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1955-06-27 第22回国会 衆議院 法務委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二十七日(月曜日)     午後一時三十九分開議  出席委員    委員長代理理事 古島 義英君    理事 山本 粂吉君 理事 三田村武夫君    理事 馬場 元治君 理事 福井 盛太君    理事 古屋 貞雄君 理事 田中幾三郎君       椎名  隆君    林   博君       牧野 良三君    松永  東君       生田 宏一君    横川 重次君       猪俣 浩三君    神近 市子君       淺沼稻次郎君    吉田 賢一君       志賀 義雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 花村 四郎君  出席政府委員         調達庁長官   福島愼太郎君         検     事         (民事局長)  村上 朝一君         検     事         (刑事局長)  井本 臺吉君         運輸政務次官  河野 金昇君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁警備部         警備第一課長) 三輪 良雄君         総理府事務官         (名古屋調達局         長)      田中  透君         高等海難審判官 増田 一衛君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政に関する件     —————————————
  2. 古島義英

    古島委員長代理 これより法務委員会を開きます。  本日は委員長が差しつかえがありましたので、理事の私が委員長の職務を行います。それでは法務行政に関しまして調査を進めます。質疑通告があります。吉田賢一君。
  3. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私は小牧飛行場拡張に関して、政府拡張予定地地域立ち入り調査いたしました事実に関しまして、以下二、三の質疑をして、事情及び事実を明らかにしたいと思うのであります。まず伺いたいのでありまするが、これは事務当局でありまする名古屋調達局長に伺いますが、記録上のこの内容を具体的に明らかにいたしますために伺いたいのですが、このたびの小牧飛行場拡張予定地域は、小牧市、春日井市、西春日井北里村、豊山村、楠村、この五カ市町村にわたるということになるのでありましょうか、そこをまず明らかにしておいていただきたい。
  4. 田中透

    田中説明員 私、名古屋調達局長田中でございます。ただいま御質問がございました拡張地域は、小牧市、それから春日井市、それから楠村、豊山村、北里村、この五カ市町村にわたっております。
  5. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そのうち北里村につきまして、いま少し具体的な字並びに面積及び事業目的などを明らかにしておいていただきたい。
  6. 田中透

    田中説明員 北里村についてのお尋ねでございますが、北里村のうち市之久田小針小針巳新田、この三つの部落にわたりまして拡張地域が及ぶわけでございます。面積は、ただいま軍の方で立ち入り調査いたしまして、大体のところはわかるのでございますが、まだ何町何反何畝何歩とはっきりいたしておりません。大体のところ、北里村はその三カ部落合せまして三十町歩前後だと承知いたしております。使用目的は、小牧飛行場滑走路延長のために新しく買い上げまして、軍に提供することになっております。
  7. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 この町歩がまだ明確に確定していないという御説明でありますが、これはやはりあと剰余分を減殺することがあるとも、一応は確定しておくことが必要ではないでしょうか。
  8. 田中透

    田中説明員 ただいまの段階におきましては、軍の立ち入り調査をさせていただきまして、飛行場滑走路延長工事をしますのに適地であるかどうかという調査をいたしまして、大体の区画はきまっておりますが、軍でこれだけほしいという区画を示されましたのに対しまして、調達局の方でこれでよろしいとまだ了解を与えておりません。私は詳しいことは存じませんが、これは閣議できまるのではないかと存じております。
  9. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 長官にお伺いいたしますが、この小牧飛行場滑走路拡張決定をしたのは、いずれあなたの方とアメリカ軍との間の折衝の結果だと思いますが、それはいつどの機会に、どういう委員会等におきまして決定したのでありますか。その際、今の北里村の広さとか目的等について、具体的な取りきめがあったのかなかったのか、それだけまず伺っておきます。
  10. 福島愼太郎

    福島政府委員 小牧飛行場提供は、まだ確定いたしておりません。小牧飛行場提供は、米軍側から日本政府として提供可能であるかどうかという申し入れに接しておるわけであります。この申し入れは、日米合同委員会施設特別委員会にあったわけであります。施設特別委員会といたしましては、これは小牧だけでなくて、その他の飛行場も数多く参ったわけでございますので、全般の問題を検討いたしまして、どの飛行場とどの飛行場にするかという検討が一番時間がかかったわけでありますが、その結果、一応の案として、小牧飛行場について拡張が可能であるかどうかを調査することにしようということが施設委員会としてはさまったわけであります。従いまして、施設委員会上部機構でありまするところの合同委員会にもまだ報告はしてないのであります。その結果施設委員会として研究をしてみるということになりまして、その具体的な研究調達庁が引き受けたわけでありまして、小牧についてそういう調査をしてよろしいかどうかという点について閣議了解を得ましたので、将来いかように、またいかなる面積土地提供するかどうかという調査をするために、名古屋調達局をしてその調査にかからしめたわけであります。その調査の結果、調査そのものは一応済みましたので、自後必要とする最小の面積決定及びそれに必要な工事の設計その他を了しまして、これらがまた、施設委員会において双方の合意を見るに至りましてから日米合同委員会にこれを報告する、日米合同委員会合意を得ました上で、日本側といたしましては閣議決定をしてもらい、その上で初めて提供ということにきまるわけであります。従いまして、今日の状態におきましては、提供する目的をもって調査はいたしておりますけれども、また事実問題といたしまして、小牧提供ということになる可能性は相当多いわけであります。けれども、厳密には、小牧飛行場拡張用地提供するという決定はまだないわけでございます。
  11. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そういたしますと、アメリカ軍当局の方から小牧飛行場滑走路及び飛行場施設拡張地域使用のための要求をいたしました結果のようでありまするが、具体的には日本政府といたしましては、北里村の地域——もちろん外四市村も含むのでありまするけれども、問題は一応北里村を中心に果てお尋ねするわけでありまするが、これらの地域に対しましては、政府といたしましては、具体的には、土地収用法関係から見まして、何の事業をするということが目的になるというように限定されるのでありましょうか。
  12. 福島愼太郎

    福島政府委員 北里村の地域におきましては、調査の結果地質その他の関係でできるということになれば、滑走路そのものをその地域に作るということ、並びにこれの付属施設誘導路とか、エプロンと申しまして、滑走路周辺安全地帯、そういうものを設置するのが目的であると考えております。
  13. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこで伺いますが、これらの事業準備のためには土地に立ち入って調査をなさったようであります。土地に立ち入って調査をするというためには法律上はどういう手続が必要であるのでしょうか。
  14. 福島愼太郎

    福島政府委員 私だけがこまかく全部を知っておるわけではありませんが、私の了承する限りにおいてお答え申し上げますならば、土地に立ち入って地質調査その他をしたいという場合に、その土地所有者合意が得られればこれはできるということになると考えます。得られない場合には、目的に従いまして法律上の手続が要るということになるわけでありますが、北里の場合には政府要求県知事に伝えまして、県知事市町村に対する公示と申しますか通告と申しますか、その手続により、それに引き続いて調達局より市町村長通告するという手続が必要であろうと思います。いずれにいたしましても小牧関係手続につきましては、法律上の規則といたしましては、合意を得てやるか、しからざれば法律上の手続によってやらなければならない、こういうことになると思います。
  15. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 本件じゃなしに、かかる場合に土地に立ち入るときには、所有者あるいは占有者承諾を得る合意の場合と、法律手続によって強制する場合と二つある、こういう趣旨了解をしていいのですか。
  16. 福島愼太郎

    福島政府委員 その通りであると思います。
  17. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこでこの北里村につきましては、調達庁はすでに調査を終了したとか、内閣委員会質疑応答の記事によっても見受けられ、今の御答弁によってもそういうことでありまするが、いつ立ち入りを始められたのでありましょうか。そうしていつ終了したのでありましょうか。
  18. 福島愼太郎

    福島政府委員 四月の十三日ころであったかと思いますが、立ち入りをいたしまして、五月の十六日に調査を終了したと報告を受けております。
  19. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 北里村につきましては、強制的に立ち入りをしたのであるか、任意に合意承諾を得て立ち入りをしたのか、いずれに属するのですか。
  20. 福島愼太郎

    福島政府委員 合意によって、承諾を得て立ち入ったと報告を受けております。
  21. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 調達局長に聞きますが、それはいずれでありますか、一つはっきりと御答弁を願いたいと思います。
  22. 田中透

    田中説明員 北里村についてどういう立ち入りをしたかという御質問でございますが、小牧飛行場関係カ市町村いずれも承諾を得て、軍の立ち入りをできるようにお計らい願いました。そうして立ち入りいたしました。
  23. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 しからば進んで局長に聞きますが、いつ、だれから、どういう方法によって、どこで承諾を得たのでありますか。広範囲にわたりますから北里村に限定してよろしいから伺いたい。
  24. 田中透

    田中説明員 北里村に関しましては、まず関係市町村長了解を得まして、最後北里村のうちの一部分であります小針部落がなかなか難問でございました。最後まで残った次第でありまするが、北里村の承諾を得ましたいきさつを申し上げますと、三月の二十六日に各市町村を回りましたときに北里村に参りまして、村長にお会いいたしまして、各所有者の御承諾を得ていただきたいとお願いをした次第であります。  その後再三お伺いいたしましたが、問題になりましたのは、六日に私が不動産部長を伴いまして北里村の村役場に参りました。村長にお会いいたしましてさらに同様のことをお願いした次第でございます。ところが各部落代表者に会ってくれと、こういうことでございまして、村役場の、あれは会場でありましたか、畳の敷いたところでありましたが、そこに参りまして、その三部落代表者が数十人集まったところで説明をしてくれということで御説明申し上げまして、皆さんの御承諾を得たいと懇願いたした次第であります。ところがその際にこの三部落のうち小針新田といいますのは承知いたしました。ここだけでけっこうでございますという話でありましたが、あと市之久田小針部落とこの二つの部落は、さらに明日自分部落まで来てよく説明をしてくれないかというお話でございましたので、お約束通りその翌日の四月七日に私再び不動産部長を伴いまして、市之久田の、あれはお寺と思いますが、まず市之久田に行って説明をいたしました。市之久田は大体よろしいだろう、こういうことで二時間ばかりおりましたが、それから小針部落の方に移ったわけであります。小針部落では数十人の人がお寺に来ておりました。私ども二人を取り巻いていろいろお話がございました。私の方からもっぱら懇願いたしまして、いろいろいきさつはあったのでございますが、夜の九時ですか、ずいぶんおそくなりましたが未解決で、私は、それではこれで失礼いたしますと言うて帰りました。  立ち入りをしなければならない期日が切迫をいたしておりますので、翌日副知事さんにお会いいたしまして、実は昨日私小針部落に行きまして皆さんから非常な反対の声を聞いて罵倒された。私に対しては小針部落の人は十分思うだけのことは言っておるはずだ、どういうふうな気分になっておるか、副知事さん、ちょっと行って気分一つどもに知らしていただけないかと懇願いたしました。あれは夜の七時ごろでありましたが副知事が出かけて参りました。その翌日、九日の土曜日でございます。副知事に会いましていかがでございましたかとお伺いいたしましたら、副知事さんはあなた方がしんぼうしたおかげで小針部落の人も大分なごんでおる、こういうお話がありました。帰りまして庁内でいろいろ相談いたしました。立ち入りをしなければならないのは翌々日の四月十一日に迫っておりますので、当日は土曜日でございましたが、それでは一つもう一ぺん行ってどういうことか立ち入りができるようになったかどうかということを確かめたい、できれば立ち入り承諾書をいただいて帰りたい、こういうことで四月九日、土曜日に石田不動産部長をつかわしまして、私は役所の寮に待っておりました。ところが午後の七時近くでありますが、やっと不動産部長が自動車で帰って参りました。どうでしたと申し上げましたところ、石田不動産部長が帰ってから申しますのには、村会議長助役の立ち会いで村長からこういう承諾書をいただいてきたといって、私に報告したのであります。その承諾書は、前に豊山村の村長からいただきました……。
  25. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 途中でおそれ入りますが、その村長名前を言って下さい。
  26. 田中透

