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1955-07-30 第22回国会 衆議院 法務委員会 第45号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月三十日(土曜日)     午前十一時二十八分開議  出席委員    委員長 世耕 弘一君    理事 古島 義英君 理事 三田村武夫君    理事 馬場 元治君 理事 福井 盛太君    理事 古屋 貞雄君 理事 田中幾三郎君       長井  源君    林   博君       生田 宏一君    小林かなえ君       猪俣 浩三君    岡本 隆一君       神近 市子君    島上善五郎君       細田 綱吉君    志賀 義雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 花村 四郎君  出席政府委員         警察庁長官   石井 榮三君         警  視  長         (警察庁刑事部         長)      中川 董治君         検     事         (刑事局長)  井本 臺吉君         検     事         (保護局長)  齋藤 三郎君         法務事務官         (人権擁護局         長)      戸田 正直君         法務事務官         (公安調査庁次         長)      高橋 一郎君  委員外出席者         検     事         (公安調査庁調         査第二部長)  宮下 明義君         厚生事務官         (公衆衛生局庶         務課長)    小沢 辰男君         厚生事務官         (引揚援護局引         揚課長)    坂元貞一郎君         厚生事務官   田島 俊康君         参  考  人         (警視庁防犯部         長)      養老 絢雄君         専  門  員 小木 貞一君         専  門  員 村  教三君     ————————————— 七月二十九日  委員福田昌子辞任につき、その補欠として中  村英男君が議長指名委員選任された。 同月三十日  委員中村英男辞任につき、その補欠として岡  本隆一君が議長指名委員選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  参考人招致に関する件  人権擁護に関する件     —————————————
  2. 世耕弘一

    ○世耕委員長 これより法務委員会を開会いたします。  日程に入ります前にお諮りいたしますが、昨日議長へ申請いたしました閉会中審査案件が付託になりましたら、すでに設置いたしております最高裁判所機構改革に関する小委員会及び交通犯罪に関する小委員会中心にして審査を継続したいと存じますので、それぞれの案件を適当な小委員会に付託し審査いたさせますが、審査の必要上参考人等招致いたす場合など手続上必要な事項については小委員長に御一任ということにしていただきたいと思いますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 世耕弘一

    ○世耕委員長 御異議なければさよう決定いたします。     —————————————
  4. 世耕弘一

    ○世耕委員長 次に人権擁護に関する件及び裁判所司法行政に関する件について調査を進めます。  質疑通告順によってこれを許します。猪俣浩三君。
  5. 猪俣浩三

    猪俣委員 厚生省の方にちょっと精神衛生法について伺いたいと思います。事案は、日本女子大学の古い教授でありました東女史武蔵野精神病院に突如として収容したという事案でありまして、これは精神衛生法の法規にのっとって合法的にやったと学校側は言っているようでありますが、私どもには幾多の疑問がそこにある。もしこの精神衛生法を乱用いたされますと容易ならぬ人権侵害を引き起すおそれがありますので、その点についてお尋ねをしたいと思う。この精神衛生法をざっと見ますと大体手続が書いてあるようでありますが、精神異常者があるということを発見した場合に、それを病院へ収容するにはどういう手続を経て収容されることになるのであるか、それを一通り説明していただきたいと思うのです。
  6. 小沢辰男

    小沢説明員 私、公衆衛生局庶務課長でございますが、お尋ねの、現在の精神衛生法における入院手続規定について概略御説明をいたします。  まず精神障害者の発見というような場合には、法律の定めによりまして、精神障害者の疑いのあるような方を知った人は何人もこれを通報するという規定になっております。従ってどなたかがおかしいという場合にはだれでもそれを通報することができるようになっております。この通報を受けました者を都道府県知事がいろいろと調べまして、特に鑑定医を派遣する必要があるという場合には鑑定医を派遣しまして、この鑑定医が二名以上、大体精神障害がはっきりするということで、自身を傷つけるおそれがあるか、あるいはまた他を害するおそれがあるかというような精神鑑定をいたしまして、それが一致いたしますと、二十九条に基いて強制入院手続をとり得るわけでございます。ところがそれに至らないような者でございましても、精神衛生法の中に、保護義務者同意による入院という制度がございます。これは三十三条に、精神病院の長が診察の結果精神障害者であると診断いたしまして医療及び保護のために本人入院させる必要があるというふうに認めました者は、保護義務者同意がありますときには本人同意がなくとも入院さすことができるという同意入院規定がございます。この両方によりまして入院をさすことになるわけでございます。なおこの同意入院規定は若干の拘束権、あるいはまた本人をある程度いろいろとだましたりすかしたりしまして病院に連れてくるということも今までの解釈上大体認められておるのでございます。
  7. 猪俣浩三

    猪俣委員 精神異常者を発見した者は何人も通報するとおっしゃったのですが、その通報するというのはだれに通報するわけですか。
  8. 小沢辰男

    小沢説明員 二十三条によりますと、都道府県知事に申請するということになっておりますが、保健所長を経て申請をしたり、または直接都道府県知事に通報する、最終的には相手方は都道府県知事ということになっております。
  9. 猪俣浩三

    猪俣委員 それから、保護義務者同意があるならば入院せしめることができる、その保護義務者というのはどういう者が保護義務者となって、またいつ保護義務者として決定せられるのですか。
  10. 小沢辰男

    小沢説明員 保護義務者については第二十条に規定がございまして、保護義務者が数人あるような場合にはやはり裁判所でその選定の手続をしてもらうということになりますが、最初申し出がありました東先生のことにつきましては、全然肉親の方がいらっしゃいませんで弟さんだけでありますので、弟さんが保護義務者になっておるものと考えられるのでございます。
  11. 猪俣浩三

    猪俣委員 それはある人の保護義務者ということは、何か家庭裁判所かその他において決定されるものですか。保護義務者というものは当然に近親者ということに法律上きまっているのですか。あるいは何か特別の手続を経てその人が保護義務者となるわけですか。これをお尋ねするゆえんのものは、東女史の弟さんというのは、二十年も本人音信不通なんです。それが保護義務者として突如として同意し、その同意に基いて入院したとこう言う。しかし二十年来何ら音信のない者、それがいつの間にか本人重大事件について同意するという権限がいつ与えられてくるのであるか。私どもはなはだ解せない。そこで、親であるとか子であるということはわかるのだが、そうじゃないような場合にいつその保護義務者というものがきまるのですか。病気になってから自然これは法定的にきまるのであるか、あるいは家庭裁判所あたりが何か選任でもするのですか。この精神衛生法を読めば出てくると思いますが、それを実際どういうふうに扱っておられるのであるか、お聞きいたしたい。
  12. 小沢辰男

    小沢説明員 二十条によりますと「精神障害者については、その後見人配偶者親権を行う者及び扶養義務者保護義務者となる。」ということがございまして、欠格要件は、たとえば行方が知れないとかあるいは破産者であるとかいうような欠格要件がございますが、一応法律上は選任手続を経ないでそれぞれそういうような者が保護義務者となるということにきまっておるのでございます。第二項には「保護義務者が数人ある場合において、その義務を行うべき順位は、左の通りとする。」ということになっておりまして、一番目には後見人、二番目には配偶者、その次には親権を行う者がなる。ものもそれらの後見人配偶者親権を行う者という場合以外の扶養義務者の中から選ぶ場合にその人が数人あれば家庭裁判所選任をする、こういうことになっておるように私どもは了承しております。
  13. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると本件の場合、二十年も音信不通の、しかも弟です。そうして東佐誉子自身女子大先生までやってりっぼな著書を数冊も出している人です。何ら扶養なんか受ける人ではない。親権者でもないことは明らかであるし、東女史が弟から扶養を受けている関係にないことも明らかだ。そしてその人は家庭裁判所審判を受けたということも聞かない。そうするとそういう者が一体保護義務者であるかどうか、あなたのお考えはどうですか。
  14. 小沢辰男

    小沢説明員 これはあとでおそらく御質問があると思いますのでそのときにいろいろと御本人病状その他につきましては申し上げたいと思いますが、そういうような御本人である場合にだれがその保護義務者になるかというふうに考えますと、やはり実弟がおられる場合にはその実弟保護義務者になるものと私どもは考えております。
  15. 猪俣浩三

    猪俣委員 いやその実弟というものが、この精神衛生法の何条によってそうなるのですか。二十条ですか。二十条ならどこの根拠からそれが出てくるか、それを明らかにしてもらいたい。
  16. 小沢辰男

    小沢説明員 民法の八百七十七条の一項によって、当然弟さんを扶養義務者と考えたのであります。
  17. 猪俣浩三

    猪俣委員 民法の八百七十七条をまだ読んでおりませんが、どういう文句になっておりますか。
  18. 小沢辰男

    小沢説明員 民法の八百七十七条は、第一項に扶養義務者規定がありまして、直系血族及び兄弟、姉妹互いに扶養する義務を有する、こういう規定であります。
  19. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、民法規定から扶養義務者——この東の場合は、私は具体的にわかりませんが、そういう扶養義務者が数人あったとすれば、この二十条の条項に従って、家庭裁判所審判を受けなければならぬのであるが、実際上、弟さん一人であったかどうかわからぬ。ただし、この弟さんというのは、二十年も本人とは音信不通なんです。そして、本人に一ぺんも会っておらないのです。これは法律の理屈から離れて、あなたに一つ考えていただきたい。二十年も本人を見ていない。しかるに女子大の方から、精神病になったから上京してくれとたのまれた。突如として上京したが、精神病で大へんだから遠慮してくれといって、むぞうさに押し出してしまった。それを大へん後悔しているそうです。二十年も本人を全然見ていない人間に、一ぺんも会わさない。病院にそう言われたものだから、それを信用して遠慮をしてしまった。その後教え子やたくさんの人によって、全くそんな収容しなければならぬ精神病者でないことがわかって、はなはだ自分は残念なことをしてしまったと言っている。しかもこのことは、六月中警視庁か、あるいは国家警察から、わざわざ弟さんの現住地に出かけていって調査したときに、それをはっきり弟さんが警察官に言っているはずなんです。それについて警察からどういう報告がありますか。弟さんには学校にだまされたとはっきり言っているそうですが、そういう報告を受けておられるか。養老さんにお尋ねいたします。
  20. 世耕弘一

    ○世耕委員長 養老防犯部長参考人と決定いたします。
  21. 養老絢雄

    養老参考人 ただいまお尋ねのありましたように、六月に警視庁から和歌山県の実弟のところへ参りまして、当時のいきさつ等を聞いたのでございますが、東諦さんのそのときのお話では、何分自分の姉が精神上多少病気があるようだということを聞きまして、そういうことから、御指摘のように全然長く会っていないことでもございますので、自分が村の知人などをたずねて、そういう場合はどうかということを聞かれたようでございます。そういたしましたところ、肉親の者が突然会ったりすると、かえって病状が悪化するようなこともあるので、むしろ肉親の者は急に会ったりしない方がいいということを聞いたりして、心準備をされている。そういうことで、自分東京へ出まして、この病院へ参りまして、ねえさん精神病気であって、治療を要するという話を聞きまして、そのときに、自分の方からぜひ会ってみたいという意思は表示されておられなかったようであります。御本人としては、そうした予備知識といいますか、むしろ肉親の者は会わない方がいいのだという気持から、おそらく積極的に会いたいということを言われなかったのじゃないかと思います。そうしたことで、病院の方からも話があったことでもありますので、長く会っていないことで、当然このことを信じて、おねえさんに会わずに調書に署名、捺印された、こういうふうにわれわれの方では聞いております。
  22. 猪俣浩三

    猪俣委員 その報告は、東の弟さんが現在関係者手紙なり話なりしていることと非常に違う。これは私はあと委員長お願いするつもりですが、当委員会国政調査に基いて徹底的に調査してもらえば、真相は判明すると思う。自分日本女子大なり病院にだまされたということを警視庁の役人に言ったということがちゃんと書いてきている。あなたの報告は、都合のいいように間違っている。なお本日当法務委員会日本女子大から真相の記録というものが出ておりますが、これを見ると、東氏の病気について弟さんに自分たちは全く指示したこともなければ、連絡したこともなければ何もしない。弟さんの方から自発的に病院へ入れてくれと言ってきたんだとちゃんと書いてある。警視庁のお調べでも、この女子大弁明はでたらめであることはわかりますが、二十年も音信不通の人が突如として病院へ入れてくれということを言うて出る道理はない。女子大は今においてもまだ虚構の弁明をしております。あなた方はそれに多少合せるような調査報告をしているんじゃないかと思われる。これはいずれ当委員会で徹底的に調べてもらいたいと思いますが、それはそれといたしまして、なお厚生省の方に伺いたいと思いますが、今あなたの御説明によりましても、精神異状があるならば、都道府県に通知する。そうすると、二人の医者診察によってことを決定する、こうなっている。これは昭和二十五年にできた法律であります。基本的人権を極力尊重した日本国憲法の成立以後の法律でありますがゆえに、法律の全精神人権侵害にならぬような細心の注意をもってできているものだと理解しなければなりません。すべてこの法律を理解するには、人権保護ということを頭に置いて条文を解釈しなければいけないと思います。そこで二人の医者鑑定という言葉がある。本件について先般質問したところによりましても、病院では、だれから連絡があったか知らぬが、栄養士と称する女の子——ちょっと東氏が部屋にいるかいないか確かめるだけの役目じゃないかと思うが、栄養士をやって、その報告に基いて突如三人の暴漢によって拉致した、こういうことであります。一体この精神衛生法に書いてある精神衛生鑑定医という中に栄養士なんというものが含まれるものですか。
  23. 世耕弘一

    ○世耕委員長 養老防犯部長から発言を求められていますから、先に発言を許します。
  24. 養老絢雄

    養老参考人 先ほど東さんの弟さんに会いました際の心境でございます。当時の状況を聞きました点についてのわれわれの承知した限りでは先ほど申した通りでありますが、そのときの心境につきまして、現在の心境はどうですかということを係官が聞きまして、それに対しまして東諦さんは、私は学校当局病院院長に全く利用されたのです。ばかを見た。こんな結果になるのであったと知ったら呼び出しに応ぜず、同意書にも同意しなかったらよかった、姉には済まなかったと思っていますということことを当時の心境としては言っております。
  25. 小沢辰男

    小沢説明員 お尋ねお話の前に、私ども事件の概要として承知いたしておりますものを簡単に申し上げた方がよりはっきりすると思いますので、申し上げたいと思います。  昭和二十七年八月に東女史精神に異常があるということから、女子大側和歌山県の実弟身柄引取方お願いに出向いたのでございます。そのときに実弟お話は全く音信不通というわけではないが、いろいろと手紙が来るけれども、どうも勝手なことばかり言うておるので、面談したことはない。生来ちょっとそういうような気味のある姉のもんだから、どうしても自分はそういうことについては、できたらそういうことでなくて、関西方面に就職でもあっせん願えればありがたいというような話もあったそうでございます。しかしそれもある程度学校当局も努力をしておったようでございますが、どうしてもうまくいきません。それで一応は学校側お願いをしたままで帰っておるのでございます。二十九年の九月に学校側では東女史が、たとえば裸ろうそくをつけておられるというようなこともあったりしまして、いろいろと学校で問題にいたしたのでございます。昨年の十一月に学校側和歌山県に居住します実弟に再三また再度身柄引取方を交渉いたしたのであります。その結果、十八日に弟さんが上京されたのであります。いろいろ相談の結果付近の精神病院であります東京武蔵野病院入院させたいというようなことで、先ほど申し上げました同意入院手続を一応とったのでございます。しかしながら病院側でもいろいろな状況を聞かれまして、あるいはその後ほかのいろいろなデータから大体精神障害者であるというふうに考えられたのでございますが、さらに長年の病院勤務をやっております同じ女子大卒業生である小野さんという食養課長でございますが、この方を派遣しまして東氏に面会を求めて、女子大内の研究室にお訪ねしたのでございます。当時東先生は男性の方にはほとんど絶対に会わないということでございまして……。
  26. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたの言うていることは学校弁明書にみんな書いてあるから、そんなことはあなたから聞かないでよろしい。学校代弁者のようなことは聞かないでよろしい。私が今質問したのは、一体栄養士というものが精神衛生法の二十七条の要求する精神鑑定医であるかどうかということをお尋ねしたいのです。この二十七条には二人の精神鑑定医鑑定を要すると書いてある。それだのに栄養士と称する婦人が行ってちょっと会ってきて、直ちに三人の暴漢によって拉致させたということの実相なんです。そこで一体そういう手続が合法であるかどうかというところの説明を私は承わっておるのです。
  27. 小沢辰男

    小沢説明員 そのためにも必要かと思って申し上げたのですけれども、それでは結論だけを申し上げます。鑑定医はあくまでも精神科専門医でなければいかぬわけでありまして、ただこの場合いは精神科関係から言いますと、精神病者は常にみずからの病気に対する意識を欠いておりますのが常でございますので、それから一方場合によりますと専門医が直接面談をするということはなかなか困難な場合もありますので、いろいろな状況を人を派遣したりしましてできるだけそうした資料を集め、その上に立って判断する場合もあるのでございまして、しかしあくまでも二十九条の入院措置をもしもやります場合には専門医鑑定が必要であります。
  28. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると専門医鑑定のないうちに三人によって自動車で強引に病院まで引っぱっていった、これは一体どういうことですか。  なおつけたすが、全くの着のみ着のままふだん着でいたまま、何の仕度をすることも許されず、いきなり玄関から連れ込んでしまった、全くの強盗、殺人犯人を収容するよりひどい、そういうことが診察以前に行われておるということに対してあなた方はどう考えるか。
  29. 世耕弘一

    ○世耕委員長 当局者側に御注意申しますが、本件を取り扱った実際的の問題だけを御説明願うと、質問者の間に理解がスムーズに進むのじゃないかと思います。そういう建前から係官が御調査になった範囲を中心質疑者に答弁をしていただくように希望いたします。
  30. 小沢辰男

    小沢説明員 診断をいたしませんで強制的に入院させるということはできないと思います。ただこの場合には一応精神科専門医十分診察をいたしますために——よくあるのでございますが、この精神障害者と考えられる方を一応なだめすかしあるいはいろいろな方法で病院まで連れてくるということは許されているとわれわれは考えているのでございます。
  31. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこで今後当法務委員会におきましてもこの精神衛生法というのは根本的に検討してみなければならぬと思うのです。脳病院院長というのは絶大なる権力を持っております。大体本人診察もせず、何かの女の子報告を聞いて突然暴漢をもって収容する、もしそういう権限があることが計されるとするならば大へんな問題です。これはちょうど同じ有名な精神病院院長松沢病院院長の林さんが言っておる、私は林さんの言っておることが正しいと思う。「私たち精神障害がある、あるいは精神病であると診断することと、その人の社会的の存在価値、あるいはその人をどう取扱うのが適当であるかという事の判断は別のことで、立場の違った考え方になるのです。したがってこの場合、御当人が異常だったということの主張だけで、今回の問題の一切を解決しようとすることは少し無理があると思うのです。要するにわれわれ専門家精神障害があるといっても、それにはいろんな程度があるし、その続く期間にいろいろの形があるので、そうした異常があるから、その人が一切の価値のある社会活動かできないと判断されては困ります。実際には異常があっても、ある程度の生産的活動はできる人があるし、昔から天才と気違いは紙一重というけれども、われわれからいうと、ほんとうの精神病の出やすいような人が天才的ないろんな業績や事業を残すということもあります。」というふうに——どもの問題にしておることは、この東さんが普通平凡の人と同じ精神状態だということを主張しておるのではないのです。だから先般も言うておるように、異常性格者かもしれません。そうしてこういうことは社会的に活動しておる人にもたくさんある、政治家のある者、実業家、音楽家、画家、ことに新興宗教の宗祖なんというものは皆さんから見れば当然精神異常者だと思う。収容して二月間外界と絶対隔離してしまう。卒業生面会を求めていっても、一切面会させなかった。一切外界と隔離して二月もそこに収容してしまう。一体この東さんの社会的地位、今までの教養——私は先般質問で間違いましたが、十一月二十三日に強制収容されておるが、このりっぱな「世界人はいかに食べつつあるか」という本は、十一月に発行されている本であります。かような名著を発表された人なんです。その人がいきなり暴漢をもって着のみ着のままで拉致され、しかも二月間外界と一切面談を遮断するような病状であるか、私はそれははなはだ疑問だと思う。それを拉致する際には専門医鑑定が必要でしょう。その女の子報告はどういう報告をしたのか知らぬが、もしその女の子日本女子大卒業生だというならばなお危険だ。なぜならば本件は学内の勢力争いからきている。東さんは学長の子分になったということである。どういう人か知らぬが、女の子が来ていろいろな報告をした。医者自身診察せずして、そんな人の報告——もしそれが悪意でならどういう報告をするかわからぬ。善意であるとしても正常な報告をする能力があるかどうか。法律専門医診察を要求していると思うのです。そんな者の報告によって、状況判断で、人の調べてきたことを聞いて、一体判断ができるものであるか、私ははなはだ疑問だと思う。これはあなたもそういう方面の役所のお勤めをされておるのですが、この精神衛生法という法律を悪用いたしますと重大なことが起ると私は思う。そこでこれを根本的に調査しなければならぬと思ってあなた方にお尋ねしているのです。そうするとあなたの御見解は、専門医が詳細に診察した上でなければ無理やりに人を着のみ着のままで強奪して病院に連れていくというようなことは、違法だとお考えになりますか。それとも許されておるものであるとおっしゃるのですか、どちらですか。
  32. 小沢辰男

    小沢説明員 二十九条の適用をいたします場合には、専門医の二人以上の診断の合意がなければいかぬということは、法に明文のある通りでございます。この場合は診察のためにおそらくは病院まで実弟東先生をお連れして、そうして診察を請うのが普通だろうと思うのでございますが、東女史が病識がありませんために診察をぜしめることが非常に困難だ。そこで病院まで護送の依頼をされたものと私どもは考えておるのでございます。また一般に同意入院入院させる場合には、患者の家族が患者をいろいろとだましたり、ある程度でございますが、身体を拘束しましたりして病院まで連れて参りまして、そうして医師の診察を受ける例も場合によってはあるのでございまして、そういうように私どもは感じたのでございます。なお御趣旨の通りこの精神衛生法の適用に当りましては、人権の擁護、尊重という点を十二分に気をつけていかなければならぬことは、私ども常々指導しておるのでございます。なお詳細に調査をいたしたいと思います。
  33. 猪俣浩三

    猪俣委員 東女史の問題は、サンデー毎日に発表され、婦人公論の七月号、八月号に発表され、当法務委員会においても質問戦が展開されておる。監督官庁としてあなた方はもっと徹底的に調査してもらわなければならぬ。日本女子大学校側の言うこと、病院側の言うことばかりをまる暗記して答弁されたのじゃ困るのです。もっと真相調査しなければならぬ。東女史にも私は数回会っておりますが、とにかく病院入院させなければならぬくらいならば、幾ら普通人といえども見当がわかる。目の色が変っているとか、乱暴なことをするとか、病院に収檻しなければならぬような精神障害というものは相当程度の進んだものだと思うのです。普通人に見分けのつかぬようなものじゃなかろうと思う。それを学校におる人をじかに有無を言わせず連れ込んだ。その当時の東女史の状態からそういう強引にする必要があったかどうか。なおまた自分たちで弟さんを呼び出しておきながら、一ぺんも弟さんに会わせもしない。しかもそれは二十年来も会っていない弟さんです。病院がほんとうに人権擁護精神に燃えてやむを得ず病院として収容するという態度であるならば、もう少し方法があったろうと思う。それをかようなことをいたしたのは、この武蔵野病院院長自身女子大のRTAの会長で、この学校の派閥の中心人物なんです。そういうことをあなた方はもっと調査しなければならぬ。ただ通り一ぺんの病院学校報告をまるのみにしていられたのでは大へんなことが起るのです。私ども法務委員会あと委員長お願いしてこの精神衛生法なるものをもっと研究しなければならぬ。また警察関係の人にもかようなことが在来相当あったと思う。それが何しろ片方は医者であり、そうして役所と病院と結託して見のがしておるようなことをやっておるから問題にならなかったたけで、相当人権侵害を今までやってきたのではないか、これは有名な後藤新平の相馬事件以来非常に重大な問題であります。こういうことが現代においても私は行われておるということをこの東女史の問題で初めて痛感してきて、これは容易ならざることだと思うのです。これはもっと厚生省におかれては具体的に東女史の当時の精神状態その他を別な医者多数にでもかけて——医者同士はやっぱり仁義がありまして、どうもあまりほんとうのことを言わぬ。もっとほんとうのことを言うような立場の医者もあると思う。そういう医者にも鑑定を求めて、もう少し役所としてこの東女史の監禁事件に対して重大視して調査していただきたいと思う。学校のする報告のまる写しみたいなことをやっておっては何にもならぬと思う。これはただ常識上考えても、どうも異常の事件だと思います。東女史という人の経歴及び現在私どもが会って感じましたことからしても、そうして問題の起し方が、二十年来会わぬ弟を呼び出して一目も会わせない。同時に三人の男で自動車へ連れ込んでしまった。二カ月も教え子がわんさと押しかけても一切再会をさせない。そういう状況であったのですか、それにしては実に不可思議千万です。何でもありません。私ども今お目にかかっていろいろな話を聞いても、ただ熱心な学者であったということだけは印象されます。一体あなた方は東女史に会ってお話ししたことがあるかどうかお尋ねいたします。
  34. 小沢辰男

    小沢説明員 厚生省当局とは東先生にお会いしたことはございません。なか御趣旨はよくわかりましたので、もう少し御趣旨の点も十分に調査をいたしたいと思います。
  35. 世耕弘一

    ○世耕委員長 本件委員長としてもちょっと発言をいたしますが、本件質問者と答弁との間にまだ相当の食い遅いがあるように思われます。換言すればまだ実相をつかんでいないようにも思われる節もありますので、この際当局は真相をさらに調査するように進められてその結果を本委員会報告されるように希望したいと思います。
  36. 猪俣浩三

    猪俣委員 私もそれに同感であります。
  37. 世耕弘一

    ○世耕委員長 なおさらに、特に人権擁護局長は本件に関しては直接の責任者のようにも考えられますが、人権擁護局長からこの点について何かこの機会に御発言があれば発言を願います。
  38. 戸田正直

    ○戸田政府委員 先般のこの前の法務委員会人権擁護局調査の経過を大体御報告申し上げた通り、ただいま調査中でありますので、結論を申し上げることは差し控えたいと思いますが、ただ人権擁護局調査の重点と申しますか、この東佐誉子を入院させるについての手続が法的に間違いなかったかどうか。たとえば三十三条の「精神病院の長は、診察の結果精神障害者であると診断した者につき、医療及び保護のため入院の必要があると認める場合において保護義務者同意があるときは、本人同意がなくてもその者を入院させることができる。」この精神病院の長の診断ということが、果して本件の場合に、この三十三条の診断になっておったかどうかというような点、それからこの東佐誉子を入院させるのが純粋に保護のためにやったものであるかどうか。あるいは他の目的のためにこれを利用したようなきらいがありはしないかどうか。さらに東佐誉子の実弟同意を得るについて、果して十分的確なる同意であったかどうか。精神衛生法の二十条の保護義務者の適格者の中の一号に、「行方の知れない者」、こういう規定がございます。これはもちろん行方がわからなければ保護義務者同意が得られるわけはありませんので、この規定はどういうものであるか、私今はっきりわかりません。ただこの精神からすると、果して二十年以上音信不通であったというような者はどうもこれに近いような感じがいたしますので、厳格な法的な意味はまだ私もつまびらかにいたしておりませんが、精神からすると、果して保護義務者としての適格性があるかどうかというような点、及び先ほど猪俣委員からお話がございましたように、武蔵野病院精神医学研究所と日本女子大学とは三つどもえになった非常に密接な関係を持っておりまして、ほとんど一心同体のように見られておりますので、こうした大学の教授と同じような関係にある病院に入れるというようなことに実は、多少の疑いを持っております。これらの点はまだ調査中でございますので、結論を申し上げる段階に参りませんが、これらの点について疑いのある点を今後とも究明していきたい、かように考えております。
  39. 三田村武夫

    ○三田村委員 関連して。私はその東女史と直接関係のある発言でありませんが、この問題の質疑、御答弁を伺っておって、実は深刻な体験を申し上げて、さらに一そうの人権保護の立場からの御善処を要望したいのであります。  私実はかけがえもない肉親の弟を精神病院でなくしているのであります。これは戦争中戦地に行きまして妙な病気を持って帰ったらしく、頭が変になってなくなったのでありますが、私約三カ月くらいその精神病院通いをしたことがあります。猪俣委員発言の中で思い出したのでありますが、ほんとうに乱暴も何もしない、実にすなおで穏やかな人がたくさん入っております。相当の名家の人らしい人が入っております。これはどういう関係で入ってきたか、私は地下室におけるささやきを聞きながら、実にいやな気持にとざされたことがしばしばあったのであります。これは人権保護立場から申しますと、東女史の場合を申し上げるのじゃありませんが、もし精神的に何らかの欠陥のある方は、よりあたたかい気持で保護されることが人権擁護の立場でありまして、特にその点を考えていただきたい。病院入院させなければならないのは、みずからの生命に害を与える、つまり自殺のおそれがある場合とか、あるいはあばれて他の者に迷惑をかけるというような場合が該当するのでありまして、私もしみじみとそれを感じたのであります。何らか周囲の家庭の環境とか他の事業上の関係で、ちょっとあれは精神病にして片づけておけ、こういうことが世間にありがちでありますが、実に悲惨であります。これは人権擁護の立場からお考え願うならば、むしろ病人の立場から真剣にお考え願いたい。果してこれを精神病院に収容し監禁する必要があるかどうかということを、むしろ法律の法文の解釈より以上深く病人自身の立場から一つ真剣にお考え願いたい。他の周囲の環境からの調査ではなくして、病人の立場に立って真剣にお考え願いたいということを、この事件にさらに御調査の手が向けられるようでありますから、一言申し上げて御善処を要望いたします。
  40. 猪俣浩三

    猪俣委員 今三田村委員発言もあったのであるが、石井長官なり井本刑事局長なり、あるいは養老部長なりから、過去においてこの精神衛生法の乱用の問題があったかどうかをお聞きいたしたいと思います。
  41. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 ただいま正確な資料等を持ち合せておりませんので、詳しいことを申し上げることができないのは残念でございますが、そういう容疑で調査をしたというようなことは、過去においても事例はあると思います。いずれ詳細調査いたしまして、適当な機会にお答えをいたしたいと考えております。
  42. 猪俣浩三

    猪俣委員 本件につきましては、今三田村委員からも実相についての質問がありましたが、私は相当人権保護の上から問題があると思う。精神衛生法という法律それ自体を点検し直す必要があるのではなかろうか。これは実は戸田人権擁護局長のサゼスチョンもあるのですが、これは相当問題だと思うのです。それに対して今の厚生省の取締りというのが実にルーズで、ほとんど病院の言うことをうのみにしているのです。また警察でも、とにかく事が専門医に関することだものだから、取締りが十分に行われない実情であるかとも存じますが、これは私は容易ならぬ人権侵害を含んでいるのではなかろうかと思う。そこで今委員長の御意見のように、また私に言わせれば、当局が非常になまけていると思うのです。もっと徹底的に調査すべきだと思うのです。事件が起ってからかかっているのです。しかるにどうもあまり的確な調査が進んでおらぬ。そこで今これ以上いくら質問いたしましても仕方がないのでありますが、これは一つ当委員会国政調査権に基く調査として、継続審査に回して調査していただきたい。そうして各関係者、もちろん大学側からも病院側からも出てきていただいて、事の真相を明らかにして、この事案のケリをつけさせていただく。これはあと委員会に諮っていただいて、委員長から善処していただきたいと思います。
  43. 世耕弘一

