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1955-03-30 第22回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年三月三十日(水曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 世耕 弘一君    理事 古島 義英君 理事 三田村武夫君    理事 福井 盛太君 理事 古屋 貞雄君       今松 治郎君    椎名  隆君       高橋 禎一君    永田安太郎君       林   博君    船田  中君       横川 重次君    淺沼稻次郎君       佐竹 晴記君    吉田 賢一君  出席国務大臣         法 務 大 臣 花村 四郎君  出席政府委員         法務政務次官  小泉 純也君         警  視  長         (警察庁刑事部         長)      中川 董治君  委員外出席者         検     事         (刑事局長)  井本 台吉君         法務事務官         (人権擁護局         長)      戸田 正直君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 本日の会議に付した案件人権擁護に関する件     —————————————
  2. 世耕弘一

    ○世耕委員長 それではこれより会議を開きます。  この際御報告いたします。前会におきまして御決定をお願いいたしました国政調査承認要求書は去る二十八日議長において許可せられましたから御了承を願います。  次に本日は人権擁護に関する件及び検察行政に関する件について調査を進めますが、まず法務大臣より発言を求められております。これを許します。花村法務大臣
  3. 花村四郎

    花村国務大臣 この機会一言あいさつを申し上げておきたいと存じます。今回第二次鳩山内閣が成立するに当りまして、不肖法務大臣として重任をいたすことに相なったのでございまするがまことに法務行政重大性にかんがみその責任の重かつ大でありますることを痛感するものでございます。しこうして私は御承知のごとく法務委員として長年の間皆さんとともにその立場を同じゅうして参ったのでありまするが、今回はからずもその立場をかえて、今度は法務委員会皆様方から質問を受けなければならないような立場に相なって参ったのでありまするが、どうぞ一つ今までのようなお気持で同僚であるというおぼしめしをもって何かと御協力、御支援を賜わりたいと思うのであります。まことに未熟な者でございまするが、皆さんとともにでき得る限りの最善を尽してその職責の全きを期したいと念願をいたしております。どうぞよろしくお願いします。
  4. 世耕弘一

    ○世耕委員長 次に法務政務次官小泉純也君より発言を求められております。これを許します。小泉法務政務次官
  5. 小泉純也

    小泉政府委員 私、小泉純也でございます。このたび法務政務次官就任をいたしました。性来浅学非才に加えて法務行政には全く未経験な者でございますので、委員各位の御指導、御協力をしていただかなければ、その任務を果すことができないと考えるのでございます。どうぞ各委員におかれましては、よろしく御指導協力を賜わらんことをお願い申し上げまして、就任のごあいさつにかえさせていただきます。
  6. 世耕弘一

  7. 戸田正直

    戸田説明員 御説明いたします。人権擁護局国民基本的人権擁護することを直接唯一の目的とする政府機関としまして、昭和二十二年五月の新憲法の施行から約十カ月おくれました昭和二十三年二月十五日、当時の法務庁内に最も特色のある局として設けられたのでございます。そして地方機関といたしましては、昭和二十四年六月八カ所の法務局人権擁護部が設置せられ、昭和二十五年七月四十一カ所の地方法務局人権擁護課がそれぞれ設けられまして、人権擁護仕事をいたしておるのでございます。なおそのほかに人権擁護委員制度というのがございまして、これは各市町村から人権擁護に理解を持ち、また有能な民間人たち市町村議会の議を経て市町村長から候補者を推薦していただきまして、これを法務大臣が委嘱いたすという制度になっております。これが人権擁護局協力機関として全国に配置せられておりまして、ただいまでは約五千人の委員が各市町村に設けられてございます。そうして各都道府県には人権擁護委員連合会というのを組織し、その下に各法務局ごと人権擁護委員協議会というものを設置されております。この協議会全国で二百九十四ヵ所、それから連合会は四十九カ所を持っておりまして、この人権擁護委員人権擁護局及びその下部機関である地方法務局とが協力いたしまして、国民基本的人権擁護をいたしておるような次第でございます。
  8. 世耕弘一