    田中説明員 北里村の村長船橋さんでございます。豊山村の村長名前はちょっと今忘失しております。それでこれと一字一句違わない文句で書いていただいた承諾書をもらって参りました。私がその承諾書をかねて村長にお願いしておきましたのは、各所有者承諾を得て下さいと懇願いたしておりましたので、その承諾書をいただいたと非常に喜びまして、その承諾書をもとにいたしまして、全部の関係市町村長承諾を得たということにいたしまして、十三日から立ち入りができるように軍の方に通告いたした次第であります。
  27. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうしますと、北里村に関しては四月九日に石田不動産部長村長議長助役などと交渉の結果承諾書を受け取って帰った、こういう御答弁なんですが、その承諾書を読んで下さい。それからそれを資料としてあと法務委員会提出方一つお取り計らい願います。
  28. 田中透

    田中説明員 写しでよろしゅうございますか。
  29. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 写しでよろしゅうございます。
  30. 田中透

    田中説明員    小牧飛行場外土地立入の件 北里大字市之久田大字小針大字小針巳新田土地測量並調査のため、四月十一日からの立入については村民は妨害せざるものと思料しますから予定の如く進められて異議ありません。  昭和三十年四月九日       北里村長 船橋鏡治   名古屋調達局長殿  以上でございます。
  31. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そういたしますと局長に伺いますが、あなたは北里村長が署名捺印いたしましたただいまお続みになりました文書によって、この場合北里村長が各関係土地権利者、つまり占有者所有者、正当な権限を有する権利者の代理人であるというふうにお考えになったのであるか、もしくはその点について何らかの根拠関係を明らかにするような文書であると確認されたのか、その点いかがですか。
  32. 田中透

    田中説明員 今お尋ねのございました件ですが、立ち入りの際には、広範囲にわたりまして所有者その他の権利者がたくさんおるわけでございます。私ども小牧飛行場に関しましても、千人に及ぶ権利者がおると思います。従いまして、実地にそれを詳しく調査しない限りは、はっきりした権利者がだれであるか、権利者権利がどこまで及んでおるかということはわからないわけでございます。従いまして、従来私ども役所がこういう場合にしておった例によりまして、市町村長に、各その市町村長のもとにおるところのそういう権利者の御承諾を得ていただいてほしいということをお願いしておきましたので、市町村長承諾書は各所有者の御承諾があったもので、市町村長がそれを代表しておるものと了解いたしました。そういうふうに信じまして立ち入りをいたしました。
  33. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 かつて三月の二十六日並びに四月の六日に、あなたは村長に会って、右の立ち入り調査承諾を各所有者から取ってもらうことを村長に依頼せられたという御陳述がさきにあったのであります。ところで現実にはその土地紛糾をいたしまして、あなたの方へ三月二十六日付、それから三月二十八日付で西春日井北里村長船橋鏡治名義陳情書が出、あるいは三月三十日には調達庁、外務省、防衛庁にも早稲田代議士及び村長を先頭にして反対趣旨陳情が、これらの所有者、農民などからされておるのであります。また四月七日にもあなたの方の不動産部長村民との間に何かやはり相当な反対的な問答が繰り返されておることがわれわれの調査で明らかであるのであります。もっともこの陳情書なるものは精細な写しもありまするし、政府に提出いたしておりますので、これは間違いないものと思います。要するに、あなたが村長承諾をとるように依頼をせられたことはわかりますが、それから後に反対の空気、反対陳情反対の言説がかなり明らかにあなたの耳やあなたの目の届く範囲で行われておるわけなんであります。そういったときに、反対現実に行なっている人の意向を、承諾を得て村長が代表しておるということはちょっと常識上考えられない。のみならず、村長みずからも進んで陳情書に署名をして、陳情書を携えて反対に出かけていっておる、こういうような事実があるわけなんであります。あなたは何ゆえにこれらのいずれの所有者に対してもそれぞれの成規手続ないしは事務を踏んで念を入れて承諾有無をただすことをしなかったのだろうか。承諾有無をただすことなく、漫然と、従来やり来った手続はこれであるから、村長承諾したのでそれでいいと思ったというようなことは、これは少くともそういうふうに紛糾をした場合には、私は少し手か足りなかったのではないか、とるべき道を十分に尽しておらぬのではないか、こう思うのでありますが、あなたとしてはどうお考えになりますか。
  34. 田中透

    田中説明員 お話の点ごもっともでございます。防衛庁にどういう陳情が行っておりましたか私は存じませんけれども、ただいまのお話の四月七日にさっき私の説明した通り小針部落のたくさんの人たちがいろいろな反対の意見を言っておられたことは確かに承知いたしております。私及び石田不動産部長を取り巻きまして、数時間にわたりましていろいろ御質問もありましたし、罵倒されたこともありますし、いろいろ反対の御意思を表明されたのは十分知っております。その際に私どもも非常に懇願をしたのでありますが、結局話はつきませんので、別れます際には、いずれ皆様の御意向村長の方にお伝えになると思いますから、後日また村長さんの方に伺って御意向を聞きたい、こういうことを申し上げてそのときは別れました。今は北里村のお話でありますが、そのほかのそれまでに承諾書をとっております四カ市町村もいずれも市町村長承諾書をいただきました。それが市町村長お話では、下の方の現地の所有者了解を得てあるからこれでよろしいということで承知いたしておりますので、北里村においても、私がさっき申しました後日村長に伺いますからといって別れましたから、その通り村長のところに行きまして承諾書をいただきましたので、その承諾書村長から各部落土地所有者了解を取りつけてあるものであると信じてその通り立ち入りを実行したわけであります。
  35. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ここは一つあなたの過去の事実をありのままに述べていただきたい。過去の事実を合理化しようと思い、あるいはまた過去の事実をつくろって、なるべく合法化しようというような意図はごうまつも許すことはできないのでありますから、ありのままに述べてもらいたい。  第一あなたがお取りになった四月九日付の北里村長のこの書類によってみましても、所有者承諾を得たという事実は何ら記載はないのであります。村民の妨害をしないものと思量しますから予定のように仕事を進めてもらっても異議がない、こういう抽象的な文句に終っておるのであります。第二にまた、あなた自身の御説明を幾らされてみましても、村民から承諾を得ておるという事実は何らの証拠もないわけなのであります。ただ他の村において村長承諾書をとっておるので、この村においても承諾書をとっておればそれで各所有者承諾があったものとあなたは考えたにすぎない。従来紛糾しておるということは御承知なんで、一々の人に当っておるわけでなし、またその前にあなたといたしましては真実所有者承諾しておるという事実を確認する何らの確実の根拠はないと私は思う。あなたは信じたというけれども、あなたは調達局長として調達庁長官を代理して地方の行政事務を担当しておる人であります。あなたは、所有者承諾しておるものと信じたというけれども、信ずべき根拠ははっきりせぬのであります。はっきりしないということはお認めになるじゃないですか、どうなんですか。
  36. 田中透

    田中説明員 御質問の点ごもっともでございます。ただ私としましては、またほかの市町村のことにわたりますけれども、この前に豊山村の村長承諾書をいただきました。豊山村の村長承諾書は、先刻北里村の村長承諾書を読みましたものとほとんど同じ文句でございますが、この豊山村におきましても反対の気勢はあったのでございます。村長が、私が引き受けた、下の方の承諾は取りつける、進めてもよろしい、私が承諾書を上げるというていただきましたので、北里村におきましても、さっき申しました通り部落に行っても説明しておりますし、後日村長にまたお伺いしますといって、後日再び皆さんにお会いするとは申しておりません。村長にお伺いする、こう申して別れましたので、私はほんとうにうそ偽わることなく村長承諾書はみなの了解をつけておるものと信じておりました。何も悪意はそこにございませんことをはっきと申しておきます。
  37. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私はあなたの悪意などというようなことはごうまつも今聞こうとするのでも何でもないのであります。冷静に、客観的に権利者承諾を与えておる事実があるのかないのかということだけを一つ明らかにしたいのであります。繰り返して念を押しておきますが、この承諾書の文言からは当然に所有者承諾したという結論は出ない。所有者承諾して、村長にこの種の文書を発行することを依頼するとか、あるいは村長に一切一任しておるとかいう事実を確かめる根拠も明確になっておらない。要するところ、あなたとしましては、土地所有者ないしは占有者立ち入り承諾果ておると認めるべきはっきりした根拠が見つからぬ、ただ前後の事情から考えてこれは承諾してくれたものと思う、こういう以外の何ものでもないというふうに私は判断できるじゃないかと思うのだが、その点はどうでしょう。
  38. 田中透

