。更生施設、まことにけっこうでございますけれども、至れり尽せりの施設——辛うじてどうにかまかなうという程度のことをお考えいただいていいのではないかということを先日も法務委員会で申し上げたのですけれども、五十万を今救え、五十万を今収容しろ、こんな無理なことはないのです。私ども先ほど申し上げたように、ともかく赤線と、それから基地売淫を第一として、それに要する施設を今の厚生省の御構想によってやっていただいて、そうして徐々にこれをなくしていこうという考えで、今結核病棟の問題も出ましたけれども、日雇い労働者の保険の問題も必ず労働委員会では出ているはずでございます。夏期手当のようなこと、そういうことをお考え下されば、そのつり合いということを考えていただくことも私は大事だと考えるのでございます。そういう意味合いで、私どもはそういうことから構想を持っていただきたいと考えるのでございます。
  76. 安田巌

    ○安田政府委員 この法案通りましたときに、これらの婦人保護更生させる施設は、先ほど大臣から八十億くらいかかるというお話がありましたにつきまして、そういう多額の金が要るということがむしろこの法案を通すことにブレーキにならないかというようなお話もあったのでありますが、大臣としては、お聞きの通りで、そういうつもりは毛頭ないのでございます。ただこの数字を出しましたのは、そのときも説明がございましたように、一応労働省売春婦全国で五十万という数字を出されましたので、もしそれの一割が対象になるといたしますならば、五万人でございますので、この収容施設を作りますのを、現在すでにあります収容施設のやり方で行いますと八十億かかるということでございます。もちろん五十万のうちには、これは大部分が散娼でございましょうし、集娼は、私どもの方の調べによりますと大体十二万程度でございますから、かりにこの法案がすでに通りましても、それらの方のうちには、郷里に帰る方もございましょうし、また他の方に転業される方もございましょう。全部が全部こちらの方に移ってくるとも考えられませんので、五万と申しましたけれどもそれだけ必ずいるかというと、それは疑問ではないかと考えております。
  77. 横錢重吉

    横錢委員 それではさらにこまかい点について伺いますが、この法案については、十八才以上と十八才未満というようなことに対する区分ということは見受けないのでありますが、これらの点は問題にならないかという点、それからもう一つはこの法案が通過した後において警察官がこれに籍口して営業妨害であるとか、あるいは旅館等における臨検等を昔のように行なって、人権侵害をやる憂いがないか、こういうような点についてはどの程度の検討をされているか、承わりたい。
  78. 神近市子

    神近委員 年少者の問題は、この法案の作成には大きに刺激を受けていることば事実でございます。本年になりまして、例の松元荘事件が表面に出ますと、それに類似の事件、アルバイト・ハウス的なもの、そういうことが東京都内でもべったりあるということが、日々の新聞で私の見ただけでも七、八回は、同じようなところに手入れが行われたことを見たわけでございます。それと最も私どもはひどい例だと考えますが、横須賀で十二歳になる女の子が二人、十四歳になる中学生に五円で売春をした。そうしてこれは紙芝居に必要な金だったそうでして、紙芝居が十円になったところがこれを十円に引き上げた。こういうような事例は、これは横須賀で一件しか出ていませんけれども、これが日本国中に至るところであるということ。これはたまた主識者の目についた事例でして、これはもう日本国中がそうなっている。松元荘事件が日本国中にある。そうしてその子供のままごとが売春形態をとっている。模擬恋愛が売春形態をとっている。こういうところに私どもの最も力を注がなければならない事例があったのでございます。この数は、私ども、今やっと警察の手入れが始まったばかりで調査も行われてない。そうしてこの法案が通過することによってそこらの手入れができるのじゃないかというように考えて、この点でも私からも松村文部大臣にいろいろお尋ねしたいことがあるのですけれども、まだ機会を得てないのでございます。  警察官との問題、警察制度の問題については、法務委員会で毎々警察との間に問答が行われておりますので、これは古屋先生にお返事をお願いいたします。
  79. 古屋貞雄