    ○世耕委員長 ただいまの猪俣君からの御注文は了承いたしました。理事諸君と御協議を願って適当に処置いたしたいと存じます。
  44. 猪俣浩三

    猪俣委員 それからこれは話が変りまして、ちょうど法務大臣がお見えになりませんので、私は石井警察庁長官についでに別な問題でちょっとお尋ねしたいと思います。これは前にお話しておくつもりでおりましたが、忙しくてかけ違ってちょっとお話できませんでしたから、調査できたかどうかわかりませんが、質問要項は御通告しておいたと思うのです。静岡県の御殿場市の中山五百三十二番地土屋といううち、これはまあ売春宿みたいなうちなんですが、これが駐留軍の兵隊に火をつけられ、二十五むねが焼けたのであります。そうしてこの放火容疑者としてキャンプ富士の第三海兵師団のヒース上等兵が御殿場の警察にも調べられた。もちろん土屋や当時このヒース上等兵の相手方になりました売春婦の宮下静子、これなどもみな調べられたのですが、私がお尋ねしたいと思うことは、そしてこれはほとんど的確にヒースが火をつけたことが明らかになっておる。そして二十五むねも焼いてしまっておる。十九世帯が焼け出されてしまっておる。この重罪犯人をどういうものであるか日本の警察の手からMPに引き渡してしまった。そして逆にMPの方から、この土屋喜代作、宮下静子という両人に、うそ発見器にかけるから出てこいという通告があった。そこで私にそんなところにわれわれ行かなきゃならぬだろうか、行けばどういう目にあうかわからぬし、警察の人の意見でも、きっとうそ発見器にかけたからお前たちはうそを言うたというようなことで、証拠がないというようなことで釈放さしてしまいたい考えじゃないかと思えるということを警察の人が言っていたが、私たち行かなきゃならぬ義理があるかどうかという質問をして参りました。そこで私は、そんなものは日米協定から出てきた刑事特別法から見ても、日本の警察がこれは取り調べる、日本の警察が処置すべきものだ、それをMPに渡すということがふしぎであるのに、そのMPが今度捜査として諸君を呼び出して調べるというようなことはどうもぼくはふに落ちないから、これは行かないでいいと思うという鑑定をして与えました。そこでこれは法務大臣並びに警察長官にお尋ねすることになるのですが、こういう事実があったかどうか、どういうわけでMPにこの人間を引き渡したのかどうか。近来駐留軍の中に乱暴をやる者が相当出てきた。しかしこれは公けの職務でない。こんな特飲街へ遊びに行った、女買いに行ったのは公けの職務でない、公けの職務でないならば、日本の警察が捜査権もあるし逮捕権もあるし、審判権もあるわけです。どうしてこれをMPに引き渡されたのであるか。御調査になったらそれを御説明を願いたい。
  45. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 ただいまの具体的事案につきまして私承知をいたしておりませんので、詳しい具体的事実について申し上げることのできないのははなはだ遺憾に存じますが、ただいま御意見にありました通り、こうした事案につきましては、当然日本側にも相手が外国人であろうとも捜査権があるわけでありますから、当然日本警察としまして権限に基いて捜査活動をいたすべきものと考えております。おそらく現実にそうした事案を起した御殿場でありますか、静岡県警察においては捜査をやっておるものと存じておりますが、詳細に事実を調査をいたしましてお答えをいたしたいと思います。
  46. 井本臺吉

    ○井本政府委員 お許しがあれば私の方にある程度報告が来ておりますから申し上げたいと思います。御質問の通告がありましたので、関係の書類を持って参りましたから簡単に御報告申し上げます。  本件の被疑者は、ダーウッド・D・ヒースというのでありまして、アメリカ第三海兵師団第三海兵連隊第一大隊A中隊の上等兵でございます。  被疑事実の要旨は、被疑者は、昭和三十年の六月十四日夜、御殿場市中山五百三十二番地のバー・ワンカップこと土屋喜代作のうちに遊興の目的でおもむきましたところ、同家の女給の宮下静子に歓待されなかったため憤慨して、女給たちの住居に使用する土屋方離れ、建坪約十五坪のむねに放火しようと考えて、翌十五日午前三時三十分ごろ、持っていたライターで離れ入口のカーテンに点火して、同建物に燃え移らせ、出火数分後現に使用する離れを全焼せしめた上、隣接した現住建物二十三戸、非現住建物二戸を焼いてしまったという事実でございます。  この事実につきましては、検察庁では、御殿場警察の方から送致を受けまして取調べをしたわけでございますが、この問題の被疑者が出火当時に現場にい合せたこと以外は否認をしておりまして、証拠によると、ライター所持の点ははっきりしておるのでありますが、当夜この宮下静子と泊る約束でこの家に泊って、約一時間後に出火しておるのであります。なお被疑者自身も頭とか顔、左手などにやけどをしておる状況でございます。特に何ゆえ火をつけたかというような動機の点が今までの調べでは発見されず、また発火後約一時間あまりは、宮下という一緒に泊っておった女は他室におったため、発火場所の付近における目撃者はなく、結局本件が問題のヒース上等兵の放火というように断定する証拠が見当らないということで、犯罪嫌疑が十分でないということによりまして本年の七月九日に不起訴処分にしたのでございます。この点につきまして、ただいまお尋ねの身柄を何ゆえ進駐軍の方に渡したかという点でございますが、進駐軍側は、被疑者を完全に拘禁隔離して、十分罪状隠滅防止に努力する、なおわれわれの方の取調べの必要ある際には、何どきでも随時連行するという約束のもとに進駐軍側に引き渡したのでありまして、それらの点につきまして、もしこの取調べの関係上不備の点があります場合には、何どきでもわれわれの方でこれを引き取ることができることになっておるのであります。未決拘禁の一つの方法としてかような態度に出たのでありまして、これを向うに引き渡して向うが調べを続けたというのではございません。
  47. 世耕弘一

    ○世耕委員長 大臣が見えましたから、それでは古屋貞雄君質疑を進めて下さい。
  48. 古屋貞雄

    ○古屋委員 法務大臣にお尋ねしたいのですが、実は来る八月六日に、広島並びに長崎に落されました原爆の十年の記念日が参るわけであります。従いまして、これは世界人類の中で日本民族だけが、原子爆弾のあの名状すべからざる悲惨な惨害を受けた。従いまして、これが世界の問題になりまして、原水爆の使用禁止に対する国民の世論は、数百万の反対署名が行われておりますのみならず、全世界におきましても、この残虐が人生で最も著しい残虐なものであるということになって、将来こういうような残虐な行為を世界から中止させよう、やめさせよう、そこに世界恒久平和の基礎が作られるものであるという重大な意義を持ちまする大会が来たる八月六日に広島並びに長崎で行われるのでありますが、それについて世界のあらゆる国からこの大会に出席をいたすために日本に参りまする方がたくさんございます。私どもはいろいろの政治的なあるいは利害的なあらゆる関係を超越いたしまして、世界人類幸福のために、しかも世界中の人類の中で初めて受けたあの悲惨な、あの歴史的な土地におけるところのこの原水爆禁止世界大会というものはまことに将来の人間の幸福のためには重大な会合であると信ずるのでございまして、これに対して外国の代表者が、いわゆる平和主義者がこの会議に出席いたそうという計画が行われました。わが日本におきましてもこの大会の準備会がしばしば行われた。政府におきましても総理大臣並びに外務大臣、その他の大臣にこの大会の意義を説明し、しかも鳩山総理大臣は重光外務大臣とともにこの大会には出席はできないけれども、メッセージだけはということで祝辞を述べることの御承諾を願ったように聞き及んでおるのでございます。しかるに一方におきまして、本日の新聞を拝見しますと、世界から日本にこの大会を目ざして、準備一切整って出発をいたしまして、しかも出発の中途におられる代表者の方々があるようにうかがわれます。しかるに日本の政府におきましてま、これらの人々の上陸を禁止するということを新聞で発表しておられるようでございますが、果してこれらの人々の上陸に対して、日本がこれを禁止する意思があるのかどうか。特に所管大臣の法務大臣は、この問題についていかようにお考えになっておるかということを承わりたい。
  49. 花村四郎

    ○花村国務大臣 原水爆禁止に関しまする世界大会が行われますることは、これはまことにけっこうでありまして、あえてこれにとやこう申すものではございません。しこうして世界各国からこの大会を目ざして入国することに相なっておりまするが、これが入国に対しましてもまたあえて反対するものではございませんが、しかしこの出入国に対しましては今日まで一定の基準がありまして、その基準に沿わざるものは遺憾ながら入国ができないという扱いをいたしておりまするので、従って旧来のこの線に沿うて今回の大会における出入国に関する問題も決せられなければならないことは当然でありまして、従ってこの基準に合わざるものは入国ができぬというようなことに相なりますることは、これは当然であります。この大会であるがゆえに特に一部の者に入国を禁ずるという意味ではございません。その基準と申しまするものは、大体スポーツであるとかあるいは文化、学術、貿易等の交流に関する事項について入国をするというようなことで、しかもそれが日本の利益になるという場合においては出入国ができる、こういうことに相なっておるのでありまして、しかも国交の回復せられておりまする国と、しからざる国とございますが、しかしたとい国交が回復せられております国であるからすべてが無条件だというわけでもございません。いわんや国交の回復せざる国は、原則的にやはり入国ができぬというのが建前でありまするが、以上申し上げましたような特別なる関係もあり、しかもそれが日本の利益が伴うものであるというような場合には入国を許すということで今日までやっておりまするから、今日までの例にならってやはり今回も処置をいたしておる次第でございます。
  50. 古屋貞雄

    ○古屋委員 ただいま大臣から基準の問題がございましたが、私どもは、スポーツであるとか、学術であるとか、交易よりも、一切を超越したヒューマニズムの立場から考えましても、しかも平和を念願とし、世界から原水爆の悲惨を中止させようというような、こうした歴史的な会合でございますから、これは全く日本のわれわれのために、ただいま申された引例よりも最も利益になる大会であると私どもは心得ておるわけなんでありますが、どうでございましょうか。一切の思想その他の関係を超越いたしました人類恒久幸福のための意義ある大会であると私どもは考える。従ってこの大会に、その主たる目的において日本に参りまする方でありまするならば、私どどもは喜んでお迎えを申し上げて、惨害の実相、国民の考えておりまする考え方、しかも人類に実際に重大な悲惨が加えられたという実感を持ってお帰りになっていただいて、世界平和のために、人類幸福のために御活躍を願うという意味から考えましても、当然日本の民族のためになるのみならず、世界の方たちのためになる重大な大会であると私どもは考えます。しかも原水爆禁止が行われることによって直接民族に重大なる利益が与えられるものであると私どもは考えておるのでありますが、いかがでございましょうか。法務大臣は、この大会の意義と、ただいま引例をされたような大会あるいは会合、あるいは行われまするいろいろの事業と比較いたしまして、いずれが日本のためになり、いずれが人類の幸福のためになり、いずれが平和のためになるか、御御所感を承わりたい。
  51. 花村四郎

    ○花村国務大臣 今回の大会に対して、すべての人の出入国を禁ずるという意味ではございません。大体において入国を許可するのでありますが、特段な一部の人に限って入国を許可しないということでありまするから、古屋君の言われる趣旨は大体において通っておるように私は思います。
  52. 古屋貞雄

    ○古屋委員 それでは私率直に申し上げるのでありますが、実は本朝広島における原水爆禁止世界大会の準備会に香港から電報が入って参りまして、中共の代表者が香港に待機しておる。それを共産圏の代表だけは日本への入国を禁止するということがけさの新聞にあったそうです。それで政府はそういう意思表示をしたのかどうか、所管法務大臣としてその事実を御承知であるかどうか、あるいはそう確定しておるのであるかどうか。  それから私どもとしては中共のいろいろな代表者を日本にお迎え申し上げた事実もあるし、われわれ国会議員の同僚諸君が中共からお招きを受けて、あちらの状況を視察してきたという事実もあります。従ってこういうことをしばしばわれの方から出向いて、向うの人情、風俗、政治の状況並びに考え方に接し、あちらから日本に参って、日本の実情を見ていただき、あらゆる思想、考え方、日本の実相をそのままお知り願って、両国間における今後の国際的親善関係をすみやかに確立いたす、これは、両国間においてはアジアの大国として一番の隣国ですから、昔のように親密におつき合いすることは国民の要望であろうと私どもは考えておるのであります。こういうさなかに、すでに香港に代表者が集まって、日本に出発しようという事態に至っておりますのに、こちらに出て参らない。その理由は、電報で照会してきたところによると、中共の代表は上陸を禁止すると新聞の記事にあるそうで、政府はこういう発表をされたのであるかどうか。またされていることを法務大臣は御存じであるかどうか。なおもう一つは、こういう方たちがこの意義ある大会に臨むため、日本に上陸することに対して、法務大臣はどういうお考えであるかということを承わりたい。と申しますのは、この大会に国民が非常な期待を持っておる。日本民族がいかに原爆のために悲惨な目にあわされたか、原爆の投下は、いかなる理由から考えても、非人道的な最も憎むべき行為であったということを、国民は肝に銘じて考えておる、その国民の原爆に対する非人道的な、残虐的な行為についてどんな考えを持っておるか、またどんな考えを持って集まっておるかということを一人でも多く、世界中の外国の人に見てもらって、再びかようなことを繰り返さないようにお考え願いたいというこの国民の要望にこたえていただきたい、そのために私はあえて法務大臣にこの質問を申し上げているのであります。どうか一つさような立場から、法務大臣のお考えを本委員会に率直に御発表願いたいと思います。
  53. 花村四郎

    ○花村国務大臣 先ほどもたびたび申し上げましたように、趣旨はまことにけつこうであり、また古屋君の言われるようなことでありますならば、これまた何ら異論をさしはさむこともありませんので、大体において入国は許すことになっておりますが、特殊なものに限りましては、これはどうもいろいろの事情から入国が許可できませんので、従って渡航証明書を渡すわけには参らぬことに決定をいたした。古屋君もこれは御存じであるかどうですか、本年のアカハタを一月からずっと見ておればこの大会の表も裏もすべておわかりなることであり、また今回の政府の処置がきわめて妥当であるということで賛成せられるのではないかと思うのでありますが、とにもかくにもアカハタは今日までずっとこの大会に関心を持つどころではない、この大会を利用して、彼らの活動に有利に利用せんければならぬということをアカハタに大々的に宣伝しておりますので、その宣伝があるからしてどうとかこうとかいうことではありませんけれども、いろいろ諸事情を勘案して、そうしてこれは一部の者に限っては入国せしめないということがむしろ本大会の趣旨にも沿うゆえんである、こう解しまして、外務省とも協議の上で渡航証明書を渡さぬ、こういうことに決定いたしました。
  54. 古屋貞雄

    ○古屋委員 法務大臣はアカハタにどうもおびえておるようですが、もっと私どもから突っ込んで申し上げますならば、これは公安調査庁等の御報告を非常に真に受けて御信用になっておるのですが、私どもはおかしいと思うんですよ。今の日本にアカハタに書いてあるようなことや公安調査庁の方たちが御報告しておるようなことはそうやすやす考えられない。そういうこと自体がいつでもこういう重大な人類の平和、幸福を阻害しておる、こういうことを私は非常に遺憾に思うのです。それはなるほどころばぬ先のつえというようなお考えもあるでしょうが、その方面専門家が考えておりますような神経質なことを考えておったならば、日本は世界の各国と親交を結ぶわけには参らぬと思う。戦争前のように日本が世界各国に伍して、ほんとうにりっぱな国であるというようなことは、さようなけちな考えを持っておると今後はとうてい考えられないと私は思うのです。と申しますのは、おそらく広島の今回のあの大会は、だれがイニシアチブを握って、だれがあれをほんとうに動かしておるかということを実際にお考え願いますならば、私はそういう法務大臣のようなお考えは生まれてこないと思う。しかも中共の周恩来が、思想的にはあるいは政治的にはいろいろ異なっておりましても、長い間の歴史を持っております中国が日本と一緒に仲よくしようという気持を真心からお持ちになっておるということは、私どもにはよくわかる。周恩来首相はせめて鳩山首相の代理の方でもいいから来てもらってお会いしたいということを率直に述べております。私はあの姿に対してこれは政策酌にやられたというひがみを持って決して考えるべきではないと思う。今回の問題についても、相当宗教的方面、いわゆるヒューマニズム的な立場から考えて原水爆禁止世界大会に出席したいという方が相当ございます。でありますから、中共からこちらに参ります代表がすべて日本の利益にならないという規定づけは、私はまことに偏見ではないかと思います。法務大臣の特殊なものと言うその特殊条件というのはどういうことかということをお聞かせ願えば了解がつくと思いますが、それでなければ私どもはどうしても了解がつかない。そこで特殊なもについては旅券を出さないと言うその特殊とはどういうことか一つ御説明願いたいと思います。
  55. 花村四郎

    ○花村国務大臣 先ほどもるる申し上げましたように、国交を回復せざる外国の人民に対しては、大体入国を禁止するというのが、原則でありますが、しかしスポーツであるとか、あるいは文化であるとか学術その他貿易等に関係を持って入国する者であり、しかもそれが日本の利益になるというような場合には、例外としてこれを許すということに大体きめられておるわけでありますが、つまりその条件にはまらないと、こういうわけでありまして、こういう一般のきめられた型にはまって、国民のみならずその他またいろいろ考慮を要する事情も加わっております関係から、まことに遺憾ながら入国を許すわけにいかぬ、こういうことでございます。
  56. 古屋貞雄

    ○古屋委員 私はなお大臣に要望を申し上げたいのですが、総理大臣も相当この大会については意義ある大会であるということを確認されて祝辞を述べるということにまで進んでおるやに承わっております。それから重光外務大臣も相当国際関係の問題でございますから、しかもこの大会の意義がまことに重大であるのみならず、世界人類恒久平和のために必要な大会である——日本の憲法の前文に規定されたあの精神がそのままこの大会に生きて参ります意義ある大会だと私は思うのであります。私どもの要望は、もう現実の八月六日の大会でございます。早急に総理大臣並びに外務大臣とも十分御相談を願いまして、ただいま御説明のような特殊なものと存じまするものがあまりないようにお考えを願って、上陸を御許可願いたい。そうして実際日本の国民がどんな考えを持ってあの原爆に対する禁止の要望が強く持たれておるか、しかも原爆の被害が日本の民族のあらゆる方面に肉体的に経済的に重大な被害を与えたものである、人類にこれ以上悲惨なものはないという現実を見ていただきまする方を一人でも多くされんことを要望して終ります。
  57. 花村四郎

    ○花村国務大臣 ちょっと一言申し上げます。八月六日の日には、これは広島市の主催にかかる大会と、そうして世界大会との二つが行われるので、これがとかく混淆されておるような傾きがありますが、総理大臣の祝辞は、この世界大会の方へは送らぬということにきまっておるわけでありまして、むしろこの広島市民の主催にかかる大会に総理大臣のメッセージをほしいというので、代表者がやって参りまして、そうして川島国務大臣にいろいろと嘆願をせられた筋もありまして、総理大臣の祝辞はこの広島市民の大会に限って贈るのはいいのじゃないかというふうな話がありまして、多分総理大臣の祝辞を贈るとするならば、その広島市民の大会に贈られることであろうと存じます。それを古屋君は聞き間違えておられるのだと思うのですが、世界大会の方へは出さぬということにきまっておるわけです。いずれにいたしましてもこれは古屋君との間の見解の相違でありまして、まことに遺憾ではありますが、これもまたやむを得ないと存じます。
  58. 猪俣浩三

    猪俣委員 関連して。実は私もゆうべおそくわざわざ広島から準備委員の連中が長距離電話で、至急法務大臣の真意をただしてもらいたいという電話をいただいた。その意味においてお尋ねしたいと思うのですが、今出入国には基準があると申された。この基準というのはどういう法令的根拠があるのですか。
  59. 花村四郎

    ○花村国務大臣 法令ではありませんが、これは各省の次官会議で決定をいたしまして、そうして閣議で了承したものでございます。
  60. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうするとこの基準というものは一体いつできたのですか。次官会議で決定し、閣議で承認を受けたというのはいつになっておりますか。
  61. 花村四郎

    ○花村国務大臣 昭和二十九年の十二月十七日でございます。
  62. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうするとその基準というものは昨年の基準でありますが、万古不磨の憲法でも改正論が出ておる際ですから、基準も変更してもいい場合には変更なさってしかるべきじゃないか。法律でも何でもない一つの行政的の処置の基準であろうと思うのです。そこで申すまでもなく四巨頭会議以来世界の情勢は変化してきておる。にもかかわらず鳩山内閣は日ソ国交調整というものを一枚看板にせられて、それが非常に平和を熱望する国民のほとんど全般に好感をもって迎えられて、選挙に際しましても大勝を博された。そして今すでにロンドンでもって日ソ国交調整の折衝中であるはずであります。そういう世界の情勢からいたしましても、日本とソ連の関係からいたしましても、去年の十二月時分と事態が変ってきておる。なおまた中共についてもソ連についても、近くソ連の招待によりまして日本の衆参両院議員が訪ソするはずであります。向うは国費をもって歓迎してくれる。しかもみな政治家です。スポーツでも、映画関係者でも、小説家でもないはずだ。そういう人たちをソ連は招待しておる。そしてロンドンでは松本大使が一生懸命国交調整をはかっておる。そういう際にこういう原水爆禁止というような人道問題に関する大会がある。それでソ連なり中共が参加してやってくるというものを、去年のこの取りきめをたてにして拒否する、私はどう考えても鳩山内閣の真意がわからないのです。これは閣議だとするならば、何とか法務大臣が中心となって、急に臨時閣議でもお開きになって、この十二月幾日かの基準なるものを少し変更されて、今回に限って——中共はもう全部代表が選定を終って今出発を準備して待機しておる。ソ連もしかりである。どこの国も入れないならまだいいけれども、ある国は入れて中共やソ連やその他の共産圏の人たけはオミットする、こういう閉鎖的の方式というものは、鳩山内閣のこの中共並びにソ連と国交を回復しようとする政策と矛盾しやせぬかと思う。一体この拒否された国はどう思うでありましょうか、あなたに伺う。あなたは外務大臣ではないけれども、ソ連の代表者、中共の代表者を拒否した際に、一体ロンドンにおける日ソの国交調整がうまくいくと御存じになりますか。鳩山さんも涙を流して日ソの国交回復だけはどうしてもやりたいということを誠心誠意述べられた。参議院の委員会におきましては涙を浮べられたということを新聞に報道されて、私どもも鳩山さんのその点については実は満腔の敬意を表しておる。その談判の最中に、このソ連が正式に派遣するという原爆禁止の平和大会に、まるでばい菌を背負ってくるごとくこれを嫌う。しかもその材料は——一体アカハタなんていうものにあなた方が扇動されているのですか。もし政府がアカハタに扇動されているとするなら一般国民よりもよほどばかだということになる。一体アカハタに書いてあるから、それを見て私の方に賛成できるだろうとあなたお考えになるが、アカハタなんというものをあなた方はどれだけ信用なさるのかわからぬ。ある際にはちっとも信用しないでいて、ある際にはそれを信用する。また彼らがどういう意図でそんなふうに原水爆のことを書き立てるのか、あるいはソ連と日本との国交を阻害するために言うておるかもしれぬ。あるいは鳩山内閣というものにレッテルを張らせるために言っておるかもしれぬ。そういうアカハタなんという平素御信用なさらぬものをたてにとって、そうして今度は入国を禁止する。私は矛盾していると思う。これは理屈を言うても始まりませんが、あなたは非常に遺憾であるということをさっきから何べんも唱えられておる。どうも花村大臣は事務官僚に押えられて、どうも自分の本心じゃないことをやっておるというようなうわさもある。在野時代のあなたの性格を知っている私は多少そういう点があるのじゃないかと思う。どうぞ次官会議というものに引きずられないで、もう一ぺん臨時閣議でも開いて、この基準はいいといたしましても、今回に限り大事な際ですから何か特別な措置をおとりになる考えはなかろうか。僕はあなたが鳩山さんにほんとうに誠心誠意を披瀝してお話しなさるならば、鳩山さんはきっとわかると思う。確かにわかるはずです。ですからあなたはきょうからでもおそくない。鳩山さんのところに一つ乗り込んでいって、そうしてこれを許可して下さい。そうすればこれはあなたの非常な手柄であるのみならず、鳩山内閣にとっては非常にプラスです。われわれから言えばかえってそういう反動的な態度をとっていただいた方がこれから八月の遊説には便利かもしれません。しかしこれは鳩山内閣補強の道ではありません。なおまたわれわれは党を中心に考えず、日本国全体、世界全体を考えますと、何としても中共、ソ連と親交を厚くしなければならぬし、こういう平和大会というものにこそ、アカリカの人もイギリスの人もソ連の人も中共の人も原爆の中心地である広島に集まって、ほんとうに私たちでこれをやめようじゃないかということをやってくれるならば、鳩山内閣における手柄というものは私はほんとに絶大になると思う。それをやられると実はわれわれ困るくらいなんです。けれどもこれは日本国全体として私はお願いするのです。これから鳩山さんにお会いになって、あなたは誠心誠意を披瀝して、一つ特例を設けてきょう明日に迫った問題を許可するように御努力いただけませんか、一つあなたの心境を承わりたい。
  63. 古屋貞雄

    ○古屋委員 それにつけ加えて、今大臣からメッセージの問題のお話しがございましたが、私今確かめました。松本官房長が立ち会って世界大会に総理大臣からメッセージを贈ることも確定しておるのでございますので、ただいま猪俣委員から申し上げたことにつけ加えて、さらに法務大臣に認識を新たにして、どうか日本の歴史的なこの大会に、ほんとうに鳩山内閣がサポーターになって人類のために尽されたという功績を残されるよう、大努力をここで法務大臣に一つお約束を願いたい。
  64. 花村四郎

    ○花村国務大臣 だんだんとお話しのありましたように、鳩山内閣はもっぱら国交調整を企図いたしております関係上、相当寛大さをもちましてこの出入国に関する問題を決したのでありますから、そう無理をしておらぬということも大体御想像ができようと思うのでありまするが、この入国を一部の人に禁ずることにより、現在ロンドンで行われておるソビエトとの国交調整に悪い影響を及ぼすようなことは絶対にないと申し上げてよろしいと思います。あらゆる観点から慎重に検討して、決定をいたしたような次第でありまして、決して御心配になるような事態にはいかぬことを確信いたしておるものでございます。
  65. 猪俣浩三

    猪俣委員 もう一点、今渡航証明書をお出しにならぬ国はどことどこの国の人でありますか。
  66. 花村四郎

    ○花村国務大臣 ソ連、中共、北鮮、ルーマニア、ポーランドであります。
  67. 古屋貞雄

    ○古屋委員 法務大臣にお尋ねしたいのですが、法務大臣は在野の当時から人権問題についてはわれわれが尊敬をするくらい重きを置かれ、確立することに御努力を願っておったのでありますが、この点を一つ承わりたいのです。こまかい事務的なことは刑事局長——実は検事総長を呼んでおったのですが、検事総長も次長も出てこられないので、刑事局長に伺うのですが、大阪において荘志成という被告、これは公文書変造罪で起訴されておる事件なんですが、その被告が五百万円の保証金を積んで、しかも裁判所はかつてない口頭弁論を開いて、十九日保釈の決定をいたしました。起訴されてから公判を二回開いて、二回目であります。しかも相被告の鄭貴蘭というのに対しては同一でありましたけれども、これに対しては三百万円の保証金の要求をしておる。そして口頭弁論を開いた結果によると、荘志成は病気で、肝臓が悪くて、入監中毎日注射をしておる。しかもこれは私自身が直接接したのですが、刑務所の四畳半の中に十一人入監者を入れている。荘はすでに保釈になりましたが、八十三日目です。かように裁判所の口頭弁論を開いて五百万円という保証金を積んで十九日に許可になって出て参りますると、出て参ります前に刑務所の中でまたあとの逮捕状を執行されて勾留されているという事実がある。こういうことは私はまことに人道上許すべからざる問題だと思う。しかもこの荘が再び勾留せられまして大阪の水上警察に行って病がだんだん重くなって吐血をいたしました。そして現在医者の診断書を見ますと、荘被告は肺浸潤であり、胃かいようであり、肝炎——肝臓が悪い、こういう診断書があるわけであります。それで私どもは口頭弁論の際に、もしも刑務所の中で生命を失ってしまうならば、いかに関係者の責任を追求しても取り返しのつかないことになるのだ、こういうことを私自身から追求いたしまして釈明を求め、その結果保釈になったのです。こういうようなことは私はほとんど人権じゅうりんではないかと思うのですが、法務大臣いかがでございますか。——いや、刑事局長が答弁する前に、今の事実をどう思うかということを法務大臣から御答弁願います。
  68. 花村四郎

    ○花村国務大臣 ただいま古屋君の言われた事案に関しましては詐欺罪に該当するがために身柄を拘束されて、そうして保釈を許したのでありまするが、さらに贈賄の事犯があがって参りまして、そうしてさらに贈賄で逮捕状が出たということになっておるようであります。これは大体において他の事犯があるということがわかっておるか、あるいはあるであろうということが証拠の上で想像せられたという場合においては保釈を許さぬというのが例であるようでありまするが、この事件は最初に詐欺罪のみを問われておったのであります。そういう関係から保釈の申請があり、これを許すべきものとして許したような次第でありまするので、かかる事案に対しましては、再び逮捕状を出して身柄を拘束するというような場合もやむを得ぬじゃなかろうかと存じます。こういう場合においては、あえて人権じゅうりんというよりも、捜査上やむを得ぬのではないかと私は存じます。
  69. 古屋貞雄

    ○古屋委員 今の法務大臣の答弁はでたらめで、まるっきり違っております。詐欺罪ではありません。公文書変造罪であります。起訴されて二回公判をやっております。そして八十三日も入れておきましたから、その間にあとの調べも全部済んでおります。そして七月の十日までには追起訴をするというので調査は全部済んでおるのです。それをあえて感情的にやったから私は質問しておるのです。公文書変造罪で起訴されまして公判を二回開いた。そうして相被告の鄭貴蘭に対しては検事が同意して、しかも保釈金を三百万円出せ、こういうことを言っておる。ほかにまだ犯罪があるのは私も知っております。涜職罪の疑いがあることを知っている。しかし調べは全部済んでおる。八十三日間も入れておいて、毎日警察が来て調べたんだから捜査は全部済んでおる。そして書類を片づけてこれを起訴にするか追起訴するか、しないかということを待っておるのが十日以後の状態なんです。しかも形式的にそういうことができるという法律があるから、これは知っています。しかし形式的にできるというのなら、前の勾留は公文書変造で勾留しておるのでありますから、その間にほかの捜査をしておること自体が問題なんだ。しかし、これはわれわれは調査して認めるのだが、あとの捜査が行われて、証拠調べは全部済んで、追起訴するばかりになっておった。それが保釈されたから検事が感情的にやったんだ。だから私はこの事件で文句を言っておるのです。鄭貴蘭の三百万円の保釈金の算定は一体どこからやるのですか。保釈金の統計を見ると百万円以上は二十八年から二人しかありません。この事件においては荘志誠に対して五百万円、鄭貴蘭に対しては三百万円でやっている。しかも全部起訴して公判を二度も開いておる。いわゆる権利保釈でさえ三百万円の要求をして、金が納まらないような状態に置かれておった。今のように荘が死んだらどうなるのです。その点を私は言うのです。裁判所の保釈決定のときには私も口頭弁論に立ち会って説明いたしました。肝臓が悪くて毎日注射をしているのだ、病気なんだということを説明して許可になった。それを刑務所を形式的に出して、また逮捕して続けて勾留をやる。私は保釈というものは、勾留状が発せられて勾留中の者の勾留効力を停止するのが保釈の制度であって保釈決定だと思う。勾留の令状が出ているにかかわらず、二度目の逮捕勾留を出すということは矛盾しておると思う。この点はどうなんですか。
  70. 井本臺吉

