運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1955-07-18 第22回国会 衆議院 法務委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月十八日(月曜日)     午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 世耕 弘一君    理事 古島 義英君 理事 山本 粂吉君    理事 三田村武夫君 理事 馬場 元治君    理事 福井 盛太君 理事 古屋 貞雄君    理事 田中幾三郎君    椎名  隆君       高橋 禎一君    林   博君       松永  東君    眞鍋 儀十君       横井 太郎君    生田 宏一君       横川 重次君    猪俣 浩三君       神近 市子君    福田 昌子君       細田 綱吉君    松尾トシ子君       吉田 賢一君  出席国務大臣         国 務 大 臣 大麻 唯男君  出席政府委員         警察庁長官   石井 榮三君         警  視  長         (警察庁刑事部         長)      中川 董治君         検     事         (刑事局長)  井本 臺吉君         法務事務官         (人権擁護局         長)      戸田 正直君  委員外出席者         参  考  人         (小松島警察署         巡査)     岡地  一君         参  考  人         (徳島東警察署         巡査部長)   平木 高二君         参  考  人         (理髪業)   山田 義明君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 七月十八日  委員佐竹晴記君辞任につき、その補欠として松  尾トシ子君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  人権擁護に関する件(徳島市における選挙違反  取調事件)     —————————————
  2. 世耕弘一

    ○世耕委員長 これより法務委員会を開会いたします。  人権擁護に関する件を議題とし調査を進めます。本日は徳島市における選挙違反取調べ事件について参考人より実情調査を進めることになっております。  なお本日出席を予定されております参考人は、巡査岡地一君、巡査部長平本高二君、警部補田上正君及び山田義明君の四名でありますが、田上正君は、病気のため長途の旅行に耐えないとの理由で、欠席の旨通知がありましたから、御了承を願います。  なお、この際参考人各位に簡単にごあいさつを申し上げます。本日は遠路わざわざ御出席下さいまして、まことにありがとう存じます。どうか忌憚ない御意見の開陳をお願いいたします。  まず参考人順序といたしまして岡地一君、平木高二君、及び山田義明君よりそれぞれ氏名、職業、住所を順次お述べ願いたいと思います。これが済みまして委員質疑に入ります。  まず岡地一君、次に平木高二君、次に山田義明君の順序になっております。最初に岡地一君。
  3. 岡地一

    岡地参考人 岡地一巡査徳島市佐古町八丁目二番地です。
  4. 世耕弘一

    ○世耕委員長 それでは次に平木高二君。
  5. 平木高二

    平木参考人 徳島麻植郡鴨島町、 巡査部長平木高二。
  6. 世耕弘一

    ○世耕委員長 次に山田義明君。
  7. 山田義明

    山田参考人 徳島両国橋筋一の十一番地、理髪業山田義明
  8. 世耕弘一

    ○世耕委員長 参考人住所氏名の御発表が終りましたので、それでは質疑に入ります。生田宏一君。
  9. 生田宏一

    生田委員 本日の参考人の方はお互い関係が深くて利害の相反するような場合があると思いますので、山田君、岡地君、平木君の順序で願いまして、山田君をお尋ねする場合は他の両君は席をはずしていただいた方がいいのではないかと思います。
  10. 世耕弘一

    ○世耕委員長 了承いたしました。それでは平木高二君と岡地一君は別室でお待ちを願います。
  11. 生田宏一

    生田委員 それでは私から山田さんにお尋ねをいたしたいと存じます。あなたに対しては世上大へん誤解もあるやに伺っております。また渦中の方として非常に批判も受けておられるのですから、この際あなたが率直に御自分のお考えを述べていただきましたならば了解するところは了解をするし、またあなたの立場もそこで明らかになる、こう思いまするので、決して他意あることなくどうぞ率直にお答えを願いたいと思います。  実はあなたをお呼びした件につきましては多少私も存じておりますが、順序としてお聞きいたしますが、昭和三十年二月選挙にあなたが徳島東警察署巡査岡地一君から、特に生田派選挙違反について何か情報はないか、ぜひおれに手柄を立てさせてくれ、こういう話があって、こうして事件が進展してきたと思うのですが、その間の事情についてあなたの知っていることを言っていただきたいと思います。
  12. 世耕弘一

  13. 山田義明

    山田参考人 二月の初めごろに岡地刑事さんが私の店に来て、僕は今度ほかの事件は一切しないで選挙だけ専門で新町や内町地区の係になったから、それで生田派選挙違反を特にやろうと思う。僕は生田派選挙事務所へ三人ほどスパイを入れてあるからということを聞きました。
  14. 生田宏一

    生田委員 そのとき特に生田派ということを言いましたか。
  15. 山田義明

    山田参考人 はい、申されました。
  16. 生田宏一

    生田委員 新聞等で拝見しますと、森達雄君が伊月町の橘の家で橘君に十万円の金を渡して、その中からあなたが二万円もらうというような話ができておるということをあなたは岡地に話した、そこで徳島署はこれの検挙に着手したということになっておるのでありますが、そのいきさつについて、あなたの御存じの点をおっしゃって下さい。
  17. 山田義明

    山田参考人 私は二月中ごろに、若槻克己先生という私に事業お金の足りないときにいろいろ出資をして下さっておる方でありますが、その人のところに二百万ほどお金を借りにいったわけであります。そうしたら、森から橘のところに十万円持ってきたら、私の方に橘から戻してくれるから、それまで二、三日待っておれ、そうしたら貸してやるからと言うたものですから、そのことを私の家内に話をしておったのであります。そうしたら、そのときちょうど岡地刑事が私のところに顔をすりにきておって、今の話は何かと言うので、森から橘に十万円持ってくるという話をし、先生からこうこうの話があったということを言うたのです。そうしたら、話があると言うて私を一番端っこの方に呼んで、あなたの金だから二万円くれるというような話も聞いておりするのだから、その二万円をあなたにもらわせたらあなたをくくらなければならないから、それでその二万円を橘の方からもらうように持っていって、そうして森から橘に渡す十万円の中からもらうようにせよ、それには僕がスパイを入れてそういうふうにさすから、亀田さんとあなたとが芝居をしておったというようなことはわからないようにしていくから、というようなことであったのであります。それでほかの者を連れてくるから、森が橘の家で十万円渡しておるところをあなたが見たと言うてくれ、そうしたら東京から生田選挙事務所へは四百五十万円の金を送ってくるというスパイ情報があるのだから、その四百五十万円の使い道を調べるのであって、あなたやみんなに迷惑をかけるのではないから、それを言うてくれたらよいということだったので、私は一応お断りしたのであります。しつこく言われるものですので、それを言うだけなら言いますといってお引受けしておって、後日平木さんが来ましたら、散髪をしてあげながら、岡地さんに伺った通りにこの話をしたのであります。そうしたら二時間くらいして今度はまた平木さんと岡地さんが来て、そこまでごはんでも食べにいってくれと言うのでお断わりしたのです。そうしたら一ぺん帰ってまた来て、吉川係長が来ておられるからそこまで来てくれとしつこく言ったので行きましたら、今さっき言ったことをもう一ぺん係長に話してくれというので、その通り話したのであります。そして帰ってきて家内に話したら、あなた警察に利用されるようなことになってくるかもしれないから隠れておりなさいと言うので、二階に上って隠れておったのです。そうしたら夜十二時近くに二人が入口から二階へどかどか上ってきまして、五分ほどでいいから来てくれと言うので、家内が怒って行かれぬと言ったのですが、五分間でいい、ちょっと来てくれとしつこく言うので外へ出たのです。そうしたら警察自動車へ乗せて警察学校へ連れていかれたわけです。そうして橘君の家で森が十万円渡したのを見た、それで私が亀田からもらう二万円は投票二、三日前に橘がその十万円の中からくれるというように言え、それを署長さんや係長さんに言えと言われたのです。それで、私はいやだ、そんならあなた方はうち幸子と仲がいいから幸子にさしてくれ、私はいやだと言ったんです。そうしたら岡地さんが、お前さんがそう言うのなら、お前さんも金を借りて詐欺になるのから詐欺でほうり込む、いなさぬようにしてやるというので、相当がんばっていたのですけれども、朝の四時ごろになって、家内に心配せぬように電話をかけてもらって、そして四時ごろからこの調書を書いて、六時ごろになって家へ帰らしてくれたのであります。
  18. 生田宏一

    生田委員 参考人にお尋ねしますが、今のお話を聞いておると、あなたと岡地君との間には前々からだいぶん交際があったように見えるのですが、岡地君とあなたとはどういう交際でございましたか、一つお聞かせを願いたいと思います。
  19. 山田義明

    山田参考人 岡地さんが私のところへ散髪に来ただけであります。
  20. 生田宏一

    生田委員 今の話は二月の何日でありますか。
  21. 山田義明

    山田参考人 その警察学校へ連れていかれたのは二十三日であります。
  22. 生田宏一

    生田委員 それではお尋ねいたしますが、あなたが若槻先生のところへ金策に行ったときに、森君のところから橘君のところへ金が十万円来るようになっており、そのうちの二万円くらいなら融通してもらってあげるということを若槻先生があなたに言ったのですが、その森という人は何という人でどこの人であるか、あなたは御存じでございますか。
  23. 山田義明

    山田参考人 それはただ森というだけで、どこの森さんとも聞いておりませんし、知りません。
  24. 生田宏一

    生田委員 森というのは徳島麻植郡鬼籠の出身で、橘君と一緒に南地劇場という映画館を経営しておる。そして橘君が持っておる株券をその森君に譲る話が出て、そうしてその十万円の金を橘君が森君からもらうようになっておる。若槻先生は森君とも橘君とも懇意であって、そしてお互い事業上の心配もしておる間柄なものですから、若槻先生の言った森君というのはその南地劇場の森君であって、十万円くれたのは橘君が森君に株券を売った十万円の金なんです。そういうことを私は別人から聞いてもおるし、はっきり言えばあなたから名前の出た関係者から聞いて知っておるのですが、そのときにその森という人が森達雄であるということがはっきりしておったのでしょうか、いかがでしょうか。
  25. 山田義明

    山田参考人 全然知っておりません。
  26. 生田宏一

    生田委員 それではその森というのが森達雄であるということは、岡地君が勝手にこじつけたものであるか、あるいはあなたと相談してそうであろうと考えてものですか、どっちですか。
  27. 山田義明

    山田参考人 私が帰ってきて家内とその話をしておったら、一ときして岡地君が店へやってきて、端にすわっておったわけです。それで顔をそつてから岡地君が、今のはいい話だと言うので、今のって何ですかと言うと、森との話は、あれは若槻先生に聞いてきたら、私が話してくれたら二万円やるということになっておるんだという話でありました。それから私へのその二万円も橘君からくれるように——幸いに橘君もよく知っておるし、家もよく知っておるのだから、さっき言ったようにひっつけておいてくれ、そしたら迷惑はかけぬ。そうじゃない、四百五十万円送ってきておる人を調べていくのが目的だから、ほかの人をつれてくるから言うてくれと言われたのであります。
  28. 生田宏一

    生田委員 それではお尋ねしますが、岡地君があなたに森君と言うのは森達雄だとして、その十万円というものは森達雄が橘君のところへ届を持っていったということにして、そうして若槻君が二万円を融通してあげると言ったのをあなたが橘君から二万円受け取るということにして、そうして買収容疑というものがここにでっち上げられた、こう見て間違いありませんか。
  29. 山田義明

    山田参考人 はい。
  30. 生田宏一

    生田委員 そのときにあなたはこういうことはお考えにならなかったでしょうか。無実の罪をこしらえたならば森君や橘君が迷惑するとはお考えにならなかったでしょうか。
  31. 山田義明

    山田参考人 全然逮捕しないということでありました。
  32. 生田宏一

    生田委員 そうしますと、あなたの先ほど言っておられたことで多少わかる気がするのですが、これは森君や橘君を逮捕するのではない。生田事務所東京から四百五十万円金が来ておるのでスパイが入れてある。それが大体わかっておるので、その四百五十万円のうちの十万円に違いないから、その使途を追及するのが自分たちの任務である、こう言ってあなたを承諾させたことは間違いありませんか。
  33. 山田義明

    山田参考人 はい。
  34. 生田宏一

    生田委員 あなたは警察学校へ二十三日の晩に連れていかれて取調べを受けたのですが、そのときには徳島東署のだれとだれがおりましたか。
  35. 山田義明

    山田参考人 藤山署長吉川係長、それから県警の人で名前はわかりませんでしたが一人、それと平木部長さんと岡地刑事さんとであります。それから後ほど田上室長さんが入ってこられました。
  36. 生田宏一

    生田委員 そのときにあなたはそういうような警察の誘導にかかってすらすらっとそれを言ってしまったのか、それともあなたはあなたの主張でもあって何か抗弁をされたのですか。
  37. 山田義明

    山田参考人 それはこういうことは言えない、作ることはいやだと岡地さんにしつこく言いました。それで私の内縁の妻だった——現在はわかれておりますが、山本幸子というのは警察の三人、つまり平木さん、岡地さん、田上さん、みんな仲よくしておりましたから、あなたのことは幸子にさせてくれ。僕はいやだというので朝の四時までかかって断わりました。
  38. 生田宏一

