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1955-05-11 第22回国会 衆議院 法務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月十一日(水曜日)     午前十一時八分開議  出席委員    委員長 世耕 弘一君    理事 古島 義英君 理事 山本 粂吉君    理事 三田村武夫君 理事 馬場 元治君    理事 古屋 貞雄君 理事 田中幾三郎君       今松 治郎君    椎名  隆君       高橋 禎一君    林   博君       生田 宏一君    横川 重次君       猪俣 浩三君    神近 市子君       細迫 兼光君    淺沼稻次郎君       佐竹 晴記君    細田 綱吉君       吉田 賢一君    志賀 義雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 花村 四郎君  出席政府委員         法務政務次官  小泉 純也君         警察庁長官   斎藤  昇君         警  視  長         (警察庁刑事部         長)      中川 董治君         検     事         (刑事局長)  井本 台吉君         法務事務官         (人権擁護局         長)      戸田 正直君  委員外出席者         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 五月九日  商法の一部を改正する法律案内閣提出第二七  号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  商法の一部を改正する法律案内閣提出第二七  号)  人権擁護に関する件     —————————————
  2. 世耕弘一

    ○世耕委員長 これより法務委員会を開会いたします。  商法の一部を改正する法律案を議題とし、政府より提案理由説明を聴取することといたします。法務政務次官
  3. 小泉純也

    小泉政府委員 大臣予算委員会に出ておられますので私から御説明申し上げます。  商法の一部を改正する法律案について提案理由説明いたします。  商法につきましては、昭和二十五年法律第百六十七号をもって会社編中心とする改正が行われたのでありますが、この改正占領下において早急に行われた関係上、わが国の経済界実情に対する考慮が十分でなかったうらみがあり、実施後間もなく経済界の各方面から再改正を要望する声が出て参ったのであります。そこで、政府は、商法改正について検討する必要があると認めまして、昨年七月六日法制審議会に対し商法改正を加える必要があるとすれば、その要綱を示されたいという諮問を発するとともに、商法改正について調査研究に努力して参ったのであります。同審議会においては、現在なお審議を継続しているのでありますが、会社編の一部につきましては、緊急に改正を要するものと認めまして、その部分について、本年三月二十五日同審議会答申を見たのであります。  この法律案は、右に申し述べました法制審議会答申を基礎として立案したものであります。  この法律案中心をなすものは、新株引受権に関する規定改正でありますが、まず株主新株引受権について申し上げますと、現行商法においては、株主新株引受権に関する事項は、定款の絶対的記載事項となっており、また、会社発行する株式の総数の増加についても、その効力発生要件となっております。その結果、株主新株引受権に関する定款定め不備がありますと、その原始定款または定款変更全部が無効となり、ひいては会社設立または新株発行効力にも影響することとなるのであります。しかしながら株主新株引受権に関する事項をかように厳格なものとすることは、必ずしもその必要がないばかりでなく、現行法規定には、解釈上疑義が多く、定款作成について実務上幾多の混乱を招いたことは、御承知の通りでありまして、経済界においてもこぞってこの改正を強く要望しており、新株引受権に関する事項定款の絶対的記載事項から削除することには学界においても全く異論のないところでありますので、この法律案におきましては、これを定款の絶対的記載事項でないことにいたしました。  しかし株主新株引受権を自己の手に保留することを欲するならば、定款にその定めをすることができるのでありまして、いわゆる定款相対的記載事項ということになり、たといその定め不備がありましても、定款の他の規定や、会社設立新株発行効力には影響がないことになるのであります。そのほかこの法律案におきましては、株主新株引受権に関し定款定めがない場合には、新株発行に関する取締役会決議によってこれを定めることができるものといたしました。これによって、授権資本制度の本旨とする新株発行による資本調達機動性を最もよく発揮し得ることになると考えるのであります。  株主新株引受権を与える場合には、取締役会決議によるものといたしましても、少しも弊害はないのでありますが、株主以外の者に新株引受権を与える場合には、これを取締役会決議によるものといたしますと、取締役会がその権限を乱用して不当に新株引受権縁故者等に付与し、その結果株主の利益を害するおそれがあります。さりとて、株主以外の者に新株引受権を与えることを全く許さないことといたしますと、資金調達上不便な場合も生じますので、この法律案におきましては、株主以外の者に新株引受権を与えるについては、取締役会決議のみによらず、株主総会特別決議をもって、その新株引受権の目的となる株式額面、無額面の別、種類、数及び最低発行価額定めなければならないものとしたのであります。更に、その決議効力が長く存続してもよいということにしますと、再び現行商法のもとにおけるような弊害を生ずるおそれがありますので、その決議は、決議後最初に発行する新株で、その日から六カ月内に払い込みをしなければならない新株についてだけ効力を有するものといたしました。  次に、株主新株引受権を与えるにつきましては、その割当株式につき一株に満たない端数、いわゆる端株を生ずる場合がありますが、この端株処置については従来説が分れておりますので、これを立法的に解決することとし、新株発行事務処理の迅速をはかることを考慮しまして、端株は切り捨ててよいことにいたしました。また、株主新株を割り当てる場合には、通常いわゆる割当日定めていますが、現行商法には、これに関する明確な規定がありませんので、規定を新設し、名義書換を終っていない株主保護するため、株主新株引受権を有すべき場合には、必ず割当日定め、これをその日の二週間前に公告しなければならないものとし、もしその日が株主名簿閉鎖期間中であるときには、その期間の初日の二週間前に公告しなければならないものといたしました。さらに、新株引受権を有する者に対する失権予告付通知または公告は、現行商法においては、申込期日の三十日前にしなければならないことになっておりますが、これを二週間前にすればよいことに改めました。これも新株発行事務の風速をはかることを考慮したものであります。  新株引受権以外の点につきましては、現行商法の下において生ずる会社事務処理の不便を除いてその便宜をはかり、その他現行商法の若干の規定の不便な点を改めてあります。これらを列挙いたしますと、株式申込証社債申込証または転換株式もしくは転換社債転換請求書は、現行商法においては二通作成することになっているのを一通で足りるものとしたこと、株主名簿閉鎖または基準日の設定は、現行商法によれば、定款にその旨の定めのあることを必要としているのを、定款規定がなくてもなし得るものとし、株主名簿閉鎖期間及び基準日株主等の権利を行使すべき日との間がそれぞれ六十日となっているのを二カ月に改め、これらを臨時に定める場合の公告を三十日前にしなければならないのを二週間前にすればよいこととしたこと、少数株主株主総会招集は、現行商法においては、その請求があった後二週間内に総会招集通知が発せられないときには、裁判所許可を得てみずからなし得ることになっているのを、その請求があった後遅滞なく総会招集手続がなされないとき、または、その請求があった後おそくとも六週間内に総会が開かれるような手続がなされないときに、裁判所許可を得て少数株主みずからなし得るものとしたこと等であります。  以上がこの法律案における商法改正主要点でありまして、この法律案は、なおそのほかに、この法律施行によって生ずる経過措置定めましたが、特に新株引受権に関しては、混乱を生じないように若干の規定を設けたのであります。  さきに述べましたように、現行商法においては、株主新株引受権に関する定款定め不備がありますと会社設立新株発行定款の他の規定等はすべて無効となるのでありまして、一部の極端な説に従えば、現存する株式会社の大半がこれに該当することになりますが、この法律案は、まさにこのような現行商法の欠陥を是正しようとするものでありますから、この法律の趣旨を、この改正法律施行後において実施するのみならず、この改正法律施行前に定め新株引受権に関する定款規定不備がある場合にも及ぼすのでなければ、徹底を欠くこととなります。そこで、このような定款規定不備は、会社設立、合併、組織変更新株発行定款の他の規定効力には影響を及ぼさないものとしたのであります。  もっとも、株主新株引受権に関する定款規定そのもの効力は、現行商法の認める範囲において、そのまま維持させることととし、ただ、この規定を廃止しまたは変更することができるかについて疑義の生ずるおそれもあるかと考えまして、この点を立法上明らかにいたしました。しかし、株主以外の者の新株引受権については、前述のように、株主総会特別決議を必要とすることにいたしましたので、現行商法の下において定め定款定めは、ほとんど意味がなくなるのみならず、疑義の生ずるおそれもありますので、この改正法律施行後は、すでに申し込みのあったものを除き、すべて効力を失わしめることにしたのであります。  さらに、この法律案では、非訟事件手続法及び会社更生法の一部を改正しているのでありますが、これらは、以上述べました商法改正に伴い関係規定に所要の整理を加えたものであります。  以上がこの法律案提案理由の大要であります。なにとぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。
  4. 世耕弘一

    ○世耕委員長 これにて提案理由説明聴取は終りました。質疑次会に譲ります。     —————————————
  5. 世耕弘一

    ○世耕委員長 次に人権擁護に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますから、これを順次許します。神近市子君。
  6. 神近市子

    神近委員 井本局長にちょっとお伺いしたいことがあるのですけれども、例の一昨年来法務省の中に設置されております売春問題対策協議会は昨年来どういうふうな回数で御審議をやっておられますか、ちょっとそれを伺いたい。
  7. 井本台吉

    井本政府委員 お答え申し上げます。一昨年暮以来、主として昨年からことしにかけてでございますが、委員会、小委員会幹事会等約二十回近く会合を開きまして、大体方針もきまりましたので、具体的な草案を今つくっておるという段階にいっております。
  8. 神近市子

    神近委員 そこまでは再三承っております。私がもっと伺いたいことは、今年になりまして、あるいは第一次鳩山内閣になりましてから協議が行われたことがございますか。
  9. 井本台吉

    井本政府委員 正式に委員会幹事会などは開いておりませんが、関係事務当局草案作成について打ち合せの必要上数回関係機関会合を開いております。
  10. 神近市子

    神近委員 それでは選挙後は行われていないということは明らかでございますね。
  11. 井本台吉

    井本政府委員 その通りでございます。
  12. 神近市子

    神近委員 それでは見通しとしていつごろになったらそれができ上るというようなお考えでございますか。一体もう二年くらいに間もなくなると思うのですけれども、その間だらだらとやっておいでになったということはわかるのですけれども、この国会に間に合うように成案ができるお見通しでありますか。
  13. 井本台吉

    井本政府委員 だらだらというふうに見られてもやむを得ないかもしれませんが、私どもといたしましては、この問題につきまして真剣に取り組んで努力しておるのでございまして、非常にむずかしい点がたくさんありますから、完全な成案を得るまでに至っておりません。今国会に提出できるかどうかという御質問につきましては、ただいまの現状ではその段階まで至るかどうかはっきりしたことも申し上げかねる次第でございます。
  14. 神近市子

    神近委員 大体そういうことではないかという疑いは、もう私どもは発足当時から持っていたものですけれども、その法律技術でいろいろ御審議があると思うのですけれども、事態はがまんしていられないように進んできている。それでこの間私は三月三十一日の午後四時過ぎでございましたか、ほんの短かい御質問をいたしました。あのときは私が持って参っておりましたケースは、女の子があちらこちらと売り渡されて歩いていて、そのときの警察保護が全くなっていない。あべこべに業者の方に加担して前借の返還を迫るというようなことで、女の子が、いるところがなくて逃げて歩いたという事実がございまして、斎藤長官でございましたかにいろいろ御質問をしたのでございますが、その直後、朝日新聞でございましたね、何日だったでしょうか、四月だったと思います。やはり女の子芸者屋に売られた問題が出たのでございます。それであのときも警察の方の扱い方があべこべに勅令第九号、これは継続法規になっておりますのに対して、違反しているのではないかということ、それは明らかに私ども違反じゃないかということを考えたのですけれども、あの事件なにかについて女の子供の保護が十分に行われているというふうなお考えがございますか。あるいは何とかこの問題を取り上げなければならないというふうなことを一度でも御審議になったことがあるでしょうか。立法審議とからみ合せてお考えになったことがあるでしょうか。
  15. 中川董治

