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1955-05-14 第22回国会 衆議院 法務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月十四日(土曜日)     午前十一時十二分開議  出席委員    委員長 世耕 弘一君    理事 山本 粂吉君 理事 馬場 元治君    理事 福井 盛太君 理事 田中幾三郎君       今松 治郎君    椎名  隆君       高木 松吉君    高橋 禎一君       長井  源君    林   博君       生田 宏一君    田中伊三次君       横川 重次君    淺沼稻次郎君       佐竹 晴記君    志賀 義雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 花村 四郎君  出席政府委員         法務政務次官  小泉 純也君         警視長         (警察庁刑事部         長)      中川 董治君         検     事         (刑事局長)  井本 台吉君         法務事務官         (矯正局長)  中尾 文策委員外出席者         法務事務官         (東京矯正管区         本部長)    巣山 末七君         法務事務官         (東京拘置所所         長)      川上  厚君         大蔵事務官         (主計官)   大村 筆雄君         参  考  人         (警視庁刑事部         長)      金谷 信孝君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 五月十二日  委員吉田賢一辞任につき、その補欠として木  下哲君が議長指名委員に選任された。 同月十三日  委員永田安太郎君は死去された。 同月十四日  委員松永東君、小澤佐重喜君及び古屋貞雄君辞  任につき、その補欠として松岡松平君、田中伊  三次君及び稻村隆一君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員田中伊三次君辞任につき、その補欠として  小澤佐重喜君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月十三日  岐阜地方家庭裁判所庁舎建設促進に関する請  願(楯兼次郎君紹介)(第六三一号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  法務行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 世耕弘一

    ○世耕委員長 これより法務委員会を開きます。  この際お諮りいたします。すでに御承知のことと存じますが、当委員会委員でありました永田安太郎君が昨日逝去されました。まことに哀悼痛惜にたえません。ここに本委員会は、決議をもって御霊前に弔詞をささげたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 世耕弘一

    ○世耕委員長 御異議なければさよう決定いたします。なお弔詞委員長の手元において作成いたすことにいたします。御了承を願います。  次に、本日は法務行政に関する件について調査を進めることになっておりますが、ことに一昨日来世論を高めておりまする東京拘置所死刑囚脱走事件その他につきまして、調査を進めたいと思います。まず法務大臣から発言を求めておりますから、これを許可いたします。花村法務大臣
  4. 花村四郎

    花村国務大臣 委員会開会劈頭に当りまして、一言おわびを申し上げておきたいと思うのでございます。  今般東川拘置所重罪犯刑事被告人逃走事故を引き起し、各方面に多大の御迷惑をかけ、また御不安を与えておりますことは、まことに申しわけのないことでございます。東京拘置所は一昨年二月にも同様の事故を起して、当法務委員会でも問題とされましたいきさつもございますので、私どもといたしましても極力これが欠陥の除去や、あるいはまた管理方法改善努力をして参ったつもりでございまするが、はからずも今回またもや同様の不祥事を重ねることに相なりましたことは、まことに遺憾この上もないことであると存じます。  不幸にして、いまだその逃走者を逮捕いたしておりませんので、今回の事故がどのようにして起ったのか全貌は明らかにされておりませんのでございまするが、職員の側におきまして職務上の解忠管理上の欠陥のありましたことは明らかでありまするので、その責任をすみやかに光明して、さらにまたこれが改善方法をも急速に講じることにいたしたいと存じます。今後再びこのようなあやまちを繰り返すことのないようにするために、一そうの検討と工夫とを重ねまして、必要有効な措置をとって行く決意をいたしておるものでございます。  なお本件の詳細につきましては、関係政府委員から詳細に説明をいたさせることにはからいます。
  5. 世耕弘一

    ○世耕委員長 私からも一言申し上げたいと思いますか、近来物質的な考えが強くしてかえって精神的な働きが非常に衰えておるということは、遺憾千万だと思うのであります。特に機械力に依存して精神力弛緩していることはいなめないと思うのであります。この結果、最近大きな事件が頻発していることは、交通機関においてこれが顕著に現われております。いやしくも国家社会に奉仕する者は、人倫の道と道義観念をさらに高揚する必要があるとかように考えられるのであります。本日これから、ただいま申し上げた問題についてそれぞれ質疑応答があると思いますが、こういう観点からも十分論議を尽されることを希望いたします。  次に中尾矯正局長から一応報告を求めておりますから、これを許します。中尾局長
  6. 中尾文策

    中尾政府委員 今回申しわけのない事故を起しておりますが、その詳細な御報告を述べさしていただきたいと思います。  逃走いたしました者は栃木県に本籍がございまして、入所当時もやはり栃木県に住んでおった者でございますが、大正十五年生れ、数え年本年三十歳になっております。農業をやっております。事件強盗殺人被告事件でございまして、昭和二十八年六月九日に宇都宮勾留処分になっておりますが、一審が宇都宮の地方裁判所で死刑の言い渡しがありまして、それを控訴申し立てをいたしましたが、そのために昭和二十九年の三月三日に東京拘置所宇都宮から移されております。昭和二十九年九月二十九日東京高等裁判所控訴棄却になっておりますが、後直ちに十月八日に上告の申し立てをいたしております。判決は死刑になっております。名前は菊地正というれでございます。  この逃走いたしました状況の詳細の正確な点は、ただいま大臣が申し上げました通り本人をまだ逮捕いたしておりませんので、不明瞭な点もございますが、ただいままでに私たちの推定し得る範囲で申し上げますると、一応逃走を発見いたしましたのは一昨日、十二日の午前七時半ごろでございます。この時刻はちょうど中に入っております者の点検と申しまして、一々所在を確かめていくわけでございますが、そのときになりまして本人がいないということがわかったわけでございまして、いつ逃げたということにつきましては実は今のところあまり正確にはわかっておらないのでおります。臨検をやっておりました看守報告によりますると、五時過ぎには一応本人を確認しているわけでございますが、しかしこれもあとで調べてみますると、ふとんの中に雑物を突っ込んでふくらませてあったというようなことで、あるいはもうそのときにいなかったのを、そういうことのために本人がいるというふうに誤認をしたのかもしれません。最小限度本人所在がわかっておりまするのは、十一日夕方の七時四十分、このときには本人が便器のふたに腰かけて外をながめておったそうでありますが、これを確認した看守がおりますので、その上きまでのことははっきりわかるわけでありますが、その後何時ごろ逃げたかという点につきましてはまだわかっておりません。本人を入れてありまするのは、拘置所北舎と申す建物の三階の独房になっておりますその独房で一人おったわけてありますが、鉄格子を、ちょうど二重になっております内側の簡単な窓のワクのような程度のものでありますが、それを切り、今度は窓の外側鉄格子、それは直径が二センチとちょっとあるわけでありますが、ここに実物を持ってきておりますが、それを、両方を切り取りまして、それから房外に出て屋根の上に飛び降りまして、そうして構内の屋根の上からだんだんと外の方に続いておりましす屋根の上を歩いたのでありますが、その途中に二カ所ばかり有刺鉄線が張ってあった。その有刺鉄線を切り取りまして、そして最後に事務所の方の屋根に上りまして、そこから表へ飛び降りたらしいということに想像しておるわけであります。その方法は、金切りのこぎり、これは小さいものでありますが、これくらいの金切りのこぎり、それを用いた。これは切れはしになっております。そしてこれははしでありますが、はしと、はたきの柄だと思いますが、これではさみまして、そしてこれはおそらくははたきのきれじゃないかと思いますが、そういうものでくくってある。これを使ってその鉄棒等を切っております。切られた鉄棒等はここにありますが、これがちょうど五本か六本――こういうもので、これよりちょっと大きいくらいのものが四段階になっておったのでありますが、ちょうどこれがこうあって、ここに、横に帯鉄ですか、それがあって、その帯鉄の真下のところを切っております。そうしてこの切り口を見ますと、少し古くなっておりまして、こちらの下の方が新しい。想像いたしまするのに、この古い方はおそらく数日前から切ってあったのだろうと思います。そしてここが新しいところを見ますると、逃走の直前くらいに切ったのではないかというふうに思われます。これを切ってみますると、大体四十分くらい、どんどんやって四十分かかるというふうに推定しております。それでこれがちょうど有刺鉄線のところに捨ててあったのでありまして、おそらくこれを使って逃げたのだろうということができるだろうと思います。ちょうどあそこの構造が都合悪くできておりまして、一たん屋根の上に上りますとだんだんその屋根を伝って行ってそうして表の方に、相当の困難はありますがいろいろくふうをこらしていけば外に出られないことはないというようなことになっておりますので、この前の失敗にかんがみまして、そこに有刺鉄線を二カ所張りめぐらしたのでありますが、しかしその裏をかかれたというような申しわけない次第になっておるわけであります。  それで発見をいたしまして、すぐ必要な処置をとったわけであります。近接の各署から警務官応援をたくさん派遣いたしまして、それと一緒になりまして、多いときは百九十四人、四十九カ所に張り込みをいたしましていろいろ捜査をしたわけでありますが、とうとうこの四十八時間以内、四十八時間と申しますると、刑務所の職員が逮捕できまする限度の時間でありますが、その時間内にはとうとう逮捕することができなかったわけでございまして、今しかし私たち職員応援に繰り出しまして警察の方で捜査をしていただいておるというわけでございます。  それでどういう点に欠陥があったかということが私たちの一番真剣になって考えなければならない点でございますが、根本問題といたしましては、やはり職員士気弛緩があったということは、これはもう私たと否定することができないと思います。もちろん物的な設備の上におきましても不備はございますが、しかしこの不備職員士気の緊張によりまして相当程度補うことができるわけであります。たとえば私たちの方はこれを捜検と申しますが、居房検査、これは定期にいたしております。現にこの本人のおりました部屋も今月になりましてから三回ぐらいいたしておるのであります。そのときにはいろいろな所持品を全部調べるとかあるいは畳なんかを上げていろいろだ隠匿物がないかどうかというようなことを調べるとか、あるいはふとんなども調べますし、なおまた今回逃走を許した一番原因になりました鉄格子なにかにつきましても、一々たたいて異常がないかどうかということを調べているわけであります。しかしそのときの調べ方にもう少し念を入れてやれば、こういう程度にまで切っておるものを発見できたに違いない、というのは十一日にも検査をしているわけでありますから、そのときに切り口というものは発見できたと思うのでありますが、ついに鉄棒が切ってあったことを発見できなかったというような点は、これは明らかに士気弛緩というほかはないのであります。途中に有刺鉄線を張りめぐらしておりまして、私たちの方では実はその程度で大体いいんじゃないかというふうについ油断をしておったわけであります。しかし屋根の上に出てしまいますと、なかなか職員の目が届きにくい、しかも夜間なにかに屋根の上に上られますと、何かの道具を持っておりましたならば、その有刺鉄線にいろいろな細工をするということは十分できるわけでありまするが、ついその点について考えが足らなかったために、ゆうゆうあの屋根の上で有刺鉄線を破る作業をやられたということになったわけであります。ついその有刺鉄線にたより過ぎたという点が私たちの第二のミスであったと思うのであります。  それで今後はどういうふうにするかということでございますが、もちろんこれは一そう職員士気を振興する、訓練に力を注ぐということ、またいろいろ監督上の注意も十分にしなければならないということもいたしますが、同時に今回のこの有刺鉄線失敗にかんがみまして、ここのところに幾らか高い障壁を作る必要がありはしないかと考えております。なおまた予算上の点でこれまで私たちもちゅうちょしておったのでありますが、できますならば鉄棒等を鋼鉄に変えたい。少くとも死刑関係収容者を入れますところの数十の独房につきましては、そういうような鉄棒等考えなければならぬというふうに考えております。しかしいずれにいたしましても、そういうような施設がございましても私たち職員がもっと緊張し、もっと注意深くやったならば、この程度のものは防げるわけでありまして、現に全国的にこういうものを相当防いでいるわけでございますので、この点につきまして、なお一そう今後努力をいたさたければならぬというふうに考えておるわけてございます。それで現在のところは、相当職員応援に各所から参っておりますが、何分にも法律で許されておりますところの四十八時間という時間か経過いたしましたので、一応私たちの方の職員によりますところの張り込みというのは最大限度に減らしまして、あとは一般の警察関係に対する応援という姿に切りかえなければならないような実情になったわけであります。法定時間内に逮捕できなかったという点につきましては、重ねて私たちは残念に思っておるわけであります。以上をもちまして、私の御報告といたします。
  7. 世耕弘一

    ○世耕委員長 それでは質疑に入ります。松岡松平君。
  8. 松岡松平

    松岡(松)委員 この件についてまず事実関係から少しお聞きしたいのですが、後に法務大臣並びに婦正局長にもお伺いいたしますが、まず所長にお伺いします。あなたは昭和二十八年の二月ころの前回脱走した当時の所長でしたか。
  9. 川上厚

    川上説明員 そうであります。
  10. 松岡松平

    松岡(松)委員 あの事件のときに起ったと同様に、今回はやはりこの格子を切られておるのですが、そのときにすでに本院からこの普通鋼材鉄棒では、やすり及び金のこで切られるから、これを特殊鋼にしなければいけないということをあなたに言ったはずなんだ。それに対して適切な処置を講ずろと言われたはずなんです。あなた自身もその点を大体記憶しておられますかどうか、お伺いいたしたい。
  11. 川上厚

    川上説明員 記憶しております。はっきり記憶しております。
  12. 松岡松平

    松岡(松)委員 そうすると、それは全然その後改善していないのですか。
  13. 川上厚

    川上説明員 改善しておりません。
  14. 松岡松平

    松岡(松)委員 その事件の後に改善された個所は一体どういう施設なんですか。それを説明しでいただきたい。
  15. 川上厚

    川上説明員 施設上で改善をしたところはバリケードのところだけであります。     〔松岡(松)委員写真川上説明員に示す〕
  16. 松岡松平

    松岡(松)委員 この写真にあった、これを張られたんですね。
  17. 川上厚

    川上説明員 それと、そのビンのかけら……。
  18. 松岡松平

    松岡(松)委員 これですか。
  19. 川上厚

    川上説明員 これはもう一つこちらにあるわけでございます。
  20. 世耕弘一

    ○世耕委員長 ちょっと当事者に御注意申し上げますが、記録を明確にするために、なるべく発言のときにそれぞれ委員長をお呼びを願いたいのと、資料を提出のときにも、同様にお願いをいたします。
  21. 松岡松平

    松岡(松)委員 そうすると、二十八年二月の逃走事件後に施設した有刺鉄線々破って今度の場合に逃げたわけですね。
  22. 川上厚

    川上説明員 二カ所つくったのでありますが、手前の方はどうもくぐったらしい。そこが一番上るのに困難なところであります。それは廊下から上まで約八尺ある。それから脇にちょっと高くたったところがあります。そこから上までは五尺九寸、そういうことでここをしろことは非常に困難な場所でありますところに有刺鉄線を取りつけ、なおかつそこヘコンクリートでもって、ビンをかいたとげとげになったものを植えつけたのであります。
  23. 松岡松平

