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1955-05-18 第22回国会 衆議院 法務委員会 第9号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
三十年五月十八日(水曜日) 午前十時五十七分
開議
出席委員
委員長
世耕
弘一
君
理事
古島
義英
君
理事
山本
粂吉
君
理事
三田村武夫
君
理事
馬場
元治
君
理事
福井
盛太
君
理事
田中幾三郎
君 今松
治郎
君 林 博君
生田
宏一
君
船田
中君
横川
重次
君
猪俣
浩三
君
神近
市子
君
淺沼稻次郎
君
佐竹
晴記
君
細田
綱吉
君
出席国務大臣
法 務 大 臣 花村 四郎君
出席政府委員
法務政務次官
小泉
純也君 検 事 (
民事局長
)
村上
朝一君 検 事 (
矯正局長
) 中尾
文策
君
委員外
の
出席者
判 事 (
最高裁判所事
務総局人事局
長) 鈴木 忠一君 専 門 員 村 教三君 専 門 員 小木 貞一君 ――
―――――――――――
五月十七日
委員木下哲
君
辞任
につき、その
補欠
として
吉田
賢一
君が
議長
の
指名
で
委員
に
選任
された。 同月十八日
委員稻村隆
一君
辞任
につき、その
補欠
として古
屋貞雄
君が
議長
の
指名
で
委員
に
選任
された。 ――
―――――――――――
五月十六日
少年院法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
第 四五号) の審査を本
委員会
に付託された。 同月十七日
監獄法
の一部
改正
に関する
陳情書
(第一九〇 号) を本
委員会
に送付された。 ――
―――――――――――
本日の
会議
に付した案件 小
委員
の
選任
参考人招致
に関する件
商法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
第二七 号)
少年院法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
第 四五号)
最高裁判所
の
司法行政
に関する件 ――
―――――――――――
世耕弘一
1
○世
耕委員長
これより
会議
を開きます。
少年院法
の一部を
改正
する
法律案
を
議題
といたし、まず
政府
より
本案
の
提案理由
の
説明
を聴取することといたします。
小泉法務政務次官
。 —————————————
小泉純也
2
○
小泉
政府
委員
ただいま上程になりました
少年院法
の一部を
改正
する
法律案
につきまして、その
提案
の
理由
を簡単に御
説明
申し上げます。 この
法律案
の要旨は、
少年院
の
在院者
に対し、
死傷手当金
を支給できるようにすること、
逃走
した
少年
の連れ戻しについての
措置
を明らかにすること及び最近の
少年院
の
状況
にかんがみ、
暴行
、
逃走等
のおそれがある場合においては、やむを得ないときに限って、
在院者
に対して
手錠
を
使用
できることとすること並びに若干の
事務手続
の
簡素化
をはかるとともに、同法中の用語の
整理
をしておることの四点であります。 第一の
死傷手当金
について申し上げますと、従来、
少年院
の
在院者
が職業の
補導等
を受けるに際して、負傷し、なおったとき、障害を残すような場合に、何らの
手当金
も支給できなかったのでありますが、このような場合には、たといわずかでありましても、何らかの
措置
を講じてやる必要があると思いますので、今後はこのような場合には、その災害の
程度
に応じて若干の
手当金
を給与できることとし、その支給の
範囲
、金額及び
方法等
は、すべて
法務省令
に譲ることといたした次第であります。 第二に、
少年院
の
在院者
が
逃走
した場合の連れ戻しについては、従来、その
方法
及び時間的な
制限等
について明確な
規定
を欠いていたため、連れ戻しについて、機宜の
措置
を敏速かつ適切にとることが困難であり、連れ戻しの時期を失して、
逃走者
を犯罪に陷し入れ、
社会
不安の一因となるとともに、他面、
逃走
した
少年
の前途をますます暗くさせることにもなりますので、この際、
逃走者
を連れ戻す場合の
措置
を明確にして、
少年院
の
在院者
が
逃走
した場合には、敏速かつ適切な
措置
によって、
社会
と
本人
の
利益
のために、なるべく早く連れ戻しができるようにしたのであります。 第三点としましては、最近の
少年院
の
状況
を申し上げますと、
在院者
には、反
社会性
の非常に強い者が多いのでありますが、そのため往々にして集団的な
逃走
や騒摂等が起る場合があるのであります。これらの場合におきまして、それを防止する適切な
方法
がないため、
少年院
の適正な運営に著しく
支障
を来たす傾きがありますので、この際、
在院者
が
逃走
、
暴行
または自殺をするおそれがある場合に、それを防止するため、やむを得ないときに限って、
手錠
を
使用
できることとしたのであります。しかしながら、
少年院
の性格から、
手錠
の
使用
はできるだけ避けなければなりませんので、その
使用
については、
原則
として、院長の
許可
を受けなければならないこととして、特に慎重を期したのでありますが、いやしくも乱用することのないよう厳重に監督する方針であります。 第四点としましては、従来、
少年院
に収容された者の所持する金品を預かる場合には、
本人
にそれぞれ
受領証
を交付しなければならないこととされておりますが、現実には
領置手続
を煩雑にするのみで実益に乏しいので、この際、その
手続
を
簡素化
し、
受領証
を交付しなくてもよいこととするとともに、その他
少年院法
中の字句について、若干の
整理
を加えたのであります。 以上が
提案
の
理由
であります。何とぞ慎重御
審議
の上、すみやかに御可決あらんことを希望いたします。 —————————————
世耕弘一
3
○世
耕委員長
次に
商法
の一部を
改正
する
法律案
を
議題
といたします。
本案
の
逐条説明
を聴取いたすことといたします。
村上民事局長
。
村上朝一
4
○
村上政府委員
商法
の一部を
改正
する
法律案
につきまして逐条的に御
説明
申し上げます。この
法律案
は、
提案理由
の
説明
の際にも申し上げました
通り
、本年三月二十五日
法制審議会
から答申がありました
商法
の一部を
改正
する
法律案要綱
に基いて
立案
