運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1955-04-01 第22回国会 衆議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年四月一日(金曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 世耕 弘一君    理事 古島 義英君 理事 三田村武夫君    理事 福井 盛太君 理事 田中幾三郎君       今松 治郎君    椎名  隆君       高木 松吉君    高橋 禎一君       永田安太郎君    林   博君       松岡 松平君    船田  中君       横川 重次君    猪俣 浩三君       神近 市子君    淺沼稻次郎君       佐竹 晴記君    細田 綱吉君       吉田 賢一君  出席国務大臣         法 務 大 臣 花村 四郎君         国 務 大 臣 大麻 唯男君  出席政府委員         警察庁長官   斎藤  昇君         (警視長警察庁         刑事部長)   中川 董治君  委員外出席者         検     事         (刑事局長)  井本 台吉君         法務事務官         (人権擁護局         長)      戸田 正直君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 四月一日  委員山本粂吉君辞任につき、その補欠として松  岡松平君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  人権擁護に関する件  検察行政に関する件     —————————————
  2. 世耕弘一

    ○世耕委員長 これより会議を開きます。  議事に入ります前に委員長より一言申し上げたいと存じます。御承知の方もあると思いますが、昨日の一部の新聞記事に最高裁の裁判官任命のために、諮問委員会を設ける旨の法案を本委員会が提出するがごとき記事がありましたが、これは全たく私の関知しないことであるとともに、委員会の運営その他につきましては、理事会に諮って取り運んで参ることとしたいと思っております。どうぞこの点をあわせ御了承願いたいと思うのであります。  なお本件に関しましては、一応政府の見解をれただす必要がありますので、法務大臣が参りましたら、この問題について一応政府の所信を伺うことにいたしたいと思います。  次に、前会に引き続きまして、本日は人権擁護に関する件及び検察行政に関して調査を進めることといたします。  これより質疑に入ります。質疑通告順にこれを許します。三田村武夫君。
  3. 三田村武夫

    三田村委員 前回委員会で、人権擁護に関し、検察警察当局に対して資料の御提出をお願いしてあったのでございますが、昨日夕刻法務省関係資料をいただき、けさ警察庁関係資料をいただきました。まだいただいたばかりで、全体によく目が通されておりませんが、なお足りないものがありますので、冒頭に重ねてお願いをいたしておきます。警察庁から出た資料では、大体私が前会お願いした内容を概略備えておると思いますが、なおその中に、今度の選挙検挙されました被検挙者の中の地方議会議員の数字は出ておるようでありますが、その地方議会議員の被検挙者のうちで、取調べのため身柄を拘束された者、それから勾留口数、これは重要な点でありますから、どうかごめんどうでも正確にお取調べの上、資料をお出し願いたいと思います。大体十日以内幾人、五日以内幾人というようなことでお出し願いたいと思います。それから拘禁された者で接見禁止処分を受けた者がどれだけあるか、これもぜひお取調べの上お出し願いたいと思います。それから逃亡のために未検挙になっておる者、前回選挙で顕著な事例がありましたことは、皆さん御承知通りでありますが、今度の選挙で、その候補者とか総括主宰者とか出納責任者の中で、被疑事実は上っておるが、当事者が逃亡したために未検挙になっておる者がありましたら、これもお出し願いたいと思います。なおもう一点非常に重要な問題だと思いますのは、婦人検挙されたものはどれくらいあるか、ぜひ一つ取調べ願いたいと思います。  冒頭に申しましたように、資料にまだ全部十分目を通しておりませんので、きわめて概括的なお尋ねになりますが、少しばかり当局の御意見を伺いたいと思います。なお法務大臣警察担当国家公安委員長が御出席になっておりませんので、大臣に対する質問は留保いたしておきます。御出席の上さらにお尋ねすることを、御了承願いたいと思います。  最初に、刑事局長警察庁長官がおいでになっておりますから、今度の選挙に対する当局取締り方針についてお尋ねいたします。  法務当局警察当局おのおの第一線機関をお持ちでございますが、今度の選挙取締りに対して、何か取締り方針等を具体的にお示しになったことがありましょうか。刑事局長警察庁長官両者から、どういう態度でお臨みになりましたか、具体的な取締り方針をお示しになった事実がありましたなら、お伺いいたします。
  4. 井本台吉

    井本説明員 二十九年度の二月の選挙に対しましては、選挙戦の始まった直後でございますが、全国から検察庁長官を招集いたしまして、大臣から選挙取締りにつきまして訓示をされておるのでございます。この訓示は当時新聞紙上にも発表されてございますが、要するに公明選挙法務省側として寄与すべきものは、選挙違反のある場合にはこれを厳重に取り締るべきものであるということでございます。ただし取調べ等におきましても、一党一派に偏するというようなことでは相ならぬので、厳正公平に、しかも悪質なものにつきましては選挙期日の前とあととを問わず厳重に取り締るべきものであるという趣旨訓示がなされております。その線に沿うて検挙がなされておるのでありまして、特にそのほかに具体的に何々事件をどうしろというようなこまかい指示はいたしてございません。取締り方針大臣訓示の線に沿うてなされたものであると私は考えております。かという点を具体的に話し合って、各都道府県本部長は、大体この方針を全うするように全力を注いで取締りに当った、かようにわれわれは見ておる次第でございます。
  5. 三田村武夫

    三田村委員 選挙取締りは厳正公平に、さらに今度は公明選挙であるから徹底的に厳重に、取締り態度としてはあくまでも人権を尊重してやれという御方針のようであります。これは当然のことでありましてその通りだと思いますが、いただいた表を拝見いたしますと、三月二十日現在で今度の選挙検挙者数、これは法務省資料ですが、合計一万二千七百八十九、前回選挙は七千百二十七で約倍数になっておる。警察庁資料によりますともっと多くなっております。総件数が一万五千四百三十二、買収利害誘導だけの件数が一万二千二百七。刑事局長のおっしゃった通り、今度の選挙に一番強く叫ばれたものは公明選挙です。公明選挙を看板にして行われた選挙で、違反件数前回選挙より倍以上出しておる。これは確かに取締りは厳正であった事実を証明するものだと思いますが、その厳正の取締りの背後に、一体それが御当局方針通り公正に、さらに人権が尊重されたかという問題が出てくるのです。私が選挙取締りに対する具体的な方針をお伺いしたいと申し上げたことは、申し上げるまでもなく法務当局におかれましても警察当局におかれましても、選挙違反事犯というものは従来どういう形において行われてきたかということは十分御存じのはずだと思います。と申しますのは、ただ抽象的に、今度の選挙は厳重にやれ、公正にやれ、公明選挙のもとだから、悪質な違反事件はどんどん検挙しろ、これだけのお示しでありますと、大体の傾向といたしましては悪質な者はのがれて、善意にして未熟なものがかかりやすいのです。つまり選挙プロというものはいつも網の目から抜けちまいまして、厳正な取締り犠牲になるのは、善良にして選挙運動にふなれな連中がよくかかってくる、こういうことであります。私が申し上げるまでもなく、よくその辺の事情は御承知と思いますが、最近の選挙事情を見ますと、常時選挙運動が行われておりまして、最も選挙運動にたけた者は、すでに久しい前から選挙運動の母体なるものを年中持っておる。これは全く選挙運動プロでありまして、くろうとばかりであります。そこで行われる事犯というものはなかなかかかってこない。そうして今度は政界の雰囲気も変ってきた、新しい、真に国民の意思の上に立った議会政治を確立しよう、民主主義を確立しなければならぬというような立場から、熱心に選挙運動に参加して参りました婦人層とか青年層とか、この選挙運動にふなれな者がひっかかる。そういうことがありがちで、今度の選挙にもたくさんに私はその事例承知しております。まことに私は残念だと思う。理屈めいたことは多く申し上げませんが、そういうもとにおいて私資料を拝見いたしまして一、二点お尋ねいたしたいと思います。  新聞にも出ておりましたが、今度の選挙に関して自殺した者があるらしいので、その事例取調べの上お出し願いたいと、前回委員会で要求しておきましたところ、昨日夕刻いただいたのであります。これは法務当局からお出しになったものも警察庁からお出しになったものも、大体同じ内容のものでありますが、今度の選挙で七人死んでおります。法務当局の方は八人になっておりますが一人は未調査のようであります。大体この事犯内容を拝見いたしますと、きわめて軽微なものが多いのであります。形式犯程度のものもあります。中には婦人が二人おりますが、私は候補者の名前や何か申しませんが、一人の人なんか三百円と五百円と百円、合せて九百円を、運動をやった報酬か何か知りませんが、もらっただけなんです。それが取調べを受けて、うちへ帰って山の中へ入って首をくくって死んでしまっている。こういう人は全くしろうとです。そしてこの資料によりますと、自殺した人は全部小心者あるいは神経衰弱です。原因を見ますと、調べられたことに責任を感じて死んだということになっております。こういう調書しかできないと思いますが、お出し願つたこの資料検察庁からお出しになったものは、検察庁自身でお調べの上お出しになったのか、ないしは警察当局調べを基礎にしてお作りになったのか。これは変死者ですから大体は実地検証というものが行われていると思いますが、その点はどうでしょうか。この資料信憑性についてまずお伺いいたしたいと思います。
  6. 井本台吉

    井本説明員 自殺された方の死体につきまして検事みずから検視をいたしまして、検視に基く結論と、その調べ等関係いたしました関係者の供述などを取り調べまして、その上でかような結論検事出したものと思います。い人だろうと思う。そういう人がたまたま引っぱられて、小心者であったかしりませんが、おそらく神経衰弱にもなりましょう。そして死んでしまった。だれも責任を負わない。十分警察注意を払った。実地検証をやった。死体の検死もやった。当局に手落ちなし。これは死に損です。そういうことに対する責任を一体だれが負うんだという疑問と、それから大きな不安が出てくる。これは私非常に重要な問題だと思いますから重ねてお伺いをいたしますが、すでにできてしまったものに対してどうしろということを申し上げたって処置がない。死んでしまった。こういう事案を日々処理されておりまして、——選挙違反についての自殺者は今回だけではありません。前回選挙にもありますし、資料を拝見いたしますと、昭和二十四年の選挙以来今日まで三十八人死んでおります。毎年の選挙にある選挙事犯というものは、刑法上から申しましても本質的な刑事犯ではありません。ことにこの資料にある事案なんかは買収犯でも何でもない。はがきをどうしたとか、文書をどうしたとか、参考人程度調べられた者もあります。実質的ないわゆる刑事事犯でも何でもない。人殺しとか、そういうような悪質なものではない。しかも選挙というものは国民権利であると同時に義務なんです。民主主義のもとにおいて選挙をやらなければ政治にならない。そういう立場からせっかく選挙に参画した人を調べて、それで毒を飲んで死んでしまった。死んだ結果は小心者神経衰弱ということで、調べられたことに責任を感じて死んだ、これだけで片づけられてしまって一体どうなるか、こういうことを私はしみじみ感ずる。私も幾たびかの選挙をやって来まして多少の経験はありますが、こういう事案に対して当局はどのような責任と今後の方針をお持ちであるか、当局の直接の責任者である刑事局長警察庁長官に、重ねてその辺の御所見を伺いたい。
  7. 井本台吉

    井本説明員 ただいまお話通り地方選挙等選挙がありますと、選挙関係いたしまして検挙が行われ、それにまた関連して毎回自殺者が出ております。実はこの一月三十日の長官会議の際におきましても、前の選挙にも数名自殺者が出ておりまして、その自殺模様を見ますると、何か当事者が多少の注意をすればあるいは自殺がなくて済んだのではないかというようなふうにも感じましたので、今回の選挙には自殺者がないように全国的に一つぜひ注意してもらいたいということをわれわれ長官会議にお願いいたしますと同時に、私どもの局の検事選挙に関しまして地方を回りました際にも、特に選挙違反関係者は日ごろ善良な方方が多いので、警察などに呼ばれるということも初めてのような人が多いと思いますから、さようなことでショックを受けて自殺するような方があってはまことにお気の毒であるから特に注意をするようにということで一々注意をいたしたのでございます。先般、九州の県庁からも、当時の私ども検事が参りました際の指示模様について手紙が来ておりましたが、このくらい自分たち注意して、自殺が出ればよほど自殺される方が注意の範囲を越えてやったということになるのではないだろうかというようなことでやや安心しておったのでございますが、それにもかかわらずその会同の直後にまた拘置所内で死んだ方がありまして、それについて私どもの方でも注意した直後にさような事案が発生したので、非常に驚いて当時の事情調べたのでございますが、調べ関係者等につきましては、直接の職務上懈怠があったという点は認められなかったのでございます。しかしながらかようなことで自殺される方はまことにお気の毒でもございますし、従来われわれが気づきました上にもなお検討を加えまして、将来はさらにかような自殺者の出るというようなことはないように十分注意させたいと考えるのでございます。幸い四月の上旬に、全国の次席が選挙関係でまた東京に集まって参りますので、その際にも御趣旨の点はよく伝えまして、人権の尊重にはこの上とも注意するようにいたしたいと考えるのでございます。
  8. 世耕弘一

    ○世耕委員長 三田村君にちょっと申し上げますが、ただいま国家公安委員長であり国務大臣である大麻大臣がお見えになりました。閣議の最中に抜けられて来たようでありますから、この際大臣質問がございましたらお尋ぬしていただきたいと思います。をつけることまでいたしておるよろな次第でございます。
  9. 三田村武夫

    三田村委員 今斎藤長官お話のように、なるほど死んだ人は責任感道徳感の強い人でしょう。だからこういう事例にぶつかってみて、われわれが真剣に悩むことは、どうしたらいいか、これはわれわれは同僚議員ともとくと御相談をして、何とか対策がないものかと考えてみたいと思うのでありますが、できるならこういう事件当事者、この当時の家族の人とか、あるいは面接扱った検察官とか、そういう人もこの委員会に出てもらって十分事情を聞いてみたいというような気もするのですが、私がここで特にこの問題について強く発言したいことは、最初に私がお尋ねした選挙違反取締りに対する当局態度なのです。一体選挙公明でなければいけない。厳重な取締りをやれという場合にはおのずから取締り目標があっていいのです。公明選挙というものは悪質な選挙運動をなくすることなのです。善良な人が警察に一ぺん調べられて調書を取られて、そのことのゆえに自分道徳感情に照らして大へん申しわけないことをしたと思って首をくくって死ぬような人は、取締り対象に実際はならなくていいのです。私はそう思う。警察留置場にほうり込んだときに、黙秘権を行使して何もものを言わぬ、しかもそれは専門選挙ブロだ。こういうものを実際は取り締らなければならない。そうならなければ選挙の公正とか公明はありはしない。ただ抽象的に選挙は厳重に取り締れ、今度は公明選挙だから厳重にやれとおっしゃいますと、第一線警察官は何でもいいから選挙違反は取り締ろうということになる。  こういう例があります。これは私、直接知っている例で、愛知県の例ですが、今度の選挙には婦人層青年層が非常に関心を寄せた。その候補者の人格の当否は別問題にいたしまして、あの人にぜひ出てもらいたいというので、ある婦人層は動いた。これは何も選挙のことは知りません。その動いた者に目をつけて一つ内偵してみようじゃないか、内偵したらどうも何かもらったらしいと思って調べた。もらっているのです。三百円か三百五十円の労務費をもらっている。ところがその地方では中流以上の家庭の奥さんだ。その奥さん警察へ呼んできて、あなた、だれだれの候補者運動をやったでしよう、やりました、お金をもらったか、もらいました、あなた、労務者で働いたのか、いや労務者ではありません、そうでしょう、おなたのようなりっぱな奥さん労務者としてビラ張りされるわけはないでしょう、労務者でない者がなぜ金をもらったか、こうなって、三百円か三百五十円の労務賃をもらったものが買収になる。三百円、三百五十円の金をもらうことがいいか悪いかは別ですが、きわめて善意な人なんです。最も悪い者は選挙プロです。職業的選挙運動家です。さらに私がいけないと思うのは、何々後援会とか何々会とかいう選挙運動の母体を持って、常時選挙運動をやっているものです。去年の暮れからことしの正月にかけて、いや忘年会だ、新年宴会だ、総会だ、例会だといってどんどん集めて酒を飲む、ごちそうする、会費を出す形式にしますが、実際は出していやしない、米二合持って集まってこいといって、二合持って集まると、三百円ぐらいの折詰が出て、酒は飲みたいほうだい、食いたいほうだいそういう形で常に選挙運動をやっているのです。そういうものが最も悪質な選挙運動なんです。最も公明ならざる選挙運動なんです。こういうものには全然手がつかぬ。なるほどそういう運動の中心におる者は地方有力者かもしれませんが、たまたまそういう者をひっかけてきても、黙秘権を行使して言いやしない、それで済んでしまう。その反面に、こういう善良な人は——斎藤長官の言われるように、道徳心が高くて、警察に一ぺん呼ばれただけで、申しわけない、自分がつまらぬことをしゃべったために他の人に迷惑を及ぼした、そういう自責の念にかられる人は死んでしまう。一体どうするのかということを私は真剣にお考え願いたいと思う。選挙取締りは、今刑事局長斎藤長官のおっしゃったように、もはやこの段階にくると厳正に公平にと、抽象的な意見だけではいかぬと思う。もう少し選挙運動の実態というものを御研究願いたいと思う。そうして徹底的に鋭いメスを入れていただきたい。そうでなければ選挙の粛正なんかできやしません。いかに公明選挙が叫ばれてみても、それはから念仏に終ってしまいます。これは選挙民の声を聞けばわかる。こういう犠牲者出した反面に、やはり大物には手がつかぬという。選挙専門家にはかなわぬという。そうして、だれが公明選挙をやったか、だれが不公明選挙をややったか、その公明、不公明選挙に対して、取調べが果して厳正であったか、公平であったかは、その事案だけを取り扱っておる警察当局検察当局よりも、直接その現場におる大衆の方がよく知っておる。そうすると、結局取締りは公正でも公明でもなかったということに結論が出てくる。この点を真剣にお考え願いませんと非常に困る。  私がきょうこれを声を強くして申し上げているのは、大麻国務大臣も長いこと選挙を御経験でよく御承知と思いますが、今、目の前に選挙が控えている。知事の選挙がすでに始まっておる。都道府県議会議員選挙はこの三日告示で全国一斉に始まります。続いて市町村議会議員選挙が始まる。全国一斉に選挙運動が展開される。この全国一斉に行われる選挙運動に、また同じことが考えられる。選挙ボスがやることは常に目こぼしになる。まじめな、斎藤長官の言われるような道徳心の高い者が、この時局に目ざめて、ほんとうに民主主義のいい政治を作るためには、ああいうりっぱな人を出したいという気持で動いた人がひっかかる。そういうところを一つよくお考え願って——大麻国務大臣にもお尋ねいたしますが、今日本の現状から申しますと、治安の面からいっても、社会秩序法秩序という面をとうとぶ建前からいいましても、警察の権威を保っていくということは非常に重要なんです。従って一月以来行われてきました選挙を通じてわれわれは大きな反省があり、大臣もその点についてはいろいろなことを感ぜられると思いますが、第一線にある警察がどのような形で選挙取締りの中に入っているか。私は警察が先頭に立って啓蒙運動をやれと申し上げるのではない。これは大きな弊害を伴いますから、それを申し上げるのではないが、その点は、抽象的な厳正に公平にという言葉だけではだめなんです。警察陣営の上においても、人事の面においても、長い惰性で同じところに五年も八年もおると、どうしてもやりにくくなる。何もそれで私は選挙取締りだけのために警察陣営を一新しようと申し上げるのではないのですが、どのようにお考えになっておるかということを私はお伺いしたいのであります。ただ厳正に公平にやるのだということだけでは、どうしても、悪質な選挙運動対象としてこれこそ厳重に取り締らなければならないという選挙悪というものは除かれない。そうでない、まじめな選挙民国民権利と感じ、義務と感じて政治に参画したい人が犠牲になる。こういう現状をどうお考えになるか、一つ大麻大臣の御意見を伺いたい。けれども自分気持のありのままを申し上げますと、私の尊敬する先輩が、選挙違反ではございませんが、侮辱を感じたか何か、世の中へ出ましてから割腹して果てたことがある。それなど私は涙なくてはどうしても考え出されないような事件でございます。三田村さんも多分思い出されることだと思います。今あなたのお顔を拝見いたしまして、お説を承わって思い出したのはそれでございます。あれ以来というものは、私は選挙につきましても、それからその他の場合でも、警察官の取扱いのいかんによって、また態度いかんによって、非常に受ける人に侮辱を与えたり何かしまして、そうしてとんでもない間違いが起ってしまうということが往々にしてあるということを聞いて、非常に心を痛めております。斎藤長官以下いつもそれを相談しまして、末端までそういうことのないようにということは口がすっぱくなるほど注意はいたしておりますが、まだまだ今回も多少あったらしくて、非常に遺憾に考えております。今この席に伺いましてあなたの御説を承わりまして、つつしんで傾聴いたしました。大体お考えはその通りでありまして、ことに警察当局もしくはこれを管理しておる公安委員などの心がけとしては、これは夢寐にも忘れてはならないようなことだと考えます。しかし大勢の中にはどうも間違った行為をする人があるかもしれない。またあったから事実起ったに違いないと考えますので、今後は一層注意いたしまして、あやまちのないようにしたいと考えております。これは私も真剣に考えるわけでございますから、議会の皆様におきましても、お気づきの点はどうぞ一つどんどん御指摘を願いたいと思います。十分注意をいたします。それからまた根本対策としても、これは本気になって研究しなければいかぬと思っておりますような次第でございますので、考えだけちょっと申し上げます。
  10. 三田村武夫