    松岡(松)委員 切られた内側の窓というのは写真のここですか。
  24. 川上厚

    川上説明員 内側回転窓にたっております。回転窓のところが回転し切らないように、とめるために細い平ったい鉄の棒が入っております。切られた方はそれであります。一番下を切られたのでおります。
  25. 松岡松平

    松岡(松)委員 実物はないのですか。
  26. 川上厚

    川上説明員 上の方は切ってありませんから持って来ておりません。
  27. 松岡松平

    松岡(松)委員 外は今出ている二十二ミリの丸峠ですね。
  28. 川上厚

    川上説明員 その方です。
  29. 松岡松平

    松岡(松)委員 ここは下からこの辺をとって……。
  30. 川上厚

    川上説明員 上は帯金があるのであります。そこで丸く帯金に穴があいて棒が通っております。その座金のつけ根のところを切断したのです。
  31. 松岡松平

    松岡(松)委員 どれに当るのですか。
  32. 川上厚

    川上説明員 ぎざぎざのあるとろであります。
  33. 世耕弘一

    ○世耕委員長 質疑当事者に重ねて御注意申し上げますが、記録をする上において明確を欠きますから、どうぞ順序よく御発言を願いたい。
  34. 松岡松平

    松岡(松)委員 この出されておる証拠物ぎざぎざのあるところが……。
  35. 川上厚

    川上説明員 そうであります。
  36. 松岡松平

    松岡(松)委員 これは下ですが。
  37. 川上厚

    川上説明員 全体がすべすべした方が下であります。
  38. 松岡松平

    松岡(松)委員 この下の方ですか。これは間違いなくはずしたままの状態ですか。
  39. 川上厚

    川上説明員 さようであります。大体私たちが予想をしますに、上のところは座金についたところを切ってありますので、それで一部分残してあるわけであります。ですからそれは前日か、その前日ごろ切った、さびのぐあいからしてそう思えるのであります。それでその当夜ここを切って引っぱって上の方が折れたために、そこがぎざぎざになった、こういうふうに考えられるわけです。
  40. 松岡松平

    松岡(松)委員 私をして言わしめると、上の方は腐食しているのです。切断したときにすぐにこの腐食が起るものではない。下の方も腐食しておる。この腐食は切断して二、三日や四、五日たったものとは思えないのですが、これはだれか専門家に見せましたか。
  41. 川上厚

    川上説明員 見せませんが、その下の方などは、私がその朝行って見たときには、ぴかぴか光っていたのであります。腐食あとは見られなかったのであります。
  42. 松岡松平

    松岡(松)委員 この全体が光っておりましたか。
  43. 川上厚

    川上説明員 そうであります。その棒の切り口も光っておりましたし、下の方に一部残ったところがあるのでありますが、そこも光っておったのであります。
  44. 松岡松平

    松岡(松)委員 それではこの腐食はあなたが発見された後に腐食したのですか。
  45. 川上厚

    川上説明員 それは上ですか、下ですか。
  46. 松岡松平

    松岡(松)委員 これはあなたはさっき下だとおっしゃいました。
  47. 川上厚

    川上説明員 下は腐食しておらなかったのであります。あるいはその後さびがついたかわかりません。
  48. 世耕弘一

    ○世耕委員長 松岡君に御注意申しますが、それば専門的にわたるように思いますから、あらためて専門家に鑑定をしていただいてから論議を進められたらいかがかと思います。
  49. 松岡松平

    松岡(松)委員 わかりました。そこでこの発見されたのこの破片ですけれども、これはどこで発見されたものですか。
  50. 川上厚

    川上説明員 それはただいま申しました二番目の高いところの、バリケードの敷設してあるところ、そこが教誨堂でありますが、その教誨堂屋根に捨ててあったのであります。そのバリーケードのすぐそばであります。
  51. 松岡松平

    松岡(松)委員 のこの入手経路はまだわかりませんか。どうして逃走犯がこれを入手したであろうかという推定はまだつかないのですか。
  52. 川上厚

    川上説明員 今のところ、それはついておりません。いろいろと考えられるのでありますが、確定した点はわかりません。
  53. 松岡松平

    松岡(松)委員 それではお伺いしたいのですが、外部の巡視というものは、夜間は今まではどういうふうにして巡視しておったのですか。
  54. 川上厚

    川上説明員 夜間逃走のあったのは、ただいま局長からも御説明申しました通り北舎前三階十八号でございます。それでその前の房の外側鉄格子のあるところは回廊になっておるのです。その回廊の端に、きょう持って参りましたが、勤務表というのが張ってあるわけです。束と西の両方とも張ってあります。そこを視察していった場合には、必ずその勤務表に判を押しておくことになっております。それは巡回しておる看守が押す。その間監督の者が随時回ってそれを視察をし、また看守勤務しておる状況を確認をして判を押すことになっております。
  55. 松岡松平

    松岡(松)委員 その外部監視人というのは昼夜交代におるわけですか。
  56. 川上厚

    川上説明員 その看守勤務状態は、昼間と夜とは看守が違いますが、こういう夜勤の場合には――その北舎三階は前と右と左になっております。その前を一人の看守が受け持ち、それから右を一人の看守が受け持ち、左を一人の看守が受け持つことになっておりまして、その前の方を受け持っておる看守がそこを受け持って中から視察し、外から視察しておるわけであります。
  57. 松岡松平

    松岡(松)委員 中というのは、房の中の廊下を言っておるわけですか。――そうすると外を巡回しながら、外に看守がおるわけなのだから、夜でも巡回しているのじゃないですか。
  58. 川上厚

    川上説明員 御質問の外というのは、どこの場所の……。
  59. 松岡松平

    松岡(松)委員 あなたが先ほど御説明になった回廊です。回廊は歩けるようになっているのでしょう。
  60. 川上厚

    川上説明員 なって、おります。
  61. 松岡松平

    松岡(松)委員 その回廊を二時間に一ぺんとか一時間に一ぺんとか歩いているはずだと思うのですが、それは歩いていないのですか、歩いているのか。
  62. 川上厚

    川上説明員 それは歩いて視察しているのであります。大体一時間にそこを四回通っております。
  63. 松岡松平

    松岡(松)委員 そうすると看守は一時間四回というのは、その廊下を同じ場所を四回と言われるのですか、房一つの単位について。四回と言われると、ちょっとわからないのですが。
  64. 川上厚

    川上説明員 その廊下を四回であります。廊下へ出るには、ドアがありまして、そのドアを開いて外の廊下へ出て、それで西に行ったとすれば、西に行くと行きどまりになって、そこから行けないことになります。そこに勤務表が張ってあるのであります。そこへ行ったときに、そこで判を押すのであります。一番端まで行ったときに判を押す。それで戻って、今度は反対側東側としますと、東側の一番端に行きます。そこは行きどまりになってしまいます。そこにやはり勤務表が張ってありますから、そこへ行って判を押して、戻ってきて、さき申しましたドアから今度は内側廊下へ出るのであります。
  65. 松岡松平

    松岡(松)委員 そうすると四回というのはそれを四回、つまり昼の勤務とすれば、昼の勤務中四回ということを意味されるのか、夜の場合の四回を意味されるのか。
  66. 川上厚

    川上説明員 ただいま申しました四回というのは、夜であります。夜と申しますと、私の方では五時からであります。午後五時からがそういう勤務状態になりまして、翌朝の六時までそういう勤務状態であります。昼間の方にたりますと、これは主として監督部長が随時そこを巡視しておるのでありまして、担当看守がその外の廊下まで行くというようなことはあまりないのであります。
  67. 松岡松平

    松岡(松)委員 先ほど行刑局長から棒をたたきながら検査して歩くというようなことをおっしゃったが、その巡視中に何か鉄の棒でも持ってたたいて歩くのですか。
  68. 川上厚

    川上説明員 ただいまの御質問にお答えいたしますが、こういう鉄の棒がずっと並んでおるのであります。それを長さ約二尺の金の棒に柄のついたもの、それをもってたたいて、その音を聞くわけであります。または柄は木製で先に小さい金のついた金づちがあり、それでもってたたいて、その音を聞くわけであります。そこに何らかの異常があれば、音色が違うということを聞くわけであります。
  69. 松岡松平

    松岡(松)委員 その方法はわかりましたが、その四回のうちに、そういう方法で点検しながら歩くわけですか。それを聞いているのです。
  70. 川上厚

    川上説明員 夜の一看守の巡回はそれはいたしておりません。
  71. 松岡松平

    松岡(松)委員 先ほど言われたたたくというのは、いつやられるのですか。
  72. 川上厚

    川上説明員 たたくのは、大体昼間監督部長が一回たたいてみます。そのほか先ほどからもいろいろ申しました細密捜検の場合には、必ずそこをたたいてみることになっております。
  73. 松岡松平

    松岡(松)委員 逃走のあった十二日の前日、十一日に監督看守はそれをたたいたということについての調査をしておられますか。
  74. 川上厚

    川上説明員 そのときの監督部長ば金子という部長でありますが、金子部長に接して私が調査したところによると、たたいて、みた音色にかわりがなかった、こういうふうに言っております。
  75. 松岡松平

    松岡(松)委員 それは十一日ですか。
  76. 川上厚

    川上説明員 十一日の午前九時半ごろであります。
  77. 松岡松平

    松岡(松)委員 そうするとその巡視一区域、今の問題になっておる北舎の並びの部屋数はおそらく十以上もあるのじゃないかと思うのですが、少くともたたくといっても、一つの窓に一、二、三、四、五、六本ある。これを全部たたいていくようなことをほんとうにやっておるのですか、これははっきりしておいていただきたい。
  78. 川上厚

    川上説明員 やっております。監督部長がやる場合には、金づちでたたくことを必ずやっておるのであります。
  79. 松岡松平

    松岡(松)委員 それは金子の場合に、十一日に部屋の体六木たたいてみたというのですか。それからもう一つ、毎日各鉄柵の棒をほんとうにたたいているのか、重ねてお伺いします。
  80. 川上厚

    川上説明員 金子部長は、先ほど申しました前日の午前九時三十分に、北舎舎前の外側鉄棒を全部たたいたと言っております。これはさっき申しました小さい金づちでたたいておるのであります。
  81. 松岡松平

    松岡(松)委員 そうすると夜の看守はたたかないが、見張りはしている。少くとも四回この廊下を往復しているとすれば、一時間半に一回くらいはこの窓の下を通っているわけですね。そうするとこれだけの犯行が行われろことを目撃し得なかったということは、われわれにはちょっと考えられない。ことにこの鉄棒の上段を切断して、しかもそこから出て金綱を切って外に出るまでには、相当の時間がかかると推定しなければならぬと思う。そのときの看守はだれであったか。その看守について所長はどういう調査をしたか、その点を明らかにしていただきたい。
  82. 川上厚

    川上説明員 当日の北舎前三階の担当看守は増田看守、それから神谷看守、それから柘植看守、この三人で交代に勤務しております。この看守については、まだ直接当って調査しておりません。
  83. 松岡松平

    松岡(松)委員 そうすると十二日、十三日、きょうは十四日ですが、その間その交代に当った看守を調べずして、どうして逃走経路――ただ抜けていった、金網を切る、切られた鉄棒を見ただけで人間が看視しておらぬということになるのですか。小菅刑務所というのは人間は関係しておらぬきいうことになるのですが。
  84. 川上厚

    川上説明員 ただいまの御質問、私が直接この看守に当って調べていないと申しましたが、私の部下にそれぞれ管理部長、保安課長、区長という人がおりまして、この区長などは詳細にわたって取調べをしております。調査をして子の事情を聞いて、私に報告しております。
  85. 松岡松平

    松岡(松)委員 その報告、直接お調ベがなかろうと、あなたの部下である管理部長が調べようと、結局あなたが、その看守が巡回中に目撃しなかったという事実についての調査をなさっておいでになるのですか、その点を明らかにして下さいといっている。
  86. 川上厚

    川上説明員 ただいま局長の御説明にもおりました通り、夜の七時四十分、このときにはそこを巡回した看守は確かに便器に腰をかけておったのを見た。それは十一日の午後七時四十分ころです、そのときの看守は柘植看守であります。それから八時四十分に、このときやはり柘植看守が回っておりますが、これは廊下の視察孔といって房内を見る窓がありますが、東京拘置所は頭を窓の方に向けて寝ることになっておりますが、その視察孔というのぞき窓からのぞいてみたところが、菊地は確かに顔を上に向けて寝ているのを見たという、十一日の午後八時四十分です。
  87. 松岡松平

    松岡(松)委員 十一日の八時四十分までの監視状況はわかりましたが、その以後の状況は少しもまだわかりませんが、その以後のことを御説明していただきたい。
  88. 川上厚

    川上説明員 その後看守は必ず中側の廊下を回っているときに、中側の視察孔から中をのぞいて、本人が確かにいるかどうかということを確かめるのでありますが、それは大体寝た状態によって確かめているのであります。こういうようにしてその後においては顔を見たというのはありませんが、確かにふとんが寝た状態になっておったということは皆見ているのであります。ところがあし朝起きてみたところが、その中に荷物をまとめたものが入っておって、あたかも寝たごとく装っておった、こういう状態でありまして、実際何時に出たのかわからないのであります。
  89. 松岡松平

    松岡(松)委員 今の所長説明を聞くと八時四十分以後犯行発見に至るまでの間においては、結局房の中側から見た話で、外側のことはおっしゃっておらない。外側はどうなのですか。
  90. 川上厚

    川上説明員 外側からも見ているのであります。しかし顔は外側から見えない、ただふとんの状態が寝たかのごとくに高くなっておれば、その状態においてその外側から見た場合顔は見えません。これはうつぶせになっていると、あのときは黒いふろしきを持っておりましたが、それで物を包んでまくらのところに置きましたから、ちょうと髪の毛でもそこにあるように見えて、錯覚を起したと思われるのであります。
  91. 松岡松平

    松岡(松)委員 いずれ詳細は現場についてまた見せていただくかもしれませんが、今お伺いした状況で、看守並びに看守長及び所長以下、一体どの程度まて責任があると考えておられますか。――今の質問に続けてさらにあなたの理解を深めるために一言付加いたしますが、この逃走事件というものは、これは容易ならぬ事件であります。ことに強盗、強姦、殺人、この形相を見ても、猛悪そのもののごとき犯人であります。こういうものが東京に出ておるのは、トラを一匹放しておると変らぬですよ。都民はきょうぎょうとしておりますよ。前回逃走のとき、二人出たあのときの切断のところを一つ読んで、あなたの記憶を新たにされた方がいいでしょう。同じ方法でこれは出ておる。やはり下を切って上を切って出ている。そのときはやすりだった。今は金切りのこに変っておる。一体何のために看守がおり、何のためにあなた以下職員がおられるか。設備と人間が監視しておる。設備は物です。人的要素というものはあなた以下全部です。これが逃走を防止するために監視しておられるはずなんです。責任がどこにあるかということは直ちに答えらるべき筋合いのものだ。近時綱紀の弛緩しているということがしきりであります。まさにその標本だと私は考える。上からの処分を待つまでもなく、みずからのとるべき責任というもの、どことどことどこが範囲かということは、おのずからわかっていなければならぬ問題であると思う。即答せられたい。
  92. 川上厚