    生田委員 ところがあなたはどうして警察の意思を入れてそういうことをおやりになったのですか。その辺に何か理由があると思うが……。
  39. 山田義明

    山田参考人 岡地さんらが、お前さんを殺そうと生かそうと、店なんかつぶそうと思ったらわけはないんだ、あなたの今まで借っておるお金やあんなもの別に手をつけぬでおるのだ。だからこれさえ何してくれれば千円のお金を工面してあげるから、そして店の方もちゃんとしてあげるけん、絶対に迷惑にかけぬけんと言われたので、しょうことなしに承知したのであります。
  40. 生田宏一

    生田委員 そのときにあなたの調書をとったのはどなたがとったのですか。
  41. 山田義明

    山田参考人 吉川係長さんです。
  42. 生田宏一

    生田委員 そのときにあなたは署長とは別にお話ししなかったのですか。
  43. 山田義明

    山田参考人 しました。
  44. 生田宏一

    生田委員 どういうことをしましたか。
  45. 山田義明

    山田参考人 署長さんから亀田さんとの二万円がどうなっているかということと、それから橘さんの家の様子を聞かれました。
  46. 生田宏一

    生田委員 家の様子を聞かれたというのは、どういう理由によるのですか。
  47. 山田義明

    山田参考人 私か見たと言うし、岡地さんが言えと言うたから、それを署長さんが聞いたのです。
  48. 生田宏一

    生田委員 あなたは橘君の家に行ったことはありますか。
  49. 山田義明

    山田参考人 橘さんは私の店へ出資して下さっておった関係で、日に日に行ったり来たりしておりました。
  50. 生田宏一

    生田委員 それであなたが橘君の家の中の構造や間取りをよく知っておるので、あなたは別に橘君のところへ行かなくても、そういう調書を作ることができるわけですね。
  51. 山田義明

    山田参考人 岡地さんが森にひっつけていてくれと頼まれたときに、部屋様子を聞かれたり、あるいは十万円をはっきり言うな、十万円ぐらいと言え、またカバンに入れておったとか、あるいは何時ころでどういうように部屋ですわったかというように聞かれるからということを紙に書いて全部教えてくれました。それで警察でその通りに言いました。
  52. 生田宏一

    生田委員 橘君のうちは質屋だから、それでふろしき包みを持ってこいという話もそのとき出たのでありますか。
  53. 山田義明

    山田参考人 そうであります。
  54. 生田宏一

    生田委員 あなたはそのとき藤山署長に何か言って、しかられたようなことはありませんですか。
  55. 山田義明

    山田参考人 あります。亀田さんと私との二万円云々の話をしておるときに、ひょっと言うなと岡地さんから注意されておった岡地ということが口に出たので、そのときに岡地のことは言うなといってしかられました。
  56. 生田宏一

    生田委員 そういうような取調べ警察学校で二十三日の晩から二十四日の午前四時ごろまであったわけですね。
  57. 山田義明

    山田参考人 私を帰らしてくれたのは六時半であります。
  58. 生田宏一

    生田委員 その帰りしなに何か警察で言われたことはございませんか。
  59. 山田義明

    山田参考人 ここ二、三日は一切外出したらいけない、じっとして動いてはいかぬ。どうしてですかと聞いたら、悪いようにはせぬから僕の言うことを聞いておいてくれということでした。
  60. 生田宏一

    生田委員 あなたは二十四日の朝の六時半に家に帰ってこられたのですが、実際にこの事件に着手せられたのは、あなたが家に帰ってこられた時刻の三十分前、二十四日の午前六時にこの事件に着手をしておるわけなのですが、それであなたはうちにちゃんとおって外出はしなかったのですか。
  61. 山田義明

    山田参考人 はい。
  62. 生田宏一

    生田委員 もし二十五、六日の間に起きたことがありましたらちょっと申して下さい。
  63. 山田義明

    山田参考人 その日一日寝ておりました。そしたら夕方の七時ごろに平木部長さんと岡地刑事さんがやってきました。私は二階に寝ておって、下の者にはおらないと居留守を使うように言っておったのですが、二階へどかどかと二人で上って参りました。二階はただカーテン一つが仕切りになっておるのですが、そのまま寝ておるところに入ってきて、平木さんはあごで何して下へ行きました。その間に逮捕したということを言ったから怒ったのであります。あなたは逮捕せぬと言っておったが、逮捕したのはどういうわけだと言ったら、いや迷惑はかけぬ、安心してくれ、実は四百五十万円の使途がわかったのだ、署長も喜んで手をたたいておるのだ。それはどういうわけですかと言うたら、橘の家からあっちへ三万、こっちへ五万やったというメモが出てきた。それから生田事務所を捜査したら、だれか偉い人がすわっておった、それでちょっと見たらふとんの下にふろしきに包んだ書類が出てきた、それを見たら麻植郡十万円、那賀郡五万円というふうに全県下にばらまいた銭の使途がわかった、ここ二、三日で使途が全部わかってしまうから、あなたに橘、亀田というようなものは全部すぐにほってしまうてこの本筋に入っていくけん、御迷惑はかけんけん、一切私はかかり合わぬから出入りせぬでくれと言うて出ていった。その帰りしなに、もう一つこいつだけは頼むと言うけん、どんなことですかと言うたら、戸別訪問をせぬのにしたと言うて頼まれて、その人は何も白状せぬから、電話口に出たら電話口で私が来たというふうに言うてくれと頼まれたものです。それで帰って一ときばかりしておったら電話がかかってきて、その人を電話口へ出したけん、何でもいいから警察の言うように言っておけと答えたら、岡地さんが電話口に出ておって何か罪にせぬがと言うておった。そうしておって途中でぷつっと電話が切れた。そのあくる日岡地さんがまたやってきて言うのには、富永さんの知っておる共産党の弁護士が来たから、これはいかぬなということですぐ帰らしたわけです。
  64. 生田宏一

    生田委員 すると今のお話ですと、森や橘は逮捕しないからというので、事実無根の買収事実をこしらえて、これをあなたに情報提供者としてやらせた、そこまではわかるのですが、その目的は何かというと、今のあなたのお話ですと、本部を急襲してみるといろいろなメモが出たからその方へ移っていくので、もう森君や橘君には用事はないから決して彼らには迷惑をかけないのだということになりますと、実際それは生田選挙事務所本部を急襲する手段に使われたものであって、目的は森君や亀田君、あなたは問題ではなしに、選挙本部の手入れをするということが目的であったように聞かれるのですが、あなたはそう受け取っておられますか。
  65. 山田義明

    山田参考人 今考えたらそう思います。
  66. 生田宏一

    生田委員 だいぶいろいろなことがはっきりして参りました。私はある弁護士から聞いておるのですが、あなたの外出を足どめしたところが、あなたは営業上金策が必要であって、どうしても外出しなければならないというようになってきたときに、岡地でありましたか田上でありましたか、どちらでありましたか知りませんが、あなたは、私はどうしても金を借りに行かなければならぬから外出しなければならぬと言ったことがもしありましたならば、その後のそういうことの結果については、どんなふうになっておりますか聞いておきたいと思います。
  67. 山田義明

    山田参考人 警察学校から帰ってきましてから二日、三日は絶対に出ぬようにしておいてくれと言うたから、私は二日、三日に——この二十五日に家賃を十三万円二カ月分入れなければ店がつぶれてしまうから、その金策若槻先生のところに行かなければならぬようになっておるからと言うたら、いやそれは僕の方でこしらえるからという岡地さんの話があった。そうしたら岡地さんは全然持ってきそうにもないから、田上室長さんが二十五日に来てくれましたときに、岡地さんはうそを言うたと言うた。そうしたら、君たちのことはすぐ署長に話してやるからと言うて一旦帰られたわけです。そうして二十五日の六時までに借用証書を書いておけ、それで電話があるのだから電話を担保に入れておけ、しかしこの電話も取られぬように私文書でいいから——公正証書できちんとしてしまったら向うに払えぬときに取られてしまうから、さっとしておいたものでいいからというお話でありました。それで言われたような借用証書を書いて待っておりましたら、六時に警察自動車が来て私を連れていってくれた。行って頭をさえ下げておったらいいからというので、行って頭を下げておったら、すぐに奥からその人が十三万円札束を出して勘定して、すぐに借用書を出せというから出したら、室長さんが、それならお前帰れというて私はすぐ帰ってきました。
  68. 生田宏一

    生田委員 今のお話と先ほどのお話を照合すると、この事件岡地が持ちかけて、そしてあなたとの間に話ができてこの事件が持ち上っておるのだということを署長はよく知っておった。何となれば、これは岡地さんから話があってこうなっておるのだということをあなたが言うと、岡地のことは言うちゃならぬと署長がそれを制止したこともあった、あるいは田上室長がそのくらいなら署長に相談してやる、こう言って帰って、すぐにその日の午後までに十三万円の金策ができてきた事実を見ると、この事件の真相は署長がよくこれを知っておって指揮したというように私たちはとれるのですが、あなたのお感じはどうですか。
  69. 山田義明

    山田参考人 それまでに私たち家内にも岡地さんが、室長さんが徳島市の特に東はいまだかつて選挙違反をあげたことがないのだ、それで今度はやっきになって生田に目をつけておるということを再三言うて、お前は正しいことをしてる主人にじゃまをするなと言って、警察までうち家内を呼んでおしかりを受けております。
  70. 生田宏一

    生田委員 個人のことを言うてはなはだ相済まぬのですけれども、このときに藤山東署長はえらい大酒して何かくつろいだ格好で和服を着て出てきておるというのですが、それはほんとうですか。
  71. 山田義明

    山田参考人 着物を着てお酒飲んで、ぐでんぐでんに酔うておいでました。
  72. 生田宏一

    生田委員 私はそれで事件をでっち上げるまでの大体のことはわかったのですが、実際に当っては取調べをしてみると、森君と橘君との間に面識もないし、また選挙事務所を急襲していろいろな材料を取られたので、それでそう思ってやってみたのでしょうけれども、新しい事実は浮んでこぬということで、むしろこの事件善後策をしなければならなくなった。三月に入るとそういうように私たちには事件が進んで行ったように見えるのですが、三月の初旬にあなたの言うことがほんとうであるかうそであるか、この事件の責任がどこへ行くのであるかということを心配され出している。そこであなたを板野東へ連れていって逮捕取調べ中の容疑者に会わして首実験をしたというようなことを聞いておるのですが、そのようなことがありましたならば、その前後の模様をお話していただきたいと思います。
  73. 山田義明

    山田参考人 三月の初め、四日か五日ごろであります。田上室長さんが私のところに来まして、自動車でちょっと行ってくれというもんですから、ついていったら板野東署へ連れていかれた。それで今連れてくる人をよう見てくれと言うけん見て、それが森さんかと言うから私は違うと言うた。
  74. 生田宏一

    生田委員 ところがあなたは三月八日には逮捕せられて取調べを受けておりますね。
  75. 山田義明

    山田参考人 はい。
  76. 生田宏一

    生田委員 その逮捕せられた前後のことをあなたの非常に懇意な人で、私は吉田伊三郎君からだいぶものを聞いておるのですが、三月八日逮捕せられる前後の事情についてお述べを願いたいと思います。
  77. 山田義明

    山田参考人 その後において岡地さんが私のところに再三来て、こうやって腹を切るまねをしまして、もうわしは切腹問題じゃ、おやじが角をはやしたからにというて、再三言いよりました。それで田上室長さんが来まして、ちょっと来てくれというので、三月の六日の晩やったか七日の晩に三階の次長さんの部屋に行ったのです。それで朝の六時までおって、お前が亀田からお金をもらったというふうにせぬと、皆が口を割って何も言わぬからおさまりがつかぬけんと言うのであります。それで自供調書というのを何か書いて、これに判をつけというので、朝六時までおらされてそれに判をついて持っていきました。それであくる日の期十時までに来いというから、そんなに行っておったら仕事にならぬけん行かぬと言うたら、また晩の十一時ごろに呼びに来たのを、吉田のおやじさんのところに行くと言うてうそを言うて、吉田のおやじさんのところに行って隠れて行かなんだ。そしたらまた朝の十時までに来いという何がありました。それで十時までに行きましたのです、そうしたらそのまま逮捕されました。
  78. 生田宏一

    生田委員 あなたと吉田伊三郎君との関係はどんな関係でございますか。
  79. 山田義明

    山田参考人 百万円吉田のおじさんが私のところに出資をして下さっておる関係です。
  80. 生田宏一

    生田委員 私は吉田伊三郎君とは非常に懇意なんですが、吉田さんから話を聞いてみると、山田という人間が生田さんのところへ悪意を持ってそのような事件をでっち上げたとは自分としてはどうしても考えられぬ。そこで山田を呼んでよく聞いてみたいと思って呼んでみたけれども、決してこれは外部の人に他言をしてはならない、もし他言をするならば再逮捕でもしかねまじきようなことであったので、山田が心を許して言わない。そこでどうしても言えないかということを聞いてみると、それではお話をしましょう、一私警察の人に念届けをして、もう吉田から言われますから、真相を言いますということをあなたが警察の人に電話をかけておる、そうしたらちょっと待て、そこをはずして出て来いというので、ちょうどそのときにあなたは昼飯の時刻になっておったので、昼飯を食いに帰って、ついにそのまま自分の家へやってこないのだ、どこへ行ったのかと思って調べてみた、ところが逮捕せられておったということを吉田君が私に言うのですが、その間の事情は吉田君の言う通りですか、またそれ以上に何かあるならばこの際申し述べていただきたいと思うのです。
  81. 山田義明