    ○古屋委員 ただいまの答弁の補足をいたしますが、十八歳未満の婦女に対する問題は、児童福祉法で特に併合罪になりまして、をれで処罰ができると思います。なお十三歳以下の者については特に重く刑法で罰することになっておりますので、その点で予防ができると考えておるのであります。  それから警察官の問題でありますが、この点は特に刑事局長並びに石井警察庁長官にもお尋ねしたのですが、現行犯の捜査をする場合に非常に困難な関係が伴うということでございますので、もしこの法律にそういう面について特段な人件じゅうりんが行われるならば、すなわち人権じゅうりんを保護しようというのにかかわらず、そのために取締り上人権じゅうりんが繰り返されるというようなおそれがございますれば、本案につけ加えてその点は特に考慮いたしまして、委員諸君の御主張がございますれば、その点の付加の規定を加えてもいいと考えております。この点に提案者から考えましても非常に重大な問題でございます。慎重を期したいと考えております。非常に当を得た御質問でございまして、この点提案者といたしましても相当慎重に考えまして、特に捜査に直接関係を持っておりまする関係方面とも御相談の上、これにつけ加えて付則にさような点を注に加えるということも考えておりますので、その点御了承を賜わりたいと思います。
  80. 横錢重吉

    横錢委員 今の警察官の問題は、戦前における状態を振り返ったときに、やはり一つの憂慮される問題であろうと思いまするので、これらの点の懸念のないように、一つさらにお考えをいただきたいと思うのであります。  それからさらにこの第七条を見まするときには、営利の目的で施設云々という条項がございまするが、この場合にも営利の目的というのがややもすれば抜け穴となってくるのではないか。従ってこれが営利の目的でなく非営利であるならば差しつかえないといいまするが、脱法行為と申しましょうか、そういうような点が出てくるのではないかと存ずるのでありますが、この点に関してはどの程度の検討がされてありますか、承わりたい。
  81. 古屋貞雄

    ○古屋委員 この点はいわゆる従来の砕けた言葉で申しますれば楼主なんです。婦女収容し、雇い入れ、あるいは勧誘いたしまして売春をやらせる場所を提供するといった関係でございますが、いろいろの脱法行為をやられるということも考慮しなければならぬという点の御質問らしいのですが、たとえば組合組織にして組合員が来て遊んでいるという事例があると思うのです。さような点につきましてはやはり組合制度といった一つの脱法行為が行われましても、組合であろうが何であろうがこの法案の第七条に当りまするような条件を具備いたしまするならばやはりそれを取り締られるんだ、処罰するんだという考えでございます。従いまして最後の具体的な事例についての判断は、日本におきましては、最後に良識ある裁判官の御判定を願う、あるいはなお良識ある捜査官において御決定を願うということを考えておりますが、大体場所を提供いたしましたり施設を提供すること自体が利益を伴うという場合は処罰対象になるわけであります。従って脱法行為が例外的にあるということになりまするならば、かような問題については考慮いたしまするけれども、完全を期すわけにはいきません。いついかなる場合でも法の盲点というものがございますが、大体ここに規定されたような規定の並べ方によってさような脱法行為を防ぎ得る、かように考えておる次第でありますので、御了承を賜わりたいと考えております。
  82. 世耕弘一