    三田村委員 大麻委員長のお述べになりました御趣旨は私よくわかりますが、私がここで語を強めて申し上げたいことは、大麻大臣の言われたように、選挙というものは朗らかな、俗な言葉で言えば選挙祭のような気持ちでやれる雰囲気にならないといけない。ところがこういう事案調べられて自殺したというようなことがあると、選挙というものがますます陰惨な雰囲気になってしまうのです。それで選挙のくろうとで、あの手この手、裏表四十八手を心得て選挙で悪いことをやるやつは、大手を振っていつまでも大道を濶歩する。こういうことになりますと、選挙そのものに対してまじめな関心が失われてくる。私は今ここで申し上げるつもりはなかったのですが、つけ加えて申しますと、私が一番心配することは、今の日本のような状態で、選挙を通じて政治を行うというこのシステムに、善意にして善良な国民が望みを失ったときに、日本はどうなるかという問題があるわけです。何べん選挙をやっても同じことだ、まじめでいい人、ほんとうに出てもらいたい人を出そうと思ってやるとひっかかってしまう。これは実に不用意で、いかにもあけっ放しですからひっかかる。こういう人は悪質な選挙運動者じゃないですよ。そのことによって、選挙というものに対する国民の関心はだんだん失われていく。まじめな選挙運動がなくなって、悪質な選挙運動ばかり残る。そうすると、まじめでしかも若くて、純潔をたっとび、希望に燃ゆる人は、ええめんどくさい、選挙じゃ勝負はつかぬ、こうなってくる。これはわれわれが過去に経験した悲惨な歴史の教訓なんです。再びそれを繰り返さないためには、なるほど選挙というものは、われわれの利益を守り、権利を守り、自由を守るために必要な手段だ——ここに一般国民の関心を持ってこなければいけない。そのためには、選挙の行われるたびごとに取締り当局のとる態度というものは、いつも重大な影響があるのです。選挙のたびごとに自殺者を出す、悪質なやつは逃亡してしまってつかまらぬ、ほうり込んでみたけれども黙秘権を行使して、大手を振って出てきちゃった、こういうことじゃ選挙は公正になりません。どういうふうな方針をとっていくかということは、これは小さな問題じゃないと思う。大げさな言い方をいたしますと、選挙がりっぱに行われるかどうかということは、日本の今後の運命に関する重大な問題であります。選挙に対する国民の信頼が失われれば、あと残るのは直接行動しかありません。あるいは別な、院外における政治勢力の結集以外にない。これはきわめて不幸な事態を招くと思いますが、この点についてどのようなお考えをお持ちになっておりますか。長いこと政界の先輩として、議会政治、政党政治に豊富な経験をお持ち大麻国務大臣——この点については閣内においても一つ重要な発言をなさることを期待いたしますがゆえに、私は申し上げて、今ここで大臣のその問題に対する率直な御意見を伺いたい。どうやって選挙というものを正しい方向に持っていくか、国民の期待からはずれない方向に持って行くか。選挙に対する国民の期待が失われては、日本の民主主義はだめになる、議会政治はだめになる。憲法擁護を幾ら叫んでみても、その根底がくずれてしまうのです。この点に対してどういうお考えか、一つもう一ぺん大麻委員長の率直な御意見を伺いたいと思います。たような次第でございます。それは選挙干渉の方でございますけれども、先ほども申し上げましたように、願わくば国民の楽しい行事として選挙が行われるようにありたいものだということは、口がすっぱくなるほどぐちのように繰り返し繰り返し申して参ったような次第でございます。ことに人権の貴重なことは、私たち重々承知いたしておりますから、こんなことについては、当局に対してはくどいくらいに申しておるような次第でございます。それではお前具体的にどうするつもりかと言われますと、私不敏で、まだ今なかなかそうも参りませんけれども、そういうつもりで一生懸命やるつもりでおります。どうぞそういうおつもりで、今後一つ御協力なり御指導なりを願いたいと思います。決して人様の御意見をいれるのにやぶさかである人間ではございません。また今の警察には、皆さんからの御注意を聞き流しにするような横着者はございません。いいことならばどんどん受け入れて実行していきたいというような気分に燃えておるような次第でございますから、至らぬところもございましょうけれども、それらの点はどうぞ寛大なるお気持で御指導願いたいと思います。
  11. 三田村武夫

    三田村委員 大麻委員長のおっしゃった通り、私も今の警察選挙干渉をやれるような機構でないことは、よく承知しております。大麻国務大臣選挙のヴエテランであっても、往年の警察のような工合にいかぬことも承知しております。それだけにまた私は問題が重要だと思う。警察はいわばある意味においては独立した機関なんです。この独立した警察政府の意思いかんにかかわらず、別な言い方をすれば、ひとり歩きのできる警察でありますから、この警察選挙の中におってどういう態度をとっていくかということは、非常に重要であるということを私は申し上げたい。その点になると、大麻国務大臣警察最高の責任者ですから、私もう少し申し上げますが、その点について、選挙に対する警察というものは、普通の警察と違うんです。これをつまり普通の刑事犯罪を扱うと同じ形で扱われると、善良な者が犠牲者になる。善良な者が犠牲者になると、選挙に対する国民のまじめな関心が薄らいでいく。そうすると、議会政治に対して国民の関心を冷却せしめる、こういうことになるのです。三段論法になりますが。かってそのゆえに、議会政治にあいそうをつかした者は、選挙を通じて政治を行う手段はもうだめだという観点に立って、元気のいい者は直接行動をやった。中野正剛のように政治に希望を失った者、直接行動をあくまでもとらない者は、みずからの生命を断つことになったのです。その結果どこにいったかというと、日本はあの悲惨な軍閥専制の暴政に突入して、遂に敗戦の運命を喫してしまったのです。私は同じことを繰り返してここで申し上げるのじゃありませんが、少くとも今後年中選挙というものは行われるでしょう。そのことのゆえに私は申し上げるのであります。  繰り返し繰り返し私申しましたが、今度の選挙取調べ中に八人の自殺者出している。しかもこの資料を拝見しても、ほとんど軽微な事案です。これを弔う道がどこにもないんですよ。こういうことについて、責任を感ずることはもとよりでありますが、こういう取調べ犠牲になった、自殺をしたとか、命を失った人に対して、何かこれを弔うような道をお考えになったことはありませんか。どうしてこれを弔い慰めるか、その犠牲というものをどういう形において弔うかということをお考えになったことがありますか。
  12. 大麻唯男

    大麻国務大臣 承わりました。私自身はそういう気持を多分に持っているわけでございます。しかしまだ早々のことでありまして、こういう八名の犠牲者があったということを承知いたしたのもつい最近で、驚いておるような格好でございますから、具体的にお前何かやっているかと言われますと、私としてはございません。しかし心持は十分にございます。  それから、ついでにちょっとお聞きおきを願いたいと思いますのは、私が今申し上げましたのは、警察が他からの圧迫とか威圧でもって動かされることがないようにということを主にして申し上げたように思うのです。そこで今度は、公安委員会制度の基礎がだんだんと固まりまして、その方を排除する力はだんだん出てきましたけれども、そのためにかえって警察自体が、御指摘のようにオールマイテイになってしまう。そうすると弊害が起るというようなことになりはせぬかと憂えるのでございますが、その点につきましても意を注ぎまして十分に一つ注意いたしたいと思います。
  13. 三田村武夫

    三田村委員 大麻国務大臣には時間の関係もおありと思いますし、大臣にお尋ねしたい他の委員もおありのようですから、私もう一点申し上げておいて、私のあとの質問は留保いたしますが、今度の選挙を通じて、私は今日非常に重要な点を感じてるんです。それは新しい憲法を持ち出すまでもなく、国民は法のもとに平等でなければいけない、そうして民主主義政治というものは、少くとも法の秩序が保たれておるということです。これは民主主義の基底になるわけでありますが、法の秩序を保たなければならぬということと、法の前に平等でなければいけない、これは憲法にはっきり書いてあるのでありますが、そういう立場からわれわれが考えると、こういう事案について警察にちょっと引っぱられる、あるいは逮捕状を持ってくるものもありますが、こういう人にはこれを拒否する権限が一つもない。ところが今度の選挙のおそらく第一の条件とか理由とも言えましょうが、それになったものは、例の昨年の一月以来問題になってきた汚職、疑獄、その締めくくりと申しますか、指揮権発動でどうにかなってしまったのでありますが、これがちまたのすみずみまで行きわたっておる国民の怒り、これはだれでも知った国民の怒りでありますが、そういう立場から、法の前で平等でなければいけないという民主主義の原則に立ってこの事案を見ますと、まことに不平等なんです。ちょっと来いでもって持って行かれて調べられて、自責のあまり自殺しなければならぬというものが善良な国民の中にあることをわれわれは悲しみます。そこで私の所論がまた元に戻って、こういうことをやってみると、民主主義政治に対して国民が希望を失うということであります。でありますから、これはここで一つ、こういうことだけによって、とても償いのできるものではありませんが、今申しましたように、こういう事案犠牲者となった者、これに対しては罪の償いという意味じゃありませんよ、そうでなくして何らかの慰めの方法がないか、担当国務大臣として、また警察事務の最高責任者としての斎藤長官の御意思を伺いたいのでありますが、何かこういうことについてお考えになったことがありますか、今お考えになっておりませんか、お尋ねしておきたいと思います。ろうか、かように考えております。
  14. 三田村武夫

    三田村委員 私は率直に申し上げたいのです。むしろ希望かもしれませんが、この資料で拝見するように、自殺者小心者であったとか、気の小さい者で、責任を感じて自殺したんだとか、あるいは取調べに何らの手落ちはなかったというが、こういう事案は必ずどこかに欠陥があるのです。こういうことでなしに、事態の真相をおきわめになって、あやまって改むるにしかずですから、正直に私は態度を明らかにしていただきたいと思うのです。それは警察庁の長官とか、あるいは委員長とかいう立場でなくていいのです。当該警察署がやることなんです。この事案はこういうことだったのだ、いや自殺した人は気が小さくて責任を感じて死んだのだ、何ら警察側には手落ちがなかったのだ、こういう言い方を常にするのですが、そういうことでなくて、あのことについてはこういう手落ちがあったのだ。そこで間違いの点は間違いの点として改めて、そういうことに対する国民の疑惑とか不信とかいうものを除くことが必要だと思う。これはぜひお考え願いたい。何も慰霊祭とか、そういうことをやれということを私は申し上げるのではなくて、ほんとうに犠牲者を慰めるの道、弔うの道というものは、警察が事に臨んだ態度を明らかにするということなんです。あくまでも権力の蔭に隠れて、おれの方には責任がないのだ、自殺者はその人自身に原因するのだ、気が小さかったのだ、責任を感じて首をくくったのだ、こういう態度では済まされないということを私は切に申し上げておきたい。
  15. 斎藤昇

    斎藤政府委員 ただいまの点は全く御意見通りでありまして、私どももさような態度で臨んでおります。それからこういう事件の起りました県の本部長に対しましても、さような意味で十分指導をいたしております。当該事件の起りました署におきましては、あるいは場合によると責任回避とかいうような意味で、今おっしゃいましたような事柄が十分行われないおそれもあります。そういうことを念頭に持ちながら、本部長は直接その家族の方、関係者の方の前後の事情等もよく伺って、そして警察に落度はなかったであろうか、改むる点はなかったであろうか。それを家族の方等に聞く場合においても、もしこの犠牲によって今後繰り返さないというようなことが発見できるならば、なくなられた方の霊を慰めるゆえんでもあるからということをよく話をして、そして実際の実情を聞いて真相を明らかにするように、かように指導をいたしておるのであります。家族の方々におかれては、悲嘆の余り、あるいはこうであった、ああであったということを言われる場合もありましょうが、もしそうであっても、それは謙虚に聞くように、しかし家族の方々にも警察のその気持を十分徹底さして伺うならば、ほんとうのことが伺えるであろうというように指導をいたしておるのであります。ただいままでのところでは、取調べを受けて帰ってきたときには、警察というのは思ったよりも案外親切であった、何も恨むところはないと言っていましたという例も聞いております。しかし何も言わずに、どういうわけかわからないといわれる例もあります。私どもといたしましては、できるだけ関係者の方々が県の本部長なりあるいは私の方にも来ていただいて、こういう実情であるということをほんとうに言っていただく、両者相待って、そうして再びこういうことが繰り返さないようにいたしたいと思っているのであります。今までそういうように指導いたして参っていたのでありますが、やはりこういうものが出て参りますので、一体これはどうすればこういうことが防げるだろうか、私もほんとうに悩み、大きな真剣な気持考えておるのでございまして、決して死んだものはしようがないというような単純な気持で見送っているものでないということだけを申し上げておきたいと思います。るなら幾らでもあげますが、こういう場合にまずなすべきことは、当然その調べ官を調べなければならぬ。警察官が正しいというものではありません。正しくない者もあります。正しくないからこういう事案が起きたのじゃないかという疑惑を私は持っております。全然逆であります。それで、これによって自殺した人を慰めることももちろん当然でありますが、この取調べに当った者を、直ちに本部から有能なる警察官を派遣されてお取調べになったらどうです。警察官を被疑者としてお調べになったらどうです。あなた方は、選挙違反によって戸別訪問した件でも十日でも二十日でも逮捕状を出して留置しておる。今なおやっておられる。二十七年度のときに、戸別訪問程度の者に対しては、逮捕状を発しなくても、在宅で取り調べるのが適当であるとここで答弁されておる。当時の犬養大臣刑事局長も言っておられる。しかるに今なおやっておられる。ここに調査報告に出ているのは、戸別訪問というものの件数は少いが、実際は逮捕状の名目というものは、戸別訪問の方が多いのです。これは一体逮捕状によって御調査になったものかどうか、あとで詳しく伺いますが、今申し上げました取り調べ警察官に対する取締べというものをどうなされているか。今後どうされるか。これをなさらない限りは、これはもう今後決して根を断つ問題ではありません。私は責任ある大麻大臣の御答弁並びに斎藤国警長官の所信を伺いたいと思います。
  16. 大麻唯男

    大麻国務大臣 よく拝聴いたしました。先ほど三田村さんの御質問の際に申し上げましたように、日本の今の警察が他から圧迫されることを排除する方法がとられているが、そのためにかえって警察がオールマイティになる危険があるから、その方は注意しなければならぬと思っておりますということを申し上げましたが、今の松岡さんのお話も、ちょっとそれに通じたようなお考え方のように思います。なるほど御指摘になられましたように、警察官が何か間違ったことをするときに、本部から調査にやるとか何とか適当なことをやって、警察官を監察するということはごもっともな御意見と思います。これはとくと一つ研究してみたいと考えております。非常にいいことを教わったと思っております。御趣旨のほどをよく味わいまして、そうして今後あやまちなきを期したいと考えます。これだけ申し上げます。
  17. 斎藤昇