    ○世耕委員長 次に三田村委員より発言の通告があります。これを許します。三田村委員
  9. 三田村武夫

    三田村委員 本委員会の審議を進めますに必要と思います二、三の資料について、その提出方をお願いいたしたいのであります。ただいま法務大臣のごあいさつにも、また人権擁護局長の御説明にもありました通り法務委員会の使命はまことに重要でありまして、なかんずく人権擁護に関する問題はきわめて重要だと思います。最近あるいは新聞紙上で、あるいはその他の機会にしばしばわれわれが耳にいたしますことは、あるいは検察事務の遂行中、あるいは警察において扱われる捜査活動の過程においてしばしば好ましからざる事件発生を見ておることであります。たとえば今春行われました衆議院の選挙に関しましても、その選挙事犯捜査中あるいは自殺した者があるとか、相当苛酷な取調べを受けた者があるということが新聞紙上にも出ております。それらの事案は数は少くても、いわゆる基本人権立場から見た場合、さらに法の厳粛なる運行という建前から見た場合、きわめて重要だと思いますので当局において一つ調査の上、そういった事案内容を御提示願いたいのであります。つまりこれを具体的に申しますと、検察警察当局においてその事件捜査自殺した者があった、あるいはまた相当世間に非難の声を呼び起したような事件内容、その経過、これを具体的に一つ調べの上御提出願いたいのであります。  それから総括的な資料といたしましては、昨日の地方行政委員会でも御説明があったようでありますが、今度の選挙に関連いたしまして、身柄拘束上坂調べを行なった選挙違反事件がどのくらいあるか。それから身柄拘束しておる期間、一人の被疑者について大体どれほどの期間拘束しておったか、そういう件数人員並びに勾留期間の区別、そういうもの、さらにその身柄拘束する事件内容でありますきわめて軽微な形式犯程度、いわゆる文書規定に抵触する事件とかあるいはまた戸別訪問、そういったものについても身柄拘束が一体行われておるか、いわゆる買収、供応とか、そういった選挙事犯中のいわゆる悪質事件についてのみ身柄拘束が行われるのか、そういうことについても一応お調べの上資料の御提出を願いたい、さらに今申しました選挙事犯に関するものだけでなく、その他の事件についても、いわゆる人権擁護立場から一応事案内容を検討してみたいと思われるような事件、たとえばさっき申しました事件取調べ中に死んだとか、あるいは自殺したとか、留置中に何らかの事故の発生を見たとか、そういった事件についても御調査の上御提出を願いたいと思います。  以上私の立場から一応今考えております資料の御提出を希望いたします。
  10. 古島義英

    古島委員 私は三田村さんの申し出たそのほかに今拘禁をした人だけでどれくらい数があるか、その数を知らせろということでありますが、その中で接見禁止を初めからしたものがどのくらいな数になっておるか、それもあわせて知らせていただきたいと思います。
  11. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 ただいま人権擁護局長から御説明がありましたが、それは構成と組織に関する一般の御説明でありますが、それでなしに、活動状態一つお示し願いたいと思います。世間にややともすると人権擁護局というものは盲腸的存在ではないか、また当局としてもややともすると予算を減縮し、あるいは人員を減し、だんだんその局をなくしようとする傾向すらも現われておりまする現下の情勢において、それはそうあってはならない、それどころではない、こういう活動もいたしておる、またこういう必要もあるんだという活動の面から御説明をいただかなければ、世間の疑問にこたえることができないと存じますが、これはここで直ちに御説明いただきませんでも、次の機会でもけっこうでございますから、数字をもってどういう事件をどういうふうに扱って、それに対してどういう結果をここに現わしているかといったようなことを、もし数字的に御説明願えますならばその資料をいただきたいし、またさらにこれに加えて、活動状態の詳細、人権擁護局というものが何で必要であって、どれだけの活動をしておるかといったようなことを十分示すに足るだけのものを、資料を整えて次会に御提出願いましてもけっこうでございますし、またこの席で御説明願えますならば御説明いただいてもけっこうでございますが、お示し願いたい。
  12. 古屋貞雄