    ○世耕委員長 中山君。はなはだ申しわけありませんが、十分程度に願います。実は二時から社会労働委員会を開くという申し込みがありますので御了承願います。
  83. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 私は伺いたいのでございますが、いわゆるクモの巣を突いてそれが散らばった、そうして今度はそれがひどくなったらどうなる。この間ダクター・ブリュッセンというドイツの放送局の人が私に面会を求めて、いろいろ現代の婦人議員が直面しておる問題は何だということを申されましたので、私はこの売春等処罰法案が出ておるということを申したのであります。いろいろお話の結果、今度は逆にドイツではどうですかと質問をしてみましたところ、ドイツはいわゆる集娼をなくしてそうしてそれが散娼になってしまった。この間私は参考人としておいでになった方のお話を聞いておりましたら、ドイツにはもうそんなものはないんだというお話がございましたが、そのお話は少し古いのではなかろうかということを実は心配しております。このダクター・ブリュッセンという人に伺いましたところが、ドイツ、イタリア、フランスもそうであるが、あまりに散娼の状態が激しいのでまた集娼のようなものに逆行しつつある、それを政府がある建物を供給してそこへ集める形態に行こうかという状態にある、こういう驚くべき御回答を私は得たのであります。それでこのたびこの法案通りまして、そして散娼が激しくなりてまたそういうふうなことになるおそれがあるのではないかということを実は私は最近の欧州の状態を聞きまして非常に心配をしておるものでありますが、何か一つ法案が出たりいろいろいたしますと、今度はその穴をくぐる道が非常にございまして、私どもが聞いておりますのでは、奥さんが一号で第二の人が二号だ、このごろはいわゆる対償物を与えないで零号というものまで出てきた。それは会社の社長さんが自分の雇りている人を零号として、いわゆる給料の中に含めてあるのでございましょう、そうしてそういうふうな場所へ行って、いわゆる何にも与えないことによって売春行為が行われておるということを聞かされますと、ほんとうに何かぬかるみに入ったような気がいたすのでございまして心配いたしております。特に私が心配いたしますのは、散娼が激しくなると青年たちがそういう意思がないのにあるいは誘惑されるときがくるのではなかろうかということが非常に私心配で、私はむしろ散娼は多くの男の子を持っている母親として世の母親の立場に立ってみて非常に心配をしておるのでありますが、これをぜひ取り締っていただきたい。  ここに私は御手洗辰雄氏の切り抜きを持っておりますが、法律無視の奨励という題のもとに、この国防会議というものは、これは憲法無視の例で、奨励をやっているのだ。それから今度婦人議員から出されたこの法律もいわゆる法律無視の奨励をやっているのだというずいぶん手きびしい御批判をいただいておりますが、識者の方がこういうことをお出しになるのは実にどうかと私も思っているのでございます。  それで私は取締りの方に質問いたしてみたいと思います。実にデリケートな問題ですが、私がいつも言うておりますことは、近ごろでは、お嬢さんが下品になってパンパンが上品になってきて、この間の差が非常に広がってきた。終戦直後はストリート・ウォーカーというような人を見ますと、たちまちこれは商売の人であるということがわかりましたけれども、今日新橋あたりに夕方行ってみますと、良家の若奥様かどこかのお嬢様かというような姿をした人が非常にございますが、警察当局はどういうふうにしてこういう間の線を引いておりますか。たとえば三本の温泉マークのところに行く男女が夫婦であるか、あるいはそうでないかということはどうして見きわめまして、どうして取締りをなさろうとされるのか、私は伺ってみたいと思うのであります。さっきの人権じゅうりんの問題にからんでくるのでございますが……。
  84. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 お答えいたします。当委員会でこの問題につきましては私どもたびたびお尋ねに対してお答えをいたしておるのであります。ただいま中山委員お尋ねに対しまして、他の委員の方にお答えしましたことをまた繰り返して申し上げるようなことになりますが、御了承いただきたいと思います。  売春行為取締りということは非常にむずかしい問題でございます。証拠収集が非常に困難なことをわれわれ痛感をいたしておるのであります。今日まで私どものこの問題について一応とっております態度を御参考までに申し上げますと、御承知のように売春行為そのものずばりを取り締る国の法規がないわけでありますので、現に慎重御審議をいただいておりますが、その他の売春行為に関連を持つ諸法令に基きまして、たとえば性病予防法、勅令第九号、軽犯罪法、さらには一部の地方自治団体において作っておられる売春取締条例、こういったものを根拠にいたしまして努めて取締りをいたしておるのでありますが、何分にも事柄が事柄であります、こっそり行われる行為でもあります。証拠収集は非常にむずかしい問題でありますだけに、今日まで必ずしも皆様の御期待に沿うような十分な取締り効果をあげていないことは率直に申し上げなければならぬかと思っております。今日までのわれわれの取締りの一応の方針といたしましては、そういうむずかしい問題でありますだけに、少くとも悪質な人身売買的な人権侵犯事犯、さらには文教地区あるいは住宅地区といったところで行われる売春行為は、社会風教上著しい悪影響があるものと考えまして、そういうものに重点を移行して取締りを励行していく、そして逐次他の地域に及ぼしていく、いわゆる青線さらには赤線区域、こういう方面にさらに余力がありますならば及ぼしていく、こういう態度をとっておるのでありまして、従っていわゆる青線、赤線区域等につきましては、決して黙認をいたしておるわけではありませんけれども、必ずしも十分取締りの手は伸びておらないということを率直に告白せざるを得ない現状にあるわけであります。今回のこの御審議中の法案成立いたした暁におきましては、私ども立法趣旨に十分かんがみまして取締りの最善を尽して参りたいとは思っておりますが、今お尋ねがありましたように、取締りの実をあげるに急なるあまり行き過ぎがありまして、他の善良な方々の人権を侵害するというようなことがあってはまことにゆゆしい問題でありますので、そうした点につきましては厳重な戒心をいたしていかなければならぬと思っております、現在私どもこの法案成立の暁において考えなければならぬいろいろの点も検討いたしております。その中の一つとしまして、捜査技術の点につきましては、今申しました通り人権じゅうりんの結果に陥るようなことのないように、巧妙な合理的な捜査方針、捜査技術というものを警察官をして体得せしめて誤りなきを期していきたい、かように考えて、目下いろいろ検討中でございます。
  85. 神近市子