    田中説明員 ただいまの御質問にお答えいたします。先刻も申しました通り、私がこの承諾書は各所有者承諾を得たものと信じましたのは、今おっしゃいました通り、そのときの各種の事情によりましてそう信じた次第でございますが、これが実際に村長が各所有者承諾を得ておっただろうと今になって考えるようなこともあるわけであります。それは四月の二十六日に立ち入り調査がずっと進んでおりました。村長村会議長と、大野というあそこで非常に反対運動の急先鋒である人、その大野という人外三、四人、八人ばかりの人が四月の二十六日の午前十時ごろ役所に参りまして、私に会いましてこういうことを申しました。君のところの調査員がきのう自分のところに来た、来たけれども何をしたか、家に無断で入った、家に無断で入って調査した、こう言うのです。無断で家に入っていいとは言うてないじゃないか、農地には入ってもいいが、家に無断で入ることは不都合じゃないか、こういうことを申しました。それで早速その調査に行った者を呼びつけまして調べましたところ、無断で入ったのではなく、そこのうちへ行きまして、ごめん下さいと奥さんに会いまして、調達庁から参りましたが、家の中を見せていただきます、こう言いましたら、奥さんがどうぞ、こう言うたので入って行ったのだそうであります。しかしその際大野さんの言うのには、小針地方では家に役所から来て立ち入りますときには、村の人または区長、そういう人が立ち会って案内をして立ち入るのが慣例でありまして、調達庁の職員だからといってきても、身分証明書も持っていないし、村の人たち調達庁の職員であるという証明もできないのだから、そう無断で入ってもらっては困る、女は弱いものだから無理に入られても黙っておるが、今後は村役場に行って、村役場了解を取りつけて、さらに区長かだれかそういう人たちが案内をして家に立ち入るようにしてくれ、こういう抗議がございましたので、それでは仰せのように、身分証明書を作りまして、そうしてさらに村には村長あて正式に公文で家屋に立ち入り要求をいたしまして、そうして村の人または区長が立ち会って家屋に入ることにいたしましょうとお約束いたしまして別れました。その通りあと実行いたしましょうと思いまして、さらに立ち入りの必要ができましたときに要求いたしましたが、そのときにはすでに五月の二日に村会でこの飛行場拡張の件の反対の決議をいたしておりましたので、正式に家屋に立ち入るのは困るということで電話で断わられました。入らなかった事実があるわけであります。さらに五月の十六日に立ち入り調査は完了いたしましたのですが、その間四月十三日から……。
  39. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ちょっと途中で失礼ですけれども、なるべくお尋ねする事項に対して直截簡明にお答え願いたいのです。
  40. 田中透

    田中説明員 それで今申しますのは五月十六日に完了いたしたのですが、その間に何ら反対があったと認められるような事実がなかったわけでございます。それでいまだに村長承諾書は、事実各所有者承諾を得たものと信じております。
  41. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 長官に聞きますが、ただいまの局長の御説明答弁によりまして、要するに村長が、今お聞きになりました文書を発行した事実並びにかつて承諾方を依頼しておったのでそう信ずる。ただいま大野何がしの御説明がありましたけれども、数百人の中の一人がどう言ったから、数人がどう言ったからというような、片々たるものをもって全体の承諾を確認することはできない。そこでどうもこの家の立ち入りについては承諾を得ておるということがはっきりしないのは明瞭なんです。承諾を得ておったというその証明をなすべき説明局長は何もできないのです。ただ二、三そういう例をあげまして、だから私は確信するということにすぎないのであります。それならばそれで土地収用法によりましても他の法律によりましても、もっと成規手続もあるのですから、なぜそういう成規手続をとることをしなかったか。そこでこれは個々の所有者占有者承諾を得ておったと言うけれども、その得て、おった根拠は結局明瞭にならなかったことになる。なぜすることをしなかったか。あなたは今日はどうお考えになっておりますか。
  42. 福島愼太郎

    福島政府委員 北里村の村長承諾という件は、私は直接交渉したわけでありませんから、村長承諾書なる文書によらざるを得ないわけであります。土地測量等に調査のため立ち入りについては村民は妨害をせざるものと思量いたしますからという字句がありますけれども、これは説明しておるのにすぎないわけでありまして、調査のため立ち入りについては既定のごとく進められても異議はありませんという一応の文面でありますし、またこの村長承諾書をとりますために部落ごとに人に集まってもらいまして、相当長い時間をかけてお話をしたあげくのことでもありますし、また立ち入りについては相当に反対という声が強かったわけでありまして、特にまた北里反対反対ということで村長の立場も非常につらかったわけでありますので、村民の同意を得ずして、あるいは所有者の同意を得ずして、村長がこういう書面を書けるはずはないと私ども考えざるを得ないのでございまして、これを書いております以上は、所有者との間に意思の疎通があったものと私どもは見ております。
  43. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あなたの方はやはりあくまでもこれを強弁なさる態度らしいのだが、重ねて局長に聞きますけれども、しからばこの重要な仕事を敢行したのだが、どうして各人について成規に、もしくは法律的にもっと正確な文書をとることをしなかったか。村長から書類をとるならば、どうしてもっと文書の内容に所有者占有者承諾をいずれも得ておるというような趣旨文句要求しなかったのか。この二点についてはっきりした御答弁を願いたい。
  44. 田中透

    田中説明員 先刻も申しました通り、ほかの市町村長も同じような措置をとっておるのでありますが、私ども役所で従来こういう仕事をやっておりますときの例も調べまして、市町村長の相手方が多数になります場合は、一々何百件と承諾書をとって歩くということもできませんので、市町村長に従来お願いしております。従来の通り市町村長にごあっせんを願って市町村長にその意思を集めていただきまして、市町村長が代表して承諾書を出していただくというふうにいたしておりますので、その通りいたした次第であります。
  45. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 しかし従来の慣例がどうあろうとも、あなたは数百件にわたる承諾を一々とって歩くことはできないという。いやしくも他人の占有しておる土地、私有しておる土地の所有権を一時的に中断するのです。そういう行為をあなたはやろうとする。なぜ一々その承諾書をとって歩くことが不可能か。数百件であろうと、数千件であろうと、政府の手を動かしてとっていくことがどうして不可能なのですか。答えて下さい。
  46. 田中透

    田中説明員 これにはいろいろ理由もございますが、小牧に関しましては千人に余る所有権者がありまして、それも千人余りであろうということだけでありまして、はっきりしたことはわかりません。立ち入り調査をいたしましたり、実地に調べたりしたあとで大体わかるということでありまして、立ち入り調査の際にはなかなか所有権者の数もわからない次第であります。およそ何百件または千何十件ということだけでありまして、あまりに多数だということで仕事の困難さを予想されるわけでありまして、かたがた立ち入りを果なければならない日にちは切迫しております事情からこういうことになりました。かたがた前にこういう種類の仕事をしておりますので、その仕事の前例を見ましてかくいたした次第でございます。
  47. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 くどいようですけれども、私はあなたの前例を聞くのじゃないのです。また所有者がわからぬとおっしゃいますけれども、これはいやしくも他人の所有の土地を収用するということが最終の目的なんですよ。もしくは長らく使用するということが目的なんですよ。所有者がわからない、占有者がわからないなんて、そんなとぼけたことが言えますか。所有者ならば役場へ行って登記簿を見ればすぐわかります。いろいろな手を尽せば、一村の調査ぐらいは即日できる。それを数百件の承諾書をとって歩くことは、仕事の困難さ、立ち入りが迫っているから、政府としてはできないというようなことは、でたらめな答弁と申さなければならぬ。一体そんな不誠実な態度で土地の収用とか、あるいは使用権を取り上げるとか、他人の土地に入るということを従来なされたのでしょうか。従来そういう例があったにしろ、反対の気勢が相当盛んであればやはり尽すべき手は尽していくというのがほんとうじゃないですか。民衆の生活の脅威になるような場合には一そう慎重でなければならぬと思う。一々とって歩くのが大儀であるとか大へんであるというのは個人の言うべきことです。政府の言うべきことではありません。
  48. 田中透

    田中説明員 今おっしゃいました通り各戸を回りまして、頭を下げ懇願いたしまして承諾書をとるのがほんとうだと思いますけれども、さっきも申しました通り、何べんも小針または小針新田などにつきましてはみんなに集まっていただきまして、詳しく御説明もいたしましたし、皆さんに再三頭をさげまして懇願いたしておりますので、そう失礼した、人権を無視したというようなことはあまり私は考えておらなかったのでございます。
  49. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 こういう場合に礼儀を尽したとか懇願したとか、私はそういうことを聞いているのじゃないのであります。冷静に、客観的に、成規にないしは正当に任意の立ち入りができたのかどうか、さもなければ強制的に立ち入りなさったのかどうか、こういうふうな事実を明らかにしたいのです。  それであなたにわざわざ来てもらったのです。そこで長官に聞きますが、結局は従来の例がそうだったから村長の判だけで所有者承諾しているものと思っていた、一々の判をとりに行けないので、一枚の承諾書で全員が承諾していると思っておった、多数の人が寄ってくれたと言いますけれども、多数の人ではありません。一部の人にすぎないのであります。さっきのあなたの答弁でもそうです。全員寄ったのではない。全員寄って氏名を点呼するとか一々するのならともなく、あなたの御説によると所有権者が何人であるかということも調査ができておらなかったらしい。できておればもっと手続としましては慎重にやられたと思う。漠然と村長の判があれば全体の所有者承諾したものと認められるという、そんな素朴な考え方で仕事をしておられるように思われてならぬ。そういうような場合にも長官はなおかつ成規所有者承諾を得ておったというふうにお考えになりますか。あなた自身もこの村長の署名なり署名文書なり、今のような御説明では、これは任意な承諾がなかった、あるいはその点についてこちらもそうまで信ずることは行き過ぎたというふうにはお考えになりませんか。もっと尽すべき手を尽しておれば、所有者承諾もはっきり確認し得たであろう、そういうふうにはお思いになりませんか。
  50. 福島愼太郎

    福島政府委員 村長承諾書をとったということであります。それが各所有者の間に意思が疎通しておったかどうかということでございますが、この飛行場拡張の問題は、特に現地におきましては大問題になっておるわけでありまして、村長が好き勝手に承諾書を書けるといったようななまやさしい問題ではないわけであります。村長所有者各位の意思を調べてもらって署名をしてもらいたいということを頼んで、異議なしという署名をもらえば、村長も相当に骨を折ってくれなければこういうことはできないのでありまして、その間に村長も交え、局長も副知事村民所有者とも話し合いをたび重ねているわけでありますので、村長所有者の意思を無視してこういうものを書いたというふうには考えられません。村長の同意書を取りつけて立ち入りを開始したということは、私は差しつかえないと考えておりますし、また立ち入りを開始いたしましてから、一人一人の所有地に立ち入りました際にも、その所有者が承知しているという心証を受けているわけでございますので、差しつかえはないと考えております。     〔古島委員長代理退席、福井(盛)委員長代理着席〕
  51. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それならなお聞きますが、村長がただいまのような文書を出したといたしましても、当然にその所有者の所有権などを代表し、代理し得ないものであるということは御承知でしょうね。
  52. 福島愼太郎