    斎藤政府委員 こういう事件がありますと、管区警察局から派遣をして事実の調べをいたさしております。私の方はただ当該署の言ってきたことをそのまま信用しているわけではございません。なおこういった事件が起りますと、検察庁も、あるいはことに人権擁護局の方でもいろいろお調べを願っているのであります。この前の選挙の際にも問題になりましたようなところは、人権擁護局からも行っていただきまして、警察のみならず関係者にいろいろ事情を聞いていただいて、そうして警察に非違があったかなかったかというようなことを、われわれ将来への戒めのためにも、そういう結果があったら知らしていただくようにいたしておるのであります。
  18. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 斎藤国警長官からお話がありまして、取り調べているとおっしゃいますが、この七人の死亡者の件についてお取調べになった具体的な調書なり、あるいは実情を、もっと詳しくこの次の委員会までに明確にしていただきたいと思う。ただお調べになったという程度では私は納得できない。前回のときも、法務省人権擁護局、これに至っては、実際これは機能的に無理です。十四人や十五人のものでお調べになって、わかりました、どうも人権じゅうりんがありました、これで終りです。これではだれも納得しませんよ。当時の刑事局長が私に答えられたことは、ひどい人権じゅうりんがありました——ありました程度でどうなります。人権じゅうりんの事実に対して適切な処置をとることが一体政府の仕事なんです。事実があったら適切な処置をとる。ここを考えていただきませんと、いかなる制度があっても何にもなりません。実際人権擁護局の十四名やそこらのお方で全国に行われている人権じゅうりんの多くの事案に対して適切な処置なんかとれるという信頼を持っておりません。これはただ形があるだけであります。私は強くここに望みたいことは、斎藤国警長官が警察官をほんとうに民主的な警察官に仕立て上げるためには、現在やっておられる程度では、私はとうていいけない。責任を負うという経路が明らかになっておりません。これは国民も理解しておりしません。この取調官が失敗した、間違いがあった。その場合署長も責任を負うのか、あるいは隊長まで負うのか、あるいは長官まで負うのか、これを一つ明確にしていただかぬことには、出先の警察官はほんとうにえりを正して捜査に当る人が少くなってくる。もし出先の警察官の失敗は、問題によっては長官の身に及ぶということまで明確になっておれば、緊張感が違います。責任感が変ってきます。現在のような警察の現実、実態ではやりっぱなしです。間違いの起りっぱなしです。改める者は少いと思うのです。この点について大麻大臣に特に御考慮をわずらわして適切なる処置をすみやかにとられんことを私は期待いたします。希望するものであります。ぜひそれに対する御所信を伺いたいと思います。
  19. 大麻唯男

    大麻国務大臣 よく伺いましてございます。
  20. 世耕弘一

    ○世耕委員長 それでは午前の会議はこの程度にとどめまして、午後一時まで休憩いたします。  この際政府に申し上げますが、人権擁護の問題並びに警察行政についてまだ多数質問の申し出がございますので、関係大臣はふるって御出席をお願い申します。     午後零時二十一分休憩      ————◇—————     午後一時五十二分開議
  21. 世耕弘一

    ○世耕委員長 それでは午前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。松岡松平君。
  22. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 長官はまだおいでになりませんから、刑事部長に個々の具体的問題について少しお尋ねしたいことがあるのです。この警察庁から出されておる本年度の選挙違反検挙状況調べのうち、通常逮捕と書いてある項目に、買収利害誘導についての件数が三千七百七十三、人員が四千六百九十六人、戸別訪問が三百五十二、それから人員が三百八十人、こうあるのですが、一体これは最初逮捕状を出されたときの件名によるのか、それとも事件取調べの過程において現われた内容によって件名をあげられたものか、これを一つ承わりたいのです。
  23. 中川董治

    ○中川説明員 当委員会に提出いたしました犯罪統計もそうなっておりますが、私どもが犯罪統計をやる場合におきましては、一人の被疑者の方について一番主たる犯罪を中心に統計をとっておりますので、御質問の戸別訪問を主たる内容事件につきましては、戸別訪問の欄に掲示をし、それから買収等を主たる内容としておるものにつきましては、買収の欄に掲示をいたしたのであります。従ってここに戸別訪問に掲示しました人数は、戸別訪問を主たる内容の犯罪事件でありまして、戸別訪問でありましても、買収を主たる内容といたしました場合には、後ほど買収の欄に掲示をしかえる、こういう統計上の仕組みになっておりますので、御了承願いたいと思います。
  24. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 そうすると、あなたの方で出先警察本部所管において取り扱った逮捕状というものに対する統計はないのですか。つまり、つかまえて来るのには逮捕状がいるのですから、そのときの逮捕状の、何月何日、どういう件名で逮捕状を出したという統計は出てないのですか。ありますので、選挙違反事件について罪種別に統計を速報的に集めた、こういうことでございまして、御質問の点につきましては、相当おくれて逐次積み重ねた統計がやって参りますので、それによらないと正確にわからないのであります。
  25. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 なぜ私はこの問題を提起しているかと申しますと、選挙違反の場合において、最初に逮捕される者の多くは、戸別訪問の罪名で逮捕状が出ているのです。そうして、つかまえておいてからたたいてしぼり出すというのが今の警察の状況であります。どういう事案が出てくるかというと、選挙法が改正されまして、労務賃金と労務者という観念が徹底していないために、事実上ビラ張りして五百円もらった、二日出て五百円もらった。これは適法な労務賃金なのである。ところが会計担当者の多くは平生こういう事務になれないために、領収書をその場で取ればいいのを、取らないで選挙終了後までほっとく。そうすると、警察があいつは運動しておったからといって戸別訪問でつかまえて来て、警察へ入れてたたく。お前幾らもらった。五百円もらった。ビラ張りに行って来ました。ビラ張りは労務者であるとかないとか議論しているうちに、労務者でなくなっちまう。それがいわゆる警察のたたき出しの技術なんです。そうすると、いつの間にか買収されてしまったことになって調書ができ上る。調書ができ上ると、普通の国民は、一旦警察官に申し上げれば変更できないものだと思う。そうしてお前はこれを変更したらまた偽証罪になる、いや誣告罪になるとかいろいろなことを言うておどかすのが例である。これはたくさんある。だから私ども知りたいのは、今度逮捕されたる者の総員について、どういう罪名のもとに逮捕状を発したか。その統計をすみやかに私希望したい。それをこの委員会に提出していただかぬと、本筋へ入っていけない。  それから今度私自身の問題について申し上げます。これは具体的な事実ですから、非常に貴重な資料です。私が選挙を終って翌日、私の事務所へ——私の住宅で、かつて事務所に使っておったことがあるという事実だけである。そこに居住してない人間を居住していると称して家宅捜索をやった。そうして事務所として借りて使っておったところを、ここもその人間がいるとして家宅捜索をやった。そこでこれは法務省の方でもお答え願いたい。一つの家宅捜索をするのに、その人間がここにもおる、ここにもおると出ている。具体的に言うと、私の住居は富山県上市町です。この私は住居の中に被疑者がいるとして、私の事務所を家宅捜索した。何を持って行ったかというと、名簿を持って行くのです。そうすると、お祝いをもらっている名簿ができている。来訪者の名簿を持って行って返さない。あいさつ状一枚出せない。一体何の必要があってかようなものを取って行くか。その被疑者をつかまえにくるために私の事務所に入るというならば私は容認します。しかるに私の住居に入って、私のところの来訪者名簿なり通信物をさらっていくというのは一体どういうことなんです。それから私の借りた富山市内の事務所、これは解散して何にもないところですが、ここへ捜査状を持って入って家宅捜索をする、かようなことは職権逸脱ではありませんか。何とお考えになりますか、一つお答え願いたい。これは警察側と法務省側に別々にお聞きしたい。非常に重大なことですから一つお答え願いたい。  それから次に見込み捜査が非常に多い。あいつは何かやっているだろうというので、戸別訪問の逮捕状を出してつかまえてきて十日も置く。具体的な事実を申しますと、富山県下新川郡入善町というところに竹内萩太郎という者がおる。私の労務員ですが、これに逮捕状を出して、胃潰瘍の病人を主治医にも見せないで十日も拘禁しておる。そうして何もなかったので帰した。本人は非常に憤慨しております。これは全く見込み捜査である。要するにあれは何かやっているだろうということで逮捕状が出された。  あとまだたくさんありますが、これを一つお答え願いたい。
  26. 中川董治

    ○中川説明員 最初の御質問の逮捕状その他の強制処分に関する関係でございますが、確かにお説の通り見込み的にむやみやたらに強制処分をすべきでないという点は当然でございまして、この点につきましては機会あるごとに第一線の諸君にいろいろ注意しているのでありまして、今回の衆議院議員選挙の施行に当りましても、この点を厳重にいろいろ打ち合せした次第であります。それで、個々の事案につきましていろいろ御注意いただきましたが、よく御趣旨に沿うて検討いたしたいと思うのであります。全体の数字上の判断になってまことに恐縮なのですが、先ほど申し上げましたごとく、今度の選挙違反事件検挙いたしました人数が二十二日現在で一万五千名余あるわけでございますが、そのうち一万人余は強制処分を用いずして捜査を遂げているような実情でございます。このほかに選挙の公正を確保するということが根本的にまことに重要なのでございますが、犯罪事件に至らないようにこれを防止している。こういうようなことも重要なことでございますので、いろいろ警告その他の処置を講じまして犯罪が行われないようにしていく、こういうことも十分第一線では考えまして、今度も選挙違反事件になる疑いがあると考えていわゆる警告をいたしました事件が、一万六千件あるわけでございます。従いまして全体の数字上の判断でまことに恐縮なのですが、そういうふうに警告もいたしておりますので、第一線がなんでもかんでも強制処分をやる、こういうことにならないような方向にいっているのではないかと考えておりますが、これは全体の数字上の判断でありますけれども、一件でも不当な強制処分があっては申しわけないことでありますので、個々の事件につきましてはそういう精神に従いまして第一線捜査員によく注意を喚起いたしまして、強制処分の乱用にわたることのないように努めて参りたいと思います。  それからお尋ねの具体的の事案につきましては、確かに捜索許可状にいたしましてもその他の処分にいたしましても、それぞれそのケースに直接関係あることについてのみ可能であるのであります。その点につきましては許可状の内容、令状の内容等を私これから調べまして、調べました結果に基いてお答えしたいと思います。
  27. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 今の私の住居に対する家宅捜索の件については、所轄警察は富山県滑川署であります。被疑者の中島千次郎という者がおる、それを探しにきたというだけの理由で私のうちじゅうを家宅捜索して、家人ことごとくふるえ上った、こういうことをやる。  もう一ヵ所、富山市荒町で私が選挙事務所に使っておった他人のうちをやりました。これをお調べになって、この職権違反をやった当該署長並びに警察官に対する処置を講ぜられたい。このままでは承知しませんよ、何回も私はやられているのだから。私だけだから言うのではない、みんかほかの多くの人がやられておる。こういうことはみせしめのために、厳重なる処置を講じてもらわなければ困ると私は思います。  それから先ほど申しました竹内萩太郎の見込み捜査、この所轄署は富山県入善署であります。飲んだ程度のものなら、在宅で調べればそんなものはうそをつきませんよ。これは私に何も関係ないことだが、一般的に見てこういう処置をすべておやりになるならば、片っ端からやられるならやられるでいいと思う。日本全国にやってもらいたい。その一地域だけやられては困る。刑事政策というものはあるはずです。  それからもう一つ、富山県婦負郡呉羽町の所管において、選挙前一月十日ごろに百姓どもが寄って十数人で酒を三升飲んだ。この理由をもって今なお十何名の者を拘禁しておる。こういうことが一体妥当なことかどうか。正月中に酒の三升ぐらいを十五、六人で飲んだその金の出場所を追及している。そのため拘禁しておる。そしてお前はだれを支持する、将来選挙になったらだれを当選させるつもりであるかということを追及しているそうです。これは弁護士が調べておる。こういう事案についてすみやかに御調査願いたい、そうして適切なる御回答を願いたいと私は思う。これは社会問題であります。その背後に、仄聞するところによると落選した候補者警察署の懇意な者となれ合って、人の政治的な将来の成長をはばむためにこういう妨害運動をやっているということを伝え聞いております。これは私に関係ないのだが、気の毒にたえない。これは許されぬことだと私は思うのです。すみやかに調査してこの委員会に御報告願いたいと思います。  結局結論づけて申し上げるならば、警察官選挙になると、何らかの選挙違反をあげなければ成績が上らないという考えを持っておる。いろいろ聞いてみると選挙違反がないというわけはない、あげないというのはその警察官がなまけておるんだ、こういうふうなことを聞くのですが、警察当局では一体そういう御教育をなすっておるのかどうか。犯罪がないほどいいことはないんですよ。なかったからといって警察官がなまけておると思われるというので、無理やりに犯罪を作り上げるということがあるのじゃなかろうか。それだからこういうような逮捕状を出して、気の毒な取調べをすることになるんじゃないか。正月の十日ぐらいに十五、六人の百姓が寄って酒を三升飲んだ、その酒の出どころは松岡派だとか、あるいは何々派だと追及するに至っては愚かもはなはだしいことであります。こういうことを日本全国全部についておやりになるならこれは別個の問題であるが、なぜその地域だけやるか、そこに私ども警察当局の公平性というものが疑われてくる。それから経田の問題ですが、四十人からの漁師が酒を飲んだ、一ぱい飲んだという程度で、四十人も働き手を失って、四十軒の人間が生活の窮迫に陥っている。そういう必要がどこにあるか、在宅で調べて差しつかえのないものではないか。おそらくこういうケースは日本全国をこまかに調べたら山のごとくあると思うんです。先ほど申したように、警察官に対する監督制度が確立されていないからこういうことになるのであります。警察官は野放しになっておるんです。これでは警察ファッショが起ってくるというのも無理がないんです。しかもこの取調べをやるのに、事犯の起った所轄の警察署長がやるのが当然だと私ども考えるのに、管轄外の警察がやる。それだから実に無慈悲きわまる行動をやるんです。およそ犯罪捜査に当っても、愛情のない処置は必ず国民政府に不信を持つに至るのであります。犯罪人を一人取り調べるにも政府の愛情というものがあってしかるべきものである。その愛情を持ち得るものは所轄の署長なんです。その所轄の署長はその事件をやらないで、管轄外の警察がこれを取り扱うということはどういうことか、これはずいぶんあるんです。これについても御見解を承りたい。  それでわれわれが聞くと、署長は本部が指揮するので私は知りませんといって逃げるのです。それでは警察署という看板を掲げて、国民の治安を守っておる署長の勤めは一体どこにあるのか。調べは本部から来てやります、逮捕状は私がやっているんじゃございません。これじゃ警察署の看板をはずして店じまいした方がよろしい、テント張りにした方がよろしい、あんな建物をわれわれ国民が税金を払って作る必要はないということになる、これに対する御見解いかん。つまり所轄の警察署長がみずから調べるべきものである、それをなぜ所轄外の警察署においてこれを行うか、その理由を伺いたい。これが人権じゅうりんの発生する大きな原因の一つと私は指摘します。それは朝夕に警察署長は顔を見ておりますから、乱暴はできないのです。だから所轄外の警察署を使う。まず一つ一つ御返答願いたい。
  28. 中川董治