    神近委員 ちょっとその点について私も付加しておきたいと思います。今の捜査が非常に困難であるという点ですが、たとえばこういうことをある温泉地帯で話して聞かせた方がありました。これは警察関係の話をよく知っている人でありますが、その地帯では大体これは売春かそうでないかということを判別するには、泊る人が東京で婦人の方が地元である場合には、これは大体売春考えてよろしいということです。それからもう一つ今クモの子を散らすようにということですが、八年野放しになっていたのですから、日本売春史で五十万というような数字が出たのはこれが初めてなんです。それでここで何とかしなければという世論が起きたと思うのですけれどもこの間都条例に関する取締り方針をお話し下さいましたときに、あの集団の中、その周辺というものはどれがしろうとあるいはしろうと宿であり、あるいはどれが売春宿であるという区別がなかなかつかない。だけれど住宅の問にまぎれ込んだ場合には目立ちますからそれで判別ができる便利もあるということでした。それでクモの子を散らすというような事態は私は起らないだろうという今までの実例で材料を持っておりますけれどそれはよすとしまして、一ぺんそこを追い出されるというような事態が起ってもおさまるところにおさまって、おさまらない者だけが施設収容されるということになるわけですけれど、それはほんの一時的現象であまり長くはかからないと私は思います。それで散娼の場合の方が摘発はずっと楽だということは外国の例でもたくさん出ております。アメリカなんかでは良識ある周囲の十指の指さすところあの家は売春宿だ、あの女は売春をやっているというときには摘発していいというのがアメリカの一番新しいやり方でございまして、これは人権じゅうりんにならないかということで高等法院で問題になりました。けれど今ではアメリカはこれが一番よい方法であったということで非常に支持を受けているということもありますから、多分中山さんの御心配のようなことは外国の実例を見てよい方に私どもは想像するわけでございます。
  86. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 厚生省の方にお尋ねをいたしますが、たとえばパンパン狩りをいたしまして病院へ入れて、いいかげんなおったところで収容所に連れてくる。ずっと前の話ですが私が視察に行きましたところでは、そういう人たちはまだ病気が完全になおっていないときには一入ずつついていかなければ逃亡する、それで非常にこれは厄介な問題であるということを聞かされたのでございますが、一収容所で平均どれぐらい逃亡しておりますか。それからほんとうに更生したというパーセンテージはどんなものでございましょうか。また第三にはそういう施設を作ってそこに収容する。そうすると本人はそれでどうにか生活が保障されるのですが、その人がいわゆる生活の費用を送っておったその家族は、今度はいわゆる要保護の家族に転落すると思うのでございますが、こういうことによって今までの生活保護法の予算にどれぐらい載せていくか。いわゆる一人の売春婦がそういうふうになったために、その家族に対する予算はどれくらい必要だとお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  87. 安田巌