いたしておりますので、お手元にお配りいたしてあります
要綱
と対照しながら、各条項について簡単に御
説明
申し上げたいと思います。 まず百六十六条第一項第五号でありますが、これは
新株引受権
に関する
事項
を
定款
の絶対
的記載事項
でないことにする
趣旨
の
改正
でありまして、
要網
の第一に当ります。
現行法
の
規定
は、
前回昭和
二十四年の
改正
の際に加えられたものでありますが、
株主
の
新株引受権
につきましては、
立案
の際
法律
上
原則
として
株主
に
新株引受権
を認めるべきであるという
見解
と、
法律
上当然
株主
には
新株引受権
を認めない方がいいという
見解
と対立がありまして、それの妥協としていずれの
原則
をとるかを
法律
に
定め
ずに、
会社
の自治にゆだねる
趣旨
で、
株主
の
新株引受権
の有無、
制限
に関する
事項
を
定款
の絶対
的記載事項
と
定め
たのであります。ところがこの
規定
につきましては、
解釈
上いろいろ
疑義
を生じたのでありますが、絶対
的記載事項
でありましたために、
新株引受権
に関する
定款
の
定め
に
不備
がありますと、
定款
全部が無効となり、ひいては
会社
の
設立
無効の原因ともなるのでありまして、その影響するところがきわめて大きいのであります。これによって生じます困難を避けるために、
新株引受権
に関する
事項
を
定款
の絶対
的記載事項
を
定め
る
本条
から削除いたしまして、これにつきましては第二百八十条ノ二に新たにこれにかわる
規定
を設けたのであります。 次に百七十五条第一項であります。これは
要綱
の第四に当ります。
株式申込証
の
通数
を、
現行法
で二通となっておりますものを一通で足りるとするものであります。
現行法
が二通を要求しておりますのは、その一通を
会社
に保存し、他の一通を
登記
の
申請
の際に
添付書類
として
登記所
に提出させるためであったのでありますが、しかし
登記
の
申請
の際に添付する
書類
につきましては、さきに非
証事件手続法
の
改正
によりまして
株式申込証そのもの
を提出しなくてもいい、
株式申込証
と称する書面を提出すれば足りるということに改められましたので、
商法
上
株式申込証
を二通要求する必要がなくなっておるわけであります。 次は第百八十条第三項であります。この
条文
は
前回改正
の際に
整理漏れ
となっておるのであります。この百八十条の三項におきまして
決議取り消し
に関する二百四十七条、二百四十八条を
創立総会
に準用しておるのでありますが、二百四十九条も当然
創立総会
に準用すべき
条文
なのであります。しかし
立案
の際二百四十九条が削除ということで欠けておりましたために、その後
商法
が改まったときにこちらを整備することが
整理漏れ
となっておるわけであります。 次に百八十八条第二項第一号であります。これは先ほど申し上げました百六十六条第一項第五号の
改正
に伴いまして、それを引用しておりますこの
条文
を
整理
したわけであります。 次は二百二十二条ノ五の第一項でありますが、これも
要綱
第四に
相当
するものでありまして、
転換株式
の
転換請求書
を現在二通要求しておりますのを一通で足りるものとする
趣旨
であります。その点は
株式申込証
と同一でありますが、非
証事件手続法
の方が
転換株式
の
転換請求書
につきましては同様改められておりませんので、この
法律
の付則第六項におきまして非
証事件手続法
も
株式申込証
の場各に準じて改めることといたしております。 次は二百二十四条ノ二でありますが、これは
要綱
の第五に当るのでありまして、
株主名簿
の
閉鎖
または
基準日
を必ずしも
定款
の
定め
がなくても
定め
得るものとして、かつ
株主名簿
の
閉鎖期間
と
基準日
と
権利
を行使すべき日との間が現在六十日となっておりますのを二カ月といたしまして、
臨時
に
定め
る場合の
公告
を二週間前にすることにいたしたのであります。
現行法
によりますと、
名簿
の
閉鎖
及び
基準日
の
設定
は、
定款
に
規定
がなければできないことになっておりますけれども、現在ほとんどすべての
会社
では、
株主名簿閉鎖
の
定款
の
定め
をしておるのであります。
一般
に
定款
の
規定
をまたず利用してもよい制度であろうと考えられるのであります。 次にこの
期間
を六十日を二カ月と改めましたのは、この方が
期間
の計算にきわめて便利であるというところから、実際界の
要望
にこたえたわけであります。 次に、
臨時
に
名簿
の
閉鎖
または
基準日
の
設定
をいたします場合に、三十日前に
公告
すべきものと現在なっておりますけれども、多くは緊急を要する場合でありますので、三十日の
期間
はやや長過ぎます。
報道機関
、
交通機関等
の発達いたしました現在、二週間
程度
で十分であろうということで、これも実際界の
要望
にこたえて
立案
いたしたものであります。 次は第二百三十七条第二項でありますが、いわゆる
少数株主
の
総合招集
の
要件
を整備いたしたのであります。
要綱
の第八に
相当
いたします。
現行法
の
規定
によりますと、
少数株主
から
総会招集
の
請求
がありました後二週間内に
総会招集
の
通知
が発せられないときは、
少数株主
は
裁判所
の
許可
を得てみずから
総会
を招集することができることになっておりますが、この
規定
には、二つの点におきまして
一般
に不満を唱えられておるのであります。その
一つ
は、
総会招集
の準備のために
相当
の
期間
を必要といたします。ことに
総会
に出席して
議決権
を行使すべき
株主
を確定するために、
名簿
の
閉鎖等
もやる必要がありますし、二週間内に
総会招集
の
通知
を発することは、むしろ不能をしいるに近いということになるわけであります。もう
一つ
の点は、
総会招集
の
通知
が二週間内に発せられましても、
総会
の
会日
が非常におくれておる場合、たとえば半年先の
会日
を
定め
て
総会招集
の
通知
を発したというようなときには、
少数株主
の
権利
は事実上
有名無実
になってしまうわけでありますので、
会日
が
総会招集
の
請求
があった日から六週間内の日でなければならぬということにいたしたのであります。 次に第二百八十条ノ二でありますが、これは
要綱
の第二及び第三に
相当
するものであります。
新株引受権
は、
株主
に対しましては
取締役会
の
決議
でもって自由に与え得るものとし、
株主
以外のものに対しては、一定の
事項