    中川(董)政府委員 ただいま御指摘朝日新聞に登載されました記事の件、その他人身売買にかかる問題について警察措置等につきまして御質疑がありましたのでお答えいたしたいと思います。人身売買その他婦女子に関連するこういった犯罪につきましては、御指摘のような点がございましたので、私どもといたしましては、関係警察十分注意を促すとともに、こういった事件早期捜査し、これを検挙して参る、こういう点につきましては、十分な措置を講じたのでございます。各警察におきましてもそういう角度からこういう人身売買事件捜査は相当進捗しておるのでございますが、捜査の一番難点は、そういった婦女子被害を受けられた方々が積極的にどしどし警察検察機関申告願う、こういうふうになればわかりやすいのでありますが、なかなかそういうふうに参らぬ点がありますので、私どもといたしましては、そういう申告を待つことなく、いろいろ関係の向きに連絡をいたしまして早期に発見するようにやっておりまして、現在ではそういう申告を待たずにどしどしやっておる状況でございます。この四月十九日の朝日新聞朝刊にこういった事件が掲載されましたので、この朝刊によって、これは警視庁の事件でございますが発見したような次第でございまして、この被害者になられる方が、いろいろこういう人身売買にかかる問題があったと、警察にお知らせ願ったのでございますが、お知らせがなくても十分捜査はすべきなんですけれども旅館内部等において行われる行為でありますので、容易に発見しがたくあった点、新聞によって認知いたしましたので、ただちにこれを捜査開始いたしまして、この新聞にかかる事件につきましては、この新聞内容におおむね同様な被疑事実がございまして、被疑者といたしましては、六十二歳の女の方でございますが置屋の主人、それから少女をあっせんいたしましたこれも五十三歳の女の方ですが、この二人を児童福祉法違反被疑事件といたしまして、四月いろいろ内偵を続けまして必要な犯罪容疑の書面を整えまして、四月二十二日逮捕いたしました。逮捕いたしまして、さらに捜査を進行せしめて、現在検察庁に送致いたしまして、現在検察庁勾留取調べをされておる事件であります。ただいま新聞に出ました事件につきましては、新聞によって初めて知ったということになりまして、その点はさらに内偵を厳重にしていればわかったではないかという点もあるのであります。いろいろその点も努力いたしておるのでありますが、宿屋の奥とか、普通の民家の一室で行われる行為でありますので、発覚がどうしても困難である、こういう点につきましては、警察はいろいろ苦労をしておるのでありますが、いろいろ関係方々の御協力によりまして、早期に発見し、早期に検挙する。そうしてこうした悪質犯罪の根を断つように努力いたして参りたい、こういうふうに考えております。
  16. 神近市子

    神近委員 四月のあの事件なんかはほんとうの一例でございまして、これは無数にあるのです。そしてその弊害があんまりひどいから私どもは何とか考えなくちゃならないということで、法務省に御協議を早く進めていただきたいということを何回も申し入れてきているわけです。今中川さんがおっしゃったように、連れ込みだとかあるいは旅館だとか——この間アジア婦人会議にいらっしゃった方々の話を伺いましても、日本アジア諸国の中の先進国として今まで仰いでいた。自分たちのゴールとしてみていた。ところが、実情はメッセージの中に、婦人たちがこの問題を何とか解決しなければならないというて尽力しているところだというように書いてありましたので、アジア諸国婦人たちが驚いて日本はそういう点においてはわれわれよりもずっと先進国だと考えていたところが、今まだその段階かといってあきれたというようなことで、こっちから行っていた人は非常に恥かしい思いをしたということだったのでございます。今中川さんがおっしゃったように、日本のどこの町に行っても、村のような町に行っても、温泉マークができておるということを考えますと、審議が完了しない、あるいは法案の調整ができないというようなことで、じんぜん時をお過ごしになるということは妥当であるかどうか考えていただきたい。これだけじゃございません。きのうも問題がございました通り鹿児島の問題これは新聞に出されて、昨日私ども協議いたしました内容がお目についていると思いますから、くどくは申し上げられないのですけれども、あの問題だって同じです。たった一つ二つケースとお考えになるでしょうけれども、全国の病菌がああいう形でようやく私たちの目につくようになったのでして、ああいうケースはたった一つ二つケースじゃないかということをお考えになってはならないと思う。たくさんのうみがあそこでちょっぴりと出たときに、われわれの目に触れることになるのじゃないかと思うので、いつまでも問題をかかえて、そしてこれだけの婦人たちが困ってしまって、子供の教育もできなければ道徳的な再建もできないというところまできている。そのことを私はぜひ考えていただいて、何とか早く審議をして、私どもも多少準備していることもございますけれど、私どもよりもっといい考え方で——皆さん専門の有能な方々を呼んで御協議になっているのですから、私どもよりももっとよい考えで、もっと適切な施策が打ち出されはしないかというので、私どもは心待ちにどういう結論をお出しになるかと見ているのです。本国会までは間に合わないかといって、三年も五年も一つ法案ができないでいるうちに、弊害がこれほど広がっている問題をかかえて、ただおまじないのようにそれはやってはいるのだという態度をおとりにならないで、ぜひとも早くこの問題の法案作成し、ほんとうにもっと国民の、特に婦人の間の要望を考えていただきたいと思います。  私は中川さんにもう一つお伺いしたいことかございます。旅館なんでございます。これは私のすぐそばにも、やはりパンパン宿というものがありまして、大体生活のやり方の上で、近所なんかはちっとも顧慮されていない。それはこまかく申し上げればいろいろなところに反社会性というものが出ているのですけれども自分たちさえよければ、金がもうかればいいんだということを考えているのではないか。前の警察法でしたか、あれでは旅館捜査ができたのですけれども旅館の方は今はどういうことになっているのですか。必ずそれをやっている。たとえば女の子を呼び込んで、そして客に提供しているということは、はたからは歴然とわかるのですけれども、そういうところには一つも手は届かないのか、それを伺いたい。
  17. 中川董治

    中川(董)政府委員 旅館関係風俗事犯法律関係の御質問でございますが、終戦前までは風俗警察対象にいたしまして旅館許可したりあるいはそこに立ち入りをしたり、そういう権限警察にあったのですが、戦後の立法によりまして警察がこういった行政的なことに関与すべからずという建前を大体全般的にとりまして、旅館につきましては旅館業法というのを厚生大臣所管で御提案になりまして現行法厚生省所管旅館業法によって許可その他の処分が行われておるのであります。従いまして厚生省におかれましては公衆衛生の見地から旅館業法の運用を願っておる次第であります。ところが公衆衛生の問題もあろうかと思いますが、風俗事犯等につきましては、旅館業法としては警察はいかなる処置もできない。私どもといたしましては一般犯罪、たとえば刑法の誘拐罪児童福祉法の子女に淫行せしめる罪、勅令九号の困惑せしめて、ああいった行為をさせるという一般刑事事件捜査としてやる、そういった建前になっておりますので、いたずらに旅館警察官が入り込んだりする行為は禁止されまして、そういう犯罪容疑がありました際には、刑事訴訟法定め手続によっては可能でありますが、行政的監督はできない、こういう建前に相なっておりますので、法制上はいわゆる風俗警察対象にならない。これが現行法でございます。とにかく私どもといたしましては、その現行法につきましてもいろいろ議論等もいたしまして、厚生省とも十分意見交換等もいたしたことがありますが、現行法としてはそういう建前でございますので、私どもとしては現在もっぱら犯罪捜査角度からいろいろ問題を考えております。それで旅館も、普通の市民のうちも、そういう建前におきまして警察としては同様の取扱いをせざるを得ない。旅館一室も普通の居宅でございますので、これに対していたずらに立ち入るべきではない。同時にこの場合は刑事訴訟法定め手続以外にはできない、こういう状況でございまして、そういう意味合いからいいまして、終戦前に警察旅館に対する取扱い等をごらんになっている方々は、旅館に対する警察の取締りが非常にゆるいじゃないか、こういうふうに目に映っておるかと思いますが、そういう事情でございますので、御了承願います。
  18. 神近市子

    神近委員 法務大臣が御出席になったから、私はあまり長く時間をとりたくないのですけれど、この鹿児島松元事件でございますね、この問題は本省では何も報告をお受けになっていないのでしょうか。井本さんでけっこうです。
  19. 井本台吉

    井本政府委員 書類をきょう持参いたしておりませんが、お話の点につきましては、私ども手元まで報告が来ております。鹿児島の県の土木関係の請負にからみまして贈収賄事件があって、その贈賄の対象といたしまして婦女の淫行行為が取り上げられたという事案がありまして、その事案贈収賄事件並びに児童福祉法違反などで起訴して目下公判審理中であります。
  20. 中川董治

    中川(董)政府委員 ただいま井本政府委員からお答えがあった通りでございますが、詳細な点が私の手元にありますのでつけ加えて申し上げます。  この事件は、昭和二十九年八月二日に被害者の方の御父兄から、自分の十五歳になる娘が行方不明になった——行方不明になりますと、警察家出人捜査と申しますか、行方不明になった方々を、犯罪捜査でなしに、少女を保護する意味で捜索する、こういう措置を講ずるわけですが、自分の娘の行方がわからぬという話がございましたので、娘さんはどこに行っているかということを、犯罪捜査という意味でなしに、保護するという立場で探しておったのであります。ところがその娘さんは、親に隠された別のところへ下宿なさっておって、同僚などとともにいわゆる不良少女の陥りやすい行為等が若干ありまして、いわゆる旅館等のあっせん者の勧誘に応じて、今度問題になっているある被疑者のところにアルバイトみたいな形で行った、そしてそういうわいせつな行為をしいられた、こういうことを認知いたしましたので、そういう家出人捜査からだんだん児童福祉法違反事件の方が発覚するに至りまして、新聞にも出ておりますが、ある方を被疑者といたしまして、強制捜査を実行いたしまして、その後、ただいま井本政府委員からお答えになったような事案がだんだん出てきておる、こういう事情のように承知いたしております。
  21. 神近市子

    神近委員 まだ親の保護下に置かれなければならない女の子たちに、そういう逸脱したことが行われるということは、これは恐るべき現象だと私は考えます。それで私どもが念願としているのは、実際にきょう発令したから翌日からそういう売春等のような行為がなくなるということは天国的な考え方でして、どうしても売春というものはよくないことなんだ、金銭によってからだを提供するということは、女性の人権に対する冒涜だという観念を打ち立てることが必要だから、早く何とかしていただきたいと私どもは申し上げている。今日でももう十三府県に、婦人たちの間でこの問題を推進させる地域の婦人団体ができているのでございます。それほど私どもが要望しておるものを、今まであまりシリアスにお考え下さらなかったということは、とても遺憾だと思います。ぜひとも御協力をいただいて、この、まるで波濤のように広がりつつある悪弊を、何とか旗じるしを上げて、道はこっちだということを見せていただきたいということを要望いたしまして、私の今日の質問は終ることにいたします。もう少し御協議なりあるいは御質問申し上げたいことがございますけれども大臣の御出席がありましたから、次の質問の方に譲ることにいたします。
  22. 世耕弘一

    ○世耕委員長 それでは佐竹君。
  23. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 それでは法務大臣刑事局長にお尋ねをいたします。なお検事総長その他検察当局、第一線の監督者にお尋ねをいたしたいと存じておりましたが、お見えになっておらぬようでありますので、あとからお伝えを願いまして、この問題は本日だけで済まされない問題と存じますから、後日またゆっくり承わる機会を得たいと存じます。  本日お尋ねをいたしたいのは、横浜市西区南浅間町八十七番地、会社社長名取実、大正三年三月十五日生まれが、昨年一月の十日午後一時ごろ、静岡県賀茂郡城東村向山において、長井隆正、横内和美及びアメリカの兵隊などと狩猟中に、同行者より射殺された事件に関するものであります。本件については事件発生より八日の後、すなわち昨年一月十八日に、被害者の妻が弁護士の岡村大氏を代理人といたしまして、殺人容疑の告訴を提起いたしました。すでにそれから一年有半になんなんといたしておりますのに、いまだその捜査も終っておりません。何人に対しても何らの強制捜査の手段をも講じておりません。従って今日何の処分もいたしていないということは、全く不可解にたえません。これがために社会の疑惑を深め、検察の威信を失墜するおそれもありますので、私はここに真剣に討議をいたしまして、真相を究明して疑惑の一掃に努めたいと存じます。よって私は次の諸点に重点を置いて承わってみたいと考えます。  第一は、何ゆえにこの事件捜査を一年余りも放任していたか。第二に、本件はアリメカの兵隊が関係しておるために、その捜査に遅疑逡巡していたのではないか。第三に、本件は謀殺と認むべき嫌疑が濃厚であるにかかわりませず、これを過失殺といたしまして軽く片づけようと苦心をいたしております形跡が認められるのはどういうわけか。第四に、このような事件捜査に不都合を来たしたゆえんのものは、横浜地方検察庁内部の綱紀が弛緩いたしまして、これに乗ずる検察ボス等の躍動に災いされておるのではないかという点について承わりたいのであります。  まず第一に、事件捜査を放任した責任を明らかに願いたいと考えます。申すまでもなく人がそのかけがえのない一命を奪われたということは、実に最大の案件であります。このできごとの真相を究明し、その責任の所在を確定しなければ公安を維持することができないということは当然のことでありますが、そのためにはその捜査を一刻も遅滞することは許されません。ことに本件は告訴事件であります。被害者の遺族たちが、すなわち妻子や兄弟などが涙に明け暮れいたしまして来る日も来る日もその事件の結末はどうなるのであろうかと、痛ましい胸詰まる気持で見守っておるのでありまして、しかもその遺族が代理人をもって切々と訴えを続けておりますのに、何にも答えもないというのは何事でありましょう。本件については、事件突発当初沼津の検察庁で少しお調べがございましたが、一カ月ばかりで横浜地方検察庁に移送された後は、実に一年近くの間もほとんど取り調べをいたしませんで、放任をいたしてありました。この間ほんの二、三人調べたようでありますけれども、大体において一年間はこれを放任いたしておる。そうして法務委員の私が耳にするようになりまして、刑事局長に事情を具申いたしまして、やっと取り調べの再開となっておりますが、しかし第一線の取り調べ官憲は一向に熱意を持って徹底的な取り調べをいたして下さいません。かくて取り調べの不徹底と遷延とによりまして、証拠は散逸し、消滅し、さらに隠滅さえもされる状態であって、遂に何人もその殺害の責任を負う者がなくなり、やみからやみへ葬り去られるような事態に陥るのではないかという危惧がございます。あるいは過失殺などといって軽く片づけて、お茶を濁しはしないかとさえも考えられます。まことに慨歎にたえません。私は検察の威信保持のためにも社会不安一掃のためにも、まず何がゆえに一年余りも取り調べを放任して、一年有半に至るもなおも結論を得ないで、じんぜん今日に至っておるかその責任を明らかに願いたいと存じます。
  24. 井本台吉