    ○中川説明員 まず警察の捜査員の件数主義的な根性と申しますか、そういう考え方についてお答えいたします。警察官はいろいろ第一線で活動するのはけっこうなんだが、物事を事件として件数をかせがないと自分の成績が上らぬ、こういうことを考える向きが少くとも過去におきましては相当ありました。こういう考え方をとりますと、いろいろ御指摘になりましたような事柄が起る根本原因になりますので、件数主義というものを排除しよう、こういう点は相当前からお互い警察の部内で考え合せまして、件数主義という考え方を排除して行こう、犯罪があって多数の人間が困っているのに、警察がなまけて捜査をしないということは、もちろん職務怠慢でありますけれども、いたずらに件数をかせぐという根性によって事を処理するということは、適当なる捜査が行われぬ根本理由でありますので、このことは特に排除して参ろう、これはだいぶ前から私ども関係警察の幹部の間において考え合せまして、こういう点につきましては徹底して教養する、こういうふうに進んで参ったのでございます。今次選挙におきましても公明選挙、ことに選挙違反事件のないことを希求するために、事前の啓蒙—これは選挙管理委員会等のお力を借りなければなりませんけれども選挙管理委員会に密接なる連絡をいたしまして、事前の啓蒙等を中心にして、まずないことを希望する、不幸にして犯罪がありました場合は、これはやはり選挙の公平を期するために、もちろん捜査をしなければならぬことは法律上当然でございますが、そういうものの考え方で進んで参る、従って自分の県に件数が幾らあるとか、自分の署に件数が幾らあるということのみをもって自分の成績と理解をしない、こういうふうな観念をよく打ち合せたつもりでございます。その教養の徹底につきましても相当努力したつもりでございますが、御質問の中には御指摘がありましたように、個々の警察官の中にいまだ件数主義的なものの考え方があるということを御指摘いただきましたので、こういった点もさらに反省いたしまして、正しいものの考え方に徹するように努力いたしたいと思うのであります。収者が乙の警察署、丙の警察署、こういう場合におきましては両方の警察署が管轄権が一応あるわけであります。それでそういった警察署の管轄をまたがって、金円の交付が行われたのは甲の警察である、買収者、被買収者が居住する地域は乙、丙の警察の管内である、こういうケースが、ことには広域の選挙運動、衆議院とか参議院の選挙運動の場合には相当多いのでございますので、そういった点につきましては、どの警察が主となって行なって、この場合は甲の警察が主となって行なって、丙の警察はこれに協力するのみである、こういうふうな段取りをきめて参らなければ、能率的な捜査ができませんので、そういった面につきましては、特に警察本部長が中心になりまして、相互の警察官の管轄の関係をそういう意味合いにおいて調整しておりますので、御指摘になりましたような場合におきまして、居住は丙の警察の管内に居住しておりますけれども事件は甲の警察に関連した事件でありますので甲の警察署がやる、こういう場合もあろうかと思いますが、全体は事柄の適正な捜査をやるという見地、特に人権の尊重を十分に考えるとともに、捜査の能率はむだの捜査が行われぬという意味において、ある地域に居住しておるということのみをもって管轄はきめるわけには参らない、こういう実情を申し上げたいと思うのであります。実情はそういうことでございますけれども、事柄はいずれにいたしましても、事件を主として管轄する警察署長が中心になり、さらにその上には府県警察本部が中心になりまして、最末端の捜査員の思い違い、不注意、ことにはなはだしきは悪意等によるところの不当な捜査が行われることを防止するように十分注意して、今回の選挙につきましても十分注意したつもりでありますが、いろいろケースについて御注意があったので、その線に基いて個々に注意を加えてみたいと思うのであります。御指摘がありました四十人同時に逮捕する、しかも久しく拘禁している、こういう事件につきましては、ちょっと私個々のケースが頭に浮びませんのでお答えできないのでありますが、とにかく事件の真相を明らかにすることが必要でありますので、明らかにするために必要最小限度の逃亡のおそれ、証拠隠滅ということを中心に事を処理すべきでありますが、四十人逮捕の個々のケースにつきましては、ちょっと直接のケースを存じませんのでお答えできませんが、後ほど調べてお答え申し上げたいと思います。
  29. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 それではこれは参考までに申し上げておきますが、今申しました呉羽の十数名の件は、管轄地でない小杉という警察がやった。この町は一部は町村合併によって呉羽町に併合されている。それで警察の所管もかわっているはずなんだ。それを呉羽の警察がやらないで小杉の警察がやった。なぜ小杉がやったかというと、その沿革を申し上げますと、大体富山県の選挙違反かつ人権じゅうりんの本家は小杉署なんです。小杉署が本部と称して今まで富山県の選挙違反を徹底的に捜査して選挙干渉をやった。おかげさまで私は二十八年は落選しました。二十七年に四百数十名の逮捕を受けた。その内容を見ると起訴した者はわずかで、戸別訪問という理由をもって拘禁したものがたくさんある、その元凶は小杉署なんです。またまた本件において、管轄違いの事件を引き上げてやっておる、これを一つ調べ願いたいと思う。私は自分の個人の問題だからこういうことをしつこく申し上げるのではないのです。いかなる英雄といえども一つ選挙で四百数十名も逮捕されて、その次五カ月もたたぬ選挙で当選する者があったら私はお目にかかります。だれだってそれはやれるものではありません。これはとりもなおさず、私は人権じゅうりんと警察干渉によって二十八年は落選したと言いたい。今度は、選挙中は圧迫を受けなかったが、選挙後においてもやはりその時分の残党がこういう悪いことをする。その後だいぶん警察制度が変ったために小杉署の役割は変っても、他の管轄の事件をこういうことで引き上げてやっておる。これを至急一つ調べを願いたい。これは非常な問題だと私は思います。  最後に私は申し上げたいのは、二十七年のこの委員会においても私は指摘し、強く要望いたしました件は、逮捕状乱発並びに人権じゅうりんを防止するに最も適切な方法は、逮捕状を発行する場合においては検事局の同意を要する、これをやらない限りは警察官の捜査独走に陥って、人権じゅうりんはその跡を断つことはなかろうと私は思います。あのとき、二十八年の国会においては遂に刑事訴訟法の改正はうやむやに葬られてしまいましたが、警察官諸君にはこれに非常な反対がある。私は反対がある理由がわからぬ。これに対する警察当局考え方は一体どうであるか。あわせて、法務大臣並びに大麻大臣もお見えになったので、一つ御所見を承りたい。実際のところを見ましても、先ほどからも個々、具体的な事例をあげて申し上げておる通り、逮捕状の乱発の弊というものは今なお直っておりません。そうして訳のわからぬ見込みをもって人を逮捕して事件を取り調べるなんということは、法治国にあるまじきことであります。日本の現在の警察制度の実情をもってこのままにしておいたならば、人権じゅうりんはその跡を断たず、また自殺者が続出するということも、これを防止することはできないのであります。英断をもってこの際刑事訴訟法を改正して、逮捕状発行については検事の同意を要するということに直さない限りは、私はこれは直らないというかたい信念を持っております。これは私議員である限り、生涯かけても主張して行くつもりであります。当該法務大臣並びに大麻大臣のこれに対する御所見を承わりまして、この問題に対して大いにお考え願いたいと思います。を積んで保釈の申請をすれば、すぐ身柄は釈放する。釈放してもその犯罪に対する証拠隠滅等のおそれはないということで、まことに至れり尽せりの方途が講じられておることを私は見聞いたして参りまして、やはり日本におけるこうした制度もかくあるべきものであるという見地に立って、私は法律改正のときに法務委員として自己の所見を述べたと記憶いたしておりまするが、その後法律も改正されて、その弊をためるようにはしてきたのでありますが、現在なおかつただいま御質問のような問題が起きておるであろうことは私も見聞いたしておるのでありますから、あくまでも法律を守りつつ、また取締り官憲において自粛をしていかなければならない、またそうさすべきであるということも私どもも痛感をいたしておるのであります。従いまして御質疑の点はごもっともであろうと存じまするので、私どもも今後かかる誤まりなきことを期していきたいと存じております。
  30. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 今法務大臣の御所見は承わりましたが、大麻国務大臣にちょっと承りたいと思います。この逮捕状乱発の弊を防ぐためには、さらに検事の同意を要するというところまで刑事訴訟法を改正しないと、今の程度の改正ではまだまだ人権じゅうりんの跡を断つことはできなかろうというのが、私の意見であります。これに対する法務大臣からの御所見を今承わりましたが、警察側のあなたの方からも御所見を承りたい。
  31. 大麻唯男

    大麻国務大臣 国警長官から……。
  32. 斎藤昇

    斎藤政府委員 ただいまの御趣旨のような点がこの前の刑事訴訟法改正の際に相当論ぜられまして、われわれといたしましては、検察官と事前に十分連絡をして令状の乱発を防ぐということは非常にけっこうだと思いますが、しかし法律上検事の同意を得るということをいたしますと、かえって警察責任が不明確になってしまうのではなかろうか、それよりも逮捕をした後検察官がさらに検事勾留という問題もあり、ことに起訴という問題もありますから、事前に連絡をし、そうして判事のもとで令状乱発のないように防いでいただき、警察も、もちろんみずからその点は自粛をするということが望ましいのではないか、従って先般改正を見ました今日の現行法で、さらに当分様子を見た方がよいのではないか、かように考えております。
  33. 松岡松平

    ○松岡(松)委員 最後に自殺者と関連することでありまして、つまり警察官が捜査途上においてあやまちを犯した、この者に対する制裁並びに監督制度の強化に対する警察側の御意見を承りたい。
  34. 斎藤昇

    斎藤政府委員 取締りの上で警察官人権じゅうりん的な行為をやったという場合には、事態によりましてはあるいは検事の方でお調べいただいて法の制裁を受けるということももちろんあるわけであります。しかし検事によって起訴を見るという程度でありませんでも、警察の正しいあり方として適当であったかどうかという点は十分監察をいたす。これにつきましては不当と思う場合には適切な行政処分が必要だと考えております。その組織といたしましては、まず県本部の中に監察の組織を持っております当該部局において監察をいたしますのはもちろん、当該部局でない監察を目的とする監察官によって監察をし、これの処分を明らかにするというように現在いたしておる次第であります。さらにその監察の仕方がよろしいかどうかという点につきましては、事実上管区警察局、あるいは場合によりましては本部からも直接参って監察をし、適当に指示をするというふうに運営を行なっておる次第であります。
  35. 世耕弘一

    ○世耕委員長 この際委員長から政府に一点お尋ねしておきたいと思いますことは、最近最高裁判所の裁判官の任命の形式について、その任命について選考機関を設くべしとの輿論が起っておるのであります。承わりますれば、すでに二、三の判事は任期満了に近づいておるやに伺っておるのでありますが、もしそうだとするならば、早急にその補充を決定しなければならぬだろうと思うのでありますが、その補充任命の形式をいかなる方法によって決定されるか。現に国民審査の方法があるから、この審査の方法がある以上、あらためて諮問機関を設ける必要がないという議論も考えられるのでありますが、現在の審査機関なるものはむしろ無意味であるというような非難も出ておるのであります。さようなことからここに最近別途の選考機関を設けて、すなわち最高裁判所の裁判官を権威あるものにせしめようという世論が抬頭してきたものと考えられるのでありますが、この点について政府の所信をこの際発表しておいていただきたいと思います。
  36. 花村四郎

    ○花村国務大臣 ただいま委員長のお尋ねにかかる最高裁判所判事任命に関する問題に対しましては、委員長がただいま申されましたような協議論もいろいろとあるやに拝聴いたしております。ことに昨日の読売新聞でありましたか、その記事が出ておったようでありまするが、私は不幸にして多忙のためにその内容をきわめ得ざりしを遺憾に思っておりますが、御承知のごとく、最初に最高裁判所長官並びにその他の判事が任命せられましたときは、裁判所法の諮問委員会の諮問を経て内閣が任命をするという規定が置かれておったのでありまするけれども、その後当該規定は廃止をせられまして、現行法にのっとって任命が行われて参りましたことは御承知通りであります。そこで憲法第七十九条には、御承知のようにはっきりと裁判官は、内閣でこれを任命すると規定し、さらにまた裁判所法の第三十九条においても、最高裁判所判事は、内閣でこれを任命すると、こう規定されておるのであります。従いまして最近論議をせられておりまするこの任命に関し、諮問委員会のごときものを設けて諮問したらばどうかというこの種問題に対しましては、もちろん積極論もあり消極論もございますが、ただ問題は、そういう諮問機関をつくることによって内閣の任命権に対する制限が伴って来るおそれはないかどうか。ここに私は問題があろうと存じます。もしその任命権に影響が及ぶものであると仮定するならば、それはまさに憲法違反の問題が起きなければならないということに相なりまするので、ここに本問題の重要性があるとみなければならないと思うのでございます。しかし任命当時に諮問委員会によって推薦された裁判官を、つまり内閣が任命するという規定のもとに行なって来たことが一回の実施によって廃されたというようなことを考えますると、やはりその必要性がないと認めてかように法律を改正したのじゃないかというような意味にも考えられ、これは相当重要な問題で、ただいまどうこうという結論を申し上ぐることはとうてい困難であると申し上げてよろしいと思うのでありまするが、もちろん構想としては諮問委員会のごときものを設けて、この衆知の意見に基いて候補者を推薦するという方途も一つ考えでありましょう。ありましょうが、ただちにそれがいいとして果して現憲法の上で採用すべきかどうかというところまで参りますと、これはやはり相当問題であろうと存じます。従いまして今日政府考えとしては、この種問題について現行法を改正しようというところまではまだ考えておりません。
  37. 世耕弘一

    ○世耕委員長 一応了承いたしましたが、実はきのうの都下の新聞に出ておりました任命に対して選考機関を設ける、衆議院の法務委員会も今国会に法案を提出するというような見出しで出ておりましたが、本委員会は全然関知しないことであったのでありますが、各方面の輿論を聞いてみますと、相当重要に取り扱っているようでありましたから、今政府の所信を伺ったような次第であります。か、かように考えるのであります。この際政府の所信を明らかにする意味におきまして、一党一派に偏しない、そうして情実にとらわれないで、公明正大にして権威ある後任者を決定するのだという、その所信をこの機会に聞かしていただければけっこうではないか、こう考えて実はお尋ねしたようなわけであります。なおこれについて御意見があれば承っておきます。
  38. 花村四郎

    ○花村国務大臣 申すまでもなく裁判官が不偏不党、あくまでも公正であらねばならぬことは言うをまたぬことであります。従いましてその公正であるベき裁判官を任命するのでありまするから、従って任命する人といたしましてもやはりその精神をもって任命すべきでありますことは当然であります。従ってかくのごとき見地に立って考えまする場合においてもちろん不偏不党であるべきことは当然であります。あくまでも正しい立場に立って、あらゆる面から検討いたしまして、最高裁判所判事として最も適当なるりっぱな裁判官を任命するという方途を講ずべきは、これも私が申し上ぐるまでもなく当然だろうと思います。今までの任命も少くともこの線に沿うて任命されてきたことであろうと私は信じます。従いまして現内閣においてもこの域を逸脱いたしませんことは、はっきり申し上げてよろしいと思います。
  39. 世耕弘一

    ○世耕委員長 本件に関しまして発言を求められております。猪俣君。
  40. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 最高裁判所の裁判官の任命につきまして、われわれが第十九国会以来最高裁判所の機構改革の小委員会において出しました中間決定の中には、最高裁判所裁判官の任命は、諮問委員会を置いてその諮問によるべきことを決定しておるのであります。しかも、これは片山内閣のときに一回実施されたと思うのでありますが、その後廃止されておる。そこで現内閣におきましては、さような最高裁判所裁判官の任命につきましての諮問委員会制度というようなものを御考慮になっておるかどうか。これは今委員長の御質問の中にあったかもしれませんが、私おくれて参りまして、あるいは二度の質問になるかもしれませんが、現政府のお考えを承わりたいと思います。
  41. 花村四郎

    ○花村国務大臣 ただいまこの問題に対して委員長よりの質疑があり、私から詳細申し上げておいた次第でありまするが、今のところ、現政府としては諮問委員会を設くるの考えを持っておりません。
  42. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 なお、法務大臣は今内閣の法律顧問でなくなった地位にありますから、これは法務大臣質問することはあるいは適当ではないかもしれませんが、一応御考慮していただいて、他日あるいは法制局長官にお尋ねするかもしれません。最高裁判所に諮問委員会なるものを置いて、最高裁判所判事の任命につきましては、内閣の諮問に対して答申するという制度は、前に行われたことがあることは、ただいま申し上げた通りですが、それに対しては、現政府としては、さような制度にする意向はないことは今承わりましたけれども、かような制度にすることが、何か内閣の行政権に対する侵害になるというような議論をする者もあるやに聞くのであります。最高裁判所の裁判官の任命についての諮問委員会のみならず、下級裁判所裁判官の任命につきましても諮問委員会を設けたらどらかという、裁判官任命に対します民主化の意図といたしまして、さような考えを持っておる者があるのでありますが、最高裁判所裁判官の任命についての諮問委員会の制度、及び下級裁判所裁判官の任命についても、諮問委員会のようなものを設けて裁判官の任命をするという制度について、憲法の議論として考えられて、これが違憲だというふうに現内閣はおとりになっておるのであるか。憲法違反ではないが、制度としてそういうものはまだ考えておらないという意味であるか。これをお答え願いたいと思います。
  43. 花村四郎

    ○花村国務大臣 ただいまの委員長質疑に対して申し上げたのでありますが、もちろん、諮問委員会なるものの性格がいかなるものであるかという内容にもよりますことは、私が申し上げるまでもないのであります。その性格によりましては憲法違反の問題も出てくるのではなかろうかとも考えられます。あるいは憲法違反の問題が起きないかもしれませんが、しかし、御承知のように、憲法において、内閣がこれを任命すると規定してあるのでありまするから、従って、その任命権を制限するがごとき方途は、やはり違憲の問題が起きてくるであろうことも想像できるのでありまするが、要は、諮問委員会なるものの性格がいかなるものであるかということが具体的に決定せられた上でありませんと、やはり最後の断案を下すことはむずかしいと思うのであります。要するに、違憲論も立ちましょうし、あるいは違憲でないという議論も場合によっては立ち得るであろうと思いまするし、また、そういう論争も現在行われておるのでありまするが、しかし、今日政府として諮問機関を設くることが違憲なりやいなやという議論をいたしますることは、この場合適当でないと私は存じます。な方法でやることが憲法違反であるかどうか。これは憲法の規定を見ますると、「下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣でこれを任命する。」とありますので、下級裁判所の任命問題については、諮問委員会の存在というものは多少疑義が出ると思いますから、それらのことにつきましては法務大臣と法制局長官とよくお打ち合せの上で、明確なる見解を示していただきたい。それにわれわれは従う意味ではありませんけれども、われわれはすでにそういう諮問委員会の具体的な規則までも考えなければならぬような段階になっておるのじゃないかと思いますので、これを要望しておきます。今御答弁できますかどうか、その点について御意見を承わりたいと思います。
  44. 花村四郎

    ○花村国務大臣 猪俣委員の申されましたごとく、最高裁判所の機構改革に対しましては、法務委員各位があらゆる熱情を傾倒して、そうして慎重なる審議を尽してこられた点に対しましては、私は心からなる敬意を表しますると同時にその労を多とするものであります。しかもただいま猪俣委員の言われたごとく、その研究資料のうちには、裁判官任命に関する事項も包含されてあったように私も考えます。が、しかしこういう諮問機関を設けてやることが憲法違反になるかならぬかということを政府の方で研究して、そうしてこの結論示したらどうかというお話でありましたが、これもごもっともであります。ごもっともな御主張であるとは存じまするが、しかしこの法務委員会の方で、もしこういう問題を取り上げておやりになるとするならば、やはり法務委員会独自の立場に立って、その筋の権威を集められて十分に違憲なりやいなやの研究を積まれて、そうして成案を得られた場合、その成案を示されたときに、初めてその具体的な問題に対して、政府の方から違憲なりやいなやの意見を申し上げるという段取りに進むことが自然じゃないか、こう考えまするので、政府の方でそういう研究をして、そうしてこれは違憲でないからこうする方がよろしいというような、そういう押しつけがましいことはなるべく避けたいと思います。それは法務委員の諸君はその筋の権威であって、あらゆる面において法律的の解釈並びに立法に対してはたけておられるのでありますから、そういう人々に対して憲法上無効なりやいなやというような意見を述べることそれ自体が御無礼であろうと存じますので、政府としての意見は今のところ差し控えておきたい、こう存じます。
  45. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 花村大臣の答弁はいんぎん無礼のような答弁で、まことにけっこうなようなさっぱりわからぬような話であります。先ほど申しましたように、憲法問題につきましては、私ども何も内閣の解釈に拘束されません。ことに鳩山内閣の憲法解釈なんて、われわれ社会党員としてもそれに服従する意思は全然ないので、ただこういう超党派的に進まなければならぬ問題で、時の内閣と意見がはなはだしく相違するような場合におきましては、何か国政の運営上暗影を生ずるようなことにならないか、ことに事が最高裁判所の判事の任命というデリケートな問題につきまして、当委員会と内閣とがまっこうから解釈が違うというようなことになりますと、これは国政運営上いかがなものであろうかという老婆心から、実は花村大臣にお伺いを立てたのでありまして、決して内閣が意見を示されたから、示されないからわれわれはこの憲法問題がわからぬというのじゃない。私どもも十分なる見解を持ち、ああいう中間決定までしておる、諮問委員会は設けなければならないという中間決定をしておるから、内閣がいかなる解釈を下そうとも、われわれはわれわれの決意があるのでありますが、相なるべくは両者見解を一にして進みたいという、これは老婆心であります。ことに花村大臣は長い間当法務委員として、私も第一国会以来ただ二人になった一人でありますがゆえに、老婆心で申し上げておりますので、そんな御遠慮は要らぬと思いますが、ただし今答弁の時期ではないというのなら、それはそれだけで承わっておきます。ただ後日なるべくは憲法問題について当委員会の解釈と同じような態度をとって進まれたいという要望が今日私からあったことだけは御記憶していていただきたい。他日何か問題が起ったときはそれは内閣側の責任であるという前提を私はここに置いておきます。
  46. 花村四郎