    山田参考人 三月二十五日の日であります。例の吉田のおやじさんが朝九時半ごろに電話でちょっと来いというような何でありましたから行ったのであります。ラジオや新聞で騒がれておるようなことをお前が事実言うたものか言わぬものか、わしはお前がそういうことを言うたりしたりするようには思えぬのだが、もしこれが事実だとしたら直ちにわしの資本を引き揚げるというもんですから、私は絶対に言うたりしたりせぬけれども、こういうふうに言えと言われたので、しょうことなしにしました。その真相をここで詳しく言えと言われましたけれども、固い約束をしておるから言えぬからちょっと待ってくれということで、おじさんのうちから田上室長さんに電話をかけました。そうしたら五分でこれからほんとうのことを言うからと言うたら、吉田のおやじさんに言うたのかと言うから、これから言うところだ、ちょっと待て、まだ言うておりません。それは幸い、そうせぬでよかった、もしそうでなかったら警察の黒陰に女がどうだこうだということを新聞に出されたら、徳島警察東署だけではなしに、徳島県の警察の面子にかかるけんと言われたものですから、言葉を濁しておるところに産経の佐々木という新聞記者が吉田のおじさんが電話をかけたもんだけん、来た。そうしたらちょうど居間の御飯食べてこいというので、家にすぐ帰ったのであります。そうしたら田上室長さんから私が帰ったらすぐ電話するようにというなにだったんです。そこですぐ田上室長さんに電話したら、お前のところの店に行こうと思っても新聞記者がたくさんうろうろしておるから行けないからちょっと来てくれ、ただし警察もうろうろ新聞記者がおるからいかぬから、それで中津の水上署なら目につかぬから水上署に来い。私は水上署を知らないものですから、よく聞いたら、かちどき橋のところにあるからというので、行くなにをしておりまして、御飯を食べかけたら吉田のおじさんから御飯あとにしてすぐ来いという電話があったものですから、家内にどちらの方に先へ行こうと聞いたら、五分でいいというのだから室長さんの方を先にしろと言うものですから、御飯食べないでそのまま自転車で水上署に行ったのです。そうしたら入口のところでオーバーでちょっと顔を隠して立っておりまして、こうやって招いてなにするものですから、自転車を外に置いて入りかけたら、自転車を中へ入れて室長さんが私の自転車にかぎをかけて、二階に上れというので二階に上つた。そうしたらそのままいろいろな、どういうふうに吉田のおじさんに話したか、そのときの様子を聞かれたけん、全然詳しいことは言うておらぬ、そうしたらそれを吉田のおじさんに言うたらいかぬ。先に私が署長さんに電話かけるから署長さんにここで話せ、それからあとで吉田のおじさんのところへ行って話をせい。それならそうしますと言って、それからつまらぬ話を二時間くらいしておりましたが、その間に田上室長さんはおりては電話かけ、おりては電話かけしておりました。あまり時間がおそいものですけん私帰してもらいますと言って段ばしごをおりかけたら、もう来るけん、もう来るけんちょっと待て、そうしてとうとう夕方の六時くらいまで待ったのであります。そうしたら県警の人だという人が来て、署長さんが来て話聞いてあげようと思ってもちょっと忙しく来られないからかわりに聞きに来た。田上室長さんが、署長さんに話するのもこの人に話するのも一緒だから、こういう工合でこうだということを一部始終話せいというので、話をしたのであります、そうしたら、よくわかった。それから室長さんがいないけんどこへおいでたんですかと言ったら、下におると言うので、そうしたら私帰らしてもらいますと言ったら、もうちょっと待っておれ、室長さんが来るけんと言うので、それで待っておったのであります。晩の九時になってから逮捕状を見せられたのであります。
  82. 生田宏一

    生田委員 この逮捕はさっきあなたが言われた逮捕とは全然事情が異なるのですが、あなたは逮捕を二回されたことになるのですか。
  83. 山田義明

    山田参考人 はい。
  84. 生田宏一

    生田委員 そうすると、最初の逮捕は三月八日ですか。
  85. 山田義明

    山田参考人 はい。
  86. 生田宏一

    生田委員 あとの逮捕は。
  87. 山田義明

    山田参考人 三月二十五日であります。
  88. 生田宏一

    生田委員 そこで私お尋ねいたしますが、三月八日の逮捕というのは、あなたが亀田からもらっていない二万円とか三万円とかをもらったという供述を特に作られて、それが理由で逮捕せられたわけになりますね。
  89. 山田義明

    山田参考人 はい。
  90. 生田宏一

    生田委員 私はそこで不思議だと思うのですが、あなたは金銭を授受したということも、人が作ったうそのことをこれを供述しろといって岡地刑事徳島東署長ら一同の誘導によって作った。ところが自分もまた逮捕せられるのに三万円もらっていないのをもらったとしてあなたは逮捕を受けているのですが、これは常識として考えられないことなんですが、あなたが何か警察の人に警察の人の言うことを聞かなければ非常に困るというような考えがあるのか、あるいはそういう事実があるのか、そこのところはどういうお気持でそういうことをお認めになり、あるいは調書を作るということになったのでしょうか。あなたのお気持を聞かせていただきたい。
  91. 山田義明

    山田参考人 去年私が事件を起して四十日ほど留置場へ入れられておったのであります。そうしてなにしたもんですからそのときから警察が恐ろしかったのであります。それで言うことを聞かなんだらまたほうり込まれるかもしれないというなにがあったので言うことを聞いたのであります。
  92. 生田宏一

    生田委員 それはあなたのお考えは非常に間違っておると思うのですが、これは起きたことですからいたし方ありません。あなたは三月の八日に逮捕せられましたならばどうせ二日間は警察で調べを受けるのですが、二日過ぎましたら検察庁へ送検になって、そうしてそこで検事の取調べを受ける段階となるわけです。そのことは当然こなければならないのですが、その場合に警察と検察庁と全然役所が違うのですから、仕事は協力していますけれども、命令系統もちゃんと違うのですからそこに岡地なり、田上なりあるいは署長の力の及ばないものがあるはずです。私は岡地がそういうことをして、あなたに虚偽の情報を提供さしておるとすれば、あなたがその真相を言ってしまえば岡地は困るわけなんです。徳島東署の人はそういう点については、あなたに何かお話をしなかったでございましょうか。
  93. 山田義明

    山田参考人 田上室長さんに全部申し上げたその晩の十時ごろでありますが、留置場へ岡地さんが来てちょっと出てこいというので宿直室へ行って室長に、なぜ約束をしておいて何もかも言うてしまったんか、こうなったらわしとしてもこのままほうっておけんけん、お前も覚悟しておいてくれ、とても一月や二月じゃいなさんぞ、お前をどうしようとわしの胸三寸にあるんだ。そこでお前をいなさしてやるにはおれの言うことを聞け、これはだれに教えられたもんでもない、私が作りごとですべてを言いましたというふうにこれから署長の前で言えというので、私もどうにでもなれと思って、そのときにだれに教えられたものでもありません。私の作りごとでありますということをはっきり署長さんに言うた。そうしたらあとで平木さんが入ってきて、こういうふうに調書を作った、検察庁へ行ったら、検事の前でその通りに言えといいますので、検事さんの前でその通りに言いました。
  94. 生田宏一

    生田委員 そうしてあなたは三月の二十日には釈放をせられておるのですが、三月二十日までにあなたを取調べをした人は、一番最初は吉川警視が一番最初の調書警察学校でとっておりますね。
  95. 山田義明

    山田参考人 はい。
  96. 生田宏一

    生田委員 それからその次には田上君か、亀田から金をもらっただろうということで、あなたの調書をとっておりますね。
  97. 山田義明

    山田参考人 はい。
  98. 生田宏一

    生田委員 それから平木君が戸別訪問自分が全く作ったということをあなたから調書をとっておるのですね。そうして検察庁では植村検事があなたの取調べをしておるのですが、あなたは調書を作ったときに、ちゃんと読んでもらって、——読み聞かした上で署名捺印せられたということに調書はなっておるのですが、あなたはそれを読み聞かせられて、そうしてあなたが了承をしたのが全部ですか、あるいは読み聞かせられないものもあったか、全部読み聞かせられなかったか、その点はどうですか。
  99. 山田義明

    山田参考人 読み聞かせられたのは植村検事さんと田上室長さんだけであります。
  100. 生田宏一

    生田委員 あとは。
  101. 山田義明

    山田参考人 全然読み聞かせられておりません。
  102. 生田宏一

    生田委員 それであなたが三月二十旧に釈放せられて三月二十五日に再逮捕せられておるのですが、その再逮捕はさきのあなたのお話によりますと、あなたと岡地との関係あるいはその事件を作りあげたときの関係を、それをあなたが吉田君にみな話をするという決心を告げたときに逮捕をされておるわけですね。
  103. 山田義明

    山田参考人 はい。
  104. 生田宏一

    生田委員 それではあなたが再逮捕せられたのは三月二十五日の午後五時ごろになるわけですか。実際に逮捕状が出たのは三月二十五日の午前七時だというし、また午後の七時だともいうのですが、あなたは逮捕せられるときに逮捕状を見せられただろうと思いますが、あなたが水上署へ連れて行かれた後に逮捕状が出たのですか。それとも水上署に連れて行かれる前に逮捕状は出ておったのですか。
  105. 山田義明

    山田参考人 私が水上署に行ったのは十二時くらいです。そして逮捕状を見せられたのは晩の九時ごろであります。そうしてあとで田上室長さんがはっきり言われたのですが、検察庁では逮捕状を出しておるからということでした。
  106. 生田宏一

    生田委員 二十五日に再逮捕せられて、四月七日に釈放を受けておるのですが、その間におけるあなたの取調べの事情を申し述べていただきたいと思います。
  107. 山田義明

    山田参考人 二十五日に逮捕されてその晩東署に連れて行かれて、田上室長さんがおらぬものですから、室長さんを呼んでくれ、うそをついて逮捕したんだからというので私は相当怒つたのです。そして吉田のおじさんに面会させてくれといって怒ったのです。そしたら三十分ほどしたら面会させてやろう、それまで留置場に入っておれというので入っておったのです。そうしてあくる日から取調べを受けて、二日ほどして西麻植という所へ連れて行かれて、そこで取調べを受けたのですが、そこの増谷部長さんが警察官が二十八人ほどおるけれども、こんな情ない取調べはできぬから山田君、お前をあした刑務所に送るからと言われたのですが、あすと言ったけれども、その日の夕方のうちに刑務所に送られました。
  108. 生田宏一

    生田委員 検事さんにももう一度お取調べを受けたことがございますか。
  109. 山田義明

    山田参考人 はい。植村検事さんに取調べを受けました。
  110. 生田宏一

    生田委員 前に植村検事に取調べを受けたときには、あなたは調書を書いておるわけですね。
  111. 山田義明

    山田参考人 はい。
  112. 生田宏一

    生田委員 今度は全然違う内容のことをあなたはお話しになったのですが、その点については植村検事は何もおっしゃらなかったのですか。
  113. 山田義明

    山田参考人 言いました。あのときにほんまのことを言うておったら、こんな二度も逮捕されないのに気の毒だ、今度はほんまのことを言うてくれと言われました。
  114. 生田宏一

    生田委員 植村検事があなたを取調べをしたときは、あなたの言いたいことを全部書かしてくれたわけですね。そうして読み聞かしてくれたわけですね。
  115. 山田義明

    山田参考人 はい。
  116. 生田宏一

    生田委員 四月七日の釈放を受けるときに検事の方から何かあなたは特に申されたことはありませんか。
  117. 山田義明

    山田参考人 七月の午後五時ごろに植村検事さんから呼ばれて、きょう帰してやろう、そのかはりに誓約せよ、それは若槻先生や吉田伊三郎さんに事件の真相を言わない、それから新聞記者が何人来ても、だれが来ても一切事件の真相を言わない、第一面接してはいけない、それから家で奥さんにも親兄弟にも言うな、それから東署へ以後出入りせぬように、こういう誓約をしろ、そうしてもしこの誓約を破ったらすぐ再逮捕するというのです。
  118. 生田宏一

    生田委員 生かすも殺すも警察考え次第だ、お前の商売をつぶすのは何でもない、絶対にそういうことを口外したりしてはいけないということで、特に検察庁でもそういう三カ条の——これは私は好意のあるところもあるように受け取れるのですが、そういう三カ条をあなたは今までかれにも口外せずにかたく守ってきた、こういうことですか、あるいは中には実際の真相をだれかに伝えた者があるのですか。
  119. 山田義明

    山田参考人 松山弁護士さん以外にはだれにも言うておりません。
  120. 生田宏一

    生田委員 それから実はあなたの精神鑑定を検察庁の方で調べたのですが、これはあなたの供述があまり極端から極端に変ったものですから、あなたの精神鑑定をしなければならないようなこともそれは考え得ることなんですが、それにつきましてあなたが精神鑑定を受けられたのは桜井教授だと思うのです。その受けた概略をもしお話ができるならばお話しして下さい。
  121. 山田義明