    井本政府委員 お尋ねの事件は、私どもに参りました報告書を見ますと、昭和二十九年一月二十八日に静岡の東加茂地区警察署から静岡検察庁下田支部に事件が移送されておるのであります。さらに昭和二十九年一月三十日下田支部より沼津支部にこの事件が移送されたのであります。次いで昭和二十九年一月十八日には沼津支部に対しまして、被害者の妻の名取ヨシ子から弁護人の岡村大氏を介しまして、殺人としてその被疑者の横内和美を告訴しておるのであります。さらに昭和二十九年三月二日沼津支部は殺人告訴事件、すなわち過失致死事件といたしまして、これを一括して横浜地方検察庁に移送しまして、同月六日横浜地方検察庁がこの事件を受理しておるのであります。この事案につきましては沼津地方検察庁または横浜地方検察庁事務が非常に多忙のために、取り調べに長時間を要したのでありまして、この点はこの事件の性質上あるいは取り調べの時期を逸したのではないかという危惧も多少ありまして、私どもといたしましては事件が遅れたということのみならず、大事な時期を失したのではないかということについては遺憾に存じておる次第でございます。しかしながらこの取り調べをする時期もまだそうおそくはないということも考えられますので、本年になりましてから、主任検事の豊島検事または横浜地方検察庁の中込刑事部長などがみずから現地に参りましたし、関係者を取り調べまして鋭意その結論のどの辺にあるかということについて検討いたしまして、その結果を得たいということで努力中でございます。
  25. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 ただいまの御答弁にもかかわりませず、私どもは検察当局の不誠意に対しまして了解することができません。岡村弁護士から私にあてた書面によれば検事局の態度は大体次の通りであります。 (一) 右告訴の際告訴代理人は翌一月十九日現場の実況検分をいたしいので、下田区検及び東加茂地区警察署に立会の連絡方を依頼したるところ、沼津支部長及び井川主任検事これを了承し、告訴代理人が十八日の晩に下田区検を訪れたときはその旨沼津支部より連絡があった話を承わった。 (二) 翌十九日下田区検副検事土屋範吾、署長、警視安岡浅市はジープをもって告訴代理人の乗用車と同行現地にて実地検分をなした、この点捜査に誠意あることを認められた。 (三) 右を転機として警察では初めて未処理書類の作り直し整理にとりかかり、関係人の取り調べをし直した。そのためか警部村田弘の昭和二十九年一月十一日付実況検分調書には、当時いまだ堀内和夫と偽名していたのに立会人として横内和美と記載してある。また横内和美や、太田栄一は当初米兵は全然同行していなかったと供述しておるのに、その供述調書にはなく、次いで山中でたまたま米兵と道連れになったと訂正の供述をしたのに、その調書がないのも供述変遷の経過を知るのに不便を来たしておる。 (四) 昭和二十九年二月に至り沼津支部では関係者を呼び出して一応の取り調べをなしたが、被疑者が否認していたため過失致死であると固守し、偏見が見えた。被疑者の供述と現場の状況に相当の食い違いがあったのに、その捜査をしていない。 (五) 同年三月二日付をもって事件を横浜地検に移送した旨を告訴人のもとに通知を受けた。 (六) そこで告訴代理人は三月の中旬古沢義信方において電話をもって横浜地検に主任検事の問い合せをしたるところ豊島検事であるということを知り、直ちに同検事のもとに電話し、早急に捜査開始を望んだが、検事不在で事務官ほその旨を同検事に伝えるということであった。この際、地検従来の告訴告発事件取扱いによる捜査多忙を口実に、長期間捜査を行わず、放置しておる実情にあったため、特に重大事件である旨要旨を話し、捜査懈怠をすると問題化せざるを得ない等を申し上げ、相当強硬に申し入れをした。 (七) 三月中に告訴代理人は地検に豊島検事を訪れ、事件の概要を話し、早急捜査を希望したところ、同検事は、手持ち事件記録を示し、こんなにたくさんあるので、いつ調べるということは明言できない。しかし、できる限り早く調べるようにしようとの回答があり、一応の誠意はうかがわれた。これは昨年の三月のことであります。 (八) その後地検に行くたびに、豊島検事や中込刑事部長検事に対し取調べ請求をなしたが、そのつど当局の回答は、何しろ忙しいので、まあなるべく早く調べましょうという一点張りであった。告訴代理人は、事件の重大性と証拠隠滅ないし喪失の増大性をくどいほど説いたが、そのつど日時を定めるのは無理だが、早くやりますとのことでいかんともすることができなかった。それから大体月に四、五回くらいあて督促におもむいたのである。 (九) しかるに少しも実効が上らないので告訴人側より数度の問い合せを受けて中にはさまった立場に追い込まれた告訴代理人は、いよいよ同年六月二十八日中込刑事部長検事あてに強硬なる書面をもって取調べ請求をしたが、これすらも何らの、結論回答を得られぬままにその後一カ月を放置されたので、同年七月二十六日、第二回目の、最後の通牒の意味でさらに強硬な取調べ請求を同部長検事あてに書面をもって督促した。この書面中には、もしも早急なる誠意なき場合には職権濫用罪として告訴するもやむを得ない事態に至るであろう旨までも付記した。しかるところ、これに対しても何らの処置がなかったばかりか、はるかに同年の十月二十八日に至って飯村末男、根本実、宮崎健治の三名を呼び出すまで感情的に放置しておき、その前同年九月、十月ごろ、この事件を知った古沢義信が豊島検事に本件の状況を尋ねた際、同検事は同人に対し、告訴するならするがよい旨を放言したとのことで、ここにおいて告訴代理人と当局とは、協力的立場から対立的立場に変えられてしまった。その間十一月ごろ次席検事のもとにも取調べを請求したが、早くやらせようとの答えであったが、前記飯村外二名の取調べのみで、ほとんどその他何らの捜査もなされなかった。 (十) そのころ中込部長検事は、昭和二十九年十二月中には捜査をする旨、さらに請求に行った際、告訴代理人に話があったが、そのまま昭和三十年になったので、そこで一月中に豊島検事を検証現場に行かせる旨またまたそのころ請求に行った告訴代理人に話があったが、これも延びてしまった。そのころ、たまたま山中己年雄氏と知り合って、その協力を得て佐竹法務委員、村専門員等とともに法務省井本刑事局長のもとに善処方を求めに行くようになった次第である。  そこで関係人が連れ立ってお尋ねをいたしましたのが、それが法務省へ私どもが御訪問いたしました初めでありふす。それから刑事局長のお取り計いで取調べが進められるようになりまして、二月十一日に豊島検事が現場に検証に行かれました。被疑者横内和美それから山案内人の太田栄一、それに岡村弁護士、被害者親族四名、ほかに山中己年雄などが立ち会いましてその取調べが行われたのであります。ところが、その取調べについての捜査当局の態度は、まことに不誠意なものがありました。岡村氏のその書面によれば、その点についてこう書いてあります。  先般提出した古沢義信氏の意見報告書末尾記載のこと、本年二月十一日豊島検事の現場検証に際し、あらかじめ地検当局から沼津支部及び下用区検に協力方申し入れがあったにもかわらず、警察官一名のみ立ち会わせ、その他責任者の立ち会い、車の提供等、何ら便宜を豊島検事に与えておらず、ために同検事は不便なバスを利用していたが、検証の際は告訴代理人等の乗用していた自動車を二、三往復してこれに便乗してもらったのである。その前二月十日夕刻、告訴代理人は下田区検と東賀茂地区におもむき、豊島検事よりの希望とあったので翌十一日の現場検証の協力方を再懇請したところ、副検事及び署長不在の上、車が故障しているという理由で、丁寧ではあったが断わられてしまった。この際豊島検事とすると、十分の意を用い、告訴代理人側の取調べ要求に誠意を見せ、約四、五十人分を要する山道を登ってくれたことは、まことに誠実であったことを認められる。  かように豊島検事は誠意を示していたようでありますけれども、しかし捜査といたしましては、ほとんどこれに協力いたしておらぬ。これはあとでさらに申し上げますが、前の法務委員会に法務大臣委員長であって、横浜地検の問題をお調べになったことがあり、その報告書が出ている。ずいぶん内部の綱紀が弛緩している。検証に行く検事の車さえも心配ができない状況である。そうして被疑者及びその親戚の車へ検事が便乗していくほどの状態である。にもかかわらず、この一カ月前の本年四月には検事総あげで湯本でどんちゃん騒ぎをやっている。どこからそんな費用が出てくるか、これは調べればすぐわかるのでありますが、そういうような費用はどっさりあるのに、実地検証をおやりになるときには被疑者の車へ便乗しなければならぬなど、これは何という協力の仕方ですか。しかも警官たった一人をつけて、副検事も警察署長も一切これに協力いたしておらぬ、こんな捜査の仕方はどこにありますか、ともかくその取調べは済みました。その結果は実に疑問が一そう濃厚にされました。そこで岡村代理人が被害者側親戚の者らと横浜地方検察庁に対し、その疑問をあげて十分に取調べを要求いたしましたが、しかし一向にこれを取り上げてくれません。一方右二月十一日の検証の際に被害者のつけていたところのバンドの中から弾丸が出て参りました。検事がこれを押収いたしましたが、この弾丸こそは日本製のものか外国製のものか、つまり日本人が撃ったものか、米兵が用いておったたまがその腹へ当ったかということをきわめるために、きわめて必要なるところの証拠である。そこで、これは有力なる証拠とあって、検事の方では東京帝大に鑑定を依頼するということであって、私どもはその結果を期待いたしました。被害者側も大いにその結果を待っているのであります。ところが、一向にその結果がわかりません。最近に至りましてやっとこれは東大の鑑定を求めておりませず、警視庁の犯罪研究所で調べたということであります。これはあとで私ども——そんなばかげたことはありませんから、さらにこの点は掘り下げて御検討願いたいと思うのであります。ともかくそういう状態であって、この重要なる問題が結果不明になった。越えて三月の二日に至りまして、岡村弁護士が豊島検事をたずねまして、右疑問の点に対する十分の調査、それから弾丸鑑定等を急いでいただきたいなどということを要望いたしました際に、豊島検事は意外にも岡村弁護士に対して政治的圧力をかけてもそれには驚かない、悪ければやめたらよいでしょうと放言をいたしております。何ということでありましょう。私ども刑事局長をたずねて辞を低うして懇請をし 被告人ども刑事訴訟法上許されたる告訴権の行使を放置して、しかも一年間も放置されているし、証拠が隠滅されるし、どういう結果になるかわからぬ不安のあまり、早く取り調べてくれということを相談に行くのは当然のことであって、しこうして取調べをしてくれぬものだから私に言って、私がそれらの人たちを御案内して法務省の上司の人々に御相談をいたしまするや、政治的圧力をかけるとは何事だ、それくらいには驚かぬぞといって反抗的態度を示した、これは一体何事でありましょうか。こういったような検事の存在が許されるでありましょうか。よって本委員が昨月の上旬と下旬の二回にわたりまして法務省をさらにお尋ねいたしまして、二月十一日検証の結果に対する疑問を申し上げ、慎重のお取調べを要求いたしました。かつ弾丸鑑定を急がれたいということをお願いいたしたのであります。よってやっと横浜地検の中込部長検事の再度の調査ということになりまして、私どもまた大いにこれを期待いたしたのであります。すると五月五日になりまして読売新聞はかように報じました。「薄れた殺人容疑、猟銃誤殺事件告訴、ハマ地検近く結論」と題する記事が載りました。これによると「横浜地検では中込刑事部長検事、豊島検事係で取り調べていたが、殺人の証拠となるべきものがない、疑えば二、三疑える点があるが、これも無理に結びつけてのことだ、捜査すればするほどますます過失致死の証拠が強まるばかりである。」とございます。その翌日法務省の刑事課長より本委員に対して御連絡がありまして翌日お目にかかって承わりますと、新聞に出たようだが、まだ結論は出ておりません。弾種、弾数などさらに調査の必要があって、慎重に調査中でありますということでございました。しこうして弾丸鑑定については、ただいま申し上げました警視庁の犯罪研究所において調べた結果、日本製のものか外国製のものかわからぬということであったということでございました。私はこのとき深く感じたのです。ほんとうにこの事件の責任を追及しようという熱意のもとに、さらに弾種、弾数などを調べていてまだ結論はどうなるかわからぬというのであったら、前述の新聞のような記事が出るわけはないと思ったのであります。新聞社も単なる想像を書くわけもございません。公式には慎重調査をするといっておるが、新聞社などにはほんとうの腹を打ち開けて、あれは問題にならぬよ、捜査すればするほど過失致死の証拠が強まるんだよといったようなことをおそらく漏らしたものに相違ないと私は考えます。また弾丸も東大に鑑定させると言っておきながら、警視庁でやらす、二月から実に二カ月を要した、これはその道の人であったならば、もう一ぺんにわかるんだそうです。二カ月も果して要するものか、あるいはあっちこっちへ持ち回って警視庁へ鑑定を求めたときのその品物は、検事の押収したものとは違っていたものになっていたのではないか疑わざるを得ません。私はこういうことを考えても全くふにおちないと考えました。私が一月刑事局長にお願いをしてからすでにはや五カ月にもなっております。それで今ごろ弾種、弾数を調べなければよくわからぬなどということが一体あることでありましょうか、もし熱意をもって捜査を遂行し、真相を追及しようとするところの責任をお感じになっておるのであったならば、もうすでに結論は出ておると思います。ほんとうに職責を果そうとするお考えでありますかどうか、私どもの納得の行くまでに御説明をいただきたいと存じます。
  26. 井本台吉