    ○安田政府委員 ただいま資料を持ち合せておりませんので、はっきりしたことは申し上げられませんけれども、戦後いわゆるパンパン狩りというのをやりまして、強制的にそれを検査して、病気の者は病院に連れていく、そうでない者はそれぞれ措置をいたしまして、家に帰すなりあるいは家に帰れない者を収容する、あるいは病気がなおりました者を収容施設に持ってくるというやり方であったわけですが、今はそういった強制的なことはできませんから、お話のように現在七百人ばかりが全国十七カ所の収容所に入っておりますけれども、途中で無断で出てしまうというのも相当数おるのでございます。しかし同時に更生をいたしまして、帰宅するとか、結婚するとか、就職いたします比率も相当高いのでございまして、その数字を今持ち合せておりませんので、はっきり申し上げることができませんことを遺憾に存じますが、そういうわけでございますので、今のやり方としては相当むずかしい点が確かにあるのでございます。施設の長の方々の中には若干強制力でも持たせたらどうかというお話がございますけれども、しかし私どもの立場から申しますならば刑罰とか刑罰の延長とかいう考え方じゃないのでございまして、やはり社会福祉施設あるいは保護更生という立場からこの問題を考えておりますので、そういう場合もやむを得ないじゃないかという考え方で参っておる次第でございます。ただ今度こういう法案通りました場合にも同様に強制力がございませんから、無断で帰るというような事態も起きてくると思いますけれども、しかし帰ってくるとまたそういったようなことをするとか、そういったところに落ち込むという方面がこの法律でどの程度取り締られ、どの程度実効を上げるかということによって収容施設の方の成績も違ってくるのじゃないかというふうに考えております。  それからもし婦人収容施設に入った場合に、その者の仕送りによって生活をいたしておりました家族等がどういうことになるかということもございますけれども、もちろん収容施設の方で家族のめんどうまで見るわけにいきませんので、そういうものは当然生活保護法にかけて参りたい。これは現在のところどの程度になるかということは、私ども計算をいたしたことはございませんけれども、生活保護法は御承知のように国民の最低の生活を守るといういわば国の責任でございますので、全体の生活保護の中から考えれば微々たるものじゃないかと考えております。
  88. 神近市子

