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1955-07-19 第22回国会 衆議院 法務委員会 第39号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月十九日(月曜日)     午後三時一分開議  出席委員    委員長 世耕 弘一君    理事 古島 義英君 理事 山本 粂吉君    理事 三田村武夫君 理事 馬場 元治君    理事 福井 盛太君 理事 古屋 貞雄君    理事 田中幾三郎君       椎名  隆君    重政 誠之君       林   博君    松永  東君       眞鍋 儀十君    横井 太郎君       小林かなえ君    薄田 美朝君       永山 忠則君    船田  中君       横川 重次君    猪俣 浩三君       神近 市子君    福田 昌子君       三鍋 義三君    戸叶 里子君       細田 綱吉君    吉田 賢一君       松尾トシ子君    志賀 義雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 花村 四郎君         厚 生 大 臣 川崎 秀二君  出席政府委員         警察庁長官   石井 榮三君         警  視  長         (警察庁刑事部         長)      中川 董治君         法務政務次官  小泉 純也君         検    事         (刑事局長)  井本 臺吉君         文部事務官         (社会教育局         長)      寺中 作雄君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巌君         労働政務次官  高瀬  傳君  委員外出席者         労働事務官         (婦人少年局婦         人労働課長)  谷野 せつ君         判     事         (最高裁判所事         務総局家庭局         長)     宇田川潤四郎君         参  考  人         (警視庁防犯部         長)      養老 絢雄君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 七月十九日  委員高橋禎一君、生田宏一君、小澤佐重喜君、  益谷秀次君及び細迫兼光君辞任につき、その補  欠として重政誠之君、永山忠則君、山本友一君、  薄田美朝君及び三鍋義三君が議長の指名で委員  に選任された。     ————————————— 七月十八日  接収不動産に関する借地借家臨時処理法案(福  井盛太君外六名提出衆法第五四号)     ————————————— 同月十九日  売春等処罰法制定促進に関する請願(中馬辰猪  君紹介)(第四三〇〇号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  売春等処罰法案神近市子君外十八名提出、衆  法第一四号)     —————————————
  2. 世耕弘一

    ○世耕委員長 これより法務委員会を開会いたします。  売春等処罰法案議題とし、審査を進めます。  ただいま本会議開会のベルが鳴りましたから、暫時委員会休憩いたします。本会議終了後再開いたします。     午後三時二分休憩      ————◇—————     午後五時四十二分開議
  3. 世耕弘一

    ○世耕委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  売春等処罰法案議題といたします。質疑通告順にこれを許します。  なおただいま理事諸君の申し合せにより、質疑は一人約十分程度にお願いすることになっております。ただし山本粂吉君、古島義英両君質疑が保留されておりましたので、約二十分の予定であります。他の諸君は大体十分程度にお願いいたします。  それでは質疑に移ります。山本粂吉君。
  4. 山本粂吉

    山本(粂)委員 私はまず刑事局長にお尋ねいたしたいのでございます。ただいま議題になっている売春等処罰法案規定を見ますと、単純売春そのもの処罰する規定が置かれております。すなわち売春行為をした婦女子及びその相手方を一万円以下の罰金、拘留、科料等に処する、こういう刑事罰を課する規定が置かれております。そこでお尋ね申し上げたいのは、単純売春行為そのもの処罰するような法律を諸外国のうちで制定している国があるかどうか、ありとすれば、その実情はどういう状態であるか、一応承わっておきたい。
  5. 井本臺吉

    井本政府委員 お答えいたします。私どもが調べました範囲では、ほんのごく少数例外を除きまして今の法案のような形で婦女子単純売春を直ちに処罰しているというような事例は発見できないのでございます。ごく少数例外と申しますのは、カナダなどにおきまして、われわれの調べた範囲では、インデアンの売春行為を禁止するという規定が記載されておりますが、その法案施行実情はどのようになっておりますかただいまのところではまだ調べができておりません。
  6. 山本粂吉

    山本(粂)委員 重ねてお尋ねいたします。単純売春処罰する規定は諸外国においてもきわめて少数の国を除いてほとんど見当らない、こういう御答弁であります。本法案において単純売春刑事処罰するということに規定されているのだが、こういう規定によって単純売春を取り締って刑事罰を課することが適当であると思われるか、それとも不適当であると思われるか、あるいは他の保安処分行政処分によって処置する方がよろしいと思われるか、この点に対する法務当局所見を承わりたい。
  7. 井本臺吉

    井本政府委員 事務的な立場でお答えを申し上げます。単純な売春行為を道徳的に是認するのではもちろんございませんが、直ちにこれに対しまして刑事上の罰をもってすることが果して適当であるかどうかということは、われわれの間でも何回も議論に上りましたところでございます。もちろん常習者に対しましては、これを処分することが適当であるという意見に大体一致を見ておりますが、初めて自分で行いました単純売春行為に対しまして、直ちに刑事罰をもってこれに臨むことが果して刑事政策上適当であるかどうかという点については、相当疑問があると私は考えております。
  8. 山本粂吉

    山本(粂)委員 この点が、本法案提案者提案理由説明を見ますと、非常に重要になっているようです。すなわち売春行為そのものが悪なんだというよりも、違法なんだ、刑事罰対象にすべきであるという根本的な考え方から本案提出されているように見受けられる。そこでお尋ねするのだが、今刑事局長の御説明によると、非常に議論の分れるところだ、こうおっしゃっておられるが、本法案通過するかしないかは別として、この売春行為そのものに対する政府考え方として、いかような考え方のもとに処置した方がよろしいかということについての根本的な考え方法務大臣から承わっておきたい。
  9. 花村四郎

    花村国務大臣 ただいまの山本君の御質疑でありますが、前にも再三申し上げましたように、この問題に対しましては、売春問題対策協議会にゆだねまして、その筋の学識経験者によって討議をいたしておりますので、この協議会結論を見た上で適当な案を作ろうと考えております。従ってここでその内容についてとやかく申し上げることは差し控えたいと存じます。
  10. 山本粂吉

    山本(粂)委員 法務大臣売春対策協議会が設けられているから、その答申を待った上で適当な処置を講じたいと言っておられるが、審議会答申答申、本法案の第三条規定してあるような単純売春刑事罰対象として処罰することがいいか悪いかということに対する法務大臣としての御所見を承わっておきたいと思います。
  11. 花村四郎

    花村国務大臣 本法案につきましては前にも再三申し上げましたように、私個人と果ての意見は相当あります。けれども、本法案衆議院各派を通じて有力なる諸君提案にかかっておりまするので、従ってその法案内容がよいか悪いかというような批判的な意見をここで申し述ぶることは差し控えたいと存じます。
  12. 山本粂吉

    山本(粂)委員 法務大臣は実に巧妙なる答弁をされておりまして、有力なる議員共同提案であるからそれに対する批判は差し控えたいとおっしゃられるが、批判は差し控えたいというお気持は私もわかるけれども、少くとも法務省当局として単純売春刑事罰によって処罰することがいいか悪いかということについての大臣の御所見がないはずはなかろう。本法案内容批判することは差し控えるというならば、法務大臣の御所見だけでも承わらせていただきたいと存ずるのであります。
  13. 花村四郎

    花村国務大臣 私は前に法務委員長として、あるいはまた法務委員として何回も携わって参っておる関係もありまするし、この問題に対しましては少からず興味を持って今日まで研究もしてきておりますから、私の意見もございます。従ってもし私の意見を述べろということでありまするならば、また機会を得て述ぶる折もあろうと存じます。(「今でなければ間に合わない」と呼ぶ者あり)しかし本法案に対しましての私の意見をここで述ぶることは、本法案反対するような意見の出るおそれもあります。また本法案是非提案者に対してその真相を確かめることが妥当であると考えまするので、従って政府当路者の一人としては、その是非についての意見は差し控える方が提案者に対する礼だと私は申し上げておるのであります。
  14. 山本粂吉

    山本(粂)委員 さような御答弁を承わるならばなお聞かなければならない。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)提案者の意向ははっきりしている。なぜかなら、提案者単純売春刑事罰を課する必要がある、そうすることによって売春そのもの社会悪として葬っていくことが根本的に必要なのだという提案理由から、単純売春処罰するという規定を出しておるのだと言っておるのだから、提案者意思ははっきりしておる。だから提案者理由をここで私が確かめないでもすでに当委員会で論じ尽されておる。結論的に法務当局としては単純売春刑事罰によって処罰することが妥当なりやいなや。また実行が可能かどうかという面からいろいろと論議があると思うので、そこで法務大臣としての御所見を承わっておるのでありまして、本法案のような、単純売春刑事罰によって処罰することよりも、他に適当な方法があればその方がよろしいというお考えであるのか。それとも単純売春刑事罰対象として本案のように処罰する方がよろしいというのか。この二者択一というか、あるいは両方並行して進むということになるのかは別として、それに対する法務大臣としての御所見を承わることが、本案に対まる賛否を決する意味において重要な関係があるのでお聞きしたい、こういう意味でありますから重ねてお伺いしたい。
  15. 花村四郎

    花村国務大臣 提案者の弁明によって法案内容については明瞭であるというお話でありますので、そういうことでありますならば、その提案者説明を基調として適当なる御判断を願えばそれで私はよいのじゃなかろうかと思うのです。しかし私にあえてその是非を論じろということでありますならば、論じないわけでもありません。私も議論がきらいでもありませんからやりますが、しかし、ここで私の意見を述べることは、あるいは本案に対して反対意思を表示するような場面も出てくるのではなかろうかとも考えられますので、従って政府として進んで議員立法であります本法案に対して反対をするということが果して適当であるかどうか、この点に対して私は少し疑問を持っておりますので、もし私の意見をしいて述べろということでありますならば、あえて辞退もいたしませんが、その適当なる機会を与えられんことをお願い申し上げておきます。
  16. 山本粂吉

    山本(粂)委員 この機会が一番適当な機会だと私は考えるのでありますけれども、どうも意見の相違で、法務大臣がこの機会が適当でないとおっしゃられれば、これはこれ以上ここで議論をしても時間をとるだけであります。法務大臣は、単純売春に対して刑事罰をもって臨むが可か、他の方法によって臨むが可かということについては、その意見を述べると本法案反対をするようなことになりはしないかということを懸念するから、そこで述べられない、適当の機会に述べる、こうおつしゃられることだけで、次に移ります。  刑事局長にお伺いするのですが、申すまでもなく、刑法を土台として刑事罰を伴う法律はたくさんありますけれども、その刑罰を伴う法律は、常に妥当性必要性そして実現性があるものでなければいけない、これはもう世界的な通論である。従って刑事罰を伴う法律を制定する場合には、それが妥当であり必要であり、そしてそれが実現されるものでなければならないことは論を待たないと思うのだが、本法の第三条、すなわち単純売春刑事罰によって処罰するというこの規定ができることによって、売春そのものを絶滅さすためにほんとうに適当な取締りができるであろうか。すなわち刑事罰を課するだけの必要性妥当性実現性があるだろうかということに対する刑事局長の御所見を承わりたい。
  17. 井本臺吉

    井本政府委員 事務的な立場でお答え申し上げます。本法三条単純売春行為は、規定にあります通り、男と女が隠秘のうちに行う性交行為処罰対象になっております。取締り官といたしまして、かような行為証拠をあげることが相当困難なものであるということはくどくど申し上げなくても想像がつくと考えるのでございます。従って私何ゆえにほかの国々で直接売春行為を取り締らずに、単純売春行為の回りに巣を食うものに対するいろいろな罰則規定を設けておるかというような点は、かような取締りが非常に困難であるという点からくるのではないかと思うのでございます。簡単に申し上げますと、対価を得て男と女が性交したということの証拠をあげるのは、土曜日の委員会におきましても申し上げましたが、おそらく現行犯ということはほとんどあり得ない。ほとんど関係者供述だけが証拠になると思うのであります。関係者供述は、これは憲法、刑事訴訟法によりまして、自分に不利益な供述はこれを強要されないということになっておりますから、黙秘すれば証拠はほとんどないというような実際の状況になってくるのではないかということを私は憂えるのであります。従いまして非常に善良な初犯の者が容易に自白をいたしまして、簡単に証拠があがる。常習者、悪質な者が黙秘戦術に出て証拠があがらぬということになって参りますと、この検挙の実際面を担当される方々におきましては相当困難が伴うということは、これは容易に想像し得るものと私は考えるのであります。ただ現在の状況よりもさらに法律制定によって場面が少しでもよくなるのではないかというような御議論がいろいろございまして、さような点につきましては私何とも申しかねますが、実際の取締りを行う立場におきましては第三条関係処分というようなことは事務的には非常に困難であると私は考えるのでございます。
  18. 山本粂吉

    山本(粂)委員 実際の取締りの非常に困難性を痛感された御答弁でありますが、単純売春の問題については、すでに転落女性に対する更正施設保護施設社会保障制度の確立等々、あらゆる施策を講じてその根本を除去しなければならないんだ。その方が先決なんだ。刑事罰対象にするよりも、その方が先決なんだという御議論も今まで尽されておりますので、私はこの点については、これ以上ここで論議を省略いたしたいと思いますが、さらに進んで第四条以下の本法案規定の実際の運営の面から考えてみて、先ほど刑事局長が言われたように、単純売春処罰をする場合においてさえもが、すなわちその立証——現行犯はほとんどあり得ない。現行犯がほとんどあり得ないとすれば、結局挙証責任をどうするかということが重大な問題になってくる。ただし単純売春の場合には刑罰規定がきわめて低いのでありますからあるいは黙過されても、いいかもしらぬが、四条以下の規定刑罰が非常に重い。あるいは一年以上十年以下の懲役というような、こういうような非常に重い刑罰を課するということになっておるのでございますから、こういう場合に、ほんとう悪徳業者が逃げてしまって、比較的善良な者のみが処罰対象にひっかかるというような結果になる。ほんとう本案のねらいどころは悪徳業者の征伐にあると思う。すなわち売春周旋業者あるいは搾取業者等々の者を処罰しようというのが本法案の大きな眼目だと思われるのでありますが、ところが四条以下の規定を見ると、この挙証責任が非常に困難だと思う。そこで私は本案そのものから見て四条以下規定に対してはある程度の推定の規定を置かなければ、実際の取締りの上において効力が上らないのではないか、こう思われるが、刑事局長の御所見を承わりたい。
  19. 井本臺吉

    井本政府委員 お答えいたします。三条規定四条以下の規定とを対照いたしますると、立証上は四条以下の方がはるかに容易であると私は考えるのでございます。しかしながらなおさような場合におきましても立証が非常に困難な場合もあり得るわけでありまして、たとえばフランスの刑法の三百三十四条規定などを見ますると、業者処分規定と思いますが、この売春婦と同居いたしまして、その生活の資が他の売春婦収入による以外の収入であることが立証されないような場合にはこれは処分されるというような趣旨の、立証責任を転嫁した規定まで設けておるようなところもございます。その他デンマーク等売春関係処罰規定を見ますると、容易に立証方法が立つような方法規定を設けておるのでございまして、さような観点からいきますると、法律三条のようなことはないと思いますけれども、相当売春関係刑法上の立証方法というものはいろいろな困難な問題があると私は考えるわけでございます。
  20. 山本粂吉

    山本(粂)委員 もう一つ伺っておきたいのですが、本法案のような状態で、私この法案全体を見て第一におそれることは、この法案がこのまま通過したとすると、先ほど来論ぜられたように単純売春取締りの面においても、四条以下の業者処罰検挙実態から見ても、ほんとうに悪質の者と警察との間にいまわしい妥協が行われる。そしていわゆる正直者がばかを見るような取締りだけが行われて、ほんとうの悪玉が逃げられると同時に、一面においては警察が生殺与奪の権を握って、そうして反対に国民の基本的人権が侵害せられることになりやせぬかということを非常におそれるのだが、本法案通過したとしてもさようなおそれがないかどうか、刑事局長の御所見を承わりたい。
  21. 井本臺吉

    井本政府委員 法案通過の際にどういうことになりますか、たやすく想像はできませんが、戦争中に行われました経済統制罰則がどのような結果になったかというようなことから御想像いただきますれば、大体の状況はわかると私は考えるのでございます。
  22. 山本粂吉

    山本(粂)委員 経済取締りに対する罰則運用実態を御想像になればという御答弁によって、私想像がつくので、まことに危険な状態が起るだろうことを想像するにかたくない。  時間の制約がありますので簡潔にもう二点だけ承わっておきますが、本法案通過いたしますと、この前論じられたようでありますが、各府県が出しておる売春等取締りに関する条例、これは地方自治法第二条の規定から推論していくと、当然本法施行されれば効力を失う。効力を失った場合に経過規定を置いておかないとブランクが起るように思う。それはその条例によって検挙された者が、施行後においてそれが処罰ができておらなかったような場合に、効力を失ってしまった条例処罰はできない。しかもこの法律施行期日通過三カ月後になっている。そうすると、地方自治法第二条によってできているところの各府県条例効力を失うことはわかるが、その場合における経過規定が必要のように思うのだが、この点に関する御所見はどうでございましょうか。
  23. 井本臺吉

    井本政府委員 条例法律との関係をどのように解しまするか、これは法律的に非常にむずかしい問題でございまして、実は私どもも、まだ明確な結論が出ているわけではございません。構成要件の違う犯罪につきましては、引き続き条例の罰も残るというふうに考えるのでございますが、同じ構成要件のものは御趣旨通りと考えます。ただこの施行期日が相当期間離れておりますると、その間条例効力がどうなるかというようなことも相当問題があると思いますが、とにかく本法の方が施行されていないのでございますから、その間の条例はまだ生きておるというように、私どもは一応考えております
  24. 山本粂吉

    山本(粂)委員 最後に本法案の第三条——先ほど来申し上げた単純売春刑事罰を課する規定、これが出発点になって常習売春等処罰されることになっておるのでありますが、私は単純売春処罰するということは、私の知っている範囲では、諸外国立法例を見ましても、その単純売春行為をさせることによって利益を得ている者、あるいはそれ自体によって社会に対して害毒を流す行為をなしたる者等々が処罰される規定になっておるのでございますけれども単純売春そのもの処罰対象としておる文化国家はあまり見当らない。そういうことだけでなしに、日本のような人口過剰であり、生活苦に悩み、しかも敗戦後の日本過小領土に過大な人口を持っておる国におきまして、極端な生活難に悩んでおるときに、転落女性に対する何らの——と申し上げると語弊があるかしらぬが、適切なる施策が行われておらないのに、刑事罰をもって臨むということは、あまりにも苛酷であり、しこうしてその実効を上げることはきわめて困難であるということと、取締りがきわめて困難であり、不公平になりがちであるという点から考えてみて、私は刑事罰をもって臨むよりも、何らかの保安処分なり他の方法によってこれら転落女性を救っていくということに重点を置くことが先決である、かように考えるが、この点に対する法務大臣の御所見を承わって、私の質疑を終りたいと存じます。
  25. 花村四郎

    花村国務大臣 さすがにその筋の大家だけありまして、山本君の御質疑はわれわれの胸を打つものがありますると同時に、私は大体においてすべて賛成であると申し上げてよろしいと思う。さればこそ私どもが慎重に慎重を重ねて、この売春問題等対策協議会意見を尊重するという意味ばかりでなくして、あらゆる観点からこの問題を検討して、そうしてりっぱな成案を得たいという意味で今日まで努力をいたしてきておるのであります。従いましてかような関係から法務省の案がおくれておるのでありまして、ややともすればこの法案人権じゅうりんを起すおそれのありますることは、(「ノーノー」)ほとんど周知の事実であると私は申し上げていいと思う。でありまするから、この人権じゅうりんがなくして、その法律実効をおさめていく方途をどうすべきかという、ここに創意と工夫がめぐらされなければならぬということでわれわれが苦心をいたしておるような次第でありまして、こういう意味から申しましても、山本委員の言われることはしごくごもっともであります。でありまするから、いかなる点から見ても不合理、不条理のないような、一般の認めてもって歓迎するような、りっぱな成案を得なければならぬということが最も必要であろうと思います。こういう見地からこの法案を見まするときに、先ほども申し上げましたように、私の意見がないわけではないんだが、しかしここで私の意見を申し上げるのは適当でない、こう申し上げたような次第でありまするが、かような見地に立ちまして、ただいま山本君の申されました御意見には全面的に賛成をいたすものでございます。
  26. 世耕弘一

  27. 馬場元治

    馬場委員 売春問題は、婦人人権を擁護する意味におきまして、社会を浄化する意味におきまして、きわめて重大なる問題であると存じます。この社会悪に対しては、これを除去するためにあらゆる努力を払わなければならぬ。特に人身売買であるとか、あるいはか弱い婦女子の犠牲において搾取を続けるといったような憎むべき悪徳に対しましては、これは断固たる処置をとらなければならぬ、かように存じます。売春問題は非常に重大でありますが、一面またその解決まことに困難なる面が多々あるように存じます。ひとりわが国ばかりでなく、東西古今を通じて、この問題の解決のために悩んだことはしばしば見受けられておるようであります。困難であれば困難であるほど真剣にこの問題と取り組んで、何とかしてこの社会悪を除去するように真剣な努力を続けなければならぬ、かように考える。  そこでお尋ねをいたすのでありますが、今度の提案をいたされておりまする法案によりますと、売春行為をなしたる者処罰することになっておる。処罰するだけで、保護の点については別に規定がないようであります。私は、売春をやる人々は何も好きこのんでやっておるとは思えない。少くとも七五%以上が家庭の犠牲となり、心ならずも苦界に身を沈めておる、こういったような実情にあると承わっております。社会の落後者であり、敗残者なんであります。この人たちをただ処罰対象にして、刑罰をもってこれに臨むというだけでは問題は解決をいたさないと私は考える。むしろまことにお気の毒なる人々であり、これらに対しましてはほんとうの愛をもってこれを保護し擁護する、そういう態度が一番必要なんじゃないか。たとえば婦人ホームであるとか、あるいは婦人寮であるとか、そういう保護施設に収容して職業の補導をやってみたり、ないしは精神的に心身ともに清浄化するように指導をしていく。こういった方向に努力を払うことが必要である、かように考えておるのであります。愛をもって保護善導するということが、売春問題を根本的に解決する一番重大なる問題ではあるまいか、こう考えるのであります。処罰だけでは解決し得ない、そう簡単なものではないと思うのでありますが、政府のこの点に対する所見を伺っておきたいと思います。
  28. 花村四郎

    花村国務大臣 馬場君のただいまお述べになりましたことはすべて私も賛成であります。この前に売春等処罰法案委員会に上程されましたときに、ちょうど私も委員の一人として、ただいま馬場君の申されましたような質疑を行なったことを今なお記憶いたしておりまするが、全面的に賛成でございます。
  29. 馬場元治

    馬場委員 法務省売春に関する協議会を設置せられておるようでありまするが、その後の協議の進捗状況はいかがになっておりますか。まだ結論を得られませんか。その点を伺っておきます。
  30. 花村四郎

    花村国務大臣 たびたび御報告を申し上げておりまするが、当協議会ができましてすでに二十数回にわたって慎重審議を続けてきております。最近に至りまして、私からの要望もあり、先月の上旬に一回——たしか二十七日であったと記憶いたしておりますが、協議会を開いて討議をいたしたようであります。しかし御承知のようになかなかむずかしい問題であるだけにその結論が今なお出てこないというような状況に置かれておりますが、不日その結論を見られることであろうと存じます。
  31. 馬場元治