    ○花村国務大臣 猪俣委員の御説ごもっともあでります。よくわかりました。私もこの問題に対して十分に研究を将来いたしたいと思います。
  47. 世耕弘一

    ○世耕委員長 福井盛太君。
  48. 福井盛太

    ○福井(盛)委員 私のただしておきたいと思います点は、きわめて簡単であるのですが、それは午前中に三田村委員から詳細に御質問になりました今回の選挙事犯に関する自殺者の点であります。この点につきましては、この報告に原因が起載されておりますので、ややわかっておるのでありますが、この調査は全く最終的の調査を経た結果の発表であるか、今なお調査研究をされておる点であるかという点であります。  それからその次に起りますのは、これがもし最終のものであるとすれば、われわれが心配しておりますあるいは自白強要あるいは人権じゅうりん的な行為がいささかもなかったという、ここに記載された原因だけであるという点にとどまっておるかという点であります。いささかでもそういう点があるかないかということをお尋ねしたい。それを質問いたしますのは、何と申し上げましても、今日われわれはこういう点を明瞭にしまして、国民に事実を知らしめて安心させたい、それが一番必要なことであると存じますので、その点を一点お尋ねしておきたいと思うのであります。
  49. 斎藤昇

    斎藤政府委員 私の方といたしましては、調査はまだ最終のものではございません。もう少し事実を調べてみた方がよかろうというものの中に入っております。さよう御承知願います。
  50. 福井盛太

    ○福井(盛)委員 わかりました。
  51. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 関連して。御承知通り選挙というものは、ばかでできなくて、といって利口な者はやらないかもしれませんが、つかまえられて自殺した自殺の動機等を見てみますと、いずれも小心者、こうなっておるわけであります。私はこの小心者の標準がちとピントが違っているのじゃないかというように考える。と申しますのは、むしろ小心者というものは、つかまらないときに、つかまっては大へんだ、調べられるようなことがあっては非常におっかないというようなところから、取調べを受けない以前に死ぬ者がいわゆる小心者であって、少くとも一ぺん調べられまして——ばかでできない、といって利口でやらないとするならば、いわば社会常識上普通の常識を備えている者だと見るのがよかろうと私は思う。その人聞が一切の関係を立ち切ってこの世から別れようとするのには、まず第一に調べられなければ死ななかった、調べられたから死んだとするならば、取調ベ行為にまず欠点があるのではなかろうかと思います。この備考欄を見てみますと、人権擁護局調べたかどうか知りませんが、少くとも脅迫等はない、こう書いてありますが、脅迫がなくても、強要があったとするならば、やっぱり取調べに手落ちがあったのではないでしょうか。もしかりに手落ちがあった結果七名もの人間が死んだとするならば、少くとも国家においてそれに対する責任を負うのか負わないのか。負うなら負う、負わないなら負わないと簡単に御答弁を願いたいと思います。
  52. 斎藤昇

    斎藤政府委員 警察あるいは検察取調べ方が不適切であったために、こういった自殺者出したということがあれば、私はその責任と申しますか、これは明確にしなければならぬと思います。職権乱用という程度であれば、これは刑事責任を課されるわけでありますが、そうでありませんでも、行政上の適当な措置をすべきである、かように考えます。その場合に賠償責任があるだろうかということは、これはまた一つの問題になってくるだろうと思います。これが原因であるということが明確になれば、あるいは民事上の賠償責任もあるのじゃないか、かように考えます。
  53. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 今、本件は最終の調べでなくて、調査の途中だとおっしゃいましたが、その調べはあなた方の手によってやるのか、あるいは東検に対して、いわゆる検察当局並びに警察当局において手落ちがあったか、ほかの調査機関を設けて調査するのか、どっちでございますか。
  54. 斎藤昇

    斎藤政府委員 われわれといたしましては、われわれの機関で調べます。その調べる筋は、警察がみずからの手で調べる筋、検察検事の手を通じて訴追すべきかどうかという意味も含めて調べられることもあると思います。人権携護局はその筋で調べることはあり得ると思います。そのほかこういうものを特に専門調べる機関はただいまございません。先般の国会では当委員会において本お調べをいただいた、かように考えております。
  55. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 あなた方の手で調べるという、自分でやったことを自分調べるということになってくると、結局自分のやったことはだれしも皆よくなってくるのです。人権擁護局と申しますけれども人権擁護局調査は、人手もきわめて少いし、また予算を伴っていないから、おそらく徹底的な取調べはでき得ないと思う。少くとも本件のごとく疑惑がある。あるいはまた官憲のやったことに対しておそらく家族連中は相当の不服があると思う。かりに適正にやりましても、少くとも自分のうちから自殺者出したとするなれば、おそらく警察当局あるいは検察当局を恨むのは当然であります。適正にやった場合においてさえもそうなんです。だから少しでも悪い点があったとするならば、それは当然がやがや言うのは、私は当りまえだと思う。しかしながら備考欄を見てみるならば一律一体に、それに対する不平もなければ不満もないというふうになっておりますが、少くともこういうふうな事案調査に対しては、新しい調査機関を設ける御意思があるのかないのか、その点をお伺いしておきます。
  56. 斎藤昇

    斎藤政府委員 警察の方といたしましては、こういうものを別個の機関で調べるという計画といいますか、そういう考えは持っておりませんが、私の方としましては、こういう委員会あるいは人権擁護局関係その他適当なところでこういうものをお調べいただくような機関ができれば、私は幸いだと思っております。私の方はその方がかえってほんとうに事態を究明し、また警察のためにもよかろう、かように考えております。
  57. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 これは警察庁で提出されたものでありますが、「被疑者又は参考人等で自殺した者及び傷害を受けた者調」この資料の中の第四であります。これは広島でできたことであります。これはよくここまで調べ出してくれたと思いますが、その警察官の当を得なかった処置であります。今の警察官の中には、あるいはいい方がたくさんいましょうけれども、少くともこういう型の人間が多いのだということを警察庁長官はまず頭の中に入れておいていただきたい。ことにこの選挙違反事件というものは短かい期間に記録を取り集めまして、証拠を収集して、そうして公判へ運ばなければならないという関係上、勢いこの選挙違反等には人権じゅうりんの問題がつきやすいのです。しかるにこの選挙違反でなくても、普通の事件でさえも留置場へ入れるというときに暴行を働いたからといってたたき投げまして肋骨を折った、こういうような乱暴な警察官がもしかりに選挙違反等の取調べにあたりましたら、少くとも一日も早く証拠の取調べをしなければならない、記録の収集をしなければならない、そうして公判に運ばなければならないということになりますると、結局警察官自体が非常にあせってくるのです。あせってくる関係上、そこに無理が出てくるのです。この無理によって死ぬ者があったというような場合には、勢い警察官に対する教養と申しましょうか、少くとも警察官に対しましてはある程度まで再教育をしなければならないというふうに私は考えておりまするが、この広島の中に記載されたもので、こういうような乱暴な警察官がまだたくさんいるのだということを一つ御留意を願っておきたいと思います。
  58. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 これは警察庁の長官にお尋ねしたいと思うのです。警察庁から提出されております被疑者の自殺者及び傷害を受けた者に対する調べに関して質問いたします。こういう自殺なり、傷害なりを受けた事件というのは、検察庁に送致されてから後のものであるか、あるいは送致前のものであるかということをお調べになっておるかどうか。お調べになっておれば、この表にある事項について具体的に、どれは送致前であり、どれは送致後であるということを承りたいと思います。
  59. 斎藤昇

    斎藤政府委員 選挙違反自殺者だげでありますか。全般についてですか。
  60. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 全般についてです。
  61. 斎藤昇

    斎藤政府委員 この概要のところに大体出ておるのでございますが、この概要の中ではっきりしていないものもあろうかと思います。一々申し上げますならば、第一番目は派出所に保護してそして寝かせておったというわけですから、これは送致でも何でもございません。これは保護だけの関係であります。第二番目は任意取調べをして帰ってから自宅でやったというわけですから、これは逮捕もいたしておりません。三番目は逮捕時間中であるかあるいは検事の勾留中であるか、この点は判明いたしておりません。四番目は現行犯で逮捕しようとした際であります。五番目は暴行をやったというので、現行犯逮捕であろうと思います。とにかくこれは房内に入れてからであります。六番目は窃盗被疑者でありますが、勾留中であります。七番目は検事勾留になってからであります。八番目は逮捕中であるか検事勾留中であるか不明であります。九番目も警察の逮捕時間中であるか検事勾留中であるか不明であります。十番目は検事勾留中でございます。十一番目はまだ派出所における事件でありますから、逮捕前でございます。選挙に関するものといたしましては、福岡は検事勾留中、二番目の福井は任意出頭を求めたわけでありまして、これは逮捕もいたしておりません。三番目は検事勾留中であります。四番目は任意調べでありますから逮捕も勾留もいたしておりません。五番目は任意調べで逮捕も勾留もいたしておりません。六番目の兵庫は逮捕し勾留せられ、そして起訴状を送達されたその直後であります。七番目は参考人として答申書を提出してもらったというだけであります。従いまして選挙事犯につきましては、大部分は参考人あるいは任意取調べで、うちへ帰ってから、こういう結果であります。が、一体そういうふうなやり方は今の刑事訴訟法の建前から見て、刑事訴訟法の精神から見て正しいことではないと私は思うのですが、それについての所見を伺いたいのであります。
  62. 花村四郎

    ○花村国務大臣 御説の通りであると存じます。
  63. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 そこで法務省においては、そういう事柄の多数あるということを御調査になっておるかどうか、それを伺いたい。われわれの知っておるところでは、そういう事柄が非常にたくさんあります。刑事訴訟法の精神に従わないで、むしろ捜査の主導権というものは警察が掌握しておる。検察庁に送致するというのは、ただ勾留状の発行を求める手続をするだけで、法律ではせつかく四十八時間内に事件を送致させて、検察庁事件の送致を受けたならば検察官自体がこれを検察官の責任において捜査するのだ、こういうように法律は規定しておるにもかかわらずそれを実行しない。しかもそれを警察署に留置しておる際に、この自殺事件とかあるいはその他の事故が起ってくるというところに、私は検察当局として十分是正するように努力をしなければならぬ点があるのだと思うのです。すなわちこういう警察署から送致された事件を、検察庁がそのまま警察に身柄を預けておいて、そして検察官がそれを責任をもって捜査しないでおるが、そういう事件調査して、そういうことのないように、従ってそういう間において自殺等の事故の起らないようになさらなければならぬと思うのですが、将来その運用に関して法務大臣の所信をお伺いいたしたいわけであります。
  64. 花村四郎

    ○花村国務大臣 ただいまのお話でございまするが、警察から四十八時間を経過して検事の手へ送って参りまして検事勾留をいたしまする場合には、取調べをやっておるようであります。その取調べが、今高橋委員の言われるように適当であるかないかというような御議論があるいはあるかもしれませんが、一応はとにかく検察官の責任において取調べをして、検事勾留を要求し、そうして身柄は警察へ預けて、検事責任において警察官取調べを行わしめておるということで、検事の手へ移りましてからは検事がこれを指揮しておるということには相なっておるようであります。そういうことでありまするが、実質的の面から検討して必ず検事責任において遺漏なく行われておるかどうかという点に対しては、多少私の考えもあるのでありまするが、今高橋委員の言われたように、少くともそういう検察当局取調べに対しては万遺漏なきを期してやるようにやっていきたい、こう私は考えております。
  65. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 実は今の問題は、私は非常に重要な問題だと考えております。花村法務大臣の御答弁は、これは御答弁として一応承わっておきますが、実情は、もう多くの事件は勾留されたら警察へまた預けて、しかも別な事件でなくしてその事件取調べをする、しかもそれは自白でもさせようかというようなときに長い間預けておくような事例が相当ある。そういうようなときに自殺だとかなんとかいう事故が起るということは、よほどまじめに考えなければならない問題であるのです。しかもそういう事故が起る起らぬにかかわらず、法律の実際の建前から見て、身柄を拘束する事件警察が取り調べるというのは四十八時間しか許されない、その後は検察官が取調べをしなければならぬのだという法律の精神を厳格に守っていくということにならないと、検察官というのは、警察から送致された事件の起訴不起訴をきめるだけのような形に漸次なってくる。これは私は今の法律の精神じゃないと思うのです。幸いに有能な法務大臣がせっかくおいでになるのですから、私はこれだけでもしっかり改めていただくということになると、将来に対して非常な功績だと思う。もしも検察官の手が足らないとか、あるいは物的設備が足りないとかいう場合には、どしどし実情を訴えて国会の審議にかけらるべきだと私は考えておるわけです。私ども実際の事務に関係をいたしましてもはなはだ遺憾な点があるわけであります。しかし警察にやらしておいても間違いがないというのであれば、私は法律が今のままではおかしいと思うのです。私の今申し上げたような趣旨において、法務大臣の十分なる御努力を要望してやまないものであります。  これをもって私の質問を終ります。
  66. 花村四郎

    ○花村国務大臣 ただいまの高橋委員の御質疑きわめて傾聴に値するものが多いと存じます。本来ならば検察当局が勾留するように相なりまして後は、検事みずからが手を下して取り調べていくということが好ましいことであり、またそうなってほしいと私どもも存じております。しかし今のところ御承知のごとく予算の関係検事の手も足りなければ、また取り調べる場所等も不足であるというようなことで、ただいま高橋委員の言われるように、理想的に捜査を運営して参ります上においてはあまりにも人員、設備その他の万事が不足がちであるというような点は、ほとんど疑いのないことであろうと思いますので、私どももまことに遺憾であるとは知りながら、現在のままを見過ごしていくより仕方がないというような事情に置かれておるのでありまするが、一つ有力なる法務委員会においてこの種方面に対するあらゆる機構の拡充強化に向って予算をとって下さるならば、いかようにでも理想的に運営することに決してちゅうちょするものではございません。私どもも長い間の体験の上から見て、高橋委員のそうした尊重すべき御意見を否定する勇気を持ちません。持たないというのは、ただいま申し上げましたような四囲の事情がそうさせるのであるという点を一つ御賢察下すって、さようなことなくして理想的に運営できるように、有力なる法務委員諸君の奮起をお願いいたしたいと存じます。
  67. 世耕弘一

    ○世耕委員長 委員長からも法務大臣に一言御意見を承わっておきたいと思います。先ほど法務大臣は欧米を御視察なさって欧米の理想的検察警察等の運営の御経験を御発表になったと思います。今また高橋委員からるる日本の現状を訴えて、その不当な行為のあることを具体的に指摘されたように今承わったのでありますが、われわれ最近報告を受けた実情から申しますと、検察は被疑ありというふうな条件のもとに被疑者をつれていって、調べないでほうり込んでおく、しかもそれは二十日以上もほうり込んでおいて、検察庁で一回も調べない。そして二十日目にやっと調べられたら、もういいから帰れ、こういう事実はおそらく全国に多数あると思うのです。これはりっぱな人権じゅうりんである。こういう連中にこの上予算をよけいやったらどんなことをするかもしれぬ、逆な結果もわれわれには考えられる。むしろ人権尊重という建前から、もう少し頭の切りかえを必要とするのではないか。練達たんのうな法務大臣のことだから、この一点を聞いただけでもおのずから腹がまえができただろうと私は思う。いずれ材料がどしどし法務委員会に集まってくると思いますし、法務委員会に集まりましたら、その資料に基いてあらためて法務大臣にも御所信をお伺いする機会も、各委員諸君からあろうと思います。なおまたその結果、今法務大臣からおっしゃったような予算の足りない結果、さような人権じゅうりんが行われておるとするならばこれは重大なことでありますから、単なる法務委員会の問題だけじゃなくして、国会の問題として大きく取り上げて、この人権の尊重を明らかにしなければならぬ、かように思います。一言委員長といたしましてもこれを付言いたしておきます。ましたように、現法務大臣は法律の専門家であり、また政治家としても長い経験をお持ちでありますから端的にお尋ねいたしてみたいのでありますが、少々理屈っぽい、聞き方においては抽象論になるかもしれませんが、内容はきわめて重要、具体的問題だと思いますから、そのおつもりでお聞きの上御答弁願いたいと思います。この委員会開会の当初に、裁判事務に関するもの、検察行政に関するもの、治安行政に関するもの、それらに関する国政の調査を行おうということを決議いたしまして発足したのであります。そこで私今の日本の現状から考えてみますと、午前中も申し上げたのでありますが、何が一番大事かといいますと、法の権威に対する国民の信頼感、それから同時に法の権威に対する国民の信頼感ということは、その法の運用に当る検察警察当局に対する国民の信頼感、ここにもどってくる。それは基本的人権を中心にしたものの考え方でありますが、同時に今の日本の政治環境から考えますと、民主政治に対する国民の信頼を高からしめるという観点から考えましても、一番重要な事柄だと思います。憲法擁護の議論がなかなか盛んでありますが、憲法の十一条には基本的人権を侵すことができない、十四条には法のもとにおいて国民は平等である。人権不可侵、平等な原則というものが憲法に書かれてあります。そういう立場からわれわれは今の日本の検察行政をながめ、また警察の活動も、政治全般の見方を考えてみるのでありますが、今度の選挙で一番論議されたものは、例の汚職事件、疑獄事件、さらにそれに関係した指揮権の発動、なぜ私が今ここで持ち出すかといいますならば、午前中にも問題になった、今もここで問題になっておりますが、選挙事犯に関する被疑者の取扱いは、何と申しますかきわめて簡単なのです。今の戸別訪問したというだけで逮捕状を執行する、まあ聞き込み程度のことです。今問題になりました二十日間身柄を拘禁している、こういう人人には指揮権の発動も何もない。つまり法の下には平等であるという、法の権威に対する国民の信頼感というものはだんだん失われていきますことは、悲しむべきことだと思います。そういう面から私は司法大臣の非常な御決意を願いたいと思うのであります。どうやって法の信威を回復するか、これは末端機関の事務的な監督とかいうことだけでは、なかなかこの問題はむずかしいと思う。もとを正しておくということが根本的に考えられなければいけないと思うのであります。  第一点としてこの法の権威をどうやって保っていくか、近ごろのように、今ここで午前中から問題になっておりますように、刑法あり、刑事訴訟法あり、公職選挙法あり、それに対する法律上の制度、組織、秩序というものは一応ありますが、なかなかそれがその通り守られていない。法務大臣は、今度の選挙取締りに対しても検察官を集めて訓示をなすっているようであります。その抽象的な立場だけでなしに、この委員会人権擁護問題が中心に論議される、この問題を検察行政最高の責任者たる法務大臣立場からどのようにお考えになっておりますか、まずその点、法務大臣の御決意のほどをお伺いしたいと思います。
  68. 花村四郎