    山田参考人 検察庁から電話かありまして、明日の一時に徳大の桜井教授のところへ行け、しかも人にぺちゃんこに話をせぬようにこっそり行ってくれという電話がありました。ところがその日の夕刊に早くも精神鑑定をするということが出ておった。それで検察庁の事務官の方に、人にぺちゃんこに言うなといったのにもう新聞に出ておる。そんならもうみんな何でも話してしまうと言ったら、やっぱり話してくれるなという電話であった。あくる日一時までに行った。そうしたら桜井教授さんが小さいときからのいろいろなことを聞きました。御記憶範囲のことで何でもかでも事件の真相を一ぺん話してくれというので、最初から申し上げた。そうしたらあさってあなたの店へ行って、奥さんや吉田のおじさんも見てくれるということでした。月曜は休みでありましたので、家内も吉田のおじさんも来ておった、桜井教授さんが来て、何もかも一部始終話をしたのてあります。そうしたら桜井教授さんが、ほんまに山田さんには気の毒だな、こんなにして警察に利用ざれたということははっきりしておるんだが、これから先もいろいろめんどうなことが起きてくるんだけれども、負けぬように一つしっかりがんばりなさいと言って帰っていきました。
  122. 生田宏一

    生田委員 それから広島管区でしたか高松高等検察庁でありましたか、徳島の現地へ実際をかなり調べに行ったと思うのですが、そのときに私は田上君や岡地君があなたから真相を言われては非常に困るというのであわてておったというようなことも聞くのですが、何かそんなようなことはございませんでしたか。
  123. 山田義明

    山田参考人 田上室長さんが、私が逮捕せられておるときに私のところの家内が、こんな徳島どころか東京まで行ってほんまのことを言わぬとうちの主人を懲役に行かされるけんといって電話をかけた。そうしたらあわててきた。その晩はひまで店を十時前に締めたのであります。もう店をしもうておりましたら、田上室長さんがお酒にぐでんぐでんに酔っ払ってきて、二階にだれもおらぬ、家内のベツドにもぐり込んで二時ごろまで寝ておったらしい。そうしてその後に起きまして田上室長さんが高松管区のえらい人が調べに来る、酒飲んで寝ておったということを一切言うなというふうに言うて帰りました。そうしてその寝ておったという日に私の家内を留置場に面会に連れてきたのは二時過ぎであります。そうして二時間も面会させてくれました。
  124. 生田宏一

    生田委員 私事に立ち入って恐縮ですが、私が巷間承わっておるところによりますと、あなたがさきの刑事事件を起して以後というものは徳島東署の署員はあなたのうちに一見非常に傍若無人に出入りをしておるように承わるのですが、今聞いておると田上君はあなたの奥さんの寝室で二時間も酒に酔うて、横になっておるということを聞いて驚いたのですが、その田上君があなたの先妻の山本幸子という人とは非常に仲がいい人だというのですが、その山本さんというのは、あなたの奥さんの所有の家に今現におる。その家をあなたの先妻の山本幸子さんにやれ、もしやらなければ金か何かで賠償しろということを田上君からあなたのところに言うてくるというので、あなたが困っておるということを人に話したというのを私は間接に聞いたのですが、あなたの家庭と徳島東署との間には、そういうふうなことを平気で言ってくるような関係にあるのか、そういうことならば私はまことに気の毒だと思って御同情しておるのです。これは私は真実ではあるまいかと思うのですが、まことに私事にわたって恐縮ですが、お答えができますならばぜひお述べいただきたいと思います。
  125. 山田義明

    山田参考人 きょうまでは家内も言われぬというておったんですけん、こんなことはやはり、今まで十何人の人に取調べを受けましたけれども、警察がおそろしいということから、遠慮しいしい、しておったんですけん、きのう来るときに近所の人も、みんなほんまのことを言うてこいというものですから、きょうはみんな言うんですけん、うちへ来てブドウ酒を飲んだり、家内と二階で話をしたりは、その事件後もしょっちゅうしておりました、私も疑問は少からず抱いておったのですけれども、おそろしいけん、そのままにしておりました。それで山本幸子というのも、実際は岡地さんと約束していろんなことをしておったということを、理髪室の方におりましたので一番よく知っておるのです。それで私と分れたのです。私と分れたものですから、私の悪口をわざと言わすようにいって、室長さんは何べんも幸子の家に行っておるのに、行っておらぬというのです。そこのところは私もどんなになっておるのか、さっぱりわかりませんです。
  126. 生田宏一

    生田委員 私はあなたがこの事件で非常に苦しい立場に立っているのがわかるのですが、聞くところによりますと、お宅の営業はあの事件以後さっぱりで、よほど社会の注目を浴びたといいますか、そのために美容あるいは理髪の営業にも影響してきて、経済的な打撃も非常に受けておるということを聞くのでが、私はこういう事件、あなたの外出を禁じたり、あなたの意思を束縛して、人にこれを言うなとか、しかも真相を言うのですから、だれにもはばからないのですが、真相を言うなとかいって人権を拘束して、しかも経済的な打撃、社会的な打撃というものはあなたが受けねばならぬ、そういう立場に追い込むような——ほかにもまた警察関係にも言い分はあると思うのですが、かりにあなたの言っておることを一方的に信ずるとすれば、私はこういうことははなはだけしからぬと思うのですが、もしあなたがこの事件についてあなたのこうむっている打撃とか、あなたがこうしてもらいたいとかいう御意思がありますならば、あなたの御希望なりあなたの気持を、当委員会へせっかく来ていただいたんですから、率直に述べていただきましたらと思うんですが、どうぞ……。
  127. 山田義明

    山田参考人 田上室長さんが、この事件があって後でありますが、私はもう二へん目の逮捕からも帰らしてもらってから、とにかく事件の真相は一切言うな、事件の真相を言うということになると、すなわち警察を相手にけんかするのだ、お前が事件の真相を言うということは、警察相手といっても、もう東署だけではない、徳島県の警察を全部相手にしてけんかしなければならぬことになるのだということを室長さんが言われた。私は、警察を相手にけんかするというつもりで最初からしたのじゃないと言ったら、それはわかっている、今お前が正しいということはわかっていても、警察官という服をぬがぬ以上は私はお前に味方ができぬ、鳴門署からずっと引っぱってくれたおやじの首になわをかけることはできぬ、それでかって警察を相手にけんかして勝ったためしはないけん、けんかはするな、私の言うことを聞いておけ、陰になりひなたになって、わしが常につきまとうてやる、困ったなら金も工面してやる、お客さんが来ぬなら連れていってやる、と言うておった室長さんが、このごろでは全然寄りつきもせぬで、反対に岡地さんなどと仲ようしているものですから、私はきょうこうして来るのも……。
  128. 生田宏一

    生田委員 参考人は非常に感情が激しているようでございますし、一身上のことは大体想像もつくことでございますから、私の質問はこれで打ち切ります。
  129. 世耕弘一

    ○世耕委員長 山田君、御苦労さまでございました。  午後一時まで休憩いたしたいと思います。     午後零時七分休憩      ————◇—————     午後一時四十三分開議
  130. 世耕弘一

    ○世耕委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。生田宏一君。
  131. 生田宏一

    生田委員 午前の山田君に対する質問でちょっと私お聞き落しがありましたからお尋ねしたいのですが、三月二十五日に再度の逮捕を受けましたときに、あの逮捕状の請求理由はどういうことになっておりましたか、御記憶でございましたら一つ……。
  132. 山田義明

    山田参考人 誣告でありました。
  133. 生田宏一

    生田委員 山田君に対しましては大体午前で終っておりますので、次に岡地君にお聞きしたいと思うのです。
  134. 世耕弘一

    ○世耕委員長 岡地一君。どうぞ住所、姓名を述べて下さい。
  135. 岡地一

    岡地参考人 徳島市佐古町八丁目二番地徳島巡査岡地一
  136. 生田宏一

    生田委員 岡地君にはきょうは遠路のところまことに御苦労様でございました。  今度の二月に行われました衆議院の選挙について、虚偽の情報に基いて検挙がなされたということが当委員会の問題になっておるわけですが、これについてあなたに関係があったことをお尋ねしたいというわけです。  そこで最初お尋ねしたいことは、衆議院議員の選挙の違反事件で、犯罪があったということがわかってそれを検挙する場合に、あなたは第一線の巡査であられるので、もしその情報をつかんだならば、これを検挙に持っていくまでの東署内における検挙の手続と言いますか、順序と言いますか、その持って行き万はどのようになっておりますか。あなたの東署における内部のそういう仕組み、それをちょっとお伺いしたいと思います。
  137. 岡地一

    岡地参考人 私が情報を聞きましたならば、まず直接の上司であります捜査係長に報告いたします。そして捜査係長の命によって仕事に従事するのであります。
  138. 生田宏一

    生田委員 それではお尋ねしますが、山田義明君とあなたとは個人的な関係があるようですが、どのような関係でございますか。
  139. 岡地一

    岡地参考人 今お尋ねになりました山田義明さんの関係におきましては、昨年の六月六日ごろだと思います。その時分に山田が強姦致傷事件徳島西警察署の方に逮捕されまして、当時徳島東警察署の勤務でありました私が宿直でありました午後の七時ごろに、山田の以前の家内と、その家内の親戚になるという木内某という人と二人が来られまして、ぜひ面会させてくれないか、こういう話でありましたから、夜分ですから面会はできませんと断わったのであります。そしてなお身柄が東警察署の身柄でありませんから、私一存で参りませんと言って断わったのでございますけれども、たって、事件のことは話さないから、一応西署の方へ聞いてくれないか、こういう話でありましたので、電話で西署の係の刑事さんに聞きましたら、面会してもかまわない、こう言われたものですからその面会に便宜を与えたのです。そういうことから彼と顔見知りになりましたが、今年の一月初めごろに、私の友だちであります徳島市役所勤務の原田栄という男と一緒の紹介で山田方へ客として散髪に行ったのです。その時分に山田が私の顔を覚えておりまして、その節には世話になったというので非常に好意を感じたような話をしておりました。そして事件の方も執行猶予になってまた商売ができるようになったと言って非常に喜んでおりました。そういう関係山田とは、ことしの一月ころから再び知り合いになってからも、あのとき世話になったから協力しょうというような話があったのです。よろしくたのみますということで、その後ずっと私が客として山田の家に出入りしておりました。ところがいよいよ二月の一日で選挙の段階に入りましたので、私が新町、内町地区の選挙の専従員として命ぜられたということを山田に伝えたのです。そのとき山田が、以前私が佐古におったときに横山周次の市長選挙のときの運動員であった、だから選挙のことに対しては非常に明るいのだ、選挙違反があったら岡地さんに手柄を立ててもらうのだ、こういうふうに向うの方から言ってきておりましたし、非常に選挙のことに対して詳しいような話もありましたので、ぜひ一つ頼むということを言っておきました。そういう関係で非常に山田とは懇意にしておりました。
  140. 生田宏一

    生田委員 ところが一月の末に山田のところで、今度の選挙一つおれに手柄を立てさしてくれと言って、あなたの方から山田に頼んだと山田は言っているし、先ほども山田さんから話があったのですが、そのときに、今度の選挙生田が金を使うのだから生田選挙違反があるのじゃないか、戸別訪問ではだめなので金銭の授受がなければならない、こういうことであなたは山田に協力方を要請したと山田は言っているのですが、今のあなたのお話とは大分話が違うのです。どっちでございますか。率直に言って下さいよ。警察庁長官がそこにおるからといって何も遠慮することはない。あなたはきょうは参考人ですから、決して強いことは申しませんけれども、そういうところははっきり言って下さい。
  141. 岡地一

    岡地参考人 今生田先生から質問がありましたが、もう少し詳しく言わなければわからないのです。山田が以前に強姦致傷の事件で面会をさしてやったときに、商売の方の話が終ったあとで、面会人のおられるそばで、私が、人間として逆境に立つことはそう再々はないのだ、とにかく早く事件を解決してあれだけのりっぱな店をやっていくようにということで激励したのです。そのときに彼が畳に手をついて泣いたのです。そして警察へ来てこういうようなあたたかい言葉を受けるとは思わなかった、ほんとうに今岡地さんの話を聞いておりまして、私もこれから一生懸命しなければならないと思いますというふうなことで、非常に彼は感激して帰ったのです。その後彼かどういうふうな処分結果で出たのか知りませんが、自分が一月のかかりごろに初めて客として彼の店に行ったときにもそのことは言っておりました。そして私の方から要請したというようなお話でありますが、彼はそのときに感激したことを再び申しまして、必ずほかの人に言うのじゃなくてあなたの方に協力しよう、絶対にあなたに手柄を立ててもらうのだ、こういうふうに山田の方から申しておりました。それと山田選挙のことについていろいろ、どういうふうにしたとか選挙の状態なんかを聞いて、形式犯から始まって戸別訪問、饗応または買収、こういうふうなことの説明を求められたものですから、それをいたしまして、それじゃ買収ということで金銭を授受するというのはどういうふうにするのかというお話でありましたから、たとえば甲乙丙と三人の人間がおるとしたら、あなたが甲として、乙丙という人間が金の授受をしたのを甲であるあなたが現認したという事実があればこれは一番いいのだ、そういう例を私が説明したのであります。それ以外については何も話してありません。
  142. 生田宏一

    生田委員 あなたの方では山田の方から手柄を立てさせてやると言ったと言い、山田さんの方からはあなたが手柄を立てさしてくれと言ったと言う。これはもうその限りにおいては水かけ論ですからこれ以上お尋ねもしませんが、それでは森達雄が面識のない男の橘基一に金を十万円渡したという事実を、あなたが情報を得たとして作って、そして検挙をした。その情報を提供を受けたのはあなたであるし、それを係長とか署長とか上司に報告して徳島署の方針を固めさしたのも、もとはあなたなんですから、その森達雄が金を十万円橘の家で渡したという事実があるとしてあなたがその事件を起した動機、経過それを一つありのまま話して下さい。
  143. 岡地一