    馬場委員 協議会結論がいまだに出ない、困難な問題だから慎重審議するんだ、その理由はわかりますが、こういう問題はなるべく早く結論を出してもらいたい。そうしてそれを実行に移してもらわなければじんぜん日を過ごしたのでは、まことに私たちは遺憾に考えます。そこでこの法案が成立をいたしまして売春を厳重に処罰する、こういうことになりました場合に、その目的の通り売春行為が絶滅されるということであればまことに幸いでありますが、われわれの予想するところでは必ずしもそうは参るまい。残念ながら地下にもぐったりあるいは一カ所に集まっておったような人たちが各所に散在をする、いわゆる散娼になる、こういう危険性も多々あるように思うのであります。従いましていわゆる性病の蔓延ということも、よほどこれは警戒をしなければならぬ。一部の説をなす者の意見によりますと、散娼必ずしも性病の蔓延の原因でないというような議論も聞きまするけれども、とにもかくにも従来検梅その他の方法が行われておったのが今度は行われないということになりますれば、常識的に考えまして、性病の蔓延ということは一応従来よりもはなはだしくなるものであると考えなければならぬ。従いましてこれらに対する政府としての対策も十分にお考えを願わなければならぬと思う。のみならず先ほど申しましたように転落いたしました人々の、現在の売春行為をやめました後の職業の問題、就職の問題、生活の問題、そういった方面に対して親切な方法も講じなければならぬ。精神的にいわゆる社会教育を徹底いたしまして、これらの人人の補導もしなければならぬ。先ほど問題になりました人権じゅうりんの危険もなきにしもあらずと思いますから、これらに対する警察当局その他の格別の御留意をも願わなければならぬ。それらの方法を講じまするには、すべて予算が伴わなければならぬ。ただ単なる計画だけでは何の役にも立たぬのでありまして、それぞれの施設を行い、各種の総合的な対策を行いまするにつきましては、やはりこれに相当の予算を計上することが当然必要になって参ることは呶々を要しないところであろうと存じます。従いまして売春の問題を解決するには、一つの処罰規則だけではとうていどうすることもできない。現に五十五にわたる都道府県その他市町村におけるたくさんの条例がありますが、一向実効を表わしていない。一種の黙認の姿になっておるのでありまして、一向実効を表わしていない。これが厳重に処罰されるようになりましてもなおかつそれだけで解決はできない。これはよく想像できるところであります。従いまして総合的な対策を立てることが何よりも必要であると私は思う。その総合的な対策の背後にはこれをバックする十分なる予算が用意せられておらなければなりません。  そこで政府の御意見を承わりたいと思うのでありますが、この問題を一つ真劍に解決するために、総合的な対策をお立てになる意思があるかどうか、一法務大臣でなしに政府を代表して、この問題に対する政府の所信と、総合的な対策をお立てになる意思があるかどうかということを御答弁願いたいと思います。
  32. 花村四郎

    花村国務大臣 馬場君のお説まことにごもっともであります。私も賛成する一人でございます。本法案が先ほどからるる申し上げましたようになかなか重要なる法案であるだけに、予算措置の必要なことまた言うを待ちません。従いまして本法案通過を見越しましてこれが受け入れ態勢に対する構想は今日立てつつありますが、もし本法案が国会を通過いたしまして、取締り当局としてその法案を実施して参らなければならぬというような場合におきましては、その国会の決議の意思に基きまして、万全を期してその実施に遺憾なからんことを今日より心がけておるような次第でございます。
  33. 馬場元治

    馬場委員 私の質問はこれで終ります。
  34. 世耕弘一

  35. 古島義英

    古島委員 私は禅問答はきらいですから、端的に問うて、端的に答えていただきたいと思います。  日本ではあまり法律が多過ぎるので、法匪だといわれております。そこで、この売春問題等で考えてみますと、刑法には公然わいせつの罪もあります。あるいは誘拐の罪もあります。営利誘拐もあり、外国に移送するための犯罪もあります。また一方において婦女子に売淫等をさせるのを禁止する法律がありますが、それによれば、すべてのことが書いてあります。あるいはこれを困惑に陥れて売春をさせたというようなこと、一切を含んでおります。また一方において、風俗営業法によれば、その土地で営業しようというものは、条例の定むるところによって、必ず公安委員会の許可を得べしということになって、各府県どこで営業いたしましても、風俗営業であるならば、必ずそこの公安委員会の許可を受けねばならぬ。こういうふうにして、公安委員会の所属している府県では、どこにも条例があり、二重にも三重にも縛ってあるのでありますが、これらが今日まで行われていなかったということは、まことに遺憾しごくであります。かような、がんじがらめになっておる売春禁止の法律があるにかかわらず、なおこの上に、何ら内容の変らない、また特にこれという目ぼしいところのない法案をこしらえる必要は、私はなかろうと思うのでありますが、なぜ今日まで、このようにがんじがらめになっている法律の実行ができなかったのであるか、その点をお伺いいたします。
  36. 花村四郎

    花村国務大臣 古島君のお説の通りでありまして、いろいろの法令が出ておりまして、これが取締り観点から見まするならば、これらの諸法令によって取り締れるのではなかろうかとのお説、まことにごもっともであると存じます。しかし、国民の代表であります国会によってきめられた法律で取り締っていくというようなことは、これはなるべく基本的人権を尊重するわが新憲法の建前からして、法律によって取り締るのが適当じゃないかと考えられます。従って、この売春法案なるものを国会を通さなければならぬということについては、私は、りっぱな理由があると申し上げてよろしいと思うのであります。今日までいろいろ諸法令があるのに取り締っておらぬじゃないかというお話でありましたが、相当取り締っております。件数を前にもここで申し上げたのでありますが、相当の取り締り成果も上っておるような次第でありまして、決してそれらの法令が適用されておらぬというわけではございません。
  37. 古島義英

    古島委員 法令が適用されないことはないというのでありますが、適用するつもりであるが、その適用する対象がない。検挙しないのだから、ないわけである。法律は生きておるから、適用するつもりでありましょう。しかしながら、同じような事案が常に起っておるにかかわらず、一つもこれを実行しない。たまたま、ほんとうにまのあたり見のがすことのできないような現実の問題が起ると、やむを得ずやるのであるが、今のその条例なり、あるいは売淫をさせた行為に対する禁止法の表に現われている仕事は、常に行われている。これに向っては、さらに実行をしない。しかも、適用はするつもりであろうが、検挙しなくんば適用はしないのだから、今日まで何ゆえにそれができなかったか、今後どうするつもりでおりますか、その点を承わりたい。
  38. 花村四郎

    花村国務大臣 御承知のように、この売春行為取締りに関する法令が、刑法の百七十四条、婦女に売淫をさせた者等の処分に関する勅令、性病予防法、児童福祉法、風俗営業取締法、労働基準法、職業安定法、地方自治団体が制定したこれら取締り条例等の幾多の法令があり、そして、これが取締りを実行はいたしておるのではありますけれども、では、すべてこれらの行為をやっております者の検挙ができるかといえば、先ほども刑事局長が申しましたように、この種行為証拠の収集がなかなか困難であります。われわれが想像いたしましても、この種行為現行犯は一体どこでけじめをつけたらいいか。実際行なっておるところへ乗り込めばいいでしょうが、乗り込んでもまだ問題がある。そういうわけでありますから、取締り当局において取締りの手をゆるめぬということで、熱意をもってこれが取締りに当りましても、こういう証拠収集に関する困難さがあるということで、もしそれが過ぎますれば、直ちに人権じゅうりんの問題が起きてくる。人権じゅうりんの問題を起してはならぬということを強く頭に置いて、こういう取締りを考えますときにおいて、なかなかそう思うようには参らぬという関係からして、その取締りはなかなか徹底はいたしませんけれども、与えられた予算と、今の与えられた機構とを、遺憾なくその力を発揚いたしまして、取締りの万全を期しておることだけは、はっきり申し上げていいと思います。しかし、そこに見方によっては御不満もありましょうが、そこはやはり人権を尊重するの余り、見ようによっては手ぬるいではないかという見方も出てくるのではなかろうかと存じますが、今後はその御趣旨を体して、一層努力をいたしていきたいと存じます。
  39. 古島義英

    古島委員 ただいま法務大臣が言うたように、非常な多くの法律が錯綜して累積いたしておるのであります。売春は、どのようなことがあっても、やり得ないようなことになっております。今日までの法律で、もしくは勅令で、あるいは条例で十分に取締りができるのであるが、これでもなお、どこか不自由なところがありますか、どうか。その点を承わりたい。これは刑事局長でよろしい。
  40. 井本臺吉

    井本政府委員 法案三条にございますような婦女の単純売淫につきましては条例が全国に五十ほどありまして、その以外のところでその処罰規定がないところがあります。その点につきましては罰則の規定がないということで取締りができない面もございます。そのほかのところにつきましては証拠さえあがりますれば売春業者、周旋業、勧誘その他一応すべて処罰規定は全部そろっておると私は考えます。
  41. 古島義英

    古島委員 私もそう考えております。法律はもう万全を期して、一切抜け目のないようにできておるんです。しかしながらそれを実行しない。実行するときには挙証ができないというようなことでやっておるんだが、本法が可決されて本法施行されるならば立証が楽になるかどうか。楽にならなければ従来と同様なことになってしまうが、その点はどう思いますか。
  42. 井本臺吉

    井本政府委員 条例などにつきましては制定の際にいろいろいわく、因縁があるように私も聞いております。従って取締り関係で手不足に伴う立証の困難から重点的にやらなければならぬとこから逐次やっていきますために、典型的ないわゆる赤線区域などがあとへ残っておるのでありますが、さような点から考えますると、国家の法律として全般的な法案が何らの留保条件なく通りました場合には、従来の条例のようないわく、因縁のない立場でやるという点から一歩前進であろうと私は考えます。
  43. 古島義英

    古島委員 売春を禁止するということは婦女の基本的人権を保護するゆえんだ、こう言われておるのであります。本法案提案理由もまたそうなっております。ところが単純な売春で全く秘密に場屋も借りずに、人の周旋も受けずして売春をする者は、みずから守らるべき基本的人権を放棄いたしておるのであります。こういう売春も同じく単純売春であってこれを罰することになっておるが、こういう者を罰しましてもこれは基本的人権を守ることにはならないと思っております。ほんとうに人間の基本的人権はわれわれの生命ほど尊いものはありません。その生命を捨てるところの自殺の未遂さえも罰することはない。しかるに売春というさような一事実で、しかも隠密の間にやっておるんだから一向に風紀を害さない。そうして自分のみが基本的人権を放棄いたしておるのであるが、それでもなおこれを守るという必要がどこに起って参りますか、私にはわからないのであります。そこで承わらねばならぬのでありますが、ほんとうにこれは隠密にやるという売春はこれを除外をする、そうして公々然とやるものはこれを処罰いたす、半ば公然とやるというようなものはこれをある意味においての処罰はその場合によるというようなことにでもせねばほんとうに公平でないと思いますが、政府はどういうふうに考えておりますか。
  44. 花村四郎

    花村国務大臣 なるほどただいま古島君のおっしゃいまするように、人権を放棄した者に対して心配する必要はないじゃないか、いわば法律の上に眠る者に対して、保護を与えないでもよいじゃないかという御議論であろうと思いまするが、そういう御議論もある意味においては一つの論であろうと存じまするけれども、しかしそれが社会正義の観念から見まして、風紀を乱し、あるいはまた言うところの純潔を傷つくるというような諸種の社会的影響がそこに生まれて参りまするので、従ってこの個人の人権そのものから見た判断だけでこれを分けに認めてよろしいという論は私は出て参らぬ、こう申し上げてよろしいと思います。
  45. 古島義英

    古島委員 私は本法案について大へんな疑いを持っておる者であります。第五条の三項には本件の第一項の未遂はこれを処罰するということになっておるのであります。未遂を処罰することはまことにけっこうですが、詐術を用いあるいは婦女を困惑に陥れて売春をさせた者を罰するというのが第一項であります。そうすると売春ということはどういうことであるかというと、第二条のいわゆる不特定の人に対償を得て性交いたすというのが売春であります。そういたしまして、第二条を見て第五条にすぐ移りますと、同じようなことが——あるいは人を困惑に陥れもしくは特別の状況を利用して売春をさせるというのでありますから、これは対償を得ることは当然であります。そうして対償の約束をするなりあるいは対価を得るなりということが当然であるが、第二項にはもしとった者、一部をとった者、とる約束をした者を罰するということになっております。二重の処罰になっており、そうして未遂法を罰するということになっておるが、どの辺が未遂の程度になり、どの辺が既遂の程度になるかわからない。同じ法律の間において、同じ条文の間において同様のことを繰り返してやっておるということは、この法律をこしらえる権威にも関することだと思うのでありますが、これは提案者に質問すれば、よいのでありますが、むしろ法務大臣がこの法文を見たときに、どのようなお考えになりますか、この点はこれでよろしいと思いますか。
  46. 花村四郎

    花村国務大臣 私はただいま、先ほど来申し上げましたように、この法案是非について批判を避けるのが適当であると、こう考えておりまするから、その点は刑事局長に御意見がありましたら説明をしてもらいます。
  47. 井本臺吉

    井本政府委員 第五条はいわゆる勅令九号の条文をほとんどそのまま持ってきておるように考えますので、一応この程度でも従来の論議の経過に徴しまして、犯罪構成要件が特定できると私は考えます。
  48. 古島義英

    古島委員 二十二年の勅令九号は、ただ暴行、脅迫を用いないというのが、同じことではあるが、この第五条と同様なんであります。そういたしますとこの対償をとるということが性交をさせる手段になる。そうして対償を得るということによって、性交させたということ、売春したということが犯罪なのでありますから、そうすればここに、対償を得る、もしくは得る約束、もしくは一部得た、全部得たということは当然起ってくるので、そうすれば約束をしたことは必ず重くなる、また一部取った、全部取ったということが重くなるということがいかにもおかしいのでありますが、その点どう思いますか。
  49. 井本臺吉

    井本政府委員 第五条の一項におきましては条文に記載されております通り「婦女を欺き、若しくは困惑させて、又は親族、業務、雇用その他の特殊な関係を利用して売春をさせた者は、五年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。」という規定でございまして、これはかような売春をさせた者が金を受け取ると受け取らないとを問わず処分される、私はこう思うのでございます。さらに二項におきましてはさような売春の対価につきましてこれを婦女から受けるということについては一層重く処分するという規定のように考えております。
  50. 古島義英

    古島委員 売春の定義は第一条にあります。第二条の行為をこの条文の売春というところにはめたならば大へんなことが起ってこようと思う。この売春のところにはめて読みかえてごらんなさい。そうすればまるでこれの未遂というのがどの程度が未遂になるかわからない。金を取る、もしくは金を取る約束をする、あるいはそういうことをして売春をさせたということは二項にあるから、第一項が未遂だというときは、売春行為、極端にきたない言葉で言うならば、性交が成功するか不成功に終るか、その成功によって未遂と既遂が変る以外にはこれはちっとも未遂と既遂の変りようがないと思う。その点をあなたの方ではどうです。専門家として御解釈を願います。
  51. 井本臺吉

    井本政府委員 売春規定はいろいろむずかしい条項がありまして、文理的に追及いたしますと非常に困難な点もございますが、元来第三条単純売春におきましては未遂罪は罰しないということになっておるようでございます。五条の一項につきましては勅令九号の趣旨をとりまして未遂罪は罰するということになっておりますので、この第五条の一項の売春をさせた者という中には売春が完全に既遂になったものしか含まないというような解釈であれば、どのような場合に未遂罪があるかということの問題が起きますが、この問題につきましては売春関係の未遂罪もこの趣旨では処分するのではないかと私は考えます。
  52. 古島義英

    古島委員 こんなことでつかえておっては時間がきてしまってしようがないのですが、この法案が通ることを希望するがために特に聞くので、ほんとうに第二項がこのようにして罰せられるならば、第一項の約束をいたし、もしくは対償を得るというようなこと、すでに得たもの、すでに得んとするものもしくは約束をしただけで罰せられるもの——しかるにかかわらず一項の未遂を罰するということになれば、売春が未遂である。言葉をかえて言うならば、性交が未遂であったということ以外には何ものも入らないのです。そこで性交が未遂か既遂かということは、これは解釈の非常にむずかしいところで、強姦の問題では常に起るのですが、強姦の問題よりはさらにこれは問題があると思うのです。その点を聞いてこれで私は質問をやめますから、どうか明瞭に答えていただきたい。
  53. 井本臺吉

    井本政府委員 五条の二項におきましては、これは説明的に申し上げますと、業者売春をした者からその売春をした結し得た対価を受けるということの処分規定というように私は考えております。従って一項と二項はその処罰趣旨が違うのではないかというように考えております。なお五条の一項の売春が未遂であるか既遂であるかという問題は、これは強姦、強制猥褻等の規定の多年の判例の趣旨を参照いたしますれば、おのずから既遂がどの程度であれば完全にその要件が充足されるかということははっきりすると考えます。
  54. 古島義英

    古島委員 御答弁で納得はいたしませんが、これでやめます。
  55. 世耕弘一

  56. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 この法案通過することにつきましては、多数世論の支持を受けておると私は考えておるのであります。しかもこの法案は各派の議員賛成者、提出者によって出されたのでありまして、その数百七名に達しておるのであります。ところが審議の経過によりまして今日の情勢を見ますると、この法案はまことに難産のように私は考えられる。しかし法務大臣はこの審議の当初におきましてこの法案に対する態度を明らかにされたのであります。ただいまのお話によりますと、自分意見を述べると反対意見も出るおそれもある、是非についての意見は差し控えたいというお話でありましたけれども、あなたの六月二十五日当委員会における答弁によりますと、「必要ありと認め、その成案を得ることに関しては、人一倍の熱意を持って臨んでいる」がしかし遅れた理由は、売春問題対策協議会結論が遅れたためであると一応断わって、通過賛成反対かという猪俣委員の質問に対して「通過せられることを希望しております。」とあなたは積極的な御意見を述べられました。また「議員提案であるけれども政府といたしましてもこの通過に御努力なされる意思があるかどうか。」というのに対して「議員立法でありましても、その趣旨はよろしいのでありますから、でき得る限りの努力は捧げたいと存じます。」こう申しております。また「その法案が国会議員の諸君のお骨折りによって必ず通過することであろうと思います。どうぞすみやかに通過しますよう私も念願してやまない一人なんでございます。」法務大臣の、これはおせじにしてはあまりはっきり言い過ぎておる。でありまするから、あなたもこの法案をお読みになってこの御答弁をなさったのでありますから、ただいまにおきましてもこの法案反対する意思はない、通過のすみやかなることを願うという今日現在の御心境でありますかどうか、それをお聞かせ願いたい。
  57. 花村四郎

    花村国務大臣 私は始まりから申しておることでございまするが、本法案に対しましては、自分としての意見は相当に持っておるが、しかし議員立法であるがゆえにその法案内容に立ち入ってよいか悪いかというような批判は避けたいということは終始一貫して申してきております。でありまするから、従ってその法案がよろしいか悪いか、賛成するかしないかというような言葉を使うことになりますれば、要するにその是非批判するという結果に相なって参りまするので、従いまして賛成とも反対とも本法案に対する意思表示はいたしておりませんけれども、しかし趣旨としては賛成であり、しかも御承知のごとく今田中君の言われたように、百七人の各党の最も有力者、われわれの先輩もおれば同志もおるというような、これら有力なる議員提案に基く法案でありまするがゆえに、かような見地に立って考えまするとぎに、やはりこの法案は通してやりたいものだという気持を私は持っておったということを、ただいま田中君の言われたような言葉で表示したにすぎないと申してよろしいと思います。
  58. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 今法務大臣は非常に婉曲に、しろうとにはわからぬような法律家の言葉で説明せられましたが、速記録を読むとすぐわかる。通過賛成反対か、イエスかノーかということを聞いておる。通過せられることを希望するということは賛成するということなんです。反対したら通過いたしません。ですから私は通過せられることを希望するということは、この法案に対して賛成であるという、あなたは政府としての意思を表明されたものとわれわれは理解するのであります。そう理解してよろしいですか。
  59. 花村四郎

    花村国務大臣 理解せられるのは御勝手でございまするが、私の意思は先ほど申し上げた通りであります。
  60. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 これは白黒をきめたところで法務大臣ははっきり申しますまい。これは表決をしたら、記名投票でもすればどっちかしなければならぬでしょうけれども、私どもは速記録を読んで、通過されることを希望するというのでありますから、賛成であると私は理解をいたしております。売春問題対策協議会なるものは二十八年の十一月にできたものと聞いておりますがどうですか。
  61. 花村四郎

    花村国務大臣 二十八年の十二月十八日であります。
  62. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 この協議会は速記録によりますと、回数は非常に不正確でありますけれども、三十数回というのもありました。そこでこの前山高しげり氏を参考人として呼びまして聞きましたところが、二十九年、月はわかりませんけれども売春問題対策協議会の基本方針をきめて法務省に報告したということでありますが、その点はいかがでございましょうか。
  63. 花村四郎

    花村国務大臣 売春処罰すべきものであるという基本的観念をきめたことは間違いありません。
  64. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 ただ単に売春処罰すべきものであるという基本方針をきめたにすぎないので、ただ簡単な一行の報告で内容は何も報告はなかったでしょうか。
  65. 花村四郎

    花村国務大臣 詳細のことは刑事局長をして答弁させます。
  66. 井本臺吉

    井本政府委員 お答えいたします。売春問題対策協議会におきましては、全般的に売春処分すべきものであるということをきめたわけでございます。その売春のうちにはちょうど今度の法律案と同じように対価を得もしくは得る約束をして不特定の者と性交したものが売春であるという定義をきめまして、その余の不道徳行為は一応この対策協議会は取り上げないということにきめたわけでございます。なおこの処分に伴いまして婦女の保護処分保安処分あるいは転落に至る前のいろいろな救済方法も同時に立案すべきものであるという、全体的な方針をきめて、そのこまかい立案は小委員会もしくはその下の幹事会でせよということの方針が一応きまったわけでございます。
  67. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 それは何月でございましょうか。
  68. 井本臺吉

    井本政府委員 昨年の九月でございます。
  69. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 この売春法案が最初に出されたのは第二国会です。それから第十五国会、第十九国会、それから第二十一国会でありますか、今回で五回目のように承わっております。第二国会に売春法案を出して、それから七年たちますか八年たちますか、それらの長い間この法案が世の中に出ないでおる。しかも法務省はこの協議会を作って慎重にという言葉の陰に私は時をかせいでおるのではないかと思う。あなたがまだ法務委員会におられたときの第十九国会のこの法務委員会の記録によりましても、やはりこれは売春問題対策協議会が協議中だということを井本刑事局長も申されておる。しかもその反面に犬養国務大臣は、この問題は法案施行後における施策その他の処分については、いろいろやらなければならぬであろうけれども、この法案をまず作って先行するのだ、先に実施するのだということをこの委員会で申されておる。私は政府がそういうことを声明し、しかも第二国会におけるところの提案政府提案である。しかも国民の世論がここまで来て、今日この売春問題対策協議会というその陰に雨宿りをして、そうして今日時をかせいでおるということは、私はまことに政府はこの問題についての処置が怠慢であると思うのであります。そこでこういう問題を犬養法務大臣のときにはそういうふうに声明し、今日においてもあなたはこの法案趣旨には賛成のようでありますのに、まだ対策協議会成案を得ないからというので、われわれ議員が待ちくたびれてこの法案を出すというような始末である。ですからあなたはやはり与党の法務大臣として、この取締りの元締めとして、この法案に一臂の力をかし与えていただきたいと存じますが、いかがでございましょうか。
  70. 花村四郎

    花村国務大臣 鳩山内閣以前のことは、あえてここで申し上げる必要もないと思います。鳩山内閣になりましてからは、売春行為に対する取締り法規を作りたいと念願いたしまして、今日まで売春問題等対策協議会結論を得るように督促をして参ったつもりでありまして、この審議会の裏に隠れて時をかせぐというようなことは絶対にないと申し上げてよろしいと思います。
  71. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 先ほど井本刑事局長も、売春問題取締りに対する法規がたくさんあるということを申された。法務大臣も先ほど朗読されましたが、まだそれ以外にもあろうかと思います。勅令第九号を初めといたしまして、ことに東京都の都条例のごときは、ほとんどこの法案に近いくらい条文が書かれておるのであります。法務当局はこれらの勅令並びに条例を廃止する意思はもちろんない、維持する意思であろうと思うのですが、いかがでありましょうか。
  72. 花村四郎

    花村国務大臣 勅令並びに都条例を廃止する意思はございません。
  73. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 そういたしますと、私ども提案しておりまするこの法案は、勅令の九号、それからもろもろの条例にあるところの条文をこの売春法案の中に入れかえるだけだ、植えかえるだけだと思うのでありますから、私どもはこの法案そのものに対して政府ももっと積極的に協力すべきものである、内容については絶対的に賛成をしていただけるものと思います。もしそうでないならば、反対のことを盛り込んであるならばわれわれもそうは申しませんけれども、同じ範囲の条件のことをこの法案に移しかえたのでありますから、私はさように考えるのでありますが、法務大臣はいかにお考えになりますか。
  74. 花村四郎

    花村国務大臣 売春行為をなくすという点については、何人も異存がないと思います。しかし先ほども申し上げましたようにこれはなかなかむずかしい問題でありまして、法律を作ることのみによってその成果を上げ得るものでないことは周知の事実でございます。従いましてそこになかなかむずかしさがあるのでありまするが、この法案の影響するところは相当大きいものがあると申し上げていいと思います。でありますから、私どもはあくまでも慎重なる態度をもって今日まで協議会結論を見守ってきたような次第でございまして、今までの法律、勅令、政令をまとめて、その形を変えた法律にするのであるからよいのじゃないかというお話でございましたが、なるほど考えようによってはそれでいいという御意見もございましょう。しかしこういう画期的な法案は、やはり旧来あった法律を寄せ集めてまとめていくというようなものでなくして、今の新しい時代にぴったり合うところの、時代の流れに沿うた新しい立法をしていかなければならない、あるいはまた新憲法の人権尊重の精神にのっとって立法化をしなければならぬというような意味において重大さが増してくると申し上げていいと思いまするので、こういう観点から私どもは進めているような次第でございます。
  75. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 さらに二十一年の次官通達というものがありますが、その内容をお知らせ願いたい。
  76. 井本臺吉