    井本政府委員 お答え申し上げます。この事件につきまして、ただいまお尋ねの際に御発言がありました通り私は本年の一月、日時は忘れましたが、佐竹委員からこの事件についてのいろいろお話がございました。私どもといたしましては、正式のこの犯罪捜査の指揮ということではありませんが、かような関係事件につきまして、お話の点もいろいろごもっともの点がございますので、私の局の参事官あるいは課長などを通じまして非公式に最高検、高検並びに現地の横浜地検に、かような上申があったわけであるが、十分調べをしてはどうかということを申してあったわけでございます。さらにその後お話の通り二月の中旬に豊島検事が現地に参ったようでありますが、調べが進展いたさないということで、またいろいろお話のように情報の御提供がございましたので、かような事件は正式に最高検の刑事部において取り上げて検討していただくのが相当であるという結論になりまして、これは少しおくれますが、四月に入りましてから正式に最高検の刑事部で関係の東京高検並びに横浜地検の検事を招集いたしまして諸般の事情を聴取していろいろ捜査の指揮をしておるようでございます。事件の調べは何と申しましても事件の起きた直後に迅速に調べますといま少しく早く結論が出たのではないかという点が考えられますので、その点はまことに先ほど申し上げましたように遺憾の点でございまするが、何分にも検察庁事務が多忙でありまして、しかも犯罪の現場が沼津の下田支部の管内でありまして非常にへんぴなところであるのみならず、記録が下田支部から沼津に参り、沼津から横浜に来たというようなことで、犯罪の現地と取調べに当りまする検察官との連絡が非常に悪くて、いろいろな点で被害者側に御満足のいくような調べができなかったのでありまするが、当事者といたしましては極力捜査の結了を見るように努力をしておるのでございます。簡単に申し上げますと、この事件被害者被疑者との間に非常に微妙な利害関係がありまして普通の関係ではないというような……(佐竹(晴)委員「その点はまたあとでこまかに承わります」と呼ぶ)こまかい点は省きますが、ともかく私どもといたしましては、この犯罪が過失致死であるか、あるいは謀殺であるか、あるいは過失致死にいたしましても、違った被疑者がいるのではないかというような点につきまして、極力結論を出して、公正な判断をしたいという念願に燃える次第でございます。鑑定の点につきましても、鑑定の結果が非常におくれましたが、私どもとしては、弾丸の鑑定につきましては、警視庁の鑑定を相当高く評価しております。しかしこの点につきまして、さらにほかにもっとよい鑑定場所があれば、御指示をいただきまして再鑑定も辞さないつもりでございます。
  27. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 この問題はさらにさらにいろいろ究明しなければならぬ点が多いのでありますから、ただいまのお言葉に対しても逐一申し上げたい点がありますが、一応荒筋だけをお尋ねいたしまして、後日もっとゆっくり時間をとってお尋ねいたしたいと考えます。  そこで第二にお伺いいたしたいことは、本件にはアメリカの兵隊が関係しておるために、その捜査にちゅうちょしておるではないかという点であります。本件告訴状には、みずからあやまちを犯したと名乗り出ておりまする横内和美を被疑者と表示はいたしておりますが、しかし告訴事実の内容には、被疑者が狩猟中、外数名の者と共謀の上、同行の名取実を殺害しようと企て云々と明記してありまして、外数名中にはアメリカの兵隊も入っておりますことはもちろんであります。のみならず、外人の関係のある殺人容疑事件であることをしばしば申し立ていたしておりまして、外人の同行していたこともまた事実でありまするから、何がゆえにその外人と事件関係について捜査をなされなかったか。ほとんどこの捜査がなされていないようでありまするが、これはどういうわけでございましょう。
  28. 井本台吉

    井本政府委員 被害者が死亡しておりますと同時に、被害者がなくなった現場におった者がほんのごく少数で、問題になっておる横内と永井という者がおりまするが、そのほかに山案内人に聞くと、もう一名外人がおったやに現在の状況ではうかがえるのであります。ただし、先ほどもちょっと申し上げましたように、この事件の暗い面と申しますか、関係者の数をなるべく少くしたいというような事件関係者の気持でありますか、外人の名前などが当初は出ていなかったので、最近になりまして、この問題の外人も当時現場の付近におったような点が判明したわけでございます。別に外人であるから調べをしないというのではありませんので、さような事情で事件関係者の名前が初めの段階においてはっきりしなかったということで調べができなかったというのが実情でございます。
  29. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 それはまことに意外なことを聞くのです。外人は当初から問題にしておる被疑者の一人であります。永井隆正が昭和二十九年三月八日に横浜の郵便ギャング事件担当の吉川、小倉という両刑事に対して述べたところによりますと、昭和二十九年二月二十日に六連銃が、すでに静岡地検の沼津支部に証拠品として提出済みであるということでありました。そこでCIDと横浜の市警が取調べをいたしましたところ、それは全くうそであることがわかった。この永井隆正というのは、告訴状にあります外数名のうちの一人であります。そうしてYEDを捜査いたしましたところ、ロングかコックかわかりませんが、どちらかの部屋からその銃が発見されました。そうしてその銃が被害者方に返還されているのです。被害者がそこへ行って取ってきたのではない、外人の兵舎へ隠されておるものが機関の手を経て返されておるのです。それを知らぬとはもってのほかです。しかして、それが問題の六連銃です。それをお調べいただかなければ、問題の根本をきわめることができないのです。それを、今ごろになって知ったから、今ごろになって外人の名が出たから云々などとおっしゃることはもってのほかであります。その狩猟当時において、一体だれがその銃砲を持っていたのか、その他、どういう経路でその兵舎の中に保管されていたか、それは一体コックが持っていたものか、ロングが持っていたものか、何に使用されたものか、それはその当時お調べにならなければならぬはずでありますが、今日におきましては少くともお調べが済んでいるはずであります。大体それは、何がゆえにそれらの関係を十分にお調べにならなかったのか、結果はどうなったのか、それを承わりたいと思います。
  30. 井本台吉

    井本政府委員 外人の名前が出たのが最近であるというようなふうにおとりでございますると、私の言い方が間違っていたかと思いますが、もちろん、最初の段階においてわからなかったという趣旨で申し上げたので、さように御了承いただきたいのであります。本件の関係者の中にヒッチコックという曹長がおりますが、この人が最初この猟銃の会合に出る予定であったように考えられるのでありまするが、実際にこの鉄砲撃ちの会合にはロングという人が同行しておるようでございます。この事件関係者が、ロング伍長が何がゆえに鉄砲撃ちの会合におったということを秘匿したか、その間の事情はまだ判明いたしませんが、われわれといたしましては、何も調べなければならぬものを故意に放任するという気持は毛頭ございませんので、関係者は、可能な範囲においてできるだけはっきりするように調べるという気持においてはかわりはない次第でございます。
  31. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 本件の現場に持って行ったという銃が非常に問題でございます。被害者が借りて持って行ったという銃は、根本という人から借りた国産響号二連銃と、村井という人から借りた外国製のエドワードペープという二連銃と、それから山案内人の太田の持っておった銃だけだというふうに事件は今日まで作り上げられておる形になっております。しかし、被害者から永井隆正に四万円で譲渡して、永井から米兵曹長ヒッチコックにプレゼントしたという米国製の六連銃が、今回の現場に持っていかれていたものと見られる状態が明らかであります。それはその狩猟に行った事件の当日、米兵のコックは右プレゼントされた銃を持って狩猟に出るために、同日の朝、神奈川県の林務課にそのプレゼントいたしました永井方の店員の谷本某を使者といたしまして狩猟免許を申請して、これを受け取っております。同日その銃を持って出かけたものと見なければなりません。聞くところによりますと、コックは当日横須賀に用件があって、現場には行かなかったということでありますが、これは一カ年余もほうっておいて、このごろになってそのことが問題として追及されるようになって、初めて言い出したことであります。その間アリバイなどもかまえているのではないかとさえ思われるのであります。もしコックが持って行っていなかったといたしますならば、おそらくロングが持って行ったのではないかと思う。それは何ゆえか。その銃がYEDの捜索によって、とにかくコックかロングかの兵舎の中から出てきておるからであります。どちらかが持っておったに相違ありません。この重要な六連銃、しかもYEDの捜索の結果出て参りました有力なる証拠を何がゆえに押収もせず、また何がゆえにその当時その関係捜査しなかったのでありましょうか。これを承わりたい。
  32. 井本台吉

    井本政府委員 事件捜査開始当時の事情がまだ私どもに判明いたしておりませんが、いずれにいたしましても、この事件につきましては、お話のような点を十分考慮いたしまして、さらに厳重に調べをいたしまして、相当な結論を出したいと私は考える次第でございます。
  33. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 さらに徹底的にお調べをいただきますことは、まことに希望するところであります。すでに一月申し入れをいたしました以後にその誠意を現わしていただきましたならば、私が当委員会において質問する必要はなかったのであります。ところが今日に至るもまだ結論を得ておりませんので、やむなくお尋ねをしなければならぬことになった。従ってこの席において十分の御答弁も御用意いただいておるものと思っていたのであります。まだ十分お調べが済んでおらぬということでございますならば、一そうのお調べをお願いいたしますが、この際さらに申し上げまして御参考に供しておきましょう。  本件においてさらに重要な問題は、被害者を射殺したところの弾丸は日本製のものであったか、外国製のものであったかという点であります。被害者名取が狩猟に出かけたときは、神奈川区大塚商店から和製十二番弾五十発、四号二十五、五号二十五を買って持って参っております。これは証拠品として押収されております受取書の中にはっきりいたしております。ところがさらにこの事件の取調べ中に、関係人から、現場において薬莢二個、そうして米国製のウエスタンの弾丸六個が現われまして、これが証拠品として提出されて、検事が押収されているはずであります。もしも外人に関係なしにこのウエスタンという弾丸が出るというがごときは理解することのできないところであります。右コックにプレゼントいたしました六連銃が狩猟の現場に持参されていなかったならば、その現場からこのウエスタンの弾丸が出てくるわけがないと私は考える。銃は押収されていないが、ウエスタンの弾丸は押収されたというごときは、とうていこれは理解することはできないところである。これはまじめな捜査ではありません。検事がもう少し頭を働かしたら、それくらいのことがわからないはずはない。弾丸を押収していて銃を押収しないという、そんなばかなことがありますか。もっと被害者が村井から借りたエドワード・ペープという二連銃は、外国製の弾丸も用いられますが、しかしそれは和製の弾丸を使用することもできるのはもちろんでありまして、被害者は根本から借りた銃と村井から借りたこのエドワード・ペープに使用するために、特に大塚商店から和製五十発を買っておるのであります。また山案内人の太田が盗みとったという被害者の銃に装填したというのはビクトリーという和製品であります。これも明らかにされております。  さらに二月十日に検証の際に、被害者のバンドに射入されたという散弾は、当日立ち会った経験者が一様に、一見してこれは外国製だと言っておる。しかしそれを東京大学にまわして鑑定するかと期待しておると、いつの間にやら警視庁の犯罪研究所に回って、そうして製造国不明であるという鑑定がなされて、われわれにその報告がなされた。実に奇怪千万であります。一体銃や弾丸を何人がどれを、また何ほど持ってそうしてその外人はどういう行動をとったかということを何ゆえに直ちに捜査しなかったか。少くとも今日といえどもこの外人をお調べになっておらぬと思う。その二人の外人はどうなっておるのでしょう。
  34. 井本台吉