    福島政府委員 所有権を当然に代表するものではないと考えますけれども、これらの承諾書によりまして、立ち入りの際に一人一人の所有地に立ち入りまして、所有者が承知しているという事実に裏づけられたわけでございますので、差しつかえがあるとは考えておりません。
  53. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 裏づけるべき何ものもここでは証明されない。かつて依頼をしておったという事実、文書がややそれを裏づけ得る事実、あるいはまたその後大野何某が来てこれを裏づけるような言葉があったということ以外何もないのです。他人の権利を制約するような行為をなさろうとする場合には、もっと問題を法律的に考える必要はないのですか。ただこの文書を発行したのだから所有者の意思を無視して出したものとは思われない、所有者から承諾を得ておったものと思う、従来そういう例があって間違いなかったのだからそう思うというような、そういう簡単な考えていいのでしょうか。もっと法律的に正確にものごとを進めなければならぬのではないですか。
  54. 福島愼太郎

    福島政府委員 ほかの土地調査小牧関係は若干違います。というのは小牧関係はすでにすべての土地立ち入りまして調査は済ましてしまったわけです。この村長の書面のごとくすべての所有者土地立ち入りましたのですが、承諾しておらなかったという所有者はなかったのでありまして、その意味におきまして裏づけられていると考えております。
  55. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そういう乱暴な政府の行政行為というものはありません。あなたの方はまず他人の家へどんどんと入っていって、文句を言わなかったから、それは承諾しているものと思うというのと同じような論法なんです。そんなむちゃな理屈なり御答弁はありません。まず立ち入りを開始したのが四月十三日であります。だから立ち入りを開始する以前に、立ち入り調査について承諾を求めねばならぬのであります。そのときに何ら確認し得ないにかかわらず、立ち入った。後日何も異議が出なかったから、それで承諾をしておるものと思うというような、そんな乱暴な行政行為はありませんぞ。そんなむちゃなことはない。やはりあなたの方に対しまして一人一人の所有者並びに占有者は、小さな小羊のような弱さなんです。でありますから文句を言わなんだから承諾したというような、そんな乱暴なことはできません。そんなようなことで、しからば今後も、文句を言わない場合に、一切の行為は相手方が承諾したものと思うというような、そんなむちゃなことでいくのでしょうか。私はそんな乱暴なことはできないと思います。そこでこれは幾ら問答をしておりましてもこれ以上発展しません。大体のあなたらのお述べになるところが論理に合わず、事実に沿わず、また的確な根拠が明らかでない。正確な、承諾の事実を証明し得る何らの御説明ができない。  そこで次に伺いますが、一体この土地立ち入りまして調査をなさったのだが、いろいろと——たとえば制札のようなものを立てたり、くいを打ったり、そういうようなことでもなさったのかいなや、局長に聞きます。
  56. 田中透

    田中説明員 立ち入りましたのは軍の方で立ち入ったのでありますが、軍の方でくいを打っております。どこまで拡張するか、いわゆる境界線のくいを打っております。また地質調査でボーリングを多少やっております。以上であります。
  57. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そういたしますと調達局長、もしくは局長が命じた者、委任した者が立ち入ったというのであるか、あるいはそうではなしに、アメリカの駐留軍が立ち入ったのであるか、あるいは駐留軍を立ち入らしめるということの約束を駐留軍との間に、もしくは所有者等の関係者の間にしたというのか、それは一体どういうことになるのですか。
  58. 福島愼太郎

    福島政府委員 調査のための立ち入りは、調達庁が立ち入ったということであります。立ち入る責任者は調達庁であります。また現実立ち入りの際も、調達庁職員が全部立ち入りをいたしております。軍の技術者を補助のために連れて歩いているということはございます。しかしながら立ち入り調査の実体者は調達庁それ自体でございます。
  59. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そういたしますると、さっきの局長の言葉の、軍が立ち入ったのである、こういうことは、今の長官の御答弁によりまして、調達庁が立ち入ったのである。しからば軍が立ち入るということは、すなわちアメリカの駐留軍が立ち入るということは、一体たれの承諾を得たものなのですか。
  60. 福島愼太郎

    福島政府委員 技術的な面で、専門家を連れて入らなければ地質その他の関係がわからない面がございますので、大体軍の専門家を調達庁が連れて入っておるということでございまして、連れて参るのは、調達庁の責任において連れて参っております。
  61. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そういたしますると、入りました土地を、たとえばみぞを作るとかその他変形したりした事実があるかないか。あるいはボーリングをやったということでありまするから、相当これはあちらこちらにやったのかも存じませんが、その数、あるいは棒ぐいを打ったようでありますが、それは何本ほど打ったのか、その点いかがですか。これは局長に聞きましょう。
  62. 田中透

    田中説明員 ボーリングの個所の数、それからくいの数ははっきり覚えておりません。
  63. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 一体あなたが立ち入りの主体なんです。調達庁長官でありまするけれども、これはやはり行政の長官でありまするから、あなたが下部組織の地方局長といたしまして、たとえば愛知県知事に対しまして報告要求いたしております。報告要求しておるのも名古屋調達局長となっております。だから事業主体であります。そのあなたが、ボーリングの個所の数もくいの数もわからないというような、一体そういうような無責任なことで行政機構はいいのだろうか。これはもし承諾を得ておらぬというような場合であるならばなおさらのこと、かりに承諾を得ておった場合でも、やはりどういうふうな工作物を設置したか、あるいは土地をどういうふうにこわしたか、あるいはみぞを作ったか、制札を何本打ったか、いろいろそういったものをあなた自身がはっきりと確認せねばならぬ。そういうことも忘れてしまってはっきりしないというような、一体そんなだらしないことでいいのですか。
  64. 田中透

    田中説明員 ごもっとものことでございまして、くいの数、ボーリングの個所の数、どこにくいを打ったか、どこをボーリングでしたか、はっきり知らなければならないと思います。知っておったときもございまするが、くいの数も相当ございますし、ボーリングの個所もあちこちありますので、個所をはっきり今明示することができないのであります。本庁の方に、文書といたしまして、どこにボーリングした、どこにくいを打ったと報告いたしたのはあるはずでございますから、御必要ならば、後日また本庁の方から資料を取り寄せましてお答えいたします。
  65. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 民事局長に伺いますが、ただいまお聞き及びの通りの事実であります。そこで一体この所有者占有者承諾をしない場合に、たとい政府の行政官庁の者たりといえども、他人の所有地、使用地に承諾なしに入って、農地を損壊するということはできるのでしょうか。その点どういうふうにお考えになりますか。
  66. 村上朝一

    ○村上(朝)政府委員 土地所有者または占有者の同意なくして土地立ち入り、あるいは測量をし、土地を損壊するということは、法令に特別の規定がありまする場合のほかは、許されないことと考えておるのであります。
  67. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 刑事局長に伺いますが、刑法の二百六十一条には、その他の物の損壊罪がありますが、もし承諾なしに立ち入って田地にボーリングを施しなどいたしました場合には、これは刑法の二百六十一条の事犯に該当する事実ありとなし得るのではないかと思いますが、いかがですか。
  68. 井本臺吉

    ○井本政府委員 さような場合もあり得ると考えます。
  69. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ちょっと聞えにくかったのですが……。
  70. 井本臺吉

    ○井本政府委員 刑法二百六十一条に該当する場合もあり得ると考えます。
  71. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこでさらに伺いたいと思うのでありまするが、ただいまの場合に、ただいまの場合と申しますのは、今の北里村の事実であります。この場合に、警察官が立ち会って中へ立ち入り調査をしておるような報告があるのですが、そういう事実があったことは御承知でしょうか。それは四月十三日の 午後一時ごろからであります。調達庁の局員約十名が、警察官若干名の立ち会いのもとに、飛行場の周辺から強制立ち入りを開始した、こういうような文書がよこされておるのでありますが、そういう事実はございませんですか。
  72. 三輪良雄

    ○三輪説明員 お尋ねの件でございますが、私どもの受けました報告ではそういう事実はございません。
  73. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 同一の事実について、局長いかがですか。
  74. 田中透

    田中説明員 私は警察に前もって——十三日でございますか、出てくれとか、出てほしいとかいうことを述べたこともございませんし、十三日に私どもの庁員と一緒に警察の職員が出ておったということを聞いたこともございません。
  75. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 事実についてあなたははっきり知らないんだから、これは問答してもむだかもしれませんけれども承諾を得て入っておると信じておる——そのような場合に多数の警察官が立ち会わなければ、つまり犯罪等を予防する意味ですか、でなければ入らないというようなことは、一体どうしたものであろうか、この点についての御所見を長官から聞いておきたい。
  76. 福島愼太郎

    福島政府委員 私も事実を承知しておるわけではございませんが、警察官に立ち会ってもらって入ったのではないと申しております。お説のようなことはないのではないかと思っております。
  77. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 刑事局長に伺いますが、もし土地所有者占有者が何らの承諾を与えた事実がない、また後日これを追認をした事実もないといったような場合に、無断で自己の占有土地に建てられました制札なども取り除くというような場合、そういったことは法律上可能とお思いになりますか、いかがですか。
  78. 井本臺吉

    ○井本政府委員 先ほどお尋ねの刑法二百六十一条に該当するような器物損壊に当れば、この条項によって犯罪になると考えるのであります。ただどうも先ほどから聞いておりますと、被害者に当る所有者承諾があったというように確信しておったというような場合には、犯意の問題が多少問題になるのではないかと考えます。
  79. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこで一つ、大臣もお急ぎでありましょうからまず伺っておきますが、小牧飛行場拡張につきまして、拡張地域に該当しております北里村で、土地所有者及び占有者承諾を得ることなく、調達庁長官無断で立ち入って調査したという案件が質疑の要旨になっておるのであります。そこでこのような場合に、つまり適法に手続をなすことなくして、他人の土地に立ち入って調査したということになる場合には、やはり法務省といたしましてもこういった行為につきましては後日相当紛糾が起り、あるいは刑事的な問題が起り、あるいはその他の問題が起るようなこともあり得ると思うのであります。相当法律を順守すべき旨を、やはりあなたといたしましても、内閣といたしましても——調達庁もその所属の一庁でありますが、もっと法律を守って、法律を正確に踏んでいくという態度がなければならぬと思うのであります。今議論のように、お聞きになったか存じませんけれども所有者等の承諾を得た事実は明らかに現われてこぬのであります。こういうようなことでありますので、順法的な態度で政府当局としてもっとなされねば、事態を一そう刺激する以外に何ものもない、こう考えますが、政府といたしまして、司法当局の首長である大臣といたしまして、調達庁の行政行為に対しまして、そういう方面の各問題の処理に当って、法律を守るべぎことを要請でもしてもらうことが必要ではないかとさえ考えるのであります。一つ大臣のこの点に対する所見を伺いたい。
  80. 花村四郎