    川上説明員 ただいま御質問の点は重々胸にこたえて、私どもこれはほんとうに申しわけないと思っております。それで、もちろんただいま申された通り、設備と人とこの二つが一体とならなければ、何としても拘置所というようなところの秩序が保てないということは十分一承知しておるのであります。この前こういう事故が起き、さらに再びこういう事故が起きたということは、ほんとうに申しわけない。私としては、この点はもう言明するというより、私の腹の問題ですから、これは私も覚悟しております。
  93. 松岡松平

    松岡(松)委員 あなたの責任について覚悟をしておられることは一応わかります。しからば管理部長及び課長並びに看守長、看守に対する責任について個別的に御説明順いたい。
  94. 川上厚

    川上説明員 ただいま申しました通り、この二昼夜四十八時間というもの、私どもも二晩全く寝ないでやっておるのでありまして、何とかして逮捕したい、ただその一心でやっておりまして、実際この問題の職員の責任ばもちろんとらせなければならぬということば考えております。抽象的に考えておりますけれども、具体的にどうするかということは、ただいま実際の具体的事実を調べて、その責任の度合いというものがありますから、それを調査しないと、はっきりここでどうするかということは申し上げられないのであります。
  95. 松岡松平

    松岡(松)委員 私がくどく申し上げなくても、夜、人間三人からの看守を交代につけるようになっている監視機構で、ゆうゆうと金棒二本を切断されて、金網を破られて、そうして脱出されて、それで責任の所在考えているなんというのはおかしいですよ。責任のあることは問題ないですよ。議論する必要はないじゃありませんか。これでは人間なきがごときである。看守の必要はありません。所長の必要はない。要するに夜間所長以下管理部長であろうと誤長であろうと看守長であろうと、看守というものは全部眠っておるということに極言せられてしまう。監督も何もない。おそらくこれは責任のあることが明らかだ。問題はないのです。だから私の聞いておるのは、どこまで、だれとだれとだれが、この機構上責任を負うべき筋合いのものかを伺っておる。これについてあなたが疑問があるならば、私はこれから何時間かかってもやります。この問題について責任があるかなんて議論するだけやぼだ。金棒を二本、二十二ミリの丸俸を切断して出ていっておる。時間が二十分や三十分でできる仕事じゃありません。
  96. 川上厚

    川上説明員 ただいま申された通り責任があることだけばはっきりしておるのであります。その範囲の問題になりますと、まず所長は問題ない。それから管理部長、保安課長、それから北舎に区長といって看守長がおります。その補佐の監視をやらせている副看守長、その下に監督部長がおります。それから担当の看守、その他夜勤の交代でやる部長が二人おります。それから看守が三人、この十三人だけは何としたって最も責任の重いところであります。このほかこれに関連して、あるいはあと金切りのこの問題も出てくると思いますが、これは仮定でありますが、あそこでもって鉄棒を切る仕事などをやっておりますから、かりにそういう方から流れたとすれば、その方の責任者もまた責任を追及しなければならぬ、こういうふうに考えます。
  97. 松岡松平

    松岡(松)委員 矯正局長にお伺いしたいのですが、これに対する責任の所在についてあなたの御所見を伺いたいと思います。
  98. 中尾文策

    中尾政府委員 この問題につきましては今所長が繰り返し申しましたように、非常に深く責任を職員ば感じております。いずれ、さっき大臣も申されましたが、明確に責任の所在をできるだけ早く検討いたしまして、相当な処分をしなければならぬと考えております。
  99. 松岡松平

    松岡(松)委員 あなたの下僚に対する責任の処置について今ほど御所見を承わりましたが、あなた自身これに対する責任の点についての御所見はいかがですか。
  100. 中尾文策

    中尾政府委員 もちろんこの点について私自身の責任を十分に痛感いたしておりまして、このままでは済まないということは私自身考えております。ひとり東京拘置所の今回の事件ばかりでなく、いろいろな事件がいろいろなところに起っておりますので、そういうものを含めまして私自身に非常に大きな責任があるということを感じております。
  101. 松岡松平

    松岡(松)委員 さらに、対策に関連いたしますのでお伺いいたしますが、昭和二十八年二月の逃走事件の起った後、この棒を、こういう非常に危険な犯人の留置されている個所だけでも、少くとも特殊鋼に改造する予算の要求をされたことがありますか。
  102. 中尾文策

    中尾政府委員 実はその方の予算を要求することを差し控えたわけであります。それはその後東京拘置所の方で非常に自粛いたして参りまして、いろいろな点について職員士気も上って参りましたし、なお有刺鉄線を作るというようなことによりまして、相当程度の対策は立った。もちろん十分ではございませんが、何しろ予算の関係上、そのほかにいろいろたくさん作ってもらいたいものがございましたので、そういう面とにらみ合せまして、まあこの程度でやっていけるだろうというふうに判断をいたしたわけでありますが、その点につきましては十分私どもに責任がございまして、むしろこの点は拘置所長というよりは私の方に責任があるわけであります。
  103. 松岡松平

    松岡(松)委員 その金網を張られた鉄の、要するに鉄べいを立てられたということの御予算はとって、施設はやっておられるのに、そうしてあのときに問題になった普通鋼々材では切断容易であるから特殊鋼にかえなければならぬということは、私は痛烈にあなた方に希望したのに、なぜそういう点を自粛せられたか。必要なところなら仕方ないじゃありませんか。それをそういう必要なところだけはずしてしまって、金網に金をかけておる。私に言わせれば、逆です。金網の方は第二段、鉄棒を取りかえる方が第一段にやることであった。それをあのときにこの委員会で重ね重ね要望しておいたはずなんですが、その点は一体どうなんですか。
  104. 中尾文策

    中尾政府委員 まことに申しわけないことでありますが、さっき申し上げましたような事情で差し控えたわけでありまして、大へん恐縮に存じております。
  105. 松岡松平

    松岡(松)委員 どういうために差し控えられたのか。およそ治安を守るべき立場にある人が、治安に危険があると思っておりながらそれを差し控えるということは、治安をふさぐということと同じことで非常に重大なことである。
  106. 中尾文策

    中尾政府委員 実はこの治安の点はもちろん非常に大事でありまして、そういう点につきましても相当予算要求は毎年いたしておるわけでありますが、私たちが大蔵省から認められますところの実際の予算というものは、毎年私たちの要求をはるか下回るというようなものでございますので、まだほかにもらいたい予算がありました関係上、いろいろ考えたわけでありますが、この程度で、あと一つ人で補っていこうというように考えたわけであります。
  107. 松岡松平

    松岡(松)委員 そうすると、これはあとで、大蔵省の主計官も来ておられるので、これもお伺いしますが、あなたはこれについて十分な責任を痛感しておられるわけですな。
  108. 中尾文策

    中尾政府委員 さようでございます。
  109. 松岡松平

    松岡(松)委員 それに対する責任の処置をとられるお覚悟ですか。
  110. 中尾文策

    中尾政府委員 むろんさようでございます。
  111. 松岡松平

    松岡(松)委員 大蔵省の主計官にこの際――実は大蔵大臣にきょう来てもらいたかったのですが、主計官にお尋ねしたいのですか、一体法務省関係施設に対する予算に対しては、まことに大蔵省は、ことに当局の人たちは今まで非常に不親切であった。予算を切る傾向が非常に多い。今回の予算の編成に当っても、私どもはかなりこの点について強調して参ったのでありますが、今まであまりにも予算を切り詰めるから、こういう設備上の欠陥を生ずる一つの遠因をなしていると思うのです。おそらくこういう事柄に対して主計官自身は、治安の上から必要であるということを大蔵省当局が一体考えているのかどうか、一つ御返答を願いたい。
  112. 大村筆雄

    ○大村説明員 全体の財政の都合もございまして、非常に窮屈な財源の中でいろいろ国の施策といたしまして、各省それぞれ緊急にぜひやらなければならぬと皆様おっしゃるのでございますが、その中でも特に治安関係は国の基本的な施策でございますので、私どもといたしましても予算の中でも非常に重要に考えておりまして、特に施設関係につきましては本年度も引き続いて、一兆円の窮屈な中でございますが、特に約一億五千万円ほどの増額をいたしておる次第でございます。
  113. 松岡松平

    松岡(松)委員 今年の増額もさりながら、従来大蔵省は法務省関係の予算に対してはどうも冷たい。これは各議員がみな痛感しておる。だから綱紀の弛緩はさることながら、やはり設備の十全ということは何といっても物質的な裏づけ、結局予算である。大蔵省はこれを機会に、ことにこういう事態をもう少し具体的に痛感しておいていただきたいと思う。あなたの方の大臣並びに次官、局長にこのことを十分にお伝え願いたい。  最後に法務大臣にお伺いしたいんですが、これに対する責任の所在を明らかにし、その処分を明確にしていただくことについての御所見、並びに今後の再発防止に対する対策についての御意見を伺いたいと思います。
  114. 花村四郎

    花村国務大臣 本件発生に関しまする責任の所在については、冒頭私が申し上げましたように、すみやかにこれが責任の所在を究明して、しかるべき処置をいたしたいと考えております。  なおかかる問題の再び起きませんように、ただに小菅刑務所にとどまらず、すべての拘置所に対しても慎重なる考慮を払って、これが防止策の万全を期していきたいと存じております。
  115. 松岡松平

    松岡(松)委員 大臣の御方針を承わりました。私あわせて意見を申し上げておきたいと思うのは、洞爺丸事件、今度の紫雲丸事件あるいは今度の東京拘置所脱出事件等に現われた特徴を見ますると、少くとも官紀が弛緩しておるということを指摘することができると思う。これをどうすればいいか。結局政治面からいって責任の所在を常に明確にして、正しきは正しく、正しからざることは正しからざるとして明確に処置する。これを欠くならば、今後こういうことは続出いたします。この機会に大臣におかれて厳然として、個人的な感情、あるいは個人的な気持からいえば同情すべき点も多々あるので、時に裁断にひるみが出るかもしれませんが、そういうことにかかわりなく、今後官紀を粛正して、そして秩序を正すためには、冷然と敢然と私は処置していただきたいと希望する次第であります。
  116. 花村四郎

    花村国務大臣 松岡委員のただいまのお説ごもっともでありまして、私もすべて賛成をいたしまするので、その線に沿うて最善の方途を講じていきたいと存じます。
  117. 世耕弘一

    ○世耕委員長 この際山本委員 より簡単な関連質問の通告がありますので、これを許可いたします。山木君。
  118. 山本粂吉

    ○山本(粂)委員 本件についてば大体真相が明らかになったようだが、なお不明確な点があるので、この点をお尋ねしておきたいと思います。まず特別捜検と普通捜検とはどういうふうな日にちの割合で行われているか、それを聞きたい。
  119. 川上厚

    川上説明員 細密捜検は特別捜検班がきめまして、その人たちが大体二人から三人が一つの房に入りまして、これは中に被告人がみんないるわけであります。それでありますからその被告人を外へ出しまして、中へ入って全部……(山本(粂)委員「やり方は大体わかっている」と呼ぶ)間隔は細特捜検の方は大体十五日に一回くらいであります。ですから一月に二回くらいございますが、普通捜検の方は随時やって、運動に出た時間とか、それから入浴に出た時間とか、そのあいた時間を利用してやっておるのであります。それでありますから、これは何日に一回と口は切りませんが、私の方針では少くとも五日に一回はやりたい、こういう考えでやっております。
  120. 山本粂吉

    ○山本(粂)委員 普通捜査は随時やっておる、五日に一ぺんぐらいは必ずやるように命令している、それが大体行われているものと思う、こういうことであるが、そこで夜間の巡視と巡視との間の時間的間隔はどれくらいありますか。先ほどの答弁では、大体一時間に四回ぐらい廊下を巡視するということであったのだが、巡視と巡視との時間的間隔はどうりなっているか。もう一つは巡視の仕方、巡視するために房ののぞき口から常に房内をのぞいてみて、果して眠っているか、起きているか、あるいは便所へ行っているか、あるいは何をしているかというようなことを確認しながら巡視するのか、その巡視の仕方についてお尋ねしたい。
  121. 川上厚

    川上説明員 巡視の時間でありますが、例をとってみますと、北舎舎前三階に四十八カ房あります。その四十八カ房をただいまおっしゃった通りのぞいて、果して中に人間がいるかいないかということを確認して――またこの東京拘置所の視察孔は実は設備が悪いのでありまして、割合見にくい。これが一つの欠点になっております。それでもって、そういうふうにして歩きますと、それを一回り回りますと大体十五分かかります。ですから一時間の問は順次歩いているわけです。立っていてはいけないわけです。夜中になりますと一時間の勤務で二時間の休憩になってきますから、一時間の間は常に歩いてそういう視察をしておるのであります。ですから十五分に一回ずつは必ずそこを回る。この十五分という時間がこれまた問題でありますが、これは長い経験から生み出された時間でありまして、大体自殺を防止しようということからも十五分という時間が割り出されたのです。十五分にすると、かりにぶら下っておっても、それ以内ならすく発見して蘇生ができる。これがわれわれの先輩の長い体験等から割り出した時間でありまして、そういうことから四回回り、十五分にしている、こういうことであります。
  122. 山本粂吉

    ○山本(粂)委員 そこで、本件の起った現場をすぐにごらんになったあなたは、この鉄棒が上の方は相当日数がたっているように拝聴したのだが、下の方はぴかぴか光っていたというのだから、もちろん何日と正確には言えないだろうが、少くとも逃走したその前夜か、およそどのくらいの時間的間隔の間に切断されたのであろうかということの想定はしておりませんか。
  123. 川上厚

    川上説明員 ただいまおっしゃった通り、上の方は私はさびと見ているわけで、これは問題ない。ですから下の方は十一日より前、少くとも十日にさかのぼるのではないかと思いましたが、ぴかぴか光っていましたから、とにかくその晩でなければああいう光は出ない。時間にしても、私実際のところ専門家でないからわかりませんが、とにかくその晩のうちに切ったならああいう光を持っておるのではないかと考えております。
  124. 山本粂吉

    ○山本(粂)委員 それでは結論をお聞きするのだが、そうするとこの鉄棒逃走したその晩くらいに切られたのじゃないか、鉄棒の上の方は少くとも前夜約三分の二切られておって三分の一は残っておる、だから下の方を完全に切ってからでないとねじ曲げて切れない、そういう状態に置かれておったのだから、その前日または前々日くらいに特別捜検なり普通捜検なりをやったとき、金づちたり棒なりでたたいてみて、その金棒が特殊の音を発して欠陥が起っておるか起っていないかを確かめることができたかできないか、この点に対する所長としての感想はどうですか。
  125. 川上厚