    古屋委員 佐竹君から活動状況の御説明要求しておるのですが、ついで民間人権擁護協会との関連、協力をしておるのかないのかというようなことともう一つ機構面の問題を今御質問がございましたが、予算の点もどのくらいであるかもできればついでに御説明していただきたいと思います。
  13. 戸田正直

    戸田説明員 先ほどの説明は非常に不十分でございました。ただいま佐竹先生からの御質問もございましたし、後ほどまた詳細の点につきましては書類をもってお示しいたしたいと存じますが、ただいまここで人権擁護局活動状況につきまして概略のところを申し上げます。  先ほどの説明の点に少し不十分の点がございましたのでつけ加えておきますが、人権擁護委員会に課が三つございまして、一課、二課、三課ございます。一課は一般行政人権擁護委員運営に関する仕事を主といたしております。二課はいわゆる人権侵犯事件事件の情報の収集調査、これを主としていたしております。三課におきましては人権擁護思想普及活動、これもまた非常に重要な仕事でありまして、主謀において啓蒙活動をいたしております。人権擁護局仕事を大別しまして、人権侵犯事件調査処理人権思想普及活動、それと先ほど申しました人権擁護委員運営、この三つが主たる仕事であります。  そこで今までの活動状況概略を申し上げますと、昭和二十三年できました当時の人権侵犯事件の数は、人権擁護局というものが非常に特殊な新しいところでございますし、人権という考え方が十分に国民に理解されておらなかったというような関係から、全国で取り扱った事件がわずかに四十八件であります。その後人権擁護局活動並びに人権擁護委員活動によりまして、漸次人権思想というものが普及せられて来て、それに従って人権侵犯事件等も逐次増加して参った次第であります。昭和二十四年におきましては五千七十六件の届けを受け付けております。昭和二十五年におきましては五千六百九十二件、昭和二十六年におきましてはさらに倍加しまして一万五千六百八十九件、昭和二十七年には、二万七百五十七件、昭和二十八年においては二万九千百四十四件、昭和二十九年度におきましては、さらに数を増加いたしまして、四万二千二百八十六件という数になっております。もちろんこの四万二千二百八十六件というものは、全部いわゆる人権侵犯事件というものではございませんで、その中には、法律相談的なものがかなり多く含まれております。これは人権侵犯事件というものがまだ一般国民に真に理解されておらないというような点もありますし、また人権擁護局啓蒙活動というものが、困っておる場合にはいろいろ問題を持って来なさいというような活動もしておりまする関係もありまして、法律相談的なものがこれにかなり多く含まれております。しかしいずれにしましても、事件を取り扱った件数は先ほど申し上げたような数になっております。そこで昭和二十九年の四万二千二百八十六件の内訳を概略申し上げたいと存じます。この人権侵犯事件を大きく分けまして、公務員による人権侵犯事件と、私人による侵犯事件、この二つに分けられるかと思います。公務員による侵犯事件が千二百四十八件でございます。このうち警察官等によるものが六百七十三件、教育職員によるものが百六十二件、刑務職員によるものが三十二件、税務職員によるものが五十八件、その他の公務員によるものが三百二十三件というふうになっております。それから私人による侵犯事件が四万一千三十八件でございまして、そのうちおもなるものを申し上げますと、人身売買事件が二百二十五一件、村八分事件が百十九件、差別待遇事件が五百十五件、私刑いわゆるリンチでございますが、これが二百十七件、酷使虐待が四百二十七件、労働権の侵害が五百三十三件、強制圧迫が千七百四十八件、残りがその他ということになっております。これが今までいたしました侵犯事件活動状況でございます。さらに啓蒙活動につきましては、ただいまここに数字を持っておりませんが、昨年度二十九年度に行いました全国啓蒙活動行事といいますか、討論会座談会講演会、映画、法律人権相談所、こういうおもなる行事だけで約五千六百件を越えているかと思います。  