○吉田(賢)
委員 私はこの機会に一点伺いますることと、あと
資料の取り寄せを要求したいと思うのでありますが、それは午前中以来しきりに問題になっておりまする
選挙事犯取調べをめぐっての人件の尊重ないしは人命の尊重の問題であります。このことは、別の角度から申しますると、一般の
事件並びに
選挙違反の
事件について
取締り、ないしは
取調べの公正、適法を求めるという問題であろうと思うのであります。そこでその問題につきましては、これは申すまでもなく、やはり憲法並びにその他の法律あるいは道徳あらゆる角度からいたしまして、基本的
人権その他の
人権は尊重せられ、擁護せられなければならぬことはもちろんであります。また人命が尊重せられなければならぬことはもちろんでありますので、いやしくもこれらの侵害があり、また危殆に瀕するような事態が起っておることにつきましては、これは最も厳格な
態度をもって根本的にその真相、原因、経過、結果を究明していくということは当然のことであります。そこでこの問題につきましては、私
どもはあくまでも出ました
資料だけでもその真相を明らかにするという
態度を継続していきたいと思うのであります。
そこでいま
一つの問題は、かりにこれを
選挙ということに限定いたしまして
考えまするときに、
選挙自体はこれまた
選挙そのものが公正、適法に行われなければならぬと思うのであります。やはりわれわれは
選挙をやってきた者でもあるし、
選挙の利害
関係者であります。しかしこの問題はやはり国家、
国民全体の視野、観点、角度から
考えていかねばならぬと思いますので、
国民といたしましては、先般国会自粛の経緯から
考えてみまして、みずから行わんとする
選挙を最も公正に行わねばならぬ。またみずからの
選挙は適法でなければならぬ。しかるに、そうではなくして、平均七十万円と推定せられておる
選挙費用が、実は数倍を要するのが常識である。百万円ではとても当選しない。数百万円を要するといったようなことが常識となっているというのであっては、
国民は理解できない。ですから、そういった問題につきましては、やはり私たちは
国民的
立場において問題を明らかにしていくことをせなければならぬと思うのであります。でありますので、かような角度から
考えて参りますると、
選挙それ自体は公正、適法に行わればなりませんがゆえに、いやしくも黄金をばらまいて
選挙をするというようなことに対しましては、もし
取締りがいいかげんになるということであるならば、私は
国民の期待に反するものと思いまするのみならず、日本の
選挙を通じての国政の粛正ということはできないと思います。数百万円の金をばらまいて
選挙に勝つということを公然と見のがしていくということでありまするならば、百年河清を待つのでありまして、日本の
政治の粛正ということは不可能であろうと思います。だから、この観点からいたしましては、やはり厳正な
選挙が行われていかねばならぬ、こう思うのであります。問題はかように、やはり二つ、事実と観念は明確にいたしまして論及していかなければいかぬのではないかと私は思うのであります。
そこで伺いますることは、この
人権の擁護、尊重、人命の尊重ということを、
選挙事犯のみならず、一般の
事件につきまして、
法務大臣といたしましては、ほんとうに最大の努力と至誠を傾けて、この擁護と尊重に進まねばならぬ
責任と
義務があると私は思います。これにつきましてどうするかというようなこと等々につきまして、先般来いろいろと議論があったのでございますので、私といたしましては、この際、たとえば小にしては
人権擁護局、あるいはさらに大にしましては
政府の
方針並びに国警のあり方、
検察庁の
検察行政のあり方等々、全般にわたりましての問題になりまするので、これは
一つ法務大臣といたしまして、さらにわれわれのこの
委員会が今後も継続審議されると思いますので、それに相対応いたしまして、これが完璧を期するということの
結論を得るために御協力を願って、そうしていろいろな改正あるいは予算措置等々万端の具体的な対案の樹立というところまで持っていかねばならぬと思いますので、これに対する御所見を伺いたいのであります。
もう
一つの、今の
選挙自体に対するみずからの公正と適法を期するということは
国民的要望でありまして、これはまた当然のことであります。でありまするので、その点につきましては、われわれは悪質犯、
買収犯、黄金をばらまいて