    川上説明員 この点は、たたいて回る部長に聞いてみましても、実際問題としては少しぐらい切られても音ではわからないと言っております。これはまことに非科学的なやり方であります。それでそういうことがわからないのに無理にということも実際はできませんが、しかしわかるという人もいるわけです。非常に敏感な人もおります。ことに敏感な人はわかると言っておりますので、これを続けさせておるようなわけであります。その前の晩たたいた金子部長は気がつかなかったというわけで、このときにはすでに上が切られておったのを気がつがなかったと言っております。
  126. 世耕弘一

    ○世耕委員長 山本君ちょっとお待ち下さい。田中伊三次君から発言の通告がありますので、そのあとにしていただきたいと思います。田中君。
  127. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 刑務所の中における囚人同士の殺人事件、それから刑の執行停止中に、その停止された囚人が市中の病院に入院中に、善良な市民を殺害せんとしたいという、ここ数日前に起りました二つの事件について、花村法務大臣の所見をただしておきたいと存じます。  第一の、この刑務所内の殺人事件というものは、去る五月四日午後二時十分ごろ、京都刑務所の中の第一工場で作業中の囚人が、何か同性愛のもめごとが動機となって、仲間の囚人を殺害したという事件が起っております。それから、続いて五月十日の夜中のできごとのようでありますが、京都刑務所で刑の執行を停止いたしました囚人が外に出て、これは結核患者のようでありますが、博愛病院に入院しておりました最中に、善良なる二人の市民を殺害せんとした。これば命はとりとめたようでありますが、この二つの事件について、法務大臣関係当局者からの報告をお聞きになっておると存じますが、まずその経過についてどういう事情であったか御説明をいただきたい。
  128. 花村四郎

    花村国務大臣 ただいまの御質疑でありますが、最初の五月四日ですか、刑務所内の囚人との間における殺害問題を起したという事実につきましては、現場の方からまことに簡単な報告には接しておるのでございまするが、この種報告では真相を把握し得ませんので、さらに詳しき報告を求めつつあります。  それから第二の、執行停止中の囚人にして病院に入っておりまして傷害人件を起した問題につきましては、いまだ報告がございません。
  129. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 第一の刑務所内の同僚同士の殺人事件というものでありますが、一体この事件については、本省からは現場に人を出してお調べになっておる事実があるのかどうか、それをまず聞きたい。
  130. 花村四郎

    花村国務大臣 出しておりません。
  131. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 これはどうしてお出しにならぬのです。一体刑務所の中で殺人事件が起るなどというような、前例まれに見る事件が起って、その報告法務大臣のところに届いておる。その文書の内容は、いかなる動機で、いかなる原因でそういう事件が起ったものか、そういうことがその文書に明らうになってないというお話でありますが、それでは、なってないというものであるならば、人を派して現地の調査を慎重にやって、どういう動機、どういう原因でそういうことが起ったかということをすみやかにお調べになるということの熱意がなくちゃいかぬ。
  132. 花村四郎

    花村国務大臣 実はただいま御質問に相なりました事件報告を受けましたのは、五月の十日でございます。しかも詳しいただいま報告がないと申し上げたのですが、簡単な報告だけは届いております。こちらから派遣すべきことも一つ考え方ですが、御承知のように現地における検察当局が、この問題が起きるやいなや、多分法令に上って活動を始めておることであろうことは想像にかたくないと存じます。従いまして、早急に派遣せなければならぬという必要は認めないと存じまするが、ただいまおっしゃられたように、その重大性にかんがみ本日直ちに派遣する準備をいたしております。
  133. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 法務大臣の事の重大性にかんがみての熱意につきましては了といたします。そこでこれは調査官を本日直ちに派遣をされるについての一つの資料となろうと存じますから、私からここに申し上げておきますが、どうも勅機は、囚人同士の間における同性愛が原因のようでございます。これは当時における刑務所当局の新聞記事を読んでみましても大体一致しておる。それからその後検察当局で取り調べましたその内容が発表されておりますが、こういうものによりましても、同性愛によってこれが起ったということは、ほぼ一致せる意見のようでございます。  それから第二には凶器の問題でありますが、これはどうも工場の中にあった作業場のおのをもってうしろから切りつけた、それが致命傷とたったというのが真実のようであります。そのおのは一体どこにあったかと申しますと、それは作業場の中で、道具箱の中に入れてあったもので、その道具箱には何ら施錠がしてなかった。いつでも、どの囚人でも、その箱をみずからあけて、自由にその道具を取り出すようにできておった。しかも二百人近い従業員がおって、第一工場で作業をしておるにかかわらず、これを監視をしておりますものはただ一人である。たった一人の看守が、一工場全員についての行動というものを観察しておる。こういう状況のもとに、看守の近くに置かれておる道具箱の中にいろいろな道具が入れてあるが、その道具は何らの指図を必要とせずして、自由にこの道具を持ち出す。これは一体世の中に、気違いに刃物という言葉がありますが、凶暴な犯人に刃物を自由に渡しておるような感があるのじゃないか、こういうふうに考えますので、特に人を派遣してお調べになるに当っては、本件の動機が同性愛等にあるといたしますと、拘禁中のこういう同性愛を原因として発生することがあろうと考えられる事案につきましては、根本的に一つこれを調べて、その動機というものを徹底さしてもらいたいと思います。それから看守の配置ということにつきましても、これは深く実情について調査をされまして、数十年ぶりで、花村法務大臣の御意見によって、とにかく監獄法が大修正を加えられようとして、囚人の人権というものが重んぜられようとしているときでありますから、この同性愛などという問題をめぐる問題については慎重な調査を遂げていただいて、これを他山の石としたい、こういう考えを持つわけでございます。  なおこの第一の問題について法務大臣の御意見を伺ってみたいのでありますが、この刑務所は一昨年の秋にも死刑囚の殺人犯人が逃亡している。その逃亡当時におりました山本刑務所長は、今日も所長として在任をしておられるわけでございます。この所長が新聞に談話を発表している。その談話を読んで私はりつ然とせざるを得ない。ちょっと読んでみますと、山木所長の談話、このたびの事件は全く担当看守の不足が最大の原因で、自分たちばかり責任を負わされても困る。同性愛などということは事新しい問題でない。何年間も服役をし異性に飢えている人々が性に悩まされている事情にあるからして、本来本能に関する問題は、われわれの教育や措置ではどうすることもできない。それは不可能なことである。今後この種の事件を防ぎたいとは思うが、看守の増加が絶対に必要で、看守の増加が行われない限り、われわれだけにこの責任を負わされることは無理である。こういう意味の談話をどの新聞にも所長が出しているわけでございます。重天な責任を持っておる者が、おのれの職責を尽しかねるということを知りながら、その職にとどまっている。職にとどまっておりながら、看守の手不足ということを理由にして、自分に責任がないと言わんばかりの声明をするということは、先ほどの新聞にもありましたように、官紀の弛緩のはなはだしいものである。この新聞記事は今朝花村法務大臣の手元に人を出して差し上げておいたはずでございますから、この談話の内容につきましても、一体かくのごとき談話を出した事実があるかどうか、刑務所長はいかなる責任を感じておるかというようなことにつきましても、最高責任者として花村大臣は十分にこの点について慎重なお調べをいただきたい。この三点につきまして、特に派遣をされる役人に御指示の上でお調べをいただきたいと存じます。  それから第二の事件については、この刑の執行を停止してそうして民間の病院に入れたというのでありますが、この刑の執行停止の要件は、一体具体的にはどういう条件がそろうたときに、その囚人について、刑の執行を停止しておられるのが、具体的にどう扱っておられるのか、これをまず承わりたい。局長でもけっこうです。
  134. 井本台吉

    ○井本政府委員 御承知の通り刑事訴訟法の四百八十二条の規定によりまして刑の執行中の囚人に対して検事が執行停止の指揮をするわけでございますが、この第一号に「刑の執行によって、健康を害するとき、又は生命を保つことのできない虞があるとき。」というのが書いてございます。この条文によって問題の被疑者が執行停止になったのだと考えるのであります。この状況はおそらく刑務所の医者の診断が、かような者に対しては刑務所以外のところで治療するのが適当である、そうしなければ著しく健康を害するというような観点に立ちまして執行停止をするのが相当であるというようなことを、おそらく所長等を通じまして検察庁へ連絡があって検事の指揮によって執行停止をしたということになると存じます。
  135. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 これは犯人の性格であるとか狂暴性があるかないかというようなこと、外に出すということはトラをおりから外に出すということなんだ。狂暴な犯人を隔離しておる社会から外に出すことだ。刑事訴訟法の今お読みになったような要件が整っておりさえすれば、一体刑の執行の停止を行うのに本人の性格その他の判断は一切やらぬのであるか、どういう取扱いになっておるのか、それを聞くわけです。どんな狂暴な犯人でも生命を保つことあたわずと考えた場合にはこれを出すのか、これは結核患者であります。しかも二人を殺害しようとしたわけでありますが、ようやくにして大勢の者でそれを押えた。取り押えたのはけしからぬということで病院じゅうのガラスを何百枚か割った。百数十枚のガラスが割られたということがどの新聞にも出ておる。こういう狂暴性のある悪質の犯人に対して刑の執行の停止をするということは、刑事訴訟法上の表面の要件がそろいさえすれば何ら反省するところなくこれをやっていいのか、その点についての今までの考え方、取扱い方、これはどういう考えであるのか。
  136. 井本台吉

    ○井本政府委員 もちろん初めからかような狂暴な犯行をするというようなことがわかっておりますれば、その点も十分考慮に入れまして病状等を参考にして執行停止処分の裁決をするわけであります。狂暴の犯人でも非常に病気が重篤になりまして今にも死ぬというような状況でありますれば、これは外に出して治療をさせるということもばいとは言えません。
  137. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 それでは進んで伺いますが、この刑の執行の停止をする場口はどういう手続によるか、どういう機関において審査をして、最後の決定は何人が行うのか、この手続の概略を伺います。
  138. 井本台吉

    ○井本政府委員 この具体的の事件につきまして、どのようにやっておりまか、いまだ報告がきておりませんので、その具体的の問題についてのお答えは差し控えますが、一般的な問題といたしましては、刑の執行に当っております刑務所の方から、その囚人につての体格、病状等について刑の執行に耐えないというような病診が下僚からずっと上司の方にありまして、刑務所の方から検察庁にさらに報告があると存じます。その報告に基きまして検察官の法でこの人間を執行停止にするのが相当であるかどうかということを検討いたしまして、相当であるということになりますれば、検事の方で執行停止の指揮をいたして、その指揮に基いて刑務所の方がそれを出すということになるわけでございます。
  139. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 その問題は、相当なものと認めるという点でありますが、相当なものと認めるか認めないかというとぎの要素に、その人の性格というものが顧慮されておるのかどうか、こういうことなんです。
  140. 井本台吉

    ○井本政府委員 もちろんその犯罪の種類にもよりますし、お話のような非常な凶悪な人間であるかどうかということも社会に対する影響がありますので、十分考慮してやっております。
  141. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 それでは花村法務大臣に重ねて要望をいたしますが、この五月の十日の午前一時に起りましたこのできごと、場所は博愛病院の一室であります。これはその真相の究明も同時に派遣される役人の手においておやりを願いたい。それはもう刑の執行の停止をした者は直接の関係がないと言われるかもしれませんが、私のねらいは、刑の執行の停止を与えることが適当なりやいなやを判断することについて慎重さを欠くところがあるのではないか、こう考えるわけで、今井本刑事局長みずからおっしゃった通り、トラを野に放つというか、そういう狂暴な化人に本来執行すべき刑の執行を停止してこれを世間に出すということは、善良な市民かまくらを高くして寝られるという見通しがない限りは、こういうことはやるべきものでない。刑事訴訟法上の要件が整うたからといって、当然にそれは刑の執行停止をしてよいこいうことにはならぬわけであります。適当なりやいなやということについての判断はそれがために上富にその権限というものが与えられてある。これなどは相当慎重に考えなければならないものだと私は思うので、特にその点についても一つ考えを願いたい。  なお一つここに注意を喚起しておきたいと思うのですが、この病院には刑の執行停止中の者が現在十数名も入っておるようであります。ところがこの執行停止中あるいは仮釈放中の囚人患者の病室と他の善良な一般市民の病室というものには何らそこにかき一つ設けてない。あるいは二階でありあるいは一階であり、部屋は隣同士である。こういう状況に置かれてあるわけであり、病院当局も非常に困ったということが新聞、ラジオ等でも出ておるわけです。いやしくもこの刑の執行を停止したる者、仮釈放したる者を収容する病院、この病院には一定の指定をして病室に入れておることでありましょうが、同じ病院に入れる場合においても、この病室は画然と善良な市民の病室とは隔離する立場をとるべきではないか、この処置は当然とってよいのではないか。果してそういう処置がこの病院の設備の上において完備しておるのかどうか、こういう事柄についても慎重にお調べをいただいて、これに対しては具体的に善後措置を講じていただきたいと思うわけであります。この点について花村法務大臣の御意見を伺っておきます。
  142. 花村四郎

    花村国務大臣 ただいまの御質疑でありまするが、その真相を明らかに究明いたしまして、そうして最善の方途を講ずるよう考えたいと思います。  なおここにただいま被疑者吉敷正幸、ただいま問題になっておりまする事件報告が参りましたから、ちょっと申し上げておきたいと思います。これはもっぱら電話で照会して得た報告でございます。本人は強度の胸部疾患によって博愛会という病院に、執行を停止させた上で入院せしめたというのでありまするが、犯罪の原因は、本人は医師の言うことをなかなか聞かないというようなことからしばしば医師より注意を受け、かつまたしかられたというような関係からいたしまして、それは究極するところ被害者が医師に告げ口をしたであろうと信じまして、そうしてそこに恨みを持って、十日の夜に出刃ぼうちょうをもって切りつけたほか、ガラス数十枚を破壊したということであるそうでありますが、しかしこれに対して検察当局は、十二日、殺人未遂容疑で直ちに送致を受けて、ただいま取調べ中であるということでございます。
  143. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員 それでは最後に花村法務大臣の御意見を伺って質問を終りますが、監獄法を改正して帰休制度を認める、囚人といえども状況の許す限りはでき得る限りその人権を守ってやろうというお考えで、監獄法の改正の準備が行われておるやに聞くわけでありますが、これはまことにけっこうなことと思う。現行制度のもとにおいても、囚人といえども必要があれば仮釈放を許す、また執行の停止をして、民間病院において心行くまで養生をさす、これは囚人の人権を守ってやる上においては非常に大事なことであるわけで、制度それ自体に私は反対をするわけではないのです。しかしこの制度の運用並びに適用を行なって、これらの処置を講じ、囚人の人権を尊重してやるという努力をすることはけっこうだが、これはよほど慎重にいたしませんと善良な市民の人権が逆に守られないことになる。数十枚のガラスを割って、前科六犯があるという犯人である。こういう者を単に形式だけの審査によって刑の執行の停止を行う、それによって多くの市民が人権を脅かされるといったようなことに陥るおそれがあってはたいへんなことではないかと思う。監獄法の改正の上にも有力な反省をすべき資料となるのではないか。また特に法務大臣及び刑事局長にお聞きおきを願いたいのでありますが、刑の執行の停止、仮釈放というような措置をお講じになるときにおいては、この者が社会の外に出て行なった行為について、善良な市民が迷惑をするような殺人事件あるいは強盗事件などというものが起る場合は、この仮釈放なり刑の執行停止を行なった人に全局の責任があると深い反省を持ってもらわなければ困る。そういう考え方のもとにこの制度の運用を慎重に行うということでなければならない。私たち考え方を申せば人権それぞれ大切であるが、囚人の人権よりはむしろ市民の人権が大事である。ここに頭をお置きになって、今後の現行制度の上における仮釈放並びに刑の執行停止の制度運用をやってもらいたい。監獄制度改正に当っては、帰休制度等を考えるについて宅に帰して戒めるという意味でございましょうが、それらの制度をおとりになる上においても慎重に事が運び得るように、制度の運用が可能になるように制度自体をお考え願う。こういう深い反省のもとにそれらの運営もしくは監獄法の改正に努力をせられたいと思います。これらの点について花村法務大臣から御意見を伺っておきたい。
  144. 花村四郎