について
総会
の
決議
を要するものとし、その
決議
の
範囲
内において
取締役会
の
決議
により与えることができるということに改めたのであります。 まず
株主
の
新株引き受け
について申し上げますと、
現行法
は、
前回
の
改正
におきまして
授権資本制
を採用し、
新株発行
による
資本調達
の便宜をはかったのであります。
新株引き受け
につきましては、
新株発行
に関する
取締役会
の
決議
で与えることができるとするのが最もよく、この
授権資本制
の妙味と申しますか、長所といたします
資金調達
の
機動性
を発揮するゆえんであろうということで、この
法律案
におきましては、
新株引受権
を与えるべきもの、
引受権
の
目的
たる
株式
の
額面
無
額面
の別、
種類
、数及び
発行価額
を、
新株発行
に関する
取締役会
の
決議事項
の
一つ
といたしたのであります。二百八十条ノ二に第五号を加えておりますが、この第五号がその
趣旨
であります。もとより
本条
の
取締役会
の
決議事項
につきまして
定款
をもって別段の
定め
をなし得ることは従来
通り
でありまして、
株主
の
新株引受権
につきましても、
定款
に別段の
定め
、たとえば
定款
をもって
株主
に
新株
の
引受権
を与え、または与えないということが
定め
てありますれば、これに従うことは申すまでもないことであります。 次に
株主
以外のものの
新株引受権
について申し上げますと、
株主
以外のものに
新株引受権
を与えるにつきましても、結局
新株発行
の具体的な場合に、
取締役会
の
決議
によって
具体的内容
を
定め
るというわけでありますが、
取締役会
の
決議
だけにまかせておきますと、
取締役会
でその権限を乱用して、
縁故者
その他に新
株式引受権
を与える、有利
発行
いたしまして、
株主
の
利益
を害するおそれがあります。そうかと申しまして、
株主
以外のものに
新株引受権
を全然認めない、与える道を閉ざしてしまうことは、特別な場合の
資金調達
の
支障
を来たすことも考えられることであります。そこで
株主
以外のものに
新株引受権
を与えるにつきましては
株主総会
の
特別決議
を必要とするものとして、この
決議
に関して第二百八十条ノ二に新たな三項を加えたのであります。すなわち、まず
株主
以外のものに
新株引受権
を与えるには、
取締役会
が与えることのできる
引受権
の
目的
たる
株式
の
額面
無
額面
の別、
種類
、数及び
最低発行価額
について
株主総会
の
特別決議
がなければならないのでありまして、その場合
株主総会
において何人に与えるかを具体的に特定することは必要ないのでありますが、
株主
の判断に正確を期するため、議案の要領を
総会招集
の
通知
及び
公告
に記載するとともに、
総会
において、
株主
以外のものに
新株引受権
を与えることを必要とする
理由
を開示しなければならないこととしたのであります。しかもその
決議
があまり遠い将来のことに関してなされますと、
総会
の
決議
を要するものとした
趣旨
が没却されるおそれもありますので、この
決議
は、
決議
後最初に
発行
する
新株
でその後六月間に払い込みをなすべきものについてのみ
効力
を有するものとしたのであります。また
定款
の
定め
によってこの
特別決議
を不用ならしめ得るものといたしますと、これまた
株主
の保護に十分でないきらいがありますので、
定款
の
規定
にかかわらず常に
総会
の
特別決議
を必要とするものとしたのであります。 次は第二百八十条ノ四でありますが、この
規定
は
新株引受権
を有する
株主
に
新株
を割り当てる場合における
端株
の
処理
について新たな
規定
を設けましたことと、
株主
が
新株
の
引受権
を有すべき場合に
割当日
を
定め
てこれをあらかじめ
公告
するという旨の新たな
規定
を設けたのであります。ただいま申し上げました後段は、
要綱
の第七に当ります。
新株発行
の場合、
株主
に
新株
を割り当てまして一株に満たない端数を生じましたとき、いわゆる
端株
が出ましたときにその処置をどうするかについて、従来いろいろ学説が分れておりますが、この
法律案
におきましては、
新株発行事務
の
処理
の
迅速
をはかるために、この点の
疑義
を一掃いたしまして、
端株
の切り捨てを
規定
いたしたのであります。ただいまの二百八十条ノ四第一項のただし書きがその
規定
であります。 従来いわゆる
新株
の
割当
についての
割当日
というものが
定め
られておりますが、
現行商法
にはこれに関する明確な
規定
がありませんので、
本条
に一項を加えまして、
新株引受権
を有すべき場合には必ず
割当日
を
定め
てその日の二週間前に
公告
すべきものとし、またその日が
株主名簿
の
閉鎖期間
中でありますときには、その
期間
の初日の二週間前に
公告
すべきものとしたのであります。これは
株式譲受人
が
名義書換
の
機会
を失って不測の損害をこう
むるおそれがないようにという配慮
から考えたものであります。 次は第二百八十条ノ五第三項であります。これは
新株引受権
を有する者に対する
失権予告付通知
の
期間
を二週間に短縮いたしておりますが、これは
要綱
の第七に
相当
する
部分
のものであります。これまた
新株発行事務
の
迅速
をはかるための
改正
でございます。 次は二百八十条ノ六第三号であります。これは百六十六条第一項第五号及び三百四十七条の
改正
に伴って必要となった
整理
であります。 二百八十条ノ八第一項、これは二百八十条ノ二の
改正
に伴う
整理
であります。次に三百一条第一項であります。これも
要綱
の第四のうちの
社債申込証
に関する
部分
に該当いたします。
株式申込証
及び
転換請求書
をそれぞれ一通と改めたのと同様の
趣旨
でございます。 次は三百四十一条ノ四第一項、これは
転換社債
の
転換請求書
につきまして、
要綱
第四に基きまして同様な
趣旨
で
改正
したわけであります。 次は三百四十七条第二項及び第三項でありますが、この
規定
は
株主
の
新株引受権
に関する
定款
の
定め
を
会社
が
発行
する
株式
の総数の
効力発生要件
でないことにいたしました。その
趣旨
は百六十六条第一項第五号について申し上げました
趣旨
と同様でございます。次は第四百八十九条第一号でございます。これは二百八十条ノ二の
改正
による
整理
であります。 最後に附則について申し上げますが、第一項は
施行期日