    岡地参考人 今お尋ねによりますと、私がその情報を聞いたというお話でありますが、私が聞きました山田からの情報というのは、二月十七日に山田方に参りまして、毎日新聞社の亀田某という人から三万円で選挙運動をしてくれないかという申し込みがあったということの情報は十七日の午後一時ころに聞いております。これは山田氏自身から聞きました。その後十八日、十九日、——二十日が宿直でありまして、二十一日の月曜日の散髪屋の休みの日にも参りましたのですが、結局山田に居留守を使われて会えなかったことと、十八、十九日の二日もまだその話がまとまっていないのだということでありまして、山田から何の情報も聞けなかったのであります。そして問題のその情報に対しましては、平木部長から散髪するところはないかという話が二十二日にありましたので、それなら私が山田の家の得意になっておるからそこに紹介しようというので、平木部長を案内しました。私はその時分に岡田派の違反事件を聞いておりましたので、その捜査に走っておりまして、約一時間ほどして帰ってきますと、平木部長散髪を終って店から出てきたところなんです。部長が今山田からいい情報を聞いたのだと言うので、どういうことですかと山田の家の前で聞いたのですが、十万円金を渡しておるということを現認したというような話だということを聞いたのです。ただそれだけを平木部長から聞いたので、それはどこでだれが渡したのかということを平木部長に質問したのですけれども、すぐ署長に報告しなければならないから早く署に帰らないかと言われたものですから、一緒に本署まですぐに帰りまして、山田の内容についての具体的な事実は、平木部長署長に報告せられるのをそばで聞いておりまして初めて知ったようなわけでありまして、山田の供述自体については私は全然知っておりません。
  144. 生田宏一

    生田委員 それじゃあなたは署長にそういう報告を平木君からして、そして知ったというのですか。その後あなたはこの違反事件については直接関知しないようですが、それじゃあなたは署長あるいは吉川警視などから直接の命令があって動いたのですか、いかがですか。
  145. 岡地一

    岡地参考人 そうです。
  146. 生田宏一

    生田委員 それじゃその命令の内容はどういうことでございましたか。
  147. 岡地一

    岡地参考人 それは平木部長が報告せられたその中に、亀田が二十一日に来て、橘の家の地図を書いた、こういうことが供述の内容にありましたので、その地図を取ってこいということを係長さんから命令を受けまして、その地図を取りにいくということと、なお詳しく、もう一度その情報に基いて山田にそのことを当るようにということを言われたのであります。
  148. 生田宏一

    生田委員 平木巡査部長もここに来ておりますから、山田君だけにお聞きをして、またあとで平木君に聞くのよりは、双方が関連事件を同時に扱っておるようですから、都合のいい問い方で、二人に同時にここでお尋ねすることが差しつかえなければ、そういたしたいと思います。
  149. 世耕弘一

    ○世耕委員長 さようにとりはからいを願います。
  150. 生田宏一

    生田委員 それでは平木君にお尋ねいたしますが、あなたは、山田君からどのような情報を、どういうような状態でお聞きになりましたか。
  151. 平木高二

    平木参考人 お答えいたします。二月の二十二日のちょうど午後二時ごろだったと思います。私が岡地君と会いまして、岡地君が山田の店の会員になっているということを、自分が存じておりましたので、自分もきょう散髪に行きたいので、僕も会員になってもいいんだがなあという話をいたしたのであります。ところが、岡地君が、それだったら僕が案内しようという話になりまして、山田の宅へ参ったのであります。一緒に参りまして、岡地君が山田の主人に、平木部長も会員にしてくれという気持であるので、僕と同じように会員にしてあげてくれということを言ったのであります。ところが、山田君は快くそれに承諾をして、どうそ気安く会員になってくれというような話でありました。私は待たされることなく、店のちょうど三番目のいすに案内されまして、すぐに散髪にかかったのであります。そのときに岡地君か、僕ちょっと用事があるので出ていってくるということを自分に言いました。それから、主人に自転車を貸してくれということを申しておりました。岡地君がどこへ行くとも申されませんので、一体どこへ行くのかなあというような気持を持って、自分散髪にかかったのであります。散髪山田の主人が私にはさみを入れて下さいまして、ちょうど散髪の途中に、私の耳元に山田が口を持ってきて、今うしろのソファーに坐っている人が小笠派の運動員で、僕を買い込みに来ているということを、私に申したのであります。私は職業柄、そういうようなことを聞いた以上は、やはりどうしても職業意識が働きますので、鏡越しにその人間を一応確かめておこうというので、鏡越しにその人間を見たのであります。ところが、約五十歳くらいの年輩で、口ひげのはえた方でありましたが、ただ自分は、そうかと言ってうなずいて、引き続いて散髪をしてもらって、ひげそりにかかりました。ひげそりが終ってから、いすが起きたときに、うしろを見ましたが、その小笠派の運動員という人は、もう帰っておりませんでした。  ひげそりを終って、洗髪も終り、一応最後の仕上げも主人がしてくれまして、散髪が終って私がいすから下りまして、ソファーのところへ腰をかけようと、うしろの方に歩きかけたときに、山田自分のすそを引っぱって、部長さん、こちらの方に来て下さいと言うので、自分は一体何だろうかというような気持で、一体何ですかと言うて、山田の方についていった。ちょうど三番目のいすから約二間ほど離れて、入口にカウンターがありますが、そのカウンターのところに山田が入っていきましたので自分もついていったのであります。ところが、山田が、実はいい話があるのです、と言う。何ですかと言うたら、選挙の話だと言う。実はきのうの二月二十一日に、ちょうど休みだから亀田さんが来て、こういうことを言いかけました。自分亀田という者については、全然予備知識がございませんので、一体亀田とはだれですか、こう問い返したのです。ところが、山田が、あなた岡地さんから何も聞いておらぬのですか、このような問い返しが僕にあったのです。そこで自分は、その以前に岡地君から、あの山田の家から生田派選挙違反が出かかっているのだということを、ちらっと耳にいたしておりましたので、具体的なことについては聞いておりませんでしたが、ちらっとそのようなことを耳にいたしておりますので、その程度の予備知識はあったのであります。そこで私は、岡地君から大体のことは聞いているけれども、詳しくは聞いていない、こう申しますと、亀田さんという人は毎日新聞の広告係の人で、生田派の運動員だ、こういうことを申されたのであります。それで私はそれだけでのみ込めましたので、それじゃその話を続けてくれと申しますと、実はその亀田さんが来まして、きのうの四時ごろ、すなわち二月二十一日の四時ごろに来まして、伊月町の橘の家へ生田派選挙事務所の森という人がお金を十万円持ってくるようになっているが、それをもらうようになっているから、一緒に行きませんかというて亀田が誘いに来た。このようなことを最初申しましたので、自分はとっさにそのようなことを聞きましたし、何も予備知識をあまり持っていなかったので、実はびっくりいたしたのであります。そこで私は、それはほんとうですかと問い返しますと、それはほんとうです。何でうそを申せましょう。私は実際に現認してから言うことになっている、こういうことを申されました。それからそのときに、これというのも岡地さんにいろいろ世話になっているので、岡地さんに何か手柄を立てさしてあげたいと思うから、このようなことを聞いたのであなたに申し上げるんだ、このようなことを言うたのであります。それからそのときにどないしていったと言いますと、ちょうど山田宅のカウンターのところに、山田と私が話しているところに紙きれと鉛筆が置いてあったのでありますが、それを示しながら、亀田さんが来て、橘さんの家へ行く地図を書きかけた。私も橘さんの家は知ってるので、それは書くに及ばないと言って断ったところが、亀田さんがそれを書くのを途中でやめた。このような話があった。それからどないして行きましたかと言うと、二人が歩いて行った。橘の家へ寄ってからは、このように問い返しますと、奥座敷へ通された。そのときにちょうど生田派事務所の森さんという人ともう一人は二十四、五才くらいの若い人が来ておった。そうして私と亀田さんが奥座敷へ入ると間もなく、一応のあいさつが済んでから、森さんが橘さんに十万円を渡しておった。それからと私が引き続いて聞きますと、その金を橘さんが受け取ってからしばらくして、森さんともう一人の事務所の二十四、五才くらいの若い人と二人は帰りました。帰ったあとで橘が、このうち二万円を山田さんに上げるけれども、きょう渡すわけにはいかない。二十四日ごろの晩に来てくれ。来るときには、うちがこういう商売をしているので、大きなふろしき包みのようなものをことさらに持ってきてくれ。そうすると怪しまれにくいから、そのようにしてくれと言った。こういう情報を私は聞いたのであります。ちょうどそういう情報を聞いておりますところへ、たしか二、三人くらいの客が入って来たように思います。私は、いやどうもありがとうございました。それじゃまたあとから調べに来ますが、いい話を聞かしてくれたので、一応本署へ帰って報告しますから、と言って私がドアをあけて帰ろうとしたところへ、ちょうど岡地君が帰って来ましたので、私は岡地ちょっと来いと言って岡地君を呼んで、実は今いい情報を聞いたのだ、そうすると岡地君からどんなやつですか、こういうような話があったのでその概略を岡地君に言って、それから二人でそろって本署へ帰りまして、上司に報告いたしたというような順序になっております。
  152. 世耕弘一

    ○世耕委員長 生田君にお諮りいたしますが、本件はすでに検事局の方でも活動を開始しているやに聞き及んでおります。さような事案でもございまするので、できるならば簡潔に急所に触れて質疑を進めていただきたい、かように考えております。
  153. 生田宏一

    生田委員 了承しました。実は私簡潔に言ってくれるだろうと思って私が問いをしてみますと、微に入り細にわたったお話をなかなかりゅうちゃうになさるのです。それで時間を食っておるわけです。実は私ちょっと不思議に思っておるのですが、こうだ、こうだといって話をした平木君は山田が話したというのですが、その話をした山田君はそのいきさつ、順序については思い出しもしない。参考人の方にお尋ねをしても、こうしてくれ、ああしてくれ、そのときこういうふうにしたらどうだとかあなた方から教えられたので、自分としてはその通りしたのであると言って、記憶のほども不確かなような状態です。あなた方は私がお問いすると何もかも御存じのようなのですが、私がお聞きをしておると、あなたの言っておられることと山田君の言うことと全く正反対なのです。向うから言われてやったというのだし、一方あなたの方から言えば、向うから積極的に話してくれたというのです。これは幾らお聞きしても水かけ論ですから、委員長お話もあり、審議の模様も急いでおるようですので、私は要点だけ聞きますからお答えになってください。  あなた方が——どっちが話をしたのか、いずれが主導的役割を演じたか知らぬけれども、ともかく情報うそであった、あるいはあなた方が真なりと考えたことがうそであったことはあなた方もお認め願い、間違いないことですね。そうするとそのときに、あなた方は山田君にしばしばこのことは口外してはならぬとか、決して言ってはならぬとかいって山田君の口を封じたり、山田君の外出をとめたり、たとえば二十三日の晩十二時ころにあなた方が行って山田君を警察学校へ引っぱり出した、そしていやがる山田君に、これは上司の了解を得ておるので決して君たちには迷惑をかけないのだ、ただ生田事務所に四百五十万円という金が東京から着いたはずだから、その金の行方を追及する。その十万円というものはそのうち一つに違いないから、君たちには迷惑をかけぬのだと言って山田ににせの供述書を書かせた。これはあなたの方から持ちかけたとか、山田の方から持ちかけたから書かせて、そして吉川警視が調書をとったということは間違いない事実ですね。そのときにあなた方は、特に岡地君は山田君に対しては少しきつい言葉で、山田君の表現をかりれば、君たちの票は生かそうと殺そうとこれはわれわれの手のうちにあるのだ、君たちの商売もいつでもつぶすことは何でもないのだ、いわんや借用証書を出して金を借って払わぬというのなら、これを詐欺罪として告訴することは何でもないのだということを言って、山田君をしてその秘密を外へ打ち明けないように、そしてあなた方の意見に沿ってくれるように、そういうようなことをしばしばあなた方はやっておるのですが、私ははなはだふに落ちないと思うのです。いやしくも選挙の公正を取り締る警察官が、このようなことをすることはもってのほかだと思う。また森君や橘君や山田君には迷惑をかけないのだ、生田派事務所を捜索する、四百五十万円の金の行方を調べるために必要な手がかりを得るのであるから、君たちには迷惑をかけないのだということを岡地君が山田君に言っておるのです。山田君はそういって供述しておるのですが、あなた方はそういうことをまじめにおっしゃったのか、あるいはおっしゃっていないのならおっしゃってない、そういう点で私はあなた方の気持を聞きたいと思うのですが、いかがでありますか。
  154. 岡地一

    岡地参考人 お答えいたします。今山田さんが申されたことについては、絶対私たちは覚えありませんです。なお山田さんが言われたうそ情報に基いて、三人を無実であるのにかかわらず逮捕したということは、一巡査と申しましてもまことに申しわけないことをしたと心からおわび申し上げております。しかしながらそれ以外の山田の話につきましては、われわれは絶対にそういうことは信じておりませんし、また言うた覚えもありませんです。
  155. 三田村武夫