    井本政府委員 次官通達をごらんになりますか。長いですが、読み上げますか。
  77. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 時間の関係がありますから概略でいいです。私の聞かんとするのは、今の赤線区域になっているもとの公娼施設、それに対する取締りの緩和か何かの通達が出ているようでありますが、その趣旨だけを聞きたいのです。
  78. 井本臺吉

    井本政府委員 昭和二十一年十一月十四日付で次官会議決定というのがございます。題目は、「私娼の取締り並びに発生の防止及び保護対策」というのがございまして、相当長文のものでございますが、一番問題になると思いまするのは、「公娼廃止後の風俗対策」といううちの3の備考に「社会上巳むを得ない悪として生ずるこの種の行為については特殊飲食店等を指定して警察の特別の取締りにつかせ、且つ特殊飲食店等は風教上支障のない地域に限定して集団的に認めるように措置すること。」というのがございますが、この点だろうと思います。
  79. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 その次官通達なるものは、公娼を廃止した結果、黙認して赤線区域を置いてあるというふうに私ども理解しておったのでありますが、ただいまの御説明によりますと、公娼廃止後における私娼云々という言葉がありまするから、公娼廃止後における政府の措置について次官通達を出したもののように解釈されます。そうすると、わが国におきましては公娼は廃止されているのでございますか。
  80. 井本臺吉

    井本政府委員 公娼は廃止されたままになっております。
  81. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 そうすると、われわれの理解しておりました黙認制度というのは、公娼制度の黙認でなくして、売春の黙認を意味するのでありまするか、どういうふうに理解したらよろしゅうございますか。
  82. 花村四郎

    花村国務大臣 それは黙認をいたしておるわけではございませんで、証拠の収集のでき得るものに限っては取締りを励行しておりまするが、人権の擁護の見地にかんがみて、慎重なる態度をもって、証拠のなきものは取締り対象にいたしておりません。
  83. 世耕弘一

    ○世耕委員長 田中君にお諮りいたしますが、約束時間が大へん超過いたしておりますから……。
  84. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 私は公娼制度は廃止されたが、売春については政府は黙認制度をとっておるのだと考えておる。ただいまの次官通達は、公娼制度は廃止されたけれども、その廃止後における私娼の処置についてのそれは通達である。私はこの委員会の決議によりまして委員長と吉原をこの間視察いたした。そのときにある一流の吉原の昔の女郎屋、今の娼家でありますが、そこに行きましたところが、十人の女性がアパートのような部屋に一々自分の名前の表札をかけてそうして長火ばちを置いて、たんすを置いてそこを自分の一つのうちとして売春行為を公然とやっておる。私どもはこれは昔の女郎屋とちっとも変りがないのじゃないか。これがいわゆる黙認制度による赤線区域の売春行為だ、こういうふうに考えたのでありますが、そういたしますると公娼制度がないというのにああいうふうに、前どころでない、もう歴然と——行ってみたらすぐわかる。そういう歴然たるものがあるのになおかつ取締りがむずかしいということに言葉をかりてこれを取り締らずにおるとわれわれは考えざるを得ない、この点いかがにお考えになっておりますか。
  85. 花村四郎

    花村国務大臣 なるほど仰せのように見たところはさように見えるかもしれませんがしかし果して現実に売春をやっておるかどうか、それはおわかりにならぬと思う。多分それは見られた方の御想像の上だろうと思いまするが、現実に売春行為を見た場合はもちろん取り締るにやぶさかでございません。
  86. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 私は公娼制度が廃止されたのでその意味で黙認制度をとっておる、こういうふうに考えておったのでありますが、公娼制度は今ない。しかしああいう行為をやらせておるという制度がまだ今残されておる。これはこの後における売春問題に対する大きな問題であろうと思いまするので、私どもはこの実態についてはなお調査を要することがあろうと思います。時間もきましたからこの程度で私の質問を終ります。
  87. 世耕弘一

    ○世耕委員長 古屋貞雄君。
  88. 古屋貞雄

    ○古屋委員 本件は大分研究をされ審議をされたのでございますが、一番問題になります点を法務大臣に承わりたいのです。ただいま山本委員からの御質疑に対して非常にあいまいな御答弁がございましたが、私は時間がございませんから端的にお尋ねいたしまするから端的に御答弁を願いたいと思うのです。  私は人権を尊重するということが今日の日本において何ものにも優先しなければならない。人権を守らなければならない。憲法の規定によってさように信じますが、法務大臣はいかにお考えになるかということを御答弁願いたい。
  89. 花村四郎

    花村国務大臣 憲法の基本的人権を尊重しなければならぬことはこれは当然でありまして、いかなる犠牲においてもこれを尊重していくべきであろうと思います。
  90. 古屋貞雄

    ○古屋委員 そこでただいま法務大臣単純売春については処罰対象にならない、むしろ保安処分とすべきだというふうな御答弁をいたしたように私は承わるのです。もしも私の聞き間違いでありますならば訂正いたしますが、さようにお考えになっておるかどうか。
  91. 花村四郎

    花村国務大臣 私はさような答弁はいたしません。
  92. 古屋貞雄

    ○古屋委員 そういたしますと私の聞き違いでございまして、処罰対象になる、かように考えますならば、現在審議中の第一条に基く、あるいは第二条に基く、あるいは第三条規定によりますところの売春処罰をするというこの原案は非常に重過ぎるとか行き過ぎであるとか、こういうような関係について法務大臣はいかにお考えになるか、明快な御答弁をいただきたいと思う。
  93. 花村四郎

    花村国務大臣 前から申しておりますように、本法案に対する是非についての批判は避けたいと思いますが、しかし少くとも売春行為に対する処罰に対してやはりそのよってきたる原因等を探究し、刑事政策見地に立って適当なる処置をしていくのが一番よいのじゃないか、こう存じます。
  94. 古屋貞雄

    ○古屋委員 売春が人間の肉を金に換算をしておるという点、本人の欲しないのにかかわらず肉を売らされておるという点、これほど人類の中で悲惨なものは私はないと思う。最も人権をじゅうりんされた典型的な事実だと私は思う。従いましてこれに対して法務大臣はただいまの御説からいきますならば相当急いでこれが処罰規定を制定をしなければならない必要が現在の社会にある、こういうふうに私どもは考えるのでありますが、法務大臣はさように考えるかどうか。
  95. 花村四郎

    花村国務大臣 御趣旨通りであります。
  96. 古屋貞雄

    ○古屋委員 なお私は進んで承りたいのですが、先日当法務委員会に参考人として出て参りました池上その他の方たちが現実に私どもの前においておごそかに供述をいたしました。その事実は、吉原における赤線区域の売春婦諸君は人工流産をいたしました日から男を強制的に取らされておる。またリンパ腺がはれて発熱をしておるにかかわらず強制的に男を取らされておる。しかも取らされておるところの実情は一日に五人ないし六人に及んでおる。こういうことをわれわれはここで承わりました。非人道的な行為日本の帝都のまん中で行われておる。しかも処罰規定があるにかかわらずこれを処罰しておらなかった。こういうような重大な人権じゅうりんが行われておるにかかわらず、しかも東京都条例があってこれを処罰することができるにかかわらず、今日まで放任されておったというこの事実に対する処罰法規の忠実なる適用者であり、実践者であり、国の代表者である警察庁あるいは司法警察官、それを指揮監督する法務大臣はこれに対してどういうお考えを持つか、御答弁願いたい。
  97. 花村四郎

    花村国務大臣 ただいま申されましたような事実もあろうかとも存じますが、しかしそれを知って放棄しておったという事実はございません。もしさような事実がありますれば直ちに取締りはいたすのでありまするが、要するに取締り当局にその事実が明らかでなかったんじゃなかろうか、こう存じますが、なおよく取調べてみたいと存じます。
  98. 古屋貞雄

    ○古屋委員 その点につきまして刑事局長の御答弁を願いたいと思います。
  99. 井本臺吉

    井本政府委員 お答えいたします。検察、警察の手の関係で調べの状況がそこまで至らなかったというに尽きると考えます。
  100. 古屋貞雄

    ○古屋委員 刑事局長警察の手が届かないということをおっしゃいましたが、さようなことでは私は納得いかない。それなら承わりますが、先日当法務委員会に参りました警視総監並びに防犯部長の説明では、何か東京都条例の制定されるときに、これには条件がついておった、こういうような意味のことを申して、実際に適用してないんだ、こういうことをおっしゃっていました。と申しまする答弁は、一体四分六分であるとか五分五分であるとかいう従業員と業者との利益の分け前の分配をきめるところに警察が立ち会っておるじゃないか、そういうようなお話のことが行われて、その答弁に、いわゆる都条例制定の場合においては、それはかつての貸し座敷、女郎屋というものを急速にやめるということになると、いわゆる業者の営業あるいは生活に影響を及ぼすということで条件がつけられたというようなことが行われておる、特殊事情に置かれておるから、知ってはおるし、見のがしておったんだ。こういう御答弁と食い違うのでありますが、それはどちらがほんとうでございましょうか。全く刑事局長のおっしゃるように、手が届かなかったかどうか。手が届かないという司法警察官が利益の分配の歩合まで立ち会うておるということが明らかになっておるのに、国民はそんなことでは承知しませんよ。捜査官が手が届かなかったということは承知しません。私自身も承服できないことで、国民も納得できない点でありますから、この点を明確に御答弁願いたい。
  101. 花村四郎

    花村国務大臣 都条例のこの種取締りに対して条件があろうとは私は考えません。それは先ほど刑事局長が申しましたように、やはり警察の手不足であるというところに原因があろうと申し上げてよろしい。
  102. 古屋貞雄

    ○古屋委員 この点はあと回しにいたしまして、もう一つ法務大臣に私の承わりたいことは、ただいま私が申し上げた趣旨について、法務大臣は御賛同をいただいておると私は確信をする。御賛同をいただいておるということになりますならば、今審議中の本法案は緊急やむを得ざる必要な法案である、法務大臣はこれに協力をしなければならない。先刻田中君からも申し上げたように、前会も当法務委員会におきまして花村法務大臣は本法案に対してはすみやかに通過することを希望する、しかも自分もでき得る限りの努力をささげて通過するようにいたしたい、こういうことを述べておられますので、本法案が現在の社会実情にかんがみまして——法案が完全であるかないかは別といたしまして、本法案並びに本法案のごとき骨子のものが現在日本社会において必要であるかどうか、こういう処罰法規が必要であるかどうか、この点の御答弁をいただきたいと思う。
  103. 花村四郎

    花村国務大臣 売春行為を取り締る法規の必要性は、これは認めます。そこで本法案は御承知のごとく各党の有力なる多数の諸君によって提案されたのでありますから、もちろん私などがこの通過に対して、少くとも妨害になりますような事柄をやるべきものでありませんことは、これはもう当然過ぎるほど当然でありますが、これら有力なる提案者諸君意思を推すときに、ぜひこれは通過さしてやりたいような気が強くいたします。
  104. 古屋貞雄

    ○古屋委員 この法務大臣、所管大臣の御発言は、重要な本案の成否に関係いたしますので、私は重ねて承わりますが、法務大臣は本年の六月二十五日、当法務委員会におきまして、こういうことをおっしゃっておる。「たびたび私から申し上げておりまするように、必要ありと認め、その成案を得ることに関しては、人一倍の熱意を持って臨んでおることをはっきり申し上げておきます。」こういうことを申しております。それからなお猪俣委員の、本案通過に対して賛成反対かという御質問に対しまして、花村法務大臣は「通過せられることを希望しております。」重ねて猪俣委員からの、通過努力されるかどうかという質問に対しまして、「議員立法でありましても、その趣旨はよろしいのでありますから、でき得る限りの努力は捧げたいと存じます。」こういうような御答弁をされておりまするが、花村法務大臣の現在の御心境は、ここに述べられたように承わるということでよろしゅうございましょうか。
  105. 花村四郎

    花村国務大臣 たびたび申しておりまするが、この種法案の必要であることは認めておりまするがゆえに、すみやかにこの法案のできますることを念願をいたしておる次第でございまして、これあるがゆえに売春問題対策協議会に対しても、しばしばその結論を出されんことを督促いたしておるような次第でありまして、売春行為禁止に関する法案の成立に対しては、今もなおかつその熱意は人後に落ちないつもりであります。  そこで本法案に対しましては、先ほどもしばしば申し上げた通り、有力なる各派の諸君が出された法案でありまするから、この法案については、私の意見を求むるならば、私も相当意見は持っておりまするが、しかしこの法案に対して批判を加えることは避けたいと存じますので、避けておりまするけれども、しかしせっかく百七人の有力なる諸君の出された法案でありまするから、通過かできるものなら通過さしてやりたいと私は念願をしておる、ということを終始申し上げておる次第であります。どうもこういう法案は出ない方がいいというようなことを祈っておることはありません。まあしかしそうかというて、賛成だということを意味するわけでもございません。(笑声)
  106. 古屋貞雄

    ○古屋委員 そこで私は承わりたいのでありますが、私は先刻、売春をされておりまする今の姿、しかも売春婦が病気であるにかかわらず売春を強制されておるということ、かような人権じゅうりんは非常に重大であって、これを処罰し絶滅させるということは現在緊急なことであるということを申し上げましたが、花村法務大臣からはその通りだという御答弁が行われ、ただいまはまたあいまいな答弁をされておりますか、法務大臣は所管大臣でありまするから、御自分責任においてなすべきことである。それを議員立法において補って差し上げておるのでありまするから、その点を十分御勘案賜わりまして、真剣に本法案通過に御努力願いたい、かように私は要望いたします。  なおもう一つは、先刻、これも私の聞き違いかしれませんが、本法案通過いたしましても、売春取締りということは非常に困難である、従ってこれには人権じゅうりんを伴う場合が多い、こういうことをおっしゃられておりましたが、私どもは従来のような捜査方法で行われますならば、なかなか困難でございましょうが、現在は科学的に非常な進歩をされておりますから、科学捜査をいたしますならば私は捜査はできると思う。ところが刑事局長もしばしばどうも捜査は困難である、証拠の裏づけが困難であるとおっしゃいますけれども、私はむしろそういうようなことは自分たちの責任のがれであって、真心からこの処罰を実践いたしまして、日本からかような人権じゅうりんを一日も早く払拭し、しかも亡国病であるといわれておるような性病を予防し、その伝播を絶滅するという誠意だけあれば私は必ず捜査できると思う。これについて法務大臣刑事局長の御答弁を願いたいと思うのは、ただ私どもが考えますことは、長年の日本におきますところの実情は、できないのでなくして、司法警察官の方たちがある場合には業者と結託をしておるというところに問題がある。業者から幾ばくかの保護を受けておるというところに問題がある。警察何々協会というものを作っておいて、たまに犯罪者を検挙する応援をしてもらうことを前提として、警察業者との間につうつうをいたしまして、暗黙のもとに認めるという弊害が顕著であります。これは日本人の常識であります。でありますから、こういう点に厳重なる一つの監督と、現代科学によって捜査したならば、私は密淫売の捜査はできると思うのですが、刑事局長法務大臣いかかでございますか。
  107. 花村四郎

    花村国務大臣 犯罪捜査に科学捜査を用うべきは今の時代の要請でありますが、しかし科学捜査もことによりけりであります。果して売春行為に科学捜査をもってその完璧を期し得るかどうか、これは私は大きい疑問があると申し上げてよろしいと思います。しかし本法案通過をいたしました暁は、取締り当局が熱意とそうして誠意とを持ってその取締りの完璧を期し、今古屋君の申されましたような御心配を除去することに努めたいと存じます。
  108. 世耕弘一

    ○世耕委員長 古屋君に申し上げますが、お約束の時間がそろそろ倍も超過するようになっております。簡潔にお願いします。
  109. 古屋貞雄

    ○古屋委員 そこで私がさらにお尋ねいたしたいのは、先刻から承わっておりますと、単純売春処罰する国の例は少いということを刑事局長は御答弁なさっておる。外国にどういうようなことがございましても、今現に日本において処罰か必要だという社会必要性がありまするならば、何も外国のまねをする必要はない。これが問題なんだ。しかもわが国におきましては終戦以来特別なアメリカの軍事基地があり、パンパンの制度という特殊の制度が起り、著しく人権が侵害されていることについては、国民ひとしく心ある者は何とかしなければならぬというので、民族的感情と申しましょうか、立ち上るべき日本の民族の将来に対して非常に心配をしておる。それで一方において予算の裏づけがないような処罰規定をこしらえることはどうもわれわれは賛成でないという議論も相当ございます。しかしながら私は、目の前に人権が侵害され、日本の亡国病が無制限に伝播していく姿をわれわれは見のがすわけにいかない。何ものよりも先んじてこのような処罰規定をこしらえる、従ってこれに伴って院議によって処罰規定が制定されますならば、おのずからいやでもおうでも政府においてその裏づけとなる予算を組まなければならぬ義務がある、こういう点においてそういう義務が生ずると私は考えますが、法務大臣どう考えますか。
  110. 花村四郎

    花村国務大臣 売春法が実施されるに至れば当然予算の裏づけが伴わないかというお話でございましたが、大体において伴う場合があるのであります。あるいは伴わない場合もありましょう。それは一にかかってその取締りの態勢をどう持っていくかによってきまろうと思います。
  111. 古屋貞雄

    ○古屋委員 刑事局長、先刻の御答弁を願いたい。
  112. 井本臺吉

    井本政府委員 もちろん法律通りますれば、われわれは法の執行者といたしまして、できるだけの努力をして、法の所期する目的を達しなければならぬと思います。従って、これに対しまして予算が足りなければ、適当な方法によりまして予算の増額をお願いするというのは当然であると考えます。
  113. 古屋貞雄

    ○古屋委員 最後に、労働省の発表をされました売春に関する白書を拝見しますと、本年の五月が売春婦の増加率が一番少かった。これは明確にデータで示しておるのでありますが、これは少くとも本院によりまして処罰規定提案がせられ、審議がされておるというこの現実が効果としてはっきりともう現われてきたものであると私は信じます。従いまして、私どもはこの法案通過させることによって、完全なるところの売春を禁止することはできませんけれども、完全法規ではございませんけれども、完全に目的を達することは不可能でありますけれども、相当効果は上り得ると私どもは確信いたすのでございまするが、この点について最後に法務大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  114. 花村四郎

    花村国務大臣 売春行為に対しまする世の批判が強くなって参りましたので、従って新聞等においても特にこの問題を取り上げる傾向を持って参りました。従って何か売春行為でも著しくふえてきたのじゃないか、あるいは取締りを特に励行するようになったのじゃないかと考えられる節もありまするが、決してそういうわけではございません。従来通り取締りもやはり変りなく一様にやってきておりまするけれども、しかし社会の耳目を聳動せしめて、この問題にあらゆる眼が集中しておることだけは間違いないと申し上げてよろしいと思うのであります。従いまして、売春行為禁止に関する法案が、その是非は別として、もしも何らかの法案が国会を通過するということに相なりますれば、その法律効果の伴って参ることは当然認めてよろしいと思います。今日法令が出てそして適用されておらないような法令も、ある意味においてはあると申し上げていいと思う。けれども、その法令があるがためにその禁止行為がやはり多少でも予防防遏されておるという事実は認めぬわけには参りません。かような見地から考えますれば法案通過すれば、その法律効果が絶無であるとはわれわれは考えません。がしかしどれほどの効果があるかは、これは大きな疑問の一つであると申し上げてよろしいと思います。
  115. 古屋貞雄

    ○古屋委員 ただいまの疑問があるという法務大臣の御発言、これは神様でないからわかりませんけれども、われわれ国民常識から申しましても、効果の上ることは必ず間違いないと思うのです。しかも現在のような状況では売春は黙認されておる。売春が悪であるというところの意思表示を国家はしておりません。従いまして、本法案によって、はっきりと売春が悪である、しかもこれらの人を利用し、これらの人人を悪用いたしまして、莫大な不正な利益をとり、あるいは場所を提供し、あるいは資金を提供し、あるいは誘惑をいたしまして悪業に従事せしめますところのかよわい婦女子をいじめておるこの姿に対して処罰を厳重にするということは、これは犯罪予防の上からも重大なことであって、当然に法務大臣はなすべき義務があると思いますので、そこでその点を十分勘案されまして、これが通過いたしました場合には厳重に適用され、所期の目的を達するように努力願うことを要望いたしまして、私の質問を終ります。
  116. 世耕弘一

    ○世耕委員長 吉田賢一君。
  117. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 私は要約して三点について法務大臣、文部大臣などに伺いたいのであります。  まず法務大臣に聞きますが、この間のあなたに対する私の質問に対し、あなた並びに厚生大臣がもっぱら売春問題対策協議会の決定に、鳩山内閣の態度としてはよる、こういう趣旨の御答弁があのたのであります。そこでこの協議会の決定案というものに非常に重きを置いておられる。私はあなたらが協議会の決定に籍口して責任を転嫁することは、まことに筋の通らぬ態度であると責めておったのであります。そこであなたに伺いたいのだが、この売春問題対策協議会におきまして大体成案を得まして、あなたもごらんになっておることと思うのであります。この出ておりまする成案は、私は全部詳細なものを持っておりまするが、これによりますと、やはり本法案とほとんどかわりないのであります。たとえて申しますと、売春行為者を処罰する規定がある。ことに相手方に対しましては、相当厳罰をもって臨んでおります。また周旋行為あるいは場所の提供、あるいは売春をさせる契約、あるいは娼家を経営し管理する者等々、これらに対する処分はいずれも懲罰をもって臨んでおる。それほどあなたが信頼せられますこの協議会の基本方針なるものは、相当厳罰をもって臨んでおるのでありますが、一体あなたはこれに対してどういうふうにお考えになっておりますか。
  118. 花村四郎

    花村国務大臣 売春問題対策協議会結論に全面的にたよっておるのじゃないかというようなお話でありましたが、そういう意味ではございません。吉田内閣のときに、この重大なる法案はやはりあらゆる学識経験者を集めて、そうしてこれらの意見を聞いた上で法案を作るべきものなりとしてあの協議会を作ったのでありますが、鳩山内閣はこの協議会を受け継いで今日に至っておりますが、この協議会結論にたよっておるというのではなくして、せっかくできたこういう協議会意見は相当に尊重して、そうしてこの尊重すべき意見を取り入れて、なお私どもは厚生省やあるいは労働省ともひざを交えてこの問題を検討した上でりっぱな成案を得たい、こう考えておりますので、従ってこの売春問題対策協議会というものの意見だけをたよりにしておるわけではないということを御了解願いたいと思います。  それからもう一点は何でしたか。
  119. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 この協議会が要綱を作っております御趣旨を通覧いたしますと、本法案とほとんど類似になっておることは、あなたはこの要綱については熟読されたものと思います。これについてのあなたの感想を聞いておきたい。
  120. 花村四郎

    花村国務大臣 この売春問題対策協議会結論は出ておりません。まだ私の方へその答申もきておりませんし、聞くところによれば結論が出るまでに到達しておらぬということであります。
  121. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 最終的結論でなくても幾たびか協議を重ね、幾たびか審議を重ねまして、世の有能な人、有識者、この問題で熱心に研究をしておられる人々が集まって、しかしてあなたの前任者が法務省にこれを設置してやっておる、実に権威ある唯一の団体であると私も考えております。最終的な結論でかりにないといたしましても、相当まとまったものができておることは御承知だろうと思う。全然ないということは言わせません。何となれば相当詳細なものがわれわれの手に入っておるのでありますがいかがでしょう。
  122. 花村四郎