    ○花村国務大臣 先ほど委員長お話に対して一言申し上げておきたいと思いますが、無益な拘束をしてほうっておくというようなお話もありましたが、さようなお話もありましたが、さようなことが断じてないと、私は申す勇気を持っておりませんが、そういう事実がありましたならば、遠慮なく具体的に事例を示されてお話願えれば、さような問題を是正して、かような誤りなきを期することにやぶさかではございません。でありまするからそういう点を一つ御了承願いたい。われわれの経験によりましても、検察方面にはあまりそういうことは見聞はいたしませんが、警察方面においてはこれを私どもも認めざるを得ないものがあると申し上げていいと思う。昨日でしたか、一昨日でしたか、参議院の法務委員会においてもこの種質問がありましたので、これは警察庁の問題にかかるのでありまするが、少くとも今後における警察官の地位をやはりあらゆる面から高めていって、その最もよりよき適任者を得るという方向へ強力に進めることによって、かくのごとき弊害を是正していかなければならぬのではないかということを私は申し上げたのでありまするが、ここに警察庁長官もおられまするから、この種問題に対しては、やはり御意見が述べられると思います。さような次第でありまするが、しかし国民もともに人権の擁護に協力し、よりよい世の中を作るという趣旨において、そういう問題がありましたならば、一つ具体的に腹蔵なくおっしゃっていただきたいということを、お願いいたしておきます。  それからただいまの三田村委員の御質疑でありまするが、まことにごもっともなお話であると存じます。これは言うまでもなく、あくまでも順法精神を高揚して、そうしていずれの人も少くとも法律違反の所為はやらぬという気持を高めていかなければならないと思います。また反面、もし法律違反の行為があった場合においては、法律の命ずるところによって公正にこれを処断していくという方途を講じて参りまするならば、おのずから法の権威は高められ、国民の信頼を受け得るものであると申し上げてよろしいと思います。
  69. 三田村武夫

    三田村委員 私がお尋ねしたことは、多少意味が違うのであります。事務的な観点から、警察検察を今後どうするかということについては、私事務当局にお伺いいたしましたし、今後また機会あるたびごとにお尋ねいたしたいと思います。私がお尋ねいたしますポイントは、法の権威を守ることも、民主的な秩序を明らかにすることも、要は責任の所在を明確にすることだと思います。そこで私法務大臣に簡単に個条的、にお尋ねしたいのでありまするが、検察行政の最高の責任者はどなたでしよう。
  70. 花村四郎

    ○花村国務大臣 検察行政の最高の責任者は、法務大臣でございます。
  71. 三田村武夫

    三田村委員 法務大臣検察行政の最高の責任者であることは、検察庁法を読んでも私その通りだと思います。そうすると、法務大臣の命令であるならば、それに全部従うことが検察行政を正しく進める道でありましょうか。
  72. 花村四郎

    ○花村国務大臣 法務大臣の命令であるからすべてそれを順法せなければならぬということはないと思います。その命令いかんによるのでありまして、法規にのっとって、そうして正しい命令を発した以上は、もちろん行政官的な性格を持つ検察当局としては、これを守らなければならぬことは当然でありましょう。しかしながら、その命令たるや、少くとも違法であるとかあるいは不適当であるとかいうような命令でありまするならば、これは検察当局ばかりでなくして、下僚が上長の命に服さないというような態度に出ることは、当然であろうと思います。どの候補者も、これを大きな課題として論じてきたことは御承知通りでありますが、一体だれが責任を負うのだ。私は問題のありましたあの事件内容に触れようとは思いません。これは私は門外漢でありますから知りませんが、少くともあのときの国会において、決算委員会でありましたか、証言台に立った佐藤検事総長は、あの法務大臣の指揮権によって、捜査上重要な支障を来たしたということをはっきり言明している。これは国民もみな知っている。そのことのゆえに、大げさな言い方をすれば、むしろ改変を招いたということも言えるかもしれません。それだけ大きな問題が出ていながら、一体責任の所在がどこにあるのだ。花村法務大臣はりっぱな権威と見識をお持ちの方だから、そういうことはなさらないと思いますが、かりに法務大臣が、これは検察庁法による最高の指揮者であり責任者でありますから、何らかの事案に対して、あの通りのケースで、検事総長に命令を出しっぱなしでさっさとやめてしまう、出てくる法務大臣も出てくる法務大臣もそれをやって何人も責任を負わない。ただやめればいいということになりますと、法の権威は失われてしまう。検事総長は確かに身分が保障されておりますし、検察官の身分も保障されておりますから、これが態度は二者択一です。法務大臣の命令を受けてこれを下に流すか、あるいはこれを拒否して自分責任を明らかにするか、どちらかであります。この場合の態度を一体どこでだれがけじめをつけるかということが、私は非常に重要だと思う。こういう一つの非常に大きなミスと申しますか、少くとも国民の前には理解されていない事柄をそのままにして、そして下部の警察の取扱いあるいは検察庁の取扱いだけで事務的に批判することは、私は困難だと思う。これからある場合だれが責任を負うのだ。法務大臣検事総長にある捜査上の指揮をした場合、その指揮のままに受けて立てば、いかに全検察陣営がそのことに不便を来たそうとも、ないしは全警察機構の中にどのような不安があろうとも、これを受けて下部に流すことが責任のとり方か。あるいはどうすることが一番法の権威を守ることか。すなわち民主主義のルールに従ってとるべき最善の方途いかんということを私は今の法務大臣からお伺いしたいのです。これはこのまま永遠に未解決でほうっておくわけにはいかないと思う。一つ率直な御所見を伺いたいと思う。
  73. 花村四郎

    ○花村国務大臣 責任ある者がその持つべき責任に対してこれを負わなければならぬということは、私の先ほど申し上げました言葉のうちに含んであると思いますが、ただいまの御質問は指揮権を発動したその責任を何人が負うべきか、そのままにしておいてよろしいかという意味ですか。あるいはその他の抽象的に何か法務大臣なりあるいは検察官が指揮命令をした場合に、その責任は何人が負うかという意味のお尋ねですか。そこがどうもちょっとはっきりしませんが、もう少しはっきり具体的の事例をあげていただけばなおけっこうだと思います。
  74. 三田村武夫

    三田村委員 時間の関係もありますから簡潔に私のお尋ねしたい要旨を申し上げます。私がお伺いしたいのは、法務大臣の発した指揮権なるものの当、不当をここで論じようとはいたしません。ただしそのことによって検事総長は捜査上重要な支障を来たしたと証言したことは事実であります。そうすると、最高の責任者たる法務大臣の命令によって捜査上重要な支障を来たした。来たしたと言いっぱなしで法務大臣はやめてしまう、検事総長はそのままその職にある。これは私はわからないのです。一体どこに責任がいくのか。法務大臣はやめてしまえばそれでいいのか、もっとひどい命令でも出し得るのです、一応検察庁法十四条を持ってくれば。私は犬養前法務大臣がどのような内容の説明をしているか知っている。その演説はつぶさに聞きました。聞いておって怒り心頭に発したのですが、それは申し上げません。そういうことで済ましてしまっていいか悪いかということを問題にしたいのです。上の行うところ下これにならう、これは古くさい言葉ですけれども、上の方から秩序を正してきませんと、わずかな給料で第一線で夜も寝ずに一生懸命夜勤手当も十分にもらえずに働いている人がばかくさくなる。人権じゅうりんをやるなといっても、これはまたそこにめんどうな問題が出てくる。こういう点を私は根本的に、法務行政の最高責任者たる今の花村法相に対して、これは一つ大きな勇気をもってこの点を明らかにしていただきたい。こういう場合は一体だれが責任を負うか。法務大臣責任を負うてやめればいいかもしれませんが、やめたことによって責任は解除されません。そのこと自体は永久に残っておるのです。どういう処置をとることが一番正しいか、法の権威を高からしめるか、少くとも検察行政に対する国民の信頼を増すゆえんかということについて法務大臣の御所見を伺いたい。
  75. 花村四郎

    ○花村国務大臣 ただいまの御質疑は、法務大臣が何らかの指揮を下僚に対して行なった場合において、下僚はこれに従わなければならないか。あるいはまたこれに指揮した法務大臣はやめればそれ以上責任は負わぬのかといったような意味の御質疑であると存じますが、これはやはり法務大臣の指揮でありましても、その指揮の内容によって考えなければならないと思います。もしそれその指揮が少くとも違法な指揮であり、あるいは不当な指揮であるということでありますならば、下僚はこれに従う必要はないのであります。けれどもそれが適正なものであるとするならば、やはり法務大臣の指揮に従わなければならないという規定がありまする関係上、それを拒むわけには参りますまい。そこで例をあげて、いわゆる世の問題になったあの指揮権の行使に対する責任はどうか、こういうことで申し上げればはっきりすると思うのでありまするが、あの指揮権が正当であったかどうか、不当であったかどうか、これは両論わかれております。不当であると論じ、あるいは正当であると論じて、議論は二派になっておりまするが、あれを適用した御本人はあくまでも正当なりと信じてやったことでありましょう。それでこれは議論がわかれておってどちらがよいかという断案をここで下すことは、私はちょっとできませんし、また下す必要もなかろうと思うのでありますが、まああの指揮権については、やはり法の命ずるところによって法務大臣の指揮に従うべきは当然でありますから、従って検事総長以下の検察官は法務大臣の指揮に従わなければならぬことは当然であり、また従っておりまするから、おのおのの立場における責任は果したものと言い得るでありましょう。そこで残る問題は、その指揮権を発動した人の責任はどうかということでありまするが、もちろん指揮権を行使するにつきましての、よかれあしかれすべての責任は、その権利を行使する人自体が持たなければならぬことは、これは当然でありまするが、あの犬養法務大臣が指揮権を行使してやめたということで、その責任が解消したかということになるのであります。これは御本人はやめることによって解消するという意味でおやめになったのじゃなかろうかとこう思うのですが、それによって解消するものでないという議論もこれは立つと思います。私は私個人としての考え方はありまするが、公の場所で言うべきではありませんから、私は申し上げませんが、あれが適当であったかどうかということは、前任者の処置として、その行為の是非についてここで論ずることは避けたいと存じます。客観的に妥当性があるかどうかということが問題なんです。ここでこの問題を論じようとは思いませんが、今の法務大臣の御所論を伺っておりますと、問題は二つあるようであります。つまり法務大臣の指揮権なるものを受けて立つ当事者検事総長だけでありますが、検事総長がこれは当然指揮者たる法務大臣の指揮として聞かなければならない、こう判断したきときは聞くべきだ。またこれは不当な命令であり、不当な指揮権だと判断した場合には拒否してもよろしい。その場合自己の責任において拒否する。こういう二つの場合があるということを法務大臣の御答弁によって私は了承いたしました。その場合、佐藤検事総長のとられた態度がどちらに当るかは、私はここで論及はいたしません。しかし今私が申しました佐藤検事総長が決算委員会の証言台に立って、あの指揮権によって捜査上重要な支障を来たしたということを証言したことは事実でございます。これを私繰り返して申し上げます。そうしてあの事案については、主観とは別に客観の判断があるということを私は申し上げておきたいのです。これ以上私は今の法務大臣の御答弁を要求いたしませんが、これらに関連した今後の検察行政あるいはさらに治安行政、警察行政全般に関する個々の問題に対する調査あるいは質疑は今後の問題といたしまして、本日私が法務大臣にお尋ねする範囲はこの程度でとどめたいと思います。
  76. 世耕弘一