選挙するといったようなものは、やはり仮借なく取り締ってもらわなければ、ほんとうに正しい
選挙をやり、また法定費用内におきまして清潔なる
選挙を目ざしまして努力するという者は埋もれてしまうのであります。悪貨がはんらんしてしまうのであります。良貨が駆逐されてしまうのであります。でありますので、別の角度から、ほんとうに高い理想を持って
選挙に臨んでおります
国民は、この点につきましては、峻厳なる
態度をもって取り締ってもらわなければならぬという希望を持っておるのであります。でありまするから、この
取締りの過誤、間違いということと、取り締らるべき
選挙の正しかるべきということとは、厳として区別して両者相総済することなく、いずれも正しかるべきことの両全を期さねばならぬ、私
どもこう思っておるのであります。でありますので、この両者の
関係につきまして、相兼ねて
一つ大臣のはっきりとした御所見を伺っておきたいと思います。において
選挙違反摘発についても相当の成果が上っておるものと私は
承知をいたしております。所によっては行き過ぎもあったような話も聞いておりまするけれ
ども、
選挙界革正の成果が一部上り得たことはまことにけっこうだと私は思うのであります。しかしこの
選挙違反の問題はなかなかむずかしい問題でありまして、
選挙をやる人もまた
選挙民も、
選挙というものは大体何人も
選挙違反を犯すものであるかのごとき
考えを持っておる者があるというような社会
事情を見まするときに、まことに遺憾に思うのです。たとえば
選挙違反で
検察される者は犯罪を犯した被疑者であるがごとき
気持を持たない、また刑務所に勾留されておって出てくる者のごときも、
選挙違反で刑務所へ入ってくることがいかにも名誉であるかのごとく
考え、出てくるときは凱旋将軍のごとき姿で、多くの人が迎えに行って堂々と帰ってくるというような
事例を常にわれわれは見せつけられておるのであります。こういう
選挙違反ということは犯罪であることが法律上はっきりしておるにもかかわらず、
国民の一部の人々はこれが犯罪でないかのごとき誤まった
考えを持っておるからこそ、
選挙違反の
取締り、また
選挙界の革正についてよほどむずかしい問題が起きてくるのであろうと思うのであります。この点はやはりもう少し
選挙違反に対する
国民の順法精神を高揚して、やはりほかの犯罪と同じに法律違反であるとして、
自分自身で
責任を自覚するということが必要じゃないかと、こう思うのであります。私は今回の
選挙において
地方へ参りましたところが、
地方の人から、
選挙違反などで腕を縛っていくことはまことに遺憾である、
選挙違反などに対しては腕を縛ったりせずに、そのまま連れていってもらいたいというような
意見もしばしば聞いたのでありますが、私はそれはそうは参らないのである、やはり犯罪である以上は手錠をかけていくのが当然であって、
選挙違反などは犯す人も相当な社会的の地位も持っており、逃げ隠れをするおそれもないというようなところから、逮捕していく人が便宜をはかって手錠をはめていかないのであって、
選挙違反などに手錠をはめるのはけしからぬというような
考えを持つこと自体が誤りだと言うて説明したのでありますが、こ一事をもってすべてを推して知ることができようと思うのであります。こういう意味において、私は
選挙違反というものに対する
国民の認識をもう少し改めていかなければならぬじゃないか、そこにおいてこの
選挙違反の
取締りも無理がなくうまく行くというような合理的な処置が期せられることであろうと存じます。従いましてこういう点について、
一つ取締りをする者もせらるる者も、すべての
国民がこぞってもう少し自覚を持ってもらいたいということを痛感するものであります。
選挙違反以外の
事犯に対しましても、言うまでもなく
検察当局はあくまでも慎重に、そして無理のないように、また過去のようにその権力をむやみやたらに振り回すことのないように、どこまでも民主的に、順法の線に沿うて捜査を進め、
人権じゅうりん等のなきことを期さなければならぬことは当然でありまして、私も実は今日まで野にあって、いろいろこういう問題も実際の上で見聞をし、またとうとい体験を績んできた一人でありますので、でき得る限りにおいて私も改むべきものは改めるように、もうちゅうちょ逡巡するところなく、まただれに気がねをするということもなく、どこまでも正しい
検察陣営を打ち立てていかなければならないという強い
気持をもって、法務行政を行なっていきたいと
考えております。