    花村国務大臣 田中委員 の御説ごもっともであります。まことに傾聴に値する御発言でありますので、ただいまもっぱら研究中に属しているのございますが、御趣旨の存するところを体して、とうとい資料といたしたいと存じます。
  145. 世耕弘一

    ○世耕委員長 林君。
  146. 林博

    ○林(博)委員 小菅の逃亡事件について、まず川上所長にお尋ねをしたいと思います。先ほどの御答弁を聞いておりますと、本件の逃走の時間が何時ごろであるかということにつきまして、十一日の夕刻七時四十分ごろから翌朝の七時半までの間のうちで、いつ逃亡したかはつきりしないということになると思うのであります。その間に巡視をなされた時間の先ほどの御報告ではっきりしている点は、八時四十分に巡視をされたという点と、朝の五時に巡視をされたということだけが明らかになっているのであります。先ほどの御答弁によると、一時間のうちに四回はあるというお話でありましたが、その他の巡視もやはりなさったのであるか、その点について。
  147. 川上厚

    川上説明員 ただいまの御質問でございますが、一時間に四回回る、十五分に一回各部屋を全部見て回っているのであります。それでこれは直接の担当看守のやる仕事でありますし、また監督部長というものがおりまして、これが随時、大体一時間半に一回くらい回ることになります。やはり同じ方法によって、収容者――中にいる人たち状態を視察し、また看守がどんな勤務をしているかということを監督するのであります。
  148. 林博

    ○林(博)委員 私が質問したいのは、平常の勤務でありますならば、逃亡者の独房はその前日の七時四十分ごろから翌朝の七時半までの間に何回ぐらい巡視されれば、正常の巡視になるのでしょうかということです。逃亡者の場合です。
  149. 川上厚

    川上説明員 ただいまの御質問ですが、全部の部屋をそうやって視察しているのでありまして、そのときに逃げているということがわかっておれば、すぐ非常ベルを鳴らし、報告してただちに追跡するのでありますが、たまたまふとんの中に物を置いてあたかも寝たごとく装っていたので、看守が視察した際に、ああこれは寝ているものであると、こういうふうに誤信したわけでございます。これはすでに一回回るごとにそれを見ているわけであります。
  150. 林博

    ○林(博)委員 先ほどの御答弁によると、七時四十分から翌朝の七時半の間にその状況を見たかどうかという御説明がないわけです。八時四十分と五時には中にいた、そういう状態におったという報告しかないわけであります。そのほかにはその部屋に関してそういう巡視をしなかったかということです。
  151. 川上厚

    川上説明員 その部屋を回るたびに見ているのでありまして、はっきりしたところを申しますと、ただいま申した午後七時四十分には便所に腰をかけていた。八時四十分に回って行ったときには上向きに寝ていたので顔が見えた。だから確かにいた。その後は顔も見えないし便器に腰をかけていない、通常寝たごとくなっていた。頭の辺が黒くなっていた。あとで見たところが、黒い風呂敷を頭のように見せてあった。こういうわけでありまして、見ているのでありますけれども、物を人と見誤まっているので、見てはいるわけであります。
  152. 林博

    ○林(博)委員 私の質問しているのは巡視の方法について不注意の点がなかったかということをお聞きしたいのです。
  153. 川上厚

    川上説明員 それは不注意があるのであります。と申しますのは人間でないものを人間と見誤まっていることはそこに注意力の欠陥があることは明らかであります。ところがこれがまたそれを看破するにはなかなかむずかしいのでありまして、寝たごとく装って、逃げるのに早く発見される、また外へ出ないうちに発見されるというようなことから、その状況の作り方もうまいというような点から、注意力の欠けておった点は一面問題なく認められるのであります。それから電灯の明るさが非常に暗くなっております。これは就寝するのに中が見える程度の明るさになっておりますから、黒いものなどを見たときに頭の毛がふろしきであったと見間違うということは、あの明るさの光線だとあり得るわけです。これを明るくしますと、東京拘置所には現在約二千六百人入っていますが、明るいために眠れない人が出て来ます。大体において視察ができる程度の明るさにしておるというのが、一つの問題だと思います。
  154. 林博

    ○林(博)委員 別の点をお尋ねいたしますが、本件に使用いたしましたのこぎりは、拘置所の作業所内において使用しておったものでしょうか、それとも外部から何らかの経路によって入手したものでしょうか。
  155. 川上厚

    川上説明員 これは非常にむずかしい問題でありまして、私たち菊地がこれを入手するについてのあらゆる場合を考えてみたのであります。それでどの方法が最も有力かということは、判断がつかないのであります。大体私たち考えておるのは、四通りの入手方法がある、こう思われるのでありますが、そのどれであるがはどうもはっきりいたしません。
  156. 林博

    ○林(博)委員 私のお尋ねしたいのは、こののこぎりが拘置所内の作業に使用しておるものかどうかということです。
  157. 川上厚

    川上説明員 同種類のものは営繕工事に使っております。
  158. 林博

    ○林(博)委員 同麺類のものというのでありますから、拘置所内のものとも確定できないかもしれませんが、かりに拘置所内のものだという推定がほとんど――大体推定されるんじゃないかと思いますが、そうしますと、拘置所内でこういうのこ等を使用した場合の員数の点検ですね、そういうようなことはまだお調べになっておらないのでしょうか。員数の点検等はどういう方法でやっておられますか。
  159. 川上厚

    川上説明員 逃走して後その金のこの破片が発見されましたので、これは私たち内部で使っているものじゃないかというので、さっそく調べてみました。これは員数はぴしゃっと合っているのであります。そこに使われている金のこは折れていて、大体普通には仕事に使わないものであります。そういうのはもう大体において私の方で、営繕の方でやった場合には新しいのと交換するのであります。かけらを集めて、ちゃんと寸法をはかって、前に渡したものと間違いないということで、そうして新しいものをそこの工場の主任が職員に渡すわけです。職員は毎日それを朝仕事をする者に渡して、夕方引き上げて、員数を点検するのであります。そういうことをやっておりまして、私どもが使っておりますのを、この逃走事故が起きました直後に調べてみましたら、員数はぴっしゃり合っておるのであります。
  160. 林博

    ○林(博)委員 員数の点検が厳格に行われておれば、こういうものが紛失したということも明らかになると思うのです。現在のところ事件発生後早急でありまして、いろいろな御調査もできないかと思いますが、なおこののこが真実拘置所内のものであるか、あるいは他の入手経路によって手に入れられたものであるか、それらの点を今後厳格に御調査願いたいと思います。
  161. 川上厚

    川上説明員 仰せの通りたちも非常な関心事でありまして、徹底的な調査をいたす考えでございます。
  162. 林博

    ○林(博)委員 それから金谷さんに、本件の被告人逃走後の状況あるいは逮捕の見込み等についてお伺いしたいと思います。
  163. 世耕弘一

    ○世耕委員長 この際お諮りいたします。本問題について警視庁金谷刑事部長を参考人として決定いたしたいと思うのでありますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  164. 世耕弘一

    ○世耕委員長 それではさよう決定いたします。金谷刑事部長。
  165. 金谷信孝

    ○金谷参考人 本件が発生いたしまして、警視庁としましては所轄署に連絡をとりまして、事の重要性にかんがみまして直ちに管下に緊急手配を実施いたしました。全力をあげて捜査に入ったわけであります。同時にこれは都内だけの問題として扱うわけにも参りませんので、警察庁に報告すると同時に各府県の連絡を緊急にいたしまして捜査をいたしております。現在所轄の亀有署に警視庁といたしましては捜査本部を設けて、これが捜査に当る特別なる態勢をもって入る、こういうような格好に相なっております。現在までいろいろ断片的な情報等もございますし、また従来の立ち回り等の推定もできるようなところもございますが、まだこれというはっきりした線をつかんでおりません。しかし先ほど来お話のように重要なる事案でございますので、全力をあげ鋭意すみやかに逮捕できますようにやって参りたい、かよう  に存じております。
  166. 林博

    ○林(博)委員 都外の捜査状況につきまして中川警察庁刑事部長にお伺いしたいと思います。
  167. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 本件事案の重要性にかんがみまして、ただいま警視庁の刑事部長から答弁がありました通り、所轄の亀有警察署が最初に連絡を受けたのでありますが、警視庁はもちろんのこと、警視庁はただいま説明通り全国の電気通信網をもちまして全国的な手配をやっております。全国的な捜査をやりますが、とりわけ当該被疑者の行きそうなところを推定いたしまして、いろいろその点につきましては特に周密な調査を遂げておるのでありまして、東京の警視庁を中心として、警視庁をとりまく府県並びに本人関係地の栃木県とその他本人の立ち回り見込み先につきましては、周密な捜査をやっておりますので、この捜査は現在国民の方の御協力もあって、見た人もあったというような情報もあちこち聞いておりますが、それをだんだん集めて精密な調査をやっておりますので、可及的すみやかに警視庁の逮捕について事件の真相を明らかにしたいという熱意でやっております。
  168. 林博

    ○林(博)委員 本件の事件の重要性にかんがみまして、捜査当局におきましても全力をあげましてその逮捕に当られんことを希望いたしまして、私の質問を終ります。
  169. 世耕弘一

    ○世耕委員長 この際私からも二、三点お尋ねいたしたいと思いますが、捜査がどうも緩漫のような感じがするのですが、こういうような犯人の捜査が案外迅速に取扱われぬように思うのです。その一点として警察犬の活用なんというのはどの程度まで利用されておりますか、関係当局の御説明を願います。
  170. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 この捜査につきましてはいろいろの方法がございまして、ただいま委員長の御指摘の警察犬も重要な犯人捜査、犯罪捜査に重要な役割を果しますので、私ども警察といたしましては警察犬の活用についても非常に工夫いたしておるのでありますが、これも重要な方法でございますけれども、本件被疑者の逮捕につきましては警察犬による方法を度外視するわけではございませんが、関係人の立ち回り先等推定する場所もございますし、こういったことについての情報を得ることもできる面もございますので、そういったところに張り込み、尾行等の警察技術を用いまして、警視庁はもちろんのこと、千葉、埼玉、栃木その他関係の府県では周密にやっておりますので、ただいま御指摘の警察犬を本件事件に具体的にまだ用いていないようでございますが、重要なる着意といたしておりますけれども、いろいろな聞き込み、張り込み、そ、ういった方法を周密にやっておりますので、捜査が緩慢だというおしかりは十分肝に銘じて考えますけれども、早急にこういった被疑者の逮捕に努める、こういう熱意はお互い関係者は非常に持っておりますので、御期待に沿うべく努力いたしたいと思います。
  171. 世耕弘一

    ○世耕委員長 なおお尋ねいたします。か、見込みはっきましたか。
  172. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 見込みは、捜査本部におきましては本人逃走経路というものをいろいろ推定を加えてやっておりまして、大体推定もできるのでございます。か、私どもあまり推定いたしますと羊、れにとらわれまして、それ以外の部面の捜査がなおざりになるという心理喜作用もありますので、推定は一応持っておりますけれども、矛あ推定にとらわれないで、関係あると思われるすべての点について周密な捜査をいたす、こういう建前をとっております。見込みの点は、私どもこういう被疑者でございますので、真に重点的に捜査しておりますので、そう遠くない機会に逮捕できるのではないかという見通しを持っておりますが、これも見込みでございますので、見込みに拘泥しないで全国的な組織を活用している関係もありますので、その辺の点を御了解順えばと思うのでございます。
  173. 世耕弘一

    ○世耕委員長 先ほど他の委員からも指摘されたことと思いますが、ちようど都内にトラを放したように、市民は恐怖の観念に追われておるのでございますから、むしろこの際全力をあげてすみやかに警察本来の使命と信頼を達成するように、この上一もあらゆる対策を講じられろことを希望します。
  174. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 ただいまの委員長のお話、まことにその通り考えておりますので、私ども任んとうに全力をあげまして、こういった危険な被疑者を一刻も早く逮捕するように全力をあげて捜益する、こういうことを、はっきり申し上げておきます。
  175. 世耕弘一

    ○世耕委員長 なお最後にお尋ねいたしますが、これは中尾局長並びに川ヒ所長に対して御意見を伺っておきたいと思いますが、中尾局長並びに川上所長ともこのたびの事件について責任を痛感されておるということを先ほど来述べられておりましたが、まことにかくあるべきだと私も考えるのでありますが、かくのごとき不祥事件を発生せしむるに至った原因は、相当多方面にわたっておるだろうと思うのです。端的に申しますれば、いわゆる精神的な弛緩、あるいは物質的にいえば、設備並びに経費の関係から人的の不足というようなことが伏在しておるものと思うのであります。あながち中尾局長川上所長ばかりを責めるべぎ筋でもなかろうと思うのでありますから、今後こういう事態を発生せしめないという観点から、両責任者から隔意のない意見の開陳をこの際していただくことが、将来の矯正関係において非常に軍要な資料となりますから、差しつかえなかったらこの際御意見の開陳をしていただきたい、かように思います。
  176. 中尾文策