    ○井本政府委員 事務的の問題でありますので私から一応お答え申し上げます。  数罪ある場合におきまして、第一の犯罪について逮捕状が出て勾留された、その取調べがすでに済んで保釈する段階になりまして、さらに第二の犯罪がある場合には、ただいまの古屋委員の仰せの通りその調べが済むまで保釈は従来してないというように扱って事実上済ましてきたのでございますが、犯罪のいろいろの関係がありまして、最近は勾留、保釈というものは犯罪ごとにきめるべきだというような意見もあって、一件調べが済んで逮捕状が出る、その勾留中にすでにその事件の調べが済めば直ちに保釈すべきである、余罪を調べるというのは穏当ではないというような考え方の方々は、保釈になると同時に直ちに次の犯罪でまた警察官の方では逮捕状を出し勾留するような段階になるということが往々にあるのであります。今の古屋委員お話でございますと、全部調べが済んでいるというように仰せでございますけれども、われわれの方といたしましてはまだ調べが済んでいないのであります。贈賄の点につきましてはさらに調べをするということで、古い慣例に従って他の犯罪の調べの済むまでしばらく前の勾留を便宜間に合わしてもらいたいということで交渉をしてきたわけであります。その点についての見解が分れましたので、法規にのっとってあとの新しい犯罪の逮捕勾留を請求してさような措置に出たということなのであります。かような人間を逮捕勾留するということの妥当、不妥当の問題は別といたしまして、法的には何ら私は差しつかえない趣旨であると考えております。
  71. 古屋貞雄

    ○古屋委員 そういうような形式論をやっているから人を殺してしまうのですよ。本委員会でも、選挙の違反に対して疑いのあった人たちが数人死んでいるということは、形式論をやっているからそういうことになる。  それじゃ申し上げますが、彼が水上署で吐血したために係官の検事が驚いて今度は早く保釈して出してくれというので出して、今入院している。それはどういうことなんですか。十九日ですよ。二十日にまた勾留した。ところが二十五日に出している。それは病気のためなんですよ。こういうことを知っておってやったから私は言っているのです。私は検事総長に食ってかかろうと思ったんだが、きょうは検事総長は来ておりませんのでやむを得ません。検事が感情でそういうことをやって、人を殺した場合がたくさんありますが、あとであやまったって、検事がやめたって、あなたがやめたってどうにもならぬのですよ。法務大臣は人権じゅうりんに人一倍従来から努力されていた経歴を持っておるから私は法務大臣にお尋ねをしているわけです。実際本件は非常に不能なことをしいておったのです。鄭貫蘭に対し三百万円の要求をして百万円で許可になりました。あとは荘志誠が五百万円、私どもは保証書を出して、出してもらった。出すと、一分もたたないうちにまた縛ってしまった。あと調べたかといいますと、私は責任ある杉島主任検事に会ってお話申し上げているが、局長の言うようなことはありません。再び勾留してからは調べておりません。私は杉島検事とちゃんと約束して、十日までには追起訴しますからと言っておった。従って十九日になったから、追起訴のことについても全部捜査は終っているはずだ。しかも相手は病気で、肝臓の注射をしているくらいで、生命がなくなると困る。そういう人を、しかも四畳半に十一人も寝かしておるんだから、これでは生命がなくなりますよ。被告人という立場から考えずに、人間の立場から考えて、この暑いのに日本の刑務所では、四畳半に今十一人も入れておる。このこと自体が人権じゅうりんなんです。そんなところに八十三日も入れておる。そしてこの荘は全部否認しているんです。人道的に考えますならば、脅迫して自白させたより以上にひどい処置だと思うのです。私はこういうことはあり得べきでないと思います。たまたま私が弁護人だったから発見しておるんです。こういうことがたくさんあるということになれば、ゆゆしき人権問題と思う。刑事訴訟法の中で、勾留が相当長くなった場合、あるいは勾留を必要としない場合には、裁判所は職権でも保釈ができ、勾留取り消しができるという規定も、つまりは人権尊重の意味からであったと思うのです。本件のように杉島主任検事の調査は済んでおるのに感情的になってやっている一例を申し上げますと、主任の杉島検事は鄭貴蘭の保釈金は百万円でいいとわれわれに申し入れをした。ところが藤田公判部長は三百万円でなければいかぬと言って、二人でけんかをした、こういう事件なんです。こういう経緯の事件だから私は申し上げている。しかも法務委員の私自身直接関係したからよくわかっている。どうかそういう形式論はやめて、こういうことが人道上よかったかどうかを御反省願いたい。もうすでに出ていますよ。今度出すときには検事の方から勧めて、出すように手続してくれと言ってきた。この事実から見ても、いかに病人が重かったかわかる。死んでしまっては困るからというので出したのであろうと思う。そういう工合に主任検事が百万円でいいと言う保釈金の予定金額を、公判部長は三百万円要ると無理に言っておる。私は口頭弁論のとき追及した。十九日に出して二十五日に再び出さなければならぬ状況下に置かれた重い病人であるということを考えると、私は人道上許すべからざることだと思う。私はあえて法務大臣や局長をいじめようとするのじゃない。こういうことが現実に日本に行われておる。一方においては、そちらに人権擁護局長がいらっしゃいますけれども、なんぼ人権擁護人権擁護と騒いでも、こういうことを検事みずからやっておるのでは何にもならぬから、法務大臣に本問題についてお尋ねして、今後絶対にこういうことのないように厳重に御監督と御指揮を願いたい。なおきょうは検事総長にはっきり申し上げてお約束を願いたいと思ったのですが、検事総長はおらぬので、十分このことは刑事局長からこの事実を御認識を賜わって、今後はかようなことを繰り返していただかぬようにお伝え願いたい。こういうことが行われておる。これは人権じゅうりんです。幸いに荘が死ななかったからよかったものの、死んでしまえば取り返しがつかない。しかも荘は台湾出身の第三国人です。私は長いこと台湾におって、こういう人たちの心情をよく知っておる。相当に財産も持っておりますから、逃亡もいたしません。証拠隠滅のおそれもございません。それを五百万円納めて、また縛られた。今度は検事から早く保釈の申請をしてくれと言ってきた事件です。刑事局長の御報告になっているのはちょっと違っているようですが、どうかそういう点を御勘案を賜わりまして厳重に——私はこの問題について責任を問うのじゃありませんが、こういう事実が行われないことを要望する次第でございます。
  72. 世耕弘一

    ○世耕委員長 午前の会議はこの程度とし、午後二時半より続行いたします。暫時休憩いたします。     午後一時二十五分休憩      ————◇—————     午後三時十二分開議
  73. 島上善五郎

    ○島上委員長代理 これより会議を再開いたします。  午前に引き続き質疑を行います。細田綱吉君。
  74. 細田綱吉

    ○細田委員 前回の委員会で福井地方検察庁の人権じゅうりん問題に関係して、大久保伸顕君の人権じゅうりん問題について質問をいたしましたが、突然でありましたので調査の上答えるということでございましたので、その調査の結果を伺いたいと思います。
  75. 井本臺吉

    ○井本政府委員 お尋ねの大久保伸顕の関係事件につきまして御報告申し上げます。  大久保伸顕の業務上横領被疑事件につきましては、昨年四月二十八日福井地方検察庁におきまして、警察から送致を受けまして勾留の上取調べを行い、昨年の五月十八日に釈放しております。     〔島上委員長代理退席、猪俣委員長代理着席〕  その被疑事実は、大久保伸顕は、昭和二十四年十一月三十日ごろから同二十九年四月二十一日までの間福井県町村会主事として勤務し、町村会の庶務会計などの事務を担当したものでありますが、同会の事務局長であってその公金を業務上保管していた森長謙之助と共謀の上で、その保管にかかる公金の中から、昭和二十六年五月二十三日ごろ福井県町村会館建築資金の名のもとに福井県職員組合、恩給組合から一時借り受けた九十万円の中から、ほしいままに三十九万円を自分のために福井市内などにおいて着服して横領したというのが(1)の事実であります。  それから、昭和二十七年十一月六日ごろから昭和二十八年二月二十七日ごろまでの間に前後数回にわたりまして、鹿児島市山下町旅館吹上荘ほか十数ヵ所におきまして、被疑者が業務上保管中の町村会経費の中から合計二十一万五千四百八十円を、ほしいままに自分の飲食費その他の用途に充てるため着服し横領したという事実が(2)の事実であります。この被疑事実につきましては福井県町村恩給組合長の知場伊太郎外一名の業務上横領被疑事件の捜査中にこの事件がわかって参ったのであります。  大久保につきましては、関係の帳簿、証拠書類によりまして、先ほど申し上げました森長らと共謀して、から出張あるいは架空伝票などによりまして、飲食遊興し、その他夏季手当、超過勤務手当などの名のもとに公金を引き出して、さきに述べました被疑事実の(2)に近い金額を着服横領した事実が認められたのでありますが、大久保個人におきまして費消した金額は非常に少くて五、六万程度であり、かつ大久保自身につきましては、森長の指示のもとに本件を行なったという関係もありましたので、森長は起訴公判を求めたのでありますが、大久保につきましては起訴の要がないということで起訴処分をしなかったのであります。この処分に当りましてなした励告についてでありますが、検察庁といたしましては大久保を釈放するに際しまして、辞職を強要したという点で大久保自身はいろいろ陳情しておるのでありますが、しかしながら大久保に対しましては起訴する必要がないという観点には立ったわけであります。そうしてこの大久保の責任につきまして反省を促し、かつ被害の弁償を自発的にやれということを励告したほか、自発的に退職するのであればそれもけっこうであるという趣旨のことを言うた事実はあるのでありますけれども、もしこの被害の弁償もせず退職しないときには起訴するというようなことを申したことは全くないという報告でございます。さらに、この組合長に対しましては、大久保の辞職を検察庁で強要したということでありますけれども本件のような一連の事件終了後に町村会長から責任者の事後処理について検察庁の方に意見を求められましたので、その求めに応じまして町村会事件関係者について辞職または転職が相当であるという意見を述べた事実はありますが、組合長に対しまして、ぜひとも大久保の辞職を承認せざるを得ないような立場に追い込んだというようなことは、検察庁としては一切行なっていないということを申して参っております。  なお、この大久保につきましては、町村会の役員の方におきまして、上の方の命令を軽んじたり独断で事務を処理するというので、機会があれば辞職または転職をさせようという意向がありまして、再三退職願いを出すように促したところが、これを頑強に拒んでいたので困っていたようでありまして、昨年の十二月二十四日に大久保が無断で東京に出張しようとしたために、副会長の坪田十左衛門がこれを理由に辞職を求めたところが、これに応じたので退職通知を速達で郵送したという事実があるそうでございます。これらの点につきましては先ほど申し上げましたように、検察庁の方でもしやめなければ起訴するというようなことでかような処置をとったのではないということはるる申し上げた事情でおわかりになると考えるわけでございます。
  76. 細田綱吉

    ○細田委員 検察庁の取調べは二十七年の十一月六日から二十八年の二月二十七日の間というが、この取調べは、これはもちろん拘束されてはいなかったと思いますが、どういう方法でお取調べになったのですか。
  77. 井本臺吉

    ○井本政府委員 今申し上げました昭和二十七年十一月六日から二十八年二月二十七日ごろまでというのはこれは(2)の犯罪事実の日時でありまして、本人昭和二十九年四月二十六日に逮捕しまして四月二十八日勾留請求、勾留、次いで五月十八日に釈放しております。従って勾留期間は四月二十八日から五月十八日ということになります。
  78. 細田綱吉

    ○細田委員 これは刑事局長お尋ねするのですが、九十万円のうちの三十九万円を横領している。あるいはまた架空の出張その他で二十一万五千四百余円を横領しておるということは、森長謙之助その他首謀者は起訴されたが、これに幇助したという形で大久保は起訴されなかったのか、あるいはそのうちの金額がきわめて寡少であったということで大久保が起訴されなかったのが、その点を伺いたいと思います。
  79. 井本臺吉

    ○井本政府委員 先ほど申し上げました犯罪事実のうちの(1)と(2)でありますけれども報告によりますと(1)の方につきましては、大久保の犯罪事実は認められなかったということに帰着するわけでございます。(2)の方の事実につきまして先ほど申し上げましたように大久保が関与した横領金額が約五、六万円ということになるのであります。なおこの(1)と(2)は警察から記録が送致になりました際の送致の被疑事実でございます。
  80. 細田綱吉

    ○細田委員 これは局長が問うに落ちず語るに落ちたと思うのですが、町村会が本人をどうさせたらよいだろうということを検察庁に問い合わせたということがわれわれにはおかしい。これは系統が違うので、何も検察庁に問い合わせる必要はちっともない。そこにやはり検事の要らぬおせっかいが出てきたのだということを私は想像する。三十九万円の方は全然無罪だというのですが、五、六万円といえどもおそらく解釈の相違であったろうと思う。そこでどうして町村会の方が検察庁にそんなことを聞いてきたか、またかりに聞いてきたって検察庁としては、やめさせた方が適当であろうとか、そんなことは要らないことであります。それは賠償はさせるべきだということは言ってしかるべきであろうと思うが、その点はどうなるのですか。
  81. 井本臺吉

    ○井本政府委員 この具体的事件につきまして町村会長の方にやめるのが相当であると言ったことの当否は別としまして、事件の処理の際に検察官の方でたとえば役人が非常に戒心して、職を退いたということが、処分の際の重要な事情として考慮のうちに入れられるということはございます。
  82. 細田綱吉

    ○細田委員 いやそれはそういうことを条件に起訴猶予ということはあるのですよ。それはあるのであろうと思う。ところが町村会の方から聞いてきたからそういう回答をしたということなんです。本人には弁償をしろ、その間は起訴は留保する、こういうことを言って釈放した、こう言われる、それはあり得ると思う。けれども町村会の方から聞いてきたからそういう回答をしたということが私にはふに落ちない。検事としては要らぬおせっかいでないかというのです。さらにその点で伺いたい。
  83. 井本臺吉

    ○井本政府委員 本人の退職が、この場合の起訴の重要な要件になっていたのではないようでありまして、検察庁としては先ほど御報告申し上げました通り事案が軽微であったから、起訴の必要はないということで不起訴処分にした、ただし本人が責任について反省して組合に弁償することか、あるいは自主的に退職するということは相当であるということを申し述べたようでありますが、別にこの弁償をしなければあるいは退職しないから起訴するというようなお言葉はなかったようでございます。従って町村会長の方から、これは先ほども申し上げましたように、大久保を何とかしてやめさしたいというようなことであったらしいのですが、伺いに参りました際にやめさせる方が適当であるかあるいはそのままとどめる方が適当であるかということにつきましては、この事件の性質上辞職の方が適当であるということを申し述べただけでありまして、これが事件の処理について条件になったというようなことはないようでございます。
  84. 細田綱吉

    ○細田委員 あとは意見の相違であろうと思うのですが、私は森長という大久保の上席がこれだけの横領をしていながら、起訴猶予になったということは、きわめて軽微であって、むしろ同人の思想が堅固であった証拠じゃないか。普通ならば上司とともにこれは一緒に行くべき人間であったと思うのです。どうもこの事件は福井検察庁が一旦手をつけたんだ、手をつけたからには何か一つ検察庁の面子にかけても、本人に対してせっかく収容して取り調べたんだが何にもなかったけれども、検察庁の権威にかけて、一つやめさせるか何かしなくちゃいかぬというところにまで落ちておるんじゃないかということをわれわれは強く印象づけられる。どうも福井検察庁は、人間を軽く見て、自分たちの立場だけを何だか神聖なところに置くくせがあるんじゃないかと私は思う。こういう点については将来とも一つ十分に御指導を願いたい。刑事局長はそういうことを相談してきたから言ったんだ、こう言うんだけれども、これはわれわれのように経験を持っている者から見れば、町村会からそんなことを検察庁に言ってくることはないと思う。しかしとにかく言ってきたと言うんだから、私にも言って来ないという材料もないので、それ以上のことは申し上げません。とにかく一たん取調べを開始したら何とかものにしなくちゃならない、また本件がものにならなかったから何とか一つというので、彼にも何かくさいところがあったからということで職を辞させたというのが真相だと思う。しかし真相はどうであろうと、世間にそういう印象を与えること自身、実質的に検察庁の負けです。また国家権力を持っている者の深く反省すべきことと思う。ほかの事例でも、刑事局長がすでに御存じのように、何しろ人の細君からおばあさんまで引っ張っていって、五十日も六十日も一家全部をたたき込むというような検察庁ですから、こんなことくらいは当りまえだと思うのですが、その問題は別です。その問題は別だけれども、この問題についても、今申しましたように、検察庁の権威にかけて何とか黒星をつけなくちゃならぬといって、事実上やめさしたという印象を強く受ける。これは何といっても強く受ける。やめさせた方がいいとか、やめさせなくてもいいということは要らぬことなんだ。かりにあったとしても、要らぬことなんです。そういうこと自身検察庁として好ましいことか好ましからざることか、最後に御意見を伺っておきたい。
  85. 井本臺吉

    ○井本政府委員 先ほど申し上げましたように、事案々々によってやめた方が相当であるという場合も相当あると思います。本件につきましては、町村会長の方からの申し出に対しまして、やめた方が相当であるという意見を言ったことが適当であるかどうか、多少の問題はありますが、本件の大久保氏がやめさせられたのは、検察庁の意見によってやめさせられたのではなくて、副会長の坪田十左衛門氏が自分の発意でやめさせたのでありますから、その点につきましては一つ御了承を願いたいと思います。
  86. 細田綱吉

    ○細田委員 国警と人権擁護局に伺いたいと思いますが、長野県小県郡禰津村で、本年の四月の選挙に居村のお寺の住職さんが出て、集団的に反対派に圧迫を加えた。すでに選挙違反に問われて執行猶予になり、さらにまた問われて実刑の言い渡しを受けて、これは最高裁ではまだ上告中であるらしいですが、そういう人がお寺の住職というような立場を利用して、集団的な圧迫を加えておるというような事件について、すでにこれはその土地の新聞にはずいぶん出ておるので警察庁も御存じだと思いますが、この問題に対して国警はどういう処置をとったか、またこの集団的な人権じゅうりん、特にそのうちのある小さい部落については、実にこんなことがあるかと思われるようなことまでして圧迫を加えておる。この事実に対して人権擁護局ではどういう手を打っておるか、その点を一つ伺いたいと思います。
  87. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 ただいま御指摘の事犯は、過般当委員会におきましても御指摘がございましたので、当庁といたしましては長野県につきまして、詳細調査せしめたのであります。そうすると御指摘のように、過般の禰津村の村長選挙の場合におきまして、候補者が二人あったのであります。一人は僧侶の方、もう一人は農民の方、この二人の候補者が村長の選挙に出られたわけでありますが、その間僧侶派の運動員によって、自分たちが推薦する者を投票しないとあとがこわいぞ、こういう意味のことを推知せしめるような言動が行われておる。こういうことが地元の警察におきまして視察内偵中に発覚いたしましたので、その後関係者を調べたのであります。御承知のようにそういう事犯は公職選挙法二百二十五条違反の被疑事実ということになろうと思いますので、その間関係者の相当周密な捜査をしているようであります。そうして関係人の状況捜査に警察は着手いたしまして、事件処理の点につきまして地元の警察と十分連絡をとりまして、事件がそういう事件でありますので、非常に事実の内容の明確なものを逐次調査していくということになろうと思うのでありますが、本年七月二十日に所轄検察庁に送致しておりまして、所轄検察庁におかれましては、本件事犯をさらにその送致に基いての捜査が行われておる、こういう状況がわかりましたので御報告いたします。
  88. 戸田正直

    ○戸田政府委員 お尋ねのような事案がございましたことは、大へん遺憾なことであると存じますが、まだ長野県の法務局からの報告が参りませんのでつまびらかにいたしておりませんが、早速問い合せをいたしたいと思います。
  89. 細田綱吉

    ○細田委員 何を言ってるんです。あなたにこの前念を押しておいたでしょう。そしてあなたは、これは初めて伺うから次にしてくれということだったでしょう。
  90. 戸田正直

    ○戸田政府委員 調査中でございますが、ただ報告が参っておらないので事情がはっきりいたしませんので、その点は早速に問い合せをいたしたい、かように考えております。
  91. 細田綱吉

    ○細田委員 それではこの禰津村の事件は検察庁へ移っておるということですが、こういういなかですと菩提寺というようなものは、簡単に変えられない、親子代々くっついたものだというふうに印象づけられておる。そういう菩提寺を、お寺を根城にして、そうして集団的に反対派の部落や反対派の候補者を圧迫するというようなことは、実に選挙法というものを冒涜するものだと思います。厳重にこれは捜査をされるように、刑事部長から所轄の検察庁に御連絡願いたい。それからあれからずいぶん長くかかっております。前回の法務委員会というならまだいいけれども、ずいぶんかかっている。そうしてまだ報告が来ないというようなことは、出先法務庁の非常な怠慢である。こういうお寺というようなところは、どこだって革新的なところはありはしない。そういう古くさい考えを利用して、そうして集団的に圧迫するというようなことはけしからぬ。これは当時の上田署の捜査方面の部長も言っておるが、大体事件も認めている。厳重にあなたの方もお調べを願いたい。いずれ臨時国会でもありましたら結果を伺いたいと思います。これで終ります。
  92. 神近市子

    ○神近委員 関連して。今の細田委員事件に非常に似ている事件でございまして、七月十五日付で当法務委員会の世耕委員長あてに実態調査お願いが来ているのでございますけれども、これは諏訪市大字上諏訪に関する問題でございます。やはり今のお話にあったように、集団的な、ほとんど暴力に類するような状態で、部落できめた候補者に投票しない者をいじめて、選挙後も村八分的な扱いをいたしまして、今日もまだ口もきかない。それから集会があっても呼ばない。選挙前には同調しないという理由でこれを部落の集会からつまみ出している。そういう事態があるのです。そうして三大新聞の地方版、地元の南信新聞、そういうものには何度も出ている。これは選管に無効の申し立てをして、行政権がないという理由で却下されております。そうして市の選挙管理委員長は、確かに行き過ぎがあったということを認めて辞職しているのです。このことについて何か報告なり、あるいは調査の要請なり当法務委員会から参りましたか。それとも新聞その他の材料によってお取り調べになったことがあったのかどうか、ちょっとそれを伺いたいと思います。
  93. 猪俣浩三

    猪俣委員長代理 神近さんにお尋ねしますが、今の事件は長野県ですか。
  94. 神近市子

    ○神近委員 諏訪市大字上諏訪です。
  95. 猪俣浩三

    猪俣委員長代理 その部落の村八分の問題ですか。
  96. 神近市子

    ○神近委員 部落で夜はかがり火をたいて、昼はピケ・ラインを張って、反対派の出入を全部阻止したということを、部落内の同調しない者に対して今日村八分的な扱いをしているということ、そうして今日まで続いて部落で口もきかないというようなこと、それから集会に出席しても、それに同調しない者は全部そこからつまみ出したということ、何かの会があっても、そのとき同調しなかった人は呼ばないというような事態であります。     〔猪俣委員長代理退席、委員長着席〕 私はこの点は人権擁護の見地から、そういうことが一体許されていいのかどうか。ちょうど今細田委員の御質問に関連しておりますから、まだ御調査ができていないということでしたら、一つぜひ御調査を願いたいというのが私の要請でございます。
  97. 井本臺吉

    ○井本政府委員 細田委員からの先ほどの件は、上田の地方検察庁で七月二十日に受け付けておりますので、引き続き厳重に調査、取調べをしたいと思っております。今神近委員からのお尋ねの件は、私どもの方にまだ報告が来ておりませんし、今こちらにいる人権擁護局係官の方に伺いましたけれども、まだ報告を受けていないようでありますから、至急に調査いたしたいと考えます。
  98. 神近市子

    ○神近委員 専門員室にお伺いいたします。もう十日以上前だったと思いますけれども、私はその書類を使いをもって届けさせました。委員長あての嘆願書だったと思います。届いているかどうか、そのお扱いはどういうふうになっているか、お伺いしたいと思います。
  99. 世耕弘一

    ○世耕委員長 お諮りいたします。ただいまの問題について、専門員より経過を報告させることに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  100. 世耕弘一

    ○世耕委員長 それでは専門員より説明させることにいたします。
  101. 村教三

    ○村専門員 確かに世耕委員長から諏訪市の関貞夫という人、それから金井某という人、この二人の書面が私どもの手元に参っておりまして、それはおもに選挙の妨害、公職選挙法違反、人権侵害、これらを内容としたものでございます。それから牧野良三委員からも書類の提出がございました。それで委員長から一つ専門員室でもってよく内調査をしてもらいたいということでございまして、ただいま書類は全部桜井調査員の方へ回しました。内調査の例にならいまして、それぞれ関係のところから書類を取り寄せたりなどいたしまして、しかるべく内調査をしてその上でまた政府の方の御意向も伺う、こういうような話し合いをしております。そういう程度でございます。
  102. 世耕弘一

  103. 島上善五郎

    ○島上委員 最初大臣から政府としての考え方の基本を伺って、それから順次具体的に質問したい、こう思っておりましたが、大臣がまだ見えませんから、その点はあとに保留するとしまして……。
  104. 世耕弘一

    ○世耕委員長 島上君に申し上げます。大臣は今本会議で緊急質問を受けているようであります。間もなくこちらへ出席するはずでありますから、御了承願います。
  105. 島上善五郎

    ○島上委員 終戦後十年になりますが、今日なお多くの戦犯が巣鴨に拘禁されておりますことは御承知の通りであります。私どもはこの前の戦争に対しては、日本国民の一人として許しがたい罪悪的な戦争である、そう考えて、その責任に対しては永久に追及する考えでありますが、しかしそれと今日巣鴨に拘禁されている諸君の問題とは、これは別個だと思う。戦争犯罪人の多くは戦争という事態によって派生した問題の責任を問われている諸君が多いと考えます。ところがこの戦争犯罪人の中でも日本国民の戦争犯罪人に対しては、すでに恩給法改正あるいは遺家族援護法適用等によって、不十分ではあるけれども、ある程度の国の責任において援護が行われている。しかるにこの中に第三国人、すなわち台湾、朝鮮、これらは今日では日本の領土でありませんから、第三国人になっておりますが、当時日本国民の一人として、台湾及び朝鮮から召集あるいは徴用されて行った人々の中に、戦争犯罪に問われてすでに出所した者あるいは仮釈放になった者もありますし、なお巣鴨に拘禁されている者も相当ございますが、これらの問題に対しては数が少かったり、あるいは日本国民と直接の縁故関係あるいは知り合い関係等が薄いせいか、とかくこの問題に対する関心が一般に薄いように思われる。特にこれに対する政府の考え方が非常に冷淡である、こういうふうに感じられてしかたがない。私は日本の戦犯同様あるいはそれ以上に今日第三国となった朝鮮、台湾の諸君に対しては国は責任を感じて、出所後の援護等についてはあたたかい心やりをしなければならぬ問題だと思う。だんだんと具体的に質問しますが、まず最初に四月二十三日付で台湾、朝鮮、韓国の戦犯一同の名によって請願書が大臣あてに出されている。その請願書の内容は、一つは釈放について一刻も早く釈放していただきたいということ、第二は国家の補償について、第三は差別待遇の撤廃について、第四は出所後の一定期間の生活保障について、こういう項目についてかなり具体的に要請書が出されている。ところがこの要請書に対して大臣は目を通されたのかどうか、あるいは役所の担当方面にこういう問題についての協力について命令を下されたのかどうか、その後今日までこの要請書に対して誠意のある政府の回答なり措置なりというものはほとんど見られなかった。ごく最近、おとといの新聞に出ておるところによりますれば、若干の措置を政府では講ずるようになったようでありますが、私はその最近の措置について質問する前に、この非常に控え目なしかしながら非常に切実な要請が出されておったにもかかわらず、これに対する誠意のある措置がとられなかったということは非常に遺憾であり、私ども日本国民の一人として今日では第三国となったこれらの諸君に対して申しわけないと思います。この請願書をごらんになったかどうか、それに対する取扱いをどのように御相談されてきたかについてまず最初に伺います。
  106. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 巣鴨に今日現在五百七十九名のいわゆる戦犯と呼ばれている人々が拘禁されておるということについては、私どもまことに残念に存じておりまして、あらゆる方法を講じまして一日もすみやかに釈放の実現を期したい、かように存じて参った次第でございます。特に第三国人といいますか、平和条約発効によって国籍を失われた人々につきましては、条約の解釈上裁判時の日本国民ということで拘禁をいたしたのでございますが、まことに事情はお気の毒でございますので、特に朝鮮、台湾の方々について特別に釈放の勧告もいたして参った次第でございます。関係国の決定に待つことでございますので、思うにまかせず今日に至っておることはまことに申しわけないと存じております。また請願につきまして、またそれ以前に昨年の暮れでございましたか、朝鮮の方で一人仮出所の決定が参りまして、そのときいろいろな御要望が出まして、そのときもいろいろ関係当局で相談をいたしまして、なかなかいい案が出ませんでしたので、特に関係の戦犯出所者の援護に当っておられる団体にお願いをしまして、日本人で仮出所になった人よりも、二口でありますが、二万円として、一万円だけよけい差し上げるような措置を講じて参ったようなわけでございます。また巣鴨に入っておられる方々につきましては、決して差別待遇をするという方針ではございませんが、ただ未帰還者留守家族等援護法が日本国民というふうに限っておりまして、日本国内に家族を持っておられない方は結局その援護金が出ない。ところが朝鮮、台湾の方は家族を国外に持っておられる方が多いのでございまして、さような関係で実質的に差等を生じておるような関係になっておりましたので、この点につきましても厚生省の方にいろいろとお願いをして、大蔵省の了解を得られまして若干の措置を講じてもらっておったのでございます。さような関係で請願につきましては、関係厚生省、外務省、私の方といろいろ連絡をとっていたして参ったのでございますが、思うにまかせないで今度のような事態に立ち至った、こういうことでございます。
  107. 島上善五郎