    ○花村国務大臣 吉田委員の言われる通りでありまして、承諾を得て入るべきが当然だと存じます。
  81. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 今の小牧の紛擾につきまして調達庁長官最後に伺っておきます。この適法に立ち入ったかいなやということは、これはなお後日あなたの方で進んで明らかにしなければならぬと思っておりますか、これが第一点。もし不法に立ち入ったものといたしましたならば責任は軽からぬものと思われるのであります。この二点につきまして一つあなたのはっきりとした御所見を伺っておきます。
  82. 福島愼太郎

    福島政府委員 小牧北里村に立ち入りました件につきましては、私どもはあくまで適法に立ち入りをいたしておると考えております。従いまして将来もしこれが適法でなかったということになれば、私がこれの全責任を負うわけでございます。
  83. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 小牧関係については私は質疑を終ることにいたします。
  84. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ちょっと関連質問がありますから……。
  85. 福井盛太

    ○福井(盛)委員長代理 ただいま調達庁長官に対しまして志賀委員より質疑通告があります。これを許します。志賀委員
  86. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 福島調達庁長官がおられますから、こういう事件は小牧についてだけではなくてそのほかにも現に起りつつあり、あるいは近い将来に起るだろうと予想せられる飛行場があると思いますが、どことどこでございましょうか。
  87. 福島愼太郎

    福島政府委員 当面拡張の計画のございます飛行場は五つございますので、小牧は今申し上げましたような状況で調査をいたしたわけであります。従いまして四つが残っておるわけです。この四つは新潟県の新潟飛行場、新潟市にございます。東京都の横田飛行場、瑞穂町にございます。東京都の立川飛行場、砂川町にあります。千荒県の木更津飛行場、木更津市にございます。この四つ、これから立ち入りという問題が起るわけでございます。
  88. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ただいままでの吉田委員に対する調達庁長官の御答弁を伺っておりますと、適法かどうかということでいろいろと問題が起っておる。必ずこれらの土地においても問題が起る。現に木更津なんかでも起っており、砂川なんかでも問題が起りつつあろうとしております。そういう点について所有権の問題は村長がということになると、これは明らかに官僚的に上から押しつけてやらせたということになるのであります。そういう不明確な点のないように今後は所有権を明らかに尊重して、そういう点に手抜かりのないようにやられるつもりであるかどうかということを一ぺん伺っておきたいのであります。
  89. 福島愼太郎

    福島政府委員 所有者承諾を得て入るということが建前でございますので、そういう点について手抜かりのないようにして今後四つの飛行場立ち入りをいたしたいというふうに考えております。しかしながら所有者が非常に多数にわたりまして、隠れた権利者ども出て参りまして、問題の起る可能性もございますので、今後はすべて法律手続によります強制立ち入りにいたしたいと考えております。
  90. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 だいぶ決然たるお考えでおられるようでありますが、あなた一人が、適法でなかった場合にあとで責任をとられても、できてしまったことは——これは生活権を奪われる人々にとってあなたが一人辞職願いを出したところで片づく問題じゃありません。あなたが決然とやられるなら、所有権者の方でも決然とやるに違いないと思います。その点は御覚悟の上お取り計らいになるがよろしかろうと思います。  なおこの際福島調達庁長官が退席なさる前に、ちょっと簡単にお尋ねしますが、岩国の献上きく子さんの問題ですね。例のオーストラリアの将校にジープでひき殺されて、過失であって不起訴処分になった事件がありましょう。それが本国に帰ったために、呉調達局の岩国出張所ですか、ここで何らの賠慣もしないということがありました。それについて先日私問い合せましたところ、あなたの方の係の方ですが、それはおかしい、必ず金はとれるものだ、こういうことを言っておられました。これが朝日新聞に出たときに、係官の方でもとれるようになるはずだということで、検察庁とかなり見解が対立しておりました。この事件については豪州軍の方で、その後問題が大きくなったので、あわてて五十二万円出す、献上きく子という未亡人は三百万円を要求しておられるのでありますが、これについては、その未亡人の方の要求をできるだけいれてやられる方針であるかどうか、その点だけを簡単に伺っておきます。
  91. 福島愼太郎

    福島政府委員 行政協定のアメリカの関係で申しますと十八条、国連軍の関係も同じような規定でございますが、これに基いてそういう補償をするという問題、ただいまの岩国の問題は検察庁の問題がございましたので、これが不起訴になるか起訴になるかということを調達局側で待っておった傾向があると思います。そのために事態がおくれたわけでございますけれども、検察庁の方のお考えの起訴になるかならないかという問題と、私どもの損害補償する立場とは違うのでございますから、起訴になるほどの間違いでないというようなことで、かりに不起訴になることがありましても、私どもの方は損害の補償をいたして差しつかえないと考えておりますので、出先で検察庁との関係もありましたので待っておって日を暮したということ、これは私は間違いであると思います。従いまして私どもの耳に入りましてから、手続は進行させるように指示いたしておりますので、進行いたすと思います。ただ金額につきましては、労務災害の補償、公務災害の補償、それとこの行政協定関係の補償という一連の補償算定方法の基準を定めてございますので、確かに行政協定関係の災害補償の額は、常識的にもっと多い方がいいという感じはいたすことが多々あるのでございますが、全般的に増額という問題が考究されませんと、一つだけを取り上げて行政協定関係の補償額だけを基準を改めるということは、かなり困難があるかとも考えております。しかしながら現在の基準の範囲内におきましては、最善の努力をしたいと考えております。
  92. 福井盛太

    ○福井(盛)委員長代理 ちょっと委員長から吉田委員に申し上げますが、法務大臣が参議院の方に出かける時間が迫っておりますので、なるべく簡単におやりを願います。
  93. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それでは調達庁関係あと回しにしまして、法務大臣に先にお尋ねいたします。  それでは紫雲丸の船員の刑事責任に関連いたしまして、海難審判先行の原則に関連いたしまして少しく伺ってみたい、こう思うのであります。聞くところによりますと、第三宇高丸の船長なり、あるいは紫雲丸の航海士などにつきまして、起訴、不起訴の処理につきまして、最高検の方へ高松の地検から伺ってきておるというふうに聞くのでありますが、そういう事実はあるのでありましょうか、これは刑事局長に伺いたいと思います。
  94. 井本臺吉

    ○井本政府委員 先般来第三宇高丸並びに紫雲丸のこの事故の関係者を逮捕、勾留して調べておりましたので、その関係者につきまして、いかような処置をとるか、現地と最高検察庁とで今慎重に協議をしておる次第でございます。
  95. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 昨年九月の洞爺丸事件といい、またこのたびの紫雲丸遭難事件といい、世の視聴を集めまして、悲惨な海難事件といたしまして注目されておりますることは申すまでもないのであります。従って避難者あるいは一般の国民的感情といたしましては、すみやかに責任者の処罰を要求するといったようなことのあることもいなみがたいと思います。ただ反面から見まして、長い目で見て、海難を防ぎ、あるいはまた海難を防ぐためのあらゆる対策を講じるという面から見ますると、世論のいかんにかかわりませず、やはり遭難の原因につきましては、冷静にきわめるべき道は尽していかねばならぬと、こう考えるのであります。同時にまた船員の立場からいたしましても、やはり真に原因がいずれにあるか、そうしてだれが責任を負うのかということにつきましては、これはまたきわめて冷静にかつ慎重に尽すべき手を尽しまして、これを明らかにするということが一般に望まれておると思うのであります。  こういうふうに考えて参りましたときに、明治以来の、海難事件につきましては、刑事訴追の手続よりも海難審判の手続を先行さすという法則を実は思い出すのであります。  それで私は法務大臣にこの問題について二、三ぜひ伺ってみたいと思うのであります。やはりこの問題は、国が海難事件を法律的に扱いまする上に、刑事手続とあわせまして、根本的な一つの大きな方針にかかわっておるものと思うのであります。申し上げるまでもないことでありますけれども、明治二十六年に時の逓信大臣と司法大臣との間に取りかわされた文書がございます。これに基きまして司法大臣から海難審判を先行するという立場が相当明確に打ち出されましたことは、これは申し上げるまでもないことでございます。年月はたちましたのでその後相当な曲折は経たものと思いますけれども法律の改正ごとに、たとえば船員法の改正につきまして、第七十一議会におきましてもやはり海難審判先行主義が明確に衆議院並びに貴族院におきまして決議となって現われております。こういうような事実もございますので、私はやはり重大な事件が起りますときに、世の中の常識的な主張、注意にかかわりませず、長き沿革を持ちましたこういう重大な国の事件の扱い方の方針というものにつきましては、やはりこれは動かされることなく堅持されていくのが正しい態度ではないか、こういうふうに私は思っておりますので、まず一般的に、原則論的に、海難審判先行を原則とする、こういうことに対する大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
  96. 花村四郎

    ○花村国務大臣 ただいま吉田君のおっしゃられたように、明治二十六年三月、司法大臣より逓信大臣にあてました、いわゆる海事審問を先行するという意味の文書が送られておりますが、しかしこれはその文書のうちでも明確に相なっておりますように、「船長、運転手、機関手ノ免状ヲ受有スル者職務上ノ過失懈怠アルトキハ刑事証憑ノ充分ナルモノノ外成ル可ク海事審問ヲ先ニシ」云々とこうある、でありますからここに言うような場合においては海事審判を先にするも可なり、こう申し上げてよろしいと思います。
  97. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこでまた一般的に考えますと、今お読み上げになりました明治二十六年三月の司法大臣の逓信大臣あての文書、その字句におきましても、たとえば航海中の衝突事件、しかして刑事証憑の十分なもの以外は海事審問を先にする、一体この航海中の衝突事件というようなものは、私みずからも弁護士の職といたしまして若干取り扱ったこともございますが、責任あるいは原因などを追及いたしますことは実に手をやくわけでございまして、ことに刑事裁判所などにおきましては、このような事件を扱いますときには、これは大臣ももちろん長い御経験でございますからしばしばお扱いになったと思いますけれども、判事なんかでもやはりまずいろはから、海難事件についての用語から、またいろいろな技術上の取扱いとかその他法制、航海の実情等々、いろいろなものを研究するというのが実情であります。なかなか手がけておる裁判官など少いものであります。検事におきましても大体同様であります。従って専門家におきましてもなかなか千姿万態の原因を追及して責任を明らかにするということは容易でありませんが、ましてや一般の裁判の裁判官におきまして、また検察官におきましてはこれを研究することは通常の場合なかなか困難であります。でありますので専門家におきましても海難事件の原因の探求は困難だとその歎を漏らすくらいであります。でありますのでこれはやはりもちはもち屋にまずまかせてということがほんとうに公平な判断を得るゆえんではないか。そもそも明治二十六年三月のこの通牒を出すに至りましたゆえんのものも、やはり一たび刑事裁判におきまして甲乙両船長の責任を追究していったところが、刑事裁判の後に海事審問をいたしました結果、裁判所の判決と逆になる、裁判所におきましては甲の船長に責任あり、ところがよく専門的に事後審問をいたしました結果は、むしろ被害を受けて沈んだ側に責任があったということが明らかになって、そこでこのような通牒が起るに至ったということも私は聞き及んでおるのであります。そのようにむずかしいものでありますから、やはり長い経験を持っております海難審判所の人々をしてまず手がけて、十分に原因を探究せしめるということは、やはり事件の公正な結論を得ることに誤りなからしめる最も大切な手段ではないかと思う。やはりその後の、最近の事件の数を見てみましてもずいぶんとたくさんな海難事件が起っておるようであります。こういう事件の数から考えてみましても、やはり海難事件につきまして長い間守られて参りました原則といいますか、主義といいますか、これをできるだけ尊重するということは今日におきましてもやはり守って行くべき大切な原則ではないだろうか、私どもはこういうふうに考えておるのであります。一そう以前にもましてこの原則を堅持される理由こそあれ、これを曲げまして刑事訴追をずんずんやらす、海難審判はあとから走るというようなことは、今日の事態から考えましても憂慮すべきではないだろうか。もちろん現に検察庁といたしましてもあるいは実例といたしましてはこの原則を守っていかれておるということであるならば、心はそれに意を強ういたしまして、なお二、三尋ねてみたいと思うのでありますけれども、これは今日におきましてこそもっと一そうはっきりと同じような原則を明確にする必要がむしろあるのではないか。こうすら考えるのでありますが、大臣はどうお思いになりましょうか。
  98. 花村四郎