    花村国務大臣 結論の出ておらないことはただいま申し上げた通りであります。それは結論でないのであります。
  123. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 あなたはこの協議会につきまして吉田内閣から引き継いだものである。もっといろいろな各方面の意見を取りまとめてよりよい協議会を作りたいような御意向もちょっと漏れている。そんなに不信な協議会ならは解散してしまたっらよろしい。しこうして前任者の犬養健君はこの法案提出者として署名している。いかに今日は与野党の違った関係にありとはいえ、前任者の法務大臣が作りました協議会がそんなに気にいらないものならばつぶしてしまえばいい。そういうこともしないで、前回のときには——今あなたはこれにたよるということはないとおっしゃるけれども、しかしあなたは、現内閣は協議会結論を得て、それによって成案を得るのだということをはっきりおっしゃっている。厚生大臣は同断であるという答弁である。内閣を代表しておられるので、総理大臣でないけれども、閣僚の一人に対するわれわれは質問であります。でありますから閣僚としての法務大臣協議会答申を待って内閣はこれに対する態度を最終的にきめるということを申しました以上は、これはたよるという言葉が適当でないとするならば、それによって成案を得るのである。こういうふうに理解することは何の妨げもない。しかるに今はこれにたよることがなくしてもっといいものを作りたいような言葉が出ております。そういうような役に立たぬようなものはつぶしてしまってはどうです。そうでないならば、このりっぱな人がやっておられる協議会のいろいろと討議いたしておりまする状況につきましてもあなたは御承知だと思います。それが大体の構想というものはやはり刑事処分といたしましては、売春行為者の婦人につきましてはそれは保安処分、たび重なるときにはこれに対してそれぞれ懲役処分ども付するような意見も出ておりますけれども、それ以外はむしろ本案よりももっと強く刑罰をもって臨んで参っているのであります。第三者の婦女を誘惑して暴利をろう断して人権をじゅうりんするというものは極悪のものであるというような思想がもりもりしている。これは今日のこの協議会の審議の実情であります。最終の成案が出ておらないからといって白々と逃げることは私は無責任だと思う。かりにも法務省において前大臣が設置している有力なる機関であります。何か御意見ありましようか。
  124. 花村四郎

    花村国務大臣 売春問題対策協議会は有力なる協議会でありまするゆえにその意見を尊重、すると私は申しているわけであります。従いましてその結論が出れば、その結論を有力なる資料として、さらにその法案作成の完璧を期したいと考えております。
  125. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 それならばなお一、二突っ込んで聞きましょう。これは最終の成案でないといたしましてもかなり最終の成案に近寄ったものがまとまっておることは御承知だと思う。今の重要な段階でありますから、そんなことまでしらじらしくお隠しにならなくてもいいと思うのだ。そこでたとえばこの規定状況を見てみますと、周旋業者に対しましてもあるいは場所の提供者に対しても、娼家の経営者に対しましても、あるいは売春をさせる契約をいたしました者に対しましても、これらにつきましてそれぞれ懲役刑または罰金刑をもって臨んでおります。ことに営利を目的といたしまして婦女に淫行をさせるような契約をいたしました者、こういう者に対しましてはかなり詳細な規定すらいたしております。言いかえますと、これを要するに売春行為者の婦人に対しましては割に寛大でありますけれども、しかしそれ以外の一切の関与者、これに介在いたしました者、協力いたしました者、利益を提供いたしました者、営利として経営いたしました者、そういったものをことごとく処罰せんとするのがこの協議会に流れている空気だろうと思うのであります。これは同時に外国の例をおあげになりましたけれども、しかし内国におきまして条例並びに勅令の趣旨は、同時にやはり両罰の態度をもって臨んでおるのであります。勅令はそうでありませんけれども条例はすべて両罰の態度をもって臨んでおるのであります。こういうことでありまするから、やはり今の段階におきましては、世論は、適当なる処罰規定を織り込んだ売春法成立というものがほとんど熟しておる、こういうふうに私は考えて差しつかえないと思う。申すまでもないことだけれども、政治の要諦は、やはり世論が熟しましたら逃がすことなくそれを取り上げまして、そうして政治の上に結実せしめるということが、私はその要諦でないかと思うのであります。あなたも四十年法曹の練達の人として来ておられる主管大臣といたしまして、まさにこれを立法しなければならぬときであります。あいまいな態度をもっていくべきときじゃありません。こう思いまするときに、この対策協議会の審議の状況に顧み、あるいはまた世間の今日の状況に顧みますときに、これはやはりこの際かかる法案をすみやかに成立させねばならぬということは、あなたはまっ先に声を高くして賛成せらるべきお立場じゃないかと思うのであります。いかがですか。     〔委員長退席、三田村委員長代理着席〕
  126. 花村四郎

    花村国務大臣 吉田君の御意見を有力なる資料の一つとして考えの中に織り込んでおきたいと思います。
  127. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 第二点は、今日の世論なるものは、ほとんど全国的なる婦人団体のすべてを網羅いたしまして熾烈に本法案の成立を切望しておるというのが現状であります。のみならず、無数の依頼の投書、激励の電報なども参っております。ここにごらんになっておりまするように、これはほんの一つの例にすぎませんけれども、数万の陳情書を署名いたしましてはるばる九州の果てから送って来ておるのであります。こういったことは、これはやはりあなたといたしまして見のがすことのできない最も切実な現実の国民の要望である、こういうふうに私は考えなければならぬと思うのであります。今有力な意見としてというようなお言葉もありましたがそんなことはどちらでもよいといたしまして、ともかく具体的に、現実に全国の婦人は、最も健全な世論を代表いたしまして、また婦人の人道的な立場からいたしましても、人権の擁護の見地から、風教の見地から、あらゆる角度からいたしまして、ほんとうに身をもってすみやかなる実現を要望しておるということが今日の実情であります。これをいいかげんに考えること、権力の座にある者がこの国民の声を無視するということになることはもってのほかであると考えざるを得ないのであります。大臣どういうふうにお考えになりますか。
  128. 花村四郎

    花村国務大臣 売春行為を禁止する法案の成立を熱望しておる多くの人のあることは認めます。かるがゆえに、私どもも一日もすみやかにこの法案を作ろうといたしまして苦心をいたしておる次第でございます。
  129. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 あなたに具体的に聞いてみますが、今かかっております売春処罰法につきましてしさいに御検討になったものと思いまするが、この法案自体についてどこか反対の個所でもあるのでありましようか。
  130. 花村四郎

    花村国務大臣 その点は、もうしばしば申し上げましたように、私として申し上げたいこともありまするが、しかし有力なる多くの各派の諸君提案された法案であるがゆえに、その内容に対するよいか悪いかというような批判は差しひかえる方が適当であると考えております。
  131. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 この点は、私もくどくなるようでありますけれども、あなたはやはり国務大臣として、閣僚の一人として、そうして主管法務大臣といたしまして何らかの意見を求められた場合には、それは同僚であろうと、何党の何議員提案者であろうと、賛成者であろうとにかかわらず、国会に対しましてはしかるべき意見をなすことが、また答弁をなさることが、私は当然の道であると思います。これを同僚、有力なる同僚か無力な同僚か知らないけれども、百七名のともかく議員提案しておるものであります。各党にわたっております。でありまするから起党派的であります。これに対しまして、あなたのお立場としては、やはり法務大臣としてしかるべき所見を述べなければならぬと思うのであります。くどいようでありますけれども重ねてこの点はもう一度聞きます。
  132. 花村四郎

    花村国務大臣 本法案に対しまして、その法案内容に立ち至っての質問は、これは提案者になすべきが至当であり、また旧来の例といたしましても、提案者にこれが質問をし、そうしてまたこれに対する内容について応答が行われてきておりますことは、過去の慣例に見てもきわめて明瞭であります。私も実はその意見を述べたいような気持がしないわけではありませんが、しかし政府当局として、議員諸君が出された法案に対して、ここでかりに反対意見を、堂々と述べなんでも述べるというようなことは、あまりどうも好ましいことじゃないじゃないか、こう考えまするので、意見を述べろといえば幾らでも述べますから、それは適当なる機会を得て、この法案に対する批判意見を述べる方が穏当ではないかと、こう私は考えておりまするがゆえに、今まで何度も繰り返して申し上げたような次第でありまして、決して何も答弁を逃げておるというわけでも何でもございませんから、そこのところは千軍万馬の中を往来してきたその筋の大家である吉田君も御了承を願いたい。
  133. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 それでは次に伺いますが、昨日の都下の一流新聞の記事によりますると、本法案通過阻止のために反対運動が猛烈に起されておる、しかして五千万円の運動資金が調達されておる、なお官庁用の資金すら集められておる、あるいは政界にまかれておる、こういったことが載っております。私はこの法案の賛否の意見のいかんにかかわらず、とかく重要な国民的関心を持つ法案が出るときには、いわゆる反対運動なるものが、ある利害関係者によって起され、多額の金が使われるというようなことが日本の政界には絶無でない、ことにここ一両年来、政界の疑獄、汚職というものは、これはあなたもまのあたりごらんになっておる。鳩山内閣も綱紀の粛正ということは一つの看板にせられておる。こういったうわさの中にこの法案が審議せられるということは、一体八千万国民は何と感じるでしょう。国会は再び黄金に包まれたのじゃないだろうか、黄金が政界を動かすのじゃないだろうか、黄金がこの法案を葬ってしまうのじゃないだろうか。第二国に出て、その後四たび出て、あるいは廃案となり、あるいは審議未了となって、全国の正しい世論の支持を受けて幾たびも国会に出ながら、ついに日を見ることなくして今日に至っておる。今日の世論は成熟しておる。命がけで全国から婦人が、この法案の成立を望んで東京に集まっておる。このときに金力がこの法律案を阻止するというようなことがあったならば、一体どうなるだろうということを、私は声はないけれども国民は心の中でほんとうに心配しておると思います。非常にこれは重大な事実であります。これの真相、真偽は別として、かくのごとく伝えられるということは、重大な事実であります。これに対して法務大臣は何とお考えになりますか。
  134. 花村四郎

    花村国務大臣 ただいま吉田君の申されました、黄白によってこの法案を左右しておるのじゃないかというような事実は、断じてないと私は信じて疑いません。もしかりそめにもかくのごとき事実ありとするならば、吉田君から一つ国会名誉のために、どの場所において、いかなる犯罪行為が行われたかの具体的事実を示していただけば、取締り当局として直ちにもってその捜査に当ることに、あえてちゅうちょ逡巡するものではございません。
  135. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 私は具体的な事実を申し上げておるのであります。その具体的事実とは、昭和三十年七月十八日の朝日新聞の記事であります。この朝日新聞の記事をあなたはごらんになっただろう。この朝日新聞の記事によりますと、「業者反対が奏功?」という見出しがつけられておる。「「五千万円の資金」全国の業者から集める」というような見出しがつけられておる。いろいろな内容が述べられておるのであります。投書もあったらしい。この事実はどうなさる。この事実は一体だれがどう解くのですか。法務大臣は、私に黄金が流れておる事実があるならばそれを示せとおっしゃる。私は黄金が流れておるとは言っておるのじゃないのです。かかる事実ありというような記事がありますが、どうですか、こういうのであります。でありますから、これに対しては、どうなさいますか。はっきりしましょう。
  136. 花村四郎

    花村国務大臣 新聞記事に載っておるから、必ずしも事実ありとの断定はできないでありましょう。また少くとも国家の威信に関する、この種法案に関する涜職問題を取り上げんとするならば、証拠の面においても慎重を要すると思うのでありまするが、新聞記事に載っているの一事をもって、直ちに涜職問題があるかのごとくに考えられる吉田君の考えを私はどうかと思うのですが、そういう問題はもう少し私は慎重に扱っていただきたいと思いますし、もしかりにもそういう行為がありとするならば、それは断じて容赦をいたさぬことをはっきり申し上げておきます。
  137. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 刑事局長に伺います。大臣はああいうお話がありましたが、私は黄白が流されているという事実を言うているのじゃないのであります。この記事を読み上げてもよろしいのですよ。たとえばこの中には、「反対運動の資金として新宿の青線業者たちは一戸あたり千円を集め、また関係官庁用として三百円を徴収、青線業者の全国的組織を結成する準備を進めているが、一方、赤線でも運動資金を集めたところがある。自治会本部では「運動資金は割当てなかったので、余り集らなかった。もっと金があれば派手にやってますよ」と語っているが、吉原のある従業婦から「一家ごとに千円ずつ集め……」」これは記事でありますよ。記事でありますが、議員云々という文字まであるのであります。「だから法案は通るわけはない。日本中から五千万円を集めてばらまくのだと、」言っているというような、こういう投書があるという記事であります。でありますので、一流新聞のこの記事を見ましたら、何もないとは思わない。何かあるのじゃないか、何かあるのじゃないかということが、まことに重大な事実でないかと私は申し上げるのであります。だからそこらに煙が立っている。その煙が立っているということは非常に重大な事実であります。見のがしてはいけません。この重大な事実を、検察に対する指揮をなさるお立場として何とお考えになるか、こう申し上げるのであります。私が国会のこの委員会においてかかる発言をする以上は、何らか適当な手が打たれてしかるべきではないか。そして真にガラス張りの中におきまして、何人も疑うことなく国会の権威が保持せられて、そして堂々議論を戦わしていくというところに、私はかかる法案ほんとうの望ましい姿なり、雰囲気があるものと思うのであります。でありますからこれに対するお考えを聞いているのであります。どこに黄金が流れておったか、どこに涜職があったか、そんな事実があれば持ってこい、しからば検察権の発動をするというような、そういうことを私は申し上げたのではないことは、今さら私が申し上げるまでもなく、賢明な法務大臣は言葉くらいはよく御理解下さっているものと思う。刑事局長はどうなさいます。
  138. 井本臺吉

    井本政府委員 業者の間におきまして、どのような資金が集められたか私は存じませんが、事いやしくもこの法案関係いたします公務員に対しまして、この金が渡ったというような事実がうかがえるような事態が起りますれば、先ほども法務大臣が言明されました通り、これは仮借なくさような者は厳重に取り締って参りたいと考えます。
  139. 三田村武夫

    ○三田村委員長代理 委員長からも申し上げておきますが、ただいまの吉田君の発言はきわめて重要な意味を持っていると思います。売春等処罰法案の審議をいたしておりますのは当委員会であります。ただいま吉田君も御発言のごとく、去る十八日の朝日新聞の記事でありましたか、われわれも非常に重大な関心を持ってこれを読んでおるのであります。政府におかれましては、一つ厳重にその事実と真相を御調査の上、しかるべき機会に当委員会に御報告あらんことを委員長から切望いたしておきます。
  140. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 法務大臣はこの客観的な、漕職的事実の有無ということではなしに、この事実に対してはどうなさいますか。
  141. 花村四郎

    花村国務大臣 ただいま刑事局長の述べたところと同一であります。
  142. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 私は、この法律案が本委員会にかかりまして、あらゆる角度から検討して参っておりまするときに、利害関係のあるものの物質的圧力というようなものが、いささかでも意見を左右するということがありましたならば、これは国会の名誉のために断固として排除しなければならぬというふうに考えておるのであります。従って、今大臣も刑事局長も同趣旨答弁をなさいましたし、また委員長代理からも要望がありましたので、これはすみやかに何らかの措置に出られんことを要望いたしておきます。そこで文部大臣になお質問が残っておるのですが、まだ見えぬのですか。
  143. 三田村武夫

    ○三田村委員長代理 吉田君に申し上げますが、文部大臣はどうしてもやむを得ない要務のために本委員会に出席できないという申し出があります。御了承願います。
  144. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 それではやむを得ません。  では最後に簡単に法務大臣に伺っておきます。この法律案は議員提出案であることは申し上げるまでもございません。私どもといたしましては、かかる議員提出案というものは、本来の国会の審議の建前からいたしまするときには、でき得る限り審議する立法自体について賛否の態度をきめるということをやはりあくまでも守るべきものでないか、こう考えております。この法案に対する賛否を明らかにすることなく、ことに個々の条文についての賛否を明らかにすることなく、別に政府に対して法案を発議せんことを要望するようなものの考え方は、これは国会の軽視であり、また国会法に基く議員の発議権そのものをみずから軽視していることじゃないか、こう考えるのですが、いかがお考えになりますか。
  145. 花村四郎

    花村国務大臣 この法案を軽視いたしておりまする気持は毛頭ございません。
  146. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 私は、国会議員の発案の権限、それから国会議員の発案いたしました法律案というものに対しましては、それ自体に対する賛否、それ自体に対する可否を論議していく考え方が本来の建前でないか、それを、賛否を表明することなく、内容についての可否を述べることなく、明らかにすることなく、政府に向って法案提出を求めるというものの考え方は、これは間違っておるではないか、こういう趣旨なんです。お問いしておるのは……。
  147. 花村四郎

    花村国務大臣 私もよくわかりませが、その点の御判断は吉田君のお考えにおまかせしておきたいと思います。
  148. 三田村武夫

    ○三田村委員長代理 細田綱吉君。
  149. 細田綱吉

    ○細田委員 労働省の発表するところによると、毎月二千人から三千人ずつ売笑婦がふえている、ただし五月、六月は横ばいの状態であるということは、これは申し上げるまでもなく本法案が本院に提案されて審議され、世論が非常に高まったからであろうと思う。本委員会で他の先輩委員諸君のお話を聞いてみますと、たとえばヴェトナムというような、ああいうようなところまで、中共なんかはもちろんのこと、いわゆる新興国家はどこも、絶無とは言わないがとにかく非常な売春婦の減少を示している。ところが日本だけがどうしてこう二千人ないし三千人ずつ売笑婦がふえてくるのか、これが非常に問題だ。第二国会において政府みずから売春取締法を出した。ところが当時これの更生施設が伴わないというようなことで、これが審議未了になってしまった。ところが八年もたって、それじゃ更生施設の方は何か政府の方が力を入れたかというと、ちっとも力を入れていない。法律を出そうと思えば更生施設がなくてだめだといってやめる。八年もたって、更生施設をこしらえないから、やむを得ないから議員がお互いに相はかって法律を出そうとすると、また同じようなことを言われる。これでは日本が世界最大、最高の名誉ある売春国という汚名は、内外ともに充実するかもしれませんが、ちっともこれは片づかない。従って何かまた企画をしてこの法律を通すことによって、更生その他の施設あるいは国家の予算が計上されることになると思うが、第二国会以来この二千人、三千人とふえてきたことに対して政府はどういう対策を講じたか。あるいはまた、よその新興国家はいずれも売春婦が非常に減っているのにかかわらず、日本だけがどうしてこうふえてきたか、その原因はどこにあるか。この点を法務大臣でも刑事局長でもけっこうですから御答弁を願いたい。
  150. 花村四郎

    花村国務大臣 売春行為がふえて参りますることはまことに遺憾でありますが、しかしふえまするについてはそこにやはりふえるべき原因があろうと思いますので、その原因をつぶきに探究して、そしてその源を断つ施策を講じていかなければならないと存じます。しこうしてその原因には経済的の原因もありましょう、あるいはまた性道徳の低下に関する原因もありましょう、あるいはまた失業等々というような原因もありましょう、いろいろそこに原因が根ざしましてそういう結果が起きて参りますから、そこで私は今までも常に申しておることでありますが、その原因をためずして、ただ一片の法律だけの取締りでこれを少くしていこうというようなことを考えて、これのみにたよっていくということは百年河清を待つの愚にひとしいものだ、こう申し上ぐる次第でありますが、先ほども申しましたように法律を制定することが効果がないというのではないが、それよりもそのよって起きる原因をためるということが必要じゃないか。そこで鳩山内閣前のことは私はここで申し上げることを避けますが、少くとも鳩山内閣に相なりましては、厚生行政の面においてこれらに対してある程度の重要性を認めて善処をしてきておることだけは申し上げてよろしいと思うのであります。     〔三田村委員長代理退席、委員長着席〕 知のごとく国家経済の乏しい折でありますから、こういう面に直ちに多くの費用を投ずることはなかなか困難が伴うことではございますが、この伴うところの困難を克服して、幾部分なりともこういう面に力を注がなければならぬということでやってきておることだけははっきり申し上げてよろしいと思いますか、その詳細なる具体的事柄については、法務省の所管でありませんから厚生省の方面にその答弁を求めていただきたいと思います。
  151. 世耕弘一

    ○世耕委員長 細田君にちょっとお諮りいたしますが、法務大臣はまだ食事をしていないようでありますから、十分間ほど中座さしてほしいとの申し出があります。よってその間刑事局長質疑をお進め願いたいと存じます。
  152. 花村四郎

    花村国務大臣 夕飯を食わずにやりますから、けっこうであります。
  153. 世耕弘一

    ○世耕委員長 細田君に申し上げます。法務大臣は夕食はあと回しでいいという非常に御熱心な御様子でありますから、質疑をどうぞ御継続願います。
  154. 細田綱吉

    ○細田委員 あなたは原因を探求して、失業問題もあるだろう、経済問題もあるだろう、それはどこの国だって同じなのです、ただ日本だけがどうして二千人、三千人ずつ毎月ふえていくのか、司法当局がその原因を探求しなくちゃならぬのですよ。しかも第二国会にこの問題が出ている限りは、もう一その問題の探求ができているわけです。だからひとり日本だけがどうしてこういうふうに売笑婦がふえていくのか、その原因は司法当局の眼から見てどこにあるのかということを伺い重たい。  それから厚生当局としては、第二国会に政府みずからこういう法案を出されて、しかも更生施設がないということによって流れてしまったというこの事実にかんがみまして、自来八カ年どういう施設を講じられておるか、その点を伺いたい。
  155. 花村四郎

    花村国務大臣 ただいまの御質疑でありますが、この面に対するいかなる資料を集めておるかはまだ聞いておりませんから、いずれ調査の上お答えをいたしたいと存じます。
  156. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 現在この種の婦人の更生保護施設が全国で十七カ所ございまして、収容されておりますのが七百数十人おるわけでございます。昭和二十二年から二十九年までの八年間の合計で申しますと、大体この施設を利用いたしまして退寮いたしました者が一万三千七百二十六人でございます。  御質問の趣旨は、二十二年以降におきましてもっとこういう施設をたくさん作れなかっただろうかということだと思うのであります。この施設は御承知のように別に強制力があるものではございません。中に入れまして、そしてなるべく早く社会復帰をするようにということで、職業的あるいは社会的の訓練をいたしておるわけでありますが、しかし一方におきまして売春が行われておる、その片方におきましてそういう者を強制力のないそこに入れましても、やはり元のところに戻っていくというのもございますし、必ずしもこの施設を要求するほど入寮の希望者かないわけでございます。中に入りました者の種類も、初め進駐軍がおりましたときに狩り込み等をいたしまして無理に連れてきましたのとだんだんと変りまして、あるいは身体的にあるいは精神的にいろいろ欠陥がございまして、長くそういうところに固定するというふうな傾向の者もございますし、あるいはまた転落一歩前で家人等を一時保護するためにそういう施設が使われるというようなこともございます。本来の目的にももちろん使われておりますが、そういう状況でございますので、やはりこれは取締りとそういった更生保護ということと並行していかなければ、こういう施設が完全な機能を発揮することはできないのじゃないかと、こういうふうに思っております。
  157. 細田綱吉

    ○細田委員 ただいま厚生省の方においても、取締りと並行しなくちゃできないという。これは法務大臣は鳩山内閣の法務大臣で就任後日浅いかもしれませんが、政府責任者として、法務省としてはその原因がどこにあるかまだわからぬというようなことでは、私は日本の閣僚は勤まらないと思う。刑事局長はどうして日本だけがこういうふうに飛躍的に売春婦が増加するか、事務当局としたどこに原因があるのか、その点をどう見ておられるか御答弁願いたい。
  158. 井本臺吉

    井本政府委員 統計の数字はいろいろの計算方法によって出て参りますので、私ども売春に関する統計は集娼七万二千、散娼四万六千という数を数えております。従って毎月二千ずつふえておるというようなことは、私さような結論に達していないので、どんどんふえておるというようには考えておりません。取締り関係からいきますと、先ほど厚生省からの答弁がありました通り、更生施設の保護施策を伴う取締りで、なければこの問題については有効な取締りはなかなかできがたいということは常々考えております。
  159. 細田綱吉

    ○細田委員 そこで一つ御苦労ですが法務大臣に、厚生省は取締り規則が必要だといい、法務省の事務当局取締り規則と並行して更生施設が必要だという、こんないたちごっこをやっておったら、いつまでたってもきりがありません。大体昭和二十二年以来今まで依然として一歩も進んでいない。だからまずこの法案を通して悪い点があったら途中でまた改正したらいい。こういう法案を通して、そして予算なり施設の裏づけをあとでするということをどっちかがしない限りは、一歩も日本売春問題は解決しない、これはどうお考えになっているか、お伺いしておきたいと思います。
  160. 花村四郎

    花村国務大臣 売春行為禁止に対する施策法案と並行してやらなければならないとは私は申し上げません。でき得ることならば売春行為のよって起りました原因を探究して原因防止に対する適切なる処置をしていくことが願わしいことでありますが、しかしこれに対しましては予算の伴います関係もありますので、その数額のいかんによっては直ちにもってこの面の施策を行なっていくということはなかなか困難であります。従ってそういう場合においては法案を先にするということもまた考えられると申し上げてよろしいと思う。必ずしも並行する必要はありませんが、売春行為防止に関するあらゆる観点からこれをながめて、そして適切なる処置を講じていくことが必要である、この必要の前には施策が先であろうが法律が先であろうが、あえてその前後を論ずるものでない、こう申し上げてよろしいと思います。
  161. 細田綱吉