を七月一日としておりますが、実はこの
新株引受権
を中心とする
商法
の
改正
につきましては
経済界あたり
では早急に
改正法
の実施を
要望
いたしておりますので、なるべく早い
機会
に施行されることが望ましいという考え方であります。 第二項は
経過規定
の
一般
の例に従ったものでありまして、特段申し上げることはございません。 第三項について申し上げますと、
現行法
によりますと、
株主
の
新株引受権
に関する
定款
の
定め
はもしこれに
不備
がありますと、
定款
の全部または変更された
定款
の
部分
が無効になり、ひいては
会社
の
設立
、
新株
の
発行
に無効を来たすのであります。この資料にありますのに現在大多数の
会社
でとっております
見解
及びそれに従ってできました
定款
の
規定
というものは、一応
株主
に
新株引受権
ありと
定め
て
取締役会
の
決議
で
制限
できるとするか、あるいは
株主
に
新株引受権
なしということにして
取締役会
の
決議
で与えることができると主張するか、いずれかが多いのでありますが、この点について非常に説が分れておりまして、一部の極端な説によりますと、大
部分
の
会社
がとっておりますこういう形の
定款
は無効だということになるのであります。最近一、二の
下級裁判所判決
におきましてさような
趣旨
の
判決
をした例もございまして、この点をはっきりいたしておくことは必要だと考えまして、新法の
趣旨
を
改正法施行
前に
定め
た
新株
の
引受権
に関する
定め
にも及ぼして、かりに
不備
な点がありましても
会社
の
設立
、
新株
の
発行
、あるいは合併、
組織変更
または
定款
の他の
規定
の
効力
に影響を及ぼさないことといたしたのであります。 第四項でありますが、この
法律施行
前に
定め
られた
株主
の
新株引受権
に関する
定款
の
規定
についてこの
法律施行
後における
効力
を明らかにしたものであります。 次に第五項でありますが、この
法律案
によりますと、
株主
以外の者の
新株引受権
につきましては、
定款
の
定め
方いかんを問わず
株主総会
の
特別決議
を必要としておりますので、
従前一般
の
会社
が
定め
ておりますこの点についての
定款
の
定め
はほとんど無意味になるわけでありますが、
解釈
上の
疑義
を避けるためにこの点についても
規定
を設けたのでございます。 次は第六項であります。これは非
訟事件手続法
を、
商法
のこのたびの
改正
に伴って必要な
改正
を加えたのでありますが、そのほか
会社
の
役員等
の
印鑑
の
証明
に関する
規定
を
整理
いたしております。これは現在
登記所
でやっております
印鑑
の
証明
ということが非常に便利だというので、各方面からもう少し
印鑑証明
の
範囲
を広げてもらいたいという
要望
もありますので、この際これを整備いたしたのであります。 次に第七項は
商法
百六十六条第一項第五号及び三百四十七条第二項の
改正
に伴う
会社更生法
の
整理
であります。 はなはだ簡単でありますが以上をもちまして
逐条説明
を終ります。
世耕弘一
5
○世
耕委員長
この際お諮りいたします。すなわち去る九日設置するに決定いたしました
最高裁判所
の
機構改革
に関する小
委員会
、及び
交通禍防止
に関する
調査小委員会
の小
委員
の
選任
については、私より御
指名
するに御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
世耕弘一
6
○世
耕委員長
御
異議
なければ
最高裁判所
の
機構改革
に関する小
委員
には
三田村武夫
君
山本
粂吉
君
古島
義英
君 高橋 禎一君 長井 源君
世耕
弘一
君
福井
盛太
君
馬場
元治
君
船田
中君
小澤佐重喜
君
古屋
貞雄
君
猪俣
浩三
君 原 彪君
田中幾三郎
君
佐竹
晴記
君をそれぞれ御
指名
申し上げます。 次に
交通禍防止
に関する
調査小委員
には
三田村武夫
君 今松
治郎
君 高木 松吉君 椎名 隆君 林 博君
世耕
弘一
君
福井
盛太
君
馬場
元治
君
生田
宏一
君
横川
重次
君
古屋
貞雄
君
猪俣
浩三
君
神近
市子
君
細田
綱吉
君
吉田
賢一
君をそれぞれ御
指名
申し上げます。 —————————————
世耕弘一
7
○世
耕委員長
次に
最高裁判所
の
司法行政
に関して
調査
を進めます。
なほ本件調査
中、
最高裁判所
より発言の申し出のありました場合には、
国会法
第七十二条第二項の
規定
によりこれを
許可
いたしたいと存じますが、御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
世耕弘一
8
○世
耕委員長
御
異議
なければ左様決定します。質疑の通告があります。これを許します。
猪俣浩三
君。
猪俣浩三
9
○
猪俣委員
私は
司法修習生
の採用に際して
裁判所側
で
思想調査
をやっておる疑いがあるということでお尋ねをしたいと思ったのでありますが、あまり唐突な
質問
のように思われてはいけませんから、この
質問
をするに至りました
動機
について簡単に申し上げて、御答弁はなるべく具体的に願いたいと思うのであります。 私がこの
質問
をすることになりました
動機
は、
司法修習生
の
相当
の人から
思想調査
と思われることを
質問
せられた訴えが前からありました。そのうちに
日本弁護士会連合会
の
発行
いたしておりまする「自由と正義」という
雑誌
の四月号に
思想
の自由を否定する
論理的技術
かと題して、やはり
司法修習生
に
思想調査
が行われておるということを前提といたしました
論文
が出ております。引き続いて「
法律時報
」の五月号に巻頭の時評といたしまして、
司法修習生
の任命と
思想調査
、
裁判所
の
自己侮辱
、かような題でやはり
司法修習生
の
思想調査
に関する
論文
が出ておるのであります。そこで私が
司法修習生
から聞きました話が、すでに客観的にかような
雑誌
に発表せられておるのでございまするがゆえに、私は一応
質問
しなければならぬと考えてきたのであります。そこで順序といたしましてお尋ねいたしますが、
裁判所法
六十六条によれば「
司法修習生
は、
司法試験
に合格した者の中から、
最高裁判所
がこれを命ずる。」となっておる。そこで命ずるについて何か条件があるのか、
司法試験
に合格した者のうちから何らかのテストをしてその合格した者に
入所
を命ずるということになるのであるか、もしさような次第であるならばいかなる