    ○花村国務大臣 吉田君のお説ごもっともでありまして、大体において私も賛成であります。やはりなるべく海事審判を先にすべきであるという主張は適当でありましょう。しかしながら、先ほど申し上げました文書にもありますごとく、過失のありたることが明瞭であり、しかも刑事の証憑が十分であると認められ、海事審判を待つまでもなく刑事訴追事件としてあまりにはっきりしておるというようなものは、これを先行してもよろしいのじゃないか。あるいはまたこういう関係がないにいたしましても、世の耳目を聳動し、大きな被害を起したというようなまれに見る大事件に対しては、やはり刑事訴追の手を早く差し伸べて真実を明らかにし、そうして一般国民に安心感を与えるというような方法も、検察当局としては当然なさねばならぬことではなかろうかと思いますので、こういう特殊の関係にあります事犯については別でありますが、しからざるものに対しては、ただいま吉田君の言われたように海事審判を先行していくということについては少しも異存がありません。
  99. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 やはり問題はそこにくるのであります。世の耳目を聳動した事件——この際あえて紫雲丸事件と具体的に申し上げてみたいと思うのでありますが、たとえば紫雲丸事件にいたしましても世の耳目を聳動した事件には間違いない。しかしながら紫雲丸の事件につきまして責任がいずれにありや、あるいは衝突の原因がいずれにありやということについては、私は必ずしも簡単でないと思っております。私自身も現地に調査いたしまして、第三宇高丸のレーダーを見たり、その操作の実情も聞いたりいろいろしたのでありますが、たとえばあの場合におきましても、新聞等におきましてはしごく簡単に原因を甲にあり、乙にありというように断定したような記事も見受けるのでありますけれども、しかし、たとえばあそこに一体航路というものがあるのかないのかというようなことをよく聞いてみると、どうもはっきりしません。幅一キロ半ですか、そういう広い間を航路と称しておる。しかし、岡山の宇野の方に参りますと明らかに島をはさんで左右の道がはっきりしておりますが、高松の方に入りますと一キロ半の幅の間のどこを通ることがほんとうに正しいのかということははっきりしておりません。たとえばそういう事実、あるいはレーダーの操作という問題にいたしましても、この場合も何ら正確な技術上の免許とか制度とか、あるいは法律、規則などもない。あるいは当時紫雲丸が左にかじを切って左に左に行こうとしたというようなことにつきましても、何のためにそうしたかということはどうもはっきりいたしません。濃霧中に警笛を右舷前方の方で聞いたというようなことを説明いたしておりましたが、そういうことにつきましてもはっきりしないというようなことが、われわれしろうとの常識でも感ぜられるのであります。こういうようなことを二、三拾ってみましても、濃霧中の相手船を警戒する方法とか、あるいはレーダーの使い方とか、あるいは国鉄という大きな機構上、陸のダイヤの制約を受けまして、あの連絡船の運航が非常に制約を受けて受動的になっておりましたようなこと、こういう機構上の制約というような問題等々から見るだけでも、われわれがちょっと一日行って、見たり聞いたり、実地に当ったりしただけでも疑問が百出いたします。でありますから、この責任とか原因がどこにあったかというようなことにつきましては、冷静に審理しなければならぬと思います。また一方から考えてみまして、たとえば遭難者の慰藉、損害等の問題につきましては、各方面のせっかくの御尽力によりまして、また運輸省幹部の御配慮によりましてある程度まで話し合いがついているようにも聞き及んでおります。また船員もすでに釈放されておるように聞いております。従ってこれはやはり原則に戻りまして、複雑な条件のもとに原因を明確にするということは困難でないか、また責任を明らかにするということは一そう困難でないか、これは慎重に審理する必要上、やはり海難審判所という長い間一カ所で年々数百件も扱っております審判所の豊富な経験と知識に信頼いたしまして、そこに先行さすという原則論で扱っていくのが妥当でないであろうか。もちろん紫雲丸の事件をこうあると言うことは少し具体性を持ち過ぎますので、御答弁はいかがかと思いますけれども、世の視聴を集めておるということに眩惑さるべきではないと思う。これは冷静に審理していただきまして、百年悔いを残さないように明確に原因を追究していただいて、責任の帰属を決定していただくということが一そう必要ではないかと思います。そういうような点から考えましても、このような重大な事件が起りましたときに、さらに振り返って私は海審先行の原則を今さらのごとく重要視していく最も大事なときがきたと思うのであります。紫雲丸の問題につきましてすでに地検が検討中であると刑事局長もお述べになっておりましたが、そういうふうに扱っていくべきではないかと思いますが、大臣はいかにお考えになりますか。
  100. 花村四郎

    ○花村国務大臣 ただいま吉田君の述ベられたごとく、あくまでも慎重に、あくまでも冷静に、そうして大体において最も専門的な知識を持っておられるところの海難審判を先にするという建前で進むことを原則としたならばどうかという御意見ですが、それには私も賛成であります。
  101. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこでたとえば故意に衝突を惹起したような場合とか、歴然たる証拠がある場合とか、こういう場合はともかくといたしまして、一応は過失事件である。これが重過失であるかいなやは別といたしまして、一応は業務上の過失事件であるというような場合には、これは全く他を顧慮することなく、海難審判を先行さすことが私は妥当ではないかと思いますが、この点一つ重ねて伺っておきたいと思います。
  102. 花村四郎

    ○花村国務大臣 仰せの通りであります。
  103. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 しからばこの際私は海難を一層防止するという意味におきまして、従ってまた同時に海難審判を先行する原則が破られることが最近しばしばあるかのように聞きますので、そういうような危惧の思いを一掃いたしまして、忠実にそれぞれ服務して、みずからその職に励精して海難を避けることに努力せしむる、こういうような見地からいたしましても、私は一つこれらの態度を明確にしていただきまするために、特に何らかの方法によって、法務大臣といたしまして適当な方面に、ただいまお述べになりましたような御意向を明確にしていただいて、そして事の大小、取扱い等に誤まりなきを期する、こういうふうにしていただくことが適切でないかと思うのですが、何かそういうような措置をおとりになる御用意、御意思はないでしょうか。
  104. 花村四郎

    ○花村国務大臣 よく考えてみたいと思います。
  105. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこでたとえばこのたびの紫雲丸の事件におきましても——すでに洞爺丸におきましては、最近函館の海難審判庁において理事官の論告があるまでに到達して、結審に近づいておるようであります。従って私は早晩紫雲丸につきましても、それぞれの手続が海難審判庁において進行されているものと思っておりまするが、運輸大臣もおいでになっておりませんので、河野政務次官にお尋ねいたしますが、運輸省、運輸大臣のお立場は、もちろん海難審判庁に対しましても行政上の指揮監督権がおありになるのであります。審判はそれ自体独立の職権に属しましておやりになっておりますけれども、しかしたとえば刑事事件について、民事事件について、最高裁がそれぞれ審理の促進を行政的に指示するがごとく、やはりできるだけすみやかに審判事件の審理を促進するようお計らい願って、常にそのような御方針をとっていただいて、そうして今法務大臣が答弁せられましたごとくに、この海難審判先行を事実においてやはり例外なく適切に行なってもらうことが、これが海難防止のために一番適切なことであると思いますので、あなたの方におきましても、できるだけ一つ審判事件がおくれないように、適切に審理を進められるように、そういったことに格別な御配慮を願うならば、海難審判を扱う官庁の仕事と、刑事事件を扱う法務省の仕事、裁判所の仕事がうまく調整がとれて、海難防止の目的を達し得るのでないか、こう私は思います。あなたの方といたしまして、ただいま申しましたような審判事件をできるだけ常に促進して、遺憾なきを期するような措置をとっていただきたい、こう思いますが、いかがでしょう、そういうような方法をおとり願われましょうか、御用意はありましょうか。
  106. 福井盛太

    ○福井(盛)委員長代理 ちょっと吉田委員お尋ねしますが、先ほども申しました通り、法務大臣は今参議院の方から迎えに来ましたが、まだお尋ねがありますか。
  107. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 法務大臣はよろしゅうございます。
  108. 河野金昇