    ○細田委員 それだからこの法律案を通してくれというわけです。この法律案を通さなかったら一歩も前進しないというのです。  それでは次に刑事部長に伺います。都条例のことはこの前警視総監から何か条件付で通ったのだ、だから手心を加えているのだという御答弁があったが、しかし御承知のように必ずしも法律を条件が拘束するわけではないと思う。また都条例だけではなくて、全国的に売春禁止の条例が非常に多い。しかるに先ほどから法務当局の話を聞いていますと、今までも一生懸命やっていたんだ、そうするとこの法律案がかりに通ったとしてもあなた方にお預けしておいたのでは一歩も日本売春解決しないということになるのだが、警察当局としてこの法案が通った場合と通らない場合とはどういうふうにあなた方の心がまえが違うか、その点を伺いたい。
  162. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 ただいま議題となっております法律案が成立いたしました場合におきましては、その法律趣旨ほんとうに第一線に徹底するように連絡はもちろんでございますが、予算上のこと、人員上の配置、そういった点は根本的にいろいろ検討いたしたいと思っております。現行法におきましては、御案内のごとく東京都外五十数団体におきまして売春条例がございます。この条例に基く犯罪取締りはやっておるのでございますが、現行法は公共団体、市町村または府県の立法でございまして、その関係取締りにつきましては、大体人員、予算等も——いろいろな一般犯罪のもとにおける取締りもございますので、そのいろいろな刑法犯を初めとする各種の犯罪捜査にあわせて捜査を行なっている、これが実情でございます。警視総監も話したと思いますが、東京都におきましてはそういう限られた人員、限られた予算のもとにおきまして、いろいろ工夫して売春関係をやっているのでございます。それでとりあえず一番弊害の多いと思われる駅前とか、文教地区、住宅地区、こういう方面に勢力を集中いたしまして、逐次その取締りを伸展していこう、こういう態度でやっておりますので、しばしば御指摘がございますごとく、不徹底な面が現われる、こういう点は私どもも認めざるを得ないのでございます。繰り返し申しますか、ただいま議題となっております法律案の成立の暁は、構想が根本的に国の法律としてきまるわけでありますので、それに基く警察としての対策は十分立てなければならぬ、こういうふうに考えているのでございます。
  163. 細田綱吉

    ○細田委員 何か話に聞きますと、法務省ではただいま売春問題対策協議会を主管されているが、これではいけないので、売春問題対策協議会をさらに内閣に移して、これを法律によってこしらえるというような話も一部にあるということを伺う。現在の売春問題対策協議会も内閣に置かれている。ただ主管が法務省というか、幹事役が法務省だというだけで、結局はこれを法律に基くものとするかしないかというだけの違いだと思うが、法務大臣の御意見としては、売春問題対策協議会結論が出ないとおっしゃるのだが、第三一次答申案まで出ている。あなたは何次答申案が出たら結論だと言うか知りませんが、大体結論が出ております。しかしあなた方は気に入らないから出ていないとこう言う。こういうような態度ですと法律で内閣に売春問題対策協議会を持ったところが、これは百年河清を待つにひとしいと思うのだが、もしそういうふうに組織がえをし、所管がえをしたとするならば、結論は大体いつごろ出るでありましょう。できない前に見通しといってもむずかしいかもしれないが、法務省から内閣へ持っていってまた新しくやったとするならば、常識上法務大臣は過去の長い御経験から見て、結論を出すのにこれからどのくらいかかるか、その大よそのお見込みを伺いたい。
  164. 花村四郎

    花村国務大臣 売春問題対策協議会が内閣に置かれておりますが、さらに法律的にこれを認めるような機構に持っていった場合に、その審議の結論はいつごろ出るかというお問のように思いますが、そういう機構を変える話は私はまだ聞いておりませんし、存じておりません。従いましていつごろその結論が出るかもいまだ考えたことはありません。
  165. 世耕弘一

    ○世耕委員長 細田君にお諮りいたします。大分お約束の時間が経過したようであります。簡潔にお願いいたします。
  166. 細田綱吉

    ○細田委員 最後に一つ。委員長は御存じないかもしれないが、本法案の審議に重大な関係がございますので、法務委員会の専門員に話を伺いたいと思うのですが、お許しを願いたいと思います。
  167. 世耕弘一

    ○世耕委員長 お諮りいたします。ただいま細田委員より専門員に発言を求められております。お差しつかえなければ許可いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  168. 世耕弘一

    ○世耕委員長 しからばさよう決定いたします。
  169. 細田綱吉

    ○細田委員 それでは専門員の方に伺いたいと思いますが、全国特飲業組合の理事長は鈴木明さんだということは御存じでしょうね。
  170. 小木貞一

    ○小木専門員 存じております。
  171. 細田綱吉

    ○細田委員 その住所が、台東区浅草江戸町二の三というのは、大体御存じですね。
  172. 小木貞一

    ○小木専門員 それは私、住所まで正確に調べておりませんから、存じません。
  173. 細田綱吉

    ○細田委員 法務委員会の調査主事補に鈴木明美さんというお嬢さんが勤務しておることを御存じですね。
  174. 小木貞一

    ○小木専門員 おります。
  175. 細田綱吉

    ○細田委員 この人は昭和二十八年の三月十三日、言いかえてみまと、昭和二十八年三月三日に、御承知のように、売春禁止法案議員提出で参議院に提案されて、それから十日後に衆議院の法務委員会でこの人を採用されております。われわれも調査しておりますが、なお念のためにあなたから伺うのですが、だれの御紹介で採用されたのですか。
  176. 小木貞一

    ○小木専門員 これも正確には——私記憶をたどって申しますが、たしか安部俊吾さん時代にその話が出まして、それから最後の決定をしたのは田嶋好文さんの時代のように記憶しております。
  177. 細田綱吉

    ○細田委員 あなたは衆議院の専門員として貴重な職責を担当されておるのだが、あなたの部下と申しますか何と申しますか知りませんが、同じ組織の中に、全国の特飲業組合の理事長の娘さんが勤務しておって、そうしてあらゆる問題が筒抜けになってしまっておることをわれわれは承知しておるのだが、それであなたは、あるいは事務総長に、あるいは議院運営委員会に何らかの意見を上申しておらなかったのですか。
  178. 小木貞一

    ○小木専門員 今私、筒抜けになっておるということは初めて伺ったわけでありますが、私どもといたしましては、そういうことは絶対にないと思っておる次第でございます。部屋の中でも、問題が非常に重大なことでございますから、こういう問題が外に漏れることにみな注意して執務しておりますから、そういうようなことは私どもはないと思っております。
  179. 細田綱吉

    ○細田委員 同じあなたのところにいて、しかも片一方はお父さんですよ。この勤めている人の住所が台東区浅草江戸町二の三番地であるということはおわかりだと思います。あなたと同じところで毎日一緒におり、しかもこの人のお父さんは、こういう法案反対の急先峰の親玉です。これで法務委員会の問題が外に出ないということを、それじゃあなたは特に教育しておられるのですか。
  180. 小木貞一

    ○小木専門員 こういう秘密につきましては、ひとりこの売春法案だけではございません。過去におきましていろいろむずかしい破防法のような問題、その他駐留軍関係刑事立法等いろいろございましたが、私どもの執務の態度としては、われわれは公務員であり、国会の職員でございますから、そういう秘密は絶対に外に漏らさないように、常時話し合い、訓練をいたしておるのでございます。
  181. 世耕弘一

    ○世耕委員長 細田君にお諮りいたしますが、本件が本法案の審議上に直接の関係を持つとは思いません。なお、もし直接の関係ありとして御審議なさるとするなれば、その真相を追求して、しかる後に取り扱うのが当然じゃないか、かように思う。ことに今の御発言の御様子を見ますると、お父さんが組合長であるからどうこうというようなお話もありましたが、それはいかなる地位の人のお嬢さんであろうが、子弟であろうが、私は、法の上には平等であるということを考えなければならぬ。ただ問題は、勤務中に秘密を漏洩したかどうかということが大きな問題でなかろうかと思います。もし秘密漏洩の事実ありとするなれば、あらためてこれは当委員会なりあるいは委員長として厳重な調査をして、その処置をとりたい、かように考えております。議事進行上かえってその方が便利だと思いまするので、一応お諮りをいたしておきます。
  182. 細田綱吉

    ○細田委員 それじゃ委員長に希望を申し上げておくんですが、本委員会のあらゆる問題が業者の方へ筒抜けです。これはわれわれにはよくわかる。従ってこういうことでは衆議院の法務委員会審査を進行することができない。しかも二十八年に参議院でこの法案提案されたその十日後にこの娘を衆議院の法務委員会で採用しておる。こういうことは専門員としてもよほど注意をして、何らかの助言はなすべきものだ。私は、時間がありませんから、具体的には申しませんが、申し述べろと言えば、いつでも申し述べる。あらゆる問題が業者の方へ筒抜けなんです。これは委員長も将来厳重に関心を持って一つこの問題を処理されることを希望いたします。
  183. 世耕弘一

    ○世耕委員長 了承いたしました。  次に猪俣浩三君。
  184. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 ただいま細田委員から、衆議院の法務委員会の専門員室に鈴木という最も精鋭なる業者の代表者の娘がおるということがわかりました。これはそう簡単な問題じゃないと思う。私は今度は、それと同じ関連ではありませんが、多少疑いのあることを最高裁判所の家庭局長にお尋ねいたします。最高裁判所の家庭局長は売春問題対策協議会の幹事をやっておられるから、最高裁判所内の家庭局の雰囲気というものは相当この売春問題対策協議会に反映すると見なければならない。そこであなたにお尋ねするのであるが、あなたの家庭局におきまして第一課長が河野力、第二課に村田宏雄という人があられるはずである。この村田宏雄という方の意見が「建設日本」という何か特報みたいなパンフレットに出ている。「最高裁判所家庭局第二課、東京大学講師村田雄宏氏の研究になる売春禁止に対する刑事学的批判の中から」ということで抜粋が出ておる。これは一々読み上げませんが、第一に、売春処罰法案が通ると、どういう結果が起るかということが列記されておる。第一は、「厳重な人身の拘束、身動きならぬ自由の剥奪が起る。彼女等の売春生活社会的必然性に基くものが多い。この社会的必然性は何かという実証的研究はすでに数回発表している。この立法の暁には、売春は非合法の陰に潜行する恐るべき地下組織になり、保身防衛のボスの手によって厳重な拘束が生まれ、自由剥奪が行われ、船底の奴隷のごとき、状態を生む」これが一つ。二、次にはあくなき搾取、これは略します。三、ほんとう人身売買の激増、四、労働強化、五、取調べの不可能、六、更生の不能、七、性病予防の困難、青少年不良化の促進という副産物が生まれる、かような項目を列記されておる。なお詳細は東京市政調査会発行二月号「都市問題」にも論じておられると書いてある。私は、これはおそらく業者の発行するインチキ・パンフレットだと思いますから、こういう家庭局の村田さんがかようなことを言ったとは思われなかった。なお私は「都市問題」という雑誌を調査するひまがなかった。しかしなお私はここに一つの疑問が出てきた。それはいわゆる全国性病予防自治会、名前はいいのであるが、これは業者の組合であります。この業者の組合が本年の二月五日に大会を持ち、そうしていわゆる業者実態調査をすることを決議し、ここに五百万の金を集めた。北海道十五万、東北二十五万、関東二百万、北陸十五万、東海七十万、関西八十万、中国三十万、四国十五万、九州五十万、合せて五百万です。この五百万の金を集めて実態調査なるものをやることを決定した。これは何のためであるかといいますると、里見という全連会長のあいさつの中に、御承知の通り売春等処罰法案問題はいよいよ最後の段階に迫ってきた、業界の重大問題として皆さんと善処したい、われわれ営業関係者十万人の生活の基礎を奪われるような取締法ができれば、われわれは生活維持のためにあらゆる手段を講じなければならない。わが国のような国民生活の十分の保障のない国で、われわれの存在はやむを得ないもので、最後の事態に当面するときは、全業界が団結して突破しなければならない。こういう決意のもとに、売春処罰法の対抗策といたしまして、五百万の金を集めて、業態調査なるものをやった。いかなる目的でこんな業態調査なんていうものに彼らが乗り出したか、これはこのあいさつではっきりしておる。そうしてなお先般当法務委員会に参考人として出席した全国の自治会の理事長であり、今鈴木調査主事補のお父さんとして問題になりましたこの鈴木氏が、同じくこの大会に際してこの業態調査なるものこそ、業界の運命をかける重大なカギであるということを演説しておる。その大会に最高裁判所家庭局の第一課長河野力、村田宏雄の諸君が出席して、この村田宏雄氏がこの業態調査の指導をしておる。私どもは、そんなことは何でもないと言われればそうかも存じませんが、はなはだ当を得ない行動ではないか。もし業態調査が必要であるならば、なぜ国家の費用で、最高裁判所がおやりにならないか。こういう業者から集めた金によって売春処罰法に対する、われわれ業者の運命をかけた調査だと称するその調査に、家庭局が協力するというのはどういう意味であるか、その真相をお述べ願いたい。
  185. 世耕弘一

    ○世耕委員長 本件につきまして最高裁判所より発言の申し出がありましたので、国会法第七十二条第二項の規定によりこれを許可いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  186. 世耕弘一

    ○世耕委員長 御異議なければさよう決定いたします。宇田川家庭局長。
  187. 宇田川潤四郎

    ○宇田川最高裁判所説明員 最高裁判所の家庭局が実態調査に参加したということはございません。ただ村田宏雄という職員が、現在は家庭局におりませんが、かつて家庭局におったことはございます。この村田宏雄君が東大の社会学科を出て、社会学の問題につきましては相当技術を持っておるというような関係からして、かような売春実態調査を個人として委嘱を受けて調査しておるということを聞き及んでおります。パンフレットにどのようなことが書いてあったか私は存じませんが、私は村田氏と売春の問題について一回も論議をしたことはございませんので、どういう思想を持っておるか、また。パンフレットにどういう思想を発表しておるかということを存じておりません。なお河野課長が実態調査に関する大会に出席したというようなことにつきましては、実は先般市川房枝代議士からその事実を聞かされまして、私は愕然としたのであります。さような次第で、河野課長か大会に出たことは市川房枝先生から初めてお聞きしたというような次第で、さっそく河野課長に問いただしましたところが、この調査は東大の川島教授あるいは一橋大学の植松教授などとともにしたのでありますが、両氏とも河野氏とは親友の関係で誘われて出かけて行ったというようなことを言っておりました。今考えてみると実に不覚だったというようなことを言っておりますし、その調査の結果についてどうなっておるかというようなことを聞きましたところが、本人はその後全くその調査の結果について何も聞いていないからどうなっておるかわからないというような返事をするくらいで、あまりこの問題についてはその後関係しておらないというように聞き及んでおります。従いまして、最高裁判所の家庭局といたしまして売春の問題を村田宏雄氏に命じたり、あるいは大会に出席することを命じたり、あるいはこの調査を援助することを命じたということは断じてございませんので、さよう御了承願います。
  188. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなたは先ほど家庭局の第一課長は協力はしていないのだとおっしゃったが、業界新聞に麗々しく河野氏の論文が載っておる。しかも今大会に出席したと自白なさったからそれは追及いたしませんが、大会の出席者の名簿の中にちゃんと書いてある。しかもこの業界の新聞を見ますと、総選挙と業界の立場として、いやしくも革新陣営には絶対に投票するな、保守党にみな投票せよ、革新政党などに投票すると処罰法が出るぞということを予言しておる。これは本年の二月五日です。しかもこういう法案が出るであろうということは家庭局などは最も敏感に予測しなければならぬはずだと思う。ことにあなたはこの協議会の幹事をやっておる。しかるにこんな業者の集まりにのこのこと出かけて行くということは実に不謹慎きわまると思うのです。そうするとわれわれとしては疑いを持たざるを得ない。しかも同じ家庭局に村田なる者が——これはいつまで勤めておりましたか。売春法に反対するいろいろの議論を私ども聞いたり見たりするけれども、これが彼の言ったことだとすれば、これくらいでたらめな、これくらい侮辱した意見を発表したことをおよそ聞いたことはありません。保守党の諸君といえどもこの法案に根本的に反対しておりません。ただいろいろの観点からいろいろの問題がありましょうけれども、もし今後この売春法案ができるならば全く奴隷のような女になるとか、あくなき搾取が行われるとか、ほんとう人身売買が行われるとか、こういう途方もない論文を発表するがごときは許すべからざることだと思う。家庭局にはこの人物はいつからいつまで勤めておりましたか、私はきょう呼び出しを願っておったのだが出てこない。いつからいつまで勤めて、この人物がいかなる働きをしておったか。
  189. 宇田川潤四郎

    ○宇田川最高裁判所説明員 ちょっと正確な記憶はございませんが、家庭局には昨年の春ごろから今年の春ごろだと記憶しております。なお家庭局におきましてはさような調査を村田宏雄に頼んだことも全くございませんし、それからまた家庭局の仕事としてそういうようなことをやるということも全く考えてもおりませんので、今の御質問にはどうお答えしてよいか、私として当惑するような次第であります。
  190. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これは今の話を聞くと、社会科を出たとか、社会問題に興味ある人だということだ。あなたが局長時代に採用になったと思うが、何を取り扱わせるために、こういう途方もない人物を採用になったのか。
  191. 宇田川潤四郎

    ○宇田川最高裁判所説明員 村田宏雄という事務官は初め法務省の鑑別所におりまして、その後東京の家庭裁判所の調査官になりまして、調査官をやっておる間に、ロールシャッハ・テストとか、心理学のテストが非常に堪能なので、人事局の方でさような心理学的なテストを行なっておったのであります。そういったような関係で、私の方で、そういう心理学的な知識を少年犯罪の調査に利用しようというようなことで、私の方に人事局から来てもらった職員でございます。従いまして私の方におりましたときにはやはりテストの問題などで、われわれの事務を補助しておったということであります。
  192. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これはあなた自身はあるいはお知りにならぬかもしれぬ。現在家庭局に勤めておらないとすればお知りにならないかもしれませんが、私どもの調査したところでは、現在も最高裁に勤めておる。最高裁の人事局の任用課というところの事務官をやっておられる。あなたは御調査を願いたい。そうしていつぞや機会があったら村田君の御高見を拝聴したいのだ。およそこのくらい途方もない議論をやっておる人物は見かけない。それが最高裁に職員として存在しておるということは、これは実にゆゆしい問題だと僕は思う。それを御調査願いたい。  それからせっかくおいでになったからあなたにお聞きしますが、あなたはこの村田の影響をちっとも受けておらぬとおっしゃる。それはそうでしょう。局長さんで、若いやつの影響など受けておらぬと思います。そこであなたは協議会の幹事もやっておられたのですが、売春処罰法について、われわれは具体案を出してあるわけでありますが、この法案について御所見をぜひ承わりたい。
  193. 宇田川潤四郎

    ○宇田川最高裁判所説明員 私家庭局長として、ここで意見を述べることはいかがかと存ずるのでありますけれども、個人としてはかような処罰法ができることは賛成でございます。
  194. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 次に刑事局長にお尋ねいたします。それは昭和二十一年十一月十四日の私娼の取締り並びに発生の防止及び保護対策についての次官会議決定というものが流されておるはずであります。これは現在有効であるのか、無効であるのか承わりたい。
  195. 井本臺吉

    井本政府委員 勅令第九号が、その翌年昭和二十二年一月十五日に施行になっておりますので、当然消滅しておると考えます。
  196. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 するとこれは警察の人にお尋ねするのだが、今の吉原等に対して手が回りかねるので、停車場や文化地区の方に力を入れて、あれは見のがしてしまっておるという答弁だが、あなたの御存じのように当委員会の公聴会の結果では見のがしておるのではない。黙認しておるとあなたが言えば私は引き下ります。あまり事実と違ったそらぞらしいことをおっしゃるとどうも一言言いたくなる。警察力が足りないために取締りを放任しておるのではなくて、ああいう営業をやっておることをここでは黙認なさっておるのじゃありませんか。一体売春婦が肉体を売った収入を四日なり五日なり営業主がプールしてそれを分ける。これについて警察の方では従業婦に組合を作れ、業者にも組合を作れといって組合を作らせて、そうしてこの業者と従業婦の組合の幹部を集めて、そこに警察とMPが立ち会って、四分六分の配分をきめてくれた、こういうのです。これは隠れもない事実です。これが一体黙認ということにならぬのか、そういう事実は絶対にないと否認なさるのか。私どもはそれをとがめておるのではない。あまりに法に対してルーズにやってきた。それはいろいろの原因がありましょう。それに対してあなた方が非は非として認めて、今度新しい法律ができたらこんなことはいたしませんと言うてくれたらそれでいいです。過去を今責めるのではない。ところが三百代言的言辞を弄して、いやあれは手が届かなかっただけで、認めたのではないのだ。こういう強弁をなさるのであるが、これは天下万人を偽わるものだ。私は役所というものはそういう虚偽なことを言うものではないと思う。あれは万やむを得ざる事情で黙認しておるのだというなら、それを今われわれは責めません。責めませんが、そういう論法でやるとわれわれが汗水たらして、こういう法律を作っても、またそういう三百代言みたいなことを申し立てて脱法行為を奨励するようなことがあっては大へんだから、念を押すのです。いかがですか。
  197. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 お答えいたします。御案内のごとく公娼制度がありました後に、勅令九号が制定されまして、公娼は廃止され、当時は売春条例等もございませんでしたので、独立の意思をもって売春等が行われるということ自体だけは、当時は合法的な状態であったわけです。それでいやしくも婦女子がそれぞれ自由な意思においてそういうことが行われるという点においては、当時として法律に触れるものがなかったので、公娼制度自体を公娼でなくすときにおきまして、自由な意思によるところの売春関係を、公娼制度のごとき強制に基いての措置でないような措置をとるために、昭和二十年でしたか、二十一年でしたか、御指摘のようなことがあったというように、われわれ詳細な記憶はありませんけれども、そういうことが想像にかたくないのであります。そういう沿革上の理由もあり、しかもその後東京都におきましては東京都条例ができまして、売春関係ずばりを東京都条例違反という法体系になったのでありますが、この点はしばしば申しますごとく、当時の状況から見て、そういう沿革上の理由もありましたので、その取締りについては、多くの目につくところから逐次やっていくというような態度で取締りをしていたことは事実でございます。ところでただいま当委員会議題となっておりますところの法律案が成立の暁は、これは本委員会で審議中よく拝聴しておりますが、この法律の目的が達成できるように最善の努力をするつもりであります。沿革上の理由その他もあって不徹底であったことは、はっきり認めますけれども、今度議題になっております法律案が制定後は、この法律趣旨にかんがみまして、それを徹底するように最善の努力をいたしたいと思うのであります。
  198. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 役人はなかなか答弁が上手で、シャッポをぬがないのだが、不徹底な点があったとお認めになったから、私はそれ以上申しませんが、こういう法案が出ましたら、不徹底なことのないように希望して、私の質問を終ります。
  199. 世耕弘一

    ○世耕委員長 福田昌子君。
  200. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 もう前の委員が大分繰り返された質問をよく理解できませんので、また重ねてお伺いさせていただきたいと思うのでございます。  売春対策協議会の点でございますか、現内閣におかれては、売春対する対策は協議会結論をまってきめたいという御発言でございましたが、この法案は六月の十日に出されておりますから、政府売春対策というものは、この法案の取扱いにおきましても、また成立後の処置からいたしましても、早急に売春対策協議会結論を急がせなければならないと思われるのでございます。従いまして法務大臣は、この売春対策協議会をその後何回催促して開かせ、結論をお求めになられたかどうか、この点を伺いたい。
  201. 花村四郎

    花村国務大臣 先ほどから何度も申し上げたように、売春問題対策協議会ができて、二十数回にわたって協議をいたしております。最近になりまして私から結論を請求いたしました結果、最近三回開かれて慎重審議を尽しておると聞いております。
  202. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 この協議会は御承知のように、花村法務大臣の前任者の自由党内閣の時代の昭和二十八年の末かにできたのでありまして、できましたときに、すでに売春対策の結論を急いで出さなければならないので、法的にも内閣に直属の手続をとるひまがないから、法務省の所管としてやるというようなお話で、結論を急がなければならないからというような意味合いから、この協議会そのものが発足をいたしたのでございます。そして協議会のメンバーの方々に伺いますと、むしろ自由党内閣時代にはしげしげと協議会が開かれて活発な討議がなされた、しかし鳩山内閣になってからその回数がきわめて減ってきたということを伺っておるのでございます。売春取締りに対して非常に御熱意がある花村法務大臣の時代になってから、この協議会があまり活発に動かない、しかもなかなか熱心に売春対策を考えておられるやに承わります花村法務大臣が、あまりこの協議会を督促しておられない、その結論を出されるのをあまり急いで要求しておられないということに、私どもは非常に疑義を感ずるのであります。従いまして結論がまだ出されていなければやむを得ないのでありますが、結論までいかないまでも、この協議会がどういう意向を持っているかということぐらいは御存じであると思うのでありますが、その協議会の御意向というものをこの際御発表いただきたいと思います。
  203. 花村四郎