先ほど古屋先生から民間団体予算の点につきまして御質問がございましたが、人権擁護局所管としまして、民間における人権擁護運動助長ということが入っておりますので、民間人権擁護関係機関協力するような建前協力といいますか助長、援助するというような建前になっております。ただいま民間における人権擁護関係有力団体といたしましては、弁護士会における人権擁護委員会自由人権協会、私の承知いたしまする範囲では大体全国的な活動をされております人権擁護民間団体としては、この二つだけで大体よろしいのではなかろうかと考えております。この機関とも常に連絡をしあいまして、できる限りの協力をいたしておる次第でございます。  それから予算の点でございますが、それにつけ加えまして、先ほど機構を申し上げましたので、人権擁護局職員についても申し上げたいと思いますが、人権擁護局職員はただいま十三名であります。一課、二課、三課に分けまして十三名ということになっております。局でございます以上、この中には給仕もタイピストも含まれており、もちろん局長も入れまして十三名ということになっております。しかしほかから兼任というようなことで四名ほど借りておりまするから、十分な仕事にはなりませんが、四名ほど実際には借りております。それから先ほど申しました地方法務局、これが四十九庁ございますが、これの実人員が、昨年より少しふえまして二百十一名ということになっております。この中に事務官が百四十六名、雇が五十五名ということになっておりますが、これまた兼務の事務官二十四名、雇十八名というものがこれから引かれるようになっております。この二百十一名が四十九庁にそれぞれわけられるのでございまして、一庁当りにしますと、わずか数名の職員ですべての人権擁護の、先ほど申し上げた侵犯事件調査処理啓蒙活動、それからそれに付置されております人権擁護委員のお世話とか、協力というような仕事もすべて含まれておりまして、このわずかな人数によって、人権擁護憲法に保障されましたきわめて重大なこの仕事を負わされているような次第であります。予算につきましても、ただいま資料を持っておりませんが、これも概略のところを申し上げますと、人件費を抜きまして、本省の予算が多分二百十五万くらいかと存じます。それから四十九庁の地方法務局全部の予算が、一千万を下って九百七十万かになっております。そうしますと、一局当り二十万にならないかと存じます。このわずかな予算、しかもこの中には人権擁護委員の一人一年千円の実費弁償金も含まれておりまして、すべてで今申し上げたような予算でございます。きわめて貧弱と申しますか、非常に不足予算人員によって、この重大な仕事を負わされております。従って従来人権擁護局活動についても、あるいはいろいろの批判も耳にいたすのでございますが、われわれとしましては、この不足予算人員で、しかも大きな仕事を負わされておりまして、憲法の最も大きな主要な部分である国民基本的人権擁護という、しかも新しい仕事でございますので、きわめて謙虚に、慎重に仕事をいたしておりますので、あるいはいろいろ仕事の面において不十分であるとか、あるいはどうも処理について迅速でないじゃないかというような御批判もいただくかと存じますが、われわれとしてはできる限りの努力をいたしておるような次第でございます。
  14. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 いま一言お尋ねをいたしておきたいと存じますが、人権擁護の中心問題は、何といっても警察官検察官刑事事件取扱いに関する人権じゅうりんが一番重点でなければならぬと存じます。その人権じゅうりんを是正するために人権擁護局がいかなる立場にあり、またいかなる効能を発揮しておるか、この問題とまっ正面から取り組んで、この人権じゅうりん問題を処理する能力のないところの人権擁護局なんというものは必要ではないではないかという疑問が、国民の間に自然に現われてくる。この問題といかに取っ組んでおるか、またいかなる実績を上げておるか、これをお尋ねいたしたい。
  15. 戸田正直