    ○島上委員 遺家族援護法あるいは恩給法等は日本国民に適用するものである、そういう関係で法的に打つ手がなかった。確かに現行法によればそういうことになりましょう。しかし今御答弁にありましたように、朝鮮や台湾の戦犯の人々に対してまことにお気の毒である、国としては当然見てやらなければならぬ責任を感じておるということがほんとうであるとすれば、私は古いことをくどくど言っても始らぬようなわけでありますけれども、政府としてもっと誠意を尽すべき方法があったはずだと私は思う。この前大臣にもこの点についてちょっと伺いましたが、当時は資料がないからといって答弁されませんでしたが、現地で死刑にされた者、これは日本人もありますが、韓国関係に二十二名、台湾関係二十四名、その人々に対しても何らの処置が講じられていないと聞いております。聞くところによりますと、援護局にまだ何柱かの遺骨が放任状態にされておるということも、これが事実だとすれば私は大問題だと思う。この死刑にされた人々に対する処置及び遺骨に対してはどのように今日扱っておるのか。
  108. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 私は法務省でさようなことを存じないのでございますが、まことにお気の毒だと存じております。また戦死者の問題につきましても、私、法務省として実は所管外でございますが、やはり何らか考慮しなければならぬのではないかと思っておりますが、ただそれには時期と段階とがあるのじゃないかと思っております。
  109. 世耕弘一

    ○世耕委員長 委員長からも特に関係当局に申し上げておきたいと思いますが、島上君の今のお説が事実となれば、十分この方面の検討をされて善処されたいと思います。ことに台湾、朝鮮の人たちは、元はやはり日本民族の一人として祖国防衛の名のもとに戦場その他に身をさらして奉公された関係があるのでありますから、場合によっては義理合いから見ると、むしろ優先的にも取り扱わなくてはならぬ人情があるのではないか、むしろそうすることが日本民族の偉大さを表現することにもなろうかと思うのであります。島上君の今の御趣旨もおそらくそういうような高い見地から質問を進められておるものと思いますから、政府当局においてこの点は十分その趣旨を体して国際的にもまた国内的にも遺憾のないように処置するようにあらためて御協議を願いたいと思います。この点は特に委員長からも申し入れをいたします。
  110. 島上善五郎

    ○島上委員 今委員長からも特に発言があり、御要望がありましたが、この問題は非常に大きな問題ですから、今御答弁ができなければ留保して次の機会にまたあらためてお尋ねしたいと思いますが、現地で死刑に処せられた人人の遺族及び遺骨に対する扱いというものは、日本人と同様に手厚い扱いをしなければなりませんが、特に国際関係等も十分に考慮して十分な措置を国の責任においてなすべきことを私は強く要望いたしておきます。
  111. 細田綱吉

    ○細田委員 台湾並びに朝鮮の人たちが国籍を離脱して日本に帰化しようとするような場合に、あなたの方は率先してこれを許容しあるいは許可する考えか、その点をちょっと伺います。
  112. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 この問題は民事局でいたしておりますので、私実は承知いたしておりません。民事局の方へ連絡をいたしましてまたお答えを申し上げるようにいたしたい、かように思います。
  113. 細田綱吉

    ○細田委員 この弔慰金あるいは援護の問題は、もちろんあなたの方でなくて厚生省だろうと思います。しかしこの援護を要すべき事実の発生、弔慰金を贈呈すべき事実の発生というものは、もうりっぱな日本人です。しかも台湾特に朝鮮なんかの家族は非常に世間狭い思いをしておられるのではないかと思います。これに対して日本人が何にもめんどうを見ないというようなことは、われわれ国民としても非常に遺憾である。日本のためにからだをささげて、家族が世間狭い思いをしておる。日本内地では、このごろ農村なんかに行くとまた忠魂碑を建てたりして非常に表彰している。ところが朝鮮、台湾、特に朝鮮たるがゆえに世間狭い思いをしているというようなことは、われわれとしても見るに忍びない。あなたの管轄ではないのであまり知らないようでありますが、そこがどうも官僚のセクショナリズムといいますか、私のなわ張りでないから知らないということは、まあ法規の上ではあなたは責めらないことかもしれないけれども、これは特にあなたの方と厚生省と連絡をとって万遺憾なきを期せられたい、この点について御意見を伺いたいと思います。
  114. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 御意見はとくと拝聴いたしました。関係方面と十分連絡をとりたい、かように存じております。
  115. 島上善五郎

    ○島上委員 御承知のように韓国及び台湾の戦犯に問われた人々は、韓国、台湾から当時召集もしくは徴集されて戦地に動員された、終戦後戦犯に問われて現地の収容所にしばらく収容されていた、それから日本に回されてきた人たちです。従って日本人の戦犯のように日本に家族がおるわけでも、知り合いがおるわけでもない。拘禁中も面会に来たりなどということもできないし、一時帰国と申しますか家族に会うということもできない、仮釈放になりましても今言ったような事情ですから、巣鴨から出るとすぐつきまとうのは、日本人の場合とは著しく異なった悪い条件のもとに置かれておる。生活の問題、住居の問題等が非常にきびしい状態に置かれておる。すでに今日まで仮出所になった人々の生活状態が非常に深刻なものであるということは、おそらく当局も御承知になっておると私は思う。これらの人々の中には巣鴨へもう一ぺん入れてほしい、巣鴨へ行けば住居も食うことも最低は保障される。巣鴨へ入れてほしいということを嘆願に行っておる人がある。しかしこれは当局として、そうでございますかといってまた元のところへ入れるわけにもいくまいと思う。つい最近ですが、もう何回か巣鴨へ入れてほしいといって当局に嘆願をしておる、しかも今言ったようにそうですかといって入れるわけにいかぬから断わる。それならば生活の方は何とかしてほしい、これも受け付けられない。服毒自殺を数回やって数回未遂に終って、ついこの七月十九日に最後に首つり自殺をやってこれは自殺をしました。私はその写真も見せられて、ほんとうにこれは日本人として申しわけない、これに近いような状態の者がたくさんある。こういうことに対して、私は政府が今まで手厚い保護をしなかったことを非常に残念に思います。最近政府が何らかのやや具体的な措置を考えておられるようでございますから、それが政府としてきまりましたならばその内容をお伺いしたい。
  116. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 ただいま島上委員の仰せの通りでございまして、まことにお気の毒な事情にあるのでございます。従来は巣鴨を出所した人は中共、ソ連から引き揚げてきた人と同じように援護措置をとるということで、私どもとしましては、厚生省なりあるいは現場官庁としては東京都にいろいろと連絡をし、お願いをしておったのでございまするが、だんだん時日の推移とともにそれも思うにまかせなくなりまして、最近ほんとうにお気の毒のような事情になってこられました。私どももその方々とお目にかかりまして、まことにお気の毒だと同情申し上げてできるだけのことをいたしたい、かように思って参った次第であります。一昨日次官会議で関係次官の申し合せとして、それについて若干の予算的措置を講ずることになりまして、昨日閣議にそのことが報告されまして各大臣の御了承を得たような次第でございます。その案の内容はまず住宅でございます。住宅は従来東京都の引揚寮にお世話を願っておったのであります。それが実際上思うにまかせないような実情になって参りましたので、今回六百万円ほどの予算措置を講じてもらいまして、朝鮮の人と台湾の人と格別にそれぞれ縁故のある、従来から戦犯問題に関心を持ち、熱意を持っておられた者に、法務省の所管と申しまするか、更生保護会という保護会がございまするが、その施設としてそれを作って、そうして在所者で仮出所なり満期で出られる方のみならず、出ておられる人でもほんとうに困っている方はそれに入っていただく、こういうふうにいたしたいという計画ができましたので、昨日から実はその関係者に来ていただきましていろいろとお打ち合せをし、早急に実現、実施ができるように努力をいたしておる次第でございます。私どもといたしましても決して十分じゃございませんが、さような施設ができるならば非常に喜ばしいことだと存じまして、できるだけ努力をいたしたい、かように存じております。それから第三国の人の悩みの第二は就職の問題でございます。これにつきましては、実は巣鴨のプリズンにおきましてできるだけ就職の職業補導ということに努力をいたしまして、外部の適当な就職先を開拓してやっておるのでございますが、これもなかなか国籍が違うとかいろいろな関係で思うにまかせませんが、これは各個人々々の御希望もありますし、また能力の点もありますし、各個人々々の御意見なり御希望なりを聞きまして、そうして東京都なり職業安定所なりに十分お願いをしてあっせんを申し上げたい、かように存じております。それから第三の悩みは、その日どうやっていくかという資金の問題でございます。これにつきましては法務省では厚生省に特に御配慮を願いまして、国民金融公庫法が日本国民に限って適用せられることになっておりまして適用はございませんですが、それに準じた扱いを実際上にやるように、次官会議及び閣議でそれが昨日正式にきまったので、その実施を一月も早くやりたい、かように今努力をしている段階でございます。
  117. 島上善五郎

    ○島上委員 厚生省保護関係の方が来ておりましたら、今私が指摘したような、そういう非常に悪い状態にあり、かつこういう事実に対して、一体今まで厚生省はどういうことをやってきたか、これを一つ伺いたい。
  118. 坂元貞一郎

    ○坂元説明員 お答えいたします。第三国人の戦犯の援護の問題につきましては、実は私の方でやっております未帰還者留守家族等援護法という法律がございますが、それに基きまして私どもとして援護を実施いたしておるわけでございます。この内容を簡単に申し上げますと、第三国人戦犯の方々につきましては、従来から特別未帰還者給与法という法律がございまして、これによりまして特別未帰還者とみなされていたわけであります。そうしましてちょうど講和発効の日から昭和二十八年の七月までの間、一ヵ月千円当りの俸給を渡すという法律措置がとられて参ったわけであります。ただいま申し上げました特別未帰還者給与法という法律が、昭和二十八年の八月に現行法の未帰還者留守家族等援護法にかわりまして、第三国の戦犯の方は従来の実績を保障するという意味におきまして、同じく未帰還者と法律上みなしまして援護をいたす。従いまして現在内地に留守家族のおられる方につきましては、留守家族手当と申しまして毎月二千三百円の手当を支給するということになっているわけでございます。それが第一点であります。それから巣鴨を出所される場合には、この法律規定によりまして帰郷旅費と申しまして、落ちつき先に定着されるまでの旅費を支給いたしているわけでございます。これは大体千円から三千円の範囲内で、距離に応じて支給いたしております。法律上の援護については以上の通りでございますが、それ以外に私どもの方で行政措置といたしまして、巣鴨を出所される際に、ソ連、中共の未帰還者が帰ってきた場合と同じように、帰還手当という名目で一万円出しているわけでございます。従いまして先ほど申し上げましたように、巣鴨におられる間につきましては、家族のある方につきましては留守家族手当が出ます。巣鴨を出られる場合に、法律上の俸給のたまった分が大体一万五、六千円の見当で出るんじゃないか、かように思っております。それから先ほど申し上げました帰還手当、帰郷旅費、こういうものが出ることになっております。私ども厚生省の方でやっております援護の内容については以上の通りでございます。
  119. 島上善五郎

    ○島上委員 現在の法律の範囲ではそれしかできないということでございますが、そのようなことでは、先ほど申しましたように日本国内に縁故も知り合いも家族もいない人々が、巣鴨から出されてその後の生活をやっていくというには、ほんのスズメの涙にも値しないものだと思うのです。そこで今までのそのようなことではどうにもならないというので、当事者の諸君からも強く要請があり、そうして先ほどお答えのような措置をとられることになったと思いますが、しかし私はそれでもなお非常に不十分だと思う。何かホームを六百万円の予算で建てるということだそうでございますが、この予算で一体どの程度の規模のものができるか。私の聞いておるところによりますと、韓国、台湾を別々にして二棟を建てるということを耳にしておりますが、二棟だとしますと一棟三百万円。三百万円で一体何人ぐらい収容のできる、どの程度の規模のものができるか。私はそれでは、今日住宅難で非常に困っておる出た人々、あるいはこれから出る人々に対する住宅対策としては、はなはだ貧弱過ぎるではないかと考える。どの程度の規模のものであるか伺いたい。
  120. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 お答え申し上げます。大体巣鴨に在所しておられる人々の数でございますが、朝鮮出身の方が二十名、台湾の方が三十名おられます。それから巣鴨を出所されました方、あるいは台湾の方がマヌスから横浜に帰還されて横浜で釈放になったという方がそれぞれ会を作っておられますが、台湾関係が二十九名、朝鮮関係が五十名と承わっております。そのうち朝鮮関係で本年中に満期になる方がお一人、それからすでに仮出所の許可が参って、いろいろと引き受け態勢ができないためにまだ出所の運びに至っていない人が二人あります。それから出ておられる方につきまして全部お入りになっていただくというと相当の数になりますが、ほんとうに困っておられる方ということを考えまして、私どもとしては予算がもっと多ければけっこうだったのでございますけれども、それも思うようにまかせません事情もございまして、結局三百万円、三百万円という額になりまして、大体両方で五十人ぐらいの収容力を持つ施設ができるのでないか。まだ詳しい計画ができておりませんで、だれに引き受けてもらうかということを今やっている最中でございまして、まだ正確なことはお答えできない段階でございます。
  121. 世耕弘一

    ○世耕委員長 島上君にお諮りいたしますが、今大臣が出席いたしましたから、また出かけるかもわかりませんから、なるべく大臣に早目に御質問を願います。
  122. 島上善五郎

    ○島上委員 それじゃこまかいことにつきましては、もう少し質問したいので、大臣に質問したあとに伺うことにいたしまして、大臣にお伺いいたします。  戦争が済んで十年、戦犯といわれて多くの人々が巣鴨にまだ入っておる。私どもはあの戦争については、これは許しがたいものであると考えて、戦争責任の追及は、日本国民として今後あくまでもしなければならぬと思いますが、それと、今日巣鴨に戦争犯罪人として拘禁されておる人々の責任とは別個の問題だと思う。その巣鴨に入っておる人々に対しては、むしろお気の毒である、そうして国家としてできるだけのことをしてあげなければならぬ、こう考える。だからこそ最近恩給法の改正、あるいは遺家族援護法の改正等によって、戦犯の人々、戦犯の家族の援護も国の責任においてすることになったと思うのです。ところがその中に、第三国、すなわち今日では韓国、台湾となった第三国の戦犯がおるということはとかく忘れられがちで、政府の措置も非常に冷淡であると思えて仕方がない。私はこれらの人々に対しては、日本人戦犯以上に国の責任において手厚い措置がとられなければならぬと思うのです。今の法律は日本人に適用する法律だから、韓国や台湾の人には適用できないのだといったような、そういうことではなしに、国がもっと責任を感じて、責任を持ってこれらの人々に対して援護なりその他の措置をしなければならぬものだ、こう考えておりますが、これに対する大臣の基本的な考え方——具体的なことは係の方から聞きますから、基本的な考えを一つ伺いたいと思います。
  123. 花村四郎

    ○花村国務大臣 第三国人の巣鴨におられる人々は、ただいま申されましたように、日本国民として働き、終戦と同時に戦犯として拘禁せられた人々でありまして、特に同情しなければならない事情にありますことは、何人も認めてもって疑わざるところであろうと存じます。従いまして、願い得ることでありまするならば、日本人戦犯以上の特段なる特遇をしてやりたいものだということも、また何人も同じ意見であろうと私は存じます。かような意味において、まことに少いながらも、鳩山内閣に相なりましては、この気持を幾部分でも実現をしてきておるということを一つ御了承願いたいと思うのであります。言うまでもなく、こうした措置は、国家経済とにらみ合せ、国家の財政を基調として考えていかなければならぬこともまた当然でありまするので、従って、国家財政の許す限りにおいて、ただいま申し上げましたような気持を実現したいものだと私も考えており、またすべきであろうと存じます。
  124. 島上善五郎

    ○島上委員 大臣の基本的な考え方が、今御答弁のようであるということは私も了承します。しかし鳩山内閣になってから、この気持を幾分でも実施しておる、こうおっしゃることは、どうも了承できない。最近少しばかりの措置をやろうとしておるそのことについては、今御説明があり、私はさらに突っ込んで質問しておりますが、鳩山内閣ができましてから今日までの間、ごく最近次官会議あるいは閣議で新しい措置を講ずるまでの間というものは、何と言っても私は、今大臣が答弁されたような、そういう誠意ある政治の片鱗だに見ることができなかったのであります。さっき大臣がいらっしゃらないとき、私は最近の事実を指摘しましたが、岡野栄という人、この日本人名前の岡野栄という人は、巣鴨の門を出ると、お前はもう日本人ではないといったそっけない扱いをされて、どうにもやっていけないから、もう一ぺん巣鴨へ入れてほしいと嘆願をして、それはもう入れるわけに行かなくて、その結果生活保護その他の保護お願いしましたが、それもやっていただけない、自殺未遂を四回やって、つい七月十九日に首くり自殺を遂げておるのです。そして、これに近いようなものが多数あるのです。こういうことでは、鳩山内閣になってから今おっしゃったような気持で実施しているというふうには了解できない。私は、言葉だけでなしにほんとうにやってもらいたいと思う。国家財政の許す限り、もちろんそうです。しかし、今入所中のものは韓国と台湾で五十八人、出所中のものが七十八人、百五十人に満たない。どんなに手厚い援護をしても、そのために国家財政が破綻に瀕するなんということはあり得べきことではないのです。今大臣が答弁されたように、国家財政の許す範囲で、そうして日本人以上に手厚い援護をしなければならぬというのがほんとうであるならば、今までの措置についても了解できませんし、今度の閣議決定による住宅と生業資金の貸付についても納得できない。大臣はこれをもって誠意ある措置だとお考えでしょうか。
  125. 花村四郎

    ○花村国務大臣 島上君から、鳩山内閣になって何にもやらぬというお話でありましたが、先ほども申し上げましたように、その多い少いは別として、気持だけは十分に何らか形の上で発揮している、こう申し上げたのですが……(「そんな口ばかりではだめだ」と呼ぶ者あり)これは口ばかりではありません。今までやらなかったのでありまするが、本年の一月から、御承知のごとく、日本人の帰還者よりも特段なる扱いをしている。その特段なる扱いというのは、要するに、帰還手当だとか見舞金を日本人よりも三万円だけ多く支給いたしております。これは、なるほど額から言えば軽少でありますが、しかし、やはりここにこういう戦犯の諸君に同情すべきであるという微意が現われておることは、これは争われない一つの事実じゃないか、こう私は申し上げてよろしいと思います。さらにまた、これに次いで選挙やいろいろありまして、なかなかこまかい問題にまで立ち至ってそれぞれ前内閣の仕事を整理することは困難であったのでありますが、だんだん日を経るに従ってやはりその真相もきわめ、そうして今回のような——これも必ずしも私は多いとは申しませんが、すでに予算措置も済んだ今日において、さらに金も出し、また住宅対策あるいはまた生業資金の貸付、さらにまた就職のあっせん等々こういう問題について従来よりもさらに数歩を進めてきたというこの事実はやはりお認め下さることであろうと思うのです。国家財政が許しますならば、これはもう十分にやってあげたい、これは島上君の気持にまさるとも劣るようなことは絶対にないと申し上げてよいと思う。しかし、昔からないそでは振れぬのでありますから、やはり国家の財政とにらみ合せて、そうしてこの気持を現わしていくということよりこれはいたし方ないと申し上げていいと思う。大きいことばかり言うても、それが実行に移されなかったならば、これは絵にかいたもちと同じようなものである。そういうことはわれわれはやりたくない、やはり公約はどこまでも実行していくという建前で、少いながらもだんだんとやはりその気持を表わしていくということで行きたいと思いますから、そういう点は一つ誤解のないように御了承願いたいと思います。
  126. 島上善五郎

    ○島上委員 吉田内閣に比べて幾らかましな程度しておる事実は私も認めます。最近住宅の問題、生業資金の問題を閣議で決定されたことも知っておりますから、幾らかましなことは認めますが、これは幾らかましな程度であって、先ほど私大臣が言っておられたのを聞きましたが、韓国とか台湾の戦犯の人々は、自分の国元から戦地に連れて行かれ、戦犯に問われて日本に来て、釈放されても知り合いも縁故も何もない人である。そういう気の毒な状態にあるということを考慮に入れていただきませんと、今度の三百万円にしましても、もし百五十人ということになりますと、一人二万円そこそこです。これでは一月かそこらの生活しかできない。この問題は今後政府が単に同情ということじゃなしに、国の責任で処理しなければならぬものである。国の責任でこれらの戦犯に対しては出所後の住居、就職、生活、こういう具体的な問題について処置しなければならぬものであると考えております。国の責任でなさるというお考えの上に立っておられるのか、それをお伺いいたしたいと思います。
  127. 花村四郎

    ○花村国務大臣 国の責任であるという意味で、今日までそれぞれの措置をしてきております。ただいまも山下春江君から本会議において立法措置を講じたらどうか、こういうお説もありました。これもごもっともなお説であるとも考えられます。こういう点についてもなお今後研究してみたいと思っております。
  128. 島上善五郎

    ○島上委員 立法措置についても研究してみるという御答弁でございましたので、私どももこれは立法措置、具体的にはどのような法律にするかは別としまして立法措置を講じなければ、現在の日本人に適用する法律でもってやろうとしても無理だ、この問題は今後の問題といたしましても、国の責任においてなさるというお考えの上に立っておるといたしますならば、私は今までの措置も、大臣がお認めになっておるように不十分だ、今度の措置も十分なものでないと思う。十分でないということをお認めになるとしますれば、今後もこれらの問題について引き続き国の責任において善処する、つまり今度六百万円出してホームを二棟建てる。三百万円出して生活の援護をされた場合、もうこれで国の責任はなくなった、なすべきことは終った、こういう考えでなく、今後も引き続き国の責任においてめんどうを見る、こういうお考えであるかどうか、大臣のお考えを伺いたい。
  129. 花村四郎

    ○花村国務大臣 とにもかくにも今日まで国家財政とにらみ合せ、そうして日本の戦犯との関係も考慮のうちに入れて最善の方途を講じてきたのでありまして、今後はどうするかというようなことはここで明言することはできません。
  130. 島上善五郎

    ○島上委員 今後どうするという、今後の具体的な内容を聞いておるのではないのです。今までの措置も、今度の措置も大臣自身がお認めになっておるように十分でない、私ども考えても十分でないと思うのです。そういう十分でないもので、これでもう韓国、台湾の戦犯に対して国のなすべきことは全部したのだ、これで国の責任はなくなった、終ったのだ、そういう考え方でなしに、今後も引き続いてやってもらいたい。というのは、たとえば住宅の問題にしましても、これは今具体的な内容を説明できないほど非常にずさんなものです。とうていこれらの諸君を全部収容するに足るものではない。さしあたって非常に困っている者を収容するだけでも、ないよりましで、その限りにおいては政府の誠意を認めますが、今入っている人々が今後順次五十五人出てくるといたしますならば、その分がまた必要になる。現在出た人だけでも足らないのに、今後出てくるとなればなお足らなくなる。留置場のように三畳のところに八人も十人も入れれば別ですが、そういう扱いをすべきものでないから、そうなればこれでは足らなくなるのですから、住宅問題も将来さらに考えてもらわなければならぬし、就職の問題にしても、つまらぬところにあっせんして就職させたが三月くらいで相手がつぶれてしまって失業したという場合に、一ぺん世話したのだからもうそれでおしまいだということでは困るわけであります。一ぺん世話してその人が引き続きずっと安定して安定した生活ができればそれに越したことはありませんが、不幸にして勤め先がつぶれて失業したという場合には、再度就職についてのあっせんをしてもらわけなればならぬ事態が起ると思う。生業資金につきましても三百万円では僅少な額でありますが、これもさしあたって非常に困っている、自殺でもしなければならぬというほど困っている人々に対して措置するには、さしあたりの間には合うかもしれませんが、これも恒久的にこれでよろしいというものではなかろうと思う。私が大臣に伺うのは、これから先具体的にどういうことをやるかという具体的内容を伺っているわけではなく、これからも引き続き国の責任においてこれらの人々に対して手厚い援護を考えておられるかということです。
  131. 花村四郎

    ○花村国務大臣 先ほども申し上げましたように、十分な援護をしてやりたいという気持に燃えております。しかしその十分な援護というのは、一体どの程度なら十分な援護と言い得るか、これがまた問題でありましょう。どこまでいけば十分と言えるか。また受ける方もどこまでいけば満足するか、これがなかなかむずかしい問題で簡単に申せない次第です。気持としては十分に一つ援護をしてあげたいと存じておりますことは万人の認めて疑わざるところであろうと思いますが、しかしそれにはどうしても先立つものは金でありますから、国家の財政とにらみ合せあるいは四囲の事情等を勘案してきめていかなければならないことでありますから、ここで政府はどうするかというようなことをお約束するような話はなかなかむずかしいのではないか。そういう言質を一つとろうなんていう島上さんもどうも少し冷酷ではないかとも考えられますが、これは先ほども申すように、お気の毒であることは重々認めるのでありますから、国家財政並びに日本戦犯との関係、さらに進めて外国の事例等も研究する必要もありましょう。人類愛の大きな見地に立って一つ十分に考えて、できることならやってやる方がいいのではないか。しかしできないことは、幾らいろいろ言われてもできませんし、またできるような美辞麗句を並べてみても、実行のできぬことはできぬわけですから、それはできる範囲において政府の方でもやる。受くる方もできる範囲においてやってもらうというところで、お互いに忍び合うということよりほかにしょうがないでしょうが、自然はそこに落ちつけてくれるのじゃなかろうかと私は考えております。
  132. 島上善五郎

    ○島上委員 私はこの前の質問のときにも言ったのですが、これから先こういうふうにする、ああいうふうにするという具体的なことを聞いておるわけではないのです。しかし先ほど大臣が法的措置まで考えておると言われておるくらいですから、将来のこともその中には当然入っているわけなんです。私が伺っているのは、今度住宅の問題と生業資金をスズメの涙ほどやって、これで政府のなすべきことは終ったのだぞ、こういうことになったら、韓国や台湾の諸君は承知しないと思うのです。これで終ったとするならば——もちろんこれで終りだというやり方もあります。これで終りだ、あとは政府はもうめんどうを見ませんというやり方もありますが、それならば相当の額のものを出すということでなければこれは承服できぬだろうし、私どもが考えても百五十人からの人に対して三百万円、住宅も今五十人と言いましたが、とても五十人なんか収容できません。坪当り一万五千円くらいのバラックでも建てれば別ですけれども、普通の東京の時価で建築するとすれば五十人なんかとても収容できない。ですから私の聞こうとするのは、法的措置までも研究しておるというくらいの大臣のことでございますから、今後これこれ、これこれをするという答弁を私は得ようとするのではありませんから、安心されて、今後も国の責任において、そういう気の毒な人々には予算とか法律とかそういうものの許される範囲内でできるだけのことは今後も考えてあげる、こういうことは答弁できないはずはないと思うのです。私はそれを要求しておるのです。
  133. 花村四郎

    ○花村国務大臣 法制化も考えておるということは、何も特段なる優遇をするという意味じゃございませんから、その点は一つお含み置きを願いたいと思います。最も適当な法制化をするという意味で、法制化をするからえらく何かもらえるだろうという意味に解釈されますと、たなからぼたもちが落ちてこないときは、やはりどうも妙なことになりますから、そういう意味に御解釈をなさらぬようにお願いをしておきたいと同時に、今後大いにどうしてやるとか、こうしてやるとかと言うて大ぶろしきを広げてみたところで、それが実行に移されなかったら、これは何にもならない。また一方の受ける方としても、何か大きなものをもらえるだろうというような大きな希望を持っておって、もらえなくなったら、これは失望落胆するでしよう。それだからそういうことはお互いに好ましいことじゃありませんから、できる状態においてこの問題を解決していくということより——将来どうするとか、こうするとかいうようなことを申し上げることは困難だろうと思うし、また私はそういうから手形を発行することはあまりおもしろくないと思いますから、それはまた先ほども申し上げましたように、国家財政と、そうして日本の戦犯に対する諸事情その他社会情勢を勘案して、そうしてでき得る範囲においての措置をやっていきたい、こう考えております。
  134. 細田綱吉

    ○細田委員 先ほど民事局長が御出席になっていないので答弁できないということでございましたが、台湾、朝鮮、特に韓国の諸君は帰るところがないと思う。李承晩大経領という人はああいう人だから、まるで敵国のために尽した異端者が帰ってきたような扱いを必ずすると思う。朝鮮でも北鮮は国柄も違うのですから、あるいはどうか知りませんが、そこで長い間日本の国民として、また祖国にからだをささげて働いた人、それが不幸にして戦犯になった、この人が巣鴨を将来必ず出るのですが、出て日本の国籍を取得しようとする場合には、祖国の方で承知するとかしないとかでなくして、特別の、日本の国籍取得のために御用意があるか、この点を一伺いたい。
  135. 花村四郎

    ○花村国務大臣 国籍取得につきましては、それに伴う条件がございますので、その条件に適する者は許可せらるるであろうと申し上げてよろしいと思います。
  136. 細田綱吉

    ○細田委員 法務大臣の言葉は、率直にいって不満もなければ、おもしろみもない。条件があるから条件に合えばというのは当りまえの話です。特にこの人たちには条件を無視してというわけにはいかないが、日本に尽して、日本のために犠牲になったという人たちに対しては、好意的にできるだけその条件の拡大解釈をして、国籍取得の方途を講ずる御用意があるかどうか、その点を伺いたい。
  137. 花村四郎

    ○花村国務大臣 それは条件を具備すれば、なるべく他の人よりもより特段なる気持で扱ってやるということはけっこうだと思います。今日おそらく朝鮮の人でも帰化を願い出ておられる人が年に五、六千人ありはしませんか。その中で帰化を許可されるのが二、三千ということになっておりますから、なかなかむずかしいといえば、むずかしい面もあるのですが、いずれも適格条項ありとして許可の申請をしておるわけなんですから、しておっても、その中でやはり許可されるものとされないものとの関係が生じておるようなわけですから、なかなかむずかしいことではありますが、特に今までのそうした功績にめで、あるいは諸事情に同情いたしまして、事務上で弾力性を持たして、なるべく帰化をさせてやるという方向に努力をしてやりたいものだと、こう考えております。
  138. 細田綱吉

    ○細田委員 援護局の課長さんに一つ伺いますが、台湾、朝鮮等第三国人の戦犯の国にいる家族、この人たちに対しては、日本の戦犯よりも全然やっていない。従ってそういう点においては、第三国人というのは給与が薄いと見ていいわけです。これは日本の国の中にいなくても、やはりめんどうをみてやるべきだと思う。現在の法律ではあるいは不可能かもしれませんが、しかしこれは明らかに不当だと思う。木のまたから生まれた人はない、また大事な人を戦地に送って家族は待っておる。国におってもこの人たちを援護する義務はある。その点に対して将来何か考えておられるか。  それからいま一つは恩給です。日本人ならば巣鴨に服役中は何でも今度の法律かこの前の法律で、要するに戦地にいるというか服務中と見て恩給がつく人たちだと思う。この点は第三国人はどうなるか、その点を一つ伺いたい。
  139. 坂元貞一郎

    ○坂元説明員 お答えいたします。第一点の朝鮮、台湾に家族を置いておられる方について、援護が法制上可能かどうかという問題であります。これにつきましては、実は私の方でやっている法律では、従来から日本人とそれから日本に留守家族がおられる者という基本原則で従来からやってきておりますので、今後朝鮮、台湾に家族のおられる方を援護の対象にするかどうかということについては、現在のところは考えていないわけでございます。現在そういう朝鮮、台湾に家族を置いておられる方で、巣鴨に入っておられる第三国人の戦犯の方については、きわめて気の毒だということからいたしまして、先ほど申しましたお盆と暮れに六千円ずつやっておるということを御承知願いたい、かように思うわけであります。将来の点につきましては、現在のところは考えておりませんが、研究してみたいと思います。  それから第二点の恩給の問題につきましては、日本の場合は今度の改正によりまして巣鴨の服役期間は公務期間となりましたけれども、第三国の方については、恩給法の適用がございませんので、そういう取り扱いが今回の改正法ではでき得ないことに相なっております。その点につきましても、やはり第三国人であるという不利益が依然として残っている、かように承知しております。
  140. 細田綱吉