    花村国務大臣 先ほども何回となく同じようなことを申し上げておりますが、鳩山内閣成立前のことは私は承知しておりませんが、後になりましても再三開かれた。しかも最近に至りましては、その結論の早からんことを私が要請をいたしまして、そうしてただいま申し上げたように、三回ぐらい開いております。でありますから今福田委員の言われたようなお話は、どこでお聞きになりましたか知りませんが、少くとも直相でないことだけははっきり申し上げておきます。
  204. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 もう一点お尋ねいたしたいのでございますが、結論が出ていないまでも、この対策協議会結論らしき意向がどこにあるかということを御存じのはずだと思いますが、その御報告をお願いいたします。
  205. 花村四郎

    花村国務大臣 結論に対しては、再三申し上げた通りであります。付加することはありません。
  206. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 花村法務大臣の与党でいらせられる清瀬一郎氏に、婦人会の幹部の方がお目にかかりましたときの話を、私はまた聞きいたしたのでございますが、その話によりますと、対策協議会結論らしき意向は全部承知しておる、大臣も閣僚もある人たちは承知しておる、その意向をよく承知いたした上からいたして、売春対策協議会結論には自分たちとしては反対であるから、この協議会を作りかえたい、別のものを作るということだということを、はっきり言明されておるのでございますが、この点に対しまして、政府与党の幹部の御発言でございますから、花村大臣はよもや御存じないことはないと思います。御見解を伺わしていただきたいと思います。
  207. 花村四郎

    花村国務大臣 清瀬君がいかようなことを申したか、私のあずかり知らざるところでありますが、今福田委員の言われたことは、少くとも事実に反しておりますことだけははっきり申し上げておきます。
  208. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 花村法務大臣は清瀬一郎氏がおっしゃったお言葉を御存じないわけでございましょうから、もちろん責任をおとりになるわけでもございませんはずですが、ただ花村法務大臣の御意思とされましては、この協議会を別な新しい協議会に作りかえるという御意思はないというように私ども解釈してよろしいのでございましょうか。
  209. 花村四郎

    花村国務大臣 その問題に対しても先ほど申し上げた通りであります。
  210. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 先ほどお伺いいたしておりましたが、よくわかりませんものですから、再度お尋ねいたしました次第でございますので、お作りかえになる意思がないのか、所属がえをなさる意思がないのかどうか、この点だけ伺わしていただきたいと思います。
  211. 花村四郎

    花村国務大臣 さような考えは今のところ持っておりません。
  212. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 売春婦がだんだんふえておるということを私どもいろいろな統計で承知をいたしておるのでございますが、先ほど刑事局長のお話によると、必ずしも売春婦はそうふえて参っておらぬというふうに聞える御答弁もあったのでございますが、大臣におかれましては、売春婦の人たちはふえておるかどうか、業者は増しておるかどうか、あるいは減っておるかどうか、この間の御見解を伺わしていただきたいと思います。
  213. 花村四郎

    花村国務大臣 刑事局長答弁以外に申し上げることはありません。
  214. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 では刑事局長に数をお示しいただきまして、その増減を御発表いただきたいと思います。
  215. 井本臺吉

    井本政府委員 本年の初めのころの統計で、集娼七万二千、敵娼四万六千というのが、私どもの調べでございます。その前からどのくらいふえておるかということは、ただいまわかっておりません。
  216. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 数をはっきりふえたことを御存じなくても、勘の上でけっこうでございますから、多少ふえておるか、減っておるか、その点を御言明願いたい。
  217. 井本臺吉

    井本政府委員 正確な調べを出してみませんと、その点についてはお答えできません。
  218. 世耕弘一

    ○世耕委員長 政府側の諸君に御注意申し上げたいと思いますが、福田昌子君は本案に対して非常に熱心な研究もされ、また本案について、熱心な議論をされる方でありますから、できるだけ親切な御答弁を願うようにお取り計らいを願いたいと思います。ことに女性議員として特別な御熱意を持って本案の検討に当られておることでありますから、できるだけ御親切に御答弁を願うよう委員長からもお願いいたしておきます。
  219. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 私の感じておりましたことを委員長に御代弁いただきまして非常にこの点感謝いたします。刑事局長のまことに無礼千万な答弁に驚き入ったのでございまして、時間があれは追究いたしたいと思いますが、今日は差し控えさせていただきますか、刑事局長の地位にある人が売春婦の増減の数さえ心得てないというに至ってはあきれたと言わざるを得ないのであります。しかもすでにたくさんいろいろな処罰取締り法規があるけれども、その実施ができないというような点は私ども絶えず憂えておりましたが、こういうような刑事局長のもとにおっては、当然取締りもできないであろうということをつくづくただいまの一言で感じさせられました。大いにこの点の御努力を願いたいと思います。  ついでにお伺いいたしますが、あなたはこの取締りに対しまして、すでにいろいろな法規がありますが、この取締りに当られる警察官に対しまして、どういうような心がまえを平素訓示しておられるかどうか、この点をあわせて伺いたいと思います。
  220. 井本臺吉

    井本政府委員 もちろん売春関係の諸般の法律がございますので、その法律施行については十分これを適用して、取り締るべきものは検挙するように取り計らっておる次第でございます。先ほど売春婦の数がふえておるかどうかという感じを申せというお話でございましたけれども、私の方は売春婦の数を調べる地位ではございませんので、大体検挙の数によって、それから推定しておるわけでございます。われわれの方の調べでは集娼七万二千、散娼四万六千と申し上げたのでございますが、売春関係の事件で検挙せられました数がおそらくお手元まで参っておると思いますけれども、二十九年と二十八年では総体におきまして、二十九年が二万五千受理しておりまして、二十八年に二方六千でございますから、少しく減少しておるという傾向でございます。二十七年は二万二千ですからそのころから見ますとだいぶふえておりますが、さような大体の状況でございます。
  221. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 派生的に取締りの数の御発表がございまして、この点非常に幸いでございましたが、私がお尋ねいたしましたのは、直接取締りに当られる警官にどのような注意をしておられるかという点をお伺いいたしたのでございます。局長は御存じないかと思いますが、末端の警官の売春取締りに対しまする態度というものは、言語道断な態度を私どもは絶えず耳にいたしておるのでありまして、例をあげて申せとおっしゃればお話ししないでもありませんが、そういうような警官のまことに売春婦となれ合った態度、売春業者となれ合った態度というものは、私どもはこういう態度ではとうてい取締りというものはできないということを痛感させられたのでありますが、こういう事態に対しまして絶えずどういう訓示をしておられるのか、この点を伺いたいのでございます。
  222. 井本臺吉

    井本政府委員 第一線の警察官に対しては、警察庁の方から答弁するのが相当であると思量いたしますから、警察庁の方から答弁を願いたいと思います。
  223. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 福田委員の御心配になられますように、第一線に勤務する警察官がほんとう売春関係の事犯について適正な、しかもしっかりした考えを持っていなければ、現行法のもとにおきましても、ことに議題になっておりまする法律案が成立後におきましても、法律の所期の目的は達成できない、こういう点は同様に考えております。従いまして私どもは第一線の警察官の教養という点は常々心を砕いておるのであります。ことにすべての法律がそうでございますが、すべての法律の執行に当りましては、その立法趣旨を十分かみ分けて、ことに売春関係について申せば、売春関係の犯罪はすべていろいろ視察、内偵をいたすべきでございますが、とりわけ強制を伴うもの、ことに児童福祉法違反のごとく幼少者を被害者とするもの、こういう点を中心にして、そういう点の捜査発見に努めよう、こういうふうにいつも話し合っておるのであります。それでいろいろ警察官の中には、福田委員のお耳に入ったと思いますが、よからぬ考えを持っておる者もおりますので、そういった者についてはそれぞれ発見次第懲罰を明らかにいたしまして、りっぱな警察官の養成に最善の努力をいたしておるのでありますが、今後とも大いに努めて参りたい、こう思っております。
  224. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 売春婦がふえておるか減っておるかということに対しましては刑事局長御自身御存じないようなお話でありましたが、どの政府機関の発表されました統計を見ましても、赤線、青線地域の売春婦自体が相当にふえておるということがどの統計にも示されておるのであります。しかも外人の日本批判しておりますその批評文を見ますと、売春日本というまことにありがたくない汚名が結論として出されておるのでございまするが、かような事態に対しましては、売春対策、売春のある程度取締り強化というものが当然早くなされなければならないのでございまするが、それに対して花村法務大臣はこの点をどういうように処置なさろうという御意思でございましょうか。
  225. 花村四郎

    花村国務大臣 法令の指示するところによりましてあらゆる努力を傾倒して取締りの完璧を期していきたいと存じます。
  226. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 法律がすでに存在しておるものに対しましてその運営の活発を期することは当然でございますが、かような意味合いにおきまして、これまでの法務大臣は相当この法令の指示に従ってのその運用の強化ということを御指示いただいておったと思うのでございますが、この点いかがでございましょうか。
  227. 花村四郎

    花村国務大臣 この点に対しましては常に用いて取締りの強化をはかっておりましたが、ことに最近所々に起きます人身売買の点についてはことさら重点的にこれを扱って参ってきております。
  228. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 今までも相当現行法の適用の拡大強化ということに御尽力いただいたそうでございますが、遺憾なことには、先ほど刑事局長の御発表もありましたように、売春婦それ自体は増加いたしましたにもかかわりませず、検挙いたした件数というものは二十八年より二十九年はさらに減って参っておるというような統計の御発表がございました。このことは法の適用が必ずしも私どもが考えておりましたほどに十分適切に運営されておったと思うとは言いがたいのでございます。しかし今後はさらに法の運営において極力その適切な強化をはかるというお話でございまして、ことにその一点として人身売買に対する例をおあげいただきましたが、人身売買に対する取締り強化も当然のことでございますが、これだけでは売春は防げないのでございまして、さらにこういった行政面の強化の売春対策といたしまして、どういう具体的な措置をお考えであるか、この点もあわせて御説明いただきたいと思います。
  229. 花村四郎

    花村国務大臣 売春行為取締の対策は先ほどからしばしば申し上げましたように、なかなか困難性を伴うのでありまして、現行犯を逮捕するというがごときは、口では申すことができまするが、実際においてはなかなか困難であると申し上げてよろしいと思いまするのみならず、またいろいろの複雑した事情もありまするので、刑事政策見地からもその犯罪に検挙に対しましてはやはり考慮する余地もあろうかと存じますので、一口に取締りと申しましても、なかなかこの取締りには先ほど申しましたような困難性が伴い、しかも一歩誤まるならば、人権じゅうりんの問題を起さなければならぬというような関係にもありまするので、取締りについてはおさおさ怠りなくやっておりまするが、見ようによってはあるいは手ぬるい面もごらんになられるようなこともあろうとも存じまするが、しかしこれはただいま申し上げましたように、そこに要するに当該問題の重要性があるのであるということを御了解願いたいと思うのであります。これは最近時代の流れも売春取締りに対して相当厳にすることを希望せられる節も多いようでありますから、人権じゅうりん問題の起きざるよう十分に注意をいたしました上で取締りは強化していきたいと思っております。
  230. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 先ほどの法務大臣の御答弁中に伺ったのでありまするが、売春取締りは非常に重大な問題であるから、それゆえにその法案の制定に当っては時代の流れに沿った、いわゆる時宜を得た、しかも新憲法の精神に沿った法律というものが望ましい。そういう法律を作りたいという観点から法務大臣は御努力をしておられるというような御意思に伺ったのでございますが、そういう新憲法の精神に沿い、時代の流れに沿った時宜を得た法律と申しますのは、要点的に申しますとどういう点を完備した法律でございましょうか、この点ちょっとお教え願いたいと思います。
  231. 花村四郎

    花村国務大臣 その具体的の事柄につきましては、やはり前にも申し上げたように、売春問題対策協議会に諮問をいたしておりますので、その諮問の結論の出る前に私が私見をとやかく述べるのは穏当でないと存じますので、その点の私見は差し控えたいと思います。
  232. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 私ども実は売春問題対策協議会結論を待って政府結論をおきめになるというような意思に伺っておったのですが、先ほどの御答弁によりますと、たとい売春問題対策協議会が一つの結論を出しても、それに左右されるものではない、あくまでもそれは参考意見であるというような御意思でございまして、そのほか厚生当局ともよく話すであろうし、関係官庁とも相談をし、また花村法務大臣のお考えにおいてこの売春対策というものの時宜を得た法案をきめたいというような御意思に伺ったものですから、売春問題対策協議会それ自身の結論もさることながら、法務大臣とされまして当然一個の見識を持たれておると思いましたから御発表いただきたいと思ったのでございます。ところが御発表がございませんでしたが、ただ一点お伺いさしていただきたいのは、そういう時宜を得た新憲法の精神に沿った法案とおっしゃる、そういう売春対策の法案を一体時期的にいつごろ出したいという御意思であるのか、またその意思に沿って売春問題対策協議会の方々に結論をお急がせになる御意思であるのか、その時期的な御見解を伺わしていただきたい。
  233. 花村四郎

    花村国務大臣 なるべくすみやかにその成案を得たいと存じまして、売春問題対策協議会にもその結論答申を要請いたしております。
  234. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 なるべくすみやかに結論を出してもらいたい、そうして政府の望ましい法案をおきめになりたいというように伺ったのでございまするが、そうでございますね。そういたしますれば当然ただいまの法案は非常に不備だとお考えになっておるのでございますね。
  235. 花村四郎

    花村国務大臣 その点は先ほども何度も申しましたように私の意見としては相当に考えもありまするが、しか有力なる議員諸君提案にかかる法案でありまするがゆえに、私としてはその法案がいいか悪いかというような批判的な論をいたしますることは避けたい、こう何度も申しておる通りで、今もなおかつ変りはありません。
  236. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 議員提案であるから批判は避けたいという御答弁を私も何回も伺いました。それで批判をお避けになられるということでございますか、御意思はこの法案には賛成できないから、政府としては新憲法に沿った時宜を得た法案を得た法案をお作りになりたいということ、しかも近いうちにそれをお出しになりたいということを伺いましたが、その近いうちと申しますのは、ここ半年くらいのことでございましょうか、一年先でございましょうか、それとも二、三年先でございましょうか、ごく簡単でけっこうでございますからその期間をお示しただきたいと思います。
  237. 花村四郎

    花村国務大臣 先ほども申し上げましたように早急に成案を得たいと存じております。
  238. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 私はこれで終ります。
  239. 世耕弘一

    ○世耕委員長 志賀義雄君。
  240. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 花村法務大臣には私見にわたることを伺うのじゃありません。今まで答弁された範囲のことで伺いますが、六月二十六日の速記録によりますと、この法案賛成であると言われておる。ところが先ほど吉田委員でしたかの質問に対しては、必ずしも賛成しないと言われた。この心境の変化は私見にわたらないと思いますから、そこのところをちょっと伺いたい。どういうわけでここ一月たらずの間に心境の変化を来たされたか。そこを伺うと、この法案の審議の上に非常に参考になると思いますから、そこをちょっと……。
  241. 花村四郎

    花村国務大臣 ただいま徳田委員は……。(志賀(義)委員、「徳田委員はいませんよ。今、逮捕状が出ておる」と呼ぶ)(笑声)福田委員にただいま申し上げましたのみならず、前からも申しておる通りで、少しも変りません。——申しましょうか、また。——私としては本法案に対しましては考えもありますが……(志賀(義)委員「そこは伺いました」と呼ぶ)しかし有力なる各党の議員諸君提案された法律案でありまするがゆえに、その法律案に対してはいいとか悪いとかいったような批判的なことを申し上ぐることは適当でないと存じまするから、従って私はそういう批判的な言葉は避けたいと存じます。
  242. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 どうも名前を間違えられたり、質問を間違えられたり、だいぶ暑さのせいもあるのでしようが、私はさっきあなたが私見にわたるから言われないと言ったことを聞いておるのではないのですよ。あなたはこの前六月二十六日にこの法案賛成であると言われた。先ほどの答弁では必ずしも賛成でないと言われた。これから上のことです。あなたの答弁のできる範囲のことです。私見にわたる点をどうこうといっておるのではない。この賛成と必ずしも賛成でなくなった、心境の変化は、どういうことなのか、ここを伺っておるのですから、あまり四角張らずに御答弁を願いたいと思います。
  243. 花村四郎

    花村国務大臣 私は終始この法案賛成であるとか、反対であるとかいうことは申しておりません。
  244. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 速記録に出ておりますが……。
  245. 花村四郎

    花村国務大臣 速記録をよくごらんなさい。
  246. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それをまくらにして次に伺いたいことは、この法案が成立したときに、人権擁護の立場からということをしはしは言われましたか、花村法務大臣に伺いたい。衆議院議員であり、法務委員である者に警察が尾行をつけるというようなことがあったら、これはどういうことになりますか。
  247. 花村四郎

    花村国務大臣 かかる処置は穏当でないと存じます。
  248. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 警察庁の石井長官はおられますか。
  249. 世耕弘一

    ○世耕委員長 石井長官は所用で退席しておりますが、中川刑事部長にお尋ね下さればいかがでありましょうか。お諮りいたします。
  250. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 実は私は衆議院の第一議員会館五百八号室に自分の部屋を与えられておるのであります。ここで去る七月十六日、同様さかのぼって七月十四日、さらにさかのぼって七月十二日に、明らかに尾行をして、私の部屋をしきりにうかがっておる者があるのであります。御承知の通り私は三十三年、三分の一世紀近く共産党の運動をやっております。だれが尾行であり、特高のスパイであるかということは、多年の訓練を受けましたから、私の目に狂いはないのであります。こういう人物が徘回しておりますが、一体警察庁でそういうことをやらせておられるのか、その点を伺うのは、一般に尾行問題を言っているのじゃないのです。売春等処罰法案の審議が漸次熱心になってきたときから、こういうことが始まっているんですから、その点……。
  251. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 尾行問題一般につきましては、先ほど法務大臣がおっしゃったと同様な考えを持っております。ただいまのお尋ねは具体的の事件でございますが、私ども、ことに国会議員の尾行をするというようなことはちょっと考えられないのですけれども、よく事情を調べまして後ほどお答えいたします。
  252. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 江口警視総監はおいでですか。
  253. 世耕弘一

    ○世耕委員長 養老防犯部長がおります。
  254. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 防犯部長に伺いますが、あなたの方からそういう人を出しておられますか。
  255. 養老絢雄

    ○養老参考人 私防犯部長でございますけれども、警視庁としまして、ただいまおっしゃったような件につきまして何ら関知いたしておりません。
  256. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 関知してないということは、ほっておかれる意味ですか。
  257. 養老絢雄

    ○養老参考人 全然そういう指示もいたしておりませんし、さような行動のあったことも承知いたしておりません。もちろん私防犯部長でございますから、ほかの部に関することはあるかもしれませんけれども、念のために帰りましてから警視総監に申し伝えます。
  258. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 実は二回目のときに私が追っかけたのであります。逃げたのであります。先ほど花村法務大臣は吉田委員の質問のときに、もし黄白がまかれたような事実があるならば、その事実を委員の方から出してくれと言われましたが、私がそういう場合につかまえてようございますかどうか、それをはっきり言って下さい。よろしければ今後私はつかまえますよ。
  259. 花村四郎

    花村国務大臣 志賀委員を尾行してきた人をつかまえてもいいか、こういうお話ですか。
  260. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 議員会館の私の部屋に入り込んで、部屋を視察する者があるんですよ。
  261. 花村四郎

    花村国務大臣 それは、つかまえるつかまえないはあなたの御意思ですから、その御意思に対して私が指図を申し上げるわけには参りません。
  262. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 先ほどの吉田委員の質問に対して、そういうことは委員の方で事実を出してくれと言われた。元来こういうことは捜査当局がやるべきものですよ。それを委員の方に転嫁して、事実があったら持ってこい。今までのいろいろな汚職事件があっても、先ほど猪俣委員からもいろいろ言われ、吉田委員からも黄白がばらまかれておるというようなことを言われた。そうして三田村委員長代理から、重要な問題であるから当局は至急調査してくれと言われたほどです。そういうことでありますから、私どもは捜査当局がそういう点十分はっきりさせるべき筋合いのものと思っております。ところがこの売春等処罰法案がようやく審議が最後に入ってきたときに、こっちが一生懸命この法案について研究もし、いろいろと尽力しておるときに、その委員の行動を妨げるような者が警察関係にあるのです。これはわれわれ非常に迷惑であります。そこで世耕委員長に最後に、法務委員会委員長として伺いたいのでありますが、こういう法案を審議しているときに、こういう事実があるのです。これではほんとうに審議が進みますか。先ほど鈴木明君の娘さんが法務専門委室に勤めておる、それについて質問したときに、人権じゅうりんもはなはだしいと言われた。ところが議員に対してこういうことをしておるのです。(「事実かどうかわからぬ」と呼ぶ者あり)それは三分の一世紀の経験ではっきりわかります。そういうことがありました。委員長として今後法務委員に対してそういうことのないように、十分あそこの出入りの人物その他について注意していただきたいと思います。あなたは人権擁護ということを非常に言われるし、法務委員会の権威ということを言われる以上、そういう点について、委員長から十分申し入れていただかなければ、重要法案審議に困るのであります。
  263. 世耕弘一

    ○世耕委員長 お答えいたします。法務委員諸君に尾行その他いたしまして審議に妨げのあるような報告は、ただいま初めて私は承わったのでありますが、もしさような事実があれば厳重な手配をいたします。ただし志賀君のような練達堪能の人に尾行をつけるということは、ちょっと想像つかないのであります。この点につきましても厳重な調査をいたしますことをお約束を申し上げます。
  264. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ただいま委員席の方で、事実かどうかわからないという声もありましたけれども、私が声をかけたときに、普通の人間なら逃げないのでありますが、それが逃げておるのであります。これも一つの事実になるのであります。そういうわけであります。この売春等処罰法案について今晩ぜひこれをやり上げるようにしていただきたいのでありますが、今後とも法務委員会でいろいろと審議すべき事項がありましょう。こういう事態の起らないようにお願いしまして、私の発言を終る次第であります。
  265. 細田綱吉

    ○細田委員 先ほど委員長のお言葉で、鈴木明美さんの問題は基本的人権だからそのままということじゃないんでしょう。
  266. 世耕弘一

    ○世耕委員長 お答えいたします。基本的人権だからということは申し上げたつもりはないのであります。父親がどういう人であろうが、あるいはどういう地位の人であろうが、職業の選択は自由ではないか。ただその勤めの場所によって、その職責を冒涜するような行為があれば、厳重にそれぞれ処罰さるべきものであろうと私は思う。ゆえにもし万一職務上そういう欠陥があったなれば適当に処置いたしたい、かように考えるということを申し上げたのであります。誤解のないようにお願いをいたします。
  267. 細田綱吉

    ○細田委員 もちろん委員長のおっしゃる通りですが、しかしまた公正を疑われるような状態に置くことも、委員会として自粛すべきである。その点を一つ委員長に申し上げたいのであります。
  268. 世耕弘一

    ○世耕委員長 了承いたしました。  これにて質疑は終局いたしました。  暫時休憩いたします。     午後十時一分休憩      ————◇—————     午後十時二十七分開議
  269. 世耕弘一