基準
をもって
入所
を命じたり命じなかったりするのであるか、さようなことについて実際の
手続
をやっておることを御
説明
いただきたいと思います。そうしてそれはいかなる人間がさような判定をするのであるか。ここにはただ
最高裁判所
となっておって抽象的でわかりませんが、具体的に何人がそういうテストをするのであるかという一連の
入所
を命ずるに至るまでの概況を御
説明
いただきたいと思います。
鈴木忠一
10
○鈴木
最高裁判所
説明
員 ただいまの御
質問
に対して私から
説明
いたします。
司法修習生
の採用についてはその資格として
司法試験
に合格した者の中から
最高裁判所
が命ずるわけでございますが、その命ずるまでの
手続
としましては、まず
司法試験
に合格して
司法修習生
たる資格がある者から
最高裁判所
に対して願書が提出されます。その願書を
最高裁判所
で受理した場合に、例外なくその身元
調査
というのをいたします。経歴についての
調査
、それからそれが終ると面接をいたします。この面接は
最高裁判所
の人事局及び法務省の人事課が相談をしますけれども、主として
最高裁判所
の人事局が事務的なことはやっております。そうして面接をする場合には、面接員は
最高裁判所
の人事局長及び司法研修所の所長、司法研修所の教官、法務省の人事課長、こういう人たちが手分けをして面接をいたします。そうしてその面接と申しましても、これは
法律
上
司法試験
に合格した者ということになっておりますから、面接というのはただ顔を知るというだけのこと、それからもう
一つ
は採用された場合の任地をどこにするかという希望を聞くこと、それから任地と関連をして家庭的な事情を聞くということ、これがおもな内容であります。それから採否についての決定は、そういう資料を整えて人事局から
最高裁判所
の裁判官
会議
に提出します。そうして全体の裁判官がお集まりの裁判官
会議
において最後に採否を決定なさいます。採否を決定する標準と申しますと、第一に不適格とされる者が健康上
司法修習生
の修習に耐えないと認められる者、その前提といたしましては、医師の細密検査をして健康診断をいたします。レントゲンをみんなとりまして細密検査をします。その結果二年間の修習に耐えない、ないしは集団生活をいたしますから、その関係上他人に菌をうつすおそれがあるというような者は除外されます。 それから裁判官、検察官を志望いたす者と弁護士を志望いたす者との間では若干の差異があると存じますが、
法律
実務家として身体上実務をとり得ない者、これは今までの例としてはほとんどございません。ただ裁判官に、判事補に採用する際に、非常に耳が遠くて補聴器をかけて辛うじてやるとか、それから失眼をしておるとか、そういう者は裁判官には採用されておりませんけれども、
司法修習生
としては、目の非常に悪い者、補聴器を
使用
して辛うじて音が聞きわけられるというような者、こういう者も弁護士になる場合には差しつかえないではないだろうかというので採用されている例があります。それ以外に、これはおそらくその次の御
質問
になると思いますが、
司法修習生
として、ないしは法曹としての適格に疑問を持たれるというような者、そういう者については採否が論議をされておる状態であります。大体今申し上げたような
手続
方法
でやっておると思います。
猪俣浩三
11
○
猪俣委員
そうすると身元
調査
をなさって面接をなさる、その面接をする者は最高裁の人事局長、司法研修所の所長及び教官、それから法務省の人事課長そういう者がなさる。面接をするのは、顔を見るというようなことや家庭的のこと、それから任地をどうするというようなことなのだという御
説明
で、最後の採否は最高裁の裁判官
会議
にかけるという御
説明
を承わりました。そうして不適格者と見られる者は、主として健康状態、それは
調査
する。健康状態については裁判官や検察官と在野の弁護士になる人とは多少違う、それもわかるのでありますが、最後にあなたが言われたことがはっきりしないのですが、健康以外に
司法修習生
として採用するに当って適格であるかないかということの審査をするのですか。
鈴木忠一
12
○鈴木
最高裁判所
説明
員 適格性についての察査は、たとえば犯罪を犯しておる、それから検挙されて
調査
を受けて起訴猶予になっておる例とか、学校において騒動をやって処罰を受けておる、そういう者、つまり
法律
を順奉しておる性格であるかどうかというような点を——これはもちろんきわめて例外的な事例です。一々そういう方面にわたって
調査
をするのでなくて、身元
調査
の間にそういう事柄が出てきた者についてのみしか
調査
をしておらないのです。今申し上げたような、過去において犯罪があった、それから現に取調べを受けておる、取調べを受けておって中止処分になっておる、そういう者について今まで論議された例があります。
猪俣浩三
13
○
猪俣委員
そういうものについて
調査
されたものを
最高裁判所
へお送りになると、
最高裁判所
では裁判官
会議
で決定になるこういうのでありますが、今あなたの御
説明
によれば、犯罪者あるいは起訴猶予になったような者というようなことに限られておるようであります。これは御
調査
になることは当然かとも思うのであります。なお学校か何かで騒動を起して処罰されたということは、犯罪として処罰されたという意味ですか、学校の当局者から学生の風紀を乱したという意味で処罰されたことを言うのですか。
鈴木忠一
14
○鈴木
最高裁判所
説明
員 学校の規律を乱したという意味で譴責、停学、退学等になっておるものを意味します。
猪俣浩三
15
○
猪俣委員
そこであなた方のこういう調べをしておるということから
思想調査
をしておるというにおいが
相当
出て来る。私の聞いた具体的事実によればある
司法試験
合格者は、この面接のときに、
昭和
二十七年十一月です、ちょうど十月に総選挙があった。そのときに君はいかなる政党に投票したかという
質問
を受けておる。自由党に入れたか改進党に入れたか、
社会
党に入れたか、何党に投票したのだという
質問
を受けた。それからその人は官公労の職員組合の
委員長
をやっておったことがある、それについて根掘り葉掘り聞かれた。そうしてその結果、何党に投票したと開かれた。これは僕は犯罪とは関係ないと思う。一種の
思想調査
だと思います。その人間も場所もはっきりいたしております。あなたの答弁とちょっと具体的に違う。なおまたこれも今大阪で弁護士をやっている人ですが、何ゆえかしらぬが一カ年間
入所
を延ばされた。何の
理由