    戸田説明員 佐竹委員の御質問大へんごもっともでありまして、人権侵犯事件で最も重要なものは権力関係にあると思います。権力のあるものと権力のない国民の間とにおける人権関係、これが最も重要な問題であります。私人における侵犯事件、いわゆる対等者間の侵犯事件というものは割合に救済されやすいのでございますが、権力を持つ公務員権力のない国民の間とにおける、差のついた関係における人権侵犯事件というものは、ただいま仰せの通り最も重要なものであります。従ってわれわれとしましても、人権擁護という立場からは、権力のあるものと、ないものとの関係、すなわち公務員人権侵犯事件については最も重視いたしまして、従来事件処理いたして参っております。ただどれだけの実績を上げておるかという御質問でありますが、実はただいま処理状況の表を持っておりませんので、具体的にこまかく申し上げられないのでございますが、われわれとしましては、警察検察庁あるいは検察官であるから、法務省の一局である人権擁護局においてこの侵犯事件調査し、処理できないというようなことは決して考えてもおりませんし、また従来さようなことはございません。われわれとしては、きわめて公平に、憲法に保障されております基本的人権の保障、擁護ということについては公平中正に処理いたして参っておりまして、法務省内にあるから検察庁仕事ができない、権力を持っておる警察官だからこの事件をやることができない、さようなことは毛頭ございません。ただいろいろ事件を取り扱っております面で、人権擁護仕事というものは、率直に申し上げると非常にむずかしいのであります。しかも非常に微妙であります。たとえば警察検察官、あるいは裁判所のように、刑事について申し上げますならば犯罪構成要件というものがある。そこで、人を殺せば殺人である、財物を窃取すれば窃盗である。しかもそれに対して懲役何年というようなことが大体きめられておりますれば、これは処理が非常にやすいのでありますが、人権擁護ということにつきましては、構成要件というものが明確でございません。しかも事案事態がきわめて微妙でありまして、また法令違反のみでなく、感覚の問題が非常に多いのであります。人権感覚を必要とするような問題が非常に多うございまして、これをどう判断するかということについては、正直に申し上げて非常に苦労しておりまして、相手公務員であるとか権力を持っておるからわれわれが処理をてきぱきできないというようなことは決してございません。ただ事案性質上、処理をします場合に非常に苦労し、慎重に考えさせられて、これをどう判断し、どう処理していいかということについては、正直に申し上げて非常に苦労いたしておりまして、処置をいたしかねる場合も非常に多いと思います。ただ仕事性質処理のしにくいという場合はございますが、相手公務員であるから処理ができない、処理しないというようなことは従来一つもございません。ただ非常に新しい仕事であり、しかも問題が重要であり、しかも非常に微妙であるというような関係上、いろいろの御批判を結果的にはいただくようなことになる場合もあるかと存じますが、私たち立場としては、これは思想的にも左右されない、政党的にも不偏不党であるし、きわめて公平な立場でこの事件処理していかなければならぬという考えをもって常に善処いたしております。幸い検察官との事件も、申し上げますならば、われわれが調査して勧告したというような事件については、ほとんどわれわれの勧告を尊重してもらいまして、われわれの勧告通り処置を常にしていただいております。われわれが相手によって事件を左右する、また左右されるというようなことは決してございません。ただ証拠の収集等につきまして、われわれが強制捜査権というようなものも持っておりませんし、また処理をするというような権限も持っておりませんので、そういういろいろな面からはいろいろ困難もございますが、われわれの気持としては左右されませんし、またされておりませんということを申し上げておきたいと存じます。
  16. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 せっかくの御説明でございますが、言葉多くしてその内容の貧弱さを痛感いたします。むしろ具体的に起りました事件をどういうふうに結末をしたかといったようなことを、次回でよろしゅうございますが、こういったような案件が起きたが、これに対してはどういう勧告をした、そのために人権擁護局というものがどれだけまた尊重されなければならぬかという気持国民に示す、その示す材料として主要なる事例でけっこうでございますから、その人権じゅうりん関係の、しかも公務員が公権を乱用いたしまして国民人権をじゅうりんしたような場合における人権擁護局のとった行動及び態度、その結末、すなわち実績等を表によってお示し願えますならば幸いであります。
  17. 世耕弘一