    神近委員 いろいろ調査がございますけれども、私ども婦人少年局調査が一番親切に行われていると思うのです。それで鹿児島県と山形県とを取り合せて婦人少年局の人が実地に入って調査しております。婦人少年局というものは調査費の予算がほとんどないのですから、ぜひ調査しなくちゃならぬときは自費でやるくらいですからその調査事例は少いけれども、非常に参考になりました。これによると、四十三人調べてございます。身元から生活状態から全部調べて出ているのですが、親元に金を五百円から五千円送っている者は十例だけです。そしてまるまる送らないのが十二例、それからときによってちょいちょい——お盆にげたを送るとか、お母さんのたびを送るとかいうものが十五例、それから考えてみますと、そこへ入るときは生活が非常に苦しかった、だけれどももう落ち込んだ人はあとはあまり当てにされていない状態だと思うのです。いつでも貧困が原因だからということで考えられるのですけれども、この事例を見ますとあそこに売られていくときが最も最悪の状態で、あとはそれが養っているという事例があるにはあるのですけれども、少数だということは言えると思います。
  89. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 実施されるときがこれが通りましてから三ヵ月後ということになっておりまするが、どうせぎりぎりまでこの商売が続けられるのではないかということを私はおそれるのでございます。外国のいろいろのものを読んだり、聞いたりいたしますと、そのときにいわゆる地下にもぐってしまうというようなことも聞かされるのでございますが、そういうおそれがないものかどうか。それまでに転向をして、そしてちゃんと行く先を見つけるような余裕のあるやり方をさせるためにこの三カ月が置いてあるのだと思いますけれども、そうしないでぎりぎりまで商売をやって、いわゆる借金に縛られておるような人たちがぱっとあすからというようなことになってそれがもし地下にもぐった場合、アメリカではこの例が非常に多いのでありますが、身売りをする人がないので、良家の子女までも注射をしてそういうところへ連れていって、もう絶望で社会が相手になってくれぬということになってから初めて拘禁を解くというようなことも、私はあの地におりましたとき聞かされておりましたことを今思い出すのでありますが、そういうことに対するいわゆる防犯——たとえば活動写真などの暗いところで、ぷっと隣の良家の子女に注射をして、その人が気を失いますと、これは私のお友達ですからといってそういう施設に連れていって監禁をして、もう社会が相手にならぬということになってやっと外出を許すという事例を再三アメリカあたりで私聞いておるのでございますが、こういう婦女誘拐の防犯ということについては、この問題に対処してお考えになっていらっしゃるかどうか、取締り当局にお聞きいたします。
  90. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 本法案成立いたしました場合には、施行までに三カ月の猶予期間が置いてあるということでございます。これは提案者の方から御答弁があるのが適当かと思いますが、一応私の見解を申し上げさしていただきますと、その間に極力転業対策等の指導を加えまして、新しい法に規定されたような結果になりますように、業者の方あるいはいわゆる売春婦といわれる婦人の方々の更生施策を講じていただく準備期間ではなかろうか、私はそういうふうに解しておるのであります。この間における適切なる指導ということが最も肝要ではなかろうかと思うのでありますが、この問題は私ども警察の直接の問題ではなく、労働省その他の所管であろうかと思いまするので、私がそれ以上深くは申し上げる資格もございませんが、私自身はそういうふうに考えておるのでございます。そういう適切な指導が加えられまして、本来の正しい職業にすべての関係者の方々が転換をされていくということが望ましいことであり、私ども警察の立場としましても、ぜひそういう正しい方向に関係各機関において御指導を願うということを要望いたしておるわけであります。
  91. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 今の指導について労働省に伺います。
  92. 谷野せつ

    ○谷野説明員 労働省におきましてはかねてから売春をなくしたいと存じましていろいろ啓蒙をいたしましたり、あるいは売春に関しまする基礎資料を整えて参ったのでございます。調べました結果、とりわけ経済的な問題で売春婦に転落していく方が多いのでございますが、この問題は経済上の問題だけではございませんで、特に社会一般の婦人に対する考え方あるいはまた婦人の人権を守るとか、あるいは婦人自身が社会的に処して参ります考え方がしっかりしておるかどうかという問題にも関連しておりますし、また社会のいろいろな問題が関連してこういう事態が起っておりますので、売春の防止という観点に立ちまして、年々資料を整えますばかりではございませんで、各方面と連絡をとりましていろいろ考え方を訂正するための啓蒙活動を実施いたしておりますし、また個別的に転落をしようとする人あるいは現に転落をしてしまっている婦人に対しましては、窓口の第一線機関となりまして婦人少年室長が親身にお世話をいたしておりますし、あるいはまた今日婦人少年局には協助員の制度がございまして、全国に八百五十名くらいの方が婦人たち、子供を守るために働いていただいております。この協助員の方々がさらに売春の問題につきまして親身になってお世話していただくように、私どもお話し合いを進めて参りたいと思っております。
  93. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 この間社会労働委員会でこれをお取り消しになりましたけれども、日雇い労働者の参考人の方がいわゆる就労の日程が非常に少い、それで非常に困って、女の日雇いの人が月に千円でもいいから二号の口を探すという例もある、こういうお話を聞いて私はびっくりいたしたのでございます。それはお取り消しになりました。しかしそういう面もございまするので、どうぞ一つ婦人少年局におかれましては、いろいろの事例をお集めになることもまことにけっこうだと思いますけれども、日雇いの日にちが少いためにせっぱ詰まってそういうことを思いつく婦人がないように、ぜひ日雇いの女の人たちに特に力を入れて下さることが防貧の動きではなかろうか。もう転落いたした人はなかなかむずかしゅうございますし、国家にもお世話がかかりますので、どうか一つ落ち込まないうちに助けてやるという労働省の御活動を希望いたしまして、これで私の質問を終ります。
  94. 山口シヅエ