    ○細田委員 よく日本へ帰ってきて老後を養っておる人が、アメリカの在郷軍人として突然恩給をもらっている。あなたたちの考えはどうも国籍にこだわり過ぎる。戦地ではその人たちを日本人として扱ったのだから、もっと日本人と同一の取り扱いを人道上もすべきです。六千円ずつということはやらないよりけっこうですけれども、それをトータルしたら日本の人たちよりもむしろ少い。どうも日本人ということにこだわり過ぎる。やはりその人たちは日本人として働いてきたのですから、現在の国籍はその人たちの意思によって朝鮮あるいは台湾を離脱したのではない。もっと大らかにものを考えていいのではないか。立法措置も将来そういうふうにしていいのではないか。  それから最後に伺いたいことは、三国人だから恩給はもらえない。しかし先ほど法務大臣にお尋ねしたのですが、将来第三国人の方が三月か四月、半年先に日本人の国籍を取得した場合恩給はどうなるか、その点をお伺いいたします。
  141. 坂元貞一郎

    ○坂元説明員 実はその点につきましては、恩給法のこまかい点につきまして承知しておりませんので、ちょっとここでは御返答できませんのでお許し願いたいと思います。
  142. 島上善五郎

    ○島上委員 あまり長く時間をとっても悪いから、すぐ結論にしますが、大臣の先ほど来のこんにゃく答弁では私は満足しません。もっと率直にはっきり答弁してもらえそうなものだと思う。しかしあの答弁の中にも、今後も国家財政あるいは法律や日本の戦犯その他諸事情を考慮した上、国の責任で援護する、こういうように今後に責任がなお残っておるということを、いろいろ遠回しではあるけれども言っております。私はそういうふうに解釈しまして、不満足ではありますが、大臣に対する質問は打ち切りまして、あと一、二点こまかい点がありまからお尋ねいたします。  次に生業資金の貸付でございますが、これは現行法によりますと日本人でない者には直接貸すことはできない。そこで間接的に貸すような方法を講ずるという御答弁のようでございましたが、その間接的にされる場合には具体的にはどういう方法をおとりになるお考えでありますか。これを伺いたい。
  143. 坂元貞一郎

    ○坂元説明員 生業資金の貸付に関しましては厚生省で担当することになりますので、ただいまの御質問に対してお答えいたします。  現在の国民金融公庫による貸付はただいま法務省の方の局長から答弁がありましたように、第三国人につきましては貸付対象に法律上なっていないわけであります。前々からこの問題につきましては私の方から大蔵省なり国民金融公庫の方に何とかならぬかということを言っている、法制上のために現在まで実現ができきなかった。現在の第三国人に対して生業資金を貸し付けるということにつきましていろいろ方法を考えた結果、ただいま御質問がございましたように、いわば間接的に貸し付けるという方法になったわけであります。その方法と申しますと、国が直接貸し付けるということはいろいろな点から難点がございますので、現在の範囲では民間の適当な団体を選びまして、この民間の適当な団体に国が資金を交付しまして、民間の個々な団体がいわば貸付の事業主体として第三国人の方に貸し付けるというように考えているわけであります。貸付のいろいろのやり方については大体国民金融公庫で貸しているような方法でやったらどうかということで現在案を進めているわけであります。
  144. 島上善五郎

    ○島上委員 民間の適当の団体ということですが、それは現在存在している団体のことを考えているか、それとも新たにしかるべき団体を作ってそれを通じて貸すか、こういうことを伺います。
  145. 坂元貞一郎

    ○坂元説明員 民間の適当な団体といたしましては、実は政府の方から資金を交付する関係上、法人格を持っているものでないと工合悪いというようなこともありますので、現在の民間の既存の団体で、そういう法人格を持っているものがあるかどうかという例を検討しましたら、現在までのところ見当りませんので、現在は法人格を持たない団体がありますので、これに法人格を持っていただいて、この事業の主体になっていただきたいということで、現在内々相手の団体の内意を伺っているわけであります。
  146. 島上善五郎

    ○島上委員 その団体につきましては、私は韓国及び台湾の諸君の意見を十分聞いて、よくその間に意思の疎通をはかってやられた方が今後円滑にいくと思います。ぜひそうしてほしいと思いますが、そういうお考えがありますか。
  147. 坂元貞一郎

    ○坂元説明員 ただいま御指摘の趣旨は十分わかりました。実は私の方でも法務省あるいは関係の省と相談をしまして、第三国の戦犯の方と密接な関係がある団体を候補にあげまして、先ほど申し上げましたように、内意を伺っておる次第でございます。
  148. 島上善五郎

    ○島上委員 最後に就職の問題ですが、これは非常に困難な問題だと思うんです。先ほど来言っておるように、若いころ国から戦地へ持っていかれて、戦犯でもう四十前後になっている、特別の技能もない人が多かろうし、国が違う、そこでいろいろな状況が悪いのでありますから、非常にむずかしい問題だと思いますが、この就職あっせんについては具体的にどのようにお考えになっておるか。たとえば東京都の労働局に依頼するとかどこに依頼するとか、だんだん国が責任を回避していって、しまいにはどこが責任を負うかわけがわからぬ、こういうことになってしまっては、この問題は解決できないと思います。この就職あっせんについては、具体的にどのようにお考えになっておるか、
  149. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 私どもといたしましては、巣鴨在所中から職業補導ということで、いつ出てもすぐに就職できるようにいたそう、こういうことで努力しておりますが、それが必ずしも全部できるわけではございませんで、出て、困られる方もあります。その場合にできるだけ御本人の希望なり従来の経険等も確かめまして、たとえば五月の下旬に仮出所の許可が出てまだ出所されておらない方、それはやはり同国出身の方にお願いして、個人的にできるだけ誠意をもってごあっせんする。制度としては、巣鴨在所中は巣鴨の方でお世話をする、外に出れば、東京都の職業安定機関でできるだけあっせんしてもらうということでありますが、やはり個人のつながりで就職される場合が非常に多うございますので、個々的に努力を重ねるということでいくよりほかないんじゃないかと考えております。
  150. 世耕弘一

    ○世耕委員長 花村法務大臣は、参議院から法案審議のため再三呼び出しが来ております。さような次第でありますから、大臣に質疑をお急ぎ願います。
  151. 島上善五郎

    ○島上委員 この就職問題は、さっき私があげた岡野君という人も、一ぺん駐留軍関係に、就職を世話してもらったか、自分で働いたか知りませんけれども、就職して、それが縮小になって失業して、再び就職することが不可能になってああいうことになった、そういう場合が非常に多いと思うんです。だから私は就職については、一ぺん就職の世話をしたらあとそれでもう責任のがれだという考えでなしに、さらに重ねて就職のあっせんをするということに対して、政府は責任をもって今後やっていただきたい、ぜひそうしていただきたい。巣鴨にいるうちに職業補導をされることもけっこうでありますが、職業補導といっても、本人の適性、不適性もありましょうし、希望しない点もありましょうから、そういう点も十分考慮して——私の聞いたところでは、巣鴨の門を出てしまったらもう責任はないのだという扱いを、今までしておったということです。それでは困る、出てからがむしろ肝心なんです。一ぺん就職の世話をしても、また何かの都合で失業する者があったら、続いて就職をあっせんするということを誠意をもってやってもらいたいということを強く要望して、これに対するお考えを承わって、私の質問を終ります。
  152. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 御意見の通り、誠意をもって就職についてはごあっせん申し上げるつもりでおります。
  153. 世耕弘一

    ○世耕委員長 岡本隆一君。
  154. 岡本隆一

    ○岡本委員 大臣はお急ぎのようでありますから、先に大臣にお伺いいたします。最初の問題は、きょう私がお尋ねしようと考えておる問題から離れておるのでございますが、同僚の加賀田進君からぜひ大臣のお考えを聞いてくれということでございますので、一点お伺いいたしたいと思います。  それは京都市の地方裁判所の裏にある拘置所の移転の問題が起っておりまして、それを下京の吉祥院というところへ移転させるという計画があるやに聞いております。それにつきましては弁護士会から、また京都の福祉会からも、またその付近一帯の住民からも、猛烈な反対の声が上っておるのはすでに御承知であろう。またその問題については、先日同僚の加賀田進君と小川半次君とが二人で大臣をお尋ねいたしまして、移転反対の要望をいたしておいたのは、大臣も御記憶にあろうと思うのでありますが、その後どうなっておるか、引き続き移転をさせるお考えであるか、あるいはお取りやめ願えるか、その辺のところをお伺いいたしたいと思います。
  155. 花村四郎

    ○花村国務大臣 ただいま申されましたように、あらゆる方面の反対がありますれば、その反対を押し切って、しいて移転する必要もないと存じますので、なるべく反対のない最も適地を選んで移転をするようなことに努力をいたしたいと存じます。
  156. 岡本隆一

    ○岡本委員 目下当局の方が移転を計画しておられるところの吉祥院は、地元民が非常に反対いたしております。またただいま申しましたように、各方面から非常に反対の声が強いのでございますので、その辺のところを十分お考え下さいまして、善処していただくようお願いいたす次第であります。  そこでもょう私がお尋ねいたしたいと思っておる問題に入るわけでありますが、去る六月の十六日に、私は京都府綴喜郡井手町町有林乱盗伐問題に関する質問主意書を差し出しましたところ、それについての御答弁を六月二十四日にちょうだいいたしました。その答弁書を見ましたときに、私といたしまして大へんふに落ちない点がございますので、本日はこの問題についてお伺いしたいと思います。参議院から呼ばれていらっしゃる大臣に、特に重要な問題について一点だけお考えを承わらしていただきまして、あとは局長の方からお答えを願いたいと思います。  御承知でもございましょうが、この井手町の町有林の乱盗伐問題と申しますのは、井手町という町は、昭和二十八年の八月十五日に、南山城風水害で非常な惨害を受けまして、百六名の死者と二百数十戸の流失家屋を出した町なんであります。その出水の原因も、この乱盗伐の問題がその一部をなしておるのでありまして、二十七年の末に井手町の教育施設の拡充をやって、学校の校舎を建てるための財源を得る目的をもちまして、町有林の一部を売却した。ところがそれを買い受けました小林という山林業者が、町議会の議決いたしましたよりもはるかに広範な範囲を切ったのでありまして、町に非常に大きな損害を与えたのであります。それについて当局が捜査をされ、処分をされておりますが、この処分に当りましては、その乱盗伐をやりました商人の小林清晴を起訴猶予処分に付しておられます。この答弁書の第九ページの終りから五行目を見ていただきますと、第三の事実は明白であると書いてある。第三の事実というのは小林が不当に拡張して記載した売買契約書を偽造したのです。その偽造した契約書に基いて、山をばっさり、広く丸坊主に切ってしまった。この文書の偽造は事実である。第三の事実は明白である、こういうように罪状を認めておる。その犯罪を犯したところの被疑者小林は高血圧、口頭ガンの重症にあった点も考慮し、厳戒にとどめ、起訴猶予処分に付したものである、こういうふうな御答弁になっております。この口頭ガンの口という字は間違っております。おそらく咽喉の喉だろうと思う。被疑者小林は犯罪は犯しておるが、高血圧であり喉頭ガンの重症であった、それでもって起訴猶予にしてやった、こういうような答弁書をいただいておるのであります。事件を捜査された当時は、昭和二十八年の七月でありますが、二十八年の七月に喉頭ガンで重症であったという小林が、今もなお健在でぴんぴんしておるのであります。従いましてこの重症であったということはまっかな偽りであり、この小林という人間は、今度は診断書という文書を偽造いたしまして、それで検察当局をちょろまかし、自分の罪を免れておるというふうな事態があるのであります。そういうことが許されていいのかどうかということを、大臣の御見解をお伺いいたしたいと思います。
  157. 花村四郎

    ○花村国務大臣 詳細な事実関係が判明いたしませんので、的確な御答弁を申し上げられるかどうか非常に疑問に思うのでありますが、犯罪を断ずることは、いずれの事案もまことに微妙な関係がありまして、その採用する証拠の価値を定めることすらもなかなか容易ならざることでありますから、従って詳細な事実関係が判明いたしませんので、ただいま申し上げたように的確な答弁ができるかどうか疑問でございまするが、一応ここにその概要を記載された報告書が届いておりまするので、これらの関係書類によって見ますれば、結局実地受渡しに際して、本件偽造契約書の記載によらないで、売却委員の指示に従って引渡しを受けたことが認められておるというような関係から、公文書偽造に直接起因するところの実害の発生は認められぬというようなことに相なっており、また今はそれは健康体であるかもしれませんが、少くともこの取調べの当時におきましては、その軽重はいざ知らず、やはり病状が認められたものであろう、こう思うのでありますが、いろいろ諸事情を勘案し、しかも実害がなかった、本件に対しては実害の認むべきものがないようでありまするが、こういう実害も出ておらぬというような事案に対しましては、刑事政策上の見地に立って、そうして犯罪は成立するが、しかしこれは起訴すべからざるものであるという判定を下すことも、あながち間違った処置でもあろうと思うのでありまするが、これは法をよくする者のよう言うところでありまするが、処罰は重く罰するよりも軽きに失する方がいいんだというような刑法の根本の精神は、やはりそういうところにあるということは、すべての人が認めておるところでありまするが、やはりこういう見地から考えても、なるべく軽く罰する、資料がありまするならば軽い方へやはり罰してやるということが望ましいことでありまするから、重く罰したということでありまするというと、これはまたいろいろ問題も起きましょうが、軽く罰したということについてはあまりどうも問題も起きないようでありまするし、またもちろんそういう病状等の判定をいたしまするについては、やはり医者のりっぱな診断書もたぶん出ておることであろうと存じまするし、その専門家のしかるべき診断書によっても、病状等から勘案して拘束することは適当でないというような考えも出てき、また四囲の事情からして改悛の情も顕著である、また実害も何もないのだというような事案でありますると、これは起訴猶予にするのが大体において適当な処置じゃなかろうか、こう存じます。
  158. 岡本隆一

    ○岡本委員 ただいまのお言葉の、重いよりも軽い方がいいということですが、しかしながら軽く罰したために、実は今非常に大きな問題が発生しております。大臣がお急ぎであると思って逆にお尋ねしておりますので、御了解ができにくいと思うのでありますが、実害の発生は認められぬというようなことが書いてございますが、これにも私どもは大きな反対の意見を持っておるのでありまして、私どもの考え方によりますと、井手町は三千万円以上に達するところの大きな損害を受けておる。そのような大きな損害を与えたところのこの小林が——それについては後ほど局長といろいろ御意見をかわしていきたいと思うのでありますが、その小林が起訴猶予になったという、その起訴猶予という言葉であります。これは起訴すべきではあるがいろいろな事情を勘案して許してやったというふうな意味に私は解釈しておるのでございますが、相違ございませんでしょうか。
  159. 花村四郎

    ○花村国務大臣 その通りであります。不起訴処分というのは大体において犯罪を認めぬということでありまするが、起訴猶予というのは、犯罪は成立するのであるがその起訴を猶予してやる、犯罪としてそれを問議しないという意味でありまするから、不起訴処分とは異なるわけであります。
  160. 世耕弘一

    ○世耕委員長 岡本君にお諮りいたしますが、刑法上のこまかい点はかえって刑事局長にお聞き願った方が御便宜かと思います。なお花村法務大臣は参議院から呼び出しがございまするので、どうぞ結論だけ、急所をお聞き下さるようお願いいたします。
  161. 岡本隆一

    ○岡本委員 大臣もそのつもりで御答弁をお願いしたいと思います。  私が問題にいたしておりますのは、犯罪の事実はあったが、しかしながらそれが当局の認定ではさほど大きなものではないということが一つ、それと病気であったということ、この二点をもって起訴が許されておる。ところが私どもの考え方では、犯罪の事実は大きなものである、同時にまた本人病気であるという事実がまっかな偽わりであるということになったならば、これは当然その人間が当時病気であったかどうかということ、さらにまた現在病気であるかないかということをもう一度調べて、その上で本人を罰すべきであると思うのでありますが、その辺のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  162. 花村四郎

    ○花村国務大臣 起訴猶予にいたしますることは、ただ病気であるとかあるいは実害がなかったかというような単純なことで起訴猶予にするわけではありません。本人の過去における経歴、将来における改悛の情、あるいはまた事件の手口、実害の程度、そうして健康などは大してしんしゃくされるものでもありませんが、しかし病気の場合においてはほかの方面とにらみ合せた上で、多少考慮の中にも入れられるのでありまするが、まあ病気であるというようなことは大してしんしゃくの資料にならぬと申し上げていいと思うのであります、その他家庭の事情から、あるいは今まで扱ってきたその他の同じような事件とのにらみ合せ、あるいはまた他の事件との比較検討、あるいはまたその地方におけるその事件に対する社会感情なり民情というようなあらゆる観点からいろいろ考慮がめぐらされて、そうしてそういう結論になるのでありまするから、単純にただ何と何とで不起訴処分にするというようなものではないと申し上げていいと思うのであります。少くとも不起訴処分にするについてはその係の検察官もあらゆる苦心をしてそこに到達したものであると申し上げていいと思いまするので、まあ不起訴処分等にした場合においては、これはあまりとがむべきではないのではないか、むしろ起訴をするという方がどちらかと申しますればこれはいろいろ人権じゅうりん問題だとか行き過ぎだとか、証拠の認定が悪いとか文句がつきまとうものであり、またつきまとうことも当然でございましょうが、罪にせぬという方面はそう深く追及したりとがめたりしない方がいいのじゃないか。刑法の大精神も、先ほど申したように重く罰するよりも軽く罰しておけというのが間違いのないことなんですから、そういう意味において本件の処置は適当であろうと私は考えております。なおこまかいことは一つ局長にお聞き願いたいと思います。
  163. 古屋貞雄

    ○古屋委員 ちょっと今の問題に関連して……。今大臣が言った通りの条項がこれは全部整っておる。まず第一に民情です。井手町の町民あげて反対の陳情をしておる、社会情勢自体がすでに被害者に対して非常な悪感情を持っておる。それから第二に、損害が三千万円、それから病状はうその診断書がついておるということが事実である。岡本委員は医学博士だからよく知っておる。ガンをわずらっておる者が一年もぴんぴんしておるはずはない。現状は会ってよく知っておる。それが一つ。さらに何ら反省のない事実としては、こういう捜査をされ告訴をされて自分の商売が進行しなかったというので、町を相手に民事訴訟の損害賠償を起しておる。これほど悪条件がそろっておるものを起訴しないというのは、いわゆる町民たちは検事が買収されておるというふうに今疑っておる事実がある。疑う方が間違いであるか、疑われる方が間違いであるか。今花村法務大臣のおっしゃられた通り、全部悪条件が事実になっておる。これは町民あげて反対をしており、小林に対して非常に悪感情を持っておる。それがために陳情もし、内閣総理大臣に対して質問もしておるのです。しかも喉頭ガンであったというのがそうでなかったという事実、お医者の診断は今でもさせろと言っておる。ですから今岡本委員質問しておるのは、喉頭ガンでないということが明らかになり、民情が非常に悪いということが明らかになり、処罰をしてもらわなければならぬという要求が町民全体であり、公共団体であるところの井手町が三千万円の被害を受けておる事実があり、本人が何らの反省をしていない証拠には、逆に町に向って損害賠償を請求しておる事実がある。こういう事実を前提とした場合に、いま一回これを調べ直して起訴する態度をとるかとらぬかということを私は法務大臣にお尋ねしたい。あなたのおっしゃる通りの反対事実があるのです。
  164. 花村四郎

    ○花村国務大臣 これは聞くところによれば、町内の政争というような関係が相当深く食い入っておるようでありますが、そこになかなかむずかしいところがあるのでございます。検察当局といたしましても、先ほど申しましたようにあらゆる観点から本件を公平にながめて処断したものであろうと存じまするが、大体において、いかなる事件でも特徴なる被害を受けておる者に限って、起訴猶予等の処置に対して不平を言い、あるいは検察官審査委員会等に申し出て起訴手続の促進を促すような事案もたまにはあります。しかし大体においてそういうものはないようでありまするが、こういう政争の具に供されておるような事犯は、むしろ衆議院で論争するというよりも、やはり開かれておる検察官審査委員会にでもお持ちになって、起訴、不起訴が適当なりやいなやという判断を受けるということが、私は願わしいように思うのです。こういう政争の具に供されておる事件について、議会でいろいろ質問、答弁をして参りますと、何かわれわれもその渦中に巻き込まれたような誤解を受くるおそれがありますので、起訴、不起訴が適当なりやいなやということを決定される別個の道が開かれておりますから、もしそういう点について御不満でありますならば、そういう方面でおやりを願えれば、私は一番けっこうだと思うのです。しかしここで質問されるのが悪いという意味じゃない。幾ら質問されてもけっこうだし、また答弁もしますけれども、そういうことも考えのうちに置いていただくということであれば、私はなおけっこうだと存じます。
  165. 古屋貞雄

    ○古屋委員 今の御答弁は、僕は法務大臣まことにけしからぬと思う。国を代表して犯罪捜査をすべき立場のものが——検察審査会ももちろん知っておりますけれども、今法務大臣みずからおっしゃったように、政争関係があるならば——検事の行動に疑いがあるというのですから、法務大臣の方からは、今申し上げたようなこういう紛争事実があるならば、当然に捜査をし直させるということが、全く親切なしかも公平な態度だと思うのです。それを自分から拒否して、審査会へ持っていけ、こんなべらぼうなことはない。それは、自分の法務大臣としての責任を他の機関に塗りつけようという態度であって、私ども国民から言いますならば、それでは私どもは法務省に信頼は持てない、検事に信頼は持てない。いやしくも検事は国家を代表しての立場から、公平にやらなくちゃならぬ。そういう疑いがあるのであるから、この法務委員会に持ち出して、疑いのある事実を明らかにして、再び捜査をし直すなり、これに対して果してそういう疑われるような事実があったかなかったかを、法務大臣みずから指揮して、はっきりしてもらう。これが法務大臣の態度であり、検察庁としても、下級検察庁のやったことが全部いいというような丸のみをいたさずに、やはりこういう疑惑があることを知ってもらいたい。しかも、これは私人と私人の争いじゃないのです。町の財産が何千万円か盗まれた。そこに問題があるのです。地方公共団体が現在赤字に苦しんでいることは明らかであります。しかも地方公共団体が議会で決議をして、議会で地域と本数までも明らかにして、これは契約をした。従って、本件の捜査に当って、もっと申しますならば、その決議をした議会の議員さんを捜査をしてないという、ここに問題があるのです。その当時どういう決議をしたか、どういう内容の契約をさせたか。この事件は議会の議員を捜査していない。取調べの関係が非常に未熟である。そこに問題がある。執行する町長とその商人との間の契約は詳しく調べておりますけれども、決議をいたしましたその決議の内容がどうであったか、この点が問題なんです。それと伐採する範囲を拡大されて伐採されておる。その拡大された伐採が、契約はあとから書き直して、その伐採したところも契約の内容に入っておったということを弁明しているわけなんです。従って、その当時の町会の議員を全部お取り調べを願わなければ、この真相が明らかにならない。それをやっていないのです。ただいたずらに政争の具に供して騒いでおるのだということで、私は葬り去るべき事件ではないと思う。だから、法務大臣のおっしゃったような、起訴猶予にいたします条件の全部逆になった条件が整っていると言っている。この点が本件で問題になっているのです。従って、そういうような責任のなすり合いをなさらずに、命じて、あるいは命ずることができなければ、刑事局長がいらっしゃいますから、直接でもよろしゅうございますから、再びお調べを願って、果してこの不起訴が妥当であったか、なかったかを、法務省の責任において明らかにしてもらいたいということを、私は要望するのですが、法務大臣のお考えはいかがですか。
  166. 花村四郎

    ○花村国務大臣 私の手元へ届いております報告書によって見ますれば、適当な処置であると考えられるのでありますが、今るるこまかいお話もありますので、もう一度詳細な報告を求めて、さらに検討をいたしてみたいと存じます。
  167. 岡本隆一

    ○岡本委員 法務大臣は今この問題が政争に関連のあるものだというふうなお言葉でございましたが、事実は全くそのようなたぐいのものではございません。私が本日質問いたします理由は、災害に見舞われた井手町が、ともかく三千万円という程度の山林を不当に伐採された。伐採された木は全部そのまま流れちゃった。その流れた木が家に突き当って、家がどんどんその木で押し倒されていって、大きな被害を与える原因になっている。そうしてそのような大きな被害を与えた材木商人が起訴猶予になった。起訴猶予になったことを逆に利用いたしまして、災害で非常に大きな損害を受け、今その復興に非常に苦しんでいる井手町に対して、損害賠償の請求をしている。損害賠償の要求額は、町に対して、木が流れたから、流れた木の代金として六百万円、それからいろいろ自分に反対をされたために、自分は名誉の毀損を受けた、だからその運動をしたところの町会議長その他の人に対して四百万円、合せて一千万円の損害賠償を要求している。その山林を小林が井手町から買いました価額が三百五万円である。三百五万円で買った山から、不当に広く切って、すでに四百二十万円で一部を売り、また二百万円で一部を売って、すでに六百万円の金はふところに入れております。さらにまた六百万円材木代として損害賠償を要求し、名誉毀損の損害賠償として四百万円を加えますと、一千万円の損害の要求をしてきているのでありますが、井手町は一千戸なんです。
  168. 世耕弘一

    ○世耕委員長 岡本君の発言中にちょっと御協力を求めますが、かなり具体的なお話のようであります。今花村法務大臣は、本件に関して誠意をもって再調査をするような態度を明らかにされたようでありますから、参議院の方の出席がおそくなるとどうかと思いますので、本件に関することはむしろ井本局長にじかにお話し下さった方が効果的じゃないかと実は考えるが、いかがでございましょうか。
  169. 岡本隆一

    ○岡本委員 わかっています。そのために私も協力したいと思っております。しかしながら先ほどから大臣の答弁が木で鼻をくくるような答弁でありますから、私は満足できないのです。大臣が誠意をもって調べ直すということを先に一言おっしゃられれば、大臣はあっさり行ってもらって、あとは局長にこまかいあと調査について注文をつけるつもりであります。ところが大臣がそういう態度をお示しにならないから、私は勢い大臣をいつまでもここへくくっておかなければならぬようなことになる。だから大臣さえ誠意を示されたら、私は何時でも大臣に出て行ってもらうのです。  そこで一千万円の損害を要求している。井手町は一千戸なんです。従って一戸当り一万円の負担がかかる。こういう大きな問題であるから、水害に見舞われ、家を流され、すっかり衣料も何も流されてしまった人たちに、一戸当り一万円かかるというふうな問題であるだけに見ていられない。だから住民のためには、このような不徳漢はあくまでも制裁しなければならない。同時にまたこの損害賠償を逆に今度は井手町から反訴しておるのでありますが、それによって井手町が受けたところの損害を取り戻すことができたならば、災害の復興に大きに役に立つ、こういうふうな意味において私は本日もう一度調査をしてくれという意味の質問をしているのです。従って大臣はそういうような偏見にとらわれないで、実際これが政争の具に供されているかどうか、あるいはまたほんとうに井手町の町民がかわいそうなものかどうかということをもう一ぺん十分調べてみたい、こういうような御答弁を願いましたら私は参議院へ行っていただくのであります。
  170. 世耕弘一

    ○世耕委員長 花村法務大臣に希望を述べます。どうぞ誠意のある御答弁をお願いいたします。
  171. 花村四郎

    ○花村国務大臣 誠意のある答弁を前からやっているのですから、どこを誠意がないとお認めになりますか、もちろん誠意をもって調査をすることはもう当然でありますから、詳細なる報告を求めて検討することにします。
  172. 岡本隆一

    ○岡本委員 それでは大臣、どうぞ一つ御調査願うことをお願いして、あとは井本局長にお尋ねというよりも、むしろ御調査を願いまして、私どもがどのような点について前回の捜査が変なものであると考えているかというような問題を御説明申し上げることになると思います。  まず第一に本事件というものは先ほど申しました小林家に山林を売却いたしましたところの売却林問題であります。売却いたしました山林が不当に広く刈られたという売却林問題と、もう一つは手入れ林問題の二つの事件からなっております。本答弁書にいただきましたのでは、売却林問題についての御答弁だけでありまして、手入れ林問題については何らお触れになっていらっしゃらないのでございますが、それについて御存じでございましょうか、お伺いいたします。
  173. 井本臺吉

    ○井本政府委員 ただいまの手入れ林問題というのはちょっと私もわからないのでありますが、報告が来ておらないので、もしあれでしたらもう一度検討します。
  174. 岡本隆一

    ○岡本委員 それでは手入れ林問題を御説明申し上げますが、手入れ林問題と申しますのは小林に井手町が山林を売りまして、その山林を伐採しております伐採作業のまっ最中に、昭和二十八年二月九日でございますが、井手の当時の町長の木村延次郎氏が木田、森田、寺島——これはこの報告書にありますところの背任をもって被疑者となっておりますところの二名の町会議員木田善之助、森田守三、それに寺島何がしという三名の町会議員でございますが、この三名の町会議員に対しまして町有林の一部の手入れを命じたのであります。手入れを命じたというよりも委嘱したのであります。手入れの労賃を何がしか日当をもらってこの三名が町有林の手入れをやったのでありますが、その作業の間に手入れという程度を逸脱いたしまして間伐どころか中には直径一尺二寸もあるような大きな良材まで切っておる、すなわち盗伐をやったのです。そこでそのことが発覚いたしまして、当時の綴喜地区署の捜査を受けまして地区の地方検察庁でもって起訴猶予処分に六月二十二日になっております。  そこで私はこの問題の処理につきまして一つ警察方面のお方にお伺いしたいのでございますが、切りました木を盗んで自分の家へ持って帰った、そしてそれを自分が使うために材木に製材した、そのことがわかったわけです。そこで調査に行きましたら盗伐しておった本人はそれを認めた、そこで町会議員を引責辞職しておるのです。従って本人もはっきり自分のやったことを認めておるのです。盗んだということを認めておるのです。当時の綴喜の地区警察署長がそれではその材木を返せということで協議返還をやっておるのですが、その協議返還に際しましてその盗んだところの材木の運搬賃とそれから材木を引く製材費、それを被害者であるところの井手町に支払わせております。こういうふうなことは常識上あり得べきことじゃない。ところが署長の説明によりますと、洋服地は盗んだやつが洋服に仕立てよった、そうすると、それは洋服になったのだから仕立賃がかかっておるのだから仕立賃を出してやるのが当りまえである、こういうふうな論法で井手町に金を申せといって出させておる。出した方も出した方でありますけれども、出させるというふうなことを指導するところの署長も変だと思うのであります。そういうふうなことが当然なことなんでしょうか、あるいは誤まった指導ではないかと私は思いますが、その辺のお考えを承わりたいと思います。
  175. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 お話のように、そういったことに関してあまり警察官は介入すべきではないと思うのでありますが、本件の事情をよく存じませんので、よくお話を承わりまして事情をよく調べましてからお答えいたします。
  176. 岡本隆一