    中尾政府委員 ただいまの御同情のあるお言葉、大へん感激いたす次第でございますが、こういう事故を起しておきまして、今さら言いわけがましいことはあまり申し上げたくもございませんし、また私たちそういう言いわけをしたいというふうな気持は持っておらないのでございます。ただそのお言葉に甘えまして打ちあけたところを申し上げさせ、ていただきまするならば、実はこの矯正関係施設におきまして人員の不足それから設備の劣悪、不上分ということにつきまして非常に苦労をしておるわけでございます。現にこの治安の関係からいたしまして、相当営繕関係の予算も要求いたしましたし、なおまたその職員の点につきましても――ただいま田中先生から御指摘がありましたが、二百人の工場に一人しか看守がおらない。しかもその、工場は木工場であって、いろいろな刃物を使っておるという工場でございます、が、そういうところでも看守が一人くらいしか置けないということは、実に問題でございまして、現にそのために、昨年横浜の刑務所におきましては看守が一人受刑者に殺されて殉職いたしております。それで私の方といたしましては、せめて五十人に一人くらいはもらいたいということを頼んだわけでありますが、いろいろ国家予算も不自由でありまして、そういう資金ももらえません。かえって本年度は行政整理を現在やっておりまして、その中からなお八百名近いものを今首切りをやっております。これは刑務所ばかりでございませんで、特に少年院におきましては大へん困った問題を持っておるわけでございます。しかしいずれにいたしましても窮屈な国家予算でありますので、そう無制限にぜいたくなことは要求できないわけでありまして、極力現在の範囲内で工夫を重ねていかなければならないという点について、今決心をいたしておる次第であります、。決して弱音を吐こうという気持は持っておりません。ますます私たちの足らない点にむちうちまして、現在の機構でなおてきるだけのことはやりたいと感じておるわけでありますが、今のお言葉にえましてそういう打もあけを申し上げた次第であります。大へん恐縮に存じます。
  177. 川上厚

    川上説明員 ただいま中尾局長が申された通りでありまして、私ももうただ申しわけないのでありまして、こういう点をお考え願いたいという点はたくさん持っておりますけれども、なかなか申しにくいのであります。ただ一点だけ私がこういうことになればよいなと思う点、それが物的面に一点、人的面に一点ございます。一つは先ほど松岡委員が申されたことに私最も賛成でありまして、この点は東拘置所の零番――零番というのは死刑の言い渡しを受けた者、死刑の確定した者ですが、この死刑確定者は十一名私のところにおります。それから一審または二審で死刑の害い渡しを受けて、ただいま控訴あるいは上告中の者が二十一名おります。それからまだ一審の判決を受けていない零番――強盗、殺人とか、多分死刑になるのじゃないかということが予想される人たち場。が現在十九名おります。合せて五十一名。もちろん菊地がこの中に一人入っておるのでありますが、こういう人数をかかえておるのです。中には、まだ、死刑の確定しない者のうちに、二人だけは絶対逃げてみせるというのがいるわけであります。東京拘置所はどうやろうが、絶対に逃げてみせると豪語しておるわけでありまして、これは特別要視察人ということで、また特に厳重な視察をして、おりますが、そういうときには看守の負担が非常に重いのであります。案はこの夜勤看守はただ夜だけ勤めるのではないのでありまして、朝八時二十分に出てきて、そこで点検を受けて、八時三十分に勤務につく、それで一昼夜働いて夜勤をしまして、あすの朝八時二十分にあけるのであります。言いかえますと二十四時間勤務であります。ただ夜間だけは一時間勤務の二時間休憩のときと、一時間勤務の三十分休憩というように、夜間、の後半と前半と違った勤務状態でありますが、二十四時間勤務をしておるのでございます。朝方の三時、四時になりますと、ちょうど一昼夜勤務の最後で、相当疲労もあり、そういうところに注意力の行き届かないところもあるだろうと思いまして、こういう事故を起こしましても一切所長が悪いんだ、こういった一線の人たちにはただ苦労をかけるだけで済まない、こういう気持でおりまして、何とかしてこういう点を緩和していただきたい、これか私の念頼でございます。
  178. 世耕弘一

    ○世耕委員長 午前中の会議はこの程度にとどめ、午後二時から続行いたします。  暫時休憩いたします。     午後一時二十二分休憩      ――――◇―――――     午後二時四十一分開議
  179. 世耕弘一

    ○世耕委員長 それでは午前中に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。山本粂吉君。
  180. 山本粂吉

    ○山本(粂)委員 午前中お伺いした点について、結論に到達しないうちに関連質問のために遠慮いたしましたので、この問題に対する結論が何かしり切れトンボになっておるので、はっきりさせておきたいと存じましてお伺いを継続いたします。  先ほど伺ったところによると、一時間に約四回、十五分おきくらいに看守が巡視して、各房をのぞき見て間違いの起らないように監視を続けておるのだ、こういうことでありました。そのほかに月に二回くらい特別捜検をやり、少くとも五日間に一ぺんくらいの普通捜検をやって万全を期しておられる、こういう御答弁でありました。そこでお尋ねするのだが、十五分おきくらいの各房の巡視の仕方で職務を忠実に行なっておれば、大体間違いの起らないように万全を期し得ると所長はお考えになってやっておられるのか、それとも十五分おきくらいの巡視では不十分であって、五分おきにやらなければならぬ、十分おきにやらなければならないというのか。たとい時間を短縮しても忠実に職務を行なっておらなければそれは何にもならないのだ、あってなきにひとしいのだ。結論として、職務を忠実に行なっておらないから、一時間に四回も各房を巡視しておったにもかかわらず今回のような不祥事が起ったのだ、こういうふうにお考えにたるか、そこの点がはっきりしないと責任の所在が明らかにならない。ただ、私は責任があります、課長にも責任がありますといって、責任がある、責任があるといってやめればいいという問題ではない。私はこういう問題はどこに一体責任の帰着点を、求めるかということのためには、その点をよく明らかにしなければいかぬ、こう思う。従ってそれが明らかになれば、所長は必ずしも私に責任があるのだといって頭から肯定される必要のない事件だとも考えられる。さような意味合いでお尋ねをするのだが、今お尋ねした点に対する所長としての現実のお考えを承わりたい。
  181. 川上厚

    川上説明員 ただいまお尋ねの事項でございますが、大体十五分に一回回って忠実に指示された通りに視察しておれば、大体事故は起らないで未然に防げる。たとえば窓を切られるとか、また外へ出てしまったのを寝ているものと誤認するというようなことはないのであります。これはたとえば視察の方法といたしましては、先ほど申しましたように、窓の方に頭を向けて顔が見えるように寝させるようにしておるのでありますから、顔を確認するとか、それからちょっと黒いものがあるか、あれば果して頭の毛であるか、ほかのものであるかというような点を十分視察すれば、この事故ばかりに起きてもすぐ発見できてつかまったという状況になってくるのでありまして、この点は看守勤務が、一晩おきにこういう夜勤をしておりますと、ついマンネリズムと申しますか、安易な気持に陥って、ただ回っているような状態ではないかとも思われるわけなのでありまして、ことに大体先ほど申しました前半夜、夜の前半分は非常に緊張してやっておりますが、後半夜になりますととかく疲れが出てしまって、ただ回っていると思われるようなこともままもります。これは実際監督部長などの報告によってそれがわかるわけであります。そういう点において欠陥があろ、こういうふうに思われます。
  182. 山本粂吉

    ○山本(粂)委員 そうすると現在の拘置所の人的配置については、予算が少いために人的配置に十分な処置ができない、そこで手落ちが起るのだというのではなくて、現在程度の定員の五割も増しているというような多数の人員を拘置所の中に収容しておっても、あなたの部下がマンネリズムでなしにほんとうに忠実に職務を遂行すれば、大体人的配置においてはこの程度でやっていける、万全は期せられる、こういうお考えですか。
  183. 川上厚

    川上説明員 その点につきましては、私は今の人員ではむずかしい、こういう結論であります。と申しますのは、先ほど申しましたように、これが二十四時間勤務であります。ところが近ごろのように収容者が激増してきますると、非番居残りというのがあるのであります。それでは何のために非番届残りが起るか。要するに八時間で明けて家に帰れるものを残して勤務につ仕る。その勤務は大体において公判に出るのであります。毎日のように百名、百二十名と公判のために出るのであります。こうした公判出廷のために看守が十分でないというような点から、明け番の者を非番居残りをして勤務につかせる。結局二十四時間の過労である上に、またこういった過労を増すような勤務をさせるわけでありますから、人間の疲れというものはやはり相当の休憩をしなければとれませんのに、結局人的配置が十分にできないから無理な勤務をさせるということになってきます。また一つには東京拘置所は毎日五十人くらい入って五十人くらい刑が確定して出ていきます。これを近在の刑務所へみな送り出さなければいけない。そうしますと、今の定員の範囲内において護送していかなければならないのでありますが、護送看守に手をとられた埋め合せば、仕方がありませんから夜勤をした非番明けの人を護送した看守のあいている職場につけるということになってきまして、どうしても人が足りないからそういう無理な配置が起る。その点に無理があるのではないか、こう思われます。
  184. 山本粂吉

    ○山本(粂)委員 そうすると一般的、抽象的に言えば、東京拘置所に関する限り人的配置はなお不十分であった。そのために過労からくろ職務食糧というか、そういうようなことが免れない、こういうことが言えるが、今度の脱獄事件に関する限り、少くとも忠実に職務を遂行しておれば、あれだけの鉄棒を長時間かかって切り取るのだから、これが発見できないということは、常識から考えてもあり得ないことだし、発見し得べき状態である。それを職務怠慢というか忠実に職務を遂行しなかったためにああいう事態が引き起された、こう判断してよろしいのか。
  185. 川上厚

    川上説明員 ただいまのお話の通り、私もそう思っております。
  186. 山本粂吉

    ○山本(粂)委員 そこで設備の点について一言伺っておくのだが、一昨年の脱獄の例もあり、今度の脱獄の例もあるので、あの鉄棒の問題についてば先ほど質疑応答があったのですが、これについては特に鋳物の鉄棒を鋼鉄に切りかえる予算措置についての要求をしたことがありますか。
  187. 中尾文策

    中尾政府委員 この点は本省の責任にありますから、私から答弁いたさせていただきます。拘置所長の方からは要求はございましたし、また私たちもそれが必要だと思いましたので、先刻申し上げましたような事情によりまして取捨選択いたしまして、その方の要求は見合せたというような実情もございます。
  188. 山本粂吉

    ○山本(粂)委員 この点はまことに遺憾の意を表せざるを得ない。例がないならば、科学的に検討して、鋳物では危ないから鋼鉄に切りかえようじゃないかというならば、これはしばらく見合せるということも考えられる。しかし前例があるんだから、従ってこれを予算の割り振り上、限られた予算の範囲内でやることであるからそれはわかるけれども、しかしこういう例があるんだから、これはやはり急速に取りかえて万全を期すべきではなかったか。しかし過ぎたことはしかたがないとして、今後東京の拘置所を全部建てかえるという二とができないことは予算の上で明白なんだから、従って現在の拘置所の設備を改善して、絶対に脱獄は行い得ないのだという安定感を持たせることが必要だと思う。そういう意味合いからお尋ねするのだが、この点の予算措置について、どういうような処置をとっておられるか承りたい。
  189. 中尾文策

    中尾政府委員 この問題につきまして、一応研究をいたしまして、部屋が約百ばかりありますが、そこの鉄格子を鋼鉄に直すということと、それからいま一つは鉄条網をいま少し高いへいに取りかえるというようなことを研究いたしております。
  190. 山本粂吉

    ○山本(粂)委員 研究されておることはけっこうだが、こういう事案がたびたび起ろうとは想像もできませんし、また想像もしたくない。また起らないでありましょう。しかしながら同じようなケースの脱獄が二回も三年の間に行われるということは、やはり設備に欠陥があるといわなければならぬ。必ずしも人間が看視しているのだから、その人間の懈怠だけを責めて、その設備の不備をそのままにして万全を期せといってもかわいそうだと思う。そういう意味から考えても、設備の上から安心感を与える、設備の上から安定感を与えるということが必要だと思う。ほかの予算は切り詰めても、こういう二とにはやはり万全を期した方がいい。研究もけっこうだけれども、どうも政府当付は、いつでも研究だとか調査だとかいうことで逃げておる、それは逃げ言葉でなくて実際に研完されているだろうと思うけれども、それだけではいかぬと思う。こういう例は二つも起っておるのだから、幾ら研究してみても安全だというわけにはいかない。何らかの処置をしなければ、すなわち鋼鉄にかえることよりも、なおよき方法ありやいなやということで研究されておることならばいいが、すみやかに結論を得て、それに必要な予算処置については、次の通常国会を待たないで、この国会中でもとにかく何らかの予算処置を講じて、急速に万全の対策を講ずることが必要ではないか。それに対する法務当局としての考えを承わりたい。
  191. 中尾文策

    中尾政府委員 実は研究と申しましたが、一昨日に起りましたので、今直ちにどうするということは決定までに至ってないという意味のことでありまして、もう私どもの方では検討済みでございまして、現にどれだけの予算がかかるということも計算済みであります。現在のこの騒ぎが静まりましたそのときに、強力な措置をとりたいと考えております。
  192. 山本粂吉

    ○山本(粂)委員 法務大臣にこの点について一つ所信をお伺いしておきたい。なかなか大蔵当局は法務省の予算についてはいつでも辛いのです。こういう問題が起ってもそれほど大蔵省は身にしみて予算の問題で痛切に考えているかどうか疑わしいくらいのものなのである。それだから法務大臣がよほどしっかりして、こういう問題が起ってから世間を騒がすというよりも、前例があるのであるから、こういう問題についてはもう少し万全を期せられるだけの急速な腹がまえをきめられて、大蔵当局に向って厳重に要求をして、予算措置の問題を御解決願いたい、その決意ありやいなやお聞きしたい。
  193. 花村四郎

    花村国務大臣 山本委員の御説ごもっともでありまして、本年度の予算折衝の折も大蔵大臣に対しまして、国家の予算はあらゆる面からいずれも重要性を持っており、かつまた民主党の掲ぐる公約を実行しなければならぬという予算措置に対しても、これはなかなか重大なる意義を持つものではあるけれども、しかし何を申しても治安の維持なかりせば、いかなる政策が具現せられても国家の安泰を期することができないじゃないかという意味で、法務省予算のいかに重大でおるかをあらゆろ角度から説明をして、だいぶ賛成を願い、また特に多少のめんどうはみてもらったのでありまするけれども、しかしまだまだわれわれからいえば、もう少し治安維持に関する諸問題を大きく取り上げて、そうして深き関心と理解とをもって法務省の予算に臨んでもらいたいとの念願を置いた次第でありまするが、こういう問題が起きるにつきましても、私の本年度予算の折衝の折に大蔵当局に申し上げたことが裏づけられたと申し上げてよろしいと思うのであります。まあ来年度の予算においては、今度は説明を用いずして法務省の予算はすらすらとみな通るべきであろうとは存じまするが、しかしそれも乏しい国家予算の中でありまするから、なかなか簡単には参らないとは思いまするが、あらゆる努力を傾倒してかかる問題の再び起きざるよう十分に予算措置の面からも万全を期していきたいと存じます。有力なる山本委員におかれましても、一つその豊富な識見と手腕力量を発揮せられて、大いに協力せられんことをこの機会にお願いをする次第であります。
  194. 山本粂吉