もない、ただしこの人はある労働組合の執行
委員長
を長らくやっておった。そのことについて
相当
聞かれたそうでありますが、一カ年間
入所
を延期されておる、一カ年たった後に
入所
を許された。今大阪で弁護士をやっており名前もはっきりしております。いかなる事情でそうなったのか、あなた方がさようなことがないというならば、私の方は具体的に証人として出頭してもらって聞いてもいいと思います。どうしても事情はわからぬが、一カ年採用されなかった。それからなお私はあなたに参考までに言っておくのですが、修習中、指導官というのか教官というのか知らぬが、ある公務執行妨害に
相当
する事実を掲示して、これに対する起訴、不起訴を書けという問題が出た、これも名前はわかっておりますが、多数の人間は起訴状を書いたけれども、私の知っているその男だけは、不起訴処分に書いた。しかもその
理由
の中に若い血気にはやる者が、その場の空気で多少の反抗を示しても、それを一々処罰すべきものではないと思うという
理由
がついた。そうすると出題したのは東京の高等検察庁の検察官であるそうですが、修習生全部を集めて、この中には反権力的
思想
の持ち主がある、不都合千万だ、そういう人間は、第二次試験には落すかもしれない、そういう訓辞を与えた。われわれはかような一連のことを称して、一種の
思想調査
、良心に対する圧迫、主観に対する圧迫というように考える。なおこれを具体的に
調査
し、組織的に積み上げていくならば、
裁判所
の側で、
目的
に、有機的に、かような巧妙なる
思想
圧迫を
相当
やっておるのではないかと思われますが、私の方はまだ五、六人の話を聞いただけで、それを統一的にしておりませんから、今あなたに対して具体的にそれを追及することができませんけれども、これはあなたが今答弁されたような実情ではないわけです。またそうであるならば、こんな弁護士会の
雑誌
や「
法律時報
」に出る道理はない。
相当
こういう響きが出てきたことだろうと思うのです。私の耳に入ったのみならず、弁護士会にも入り、「
法律時報
」の記者の耳にも入った。
相当
広範な
範囲
にこういうことが行われたのではないか。私の聞いた二、三の実例はこうであります。 そこでもう一点お尋ねいたしますが、同じ二十七年なら二十七年に合格した場合に、十月に試験が発表になり、十一月ごろ面接が行われて、大体一月には
入所
の採否の
通知
が来るそうでありますが、これは大体同じように
通知
が出るのか、または非常に時期を異にして
通知
を出しておるのか。時期を異にして
通知
を出すならば、それはいかなる
理由
に基くのであるか、それをお答え願いたい。
鈴木忠一
16
○鈴木
最高裁判所
説明
員 面接は日を同じくして一律的にいたしますけれでも、採用の
通知
は一律的に行われないのが実際です。と申しますのは、面接で少しも問題のない、今言いましたように、健康的にも、経歴等についても問題のない者については、できるだけ早く採用の
通知
をしないと、
本人
も他の方に方向を転換されるようなこともありますし、
裁判所
の方としても、できるだけ多くを資格者の中から採用したいわけですから、そういう点で、面接の結果少しも問題のない者は、裁判官
会議
にできるだけ早くかけて、年内に採用の
通知
をしております。残る者はさいぜん申し上げましたような不健康的な者、それから過去の経歴上犯罪があるとか、起訴猶予があるというような者、そういう者があと回しになるのが実際であります。
猪俣浩三
17
○
猪俣委員
それならばなおお尋ねいたしますが、
司法試験
に合格して、しかも
入所
の願書を出しておる。しかし身元
調査
、面接、その他の
調査
によって、不健康な者は別として、あなたのおっしゃるいわゆる犯罪者——身分
証明
をつけなければならないから、大体犯罪者なんか願書を出せないと思うのだが、そんな者があるかどうかわからないが、犯罪者とかあるいは起訴猶予した者、その他学校で何か騒動を起して処罰された者——これなんかも、学生がストライキなんかやって譴責を食ったというようなことが直ちに問題になるということも私どもはどうかと思う、「
法律時報
」もそういうふうに批評をしておりますが、これはいいとして、こういう者で不採用になった者はどのくらいあるのですか。口頭試験に合格して願書を出して、
調査
の結果犯罪者というようなことがわかって、不採用になった者があるのかないのか。あったとすれば、今までに幾らあったでありましょうか。
鈴木忠一
18
○鈴木
最高裁判所
説明
員 その御
質問
の
趣旨
は、終局的に不採用ときまって、採用しないと決定された者という意味でしょうか。 〔
猪俣委員
「そうです」と呼ぶ〕 その意味ならば一人もございません。
猪俣浩三
19
○
猪俣委員
そうすると、あなたはさっき不適格者ということを言われたが、犯罪をやった者でも採用しているわけですか。
鈴木忠一
20
○鈴木
最高裁判所
説明
員 犯罪をやった者でも、その後大赦にあっているとか、執行猶予の
期間
を無事に過ぎた者であるとか、そういうような者は採用をいたしております。
猪俣浩三
21
○
猪俣委員
私は、今世論の問題になっておりまするものは、そういうことじゃないと思うのです。そういうことの
調査
なら当然のことだと思う。今この「
法律時報
」でも、「自由と正義」でも問題にしておりまするのは、そういう常識上考えて当然の
調査
そのことを問題にしているのじゃないと思う。さっき私が二、三の例を申し上げましたように、過去において労働組合の
委員長
をやったとか、過去において何か学校の学生運動を指導したとかいうような者に対しては、根掘り葉掘り、いずれの政党に投票したかまでも
質問
している。そうして、その一問一答が
最高裁判所
に提出せられておるのじゃなかろうか。なおまた、修習の途中において、公務執行妨害罪として起訴されるかされないかという、これは純然たる学問的な問題だ。しかるに、不起訴の起案をした者に対しては、落第するかもしれぬということを訓辞する、かようなことが修習の
目的
にかなうものであるかどうか。ことに検事は、刑事訴訟法上便宜主義を持っている。ある事案に対して、起訴すべきか不起訴にすべきか、ある
程度
の便宜主義をもってやっているわけだ。しかも題が公務執行妨害罪という題である。それに対して、こんなものは起訴する必要がないという起案をすると、反権力的
思想
の持ち主だ、こんな者は落第するかもしれぬというようなことを言う。あなたはそういう事実はないとおっしゃるのですか、そういう事実はまだ調べてないとおっしゃいますか。実際の指導に対して、一体指導官はいかなる言動をやっているのか、そういう言動が響いてこういう