    井本政府委員 ロング伍長の方は、その後アメリカに帰っております。ヒッチコック曹長の方につきましては、CIDを通じまして調べてありますが、検事調書がまだできておりませんので、さらにその点について調査を完了いたしたいと考えておる次第でございます。
  35. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 被疑者の横内和美や山案内人の太田栄一は、当初米国の兵隊は全然同行していなかったと、これを隠しておりました。これはもう刑事局長も御存じの通りである。次いで山中でたまたま米兵と道連れになったとうそをつきました。ところがこういう調書は作られておるのにもかかわりませず、今そういう調書がありましたら見せていただきたいと言ったら、検事の手元にないという。奇怪千万であります。しこうして今やお説の通りロングは確かに現場へ行っておったことは明らかです。これは刑事局長より報告を受けて、私はそれを確かめることができた。はっきりロングは行っておったのです。それが米国へ帰った。たれが見ても逃がしたとより考えられないじゃありませんか。これに対して何の弁解がありますか。ロングかコックの兵舎から銃が出ておるのであります。そのときになぜつかまえて調書をとらなかったか。そうして一年たって文句を言ったら、それは米国へ帰っておりますからわかりませんという。腹のバンドへ当っておる弾丸は、それは米国製のものに相違ないといって、鑑定にやると製造国不明という。何ということでありましょう。私はどうしてもこれらの関係を理解することができません。豊島検事が昭和三十年の二月の十日に、現場検証に参ります際に、その検証に行くことがきまった二、三日前であります。告訴代理人岡村弁護士に対しましてこのようなことを言っております。それは告訴代理人岡村弁護士とそれから親族四名が横浜地検の豊島検事をおとずれて、検証に参ります道筋や車などについてお打ち合わせをいたしましたが、その際のできごとであります。その際豊島検事は、岡村弁護士だけを検事の部屋の前の廊下に招きまして、こう言っております。「実は困ったことが起きた。この事件の中に外人が関係しているが、東京CIDが横浜CIDを通じて地検渉外係に対し、どういう理由で外人を調べるのか知らせるよう連絡があった。東京CIDでも、猟に行って外人が射殺したという事件を調べているらしい。事は国際間のことなので慎重にしなければならないが、もし衆議院の方で外人が犯人である旨断定して、米軍の方へ連絡した結果の問い合せだと早まり過ぎているので、何とか岡村さんの方でこの点を確かめてくれ、もしそうでなかったらよいのだが……」こういうことを述べて拘るのであります。一体検事ともあろう者が、外人関係の調べにおそれをなし、ちゅうちょし、逡巡し、選挙違反では戸別訪問でも片っ端から引っぱってほうり込むのに、外人関係ならよう手をつけないということでは、独立国家としての日本の司法権がどこにあるか。この豊島検事のいったことについてお調べなさったことでもありますか。もしそんなことは言わないと言うならば、岡村弁護士と豊島検事を次会に私は証人として喚問するから、その席において一つ対決を願いたいと思っております。これについて何かお調べでもありましたか。
  36. 井本台吉

    井本政府委員 われわれの常識といたしまして、現職の豊島検事が、さような発言をするはずがないと考えておるので、しいて確かめはいたしませんでしたが、本日お尋ねもありますので、さらにその点について、いま一度当の豊島検事について詳細事情を聴取いたしたいと存じます。
  37. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 時間も過ぎましたから、あとは午後にいたしたいと思います。
  38. 三田村武夫

    ○三田村委員 この機会に緊急事案としてお尋ねいたしておきたいことがあります。実はただいまこの号外を拝見したのですが、けさ七時ごろ宇野——高松間の連絡船紫雲丸が衝突、沈没した事件が発生いたしております、修学旅行のための生徒その他三百余名が、悲惨な犠牲者となっているようであります。近ごろひんぴんとしてこのような事件が起きますので、当委員会におきましても、先般来これらの交通禍をいかにして防止するかという点に関して、しばしば意見の交換が行われ、けさの当委員会では、交通禍防止に関する特別小委員会を設けることに決定したのであります。そういう観点からも、この際ぜひ法務、警察両当局に、交通禍防止の監督の立場から御所見を伺っておきたいのでありますが、こういう事案に対して、従来警察のお立場、検察のお立場からどのような処置をとっておられるか。ことにけさ問題になりました紫雲丸という船は、号外によりますと、二十五年三月にも衝突、沈没したことがある。そのときに刑事的な責任あるいは警察的な立場から、どのような処置をとられているか。こういう事案に対しての処置が、ただ被害者の救済とか、あるいは遺族に対する慰安、弔問そのことのみで終ってしまいますから、その当事者が案外問題を軽く考えるという傾向があるのであります。そのことのために、われわれこの委員会でも特別に小委員会を設けて、今後こういう事案をできるだけ防ぎたいということを今考えているのでありますが、これは犠牲者の立場からするとまことに深刻な犠牲であります。その肉親、親族一統も、何とも忍ぶことのできない深刻な犠牲でありまして、われわれはもっと真剣に、このような事件に対する対策を考えなければいけないと思う。こういう事案に対してどのような態度をもって臨まれるか、過去における事案に対して、どのような処置をしてこられたか、まずこの二点について検察、警察両当局から御意見を伺いたいのであります。
  39. 花村四郎

    ○花村国務大臣 交通禍中、もちろん法律に照らしまして犯罪となり得る行為に対しましては、これは仮借なく所定の法律に照らして処置をしてきているわけでありますが、今の船の、前に起きた処置がどうなっているかというような御質問もありましたが、それはただいま資料がありませんので、もし必要とあらば、その点は調べて申し上げることにいたしまするし、なおその他の交通禍に関するおもなものについての処置がどうなっておるかというようなことに関する、何か資料でも必要であられるということでありまするならば、その点も、でき得る限り資料を集めて提供いたしたいと思っております。過去においても万全の処置をしてきたことは当然であろうと思いまするが、今後においても、その点は変りなく、法規に照らして最も公正妥当な処置をとっていきたいと存じております。
  40. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 海上における船の衝突事件による交通禍に対しましては、今法務大臣からお答えがありましたように、刑事責任の追及についてはいつも検察庁中心になって、警察と海上保安庁等が協力していたしております。最も大事なのは事前のいろいろな行政監督であろうと存じます。これはそれぞれ運輸省関係においておもな監督をいたしておりますが、こういった衝突事件の真相の発見と事後における反省につきましては、御承知のように海難審判所が設けられまして、そこでどういう理由でこういう衝突が起ったか、それに対する海難審判所としての結論及び制裁をそこで加えられる、こういう組織になっております。従って海上のこういった交通禍につきましては、警察といたしましては今日の制度上は副的な協力をいたしておるという程度でございます。
  41. 三田村武夫

    ○三田村委員 本件に関しましても、おそらく他の委員会において慎重な検討、調査を行われることと思いますが、当委員会におきましても、先般来最も中心的な問題として人権擁護が叫ばれておるのであります。犯罪捜査その他の事案について人権が尊重されなければならぬことはもちろん言うまでもありませんが、こういう事案を見た場合われわれが考えることは、何らの責任のない方の犠牲——船に乗る人、バスに乗る人、汽車に乗る人は、国及び公共団体あるいは法律で認められ、当局によって承認された機関を信頼して身命を託する。その場合に、親の立場から考えましても、あるいは肉親の立場から考えましても、何とも取り返しのつかない悔いを千載に残す、このような事案がひんぴんとして起ることについては、われわれは真剣に考えなければいけない。ただ行政監督の区分に従って、これが法務当局の責任であるとか、警察当局の責任は副次的であるとかいう問題だけではなくて、政府当局として今後こういう事案防止のためにどのような決意をもって臨むか、必要以上に厳格な立場でお考えを願いたい。これは法務大臣直接の責任じゃないかもしれませんが、政府としては共同であります。宇野—高松間の連絡船はおそらく国鉄でしょうが、これは政府の監督下にある機関であります。そういったものに対する考え方が、今まで、端的な言葉をもっていたしますと、甘過ぎはしないか。法規に照らしてこれが罪になるとかならぬとかということでなくて、そういう場合の処置は法規以上、より厳格な態度をもって臨むということを真剣にお考え願いませんと、こういう悲惨な交通事故はなくならぬ。法務大臣がここにおられるのですから、政府を代表して遺憾の意を表していただきたいし、また今後どのような決意をもってこういう事案に対処されるかということについても御所見を伺いたいと思います。  なお今法務大臣も言われましたが、われわれ当委員会で交通禍防止に対する小委員会を設けて、今後その対策を練りたいと思っておりますので、法務当局も警察当局も、従来の類似事案に対する処置などについて、詳細に御調査の上、資料として御提出願いたいのであります。
  42. 花村四郎

    ○花村国務大臣 三田村委員の御意見、ごもっともであります。ただいま申されました船禍については、先ほど予算委員会において運輸大臣から詳細報告がありまして、大部分の人は救済され、しかも残っている人々に対しましては、海上保安庁の船も何隻か出て、これが救助に当っているというような話でありましたから、その被害たるやおそらく寡少であろうと存じます。またあることを祈っておりますが、しかしそういう問題の起きましたことは返す返すも遺憾にたえない次第であります。近来ことにそういう問題が次から次に起きて参りますことは、われわれとしても大いに考えさせられる点がございますので、政府といたしましても、所管官庁は申すに及ばず、そういう船禍の今後絶対に起らないように、予防、防遏に関しましてはもちろんのこと、あらゆる角度から万全の処置を講じていきたいと存じます。
  43. 世耕弘一

    ○世耕委員長 この際委員長からもちょっと政府当局にお尋ねいたしますが、今度のこの遭難は天候が原因であったのか、それとも設備の上に不備な点があってこういう事件を引き起したのか、その点予算委員会説明がありましたかどうか、お伺いいたしたい。
  44. 花村四郎

    ○花村国務大臣 ただいま委員長が言われたような報告はありませんでした。大体号外に載っておりますような、もっぱら被害状況等に関しまする報告が大部分のようでありましたので、私もいかなる原因でそういう船禍が起きたのか、今なおわかりませんが、そういう点は運輸省の方で調査をいたしておるであろうと存じますから、いずれそれが判明いたしますれば、政府としてももちろん議会に報告するでありましょうし、また法務委員会の方においても必要とあれば、私から御報告申し上げることにやぶさかでないことを申し上げておきます。
  45. 世耕弘一

    ○世耕委員長 重ねてお尋ねしておきますが、今の号外をのぞいてみますと、濃霧の結果衝突を余儀なくしたというふうに号外には発表されております。もし濃霧のためだとするならば、近ごろは電波が発達しているのだから、濃霧の機会にも安全な航海が十分できるはずであります。そうすると結局濃霧航海を安全にできる措置がしてなかったかということが問題になる。もう一つは職務の弛緩です。その責任者が職務上の責任を果して完全に果したかどうかということが大きな問題だと思います。今法務大臣からの御説明によると、人命にはきわめて被害が少かったということは不幸中の幸いだと思いますが、閣議等に問題が出ましたときにはこの点を特に明確にしていただきたいことと、同時に今三田村君からも説明があったように、近ごろはひんぴんとしてこういう事件が起っておる、これは何か原因がなくちゃならぬ、その原因を追及することがすなわち禍根を断つ一つの根本だと思います。この際運輸省ばかりにまかしておかないで、検察当局、いわゆる法務大臣の支配下にある係官を即時現地に派遣する用意があるかどうか、また派遣されたかどうか、この点もお尋ねしておきます。
  46. 花村四郎

    ○花村国務大臣 それはいつのできごとでありますか、私もまだ詳細に調べておりませんが、その号外並びに予算委員会における運輸大臣報告によって知ったようなわけでありますので、おそらくまだ法務省としては派遣してなかろうと思います。しかし派遣する必要があるかどうか、その辺もわかりませんので、もしあらゆる面から検討をいたしまして派遣する必要ありと認めるような場合が出て参りましたならば、さっそく派遣をして、適当な処置を講じたいと考えております。
  47. 世耕弘一

    ○世耕委員長 なお重ねて井本局長にお尋ねしておきますが、こういうような大事件はむしろ真相調査は敏速を要すると思いますが、刑事局長の現地指導者としての御見解はいかがでありますか。
  48. 井本台吉

    井本政府委員 詳細の事情はまだ判明しておりませんが、この事件は高松地検の所管になると考えるのでございます。現地には小坂検事長、中島検事正等の有能な監督官がおりまして、捜査にはおそらく時期を失せず遺憾なく遂行すると考えますが、ただいま法務大臣からも御言明がありました通り、事情のいかんによりましては法務省刑事局もしくは最高検から現地に係官を派遣いたしまして、さらに迅速な捜査の完了に努めたいというふうに考えておる次第であります。
  49. 世耕弘一

    ○世耕委員長 なおこの際委員長より一言申し上げます。前回の委員会におきまして志賀委員より要望があった法務大臣の発言内容について、その後速記録を調査せしめたところ、花村法務大臣の答弁に際しての真意はその意を尽さざるやの感はありましたが、特に本委員会において取り上げて問題にするほどでもないと判断いたしましたので、この点志賀君においても御了承が願いたいと思います。  午前の会議はこの程度にとどめまして、午後二時まで休憩いたします。     午後一時六分休憩      ————◇—————     午後二時五十二分開議
  50. 世耕弘一