    ○世耕委員長 ただいま法務大臣から発言を求められております。これを許可いたします。
  18. 花村四郎

    花村国務大臣 三田村委員から選挙違反に関する資料提出についての御要求がございましたが、ただいまの御要求のうちで現在判明しておるものもあり、またしからざるものもございますが、後者については相当の時日を要するものもありますので、現在わかっております部分については後に局長より説明をいたすことであろうと存じますが、さように御了承を願いたいと思います。  なお一言申し上げておきたいことは、今回の総選挙は、御承知のごとく選挙界革正を目ざして公明選挙を打ち立てなければならないということで、この線に沿うて選挙違反等に関する取調べも進められましたことは当然でございますが、しかしまた取締りに対する最善処置を求むるとともに、その反面において少くとも人権をじゅうりんするがごとき行き過ぎた取調べのなきよう、また捜査の上において無理な捜査のなきよう、かようの面に対しましては最善の注意を機会あるごとにいたしておりましたので、この私どもの考えの線に沿うて進められてきたことであろうと信じまするが、しかし何かまた違法なる取調べ検挙等の具体的の事例がありましたならばお聞かせ願えますれば、そういう点に対しましては詳細にまた取り調べて、不当なる処置がありとすれば善処いたしたいと思っております  なお取調べをした被疑者の中で自殺者があったのではないかというお話でありましたが、ただいままでの取調べによりますと、被疑者の中で七名余り自殺をいたした者がございますが、この中で勾留中に自殺をいたしたというのは一名でありまして、その他は帰宅後自殺をいたしておるのであります。がしかしその自殺たるや選挙違反取調べに牽連をして自殺をしたというのではありませんから、その点は一つ御注意を願いたいと存じます。
  19. 三田村武夫

    三田村委員 ただいま法務大臣の御発言に関連し、かつ私が先ほど要求いたしました資料に加えてさらに希望を申し上げておきたいと思います。法務大臣説明通り、今度の選挙で一番強く叫ばれたものは選挙は公明たるべしということであります。選挙は公明でなければなりませんが、その選挙の取締りに対しては公正でなければいけない。選挙は公明たるべし、取締りは公正たるべし、これでなければ公明選挙は行われないと思います。その公明選挙のもとで非常にたくさんの違反事件を出したことはまことに悲しむべきことと思いますが、さらに取調べ、検挙に着手しております事件がどういうものであるかということは検察当局並びに警察当局も御存じでありますが、同時に選挙は大衆の中で行なっておるものでありまするから、また選挙民たるべき国民もよくこれを承知しておるのであります。どの候補者がどういう運動をやったか、そしてどのような事件を出したかということもよく承知しております。従いまして、狭い専門的な見地から見た取締りの公正と、いわゆる民主的な客観的監督のもとにおける取締りの公正とは、おのずからまた違うものがあるのであります。われわれが法の権威のために、検察の権威のために一番心配するのはその点でありまして、この点もどうか御注意願いたいと思います。  なお資料要求の点においてもう一点御調査願いたい点は、この選挙違反取調べに当って、いわゆる議員、地方議会議員あるいは市町村会議員、こういう公職にある人の関係した事件、その人員内容等も数字にしてお出し願いたいと思います。と申しますことは、御承知通り会議員はその身分が憲法に保障されております。従ってその議会活動に支障を来たさざるために、先般は国民批判の中心になった指揮権の発動も行われたのでありますが、いやしくも選挙民を代表して議会活動を行うという立場から考えました場合には、国会議員のごとき身分保障はないといたしましても、地方議会の議員についてもその点は十分考慮が必要だと思います。大量の選挙違反を出したために、地方議会の活動がほとんどその機能を失ってしまうという事案もあるのであります。ことにこの衆議院の選挙に続いてまたすぐ地方議会の選挙が行われるのでありますが、その地方議会の選挙を目前にして、その身柄拘束され、事案を大衆の前に発表されることは、ある意味においてはその選挙に対して重大な支障を来たす場合もあるのであります。こういう点も十分御考慮願いまして公職にある者、ことに地方議会の議員の職にある者に対して、どのような取扱いをなされるかということもあわせて御調査の上、御提出願いたいと思います。
  20. 世耕弘一