雑誌
に出てきたのじゃないですか。それに対するあなたの所見を承わりたい。
鈴木忠一
22
○鈴木
最高裁判所
説明
員
最高裁判所
が
司法修習生
を採用いたすときにも、さいぜんも申しましたように、その個人個人の
思想
を
調査
するということはしておらないのです。個人々々のやった経歴、その行動を、どういうことをやったかということについては
調査
をいたしますけれども、どういう
思想
を抱いているかとか、どういう政党を支持しているかとか、まして投票したかというようなことはしたことはないと思います。かりに投票したかというようなことを言ったといたしましても、それはおそらくそのときのはずみで言ったもので、いわゆる
思想調査
とか、何政党を支持するかということを
調査
するために言ったのではないと私は確信しております。 それからなお、研修所に入りました後に、研修所で各修習生の
思想
を
調査
するとか、ないしはある種の
思想
に対して圧迫的な態度に出るとかいうようなことは、これは絶対と申してもいいほどないのじゃないかと思います。ただいまおあげになりました例は、高裁の検察官とおっしゃいましたので、私の方とちょっと管轄違いで、私が申し上げるのもどうかと思いますが、私の個人的な意見としては、おそらく修習生が検察庁に配属されておった場合、その検察庁における修習の際に起案をさせた結果について結論的に間違っておるというので、あるいは言葉がきつ過ぎたかもしれないと思いますが、そういうことを言っただけのことで、公務執行妨害罪について不起訴の裁定をしたからといって、それに対して非常に反権力的な焼き印を押してしまうというような
趣旨
ではないのであります。その結果が普通の検察官の感覚としては不起訴裁定をすべからざる場合なので、そういう意見を出されたのではないかと思います。司法研修所に入ってからの生活というものはかなり学科の方面で忙しい面もありますけれども、自由な面が非常にあるので、私は司法研修所に入ってから後の
思想調査
ないしは
思想
的な圧迫というようなことは絶対にないと信じております。また現在の司法研修所はそう信用していただいていいのではないかと私は思います。
猪俣浩三
23
○
猪俣委員
私どもも実は今までそう思っておりました。ことに
裁判所
に
司法修習生
の採否を決せしめたところに、行政官を排除したところに法の深いもくろみがあった、私どもさように考えておりましたが、最近そういうことがひんぴんと私どもの耳に入るのみならず、
雑誌
に堂々とそれが出てきた。そこで私はお尋ねしたのであります。あなたのように根も葉もないというような答弁だとこれは困るのでありまして、多少
調査
してもらわねばならない。私は具体的な名前もあれも全部知っておるのです。ただし修習中はその事実をみな隠してしまってしゃべらないのです。万一それがばれて落第でもさせられちゃたいへんだという頭がある。修習を終りますとみんなばらばらになりますので、そのためにたくさんの人からたくさんの問題をとることは困難であるのですが、四、五人のを私は知っておる。今何党に投票したかということを聞いたはずはないと言うが、これは現に聞かれておる。それはあなたのおっしゃるような軽い意味で言うたかどうか、これは主観的な問題でありますが、聞かれた人間は非常にショックを受けておる。これは御存じのように近ごろ
会社
で社員を採用するときには、お前何党に投票したか、何党を支持したかと聞く。大体みな自由党を支持した、こう答える。近ごろ民主党もふえてきたが
社会
党なんというものはめったにない。心理的圧迫です。
会社
の入社試験にそういうことが出てきた。私どもは実にまゆをひそめたのでありますが、もしさようなことが
司法修習生
の採用の際に出てきたとしたらゆゆしき大問題だ。私どもがこの心配をいたしますのは、大体今の
最高裁判所
の長官の田中耕太郎さんという人は、ちっと異常な反共の闘士であります。裁判官としては度が過ぎておる。
昭和
二十七年に、八十八人の弁護士から裁判官弾効法による訴追の
請求
を田中耕太郎氏は受けておる。その訴追の
理由
は、あまり極端な反共的な言辞、ソ連や中共をまるで強盗、強姦犯人にたとえたような裁判官に対する訓辞をしておる。そうして中立を唱える者を全部実に勇気のないダラ幹であるかのごとく罵倒し、かような反共でこり固まっている長官をいただいておるその裁判官
会議
で、この採否を決する。そうしてその材料を、諸君が、いや何党を支持したことの、いや労働組合の執行
委員長
をやって何をやったことの、そういうようなことを根掘り葉掘り聞いて提出すると、どういうことか起らぬとも限らぬ。この司法研修所は申すまでもなく、裁判官になる人だけではない、在野法曹になる人もたくさんある。近ごろ弁護士になる人が多い。しかるにかような一種の
思想
的弾圧をほのめかすような、採否を決する際にさような
調査
をせられたり、
入所
してからも、さような一方的な、反共的な訓練みたいなことばかりやられる。これでは正義、中正な、良心的な訓練が僕は失われると思うのです。それでゆゆしき問題として私は
裁判所側
にこの
質問
をしておるのであります。そうして何党に投票したかというようなことも、これは現実のことであります。そうして一カ年間
理由
なしに
入所
を延期せられた人物がある。おそらくその人物自身は、自分が労働組合の執行
委員長
をやったことがあるためであろうと理解しておる。さような理解をせられておるところに、これがもし誤解であったとしても、何らかの不
利益
があると見なければなりません。一カ年間も
入所
を延期した者があるかないか、あなたはそれを
調査
なされたことがあるかないか、今御存じであるかどうかをお答え願いたい。
鈴木忠一
24
○鈴木
最高裁判所
説明
員 一カ年間延期された例はあります。そのあれは多分こういう観点できめられたものと思います。つまりさいぜんからおっしゃっておりますように、
司法修習生
は、将来判事、検事または弁護士になるのが百人のうち九十八人まではおそらくそうだろうと思います。司法研修所を出て、そのどれにもならないというものはおそらくないのでありまして、どれかになるわけでございます。そういう弁護士にしろ、検事、裁判官にしろ、これは
法律
に従い、憲法に従い、規則に従って行動するものであることは申し上げるまでもないことであります。そういう場合に、憲法をじゅうりんし、
法律
を無視し、規則に従わないというような性格ないし傾向があると見られるような場合に、
司法修習生