    ○世耕委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  人権擁護に関して質問を続行いたします。佐竹晴記君。
  51. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 午前に引き続いてお尋ねいたします。  第三にお伺いいたしたいのは、本件が謀殺であるとの嫌疑が相当に濃厚であるにかかわりませず、これを過失殺として軽く片づけようとしているではないかという点であります。まず被疑者横内和美が、自分において過失で射殺をしたと言っておりますが、しかし二月十日の実地検証の際、事件当時の状況を再現いたしてみましたところ、横内は銃を持った経験もないということが、まことに明らかにされたのであります。同日、その場所に行っておりましたハンターの経験者であります根本実が、そこに立ち会っておりまして、その状況を見たのでありますが、再現した実情をよく見て、その状態を述べております。これによりますと、被疑者横内和美は山の方に向って一発弾丸を放した。これはちょうどキジが来たというので、その山中に向って一発撃った。こう言ってその所作をして、一年前の動作をそこに再現してみたそうであります。ところがあにはからんや、その横内はその際、安全器のかかったままの引き金を引いている。そこで引き金がちょっとも引けないので、銃をおろして、どうしたら引けるかと言って、盛んにそこで苦心をしていた。そこで同行いたしておった、ただいま申し上げました根本が、取り扱いを教えたのであります。よって被疑者は、銃の取り扱いについて初めてその操作をすることを知って、そこで所作をしたということが明らかにされております。かように、横内は自分で誤まって撃ち殺したと言うけれども、銃を扱った経験もなければ、みずから鉄砲を発射したものでないということは、この状態によって、それだけでも一見明瞭にされておるのでありますが、検察当局はこれに一向重きを置かれておらぬのであります。私はこれは重大なことであると考えますが、当局のお調べはどうなっておるでありましょう。またお考えはいかがでございましょう。
  52. 井本台吉

    井本政府委員 横内が誤まって被害者を撃ったという位置、姿勢等につきまして、われわれの方でも十分納得のいかぬ点がありますので、さらに捜査を続けておるような次第であります。従って今結論的なことは申し上げかねます。
  53. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 その点は私ども重大だと考えますので、十分お調べを願いたいと存じます。特に最初一発を放したときに、キジが来たからそこで撃った、こう言っておりますが、実はその鳥というのは、茂みの中へ入ってしまった。その鳥がどこに行ったか、いることもわからないのに、被害者の承諾を得てその茂みに向って撃ったというのであります。全たくあられもないことを言っております。そんなばかげたことはないと考えますので、十分お調べを願いたいと存じます。  さらに重要なことは、この一発を放したときに反動で倒れた。そこで第二弾で誤まって暴発さして被害者に命中さした、こう言うのであります。ところがこれは過日刑事局長のお手元まで届けてある通りでありまして、たしか写真の第五と思いますが、このように加害者と自認いたしております横内が申しているのでありますが、第一弾発射後火薬の反動で写真のような姿勢に倒れた折、無意識に第二弾を被害者に向けて発射した、かように自供いたしておりますが、横内和美の第一弾発射の折は、被害者はキジの出た方向に向っておりまして、その姿勢で第二弾が被害者に向って発射せられたといたしますならば、当然被害者の腰部後方から斜めに弾丸が腹部に入って、左の腹の前方へ抜けることにならなければなりません。ところが事件後藤井裁判医の死体検案書によりまして、弾丸が左腰部後方より水平に入って背骨を打ち砕いておる事実が明らかである点から見ましても、加害者の自供及び現場の状況からして、これは相当の相違があるのであります。この点はすでに写真をお示しいたしましてお調べをいただいておることでありますので、結果を得られておることと存じます。私は、この横内和美の供述は全くの虚偽であって信憑するに足りないものと考えられますが、お調べに当られまして検察官のお考えはどうだったでございましょうか、お調べの実情を承わりたいのであります。
  54. 井本台吉

    井本政府委員 調べに当りました豊島検事の報告等に徴しますると、平地における実際の鉄砲を撃った実情とは現地の実情が多少変っておって、桟橋の上の不安定な場所における発砲でありますので、必ずしも理論通り行くかどうか相当疑問があるということであります。しかしながらこの点につきまして、先ほども申し上げましたような被害の部位と被害者の姿勢等につきましてなお検討を要する点があるので、猟の経験等に非常に詳しい者をさらに物色いたしまして、かようなことがあり得るかどうか、かような点はいま一段と検討しなければならぬという実情にあるのであります。
  55. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 豊島検事のただいまの御報告だそうでありますが、不安定な場所においてでありますからこそ、私どもは一そうそこに疑問を持つのであります。専門家の話に聞くと、ああいったような写真に出ておりますような橋の上で、向うから鳥が来てもこれを見るがようやっとだそうです。それを身がまえて撃ったら、反動が多くてひっくり返るのだそうです。そこで山に向ってこの橋があって、山に向ってこう撃ったというのです。そこで反動を食ったらその下へ転倒しなければなりません。ところがどうでしょう。写真によると山の方へこうすわっております。いわゆる折り敷けをやるような工合に、けつをぐるっと回して、こちらへかがんでおります。そんなことがあろう道理はありません。ことにしろうとでありますと、そのやり方がまずくてとても反動が多いだろうと思います。ことにこの銃は非常に反動が多いそうでございまして、必ずその橋の下へひっくり返っておらなければなりません。それがずっと山の方へ姿勢がひっくり返っておる。そういう状態であるのにかかわらず、第二弾をまた引くなどということはありません。大体専門家の話を聞いてみますと、第一弾を引いたときに反動があって、つきすわるときはそのままだそうです。それをまたさらに二連銃をもう一弾引くなどということは、これはもう絶対にありっこないということです。もしうしろへすわってもう一度指をかけて引く場合には、これは別です。あんな姿勢のもとに反動でひっくり返ったら、第二の指をかけなければどうしても第二弾が引けないのですから、ありっこないのです。これはしろうとなるがゆえにこそああいったことをやって、私がやったと言っておるのですが、これは身がわりに出ている証拠なんです。これはだれが考えてもそう気づかなければなりません。ほんとにやった者はこれ以外にたれかあるのだということを見なければなりません。またその撃たれた被害者が倒れて、その銃は橋の上へ置いてあった、ところがその反動を食った撃った加害者の銃が橋の下へ落ちておったなどということになっておる。これはもし山の方へずしんとすわったとするならば、そのときに橋の上に置いたでしょう。第二弾もよう撃たないで置いたでしょう。ところが撃たれた被害者にしてみれば、どんとやられてどーんとひっくり返ったんですから、その銃こそほかへ落ちていなければならない。それも逆なんです。逆になっております。何といってもこれはありっこありません。こういったような調べ方をいたしまして、そうして私がやったんですと言って出たのを、ああそうですかとこれを信用いたしまして、それでもってこの問題を葬るというようなことがあるといたしますならば、少くとも私は検察庁というものを信用いたしません。そんなことは日本法律によって許された検察官としてありっこありません。私はこの関係については、最初に資料を持って参りましたし、刑事局長に最初にお目にかかってすでに五ケ月です。そこに何らかの確信を得られておると思うのでございますが、いかがでございましょう。今の点だけでもいかがでございましょう。
  56. 井本台吉

    井本政府委員 先ほど申し上げましたような創傷の部位と姿勢との関係が、どうも合点がいかぬ点があるので、この点について捜査を続けておるわけでございます。ただ佐竹委員のおっしゃるような、事件が殺人事件であって他に殺人犯人がおるというような点につきましては、現在の状況では、この横内の供述が相当検討を要する点があるという事情がある程度出ておるという程度で、先ほど申し上げたような、他に犯人があるというような状況までが調べの結果に出ておるというような実情ではございません。しかしなお相当問題の点がありますので、引き続き厳重に調べて、適正な結果を得たいと考えておる次第でございます。
  57. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 他にまだ嫌疑を受けるべき者があるかどうかということについてはわからぬようなお話でありますが、ただいま私が申し上げただけでも、これは横内がほんとうのことを言っていないんだ、だれかをかばうために言うておるんだ、ほんとうの供述ではないんだということだけは、私は御信用いただけると思います。そうすれば他に何人かほんとうのことをした者があるに違いないということを、それが外人かわからない、あるいは日本人かもわからない、それがだれにいたしましても、ともかくもその同行をしておった他の者と何か共同動作をやったんではないか、しめし合せてやったんではないか、それがためにわけのわからぬことをこの横内一人だけがひっかぶって、過失によって私がやりましたと言っておるのではないか、しかしそれは真実ではないということだけでもおわかり願わなければならぬと思います。これは私は過日来数回法務省に参りまして、口をすっぱくしてお願いをいたしておる点であります。一人の人を殺しておるのです。ともかく一命を奪った事件です。だれがやったかぐらいのことはどうしても追及しなければならぬ。そうして、私がやりましたと言って出ても、その言うことが信用がならぬとするならば、それなら他のだれかがやったんだろう、これはどうしても検察庁としてやっていただかなければならぬ点であります。  さらに進んで、横内はどう言っているでありましょう。先ほど言った、前方にキジが出たんでその方に撃った、というのでありますが、そのキジが出たというが、実地に検証いたしてみますと、五十メートルも先です。それは十二番銃の射程距離範囲内ではございません。しかもそこはキジの出るような場所では全然ないのです。そんなことを御信頼なさって、被疑者の言うことだから、一応信用できるというようなこと、おれがやったんだと言うから、それはほんとうだろうというようなことはとんでもないことであります。さらに最初は、撃ったとき二メートル、七尺離れたところから撃ったのだと一年前に調べたとき横内は述べております。今度実地検証をやりますといかがでございましょう。十五センチ、からだにくっつけて撃った、こう言うておるのです。何で一年の間にかわったのでしょうか。これは藤井裁判医の検案の結果によっても、三メートル近いところから撃ったならば、当ったところに相当の広い傷がつかなければならぬ、傷がこうならなければならぬ。ところがほんとうに当ったところには一銭銅貨大位の穴しかあいてない、そういった傷しかそこにない。これは至近距離による射撃であるということが検案の結果明らかになっている。するとちょうどそれに合うような供述を変えたものです。すると、検察官がまたそのままにそれを受け入れておる。最初の供述は一体何でございましょうか。普通法廷に出て参りますと、大がい最初の供述は、最も新しい記憶によってされた供述であるから、大体それが正しい、その後に変更されたものは信用するに足らぬといって、弁護人が立証でもいたしますと、十中九分九厘まで排斥されるのであります。ところがこの問題はどうでしょう。何かしらんほんとうの責任者を出そうといたしませずに、おれが責任者だと言って来ると、その人の言うことがいかに不合理であっても信用しそれを合理的に是正するように協力をいたしておるというより外に見ることができません。そうして、だんだん供述がかわってくる。二転、三転し、何度かわってくるのでしょう。こういった供述を変更いたします者を、何で強制力を加えて調べ上げないでしょう。普通、次へ次へと供述を変更する者は、虚偽の供述をするから、こういった者は外部と隔離しておいて、調べる以外にその真相を得る道がないというので、大がい逮捕するのであります。本件は人、一人をいためている事件です。何で強制力も加えないで、そのままこんなに放置していたしまして、二転、三転いたします供述を、しかも検事局が自分のお気持に沿うような逮捕しないでもよいような供述にだんだん変更されて行くことを認めるというがごときは、とうてい明朗なる検察行政のあり方であるとは私には思われません。こういったような点は、何といっても国民をして信頼せしめ、安心感を与えるものでないと存じます。一体、そういったような二転、三転いたしまして、変な供述、うその供述をしておったものに対して真実の供述をさすべき正当の方法がなぜ講ぜられなかったでございましょうか。この点についてお調べいただいたでございましょうか。
  58. 井本台吉