    ○世耕委員長 ただいま三田村委員外委員から資料要求が政府に対してあったのでありますが、早急にその資料提出要求いたします。  なおこの際委員長から戸田局長にお尋ねいたしますが人権擁護問題について、国際的な立場から人権問題が発生したのがあるのではないか。そういう方面の調査は進んでおられるかどうか。またお取扱いになっておるかどうか。手近な例を申しますれば、沖縄の人権問題が世間の話題となっておるのでありまするが、そういう方面に触れたことがあるかどうか、お尋ねしておきます。
  21. 戸田正直

    戸田説明員 国際的な人権問題といたしまして、ただいま沖縄の人権問題がありますが、沖縄の人権問題につきましては、われわれも深い関心を持ちまして、情報の収集等をいたして参りましたが、この事件は御承知のように、領土権は日本にございますが、行政権が日本にございません関係上、いわば外国における在留邦人の人権問題と同じような立場にございますので、人権擁護局といたしましては、この問題を調査しまた処理する権限がございませんので、われわれとしてはできる限りの情報を得まして、外務省に逐一これを連絡いたしまして、その善処方をお願いしておるという程度でございます。
  22. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 人権擁護局長にちょっとお伺いしまするが、憲法人権擁護ということがあるので、その義務を履行するために、仕方がなくて人権擁護局というものがあるのじゃないでしょうか。真に活動する意味の人権擁護局とは受け取れないのです。先ほども人権擁護局長から各地方の委員に年額の実費弁償として千円ずつやっておる、こう言うておりまするが、裁判所の調停委員でもそれ以上の金額であるのに、わずか年額千円程度で果して委員活動できるとお思いになっておりますか、それをまずお伺いしたいと思います。
  23. 戸田正直

    戸田説明員 先ほども予算不足をお訴えいたしたのでありますが、人権擁護委員関係予算としましては、人権擁護委員一人年間千円の実費弁償金、これだけでございます。月にしますと八十円そこそこであります。たばこも二個程度しか買えないというような、きわめてわずかな予算であります。これで十分な活動ができるのかどうかというお説につきましては、とうていこのわずかの予算で十分な活動ができるとは思っておりません。われわれもその予算不足を常々痛感いたしまして、常に大蔵省とも折衝いたすのでございますが、どうも当初千円というような大体のワクがきまりまして、その後国家財政等の立場から、どうもこれらの予算が十分認めてもらえないというようなことで、なお依然として年間千円というわずかな予算でやっております。ただ幸いと申しますか、役所からは少し勝手なんですが、人権擁護委員の方がよく人権擁護仕事を理解されまして、自腹を切って実際には仕事をしていただいております。さようなわけで、委員の方もわずか千円の実費弁償金というものは当てにせずに、実際に仕事をしていただいておりますので、どうやらやっているような次第であります。千円のワク内で十分な活動ができるかというようなことは毛頭考えておりません。三十年度の予算につきましても、大蔵省と折衝して、この増額方についてただいませっかく努力中でございます。
  24. 椎名隆

    ○椎名(隆)委員 なるほど多くの委員の中には、あるいは人権擁護ということを理解して、一つの義務だと思ってやっている方があるかもしれない。しかしながら、多くの委員の中には年額千円ではやりきれない、結局頼まれれば自腹を切らなければならないのだから、真になすべきことがあっても避ける傾向があるということを、一つ御留意願いたいと私は思う。  なお昨年度の受付件数は四万何千あったと仰せられますが、どういうふうな処理状況になっているか。擁護局の局員の中には、いわゆる警察私人との間の問題の調査に当っては、多く警察の方に、いわゆる官憲の方に味方するきらいがあるということです。これも一つ御留意願っておきたいと私は思います。  なお資料が出てきましたならば、その資料に基いてお伺いしたい点がたくさんありますが、それは資料が出てから後にしたいと思います。
  25. 世耕弘一

    ○世耕委員長 なお委員長から政府側に要求しておきますが、きょう御発言になった中の資料も、同時に委員会に御提出願いたいと思います。  他に御発言はございませんか。——他に御発言がなければ、本日はこの程度にとどめて、次会は明後四月一日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午前十一時四十八分散会