    ○岡本委員 この問題はこの事件の性格を示すのに非常に重要な意義がある。町民はこの事件をこう考えておるのです。当時の井手町長とそれから山を買ったところの山林業者と、それから木田、森田、寺島等の三人の町会議員、これが山林委員になっておるのでありますが、これが結託をして山の大盗伐をやった、こういう解釈をしておる。従って手入れ林の材木を盗んで帰ったところのその犯人に——これは明らかな犯人です。これはもう捜査の結果犯人であるということを地検も認定しておる。その犯人に材木を返させる。盗んだものを吐き出させる。それに対して町長が被害者の代表です。被害者の代表の町長が運搬代を払ったり製材費を払う、そんなべらぼうな、あり得ないことをやっておるのです。そこでこの三者がぐるであるというふうに町民は考えておるのです。このことは本事件の性格を示すところの非常に重要な問題でありますので、この辺のことはもう一度お調べを願いまして——罪人を作ることが目的ではありまけん。せっかく起訴猶予になったこれらの人々をもう一度起訴しろ、こんなことを私は申すのではありません。しかしながら本事件の性格というものを知る点においてこの手入れ林問題というものは実に重要な性質のものであると思いますので、一つこの手入れ林問題も再調査お願いいたしまして、この事件を処理するための有力な参考になりますから御参考にしていただきたいと思います。  そこで今度はいよいよ売却林問題に入って参りますが、この答弁書を見ますと、実害の発生は認められないというのですが、九ページの終りから四行目に書いてありますが、実害は発生している。契約書を偽造いたしまして、これにも書いてありますが、六ページの第三、一番終りの行に、右売買物件を不当に拡張して記載し、売買契約書を二通ということが書いてございます。こういうふうな売買契約を最初にしておいて、そうしてこれを今度は不当に拡張した契約書を偽造いたしまして、その偽造契約書によって山林の引き渡しを受け、木を現実に切ってしまった。切りましたが、それに気づいたところの町が、搬出禁止の仮処分をやったために運び出すことができなかったのではありますけれども、木を切られたという現実は、これからもっと大きくなる木を広く切られてしまったのですから、大きな損害を受けておる。それに実害の発生を認められないということが書いてあることはどういう理由に基くものでありますか、これは井本局長に対する質問になるわけでりあります。
  177. 井本臺吉

    ○井本政府委員 先ほど大臣も言われましたが、いただきましたこの報告書によりますと、先ほどお話の売却林の問題だと思うのでありますが、余分に切ったことはない。そういうことは犯罪事実が認められないということで認定いたしております。従って町長が偽造したという偽造の事実はあるけれども、その偽造の事実によってよけいに木は切らなかったものであるということで実害がないという認定をしたものと私は考えるのであります。これも先ほど大臣が言明されました通り、いろいろな問題がありますから、信頼性の問題と合せましていろいろ研究したいと思います。
  178. 岡本隆一

    ○岡本委員 その点はもう一度よく御調査願いたいと思いますが、私は本日ここに当時の町会の会議録を持って参っておりますが、この会議録には売買契約をするところの範囲というものをはっきり町議会は議決しているのです。その町議会の議決と執行権者であるところの町長、その町長によって委任されましたところの三人の山林委員、その三人の山林委員というのはさっきの手入林の盗伐をやった人間なんです。そういうふうな手入林の盗伐をやるような性格を持った、いわば悪事を働くような性格を持った三人が、町長によって山林委員に任命された。そうして山林委員の指示に従って小林は山林の引き渡しを受けておる。そこに町民がこの事件は町長と山林業者が結託した事件である、こう見ておる。これは検察当局が何ぼどのような形でもってこの事件を白とされましても、町民は絶対に白とは思いません。それははっきりと町会の議決をやっているのだ。これは読む時間がないから読みませんが、あとでごらんになったらよくわかります。売る木の種目、何石売るという石数まではっきり書いてある。そういうふうな議決をしたところの山林の売買に当って、業者にその数倍の木を切らしている。しかもその捜査に当りまして町長は調べました。三人の山林委員も調べました。小林も調べました。しかしながら一番重要な町会の議長、あるいは町長の監査委員、そのほか町議会側の人はだれ一人調べておらない。ここに捜査の非常に大きな欠陥がある。片手落ちがある。従って町民は検察庁が買収されたのではないか、こういうふうな疑惑すら持っておる。従って検察ということに対して非常に大きな不信の念を抱いている。こういうようなことがあってはならないと思う。いやしくも検察は公正に行われなければならない。また検察行政というものは少くともそのような不信を招くようなあり方であってはならない。またもしそういうことが指摘されたならば、直ちにその足らざるを補って町民に信頼されるような検察行政のあり方を示していただくのが本筋ではないかと思いますが、それについてのお考えを承わりたい。
  179. 井本臺吉

    ○井本政府委員 先ほど大臣の申されたことに尽きると思いますので、御了承を願います。
  180. 世耕弘一

    ○世耕委員長 岡本君にお諮りいたしますが、最終の会議でまだほかに重要な質問をなさる委員諸君がお待ちのようでございますから、できることならほかの方に時間を御割愛願いたいと思います。なおただいまの御質問の趣旨はほぼ大臣並びに井本局長は了承したかにうかがわれますので、できるだけの資料をまとめてお出し下さって、再審査していただく手続をおとりになるような方法をおとり下さいまして、なるべく結論を得ていただきたいということを希望いたします。
  181. 岡本隆一

    ○岡本委員 わかりましたが、私は委員長に対して意見があるのです。私は朝の十時にここに参りまして、十時から午後五時までここにずっと私の質問時間を待機しておった。そういうような御意見が今出るのでしたら、私以前に質問されたほかの委員に対しても、あと何人あるから一人の質問時間は何十分というような制限を委員長においてなさるのが当然であろうと思います。私の質問の番になってからそういうようなことをおっしゃるのは、私としては納得できません。しかしながら委員長のおっしゃることはわかりますから私は打ち切りますが、委員長からそういうようなことが今ごろになって出てくるということは、私は非常に不満に思う。
  182. 世耕弘一

    ○世耕委員長 お答え申し上げます。実は本日の日程は、従来からずっと審議した終末をつけるために特に委員会を開いたのであります。そういう関係からずっと以前から委員になっておられる方々が結論をつける最終段階の日にちであります。けれども岡本君が非常に御熱心な御質問であり、重要なように伺っておりましたから、特別の御便宜を委員長ははかったのですから、どうぞこの点は誤解のないようにしていただきたい。ずっと前からの委員としてここに定着して御論議をなさった方々は、たくさん結論をそのまま残して今日に至っております。その最終の段階となっているわけです。言葉をかえて申しますならば、あなたは飛入りのような感がいたすわけであります。どうぞ委員長の苦心のあるところを了承願いたいと思います。
  183. 岡本隆一

    ○岡本委員 それでは私はもう一、二点で委員長の忠告の通り終りますが、町議会をお調べになっていないということですね。これはよくもう一度調べ直して下さい。  それから喉頭ガンという診断書の問題でありますが、私は医者なんです。病気のことはあなたもそれは御存じであろうと思うのです。しかしながら二年前に喉頭ガンであった人が今時分生きているはずがないのです。のどのガンです。これは手術することもどうすることもできない。だからもし診断書が事実だったらとっくに死んでいる。ところがぴんぴんして損害賠償の訴訟をしているというところに許しがたい事実がある。その点もよく調べてもらいたい。先ほど御説明を申し上げましたが、損害賠償の請求をしている。従って改悛の情というものが全然ないと私は思う。  その次にもう一つ見落されていることは、保安林を伐採している。契約書にもはっきり山の峯通り十間は除くということが書いてありまして、しかもその峯通りの方は一帯に保安林になっているのです。その保安林は山林法の規定に従いまして伐採することは許されないのです。ところが大胆にも、土砂の流失を防止するための保安林だということを書いた標柱がちゃんと立っている。そのそばの二メートルと離れていないところの木を切っている。だから知らずに切ったのではなしに、山林業者が木を切ってはならないということは当然知っているはずです。知っていながらこの保安林を切っている。しかも検事は当時その実地検証に行っている。実地検証に行って、保安林という標柱だけが立っているまる防主になった山を検事は見ているのです。にもかかわらず、この山林法違反ということが不問に付せられているということは、これは検察庁の不信を買う一つの原因にもなっている。だから、そういう点も一つよくもう一度調べ直していただきたい。  さらにまたこの山林委員は、町議会が任命したんじゃないのです。町議会が任命した正式の委員でないのに、町長はそういう山林の盗伐をやるような性格を持った委員を任命している。しかも偽造契約書の書き方がはなはだけしからぬ。偽造契約書にはどういうことを入れたかと申しますと、最初の奨約よりも広く広げたというだけでなしに、この三人の山林委員説明した地域とすると、こう書いてあります。こういう文句を入れたのです。従って計画的に盗伐をやる。その盗伐をやる計画を正当づけるために、この悪い三人の山林委員説明した地域とする、こういうふうな文句を挿入いたしましてそうして偽造した。自分の盗伐を正当づけようとするところの計画的な意図が含まれている。こういうふうなことで一ぱい食ったところの町民は今非常な憤慨をいたしまして、その事件が発覚しました当時、町民が町長けしからぬというので、リコール運動をやりましてリコールが成立しております。そうして町長はやめざるを得ないようなことになった。これは政争では断じてないのです。これは明らかにしろうとの町民が見、また町会議員のすべての者がこの小林と町長に一ぱい食った、ひどい目に会ったという怒りに燃えておる。しかもそのあとへ水害がやってきて、そうして家がその流木のために押し流されておる、たたき倒されておる。そういうような事件でありますだけに、あなた方も十分誠意を持って、政争の具に供されておる、そういうようなお考えでなしに、もう一度正当な判断の上に立ち、冷静な考え方の上に立ち、公平な立場に立ってよく捜査していただきまして、そうして罰すべき者は罰し、許すべき者は許して、そうして町民の前になるほど日本は法治国である、日本は立憲国である、日本の法律は生きておるということをはっきり示していただきたい。  私の希望を申し添えまして私の本日の質問を終りたいと思います。
  184. 世耕弘一

  185. 猪俣浩三

    猪俣委員 私の質問事項は出しておいたので御研究になったかどうか知りませんが、それは猪俣富作という人物、私と同姓でありますけれども、私と何にも関係のない人物で、ただ同県の人間であります。これが内蒙古に抑留せられ、それから中華人民共和国によって何か技術家の役人に任命されて、昭和二十八年三月帰還をしたのであります。そうすると千葉県の小中台町にある引揚援護庁の留守業務部第三課から呼出状がきた。そこで行ってみましたところが、聞くことは内蒙古のソ連の軍備あるいは中共の軍隊の配置、そういうことばかりであった。そこでその人は、あなた方が招請されたときの案内状にはそんな質問事項は書いてないじゃないか、これを見ますとそんなことは書いてない。呼出状を持ってきておる。しかるにそんなスパイみたいなことをどうして聞くんだ、私はそんなことを言いたくない、なおまだ残留者があるのにかかわらず引き揚げた人がそういうことをしゃべったということになると、あとの人の運命にも影響する。一体そういうことを何のためにあなた方はお聞きなさるのかというて供述を拒否した。そうしてその人は憤然帰ったわけなんです。そうしてその人が稲毛から乗るとそこから秋葉原まで引揚援護庁の職員の人が見えつ隠れつ尾行してきた。尾行しているなと思ったからその人は秋葉原でまいてしまったらしい。この人は元新潟県の中頸城郡というところに住んでおったらしく、引き揚げ当時そこにおったのでそこから呼び出しを受けて千葉まで来たのですが、その後埼玉県の浦和に転勤してきました。そうすると高田の警察署から浦和の警察署にあの男の思想やその他のことに対して調査してくれという依頼がきた。そこで浦和の警察署が本人に聞きに来るならいいが、隣近所にあの男はどういう男だ、どういう勤めをしてどんな友だちと交際しておるかということを聞き歩いて、それが会社の耳に入ってお前は赤だろうということで首になったということを私に訴えてきました。一体引揚援護庁は、内蒙古や満州の軍隊の配置なんというものを、何がゆえに調査なさるのか、それを承わりたい。はなはだ不可解な現象だと思う。
  186. 田島俊康

    ○田島説明員 御説明申し上げます。現在海外に行かれたままお帰りにならないで、未帰還になっておる方が六万人くらいあるわけであります。引揚援護庁といたしましては、そういう方々の消息を明らかにしますために、現地からお帰りになった方が一番よく御承知のことは明らかでございますので、この方はよく御承知であろうと思われる方をお呼びいたしまして調査をいたして、こういう方はいつどこで御健在であったか、あるいはこういう方はいつどこでなくなられたというような調査をいたすのであります。そしてその調査の結果をお留守宅に御通知申し上げるということをいたしております。猪俣富作さんは、昭和二十八年の四月七日にお帰りになっていらっしゃるようであります。そういたしましてお帰りになりました際、内蒙古のアバカというところの状況をよく御承知のようでございました。そこの特務機関は内蒙古にございまして、その特務機関にソ連の軍隊、あるいは中共の部隊が入ってくる等で一部残り、一部の者は満州の中に引き揚げられる、あるいは一部のものはソ連に一度拉致されましてばらばらになった一つの機関でございますので、そこの調査は今もって進んでおりません。たまたま猪俣さんからアバカに関します覚書、覚書と申しますと、舞鶴にお引き揚げになりました際なくなられた方とか、生存しておられるというような方について、御承知の方をお書き願いたいというので御協力を求めております。よく引き揚げられた方は書いていただいておるのでございますが、たまたまアバカの機関の者のお名前を書いていただいたわけなのでございます。その方のことを取り調べをいたして、そして死亡でありますとか、あるいは健在であるとかいうようなことを決定いたすために、合同調査をいたしたわけでございます。目的はそうでございますが、そういうような調査の途中におきまして、アバカの機関がたまたま私が今申し上げましたような状況にあったものでございますから、そういうことを聞くというところまで私よくわかるのでありますが、それから先、先生がおっしゃいましたようなことにつきまして私も報告を受けておりませんし、一つその点について、もしそういう事実がありますれば、決して適当ではないと思われますので、私上司に報告いたし、よく調査いたしましてお答え申し上げたい、かように考えております。
  187. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたが今おっしゃったようなことが当然なはずなんです。この呼出状にも未帰還者の消息調査、一般邦人中戦闘に協力された邦人の状況、それが詳しく書いてある。ですからなお印刷と違えてペンで、特にあなたにはぜひお目にかかりたい。そして第一後方病院のことなんかも御存じだと思ってお尋ねしたい。そしてどこにはどういう邦人がまだいるか。そして本人はわざわざ新潟県から千葉県まで、これはもっともなことだといって出ていった純朴な農決なんです。ところがこんなことを一つも聞かないで、一体ロシアに兵隊はどうしているか、共産軍はどのくらいいて、大砲はどうだとか、どこが基地だとか、そういうようなことばかり聞いたというのです。これはこの人ばかりではない。当時呼ばれた人は七人ある。下平富士夫、浦田雄喜、桜田角治、粟野正夫、梅津恒男、推名二郎、猪俣富作、これらがみんな文通し合って、なんてへんちくりんなんだろう。引揚援護庁はスパイなのだろうかといって話し合ったというのです。それから先生首になって、こういうような警察がつきまとう、事実だとすればとほうもないことだと思う。もっとそういうことを徹底的に調査して下さい。だれに頼まれてそんなばかげたスパイみたいなことをやるのか、引揚援護庁は、引揚者を援護するのが目的じゃないか。しかるにそれをスパイのように使うのは、なおソ連にも中共にも数万の人が残っておる。そういう人にいかなる影響を与えるか、そういうことを考えなければならぬ。あなた方がそういうことを知らぬならば、現地の連中に徹底的に調査して下さい。千葉小中台町の留守業務部第三課という呼び出しがきております。それを徹底的に調査して当委員会報告して下さい。それをどうしても否認なさるなら、この七人の人を全部当委員会に喚問してもらいます。あなたが今おっしゃったようなことで調べるならそのつもりで本人は出てきているわけでありますから憤慨する道理はない。日当ももらっているのだから知っていることはみなしゃべるつもりであって、それをとほうもないことを聞いているので非常に不愉快になってしまった、こういうのです。そうして何か赤とか共産主義者みたいにレッテル張られてしまって非常に困ってしまう、皆困っている、こういう訴えです。私は人権擁護の立場からかようなとほうもないことを一体援護庁でやるということはゆゆしき問題だ。これはどうか後日といわず徹底的に調査して下さい、私はこれだけで終ります。あなたの考え方を伺います。
  188. 田島俊康

    ○田島説明員 ただいまのような事実がありますれば、警察のことは全然関知しませんが、未帰還調査部において今先生おっしゃったようなことがありますればそれは大へんなことでございますので、先ほど申し上げましたように十分調査いたしまして、当委員会に御報告いたすような処置を上司にも報告いたす考えであります。なお猪俣さんに申し上げますれば、ただ一つこういうことはお考え願わなければならぬと思いますが、それは先ほど島上先生との御問答等にもありましたが、特別未帰還者というような取扱いをすべきであるかどうかということを猪俣さんについてはまた別な観点からいろいろ伺ったのではなかろうかと思っております。それは内地に御家族がおられて様子がよくわかって、特別未帰還者ということで、特別未帰還者としての俸給を留守家族にお出しするというような処置を従来からとってありますれば何でもないのでありますが、そういう処置をとらないでお帰りになって、そこでその方は特別未帰還者として従来支払わなければならない給与をお支払いするようなことになっているのであります。そういうことに相なりますれば、その方個人の御行動等につきまして特別未帰還者の給与条件がありますから、そういう条件に適合するかどうかというような点についてお尋ねをするようなことはあるかとも思うのでございます。と申しますのは、私新潟県にやはりお出まし願っておりますから、県に連絡いたしましたところが、こういう特別未帰還者の申し出があったということでありますので、あるいはそういう点でどこをどういうふうにおいでになりましたかという点について、特別のお尋ねをしたこともあるかもしれませんが、これは想像ですかり、猪俣さんに特別の事情があったことだけ申し上げておきます。
  189. 猪俣浩三

    猪俣委員 私は引揚援護庁に対してはこれで終りますが、私はこの間トニー・谷の児童誘拐事件質問を出したのでありますが、きょうは質問者が大へん多いようでありますからこれは次会に回そうと思っておりましたところが、防犯部長を初め中川刑事部長とずっと警察関係の方々がお待ちになっているということでありますので、ただ一点だけお尋ねいたします。今このトニー・谷の児童誘拐事件が起ってから、いわゆる刑法の誘拐罪その他について改正の動きがあるようでありますが、これは実際の実務に当った、特に今回のトニー・谷事件で実見をせられた御両所の方から一体今の刑法のああいう誘拐罪のごときものをもっと重くする処分については、重くすることが妥当であるかどうか多少疑問があると思う。特に参議院で立案しておられるようでありますので、実務家としての御両所の御意見を承われればそれでけっこうだと思うのであります。
  190. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 大谷正太郎さんの御長男が御存じのように誘拐されまして、警察といたしましては八方手を尽してああいうふうに犯罪を検挙いたしたのでございますが、私どもが犯罪捜査をする関係のみから申しますと、現行法を変えなくてはならぬという結論は出ません。別の見地からはよく知りませんが、われわれ犯罪捜査する事務に従事いたしました立場から申しますと、現行刑罰法令が不適当である、こういうふうには考えられませんです。
  191. 猪俣浩三

    猪俣委員 その現行法よりも重くする必要はないという理由は、どういうところからくるわけですか。ああいう少年の誘拐罪は憎むべきことであることは当然のことだし、アメリカあたりは死刑をもって臨んでいるようですか、しかしそれを実務家としてのあなた方が重くする必要がないという根拠はどういうところから出ますか。
  192. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 この防遏とか何かの関係で重くするという考え方があろうかと思うのでありますけれども、私ども犯罪の捜査をやっておりまして、ずっと手配したり何かして、ことに犯罪の法定刑が短かくなれば強制権の制限が多くなるという関係もございますけれども、そういう点は刑事訴訟法上現行法で十分でございます。防犯という立場からでございますけれども、防犯という点は非常に抽象的な議論になりまして、実務というよりも、一般の刑事政策学者の意見に近くなりますので、防犯という点で刑罰を重くするという考え方もよくわかりますけれども、われわれが実際狭い意味の防犯をやっている意味から申しまして、関係者が自首する場合もございましょうし、そういったことから考えますと、現行刑法では困る、こういうふうには思えないのです。ところが、非常に刑事政策学者的な観点に立たれまして、重くしなければならぬ、こういう御議論については必ずしも反対でございません。実務家の立場から、変えなければならぬという結論が出ないというだけでございまして、広い角度から、広い国家社会の実利ということを主力に考えて、刑事政策を深く御研究になった立場からいってこれを重くしなければならぬ、こういう御議論もあろうかと思いまして、その御議論には敬意を表する面もあるのですけれども、私たちが実際の作業をしている面からいいますと、そういう結論が出ない、こういうことでございます。
  193. 世耕弘一

    ○世耕委員長 古屋委員
  194. 古屋貞雄

    ○古屋委員 これは人権擁護局長が主となると思うのですが、簡単に御質問申し上げます。実は板橋の愛世会の問題なんです。愛世会の藤岡という医者の首を切ったわけです。そしてこれは病院の争議ですから、そのために病院の中に第一組合、第二組合が出まして、第二組合の御大将はかって白木屋の争議のときの御大将をやった大村というのですが、問題はこういうことなんです。お医者さんの争議ですから、お医者さんについているたくさんの患者さんがあるわけです。そして患者さんから非常に信用を受けておった藤岡というお医者さんが、いろいろな事情はございましょうけれども、首を切られた。そこで何も首を切られる理由は一つもないというので、東京地方裁判所に向って、自分の身分確認の仮処分の申請をしたわけなんです。それで、東京地方裁判所では慎重審議をずいぶんいたしました結果、こういう結論になったわけです。藤岡温の身分の確認の仮処分、地位確定の仮処分が行われた。それはこういうことを書いているのです。主文を申し上げますと、「被申請人が」——被申請人というのは御承知の通り財団法人愛世会です——昭和三十年一月三十日申請人に対してなした」——申請人とは藤岡温でございます——「解雇の意思表示の効力を停止する。被申請人は申請人の就業を妨害してはならない。」医者の業務をやることを妨害してはならない。「被申請人は申請人に対して賃金その他の労働条件につき従前の待遇を不利益に変更してはならない。」こういう仮処分の命令が出たわけです。従って藤岡医師は、病院に帰って藤岡医師に診察をしていただいております患者の治療、診察をいたしたいということで帰ろうといたしましたけれども、愛世会はこれを拒否して入れない。それがためにこの一月になんなんとする間、主治医の診察を受けていない、自分の信頼する医者の投薬並びに治療を受けることができないという事実が反面に現われているのです。これは人道上からいってまことに人権侵害もはなはだしい問題だ、かように思います。この暴力をもって反対をして、どうしても愛世会病院の患者の要求を満たすような藤岡医師の診察治療をさせない行動をとっております問題は、いろいろ問題になると思いますが、これは重大な人権のじゅうりんだと思う。あとにかわる医師が来て、十分にこれと同等並びにこれ以上の治療並びに診察ができますならばいいのですけれどもあと医者が来ていないし、来ても入院患者は自分の信頼する医者でないというので、診察を受けていないらしい事実もあるのです。従って、これがために看護婦並びにつき添い婦の関係も拒否されているという事実があるわけです。一方において身分確認の仮処分が行われているのを拒否しているような乱暴な愛世会の管理者がおります。この点は暴力をもって反対をしているので、管理者としては裁判の命令に従わない状況がありますから、これはほかの刑事問題になるかどうか別といたしましても、今速急にお願い申し上げたいことは、この藤岡医師がもと通り戻って、この裁判の通り戻って活動ができるような点についての方法を講じたいというのが関係者一同の要求なんです。そこでお願い申し上げたいのは、人権擁護局ではこの事実をお調べを願って、こういう事実がありますれば、この点はこの医者の、あるいは患者さんの要求を入れるような御配慮を願わなくちゃならぬと思うのですが、こういう場合に局長の方ではどういう御処置ができるか伺っておきたい、こう考えます。
  195. 戸田正直

    ○戸田政府委員 大へん申しわけないのですが、私としてはただいま初めてお聞きしました。あるいは東京法務局として調査しておるかどうかわかりませんが、私はただいま伺ったのでございますが、ただいま仰せのような事情がございますならば、さっそく調査いたしまして善処いたしたいと思います。ただ方法といいますと、率直に申し上げまして人権擁護局の処置は強制力を持っておりませんので、非常にむずかしいのですけれども、かりに仮定いたしまして、今おっしゃられるような事実があると、かようにいたしました場合、もし暴力あるいは脅迫等の事実がありましたならば、これは警察並びに検察庁に連絡をいたし、また病院側に対しては、かようなことは人権擁護上よろしくないから、そういう措置をやめられるようにという勧告というような処置がとられるかと思います。大体考えられる方法としてはその辺じゃないかと思います。
  196. 古屋貞雄

    ○古屋委員 今のお答えで満足ですが、そういう人命に関係することですから、ぜひ万全の御処置を願いたいと思います。
  197. 世耕弘一

    ○世耕委員長 神近君。
  198. 神近市子

    ○神近委員 大体今の古屋委員のお訴えが内容でございますけれど、ここは結核病棟でございまして、二百人の患者がおるのでございます。そしてその地裁による仮処分の問題は、これは憂慮すべきものだという決定が出ている。それでいてその決定が守られない。井本局長に伺いたいのですけれども、そういう決定というものは、決定すればあとはその命令が行われても行われなくてもいいものなのか、それを一つ承りたい。
  199. 井本臺吉

    ○井本政府委員 裁判所の決定に反する行為をした者に対しまして、罰則のついているものは、別に刑法に罰則があれば問題にいたしますが、ただいまの問題のような解雇処分を停止した決定があったにかかわらず、被解雇者を入れなかったということは、私は刑法上の罰則はないと考えております。
  200. 神近市子

    ○神近委員 これは相当深刻な問題です。この藤岡という内科医長は初め東大においでになったのを、東大の教授方が要請して最適任者であるといってこの愛世病院に送り込んだ人であります。それがただ組合の委員長におなりになったということだけで別に何の不満を持たれる点もなかった、大へん人格者であります。それを今のような状態に追い込んで、そして患者と主任の先生が接触することができない状態に置かれている。そして今二百人の患者さんが、多少感情もあると思うのですけれども、その先生の手当が非常に信頼できるよい先生であったということらしいのですけれども、それで人権擁護局では勧告するよりほかに手の打ちようがないというのでは非常に心もとないのです。それに対してたとえば病院に入ることを阻止するというような場合に、警察署がそれを見てやるというようなところまでは御勧告はできないものでしょうか。それをちょっとお伺いしておきたいと思います。
  201. 戸田正直

    ○戸田政府委員 人権擁護の根本問題になりますので長くなりますが、簡単に申し上げますと、人権擁護の仕事といたしましては、処罰することが目的でございませんので、従って人権擁護局といたしましては、処罰する処置は実は考えておりません。ただ目に余るような刑事事件については告発する等の処置をいたしておりますので、そこでもし先ほど申し上げましたように、調査の結果脅迫、暴力等の事実が現われまして、このままに捨てておけないという事情がありますならば、警察なり検察庁の方にその処理を促すようにいたしたい、かように考えております。なおこの問題の詳細の事情について承知いたしておりませんが、不当労働行為の問題になるのじゃなかろうかと存じますので、これは労働基準局が発動すべき問題ではないか、かように考えております。もしそうした事実が現われました場合は、労働基準局にも連絡いたしてその発動を促すようにいたしたい、かように考えております。
  202. 神近市子

    ○神近委員 給与なんかも四ヵ月にわたって一銭も払っていない、そういうような状態であります。それに派生的に中の雇用者に対しましてもいろいろ不当な弾圧を加えている。これは基準局にもよく御連絡の上で、相手は患者さんでございますから、ぜひ急速に調査を御発動下さって、そして妥当な結論にもっていっていただきたいということを要請しまして私の質問を終ります。
  203. 細田綱吉

    ○細田委員 関連して人権擁護局に伺います。取締りの規定がない、こういう御答弁ですが、行って自由に仕事ができるという仮処分があるのですから、それを阻止するというのは業務妨害です。われわれ考えられる二つの条文があるのですが、これはどうですか。
  204. 戸田正直

    ○戸田政府委員 私の先ほど申し上げましたのは、今の犯罪等に該当いたします場合は、警察なり検察庁の取締り当局でいたすことでありまして、処罰する等のことは私の方の目的とするところではない、かように申し上げただけで、あるいは仰せのように医者としての業務を妨害するというような立場は、あるいは業務妨害に当るような場合もあるかとも存じますが、ただ私の方で業務妨害があるからといって、それを直接起訴するとかいうようなことはするところではない、こういう意味でございますから、その点御了承願いたいと思います。
  205. 細田綱吉

    ○細田委員 それはよくわかるのです。今度は刑事局長の方に伺います。どうもわれわれの考え方では二つの条文があるのですが、これはどうですか。
  206. 井本臺吉

    ○井本政府委員 刑法の業務妨害になるような事実があれば問題は別でございます。ただ本件のように地位保全の仮処分がなされて、結局法律病院の方では内科の医長であるというそのままの雇用契約が続いているというだけの状況でございますから、それに対する債務不履行というか、民事上の不履行の場合だけでありますれば、何も犯罪になりません。ただし先ほどお話のような別途に何らかの形におきまして、刑法上のいわゆる業務妨害という犯罪が成立するような要件が整いますれば、その犯罪を処罰することは当然でございます。
  207. 細田綱吉

    ○細田委員 そういう抽象的な言葉ではちょっとわからないのですが、たとえばこの仮処分の命令に診療業務を妨害してはならないという文句があります。被申請人は申請人の業務を妨害してはならない、こういうが一項うたってある。そこで申請人が病院へ出勤して患者の治療をしようという場合に、暴力その他で出勤を停止させるという場合には、これが仮処分の条文にひっかからなかったら、全然効力のない仮処分を裁判所がやったことになるから、私はそうは考えない。業務を妨害してはならないという仮処分だから、業務妨害にならぬという刑事局長お話はどうもおかしい。この点を一つはっきりさせてもらいたい。
  208. 井本臺吉

    ○井本政府委員 私の方の調査では、被申請人が昭和三十年一月三十日に申請人に対してなした解雇の意思表示の効力を停止するというだけの主文であるというように聞いているのです。今お話の主文と少し違うのですが、なおお話の点は私の方でも決定書をよく見まして、調査研究して正確なお答えをいたしたいと思います。今ここで思いつきで申し上げていろいろな間違いがあるといけませんから御了承願います。
  209. 世耕弘一