    井本政府委員 本件の事故発生の時刻は一昨年、昭和二十八年の二月十日午後一時ということになっております。従って白昼の事件でありまして、この現場には被害者と、問題になっておる横内という被疑者のほか、名取と、山案内人太田某と、それからロングという伍長がその近辺にいたことが大体推定されるわけでございます。検察官といたしましては、佐竹委員のお尋ねのような供述のあいまいな者は身柄を拘束して調べるという点もないではございませんですが、この事件は一応刑法の過失致死罪でありまして、罰金該当の事案でございます。これが殺人事件であるとかあるいは傷害致死事件であるという認定が十分つきますれば、あるいはまた別途の方法も講ぜられるわけでありますが、現在の状況では過失致死罪の推定に一応なっております。傷害致死もしくは殺人ということのためにはそれだけの事情もなければなりませんし、四人も関係者がおるのでありますから、おそらくその間に何らかさような実情がはっきりするのではなかろうかと思うのであります。従って身柄不拘束のまま現在まで調べを続けて来たのでありますが、何と申しましても、確かにお尋ねのような、横内の供述にも合点の行きかねる点もございます。従って、さような点についてさらに今検討を加えておるようなわけでございまして、いま少し日時をお貸しいただかないと最終結論が出ないというような実情でございます。
  59. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 何でも逃げようというお気持、また上司が下の検事のやったことをかばおうという態度で今日まで参っておりますので、私どもははなはだしく不満を感じ、検察当局それ自身の威信を信ずることができないまでの気持になっていたのでありますが、ただいまの刑事局長のお話を承わりまして、誠実なるお調べを遂行されるということでありますから、その結果をお待ち申し上げるより以外はないと存じます。この関係についてまだたくさんございます。私の今申し上げたのはほんの三分の一くらいでありますが、ただいまのお言葉もありますので、ここで具体的事実をくどくどしくは申し上げません。さらにより以上お調べをいただきますことを期待いたしまして、あまり具体的な関係について立ち入ってお尋ねすることを省略いたします。ただ被害者被疑者の一人であると思われる永井隆正との間にはきわめて微妙な関係がある。被疑者横内は、これはやはり進駐軍に勤めておりました一人でありまして、そうして外人をかばわなければならぬ立場にありますと同時に、他の被疑者との関係においても、できるならば自分で責任を負って他に迷惑をかけたくないという念に燃えている人間でありますことを十分御洞察いただきまして、とくとお調べを願いたいと思うのであります。その被害者被疑者の一人である永井隆正との関係と申しまするものは、まず被疑者である永井隆正は、昭和二十六年ごろ被害者名取実に対し詐欺被害を与えまして、被害者が死亡する直後まで未解決でありました。  それから被疑者でありまするところの永井隆正は、昭和二十八年十月ころから被害者名取実と共同にて米軍部隊の物資払い下げを受けて、被害者が死亡直後まで被疑者永井隆正に対して相当の貸越金のあった事実がございます。次いで被疑者であります永井隆正——被疑者の一人であるという意味です。永井隆正は米軍部隊より払い下げ物資を引き取るに当って相当なる不正をなしていたことを被害者が感知いたしておりまして、永井隆正に対してしばしばいやみを言ったことがございます。なお昭和二十八年十二月に被害者名取実は永井隆正と関係を断って、単独で米軍の物資払い下げをしようという計画をいたしておったのであります。次いで加害者であると自称する横内和美は、ただいま申し上げる米軍部隊の勤務者でありまして、被疑者永井隆正と被害者名取実との関係を平素からよく知悉しておるものであります。従ってもし名取がこれら米軍払い下げに関係いたしておりまするある種事件の秘密を漏らしでもいたしますると、たちまちにして影響を受ける関係にあった、これを非常におそれておった関係にあった。それはむしろ永井の方が中心であり、しこうして助の立場にあった被疑者横内も、その事態をおそれておったことは否定することはできないと思います。それから被害者名取実は、米国製の六連銃を米軍部隊のコック曹長に対してプレゼントするに当りまして、被疑者永井隆正を通じていたしております。そういう特別な関係、これはやはり払い下げ関係に伴う好意を示す趣旨のものであったそうであります。そして次いで被害者より被疑者の  一人であります永井に対して私の記憶にして間違いなければ約五十万円ほどの貸しがあったのでありますが、事件直後にその金が返ってきておるのです。一体生前中に一向払ってくれないのに、被害者が殺されると、その金がすっとどこかからわいて出て支払いができたのであろう。おそらく、私がやりましたといったような責任を負う者があって、責任を負わぬで済んだ人々の手からこれらの金が醵出されたのではないかと見られる節がないでもないのであります。これらの関係を十分御洞察いただきまするならば、この点はもちろん権力を持っておらない私どもとして調べるに由はございませんが、十分お調べをいただきまするならば、必ずこうした関係は明らかになってくるのであります。これが単なる過失殺であるか、それとも共謀による殺人であるかといったようなことは、最初からうそをついている横内のような者を不拘束で幾ら調べたところで結論が出るわけはない。今申し上げるような事態であるから、一つだれかに強制力を加えてお調べをいただくならば必ず糸口が出るもので、それで初めて真相がはっきりつかめるのだということを、私がるるお訴えをいたしておるのはこれであります。私どもこそ人権尊重を主張するに当っては何人にもあとに引くものではないのでありまするが、こういった事件で何も調べないで被害者をほうりちらかしておくということは、これまた人権じゅうりんのはなはだしいものであります。これは何としてもお調べを願わなければならぬ。とにかく人一人をいためておるのであります。何の強制力を加えることなしに、ある一人が否認をすればそうですかといって受けいれられる。しかもそういうことが一切信頼することができないうその供述であるということがわかっておりながら、そのうその供述をそのままにほうっておく。一年もほうっておくうちに、調べなければならぬ外人はほかに行って帰ってしまった。また内地における人々の供述も変化してきた。それでもって否認を続けておるからどうにもしようがない。こういったことで、もしこういった事件が済んでしまうといたしますならば、これは私どもといたしまして神も仏もないものかという気持がせざるを得ないのであります。私は十分にこの点のお調べをいただきたいと考えます。  なお私がこの際お訴えをいたしておきたいことは、古沢正一がかように述べております。昭和三十年二月の十五日に横内和美は名取宅へやって参りまして横内の自供するところによれば、同日の午前二時ごろ自殺をしようとしたが死に切れずに、横浜の伊勢佐木警察署にみずから保護を依頼した。自殺をはかろうとした理由は、検察当局の捜査がこれ以上続行されたら国際問題にまで発展するおそれがあるから、もしそうなると自分はとうていたえられない、生きておれないという気になって、そういう行動に出たと言って、おわびに参っておるのであります。しかもこのおわびに出たことと、自殺を企てたことについては検察当局もお認めであり、かつ刑事課長におかれましても、過般この問題についても触れられておったのであります。今日になってみれば、自分は何と弁解しても被害者側が聞いてくれないから、自分は自殺をするような決意でもしてそういう動作でもすれば、被害者の方が納得でもしてくれるのではなかろうかと思ってそうやったのだ、こういったようなことを述べ、かつおわびに来たのだといったようなことを述べております。しかしそうではありません。これは絶対に信頼することはできません。私の方には証人を幾人も持っております。しかしておわびに参っておるのは、国際問題になるから、どうかこれ以上追及しないでくれという依頼に来た以外の何ものでもない。私の方では幾多の証人がありますから、もしお疑いとあれば、後日私の方から出すことにいたします。またこういう委員会の席上でなくても、何かお話等があれば、私の方で資料を提供いたしましてもけっこうであります。こういうようなことで、だれかが何か弁解をいたしますと、もうすっかりその弁解をうのみにいたしまして、それらの主張が正しいものといたしまして、これには殺人の嫌疑はない、傷害致死の嫌疑はないなどといってこの問題が葬られてしまいますことは、とうていたえがたいところであります。私はこれに関連してなお幾多の事実を持っておりまするけれども、あまり私のみが時間を食いますから、この点についてはこの程度にとどめることにいたしておきます。先ほど刑事局長より、さらにこれは誠意をもって調べるという誠意のあるお話でございますので、それを期待することにいたします。  この際私は大臣に承わっておきたいと考えますが、私が第二に述べた外人関係について、あれだけの関係にあるにかかわらず、一切調べをしていない。それで一年半たった後に、今どうしても調べなければならぬようなときに、その外人はもう向うに行ってしまっておる。世間から見れば、逃がしてしまったとよりは見られないのです。外人兵舎から六連銃が出てきたときに、なぜすぐ調べなかったか。現場において外国製の弾丸が出ておるのでございますから、それを押収すると同時に、六連発も押収し、直ちに外人を調べたらいいのです。一年半もほうっておいて、今日になれば時期を失したなどということは、私は言えた義理ではないと考えます。在野法曹四十年の歴史を持たれる法務大臣といたしまして、こういうような状態で検察行政の姿が正しきものであると考えられましょうか。それともこれはもう少し何とかしなければならぬとお考えになりましょうか。  さらに第三に、誤まって殺したといって名乗り出てきておる者があるけれども、それがほとんど信ぜられない。そしてその供述が二転、三転全部うそであって、今日うそであったことがわかって、その後医師の鑑定書が出るとだれに入れ知恵をされたかわかりませんが、それに合うような供述をいたしますと、それがけっこうだろうなどといって、その問題をもう殺人の嫌疑なし、過失による罰金刑に相当するのだなどといって、軽くあしらってしかるべきものと思われましょうか。私が午前から午後に至るまでるる述べておりましたところを熱心にお聞き取りいただいております法務大臣といたしまして、検察行政のあり方がこのような状態であっていいものであろうかどうか、この際私は大臣の御意向を承わりたいと存じます。
  60. 花村四郎

    ○花村国務大臣 佐竹委員のお話しを承わりますると、まことに複雑怪奇の事件のようですが、果して真相はその通りであるかどうかはまだ私のあずかり知らざるところであります。いずれまたよく調査はいたしてみたいと思いますが、しかし大体の筋書きにかんがみて、すべて検察当局の処置が妥当であったとは考えられませんし、その捜査も、きわめて敏速的確に進めましたことであろうならば、こういろいろ問題になるようなことにもならなかったと思いまするので、かようの点については、今後なるべくすみやかに事件の処理に進んで行くということに、一線の検察官に対しても督励をいたしたいと考えております。
  61. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 この際、被害者の痛ましい腹部切開の写真一葉だけを大臣にお目にかけておきます。この写真は射撃された直後に切開したもので、お医者が切開をして、そうして縫合したのだそうであります。何という粗雑なことでありましょうか、犬ネコを縫うように縫っております。だれが見てもこれは生きている人を縫った姿ではありません。ところが、これを私が問題として提供いたしますと、いや、そのとき非常に急いでおったからあるいは粗末であったかもしれぬがなどとそのとき扱ったお医者はおっしゃっているそうであります。そうして、縫うてから六時間生きておったと言うている。だがしかしこれは、生きている者を縫ったにしては、生かすように、治療するために縫うたものではない。これはゆゆしき人権問題です。これはお手元に行っておると思いますが、一応お目にかけておきます。もし私の言う言葉にお疑いがあるといたしまするならば、私からだれか専門医にこれを見せて鑑定を願いましょう。およそ医者と名のつく人が、治療するために、生かそうとする意思で縫うた縫い方であるかどうかということを。こういったことを平気でやるようなお医者があったといたしますならば、これは人権問題である。これは死んだ後において縫うたものであるとより見ることができません。そうであるといたしまするならば、本事件の御賢察をいただきまする上にも、相当にこれはまた観点を変えてごらんいただかなければならぬ点があると思います。生きておる者を、全く犬ネコを縫うかのごとくこういう縫い方をしたとするならば、これ自体また許しがたき縫合の方法であると私は考えます。この事件は、被害者の遺族の身になってみれば、実に、泣くに泣かれぬ、いてもいられない事件であります。しかも被疑者がどのようなうそをつこうとも、はいさようでございますかと、そのことのみを信頼されて、そうして何らの強制力も加えることなしに、この問題は一年半たっているのに、なお結論が出ないという案件です。これはやはり、何かしら、法の前にはすべての国民を平等に保護するところの、すべての人を満足せしめるところの相当の方法をここに講じてございません限りは、決して国民は納得がいくものではないと考えます。  最後に私が申し上げたいことは、横浜地検の綱紀の紊乱の問題であります。昭和二十四年の四月十四日、現大臣花村四郎氏が法務委員長として報告をせられておる報告書がここに出ております。これによると横浜の検察庁内においていかに汚職事件のためにいろいろな問題が起っていたか、さらにまたその検察庁に出入りをいたしますところの女性であるいわゆる後藤ばあさんなる者があって、この検察ボスがいかに検察の公正なるあり方を乱しておったかということは、この報告書によってよく見ることができます。私の承わるところによれば、当時委員長といたしましてもずいぶん御苦心をせられまして、英断もってこれをおやりになると同時に、相当涙を加えられて、実はある意味から見ればまことに物足りないところの報告書が出ておる。もっとこれは徹底すべきである。もっとその際に粛正をしておったならばと思われる点があります。しかもそのときに汚職事件を犯しました大半の検事が東京検察庁へ栄転をしております。汚職を犯し、悪いことをした者は東京のひざ元へ呼ぶ。正義派はいなかへおっぽり出してしまって、よって粛正されたと称せられておる。はたして粛正の実が上っておるでありましょうか。私は今日この席ではこれをのみ目的といたしませんためにここで多くは申し上げません。しかし冒頭ちらと申しておきましたので、それだけには私は触れておかざるを得ないのでありますが、冒頭私が訴えておりました通り、実は豊島検事が検証に参りましても、被害者の遺族の車に乗っていかなければならぬほど検察当局は費用にお困りです。しかし私の手元に届いておりますところの——名を明らかにしてよければ、あとでこれも証人に呼んで明確にいたしまするが、ここでは某氏と申し上げておきましょう。これが相当に地検の内情について憂えられております。本年四月九日より十日にかけて箱根環翠楼において全検察官が二日一泊の催しをなしたようであるが、この費用は二十九年度予算の残りを各検察官が本年三月ごろに各地に二泊で捜査出張したという架空の名義によって引き出しをした。これによって右費用に充てたではないかといううわさが立っていると書いてある。うわさをもって論ずることはできません。しかしこう言われるからには、ここに何かありましょう。私はこれだけであったならば、決してここに議題としようとは思いません。法務大臣御自身が法務委員長としてここに出されておる報告書によれば、かほどまでもこの地検が乱れておったかということを確知するに十分であると同時に、これがその派閥をなし、尾を引いて、いわゆる正義派が粛正されて、いわゆるまあまあの、穏健派で、権力にこびて、弱い者をいためるといったような、たとえば外人関係にはぺこぺこ頭を下げる、弱い商人なぞについては経済違反でも片っぱしから引っぱる、選挙違反でも、戸別訪問でもあると、すぐちょっと来いといって人権尊重どころではない。片っぱしからほうり込む、そんなことには大へんにおえらいが、外人やなんかの関係については一向なすべきことをやらないで、一年も二年もほうるなどといったようなあり方が、今日どうも数年前の粛正において十分粛正がなされておらなかったために、その禍根がとれていないではないかという疑いを持つために、私はここに再言せざるを得ないのであります。私はもしこの問題について何を言うかというお話であるならば、いま少しく私どもの方でも資料を整え、かつ法務委員会といたしましても、いま一度前の調査委員会のようなものをこしらえて、そうしてお調べを願わなければならぬと思いますが、ともかくきょうは——ともあれいまだに後藤という警察ボスのばあさんが、委員長報告によりますと、仕入り厳禁とありますが、しかし今なおやはりやっておるのです。そうしていわゆる私の被疑者の一人と称せられておるある一人の妻帯について世話をしたのが後藤ばあさんです。この後藤ばあさんがこの事件の裏に暗躍をしたことをうかがうに足る資料がございます。もしそういう手合いの暗躍のために正義の士が葬られたり、今回の射殺事件なぞがそのまま泣き寝入りをしなければならないようなことになったり、うそをうまく言って言いのがれのできる人は、きれいに済んでいくということであったならば、世が治まりません。これはただいま申し上げますところの綱紀がゆるんでいるところにそういったような魔の手がいささか伸びており、そのことが何らかの影響を与えておるではないかという疑いさえも持たざるを得ないのであることを私は遺憾に思うのであります。願わくばこれらの点についても十二分に御勘考を賜わりましてそうしてともかくいかなることがあろうとも、それとは切り離して本件のごとき問題は純粋な立場に立って、この事件は果してうそをついて二度も三度もその供述を変更しておる、横内の言うがごとき、ことが正しいものであるか、それとも他にもっと利害関係の深い別の存在があって本件を犯したものであるかということについてそれらとにらみ合せて十分の御洞察を仰ぎたいと存じます。  これについては、もしお答えがあれば承わりますし、ないといたしますならばお含み置き願いましただけで十分であります。
  62. 花村四郎