    ○世耕委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  売春等処罰法案議題といたします。本案につきましては、先刻すでに質疑を終了いたしておりますので、これより討論、採決を行います。討論の通告がありますので、順次これを許します。なお討論時間は、理事会の申し合せにより、一人十五分以内にお願いいたします。椎名隆君。
  270. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 売春問題は非常に大きな社会問題でありまするので、当委員会におきましても慎重審議されまして、夜おそくまで各委員熱心に審議せられたことを、厚く御礼申し上げます。と同時に、私は本法案に対しては反対意思を表示いたします。  なぜかと申しますると、本法案が成立いたしましても、結局予算を伴うべきにもかかわらず、予算措置が講じられていないことであります。せっかく生まれましても、育てることができないというのが、この法律の運命であります。なぜかと申しますると、先般来しばしば申し上げましたごとく、法律はできたがしかもこれが実施できないというようなことになりますると、国民全般に対します順法精神を失うことに相なるのであります。かてて加えて基本的人権を尊重すると言うておるにもかかわらず、結局この法律ができることになりますと、百数十万のいわゆる被疑者というものが出てくるのであります。国の政治は国から犯罪者をなくすることが要諦でありますにもかかわらず、この法律ができますなれば、売春婦並びに不特定の相手方と称する者が少くとも二名以上、五十万の売春婦ありとするならば不特定の相手方二名を加えますと百万、百五十万の人間が少くとも被疑者とならなければならない実情になっております。しかもこの法案におきまする非常な欠点は、連合軍の各将兵が自分の国に帰ってから後、売春日本ということを雑誌に書き、あるいは新聞紙等に発表するのはとりも直さずオンリーであります。しかるにこの法案の中にはオンリーが対象となっていないのであります。もしそうだとするならば、売春婦は少くとも取締りをせられないところのオンリーになることは必然的であります。この点から見ましても、まず第一に、本法案は予算措置を伴わないがゆえに、結局国民全般に対する順法の精神を失う。これがもし順法精神を失うようなことがあるとするならば、これは国の乱れる基であります。これが第一点。  第二点といたしまして、先ほど来法務大臣もしばしば口にせられましたが、これは最初から私が非常に心配していた点でありますが、本法案が成立いたしますと、常に人権じゅうりんの問題が伴うのであります。少くとも人権じゅうりんを守る法律人権じゅうりんをするというようなことに相なりましては、せっかく作りました法律もかえって世の中を混濁せしめる憂いがあるのであります。この点から見ましても、本法案はとうてい成案として見るべきものではないというふうに考えるのであります。  さらに本法案につきましては、先ほど志賀委員が、何か警察署の関係でのぞき見したりあるいは尾行する者があると言われました。衆参両院の婦人議員各位が一致団結して、政党政派を超越して、明るい日本文化国家を建設したいという意味から、非常に熱心に本法案提出を見るに至ったのでありますが、私は、本法案提出せられたについて、警視庁におきましても、銀座あるいは新宿等においてすでに検挙している、あるいは業者が自粛している点から見ましても、本法案提案を見ただけで相当の効果があったことと考えております。かくのごとく各議員連中が熱心のあまり各地の婦人会また非常に熱心であります。先ほど志賀委員警察署員の尾行の点を申されましたが、私はそれに反しまして婦人会から非常な脅迫を受けております。なぜかと申しますると、本月十四日の午前中約二十名の婦人会の方々が見えられました。そうして本法案に対して反対賛成かとのことでしたので、私は、まつ正直に本法案趣旨としては賛成だが、法案内容に非常に欠点があるから、この欠点だけは是正しなければならない旨を申しますと、あなたの選挙区は一体どこなんだ、あなたの選挙区の婦人会と連絡をとって云々というようなことを申しております。むしろ私は熱心のあまり行き過ぎた行為は是正しますが、今後における婦人会の活動もある程度までは是正しなければならないというふうに考えておりまするし、せっかく提案せられた各婦人議員の方々もこの点御注意を願いたいと考えます。はなはだ簡単でありますが、私の反対理由は以上の通りであります。
  271. 世耕弘一

    ○世耕委員長 次に神近市子君。
  272. 神近市子

    神近委員 私はただいま議題となりました法案に対しまして、提案者の一人として賛成意思を表示するものでございます。この法案は非常な不幸な扱い方を受けてきたということについて、私は憤激にたえない点をたくさん持っておるのでございます。どういう点かといえば、私はやむを得ずして筆頭提案者になっておりまして、提案理由説明をいたす立場にいたのでございます。しかし保守派の民主党あるいは自由党の方々の御質疑は私にはほとんど与えられなかったのでございます。ですから、今日私は、提案者として多少時間の御猶予を願って私どものこの不幸な法案に対する弔辞を述べたいと考えるものでございます。先ほどから伺っておりますと、人権でございますとか、あるいは愛情でございますとか、あるいは保護でございますとかいうことが繰り返し繰り返し口にされるのでございます。われわれに愛情が足らないというのはとんでもないことで、今度の法案の基本的な考え方は、売春をなさしむる者をやめさせ、それに場所を提供して搾取する者をやめさせ、これに資金を提供して便宜をはかりかつ利得している者をやめさせ、あるいは勧誘し、人身売買の事態を起す人たちを罰する、この四つが基本的な点であったのであります。そして保守派のどなたを考えてみても、今年選挙が済みましてから御一緒に法務委員会に出入りしてどの一人を見ましても、りっぱな方々である。人生の経験も積み、そして法理にも詳しい。このりっぱな方々とお話をしてみれば、どなたでも今日の売春実態はこのままではおけないということをお認めになるのです。しかしここで保守派の方々の御議論を拝聴しますと、政党の政治的陰謀によってこの法案がつぶされかけているということを私は感じます。それはどういうことによって私どもがわかるかというと、この正しい討論には持ち込まれないで、ごくさまつ的な、たとえば法務委員会においてただいま立案されているところのあの協議会法案をのぞいてみても、あれは法務と厚生と労働と文部と多岐にわたった法案なのでございます。花村法務大臣は最も衆知を集めて作った法案とおっしゃるのですけれども、あれをここに今持って来てどういう形で審議するか、私は法律はしろうとでございますけれども、厚生と労働と文部と法務の四委員会が共同審議をしなければならないものじゃないかと思うのです。犬養前法務大臣が言われたように、まずできるところから手をつけようじゃないか、予算は今つけられないが、まず一番手近いことからやろうというのがこの前の法案に対する前犬養法務大臣のお話であったのでございます。私どもはその言をよしと考えました。法務委員会で出す以上、この一面に限られることは当然でありまして、そして今お気の毒にも、良心を持ちあるいは良識を持っている法務委員の方方が党の政治的陰謀によってこれを否決しなければならないのです。なぜそれならば不満があるか、口におっしゃるような不満があるならば、なぜわれわれにどの程度まで妥協ができるか、譲歩ができるか、あるいはどの点がわれわれには困るのだということを申し出にならないか。今まで一言もその点に触れないで、言うことは施設がないということ、たとえば今日本全体の赤線、青線、その周辺を含めて五十万という数が出ている。そしてこの間中川部長でありましたか、この法案が出たならば検挙は五万人だと考えると言われた。そうすると、その五万人の内容は、今すでに検挙している者が三万六千でこの法案の実施によって大体一万四千というものの増加を見越すというその内容すらみなよく見きわめないで、五万の検挙でございます、あるいは八十億の予算でございますと言う。われわれが実際の政治に携わる者として一歩々々を進めていかなければならないものを、向うの遠いところの理想郷のような話をなさるのです。そういう理想郷のようなこの売春解決策は、共産圏の中でなければできないのです。私どもはよくそんなことは知っている、それで皆さんは妥協がどこでできるか。今五十万の人権の問題が話に出ております。愛情を持って物を考えなければならない、その愛情はどこに向けられるべきか、この五十万の人たちの前にわれわれのその愛情は積み重ねられ、その人権の擁護は、この五十万の女の人たちの上に置かれなければならない。しかし委員諸公の愛情の置きどころは、変なところにそれていやしないか、業者のためのこれは策動——もしそれをうそだとお考えならば、今椎名委員婦人たちに脅迫されたとおっしゃったけれども、あなた方の仲間の辻政信氏は、業者からこの脅迫的なものを受けたと同じことを言っておられる。しかも今日の委員会のあの廊下では、業者の方々が、あの男には二十万だったか、あの男には三十万だったっけというようなうわさをしていて、それにしちゃやり方が手ぬるいというようなこと今もささやいていたということが私どもには報告されたのです。そういうことを考えますと、今いろいろ入りかわり立ちかわりお述べになったところの、この法案反対の御意見というものは、そういうような意図から行われたのであって、そうしてこれは納得できない政治的陰謀によってつぶされるということを私どもは感じます。(「二十万とは何だ」と呼び、その他発言する者多し)それで、たとえばその思想の根底は、ただ取引だけだとは私は言わない。たとえば、前の文部大臣であったところの……。
  273. 世耕弘一

    ○世耕委員長 神近君にちょっと御注意申し上げます。今神近君の御発言の中に……。     〔発言する者あり〕
  274. 世耕弘一

    ○世耕委員長 静粛に願います。神近君に御注意を申し上げたいと思いますが、そういうような御発言は……。
  275. 神近市子

    神近委員 五千万円の金の話しだって出たではありませんか。
  276. 世耕弘一

    ○世耕委員長 静かにお聞き願います。
  277. 神近市子

    神近委員 私静かに話そうと思っております。     〔発言する者多し〕
  278. 世耕弘一

    ○世耕委員長 静粛に願います。静粛に願います。神近君にお願いいたしますが、なるべく他の議員を刺戟するような御発言はなさらないように、そうして論旨をお進め下さるようにお願いいたしたい。それでなければ、お約束の時間でかえってあなたの諭旨を失う結果になりますから、どうぞ時間を有効にお使い下さるようお願いいたします。
  279. 神近市子

    神近委員 私はそういうことが皆さんを刺戟しようとは夢にも思わなかったので、事実のところを申し上げたのでございます。それでこの問題でございますけれども、どうも想像の上の人権は守らなければならないということが、さっき逐次考えられたのですけれども、今赤線の中、青線の中、その周辺に五十万という女の人が人権をじゅうりんされて、行動の自由がなく、苛酷な搾取を受けております。そうして婦人少年局の白書によれば、その九割が更生を望んでおります。私がこの間皆さんにプリントにしてお回しいたしました手紙も、その実証をするためのものであったのでございます。その九割があそから早く更生したい言っている。ところが皆さんの方では、貧困だからあそこで落ちついてやっと食べているんだ。じょうだんじゃない、あの中に貧困のために落ちたということは事実であっても、落ちるときの貧困が最も苦しいのです。あそこに入ってからの貧困は、皆さんが愛情を持ってお考えになるような性質のものではない。九割が早く出たい。毎年一人々々が十万、二十万、三十万と借金を負って、どういうわけかわからないけれども、このちっとも理由のわからない借金が年々ふえている。三十万も五十万もしょったら一体われわれはどうなっていくか、この不安にさらされている。この人権の擁護こそ、私どもは最初だと思う。だけれども、皆さんは、あとの人権、これからこういうことが起り得るというような想像上の人権のことは非常に問題としながら、現実に今日本の各地に五十万と推定されている女の人たちの人権というものは、一つも考慮されていないというところに、私はその反対論に非常に不思議な印象を受けるものでございます。この問題でいろいろ論議が出まして、私には一言もそのことに触れる機会を与えられなかったので、ここではっきり申し上げます。井本局長が仰せの通り外国の立法には売春そのもの処罰するという法規は、インデアンを除いてないのであります。なぜ日本がこの特別法を必要とするかということを考えていただきたい。キリスト教団は、売春というものに対する本能的な罪悪観が強い。私はキリスト教の学校に育ちましたから、よくその心理がわかるんですけれども、キリスト教的な感覚では、売春というものが罪悪である、神に対する悪であるというのは、犯罪観よりももっと強いのであります。だから交通整理とか、あるいは性病予防とか、刑法とか、それから風俗営業法的な法律によって、十分その効果を上げているんです。ところが日本はどうしてこういうことになったかということが先ほどから問題になっておりましたけれども日本はキリスト教的な一夫一婦の感覚は全部なし。男の人にあるとすれば、これは珍しい、表彰に値するくらいのものであって、男の人たちは、その点では私ども婦人に比べて道徳的に非常に劣性であるということは、言うをはばからないのでございます。一般論的に言って。  それで今までの勅令第九号、それから風俗営業法、あるいは性病予防法、児童福祉法、職安法、こういうりっぱな法律がいくら作ってあっても、この問題にちっとも役に立たなかった。われわれは売春が悪であるというキリスト教国の伝統とは逆に、売春は当りまえだという五百年以来の公娼制度の伝統を引いてきております。私は最近ある大学の歴史研究会に参りまして聞かされたのでございます。大正の何年であったか忘れましたが。吉原をあそこに移転した、あるいは再建された何百年かの祝いがあって、そのときに、お名前を出してはまことに悪いかもしれませんが、前の文部大臣安藤正純氏、それから私がこの中でも特に尊敬申し上げてりっぱな方だと考えております船田中先生、そういう方が祝辞をお述べになっている。その中に、この制度は——公娼制度ですよ。売淫制度は、日本の国の国粋的な美風であって、日本はこれあってこそ忠君愛国的な国是が維持されている。まことに表彰すべき人たちだ、というような祝辞が述べられたということであります。私は、今船田先生が同一のことを考えていらっしゃるとは思いません。しかしわずかに二十年か二十五年の過去に、そういう政治家がそういう場所に出てぬけぬけとそういう式辞を、あるいは祝辞を述べることができたという日本状態を考えますときに、私どもは、今までの法案が効果が上らなかったことはゆえあるかなと考えるのでございます。大体この自然犯といわれるようなことと法定犯との争い、それからもう一つこれが警察によって実施されない、そういうことについてここで役人を相手に皆さんが御討議なさること、御討論なさることをなぜ私に向けて下さらなかったか、私はその点非常に不満なのです。インジャンクション・アンド・アベートメント・ローというアメリカの法律、ドイツの学校あるいは幼児をかかえた家庭におけるこれを遊離しなければならぬ、あるいは公共のふろに入れてはならない、そういうような実施は幾らでも私ども方法を持っていたのでございます。けれど私には結局一度もそれを発言する機会を与えられないで、そうしてこの法案を葬るということは私は不当だと考えるので、何も興奮してはいないのですけれども初め少し大きく声を出したので、とうとうおしまいまで声が大きくなって、委員諸公を御非難申し上げているような結果になっているのです。私どもは問題は逐一わかっております。しかしわれわれにはどなたも立ち入った批判もあるいは修正の意見もお出しにならなかったから、われわれはそれを秘めたままここへ最後の討論に出させるはめに立ち至ったのでございます。私どもはよろしい、ともかくこれを否定なさって下さい、そして日本の全部を今のままでさえひどいと思うのに、なおひどいものにする、そして家庭が破壊され、男女の幸福が破壊され、あるいは子供の教育が破壊され、あらゆる今の弊害のもと、このもとに手をつけないで一体何をなさろうというのか、私どもは静かに皆さんのおやりになるところを拝見していたいと思います。そして私ども機会があればまたこの法案は次の国会にどういう形かで——同一の形かあるいは異なる形か、私どもは持ち出すつもりでございます。  私は原案を支持するためにこの討論に出たものでございます。(拍手)
  280. 世耕弘一

    ○世耕委員長 福井盛太君。
  281. 福井盛太

    ○福井(盛)委員 私はここに本提案に対しまして、遺憾ながら反対意思を表明する次第であります。  幾多の提案者の方々並びに文書等によりまして、この提案理由並びに説明についてとくと了承いたしたのであります。その理由とするところは、要するに風紀の紊乱を防ぎ、婦女の基本的人権を擁護し、健全な社会秩序の維持に寄与するために、売春等の行為処罰する法律を制定するのであるというのが、これが提案されました理由の概略並びに説明であったのでありまして、本法案趣旨につきましては、私どもも決してその趣旨反対するものではありません。まことにけっこうな趣旨法案であると考えるのであります。しかし私がこれに反対せねばならぬ理由のものは、今直ちにこれを履行することができるかできないかという問題にあったのであります。  まず第一に考えなければならぬことは、一たび法律として施行せられる場合には、その法律の権威というものはあくまでも国民にこれを知らしめなければなりません。すなわち徹底的に行われるようにしなければならないのであります。これは言うを待たないところであります。従いまして本法案が国会を通過し、施行せらるるあかつきには、当路者はどこまでも厳正にこの法律の真意を国民に徹底せしめ、そして罰すべき適格者はどこまでも処罰し、もって寛厳よろしきを期さねばならないのでありまして、その間いささかの錯誤もあってはならないのであります。しかしながらこの適正を期するためには、何といたしましてもその受け入れ態勢と申しますか、いわゆる準備工作が必要と相なるのであります。法律は運用よろしきを得て初めて効果が上るのであります。法律ができても運用よろしきを得なかったならば、何にもならないという結果に相なります。今日の場合、果してこの法律施行の場合におきまして、その効果等を完全に上げることができるでありましようか、私は大いにこれを憂うるわけであります。しからばいかにせばよいかという問題に到達するのでありますが、これをなすためには、やはり何と申しましても根本的な施策、総合的な考慮を樹立しなければならぬ必要を覚えるのであります。何となれば、売春等に関する問題はその関係する範囲がきわめて広範なのでありまして、あるいは倫理道徳を基本といたしまする文教に関係するもの、あるいは健康衛生を中心とするいわゆる保健問題に関するもの、あるいはひいては社会秩序の方面より見たる法務省関係事項、またあるいはこの転落いたしました貧困家庭の婦女等社会施設に関する政策問題等、その関係するところは決して一、二にしてとどまらないのであります。これがすなわち、いわゆる受け入れ態勢を十分考慮せねばならないところであると申し上げる次第であります。換言すれば、本法施行について、以上申し述べました各方面の施策を十分考慮する必要があると私は存ずるのであります。  第二には、ただいま第一に述べましたように諸種の準備行為が必要でありまするが、それには何と申しましてもある種のやはり機関を設立し、そうしてその機関によって各種の行政的、立法的諸措置を決定いたしまして、さらにこれに要する、先ほどからもしばしば論議されました予算処置というものを十分考慮せられなければならないということに相なるのであります。この点につきまして、先ほど法務大臣もわが法務省におきましてこの売春の対策といたしまして対策協議会を設けまして、そうして着々これが研究、調査に着手されておるそうであります。しかしながら私はこの研究が一日も早くでき上らなければならない、鞭撻に鞭撻を加えてそうして一日も早くこれらの研究ができ上って、初めてこれらの基礎に基いてこの立案が完遂せらるることを私は実は心から願っておるのであります。そうすることによって、初めてこの実際に関するところの法律というものの完璧を期することができると相なるのでありまして、私は法務省法務大臣がもっとどんどん鞭撻して早くこの立案を見せていただきたいと考える次第であります。これらが早くできまするならばあるいは今日このような問題も起らずに、これらの法案も修正するところはして、そうしてうまく結果をおさめることができたのではないかと思うくらいに先ほど来思っておった次第であります。  以上勘案いたしまするときに、前述します通りどもは本法案の精神にはもとより反対するものではないのでありますが、一日も早くその成案を見て実行に移し、この種の婦人を救済し、もって道義を基調とするところのりっぱな民主的国家を建設したいという考えが胸一ぱい満ちておるような次第であります。さような期待を持てばこそ私どもはこの法律を全く完璧な法律とし、これに対応するところの諸準備を完全にして、そうしてわれわれの納得のいく、心配のないこの制度にしたいという考えを持っておる次第であります。この会議においてこれを決議し、これを施行するのには社会情勢は一日も早きをこいねがうのでありますけれども、以上のごとくこれが施行後における対策ができておりませんので、はなはだ遺憾ではありまするが、これら諸対策案とともに実行に移していくことが最もよいと考える次第であります。論者あるいは言うでありましょう。しからば本案を本議会において通過されて、施行期日をおくらせたならばそれで目的は十分達するであろうという御議論も出るでありましょう。しかしながらそれは法律案の内容と諸設備とを相互に勘案して作ることか最も良法と私は思うのでありまして、完璧を期するがために問題はなるべく早き機会にという条件でこれを実現することが必要であると思うのであります。かかる新しき立法と諸設備ができまするまでは、ただいま現存いたしておりまするところの関係法規を自由に運用いたしまして、万遺憾なきように実行せられたいということを私は心から願っておる次第であります。  以上私は本案に対するところの反対意思を表明した次第であります。(拍手)
  282. 世耕弘一

    ○世耕委員長 次に戸叶里子君。
  283. 戸叶里子

    戸叶委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただい議題となっております売春処罰法に対しまして心からなる賛成の意を表するものでございます。  この法案はすでに多くの議員から述べられました通り今回で第五回目でございます。しかしこれまで提出せられましたときと環境が非常に異なっているのでございます。今日この法案通過させてほしいという世論は全国に高まり、婦人団体の涙ぐましいところの運動が行われ、また青年の方々からはこの法案通過させよという非常に激励の言葉を私は受けているのでございます。さらに過ぐる十五日におきましては、ぜひともこの法案を通してほしいという一婦人の犠牲さえあったのでございます。この婦人反対と思われる人、あるいはまた賛成の人にまでも強力に働きかけまして、この法案を早く通してほしいというので、その運動に出かけて参りましたが、遂に熱心のあまり脳溢血で倒れました。しかしこの婦人が意識を回復いたしましたときにまず言われたのは「審議未了でありましたか」こういうようなまことに胸を打たれる言葉であったのでございます。さらに「正義が通るような世の中に早くしていただきたい」この言葉を私はとうてい忘れることができないのでございます。このような法律の運命を持っておるにもかかわらず反対の方方があるということを考えましたときに、私はまことに残念でたまりません。特に反対論者はこう言っております。まず第一にこの法案を通しても更生施設がないからたくさんの売春婦の人たちがすぐに路頭に迷うではないか、こういうことを言われているのでございます。全くその通りでございまして、私どももこの更生の問題を考えないのではございません。けれども同時に考えられますことは、政治というものによって一歩々々世の中がよくなって行くのでございます。そう考えましたときに、私どもはまずここに見られることは、たとえば今日失業者はちまたにあふれておりまするけれども、そのごく少数の人しか職につくことができませんし、また結核患者ですぐ病院に入らなければならない人が百三十七万人あるにもかかわらず、二十万ベットしかないという状態でございます。しかるにこの売春婦の問題だけに対しましては、完全な救護ができないから、まずそういうような理屈をつけながら何ら手を下そうとしない。売春そのものに対しての反対をしているということはとうていその人たちの中に見出されないのでございます。この法案を通すならば、かえってそういう人たちに対する対策としての予算がとりやすいではございませんか、なぜその点を考えられないのでございましょうか。厚生大臣の言われたことは、この法案通過するならばただちに予算的措置を考える、こうはっきりと答弁せられておることを見ましても、私どもは心配はないと思うのでございます。さらにまた法務大臣が言われましたことは、多くの人たちが支持され、そうしてまた議員の皆さん方から提出せられた、りっぱな議員の方から提出せられたのであるから私はこの法案通過を望みますと、はっきりこの委員会で言われておるのでございます。にもかかわらずこの委員会に臨んでおりますと、なお反対論者があることを私はまことに残念に思うのでございます。もしこの法案に悪い点があるならば、その悪い点を指摘してそうして修正をして、この法案通過のために努力すべきであると思うのでございますが、何らその努力を払わずして、いたずらにこの法案が悪い悪いと言うだけで、私どもはどこが一体どう修正されていいかということさえも語られておらないという点をまことに残念に思うものでございます。世間では今日民主党、自由党はまことに不思議な政党だと言っております。それは多くの人たちが陳情に参りまして、一人々々の議員に当ってみますと、この法案はぜひ通過しないと困ったものだ、売春社会悪であるということを一応きめることがなぜ悪いのだろうか、日本が国際社会に入るにもこの法案は必要だ、こういうふうな積極的な意見を説かれておるのでございます。ところが今日この委員会で見ますように、さて党を背景として立たれる方はそこに反対意見を出されておるのでございます。一人一人の意見賛成でありながら、しかもその法案に対しまして反対というふうな線が出てくる、こんな類例はあまりないでございましょう。これを考えてみましたときに、私が先ごろ聞かされたことは、ある人たちはいわゆるこの法案を通してほしいという陳情者に対しても賛成をし、また赤線を残してほしいという業者に対しても賛成をした、こういうふうな両方サインをした人さえたくさんあると言って聞かされたことが事実でありはしないかということを疑わざるを得なくなってきたのでございます。また先日、この制度をなくすことは、年をとった人よりもむしろ青年にとって気の毒なことではなかろうか、こういうふうな意見を言われた人もございました。私は先ごろ中央大学の若い学生さんの前でこの問題について問題を提示いたしました。ところが集まった若い青年が異口同音に言われたことは、なぜこの法案通過しないのですか、この学生の会議の決議としてもぜひこの法案通過を望むと言って、私はかえって激励せられてきたのでございます。こういう点から考えてみましても、お年を召した方方の、青年に対してこの制度を残しておいた方がよいのではないかというような同情的意見は、かえって青年にとって迷惑であるということを私ははっきりここに申し述べておきたいのでございます。また聞くところによりますと、今日何か審議会というようなものをここに作ろうとしていられるということを聞いているのでございますが、これは私は自分たちの責任をこの審議会に転嫁しようとするのではないかと思うのでございます。売春処罰法を通すべしという世論があまりに高まっておりますために、この世論に対して何らかの返事をしなければならない、ここでうまく審議会をつくって体をかわしてそうして逃げようと苦慮した結果こういうふうな考え方を出されたのではないか、こう考えざるを得ないのでございます。私は天下の公党であるならば、もっと正々堂々とはっきりこの制度を認めたい、業者を支持したい、こう言われるならば堂々とその意見を出されるべきであって、いたずらに審議会にその責任を転嫁しようとするような態度は、まことにひきょうな態度であるといわざるを得ないのでございます。日本は今国際社会の仲間入りをしてだんだんに国際的の地位を確保しつつあるのでございます。にもかかわらず相変らず日本売春国であるという汚名を着せられ、そうしてその汚名を取り除こうともしません。その人たらは、私は口ではいかに文化国家の建設を唱えても、決して文化国家建設に当る資格がない、こう言わざるを得ないのでございます。今日ここに超党派で出された法案が何ら修正もされないで、そうしてある人たちがいわゆる応対をしながらうやむやにされるということは、全く国会の審議権を軽視するものでありまして、どんなに弁解をしてみましても、どうもその方々の態度というものに対して私は不明朗なものを感ぜざるを得ないのでございます。  今日盛り上ってきているところの進歩的な人たちあるいは婦人青年は、かたずをのんで今日のこの委員会の結果を見守っております。もしこの法案が否決せられるようなことがありましたならば、その人たちの憤りというものはさらに倍加せられまして、この法案通過されるまであくまで目的貫徹のために戦うということを強く誓うでございましょう。この法案反対する方方はどうぞもう一度胸に手を当ててようくお考え下さいまして、恥かしくないような結論をお出しになるためにも、今からでもおそくはございません、どうぞこの法案賛成されることを心から希望をいたしまして、私のこの法案に対する賛成の討論にかえる次第でございます。(拍手)
  284. 世耕弘一