    ○河野(金)政府委員 先ほど来吉田委員と法務大臣との間の質疑応答を承わっておりましたが、海難審判を先行すべきであるというのは、やはり明治二十六年からの経過もあり、またその後先ほど仰せの通り、衆議院並びに当時の貴族院においても、船員法を通過させるときに附帯決議等もつけられておるような状態でありまして、運輸当局としては、もちろんこういう海難事件は海難審判所の決定を待ってさるべきことがよき前例であるから、この紫雲丸事件に対しましても、当然そういうことが行われることを私たちは期待をいたしております。しかしあの事件は先ほど法務大臣がお述べになったように、非常に天下の耳目を聳動させた大事件であります。従って運輸当局といたしましては、政治的の責任をとるべき問題に対しては、国鉄の総裁をかえるとか、あるいは当面の監督機関であるところの四国の鉄道管理局長をやめさせるとか、そういうような手配はすでにしたのでありますが、船員等の処置と申しますか、処罰の方法は、やはり海難審判所の決定を待っていたしたいと思っております。しかしこれをただ審判所がおやりになるのを拱手傍観しておるわけにはいきません。吉田さんのおっしゃる通りに、促進をしなければならないから、すでにそういう通牒も出しましたし、またすでに六月十一日には、この紫雲丸事件に関するところの審判開始の申し立ても行われて、着々準備を進めております。審判の第一回の審理は八月一日に行われますが、その前にも着々といろいろな状況等を調べさせております。なるべくこういう事件は、特に天下の耳目を聳動させたようなこういう事件は長引かせるべきものでなしに、なるべく早い機会に処置つけるべき問題としてそれぞれ通牒を出して促進をいたしております。
  109. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 刑事局長に伺いますが、第七十一帝国議会におきまして、船員法改正に当って衆議院が附帯決議をいたしておりますうちに、第二項として「政府ハ船員ノ業務上ノ過失ニ対シテハ海員審判所ノ審判後ニ非ザレバ刑事訴追ヲ為サザル方針ヲ採ルベシ」それから第三項に「政府ハ船員ノ業務上ノ過失二対シテハ慎重ナル態度ヲ以テ臨ミ軽々ニ之ヲ処断セザルヤウ検察当局ニ対シテ訓令ヲ発スベシ」第四項には「政府ハ海難ニ際シ船員ノ喚問取調ヲ為スニ当りテハ其ノ業務ニ支障ヲ来サザルヤウ十分ニ理解アル態度ヲ以テ臨ムベク検察官ニ訓令ヲ発スベシ」、これは貴族院における同第七十一帝国議会においてなされた附帯決議も大体同趣旨であります。そこで伺いたいのでありまするが、大体過失罪以上のものではないという前提にも立ちながら、世の耳目が集中されておる事件であるというような理由で逮捕しあるいは勾留をいたしまして取り調べるというような検察庁の方針は、これはいかがなものであろうか。そういうふうにしなければ世の耳目に対してこたえられぬということが理由であるのか、あるいはまたそういうふうに自由を拘束しなければ取調べができないような場合が多いのであるか。過失罪が明らかであるような前提に立つ場合には、なるべく自由を拘束しないで取り調べるということを守っていくのが検察庁のとるべき道ではないであろうか、こういうふうにも思うのでありまするが、局長はどうお考えになりますか。
  110. 井本臺吉

    ○井本政府委員 お話通り、刑事事件はなるべく身柄の拘束などをしないで取り調べるのが原則であると私は考えます。この紫雲丸関係におきましても、できるならば関係者を逮捕勾留などをせずに調べるのが原則であると私も考えます。ただし、個々の事件々々によりまして逮捕勾留しなければ調べができない、すなわち関係者が逃亡、証憑隠滅のおそれのあるような場合に、さような処置をとらなければ調べができないような場合には、そういうような処置をとることもまた適当な場合もあると考えるのでございます。本件におきましては、もちろん逃亡するようなおそれは認められないのでありますが、関係者の間に不当な打ち合せその他によりまして証拠の隠滅をはかるおそれがあるということで関係者を逮捕勾留して取り調べたのでございます。現に具体的にも証憑隠滅のおそれありということで紫雲丸の非直の船長の岡何がし外数名は、当時逮捕勾留して取調べをしております。さような状況のもとに本件は逮捕勾留されたのでありまして、これはあくまでも私は例外的な処置だったというように考えるのでございます。
  111. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 高等海難審判官の増田さんに伺ってみますが、あなたからの御経験による場合に、たとえば地方審判庁の理事官が当該船員などをあらかじめ取り調べるというようなときに、これは海難審判法によりましても逮捕勾留はできないことになっておると思うのであります。やはりこのような規定のあるゆえんのものは、それは自由の立場において自由に発言し、自由に取調べに答え得る、そういう必要からなされておるものでないか、こう思うのでありますが、たとえば検事勾留をしておる最中に拘置所などに出張して、そして証拠調べをするというような、そういう身体を強制的にある場所に留置されておるようなところで取調べをするというようなことで、一体過失事件の海難審判としての事実の調査ができるのであろうか、これははなはだしく海難審判の立場からするならば取調べがゆがめられる危険がありはしないか、もっと拘束を受けない自由な立場において取り調べるということでないと、理事官も取調べの結果の正確を期しがたいというおそれがありはしないだろうか、ひいてそれが審判の上に影響することはありはしないだろうか、こういうふうなことを海難審判法の規定と相対比して私は考えるのですが、これはいかがでしょう。
  112. 増田一衛

    ○増田説明員 海難審判におきましては、刑事裁判事件と違いまして、その海難が、海技免状を持っておる人間が過失を犯したというような場合にはこれを懲戒することができる。いわゆる懲戒は免許の取り消し、業務の停止、それから戒告という三種に分れておりますが、それは単に行政処分でありまして、その行政処分において、海難を起した場合これを強制して勾留して調べるとかなんとかいうことは法律上許されないというので、そういうことになったのであります。
  113. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私の問いたい点は、今の海難審判法第四十条の第三項にそのような規定がございます。強制は許されないということになっております。やはり刑事裁判と違いまして、海難審判というのは、海難審判法の第一条にもありますごとくに、海難の原因を明らかにしてその発生の防止に寄与する、つまり海難の原因を明らかにするということが、私は最初の目的であり、最終の目的でないかと思うのであります。従ってあくまでも冷静に、客観的に、いささかもそこに過不足なく、正しく、取調べの相手から答弁を求めるということにするために強制することをしないで自由に答弁さす必要が絶対的にあるのではないか。これをすることがなかったならば、海難原因の究明に非常に支障を来たすのではないだろうかと私は考えますので、これはまた相当沿革もあってこの法文ができておるものと思います。従ってただいまの場合に、検察庁におきまして何らかの理由によって逮捕したり、勾留中に理事官が行って取調べをするということは例外の例外で、こういうことをやられては海難審判の建前上ちょっと困るというのが私は建前じゃないかと思うのであります。でありますからそれを聞いておるのであります。行政的な処分等でありますということは、それは懲戒の問題でありまして、私の聞くのはその点ではないのであります。その点ではなくして、そういうような海難原因を探求するということが目的であるその理事官の立場は、強制収容されておる者を留置場に行って調べるというようなことでは、海難審判法の趣旨にも反するのではないだろうかと思いますが、それはどうかと聞いておるのです。
  114. 増田一衛

    ○増田説明員 もちろん調べられる本人も、勾留なんかされると幾分か心身に違った影響があるだろうと思います。それでフリーな立場でいろいろそれを調べ、フリーな立場で供述するということは必要なことであります。
  115. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それは必要なことでございますので、事件が世の視聴を集めて一層重大であればあるほど、そういうフリーなそして疑惑を持たれないような、不公正な要素の加わらないような雰囲気のもとに取調べをする、こういうことが一そう要請されるのではないだろうかと思うのですが、これは今の御説によりまして必要であるということでありますから、私はこのたびの事件につきましても、こういう点につきましては若干検察庁のお立場も違うのかとも思いますし、刑事局長に伺うのもどうかと思いますが、やはり一方海難審判が行われようとするときには、なるべくその審判に不公正な暗影を与えないような方針というものが一般的にとられるべきでないか。従って逮捕とか勾留とかいうようなこともなるべく避けて、まず原因の追究ということを十分にいたしまして——もっとも今の御説明によりますとほかの理由も加わったかと思いますけれども、ほかの理由によって逮捕者を請求なさったというのは私は第二の問題ではないかと思いますので、心配しますのは世の中の視聴が集まるというと、やはり妙に刑事事件として扱っていくということが少し浮き立ちなさることがありはしないだろうかということであります。このたびの事件についてはそういう趣旨、動機、目的、理由がなかったものと思いますけれども、一般的の場合といたしましては、なるべく海難審判に支障を来たさないような、不公正な要素が加わらないように事件をお取り扱いになるということが最も正しいあり方でないかと思うのですが、いかがでございましょう。
  116. 井本臺吉

    ○井本政府委員 われわれの方の調べにおきましても、先ほど申し上げましたように、なるべく身柄は拘束しないで取り調べるのが原則でありまして、海難審判の方でも自由な立場で供述をとるというのが調べの真相に触れることになると思いますけれども、事件の種類によりましてはどうしてもさようにいかない場合もあるのでございます。身柄を拘束すればすぐに供述が間違ってなされるというのでは、これまた調べができないのでありまして、われわれといたしましてはあくまでも真相はどこにあるかということをなるべく早く発見して調べを済ましたいということで処置をとったのでありまして、この処置はあくまでも原則的な処置ではなくて、例外的な措置であるというふうに御了承を願いたいと思います。
  117. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこでなお伺っておきたいと思うのでありますが、逃亡のおそれもない、すでにある程度調べは済んでおるといったような場合には、やはり原則主義に立ち戻りまして、できるだけ海難審判を先行さすということに御協力願いたいと思いますが、いかがですか。ことに運輸政務次官も紫雲丸の事件につきましては世の視聴も集めたことでもあり、海難審判もできるだけすみやかに審理を進め、終結をしてほしいというような御意向もありますので、おそらくはそのように進められると思いますから、それらのことにもかんがみまして、やはりこのような事件におきましてもなるべく原則に立ちまして、海難審判が進められることを見守っていただいて、そうしてすみやかに終結されるでありましょうから、その上で検察庁の態度をおきめになるのが適当でないかと思うのですが、この点についてはいかがなものでしょうか。
  118. 井本臺吉