    ○山本(粂)委員 御希望は了承いたしましたが、最後に警察庁の方にお尋ねしておきたいのですが、この脱獄囚に対して四十八時間過ぎた以後において、警察当局の捜査が始まったようですが、その後捜査状況はどうなっておるのか、そして日ならずして逮捕できるようなところまで捜査が進捗しておるのか、それとも五里霧中なのか、その点について、やはり市民の安定感の上から一応お伺いしておきたい。
  195. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 本件の逃走者の逮捕という点は、大へんわれわれ承二要だと考えておりますので、本件が発生いたしまして、先ほど来御説明がありましたごとく、五月十二日朝、あそこを管轄して、おります警察署は警視庁の亀有警察署でございますが、亀有警察署に御連絡がございまして、亀有警察署は直ちに必要な処置を講じまして、逮捕に努めたのであります。と同時に、警視庁内のすべての警察署にも連絡し、警視庁の本庁におきましても、亀有警察署に応援いたしまして、現在といたしましては、亀有警察署の捜査というよりも、警視庁全体の捜査が行われておるのであります。直ちに警視庁におきましては、東京都内だけが捜査区域でないと考えまして、われわれの警察部内には速報の場合、電気通信の方法でずっと手配する方法がありますが、その方式を用いまして、同日全国に手配いたしました。従いまして、五月十二日以来全国手配に基いて捜査が行われておる、こういうことに相なるのでございます。しかしながら全国的に手配をいたしますけれども、何と申しましても、その被疑者がいそうなところを中心に、周密な捜査を行なっておるのでございます。ただいまのところでは、警視庁及びその周辺の栃木、こういった方面を周密にやっておりまするか、全国的にもこういう電気通信の方法で連絡いたしまして、周密な捜査を行なっておるのでございます。それで、逮捕の見込みでございますか、これは警視庁の捜査本部におきましては、いろいろだ資料を集積いたしまして、本人の足取りを推定を加えまして、だんだんこれを追及しておるのでございますが、いずれも資料に基く推定でございますので、それに基く捜査も十分やらなければなりませんけれども、その先入観にとらわれますと、また見のがすこともありますので、そういう全国的な手配と、資料等に基く関係部面に対する周密な捜査を遂げているのが現状でございます。それで警視庁初め関係警察におきましては、治安の重要性にかんがみまして、全力をあげてこれが捜査に努めておるのでありますけれども、見通しの点につきましては、私ども一刻も早くこれを逮捕して市民の方々の不安を一掃したい、こういう熱意に燃えておるのであります。五里霧中というわけではございませんけれども、いずれも資料に基いてやっておりますので、逮捕できることの信念のもとにやっておりますが、ここで何日とまでは申せませんけれども、そういう大きな熱意を持ってやっております。五里霧中の捜査ではございませんけれども、あらゆる角度から関係者その他の御協力はもちろんのこと、国民の方々の御協力もいただいておりますので、一刻も早くこの被疑者を逮捕いたしたい、こういう熱意でやっていることを御了承願いたしと思います。
  196. 山本粂吉

    ○山本(粂)委員 いま一点お尋ねしておきたいのは、これは法務大臣がよかろうと思うのですが、拘置所、刑務所等の看守の待遇が、他の一般警察官と比較して低給のように伺っております。こまかい数字はしばらくおくとして、現在東京拘置所看守ばかりでなしに全国看守の待遇、超過勤務手当がどうなっているか、それから一般給与が他の警察官と比較してどういう比率になっているか、その看守の待遇について伺っておきたい。
  197. 花村四郎

    花村国務大臣 大体において警察官と同様な待遇を受けているように存じております。いつころでありましたか、法務委員県会におきましても、警察官の待遇が改善せられたときに、看守のごときもやはりその職務が生命、身体に危害を受くるがごときおそれのあることは、警察官と何ら変りがないという意味において、警察官の処遇に準ずべきものであることを強く法務委員会の方でも要望いたしまして、その結果看守の待遇も改善せられて、警察官並みになったように記憶をいたしておりますが、しかし詳細なる点の御報告をお求めになるとするならば、また御希望によりまして準術をいたしてもよろしゅうございます。
  198. 山本粂吉

    ○山本(粂)委員 警察官、ことに下級の警察官、それから拘置所、刑務所等の看守は、非常に重い仕事をやっている。それに対する待遇の問題については非常に重要だと思うので、どういう状況になっているか、当委員会として承知したいと思いますから、これは御調査の上資料として御提出願いたい。  以上をもちまして私の質問を終ります。
  199. 世耕弘一

    ○世耕委員長 志賀義雄君。
  200. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 あまり時間をとりません。簡単に申し上げますが、本日当委員会において問題になりました小菅監獄には、私は十八年のうち前後二回おりました。よく存じておりますが、先ほど来世耕委員長から、どうも精神力弛緩しているとか、また松岡、田中両委員からも、士気弛緩あるいは官紀の弛緩というようなふうに言われておりました。今小菅の刑務所の所長をしておられる川上所長は、今からちょうど十年前、最後の空襲のある直前のころ豊多摩監獄におられたときに、私はあの一部の敷地にあった予防拘禁所におって、川上所長を拘禁所で招いて訓話があったことがありますが、非常に精神力の方面を強調する人でありまして、強調し過ぎると思いました。もっとも戦争の最後の段階だからなおさらそうであったと思うが、どうもその面に問題があるのではないように私には見受けられるのです。なお刑務所の職員の処遇が悪いこと、また勤務状態が非常に過重であるというようなことを言われておりましたが、最初二十四時間勤務であると言われ、後に川上所長が山本委員の質問に答えられたときは、二十四時間以外に、未決あるいは確定判決を受けた者の護送、こういうふうなことについて言っておられましたが、看守は平均どのくらいの勤務時間になりますか、保安縦長の方で統計をとっているでしょうから伺いたい。
  201. 川上厚

    川上説明員 超過勤務は、東京拘置所にとってみますると非常に多いのでありまして、大体保安課と申しまして戒護の方面の看守になりますると、超過勤務時間は平均しまして月に約七十時間……。
  202. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 私の伺っておるのは一日平均どれくらいになるか……。
  203. 川上厚

    川上説明員 それでおりますから、超過勤務が一日二時間くらいつくことになりますから、結局平均して十時間は働いております。
  204. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 徹夜勤務をやって翌日出廷のときの戒護なんかやりますね。そういうときには三十六時間勤務に及ぶようなことがありますか。私はそういうことをしばしば見聞しておりますが……。
  205. 川上厚

    川上説明員 夜勤勤務者になりますると二十四時間ばもう正確に勤務いたしまして、その非番居残り上申しますか、その人たちを次に働かせる場合には舎房捜検それから公判の出廷が多いのであります。それで私の方針としてはこの人たちが出廷戒護に行ったならば、一番車で帰すということを言っておって――一番車というのは午前の審理を済んだ人々を連れ戻す車でありまして、これが大体拘置所に帰るのが一時ごろになります。それで帰った人は五時間二十分よけいに働いておるわけであります。ところが実際問題として公判出廷が多い場合には、その一番車で帰れない人たちもいるわけでおります。そうすると次の車になりますと、四時になってしまいます。それですから二十九時間にまた三時間足しますから、三十三時間ぐらいの人がときにあるわけでございます。
  206. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そういう長時間で非常に疲れる上に、小菅刑務所の所在地は湿地であるために背から非常に蚊の多いところであります。それで私自身の経験を申しても、正月に南の風が吹くと天井から蚊がおりてくる有様です。これが中におる者ばかりでなく役人をも非常に苦しめるのであります。耳の中に入るととることができない、それから靴下の上から刺す、それで徹夜勤務あとの戒護のときには、午前中にかりまするとほとんど疲労困憊するわけです。そういう点で今申しました勤務時間が長時間であること、そのほかに武道を奨励して、疲れた人間が非常にまたやらされますね。そういうことで人間の生理的限界を越えたようなことを役人に強制する、そのために非常にいらだつから、今度は収容者に対して非常に八つ当りをするような場面が出てくる、午前中からの質問を伺っておりますと、収容者の側がどんなに苦しんでおるということがちっとも言及されておらないのであります。今度逃走したのも係の役人に対する書き置きがあるでしょう。死刑判決が確定したものですから、しばらく生を延ばさせて下さい、こう言っておりますね。先ほど来持ってきておられた写真を見ても、あの小菅監獄の三階の北舎及び南舎の一番上のところは、非常に意地の悪い構造になっておるのですよ。ちょうどようかんを少しずつはすに並べたようなふうにして、内側は直線でおりますが、外側はこういうふうにしてお互いに連絡できないようにするつもりでやらたのですが、それに目隠しをする、青空さえろくに見られないようなところに置いてあるのです。私もそこに置かれたからよく知っておるのであります。こういうわけで無理がいっておるから出たい出たいという心をそそるのです。そういう方面からの観察をしなくて、役人の数を増す予算が足りない、あるいは大蔵省が役人の数を増したときはどうなる、ますますこれをしめつけるから、中におる人間ばままます逃げ出す覚悟をきめるほかなくなります。そういう面が少しも行刑当局から報告されておりません。それで今日でも小菅監獄においてはタバコは一木幾らで取引されておるか、川上所長は御存じですか。タバコば禁止されておりますね、それが一本どれくらいで取引されておるか、その値段を御存じですか。
  207. 川上厚

    川上説明員 大へんむずかしい御質問でありますが、それは一時一本三百円という値段がしたことを聞いております。私はなぜ三百円もするかというようなことを研究して調べたことがありました。ところがそれがあめ玉、あめでありますが、この中をえぐりまして、そこへパラフィン紙などで包んで入れる、そうしてあめ玉十木として差し入れる、その中の何本かにタバコが入っておる、そういうことを聞きましたので、あめ玉の出所を調べた。ところがはっきりと突きとめることはできませんでしたが、大体上野あたりで作っておるということを聞いておる。それを買って入れるのに三百円かかるということを聞きましたから、折ってみるとなるほど入っておる。それで検査するようになりましたら、あめ玉は入ってこなくなりました。次に入ってきたのは何かと申しますと、これは主として朝鮮人でありますが、一時ニンニクみその差し入れが非常にあった。ニンニクみそはくさいものですから、検査をするときはぱっとふたをおけただけでやってしまう。ところがたまたま家族が面会に来て紙を丸めたのを落した。それを広げてみると、ニンニクみそを差し入れろということが書いてある、これが暗号になっておる。これはおかしいぞ、君ら一体どういう検査をしておるか。見ておる。はしでひっかき回しておるか。しません。そういうことを話しているときにちようどニンニクみその差し入れが入ってきましたから、ひっかき回してみたら、タバコが中に入っておる。そういう方法で入っております。これもそういうふうにして検査するとなくなってきました。今入ってくる方法は、本人が持ってくる方法です。この肩当てのところ、これへ入れてくるのでありますが、タバコを巻いたまま入れてくるとすぐわかります。検査する人が中に何が入っておるか上から押えてみるとすぐわかるので、近ごろはこれを巻いたまま入れないで、粉にして中へ入れて縫い込んできます。しろうとがちょっとほころばしてやってきますから、ちょっと縫目がおかしいからほどいてみると中に入っておる。これは本人が持ってくるのであります。そんなようなことで、タバコがもしそういう不正のルートで入ってくるというならば、相当の値段がするということは想像にかたくありません。
  208. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 どうも収容者だけが悪いことをしているように言われるが、そのほかにやみルートがありますな、やみルートが……。そのところには所長は触れられないのですが、私の方であえて追及しません。やみルートが別にたくさんありますね。獅子身中の虫というか、内部にもたくさんいますな。  そこで次に刑務所がいかに収容者を処遇しておるかというと、食費は――今副食費は一日幾らになっておりますか。
  209. 中尾文策

    中尾政府委員 一日に十七円五十銭になっておりますが、今年度の予算でそれが一円上ることを認められました。
  210. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 幾ら上げられた……。
  211. 中尾文策

    中尾政府委員 今年度で、しかしこれは予算が通過しませんとそういうことになりませんが……。
  212. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 何円上るのですか。
  213. 中尾文策

    中尾政府委員 一円、しかし一円というのはなかなか大きなものであります。
  214. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 こまかい質問はやめますが、私どものころからの伝統で、刑務所における魚類というものは、食えないことのあだ名がついておるのです。たとえばイワシの塩で煮たものは、ネコまたぎといいます。ネコでもまたいで行ってしまう。食いやしない。身欠きニシンはどぶ板といいます。それから塩引きマスは赤わんがといいます。こういうものを食わせられている。しかもそれがほんの月に何回か町たまです。豚というと、かね太鼓で探さなければ豚はいない。実際刑務所の行政局に来る献立表を見ると、一応世間並みなごちそうは食わせられているようですけれども、とんでもない。ヒジキのごときは木になっているヒジキです。そういうものがみんなに与えられるから、中にいろ者が非常に困っておるのです。だから自然いろいろな問題が起る。会計検査のときに、米俵の中にジャガイモを入れて検査の口を盗まなければならないような事態も起って来るのです。こういうような処遇をしておるから、今度のようなことが起ります。どろぼうを見てなわをなうのじゃないのです。どろぼうが逃げてからなわをなう、こういうことになるのであります。何とかして一日でもしゃばの空気を吸いたいという気持が積って、今度のような事件が起る。午前中からの政府委員の答弁では、その半面については何ら言及されておらないわけです。そもそも未決の勾留及び拘置される場合には、これは本人が逃亡するおそれその他云々ということで自由形拘束するだけで、本来社会におけるのとそう変った待遇をしてはいけないわけです。それをそういう無理をして受刑者と同様にやるから、よけいに死刑囚の場合なんかは逃げたがるのです。そういう面を少しも改善せずにおいたら、ここで法務大臣あるいは刑事局長、それから中尾局長川上所長が幾ら今後注意いたしますと、るる言葉を尽されても、半面の問題は全然未解決になるから、繰り返しが起るだけであります。さらにそればかりではなくて、どろぼうが逃げてからなわをなうようなことで、とんでもないことになる。私は十八年間、だれかが逃走すると、必ず私らの方にはね返りが来る。あるいは仕返しが来る。全然逃亡しない者の方へ影響が及んで来るのであります。現に御承知の通り、小菅監獄だけでも、三鷹事件の竹内景助、練馬事件の二人、それからまた横川事件が七人、こういう人たちの方へ最も厳重に今度はしりが来るのであります。見当違いをやられておるわけでおります。実際今度逃亡した者がかりにつかまりますと、監獄法の規定によって重屏禁いう処罰を受けます。監獄法でこういうことが書いてあるでしょう。「屏禁ハ受罰者ヲ罰室内二昼夜屏居セシメ情状ニ因リ就業セシメサルコトヲ得重屏禁ニ在テハ仍ホ罰室ヲ暗クシ臥具ヲ禁ス」そこでこれはふとんをくれないで寝させるのかと思っていると、そうでないのです。五分間くらいごとに監視が来てとびらをたたく。それについて一々応答をしなければならない。これが二十四時間でなしに、七十二時間くらい続いておることもあります。三昼夜全然寝させられない処罰を受ける。これが人間として生理的に耐え得るかどうか。こういうことをするから、一たび逃げたら必死になって逃げるから、よけいつかまらなくなる。これは外にいた人が監獄法を読むと、寝具だけは与えないで横にさせるのたと思うが、そうでないのです。七十二時間の間全然寝させない刑罰をやるということであります。こういうことがかえって事態を深刻にするわけでありますが、さらにこれは長谷川浩君、先日も法務委民会で大臣とだいぶ応答がありましたあの長谷川浩君も、今こういうさなかに入って行くのであります。いつも選挙のあとには選挙違反が多い。非常に輻湊して来る。それでよけいに役人の人数が足りないところでこう事件が起ったのであります。客観的にはこういうことが起っておるのであります。そこで問題は、こういうことが起りますと、他に非常に影響を及ぼす問題がある。先日白鳥事件の村上国治、これについて刑事局長と立ち話をしたのですが、これは花村法務大臣は接見禁止三年と言われたときに、監獄におるものとお考えになったのでしょうが、警察にいまだにたらい回しされておる。三年の接見禁止だけではない。親とも近信もできない。弁護人とも通信を制限するために、札幌からわざわざ離れた苫小牧の警察署の豚箱にまで入れておったのであります。これを井木刑事局長は代用監獄と言われるが、この村上君が弁護人を通じて出した意見があります。それによりますと、警察は一時的な勾留の場所であるだけに、未決の拘置所に比べて、食事、衛生、運動その他あらゆる点で不備がある、その点裁判所、検察庁に抗議したが、聞きいれられず、警察署に勾留しておる理由は、村上が脱出しようとたくらんでおるからというだけで、全く不法な取扱いを受けておる、もしこれが事実としても、彼らの言い分はおかしく、拘置所は完備しておるはずだ、こういうふうに村上本人が申しておる。今度のような事件が起りますと、検事及び警察の無能なやり口ですね。――脱出するおそれがあるから入れる、現に小管監獄ではこういうふうに逃げておるじゃないか、だから豚箱に入れておくのだということを理由つけることにたる。その点について井本刑事局長はどういうふうにお考えでしょうか、まずそれを伺います。
  215. 井本台吉