    ○世耕委員長 これにて討論は終結いたしました。  これより採決に入ります。本案賛成諸君の起立を願います。     〔賛成者起立〕
  285. 世耕弘一

    ○世耕委員長 起立少数。よって本案は否決されました。  ただいま山本粂吉君より売春等に関し本委委員会において決議したいとの旨の動議の提出がありました。その趣旨弁明を許します。
  286. 山本粂吉

    山本(粂)委員 私は売春等に関する決議案の提出理由説明いたしたいと存じます。  まず売春等に関する決議案の案文を朗読いたします。     売春等に関する決議   いわゆる売春等に関する諸問題は、文教、保健、道義、社会秩序並びに転落貧困家庭の扶助政策など各般に亘り、速かに抜本的総合施策を樹立しこれを実施する必要がある。   仍て政府は、この際内閣に強力なる審議機関を設け、その議を経て行政措置、立法的措置、予算措置など総合対策を策定し、国会の審議を要するものについては次の通常国会に提出し、現行の法令並びに行政措置により可能なる範囲については政府責任において速かに実施励行すべきである。   右決議する。  以上の通りでございます。  本決議案提出趣旨は、決議案そのものの文言によっておのずから明らかでございますので、ここにあらためて趣旨の弁明を省略いたしたいと存じます。ただ私は、本決議案を提出することによって、政府にすみやかなる売春等に関する立法措置を講ぜしめて、しかも次の国会においては、ただいま否決せられた本法案提出者とともに、さらによりよき法案を立法化して、ともに喜びたいという念願から、本決議案を提出するものでありまして、断じて審議機関を設けてそれに責任を転嫁せんとするがために決議案を提出するものではございません。次期国会においては、売春等に関する立法措置を講ぜしめて、これを成立せしめて、ともに喜びたい念願から、本決議案を提出するものであることをさらにつけ加えて趣旨弁明といたす次第でございます。すみやかに諸君の御賛成をお願いする次第でございます。
  287. 世耕弘一

    ○世耕委員長 ただいま山本粂吉君より、売春等に関する決議を本委員会においてしたい旨の動議があり、さらに趣旨弁明がございました。よって本動議について議事を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。古屋貞雄君。
  288. 古屋貞雄

    ○古屋委員 ただいま山本君から、売春等に関する決議案の動議が提出されまして、なおそれに対して御趣旨の弁明がございました。第一に私は御質問したいのでございますが、売春等に関する決議で、政府にこれを求めるというような御説明がございましたが、第一にこの決議案に対する本質でございます。政府にあれもせよこれもせよということを申す前に、われわれ議員には発案権がございます。ただいま不幸にいたしまして否決をされました売春等取締法案に対する審議をさらに進めまして、みずから発案いたしました議員の発案に対して、完全なものでなければこれをさらに修正するなり、あるいは代案を出すなりいたしまして、この議員の発案権に対する尊重をわれわれは考えなければならない。従ってその発案権に対するわれわれの審議権、発案権を放棄いたすような結果になりはしないか、みずからみずからの無力を表明して、政府にかような大事な立案を要求するということになりますので、この点私非常に納得がいきませんが、この決議案の本質について、第一にただいま申し上げましたように、われわれの発議権、審議権を放棄する、おろそかにすることが疑われはしないかということが一つ、もう一つは、審議機関を設けさして、来る通常国会にこれが立法措置が必要なものについては提案をさせるのだということをお述べになっておりまするけれども、すでに政府は昭和二十八年の十一月から、第二国会の政府提案が審議未了に終りました後に、すみやかにこの法案は必要であるからというので、売春問題対策協議会を、内閣に審議会として設置することを急ぐからという理由のもとに、法務省に設置いたしまして、しかも数年間、今日に至りましても、今日まで法務大臣その他から御発表がございましたように、いまだに結論を得ないというこの実績に徴しましても、この決議案に盛られておる、これから審議会を作って数カ月後の通常国会に法律的措置をすることができるというようなことをお考えになっておることは、これこそまことに私は夢のようなことをこの決議に盛り込んでおる、不能のことを盛り込んだことになると信じます。言いかえまするならば、現在否決されました法案が不完全である、これに対する予算措置が行われていない、その他売春取締の目的を達成するには、文教、保健、社会秩序、いろいろな方面の総合的な研究の結果に待たなければならない、こううたっておりますが、数カ月後に果して政府はかような重要なる措置をとられるかどうか、私は非常に疑いを持つものでございます。それからまたこの決議が行われて、政府にこれが要求をいたしましても、政府がこれをやらないということは、従来の実績にかんがみまして、私どもはもう結論がはっきりわかるような気がいたしてなりません。提案者はこれに対して確実に責任をもって、通常国会において政府をしてこれが措置をなさしめることができるかどうか、そうして提案者の御主張のような完全なる売春取締法案というものを制定される準備ができるかどうか、私はこの二点について提案者に御質問申し上げる次第であります。  私どもから考えますならば、売春処罰法案が否決されました根本の原因は、総合的調査の結果、完全なるものを出すということでなくして、売春が悪意であるのかあるいは悪意でないのかという、いわゆる一つの思想的な相違が根本にあるように思うのです。従いましてこの点について売春は禁ずべきものではない、処罰をいたすべきものではない、こういう御主張をお述べになりました提案者立場から、かように重要なる法案が数カ月後にまた提案されるかどうか、今提案の決議案の内容そのものに重大なる矛盾があるが、さようにお考えになるかどうか、この点の御答弁をお願いいたしたいと思います。
  289. 山本粂吉

    山本(粂)委員 お答えいたします。  第一の御質問でございますが、本決議案は断じて議員の立法権を放棄するものではございません。そういう意味合いで出しておるのではなくて、よりよい法案政府責任をもって作成せしめて、それを本委員会提出せしめ、そしてよりよき法律を作りたい、こういう念願から決議案を提出するのでありまして、決して立法権の放棄ではない。  第二の法務省内に設置せられた協議会でありますが、これは相当の年限がたっておるにもかかわらず、いまだにその結論が出ておらない。しかるにさらに内閣に審議会を設けて、短日月の間に結論が出るかどうか、はなはだ疑問が多いという御質問でございます。まことにごもっともではあるが、これはあえて法務省内における協議会が怠慢であったとか、あるいは職務に不熱心であったとかいう意味ではないけれども、一体ほんとう政府が腰を入れて、売春等に関する行政措置について、あらゆる面から総合的な研究をして、ほんとう社会悪をなくそう、根絶しようとする意気があるならば、私は数カ月はおろか、より短かい期間においてもよりよきものができるであろうことを確信いたして、本決議案を提出しているものでありまして、与党といたしまして、政府がこれを取り上げない、この決議だの趣旨を尊重しないで、次期国会に適切なる法案提出をしない、さような無責任な決議案を提出したのではなくて、政府と緊密なる連携のもとに本決議案を提出したものでございますから、この点は御安心を願いたいと存じます。
  290. 古屋貞雄

    ○古屋委員 法務大臣に御質問申し上げますが、この決議案が議決されました場合に、法務大臣責任をもって五カ月くらいの短かい期間に、これに盛られたような精神の完全なる売春処罰法案提案することができるかどうか、御答弁願いたい。
  291. 花村四郎

    花村国務大臣 もし決議がいたされましたとしまするならば、その決議の趣旨を尊重して善処いたしたいと存じます。
  292. 世耕弘一

  293. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 現在法務省売春問題対策協議会のあることはしばしば申した通りであります。提案者に伺いますが、労働省にも労働大臣の諮問機関である婦人少年問題審議会がございまして、そこで売春問題の対策を研究しておったのでありますが、昨年の十二月二十七日にすでにその審議の結果が現われまして答申をいたしております。その答申内容に黙認主義を排して売春取締りを強化すること。単独の売春禁止法を制定すること。さらに売春婦の保護、厚生対策及び一般婦女子の転落防止を講ずること。そのためには職業補導、指導、就職あっせん、また保護融資資金、婦人厚生、相談所等を設置する。こういう内容を持った完璧を期したところの答申が行われておるのであります。法務省には一つの協議会があり、さらに労働省に重ねてこの協議会がある。このことを御存じであるかどうか。さらにこの二つの協議会があるのに、内閣に屋上屋、ビルディングを作って——審議会のビルディングを作って、さらに内閣にこの諮問機関を作らんとするのである。そういう必要が果してあるのかどうか、われわれはこういう審議会のビルディングを作って、そこに巣くってこの法案のすみやかなる実現を阻止するのであるとわれわれは疑わざるを得ない。この点に関する御答弁と、さらにもう一つはこの内閣に作る審議会というのは憲法調査会のようなのをいうのであるか、そうするとこの調査会を作るために相当の長時間を要すると思う。また審議につきましても、一つの諮問機関が一年も二年も三年もかかってやっているのに、審議会をこれから作って、その上に通常国会に出すというようなそんな早わざの芸当ができると確信を持っているか、もしそれができなかったらこの決議をした諸君はいかなる責任を負うのであるか、その点に対する御答弁をお願いいたします。
  294. 山本粂吉

    山本(粂)委員 お答えいたします。法務省内にある協議会と、ただいま提出いたしました決議案に盛られている審議会との関係でありますが、法務省内における協議会は内閣において法務省と交渉の上これを引き継がせる、こういう考えでおりますので、決して同じ問題について二つの協議会審議会を並行して進ませるという考え方ではございません。  それから審議会協議会等は多くの時日を要するということが通例になっておる、私もその点については全く同感でございますけれども、この世論の傾向を考え、この否決せられた売春等処罰法案の審議の経過等から考えてみて、政府におかれましては、この決議案の趣旨を尊重せられて、必ず今日まで行われた法務省内の協議会における審議の一切の過程を、今度できる審議会に引き継がれて、すみやかに結論を得て、その結論を土台にして立法化せらるるものとかたく信じておりますから、あらためて御安心を願いたいと存じます。労働省に審議会があるとすれば、その問題も売春等処罰法案と同一傾向のものであるとすれば、同一内閣のことであるからこれもおそらく並行するかあるいは一つにするか、これは内閣におまかせしてよろしいと思います。
  295. 神近市子

    神近委員 私は提案者に一、二お尋ねしたいことがございます。この決議案はただいま否決されましたところの法案に対する世論の支持が非常に強い、そしてこれに反対する者に対する風当りが非常に強い、その風よけのために提案されたものと私は考えます。それで今これを拝見いたしますと、文字通りこれを受け取れば非常にけっこうでございますけれども、この転落貧困家庭の扶助政策、これは今日でも転落する子供を出すような家庭は非常に多くて、そうして受け入れ態勢がどこの町に行っても業者が網を張って待っているということから生じているというのが私どもの見解であったのでございます。この穴をふさがなければ幾らでも無数に転落子女ができる、この転落する者を保護する——今日生活保護を受けている人は有資格者の二割か三割にすぎないような状態、そうしてこの通りにもし新しく立案されれば転落家庭は無数にできてくると思うのです。まずここでちょっと転落すればここからよりよい救護が与えられる、生活保護なんかは幾ら待っていてもかかることはできないけれども、ここでちょっと通ればこの保護の網に乗ることができるということで、私は転落する子女を誘導する役割をするのではないかと考えます。その点について提案者の御説明を承わりたいと思います。
  296. 山本粂吉

    山本(粂)委員 お答えいたします。本決議案が風よけのためではないかという御質問でありますが、これは考え方によっていろいろに考えられるでありましょう。私どもは風よけのためにこの決議案を出そうというのではない、世論の趨勢にかんがみ、また否決せられた法案の審議過程にかんがみて、この売春等に関する社会悪を根本から根絶したい、こういう念願から、日本の財政その他の面からあらゆる衆知を集められて、最も適正妥当なる法案を出してもらいたい、こういう意味から内閣に責任を持たして立法化させたいために本決議案を出すのでありまして、決して風よけのために決議案を出そうというようなことでは断じてございません。それから本決議案が文字通り読めれば大へんけっこうなように思われるとおっしゃいますけれども、そういうお考えでなしに、文字通り政府を鞭撻して実行させるという意気込みで政府に迫るべきが、われわれ議員の本分ではないかとまで私は考えておるのでありまして、さように責任をもって政府によりよき法案の立法化を進めさせたい、こういうことが本決議案の趣旨であることを御了承願いたいのであります。またこの決議案のようなことができてくると、穴があるから転落女性がそこへ出ていくのだ、こういう考え方、また反射に転落するから穴ができるんだという考え方、どちらがどうなのか、ここで直ちに結論を出すことは困難でございましょうけれども、この決議案の趣旨のようなことが織り込まれてくれば、転落者が増加するであろうという考え方については、それは御意見としてどのような御意見を御発表になろうとも、私はさようなことは断じて考えておりません。以上お答えいたします。
  297. 世耕弘一

    ○世耕委員長 これにて質疑は終了いたしました。  討論に移ります。討論の通告があります。これを許します。福田昌子君。
  298. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 私はただいま民主党から提出されました売春等に関する決議案に、社会党を代表いたしまして反対をいたします。この売春等処罰法案それ自体が超党派で提出された法案でありまして、その超党派提出法案が不徹底な審議のままに結論を出されまして、そうして突如として政府与党からこういう奇妙な決議案が出されたのであります。私どもはこの決議案の一事をもっていたしましても、このことだけをもってしましても、いかに政府与党の方々が国会における議員の立法権及び審議権を無視しておられるかということを立証するに足るといえるのでございます。かような政府与党の態度は私どもといたしましてはまことに遺憾しごくに存じます。  そもそもこの売春等処罰法案そのものは、国会におきましても第二回国会、昭和二十三年にその最初の提案を見まして以来、すでに四回にわたりまして審議未了または流産のうき目を見ておるのでありまして、今回はすでに五回目の提出であったのであります。年限からいたしますれば法案の最初の提出をいたしましてからすでに八年目の提出であったのでございます。しかも日本の現状を見まするに、売春婦は増加の一路にございまして、しかも業者はますます隆盛の一路をきわめているという状態でありまして、諸外国から見ました場合におきましては、売春日本の汚名をほしいままに発揮しておるという状態に相なっておりまして、今や世界の識者から関心の的として売春日本の行方を見守られておるという状態にあるのでございます。従いまして何らかの形においての売春取締り対策というものは焦眉の急を要する措置であるにもかかわりませず、この売春等処罰法案の審議に当りまして、十分なる審議も尽されずいたしましてかような決議案が出されて参ったということは、重ね重ね遺憾しごくに存ずるところでございます。売春そのもの取締りにつきましては取締り法規と同時に保護政策が必要であることは、これまた論を待たないところでございます。従いまして政府与党におきまして売春に対しまして十分その政党において心痛いたしておりますならば、その三十年度の予算補正におきまして当然売春のよって起る原因を未然に防ぐための防貧政策、さらにまた売春婦の保護政策というものに対しまして十分なる予算の割愛、編成かなされなければならなかったのでございます。しかるところ、御承知下さいますように三十年度の予算の決定におきましても、生活保護法それ自体が二十九年度におきましては、約百九十万世帯を対象としての予算が組まれましたにもかかわりませず、本年度におきましては約百八十五万世帯を対象としての生活の保護法の予算が組まれておるにすぎないのであります。実際は生活困窮者が増加の一路にあるにもかかわらず、予算的にはその対象世帯を減少したというのが、今回の今年度の予算措置でありました。また売春婦に対しまする保護政策あるいはまた転落婦女を未然に防ぐと称しまする保護政策においても、全般的にその予算措置が減少されましたことは、すでに予算の決定におきまして御承知のところでございます。この一事をもちましても、ただいまの鳩山第二次内閣におきましては売春対策に対しましては十分なる熱意を持っていない。その主張いたします売春婦の保護政策に対しまして、きわめて冷淡無比であるということが立証されるのでございます。こういう状態でございますから、この内閣におきまして売春取締りに対します対策というものが、きわめて熱意がないということは火を見るよりも明らかであります。にもかかわりませず、本日ここに出されました決議案を見ますと、まずその冒頭にうたわれておりますことは、売春婦のよって来たる主たる原因であるところの貧困家庭を救済する政策の主張があり、また抜本的な売春婦に対します保護政策を強調いたしておりますが、かような保護政策はただいま申し上げましたように、過去八年間にわたります保守党の政権下にあってすでになし得ざるところであり、しかも第二次鳩山内閣におきましては予算編成の当初において、初めからその念頭になかった措置であるのでございます。八年間になし得なかった措置、しかも本年度の予算編成においても全然考えていなかった処置を、この一片の決議案によりまして、早急に政府に要請いたしましてその実現をはかるということは、これはまことに困難そのものの要望を政府にいたすことでありまして、かような決議なる美名をもちまして、政府がやる意思のない売春対策を糊塗いたしまして、その売春政策をやる意思のないことをごまかそうとするこのことは、私どもといたしましても、まことにその魂胆におきまして許すべからざる態度といわなければならない、この点もさらに深く遺憾しごくに思うのでございます。  さらにまた私どもはこの決議案におきまして考えさせられますことは、この売春等処罰法案そのものは、たびたび繰り返しますように、法案提出そのものは超党派の形で提出されたのでございます。従いまして、その法案の審議の当初におきましては、超党派的にこの法案に対しまして賛成の態度をとられました保守党の議員諸公がこの法案の審議が進むにつれまして、ことに業界の動きが活発になるに歩調を合せまして、この法案に対しましてだんだんと批判的な態度をとり、次には売春業者取締りに対する反対の態度が強化されて参り、次には法案自体の反対の空気が強くなって参りまして、さらにまた残念なことには、法務大臣自身もこの法案反対意見を表明されまして、本日遂にこの法案の審議が打ち切られて、不幸にして否決されたというこのことでございます。私どもはかような決議案が出されたということ、このことをもちましてもまことに奇怪千万に思えるのでございまするが、かような動きをよく考えてみますると、その間に疑義なきを得ないのでありまして、その点につきましても神聖なる国会において、私どもはまことに残念、遺憾しごくに思うのでございます。さらにまた私は……
  299. 世耕弘一

    ○世耕委員長 福田君にお諮りいたしますが、まだだいぶんございますか。
  300. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 それでしたらすぐ、簡単にいたします。  さらにまた私はこの法案の審議におきまして、また今回の決議案に対しましてつくづく考えさせられますことは、今回のこの法案そのものに対しましては、日本全国の善良なる婦人がその成立に大いなる期待をかけておったということでございます。この法案の否決を見、今日この奇怪なる決議案を出されたということは、全国数千万にわたる婦人がいかに悲観落胆するであろうかということでございます。その責任はあげて、この法案を否決され、この決議案を出された議員諸公の責任にかかっておるということを、私はあわせて申し上げたいと思うのであります。(拍手)  さらにまた私はこの法案の審議においてあわせて考えさせられたことでありまするが、日本は今日新憲法下におかれまして、男女は同権ということになっておる。女性の人権もまた男子と平等に尊重されるということがいわれております。しかしながらこの法案の審議を通じて見ますると、男性議員の一部におきましては、過去数世紀にわたりまして専横をきわめました男性支配の思想というものが、そのまま今日もなお受け継がれておるという感がすることでございます。私は男性議員の幾人かの方々にぜひお願い申し上げたいことは、今日その男性である特権的な意識を一日でもよろしいからお捨ていただいて、女性の地位に立って、売春婦立場に立ってお考えいただきたいと思うことでございます。かような、今日の新憲法下におきまして平気でじゅうりんされております売春的女性の地位に自分を置いてお考えいただきましたならば、今日このような重大な法案の審議に当りまして簡単にこれを否決されまして、かような理不尽な決議案を出されるようなことはおそらくなかったであろうということを私はきわめて遺憾に思うのでございます。  かようなことを考え合せまして、今回御提出になりました決議案に対しましては、私どもはどうしても承服できないのでございます。(拍手)
  301. 世耕弘一

  302. 永山忠則

    永山委員 自由党を代表いたしまして、本決議案に賛成をいたすものでございます。  反対党の方から言われましたように、この決議の文案そのものはけっこうだということでございますので、われわれは、ここに各派共同提案として出されたときの気持に立ち帰られまして、ともに手を携えまして、この文案の通りに実行するように一つ互いに努力をすべきであると考えておるものでございます。そうしてこの社会悪は全国民ひとしく痛感をいたしておるところでございますから、これをいかにして払拭するかということについては、互いにその手段、方法考え方が違っておるだけでございまして、この社会悪をのけねばならぬという熱意はともにあるのでございます。この決議案にございます通り、また反対者の言われました通り、どうしても予算的処置が伴わねばならぬのでございます。すなわち予算が通過したあとで本法律案が審議されておるのでありまして、川崎厚生大臣も直ちに八十億はいるんだということを言われましたように、われわれは処罰主義よりは更生主義へ、法廷主義よりは行政主義へ、さらに急進政策よりは防貧政策という施策をもちまして、どうしてもここに政府の方で十分予算的措置をしていただかねばならないので、この決議案に強く賛成するゆえんでございます。何といっても観念的な法理論だけではいけません。どうしても予算的処置が伴わねばならぬ、この点において本決議案に賛成するものでございます。  さらにまた、時間がございませんから詳細は言いませんが、審議機関の問題に対しましても、各省がみな対立いたしまして、そうして総合的でないということが今日の行政一般の欠点である。ここにおきまして総合機関を設けてやってもらうということに対しても、賛成をいたす点でございます。そうして声を大にして賛成することは、次の通常国会にこれを提出するという点でございます。おざなりに今日を糊塗しようというような考えは毛頭ございません。こうしてこの売春問題を解決したい熱意において、本決議案に賛成するものでございます。
  303. 世耕弘一

    ○世耕委員長 細田綱吉君。
  304. 細田綱吉

    ○細田委員 かつてマッカーサー司令官が、日本の国民は十二才だと言ったということを記憶しておりますが、私はこの決議案を見て、まさに日本の、特に保守党の方々は政治的に十二才ではないかと考えるのでございます。大体国家最高の機関である国会が政府の措置をまたなかったら何もできないという考えは、旧憲法時代の頭がちっとも切りかえができていない。時間もないので申しませんが、大体法務大臣でも、審議機関を設けて次の通常国会に出せるか、善処いたしますというようにお茶を濁しておる。こんなことはできないのはもう当りまえだ。審議機関を内閣に持って、新しく委員をきめて、それからまた三年か五年引き延ばそうというのが民主党、自由党のお考えであろうと考える。特にまた第一項の文教から保健、道義、社会秩序から転落貧困家庭の扶助政策の各般にわたって抜本的な施策というようなことをやったら、これは数千億の金がかかることはあなた方がよく御存じ。日本の現状でこれをやって、それでさて売春を絶滅しようというと、まさに一世紀ものの感が深いのでございます。従ってそれはできないことを、先ほども神近さんが言ったように、国民の世論が非常に巻き起って、これをいかにかわすか、いかにこの目をのがれるかというために一片の決議を出した、中身はへのような何もないものである。従って私はこの決議に反対するものでございます。(拍手)
  305. 世耕弘一

    ○世耕委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより山本粂吉提出の動議について採決いたします。山本粂吉提出の動議に賛成諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  306. 世耕弘一

    ○世耕委員長 起立多数。よって本動議は成立いたしました。  ただいま花村法務大臣より発言を求められております。これを許します。花村法務大臣
  307. 花村四郎

    花村国務大臣 政府といたしましては、ただいまの決議の趣旨を尊重して最善を尽して参りたいと考えます。
  308. 世耕弘一

    ○世耕委員長 なお本日議決いたしました法律案についての委員会報告書の作成並びに決議の送付等については、委員長に御一任を願いたいと存じます。  これにて散会いたします。     午後十一時五十二分散会