    ○花村国務大臣 佐竹委員のただいまおっしゃられたうちに、横浜地検の綱紀頽廃にかかる問題がありましたが、これはなるほど私が法務委員長のときに、法務委員会として取り上げて適当な処置をしたものでありますが、その後この官紀弛廃の姿は郭清されたという話を承わっておりまするが、しかし官紀紊乱の事実ありとすれば、これを粛正することにはあえてちゅうちょをしないものでございます。従いましてまたよく佐竹委員の言われたごとき事実がありまするかどうか、その真相を尋ねてしかるべく処置をいたしたいと存じます。
  63. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 あまりに長い時間をとりましたから、私はきようの質問はこの程度にいたしておきます。しばらく刑事局長の言を信じてここしばらく検察当局のおとりになるところの態度を見たいと存じます。その上に私どもといたしましては、先ほど私の申しましたうちに、こう言った、ああ言った、おそらくうそであった、うそでなかったというような問題が必ず出てくると存じますので、検察当局の結論いかんによりましては、私の主張いたしておることが正しければ正しいということをここに明らかにいたしまして、私はぜひとも検察行政を正しく明るくする意味合いにおいても、証人その他参考人等をさらに申請をいたしたいと考えておりますが、本日はその申請はいたしません。しばらく検察当局の御動向をうかがました上で、次の機会にいたしたいと思います。証人等を申請いたしたい、お調べを願いたい点はありますが、これは留保いたします。
  64. 世耕弘一

  65. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 私は午前中に神近委員から質疑がありました人身売買について二、三お尋ねしたいと思うのでありますが、その前に、今佐竹委員の発言に関連いたしまして、一言お伺いをいたしたいと思うのであります。  最近告訴事件の取り扱いが非常におくれておりまして、これはもう事務多忙であるからというような申し訳では、われわれ弁護士としてはどうしても納得ができない怠慢、放任をしておるというような事件が多数にあるのでありまして、私自身も直面しておりますし、また多数弁護士からの非難もございます。そこで私は法務当局に向って全日本検察庁に対する告訴事件の数、それから今日までに告訴をしてから処理された時期と件数、それを一度表にして出していただきたい。これはいろいろ検察庁の人員の点なんかにも関係するでありましょう。われわれはいちずに法務当局を責めるわけではないのでありまして、これは検察行政を円滑にやる上から申しましても、そういう資料をいただいて、そうしてまたはなはだしく遅延しておるものについては、どういう理由でそれが延びておるかという理由も一応書面によって御報告をいただきたいと思います。  それから人身売買の問題は、最近新聞が非常に取り上げて、この問題については今後も非常に力を入れるような情勢であります。先ほど神近委員から鹿児島の松元荘の話が出ましたが、鹿児島にはもう一件志布志町といいますが、これは昭和二十九年の八月、九月のころに、四人のブローカーによって百十一人の多数が売買をされて、そうしてその仲介手数料を二十二万六千五百五十円取ったという事件であります。これのうちには十八才未満の年少者が六名おる。これらを含めて労働省の報告によりますと、昭和二十九年には接客業、農業、店員、そういうものの中間搾取等司法事件としてありますが、これは中間搾取をしてそういう事件になったというのですから、おそらく人身売買だろうと思うのです。これが昭和二十九年には労働省の調査によりますと合わせて四百八十二名でありますが、調査をすればもう少したくさん潜在した事件があるのではないか。先ほどの検察庁の話によりましても、被害者が訴え出ないということから非常にわかりにくいということのお話がありましたが、こういうことによって潜在しておるところの泣いておる多数の被害者があるのではないかと思うのですが、法務省の方には全国の統計のような報告は来ておりましょうか、いかがでございましょうか。
  66. 井本台吉

    井本政府委員 突然のお尋ねで、資料は今日こちらに持って来ておりませんが、われわれの方にも人身売買に関する報告は届いております。役所に戻りますれば報告がとれますので、お答え申し上げることができると思います。
  67. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 この点は法務省の方は人権じゅうりんの面からだけの報告かもしれませんが、これは労働省の方には労働基準法違反のような事件もありましょうし、厚生省児童福祉法による面もありましょうから、この三つの機関がもし総合でさましたら照会をしてもらって表を出していただきたい、かように存じます。そこでこういう人身売買のよって来る原因、これをどういうふうにお考えになりましょうか。何によってこういう事件がこんなにたくさんふえてきたか、原因を当局の方はどういうふうにお考えになっておりましょうか。
  68. 井本台吉

    井本政府委員 一がいに決定的な理由を申し上げるわけにも参りませんが、一つには経済的な事情から、非常に貧困家庭にかような人身売買事案が発生する事象が多いようでございます。それと同時に日本民族の道徳観念の低いことから、体を売って金をかせぐというようなことについて、そう罪悪視しないというような面も十分あるようでございます。それに問題となっております法規の不備等が重なって事案が出てくるものと考えられるのであります。立ちましたついでに申し上げますが、われわれの方といたしましても、児童福祉法、労働基準法、職業安定法、勅令九号、もしくは各府県におきましての条例等が売春の取締り法規でございますが、さようなものについて統計をとっております。隠微の間に行われる犯罪でございまして実際に検挙される実数とほんとう犯罪の絶対数とが合致いたしませんので、おそらく統計よりはるかに多い犯行があるものと私は考えております。
  69. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 労働省のこれらの防止の方法として婦人少年室、労働基準局、それから警察本部、法務局、これらの機関によって防止対策が講じられておると書いてありますが、具体的にこれを防止する方法をどういうふうにしてやっておるのでありましょうか。
  70. 井本台吉

    井本政府委員 私の所管の外でございますので、厚生省もしくは労働省に直接おいでいただきましてお尋ねいただく方が、的確なお答えができると存じます。
  71. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 それからいま一つ福島県の内郷市、ここに矢ノ倉炭山という鉱山がありまして、これは閉鎖になったそうでありますが、ここの出身の十五歳の少女が二カ月に接客業に従わせられて、五、六十名の客をとった。そこで性病にかかって、これが平市の児童相談所に保護されておる、こういう事実がありますが、御報告を受けておられましょうか。
  72. 井本台吉

    井本政府委員 さような報告は来ておるかどうか。まだ確かめておりませんので、お答えいたしかねる次第であります。
  73. 世耕弘一

    ○世耕委員長 田中君にちょっと御相談しますが、戸田人権擁護局長も来ておりますから、何でしたら戸田局長にも今の問題をお尋ねした方がよかろうかと思います。
  74. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 今戸田局長の方からの御答弁を期待しておったわけです。
  75. 戸田正直

    ○戸田政府委員 ただいまの矢ノ倉の事件につきましては、報告を受けておりません。先ほどお尋ねでした人身売買は、人権擁護局では昨年度二百二十五件、どういう原因と申しますか、これははっきりしたことはもちろんわからないのですが、基本的にはやはり人権というものに理解が薄いのじゃないか。買う方も売る方も、たとえば娘が売られていく、自分の人権が侵されているというような認識が非常に少いのじゃないかということが、まず基本的なもののように思うのですが、現われた原因は、主として経済的貧困ということと、これに乗じて中間搾取して、だまして売る。たとえばいい着物が着られて月何万円になる。いい働き口があるから行かないかということでだまして連れていくというようなものが、私の方の取り扱った中では非常に多いということでございます。
  76. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 児童相談所というのは、あなたの方の管轄でしょう。
  77. 戸田正直

    ○戸田政府委員 私の方の管轄ではございません。多分厚生省だと思います。
  78. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 それではこれは後日に譲りまして、きょうはこの程度にとどめておきますが、実はこの発言を求めたかったのは、今の問題は五月六日にラジオ東京の記者が行って、今の被害者の少女に会って録音をとってきた。きょうの十一時からラジオ東京から放送するのです。こういうことが新聞社に先調べられて、ラジオが放送をしてからあとで調べるというようなことは、どうもあまりに政府当局としては怠慢ではないかと思うので、この点だけ発言を求めておいたのですが、このことにつきましては後日に譲ることにいたしましてきょうはこれで打ち切っておきます。
  79. 三田村武夫

    ○三田村委員 この際ちょっと刑事局長にお尋ねかつお調べ願いたいことがある。地方議会議員などでいわゆる選挙違反事件、逮捕状の出た被害者について何らかの事由で逮捕状の執行を延期または猶予されたような事例が今までありましょうか。
  80. 井本台吉

    井本政府委員 先般行われました選挙の際に、地方議会の議員もしくは議員となろうとする候補者につきまして、選挙の関係で予定された勾留期間よりも早く釈放したというような例が一、二あったように聞いております。なお大した事由でないが関係者にお葬式があるというような事情のために、勾留の執行を延期したというようなことも一、二あったように聞いておりますが、具体的な報告書を見ておりませんので、その程度にお答え申し上げます。
  81. 三田村武夫

    ○三田村委員 実は私昨晩知ったのですが、問題を具体的にしてお尋ねいたします。この間の地方議会選挙、これは県議会議員の選挙ですが、岐阜県で当選した議員が二人いる。事件を起しまして二人とも逮捕状が出ている。二人とも逃亡してしまって、一人はまだ逮捕されていないようです。二人とも当選した議員ですから、その中の一人が確か先月三十日に買収供応容疑で逮捕状が出た。ところが五月の二日から臨時県議会が招集されまして、その臨時県議会に当選者である、かつ選挙違反事件のため逮捕状が出され、しかも逃亡中の議員が出てくるかどうかということは、非常な問題になっておったのです。一人はとうとう出なかったようでありますが、その中の一人、三十日に買収供応の容疑で逮捕状の出た新県議会議員ですが、逃亡中であったにもかかわらず、県議会が始まりまして十一時ころになると忽然として議場に現われてそうして審議に参加したのでありますが、四日に県議会が終って五日の朝逮捕された。つまり二日、三日、四日の三日間県議会の審議に参加した。これは議員として当然の職務行為でありましょうが、その前に逮捕状がすでに出ている。逃亡中で逮捕されていなかった、それが二日の晩忽然として現われ議場に入って審議に参加した。審議が終ってから逮捕状の執行があった。私は名前も党派も承知しておりますが、ここでは申し上げません。そのことによって岐阜県では非常に大きな疑惑を生んでいる。一体法というものは公正に行われているのかどうか大きな疑惑が起っておりますので、この際お取調べを願いたい。どういうわけで逮捕状の出ているものを逮捕状を執行せず審議に参加させたか。逃亡のおそれある、かつ証拠隠滅のおそれあるという理由で逮捕状が出されているにかかわらず、その三日間というものは完全に行動の自由を認めた、そうして県議会の終了と同時に逮捕した、これは厳然たる事実です。その事実の前に非常に大きな疑惑を持たれておる。その点御調査の上、本委員会に御報告願いたい、お願いいたしておきます。
  82. 井本台吉

    井本政府委員 ただいまお尋ねの件はさっそく調べまして、後日その調べました結果を御報告申し上げます。
  83. 世耕弘一

    ○世耕委員長 本日はこれにて散会いたします。  次会は公報をもってお知らせいたします。     午後四時十二分散会