    ○世耕委員長 なおこの際中川刑事部長にお尋ねいたします。自治警察国家警察が改廃後警察行政について円満に進行しているかどうか、特に警察官の地位とか待遇等はどういうふうに調整されているか、この際説明を願っておきたい。
  210. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 現行警察法によりまして、国家地方警察と自治体警察が統合されましたのは、昨年の七月一日でございます。昨年の七月一日から本年の六月末日までは五大市だけは別でありますが、その他の自治警、国警はなくってしまった、こういう状況であります。その場合に、従来自治体警察で俸給等が支払われておったわけですが、それがそれぞれの府県警察に統合されますと、府県全般として一定の俸給が定められることになる。たとえて申しますと埼玉の警察につきましては、浦和市警も埼玉の自治警も全部なくなって、埼玉警察のベースに従う。こういう場合におきまして浦和市警において埼玉のベースよりも高い俸給をもらっておった場合においては、結果において俸給が下ることになるわけであります。その結集下る部分だけは調整手当を支給するということが改正法の経過措置にございましたので、その分については調整措置が講ぜられて逐次俸給が統一されていく、こういう結果に相なっておったわけであります。それに基きまして各府県ともそういう俸給上のアンバランス是正の暫定措置を講じながら、一年有余をけみしたわけでありますけれども、調整手当を含めて考えますと給与のアンバランスが逐次是正されつつある、こういうことでございます。ところが、そういう俸給の面から見れば、確かにそういう不利をこうむる点もあるのでありますけれども、県全体が統一された警察になりますものでありますから、従来に比して連絡が便利になる。施設がダブっている点がダブらないで済むようになる、そういう面で能率その他については相当上っている、こういうふうに思われるのであります。ところが、警察の能率が上ることも一つのいいことでございますけれども、その他のいろいろの点も考えなければなりませんので、当該県の住民の意思に基いてほんとうに信頼される警察ができていくかどうか、これが一番根本の問題だと思うのであります。その根本の問題につきましてはいろいろ国民の皆さんの御協力を得ながら、大いに警察自身も反省し、自粛し、検討し、教養訓練を積んでいく、こういうふうに大いに努めておるつもりでございますけれども、皆さんの御批判を受け、御指導、御鞭撻を受けながら逐次能率が上り、信頼される警察になるように進んで参りたい、こう思うのでありますが、ただいまのところ著しく悪いという面はわれわれの目にはうかがわれないのであります。個々の問題につきましては、それぞれ検討を加えまして、理想の、国民から納得の行く、信頼される警察の実現のために努力している、そういう状況であります。
  211. 世耕弘一

    ○世耕委員長 重ねてお尋ねいたしますが、国警と自治警が合併したために俸給が少くなる、いわゆる収入が少くなったり、あるいは地位が低くなったり、こういうような点が二、三うかがわれるのでありますが、さような調節は十分行き届いておりますか。
  212. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 ただいま御説明いたしましたように、調整手当がある関係上、物理的に少くなるというようなことはないのですが、従来自治体警察でもっと俸給が上るべきものであったのが上らないで据え置かれておってだんだんに調整が行われるということは、広い意味では、ある具体的の人につきましては給与が下ったということが言えようかと思います。そういう面もございますが、俸給の面も重要なことではありますが、全体的にいろいろ連絡を密にして強力な体制を作ることによって、またほんとうの公僕としてのパブリック・サーヴァントとしての使命を発揮することによって、そういう面も補いつつ、りっぱな警察活動ができるようにするという面もございますから、総合的には支障がないので、給与面については今後とも大いに研究しなければならぬ問題であろうというふうに常々考えておるのであります。給与問題等につきましては検討を要すべき相当多くの部面がございますので、これは十分に検討をいたさなければならない問題だろう、こう思っております。
  213. 世耕弘一

    ○世耕委員長 地位の点を伺います。
  214. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 地位の点は、非常に特殊の自治体警察で著しく上っておった人が下ったような例があるかと思いますが、その点は給与問題に比して大して問題はないと思います。給与問題は先ほども申しましたように、今後とも検討を要すべき問題が残っておると思います。
  215. 世耕弘一

    ○世耕委員長 志賀委員
  216. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 まず藤井公安調査庁長官に質問したいことがあるのでありますが、公安調査庁長官は来ておられますか。
  217. 世耕弘一

    ○世耕委員長 長官は来ておりませんが、高橋次長並びに宮下部長が出席のようであります。
  218. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 私の人権擁護の問題に関連して質問するときに必ず藤井公安調査庁長官に来て下さるように前々から申し入れてあります。それでは次長に伺いますが、公安調査庁長官はきょうはどこへ行かれたのですか。何の用事で行ったのか言って下さい。どこへ行ったかわかっておりますか。
  219. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 わかっております。大へん申しわけないのですが、実は私の過失なのでありますが、きょうは私もお供をして両国の花火を見に行っておりました。こちらの方の御要望があるというので、とりあえず私が大急ぎで出て参ったのでありますが、何しろ交通の方が不便な場所でございまして、大へんおくれまして申しわけございません。これは全く私の見通しの間違いでございまして、その点は十分に気をつけたいと思っております。
  220. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 見通しの間違いとは何を言われるのですか。またどこの団体の主催で花火大会を見に行かれたのか。
  221. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 私午前中はこちらへ参っておりましたし、午後も四時ごろまでお待ちしておったのでありますが、その点なお確かめずに参ったという点が私の過失であったと思います。
  222. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ごらんなさい次長、世耕委員長を。上着を着てチョッキをつけて朝から西日のさすところにすわっておられるんですよ。納涼の花火大会に公安調査庁長官が行っておって——私がきょう質問しようとするのは石川県の金沢市における公安調査庁の人権じゅうりん事件についてなんです。委員会をすっぽかして花火大会に行っておる、そういうようなことをするから、こういう人権じゅうりん事件が起るんですよ。何というふまじめなことですか。あんたも行っていたんでしょう。幾らこちらの法務の委員部が連絡してもどこに行ったかわからない、さんざん探したあげくやっとこれがわかった。私は前々から申し込んであるのですよ。これは記録を見ればちゃんとわかる。しかもあなたは四時までここにおられたと言うからには、私がそれを申し込んでおったということがはっきりわかっておって公安調査庁長官はすっぽかしたということになりますね。
  223. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 具体的に御質問のございますことがわかっておりますれば、私ども決してそういうようなことはいたしません。前から志賀さんからそういう質問があるということは確かに私ども承知しておりました。しかし従来から国会の質問においても、そういうお申し出がありましても、必ずしもそのときあるとは限っておりません。その点私おわびしておるのでありますが、きょうは大体最終日でもあるし、もう御用が済んだというように考えましたのが私の過失でございます。
  224. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 私は公安調査庁長官の責任を聞いておるのに、次長が私の責任ですと言われてもちっとも答弁にならないじゃありませんか。私は公安調査庁長官の責任を問うておるのですよ。
  225. 世耕弘一

    ○世耕委員長 志賀君にお諮りいたしますが、長官はお留守で高橋次長が今出席されておるのですが、本論を……。
  226. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 その理由を伺って、この法務委員会の最後の日に、何か公務上のやむを得ざる理由があるというならば、これは私どもも了承いたします。午後四時まで次長がいたなら、ここの委員会があって私が質問するということはわかり切っておるはずです。それに両国の花火大会に行ったという。これは委員長、あなたはここの法務委員長をやっておられますが、これは法務委員会に対する侮辱じゃありませんか。その点を世耕委員長に伺いたい。
  227. 世耕弘一

    ○世耕委員長 志賀君にお諮りいたします。長官は御不在だから、今急に処置をすることは不可能でございます。それよりも志賀君の御質問の趣旨が、もし次長で間に合わぬようでしたらこの程度で散会いたしたいと思うのでありますが……。
  228. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 まだあとの方の質問もございますが……。
  229. 世耕弘一

    ○世耕委員長 次長において十分論議がお尽しできるのでしたら、どうぞ論旨を進めて下さい。そのうちに適当の処置ができたら取り計らいたいので、さように願います。
  230. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 もし長官が公用上の理由によって、この衆議院の法務委員会の最後の日にやむを得ず欠席したというのであれば了承いたします。しかし委員長、考えてごらんなさい。両国の花火大会に行って、ここにこられなかった。それもきょう私が質問することを知らないというならともかく……。
  231. 世耕弘一

    ○世耕委員長 了承いたしております。
  232. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 了承いたしておられるならばいかが処置をとられますか。私の質問をなるべく早くするために了承いたされたならば、公安調査庁長官に対してどういう申し出をなさるお考えか、それをごく簡単でよろしゅうございますが……。
  233. 世耕弘一

    ○世耕委員長 さっそく出席するよう手続をとりますが、ただいま調査したところによると交通は遮断されておるようであります。連絡の道は今急にとることは困難だと思います。しかしながらなお呼び出しをかけてみまして——呼び出しかけるまでお待ちになりますか。
  234. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 呼び出しをかけて下さい。そのうちに来たら来たで、また公安調査庁長官には委員の中からもだいぶ非難の声も上っておりますから、法務委員会からどういう質問をするかということも出て参りましょう。ただいまのところはそれだけのことを伺っておきまして私の質問に入ります。
  235. 世耕弘一

    ○世耕委員長 志賀君に申し上げます。委員部を通じて手続をいたします。
  236. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 どうぞそのようにお願いいたします。  公安調査庁次長に伺いますが、事は金沢市で起った問題であります。ここに梨木作次郎弁護士を代理人として、日本共産党石川県委員長大桑孝雄から告発状が出ておりますが、これは告発されたのは公安調査庁の金沢の方の役人でありますが、新田貞次と言いますか、これは公安調査庁の係官だそうであります。室橋竜次という男に対して、共産党の小牧基地反対闘争に関する文書及び県民の友を昭和三十年六月五日に受け取り、これに対して金千円を、さらに同年六月五日、情報を提供せしめる際金千円をそれぞれ交付したということになっておりますが、その調査について必要な費用というようなことがある場合に、何を基準としてこういう謝礼を出されるのですか、それを私伺いたい。またそういう予算が公安調査庁の予算の中のどこに組まれているか、それの御答弁を願います。
  237. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 公安調査庁の予算の中に公安調査調査活動費という費目のものがあります。破壊団体の組織を解明したりする場合に、協力者の協力を必要とする場合がございます。その際にこのサービスに対する報奨としまして、この公安調査調査活動費を充てておる場合がございます。
  238. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ただいま私が申し上げました県民の友というのは一部金五円なりで共産党の各支部で石川県では売っております。この五円の文書、ガリ版二、三枚の文書、こういうものに対して、どういう理由で千円を出すのか、そういう基準はどこから出るのか、それを言って下さい。
  239. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 日本共産党のいろいろな機関誌などで、定価がたとえば五円でありますとか、十円でありますとかいたしましても、実際に普通の社会においてこれを入手する場合にはとうていそういう定価では手に入りません。しかも私どもはそれを入手する必要がございますから、それによって適当なる代価によってこれを取得しておるのであります。
  240. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 花火大会に行く人にふさわしいぬけぬけ答弁です。金五円なりで公然と販売しておると私は言うのですよ。それをどうして入手しがたいというのか、それを御答弁願いたい。
  241. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 公然と五円で入手し得るものであれば、われわれの方で決してそういう高価な活動費を使って入手するようなことはございません。(志賀(義)委員「現にあるじゃありませんか。」と呼ぶ)いやそれは公然と入手し得るという意味が違うのではないかということに考えます。やはり一般にこれを入手しようとする場合には、そういう定価の五円というようなことでは入手できない場合がたくさんございます。この場合もそうした場合であったろうと考えます。
  242. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 私は事実を言っておるのに、あなたはあったろうというようなことを言う。金五円でどこでも、共産党の石川県の支部で売っているのですよ。それに対して金千円なりを謝礼として出す、これは明らかに買収でしょう。破壊活動防止法、憲法のどこにそういうことをしていいということが書いてありますか。あれば示して下さい。
  243. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 破壊活動防止法の第二十七条において「公安調査官は、この法律による規制に関し、第三条に規定する規準の範囲内において、必要な調査をすることができる。」というふうに規定してございます。それで私どもは、もちろん第三条の制限の範囲内ではございますれども、いやしくも破壊的団体の組織の解明に必要があると思う場合には、その調査について必要なる手段をとるわけであります。
  244. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それが答弁になりますか。金五円なりで公然と販売しておるものに対して、千円なりを出すという、そういうことをしていいということがどこに書いてあるか、それを言って下さいというのです。必要な調査を行うという、それが答弁になりますか。
  245. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 調査法律の根拠を示せと申されましたように伺いましたので、ただいまのような御返事をいたしたわけであります。志賀さんは金五円の定価で通常入手し得るものに千円払ったというふうにきめておいでになると思います。この事実は私はそうでないと考えておるものでありますから、その点は前提が違うように存じておるのであります。
  246. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 他の一般の市販の文書とともに、これは県民の友として書籍店にも出しておるものですよ。それをどうして千円で入手されるのですか。本屋にも出ておるものですよ、これをどうして金千円なりで買われたか、これは国費の乱費にもなるでしょう。そういうことを役人がしていいという法律的根拠があるならばお示し下さいと私は言っているのですよ。その点御答弁願います。前提が違うの、立場が違うのとごまかしを言わないで、はっきり言って下さい。本屋にだって売っているのです。
  247. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 通常金五円で入手し得るものを千円払ったのであるか、あるいはそうではないかという点について、志賀さんの方でそういうように御主張になるのでありますから、私どもはその点を調査してみたいと思っております。
  248. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 きょうはこの衆議院法務委員会のこの会期における最後の日ですね。それはあなたも知っているでしょう。いつまでに調査するのですか。いつそれを出すのですか。最後の日に花火大会に行くような人にふさわしいと思う。その点をはっきり……。
  249. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 最終日で今会期中には間に合わないと思いますが、われわれは調査する以上は、誠意をもってできるだけ早くいたしまして、たとえば委員長の方に御返事するなり、適当な方法を講じたいと思います。
  250. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 私がこういうことを聞くのは、こういう越権行為がある、それで尋ねているのですが、この新田貞次というものがそのうちに行って、盛んに脅迫と買収を行なっていた。その細君が共産党の組織の方へ来て、私の主人にこういうことを脅迫して、金で買収しようとしております。今までも物品を持って来ました。はなはだ困りますと言ってきた。そこで共産党の連中が隣の部屋で聞いておるとは知らずに、こういうことを言っておった。そればかりではない。朝日、毎日、読売新聞を初め、金沢の新聞社の本社、支局の人たちを呼んで、隣の部屋で聞いていたのに、なおそれをやっておった。だから翌日の新聞にでかでかと買収と脅迫の現場が書かれたのですよ。これを告発したところが、どうだ、今度は不法監禁ということでもって逆に告発して、六十名の警官隊をもって四人の党員を逮捕している。盗人たけだけしいという言葉があります。自分たちの落度をごまかすために、自分たち人権じゅうりんをしたことをごまかすために、こういうことをやっている。これをあなたは御存じですか。御存じならば御答弁願います。
  251. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 ただいまお話のような、石川局の管内におきまして調査官の新田貞次の関係において事故が起ったことは、もちろん承知しております。しかし新田調査官は、当時先ほど申し上げました破防法の規定に基きまして正当に調査をしておったのであります。これに対して相手の人が従来から任意にこれに協力しておったのでありまして、党内の何らかの事情かどうか、そこはわかりませんけれども、その協力関係を持つことがいけないというのであれば、その相手の人がこれを拒否すれば、決して強制的になお協力を強要するといったようなことは絶対にさせないつもりでおります。この場合におきましては、従いまして私の方の側にそのような人権じゅうりんといったようなことは毛頭ないと私は考えております。そうしてこのような協力のための会談のときに、日本共産党加賀地区委員長の杉浦常雄という人その他数名がその場に参りまして、そうして不法に新田調査官を逮捕して、それからさらに約一時間くらいの距離のところにあります石川地方公安調査局、引き続いて広坂警察署に連行したわけであります。それで新田調査官としては、このような行為に対して、被害者としてその法律的な保護警察官憲に求めたわけであります。さらに杉浦君その他を警察の方で逮捕し、捜査をしておられるのは、これは警察、検察系統の独自の行動でございますが、私の方の側といたしましては、被害者としてこれを申告したのであります。従いましてそれがうそであるかどうかというようなことは、裁判の結果を待って一つ御判断を願いたいというふうに考えております。
  252. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 いいですか。任意の供述云々というようなことを言っておりますが、すなわち室橋龍次が再三、先に受け取った二千円は返すと、情報提供を拒否したのに対して、被告発人新田は、スパイ活動は長くて一年、短かければ二、三ヵ月で交代するから、絶対にわからない。指令や通達、特に富士山や小牧の基地反対が入手できれば、一万円もらってやる。金は政府の予算から出ているから、君の生活を保障する。こういう仕事をしている人は、広坂、玉川両警察署に各十三人、調査局に十七人いると誘い、あくまで拒否しようとする室橋龍次に対し、今まで何回も会っているのだから、もういいかげんにはっきりして話したらどうだ。明日の晩、金沢市——土地の名前でよくわかりませんが、木ノ神保四番丁で会おうと、同人の隠れ家を教えて情報提出を執拗に要求した、こういうふうに出ている。こういうことをするから、新聞社も立ち会いの上で事実を見ているんですよ。そういうことをするから一緒に行ったのです。これがどこが悪い。そうしてあげくに、不法監禁をやったとかなんとかいうことにしているでしょう。あなたはさっき何と言った。いずれ事実に対して調査をした上で御答弁します。自分の都合の悪い方は調査で通すが、つかまえる方は、自分の落度を隠すためにさっさとつかまえているでしょう。あなた方のやられることは片手落ちでしょう。それで先ほどあなたは何と答えた。破壊的活動を行なっている団体——共産党をあなたは破壊的活動団体と断定されてやっておられるのですか、その点御答弁願います。
  253. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 日本共産党の杉浦君などを逮捕捜査しておりますのは、私どもとは別個の機関でございます。私どもが逮捕しているのではございません。その点を御了解願いたいと思います。私どもはただ被害者として正当に、被害にかかったという申告をしたのであります。それからただいま日本共産党を破壊的団体として調べているのかというお尋ねがございましたけれども、私どもは日本共産党を破防法に基きまして調査の対象といたしております。
  254. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 あなたはさっき破壊的活動をやっている団体といって、それを調査に出かけたと言ったですね。小牧とか富士とか、そのほかの基地の反対闘争というものは、地元の人たちにとっては生活の問題ですよ。立川の砂川基地の問題にしてもですね。そういうことに関する報道の文書を出す、これがどこが破壊活動です。
  255. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 破壊的団体の調査と申しますと、決してある団体の破壊的活動の部門だけを調査するということではないと私どもは考えております。特定の暴力主義的破壊活動というものがございまして、破防法にいうところの破壊的団体の疑いのある場合にはその団体全体について一体だれがその構成員であるか、組織はどうなっておるかというような点がすべて調査の対象になるのであります。従いましてその段階においては、決していわゆる火災びんを投げる行為自体であるとか、そういう活動だけが調査の対象になるとは考えておりません。
  256. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 その破壊活動防止法というものは御承知の通り第一条にも「暴力主義的破壊活動を行った団体に対する」云々ときめてあり、第三条には「この法律による規制及び規制のための調査は、第一条に規定する目的を達成するために必要な最小限度においてのみ行うべきであって、いやしくも権限を逸脱して、思想、信教、集会、結社、表現及び学問の自由並びに勤労者の団結し、及び団体行動をする権利その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を、不当に制限するようなことがあってはならない。」こう言っていますね。今私が金千円だけをあげたけれども、いろいろな物品を持ってきてそこに置いていっているのですよ。文書を入手する必要のないときでもいろいろな物品を、わざわざ押し入ってきて置いていっておる。そうしてあとでこういうことを言っているのです。これが国民の権利を保障する道ですか。そういう量見だからきょうのような国会の最後の大切な日に花火大会に行くような長官と次長も出てくるのですよ。あと委員もまだ質問があるようですから、この辺でやめますが、あなたが調査を出すというならこの次での国会継続審議をしてもらいます。その調査をしっかりお出しなさるがよろしい。ついでにあなたに言っておくが、公安調査庁長官の今日の行動も調査してお出しなさい。  次に井本刑事局長がおられますのでお尋ねいたします。あれはたしか議事録の第八号であったと思いますが、白鳥事件関係して村上国治被告が札幌の警察署に入れられておる。これは非常に長期にわたって警察の豚箱でたらい回しになっておるということを申しておりました。これは監獄法の代用監獄の規定によってそこに入れておるということになっております。今度共産党の松本三益という者が参りまして、特に許可を得て実地に調べましたところ、監獄法には御承知の通り拘置監でない場合には畳を用いることを得ずという規定があります。全国どこの拘置監でも畳が敷かれておるのですが、そこは畳を敷いてないのですよ。そうして衛生その他通風のことにも規定があります。窓のない地下室に三年間もつないでおる。それから監獄法には、六月から九月にわたっては五日に一回の入浴を下ることを得ず、こういうことになっておるが、それを七日に一回しか入浴さしてない。現場の検事は帝銀事件で有名な高木検事であります。そこでその警察署に対して聞いたところ、実は本庁の特捜係の刑事が来まして調べております、私はどういうことをいたしておるか全く存じませんでしたと署長が言っているのです。そして高木検事も、そういうところに入れられているとは知らなかったと言います。井本刑事局長は、代用監獄の規定に従ってそういうところに入れておるのは当然だと言われましたが、あなたは調べてそう言われたのか、私が今事実を申し上げてもそれで当然だと言われるのか、御答弁願いたいと思います。
  257. 世耕弘一

    ○世耕委員長 志賀君にお伝えいたしますが、長官連絡のために人を派しておるのでありますが、今なお連絡がつきません。ちょうど今ごろが花火の最中だと思います。(笑声)とにかく群衆は興奮しておるときでもあり、自然混乱しておると思いますから、御期待に沿えないのではないか、かように考えております。どうぞ御了承願いたい。おそらく長官は委員会を無視して行ったというよりもやむを得ない社交のために出かけた、こういうふうに善意に私は了解しておきたいと思います。ただし特に使いを出しましたが、今なお連絡がつきませんから、一応中間報告を申し上げます。
  258. 井本臺吉

    ○井本政府委員 代理監獄の監督者は所轄の署長であります。従って署長が、その代用監獄として使われている監房がどうなっておるか知らないというのは非常に奇怪なことだと私は思います。なおお話のような処遇をしておったかどうか、今日実は初めて承わるので、これも恐縮でありますが調査の上お答えいたします。
  259. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 これで最後にします。今、事実を知らぬのでまことに恐縮であるが調査の上お知らせすると言われましたね。この前私が申し上げたときに、あなたは事実も調査しないで、代用監嶽は合法的だと大みえを切られましたね。木で鼻をくくったようなお話だった。これからもよくあることです、事実をよく調べてやって下さいよ。方々でこういう人権じゅうりんが行われて、公安委員会でもあきれておる。さっそくこの高木検事も知りませんでしたと言って、それから三日目にようやく未決監に移しておるのです。ただ未決監に移した場合にも、刑事訴訟法の規定によれば、長期にわたる場合はこれを釈放すべしという規定があります。そこで、あなたが今まで調査もしないで答えられたことに対して非常に相済まなく思われるならば、刑事訴訟法の規定を生かして——この村上国治君もからだが非常に弱っておる。一時間に三回小便に行かなければならないほど、賢臓を悪くして弱っておる。それが畳もない穴倉の中に入れられておる。だから人道上の問題ですからして、きょうの私の質問に対する答弁の責任上、一日も早くこれを刑事訴訟法の規定に従って釈放されるようにお願いして私の質問を打ち切ります。よくお調べ下さいよ。あまりそこでいばっておるとときどきこんなミスが起りますからね。公安調査庁長官のきょうの大失態もありますから、よくそういうことを考えて下さいよ。
  260. 井本臺吉

    ○井本政府委員 もし釈放を御希望でございますれば、村上氏の弁護人もおることと思いますから、刑事訴訟法の成規の手続を経て、保釈の請求なり何なりをせられまして判事の許可をおとりに下さるよう、よろしくやっていただきたいと思います。
  261. 世耕弘一

    ○世耕委員長 神近市子君。
  262. 神近市子

    ○神近委員 私は、埼玉県の朝霞町の朝霞町立第二小学校の子供の事件について質問したいと思います。これは何度もここで御相談あるいは御質問申し上げようと思ったのですが、とうとう今日まで機会をなくしておったものでございます。事件は連れ込み宿のおかみさんの、大体二千円くらいのクローム時計がなくなったということ、それ十二になる隣の貧乏な家の子供が取ったという仮想のもとに、警察官だとか、あるいは学校の校長だとか主任だとか、こういう人たちがこの子供が取ったという憶断をいたしまして、そうしてこの子供を非常にはずかして、今日でも学校に行けないという状態になっておるのでございます。それでさっきも猪俣委員質問で、引き揚げの方がとうとう職を失ったということなんですけれども、ちょうどその事件のように子供が時計どろぼうという町じゅうの評判になって、子供は学校に行けない。学校に行くと、お前は時計を取ったのだろうと言われる。この時計は子供は取っていない。その連れ込み宿のおかみさんのいとこの子供の不良がかったのが持っていたのを見た人がある。どう考えても、この十二になる子供は、貧乏ではあるけれども、性質は大して悪くない。貧乏で百円札一枚ごまかしたことはあったけれども、そのときはちゃんと出している。それで、私どもはこの子供をめぐっての警察官、それから学校の教師——きょうは教育の問題は別でございますけれども人権擁護局のお調べがどうも片手落ちであるというように考えて、とうとう法務委員会にまで問題を持ってきたのでございます。考えてみると、これはおとなが、貧乏な子供だから取っただろうという仮想のもとに、いろいろな策謀をして子供をいじめている。子供がかわいそうな状態なので、朝霞のキャンプに勤めている尾高夫婦が出てきて、それは間違っているじゃないかということを言い立てる。そうすると、その人は気違いだとか、ヒステリーだとか、あるいは売名だとか、あるいは金がほしいのだとか、役人の方でそういう仮想のもとに憶断していらっしゃるようなことが考えられる。私は何もこの問題について介入する利害関係はない。ただかわいそうな、母親のないたった十二の子供が、取りもしない時計を取ったとして、おとながそういう問題に介入してきて、自分たちの失敗を、自分たちの出過ぎた行動に対する非難を避けようとするために、町じゅうのえらい人たちがそれに口を出して、いろいろ策動をして、これをもみつぶそうとするところに問題があると思うのです。この日記は大へん大部でございまして、よほど時間を持っている人と見えまして、毎日の行動が全部記録されておりますから、そう間違った記憶違いとか、あるいは偏見にとらわれているわけではないと私は考えるのです。第一に、パンパン宿のおかみのところで時計がなくなったというので、さっそく警察に電話を一本かけると、そこにやって来て、その子供を教師と一緒に警察署に連れていって、手錠を見せておどかして、自白を強要したという件、それから、田口刑事という人が、この片山という家には非常にしばしば出入りして、飲食をしたり、あるいは、ある意味でその婦人と関係があったといううわさを立てられているということ、それから、人権擁護局でお取り上げ下さって、二回も御調査に行っていらっしゃいます。宮崎調査官と大森第二課長と行っていただきながら、どうしてそれを解決できなかったか。法務委員会にそれを持ってくるほどものをこじらしたか。その点で、私は何とも納得のいかない態度だと考えるのです。この問題は大したことじゃない。子供はどろぼうではなかった、あれは間違いだったというように、このかわいそうな子供の汚名をそそいでいただきたい。これだけが私の関心事でございます。けれども、どうしてそういうことを見捨てておいでになったのか。警察官がパンパン宿のようなところにかってに出入りする。そうしてその御主人が防犯協会員でございますか、そういう人を協会員として、始終仲よくやっていたというようなことが、妥当であるかどうか。そういうことについて、警察庁、それから人権擁護局長から、御調査の結果なり、あるいは順路なりについて、お伺いをいたしたいと思います。
  263. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 ただいま神近先生のお述べになりました事件は、実は朝日新聞でしたか、毎日新聞でしたか忘れたのですが、新聞に掲載されまして、それでその少年の窃盗事件の捜査の場合に、これは成人の場合でもそうですけれども、特に少年の場合は取り扱いを丁重にせよということを常々話しておりますので、重大に考えて、埼玉県について調査したのでございます。お話のように、パンパン屋と言えるかどうか疑問なんですけれども、片山という方のところで時計がどろぼうされた。こういう申告が片山さんから駐在にありまして、駐在では届けがございましたから、さっそく出かけていきまして、被害の事情を聞いたのです。いろいろ捜査しておったのですけれども、被疑者がわかりませんでした。その後、学校の方で、また片山さん自身も、いろいろ心当りを探されたと思うのですけれども、今お述べになりました少年が盗んだ、こういう事情を聞きましたので、そのところの駐在においては、ことに子供でありますので、子供の名誉を重んじまして、学校の方とよく連絡いたしまして、先生に事情を話して、先生と一緒に子供のその間の状況をお聞きいたしたのであります。それで別に学校先生の方でも御調査願ったようであります。一緒に警察に来ていただいて事情をお聞きしたのでございますが、まだその子供が窃盗事件の被疑者であるということが確認できませんので、その子供の取り調べは終えまして、当該時計どろぼうの被疑事件を捜査しているんですけれども、真犯人がまだ見つかりません。真犯人が見つかることによって、朝霞界隈の人たちはあの子供じゃなかったということがはっきりわかるというので、真犯人を見つけるべく努力しておりますが、当時の物的証拠があまりありませんので、お話のように別の方がどろぼうしたという聞き込みもありまして捜査しているんですけれども、それもはっきり出てこない。それで現存未検挙のどろぼう事件ということになっているのであります。  それからお話のありました警察が子供を調べるときに手錠を使ったとかいう点も私聞きまして、厳重に調べたのでありますが、手錠を使ったことはないようであります。警察官と子供が一対一でやっている場合におきましては、警察官がないと証言いたしましても、うそを言っている場合もあるのでありますが、今回の場合は学校先生と一緒に取り調べておりますので、われわれの調べではそういう点はないようであります。  それから子供がどろぼうの被疑者だということについてもっと慎重な捜査をすべきでなかったかという点も考えますので、そういった点は十分反省するように関係の向きに教育を徹底しているのでありますが、さらにまたお話に基きまして、詳細な点は調べてみたいと思います。今のところは、われわれが新聞に基いて、事柄が重大だと考えて調べました結論の要点は以上であります。  それから所轄警察の係が問題のうちと出入りしておったという点は、今初耳でありますので、その点はさらに調査いたしたいと存じます。
  264. 神近市子

    ○神近委員 片山のいとこに当る十七歳ぐらいの少年が持っていたということを見ている人がある、それは片山の夫の弟か何かで、それはこの記録の中に出てきます。それでそれを一つも朝霞の警察は検挙しなかった、そのうわさあるいはその事実を伝えてもこれに手をつけなかった、非常に片手落ちの状態が出てきている、そうしてその調査のときに、教師が二人、刑事部長が二人ですかで調べたとおっしゃるけれども、その中に一人そのそばにものを書いていた小林という刑事が調べたということ、そうしてそのことをなぜか伏せてあって、そうしてその小林という人の言っておることと刑事部長が言っておることとも違う。それから手錠の問題ですけれども、手錠はそれを使ってかけたというのではなくて、がちゃがちゃといわせて、言わなければこれでやるぞ、そうして監嶽に入れる、こわいおじさんたちが大勢いて、そうしてお前なんかはすくんでしまうというようなことを言っておどかしたという事実もあるのです。私はその点で警察が十二の子供の取ったか取らないかわからない時計の問題で、そこまで介入をするということは私は不当だと思うのです。これは教師の方に手落ちがあることはもちろんでございますけれども警察がこのたった二千円ぐらいのクローム時計にそれほど捜査に肩を入れなければならないか、そこに私どもはどうも子供の人権を愛する、かばってやるという考え方が非常に足りないのではないかというふうに考えます。それでもし御調査の上でそのことがほんとうだということが——この日記にございますことが全部ほんとうだということでございましたならば、あなたはその警察に対してどういう処分をお考えになりますか。
  265. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 実は神近先生のお持ちの日記というものを存じないのですけれども、われわれは本件が先ほど申したごとく新聞に出ましたことによって発覚をしたのですが、私は新聞を見まして、これは少年事件の取扱いとして間違っていないか、私は新聞記事を見まして思いましたものですから、直ちに埼玉県について調べたのです。調べたところが以上申したようなことが結論になったのでございます。それで少年の取調べに当りまして、学校先生と一緒にやっておるということと、それからたまたまその調べたときに署長もほかの用事等もあってその取調べる状況等も見ておりまして、署長もそういうことがないということを現認しておるのでございます。われわれとしては八方手を尽してそういったときに手錠を用いたとか、手錠でおどかしたとか、そういう点がなかったかどうかということは、私どものできる範囲内において究明した結果はノーだということなんでございますが、また別の資料等によりまして、そういうことの事実がございましたら、その事実に基きまして不当なことが行われております場合におきましては、厳重に処置すべきものだと思います。
  266. 戸田正直