    ○井本政府委員 監獄法の第一条には「警察官署二附属スル留置場ハ之ヲ監獄二代用スルコトヲ得」云々と書いてあります。従って原則といたしましては、起訴になりますれば、たるべく普通の拘置所に勾留するのが当りまえだと思いますが、ものの事情によりましては、この代用の刑務所に被勾留者を入れておくということもあり得るので、現にいろいろな事件で調べが終らないようなものにつきましては、余罪の捜査の必要上代用監獄に入れておくという事例も相当ございます。
  216. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そうすると、白鳥事件の村上君のように長く入れられておる例があるかどうか、これは期限なしにやれるものかどうか、第三には、この村上君というのは腎臓病があるのです。一時非常に悪かった。現在でもその病気が依然としてあります。こういう豚箱に入れておいて、もし生命に異常があった場合には、あなた方責任をとられますか、その点御返答願いた
  217. 井本台吉

    ○井本政府委員 さような前例があるかどうか、私承知しておりません。期限につきましては、これは別に期限の制限がございませんから、法規的にばいつまででも置いておくことができるのでございます。それからただいまのお示しのような例につきましては、具体的な事情を検討いたしませんと、われわれが責任を負うべきものであるかどうであるかということはわかりません。
  218. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そうすると、豚箱に入れておいて、こういう人権じゅうりんをやっておいて、それは法律にあるからいいと言われるのですか。憲法の建前で基本的人権を尊重すべきことが言われております。そういうことについてあなたは全然無責任――現に病気になって、これがもし悪くなったらどうするかということを聞いているのに、そういうことは具体的事情を知らないから何とも言えない。そうすると、あなたは責任を持ってそういう病気を直すように努力しておられるのですか。何らかの指示を与えられましたか。それを伺いたい。
  219. 井本台吉

    ○井本政府委員 もちろんとうとい人命を預かっておる拘置所であり、代用監獄でありますから、本人のさような病状その他につきましては、慎重に注意をしておるものと私は考えております。
  220. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 この村上君は非常にがんばりのきく人でありますから、なお今日辛うじて生命表持っておりますけれども、そのほかこの事件で非常に苛酷な取扱いを受けたために、すでに精神病になっておる者があります。清水房江という人、これは札幌中央腎でやられたために精神病になり、病院に入院をして、現在もまだ精神状態が回復しておらないようであります。こういう事実すらあるのです。それが今度の小菅監獄の、ような事件が起りますと、これこそ理由にされますよ。刑務所に入れれば逃げるから豚箱に入れるのだという検事の言っている理由が立ちますね。こういうことになってくると、先日ここでさんざん問題になりまして、花村法務大臣も、自分の考えとしては長過ぎると言われておる。あのときは花村法務大臣は監獄にいるものとばかり思われておる。接見禁止だけということを問題にしたのでありますが、そのほかに通信も禁止する、弁護士との面会もはるかに離れた場所に置いて、事実上不可能にする、こういう状態になっておるのであります。こうなってきますと、今度の小菅の死刑囚菊地正という人の脱走事件というものが、ただこの一件にとどまらず、全国において非常に影響を持ってくるということがわかるのでおります。そういう点おいて、こういう事態を改善するについて、収容者の側に対してどういうふうにやるおつもりか、その点を花村法務大臣にお聞きしたいのであります。
  221. 花村四郎

    花村国務大臣 私も実は一昨々年アメリカの刑務所のおもなるものをつぶさに見学をして参りました。もちろんよい面もあり悪い面もございますが、しかしわが国の刑務所もしくは拘置所等を考えてみますると、大いに他山の石として学ぶべぎものも多いように考えまするので、今の法律はきわめて古いものでありまして、今の時世から考えますれば沿わざる点もあるように考えられまするので、もう少し改善するという見地に立ってこれを改正する必要があるのじゃないか、こう考えまして、今これに対する研究を進めておるような次第でございます。いずれ近き将来においてその成案を得、法務委員諸君の御考慮をわずらわす場合があるいは出てくるのではなかろうか、こう存じます。
  222. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 今花村法務大臣 から御答弁がありましたが、現に行刑累進処遇令というものがそのまま生きておる。これは受刑者で六カ月未満の刑期の所、それから非常に老年で監獄における労働のできない者に適用しないのでありますが、それの第一章第二条の第五号に、「詭激ナル思想ノ抱懐者ニシテ其ノ思想ヲ抛棄スルニ至ラザル者」こういう条項がまだ生きておるのであります。こういうめちゃくちゃなことが今日なお監獄で行われているかどうか、これば矯正局長から……。
  223. 中尾文策

    中尾政府委員 ただいま御指摘になりました点は、もう十年くらい前から自然消滅になって……。
  224. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 なっておるべきはずです。最近の六法全書にちゃんと出ておりますよ。
  225. 中尾文策

    中尾政府委員 それはどうも六法全書の発行者の方と連絡が悪かったかもしれませんが、これは私らの方でも全然問題にしておりませんから、その点につきましてなお訂正を求めるようにいたします。
  226. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 これは法律専門家たちが使うのですね、弁護士もみな使いますね、裁判官も使いますね。そうすると矯正局長の方でそういうふうに自然消滅のものだと言われるが、これが現に通信あるいは読書の面でいろいろの制限が与えられる基準になっているということを御存じですか。ことに小菅の監獄ば、今度のようなことを起しましたが、全国でのモデル刑務所ということになっておりますね。そこで通信、読書のことについていろいろの制限が行われるということになっておる。これは実にあの監獄の規律を維持する上に、一般の犯罪を助長するということに関係のない面までも行われているのでありますが、そういうようなことを御存じですか。
  227. 中尾文策

    中尾政府委員 例の行刑累進処遇令というものは今生きておりますが、御指摘にたりました第五号、これは全然消滅になっているわけですから、そのことを御承知願います。
  228. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そうするとこういう六法全書を発行する方が悪いということになるのですか。
  229. 中尾文策

    中尾政府委員 なおよく検討いたしてみます。あるいは私の方の手落ちであるかもしれませんが。
  230. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 先日の法務委員会で基本的人権が侵されている、人権じゅうりんがやられているということが、長谷川浩君の事件、白鳥事件の被告人その他について言われております。井本刑事局長のお話を伺っても、その点について先日来、大麻国務大臣は植野間違い事件についても本人及び国民に対して深くおわびするとまで言っておるのです。また花村法務大臣もそれに関連して発言されておりました。あなたはその点について法務委員会で問題になったことなんか、てんで考慮していないのですね。法務委員会ではこの人権じゅうりんの問題は今後もなお取り扱うし、他になお大分県の菅生事件のことなんかの調査政府委員の方に要求しておきました。今後は法務委員会でこの問題を取り上げられる場合に問題を保留いたしまして、私はどこまでも基本的人権を守るために発言するつもりであります。それを最後に申し上げまして私の発言を終ります。
  231. 川上厚

    川上説明員 先ほど志賀委員のお話のうちに重屏禁の問題がありました。これは重要な問題でありますから申し上げたいと思うのであります。あの重解禁というものは、ただいま条文を御指摘になりました通り、とにかく罰室内に置き、罰室は暗くして敷物は敷かせない、そして寝具を給したいという罰則であります。これはまことに基本的人権侵害の尤なるものであると私は考えております。これは人間を動物扱いすることであるというふうに私は考えておりますので、この点においてあの条文は憲法違反でおると考えております。そのために私は懲罰において重屏禁罰をやったことはありません。たとえば今度の菊地がかりにつかまってきて罰をするにしても、軽屏禁罰であります。重=禁を絶対いたしません。それともう一ついたさないのは減食罰であります。私はこれも人権じゅうりんの尤なるものであると思いまして、減食罰ば絶対にいたしておりません。
  232. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ただいま川上所長は監獄法にきめた重解禁、臥具を許さず、これを自分が所長になった場合には、基本的人権を侵害する尤なるものであるから、決してやらなかったと言われたが、局長としては全国の刑務所にこれをやってはいけないということを言われたか、また花村法務大臣 は、そういう基本的人権を無視して、川上所長の言葉で言えば動物視するようなことをやってはいけないということを、あらためて全国の刑務所に通達される意思があるかどうか、これを順々にお答え願いたいと思います。
  233. 中尾文策

    中尾政府委員 実はそのことを申し上げたいと思ったのでありますが、重屏禁についてはやってはならないという通牒を出しております。これは数年前に出ておりまして、ちょっと今正確に…
  234. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 あとでそれを見せて下さい。
  235. 中尾文策

    中尾政府委員 さようなわけでありますから、どうぞ御安心を願います。
  236. 花村四郎

    花村国務大臣 ただいま志賀委員の言われたごとき事項は、私から各刑務所へ通達をせずとも、おそらくさようなことは今日やらざることを私は信じて疑いません。通達の必要なしと認めてよろしいと思います。
  237. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それでは、その通達の必要なしというほど励行されているかどうか。今後それに類似する事実が起こった場合には、政府委員の皆さん責任はとられますね。それだけを伺っておきまして、必ず責任をとられるものと思って、私の発言を終ります。
  238. 花村四郎

    花村国務大臣 そのようなことは、この責任問題は別として、そういうことが起りましたならば、もう遠慮なく一つおっしゃって下さい。そうしてともに協力して、さようなことのなき事想を一つつくろうじゃありませんか。
  239. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 けっこうです。
  240. 世耕弘一

    ○世耕委員長 福井盛太君。
  241. 福井盛太

    ○福井(盛)委員 本日の委員会におきまして、私の質問してみたいという点も多々ありましたけれども、幾多の質問者の質問とこれに対する御答弁によりまして、ほぼ私は明瞭に相なったのであります。ことに私が質問してみたいと思ったのは、山本君が質問された点に多く小かっておるのであります。私は起った事柄については、いたし方がないといって逃げるわけじゃありませんが、これについてはどうもいたし方がない。ただ、現実の問題といたしましては、逃げた者をつかまえて適当な処理をするというより道がないのでありまするが、問題は、要するに今後再びかかることのないように戎めねばならぬ、それにはどうするかということが一番大事な問題になったのであります。人的な方面その他物的な施設の問題等、全くそれはその通りでありまするが、どうもずいぶん注意しておっても、起る問題は起ることもあり得るのでありまして、われわれとしてははなはだ遺憾にたえない点があるのでありまするが、この問題につきまして先ほど花村大臣より、現に研究調査の上、万全を期したいという御決心のほどを承わったので私どもは安心したのであります。それにつきまして重ねて申し上げるようでありますので、はなはだ屋上屋を重ねるようでありますけれども、ぜひとも一日も早く研究を積まれまして、再びこういうことのないような施設並びに人的方面についてのお考えをわずらわしたいと思うのでありますが、それについては先ほどの答弁の通り承わってよろしいのでございますね。――さように相なりました以上、私どもとしては何としても仕事をする上におきましてはやはり経済、つまり予算を必要とするのでありまして、そこに困難さがあると存ずるのでありますが、大蔵当局におかれましてもこの点につきましては十分心せられまして、再びかかることのないように今後の防備なり予防の道を十分達することのできますように、大蔵当局におきましてもお力添え下さることを心から私は念願するのであります。これに対する大蔵当局の御意見も、おそらくはその通りやって下さることと信じますが、ぜひ一つお願いいたしたいと思います。  多々質問したいと思う点は、私といたしましては前質問者から詳しく申し述べられておりますがら述べません。ただ私の希望と考え、私の多年の経験によりまして、まことにむずかしい問題ではありますが、ぜひやってもらいたいという気持を吐露いたしまして、私の要望する点といたしたのであります。
  242. 世耕弘一

    ○世耕委員長 この際法務大臣から何か御発言がございませんか。並びに大蔵当局からこの問題について御意見の発表なりあるいは御回答あってしかるべきと思うが、いかがでございましょう。
  243. 花村四郎

    花村国務大臣 先ほどからるる申し上げましたごとく、あらゆる角度から一つ最善の注意と、そうして十分に研究を重ねまして、かかる失態なきことを期したいと思いまするが、一つ委員の諸君におかれても大いに御協力を賜わらんことをお願いいたしたいと思います。
  244. 世耕弘一

    ○世耕委員長 この際なお私から要望いたしておきますが、本件は治安の上からも非常に重大な問題だと思いますので、大蔵並びに法務、関係の両省において十分御協議の上、あらためて本委員会にその所信のほどを発表してもらいたいと思います。これをあらためて要望いたしておきます。  本日はこの程度にとどめまして、次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時四十七分散会