    ○三田村委員 ちょっと議事進行について。この問題は人権じゅうりんのケースとして当委員会審査の対象となったのでありますが、だんだん参考人の御意見を伺っておりますと、いろいろわれわれはふに落ちない点があるのであります。きょうは参考人として御出席願ったので、参考人の発言に何らの制肘も加えておりません。陳述は自由でありますが、良識ある現職の警察官でありますから、どうぞ国会の権威というものを御信用願いまして、できるだけ一つ真実をお述べ願いたい。と申しますことは、本件は先刻委員長も言われましたようにすでにその一部が刑事事件として検察庁の手に渡っておるのであります。やがてその真相は検察活動並びに裁判所によって明らかになると思いますが、良識ある現職の警察官がやがて明らかになる真実ともし違ったようなことをここでお述べ願いますとまことに当委員会も迷惑するのであります。証人として宣誓証言を求めておるのでありませんから、ここでお述べになることに何らの制約はありませんから、一つその点は十分御考慮願いまして、できるだけ正確なことをお述べ願いたいと思うのです。われわれは現地のことは非常に暗いのであります。参考人の当委員会における御発言によって判断する以外に道はないのでありますから、どうしても割り切れない、判断のできない問題がありますれば今度はまた再び御出頭願いまして、宣誓の上御証言願わなければならぬことになるかもしれません。そういう点も御考慮の上、現在及び将来の立場をいろいろ御考慮のことはありましょうが、一面今申しましたように案件はすでに一部検察庁の手に渡り、やがて裁判所で明らかになります事案でありますがゆえに、その点事の将来の発展性について十分御了解のことと思いますから、一応念のために議事進行上申し上げておきまして、お含みの上、できるだけ正確な真相を簡潔にお願い申し上げたいことを一言申し上げた次第であります。
  156. 山本粂吉

    山本(粂)委員 なお議事進行について一言申し上げたいのでありますが、それは本件は今もおっしゃられるように検察庁で起訴になるかならぬかについて捜査中です。従ってここで事実の問題について、くどくどしく述べられることをとってみたところが、それよりも大事なことはあるのかないのか、事実の有無を簡潔にお聞き願い、簡潔にお答え願うことによって、一つこの参考人を御指導願うようにお願いしておきます。
  157. 生田宏一

    生田委員 それではお尋ねいたします。平木君と岡地君と二人で情報を収集して、ここに選挙違反買収容疑がありとして署長に報告をして、これに着手した。ところがそれが真実であったのでありますか、真実でなかったのでありますか、それをお尋ねいたします。
  158. 平木高二

    平木参考人 結果は真実でございませんでした。
  159. 生田宏一

    生田委員 そうしますと、あなた方の内部関係としては責任の所在というものがあるわけなのですが、その責任の所在というものは、あなた方はむろん上司の方へ何とかの処置をしただろうと思いますが、そういう点はどうなっておりますか。
  160. 世耕弘一

    ○世耕委員長 生田君にお諮りいたしますが、岡地君、平木君も同様にすでに無根の事実に基いてとったことに対して相当責任を感じられておるようであります。言明もあったようであります。この上責任を追及なさることはいかがと存じますが、ことに本日は参考人としておいで下さっておるのですから、なるべく両君関係者の心境だけの程度に伺っていただくことにお取り計らいを願って、それぞれ上司に対する責任もあろうと思いますから、その点をお含みの上で適当に御質問願いたいと思います。
  161. 生田宏一

    生田委員 実はこの問題はすでに山田君に対しては告発が出ておりますし、その以後において検察庁においては山田君を起訴しておるのですが、そうしますと事件がどこに責任があったかということはむろん裁判所で十分審理されるけけですが、私は本委員会が持ち出したために起訴猶予になっておった者が起訴になるというところに一応の疑問を持つわけです。起訴猶予の処置か正しいというならば、法務委員会が人権じゅうりん問題として取り上げてみても、検察庁の措置には大して変りはないはずなのですが、そこに私は一抹の疑念を持つので、山田が起訴されたということは法務委員会がこの問題を取り上げたからというような感じが特に私としてはするものですから、そこで法務委員会としては一体これはどこに重点があるのか、これは全く山田が作ったものであって、あなた方はそれに、だまされたものであるのか、あるいはあなた方もその事情がわかっておりながらもあの事件をでっち上げたときに片棒をかついだのであるかということに問題は帰着するわけです。ですから私は山田が責められるならば、もしあなた方にも青められる点があるならば、あなた方も率直にその片方の青めをかついでもらいたい。またそれが正しいことだと思う。しかしあなた方が山田に全然だまされたとするならば、それじゃどういうような裏づけ捜査をしてその真実性を確認したかということをお尋ねしなければならないわけです。ところがその真実性というものについては山本本部長が徳島県議会に対して責任をもって報告した報告書の中にはっきりとこう言っておるのです。「それから、だんだん取調べをいたしましたが、どうもその情報の内容において疑いがあるという結果、その裏づけを行なったところが、だんだんその事実がないことが明らかになって参りました。」こうある。そうするとあなた方の報告を全部山本本部長がそれをうのみにしてやってみたところが、うそのような、どうも真でないというので、それから初めて裏づけ捜査をしてみると、全く事実でないことが判明した。こう報告しておるのです。とすればあなた方はおれは知らなんだとかなんとか言えるような筋合いのものじゃないと思うから私お尋ねをしておるのです。山本君ははっきりこれはおかしい、話を持ってきた工合は山本君の報告によりますと、これは自分も相談にあずかったと書いてある。自分も相談にあずかったがその状況がどのような状態でカバンからどのようにして取り出してだれがどういつでそうしてその座敷の状況がこうであった。それは全くいけるがごとくであって、何一つ疑う余地がなかったから、自分はこれは検挙しなければならないものだと即断した。そうして検挙に着手さした、こういっておるのですよ。そのような疑うべからざる状況を作っていくのには私は一人や二人の知恵ではなかなかできるものではない。そうしてあなた方が上司に報告し上司がまた本部長に報告し、第一捜査課長や第二捜査課長が鳩首検討してみて、これだけまとまったものをどうしても着手しなければならないのだというような、そういう完成した状況を作るということは、なかなか一人の考えでできるものではない。特にくろうとが考えてみて、これはもう絶対に間違いないというような、そういう状況をこしらえるということはそれはおそらく山田君のようなしろうとの一個の考えではできるはずはない、私はこういう考えを持っているのです。そこで私はあなた方にも、あなた方が山田君と御相談されたものなら、これはその通り言っていただかぬと、山本君はここではっきり報告書で白状しておるのですから、あなた方が上司に迷惑をかけたことになる。それなら全く山本君は部下にだまされたといっておるのと同じです。そういうような状態に上司を追い込んでおいて——それでは当委員会へ来ていただいてその事情をお尋ねするのに対しては率直に言ってもらいたいと思うのですが、これは上司の責任なんですか、あなた方の情報収集に誤りがあって、上司を誤らせたのですか。またこれで見ると自分も相談したと書いてあります。山本君は私もその場にあってみなと相談したと書いてある、私もそう信じたと書いてあるから、検挙は山本君が責任を持ってやったには違いないのですけれども、これだけをあなた方に聞けばきょうあなた方においでいただいたことも済むわけです。あとは検察庁、裁判所の方でお調べになるわけですけれども、その点についてお尋ねいたします。
  162. 平木高二

    平木参考人 お答えいたします。私が二月の二十二日の日に情報を得たのはそれまで山田さん個人とはあまり面識がない、にもかかわらず二回目に行ったときにあのような情報を私にくれたのでありますが、そのくれたのは、すでにその前に私と岡地君と一緒に行っておりますので、岡地君に当然情報を出すべきでありますが、岡地君に出すのも自分に出すのも結果は同じだろう、二人が組み合せで選挙取締りに専従しているのであろうというような考えから私にしたように自分考えておるのであります。従って最初二十二日の三時ごろに聞いた情報をすぐに帰って署長に報告いたしまして、足らない分をなおかつ詳しく聞いてこい、かように指示されまして、さらに一時間後に引き返しましてまた山田に細部的な点についてお尋ねしたのであります。そのときに古いカバンから十万円を出しておったとかあるいは阿波商の封印がついておった。実際に自分が見たからついておるということが言えるのだ、それから古いカバンの中にまだお金が入っておった。それから選挙事務所の森さんという運動員の人と一緒に来ていた二十四、五才の男という人はもと税務関係の仕事に携わっておったらしいというようなことも、すべて山田自身がすらすらと私に申したのでありまして、今生田先生が申されました点について私の方から誘導的なあるいは教唆的な言辞は一切いたしておりません。それから二番目のお尋ねの点でございますが、はたしてわれわれ岡地君並びに自分の責任に帰属すべきものであるか、あるいは上司である藤山署長並びに本部長の責任に帰属すべきものであるかというお尋ねにつきましては、ただあの情報が、山田みずからなされたものであって、しかもその情報が微に入り細をうがっていて、具体的に心証が出ておりましたので、私は絶対に間違いがないという確信を抱きまして、上司に絶対に間違いがないと強く申し上げたのです。そうして翌日の吉川係長に面接してもらったときにも、吉川係長もそのような感を持っておりました、ただ上司の責任に帰属すべきであるか、あるいはわれわれ巡査二人にその責任が帰属すべきであるかという点については、私からお答えできません。ただ私は良心に従って真実なりという情報に基いてやったことをお誓い申し上げます。
  163. 生田宏一

    生田委員 それはよくわかりましたが、事件が進んでいって、これはもう白だということがわかってきたのに山田を逮捕していろいろ調べておる。そしていろいろ調べてみて、山田があなた方をだましておるならば、言うまでもなく山田を誣告の罪としてそのときに起訴しなければならぬ、あなたの言うがごときであれば、もう事件が白だということがはっきりしたときに山田を誣告で起訴しなければならぬわけですが、警察としてその措置はおとりになりましたか。
  164. 平木高二

    平木参考人 その点につきましては、一巡査部長の私のタツチすべき段階ではありませんので、私は申し上げかねます。
  165. 生田宏一

    生田委員 平木君は山田君をお取調ベをして、これはもう山田個人がやったことであって、上司は知らないのだという調書をあなたが山田を調べて作っておるはずです。そしてそのときには岡地君が山田を引っぱり出して、これはもう自分一存でやったことだから、平木君も岡地君も何も知らぬのだということを藤山署長の前で言わして、そのあとで平木君が調書を作った。岡地君が作ったのではない。岡地君が言わして平木君が調書を作った。あなたはその調書を作っておるはずですから、ちゃんと誣告の裏づけというものの捜査をなされたはずです。従ってその調書というものは生きて、山田君を起訴する材料に直ちになるべきはずですが、一応不起訴処分になった。そして後日この問題が法務委員会で取り上げられたから山田が起訴されたのですが、その直後においての誣告被疑者としての山田を扱った次第はあなたは御存じのはずですが、知らぬというのはどういうわけですか。
  166. 平木高二

    平木参考人 はなはだ恐縮でございますが、今の御質問理解しかねますので、もう一度お願いいたします。
  167. 生田宏一

    生田委員 山田君が自分の一存でこういう事件をでっち上げたので、平木岡地の両巡査は何も知らぬのだという調書をあなたは作ったでしょう。
  168. 平木高二

    平木参考人 山田調書をとったことは間違いございません。ちょうど三月の九日だったと思いますが、それ以前に山田自身が当時岡地君から教唆されたからあのような情報を提供したのだということを言うておりましたが、それはだれからも申されたのではないというような供述をいたしたのでありまして、このときには吉川係長の方からその調書は君がとれということを命ぜられましたので、私が作成したようなわけであります。
  169. 生田宏一

    生田委員 その調書をとる前に岡地君は山田を引っぱり出して、そうしてお前が自分で勝手にやったものじゃないかということを署長の前で言えということで山田岡地に言わされたんだ、こう言っておりますが、それは真実ですかどうですか。
  170. 岡地一

    岡地参考人 今のお尋ねでありますが、それ以前に山田がこの犯罪事実は岡地さんに教えられたんだ、岡地さんがこういうふうなことを言うてくれということを山田さんが取調べに際して云うておりましたので、私としてはそういうことは絶対に云うた覚えがないということでおりましたところが、署長ないし係長から、お前はそういうことを山田に教唆したのかということを再々御注意を受けたのであります。絶対にそういうことは云っておりませんということを返事しておりましたと同時に、一度できましたら山田自身を私に調べさせてくれませんかと、署長さんにこう申しました。よろしい、調ベなさいという署長さんの許可を得まして、そうして山田君を調べたところが、最初に山田君自身に対して云わないというのでなしに、君が自由な気持において教えられたなら教えられたでかまわないからほんとうのことを云うてくれ、ここには署長さんもおられることだから君は真実のことを話してくれないか、決して私がおるから云いにくいとかうそを云わないように、君自身が信じておるならそれでけっこう、だから、君の自由な気持において話をしてくれないかということて山田に答えさせたところが、私はそういうことを云っておりませんということで、私に教えられたということをくつがえしたのであります。
  171. 生田宏一

    生田委員 私はあなたが職務に忠実で公平な措置をとっておるならば、かりに上司にしかられたところで、その容疑者とか相手方に、わざわざ自分の上司の前へ行って自分が教唆したものではないということを云ってくれといったようなしみったれな、そういうことは毛頭考えられないはずです。それをあなたはされておるのですが、あなたはそういろ疑いを受ける何か要素があって、あなた自身がそういう心配なことがあって、山田に特に自分の上司の前で言ってもらったと違いますか。
  172. 岡地一

    岡地参考人 私が自由な気持で言うてくれと言ったことは、山田君自身が私がおることにおいて私を誣告の教唆だというふうに言っておりますから、私がおれば山田君自身としても非常に言いづらいだろうという気持から、山田君に自由な気持で言ってくれということを言ったのでありまして、決して自分がやましいから、どうこうということはありませんでした。
  173. 生田宏一