    山口(シ)委員 労働省の方にちょっとお伺いいたしますが、労働省売春白書として発表なさっておるものに、全国において五十万人の売春婦——これは推定になっております。長いこと正確な数学をつかみ切れないような御様子で、三十万人から五十万人というような推定が大体出ておりましたけれども、今日大体五十万人だろうというような数字を御発表なさっておるようでございます。もちろん集娼の御調査は困難ではないだろうと存じますけれども、散娼は非常に御苦労だろうと思うのです。しかし数を調査いたしますのにここに五十万人という数が出ておるところを見ますと、八千万人の人口の半分を女子と計算いたしますと八十人に一人という、売春で生活している方のパーセンテージというものは非常に高いように見受けるのですが、この五十万というのはどのような御調査の結果この数字が出たのでございましょうか。
  95. 谷野せつ

    ○谷野説明員 これは別に実態調査をいたしました数字ではございませんで、世上言われております数字を記載したものであります。
  96. 山口シヅエ

    山口(シ)委員 そういたしますと、これは婦人少年室が地域的に調査して推定したものでもないのでございますか。
  97. 谷野せつ

    ○谷野説明員 私どもの方で、世上の数字を推察した程度でございます。
  98. 山口シヅエ

    山口(シ)委員 もう一つお伺いしたいのですけれども、先百全国婦人少年局の室長がお集まりのようでございましたけれども、その席で売春問題について何か話し合いはございませんでしたでしょうか。同時に各婦人少年室での室長さんの地区的な売春に対する御意見、いわゆる地域の世論というものを持ち集まったような様子はございませんでしょうか、一つ答弁いただきたいと思います。
  99. 谷野せつ

    ○谷野説明員 全国の室長会議の席上で室長から述べられましたことの概略お話し申し上げますと、まず第一点は、かねがね婦人少年局では、先ほどお答えいたしましたように、売春の問題につきましては、調査や啓蒙の運動を実施いたして参りましのでございまますが、最近は特に売春問題についての相談事件が非常に多くなったということでございます。特にこの法案がこちらで議せられましてからは、転落前の女性あるいは現に売春婦として働いていらっしゃる方が何とか救ってほしいというので、一日に一室で二件から三件ぐらい御相談に応じている状態でございます。この問題は大へん複雑な問題でございまして、簡単に解決してあげることができませんものでございますから、室長が業者の方と話して解決をしてあげましたり、あるいは就職先をお世話をいたしましたり、あるいは国へ帰しますための親元との関連をつけましたり、この相談事件で非常に忙しくお世話をいたしております。それからまたこの問題につきましては、地域の婦人団体の方々が大へん熱心に注目をされまして、現に今日地域でもって婦人団体でこの問題に対する決議文を室長が持って、国会議員の先生方あるいは大臣の方々にお届けしてほしいといって参っておるものもあるようなわけでございます。
  100. 山口シヅエ

    山口(シ)委員 どうも御丁寧な御答弁ありがとうございました。大へん参考心になりました。
  101. 世耕弘一

    ○世耕委員長 これにて本日の連合審査会は散会いたします。    午後一時四十四分散会