    ○戸田政府委員 本日この御質問のあることを予定いたしておりませんので、記録を持って参りませんでしたから多少の誤まりがあるかもしれませんけれども御了承願いたいと思います。この問題に対しまして、これは神近さんの前でこんなことを申し上げるのはどうかと思いますが、実は先般の毎日新聞におきまして、神近さんの談話として人権擁護局のM事務官が売春業者にだまされた、そうして職務を越えた関係にある、そうして事件をうやむやにしたというような記事を出されまして、私ははなはだ遺憾だと思っております。どうしてかような一方的な御意見を出されて、人権擁護局人権擁護の仕事をする上に非常に大きな支障を来たしたことを私は実は非常に残念に思っております。  この事件を簡単に申し上げますと、多分昨年の六月ごろであったかと記憶しておりますが、片山という旅館——これは神近さんの言葉によりますと売春業者ということを言われておりますが、私の方の調査では旅館業でございまして、売春業者ではございません。この片山という未亡人の家にありました時計が紛失いたしまして、これをさっそく警察に届けまして、三日ほどいたしましてこの時計がなくなったということが小さい町ですから近所の者に知れ渡った、ところが本件の問題になっておりまする石川隆司と申します少年が——かように断定いたしますことはどうかと思いますが、話のついでに申しますが、盗癖が従来あったようで、その前に幾多の実例がございますものですから、そこで友だち同士の話で君時計を取ったんじゃないかというようなことを言われたので、実は取ったということを言ったわけです。そのとき聞いた子供がさっそく片山のおばさん、石川の子が時計を取ったようだよということを言われたので、そのことを警察に届けたのであります。そこで警察ではその事情を調べたいというので家に参りましたところが、隆司の父親、峰吉と申しますが、これは人夫をしておりまして、これは当時出ておって家におらなかった、そこで姉に話をしてちょっと聞きたいことがあるからということで姉の了解を得て学校先生に、多分二人でございましたかに来ていただいて、そうして実は調べた、ところが取ったということで、どうしたかと言ったら畑の中へ棄てた、さっそく棄てたという畑を調べたのですが、時計が出てこないのでどうもはっきりぜぬというので、わずか一、二時間の調べでそのままはっきりせぬということで出したのであります。そこで問題は、これが非常に広がって、石川の子が時計を取ったんじゃないかということで問題が非常に大きくなった、こういう事案でございます。それから話はあるいは前後するかもわかりませんが、先ほど手錠の話が出ましたが、これも私の方の調査の結果では、手錠を見せておどかしたという事実は私の方の良心的な調査においては現われておりません。これははっきり申し上げてよいと思います。これは当時の学校等の目撃者がおりますので、私の方で慎重に調査いたしました結果はさような事実はございません。そこでこの問題の投書がいろいろ問題がありまして、この問題を持って参りましたのは先ほど神近委員の言われた尾高ハツ、夫の名前は忘れましたが、駐留軍に勤めておる人たちです。これはどういう関係か知りませんが、この問題を非常に大きく取り上げたのであります。一つの正義感、かように見れば決して非難すべきものではないと思いますが、どういう理由がわかりませんが、尾高夫妻がこの問題を非常に大きく取り上げた、そうして東京の法務局の方に陳情に参ったのであります。そうして私の方では、東京法務局におきましては、さっそくその事件を取り上げました。いろいろ尾高等の話によると、埼玉の役所関係じっだめだ、どうしても東京で調べてもらわなければだめだというようなことで陳情に参ったそうであります。そこで東京法務局が調査いたすことになりまして、東京法務局の第二課長、それから先ほどお話がありました宮崎事務官、浦和の法務局の課長、事務官の四名が、子供の問題であるので人権擁護上これは慎重にしなければならぬというので、非常な熱意をもって両法務局において共同調査をいたしたのであります。その結果私の方の調査によりますると、子供に対する警察側の調べ方としてはややどうも妥当でない節もあるのではないか、こういうような事実が認められましたので、警察に対して私の方で口頭勧告いたしまして、そうしてその結果処分猶予の処置をいたしたのでありまして、決して人権擁護局がこれをなおざりにして何もしておらないというような事実は何もない、ところがこのいろいろな調査に関連して、尾高及び被疑者の石川の方においては、どうも法務局の調べは自分たちの思う通りにならないというので、どうも法務局がなれ合いになっておるのじゃないかというようなことを再三に言ってこられました。おそらく神近委員の方に参ったのもさようなことで参ったのではなかろうかというふうに想像いたします。従って神近先生が尾高あるいは石川等の話を一方的に聞かれて人権擁護局——実際は法務局でございますが、人権擁護局の事務官がどうも職務を越えた怪しい関係にあるんじゃないか、かような御想像をされて意見を出されたのじゃないだろうかというふうに私どもの方は想像しておるのですが、この事件につきまして先ほど申しましたように、警察側としては子供の調べについてはもう少し慎重であってよかったのではないかという気がいたましす。また学校側においてももう少し慎重な態度がほしかったのじゃないか、かようなことは私どもも考えておるのでございますが、神近先生の考えられるような人権擁護局の職員——これは新聞の間違いか、神近先生のお考え違いと思います。法務局の職員がさような関係もございませんし、さような不公平な処置を決してしておらないということを、これは新聞等に公表されておりますので、将来私たち人権擁護の仕事をしていく上にこの点をはっきりさしておかないとならないと存じますので、あえてこれは申し上げて、あるいは多少失礼を申し上げているかもしれませんが、この点は一つはっきりしていただきたい。そして神近先生なりまた申告人等の言うことと私の方の調査とは全く違っております。そこでもしできますならば法務委員会においてすべての関係者を呼んでお調べ願わないと、この食い違いは、どうも人権擁護局の職員が怪しいのだかというお考えであるならば、とうてい私は公正な判断を申し上げることができない、かように存じますので、この問題をもしあくまでも重大問題として取り上げられるならば、一つ法務委員会において関係者すべてをお呼び願ってお調べを願わなければならぬのじゃないか、かように私は考えております。  それから石川、尾高等の考え、これもこの際御参考のために申し上げておきますが、結局においては損害賠償を払えということであります。そこで法務局及び人権擁護局の措置としては、損害賠償を取ってやるということはこれは少し権限を越えるのでございます。そこでそういう問題は訴訟等において国家賠償を請求されたらどうかということでありますが、何とかしてこれを話し合いをつけてくれということで、せっかくのあれで、ある程度の示談に持ち込んだこともあるのであります。ところが尾高あるいは石川等においてはそういう場合は出てこないというようなことで示談に容易にできなかったということになっております。  それから学校に子供が行けなくなった、これはきわめて重大な問題であります。これはほかの先ほどの問題以上にむしろ私はこの方が問題であると思います。教育を受けられない、この方が人権擁護上私の方は実は重大問題だと考えておったのであります。ところがこれもすっと調べておりますと、尾高夫妻と申しますか、尾高さんの方でこの事件が解決するまでは子供に学校に行かないようにとめられておるということであります。そこでこの問題については法務局においても非常に努力いたしまして、どうか学校に行くように、また学校側においてもこれは非常に努力しております。しかも先生が数回にわたって頭を下げて、どうか学校へ出てくるようにということで再三手を尽しております。ところが子供が言うのには、学校に行かないで働くと、八百屋の手伝いをすると一日十円になる。だから学校に行かないのだ。そこで学校先生は、十円は私が出すから来てくれということで、数日十円を出してきてもらったのでありますが、また来なくなったのであります。そこでいろいろ調べてみますと、学校へ行かないように、尾高のおばさんが行くなと言われたから行かないのだ。しかしその後私ども心配ですから、さらにいろいろ調査し、また学校に行くように注意いたしたのでありますが、近く行けるようになった。どういうことかわかりませんが、少年の姉の言葉によりますと、ようやく行けるようになりましたから最近に学校に出るということでございまして、その後の経過は実はまだ詳細に調べておりませんが、その程度まで実は私の方で調査いたしました。決してなおざりにもいたしておりませんし、私の方の申し上げることとおそらく神近先生のお考えになったこととは非常な相違があるであろう、かように考えております。  そこできょうの程度は詳細のあれを持っておりませんから、ただ記憶の程度で私は申し上げたので、多少の間違いがあるかもわかりませんが、間違っていましたら後ほど訂正いたしたいと存じます。私の方としては誠心誠意——この問題については決して私は人権擁護局が怠慢であった、処置が誤まっておったと言われるそしりは受ける覚えはないと私、考えております。しかしわれわれの力にも限界がありまして、必ずしもこれが万全な処置であったとは決して申し上げられませんが、少くも良心的な気持をもって調査いたしたつもりでありますので、もし食い違いの点等について納得いきません場合は、これは関係者をお呼び願ってお調べになる以外には道がないのじゃないか、かように思います。
  267. 世耕弘一

    ○世耕委員長 神近君にお諮りいたします。本件に関しましては法務委員、専門員の方でも調査を進めておりますので、一ぺん専門員ともよく御協議下さいまして、さらに調査を進めましてあるいは当局に要求するなりしていただいて真相を究明なさる方が近道じゃないかと考えております。さよう御了承願っておきます。
  268. 神近市子

    ○神近委員 私はさっきから申し上げるように、これは人事に何にも興味はございません。私の最大関心事は、この貧乏な子供が学校に行って仲間から時計どろぼう時計どろぼうと言われる、この汚名を何とか取り払って安心して学校に行けるようにということが最大の関心事でございますということを私さっき申し上げましたから、戸田局長が最大の関心事とおっしゃるのは私も同感でございますということを先に申し上げておきます。私はそのほかに何にも利害はないのでございまして、ただ子供の問題で貧乏であったからということがこの子供の唯一の劣性というか、こういう立場に追い込まれた理由でございます。あなたはこの子供が前に盗癖があったということをお信じになっているようですけれども、あるいは私も御同様きょうこの問題が持ち出せると思わなかったのですから、読み直しはしておりませんけれども、黒板に書いてあったときには、この子供は普通の子供で特に変ったところは見られないという返答を言っているのです。それで特別に悪くはなかった、ただ貧乏な子供が教師からお前は五十円の給食費を持ってこられないかということを言われたときに、友達の筆箱から百円持っていった、それがわかったものですからだれかお金を持っている者はいないか、黙って持ってくれば決して先生はとがめないと言ったときにちゃんと百円持っていっておるのです。あすこに落ちていていましたと言って隠したところから持っていっている。それが唯一の盗癖の理由になっているのです。この子供に疑いがかかったのは貧乏だった、親が生活保護を受けている、あるいはニコヨン的な仕事をやっている、まわりの人たちがその貧乏だったということでこいつがやったに違いないということに憶断したことがものの初まりで、あなたがおっしゃったように教師の行き過ぎがある。それから警察官の行き過ぎがある。この行き過ぎが——自分たちは初めはこんなに問題にしていなかった、こんな子供は親も貧乏で大した親じゃない、こんな者はいつでも自分たちのおどかしなりあるいは圧迫なりによって実を吐かせるという自信があった。ところがこれが間違いであったということがわかると教師も警察官も自分たちのへま、だれかにとがめられる、この行き過ぎを隠そうとすることからいろいろな問題が派生したので、私はその土地の事情はわかりませんけれど、あなたが今おっしゃった通りなんです。教師の行き過ぎ、校長と担任教師の行き過ぎと警察の行き過ぎ、これはその片山という旅館に対する好意というか、はでな商売ということによって非常に考えのうちにバランスが欠けているのです。そこから起ってきて自分たちのやり過ぎを伏せようとするために、尾高夫妻というものが非常にじゃまになって——尾高夫妻とはどうして知り合いになったかというと、子供が引っ越していった当座自分のうちの子供をなぐった。そうしてよその子供が来て、あの石川隆司がなぐったと言ったので文句をつけに行った。どこかにこぶを作っている。そうしたらその子供でなかった。ほかの子供が来て、ほんとうはあの子がなぐったんじゃないわよ、おばさん、あれは違う人がなぐったので隆司ちゃんがなぐったのではないということを教えてくれたので、それならどなり込んだのは非常に悪いと思って古い絵本を持っておわびに行ったということから関係が始まり、今度こういう事件が起ってから、単純な正義感から弱い者がいじめられるというところからこの夫妻が出てきて、そしてここに逐一毎日毎日のできごとを書いてありますから、その日の人が言ったことあるいはしたことが全部書いてありますから、私はそう作りごとではないというように考えます。それで私が新聞社にしゃべったという件でございます。これは私がしゃべったわけではございません。ほかの用事でその新聞社の人が来ているときに、私にほかのラジオか何かの訪問者があったので、あまり待たせるのは悪いから、こちらの用は簡単に済みますからしばらくお待ち下さい。私のうちは狭いうちで一問でお客様をあしらいますから、同席しながら片方の用事を足したのです。そうしたら、この朝霞の事件というのをその前にちょっと話題にはしていたので、これをちょっと見ていいですか、と言いましたから、それはちょっと困るなあと言いながら、私がこれを厳重に押えなかったところに宮崎調査官の問題が出てきたのです。それで私はこの間宮崎調査官と大森第二課長とそのほかの四、五人の方々の御訪問を受けまして、その点で釈明を求められた。もしそれが私が理由のないところからこれを持ち出したのであれば私は謝罪いたします。結局どこかに間違いだったと書けばいいのでしょうというような笑い話でお別れしたのですけれども、翌日幸いに尾高益男という夫の方がお見えになったので、私がその点確かめたのです。この相沢という証人、これは片山家に一緒に部屋を借りて、今よそに移っております。この相沢という人は信憑性があるかどうか、信じていいかどうか。そしてもし必要があるといえば証人に出てくるという決心があるかどうかということを確かめましたところが、それはいつでも出てくると言っておりますということだったのです。宮崎さんには、りっぱな方で非常にお気の毒で、どうしてそういううわさを生んだのか、これが相沢の作り話であるのかどうかということは私にはまだわかりません。私はほかの関心事は何もないのでありまして、ただ子供を、貧乏でそして親が無力であるということによって町じゅうからはずかしめられて、そして八百屋の手伝いすら断わられるというような状態に置いてはならないという子供に対する女の愛情というか、そういうものでものを申し上げているので、私は尾高夫妻はよく観察いたしました。なるほど寄ってたかってつつかれて疲労こんぱいしていささかヒステリーかなというふうに私は感じたくらいでございます。それで夫の方にお目にかかりましたところが、これは全くまともな紳士で、私が幾らかいろいろな成心をもってお尋ねしましてもちゃんとした返事をなさってそしてこれは欲でもないあるいは名誉でもない。ただあまりひどい状態なので見ていられないということが動機であるようです。私は法務委員会で御調査いただくならば、これ以上お話し申し上げる要もないと思います。宮崎さんの問題、あるいは相沢君のこと、これも大部なものでございまして、これを一度読み直そうとするには三時間ぐらいかかります。ですから私はもし御調査下さるようでしたら、まだいろいろ疑点を残しておることもございますけれども、きようは最終日でございまして皆さんのお時間がないと思いますから私はこれで終ります。
  269. 古屋貞雄

    ○古屋委員 実は今結論をやっておるのですが、この問題は、最初私が十九国会の終りごろに尾高夫妻が私のところへ来まして今の子供の処置に対する問題で、警察の態度がけしからないというので私のところへ持って参ったのです。たまたま私の関係しておるもう一つの学校の子供がどろぼうをしないのにどろぼうしたと言われて、本屋の二階へ連れて行かれてぶんなぐられた。そうして告訴をしたところが検察庁で、そのなぐったのが本屋のおやじでなくて、その町の教育委員であったというので、起訴猶予になっておる事件があったのです。私はこれらの事件をまとめて関係者に答弁を求めて将来の大切な子供に対する処置が、貧乏人なるがゆえに、学校でも警察でも、はんぱな取り扱いをされるのはけしからない。重大な人権問題である。というようなことを考えて準備した書類が全部私の手元にございます。その後十九国会で取り上げませんでしたので、たまたま人権擁護に持っていったらしいのですが、それが今の派生的な事件なんであります。従いまして私のところに記録はたくさんございますが、これは学校警察しかも地方のボスが一緒になって、この貧乏人の子供をどろぼう扱いにしたばかりではなく、村八分にして、しかも子供の仲間からほとんどつき合いをさせないような人権じゅうりん事件があるのです。でありますから今の派生的な結論はとにかくといたしまして、私は現在の青少年の問題に対する対策というものは非常に日本の将来に重要な問題であると思いますので、私のいま一つ握っておりまする問題も兼ねて、この際法務委員会でお調べを願ってこういう弊害を除去しなければならぬということを私は痛切に考えますので、戸田局長からおっしゃられましたこの申し入れを取り上げまして、法務委員会として今後お調べ願いたい。これは終戦後国民生活が悪くなったために貧乏人がふえたわけなんです。その子供がたまたま疎開にやっておった子供とか、尾高さんの子供さんのように、疎開した子供はなかなか地方になじまないので、地方の有力者や関係者からそれとなくいじめられておるあの姿は非常に重大な問題だと思います。どうかこの点も皆さんの御賛成を得て、再びこの法務委員会でお取り上げ願って結論をつけていただきたいと思います。
  270. 世耕弘一

    ○世耕委員長 本件に関しましては村専門員が係で相当調査も進めております。なお古屋君がお持ちになった資料等もお借りしてもっと真相を追究して結論を出したいと思いますから、神近君も御了承を願っておきます。また御協力を願いたいと思います。  三田村委員
  271. 三田村武夫

    ○三田村委員 本国会が始まりましてから、当法務委員会にあるいは陳情の形式であるいは意見具申の形式で数件の人権問題あるいは検察行政に関する申し出があるのであります。きょうは今国会の最後の委員会でありますから、事務的な締めくくりの意味におきまして、その中の二、三の問題についてあるいは当局で未調査の問題は調査お願いし、すでにお調べの済んでおるものについてはこの際御意見を伺っておきたいと思います。  その第一でありますが、これは今神近委員、古屋委員から御発言のありました事件と多少は違いますが、大体児童を対象にした刑事事件であります。この書類は数時間前に戸田人権擁護局長にお目にかけたばかりでありますから、まだ内容を御存じないと思うのです。問題は青森県三戸郡戸来村の福井という一青年——もう青年ではありません。この人は私学生時代に知っている人でありますが、これから当委員会に申し出のあった事件であります。「私は東北の寒村に住む一介の農民に過ぎませんが、実は私の村に驚くべき児童の人権侵害事件が発生し、この儘放置せられますならば、無実の児童が警察官の強要暴行に依り自白せしめられ窃盗の罪名を課せられんと致しているのであります。」こういう書き出しであります。相当長いものでありますが、簡潔に申し上げてお調べを願いたいと思います。  これは戸来中学校で、昭和二十八年からことしの二月二十七日まで、前後六回にわたって盗難事件があったのであります。金額にいたしまして、総計二万九千百円取られた、その他物品が相当あるようであります。この事件の最後の二月二十七日の事件に関連いたしまして、この学校に通学いたしております、名前は差し控えますが、当時二年生と一年生の女の子二人が、窃盗の容疑者として警察で調べられた。大体駐在所で取り調べられまして、この資料によりますと相当詳しく書いてありますが、結論は駐在所のだんな——この村ではだんな、だんなというそうであります。寒村に行きますと、それくらい警察のおまわりさん、駐在所というものは非常に高い立場にあるらしいのでありますが、いわば自白を強要されて、私が取りましたということになったらしい。ところがその後、三月の幾日でありますか、第二回から第五回までの真犯人が現われた。この四回は抜けてしまいまして事件は解決したのでありますが、第一回の場合の九千円と、第六回の場合の五千八百円、この二件だけまだ二人のいたいけない子供の窃盗事犯としたまま残されておるのであります。これはちょっと想像できない事件でありまして、申告者の福井何がしというのは、学生時代非常にまじめな青年であります。これはこの福井君の居村の問題でありまして、そうでたらめのうそ偽わりを言ってくるはずはないと私は思っております。私ここでどうしてもふに落ちないことは、まだ中学の二年生と一年生であります。最初の昭和二十八年の事件のときには、やはり中の一人が取ったこになっていますが、まだ中学の一年生であります。九千円の金を取って、使い道があるわけはない。どこに使っておる事実も現われておりません。ことしの二月の事件でも五千八百円でありまして、どこに使ったか、さっぱり見当がついておりません。しかもこの二人の女の子は、学校では優等生で、村では中流の農家であります。そうして生徒がやっております学童貯金を過去三年間預かっておって、一度も間違いを起したことのない優秀な児童であります。こういう児童にこういう汚名を着せたままでおくということは非常に残酷だというのであります。どうか一つ法務委員会でこの問題を十分御調査願いたいという申告書であります。これは警察人権擁護局、検察庁、刑事局におかれましても一応事件として現われている問題でありますが、十分御調査願いまして御善処あらんことを希望しておきます。  次の問題は、私の岐阜県での問題でありますが、これは刑事局長にちょっと申し上げて、もし事実がおわかりになっておりましたらこの際御所見を伺っておきたいのであります。  これは法務省は御承知と思いますが、問題は、昨年の暮れからでありますが、岐阜市に地方検察庁が新築されて、ことしの三月の幾日でありましたか、新築落成式が行われまして、たしか検事総長か次長が落成式に列席されておられるようであります。この岐阜地方検察庁の新築に当りまして、岐阜の知事及び岐阜が一番大きい銀行十六銀行の頭取などが発起人になりまして、新築のための経費の一助にすべく寄付金を集めたという事件であります。この事柄に関しまして、これは五月十一日付でありますが、岐阜の一市民椿信四郎なる人から当委員会に陳情書が出ておりますが、私も岐阜の住民がありまして、この事実はよく承知しております。知事及び地元県のいわば有力者が名前を連ねてやられたことも承知しておるのですが、そのときの主張は、これは法務省も御承知と思いますが、この検察庁は岐阜市のどまん中に立っておって、いわば繁華街のまん中にあります。岐阜は長良川の鵜飼いで御承知の、いわば観光都市でありますから、その中にあまりごつごつした殺風景な建物を建てられても困る。それでできるだけ協力しようじゃないかということも聞いておりました。しかしどういうような手段でその協力の形が行われたか承知しておりませんが、実はこの陳情書の内容も法務省にいっておると思います。こういう、相手が検察庁でありますし、いろいろな誤解、または疑惑も持たれる点もなきにしもあらずであります。この問題をどのように処理されておりますか、この際一つもしお調べが済んでおりましたら、法務当局の御意見を伺っておきたいと思います。
  272. 井本臺吉

    ○井本政府委員 本件は私どもの方の経理部長の方から説明をするのが本則だと思いますが、私も経理部長の方から一応状況を聞いておりますし、その結論を一応出しておりますので、簡単に御報告申し上げます。岐阜地方検察庁庁舎、これは地方検察庁と公安調査局の合同庁舎でございます。御承知の通り昭和二十八年三月二十日着工しまして、昭和三十年二月二十八日竣工したもので、予算関係を見ますと総工費が五千百二十三万七千円というようになっております。このうちで二十八年度が四千八百二十八万二千円でございます。それから二十九年度が三百十一万円、寄付が四百五十万五千四百二十円ということになっております。この四百五十万円の寄付採納の経緯は次の通りであります。  昭和二十九年の九月二十六日ころに、岐阜の地方検察庁検事正が東京へ参りまして、経理部長に会って、庁舎新営費の不足を訴えたわけであります。予算が何回も節約になっておりますので、当初から見ますと、非常に減っておるのであります。その結果庁舎四階の倉庫、便所、階段などの工事は本来公安調査局の予算でまかなうのであるが、これを検察庁の予算で施工した。その意味で公安調査局配付の予算五十万円を検察庁の方に回してもらいたい。そのほかに車庫の造営費五十万円がどうしても不足しておるので、予算上は車庫関係として六十万円を組まれていたが、これを地下室の工事費に使ってしまったのである。地検といたしましては、公安調査関係の五十万円を加えて百万円の鉄筋または、ブロック建の車庫を建築したい。なおこの旧庁舎の古材を利用して物置を作りたいが、その移築費がない、また日よけ、検事正の部屋の敷物などがないのでその設備がほしいというようなことで、検事正から経理部長にいろいろ話がありまして、その際経理部長の方から現在の国家予算の実情にかんがみまして、要求通りにはなかなかできがたい。なおその際には経理部長の話では検事正の方から、寄付の話は別に聞いていなかったと申しております。ところが昭和三十年一月二十四日に、岐阜地方検察庁の会計課長が東京に参りまして、経理部長に面接いたしまして、その際に会計課長の申しますのには、昨年末に武藤県知事を会長とする、岐阜地方検察庁並びに岐阜地方公安調査局の新築協賛会が設立されて、庁舎の附帯設備などについて寄付の話が出ておる。検察庁としては右に関して、直接関係していないが、寄付者あるいは使途について話を聞き、またその相談も受けておる。寄付の見積額については約五百万円であるが、具体的には雑倉庫、運転手の控室、車庫の附属設備、長官室の敷物、電気時計などで、総額が四百二十五万円くらいになろうということであったのであります。経理部長は検察庁の職責の重大なことにかんがみまして、寄付を受けるということは、必ずしも賛成でないという回答をしたようであります。しかるに、さらに本年の二月一日に再度検事正が東京に参りまして、経理部長に面接したのでありますが、その際検事正は本件の寄付によって検察の公正を害する心配は全然ないと思う。個人としての寄付は一切なく、また強制的な要素は全然ない、庁舎の整備充実については、岐阜市からもりっぱなものをぜひ作ってもらいたいという要請もあって、事実下検分にもこられ、これでは非常に気の毒であるから、何とかしてあげましょうということで、協賛会ができたのである。五百万円くらいの寄付が予定されているのであるが、その使途などにらみ合せて、当然国費でまかなうべき性質のものがあるので、前回に会計課長が説明した程度に圧縮したもので、ぜひ寄付受納の内諾をもらいたいということであったのであります。これにつきまして所管の営繕課長におきまして検討いたしました結果、この程度のものであれば認可しかるべしということでありましたし、なお経理部長は協賛会員のうちに、岐阜県繊維協会長、岐阜繊維問屋連合会長、岐阜建設業協会長、岐阜県酒造協会長、岐阜県木材林産協同組合連合会長、岐阜工業組合連合会長、岐阜自転車振興会理事長などほとんどの業界の代表者が氏名を連ねておって、必ずしも賛成ではなかったのでありますが、前の検事正のたびたびの説明もありまして、このことにつきまして上司の決裁を仰いだ結果、結局寄付を受納しようということになりまして、同日付で認可通知の起案がなされまして、二月二十四日に経理部長名をもって、検事正並びに公安調査局長あてで認可の通知がなされたのであります。  以上のような経緯で寄付がなされたのでありまして、検察庁が直接寄付に関与いたしましたり、強制をしたり、あるいはまた不正の点のあったことは、今のところ全然認められません。また協会から寄付の申し出がある、どういうものが足りないかということについても、国家予算でまかなうべきものにつきましては、これを削除しておるようでございます。法務省全体といたしまして寄付の問題につきましては、昭和二十三年一月三十日の官公庁に対する寄付金などの抑制に関する閣議決定につきまして、また昭和二十四年の右閣議決定の再確認の閣議決定につきましても、そのつど部内に通牒を発しましてその趣旨を伝えております。また昭和二十七年八月三十日の地方財政法の一部改正があった際にも改正の趣旨につきまして通牒を発しております。また昭和二十九年八月二日にも寄付の取扱いにつきましてはあくまでも慎重であるべき旨の通牒を発しているところでありまして、寄付に関しましては、寄付者、寄付物件、さらに当該寄付を受けることによって検察の公正に悪影響を及ぼすかどうかというような点につきましては、特に厳重に検討してあくまでも純粋に好意的なものだけを受けるということでやって参ったのであります。  寄付を受けた経緯は以上の通りでございます。
  273. 三田村武夫

    ○三田村委員 御説明で大体了承いたしました。ただ最後にもう一言申し上げて御意見を伺っておきたいと思うのですが、ただいま御説明通り、発起人は知事と岐阜の市長と十六銀行の頭取とそれから商工会議所の会頭というのですが、そういう立場におる人です。それから農業協同組合の県連の会長、もう一人他にあったと思います。大体そういう人で、地元の人としては別に疑惑は持っておりませんが、申告者の意見の中には何らか検察庁の圧力が作用しておるような主張があるのであります。私はそういうことは万々ないと思いますが、その点を一点。もう一つこの寄付行為の背後に、検察との関係に何らかの疑惑を持たれるような点がなかったか、この二点をさらに確認いたしておきたいと思います。
  274. 井本臺吉

    ○井本政府委員 寄付を受けますにつきましては、特殊な関係で寄付がなされたということがないように十分注意をして参ったはずでありますから、圧力などがかかったということは私想像しておりません。  また寄付者と検察庁との間に何らかの関係があったのではないかという点につきましても、全然私は否定的な結論を持っております。実は私もこの岐阜の新庁舎の落成式のときには岐阜まで参りましたが、岐阜の会計課長から堂々とこれこれかくかくの寄付があってかような設備をしたということを公衆の面前で報告しております。私の考えでは岐阜の観光都市の特質上、特に岐阜市としても外観上相当りっぱな庁舎ができませんと岐阜の町の美観にも相当影響するというようなことで、りっぱな庁舎ができることに大いに関心を持ち好意的であったのではないかと考えるのであります。     —————————————
  275. 世耕弘一

    ○世耕委員長 この際お諮りいたします。閉会中の審査は、定足数等の関係もありますので、この際特に閉会中審査委員会を設け、閉会中審査事件審査いたさせたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  276. 世耕弘一

    ○世耕委員長 御異議なければ、さよう決定し、小委員長及び小委員の人員、氏名等は委員長に御一任願いにいと存じます。  なお、閉会中小委員の異動及び参考人等の決定など手続上必要の事項については、小委員長に御一任をいただきたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  277. 世耕弘一

    ○世耕委員長 なければ、さよう決定します。  小委員長及び小委員は後刻公報をもってお知らせいたします。     —————————————
  278. 世耕弘一

    ○世耕委員長 この際私より一言ごあいさつを申し上げます。間もなく第二十二国会も終了することとなると思いますが、三月以来長期にわたる会期でありましたが、委員諸君の御熱心なる御努力と御協力により重要なる審議がすべてその実を上げ得たことは御同慶の至りにたえません。なおこの際政府関係、事務職員諸君においても暑気にもかかわらず熱心に御協力下さったこともあわせてここにお礼を申し上げます。ここにつつしんで委員諸君並びに関係各位に対し感謝の意を表し、かつ一言ごあいさつ申し上げた次第であります。  これにて散会いたします。     午後八時二十六分散会