    生田委員 いや、そういうことでなしに、あなたがほんとうに忠実な公平なことをやっておるなら、何も山田の言をかりてあなたの身の潔白を証明してもらわなくてもいいはずです。もしそんな一々心配していたら警察官は勤まらないはずです。それをあなたが山田の口をかりて身の潔白を証明しなければならないということは、何かあなたにそういう必要があったのじゃないか、あなたは山田に教唆したことはないというのですけれども、山田岡地さんからこう教えられたというような場面がしばしばあったということと違いますか。
  174. 岡地一

    岡地参考人 私は、選挙というものが非常に厳正公平でなければいけないということは再々上司からのお達しもありました。取締りの趣旨自体がそういうふうでありましたので、普通の事件よりも一そう厳正でなければならないということで重要だと考えておりました。それがために私が当時その教唆の主犯というか誣告の教唆犯ということで、私一人が非常に不利な立場というとおかしいのですが、非常に状況が悪かったし、選挙というものは非常に厳正公平でなければならないということを常に上司から聞いておりましたので、そういうような自分が非常に苦しい立場におったということであったので、自分自身が正しいんだということを信じてもらいたかったのです。それと上司が非常に心配されておりましたので、そのことの事実が明らかになれば上司自身としても喜ばれるのではないか、こう思いましたのでそういうふうなことを話したのです。
  175. 生田宏一

    生田委員 大体のことはもう推定もつきますから、しいてお尋ねいたしませんが、両君ともあれが虚偽の情報に基く逮捕であるということは認めておられるのですから、それ以上のことはあまりお尋ねすると役所の中へ入ったようなことになりますので、私としてはこの程度で打ち切っておきます。
  176. 三田村武夫

    ○三田村委員 関連して。検察、警察両当局に一言申し上げておきいたのですが、午前中からお聞き及びの通り、午前の参考人の陳述と午後の参考人の陳述とだいぶ食い違っておる点があるようであります。事の真相のいかんはいまだここできわめる段階に立ち至っておりませんが、検察、警察両当局におかれましても、前回以来の当問題に関する審議経過については、この二十日でありましたか、一応御報告願うことになっております。二十日に御報告になられるかどうかは別問題といたしまして、どうか一つ公正な立場から検討、御判断願いまして、適当な機会に当問題に対する真相と申しますか、真実の姿を当委員会に御報告願いたいのであります。午前、午後お聞き及びの通り、問題はなかなか複雑であります。ことに警察当局にとりましては、警察の重要な名誉に関する問題であり、威信に関する問題であり、ことにこの問題が国会の問題になりました性質上、ただ特殊な勤務場所における一事案にとどまらず、全国の警察に対する威信の問題にもかかわってくるのであります。その点も十分御考慮願いまして、適当な機会にこの真実の姿を当委員会に御発表されんことを重ねて申し上げておきたいのであります。
  177. 生田宏一

    生田委員 三田村委員からの御意見もはなはだごもっともかと思うのでございますが、検察庁の方ではすでに本人を起訴されていることでございますから、このことが進んでいくのでございますが、この間のお話によりますと、山田の精神鑑定の結果を待って結論を出したい、こういうお話だったと思うのです。山田の精神鑑定もすでに結論が出ておるように漏れ承わっておるのですが、そうしますと、私は事件の内容によれば警察官に対する誣告の起訴ということもあり得ると思います。それでそのような方面につきましても検察庁としては御配慮があるかどうか、それをお伺いいたしたいと思います。  それから人権擁護局長に対しましては、山田という男が果して誣告の罪に当るかどうか、それは調べてみなければわかりませんけれども、少くとも本人と警察との間においては相当人権のじゅうりんもあるやに想像されることでありますし、単にこの事件が、森君なり、橘君なり、亀田君なりの人権がじゅうりんされたというばかりでなくて、あるいはもっとひどい人権じゅうりんが山田に対して加えられておるということも想像されるわけです。また山田自身はあの自分の営業が非常に影響を受けて、そうして業務も続けがたいような状況にも立ち至っておるように本人はけさも供述しておりましたが、これらの点についても、人権擁護の点から特に御配慮願って、もしそのような被害によって生計を営むことができないようになっておるとするならば、私はこれは重大なる人権擁護の問題としてあなたの方においても取り上げて、以後人権擁護をしてやる気持はおありでありますか、その辺の御意向も承わりたいと思います。  それからまた警察関係ですが、ちょうどきょうは石井長官がお見えになっているからお尋ねをするのですが、このような問題が起きましても、特に警察の内部は強固な治外法権的な地域でございますので、部内的に事件を処理して、外部に対しては真相を発表せず、どのようにして責任がとられたかということはわれわれは常に了得しがたい状態でいつのまにか過ぎてしまうのが落ちでございますが、新長官は新しい民主警察を御指導されるお考えがあろうと思いますので、この問題についてはどのような御心境で処理されるつもりでありますか。三人の方々の御意見を承わっておきたいと思います。
  178. 古屋貞雄

    ○古屋委員 関連して。午前の参考人の供述を聞いておりますと、問題は、山田よりもむしろ山田をしてうそを言わしたというところに重点があると思うのです。一体最近巡査が勝手に逮捕状の疎明書類を偽造したり、人権を尊重する立場におかれる巡査諸君が非常に法律を蔑視している点がある。それでこれは刑事局長にお尋ねしたいですが、私どもはむしろ山田を起訴する前に今の二人の参考人を徹底的に調べなくちゃならぬと思う。今私どもの承わっておるところではいずれが真かわかりませんけれども、捜査していただく上において検察庁は公平な立場から見ますならば、むしろ山田を起訴する前にきょうの二人の平木君と岡地君の関係を厳重に捜査していただいておるかどうか。その点が本件では重大な問題だと思う。権力を乱用しているという点が問題であります。山田のような法律のわからない、しかも非常に弱点を持っておる人間に対して——山田の言を全部信用しないとしても、少くとも山田参考人としてそこでしゃべったことは全部うそだとは考えられない。前後のいきさつを考えて、しかもお二人の参考人は最初の捜査が間違っておるとはっきり確認している以上は、やはりその原因がどこにあるか、山田の謹告がどこから生まれたかということが捜査の中心だと思う。その点を今まで捜査されたか、今後されるか、その点を承わりたいと思います。
  179. 井本臺吉

    ○井本政府委員 山田がすでに起訴になっておるようなお話でございますか、実はまだ本人は起訴しておりません。起訴すべきやいなやという点を慎重検討中でございます。古屋委員からのお尋ねもございましたが、この事件につきましては、われわれといたしましてはつとに事件の重大性を考えまして、ちょうど紫雲丸当時のことでございましたが、ちょうど高松に私どもの方の長戸刑事課長が出張する予定になっておりましたので、わざわざ徳島まで行ってもらいまして、大体事情の報告を受けて帰って参りました。その後も何回も現地から報告をとりまして、慎重検討しているわけであります。三週間ほど前に大体七月二十日ごろまでに一応の結論は出すというようにお約束申し上げましたので、鋭意調べを続けておるわけであります。今日までのところでは大体八月の二十日ころまでに一応の結論を出すつもりでおったわけでございます。ただ偶然に本日私こちらへ参りまして直接この関係者の方々の供述を聞きましたので、われわれの今まで受けた報告と本日ここで参考人として出られました三人の方々の供述とをもう一度慎重に検討しまして、その上で最後の結論を出したいというように考えております。従って二十日に結論を出すと申し上げましたけれども、いましばらく御猶予のほどをお願い申し上げたいと思います。
  180. 古屋貞雄

    ○古屋委員 ただいま刑事局長からの御答弁を伺いましたが、ぜひその点を綿密に真相を御捜査の上態度をきめていただきたい。なお本件の重大性は、参考人もしばしばここで言っているように、選挙に対する公平な態度をとらなければいけないと自分たちはそうおっしゃりながら、自分たちがやったことが公平でなかったことは、参考人生田委員への答弁において明らかになっておるのですが、選挙に名をかりて、公正でなければならぬ、こういうことをおっしゃっているのに、まことに不公平なことをやった結果になっておる。この点私は重大だと思うのです。日本の政治の根本を築き上げるところの正しい選挙が行われなければ、正しい政治が行われない。ことにややもすると、どうも警察の諸君が法律に無知な一般国民に対して、自分の感情を交えてのいろいろの判断をして無理をする。本件はこれは相当無理な事件であって、しかもそれが選挙に関する無理でありまするから、普通の人権じゅうりん事件と違った大きな影響を及ぼすことに、私どもは非常に重点を置いているわけであります。従って最近行われておる警察官の法律蔑視の態度、これに対する一つのはっきりとした警告と申しましょうか、あるいはおきゅうと申しましょうか、こういうことも十分考慮の上で、本件の捜査の結果に基いての御処置を願いたい。  それからなお石井長官にお尋ねしたいことは、最近こういうような国民の人権を進んで尊重していかなければならぬ立場の警察官が、日本の人権じゅうりんのうちのパーセンテージが非常に多い地位を遺憾ながら持っておる。こういうことはまことに遺憾にたえないと同時に、これがひいてもって人心に及ぼす影響は重大であります。石井長官は、この法務委員会において、再びかようなことが起らないということを言われまして、私どもは今日までそれを信じて安心しておりました。大麻国務大臣も、この前の大阪の警察署における法律蔑視の態度に対する問題については、厳重な責任を問うと同時に、けんけん服膺してかようなことの再びないようにということをしきりに真心を込めて、私ども並びに国民に対して御発表になっておるのに、今回これまたこういうことが繰り返されておるわけなんですが、石井長官におきましては、一体この問題に対してどういう心がまえを持って、今後再びかようなことが起らないような処置をとるかについて、一つのお考えを御発表願って、私どもの納得のいくような御答弁を願いたい、こう考えます。
  181. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 本問題につきまして、当委員会の皆様並びに関係の各方面の方々に非常な御心労をわずらわし、御迷惑をおかけいたしましたことを、私衷心より申しわけないと思っております。この機会に深くおわび申し上げたいと思います。  先ほど三田村委員の御質疑通り、私どもはこの問題の真相を把握いたしまして、適当な機会に当委員会はもちろん国民の皆様の前に発表いたしまして、われわれれのあやまるべき点は率直に陳謝をいたす、こういうことにいたしたいと存じております。先ほど井本刑事局長からお答えがありました通り参考人山田氏の問題につきましては、いまだ検察当局の結論が出ておらないようでございます。そうした結論を伺いました暁におきましては、最終的に私どもの今日までのこの問題に関する経緯その他を発表させていただきたきたい、かように考えております。  なお古屋委員の御指摘の点でございますが、かねて大阪の疎明調書事件等が起りましたときに、当委員会におきまして、当時私次長といたしましてお答えもいたしたわけでありますが、およそ捜査に当る者の心構えといたしまして、常に人権を尊重すべきことを基本的な面といたしまして、公正適切なる捜査をするというのが根本態度でなければならぬかと思うのであります。捜査の便宜のために手段を選ばない、あるいは人権を侵害するといったようなことは、絶対にあってはならないのでありまして、この点は先般の大阪の疎明調書事件の際に、警察庁といたしましては全国の府県本部長に、そうした不祥の事件を契機といたしまして、こういうことの再び起らないようにということを、厳重に指示、通牒をいたしたわけであります。ただ単に一片の通牒をもって能事終れりとは、私どもは決して考えておりません。結局これは全国の警察官の一人々々が、先ほど申し上げるように、およそ捜査に当る警察官として基本的な心がまえ、態度というものを、真に身につけるということでなければならぬと思うのでありまして、この意味におきまして警察官の教養のきわめて重要であることを痛感いたすのであります。今日まで警察官の教養につきましては、私ども及ばずながらあらゆる機会にあらゆる方法を講じて、営々として努力を重ねているつもりではございますけれども、何分にもこの教養ということは一朝一夕には実を結ぶものではないのでありまして、長い時間と労力をかけて初めて実を結ぶものと考えているのであります。今後とも一そう警察官の指導、教養につきましては、微力ながら最善を尽しまして、今後こうした不祥事案が再び起らないように、厳に戒心をいたして参りたいと存じておりますので、御了承願いたいと思います。
  182. 戸田正直

    ○戸田政府委員 三月二十二日の新聞情報によって、さっそく徳島地方法務局によって本件を調査いたしました。その結果山田義明からの情報のとり方、その裏づけ等において、いささか軽率であったのじゃなかろうかというような考えを持っております。ところが警察におきましては、各関係警察官を行政処分をいたしましたので、私の方としては処分猶予の処理をいたしたのでありますが、その後新たな事実も出ておりますので、さらに徳島法務局においてただいま調査をいたしている次第であります。  それから、先ほど生田委員から、山田義明が本事件によって、理髪業がうまくいかなくなった、これらの生活のうまくいかなくなった面を何とか救済できないかというような御質問でありますが、それは人権擁護局としても考慮いたしたいと思いますが、家業がうまくいかなくなったのをどう救済するかというようなことは、少しむずかしいのじゃないかと思いますが、他の面で人権擁護をいたします面がございますならば、それは考慮いたしたいと思っております。
  183. 生田宏一