    ○世耕委員長 関連質問で吉田賢一君。
  77. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 私はこの機会に一点伺いますることと、あと資料の取り寄せを要求したいと思うのでありますが、それは午前中以来しきりに問題になっておりまする選挙事犯取調べをめぐっての人件の尊重ないしは人命の尊重の問題であります。このことは、別の角度から申しますると、一般の事件並びに選挙違反事件について取締り、ないしは取調べの公正、適法を求めるという問題であろうと思うのであります。そこでその問題につきましては、これは申すまでもなく、やはり憲法並びにその他の法律あるいは道徳あらゆる角度からいたしまして、基本的人権その他の人権は尊重せられ、擁護せられなければならぬことはもちろんであります。また人命が尊重せられなければならぬことはもちろんでありますので、いやしくもこれらの侵害があり、また危殆に瀕するような事態が起っておることにつきましては、これは最も厳格な態度をもって根本的にその真相、原因、経過、結果を究明していくということは当然のことであります。そこでこの問題につきましては、私どもはあくまでも出ました資料だけでもその真相を明らかにするという態度を継続していきたいと思うのであります。  そこでいま一つの問題は、かりにこれを選挙ということに限定いたしまして考えまするときに、選挙自体はこれまた選挙そのものが公正、適法に行われなければならぬと思うのであります。やはりわれわれは選挙をやってきた者でもあるし、選挙の利害関係者であります。しかしこの問題はやはり国家、国民全体の視野、観点、角度から考えていかねばならぬと思いますので、国民といたしましては、先般国会自粛の経緯から考えてみまして、みずから行わんとする選挙を最も公正に行わねばならぬ。またみずからの選挙は適法でなければならぬ。しかるに、そうではなくして、平均七十万円と推定せられておる選挙費用が、実は数倍を要するのが常識である。百万円ではとても当選しない。数百万円を要するといったようなことが常識となっているというのであっては、国民は理解できない。ですから、そういった問題につきましては、やはり私たちは国民立場において問題を明らかにしていくことをせなければならぬと思うのであります。でありますので、かような角度から考えて参りますると、選挙それ自体は公正、適法に行わればなりませんがゆえに、いやしくも黄金をばらまいて選挙をするというようなことに対しましては、もし取締りがいいかげんになるということであるならば、私は国民の期待に反するものと思いまするのみならず、日本の選挙を通じての国政の粛正ということはできないと思います。数百万円の金をばらまいて選挙に勝つということを公然と見のがしていくということでありまするならば、百年河清を待つのでありまして、日本の政治の粛正ということは不可能であろうと思います。だから、この観点からいたしましては、やはり厳正な選挙が行われていかねばならぬ、こう思うのであります。問題はかように、やはり二つ、事実と観念は明確にいたしまして論及していかなければいかぬのではないかと私は思うのであります。  そこで伺いますることは、この人権の擁護、尊重、人命の尊重ということを、選挙事犯のみならず、一般の事件につきまして、法務大臣といたしましては、ほんとうに最大の努力と至誠を傾けて、この擁護と尊重に進まねばならぬ責任義務があると私は思います。これにつきましてどうするかというようなこと等々につきまして、先般来いろいろと議論があったのでございますので、私といたしましては、この際、たとえば小にしては人権擁護局、あるいはさらに大にしましては政府方針並びに国警のあり方、検察庁検察行政のあり方等々、全般にわたりましての問題になりまするので、これは一つ法務大臣といたしまして、さらにわれわれのこの委員会が今後も継続審議されると思いますので、それに相対応いたしまして、これが完璧を期するということの結論を得るために御協力を願って、そうしていろいろな改正あるいは予算措置等々万端の具体的な対案の樹立というところまで持っていかねばならぬと思いますので、これに対する御所見を伺いたいのであります。  もう一つの、今の選挙自体に対するみずからの公正と適法を期するということは国民的要望でありまして、これはまた当然のことであります。でありまするので、その点につきましては、われわれは悪質犯、買収犯、黄金をばらまいて選挙するといったようなものは、やはり仮借なく取り締ってもらわなければ、ほんとうに正しい選挙をやり、また法定費用内におきまして清潔なる選挙を目ざしまして努力するという者は埋もれてしまうのであります。悪貨がはんらんしてしまうのであります。良貨が駆逐されてしまうのであります。でありますので、別の角度から、ほんとうに高い理想を持って選挙に臨んでおります国民は、この点につきましては、峻厳なる態度をもって取り締ってもらわなければならぬという希望を持っておるのであります。でありまするから、この取締りの過誤、間違いということと、取り締らるべき選挙の正しかるべきということとは、厳として区別して両者相総済することなく、いずれも正しかるべきことの両全を期さねばならぬ、私どもこう思っておるのであります。でありますので、この両者の関係につきまして、相兼ねて一つ大臣のはっきりとした御所見を伺っておきたいと思います。において選挙違反摘発についても相当の成果が上っておるものと私は承知をいたしております。所によっては行き過ぎもあったような話も聞いておりまするけれども選挙界革正の成果が一部上り得たことはまことにけっこうだと私は思うのであります。しかしこの選挙違反の問題はなかなかむずかしい問題でありまして、選挙をやる人もまた選挙民も、選挙というものは大体何人も選挙違反を犯すものであるかのごとき考えを持っておる者があるというような社会事情を見まするときに、まことに遺憾に思うのです。たとえば選挙違反検察される者は犯罪を犯した被疑者であるがごとき気持を持たない、また刑務所に勾留されておって出てくる者のごときも、選挙違反で刑務所へ入ってくることがいかにも名誉であるかのごとく考え、出てくるときは凱旋将軍のごとき姿で、多くの人が迎えに行って堂々と帰ってくるというような事例を常にわれわれは見せつけられておるのであります。こういう選挙違反ということは犯罪であることが法律上はっきりしておるにもかかわらず、国民の一部の人々はこれが犯罪でないかのごとき誤まった考えを持っておるからこそ、選挙違反取締り、また選挙界の革正についてよほどむずかしい問題が起きてくるのであろうと思うのであります。この点はやはりもう少し選挙違反に対する国民の順法精神を高揚して、やはりほかの犯罪と同じに法律違反であるとして、自分自身で責任を自覚するということが必要じゃないかと、こう思うのであります。私は今回の選挙において地方へ参りましたところが、地方の人から、選挙違反などで腕を縛っていくことはまことに遺憾である、選挙違反などに対しては腕を縛ったりせずに、そのまま連れていってもらいたいというような意見もしばしば聞いたのでありますが、私はそれはそうは参らないのである、やはり犯罪である以上は手錠をかけていくのが当然であって、選挙違反などは犯す人も相当な社会的の地位も持っており、逃げ隠れをするおそれもないというようなところから、逮捕していく人が便宜をはかって手錠をはめていかないのであって、選挙違反などに手錠をはめるのはけしからぬというような考えを持つこと自体が誤りだと言うて説明したのでありますが、こ一事をもってすべてを推して知ることができようと思うのであります。こういう意味において、私は選挙違反というものに対する国民の認識をもう少し改めていかなければならぬじゃないか、そこにおいてこの選挙違反取締りも無理がなくうまく行くというような合理的な処置が期せられることであろうと存じます。従いましてこういう点について、一つ取締りをする者もせらるる者も、すべての国民がこぞってもう少し自覚を持ってもらいたいということを痛感するものであります。選挙違反以外の事犯に対しましても、言うまでもなく検察当局はあくまでも慎重に、そして無理のないように、また過去のようにその権力をむやみやたらに振り回すことのないように、どこまでも民主的に、順法の線に沿うて捜査を進め、人権じゅうりん等のなきことを期さなければならぬことは当然でありまして、私も実は今日まで野にあって、いろいろこういう問題も実際の上で見聞をし、またとうとい体験を績んできた一人でありますので、でき得る限りにおいて私も改むべきものは改めるように、もうちゅうちょ逡巡するところなく、まただれに気がねをするということもなく、どこまでも正しい検察陣営を打ち立てていかなければならないという強い気持をもって、法務行政を行なっていきたいと考えております。
  78. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 簡単に斎藤長官に伺いますが、あなた方の立場は政党人じゃありませんので、従って自由党の内閣であろうと民主党の内閣であろうと、内閣の与党的色彩というものは本質的にはないものと信じておるのであります。元来日本の司法権の独立という見地から考えてみましても、やはり警察はほんとうに公正な立場においてその職権を行使するということが必須の条件であると信じております。かかる観点からいたしましてあなたの御覚悟を聞いておきたい。その一つはみずからの内部系統の部下全体に対する訓令なり取締りなり指示等でありますが、人権の尊重、人命の尊重ということは至上の問題としてお考え願わなくてはなりません。いやしくもみずからの部下なるがゆえに、あるいは系統の部下なるがゆえにこれに寛大な態度をもって、二、三にするというような態度がありましたならば、これは大へんなことであります。これは警察権を私する結果になります。そういうことはないと思いますが、この種のきよう資料に出ておりますような数個の案件は微細のようでありますけれども、その内容、原因、経過等につきましてはあなたは最大の問題として御検討なり、お考えにならなければならぬと思います。しこうしていやしくもそこに責むべき理由ありとしますならば、仮借するところなく厳にこれに対し何らかの措置をとられねばならぬと思います。従ってそういうことに対するあなたのほんとうの心構えを伺っておきたいのが一つ。いま一つは、前段申し上げましたごとくに、政党のいかんにかかわらず司法権を構成すべき重要な一環といたしまして、むしろ警察中心に今事件検挙されていっておるのでございますから、そのお立場は実に至上至大であると申さねばなりません。従って私がさきに申しましたごとくに、国民的なのろいの的になっております政界の汚職腐敗の原因は選挙にあるのでありまして、選挙に数百万円をかけているということが最も大きな汚職の原因でありますので、こういうような問題につきましては、どこからどういうふうな意見があろうとも、敢然として私は職責は全うしてもらわなければいかぬと思うのであります。ただし形式犯のようなものに至りますまであれこれ混淆するということになりましたら、人権じゅうりんという線に飛び込んでしまう危険もあります。私のこいねがうところは、世上悪質犯と言われております買収犯的な事犯に対してであります。だからやはりこういうようなものに対しましては厳として臨んでもらわなければならぬ、ひるむべきではないと思います。与野党にかかわらず進んで行かれる敢然としたものが、やはり日本の警察権を確保していきます大道であると考えます。従ってこれは憲法の司法権の擁護の観点からいたしましても、当然そういうふうに臨まなくちゃならないと思います。でありますので、この二つの問題につきましては、あなたの確固とした御意見を伺っておきたいと思います。長官を拝命して以来四、五年の間はまだございませんでした。四、五年とにかく教養その他の関係で、ここまでくればもう大丈夫であろうというので、二十七年の十月のときからは本気になって違反検挙をやってもらいたい、これが真に良心に恥じない、そうして人権尊重の趣旨に沿うた合理的な取締りであるならば、いかなる非難があっても私が一身においてその責任を引き受けるからとまで申したのであります。そのとき検挙いたしましたのは四万四十人であります。しかしながら、その結果を省みてみますと、やはりまだ人権尊重の意味から合理的な捜査という面を考えますと反省する余地があるというので、各選挙のたんびにあとを振り返り、次の選挙に備えておるのであります。今回の選挙もさような意味合いから、具体的に過去の思わず犯したであろうような事件を中心にいたしまして、再び繰り返さないようにということを期して参っている次第でございます。まだ今日といえども完璧であると自負するほどの何はございませんが、今後もその努力を進めて参りたい、かように考えております。また政党政派に関係なく中正に中立に取り締らなければならぬということも、これはごもっともであります。今日警察長なりあるいは府県の本部長等におきまして、そういう配慮から取締りを右、左にするというものは、私はないと信じておるのであります。ただ県の本部長等にいたしましても、大勢の警察官を使って取締りをするわけでありますから、十分それらの警察官を把握をいたしまして、そうして一党一派に偏することのないように、厳重に把握力を養成させるべく努めておる次第でございます。違反の取締りにつきましてはおっしゃいますように悪質犯を主にいたして検挙いたしております。軽微なものはけさほど差し上げた統計にはございませんが、注意、警告を発したものは、この検挙をいたしました一万五千人のほかに一万六千件あったのであります。捜査の対象にはいたしませんでしたが、軽微なものは一万六千件に及ぶ注意、警告を発しております。この数は今までの選挙取締りにない数字でございます。またけさの表をごらんいただきますとおわかりと思いますが、できるだけ任意調べを原則といたしまして、令状請求によりまして逮捕して取り調べましたのは、人員にして五千百九十二人であります。任意取調べはこれに反しまして一万人に及んでおるような次第でございます。  なお戸別訪問のごときとおっしゃいますが、戸別訪問にいたしましても軽微なものはあるいは注意、警告、あるいは任意取調べ等をしておりますが、最近の戸別訪問におきましては計画的、組織的な大規模な戸別訪問が行われつつあるのであります。こういうものは私たちは非常に悪質な違反だ、かように考えまして過誤なきを期しておる次第でございます。
  79. 世耕弘一

    ○世耕委員長 神近市子君。
  80. 神近市子

    ○神近委員 きょう私は十時半からここにすわりましたけれども、五時には個人的な用事で出なくてはなりませんので、あと二十分しか時間がございません。それできょうは人権擁護に関する御説を拝聴して、皆さんがこんなに熱心に人権を擁護しようというお考えで努力を尽されていることに対して、大へん楽しく拝聴をしていたわけでございます。ただきょうの論議の中心は選挙に関することでございまして、私がここでちょっとお耳を拝借したいのは女性に関することでございますから、あるいはそれほどお耳に入らないかと考えるものでございます。それで婦人は性についてどうしても人権が軽視される傾きがある。これは長い伝統からやむを得ないこととも思いますけれども、今の憲法第十四条の法の前には万人が平等という考え方からすれば、もう少し婦人の問題に御同情とそれから人権育成の考え方で注意を払って、この問題についても、歴史的な人類の理想の立場からも考えていただかなければならないと思います。それで、婦人が全体としてそういう立場にある、その中でも最もしわ寄せされている人たちが集団として存在するのでございまして、私はこの点が人権擁護局長、警察庁長官にいろいろ御質問したいと思います。  まず人権擁護局長にお尋ねしたいことは、人権立場から売春婦の存在というものが実質的に非常にじゅうりんされている。たとえば愛情によらない関係において、ある場合には強制的にからだを提供しなければならない。こういう者を擁護することが妥当とお考えになるか、これはその人の貧困、あるいは興味による本人の行動であるから自由である、これを拘束するのは人権侵害になるとお考えになるか、一体どちらにお考えを向けておいでになるかということを承わりたいと思います。
  81. 戸田正直

    ○戸田説明員 お答えいたします。売春婦の問題につきましては、私は人権擁護というよりか人権尊重という立場から議論をしなければならないのではないかと思います。人権尊重という立場から売春婦というようなものは好ましくないのでございまして、これをいかに擁護するかというようなことは厚生施設とか政治とかいろいろ問題がございますが、人権という立場から大きく擁護しなければならないという考え方には御同感でございます。
  82. 神近市子

    ○神近委員 それで大体わかりましたが、その方法についてどういうよらな方法が使われておりますか。人権擁護局でこれについて何か方法あるいは手段をおとりになっておるということがありましたらお示し願います。
  83. 戸田正直

    ○戸田説明員 売春婦の問題につきましては、人権擁護局の仕事と関連いたしましては、いわゆる人身売買の事件でございますけれども、ただいま資料等を持ち合せておりませんが、人身売買事件等もかなりございます。それで今の人身売買から売春婦を救済したというような事案もかなりの数になっております。この次あたりに統計を報告いたしたいと考えております。
  84. 神近市子

    ○神近委員 人権擁護局からいただいた資料の「最近における警察職員による人権侵犯事件例」これの「五、警察職員による人身売買事件介入」ですが、前借金三万円にて飲食店神野屋に周旋した、こういう事件も人身売買事件じゃないかと思うのですが、その通りでございますか。
  85. 戸田正直

    ○戸田説明員 その通りでございます。  それからただいま申し上げました人身売買事件、これは昨年度取扱った事件が二百二十五件でございます。
  86. 神近市子

    ○神近委員 そうすると、そういうものの発見は警察の方からの報告によってお扱いになりますか。あるいは被害を受けた人が申告するということから手をつけておいでになるのか、これを伺いたいと思います。
  87. 戸田正直

    ○戸田説明員 本人、まあ被害者の方、あるいはその他の第三者の申告の場合と情報によって認知した場合、かような場合に人権擁護局あるいは地方の法務局でこれを侵犯事件として取り上げております。
  88. 神近市子

    ○神近委員 その情報というのが警察の聞き込みに当るわけでございますか。
  89. 戸田正直

    ○戸田説明員 いろいろな場合がございますが、主として情報認知いたします大部分というものは、新聞あるいはラジオ、これがほとんどと申し上げてもいいかと思います。新宿だとか上野だとかというところに、何かいなかで失敗するとか、思わしくないことがあって家出をしてくる若い人たち、そういう人たちの処理について警察はほとんど婦人の将来というものについて考慮しない。それを一応施設の中に収容させて下さればいいのですけれど、それがなくて、必ず旅費を与えるとかしてもといたところの家に帰しておしまいになる、それが施設の人たちの大きな嘆きなんで、そのときにわれわれのところに持ってきて下されば、よく言い聞かせあるいは教育をすることができるのですけれど、警察がそのまま帰しておしまいになる。それはめんどうだからでしょうか、それともほかに何か理由があるのでしょうか。その事件がとても多いのです。それで結局転落が防止され得ないということ、帰せばまた必ず二度でも三度でも同じ事情のもとに出てくるという人が多いのであります。これを何とかして一応施設に相談をかける、あるいはそこに宿泊させるというような手続はとれないものでしょうか。
  90. 斎藤昇

    斎藤政府委員 御説のように上野、新宿等に家出をしてきた、あるいは目当てなしに東京へやってくるという若い婦人の方々が非常に多いわけでありますが、警察といたしましては事情をよく聞きまして、今おっしゃいますような施設の方に連絡をして引き取っていただいているのもございまするし、また親元がしっかりしているという場合には親元へ帰している場合も多いと思いまするが、今お話しのようにこういうものをもっと施設の方に回してもらえば、もっといい方法が加えられるであろうという実例もたくさんお持ちだろうと存じます。こういう施設と警察との連絡がどの程度になっておりまするかもよく実情を調べてみまして、連絡が不十分でありますればそういった施設と警察との連絡をもっと密にいたしまして、御意見に沿うように運営を進めて参りたい、かように考えております。
  91. 神近市子

    ○神近委員 今親元がしっかりしているというお言葉ですが、たとえばそのしっかりしているというのは財産があるとか地主であるとかというようなことではないかと思うのですけれど、家出してくる娘としましては、そこから出てきたのですから、その中に自分に納得のできない問題があって出てくる。そうすればどうしても教育の必要があると私は考えます。どうせ一晩なり聞き取りをする間おとめになるのですから、そういう場合にはできれば施設を使っていただきたい。これは瀬川八十雄という四十年からこの問題を手がけておいでになる先生の切なる御希望で、この前法務委員会に参考人においでになったときにも同じ御意見であったように私は記憶しております。ぜひその方法をおとりになっていただきたい。  それからもう一つ、これはもうなまな事件でございまして、どこの警察で何日ごろということもわかっておりますけれども、都合上これは伏せなければならないので申し上げませんが、同一の人が二回、そういう生活に耐えられないので保証を求めて、警察に相談に行った。ところがあべこべに不当な営業でその人たちを搾取して、その人たちの自由も、それから人権もじゅうりんしている人たちの考え方の方に同調これは頼まれてという意味ではございませんけれども、頭の切りかえができておりませんので、借金、前借、それも今違法なんですけれども、その借金があるというようなことで相談に応じなかったという事件がありました。これはもしお必要でございましたならば逐一お話しができる事件でございます。これはその一例だけで物を申し上げておるのではないのですよ。そういうことは始終どこに行ってもありふれて、警察というものは業者の手先とさえわれわれには考えられるような事件がございます。それでそういった場合に、一体保護ができないという考え方の基礎があるのでしょうりか。それをちょっと承わりたいと思います。
  92. 斎藤昇

    斎藤政府委員 あとの方の事例は神近委員のおっしゃるように、警察すべてがそうだとは思いませんが、しかしただいまおっしゃいますように頭の切りかえが十分できていないというものもないとは考えません。実際実例を私も知っております。われわれの耳に入りました際には、それは考え方が違う、処理の方法を誤まっておると厳重に戒め、もし業者と結託しておる事実があったりいたします場合には、実は厳重に処罰をしております。従いましてただいまのような事例をお持ちでございましたならば、後刻おひまのあるときに、私の方の係りを伺わせますから具体的事実を教えていただきたい。こういう問題は個々具体的の事例に当って処理していかないと、なかなか改善のできない面もありますから、そういう意味で伺わせていただければ非常に仕合せに存じます。
  93. 神近市子

    ○神近委員 そういう事実がわかれば処罰する、そこはよくわかりますし、また必ずなさるであろうと思うのです。けれども、これは新宿あたりに居住する人である商売をする人ですけれども、この人は参考になることをたくさん持っております。私の申し上げたいことは、三人や五人なまな事実をつかまえてこれを懲罰にするというような、そういう手工業的なことでは追いつかないと私は考えておるのです。業者と警察というものが、昔から仲がよかったということはこれはもう常識なんですけれども、一体どうしたならばそこのところがはっきりできるとお考えになるのでしょうか。それは監察をなさるということも一つの方法でしょうけれども、全体としてどうしたならばよいかということ、これは決して私が警察の人を誹謗するのではなく、現実にそれはだれでも常識として考えておることなんです。どうせあちらの方の肩を持つということは、みな常識として持っているわけなんですが、一体どういうふうにしたならよいか。それは警察の末端の方々の教育だけで効果があるものとお考えになるのでしょうか。一つその点もしお考えがおありでございましたならば伺わせておいていただきたいと思います。
  94. 斎藤昇

    斎藤政府委員 これはやはり警察の教育と指導、それからもう一つは日常の監督、これに待つよりほかないと考えております。従いまして、ただいまお述べになりましたような事例も、特に事例をあげたりいたしまして、こういうことのないようにというような指示あるいは教育は相当いたしておるのでありますが、やはり最後の場合は監督によりましてみずから監督者がそれを発見してそういうことを是正する、あるいは他から教えていただいて、こういう事例がある、こうだということを聞いてそれを是正させていく、そうして厳重にそういうことのないように守らせていく。場合によれば懲戒その他の処分もとっていくという行き方をするしか道がないんじゃないか、かように考えておりますので、そういう意味で御協力をお願い申し上げたいと存じます。
  95. 神近市子

    ○神近委員 ありがとうございました。大体見当がつきました。私ども第一番にありがたいと考えるのは、転落防止のために、家出娘やなにかをぜひとも施設に一泊させて、そして十分な訓戒というか、あるいは将来に対する考え方を変えるような忠告を、女のやわらかい親切な態度で示す機会を与えていただきたい。これはぜひ励行していただきたい。私どもは二回—三回にわたりますか、売春処罰法案を提出しております。そしてこのことについては、花村法務大臣も前にいろいろ御一緒にその問題を研究いたしましたし、私の考えでは、前に犬養法務大臣が、わしがいたからこれが成立する希望が生まれたというようなことをおっしゃったことがあったのですけれども、花村法務大臣もその点では決して犬養法務大臣だけに婦人の信望を渡しておしまいになるはずはないと私は考えています。私どもは少し意見を変えていただかなければならないのではなかろうかという点がございますけれども、きようはもう五時を五分過ぎましたし、次の機会にいよいよ法律案というときになりましたら、また委員長のお考えもよく承わって、そして私どもこれは決して軽率にお話をしているのでなく、二十七年に保利労働大臣から婦人の売春に関する諮問が出まして、それで大ぜいかかって研究もいたしましたし、外国の法律も勉強しております。売春に関する処罰法がないのは、ほとんど日本とトルコぐらいになっておりまして、その点でも委員長のお考えはちょっと間違っているんじゃないかというふうに想像いたします。この終りにございますように、私どもも法案を整備いたしまして提出いたしますから、小委員会をお作りいただいて、法務省の売春対策議会ともよく連絡をとって、この婦人に加えられている汚辱をぜひとも取り除いていただく一つの柱を立てていただきたいということを希望いたしまして私の質問を終ることにいたします。ありがとうございました。
  96. 世耕弘一