は公務員ではありませんけれども、御承知のように公務員に準じて大学出の普通の者よりもむしろ高い報酬をもらっております。しかも二年間の修習を受けた後少しの負担、何らの義務というようなものも負担をしておらない、これは申し上げるまでもないことであります。そういう面からいいまして、少し大げさになるかも存じませんけれども、憲法を無視し、
法律
を無視し、規則を無視するというような傾向の者、そういう性格が強い者、これはやはり裁判官、検察官にはもちろんのこと、弁護士としても困るのではないか、そういう観点から、具体的な事実があった場合にそういう傾向が強過ぎるというような場合は、少し様子を見ておったらどうかというようなことで、一年延期をして様子を見ておったというような例も、私の記憶に確かにございます。しかしそれは何も、ある種の
思想
を持っておるからとか、ある種の傾向を持っておるからということに対する単なる毛ぎらいとか好悪とかいうような問題でなく、ただいま申し上げましたような職務の性質上、最も憲法の線に従った行動をしなければならない、その行動をすることのできない、ないしは違反するような性格があっては困るではないか、しかし若い諸君のことでありますから、そういう傾向が若干見られたとしても、それをとらえて最後まで門戸を閉ざすというようなことはまた行き過ぎだろうから、しばらく様子を見ようという意味で、一年延期されて採用されたという例が確かにございます。しかしその意味は今申し上げましたような
趣旨
でございます。
猪俣浩三
25
○
猪俣委員
あなたの
説明
はどうも納得いたしかねます。大体裁判官になるにいたしましても、良心の自由ということが裁判官の最大の資格でなければならぬ。いわば
司法修習生
になるような人間に一体憲法を否認する人間があるか。たとえば共産主義を信奉しているということだけで憲法を否認するのだということになるか。元来共産党なる政党は合法政党として存在している。そういう
一つ
の
思想
のみならず、団体をつくっても現下日本では合法政党になっておるのみならず、やはり国会というものを承認して、ここにも志賀義雄君というものは法務
委員
になって出てきておる。共産党員であったら、直ちにこれが今の憲法を否定しているということは言い得るか。いわんや共産主義という
一つ
の
社会
主義——これは政治上の主義です。それを持っておることで、直ちに憲法を否定しているのだ、あるいは
法律
を守らぬやつじゃないかというふうに考える、ソ連とか中共との友好関係を説く人を、すぐさまこれは赤だというような判定と同じような、乱暴な素朴な議論になる。共産主義を奉じていること即現行の憲法を現実において否認しておる、
法律
を一切否認しておるということにはならぬと思う。もしその一カ年あなた方が採用を延期された人間について具体的に考える場合において、それは一体どういう事情で一カ年間——何か犯罪でも犯したというのであるか。あるいは共産党にでも入党しておったというのであるか。いかなる事情で一カ年間
入所
を見合せたのであるか。その辺の
説明
は、私には具体的にはわかりません。共産党にでも入って破壊活動防止法に触れるような行動でもやったというのであるか。ただ共産党員であるということであるのか。あるいは共産党員でもないが共産主義の信奉者だというのであるか。いかなる段階の人間を目して、憲法をじゅうりんするおそれがある、
法律
規則をじゅうりんするおそれがあるというふうに断定したのであるか、そこが問題だと思う。田中耕太郎氏が「ジュリスト」の一月号に、裁判官も検察官も弁護士もみな
一つ
の資格条件があるというような
論文
を書いておる。それはあなたのおっしゃらんとする、憲法をじゅうりんするような、
法律
を無視するような者はというような前提のようでありますけれども、じゃ具体的にその一カ年間猶予せられた人間が果して一体それに該当するのであるかどうか。田中耕太郎氏のような反共観念の猛烈な、ソ連、中共を強盗犯人にたとえるような人間から見ると、大ていの人間はみな資格を失ってしまう。そこで私どもはそういう主義や良心的なことに対して、採否を決定したり、あるいはおどかしたり、さようなことをすることは、ほんとうの正義観念、ほんとうの良心的な行動をする青年をしてゆがめてしまうと思う。そしてこれはまた将来大きな問題になると私は思うのです。
会社
の採用試験みたいなことになってしまったら大へんなことだ。そこで私どもはこの
質問
をしたのでありますが、その一カ年間猶予したと称する、様子を見ようとした人間が、どういう行動、いかなる
思想
を持っているためにそういう態度に出られたのか、もう少し詳細に私は報告してもらいたい。それが今おわかりであるならば、具体的にこういうことをやったからこうしたというふうに承わりたいし、具体的におわかりにならなかったら、一カ年間
入所
させなかった
理由
についてもっと詳しく御答弁願いたいと思います。
世耕弘一
26
○世
耕委員長
猪俣
君にお諮りいたしますが、最高裁の
司法行政
に関する
調査
は、今後さらに具体的に進められると思いますが、そのときにさらに掘り下げて質疑応答される
機会
をとらえられたらどうかと思います。なおこの際鈴木局長の方でも、もし具体的な事例をお持ちでないために御
説明
できなかったら、次の
機会
をとらえられることがかえって便宜かと思いますので、議事進行の都合上御参考までに申し上げておきます。
鈴木忠一
27
○鈴木
最高裁判所
説明
員 ただいま
猪俣委員
からの御
質問
は、どういう具体的な事実をとらえてそういう結果にしたのかという御
趣旨
でございますけれども、その具体的な
理由
というのを私今宙に覚えておりませんが、記録が多分残っておると思いますから、それに基いて後日お答えをいたしたいと思います。
猪俣浩三
28
○
猪俣委員
それでは私はその具体的な事実をお答えいただいてからなおまた質疑を続行させていただきたいと思います。きょうはここで終ります。
世耕弘一
29
○世
耕委員長
この際参考人の決定についてお諮りいたします。すなわち人権擁護に関する件について先般来
調査
を進めて参りましたが、選挙違反の取調べについてなお
調査
を進める必要があると思われますので、参考人を本
委員会
に招致いたしたいと思います。そこで森達雄君、橘基一君、亀田昇君、大津義兼君、斎藤利勝君を参考人とするに御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
世耕弘一
30
○世
耕委員長
御
異議
がなければ、以上の五名を参考人として決定いたします。 なお参考人の招致の日取り等については
委員長
に御一任をお願いいたします。本日はこの
程度
で散会いたします。 午後零時十九分散会