    ○井本政府委員 原則論としてはさように考えます。ただ申し上げておきたいのは、海難審判の先行と申しましても、海難審判が終結に至るまで待っていなければならぬかどうか、一審さらにその上級審があり、その上にまた高等裁判所が乗っかっているわけであります。それを全部済まさなければ刑事手続はとれないというのでは、われわれとしては全く仕事ができないのでありまして、われわれの責任もありますから、調べの段階におきましてはこれは海難審判の御審理と大体従来も一緒に並行的にやってきたように考えております。今度の逮捕、勾留というような強制事件に出たのは例外的措置でありまして、普通では在宅のまま調べを続けていくという状況でございます。そこでそれでは海難審判の一審が済んでから刑事訴追をやれ、それで海難審判先行の原則はとられたのではないか、大体その辺までいけば、おそらく海員組合の方々もある程度納得するかもしれませんが、事情によりましてはそれまで待っておれないような事件もありまして、これは先ほど大臣も答弁されましたが、原則といたしましては海難審判先行であるが、場合によっては例外のものもあり得るということで、具体的にはその事件々々によってどれが一番適当であるかというところで判断するよりいたし方ないと思っているのでございます。
  119. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 大体私の申し上げたことに対する各方面の御答弁趣旨はわかったのでありますが、お伺いかたがた御希望申し上げておきたいと思いますことは、やはりでき得る限り海員の諸君が、安心して職務に励精し得る、こういうような態勢をとりますることが、私は一つは海難を防止する大きな原因だと思います。今何かもやもやしたものがありまして、海難審判先行の主義がくずれてしまうのではないかということの心配があちらこちらにあるようでありますので、こういうことを一掃しまするためには、適当な方法と適当な機会に、何らかの措置をとっていただいて、海員諸君は心配せずに、みずからの職務にほんとうに忠実に冷静に努力してほしい、というようなぶうに持っていくような措置が一つとっていただきたい。これは運輸省におきましても、運輸大臣の方におきましてそれぞれ何らかの方法でそのような方法がとられんことをお願い申し上げたいのであります。何万の海員が、この大きな原則が破壊されてしまうということを非常に心配をいたしておるのが実情のようでありますから、同時にまた法務省におきましても、どうぞ法務省のお仕事の内部におきまして、このような空気のあることを察知していただきまして、適当な措置で、正しく海難審判は従来の方針も捨てられることなく、先行的に行われるものであるということがわかり得るような措置をとっていただきたいということをお願い申し上げておきたいのであります。これは大臣もそのような趣旨のことを一言申されたのでありますけれども、まあ何かの機会に一つ趣旨の徹底ということについて格段の御協力を願いたい、こういうふうにお願いを申し上げておきたいと思います。何か一つ御発言がありましたら伺っておきます。
  120. 河野金昇

    ○河野(金)政府委員 船員の諸君の立場を理解していただきましての、御親切な質問並び御忠告御希望等に対しましては、運輸省としてもありがたく承わっておきたいと思います。先ほど来花村法務大臣あるいは井本刑事局長答弁を承わっておりましても、今度は異例の措置であったわけで、証拠隠滅のおそれがあるからやったのだとおっしゃったので、そういうことをわれわれはかばう気持は毛頭ありませんが、検察当局においても、その証拠隠滅等のおそれのあるようなことは、すでに御調査済みのことだろうと思います。できることでありますならば、われわれの方も海難審判所の審理を促進いたしまして、なるべく早い機会に第一審の結論を出したいと思います。希望といたしましては、その結論の出たあとに検察当局の方で御処置下さることを、私はやはり船員の今後のあり方等から考えまして、希望を申し上げておきたいと思います。すでに先ほど吉田さん御指摘のように、昭和十二年の船員法の改正が議会を通りましたときに、そのときの司法大臣の答弁によりましても、通牒を出しておられるのであります。従いましてこういう具体的な事件のときにどうしろということはどうかとは存じまするけれども、明治二十六年から続いたところのこの海難事件に対しては、やはり海難審判所が先行すベきであるという原則を事実の上に残していけるように、私は運輸当局と法務当局において処置されることを希望いたしまして、両大臣等において話し合っていただいて、そうして今までの多年の伝統、しきたりが実質の上において続いていくようにしたいと考えております。
  121. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 調達庁関係質疑が少し残っております。ほかはもうこれでよろしゅうございます。調達庁長官にちょっと簡単に伺っておきたいのでありますが、九州の福岡県の築城飛行場の問題であります。これにつきましてこういう問題が起っておるのでありますが、旧築城村の土地が買収されまして、そして何がしかの金額がそれぞれ支払われたようであります。ところで築城村におきまして、何でも三十年度のいろいろな計算がせられた中に、この飛行場の補償関係で二百万円の残金がある、しかもそれは現実にはない、そしてまた別に二百万円の交際費というものが何か書き出されておる、こういうようなことがあったようで、そういうことを中心にしまして、ただいまは町当局でありますか、元の村長などとその関係の住民との間に、この金の行方、金額、内容等をめぐりまして、非常な紛糾を重ねて、目下それがために町政が運営できないまでに紛糾しておるようであります。でありまするので、この金の内容について計算関係を明らかにしたいというのが私の質疑趣旨なのであります。伺ってみたいのでありまするが、この支払いというのは、やはり当該土地所有者あるいは権利者などに直接渡すものでありますか、あるいは何人かその代表に渡すものであるか、あるいはこれで見ると村長にお渡しになったのでないかと思うのですが、その辺、支払いの方法、相手方はだれになさっておるのでございましょうか。
  122. 福島愼太郎

    福島政府委員 土地の買収をいたします場合に、その土地に相当多数の所有者があるということは間々多々ある例でございます。この築城の買収につきましても、所有者は相当多数に上っておるわけでございます。築城の買収は第一次、第二次、第三次と数を重ねたわけでございます。原則といたしましては、そういう場合に、それぞれ所有者との間に売買契約を結ぶのがもちろん原則でございます。非常に多数に上ります場合には、その代表者が正規の委任状を持っております場合には、代表者との間に契約を結ぶこともあるわけでございます。築城の買収につきましては、第一次買収の支払いは、昭和二十七年の十二月二十四日に行われたわけでございます。その面積は四万四千七百七十三坪になりまして、その金額が千六百六十八万円余になっておるわけであります。正確に申し上げますと、千六百六十八万六千百五十三円になっておりまして、その際は築城村の村長関係所有者百五名の正規の委任状を呈示いたしましたので、これに基きまして築城村村長との間に売買契約を結び、築城村村長に対しましてただいま申し上げました金額を支払ったわけでございます。  続きまして第二次の買収と申しまして、これは昭和二十九年にやったわけでございますが、これが若干そのうちさらに分れておるのでございます。第二次買収のうち昭和二十九年の四月二日に、同じく築城村村長代表者といたしまして、正規の委任状を確認いたしまして、三十名の代表者として築城村村長に契約いたしまして支払いました金額が、七百八十五万七千二百八十二円でございます。この土地面積の総計が一万三千百七十二坪になっております。同じくわれわれは第二次と称しておりますが、昭和二十九年四月二十日に、八津田村の助役代表者といたしまして、十四名の所有者に関します買収契約を、これも正規の委任状を確認いたしまして契約を結び、支払いをいたしたのでありますが、これが二百二万三千六百八十六円、坪数にいたしまして四千三百八十八坪ございます。さらに昭和二十九年四月三十日に、これは一名の所有土地でございますが、仲津村村長に対して委任状を出しまして、私どもといたしましては、この仲津村村長に対しまして、四百十三坪に対し二十三万二百六円を支払いましたことがございます。同じく二次のうちにわれわれ勘定いたしておりますが、昭和二十九年八月二十六日に、これは所有者一名でございますが、この一名が同じく築城村村長に対して委任状を出しまして、こちらからは築城村村長に対しまして、八百十二坪に対して三十八万七千七百六十七円を支払っております。  さらに引き続きまして第三次買収というのがございます。第三次買収の時期は、昭和二十九年十二月二十八日でございます。この場合は所有者四名でございます。所有者四名の所有地千二百五十五坪を、四名のうちの一人末永六太郎氏に他の三名が正規の委任状を与えておりましたので、末永六太郎氏に対し九十一万六千七百七十九円を支払ったことがございます。いずれにいたしましても正規の委任状を代表者に託していただきまして、しかしながら一々の金額と坪数に基きまして契約し、支払いをしておるということになるわけでございます。
  123. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 いずれこれは土地を買収なさるときには地上の耕作物あるいはその他何らかの第三者の権利の取得、そういうものも含まれると思いますが、これはやはりそれぞれ内訳があって積算されて合計が出る、こういう関係になるのでありますか。
  124. 福島愼太郎

    福島政府委員 ただいま申し上げました金額には耕作物その他の権利関係の損害その他のものが計算されて含まれておると承知いたしております。
  125. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 なおたとえば農地ならば農作物、宅地ならば賃借人、所有者と賃借人その他の地役権の所有者とか、つまり物権者、そういうような第三の地上に権利を有する者の何らかの補償もあるわけでしょうか。
  126. 福島愼太郎

    福島政府委員 御指摘のその土地の上にございます第三者の権利、それらのものも金額の算定には当然に考慮されておるはずでございまして、ただ権利者所有者との関係において処置せらるる建前で、所有者に対して金額を支払ってあるそうであります。
  127. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 これは何ですか、今は村が合併されまして町になっておるようでありますが、八津田村、仲津村は除きまして、築城村のみの土地、宅地、田、畑、池、山その他いろいろと権利関係、補償の対象が別々になっておる。人間の数——補償金を渡してある相手方の人の数はずいぶん多くなるのですか、どのくらいになりますか。
  128. 福島愼太郎

    福島政府委員 説明の途中で申し上げたと思いますが、第一次の場合は百五名でございます。百五枚の委任状が築城村長に集まっております。第二次の場合には三十名の委任状でございます。ただいま三十名と申し上げましたのは、第二次のうちの築城村の分でございます。それから第二次のうちの八津田村の分は十四名、同じく第二次のうちの仲津村の分は一名、第三次の築城村の分が一名、第四次がちょっとどの村でございますか、多分築城ではないかと思いますが、これが四名でございます。
  129. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 これは御相談ですが、築城村の一次ないし最終の二十九年十二月でありますが、最初は一名のようでありますが、これはあなたの方で簡単に表にでもできますか、非常に煩瑣な作業になりますが、それはいかがでありますか、築城だけでよろしいですが……。
  130. 福島愼太郎

    福島政府委員 資料は取り調べたいと思いますけれども最後まで分割しております資料は、福岡の局の方にあるそうでございまして、ただいま調べさせておるところでございますが、御希望によりまして金額の算定の基礎になりました資料あるいは個人的な人名なり取り調べることはできると思います。
  131. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 この問題は築城のみについてのようでありますけれども、何か数百万円の金の行方が疑惑視されて、そこで町政紛糾というふうに発展しておるようでありますから、いずれこれは刑事事件になるのではないかしらぬと、今の情勢で思われるのであります。でありますので、煩瑣な作業でありますけれども一つ築城のみでいいと思いますから、できるだけ詳細な数字、人、それからその補償の対象、物件、権利などがなるべく詳しくわかるようなものを資料として提出していただくようにお願い申し上げます。
  132. 福島愼太郎

    福島政府委員 承知いたしました。
  133. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それから各お渡し下さった年月日、受け取った村長名前、これも一つ明らかにしていただきたいと思っております。  以上でよろしゅうございます。
  134. 福井盛太

    ○福井(盛)委員長代理 本日はこの程度にとどめまして、次会はいずれ公報をもってお知らせいたすことにいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十一分散会