    生田委員 今の局長のお話は、私の申しましたのと全然違うのであります。家業がむずかしくなったということは、これは私の営業でございますから、それを擁護してやれというのではありません。山田の人権を擁護してやることが行われれば、そのような事態にはならないと私は思うのです。山田の人権が不当にじゅうりんせられて、自分の自由意思の発表も禁じられている。外出も禁じられている。そして一身に全部の責めをひっかぶって、これは山田のでっち上げなんだ、それに警察がおどらされて、そしてこのようになったのだというような体裁に作られて、山田外出もしちゃいかぬ、人と交わってもいかぬ、人にものを言うなというから、それは不当に山田が社会的制裁を受けておるんですから、そのような原因を除去してやれば、山田の営業がその上で悪くいこうがよくいこうが、それは山田の才覚にあることで、そこまでやれというのじゃありません。あなた方の方でこの事件の報告を通じて人権擁護局が活動して、山田の人権を擁護してやればいいというんですから、そのことを私はお話し申し上げたわけであります。
  184. 戸田正直

    ○戸田政府委員 事情よく伺いました。先ほど申し上げましたようにすでに第一回の処置はいたしましたが、さらに新しい事実が出ておりますし、また本日新しい事実も聞きましたので、十分人権の点から事実を調査して処置いたしたいと思います。
  185. 生田宏一

    生田委員 刑事局長からお話がございましたので私も了承いたしましたが、古屋委員も言われておるように、誣告の対象になる者は決して山田だけではございません。あるいはこれを取扱った警察官以外の第三者にもあるのではないかという気もしますので、誣告に対しては、山田のみならず、山田と交渉して、うそ情報をでっち上げた警察官自体も、誣告の捜査の対象になると思う。その点を古屋委員からもお尋ねしたが、お答えがございませんでしたが、そういう御配慮がございますかどうか。
  186. 井本臺吉

    ○井本政府委員 全然虚偽の内容であることを知りながら、特定な私人に対しまして警察官がかようなうそを言えということで、その私人がうそを言った場合には、これは警察官も誣告の共犯になると私は考えます。本件につきまして、もしそのような状況であれば、その調査も行わなければならぬわけでございますが、われわれがいろいろ聞いた報告の範囲内では、山田君の言うことが、本日の供述と今まで受けておった報告と非常に違っております。またその都度私どもにきます報告の内容も、毎回言うことが違っておるので、もう一ぺん検討したいからもうしばらく待っていただきたいと申し上げたわけでありますが、もしここで本日山田氏が参考人として供述されたような事実が成り立つとすれば、われわれの結論も少しく違ってこなければならぬと考えますので、今まで受けた報告と本日の供述につき十分検討したいと申し上げたわけであります。決して山田一人だけが被疑を受けるべきであると断定してそういうことを申し上げたわけではございません。
  187. 世耕弘一

    ○世耕委員長 これにて質疑は終ります。参考人にはお暑いところまことにありがとうございました。本委員会の調査に御協力下さいましたことを厚くお礼申し上げます。  次に細田委員より発言を求められております。これを許可いたします。細田綱吉君。
  188. 細田綱吉

    ○細田委員 私が伺いたいのは二つの件数でございますが、いきなりでございますので、まず事件の概要を申し上げ、あるいはまだお耳に入っていないようでしたら、御調査の上この次にお答えを願ってもいいと思います。  その一つの問題は長野県小県郡禰津村、ここで三十年の四月に村長選挙があったのですが、その村長に立候補しました百瀬豊喜という人、これは長命寺の住職だそうですが、俗にいう大ボスでございましょう。二十五年の参議院議員の選挙には禁固の言い渡しを受けて執行猶予になった。ところがまた二十七年十月の衆議院選挙には選挙違反をやって、東京高等裁判所で一年二カ月の実刑の言い渡しを受けて、今上告中であるといわれます。それがこの四月の村長選挙に立候補いたしまして、そうしてこれが反対の側にある候補者を圧迫するということは、これは候補者同士ですからあえて問題にしませんが、その反対派の運動員に対して尾行をつける、あるいは婦人会の幹部を脅迫する、あるいはまた、特に見のがすことのできないのは、ある部落——同村の東町の六区だそうですが、この区長に対してほとんど村八分にして圧迫を加えた。こういうことでひどく社会のひんしゅくを買った選挙を遂行して、この人が当選したのです。しかしその当選の翌日、五月一日には居村の日吉神社の祭礼の席上で、ただいま申し上げました東町部落から出ている人たちを大ぜい、この百瀬派の幹部の人が呼び出して、一人ずつつるし上げた。村の平和を害するとか何とかいって、反対派のために投票したということをきわめて痛烈に非難してつるし上げをしたという事案でございます。これに対して選挙妨害等の告訴が上田警察署へ提起され、それから上田市人権擁護委員会にこれに対する徹底的な取調べを求めた。そしてこれに対して上田警察署では事案を調べて、新聞にも堂々と、ほとんどこの事実を被疑者は認めておるということを警察でも発表しておる。にもかかわらず、これがそのままになっておるという事案であります。これは警察庁の刑事部長に伺いたいのですが、この上田署の取調べに対して、これだけの問題を起しながら、どういう点で起訴猶予あるいは不起訴処分になったのか。また上田市人権擁護委員会では、この申告を受けてどういうふうに活動しておるか、この点をまず伺いたいのでございます。
  189. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 ただいま御指摘になりました長野県の事案ですが、私ども警察関係も、法務関係も、まだ現地の報告等が来ておりませんのでわかりませんから、ただいまの御発言に基きましてよく事情を調べてみたいと思います。
  190. 戸田正直

    ○戸田政府委員 私の方もまだ報告を受けておりませんので、さっそく調査いたしたいと思います。
  191. 細田綱吉

    ○細田委員 それでは、突然提起されましたので御存じないとも思われますので、次に御説明願うことにしまして、福井地方検察庁の問題でございます。どうもわれわれが見ましても福井地方検察庁はちょっと変っているように思うのです。同僚の選挙違反は、これは法廷で徹底的に争うから法務委員会ではしないでもらいたいというようなことだったものですから、われわれも質問を差し控えたのですが、たとえて申しまするならば、細君を収容して、その細君の血圧が低血圧で八十になってほとんどいたたまれなくなり、また心臓の何とかというむずかしい病気で、非常に危ないような者を六十日も拘置所の中にたたき込んでおいて、町の医師を呼んだら非常に危険だと言われたにもかかわらず、今度はまた拘置所の医師を呼んでことさら大丈夫だというようなこと、しかも連続注射までして、なおかつ六十日も拘置したというような事案でございます。それは別としまして、そういうような問題は被告の信憑力があるとかないとかいうこと以前の、憲法じゅうりんの人権問題だと思うのです。今秋が伺う問題は、福井県市町村職員健康保険組合の職員である大久保伸顕が森長謙之助と共謀の上、同会が福井県市町村職員恩給組合より借り入れた九十万円のうちの三十九万円を横領し、なお職員九名とともに九州地方へ視察出張した際に諸経費として六万余円を支出横領し た。なお役職員十一名とともに東京地方へ出張した際、諸経費として八万余円を支出横領したというような事案で、二十日間勾留を再延長して取り調べた。ところが取調べをした結果、これは罪なしと見たのでございましょう。従ってこれは不起訴になっておる。私はこれを責めるわけじゃない。神様でない人が見込み違いをするというようなことは、これはあえて責められない。ところがそのあとが悪い。自分たちがこれを合理化しようとするために、お前は責任をとってやめろ、やめなければ起訴するぞ、こう言われたそうです。そこで大久保君は、私は横領したということでやめたのでは自分の信用上、社会的生命にかかわるのでやめませんから起訴して下さい、こう言ったところが、それでも起訴しない。なおその上、本人がやめないのに今度はその組合に対して、大久保を解職しないときは個々の町村における補助助成金や起債の事業に不正があるから、徹底的にこれにメスを加えるという威嚇をして、そうしてついに同組合は大久保を退職するの余儀なき立場に至らしめた、それで退職した、私はこれが問題だと思うのです。何も検事はそんなことは要らないことだ。この事実がこのままであるとするならば、これは自分の立場を合理化するために、自分の面子を守るために余分なことをしておる。起訴事実があると思うならさっさと起訴したらいいので、退職しようとしまいとそんなことは勝手だ。二十日間の勾留をして、罪がないと思った。ところが罪がないどころか、職権を乱用して自分たちの面子を保つためにこういうようなことをしておる。もちろん他の事実についてはは起訴していない。ほかの点でも起訴していない。こういうような事実があるのですが、これに対して刑事局長は、突然申し上げたことでありますのでもちろん御報告は受けておられないと思うのですが、あるいは受けておられたらどういう報告が来ておるか、一つ御説明願いたい。もしまだ来ておりませんでしたら、この事実を御調査の上、次の委員会において御説明願いたいと思います。
  192. 井本臺吉

    ○井本政府委員 ちょっと細田さんに伺いますが、これはいつごろの事件でしょうか。
  193. 細田綱吉

    ○細田委員 これは昭和二十九年四月二十六日です。
  194. 井本臺吉

    ○井本政府委員 たしか昨年の暮れか本年の初めごろに、これに関連した事件の報告を受けておると思いますが、本日突然のお尋ねで、資料も全然持ってきておりませんし、正確でございませんから、資料を取りそろえまして次の機会に御報告申し上げたいと思います。もし報告が来ておりませんければ至急に現地に照会いたしまして、その結果を御報告申し上げます。
  195. 世耕弘一

    ○世耕委員長 この際政府関係当局に委員長から一言申し上げておきたいと思いますことは、今朝来の新聞に、三田高校の生徒の自殺に伴って校長がさらに自殺未遂をしたということが発表されておるようであります。これは教育界の問題として、単純な事件として取り扱うべきじゃないようにも思われるのであります。次に今朝の新聞をにぎわしておりますことは、トニー谷の愛児の誘拐ギャング事件が大げさに取り扱われております。その他過日の新聞には、肉親の子が老母をば撲殺した事件があります。さらに引き続いて新聞をにぎわしておりますことは、愛人を扼殺して茶箱に、二つに折って入れておった事件が新聞に報道されております。まことにこの事態を考えてみますというと、無雑作に殺人行為が行われているような感が深いのであります。この事件は単に大都会の面で行われているばかりでなしに、地方にもややこれに類似したことが行われているように報道されておるのであります。治安、公安その他の面からまことに遺憾千万だと思いまするが、この点に関しましても警察当局並びに法務当局は何かの対策をお考えになっておられるかどうか、この際御意見があらば承わっておきたい、かように思うのであります。
  196. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 最近の犯罪傾向といたしまして、特に凶悪犯が増加しつつあるということは一つの大きい特徴であります。昨年と本年と比較いたしましたとき、そういうことはわれわれの統計的な数字にも出ておるようにうかがえるのであります。これはいろいろな原因があろうかと思いますが、根本的には国民の道義の問題ということにもなりましょうし、生活の関係等もありましょうし、基因するところは多岐であろうかと思います。いずれにいたしましても、原因のいかんにかかわらずこうした事犯の発生を見ますことは、まことに遺憾であります。私ども警察の立場におきましては、こうしたいわゆる犯罪未然防止という見地での警察活動と同時に、一たび不幸にして発生しました犯罪に対しましては、急速にこれを検挙捜査をいたしまして、世人の不安なからしめるというふうにいたして参りたいと考えておるのであります。今後ともそういう意味におきまして、防犯の活動あるいは捜査活動というものにつきましては一層と努力を払って参りたい、かように存じております。
  197. 井本臺吉

    ○井本政府委員 仰せのような凶悪犯の横行いたしますことは、われわれといたしましてもまことに無関心でおられない重大事件でございまして、われわれの職分の範囲では、かような犯人に対しましては一日も早く片っ端から検挙いたしまして、迅速にこれを処分して、法の所期する目的を達することがひいては他の犯行の予防手段にもなると考えまして、極力機会あるごとに捜査の現地当局を激励いたしまして凶悪犯行の敏速検挙処理に努力させておるような次第でございますが、なおこの上ともさような方向について努力いたしたいと考えております。
  198. 戸田正直

    ○戸田政府委員 ただいま委員長から仰せになられましたように最近人命軽視の傾向がきわめて顕著に現われておりまして、人権擁護上きわめて重大だと考えております。昨年も十二月の世界人権宣言の記念週間に人命の尊重ということを一番重く取り上げて、全国的に啓蒙活動をいたして参ったのであります。今後もこの啓蒙活動は続けなければならぬものだと考えております。言うまでもなく人権の最大のものは人間の生命でございます。人命の尊重に今後とも啓蒙活動を続けたいというふうに考えております。ただ人権擁護局の一番大きな仕事である人権侵犯の予防的な役目を持っておる啓蒙活動に対しては、予算が一銭も認められて おりません。皆無でございます。にもかかわらず昨年は全国で七千回以上の啓蒙活動をいたして参りました。これは全部予算なしでいたしましたが、今後とも予算のあるなしにかかわらず、人命尊重に対する人権擁護の啓蒙活動をいたしまして人権の侵犯事件の予防に努めたい、かように考えております。
  199. 世耕弘一

    ○世耕委員長 本件に関しては非常に重大なように考えられるのでありますから、いずれ本委員会においてもあらためて委員諸君の御協議を願って、あるいは適当の機会に政府に申し入れするような手続をとることになろうと思いますが、特に直接その治安、公安の維持に当られておる方々はこの事態をさらに政府当局とも十分御協議下さって、万全を期せられるように特に要請いたしておきます。  本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもってお知らせいたします。     午後三時二十六分散会