    ○世耕委員長 他に質疑はございませんか。——なければ、この際委員長よりお諮りいたします。  選挙違反取締りに当って当局の厳正なる処置を要望するため、次のごとき案文の決議を行いたいと存じます。すなわち、    決議  選挙違反事件の取調に当り、悪質なる違反については厳重なる捜査をなすべきことは勿論であるが、従来、その違反事件の取調に当り度をこして、自殺者を出す等の事実に鑑み、選挙の公正と明朗を期するため、当局に厳重なる反省をうながすものである。  特に今次地方選挙に当り取締りの厳正と公平を図り、左記の事項については十分考慮を払い、人権尊重について万遺憾なきよう警告する。    記  一、選挙違反事件取調べに当っては、悪質なる違反については厳重なる取締りを励行すること。  二、逮捕状及び捜査権の濫用なきよう厳正なる処置をとるとともに、被疑者に拘禁その他過重の負担をかけぬよう特に注意すること。  三、戸別訪問の疑いによるもの等については極力在宅のまま取調ること。  四、被疑者を自殺に陥らしむるが如きことは絶対に避け、特に婦女子の取調については細心の注意を払うこと。  五、公務員による人権侵害の疑いのある場合には遅滞なく、その公務員を厳重に調査すること。   右決議する。 以上の案文のごとき決議をいたしたいと存じますが、案文について御意見ございませんか。
  97. 三田村武夫

    三田村委員 この決議の趣旨には私異論はありませんが、この際決議の前に一言つけ加えて申し上げたいことがあります。  今朝来当委員会におきまして、人権尊重の立場から、選挙違反事件に対する当局取調べ態度等々について相当鋭い批判が出て参りましたが、しかしここでわれわれが考えなければならないことは、このことによって選挙違反に対する取締りというものに非常に大幅な手心が加えられるようなこともまた厳に警戒しなければならぬと思います。ますます悪質な選挙運動がちまたに横行しつつある今日、これは現にわれわれがその悪質な選挙運動の中におるのでありますが、それらの悪質な選挙運動に対しても警察が手心を加えるようなことになりますと、これはまた非常にわれわれの考えと逆な結果を生むことを私はおそれます。でありますから、その点は私ここで委員会の権威のために、さらにこの決議をなす前に一言この点をつけ加えておきたいのであります。しかるべく委員長において御考慮を望みます。
  98. 世耕弘一

    ○世耕委員長 ただいま三田村君からの御発議がございましたが、その点も特に考慮しまして、悪質なる犯罪に対して手かげんをするような感を与えることは妥当でないと考えまして、特に悪質なる違反に対しては厳重なる取締りを励行することということが案文の中にうたってあるような次第であります。なお三田村君のおっしゃるような疑点が生ずる場合に当りましては、よく注意を払って善処いたしたいと思います。  この際法務大臣から発言を求められておりますから、これを許します。花村法務大臣
  99. 花村四郎

    ○花村国務大臣 かかる決議をせらるることに対して私がどうこう言うべき筋ではありませんが、ただいまの三田村委員の発言は、非常に私は尊重すべきものであると存ずるのでございます。御承知のように、選挙界の革正というものが、今の時代からながめていかに重大なる問題であるかということは、多くを申し上ぐるまでもございませんが、特に地方選挙を控えてその感を深うするものであります。地方選挙は言うまでもなく中央選挙の基礎とならなければならぬ選挙でございますが、今日の地方選挙取調べをながめてみまするのに、もちろんこれは手不足の点も多分にございます。これはわれわれも認めますが、地方選挙取締りというものが、過去においてはとかく寛大視されておったうみがございます。従いまして、至るところで選挙違反が起きても、これが取締りが徹底しなかった。こういうことが要するに中央選挙にも反映しておることを忘れてはならないと私は思う。そこで今度の選挙におきましても、このごろの選挙総におきましても、各党から私に対して事前運動を徹底的に取り締ってもらいたいという要請がたびたびありました。これは現職議員のみでありまして、しからざる者からありませんでしたが、現職議員からたびたびこの種要請があったのでございまして、その現職議員意見を私は尊重して、この事前運動取締りにも最善を期したつもりでございます。かような次第でありまして、この選挙界の革正こそは何をおいてもやらなければならない今日の重大問題であります。えて、もってこの決議をするというがごときことがあっては、私は法務委員会のために惜しみても余りあると申し上げていいと思う。法務委員で一番古かりし私は、法務委員会を愛するがために、また今日まで法務委員会の権威の高かりしために、法務委員の各位に向って反省を促すものであります。  なおまたその他戸別訪問の問題でありますが、これはごもっとものようにも思うのでありますが、これも先ほど警察長官の言われたように、何回も戸別訪問をやられるというと、やはり戸別訪問をやらぬ候補者は非常に困るので、私なども戸別訪問などやらぬ方ですから、どうも端からやられるというと、あれほどやるのに、手ぎわよくやればやってもいいように思うのだけれども、まあやらない面があるので、私らもこれに不満を持っておる一人ですが、これは在宅のままということになっておりまするが、これもやはり程度の問題で、御考慮を願う方がいいんじゃないか、こう思います。  また婦女子の取締りについて細心の注意を払う、これもごもっともの話であります。ところが近来は婦人が有権者になりまして、政治的興味といいまするか、これは政治的に進出してくるのは当然でありまして好ましいことではありまするが、最近相当婦人選挙関係を持って参りまして、むしろ男性よりも女性の方が選挙運動が激しいとまで、東京などの私の選挙区では認められる節もあるのです。でありまするから、なかなか婦女子も相当にやるんで、もしその取締りに手心を加えるというような感じを持たしてもいけませんし、またそういうことがあってもならぬと思うのですが、ここに書かれた、婦人などはか弱きものであるからこういう者に細心の注意を払ってやるべきことは、これは私も異存はありませんが、そこのところは一つ賢明なる委員諸氏はよくお考えになって御検討を願いたいと思うのです。  その他はけっこうだと思いまするが、あまり手きびしくやりますというと、かえってこれは——われわれならきびしくやられれば、なお反発して強く取締りをやって行くんですが、しかしなかなか一線の人はそうは参りませんから、やはり強く風が当ってくるというと、柳に風と受け流して、事なかれ主義でいこうというような者も私は相当ある、こう見てもいいのです。でありますから、この地方選挙取締りがどうも疎漏であったというようなおしかりをこうむることのないように、一つ法務委員諸君もお考えになって、以上申し上げたような点を参考に、もう少しこれは練っていただきたいことを私は申し上げておきます。
  100. 三田村武夫

    三田村委員 ただいまの花村法務大臣の御発言ですが、私少々意外に承わりました。と申しますことは、法務大臣のおっしゃることは私よくわかるのです。けれども私は歯にきぬ着せずして申し上げるならば、少々言葉が過ぎやしないかということを申し上げたいのです。われわれがここで心配をしたことは、善良にして善意なる者の人権をどうして保護するかということなんです。この自殺者七人というケースも、なるほど私は取調べその他について大きな手落ちや過誤があったとは思いません。けれども、その資料に表現されております通り、善良にして善意な市民というのは非常に気が弱い。自殺をするような人が、どれほど悪質な選挙運動をやるかということを私はここで問題にしたいのです。自殺をするような人が、警察で一ぺんや二へん取り調べられたことによって、みずからの生命を断つような人がどれほど悪質なる選挙運動をするかということを私は問題にしたい。花村法務大臣は、事前運動を厳重に取り締るとおっしゃいましたが、悪質にして目に余るような事前運動があるのです。こういうものと比較して、その悪質にして目に余るようないわゆる選挙プロ、職業選挙運動屋と称する者が天下を横行闊歩している。それはそのまま見のがされておって、しかも一面にはこの痛々しい犠牲者出しておるところに問題がある。私はそれを申し上げたいのです。しかし法務大臣の御心配の通り、私自身もこの決議の案文をさっと目を通してみて、この決議をこの法務委員会でやることによって、選挙取締り陣に水をぶっかけるようなことになったら大へんだと思ったから、私は一言発言を求めて所見の一端を申し述べたのです。法務大臣のおっしゃる通りです。今日本で一番必要なことは、公正にして公明なる選挙をあくまでも遂行するということです。それ以外に日本の政界を浄化する道はありません。莫大な金を使う候補者があり、またその下に、選挙祭と称して選挙運動のきたないことを待ちかまえている悪質なる選挙ブローカーがあります。これは厳粛なる事実です。そういうものをどうしてなくすかというところに私は取締りの重点が置かれなければいけないと思うのです。法務大臣御存じないはずはないと思いますが、私は事例をあげろとおっしゃるなら幾らでもあげます。何百万円という金を使い、常時選挙ボスを養い育てる。その上にこう然とあぐらをかいている者だっているのです。だれでも知っているのです。そういうものが見のがされておって、そうしてこの痛々しい犠牲者を出すところに私は問題があると申し上げたいのです。何もこれが警察の不当な取調べ、不法な処置によって犠牲出していると私は申し上げているのではないのです。その点これは表現がまずければ十分案文を練っていただきたい。きょうは委員出席数も少いですから、法務大臣の御発言も十分尊重して、委員会の権威のために十分案文を練ることは私も賛成です。賛成でありますが、法務大臣の発言の中に、私少々腹の虫がおさまらぬところがありましたから—取締りの目標は、悪質なものを押えることです。戸別訪問だってこの事例に出てくるような簡単な戸別訪問ではなくて、私は率直に申し上げますが、労働組合のやっておるものなどは、べたの集団的戸別訪問です。こういうものを私は全部見のがせというのではないのですが、選挙はあくまでも公正でなければならぬ。どこに選挙の公正があるかというところに私は問題があると思うのです。一つ法務大臣、法律の専門家であり、また政界においても先輩であり、両面の豊富な経験をお持ちですから、十分一つ御研究、御検討をわずらわしたいと思います。
  101. 世耕弘一

    ○世耕委員長 先ほど決議案文を朗読して御意見を求めたのでありますが、以上の如き趣旨の決議をすることに御異議ありませんか。
  102. 世耕弘一

    ○世耕委員長 異議なければさように決定いたします。なお、字句の整理は委員長に御一任願います。  次に花村法務大臣の御発言について、何か御意見なり御発議があれば、この際許します。せぬではありませなんだが、法務大臣の意のあるところもわかりますし、また委員会の意のあるところもよく御了承せられるならば、そこにそう角ばってむきになる必要もなかろうではないか、こう思いますので、一言申し上げます。
  103. 世耕弘一

    ○世耕委員長 なお委員長からも一言花村法務大臣に、これは御忠告申し上げたいと思うことは、この決議の案文をよくごらん願えれば、法務大臣としての指揮監督に支障を来たすようなことは一つも書いてない、むしろ厳正公平にその職責を遂行してくれるようにという激励の決議文である。これは少し法務大臣何か見当違いなことをお考えになっているんじゃないかというふうな感じがするのであります。長年法務委員会関係があって、法務委員会のためにということをおっしゃったようでありますが、その御好意は大いに感謝いたしますけれども、実はこの案文の中にそう興奮なさって御発言なさるような理由は一つもございません。もしこれを阻止するような御発言であったとするならば、むしろ法務大臣の信任の問題が次に出てくるのではないかと思うくらいにわれわれは心配している。それでこの点はむしろもう一ぺん御発言なさって御訂正なさる方がいいんじゃないかということを御注意申し上げます。それで実はこの案文を決議したあとで花村法務大臣並びに大麻国務大臣から適当な御発言を願おうというのが順序になっておったのであります。そういうふうな実情であるということも御了解を願うことと、もう一つは、人権ということは非常に尊いことであります。人権はじゅうりんされてしまって、あとで論議したってそれは人権の擁護になりません。人権の尊重はむしろ事前に予防するところに効果が百パーセント表われるということは、今さら申し上げるまでもないことであります。その意味において、現に衆議院の総選挙においてかくのごとき自殺者出したということがここに出ておるのでありますから、かくのごときことを繰り返さないように厳正公平に、しかも司法の権威を高からしむる意味においてここに決議したのであって、他意ない気持がこの法務委員会において期せずして起ったのである、こういうふうな御理解をもって御判断願うことをお願いいたします。  ただいま大麻国務大臣からの御発議がありますからこれを許します。
  104. 花村四郎

    ○花村国務大臣 委員長、ちょっとその前に私が簡単に……。
  105. 世耕弘一

    ○世耕委員長 それでは花村法務大臣
  106. 花村四郎

    ○花村国務大臣 委員長の御忠告ありがとうございました。さすがはやはり大先輩だけあって、うまいことをおっしゃって下さると思って大いに感謝しましたが、私は興奮しているわけでも何でもないんだが、三田村委員や吉田委員の説に少しも変りはありません。が、ただこのうちで「その違反事件の取調に当り度をこして、自殺者を出す等の事実に鑑み、」とこうあって、その取調べの度を越したことが自殺者出したんだというような意味に断定しておられる。そこで私の集めた資料によれば、しからざる事実であると、こう私は考えたものだから、それで実は今申し上げたわけです。ほかのことは、これは大体こうあるべきことで私はむしろ賛成であるので、しかも初めに私はこの決議に対してどうこう言うものでないことも前提に申し上げてある。また言う資格もありませんから言いませんが、ただ取調べが酷であった、そのために自殺者出した、こうありますから、これは社会に及ぼす影響も相当大きいものですよ。それだから法務委員会取調べの酷のために自殺者出したかどうかということを国政調査なり何なりの上で調査せられて、そうしてその事実ありと認めた場合にこういう決議をなされることはこれは至当なんだが、その資料なくしてこういう重大なる断定を下すことは私はどうかと思うのですよ。こういう断定を下したからといって私は別にどうこうあるわけでもなし、取調べをゆるめるというわけでもありません。今の激励のお言葉に基いて、正直者だからやはり正しくどこまでもやっていきますからそういう点は御心配ありませんが、ただそういうことを顧慮して私は申し上げたわけですから、その点は一つ虚心坦懐にお考えを願いたいと思います。
  107. 大麻唯男

    大麻国務大臣 私は今朝来当法務委員会に出まして、選挙取締りの厳正公平であるべきこと、人権の尊重すべきであること、その他につきましてるる各委員の方々からお説を拝聴いたしました。またお答えも申し上げまして、つつしんで拝聴して、委員会の御意向がどの辺にあるかということを大体了承いたしたつもりでおります。従いましてこの決議は、委員長が今仰せになるように激励の決議であるぞということであるから、これは当局といたしましてはありがたくちょうだいするつもりであります。ただ、ただいま花村法務大臣も申しましたが、どうも警察当局の方でも率直に申しまして「度をこして」云々と断定されることは少し痛い。これはこの言葉が現われて当局の皆さんが受けます印象は、委員会の皆さんがおっしゃるところと少し違った印象を受ける。これは非常に残念に思っておるようであります。おそらくこれはどうしようもないけれども、皆さんの心持と、やっておる者の受ける印象とが違ってきておる。こういうふうに考えますから、もう御決議になったのだからとやかく申し上げるわけではございませんけれども、これは委員長に御再考がもし願えれば願っておきたいと思います。これは皆さんのお考えと違った印象を検察当局並びに警察当局に与えまして、ひょっとすると皆さんの庶幾されるような目的と違った方に行ったら大へんなことだと思いますから、こういう言葉で刻印をお打ちになることは、もしできますことならばお延ばしを願いたいと思うのでございます。まあ今朝以来の委員会の成り行きといろものはすこぶる和気あいあいとして、どうして選挙取締りをよくしようか、どうして人権を擁護しようか、どうして人権を擁護しようかという非常な御熱意の表われでお聞きしてきたことでありますから、切に何とか一つこの辺はお考えを願いたいと思うのです。
  108. 三田村武夫

    三田村委員 今花村国務大臣大麻国務大臣の御発言よく了承いたしております。われわれといえども軽率に選挙取締りの行き過ぎということをここで断定しようという考えは毛頭持っておりません。御苦心のほどよく了承いたしております。ただしかし、今朝来大麻国務大臣お聞き取りの通り、事人権に関する問題でありますから十分御考慮願いたいということが本委員会趣旨でございます。  そこで今度は委員長に対して希望的な意見を申し上げておきたいのでありますが、これは動議と解されてもよろしいのでございます。なるほど用語に「その違反事件の取調に当り度をこして、」という言葉を使っておりまするが、「度をこして」というこの断定をこの委員会でやってしまうことはどうかと思いますから、この字句の点についてはしかるべく委員長の方で考慮してもらいたい。決議の趣旨は、あくまでわれわれはこの決議の通り決議したのでありますから、本委員会といたしましては撤回も修正もいたしません、いたしてはいけないと思うのでありますが、この用語の点で、あたかも今までやってきた検察当局警察当局のやり方が度を過ぎて自殺者出したのだ、こういうような印象を与えますと、これは一般の国民に与える影響もなるほど考える必要があるかとも思いますから、用語の点においては委員長のお手元において一つ御考慮願いたい。
  109. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 ただいまの三田村委員のお説ごもっともであります。いかにも度を越して自殺者出したということは、本委員会調査をして証拠に基いて決定したのならそうでありますけれども法務大臣の御意思のあるところもよくわかるのであります。これは決議の前文でありますし、この字句については三田村委員の御発言通り委員長におまかせいたしたいと存じます。
  110. 世耕弘一

    ○世耕委員長 お諮りいたします。三田村君の動議の趣旨もごもっともだと思いますが、「度をこして」というのが大分問題のようであります。これをこの際「取調に当り度をこして、自殺者を出す等のなきよう」……。
  111. 三田村武夫

    三田村委員 「度をこして」を削ってしまえばいいじゃないですか。「違反事件の取調に当り自殺者を出す等の事実に鑑み、」度を越しても越してなくてもいいのです。それは事実だから……。
  112. 世耕弘一

    ○世耕委員長 それでは案文の字句のうち「度をこして」は削除し、その他は朗読文通りにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  113. 世耕弘一

    ○世耕委員長 さよう決定いたします。
  114. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 今後の審議の予定につきまして一言希望を申し上げておきたいのであります。この人権擁護の問題はただに選挙違反とかあるいは一般事件取締り等に関連した人権問題だけにとどまらぬのは申し上げるまでもございません。従ってこれはさらに調査を継続するということに、ぜひともお諮りを願いたい。いずれ理事会におきましてその日程等々は具体的におきめになると思いますけれども、基本的方針といたしましては、さらに継続せられんことをお願い申し上げます。
  115. 世耕弘一

    ○世耕委員長 お答えいたします。過般の理事会におきまして継続審議することにきまっております。また再開する日取り等についてはあらためて御協議する、できるだけ委員諸君は資料等もお集め願って御用意願いたい、かように考えております。  次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時四十三分散会